1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十七年四月一日(火曜日)
午前十一時二十九分開議
出席委員
委員長 八木 一郎君
理事 青木 正君 理事 大内 一郎君
理事 船田 享二君 理事 鈴木 義男君
川端 佳夫君 鈴木 明良君
坪川 信三君 橋本 龍伍君
平井 義一君 平澤 長吉君
平川 篤雄君 松岡 駒吉君
今野 武雄君
出席国務大臣
国 務 大 臣 大橋 武夫君
出席政府委員
警察予備隊本部
次長 江口見登留君
警察予備隊本部
裝備局長 中村 卓君
警察予備隊本部
経理局長 窪谷 直光君
委員外の出席者
警察予備隊本部
長官官房文書課
長 麻生 茂君
專 門 員 龜卦川 浩君
專 門 員 小關 紹夫君
—————————————
四月一日
委員田中萬逸君、山口喜久一郎君及び山口六郎
次君辞任につき、その補欠として坪川信三君、
平井義一君及び川端佳夫君が議長の指名で委員
に選任された。
—————————————
本日の会議に付した事件
警察予備隊令の一部を改正する等の法律案(内
閣提出第一二四号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304889X01419520401/0
-
001・八木一郎
○八木委員長 これより会議を開きます。本日は警察予備隊令の一部を改正する等の法律案内閣提出(第一二四号)を議題といたし、討論、採決を行います。討論の通告がありますから、これを許します。鈴木義男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304889X01419520401/1
-
002・鈴木義男
○鈴木(義)委員 この警察予備隊の改正法律案につきましては、わが党は警察予備隊のあり方について、根本的に違つた考えを持つておりますのと、その他の理由等をもちまして、反対いたすものであります。
国内の治安維持のためには、警察力の強化を必要とすることはもちろんであります。ことに軍隊のない国において、国内治安を維持するというのには、ある程度装備を持つた、機動的に働く警察力の必要なることは認めるのであります。今日の国警、自治警等がはなはだ弱体、不活発なものであり、一向能率を上げておらないということに対しては、われわれ遺憾に存じておるのでありまして、何らかの形でこれを強化しなければならぬということは考えておりまするが、しかし現在の警察予備隊というような形のものは憲法にも違反いたしまするし、また適当なものでないと信じておるわけであります。そうしてこれをもし外敵に対する防衛力であるといたしまするならば、軍隊を持たないということは憲法の規定しておるところであり、諸般の情勢から見て、眞に日本を領土的に侵略奪取するというようなものが現われるという予想が立てられない限り、みだりに持つべきでない。また持つといたしましても、それはアメリカの軍隊が駐留するといたしましても、これに匹敵し、それ以上の数と武装とを持つた近代的軍隊でなければ、そういう外敵に対して国を守り得るようなものはあり得ないと思うのでありまするから、その意味においても軽々にかくのごときものを考えるべきでない。かりに百歩を讓つて、若干の日本侵略の危険があるといたしましても、日本の財政は今日これを許さないということは、何人が考えても明らかなことでありまして、軍備などは今考えるときではない。国民各自の正当防衛権の行使という程度にとどめるべきであるというふうに考えるわけであります。むろんアメリカとソヴエト、あるいは資本主義圏と共産主義圏、あるいは西欧民主主義陣営と共産主義陣営との対立ということは、これは厳然たる事実であります。しかしそれでも、私どもは近いところでこの大規模な第三次世界大戰というようなものがあるとは考えておらないのでありまして、ソ連などはいかにもやるようなかつこうをいたしまして、アメリカをして非常な神経過敏に陷らせ、再軍備に狂奔せしめまして、そうして有史以来八百億ドルというまれに見る大予算を組んで、全世界に向つてこの再軍備の促進をいたしておるわけであります。これはあたかもソビエトの思うつぼであつてもつともつとアメリカが軍備のために金を使いますならば、おそらくソビエトから見てはその希望するところにはまると思うのでありまして、ほぼ軍備が最高潮に達したというので、ソビエトは今度は中和攻勢に轉じて盛んに、平和を主張することは御承知の通りであります。現にモスクワでは世界資本主義の代表者を集めて経済会議を開いて平和なる取式の再開をやろうというような提案をいたしているわけであります。スターリンは資本主義と共産主義の共存の可能ということを宣言いたして共産主義と資本主義とは必ずしもけんかせずにやつて行ける、こういうまあ共産主義世界統一論から言えば非常な逆説でありますけれども、そういうことを申しておるくらいであります。かりに本音がどこにあるにいたしましても今のソビエトなり、共産圏が、現在の状況において、お互いに非常に充実した武力を持つて、乾坤一擲の大ばくちを打つとは考えられないことであります。もしこの戦いに破れることがありますならば、どちらの陣営にせよ、まつたく世界が一方的に統一されるのでありまして、共産の陣営から云えば共産主義が地上から抹殺される危険があるわけであります。そういう危険を冒してまでもやるとは考えられないわけであります。それほど愚かではないと考えるわけであります。おそらくアメリカの国内でもすでにそういう輿論が強いようであります。あまりに軍備に力を入れ過ぎておる、平和産業にもつと力を入れなければならぬということでだんだんまた縮小—急に縮小することはパニツクを伴い、いろいろな経済上の破綻を伴いますから、これはできない。だんだん減退して行つて、再び平和産業にもどろうとするころ、再びソビエトなり、共産圏は大いにやるという態勢を示して、また再軍備に奔命に疲れさせる、こういう態度に出るであろうことは共産の戦略にかんがみて容易に予見されるところであります。ゆえにこういう形でだんだん冷たい戦争が継続されて行くと思うのでありまして、熱い戦争にはなかなかならない。日本がこの片棒をかつぐというようなことは愚かであり、またその段階にないということを私どもは信じまするがゆえに、決して再軍備、あるいは再軍備に近いことを考えるべきでない。ひたすら国内の経済復興のために全力を傾注すべき段階である。少くもここ数年はそういう段階である。こういう考え方であります。そこで日本の安全は、あくまでもわれわれの信ずるところは、集団保障の一員に入りまして、そうしてこの国際的な安全保障にたよるほかはないわけであります。その場合に日本の軍隊を供出せずしてこの集団安全保障の恩恵に浴する、それはあまり蟲がよ過ぎるではないかというのが一般の考え方であり、議論でありますが、私どもはそうは思わないのでありまして、現に軍備なくして国際連合に参加しておる国も二、三あるのでありまして、日本はその点について厳粛に全世界に向つて約束をいたしたのでありますから、軍隊以外の道においてこの集団保障に貢献することが日本のとるべき道である。かように考えておるわけであります。国際警察軍はまだ少しもその形を持つておらないということは事実でありますが、日本がやはりこの二大陣営の争いの渦中にあつて、そうして片棒をかつぐということであれば、いずれの日に真に軍備なき国を守る国際警察—国際警察軍なるものは軍備なき国を守るためにつくろうとしておる。これは国際政治における理念でありまして、どの国もみな軍備をもつてやるというなら国際的封建主義を継続して行くことになりまして、決してこの国家連合の理念は達成される日は来ないわけであります。日本は過去において非常なあやまちを犯しただけでなく、私は罪悪を犯したものであると考えておるわけでありまして、これを償うの道は一つ、軍備以外の点において世界平和に寄與するとともに世界の安全を守る道を打開するために、微力なりといえども貢献することが、日本国民の世界に対する一つの使命である。こういうふうに考えるものでありまして、言うに足らざるおもちやの兵隊に近いような防衛力をもつて世界平和に寄與せんとするがごときは、むしろ笑うべき態度であるといわざるを得ないのであります。のみならず、半呑半吐の警察なり軍隊というようなものは国内共産革命の有効な手段となるのでありまして、ソビエトが日本に約二十個師団に近い軍隊を許せということを講和条件の一つに提議しておりますようなことは、皮肉な見方をもつてしますれば、日本において共産革命を促進する手段となるということを予見しておるためであると申すことができると思うのであります。ブルガリアにせよ、ルーマニアにせよ、チエコスロヴアキアにせよ、ポーランドにせよ、みな当時の軍隊と警察とが共産党の味方となつて一夜のうちに革命は成功した。もしああいう軍隊がなければ、たとい上層部だけを殺したり、おどかしたりいたしまして、あと下の方を味方に引入れて、革命をたやすく成功させようといたしましてもできないわけであります。そういう意味においても、私は半呑半吐の防衛力というものは、共産革命を促進する効能こそあれ、これを阻止する力はないということを信ずるものでありまして、ますますそういうものを設けることには反対であります。それだけの余力があるならば、結局一千八百億といい、二千億と申しまするが、日本の現在の貧弱なる財政においては厖大なる金であります。そういうものを生産力増強と生活の安定と向上とのために、少しでもある余裕はこれをささげる、これは国際的にも十分に主張して少しもさしつかえのない議論であると私どもは考えておるわけであります。従つてこの警察予備隊令を改正する法律案というものは一見大したものではないように見えまするけれども、予備隊の隊員をさらに三万五千増加する。そして政府御答弁の中にも見えるように、将来は名称をかえるだけと言うけれども、それによつて一種の軍隊化する危険性を持つておる保安隊に編成がえをするということが予見されておるのでありまするから、私どもは賛成するわけに行かぬのであります。むしろわれわれの立場から言うならば、今日の警察予備隊も、国家警察、自治体警察と分離して独立の軍隊まがいの予備隊としておかないで、それそぞれの必要なる装備を持たせたまま機動的な国家警察の一部として場合によつては自治体警察の一部として編入して、真の意味における警察力の増強に資すべきであると考えております。それが今日の無力なる国家警察自治体警察に筋金を入れることにも相なる、かように考えておるのであります。従つて今回の改正案は、三万五千人を増員するというのでありまして、それはとうてい賛成いたしかねるところであります。その他募集の方法等につきましても若干の憂慮がありまするので、いろいろな見地からここに本法案に対しては、日本社会党といたしましては賛成いたしかねる、反対であるということを表明いたすものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304889X01419520401/2
-
003・八木一郎
○八木委員長 青木正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304889X01419520401/3
-
004・青木正
○青木(正)委員 私は自由党を代表いたしまして警察予備隊令の一部改正案に賛成いたすものであります。ただいま鈴木委員の反対の御意見を承つておりますると予備隊が憲法九条で禁ぜられておる戦力であるというような前提に立つての御所論のように承るのであります、がしかしながら私どもはさようには考えないのであります言うまでもなく警察予備隊は、警察予備隊令第一条に規定してあるごとく、わが国の平和と秩序を維持し、公共の福祉を守るためにできておるのであります。鈴木委員も御指摘のごとく、今日の国際情勢に処しまして日本の独立を守るために、いわゆる直接侵略、外敵の侵略に対しましては、御指摘のごとく日本の財政状態から見まして、なかなか現実の問題としては困難であることはお話の通りであります。そこでわが国といたしましては、日米防衛協定によつてそうした安全保障の道を考えておるのでありますが、国内につきましては、これはやはりいよいよ講和が発効した後の国内治安ということを考えまするときに、やはり日本は日本としてみずからの力でできるだけ国内治安の維持をはかるということは、これは当然過ぎるほど当然のことであります。さような意味で講和条約の発効後の国内治安という問題を考えてみまするときに、現在の警察予備隊の力をもつてしては不十分であるということは、これはいろいろ御議論はあると思うのでありますが大局から見ておそらくどなたも反対のないところと思うのであります。さような意味で今回新たに三万五千の増員ということは、現在の日本の情勢から見まして、私どもはこの程度の増員は真にやむを得ないもの、かように存ずるのであります。従いまして今回の改正は、法制的にも、また現実の面から見ましても、私どもは最も妥当なものと存ずるのであります。なおその他の改正につきましては、増員に伴い、さらにまた今後の警察予備隊の機能を十分に発揮させるために機構の若干の改正、さらにまた募集につきまして地方公共団体にある程度の仕事を委嘱するという程度のものであります。従つてその他の問題につきましても、私どもは今回の改正は最も妥当なものと信ずる次第であります。
簡単でありますが、以上をもつて本案に賛成の理由といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304889X01419520401/4
-
005・八木一郎
○八木委員長 平川君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304889X01419520401/5
-
006・平川篤雄
○平川委員 改進党を代表いたしまして、反対の意向を表明いたします。
われわれは自衛力の必要ということを認めないものではないのであります。ただいま鈴木委員からお話がございましたが、その点には同意の点もあり、また反対の点もあるのであります。大体最小限に考えましても、終戦直後に、例のいわゆる二・一ストというものが起つたのでありますが、かような事態が今後起らないとはだれも保証できない。まつたくこれは国内的な問題でありますが、さような問題一つ起りましても、ただいまの普通警察のみではとうてい国家の大混乱を阻止することはできないということを私は認めざるを得ないと思うのであります。また外国の教唆等におきましても、これも当然あり得ると私は思うのであります。ないとして断定することはだれもできないのであります。学者とか宗教家ならばいざ知らず、生身の日本国民の生命を預かつております政治家といたしましては、最悪の事態を常に予想して賢明に対処しなければならぬことは私は当然だと思うのであります。かような意味におきまして、たとい政府がよく言われますジエツト機やあるいは原子爆弾を備えるような軍備でないにいたしましても、国内に侵略の手が伸びたというような場合に、これを海岸線において阻止し得る程度の自衛力というものは、これは私は当然持たなければならないものだと思うのであります。その点におきまして私は今回の警察予備隊の増員は、実質的には少いと考えこそすれ、決して多いとは思わないのであります。けれども先般来いろいろ問題になつておりますように私どもが要望いたしております自衛力の漸増というものは、いろいろな点に考慮を払つておるのであつて第一番には、どこまでも自主的な自衛力でなくてはならぬと思う。なるほで自主的な自衛力というようなことになりますれば、いろいろむずかしい問題はありましよう。ただいまのように武器をアメリカから借り、しかも行政協定におきましては、緊急非常事態の発生をいたしたような際には、両国政府が話し合うということになつて、一体どこに指揮権があるものやら何やらわからない。あるいは事態が急迫をいたしまして米軍が出動する、おい、お前のを出してくれというような相談も何もないというような事態も起こらぬとも限らない。かようなことを考えてみますときに、私どもは、これは必ずしも自主的な国内の防衛であるとは思えないのであります。また今回の方面隊の設置なんかにつきましても、十分に聞きただすことができないのでありますが、それの配置等におきましては、やはり憲法第九条の範囲を逸脱をいたしまして、外国を相手にいたしたところの防衛隊であるように考えられるのであります。また今回の増員が政府の言つておりますところによれば単なる警察予備隊の増員であると言つておりますけれども、だれしもこれは率直に見まして、いわゆる再軍備への漸増であるということは明らかなのであります。かようなことに私どもが反対をいたしますのは、一つには経済的な理由であります。それはどういうことかというと、私、鈴木さんとその点は意見が違うのでありますが、必ずしも近代職を戦い得るような軍備が必要であるとは思わないのであります。しかしながら列国の共同防衛の態勢の中において、いわゆる最小限の防衛力というものは、これは考えることができるのであります。しかもその最小限の防衛力というものは、時間をかけましてなしくずし的にやることこそ日本の最も賢明な道であると思うのであります。もうすでにそういう危険が予想せられております以上は、政府も何やらわからない防衛負担金であるとか、安全保障諸費であるというようなものを米国政府の要求通りに出すというようなばかなことは、しないで、みずからの計画をもつてやるべきであると思うのです。いよいよアメリカが撤退をいたしますような際には、駐留をやめますときには、元も子もないすつからかんの日本の防衛力であるということを私どもはおそれるのであります。ほんのわずかでも、十分の一ずつでもいいからこれをためて行きたいというのが、われわれの考え方であります。それが結局日本の経済をこわさないと同時に、早く自衛力を充実さして行く道である、こういうふうに思う、これが一点であります。
それからさらに先ほども申しますように、ほんとうの、国民自体が真に国の危難はみずからの力で守らなきやならぬという気魂のこもつた防衛力を私どもはつくりたいのであります。ところが今政府のやつております態度から出て来るものは、これは混乱と疑惑以外にはない。こういうような状態では、国民の自国を守ろうというような意欲が高まるはずがないのであります。しかも思いに反してこれが反米的な空気になりつつあるということは、これはアメリカに対しましても必ずしも当を得た態度ではないと考えるのであります。かような意味におきまして、今回の予算案の審議にあたりましても、われわれは安全保障諸費、防衛負担金等の中には、まだ内容を明らかにし、かつその中に幾分わが国自体の計画にまわし得るものがあるかと考えまして、これが究明に乗り出したのでありますが、しかし政府の答弁からは、明らかなものを得られなかつたので、予算案には、この安全保障諸費、防衛負担金の問題を中心にして私どもは賛成の意を表するわけには行かなかつたのであります。従いまして、今回の防衛隊の増員にあたりましても、われわれは、政府のそうした行政協定、安全保障条約あるいはさかのぼつて平和条約、憲法第九条の問題、かような問題についての不明朗なる態度から生れ出ました今回の改正案については、どうしても賛成をすることはできないのであります。私どもは、そういうような観点に立ちまして本案には反対をいたすわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304889X01419520401/6
-
007・八木一郎
○八木委員長 今野武雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304889X01419520401/7
-
008・今野武雄
○今野委員 私は日本共産党を代表いたしまして本案に対して反対の意を申し述べます。
反対の第一点は、この警察予備隊それ自身が、実は日本の憲法に反し、またポツダム宣言を蹂躙し、それから日本の国民生活を破壊する再軍備であり、今回の案は、さらにそれを充実させようとするものであるからであります。政府では、これを盛んに再軍備ではない、軍備ではないということを口をきわめて言つておるのでありまするが、これは警察予備隊を創設した当面の責任者であるマツカーサー初め、アメリカの政治界、あるいは軍人あるいは官僚、あらゆる人々の一致した指導的な意見であります。それからまた日本においても、自由党並びに政府を除くあらゆる輿論は、全部これを軍備と認めておるわけであります。現に本日も、ニツポン・タイムスを見てみますると、APの特派員のジヨン・フジイ君が北海道を視察に参りまして、北海道の予備隊の状況をつぶさに報道しておりまするが、これによれば、従来戰前における日本の軍隊の欠陥であつた機動性、それから通信連絡の不十分さ、こういうものを十分補つて、さらに前よりも強力な軍隊になつておるということをるる実例をあげて述べております。そうしてフジイ君は、予備隊の各員に対して質問しておるわけでありまするが、その質問に対する答によれば、われわれは最初は警察官という気持で入つて来た。しかし今では軍隊である。つまり外国の侵略に対する防衛をするんだという気持がはつきりして来ておる。こういうことを異口同音に述べておるということも報道されております。そうして現にいろいろな演習などにいたしましても、相当国民に損害をかけてまで、たとえば山林を荒すとか、その他非常な猛烈な演習をやつておる。これはとうてい普通の警察あるいはその力を補給する、そういう種類のものではない。武器から申しましても、カービン銃とかライフル銃というもののほかに、ロケツト弾発射器あるいは飛行機、戦車なども備えるというようなことになつておりまして、こういうことになりますれば、これはインドネシアや何かの軍隊よりは、はるかに上等な軍隊であるということが言えるわけであります。そういうようにして、これは自由党と吉田内閣は国民をごまかし、世界の輿論をごまかすつもりでおるかもしれませんが、世界は決してごまかされない。日本人もごまかされない。りつぱな軍備であり、憲法蹂躙であり、ポツダム宣言蹂躙であり、国民生活を蹂躙するものである、こういう点において反対なのであります。
第二に、これは単なる軍隊ではなくして、外国の軍隊であるということであります。これはアイケルバーガー初めアメリカの将軍達がみんな口をそろえて、日本の人的資源を利用しなければ極東戦略は成り立たないということを論じております。そしてそのためにつくられたアメリカの軍隊であるということ、その最も明白な証拠は、今のジヨン・フジイ君の書いた中にも、またわれわれが得たいろいろな情報によつても、また警察予備隊員自身が語るところによつても、予備隊を指揮しているものは外国の将校であるということで明らかであります。しかも武器に至つては外国の将校が管理して、演習をするときには外国の将校がかぎをあけて倉から出し、そして演習が終れば数を調べて外国の将校が倉へしまう、これは大橋君自身きのう認められておるところでありますが、さようなことによつて、これはまつたく日本人自身の、独自の意思によつては発動できないような、そういう外国の軍隊である。しかも行政協定においても秘密協定がございます。二十四条には非常な事態の場合には話し合うということになつておりまするが、この日本の防衛を要するような非常事態というのは、はたしていかなる事態であるか、それが非常な問題であります。現にアメリカの輿論では、朝鮮の戦争は日本の防衛戦争であると言われておる。そして現に極東空軍は日本防衛空軍となり、それから第七艦隊は日本防衛艦隊というふうになつて来ておる、現在の状態がつまり非常事態であり、そして日本の防衛を要する事態である、こういうふうになれば、現に警察予備隊がアメリカの司令官の指揮下にあるとしてもこれはふしぎはない。二十四条に書いてあることは将来の問題ではなくして。現にもうそうなつておるのです。そういうようにしてすでにアメリカの指揮下にある外国の軍隊である。しかもそういうような軍隊の費用を、国民の生活を苦しめた税金で—災害復旧とか教育の奨励とかそういうことに使う金まで節約して、そして再軍備に血道を上げている。このことはまさに日本国民の敵であり、同時にこれによつて脅威を受けるアジア諸国民の敵である、こう言わざるを得ないわけであります。
第三に、今申しましたところの裏づけとなるアメリカの極東戦略についてでありまするが、アメリカではアジア統一軍をつくるということが盛んに論議されておる。現に吉田首相もダレス氏の慫慂によつて二月二十四日にダレス氏あてに手紙を出しております。そしてアジア統一軍をつくるということはこちらからの要請である、日本国民の要請であるというようなそういうばかげた手紙を出しておる。しかしてそのアジア統一軍なるものの内容を見れば、日本が二十万、蒋介石の台湾が二十万、キリノのフイリピンが十万、李承晩の韓国が十万、こういうようなふざけきつたものでありまして、一体これがアジア統一軍なんというりつぱな名前に値するものかどうか、これはとんでもないものであります。何が統一であるか。ああいう敗残兵、台湾におる敗残兵。それからフイリピンでは内乱がすでに起つておる。農民がみんなアメリカの買弁になつておる政府に反抗して内乱さえ起つておる。それから朝鮮における李承晩は、国民からはすつかり見捨てらておれるということは、外国の報道員もみんなしろしておるところでありますが、そういうような腐り切つたものを集めて統一軍をつくるというのであります。日本でも吉田首相、それから大橋国務大臣、これはやはり腐敗の親玉と言つていいと思うのであります。二重煙突で有名な大橋国務大臣が、この軍隊の大将になるのでありますから、これは大したものだろうと思うのです。そういうような腐敗と売国という点においてのみ統一されておるような、そういうアジア統一軍なんというのは、これは実に笑うにたえたものでありますが、そういうものによつて中ソに対して戦いをしかけろということは、これはだれが聞いたつてどうにもならぬものであります。そういうような道具に使われる。その実は何であるかといえば、そういう名のもとにアメリカが日本を永久に植民地にして占領しておく、こういうようなことのために利用されておるにすぎないわけであります。
それから第四に、それではそういう中ソの方でははたして侵略政策をとつておるかどうかということであります。ソビエトが侵略するとか、ソビエトの侵略政策ということがよく言われるけれども、そういうような問題が一体真実にどこにあるというのです、どこの世界をソビエトは侵略したか。(「朝鮮戦争はどうだ」と呼ぶ者あり)朝鮮の戦争のことをよく言われるのでありますが、朝鮮の戦争のことについてはあの当時の新聞をよくごらんいただきたい。あの当時一体何が起つていたか。南鮮の選挙が五月三十日に行われて、そして李承晩の與党はわずか二十四名という、実に極端な少数しか得られなかつた。そして朝鮮の統一を求める朝鮮へ民の意向というものがほうはいとして盛り上つた。このときに北鮮から南鮮に対して外交官を派遣して統一への申入れを行つたところ、乱暴にもその外交官を殺して道ばたへ埋めてしまつた。このことは当時の新聞によつても明らかであります。こういうような乱暴な、一国の外交官をとつつかまえて殺してしまうというような乱暴なことに対して、兵力を発動しない国が一体どこにあるか。このようなことに対して当然兵力が発動さるべきである。しかもそればかりでない。すでに京城でもつて押収せられた外交文書によれば、一年前から李承晩は北伐ということを呼号しアメリカに対して武器の提供を再三再四要求しておつたのであります。そしてあの事件の起る前にアメリカのダレス氏が朝鮮の前線に出かけて、塹壕などを見てまわつて、そして用意万端整つたということを公言しておるじやありませんか。どちらが侵略であるか。このことはだれが聞いたつて明らであります。(発言する者あり)このようにして、ソビエトの侵略政策なるものは単なるデマにすぎない。そしてそのデマのもとに、侵略されるぞ、侵略されるぞ、だからお前たちを助けてやるのだと言つてやることは、ちようど普通の家にたとえれば、たとえば私の家にどこかの親分がやつて来て、お前のうちにどろぼうが入るぞ、だからおれの子分を置いて守つてやる、そのかわりおれの子分に飯を食わせろ、そしておれの子分の言うことを何でも聞け。(発言する者あり)こういうようなものでありまして、それ自身どろぼうよりもつとひどい災害であると言わなければならないわけであります。かようなアメリカの極東戦略の道具として使うためのデマの利用方法に対しては、われわれとしては断固として反対しなければならない。今回の警察予備隊の増員もそういうデマを基礎としてやつておる以上、われわれとしては断固として反対しなければならないわけであります。
第五に、たびたびここでもつて自衛ということが問題になつておりまするが、自衛の道はわれわれとして確かにあると思う。自衛の第一は何であるかといえば、今国民が結束することである。これは幕末に日本が外国の植民地になろうとしたとき、あのときの日本の状態はわずかに武士が刀を持つているだけのことであつて、武器らしい武器は何にもない。それでありながら、よく独立を守り得たのは一体なぜであるか。これは国民が結束して、そういう腐つた幕府を倒してそうして外国の侵略に屈しないという意気を示したからでございます。このことがなければ自衛というものはあり得ない。自衛というものは守るに値する国、日本こそわれわれの祖国であり、そうしてほんとうにこの国を守り、この生活を守り通さなければならないという、その守るに価値ある国民生活を打立てることこそ自衛の第一歩であります。これによつて国民が団結することこそ第一歩である。それに何ぞや。国民を苦しめて失業者をつくり失業者がなければ軍隊の募集ができないというような、こういうようなことすら当事者が言つているような、そういうやり方で、いかにして国を守ることができるか。現在の状態はまさに侵略下にある日本ということができるわけであります。われわれはこれに対してほんとうに国民の総意を結集して、そうしてこれを守り通さなければならない。その覚悟においては、日本全国の有志者とともにわれわれは進むつもりでおります。
以上簡単でありまするが、われわれの反対の理由を述べる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304889X01419520401/8
-
009・八木一郎
○八木委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより採決を行います。本案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304889X01419520401/9
-
010・八木一郎
○八木委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
なお本案についての委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願います。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304889X01419520401/10
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。