1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月九日(木曜日)
午前十時五十一分開会
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出席者は左の通り。
委員長 早川 愼一君
理事
八木 幸吉君
委員
岩沢 忠恭君
永井純一郎君
鮎川 義介君
国務大臣
通商産業大臣 岡野 清豪君
政府委員
内閣官房長官 福永 健司君
公正取引委員会
委員 湯地謹爾郎君
経済審議政務次
官 深水 六郎君
経済新議庁次長 平井富三郎君
経済審議庁審議
官 今井田研二郎君
事務局側
常任委員会専門
員 桑野 仁君
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本日の会議に付した事件
○私的独占の禁止及び公正取引の確保
に関する法律の一部を改正する法律
案(内閣送付)
○連合委員会開会の件
○公聴会開会に関する件
○離島振興法案(衆議院提出)
○日本経済の安定と復興に関する調査
の件
(経済自立政策に関する件)
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001・早川愼一
○委員長(早川愼一君) それでは只今から経済安定委員会を開会いたします。
先ず私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案、予備審査でありますが、一応政府の提案理由の説明を福永官房長官から聴取いたすことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/1
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002・福永健司
○政府委員(福永健司君) 只今上程されました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案の理由を説明いたします。
昭和二十二年七月に独占禁止法が施行されましてから、早くも約六カ年を経過いたしたのでありますが、その施行の経験に徴しまして、本法の諸規定を我が国経済の特質と実態に、よりよく則応するものにする必要が感ぜられたのであります。もとより国民経済の民主的で健全な発達を促進するため、私企業による市場独占のもたらす諸弊害を除去し、公正且つ自由な競争を促進しようとする独占禁止法の根本精神は飽くまで尊重すべきものでありますが、この際、内外諸情勢の推移に鑑みて、独占禁止法に適当な調整を加える必要があると考え、前国会にこれが改正を提案いたしましたが、成立をみるに至りませんでしたので、今回改めて本法律案を提出するに至つた次第であります。
本法案は、前国会に提出いたしました法案とその内容がほぼ同一でありまして、その改正の項目は多岐に亘つておりますが、主要なものは特定の場合、即ち不況に対処するため必要がある場合及び合理化の遂行上特に必要がある場合における事業者の共同行為を、一定の条件の下に認容したこと、株式の保有、役員の兼任等の制限を緩和したこと、不公正競争方法に関する現行法の規定を整備したこと、不当廉売、おとり販売等の不当な競争を防止するための再販売価格維持契約(定価拘束制度)を認めたこと、事業者団体法を廃止して必要な事項を独占禁止法中に収めたこと等であります。
何とぞ、御審議の上、速かに御可決あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/2
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003・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 本法律案につきましては、通産委員会から連合委員会の申込がございますから、午後に逐条説明を政府にお願いすることにいたしまして、一応この法律案はこの程度で打切りたいと思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/3
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004・早川愼一
○委員長(早川愼一君) この際、ちよつとお諮りしておきたいと思いますが、これは一応事務当局のほうで予定しました分を御披露いたしまして、なお御意見があれば、それによつて決定いたしておきたいと思います。
本日この委員会におきまして独禁法の提案理由の説明を聞きましたが、午後は実は独禁法の内容の逐条説明に続いて質疑に入りたいと思いますが、ただ、ここで本委員会に付託になりましたこの法律案につきまして、通産委員会から連合の申込がございます。これを承認したらどうかと思いますが、如何でございますか、それでよろしうございますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/4
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005・早川愼一
○委員長(早川愼一君) それでは午後一時から通産委員会と連合……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/5
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006・鮎川義介
○鮎川義介君 どのくらいかかります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/6
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007・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 主として、逐条説明のあと、通産委員会の側のほうの質問を主といたしたいと思います。ですから、本委員会のほうの質問は、又後日に、大分余裕がございますので、主として、連合委員会として通産側のほうの委員の質問を主として行きたい。
それから来週の火曜日に引続いて独禁法、それから輸出取引法とそれから特定中小企業、これはこの委員会から通産委員会のほうに連合を申込んでありますから、その予定をいたしたいと思います。通産委員会のほうの都合がつけば、来週の火曜日はそのほうに当てたいと思います。
それからなお先ほどちよつと懇談会で申上げました通り、独禁法につきましては公聴会を開く必要があるのじやないかと思いますから、その手続をとりたいと思います。そういたしますと、それを大体今のうちに予定しませんと、新聞広告等の関係もございますので、十七日いとうことに予定いたしたい。それを御承認願いたいと思います。それから引続いて二十一日は、ずつと続いて、丁度二十一日、二十二日、二十三日までは続けて聞かなければならんようなことになると思いますから、あらかじめそれくらいを予定します。又、そのときの情勢によりまして日取りを変えて行つたら如何かと思います。
それからなお独禁法に関して請願、陳情がございますので、そのほかの請願、陳情も合せて二十七日頃それをやりたいと思います。大体二十八日か、九日頃に独禁法を上げるような順序になろうかと考えておりますから、よろしくお願いいたします。これはただ予定でございますから、なお詳細はその都度お諮りいたすことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/7
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008・岩沢忠恭
○岩沢忠恭君 連合委員会は三回になりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/8
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009・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 独禁法が今日午後でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/9
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010・岩沢忠恭
○岩沢忠恭君 独禁法でなく、輸出取引法、特定中小企業に対するやつは二十一日——二十三日……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/10
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011・早川愼一
○委員長(早川愼一君) この三日はこの三つの法律案を連合してやる形になりますから、九日は独禁法、十四日から輸出取引法、特定中小企業、二十一日それから、九日は独禁法、十四日から輸出取引法、特定中小企業、二十一こういう予定をしておるわけであります。なおこれは通産委員会の都合も聞いてみなければわからんので、大体こういうような予定をしておいて、こちらから申込んでおいたらどうかと思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/11
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012・早川愼一
○委員長(早川愼一君) それでは前回継続して審議に入つておりまする離島振興法案、衆議院修正送付。前回で一応の質疑が終つておりますが、なおその際、政府側のこれに関する意見を確めたいというお申出がございました。只今政府委員として今井田研二郎君が出でおりますので、御発言を許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/12
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013・今井田研二郎
○政府委員(今井田研二郎君) 私経済審議庁の審議官今井田でございますが、政府を代表すると申しますよりも、経済審議庁といたしまして、経済審議庁のこの法案に対しまする考えをお話申上げたいと思います。御承知のように、経済審議庁では、現在国土総合開発法という法律の運用を一応主管しておるのでございまして、この国土総合開発法におきましては、これも申すまでもなきことながら、国土の完全なる開発利用ということを目途としまして、大体四つの計画が考えられておるのであります。
第一は、全国計画、それから地方計画、府県計画、それから特定地域計画と、この四つの計画を総合開発計画において立てることになつておるわけなのであります。
府県計画と申しますのは、言うまでもなく、各府県を単位とする計画でございまして、例えば、今回この法案の対象になつておりまする島々も、それぞれ府県におかれましてその府県の総合開発計画の対象地域として取上げられるような仕組になつております計画であります。
それから、特定地域と申しますものは、これは政府が全国のうちで特に重要と思われる地点を、法律に基きまして指定いたしまして、その地域の開発を国が責任を持つて遂行するという態勢になつている地域でございまして、一昨年の十二月でありましたか、全国に十九の特定地域を指定いたしまして、現在これの開発計画の策定及び一部分は今年の二月、そのうちで北上地域だけは計画が決定されましたことは御承知の通りでございます。その他の地域につきましては、現在鋭意計画の策定に努力しておるような次第でございます。
地方計画及び全国計画は現在まだ構想の段階でございまして、いずれもまだまとまつた計画にはなつておらないのでございますが、現在政府が最も力を入れてやつております仕事は、特定地域計画の策定と、それからこの計画に基きます事業の実施と申しますか、特定地域の総合開発ということに最も重点を置いておるのであります。で、この法案の対象になつておる島のうちで、例えば対馬でありますとか、隠岐島でありますとか、或いは鹿児島県の屋久島、こういう島はその十九の特定地域の指定のうちの一部分であり、特に對馬のごときは對馬地域といたしまして、特定地域計画の一つの単位となつておるのであります。従つてこれらの地域におきましては特定地域計画と離島振興地域とがダブるというふうな工合にもなるわけでございます。そこで、元来各方面で御議論がございました際に、総合開発計画で行けば離島振興計画というものは要らないのではないかというふうな御意見もあり、事実我々の内部におきましてもそういう意見もあつたのでございます。ところが、国土総合開発法は国土の完全なる開発利用ということを目的としておるのでございますが、現在のところこれの運用は先般も綱島議員から御説明が、ございましたように、必ずしも経済効果ということだけで仕事はしておらない、計画を立てるのではないのでありまして、最大の重点は国民経済に対する寄与が当該地域からどのようにあるかということを最大の重点といたしまして、後進未開発地域のレベルアップでありますとか、或いは民生の向上でありますとかいうことは、この場合の国土総合開発法の現在の運用におきましては必ずしも最大の重点としてはおらないのであります。その運用方法がいい悪いという問題につきましてはいろいろ御議論もありましようが、現在の国土総合開発審議会におきまして決定されました方針は大体そういう方針で動いておるのであります。そのことが第一点。
それからもう一つ、現在国土総合開発法で取上げておりますことは、これは特定地域計画というものを中心とした場合の考え方でございまして、府県計画の場合はこれ又おのずから別でございますが、現在最も国で力を入れております特定地域計画におきましては、国民経済に対する寄与ということ一を今申し上げましたように裏としておりますので、勢い取上げます事業のごときも根幹事業に限定されるのでありまして、例えば対馬なら対馬で申上げますと、対馬というものを国民経済の一環として考えました場合に、どういうふうにこの島を開発すればいいかということを重点に置くのでございまして、対馬の住民の生活の引上げということだけからいいますならば、他の事業もしたほうがいいという事業も落ちるという場合もあり得るのであります。そういうふうに、若干狙いが違いますので、総合開発法の考えておりますことと、離島振興法の考えておりますことは、外形的には同様でございますが、若干その間に目的が違うような点があるのであります。
それからもう一つは、総合開発法でやつてやれませんものは何であるかと申しますと、現在の総合開発法に、国が特定地域として指定したような地域に対しては財政上或いは特別の負担をし、特例を設けることができるというような根拠法があるのでございますが、直接特定地域に対して財政上の特例を設けるとか、或いは税率に関する特例を設けるとかという具体的なこと
は書いてないのであります。ところが、今回の離島振興法案におきましては、第九条でありますが、特別に国の補助率の負担特例を明記してあるわけでございます。こういうふうなことは現在の総合開発法ではこれは求められないことであるというふうに我々事務的に判断いたしまして、従つて、離島をこの立法者のお考えのような観点から開発する場合におきましては、一応現在の総合開発法では完全ではない、現在の総合開発法の運用によりましては必ずしも所期の目的は達成することはできないのではなかろうかというふうにも考えられました。かたがたこういうふうないわば特殊立法的なものはこれが最初ではないのでございまして、御承知のように或いは特殊土じよう法でありますとか、或いは急傾斜等段々畠に対しまする特例でありますとか、いろいろこういう地域の開発に関しまする特例は総合開発法のほかにもまま見られるわけでございますが、我々といたしましては必ずしもこの法案に対しまして反対し、或いは別の形のものにするという必要は先ずなかろうというふうに考えられましたので、この立案を企画されましたかたがたに対しましては一応経済審議庁としては異存がないというふうに申上げた次第でございます。
なお他の各省の意向でございますが、これは私がここで責任を持つて申上げるのはいささか当を得ないかとも思うのでございますが、私が承知しております限りにおきましては大体各省ともこの法案には異存がないというふうに聞き及んでおるのであります。ただ一部衆議院で御修正に相成りました部分につきまして、若干まだ各省の完全なる了解を取つけたかどうかという点に対しましては、まだ私本日までにその辺の事情を明らかにして参れませんでしたけれども、大体各省ともこの法案に対しては異存なかろうというのが私の考えでございます。
一応経済審議庁を中心としてのこの法案に対しまする考え方を申上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/13
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014・早川愼一
○委員長(早川愼一君) 只今の説明に対して御質問ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/14
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015・八木幸吉
○八木幸吉君 今の国土開発法の除外例的の単独立法のお話がちよつとございましたが、あれをもつと詳しく聞かして下さい。その種類と内容を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/15
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016・今井田研二郎
○政府委員(今井田研二郎君) これは現在の国土総合開発法は、御承知のように北海道は除いてございますが、北海道以外の地域の国土の完全なる利用開発、それによるところの民生の安定向上というふうなことを狙いにしてございますので、全国土に関しますところの土地と水の利用に関する計画は全部この総合開発法でやり得ることになつておるわけでございます。ところが、土地と水の利用に関しまするこの法律ができました以後の単独立法、特殊立法といたしましては、最も大きなものは御承知のように積雪寒冷単作地帯に対します法律がございます。あの法律もいわば一つの土地と水の利用に関する特例法と言つて差支えないと思います。その後出ましたものは特殊土じよう法、これは主として西日本におきますところの、火山灰或いは花崗岩地帯等の特殊土じよう地帯に対します振興法、こういうものが昨年の春でございましたか国会を通過いたしましてこういう法律が出ています。そのときにやはり法律の正確なる名称は覚えておりませんが、急傾斜地帯に対します畠その他でありますが、田圃でありますか、こういうものに対しまして特別の保護法というふうなものが出たわけであります。それから本国会で通過いたしましたかどうか、湿田単作というふうな法律が出ております。これもやはり土地改良というふうなことを目的といたしました特殊な法律であります。こういうふうなことは総合開発法という国土の完全なる開発利用を行うという建前をとりました法律を若し完全に運用しますならば、その法律でやれることでございます。従つて厳密に申上げますならば同一のものを対象として二つの法体系があるということになるわけであります。一は全部網羅的に考える。一は部分を非常に鋭角的に深く取上げるものでございまして、全体として浅く取上げるほうがいいか、深く鋭角的に取上げるほうがいいかどうかということは、いろいろ意見の相違がございましようが、又効果だけを考えますと、そのほうがいいかと考えまして、如何に調和するかということについては絶えず我々は総合開発法の根本的な方針に基いてこういう法律の運営をやりたいという申入をいたしまして、現実に調和しました運営はしておるのでありまするけれども、法体系としては明らかに破られておるような形があるわけであります。この法律もそういう行き方をとつております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/16
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017・早川愼一
○委員長(早川愼一君) それじや一応ここで離島振興法案に対する質疑を中止いたしまして、今衆議院の予算委員会に出席中でありますけれども、特にその間を縫つて審議庁長官が見えておりますから、日本経済の安定と復興に関する調査に関連いたしまして経済自立政策の構想についての説明を聴取いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/17
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018・岡野清豪
○国務大臣(岡野清豪君) 我が国経済の自立につきましては、本会議などで申上げました大体の構想に基きましておおむね五年後即ち昭和三十二年の頃における大体の我が国の経済の姿について研究を進めておりましたが、このほど研究途中の中間的数字ができましたのでその概要を申上げたいと存じます。勿論これは一応の中間的なものでございまして、今後の経済情勢の変化及び検討に応じ当然変更を来たすべきものでございますし、又関係各省とも今後更に十分連絡いたしまして検討を加えなければならん必要もございますし、経済審議会においても十分検討されるものでございます。更に経済界その他各界の意見も十分聴取いたしまして今後なお慎重検討の上、もう少し身の入つたものを申上げたいと思つております。
それでは次に右の中間的研究の概要について申上げます。先ず第一に基本構想はどんなものであるかということにつきましては、まあ大体世界情勢の現状及び将来に対応いたしまして、国民消費水準の維持充実に努めつ極力正常な貿易による国際収支の均衡を図つて行くという、これが一番でございます。それから右の目標を相当高水準の特別外貨収入を期待し得る間に実現して行きたい。特需のある間に是非これを完成して行きたいと考えております。それからこれがために輸出の増大、国内自給度の向上を通じまして国際収支の改善を図りつ経済規模の拡大を図つて行きたい。なおこれと共に消費を抑制し、所得の増加は成るべく蓄積に振向けるように措置して経済自立の速かな達成を図りたいと存じます。
施策の重点はどこに置くかと申しますれば只今申上げました基本構想に基きまして次に申上げるような諸施策を重点的に実施して参りたいと思つております。先ず第一に浮かび上りますのが輸出の増大でございます。経済外交の推進と東南アジア諸国との経済提携の強化など輸出市場の拡大を図ると共に、左により割高物資のコストの低減を図り、その他金利の引下げ、税制の合理的改正に努め、その国際的競争力の強化を期するわけでございます。そのうちでも先ず第一に石炭鉱業、これは竪坑開発を促進することなど、その合理化を推進しまして、大体五年以内に二〇%程度の炭価の引下げを図るという目標にいたしております。第二番目に鉄鋼業でございますが、既定の合理化三カ年計画によります製鉄設備の近代化を促進し、銑鉄は約四%、棒鋼が一二%、厚板二〇%、薄板二七%程度のコストの引下げが図れると見込んでおります。三番目に硫安工業でございますが、設備の近代化の促進、操業度の向上などにより、大体三年以内に二〇%程度のコストの引下げを図りたいと存じております。四番目に機械工業でございますが、これは無論造船工業も含んでおります。設備の近代化を促進しまして極力そのコストの低減を図る。
大きな二番といたしまして国内自給度の向上でございますが、現在輸入総額の約五割は食糧及び繊維原料でございまして、今後の人口増加と農地の荒廃により、このままで行きますというと更にこの輸入は増加するものでございますから、食糧及び合成繊維の増産に重点を置いて国内自給度を向上せしめ、外貨払の節約を図るほか、外航船腹の増強によりまして外貨払の節約及び外貨の獲得に資する。こういうことでございます。そのうち一番といたしまして食糧の増産でございますが、これは昭和三十二年度におきまして米麦千七百万石の増産を行うことを目標といたしまして、食糧の増産を図ると共に米食偏重の是正を図りたいと存じております。二番目に合成繊維の増産でございますが、これは昭和三十二年度におきまして合成繊維一億五千万ポンドの生産を目標とし、設備の増加を図つて行きたいと存じます。三番目に外航船腹の増強でございますが、昭和三十二年度当初におきまして百二十万総トンの外航船腹の増加を目標としてその増強を図りたいということを目的とするものでございます。四番目は電源開発の促進でございますが、既定計画通り昭和三十二年度までに五百五十万キロワットの出力の増加を目標といたしまして電源開発を促進したいと存じます。
それから奢侈的輸入品及び輸出適格品の消費の抑制でございますが、奢侈的物資の輸入をできるだけ抑制いたしまして、外貨払を節約いたしますと共に、若しこれが輸出適格品であるというようなものがございますれば、これはできるだけ国内における消費を抑制いたしまして輸出のほうへ差向けてもらいたい、又そういうふうにしてもらう、さように考えております。
そこで五年後におきますところの経済の構図はどうであるかと考えまするというと、以上申上げましたような構想によりまして大体五年後の我が国の経済の構図は次のようなものでございます。
一番目の国際収支、これは輸出は昭和二十八年度の十一億八千万ドルに比べまして約三億ドル増加して十四億六千万ドル程度となる見込でございます。又輸入は昭和二十八年度の十七億八千万ドルに比しまして約一億ドル減じまして十六億六千万ドル程度になるであろうと考えるわけであります。三番目に正常の貿易外収支におきましては外貨払の節約と兵に船腹の増加によりまして三国間輸送による運賃収入の増加が期待されるので、昭和二十八年度約一億ドルの赤字勘定に対しまして収支とんとんということになる、こう考えております。次に特別外貨収入は朝鮮経済復興、東南アジアに対するMSA援助等によるドル収入といたしまして一応約一億ドルを期待しております。
第二番目は生産でございますが、鉱工業生産指数は昭和二十八年度の一五四に対し一七〇、約一割増となります。農林水産指数は昭和二十八年度一〇八に対しまして一二一、これも約一割増となります。
国民所得はどうなるかと申しますと、国民所得は昭和二十八年度の五兆八千二百億円に対しまして六兆五千五百億円、約一割増となる見込でございます。
消費水準でございますが、一番に主食の一人当り消費量は二千十七カロリーで、二十七年度と等しい。これは昭和九年——十一年は二千八十二カロリー、大体三十二年度におきましては二十七年度のカロリーと同じようになつて行く。又砂糖の一人当り消費量は二十七年度の九・七キログラムに対しまして一〇・七キログラムになるつもりでございます。食用油の一人一日当り消費量は二十七年度の三・五グラムに対しまして四・五グラムとなるわけであります。繊維の一人当り消費量は昭和二十七年度の一二・八四ポンドに対しまして一二・四〇ポンドでございますが、合成繊維は耐久力が強うございますので、このメリツトをその中に勘定に入れますと、現実の消費量は一四・四〇ポンドということになるはずでございます。
次に雇用でございますが、これは昭和二十八年度に比しまして国民所得は一二%増加しますのに対しまして、人口は五%の増加にとどまるわけでございますので、総人口に対する労働力人口の割合を現状通りといたしますれば、労働力人口の増加は右の経済規模の拡大によつて吸収され得るものと認めるのであります。
資金の面でございますが、電力、食糧、合成繊維及び外航船腹の増加並びに石炭、鉄鋼、硫安及び機械の合理化に必要な資金としまして要望されておる昭和二十八年度乃至三十二年度の所要金額は約二兆九百億円になつております。そのうち財政資金から賄われることが要望されておるものが約一兆九百億円でございます。今後における財政資金の需要の増加等も予想されますが、右の財政投資要望額もその効率的な使用を図ることによつて幾分減額し得るものであろうと考えております。今後経済規模の拡大によりまして自然増収もありましようから、民間金融機関の一層の協力と外資導入の促進とも相待つて、これら経済自立に必要な資金の優先的確保を図れば所要な財政資金は供給し得ると考えられるのであります。
以上大体のことを申上げましたが、これは中間でございまして、まだ年次別にどういうふうにして行くかという細かいことはまだ作業中でございます。まだ出ておりません。一応事務当局においてこのような考えをまとめましたので、今後の修正又は検討を前提といたしまして、御報告を中間的に申上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/18
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019・早川愼一
○委員長(早川愼一君) それじや衆議院のほうから呼出しがありますまで大臣に対する質問をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/19
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020・鮎川義介
○鮎川義介君 今の長官の御説明とそれから前から頂いております御演説の要旨をよく拝見しまして、大変結構に一応できておると思いますが、私はちよつと御質問をいたしたいのは、今輸出をやつておりますが、大体出血輸出になつておる、これはつまり国際収支のバランスをとるために続けてこれをやる場合には出血がなお多くなる虞れがあると思うのです。それを出血はかまわないから積極的に政府はやつたほうがいいというお考えですか。それとも出血をしないで、若しそうであるならば輸出を制限してもしないようにするのがいいか、どつちの御方針なんでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/20
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021・岡野清豪
○国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。私は只今の段階におきましては出血輸出というものは余り好ましくないと存じます。と申しますことは、ともかくも特需がございまして、この特需も両三年は続くということが予想されますので、我々はその特需のある間に日本の経済を建直して正常貿易、即ち出血をせずにコストを引下げて、そうして利益を得て外国との貿易ができるという方向に持つて行きたいと思つております。ただ問題といたしますのは、これは如何にして出血輸出を防ぐか、即ちコストを引下げなければならんかということでございます。只今私が申しましたのは、これは五年先のことでありまして、ましやくに合わないのでございます。目先のことといたしましては、どうしても早く出血なしに而も輸出が増進できるようなことを考えなければならんのでございます。こういう私は一応五カ年後の計画を立てましたけれども、これは長期のことで、目先の如何にしてこの特需のある聞に早く正常な貿易に建直して行くかということにつきましては、二十八年度は予算がとれませんから、予算上の措置によつてこれをどうするということはできませんが、併し税法上の関係とか金利の操作とかいうようなことによりましてコストを引下げるということにやつて行きたいと思います。結局問題は出血輸出は私は余り好ましくない、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/21
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022・鮎川義介
○鮎川義介君 好ましくなくても、やはりドイツその他現在の海外の情勢からいたしますと、今の段階では出血輸出でなければ仕方がないということになるのじやないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/22
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023・岡野清豪
○国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。これが私の考えといたしましては業者のほうでは、或る例を硫安にとつてみましても、出血輸出をしたような形になりますけれども、併しその業者全体といたしましては私は出血になつていないと思います。併しこれは国内の政治情勢からいろいろな異論が出まして問題になつておりますけれども、大体商売人は私は損してしまつたら出そうというようなことは……。我我が幾ら出血輸出しろしろと言つたつて出すものじやない、こういうような私は考えを持つておるのであります。昔のように統制経済でやつておる時代なら政府の命令とか政府の方向とかいうものにこれを従わせて行くというようなことになつて日本の経済を破壊するような出血輸出をするかも知れませんが、只今の段階では私はそうはならないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/23
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024・鮎川義介
○鮎川義介君 その特需のほうも出血じやないですか。あれは、特需というものがある間にというのは、特需は儲かるという予定になつておるのですか、それとも特需もやはり同じように出血じやないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/24
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025・岡野清豪
○国務大臣(岡野清豪君) どうも大体いろいろ日本のものが特需あたりで出血になるかどうかということと思いますけれども、私は全体を申せば出血にはなつていないのじやないかと思います。ただ高いから向うが買渋る、又値段を叩くということもございましようけれども、併し只今日本で受けておる特需というものにつきましては、相当国際価格から高い値段でとつておるようであります。我々としまして一番心配なことは、どういうふうになつて参りますかわかりませんが、これは仮定の問題でございますが、仮に今までの特需であるものがMSAというものに切替えられたその後における経済界の苦労というものは、これは相当なものだと思います。今は少々、少々と申しますか、日本の内地の値段で向うも引受けてくれておりますけれども、併しMSAの形で行きますことは、これは理論でございまして実際ではございません。今後の交渉に待たなければならんことは勿論でございますけれども、併しあの理論でMSAがやられるということになれば国際的な競争に勝てなければ行けん、こういうことになりますから、その場合になりましたら或いは出血してもとらなければならん理由も出て来る時代が来るかとも思います。それまでに我々何とか考えなければならんと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/25
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026・早川愼一
○委員長(早川愼一君) ちよつと皆様にお諮りいたしますが、只今衆議院のほうから岡野長官の出席を要求されたそうですので、まだ御質疑が残つておると思いますが、成るべく早い機会にもう一度機会を作つて御質疑を願うことにして、一先ず御退席願うことにいたします。
なお引続いて審議庁の次官と次長が残つておりますから、若し大臣に対する御質疑以外で御質疑がありますればそれを一つやつて頂きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/26
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027・八木幸吉
○八木幸吉君 今の長官の御説明では五カ年後には米麥の増産千七百万石とおつしやつたのですが、私数字を持つておりませんが、明年の予算で相当日額の食糧増産費が計上されておりますけれども、米姿の生産高をちよつと調べて見ましても、的確といいますか、その効果が生産量の上に現われていないように思うのですが、貿易の関係から食糧の自給は無論非常な必要なことで、私は相当巨額な食糧増産費を使つての食糧増産計画でありますから、成るべく有効にこれが使われるように希望するのですが、経済審議庁の立場で、例えば過去五カ年間における食糧増産対策費と実際の増産高とを比較されまして、効率的にこれが使われておるかどうかという点を御研究になつたことがあれば、数字に基いての資料を一遍提出を願いたい、こういうことをお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/27
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028・平井富三郎
○政府委員(平井富三郎君) 只今長官から三十二年度までの財政資金の需要について一兆九百億、そのうち食糧増産に只今要望されております額が四千三百七十億でありまして、一兆九百億のうちの相当の部分を占めておるわけでございます。本年度の二十八年度について見ましても、予算に計上せられましたプロパーの食糧増産に対する予算は四百六億であります。それに対しまして一応農林省で立てました五カ年計画で参りますと、初年度では八百億の要求があるわけであります。従つて今後この金をどう賄なつて行くかというこの一つを捉えましても、食糧増産のほかの各種の石炭、鉄鋼、肥料、合成繊維、海運関係の資金、電力等を考え併せますと容易ならん問題であると考えております。従いまして審議庁といたしましては食糧増産として毎年の人口増と、それから農地の潰廃等による減産、これがそれだけで五カ年間放置しておきますと、繊維も若干ありますが、約三億ドル程度の外貨支出を要することになるのであります。従いまして何といたしましても食糧増産としては相当の増産をして行かなければならない。従つてこの食糧増産につきましては効率的な金の使い方というものを図つて行かなければならない、過去の実績を見ましても、それはその年の天候関係などによりまして、工場生産のようにその増産施設のための増産分というものが的確には出て参らないわけであります。が併し今申上げました、毎年二百万石程度に亘る農地の潰廃に伴う減収、或いは人口増による自然増というものを賄なつて来ておるわけであります。食糧増産につきまして相当の効果をやはり挙げておるのではないか、但し金の使い方につきましてはいろいろな問題が一般的に指摘されておる状態でございまするので、今後この千七百五十万石のいわゆる増産計画というものに対応いたしまして、如何にすることが最も資金効率の点或いは増産効果の点から適当であろうかという点は検討を深めて参りたい、かように考えておるわけであります。この点は他の産業の面につきましても同様のことが言えると思いますが、特に食糧増産につきましては、金額が大きい点、それに見合う増産効果というものの関係を今後とも農林省とも協力いたしまして深めて参りたい、こういうふうに考えております。従来の増産効果、これは又別の機会に一つ詳しく表にいたしまして御説明申上げたいと思います。米麦につきましても増産しておりますし、或いは麦、甘藷、菜種その他の農産物を引つくるめまして相当の増産になつておることは事実であります今後、現在出しております予算の約倍額程度のものを計上して行きたいということになりますれば、只今御指摘になりました資金効率に伴う増産効果というような点を更に突つこんで検討して参りたい。只今長官が中間的試案と申上げましたように、そういうような点もございまして、大体のめどといたしまして、一応五カ年計画の数字そのものを計上して検討を続けているわけであります。財政資金の現状から見まして、やはりできるだけ少ない資金で効果を挙げて行くということを考えているということで、特に食糧増産につきましては、その点特に慎重を期して参りたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/28
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029・八木幸吉
○八木幸吉君 私この間過去五カ年間の主要食糧生産高の絶対値を見たので、今ちよつと記憶しておりませんけれども、やはり巨額の金を出しておるのですが、一向に殖えていない。我々の立場といたしましても、十分この問題はいろいろな角度から検討したいと思うのですが、只今お話の資金効率の立場から、なおいろいろ森林省のほうには弁解はあるようですけれども、どうももつと的確に行けるのじやないかという気がいたしておりますので、経済審議庁の立場から十分一つ過去の実績などを御検討頂いて、効率の挙るような計画をお立て願いたい。なおそれに参考資料になるようなものがあればお作り頂いて、又の機会に一つ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/29
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030・早川愼一
○委員長(早川愼一君) これも一応この程度にとどめておきます。それでは委員会は本日はこれにて散会いたします。
午前十一時四十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614073X00519530709/30
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