1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十三年二月二十七日(木曜日)
午前十時五十二分開会
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委員の異動
本日委員後藤義隆君及び山下義信君辞
任につき、その補欠として西岡ハル君
及び大矢正君を議長において指名し
た。
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出席者は左の通り。
委員長 阿具根 登君
理事
勝俣 稔君
木島 虎藏君
委員
有馬 英二君
紅露 みつ君
高野 一夫君
横山 フク君
片岡 文重君
大矢 正君
木下 友敬君
藤田藤太郎君
松澤 靖介君
山本 經勝君
田村 文吉君
竹中 恒夫君
政府委員
通商産業省鉱山
保安局長 小岩井康朔君
労働政務次官 二階堂 進君
労働省職業安定
局長 百田 正弘君
説明員
大蔵省主計官 鳩山威一郎君
労働省職業安定
局失業対策部長 三治 重信君
参考人
けい肺対策審議
会会長 勝木 新次君
けい肺対策審議
会委員 新居 五郎君
けい肺対策審議
会委員 北里 忠雄君
けい肺対策審議
会委員 能見 修君
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本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○労働情勢に関する調査の件
(一般労働問題に関する件)
(けい肺対策に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/0
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001・阿具根登
○委員長(阿具根登君) 開会いたします。
初めにお諮りいたします。けい肺対策に関する件について、調査の参考に資するため、参考人の意見を聴取することにいたしたいと存じます。日時、人選、手続等は、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/1
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002・阿具根登
○委員長(阿具根登君) 御異議ないものと認めます。よって参考人から意見を聴取することに決定いたしました。
なお、本日午後一時から、けい肺対策審議会関係の参考人の出席を求めることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/2
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003・阿具根登
○委員長(阿具根登君) 次に、労働情勢に関する調査の一環として、一般労働問題に関する件を議題といたします。
労働省当局に対する質疑がございましたら、順次質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/3
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004・山本經勝
○山本經勝君 二階堂政務次官にまずお伺いを申し上げたいと思うのですが、日雇い労務者の就労状況が最近非常に悪い。これは、具体的な状況を申し上げてみますと、まず、地元の東京都における三十二年の七月以降の数字を見ましても、あぶれの数字が非常にふえている。七月が、東京都であぶれた人々が二万五千二百三十六名である。これが順次増大をして、十月には三万三千九百九十二名、こういうふうに、飛躍的に増大をしている。約一万ふえている。こういうことなんですが、これは、やはり全国的な情勢ではないか。最近の聞くところによりますというと、たとえば、地方で、京都では、十六日あるいは十八日くらいしか就労できておらない。あるいは鹿児島では、大体十七日しか就労していない。高知県の中村市のごときは、十日内外しか就労しておらぬ。こういう状況が顕著に現われている。あるいは大分市では十四日、全体から推測いたしますというと、大体十七日あるいは十八日という就労状況のような実情ではないかということが言われておる。そうしますと、かねがね労働省としては、二十一日就労を全国平均でやっていくということで予算を編成されておって、そうしてそれが、三十二年の第四・四半期についても、すでに昨年の十二月に、仮決定をした予算のワクが地方に行っておるわけです。それにもかかわらず、二十一日就労は、今申し上げたような事例が具体的に出て、地元の状況を見てますというと、あぶれが非常に増大している。これは、はっきりした具体的な数字が政府の出した資料の中には出ている。そういたしますと、この二十一日就労ということでは、きわめて不満足なことは言うまでもない。こういう状況のもとで、なおかつどういう理由で、どういうふうにあぶれが増大して、かつ地域的に見ますと、非常に極端に就労を規制している事実がありはせぬかというふうな疑いが起るわけです。ですからこれは、総括的な点で次官の方から伺っておきたいのは、そういうあぶれが増大し、あるいは地域的に見ますと、非常に就労のワクが引き締められておる。これは、しばしば労働大臣初め労働省当局が言われているのは、予算も増額しました、それからまた、就労は十分やられておると言われるのですが、実はそうではない。具体的な事例がある。そうしてまた、就労した者に対する非常なる労働強化が行われている。そのために、最近犠牲者も出ている。こういうような実情なんです。このいわゆるあぶれの増大と、地域的に非常に就労のワクを締めている。こういうことが顕著に出ていると思うのでございますが、この大きな傾向を、労働省としてはどうお考えになっているのか。あるいはその原因等は何であるか。この点、まず基本的に、次官の方から解明を願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/4
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005・二階堂進
○政府委員(二階堂進君) ただいま、具体的に、各地方の就労状況が非常に悪くなっているというようなことをお述べになったのでございますが、事実そういうような状況になっている所もかなりあると存じます。この原因等につきましては、これはいろいろあろうかと思っております。たとえば、金融引き締め等の影響も相当あるかと思っておりますし、また、予算の関係上、この公共事業関係の仕事等もかなり減っているというようなことも、理由にしていいかと思うのでありますが、労働省といたしましては、やはりこれは、二十一日というものを原則的に考えて、その方針を貫くよう努力をいたしているわけでありまして、決して就労日数というものをば、これを縮めていこうというような考えは持っていないわけでありまして、なお、詳細なこの理由等につきましては、局長の方から御答弁をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/5
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006・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) ただいま山本委員からの御質問でございますが、全国的なあぶれの状況を見ますと、最近年末の三カ月等について見ますと、九月で百四十万、十月で百四十四万、十一月で百二十四万、十二月で八十一万というふうな数字になっておりまして、極端にこれが増大の傾向にあるということは、全国的な数字としては出ておりません。さらにまた、全国平均の就労日数を見ますと、七、八月ごろがまあ仕事の最盛期でもありますので、七月は二十二日、八月が二十二・八日、九月がちょっと落ちまして二十・八日、十月が二十一・七、十一月が同じく二十一・七、十二月が二十四・七というような、全国的な数字になっております。ただ、今御指摘のような地方的に、あるいはさっき御指摘がございました京都、これは、いろいろな財政上の事情等もあろうかと思いますが、十六日ないし十八日程度の就労というようなことになっております。われわれといたしましては、できるだけこうした、基本といたしまして、二十一日就労確保ということで、実は毎四半期におきましてワクを決定いたしているのでございまして、しかも、その後の情勢の変更がございました場合には、それに即応してこれを調整し、二十一日の就労を確保できるように努力いたしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/6
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007・山本經勝
○山本經勝君 今の次官のお話ですと、特にその規制をしてはおらない、こういうことなんですが申し上げたような具体的な事例があるわけなんです。そこで、今の局長のお話ですと、やはり全国おしなべて見ますと、十七、八日の就労状況だという現在の状態ですね。違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/7
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008・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) 全国おしなべて申しますと、十月以降について申し上げますれば、十月が二十一・七、十一月が二十一・七、十二月が二十四・七、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/8
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009・山本經勝
○山本經勝君 局長にお伺いしたいのですが、先ほど申し上げましたような具体的な事例ですね。そうしますと、どこか二十七、八日も、あるいは三十日近くも就労しているというような所もあるのですか。それがもしあれば、具体的に話してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/9
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010・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) 私は、今お話になりました、たとえば高知あるいは大分といったような所に、極端に低いといったような所には、何か別に事情があるのじゃないかというふうに考えております。と申しますのは、われわれの方といたしましては、一応そこにおける、たとえば民間の求人がどの程度あるか、公共事業がどの程度あるかということを見まして、それによりまして、それが非常に少い場合には、このウェイトが失対事業にかかるわけでございます。失対事業のワクを広げるというような形で、毎四半期査定をいたしまして、従いまして、これに見込んだよりもそうした者が予想よりも減ってきたという場合には、それを調査しておるような状況でございますので、特に十四日であるとか十日であるとかいったような事態がありますのは、何らかそこに別の原因があるのじゃないかと考えております。たとえば、あるいは地方財政上の財政負担ができないとかといったような事情も考えられますのでそういった極端な事例につきましては、われわれといたしましては、二十一日の就労を確保いたしたいということでやっておりますので、これにつきましては、われわれ、具体的にその原因を調査いたし、また、二十一日就労を確保できるように努力いたしたい、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/10
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011・山本經勝
○山本經勝君 実はね。そうではなくて、今のお話のようだと、大体全国平均で見ますと、十月以降における就労状況が大体二十一・何がし、こんな数字になるようですが、もしそうだとすれば、今のような極端な事例がある。しかも、おしなべて、また東京都下の場合でも、最近非常に低下しておる。これは事実だと思うのですよ。これは、東京都の労働局の資料に基いて見ましても、先ほど申し上げましたように、あぶれの増大というものは顕著に出ている。毎月大体二千人以上増大の傾向をずっと連続している。ことに十二月なんか、特別の事情で就労日数というものは多くなっているんでしょう。一月等もそういう関係がある。ところが、ほかの月は、事務系統が停滞して、金融引き締め等による応急措置が講じられたのを境にして、民間事業の吸収率等もずっと低下して、これはもうはっきり出ている。「日雇職業紹介業務状況」という資料を見ましても、はっきり出ている。これは、三十二年の五月就労総数を百と仮定しますというと、民間への吸収が、五月には二六%である。それが十月には二三%に下っておる。こういうふうに下ってくることが、一方には問題があると思うのですが、これは、当然金融引き締め等による中小企業の雇用の減少あるいは失業の増大ということになってくると思うのですが、そういうふうな状況や、あるいはその他の一般的な原因について、私は、今のような特殊な事例については、調査をした上で対策を講ずるという意味じゃなくて、そうした具体的な事実が局長の方にわかっておれば、しかるべく手が当然打たれなければならないのですが、しかも、その傾向に対して、総括的な対策を考えてもらわなければならないということを強調したいのです。ところが問題は、現に起っておる問題の中で、いわゆる就労の規制はしておらぬと言われるのだが、適格検査ということは非常に厳格に行われておる。あるいは査察制度と称する業務上の、何といいますか、つまり現場の就労あるいは労働能率に関するところの問題を中心にして、強力な機関を新しく設けて、監督しておる。こういうこともあるようですが、いずれにしても労働強化と、その半面では、何といいますか、あぶれが増大しておるということは、うらはらのような関係になると思う。そうしますと、次官の言われたように、規制はしておらないと言われるが、適格検査が厳格になって、就労がなかなかできかねると、こういう事実も私は指摘されると思うのです。局長の言われるような一般的なあれでもって、十二月以降の例をとられておるけれども、私は、十二月は例にはならぬと思うのです。去年の五月から始まって、十二月までの間に起っておる状況は、おしなべて現在の状態を推測するには余りある具体的な事例だと思うのです。そういうようなものの原因は何かということをもう少しはっきり、局長でなければ次官でもけっこうですから、御説明を願わなければならぬと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/11
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012・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) 私、先ほど申し上げました平均就労日数は、何も暮れの分だけ申し上げたのじゃありませんで、四月から順々に申し上げますと、四月が二十一日、五月が二十一・四、六月が二十一、七月が二十二、八月が二十二・八、九月が下って二十・八、十月、十一月が二十一・七、十二月は年末でございますから、特に二十四・七、こういうような数字になっております。今御指摘のように、民間吸収の状況等につきましては、これは確かに一時よりも私は、少し減ってきておる、こういうように思います。従いまして、減ったものは減ったものといたしまして、それを計算に入れまして、失対事業のワクを決定いたしておるような状況でございますが、ただ、おそらくその間に、今おっしゃったようなあれがあるといたしますならば、われわれの方としましては、二十一日計算ということでやっておるわけであります。従来もその方針でやって参っておりますが、民間が非常によかったということのために、先ほど申し上げたように、割合に就労日数がよかった。ところが、二十一日の線に落ちついたといったようなところで、そうしたものが出ておると思いますけれども、労働省といたしましては、特にそのためにこれを規制するとかいったようなことは考えておりませんので、二十一日ということは確保して参りたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/12
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013・山本經勝
○山本經勝君 続いてお願いしたいのですが、先ほど申しました「日雇職業紹介業務状況」という冊子の中に載っておる数字によると、たとえば、そういう民間の雇用吸収が非常に低下しておる。その半面で、失対事業がふえておるかというと、ふえておらぬ。申し上げるように、三十二年の五月の雇用総数、就労総数を百として、失対事業に吸収した率は八九%であります。ところが十月になりますというと、それが七八%に下っておる。約一〇%低下しておる。その間月々下っておるのです。これは、ごらんになればわかるのですが、こういう状況だと、失対事業も、その半面ではふえておらぬ。ですから、勢いこれは、あぶれる以外にないと思うのです。その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/13
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014・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) ただいまパーセンテージでおっしゃいましたが、失対自体としては、民間が減ってくれば、その分だけはふやしておる形になっておりますが、しかしながら、その総数としては二十一日の線でやっております関係上、従来民間が非常に多かった。従って、結果的には二十一日を上回ったというような場合におきましては、失対そのものの絶対数は変らない。あるいは多少ふえておりましても、相対的にはそうしたことがあり得るというふうにも考えられますが、具体的なものにつきまして、私どもも調査いたしたい。こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/14
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015・山本經勝
○山本經勝君 よく言われることですが、失業対策事業費がこの国会で審議をされ、決定をみる。そうすると、四月一日からかりに実施になる予定だと、そうすると、一般失対事業というのは、その手続的にも、事務的な準備態勢が非常に簡単にできますから、一月ぐらいずれて実際に就労を吸収することになるでしょう。ところが問題は、特別失対事業や、あるいは臨就といわれる分野は、その事務的な準備段階が長く、つまり四月一日から行われるその予算が、実際に業務開始になって地方に流れていく、そしてこの日雇い労務者の吸収を始めるという時期が、早くて八月、あるいは十月になるという関係がある。季節的なしわ寄せを年度末に持ってくるということがあり得ると言われております。またこれは、局長さん自身もお認めになっておると思うのですが、こういうしわ寄せが年度末か、あるいはその中間の期間の第三・四半期なり第四・四半期にいつも起る現象ではないかと思う。これは、非常に私は大事な問題だと思いますが、一般失業対策事業は、適格基準の基礎になっておりますから、勢い老齢あるいは婦人や、その他特別失対に行けない人々か、あるいは臨就に行けない人々がそこに吸収されるという一番苦しい状態のもとに置かれておる労務者がそこに行くのである。それが年度の中で、いわゆる第一・四半期、第二・四半期の場合は、そういうところに相当な予算が回って動くわけですが、ところが、第三・四半期、第四・四半期になってくると、それがなくなって、あるいは特失あるいは臨就、こういったものが多くなってくる。こういう現象が起ると思う。ですから、そういうものに対する具体的な対策は、労働省としてはどうお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/15
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016・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) ただいま御指摘の点は、私も実は同様に考えております。確かに年度の当初におきまして、特失あるいは臨就といったものは、設計その他の関係から、多少繰り越し分がございますけれども、少い。これが年間ならされるならばよろしいのでございますけれども、確かに今おっしゃったような事情がございます。これが年度末にしわ寄せられて、そのために、総ワクとしては変らないけれども、特失、臨就等に行けない人たち、つまり一般失対にしか行けない人たちの就労日数が減るのではないか、こういったような点は、そういうことが出てくるということは、私もあり得ることだと存じております。そういうことも考えまして、各府県における第四・四半期の割当等につきましては、特に特失、臨就等のあれが多いといったようなところにおきましては、一般失対のワクについて調整を加えておるような状況でございます。しかしながら、この点は、このままの形だけでは参りませんので、今後に、できるだけ特失、臨就が早く開始せられるように、と同時に、この間の調整については、さらに研究しなければならぬ問題が残っておると思いますが、現在におきましては、そういうふうな方法で調整を加えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/16
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017・山本經勝
○山本經勝君 今の局長さんのお話、一応わかるわけなんですが、ところが、そのことが、あの就労が低下しておる、あぶれの増大あるいは適格基準がやかましくて就労ができないといういわゆる訴えが起る原因になっておると判断せざるを得ない。先ほど申し上げた、たとえば愛媛県の南予地区あるいは高知県の西南部あるいは大分市等に現われておる具体的な就労低下というものは、やはりこの適格基準に基く配置がえ、あるいは都道府県等における資金の問題もあるかもわからない。しかし、そのことはあっても、やはりそういう状況に、予算の、何といいますか、実施に伴う時期的なしわ寄せが生じてくる。そうしてつじつまを合せるために、労働省としては、適格基準を厳格にして、そのワクの中にはめようと、無理なことをしておるとしか私には受け取れないのですが、その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/17
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018・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) われわれの一番苦心しておりますのはその点でございまして、全国的に平均したものが二十一日になれば、個々の事業主体のところでどうあってもよいというわけではないのであります。今言ったような事情も確かに私はあるというように考えます。そういう意味からいたしまして、先ほども申し上げましたように、そういう所につきましては、つい最近の機会におきまして、そのいろいろの事情について、各県の責任者を呼びまして、調査もいたしましたが、しかしながら、そのために、これをむしろわれわれの方でそうしたギャップをいかにして調整するかということを、現在のところではそういう方法でやっておりますけれども、さらによい方法がないかどうか、さらに円滑に行く方法がないかどうかということを検討するのがわれわれの役目でございます。そのために、逆に適格基準を、今度は別のものを作って、それを締めるとかいうようなことは、私は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/18
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019・山本經勝
○山本經勝君 次官にお伺いしたいのですが、これは、石田労働大臣がしばしば強調された、この間も私申し上げた問題なんですが、これは、三十三年度の問題だけじゃないですよ。昨年この委員会で、石田労働大臣が強調されたのは、積極的に国の投融資等によって民間企業を振興する。そうして失業者をなくする。完全雇用に持っていくのだ。それは、いわゆる経済規模の拡大に伴って、おのずから吸収されるというような消極的なものじゃなく、積極的に投融資等によって民間企業の振興をはかって、積極的な失業救済というよりも、完全雇用に持っていくという基本的な方針であるということを強調された。これは、次官に伺いたいのは、当時次官もおいでになったので、私は聞かれていると思いますが、ですから、次官として、そうした当面のしわ寄せが年度末をめざして一そう強化されるか、しかも、非常に強力ないわゆる労働強化、査察制度等が強化されつつある状況ですから、そういう方法でいわゆる年度末のしわ寄せをその労務者に押しつけて、そうして適格基準を厳格にしてみても、これは事実起っているのですから、具体的に事例をあげて話さなければ御理解願えないと思いますが、そういう状況で労務者にして寄せを押しつけて、そうして適格基準その他であぶれを作り、あるいは非常に心理的にも無理な状況でこういうことになっている。しかも、全国平均を見ますと、表の上では二十一日何がし、こういうふうな就労状況になっているからと言われても、これは、実際は労働省として、この日雇い労務者に対するほんとうの意味における救済がまじめに行われておると私は受け取れぬのです。その点をどう次官はお考えになっておるか。これを私は、基本的な問題として大事な点なので、お伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/19
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020・二階堂進
○政府委員(二階堂進君) 御承知の通り、金融引き締め等の影響を受けて、かなり失業者がふえるだろうということを予測いたしまして、本年度は積極的に、失業対策の事業につきましても、労働省といたしましても、相当な対象人員の増加を見込んで、予算措置もいたしておるわけであります。もちろん目標とするところは、完全雇用ということでありますが、本年度といたしましても、御承知の通り、公共事業関係につきましても、相当な予算の増額を見ているわけでございます。道路だけにいたしましても、約九十数億という予算を見ております。
なおまた、財政投資関係におきましては、道路公団とか、あるいは愛知用水とか、そういう事業等を積極的に推進いたしまして、港湾その他の事業につきましても、投融資関係の事業で相当積極的に吸収をしていこう、こういうふうな計画を立てておるわけであります。
なおまた、先ほどからいろいろ山本先生の方からお話がありましたが、労働者にしわ寄せをしてきている、なおまた適格基準をさらに強化してきている、あるいは査察制度みたいな監督制度というものを強化してきている、こういうことをいろいろお述べになりましたけれども、労働省といたしましては、そういう労働強化を積極的に考えているとか、あるいは働らく人の働らく状況を査察しているとかいうようなことをやっているわけではないのであります。ただ、私どもといたしましても、日雇いの方々の就労状態につきましては、いろいろな世間から批判があることも、山本さん御承知の通りであります。そこで、もっとそういう日雇いの方々が能率的に効果的に働いていただく方法はないものか。これは、世間の誤解を解く意味におきましても、私は必要であろうと思っております。また、日雇いの方々の働かれる適材適所というものをよく考慮して、そうしたら、世間の誤解を解くようなためにもなるのじゃないか、こういうようなことで、そういうことにつきましては、十分一つ世間の誤解を解く意味におきましても、協力を求めていく必要があるのではなかろうかというような意味で、私どもといたしましては、建設省の方にも私はしばしば参りまして、そうして、いろいろ誤解があるようでございますので、その点につきましては、労働省の立場といたしまして、誤解を解くように、積極的な努力をいたしておるような状況であります。ただ、そのことが、非常に適格者の厳選をやっておるとか、あるいは監督をやかましく言っておるとかいうようにとられるといたしますならば、決してそういうことは私どもの考えておる本意ではないのであります。誤解のないように、よろしく一つお願いいたしたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/20
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021・片岡文重
○片岡文重君 関連して。私、二つほど局長にお聞きしておきたいのですが、就労日数で、二十一日確保ということで従来もやってきておるし、今もそういう方針に変りないということを強調されておるようだが、さっき山本委員から指摘されたように、高知その他において、非常に少い就労日数が現実にあるわけです。そうすると、その原因が何かほかにあるのであろう。たとえば、民間の求人が多かったとか、何かほかに原因があってそうなったのであろうという、こういう説明のようでしたが、原因のいかんを問わず、とにかく平均日数にして二十二日もしくはそれを上回るような日数が出てくるとすれば、一方において十五日、十四日という日数があるのですから、それを平均して二十一日を上回るような日数があるとするならば、当然二十一日や二十二日を上回るような日数をもってやっておる所がなければ、二十一日という平均にはならぬはずである。それは、原因がどうだということではない、あるかないかということなのです。ところが、先ほどの局長の説明では、何かがあるのであろう、何か特別な理由があろうということを言っておられるけれども、それならば、その平均日数を上回る所はどうして出てくるのか、その点を一つ説明してほしい。つまり、原因のいかんにかかわらず、とにかく二十一日以上を出ている所が現実になければ、平均日数として二十一日は出てこないのだから、その出てきておるところはあるはずですよ。もしあるとするならば、二十一日として押えておるのだから、その出ておる所の費用というものは、どういうふうにして出してこられたのか。その点もあわせて、まずこの点を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/21
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022・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) 平均日数ということであれしております関係上、平均でございますから、上下がある、これはあります。この上回った所はどういう所であるか、二つ考えられると思います。一つは、東京みたいに、単独の事業をやっておるというようなことも考えられます。もう一つは、各四半期の前に、今までの実績、今後の見込み等を予測いたしまして、民間の求人その他をやります関係上、結果といたしまして、それが民間の思い通りに伸びなかった。あるいはまた、民間が伸びたというようなことで、結果としてそこに差が出てくるというようなことは、私はあり得ると思います。ただ、その場合におきましても、特に私は、京都等のように、財政関係の事情があるという所についてはわかりますけれども、かりに平均にして二十一日とすれば、その上下を一日か二日上下するというならば、話はわかりますが、十日間ということになると、ちょっと原因がつかみにくい。あるいはまた、今山本先生御指摘のように、特定の人について何かそういうことがあるとか何か特殊な原因があるのだろうということで申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/22
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023・片岡文重
○片岡文重君 都単その他県単ですね。こういうものを、二十一日を上回った場合は国としては認めないとか、削るとか、やってはいかんとか、やかましいことを言っておられる。従って、労働者の就労日数に出てくる場合は、そういうものの量は私はあまり出てこないと思うのです。それでもなお、上回った平均日数が出てくるということは、どうも平均日数、今説明された四月からの平均日数というものが、果して信憑するに足る資料に基いて出てきたのかということをはなはだ疑わしく思うのです。現実に各地方において、たとえそれが少数の人であろうとも、あるいは特定な町村においてでも、とにかくこの現実に指摘される事実のあることは事実なんですから、そういう事実が労働本省では把握されておらないように、局長の答弁ではうかがえるのですが、そういう事実を全国的に把握しておらないのかどうか。これが把握できないならば、これは二十一日を確保することすら、その計画すら具体的に起っておる事実をつかまえていかなければ、その起っておる障害を排除する具体的な対策は立たぬと思うのだが、今あなたの話を伺っていると、どうも、そういう事実については調査してみようというようなことで、現実につかんでおらないらしい。それを現実につかんでおらないとするなら、早急に一つ、全国的にそういう就労日数の足らない所の原因と対策を調べてもらわなければならぬと思うのだが、労働省は、どの程度に一体現実をつかんでおられるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/23
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024・三治重信
○説明員(三治重信君) 事務担当をやっておりますので、関連してお話申し上げますが、最近の一月、二月の就労日数が二十一日を欠けるようになった所がある。財政状態が悪い所、従って理事者側にこちら側から、二十一日の就労日数をやるように予算を組んでほしいと言っても、予算がないから組めない。自分のところは十七日だ、あるいは十八日だというふうな所が、先ほど山本委員の方から御指摘になった所では、ほとんど過半数がそういうふうに思います。それからもう一つは、予算としては大体二十一日の稼働ができるように組んであるにもかかわらず、昨年の十二月に全日労の攻勢が激しくて、それのために、二十四日、二十六日というふうに就労を食い込んでしまった。食い込んでしまったので、結局自分のところでは、それをまた一月〜三月二十一日の就労になるように予算を……、十二月までの三・四半期の予定のワクを食い込んでしまったから、さらに予算をというふうな所が相当ございます。しかし、それを一たん認めますならば、せっかく予算として……、われわれの方も二十一日を基準にして予算を組んでいるのが自分の所は、どういう理由があろうが、ワクの予定よりか就労日数が増加して食い込んでしまったために、一月〜三月の就労が足らないから、予算がほしいというふうな申し出があっても、それはちょっとこちらは応じかねるという、その結果として、現在一月、二月二十一日を割るという所も二、三ございます。そういう事情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/24
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025・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 ちょっと関連して……。さっき次官のお話の中で、要するに労務者の人に働いてもらいたい、こういうお話がありました。ところが、問題になってくる第一の問題は、PWとの関係だと思うのです。そのPWの八割を策定するときに、時間的なズレを持っている。労働力の対価としての賃金というものは、市場の中で、労働力に応じて高くなる場合がある。今日は、低くすれば食えませんから、むしろ高くなるのが現実なんです。その中でPWの策定というものは、時期的に相当ズレていると思うのです。ところが、失対事業の労務者には、そのズレているPWの八割というものを対象にして賃金をきめられている。これが一つの問題だと思う。
もう一つの問題は、労働省が失業対策をやろうとしたら、やっぱり自分の労働力として、民間就労に対しては、やはり生活のできるように、民間就労においてはもっと高く、高くといいますか、もっと生活ができるような形で民間就労との関係を労働省の役割として交渉される、またはそういうところに持っていかれるというのが私は根本の問題だと思う。この一つの問題をそのままの状態に置いて、ただ働けとか、もっと作業能率を上げよというてみたところで、私は理解ができないのじゃないか。さっき次官のお話になりました話について、私は、そういう問題を労働者としてはどう考えるか、そういうものの具体化、実際の労働力を提供している労務者に対して、やはり公正な賃金というものを生み出さない限り、そういう労働者の立場から、もっとしっかり働けというようなことは、私は言えないのじゃないか。そこのところあたりを、次官もう少し話して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/25
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026・二階堂進
○政府委員(二階堂進君) ただいま藤田さんがおっしゃったように、PWの改訂は、確かに時期的にずれて参っております。そういう関係で、上るべき賃金が押えられて、おくれている賃金で働かしておるのは不当じゃないかというような御意見であったと思うのですが、これは、確かにそういう議論もあるかと思っております。まあしかし、今の制度では、一応前の八、九月ごろに職種別の賃金実態の調査というものをいたしまして、それを時間をかけてよくまとめて、その結論を得た上で、この数字が出てくるようなわけでありますので、まあやむを得ないと私ども考えております。考え方の基本といたしましては、それは、藤田さんがおっしゃるようなことも、私は一応正しい考え方であろうかと思っておりますが、現在の制度上そういうふうになっておりますので、これはやむを得ぬと思っております。
なおまた、失業対策の仕事について、食えるだけの賃金を日雇いの方々にもやって、そうして積極的に政府がそういう仕事をやるべきが至当じゃないか、こういうようなお話でもあろうかと思っておりますが、私は、やはりこの失業対策という仕事は、これは、建前からいうと、失業対策の対象人員がふえるとか、失業対策の事業が増すということは、あまりこれは、政治の上からいっては、私はいいことじゃないと思っております。むしろそれが減るのがいい政治をやることである、そういう私は考え方を持っておりますが、しかし、現実に失業者がふえて参っておりますので、そういうのを吸収する第一の建前は、やはり民間の事業とか、あるいは投融資関係の事業を興して、そうしてその面で第一に吸収していくのが私は正しい行き方じゃないかと思っております。それでもってどうしても吸収し得ないものをば、国が失業対策等によって積極的にこれを雇用していく、働いてもらうというような施策を講じていくのが正しい私は考え方じゃないかと、こういうふうに考えておるわけであります。まあそれかといって、どうも民間にまかせきりで、だんだんふえてきておるものをば見て、知らぬふりをしておるというようなことは、これは当然してならないことであると考えておりますので、本年は、特に失業者がふえるというようなこと等も考えまして、失業対策事業には、一生懸命努力をして、予算を獲得したつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/26
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027・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 ちょっと私の質問が、言い方がまずかったかもしれませんけれども、私の申し上げたのは、労務者自身しっかり働けという次官のお言葉に対しては、それをおっしゃるまでに、PWはこういう賃金じゃないか、その八割というところで賃金を押えているのじゃないか。人間が労働力を提供するには、やはり働く条件というものが一つそこにある。それが一つ、もう一つの問題は、民間就労にしても、自分の問題として、より高い賃金で失対事業の労務者を守っていくという立場に立たなければいかぬのじゃないか。この二つの条件というものを労働省自身がおやりになることが先じゃないか。そういう働け働けというようなことをここでまあ大みえを切られるならそういう条件をもっと積極的に、八割じゃなしに、たとえば、PWの策定についても、百パーセントであり、また、PWの策定自身にズレをするようなことでなしに、もっと的確にその地域の賃金というものを策定して、労務者の賃金を策定していく、こういう問題とか、民間には、自分の問題として労務者の生活を考えて、自分の問題として交渉して、そういう問題を起していくということが私は先じゃないか。まずしっかり働かなければ困るじゃないかということをおっしゃるなら、それが先じゃないかということを私は申し上げているのです。一般論としては、次官の言われることもわかるところがあります。ありますけれども、その問題をもっと労働省は積極的にやって、生活の問題も考える、そうして今のようなことをおっしゃたらどうですか。私はこう言いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/27
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028・二階堂進
○政府委員(二階堂進君) 私が日雇いの方々に一生懸命働いてもらわなければならぬと、こういうことを非常に強く言ったような仰せでありますけれども、私は、安い貸金を与えておきながら、一生懸命働けと、労働者を酷使するような考え方でそういうことを言ったんじゃない。そういうことは、誤解のないようにお願いしたい。
それから、日雇いの賃金をうんと高くして、どんどん働かしたらどうか。これは私は、賃金というものは、高ければ高いほどこれにこしたことはない、いいと思っておりますけれども、しかし、たとえば、民間で払っております給金以上に、国がやらせる失対事業の日雇いの賃金をふやすということは、これはいろいろ議論があろうと思います。高い方へみんな入ってきちゃって、よけい働くなということも私は起るであろうと考えておりますが、私は、藤田さんの議論がよくわかっていないかもしれませんけれども、どうもそういうようなことになると、これはどうかというふうに考えておりますので、やはりこれは、一般の民間の賃金の八〇%ないし九〇%で失対の方々の賃金を策定していくというふうにきめておるのも、そこにあるのじゃないかと、こういうふうに考えております。あるいは藤田さんの御意見、私誤解があるかと思っておりますので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/28
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029・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私、関連してですから、これでやめますけれども、どうも十分に私の言っていることが……局長どうですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/29
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030・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) 政務次官と同様でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/30
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031・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そうならちょっと……、私は、何も民間の払っている賃金よりよけい払えとか何とかいうことをここで議論しているわけじゃない。労務者の賃金というものは平均三百六円という、それより上も下もあるでしょう。それができたものは、第一の条件としてPW——地域の貸金平均統計、これの八割を策定して、この賃金をきめられているということです。第一、次官聞いて下さいよ。そのきめるPW自身が時間的にずれて、今日賃金がどんどん上っているのに、PW自身がズレがある、この統計自身に。この八割を策定しても、相当ズレがあるのじゃないか。そうしてその民間の地域における賃金を私は何も八割とか、そのズレというものじゃなしに、この民間の働いている、労働力を提供しているような、それと同じ賃金というものが、労務者の方々でも労働力を提供しておられるから、そこに置くべきじゃないかということが一つですよ。もう一つの問題は、そういうワクの問題だけで民間就労ということじゃなしに、それの一つの考え方で、民間就労の中にも、この賃金というもので労務者の生活を守っていくという形で、自分の問題として、民間業者との間に話をされていくという、二つの条件が生まれてこないで、そういうところには、規定がこうなっていますということだけで、しっかり働かなきゃあ何とかということを言えないじゃないかということを言っているので、それをちょっと取り違えてもらっては困る。そういう形をまず先にするべきじゃないかということを言っているのです。どうですか、その点。それを、民間の方が高いとか何とか返事をされたんじゃ私は因る。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/31
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032・二階堂進
○政府委員(二階堂進君) どうも専門家の藤田さんと、しろうとの私が議論をしちゃ始まらぬと思いますけれども、なるほどPWの改訂の時期がずれておるということは、先ほど申し上げた通りでありまして、これは、決して私は好ましいことではないと考えております。しかし、現在の制度がそうなっている以上は、これは私はやむを得ないと思いますが、まあ考え方としては、私は好ましいことではない、検討すべき問題だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/32
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033・山本經勝
○山本經勝君 先ほどから申し上げていることを一ぺん整理をしてみる必要があると考えますが、私は、最近のあぶれの原因をまずとらえて、その原因を解除せなければならぬと考えるですが、そのあぶれの顕著に現われたもの、あるいは局部的に非常なへんぱな状態があるというのは、就労日数が、いわゆる二十一日の全国平均日数が浮んでも、地域的にはそういう矛盾が顕著に出てきている。この事実はお認めになると思う。あぶれの存在というものはお認めになっていると思う。そうするとそのあぶれの原因となるものは、昨年の岸内閣の打ち出したいわゆる神武以来の景気というものが、五月あるいは六月ごろから急転直下変って、そうして投融資等の繰り延べや、いろいろな形で金融引き締めをしたことが、民間企業の雇用吸収力が低下したということ、あるいは失業の増大となって現われてきたということ。これが一つの原因だということは、私は御否定にならぬだろうと思います。それからもう一つの問題は、週期的に、この予算のしわ寄せが局部的には大きく現われてくる。こういう原因もお認めでしょう。いま一つ、そのこととあわせて、労働省がこの日雇い労務者の吸収に対する政策をどういうふうに進められているかということが問題で、そこで、いわゆる適格基準なるもののワクをきめることによって、それに合わしたのではないかという私は疑いを持っている。それは、今までの御答弁では依然として解明できておりません。それで、どういうふうにして、適格基準を厳正に行われているか、厳正にと言っては、言葉が適当でないのですが、極端に行われている。こういう今申し上げたような状況があるから、地域において、あるいはまた、あぶれの全体の情勢から判断をして、やはり相当強力に適格基準が励行されるように労働省としては指導をされている。こういうふうに見ざるを得ぬ。その具体的な例を私は一つだけあげておきたい。それは、この人は戦傷者であって、廃疾者ではないのですが、戦傷者。そして病弱であるということで、失対適格にならない。そこで、その夫人が、奥さんがいわゆる失対事業の適格者として従来も働いておった。ところが最近、最近というよりも、この春になって、いわゆる一家で二人働くのはいかぬということで、その夫人の失対人夫の適格を剥奪されている。その理由が主人の、今申し上げますように、戦傷者で病弱であるということから、郵便配達、つまり簡易郵便局の郵便配達を請け負いでやるのをやっておった。そしてこれが月収五千円程度をあげている。そういう主人の細君が、今申し上げるように、失対人夫で働いておったのが、これが適格基準に当てはまらないということで、この一月にその適格基準から排除されている。そこで、生活保護法の適用を受けるようになっているのですが、もっとも子供が四人あって、生活保護法を適用する条件を一応持っていると思うのですが、そのような形で、適格基準が励行されておるという事実がある。それはしかも、先ほど申し上げました大分市、この地域にある。そうすると先ほど申し上げたように、大分市では、最近の実情を調べたところによると、月間十四日ですか、就労日数が。そういう状況に落ちている。その半面こういう基準が励行されている。ですから、やはりこのことは、地域的にも、先ほど申し上げた予算のしわ寄せが来た。そういう状態に合わすために、非常に無理な適格基準が強行される。こういうふうに判断せざるを得ぬのですが、これは局長、どう解釈なさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/33
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034・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) われわれの方で、各事業主体ごとの平均就労日数、これは、予算の割当ごとに明確にいたしまして、それをもとにいたしまして、やっておるわけでございます。従いまして、先ほどから申し上げましたように、そう極端なことがあるということは、われわれも承知いたしておりません。従って、もし一月以降にそういう事態が新たに出てきておるといたしますならば、これは、十二月の割当のときには、その点はわかっておらぬわけであります。しかしながら、二月の調整のときには、そういったことも調整可能ではないかと思うわけであります。しかしながら、現実にそうである。ただいま御指摘になりました大分市が月間十四日で、最近において十四日であるといいますならば、それは、われわれの方としては、二十一日の就労、この線を出しております関係上、何か大きな事情の変化が起ったと考えざるを得ませんので、それについては調査いたしたいと思います。なお、適格基準につきましては、現在の適格基準といたしましては、失業者であるということと主たる家計の担当者であるという、この二つの基準にいたしておりまして、従いまして、今お示しのような事情におきましても、奥さんが主たる家計の担当者であるということならば、差しつかえないと存じます。そうした事例につきましても、これも具体的に調べてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/34
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035・山本經勝
○山本經勝君 これは、私は具体的に例を今あげたわけですが、こういうことは、すでにこの委員会でしばしば論議をしてきた問題で、適格基準の問題は、単に大分市の問題だけではありません。全国的に行われているのですから。すでに局長御存じのように、労働省の通牒が出て、そして適格基準を励行するようになっている。これは、私は否定なさらんと思う。それが、今申し上げたように、いわゆる経済界の状態の変化や、あるいはまた、予算の実施に伴うしわ寄せというものが時期的に来る。このこともお認めになるでしょう。それにあわせて、今言うような適格基準が励行されて、しかも強行される。こういうことになりますと、どうしてもこれは、局部的には非常なしわ寄せが出ると思う。これは、今までしばしば、日雇い労務者の問題で、この委員会で取り上げて論議するたびに、この問題は基本問題として浮んでくる。だから、この適格基準というものをなくしてしまったらどうですか。あるいは適格基準を励行するという通牒を、もっと親切な、実情に即した取り扱いをするように改めるような指示をなさった方がいいと思う。そうでないから、今のような形で、局長とかあるいは次官通達、そういう固いやつが出てくる。あるいはそうすると、職安の窓口あるいは担当者はやはり励行すると思う。励行すれば、そういう事態が起ってくる。こういうことが客観情勢の変化に伴って、予算のしわ寄せなり、あるいは経済界の変動なり、自動的にこういうものによって動くようにできている。ですから、そういうようなやり方では、労働省が今言っている完全雇用あるいは失業者の救済をやりますと言うことは、言うだけであって、実際には効果が上らぬ。こういうことになってくると思う。このことを私は申し上げている。ですから、先ほどもいわゆる原因の究明と、それに対する対策、調査はむろんやってもらわなければなりませんが、単に調査ということだけでなしに、実際にそういうところに必要な予算の配合をして、こういう状態を改善されるような積極策をとってもらわなければならぬ。しかも、あぶれ増大の傾向は、昨年来の好況と、その後に起ったいわゆる引き締め政策、こういうものに起因するものでしょうが、そういう場合に、それに対応した裏づけになる対策というものを労働省は持たなければ私はいかぬと思う。そこら辺はどうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/35
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036・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) 適格基準につきましては、現在先ほども申し上げましたような基準でやっておりまして、これを今直ちに変更する考え方は持っておりませんが、しかしながら、これがたとえばそういう該当者がふえてきた。しかしながら、予算が足りないから、その適格基準というものを今度はさらに厳格にして、縮めていくといったようなことは、私ども考えておりません。適格基準は従って、仰せの通り、こちらの示した通り励行してもらう必要があると思います。しかしながら、その励行ということは、情勢が悪くなり、予算が足りなくなったから、そっちの方できびしくするのだというようなことは、考え方としては逆であると思う。ただ、まあ四半期ごとの予算の配付でございますので、一時的にそうした事態が、予算的な制約というものがあって、就労日数その他に影響を与えてくる場合がありましょうが、そういうようなものは、正直に正確な姿で現われることによって、次の四半期の割当の基礎とするということでなければならないと考えておりますし、おっしゃったように、そうした点につきましての、何と申しますか、間違ったやり方ということにつきましては、われわれ是正して参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/36
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037・山本經勝
○山本經勝君 それから、いわゆる労働強化の問題ですが、査察制度が相当強行されておる。それは、労働省としてはやっておらぬと言われますが、昭和二十四年以来、これは東京都でやっている。あるいはその他の全国都道府県においてそれぞれやっておる。これは、私は、福岡のことを非常によく知っているのですが、福岡の場合にも、昭和二十八年以来、査察制度というものは、県の労働部が中心になってやっておる。しかし、このことも、今のいわゆる就労引き締めの大きな役割をなしておる。これは、一般失業対策事業等に、公共事業等に吸収されるいわゆる労務者は、老年あるいは婦人、こういうような特殊な条件を持っている。そういうものを強力に査察することによって、あるいは特失でも臨就でもいいのですが、強力に最近行われている。そのことは、一方では一日働いて、翌日はもうからだがきつくてもたない。しかも、賃金は、御承知のように、安いのですから、そもそも三百六円なら六円、かりに平均賃金をもって見ましても、それは安い賃金。これは、今の産業労働者の賃金の水準から比べて、あるいは官公庁、公共企業体等における労務者の賃金に比べて非常に低い。これははっきり言えると思う。ですから、一日その職場で働くことによって、査察が強化されれば、そうすると、次の日は休まなければならぬ。こういう状態になってくる。あるいは一カ月二十一日働くことは不可能であって、十五日か、十七、八日しか働けぬ。こういう状況に追い詰められる。だから、この査察が強化されることもまた、就労の減退に役立つ。そこで、申し上げるような形で、規制の方法がいろいろあの手この手で考えられている。こういうふうにしか受け取れぬ。これは、どういうふうに弁解なさっても、そういうふうにとらざるを得ないと思う。ですから、今申し上げるように、具体的にこのことを労働省としては指示していないのであるということであれば、あるいは都道府県等がそういうことをやることについて、それは行き過ぎであるぞというくらいな労働省から強い示達を出すなり、指示をなさって、規制をされぬというと、そのこと自体が、いわゆる一般失業対策にせよ、特失、臨就にせよ、いずれの形を問わず、就労ができなくなってくる。一方、民間企業への強制紹介するものが最近あると言われておる。東京都なんか、ずいぶんひどくやっておるようです。これは、東京都の労働局の資料に基いて私は申し上げている。ですから、そういうような具体的な状況が出ておるということは、これは、労働省としては見逃してならぬ大事な問題だと思うのです。その点は、どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/37
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038・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) ただいまの現場査察制度でございますけれども、これは、現在やっておる失対事業は、御承知の通りに、国庫補助の事業になっておるわけでございます。従いまして、これが補助の目的通り行われておるかどうか、あるいはその要件通り行われておるかどうかということを、事業主体自身が内部監査をするということは、私は当然だろうと思うのでございまして、しかし、それが労働強化を目的とするとかいったような意味のことではないのでございます。この点は、誤解のないようにお願い申し上げます。従いまして、そうした査察をしちゃいかぬというようなことを私どもは申す気持は、これはございません。
それから、民間に対する強制紹介というようなお話、東京都で行われておる……。強制紹介というのがどういう意味か、私はっきりわかりませんけれども、第一に、まず、安定所に日雇労働者として登録されておる場合に、できるだけ民間の方に、民間に求人口がある場合には、その方に適するという場合には、まずそちらに紹介する、これが私はあくまでも原則である。そうした民間の求人口がない場合に、やむを得ず失業対策事業でこれを救済していくというふうにするのが私は建前だと思う。従いまして、これを紹介ということは、本人の能力に適した仕事であると認めてやることでございますが、しかしながら、たとえば、非常に老齢の人がとてもつき得ない仕事にむりにやるといったようなことは、全然考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/38
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039・山本經勝
○山本經勝君 今の査察をとめる考えはない、私は、とめよとは申し上げておらぬ。ただ、行き過ぎが顕著に出ておるということを申し上げておる。というのは、今申し上げるように、一般失対の公共事業であれ、あるいは特別失対の事業であれ、あるいは臨就であれ、その作業現場において怠慢でいいということを私は申し上げておるのじゃないのです。そうでなくて、いわゆる最近起っておる状態は、その査察を強化されることによって、たとえば、現場の近くに、何といいますか、管理班と称するものができておる。その管理班から、それぞれ現場の近くに作業場の状況を視察しておるわけです。そうしてこの者がだめだということで、翌日からだめになるとか、いろいろそういうようなことがやられておると承わっておる。ですから、そういうようなことをやられれば、勢いおびえた姿で職場におる、こういうことになってくる。そのことは、同時に労働強化を私は意味すると言わざるを得ぬと思う。だから、そういう査察のやり方は適当ではないのではないかと思う。ですから、そうなれば、その査察をかりにやめさすわけにいかぬというのであれば、こういうふうなやり方であるという具体的なやり方を、もっと懇切丁寧に指導してやられぬと、ずいぶん行き過ぎた問題が至るところに起りつつある。これは、昭和三十年から昭和三十一年にかけて、福岡でも問題が出ておる。先ほども申し上げたように、福岡では、至るところでこの問題が起っておる。そこで、そのときに問題を追求していったら、県の労働部が部長の指示でやらせておる。こういうことになって、県との問題がかなり紛糾したことは、これは局長も御存じだろうと思う。そうすると、そういうようなやり方が、こういうことをやってはならぬという一定の規範を与えぬと、野放しになる。その野放しになる査察が、次には就労を不可能にする、あるいは就労日数を逓減する、こういうことに役立つわけですから、悪く解釈すると、そういうあの手この手で規制しようとするそのことが、経済事情の変動なり、あるいは予算のしわ寄せ等によって生ずる矛盾を労働者の上に押しつけることになるのじゃありませんか、そういうことを申し上げておる。ですから、そういうことは、やはり計画的に排除してもらわぬと、せっかくの労働省の考えておる三十三年度の予算にしても、ほんとうに困った失業者の救済にならずに、むしろ痛めつける役割を果す、こういうことも私はあり得ると思う。で、最近職場で倒れた、そうして遂に死にました。その死んだ理由が、なるほど心臓麻痺か高血圧の理由のようですが、ところが、そういうふうになる状態が、この安い賃金で最低の生活、辛うじて命をつなぐという生活状態の中では、どうしても私は否定はできぬと思う。そうすると、大体からだが弱っておる。そうして十分な栄養がとられていない。給料そのものが安いから、こういうことになってくるのですが、そういう場合に、労働省として、やはり積極的ないわゆる失業対策を考えるというならば、ベース・アップを考えなければならぬ私は当然の理由があると思う。
それから、先ほども申し上げた、民間への強制紹介があるということは、民間の賃金が一般には、東京都の労働局その他の調査によっても安い。平均は大体三百円見当になっておるようです。これは、東京都の資料によっておるのです。ところがその三百円、二百七、八十円あるいは二百四、五十円、こういうような安い賃金の状態ですから、そこに行って、しかも、申し上げるように、公共事業による一般失業対策の中で働く場合と条件ががらりと変って、たとえば、港湾荷役等の問題に紹介された場合に、これはとうてい働けぬと言っている。というのは、健康で体力も十分あって、栄養も十分とってやっておる、こういう労務者の場合と違う。しかも年令がいっておる、平均年令が御承知のように非常に高い。ですから、そういった人々ではとうてい働き得ないようなところに紹介されている。ところが、紹介されて、それを拒んだならば、もうあとは紹介しない、あるいは失業保険ももらえぬということになってくるわけなんです。ですから、いずれにせよ、この最近の規制の状況は、私は看過するわけにいかぬと思う。そういうようなやり方でやられることによって、予算のワクの中にはめてしまう、こういうような行き方では、私は失業対策にならぬと思うのですが、そういう点を一つ、次官の方から御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/39
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040・二階堂進
○政府委員(二階堂進君) 現場のこの査察制度については、先ほど局長が申し述べた通りでありまして、決して行き過ぎたことをするようなことがないようにと、これは当然のことであろうと思っております。もしかりに、具体的に、お述べになりましたような行き過ぎたことがあちこちであるといたしまするならば、そういう行き過ぎがないように、懇切丁寧に指導し、あるいは監督するというふうに、私は、改めさせるように、善処をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/40
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041・山本經勝
○山本經勝君 何らかのいわゆる具体的なそういう指導をそれはしていただく、こういうふうに理解してよろしいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/41
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042・二階堂進
○政府委員(二階堂進君) はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/42
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043・山本經勝
○山本經勝君 それでは、査察制度については一応その程度にして、局長に伺いたいんですが、三十二年度の第四・四半期の二十二年度予算の地方への割当、都道府県への割当ですね。これは、この前事務当局に電話で伺ったところによると、大体十二月に仮決定をしまして、そうして目下実情に沿うて調整中であるというようなお話であった。これは、御説明申し上げましょうということであったんですが、これは、実は資料としてお願いしたい、この委員会に出してもらいたい、そのことなんですよ。先ほどから申し上げましたように、三十二年度の第四・四半期におけるいわゆるあぶれの増大あるいは局部的な非常な就労日数の低下、こういうようなことが現われていることは非常に重大であって、しかも、その予算の割当がどういうふうになっているかということがはっきりしないと、議論ができないと思うのです。そういうので、特にこの点、資料としてあとでお出しを願っておきたい。
それからいま一つ、大蔵省の鳩山主計官がお見えになっておるから、お伺いしたいんですが、労働省の失業対策の予算について、この中で、今の地方への割当ですね。これは、労働省が単独でやるのですか。それとも大蔵省もこれに関与するんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/43
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044・鳩山威一郎
○説明員(鳩山威一郎君) 私どもの方では、各四半期の労働省の実施計画の総額を御相談受けまして、総額を御相談してきめます。具体的に地方への配分につきましては、これは、私どもとても手が及びませんです。労働省の方で責任をもっておやりになっておる、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/44
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045・山本經勝
○山本經勝君 続いてお願いしたいんですが、東京都では、御承知のように、東京都単独で、簡易失業対策事業費なるものを約八億数千万円組んでおる。この種の地方単独の失業対策事業費というものを組んでおる府県が他にありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/45
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046・鳩山威一郎
○説明員(鳩山威一郎君) 私のところでは、東京都だけというふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/46
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047・山本經勝
○山本經勝君 局長にお伺いしたいんですが、これは他にないですか、ほかの府県で。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/47
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048・三治重信
○説明員(三治重信君) ほかに新潟とか長野県、その他二、三あります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/48
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049・山本經勝
○山本經勝君 その二、三というのはどこですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/49
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050・三治重信
○説明員(三治重信君) 島根県、静岡、長崎県、兵庫、栃木。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/50
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051・山本經勝
○山本經勝君 そこでまた、局長にお伺いしたいのですが、この種の、地方単独の予算を組んで失業対策をやっておる、これは非常にいいことだと思うのですが、ところが労働省は、こういう予算を組んだ地方公共団体に対して、これらが吸収する失業者あるいは世話をしている失業者の対策を、この全国的な予算のワクの中に一緒にひっくるめて考えられておる、こういうこと、従って監督指導の面からいいますと、そういう都あるいは府県については——たとえば、東京都の例を引けば、そのいわゆる失業対策事業、すなわち東京都独自の予算によってまかなわれておる労働者をその対象人員の中に入れておる。労働省で言っておる、たとえば二十五万人の対象人員の中に含めて考えておる。従って、予算面で押えていくというやり方がやられていると聞くのですが、その点は、局長どう考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/51
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052・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) その点については、こういった点があろうかと思います。たとえば、四半期ごとの割当でございますので、地方によっては、ある程度自分のところの単独で失対事業的なものを始めまして、そして次の四半期から正規の労働省のワクの中に入れていくといったようなこともあって、具体的にそうしたこともございます。東京都のように、たとえば、学校給食でありますとか、それから、新宿の駅前で朝二時間程度のパート・タイムの掃除のことをやるというのも、失業対策事業的なものといたしまして、東京都でおやりになっている。こういうのもあるわけでございます。それからまた、われわれの方といたしましては、いわゆる県独自の事業もいろいろあるわけでございまして、そうした仕事に安定所の登録者が行くという場合には、一つの民間的公共事業の一種だと考えられるのが普通でございます。しかしながら、まあ東京都の場合に、それだけでは十分でないからといって、特別に失業対策事業をやると、これは大体ワクがきまってからそうした御決定をなさると、従って、自後の問題になろうかと思いますが、そうしたものにつきましては、財政の豊かなところでそういったことを、そこ限りでおやりになるといった場合には、どうこう言うあれはないと思いますけれども、しかしながら、今までの実績、経験その他から考えますと、その辺がはっきりいたしておればよろしゅうございますけれども、ややもすると、県単事業を、県単で失対をやっておるのだといったようなことで、普通の県の事業についてそうしたものをお考えになったり、あるいは、県単事業別にやっておって、国の補助の対象になる事業につきまして、赤字を出したといったようなことで、しりぬぐいを本行がさせられるといったようなこともございます。従いまして、われわれの方としては、その点十分に検討して参りたいと思いますし、また、先ほども申し上げたように、登録者がふえてきた、適格者がふえてきたという場合には、国の計画の中に吸収してやっていくということが一番いい方法じゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/52
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053・山本經勝
○山本經勝君 これは私は、たとえば東京都の例を引けば、簡易失業対策事業を東京都がやっておるということは、本来国の立場から見れば、これは国の仕事だと思う、失業対策として見ればですね。失業者が事実あるのですからね。それがいわゆる適格基準等その他の規制が強化されるというと、勢いそういうふうなものが増大されるということも言い得ると思う。それから問題は、こういうふうに考える場合もあると思うのです。今の適格基準を基礎にして、就労を規制するということは、一方に、登録人員の規制ですかに結果的にはなって参りますから、そのことからはみ出してくる失業者を、当該都道府県あるいは市町村等において、自分の町民であり、市民であり、県民である失業者をどうにもならぬから、やむにやまれずそういう方法が講じられる。そうすると、それをいいことにして、国はその地方まかせで、それはお前のところでやっているのだからというので、やらしておくという考え方は、私は、まことに不親切なやり方だと言わざるを得ないと思うのですが、それは、そういう都道府県に対して、予算面での失業対策事業費の国の割当というものは、相当規制されているやに聞くのですが、そこら辺はどうなのですか。局長、直接都道府県の割当等を最終的に決定なさるのでしょうが、そういうことが、たとえば、この前から申し上げておるように、都道府県への割当を一応決定したら、その資料を下さいと言ったけれども、資料はやれぬ、こういうことで、御説明は申し上げましょうというような話であった。そういうことの裏には、この調整を含むそういう問題が伏在すると、非常に悪く私は推察をしておるのですが、そうでないなら、ないということをはっきりしておいてもらいたい。そうせぬと、地方の問題として日雇労務者の対策が論議されるときに大事な問題になる、こう考えますので、伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/53
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054・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) 失業対策事業は、国の補助しております一つの事業種目でございますので、たとえば、学校給食とか、パートタイムのさっき申し上げましたようなことについては、今のところ、それを種目に載っけておりません。しかし、その他の対策につきましては、先ほども申し上げたように、適格者がふえるといったような場合には、国のベースへ載せていくことが私は適当であるというふうに考えておる次第でございます。割当の問題について話がございましたけれども、何もこれは、秘密にする必要はございませんけれども、しかしながら、実際問題といたしまして、先ほども申し上げたように、一回やって、さらにまた、その後状況等によって調整いたすわけでございます。調整いたしましても、県に直接全体のワクが参りますと、またいろいろ事業主体等の問題もございまして、その事情も変って参りましょうと思いますので、私は、一律に申し上げかねると申し上げた次第でございますが、今の県の単独事業等につきましては、それがいわゆる民間の事業ないしは公共事業に準ずるものとして入れば、当然それは、一つの吸収策として考えられるでありましょうし、国の割当がきまりましてから、これだけじゃどうにもわれわれの方としては足りないからというようなことであれば、あるいは別の対象をやりたいのだということであっておやりになる分には、私どもとして、どうこう申し上げるわけには参りませんけれども、しかしながら、先ほど申し上げたようないろんな弊害も出て参る関係もございますので、できるだけ国のベースに合うものにつきまして、これは国のベースでやっていくということにいたしたらいいじゃないか。ただ、登録者を従って制限したり、あるいは適格者の基準を、そういう状況が悪いから締めるといったようなことは、私は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/54
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055・山本經勝
○山本經勝君 朝日新聞なんですが、こういうふうに書いてあります。「国が知識層失業者の組織化を恐れてか手をつけないのを都はあえて実施中」ということが書かれてある。今の簡易失対事業、失業対策事業というのをやって、これは相当顕著に実効が上っておると言われて、なかなか評判のいいあれですが、問題は、そういう予算が組まれるということは、たとえば、弱い地方公共団体、都道府県では困難である。しかしながら、東京都や、あるいは先ほど言われた、長野とか新潟とか、こうした有力な、財政の堅実な県では、やはりこういう仕事をやらなければならぬほど実は失業者をかかえているということです。ですから、完全雇用ということを労働省が言われるならば、少くともこれをもっと親切に手を差し伸べて、国の総括的な予算の中でまかなってやるようにしなければ、健全な財政状態のいい都道府県ではやれても、全般的にはこれは困難だからやれない。ですから、そういうことがあることを事実認識されなければ私はならぬと思うのですが、その点は、次官の方から、どうお考えになっているか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/55
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056・二階堂進
○政府委員(二階堂進君) 先ほど局長から答弁いたしました通りに、やはり建前としては、私は、財政的に余裕のある県が相当な失業者をかかえておって、県単位でそういう失業対策事業を起して、失業者を吸収しておられるということは、これは、建前から言いますと、国がやるべき事業を県でやっておるのでありまして、できる限りやはり適格者で、しかも、失業対策事業の種目に入っておるような大事業は、将来はやはり国が考えていくのが適当であろうと考えております。しかしながら、現在失業対策事業の予算のワクも限られております。そういうことでありますので、なおまた、労働省としては、全国的な立場で失業対策事業というものを見ていっておる関係上、そういうところまで現在手が及んでいないと思うのでありますが、将来は、やはりそういう実態もよく研究をいたしまして、善処しなければならぬと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/56
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057・山本經勝
○山本經勝君 これも、やはり私は、適格基準の問題に集約できていくと思うのですが、適格基準を厳格にして、そうしてはみ出していく、つまり就労制限をされていく、こういうふうになっていく勢いというものは、やはり地方公共団体に押しつけられて来る、こういうことになっていくので、先ほどのお話のように、適格基準は、一応出したものであって、すでに出した通牒あるいは指示であって、これを取り消す考えはないと言われた。しかし、取り消す考えがなくても、現在のような適格基準の、何といいますか、過度に厳格なやり方、これは適正に抑制されなければ、これはやはり問題だと思う。それについて、何らか具体的な指導をなさるお考えがあるかどうか、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/57
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058・百田正弘
○政府委員(百田正弘君) 私が申し上げましたのは、非常に登録者がふえてくる、あるいはそうした該当者がふえてくると、予算上執行ができないから、この適格基準を、そういう情勢に応じて、今度逆に強く締めるといったようなことは適当ではない。やはり正確な状況を反映してもらって、それに応じて失業対策事業費の予算を組んでいくのが適当な方法であるというふうに申し上げております。従いまして、そういう方向で地方については指導いたしたいと考えております。なお、先ほどお話のございました、東京単位の、たとえば、知識階級の失業対策事業等のことでございます。現在、なるほどおっしゃる通り、建設事業関係ばかりでございます。われわれといたしましても、適切なる知識階級層を対象といたしたところのものが全国的に実施できるといったようなことにつきましては、かねがね研究いたしておるところでございますが、いまだそこまで至っておりませんけれども、これは、今後十分にそうした、対象に応じた失業対策事業が実施せられるように考えて参りたいと思います。また、現在失業対策事業に従事中の方でありましても、もっと視野を広げて、あるいはこうした人が授産場的な所で生活が維持できるといったようなところも、広い視野から考えていかなければならぬのじゃないかと考えておりますが、今後一そうこの点については、対象に応じた対策を検討いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/58
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059・山本經勝
○山本經勝君 時間もございませんし、最後に、一点だけ確かめておきたいのは、査察制度の強化ということについては、これは、労働省として積極的にやっておるのではない、これは、予算を実施する上から言って、地方公共団体がそれぞれ責任がありますから、やむを得ぬ部分も私はないとは言えない。しかし、これも、行き過ぎがあるという実情を私ども聞くに及んでは、やはり黙過できませんから、労働省としては、具体的に言って、査察制度、つまり管理班とか、都道府県でいろいろ名前は変っておるようですが、何しろ現場について査察をして、基準の中に当てはめて制限をしていくという行き方が、現に結果としては現われておることは、否定できぬと思う。ですから、こういう点については、行き過ぎがあれば、是正をしなければならぬというお話があったので、それを期待いたします。
さらに質問は、大臣が次回等に見えるでしょうから、お願いいたしたい。その前に、先ほど要望いたしました、昭和三十二年度の第四・四半期における三十二年度予算の都道府県への割当、これを一つ資料としてお願いをしておきます。なお、本日資料をさらに出していただいて、あぶれ増大と、地域的に非常な矛盾が起っていることはお認め願えると思いますので、これに対する地方差の結果を一つお知らせ願いたい。資料としてお出し願いたい。このことをお願いして、私の質疑を本日は打ち切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/59
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060・阿具根登
○委員長(阿具根登君) 本件に対する本日の調査は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/60
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061・阿具根登
○委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。
休憩いたします。
午後零時二十一分休憩
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午後一時五十二分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/61
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062・阿具根登
○委員長(阿具根登君) 再開いたします。
委員の異動を報告いたします。
二月二十七日付をもって山下義信君及び後藤義隆君が辞任され、その補欠として、大矢正君及び西岡ハル君が選任されました。
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063・阿具根登
○委員長(阿具根登君) 労働情勢に関する調査の一環として、けい肺対策に関する件を議題といたします。
午前中の当委員会の決定に基き、けい肺対策審議会の方々に、参考人として御出席を願っております。
各参考人の方には、お忙しいところを御出席願いまして、ありがとうございました。これから御意見をお伺いするのでございますが、初めに、会長さんから、現在までの審議会の進行状況及び今後の見通し等につき意見の発表を願い、次に、各委員の質疑に対して、各参考人からお答えを願うことといたしたいと存じます。御了承をお願いしておきます。
では、けい肺対策審議会会長勝木新次さんから御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/63
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064・勝木新次
○参考人(勝木新次君) それでは、私から、けい肺審議会の今日までの経過と、そこで論議されました主要な点について、一つ御報告申し上げたいと思います。
けい肺等の特別保護法に基いてけい肺審議会が作られまして、その第一回が開かれたのが、三十年の十二月十五日でございますが、それから本日までに、十回審議会の総会を開いております。そのほかに、小委員会を設けて、その小委員会の会合が五回開かれておるわけであります。審議会の議事といたしましては、このけい肺等特別保護法の実施に伴いましてまず行われました、政府の手による健康診断の実施の状況について報告を伺い、その進行並びにそれに基いての処置等について、いろいろ検討が行われてきたのであります。と同時に、一方この法律が国会を通過いたします際に付帯決議がされておりますが、その付帯決議の中の作業転換給付の増額というものや、それから、けい肺患者の就労施設を設けるという、その二項目について、労働省から諮問がありましたので、その点について、いろいろ討議を続けてきたわけであります。で、この問題は、進行の関係から小委員会に付託して、まず小委員会で前段的な討議を尽すという形式をとりまして、その小委員会には、きょうお見えになっている新居委員が小委員長として、議事を進められましたので、詳細は、新居委員長から御報告があろうから、よろしいと思いますが、簡単にその内容を申し上げますと、転換の給付増額については、もちろん給付が厚くなるということはけっこうだと思われますけれども、どういう程度に増額がされることが適当であるかということを考えますために、労働省の方から、実際に近年作業転換が行われた実例について、その給与の状況等、具体的な材料の提示を願って、それに基いていろいろ討議を行なったのであります。それから、就労施設の問題については、これは、労使の意見にかなりの食い違いがありまして、そのおもなる点は、労働者側の委員の方としては、この就労施設に労働者が入る場合には、従来の雇用主との関係をそのまま続けたままで入るのが適当であるというような見解を持っておられますが、一方使用者側の委員は、その場合には、雇用の関係が一旦切れて、そうしてそこへ入っている状況ということを基本に考えるべきだというような意見がありまして、この点について、いろいろ話し合いが進められたのでありますが、なかなか一致点を見出すことが困難であるという状況であります。それで、この二つの事項は、いずれもけい肺の状況によって従前の仕事を変える、まあ作業を転換する問題に関連があるわけでありますが、この作業転換については、いろいろな角度から慎重に行われなければならない事情もあるわけでありますが、そういう点に関連いたしまして、作業転換の勧告をする場合の基準等についても、さらに明確な方針を定める必要があるのじゃないかということで、そういう点もいろいろと論議に上ったのであります。そういうようなことで、小委員会で論議が継続されておったのでありますが、結論を見ないままで三十一年が終りまして、三十二年に入りまして、この審議会に関係の主要な委員と申してよろしいかと思いますが、使用者側、労働者側、それから私自身、いずれもほぼ同じ時期にヨーロッパ等へ参る関係がございまして、審議会を開くことがかなり長い期間できませんでした。それで、三十二年の十一月になって、また委員会を開きました。で、従来の論議の問題をさらにしぼって、早く結論に達したい。こういうことで、現在進行しているわけであります。
非常に概略でありますが、従来の経過をかいつまんで申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/64
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065・阿具根登
○委員長(阿具根登君) それでは、参考人の方に対し質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/65
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066・大矢正
○大矢正君 ただいま勝木さんから、審議会における法律制定後の経過について御説明をいただいたのでありますが、
〔委員長退席、理事木島虎藏君着席〕
ただいまの説明は、転換給付の問題、それからまた、転換後の就労施設の問題というようにして、前の国会で付帯決議された事項について検討してきたという御説明なんでありますが、そのこと以外に、法律を制定してからもう二年以上も経過いたしておるのでありますが、審議会としては、こういう、今説明をされた付帯決議以外に、法律それ自身の中で改正をすべき余地があるのじゃないか、あるいはまた、実際の運営の面で、まだ法律には不足の点があるのじゃないかというようなことで検討をされたことはないでしょうか。その点、ちょっと質問いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/66
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067・勝木新次
○参考人(勝木新次君) ただいまの御質問の点でありますが、この法律が実施されまして、まず、現在けい肺の発生の実態を明らかにする重要な意味を持っておる健康診断が、この三十二年度まで政府の手で行われてきまして、まだその結果が三十年度分、それから三十一年度分はほぼ明らかになった程度で、全部終了しておりません。それで、まだ法の趣旨が実際に実現する一つの最初の段階が進行中というようなことで、その間実施の状況等について報告を伺って、いろいろこまかい点についての討議は出ておりますけれども、それを集約して、この法律そのものが改正されるべき点があるかないかというようなところまでまだ審議会としては、十分突っ込んで討議する段階にきておらなかったと、私はそういうふうに了解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/67
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068・大矢正
○大矢正君 法律が制定されましてから今日までの間、審議会の委員の方々は、勝木さんを初めとして、審議会それ自身の中で、あるいはまた自分個人としても、日夜けい肺についての御研究をされておることと思うのでありますが、まだ今の段階で、審議会としてまとまった意見を政府に答申をするところまでは来ていないという御発言なんでありますが、私は、これはどなたにお聞きするかといえば、これは、勝木さんに御回答をいただく以外にないと思いますが、法律制定当時と今日とを比べまして、医学的な見地から見て、法律制定当時考えられた考え方と、それから今日なおけい肺を考えてみる場合の考え方に、変化がないのかどうか。言いかえれば、法律制定当時医学的な見地で考えられた立場というものは、今日なお依然として変っていないのかどうか。あるいはまた、もっと突き詰めていくと、医学的な立場から言って、法律制定の当時考えられたような考え方が、依然として今日もなおその通りの状況であるのかどうか、こういう点について、できるならばお答えをいただければ幸いだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/68
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069・勝木新次
○参考人(勝木新次君) 基本的な線では、法案が成立いたします当時、まあ、私どもと申してよろしいかどうか、私個人になるかもしれませんが、基本の線はあまり変っておらないと考えます。ただ、この法律に基いて、粉塵作業全般にわたっての非常に広範な調査が行われて、日本におけるけい肺発生の状況が逐次具体的に明らかになって参りましたので、それに基いて、細目の点では、いろいろ事実の上から教えられるところがあると考えております。たとえば、現在までのところ、この法によってと申しますか、法に基いて労災補償の対象に入り、やがてはこの特別法による保護を受けるような状況になるような対象、そのほとんど圧倒的な部分が結核を合併しているというような事実が、これは全産業にわたって明らかになってきております。従って、現在においては、日本のけい肺問題については、結核を防止して、悲惨な状況に陥る患者を極力少くするというようなことが非常に重要であり、またそれらの点にうんと努力を注げば、状況ははるかに現在よりもよくなるであろうということがありますし、また、このけい肺に合併する結核についても、だんだん学界としても経験を積んで参りましたので、それらの結果が実際に貢献し得る面も、逐次開けつつあるというように考えております。
そういうふうに、法の実施によって実態が明らかになりますにつれて、的確な対策を行うことができるようになってきているというようには思いますが、基本的な線は、当初考えられたことと、それほど修正されなければならないような点を含んでおるとは考えておりません。それでお答えになっているかどうかわかりませんが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/69
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070・大矢正
○大矢正君 私も、いろいろ鬼怒川のけい肺病院もおたずねして、御説明を受けたり、あるいはまた、それ以外の方々ともお会いして、勉強さしていただいているわけでありますが、確かに基本的な考え方として、法律が制定をされる当時考えられたように、病状というものは、固定をしても、これは決して治癒するものじゃないという考え方は、今日もなお間違いではないと、私は思いますけれども、しかし、医学の進歩、それからまた、ある程度の予防措置、あるいはまた、健康診断等を通じて、比較的に、何と申しますか、けい肺にかかられた人たちのその後の症状というものは長くもつという、言葉が当てはまるかどうか知りませんが、法案制定当時には、おそらく大体命取りになった場合には、二、三年でなくなられるのじゃないかというような危惧も相当あったようであります。しかし、現実的には、今申したように、いろいろ、医学の進歩その他で、相当これが変って参りまして、どのくらいということは、具体的には出すことはできませんけれども、相当長期にわたって、その後もまあ生きていけるという見通しがついてきたように私は思うのでありますが、そういう立場から見ると、多少前の考え方と、それから今日の情勢では、根本的には変化はないけれども、具体的な面では、変化が起りつつあるのじゃないかという気がするのですが、勝木さん、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/70
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071・勝木新次
○参考人(勝木新次君) その点は、ただいまも申し上げたことでありますが、一方結核につきましては、その治療技術が非常に進歩して参りましたということもその背後にあるわけでありますが、けい肺結核の患者に十分な治療が行われます場合、治癒は困難でありましても、少くも、はっきりした数字は私も今ここに持っておりませんけれども、死亡率は非常に低下してきておるようであります。ということは、やはり治療によって結核の進行をある程度阻止することが明らかにできるということも言えるかと思います。また、その結核の発見が非常に早期に行われれば、治療効果はさらに上るわけで、このような場合には、相当労働能力を残した状況で病状を停止させてしまうということも困難ではないという例も、あげ得ないことはないというように、結核につきましては、ここ数年の間にいろいろ経験を積まれ、知見の上でも進歩があったと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/71
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072・大矢正
○大矢正君 普通一般の結核の場合なんかも、これは、昔から漸次療養年限というものが延びてきているということから考えてみましても、私は、けい肺の場合も同様に、療養年限が、法律的な措置としても延びることが望ましいのじゃないかという気がするわけでありますが、私は、こういうことをお尋ねするのはどうかと思うのでありますが、審議会として、療養年限というものが現実的には長くなりつつあるということについて、御検討されたようなことはないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/72
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073・勝木新次
○参考人(勝木新次君) 審議会としては、今のような点を、特に資料の提示を願って、検討したことはなかったように記憶しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/73
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074・大矢正
○大矢正君 それから、先ほどちょっと出たのですが、就労施設の問題ですが、政府のたしか、私の記憶では、予算の中にも、就労施設の予算は組まれていると思うわけですが、これは当然、法制定の立場からいって、そうならなければいかぬことでありますが、この就労施設に労働者を収容するという点について、先ほど、労使の間でいろいろ意見の相違があるというお説でありますが、できれば、どういう点で労使の意見が対立しているのか、御説明をいただければ幸いかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/74
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075・勝木新次
○参考人(勝木新次君) それは、さっきもちょっと簡単に申しまして、この点は、むしろ小委員会の委員長の新居さんから詳しく御説明いただく方がいいかと思いますが、就労施設に入った労働者の身分上の問題がおもな論議になったわけであります。労働者側は、就労施設に収容された場合にも、以前の雇用主との関係を継続したまま、退職をしないで、雇い主、使用者との雇用関係を継続の状況においたままで入るようにすべきだ、こういう御意見、それから使用者側の方は、企業内で配置転換をする場合は、もちろんこれは、雇用が継続しているわけであるけれども、別の就労施設へ収容されるようになった労働者の場合については、雇用が継続されない状態、退職をしてここに入る、こういう条件を基礎に考えていきたいというところで、意見が対立しておるというわけであります。
なおこれは、詳しく新居小委員長の方が……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/75
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076・木島虎藏
○理事(木島虎藏君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/76
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077・木島虎藏
○理事(木島虎藏君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/77
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078・山本經勝
○山本經勝君 会長に伺いたいが、この法案が三十年七月一日に衆議院で議決される当時、あるいは参議院に回って、引き続き審議をされた中で、付帯決議の条項の四項目というのは、非常に重要な意味を持っておったかと考えるのであります。というのは、いずれは死に至るまであろう、療養によって回復するという見込みのないけい肺患者あるいはせき髄障害といったような状態であることは、おそらくこの委員の皆さんが一致して考え、また、論議した点なんです。従って、少くともこのけい肺にかかった労働者は、救われることのない者である。従って、その論議の中で言われたことは、でき得べくんば一生涯を国が見てやるか、あるいは使用者が見てやるか、いずれにせよ、その仕事のためにささげたからだがそのためにだめになるということでありますから、見てやるべきであるということが論議の焦点になっておったと思います、大ざっぱに申しますと。それに対して、いろいろなことが論議されたのですが、その中で、今の配置転換の問題あるいは就労施設とその間の労働者の取扱い、こういうことで、この付帯決議の第一、第二の二項目が上っておる。従って、根本的には、法そのものの基本的な考え方あるいはまた目的、そういうものから出発して、最小限度この程度のことは至急に講ずべきであるという趣旨の付帯決議である。
そこで私は、ついせんだってこの委員会で、実は当局側に質問をしていたのですが、審議会の審議が一向に遅々として進まない。そこで、何らかの結論を求めたいのだけれども、聞くところによると、月に一回ぐらいしか会合が開けない。予算の点もあるのじゃないかということも申し上げたのでありますけれども、いずれにしても、そういう形で来ておる。ところが、根本問題は、さっき言ったような、けい肺にかかった患者がなおらないということ、何らかこれは、完全な保障の方法を考えなければいかぬ。それからもう一つは、予防措置が必要である。まず、けい肺にかからないことが前提にならなければならない。こういうことで論議を進めたわけですが、今までの検診等の結果を見ますと、ずいぶんふえておる。三十年度、三十一年度の集計を見ますと、二十八万なにがしという多数の検診の結果が、現在四等症だけを見ましても、千七百四十一名という多数に上っておる。もっとも、現在療養中の者も入っておるというのですが、そういうような状況ですから、やはり審議会の方へ答申を求めておる。労働省の考え方も、その審議の過程で明らかになったいろいろな問題点をなるべく早く解決するために実は答申を求めている。こういうふうに考えているのですが、それで、後ほど小委員長の方から、今のお話の、労使双方側のそれぞれの意見の食い違いというような点をこの際明らかにしたいわけですが、ただ、会議が月に一回程度しか持たれないというような形で、実際は、実の入った審議が継続的に行われて、すみやかに結論を出すという状態になかったのではないかという多少懸念があるのですが、そこら辺はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/78
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079・勝木新次
○参考人(勝木新次君) 大へん審議会として申しわけない点も確かにあったと思いますが、先刻申し上げました通り、三十二年度には、審議会関係の労使公益それぞれの委員がヨーロッパの方に行って参ったというような経過がありまして、その間、相当長い期間審議会を開くことができなかった。そのことが審議を特に長引かせておる結果を招いた主要な原因になっておる。審議会は月一回ということは、必ずしもそういうふうにしておるわけではございませんで、現に、三十二年十一月からきょうまでには、五回開かれております。それで、今月などは、ほかに急ぎます、たとえば、この法の使用者負担金の料率決定の問題でありますとか、時期を急がれた点もありまして、それをまず先にやって、それで、前から引続きやっております小委員会の事項については、即刻来月に入ってまた審議を始めようというようなことで考えておりまして、故意に会の開催が間遠であって、そのために審議がおくれているというような結果でもないのでありますので、これは、御了承を願いたいと思っておりまするが、昨年は、確かに会議を開くことができませんで、非常にその間審議が遅延した結果になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/79
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080・山本經勝
○山本經勝君 決して不平不服を申し上げておるのではないので、努力はしていただいておると思うのですが、そこで問題が、関係しておられる委員の皆さん方の努力、もしその辺が、労働省の方の積極的な協力態勢がないために、そういうふうになっているということであれば、大いに問題であるし、もう一つは、予算の方も十分でない、会議が開けない、あるいは手当が不十分であるということであれば、これは率直にお話していただいて、この際そういうのは是正していただくということでなければ、進行ができぬと思う。
そこで、最近の実情は、御承知のように、いわゆる診療期間が終って、そして出所をしたが、生活の方法がない。それからもう一つは、雇用関係も切れておるから、勢い生活するところの方法もないので、自殺者も出たというような悲惨な事実もありますし、いろいろ関係者の間には相談し、研究しておるのですが、それも、やはり正規の機関としての審議会が何らかの結論を出していただかなければならぬ。特に申し上げるのは、なおらぬ病気である。結局は死ぬのだということであるならば、やはり基本的には、生きておる間生活を保障し、療養も保障するということになっていかなければならぬのでしょうが、その場合、労使の関係がそれぞれ異なった利害関係に立つということであるならば、それぞれ国の手で対策を講じなければならぬということになるのではないか。審議会にしては、独自の立場で検討、判断していただいて、そこに何らかの結論を得るということですから、むしろ積極的な解決策を講ずる何らかの障害があるとすれば、その点を一つここではお話をいただいておきまして、それを検討して、解決するということになおさなければならぬ。こういうふうに考えるのですが、むしろ会長から個人の考え方を、と言っても、会議に諮って決定してなければ、会長さんが会議の意向としてお話をいただくということもなかなか困難かもしれません。しかしながら、一応勝木さん自身の考えとしては、こういう考えもあるのではないかということもあるのではないかという気がしますが、お差しつかえない範囲で、その辺のお考え方を伺わせていただければ、非常に幸いであると、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/80
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081・勝木新次
○参考人(勝木新次君) これは、確かに審議が進まなかったという場合に、労使の意見が対立したということが審議の進行を困難にしたこともあります。しかし、今議題に上りました配置転換給付の問題にいたしましても、就労施設の問題にいたしましても、むろんそれ自身としていろいろ考えなければならない点を含んでいると思うわけです。どうも私個人の意見になって、大へん申しわけないのですが、たとえば、就労施設の場合でありますが、先刻申し上げました通り、日本でけい肺にかかって、あるいは療養を必要とするとか、あるいは配置転換を必要とするという人のほとんど大部分が結核を合併しておるのです。それで、こういう人を就労させるという場合に、ただ労働面だけを考えればいいのか、同時に医学的な管理というものが密接にこれについていかなければ、やはり非常に危険があるのか、こういう点なども、よほど慎重に考える必要がある点だと思っております。従って、就労施設をたとえば病院に近いような形として作られる方がいいのか、あるいは労働を主体として、それに簡単な医療機関を付設した形で進めばいいのか、これらの点も、やはり実際にはまず試験的なプランを作って、十分に慎重に検討しながら、逐次拡大していくという行き方で行く方がよろしくはないかというふうに考えられる点もあると思います。
それから、転換の給付の問題につきましては、これは、日本の労災保険そのものの建前の問題とも関連があるわけですが、ヨーロッパあたりの国は、おおむねこういう場合の補償は年金制をとっておりまして、そうして労働能力の減少によって収入が減ったその差額だけを年金として補償するような補償の仕方をしております。日本の場合は、よほどそのやり方が違っておりまして、ヨーロッパのようなやり方でありますと、配置転換をいたしましても、その収入減だけは補償でカバーされていきますから、比較的転換がやさしいという点もあるかと思いますが、御承知の通り、日本のこの方面の補償関係は、違った建前をとっておりまして、ある期間に休養給付のようなものがあり、それから業態がかわれば、それが切れれば、一時金というものが出ますけれども、いまのような差額補償というような制度もありませんし、従って、この配置転換によって、当人が非常に経済的に困難するような状況に追い込まれるようなことでは、本人も望みませんし、またそれでは労働者を非常に不幸な状態に追いやることになる場合も起り得るかと思います。従って、一面このけい肺の進行を阻止するという医学的見地から目的にかなうと同時に、労働者の生活を危殆に陥らせない状況で配置転換がうまくできるかできないか、こういう点については、絶えず慎重に考慮していかなければならない問題があるわけです。
それで、実態として、今までに行われた、これは労働者の同意のもとに行われた状況を見ましても、いろいろでございまして、収入の減少なしで転換された労働者もおりますし、相当収入の減った労働者もおります。個々のケースで状況が違うという点もありまして、それらの点を考慮に入れて、配置転換を効果的によい結果をもたらしつつ実施するということについて、十分考えてみる必要があるかと思います。それは、その転換給付の問題だけとしてではなくして、労災関係の補償の全体系そのものとの関連もあることで、これらは、十分やはり考えながら、結果として労働者に不幸をもたらすようなことが起らないように、配置転換そのものを進めなければならないというようなこともありはしないか。こういういろいろな点を審議会として絶えず討議しつつ進んでおりますので、非常に審議が多岐にわたるような点もあるわけであります。
お答えが適切でないかもしれませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/81
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082・山本經勝
○山本經勝君 決して誤解のないようにお願いしたいのは、皆さんの独立した審議会、自主的にやられる審議会の運営を、われわれがここで圧力をかけたりするようなことではございませんし、それからまた、怠慢であると言っておるのではございません。言われる通り、非常に慎重に審議していただいていることは十分わかるのですが、そこで、会長さんのお考え方は一応わかるのですが、それで、大体審議会で結論が出そうだと思われるのは、時期的に、今、何月何日にということは困難でしょうが、およその見通し等ございましたら、一つお聞かせを願いたいと思いますが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/82
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083・勝木新次
○参考人(勝木新次君) 今の事項については、むしろ実際この審議に当って来られた小委員会の委員長にお尋ねいただく方がよろしいかと思いますが、このけい肺全体の問題から考えまして、今の二つだけをとり上げれば、必ずしもそれが主要な原理というわけでもございませんし、まず実行してよろしいということであれば、やはりなるべくそう時間をかけないで一応結論を出して、いいことであれば、なるべく早く実施されるということは、私としては望ましいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/83
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084・木島虎藏
○理事(木島虎藏君) 勝木会長に対する御質疑はございませんか。それでは勝木さん、大へん御苦労様でございました。
次に、新居小委員長から、小委員会の経過について御説明を願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/84
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085・新居五郎
○参考人(新居五郎君) 私、新居でございます。このけい肺の問題は、非常にむずかしいということを、私、審議会の委員を命ぜられまして、初めてわかったわけでございます。審議会の公益側の委員は六人おりますが、そのうち四人のかたまでが、この方の専門の医科の方で、まず医者でないのは、私と清水さんというようなことで、まあいろいろお話を伺っておりますのですが、だんだんけい肺という病気のこと、これが対策ということについて、むずかしさがわかってきたわけでございますが、そういうことを一つ御承知おきを願いまして、先ほどお話に出ております小委員会の問題でございますが、これは、実は昭和三十一年の七月十九日に第一回、それから、八月二日に二回、九月六日に三回、九月二十九日に四回、十二月十九日に五回目、それで、一応今日まで、小委員会は開かれずに来たわけでございます。それで、その内容につきましては、私もよくわかりませんので、まあ議事の進行をしている程度でございましたが、そこで、勝木会長にも毎回御出席願いまして、他の委員の方は、使用者側が北里さんに大滝さん、それから労働者側が能見さんに佐々木さんというような顔ぶれで、きわめて熱心に会議を続行していただきました。問題点は、勝木会長から詳細にお話がありましたように、あれでほとんど尽きておるわけでございます。要するに、就労施設の問題につきましては、労働者の雇用継続の問題がまず先議さるべきだ。これがきまらないうちは、いたずらに就労施設を作りましても、これはかえって、そこに入るということが、首切りの前提になるというような話も出ましたし、それから、転換給付金の増額につきましても、現在三十日を五十日にするというような話も出ましたが、その程度のことでは、ほとんど何にもならないから、相当多額のものを出したらいいだろうというような議論が出ました。しかし、そういうふうにすることは、ほかの業務災害を受けた労働者に対する影響はどうかというような点もありまして、先の就労施設につきましても、雇用継続という問題もそう簡単にはいかない。要するに、他の業務災害のものに及ぼす影響等も考えると、そう簡単にはいかないというようなところで、結局労使の意見が並行線をたどっているというような状況で、第五回目までは来たわけでございます。そこで、三十一年の十二月の二十六日に、一応小委員会の経過を本会議に報告したらどうかということになりましたので、その小委員会の経過報告をちょうどここに持って参りましたので、勝木先生は詳細を詳細をと言われますが、詳細と申しましても、ほとんど今申し上げたことに尽きるわけでございますが、一応経過報告を私ちょっと簡単に読み上げまして、この辺で一つ御判断願いたいと思います。
けい肺小委員会の経過中間報告でございます。これは、昭和三十一年十二月二十六日のけい肺審議会で申し上げたわけでございますが、内容は、
「昭和三十年十二月に開催された第一回けい肺審議会において、就労施設設置、転換給付額の増額及び作業転換の勧告の基準について具体案を検討するため、けい肺審議会小委員会を設置することが提案され、第一回小委員会を昭和三十一年七月十九日に開催した。
以降昭和三十一年十二月十九日までに五回の小委員会を開催し、就労施設及び作業転換等の問題について検討を行なった。
第一回より第五回までの意見の大要は次の通りである。
なお、就労施設の具体的内容の審議に入る前に、就労施設に就労せしめる労働者の身分をどうするかということが問題になった。これについての意見は大体次の通りである。
けい肺法第八条は、当該労働者についての衛生的な管理から出発したものであり、かかっているけい肺をさらに増悪させないためには、使用者としては、粉塵作業以外の作業につけるべき義務があり、これを規定したものである。けい肺法第三十八条は、この義務を国が援助するということを規定したものであるから、作業転換された労働者は、企業内はもちろん、企業外に出ることがあっても、当然企業との身分は引き継がれるものである。端的に言えば、国の施設に出向という形をとるべきであると考えられるのである。
国としても、けい肺対策の最も眼目となるところは第三症度のものであり、これが単に補償の対象とならないということから放置してよいという筋合いのものではなく、このようなものこそ強力な施策を進めていくべき対象であると考えられる。むしろ積極的に、作業転換を喜んで受け入れるような態勢を作り上げることこそ急務である。
しかしながら、現実においては、この作業転換ということが喜ばれていない。むしろ現実の問題として、作業転換すべき職場はないわけであり、かえってこれが労働者の首切り法として迫っているような状況である。就労施設を作る前提として、まずこの身分関係が解決される必要があると思われる。この点が解決されれば、他の項目は直ちに解決する問題であり、具体的にもその要求は持っているものである。この意見に対して、作業転換された者の身分を継続するということは好ましいことではあろうが、現在の諸法律の関係から見ても、また、常識的に考えてみても、考えられないことであると思う。もちろん使用者といえども、善意をもって処理するということは考えてはいるが、けい肺法を見ても、法第三十八条を受けているとは考えられない。第三十八条は、やむを得ず企業外に出なければならなくなったものを国の責任でめんどうをみていくものであるというように考えるのが自然である。
作業転換というものについての規定を通覧してみると、まず、企業内でこれを行い、やむを得ない場合には企業の外に出るということになるが、それに対しては、職業紹介なり、職業補導を行う。さらには、就労施設において就労の機会を与えるというような順序になっており、これは、明らかに労使の関係が絶えたものと考えられるべきである。離職した者をすべて企業と雇用関係を継続させるということになれば、その他の疾病との関係から見ても絶対に無理である。
また、就労施設に入った者にまで雇用を継続させろという意見は、実際は実現不可能であろうし、法文からもそうは考えられない。この問題は、むしろ法律外の問題とし、労使の間の十分なる話し合いにまかせることとし、さしあたってどんなものを作るかということを、その議論と並行して、または別に審議していったらどうであろうか。そしてとりあえず就労施設を試験的に小範囲のものを作ってみたらどうか。」
それが就労施設の問題であります。
「転換給付の問題についても、給付額を三十日分から五十日分に増加してもほとんど意味がないではないか。むしろ思い切ってこれを増額し、これを資本として他に転向するということができるようにさせるべきだと思う。こういうような意見に対して、給付額が多いということは、一見してよいように思われるが、あまり多きに過ぎると、かえって使用者の立場から言わせると、作業転換促進に困難を来たすようなことになると思う。むしろ額が適当なところに置かれてこそ、この作業は円滑に進むべきものであって、そのことは、結局労働者の仕合せということになるわけである。ことに中小企業のように、基盤の弱いものが多い現状では、法律が空文に終る危険性が非常に強いことになるであろう。従って、その額は多いことがよいことは言うまでもないが、大切な作業転換という作業をから回りさせるようなものであってはならないと考える。
〔理事木島虎藏君退席、委員長着席〕
小委員会の経過の大要は以上のようであって、就労施設については、就労すべき労働者の身分の問題について、意見の一致を見るに至らなかった。また、転換給付額についても同様である。」
こういうことを十二月二十六日の総会に報告して、一応全員の御了承を得たわけでございまして、大体以上のような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/85
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086・阿具根登
○委員長(阿具根登君) 小委員長の説明に対する質疑を、各参考人に対しても含めて、質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/86
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087・大矢正
○大矢正君 ただいまの中間報告について、また中間報告以外についても、新居さんのお答えいただける範囲においてお答えを願えれば幸いだと思うのですが、一つは、この今就労施設の問題で、小委員会の中においても、労使間の意見の対立があって、なかなか結論を出すことは困難であるという御意見がありましたけれども、もちろん前提となるのは、雇用条件が継続されるかどうかということも、これは重要なことであるには違いないと思いますけれども、それよりもっと大事なことは、就労施設というものは一体どういうものなのか。内容はどうなんだ。そこに収容された場合の労働者の条件というものはどの程度のものなのかということが具体的に明らかになれば、私は、雇用条件の問題も、ある場合には解決する面も出てくるのではないかと思うのですが、その就労施設そのものが非常に、何といいますか、ぼやけておって、人それぞれに考えているという範囲にとどまっているものですから、なかなか雇用問題についての条件を取りきめをすることは、労使間においてできないのではないかと思うのですけれども、学識経験者としての新居さんの御意見はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/87
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088・新居五郎
○参考人(新居五郎君) 私も、おっしゃるようなことじゃないかと思いまして、小委員会でも、そこまで発展していくことを希望いたしておりましたのですが、結局、先ほど申し上げましたように、話が雇用関係の断続、この問題で行き詰まりまして、前後五回にわたりまして、労使間非常に熱心な議論に終始しておりましたので、おっしゃられるような内容にまで入るまだいとまがありませんし、私も、一番初め申しましたように、きわめてどうも経験の浅い者でございますから、私の意見としましても、ちょっと申し上げるほどのものは何もないのでございますけれども、その点一つあしからず。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/88
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089・大矢正
○大矢正君 これは、審議会としての結論はどうかという質問をすれば、審議会としては結論は出ていないのですから、審議会それ自身としては、私は答えられないと思うのですけれども、本日御出席の皆様は、大へん日ごろから、審議会の中においても、あるいはそれぞれの自己の立場から研究されていると思いますので、私は、そういう立場で御意見を発表をしていただければ幸いだと思うので、特段私は、きょう御意見をいただいたのがこの審議会の結論であるという前提で、とやかく申し上げる意思は毛頭ありませんから。それで、使用者側の立場を、私は北里さんに、今の考え方についてお答えをいただければ幸いだと思うのでありますが、就労施設の問題については、これはひとり労働者側だけの問題じゃなくて、使用者として相当関心を持っておられるのじゃないかと思うのでありますが、使用者の立場から、就労施設というものに対しての何かまとまった御意見がありましたら、この際聞かせていただければ幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/89
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090・北里忠雄
○参考人(北里忠雄君) ただいま小委員長からお話がありましたように、基本的には、確かに雇用の継続の問題ということで、労使の意見が不一致でございます。われわれとしては、就労施設を国の援助のもとに施設されるということについては、構想としてはまことにけっこうだと思っておりますが、ただこれは、使用者の立場ということだけでなくて、どなたの立場においても、一体どういうふうな就労施設を作ったらいいか、今お尋ねの問題が、現実問題として一番大きな問題じゃなかろうか。そこで、小委員会でもいろいろそういう点について議論がなされましたが、しかし、これはただ議論がなされたというだけで、今、小委員長から、特にそういう内容についてはお話がなかったのでございますが、まず第一に考えていただかなければならぬことは、一体配置転換をされて、そして職安でそういう就職のあっせんなり、あるいは職業補導の手を経てもだめだと言って、就労施設の中に入る者が何人いるかということが、私は第一の問題点だろうと思います。ということは、これは就労施設の規模に関係があります。そういう点を考えても、現在の段階では、配置転換者の数というものは、実際把握できない状態じゃないかと思います。労働省のお調べになった数字を見ましても、まだ、今のところは、ごくわずかな数字です。そういったような状態のもとにおいて、非常に大きな就労施設をかりに作ったといたしましても、それはただ、遊休施設になるというにすぎないのじゃないか。こういうふうな考えが第一にございます。
それから、第二番目は、本人はかりに就労施設に入りましても、今まで同居しておった家族が一体どうなるか。鉱山の例で言いますと、大体鉱山付近の社宅に居住していますから、そういう社宅を引き払って、就労施設の中なり、あるいは近辺に来るというのがやはり常態じゃないかというふうに考えられます。そうすると、それに付帯する家族の住宅を一体どうするか、こういう問題が次に起ってくる。それから、かりに同居ができたにいたしましても、今度本人が死亡した場合、この家族の処置を一体だれがどういうふうにするのかというふうな問題が起ってくる。それから、そこに入った転換者の、いわゆる収容者の仕事というものは、どういうものが一体いいだろうか。これは、まだ働ける状態にあるのですから、一定の職業補導をすればいいわけですけれども、やはり就労施設としても、そう成り立たないようなことばかりやっておったって仕方がありませんから、やはり仕事を教えかたがた、そこで軽易な作業をやらして、その製品を他に売るなり何かして、やはり一面の償いというものをやって、自分らの生活の足しにもするというふうなことが勢い必要になってきやしないか。そうすれば、どういうふうな仕事が一体けい肺患者に対していいのか。どういう地辺が、そういったものをかりに売りさばくといたしましても、一番適当であるかどうか。これは、議論の過程に出たことでありますが、たとえば、温泉地の付近においてみやげものを作らせるとか、あるいは山の中に入って酪農をさせるとか、いろいろ考え方はありますけれども、そういうことが果して実現できるものかどうかというような調査も十分やらなければならない。そういったことが付帯して起ってくると思います。それから、もちろんそういったようなことでまかなっていけませんから、その間の賃金の保障といったようなことが当然起ってくると思います。そうすれば、その賃金の保障は一体だれがするのかといったことがまた問題になる。そういったことで、あれこれ考えてみますというと、具体的には非常にむずかしい問題を含んでおるということが、われわれとしてもわかるわけでございます。だから、基本的な意見の対立であるからどうにもならぬという問題もありますけれども、それ以外に、現実にこれを作る場合に、特殊なそういう患者でありますだけに、いろいろな障害がありはしないかということを十分研究してかかりませんというと、早急にただ結論を出して、建てればいいじゃないかといった式でやったら、大へんな誤まりを犯すというふうなことがありますので、小委員会でも、慎重に審議をし、また調査も行なって、その結論を出したいというのが、われわれとしての態度であるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/90
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091・大矢正
○大矢正君 今の問題について、能見さんどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/91
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092・能見修
○参考人(能見修君) お答え申し上げる前に、関係労働者と患者にかわりまして、一言御礼の言葉を申し上げます。非常にお忙しい中を、私たち粉塵労働者や、現にけい肺にかかっております患者のために、いろいろ時間をさいていだだいて、けい肺対策についての御調査をいただきましたことを、厚く御礼を申し上げます。先ほど会長以下小委員長の方からも言われましたように、非常にけい肺対策はむずかしいということが、現在の結論だと思いますが、何とぞ一つ、今後とも国会の御審議をいただいて、そしてけい肺にかかることから労働者を防衛していただいたり、かかっている労働者については、相当あたたかい保護を与えていただきますことをお願い申し上げておきます。
それで、今、いろいろ小委員長の方から、作業転換についての問題点、それから、使用者側の北里委員の方から、結局総括的に作業転換をどう考えるかというようなことで、いろいろお話があったのですが、確かに現状の結論は、第八条と三十八条の関連をめぐって、いろいろ論議が白熱化したわけです。私たちのとっております立場としては、結局作業の転換というのが、いわゆる衛生管理上の措置として健康管理のために行われるという、そういう法第八条の解釈に立つのであるかどうかということで、残念ながら、現在できております法律は、その点の性格がきわめて私はあいまいだということをみずから認めざるを得ないと思います。で、結局第八条が、この特別法の全体を貫いておりますいわゆるヒューマニズムに立ったけい肺の救済、あるいはけい肺の早期発見、早期治療に対する対策の面から言って、第八条の作業転換というのは、非常に特殊な性格を持っておるというこうが私たちの態度であり、結論であるわけです。そこで、非常に長い時間を費しまして、この第八条の解釈論議をやったわけです。先ほど小委員長の方からいろいろ御報告がありまして、私が補足をするということは、非常に僣越でありますけれども、審議会におきまして、この小委員会の経過が報告されたときに、足りない面として私たちが主張しておりました第八条の解釈についての政府側の見解というものも、その報告の中に入れてほしいという提案もしたわけです。それは、第八条のこの考え方というものが結局衛生管理上の措置として健康管理をやる一つの手段としてとられる措置であるということが、政府からも明らかにされたというふうに私は理解をしております。そういうところで、小委員会の審議が、それ以降進行をしておりませんのですが、結局、先ほどるる言われまするように、確かにむずかしい病人であるから、長年働いてきた労働者のこの労働の実態から、一定年令に達して、さらにその労働者を新しい職に切りかえさせるということは、私は非常に、技術的にも、心理的にも、むずかしい問題が確かに内在していると思うのです。しかし、そうかといって、やはり工業技術においても、けい肺にかかることを防ぐこともできないし、また、一たんかかれば、現在の医学では、これをなおすことができないという現状においては、作業の転換措置ということでけい肺患者の病勢の悪化を防止するという建前を確認するとすれば、一つの方法として当然考えられる措置である。その考えられる措置として、それでは具体的にどうかということになりますと、やはり手段方法の問題、あるいは規模の問題というように、それに、本質的には労働者の身分上の問題、生活保障の問題ということが非常に総括的に相関連して参りまして、むずかしいところなんですが、ただここで簡単に、それでは、規模の小さなもので、一つのテスト・ケース的にそれを行なってみようとしても、やはり帰ってくるところは、労働者の身分上の問題というものが第一に出て参りますし、加えて、それについては、作業の転換保障ということが、従来の生活賃金との連関において、いわゆる転換をいたしました後の生活水準ということが当然問題になる。だから、そういうような立場から、私たちもまあ審議遅延の一半の責任があるわけでございますけれども、そういうところを解明していって、そうしてあとは、一つの事業を組織するのでありますから、その事業を組織するための専門的ないろいろな意見あるいは経験を入れて考えていくべきではないかというようなことから、現在まで、そういうようなことで事態を推移してきたわけなんですが、まあ方法として、作業転換は、総括的に非常に諸条件がむずかしいのでありますから、私どもの方法としては、勢いこれは、作業転換に必要な諸種の条件というものを完全なものにしていただきたいということに結論がなってくるわけです。
お答えになりますかどうかわかりませんが、考え方としては、そういう考え方で従来も審議会に臨んで参りましたし、現在なおそういうように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/92
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093・大矢正
○大矢正君 就労施設としてどういうものを作った方がよいかという点については、なかなか議論のあるところだと思いますし、効果的に予算を使用する上においても、慎重に検討されなければならぬことだと思いますので、今後とも審議会として十分御検討いただきたいと、心からお願いをするのでありますが、そこで、けい肺患者を未然に防止するということは、ひとりそこの事業場で働く労働者の問題にとどまらずして、経営者自身にとっても重要な事柄だと私は思いまするし、むしろ労働者よりは積極的に、けい肺というものを未然に防止するための対策をお立てになっておられるのじゃないかと思うのでありますが、そこで、北里さんにお尋ねをいたしたいと存ずるのでありますが、何か法律の上で、こうすればもっと未然に防げるのではないかというような御意見を持っていたら、お聞かせを願いたい。こまかく言うと、法の運営の問題、あるいは法に新しく付加することによって予防するための条件を具備するとか、そういうような内容に私はなると思うのでありますが、そういう点で、経営者の立場から、法律的にこういうように改正をする、こういうように付加をすることによって、もっと予防がしやすくなるのではないかというような御意見はないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/93
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094・北里忠雄
○参考人(北里忠雄君) ただいまお尋ねの予防の件につきましては、鉱山関係では、御承知のように、鉱山保安法に基きます鉱山保安規則がございまして、鉱山責任当局から、その法律によって厳重な監督を受けております。また、その予防に対するいろいろな諸対策が、行政指導としても今日まで数々行われてきたわけであります。鉱害の面におきましても、やはり御案内の通り、労働基準法で、安全衛生規則に基く諸対策が行われておりますので、まあ別建の法律ではございますけれども、それぞれの所管において行政が進められておると確信しております。そこで、現在の特別法にそういう予防の何らかの規定を置いて、もっと強化する方法はないかという御意味のようでありますけれども、一体珪酸粉塵の問題は、けい肺のみではないと思っております。塵肺の問題もありましょうし、また、その他珪酸粉塵によって起るいわばこれ以外の病気もあるかと思います。だから、一般の粉塵を含め、いわゆる珪酸粉塵の防止ということは、業務上の疾病の防止ということに勢いならざるを得ない。ただ、たまたま肺に入って、繊維性増殖変化を起すから、けい肺といったような特殊な病状があるというだけであって、その他のところにいろいろな病状を起せば、またその他のいろいろな病名がつくということになるのではないかと思っております。従って、そういう見地から言うと、珪酸粉塵というふうに限定せずとも、一般粉塵の発塵防止あるいは吸塵防止といったようなことをやるということが根本的な対策だと思っております。そういうことで、実はこのけい肺予防の問題は、保安局の方でも、保安協議会といったような労使の構成になる会合があって、そこでいろいろな問題がディスカッスされておるわけであります。そういうふうなことから考えてみましても、今の特別けい肺法の中に、特にけい肺粉塵防止といったような規定を設けなければ強化されないといったような性質のものではないように考えます。
私、ついでに申し上げておきたいと思いますのは、実は金属鉱山関係では、この粉塵防止といったような問題は、単に議論をするという問題ではなくて、やはり技術的に研究をして、新しい方法を発見する、こういうことが、今のわが国における現状から言うと、与えられている重要な課題ではないかと思っております。従って、そういう見地から、鉱山保安局の御指導を得まして、業界が自主的に多額の金を費して、今、諸般の研究をしております過程であります。御参考までに、どういう問題を研究しておるかという題目だけを申し上げますと、粉塵マスクの使用基準をどういうふうなものにしたらいいかということの研究、それから、ウォーター・スプレー並びに局部通風の研究をやっております。それから、ウエッチング・リエゼントの研究、それから、アルミニウムの粉末によるけい肺予防の研究、それから、静電瀘層防塵マスクの研究、まあ大きな項目をあげますと、大体この五つの問題をそれぞれの各公けの研究機関に御依頼を申し上げて、費用を業界が支出して、やっていただいておるわけでございます。まだようやく一年になったばかりでございますから、もちろん研究の成果というものは上りません。しかし、ぼつぼつ中間的な報告ももらっておりますので、やがて年を重ねるに従って、新しい方法、しかも、経済的で効果のある方法が予防面に見出されることを希望しますし、また、見出されるものと思っておる次第であります。そういうことで、これに対しては、国の補助金も、百三十万円ほど実はいただきまして、われわれの業界から出した金と合せて、研究をいたしております。私は、この機会に希望を申し上げたいのは、保障の面も最も大事なことでございますが、けい肺対策の根本問題は、何といっても、今後けい肺患者を出さないということにあるわけでございますから、ただ、しりぬぐいの金に多くを出すということよりも、もっとこういう研究に対して、国として大きな力をかしていただきたい。こういうことがわれわれ業界としての念願でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/94
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095・大矢正
○大矢正君 先日私、経営者の方々の考えておられる、また感じておられるこのけい肺に対する内容というものを本で読ましていただいて、大体経営者の方々も、積極的にけい肺の防止のために努力をされておる点を、私も心から喜んでおるわけなんですが、そうして今おっしゃられたように、経営者も自主的に、経済的にも、またあるいは技術的にも動員をして、けい肺の防止に努力をされておるようでありますが、もちろん、おっしゃられる通りに、鉱山保安法あるいは労働基準法に基いて予防の措置をするという、法律的な根拠があるかもわかりませんけれども、これだけ重要な内容の問題でありますし、それから、経営者自身も、経済的にも技術的にも、相当犠牲を払われておるものでありますからして、もっと力のある機関をこの法律の中に作り上げて、そうして国の多くの技術と、それからまた、ある場合には、資金的な援助も注ぎ込んで、どちらかというと、ばらばらなけい肺に対する研究と申しますか、予防に対する検討と申しましょうか、こういうものをするのではなくて、一本にまとめて、力をしぼってきた方が非常に好ましいのではないかという気がするものですから、私、今、北里さんに、そういうようなお気持があるかどうかということを実はお伺いをいたしたのでありますが、いかがでしょう。私は、再度繰り返すようでありますが、経営者が自主的に、ある場合には、一つの企業体の中だけで研究、検討されているということじゃなくて、国全体としてこの問題に取り組んでいって、多くの人的犠牲や、経済的な犠牲を払わなくてもよいための努力をする方がいいんじゃないかという気がするのですが、経営者の立場としてどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/95
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096・北里忠雄
○参考人(北里忠雄君) 重ねて申し上げますけれども、ただいま大矢先生のお話のように、もっと大きな舞台でこの問題を取り上げてやっていく、そのための法律が必要だというお話のように受け取れるのでございますが、そういう御構想は、まことに私もけっこうだと思っております。あえて反対すべき筋合いのものではないと思っております。ただ、私が申し上げたいのは、既存のそういう委員会をそういう形に持っていくことも可能ではないかと……。別にそれをわざわざ法律に規定して作らなければできないというものであれば、それはお説の通りだと思います。しかし、すでに、今おっしゃいました通りに、既存の法律があり、それに基いてやはりある意味においては国家的に動いておる機関があるにもかかわらず、何ゆえにこのけい肺だけに対して、そういったような国家的な予防委員会をさらに大がかりに持たなければならないかということが、私にはどうも了解いたしかねるのでございますから、まあなるべくなら、既存の機関というものをもっと強化し、もっと活発に活動をしていただくように、国としても援助をしていただくということの方が手っ取り早くもあるし、現実的ではなかろうかというふうに思ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/96
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097・大矢正
○大矢正君 まあどちらかというと、今経営者の立場でいろいろ御検討をされておるということは、経営者の立場だけで研究、検討されているという格好で、私は、できることならば、その中へもう一枚、労働者の意思が十二分に反映されるような機関と申しましょうか、そういうものができ上れば、これは非常にいいんじゃないかという気がするものでございますから、今申し上げたような意見を聞いていただいたわけですが、この問題については、能見さんなんかも、いろいろ御意見のあるところだろうと思うのですけれども、どうですか。今私が申し上げたような、そういう予防のため、研究あるいは検討をする機関的なものを、けい肺だけを切り離して積極的にやる必要性が今日あるのじゃないかということに対してのあなたの御意見はどんなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/97
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098・能見修
○参考人(能見修君) 金属工業会においては、先ほど北里委員が言われたように、まあいろいろ、現実に通産省と連絡をして、関係研究機関と、研究のテーマを作ってやっておられるわけですが、ただ、その粉塵防止委員会の態度としても、非常にけい肺の研究自体が大がかりのものであり、なおかつ、経済的にも相当の経費を必要とするという立場から、いろいろ研究推進に対する態度として、やはり一企業、一事業体では、このけい肺の研究は達成することができないという態度も出ておりまして、願わくば官民協力して、そうしてけい肺の予防の研究推進ということをやるべきであるというような答申書が出ておるように、私たちも承知いたしておりまするが、この場合、金属鉱山の場合は、坑内作業がそのすべてにおいてけい肺の危険にさらされておりますために、業界自体も戦後相当の努力を払われておるということは、われわれも非常に喜んでおるわけなんですが、ただ、言えることは、最近やっておりますけい肺の予防の実態は、作業の工程の湿式化の問題、これが積極的な措置としてやられております。それから、消極的には、いわゆる防塵マスクの着用の問題が出ておるわけでありますけれども、いろいろ金属鉱山の一つをとらえて申しましても、採掘作業の方法等の機械化の問題あるいは共同作業化の問題等で、労働者が粉塵にさらされる機会あるいはさらされる労働者の職種の増大したということが否定できない事実として、現在各鉱山の実態の中にそういうものが現われております。ところで、共同作業と一がいに言いましても、片一方で、スラッシャーでどんどんハッパをかけた鉱石を井戸の中に入れている。片一方では、同じ作業場の一つのクルーの中において、クルーと申しますか、一つの環境の中で、片やさく岩機が回っている。もちろん水は使っております。それからまた、その中に介在して支柱員が支柱を打っている。または手で井戸へとにかく鉱石を投げ込んでいる。こういうような作業方法等も、最近相当広く採用されて参りまして、発塵の条件というものは、従来以上に私はひどい条件が出ておるのじゃないかというように考えています。なおかつ、現在ジャンボーという機械が入っておりますが、大体二連装において二台のさく岩機を動かしますが、水はもちろん使っておりますが、発塵の状態というものは、必ずしも一台を使っているときよりもいいということは絶対あり得ない。そういうようなことより、実態から申し上げて、現在作業工程の湿式化の条件そのものが、果してけい肺を予防するための措置として、相当大きな効果があるものかどうかについても、私はいまだ結論は言い切れないのじゃないかということを考えておるわけですが、そういうような、金属鉱山一つだけとらえてみても、そういう条件の中で、それでは新しく、どうこの予防方法を具体的に考えていくかということになりますと、先ほど言われました静電瀘層防塵マスクの問題とか、あるいはマスクの基準の問題とか、さらには、アルミニウム粉末を吸入することによってけい肺結節の条件というものを防衛していこうとかいうような方法が、新しいテーマとして出てきたわけでありますけれども、問題は、やはりこの作業環境そのものについてどうすればいいかということを、少くとも、現在、終戦後日本の国においても、各政府機関の研究施設あるいは民間の研究機関、さらには各大学が、現在けい肺についてのいろいろな研究をされておるわけでありますけれども、それは、その立場々々におけるけい肺の研究をしているのじゃないか、私たちはこう思うわけです。従って、それを何とか、かたいものの考え方ではなくして、どういうことをやればいいかということを、現在の研究者の、私は、研究のテーマに対する総合化ということが、非常に大切な問題として生まれてきたのではないかと思うわけです。ですから、そういう中で、特に工業技術の問題と、それから医学上の予防の問題、こういうものを総合的に含めて、研究のテーマを作り出す機関というものが法律上何らかの形で規制していただけることが、日本のけい肺予防を推進する上においてきわめて重要なことではないかというように考えておるわけです。特に私も、先年欧州の方に組合の会議がありましたので、出席をして参りましたが、ドイツの研究機関においても、使用者が年間一億五千万円程度の金を出して、工業技術の面、あるいは医学の面、さらには光学の面、いろいろな角度から総合的な研究機関ができ、研究のとにかく範囲というものが総合化されまして、相当大きな研究をされております。その研究所では、最近日本にも試験的に入ってきていると思うのですが、そういう条件の中から、とにかく集塵機の問題等が実際にその予防器具として、この防塵器具として効果があるという結論を見出しているような事実もありますので、どうか日本の場合も直接に、通産省と労働省がお互いに分立をいたしておりまして、けい肺の予防の諸条件というものを、ここで直ちにいわゆる行政機構上一本化しようということは、なかなかそれぞれのお立場があって、むずかしい問題があると思いますので、何とか、そういうものの上に立ってでも、日本の工業技術、医学の研究機関が、それぞれ一つの場において、常時、とにかくテーマというものを作り出しながら研究を進めていただけるようにすればよろしいのではないか。特に私たちは、職場の実態に結びついて、実際に効果のあるものを考えてほしい。しかも、この裏づけとなるこのけい肺の予防については、非常に経済的にも金がかかります。ですから、ほんとうに金をかけて、それがほんとうに効果があるものにしてほしいということを私たちは主張したいわけなんです。そういうような意味で、また、御質問に合うか合わないかわかりませんけれども、とにかく現在の段階においては、日本の現状としては、何らかのこの研究の統一化の問題、研究機関、研究テーマの統一化ということで、一つの機関を法律的に設けていただいて、その中で、従来以上に努力が集中されていくということを期待したいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/98
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099・大矢正
○大矢正君 学識経験の立場で、公正な意見をお聞かせ願いたいという気持から、新居さんに私お願いしたいと思うのでありますが、けい肺法が、昭和三十年の九月一日から施行されて今日まで二年半というので、いろいろ検討してみますと、数多くの問題点があろうかと思いますけれども、私は、その中の一つとしてあげたいことは、療養給付、休業補償の問題ではないかと思うのであります。それは、法律の根本的な思想がそうだという意味で申し上げるわけではありませんけれども、当時私どもが考えた立場というものは、おそらく入院をされても、まあ、いいところ三、四年、お気の毒でありますけれども生きておられれば精一ぱいではないかというふうにもいわれておった。ところが、医学の進歩か、あるいは人間の体力がそれだけ強まってきたのかは存じませんけれども、今、鬼怒川けい肺病院あるいは北海道のけい肺病院等におられる入院患者をながめてみましても、当時の私どもの予想が狂って参りまして、五年間の期限が切れても、なお相当療養しなければならぬし、また、休業補償をもらって、生活のかてにしなければならぬという人々が比較的多いように私は思のですが、そういう立場から考えてみると、この法の制定当時の情勢と今日の情勢では、大へん相違が出てきているのではないか。もっと具体的に言えば、あの当時は、まあ、四、五年しか生き得ないだろうと考えておったのが、今日では、七、八年以上も生きておられる方も非常に多いということからながめてみて、私はこの際、休業補償の問題にいたしましても、あるいは療養給付の問題にいたしましても、もう少し時期的にやはりこれを延長する必要性が、今言った立場からあるのじゃないかという気がするのですが、学識経験の立場から、新居さんのお考えを聞かしていただければ幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/99
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100・新居五郎
○参考人(新居五郎君) なるほど、先生のおっしゃるように、けい肺患者が打切補償を受けてから、あと二年で、それでいいかということにつきましては、やはり問題があるのではないかと思います。やはり休業補償につきましても、その通りだと思います。まあいろいろのことが許されれば、延びるというようなこともけっこうじゃないかということも考えておりますが、その一般の作業災害で苦しんでいるほかの労働者との関係等は、一体どう考えるべきか。単にけい肺の問題だけで解決すべき問題であるかどうか。けい肺もまた、結核合併症が非常に多いわけでございますね。で、その結核対策としては、国策として非常に力を入れて、漸次これは少くなっているような状況にありますので、そういうようなこととからみ合せてお考えになって、十分けい肺患者の保護ということの万全を期していただいていいのじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/100
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101・大矢正
○大矢正君 当初、この法律ができ上る当時の考え方としては、大体五年たてば、治癒はもちろんいたしませんけれども、症状が固定をするなり、あるいは、お気の毒な話だが、おなくなりになるなりして、実際的には休業補償や、あるいは療養給付の必要性がないだろうということが考えられておったのが、現実的には、やはり五年間じゃまだ症状も固定しない。それからまた、まだまだ療養を続けなければならない状態が出ているのでありますから、私は、この際思い切って審議会なんかもこの問題を取り上げて、政府に建議してもらうような方法がとられれば、非常に好ましいのじゃないか。先般鬼怒川の病院の近くで自殺をされた方の内容も、私、よく行って見て参りまして、ああいうような悲惨な気持にさせないためにも、早急に救いの手が必要じゃないか。確かに政府は、行政的な措置として、国保に切りかえるなり、あるいはまた、家族の健保に切りかえるなりというような方法で、いろいろ部分的には救われる道もあるかとも思いますけれども、しかし、それでは筋じゃないのでありまして、けい肺にかかった人たちを安心して療養させるということにも参らないのじゃないかという気がいたしますので、私としては、審議会あたりでこの問題を取り上げて政府にそういうような建議をされることが好ましいのじゃないかという、私なりの気持を持っているわけですが、この点、どんなものですか。できれば、北里さんの御意見もあわせて聞かせていただければ幸いだと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/101
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102・新居五郎
○参考人(新居五郎君) 今さらこんなことを申し上げることは、はなはだ申しわけないのですが、私たち公益側の委員といたしましても、一つ今後、けい肺の実態というようなものにつきまして、十分研究もし、また、療養所及びそのけい肺の出る場所とかいうものにつきまして調査いたしまして、その結果いろいろの案が出ましたら、審議して、問題に持ってきてもよろしいのじゃないかというようなことも、きょう先生の非常な御熱意のあるお話を伺いまして、一そうその感を深くするわけであります。
この点、この程度であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/102
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103・北里忠雄
○参考人(北里忠雄君) ただいまの問題は、このこと自体について、私は、大矢先生のお話しになるように、気の毒な患者に対して長く療養さしてあげよう、給付補償もやるということは、これは、だれが考えても反対ができない、けっこうなことだと思うのであります。ただ、私どもの立場といたしましては、立法当時から申し上げてございますように、本来ならば、労災補償の建前から考えて、その後における療養なり休業の補償というものは、国がこれはやらなければならないのだと、しかし、一半の責任は事業主にあると言われれば、まああるわけでございます。財政的な問題もあっただろうと思うのでありますが、そういうことから、半々で行こうじゃないかといったような、妥協的な線でこれは落ちついた法案のように考えられる。ところが、政府の御説明を今思い出しますというと、これは職業病であり、かつ国民病だという考え方でこのけい肺患者を取り扱いたい。国民病という意味は、労災補償のいわゆる経営者の責任解除になったあとも、一般国民としての、あるいはけい肺患者としての保護は、これは、本来なら国が取り扱うというふうに、われわれは解釈できるように思うのです。ただいまお話しのように、筋は違うというお話でありますが、そういう観点から言うと、労災法の適用後における、終了後における取扱いは、やはり社会保障制度の問題として考えなければならないのが私は本筋ではなかろうかというふうに思っておるのでございます。だから、もしそういう基本的な立場に立って、療養給付の延長なり、あるいは休業補償の延長を考える場合には、国があくまでもこういう気の毒な患者に対して保護を加えるべきだという立場であれば、われわれはあえて反対するものではありません。しかし、経営者の一半の責任を、いつまでもこれを延ばして、極端に言うならば、経営者は終身これに対して責任を負わなければならないというようなことになると、今、新居小委員長から言われたように、他の職業病その他のものと極端なアンバランスが起ってくる。これは、労務管理上はなはだおもしろくない結果が出てくるのではないかというふうに考えられますので、その辺の根本的立場をはっきり割り切った上での賛否の意見を申し述べなければならないということになると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/103
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104・大矢正
○大矢正君 現在のところは、法律が三十年に施行されて、いうならば、過渡的な段階でありまして、従来まで隠れていた多くのけい肺患者が一ぺんに出たという格好になっているわけでありますから、比較的今の段階における国及び経営者の負担というものは、私は多いかと存じますけれども、しかし、先ほど来申し上げておりますように、経営者自身としても、また国としても、積極的に予防措置を講じられておられるようでありますし、今後また、医学の進歩や、あるいはまた、その予防措置の研究等によって、おそらく大幅にけい肺患者というものは減少してくるのではないかという考え方を持っておるのであります。そうしますと、これはどうもおかしなことを言うようでありますけれども、現在のけい肺患者に対する給付の負担分その他の総体的な予算があれば、これからまた患者が減っていくんでしょうから、たとえば、一、二年の給付の延長やその他のことをしても、さほど予算上には多く響かないのではないかという気持もするのですが、使用者の立場においては、そういう点は、どういうふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/104
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105・北里忠雄
○参考人(北里忠雄君) 従来の姿において一、二年延長するという考えでありますか。今の御質問がはっきり受け取れなかったものだから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/105
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106・大矢正
○大矢正君 先ほど申し上げましたように、現在は五年で切れておりますから、合せて五年ですが、これを合せて、六年なり七年に延長する。現在でも、療養を必要とする患者が少しずつ出ておるわけですから、一年なり二年なり三年なり延長するその予算というものは、結局患者の数が減るということによって、総体的なワクとしての予算がふえるという気づかいは、私はないと思うのですが、その辺に対する経営者の考え方はどうかというのが私の質問なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/106
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107・北里忠雄
○参考人(北里忠雄君) この療養給付、休業補償のその財源になっておりますのは、負担分として経営者側が一応納めている金の中から出されておるということであります。結局、今お話のように期間を延長すれば、それだけ負担金が増加になることは必然であります。こまかい金のことを申し上げるわけではないのでありますが、そういうふうな面もしかし全然考えないわけにはいかないのであります。
それから、私どもが最も考えておりますのは、先ほど申し上げましたようなことを重ねて申し上げますけれども、とにかくけい肺患者なるがゆえに、労災の他の職業病とも異なった取扱いをして、保護を加えておるのに、さらにまた、これを三年なり四年延長する、こういうようなことが、果して今日の段階で妥当であるかどうかということなんでございます。これは、実際問題として……。だから、私は、長いほど好ましいということは、このこと自体についてはわかるのでございますが、しかし、長くすることによって、また一面、そういったような企業内における他の職業病との関係といったようなことがむしろ大きな影響を持って、いろいろ弊害を起すといったようなことがないとは言えないと思うのです。そういう面で、まだ法律が施行されてから足かけ三年くらいになる今日でございますから、もう少しこの実態を十分きわめた上で、将来どうしてもそれが延ばさなければならないということがはっきりいたしましたならば、それはまた、将来の時期に考えられぬことはないと思いますが、まだまだそういう、今日の時期に直ちにこれを延長するということは、まあ考え方によっては、時期尚早ではないかと思われるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/107
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108・山本經勝
○山本經勝君 新居さんにちょっとお伺いしたいのですが、先ほどからいろいろ、北里さん、能見さん等の御意見を承わっておりましても、また、会長さんのお話もそうでありましたが、つまり一応問題点が付帯決議の二項目に限定された形で審議会に付託されたように伺うのですが、そうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/108
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109・新居五郎
○参考人(新居五郎君) そうでございます。一応……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/109
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110・山本經勝
○山本經勝君 その中で、たとえば、北里さんの御意見を伺ってもそうなんですが、なるほど意見の一致をみておらないけれども、給付の増額にしても、それは望ましいことであるといわれております。また、収容施設に収容される場合に、身分の、いわゆる雇用関係の存続ということも、趣旨の上ではという御見解のようでありますが、それから、これは労使間の立場で、委員の皆さん労使間の関係がありますから、そこで、なかなか立場上の相違が結論を出すのに困難だ。そこで、三者構成の委員会が特殊な意味を持っておるということになるので、これは、新居さんは、公益といいますか、学識経験者という形で、直接当事者と立場を変えておられる立場におられる。そうなりますと、あなた方が委員会の中で論議をされて、ある一つの結論を得るので、これは、御承知のように、労働委員会と同じなんですが、労使双方の委員がそれぞれ、何といいますか、利益代表というような形になって、そこで公益側が立ち会って、これならどうですかという結論を出す。どうしても委員会の形はそうなると思いますが、その場合に、大事なかぎが新居さんなり、あるいは会長といわれる学識経験者の立場になると思うのですが、ですと、たとえば労働者側の意見からいいますと、給付の増額なり、あるいは身分の継続なり切望して、使用者側も、実情がそうなれば、そういうことが望ましいことであるという御意見でありますと、そこから出てくる結論は何であるかということが、ある程度ぼやけた形でも浮んでいるように思います。
そこで、小委員長としての新居さんの考え方として、何とかしてやらなければというお考えをお持ちでしょうか。これは、お差しつかえのない範囲内において、新居さんの見解を承わっておきたいと思うのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/110
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111・新居五郎
○参考人(新居五郎君) 私も、五回小委員会に出まして、非常に労使とも熱心な議論が出まして、何か結論が出ないものかと考えたことも幾度かございました。たとえば、大企業から出るけい肺患者に対する就労施設あるいは中小企業から出るけい肺患者の就労施設というようなものについては、別に考えるというようなことも一つの案じゃないか。いろいろ考えたこともございますのですが、その結論に至らないで、中間報告をさっき申し上げるようになって、その後委員の外遊等の事情等がございまして、小委員会がそのまま中断されるというので、いわゆる小委員長としての、公益側としての具体案は出ないうちに今日に至ったわけであります。実は、先般のけい肺審議会、新しいけい肺審議会におきまして、再びこの問題についての小委員会を設けようということがきまりましたので、やがて近いうちに、また小委員会が継続して行えるのじゃないかと思いますので、その際、われわれとしての考え方も、述べる機会があるのじゃないかと思っておるのですが、そういたしましたらば、何か具体的な二つの問題について見通しがつくような段階が来るのじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/111
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112・山本經勝
○山本經勝君 先ほどのお話にあと戻りしますが、たとえば、収容施設を作る場合に、大矢委員の質問は、いわゆる収容施設の中に、あるいはその取扱いが問題であるということを指摘したと思うのです。その点については、皆さんの意見が共通に、そういうことが結局望ましいであろうというお考え方であったように思いますが、そうしますと、そこら辺をもう少し踏み込んで、突っ込んで検討すれば、何か結論が出そうな気がする。その場合の結論が、先ほど申し上げますように、労使の立場で、病気にかかる労働者側と、それからその職場を持っておられる使用者の立場、こういうような関係の中からは、直接合理的に了解点に達するということは非常に困難だと思うのです。私の経験では、労働委員会等において特にそれは経験を持っておるわけなんですが、その場合に、やはり公益といいますか、第三者という立場に立つ学識経験者の意見が結局イニシアチブをとることになる。そこで、小委員長として、私はこうなければならぬということを端的にお考えを願えれば非常に幸いなんですが、それは、なかなかむずかしい問題でしょうが、小委員会で意見がまとまらなければいけないというだけでもなかろうと思うのですね。自分としてはこう考えているというようなお考え方もあろうかと思うのですが、そこら辺をお聞かせ願うというと、非常に委員会の今後の調査の推進も円滑にいくわけなんですが、どうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/112
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113・新居五郎
○参考人(新居五郎君) その辺が非常にむずかしいので、まあ無能ということになるかもしれませんが、その辺が非常にむずかしいわけなんでございましてね。しかし、労使としても、今までは、ずっと平行線をたどっているような議論の仕方だったのですが、今後は、会を重ねるにつれて、近寄ってくるのじゃないかという気がいたしますので、その時分には、その辺のことを、私としましても、何か考えたいと思っております。まことに恐縮でございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/113
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114・山本經勝
○山本經勝君 もう一点、お伺いしておきたいのですが、これは、労使間で問題を解決するという、労働関係の紛争や何かとは若干性質を異にしておって、そして国が特別なる保護法をもって特に保護をするという立場をとっておる。北里さんのお話にあったのですが、やはり国というものをもう一枚加えて考えるというと、そこからやはり委員会としての審議が進行して、結論を出し得る条件がやはり一応あるのじゃなかろうかという気がいたします。これは、特に国を加えてという場合に、たとえば、政府自身が今までしばしばこの委員会で言っておることは、審議会に答申を求めておるが、審議会の答申がまだ出ない。しかしながら、現行でいいとは考えておらぬ。ここにもおいでになるのですが、そういうふうに言われておる。そこで審議会に答申を求めておるのだと思うのですが、そうすると、審議会の審議に結論が出るか出ぬかということが、政府の動き方を左右するということに結局なっていると思うのです。ですから、先ほど申し上げたように、検診の結果は、千数百名に上る多数の新しい患者が発生していることは確認されておる。しかも、それは療養を必要とする者なんです。ですから、そういう状態を考え合せてみまするというと、政府としても、このままでは放っておけぬと思うのですね。ですから、そこのところを、委員会としての一つこれは要望になりますが、すみやかに一つ結論をお出し願いたいと同時に、できれば委員長さんの方の端的な御意見を、この点はこう思うけれども、結論はこうならぬというところを遠慮なくお話をいただきますと、非常に好都合だと思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/114
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115・新居五郎
○参考人(新居五郎君) だいぶ問いつめられるような格好になりますが、さっき申し上げましたように、近々あの小委員会が再開されると思いますので、そのときに一つ、きょうのこの空気を十分私頭の中に考えながら、何とかして一つ、私は小委員長になるかどうかよくわかりませんが、万一そういうふうになったような場合には、一つ努力してみたいと申し上げるより、ちょっと今こういう所で、私の見解としましてもあまりございませんので、この程度でお許し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/115
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116・勝俣稔
○勝俣稔君 新居先生にお聞きしますが、けい肺が九八%結核であるというようなことを聞いたのでございますが、皆様の御審議の際に、結核対策ということは、先ほどちょっとお言いになりましたが、結核対策あるいは結核予防法等の関係のようなお話は何かあったのでございましょうか、ないのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/116
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117・新居五郎
○参考人(新居五郎君) 今の小委員会でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/117
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118・勝俣稔
○勝俣稔君 ええ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/118
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119・新居五郎
○参考人(新居五郎君) 小委員会ではそういうことは出ませんが、審議会の審議の過程におきまして、まあさっき見えました勝木先生あたりのお話を承わりましても、結核の合併症が非常に多い。それで、その結核を撲滅することによってけい肺症というものは非常に軽くなるし、また少くもなる。要は結核対策にあるのじゃないかというようなことを強く勝木先生あたりから聞いておりますので、私もその感を深くしたというようなわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/119
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120・勝俣稔
○勝俣稔君 私もそういうように実は考えておるのでございまして、職業病には違いありませんが、疾病としては、結核というものをどこまでも重きを置いて考えなくちゃならないというような感じを持つのであります。従って、小委員会か何かに付属して、専門部会というようなものはございますですか。ございませんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/120
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121・新居五郎
○参考人(新居五郎君) 現在では、専門部会というようなものはございません。かつて、結核対策審議会、これもけい肺法の出る前でございますが、その時分には、いろいろの専門部会を持ちまして、検討されたこともあるように聞いておりますが、けい肺法が出ましてからは、初めてこの二つの問題について小委員会が設けられたわけで、ほかにはございませんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/121
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122・勝俣稔
○勝俣稔君 最近の結肺医学とでも申しますか、非常な進歩をして参りました。従いまして、先ほど来の五カ年間という、三年、二年でございますけれども、これ以上に、何というのでございますか、療養をしていらっしゃる方も出てくる。あるいは軽いようなけい肺の方々は、あるいは今後結核の治療によってよほどよくなるのじゃなかろうかというようなことも考えられるので、私は、少くとも結核の専門の研究者のようなものを集めたものの小委員会のようなものでも、専門部会のようなものでも中にお置きになって、この問題を疾病として一つお考えになることも、私は一つの方法じゃなかろうかと思う。むろん職業病としてのいろいろの待遇、いろいろのことは、法規できめてございましょうけれども、もとはやっぱり疾病でございますから、その点を私は、何かお考え下さったならば、場合によれば、なおいい結果が出るのじゃなかろうかというような考えも実は持っているのでありますので、ちょっとお伺いした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/122
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123・有馬英二
○有馬英二君 ちょっと、大へん時間がおくれましたから、簡単に、能見参考人にお伺いしたいのですが、先ほど発塵防止の最近の進歩について、特に戦後ヨーロッパへおいでになって、向うでごらんになったというお話でありますが、さく岩機が進歩し、またその時に発塵する、それに水を用いているということでありますが、これは昔からあったので、そう新しい方法じゃないと思うのですが、私が、あまり古い話で、そんなことを言うのはおかしいのですが、三十、やがて四十年前に、ドイツのウェストファーレンのボッフムへ行ったのです。あなたもボッフムへおいでになったでしょう。ボッフムへ行って、そしてあすこのけい肺の病院の方へも行きましたし、それから坑内へも入って、そして防塵の作業を見たのですが、その時分は、さく岩機の先にあわが立つようになって、そして粉塵をすべてあわに吸収するというようなことをやっておりました。それを何でも専売特許であるかのような話をして、薬液は何だと言って聞いたのですが、それは教えない、向うで。おそらくシャボンみたいなものに違いないと私は思うのですが、非常にあわが出て、そして粘稠で、その石塵が出るに従ってあわに吸収されるのですね。だから、空気中に発塵がないわけです。それを見せてくれて、非常に自慢をしたわけです。日本でこういうような機械があるかなんて言った。もっともそれは、日本ではその当時はなかった。そういうような機械が、今日もっともっと私は発達していると思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/123
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124・能見修
○参考人(能見修君) 私もしろうとでございまして、見た範囲のことなんですが、やはり一番大きな問題は、通気の問題が一番大きな問題だというように考えます。その点については、私は英国の炭坑も入って参りましたし、それから、ドイツの炭坑も三つばかり入ってきましたが、やはり通気の問題が第一に考えられて、次は、やはり作業工程の湿式化の問題ということになっております。ところで、向うの人々の言いますのには、やはり機械化がどんどん促進されるに従って、ほこりの大きさがますます小さくなってくる。それによってますます防衛がしにくくなった。困ったものだということが現状だと思うのです。そういうことによってやっております。それから、あれはたしかソープレス・ソープというのですか、ニューレックスというのですか、よく承知しませんでしたが、やはり粉塵飛沫の表面張力を弱くして、粉塵を捕捉するというような方法で、私が見ましたのでは、英国の炭坑で、一つ非常に大じかけに坑内に水を持ち込む。その水は、すべてその薬剤が入っているということなんですが、これは日本でも相当、通産省でも鉱業協会と一緒になられまして、御研究になったようですが、なかなかそれに対する効果というのが期待できないというのが、私たちが承知している現状だと思っているわけであります。それから、ドイツの場合は、集塵器を作りまして、たしか、あのドイツの研究所で作ったのですが、全国で大体五千個、集塵器が職場の中に現に行っておるということを話しておりましたが、あちらの方の予防の方法も、私は、なるほど合理的にやっているなという感じを受けたのですが、非常に先山等の母岩掘進——炭坑ですから、母岩掘進等には、相当きびしいあらゆる手段方法を採用しておるようでありますが、これは、残念ながら実態が見られませんでしたけれども、それから、比較的、何といいますか、珪酸塵の条件のいいところでは、まず通気の問題が、これがもう一番条件としては当然のあれでありますが、それをやりまして、それから水を作って、ベルト・コンベヤでどんどん送炭いたしておりますけれども、その送炭についても、水を全部スプレーでかけておる。たった一つ、小さなところですけれども、ベルトからベルトに乗り移っていくときの条件なんかも、まともに落さないで、はしりを使って落すというようなところまで、気を使ってやっておるように私は見て参りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/124
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125・有馬英二
○有馬英二君 日本の金属鉱山、主として金属鉱山ですが、私も二、三入って現場を見ておりますけれども、だいぶ古くなりましたので、今日では、非常に日本のその方面の状態も進歩しておるのじゃないかということを私は考えておりますが、要するに、けい肺というものは、珪酸を含んだ石の粉が飛んでくる。それを吸入するということですから、粉を防ぐということが主であって、それをどうして人間が吸わないようにするか。先ほどアルミニウムの話がありましたが、アルミニウムを吸って珪酸を無毒にするというようなことは、これは、学理上はできるかもしれませんけれども、実際にはほとんどそんなことは行われない。ですから、どうしても防塵ということが第一でなければならぬと思いますが、日本でも、労働科学研究所の所長の勝木君などは、何十年もその方面をやっておられるのですから、もっと金をかけてそういうことを研究されれば、これはそんなむずかしいことではないと私は考えています。日本では、まだそこまで鉱業方面に、特に企業家がそういうことをお考えにならなかったということ、まあ最近では考えておられると思いますが、また通産省にしても、そういうことまで科学的に研究が進んでいなかったということは、非常に残念なことだと思います。私は、もっともっとそういういわゆる科学化ということを促進させなければならぬと思いますし、この病気はもう、先ほど勝俣委員も言われたように、大部分が結核と合併しておるのですから、結核はだんだん今減りつつある。もっとも病人は減っておりませんけれども、予防もだんだん進んでおりますから、やがてはけい肺がこの結核と合併しないような状態、あるいは結核がだんだん減るに従って、いわゆるけい肺も減っていくというようなことは大体考えられますけれども、現実には、なかなかそこまで急には参りません。参りませんから、どうしても結核を撲滅するということと、それから、今の防塵をどうかして完全にやるということよりほかに、この病気を防ぐということはないのでありますから、これは、民間並びに官、いわゆる官民合同で、そういうことにもっと研究をするというように、先ほど能見委員もそういうような御発言もあったようですが、それよりほかに私もないと思います。これはどうしても、われわれもこの委員会において政府を督励いたしまして、そういう方面に向かさせなければならぬと思いまするし、また日本の企業家、また企業家ばかりではありませんけれども、一般にそういうことを認識していただいて、どこまでもそれに最善の努力を尽すということに私は進まなければならぬと考えておるのでありますが、先ほど来能見委員もいろいろ御意見がありました。それから、職場の転換ですね。実は二、三日前、私は鬼怒川のけい肺病院を見に行ったのでありますが、その際、能見参考人にもそこでお目にかかったわけですが、やはりそこで患者さんの訴えを聞くと、やはり給付が少いということ、それから、先ほど大矢委員からも言われましたけれども、五年では足りないだろう、もっと延長すべきではなかろうかという御意見がありました。これは、すべての患者さんがそれを訴えております。その通りであります。また私どもも非常に、患者さんからそういう話を聞けば、この病気はほとんどなおらないのですから、同情にたえませんし、ぜひともこれは、彼らの身分を保障するか、あるいは生活の保障をするだけのことをしてやらなければならないと、私も考えております。これは、先ほど北里参考人からもお話しになりましたが、どうもこの保険ですね。労災保険に入っておりますから、保険だけで給付が三年間、それから今度は二年間延ばす、それをさらにその金でまた延ばすということはどうであろうかというお話がありましたように私は承わったのでありますが、これは、先ほど勝木会長からもお話しになったが、政府の年金ですね。あとからは年金でまかなっておるというようなお話でありましたが、どうしても何らかそういう措置をとって、足らない分はどっかから補給してやる。そうして彼らの生活を安定せしむるというよりほかに道がないのではないかと思っております。また、保険の期限を延ばすということも、これもなかなか実際においてはむずかしいことであろうと私は考えております。御承知のように、結核でも、やはりこの給付が初めはもっと短かかったのですが、近ごろは、三年療養所に入って療養生活を送ることができるのですが、これだって、三年でなおるかというと、なかなかなおらない。けれども、それ以上に延ばすということは、これはなかなか困難なことでありますから、このけい肺の場合においても三年と、それをさらに、今度の新しい法律でもって二年延ばすことができたということは、非常に仕合せなことであって、それをなおこれから延ばすということは、北里参考人のお述べになりましたように、いろいろな問題があって、むずかしいと私は思いますから、何らかほかの方法で、これをさらに療養を続ける、あるいは生活を保障してやるというような方法を考えなければならぬと思っております。そういう点は、小委員会で、どうぞ今後新しく、そういうことについてさらに御研究を願いたいと思っております。
これは、まあ私の希望になりましたけれども、いろいろな問題があって、実際においては、容易なようであって非常に解決困難なものでありますから、皆さんの今までの審議の過程においていろいろと御苦心をなすったことと私は思いまするが、しかしながら、これはどうしても、審議会でも十分案を練っていただいて、そうしてこの委員会も、さらにそれをもとにして政府を督励して、何らかこの病気に対する万全の策を講じてやらなければならぬと、私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/125
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126・阿具根登
○委員長(阿具根登君) 参考人に対する質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/126
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127・阿具根登
○委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。
各参考人の方々には、長時間貴重なる御意見を述べていただき、まことにありがとうございました。
速記をちょっととめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/127
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128・阿具根登
○委員長(阿具根登君) 速記を起して下さい。
本日は、これにて散会いたします。
午後四時六分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102814410X00919580227/128
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