1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十四年十一月二十四日(木曜日)
午後一時五十七分開議
出席委員
委員長 花村 四郎君
理事 角田 幸吉君 理事 高橋 英吉君
理事 石川金次郎君 理事 佐竹 晴記君
佐瀬 昌三君 古島 義英君
松木 弘君 眞鍋 勝君
武藤 嘉一君 山口 好一君
猪俣 浩三君 上村 進君
世耕 弘一君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 池田 勇人君
出席政府委員
法務政務次官 牧野 寛索君
刑 政 長 官 佐藤 藤佐君
(検務局長)
検 事 高橋 一郎君
委員外の出席者
最高裁判所事務
総長 本間 喜一君
専 門 員 村 教三君
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本日の会議に付した事件
裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する
法律案(内閣提出第二五号)
検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する
法律案(内閣提出第二六号)
最高裁判所の誤判事件に関する件
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001・角田幸吉
○角田委員長代理 これより会議を開きます。
委員長が所用のため、理事の私が委員長の職務を行います。
きようの日程は刑事補償法案、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案であります。
きようの日程に入ります前に、佐竹委員及び梨木委員より、最高裁判所の誤判事件について発言の要求があります。これを許します。佐竹晴記君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/1
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002・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 要旨でけつこうでございますが、いわゆる誤判事件の内容と、これに対する最高裁判所裁判官会議の経過並びに結果の内容を承りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/2
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003・角田幸吉
○角田委員長代理 この際お諮りいたします。本間最高裁判所事務総長より発言の申出がありますから、国会法第七十二條によりこれを許したいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/3
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004・角田幸吉
○角田委員長代理 御異議なければさよう決定いたします。本間最高裁判所事務総長発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/4
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005・本間喜一
○本間説明員 世間で誤判事件と申しますのは、長野県の片桐光晴という者に対する強盗致死、傷人、住居侵入、銃砲等所持禁止令違反事件に対しまして、東京高等裁判所は無期懲役の判決を言い渡したのでありますが、その高等裁判所の判決に対して、被告は最高裁判所に上告した次第であります。その上告事件に関して、最高裁判所の第二小法廷において、昭和二十四年七月十六日判決を言い渡しました。その判決を破棄してこの事件を東京高等裁判所にさしもどす、こういう判決を昭和二十四年七月十六日にいたした次第であります。その破棄した理由は、上告人の申立によれば、この事件は公判を開き、第三回公判期日において、その間十五日以上期間を経過しているにかかわらず、弁論を更新しなかつた点において手続規定の違背がある。こういう理由でありました。これに対して最高裁判所は、いかにも上告理由はある。従つて原審を破棄して手続をされたいという判決をするように、こういう判決をした次第であります。この最高裁判所の判決は、最高裁判所の刑事訴訟規則施行規則の規定の第三條の第三号によれば、従来は十五日以上引続いて開廷したかつた場合においては、弁論を更新しなければならないという刑事訴訟の規定があつたにかかわらず、今年の一月一日からは、必要と認めた場合に限つて、公判手続を更新すればいい、そういうふうな規則に改めてあつた次第でありまして、その規則に従つて下級裁判所は弁論更新をしなかつた。従つて最高裁判所としては、弁論更新をする必要がなかつたのであるからして、上告の理由なしと判断すべきにかかわらず、この刑事訴訟規則施行規則の第三條の第三号を離脱して、それは弁論更新をしなければならない場合であつたということを判断した点において誤判と言われておるわけであります。そういう次第で、施行規則の離脱した点においては誤判であつた。これに対して、本年の九月三十日付で東京高等裁判所から、これは誤判ではない。ほかに同種類の事件がたくさんありますので、もし判決のようにすると、みな弁論を更新しなければならぬような事態に際会する。この施行規則第三條第三号の規定を適用する必要はないのであろうがどうかという伺い書が、東京高等裁判所の長官から最高裁判所に出されたわけであります。これに対して最高裁判所に、今年の十月一日及び三日の二日にわたつて裁判官会議を開いて協議をして、これに対する返事を高等裁判所にしたわけであります。これは訴訟に関して、司法行政の面から伺いを立てたのでありまして、司法行政面においてただ最高裁判所の見解を返事したわけです。その返事は、その伺いに対して、やはり旧刑事訴訟法三百五十三條後段の規定あるにかかわらず、刑事訴訟規則施行規則第三條三号の規定に従つて、必要と認める場合に限つて更新すればよろしい。だから必要がないと思う場合には更新しなくともいい。そういう返事をしたわけであります。そこで最高裁判所においては、そういう誤判をした場合において、判事がどういう責任があるかということに関して、裁判官会議を開いて慎重に審議をしたのであります。それは十月五日と十月六日及び十七日の三日にわたつて慎重審議いたしました。その結果、四人の判事の意見も十分聞いた上に、裁判官会議は、この事件に関する問題を会議の決議として意見を発表したわけであります、その十月十七日の会議の決定といたしましては、本件の取扱いについては、関係裁判官に関する情誼からすればまことに忍びがたいものがあるが、当裁判官会議は、最高裁判所の使命、性格並びに最高裁判所裁判官の責任の重要性にかんがみ、單なる懲戒手続によつて処理すべきものではなく、この際関係裁判官が自発的に善処することが最も妥当であると認める、そういう決定になりました。この会議は四人の判事が退席いたしました結果、十一人の判事をもつて会議を構成しておりましたが、なお塚崎裁判官、澤田裁判官は、本件は懲戒手続によつて処理するをもつて足るという意見を述べて、少数意見が二人あつたわけであります。だから九人に二人、九対二の割合になつて、この事件に関しては懲戒手続ではなく、それ以上の責任を背負うのが妥当じやないかという意見を会議においてきめたわけであります。それがこの事件に対して、最高裁判所の裁判官会議においてとられた主要なる経過であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/5
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006・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 それではこれから逐次お尋ねいたします。まず刑事訴訟規則施行規則は憲法違反であつて、無効であるという議論があるようであります。もしもこれが無効であつたといたしますならば、この規則を適用しなかつたというために責任を問うという論拠はなくなつて参ります。従いましてこの施行規則がはたして適法なものであるかどうか、つまり憲法違反であるかないかということをまずきめてかかる必要があると考えます。従いまして最高裁判所のとられました態度については、この規則の憲法上の問題はすでに十分討議決定されていることと存じますので、この説に対する最高裁判所の御意見を承つておきたいと考えます。
〔角田委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/6
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007・本間喜一
○本間説明員 この施行規則が憲法違反であるかどうかということをきめるのは、結局裁高裁判所の大法廷において具体的に問題になつた場合にきめられる問題だと思います。まだその点は裁判所のケースに現われて来ておりません。従つて最高裁判所の法律解釈的なオーソリティーを持つた判断は、まだできておりません。但し裁判官会議においては、この規則が憲法違反でないということを前提としなければ、今のような決議が成り立たないことと私は思います。お説の通りだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/7
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008・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 私はこの点については議論があると存じますけれども、これはその内容に触れられませんので、これ以上申し上げることを省略いたしまして、進んでこの誤判事件がいかなる理由に基いて起つたものであろうか、單なる裁判官の失策であるのか、それともたとい失策にしろ、最高裁判所があまりにも過重なる任務を背負い過ぎておつて、目が行き届かなかつたのであるか、あるいはいわゆる調査官裁判なるものが今日実際に行われておつて、調査官に何もかもまかした結果、ついその方面でやつておることが正しいと思つておつたところ抜かつていた、こういつたような結果こういう誤判事件が起つたものか、その誤判事件の起りました由来について承りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/8
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009・本間喜一
○本間説明員 私は裁高裁判所において、今お話の調査官裁判というような実情のもとに判決をしているのではないと思います。調査官が裁判官の命を受けて各種の調査をいたしておりますが、それはすべて裁判官の指揮命令のもとにやつておるのでありまして、調査官の意見を十分としないような判決が時々あるということを、ほのかに裁判官から承つておりますから、決して調査官まかせの裁判をしておるというようなことはないと思います。ある裁判官のごときは、自分の意見を先に考えておいて、参考に調査官の意見を聞くという人もあります。従つてあるいは世間で言われるがごとく、調査官まかせにしておくからだというようなことは、真相を十分にしないがためにそういうことが言われているのだろうと思つております。それからこの事件がこういうふうに持続するように起きたのはまことに遺憾なのでありまして、間違うときにはどうも意外なことが間違つて来る。ちようど野球の場合に、一人がトンネルをやると、二人、三人ずるずるトンネルをやることがある。この問題についても、弁護士の議論がそもそも初めから問題を非常にそらした形になる。それを各方面がみなトンネルをしたというような形になつて、まつたく不慮のこういう間違いというものがよく世間で起るようなぐあいに起きてしまつたというようなことではないかと思います。しかし判事の負担が非常に重いということは、これは前回の大審院時代の事件とその場合における判事数とを比べて考えてみると、今の最高裁判所の判事の負担は非常に重いと考えられております。これは事件数が多くなれば自然注意力も散漫になるというような形が幾らか手伝つたのではないか。たとえば今年の九月末現在において、最高裁判所においては民事、刑事の審理が合計三千三百三十七件あります。そのうち二千六百九十九件が今年の一月から九月までの間に判決した部分であります。残りが一千七百七十五件というようにたくさんありまして、一人の負担部分が百何件という大量の事件を持つておりますから、仰せのように、負担部分が多いがために注意が十分そこまでまわりかねるという事情は大いにあると私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/9
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010・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 調査官にまかせ切りにして、いわゆる調査官裁判になつたのでこういつたことになつたのではないかというのでなしに、判事の負担が非常に重いために、信頼する調査官にある程度まかせるということが余儀ない状態にあるのではないかということが一つ、しこうしてただいまの事務総長の御答弁によりますれば、判事と調査官との間に意見を異にするものもあるということを承りましたが、しかしそれは内部のことであつて、いかに意見の相違がございましようとも、結論としては判事の意見なのであります。従つて反対の意見を持つておるような調査官を信頼しよう道理はないのでありますが、それを信頼したということは、結局判事といたしましても自分と同意見である、そしてこの調査官にまかせておけば間違いがないという見通しがついてのことであろうと存じます。事務が非常に多忙であつて、そこであの調査官ならば自分とは意見の相違がない、そしてこの点については間違いがない、そこで判を押す。これは裁判におきましても、あるいは行政においてもそうでありまして、いわゆる盲判というものが通用いたしております。調査官を置いて、そうしてこれに信頼することができぬで、判事が徹頭徹尾全部調査をしなければならぬということになれば、これはもう調査官という制度をおよしになつた方がよろしい。信頼ができればこそ置いておられるに相違ない。そこで信頼のできるところの調査官を置いて、ある程匿これに依存するということが現状であり、そうしてそのことのために誤りがあつたといたしますならば、一人の裁判官のそれは過失の問題にあらずして、全機構の問題であり、制度の問題であろというような議論が出ざるを得ないと存じますが、そういう程度にまで至らぬところの、これは單なる裁判官だけが責任を負わなければならぬような状態のもとにおける誤判であつたかどうか、それとも機構それ自体にいろいろな難点があるために起つたところの事案であるか、この見わけをひとつ私は聞きたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/10
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011・本間喜一
○本間説明員 さつき私が調査官と裁判官が意見が違うと困るということを申し上げたのは、決して裁判官は調査官まかせにして盲判を押しているのじやないということを申し上げる趣旨でございまして、同じような意見になることももちろん多いだろうと思います。
それからさらに調査官は裁判官から命ぜられて、この問題に関する判例その他を調べて来い、あるいは外国のそれに関する判例を調べろ、学説を集めろというようなことでありまして、裁判官と調査官とが意見が一致したとしても、決して調査官を必要としないという考えではなし、信頼して使つております。しかし信頼したからといつて、みなその通りまかせきりに盲判を押しているということでは決してございません。今の調査官の任務はもつぱら内外の判例、学説、その問題に関する法律上の点を調査するのでありますから、やはり裁判官の補助としてそういうものは別個に入用なわけであります。
それから制度といたしましては、これは最高裁判所ができてわずかに二年半にようやくならんとしておるような状態で、最良の制度として出発したわけでありますが、いろいろ事件の集まる程度が非常に多くなるとか、そういうようなことを考慮しながら、時々これが改良に関しでは監察し、研究しなければならぬと思つておるのでありまして、一つの大切な国の制度でありますから、そういう問題については裁判所においてもまた法務府においても、お互いに連絡しあつて十分研究しつつあるのであります。入用であつたら、また国会にその点を報告して、しかるべく立案をしていただかねばならぬ段取りになるかもしれません。今のところにとにかく出発早々の際であり、どういう点に欠点があり、どういう点にいい点があるかということについての試験期にありまして、今はつきりした意見が最高裁判所にきまつておるわけでは決してございません。
それからこの裁判の間違いは、調査官まかせにておつたから、そういうことになつたのだろうというようなお考えが大分あるようでありますが、しかし千八百人の下級裁判所の判事がみな間違いなくやつておることでありますから、制度という問題よりも、一種の偶然なミステークということじやないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/11
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012・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 本件について調査官の調査に信頼したことが何か関係がありはしないか、それとも本件については調査官の調査に何ら関係ない、こうおつしやるのか、これをひとつ承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/12
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013・本間喜一
○本間説明員 本件に関してどういう調査をして、それを第二小法廷の会議に提供したか、その点は会議の内容で私どもも聞いてみませんし、また聞いても報告が得られるかどうかわかりません。これは裁判官がその事件に関してその部を構成している各判事と会議を相当長くみなやつておりますから、十分研究したのであろうと思います。調査官との調査の振合いの関係は私どもにはわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/13
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014・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 私のお尋ねしたいのは、ただいま事務総長のお話の通り、調査官は内外の判例、学説等を調査する補助機関であるというのが本来の使命のようであります。
さてこの施行規則に関する内容についで調査研究せよといつたようなことについては、これは問題になることでないと存じます。従つて内外の判例学説等の調査を命ずる補助機関であるということになれば、この最高裁判所がみずからつくつた施行規則について、何か疑問があつて研究せよということであるならばともかく、そうでございませんので、従つてこれは調査官に調査せしめる何の必要もないことだと存じます。しかるに本件がはしなくも調査官裁判のよろしくない点が暴露されたのだといつたようなことが世間に伝えられておりまして、その伝えられるところによれば、調査官がこの施行規則の通用を逸脱した判決文を書いて、それを裁判官が見てよろしいといつて判をついた。それがために調査官裁判のよろしくない点が暴露されたのだといつたふうに伝えられておりますので、そこでこの調査官の調査が本件裁判に何か関連があるかどうか、つまり今度の誤判事件と調査官の調査の関係がどのようなものであつたかということを、私は聞きたいわけであります。ところがその実情がわからぬというのでありますので、でき得るならば御調査をいただきました上に、他日承ることができればけつこうと存じます。それはやはり国家機構、裁判制度といつたようなものに関する問題でありますから、同時にそのことがやはり司法行政に関する問題といたしましても、責任問題とからまつて参りまして、相当考慮すべき関係だと考えますので、その点を他日でけつこうでありますから承りたいと存じます。
続いてお尋ねをいたしたいのは、裁判官会議の性質、それは法律に根拠を持つところの会議と存じますので、その裁判官会議なるものはいかなる性質を持ち、どういう範囲においていかなる権限を持つておるものであるか。世間に伝えられるところによれば、最後の結論が結局道義的なことを要望したにすぎないと言つて、いかにも道義的なものとしてお扱いになつておる。しかし私はこれは單なる道義的な問題にあらずして、法律的根拠を持つた裁判官会議としてのその権限に基く決心の結論を、誤判をいたした四判事に通告したことであろうと思いますので、その法律上の性質並びに効力及び道義的要求であるかどうかといつたような点について、関連いたします諸事項を承りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/14
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015・本間喜一
○本間説明員 先の方の佐竹委員の質問について、私は調査官は内外の学説、判例を調べるということを申し上げましたけれども、それは大きな仕事ではそういうものがあるのでありますが、具体的の事件に関して調査するということになつておりますから、決してそれはかりに限られたものではありません。たとえば上告論旨に関して調査して、自分の法律的意見を述べるというようなことはもちろん調査官の仕事でありますから、この事件に関して、この上告論旨は規則第三條の三号に該当するからいけないのだというようなことは、もちろん調査してさしつかえないのであります。この事件には調査官の仕事はないではないかとおつしやつたけれども、それは私が内外の判例と申し上げたからで、具体的事件に関しては、皆意見を述べることになつておりますから、やはり調査官がこれに関與して十分意見を述べる余地はあつたのだろう、こう思います。
それから裁判官会議でありますが、裁判官会議は裁判所における司法行政の最高機関であつて、司法行政権を行使するところの会議体の行政官庁である、こういうことになつております。最高裁判所は全国の裁判官を監督する権限を持つておるのでありますから、前回のこの問題に対する最高裁判所の決議は、一方においてこの事案に対して、七月十七日当時においては、懲戒手続の申立てをするという司法行政的監督処置をとることはまだ必要はないという意味において、法律的な決定を含んでおるのであります。だからその後の情勢、その後の考えで、これに懲戒の申立てをすべきものである、こう思う場合においては、また裁判官会議において、懲戒の申立てをするということに一向さしつかえないわけであります。その理由として、今のように、これに懲戒手続に値し過ぎるのだということを言つたわけであります。だから、やはり法律的な決定であつて、單に道義的なことばかりではないのであります。それから多少道義的なことを附加することは、監督機関として一向さしつかえないことだと私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/15
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016・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 最高裁判官会議において決議されました内容は、先ほど承るところによれば、裁判官の使命、性格、責任の重要性等にかんがみて、單なる懲戒手続では足らず、その職を引くべきものであるという結論のようでございます。いわゆる任意に善処することを要望されたのは、その趣旨と存じます。そこでこの事業がはたして辞職に値する事案かどうか、職をなげうたなければならない程度の事業であるかどうかという点が一番重大な問題と存じます。もしも最高裁判所裁判官会議において、ただいま御説明の通り、法律的根拠を持つた司法行政の最高機関の決議として、それは職を引くべきものであるという結論に到達いたしましたとするならば、必ずこれを遂行せしむるだけの威力がなければならぬと存じます。そういう決議はしたが、それに応じないと、それきりになるということになるといたしますならば、最高裁判所の裁判官会議はまつたく面目まるつぶれになります。法律上の根拠を有し、單なる道義的なものではなく、法律上司法行政の最高機関として、その権限内においてこれだけの決議をなし得るものとして一旦決議をされた以上は、これは必ず遂行されなければならない。それができなかつたときには一体いかなる結果になるか。もしもそれに服しなくても何ともすることができぬということになれば、裁判官会議が負けたということになります。そんな筋の通らぬ、法律上に根拠を持つ司法行政の最高機関なるものはあり得よう道理がありません。最高裁判所の裁判官会議が司法行政の最高機関としての権限を有するならば、必ずこの決議の内容を実行する方法がなくてはならぬと存じますが、いまだにこれが行われておらぬように聞きます。これに対していかなるお考えをお持ちになるか承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/16
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017・本間喜一
○本間説明員 この決議の後半の方は、自発的に善処と書いてあるのであります。初めから善処を強制するというような考えを持つておりません。初めからそれを強制させるという意思はないのでありまして、やめない場合があつたとしても、別に裁判官会議がどうするということもなければ、それを強制することもないために、権威を失墜するというようなこともないのではないかと考えております。これは結局各自の道義的な判断にまかしてこの場合の出処進退を決すべきものであるという趣旨だと私どもは解釈しておるのであります。この当時の事情の下においてはそうでありますが、さらにただいま訴追委員会においてそういうものを調査しておるということであります。ほかに方法がないというような場合には、裁判所としては、行政的になし得るものは懲戒手続よりほかないと思つております。従つてそういう場面に際会することが起つて来るかもしれないと思つております。だからこの問題について、最高裁判所が、まだ終局的に事を処理したわけでは決してないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/17
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018・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 強制させる意思がない、ただ單に自発的に、道義的に辞職を勧告するということは、これは越権ではないかという議論が出て参ります。そういう決議をしたが向うさんが聞かなかつたというが、法律上に根拠がある司法行政の最高機関として、その有する権限内において決定したことであるならば、それは実行のできるものでなくちやならぬ。実行のできる範囲内においてのみ、権限を有するものであると解すべきではないかという議論が起つて参ります。もし強制させる意思がなかつたといたしますならば、そのときには最高裁判所裁判官会議としては決議をしないで、つまり法的決議をしないで、裁判官会議においても任意の申合せをして、同じ同僚として、君はこうするのが適当ではないかということを道義的に勧告することは、これはけつこうだ、向うさんには道義的にその出所進退を決すべきことを要求しておるかわかりませんけれども、要求する基本は、司法行政の最高機関の決議として法律の根拠に基いてなさつた、この間に私は重大なる矛盾があり、かつそういつた任意の進退問題までも、法律上にものを言わせて決議をするということが、はたして合理的なものであるか、あるいはまた合法的なものであるかという疑問を私は持たざるを得ないのであります。そういう道義的関係のものについてまで、司法行政の最高の機関として決議をなすところの法律上の権限を有するという根拠を、ひとつお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/18
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019・本間喜一
○本間説明員 この裁判官会議は、各裁判官が自分の考えを四人の裁判官の前に披瀝いたしまして、四人の裁判官に参考意見を提供したものであつて、決してだしぬけにこういうことを決議したというものではありません。めいめいがきようは人のことであつても、あすは自分のことになるのだから、自分がこういうふうな間違いをした場合においては、私はこういうふうにしたいと思う、そういう建前においてこの問題を扱つて、そうしてその意見を陳述して、四人の裁判官に参考意見を提供したわけであります。しかし裁判官会議の全体としてどういう意見になるのか、それはまとめてみなければわからないのでありまして、従つて決議体にするよりしかたがないというわけで、こういう決議をしてはいけないというようなこともないと思います。すべての裁判官は、新しい裁判所が出発するに際して、国民から最も信頼を受けるようにしなければいかぬ、その点についてはおよそ間違いのあつたような場合に自分の職を賭する、それだけの注意をもつてやつておるということをこの際はつきりして、裁判所に対する国民の信頼を得なければならない。なお一方において、下級裁判所の判事が誤判をしたりすることのないように、この際気分を振粛させるということを、上の裁判官としては考えなければならないのじやないか、こういうようなことをシリヤスに考えて、そうして自分だつたらこうするという意見を参考に供して、それをひとまとめにするためにこういう決議体になつただけで、決して裁判官会議の決議が逸脱しておるとも考えられません。というのは、一方法律的な意味において、今の状態においては懲戒手続をしないという文句がそこにある。その理由を、今の責任に関する各自の意見を理由の形においてまとめたわけで、この決議が違法であるというようなことは、決してないと思います。これが行政官庁であつて、單独制の官庁であつたならば、そういうような意見はいくらも述べることがあるじやないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/19
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020・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 法律上権限のない事項について、司法行政の最高機関として決定することができるということは、私はどうしてものみ込めません。もしもプライベートに、同じ裁判官同士であるからただ意見を出し合せて、その結果をひとつ参考にしようというならば、——法律的決議などになさらずに任意に友人として忠告をなさるならこれはけつこうであります。いやしくもそれを決議をなさいました以上は、その決議は司法行政に関する最高機関としての法律上の決議であります。ところがその決議は四判事によつて拒否されていかんともすることができぬというのでは、これは何という威信のないことでありましよう。これはより以上に最高裁判所の威信にかかわる重大問題である。いわんやそういうことが憲法違反だなどと言われるに至りましては、その派生する問題がより重大になつて来ることを覚えずにはいられません。ただいま事務総長のお話によれば、これはまつたく偶然のミステークである。野球の場合、一人がトンネルをやると、ほかの者がついて来るようなことがある。まつたく不慮の誤りである。人間たれか不慮の誤りを犯さないことがありましようか。そんな偶然なミステークであるということがはつきりしておりますものを、最高裁判所の裁判官会議においてこれを葬つてしまわなければならぬというほどこれは重大でありましようか。四判事も唱えております通り、道義的責任は感ずるのだ。誤判についての責任も、法律上の責任も感ずるのだ。しかしその程度がやめなければならぬ程度のものでないのである。たとえば減俸を言い渡すべきものであり、あるいは譴責に値するという程度の事案であつたときに、汝はやめよ、こう来れば、それはあなた方の決議は度を過ぎておるということは言わざるを得ないのでありますが、しかし司法行政の最高機関としての決議であるとすれば、最高の権威を持つておるはずで、その相手方が文句の言い得る道理もございませんし、また文句の言われない状態において決議がされなければならぬと思います。決議して見たが向うさんが文句を言う。従つて何ともならぬというのでは、これは先ほど御説明になりました司法行政の最高機関としての決議であるとは私は受取れません。單なる友人としてのプライベートな勧告ならばともかく、そうでなしに司法行政の最高機関としての決議であるとするならば、その決議事項は遂行されなければならない。遂行されないことが決議され、向うさんの拒否にあつたにかかわらず、いかんともすることができない。これではもうまつたく法律上の存在の意義はありません。私はもしそんなことだといたしまするならば、裁判官会議が法律上の根拠を有し、司法行政の最高機関であるという御定義は、みずから御撤回になつたものと解釈するよりほかにありません。私はこの結果に、最高裁判所においてこれがどうなるかわかりませんが、もしこれが罰俸程度のものであつたといたしましたならば、あるいはまたこれがもし譴責ぐらいで済むのであるということになつたといたしましたたらば、どうなるでありましようか。そうするならば法律上許された最高限度は罰俸程度であつた。しかるに最高裁判所の裁判官会議ではやめろ、こう言つた。これは越権じやないかという議論がおのずから起つて来る。この議院におきましても、登院停止たとえば三日に値する事案について、それをお前は議員を辞職せよということを決議をもつてしたということになれば、それはいかなる根拠に基いてそういう決議をしたか、これは法律上きわめて重大な問題になつて来ると存じます。従つてこの点をなお十分明らかに願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/20
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021・花村四郎
○花村委員長 ちよつと佐竹君に申し上げます。裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案のため、大蔵大臣がお見えになりましたが、大蔵大臣は御承知のごとく、予算委員会その他のため急がれておりますので、本案についてちよつと質疑を行つた後、また佐竹君の御質疑を継続いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/21
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022・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 異義ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/22
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023・花村四郎
○花村委員長 それではさようにはからうことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/23
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024・花村四郎
○花村委員長 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を一括議題といたします。質疑の通告がありますから、これを許します。佐瀬昌三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/24
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025・佐瀬昌三
○佐瀬委員 本両法案を審議する上において、この機会に大蔵大臣から御意見を承つておきたいと思うのであります。
申し上げるまでもなく、新憲法のもとで、司法権の独立及びそれに関連して最高裁判所等の特殊性というものは明確にされ、日本の民主化のため新しい方向のもとにこれが運営されることになり、これに伴つて裁判官の身分の保障及びその地位の独立性というものが確保された次第であります。しかしてその意義を明確にし、またその目的を達成するためには、裁判官の報酬はその裏づけとして一般行政官に対しては優位な地位にこれを置かなければならないということが問題とされ、これはたしか第三国会の際に、当委員会においても、私の質問に対して当時の芦田首相は、それを全面的に承認された次第であります。爾来それに基きまして裁判官の報酬等に関する法律、また裁判官と一連の関係ある、これに準ずべき検察官に対する給與等に関する法律というものができ、特に裁判官の報酬等に関する法律は、その第十條におきまして、一般の官吏の給與が増加するような場合においては、当然裁判官の報酬等もいわゆるスライドによつて引上げらるベきであるということが明確に規定されるに至つた次第であります。そこで私はやり第三国会の本問題の際に、政府は憲法第七十三條の規定によりまして、法律を誠実に施行する責任を国会に対して負つておる。従つてかような第十條等に基いて将来裁判官に対する報酬が増加する場合には、これに伴う予算的措置を政府としてはいたすベき責任があるのではないか、言いかえれば、これは法律と予算の関係に基いて、いわゆる義務費として政府は当然計上すベき責任を持つものではないかということを政府にお尋ねいたしたところ、当時の芦田首相は、やはりそういう責任を持つものであるということを確認されたのであります。さて今回この法案が本委員会に提出されまして、その内容を検討するや、法務総裁等の説明によれば、この第十條に基いて裁判官等に対する報酬を全面的に引上げたいのであつたけれども、財政等の関係から、ある程度の階級に属するものの裁判官及び検察官の報酬、給與の引上げに終つたのだというような説明で、結局国会としてこれを見まするときには、第十條の規定というものが貫徹されない、政府によつて忠実にこれを施行されないというような感を抱かざるを得なくなつたのであります。そこで先ほど申し上げましたような憲法上の政府の責任において、いわば義務費としてこれを予算的に措置するということが当然であるならば、やはりこの機会に法第十條の精神をそのまま実現すべく 実はこの法案に対する修正なり、最後の態度を決定しなければならぬというところに本委員会は到達した次第であります。そこですでに予算の上でそういうことが困難であるかどうかということを、ここに以上のことを前提として大蔵大臣に承つておきたいと思うのであります。ここで私から申し上げるまでもなく、財政法二十九條には、法律に基く政府の義務費は、もし追加予算あるいは補正予算というようなものが出る場合には、それに盛り込むべきであるということも明確にされております。従つて政府はそういう措置を講ずる道が、二十五年度の予算にも明らかに開かれておるというようなことも考え合せまして、裁判官の報酬等に関する法律に伴う予算的処置を今日までいかにお考えになつたか、また将来いかようにとりはからわれる考えであるかということを、ここでお伺いしておきたいと思う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/25
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026・池田勇人
○池田国務大臣 裁判所の経費につきましては、国家の他の機関の経費とは別扱いにいたしましてやつておりますことは、御承知の通りでございます。御質問の判事、判事補の対しまする給與の改善につきましては、今回の予算には判事補の方は増額をいたしておりますが、経費の関係その他で判事の方はすえ置きになつておることは、御承知の通りであります。裁判所の性質にかんがみまして、今後できるだけ早い機会に、判事の方々に対しまする俸給につきましても考慮いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/26
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027・佐瀬昌三
○佐瀬委員 先に申し上げました理由に基いて、当委員会としては、大蔵大臣において二十五年度の補正予算においてそれを具体化されるということを、ここで御明言願い得るかどうか。もしその言明が得られるならば、私どもは本案に対する審議について結論を與えることが非常に容易であるという見通しのもとに、今少し具体的な御意見をこの際承つておきたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/27
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028・池田勇人
○池田国務大臣 二十五年度の予算案につきましては、ただいま関係方面と折衝いたしまして、ほとんどまとまりがつきかけております。従いまして二十五年度当初予算に、今から判事の方々の俸給をやりかえて予算を直すという問題につきましては、いましばらく御猶予を願いたいと思います。お話のように二十五年度の補正予算ということになりますと、補正予算を出すか出さないか、出しますについても、いつ出すかという問題でありますが、私といたしましては、お話の点もありますので、できるだけ早い機会に判事の方々の俸給について善処いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/28
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029・佐瀬昌三
○佐瀬委員 ただいまの大蔵大臣のお答えによりまして、予算的処置に対しては私どもは言明のようにとりはかられんことを切に希望するのであります。これをもつて私の質疑は終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/29
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030・花村四郎
○花村委員長 山口好一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/30
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031・山口好一
○山口(好)委員 大蔵大臣に一点お伺いいたしたいと思います。ただいま佐瀬君から、裁判官に対します俸給については特に憲法上の保障もあり、政府のこれは義務支出になつているのであつて、今度の場合においても、特に上の方だけをすえ置くということは、はなはだ不合理であるということを申し述べられましたが、われわれ委員といたしましても、この委員会といたしましてこの法律を審議いたしますにあたり、非常に重大視いたしておるわけでありますが、大蔵大臣もなるべくすみやかなる機会にこれを実行する予算措置を講ずるということをただいま言明いたしておりますので、その点は了承いたしたのでありますが、これは裁判官の憲法上保障せられた地位と、この俸給の点につきましても、御承知のように裁判官は一日定められました俸給額については、その任期中減額をせられることはないというようなはつきりとした規定もありまして、他の一般行政官及び他の判事が昇給しているにかかわらず、上級の者が上らないということは、一方から申せば減俸せられたというような結論にもなりますので、これはどうしてもさつそくに次の国会において、これが予算的措置を講ぜられなければならないと私は要求するものであります。さらに今度昇給になります分につきましても、実は判事、検事についてはこの前の国会にもこの昇給案が出ません。その前は会期が切迫したというので出なかつたというようなことでありまして、今度幸いにこの部分だけは出ましたが、このりくつをずつと一貫して通しますについては、今まで不拂になつておりましたものは、六千三百七円ベースの一般行政官の昇給当時に遡及して支給せられなければならないものと考えます。今度の法案を見ますと、公布の日より施行するとなつておりますが、このままでは遡及できない、こういうふうに考えます。今度の昇給いたします分についてのバツク・ペイについても、予算の方がとられておるかどうかというようなことをちよつとお伺いいたします発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/31
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032・池田勇人
○池田国務大臣 今度昇給の措置をとりました判事補の方々につきましてのバツク・ペイの問題でありますが、私は寡聞にしてそこまで検討いたしておりませんが、多分その昇給の規定が施行になりましてから後のことじやないかと思つております。詳しいことは、調べまして御返事させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/32
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033・山口好一
○山口(好)委員 もう一点、もしその予算の点において裁判所及び検察庁、法務府の予算がこれを現在のままで許すとすれば、このバツク・ペイを考えまして、この委員会において本法案を修正して、さかのぼつて支給してもらう、こういうふうなことに対しましての関係筋との見通しといいましようか、もし予算が許しますならば、そういうことについては大蔵大臣として関係方面との交渉の見通しいかんというようなことを承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/33
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034・池田勇人
○池田国務大臣 聞くところによりますと、この問題も相当密談をしたそうであります。従いまして、ただいま私のお答えできます範囲は、施行後昇給ということで御賛成を願いたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/34
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035・山口好一
○山口(好)委員 最高裁判所の説明員にお願いするのでありますが、この前最高裁判所の事務総長に御要求しておいたのでありますが、現在判事の十五級の一号、月額二万四千円支給されております人々は何名くらいありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/35
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036・本間喜一
○本間説明員 それはこの前申し上げましたが、百人くらいあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/36
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037・山口好一
○山口(好)委員 そうしますと、この判事の十五級棒の定められました当時の国会の速記録を見ますと、ちようど鈴木法務総裁でありましたが、この判事の十五級一号というのはごく特別の者に限つて適用をいたす、そうしてその適用の方法によつて検察官の俸給のバランスをとるというようなことが書いてありますが、検察庁の方から出ております表を見ますと、二万四千円を受けております特棒の人は八名ということになつております。この検察庁の方の八名と、裁判所側の百名というのは、受けます人数において著しい差がありますが、この点はどういうふうにお考えでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/37
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038・本間喜一
○本間説明員 これは前に俸給に関する法律のできる際に、原案の方は、検察官についての一号は、判事の二号俸であつた。それに特別な俸給をそこに加味するに際して、特に人数を考慮するというのが、法務庁の方のお考えであつただろうと私らは思います。私ども最高裁判所の方といたしましては、この一号俸については、單に年限、年齢その他そういう一定の規格の基準を考えるほか、そのうちから特別のものをピック・アップして、そうして一号俸を給與するように、慎重に裁判官会議を開いて、一号にするか、しないかをきめて、ほかの場合よりは一層慎重な手続をしておるような次第であります。その大体の代表的なものとしては、地方裁判所の所長、これと同格のその後できた家庭裁判所の所長、それから高等裁判所の裁判長、そこらは前に控訴委員長だつた人のあり、大審院の部長であつた人があり、おのずから特殊な尊重する立場にある能力その他を考えて、そんなふうに割当てたのであります。私の方は何人という制限がなかつたのであります。それから検察庁の方はその際何か制限があつたとみえまして、八人なり十一人ということになつているのじやないかと思います。従つてそこに差があるのは、自然の成行きになつた次第であります。別にふしぎじやないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/38
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039・山口好一
○山口(好)委員 ふしぎでないと言えばそれまでの話でありすが、勤務年限、年齢などを比較いたしますと、裁判所の方の平均年齢は、一号を受けておりますのは、約五十五歳と表に出ております。それから検察庁の方の関係を見すと、二万四千円というのは、やはり平均五十五歳に出ております。大学を出るときも、どちらかといえば先に出ておるというような人が、一方は裁判所におりますためにずつと上の俸級を受ける。同じ学校を出て、同じような経歴で、一方は検察庁にいるためにずつと低い俸給をもらつている。結局こういうような著しい差等ができているのであります。これをやはり現在の段階におきましては、ある程度バランスをとつて行かなければ、治安維持の方面については非常な支障が来されるのではないかと思うのでありまして、裁判所の方は、二万四千円とつている人が百名もある。片方は、同じく平均五十五歳の人が八名しかそういう高額の俸給をもらつている人はない。こういうようなことになりますことは、やはり非常に均衡を得ないという感を国民にも與えると考えるのであります。今度裁判所側から御希望になつております、この上の方の昇給ができなければ、特号として二万六千円という号を設けてもらいたいというようなお考えでありますが、二万六千円という特号ができますと、結局この百名あるいはそれ以上の人がまたこの二万六千円というものに昇給されるようなことにもなるのではないでしようか。これは結局賃金ベースが上つたについて、上の方の裁判官の俸給をそのまますえ置いては相ならない、よろしく新ベースに従つて上げろ、それで引上げました結果よりも、特号として二万六千円というものがここにできますと、非常に多頭の、しかも多数の新しい昇給者ができまして、予算面においても非常な厖大なものが必要になつて来る。こういう結論になるのじやないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/39
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040・本間喜一
○本間説明員 ただいま御質問の、二万六千円という特号を設けるとするならば、今お話のように百人を全部特号にするというのは、部内においても異論があると思います。私どもの予想では、十人くらいのところがそれに該当するようなことになるはしないか。そんなに百人もすぐ特号にするというような問題は起きない。その一号の中においても、大正四年ごろの卒業者もあり、よほど若い者もある。こういう形でありますから、その古いところの、そうして能力のある者を十人内外、特号にもししていただくとすれば、そこに該当するのではないか、こう考えております。従つて予算の面においても平均二千円ずつであつて、一箇月二万円、年にして二十四万、三十万円内外の予算で、予算面上は大して困ることはない、こう考ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/40
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041・山口好一
○山口(好)委員 裁判官に対する号俸の適用というものは、大体最高裁判所の專権に属しておるように思うのでありまして、ほかから一向掣肘を受けておらない。号俸の適用については、そういう点で最高裁判所の專権に属するというようなところから、一部の人々の間では、裁判所の予算の使い方、この号俸の適用の扱い方などが、必ずしも妥当でないのではないかというふうなことが言われるのでありますが、この号俸の適用について、何人に何号俸を支給するかというようなことは、どういう方法で決定されておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/41
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042・本間喜一
○本間説明員 大体においては在職年数というようなことが基準でありますけれども、その在職年数にあつても、能力のないような人は、在職年数があるために上げるというようなことはなしに、むしろ制限しておるような状態であります。最高裁判所が俸給を支給するについて、非常にかつてなことをやつておるようのな印象のもとに御質問でございますが、予算の面においては何号俸は何人、何号俸は何人というように非常にきゆうくつに制限され、その関係において、最高裁判所はかつてな給與をしておるというわけでは決してありません。給與その他の方の意見は十分に予算面に反映されて、非常にきゆうくつになつておりまして、私ども上げたいと思うような場合も上げられないような状態ですから、予算面において御援助ただきたいと思つておる次第でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/42
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043・山口好一
○山口(好)委員 もう一点、裁判所の関係でありましても、その行うところの職務が、裁判そのものに従事するのではなしに、いわゆる事務の方面、事務職員の方でやはり裁判官と同じような号俸によつて支給を俸給されておる方があるようであります。これはやはり裁判官として支給されておるのでありますか。それとも他の法的根拠によりまして、事務職員ではありますが、何か裁判官と同じ待遇を受けるというようなことでやつておるのでありますか、その辺を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/43
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044・本間喜一
○本間説明員 裁判官は司法行政を行うことになつておりますから、そういう立場において、裁判でなく、司法行政面に判事をして仕事をしてもらうということができるわけであります。十分に司法行政に関して能率を上げ得るような事務官が外部から来るような時代には、もちろん喜んでそういう人に司法行政事務のことをやつていただくわけでありますが、まだその時期に到達しないがために、ある部分は判事をして司法行政事務をやらせておるということがありますが、それに対しては、判事でありますから判事の給與を出しております。その数はそうたくさんありません。三十七、八人だろうと思います。ちようと法務庁において検事が相当数行政事務をやつておると同じような関係で、われわれとしては現在の段階において、司法行政事務について判事の知識能力の援助を受けなければならないものが多々ある実情をごらんくだされば、十分おわかりになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/44
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045・山口好一
○山口(好)委員 そうしますと、それは裁判官が兼任しておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/45
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046・本間喜一
○本間説明員 兼任という形もとつておりません。たとえば最高裁判所事務総局の刑事局長の仕事を命ずる。だからある意味において、実質上は兼任みたようでありますが、刑事局長の職をすることを命ずる、あるいは刑事局付を命ずるというような形をとつております。調査官については、判事あるいは判事補をもつて調査官に当てる、こういうことになつております。それは裁判所法にそうできておりますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/46
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047・花村四郎
○花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。
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048・花村四郎
○花村委員長 それでは先ほどの誤判事件に関する質疑を続行いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/48
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049・本間喜一
○本間説明員 裁判官会議というものは、各裁判官を監督する権限を持つております。従つて監督の仕方は、法律的なことばかりでなく、十分官吏として考えなければならぬところの道義上のことに触れることは、一向さしつかえないと思います。従つて裁判官会議の権限の問題としてはいろいろ御意見があるようでございますが、最高裁判所の裁判官会議においては、あれはもちろん権限の範囲内だと考えて決議されたことと思つております。なお裁判官の減俸ということは、憲法上で保障しておりますから、ありません。従つて弾劾裁判所なり、訴追委員会なりは、佐竹委員のおつしやつたようなことが減棒に相当するというような場面は起きて来ないだろうと思います。この問題は、結局各裁判官のこの事案に対する大きな間違いと考えるか、軽い間違いと考えるか、その点と、もう一つは、各裁判官の責任に関する人格判断の相違から来たことであります。手続においては別に違法とか、憲法違反というようなことにないと私どもは思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/49
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050・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 法律的問題のみならず、道義的な点に触れてもよろしい、こういうお話でありますが、もちろんそういうことに触れることはさしつかえないでありましよう。しかし決議をもつていたしました以上、その議決というものが法律的根拠をもつて法律的な効力があるものといたしますならば、それは最高裁判所の決議といたしましても、また司法行政の最高機関としての決議といたしましても、その遂行のできないような決議というものは、とうてい私どもは想像することができないのであります。そこで最高裁判所の裁判官会議において、道義的に見てやめるべきものであると決定をした。ところが道義的にやめない、またやめさせる方法がない、その決議をもつてしてはやめさす方法がない、それは懲戒裁判所とかいうほかの機関が別の決定をするならば別でありますが、その裁判官会議においてはそういうことができないといたしますと、せつかく道義的にやめるべきものだと決定したが、決定された人々はやめないということになると、結局最高裁判所には非道義的な人が裁判官としてがんばつておるということを天下に声明する結果になりましよう。そういう結論に相なります。しかもこれをそのままにしておかなければならぬということでございますならば、これはゆゆしき問題だと私は考えます。そこでまだ問題は残されておるとおつしやいますが、今度は裁判官会議において、それではひとつ懲戒裁判へ訴追をしようというので訴追したといたします。ところが、その懲戒裁判所において、罷免に値しない事案であると決定されたらどうでありましようか。もし罷免に値しない事案であるという決議をいたしたということになると、裁判官会議は、罷免に値する事案であるという前提のもとに、あなたはやめなさいということを言つておるのでしよう。罷免に値しない事案であるといたしますならば、辞職をせよということは言わぬでしよう。罷免に価する事案だというので、人間的にあなたは辞表を出すがよかろうと言うておる。ところが権限をもつた懲戒裁判所においては、罷免に値しないと決定したということになれば、最高裁判所の裁判官会談に、罷免に値しない事案について、お前はその職を引けということを法律上に根拠があるといつて、司法行政の最高機関として決定したということになる。それでははなはだ越権ではないか。憲法違反でにないかという議論がおのずから起きざるを得ないと考えます。もしも裁判官会議においてやめろと言うにかかわらず、懲戒裁判所においてやめる必要はない、こういう決定をしたということになれば、最高裁判所の裁判官会議は面目まるつぶれになると同事に、要求のできないことを要求して破れたということになります。しこうしてその決議をされた四判事は、非道義的人物であると烙印を押されておつたが、いや必ずしもそうではない。やめろという要求に応じないからと言つても、非道義的ではない。その人はとどまつておつてよろしいということを懲戒裁判所において認めたときは一体どうなるか。そうなれば、逆に裁判官会議で決議した人々は、全部責任を負わなければならないでしよう。やめるに及ばないことに対してやめろと言つた。ところが正当な機関でやめるに及ばぬということになつたら、最高裁判官会議の人々は責任を持つて、みずからがやめなければならないような事態に陥るおそれはないか、私はこの点についてさらに承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/50
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051・本間喜一
○本間説明員 道義的な判断でありますから、ある人はやめるにふさわしいという良心を持つているし、ある人はそれには及ばぬという程度の考えの人もあるでしようから、そういう道義的問題については法律判断と違いまして、各人の良心において判断することであるから、いろいろ差別があつたところでちつともふしぎじやない。いろいろ批判があつてしかるべきだと思つております。
それから裁判所みずからが過失をいたしましたとき、その過失は小さいもので、何ら責任はないものであるという態度をとる裁判所よりも、やはりみずから責めることが重く、まことに国民に相済まなかつたということを感ずることにおいて裁判所の価値は上るかもしれません。それが逆の場合よりは、その方がむしろ裁判所としてはその価値が上るではないか、結局権威を失墜することはないと思います。私は外部からそれは大したことはないと言つて、ときどきは人間だから法律の誤判はあるんだ、たびたび間違つてもちつともさしつがえない。心やすく裁判所で仕事をしてもらいたい、間違いのあるのをあえて問わないからと国民から言つていただければ、裁判所は非常に気をやすくして、ありがたい次第であります。しかし裁判所みずからの口からそんなことは、それがあたりまえだ、法律に触れない限り、法律の承認さえ受けておれば便々としていつまでもやつておれるのだということを、裁判所側から皆さんに申し上げるという立場ではない。どこまでも裁判所はみずからを責め、みずから反省し、誤判のないように心がくべきものだと考えておるのであります。
それから責任の負い方について、罷免にあらずんばあとは懲戒戒告だけである。しかし分限法の規定によれば、いつでも裁判官は辞表を出してやめられるのであります。その辞表において、私は誤判をいたしましたからその責任を負つてやめたいと思うという辞職理由を書いて出せば、これはりつぱな辞職理由だ、りつぱな責任の負い方である。従つてそういう点に心をいたして、裁判官が裁判官会議において適当な善処の方法があろうと思われるということを言つたところで、決して監督機関として行き過ぎたことでもなければ、それに基づいてそういう結果を来さない場合においても、裁判所の権威を失墜したとは私は考えておりません裁判所はそれほど謙遜な態度をもつて、国民に対して裁判所の中にこういう四人の裁判官があるということを知つていただければ、国民にいくらかの信頼を得るゆえんではないかと考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/51
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052・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 許されれば間違いをやつてもいいんだという、国民が許すなんて、とんでもないことであります。またそういう見地に立つて私は一言も言つていない。責任はとれと、言つておる。ただ問題は程度だと言うのです。どんな裁判をやつても、どんな間違いをしても、それは国民が許すなら、裁判所はまことに気やすいという。とんでもないことです。お笑いになることじやありません。私どもは責任のあることは、これを認めなければならぬと存じます。程度の問題だと思います。たとえば先ほども申しました通り、衆議院におきまして除名に値しない事案、たとえば登院停止二、三日で済む事案について、院議をもつて君にやめるべきものであるという決議案を出して決議をしたらどうなりましよう。決議をすることは自由だ。道義的なことなんだからかつてだ。それは言えるかもわかりません。けれども相手はこれに承服しない。そこで登院停止二、三日に値する事案について、なんじやめろといつたときに、私はやめるわけに参りません。責任はとります。しかし登院停止二、三日に値する事案でありますから、せつかくでありますがやめるわけに行きませんと言つたときに、やめるわけに参らぬと言うならば、あとでそれを懲罰にしたところが、登院停止三日になつたならば、前の院議のなんじやめろと言つたことは、度を越しておつたということは、何人が言つても言えるでしよう。あなたはやめなさいという、それくらい強いところへ出るときには、必らずそれはやめさせるに値する事案である。長年にわたり、数十年の経験を棒に振つて、一切もうその職から離れるという、それほど重大な、それほど程度の高い法律上の責任を負わなければならぬ事犯を犯したときに、初めてあなたは進んでやめるべきである。私どもが法律的にあなたの首を切るということは同僚として忍び得ないから、私どもはあなたを首切る前に、あなたが進んで辞表をお出しになつてはいかがであるかというのならば、道理は通ると思います。ところが戒告なり何かに値する事案であつたときに、なんじやめるべしという決議をしたならば、それは行き過ぎではないか、そこでもし懲戒裁判所においてやめるに値しない事案であるという決議が行われたときには、最高裁判官会議において、なんじやめるべきものであるという道義的責任を追究したことは行き過ぎになるのではないかということを私は聞いておる。今一度承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/52
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053・本間喜一
○本間説明員 裁判官会議においてあの決議をした意味は、その際の裁判官の発言の模様を承ると、私がこのような間違いをいたしましたらやめますという意見を述べたように思います。あなたやめなさいという意見を言つた人は一人もありません。私だつたらやめます。その趣旨を決議に表わしたものであると私は考えております。それから会議体の行政機関におけるお互い同僚の意見は、非常に尊重すべきものである。何事にもやはり同僚として知り合つておるのであるし、世間のだれよりも事情を知り合つておる。その一緒にやつている同僚の意見は大いに尊重すべきものじやないか。これは大学における自治が教授会においてよく議論になつて、お互いに意見を述べておりますが、はなはだそれに類似しておるのであります。そういう意味において、同僚の一員としてその機関を構成するものとしての意見を十分述べ、それを全体としてまとめるためにそういう決議をしたのでありますから、道義的に考えてそうするのがよければおやめになるのがよかろう。こういう意味でありますから、そういうふうに感じない人にとつては、一向そういうことが実現しなくても、決議した人にとつて責任があるとかいう問題はないと思います。これは各裁判官がいつかそういうふうになつたら、いろいろ考えることだろうと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/53
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054・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 最高裁判所の裁判官会議は、自分だつたらやめるという意思を機械的に集めただけだとおつしやいますけれども、しかし先ほどの御報告によれば、とにかく決議としたというのです。そうして、善処を要望するという意思表示です。自分の頭ではこういうことを考えておるという單なる観念を集めただけじやない。その結果あなたはやめるに値するということを要望しているのです。要求しているのです。あなたはやめるに値する事案を犯したのだ、道義的に辞表を出してやめるべきものだ、私はそれまで来る事案ならば、あなたを懲戒裁判にかけて首を切るのは同僚としてしのび得ないのだ。従つてあなたは自発的におやめになつたらどうかという趣旨であるとしか解釈ができません。もしそうでなしに、あなたが戒告程度で済む事案だけれども、しかし戒告程度の事案でも、ぼくだつたらやめるかもしれないというようなものであるといたしますならば、これは決議にすべきものではない。なるほど今おつしやつた通り、同僚の意見はまことに尊重すべきものであり、ありがたいことであります。従つて同僚同士で忠告してもよろしゆうございましよう。これを最高裁判所の裁判官会議という、司法行政の最高機関としての決議としてなさらずに、正規のものでなしに、單に個人的に多数の者がこういう意見なんだから、あなたはこうなさるのがよかろうという忠告をなさいますことはけつこうでありますけれども、いやしくもここに法律上に根拠のある裁判官会議として決議をいたしました以上は、そこに法律上の根拠がある要求でございますので、その要求はきわめて妥当なものでなければならぬ。それが度を過ぎたものであるといたしますれば、その度を過ぎたことを決定した者の過失とならざるを得ないと私は存じます。この点についてなお私申し上げたい点もありますが、今日はほかに会議がございますので、これ以上多くを申しません。惜しむらくは事務総長は、みずからこの決議に参加なされた方でありませず、事務的にものをお扱いになられたと思いますので、はなはだ私は遺憾に存じます。でき得るならば次に長官においでをいただきまして、最高裁判所長官にその当時におけるほんとうの実情を承り、私どももほんとうに赤誠を吐露いたしまして、どうあるべきかというそのあり方について、私は意見の交換をすることができれば幸いだと存じます。時に私が申し上げておくのは、判事の擁護をしようなどということはいささかも考えておりません。私は責任を追究すべきものであるという見地に立つております。ただしかし度を越しておるかおらぬかが心配であります。そこでこれは度を越したものではございません。これは何をどうごらんになつても、やめるべき性質のものでございますという程度について、裁判官会議に現われたいろいろの実情をひとつお話願いまして、これはどうしてもやめるべき性質のものだ、罷免に値する事案だということを御説明いただきますならば、私どもは非常に満足をいたしますと同時に、そのことによつて、最高裁判所の裁判官会議でまことに妥当な決定をなされたものといたしまして、私どもも胸をなでおろしますと同時に、賛同をいたします。今の事務総長の話を聞いてみますと、何かしら私どもが四判事の擁護の立場に立つて論じておるかのごとく見て、それをしまいにはせせら笑つて答えるというのは、私どもの心中を察せざるもはなはだしいものである。私どもはもつと真劍にそれらのことを考えておる。私はできますならば、この問題について長官においでをいただきまして、真に罷免に値する事案であつて、この裁判官会議は適当である。あなたも安んぜよという御説明をいただきますならば、非常にさいわいと存じます。私はこれで打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/54
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055・角田幸吉
○角田委員 関連して、この際事務総長に今の佐竹君の質問に関連して、ただ一点伺いたいと思います。
先般の決議で懲戒以上だという結論を出されて善処せられたい。その善処というのは、私どもだつたらやめるよりほかにないということが善処だとは思わない。やめるか、または他にこういう方法があるということをお考えになつて、いわゆる善処というお言葉を使われたのであるか。それともまた善処ということはやめるだけのことを指しておるものであるかを、この機会に承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/55
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056・本間喜一
○本間説明員 私の承るところによると、善処というのは必ずしもやめることばかりではないと聞いております。その方法は、国民がこの過失について納得の行くような弁解の得られるような方法があれば、幾らでもその方法は考えていただいてよろしい、こういうふうに私どもは承つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/56
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057・角田幸吉
○角田委員 その弁解の方法はどういうふうな方法でとられることをお考えになつておりますか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/57
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058・本間喜一
○本間説明員 私は十分その場合々々を盡しておりませんけれども、国民全体に対して謝罪して、私はまことに不敏のいたすところであつて、こういう間違いをいたしました。今後は十分注意するから、そういうことのないようにしたいということをみんなの納得の行くような方法によつてやるということなんですから、その方法については私は具体的に考えたことはありませんが、何かあるだろうと私は思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/58
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059・花村四郎
○花村委員長 これはなかなか重大問題でありますから、私も今の佐竹君の質問に関連して一言承つておきたいのですが、裁判官会議で決定せられたことは、裁判官の意見をまとめる申合せの程度でなくて、裁判官会議の意思を表明する意味の決定でしようね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/59
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060・本間喜一
○本間説明員 さようでございます。裁判官会議の意思を決定したものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/60
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061・花村四郎
○花村委員長 そこでその裁判官会議の議論のうちで、懲戒に付すべしという意見と、自発的に善処を求むべしという意見と対立して、相当論争せられたという話ですが、結局懲戒に付すべしという意見が少数で、自発的善処を求むるという意見が多数を制してそのような決議をしたという話ですが、それはいかがでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/61
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062・本間喜一
○本間説明員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/62
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063・花村四郎
○花村委員長 そこで先ほど角田君がお尋ねになりましたが、自発的善処を求めるという意味がはつきりしないようですが、少くとも観念としては懲戒よりは思いという意味の責任を問うたのであるか、あるいは軽いという意味の責任を問うた趣旨でありますか、要するに責任の所在を明らかにして、その結論を生み出すということだけですから、従つてその前提において、その責任の価置を考えなければならぬということは当然のことなんですから、従つてその自発的善処を求むというのは懲戒よりも軽い意味なのか、重い意味なのか、それはどうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/63
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064・本間喜一
○本間説明員 それは重い意味と私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/64
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065・花村四郎
○花村委員長 重い意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/65
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066・本間喜一
○本間説明員 重い意味です。それは懲戒に値する。こういう意味です。重い意味です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/66
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067・花村四郎
○花村委員長 そうすると懲戒より重いといえば、結局退職するという以外にはないと思いますが、そうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/67
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068・本間喜一
○本間説明員 お答えいたします。これは私は会議には列しておりましたけれども、会議のメンバーではありませんから、私の意見というものはその中に入つておりません。ただ会議に列して皆さんの御意見を聞いて、そういうふうに解釈しておるわけなんであります。その辞表の中に、自分の責任を認めて、辞表を提出するなんかは最も善処の中の重要な部分だと聞いております。従つて辞職することなるものは、善処の中の非常に大部分を占めておると思います。なお特殊の判事は、善処なる場合を組み合せてみたら、何百種も出て来るということを言つておる人もありましたから、その他のこともいろいろあるのじやないかと思います。別にはつきりした説明はその際聞いておりませんから——けれども辞職することが、その大多数の場合に一番重要な分子を占めておるということだけは、私は確かだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/68
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069・花村四郎
○花村委員長 そうしますと、懲戒処分以上の責任を問う、こういう御説に基くと、これはやはり道義上の責任とは解釈できぬじやないですか。それはどうでしよう。懲戒ということは、要するに法律上の責任を問うことなんですから、それよりも重い意味を含めてあるのだということであれば、それは道義的の責任を問うということとは趣旨が違うと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/69
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070・本間喜一
○本間説明員 まことに御説の通りでございますが、それは面が違う、法律的な面における責任と、道義的な面における責任でありますから、重いといえば重いし、軽いといえば軽いことになる。面が違うから、正式に言うならば比較することにいきません。但し世間では戒告ぐらい受けておるよりは、やめた方が責任を重くとつたという、そういう常識から、重いと言つただけの話で、これを学問的に言つたならば、面が違うから比較できません。こういうことに言わなければならぬことになるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/70
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071・花村四郎
○花村委員長 結局やめるやめないは、本人の自由意思にまかせるということなんですから、やめない場合にはそれで責任は問わないのだ、こういう結論になるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/71
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072・本間喜一
○本間説明員 それはやめなかつたときはどうするということは、まだあの会議においては私はきまつていないと思つております。だからやめないことがはつきりと確定したならば、またあらためて考えるのじやないかと私は想像しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/72
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073・花村四郎
○花村委員長 それはいかに考えられても、要するに裁判官に関する道義的責任を除いた以外の法律上の責任は、御承知のように弾劾法によるか、しからすんば分限法によるか、そのいずれか一途を選ぶことよりほかに方法がないことは明瞭です。従つて道義上の責任ならば別であるが、もしも法律上の責任を問うということになれば、その裁判官会議において懲戒に付すべしという意見を述べ、しかもその理由も相当強く主張された裁判官もあるというお話ですが、その意見が葬られて、自発的善処を求むという結果になつたということになれば、すでに懲戒に付すべきやいなやの責任追究の問題は決せられて、それは懲戒に付すべきではないという意見がそこに確定した、こう見なければならぬと思うのです。そういうことになれば、今後においてそれをさらに懲戒に付すべしという論は出て来ないように思うが、どういうものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/73
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074・本間喜一
○本間説明員 そういう意見も成立つかもしれません。道義上の責任は、自発的にそういう責任をとることであります。それから法律上の責任は、よそから責任を押しつける——よそからある分限を押しつけるべきじやない。この場合においては、最高裁判所の裁判官として、よそからそんな責任を押しつけらるべきものでなく、みずから責任をとるべきものだ、こういう立場であの決議がなされております。さらに裁判官がみずから責任をとることをしない、よそから責任をつけてくれ、こう言つてる場合においては、そうするほかしかたがなくなるようなことも成立ちはしないか、こう思います。これは各裁判官がいろいろ考えてくださることでありますが、必ずしももう道義的の責任は負わないんだから、よそから押しつける責任は不問に付したんだということに結論ずけない意見も成立つのではないか、こう思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/74
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075・花村四郎
○花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。——なければ、ちよつと速記をやめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/75
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076・花村四郎
○花村委員長 速記を始めてください。
ほかに御質疑がなければ、本日はこの程度において散会いたします。
午後四時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100605206X01019491124/76
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