1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月二日(木曜日)
午前十時九分開議
出席委員
委員長 小島 徹三君
理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君
理事 古屋 菊男君 理事 長谷川 保君
理事 堤 ツルヨ君 理事 中川 俊思君
越智 茂君 助川 良平君
田中 元君 寺島隆太郎君
降旗 徳弥君 安井 大吉君
中野 四郎君 山下 春江君
萩元たけ子君 柳田 秀一君
岡 良一君 杉山元治郎君
亘 四郎君 有田 八郎君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 山縣 勝見君
出席政府委員
厚生事務官
(社会局長) 安田 巖君
厚生事務官
(保険局長) 久下 勝次君
厚生事務官
(引揚援護庁次
長) 田辺 繁雄君
厚 生 技 官
(公衆衛生局
長) 山口 正義君
厚 生 技 官
(公衆衛生局環
境衛生部長) 楠本 正康君
委員外の出席者
議 員 河原田稼吉君
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
専 門 員 山本 正世君
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六月三十日
らい予防法案(内閣提出第一三四号)
七月一日
医師等の免許及び試験の特例に関する法律案(
内閣提出第一四〇号)
六月三十日
理容師美容師法存続に関する請願(中野四郎君
紹介)(第二〇六九号)
七日一日
インターン制度廃止に関する請願(萩元たけ子
君紹介)(第二二一六号)
理容師美容師法の一部改正に関する請願(萩元
たけ子君紹介)(第二二一九号)
同(原茂君紹介)(第二二二〇号)
戦沒者遺族に年金並びに弔慰金等支給に関する
請願(逢澤寛君紹介)(第二二二一号)
の審査を本委員会に付託された。
同月一日
軍人会館無償返還に関する陳情書
(第五二四号)
日雇労働者健康保険法案に関する陳情書
(
第五二五号)
国民健康保険医療給付費に対する二割以上国庫
負担実施に関する陳情書
(第五五二号)
戦争受刑者遺族援護に関する陳情書
(第六〇〇号)
理容師資格授与制度等に関する陳情書
(第六〇一号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
らい予防法案(内閣提出第一三四号)
健康保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
第五〇号)
厚生年金保険法の一部を改正する法律案(内閣
提出第五一号)
船員保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
第七二号)
国民健康保険再建整備資金貸付法の一部を改正
する法律案(内閣提出第八六号)
厚生行政に関する件
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/0
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001・小島徹三
○小島委員長 これより会議を開きます。
まずらい予防法案を議題とし審査に入ります。まず山縣厚生大臣より趣旨の説明を聴取したいと存じます。山縣厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/1
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002・山縣勝見
○山縣国務大臣 ただいま上程されましたらい予防法案の提案理由について御説明いたします。
癩は慢性の伝染性疾患であり、一度これにかかりますと、根治することがきわめて困難な疾病でありまして、患者はもちろん、その家族がこうむります社会的不幸ははかり知れないものがあるのであります。
この癩の予防をはかりますために、明治四十年に癩予防法が制定され、爾来この法律によつて、癩の予防施策が実施されて来たのでありますが、何分にも、この法律は、約五十年前の制定にかかるものでありますため、その後数次の改正を加えてはおりますものの、今日の実情にそぐわないと認められる点もありますので、これを全面的に改正したらい予防法を新たに制定しようとするものであります。
この法案の内容は、おおむね、次の通りであります。
今日、癩を予防しますためには、患者の、隔離以外にその方法がないのでありまして、この見地から、本法案においては、その第六条において患者の国立療養所への入所措置を規定しておりますが、この場合において、患者の療養所への入所後におきまする長期の療養生活、緩慢な癩の伝染力等を考慮いたし、まず勧奨により本人の納得を得て療養所へ入所させることを原則といたし、これによつて目的を達しがたい場合に入所を命じ、あるいは直接入所させる等の措置が特例的にとられることと相なつておるのであります。
なお、療養所に入所いたしておりまする患者は、癩予防の見地から、法令により出頭を要する場合及び所長が許可した場合を除きましては、当該療養所から外出してはならないことといたしております。
さらに、右に申し述べましたように社会から隔離されております入所患者でありますので、その者が、当該国立療養所内の秩序を乱しました場合、これについて一般の施設におけると同じく退所の処分を行うことができませんので、所長が秩序維持の手段といたしまして、戒告または謹慎の処分を行い得ることといたしております。
次に患者及びその家族の福祉をはかり、あわせて、これによつて癩予防対策の円滑な推進をはかりますために、患者及び家族の福祉措置についての規定を設けておるのであります。すなわち、入所患者について、国は、患者が義務教育もしくは高等普通教育または更生指導を受けるために必要な措置を講じ、患者家族につきましては、療養所長がその福祉のため必要なる援助をし、あるいは未感染児童につきまして必要な福祉の方途を講ずる等福祉に関する規定を設けておるのであります。
その他、癩の予防に関しまして必要な規定を設けておるのであります。
以上がこの法律案の内容でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あられんことをお願いいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/2
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003・小島徹三
○小島委員長 以上で趣旨の説明は終りました。なお本案の質疑につきましてはあとまわしといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/3
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004・小島徹三
○小島委員長 次に昭和二十八年度厚生関係予算に関しての大臣の説明に対する発言の通告がありまするので、順次これを許可いたします。但し審議の都合上健康保険法の一部を改正する法律案等、保険法四案について質疑をなし、時間があれば一般的事項について質疑していただきたいと存じます。田中元君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/4
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005・田中元
○田中(元)委員 大臣に承りたいと思うのでありますが、健康保険は国民生活の上で必要な大きな問題でございます。保険経済を確立して、少くとも保険の万全を期したいということが社会保障の問題の中心になつておるわけでございまするが、実は保険経済の根本をなす医療の問題におきましては、医療が万全を期せられなければ保険の問題とは解決ができないと思うのでございます。その医療は医師並びに歯科医師が行う以外に本質的には行えないわけなのであります。そこで私は、この保険経済の根本をなす医療の体系と申しますか、医療のあり方というものが基本となつて保険経済の確立がなされなければならないと思う。そこで一昨年の十二月、当時医師並びに歯科医師の方々が、今日の保険単価においては断じて適正な医療ができないということで、厚生大臣と医師会、歯科医師会の代表者との間に、今日行われておりまする単価十一円五十銭と十二円五十銭という暫定的な妥協案をつくつたわけでございます。その後昨年の三月に至りまするまでの間に審議会等をつくつて適正な単価を決定し、そうしてこの問題に対して将来禍根を残さざるような方向に持つて行くということが、当時かたく約束せられた方向でございますが、今日なおかつその問題等が解決されておらない。つまり国庫から補助金を出す、あるいはいろいろなる保険の制度をするといいましても、医療の問題の中心でありまするところの保険単価の問題を解決しないで、今日なおかつ単なる給付金を出すということは、私は少しく片手落ちの感があるのではないかと思うわけでございますが、厚生大臣はこれらの根本の問題でありまする医療単価、つまり医療の本質を解決するために、いついかなるときにこういう問題に対して解決をする御決意であるかを私は承りたいと同時に、保険の性格から申しまして、国庫補助を出すということばかりでなく、また単価の問題も、金を集めでおいてその金の中から単価をにらみ合せて出すという問題ではなくて、保険料率等についても問題があるだろうと思う。厚生当局は今日いわれておりまする六〇%の保険料率に対して、今後このまま続けて行くつもりであるか、あるいは適正な保険料率をいろいろ考えて、あるいは少しく料率を高めて行く考えがあるか等について、私は厚生大臣の意見を承りたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/5
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006・山縣勝見
○山縣国務大臣 ただいま健康保険法の改正案に関連いたしまして、その基礎をなす問題、ことに保険診療報酬に関する御質問でございましたが、この問題は仰せの通り昭和二十六年の十二月七日の閣議で一応当時のいろいろな事情を勘案いたしまして、単価その他の点も、たとえば所得に対する課税の問題等も勘案いたしまして、一応決定をして措置をとつて参つたわけでございます。ただいま、それは暫定的なものであつて、至急にこれらの根本的な問題あるいは改正を要するものがあれば改正をやるべきじやないかという仰せでございます。私どももさように考えております。ただこの問題につきましては、当時の閣議の了解の中にもありまする通り、臨時医療保険審議会でありますか、その審議会等にはかつて、そうして適正なる結論を出して、それに基いて政府が適当の結論を出して善処するということに相なつております。ただその際課税問題とも関連をし解決をいたしておりますので、たとえば昭和二十七年度の診療報酬に対する課税も、先般大蔵省の強硬なる申出がございましたが、昭和二十六年度と同じような措置をとつて参つたわけであります。その間臨時医療保険審議会等にもはかつて、できるだけ早く結論を出していただきたいと考えております。御承知の通り審議会の委員の中で五名の方が立候補なされて、二名は御当選になりましたが、一名はそのままで、医師会等にその後任の推薦を依頼いたしましたが、遅れてようやく最近御推薦があつたようでありますから、ごく最近に御審議をいただきたいと思つているわけであります。なお単価の問題等に関しましてはこれはもうすでに御承知の通り、なかなかいろいろなフアクターを考慮して考うべき問題でございまして、今厚生省におきましてもせつかくいろいろなデータのもとにその結論を急いでおりますが、たとえばその資料をいつの時期で、どういう観点からとるかという問題、あるいはこの単価の問題の基礎をなしまする医師の生計費でありまするが、生計費にいたしましても、現在一般の市民の生計費の二割増しということで出しておりますが、はたして二割増しが妥当であるかどうかという問題には、なかなかいろいろな問題があります。また自己診療との関係もあります。また稼働点数等の問題につきましても、それをどういうふうにスライドするかという問題もあり、なおこれは単価の問題だけではなくして、点数にも関係がございます。点数の問題になりますると、技術上どう見るかという問題もある。いろいろな困難な問題がありまして、実は私どもも原局を督励してできるだけ結論を出すようにと思つて、かたかだまた議参方にも急いで結論を出していただくようにしておるのであります。あるいはまた支払い方法等におきましても英国式のものをとるかどうか、いろいろな問題で昨日も原局を督励いたして、その結論に対して早く何らかの見通しをつけて、医療審議会の審議とも相まつて、妥当な線に持つて行くようにというふうに指示をいたした次第であります。政府といたしましても今後この問題に対しましては善処いたして参りたいと考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/6
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007・田中元
○田中(元)委員 とにかく早くこの問題を解決してくださいまして、適当な医療が行われるように、ひとつ厚生省は万全の措置を講じていただきたい。
ただ、先ほどもう一点私は質問申し上げたのでありますが、保険財政を確立する一環として、現行の保険料率でやつて行くつもりかどうかということについて、厚生大臣の御意見を承りたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/7
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008・山縣勝見
○山縣国務大臣 ただいまお答えを漏らしましたが、保険料の改訂の問題は、これは実はちようど単価の問題とか、非常にいろいろな問題がございまして、できれば保険財政をさらに健全化いたして、それによつてその面からいわゆる社会保険医療報酬に対する問題も解決いたし得ればとも考えます。ただ何分にもこれは社会保険でありまするし、国家が全部保険料を払い込むというわけでなく、勤労階級の諸君あるいはまた一般の市民の諸君が払い込むのでありまするから、やはりその負担の限度というもの、あるいは負担というものを考えなければいけませんので、今後も検討いたしたいと考えておりますが、現在検討いたしておる範囲においては、現在の保険料率をただちに改訂するという線に持つて行くことはどうであろうか、それ以外の点において、この保険診療報酬等の点を一応考えて行きたい、かように考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/8
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009・田中元
○田中(元)委員 現行の保険料率でやつて行くということになりますと、保険単価がいろいろ議論されて決定されるでありましようが、その場合に出て来た差というものは、国庫で負担してやつて行くという考え方を厚生省では持つているわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/9
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010・山縣勝見
○山縣国務大臣 ただちにさような結論にはまだ参らぬとは思いますが、ただたとえば健康保険にいたしましても、今度提案いたしておりまする法律案では、診療期間を一年ふやしておりますが、このふやしている主たるものは、やはり結核患者が多いからであります。結核患者に対しましては、一方においては結核予防法等の関係から、本年は御承知の通り結核の病床を相当ふやしております。予算もとつておりまするから、そういう点から一方において増床をいたしますとか、予防法において予算をとつて結核対策をやるとか、これは同時に間接的には保険料の改善あるいは保険経済の改善になるわけでございますが、これらの点につきましてもまだ私どもとしてははつきりしたデータに基く回答が出ませんので、今後とも検討して行きたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/10
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011・田中元
○田中(元)委員 それではともかく一日も早く保険の単価その他の問題を解決してくださいまして、保険の問題に対するいろいろなる摩擦を起さないよう、ひとつとくと大臣督励によつて厚生省が解決せられんことを希望いたしまして、私の質疑を終ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/11
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012・小島徹三
○小島委員長 岡良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/12
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013・岡良一
○岡委員 ただいま田中委員からの御質疑に対して、厚生大臣からのお答えがありましたが、この点に関連して多少私の意見を申し上げると同時に、厚生省の考え方を伺いたいと思います。
ただいまの御答弁にあつたように、いわゆる健康保険その他における一点単価の構成は、大体医薬材料費がどれだけであるか、税金がどれだけであるか、あるいはまた使用人の給料がどれだけであるか、医師の生計費がどの程度であるべきかというようなことをその主要な要素にしておられる。ここにこの一点単価の持つ非常に大きな誤謬があると私は申し上げたい。現にたとえばイタリアでは健康保険制度の保険医に対しては一箇月三万リラ当り、邦貨に換算して二万二千円くらいの最低の給料を与えている。あるいは初診料にいたしましても三百六十リラくらいのものが入る。フランスに行つても、繁華なところでは四百五十フランくらいの技術評価をもつて収入を与える。いくさに負けたドイツのごときも、初診料は二マルクである。あるいは英国のように全面的な医療国営をやつておりましても、現在のロンドンの一般民間の産業労働者の標準収入というのは大体六ポンド十五シリング、しかし医師の収入はその四倍くらいに上まわつている。私どもは医者が特にこうした過大な処遇を社会から与えられなければならないとは考えておらないけれども、しかしそれにしても、大体一点単価というものに対する政府その他関係の諸君の考え方が、医師の技術というものに対する評価についてはまつたく無知であるとさえ言いたい。こういうところに、一点単価問題をめぐつて、常に被保険者側と保険担当の医師側との争いの一番大きな原因があると思うのだが、われわれは、医師の技術評価というものに対して、これをどういう基準において見て行くか、もちろん日本の農民諸君、労働者諸君、すべての諸君の生活水準を顧慮に置いて、なおかつ国民の生命を預かる医師の医療技術に対してどういう評価を与えて行くかというところに、やはり厚生省としてはもつとはつきりした態度を打出してもらいたい。現にこの問題については、一昨年であつたか、サムス準将の示唆によつて、これらに対する特別の委員会が設けられ、ある程度の答えが出ておるのであるが、それもそのまま今日では放置されておる状態である。体厚生大臣は、今この一点単価の問題が問題になつておりますが、医師の技術を正しく評価するというところにこの一点単価の切りかえの重点を置かなければならないという私の考えに対して、どういうような考えを持つておるか、まずこの一点を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/13
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014・山縣勝見
○山縣国務大臣 先ほど私も申し上げたのでありますが、一点単価の算定の構成の基礎といいますか、そういうものに対して、イタリアあるいは英国の例を引かれましたが、たとえば英国の人頭請負式をこの際ただちにとるか、あるいはイタリア式の方式をこの際加味するかということに対しては、率直に申し上げまして、われわれとしてはまだ結論が出ておりません。但し、ただいまお話のように、技術料をできるだけ尊重して、いわゆる一般のものと違つて医師としての貴重な技術というものに対して、これを適当に評価して単価の算定の基礎に当てるということについては、私どももまつたく同感であります。もちろん医療審議会等においても、さようなことも頭に入れていろいろ考究をしておられ、また政府におきましても、単価の研究にあたつてはさようなことも頭に置いておるのであります。ただそれをどの程度にどうするかということは、まだ医療審議会においても検討中で結論が出ておらぬ問題でありますから、両々相まつて今後もそれらの問題に対してはいろいろなデータについて検討して行きたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/14
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015・岡良一
○岡委員 この問題についてはまた後日の会合で私もいろいろ政府の所見を伺いたいと思うのでありますが、とにもかくにも両三年前に医薬分業が非常に大きな課題として国会の論議の種となつたときに、臨時医療報酬調査会あるいは臨時医療制度調査会というものを設けられて、これらの調査会はそれぞれ結論を出しておる。その出た結論の中においては、かなり前進的な意義を持つておるものがあると私どもは思つておつたのであるが、これが出しつぱなしで、その後、医薬分業の問題は曲りなりにもある程度の形がついたところが、そのままでたな上げになつておるというような状況であることは、はなはだ遺憾だと思うので、この機会にひとつ、ぜひとも厚生省としては一点単価について根本的な是正をはかるという決意をもつて、この問題に取組んでいただきたいということを心からお願いを申し上げておきます。実は私のきよう特に大臣にお尋ねをいたしたいのは、ただいま本委員会に上程になつております各種社会保険法に関する一部改正の法律案に関連をいたしまして、すでに第十二あるいは第十三国会において衆参両院は一致して社会保障制度の推進に関する決議案を通過せしめておることはすでに大臣も御承知のことと思うので、その立場から二、三の質問をいたしたいと思うのであります。憲法第二十五条においても、国が全国民に対して最低生活の保障をする義務を負うておることは、今さら申し上げるまでもなく、今申し上げましたように衆参両院はすでに十二、十三両国会において社会保障制度の推進に関する決議案を通過せしめております。二十五年の十月には、社会保障制度審議会の勧告もすでにあつたわけであります。しかしながらこれに対して政府がいかにこたえておるかというと、政府の現実のこたえというものは、われわれをして言わしめれば、きわめて遺憾であるので、この機会にまず厚生大臣は、社会保障の実現に対していかなる決意を持つておられるか、この点をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/15
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016・山縣勝見
○山縣国務大臣 この点に関しましては、本会議並びに委員会においてたびたび私の決意、方針を申し述べて参つた次第でありますが、憲法二十五条の健康で文化的な最低生活の保障という問題に対しましては、政府は国家財政の許す範囲において最大限に考えて参るということは申し上げている通りでございます。なおまた社会保障制度審議会の答申が二回出ておりますが、その答申に伴つて実施に関する勧告も出ておりまするが、その勧告書の中にも、日本の戦後における国家財政の現状から見て、日本の社会保障制度の推進にあたつては、まずもつて社会保険を中心にしてこれを推進すべきである。しかも社会保険を中心にするのであるけれども、そのうちで一番中核をなす国民健康保険に対する給付費の国庫負担をまずもつて実現をいたして、それでもつて社会保険を推進し、従つて日本の社会保障制度を推進すべきである。しかしながら日本の国家腰はなかなか十分に行きがたいであろうから、それと調整をとつて云々という勧告がなされておるのであります。従来政府といたしても、この社会保障制度の推進にあたつては努力をいたして参りましたが「昭和二十八年度予算案においては、この社会保障制度審議会の二回の答申並びにそれに伴つて出されました実施にあたつての勧告の趣旨をくみまして、国民健康保険をまずもつて取上げまして、保険給付に対する国庫負担の道を開きました次第であります。なお社会保障制度審議会の答申においても、いわゆる社会保険、あるいは医療の問題、あるいは国家扶助の問題、あるいは社会福祉の問題、この四分野にわたつていろいろ答申をいたしておりまするが、この第一の社会保障制度の面は、ただいま申し上げましたように、まずもつて国家財政との均衡調整を考えて、国民健康保険給付の国庫負担をいたさんとするものであります。それから次に国家扶助につきましては、これまた法案を提出いたしておりまするが、生活扶助に対して今回その基準の引上げをいたしております。なお公衆衛生あるいは医療の問題につきましては、勧告書の中には大体十万単位について一保健所ということを言つておりまするが、昨年あたり大体十一万単位ぐらいに相なつておりまするが、今回は御承知の通り予算案において、保健所の設置増設等、あるいは拡張をいたしておりまして、この勧告案の理想にだんだん近づきつつあると思うのであります。なおまた社会福祉の面におきましては、これは先般各位の御発案によつてできました母子家庭に関する貸付金制度、また社会福祉の面におきましては、これまた保健所と大体同単位の十万単位でいわゆる福祉事務所を置くということになつておりますが、これも大体それに近くなつております。現在七百五十二箇所ございますが、これも御承知の通り全面的に活動をいたさせまして、それにはいろいろな社会福祉機関も附置いたして、ただいま活動をいたしておる次第であります。なおまた勧告書におきましては、この四つの基本的な問題以外にあるいは遺家族の問題、留守家族の問題等につきましても勧告をいたしておりまするが、これは今回提案いたしておりまする法律案並びに予算案において、国家財政の許す範囲において善処いたしております。今後ともこの点につきましては、政府といたしましても留意いたして参りたいと思つておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/16
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017・岡良一
○岡委員 社会保障制度の問題について大臣に質疑を申し上げますると、従来もしばしば国家財政の許す範囲でということを言つておられるのであります。現に今御指摘の国民健康保険にいたしましても、なるほど一割五分、二十一億ばかりの補助金が出ることになつたことは、われわれも大いに意を強うするところではありますが、御承知のごとく、社会保障制度審議会の勧告では、すべての健康保険の給付については二割の国庫負担をしろということを言つております。しかもその前文においては、すみやかにこれを実施してもらいたいという強い前文を付してわれわれは政府に勧告を出しておる。現に昨年度の予算を見ましても、社会保障制度に関する予算は、日本がわずかに九%、かなり広義な社会保障制度の予算を見ても九%、アメリカが一七%、英国が一八%、いくさに負けた西ドイツのごときが三七%を占めておる。こういうような点から見ても、われわれとしては特に日本の今日置かれている立場、将来に予想される経済あるいは生活の非常な危機を予想するときには、社会保障制度というものを、政府がしつかり決意を持つて実施しなくてはという気持が非常に強いのであるが、こういうふうに低調である。大体予算の上においては、なるほど多少の増加が認められておるようではあるけれども、これは物価の上昇その他に伴う必然の上昇であつて、本年度までに見積られておるものは、取立てて言えば国民健康保険の二十九億と、母子福祉の貸付金の七億くらいのものしかない。こういうことでは政府に非常に熱意が足りないと思うのであるが、厚生大臣は本気でこの社会保障制度の実現に大いに決意と誠意を持つてやられるのか。すでに社会保障制度審議会も陣容を更改し、再び大内兵衛氏を会長に迎えて、全員張り切つてこの仕事に取組もうとしておるのであるが、政府は社会保障制度審議会の勧告をあくまでも責任を持つて尊重しようという心構えがあるのかどうか。この点を重ねてお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/17
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018・山縣勝見
○山縣国務大臣 ただいまいろいろお話がございましたが、社会保障制度審議会の答申は、さすがに、国民健康保険等に対して国庫負担といつておりますけれども、同時に出ました勧告書には、国家財政の見地から見て、まずもつて国民健康保険の給付に対する二割国庫負担を実現すべきであるということを言つておるのであります。なおまた今熱意がないというお話がありましたが、社会保険におきましては、本年度は七十九億、約八十億出しております。これは前年度に比しまして七〇%、前々年度に比して約一四〇%の増加であります。さきに廃案になりました予算案を組みましたとき、その前の二十七年度暫定予算以来、私が厚生大臣に就任以来、微力を尽して参りまして、これは決して私の力ではありませんけれども、皆さんの力もいろいろ借りて、本年度の社会保険におきましては前年度に比して七〇%、前々年度に比して、つまり昭和二十六年度に比しましては一四〇%の増加であります。なおまた全体の社会保障費は、昨年及び一昨年に比しますると、国家財政の総予算の額に比しまして確実にふえておるのであります。もちろんこれは欲を言えば切りがありませんけれども、国家予算の編成に対する基本的な考え方は、あるいは立場によつて違うかもしれませんけれども、私どもといたしましては最善を尽して来ておるつもりであります。なおまた今後もいたすつもりでおります。なおただいま日本の、いわゆる総予算に対する社会保障費の率が九分幾らというお話でございましたが、これは大体標準にはなりますけれども、国によつて、社会保障そのものの内容の差によつて、また国家予算の編成方針の相違によつて違うのであります。たとえばフランスのごときは、先般本会議において、どなたか知りませんけれども三〇%いうお話がございましたが、それは単位が違つておるので三%であります。でありますから、これはいろいろとり方もあります。しかし日本におきましても九%になりまして、国家予算に対して社会保障の率は最近急激にふえて参つておるのであります。今後といたしましては、皆さん方のお教えも請うて努力して参りたいという決意は持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/18
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019・岡良一
○岡委員 私どもの記憶するところでは、総予算に対する社会保障費は、昨年度は遺家族の援護の費用も含めまして大体八・七%であつたかと思う。本年は大体九%でありますが、この程度では大臣の申されるような顕著なる増加というふうには私どもには考えられないのであります。いずれにいたしましても、わが国の経済の底が浅いと同時に、国民生活の底も非常に浅いということは申し上げるまでもない。一千世帯の中で大体四十五世帯が生活保護法の保護を受けなければならない。あるいは一千人の中で二十四人が生活保護法の適用を受けなければならない。こういう具体的な数字こそ国民生活そのものの底が非常に浅いということを物語つておるのであつて、ひとつこの際、特に厚生省としては、社会保障制度審議会の勧告に対して、できるだけ勇気と決意を持つて充実をはかつていただきたいということをお願いをいたしまして、次に二、三具体的なお尋ねをいたしたいと思うのであります。
その第一点は、社会保障制度審議会、それから各種の団体からもその必要が力説されておる例の社会保障行政の統合の問題であります。政府は一体社会保障行政というのを統合する、あるいは漸進的にもあれ統合の方向に持つて行こうという意図があるかどうかという点を、この際お答えを願いたいと思う。実際今日労働者に対する社会保険にいたしましても、厚生年金保険あるいは失業保険、労災保険、健康保険、これらがてんでんばらばらで保険料を徴収し、給付を行う。そうしてまた労働者も使用者も今日の制度では煩雑で耐えられないということを言つておることは周知の事実である。これらの社会保険を一本化して、保険料徴収事務、あるいは給付の支払い事務、またそれに関連するもろもろの行政事務などを、一本化し、もつと簡素化する。それは被保険者のためにも、あるいは事業主のためにも、ずつとその方が便利であるだけではなく、事務費を節約するという観点からも、非常に大きなプラスがあると私どもは思うのであるが、一体政府は、こうした今日てんでんばらばらのこの社会保険行議構、あるいはその制度、法制というふうなものについて、これを統合の方向に持つて行ごうというお気持があるのかどうか、この点を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/19
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020・山縣勝見
○山縣国務大臣 この社会保険の統合整備という点につきましては、お説の通りわれわれも考えおるのであります。できれば窓口も一つにして、そして保険経済の合理化もはかり、従つて被保険者の負担の軽減もはかりたいと思つております。ただ御承知の通り、各種の保険がいろいろな要請、いろいろな社会的の環境、事情によつて発生をいたしておりますこともあつて、それらの調整も必要でありますので、なかなかりくつ通りには参らぬ点も、あります。しかしながらさような末梢は捨てましても、問題は、現在保険経済は、すべてどの保険につきましても、一部のものを除きましては、非常に困難でありますから、なおまた被保険者の負担というものも相当限度に来ておりますものも多いのでございますから、むだを省き、あるいは合理化をするという見地から、ただいま仰せになつたような方針でせつかく検討いたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/20
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021・岡良一
○岡委員 社会保障制度の中でも、特に医療保険がその最も重要な一環であることは申し上げるまでもないのであるが、しかしそれにしても、全国民の中でなお半数近いものがこの被保険者たる資格を持つておらない。現に国民健康保険にいたしましても、二千万の農民というものがまだ国民健康保険に加わつておらない。しかも国民の税金によつて給付費の一割五分なら一割五分を負担しなければならぬ。しかも一方においてはこのような二千万人の農民というものがこの国民健康保険の恩恵に浴しておらないということは、非常に不均衡な姿であると思うが、政府としてはこうしたすべての農民、特に生産と生活の本源が天候にあるところの農民を、すべての健康保険、国民健康保険の被保険者として包括して行く、こういうような構想に立つての何らか具体的な、あるいは基本的な構想を持つておるかという点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/21
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022・山縣勝見
○山縣国務大臣 仰せの通り、日本の社会保険におきましては、ことに国民健康保険は、終戦によつて御承知の通りのああいうふうな政策をとられました結果、現在は給付に対する国庫負担という形でありますが、以前は別の形で同じようなことがなされておつたのであります。従つて被保険者も五千万人内外になつておつたのが、現在半減いたしておる。お説の通りである。しかし今回、さようなこともありますので、国民健康保険に対して、困難な国家財政の中から給付費の国庫負担を初めて創設する、あるいはまた再建整備の貸付をいたしますとか、あるいは振興奨励金を出すとか、いろいろなことをして、保険財政の窮乏を救い、なおまた保険の普及徹底をはかつて行きますれば、この現在半減いたしております国民健康保険等におきましても、必ずや今後普及徹底を期して、適用人員、あるいは適用被用者においても、あるいは適用される被保険者においても、相当増加いたすと思うのであります。これは余議でありますけれども、適用範囲の問題から言いますと、国際条約の社会保障の最低基準、あれが大体被用者の五割ということになつておりますが、大体この点から言つて日本は、まだまだこれは不完全で、決して自慢することはできませんけれども、一応適用範囲の面から申しますと、失業の面だけを除きました社会保険におきましては、一応その基準以上になつておるような次第であります。しかし政府といたしましては、今後とも仰せの通り毒をいたして、いろいろな施策のもとにこの普及徹底はもちろんはかる所存であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/22
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023・小島徹三
○小島委員長 中川委員から関連質問をしたいという申出がありますので、これを許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/23
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024・中川俊思
○中川(俊)委員 社会保障の問題が大きく取上げられているのですが、これはむろん先ほど来御答弁のように、国家財政とにらみ合せてやらなければならぬことは申すまでもありません。イギリスは、労働党が内閣を組織して以来、英国の財政限度を越えて社会保障制度をやり過ぎたために、今日非常な耐乏生活を余儀なくされている例があるのでありますから、もちろん政府当局としては、十分に国家財政とにらみ合せておやりにならなければならぬことはよくわかるのでありますが、しかし先ほど来御質問をしておられる通り、ことに国保の問題でありますが、今日の町村財政というものは非常に行き詰まつておりまして、単に今回のように量的の改善だけではおぼつかなくなつている。これをこのまま放擲しておられるということは、結局何もならないことになつてしまうのであります。大臣や事務当局の方は十分に察知しておられると思うのですが、今政府が提案しておられる医療給付の一割五分というものは、二十九億六千万円ですが、これは各党において二割にしなければならぬというように、大体話がつきかけている。私は政府がいかにがんばられても、どうしてもそうなら、ざるを得ない情勢に到達するだろうと思うのでありますが、むしろ国会の方からのそういう修正の意見を待たずして、政府が率先この問題を取上げらるべきじやないかと思う。どうも今の山縣さん、それから事務当局の方は、非常に熱心に、熱意に燃えてやつておられることは、私もよく承知しておりますが、由来政府の答弁というものは月並的であつて、善処いたします、考えております、御期待に沿うようにいたしますということで、どの委員会をのぞいてみても、そういう答弁で今日まで終始しているのです。考えていることはみな考えている。先ほど大臣は、憲法二十五条ですか、国民の最低生活を保障するように規定もあるのだから、考えているとおつしやるが、今の日雇い労務者の夏季手当は、今日の制度によれば、わずか二日間です。六百円ぐらいの夏季手当をもらつて、それでもつて最低の生活を保障すると、一体お考えになるかどうか、公務員には
○五箇月の手当を政府はきめておる。ところが国会におきましては、これまた残念ながら、政府の思う通りには行かないという実情になつているのです。日雇い労務者にわずか二日間の夏季手当をやつて、これで憲法二十五条に保障されておる最低生活の保障をしたと言い得るかどうか。そういう点についてはただ考えておる、考えて宏るということだけの御答弁でありますが、もつと熱意を持つてやつていただきたい。私はこれは厚生省事務当局ではできないことかもしれませんが、大臣の政治力だと思うのです。かつて林讓治さんが厚生大臣をしておられたときに、林さんが大臣をしておられるのだというので、時の大蔵大臣池田君は林さんの言うことなら何でも聞かざるを得なかつた時代がある。そういうばかげたことはなすべきことではございません。しかし今日の二十八年度の予算を見ましても、倹約すべき、節約すべき項目はたくさんあるんですが、そういう面からもつと弱い面に対する社会保障の完璧を期するということについて、ただ月並的に決意を持つておる、考えておるというのでなく、むしろ積極的にやつていただきたいということを私は強く要望するのです。ことに今の医療給付の問題でも、すでに二割ということは各党一致した意見でありますから、これはどうしてもできるんですが、これらについても政府は国会の議をまたずして、率先この問題を取上げられるくらいな熱意があつてしかるべきではないかと思うのですが、大臣はやはり従来の各大臣と同じように、月並的な御答弁をなさるおつもりか、またそういうふうならばひとつ思い切つてこの大事な厚生行政をまかされておるんだから、むしろ国会あたりに先行してそういう問題を取上げたいという御注意か、この点をひとつ明瞭に御指示を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/24
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025・山縣勝見
○山縣国務大臣 中川先生の御質問を受けまするのは初めてでありまするが、私は月並的な答弁は従来いたしておらぬつもりであります。なお国民健康保険に対する私の決意は、前国会以来厚生委員の諸先生方の御了承の通りであります。多年困難であつて、占領下の内閣の厚生大臣のときにおいても実現のできなかつた国民健康保険に対する給付費の国庫負担金を創設いたしたのであります。おざなりではできないと私は思うのであります。そして私は実は厚生行政を推進いたしたいということをかねて考えておりますが、ただ厚生行政の推進と申しましても、国家行政の一環でありまするから、さような点も考えて最善と思う国の考えでやつておりまして、ただ大臣の職にとどまるがためにやつておるということは毛頭ございませんということを申し上げておきます。
なおこの国民健康保険の一割五分の給付費負担につきましてはいろいろいきさつがありまして、前国会の委員会——たしかこの委員会において堤先生からもおほめの言葉をいただきましたし、参議院の委員会におきましても、よく一割五分の給付費の国庫負担を創設せしめたという委員会の公式の発言もあつたくらいであります。私は決して一割五分の負担に満足いたしてはおりませんし、私の考えておりまするのは、現在の国民健康保険の保険財政というのは、国庫負担を二割にしたからそれで終つたというのでももちろんありません。この一割五分の国庫負担を創設しますときに、閣議においてもなかなか困難でございまして、御承知の通りいろいろ重要な要件がございましたが、最後に残りましたのがこの国民健康保険給付費の国庫負担で、その際大蔵大臣も終始反対をいたし、なかなか困難でございましたが、私は今後国民健康保険の保険財政の運営に対しても合理化をはかつて両々相まつてやつて行く、とりあえず少くともその間に国としても給付費の国庫負担をやつてくれて——そして初めは実は五分くらいでもよかろうというような話が、これは内々委員会等においてもあつたくらいであります。しかし一割五分までやりまして、そのかわりに保険財政の、あるいは保険運営の合理化もやる——私は率直に申し上げまするが、現在の国民健康保険の運営そのものは決して万全とは思つていないのでありまして、そこにはいろいろな欠陥もあり、運営上のいろいろな改善すべき点がまだ多々あると思うのであります。その一つといたしては、たとえば収納率でありますが、収納率は昭和二十五年度には七割七分であります。その後ずいぶん督励をいたして現在は大体八割三分ぐらいに相なつております。ここでもしも五分上りますればやはり十数億ふえるのであります。現在の国民健康保険はもちろん担当の諸君が非常に努力して一生懸命やつておられるけれども、私の見るところではまだまだ遺憾な運営をされておる。この際決してただ安きを求めておるとは申しませんけれども、国庫負担をいたして現在の赤字あるいは困難を理合すだけで終るならば、現在われわれの目にもつきますような保険運営の合理化があるいは遅ればせぬか、給付費の国庫負担と申しましても、国の血税でいたすのでありますから、まず被保険者あるいはその他の方々ができるだけ納めていただく、もちろんこれには現在の国民生活の困難の点もございましようけれども、それでもこれを補うのは他の国民が補うのでありますから、しかも収納率というものは、督励あるいは保険運営のいかんによつては現に年々改善されておりますから、そういう改善もはかり、あるいはまた、実はこれは私のほんとうのいわゆる私案でありますが、現在の運営においては、小さな村でも一つの国民健康保険組合を持つておる。先ほどの岡先生のお話のように社会保険の統合という問題と同じ精神で、この運営においてもう少しいわゆる組合の負担というものを考える必要があるのじやないか、それによつて保険財政もさらによくなるのじやないか、組合があつても診療所がない、あるいは医者がおらぬということは困る、国民健康保険の加入者がたくさんおるのでありますから、この国民保険の運営の改善、財政の改善、そういうものをいたして、ことしはとりあえず一割五分の給付費国庫負担をやつて、両々相まつてやつて行つて、この万全を期するというのが私の考えであります。しかも私が強くこの感じを抱きましたのは、前国会の委員会の審議を通じまして、あるいはまたその委員会を中心とした国会の空気を見まして、大体この程度でよかろうということで、衆参両院の委員会においてもいろいろ御書もあつて、もちろん審議会の方で答申に二割という声はございましたが、それは表の話で、実際の腹づもりとしては日本の現在の状態としては一割五分でまずよかろうということでございましたから、それと現在とは数箇月を経ただけでありますので、一応そういうふうな事情も勘案いたしまして、私は一割五分を出して、そして一面においてこの保険運営の改善もはかり、今後の国としてのこれらの保険経済の改善にはさらに努力をする、これが現在総合的に大局的に考えてみて一番とるべき態度ではないかという確信をもつて私は出しておるのでありますが、なおこれは今後の国会の意思によることでありまするから、国会の意思によつてわれわれはまたもちろん考えるべき点は考えますけれども、今この予算を提出いたしました私の考え、決意はただいま率直に申と上げましたような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/25
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026・中川俊思
○中川(俊)委員 大臣が現在お考えになつておること、さらに将来に対するこの問題についての理想については敬意を表するのでありますが、しかし現在のこの社会保険に対する状態というものは、これから考えて改善する、こうしてやつて行くというほどのんきな状態でないのです。このまま成行きにまかせたならば、現在ですら全国の市町村の中で半分以上の国民健康保険組合のごときは休廃止されている実情なんですが、これをさらに成行きにまかせておきますと、全面的に崩壊するのじやないかというような危惧さへわれわれは抱いておる。そこでそういうのんきなお考えでなく——のんきというとはなはだ御無礼かもしれませんが、ただ事務当局がメモを提出するやつだけを見て、それでもつて簡単に御答弁なさるというのでなく、とにかくこれは非常な急を要する問題なんですから、たとえば私どもは二割でも決して満足だと思つておらぬ。これは三割、五割にしてもらいたい。しかしそれは国家財政とにらみ合せなければならぬから、そういうわけに参りますまい。ただいま大臣の御説明によつて大臣の御苦衷を察しないことはないのでありますが、私がお尋ねいたしたいのは、国会においては各党はすでにこの問題について二割の医療給付をきめなければならぬというところまで来ておるのを見のがしておいて、政府が一旦こういう予算を組んだのだから、このままで押し通すつもりだ、こういうお考えか。国会が決議をしておるのならば、むしろ国会に率先して、政府は熱意を事実の上において示そうというお気持があるかどうかということを実はお尋ねいたしたのであります。この点について明瞭なる御答弁を願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/26
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027・山縣勝見
○山縣国務大臣 はなはだお言葉を返すようで、失礼な言葉はお許し願いたいと思いますが、私は国民健康保険に関しまする限り、事務官僚のメモによつて御答弁いたしたことは一回もないのであります。
なおただいまの二割にするかどうかというお話に対しましては、私がただいまるる申し述べましたような考え方で、一応一割五分で予算案に計上いたした。閣内におきましても一応さような方針をとつておりますので、政府といたしましてはその方針で参ります。もちろんすべての立法権は国会にあるのでありますから、国会の意思決定によつて政府が善処いたしますことは当然でございますが、ただいまの状況におきましては、大体政府といたしましては、私が申し述べましたような方針で進んでおるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/27
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028・岡良一
○岡委員 先ほど私のお尋ねした件について、もう一度繰返して具体的な御答弁を願いたいのです。それは要するに、国民健康保険の給付費国庫負担が一部成功した。それによつて三十億ばかりのものを出した。しかしそれは農民なりその他国民の税金が負担をしておるわけであるが、にもかかわらず、なお生産と生活の元手を健康に仰いでおる二千万の農民というものが国民健康保険から漏れておる。これは当然やはり国民健康保険に総括すべきものであると私は思惟するのであるが、とすれば一体厚生省としては、具体的にこの普及徹底のためにいかなる政策を擁しておられるかという点をお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/28
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029・山縣勝見
○山縣国務大臣 ちよつと御質問の要旨を取り違えておるかもしれませんので、もしも間違つておりましたら重ねて申し上げますが、今後たとえば、国民健康保険についての適用範囲——適用範囲というと語弊がありますので、適用範囲にあらずして、被保険者が非常に少い、これをさらに拡充して、少くとももとのように、あるいはそれ以上の被保険者数にして、もつて社会保険の拡充強化をはかつてはどうか、そういうものに対してどういう具体案を持つておるかというお尋ねだと思いますが、社会保険にはいろいろありますけれども、たとえば国民健康保険というものに対して、その保険料を支払うについての支払いやすい方法、またその他その保険に入る意欲を内容的に示すということが一番必要である。なおまた現在におきましては、保険財政が仰せの通り——これはわれわれも認めるのでありますが、非常に困難であります。従つて診療の内容も十分でない。結局それは元にもどつて、保険財政が強固になりますならば、診療の内容もよくなるわけでありますから、そういう意味から、今回給付費の国庫負担を一応一割五分にいたして、その面で、放つておき場ますれば本年度で五十億近くの赤字になるのを、大体二十億くらいにとどめよう、なおその他に再建整備あるいは振興奨励金を出して、前年度においての赤字も漸次消して行こう、それによつて保険財政が回復いたしますれば、いろいろな点において診療の内容も自然によくなつて来るであろう、また一般の被保険者の保険加入意欲もふえて来るであろう、もちろんいろいろな宣伝をいたすとしても、内容的にそういうふうな普及宣伝に努めようというので、それが今回の給付費国庫負担をいたします一つの大きな目的であります。具体的にということになりますといろいろございましようけれども、基本的に考えておりますのは、さような意味で、今回の給付費国庫負担を出しました。この面から少くともそういう被保険者の増大をはかつて行きたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/29
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030・岡良一
○岡委員 先ほど中川委員の質問に対してのお答えの中で、閣議の席上である大臣は五分程度でもよかりそうなものだという発言もあつた。しかし山縣厚生大臣は一割五分の線をどうにか貫いていただいた。私どもは、社会保険の給付について国が国庫補助を断行したということは、社会保険の大きな黎明であるとして、大臣の功績を多とするものでありますが、五分といい一割五分という、一体一割五分補助すれば足れりとするその算出の基礎はどこにあるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/30
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031・山縣勝見
○山縣国務大臣 私が申し上げた言葉が不十分でございました。重要でございますからこの際訂正いたします。閣議の内容は一切申し上げないことになつております。他の閣僚が申したことは私は申し上げないので、当時の空気においては、まずもつて給付費に対する国庫負担という道を開くことがこの際大事であろうという意味で、五分でもいいじやないかというのは、これは事実でありますから申し上げておるのであつて、さような空気があつたということを申し上げておきます。
なお一割五分の基礎いかんということでありますが、これは実は私ども、せつかく社会保障制度審議会の答申もあることでございまするし、国民健康保険の財政も承知いたしておりまするから、先ほど申しましたような意味の、いわゆる保険の運営あるいは保険の財政、それらの点において、一方において極力改善強化をはかる。これは実は決して遠き将来のことにあらずして、現にやつておることでありまして、そのゆえに収納率も年々上つて、収納率が上るということは、これは厚生の専門の方に申し上げるのは恐縮でありますが、保険財政を強化する二とが一番の道でありますから、収納率が上り、改善されておることは、これは現にやつておる、将来の問題ではなくて現実の問題であります。そういうこともいたしつつ、できれば二割という線で行きたい、かように考えております。率直に申し上げまして、さようなことも考えて私も数字を出してみたこともありますが、何としても当初給付費に対する国庫負担ということそのことに対して、決して他省のことを申すのではありませんけれども、大蔵省としてはどうしても承知いたしません。最後の閣議においてもなかなか承知いたしませんで、私も、かように申し上げてはいかがかと思いますが、私の最後の決意を抱きつつこの問題は闘つた次筆あります。これはいろいろ菌家財政の点から、最後に収入の点等をにらみ合せて、他の面の予算もしぼりまして、そうしてようやくこの一割五分を出しましたような次第であります。確実な基礎ということになりますと、二割でも確実な基礎があるとも言えるのであります。一応さようなことで、国家財政の許す範囲で、当時の予算の編成にあたつて、無理をしていろいろな点から財源を出して来て、そうしてこの一割五分というものを出した。それをことに——これは余議でありまするけれども、大蔵省はこの三十億何がしの額は、最後は承知はいたしましたが、それでも給付費に対する国庫負担は了承しないという。そうしてまた予算閣議が済んだ後においてもこの問題は残りまして、われわれといたしましては、三十億を出してもらうということも困難であろうけれども、それ以上に、給付費に対する国庫負担という道を開くことがこの際大事であろう、従来は金額のいかんにかかわらず、給付費国庫負担の道が開かれなかつたのが問題であるから、次にどの大臣がなるとしてもこの問題が大事であるということで、給付費国庫負担という道を開いた。そうして大蔵大臣も相当無理をして、他の財源から一割五分というものを出して来たというのが実情であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/31
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032・岡良一
○岡委員 とにかく医療保険の給付費について国庫負担の道が開かれたことに対しては、私ども大臣の御努力は多とするものであります。ただしかしながら、社会保障制度審議会もすでに二回にわたつて、国保の二割国庫補助を要請していることは御承知の通りである。あるいは十二国会においても十三国会においても、また先般の国会においても、衆参両院は決議案をもつて明確に二割という数字を掲げて、重ねて政府の善処を促しておるのであつて、今日われわれは各党共同の態度をもつて二割の国庫補助に助勢をしようという腹組みで作業を進めておりますから、ぜひともこの際政府の善処をお願いいたしたいと思います。
そこで次にお尋ねをいたしたいのは、先ほど来山縣厚生大臣の御答弁を伺つておりますと、われわれがたとえば算定の基礎をどこに置かれたかということをお伺いいたしますと、大臣は国庫財政とのにらみ合せであるというふうなことで、算定の基礎というものについての明確なお答えがないのでありますが、この問題はいずれまた国保の具体的な、こまかい技術的な問題として後刻の委員会に譲りたいと思います。大臣のお答えを聞いておつて、私どもいささか疑義を持つのでありますが、一体社会保険に対する給付費について国が補助するというのは、それぞれの社会保険なりあるいは個々の国民健康保険組合なりが赤字にあえいでいる、これを助けてやるために国が負担するというお考えで臨んでおられるのであるかどうか、という点をこの機会に一応お伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/32
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033・山縣勝見
○山縣国務大臣 この点はいろいろ論議のあるところでございまして、かりに保険財政が相当の黒字であり、また保険給付が相当よくても、国はそれに対して給付費の国庫負担をすべきであるという意見、また理論的にはさようなことも言われますけれども、一応ただいまわれわれの立場といたしましては、とりあえずいわゆる国民健康保険の保険財政が赤字である、しかもこの国民健康保険は日本のいわゆる社会保障制度の中核をなす重要な問題であるから、とりあえずその赤字を消して、そして健全なる保険の運営をせしめて、もつてこの社会保障の目的を達成しようという立場に立つているのであります。理論的には、あるいは学説的にはいろいろ所論もございましようが、一応われわれはこういう立場に立つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/33
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034・岡良一
○岡委員 私どもは、こうして給付費について国が大幅な負担をするということは、それぞれの社会保険財政が非常に窮境に立つているからして、これを救うがためにというよりも、やはり憲法第二十五条の理念に基いて、社会保障というものは全国民に及ぶべきものであり、また当然それに対する国の財政的責任というものは国の責任であり、またそれは当然必要かつ十分なものでなければならないという考え方に立つているので、この点はいささか政府との間にその考えに大きな食い違いがあるのでございまして、非常に遺憾に思います。
次にお伺いいたしたいのは、それではやはり一般労働者の健康保険についても、その経営は必ずしも楽ではないのではないかと思いますが、将来においてこうした一般労働者の健康保険についても給付費の国庫負担の道を開かれる意思があるかどうか。さらに保険局長が御出席なのでお伺いいたしたいのであるが、一体失業あるいは労災あるいは健康、あるいは厚生年金等を総括しての保険料率というものは、各国の労働者の保険料率と日本の労働者の保険料率とでは、どういう数字が出ているかという点をもあわせてお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/34
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035・山縣勝見
○山縣国務大臣 労災等の数字のことは後ほど局長等から申し上げますが、他の労働者の健康保険と仰せられるのは広義の意味で仰せられるのであろうと思いますが、これは今後そういうふうな場合において、われわれといたしましても、重要な社会保険においてその運営が非常に困難であり、しかもその社会保険が社会保障の推進の上から見まして、重要な産業におきましてはこれまた当然考慮しなければいかぬ。しかしその際に、どう言いますか、いつもおしかりを受ける言葉でありますけれども、その際にもそれだけのことでは結局きまらぬのであります。やはり財政全般の点からどのようにそれを処置するかを考えて行かなければならぬ。これははなはだいつも申し上げることで恐縮でありますが、政府の立場といたしましては両々相まつて考えて行かなければならぬ。その見地からそれらの点を検討いたして行きたい。もちろんそれらに対して全然そういうことは必要ないとは考えてはおりませんが、さようなことも考えてその点に対しては考慮いたしたい、かようにお答えせざるを得なないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/35
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036・小島徹三
○小島委員長 岡君に申し上げますが、大臣は実はきよう九州の方に立つ都合がありますから、大臣に質問していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/36
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037・岡良一
○岡委員 あと数点でございますからお許しを願いたい。
次に大臣に所見を伺いたいのですが、実は先般来の委員会では非常な問題となつておりますが、この際国務大臣としての責任ある構想を承りたいと思う。それはただいま委員会に上程に相なつておりまする厚生年金の一部を改正する法律についてでありますが、すでに本年の十一月になれば、坑内夫に対しては厚生年金の給付が始まる。しかもその年金は現行法によればわずか一箇月百円、年間を通じて千二百円というようなことにしかなつておらない。われわれは、当然厚生省としても今日の物価事情にスライドしたべース・アツプを断行するということが、厚生年金法改正の最も重点的な点ではなかろうかと思つて期待しておつたのであるが、ただいま提案をされている厚生年金法の改正は、何らこの点には触れておらない。すでに十一月から開始されようとしているのであるが、これを一体このまま放置されるのであるか。さもなくんばいかなる具体的な措置によつてベース、アップした厚生年金を支給されようとされるのであるか。この点責任ある御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/37
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038・山縣勝見
○山縣国務大臣 実は厚生年金の問題はただいま私どもとして検討いたしておりますものの重要な一つであります。仰せの通り厚生年金は政府としても決して等閑に付しているわけではないので、現に本年坑内夫の一部養老年金の支給の時期が参りますが、しかしこれは予算的には大体予備費等においてできると思つております。ただ同じことが、あるいはそれ以上のことが——これは決して私は一方の話のみを聞くというわけではありませんが、厚生省に関する限りは、これはいわゆる経営者と労働者というものの立場も公平に、どちらにも重きを置くことはいけません、公平に考えて、そして国としての公正な結論を出さなくてはならぬ。それでむしろわれわれとしては、ただいま仰せの標準報酬等も適当に引上げる、あるいはその他の点においても適当の考慮をしてやりたいと思つておりますが、いわゆる経営者が御承知の通り強硬な態度をとつておりますので、決してわれわれはそれがゆえにということは毛頭ありませんで、この点先般もある会合において、私はむしろ結論としては労働者側の立場の人にとつての結論になるようなことまで言うたのでありますが、標準報酬の問題にいたしましても、ことに一面先ほど仰せられた社会保険の統合という点から、経営者側は、たとえば現在においては退職金制度がある、戦後においては退職金制度を廃して一応いわゆる給与の中に入れた、しかもその後退職金制度ができた、しかも一方において厚生年金制度をこの際相当の規模において創設せんとする政府に対して非常な不満を持つております。しかしこういうものはわれわれはただ意として聞くのでありまして、政府は公正な態度から公正なデーターのもとにおいて結論を出したいと思つておりますが、そういう面でいろいろな点をさらに検討して、そうしてどこから見ましても公正な国としての線を出したいと思つて、今せつかく検討中であります。仰せの坑内夫の問題につきましては、予算的に見ますとごく少額であり小数でありますので、この予算的な措置は目途はついておりますが、できるだけ早くこれらの問題についても結論を出したいと思つてせつかく検討中であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/38
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039・岡良一
○岡委員 しかし予備費から出されるとしても、これは法律の改正をされなければ出されないわけでありますが、法律の改正をいつなさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/39
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040・山縣勝見
○山縣国務大臣 おそらく厚生年金の改正は次の国会に出し得ればと思つておりますが、坑内夫のものに対しては法律の改正を要しますかどうか、これは私はそこまで考えていないのであります。たぶん要しないで一応出したいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/40
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041・岡良一
○岡委員 先ほど国保の給付費の一部国庫負担については、大臣も相当の決意をもつてその解決に当られたということをお漏らしになつておられますが、すでに今日軍人恩給の復活についても、軍人制度廃止以前のあの身分差をそのままの十七の階級差を持つた古色蒼然たる恩給制度というものがすでに改正をされ、これが本院の審議にかかつておるわけであります。また文官恩給についても、従来の明治初年からのいわゆる終身官を想定したような、きわめて恩恵的な制度ではいけないということで、国家公務員法に基いてその研究もすでに作業が了せられて、もうすでに人事院の方では国家公務員の退職年金法については要綱はすでに一応発表されておるが、年金制度というものは、今日日本の社会保障制度のもとにおける立法段階としては、実に山になつて来ておると私は思うのであるが、この際新聞を見れば、日経連あたりがかなり強硬に反対をしておるというようなことも伝えられておるのは非常に遺憾である。厚生委員会は常にどの委員会よりもお互いがまことに欣然たる協力の姿で問題の解決に臨んでおるのであつて、大臣としてもこれは相当な決意をもつて何とか労働者の納得の行く厚生年金法の改正を一刻もすみやかになさるべきであると思うが、この点重ねて大臣の決意を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/41
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042・山縣勝見
○山縣国務大臣 ただいまの御趣旨はよく拝承いたしまして、今後ともその線に沿つて行きたいと思つております。但し単に労働者の立場のみというわけには参りません。これは公正な立場に立つて各般のことを勘案して参りたいと思つておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/42
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043・岡良一
○岡委員 それからこれも先般来委員会で問題になつたのでありますが、特に大臣の御見解を承りたいと思うのは、この厚生年金積立金の問題ですが、すでに七百億近いものがある。年年百五十億以上も増加を見るということになつておる。これはまつたく法律に規定された労働者のいわば強制貯蓄である。労働者の強制貯蓄でありながら、これが運用部資金となつて大蔵省の財政投資のままに放任されておる。本年度においてもわずか勤労者住宅などに二十億か三十億程度のものが労働者の福祉に還えされるということは、われわれ納得できない。こういうような資金というものは、健康保険勘定の財政規程によつても、当然労働者の福祉に還元する道が開かれておる。これはもつと大幅に労働者の福祉に還元すべきものであると思うが、大臣の所見はいかがであるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/43
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044・山縣勝見
○山縣国務大臣 厚生年金の積立金は、仰せの通り、現在六百七、八十億になりますが、年々百七、八十億ふえております。相当大きなフアンドであります。従つてこの運用よろしきを得て、ただいま仰せのようにいたしたいということはまつたく同感であります。但し問題は、われわれちよつと考えますると、むしろこれを預金部資金から切り離して、厚生省単独で運用いたして、高利にまわして、それでもつて福利厚生あるいはその他の保険給付の内容の改善をはかつたらどうかということは、われわれも考えるのであります。しかし御承知の通り、今これを大蔵省にまわさして、五分五厘とつて、大蔵省は六分五厘でまわしております。その間約一分のマージンがあります。しかしその中の七、八厘はエツクスペンスにかかつているようでありますが、問題はその差額の二、三厘ということになつておりますので、これだけは少くとも不必要なもので、これは還元してこちらの方にもらえてしかるべきものと思つております。これは努力いたして、今後そういうふうな大蔵省の運用利率からその必要な経費を差引いたものはまるまるこちらの方のいわゆる保険財政の方にまわしてもらいたいと努力いたしております。
そこで問題は、そんな手ぬるいことでなく、いわゆる単独で運用して、もつと高利にやつたらどうかということも考えられるのでありまするが、これは御承知の通り、貸し付けますると——運用といえば貸付けでありますが、貸付けにはおのずからそこに危険が伴うわけであります。現に、いつでありましたか、厚生年金から満州の重工業その他の関係の海外の社債等を引受けて、相当の損失を受けた際に、厚生年金積立金は労働者の貯金によるものであるから、それを国家がほつておくことはできぬというので、無理に大蔵省からその損失補償を受けたようなことがありますが、実際から申すと、法律の建前から行くと、これはおかしいのであります。しかしそういうこともあつて、これは国家のいわゆる保障された投資である方がいい。結論としては一応高利ということを望んでもいかぬ。やはりそのセキユリテイというものも必要だから、ことに重要な労働者諸君の零細な貯金であるから、その確実性も同時に考えなければならぬ。そういうわけで一応現状のままやつております。しかしそれのみではいけませんから、ただいま申しましたように、より高利まわりにまわるようにまわしてもらう、また還元融資につきましては、病院あるいは住宅等に対してできるだけしてもらう。実は本年度の考え方をちよつと申し上げますると、病院もけつこうであり、またそれに対してもいわゆる厚生年金病院もりつぱなものができつつありますが、やはり従来の厚生年金の運営から見ますると、そういうふうな労働者の方々が住宅に非常に困つておられる。住宅の施設に還元融資をしますると、労働者のいわゆる福利あるいは家計、これらに対して住宅からはね返りますところの工フエク下というものが非常にあるということが統計的に出ておりますので、今年度は住宅問題に相当重点を置いて還元融資をやるように原局にも指示いたしておるような次第であります。今後とも仰せのような趣旨によつてこの点に対して最大の努力を払つて行きたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/44
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045・岡良一
○岡委員 住宅の問題について多少の還元がされていることはわれわれ了とするのでありますが、それにしても、たとえば先般も炭鉱労働者の住宅のための政府の貸金の利息は、炭鉱労働者の要請によつて相当巨額のものを棒引きしている。一方いわゆる二十五億程度のものが、しかも法律上義務として労働者の積み立てた積立金の五%にも満たないものが住宅に還元されたということでは、これは筋が通らないと私は思う。おそらく各国の立法例を見ても、私どもの調査した範囲内では、社会保険の積立金というものは、ほとんど社会保険財政の確立化、労働者の福利のために還元されている。単に事務的に安定をはかるというようなきわめて技術的な、俗僚的な観点から、小心翼々としてこの預かつた金の保全に当るということでは、ほんとうの政治というものではないのではないかとさえも私は言いたいのでありますが、これ以上議論になりますから、重ねてお聞きいたしますが、年々社会保険の全体の保険料は一千億ばかり入つているはずである。そのほか積立金が七百億はある。せめてこの半分くらいはやはり独自のフアンドとして労働者の福利のために還元し、あるいは保険経済の安定のために寄与するがごとく活用する、そのくらいの態度でもつて厚生大臣としては大蔵大臣と大いにとつ組んでいただきたいと思うのであるが、とりあえずその点についての御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/45
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046・山縣勝見
○山縣国務大臣 ただいまのお尋ねの前に、お尋ねに関連してちよつと申し上げたいのは、確かに積立金は六百七、八十億ございます。それに対して住宅問題は非常に大事であるから、住宅問題に対して今後は、少くとも昭和二十八年度は重点を置いて行きたいと申し上げましたが、それでは少いというお話であります。私どもも決して十分とは考えておりませんが、厚生年金積立金というものは、たとえば損害保険におけるプレミアム・リザーヴに該当するものでありまして、ただそれがいらないものを積み立てるのではなくして、今後養老年金等が漸次出て来ますると、プレミアム・リザーヴでありますから、それを長期なものに固定することは保険財政からいつて適当ではない。でありますからさような点も勘案して、この運用を考えなければならぬ。しかし二十五億ではまだまだ少いと思いまするから、それに対する努力はいたしたいと考えております。
なお全体的に社会保険を通じて、それをシングルのセパレート・フアンドにしたらどうかというお話でありますが、私も一応理論的にはさようなことも考えまするが、それにはただいま申し上げましたような点もあり、あるいはまた全体としての総合的な問題もありまするから、それはまだ私は結論を申し上げて御答弁申し上げる確信はございません。なおいろいろなデータを研究いたして検討いたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/46
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047・岡良一
○岡委員 最後に厚生大臣の御所見をお伺いいたしたいのでありますが、先ほどの御答弁にあつた、昨年の六月にジユネーヴのILOの総会において採択されたいわゆる社会保障の最低基準関する国際条約、あれは申し上げるまにでもなく九つの社会保障部門にわかれ、そのうち三つがその基準に達しておるならば批准し得るということになつておるのであるからして、わが国としてもその資格は十分にあるわけなのです。そこでこれは常に政府の態度であるが、せつかく政府あるいは労働者、資本家の代表をまぜてみましても、賛意を表しながら、しかもそうした国際条約の批准ということになると非常に怠慢である。これは労働省の直接の所管かもしれませんが、厚生省としてもこの際当然この昨年のILOの第三十五回総会において採択された社会保障の最低基準に関する国際条約を国会の承認を求めて批准を完了すべきものと思いますが、この点について大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/47
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048・山縣勝見
○山縣国務大臣 仰せのILOの社会保障の最低基準に関する条約の批准の問題でありますが、わが国といたしましても、これにはたしか政府からも代表が出ておるはずであります。従つて適当なものであれば批准をいたすべきであろうと思いますが、外交上の問題について実はいま少し外務大臣とも話合いをいたしたく、また労働大臣の所管でもあろうと思いますから、なおよく話したいと思いますが、御承知の通りあれにはたしか医療とか疾病とか失業とか出産とか、あるいは養老とか遺族とかいろいろあります。そのうちで、たとえば適用の範囲の問題でいわゆる五割に達しなくても、保険の給付の内容で基準を突破いたしておるものもありますから、一概に言えませんが、大体ただいまのところ仰せの通り四つくらいはこの基準を上まわつておるとも考えられますので、この点はなおわれわれといたしましても労働大臣、外務大臣とよく相談いたしまして、遺漏のないようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/48
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049・岡良一
○岡委員 御提案になつておる健康保険に関連をして、政府の基本的な構想をお伺いいたしたのでありますが、これで一応私は質問をやめたいと存じます。なおその後においてもいろいろ法律案が出ておりますが、やはりそれに関連して政府の責任のある御答弁を要求したいという気持は、各委員とも平等に持つておると思いますので、今後厚生大臣としても他にいろいろ委員会等もあつてお忙しいことではありましようが、また本委員会の求めがあるならばできる限り御出席をいただいて、お互いに率直な所懐を闘わしたいと思いますので、委員長においてもまた厚生大臣においても私どもの気持を了として善処されたいことを念願いたしまして、私の質問はこれで終えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/49
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050・小島徹三
○小島委員長 杉山元治郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/50
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051・杉山元治郎
○杉山委員 私のお尋ねしたいと思つておりましたことは、大体岡君のお話で、社会保障の点あるいは積立金の点については了承いたしました。それでただ一点お伺いいたしたい点は、いわゆる単価引上げの問題であります。これは社会保険をよりよくいたして参りますのには、やはり医師の協力を得なければならぬことはもちろんであります。そういう意味合いにおいて、大臣もすでに御承知のように、単価問題で非常にもめ、ときには医師が総退却するというような場面もあつたようでありますが、そういう意味合いにおいて今の単価は十分でないと私どもは思う。また今日の物価指数やいろいろな問題から考えてみましても、引上げなければならないのではないか、こう考えておりますので、厚生省として、また大臣としてどういうお考えを持つておられるか。なおこの点ができないならば、それに該当すると言うと語弊があるかもしれませんが、税金などの点において何か考慮してやるというようなことがあるかどうか、この点をひとつ伺いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/51
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052・山縣勝見
○山縣国務大臣 単価問題につきましては、先ほど来諸先生方の御質問にある程度巨細にお答え申し上げ、御了承願つたと思いますが、何分にもこの問題は、先ほど申し上げた通りいろいろなデータの検討には、ただ数字を出せばすぐに答えが出るにあらずして、いろいろな考え方がございまして、しかもそれがいろいろな角度から見ますと、同じデータで考えが違つて来るという点もあり、かりに単価の問題が解決いたしましても、点数の問題に関連し、地域差の問題に関連し、いろいろな問題に関連いたしますので、先ほど来申し上げております通りせつかく検討いたしております。
なおそれに関連して課税の問題がございました。これは最初に他の先生からもお話がございましたが、御承知の通り二十六年十二月にああいうふうに閣議了解で、昭和二十六年度の措置に対して二割五分ないし三割という標準で、その面から診療報酬の所得者に対する軽減もいたして参りましたので、その後昭和二十七年度の所得者に対して問題が起り、大蔵省は、今回は絶対に前回の閣議了解のあの措置はとれないということで、事務的にも相当強硬な態度でございましたが、閣議においてもその点は現在の各府県の財政、ことに診療報酬の所得者の立場等いろいろ申しまして、大蔵省とも折衝をいたしまして、結局昭和二十七年度も二十六年度同様の措置で参ることに先般いたしましたことは御承知の通りであります。但しその際には大蔵省としては、さようなことをいつまでもされては困るということでなかなか強硬な態度でございましたが、これは今後単価の問題、あるいは点数の問題、あるいは地域差の問題、いろいろな問題を決定いたします際に、現在の国家財政の点から見ますと、そう百点満点の答えが、たとえば単価の問題だけでできるといたしますればけつこうでありますが、そうできぬ場合においては、あるいはさような租税上の間接的な措置でもつてアジャストするということも考えられますので、今後はこれらの関連の事項を総合的に考えて——もちろんこれは最初単価の問題と取組んで参りますが、それらの解決については、あるいはその他の間接的な措置も必要であるというような事態も起るかもしれません。さような際には、ただいま仰せのような趣旨によつてできるだけ善処してみたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/52
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053・杉山元治郎
○杉山委員 もう一点それに関連してお伺いいたしたいと思います。今地域差の問題についてお話がございましたが、普通の俸給の地域差と違つてわずか一円のことでありますが、人事院においてもこの地域差をなくして行こう、また各党派においても地域差の問題をなくして行こう、そういう議が人事院関係においてすら起つておるのであります。御承知のように、ときによるとむしろ僻陬の土地のほうがいろいろ生活などの点においても困つており、またかえつて高くなりつつある、こういう現状などからいたしまして、むしろ今のような地域差のごときはなくしてしまつた方がいいのではないかという考え方を持つておるのですが、そういう点についてもぜひひとつ大臣の御意見を伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/53
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054・山縣勝見
○山縣国務大臣 仰せの通りこの地域差の問題は、なかなか具体的に現実的に問題を蔵しておりまして、たとえばこの間地域差の問題で一番問題になつておりました大阪市の周辺の都市、これは地方自治団体として、別個の自治団体でありますけれども、もうほとんどどこが境かわからないような都市がたくさんある。その際にこの地域差でもつてやられることは困るというので、これはいろいろな事情を勘案して乙地域から甲地域に編入いたしました。同様の問題はたくさんあります。但し、そうかといつてこの際全国的にこの地域差を廃止するとい)ことになりますと、これまた問題が残りまして、たとえば東京のようなところとその他の地方と同じような地域差で行つていいかどうかということになりますと、別の意味のまた不均衡ということも起つて参るのであります。でありますから、今ただちにこれを廃止するということは考えておりませんが、ただ甲地、乙地の地域差を設けたとしても、その公平を期するということに対しては他との権衡を十分に考えて行かなければならぬと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/54
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055・小島徹三
○小島委員長 この際健康保険法の一部を改正する法律案等保険関係諸法案につき、大臣に対する質疑はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/55
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056・長谷川保
○長谷川(保)委員 それでは、本日は全般の問題と考えておつたのでありますが、健保に関する問題ということでありますので、伺いたいのでありますが、健保の療養給付を三年に延長することにつきまして、生活保護におきまする医療費の節約が相当できると思います。これは私は相当大きな額と見るのであります。医療給付の三年延長について事業者側からあるいは労働者側から相当強硬な国庫負担に対する要望がありますが、この額をそれにまわしたらどうかと思うのでありますが、先ほど来大臣は社会保障制度の実施につきまして大きな熱意を持ち、ことに一昨日の行政全般に対しまする説明におきましては、その第一の点として疾病の医療に対する保障についてやつて行くというお話があり、私はそれは正しいと思うのでありますけれども、この額、及びこれをまわしたらいかがかということについての大臣の所見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/56
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057・山縣勝見
○山縣国務大臣 ただいまお尋ねの健康保険の療養期間の一年延長によつて——たとえば結核はたしか保険給付率におきましては四割くらいを占めると思いますが、従つてそれによつて生活保護が減るのではないか、それを国庫負担にまわしたらどうか、こういう御質問でございました。これはそういうふうにも考えますが、国家財政全体として一方に減りますかわりに一方にふやすということになりますし、そういうことでなくて、かりにそういうことで減らなくても、減つたからまわせということでありますが、そういう理論とともに、減らなくとも国民健康保険のごときは国家財政からしぼり出して持つて来ているのでありますから、これはやはり健康保険の財政そのものも見て、それに合うような国庫負担を総合的に、大局的に考えるということにいたしたい。実は一年の延長によつて生活保護のどれだけのものが助かるかということは、研究をさせておりますがなかなか出ません。これは先生も事情を御承知だと思いますが、観念的には出るのであります。しかしそれは実際これだけのものが減るという把握が、たとえば次の予算編成というときに間に合うような程度にはなかなかできませんで、理論的にはわれわれ考えてそういう数字を出してみろと言つておりますけれども、的確な数字が出ませんので、これもやはりそういうことではなくて、たとえば国民健康保険に対する給付の国庫負担をいたしますような、国家財政全般から必要なものは出すということにいたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/57
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058・長谷川保
○長谷川(保)委員 一昨日の厚生省の予算の説明におきまして、本年度の前年度に対しまする予算の実質的増加は十五億円と承つたと思うのでありますけれども、ただいま申しました健康保険の医療給付の三年延長によりまして、今まで健康保険の医療給付は二年でございましたから、二年を過ぎたものはみな生活保護にかかるということが多かつたと思うのであります。従つて相当大きな額がここで浮いて来る。予算で前年度比実質十五億円増というようなことよりも大きなものが浮いて来るのではないかと私は思うのであります。従いまして、先ほど来大臣が熱心に社会保障制度を推進しておると言われておるが、私は、事実において何も推進していないのじやないかというように考えるのでありますけれども、いかがでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/58
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059・山縣勝見
○山縣国務大臣 それはいろいろ考え方もありましようけれども、先ほど岡先生の御質問にもありましたように、社会保障の推進ということはやはり適用範囲をふやすということと、給付の内容をよくするという面があるのでありますから、政府として健康保険の対象人員を六十万もふやすということは一つの推進になる。それから給付期間を一年延長することによつて、現在相当漏れておりますものを救うことができる。ただ問題はそれに対する保険経済の問題になりますが、保険経済の問題につきましては今後検討して行きたいと思う次第であります。なおまたそのほかに、先ほど申しましたが、間接的の措置として、これは国家の直接扶助と結果は同様になると思いますが、たとえば、保険給付の約四割を占めるのは結核でありますから、結核患者に関して、今回一年延長することによつて、政府管掌のものに対しては今年は十三百床、組合管掌については千五、六百床、合計二億数千万円というものを増床に用いている。これは必然に結似対策になる。それが国民健康保険給付の内容に付する何らかの寄与をいたす、こういうことをいたしつつあるのでありまして、こういう点は総合的に今後考えて参りたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/59
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060・長谷川保
○長谷川(保)委員 私はあれこれ論理をもてあそぼうとするものではありません。今申しましたように、相当大きな金が健保の方から浮いて来て、生活保護の医療扶助が減ることは明らかであります。明らかであるのに、厚生省の行政全般の国庫から出します金が十五億円増加したということだけで、健康保険に対する国庫補助、あるいは国民健康保険でも医療給付の二割を補助せよという国民大衆の非常な要望に対しまして、一割五分であくまで行こうという考え方、これら全体を総合して考えまして、私は、厚生行政が社会保障制度を推進するという線で推進はしておらぬと言うのです。だから、私の一昨日予算説明について伺つたこの十五億円実質増加というのが間違いならば別でありますけれども、その点いろいろ研究するとか、あるいは保険のわくが広がるということでなしに、実際に金がふえてないのではないかと思いますが、その点いかがでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/60
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061・山縣勝見
○山縣国務大臣 この点は仰せのようなことも考えられますが、先ほど私が申したようなこともあろうと思います。ただいま検討しておりまして、まだその数字を的確につかめませんことには、ただここで数字をお互いに言うだけのことになります。さらに研究を進めまして、数字を見て私も研究いたしたい。但し仰せのように、そうだからといつて日本の社会保障制度は停滞したとは私は考えてない。あくまでも前進しておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/61
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062・長谷川保
○長谷川(保)委員 それは次の機会に譲るといたしまして、今日国保及び健保におきまする保険財政の困難というものは、申すまでもなく結核に対する医療給付であります。そういうようなところから、前年御承知のように結核に対しまする公費負担という制度ができたわけでありますが、この結核予防法の医療費の公費負担というものが、今日地方財政の欠乏というところから、実質におきましてこれが停頓をいたしておる点がございます。これは保険財政と重要な関係があると思いますが、この現状とその打開策について大臣の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/62
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063・山縣勝見
○山縣国務大臣 この点は実は私も憂慮いたしておりまして、地方財政の困難のために、公費の負担を渋つておるとかあるいは出さないとかいうふうなことがあるやにも聞いておりますので、これは厳重に厚生省から都道府県に注意をいたしましてやつておりまするので、これはたしか私も承知いたしておるところでは、数字は今手元にありませんけれども、昭和二十六年度あたりは非常に悪かつたのでありますが、昭和二十七年度は非常に改善されておるように聞いております。こまかい数字を持つておりませんから詳細に申し上げかねますが、まつたく同感でありますから、今後ともこれは厳重にひとつそういうことのないようにいたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/63
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064・長谷川保
○長谷川(保)委員 この医療費公費負担が御承知のように非常な煩雑な事務と、またただいま申しましたような理由からいたしまして、患者も医師も非常に迷惑いたしておりまして、この改正についての要望が強いのであります。社会保障制度審議会の勧告の方にも、結核につきましては五割の国庫負担をすべしということがありまするが、この結核に対する医療費の解決こそ保険財政建直しの根本問題だと思うのであります。そこでこの際私は厚生省の御方針を承りたいのでありますが、百尺竿頭一歩を進めまして、社会保障制度審議会の主張いたしますように、ただいまのようなめんどうな行き方でなしに、ことにこれが生活保護の関係などになりますと、実にこれはむだな経費を使つてむだな事務をいたしておる。このむだな事務費もたいへんなものだと思うのでありますが、この際結核予防法の医療費公費負担を根本的に改めまして、そうして全結核に対して五割の国庫負担をするという社会保障制度審議会の勧告の線を推進なされてはどうかと思うのでありますが、これに対する御所見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/64
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065・山縣勝見
○山縣国務大臣 これはさようにできれば非常にけつこうだと思いますが、五割と申しますけれども、いろいろな問題があつて、もちろんこの社会保障制度審議会の答申を読みましても、日本の社会保障制度の推進の順序、方法、内容等については云々とうことも書いてあります。幾らでも出せばいいというわけでもありませんので、これらに対しましては、五割ということが適当であるかどうかということはただいま確言はいたしません。あるいは五割ということは少し問題があるのじやないかと思いまするが、ただ結核対策に対して推進いたすということは、政府は御承知の通り十九万床を目標にして年々増床をいたし、あるいはまた結核予防に関する予算は十分とは言い得ませんにいたしましても、予算に組んで善処いたしておるような次第でございます。なお、公費負担等の点についてもただいま申した通りでありますから、両方の点を総合的に推進いたしまして、今後この問題の解決に当りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/65
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066・長谷川保
○長谷川(保)委員 時間もありませんし、次の質問者の方もありますから、もう一点だけ伺つておきたいと思うのでありますが、ただいまの問題に対しまして、私は厚生大臣の結核に対しまするお考えについていま一段の熱意と御尽力を願いたいと思います。
先に岡委員から伺いました厚生年金保険に関することでございますが、私の質問せんとすることが少し漏れておりますので、その点伺いたいのであります。先ほどお話のように、厚生年金保険の積立金がすでに六百八十億になつており、年々また相当大きな額がこれに加わつて参ります。その運用につきましては、私は岡君とまつたく同感でありまして、この運用の方針につきまして、今日のような資金運用部に自由にされておる、こういうようなことではいけないと思うのであります。これは前国会におきましても、御承知のように簡易保険等、郵政省関係の保険積立金等につきまして、非常な問題が惹起いたしました。その合理的な解決といたしまして、大蔵省から郵政省に移すということが行われましたが、厚生省も一ふんばりなさいまして、この積立金を厚生省の方に、金額と言わないまでも、相当大きなものを厚生省の管轄に移しまして、そうして被保険者である労働者の十分な福祉対策をする必要があると思うのであります。つきましては、この積立金の運用の機関を、労働者代表つまり被保険者代表、及び事業者代表あるいは公益委員の、いわゆる三者構成にして、これを運用して参るというような機関を新設なさつてはどうか、こう思うのでありますけれども、大臣の御所見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/66
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067・山縣勝見
○山縣国務大臣 この問題につきましては、先ほど岡先生でございましたかの御質問にお答えいたしました通りに考えておりまして、なおこの問題はそう一片の検討だけでどうこうという問題でもありません上、重要な問題でありますから、私ども自身といたしましても、保険財政あるいは日本の社会保険全体の問題ともにらみ合せまして、今後十分検討いたしてみたいとは思つております。但し政府の御答弁として、今御趣旨に沿つて善処しますということをまだ申し上げかねますが、私は十分検討してみたいとは思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/67
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068・長谷川保
○長谷川(保)委員 ただいまの御答弁非常に不満でありまして、私はさらに追究したいのでありますが、時間がすでにないようでありますから、いずれ他の機会に譲りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/68
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069・小島徹三
○小島委員長 次に、ただいま議題となつております法案中、健康保険法の一部を改正する法律案に対して、委員外の原田稼吉君から発言を求められておりますが、これを許可するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/69
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070・小島徹三
○小島委員長 御異議なしと認め、これを許します。河原田稼吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/70
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071・河原田稼吉
○河原田稼吉君 たいへん時間のない際、特別のおとりはからいをいただきましてまことにありがとうございます。この機会に、ただいま御審議中の五十七条の三の問題につきまして、厚生大臣に若干のことをお伺いしておきたいと思います。
このたび、五十七条の三が改正になりまして、二年が三年に延長せられることになりました。これはある意味においてまことにけつこうなこととは存じまするが、しかしこれに対する財源的の裏打ちはどういうふうにせられるかということを篤とお伺いをしたいのであります。御承知のように保険には二通りありまして、いわゆる一般国民を対象といたしまする国民健康保険につきましては、これは皆様方のいろいろのお骨折りによりまして、一割五分の医療費の補助ということが提案せられておるようでありまして、これはまことにけつこうなことであります。ところが、これとまつたく同じ性質を持つておりまする労働者を対象とする健康保険につきましては、これに対する何らの御処置がまだないのであります。これは御承知のように二通りありまして、一つは政府管掌の分と、いわゆる事業主と労働者の組合による組合の分と二つありまするが、この政府管掌の分は、これはたくさんの人を一つにまとめて取扱つておるのでありまするから、財源におきましてもあるいはプール計算等におきましても、一年延ばしてもある程度経理が立つことがありましよう。ところが組合の方につきましては、いずれもみな独立の経済を立てており、そのうちには余裕のある大工場の組合もありますが、中にははなはだ貧弱な組合もあります。たとえて申しますれば、いわゆる市町村の公務員あたりを対象といたしております公務員の組合のごときは、標準報酬も少いし、関係の人も少い。こういうようなことからして、一年を延長するということによつて非常に財政の困難を来し、場合によると組合を解散しなければならぬというようなことが起らぬとも限らぬような現状であります。元来健康保険の制度は、——実は私はその法案の制定の際に社会局におりまして、その立案に関係をいたしておりましたが、大体その趣旨は、事業主と従業者すなわち労働者との自主的経営になるべくまかして行く、すなわち今日でいいますると、民主的、自主的の制度というものを主眼にしておる。ただ非常に小さい工場では、独立の経済を立てるわけに行きませんから、国家がこれを全体として管掌するというような建前になつておると存ずるのであります。こういうのでありますから、そういう貧弱な組合は解散をして、あるいは政府管掌になつてもいいじやないかというようなことは、まことに立法の精神にも反するし、またはなはだ無慈悲といいますか、はなはだ同情のないことになりますので、どこまでもこの組合というものを助長して発達さしていただかなければならぬし、またこれをすることが国家の義務と思うのであります。社会保障制度審議会におきまして、たびたび医療費の国家補助ということが決定になつております。あるいは財源その他においてこれは一方において考えなければならぬのでありますが、大体においてやはりこの線に向つて進まるベきものと思うのであります。前国会におきまして、私はこの点についてお尋ねをいたしたのでありますが、当時厚生大臣がおいでなかつたがために、保険局長からかわつて御答弁を願いまして、その際に大いに考えるというお話でありましたが、その後あるいはときどき厚生省におきまして、その方針がかわるやのうわさもなきにしもあらず、つきましては、この点につきまして、なおその方針を堅持せられておるのであるかどうか。もとより一方におきまして、国家の財政ということも考えなければならぬのでありますが、これを何とか解決するという御熱意を持つておられるのでありますか。この点につきまして、厚生大臣の御答弁を承りたいと思います。
なおこれに関連いたしまして、もう一つお尋ねをしておきたいと思います。と申しますのは、ただいま申し上げましたように、健康保険の運営は大体民主的、自主的に行わしめる、すなわち組合のある場合には、組合をしてできるだけ自主的、民主的に行わしめるということが建前になつておると思うのであります。ところが戦争以来いろいろ統制のはやつた結果でありましよう、あるいはまたその当時におきましては必要であつたと思いまするが、新たにいろいろの監督といいますか、統制的の規定が爾来加わつておるように思います。私は今日の時勢におきましては、なおさら元にかえつて、さらにもつと民主的、自主的の運営を達成せしむるような法制的の処置をおとりになることが必要と思いますが、これにつきまして、なお厚生大臣の御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/71
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072・山縣勝見
○山縣国務大臣 ただいま健康保険の相付期間の一年延長等に基いて、保険経済上のいろいろな経費の増加を来すについて、国庫負担を必要とする、あるいはさような適用範囲、あるいは保険給付内容の改善の裏づけとして、国としての財政的の措置いかんというお尋ねだと考えますが、これは先ほど来諸先生の御質問にるる申し上げたことで尽きておると私は思います。ただ現在かような給付の一年延長によつて、大体今押えました数字は、政府管掌で六億二、三千万円、組合管掌で八億五千万円くらいでございましようか。しかし昭和二十八年度はそのうちの五箇月分でありますから、三億ないし三億五千万円、これに対する裏づけでありますが、これは実は、御承知の通り今回の改正案を提案いたしまして、標準報酬も最低二千円を三千円に、最高二万四千円を三万六千円にいたしておりますので、保険料率をさわりませんでも、自然に保険料収入はふえるわけであります。これは現実の問題でありますが、そのほかに、これらの健康保険の被保険者が、その給与も年々上つておる。これはベースが上つておるという意味ではありませんで、本人たちの給与の各クラスは下つているよりも上つておる。そういうことも考え、また先ほど来申し上げておりますように、間接的に結核予防法等——しかもこの一年延長は、健康保険の医養給付の四割は主として結核ということに一応数字上なつておりまする関係もあつて、結核予防法その他の方面からも間接的な処置をとつて善処を期しておる。なおまた現在の健康保険の財政から見ますると、さようないろいろな措置等も勘案して総合的に考えまするならば、本年度においては、この程度の経費の増加は一応まかなえるであろうという観点に立つて、今回の改正案を提出いたしたものであります。今後健康保険組合の保険財政運営等を勘案いたして、これらの健全な発達に対しては、もちろん政府は万全の考慮を払つて行くつもりでありますが、当面の措置といたしましては、先ほど来るる申し上げておりますような考えによつて、ただいま提案いたしておりますような趣旨によつて実現を期したい、かように考えておる次第であります。
第二点は監査の問題でありますが、これは仰せの通り考えております。社会保険につきましては、たとえば保険医の保険診療報酬等の査定、いろいろな申告等において、ときに問題が起ることがございまして、その監査には適正を期して参つておりますが、健康保険組合の監査に関しましては、主としてこれらの指導に重点を置いて参つておるのでありまして、いたずらにいわゆる官僚的な監査をいたすという方針は毛頭とつておりません。もしもさようなことが事案としてございますれば、厳重に戒告いたすつもりでありま了し、今後もその方針で参りたいと考えておる次第であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/72
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073・小島徹三
○小島委員長 これをもつて健康保険法の一部を改正する法律案等保険関係諸法案の大臣に対する質疑は終了し、他の質疑については次の機会に譲ることとし、この際九州地区水害地引揚者の援護の問題について、山下委員より発言を求められておりますので、これを許可いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/73
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074・山縣勝見
○山縣国務大臣 その前に……。実は私は本日午後二時の飛行便で、九州地区の災害地に政府を代表いたして参ります。つきましては、後ほど九州災害についての委員会の意思表示があるようでありますが、時間がございませんので私は退席いたしますが、委員長から承りますと、当委員会としても深甚な関心をもつて、これらの対策につきいろいろお考えのようでありますから、この委員会の趣旨を体して、現地に参りまして、せつかく諸種の対策の樹立あるいはその実行、に対して善処いたして行きたいと思います。一言ごあいさつを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/74
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075・山下春江
○山下(春)委員 大臣もきよう御出発のようでございますので、簡単にその内容を御報告しておいた方が、九州においでになる御参考にもなろうかと思いましたので、皆様のお許しを得て発言いたす次第であります。
舞鶴に引揚げて来ます船団がいろいろなトラブルで遅れました関係上、ひよつとしたら四船が一ぺんに入つて来るおそれはないかと思いまして、施設を調査に参りました。大体今の雲行きでは四船一ぺんに入るようでございますが、そうしますと、一番災害のひどかつた熊本、福岡のような所が、これまでの統計からいうと一番人数が多いのであります。これはどうしても三泊四日で帰すということが不可能な状態になつておりますので、その施設を調査いたしましたところが、森寮に収容いたしますことは、一棟を修繕すれば、不便でありますけれども大体可能であります。そういうことで、あるいはすぐに帰せませんので、一箇月くらい滞在させなければならないような事態が起つて来ると思います。その用意について、舞鶴援護局の職員及び報道陣などが暴行を受けたりして、相当今日まで問題があつたようでございますから、援護庁及び厚生省で万全を期していただきませんと、思わざる不祥事を起すと思います。そのことに対して厚生大臣の方で、これは緊急を要すると思いますので、お考えがまとまつておればちよつと承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/75
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076・山縣勝見
○山縣国務大臣 この災害地の対策に対しましては、この間の閣議で総理からも、こういう問題はそう法規の末梢にこだわらないで、臨機応変に善処するようにという話もありましたから、ただいまの仰せは事務当局としては検討しておりますが、こういう方々の実情がさようであり、また援護を必要としますれば、われわれとしても最大のことをいたさなければならないと思つております。実はこの問題については公的に大蔵大臣とまだ話しておりませんが、これはその他にも同様の問題があろうと思いますので、現地にも参り、またこちらにおいても大蔵当局と折衝してできるだけ遺憾のないようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/76
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077・山下春江
○山下(春)委員 大臣御退席のようでございますから、詳しいことはあとで援護庁から聞くといたしまして、大臣に申し上げておきたいことは、今日までの統計から見ますと、福岡あるいは熊本地区に帰る者が、四船団一緒に入つて来るとすると、大体千人程度でございます。そうするとさしあたり住宅問題が起つて参ると思いますので、お立ちになるにあたりまして、そういう状態を御勘案の上御考慮願いたいと思います。あとは田辺次長に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/77
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078・山縣勝見
○山縣国務大臣 承りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/78
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079・山下春江
○山下(春)委員 それではもう少し田辺次長に承つておきますが、援護庁の方に何か詳細な報告が参つたかどうかわかりませんが、私どもの調査したところによると、今申し上げた森寮が三棟使つております。四棟あるのでありますが、一棟は修理すれば使えるのです。その営繕費が詳細に検討してみると大体百万円かかります。それからその千人を収容するための諸施設の問題もありますし、援護庁の方で帰還手当というものをおとな一万円、子供五千円をやつておるそうでありますが、これは職にありつくまでのつなぎ資金となつておるそうで、これが舞鶴に待機しておる間に使われてしまうと——引揚げた者の大体三三%は無一文で帰つて来るそうでございます。中には何百万も持つて帰る者もあるそうでございますが、これはごくわずかであつて、他の者は大体二万円程度の香港ドルを持つておるということであります。三三%は無一文で帰つて来るそうでございますから、それらの一万円、五千円を使わしてしまつたのでは、就職のつなぎ資金がないというところで、とりあえず一箇月くらい水害がおちつくまであそこにおちつかせるといたします。と、食費その他も検討して参りましたが、一箇月大体五百円くらいかかるだろうというのであります。そうするとそれが千人で五百万円かかります。これらの措置は急速に講じておきませんと後手を打ちます。次長はこちらにおられますが、舞鶴の援護局の者は暴行その他で相当難儀をしております。あれは非常に気の毒な作業だと思います。すべての状態からいつても容易な仕事でありません。そこで、政府が後手にまわつたためにあの現場におる者がにつちもさつちも行かない、難儀をするということは、われわれも想像がつくのであります。そういう点で、あるいは第二次の華人の送還と、また運悪くあそこでかち合うということになると、非常な混乱を来すと思います。なお上陸の施設が四船団一緒に帰つて来ると非常に下足を来すのであります。病院の方を調べましたが、今百四十のベッドが用意してあります。ところが一船団で多いときは二百八十人、少くても百人というような数字になつておりまして、今度は満州の奥地の者が多いという想像でございますが、そういうことのために非常に病人が多いだろうということで、この病院の不足が数字の上に出ております。これらについても援護局長として何かお考えになつたか、あるいは今手を打ちつつおありでありますか、それを次長から承つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/79
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080・田辺繁雄
○田辺政府委員 ただいま現場においていろいろ御視察いただきました点から御注意をいただきまして、まことにありがとうございました。実は第四次配船の船がまだ向うを出発しておりませんが、御指摘の通り同時に入つて来る心配も多分にあるわけであります。これは舞鶴援護局内での事務の取扱いとしても、同時に入港し、同時に上陸して同時に帰ることは困難でございますので、できるだけそういう事態を避けるよう調整したいと考えておりますが、もしいろいろの関係から上陸が相当接近して行われる場合におきましては、三泊四日も相当延ばさなければならないのじやないかと思つております。
次に九州地方に帰郷する方々の援護でございますが、従来の実績から推定いたしますと、評第四次配船によつて帰つて来られる方々で九州地方に定着せられる方は約千人弱と思います。しかしこれらの方々は、従来の実績から申しますと、多くは定着先のある方でありまして、一時収容所等にお入りになる方は、東京都と違いましてきわめて少数であります。従つて問題は、この方々の帰郷されようとして予定されている所が今度の水害でやられているかどうかということになるのでありますが、私の方で調べますと、鹿児島、宮崎、長崎等一部やられていないところもございます。大体被害地域該当が六割から七割、それ以外の地域が四割という程度ではなかろうか。もつともその中でもやられてない部分もあります。全体の被害率から申しますと、その全部が全部定着先がないということもなかろうと思つております。そこで、舞鶴援護局に駐在している都道府県の職員がおりますので、これらの方方にできるだけ詳細な資料を持つておいでになるようにお願いしておりますし、また上陸されましたらただちに定着先の方に電報その他によつて連絡をとりまして、定着先が健在である方はできるだけ早くお帰しするようにする。かりに定着先が水害でやられている場合におきましても、帰つて来られる方々の心情としては、一日も早く顔を会わせたい、なるべく早く帰りたいという気持もあろうかと思いますので、その場合におきましては、府県と連絡をとりまして、できるだけ早く御郷里にお帰しできるようにいたしたいと思います。もつとも無理かあつてはいけませんので、各県の状況を十分参酌して決定」たいと思います。問題は輸送方法でございますが、関門墜道は十五日以降でなければ復旧が完成しません。但し大分、宮崎、鹿児島に帰られる人は船を利用することも考えられますし、また関門連絡船もあることでありますから、われわれとしてはできるだけ従来通りの方法でお帰しするように希望いたしております。これは輸送の関係もありますので、こちらから運輸省へ相当強く折衝いたしております。そしてその結果分散して帰すという場合もあると思います。その場合は若干舞鶴の滞在が延びるが、これはやむを得ないと思います。ただどうしても定着先がなくて長い間舞鶴にいなければならない方がどのくらいになりますか、私どもの見当ではさほど数が多くないのじやないかと想像しておりますが、郷里に帰るまでの間舞鶴におらなければならぬという方に対しましては、三泊四日をその間延ばしてもよいように、遺憾のないようにいたしたいと思つております。こういう考え方で、こまかい点は今検討し、府県にももこまかい照会をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/80
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081・山下春江
○山下(春)委員 次長のお話は、われわれが現地で調査して来た程度のことでございますが、ただ私この際質問というよりは申し上げておきたいことは、どうも役人の仕事というものは後手にまわることがあつて、起さなくてもよいトラブルを起している場合があるようでございますので、十分連絡をとつていただきたい。実は舞鶴の駅長も綾部の駅長もまだ何らの交渉もないので、われわれどう手を打つていいかわからないという、それは病院が足りません。これは費用を持つても、宿舎を修理するように簡単なわけに参りませんので、この病人の軽い方は汽車で輸送するというようなことが起ると思うのです。そういう特殊な汽車を配置するとかなんとかいうことは、現場の駅長はまだ何も運輸省の方からの通知に接しておらない、こういうようなことでございましたので、こういうこともいざとなると問題が起ると思います。
それからこの間の華人の送還の場合でも、非常に援護庁で出しました食事が悪いということを私の委員会でいろいろ強調されておりましたので、それをよく検討したのですが、必ずしも悪くないのです。それはお役人のまかないで、華人はどつちかというと油を入れてガラガラとやつて、ちよつと肉を落しておけばいいのに、わざわざなすを煮たり何かして金をかけて、向うがうまがらないということがあるので、そのために起つて来るトラブルが非常にたくさんあると思います。鉄道その他の問題につきましても、先手を打つておけばあれだけ問題は起りません。援護庁の職員や報道陣は、このために非常に船が遅れたりしないようにがまんをして発表していないのでありますが、非常に暴行があつたのです。そういう点から非常に現場の者はかわいそうでございますから、東京でのんびりしていないで、先手を打つていただいて、そうして役人のまかないでない配慮をなされば、あれだけの金額で十分なまかないができ、喜んで帰すことができると思います。
それから今のお見通しは必ずしも違つてはおらないと思いますが、あまり軽く見通さないで、住宅問題ということはいつも厚生委員会で問題になりますが、建設省とのひもをつけるならば、非常にがつちりとしたひもをつけるようにしなければ、今次長はそういうふうにおつしやいますが、大体あちらの現場の調査では、これまでの統計では熊本、福岡という最も被害のはなはだしいところが人員が多いようだということでございました。それらに、ふだん住んでおつた者さえ住むところがないのに帰れということでは、非常に大へんなことだと思いますので、住宅の問題もあわせて応急対策を立てて御考究を願いたい。これは現場を見て来た者のお願いでございますので、質問ではございません。お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/81
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082・小島徹三
○小島委員長 本日はこれをもつて散会いたします。次会は明朝午前十時より開会いたします。
午後零時二十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01119530702/82
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