1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年六月七日(火曜日)
午前十時三十三分開議
出席委員
委員長 中村三之丞君
理事 大橋 武夫君 理事 山下 春江君
理事 山花 秀雄君 理事 吉川 兼光君
植村 武一君 臼井 莊一君
亀山 孝一君 床次 徳二君
森山 欽司君 山本 利壽君
横井 太郎君 越智 茂君
小林 郁君 野澤 清人君
八田 貞義君 岡本 隆一君
多賀谷真稔君 滝井 義高君
中村 英男君 長谷川 保君
受田 新吉君 堂森 芳夫君
山口シヅエ君 山下 榮二君
中原 健次君
出席国務大臣
労 働 大 臣 西田 隆男君
出席政府委員
通商産業事務官
(鉱山保安局
長) 正木 崇君
労働基準監督官
(労働基準局
長) 富樫 総一君
委員外の出席者
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
専 門 員 浜口金一郎君
専 門 員 山本 正世君
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六月六日
委員小坂善太郎君辞任につき、その補欠として
八田貞義君が議長の指名で委員に選任された。
同月七日
委員千葉三郎君及び松岡松平君辞任につき、そ
の補欠として森山欽司君及び清瀬一郎君が議長
の指名で委員に選任された。
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六月三日
クリーニング業法の一部改正に関する請願(加
藤鐐五郎君紹介)(第一六四二号)
同(野田卯一君紹介)(第一六四三号)
戦没者遺族等の援護強化に関する請願外一件(
池田清志君紹介)(第一六四四号)
国民健康保険助成費増額に関する請願(荒舩清
十郎君紹介)(第一六四五号)
元満州開拓民及び満州開拓青年義勇隊員の処遇
に関する請願(中村三之丞君紹介)(第一六四
六号)
身体障害者の更生資金制度実現に関する請願(
保科善四郎君紹介)(第一六四七号)
健康保険制度確立等に関する請願(松井政吉君
紹介)(第一六四八号)
医業類似療術行為の期限延長反対に関する請願
(五島虎雄君紹介)(第一六四九号)
上水道地盤変動対策事業の継続施行に関する請
願(井谷正吉君紹介)(第一六六一号)
同月四日
美容師法制定に関する請願(淺香忠
雄君紹介)(第一七五二号)
昭和三十年度国民健康保険関係予算確保に関す
る請願(井谷正吉君紹介)(第一七五三号)
医療扶助審議会の設置反対に関する請願外二件
(臼井莊一君紹介)(第一七五四号)
戦傷病再発医療費全額国庫負担に関する請願(
高村坂彦君紹介)(第一七五五号)
戦傷病者の割当雇用に関する請願(高村坂彦君
紹介)(第一七五六号)
医業類似療術行為の期限延長反対に関する請願
(木崎茂男君紹介)(第一七五七号)
健康保険法の一部改正反対に関する請願(田中
武夫君紹介)(第一七五八号)
同(渡海元三郎君紹介)(第一七五九号)
同外一件(臼井莊一君紹介)(第一七六〇号)
結核アフター・ケア施設拡充に関する請願(臼
井莊一君紹介)(第一七六一号)
未復員患者の医療区分撤廃等に関する請願(横
錢重吉君紹介)(第一七六二号)
未帰還者留守家族等援護法による医療給付適用
期間延長等に関する請願(猪俣浩三君紹介)(第
一七六三号)
国立療養所の附添廃止反対に関する請願(田中
武夫君紹介)(第一七六四号)
同(矢尾喜三郎君紹介)(第一七六五号)
同(柳田秀一君紹介)(第一七六六号)
同(渡海元三郎君紹介)(第一七六七号)
同(横錢重吉君紹介)(第一七六八号)
同外四件(臼井莊一君紹介)(第一七六九号)
同(水谷長三郎君紹介)(第一七七〇号)
国立療養所の附添廃止反対等に関する請願(柳
田秀一君紹介)(第一七七一号)
同外一件(川崎末五郎君紹介)(第一七七二
号)
クリーニング業法の一部改正に関する請願(三
輪壽壮君紹介)(第一七七三号)
同(奥村又十郎君紹介)(第一七七四号)
同(前田榮之助君紹介)(第一七七五号)
同(穗積七郎君紹介)(第一七七六号)
同(宇田耕一君紹介)(第一七七七号)
同(丹羽兵助君外一名紹介)(第一七七八号)
同(中川俊思君紹介)(第一七七九号)
同(木崎茂男君紹介)(第一七八〇号)
同(白浜仁吉君紹介)(第一七八一号)
同月六日
クリーニング業法の一部改正に関する請願(井
堀繁雄君紹介)(第一八四一号)
同(岡良一君紹介)(第一八四二号)
同(綱島正興君紹介)(第一八四三号)
同(眞鍋儀十君紹介)(第一八四四号)
美容師法制定に関する請願(徳安實藏君紹介)
(第一八四五号)
医業類似療術行為の期限延長反対に関する請願
(今澄勇君紹介)(第一八四六号)
戦傷病再発医療費全額国庫負担に関する請願(
今澄勇君紹介)(第一八四七号)
戦傷病者の割当雇用に関する請願(今澄勇君紹
介)(第一八四八号)
国立療養所の附添廃止反対に関する請願(小林
郁君紹介)(第一八四九号)
同(鈴木善幸君紹介)(第一八五〇号)
同(山花秀雄君紹介)(第一八五一号)
健康保険費増額に関する請願(臼井莊一君紹介
)(第一八五二号)
生活保護費増額に関する請願(臼井莊一君紹介
)(第一八五三号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
公述人選定に関する件
けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護
法案(内閣提出第七二号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/0
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001・中村三之丞
○中村委員長 これより会議を開きます。
まず来たる九日、十日に開会いたしますけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案の公聴会の公述人選定の件についてお諮りいたします。
本公聴会の公述人につきましては、先日の理事会において協議いたしたのでございますが、来たる九日の午前には、珪肺労災病院長の大西清治君、日本石炭鉱業経営者協議会専務理事早川勝君、以上二君、九日の午後には、労災審議会長清水玄君、日本鉱業協会総務部長北里忠雄君、全日本金属鉱山労働組合連合会常任中央執行委員能見修君、以上三君、十日の午前には、労働科学研究所員佐野辰雄君、いすゞ自動車株式会社常務取締役田坂政養君、以上二君、十日の午後には、日本炭鉱労働組合中央執行委員十二村吉辰君、全国窯業労働組合連合会長下野喜一君、以上二君、合計九名の諸君を公述人と選定するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/1
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002・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
午後一時まで休憩いたします。
午前十時三十五分休憩
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午後一時十八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/2
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003・中村三之丞
○中村委員長 休憩前に引き続きまして、会議を開きます。
けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案を議題とし、質疑を続行いたします。森山欽司君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/3
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004・森山欽司
○森山委員 今回政府より、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案が提出せられましたので、これに関して質疑を行いたいと思います。
わが国のけい肺対策は、昭和五年ごろより、けい肺というものを業務上の疾病として取り上げられるようになったのでありますが、戦前は、この対策は遅々として進行せず、むしろ戦後に至って労働基準法の制定等によりまして、逐次これが対策が進捗して参ったわけでございます。国会に対する関係におきましても、昭和二十三年でありましたか四年でありましたか、当時の金属鉱山復興会議が、国会にけい肺対策について建議案を出したことが、国会がこの問題を取り扱った最初になるわけでございます。その後昭和二十六年の二月一日に、当時の労働委員会において、けい肺対策小委員会を設け、今日に至るまで、衆議院の労働委員会は二十回以上の小委員会を開いて、この問題と取り組んで参ったのでございます。その間、御承知の通り、予防に関連いたしまして鉱山保安規則の改正があり、また補償に関連いたしまして休業補償のスライド制が、労働基準法の改正という形で実現をせられたわけでございます。さらに参議院におきましては、昭和二十八年からけい肺法案というものが提出せられまして、自来毎国会にわたってこの法案が提出されたわけでございます。今国会においても、参議院よりこの法案が提出せられておったのでございます。かかる機運に際会いたしまして、政府より今回のこの法律案が出たということは、このけい肺に対する特別保護について終始携わって参りました一人として、まことに慶祝にたえないところであります。この立案に当られました西田大臣以下労働省の係官に対しまして、この席上より厚く敬意を表する次第でございます。ただし、今回この法案が成立するにつきまして、その内容を検討いたしますと、なお幾多の疑義がございますので、今回の国会あるいは将来の国会において、修正をいたすべき事項として取り上ぐべき問題、あるいはまた解釈上疑義のある問題等について、この機会に労働大臣及び労働省の関係官に、その真意をただしてみたいと考えておる次第でございます。
その第一といたしまして、私は労働大臣にお尋ねいたしたいのは、政府が今回のけい肺等の特別保護法を提出するに際しての、この法立法に対する基本的態度でございます。すなわち、何ゆえに今回の法律というものを、労働基準法の内部において、あるいは労働基準法の特別法という形で提出せられなかったか。元来、労働者の業務上の災害に対するところの補償は、無過失損害賠償の責任の理念の上に立っておるのであって、これに対して何らかの給付をいたします場合も、これはあくまでも補償の理念に徹してなすべきであるにかかわらず、この法律の第一条以下、基準法とかあるいは労働者の業務上の災害に対する従来の理念を曲げて、無過失損害賠償の立場を離れて、この法案の制定に当っておられるようでございまして、この点についての労働大臣の所見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/4
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005・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。この法案を私が労働省に参りまして出すということについての基本的な考え方は、現在職業病として扱われておりますけい肺というものは、必ずしも職業病として考えるべきでなくて、むしろその予防が完全に発見されていないということ、また病気にかかった人が第四症状となった場合においては、回復し切れないという事実、こういう面から考えまして、これはむしろ職業病というよりも、国民病的な要素を多分に持ったものである、従って全額を国庫で負担することによって、このけい肺にかかった人たちの救済をすべきだというのが、私個人の基本的な考え方でございます。その構想に立ってこの法案の制定をやらせたわけでありますが、結果におきましてこういうような内容のものになったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/5
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006・森山欽司
○森山委員 国庫において金額あるいは一部を分担するということの前に、無過失損害賠償という上に立って、あくまでも、たとえばこの第一条にありますように、労災補償の中には、療養給付とか、休業給付とかいうような言葉を使っていない、全部補償という言葉を使っておる。何ゆえに給付というような言葉を使ってこれを解釈しようとするのか。要するに、その金は経営者が出すのが建前であるが、無過失損害賠償であって経営者としては出せないから、これを国が、一部補助してやる、全部補助してやるということは、一つの考え方として成り立ち得る。しかし、そういうふうな給付をするということ自体は、これは補償であるという考え方に、なぜ徹し切れなかったか、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/6
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007・西田隆男
○西田国務大臣 さっきも申します通り、私は、職業病というよりも、むしろ国民病という観点に立って法案を考えましたので、経営者が負担ができるとか、できないとかいう問題でなくて、国が当然めんどうをみるべきである、こういう基本的な考え方を持っておったのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/7
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008・森山欽司
○森山委員 職業病でなくて国民病であるという大臣のお考えであるといたしますならば、役所のなわ張りに関係するわけではございませんが、これは厚生省がお取扱いになったら適当であるとお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/8
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009・西田隆男
○西田国務大臣 広い意味に言ったら、国民病ということが一般の世論となり、政府部内でそう考えました場合においては、あるいは厚生省が扱うことが適当であるかもしれません。しかしながら、労働省関係でございます労働行政の中にはまっておるものの、今では職業病と考えられるのですが、それを職業病というだけではなしに、むしろ国民病的な観点から救済すべきだという、必ずしも厚生省に持っていかなくとも、労働省でやっても差しつかえない、かように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/9
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010・森山欽司
○森山委員 大臣は、国民病的な考え方というお考えでこれを表現されたのでありますが、この病気の性格自体は、あくまでも業務に基因して起る疾病でございます。従って職業病であるという性格は失われておらない。国民病的な性格も、大臣の見解からいうと起り得ると思います。しかしながら、職業病的性格が失われておらないにもかかわらず、何ゆえに無過失損害賠償という立場から、補償という考え方でこの問題を取り上げなかったか、こういうわけでございます。あなたが国民病的な立場でお考えになるということは、同時に職業病的な立場を御否定になることには私はならないだろうと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/10
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011・西田隆男
○西田国務大臣 お説ごもっともと考えますが、私はこの法律案の内容を見ていただいてもわかると思うのですが、職業病ということを、この法案の内容では否定はいたしておりません。ただ、私がこの法案を作らせるに際しての基本的な考え方がどうであった、従って、これでは職業病というものと労働基準法等の範囲外の給付を行うという二つのねらいをもってこの法案が作られておるのでございまして、原則的にどっちがどうであったからどうだという議論は、私はそのときは考えないままこの法案の作成に当ったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/11
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012・森山欽司
○森山委員 そうすると、この法案に対する一つの基本的な立場から申しますならば、あくまでも補償の理念に徹すべきだというようなことを、一応はお考えにならないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/12
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013・西田隆男
○西田国務大臣 これは何度繰り返しても、並行した議論になるかもわかりませんが、私はこれは、職業病でないとは否定はいたしておりません。それよりも、むしろ予防措置も講ぜられていないし、あるいは回復もできないという状態も現実に起きておるし、従ってこれを国民病的な観点から考えることの方が、より強く私の考え方を支配しておったことは事実でございます。従って、無過失損害賠償の、現在労働基準法は規定してありますが、その規定をけい肺病に関して長期に延期するということの考え方は、その当時私は持っておりませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/13
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014・森山欽司
○森山委員 大臣の今の御答弁は、納得するわけには参らないのでありますけれども、他に質疑事項もございますので、次に移りたいと思います。
基準法第一条第二項に、この基準法に書いてあることは、これは最低の基準であると書いてあります。そういうような観点から、たとえばこの法律にある休業給付等を行う場合において、これが労働協約の対象になるだろうかということを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/14
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015・富樫総一
○富樫(総)政府委員 労働協約の協議事項になり得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/15
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016・森山欽司
○森山委員 それでは、現在の法律によって、休業補償は平均賃金の百分の六十になっております。三年の期間の内におきましては、会社によっては百分の四十を追加して百%支給している会社もございます。それをあとの二年間についても百分の四十を与えよ——これは、この法律では、おそらくやめた人を予想していると思いますが、この休業給付の場合に、百分の六十のほかに、百分の四十を在職当時と同じように出してもらいたいということが、労働協約の対象になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/16
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017・富樫総一
○富樫(総)政府委員 そういうことも、労使間において話し合いがつけば、協約事項になるものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/17
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018・森山欽司
○森山委員 この法律の第一条に、けい肺にかかった労働者と同時に、外傷性脊髄障害というのが掲げてありますが、これはどういうことでこれを併記してあるのですか、その理由を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/18
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019・富樫総一
○富樫(総)政府委員 前会もこれに関連した御質問がございましたが、けい肺と外傷性脊髄障害とは、医学的に見て全然違ったものであるということは申すまでもございません。従いまして、その観点から申しますれば、これを一つの法律に規定することはどうかという御意見も成り立ち得るのでございますが、この法律の本来の目的は、おのおのの病気をそれぞれの医学的観点に立って治療するという医学的意味でございませんで、同じく不治の病にかかった人を保護するというところに重点があるわけでございます。従いまして、不治である、そしてその病状が悲惨である、これに対する国家的保護措置が同様に講ぜられなければならないという意味合いにおきましては、共通の性格を持っておると考えまして、一緒に規定したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/19
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020・森山欽司
○森山委員 その問題は、あとで関連がありますので、そのときにさらに突き詰めてお伺いしたいと思います。先ほど大臣の御答弁で、補償の理念に一応徹してこの法律の構想がなされなかったことの結果として、十条以下のいわゆるけい肺に関する給付について、いろいろ問題が起きてくるということになると思いますが、まず第一点に、第十条に言っておるところの転換給付について、大臣の御所見をただしておきたいと思うのでございます。この粉塵作業に従事しなくなったとき、転換給付をやれるというのは、これは労働基準法のいわば障害補償と、大体同じような考え方に立っていないか。労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり、なおったとき身体に障害が存する場合においては、というような考え方にならないかという感じがいたしますが、その辺のところはいかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/20
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021・西田隆男
○西田国務大臣 第十条の規定を設けました理由は、一般のものと違いますところは、配置の転換をいたします場合においては、まだ労働能率そのものを阻害されておりませんし、結局障害を受けたために云々という条項でなくて、障害補償の対象前のものである、こういうふうな考え方に立って、実は規定したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/21
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022・森山欽司
○森山委員 しかし、職場を転換すれば症状の進行をとめられるというお考えのもとに、第八条で転換することを御勧告になっておるのではないのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/22
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023・富樫総一
○富樫(総)政府委員 前会にも、それに関連した御質問があって、大臣から答弁したようでありますが、第二症度と第三症度が、一体病気であるかどうかということになりますと、これは名前のつけ方の問題で、病気といえば病気と言えるわけであります。しかし、治療を要しない段階でございます。従いまして、今大臣のおっしゃいましたように補償前の段階にあるわけであります。性質上、障害補償とは性格が違うのであります。なお第三症度の転換対象労働者の身体機能の障害は、一体どういうことになるかということになるかとも存じますが、第三症度までにおける機能障害は軽度の機能障害——この機能障害の基準は、四十キロの重量物の持ち上げを基準といたしておりまして、きわめて強重労働を基準としての機能障害でございます。従いまして、ここにおける軽度の障害という程度におきましては、きわめて通常の、あるいは相当の重労働までなし得る障害の程度でございますので、両方相待ちまして原案のごとく立案した次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/23
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024・森山欽司
○森山委員 私は労働基準法の七十七条の条文をすなおに読んで、労働者が業務上疾病にかかりとありますが、けい肺にかかったということは、第二症度であろうと第三症度であろうと、けい肺にかかった、疾病にかかったものと私は考えていいだろうと思いますが、いかがでございますか。なおったとき身体に障害が存する場合、転換をすれば症状が進まない。しかし、ともかくその第二症度、第三症度というのは、あとに残るわけですね、その程度はあとに残る。従って、症状が存することはお認めになりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/24
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025・富樫総一
○富樫(総)政府委員 繰り返して申し上げるようでございますが、言葉の用いようの問題でございまして、いずれにいたしましても治療を要する段階に至らない。これをかりに疾病と名づけましても、治療を要しない段階のものであります。基準法におきます疾病は、通常の場合治療を要する場合のことを疾病といっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/25
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026・森山欽司
○森山委員 転換をすること自体は、一種の治療だというふうに私どもは考えるのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/26
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027・富樫総一
○富樫(総)政府委員 治療と申しますよりも、新たに粉塵を吸入することによりまして症状が悪化することを予防する措置と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/27
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028・森山欽司
○森山委員 症状が進行するのをとめようとすることは、私は治療だと思うのです。従って、これは治療を要する場合というように、あなたの議論から考えても差しつかえないと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/28
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029・富樫総一
○富樫(総)政府委員 それは言葉の使い方で、それを治療と呼ぶのだというのであれば、別段これに積極的に反対する理由はございませんが、事柄の意味合いそのものは、まだ治療を要しない段階において、治療を要するような段階に至らないように予防する措置、これが事柄の実質的な意味とわれわれは解釈いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/29
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030・森山欽司
○森山委員 しかし、転換をしろということを国が勧告をする。そしてこの勧告自体は、少くとも労働者の場合にとっては、命令的な効果を与えるであろうということは予想されるわけであります。そういう際に、そういう勧告によって職場を転換しなければならない。たとえば治療と申しましても、転地療養だとか、あるいはまた先般の労働省当局のお話ですと、牧場を作るとかいうようなお話もございました。これもやはり治療だと思う。労働省から勧告をしなければならないような状況、そしてその職場転換をするということは、一つの治療になると私は思う。それが治療に当るか当らないかということを、あなたの前で水かけ論を展開してもしようがないが、労働基準法第七十七条の、労働者が業務上疾病にかかって、なおったとき身体に障害が存する場合においては、というなおったとき身体に障害が存する状態じゃないか、こういうように私は考える。なおるという意味が問題でありますけれども、その辺はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/30
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031・富樫総一
○富樫(総)政府委員 どうも繰り返すような答弁で恐縮でございますが、病気にかかって、なおった後に残る障害と、この第三症度というのは、質的に全く違う。先ほど申し上げましたように、あくまでも治療を要しない段階から治療を要する段階に至らないようにする予防措置と、私どもは解釈せざるを得ないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/31
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032・森山欽司
○森山委員 今の政府委員の御答弁は、これも実は納得できないのでございますが、そういうことによって転換をした場合の給付が、平均賃金の三十日分に相当する額を支給する。これは先般どなたかの御質問に対して、労働大臣かあるいは基準局長から、これは腰だめできめたのだ、こういうお話でございましたが、労働基準法によりますと、障害補償について等級がございます。それによると、最高平均賃金の千三百四十日分から最低五十日分というふうになっておる。その内容を見ますと、たとえば、胸腹部臓器の機能に障害を残し軽易な労務のほか服することができないもの、これが第七級であって平均賃金の五百六十日分もらえる。それから第十一級は、胸腹部臓器に障害を残すもので、これが平均賃金の二百日分もらえるということで、これはむしろ第七級か第十一級程度の身体障害の等級に該当すると私は思っておるのであるが、この身体障害については、千三百四十日分から最低五十日分まで補償しておるにかかわらず、これだけが三十日分というのは、何か理由があって三十日分にしたのではないか。労働基準法にこういうような体系があるならば、すなわち、たとえば第四級は、大体死んだと同じだ、第四級から上の方の三級、二級、一級は死んだよりなお悪い。要するに、人様にいろいろお世話にならなければならないという意味において、死んだよりなお悪い。四級から以下については、だんだんとその障害の程度が薄くなっていく、こういう構成になっている。そういう際に、同じ転換給付というような考え方を入れるにしましても、今の基準局長の言葉いかんにかかわらず、身体に障害が残る、こういう労働基準法の体系の中で、納得できるようないわゆる転換給付を与えるべきじゃないか。その納得できるような転換給付の線が、平均賃金の三十日分というふうに労働大臣はお考えですかどうか、承わりたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/32
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033・富樫総一
○富樫(総)政府委員 こまかい点になりますので、まず私からお答えいたします。
先ほども申し上げたのでありますが、たとえば第七級におきましては、障害を残し軽易な労務のほか服することができないもの、こちらの方におきます配置転換は、先ほど申し上げましたような、四十キロの重量物を基準とした軽度の機能障害、通常の仕事はもちろんのこと、相当の重労働にも、まだ服し得る段階であるのであります。従いまして、考え方といたしましては、基準法におきましては、毎年一回一般的な健康診断をいたしまして、その健康診断の結果、使用者は健康管理の立場から、それぞれの労務者をそれぞれの適職の方に配置するということが通常行われておるのであります。これも、質的に申しますれば、そういうような健康管理の一端とも申して差しつかえないかと思うのであります。ただ、これにつきましては、将来不治の病になっては大へんである、そこで国としても進んで配置転換の勧告をするのであります。従いまして、通常の健康管理の一端の性格を持ちながらも、特に、そういう場合には賃金が通常不利になる場合が多かろう、こう考えまして、一般の健康管理の場合の転換とは異なりまして、特にこれを支給するというふうにいたしたのであります。繰り返して申すようでございますが、基準法の障害補償とは性質が違うものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/33
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034・森山欽司
○森山委員 それでは大臣にお伺いしたいのであります。大臣は炭鉱を経営しておられて、よく御存じでしょうが、炭鉱も鉱山も、ある程度類似した面もあろうかと思う。坑内作業から坑外作業に職場転換という形で移った場合、これは相当賃金差が出てくると思いますが、大体どの程度通常起きるものか、大臣の豊富な御体験からこの際お示しを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/34
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035・西田隆男
○西田国務大臣 普通の企業の状態で、今、特にお話になった坑内から坑外に移るような場合は、炭鉱自体が移す場合もありますが、大体において労務者の希望によって職場転換をすることが常識のように私は見ております。賃金の面におきましては、ただいまのような団体交渉による賃金協定によって賃金がきまっております実情下におきまして、坑外、坑内の賃金は、相当開いておると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/35
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036・森山欽司
○森山委員 今、大臣の御答弁にありましたごとく、坑内、坑外の賃金は相当開いておる。そこで、この法律の規定によれば、転換の勧告をするということになっておる。けい肺措置要綱にあるように、当該労務者の希望を十分に参酌するというようなことは、今の大臣のお話にかかわらず、実はこの法律には規定がないわけでございます。そういうことで勧告をして——これはこの勧告の効果等についても、いろいろ問題がございますが、事実上命令にひとしい形でもって職場を離れて、賃金差が非常に出てきた、そういう際に、わずか三十日分程度の転換給付ということで一体足りるだろうか。そういう際は、少くも労働基準法の障害補償等に相応する程度の金額はやらなければ、実際問題としても困るのではないか。第一、転換がうまくいかないのではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、大臣、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/36
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037・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。配置転換による給付を、よけいにした方がいいということは、これはもう議論の要はございません。しかし、けい肺にかかっております従業員のおるところとして、私たち炭鉱の例を引きまして、相当開いておると申し上げましたが、炭鉱と同じように開いておるかどうかという点については、私承知しておりませんが、若干の賃金の開きがあることはもちろんであります。しかしながら、この法律案のねらっておりますのは、けい肺にかかったところは、その日すぐ職場転換をせねばならぬとか、あるいは一週間以内にせねばならぬとかいうほどの緊要性と申しますか、緊急性と申しますか、そういうものを帯びたものではなくて、結局職場転換をすべき労務者の意見を十分参酌して、使用者側としてはできるだけその期待に沿うような形において職場転換をはかってやるという親切心が当然なければならぬことでありますし、そういう考え方からいいましても、そこに働いておる人と使用者の間で全く意見の相反した形において職場転換が行われるということは、私は考えておりません。なお、もしそういうことがありました場合は、職場転換ができないということになりますが、それに対しては、国があらゆる方策を講じて、本人の職場転換のあっせんをするということが、この法案の条文の中に規定してありますので、森山さんの御懸念になっておるような賃金差の問題は別としまして、その他の点については、大した不都合は生じないであろうという見方を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/37
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038・森山欽司
○森山委員 その賃金差の問題を今取り上げて、給付の問題で考えておるわけでございます。炭鉱とかあるいは金属鉱山なんかの場合は、賃金差は非常に大きいのじゃないかと私は考えるのです。その非常に大きい賃金差について、これは後ほど労働基準局長に教えていただきたいたのでございますが、ILOのけい肺の専門者会議か何かで、配置転換した場合については、給与を前よりも落さないようにしてやらなければいかぬという勧告も出ておるやに私は聞いておるのでございます。そういう点から見たら、平均賃金の三十日分というのは、いかにも少いじゃないか。しかも、それは、今日いただきました労働省の、毎年新規発生けい肺罹患者症度別推定表という関係資料によると、第二症度で転換の勧告を要する者は、けい肺健康診断が必要と考えられる粉塵労働者の推定数二十七万二千九百四十三名中、わずかに二名しかいない。この表によれば、こんなにわずかな人に対してさえも、三十日分で転換しろというようなことは、これはもう財政上も何も大した問題にならないわけです。これは労災保険の経理の上においても問題にならず実行できると同時に、労働基準法そのものでなくても、労働基準法に該当する概念として障害補償が認められておって、多きは千三百四十日、少くても五十日認めておるならば、たった三十日を認めたというのは、私は理由がわからない。なぜ一体三十日というのを認めたか。それによって、ILOのけい肺の専門者会議でも、賃金差をなくすようにというような勧告をしておるやにも聞いておるし、理屈からいったって、転換がうまくいくためには、この程度の、たった三十日分というような転換給付でなくて、もっと労働基準法の障害補償に該当する程度の転換給付をやったっていいじゃないか、それはやれるじゃないか。私は今の労災経理のワク内においてもやれると思うが、大臣いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/38
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039・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。私は職場転換をさせる数が大きいから三十日にしたとか、少いから百日にしてやったらいいという考え方で、こういう規定を設けたのではございません。さっきも申しましたように、労災補障をする前の段階だという私の考え方が、結局この五十日分を減らして三十日の特別な——これは考え方が間違っておるかわかりませんが、特別な給付として三十日分を給付すればいいだろうということで、さっきあなたのおっしゃったように、腰だめでやったというお話でありましたが、あるいは厳密に言ったら腰だめだったかもしれません。そういう考え方でこの規定を作ったのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/39
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040・森山欽司
○森山委員 この法律を制定するについては、腰だめか腰だめに類似するお考えで、平均賃金の三十日分をおきめになったと思うのですが、実際問題として、転換がスムーズにいくためには、特に金属鉱山なんかの場合を考えてみますと、坑内労働と坑外労働では、賃金差が非常に大きい。実際問題として、転換の勧告を受けたって、実行できないじゃないかというような場合がある。そういう際に、労働基準法の中にある障害補償に類似する概念として、この転換補償の金額をもう少しよけいにやれば、ある程度は転換もスムーズにいくのではないか。それが労災経理のワク内で——予算がありませんということをよく言われますが、毎年新規に発生するのは、二十七万二千九百四十三名中、たった二名くらいしかないというこのけい肺患者症度別推定表によれば、これは経理のワク内でもやれるのだ、そうやった方が、作業転換の勧告、この第八条をほんとうに生かすためにも必要じゃないだろうか。私はこの法案の立案を離れて、大臣にその所見を伺いたい。そういう考え方もあるとお考えか、そういう考え方はだめだとお考えか、その辺の点を伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/40
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041・西田隆男
○西田国務大臣 あなたの考え方が間違っておるものと考えております。これは議論ではありませんけれども、逆に、一つの企業の中で配置転換をはかる数が非常に少いという観点からいきますと、あなたが御懸念になっておるような、賃金差の非常によけいつくところに持っていって、必ずしも職場転換をしなければならぬという結論も生まれてこないと私は思う。従って、最初から申し上げますように、私は人道的な見地から、というと大げさなようですが、そういう観点に立って、この法案を考えたわけです。使用者側としても、十分にそういう感覚のもとに立って、配置転換を考えます場合においては、今森山さんが御懸念になったようなことは、少ければ少いほど、そういう御懸念は御懸念としてだけであって、実際問題として、そう御懸念なさるほどのことは生じないのではないか。これは理屈になるかもしれませんけれども、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/41
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042・森山欽司
○森山委員 このけい肺立法について、いろいろの業種が指定してございますが、その根本は、大体金属鉱山で珪酸粉塵を吸う連中を救うというところから始まったのです。だから、私の頭には金属鉱山が主力として入っておる。しかし、その後の巡回検診その他の結果によると、金属鉱山だけでなく、けい肺にかかる範囲が非常に広いということもわかって参りました。しかし、何と申しましても、けい肺の主力は金属鉱山であるということはいえると思う。その大多数の場合を考えて、私は、この平均三十日分の転換給付の性格というものについて、労働省の人に御意見をただしたのでありますが、納得できない。
最後に、富樫労働基準局長から、ILOの専門者会議でどういう決議があったかということを、ちょっとここで読み上げていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/42
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043・富樫総一
○富樫(総)政府委員 今、手元に持って参っておりませんので、次の機会に正確に申し上げることにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/43
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044・森山欽司
○森山委員 あなたが記憶しておる内容はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/44
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045・富樫総一
○富樫(総)政府委員 配置転換につきましては、本人がこれをどうしてもいやだというような場合には、よく注意して円滑にやるようにせよということがあったような記憶がございますが、なお正確なところは、次会までにお知らせいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/45
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046・森山欽司
○森山委員 賃金差をできるだけ少くしろというようなことも聞きませんでしたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/46
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047・富樫総一
○富樫(総)政府委員 そこら辺のことは、まだはっきり承知しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/47
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048・森山欽司
○森山委員 よく御勉強になって、次会に一つ御返答願いたいと思います。
そこで私は、この転換給付に関連しまして、第八条の作業の転換について伺いたいのであります。転換の勧告というようなものが、労使双方に対して実際には命令的な効果を持つというふうにいわれておるわけでございます。そうして、同様なことについて、けい肺措置要綱では、この転換をする際には本人の意思を十分に参酌してという言葉が従来使ってあったわけでございます。今度の法律案には、その本人の意思を十分に参酌して配置転換をさせるということが法文に載っていない。これは法文に載せる方が私は適当だと思いますが、載っていなければ、この法文を修正するか、さもなければ労働省の方で、これは適当かどうかわかりませんが、この法律の施行規則か何かに、本人の意思を十分に参酌するという言葉を入れるか、何らかの措置について、労働大臣の御見解を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/48
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049・西田隆男
○西田国務大臣 ただいまの問題は、前の御答弁の中にも一部答えたと思いますが、勧告をいたしまして、労働者側の意見を全然聞かないで使用者が勝手に配置転換を行うということは、現実の問題としては、私はあってはならぬことでもあるし、あり得ないと考えております。従って、もし労働者側の意見を全然聞かないで、使用者側が勝手に配置転換をする等のことがありました場合には、これはもちろんのこと勧告をした役所でございますから、十分にその意思を体して、使用者側をしてかようなことなからしめるように行政指導の面で十分にやれる、かように考えまして、実は労働者側の意思を十分に尊重してという表現を用いておらぬのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/49
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050・森山欽司
○森山委員 この第八条については、労働置側の意見を聞きますと、非常に乱用の危険がある、首切りの道具に使う可能性があるということを言っておる。大臣が言うように、そういうことはあり得ないのだ、またあっては困るし、あり得ないのだとおっしゃるならばいいのでありますが、法は、起り得べき事態に対して、ある程度は整備しておかなければならない。現に労働省でかって作られまして現在行われておるけい肺措置要綱にも、労働者の意思を参酌してという言葉が使ってある。そうであるとするならば、この配置転換を実際に行わせるについては、私はやはりそういう言葉をこの法律の中に入れた方が適当だと思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/50
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051・西田隆男
○西田国務大臣 私は入れなくても、そういう問題は、特殊な場合は別ですが、常識的には起り得ないと思います。この法案の内容を見た場合においては、使用者側として、そういうむちゃなことをやるという考え方は、おそらく起してはならぬし、起ってはこないと思う。ほんの一つの特例がある、二つ特例があるということのために、法律全般の中にそういうことを書かなければならぬというほど、私は悪く解釈をいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/51
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052・森山欽司
○森山委員 私もあなたと同じように、悪く解釈をしたくはないのであります。労働者側の方々が、非常にそういう危険があるということを指摘されるし、今までのけい肺措置要綱の中にも、本人の意思を十分参酌するということが書いてある。これは何も必要がなければ、そういうことは書いてないと思う。この法律の前身の措置要綱に、そういうことが書いてある。だから、この法律の条文の中に、労働者側の意思を参酌してということを入れた方がいい。法律に入れなくても、施行規則ぐらいにお入れになる頭はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/52
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053・西田隆男
○西田国務大臣 ただいま森山さんの言われたのは、法律を作る場合のあれではなくて、このけい肺の法律が通りました場合において、労働省が行政指導する場合のものの考え方、実行の仕方ということが、今森山さんのおっしゃる労働者の意見を参酌してということになっておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/53
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054・森山欽司
○森山委員 ですから、それを文書にした——この法律の施行規則を作るかどうか存じませんけれども、省令とかあるいは通牒とかいうもので、はっきり出す頭がございますかということを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/54
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055・西田隆男
○西田国務大臣 施行規則はどうせ作るだろうと思います。そういう場合には、一つ森山さんの御意見を十分に尊重して考えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/55
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056・森山欽司
○森山委員 この第八条に関連して、さらに伺いたいのですが、転換をしたらいいといって動告を受ける。ところが、本人がいやだといって断わったといたします。そういう際に、労働基準法第七十八条によって「労働者が重大な過失によつて業務上負傷し、又は疾病にかかり、且つ使用者がその過失について行政官庁の認定を受けた場合においては、休業補償又は障害補償を行わなくてもよい。」という言葉があるのです。おれは転換するのはいやだ、見ろ、お前は病気にかかったじゃないか、それでは休業補償もやらないぞ、あるいは障害補償もやらないぞということが、基準法の第七十八条で、解釈上やろうと思えばできるのじゃございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/56
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057・西田隆男
○西田国務大臣 ただいまの条文の解釈とこれとは、関係がございません。詳細については政府委員から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/57
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058・富樫総一
○富樫(総)政府委員 これはあくまでも勧告でございまして、法律上転換する義務が生ずる場合には、あるいは森山先生のおっしゃるようになるかもしれませんが、これは任意のなにでございますので、かりに拒否した場合におきましても、ただいまの条項の適用はないと解釈をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/58
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059・森山欽司
○森山委員 それでは、次に第十一条の療養給付について伺いたいのであります。この療養給付は、理論上、先ほど労働基準法の特別法的な取扱いをされない、労働基準法と別個の体系の法律だということであるので、結局この十一条の規定というものは、療養給付は、打ち切り補償を受けてということになっておるので、労働基準法の第十九条に基いて、打ち切り補償があればこれは解雇していいわけですか。一応会社がやめさして、そのあと二年間だけ払う、こういう意味でございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/59
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060・富樫総一
○富樫(総)政府委員 この打ち切り補償は、当然に解雇ということにはなりませんで、その後療養し休業する——実際には、不治の病で働けないわけでございますが、事実上実際問題として使用者が雇用を継続することは、もちろん一向さしつかえないわけであります。当然に解雇ということにはならないと解釈いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/60
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061・森山欽司
○森山委員 労働基準法第十九条によれば、これは当然解雇にはなりませんけれども、解雇することができる、実情は解雇する場合が非常に多いじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/61
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062・富樫総一
○富樫(総)政府委員 法律上は解雇し得るのでありますが、実際問題としてどうなるかは、今後法の施行状態を見なければならぬのでありまして、何とも申し上げられませんが、心持としては、かねて大臣が申しておりますように、労使の間のあたたかい話し合いによって、穏当なる扱いを受けることを期待しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/62
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063・森山欽司
○森山委員 要するに、今度の法律ができる前に、一応三年たってしまえば、打ち切り補償をやる、打ち切り補償をやったら、当然会社はやめてもらうというのが実際上の現実じゃなかったかということです。法律は、解雇することができるとなっておるけれども、現実は、ほとんど解雇しておるのだということが、実情じゃなかったかということを伺っておるのです。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/63
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064・富樫総一
○富樫(総)政府委員 従来行政上、打り切り後、三年後の帰趨を調査したことはございませんが、おそらくは不治の病として、実際問題として労働能力がないわけでございますから、相当程度解雇という形式になっておるのじゃないかと一応想像するのであります。行政的に正確にその後の帰趨を調査したものはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/64
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065・森山欽司
○森山委員 そうなりますと、せっかくあと療養補償三年間、療養給付二年間してやっても、療養補償の三年が終ったら首になってしまうということになれば、社宅も追い出される、厚生施設も利用できない、退職金の勤続年数も、それだけよけい数えられないというようなことになってしまう。どうせ事実上五年延ばすならば、この辺のところで労働基準法の筋を通す、こういった方が、私はいいじゃないかと思うのです。なぜそれができないか。これは理論上よりも実際問題として、そのくらいの取扱いをしてやったらどうだろうということを私は考えておる。なぜそれができないか、その点を労働大臣から承わりたい。理屈は先ほど伺いましたから、今度は実際問題として、首になっちゃかわいそうじゃないか、もう少し首にすることにできる期間を、もう二年間延ばしてやったらどうか、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/65
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066・西田隆男
○西田国務大臣 最初にこれは私お答え申し上げましたが、第四症度になっておって、労働基準法による無過失損害賠償の期間が済んで会社から解雇されました人の問題は、死ぬまで一つ国で見てやろうという考え方に立っております。それがこの法案の最終決定をする段階において二年というふうに入れましたので、私の基本的な考え方は、死ぬまでめんどうを見てやるべきだろうということで、この法案の作成に当らせたわけであります。あなたのおっしゃるように、労働基準法の規定によって無過失損害賠償を延長して、そうして保養の継続した状態においてめんどうを見てやる方がいいじゃないかということよりも、私の考えの方がずっと進んだ考え方をしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/66
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067・森山欽司
○森山委員 死ぬまでめんどうを見てやりたいという大臣のお気持も、これは一つのお考え方であります。しかし現状においては、療養二年たって打ち切り補償をもらいますと、あとはこれは厚生年金で障害年金をもらうことになっておるわけでございます。あなたの理想は理想として、現実の問題として、死ぬまで見る気持があったら、なぜ五年間だけでも基準法の線に沿ってめんどうを見てやることができなかったか。それもできないのに、死ぬまで見てやるというのは、はったりですよ。同じ党ではあるけれども、私はあなたのお考え方に賛成できないのです。もっとまじめにお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/67
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068・西田隆男
○西田国務大臣 私は、はったりでもなければ、インチキとも考えておりません。これは第一条の解釈から、森山さんの解釈と私の解釈は基本的に並行しておりますので、結局第十一条の問題になりましても、基本的な考え方の違いがここに現われておる、かように御承知願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/68
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069・森山欽司
○森山委員 大臣と話していると、どこかでちっとも合わないのでありますが、法の解釈で、さらに十一条に関連して伺いたいのです。療養補償について労働基準法は、これは使用者がその費用で必要な療養を行うとか、または必要な療養の費用を負担しなければならない。ところが十一条によると、政府は、療養給付として必要な療養を行い、または必要な療養の費用に相当する額を支給する。労働基準法では、療養する場合には、使用者が責任を持っているのだが、これは政府が責任を持っておる。政府が療養を行うというのは、どういう内容を持っているか承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/69
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070・富樫総一
○富樫(総)政府委員 基準法の使用者がなす場合と同様、あるいは労災保険法で——基準法では使用者であったのですが、これを労災保険で、使用者のやることを肩がわりして、政府が現在労災保険でもやっております。それと全く内容においても同じ療養を、政府がみずからやるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/70
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071・森山欽司
○森山委員 だから、政府が療養給付として必要な療養を行う、政府が行う療養の具体的な内容を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/71
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072・富樫総一
○富樫(総)政府委員 具体的に申しますと、基準法施行規則の三十六条に具体的に規定してございますが、診察、薬剤または治療材料の支給、処置、手術その他の治療、病院または診療所への収容、看護、移送、こういうことが具体的な内容になるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/72
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073・森山欽司
○森山委員 それは具体的な内容ですが、けい肺にかかった者が診察を受けたり何かしたときに、その費用に相当する額の金をやるというのはわかる。政府が療養するということは、どういうのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/73
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074・富樫総一
○富樫(総)政府委員 政府がみずから療養を行うというのは、政府のみずから建てた病院に収容する、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/74
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075・森山欽司
○森山委員 政府がみずから建てた病院とは、どこですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/75
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076・富樫総一
○富樫(総)政府委員 現在けい肺専門の病院といたしましては、御承知の栃木県鬼怒川のけい肺療養所、その他秋田、岡山等にございます。またその他一般の労災病院におきましても、今後できるだけけい肺ベッドを準備いたします。このように万遺憾なきよう努力いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/76
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077・森山欽司
○森山委員 政府の行う療養、そしてその中で、たとえば診察は、いわゆるけい肺労災病院でおやりになる、こういうお話ですが、それでは、その病院の実情について承わりたい。病院の場合は、大体最近できる一般の労災病院は、設備の新営費は百二十万円ないし百二十五万円くらいかけておる。けい肺の、たとえば鬼怒川の労災病院は、先般参りましたが、二十三万円くらいの設備費、新営費しか使ってない。建物及び設備は、他の一般労災病院に比べて非常に貧弱だということを、私は聞いておるのでございます。特にけい肺のように研究的要素を持つところの療養の際に、こういう一般労災保険と同じように、独立採算制ということがかなり強行されておって、現在全国でただ一つであるといわれておる鬼怒川のけい肺労災病院あたりは、運営に非常に困っておる。政府はこの法案を作って、けい肺に特別力を入れると言うけれども、現実の鬼怒川のけい肺労災病院は、建築費及び設備において、他の一般労災病院の水準にはるかに劣るばかりでなく、特殊の病域を扱って研究的な仕事をしなければならないのにかかわらず、他の労災病院と同じように独立採算制ということによって、その診療について飛躍的に伸ばすということの障害になっておる。こういう実情を私は聞いておるのですが、そういうことはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/77
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078・富樫総一
○富樫(総)政府委員 労災病院の建築に関します経費につきましては、詳細ここに持っておりませんが、けい肺病院は、労災病院の中で一番初期に建てたのであります。従いまして、その後の物価の値上り等によりまする経費の差額が相当あるかと存じます。しかし、それでなくとも、一番初期の病院の設計は、その後漸次設計がよりよく、あとからできるものほど一段といろいろな苦心なり創意なり加わりますので、それに比べますと、やや旧式であるというふうにいわれております。私もそうだと考えております。しかしながら、できるだけその後におきましても——先生の御承知のように、最近におきましては、家族が見舞に来た場合には、患者と一緒に泊れるような部屋も作り、家族ぶろ式のものも、そういうものも併置したり、できるだけあたたかい思いやりでこれを処置するように努力しておるわけでございます。
なお、診療費につきましては、もちろん乱給になってはなりませんので、その点につきましては十分な配慮をいたしまして、同時に、原則といたしましては独立採算という建前をとっておるのでございますが、しかしながら、一般の労災病院に比較いたしますれば、けい肺病院は、特にこの研究的という観点をも含めて、手厚い看護をするために、一人当りの診療費の実際にかけている金額は、相当上回っておるように聞いております。具体的には、あとで数字等を整理して申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/78
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079・森山欽司
○森山委員 今、局長からお話がございましたが、よくお調べ願えば、設備及び建物等について、他の労災病院に劣る、それから、病気の性質で、非常に研究的なことをしなければならないのだが、予算が独立採算制ということで縛られて、仕事が十分やれぬという実情にあることは、私は事実のように思うのですが、もしそれが事実であるとするならば、この独立採算制でやらなければならぬとかいうような問題について、労働大臣は、けい肺労災病院については、もう少し運営についてゆとりのあるような形にこれを運営できるように、お取り計らいはできないものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/79
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080・西田隆男
○西田国務大臣 ゆとりのあるようにという意味合いが、金の余るようにという意味かどうかわかりませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/80
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081・森山欽司
○森山委員 研究的な仕事ができるように……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/81
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082・西田隆男
○西田国務大臣 労災病院の最終の目的を達成するに可能なだけの経費は、当然やるべきだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/82
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083・森山欽司
○森山委員 この労災病院については、相当今後力を入れて参らねばならない。鬼怒川だけでなく、他にも作るということでございますので、この参議院から出ました法案によりますと、けい肺研究所というものを置くことについては、法文に明記してあるわけでございます。それと同じような趣旨において、研究機関を含めて、けい肺等の特別保護法案の中に、そういうものも設置するということを明記しておいた方が、これらの機関について、予算上あるいは運営上縛られる問題を、もう少し活発に動けるような組織にすることができると思いますが、大臣の所見はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/83
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084・富樫総一
○富樫(総)政府委員 具体的な問題でございますから、まず私からお答え申し上げます。現在の鬼怒川の病院に、御承知のように労働省直轄の試験室が付置されてございます。しかし、それではもちろん不十分でございますので、現在すでに関東の総合病院といたしまして、川崎に総合大病院を建築中でございますが、その中に別に労働衛生研究所を目下すでに建築中でございます。今年中にある程度形を整えまして、来年度から所要の職員を配置することになっております。その際に、労働省設置法に基きまして、付属機関として正規に発足するわけでございます。先生のお心づかいは、非常にありがたいのでございますが、今この法律にそう書かなくとも、すでに大蔵省との話はついておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/84
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085・森山欽司
○森山委員 この際大臣にお伺いいたしますが、第十二条の休業給付に関連いたしまして、労働基準法上の休業補償の百分の六十になっているものを、八十にしてもらいたいという要求は、かなり前からあるわけでございます。さらに休業補償について、平均賃金のスライド・アップが実現されておりましたが、平均賃金自体を、一つこの際、休業補償に限らず、全般にスライド・アップするように労働基準法を改正する御意図はございませんか。もう物価も大分安定して参りましたから、特に問題として残っているのは、このけい肺だけがおそらく問題になると思うのです。そういう意味において、この平均賃金のスライド・アップの問題、さらにまた休業補償の百分の六十とあるのを百分の八十程度にする、これは現実には、もう百分の六十に百分の四十を足して百%になっているところは、たくさんあるわけであります。もう現実に大部分そうなっている現状であるから、その程度に上げるようにしたらどうか、大臣の見解を承わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/85
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086・西田隆男
○西田国務大臣 百分の六十を百分の八十にしたらどうかということで、百分の八十でもけっこうだと思いますが、これは税金がかかりませんので、百分の八十ということは、ほとんど全額給付するということに結果的にはなろうと思います。またスライド・アップについては、専門的なことですから、基準局の方から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/86
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087・森山欽司
○森山委員 百分の八十に直して、けっこうということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/87
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088・西田隆男
○西田国務大臣 百分の八十に直してもけっこうと思いますが、百分の八十ということは、結局全額給付をする——税金がかからないから、ほとんど賃金の全額をもらうというのと同じことになるのじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/88
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089・森山欽司
○森山委員 百分の八十にすることは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/89
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090・西田隆男
○西田国務大臣 私は決して反対ではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/90
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091・森山欽司
○森山委員 そういうふうに改正をすることについて、大臣は賛成でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/91
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092・西田隆男
○西田国務大臣 今、改正をするかせぬかという問題に対して、意見を申し上げかねますが、給付がふえるということについては、反対いたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/92
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093・森山欽司
○森山委員 そういうふうに政府において労働基準法を改正する頭はございませんかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/93
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094・西田隆男
○西田国務大臣 労働基準法の改正の問題は、審議会を作りましていろいろな問題を検討したいと考えております。せっかく今準備をやっておりますが、その審議会の回答に基いて、政府は善処いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/94
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095・森山欽司
○森山委員 せっかくけい肺について特別法が出たときですから、けい肺に関係ある事項として、この項目、そのことに関する労働基準法の改正だけでも実現されたらいかがか、こういうように考えております。かつてこの衆議院の労働委員会も、けい肺問題についていろいろ関心を持っておりました結果、その動きを反映いたしまして、休業補償のスライド・アップだけは実現したのですから、この際できるだけすみやかな時期に、労働基準法の全体の改正と申しますか、この改正案ができる時まで、大臣がその席においでになるかどうかわからぬと思う。またおやりになっても、なかなかこれは問題を含んでおると思う。しかし、百分の六十を百分の八十にするということ自体は、私はごく簡単にできるのじゃないかと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/95
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096・西田隆男
○西田国務大臣 私は、さっきから申しますように、百分の六十を百分の八十にする、ふやすことには反対でございませんが、ただ、今このけい肺法と並行して労働基準法を改正するという考え方は、持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/96
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097・森山欽司
○森山委員 けい肺のために、特別に労働基準法の範囲内においてやれることでも、おやりになる頭はない、こういうわけでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/97
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098・西田隆男
○西田国務大臣 給付というものは、全般的に考えなければならないものでございまして、ただ特別なものだけひっこ抜いて、それに対して特別な立法措置をするということは、私はあまり好ましいやり方ではないと考えております。それほどけい肺患者の給付というものは、ほかの一般の災害の給付との間に差等がついておるとは私は考えておりません。賃金その他においても、大した差別もないように考えておりますし、満足ではないかもわかりませんが、今までそういうことで行われてきたものでもありますし、この際特にそういうふうな措置をとるということは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/98
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099・富樫総一
○富樫(総)政府委員 スライド問題につきましては、国会においてこの措置がとられた当時の御事情は、先生が一番よく御存じだと考えます。これにつきましては、御承知のように、無過失損害賠償の理論的な建前から、あるいは保険財政の観点から、当時もいろいろ問題がありまして、この休業補償だけについて特別にやられております。しかし私どもも、現在ほかの給付についてスライドがいかないで、休業補償だけがスライドというのも、何かそぐわない感じもいたしますので、これもただいま大臣がおっしゃいましたように、何も経費だけの問題でもございませんが、近い将来におきまして、基準法再検討の場合には、これをも含めて慎重審議いたしたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/99
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100・森山欽司
○森山委員 それでは次に、このけい肺特別立法の国際的な関係に関連して、御質疑申し上げたいのでありますが、このけい肺については、すでに一九一二年に南アフリカ連邦で特別立法がなされ、今日まで十数カ国で特別的な法制あるいは積極的な対策がとられておると聞いております。一九三〇年にILOの第一回の国際けい肺会議が行われておるわけでございまして、今日まで三回その会議が行われておる。ところがわが国からは、このILOの国際けい肺会議に、だれも参加していないというような状況でございます。そういう意味において、この際この問題に最もふさわしい人物を、この国際会議に代表として送る意図はないか、またこの国際会議にわが国が参加するという御意図はないか、大臣に伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/100
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101・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。今までは、このけい肺に対する何らの措置が講ぜられてなかったし、世界各国の集まりに行って恥かしい思いをするだろうからというような状態で、参加しなかったのではないかと考えますが、これも必ずしも完全なものではありませんけれども、一応この法律が施行される段階になりました場合においては、日本政府を代表してやることも考えてもいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/101
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102・森山欽司
○森山委員 たしか今年あたり行われるとか聞いておりますが、今年の問題だったらどういたしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/102
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103・富樫総一
○富樫(総)政府委員 これは先ほど大臣から申しましたように、今までわが国の方にも相当参加の熱意が、なかったことによるかとも存じますが、形式上、建前といたしましては、これは任意参加でございませんで、ILOの理事会において決定した特定の国を構成員として招集されるわけでございます。ただいまの大臣のお話にもございましたように、今年は、そういうわけで構成メンバーに加えられておりません。今後、わが国が常任理事国になったので、こういう法律もできますれば、堂々と積極的に、構成メンバーに加えてもらいたいという主張をいたしまして、そういうことを実現したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/103
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104・中村三之丞
○中村委員長 森山君に申し上げますが、まだ三人大臣に対する質問が残っておるので、どうぞそのおつもりでお進め願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/104
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105・森山欽司
○森山委員 国際的に見て、このけい肺立法については、いろいろ規定の仕方があると思います。大体において、けい肺を中心にして規定をされておるわけであります。わが国のごとく——この内容自体に、私は反対はございませんけれども、外傷性脊髄障害なんというものと抱き合せにした法律は、世界にあまり類例を見ないわけであります。そういう意味で、なぜ一体外傷性脊髄障害を抱き合せしたか。先ほど労働基準局長からのお話で、非常に気の毒な状態が似ているからだ、こういうお話でございますが、これを昭和二十六年以来の沿革から見ますと、けい肺法制定に反対したグループがあるわけであります。すなわち、使用者のグループは、今日まで、今回のけい肺対策審議会における消極的態度まで含めまして、終始これについて少くとも積極的でなかった。ある場合には、はっきりと時期尚早という名前において反対しておった。こういう際に、これの口車に乗った労働省の事務官僚は、同じように気の毒なものがある、そういうものの代表として出てきたのが、外傷性脊髄障害というものであります。この外傷性脊髄障害を入れたということは、いかにけい肺特別立法ができることがむずかしかったかということの記念物として、すなわち盲腸的存在といたしまして、この外傷性脊髄障害を含めてあるものだと私は解釈いたしますが、大臣はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/105
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106・西田隆男
○西田国務大臣 森山さんは、だいぶ誤解があるようであります。労働省の事務局の責任と言われましたが、これを加えましたのは、私が希望して実は加えさせたのであります。それは労働省へ参りまして、第一回の会議を開く際に、けい肺の問題を取り上げまして、そうして外傷性脊髄障害に対する救済の方法、援助の方法等をよく詳しく聞きまして、私自身が事業をやっておりますので、病状がいかに悲惨であるかということはよく知っておる。従って、それであれば、けい肺の状態と脊髄の問題とは同じような苦痛を同じ人間に与えておるという観点から——けい肺法を出すから、便宜的に入れるという意味合いではございません、一緒にこれを救済する方法を法律案の中で考えてくれ、こういうことを労働省の会合で申しました結果が、この中に入ったのであります。責任があれば、私に責任があるので決して労働省の職員にも、使用者の側にも、責任はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/106
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107・森山欽司
○森山委員 私はこの法案立案の従来の長い経過にかんがみまして、この外傷性脊髄障害を、少くもこの程度に処遇するということは、差しつかえありませんが、けい肺と抱き合せをしたということでこれが成立したということの中に、けい肺立法がなかなか行われなかったところの反対論の根拠として出されたものが、根跡として残っておるものであるというふうに、私は解釈をいたすわけであります。大臣がそういう御見解であられたとしても、大臣はしょせん従来の経営者関係の方々のいろいろな声を多く反映されたのではなかろうかと推定しておりますが、もしそうでなければ幸いでございます。
そこで、この立法に対しまして、労使双方がこの点についていろいろ見解を示して参りました。この立法に対する労使の態度について、労働大臣の所見を承わりたい。すなわち、労働者はどういう態度をもって臨んだか、使用者はどういう態度をもって臨んだか、それに対して労働行政を握る大臣としては、これをどういう感じをもって見ておられたか、承わりたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/107
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108・西田隆男
○西田国務大臣 けい肺問題が大いに論議されるようになりました段階におけることは、私が申し上げぬでも、森山さん御承知と思います。私が労働省へ参りまして以後、けい肺問題について私のところへお見えになりましたのは、社会党の代議士諸君が二、三名と、労働組合側の代表者がそれについて五、六名お見えになりまして、けい肺法をどうする、出すのか出さぬのかという御質問を労働省で受けました。それは必ず出します、こういうお答えをいたしました。使用者側から私どもへは、だれも参りません、何らの意見も聞いておりません。これが真相でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/108
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109・森山欽司
○森山委員 そういう意味で、使用者側がこれについて何らの意見を述べないということは、この法案の制定に対して、非常に消極的であったというようにとれないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/109
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110・西田隆男
○西田国務大臣 私、直接意見を聞いておりませんから、どうであったかということを的確に御答弁は申し上げかねますが、私の聞きますところによりますと、多少の異論はあったようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/110
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111・森山欽司
○森山委員 私は、この法案立案に際しまして、経営者側が、従来のごとき、やはり依然たる消極的態度のうちにこの法案が立案されたことを、まことに遺憾とするわけでございます。使用者側が反対した理由は、金がかかるということが、理由ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。大臣のところへは、経営者代表は参りませんでしたけれども、少くもけい肺審議会には、使用者の代表は出ておられる。そのけい肺審議会において、使用者の代表と接触された富樫労働基準局長は、使用者の腹をどう読まれたか、この際一つ述べていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/111
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112・富樫総一
○富樫(総)政府委員 私も四月一日に基準局長になったばかりで、以前のことはよく存じませんが、大臣の命令によりまして本法案を立案して、その要綱をこの審議会にかけた。その際におきましては、使用者は大体におきまして、現在の情勢におきましては、ある程度やむを得ざるものというような態度のように見受けました。ただ、経費につきまして、強く国庫負担のことを要望しておられたのであります。答申にも、そういうふうに出ておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/112
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113・森山欽司
○森山委員 そこで伺いたいのですが、今の労災保険ですと、金属鉱山の場合、一円について三銭二厘が保険料率ですが、もし金額経営者が負担するとした場合についての負担金率は、大体どの程度になりますか。これはこの法案の十八条とか附則の十六項によって、負担金率はすでに御推定になっておると思います。金属鉱山の三銭二厘の保険料率は、この法律を施行すると、どのくらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/113
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114・富樫総一
○富樫(総)政府委員 負担金率につきましては、法案においては過去五年の実績によって計算することを原則としております。ただし施行当初におきましては、各産業とも、この過去五年間の発生率なるものが、的確であるとは必ずしもいえませんので、これは特にけい肺審議会に付議いたしましてこの料率を決定することにいたしております。しかし、一応私どもとしての目の予算といたしましては、たとえば一番負担金率の高い金属鉱業におきまして、今年は半端な年でございますが、来年度におきましては一円につき二厘、つまり賃金一万円につきまして二十円、これは三分の二負担の場合として、そういうことに計算しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/114
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115・森山欽司
○森山委員 三分の二負担で二厘くらいしかならない程度でございますから、全額負担としましても、三厘程度というように考えてよろしゅうございますか。そうすると三銭二厘が三銭五厘くらいになって、そうして今の経営者がやっていけないといって反対しておる、こういうわけでございますな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/115
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116・富樫総一
○富樫(総)政府委員 はっきりはいたしませんが、経営者はいろいろ自分のことを考慮しておる。かつ金属鉱業の現在の景況等をも考えて、このような渋い態度をとられたものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/116
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117・森山欽司
○森山委員 労働大臣に伺います。保険料率三銭二厘が三厘上って三銭五厘となって、わが国の金属鉱山鉱業は滅ぶ、こういう御見解をお持ちかどうか、承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/117
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118・西田隆男
○西田国務大臣 私はそういう見解をとっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/118
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119・森山欽司
○森山委員 そうすれば、この保護程度のことであるならば、これは業界の自力でもやれる、当然やられてしかるべきことであると大臣はお考えにならないか、承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/119
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120・西田隆男
○西田国務大臣 お答えします。この問題は、また第一条の最初のあなたのお尋ねに帰るわけですが、あのときから申し上げておりますように、一応職業病ではあるけれども、国民病的な要素がもっと強い。だから、こういうかわいそうな人たちは、事業主に関係なく、国が全額負担をもって当然救ってやるべきだ、こういうふうな基本的な考え方を持っておりますので、保険の料率が三厘がどうだとか、二厘がどうだとかいうことは、今初めて聞いて考えておりますので、けい肺対策審議会等につきましても、基準局長から一厘で反対があったとかいうことは聞いておりません。資本家側の考え方は、私のところは全くつんぼさじきになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/120
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121・森山欽司
○森山委員 ですから、私が申し上げることは、この法律ができるときに、昭和二十六年以来、国会のこういう席上に呼びましても、経営者は実に非協力的な態度なんです。この法案を審議するけい肺対策審議会におきましても、非常に協力的でなかったと私どもは聞いておるわけです。その理由は、こういうことをやると会社経営が成り立っていかない、金を出したくないという裏には、出すと非常に困るという事実、先般山下委員でございましたか、中小鉱山は、これでは立ち行かないという声があったということを聞いておるのです。はたしてそうか、三銭二厘の保険料率が三銭五厘になって一体やっていけないのかどうか。おそらく石炭鉱業は、三銭五厘以上の料率であったと私は思うのであります。ですから、これに対して経営者側の態度というものは、これらのわが国の労使関係をどう持っていこうかということについて、誠意に欠けているのではないか、ヒューマニティもないし、また労使関係が円滑にやっていくための一つのいいきっかけとしても、こういうものに対して誠意を示していないこういう経営者の行き方に対して、労働大臣はどう思われるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/121
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122・西田隆男
○西田国務大臣 金属鉱業は、森山さんも御承知のように、一時は非常にすばらしい好況を呈しておりました。その当時も、けい肺の問題は問題になっておったのであります。そのころ二厘、三厘の負担がふえるからやっていけないということは、口に出して言えることでもありませんし、そういうこともまた考えていなかったろうと思います。現実の金属鉱業の採算の問題は、その当時より悪くなっていることは事実ですが、それもさっき申しましたように、二厘、三厘負担がふえるから、そのために金属鉱業がつぶれるというのではなくて、つぶれるための要素は、ほかにたくさんあると思います。従って、私は、使用者負担にしても、決して差しつかえないと考えておりますけれども、最初申し上げましたように、これは国が当然持つべきであろうという基本的な考え方に立っておったために、使用者側としても来なかったのだろうと思いますが、何ら使用者側の意見は聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/122
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123・森山欽司
○森山委員 ですから、私は、こういう数字が出てみると、労働者が一般に困った点もあるが、経営者もどうもこういう問題を見ると、少しひどいなという印象をお受けにならないかどうか、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/123
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124・西田隆男
○西田国務大臣 ひどいとか、ひどくないとかいうことは別問題として、日本の労使関係が、森山さんがお考えになっているように、過去においても現在においてもスムーズに行っていない、ものの考え方に多少のニュアンスの違いがあることは事実のようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/124
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125・森山欽司
○森山委員 そこで、最後に経過措置について承わりたいのでございます。附則の第一項によりますと、この法律は九月一日から実施するようでございます。ところが、この法律ができるというので、喜んでおるけい肺患者が、全国に相当多数ございますが、そのうちの何人かは、九月一日までに三年の打ち切り補償の期間が来てしまって、この法律の恩典に浴さぬということになるのです。少くも今年の四月以降三年の期限が来る人たちに対して、この法律に浴させないということは、何かかわいそうじゃなかろうか。それから、さらにさかのぼって考えますと、昭和二十九年の五月下旬に、時の自由党内閣の小坂労働大臣から一つけい肺法を作ってみたいというような発言もあった、その当時から、けい肺患者の人たちは、かなり希望を持ってきておるわけでございます。ですから、さかのぼればその当時まで、さらにさかのぼれば昭和二十三年ですか、労働基準法が施行されてから三年間、要するに昭和二十六、七年以降、初めからこの法案の恩典に浴させてやるわけには参るまいか、そういういろいろな段階において考えが出てくるわけでございます。これは理屈ではなくて、九月一日というのを、もう少し前からさかのぼって適用させてやらなければ、あまりにかわいそうじゃないかというふうに大臣は考えられないか。たとえば、八月三十一日にもう三年の期限が切れて、一日違いでもって——この法律が審議されておる状況を、耳を大きくして全国の患者が聞いておるわけです。そういう人たちの立場を考えると、何とかそういう人たちのために、ある程度のところで切ることはやむを得ないかとも思いますけれども、経過措置として、九月一日より前のものは全くためだということのないような措置について、大臣はどうお考えか、承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/125
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126・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。森山さんが今言われますように、八月三十一日までのものが適用されないことは非常に気の毒であるということになると、結局けい肺にかかった最初の人たちまで、現在生きておられる人を全部適用することが、一番好もしいことであろうと思います。これは理屈ではなくて、人間として人の不幸を見た場合に、それに対して同情しないというのは人間でないと考えますが、しかし、森山さんも御承知のように、これは理屈になりますが、法律不遡及の原則と申しますか、そういうものがありまして、切りがないので、どこまで持っていったらいいかということを政治的に片をつけるのは、事実問題としては非常に問題です。一応理屈の上では、それでは半年にしたらいいじゃないか、一年にしたらいいじゃないかということが成り立ちますが、それが依然として、あとに残ったものがありますと、九月一日から実施するのと同じ結果になっていくので、結局は全部のものにこの法律を適用させるということにならない限り、その問題の解決はつかないと思いますので、一応九月一日からこれを施行するという考え方できめたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/126
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127・森山欽司
○森山委員 九月一日はわかるのでありますけれども、現在これを聞いておる全国のけい肺の患者を考えると、せめてこの四月から九月までの間に受給資格がなくなるような人たちを何とかしてやるということについては、大臣いかがでしょう、いかにも気の毒じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/127
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128・西田隆男
○西田国務大臣 全く私も気の毒に思っておりますが、もしこの法律でそういうことを書きますと、今度はまた森山さんの、半年を加えるならこれも加えたらどうかというような御議論が必ず出ると思います。そういうことでありますので、情においては忍び得ませんけれども、立法する以上、仕方があるまいという悲しいあきらめをいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/128
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129・森山欽司
○森山委員 この法律には、予防措置についてはあまり規定がないようでございます。予防措置については、御承知の通り、鉱山保安法に基く鉱山保安規則によって、けい酸粉塵の山へ水をまくとか、さく岩作業の湿式化をする、あるいはマスクをかけるというようなことで予防措置をとっておるわけです。基準法でも、マスクをかけろということは言っておるわけであります。またからだが悪いときには休んだがいいというような規定もあるわけであります。ところが、鉱山保安法なんかの場合を見ますと、爆発を防止するために逆に粉塵をまけという規則もあるやに聞いておる。だから、鉱山保安規則というものは、けい肺に対して予防するという考え方よりも、やはり経営者の立場に立っておる。山を大いに盛り育てていくというようなことが中心になるのではないか、私はこういうふうに考えるのです。しかし、実際問題としまして、この労働委員会の推進によって保安規則も改正され、ある程度その線に沿って実績もあがって参ったと考えておるのでございます。通産省の方が来ておられたら、その進行状況について御説明を願いたいと考えておりますが、従って現状においては、鉱山保安規則によって、この予防に全面的に依存することは困難ではないかというふうに私は考える。予防に消極的ではなかろうか。だから、こういう法律の中に、何かもう少し予防するようなことを規則として、役所のなわ張りを離れて、入れておく必要がないかという感じを持っておるのですが、これについて大臣の見解を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/129
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130・西田隆男
○西田国務大臣 けい酸粉塵の予防措置につきましては、まだどこでも、どうして予防したら完全に予防できるかという結論は、出ていないようであります。労働省としましては、ただいまでは労働基準法と鉱山保安法の適用によって、一応予防するということにしておりますが、けい肺審議会等で結論が出まして、新しい予防方法が発見されました場合においては、鉱山保安法と関係なしに、そのときの話し合いによって、当然このけい酸粉塵に対する特別な予防措置をとっていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/130
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131・正木崇
○正木政府委員 ただいま鉱山保安法がけい肺の予防について不適当ではないかというような御質問でございましたが、私はさようには考えておりません。と申しますことは、たとえば、今先生が例としてあげられました、爆発の防止のために石灰石の粉末をまきます場合にも、けい酸質のきわめて少いものをまきますので、爆発の予防とけい肺の予防とは、両立し得るというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/131
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132・森山欽司
○森山委員 私は鉱山保安規則の改正によって、この予防については一歩前進したとは思っておるのです。思っておるけれども、鉱山保安規則というものの性格は、労働衛生の立場から見て、たとえばけい肺を予防するというような性格は、この法自体は持っておらない。だから、場合によっては、逆に粉塵を爆発防止のためにまき散らしていいというような規則もある。あなたがおっしゃるように、けい酸質の粉塵はまき散らさないように指導しておると言われますが、実際問題として、二番手近に入るのはけい酸質の粉塵だから、そういうものを実際まいておる。だから、鉱山保安法の保安規則のワク内におけるところの予防というものについては、どうしても一定の限界が出てくるだろう。山の経営、山でものを掘るという生産面の方からこの法律ができておるのであって、おそらくその鉱山の保安という方からできておるのであるから、もし、けい肺について予防措置をやっていこうとするならば、それらの法律との関係もあるけれども、何かこの法律の中に、予防面として、役所のなわ張り問題を離れれば、これは入れてもいいのじゃないか。ただし、私どもが、たとえば鉱山内の通気の問題は労働省の問題であるとかいうような議論を一口でも申しますと、通産省幹部、次官以下、いきり立って権限を主張して、これは大騒ぎになりますから、そういうことは申しませんが、要するに、なわ張りを離れて、何とかしてこの予防措置を徹底するようにしたい。だから、この法律も労働省の法律になっているが、通産省と共管のような形で持ってもいいのであります。とにかく、そういうことで、このけい肺の予防について、現状よりもさらに一歩前進するような法的規制ができないものかということを、私は大臣にお尋ねした。それで、せっかく保安局長が来られたのでありますから、この際湿式化とか、また散水作業とかいうことで、あなたから最近二、三年間におけるこの仕事の進捗状態を、一つ御説明を願いたい。ごく簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/132
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133・正木崇
○正木政府委員 坑内の湿式さく岩機の使用の状況は、ほとんど完了しておりまして、残る問題といたしましては、給水の問題がございます。これもただいまウォーター・パイプ・ラインの施設を強力に指導しておりまして、ウォーター・パイプ・ラインについてだけ申し上げますと、二十八年の九月から昨年九月までに大体四割延長しております。さらにこの指導は強力に続けていくつもりでございます。なお、このウォーター・パイプ・ラインの設置の切羽の数も非常にふえておりまして、二十八年九月から二十九年九月までに五割増加いたしております。なおこの鉱山のパイプ・ラインの延長は、大体一鉱山当り二千二百メートル——これは昨年末の調査でございますが、そういうことになっております。それから防塵マスクの使用につきましても、かなり徹底して使用しておりまして、大体一鉱山当り八十くらいマスクをつけております。なお、湿式さく岩機の使用の状況でありますが、大体一鉱山当り二十台のさく岩機を据え付けておりますが、これもほとんど完了しております。特に一、二の鉱山におきまして、特別の事情で使用できない場合には、鉱山保安監督部長の許可を受けまして、これにかわるさく岩機を使用しておる状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/133
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134・森山欽司
○森山委員 だいぶ質問が長くなりまして、なお逐条的に数点残っておりますが、あとの方がございますから、ひとまず私の質問はこれで打ち切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/134
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135・中村三之丞
○中村委員長 多賀谷真稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/135
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136・多賀谷真稔
○多賀谷委員 ただいま森山委員から、与野党の立場を離れて、ヒューマニズムの見地から、非常に熱心な討議にあずかりまして、われわれ非常な敬意を表しておる。おそらくわれわれが出します修正案には、全面的に賛成いただける、こういう期待を持ちまして、私は大臣の答弁を求めるものであります。
まず、ほとんどの論点につきましては、質問がありましたので、最初は小さな問題から局長に質問をいたしたいと思います。
第一には、このけい肺にかかるところの粉塵作業場の五名未満の労働者で、労災保険の適用を受けない、こういう人々はいないかどうか、全部強制適用になっておるかどうかをお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/136
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137・富樫総一
○富樫(総)政府委員 大体五人以上と存じておりますが、詳細な数字は、目下把握に努め中でありまして、五人未満も相当あるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/137
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138・多賀谷真稔
○多賀谷委員 私が申しましたのは、五人以上は、もちろん適用を受けるわけですが、五名未満の労働者を使用している企業でけい肺の患者が発生する。しかるに、労災の適用を受けていない、こういうことが起りますと、困るわけでありまして、そういう事業場がないかどうか。五名未満でも、一名でも、強制適用を受けることになっておるかどうか、その点をお尋ねいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/138
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139・富樫総一
○富樫(総)政府委員 労災保険法は、原則的には五人未満は任意適用になっておりますが、特に労災保険法の施行規則の第三条によりまして、大体この粉塵作業は、五人未満でも強制適用事業になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/139
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140・多賀谷真稔
○多賀谷委員 もう少し正確にお答え願いたい。もちろん労働者災害補償保険法施行規則第三条を知っておるわけでありまして、第三条の三号に、強制適用事業場が書いてある。しかし、漏れてはいないかということを心配して聞いておるのでありますから、大体とかいうことでなくて、少くとも、けい肺法案に盛られておる粉塵作業場というのは、全部入っておるのである、今予見し得る作業場は全部入っておりますと、こういう答弁を願いたいのでありますが、どういう事情になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/140
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141・富樫総一
○富樫(総)政府委員 現在のところは、完全に全部強制適用事業になっているということは申しかねます。従いまして、本法案の中におきましても、労災保険の適用のない事業の存在を前提とした規定も設けておるようなわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/141
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142・多賀谷真稔
○多賀谷委員 漏れているということを前提とした規定は、どこにありますか。またその場合は、どういうようになっておるのかまたこういった場合に、政府資金を出すか、一体政府資金はどこへ出すのか、こういう点についてお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/142
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143・富樫総一
○富樫(総)政府委員 その規定は、十七条の第二項がそういうことになっておるのであります。こういう事業におきましては、従来とも労災保険の適用がないために、基準法によりまして直接に事業主が補償する建前になっております。実際問題として、こういうものを強制適用にいたしまして何することは、保険の繁雑な手数及び事業主に対する負担関係から見ても、なかなか困難でございます。従いまして、この十七条の二項の規定を設けまして、発生した場合には、そのつど三分の二の負担金を出してもらうことにしておりますが、実際に負担する段階は、打ち切り補償後の三年後のことでございますので、行政指導といたしましては、それまでに任意加入をいたして入っていただくように指導いたしますれば、実際問題としては、うまくいくのではないかというふうに考えております。この負担金は、政府の負担金と合せまして、労災特別会計のこの労災勘定の中に繰り込まれるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/143
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144・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そういたしますと、漏れなくけい肺法の保護規定を受ける、こういうように了解してよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/144
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145・富樫総一
○富樫(総)政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/145
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146・多賀谷真稔
○多賀谷委員 ことに、けい肺で問題になりますのは、石屋さんの場合の一人親方と俗に言っております種類のものでありますが、この一人親方については、どういうような取扱いをなさるおつもりであるか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/146
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147・富樫総一
○富樫(総)政府委員 一人親方につきましては、建前上雇用労働者でございませんので、現在とも基準法及び労災保険法は適用がないことになっております。しかし、実際問題として、特にこのけい肺につきましては問題がございますので、それにつきましては、従来行政的に便宜一人親方の人々に組合を作っていただきまして、その組合が使用主になり、一人親方はその組合の使用人という建前をとっていただきますれば、労災保険法を適用することに従来ともいたしております。今後とも、そういう指導で事態に善処したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/147
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148・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そういたしますと、今申されましたような便宜的な取扱いで、けい肺法の保護規定を受けると解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/148
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149・富樫総一
○富樫(総)政府委員 そういう形をとりますれば、同様の保護が受けられる、こういう解釈でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/149
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150・多賀谷真稔
○多賀谷委員 先ほどから森山委員も御質問をなさっておりましたが、私は、基準法が施行になり、労災保険法が施行になり、さらに三年間のそういう補償を受けた者、こういう者は、そう多数いないのではなかろうかと思うわけです。ことに、われわれがけい肺病院を視察に参りましたときに、院長からの話を聞きましたが、退院をする者は、病気がなおって退院するというわけでなくて、打ち切り補償によって療養期間が過ぎたから退院をする、その中で、約四分の一がその後五カ年間において死亡しておる、こういう話を聞いたわけであります。さらにまた、患者の人から、療養期間が切れると、何とかしてこの鬼怒川の地におりたいということで、小さな小屋を建てて住もうとしておる人もあったけれども、ついに生活ができなくて死んでいった、こういう哀れな話も聞いたわけであります。私は、この法律の保護を受けない患者に対して、できるだけ法律の適用をしてもらうように希望するわけでありますが、先ほど大臣は、何か法律不遡及の原則の話をいわれましたが、これは刑事罰の話であります。こういうような法律には通用するものではございませんけれども、それはさておきましても、一体、現在もしこの法律を基準法施行当時からずっと実施するといたしますと、どの程度の人間がおり、またこの法律を適用することによって、どの程度の予算が要るか、その点を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/150
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151・富樫総一
○富樫(総)政府委員 基準法施行当初より今日に至りまするけい肺患者で、打ち切り補償を受けた者は、累計いたしまして、今年の九月までの分を算入いたしまして約八百二十人でございます。このうち、相当数なくなった方もあるかと思いますが、それも含めて八百二十人くらい。これに対しまして、本法におきまして同様の保護を加えるとすれば、どのくらいの金額がかかりますか、正確な数字は簡単に算出困難でございますが、大体目の子算といたしまして五、六億くらいかかるのではなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/151
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152・多賀谷真稔
○多賀谷委員 大臣、今お聞き及びの通りでございますが、今まで基準法施行以来、打ち切り補償をもらって現在、あるいはその中には死亡しておる人もあろうと思いますけれども、八百二十名である、こういうことを聞いておるわけであります。そこで、八百二十人の人に何とかこの法律施行実施をさす気持はないものであるかどうか。なるほど法律を実施する場合には、必ず期限が必要である。その期限を定める場合には、その前の人はどうするかという問題に必ず逢着する。しかし、この法律が、大臣が最初お話しになりましたように、国民病として考えておるというような見地からのお話でありますならば、なおさら私はその感を深うするものでありますが、大臣はもう一度考え直されて——わずかの人でありますけれども、しかしその人々は、きわめて深刻に悩んでおる人々であります、何とか御処置できないものであろうか、再びお尋ねをする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/152
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153・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。さっきも森山さんにお答えしましたように、私個人として考えました場合には、全くあなたの御質問に同感でございます。しかしながら、この法案の国会提出に至るまでの経過を考えますと、さっきはえらい怒られましたけれども、私ほんとうに、これは全額国庫負担にすべきだという観点に立ちまして、その建前に立って大蔵省と折衝いたしました結果が三分の一、わずか八千数百万円の金さえも出せないで、三分の一しか国庫で負担できないという結果から考えまして、今基準局長の答えましたように、数億に上る金を今ここで、私の気持はそうであっても、法律案を修正して全部の人に遡及するということは、これはもう考えておりましても、ちょっと不可能である、かように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/153
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154・多賀谷真稔
○多賀谷委員 三分の一と三分の二の問題は、どこか持つところがあるわけであります。すなわち、全額国庫が負担しなければ、使用者に転嫁するということができますけれども、その問題とはおのずから違うと考えます。これは負担をする人々がおりません。そこで、やはり何とかしてこの法律の適用を受けさせてやろうと考えるわけでありますが、今基準局長は、八百二十名という正確な数字をおっしゃいました。もっとも死亡を含んでおるのですが、経費の点となると、数億という話をされたのです。正確にこの法律を施行しますと、もちろん賃金が違いますから、こういう点はなかなか正確にはできないでしょうけれども、現在予算で計上されております平均賃金を算定して、そうして人数を足されると、どのくらいになるか、正確にお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/154
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155・富樫総一
○富樫(総)政府委員 急に過去のそういう打ち切られた方々の賃金をもととして計算をすることは困難なので、大体の目の子算で申し上げたのでありますが、ただいま先生のおっしゃるような、現在の平均賃金でならばどうなるか、ちょっと今はじいてございませんので、次の機会に答えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/155
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156・多賀谷真稔
○多賀谷委員 大臣にも、何とかこの法律施行前の経過措置については、十分考えていただくことにしまして、またわれわれ自身も考えてみたいと思うわけであります。
さらに質問を続けますが、収容の保護施設について、第一年目は、いろいろな関係上、発生の状態とかあるいはその他の問題で建設できなかったが、来年度からはいたす、こういうことでございますが、必ず明年度予算には組まれるつもりであるかどうか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/156
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157・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。健康診断をいたしました結果、どういう地方にどの程度のけい肺病の患者がおるということがはっきりわかりますれば、私の考え方では農場とかあるいは共同作業場とかいうふうなものを作りまして、本人だけでなくして、家族全体をくるめての生活安定という面まであんどうを見ていきたい。来年度の予算には、第一期の健康診断が完了しました結果に基いて、具体的にそういうものを決定していきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/157
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158・多賀谷真稔
○多賀谷委員 大臣の理想は、なかなかいいのですけれども、現実は必ずしも伴っていない感があるわけで、非常に残念に思うわけですが、そういう理想的な観念に立ちます現実の処理としては、きわめて遺憾な点が間々出てきておるわけであります。先ほども、死ぬまで何とか国でめんどうを見てやろう、こういうところから、三年ないし五年の打ち切り補償の問題が論議になった、あるいはまた作業転換の問題が論議になっておるわけですが、私も、先ほど森山委員から質問がありました作業転換の補償の問題について、質問をしてみたいと思うわけであります。なるほど本人の健康保持ということは、非常に大切なことでありますが、また生活の確保というこの問題も大切なことである。この両面の調節をいかにするかが、この問題であろうと思うわけであります。そこでどう考えましても労働能力の低減がそこにあり、減退がそこにある。この補償をしなければならない。現実に労働能力は喪失していないと言われるかもしれませんが、そのまま続行すれば当然喪失を予見し得る状態にあり、必然的な状態にあるわけであります。だから、この損害に対して、私らは何らか補償すべきであると考えるわけであります。単に三十日分をやって、あとはこれでがまんすべきである、当然社会的に認容すべきであるという理論は成り立たないと思う。やはり私は、この損害については、補償してやるべきであると考えるわけですが、大臣並びに局長はどういうふうにお考えであるか、御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/158
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159・西田隆男
○西田国務大臣 多賀谷さんから、お前、理想ばかり言っておると言われましたが、政治家はやはり理想を持つべきだと思います。理想に向って突進する前の段階において、これは理想通りやれないからよくないではないかということにはならないと思います。配置転換の問題に対する給付の問題は、さっき森山さんにお答えした通りであります。あと法的なことにつきましては、基準局からお答えさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/159
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160・富樫総一
○富樫(総)政府委員 私といたしましても、先ほど森山先生にいろいろお答え申し上げた以上に答えることはないわけであります。要するに、まだ治療の段階に至らない、相当の労働能力を持ち、しかも健康管理上、本人のためでもあるわけです。本人は進んで少しくらい安くても、こういうところからは退きたいという性質の事柄でもございます。もっと多いことに越したことはないと存じますが、いろいろなことを考えまして、まずこの程度でがまんしていただきたいと考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/160
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161・多賀谷真稔
○多賀谷委員 局長に対してお尋ねしますが、配置転換料といいますか、配置転換の手当の給付は、これは一つの補償になると考えるのですが、これは補償ではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/161
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162・富樫総一
○富樫(総)政府委員 この配置転換給付の性格の問題でございますが、補償という言葉の意味にもよりますが、要するに、この法律によって初めて支給される特殊の給付である、こういうふうに申すほかないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/162
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163・多賀谷真稔
○多賀谷委員 労働能力が、現実には低下していないけれでも、じっとその職場におる場合には低下する、こういう状態にあるわけであります。そこで、今森山委員は、障害補償の例をとられて、これを適用さすべきであるという御議論をなさっておられました。私も一面そういう面もあると思うわけですが、これは特殊なケースでありまして、必ずしも障害補償の文句通りにいくかどうかという点は疑問がありますけれども、やはり労働能力の低下を来たす原因を作っておる、それに対して何らかの補償の措置を講ずべきであると考えるわけであります。それでこの問題につきましては、それは労働者のがまんをすべき範囲に入っておる、こういうふうには、どうも考えられないわけですが、局長はどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/163
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164・富樫総一
○富樫(総)政府委員 仰せの通り、これは基準法ないし労災法におきまする障害補償とは、まったく性格の違う給付でございます。ただ、賃金が安くなる原因を外部から作った、こう仰せになりますけれども、これは本人が何でもないのに無理やりに外部から政府が作るというのでなく、これはヒューマニズムの見地から、本人のためをも考えてやることでございます。実際問題として、そういう場合には、何がしかそれ相応の賃金が不利になるのが通例であろうということが考えられますので、特に一カ月分の特別給付をいたしたい。これ以上に特に申し上げることはないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/164
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165・多賀谷真稔
○多賀谷委員 単に賃金が安くなるというだけの問題でなくて、これは健康を害しておる、いわば病気であります。ですから、じっとそのまま働いておれば、当然労働能力が低下する。その以前にある。ですから、これに対して補償をすべきでないという議論は出てこないと思う。これは労働者の社会的な認容の範囲だとは考えられない、どうしても職業病として扱われ、またこれに対する補償を当然要求しなければならない、かように考えるわけであります。もちろん、今、森山委員が指摘されたましたような七十七条を持っていきたいわけですが、ただここに「なおったとき」ということがある。もっとも、厚生年金その他では、あるいは「なおったとき」として扱っている障害手当の支給の場合もあるやに聞いている。しかし、議論は別として、とにかくなおったとはいえないけれども、停止している。しかしそのまま働けば当然労働能力の喪失を来たす、こういう状態ですから、ここに私は補償の概念が入ってくるだろうと思うわけです。ですから、その場合に、三十日というわずかなことで、これは強制というわけではないが、転換料として出すということでは、あまりに少いのではないか。少くとも、この障害補償にずっと等級がついておりますが、この等級の中の一番下とは考えられない。あるいは先ほど十一級という指定もあり、七級という御指示もありました。私は当然それに入ると考えるわけですが、これは不治の病という点であります。さらに加えるに、ほっておけば進行するという状態です。こういうところに、何らか補償がないということは考えられないわけです。新しい概念でもけっこうですが、私は当然補償をすべきであると考えますが、どのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/165
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166・富樫総一
○富樫(総)政府委員 新しい概念が、これから何かできますれば、われわれとしても研究いたしたいと思いますが、現段階におきましては、先ほどから申し上げますように、要転換者の症状の段階は、相当の重労働までなし得る段階の方々でございます。そのままじっとしておれば進行いたしますけれども、その他の労働につく分には、通常の働きができるわけであります。また他の場合におきまして、一般的な健康診断の結果、健康管理ということで、転換した場合におきましても、こういう給付はないのであります。実際問題として、それは労使間の賃金問題として扱わるべきでございまして、特にけい肺につきましてはヒューマニズムの観点から政府が支給する。いろいろお説がございますが、その場合経済的に困難であるといういろいろな問題がございます。だから、それは政府がそういうものを出すということには必ずしもならない。あれこれ考えまして、他の場合にも類似の場合があるかとも考えましたけれども、特にけい肺につきましてはヒューマニズムの観点から一カ月分出す、これだけでも、特別の給付というようにいえるのではないか。金額について、高い低いの論議はありますけれども、こういう扱いをしたことは特別な扱いであるというように御了解願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/166
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167・多賀谷真稔
○多賀谷委員 これは従来けい肺に対する認識が薄かった点と、また労働基準法がいろいろな場合を想定して、こういう病気があり、またこういう病気がこういう状態になっているというようなことを考えなかったところに、障害補償はつきましたけれども、これにそのまま当てはまるような条文がなかったと思います。しかし、けい肺が現在の医学の枠をもってしてもなおらない病気である。さらにその作業場にいると進行する。ですから、その作業には永久につくことができない、こういう状態になっているわけです。もちろん、死ぬ覚悟でやれば別でありますけれども、その分だけ範囲が狭められる。しかも、その病気は私病ではございません、業務上の疾病である。こういう場合に、補償の概念が出てこないとは私は考えられない。今までの法律の中に当てはまる条項がなかったということはわかりますけれども、現在のように取り上げられてきた場合には、少くとも障害補償に並ぶだけの補償を行うべきである、かように考えるわけでありますが、局長はどういうようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/167
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168・富樫総一
○富樫(総)政府委員 繰り返すようでございますが、その作業を継続しておればこれは大へんなことになる、しかし、ほかで働く分には相当の仕事ができる。従いまして、その作業に従事して病気になったことはお気の毒である、御本人も大へんだ、こういうことで行くわけでございまして、通常の場合の労働能力は持っておりますので、それは補償ということでなく、特別の給付ということて扱うのが妥当かと考えて、このようにいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/168
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169・多賀谷真稔
○多賀谷委員 どうも納得ができないのですが、ことに、五年以内でもかかる体質の人もあり、また十五年以上でかかる人もあるわけですが、とにかくこういう熟練した作業ができないという状態になるのです。しかも、それは業務上からなるのです。業務上に起因している病気ですから、当然補償の範囲に入ると私は解釈するわけです。そこで私も、森山委員が指摘されたように、ぜひ障害補償に入れていただきたいと考えるわけでありますが、すでに御議論は聞いておりますので、その点についてはあえて質問いたしません、とにかくどこかで補償してやるべきである。単にそれは配置転換の三十日分で糊塗することのできない大きな、本人は精神的痛手だけでも大したものを受けているわけですから、その精神的肉体的な補償について、何らかの措置をすべであると考えるわけですが、労働省の方では同じような答弁を繰り返されておりますので、これ以上申し上げません。
そこで、私は大臣にお尋ねいたしますが、大臣は先ほども、この法律ができた以上は、資本家の方もこの法律の精神に準拠して、十分ヒューマニズムを発揮して処置するであろうということをおっしゃいましたけれども、鉱山または石炭あるいは窯業その他の実情を実際見てみますと、必ずしもそういうふうになっておらないようであります。病気があるから、打ち切り補償をやったからといって、すぐに首を切っているという状態ですが、すくとも私は、この療養といいますか作業転換といいますか、この期間だけは、何とか基準法十九条のような規定の設定をされたらどうか、かように考えるわけでありますが、どういうお考えであるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/169
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170・西田隆男
○西田国務大臣 労働基準法によりましては、無過失損害賠償というものが三カ年でありまして、解雇することができるという規定になっておりまして、解雇される場合もあり得るわけであります。このけい肺法の関連において、多賀谷さんは大へん心配しておられるようでございまして、かかって配置転換等をされねばならない、あるいは三年以上五年までは解雇してはならないという規定を置いた方がいいじゃないかとおっしゃいますが、置いた方がいいには間違いない。解雇してはならないということを原則にすれば、置いた方がいいと思いますが、そういう原則を置かないでも、政府としては、その後二カ年間に対する給付を責任を持って行うわけでありますから、今までは多賀谷さんの御心配のようなことがあったと思いますけれども、今後の問題としては、そう数として大へんな数ではありませんし、社宅の家に住まっているものを、きょう打ち切り補償をした、だから、あしたから出で行けというようなことば、今まででも前例はないと思っておりますが、今後もそういうことはやってもらいたくないし、やってもらっては困るわけであります。政府としても、これに対しては十分な行政指導をやることによって、そういう規定を設けなくても、実際は関係はないのではないか。また労働基準法等の規定を無視しまして、ここで五年間は解雇してはならないという規定を作るということは、これは森山さんとさっきから議論をいたしましたけれども、私は完全な職業病だという見解をとっておりませんので、その点に対しては、森山さんにお答えした以上のお答えはできないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/170
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171・多賀谷真稔
○多賀谷委員 大臣に対する質問は、実は作業転換の間のお話を聞いておったわけですが、さらに大臣は、私の気持をそんたくされてか、三年の打ち切り補償を五年にしたらどうか、こういう御議論を展開されたようであります。それでもまあけっこうでありますが、その問題につきましては、自分は国民病として永久に療養さすべきである、こういうように考えておるから、現在三年で打ち切られる場合はやむを得ない、こういうことでありますが、現実には、やはり五年で打ち切られることになっておりますので、私はその点につきましては、これは当然雇用契約を継続すべきであると考えるわけであります。もちろん、経営者が全額負担をするということは、あるいは補償の限界の点において、酷ではないとわれわれは考えますけれども、あるいは酷であると考える方もあるので、国家が財政上の負担をするということにつきましては、何も異論はございません。しかし、それによって、私は経営者が負うところの業務上の疾病に基くいろいろな問題について、責任を回避するわけにはいかないと思うのであります。そこで、負担の問題と、経営者がその責任を転嫁するという問題とは、理論上おのずから若干のニュアンスの差異があると考えるわけであります。そこでこの点につきましては、三年間が五年間になったわけですから、五年間はやはり打ち切り補償をすべきでない、こういうように考え得るわけでありますが、その点について、もう一度答弁を願いたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/171
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172・富樫総一
○富樫(総)政府委員 お答え申し上げます。大臣も何回も申されておりますように、五年で打ち切るのではなく、死ぬまでという考え方は、理想としてもちろんあるのでございますが、実際問題としては、三年の療養、二年の延長、その間に千二百日分の打ち切り賃金、こういうものがございます。かつ患者の年令も、その段階になりますれば相当の年令になります。他の同種の労働者におきましても、相当労働能力の喪失の段階になるようでもございますので、一応ここで打ち切ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/172
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173・多賀谷真稔
○多賀谷委員 労働能力が、他の同じような年令の労働者は喪失するというように聞いたのですが、その点は最後の点が、はっきりしませんですが、もう一度……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/173
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174・富樫総一
○富樫(総)政府委員 これにつきましては、たとえば、ここに持ってきておりませんが、賃金の統計などによりますれば、明瞭に坑内夫の賃金はある一定の段階の年令以降におきましては、相当のカーブを持って賃金が低下しておる。これは大体能率給を採用しているところが多いせいと思います。従いまして、そのことは、能率の低下、老令のための労働能力の喪失、こういうふうに判断するのが妥当ではないか、そういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/174
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175・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そのことは、事はわかりましたけれども、答弁としては意味をなさないことをおっしゃっておるようであります。それがどう関連があるか、さっぱりわかりません。なるほど、ある一定の年令にくれば、請負給の関係で、特に炭鉱とか鉱山におきましては、同種の労働者はだんだんある点をピークといたしまして下っていく。これは私は、少くとも好ましい姿ではないと思う。とも金の要る、費用のかかる、出費の多いときに、労働能力の喪失によってだんだん賃金が安くなっていく、こういうことは、悲しい賃金形態であると考えるのですが、それを御指摘になりまして、しかも何かわからない答弁をされたことは、非常に遺憾であると考えます。しかし鋳物とか、その他の面では、私は必ずしもそういうような状態にはないと思います。ことに、ほとんど肉体労働ばかりをやって、あまり頭脳を使わない、技術のない産業におきましては請負給でありますと、そういうような事態が起ると思いますけれども、他の職場にはそういうことは当てはまりませんし、それがまたこの打ち切り補償を三年でやるのを五年でやることに反対の理論的根拠には、何らなっていないと思うのですが、その点についてはどういうお考えでお述べになったか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/175
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176・富樫総一
○富樫(総)政府委員 先ほどの答弁、ややピントをはずれまして、大へん恐縮に存じますが、仰せのように三年目に打ち切り補償をする。経済的に申しますれば、五年目にやった方がよいようにも考えられるのでございます。法の建前か、大臣からも申されましたように、三年間につきましては、他の職業病と同じように無過失賠償責任、後の二年が国家的な給付、こういうことでございますので、この形の上におきましては、実際とややそぐわないようでもございますけれども、法の建前上そういう形にならざるを得なかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/176
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177・多賀谷真稔
○多賀谷委員 実際の扱いについて、森山議員も指摘されておりましたが、打ち切り補償をもらうにつきましても、療養の切れるときにもらうということが非常に大切なことであります。途中でもらいましても、生活が苦しいものですから、せっかくもらった打ち切り補償が、その後の二年間においてかなり使われてしまって、五年目には何もなくなっておる。そこまでいかないにいたしましても、そういう事態も起るわけでありまして、これは理論上から申しましても、実際の取扱いからいたしましても、少し考え直されたらどうかと考えるわけです。せっかくその点まで踏み切っておられますので、もう少しお考え下さったらよいと考えるわけです。大臣は同じような答弁を長い間繰り返されておりますので、本日はこれ以上いたしませんが、この点について、一つ十分考えていただきたいことをお願いいたしまして、質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/177
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178・中村三之丞
○中村委員長 山花秀雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/178
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179・山花秀雄
○山花委員 先ほど同僚議員の方からたくさん質問がございまして、おおむね私の質問しようと思う点は、言い尽されたような感じがいたしますが、ただ一、二点だけ、大臣のおいでになっておるときに、質問をしたいと思うのであります。
ただいま出ております原案が、何か承わるところによりますと、予算委員会において自由党、民主党が妥協をいたしまして、費用負担の率が、予算の上では変更されたと聞いておるのであります。そうすると、この原案がくつがえるようになりますが、その点がはっきりしておいでになれば、原案修正をしてこの委員会に提出をされる意向を持っておられるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/179
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180・西田隆男
○西田国務大臣 これは形式の問題だと思いますが、大体閣議において了承いたしました金額は、三分の一が、二分の一に増加されておりますが、聞くところによりますと、ただいま修正案の提案理由の説明があったようであります。その説明がありました場合、これは技術的な問題として、政府側としてこの法律案を修正して再提出するということになりますか、あるいは当委員会において、自由党と民主党その他の人々によって、この法案が修正される格好になりますか、私はその点はまだ詳しく聞いておりませんが、いずれにせよ、このままで御審議をお願いすることはできなくなって、何らかの措置をとらざるを得ないであろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/180
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181・山花秀雄
○山花委員 そういたしますと、そのときになって、政府側としては修正案として出すか、あるいはこの委員会で修正を受ける以外にない、どっちかになると思うのでありますが、この点は、もう政府としては予算の方ではっきりしておるのでございますから、政府として修正をして出された方が、すっきりしていいのではないか、こういうように考えておりますが、この点について、もう一回大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/181
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182・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。ただいまお答えしましたように、これは民主党と自由党との修正案ということになっておりますので、少くとも衆議院の予算委員会が通過いたしませんと、この法案に対して政府側で——かりに出すといたしましても、これを修正するということは、ちょっと時期的な問題でございますので、どうかと考えまして、せめて衆議院の予算委員会の通過を待って何らかの措置をとるのが妥当だろう、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/182
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183・山花秀雄
○山花委員 その点、よくわかりました。
次にお尋ねしたい点は、先ほどの零細企業と申しましょうか、具体的に申し上げますと、石屋のおやじさんが従業員を一人か二人使っておるあるいは自分だけがやっておる。これは業態としては一応事業主になる。ところが、事業主が労働者の仕事をやっておりますから、けい肺にかかる可能性が多い。そういう場合の扱い方について、政府委員の答弁を聞いておりますと、何か組合を作って、それに雇われた形式にすればいいのではなかろうか、こういうような御答弁がございました。そこで問題になりますのは、この大きい小さいは別といたしまして、事業主たる石屋の主人公がけい肺の補償を受ける場合の単価をきめる場合に、何か組合というのは、考えによると、このためにできたほかに、何もやらない幽霊組合のような感じがするのですが、この基準をどういう標準でおきめになろうというお考えを政府側では持っておられるかということを、ちょっと承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/183
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184・西田隆男
○西田国務大臣 詳細については、基準局長から説明すると思いますが、私の考え方では、現在の労災保険法によりましては、五人以上使用するものが強制加入になっておりますので、少くとも同一職種である限り、この適用を受ける程度の同業者の組合というものであれば、その主人公も、そこに使われております職人の人も、結局このけい肺法の対象として取り上げることができる、かように考えておりまして、それが五十人でなければいかぬとか、あるいは一地区全部集まらなければいかぬとかいうほどの窮屈なものではないと私は解釈いたしております。あと詳しいことは基準局長から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/184
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185・富樫総一
○富樫(総)政府委員 その場合、そういう措置は、率直に申しまして、やや脱法的なきらいがあると実は言わざるを得ない。これにつきましては、そういう措置をとった当時の事情を、私は直接ではありませんけれども、官房におりまして見ておったときには、いろいろな陳情なりがございまして、事情を聞いてみると、理屈は別として、ともかくお気の毒だというようなことから、そういう格好になった。従いまして、実際の扱いもそう——突き詰めていくと、おかしくなるわけでありますが、形の上におきましては、任意組合を作って賃金を幾らだと協定する、そうしてその賃金がべらぼうに高いということのないように、そこら辺は社会通念によりまして、これは私どもの方の出先の監督署と、もともと陳情から始まった話でございますので、話し合いで大体うまくいっておるように聞いております。通牒といたしましては、年間の稼働二百日、賃金につきましては組合との話し合いによって決定すること、こういうことになっております。なお実情を調べまして、もしいかにもおかしいというような点があって、是正しなければならぬものがございますれば、それぞれの事情において善処いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/185
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186・山花秀雄
○山花委員 私は、今政府がおとりになる措置は、この実情に即してはやむを得ない一つの暫定措置であろうと考えておるのであります。そういうように親心的な観点に立ってこういう措置をとられておるのでありますから、先ほどいろいろ議論になっておりました例の、この法律を九月一日から実施した場合にひっかかる面においても、同じような考え方で法の運用をやっていただきたい、これは希望であります。
それからもう一つは、この適用範囲であります。ここにずっと種類を書いておりますが、特に粉塵作業で、これは炭鉱であるとかあるいは窯業であるとか、いろいろ書いてあるが、一つ抜けておる点があるのです。またこの抜けておる職業が、相当広範にわたると承わっておりますので、これは労働省の方でも、あるいは当該組合の方から要請でもあって、よくおわかりになっておるかもわからないと思いますが、造船関係の電気溶接が明確に規定されていないのです。その他というところに入れるようなおつもりかどうか、それとも、電気溶接が当然けい肺に関係があるということがはっきりわかっておれば、やはり明確に業種の中に入れてもらう方がいいと思いますが、この点についてどうお考えになっておるか承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/186
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187・富樫総一
○富樫(総)政府委員 造船の電気溶解のある段階のところに遊離けい酸粉塵がある程度出るということは、私の方でも承知しておるわけであります。ただ、先生も御承知のように、遊離けい酸粉塵がどの程度になれば危険の段階になるか、つまり粉塵の数あるいは個個の粉塵の中に含まれるけい酸の含有度、あるいは粉塵のこまかさなど、いわゆる遊離けい酸粉塵の恕限度という問題があるわけであります。ただこの問題は、非常にデリケートなので、世界各国とも、法的にはこれを取り上げてございません。行政的に、ある程度粉塵防止の過程において、いろいろ参考基準にしておるのでありますが、しかしながら、遊離けい酸粉塵が少しでもあれば全部危険ということはございませんので、ある程度以下であれば恕限度以下ということで、そう心配しなくともいいということになっておるわけであります。そこで、ただいまの作業につきましては、遊離けい酸粉塵が出ることはある程度わかっていますが、これがほんとうに別表に掲げなければらなぬほどのものであるかどうかということにつきましては、専門家の話によりますと、なお検討を要すると伺っておるのでございまして、今後の研究の結果、必要であるということであれば、別表におきまして政令で追加することができるようになっておりますので、その方で善処したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/187
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188・山花秀雄
○山花委員 私も、この関係についてあまり詳しく知りませんから、ここで当局側と討論しようというような、そういうことは考えておりませんが、せんだって広島県の因島、向島ですか、あそこの広島造船と尾道造船で、何か調査をしたときに、若干のけい肺関係の人が出たという、こういう何か事実が報告されておるらしいのです。それから外国の文献なんかを見ておりましても、電気溶接関係では、百人に対し三人の罹病者が出ておるというような文献があることも伺っておるのですが、ただいま申し上げましたように、私もはっきりわかりませんから、ここで議論しようとは思いませんが、そういうように具体的事実が出てきております限りは、できれば、やはり明確に職業病の中に列記していただいた方が、かえっていいのではないかというふうに考えておるのであります。
なお、いろいろ質問したい点がたくさんございますが、何か大臣も時間をお急ぎのようですし、あとに質問者も残っておるそうですから、私の質問はこれで終えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/188
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189・中村三之丞
○中村委員長 それでは中原健次君——。中原さんに御了解を求めますが、労働大臣は四時ごろ席をはずしたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/189
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190・中原健次
○中原委員 それでは委員長にお願いしますが、大臣が予算委員会の方へもう移られるそうでありますから、時間の許す限りの質問をさしていただくことにしまして——私の質問予定は、おそらくかなりの時間を必要と考えております。従いまして、残余の部分は次の機会へ発言を留保さしていただきたい、そのことをあらかじめお願いしておきます。
ただいま、いろいろ御答弁がございました、その御答弁の数々の中でも、かなり見解を異にする点が出て参っておるのでありますが、時間の関係もありますので、まず今日は、この法律案の中に、罹病の予防に関する法的な措置が講ぜられておらない、この点につきまして、結局この法律案に魂が入っておらないという一つの欠陥があるという点を否定しがたいのでありますが、予防措置についての法的な措置がなぜ講ぜられなくてもよかったのであろうか、こういう点について、まず大臣の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/190
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191・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。これは先刻もお答えいたしましたが、現在のけい肺の原因でありますけい酸粉塵をどうして吸引しないようにするかという科学的な措置が、日本ではまだきまっておりません。従って、けい肺の予防の方法を講ずる場合において、特別な、こういう措置をしたらけい酸の粉塵を吸収してもいいんだというような結論が生まれておりませんので、やむを得ず労働基準法と通産省の鉱山保安法による粉塵の予防規定を適用して参っておるだけでございまして、これはけい肺審議会あるいは学界等においてはっきりしたけい酸粉塵の予防措置がきまりました場合においては、これは当然それに基いてけい肺病の予防措置を講ずることになる、私はかように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/191
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192・中原健次
○中原委員 それでは予防措置の、いわば科学的な実証ができるようになってくれば、それを必ずその中に取り入れて措置を講ずる、こういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/192
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193・西田隆男
○西田国務大臣 ただいまけい肺の問題につきましては、けい肺対策審議会でも、予防措置について検討をいたしております。この研究の結果がわかりますれば、それに基いて当然けい肺の予防措置を講ずるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/193
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194・中原健次
○中原委員 一応、それにつきましても議論がありますが、その点は差し控えまして、もう一つ伺っておきたいのであります。それは先ほどから局長の言葉にもありましたのですが、能率給を採用することもまたよろしい、こういう見解で、能率給の問題は、このこととの関連におきましても、相当強調されておったかのように伺いましたが、能率給制度をこのような作業に取り上げていくということになって参りますと、粉塵を吸入する、つまり呼吸の激度のために粉塵をよりたくさん吸い込むという操作が起ってくると思います。粉塵をたくさん吸うということが、罹病の時間をより早める。楽に作業をしておる場合に、五年間の期間を置いて罹病するとすれば、過激な作業をしておる場合には、それが三年になり、あるいは二年になってくる。こういうことが当然考えられて参るのでありますが、このことにつきましては、どのような御見解をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/194
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195・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。能率給とけい肺の罹病率との関係については、私は技術的にはっきりした認識は持っておりませんが、常識的に、けい酸が含まっておる粉塵をよけい吸入すれば、病気にかからないでいい者もかかる場合があり得るだろう、からだの関係で、三年でかかる者が一年半でかかるということも、常識的には考えられると思いますが、科学的にそういうことに対する証明ができておるかどうか、私はよく承知しておりませんので、これはよく基準局長に説明させたいと思いますが、必ずしもけい肺病の発生するような作業に従事しておるところだけが能率給になっておるということは、私、承知いたしておりません。能率給になっておるところもありましょうし、あるいは能率給になっていないところもあるだろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/195
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196・富樫総一
○富樫(総)政府委員 けい肺に関する現在の段階における研究成果におきましては、呼吸量の多寡にけい肺が比例するというふうには言われておらないようでございます。相当体力の個人差というものがあるようでございます。従いまして、法案にもございますように、ある者は五年でかかる、ある者は二十年でかかる、ある者は、同じ作業をして、ほとんど問題なく一生を過されるということもございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/196
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197・中原健次
○中原委員 局長の御答弁でありましたが、しかし、実際はそのような大よその見解では、はなはだ迷惑すると思います。公聴会もあることでありますから、おそらく専門家の意見等も聞けると思いますけれども、そのことは、この病気を管掌する当局として、すでに追及し、研究しておらなければならぬ問題である、私はかように思います。これは科学的にそのような証明ができないというところに、日本の医学、科学がぼんやりしておったとは思わぬが、私はおそらく科学者の明確なる証明を得ることができると思います。いずれにいたしましても、このような過激な作業のもとで働く労働者は、やはり太い大きな呼吸で、軽い呼吸では作業をしておらないのが現状になってくると思う。そのことが、賃金に追われる、従って同時に、能率給あるいはその他の作業環境のいろいろな関係から、不可避的に過激な作業に追い込まれておるというのが実態だと思うのです。従って、けい肺病に対する対策を考える場合、まず何をさしおいても、一番最初に必要なものは、労働をなるべく軽く、しかもなるべく時間を短かく、こういう仕方が考えられるために、相当御研究になる必要があるであろう。すでにそのことは御研究になっておるだろうと思うのですけれども、この法律案では、そのことがうかがわれない。そこで私は、そのことについて、どのような御見解なり経過なり、あるいは御関心をお持ちになられたか、これについて、局長なり労働大臣の提案者としての御所見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/197
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198・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。私、まだこのけい肺の研究をしておられる専門の方々の意見を十分に承わってはおりませんが、けい肺病というものが、けい酸の粉塵を吸入することによって起きるということだけは間違いないことで、働く人の健康状態あるいはその人の肉体的な素質等の問題も当然考えられると思います。まず常識的に考えられますことは、同一作業に長い時間従事せしめないこと、結局さっき中原さんからも言われましたように、基準局長は、深く呼吸をしたからといって必ずしもならない。こう言っておりますけれども、吸わない人より吸った人がなることは間違いないので、常識的に考えましてもAという作業個所でけい酸粉塵を吸う人が何十人かおるとしました場合、その企業に現在の基準法による八時間の時間内労働を集約的にさせないで、二時間ずつで交代でさせるというようなことをすれば、もし吸入量のいかんによってけい肺というものが起きるものであれば、これは常識的に、十年したらかかるという人は、四分の一ずつの作業時間の場合においては、当然四十年は持つということになりますので、そういう面は、専門的なけい肺の科学者の研究と相待って、実際の個々の企業の際にも、実施の場合において、今後この法律ができました場合、労働省としては行政指導ももちろんやりますけれども、使用者側も労働組合側においても、当然お考えになって、私が考えておる程度の常識的なことは当然おやりになるべきである、かように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/198
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199・富樫総一
○富樫(総)政府委員 けい肺につきましては、先ほど申し上げましたように、私どもしろうとといたしましては、意外なことでございますが、現在のところ、先ほどのような専門家の意見でございます。と申しますのは、私、専門家でないので、こういうことを申し上げますと、なまいきでございますが、遊離けい酸が肺臓に入った場合に、いかなる転帰をもって繊維増殖等の変化が起きるかということ自体が、現在明らかでないのであります。大体憶測からいたしますと、けい酸の化学的性質がそういうものの変化を催すのであろうというのが、一般的考え方であります。しかし一方におきましては、たとえばけい酸の強さ、鉱物学的性格、あるいはこの間も見学のときに大西博士が言っておりましたが、物理的性格、放射能の結果ではないかというような、その点については憶測の範囲を出ない非常に困難な病気であるわけであります。従いまして、そのような結論になり、またけい肺の第一度、あるいは第二度になりましても、作業の強度は機能障害の方には影響を及ぼしますけれども、けい肺そのものの進行度は、これまた必ずしも並行しないというようなことにもなっておるのでございます。しかし、いずれにいたしましても、粉塵を吸わないに越したことはございません。その場合一番問題になるのは、粉塵をなくしますと同時に、防塵マスクをつけることであります。この防塵マスクの性能が悪かった時代におきましては、仕事が苦しいというので、ややともすると、労務者自身がこれを陰でそっとはずして仕事をするという傾向がありました。私どもの方におきましても、できるだけ研究を進めまして、労働大臣が規格検定をいたしまして、これに年々改善を加えて、最近におきましては、呼吸度に相当困難さを与えないように改善を加えてやっておるわけであります。なお今後とも改善の余地があるわけでありまして、私の方のけい肺対策審議会の予防部会において、専門的にいろいろ研究を続けておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/199
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200・中原健次
○中原委員 それでは、もう一つ伺っておきたいと思います。もし学問的な裏づけができてきた場合に、粉塵の吸入の軽重差で罹病の度合いができるということになれば、これに対する対策は必ずお講じになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/200
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201・西田隆男
○西田国務大臣 これは必ず講じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/201
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202・中原健次
○中原委員 このけい酸粉塵を吸入したことによって病気にかかるとすれば、いやおうなしに、そういう作業に従事したからかかったということは、間違いないわけですね。そういう作業に従事しなければ、かからなかったに違いない。そうなって参りますと、そのような作業に従事する労働者は、やはりその職業によってその病気にかかったということになるのではないかと私は思います。そうなって参りますと、これはただ単にばく然と国民病というような規定づけで片づける問題ではなく、やはりそれとは別に、特定の職業に従事したことによって発病したのであるから、やはり職業病としての範囲に入れるべきものとなるのではないか。こういう点について、もう一度お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/202
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203・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。これはまた理屈になるかもしれませんが、けい肺病の悲惨な実態を考えますと、もしそういうところの仕事に従事させないで済むものであるならば、実は国が禁止すべきであると思います。それを禁止しないでその作業を認めておるということは、国の存立上必要な企業であり、必要な仕事であるという観点から認めておるであろうと思う。かえってそういう観点から、国が存立上必要な作業であると認めて、こういうおそろしい予防措置もできない、全快もできないというような病気にかかる作業に従事しなければならぬということは、解釈の問題は別として、その点、業者が負担すべきでなくて、国家が負担すべきである、私は、現在もなおそういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/203
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204・中原健次
○中原委員 そのような危険な作業であったとしても、その作業をとめることは、重要な産業だからできない。従って、その作業がかりに危険であったとしても、禁止することはとうてい不可能である、かようなことはわかっております。それだけに、そのような危険な作業に、しかもなおかつ、あえて従事させられなければならないその作業者、これに対しては、まごうかたない職業病として、しかも、今の場合そのような治療がほとんど可能性のないと称せられておるこの罹病者に対しまして、企業なり、あるいは関連して国家なりが、これに対する責任のある措置を講じなければならぬという結果が、当然出てくると思います。なかったからこそ、一応不十分なものであったとしても、このような法律が作られたのであろうと思います。しかし、それにしては、あまりにも場当り的な、きわめて言いわけ的な立法でしがなかったということに、遺憾ながらこれではなるのじゃないかと私は思います。やはり、これははなはだ不十分である。もう少し責任を背負うだけの心がまえのもとに、その構想のもとにこの立法措置が講ぜられなければならなかったのじゃないか。しかも、今さら去年やことしに初めてこれが問題になったことではないのでありますから、もう実際は相当研究も進んでいなければならぬはずでありますし、それだけに、かれこれ考えて参りますと、この法律措置が、それらのおそるべき罹病者に対する国家的な対策、措置としては、まことに不誠意きわまるものと言われても、釈明の余地がなくなるのじゃないか。人道的な立場からお取り上げになられたこととは思いますけれども、それにもかかわらず、よくその気持にこたえるだけの法律措置になっていないというふうに思うが、いかがですか。私はこのことについて、病人から聞きますと、私は前に病気にかかった、おそらく時間の問題で、必ず死ぬ覚悟をきめておるけれども、また山元に帰ってみると、子供は、この仕事はこわい仕事だと思いながらも、生きていくためには、やむを得ず親の相続者としてその作業に飛び込んでいかなければならぬ、そうなると、また子供がこのなおらない病気に繰り返しかかっていくことになるのであるから、私はよろしいけれども、子供にだけはこの悲劇を経験させることのないように考えていただきたい、このようにさえ罹病者自身は申しております。これはまさに当然しかるべきだと思いますし、またそのことを聞かされるときに、おそらくだれにいたしましても、人間の情を持てば、また肝をしぼられるような思いがいたすのであります。従って、このことは単なる仮説の問題でないだけに、どうしても一そう真剣に取り組んだ行政措置を講ぜられるための立法措置が行われなければならぬのじゃないかというふうに考えるのですが、この点に関してはいかがですか。この今日の段階における立法措置として、今御提案になられました法律案が、まずまずこれでということになりましょうか、お聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/204
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205・西田隆男
○西田国務大臣 御説ごもっともと存じます。しかし、中原さんこれは御承知のことだろうと思うのですが、ずっと前からけい肺の問題が問題にされておりながら、本日まで政府提案として提案されたことは、もちろん一回もございません。議員提案として出されました法律案も、審議未了、審議未了ということで、今日まで成立いたしておりません。そういう状態の中において、私が申しますと、お前は理想ばかり言うとおっしゃられますけれども、実はほんとうにそう考えて、法律案の内容をそういうふうに決定したいと努力しておりました。決して、これで万全とは考えておりません。おりませんが、そういう状態の中において、少くとも政府提案として提案して対策を出した、そうして責任の所在をある程度はっきりしたということは、一つの進歩だと考えております。必ずしも最初において万全なものでなければならぬ——万全であるに越したことはありませんけれども、これはいわゆる政治的な観点からお考え下すって、一つあまり私をお責めになることは御遠慮願いたい、私はかように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/205
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206・中原健次
○中原委員 ただいまの大臣の御答弁のような、そういう状態の中に置かれておるのではいたし方ない。しかしながら、この法律案を審議するに当りまして、私どもは、やはりこの立法措置をなさるまでのいろいろな経過の中の御苦心がもう少しわかりたい。どうもあなたの答弁では満足できません、いや、むしろ満足どころか、これでは何とも言いようがない。法律案を手にいたしまして、私どもはただあぜんとしたわけであります。あまりにもそれでは良識がなさ過ぎるのではないか。どのように立場が異なる人々をもって構成されておる国家にいたしましても、やはりそこに人道主義というものがあるのじゃないか。ヒューマニズムということが繰り返し言われておるが、あれではあまりにも良識がなさ過ぎる。この法律案を見まして、実は非常に嘆きました、一体これは何だ。やはり、根本的には罹病率を一ぺんになくすることは不可能でありましょう。しかしながら、これをだんだん軽減していくというための措置ぐらいは、当然講ぜられなくちゃならぬ。それを今の鉱山保安法の線だけでもってよしとするがごときは、いわばはなはだ責任が乏し過ぎるということになるのではないかというように私は感じます。いやしくも保護立法としてできるからには、なるほどそれに値するだけの考慮が払われて、どの段階においてもこの程度のことはなされなければならなかったということが言えるだけの措置は、講じられてしかるべきではなかったか、私はこう思うために申し上げたわけなのです。もちろん、これはいずれ各条項を追っての審議の過程において、より完全に近い方に、よりよき方向へ修正されることを期待いたしておりますが、いずれにいたしましても、まず根本の考え方としては、このことが非常に重大だ、こう考えます。ただ単に転換措置を講じたから、作業場を変えたから、これでもってけい肺病がだんだん減るだろうと考えたら、間違いである。その次には、かわった人がその場所につくに違いない。相当に幅が広くなって、多数の人がさきのけい肺の発病の原因をからだにはらみながら、いろいろの作業に転換していくということだけなのであります。しかも、それは早く処置したから、それをもってその人についておる遊離けい酸の作用が、全部その人から取り払われるとは限らない。ある場合によると、やはり自動的に進行していくという過程をとることは、これまた否定することはできないのでありまして、そうなってきますと、政府のとられた措置でありますけれども、この措置をもっともっと突っ込んで考えながら、かりに作業を転換したといたしましても、いたしました後におけるその発病の原因をだんだんなくしていくということのできるような、そういう操作も、また措置も必要になってくるのではないかとさえ思っておる次第であります。従いまして、かれこれ考えますと、この法律案の各条項につきまして、もう少し検討を深めながら、願わくは、そのような意味におけるおそるべき罹病に対する法的措置としての、せめても今日の段階においてこれだけはしなければならなかったという点だけは、覚悟していかなければならぬと思うのであります。この点、いずれ国会側の方で、いわゆる良識の線に沿うての審議ができるわけでありますから、必ず完全に近い法律的の修正の措置が講ぜられることを期待いたしております。いずれにいたしましても、政府の提案になられました法律案に、私はせめてもよかったと言わせるだけのものに大臣としてお考えになることが当然の義務ではないか。従って少くともこういう段階で労働大臣に御就任になられましたからには、そういう義務を背負った上での御就任でなければならなかったと思うのであります。そういう意味で、このことについてのお考えをもう一度承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/206
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207・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。中原さんのお考え方と私の考え方には、多少の違いがあるかと思います。私は、この法律を作ります場合に、現在かかっておられる人にも、将来かかると予想される人、かかるであろう人、そういう人たちをして、国として何らかの措置をとりたいという考え方と、将来、けい肺にかかる人をできるだけ少くしたい、それから職場転換をしたことによって、中原さんはうっちゃってしまうようにおっしゃいましたが、法律案の中には、随時に一定の期限を切りまして、健康診断をしなければならないという義務が課せられております。労働者の要求があれば、これもしなければならぬという規定になっております。職場転換をした人は、その後病状の悪化するという状態がありましたならば、それに対する適当な措置をとるように考えられておりますので、必ずしもあなたのおっしゃる通りではないと考えております。この法律案そのものが、よかったというだけの内容を持っていないじゃないか、かようにおしかりを受けたわけでありますが、私どもこの内容は、こんな法律はだめじゃないかということでもないと考えております。第一歩を踏み出すことは、あらゆる場合において一番困難な障害の多いことであります。出ました以上、人道主義の立場には党派はないはずであります。当委員会において、ほんとうによかったという案になるような御修正を願えれば、私は決して異議は申しません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/207
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208・中村三之丞
○中村委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明八日午前十時半より開会することとし、これにて散会いたします。
午後四時二十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01919550607/208
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