1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年三月二十日(火曜日)
午前十一時二十九分開議
出席委員
委員長 圖司 安正君
理事 多田 勇君 理事 竹山祐太郎君
岩川 與助君 寺本 齋君
奈良 治二君 福井 勇君
渕 通義君 細田 榮藏君
宮原幸三郎君 森 曉君
笹山茂太郎君 森山 欽司君
出席政府委員
経済安定政務次
官 小峯 柳多君
外資委員会事務
局長 賀屋 正雄君
委員外の出席者
経済安定事務官
(外資委員会事
務局総務課長) 山中 俊夫君
專 門 員 圓地與四松君
專 門 員 菅田清治郎君
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本日の会議に付した事件
外資に関する法律の一部を改正する法律案(内
閣提出第一〇六号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/0
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001・圖司安正
○圖司委員長 ただいまより会議を開きます。
これより内閣提出第一〇六号、外資に関する法律の一部を改正する法律案を議題に供し、賀屋政府委員より新旧條文の対照について説明を聽取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/1
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002・賀屋正雄
○賀屋政府委員 それでは今回当委員会に付託になりました外資に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、どういう点がかわりましたか、その條文についての御説明並びに別途お配りしてございます二、三の資料について簡單に御説明いたしたいと存じます。
外資に関する法律は、御承知のように昨年の通常国会において御協賛を得まして、六月に施行いたしたわけでございますが、だんだんわが国に対する諸外国、ことに米国の投資もこの法律ができまして以来活発になりつつある状況でありまして、朝鮮の動乱が起りまして、一時外資の導入というようなことも絶望的に考える向きもなきにしもあらずであつたのでありますが、それにもかかわりませず、実際に私どもがこの方面の仕事をしておりますところから見ましても、ことに無形の外資と申しますか、技術援助契約を中心といたしまして、相当盛んに行われつつあるように見受けられるのでありまして、この点はわが国経済の将来のために、非常に喜ばしい現象だと考えているのであります。この外資に関する法律の最も大きな目的は、外資の果実の送金保障という点にあつたわけでありまして、これが外資の導入に非常にいい影響を與えたのではないかと考えているわけであります。しかしながら非常な短期間におきまして制定いたしました法律でもありますので、いろいろな点におきましてやや不備な点もございますので、その施行後約半年の間における状況を振り返りまして、この際この法律を完備いたしたいと考えまして、今回二、三の改正をいたす段取りにいたしたわけでございます。
今度の改正案のおもな点をまず最初に申し上げますと、お手元にお配りしてあると思いますが、外資に関する法律の一部を改正する法律案要綱という一枚紙にまとめてございますように、大きくわけまして三点あるのでございまして、まず第一点は、外国投資家の株式取得の制限を緩和するという点でございます。それがまた二つにわかれまして、同じ株式と申しましても、新株の場合と旧株の場合とにわけまして、そのいずれにつきましても、現行の制度よりも外国人が取得するのに便利であるように改正をいたしているのであります。
それから第二の点は、外資法の第十七條に、国または地方公共団体等が外国人の事業財産を強制的に收用いたしました場合の補償金の海外送金の保障という趣旨で設けられました條文が一條あるのでございますが、現実にそういう事態が発生いたしました場合に、実行が確実に参りますように、手続的な従来の規定の不備な点を補おうとする点でございます。
それから第三点は、経過的な問題でありますが、外資法ができます前に、いわゆるポツダム政令の政令五十一号で、外国人の財産取得を規制する政令があつたわけであります。この政令によりまして、外資委員会の認可を受けて投資せられましたものに対しても、外資法による送金の保障と同じような送金の保障を今後認める必要があるのではないか、そうすることが先に入つた投資が、後に入つた投資よりも不利益をこうむるというような結果を是正するゆえんであると考えまして、附則の改正をいたしました点が第三点でございます。
この三つの点が條文でどういうふうにかわつて参つたかという点を、外資に関する法律新旧條文対照表というのでややこまかく御説明いたしますと、これには今回の改正でかわりました條文だけを拔萃してございまして、かわつた点を傍線を付して明らかにいたしておるのでありますが、上が新條文で下の欄が旧條文でございます。
まず先ほど申しました第一点の株式取得の制限緩和の点で、どの條文がどういうふうにかわつたかという点は、まず第一に八條に関係があるわけであります。第八條は見出しにもありますように、認可、許可または勧告の基準に関する條文でございまして、その第一項は、いわば積極的な基準と申しますか、外資委員会が認可をするのは、こういう場合であるという規定になつておるのであります。しかもその場合には、国際收支の改善に有効に寄與するものを優先させなければならないということで、まず第一に、直接または間接に国際收支の改善に寄與する場合、第二には、直接または間接に重要産業または公益事業の発達に寄與する場合、第三には、重要産業または公益事業に関する従来の技術援助契約の更新または継続に必要である場合、この三つの場合に、認可、許可、勧告をするのであるというふうに規定しておるのでありますが、この点につきましては、従来の條文に何ら変更を加えておりません。
第二項は、逆にいわば消極的な基準と申しますか、次に掲げた各号に該当する場合には、外資委員会は認可をしてはならないという條文でございます。そのうち一号、二号、三号は従来通りかわりがないのでありますが、従来の旧條文におきましては、社債株式につきましての特有の基準と申しますか、基準が第四号にあつたわけであります。第三ページの下の欄の第四号がそれに当るのでありまして、これが今度上の四号と五号の二つにわかれることになつたのであります。従来の第四号で、社債、貸付金、それから株式持分についての基準として、どういうことが書いてあつたかと申しますと、こういうふうな形態の投資をいたします場合には、その対価として用いられます本邦通貨が、どういう源泉から生じたものであるかという点を問題にいたしまして、その場合におきましては、まずこういつた投資をいたします目的のために、外国から対外支払い手段を送金して参ります。たとえばアメリカの投資家でありますればドルを送つて参りますから、それを合法的に三百六十円の公定のレートで交換して獲得した円貨でなければならない。次には本邦における正当な事業活動により取得したもの、その他適法に取得したものでなければならない。諸外国人が日本である一定の事業活動をすることを許されておりますが、そういつた事業活動をやる上において、正常な取引をして獲得して円貨でなければならない。たとえば物資をやみ売りして獲得した、そういう円貨でもつて投資をするというふうに認められる場合には認可をしてはならない。こういうふうになつておつたわけであります。これを今度は社債と株式と二つにわけたのでありまして、社債、貸付金等のグループと株式のグループの二つにわけたのであります。社債、貸付金については従来の通りでありますが、株式については新しく規定の仕方をかえまして、第四号に持つて参りまして株式だけについての認可基準をつくつたわけであります。ここでもう一つ旧條文について御説明しなければなりませんのは、七ページのところで、従来第十二條として、八條以外に株式だけについての特別の認可基準があつたのであります。この十二條が今回は削除せられまして、そしてただいまの第四号に移して規定されることになつたのであります。そこでどういう基準があつたかと申しますと、この十二條では外国人が株式を取得いたします場合は、次の二つの場合に限られる。第一は当該法人の財産の増加をもたらすものである場合というのでありまして、その株式を外国投資家が引受けることによつて、株式を発行しておる会社自体の財産が増加する場合でなければならない。と言いますことは、つまり新しい会社が設立せられまして、その新たに発行せられる株式を持つ場合、これがまず第一に該当するわけであります。その次には既存の会社が増資をいたしまして、そうしてその増資新株を外国投資家が取得する場合、この二つの場合を指しておるわけであります。原則はそうなるのでありますが、第二号に入りまして、当該法人の財産の増加をもたらさない場合は、どういう基準によるかと申しますと、つまり財産の増加をもたらさない場合と申しますのは、すでに発行せられております既存株のことをいつておるわけでありますが、既存株を外国人が取得しようとする場合には、まず第一にその取得が外国投資家の投資計画の一部でなければならない。かつ同時に第二といたしまして、その取得の対価たる本邦通貨が、当該取得のため対外支払い手段を合法的に交換して得たものでなければならない。その株を買いますために、特にドルなりポンドなりを送つて参りまして、それを合法的に交換して得た円貨でもつて取得する場合に限る。こういう比較的やかましい條件がついておつたのであります。ところが先ほどの要綱で御説明いたしましたように、新株と旧株の二つについて緩和措置をとることにいたしたのであります。そのうち旧株についてどういう緩和をいたしたかといいますと、ここに書いてあります二号の要件のうち、外国投資家の投資計画の一部でなければならないという要件を、今度は削除することにいたしたのであります。その結果外国投資家が外貨を送金して参りまして、それを正当に交換した円貨をもつて既存株を買う限りにおいては、外資委員会は認可してもかまわない。従来は認可ができなかつたのであるが、認可をしてもさしつかえないというふうにかわることになつたのであります。それから新株につきましては、従来は認可が必要であつたのが、今度は事後の届出で取得できるということになつたのでありますが、この点はただいま御説明いたしました十二條の第一号と、その前の條文の第十一條に関係して参るのでございます。四ページにあります十一條をごらん願いますと、一項から四項までありますが、三項、四項は別段問題はないのであります。まず第一項におきましては、従来の規定では、外国投資家が日本の会社の株を取得しようとする場合には、次項でもつて事前の届出を必要とする場合を除いては、外資委員会の認可が必要であるという原則を掲げまして、それではどういう場合に事前の届出で取得できるかということを、二項で規定いたしておるのであります。それはつまり五ページの最後の二行にありますように、適法に所有する株式または持分に対し、新たに割当てられた株式または持分、すなわちすでに外国投資家が合法的に持つております株式に、その株主の当然の権利として新株が増資されて割当てられたという場合には、その新株を取得するにつきましては、あらためて認可を要しない、事前の届出で持てる。それから第二号において他の外国投資家から讓り受ける株式または持分ということで、ある外国投資家がすでに合法的に持つております株式を、他の外国投資家に讓り渡す場合には、その讓り受ける外国投資家は別段あらためて認可を受ける必要はない。こういうわけであります。但し第二項の中ごろに書いてありますように、その株式の配当金の送金の保障を求めようとする場合には、これは第一項に逆もどりいたしまして、外資委員会の認可が必要になるのであります。これは為替管理を実施いたしております以上、将来末長く外貨の送金を保障いたしますのは、ただ單に届出だけでそういう処置を認めるわけには参りませんので、やはりその投資の効果というものを十分審査する必要がありますので、こういう場合には認可が必要でありますが、別段送金の保障を求めないという場合、さつき申しました二つの場合は届出だけでよろしい、こういうことになつておつたのであります。ところがそれが今度は上の段に書いてありますように、五ページのしまいの二行にありますように、その取得が当該法人の財産の増加をもたらす株式または持分、これは改正前の十二條の一号にありました財産の増加をもたらす株式ということで、増資新株あるいは設立新株等を指しておるわけであります。そういう株式でありますとか、それから他の外国投資家から讓り受ける株式、この二種類の株式につきまして、やはり配当送金の保障を求めないという場合におきましては、ただ外資委員会に事後に届出をすればよいということになりまして、それ以外の場合は外資委員会の認可を受けなければならない、こういうことになつているわけであります。そういたしまして、第三ページの上の欄の株式について基準がここにまとめられて出て来たわけであります。つまりこれは認可の基準でありますから、認可がいります場合は、配当送金の保障を受ける新株、それから旧株を取得する場合でありまして、この二つの場合につきましては、第四号にありますように、その投資に円います円貨が、合法的に対外支払い手段を送金して参りましてこれを円貨にかえた場合、あるいはこの外貨と同等の価値があるものによつて取得する場合、こういう場合でなければ認可ができないということにいたしたわけであります。結局簡單に申し上げますと、新株につきましては従来は認可が必要であつたのが、配当金の送金保障を求めない限りは事後の届出だけでいい。それから旧株につきましては、従来は認可が必要であつて、今後も認可が必要なのでありますが、認可基準としては、従来はその取得が役資計画の一部でなければならなかつたのが、そうでなくても、外貨を送つて来てその円で買う場合、あるいは外貨と同等の価値のある現物を送つて参りまして、それを現物出資、あるいはそれを売却した円貨で取得するというような場合には、認可をしてもさしつかえない、こういうふうにかわつたわけであります。
それから改正の第二点は、十七條に関するものであります。十七條は、昨年の法律をつくりました際にいろいろ問題がございましたが、アメリカと諸外国との戰後の條約等にもこれに似たようなことが見受けられるのでありまして、むしろ條約に記載すべき問題ではなかろうかというような意見も出たのでありますが、外国投資家の中には、投資をいたしました相手の国が、政治情勢その他がいろいろかわりまして、事業を国有化するとか、その他いろいろな目的で強制的に買收するというようなことをやりはしないか、せつかく投資をしても、そういうようなことになつて回收ができないというようなことでは、投資家は不安でなかなか思うような投資ができない、こういう心配が非常にあるということが強くいわれておつたのであります。しかし、その点については心配はない。万一、何らかの目的でそういう事業を強制的に收用いたしますような場合がありましても、現在の憲法で正当な対価は必ず補償される。しかしながら、対価が円貨で支払われただけでは、外国投資家には絵に描いた餅のようなものでありますので、それを投資家の自国の通貨に必ず交換できるという保障をしておけば、その点の不安はなかろうということで、この原則を明示するような意味合におきまして、第十七條に規定を設けたのであります。第八ページの下の段にありますように、こういう收用または買收が行われましたときには、その対価の、外国へ向けた送金を確保するために、その必要な金額を、外国為替予算の一年間必ず計上しなければならないということにいたしまして、そうしてこの計上された資金で現実に送金をいたします場合には、別段為替管理法上の許可をとる必要はないということを規定いたしたのであります。この條文だけでは、原則は明らかにされているわけでありますが、もし現実にそういう事態が起りました場合に、このままではちよつと動けない。全然動けないわけではありませんが、手続的に非常な不備な点があるというようなことが察せられますので、このたび、上段にありますように、やや詳細にわけて規定いたしたのであります。つまり、従来の法律のままでは外国為替予算に必要な資金を計上しなければならないとしておきながら、その予算を組みます責任者である閣僚審議会で、いつどこで、どのような場所で買收が行われ、大体どのくらいの外貨を、どういう通貨で用意しなければならないかというようなことが、具体的に詳細にわかり得ないことになつておりましたので、その点の資料を、まず外国投資家から大蔵大臣に出させ、ついで大蔵大臣がそれを閣僚審議会の方へ出し、この資料に基いて閣僚審議会が具体的に予算を組む、こういうふうに規定いたしたのでありまして、実質的には何らかわつた点はないのであります。
それから第三点の改正では附則の改正になつているのでありまして、これは十三ページの上段の附則の第四項、それから十四ページの第五項、この二つが新たに加わつたのであります。これは先ほど口頭に簡單に御説明いたしましたように、比較的早く政令五十一号の認可を得て投資せられましたものに対して、外資法ができてから以後の投資と同様な、配当送金の保障の道を新たに開こうというのであります。まず、「外国投資家が左に掲げる認可を受けて取得した株式又は持分で外資委員会規則で定めるところにより、この規定の施行の日から六箇月以内に行われた申請を基いて外資委員会が指定したものに係る配当金の外国へ向けた支払は、外国為替及び外国貿易管理法第二十七條の規定により認められたものとする。」の、「左に掲げる認可」というのは、十四ページにありますように、「外国人の財産取得に関する政令の規定に基く認可」つまり外資法ができます前は、外国人の財産取得に関する政令で、株式取得は外資委員会の認可が必要であつたのであります。但し、そのときは配当送金の保障という制度もなかつたわけであります。これによつてすでに認可を得ているものについて、その認可を受けた外国投資家は、この法律の規定が施行せられましてから六箇月以内に、外資委員会に指定の申請をしていただくわけであります。そういたしまして、外資委員会が外資法の基準に照しまして、これは送金を保障してもいいという判断をいたしますれば、外資委員会が指定をいたします。そうするとその指定の日以後に支払いの行われます配当金が、今度は為替管理法上別段の規制を受けないで、自動的に送金できる、こういうことにいたしたのであります。六箇月間と区切りましたのは、すでにケースとしては片づいたケースでありますので、指定の申請をしようとすれば、この程度の日にちがあれば当然できるわけでありますので、二年、三年あるいはそれ以上先になつて、これは昔政令五十一号で認可されたものだから、配当金の送金を保障してほしいということを持つて来られましても、外貨予算を組みます上においても、非常に古いことを一々振り返らなければならないということで煩雑でありますので、その辺の関係をなるべく早く片づけようという意味で、六箇月に区切つたわけであります。それから第五項は、これはいろいろな條文の準用規定並びにその読みかえの規定でありますが、その中で特に御説明を要するのは、第十五條の二項を準用いたしておりまして、——第十五條の二項といいますのは、配当金の送金の保障をいたします場合は、必ず外貨が入つて来た場合でなければならない。株を持ちます場合にも、日本の国内でたまりました円でもつて取得したような株式の配当金の送金は保障できない。外貨を売つてそれを合法的に円貨に交換してできたもの、あるいは外貨と同等の価値のある現物を売つて、それによつて取得したような株式に限つて、送金の保障ができるということにいたしておるのでありますが、その條文を、今度の古いものの指定の場合にも、やはり準用することにいたしたわけであります。
以上で大体法律についての改正の箇所の御説明を終つたわけであります。
次に、お配りしてある資料に基きまして、これまでの外資導入の概況は、どういうふうになつておるかということを、簡單に御説明いたしたいと思います。
横書きの扉がついた「外資導入概況」という資料がお配りしてあると思います。外資導入の形態にはいろいろあるわけでありますが、外資委員会が審査いたしまして認めます外資導入の形態といたしましては、まず第一が技術援助契約、それから株式持分、それから社債貸付金があるわけでありますが、社債貸付金の形態によります投資は、今日までのところ、ほとんどまだ実現を見ておらないのであります。一番重要なのは、技術援助契約と株式の取得の二つにわかれるわけでありますが、この二種類の投資について、具体的にどういうようなケースがこれまであつたかというのを、第一の表と第二の表に詳細に掲げておきましたから、これを、こらん願いたいと思うのであります。それから第三の表は、政令第五十一号に基き、外貨またはこれと同等の価値のあるものによつて取得した株式ということになつておるのでありますが、これは先ほど改正点について御説明しました中の最後の点に関係があるわけでありまして、すでに政令五十一号で認可を受けて取得いたしておりますもののうち、今度の改正によりまして外資委員会が指定をいたしまして、将来の配当送金を保障することができる部類に属するものはどれほどあるか。その要件といたしましては、先ほど御説明いたしましたように、外貨を持つて来たもの、あるいは外貨と同等の価値のあるもので取得した株式に限るわけでありますので、それをピック・アップいたしましてここに掲げておいたのでございます。全体で十五件ほど認可になつておりまして、金額にいたしまして八千五百万円ということになつておるのであります。第四の表は、外資法に基く対外送金実績ということで、これまで外資委員会が認可いたしました投資のうち、これに基いて果実の送金として、どのくらいの外貨が現実に出て行つたかという、その実績の表でございます。今日までのところでは、まだ実績としてはそう大した金額に上つておらないのでありまして、八件、二十六万ドル程度にすぎないのであります。なお株式につきましては、会社の決算期等の関係もございまして、今までのところは、現実に送金が行われた実績はございません。
この表でごらんになりますと、大体具体的に、会社としてはどういつた会社が外資を入れておるかということがおわかりになると思いますが、それでは金額的に——たとえば株式につきまして、一体、全体でどのくらいの金額のものが、外国人によつて投資されたかという数字がわかりませんので、それは「外資委員会審議状況報告表」というのがございまして、これの中に出て参るのであります。これは非常に表としてごちやごちやいたしておりますが、実は毎月外資委員会の事務局でつくつております表を代用さしていただきました関係上、二月分についてつくりましたもので、いろいろなこまかい数字を書いておりますが、このうちの累計のところをごらん願いますと、最初から二月末までの間の数字がおわかりになるわけであります。第一ページは、これは全体の種類について、ただ申請の件数、認可の件数を記載しておるだけであります。たとえば認可件数の下の累計をごらん願いますと、技術援助契約では二十一件認可しておる、株式では、取得に認可を要するもの六十五件、取得に届出を要するもの五十件、それから社債、貸付金なし、こういうことになつております。その技術援助契約のうち、種類別によりまして、二十一件がどういう種類にわかれるかというのが次の表にあります。化学工業が七件、ゴム工業が一件、合計二十一件ということになつております。それから外資法ができます前には、やはり技術援助契約を政令五十一号で、外国人の財産取得に関する政令によつて認可いたしておつたのでありますが、それが二ページの最後の下の部分にあります。全体で十二件ございまして、その数字の内訳等を掲げてあるのでございます。三枚目の表が株式の取得の合計の金額でありまして、(1)が外資法によりまして認可した金額であります。これも当月とありますのは二月で、累計のところが外資法施行以後二月末までの数字であります。金額で十億三千万円。それから株式につきましては、單純な資産投資と経営参與的投資というふうにわかれておりまして、これは便宜上のわけ方にすぎないのでありますが、單純な資産投資と申しますのは、日本に生活しております外国投資家が、資産保全的な意味で銀行の預金にするかわりに株を持つといつたことで、百株、二百株といつたような、比較的少数の株を取得する場合を指しておるのでありまして、これはあまり外資導入といたしましては、そう重要な意味を持つておらないのであります。もう一つの経営参與的な投資と申しますのは、つまり経営に参與する目的を持つた投資でありまして、どちらかといえば、これが本格的な外資導入であります。その二つにわけて、数字を掲げておるのであります。同時にまた対価の種類別によつて、外貨を送つて来た場合と、現物を送つて来た場合と、国内で畜績した邦貨で買います場合と、この三つにわけて、それぞれの数字の内訳を掲げております。それから同じページの一番しまいの部分は、これは外資法ができます前に、外国人の財産取得に関する政令によつて外資委員会が認可をいたしました数字であります。昭和二十四年三月十五日から、二十五年の六月七日までの数字でございます。戰後ということでございますれば、この下の欄の数字と上の表の数字と、両方を加えた数字になるわけであります。四枚目は、これは外国人の事業活動に関する政令による認可の状況でありまして、いわゆる直接投資と申しますか、外国人自身が、日本の商社とは全然縁を結ばず、單独に出て参りましていろいろな事業活動をする場合に、ある一定の業種につきましては、外資委員会の認可あるいはそれぞれの行政官庁の許可が必要でありますが、この場合に、外国人の事業活動に関する政令におきましては、主務官庁がそれぞれの業法に基きましてたとえば銀行業であれば大蔵大臣、運送業であれば運輸大臣が、業法によつて免許いたすわけでありますが、そういつた場合には、それぞれの主務官庁は、処分をいたします前に外資委員会に付議をいたしまして、その意見を徴するということになつておるのであります。それが第一の上の半分の表でありまして、累計のところにありますように、二番目の賛成回答件数ということで、銀行業については七件、保險業については十件、運送業については一件、電気ガスがなし、合計十八件、こういうことになつておるのであります。それから下の半分の表は、これは他の行政官庁は、別段行政処分の権根は持つておらないで、外資委員会自身が自己の権限として許可をする場合の業種でありまして、それはここにありますように保險業、運送業等が並べてありますが、そのそれぞれにつきまして、許可件数ということで、二月末までに全部の業種につきまして、百十五件の許可をいたしております。それから最後のページの表は、これは外国人の財産取得に関する政令によりますと、外国人がわが国内におきまして不動産を取得いたします場合、その他鉱山権、砂鉱権、地上権、担保権等を取得いたします場合には、やはり外資委員会の認可が必要でありますが、そういつたケースについて、どのぐらいの認可をいたしたかという件数を掲げたのであります。その一番下の方の部分に、その中で特に土地と建物について、どのぐらいの認可をしておるかということが明らかになつておりますが、その累計は、外国人の財産取得に関する政令ができました昭和二十四年三月十五日以後二月末日までの数字でございますが、累計にありますように、数量で二十七万三千坪、金額では四億八千五百余万円、その場合も、外貨を送つて来てそれを円にかえました場合と、現物を送つて来てそれを売却した円貨でもつて買つたものと、それから国内で合法的な事業活動を行いましてたまつた円貨によつてやりましたものと、三つにわかれるわけであります。そのそれぞれについて内沢を掲げておるのであります。大体以上法律についての改正点の御説明と、今日までの外資導入の概況についての御説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/2
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003・圖司安正
○圖司委員長 ただいまの説明に対し、質疑があればこれを許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/3
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004・笹山茂太郎
○笹山委員 簡單にお伺いしたいと思いますが、この旧来の株式につきましては、今度は投資計画の一部でなくてもいいということに変更になつたようでございますが、現在運用してみて、どういうような点について不都合があつたからそういうふうに改正するのであるか。その点について、具体的に支障があつたならばその事例を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/4
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005・賀屋正雄
○賀屋政府委員 従来の、投資計画の一部でなければならないという趣旨を申し上げますと、たとえばある外国投資家が日本の会社に自分の特許を使わせる。技術援助契約をいたすわけであります。そういつた場合に、日本の会社に対して、その経常に特に関心を持つというような意味合いから、その会社に対する支配権を従来よりもよけい握りたいというようなことで、増資がありますればその増資株を特に引受ければ、それだけ経営に対する支配力が増すわけでありますが、そうでない場合におきましては、既存の株を買わなければならないというようなことが起つて来る場合もあるのであります。そういうふうな場合には、技術援助契約という一つの投資計画がありまして、それと結びついているからいいわけでありますが、そうじやなくて、ただ既存の株を買うという場合は、従来は全然できなかつたわけであります。従来こういう規定になつておりました関係からも、あまり現実の問題として非常に困つたというようなケースはないのでありますが、最近諸外国をまわつて来られましたいろいろな方々の意見を徴してみますと、向うでは日本の株式に対して投資をしたいというような意向を持つておる人が相当多い。また特にアメリカ等におきましては、今日二世で祖国に貢献するという意味合いから、外貨を送つて日本の株式に投資し、国際收支の改善に寄與したいというような考えを持つておるものも、相当あるというふうに聞いておるのであります。そういう人たちが、ただ單純に株式を持つというような希望がいくらございましても、ただいままでの規定では、ほかに大きな投資計画がなければ認可ができないということになつておつたわけでございますので、その要件を除くことにいたしまして、こういつた投資も認可をすることができるように改正した方がいいのではなかろうかということから、こういう改正をした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/5
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006・笹山茂太郎
○笹山委員 旧株の取得につきましては、そういうことで範囲を非常に広げるということになりますと、いろいろ証券市場に外国資本が介入して来るといつたふうな問題でもつて、そこに経済界にいろいろ波紋を来すのではないかということが考えられるのですが、そういつた心配はありませんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/6
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007・小峯柳多
○小峯政府委員 今事務局長から説明がありましたように、外国の投資を盛んにする必要がありますが、また今御指摘のような懸念もあるわけであります。そこで素性の知れた金というふうな意味で認可制度を残しておるのであります。この問題を御審議いただきますまでに、財界の人たちの意見も十分伺つたのでありますが、外資を入れたい。株式を、筋が通つておりさえすれば計画の中の一部でないという意味で、もつとこれを容易に持つていただいたらいいのではないか。しかし株価も安いし、今御指摘のようにこれが非常にのほうずもないようなことになつて、ことに好ましからざる外国投資によつて持たれるということに対しましても、いろいろ意見が出たものですから、その中間をとりまして、金の素性、また持つていただく人の素性等を認可によつて十分監視をして参るつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/7
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008・笹山茂太郎
○笹山委員 そこの第四号の問題ですが、これはこの法律を制定する場合においても必要があつたのだろうと思うのですが、あるいは法律制定当時におきまして、こういつた問題については別に必要がないということで設けなかつたのであるか、あるいはまたこれによつて、現在非常に困つておる面が苦情として出ておるかどうか、こういう点を御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/8
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009・小峯柳多
○小峯政府委員 最初のは政令によつてやりましたので、とりあえずきめたものでありまして、その後の情勢等を勘案して、やや体系的な法律をつくつたわけであります。今御指摘のように、その当時からその準備が必要であつたかとも思いますが、さしあたりのことでございますので、この法律を機会に、不公平のないようにという意味で加えたものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/9
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010・笹山茂太郎
○笹山委員 この取扱いによりまして、将来対外資産の関係がどれだけ増加する状況でありますか、あるいは現在この関係におきまして、円として日本に保有しておる金額の見積り、こういつた点について御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/10
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011・賀屋正雄
○賀屋政府委員 あとの方の御質問の趣旨はちよつとわかりかねましたが、先ほど資料について御説明いたしましたように、全部政令五一号で認可されましたもののうち、外貨あるいはこれと同等の価値のあるものによつて取得した株式が、外資法に照して妥当なものであるというふうに認定いたしまして、外資委員会が決定するといたしまして、先ほどの第三の表にありましたように八千五百万円の株式ということになるのであります。そういたしますと、この株式について毎年の配当金が送金されることになりまして、その金額を外国為替予算に計上いたさなければならなくなるわけであります。会社によつていろいろございまして、また将来の事業の業績というようなことからも、必ずしも配当金を的確に予想することはむずかしいのでありますが、いろいろ会社のお話等も承つて概算いたしまして、将来の配当金の予想は一年で大体四万ドル程度のものであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/11
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012・笹山茂太郎
○笹山委員 外資委員会の審議状況の報告にございます表でございますが、この表の中に大体認可されておる。ところが不認可のものが若干あるのでありますが、この不認可されたものについて、大体どういうものであつたのであるか、この法律案の條項から考えて、どういつた点に該当するのであるか、その点を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/12
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013・賀屋正雄
○賀屋政府委員 株式取得で認可を要するものについて、不認可の件数が一つ出ております。そのほか事業活効についても、ごくわずかでありますが、不許可の数字が出ております。株式取得についての不認可は、実は今度の外資法の改正に関係があるのでありまして、ある会社が既存の株式を取得いたそうという申請が出て参りまして、その外国投資家が所属いたしております法人としては、新たに取得しようとする日本の会社と従来も資本的なつながりがあつたのでありますが、その重役が個人として既存の株式を取得しようということで、その個人について見れば、投資計画の一部と見ることができないという関係で、既存株の取得を不認可にいたしたと記憶しております。こういつたケースが、今度の場合でありますれば、認可してもさしつかえないことになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/13
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014・笹山茂太郎
○笹山委員 不動産、特に土地の取得についてでございますが、報告によりますと、二十七万坪の土地が取得されて、認可になつておるのでございますが、土地の取得について、現在どういうような態度をもつて認可の標準にしておいでになるか、あるいは将来こういつた問題についてどうお取扱いになるのであるか、お伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/14
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015・賀屋正雄
○賀屋政府委員 不動産の取得を外国人について特に制限いたしまして、認可制度にいたしました趣旨は、特殊な事情があるのでございまして、終戰後日本は占領下にあるわけでありまして、講和が成立いたしますまでの間は、占領軍によつて日本の経済が特に悪い影響を受けるようなことがないようにというおもんぱかりから、外国人が占領というような特殊の地位を利用いたしまして、不当な圧迫を日本人に加えまして、目ぼしい土地を安い値段で買い占めるようなことがないように——これは実は内部的なことでありますが、日本政府が認可いたしますのみならず、認可いたします場合には、向うの意見もよく聞きまして、向う側もそういう点にはむしろ自発的に関心をもつて、そういう悪いケースの起らないようにとい配慮をいたしておるのであります。そういうことにいたしまして、日本の重要な資源の保全ということを考えておるわけであります。従いましてこの土地の取得の場合におきましては、詐欺、脅迫だとか、占領軍の責めに帰すべき不当な圧迫がなかつたかということを、特に注意して調べることになつておるのであります。同時にまた、それを買います場合の円貨の源泉を非常にやかましく申しまして、その円貨が、たとえばいろいろな物資を日本に持ち込みまして、それを不当に高く売つて稼いだような円であります場合には、これは認可しない、こういうことにいたしております。大体そういつた諸点を考えまして、特に不都合のないような場合には認可をいたすことにしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/15
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016・笹山茂太郎
○笹山委員 たとえばある宗教団体の付属農園というような名儀で、たくさんの農地を買收する、こういう場合におきましてはこの法律によつて許可ができるのでありますか、あるいはそういうものは好ましくないという判断が下されますか、その点を向いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/16
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017・賀屋正雄
○賀屋政府委員 宗教団体がその布教の目的のために、たとえば教会を建てますとか、あるいは修練場を設けるとかいうために、不動産を取得しようという事例は、今日までも相当ございまして、認可をいたしております。今後も特に、それが先ほど申しましたような不当な円でもつて買われるというような場合でない限りは、認可をいたさざるを得ないじやないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/17
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018・笹山茂太郎
○笹山委員 ただいまの御説明で、そういう場合におきましては認可をするという方針のように聞いておるのでありますが、宗教団体、そのほかにいろいろそういうような名目を持たせて、日本の安い農場を買い占めるという計画については、これをこのまま放置することは、私は非常に大きな問題を将来に残すだろうと思います。そういう点について、このままの状態でいいという政府のお考えについては、私相当疑問を持つものであります。やはりこういつたものについては相当制限して、実際その宗教団体なり公益団体が、どうしても農場を持たなければならぬというふうに、きわめて狭義に解釈しまして、必要最小限度にとどめるべきものではないか、かように考えますが、どういう御意見でしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/18
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019・小峯柳多
○小峯政府委員 農耕地の問題などは、当然農地調整法の委員会の意見も聞きますし、御趣旨のように、私ども不必要なものをそういう形でやられることは好ましくないと考えますので、愼重を期したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/19
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020・圖司安正
○圖司委員長 奈良治二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/20
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021・奈良治二
○奈良委員 外資導入は、昨年実施当時非常に大きな期待を持たれておつたのでありますけれども、予期の通りの実績が上つていないように考えられるのであります。これは單に届出または認可の制度だとか、あるいは各種の制限を緩和する、廃止する、あるいはまた外国人の財産取得や配当金その他の送金の保障というようなことだけで、盛んになるとは考えられないのでありまして、やはりわが国の経済的な安定と自立の見通しがなければ、盛んになるものではないと思います。これについて当面伝えられております日米経済提携がどうなるかということは、きわめて重要なことだと考えられるのであります。そこでこの日米経済提携という問題に対しての政府のお考えやら、見通しやらをお伺いしたいのでありますが、これに関連しまして、外資導入の今後の見通し、また政府はこれに対してどんな対策を講ずるお考でありますか、できるだけ具体的に御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/21
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022・小峯柳多
○小峯政府委員 まつたく御指摘の通りでありまして、小さい法律の末節を改めましても、外資が積極的に入つて来るものだとは考えておりません。ただこの法律の範囲内でこう改めますれば、多少でも入り方が積極的になるだろう。先ほど事務当局から説明がありましたように、現に單純な投資、筋は通つておりましても、投資計画の一部でないという意味で不認可になつたような例もありますので、わずかではありますが、その点も改善したいというのが改正案のねらいであります。しかし本格的にはこれまた御指摘の通り、日本の経済の安定及び日本の経済の復興状態、経済の実態というものに中身が入つて参りませんならば、最も臆病である資金が流れて来るはずがないと思います。しかしそれに多少加わつて、日本の経済の復興を助けながら入れるというようなことになりますと、これまた御指摘の通り、経済協力の問題だろうと思います。しかし経済協力の問題はいろいろとりざたされておりますが、まだ実は公式な折衝は、政府としましては受取つていないのであります。ただ私どもはそういう形の協力が、日本の自立経済計画に、著しい齟齬を来すような形ではまずいのだと考えておりまして、私どもが描きました自立経済計画を、その相互関係をくずすことなく促進されるような経済協力が好ましいと考えております。従つてそういうようなお話があり、われわれがねらつておる自立経済計画にも大きな齟齬を来さぬように、あの相互関係を維持しながら促進されるようなら喜んでお話に応ずるのでありますが、また公式な折衝がないのであります。しかし方向としてはそういうような方向に行き、その方向を通じて外資が入つて来るときが、一番本格的な外資導入の問題となるのだろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/22
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023・奈良治二
○奈良委員 外資の導入が予定のようにできないということの原因がどんなところにあるとお考えになるか、率直にお話願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/23
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024・小峯柳多
○小峯政府委員 私は、まだ資本が安心して日本の経済にとどまるほどに、日本の経済の実態は固まつていないと思うのであります。私どもも安定計画を進めて参りまして、安定の緒にはついて参つておりますが、なお産業界が安定するという段階には、相当いろいろの問題があると思います。しかし長い間かかつて築き上げた日本の経済を、戰争で一朝にして灰燼に帰しておるのでありますから、そういう問題が改まりません限り、なかなか本格的には参らぬと思います。また同時に、これは国際的な條件もあるわけでありまして、御承知のように、いろいろな国防生産なんかの問題がありまして、外国に対する投資が、まだ正常な意味において国際的にも見直される時期に至つてないのだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/24
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025・奈良治二
○奈良委員 公式な日米経済提携の申入れがないというようにおつしやいますけれども、巷間いろいろ伝えるところには、何かしら根拠があると考えますが、そのアウト・ラインみたいなものだけでも御説明願えませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/25
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026・小峯柳多
○小峯政府委員 巷間伝えられるところは私どもも承つておりますが、確かにそれは根拠のないことではないと思います。正式に交渉を受けておりませんが、講和会議に入りまして、お互いに友好国としてつき合いを始めますれば、日本に対する経済の実態も、もつとはつきりわかつて参りましよう。また日本の適地産業として伸ばし得る産業もあると思います。たとえば設備なくとも、資材のかませ方いかんでは、もつと産業の生産指数の上る面もありましよう。また労力も、日本の状態から、もつと有効に活用する方法もありましよう。お互いに長所をよく生かしながら経済提携をするというのは、講和後の平和態勢から当然必要なことだと考えますので、そういう根本的な理念からいつても、経済協力は講和会議を契機として、当然進められる問題である。そういう大道に即した巷間のお話でありますので、私どももそういうことはあり得ると考えますが、ただ政府に対し、正式な折衝がないものですから、この場でお答えするまでに至つてないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/26
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027・奈良治二
○奈良委員 公式な折衝がないものを、しいてしつこくお尋ねするのもどうかと思いますけれども、ことに電源開発の問題なんか、かなり具体的な新聞報道があるのでありますが、この電源開発の外資について、政府としてのお考えをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/27
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028・小峯柳多
○小峯政府委員 御承知のように、日本の電力事業は、過去においても外資の力によりまして相当促進されて来ましたことは事実であります。また大観いたしまするならば、日本の経済の特色は、私はやはり電源にあるのではないかと思います。この電源開発の問題は、経済協力というふうな、最近伝わつておるような問題と一応関係なしにでも、日本の電源の非常に條件のいいことを考えまして、先般これも非公式でありますが、民間の技術者がおいでになつて、日本の電源を下調べしてくれたこともございます。只見川あるいは四国などにも、その人が行つたことも事実であります。そういう意味で、私どもは、日本の経済の一番根本的特色である、しかも潜在資源である水というものを、ぜひ外資の力で生かしたいという考え方でありますから、お話がありますれば、日本の産業の自主性をそこなわないという範囲で、十分お話を承り、むしろ力を借りるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/28
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029・圖司安正
○圖司委員長 多田勇君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/29
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030・多田勇
○多田委員 ただいま大体御質問がございましたので、私は一、二お伺いしたいと思います。先ほど政務次官から、外資導入が活発に行われない原因についていろいろお話がありましたが、外資の導入が活発に行われないという具体的な障害となるべきような点は、どういう点であるか、またその障害となるべきような点を除去するための方策としては、今後どういう方法をとつて行かれるか、その点についての政府の見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/30
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031・小峯柳多
○小峯政府委員 先ほどもお答えいたしたのでありますが、結局信用の問題だろうと思います。日本の経済の実態に対する信用、あるいはまた日本に投資しました場合の果実の送金、あるいは投資の元本の保障に関する信用、要は日本の経済力が国際的に見て一人前になるかどうかの問題であろうと思います。こまかい技術的な点でいろいろ支障のあります点は、今御審議を願つておるような形で、徐々に改善をして参つておるつもりでありますが、根本的には、何といつても日本の経済がまだ復興途上にある。安定途上にある。完全なる意味において一人前になつていないという意味だろうと思います。しかも戰争というふうなことで、資本に対するお互いの約束というものを、一時中断しましたことも御承知の通りであります。そういう意味で、総合的な意味の信用度を高める以外に、根本的に外資を導入する方法はないのでありまして、一口に言えば、信用の確立、具体的に日本の産業に中身をつける。そしてまた約束を十分にどこまでも果し得るような、国際経済道義というふうなものを、事実をもつて見ていただく以外に方法はないのではないか、ただ経済協力という、伝えられるような問題が出て参りますれば、そういう意味で、私ども考えておる信用というものが、政治的にも多少進められるということは、考慮に入れていいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/31
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032・多田勇
○多田委員 御説ごもつともだと思いますが、外資の導入について、特に日本の経済がそのためにこうむる影響が非常に大きいというような見地から、特に阻害しておると申しますか、あるいは外資の導入を希望しないというような意向が現在までどの程度あつたか、その点伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/32
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033・小峯柳多
○小峯政府委員 今申し上げましたことのほかに、たとえば独占禁止法の問題、事業者団体法の問題等も、やはり外資の入り方にさしさわりになつておる面があるように考えます。そういう技術的な問題も当然改正して参るつもりでありますが、まだ関係筋との了解が得られませんままに、一応今お手元にさし上げたような形の、小範囲の改正にとどめておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/33
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034・多田勇
○多田委員 外資の導入について今お尋ねしました点は、外資を導入したいという相手方からの希望があつても、それに対して外資を導入することに賛成できないというような意向が、どの程度あつたかということをお尋ねしたのでありますが、それに関連しまして、日本の産業機構を近代化するためには、どうしても積極的に外資を導入しなければならないということは、先ほど来政務次官も言われた通りであります。これらの、たとえば電源の開発あるいは鉄鋼業等の規模の改善、その他日本の基礎産業の設備を近代化するために、外資の積極的な導入をはからなければならないと考えていますが、それに対して、政府はどのような対策あるいは見通しを持つておるか。あるいはまた現在、たとえば川崎製鉄が新しい製鉄所をつくるという場合に、これはアメリカの新しい技術、設備を導入しようという考え方のようでございますが、これらに対して、現在どの程度の話があるか、またそれに対する政府の考えをお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/34
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035・小峯柳多
○小峯政府委員 詳細は事務当局から答えていただきますが、御指摘のように、基礎産業に関しまして、特に設備の近代化をいたさなければ、日本の産業というものは基礎構造として非常に弱くなつてしまうと思います。そこで最近、基礎産業が比較的好況に惠まれておりますので、その自己資本による近代化は十分いたしております。またそのために、税金、償却その他の面でも考慮を続けて参るつもりであります。また見返り資金、あるいは近く御審議をお願いする予定になつております開発銀行等においても、その線は推進するつもりであります。また技術的にいろいろお話があり、すでに話の進んでおるのもありますので、單に資金という意味でなしに、技術の導入ということも話合いはつけて参るつもりであります。しかし一番大きく期待されますのはやはり——まだ具体的には何も聞いてはおらないということは、先ほど申し上げた通りでありますが、経済協力というような面が出て来ましたときに、ややそれを本格的に進める。しかしそのことの前にできるだけ、今申し上げましたような点を総合的に実施をしまして、近代化を促進いたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/35
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036・多田勇
○多田委員 事務局のこの表を見ますと、外資の導入の形態が、技術援助がほとんどその主たるものになつております。技術援助が主たるものであつて、実際の投資が活発に行われないというような理由は、先ほど政務次官から、日本の経済が安定しないという点を強く主張されたのでありますが、この点については、投資と技術の援助、これは日本の経済の実態を考えれば、同じような條件に考えてもいいと思います。ことに技術援助が活発に行われて、一方投資が不活発だという理由について、政府の見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/36
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037・小峯柳多
○小峯政府委員 手を入れれば見込みがある。そうしてやや見通しがついても、資金というふうなことは、これは好意を持つて見て下さる場合当然だろうと思います。少し手を入れて成長さしてからというふうなことになるのではないだろうかと思いますが、技術よりは資金自体の方が、保守的のものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/37
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038・多田勇
○多田委員 海外送金の問題が、外資導入を非常に阻害する点になると思いますが、大体海外送金は、どのような基準で線を引こうという考えでおりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/38
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039・小峯柳多
○小峯政府委員 ただいままで事務当局から御説明がありましたような、この法律によるものはおのずからその線になるのでありますが、その扱い方の関係等については、事務当局から申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/39
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040・賀屋正雄
○賀屋政府委員 外資導入によりまして、海外邊金の保障をいたす道が開かれたわけでありますが、ただその場合、どのような基準でもつてこれを認めるかという点につきましては、いろいろ研究もいたし、問題にいたしたわけであります。たとえば貸付金の利子なら何パーセント、それから配当金であれば何割というふうな基準をつくつてはどうか、というような議論もいたされたのでありますが、たとえば金利でありますれば、一割まではいいということにかりにいたしますれば、むしろ低くて、六、七分程度で入ろうというふうに考えておりました外資でも、一割まで認めれば一割でというようなことにもなりましようし、また基準をあまり低くいたしまして、これを外部に公表いたしますれば、これしか認められないならば差控えるというような考えも起ります。また業種別によりまして、どの業種が幾らというふうな差別を設けますことも、非常に技術的な困難もございますので、結局は第八條にありますような基準によりまして、非常に抽象的ではありますが、その後のケースについておのおののメリットを考えまして、その具体的なケースにあたつて、その希望するところもよく聞きまして決定いたす方が、むしろ実際的ではないかというふうに考えまして、別段はつきり何分というようなきまつた基準は設けておらないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/40
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041・多田勇
○多田委員 海外送金はる一定の線が引かれ、認可について相当検討された上できめられるようでありますが、海外送金をされた以外の、国内に蓄積せられましたそれらの資金を、将来どういうふうな取扱いをするように考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/41
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042・賀屋正雄
○賀屋政府委員 国内に蓄積されます円資金でありますが、これは広く国際收支という面からいたしますれば、結局はいつかは外貨にかえてほしいという要求が出るべき性質のものでございますので、その意味から申しますれば、外国人が日本で円貨を持つておることは、国際收支の面では、それだけ日本が外国に対して債務を負つておるという関係になるわけでございます。従いまして、私どもの実際の事務の処理の点から言いますれば、日本でさしあたり円だけで持つて、海外には送金しないから、これだけの投資をしたいというようなことを申して参りまして、特に送金をしないから、円で保有しておるだけだからというので、別に基準を軽く扱つて認可するというようなことはいたさない考えでありまして、国内の円資金につきましては、相当愼重な考慮を払うようにいたしたのであります。このたまりました円は、結局は為替管理の一般の原則に従つて、送金の許可、認可等がきまつておるわけでありまして、現状におきましては、ドルその他の外貨への交換につきましては、制限的な態度で臨んでおるわけであります。ことに国内にたまりました円につきましても、いろいろ業種によつて和類があるわけであります。たとえば御承知の映画の事業をやります上におきまして、外国映画の事業は、相当日本の円が蓄積されておるのであります。その他、いろいろな観光、出版関係によつてたまりました円貨も、相当な金額に上つておるように聞いておるのであります。こういつた種類の事業からたまりました円貨につきましては、特に弘報宣伝関係の事業といたしましては、いわゆる宣撫工作的な意味の事業から、たまりました円貨でもありますので、これを一概にすぐドル貨に交換することを認めますことは、非常に問題ではなかろうかと考えておりまして、これは将来の研究の課題だと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/42
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043・多田勇
○多田委員 現在外国人の所有に帰すべき範囲の円貨、どの程度あるか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/43
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044・賀屋正雄
○賀屋政府委員 これはまだ詳細な資料が整つておりませんし、なかなか調査が困難な点もございますので、具体的な金額を申し上げる準備を持ち合しておりませんが、この点につきましても、私どもの方の面接の責任ではございませんが、大蔵省等とも連絡いたしまして、資料の收集については話合いをいたしまして、準備を進めて行きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/44
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045・多田勇
○多田委員 時間がないようでありますから、最後に一つ、財産取得令に基くいろいろな援助契約の中に、一定割合受領の権利ということがございますが、これは相当強い條件を相手方から出して来ておるために、せつかく外資が導入されても、企業として非常な圧迫を受けるような傾向があるというような話を聞いておるのでありますが、そういつた傾向がないかどうか。現在外資の導入によつて契約されたその契約の内容は、日本の経済にとつて妥当なものであるという見解であるか、あるいはこの程度はやむを得ないというような、ある程度無理な契約がなされておるような点がないかどうか、その点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/45
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046・賀屋正雄
○賀屋政府委員 ただいままでに処理いたしましたところにつきましては、向うの條件を認めました結果、日本の受入れ会社が、非常に経営が苦しくなるというようなケースはございません。ただまだ正式な申請書に至りません間におきまして、私どもいろいろ相談を受けるような場合はあるのでありますが、そういつた場合におきましても、非公式に私どもの方の意見を申し上げまして、そうして適切な注意を與えて、向う側と再三折衝をいたしました結果、だんだん條件がよくなつて参りまして、当初向うが要求いたしましたものに比べて、格段に、日本の経済にとつては有利な條件になつておるというようなケースは一、二ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/46
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047・圖司安正
○圖司委員長 ほかに御質疑がなければ、この際お諮りいたします。本案に対する質疑はこの程度をもつて打切り、討論を省略し、ただちに採決に入りたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/47
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048・圖司安正
○圖司委員長 御異議なしと認めます。
それでは、これより本案の採決に入ります。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/48
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049・圖司安正
○圖司委員長 起立総員。よつて本案は、原案の通り可決いたしました。
なお本案に対する委員会報告書その他の取扱いについては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/49
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050・圖司安正
○圖司委員長 御異議なしと認めまして、さようとりはからいます。
本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。
午後零時五十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01619510320/50
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