1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年七月二十六日(水曜日)
午前十時三十五分開議
出席委員
委員長 安部 俊吾君
理事 押谷 富三君 理事 北川 定務君
理事 田嶋 好文君 理事 猪俣 浩三君
角田 幸吉君 高橋 英吉君
花村 四郎君 眞鍋 勝君
石井 繁丸君 田万 廣文君
上村 進君 梨木作次郎君
世耕弘一君
出席国務大臣
法 務 総 裁 大橋 武夫君
出席政府委員
検 事
(特別審査局
長) 吉河 光貞君
検 事
(民事局長) 村上 朝一君
委員外の出席者
專 門 員 村 教三君
專 門 員 小木 貞一君
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七月二十五日
委員梨木作次郎君辞任につき、その補欠として
立花敏男君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十六日
委員立花敏男君辞任につき、その補欠として梨
木作次郎君が議長の指名で委員に選任された。
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七月二十四日
罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の
災害及び同條の規定を適用する地区を定める法
律案(内閣提出第六号)(参議院送付)
青森地方裁判所三本木支部設置に関する請願(
小笠原八十美君紹介)(第二九四号)
同月二十五日
立川市に東京地方裁判所等の各支部設置に関す
る請願(花村四郎君紹介)(第四六五号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
小委員の追加選任
罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の
災害及び同條の規定を適用する地区を定める法
律案(内閣提出第六号)(参議院送付)
検察行政及びこれと関連する国内治安に関する
件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/0
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001・田嶋好文
○田嶋委員長代理 これより会議を開きます。
罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案を議題といたします。御質疑はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/1
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002・押谷富三
○押谷委員 ただいま議題に供せられました案件は、適切かつ緊急を要するものと信じますがゆえに、質疑並びに討論を省略して、ただちに採決せられんことの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/2
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003・田嶋好文
○田嶋委員長代理 押谷富三君の動議についてお諮りいたします。質疑並びに討論を省略して、ただちに採決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/3
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004・田嶋好文
○田嶋委員長代理 御異議なければこれより採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立をお願いいたします。
〔総員起立)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/4
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005・田嶋好文
○田嶋委員長代理 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
この際お諮りいたします。衆議院規則第八十六條による委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思います。よろしゆうございますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/5
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006・田嶋好文
○田嶋委員長代理 御異議なければさよう決定いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/6
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007・田嶋好文
○田嶋委員長代理 この際猪俣委員から発言を求められております。これを許します。猪俣委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/7
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008・猪俣浩三
○猪俣委員 第七国会の際に、私は解散団体であります海仁会の財産処理の問題について法務府に質問申し上げ、法務府の方からは調査されたのであります。その調査の結果を当局より報告願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/8
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009・村上朝一
○村上政府委員 ただいままでの調査の経過及び結果の概略を御報告申し上げます。解散団体海仁会横須賀支部は、昭和二十二年三月二十五日内務省告示をもつて、勅令第百一号第二條の規定による解散の指定を受けたのでありますが、これより先昭和二十年十二月三十一日、終戰によりまして目的の達成が不能であるということで、自発的に解散いたしました。清算のため昭和二十一年四月三十日合名会社久里濱会館に、横須賀市内川新田字明濱千五百七番の宅地ほか二十六筆、同所にありました建物十三棟及び附属工作物、備品類一切を代金五十五万円で売却いたしたのであります。その後昭和二十三年政令第二百三十八号によります解散団体の財産管理及び処分に関する政令の施行に伴いまして、同年の九月十七日この財産の転得者でありますところの株式会社久里濱会館から、報告書の提出があつたのであります。その報告書に基きまして調査しました結果、海仁会横須賀支部が合名会社久里濱会館に対して譲渡いたしました土地、建物及び工作物の処分は、当時施行されておりました宅地建物等価格統制令の適用を受けるのでありまして、いわゆる不当に低廉でない対価をもつてした処分と認めまして、昭和二十四年の五月三十日有効の処分として、回收不要の取扱いをするよう、神奈川県知事にあて指示いたしたのであります。
その後以上の不動産を除きました備品類の回收の要否について、検討いたしておりまする際、この団体の旧職員でありました岩堀金藏という者から、この財産処分に不正があるかないかということにつきまして、調査の依頼がありましたので、調査いたしました結果、昭和二十一年四月三十日、合名会社久里濱会館に海仁会横須賀支部が売却いたしました備品類の内訳は、理髪用のいす、その他三百三十六種でありました。処分当時の適正価格を評価いたしますと、この評価ははなはだ困難であつたのでありますが、適正価格を一応評価してみますと、三十七万円相当であるにかかわらず、事実上無償で譲渡しておるにひとしい状態であつたのであります。なおこの海仁会横須賀支部は、昭和二十年十二月三十一日、北川菊松という者に、酒保品でありましたところのサージ、たび、ほか百八十二種を代金十七万三千百七十八円六十銭で売却しておりますが、処分当時の適正価格は、七十六万円相当であることが判明いたしました。
なおこの団体は、株式会社久里濱会館に対しまして、昭和二十一年十月小型ダットサン一台、自動三輪車一台、これはいずれも古物でありまして、大修理を要するのでありますが、これを代金二千六百円で売却いたしております。またその際寝台、その他の十三種類のものを、代金九千七百一円七十五銭、シンガーミシン四十一台を七千四百円、ピアノ一台を代金五百三十円というような額で売却いたしておりますが、これは当時の適正価格を算定いたしてみますと、それぞれ二万二千五百円、一万一千六百円、二万二千五百円でありまして、そのうち第一に申し上げましたダットサン、自動三輪車等は、事実上廃品同様のもので、一万円以下の財産処分として、この政令で問題にしておらないものに該当するのでありますけれども、そのほかの三点につきましては、不当に低廉な価格であろうと考えられるのであります。
そこで、解散団体の財産の管理及び処分に関する政令の第二條第一項の規定によりまして、これらの処分のうち、今申し上げました酒保品、サージ等の処分、それからダットサン、自動三輪車以外の動産類の処分は無効となります結果、回収を要するのでありますが現物はすでに解散指定前になくなつておりますので、価格を回収する必要を生ずるわけであります。一方この政令の十五條によりまして、かような無効と判断されました場合には、支払つた対価について債権申出をすることになりますので、これを差引いた差額を回収するというのが適当であろうと考えるのであります。ただいまその措置を準備中であります。
なお岩堀金藏から横須賀権察庁に対して告訴があつたのでありますが、この告訴事件につきましては、同検察庁において調査を続行中であります。
以上申し上げましたこと以外のこまかい点につきましては、資料を持ち合せておりませんので、十分御説明いたしかねるのでありますが、大体の概要をお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/9
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010・猪俣浩三
○猪俣委員 この問題は、なおお尋ねしなければならぬことが多々あるのでありますが、局長も御用意がないようでありますから、他日を期しておきますけれども、ただ私どもが遺憾に存じますことは、この問題は、私が当国会で取上げるまでは、横須賀市内ふんぷんたるうわさがあるにかかわらず、法務府は何らこれを調査しなかつた。なおまた調査の結果におきましても、皆さんが厳密なる価格の査定においても、二万何千円という査定、その査定自身に、私どもは納得いたしかねる点があるのでありますが、そういう二万何千円という価格を適正なりといたしましても、ピアノを五百円で売つたというようなことになつている。実にインチキであることが一見して明瞭であるにかかわらず、法務府は、これを調査しておらぬという点が、はなはだ怠慢ではないかと考えるのであります。さような点につきましては他にも多々あるので、これがどういう機関が一体責任を持つて監督するのかというようなこと。それからなおこの解散団体の財産処分については、実際問題として一体法務府はいかような活動をなさつておるのであるかというようなこと、なお今局長の報告には、私が指摘いたしましたことについて報告がないのでありますが、価格の点だけの報告がありましたけれども、私が指摘した中には、おびただしい数量の違いがある。その解散団体の財産は法務府へ正しく報告しなければならない義務があるはずだと思うのでありますが、これを虚偽な報告をいたしまして、多額な物品をごまかしておるということも指摘しておるのでありますが、その辺の調査は何もしておられない。私たちから見ますると、はなはだ怠慢そのものである。こういうことはどういう事情でさように相なつておるのであるか。なお今日確かに無効であることが確認せられたにかかわらず、それに対してまだ対策は準備中だ、品物はみななくなつてしまつておるというようなことは、はなはだ怠慢きわまりないものだと私は考える。そこでさようなことにつきましての詳細な報告を、なお次会に御答弁願いたいと思うのであります。本日は突然でありますから、私は以上の疑問を提出いたしまして、次会に御答弁を要求してこれで打切ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/10
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011・田嶋好文
○田嶋委員長代理 それでは検察行政及びこれと関連する国内治安に関する件を議題といたします。本件に関して梨木委員、世耕委員より集会デモ禁止事件その他について発言の通告がありますから、これを許します。では梨木委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/11
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012・梨木作次郎
○梨木委員 集会デモ問題もありますが、その前に、最近特に起つている問題を先にお尋ねいたしたいと思うのであります。それは労働新聞に対しまして、七月の二十四日にこれが発刊停止の処分を受けたのであります。この問題に関連いたしまして、まず伺いたいのでありますが、労働新聞——これは労働新聞だけでなくて新文化に対しても来ておるのでありますが、この処分にあたりまして大橋法務総裁の名義で文化タイムス社並びに全国労働組合連絡協議会機関紙の編集と印刷所あてに一つの書類が出されております。これを見ますと、昭和二十五年六月二十六日付並びに同年七月十八日付連合国最高司令官より内閣総理大臣あて書簡による両指令に基き、日本共産党機関紙アカハタその後継紙及び同類紙に対し、発行を無期限に停止することを命ぜられ、本職は内閣総理大臣より右措置の執行を委任せられた。よつて貴新聞に対し右伝達の上執行する。こういう命令で、この命令の伝達と同時に機関紙印刷所の輪転機並びに平台その他のものを押収、並びに差押えの処分をしておるのであります。そこでまず第一に伺いたいのでありますが、こういう処分は——連合国最高司令官の書簡を実施したということは、この命令の趣旨でわかるのでありますが、私の考えではこういう指令を実施するにあたりましては、日本の国内法規に従つてこれをやらなければならないと考えるのであります。ところがこれによりますと、押収並びに差押えというものが、大橋法務総裁の命令でなされておるのであります。押収とか捜索とかいうようなことは、日本の国内法規に従えば、裁判官の押収令状あるいは差押え令状がなければできないものと考えるのでありますが、これはどういう国内法に従つてなされたのか、その法的な根拠をまずお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/12
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013・大橋武夫
○大橋国務大臣 この点につきましては国内法上の根拠は、一九四五年九月二日指令第一号附則一般命令といたしまして、第一号の第十二項に「日本国ノ及日本国ノ支配下ニ在ル軍及行政官憲並ニ私人ハ本命令及爾後連合国最高司令官又ハ他ノ連合国軍官憲ノ発スルー切ノ指示二嚴重且迅速ニ服スルモルトス本命令若ハ爾後ノ命令ノ規定ヲ遵守スルニ遅滞アリ又ハ之ヲ遵守セザルトキ及連合国最高指令官が連合国ニ対シ有害ナリト認ムル行為アルトキハ連合国軍官憲及日本国政府ハ厳重且迅速ナル処罰ヲ加フルモノトス」それが国内法上の根拠に相なつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/13
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014・梨木作次郎
○梨木委員 少しこの間私が質問した点と重複する質問があるかもしれませんが、この前の質問は途中で切られたので、その点も御了解くだすつて、この点は非常に大事な点でありますから、明白にしておいていただきたいと思うのであります。今大橋法務総裁のお示しの一般命令第一号の十二項は、私もよく読んで研究はしたつもりなんでありますが、日本の政府、並びに私人これは国民という意味でありましようが、連合国最高司令官の指令に忠実に服従しなければならぬ、このことはわかります。ここで二つのことが考えられると思うのであります。つまり連合国最高司令官から日本の政府へ指令が来て、日本政府がこの指令に基いて日本国民にこれを実施させるという場合と、もう一つは直接軍命令が日本の人民に来る場合とこの二つがある。このいずれの場合においても、連合国最高司令官の指令に忠実に服しなければならぬということを、ここでは言つておるのでありまして、しかしてこれをいよいよ実行する場合になりましては、今の六月二十六日付並びに七月十八日付の連合国最高司令官の書簡というものは、日本政府にあてられたものであります。これは日本の人民に直接あてられたものではありません。そこで政府にあてられた場合は、政府は日本の国内法に従つて、あるいは法律をつくり、また適当な機関によつてこれを実施するということにならなければならぬと思うのであります。とこがこの点が明白でないのであります。もしこの命令が直接日本の人民であるところの新文化の編集印刷発行人の井田薫に直接に来たものならば、私はこの形式だとかそういう問題については、国内法的な問題にしようとは思わないのでありますが、今見ますと、これは明らかに政府に来たのでありますから、政府に来た場合は、日本の法律に従つてその形式とそのポストにある機関がやらなければならぬというように私は考える。この点が私にはわからないのでありまして、それを御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/14
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015・大橋武夫
○大橋国務大臣 連合国が指令を発せられます場合には、その指令の内容にしるされた事項が遅滞なく実現されることが目的になつておるのでございまして、それがために、ある場合においては、政府を相手として指令が発せられる場合もあります。また直接個人に対して命令せられる場合もあり得ると思うのでございます。しかしいずれの場合におきましても、その命令の内容に要求された事項が、遅滞なく実現されることを目的といしたものであることは間違いがないわけであります。そこでそれを実施するについての日本側の命令を受ける窓口として政府を選ぶ方が、事態の進行上円滑に行くという判断がなされました場合には、政府にあてて書簡が出される。しかしながらその内容は国民の私人の行為について要求したものである場合があるわけでございまして、この場合はその一例と存ずるのでありますが、かような場合におきましては、政政府はできるだけすみやかにこれを当該私人に伝達いたしまして、指令の内容を実施させるようにするわけでございます。ただいま御指摘の法務総裁から当該会社に対してあてました書面は、それを伝達いたした趣旨のものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/15
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016・梨木作次郎
○梨木委員 そこで私は日本の国内法に従えば、法務総裁は押収とか捜索をする権限はないと思うのであります。日本の国内法に従えば、裁判官だけが押収、捜索の令状を発行する権限を持つており、この裁判所の発行した押収並びに捜索の令状に基いてのみ、かような処分が可能になると思うのでありまして、今度なされた方式は、明らかに私は国内法的には日本の法律に違反しておると思うのでありますが、違反しないと法務総裁がお考えになるならば、その理由をお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/16
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017・大橋武夫
○大橋国務大臣 刑事訴訟法並びに民事訴訟法に基きまするところの押収捜索については、御指摘のように裁判所の権限に属することであります。しかしながら今回とりました押収並びに捜索は、これは司法的な措置ではございません。このマッカーサー元帥の書簡を執行するためになしたところの純然たる行政的措置でございます。この点におきまして、刑事訴訟法あるいは民事訴訟法の適用を受けるべきものとは、根本的にその性格が異なつておるということを御承知願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/17
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018・梨木作次郎
○梨木委員 そうすると行政措置である、これはわかりました。そこでこの新しい憲法ができる前には、行政執行法というようなものがありました。今はたしか私の理解しておる範囲では、行政代執行法という法律があつたと思うのでありますが、大橋法務総裁がこういう押収捜索をするについても、こういう行政処分をするについても、その法的根拠は、日本の国内法に従えばどういう法律があるのですか。法律がないとおつしやるならばないでもけつこうであります。それは法律の不備でありますから、その点を伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/18
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019・大橋武夫
○大橋国務大臣 この問題に関するすべての行政措置の国内法上の根拠は、当初に申し上げました通り、一般命令第一号第十二項でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/19
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020・梨木作次郎
○梨木委員 どうも総裁の答弁では、私は納得できません。しかしこれ以上この問題について質疑をかわしてもむだだと思うのでありますが、今の総裁のその一般命令第一号の第十二項、これは私の質問に対する答弁には明らかになつておらないと思うのであります。しかしこれ以上この点に関する質問はやめます。そこで明らかにこの日本の国内法をお示しがないのであります。その国内法的な根拠なくして、押収とか差押えをやつておるのであります。労働新聞とか新文化だとか輪転機だとか、平台とかいうものを押えて行つておるのでありますが、これは明らかに不当だと思うのであります。この点については今法的根拠のお示しが、私の納得の行くようなものがなかつたのでありますが、ところでこういう処分をするについても実際的に私は非常な疑義がある。というのは、この命令によりますと新文化並びに労働新聞を発行することを無期限に停止することを命ぜられた。これを執行するという意味でありますから、発行の停止に必要な限度の処分さえとられればそれで十分だと思うのであります。でありまするから、もう無期限発行停止になつたぞという通達をすれば私はそれで十分だと思うのであります。さらにそれを続けて、何かその停止の命令に違反するような具体的事例があれば、その後においてそれに適応した措置をとればそれで十分だと思うのでありますが、実は輪転機あるいは平台までも押えて行つておるのであります。こういうことはこの命令の趣旨からいつても、その趣旨を逸脱して、個人の権利を不当に侵害した結果になつておるのであります。具体的に申しますならばたまたまこの労働新聞、新文化を、頼まれて印刷したというそのことだけで、輪転機も押えられ、平台まで押えられて、ほかにたくさんの印刷を依頼されておるこの一印刷所が、そのためにほとんどまつたく営業が不可能に陥つておるのであります。こういうことまでするということは、この命令の趣旨には私は含まれていないと思うのでありますが、これは明らかに法務総裁もそこまで意図されておらないだろうと思うのでありますが、法務総裁がそこまで意図され、それを部下に命令されたのかどうか、その辺のことを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/20
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021・大橋武夫
○大橋国務大臣 法務総裁といたしましては、この命令を執行するに必要なる範囲において措置することを命じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/21
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022・梨木作次郎
○梨木委員 この命令を執行するに必要な範囲とおつしやるならば、單に発行は停止になつたぞという通達をしただけで、もうそれで私は十分だと思います。それを輪転機まで押えるというようなこと、これは東條軍閥時代におきましても、いろいろな秘密出版がなされた場合に、その出版をした人間だけに対していろいろ刑事上の処分などがなされてはおりましたが、その印刷屋の輪転機まで押えて商売ができなくなるようなことは実際はなかつたのであります。こういうことになりますならば、この労働新聞の輪転機を押えられた機関紙印刷所というのは、全国の労働組合の機関紙をほとんど一手に引受けて印刷しておるところでありまして、このために全国の労働組合の機関紙は印刷所がなくなつたために印刷ができなくなつた。特に印刷所までが押えられるというようなことになつて来ますと、この労働組合の機関紙を頼まれて印刷をする印刷屋が恐れをなしてこれを非常に敬遠するようになつて来ておるのであります。こうなつては労働組合の機関紙というものはほとんど発行ができなくなる。結果的には労働組合運動に対する断圧になつてしまう。彈圧をしようとしているとこう言われても辨解の辞がないような結果になつておるのであります。これは明らかに不当だと思うのでありますが、この輪転機まで押えてしまうのだというこのやり方は、総裁はこれは適当である、必要な限度内の行為である、こういうようにお考えかどうか、これはもう少し愼重に考えて御答弁を願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/22
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023・大橋武夫
○大橋国務大臣 現在の場合におきましては必要やむを得ざる措置であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/23
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024・田嶋好文
○田嶋委員長代理 ちよつと梨木君にお諮りいたしますが、法務総裁他に御用件もあるようですし、ほかにあなたの質問と関連して猪俣委員からも世耕委員からも質問がございますから、なるべく簡明にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/24
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025・梨木作次郎
○梨木委員 そうしますと、こういうぐあいに承つてよろしいのでありますか、今この労働新聞の機関紙印刷所、これが輪転機、平台が押えられる、このことは私はこの命令の範囲を越えた行為であると思うのでありますが、それは法務総裁としては必要の限度の行為である。法務総裁もこれらの押収、捜索並びに輪転機の封印については責任を持つてこう命じておるのだ、こう理解してよろしいのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/25
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026・大橋武夫
○大橋国務大臣 仰せの通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/26
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027・上村進
○上村委員 実は私はアカハタの印刷所であるアカツキの社長をしているわけです。アカツキ印刷所では、アカハタという停止を食つた出版物は、事業の約二割の仕事である。あとの八割は何らそういう命令を食わないところの合法的な出版をしておる一商事会社でございます。しかるにかかわらず、このアカハタが発行停止になつたというので、その工場全部をくぎづけにしてしまつたのでございます。そうするとこの点は明らかに法務総裁がこの一般命令に忠実に従うというけれども、現にそれほどはみ出して、われわれ印刷業者の営業権を圧迫しておるのでありますが、これでもなおそれがマ指令のアカハタ禁止の範囲に属するというのでありましようか、その点をお伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/27
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028・大橋武夫
○大橋国務大臣 これは当然のことであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/28
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029・上村進
○上村委員 そうすると当然というのは、アカハタを刷つておる印刷所はほかの合法機関紙もアカハタ禁止の理由によつて刷られないということになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/29
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030・大橋武夫
○大橋国務大臣 アカハタの発行停止の行政措置を将来に向つて確実ならしめる措置といたしまして、アカハタの印刷に用いられましたる一切の機械を押えたわけであります。そうしてこの機械は、あるいは御説の通り八割は他の用途に供せられ、ただ二割だけがアカハタの印刷に供せられたのだということがかりにありましたところで、一個の機械の二割だけ差押えをするということは無意味でございますので、一個全体を差押えをするという結果になつたわけでございまして、現在の段階といたしましてはこの処置はやむを得ないものである、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/30
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031・上村進
○上村委員 その点、私は責任をもつてアカハタの停止ならばアカハタは刷らないから……。またアカハタを刷つた輪転機を押えるのはいいが、工場全部を押えて平版とか、ほかのものまで刷れないようにするのは困るから、解除してもらいたいと総裁に今お願いしたところが、総裁はそれはどうも向うの関係もあつて解除することはできないと言つておるのですが、そうすると一体現にわれわれが見て、行過ぎのところまでやるということは、法務総裁の責任においてやるわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/31
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032・大橋武夫
○大橋国務大臣 すべては私の責任においてやつておることでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/32
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033・梨木作次郎
○梨木委員 日本共産党の中央委員二十四名、それからその後アカハタの幹部十七名が公職追放の指令を受けて追放になつておるのでありますが、これは日本の国内法に従えばどの法律によつておやりになつておるか、その法的根拠をお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/33
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034・大橋武夫
○大橋国務大臣 先般の共産党幹部の追放につきましては、すでに梨木君も御承知の通り六月六日付の連合国最高司令官の指令に基くものでありまするが、その指令の内容といたしましては、この指令に列挙せられましたる者を一九四六年の二つの指令でありまする五百四十八号及び五百五十号に従つて即刻行政上の措置をとるべき旨を命ぜられたものであります。従つて政府といたしましては、この指令を忠実に実行いたしたものであります。御承知の通りわが国は連合国の管理下に置かれておりまする以上、最高司令官の発しまする指示、命令には誠実かつ迅速に服さなければならないことは先ほど申し上げました通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/34
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035・梨木作次郎
○梨木委員 これはやはり先ほど私が質問した問題に関連して来るのでありまして、その指令は日本政府に対して来た指令だと思うのです。あるいは日本政府に来た指令ではなくして、直接共産党の中央委員に来た指令なのでありましようか。私はそうではなかつたと思うのでありますが、日本政府に来た指令であるとするならば、この指令を実施するためには、やはり日本の国内法的な根拠に基いてこれをやらなければならぬ、もしそういう国内法がなければこれをつくつてやらなければならぬと思うのでありますが、こういう点はどうなつておるのでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/35
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036・大橋武夫
○大橋国務大臣 一九四六年一月四日付の二つの指令、すなわち五百四十八号及び五百五十号、これに基き、国内法上の措置といたしては御承知の公職追放令が出ておりますから、この公職追放令によつてやつたものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/36
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037・梨木作次郎
○梨木委員 公職追放令の第何條の第何号に該当するのかをお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/37
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038・大橋武夫
○大橋国務大臣 公職追放令によつたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/38
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039・梨木作次郎
○梨木委員 だから公職追放令の第何條の第何号とお示しがなければ……。これはたくさん條文があるのでありまして、これでは私は答弁にならないと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/39
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040・田嶋好文
○田嶋委員長代理 それはちよつと研究させますから……。続いて質問を願います。世耕委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/40
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041・世耕弘一
○世耕委員 私も関連して二、三点要点を法務総裁並びに政府委員にお尋ねいたしたいと思うのですが、日本の政府の共産党対策はほんとうの腰がすわつておるのかどうかということをまず聞いておきたいのであります。腰をすえてないで、及び腰でちよこくやるのならやらぬ方がよい、こういうことを私は聞きたい。どじようすくいでも、腰が定まつておればどじようがすくえるのでありますが、腰が定まつておらぬですくうと、どじようを逃がしてしまう。たとえば今問題になつた追放令の問題でも、徳田君ほか数名というものは行方不明だという。これはどういうわけなんですか。近いうちにつかまるのですか、それともつかまらないのか、逃がしておくのか、どちらですか、世間ではこれはあいまいに感じております。こんなことで逃がすなら初めのうちから追放にかけなければよい。だから私の言うのはどじようをすくうのか、それともおつぱらうのか、どつちなんだ。今の質問を聞いておりますと印刷工場を押えたなんというが、こんなものはちつぽけな問題です。そんな小手先の器用な芸当をするよりも本腰をかけられたらどうですか。やるのかやらないのか、共産党の諸君は迷惑すると思う。政府が腰が定まつて来ないから、対策がつかないからこういうことになつて来る。本腰でやつてもらいたい。それから例を申しますが、これは皆さんごらんになつたと思いますが、河上清というアメリカに三、四十年おつた有名な記者ですが、この人の著書の「米ソ戰わば?」の引用例を見ましても、レーニンの言葉で「われわれは瞞着、虚偽、法律違反、事実隠匿などの手段をとる用意なかるべからず。」ということを書いております。これは原文があるのだから、まさかうそではあるまい。日本の共産党はどうか知らぬけれども、私はヨーロッパの実例を参考に申し上げますならば、都合のよいときは法律を援用します。都合の悪いときは法律を無視します、これがヨーロツパの共産党の手なんです。そういうような手があるから、法務総裁御自身がくろうとだから、腰が定まつたのかどうか、本腰でどじようすくいをやるつもりかどうか、そのつもりだつたらお手伝いもできるし、また御相談にも乗れると思うから、その点をまずお聞きしたい。それから今申し上げた徳田君のごとき、公職追放をかけたから逃げてしまつた、追放をかけなかつたら逃げなかつた、そこの急所を言うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/41
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042・大橋武夫
○大橋国務大臣 共産党対策と申してお尋ねがございましたが、現在日本共産党は御承知の通り合法的政党として活動いたしておるわけでありまして、政府としましてはこれが不規の行動がないように嚴重に監視をいたしておるという状態でございます。そしてこのことは共産党ばかりではなく、いやしくも現在の治安を乱るおそれのあるような団体的な行動については、すべての団体について同じような態度をもつて対処するということを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/42
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043・世耕弘一
○世耕委員 私は法律論を今聞こうとするのではない。私も法律は少しやつておりますから、法律の運用方法はわかつております。私は政治論を聞いておるのです。法務総裁から共産党対策に対する政治的な見解をお聞きしたい。なお今問題の中心になつておる徳田ほか数氏の連中が逮捕命令が出たにもかかわらず行方がわからないという理由は、これはつかまえる見込みがあるのか、つかまえないのか。また私は共産党の諸君にも注意を願いたいのだが、こういう社会運動をやる連中は逃げたり隠れたりせぬで、堂々と名乗りをあげて出て、一戰を交えればよいではないかところが名乗り出ない、もぐるところに暗さがある。暗さがあるので国民の支持は得られません。(「彈圧じやないか。」と呼ぶ者あり)彈圧があれは彈圧に対抗すればよいと思う。卑怯だと思う。これは卑怯な態度をとらしめた政府側にも責任があるのではないかと私は思う。この点はどういう考えか、度胸をきめて、本腰でかかつたらどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/43
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044・大橋武夫
○大橋国務大臣 政府は治安対策につきましては、今日の段階において、そのいろいろな意味における重要性にかんがみまして、かたき決意をもつて対処しておるということを御了承願います。なお共産党関係の追放者の行方不明の問題でありますが、これはもちろんなるべくすみやかにその所在を明らかにしたい趣旨をもちまして、鋭意捜査中である次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/44
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045・世耕弘一
○世耕委員 最後に一点だけお尋ねいたしますが、共産党の諸君が、いろいろな工作がかりにあるとしても、日本国民に間違いない。万一不逞の徒が出ていろいろな危害を加えるということもあり得ると私は想像するのでありますが、これは保護する責任があると思う。だから逮捕するという意味よりも保護するという建前からも、人権擁護の建前からもしなければならぬと思うが、その点についてどうも腰がきまらない。どじようすくいがどじようを追うようなかつこうで、どじようをすくう腹がきまつていないということを私は改めて申し上げたい。あなたはくろうとだからもう少しはつきりした御答弁をなさつたらどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/45
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046・大橋武夫
○大橋国務大臣 御趣旨に沿つて措置したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/46
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047・上村進
○上村委員 総裁にちよつと一点だけお尋ねいたします。あなたのお出しになつた七月二十四日の労働新聞及び新文化に対する停止命令でございますが、その中に、これは日本共産党機関紙アカハタ及びその後継紙及び同類紙に対し発行を無期限に停止することを命ぜられた、こういうふうに書いて労働新聞を無期限に停止したのでありますが、この同類紙という意味がわれわれにはわからないのです。アカハタは共産党の機関紙でありますけれども、労働新聞は経済団体であるところの労働組合その他連合会の機関紙であつて、共産党機関紙アカハタの同類紙ではないと思うのですが、こういうふうに後継紙及び同類紙として労働新聞又び新文化を発行停止になさつたようですが、この同類紙というのはどういう意味か、あわせて後継紙というのはどういうものか、御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/47
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048・田嶋好文
○田嶋委員長代理 この答弁は法務府特審局長吉川光貞君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/48
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049・吉河光貞
○吉河政府委員 今般発行停止の措置をとりました労働新聞と新文化が同類紙に該当する、しからば同類紙はどういう内容のものかというお尋ねでございますが、同類紙の内容につきましては、連合国最高司令官から発出されました七月十八日付の書簡の全趣旨によつて御判断願いたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/49
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050・上村進
○上村委員 そこがはつきりしないとアカハタという共産党の機関紙が発行停止されたので、あとの文化団体あるいは民主団体の機関紙があなた方のかつてな認定によつて、これは同類紙であるからといつてどんどん無期限の発行停止になつたら、実にこれは言論の彈圧、暴圧ということになつて、ゆゆしい問題になると思いまするから、アカハタの後継紙及び同類紙という範囲は一体記事そのもので判断あれるのか、それとも発行者の組織団体の性格その他によつて判断されるのか、それらの点は十分ここで明らかにしておいていただきたいと思います。むろんこの労働新聞の記事は、なるほどいろいろの民主的のことが書いてある、あるいはファシズムに対する批判を書いたり、戰争反対を書いたりします。そういう点ではアカハタと同じようなことを書くのでありますけれども、それをもつてただちに同類紙であるというふうに見ることは、これは何かそこに根拠がなければならぬと思うのですが、その点を国民に対し、言論出版業者その他に対して十分はつきりしていただきたいと思う。今の答弁ではわかりかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/50
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051・吉河光貞
○吉河政府委員 ただいま申し上げました通り、七月十八日付の書簡の内容は相当詳細にわたつて記述されているのでありまして、この内容をよく御検討願いたいと思うのであります。またかような書簡による指令の最終の解釈につきましては、書簡の発出者がこれを保有しているのでありまして、私どもはめつたやたらに濫用するというような考えは毛頭ないのでありまして、これが運用にあたりましてはきわめて愼重な態度で行く考えでございますので、御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/51
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052・梨木作次郎
○梨木委員 今吉河さんはマ書簡の全趣旨を見てくれ、こうおつしやる。それでは今度の新文化や労働新聞がアカハタの後継紙または同類紙と解釈し、あるいはそう認定したのはこれは日本の政府ですか、それとも指令を発した司令部の方々ですか、どつちなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/52
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053・吉河光貞
○吉河政府委員 法務総裁にかわつて御答弁申し上げます。認定したのは日本政府であります。しかしながら命令発出権者は、日本政府が自主的な責任において行つたことについて逸脱すれば、これを補正する権限を有しております。また不足があればこれを追加を命ずる権限を有しているのであります。今回の認定にも日本政府の自主的責任において行いました。この点御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/53
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054・梨木作次郎
○梨木委員 日本政府が認定したということはわかりました。そこでその認定の基準ですが、私たちはマ書簡を見ましても、結局は日本共産党機関紙アカハタその後継紙及び同類紙、ここが焦点になつているのでありまして、この表現はきわめて抽象的なんでありまして、だから日本政府はどういう基準によつてそういうふうに認定するのかその認定の基準を一応お示しにならないと、非常に出版の自由というものが侵害される危險が確かにあると思うのです。だから出版の自由を保障する意味からいつても、その一定の基準というものをお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/54
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055・大橋武夫
○大橋国務大臣 この基準と申しまするのは、その記載せられた内容から出て来るわけでありまして、これは禁止すべきものと認めれば、こちらで行政上の措置をいたしますから、行政上の措置のないものまで圧迫するというような心配はいらないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/55
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056・梨木作次郎
○梨木委員 政府は一定の基準をお示しにならないで、政府の認定によつておやりになる、これでは私は明らかに政府の專制的なやり方によつて、新聞の出版の自由というものが非常な危險にさらされるということを指摘して私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/56
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057・大橋武夫
○大橋国務大臣 ただいまの基準は、同類紙あるいは後継紙という言葉自体に基準が含まれておるものとわれわれは考えておるのでありまして、それ以外に特別の基準はいらないと思います。
それから先ほど保留してありました答弁をこの機会に申し上げたいと存じますが、公職に関する就職禁止、退職等に関する勅令の何條によつて追放が行われたか、こういう御質問でございましたが、これは同令の第一條の精神をくみまして、第三條によつて命じたもの、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/57
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058・田嶋好文
○田嶋委員長代理 世耕委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/58
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059・世耕弘一
○世耕委員 簡單に伺つておきたいが、徳田ほか数名の者に対して逮捕命令を出したのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/59
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060・吉河光貞
○吉河政府委員 総裁にかわつて御答弁申し上げます。六月六日、御承知の通り、元日本共産党中央委員の方が追放になりました。それで追放者につきましては、公職追放令の規定に基きまして、その動向を監視する職責を持つものであります。しかしながら四六時中常にこれらの方々をわれわれの視界に置くということは絶対に不可能な事態であります。こういう点を御了承願いたいと思います。その後これらの追放者の方々の一部が会合を持ちまして、政治活動をしたやの情報がありましたので、団体等規正令によりましてそれぞれ出頭命令を発し、出頭を求めましたところ、九名の方々が追放の前後にその所在を不明ならしめたということが明らかになつたのであります。爾後引続きその所在を調査いたしておりますが、出頭命令に応じない容疑が顯著になりましたので、検察庁に対しまして、出頭命令違反として告発の手続をとりました。すでに刑事事件となりまして、検察庁におかれまして裁判所からの逮捕状の発付を求められ、司法警察官がその所在の捜査に当つております、これと並行いたしまして、私ども特別審査局といたしましては、追放者の方々の所在の調査を引続き続行中であります。御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/60
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061・世耕弘一
○世耕委員 重要な点だからなお重ねて尋ねいたしますが、逮捕の見込みありますか。聞くところによると、もうすでに海外に逃れたという情報も入つております。私は海外に逃れたのならけつこうだと思います。なぜならば、それは生命の危險が伴わないからであります。徳田君ほか数名の諸氏は、われわれと同僚でもあるし、懇意の間柄でもある。生命の危險というようなことは私は考えたくない。もし国内にこのままもぐつておるとして、逮捕されなかつたら、不幸が生ずるのではないかという危險があるのです。そういう点で、近く逮捕の見込みがありますか。それとも海外に逃げた形跡の方が強くありますか。その点お見込みはいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/61
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062・吉河光貞
○吉河政府委員 これらの方々が国外に脱出したやの風説も聞いておりますが、私どもとしてはこれを確認いたしておりません。目下所在を調査中の方々に対しましては、その時期は問題でありますが、必ずその所在を明らかにし得ると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/62
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063・世耕弘一
○世耕委員 こういう問題を今日に至つて論議することは、私は検察当局なり法務庁の怠慢だと思います。今後かような怠慢だということを言わせないように、ひとつ愼重な御処置を願いたい。なぜさようなことを申しますかと言うと、国内にもし潜伏しておるとすれば、意外なところから手が伸びて、捜査の目的の諸君に危害を加えるようなことがあれば、これは日本にとつての不祥事であります。われわれは人権を擁護する建前から、すみやかに手配をして、逮捕するというよりも、まず保護の立場に立つてもらわなくちや困る。これは予言じみたことでありますけれども、特にこの点は御注意を喚起したいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/63
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064・猪俣浩三
○猪俣委員 今日本の置かれておる状態が非常にデリケートでありますので、なお念には念を入れる意味で法務総裁にお尋ねしたいと思います。
去る二十二日におきまして、最高裁判所の長官田中氏が、大阪におきまして高等裁判所内の記者団に会見されまして、いわゆる義勇兵の問題について論議をされて、かような趣旨のことを言つておられるのであります。国内的にはあくまで新憲法を維持しなければならぬが、国際的には、軍備撤廃後でも国家存立の自衛権は持つておるはずで、これは正当防衛の権利である。朝鮮の動乱の進展から義勇兵問題が起つているが、この実現は困難である。しかし平和主義の見地から国際連合の要請があれば、自衛権の立場から、日本人が国際連合軍に入ることは認められる。かような趣旨のことを言つておるのであります。吉田総理大臣は、義勇兵というようなことに対しては否定されておるのでありますが、これは内閣全体の閣議の決定として、日本人が義勇軍に入るというようなことは否定しておられるのであるかどうか。その田中長官の、国際連合軍に日本人が入ることが認められるという趣旨に対しまして、政府のお考えをお開きしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/64
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065・大橋武夫
○大橋国務大臣 義勇兵の問題につきましては、憲法上の論議は別といたしまして、ただいまの日本の国際的地位から考えまして、これは望ましくないことである。かように私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/65
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066・猪俣浩三
○猪俣委員 もしここに、義勇兵として応募する者があつたといたしますならば、政府が望ましくないという場合に、いかなる対策をお立てになるのであるか、お聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/66
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067・大橋武夫
○大橋国務大臣 その場合政府としては、望ましくないと考えておりまする政府の意思が実現できるような、いろいろな措置を行政的に講じて参りたい。かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/67
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068・猪俣浩三
○猪俣委員 義勇兵として応募することそれ自体に対して、何か行政的取締りの規則あるいは法令がありますか、お答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/68
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069・大橋武夫
○大橋国務大臣 現在のところ、さような行政上の取締り規則は制定いたしてございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/69
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070・猪俣浩三
○猪俣委員 もし政府が、この義勇兵に応募するというようなことを好まないということが真実であるならば、ここに何らか法令をつくる必要があると思う。これは政府のみの責任にあらず、国会の責任でもありましようが、政府におきましては、さような意図があるかないか、お答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/70
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071・大橋武夫
○大橋国務大臣 さような取締りの法令を制定する必要は、現在の段階ではない、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/71
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072・猪俣浩三
○猪俣委員 現在の段階では、取締り法令をつくる考えがないというわけですね。
なおお尋ねいたしますが、国内に国防的な行動をやる民間団体をつくつておる。一旦緩急ある際には、自衛権の発動としてわれらが立つんだというような、そういう国防を目的とするような民間団体ができたといたしまして、これは許されることであるかどうか、お答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/72
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073・大橋武夫
○大橋国務大臣 国内におきまして、軍事的、もしくは準軍事的な訓練を実施し、または軍国主義もしくは軍人的精神を存続することを目的としておるというようなことの認められます団体は、団体等規正令第二條、第三條に違反するものであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/73
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074・猪俣浩三
○猪俣委員 この団体等規正令の適用は、民間団体だけにあるのでありますか。さような根本精神は、政府の諸設備にもあるということになるのであるか、お聞かせ願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/74
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075・大橋武夫
○大橋国務大臣 これは、取締り法規の性質上、民間団体に対して適用のあるものでありまして、政府内におきまする機関については、別にこの法令が適用になるというものではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/75
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076・梨木作次郎
○梨木委員 関連して——義勇兵の問題につきまして、現在日本人は海外へ渡航するということについては、一つの規則があつたと思うのでありますが、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/76
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077・大橋武夫
○大橋国務大臣 海外への渡航につきましては、昭和二十一年勅令第三百十一号によりまして、一九四六年五月七日付の覚書、引揚げに関する件という連合国最高司会官の定めた手続に違反する渡航については処罰される。こういうことに相なつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/77
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078・梨木作次郎
○梨木委員 そうすると、国連軍に参加することの目的で日本人が海外へ行こうとするということは、この海外渡航取締り規則によつて違反になると思うのでありますが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/78
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079・大橋武夫
○大橋国務大臣 連合国最高司令官の承認なくして海外へ渡航する者は、すべて違反になるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/79
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080・梨木作次郎
○梨木委員 そうすると、国連軍に参加する目的で海外へ行こうとする、そういう許可の申請をしたら、これは許可されるのですか、されないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/80
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081・大橋武夫
○大橋国務大臣 これは連合国最高司令官の権限に留保されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/81
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082・梨木作次郎
○梨木委員 そこで政府の方では、義勇兵は認めたくない。ところが同じ国家機関の中で、しかも司法権の最高の地位にある田中最高裁判所長官は、国連軍に義勇兵として参加することは許されるであろうという一つの憲法上の解釈についての重大な意見を表明しておるのでありますが、こういうことになりますと、過般の国会討論会の放送におきましても、自由党の方々から、われわれは、従来精神的に国連に協力するという建前でおつたが、これは今度の田中長官の談話によつて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/82
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083・田嶋好文
○田嶋委員長代理 梨木君にちよつと申し上げます。最高裁判所の事務総長に対する質疑の通告がありましたが、本日は最高裁判所の事務総長は都合でこちらへ見えることができないという通告がございましたので、お含みの上御質問願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/83
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084・梨木作次郎
○梨木委員(続) この最高裁判所長官の談話によつて、義勇兵として参加することも憲法上許されるということになれば、いよいよわれわれがより積極的に協力しなければならぬという考え方が強化されて来たという趣旨の発言があつたのであります。こういうことになりますと、政府の方では義勇兵は認めたくないと言つても、一方では最高裁判所の長官が、義勇兵は憲法違反でないという趣旨のことを発言されたら、若い日本の青年は、憲法違反でなければ義勇兵で参加しようじやないかというような機運が出て来て、日本の国際的な複雑な現状のもとにおいては、非常な憂慮すべき事態が出て来るのではないかと思うのであります。そこで政府といたしまして、こういう最高裁判所長官の談話に関連して、何らかの措置をとる必要があると思うのでありますが、この点についての政府の見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/84
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085・大橋武夫
○大橋国務大臣 最高裁判所の長官の談話は新聞紙によつて伝えられておるのでございますが、政府といたしましては、その内容についていまだ確認いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/85
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086・世耕弘一
○世耕委員 簡單に二、三点お尋ねいたしますが、義勇軍とか義勇兵がいけなければ、連合軍、いわゆる連盟から警察隊員の募集を受けた場合に、どういうふうな処置をとりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/86
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087・大橋武夫
○大橋国務大臣 恐れ入りますが、もう一度……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/87
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088・世耕弘一
○世耕委員 国連から警察隊員として募集を受けた場合にどう取扱うかというわけであります。私は、応募してさしつかえない、場合によれば義勇軍もさしつかえないというふうな断定を持つておるということは、第七国会において、殖田総裁は、外国軍隊に義勇軍として志願することは、自由であるというような答弁をされたと記憶しているのてす。あるいは私の記憶違いかもわかりません。だからその点は少し思い違いがあるのだろうと思う。今問題になつている義勇軍がいけないというならば、国連から警察隊員の募集があつたときに、応募して悪いかどうか。私は国民の総意であるならばかまわぬのじやないかというふうに考えるのだが、これは政府側の意向もあるから、参考にお尋ねしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/88
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089・大橋武夫
○大橋国務大臣 現在の日本の地位から考えまして、国際連合が、国際連合の行うべき警察措置のために、義勇兵的なものを、日本国において募集するかどうかということにつきましては、私どもはただいまさような見通しを持つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/89
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090・世耕弘一
○世耕委員 前の総理大臣であつた芦田均君の文芸春秋に原稿を寄せた内容を見ますると、義勇軍の組織、これに応募、参加することは憲法外の問題だというふうに説いておるようであります。また田中最高裁判所長官の車中談をのぞいてみても、同様の所論と私はかように思うておるのであります。また二、三の新聞はあとで、あれは私的意見であつたというようなことで取消しておるようでありますが、少くとも憲法を解し、法律を解釈するものであれば、日本の憲法の解釈から見ても、私は義勇軍募集に応ずることは決して違憲じやないということの断定を下すことができるのでありますが、こういう点について法務庁は何か研究を遂げられておりますか。それとも研究中でありますか、お尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/90
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091・大橋武夫
○大橋国務大臣 私どもはこの問題は、憲法上の解釈の問題としてではなく、今日の日本の国際的地位から考えまして、政策的に好ましからぬものである、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/91
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092・世耕弘一
○世耕委員 それならもう少し進んで、議論を進めてみますが、もう世界は二つになつちやつた。やがて一つになろうという状態であります。これは世界各国の人の常識だろうと私は思う。その一方はあくまでも独裁專制をもつて世界を統一して行こうという行き方。また別な行き方は、宗教と倫理を中心にして、世界の国々の者が話し合つて世界を統一して、平和的な生活を人類に与えよう、こういうような行き方と二つある。その一つの行き方はすなわちソビエトであり、一方の行き方は英米であるということが言えると思う。最近の総理大臣の答弁並びにいろいろな委員会での説明を聞いてみますと、常に中立的態度をとる。あたらずさわらずの答弁をなさつておるようであります。いろいろ含みもあろうと思うから、この際繊細にこれを解剖することはどうかと思いますけれども、私が特にこの際強調しておきたいことは、世界が今日二つになり、二つの思想が流れておる。今申し上げたように、独裁專制で世界を統一する。その世界を統一する方法が、一方は場合によれば暴力を用いるという行き方、それがソ連の行き方であり、英米はあくまでも平和的手段でもつて、われわれ人類の幸福を生み出そうという行き方。さようなときにあたつて、われわれが右に行くか左に行くかいずれかをきめなければならぬときに、中立ということはあり得ない。中道を歩むということはあり得ない。右に行くか、左に行くかの二つしかバスは出ない。中央に行くバスは、私は発車せぬと見ておる。こういう点について政府当局はよほど腹をおきめにならなければ、政治はとることができないのではないか。
(田嶋委員長代理退席、委員長着席〕
先ほど私が申し上げましたように、どじようすくいにも腰だめというものがある。腰が必要だが、本腰になりましたかと私が聞くのもそこです。この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/92
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093・大橋武夫
○大橋国務大臣 先ほど申し上げた通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/93
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094・世耕弘一
○世耕委員 それならさらにお尋ねいたしますが、輸送船舶をあやつつている日本の船長、船員が、朝鮮海峡に働いているということは、もうすでに公然の事実であります。同時に国内において武器輸送に協力しておるのも日本人であります。やがてこれは問題になつて来ます。政府が腹をきめていただかなければ、もしもあくまでも中立的態度をとるとするならば、朝鮮向けの武器輸送には、共産党の諸君が言うように反対すべきである。そういうあいまいな態度は、今後世界の各国と国交を結ぶ場合に支障を来す。私はかように考える。はつきりした態度で今日臨むべきではないか。右すべきか、左すべきか。しかし政府は今のところ当分まだどつちともきめてないというなら、それでもけつこうだ。急な場合でありますから……。この点についてどうぞ腰だめなり、あるいは腹をきめてもらうか、今きまつていなければ、きまつていないというだけのことをおつしやつていただければけつこうだと思いまするし、さつき申し上げました芦田君も憲法学者、田中君もりつぱな法律学者であります。かく申す私もいささか法律を学んだ男であります。義勇軍を組織することに何ら躊躇ないと私は思う。もちろん連合軍側から警察隊員を募集された場合に、喜んで応じてさしつかえないと私は思うのであります。ただいま申し上げました朝鮮におけるところの事態に対しまして、私はかような考えを持つている。隣に起つた火事ではないか。下手をすればうちへ燃えつく。この場合見ておつていいのか。こういうふうに、常識的な判断を下しても私は言えると思う。ところが隣は実は刑務所である。一方は民家である。おかみさん一人で火は消しとめられなくて、下手をすればおかみさんが焼け死ぬかもわからぬ。刑務所の中で囚人がのぞいているけれども、おれは刑務所の中で、占領下であるから、拘束の身だからどうにも仕方がないという。それではおかみさんが獅子奮迅の勢いをもつて消火しているのを、見殺しにするか。道義的に考えれば、塀を破つても刑務所を乗り越して来ても、そのおかみさんに協力して火事を消しとめるというのが、今日の日本人の感情として当然なことではないか。こうまで私は進んだ感じをもつて、この問題を見ておるのであります。私たち町にある者ですら、これだけの感情を持つているのだから、重大な時局担当の任にある法務総裁以下、各政府の幹部の諸君は、何かここに大きな決心と明瞭な見解があつてしかるべきことと私は考えるのでありますが、この点はいかがでありますか。しいて御答弁を願おうとは思いませんが国民は不安を感じておりまするから、明瞭にお答えが願えればいいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/94
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095・大橋武夫
○大橋国務大臣 朝鮮問題に関連いたしまする国民的感情についての御説明はよく承つたわけであります。政府といたしましては、この問題につきましては、たびたび総理大臣からも申し上げてありまする通り、精神的に国連に協力するという態度をとつておるわけであります。しかしながらそれ以上の対外的な行動ということになりますると、占領治下にありまする現在のわが国といたしましては、それ以上の行動は遺憾ながら許される状態にない、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/95
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096・世耕弘一
○世耕委員 非常に大事なことだから、重ねてお尋ねいたしますが、しからば武器を輸送しておるのは精神的だということでございますか、労力を提供しております。また船をあやつつておるのは、あれは精神的と見ますか。私は精神的よりももう一歩進んでおると思う。進んでおるならねこばばしないで、はつきり言うたらいいじやないか。まだはつきりするところまで至らなければ、それでもなおむりにこの機会にはつきりさせろとは私は申しません。国民が帰趨に迷うておる。だから私はさつき申したように、どじようすくいに本腰でやるのかどうかということを譬喩まがいでお尋ねしたわけであります。腰がまだ定まつておらぬというならそれでけつこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/96
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097・大橋武夫
○大橋国務大臣 武器の輸送に従事いたしておりまするのは、これは従事者たる国民個人の行動でございまするが、これは国内的には占領軍の占領目的に必要な範囲において協力をいたす、こういう趣旨でございまして、これは対外的な政府の行動とは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/97
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098・世耕弘一
○世耕委員 私はあげ足をとろうと思つて法務総裁に聞いておるのではない。心構えを聞いておるのと、心構えをしてほしいと言つておるのです。右に行くか左に行くか、それはあなた方の御自由だ。しいてこの際私の説に引き入れようとはいたしません。それならば申し上げますが、公海で働いている日本人をどうするかという問題です。国内は別といたしまして……、これをどうするか。その手が及ばないというなら別です。また政府としてはしないのだということは明らかになつておりますが、個人的な行動にまで政府が制肘するということになると、少し筋が違うから、そこをお聞きいたしたのであります。政府の御意見を私はこれ以上聞こうとは思いません。ただ個人的資格において行動するのに対してそれでも干渉なさるかどうか。これは干渉すべきではないという前提のもとに私はお尋ねいたしておるのであります。もし干渉をなさるとするなれば、どういう論拠に基いてやつておるか、こういうことをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/98
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099・大橋武夫
○大橋国務大臣 先ほども申し上げました通り、個人的な行動につきましては、特別に政府はこれが干渉のために法令をつくるというような意図のないことは、先ほど申し上げた通りであります。その余は従来申し上げたところによつて御了察を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/99
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100・世耕弘一
○世耕委員 その点総理との食い違いがあるのではないかと思うのです。それはなぜかと言うと、総理は義勇軍募集というような場合があつても賛成しないようなことを言われておつたが、ただいまの御答弁は、個人的の場合はかまわぬのだと、こうお聞取りしてさしつかえございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/100
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101・大橋武夫
○大橋国務大臣 かりに義勇軍の募集ということがありまして、国内におきましてそういう事態が行われ、政府として何らかの処置を必要とするような時期になつた場合は、これは政府が当然そういうことをやるのでありまするが、しかしただいまの段階では、そういうふうな程度にはなつておらぬと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/101
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102・世耕弘一
○世耕委員 私の申し上げるのは、義勇軍あるいは警察隊の募集にあたつては、これは自由であるべきだ、現状から見ても干渉すべき性質のものでない。もちろん日本政府が干渉すべきでないということの前提でお尋ねいたしておるのであります。政府がどうするこうするということを申し上げるのではない。政府は干渉せぬかということをだめを押しておくのであります。干渉すべきでないという論拠を私は持つておるから、私のお尋ねする趣旨を簡潔にするために、その結論だけお聞きしておるわけであります。これは大切なことでありますから、即答できなければ、よく御研究の上で御返答願つてもかまわない。決してこれは簡單に取扱わるべき問題ではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/102
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103・大橋武夫
○大橋国務大臣 それでは御趣旨によりまして、他日に答弁を保留させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/103
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104・安部俊吾
○安部委員長 大橋法務総裁は外務委員会の方にも出席しなければならぬそうでありますから、この際できるだけ簡單にお願いします。梨木君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/104
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105・梨木作次郎
○梨木委員 最近の新聞によりますと、マッカーサー元帥は国連軍の司令官にもなられたというように報道されておるのでありますが、そうなつて来ますと、日本人民に対して、国連軍の司令官としてのいろいろな作戰上の要員の調達あるいは物資の調達という問題が一つあるし、また一方におきましては、連合国の最高司令官としての物資の調達やあるいは要員の調達ということがあり得ると思う。そこで連合国最高司令官としてのいろいろな日本人民に対する要請は、日本人民として服従しなければなりませんが、国連軍の司令官としてのいろいろな物資の調達あるいは要員の募集というような問題に関連しては、日本人はどういう義務を負つておるのか、これをひとつお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/105
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106・大橋武夫
○大橋国務大臣 先ほど来申し上げましたように、日本人に対しまする義務を命じました根拠である一般命令第一号は、これは連合国最高司令官、こういうことになつておりまするから、その資格において発せられたる命令のみが、われわれとしては服従の義務があるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/106
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107・梨木作次郎
○梨木委員 そうすると、日本人民としては、連合国最高司令官としての命令ないし要請であるか、あるいは国連軍の司令官としての要請であるかということを、われわれは質問することはできるはずだと思うのですが、それをやつて、それを明確にして国連軍の司令官としての要請であれば、日本人民は自由である。こういうふうに理解してよろしいのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/107
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108・大橋武夫
○大橋国務大臣 おそらくすべて国内において発せられる指令は、国連軍の最高司令官としての資格に基いてなされるものでなく、すべて連合国最高司令官としての資格に基いてのみなされるものと私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/108
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109・梨木作次郎
○梨木委員 そこで実際、人民の側から申しますと、たとえば朝鮮の今度の動乱の問題に関連して、いろいろと客観的に考えて、朝鮮作戰に必要だと思われるような指令のようなものが考えられるわけでありますが、そういう場合に、日本人民の側からは、これは一体どちらなのかということを問いただすことはできると思うのでありますが、それはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/109
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110・大橋武夫
○大橋国務大臣 すべて連合国最高司令官の資格においてなされるものでありまするから、問いただす必要はないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/110
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111・梨木作次郎
○梨木委員 問いただす必要がないということは、それは観念的でありまして、やつぱり問いたださなければわからないことがあつた場合には、われわれは問いただしてよろしいのかどうか、その点を私は聞いておるのです。問いただすこと自身がやつぱり占領政策違反になるのかどうか、これを聞きたいのであります。でありますから、やつぱり人民の側から言えば必要があるのです。そこでわれわれは問いただしていいのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/111
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112・大橋武夫
○大橋国務大臣 連合国最高司令官以外のものが日本国民に対して指令を出されるということはあり得ないのでありまするから、そこで出された指令は必ず連合国司令官の資格に基いて出されておる。これに対して国連軍の司令官の資格に基いて出されたのではないかということを問いただす必要がないことは、先ほど申し上げた通りであります。しかし必要のないことをしいて問いただすことができるかどうかという御質問でございますが、もしこれらの指令に服従しない、反抗するという意図をもつてこの質問がなされたる場合におきましては、これは明らかに処罰の対象となるべき行為となるおそれが十分にあると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/112
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113・梨木作次郎
○梨木委員 それは明らかに朝鮮へ行くということがはつきりしている場合に、私たちの理解では、占領軍というのは日本国内におきまして、ポツダム宣言の方針に従つて、日本の民主化と平和的な再建を保障するために来ておる、こう理解するのであります。その場合に客観的に朝鮮へ行くような、朝鮮作戰と理解されるような問題については、これはやはり疑問を持つと思うのであります。それは明らかに反抗するという意思がなくて、やはり率直に疑問を持つた場合のことを言つておるのであります。明らかに反抗する意思をもつてやるというのは、これは問題を別にして私は聞いております。常識的に考えて明らかに疑問を持つた場合、こういう点のお尋ねなのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/113
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114・大橋武夫
○大橋国務大臣 その点は梨木君の常識によつて御判断を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/114
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115・安部俊吾
○安部委員長 次に特審局長に対する質疑に入ります。梨木君より発言の通告があります。梨木作次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/115
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116・梨木作次郎
○梨木委員 新宿区委員会、もう一つ大日本印刷でしたか、これに団体等規正令に基く解散が命ぜられたのでありますが、この解散の措置は今までは朝鮮人によつて組織された朝鮮人連盟、こういう外国人の団体に対してはその例があつたのでありますが、今度は日本人の団体に対して初めてこれが実施されたので非常に重要視しているのでありますが、この新宿区委員会その他一つの組織に対する解散の命令というのは、これは、日本政府の判断によつて自主的にやつたものなのか、それとも司令部の要求によつてなされたものであるか、それをまず最初に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/116
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117・吉河光貞
○吉河政府委員 お答えする前にちよつと梨木さんに申し上げたいのですが、御質問が相当長時間を要するようなお話でありましたら、また明日か明後日——実はきよう午後にちよつと余儀ない用事がありますのですが、簡單ならば……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/117
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118・梨木作次郎
○梨木委員 それでは次会でもけつこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/118
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119・安部俊吾
○安部委員長 それでは次回の委員会に延期します。
この際ちよつとお諮りいたしたいのでありますが、限時法に関する小委員会の小委員の員数は現在十一名でありますが、審議の都合上、さらに一名を加えて十二名といたしたいのでありますが、御異議ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/119
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120・花村四郎
○花村委員 十二名だとすれば偶数ではございませんか、奇数にしておく方がよいのではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/120
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121・安部俊吾
○安部委員 奇数にしておく方がよいという花村委員の御意見でありますが——それでは二名を増加いたしまして、十三名とすることに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/121
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122・安部俊吾
○安部委員長 御異議なしと認めます。その二名の委員は委員長において指名することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/122
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123・安部俊吾
○安部委員長 御異議がなければ、委員に花村四郎君、世耕弘一君を指名いたします。
本日はこの程度にいたしまして、次会は公報をもつてお知らせいたします。
午後零時十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805206X00619500726/123
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