1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
令和七年五月八日(木曜日)
午後一時開会
─────────────
委員の異動
四月二十四日
辞任 補欠選任
高木かおり君 片山 大介君
四月二十五日
辞任 補欠選任
高橋 次郎君 竹谷とし子君
─────────────
出席者は左のとおり。
委員長 和田 政宗君
理 事
磯崎 仁彦君
酒井 庸行君
山本 啓介君
木戸口英司君
竹谷とし子君
委 員
青木 一彦君
石井 浩郎君
今井絵理子君
太田 房江君
友納 理緒君
山谷えり子君
石垣のりこ君
石川 大我君
奥村 政佳君
鬼木 誠君
河野 義博君
片山 大介君
柴田 巧君
竹詰 仁君
井上 哲士君
大島九州男君
事務局側
常任委員会専門
員 岩波 祐子君
参考人
早稲田大学法学
学術院教授 酒井 啓亘君
LM虎ノ門南法
律事務所弁護士 上沼 紫野君
芝浦工業大学シ
ステム理工学部
准教授 持永 大君
弁護士 齋藤 裕君
─────────────
本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案(閣法第四号)(衆議院送付)
○重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(閣法第五号)(衆議院送付)
○連合審査会に関する件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/0
-
001・和田政宗
○委員長(和田政宗君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、高木かおりさん及び高橋次郎君が委員を辞任され、その補欠として片山大介君及び竹谷とし子さんが選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/1
-
002・和田政宗
○委員長(和田政宗君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/2
-
003・和田政宗
○委員長(和田政宗君) 御異議ないと認めます。
それでは、理事に竹谷とし子さんを指名いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/3
-
004・和田政宗
○委員長(和田政宗君) 重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案及び重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
本日は、両案の審査のため、四名の参考人から御意見を伺います。
御出席いただいております参考人は、早稲田大学法学学術院教授酒井啓亘君、LM虎ノ門南法律事務所弁護士上沼紫野さん、芝浦工業大学システム理工学部准教授持永大君及び弁護士齋藤裕君でございます。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、酒井参考人、上沼参考人、持永参考人、齋藤参考人の順にお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず酒井参考人からお願いいたします。酒井参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/4
-
005・酒井啓亘
○参考人(酒井啓亘君) 御紹介あずかりました酒井と申します。よろしくお願いいたします。
本日は、このように意見を述べる機会を与えられ、大変光栄に存じております。
以下では、専門である国際法の観点から、いわゆるサイバー対処能力強化法案及びその整備法案について評価を行い、幾つか意見を申し上げることにいたします。
法案への評価に入ります前に、サイバー空間への国際法の適用についての現状を確認し、ここでは三点のみごく簡単に御説明しておきたいと思います。
第一点は、サイバー空間の活動には既存の国際法規則ができる限り適用されるということが多くの国家の間で合意事項となっているということです。
第二に、同じく国家間で合意されている点として、サイバー行動が外国領域で執行管轄権の行使という形態を取った場合には当該外国国家の主権を侵害する行為となり得るということが挙げられます。ただし、執行管轄権の行使に当たるかどうかの基準については、異なる基準を採用している国家もあり、全てのサイバー行動が執行管轄権の行使として主権侵害行為となるわけではありません。
第三に、問題となるサイバー行動が他国の主権侵害行為として国際法上違法な行為とみなされる場合でも、国家責任条文に規定されているような慣習国際法上の違法性阻却事由に該当する場合には、その正当化が可能であるということです。違法性阻却事由としては、対抗措置のほか、緊急避難、これは本国会の審議では緊急状態と呼ばれていますので、以降はここでも緊急状態と申し上げますが、この対抗措置と緊急状態の二つが特に現実には適用されるでしょう。実際にも、各国がサイバー行動に関して参照しているタリン・マニュアル二・〇においても対抗措置と緊急状態のルールについて比較的詳しく規定されております。
こうしたサイバー空間の活動に適用される国際法規則の内容に照らし、今回の法案の評価について、ここでは四点にわたり意見を申し上げたいと思います。
第一に、この法案で想定されている措置は武力攻撃事態に至らない状況での武力の行使とはみなされない措置での対応とされており、その意味で、国際法上の武力行使禁止原則の遵守が確認されているということに注目する必要があります。
確かに、いかなる措置が武力の行使に該当するかについて国際法上定まった定義があるわけではありません。しかし、問題となる措置が、少なくとも国内法上警察権の範囲内で比例原則に基づき危害の発生防止のために必要最小限度で実施されるのであれば、国際法上は武力の行使には該当しないと主張することができます。
第二に、アクセス・無害化措置を行う場合の国内法上の根拠規定となる改正警職法第六条の二第二項の規定は、この措置を国内法上適法に行使し得る条件を明確にしたものであって、国際法上の緊急状態の要件を定めたものと誤解してはならないということです。したがって、この規定に緊急状態の要件が逐一明記されていなくても、それ自体が問題となるわけではありません。
この規定の国際法上の効果は、国内法が定めた条件に従った国家機関の行為が、諸外国に対して我が国の国家としての行為であるということが明確に示されるということにあります。
ただし、国内法上適法な国家行為だからといって、それが国際法上も合法であるというわけではありません。アクセス・無害化措置が国際法上合法であることを主張し、又は違法行為と疑わしい場合に違法性阻却事由を援用してその正当化を図るためには、別途、国際法規則を適用して判断しなければならないのです。
すなわち、第三に、アクセス・無害化措置が国際法上合法化されるかどうかはあくまでも国際法規則に従って判断されなければならず、この法案の内容もそれを前提とした立て付けになっていることを確認する必要があります。その場合の国際法規則は、主として主権平等原則や不干渉義務といった規則であり、これらに違反すれば国際違法行為となります。
ただし、主権侵害が生じる敷居については、各国によって意見の相違がないわけではありません。国家によっては、具体的な損害が生じなければ主権侵害を主張しないところもあります。その場合には、アクセス・無害化措置は物理的被害や機能喪失を発生させないものと想定されていますから、その国との関係では国際法上合法な行為として主張できることになります。
他方、具体的な損害が生じなくても、この措置が執行管轄権の行使であることを理由に、主権侵害行為としてその違法性を主張する国家も存在します。その場合には、当該措置が国際法上合法か違法かについて見解が対立し、両国間に紛争が生じる可能性も出てくるでしょう。我が国は、この場合、この措置が国際法上合法であると主張しつつ、他方で、仮に違法であった場合でも、違法性が阻却され正当化されるという主張を行わなければなりません。
したがって、第四に、この法案では、我が国のアクセス・無害化措置について、相手国が主権侵害による国際義務違反を主張する場合には、国際法上の違法性阻却事由によりこの措置を正当化することが可能とされていることが重要です。
すなわち、国際法の一分野である国家責任法に定められた違法性阻却事由の制度を用いて問題の措置の正当化を図ることが予定されていなければならないわけです。ここで想定される違法性阻却事由は、主として対抗措置と緊急状態ですが、多くの場合、緊急状態の方がサイバー行動の正当化には適合的な要件を有すると言えるでしょう。
改正警職法第六条の二第二項は、緊急状態が成立するための要件そのものを規定したものではありませんが、その発動を妨害しないように、国際法上の要件との不一致が生じないような規定内容となっています。その意味で、アクセス・無害化措置が行われる場合には、この国内法規定とともに国際法規則に合致したものでなければならず、この法案はそうした条件を備えた内容となっているものと評価することができるでしょう。
最後に、この法案が成立した後、このサイバー対処能力強化法及びその関連法令とそれに基づく国家実行が国際法の観点からいかなる意義を有するのか、そして、その意義を実現していくためにはいかなる課題が残されているのかを四点ほど意見を申し述べたいと思います。
第一に、この法律及び関連法令の実施によって、重要インフラが保護され、我が国の安全や公の秩序の維持が図られるという国内レベルでの目的が実現するのに加えて、実際には、グローバルなレベルにおいてサイバー空間の安全と国際社会による安定的なその利用への貢献が図られるということがあります。
しかし、こうした状況が実現するためには、この目的の実現手段を実施する能力を向上させなければなりません。この能力を向上させるためには、その作業に適した人材の投入と発展する科学技術のフォローが不可欠です。サイバー行動に関係する人材の育成は様々なところで主張されてきたところですが、これまで見てきたように、サイバー行動に関係する国際法規則の専門知識に理解の深い人材の育成もまた急務であるように思われますし、特に民間部門で発展が著しい科学技術などについても実施機関が不断に取り入れていく必要があります。それとともに、グローバルにサイバー空間の安定的利用が確保されるためにも関係国との連携は不可欠ですし、この点での国際協力を強く進めていくことが重要です。
第二に、この法律の目的を達成するために実施されるアクセス・無害化措置は、我が国の安全や公の秩序の維持のために実施されるものであり、その場合でもできる限り人権保護を尊重し、人権を尊重しなければならず、この点は、国際法の観点からも安全保障と人権保護のバランスをいかに捉えるかという問題に関わると考えられます。
いずれにおいても、国際社会にとって重要な価値を表すものであり、その優劣はあらかじめ簡単に決められるものではありません。そのバランスを図るためには、個別具体的な事案ごとに保護法益と被侵害法益の内容などを特定し、それに対する具体的な措置の影響を検討しなければならず、この点は今後の実務において留意しなければならない問題であるように思われます。
また、アクセス・無害化措置の実施に行き過ぎや濫用が行われないようにするためには、第三者機関としてのサイバー通信情報監理委員会が実効的に機能することが不可欠です。このため、その作業には、憲法、通信法といった国内法と、サイバー行動に関連する国際法にそれぞれ精通した専門家の助力をどのように得ていくかということも今後の課題となるでしょう。
第三に、これも国際法の観点からですが、国際法を形成するプロセスにこの法とその実施が貢献するということがあります。すなわち、サイバー対処能力強化法とその関連法令の内容及びこれらに基づく我が国の国家実行が、サイバー空間での活動を規律する国際法規則の形成、発展に大きく貢献するということもその意義と見ることができるのです。
この法案が成立して正式に国内法として施行されれば、その内容自体が日本の国家実行を示すことになりますし、この法に基づくアクセス・無害化措置の実施とその国際法上の根拠や正当化に関する我が国の主張もまた日本の国家実行として諸外国の注目を集めることになります。
御承知のように、具体的な行為を行う行政府はもちろん、国内立法を行う立法府もまた国家機関の一つとして国家実行の担い手であります。したがって、この法の制定もまた国家実行となり、慣習国際法の形成などを通じて、サイバー空間の活動に関連する国際法規則の形成、発展に大きな寄与を果たしているのです。
また、こうして形成されるルールには、いずれは、国家機関のみならず、サイバー関連の民間セクターに関係する企業等も実質的に国際法形成過程に関与することが期待されます。そこでは、国家を拘束する国際法規則だけではなく、私人を直接規律する非法的なルール作りも視野に入れられることになるでしょう。
サイバー空間の活動を規律する国際法規則の形成には、当然のことながら、他の諸国もまたそれぞれの国家実行を通じて関与していますので、他国の動向も不断に検討しておくことが重要です。
それと若干関係しますが、最後に第四に、他国との関連でこの法律の役割をどのように考えるかということがあります。これは、特にアクセス・無害化措置をめぐり、相手国から懸念や抗議が伝えられる場合に重要です。我が国がサイバー空間での活動について正当化のための法的議論を展開していく際には、この法律とそれをめぐる関連国際法規則の解釈適用が行われるわけで、この法律と国際法規則の解釈が我が国の主張の根拠を提供することになるからです。
しかし、相手国との間で見解の相違が生じた場合には、相手国も自己の主張に都合のいい国内法や国際法規則の解釈を用意するのが一般的です。お互いに自らの主張とその根拠を持ち寄って、それぞれ国益を追求しつつ、紛争を悪化させないように協議することになりますが、その関係国間の協議を建設的なものとするためにも、次のことに留意することが必要ではないかと思われます。
まず、両国間で問題となった措置をめぐる事実やその内容などについて、自国の省庁間で関連事実や情報を正確に、かつ確実に共有しておくとともに、国家として自己の行動を正当化することを目的とした法的議論の一貫性を維持できるような制度的枠組みを準備しておくことが必要です。
また、国際社会においては見解の相違は頻繁に見られるのであり、国家間での紛争解決の内容が結果として第三国の行動にも影響を及ぼし、最終的に新たな国際法規則の形成に寄与することも少なくありません。このように、個別の紛争解決がサイバー空間を規律する新たな国際法規則の形成の端緒となることにも留意した努力を行うことが必要でしょう。
紛争の発生との関連では、我が国に所在するサーバー等が何らかの形で操られ、そこを起点として他国の法益を侵害するような攻撃が行われるという状況で、我が国自身が責任を問われる危険があるということも認識すべきです。したがって、我が国も自国領域を適切に管理して、国際違法行為国となることを回避しなければなりません。
この問題は今回の法案が想定する状況の範囲を超える課題ではありますが、できるだけこの問題にも対応する必要があることを最後に指摘して、私の意見陳述を終えたいと思います。
御清聴どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/5
-
006・和田政宗
○委員長(和田政宗君) ありがとうございました。
次に、上沼参考人にお願いいたします。上沼参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/6
-
007・上沼紫野
○参考人(上沼紫野君) 御紹介にあずかりました弁護士の上沼と申します。
私は、サイバーセキュリティ戦略本部員と、あとこの法案に対する有識者検討会に入っていましたので、その際に、特に通信の秘密に関して留意して検討しておりました。その通信の秘密に関する留意点と、その留意点がこの法案においてどのように具体化されているかについてお手元の資料に基づいて御説明させていただければと思います。
まず、三ページ目を御覧ください。
通信の秘密に関してですが、今更申し上げるまでもないところですけれども、非常に重要な権利でありまして、表現の自由もそうなんですけれども、人の内面、内心の表れるものとして非常に重要なものとして保護されています。
その結果、通信の秘密の保護対象ですが、四ページですね、通信に関わる全ての事実ということで、特に我が国では、通信の内容のみならず、通信の存在それ自体に関する事項についても通信の秘密として保護されています。これは、具体例でいいますと、信書の場合を念頭に置けば、封書の中身が通信の内容でして、封書の表面ですね、郵便屋さん等が御覧になる表面等も通信の秘密として保護されているということです。これをインターネット通信の場合で考えますと、電子メールの本文、件名、添付ファイル等が通信の内容、あと、通信の存在それ自体に関わる部分が、送受信日時とかIPアドレス、ポート番号等がそれに当たるということになっております。そうしますと、この二つについてはその保護レベルがそれぞれについて違うということがお分かりいただけると思います。
それを前提に、次のページ、通信の秘密の制限における視点というものを考えていきたいと思います。
通信の秘密は非常に重要な権利ではありますけれども、一〇〇%常に守られるものではなく、やっぱり必要最小限の制限は受けるというものです。その場合の考え方として、必要性があるかどうかというところを、通信の秘密で守られる利益、あと通信の秘密の制限により実現される利益というものを考えながら、その必要性において必要最小限度かどうかというようなことを考える必要があります。
その際に、通信当事者の同意がありますと、それは通信の秘密として守られるレベルが割合緩和されるということになります。なぜならば、秘密ではなくなるからです。この場合の同意に関しては、包括的な同意ではなく、一般的に具体的な同意ということになっておりますので、単純に、見てもいいよと一回言ったら常に見られると、そういうものではないということになります。あと、手段についても当然考えなくてはなりませんので、目的に照らして必要な限度の制限かということになります。
これを本法案において検討したものが次の図でありまして、実現しようとする利益が国民の生命、身体ということになります。なぜならば、重要インフラが機能を発揮しないということになりますと、国民の生命、身体が危機に冒されるわけです。なので、これは非常に重要な権利だということになります。
それを守るための手段として、一定限度で通信の秘密を、通信の内容を利用しようと、内容じゃない、ごめんなさい、通信を利用しようとするのが本法案でありまして、次のページ、七ページを御覧ください。手段としてどういうことをしようかというと、対象とする通信は外外通信、外内通信、内外通信というものです。これは、この検討のときに考えていたのは、外国に関しては日本の国家権力の捜査等が及びませんので、この通信を見ることによってでないと実際のその調査はできないという事実があるからではないかというふうに私は考えておりました。
その対象をこのように絞った上で、更にその情報の内容を見ていきますと、先ほどの通信の内容と存在に関わる事実というふうにして分けて考えたときに、今回対象となる情報は、見ていただければ分かりますように、コミュニケーションの本質的な内容には当たらない例というものでして、送受信日時、IPアドレス、通信量、ポート番号というようなところになっております。メールアドレスもこれに入りますが、というのは、宛先等当然入りますので、ただ、ここについては個人情報保護の観点から識別化を、識別できないように工夫すると、加工するという手段が取られております。
さらに、ここの部分をイメージ図に、先ほどの信書の場合との比較したイメージ図でいいますと、この封書の中身は見ないけれども、宛先に類するものは見ますよというようなことになってきます。当然、宛先についても普通は見えるというものの、これを集めていくとそれなりの推知ができるところではあるので、そこを、じゃ、何らかの形で歯止めを掛けなければいけませんねということは当然入ってくるわけで、その手段として実際にどんなことをしているかというと、十ページ、まず、サイバー攻撃に関係する情報だけを自動選別しますと。自動選別がなぜ重要かというと、人が認知しないのでそこの中身をまず見ませんと、人がですね、あと、恣意的な選別を行わないというところが重要だということになります。
さらに、その通信の秘密の侵害を防ぐための手段として、十一ページですね、不当な侵害発生を防ぐための措置というものを更にセーフハーバーとして考えるというようなことになります。このときに考え得る手段としては、事前の規制と事後の是正手段の両面から考える必要があります。
一般的に、このとき考えていたのは、法令による規制、あと独立した監査機関による監視、あと事後的な是正ができるためには透明性の確保が要るということを考えた結果、本法案においてどうなったかというのが十二ページでありまして、まず、法令による規制ということで、目的の限定、通信の秘密の尊重、あと法令に違反、これは事後ですけれども、法令に違反した場合の措置というような形でまず事前と事後の両方が法令の中に入っております。実際に違反があった場合にどうするかということに、違反がないように、あるいは違反があったときにどうするかということで、独立機関による監視を事前、事後と両方に行うということになります。ここが特に今回重要な役割を担っているというふうに私としては考えているわけです。
さらに、透明性の確保ですね、これは透明性確保の仕組みをつくるところは事前の措置ですけれども、実際にそこの是正を行う実効性を保つのは、この国会における報告等できちんと実際に何が行われているかということを把握するというところになってくるというふうに考えております。
その上で、重要な役割を担う監視機関についてどういう在り方が必要かというようなことを考えてみたのが十三ページでして、まず、監視機関については、国民の通信の自由という重要な価値を守るための重要な機関ですので、独立性が確保されることがとても重要だということになります。これが、本法案では三条委員会として独立性を極めて高い形で設置されるというふうに想定されています。さらに、サイバー攻撃の対処という目的に鑑みますと、その独立監視機関というのは、専門性があって、さらに、迅速な対応ができるというところ、あと、孤高の機関であってはなかなかいろんな対応ができませんので、関係当事者との円滑な協力が必要だということになってくると思います。このような上で、三条委員会というか、独立監視機関がきちんとグリップを利かせて監視をしつつ、かついろんな情報を見るというところが本法案において非常に重要な点というふうに承知しております。
さらに、その上で必要な重要な事項として考えておりますのは、まず国民の理解というのが非常に重要だと思っております。この場合の国民の理解というのは、自分の権利を守ることに対する正確な知識と関心です。この自分の権利というのは、通信の秘密を自分が守られているということについての知識と関心と、サイバーセキュリティーがなぜ必要かと、これにより自分の生命、身体が守られているという知識、関心、この両方がきちんと理解されていることが、この法案において、この法案が円滑に行われるための重要な要素というふうに考えております。
さらに、サイバーセキュリティー分野に関しては変化が非常に急速な分野でございます。ですので、一旦法律を作ったら終わりということではなくて、継続的にその状況についての調査、あるいは制度が十分か、また、想定した枠組みが機能しているか、問題が生じていないかということを継続的に検討する必要があると思います。本法案においても三年後に部分について検討というのが、附帯決議じゃなかった、ごめんなさい、修正で入っていたと思いますので、その継続的な見直しについての言及がされているという点、非常に私としては有り難いことだというふうに思っています。
私からは以上になります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/7
-
008・和田政宗
○委員長(和田政宗君) ありがとうございました。
次に、持永参考人にお願いいたします。持永参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/8
-
009・持永大
○参考人(持永大君) 芝浦工業大学の持永です。どうぞよろしくお願いします。
本日は貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
私は、サイバーセキュリティーの技術と戦略について研究をしています。技術に関しては、通信ネットワークのセキュリティーであったり、サイバー攻撃の手法などを研究しています。戦略に関しては、他国のサイバー戦略や関連する政策を分析しています。
現在、私は大学に籍を置いて研究活動をしていますけれども、元々は実務家としてのキャリアの方が長くて、JPCERTコーディネーションセンターというところでサイバー攻撃の分析やインシデントの対応、調整、あとは国際連携に当たったほか、三菱総合研究所に行ってサイバーセキュリティーや外交・安全保障に関する政策立案のお手伝いをしてきました。
本日、私は、能動的サイバー防御が日本が欧米主要国と同等以上の対処能力を備え、被害の顕在化を防ぐために必要な能力であることを指摘いたします。その能力必要性の背景として、サイバー攻撃の洗練化に併せ、防御側の対処が多様化しつつも限界を迎えていることを指摘します。さらに、これらを踏まえ、課題として、官民国際連携の充実、体系的な対処と監査の円滑化及び科学技術・人材への投資を指摘します。
近年のサイバー攻撃は、攻撃手法の洗練化に加えて、規模の大きさやしつこさが特徴的です。これらの攻撃は、ある期間内に特定の組織や分野を標的とし、特定の手法やインフラを用いて繰り返し行われる攻撃活動です。専門家は、繰り返して行われる一連の攻撃活動を攻撃キャンペーンと呼んでいます。この攻撃キャンペーンはその期間が長く、潜在的な被害規模がとても大きいです。
二〇二四年一月にアメリカ政府が公表した中華人民共和国を背景とするボルト・タイフーンと呼ばれる組織による攻撃では、攻撃者は少なくとも五年間にわたって攻撃を継続しており、防御側が兆候をつかんで対処するまでに二年半を要しました。この攻撃への対処として、防御側は、通信情報を活用した調査や政府、民間による脆弱性対応の呼びかけ、あとは攻撃手法の公開といった様々な措置を行った上で、最後の手段として、我が国でいうアクセス・無害化の措置を行いました。
攻撃キャンペーンの洗練化や長期化に伴い、防御側は複数の手段を用いて対処を多様化しています。日本においても、例えば、セキュリティー製品の導入、規則の整備、教育といった各自や各社で行うような対応から、民間組織によるソフトウェア更新の呼びかけ、注意喚起、組織間での情報共有等があります。また、被害を受けている機器を運用している方に直接連絡をして被害の拡大を抑えようとしています。
一方で、政府や民間組織の間、専門組織からは、普及啓発、攻撃手法の公開、攻撃者を名指しして非難するパブリックアトリビューション又は経済制裁といった様々な手段を組み合わせて対処しています。
しかし、現状の対処にはコストと網羅性の限界があります。防御側は全方位の守りを固めることは高コストであり、網羅的かつ完璧な対策は難しいです。また、これらの限界の要因の一つは、悪用されているコンピューターの修復を管理者の自主的な行動に委ねている点にあります。この限界は、攻撃者が放置されているコンピューターを大規模な攻撃に悪用できる状況を生んでいます。
専門組織が呼びかけている内容には、例えば皆さんお持ちのスマートフォンのソフトを最新のものにしてくださいといったように、追加の費用が不要で手順も簡単なものもあります。しかし、サイバー攻撃に関する通知を受け取った組織がその機器をそもそも認識していなかった、又はサポート期限を過ぎた機器を使い続けた、又は追加のセキュリティー対策を取らなかったという現状が続いています。この状況が続けば、日本にあるコンピューターが攻撃者に悪用され、国内の基幹インフラ等がサイバー攻撃を受けるだけでなく、悪用されたコンピューターを経由して他国にもその被害を拡大させることにもなります。
国連の政府専門家会合の報告書は、国家がその国内で情報通信技術を悪用されている状況を許してはならないという国際的な規範を示しています。能動的サイバー防御は、この国際的な規範に応える一つの手段として位置付けることができます。そのため、サイバー攻撃の抑制に資する対処は、日本が国際社会において責任ある立場を維持するためにも重要な政策対応であると言えます。
よって、本法案の通信情報の活用はサイバー攻撃の兆候を捉えるのに有効であり、アクセス・無害化は、脆弱なコンピューターを攻撃者が悪用できないように政府が管理者に代わって対策することを可能とします。これによって、従来よりも高いセキュリティーを達成することが可能となり、攻撃キャンペーンを終了に追い込むことができます。
次に、課題として、官民国際連携の充実についてお話しします。
我が国のサイバー安全保障は、国家安全保障局や内閣官房の新組織を始め、官民の多岐にわたる関係主体によって確保されます。しかし、各省庁は対処手段についての共通理解を持っていない状況です。例えば、官民の誰が、いつ、どんな対処をするのかなどの共通認識を持っていません。今後は、共通認識を醸成した上で政府と民間組織の情報を統合し、官民の組織が同じ情報を見て連携し、各自が役割に応じて対応することが重要です。
また、政府の情報共有の在り方を再検討し、効果を高めるべきです。
現在、我が国では、官民それぞれが独自にインシデント情報を収集、共有しています。JPCERTコーディネーションセンターは、基幹インフラ事業者を含む約千二百六十の組織に対して毎日情報提供を行い、二〇二四年には四万六千件のインシデント報告を受け付けています。
一方、内閣サイバーセキュリティセンター、NISCで共有された情報は年間四百件程度です。この差は、JPCERTコーディネーションセンターが中立性と技術的専門性を併せ持つ独立組織として長年にわたり国内外の信頼を蓄積してきたことや支援を提供してきたことに起因すると考えられます。
そのため、今後は、政府が新たに独自の仕組みを構築するのではなく、既存の信頼ある情報流通チャネルを活用し、官民が相互にフィードバックし合える体制を整備することが重要です。加えて、民間事業者に政府へインシデント報告を義務付ける場合でも、それが一方通行とならないよう、政府側も迅速かつ有益な情報を継続的に還元すべきです。
国際連携について、サイバー攻撃への対処は国境をまたぐことが必要な場合が多く、諸外国との連携が欠かせません。そのため、国家安全保障会議は、国内の対処を開始する時点であっても、国際連携を前提とした対処方針を定める必要があります。
また、海外から支援を受け入れる態勢も必要です。なぜなら、海外から情報提供を受けて共同対処をするといったことが想定できるからです。そのため、積極的に同盟国、同志国と情報交換を行うだけではなく、運用面でも意思疎通を密にし、お互いの能力や組織文化に対する理解を深めることが重要です。
例えば、多国間で政治判断を含む実践的な演習を実施することも重要です。防衛省・自衛隊がまさに本日参加しているNATOサイバー防衛協力センターのロックド・シールズは、政府と民間だけではなく、米国、英国、オーストラリアなど諸外国と連携して演習に参加することでお互いの能力を確かめる機会となっています。この演習では、官民が連携して通信ネットワークを守るだけではなく、民間の送電網や水処理施設を共同で守ります。さらに、技術的な対処だけでなく、メディア対応や国際法に関連した分析を行うなど、領域横断的であることに加えて、全てを英語で行う演習です。
こういった演習は、領域横断的な対処能力に加えて、平素から日本が官民問わず諸外国と連携する能力を試す良い機会となります。今後、日本が主導して政治判断を含む演習をアジア太平洋地域で実施するなど、能力や判断プロセスを実践できる機会を増やしていくことが必要だと考えます。
次に、体系的な対処と監査の円滑化について申し上げます。
適切なタイミングでサイバー攻撃対処をするために、体系的な対処と監査の円滑化が必要です。政府が実施する注意喚起やアクセス・無害化を含む措置の実施は、慎重な検討が必要な一方で、対処の有効性を高めるようなタイミングで実施することが重要です。これまで政府が行ってきた一部の対処は、タイミングを外しており有効でないものがありました。そのため、体系的な対処として、通信情報の活用によるサイバー攻撃の兆候の認知から、対処の目標や計画の策定、措置の実施判断、効果測定、実施後の評価といった手順を確立することが必要です。
体系的な対処の確立においては、監査を円滑化する工夫も必要です。例えば、各手順において検討、承認に係る過程をシステム化して、迅速かつ確実な措置を目指すべきです。その際、各手順の根拠や責任者を記録に残すなどして、政府が各段階における説明責任を果たせるようなものとするとよいと思います。
最後に、科学技術・人材への投資について申し上げます。
我が国のサイバー人材の不足を解消するのは、科学技術・人材への投資です。政府による周知のおかげで既に多くの行政官や技術者がサイバーセキュリティーの社会的な意義ややりがいを認知しています。そのため、意義、やりがいを訴える段階から、資金を投じて基盤を強化する段階へ移行する必要があります。
我が国の国内総生産は世界第四位の規模であり、経済基盤や安全保障の確保という観点から見れば、我が国のサイバーセキュリティー予算は少ないです。令和六年度の政府のサイバーセキュリティー予算は二千百二十八億円でした。今後、政府や民間企業に高度な人材を供給できるよう、大学等での教育を始めとする科学技術への投資の絶対額を増やし、政府による予算配分の方法を変えることが必要です。
科学技術への投資と予算配分について言えば、研究テーマや配分機関の重複を許し、多数の研究者に研究費を配る方式を採用すべきです。サイバーセキュリティーは領域横断的な分野であり、従来の資源、予算を特定の分野やプロジェクトに投入する選択と集中の方針を転換するときです。高い能力を目指すならば、広い裾野が必要な分野です。現状では、軟弱な地盤の上に高層ビルを建てようとしている状況と言えます。
また、サイバーセキュリティーによる不備による経済的損失よりも、研究の重複や失敗を許容した場合の損失の方が少ないと考えます。最近の事例では、大学がランサムウェアによる被害を受けたことや証券会社のセキュリティーの不備が九百億円規模の不正取引につながったことがあります。
そして、人材への投資について、決め手となる給与水準が低いことが課題です。これは、人材への投資として早急に対処しなければいけません。
現在、エンジニアをしている方が教育機関や行政機関などの公の仕事に興味があったとしても、給与の低さから敬遠されています。行政官について言えば、能動的サイバー防御には技術、法律、国際関係など幅広い知見に基づく慎重な意思決定が必要であることを踏まえ、これに関わる領域横断的な能力を有する行政官が必要です。そういった能力を有する方の給与を引き上げるべきだと言えます。その責任や専門知識を踏まえれば、これは民間並みではなく、民間以上の水準で確保する必要があります。
民間から人材を登用する場合、政府は、彼らがこれまでに獲得してきた経験、資格及び能力に費やしたリソースに見合う給与を用意して迎え入れるべきです。特にサイバーセキュリティーは、情報通信技術や国際法など、様々な分野と隣接、重複しており、必然的に人材の獲得競争率が上昇します。また、国におけるサイバーセキュリティーは、その性質上、誰にでも仕事を任せられるものではなく、例えば海外の人材を無条件で採用をするのが難しい状況を考えれば、こちらも民間以上の水準を確保する必要があります。
最後に、これらの人材が政府内でサイバー分野を中心としてキャリアを積み重ねることができるようにする必要があります。現在、各省庁では、サイバー分野を中心とするキャリアパスが限られているため、幹部職員であってもサイバー分野に関する知見に濃淡があります。そのため、サイバー分野を中心としつつ、領域横断的な専門的知見を有する行政官、技官を養成することを念頭に、職員の異動時にサイバー分野に関連する異動先に配置するなど、サイバー畑を歩めるようなキャリアパスが必要です。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/9
-
010・和田政宗
○委員長(和田政宗君) ありがとうございました。
次に、齋藤参考人にお願いいたします。齋藤参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/10
-
011・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) 弁護士の齋藤裕と申します。
本日は、貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
私は、日本弁護士連合会で今回の法案についての検討を担当してきました。今回お話しする内容はあくまで個人としての発言でございますが、よろしくお願いいたします。
私の方は、今日、能動的サイバー防御法案、令和七年五月八日、参考人質疑メモというものに基づいてお話しさせていただきたいと思います。ただ、こちらが言いたいことは、事前でも配られていますし、今日も配られていますけれども、いわゆる能動的サイバー防御法案について慎重審議等を求める意見書、日本弁護士連合会、四月十七日付けというものがございますが、基本的には私の意見はこの意見書に沿った内容ということになります。
まず、メモに基づいてですが、第一に言いたいことでございますが、当事者協定の問題点、特にこれが通信の自由を侵害しないかということについてお話しさせていただきたいと思います。
当事者協定による通信情報の利用は、一方当事者の同意のみがあれば可能だというふうにされておるわけです。例えば、当該当事者の設備にサイバー攻撃がなされている、あるいはもうなされようとしているというような具体的な必要性は全く要件とされていないわけでございます。これがほかの通信情報の利用制度と異なるところでございます。このような通信情報の利用、当事者協定による通信情報の利用というものが通信の秘密を侵害しないかということについて述べさせていただきます。
まず、この点についてですが、最高裁決定、平成十一年十二月十六日決定というものがございます。いろいろ書いてございますけれども、最終的には、その通信傍受についてやむを得ないと認められることが必要だというふうにされているわけでございます。要するに、必要性でございますけれども、ここでいう必要性というのは、一般論としての必要性ではないわけですね。
例えば、一般的に、犯罪を防止しなければならないから、どんな状況であっても人の家に捜索、差押えを掛けてもいいということには絶対ならないはずであります。捜索、差押えをすることができるのは、犯罪の嫌疑がある、具体的に、ある犯罪が行われた疑いがあって、その被疑者を捜査するために必要性がある、そういう具体的な必要性があるから捜索、差押えができるということでございます。ここでいう必要性というのは、あくまで一般論としての必要性ではなく、具体的な必要性ですね。最高裁は、あくまで具体的な必要性がある、具体的にやむを得ないという場合には通信の秘密は制限されるということを言っているわけでございます。
ところが、当事者協定の場合、どうでしょうか。当事者協定について法文上の要件とされているのはあくまで一方当事者の同意であります。例えば、ソトソト通信と言うのかガイガイ通信と言うのか分かりませんけど、外外通信の場合ですけれども、通信情報の利用をしなければサイバー攻撃による被害を防止できないというようなことが要件に書かれています。これが具体的な必要性だと思います。当事者協定による以外の通信情報の利用については何らかの形で具体的な必要性が要件とされているわけでございますが、当事者協定による通信情報の利用については具体的な必要性が全く要件とされていない。これが非常に異質なわけでございます。そうしますと、最高裁の判断枠組みからして合憲性に疑問があるのではないかと思っております。
この点ですけれども、一方当事者が同意しているからまあいいんじゃないかというような反論が考えられるところであります。全く同じような事例について判断した判例、裁判例というのはないわけでございますけれども、通信の一方あるいは会話をしている一方が他方の同意なく録音しちゃう、人と人が話している、電話で話す場合も面と向かって話す場合もあるでしょうけど、一方当事者が相手の承諾を得ないで勝手に録音してしまうということがあるわけです。そういうケースについて、今まで多くの判例、裁判例で判断されてきたわけでございますが、今回、最高裁の二つの決定を資料に書いておりますけれども、二ページ目に行きます。
結局どういうことを言っているかということですけれども、例えばその録音が証拠にする上で必要性があるとか取材をする上で必要性があるとか、何らかの必要性があるからその録音、勝手に録音するというのは適法なんだというような判断をしている。あるいは、相手方も録音されることは予想すべきだったんじゃないのということで適法としているということでございます。これが最高裁の判断枠組みでございます。
そうしますと、今回の当事者協定による通信情報の利用というのは、先ほどから申し上げていますけど、法律上の要件として、少なくとも具体的な必要性というのは全く要件になっていない。そして、当事者が、じゃ、私は内閣総理大臣から通信情報が利用されるだろうかということを予期できるかというと、普通はできないわけですね。そう考えると、秘密録音、不同意録音の事例を持ってきて、一方当事者が同意しているから当事者協定による通信情報の利用は正当化されるんだということは決して言えないだろうと思っています。
そう考えますと、やはり当事者協定による通信情報の利用については、通信の秘密との観点で非常に問題があるというふうに考えております。これが一点目です。
二点目、捜査利用の可能性と令状主義でございます。
ここでは主に、通信情報の利用以外の、通信情報の利用について述べますけれども、全ての通信情報の利用について、法律の条文上は捜査利用の可能性は排除されていないわけでございます、明確には排除されていません。政府答弁では、これは政府答弁自体がぶれていますけれども、警察が選別後通信情報を得て、それを捜査に使う場合には新たに令状を取得するというような答弁もあったわけです。これはほとんどもう令状主義の潜脱と言わざるを得ないわけですけれども、このような捜査に使われてしまうかもしれない状況で令状なしで通信情報を取得するという制度が憲法に違反しないかということが問題になると考えております。
憲法三十五条というものがございまして、捜索、差押えをする場合には令状がなければならないというふうに言っておるわけでございます、これに反しないかの問題です。
まず、前提として、捜索、差押えというのは、警察官がどかどかと人の家に入り込むみたいな物理的なものが基本的には念頭に置かれているわけですけれども、ただ、無形的なものについても憲法三十五条が適用されるというのは、最高裁平成二十九年三月十五日判決ではっきりしたわけでございます。
次ですけれども、今回のような通信情報の利用のような、通信情報の利用は行政手続であって捜査手続ではないというふうにされているわけですが、このような手続についても令状主義が適用されるのか、これはもう国会でも議論されたわけでございます。これについて述べさせていただきます。
これについては、収税官吏による調査と憲法三十五条についての最高裁昭和四十七年十一月二十二日判決というものがあって、これも国会審議で再三引用されてきたところでございます。この最高裁判決は税務調査について令状主義が適用されないという判断をしているわけですが、その理由として四点挙げているわけでございます。
一つは刑事責任の追及を目的とする手続ではない。二つ目が刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結び付く作用を一般的に有しているものではない。三点目、これ、三ページですね、三点目でございますが、直接的物理的な強制と同視すべき程度の強制をしていない。四点目でございますが、公益上の目的を実現するために必要不可欠だということが言われているわけでございます。
まず、二つ目の要件でございますけれども、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結び付く作用を一般的に有するものかどうかということでございますけれども、これにつきましては、最高裁はなぜこういう判断をしているかというと、所得税の逋脱その他刑事責任の嫌疑を基準に右の範囲が定められているのではない、だから税務調査というのは刑事責任の追及に一般的に結び付くものではないと言っているわけです。税務調査の対象というのが犯罪という基準で絞られているわけではない、だから税務調査の対象は犯罪以外のものも含まれている、犯罪も含まれるかもしれないけど犯罪以外のものも含まれているので、そういう意味では、刑事責任の追及に一般的に結び付くものではないというのが最高裁の論理なんでございますけれども、通信情報の利用につきましては、特定不正行為の疑いというのが要件となっているわけですね。
特定不正行為というのは、例えば、業務妨害であるとか、刑法の業務妨害とかあるいは不正アクセス禁止法とか、そういう犯罪行為に該当する行為を要件としているわけです。通信情報の利用というのは犯罪行為というものを基準として行われることになっている、そういう制度でございますので、まさに犯罪というものを基準に、それを、犯罪に関わるものを対象に通信情報の利用がなされるという制度になっていますので、まさにこれは刑事責任の追及に一般的に結び付き得るものだろうというふうに言わざるを得ないと思います。
三点目の要件ですけれども、通信当事者は、もう勝手に通信情報を利用されちゃうわけですから、もう原則拒否できない、嫌だよと言うこともできない。これは非常に強制の度合いが大きいということでありまして、そう考えますと、最高裁の判決を前提としましても、少なくとも当事者協定に基づくもの以外の通信情報の利用については、最高裁判決に照らしても、憲法三十五条が適用されて令状主義が必要なのではないかと考えております。そうしますと、令状なしでこのようなことをやる制度というのは違憲ではないか、その可能性があるのではないかと考えております。
三点目でございます。当事者協定と目的外利用でございます。
当事者協定については目的外利用が許容されているということでございます。この点について一点、政府の説明としては、一つ目は、法の趣旨にのっとり権限を行使するのが当然だからいいんだと。二点目、第三者機関も法の目的に照らしてチェックを行うからいいんだと言っています。三点目、サイバー防御以外のために使いようがない情報だからいいんだというふうに言っています。
これらについて検討しますけど、一について、我が国は法治国家であります。法の趣旨にのっとり権限を行使するからいいんだというのはまさに人治主義の考えでありまして、到底法治主義の考えではないと言わざるを得ません。
二つ目ですが、第三者機関も法の目的に照らしてチェックを行う、次、四ページ目でございますけれども、というふうに言われていますけど、これ、二十三条四項でわざわざ特定被害防止目的以外に使ってよいと記載されているわけですね。明確にこういうふうに書かれているのに、第三者機関が法の趣旨とかどうのこうのということでチェックできるとは到底思われないわけであります。
三番目でございます。これは、ここに書かれているのは、どっちかというと当事者協定に基づく通信情報の利用などに関わる、法二十二条二項、一項三号ですかね、ごめんなさい、法二十二条二項一号、三号に基づいて述べているわけでございますけれども、例えば、誰かのパソコンなりサーバーが乗っ取られて、それを踏み台としていろんなところにサイバー攻撃がなされた場合、そのサーバーなりのIPアドレスをキーにして検索をして、それに関わるような通信がのぞかれてしまう可能性があるだろうと。その場合に、例えば、じゃ、どういうところとメールでやり取りをしたのか、どういうサイトをのぞいたのか、そういう人の交流、交友関係とか興味関心に関わるような情報が知られてしまうのではないかと思います。そういう情報が知られてしまうということになれば、それは捜査とかあるいは脅しに使われるということも十分あり得るだろうと思っております。
メールについては非識別化がされるからいいんだというようなお話もありました。これについては、衆議院でたしか平大臣がおっしゃっていたのが、メールの識別可能性については、例えばメールの中に名前が入っている、名前が入っているような場合にはそれで個人識別ができちゃうのでその部分を消さなきゃいけないというようなことを平大臣おっしゃっていたと思います。
そうだとすると、じゃ、名前が書かれていないメールアドレスは非識別化しないのかということになります。でも、メールアドレスというのは、使いようによっては、あっ、このメールアドレスはこの人のものだなというふうに分かってしまうことは十分あるわけですね。そういう意味では、メールアドレスなどについて非識別化されるから安心だということには決してならないだろうと思っております。そういう意味で、当事者協定において目的外利用を許容する規定は削除すべきだと考えております。
第四もありましたが、時間となりましたので。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/11
-
012・和田政宗
○委員長(和田政宗君) ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/12
-
013・山谷えり子
○山谷えり子君 自由民主党、山谷えり子でございます。
参考人の先生方、それぞれの視点から考え方をお述べいただきまして、ありがとうございます。非常に参考になりました。また、今後の課題についても重く受け止めていきたいというふうに思っております。
サイバー攻撃は年々深刻化、巧妙化しております。この法案は、官民協力の下、攻撃側を無害化することも可能になるということで、国民の安全、安心を考えてのことであります。
そこで、上沼参考人、持永参考人に、分析対象となる機械的情報の性質についてお伺いしたいというふうに思います。
本法案において、コミュニケーションの本質的内容に当たらない機械的情報であって、攻撃に関係があるものだけを選別した上で個人情報に当たるような部分は識別できないようにするという措置も講じて分析をすることになっているわけですけれども、サイバー攻撃の被害防止、そして通信の秘密を両立させるための仕組みでありますが、一方で、こうした情報を蓄積することで一般の個人の方々の行動を追跡したり監視したりするということができるのではないかという指摘もあるわけであります。
本法案が定めるように、機械的情報であって、サイバー攻撃に関係のある外内通信に限られるもので、かつ個人情報を非識別化したもののみを選別して利用するという、こうした場合に、こういう情報を蓄積することで、ストレートな聞き方になりますけれども、一般の個人の方々を監視することができるのか、お考えをお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/13
-
014・上沼紫野
○参考人(上沼紫野君) 御質問ありがとうございます。上沼の方からお答えをまずさせていただきます。
結論として、一般の方のその個人の行動を網羅的に追跡するということは難しいというふうに考えます。
その一つの理由は、今回対象となるものが外内通信ということでして、一方当事者の同意と言っているのが日本の国内の事業者の側の同意ですね。そうすると、相手側は国外になりますので、この通信によって一般個人のその行動を追跡するというのは非常に難しい、まずその通信の性質からですね。さらに、そこの部分が機械的だということになってきて、さらに、その機械的にするときに対象不正行為の可能性のところを鑑みて自動選別するということになってくると、一般的なその個人の行為を追跡するというのは非常に、その段階で結構落ちてしまいますので難しいというふうに考えます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/14
-
015・持永大
○参考人(持永大君) 御質問ありがとうございます。
個人を追跡できるのかというのは、まず選別後の情報なので、それはサイバー攻撃に関連している情報というふうに承知しておりますので、非常に難しいと。
例えば、サイバー攻撃に関連しているIPアドレスを事前に特定して、それらのIPアドレスの通信を丸ごと取ってこようみたいな話を懸念されるかとは思うんですけれども、まずその段階であっても、もしそのIPアドレスを監視しようとした場合には、サイバー通信情報監理委員会の方でそれは不適切な運用であるというふうにはねられるはずなので、今回のその法案の中で言われているような方式を使って個人の方を追跡するのは非常に難しいと言えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/15
-
016・山谷えり子
○山谷えり子君 次に、アクセス・無害化措置の国際的な評価についてお伺いしたいと思います。
政府は、本法案は国家安全保障戦略の掲げるサイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させるという目標を実現する上で不可欠と説明をしています。しかし、この目標分かりにくいという指摘もなされておりまして、特にアクセス・無害化措置については、そもそも諸外国のアクセス・無害化措置は、対外非公表の活動として行われており、詳細が明らかになっていないものが多いと政府が答弁をしております。
政府のやろうとしている措置が欧米主要国と比べてどうなのか、我が国を守る上で十分なものとなっているのか、必ずしも明らかになってはいないと思います。また、逆の面では、国外に所在する攻撃サーバー等に対するアクセス・無害化措置について、武力攻撃や先制攻撃とみなされる危険性はないのか、また、他国の主権侵害となり、国際法違反となるおそれはないのかといった懸念の声も示されてきております。
そこで、持永参考人にお伺いしたいんですが、政府のやろうとしているアクセス・無害化措置について、欧米主要国が行っている同種のサイバー攻撃対処と比較をした場合、これらと遜色のないものになっているのかということをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/16
-
017・持永大
○参考人(持永大君) 欧米主要国と遜色のない対応かどうかということなんですけれども、これは、今の見ている法案の中でいうと、欧米がやっていることというのに遜色ないことができそうではあると、制度上は。
それは、今まで政府の対処というのが、国内のかつ政府が管理しているコンピューターに対してのみ処置する、しかも被害が出た後に処置するということだったんですけれども、今回の法案では、政府が管理していない民間のコンピューターに対して被害が顕在化する前に対処できるという点で他国と遜色がないと言えます。
ただ、他国が、先ほど言われていたみたいに対外秘ということはちょっと違って、例えばアメリカの場合だと、先ほど言及した二四年一月のボルト・タイフーンの例では、実際にどういう対処をしたのかであったりとか、捜査令状を公開したりとか、それはアメリカの制度上、令状を取ってからやるという制度を彼らはつくっているのでそうなっているわけなんですけれども、そのときにでも、どういう対象のコンピューターに対してどれだけの期間実施して、その結果がどうであったかということをやって、透明性を確保して実施しています。
なので、欧米並みで遜色ないようにできるかどうかというのは今後の運用次第なんではないかなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/17
-
018・山谷えり子
○山谷えり子君 もう本当、今おっしゃった二〇二四年一月に米国政府が対処した中華人民共和国を背景とするボルト・タイフーンと呼ばれる組織による攻撃は、少なくとも五年間にわたって続いた、一方防御側は、兆候をつかんで対処するまでに二年半を費やしたと。これ本当に大変な難しさをはらんでいるというふうに、象徴的なケースであるというふうに思いまして、この課題はしっかりと受け止め続けていきたいというふうに思っております。
続きまして、酒井参考人、今と同じような質問なんですけれども、国際法の観点からタリン・マニュアル二・〇についても御説明いただきましたが、政府は、アクセス・無害化措置は、そもそも武力の行使と評価されるものではなく、武力攻撃や先制攻撃とみなされるものではない、また、国際法上許容される範囲で行うことは当然と答弁しております。
この国際法上許容される範囲、つまり違法性阻却が認められる範囲内で行うという考え方は国際的スタンダードに合致していると言えるのか。また、詳細は明らかになっていないとのことでありますけれども、外国ではアクセス・無害化措置の事例もあるようでありまして、こうした措置について、措置をされた国が国際法違反だと主張してきた事例などがあれば、併せてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/18
-
019・酒井啓亘
○参考人(酒井啓亘君) 御質問ありがとうございます。
まず、最初の方の御質問でございますけれども、国内法、失礼、国際法上許容される範囲というお話でしたけれども、先ほど御報告したとおり、アクセス・無害化措置については、そもそも合法だと、国際法上合法であるというふうに評価される場合もあれば、残念ながら、相手方の評価から見て違法と疑わしい場合というのももちろんあります。いずれにしても、諸外国の間、日本も含めてですけれども、国家間では、いかなる行為が域外管轄、執行管轄権の適用で主権侵害になるか、つまり国際違法行為になるかという点について、その基準自体は、どの国もこれは国際違法行為だということでは一致していると思います。そういう意味では、国際法の許容範囲というのはおおむね、抽象的には、一般論としては各国とも合意があるだろうと思います。
ただ、問題は、具体的に、じゃ、どの行為がその許容範囲に入るか入らないかという当てはめの問題でありまして、いかなる基準において執行管轄権の域外行使だというふうに見ているかとか、そういった点で各国にばらつきがある。その点で、国際法規則がやや不明確な部分がないわけではない。
本件の、本法案においては、むしろ日本政府の立場というのは、比較的多数の立場の、国家の立場に立って行動して、そしてこの法案を作っているわけでありますので、自信を持って国際社会でこれを主張していくということが、先ほど報告で申し上げたとおり、国際法規則を明確にしていく、そういった貢献をするものになるのではないかというふうに個人的には考えています。
それから、後半の御質問ですけれども、アクセス・無害化のような措置が外国によってとられて、そしてそれに対する国際法違反だという主張があったかどうかという御質問ですけれども、これはまず、私が知る限りは、明確にそういった違反ということを主張した例は存じ上げません。攻撃があったという、サイバー攻撃があったということで国際法違反だというふうに主張する場合はあるんですけれども、日本がこの法案で想定しているようなアクセス・無害化措置のような措置について、これは国際法違反だというふうに明言した例というのは、実際に事例があって明言したというのは私が知る限りはございません。
ただ、もしかしたら私が知らないだけであって、いろんなところで情報が共有されているのかもしれませんけれども、それはなぜかというと、やっぱり、もし仮にそれが国際法違反だというふうに主張する場合には、自らの領域においてそういう事例があったというふうなことを認めざるを得ないわけですね。それが、自己の領域の管理責任を問われる可能性があるだとか、ある意味自分の責任が国際法上問われる可能性があるということも一つの要因でしょうし、それから、そういった違法行為があったということを認めることによって自己の察知能力だとか対処能力というものを対外的には知られたくないということももしかしたらあるのかもしれません。
いずれにしても、余りそういった事例というのが顕在化していないということと私は承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/19
-
020・山谷えり子
○山谷えり子君 本当に、変化に応じた整理、対応、アップデートをしながら引き続き取り組んでいかなければならない課題かというふうに感じております。
続いて、上沼参考人に、有識者会議の委員でもいらっしゃいまして、サイバー通信情報監理委員会の実効性についてお伺いしたいと思います。
いわゆる三条委員会であるサイバー通信情報監理委員会は、審査や検査を通じて行政機関における法令遵守を確保し、制度の信頼性を確保していくという重要な役割を担うわけでありますが、この法案が成立した後、この委員会が実際に有効に機能していくということは非常に重要なことでありまして、どのようなことを重視すべきなのか。この内閣委員会におきましても、我が党自由民主党からは、委員会は、検査対象となる行政機関と一定の緊張関係を保ちつつも、同時に信頼される存在となることが必要と指摘しました。政府からも検査を受ける行政機関との信頼関係が必要になるとの答弁があったところでありますけれども、上沼参考人の御意見、御見解、お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/20
-
021・上沼紫野
○参考人(上沼紫野君) 御質問ありがとうございます。
信頼関係に関してはおっしゃるとおりだと思います。独立性がある機関ということは孤高を保つ機関と同義ではありませんので、独立性を保ちつつ、かつ、その重要な部分について円滑なコミュニケーションがなされなければ、この専門的な分野におけるその独立機関の有効性は確保できないというふうに思っております。
あと、もう一つ付け加えるとするならば、実効性のためには実際のその人的リソースが必要でして、それなりの組織が絶対必要ではないかというふうに考えておりますので、その独立性とふだんのコミュニケーションと人的なリソースというのが実効性を確保するために必要ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/21
-
022・山谷えり子
○山谷えり子君 続いて、また上沼参考人にお願いいたします。
この委員会でもいろいろなやり取りがあったんですけれども、今回の法案では、基幹インフラ事業者へのサイバー攻撃について、アクシデントになる一歩手前のインシデントについても報告を求めるということになっていますけれども、基準が曖昧だと報告側に過度な負担を掛けてしまうということにもなろうかと思います。具体的な報告基準を作成するに当たりましてどのような点に留意すべきとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/22
-
023・和田政宗
○委員長(和田政宗君) あっ、挙手を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/23
-
024・上沼紫野
○参考人(上沼紫野君) ありがとうございます。ちょっと焦っちゃいました。
必要な点については、まず事前の関係事業者からの情報収集が必要かなというふうに考えています。そうでないと、実際の民間、民間というか事業者が必要だと考えているところと政府側で考えているところがずれる可能性があって、そのずれが恐らく一番の負担になってくるんですね。なので、そこを事前によくすり合わせをした上で、かつ、その一元的な報告というのが必要だと、一番重要ではないかというふうに考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/24
-
025・山谷えり子
○山谷えり子君 続きまして、もう一度上沼参考人に、やはり内閣委員会でやり取りがあったんですけれども、中小企業対策についてであります。
デジタル化の進展や地政学リスクの高まり等に伴いましてサイバーリスクが高まっていることを踏まえますと、基幹インフラ事業者にとどまらず、一般の民間企業や地域の中小企業など産業界全体のサイバーセキュリティー対策の強化に向けた取組が重要と考えます。しかし、中小企業からは何をしていいか分からないという声も聞くわけでございまして、政府はサイバーセキュリティお助け隊サービスなどに取り組んでいるところではありますけれども、まだ余り知られていないということもあります。更に強化すべき取組、そしてまた課題についてお考えがあれば教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/25
-
026・上沼紫野
○参考人(上沼紫野君) サイバーセキュリティお助け隊なんですけど、非常に良い取組だと思うんですが、残念なことによく知られていなくて、そういう意味で、必要な制度が、広報がきちんと届いているというのは極めて重要ではないかなというふうに考えました。それがまず一点目ですね。
あと、二点目に関して言うと、中小企業に対してそのサイバーセキュリティーという言葉自体が極めて高度だというふうに思ってしまい、何となく一〇〇%できないとやっても意味がないという諦めの境地になりがちだと思うんですね。ただ、実際に必要なことは割ともっと基礎的なところで、そこまで高いものがなくても効果があるんだということをやはりきちんと普及啓発していくということがその中小企業対策として重要ではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/26
-
027・山谷えり子
○山谷えり子君 持永参考人にお伺いいたします。
大学で実際に教鞭を執られている中で、人材育成についてますます必要であるということをおっしゃられました。そして、今、意見陳述の中でも人材への投資も含めておっしゃっていただきましたけれども、最後に改めまして、この人材育成、人材投資への強化についてお考えがあれば。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/27
-
028・持永大
○参考人(持永大君) ありがとうございます。
人材育成を結構やろうというのは実は日本政府の中でももう十年以上続けてきているところでありまして、例えば総務省の情報通信研究機構であったりとか様々なところで人材育成について話が出るんですけれども、やはり他国と比較して総額が小さいであったりとかインパクトが小さいというのが原因だと思います。例えば、今年度、科学技術振興機構、科研費と呼ばれる、研究費の中で呼ばれているものがあるんですけれども、それ、大学の中で、大学の研究者とかを対象にした研究分野で情報セキュリティーに関する研究は三十六件なんですね。非常に少ないんです。
そういったことを考えても、やっぱり件数も少ないし、一つ一つの規模も小さいし、やっぱりそういったところが裾野の狭さみたいなものを生んでいて、であれば、やはりちょっと失敗を許容してばらまいて、もう少しいろんなことをやってみると、しばらくしたら、関係ないことでもほかの分野で芽が出るかもしれないしといった、ちょっと非常に、こう言うのは何ですけど、もっとばらまきをやってほしいというのが教育機関にいる者としては思う次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/28
-
029・山谷えり子
○山谷えり子君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/29
-
030・鬼木誠
○鬼木誠君 立憲民主・社民・無所属の鬼木誠と申します。
今日は、貴重な御意見いただきまして、本当にありがとうございました。
そしたら、まずは齋藤参考人にお尋ねをしたいというふうに思います。
御意見の中にもあったように、私自身も今回の法案については、不特定多数の通信情報を本人の了解のないまま国が取得をするということを定める、そういうつくりになっている、したがって、極めて高い公益性があるんだということを理由にして、通信の秘密というものが、部分的ではあれ、制約をされたり侵害をされたりするケースが出てくるんではないかという懸念がやっぱり払拭できないというところが私自身の思いでございます。だからこそ、制度設計の段階で極めて抑制的に、極力抑制的にこの制度を構築していかなければならないし、運用についても厳密に厳密に行っていかなければならない。
そういう問題意識や観点から、今日も、齋藤参考人からは四つの懸念点ということでのお話がありました。ただ、時間の関係で最後の懸念点については御報告いただけなかったので、まずはこの第四の課題、問題点について是非お聞かせをいただけませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/30
-
031・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
第四の緊急避難法理と無害化措置の関係でございます。資料の四ページですけれども、これ、専門家の先生がいる前でこういう話をするのは非常に恥ずかしいんですけれども、しかし、ICJの判決なんかでも、急迫性の要件について、即時性とか直前性とか、そこまで言わないにしても、危険の現実化が確実かつ必然であるというようなことが緊急避難法理の要件として言われているわけですね。
ところが、政府の方が言っているのが、いつでもサイバー攻撃が敢行されてもおかしくないという状況にあるとき、例えば、マルウェアの感染を発見し、いまだ発動していないけれども、C2サーバーと定期的に通信を行っていることが認められるため攻撃者の意図次第でいつでもサイバー攻撃が行われると認められる場合というふうに、かなり緩めに御説明されているということでして、これでは緊急避難法理の要件を満たさない場合にまで無害化措置がなされてしまうのではないかということを心配しているわけでございます。
やはり、もちろんそれなりの専門的知識のある方がやるにしても、警察官が、現場の警察官が権限を行使するという場合に、警職法にきちんと要件を書き込んでいなければ、国際法上、後日非難されるようなことをやってしまう危険性があるのではないかということを憂えているところでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/31
-
032・鬼木誠
○鬼木誠君 いずれの課題についても、参考人の方から御指摘をいただいているのは、真に必要性というものがあるのかどうかということと、この方法しかないのかというようなことについて、政府のこの間の答弁や制度の作り付けの中ではそのことがきっちり書かれていない、明確になっていないのではないかというようなことだと思います。
その上で、今日御指摘をいただいた懸念点を含めまして、最もやっぱりこの法案でここが課題なんだ、問題なんだということと、それから、この部分をやっぱり改善をして修正をしていくということがやっぱり最低限必要なんだということについて、改めて、一つに絞って恐縮なんですけれども、ありましたら是非教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/32
-
033・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
やはり今回の法案の一番問題なのは当事者協定だろうと思っております。ほかの通信情報の利用についてはそれなりの具体的な必要性というのが要件となっているけれども、当事者協定については全く具体的な必要性が要件となっていない。そして、出口、今のは入口の話ですけど、出口についても何に使ってもいいと、少なくとも、同意があれば何に使ってもいいという話になっている。
これではやはり、市民の通信の秘密は非常に危険にさらされるということになっておりますので、やはり当事者協定に基づく通信情報の利用については要件をもうちょっと厳密にする、そして目的制限をきちんと設ける、これが必要だろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/33
-
034・鬼木誠
○鬼木誠君 ありがとうございました。
目的外利用については前回の委員会の中で石垣委員からも厳しく指摘がされたところでございまして、やっぱり目的外利用そのものについてやめるべきだということを原則にしながら、せめて法文にその目的、いわゆる限定列挙でですね、止めるべきだというようなことも指摘をさせていただいているところでございますので、同じ問題意識だということを改めて私の方からも表明しておきたいというふうに思います。
次に、持永参考人にお話をお伺いしたいと思います。
今日もお話の中でありましたし、お書きになった文章についても拝読をさせていただきました。その中で一つ、サイバー攻撃に対する情報共有の受皿はたくさんあるけれども、情報分析結果の共有が進んでいない、今日もお話の中であったと思います、そういう御指摘がされていました。
その例示として、警察が捜査情報を他の機関と共有することはまれだというようなことが指摘をされている。その上で、サイバー攻撃に関する情報の分析あるいはインテリジェンスの共有という観点から見ると、他のインテリジェンス組織との共有や分析に進む段階がうまく機能していないということについても指摘をされているところでございます。
その原因はどこにあるというふうにお考えになっているのかということと、今回の法案が成立をする中で、御指摘いただいたような情報の共有であるとか分析の共有であるとかいうことが前に進むのかと、克服のための一歩になるのかということについて御見解をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/34
-
035・持永大
○参考人(持永大君) 御質問ありがとうございます。
情報共有がうまく進まない原因としては、やはり、これは政府の報告書の中でも何度か言われているんですけれども、組織の縦割りというのが非常に問題だと。これは二〇一三年ぐらいからずっと言われていて、そういった政府の報告書で自身が言っているにもかかわらず、やはりその数字を見ても件数が少ないという状況を見れば、やはりそういった問題は解消していないと。やはり、この法案が出てきたのは、そういった状況を変えようということで、新たに内閣官房に組織をつくって、新たな組織の下でやっていこうということだと認識しています。
根本的な原因がそこで新しい組織ができたからって解消されるのかというのは、本当にこの法律ができて運用されてみて、民間事業者からそういった組織がどう評価を受けるかというところで決まってくるのだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/35
-
036・鬼木誠
○鬼木誠君 ありがとうございました。
もう一点、持永参考人にお尋ねをしたいんですけれども、先ほど中小企業に対するセキュリティーの強靱化のお話についてございました。同じような問いになって恐縮なんですけれども、今度は持永参考人に、中小企業セキュリティーの強靱化のためのサポートあるいは費用等々について、先ほども御指摘がありましたけれども、今経産省が行っているものだけでは僕は不十分だというふうに思っています。
持永参考人から見たときに、サイバーセキュリティー全体のサイバーセキュリティーの高度化に取り組むためには、中小企業に対してより具体的な支援としてどのような支援が必要であるというふうにお考えになっているのかという点を是非お聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/36
-
037・持永大
○参考人(持永大君) ありがとうございます。
中小企業に関しては、長い間こちらも、私も実際に町工場の方に、最近パソコン使っていますかみたいな形で、ソフトウェア使っていますかみたいな感じで、うちはインターネットつながっていないから大丈夫だよみたいな、そういう感じで来るんですけど、実際にはインターネットにつながっていなくてもサイバー攻撃を受ける可能性はあって、そういったことというのは、重要インフラで例えばやられているような対策でも、やはりインターネットから切り離していればオーケーとかそういうものではないということが今の現状なんです。
そういった認識をやはり中小企業の方に持っていただくというのが第一で、それがうまく機能するかというと、やはり中小企業の方にとってみれば、追加の作業を、セキュリティー対策取れよみたいな感じで、多分お金をあげてもどうやってお金使っていいか分からなくて、何というんですか、自分たちが関係している会社に、じゃ、セキュリティー対策やっておいてみたいな感じで契約、委託されたりとかするんですけれども、またその委託先がセキュリティーのことで分かっていないみたいなことが連鎖的につながっていくので、例えば、よくある元請側から下請側にセキュリティー契約条項を課すときには追加のお金を積むこと、監査を受けることみたいな制度をつくるとうまくいくんではないかなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/37
-
038・鬼木誠
○鬼木誠君 ありがとうございました。サプライチェーン全体でサイバーセキュリティー強度をどう上げていくかという観点からの御回答、御指摘だったというふうに思います。
それからもう一つ、人材育成、これも持永参考人なんですけれども、人材育成に関して、先ほどもこれも御指摘あったところでございますけれども、とりわけ今日の持永参考人のお話の中で、やっぱり国としてもっともっと人に投資をすべきだというお話と併せて、給与制度等を含めた公務員制度の見直しというような観点からの御指摘もいただいただろうというふうに思います。
一つ、政府の人材確保という観点では、御回答になった、御指摘になった御意見の中でいろいろな御示唆いただいたところでございますけれども、地方公共団体のサイバーセキュリティー人材の確保ということについては、政府、国よりもかなり厳しいなというふうに思っています。
この地方公共団体のサイバーセキュリティー強化に関わる人材の育成について、とりわけ確保についてですね、育成よりも、について、やっぱり国との連携とか国からの支援ということが確実に必要だというふうに思うんですけれども、それも含めて、どのような形で地方公共団体の人材を確保し、育成をしていくのかということで、是非御見解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/38
-
039・持永大
○参考人(持永大君) ありがとうございます。
地方公共団体の方も、非常に先進的な取組をされている方がいる一方で、全然やっぱり人がいなくてできないという方もいらっしゃると。その中で、やっぱり困っているのは、昔からある情報システムをどうやってセキュリティー対策したらいいんだろうみたいなことを考えられる人がいないというところで、やはり国の方でシステムをまた、何というんですかね、一からつくるというのはちょっと言い過ぎなんですけれども、うまくセキュリティーが回るようなシステムとして、その地方公共団体にシステムを提供するということをした方がいいと思うんです。
というのは、地方公共団体は、もうシステム更新のお金がなくて、古いシステムを使って、それがサイバー攻撃を受けてやられちゃうみたいな、そういうパターンもあるので、できれば国側としては、そのセキュリティー対策やれよと言うだけではなくて、実際にそのシステムを国側でも提供をして、それにセキュリティー対策をするみたいな形で、地方に追加的な予算を掛けなくても提供できるような手段というのは幾つかあると思います。例えばクラウド利用とか、そういった政府がクラウド基盤を提供するみたいなところも一つの手段ではないかなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/39
-
040・鬼木誠
○鬼木誠君 御回答いただいた新たなシステムの関係については、今、標準化であるとか、それからガバメントクラウドの課題であるとか、国の政策に基づいて地方公共団体も前に進めようとしているところではあるんですけれども、これなかなかやっぱり進まないんですね、予算の面と人の面というところがあって。ただ、おっしゃっていただいたように、そのことが単に業務の効率化を図るという観点からだけではなくてセキュリティーという観点からも重要、必要なんだということで、必要な予算を投じるべきだということについてはしっかり参考にさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
引き続いて、酒井参考人に、これちょっと具体的なお話になって恐縮なんですけれども、この法律をよく読んでいくと、いわゆる対外、外国との関係でこれをどう理解すればいいのかなと、よく分からないところがあるんですね。
一つ、在日米軍が使用する電子計算機に対するサイバー攻撃の関係。これについては、法律読む限りでは、米軍から要請があったときにはというようなことで、日本がやってもいいよというようなことになっている、自衛隊がアクセス・無害化措置を行うことができるというふうに読めるんですけれども、これ、タリン・マニュアルの二・〇ということから見ると、違法性阻却事由として対抗措置が認められているというふうには思うんですが、それは被害国のみがその性質上、サイバーであるか否かを問わず、対抗措置をとることができるというふうになっているのかなと。
直接被害を受けていない日本が、在日米軍の電子計算機がサイバー攻撃を受けたときに、要請があったとはいえ、それを実施することが可能なのかどうかということがよく分かっていない。この点、どういうふうに理解をすればいいかというのを是非教えていただきたいなと思うんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/40
-
041・酒井啓亘
○参考人(酒井啓亘君) 御質問ありがとうございます。
まず、その在日米軍のサーバー等が攻撃にさらされるという状況を考えた場合に、そのサーバーどこにあるのかということも問題になると思います。例えばそれが日本国内に置かれているということであれば、そこに至るアクセス、相手側からのですね、攻撃側からのアクセスというのは、これは当然日本の主権侵害行為に当たる可能性が出てくるということになるんだろうと思うんですね。そういう意味では、被害国という概念をリジッドに考えても、その場合には日本も含まれるということになるんだろうと思います。
他方、例えばその米軍、在日米軍のサーバー等々が日本の領域外に所在するといった場合にでも、じゃ、日本に対して自衛隊に要請があって、それが何らかの措置を求めるということがあるかどうか、これはそのときになってみないとちょっと分からないんですけれども。今申し上げた限りでいうと、日本に直接確かに被害が生じるわけではないわけです。そうだとすると、日本が自らの法益が侵害されたということを理由にして対抗措置だとかあるいは緊急状態だとかというような法理で違法な行為を行っても阻却される、正当化されるということはなかなか難しいかもしれないと。
ですので、ただ、そのサーバーの位置付けというのはどこにあるのかというのが瞬時にあるいは正確に分かるかどうかというのはなかなか難しいところじゃないかというふうには思います。私その辺は門外漢なので、もしかしたらそれは正確に読み取れるということもあるのかもしれませんけれども、しかし、一応、国際法の観点から見ると、領域内か領域外かという点はやっぱり大きな違いが法理的には出てくるだろうと。まずはその点を分けて考えていく必要があるんじゃないかというふうには今の御質問としては答えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/41
-
042・鬼木誠
○鬼木誠君 ありがとうございました。
難しいんですよね。考えれば考えるほどいろんなケースが想定をされて、そのケースごとに要請が阻却できるかどうかという判断が恐らく出てくるんではないかなと思うんです。その判断をその時々によって瞬時に行っていくということが本当に可能なんだろうかということが非常に疑問に思っていまして、そこも含めて、今後やっぱり審議の中でしっかりと追及をして政府の見解求めていきたいなというふうに改めて思いました。
もう一点、外外通信の関係について、酒井参考人に続いてお尋ねをしたいと思います。
今回の法案の中では、監理委員会の承認を受けて、海底ケーブルを通じて送受信される海外通信の情報のコピーというものを政府のサーバーに送信、保存することを可能とするというような中身になっている。
この他国のサーバー等から情報をコピーをするという措置について、これは国際法上、何というんでしょうね、例えば他国から窃取するというようなことで指摘をされるというようなおそれはないのかというようなことについて是非教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/42
-
043・酒井啓亘
○参考人(酒井啓亘君) 御質問ありがとうございます。
そのコピーの対象となるものが何かによって評価が変わってくるように思います。もちろん、個人情報データというものがコピーされるということであれば、それは、どういう目的かにもよりますけれども、本法案で考えられていることであれば、やはりそれは域外執行措置、執行管轄権の適用ということで、相手方の考え方次第ではありますけれども、相手国にとっての主権侵害行為になり得るということだろうと思います。
ただ、報告の中でも申し上げたとおり、サイバー空間を通じたそういった諜報活動だとか、あるいは部分的にその情報にアクセスするというようなことも、国によってはそれは執行管轄権の行使ではないのだというふうに理解をする国、イギリスなんかはそうだと思いますけれども、ありますので、そういった国との関係では、同じ措置であっても国際法上合法な行為だというふうにこちらは主張することができるということになります。
要するに、二国間の関係で相手方がどういうその法理に基づいて日本側の措置を合法とするか違法とするかによってこちら側も対応が変わってくるということになります。措置によって侵害される法益だとかあるいは被害だとか、そういったようなものとの勘案ということもありますけれども、一番大きいのは、やはり相手方がその主権侵害行為をどういうふうなものとして捉えているのか、それに応じた対応がこちら側が必要だということだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/43
-
044・鬼木誠
○鬼木誠君 ありがとうございました。
やっぱり、国際的な共通ルールというものがまだ未確立だというようなことで、おっしゃったように、相手方がどう捉えるかというところで変わってくるということだと思うんですね。だから、やっぱり早急な国際的な共通ルールが必要だというふうに思いますけれども、その共通ルールが確立する前の今の段階でのこの法律が危険性をはらむといいますか、いうものであるというようなことについては、改めてお話を聞いても、やっぱりちょっと危ないところあるなというふうに思ったところでございます。
今日は参考になりました。ありがとうございました。
質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/44
-
045・竹谷とし子
○竹谷とし子君 公明党の竹谷とし子でございます。
四人の先生方、大変参考になるお話をありがとうございます。
まず、持永参考人に幾つかお伺いしたいと思います。
今日のお話の中でもありましたけれども、横断的な情報収集、分析と円滑な対処という観点で、事前にいただいた先生の書物等も学ばせていただいた中で、やはり我が国のこの体制というのが例えばアメリカと比較した場合に非常に規模が小さいという、そういう御指摘がございました。例えば、二〇一八年時点のNISCが他省庁や民間企業からの出向者を含め百九十一名体制であった、米国の類似組織と比較すると、国家サイバー長官室の最大七十五名、サイバーセキュリティー社会基盤安全保障庁の二〇二三年時点での三千百六十一名と比べて大幅に小規模であるという、そういう御指摘をいただいております。
規模だけではなくて、もちろん中の機能というものが一番重要ではあると思いますけれども、この規模感ということについて、この政府の体制、自衛隊、また警察も含めた、そうした省庁、また総務省もあると思いますし、デジタル庁もありますけれども、その体制規模と、また米国の類似組織と比較をした視点から、規模、また機能について、改善すべき点について忌憚のない御意見をいただければというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/45
-
046・持永大
○参考人(持永大君) ありがとうございます。
私の意見として、日本がアメリカと同等の規模を持つべきかと言われれば、それは私は違うというのが意見です。というのは、アメリカとは、例えば、GDPの規模でいっても違うし、持っているもの、土地の広さであったりとか範囲も違う、見ている範囲も違うわけなので、全く同じものでは、レベルではないとはいえど、今の状況からすれば、少なくとももう少し拡大する必要があるだろうと。
よく私がやるのは、その組織的な分析というときに、そのカウンターパートはどこの組織なんだろうというふうに見ていくんですけれども、今、例えば、内閣サイバーセキュリティセンターのカウンターパートであるような米国のサイバーセキュリティー・インフラストラクチャー・セキュリティー・エージェンシーというところは数千人規模でいると。中身を見てみると、機能的に見ると、ほぼほぼ同じ、重要インフラを守りましょうであったりとか、情報共有をしましょうというところではあるんですけれども、やっぱりそこにひも付いているのは、技術者がたくさんいるというところなんですね、機能的な部分とすれば。
例えば、法律職であったりとか経済職であったりとか、様々に国家公務員の方いらっしゃると思うんですけれども、やはり内閣サイバーセキュリティセンターは、基本が省庁からの出向者から出てきている方で、プロパーでそこの中で長くサイバー分野のキャリアをやった方がいらっしゃらないと。すなわち、何となくそういうふうにいろんな省庁をまたいだ連携体制みたいな側面からすると今の体制はいいのかもしれないんですけれども、本当に分析力であったりとかそういったものが必要なときには、もっとその公の職場の中に研究者、まあ研究者という言い方が適切かも分からないんですけれども、技術を持った方がいらっしゃることが必要だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/46
-
047・竹谷とし子
○竹谷とし子君 ありがとうございます。
本当に、法律を作ったとしても、やはりそれを運用できるような人材がいなければ、絵に描いた餅といいますか、全く意味をなさないということになってしまいますので、先生の最後の科学技術・人材への投資というところが、山谷先生からも言及ありましたけれども、大変重要な部分ではないかというふうに思っております。
プロパーから育てていくということも必要だというふうに思います。先生今おっしゃったように、研究者というか、その技術を持った人ということでありますので、必要な知識やまた経験をプロパーで入っていただいて身に付けていくという場合に、誰かに習わなければいけないというふうに思います。そうしたときに、やはり先行する他国なのか、あるいは先行する民間企業でも、私もサイバーセキュリティーの専門の人材がいらっしゃるそういう会社に視察もさせていただいたことがあるんですけれども、その民間企業の知見を仰ぐとか、やっぱり教える人、指導する人が最初はいなければいけないというふうに思うんですけれども、それにふさわしい人が日本にいるのか、あるいはいなければ他国に支援をしていただく必要があると思うんですけれども、その辺についても御意見を伺えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/47
-
048・持永大
○参考人(持永大君) ありがとうございます。
まさにおっしゃるとおりで、誰からそういったスキルを学ぶのかというのが非常に重要だと思います。現状では、思い切ったことをやろうとすると不正アクセス禁止法に抵触するので、余り思い切ったことは誰もできないというのが日本の現状ではあります。ただ、そうではあっても、やはり守る側の立場の技術を高めようとするのは、非常に技術的なコミュニティーの方もいらっしゃいますし、政府の方でも幾つか取組をされているので、そういったところで技術を養成することはもちろん今可能ではあると思います。
今回の例えばアクセス・無害化みたいなのに関わるような技術は誰から教えてもらったらいいですかといったところで、多分そういうことができるのは国内でも結構限られた人であるというふうには認識をしています。特に、私は、アクセス・無害化は、非常に技術的にどうその権利保護であったりとかそういったことを認識しながらできるかどうかが鍵になっていると思いますので、そういった技術を習えるのが他国なのか、国内なのか、若しくは自分たちで一から日本の法律に合わせてつくっていかなきゃいけないのかということを考えても、非常に難しいことだなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/48
-
049・竹谷とし子
○竹谷とし子君 先生をもってしてもやはり難しいことだということなので、これよくしっかり考えていかなければいけないことなんだなというのをよく今も認識をさせていただきました。大変重要な御意見であったというふうに思います。ありがとうございます。
それから、幾つも重要なことを御指摘をいただいたんですけれども、やはりサイバーの世界は国境がないので、国際連携を想定した運用にするべきだということ、本当におっしゃるとおりだというふうに思います。また、今のお話とも関係しますけれども、やはり官だけではなくて民も連携をするということが大変重要だというふうに思います。
先生のお話の中でも、この情報共有ということについて民間をよく活用していった方がいいということで、重要インフラ事業者とNISC間での共有件数を先生の書籍でも、書物でも三桁単位ぐらいの数であるというのに対して、JPCERT/CCが受け付けたインシデント報告、調整件数というのは、報告件数が六万件以上、調整件数で二万件近くということで、本当にそちらの方の情報等をしっかりと連携をさせていただくことが大変重要なんだというふうにこの数字を見た限りでも思いましたけれども。
今この共有をしようというときに、何かこの阻害要因みたいなものが政府の中にあるか、それを改善をしていくにはどのようにしていったらいいのかということについて何か御示唆があれば教えていただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/49
-
050・持永大
○参考人(持永大君) ありがとうございます。
情報共有の阻害要因としてよく民間事業者の方から伺っていた話は、やはりその監督官庁に自分のところでサイバーセキュリティーインシデントが起きましたと報告するのをすごい嫌がるというのは、それは後で行政指導につながるかもしれないということもあるので、非常に慎重にならざるを得ないと。一方で、そのJPCERTコーディネーションセンターに報告しても別にそういった罰則があるわけでもないしというところで、むしろどうやって対処すればいいかとすぐ教えてくれるというのでその件数になっているわけなんです。
なので、もし今後、政府の方で情報を例えばインシデント報告しなさいよみたいな義務をつくるときには、あくまでその報告だけであって、そういった罰則につながるようなことではないので、むしろ報告することがインセンティブになるというような制度づくりが今後必要だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/50
-
051・竹谷とし子
○竹谷とし子君 とても的確な御指摘をいただいたというふうに思います。ありがとうございます。
先生にもう一点だけ伺いたいんですけれども、今日いただいた資料の一ページ目のところにありましたけれども、サイバー攻撃の洗練化と防御の限界というところの限界のところに関係するんだと思うんですけれども、現状の対処にはコストと網羅性の限界がありますというお話がありました。防御側が全方位の守りを固めることは高コストであり、網羅的かつ完璧な対策は難しいというのが本当にそうだというふうに思っておりまして、特に重要インフラにつながっている中小企業の対策というのが、大手の企業に比べるとやはりコスト的な問題、また人材的な問題もあって非常に脆弱であるということを指摘を受けております。
こちらでも、悪用されているコンピューターの修復を管理者の自主的な行動に委ねている点ということで具体的に御指摘もいただいておりますけれども、この中小企業のセキュリティー対策というものについて、政府としてどのような支援をしていくべきかということについても何かあれば教えていただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/51
-
052・持永大
○参考人(持永大君) ありがとうございます。
中小企業対策は、先ほどもちょっと申し上げたんですけれども、非常に発注元と発注を受ける側としての関係性は非常に強くて、発注元から追加でセキュリティー対策をしてくださいねといったときに、やはりその追加料金なしでセキュリティー対策してくださいということが多いと。というのは、元々のその下見積りの段階で得られるのは成果品に対してのみ見積りをしているので、そういった追加対策をすることの費用が含まれていないということで、発注元に対して例えばセキュリティー対策の費用を上乗せするような制度をつくったりとか、そういったことを契約条項に盛り込むようにしたりとかというのが、国が直接支援、お金をあげて支援するよりもずっと効果的であると。というのは、委託元から、委託元の管理責任としてその下請の人が例えば責任を負うようなことにもなりかねないので、できるだけその対策を求めるのであれば、それに追加の費用を元請側から払ってくださいというようなことが必要だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/52
-
053・竹谷とし子
○竹谷とし子君 大変にありがとうございます。参考になりました。
続いて、上沼先生にお伺いしたいというふうに思います。
事前また事後的、事前の規制及び事後的是正手段ということで、今日御説明、配付いただきました資料の十一ページ、十二ページ、十三ページにあるところでございますけれども、この独立機関による監視、これが事前、事後で非常に重要なものだというふうに考えておりますけれども、こちら、どのような機能、また規模感とかですね、もし先生のイメージがあれば御参考までにお伺いできればというふうに思います。
また、この独立機関、実施、運用する機関にも人材は必要だと思うんですけれども、独立機関でもやはりそれ相応の人材が必要だというふうに思います。また、規模感といったときに、どういう仕組みをつくるかによってどれぐらいの規模感になるかというのも変わってくるというふうに思います。できるだけ効率化していくための仕組みといったようなものについても何か御示唆があれば伺いたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/53
-
054・上沼紫野
○参考人(上沼紫野君) 御質問ありがとうございます。
おっしゃるとおり、独立機関であっても人材は必要でして、人材がないと監視の実が上がらないので、それをするための最低限の人材が必要だというふうに考えています。それを考えると、規模感ちょっとどのくらいかというのは難しいんですけれども、今、三条委員会、日本で行われているものだと、やっぱり最近だと個人情報保護委員会があると思うんですが、個人情報保護委員会のレベルぐらいはあってもいいかなと個人的には思います。というのは、行わなければいけないその対象行為がどんどん今後高度化していくと思うんですね。それを考えると、それなりの人材がやはりいなくてはいけないというふうになりますので、そのぐらいは個人的にはあってほしいなというふうに思っているところです。
機能としての実効性のためというところは、できれば、やっぱりいろんなところで日本の行政のその作業って重複しちゃっていると思うんですね。それをなるべくデジタル化することで重複を避けるということで大分できるんじゃないかなと。例えば、本当卑近な例で申し訳ないんですけれども、要するに、例えば日程調整とかそういうの、単純なことに関しても、極めていろんなところで同じようなことをしているとかということがあると思うんです。そういう一つ一つのことが結果として積み重なって時間使ってしまったり遅れにつながったりしてしまいますので、そういうところを、何せサイバーセキュリティー対策なので、デジタル化によってその一元化、機能化というのを図るというのは是非していただければなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/54
-
055・竹谷とし子
○竹谷とし子君 ありがとうございます。
今のこの独立機関による監視ということで、不当な侵害発生を防ぐための措置でありますが、こちら、齋藤参考人にもこちらの独立機関による監視に求める機能についてお伺いできればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/55
-
056・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
機能ということですけれども、的確にその機能を発揮するということにつきましては、やはりある程度、どういう場合にどういう判断をするんだということが事前に予測できるということが必要なんだろうと思うんですよね。
これ、例えば、じゃ、事後承認になるケースが結構多くなるんじゃないかみたいな議論も結構ありましたけれども、もちろんその個別のケースごとに判断していかざるを得ないんだと思うんですけど、いろんな承認をする場合に。ただ、そうはいっても、じゃ、どういう場合に承認できるのか、どういう場合に緊急避難の要件を満たして承認できるのかできないのかみたいなケーススタディーみたいなものをきっちりやっていくことが非常に大事なんだろうと思うんですね。本来はそれは国会で審議できれば一番いいんですけれども、それができないとしても、やはり内部で、こういう場合には承認できそう、できなそうみたいなケースをなるべく研究していく、できればそれはできる範囲で公表していく、そういうことで機能が割と効率的に発揮できるようになるんではないかなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/56
-
057・竹谷とし子
○竹谷とし子君 ありがとうございます。
ちょっと時間がなくなってしまって、酒井先生にお伺いすることができなくて申し訳ございません。
終わらせていただきます。ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/57
-
058・片山大介
○片山大介君 日本維新の会の片山大介です。
私は、まず、通信の秘密、齋藤先生が言われた通信の秘密について少し聞いていきたいと思います。
齋藤先生は、当事者協定が一番の問題で、これは通信の自由を侵害しているという問題提起をされました。それで、先生は、必要性を裏付ける事情はこの要件とされていない、ここが問題だとおっしゃったと思います。そうすると、これ、必要性を裏付ける事情がない限り、逆に言えば、あればこれは結んでもよいというお考えなのかということをちょっと逆説的にまずお伺いしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/58
-
059・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
おっしゃるとおりで、もちろんそこの具体的な必要性を要件として設けるということになれば、その点について憲法違反、通信の秘密侵害という問題はなくなるんだろうと思うんです。
ただ、当事者協定の問題についてはそれだけじゃなくて、今のは入口の話なんですけど、出口で目的外利用が自由にできちゃうという問題があるんで、そこがやはり放置されているとやはり認められないんじゃないかなと思っています。ただ、入口の問題に関しては、おっしゃるとおり、そこの具体的な必要性というのが要件になれば、少なくとも通信の秘密との関係はクリアできる可能性はあるんだろうと思っております。(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/59
-
060・和田政宗
○委員長(和田政宗君) 挙手をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/60
-
061・片山大介
○片山大介君 出口の、二十三でもちょっと後でお伺いしたいと思っています。
次に、上沼先生と、あと酒井先生に聞きたいんですが、ここで今、齋藤先生が言われたこの当事者協定が通信の自由を侵害しているのではないかというお考えに対して、例えば上沼先生は、これ、イラストで、てんびんに掛けて、必要性、実現しようとする利益の大切さにおいてはそれは可能なんだとおっしゃったんですが、ここのお考えについて、齋藤先生の御主張について、それぞれ、酒井先生とそれぞれお伺いしたいと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/61
-
062・上沼紫野
○参考人(上沼紫野君) 御質問ありがとうございます。
通信の秘密に関しては、その当事者が同意をしていれば秘密ではないというのが原則的な考え方ではあるので、それを原則にするのであれば、同意があるんだったらそこはある程度柔軟に対応できるというのがその通信の秘密の重要性を考えるときの出発点なのかなというふうに思っています。
齋藤参考人がおっしゃる懸念も分からなくもないんですけど、ただ、本法案について言うと、やはり、その当事者の同意で対応できる、じゃなくて、取る情報が内外、外内通信ですので、それを考えると、その国内の側の通信の相手方当事者というのが国内の個人って考えにくいわけなんですよね。それを考えるのであれば、本件について、今までの通信の秘密について当事者の同意があればそこはいいんじゃないかというベースの考え方でいけるんじゃないかなというふうに思っています。
あともう一点付け加えるのであれば、通信の秘密に関する同意は包括的な同意ではありませんので、具体的な同意なので、そういう意味でいうと、どういうふうに使いますっていうことも含めて同意を取るというようなことで考えておりますので、そうすると、その自分の全く知らないところで勝手に使われる、通信がっていうことにはちょっとなりにくいんではないかなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/62
-
063・酒井啓亘
○参考人(酒井啓亘君) ありがとうございます。
もう国内法での緻密な議論というのは積み重なっていると思いますので、国際法の側から言えることというのはそれほどないんですけれども、ただ一点、参考までに申し上げますと、例えば、日本も批准しております自由権規約という国際条約ありますけれども、そこの十七条に通信の秘密に関する規定があります。ただ、この規定というのは、六条だったかな、四条ですね、申し訳ないです、同じ自由権規約の四条で、公の非常事態においては権利が停止されるそのカテゴリーに入っているんですね。つまり、そのバランスという意味で言えば、公の秩序の維持のために一定程度通信の秘密というのが権利として停止されてもやむを得ないという状況が条約上認められているということになるかと思います。これは、生存権とか、そういった停止が認められない権利とは性質を異にするものだという考えの下にそういう立て付けになっているんだろうというふうに思いますけれども、国際法の側からは、今申し上げたように、一定の条件の下で、やはり通信の秘密というものが制限を受けてもこれはやむを得ないのだということでは各国とも合意が取れているということを参考までに申し上げたいというふうに思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/63
-
064・片山大介
○片山大介君 ありがとうございました。
それで、齋藤先生、二十三条の出口の方の話なんですけど、やっぱりこの目的外利用について、今回の審議でも一つの議論にはここなっているところだと思います。
先ほどほかの委員からは、限定的に列挙して明文化すべきだというのもあれば、先生は、目的外利用を許容すべき規定はもう削除すべきだというところまでおっしゃっていて、ここの考え方と、あと一つ、ちょっと先生の説明で分からなかったのは、これ第三者委員会、この監理委員会が法の目的に照らしてチェックするのが不可能だというのが、これがどういうことなのかがちょっと、先生、四ページ目のところなんですけど、二行目の、三行目かな、なんですが、ここを改めて教えていただきたいと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/64
-
065・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
一つ目でございますけれども、目的外利用について、私個人としては、そもそも国会答弁を聞いていましても、いや、これはサイバー防御のためにしか現実的には使われないんだというようなことを政府の方もおっしゃっているんで、だったらもうそれに限定すればいいので、目的外利用を許容する規定は一切要らないのではないかというふうには考えております。ただ、限定列挙という考えがどうかというと、それはもちろん今の規定よりははるかに望ましいとは思います。ということで、現実的に限定列挙というのはあり得るのかなと思います。
もう一つの第三者機関のチェックの話でございますけれども、要するに、原則として目的外利用は禁止されるというふうになっていて、例外的に二十三条四項でわざわざ、いや、当事者協定による場合は同意があれば何に使ってもいいんだよというふうにわざわざ書いてある。わざわざ書いてあるという状況で、政府の方は、じゃ、法の趣旨というものがあって、法の趣旨に基づいて第三者機関がチェックするからいいんだということをおっしゃるんですけど、ただ、法の趣旨はもちろんあって、法の趣旨からして目的外利用というのは禁止されているんだけど、あえて明文で例外設けているのに、それが法の趣旨に反するみたいなチェックするというのは明文に反するので、法律の、第三者機関として、明文に反して法の趣旨に反するから駄目だという判断はなかなかしにくいんじゃないかと。特に、裁判官出身者が第三者委員会に入るということが想定されていますけど、裁判官の発想からして、明文の規定上許されているけど法の趣旨に反するからこれは駄目だという意見はなかなか言いにくいのではないかなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/65
-
066・片山大介
○片山大介君 ありがとうございます。
じゃ、次に、ちょっと持永参考人にお伺いしたいというふうに思います。
官民連携の充実のところで、各省庁が対処手段についての共通理解を持っていないというふうにおっしゃいます。これ、先ほどもちょっと質問あったかなと思ったんですが。これ、今回政府は、内閣官房の下で、しかもわざわざ何か強力な総合調整って強力という言葉を付けているんですけれども、ここはやっぱりなかなか共通理解になっていないというふうなお考えなのか、そこをどういうふうにお考えか。あと、懸念点があるとすれば、例えば内閣官房の総合調整なんですけど、実質には内閣府がやったりだとか、お互い兼務するとは言っていますけど、そこのちょっと何というのか、体制の複雑化というのは確かに懸念するところはあるのかもしれないんですけど、どのようにお考えか、教えていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/66
-
067・持永大
○参考人(持永大君) ありがとうございます。
現状で例えばどういうことが起きているかというと、内閣官房が例えばサイバー攻撃を認知した後に、被害を防止するための情報提供をしましょうみたいなことがあったときには、その被害を受けていそうな分野の所管官庁と調整をしたりとか、あとは被害の攻撃元である国との関係を調べるために外務省と連絡をしたりとか、で、実際にそのパブリックアトリビューションと呼ばれる他国を非難するようなものを出そうとした場合には更に調整が要って、時間だけが過ぎていって、結局有効な対処が打てないということがあるので、その強力な総合調整というのがどう機能するかは、今言ったような情報提供と、相手側に何かを働きかけていって、それでアクセス・無害化するというのが一つのプロセスとして成り立っていくために強力な総合調整が必要なんだと私は思っています。
なので、実際に今ハードルとなっているところというより、その総合調整ができないというのは、やっぱり権限が不足していたりとか、同じ方向を向いていない、各省庁が同じ方向を向いていないというところにあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/67
-
068・片山大介
○片山大介君 じゃ、どうしたらいいかというふうに思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/68
-
069・持永大
○参考人(持永大君) どうしたらいいかというところだと、やっぱりプロセスを確立するってところにあるんですよね。
私が思うには、一番最初に認知をしたときに、情報提供するまでに例えば三週間以内とか二週間以内みたいな時間を区切って、次のプロセスに移るまでに一か月とか、最終的なアクセス・無害化までは三か月みたいな形で時間間隔を、最初にある程度政府として取るべき対処のプロセスのパターンというのが決まっていて、それをこなしていくみたいな、そういうプロセスづくりというのがその総合調整だったりとかに共通認識を得るために重要だと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/69
-
070・片山大介
○片山大介君 ありがとうございます。
それで、じゃ、その総合調整の下で行われていくアクセス・無害化措置について、サイバー通信情報監理委員会のことを聞きたいんですけど、これは酒井先生も持永先生も上沼先生もちょっと言及されているのでそれぞれに聞きたいと思うんですが、その無害化措置の濫用防止のために、実効的活動、最新の知見を活動に反映というのは酒井先生がお書きになっていらっしゃって、それで、あと持永先生は慎重な検討が必要な一方で、対処の有効性を高めるようなタイミングで実施することが大切だと思っていると。これ、結構難しい、実際に、じゃ、運用するときになったら難しいと思うんですが、ここら辺のその今言ったありようというのはどうあるべきか、これを、じゃ、持永先生から上沼先生、酒井先生へと聞いていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/70
-
071・持永大
○参考人(持永大君) ありようというところは、ここはまだ、通信情報の活用からアクセス・無害化に至るまでのプロセスというのを、例えば他国の事例を参考にして、その措置を国内で実施するにはどうしたらいいかみたいなケーススタディーをするというのがまず第一歩で、その後にありようが多分決められるのではないかなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/71
-
072・上沼紫野
○参考人(上沼紫野君) ありがとうございます。
措置の濫用の防止のところは本当に難しいところでありまして、ただ、実際に今回すごく意義があると思っているのは、その仕組みをつくったというところがまず重要だと思っていて、それを実際に運用してみる中でやっぱり見ていくしかないのかなというところが一点ございます。
ただ、そのときのその運用の中で一番、視点として、通信の秘密に関する、何というんですかね、不当な侵害がないかというような視点で見ていただくということがその第一視点だということで、それをベースに見ていただくという形でその仕組みをつくっていただくというふうにすることが重要かなというふうに私は考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/72
-
073・酒井啓亘
○参考人(酒井啓亘君) ありがとうございます。
お二人の参考人の先生の御意見と全く一緒のところがあるんですけれども、国際法の観点から見ると、やっぱりいろいろな御懸念があると思うんですね、そのアクセス・無害化措置というのが濫用されないかどうかという観点。それは通信の秘密の観点でもそうでしょうし、それから国際違法行為になるかどうかという、その国際的なレベルの問題でもそうでしょう。こういったことをチェックをする機関として、独立機関としてのこの委員会というのが設けられているというふうに承知しています。ですので、まずはそういったその基準というものを明確にして、濫用されないような枠組みづくりというものを委員会でしっかりやっていただくというのが個人的には希望するところです。
ただ、その場合に、どういうふうに委員会を構成したり、あるいはその下にどういう機関を設けるのか、さらに、どういう形で憲法、通信法の知見、国際法の知見、あるいは最新の科学技術の情報伝達といったようなことが委員会の方に持ち上がるのか、そういったことというのは恐らくこれから準備をなさるんだろうというふうに思いますので、是非今申し上げたような視点というのを入れた上で、委員会というものをうまくつくっていただければなというふうには個人的には思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/73
-
074・片山大介
○片山大介君 それで、酒井先生は、じゃ、ちょっと警職法の関係も聞きたいんですが、これ、法案の条文の中に今回その条件がやっぱり書かれていない、それでその条件としてはやっぱり対抗措置であり緊急状態であると、これが書かれていない中で、この違法性阻却事由の該当性をどのように整理していくのか、ちょっとここは難しいところなんだと思いますが、そこは先生どのようにお考えになるか。あと、これは齋藤先生にも併せてお伺いしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/74
-
075・酒井啓亘
○参考人(酒井啓亘君) ありがとうございます。
国際法の観点から、一番興味深い、あるいは問題があるところじゃないかというふうには思っています。
つまり、先ほど申し上げましたけれども、新しく作られるその警職法の第六条の二の規定ですけれども、とりわけその第二項ですが、その規定というのは、私が先ほど御意見申し上げたとおり、必ずしも国際法上の対抗措置だとかあるいは緊急状態の要件を定めたものではありません。むしろ、そういった仮に違法行為になりそうな場合の行為であっても、違法性阻却に該当することを妨げないような、そういった立て付けの規定だというふうに理解しています。
元々はこの規定というのは、国家として行為を行うその国内法上の要件を具備するということだろうと思いますので、国際法上の要件として対抗措置なりあるいは緊急状態が満たされなければならないというのはまた別建てということになります。
と申しますのは、これなかなか国内法の先生方に申し上げると理解していただけないところもあるんですが、要するに、ある国内法に反するよう、失礼、ある国際法に反するような行為を行って、外国から国際法違反の行為だというふうに指摘された場合に、それをどういうふうにこちら側が対応するかということを全て一般的に国内法で規定しているということはないんですね。
これは、特別な、その国内法の中で規定が設けられることはないわけではないと思うんですけれども、一般にそういった国際法上の国家責任に関わるような問題を国内法ですべからく規定するというような手法を少なくとも我が国は取っていない。
したがって、新しい警職法の第六条の二第二項に基づいて措置をとったと、それが相手方にとってみるとそれは国際法違反だというふうに指摘された場合に、必ずしもこの法律ないしは整備法を通じて国内法で議論するのではなくて、あくまでも慣習国際法上の国家責任法のレベルで相手方に対して主張をし、説得をするということになるわけです。
ですから、御懸念あるかもしれませんけれども、そういった緊急状態にせよ、対抗措置にせよ、全てあらかじめ国内法に要件を書き込んでおくというようなことはこれまで行われてきませんでしたし、恐らくそれはケース・バイ・ケースで考えられることでしょうから、今後も難しいだろうというふうに思いますし、諸外国もその点では同じ考え方を持って立法を行っているのではないかというふうには思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/75
-
076・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
今お話ございましたけれども、もちろん国際法的な評価と国内法的な評価は違うんでしょうけど、ただ、現実に行動するのは国内にいる警察官でありまして、その警察官が何を参照にするかというと、やはり警職法の条文なわけですね。そうだとすると、警察官がきちんと国際法違反にならない、違法性阻却事由を満たすような行動をするような条文にする、警職法にきちんと要件を書き込むというのは非常に重要だろうと。その後、国際法上の要件を満たすかどうかという折衝なりする場合にも、やはり警察官がきちんと国際法上の要件を満たした行為をするということは非常に重要なことだろうと思っています。
ですから、警職法の要件をきちんと整備するというのが大事ですし、それが難しいということであれば、例えば秘密保護法の運用基準のように、いや、こういう場合は警職法の無害化措置を行使できるできないみたいなことをマニュアルとかガイドラインレベルで明確化するというのは非常に重要だろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/76
-
077・片山大介
○片山大介君 終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/77
-
078・竹詰仁
○竹詰仁君 国民民主党・新緑風会の竹詰仁と申します。
今日は、参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
酒井参考人と上沼参考人にお尋ねいたします。
お二方ともサイバーセキュリティ戦略本部の委員でございますし、サイバー安全保障分野の対応能力の向上に向けた有識者会議のお二人だということで、ちょっとお二人がこういった会議に携わる中で、ここがやっぱり一番時間を使ったというか、ある意味赤白分かれていろんな大議論があったというか、ここがやっぱりお二人の中での一番山だったねというのが多分御専門でそれぞれあるんじゃないかと思うんですけれども、それぞれお二人に、やっぱりここが一番時間掛かったとか、すごい大議論になったというのを、そういうところがあれば教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/78
-
079・酒井啓亘
○参考人(酒井啓亘君) 御質問ありがとうございます。
今おっしゃっていただいたとおり、NISCが行っているその本部のメンバーでありますし、それから昨年行われました有識者会議のメンバーでもあるんですけれども、その議論の内容については、議事については公開されておりますので、それを参照していただければというふうに思います。
個人的には、もちろん私は国際法の専門家ですので、今日御報告申し上げたようなアクセス・無害化措置の国際法上の評価についてやはり関心を持っていましたし、それから、それがどういうふうに評価されるのか、そして最終的に法案としてどういう形で実を結ぶのかというところを注目をしてきました。ですので、現在進行中の例えば戦略本部の会議の内容だとか、あるいは昨年行われたその有識者会議の内容だとかということをつまびらかにすることは差し控えたいというふうに思いますけれども、今申し上げた点を注目して議論をさせていただいたということだけ申し上げたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/79
-
080・上沼紫野
○参考人(上沼紫野君) 御質問ありがとうございます。
私も両方のメンバーではあるんですけれども、ただ、有識者会議の方はやっぱり論点が三つ基本的には決まっておりまして、情報共有と通信情報の利用とアクセス・無害化ということになっており、私はやはり関心としては通信の秘密のところがありましたので、その通信の秘密という重要な価値をどういうふうに形骸化させないように、かつ、このサイバー攻撃に対する対処によって国民の自由、生命、身体を守るというところを実現するかということについてやっぱり関心がありましたので、その点を中心に議論に参加していたというところではあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/80
-
081・竹詰仁
○竹詰仁君 私は野党側ですので、政府から出てくる法案に対してそれをチェックしていくという立場で、今どういったところがやっぱり皆様の会議の中で御議論があったのかなということを知りたくて御質問させていただきました。
〔委員長退席、理事磯崎仁彦君着席〕
ちょっと持永参考人にお尋ねしたいんですが、この中で官民の協議会というのが出てまいります。先ほどの御質問の中で、今回の法案の一つのそのポイントは、政府だけじゃなくて民間も入ってくるということが一つの要素だとおっしゃったと思うんですけれども、その官民協議会というのがちょっと私もイメージが、まだ始まっていないので当然湧かなくて、この内閣委員会でも質問させてもらったんですけれども、例えばインフラ事業者には電気事業というインフラ事業者があって、電気事業だけで四十六者も指定されているんですね、あるいはクレジット会社、金融会社だったら五十何者とか。本当に全ての会社がこの協議会に入ったら、もう多分何百人という協議会になっちゃう。
実際にそんな会議って開けないですし、開こうと思ったらホテルのパーティー会場みたいなところのイメージになっちゃうんですけれども、じゃ一体、その中でまた選別、会社を選別するというのもまた一方で難しいかなと思い、じゃ、その協議会の実際の当日のイメージが湧かないんですけれども、どうやったらうまく官民が情報共有できるようになるのか。それはもう事前にあらかじめお伝えして、あったときはもうしゃんしゃんみたいな会議なのか、もうそこで毎日、毎日というか、一回もう七時間ぐらいの会議やって、それぞれA社さんどうですか、B社さんどうですかということをやっていくことが協議会のイメージなのか、ちょっとその点を、持永参考人はどういうふうにあるべきだというか、こういうふうにしたらいいんじゃないのというのがあれば教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/81
-
082・持永大
○参考人(持永大君) ありがとうございます。
現状でも、サイバーセキュリティ協議会というような内閣官房のところでやっているものがあるんですけれども、そこのものと似たような形態になるんじゃないかなと。変わるのが、やはり政府側からの情報提供が増えるんじゃないかなというのがあります。
先ほど言われたみたいに、非常にたくさんの方が現状のサイバーセキュリティ協議会もいらっしゃって、そういった中で、どういうふうにやったら、その一堂に会するの難しいのでということを考えれば、それはやっぱりオンラインで会議をやるというのが一つの方向性としてあるでしょうし、それで、必ずしも同時に時間をそこで共有する必要も私はないと思うんです。
というのは、例えば金融業界であったりとか電気事業者の方であったりとか、そういった業界の方ってそれぞれ持っている興味が違うんだけれども、そこから情報を得ておきたいというふうに考える方が多いと思うので、例えばきちんとセキュリティーも保たれたインターネット上の情報共有基盤があって、そこに行くと政府側からの情報が見れたりとかというのがあったりとか、定期的に政府側から案内が届くとか、月一回、こういうような事故が、インシデントが発生していますので皆さん注意してくださいと、そこは秘密がちゃんと保てるような内容の情報が、保てるような人々の間での情報共有ということで、必ずしも時間を拘束しないような方法もあるんじゃないかなと思います。
〔理事磯崎仁彦君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/82
-
083・竹詰仁
○竹詰仁君 ありがとうございます。
先ほど、例えば政府のどこかの省庁が自分のところがサイバー攻撃受けたというのはやっぱり言いにくいんだよという話をされていたと思うんですけれども、私、民間でもそういうところあるかなと思っていまして、例えばA社が自分のところがサイバー攻撃を受けそうだということを言うこと自体が、仮に政府には知られたとしてもよかったとしても、同じ民間企業同士言うと、ああ、あんたのところ甘いねみたいなところがなるような気がして、なので、余計に私、協議会というのは実際どうやったらお互いがウィン・ウィンの関係になるんだろうと、この協議会に出て良かったなと、というのがちょっとまだイメージが湧かないんですね。
その点はちょっともう一度、酒井参考人、上沼参考人、そういう話ってこの有識者会議だとか戦略会議の中でそもそも議論があったのかなかったのか、ちょっとあれば、こんなことだったよというのを教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/83
-
084・酒井啓亘
○参考人(酒井啓亘君) ありがとうございます。
正確には記憶はしていないのですけれども、確かに、その協議会についてどういうふうに動かし、協議会、そのときはそういう話ではなかったと思うんですけれども、官民連携、大世帯になるような、そういったものをどういうふうに考えていくのかという議論は委員の中でもあったとは思います。
今御質問あったように、あるいは持永先生から御回答あったように、やっぱり難しい、何か、どういうふうにして一堂会して、そしてインセンティブですかね、情報提供の、官の方から情報提供があり、民の方からも情報共有のための提供がある、それをどういうふうにしてインセンティブを持ってやっていただくかというところが難しいのかなという話はあったように記憶しております。
そこでどういった解決策が出てきたかということは、ちょっとそこまでは覚えてはいないんですけれども、結局はその辺はそういった問題提起に終わったのかもしれませんが、いずれにしても問題意識としては共有していたという点は言えるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/84
-
085・上沼紫野
○参考人(上沼紫野君) 御質問ありがとうございます。
大規模な協議会の運営という形での議論がされていたのかどうなのかは、ちょっと私の方でもしかして、出ていない会議もありましたのではっきり覚えていないんですが、インセンティブという形でいいますと、非常に言われていたのが、民からの情報提供だけでなく官からも情報提供してくださいというのが結構言われていて、今までは報告、報告と言われるだけで、何のために報告しているのかもよく分からぬぞというようなお話でして、それを報告するんだったらその結果の解析したことを教えてほしいみたいな、そういうお話は結構出ていて、そこが結構インセンティブとしては重視されていたのではないかなと個人的な印象ではあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/85
-
086・竹詰仁
○竹詰仁君 ありがとうございました。
もう一度持永参考人に、例えば経団連なんかが、今のインシデント報告だとか報告に対して、余り過度なことを期待しないでくださいというか、負担を掛けないでくださいというような意見とかを出しているんですけれども、例えばアメリカだったらアメリカの例でもいいんですけれども、その先行してやっているところは、民がどういうふうに協力というか、どういう情報を持って、あるいは情報をもらっているのか、ちょっとその点の御示唆があれば教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/86
-
087・持永大
○参考人(持永大君) ありがとうございます。
民間から情報を得るということに関しては、ほかの国では、ある程度その様式を決めて、これぐらいのこういう内容を報告してくださいという一定程度の様式が決まっているんですね。
日本においても、実は日本はかなり情報共有、民と民の間の情報共有とか民から官への情報共有は、ほかの国からもそんなすごいことよくできるねと言われるぐらいに非常に先進的だというふうに言われています。そういったことを、例えば先ほどあった例でいえば、金融とかそういった業界の場合だと、金融の場合は、同じようなコンピューターシステムを使っていたりとか同じような要件で組み上げているので、ほかの企業で受けた攻撃がうちにも来るかもしれないというインセンティブが、そういうところに情報提供すると自分たちも予想できる、対応ができるというところのインセンティブがあるので情報提供をするということがあるわけなんですね。
だから、そういうふうに考えれば、民から官への情報というのはやはりたくさんあるというのが現状で、それはフォーマットを決める、今ももう既にフォーマットはありますし、JPCERTコーディネーションセンターでもたくさんもらっているという状況なので、非常にある程度定式化されていると。
経団連の方が言っている過度な負担にならないようにというのは、新たな仕組みをつくって、この基準でこういう内容をやってくれよと、今までと違う方法だったりとか今までと違うようなことを業務プロセスの中に組み込んでくれと言われるのがきっとつらいということであって、だからこそ今ある仕組みを最大限に生かした方がいいということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/87
-
088・竹詰仁
○竹詰仁君 ありがとうございました。
続いて、上沼参考人と、もう一度持永参考人にもお聞きしたいんですけれども、先ほどのサイバー情報通信監理委員会の話も出たんですが、持永参考人からは、いい人材を雇うというかやってもらうにはそれなりのサラリーというか処遇が必要だということだったんですけれども、じゃ、サイバー情報通信監理委員会のメンバーも、きっとそういった高度な専門的な知識だとかあるいは専門的な技術が必要だと思うんですけれども、こういうところに入る人たちも、仮に公務員、国家公務員で内閣府から出向しました、経済産業省から出向しましたという人だとしても、やっぱり一段高い処遇であるべきなのか、ちょっとその辺が、例えば私の経験では、民間の会社でももちろんそのときに与えられた高度な技術とか難しい仕事ってあったにせよ、それは、もしそれをクリアすれば、いずれその人が処遇される、又は評価されるという意味で、それはいずれ評価されるんですけれども、その仕事に就いたからといって十万円上がるってなっちゃうと、じゃ、上がらない人からとってみてもどうなの、何でその人だけ十万円高い給料をもらっているのというのは、なかなか踏み出せない出来事なんですね。
ですので、その監理委員会に高度な専門的な知識、技術が必要だというときに、その人にもやっぱり高い処遇であるべきなのかという、ちょっとその点についてお二人の考えを教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/88
-
089・上沼紫野
○参考人(上沼紫野君) 御質問ありがとうございます。
それは、組織をどうつくるかというところにも関係してくると思うんですね。ただ、一般論として言えば、少なくとも対価、相当な対価のない業務をしたいと思う方は余りいない、よっぽど、何だろう、仙人とかじゃない限りはなかなかいないと思うので、そういう意味で、期待をするんだったらそれなりの対価は必要だというふうに思います。なので、例えば出向という仕組みが本当にいいのかどうなのかとか、そういう話は組織づくりの問題だと思いますけれども、なので、期待をするんだったらその期待だけのやっぱりお金は払ってあげないとなとちょっと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/89
-
090・持永大
○参考人(持永大君) ありがとうございます。
私も、その人の処遇は特別だとして、特別なので、上げるべきだと思います。というのは、その監理委員会に入る方は、罰則が何か情報漏えいがあったりとか悪用した場合にはあるわけで、しかも二十四時間三百六十五日待機しなきゃいけないという状況を考えれば、今、周りの人から見てみると、更なる重い責任をむしろ負うことになって、かなり職責も能力も必要であるということを考えれば、プラス十万円とかではなく、給料三倍ぐらいが必要だと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/90
-
091・竹詰仁
○竹詰仁君 御見解は承知いたしました。ありがとうございました。
続いて、齋藤参考人にお尋ねしたいんですけど、ちょっと今日、御説明の中にはなかったんですけれども、事前にいただいた資料、あと今日お配りいただいた資料の、今日の資料では十ページでいうと、私、この時間の限定がないということは、なるほどと思ってお読みしたんですね。要は、その緊急性があるということと、でも、その割にはこれって時間が書いていないよねと。ずっとこれは怪しい怪しいということが書いてあっても、その時間って、今日だけが怪しいのか、一年後であっても怪しいのか、十年後であっても怪しければ、ずっと怪しいということがずっと付きまとっちゃうじゃないかと、そういった御意見を拝聴して、あっ、なるほどと思ったんですが。
最後の方に、ならばということが書いてあるんですけど、もう一度、この問題点と、そうであれば、何を、例えば一文変えたらいいとか、あるいはここは削除すべきだとか、ちょっとその辺りを教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/91
-
092・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
まさに、緊急避難が認められる、無害化措置が違法でなくなるためには、時間的な要素というのは原則として必要なんだと考えております。時間的な要素は必ずしも要求されないんだというような意見もあるというふうに聞いていますけれども、たしか中村和彦国際法局長の著作なんか見ますと、やはりそういう見解というのは余りよろしくないんだみたいなことも書かれていまして、やはり一定の時的な要素というのは必要なんだろうというふうに思っております。
やはり基本的には、そういう国際法に抵触する可能性のある方法を使うんじゃなくて、そのほかの交渉とか、ほかの方法で、可能ならばほかの方法で対処するというのが原則だと思われますので、それができない、時間的な余裕がない場合だけ無害化措置ができるというふうにしなければならないんだろうと思っています。
そういう意味で、この法律の条文については、そのほかの措置をとる時間的ないとまがないとか、そういう文言を付け加えるとかいうことが必要なんだろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/92
-
093・竹詰仁
○竹詰仁君 ありがとうございました。
ちょっとしつこいようですが、もう一度持永参考人に、仮にその情報監理委員会に民間から企業が来たとしたら、出向者とかですね、そういう専門的な人が来たとすれば、それは民間が、出向元がサラリーとかを決められるわけですけれども、望ましくはすごい待遇で人をよこしてくれよと、そういうふうに思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/93
-
094・持永大
○参考人(持永大君) 民間から出向するとき、すごいサラリー出してくれよというのは、私、そこら辺は、民間よりもいい金額でというところにしかならなくて、というのは、民間でもやっぱり市場原理が働いていて、青天井でお金払えるわけでもないですし、ただ、今回のその監理委員会とかそういう仕事は、どちらかというと、もうやりがいを皆さん分かったので、さらに、職責であったりとか社会的な責任を負ってくださいという部分なので、それに合うような形の処遇なんだろうというふうに私は想定しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/94
-
095・竹詰仁
○竹詰仁君 ありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/95
-
096・井上哲士
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
今日は、参考人の皆さん、本当に貴重な御意見をありがとうございます。
まず、齋藤参考人にお聞きいたしますけれども、お配りいただきました日弁連の意見書でも、通信の秘密等に対する侵害可能性ということを書いておられます。この取得した通信情報の分析、利用については、意思疎通の本質に関わる情報以外の情報を対象にするものとされていると、しかし、そのような情報であっても、送信先や受信先次第で、また、他種の情報と組み合わせた場合に通信の秘密等に対する侵害可能性が払拭されないということを書かれておりますけれども、これ、もう少し具体的にお話しいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/96
-
097・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
やはり、誰と付き合っているか、誰と交流しているのかというのは、もちろん公にしている場合もあるでしょうけど、やはり知られたくないということも多いんだろうと思うんですね。特に性的マイノリティーの方なんかについては、例えば、じゃ、同性の恋人とやり取りしているとか、そういう情報というのは余り知られたくないだろうと思うんです。あるいは、まあほかにもあるでしょうけど、例えばその性的マイノリティーの方がよく見るようなサイトとかにアクセスしたというのは、別に犯罪でも何でもないですけれども、しかし、そういうのはやはり知られたくないんだろうと思うんですよね。
それはメールの中身が分からなくても、じゃ、どういう仲間とやり取りしているか、そしてどういうサイトにアクセスしたか、そういうことが分かること自体がその人の思想、信条を、あるいは性的指向とかそういうものを示すということは十分あり得るわけですから、今回の法案で問題となっているのは、通信の本質的内容に関わらないからといって決して軽視できるようなものではないというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/97
-
098・井上哲士
○井上哲士君 その上で、そういう情報が目的外使用ができるということが大変問題だということから先ほど来お話があるわけですけど、それに対して私もこの前質問したんですけど、あくまでも機械的な情報に限られていて、その中にはこのサイバー攻撃と関係のないユーザーの情報などが含まれることはないと、だから、このサイバー防御の目的以外に通常使われないとか、そういうものを想定しているとか、こういう言い方をするわけですけれども、絶対ないとは政府も言わないわけですよね。
例えば、岐阜の大垣警察署などが個人情報を収集して提供していて、名古屋高裁で違法の判決が出たわけですけど、そういう事態を見ますと、こういう目的外使用が、絶対に不当に使われないということは私はあり得ないんじゃないかと思っているんですけれども、そういうこの目的外使用の、対する政府の姿勢、この法案についていかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/98
-
099・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
まさに政府そのように答弁していると思いますけれども、例えば法案の二十二条、自動選別の実施ということで、二項ですね、ごめんなさい、二十二条の二項で自動選別をする場合の基準ということで、一号で、当該対象不正行為に関係がある送信元又は送信先であると認めるに足りる状況のある電気通信設備のIPアドレス等というふうにされているわけですけれども、例えば、じゃ、踏み台として利用される、自分の犯罪とかサイバー攻撃をしていないけれども、踏み台として利用されるということは誰しもあり得るのではないかと思うんですね。そのときに、じゃ、その人がパソコンなりサーバーが踏み台にされてしまった、で、その、じゃ、IPアドレスをキーに検索して通信情報を選別できるんだというふうにこの二十二条の二項というのは読めると思うんですよね。
だから、もちろんその政府の意図としてはサイバー攻撃に関わるものだけ抽出しようとしているんだということになるのかもしれないけど、踏み台として利用されているような人の情報も併せて取得される可能性もあるんだろうと思います。
ですから、もちろん国民の大部分を監視するということはできないかもしれないけど、踏み台に利用されたような人の個人情報、通信情報が取得される、で、いろんな弾圧なりに利用される可能性というのは決して払拭できないだろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/99
-
100・井上哲士
○井上哲士君 ありがとうございました。
その上で、目的外利用について上沼参考人にもお聞きしたいんですけれども、先ほどの最初の御意見の中で、通信の秘密に関してというこの五ページのところで、通信の秘密の制限により実施される利益の方が大きい、通信の秘密で守られる利益よりもその制限により実現される利益が大きいという場合に目的に照らして必要な限度の制限をするんだと、こういうお話だったと思うんですね。
そうしますと、この場合の目的というのは、まさにこのサイバー攻撃を防ぐ、それによる重大な被害を防ぐという目的だからこそ一定の制限が必要だという理屈になると思うんですけど、だったらその目的外利用というのは、この通信の秘密を制限をするというのは、私ちょっと理屈としては成り立たないんじゃないかなと思うんですけど、その辺りは有識者会議でどんな議論になったのか。政府は、想定していないとか、通常はこうだと言うんですけれども、そういうことはやっぱり絶対ないと言えない以上は、これむしろやっぱり禁止をするということにした方がすっきりすると思うんですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/100
-
101・上沼紫野
○参考人(上沼紫野君) ありがとうございます。
最初に申し上げたとおり、通信当事者の同意がある場合には、まず通信の秘密の秘密性が除外されるという前提がありましたので、それでいうと、通信当事者が同意した範囲では使えるというふうに考えることになります。
ですので、その目的外利用というか、ここでいうその選別後通信情報の使える範囲というのが極めて限定されていて、その対象不正行為というものに関するものに限ってしまうので、そうすると、結構、本来サイバーテロってどこから起こるか分からないみたいなところが若干あるわけで、持永参考人からもおっしゃっていただいたようにですね、それを考えると、限定するということが、余りに限定するということが、じゃ、本当にいいのかという話も出てくるわけです。
今回のその同意のあるところについては、同意をしているというところを前提に、その同意がある場合に同意の範囲で使ってもいいでしょうという話なので、なので、そうであればそこに限定はなくてもいいんじゃないのと。実際に、ここの通信当事者の同意に関して言うと、通信当事者の同意があれば、実は選別後通信情報じゃなくて、もっと生情報だってもらえるわけなんですよね。その話をしていないんです、逆に言えば。ここでは選別後通信情報というある程度もうフィルターが掛かった後の情報の話だけの話をしていますので、そういう意味でもここは謙抑的な条文になっているんじゃないかなというふうに私は個人的には思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/101
-
102・井上哲士
○井上哲士君 その当事者の合意といっても、実際にメールとかやっている本人ではなくて、その事業者の当事者ですよね。そこが合意したからといって、現実のその個人の皆さんからいえば、しかもこの協定については必ずしも公表しないということになっていますから、自分の知らないうちに個人情報が使われるということになるんじゃないかと思いますけれども、上沼参考人、それから齋藤参考人、もう一度今の点お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/102
-
103・上沼紫野
○参考人(上沼紫野君) その通信当事者の同意の話でいうと、その事業者の同意なんですけど、これ、外内と内外通信なので、通信の相手が国外のそういう、何というんですかね、サーバーだったり何だりだったりということを想定しているわけなんですね。なので、それでいうと、そのこっち側の人たちというか、国内の個人の方の情報というのを、ここの情報で問題なんじゃないかということは余り考えにくいのかなと個人的には思っています。
元々の通信の秘密の一方当事者の同意の話でいうと、元々、両方国内であったとしても、片っ方が同意していれば、その片っ方の人が言っちゃうことあるでしょうという話で片っ方の同意でいいですという話なので、それから考えても本件の規定というのは抑制的なんじゃないかなというふうに思っているところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/103
-
104・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
まず、国外の方からの通信だというお話なんですけど、例えば海外にサーバーがあるサービスを利用して国外から通信が、日本にいる人についても国外から通信がなされる、国内の事業者に通信がなされるということもあるので、まあこれは別に日本人が対象外になるということではないと思っています。
もう一つは、いや、そもそも、じゃ、外国人の人権は守らなくていいのかという話だと思うんですよね。日本国憲法のその適用対象は日本にいる人だけかもしれませんけど、でも、自由権規約で通信の秘密は保護されるわけで、すべからく世界の人の通信の秘密は保護されるわけですから、ですから、日本人は関係ないからいいという話ではないだろうと思っています。
そして、最後ですけれども、同意があれば通信の秘密は考えなくていいみたいな法理が一般的だとは決して思っていません。必ずしも通信に関わるものではないですけど、コミュニケーション過程において一方当事者が同意をしたら他方当事者の同意がなくても合法なのか違法なのかということについては学説上いろんな議論がありまして、今お話があった原則合法論というのもありますけど、原則違法論というのもあります。
その中で、じゃ、最高裁がどのように判断しているのかというのは今回の資料でお示ししましたけれども、昭和五十六年の最高裁決定、そして平成十二年の最高裁決定ということで、一定の要件があった場合に初めて一方当事者の同意だけで合法というふうな判断を最高裁が示しているわけですから、ちょっと最高裁の判断を離れた理論的なことを言っても余り意味がないだろうと。やはり最高裁の基準に照らすと、必要性、具体的な必要性がある場合、あるいは他方当事者も、ああ、自分の通信が取られているんだなというふうに予見できるような場合以外は一方当事者の同意があるから合法になるということではないだろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/104
-
105・井上哲士
○井上哲士君 続いて、アクセス・無害化措置について酒井参考人にまずお聞きしますけれども、先ほど来の議論で、いわゆるこのアクセス・無害化措置が武力行使に当たるのかについて、一般論では様々な議論があって、具体的な当てはめだというお話があったと思うんですね。これは衆議院の参考人質疑でも、国際法上、武力の行使について普遍的に合意された定義はないと、その上で、日本の行為を武力の行使だと批判する国が出てくることは理論的には否定できないという、これ参考人質疑での御意見があったんですが、これ、こういうことでよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/105
-
106・酒井啓亘
○参考人(酒井啓亘君) ありがとうございます。
武力行使、ユース・オブ・フォースの定義について、一般国際法上決まった敷居というものがあるかどうかというのは大変難しい問題です。例えば、一国内の争乱状態で行われる警察行為が、例えばそこに国外からの反乱、反政府勢力などが関与した場合に、じゃ、そこに武力の行使というのが生まれるのかといったような極めて難しい問題というのがやっぱり国際社会には起きるわけですね。そういった、何というんですかね、限界事例みたいなものを考えていくと、安易に、武力の行使はこのレベルで、それ以下であれば武力の行使に当たりませんよというような普遍的な合意がなされているというのは言えないというのが現実だと思います。
ただ、その場合に考慮要因になるのはやはり、どの程度の被害が生じるのかとか、どういう手段が使われているのかとか、いろいろな考慮要因があって、これは武力の行使に当たるでしょうね、あるいはこれは武力の行使には当たらないでしょうねというような判断がなされるんだと思うんです。
本件、この法案で想定されているアクセス・無害化措置というのは、基本的には被害を出さない、損害を生じさせないということを前提に組み立てられていると承知していますので、その意味では、どこにその武力行使の定義の敷居があるにせよ、その措置が武力行使の敷居を越えることはないというふうに考えられているんじゃないかというふうに個人的には思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/106
-
107・井上哲士
○井上哲士君 その上で、国際法上にその違法性が阻却される事由の話も先ほど来ありました。これ、酒井参考人、齋藤参考人にもお聞きしたいんですけど、このタリン・マニュアル二・〇が議論になってきました。日弁連のこの意見書にも書かれておりますが、このタリン・マニュアルでは、国の根本的な利益に対する重大で差し迫った危険と利益を守る唯一の手段である場合というふうになっているんですね。
ところが、この警職法改正案では、そのまま放置すればということで、この差し迫った危険ということではありません。それから、人の生命、身体又は財産に対する重大な危害が発生するということで、国の根本的な利益ということも違うんですね。かつ、緊急の必要があるときということで、この差し迫った危険を守る唯一の手段としているタリン・マニュアルとも、私、いずれも違うと思うんですよね。
ですから、タリン・マニュアルと比べましても、この法案で書かれていることは違法性の阻却は認められないんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/107
-
108・酒井啓亘
○参考人(酒井啓亘君) ありがとうございます。
さきにも申し上げましたけれども、この警職法の新しい第六条の二の特に第二項というのは、私自身は必ずしも、国際法上の緊急状態をそのまま要件化して、その要件をその法律の下、国内法の下に落としたということではないというふうに考えています。
ただ、もちろんその法令の中に明らかに国際法に違反するような文言あるいは要件が書き込まれていたら、それ自体、まあ法律が違法になるか、あるいはその法律に基づいた実行が違法になるかはともかくとして、国際違法行為が生じ得る可能性が高いわけですから、その内容についてはやはり国際法に合致した内容にしなければいけないということだろうと思います。
その限りでこの第六条の二の第二項というのは書かれているわけであって、繰り返しで恐縮ですけれども、それ以外に、その上にと言った方がいいですかね、その上に国際法上の緊急状態の要件がかぶってくるということであって、国際法上の要件の方が実は厳しいということになって、対外的に国際社会において非難を受ける場合には、その国際法上の要件をクリアしなければその非難には耐えられないということで濫用が抑えられているというふうに国際法上は考えられているというふうに理解しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/108
-
109・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
今、日弁連の意見書を御指摘いただきましたけど、この十ページの辺りにその関連のところが書いてあるんですけど、三月十九日の衆議院内閣委員会で、飯島審議官の方で、マルウェアの感染を発見し、いまだ発動していないが、C2サーバーと定期的に通信を行っていることが認められるため、攻撃者の意図次第でいつでもサイバー攻撃が行われると認められる場合というのがその無害化措置が行われるケースとして挙げられているわけです。
その注のところに書いてありますけど、中村和彦国際法局長の方の著作を見ますと、自国の重要インフラのシステム内にマルウェアが侵入していることが確認されたが、そのもたらす損害、侵害等が全く判明していない段階で国際法上の義務に違反し得るハックバック等を行うことについては、急迫性の要件を満たすと説明することは困難と思われるというふうにされているわけですね。
ですから、ちょっと中村さんがおっしゃっていることと対比するとかなり政府の要件というのは緩いだろうと。警職法に書かなくてもほかのいろんな要因で国際法を守るんだというお話なんですけど、ただ、少なくとも今の政府答弁は、どう考えても緊急避難の要件についてはかなり甘く見ているんだろうと思っているんですよね。そのような政府の姿勢プラスこの警職法の緊急避難の要件を踏まえていない条文を足して考えると、やはり緊急避難の要件を満たさない無害化措置をやっちゃうリスクがあるんじゃないかというふうに私は懸念しています。
ですから、ちゃんと緊急避難の要件は書き込むべきだろうと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/109
-
110・井上哲士
○井上哲士君 時間ですので。ありがとうございます。
持永参考人、質問できなくて申し訳ありませんでした。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/110
-
111・大島九州男
○大島九州男君 れいわ新選組、大島九州男でございます。本日はありがとうございます。
まず最初に、酒井参考人と持永参考人にお伺いをしたいんですけど、能動的サイバー防御は米国や英国、そしてカナダやオーストラリアなどで既に導入をされており、今般の我が国の制度設計においてもそうした国の制度が参考にされているというふうに思いますが、一方で、ドイツはこれらの国よりも抑制的な考え方であり、アクセス・無害化措置についてはまだ実施していない、あるいはその導入を検討中のようにも伺っていますが、我が国の能動的サイバー防御法案は、それらの諸外国の類似の仕組みと比較してどういう部分が優れていてどういう部分が劣っているのか、そしてまた、あるいは運用面も含めどういったところに懸念点があるのかというのがあればちょっと教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/111
-
112・酒井啓亘
○参考人(酒井啓亘君) 御質問ありがとうございます。
恐らく、どういう措置を制度設計して、それを運用していくかというのは政策の問題だと思いますので、国際法の観点から言えることというのはそれほどないんですけれども、もちろん、例えばイギリスだとか、先制的に予防的にその措置をとるのではなくて、それもあるんだけれども、むしろ起こった後、こちらが危害を加えられた後のことを考えて対処をするんだということを視野に入れた政策を取るという国も幾つかあると思います。それは、その国それぞれの考え方の違いが反映されている、力点の違いというのでしょうかね、というのがあると思うんですね。
日本はその点、本当は全般的にもちろんサイバーセキュリティー能力を向上しなきゃいけないわけですけれども、今回特にここで審議いただいているのは能動的サイバー防御であって、予防的にこちらが危害を受ける前にいろいろなことができないかという点に力点を置いて判断をしているということだろうと思います。
国際法の観点からすると、何度も繰り返し御質問いただいたり、あるいはこちらが答えているように、国際法規則がまだ未整備だったり、あるいはこれから発展途上だという分野であるということは、それはいい意味、いい点と悪い点と両方あるんだろうというふうに思うんですね。つまり、日本がこの法案を成立させて国家実行をつくっていくことによって自らの国益に応じた国際法規則というものを作っていく契機になるという点では非常に重要なポイントではあろうと思いますし、逆に、それはどの国もそういうふうに思っているということもまた言えるわけであって、いずれの国ともやっぱりその点、考え方が抵触する、あるいは考え方がぶつかり合うということはどうしても出てくるだろうと。その中で日本が果たす役割というのを考えていかなきゃいけないという点を抜きにしては政策決定というのはなされないだろうなというふうには個人的には思っています。
諸外国と比べてどの点が日本のそのやり方にいい点と悪い点があるのかという御質問については、私はそこまで申し上げる能力というのは残念ながらありませんので持永参考人の方に渡したいとは思いますけれども、国際法の観点からすると、今申し上げたように、国際法上の根拠がなかなかはっきりしない中で船出をしていかなきゃいけないこの法とその実行をどういうふうに動かしていくのか、今後のその運用次第で今申し上げたプラスの面とマイナスの面というのが出てくるのではないかというふうには思っています。
以上が私からの答えとなります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/112
-
113・持永大
○参考人(持永大君) 御質問ありがとうございます。
日本は今のところ欧米と外から見た制度上はほぼ同等のことができるような仕組みになったという点においては、優れているとは言わないまでも同じことができるようになりつつあるというのが私の感覚です。
やはりこれ、ほかの今の現状の法律、法案において優劣、ほかの国と優劣があるかというと、先ほど言ったように枠組み上は優劣は付け難いんですけれども、やはり運用が始まってから日本がどれだけその運用を効率化して適切に対処できるかであったりとか、その対処した後に透明性が確保されているのか、あとは、その対処自身も常に技術的に革新的なものを採用しているのかどうかというのが課題なんだろうなと、もし優劣を付けるとすれば。
というのは、サイバー攻撃のやり方というのは、本当に一年たつとがらりと変わったりとか、使っている製品によって非常に全然違うので、そういった相手側の攻撃にいち早く対処できるようにこちら側も常に備えていられるかどうかというのがほかの国との優劣を判断する材料になるのかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/113
-
114・大島九州男
○大島九州男君 齋藤参考人、今の質問の中で、懸念点と私がこういうふうに思っている部分で何か御意見ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/114
-
115・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ごめんなさい、懸念点というのは。この法案についての懸念点ということでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/115
-
116・大島九州男
○大島九州男君 そのとおりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/116
-
117・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) 失礼しました。
この法案の懸念点ということでございますけれども、こちらのメモにも書かれていますけれども、やはり当事者協定についての入口が甘い、出口が甘い、具体的なサイバー攻撃の危険性であるとかそういった必要性もない場合でも当事者協定による通信情報の利用ができてしまう、そして目的については特に制限がない、何使ってもいいみたいな条文になっている。
政府の方が言っているのは、何かサイバーの安全を守るようなメーカーの方に情報をあげるとか、そういうことに使うんだみたいな話はありますけど、だったらそう書けばいいわけですよね、法律に。そういうことも目的も全然無限定で、捜査に使ってもおかしくないような条文になっている。そこが非常に大きな懸念点だろうと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/117
-
118・大島九州男
○大島九州男君 いろんな懸念点、私もいろいろ問題視している部分がございまして、委員会の中でも、昔マイナンバーつくるときに、これをどんどんひも付けていくとか広げませんよみたいな答弁でいくわけですが、最終的には今もう免許証までひも付いていくと。
今回、ここで私が一つ大きく問題にしているのは、外外通信ですから内内やりませんよと、プライバシーも守りますから安心ですよというようなことを一生懸命政府は言うわけですよね。そういう情報管理もしっかりやると言うのであれば、内内通信も胸を張って、しっかりやりますよ、安心してくださいと言うべきだなというふうに私は思っているわけですが、当然、これはもう今回の法案を通すために、小さく産んでどんどん広げていこうというふうに思っているんじゃないんですかというふうに私が質問をするわけですが。
今回、内内通信については、衆議院の内閣委員会で参考人として意見陳述をされた横浜国立大学の吉岡教授が、外国から行う攻撃が目立つので、一旦国内に侵入してそこから攻撃を行うということを意識した攻撃というのは実在していますと。いや、もう当然、ハードルが高くなれば低いところから行くんだから、当然、それを能動的と言うのなら、内内もしっかりとやるべきじゃないのというふうな意見を言ったわけですが、こういう技術的な側面とかセキュリティーの観点で実は重要な部分でもあるんだというふうに意見述べられていらっしゃるわけですよ。
今回は通信の秘密の問題に配慮して、要は、だから内内通信は対象外としたんじゃないかというふうに私は思っているわけですが、今回の法案で政府が内内通信を対象外とした理由や背景、また内内通信を対象外としたことによるリスクやデメリット、将来的に内内通信まで対象にする可能性があるんじゃないかと私は思っているんですが、この三点、それぞれ参考人の御意見あれば、簡潔にどうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/118
-
119・酒井啓亘
○参考人(酒井啓亘君) ありがとうございます。
そうですね、私個人の意見としては、この法案の目的というのは、あくまでも我が国の特に重要インフラの保護という観点から、公の秩序なり、あるいは国の安全というものを確保していくという、そのための手段としてこの法律が作られるんだろうというふうに思っています。
したがって、その限りで、外内、内外、あるいは外外といったようなものが対象になるんだという、そういう説明だったと思いますし、今の御質問でいうと、それ、内内も入れてもいいんじゃないだろうかという、しかし、そういう話にはなっていないという、そういう御質問だったと思うんですけれども、私自身は、それは内内がなくても今申し上げた法案の目的というのは十分達成できるというふうに理解してこの法案が作られているんだろうというふうに思ってはいます。
ただ、一つ申し上げるのは、今申し上げたように、あくまでもこの法案というのは国の安全なり公の秩序の維持ということが重要なポイントだろうと思いますので、実は、国際法の観点から見ると、それは国だけの、一国だけの問題ではなくて、サイバー空間というのは国境を越えて広がっている、そういった問題ですので、国際社会全体の問題として実は考える視点も持っていただきたいなというふうには思っています。
それが直接、内内とか、そういうふうにつながるかどうかはちょっと分かりませんけれども、こういうサイバーセキュリティーというのは決して一国で完結するものではないのだという視点は是非持っていただきたいなというふうには思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/119
-
120・上沼紫野
○参考人(上沼紫野君) 御質問ありがとうございます。
ちょっと私、今日の資料の中にもお書きしたんですけど、内内通信に関して言うと、内内通信は国の権力の及ぶ範囲なので、取りあえず及ばない範囲のところをまず見ましょうということなのかなというふうに理解しております。なので、そういう意味で、必要なところからまず始めてみて、それでうまくいかなかったらまた考えるということでいいんじゃないかなと思っているんですね。
なので、そのサイバー攻撃に関するものというか、法律もそうなんですけど、一〇〇%は最初からできませんので、なので、まず権利の侵害が少ないところから始めてみて、それでうまくいくんだったらまた考えればいいし、それがうまくいかないんだったらまた考えるということなのかなと思っています。
ちなみに、外部の関係で、通信の秘密のお話、先ほど齋藤参考人からもありましたけれども、機械的な情報ですね、通信の存否に関する情報まで通信の秘密として守っているというのは日本で極めて特徴的なものでして、ほかの国でそこまで守っているのかというと、必ずしもそうでもないというのがありますので、そういう意味でも、外外、内外、外内というところで検討したというところではないかなというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/120
-
121・持永大
○参考人(持永大君) ありがとうございます。
私は、内内を対象外とした理由についてはちょっとよく分からないなというのが正直なところで、そこは対策として必要なんじゃないかと言われればそれはそうかもしれないけれども、技術的にもハードルが低かったんではないかなというのがあると思います、外側からの通信であれば。
なので、例えば、その外から、外外みたいなものはどこから来てどこから出ていくというのは非常に分かりやすいですし、外向けであれば、ある程度IPアドレスとかで絞り込みができるので、技術的なハードルが低かったのではないかなというふうに想像します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/121
-
122・齋藤裕
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
そもそも論なんですけど、私は余り内内とそれ以外とで人権侵害の程度に違いがあるというふうには全然思っていなくて、先ほども言いましたけど、自由権規約があるわけですから、結局、違法なものは、外国人が対象だろうが、外国にいる人が対象だろうが違法なものは違法だろうということだろうと思っております。
あとは、今回の外外通信とかいうものは、結局IPアドレスで識別しているものでしかないので、日本人同士の通信だって対象になり得るわけだろうとは思うんですよね。あとは、外国に対して選別後通信情報を提供できる規定もありますので、例えば、じゃ、アメリカの方が日本人についての通信情報を集めて、日本がアメリカに関する通信情報を集めて交換するとかすれば大体補完関係ができるわけですから、余り国内、国外みたいな話をしても私はそれほど意味がないとは思っていますけれども、ただ、アメリカの方で、例えばスノーデンの方が暴露した件でいえば、国民の情報を政府の方がのぞいていたんじゃないかみたいなことでかなり批判もあったわけですし、諸外国の法制としては基本的には内内通信は見ないというふうになっていると思いますので、そういうことに倣って内内を除外するという制度になっているんだろうというふうに理解しています。
あとは、外国からの通信で被害が多く生じているというのが立法事実ですから、立法事実がある範囲でしか規制できないというのがやはり立法の大原則だと思いますので、そういう意味では、やはり現時点では内内は外すべきだろうということにはなるんだろうと思います。
ただ、御指摘のとおり、内内以外のところの政府のカバーが強くなれば当然内内の方に攻撃する人が移ってくるということはあり得るので、将来的にはそちらの方も規制する流れにはなるかもしれませんけど、ただ、やはりその場合でも、私の方はこれまで指摘された問題は解消されなければならないと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/122
-
123・大島九州男
○大島九州男君 持永参考人にちょっとお聞きすると、要は、いろんなところにつながっているわけですから、例えば日本国内で悪いことしようとしても、それは外国飛ばして、それでこうやって中に入ってくると。これって外内通信という理解でいいんですかね。外内というか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/123
-
124・持永大
○参考人(持永大君) 日本国内にいる人が絡むのであれば、外内か内外のどちらかだと思います。外国の人がまた第三国に対して通信するのが外外だと承知しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/124
-
125・大島九州男
○大島九州男君 じゃ、もう一回聞きますと、日本の中から外国を経由して日本に被害を及ぼしても、これは内内という、そういう理解ですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/125
-
126・持永大
○参考人(持永大君) 今のは多分、内外と外内の二つだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/126
-
127・大島九州男
○大島九州男君 ということはですよ、日本の中で内内で直接やるような犯罪者ってほとんどいないですよね。非常にこれって、もう今言うように、最初、非常に分かりやすいねという話だからやらなくてもいいという話でしたから、基本的に、日本から日本を攻撃しようと思っても、今言う外を経由するわけで、外内と内外といったら全てがカバーできるという、そういう理解でいいですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/127
-
128・持永大
○参考人(持永大君) 内内で想像できるのは、例えば、結構、東京都で閉じるみたいな通信のパターンですね。例えば、この国会から通信をしたときに、ある程度行く、それで東京都内のどこかの通信サーバーに行く場合というのは内内に相当するのだと思うんですけれども、そのときには内外も外内も絡まないので内内だというふうに言えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/128
-
129・大島九州男
○大島九州男君 まあ、そういう犯罪ってほとんどないという理解でいいですよね。普通、そんなすぐ分かるようなあれにならないでしょう。結局、都内で何か及ぼそうとしても、当然外を通して、外国を通してやるというのが一般的なんでしょう。技術的なことがちょっと分からないので聞いているんですけど。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/129
-
130・持永大
○参考人(持永大君) 必ずしも外は絡まなくてももちろん攻撃はできますし、中で閉じる攻撃ももちろんあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/130
-
131・大島九州男
○大島九州男君 じゃ、その中で閉じる攻撃というのは、簡単に見付けることができるというか、その立証というか、犯罪を立証することができる、非常に簡単だとさっき一番最初におっしゃっていたような、そういう理解でいいですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/131
-
132・持永大
○参考人(持永大君) 見付けるのはまず簡単かどうかというのは、非常に私もよく分からないというのが正直なところで、攻撃の種類によって、例えば大量の通信を仕掛けるような場合、国内国内で、そういった場合は見付けることができる可能性が高いとは思いますけれども、そうでないような、現状で、例えば言われたような不正アクセス禁止法に違反するような行為であったりとか、そういったものが国内内で起これば、それは検知できる場合はあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/132
-
133・大島九州男
○大島九州男君 どうもありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/133
-
134・和田政宗
○委員長(和田政宗君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。
参考人の皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/134
-
135・和田政宗
○委員長(和田政宗君) 連合審査会に関する件についてお諮りいたします。
重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案及び重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、外交防衛委員会からの連合審査会開会の申入れを受諾することとし、さらに、総務委員会からの連合審査会開会の申入れがあった場合には、これを受諾することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/135
-
136・和田政宗
○委員長(和田政宗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/136
-
137・和田政宗
○委員長(和田政宗君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/137
-
138・和田政宗
○委員長(和田政宗君) 次に、連合審査会における政府参考人の出席要求に関する件及び参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
両案審査のための連合審査会に政府参考人及び参考人の出席要求があった場合には、その取扱いを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/138
-
139・和田政宗
○委員長(和田政宗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121714889X01220250508/139
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。