1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十年六月二十七日(月曜日)
午前十一時四十八分開議
出席委員
委員長代理 理事 前尾繁三郎君
理事 亀山 孝一君 理事 古井 喜實君
理事 鈴木 直人君 理事 加賀田 進君
理事 門司 亮君
唐澤 俊樹君 川崎末五郎君
木崎 茂男君 纐纈 彌三君
渡海元三郎君 徳田與吉郎君
長谷川四郎君 三田村武夫君
青木 正君 熊谷 憲一君
山崎 巖君 吉田 重延君
川村 継義君 北山 愛郎君
五島 虎雄君 杉山元治郎君
中井徳次郎君
出席政府委員
警 視 長
(警察庁刑事部
長) 中川 董治君
委員外の出席者
警 視 長
(警察庁刑事部
防犯課長) 藤本 好雄君
通商産業事務官
(重工業局航空
機課長) 宮本 惇君
専 門 員 長橋 茂男君
—————————————
六月二十五日
市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案
(大矢省三君外四名提出、衆法第二七号)
の審査を本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
銃砲刀剣類等所持取締令等の一部を改正する法
律案(内閣提出第八五号)(参議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/0
-
001・前尾繁三郎
○前尾委員長代理 これより会議を開きます。
委員長が所用のためお見えになりませんので、不肖私が委員長の職務を行います。
まず銃砲刀剣数等所持取締令等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。質疑の通告がございますのでこれを許します。三田村武夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/1
-
002・三田村武夫
○三田村委員 前回の委員会におきまして、大体総論的な問題についてお尋ねいたしたのでありますが、きょうは本改正案の主要なねらいの一つである飛び出しナイフと小型あいくち等の所持禁止について、さらに具体的に当局の意見を伺い検討を加えていきたいと思います。
まず初めに重ねてお伺いいたしますが、前回の委員会でもお尋ねしましたように、本法案立法の目的と申しますか、その理由の中には、近ごろやかましい問題が出て参りました青少年不良化防止の問題があるのであります。われわれはもちろん必要な手当をしなければならぬと思いますが、本法案に盛られた対策の一つは、すでに不良化した青少年のいわゆる反社会的犯罪手段の一部として行われる行為、つまり脅迫とか暴行とか傷害とかいう場合に飛び出しナイフ、小型あいくちを使うということでありまして、元来こういう対策の根本はその原因にまでさかのぼって探究しなければならぬのでありますが、当委員会の性質といたしましてそれほど範囲を広げていくことはどうかと思いますから、焦点をしぼりまして、本案に関係した点につき一、二点まずお尋ねいたしておきたいと思います。そもそも青少年不良化の原因と申しますか一番強い影響力を持っておりますのは、これまた近ごろ非常に問題になって参りました映画であります。さらに読みものであります。ことに最近の映画を見ますと、興味本位を通り越して非常に刺激的なものがある。ギャング映画にしても肉体的、精神的に不健全なあるいは未成熟な青少年を刺激するものがはなはだ多いのであります。読みものにいたしましても、そういう点が非常に強いのであります。そういう刺激とか影響によって肉体的、精神的に不良性を帯びてきた者が、たまたま手段の一つとしてこういうものを用いるということになるのであります。もとよりこの点も御当局のお考えの通り、そういった反社会的犯罪はできるだけ除かなければならないから、立案の趣旨に応ずべく業者の方でも大いに自粛自戒して、御当局の考えに協力することは当然でありますが、不良化の原因として最も大きな影響力を持つ映画ないし演劇、読みものにどういう処置をするか。これはなかなか問題が大きいのですが、端的に申しましてこういうものは一番抵抗力の弱いところに見受けられるのであります。ギャング映画とか不良性を刺激するような映画に対して、世論は相当やかましいが、こういうものに手をつけることは抵抗力が強いから困難だ。また読みものにしてもそうでありますが、今度対象になりました飛び出しナイフあるいは小型あいくちにしても、その業者はきわめて一握りの業者で抵抗力が非常に弱い。その点深甚な考慮が要るということを私は申し上げたい。青少年の不良化という問題は、一面大人の社会の反映ともいえるのでありまして、また家庭にも大きな責任があるといえます。従ってそういう反社会的の一部現象として現れたものを、少数の業者が全部しょい込まなければまなければならぬということはまことに痛々しいと思います。そういう点についてこの法案の趣旨についても、参議院が慎重な態度で検討を加えられたことに私は敬意を表します。でありますから、まず前回の質疑に続いて本日冒頭にお伺いしておきたいことは、青少年不良化の原因ともなるべき最も悪質な映画とか読みものに対して、警察当局としてどういう御見解をお持ちになっておりますかを伺っておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/2
-
003・中川董治
○中川(董)政府委員 三田村委員御指摘のごとく青少年不良化防止の対策は、その根本は青少年の心の問題でありますので、青少年の不良化するような社会環境を除去するにつきまして、いろいろの総合的な行政施策及び国民生活の改善ということが中心の問題であろうと思うのであります。私ども警察庁におきましてもそういうことを根本にしておりまして、積極的に行政各省との連絡を密にするとともに、内閣に設置されております青少年問題対策協議会を連絡の中心として、そういう積極施策に努めているわけであります。そこでそういう根本問題の解決ということを中心にしまして、法律の力によってこれを規制するという点は必要最小限度にすべきであろう、これも三田村委員と全く同様に考えております。つきましては今度の飛び出しナイフ等の問題と映画読みものとの関連についての御質問でありますが、これは両方とも青少年の不良化を助成する、そういう環境を作る点では逕庭がない、むしろ映画の方がひどいということも言えるだろうと思うのでありますが、両方同様に取り扱うという趣旨は全く同感でございますが、映画の方は憲法のいわゆる表現の自由と、直接問題が関係するという理由もありますほかに、映画につきましてはそういう制限という考慮よりも、それ以外の考慮の方がより適切ではなかろうかと思われる点があること、さらに飛び出しナイフのごとき危険物については、すでに現行の銃砲刀剣類等所持取締令という法令がございますので、その整備によって解決できる、そういう方途も可能である、こういう三つほどの違いがございますが、飛び出しナイフについては直接身体生命に危害を与えるという関係で、すでに現行法律もそういう考え方のもとにできておりますので、それを整備する、こういう観点から内閣は提案をしているわけでありますけれども、大体精神は同様であります。また飛び出しナイフの問題もすべて法律の力によってのみ問題を解決する、こういう考え方ではなしに、根本は社会環境を青少年に適するごとく、お互いの国民の力によって改善していく、こういう根本は常にこの法律運用につきましても持たねばならぬ、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/3
-
004・三田村武夫
○三田村委員 私は法律的制限を広めろとか、拡大しろとか、今刑事部長のおっしゃったように、映画とか、読みもの、すなわち出版物についても法律的制限、警察的手段を用いろ言うとのじゃないのであります。逆であります。つまり警察的、法律的手段でものを解決しよう、そういう考え方はできるだけ最小限にとどめていただきたい、これが趣旨であります。今憲法の保障云々と言われましたが、私前会の質問で冒頭に申し上げたのはその点であります。業者にも職業選択の自由が憲法の二十二条で与えられている。もちろんこれには公共の福祉に反しないということが条件になりますが、公共の福祉に反するか反しないかということは、立法技術上の問題であり、また立法の範囲、性格の問題であります。たとえば飛び出しナイフは、前回も申しました通り、警察庁がお示しの資料によりましても年間大体三十万丁作られておる。そこの中で今申しましたように、たまたまこの資料に出ておりますように、七、八百件のものが犯罪用に使われたからといって、この法律で全体を規制するということは、憲法第二十二条の趣旨にかんがみてどうかという議論も成り立つ。私は今これを多く論じようとは思いません。そういう意味において今刑事部長のおっしゃったように、警察的処置、立法的処置で、しかも刑罰を加えてものを処理しようという考えは、できるだけ狭めていただきたい。せっかく民主主義の秩序がここで養われ、これからその基礎をさらに強固にしなければならぬ段階において、すべてのものが警察的処置あるいは法律的処置で押えられる傾向が出て参りますと、はなはだわれわれは将来を憂えざるを得ないのであります。そういう点で申し上げているのでありますから、こういう立法をやるならば、映画についてもあるいは出版物についても、警察的立法的処置を御考慮なさいと申し上げるのではない。その点は一つ誤解のないように御了承願いたいと思います。
あまり総論的なことばかり申し上げておりましても、議案の審議上どうかと思いますから、具体的に内容についてお伺いいたします。
まず飛び出しナイフでありますが、参議院におきましては相当熱心な審議が行われたようでありまして、修正されてきております。原案では寸法のいかんにかかわらずすべてその所持を禁止する、こういう立場でありましたが、参議院の修正は、五・五センチ以下のものは所持禁止制限の対象から除外するという修正になっております。これは私きわめて適切な修正だと思います。というのは、資料を拝見して思うのでありますが、資料の四十ページ、弊視庁の二十九年中の表を見ましても、五センチから六センチまでのもので、取締りの対象になったものはわずかに八丁です。これを全国の取締り集計と対比いたしますと、全国の取締り対象が千百七十七でありますから、警視庁の取締り件数五百七十九を比率で考えてみますと、全部で二十九年中に五センチないし六センチのものは十五、六丁しか取締りの対象になっていない。これをパーセンテージから申しますと、年間約三十万丁の中で十五、六丁しか取締りの対象になっていない。しかもこれが禁止規定の中に包含されますと非常に大きいのであります。御承知のように所持禁止ということは、法案の文理解釈から見ると、持っておることはいけないことになりますが、実際はこれは製造禁止であり、販売禁止であり、業者は何もできない、それ以外には意味がありません。製造のために所持することの所持であり、販売のための所持することの所持である、所持禁止と製造禁止、こういう法の効果があるのであります。この点私は参議院の修正はまことに妥当だと思います。実はこれは警察当局も御承知の通り、大体業者の立場からは七センチ、八センチのものが一番多いから七センチくらいまでにとめてくれぬかという当局に対する陳情、請願があったようであります。当院にも請願書が出ておりますが、しかし私は岐阜県でありますから、業者の方々にもいろいろ懇談をして、実はこういう資料を見ると七センチ、八センチのものは非常に多く犯罪用に使われておる、そういうことを申し上げて、業者の方はそれならば一つ大いに考えて大きいものを作らないというので、業者の方の希望といいますか、請願も大体五・五センチくらいまでのものにとどめる、こういう立場であります。だからこの点は大きいものを作らない、犯罪の用に供されるおそれのあるものは作らないということは十分業者の方も考えますから、参議院の修正点で一つこの法案の扱いについては御考慮願いたいと思うのでありますが、この点について当局はどのようなお考えでありますか、まず伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/4
-
005・中川董治
○中川(董)政府委員 ただいま三田村委員の御発言中前段の部分から申しますと、青少年不良化防止問題の対策として、法律規制は最小限度であるべきである、こういう意見は全く同感でございまして、私たち日常の職務執行に当りましても、また法律案等の立案に当りましても従来ともそのつもりでございましたが、今後ともそういう考え方を中心にしてものを処理して参りたい、こう考えております。
後段の御質問でございますが、飛び出しナイフの最小限をどういうふうに理解するか、ことに統計によれば小さいものは犯罪に用いられる件数が少いではないか、こういうことに関連する質問でございますが、御指摘のごとく警視庁におきまして飛び出しナイフを刃渡りの長さ別に調べましたところ、小さいものは確かに百分の一・四件であった、こういう状況でございます。従って小さいものは比較的取締りの対象に少くなっておる、こういうことが言えようかと思うのであります。こういう点についてはお考え願いたい点でありますが、統計資料の次の事項に掲載してあります通り、しかもまた三田村委員の御指摘の通り、飛び出し等の関係業者におかれましても、かつての生産状況は五センチ以上のものが大部分生産されておった。こういう比較的小さいものはあまり生産されていなかった、こういうことが原因の一つ、原因の二つは、どうしても警察の取締りでございますので、見つからなければこの統計に出てこない、こういう犯罪の仕組みでございますが、そういう関係で比較的小さいものは見つかりにくい、こういう二つの要素がございますので、それをも含めて御勘案願いたいと思うのでありますが、それにいたしましても幾ら科学的に考えましても刃渡りが短かければ短かいほど人の身体に与える影響が少い、こういうことは確かに言えますので、御指摘のごとく小さい七センチ未満のものは除くべきではないかという関係業者の話も十分承わりまして、そういうことも検討したのでございますけれども、短かい最下限な作りますと、とかくそういう最下限なものをまた不良少年等が用いる傾向を助長しはしないかということで、内閣の案としては最下限を定めなかったのでありますが、参議院におきまして、それはそうかもしれぬけれども、先ほど御指摘のごとく小さいものは傷害を与える程度は少いのであるから、こういうことを勘案して五・五センチメートル以下のものにつきましては、規制の対象からはずすべきが相当であろう、こういう御決議がございましたので、もちろん国会の御決議でございますので、これが十分理由のあることだと思い、われわれ国会の御決議に対して深く敬意を表しておる次第でございます。それで先ほども申しましたごとく、運用に当りまして、根本精神は法律規制は最小限度にすべきであろう、こういう思想にも合致いたしますので、その国会の修正については、これが成立いたしましたあかつきには、それに基いて適正な取締りが行われるべきであろう、こういうふうに考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/5
-
006・三田村武夫
○三田村委員 今御説明の通りで大体了承したのでありますが、今刑事部長のおっしゃった通り、小さければ小さいほど発見に困難だ、同時に前回にも申しました通り、これはすぐ罰則が生きてくるのでありますから、小さなこのくらいの飛び出しナイフ一ちょうポケットに入れておっても、全面禁止になりますと三年以下の徴役もしくは五万円以下の罰金になる。こういう法律というものは大体実行不可能であります。だから刑罰を伴う法律を作る場合は、実行の伴わない立法はやっちゃいけないということは考えなければいかぬ。これは立法府としての国会の権威にもかかわることと思いますから、この点一つ御考慮願いたい。幸い今国会の審議も尊重するという御意見でありまして、大体参議院の線は私も妥当だと思う。同時にこういう立法はあわせて業者に対する警戒であり、また一つの戒告である。大きいものは作らせない、社会的に害のあるようなものはできるだけその存在を社会からなくするという立場から、五・五センチのもの——業者の立場から、あるいはまた資料に基く判断からすれば、私は六・五センチくらいまではいいと思いますけれども、業者も五・五センチくらいでほんとうに日常の、小学校の子供や何かに便利なものを作ることにしようというお考えのようでありますから、その点御考慮の上、善処されんことを希望いたしまして、飛び出しナイフに対する立法は参議院の修正案を支持する、同時にこの点を当局の御了解を願うことを含みといたしまして、飛び出しナイフの問題はこの程度にとどめます。
次いであいくちの問題でありますが、これはあいくちという呼称は昔から読みものにもいろいろなものに出て参りますが、あいくちという呼称は、必ずしも全国的に統一されているのではない。法律用語としてあいくちという言葉が使われておりますか、これは関あたりの業者——長い七、八百年の伝統を持つこういう刃物類は大いに研さん努力を積み、いいものをできるだけ残しておきたいという立場からやっておられる業者の立場からいいますと、あいくちとは言ってないのです。太刀または豆太刀、すべて刀の形態をなすものは太刀という名称を使っております。取引上もそういう名称を使っております。しかしここにあいくちという文字が法文にあるのでありますから、一つそのあいくちという用語の持つ内容について、一、二点伺っておきたいのであります。これはいわば社会通念できまるということは一口に言えますけれども、こんな小さな五センチや七センチの刃渡りのものをおよそあいくちとは言わないと思いますが、しかし、しからばだれがあいくちの範囲をどこできめるかということは非常にむずかしいのであります。いずれこれは法案が法律になって公布される場合は、当局の方から具体的に取締りの内容について通牒なり訓令なりお出しになることと思います。その際の大体の標準を伺っておきたいのですが、ここにいわゆるあいくちとはどの程度のものを当局の方はお考えになっておりますか、まずこの点伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/6
-
007・中川董治
○中川(董)政府委員 まことにごもっともな質問でありまして、御趣旨に基きまして私ども研究をして参りました状況を申し上げておきたいと思います。これは三田村委員御存じの通り解釈の問題になるわけですが、たとえば現行刑法でわいせつ図書という文字が使われておるわけですが、何がわいせつ図書であるか、こういうことになりますと、これは健全な社会通念によるより手はない。どの程度まで露骨になればわいせつ文書であるかどうかという判定は、われわれ常に刑法の執行に当って総合的に研究しておるのでありますが、それと同様の精神に基いて、ただいま御審議をいただいておるこの法律案のあいくちを合理的に判断すべきである、こう考えるのであります。合理的に判断する場合、根本的観念は、先ほど総括的な御意見のときにいたしましたごとく、法律によって、ことに刑罰をもって強制すべきものは必要最小限度であるべきであろう、こういう三田村先生の御意見がございましたが、その精神に基いてまた解釈すべきである、こういうふうに考えるのであります。そこであいくちの持つ日本語の意味は、御案内のごとくあいくちという言葉の中には人畜を殺傷する、こういう概念が入っておると思うのであります。昔の言葉であいくちをのど元に突きつけられたという言葉がありますが、これは人畜を殺傷する、こういう要素があいくちの概念の中にあろうと思うのであります。従いましてあいくちの大きさ等を判定する場合におきましての重要な要素、根本精神は、先ほど三田村先生の御指摘の通りでございますが、具体的には人畜を殺傷する威力がある、こういうことに相ならなければならぬ、こう思うのであります。それで人畜を殺傷する威力があるかどうかということになりますと、法医学の立場からいうと、たとえば心臓部に対して突きつけた場合におきましては、比較的短かくても突き場所によりましては人が死ぬかもしれません。ところがそういう法医学的見地だけから判定すべきものでもない。法医学者が人を殺す場合には、小さいあいくちでも人を殺せるかもしれませんが、通常人は、人畜を殺傷するという意味におきまして恐怖を感ずる、こういう程度のものであるベきであろうと考えるのであります。そういう根本概念、根本思想に基きまして健全な常識で解釈すべきでございますが、これは三田村委員も御案内のごとく、個々の第一線の取締官諸君がそれぞれの常識でそれぞれやられましては、法律全体の適正な運用ができませんので、以上申しました根本精神に基きまして、何があいくちなりやという概念は、われわれ法律解釈の問題として全国の取締官諸君に周知徹底をはかって参りたい、こう思っておるのであります。
この周知徹底をはかるべき内容は次のように私ども考えておりますので、御了解を得たいと思うのでありますが、今申したように人畜を殺傷する威力があると通常人が考えられる大きさというものは、刃渡りの長さが判断の重要な要素になります。そのほか、刃とみねとの長さを刃幅と申しますが、この刃幅がいかほどあるかということも重要な要素である。次に刃の厚み、薄っぺらいものでしたらあまり脅威を感じませんが、刃の厚みというものも重要な要素である。従いまして刃渡り、刃幅、刃の厚みその三つを総合的に判断してあいくちかどうかを判定するのでありますが、その判断の基準は、刃渡りの点に参りますと、刃渡り八センチを越えれば原則として積極に、八センチ以下であれば原則として消極に、刃幅の点から申しますと、刃幅一・五センチを越えれば原則として積極に、刃幅一・五センチ以下であれば原則として消極に、最後に刃の厚みでございますが、刃の厚みは二・五ミリメートルをこえるものを原則として積極に、二・五ミリメートル以下は原則として消極に、こういうふうに私どもは合理的に判断しているのであります。
刃渡り、刃幅、刃の厚み、こういう三つについて、それぞれ原則として積極に、原則として消極に、こう申したゆえんのものは、三つが総合的に働くのでございますので、そのいずれもが今申した数字をこえておればこれは積極である、いずれもが今申した数字に満たなければ消極である、これは間違いございません。ところが、いずれか一つがごくわずか大きい、他の二つが非常に小さい、こういう場合には、その原則としてという言葉が働くのでございまして、総合判断の結果消極に、こういうことになろうかと思うのであります。こういうふうに理解するのでございますが、こう理解いたしました暁は、現在関係業者等が豆太刀と呼称して市販で取引されておるものが現にございますが、現にございます豆太刀につきましては、今言った判断を総合的に適用いたしますと、原則として消極に、こういうことになろうかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/7
-
008・三田村武夫
○三田村委員 大体お考えの標準はわかりました。これはいずれさらに具体的に実施に臨んでは御検討を願いたいと思いますが、ただ一言重ねて申し上げておきたいことは、殺傷の威力を持つものという観点に立ちますと、あえてあいくちだけでなく、何でも殺傷の威力は持っておる。お示しの資料によりましても、昭和二十九年中の警視庁及び全国の表を見ましても、警視庁の表の日本刀以外の刃物の中に、いわゆるあいくちが二百七十三件あります。包丁が二百十九件、その他と称するものが六百九十九件あります。それで、その刃渡り十五センチメートル以上のいわゆるあいくちが、しからば何の用に供せられるか、これがよく問題になるのでありますが、これは必要のないものは生産しておりません。と申し上げることは、これは紙を切りたり、くだものをむいたり、いろいろなことに使われる。ことに関刃物というものは、前回も申しました通り、御承知の関孫六以来七百年の伝統を持ち、非常によく切れる。そういう短かいものでいろいろな用途に供せられる。この点も一つお考え願いたい。相当多数のものを作っておるのです。その中でごく少量なものが取締りの対象になったからといって、全部を規制していくということはどうかと思う。あまり多くを申し上げませんが、その点十分御考慮願いまして、実際具体的に取締りの方途を講ぜられるときは、今刑事部長がおっしゃった通り、制限の度合いはなるべく消極に解していただきたい。法律を変えただけでは解決しないのですから、その点一つお考え願いたいと思います。
ここに関の人から持ってこられたものがありますが、御当局にもあると思いますが、これは刃渡り十三・五センチです。これはだめですね。これが九・二センチ、小刀です。これまで禁止してしまうのはどうかと思うのです。これも一つ善良な常識で判断していただきたい。これだって人を殺そうと思えば殺せる。料理屋の板場にある出刃ぼうちょうを持ってきて、これはどうだ、いやそれはこわいとだれでも思う。これは用途があるから許されておる。紙を切ったり鉛筆を削ったり、いろいろの細工に使われるから、年間何十万という生産がある。それが百丁かどれだけかしらぬが、不良少年が使ったということで、全部生産を禁止してしまうということはどうかと思うのです。この点はぜひ御考慮願いたい。法律を変えただけで見ると簡単でありますが、実際効果はあるまい。所持禁止は製造禁止ですから、業者はたちまち生業に困って、食えなくなる。今おっしゃった豆太刀はこれです。これはもちろん議論の余地はない。これはひな祭や何かに飾っておる飾りものです。外国人あたりが喜んで買っていくらしいが、こんなものまで禁止の対象にするのはこっけいです。そういう点ぜひお考え願いたい。
それから重ねて申し上げますが、どうぞ一方的な処置でおきめにならぬようにお願いいたします。業者は生活問題なんです。警察庁や政府当局は、一片の通牒、法律で済みますが、ただちにそれによって生業を奪われ、あすから生活に困るという立場ですから、そう簡単に一方的な役所の会議だけでおきめにならないように私は切にお願いいたします。先ほども申しました通り幸か不幸か、この業者は岐阜県、しかもその一部分の関市だけであります。関市だけでありますから非常に抵抗力が弱い。こう申しますと、三田村は自分の選挙区だから業者の代弁をするのかと言われるかもしれませんが、私は業者の代弁をするとはっきり申し上げたい。それがわれわれの責任であります。そういう立場から、抵抗力の弱いところに向けられてきた警察的処置あるいは立法的処置には、われわれは正しい立場に立って敢然として反駁しなければならぬという立場をはっきり申し上げるのです。どうかその点を御考慮願いまして、具体的にものをおきめになるときは、岐阜県庁の意見もお聞き願いたい、業者の意見も十分お聞き願いたい。取締りの線をどこに引くか、その引き方によっては、すぐ三年以下の懲役、五万円以下の罰金という刑罰がかかってくるのであります。実際そういう刑罰は、かかってきても実行不可能になりますから、そういう点も御考慮願いまして、具体的のお取扱いの際は業者の意見をぜひ十分聞いていただきたいということを申し上げておきます。
それからもう一点、輸出の場合、飛び出しナイフでも豆太刀、あいくちでも外国人が珍しがってだいぶ買っていくのです。関市といたしましては、重要な輸出産業の一つになっております。国の立場からすれば、金額はわずか数千万円にすぎないかもしれませんが、これも貿易振興の一助として、軽視するわけにはいかないと思います。でありますから、この輸出向きの点は一つ十分御考慮願いまして、通産当局の方もおいでになっておると思いますが、この問題は一つ岐阜県庁の方で具体的に取り上げて御協議願うか、この法案によりますと許可制になっておりますから、その許可は一々警察庁がおやりになるという格好よりも、通産当局の手で御協議の上おやりになるようにしていただきたい。その点についての御方針、お考えをまず一応伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/8
-
009・中川董治
○中川(董)政府委員 この飛び出しナイフとかあいくちその他の危険物数、青少年関係団体、青少年問題協議会等の言葉を用いれば、不良玩具は規制すべきではないかという論、そういう世論が旺盛になりました機会に、われわれ法律を立案するに当りましては、これを禁止すべきであろうという考え方の動向も十分聞くべきでありますが、同時に関係事業の生産状況その他をつまびらかにしないと、合理的な立案ができないと私ども考えまして、全国のこういう生産状況を調べて参ったのであります。その結果、御指摘のごとく、本件物件は、少くとも飛び出しナイフについては岐阜県の関市がほとんど唯一の生産地である、こういうことを発見いたしましたので、私どもはその生産状況その他を十分お聞きいたしましたし、いろいろ事情をつまびらかにいたしまして、最初申しましたごとく、規制は必要最小限度であるべきである、こういう考え方のもとに立案いたしたのでございます。その実地調査の結果は、生産物のうち約二割に相当するものが輸出されている、こういう事情を発見いたしましたが、輸出関係はとにかく現実に輸出されておりますので、これは規制の対象からはずすべきである、こう考えまして、改正法律案の二条の九号で、その住所地を管轄する都道府県知事に、輸出するのだという旨を届出すればこれはよろしい、こういうふうにいたしたのでございます。そうしてこの届出の手続その他の執行の関係につきましても、ただいま御意見がありましたごとく、関係者の方に不必要な御迷惑を与えないように、十分な考慮を払いたい、こう考えるのでございます。
それから、御質問のあいくちの大きさの問題でございます。ただいま私判定の基準を申したのでございますが、その基準の根本精神は、繰り返し申すようでございますが、規制は最小限度であるべきである、こういう考え方に出ているのでございます。それで御指摘の豆太刀のごときは、ただいま申しました基準に従いまして当然規制の対象からはずれる、こういうことを御理解いただきたいと思うのであります。そして法律執行に当りましては国民の御協力を得なければなりませんので、いろいろ関係の皆さんのお知恵を拝借いたしたいと思うのでありますが、結論は健全な良識に基きまして事を処理するのが一番妥当であり、またそれ以外に方法がなかろうと思いますので、そういうふうにいたしたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/9
-
010・三田村武夫
○三田村委員 大体具体的な内容についてはこれくらいにいたしておきますが、今刑事部長が一言触れられましたから、私も言葉を返す意味でなくて一言触れておきたいと思います。この資料の中にあります東京都青少年問題協議会から出された、飛び出しナイフの取締りのためという意見書、それから中央青少年問題協議会の出したもの、三つ意見書が出ておりますが、飛び出しナイフ等の人体に危害を及ぼすおそれのある玩具となっているのです。これは実際は玩具じゃないのです。それはもちろん人体に危害を及ぼすおそれのある玩具はいけないのですが、玩具を作っているのじゃない、実用品ですから、その点誤解のないように……。何でももちろん世論に聞かなければなりませんが、青少年問題協議会からこういう意見が出されたから、すぐこれを立法化するということは、他の意見を無視することにもなるのです。それを理由にされるなら私も少々意見がありますが、それのみを理由にされるということは私考えられませんから、ある程度御当局の御苦心の点も了察いたしまして、この立法の目的には私は賛成をするのです。ただその内容については、私先般来るる申しましたが、元来職業選択の自由は憲法に保障されておる。そうして今まで長年にわたり久しきにわたって、何らの不安なく生業を営んで参った者が、業者にして三百軒、従業員にして八千、何らの不安なくその生業に安んじておった者が、一片の法律によって、あすからその生活の基礎を失うということは、これはゆゆしい問題であります。その点は一つくれぐれも慎重にお考え願いたい。
それから通産当局もおられることでありますから、重ねて最後に一点念のために伺っておきますが、この法律ができますと、今まですでに市販に出ておるもの——これは何十万出ておるかわかりませんが、これが全部返品になって戻って参ります。五・五センチ以上のものは、全部無価値のものとなって戻ってきます。莫大な損害であります。これも法律によってこうむるところの直接の損害であります。これは国家の意思によって一つの大きな損失を与えるものでありますから、今までそういった自意識を持っていなかった業者が、自分たちの生業を直ちに奪われる、そうして資本も投じ、労力も加え、技術もみがいて、販売いたしておったものが、この法律によって、その経済的価値を根こそぎ失ってしまうものでありますから、この救済の点については十分お考え願いたいと思うのであります。通産当局もその点は十分御検討のことと思いますが、所持の禁止は即販売禁止であり、生産禁止であります。これからはこういう大きなものは作りません。五・五センチ以上のものは作らなければ済むのでありますが、今すでに作られてしまって、資本もかかり、金利も払い、労力を加え、技術を加えて市販されておるものが、この法律の発布と同時に全部返品になって戻ってくる、何とも処置のいたし方がありません。刃の少し長いものを短かく削ればいいじゃないか、これは机上の論でありまして、実際はそういうことはできるものではありません。その点もお考え下さいまして、どのような救済手段を考えられるか、一つ政府は、政府の一体の責任において、警察当局、通産当局御協議の上、この苦しい立場に追い込まれる業者の方々の救いの手というものをお考え願いたい、どのような御用意がありますか、お尋ねいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/10
-
011・中川董治
○中川(董)政府委員 この法律施行後の、ことに生産地関係、生産者関係の被害の点でございますが、確かに御指摘のごとく被害はございます。それでわれわれ、こういう公共の福祉のために立法が行われる、その結果、その生産に携わっておる方々が大へん御迷惑をこうむられる、これは非常にお気の毒に思うばかりでなく、この対策を十分研究いたしたのであります。われわれ公務員でございますので、そういう研究をするのには、いろいろ法律その他の関係規定の勉強はもちろんでございますが、前例等も考究する必要がございますので、前例等も考究してみたのでございます。まず補償の点でございますが、補償の前例等は、こういった全く同様のケースの場合、同様の事案の場合に、国の補償というものは行われていないのでございます。たとえて申しますと、このただいま御審議願っておる法律も、改正法律案でありまして、現行法があるわけですが、現行法制定のときも、理論としては全く同じ問題があり得たのでございますが、こういう補償の道が講ぜられていない、こういうことが一つ。それからそれ以外の法律、たとえば覚せい剤取締法も覚醒剤という物資の所持を禁止する点は、この法律案と全く同様でございますが、この場合も現に覚醒剤を生産しておる者その他につきましての補償は講ぜられていないのでございます。従いまして補償の点は考究いたしましたけれどもそういう関係等で、われわれとしてはこれを補償して処理することは不可能の状態だろう、こういうふうに申し上げざるを得ないのでございますが、まあ補償の点はお気の毒で、恐縮でございますがやむを得ませんので、それ以外に関係事業も十分調べたのでございますが、三田村委員も御存じのごとく、この生産は、関では飛び出しナイフをもっぱら生産されている方は比較的少い方でございまして、大部分の生産者の方は他の刃物と一緒に飛び出しナイフ等も生産なさっているのでございまして、兼業が多いからどうでもいいというずさんな考えは持っておりませんけれども、刃物の生産につきましては多年の御経験と技術を有されておりまして、ことに今度の改正法律案の成立後におきましても、規制されない重要な刃物がたくさんございます。そういう刃物の生産は、その生産業者の方はすでに御経験もございますし、現に生産に従事していらっしゃいますので、成立後も禁止されない刃物の生産に大いに力を用いていただきまして、国の産業の発展に寄与願いたい、こう希望するわけでございますが、そういうことに伴って現在すでに生産されておるものにつきましては、この法律施行が成立後おおむね三カ月になりますから、三カ月を経ますと所持が禁止されますので、お話のごとく関係事業の転業あるいは返品ということもあるかと思うのでありまして、その関係の御迷惑はまことに申しわけない、こういうふうに思うのでありまけ。こういう点につきましての補償の点は以上申し上げた通りでございますが、それ以外の対策につきましては、われわれ法律立案の際も通産省当局と十分協議いたしまして、できるだけ関係業者の刃物生産に支障が少くて済むように、こういうことについて相談しているのでございます。できるだけ関係業者の迷惑が最小限度に済むように、通商産業省とともに努力して参りたい、こう思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/11
-
012・三田村武夫
○三田村委員 通産省は来ておられますね。何か御対案がありましたら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/12
-
013・前尾繁三郎
○前尾委員長代理 ちょっと申し上げますが、通産省は宮本航空機課長が見えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/13
-
014・宮本惇
○宮本説明員 ただいま中川政府委員、また三田村先生からお話がございましたように、今作っておるものが返ってきたときにどうするかということになりますと、これは通産省といたしましても確かに重大な問題でございますので、極力輸出振興をはかりあるいは融資をあっせんする関係方面とよく打ち合せまして、できるだけ御迷惑をかけないようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/14
-
015・三田村武夫
○三田村委員 もう一点で終りますが、中川刑事部長の御意見、半分は了承いたしまして半分は了承できない点があるのであります。それは私決して言葉を強めて申し上げるのではないですが、業者の立場からすれば、これは天災でなくて人災なんです。天災についても災害補償をやるのです。しかるにこれは国家の意思によって業を奪うのでありますから、その点の御考慮は当然あっていいのです。刑事部長のおっしゃった前の例というものは、携帯の場合も許可制でありますから、許可を受けるか受けないか、やみでこれを持つか持たないかは別なんです。今度の立法の場合には明らかに所持禁止即生産禁止であります。この法律の発布と同時にストップするのです。販売もストップしますし、すでに出ておったものは返ってくる、生産もストップします。仕入れた材料もだめになる。この方面に専業で従事しておった工員もだめになります。そういう点から考えましてもちろん転業その他についてのごあっせんは、当然御考慮願わなければなりませんが、そのほかに損失の点においても十分御考慮を願いたい。こういうことを考慮願っておきませんと、国に対しての信用というものが失われてきます。われわれは国民の代表として国政最高の権威たる国会を構成しております。だからできるだけ忠実に国民の立場というものを考えなければなりません。業者の立場も守っていかなければなりません。そういう責任がありますから、御当局のお考えはよくわかりますが、取締りの便宜のためにこれも必要だ、あれも必要だ、これが一つ立法の先鞭になりまして、次々とそういう警察立法が行われていく、そのたびごとに業者ははからざる損害をこうむっていく、これは耐えがたいことなのであります。これは国政最高の権威機関としての国会において、十分この点は考慮しなければならぬ一思いますから申し上げる次第でございます。どうか一つそういう点において十分御考慮の上、できるだけ最小限度に実害をとどめていただきたい。そうして立法の目的は、権力や法律で制限をする点も、また最小限度にとどめていただきたい。むしろこういう青少年不良化の問題はわれわれの責任であります。政治家の責任であります。だれかの言葉ではありません。前回も申し上げたと思いますが、一切の社会悪、社会的欠陥はすべてことごとく政治家の怠慢と無責任によるということを、われわれは深く深く胸に体しております。こういう事態というものは一片の法律で解決するものではありません。そこにわれわれは深甚なる反省と考慮を払いますが、同時に当局においてもただ一片の警察立法でものを解決するという態度についても、深甚なる御考慮をわずらわしたいということを申し上げて、私の質問を終りますが、ただ念のためにもう一ぺん繰り返して伺っておきます。
飛び出しナイフの点においては、大体参議院修正の点で当局も御了承になるかどうかということが第一点、第二は、いわゆるあいくちの問題については中川刑事部長と今ここで質疑応答をいたしましたその内容に従いまして、実際施行の場合には十分業者あるいは一般の社会的常識というものを基礎にして御考慮を払う、この点についての御意見を念のために伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/15
-
016・中川董治
○中川(董)政府委員 御質問の前段は、われわれ国会におきましていろいろ御審議の結果得ました結論につきましては、もちろん深く敬意を表する次第でありまして、法律の成立後にはそれを忠実に実行する。こういうふうに考えるべきは当然であると思います。それから何があいくちなりやの問題は、これまたるる申し上げましたごとく結局は健全な常識で判断する、健全な常識の判断に基いて健全な行政が行われる、こういうふうにありたいものである。こういう念願のもとに努力して参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/16
-
017・門司亮
○門司委員 そこで関連して今の問題について、一つ聞いておきたいのでありますが、法案の内容というよりも、むしろこの法案の立案をされますときに、警察はただいま三田村委員からお話のありましたような点について、通産省その他との協議がなされたかどうかということであります。これを聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/17
-
018・中川董治
○中川(董)政府委員 本件立案の途中におきましては通商産業省、法務省、文部省、建設省等の関係部局と十分打ち合せいたしまして、最後は言うを待たないところでありますが、閣議決定を経て提案いたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/18
-
019・門司亮
○門司委員 それからもう一つ聞いておきたいと思いますことは、従来こういうものの製造は別に取締りの法令はなかったかということであります。禁止の法令はなかったのであるが、他に製造あるいは販売に対しての取締りの法令はなかったか聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/19
-
020・中川董治
○中川(董)政府委員 お答えいたします。改正案の内容として提案しております飛び出しナイフにかかる部分は、飛び出しナイフという物質が最近多く出だしまして、ことに最近のことであったという関係もあったろうと思いますが、過去におきましては製造についての制限はございません。ところが御審議をいただいておる現行の銃砲刀剣類等所持取締令におきまして、これは所持のものには触れておりませんけれども、正当な理由がなければ携帯できない、こういう規定が十五条にあるわけでございます。そういう点はございましたけれども、製造そのものは初めてでございます。それから空気銃の点はまた別でございますが、御質問があればお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/20
-
021・門司亮
○門司委員 製造にも販売にも禁止の法令がなかった。それからさらにこれを制約し、これを制限する他の法令もなかったということになりますと、これらの製造、販売は合法的に今日行われておったということでございますね。そう解釈してよろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/21
-
022・中川董治
○中川(董)政府委員 製造そのものは今日は合法的に行われております。携帯につきましては若干の制限はございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/22
-
023・門司亮
○門司委員 私は販売を聞いているのです。販売はどうなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/23
-
024・中川董治
○中川(董)政府委員 製造、販売とも同様に制限はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/24
-
025・門司亮
○門司委員 そういたしますと、業者は何らの制限を受けないで今日まで製造してさらに販売をしておった。それから飛び出しナイフについては、これを所持することがいいか悪いかということは行政的の処置でございまするから、被害がある限りは処置すべきは当然であろうと思います。そこでこういう法律をこしらえます場合には、これの副作用として今三田村委員からお話のありましたようなことが必ず起るのであります。その副作用が起ってくるものについても、今まで何らの取締りも制限もなければ、むしろ法律をこしらえる場合には当然それらの問題が考えられ、それから同時にこの問題を抜本的にしようとするならば、単なる持所を禁止するというようなことでありませんで、販売を禁止する、あるいは輸出その他を除く以外については製造を禁止するという厳重な取締りといいますか、さかのぼって弊害を除去する方策がここに講じられなければならぬ。その方策を講ずることになると、これは少し私の考え過ぎあるいは言い過ぎかもしれませんが、当然業者に対しまする補償の問題が出てくるわけであります。従って政府はそういう問題をおそれて単にからめ手から製造を禁止し、販売を禁止せしめるような行政措置をとったのではないかという疑いを持つわけであります。これは業者にとっては非常に迷惑だと思います。むしろ政府は進んで所持することがいけないというのならこしらえることもいけないのだ、あるいは販売することもいけないのだというふうになぜ徹底しないか。そうして現在あるものは政府が買い上げればいい。業者にとっても親切なこういう態度こそが、将来におけるこれらの問題を阻止する一つの大きな問題だと思う。何らの罰則もなかったものをいきなり所持ができないということになれば、これは用途が断たれます。用途が断たれれば禁止せざるを得ないのである。これは従来多少法律の所締りを受けたり制限を受けたりしておったものであるならば、また所持を考えられる余地がありますけれども、何ら業者についての制限も取締りも設けていない。それがいきなり所持の禁止から、そういう大きな副作用が起ってきて業者を苦しめるというやり方は苛酷過ぎやしないか。同時にこの法の徹底にも不備がおのずから出てくる。こしらえてもいいのだ、売ってもいいのだということになれば、店頭に飾っておってもこれを阻止する方法がない。これは密売の行われる原因をこしらえるものである。店頭に飾っておったからといって、あなたの方でこれを取り締ることはできないでしょう。持っていることはいけないけれども、飾っておくのは差しつかえない、売ることも差しつかえない、こしらえることも差しつかえない。やはり法の徹底を期するにはそういう親切な——しかも国民のある一定の生活に関係のある問題でございまするので、政府は悪を十分取り締まると同時に、国民の生活を保護するという親切な態度がこの際望ましいと思う。従って私はさっき合議されたかということを聞いたのであります。この点について当局のお考えを通産省その他から、もう一度聞かせておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/25
-
026・中川董治
○中川(董)政府委員 ちょっと申しますが、現行の法律の規制の方法にはいろいろございますが、所持規制という方法があるわけでございます。そこに申します所持とは製造したために持っておることも期待であり、販売のために、引用になりました店頭に並べておることも所持であります。いずれも所持の対象になりますので、お示しの店頭に並べておるごときものは所持規制の対象になって二条違反になる。こういうわけであります。ことに所持禁止の例はほかにもございますが、本件の案については所持そのものを原則として禁止いたしますので、その例外は二条の各号にありますけれども、原則として禁止いたしますので、製造、販売、使用、いずれも規制されるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/26
-
027・門司亮
○門司委員 今の解釈については多少まだ疑義があると思います。所持をするという一つの目的、あるいは法律のできた目的は、私はこさえることがいけない、あるいは販売することがいけないということよりも、むしろ私はこの法律のできた立法の精神というものは、持つことによって他人に危害を加えないということがその立法の精神であろうと思います。そうすると今のことはあるいはこさえるまではよいのだ、持っておればいけないのだ、こさえることはよいのだということなのであります。持てばよい、そういう理屈は通らぬと思います。もしそういうことでも、百歩譲ってそういうことが考えられるとしても、さっき申しましたように、根本的に絶やすことになりますので、さっきの同僚委員の質問は私はただ副作用としてそういうものが起るからというので聞いておりましたので、なお突っ込んでこのことを聞いておるのであります。もしそうであるとするならば、これについて販売禁止あるいは製造禁止ということになりますれば、業者のこうむる損害はなぜ一体補償されないのか。これは損害賠償の訴訟が起るでしょう。私は起し得ると思います。法律だからそういうものは知らぬというわけにいかぬと思います。他の法律に触れておってそういうことはしてはいけない——今の麻薬取締りの場合のヒロポンのようなものは、だからこさえるのはいけないというのであって、どんなに大きな損害を相手方に与えるか、これは法律に触れておるからはっきりいかぬということが言える。しかしこういうような何らの制限を受けてない、干渉を受けてない、今でもこさえておるかもしれない。法律の通るまでこさえるかもしれない。太い業者はまだものを仕入れておるかもしれない。そういう国民の思わざる損失については、こういう法律をこさえようとするなら徹底した——幾らの金になるか知りませんが、徹底した方法を私は講ぜられることが正しいことであると同時に、所持することはけしからぬのであるが、こさえるまでは持ってよいというなら、これはいささか議論せざるを得ない、おもしろい問題が出てくると思います。所持することはいけない、だから売ってもいけないのだということについても議論の余地が十分ありますが、今そういう議論をすると長くなりますから、議論は別にして、今の御答弁であるとするならば、私は当然販売禁止あるいは所持の禁止をすると同時に、売ってもいけない、あるいはとさえてもいけないという筋の通った法律にして、そうしてなお損害をこうむるものについては、日にちを限ってでもけっこうです、何月何日まで届出をしたものについてはこれを認めるということでけっこうでありましょうから、国民の生活を保護しその損害を補償する親切な立法措置が当然とらるべきであると考えるのですが、この点についてもう一度御答弁が願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/27
-
028・中川董治
○中川(董)政府委員 麻薬取締法とそれから覚せい剤取締法の例を引用なさいましたけれども、本法律案は覚せい剤取締法と全く同様の規制の内容でございます。向うが違憲であるということであれば、こちらも違憲、向うが合憲であればこちらも合憲である。こういうことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/28
-
029・門司亮
○門司委員 そうすると少し意見が長くなります。麻薬の取締りでは当然いけないということになっております。いかなるものが麻薬でありましょうとも、麻薬と断定されるものについては、人体に影響を及ぼす麻薬、麻薬取締官が取り締っておりますものは、ヒロポンという名はあるいはその中に従来なかったかもしれない。しかし麻薬という製品においては同じであると思います。それは当然適用すべきである。麻薬という名前の中に、あるいは法律用語の中に、ヒロポンというものはなかったからというのでは通らぬ。麻薬自身であるということには間違いがない。麻薬は当然に取り締る。ところがこれはそうでなかったと思います。これを私が例を引いたからといって、そういう開き直ったあなた方の御答弁なら、これから議論をいたします。一体麻薬やヒロポンをこしらえてもいい、販売業者がこれを売ってもいいという法律がどこにありますか、あったらお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/29
-
030・中川董治
○中川(董)政府委員 麻薬と覚醒剤とはそれぞれ別な法律でございまして、覚醒剤は覚醒剤、麻薬は麻薬で取り締っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/30
-
031・門司亮
○門司委員 私の言葉が足りなかったかもしれませんが、麻薬と覚醒剤の取締りの方法はそう違っていないと思う。一体どこに覚醒剤を無制限にこしらえて販売してもいいという規定がございますか。覚醒剤の弊を取り締るようなことが書いてあるでしょう。しかもこの覚醒剤の取締りについては、知事も多少権限を持っております。ここまで法律でおろしておるということは、やはり覚醒剤自身の弊害を認めて、その種類のいかんを問わずこれについての取締りの規定がちゃんとあるのです。現にその取締法によって覚醒剤の取締りが行われておるのであって、法律に基かない取締りが行えますか。ちゃんと法律に基いて取締っておるのです。これを今までこしらえておったものについては、法律ではどこで取り締っておるか。さっき法律がなかったと答弁されたが、私の言うのは、片方は少くとも法律に抵触しておるから取締りが行われるので、取締りの行われるものについての損害は何も補償する必要はないと私は思う。しかしこれらの問題は、法律に触れていない、こしらえることもよければ販売もいいのである。今度新しい法律ができて所持することが禁止される、その副作用としてそういう損害が起ると思う。それを麻薬と同じようなものの考え方で、やるなら、両方とも議論になるという考え方はおかしいと思う。それなら、一体ヒロポンは何の法律で取り締っておりますか。こしらえてもいい、売ってもいいということがはっきりしておれば取り締る必要はないでしょう。売っても持っても注射してもいけないから取り締っておるのでしょう。そういうあげ足をとったような答弁では困るので、もう一度聞きますが、ヒロポン取締りは何の法律でやっておりますか、法律があったら一つ示してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/31
-
032・中川董治
○中川(董)政府委員 何か誤解があるようでございますが、私は本件の取締りが麻薬取締りや覚醒剤の取締りと全たく同じことであろうと申し上げたのではなく、法律書生的な法律論から覚醒剤についてこれを申せば、覚醒剤は昭和二十六年までは合法的に所持できたのであります。ところが覚せい剤取締法が二十六年に成立いたしましたとたんに所持等が禁止された、こういう態様は、現在は野放しになっておるのがこの法律が成立するとたんに禁止されると同様の法律形態であろう、こういうことを申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/32
-
033・門司亮
○門司委員 そう長く議論をしても仕方がありませんから百歩譲って議論は別にしても、そういう問題が起らなかったから今度も起らないのだという考え方ならこれは誤まりだと思う。問題が起らなかったということを例にして、この前もやってなかったから今度もやらなくてよかろうということはきわめて不親切だと思う。問題があればそれを処理することが当然であり、この前に処理しなかったのが誤まりだと思う。前に悪いことをしてもみんなが黙っていた、だからまた悪いことをしてもよかろうという理屈は間違っていると思う。間違っておるものなら改めてもらいたい。従って私が申し上げておりますように、製造の制限を受けていなかった人がこういうことになると非常に困るということは事実だと思う。従ってこの剛作用に対しても国がちゃんと根絶をしないと、製造が許されておればこしらえますよ。販売が許されておればどこかに出ます。私はそういう安易なものではないと思います。これはどんなに取り締っても、覚醒剤がやられるのと同じでありまして、麻薬の場合にもどんなにやかましく言われても、要求する者があればこしらえる者がある、こしらえる者があれば販売する者がある。従ってこういうものの筋を通そうとすれば、所持することを禁止しておるのだから、当然こしらえても持って歩いてもけしからぬという理屈は成り立たぬ、こしらえたからには持って歩くことは当然だと思う。それなら製造も販売も禁止して徹底的にこれの取締りをする方がよい。そうしてそれによって被害を受ける業者に対しては、補償をすることが法律としてはっきりするし、親切だと思う。その点をもう一ぺん聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/33
-
034・中川董治
○中川(董)政府委員 私が前例だけ申し上げたので誤解を生んだと思うのですが、前例が法律解釈の一つの参考になろうかと思って申し上げたわけであります。こういった財産権の侵害になるような立法上の問題について、憲法上どういうふうに理解すべきかという問題は、われわれはすべて法律を立案する場合におきましては精密な研究をいたすのでございます。立法によらずして行政権によってやればもちろん非合法でございます。立法上については、公共の福祉のためにそういうことが可能であると理解される限りの立法でありますならばそれは合法であろう。問題の要点は、公共の福祉のために所持の禁止が適当かどうか、こういうことの立法上の論議があろうと思うのでございますが、それを前例だけを申し上げたので誤解を生んだかと思うのでございますが、この点御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/34
-
035・門司亮
○門司委員 法律はそういうことが言えるのです。悪いものがあれば禁止しなければなりませんし、当然禁止すべきであることは間違いないと思います。しかし法律だけで人間が生きていければけっこうですが、法律だけで人間は生きていけないのです。それから先は政治であると思う。政治である以上は、これから来る副作用は除去していくことが政治の正しいあり方だと思う。法律だけで世の中は生きていけません。そうなってくると、日本の法律をみんな適用したらそこらは歩けません。右側を歩けと言っても左側を歩く者もたくさんおる。これを法律違反であると言ってつかまえて入れてごらんなさい。あなた自身だってけっこう左を歩いておる。みんな右ばかり歩いておるわけではない。私は法律解釈だけでものを片づけようとする警察の態度は、はなはだおもしろくないと思う。それを緩和して住民に刺激を与えないように、影響のないようにすることが政治の要諦であり、あり方であります。従って親切なやり方をしようとすれば、法律を徹底さして、そこまで国民のめんどうを見ていくことが正しいと思う。所持することができないからといって、こしらえることはかまわないのだ、売ることもかまわないということでは困る。私は法律の制定に当っては、理屈だけでなくて、親切な徹底した方法をとっておきませんと、法の運用もできませんし、法律が忠実に守られないのであります。さっきも守られないような法律ならこしらえぬ方がいいというお話がありましたが、それならば製造をはっきりやめてしまう、こしらえる者がなければ売る者も持って歩く者もなくなる。持って歩けと言っても持って歩く者はありません。ただ所持することができないのだから、売ることはけしからぬと言われるかもしれませんが、こしらえることが許されておって、それに制限を加えようとすれば、こしらえることだけは許可制にして、輸出その他の注文があったときにこしらえることができるようにして、規制は他の方法でできると思う。それでなおかつ流れたものは厳罰にする必要があると思う。しかし法が徹底を欠いて、ただ理屈だけで持つことはけしからぬという解釈には賛成しかねる。そういうものについて営業者を守る立場の官庁である通産省としては、こういう点をどうお考えになるか聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/35
-
036・中川董治
○中川(董)政府委員 この法律案は所持を禁止するというのが根本原則でありまして、所持とは製造、販売、すべてを含む、従って製造のために所持するもの、販売のために所持するものも禁止されるということになろうかと思っております。ただし輸出だけは特免する必要がありますので、輸出のための製造は例外として二条九号でこれを除く、こういうことでございます。
それから根本問題の点でございますが、これは門司先生の御意見の通り、私ども法律万能論者ではございません。法律ばかりによってものが解決するという考えは持っていないのでございます。先ほども三田村委員にしばしばお答えいたしましたごとく、社会環境の浄化とかそういった根本問題を中心にものを考えるベきであろう、ところがこの現物の所持については従前こういった所持の禁止法令を整備する必要を認められたのでこれを整備するのだ、いろいろ法律上の議論が出ましたけれども、私どもすべて法律論ばかりで世の中を解決するという考えは根本的に間違っておる、こういう点は全く同様に考えておりますので御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/36
-
037・門司亮
○門司委員 通産省はどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/37
-
038・宮本惇
○宮本説明員 ちょっとお断わりしておきたいと思いますが、私直接空気銃の方ばかりやっておりましたので、飛び出しナイフの方は別の方でありますが、一応この経過につきまして通産省のとりました措置を御説明いたします。
この飛び出しナイフ等を禁止いたします場合に、通産省といたしましては警察庁に次のような意見を申し入れております。まず第一点といたしましては、規制の対象に加えるべきものについては、治安維持上必要最小限度の範囲にとどめるべきである、ただしその必要最小限度の判定は警察庁におまかせをするが、しかしメーカーの立場から必要最小限度にとめていただきたいということが一つ、それから今度の第二条の九号で輸出の問題が出てきておりますが、この規定の運用につきましては、輸出業務の円滑な運営を阻害することのないよう配慮することが必要であると認められるので、その実施細目については事前に十分御相談を願いたいということが一つ、それから新たに規制の対象に加えるものを現に所持する者につきましては、改正法の施行に伴う過渡期の混乱を極力緩和するため、少くともこの第二条九号の規定の運用に関し、特に施行期日をおくらせる等適切な措置を講ぜられたいという申し入れをいたしまして、先ほどちょっとかわってお答えいたしましたのですが、空気銃なんかの場合と違いまして、相当ほかの万の兼業の方もいらっしゃるので、できるだけ融資あっせんとかなんとかしたい、こういうことは警察庁と御連絡の上、通達省として考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/38
-
039・門司亮
○門司委員 それから今のお話では経過措置か何か考えられたようですが、その経過措置なんというものはどうなんですか、こんなものに経過措置が要りますか。禁止するような法律は施行の日からしなければ禁止にはならぬで、しょう。どういうわけで経過措置の日にちなんかあるのですか。これはその間持ってもいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/39
-
040・中川董治
○中川(董)政府委員 飛び出しナイフとか空気銃とかいうのは、関係者が非常に多うございますので、こういった法律が成立即日施行になりますと、いろいろ持っている者が合法的なものに直す時間を与えた方がより妥当であろう、こう考えまして、通商産業省からもそういう要望がありますので、それは相当なことだと考えまして、御審議をいただいております附則第一項の中で「この法律の施行期日は、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める。」こういうふうに——別言すれば法律施行後おおむね三カ月後の日から施行する、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/40
-
041・門司亮
○門司委員 私はやはりこういう点については、先ほどから申し上げておりますように、たとえば今の経過措置が、ほかにこしらえかえるとかどうとかということでは経過措置にはならぬと思う。禁止しておっても、そうして全部一応集約されても、それを作りかえようとすれば、それからでもすぐ間に合うのでありますから、何も経過措置なんというものはあったってなくったって、どうだっていいのです。それだけ親切があるなら、この経過措置の中に従来よりむしろこれの製造を禁止して、間の経過措置というものは明らかにこれの損害を補償するという、いわゆる何月何日までの間に仕入れたものとか、あるいは販売をするために持っているもの——製造屋には大した影響はないと思いますが、製造するために、平成品その他で他に転換のできないものについては政府が買い取る、そうしてそれを一応損をしないように出せばいいのであって、利潤の幅というものは実際は大したものじゃないと思います。改正ができるものであるとすれば、そういうふうにやはり通産省なども親切な行き方をしないと、経過措置を三カ月ばかり置いてあるから、そのうちにこしらえ直せるものはこしらえ直すであろうといったって、できたものを買ってきて店へ並べているものは、こしらえ直すことはできません。製造業者ははがねをどうするとか、半成品はどうするとかいうことはやれるかもしれませんけれども、半成品以上になってでき上ったものは規格からはずしたものに直せません。長過ぎるから先っぽをちょん切るということはなかなか困難だと思います。そういうような不親切なことでなくて、立法にはもう少し親切心があってよかったと思います。しかしここで法律を決定するわけではないので、当局の意向だけをお伺いしておいて、私はきょうの質問を打ち切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/41
-
042・鈴木直人
○鈴木(直)委員 ただいま政府委員の説明の中の、所持という言葉には製造と販売を含むのだというようなお話でありましたが、そうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/42
-
043・中川董治
○中川(董)政府委員 ちょっと言葉が足りなかったと思います 鈴木さんは御専門でございますが、所持というのは、こういう物質を自分の占有権内に置くことでありますので、販売の目的のためであろうと、製造した結果であろうと、結果においては所持という概念に当てはまる、こういうふうに申したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/43
-
044・鈴木直人
○鈴木(直)委員 そうしますと、法律に規定されておる分野、対象というものは、所持というものを禁止する、こういうふうになるわけですね。そこには、製造も販売もそういう言葉はその中にはないのだ、こう了解していいとして、所持というものは携帯とは違う、従ってたんすの中に人のものを入れておいても所持に入る、こういうことになるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/44
-
045・中川董治
○中川(董)政府委員 これは鈴木先生御専門のごとく、所持とは自分の支配力の範囲の中にある、こういうことが所持でございます、たとえば私が持っておるものを宿屋の金庫に入れておく、こういう場合には私が所持者であって、宿屋の女中は所持者ではない、こう理解すべきだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/45
-
046・鈴木直人
○鈴木(直)委員 そうすると所有している者ということじゃないのですね。いわゆる支配力ですから、自分が所有していなくても、置く場所がどこでも関係はない、こういうことになりますと、これはどこかで見つけた、ところがそれの支配力は一体どこにあるか、こういうことになるわけですね。そうするとたとえば不良少年が持っていた、これは自分は持っていてもその支配力は、商店から盗んできたのだから商店にある、その不良少年にはない、こういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/46
-
047・中川董治
○中川(董)政府委員 所有と所持とはお説のごとく別ですけれども、不良少年などが持っておるものは、支配力は不良少年にあると理解すべきものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/47
-
048・鈴木直人
○鈴木(直)委員 そうするとあなたが所持しておるものあるいはあなたがほかから借りておるものを、宿屋に保管していた場合には、宿屋に支配力がなくて、あなたに支配力がある、こういう解釈になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/48
-
049・中川董治
○中川(董)政府委員 その宿屋に預ける態様によって違うかと思います。要するに自分のかぎでなくちゃあかないようにしてしまったとする、支配力は宿屋に移っていないが、これを一年間君の方で適当にやってくれというときは宿屋に支配力がある、一にその態様によろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/49
-
050・鈴木直人
○鈴木(直)委員 そうするといわゆる不良少年が考えて、そういうようなうまいことにして、不良少年はただ持っていたんだ、支配力はほかにあるのだという格好で持っていた場合は、どうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/50
-
051・中川董治
○中川(董)政府委員 それは持っておる被疑者たる不良少年の言い分も、一つの参考ですけれども、客観的に、合理的に判断した場合には、大体持っておるという言葉の中には支配力が入っておると多くの場合なろうと思います。こういうふうに持っておるという場合は、支配力がある、こういうふうに理解すべきだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/51
-
052・中井徳次郎
○中井委員 もう時間もありませんから、一言簡単に通産省の係員の方にお伺いいたします。きのうから三田村さんのお話を伺っておりましたが、私も関のことはよく存じておりますが、まことに岐阜県の関市にとりましては、この法律案が出されますと、業者はほんとうに死活問題だろうと思います。先ほども麻薬問答の中にございましたが、この刀剣類につきましては、関市の中小企業の皆さんはこの法律が出ますまでは、何もこれは悪いことをしたなんてちっとも考えておりません。ほんとうに自己のなりわいとしてまじめにやっておった。それを厳格にいえば、補償の問題が起ると思いますが、国の予算の関係あるいは他の法案の関係で、こういうことになったのではないかと存ずるのであります。それについてあなたは簡単に融資をやるというふうなことを言っておられたが、これはできましたら、ここでもう少し融資方法その他についても、私は積極的にちゃんと問答しておいた方がいいのではないかと思いますので、お尋ねをするわけなんですが、どういう方法でやられるつもりであるか、それをちょっと伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/52
-
053・宮本惇
○宮本説明員 率直に申し上げますが、私空気銃関係のあれで参っておりますので、ここで責任ある御答弁を申し上げるわけにはいきませんが、しかし御趣旨の通り別体的によく研究いたしまして、また御返答申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/53
-
054・中井徳次郎
○中井委員 どうもきょう見えておる通産省の方は担当官でないようでありますが、これはどうもこの委員会としましては、もう少しこの点は確かめておくのが親切であろうと思うのであります。きょうこれは上げるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/54
-
055・前尾繁三郎
○前尾委員長代理 ちょっと速記をやめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/55
-
056・前尾繁三郎
○前尾委員長代理 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/56
-
057・鈴木直人
○鈴木(直)委員 飛び出しナイフというものが危害を与えるということを考えたのは、ちょっと会ったときにぱっとやった瞬間に突きさすことができるようになる。それが半分ならば罪にならない。こういうことで半分はよろしい。ぱっと行くのはいけない、こういうことなんだから、大体携帯ということが中心ではないか。たんすの中に支配しておいて、それが危険だということはないと思う。従って所持というよりも、むしろ携帯ぐらいにする方がその目的を達するように思いますが、何かその点について考えたことがあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/57
-
058・中川董治
○中川(董)政府委員 これは現行法の十五条で携帯を規制しているわけですが、携帯というのは、その都度携帯していなければ問題にならない。ところがよくこれを携帯したときに、すでに人が殺されている。こういうことで人が殺されてから携帯を発見したという事例が多いのであります。それで飛び出しナイフは現行法では携帯でございますが、それ以外のもの、たとえば日本刀とか銃砲というものは、ひとり携帯のみならず、所持に至るまで規制しておるわけです。その関係等もあって、そのための弊害はありますけれども、若干それによって抑制されておるという面も考えられましたので、現行法の携帯制限を所持規制に高めた、こういうことで申し上げた方が御理解されやすいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/58
-
059・前尾繁三郎
○前尾委員長代理 ほかに御質疑がなければ、これで本案に対する質疑は一応打ち切りにいたしまして、後刻適当な機会に政府当局の説明があり、あるいけその際に質疑応答されることを留保しておきたいと思います。一応の質疑打ち切りにつきまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」を呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/59
-
060・前尾繁三郎
○前尾委員長代理 御異議なければ、本案に対する質疑はこれをもって終局いたします。
それでは本日はこれにて散会いたします。
午後一時二十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204720X02919550627/60
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。