1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年五月三十一日(火曜日)
午前十時五十六分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 和泉 覚君
理 事
木島 義夫君
松野 孝一君
委 員
後藤 義隆君
斎藤 昇君
鈴木 万平君
中野 文門君
大森 創造君
亀田 得治君
藤原 道子君
市川 房枝君
国務大臣
法 務 大 臣 石井光次郎君
政府委員
法務省民事局長 新谷 正夫君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
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本日の会議に付した案件
○商法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議
院送付)
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001・和泉覚
○委員長(和泉覚君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
商法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/1
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002・亀田得治
○亀田得治君 商法の一部改正案につきまして、若干御質問をいたしたいと存じます。各条文に入る前に、平素私が疑問に思っておる点につきまして少しお尋ねをしたいと思うわけです。
その第一は、株式会社に関するいろいろな研究等が専門家によって行なわれているわけですが、どうも研究の主体というものが近代的な大企業というようなものに片寄り過ぎておるというふうな印象を受けているわけであります。株式会社自体は実態はきわめて多種多様であるわけですが、どうも理論的な面の研究というものが、その中の一部の大きな企業というものを対象にして理論研究が進められておるやに思われるわけです。もちろん、それだけというふうに申し上げるわけじゃない。中小企業、小さな会社の実体等についても目を向けておるものもあるわけですが、全体として見る場合に、非常なへんぱな感じがいたしておるわけです。理論そのものはなかなか論文等でもりっぱなものがたくさんあるわけですが、そういう意味で専門家の研究の態度ですね、そういうものに一つの偏向というものを感じておるわけです。民事局長としてのひとつその辺の考え方を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/2
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003・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 株式会社に関する法制の研究につきまして、大企業中心のものの考え方というものが中心になっているのではないかという御趣旨の御質問でございますが、これは非常に大きな問題でございまして、株式会社なる形態の法人というものが一体大規模の組織のものであるのが通常であるべきなのか、それともまた小さな企業についてもこれが適用されるべきであるかという根本の問題とも関連してまいるわけでございます。概して、株式会社の形態をとります会社というものは、その規模も大きくなっているのが通常でございますが、さりとて非常に小さなものもこれはございます。したがいまして、株式会社法一般の検討ということになってまいりますと、これは大企業の立場からの意見ももちろん出ましょうし、また、中小規模の会社を中心にした意見というものも当然出てくるわけでございます。いろいろ議論されております問題といたしましてあるいはお説のように大企業中心にものを考えているのじゃないかというふうに見られる節もないではないと思うのでございますけれども、もともと現在の株式会社法そのものが大企業も中小企業も含めてこういう形態の会社組織を認めることになっております以上、一方にのみ偏重して株式会社というものを考えるのは当を得ないものと私どもは考えているわけでございます。ただ、多くの問題が出てまいりますのは、株式会社組織をとっている法人の運営上の問題についていろいろ問題が出てまいりますために、勢いそういった研究も大企業関係のものが多くなるということもこれは考えられるわけでございます。そうかといって、中小規模のものにつきましてこれを無視するということはむろん許されないことでございます。大企業の立場からも、あるいは中小企業の立場からも、株式会社法というものがどうあるべきかということは十分に研究されなければならない問題でございます。今回の商法の改正におきましても、主として大企業の関係のものもございますし、また、中小企業中心に考えられた点もある次第でございまして、今後いろいろ株式会社法の問題についてさらに検討をいたさなければなりませんが、私どもの態度といたしましては、大企業のみの問題として取り上げるべきものではなくて、中小企業、さらに株主、債権者の立場、こういったものも総合的に勘案いたしまして株式会社のあり方というものについて検討すべきものであろうというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/3
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004・亀田得治
○亀田得治君 実務家の人たちですね、たとえば、裁判官とか、弁護士とか、あるいは実際に企業にタッチしていろいろな指導等をしている人、こういう人たちは、わりあい中小企業の立場というものも頭に入れた論議がなされていると思うのです。それは、社会の実態が、大企業あり、中小企業あり、さまざまなんですから、これは当然なことなんですね。ところが、学説とかそういう理論的な研究の面になりますと、はなはだそういう点が一つの片寄った状態になっておるというふうに感ずるのです。おそらく、外国の制度などを比較的に研究するというような場合にも、やはり大企業を対象にした論文等が多い。したがって、そういうものを読む。そういうところからの影響なども自然大企業中心の研究になっていくというような面が確かに私はあると思います。たとえば、所有と経営の分離といったようなことは、ほとんどこれはもう今日では常識的な通説になっておりますね。こまかい問題になりますと、たとえば株主の地位の問題とかそういう問題になると、いろいろ意見が分かれるようですが、しかし、どういう意見になるにいたしましても、所有と経営の分離といったようなことはもうみんなが認めてかかってやっておるわけですね。ところが、実態は、所有と経営というものが一つだというふうな中小の企業、そういうものはたくさんあるわけなんですね。だから、そういう意味で、現在の日本の商法学というものはある意味ではその任務を果たしておらぬように私は思うのです。一部の、非常に大きな、はなばなしい、どんどん前向きに進んでいく、そういう面ばかりの研究に没頭しておりまして、はなはだ私はそういう点では遺憾だと思うのですが、これはどうなんですか。いや、そうじゃないと、中小企業の立場からの商法理論の研究などを非常に深めてやっておるというふうなものもあるのかどうか。実務家は別ですよ。どうも理論的な面ではそういう面がはなはだ私は薄いように思う。できましたら、いや、こういう学者のこういうものがあるといったようなことまで、もしあるのであれば、お示しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/4
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005・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 確かに、先ほどのお説のように、株式会社というものの研究というものが大企業を中心に偏しておるのではあるまいかという点は、これは否定できないであろうと思うのでございます。御承知のように、会社の形態といたしましては、合名会社とか合資会社とかあるいは有限会社というものもございますし、また、株式会社というのもあるわけでありまして、ごく大ざっぱに申し上げますと、株式会社は主として大規模の会社に向く組織であり、その他の会社組織はどちらかと申しますれば同族的な中小規模の会社に向くような形態になっておるわけであります。そうかといって、株式会社も決して中小規模のものにも適用されないというものではなくて、現実問題としてむしろ数といたしましては、わが国の株式会社の実態から申しますれば、中小規模の会社のほうが多いのではないかというふうにさえうかがえる節があるわけであります。会社の性格が法律的には株式会社というものは大きな組織のものに適用されるものであるというふうな考えに立っておるといたしますれば、研究の中心も勢いそういうことになるわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、わが国の株式会社の実態は、大規模の会社と中小規模の会社がどちらが多いかということになりますと、むしろ中小規模の会社が多いように考えられるといたしますれば、今後の株式会社法の検討という面から申しますなら、大企業の会社組織の問題のみを取り上げて、中小企業関係のものを無視するということは、これは絶対にできないわけであります。私ども実務を担当しております者の立場から申しますれば、これはどちらに偏するということでなくて、大企業の株式会社の運営上不都合な面があれば、これは直していかなければなりませんし、また、中小企業の株式会社の運営に不都合な点がございますれば、これもまた取り上げて研究いたさなければならないのは当然のことでございます。そういう意味におきまして、私どもの立場としては、いずれの立場に偏するということでなく今後の株式会社の問題について検討いたしたいと思っているわけでございます。お説のごとく、現在のいろいろ学界等で研究されております問題が大企業中心のものではないかということになりますと、確かに株式会社法というものは本来大きな組織のものに適用されるものでございますので、どうしてもその検討の対象がそういった方向に向いていくこともこれはやむを得ないことだと思います。一がいにすべて大企業中心にものを考えているというふうには言えないと思うのでございますけれども、実際問題として出てくる多くの問題が大企業中心のものにあるとしますれば、そういった面から問題を掘り下げていくということは、これはやむを得ないことであると思うわけでございます。中小規模の株式会社についての研究というものが非常に少ないということも、確かに私ども具体的にどういうものがあるということをつまびらかにいたしませんけれども、概して申し上げますれば、亀田委員おっしゃいますように、企業の所有と経営を分離していくというふうな株式会社の一般的な趨勢を中心にしたものがやはり多いことは、これはいなめない事実でございます。そうかと申しまして、それのみに終始していいものかどうか、将来の株式会社というものがすべて一律にそういった方向に走ってしまうということになるかどうか、これは理論上の問題と現実の問題と必ずしも一致しない面も出てまいるわけでありまして、現実には企業の所有と経営が一致しておるものというものも多々あるわけであります。そういったことを無視して株式会社はこうあるべきだということは、これは言えないと思うわけであります。
確かに、ただいまの点は、今後の株式会社法というものがどうあるべきかということの考え方の根本につながる問題でございまして、たいへん重要な問題であろうと思うわけであります。私どもの立場といたしましては、大企業の立場も、また中小企業の立場も、同じように考えて検討いたさなければならないというふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/5
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006・亀田得治
○亀田得治君 ともかく、日本の株式会社に対する研究が片寄っておる、これははなはだ遺憾なことでして、もっとそういう点では改革されなければいかぬ面が多々あると思います。
そこで、たとえば、今回の一部改正案のもとになりましたのは、経団連なりあるいは商工会議所なり、そういう言うてみれば大きな資本家団体、まあ商工会議所の場合には中小もずいぶん入っておりますが、しかし、原動力としての動きというものは、大企業の面からの要請というかっこうをとって法制化されてきていると思うのです。私は、この改正案の結論自体は、これで一応いいんだろうというふうには思っておりますが、ともかくそういう大企業面から何か具体的に困る問題があるから法律をこういうふうにしてくれというふうな事柄ですと、わりあい早く話がきまって、そしてどんどん法案として出てくるわけなんですね。それは必要なものはもちろん早いほうがいいわけですが、中小企業面が全くこれは抜けている。実際の裁判所の係争などを見ておりましても、中小企業関係の会社の係争というものが圧倒的に私は多いと思うのです。大企業のほうは、そういう裁判所の係争なんかにはむしろならないで、もうそういう係争の対象よりももっと大きな存在になっているわけですね。そうして、実務上差しつかえがあると、すぐそれが学者によって取り上げられ、これは当然改正しなけりゃなんということになって、法律がすぐうまく調子を合わせていくようになっている。中小企業のほうは全くおくれている。学者、理論家のほうは、あまりそれには目をくれない。しかし、実際の裁判所では、むしろ中小企業関係の会社の紛争というものが多いわけでしょう。法律というものがそういう紛争をなるべくなくしていくんだということであれば、もっとそこに目を注いでもらわなければいかぬと思うんですよ。
そういう点で、今度の改正案には賛成はしますけれども、はなはだ片手落ちだという感じがいたしておる。せんだってからの答弁で、そういう関係については今後さらにやっていくんだと、こう言っておられますけれども、まあ中小企業についての商法上の諸問題等について問題点の指摘程度に終わっておりまして、それをそれでは法案にまとめてどうこうといったような熱意などが私たちにはどうも感ぜられないんです。この法案を通す便宜としてまあそれも今後やらなければならないというふうな程度にしか感ぜられないんですが、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/6
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007・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 先ほど来の御質問に関連することでございますが、この問題は、現在の株式会社に関する法制というものが大企業の会社あるいは中小規模の会社に共通してそのまま適用されるべきたてまえにはなっておるわけでございますけれども、はたして現実問題として大会社も中小会社も一律にこの法律によって規律することが妥当であるかどうかということになろうかと思うのでございます。中小会社に法律上の紛争が多いといいますのも、株式会社につきましては債権者あるいは株主の立場を考えていろいろこまかい規定がたくさん入っております。そういった規定の適用を受けるに値するような会社の実体であるかどうかということにそもそも問題があるわけでございます。そういう意味におきまして、現在の株式会社法というものを大きな会社と小さな会社に分けて、大きなもののみに適用したらどうかという意見はかねてからあるわけでございまして、法制審議会におきましていろいろ具体的に取り上げられました問題を検討いたします際にも、常にこの問題は問題として論議されてきたわけでございます。しかし、現在の実情といたしましては、いろいろ中小会社向きの会社組織というものがあるにもかかわりませず、当該の会社としては株式会社組織にしたいということから、小さい会社でありましても株式会社の形態をとっているものもございますし、また、これを法律的にいま直ちに規制することによって、中小会社については株式会社でないようにしてしまう、ほかの形態の会社組織に改めてしまうということも、これまた非常にむずかしい問題でございます。そういうことから、かねがねその点については問題にはなっておりますものの、具体的にそれじゃどうしたらいいかという結論にはまだなかなか到達し得ないような状況にございます。非常に大きな問題でございますので、これは確かに将来のわが国の株式会社法というものをどう持っていくかという意味から考えますれば、慎重に検討を加えまして結論を出さなければならないと思うのでございます。
しかし、それはそれといたしまして、当面、大会社にも中小規模の会社にも、現行の商法上不都合な点がこのようにあるから、これを改正してもらいたいという要望が各方面から出てまいりましたために、今回の改正ということになったわけでございます。お説の点は、株式会社法そのものの最も根幹をなす問題でございまして、将来の問題として検討を加える必要があることは申すまでもないわけでございます。非常にむずかしい問題でございますだけに、なかなか法制上にもまた実際の扱い上にも問題が出てまいりますために、なかなか早急な結論を得られないわけでございます。今後とも十分そういう点は考慮に入れまして、大会社あるいは中小会社にとってはどうあるべきかということも慎重に検討したいと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/7
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008・亀田得治
○亀田得治君 会社の関係で裁判上の紛争になる、これは年間どれくらいありますか。たとえば、総会の決議無効とか、いろいろな種類のものがあるわけですが、そういう紛争ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/8
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009・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) ただいま、申しわけございませんが、手元に資料ございませんので、裁判所のほうに照会いたしまして資料を提出いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/9
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010・亀田得治
○亀田得治君 それは大部分が中小関係だと思うんです。八幡製鉄あたりだと、ああいう政治寄金が一体定款に合うのか合わぬのか、非常に変わった問題がときどき出ますけれども、これは多少普通の問題と違う問題で、一般に紛争というのは、これはもうほとんど中小企業なんです。それは、中小企業の会社をずっと見ますと、出発のときからやはりうそ——と言っちゃちょっと当事者に気の毒なんですが、正確に言えば真実でない出発点になっておるわけですね。実際は最低七人で会社をつくっていく、こうなるわけですが、実体は一人、ここら辺にまず問題があるわけですね。形式の上では、名前を借りてきて七つに分けておけばそれで一応通りますけれどもね。しかし、それは真実ではない。ところが、形式として株主になれば、いざという場合にその人が開き直れば、やはり商法上の権利を持ってくるわけで、そういう人が今度は開き直って、この会社のやっていることはむちゃくちゃじゃないか、株主総会の決議があるけれども、そんなことをしたことはないじゃないかとかいろいろなことを言い出しますと、一生懸命まじめにやっておる経営者が、そういう形式的な瑕疵のために、何かこの会社をいじめてやろうというような者に簡単に利用されるようになっておるわけですね。そういうふうに裁判所に持ち出されれば、裁判所も法律を無視したことはできませんので、いろいろ苦心はされても、やはり法律の条文は無視できないというようなことになって、社会の実態と非常にバランスのとれないような現象が多々起きておるわけなんです。これは現在の日本の株式会社の問題としては非常に重大な問題なんですけれども、そういう中小企業者は団結がないものですから、なかなかまとまってすぐ政治力として上がってこない。したがって、なかなかそういう点についての解決策が出てこないということに現状はなっておる。
私は、そういう意味で、立法はやはり困っておる問題をなるべくそういうことが起こらぬように合わしていくことが大事なんで、なぜこういうことについて現実が困っておるのにいつまでも放置しておくのか。理屈の上だけじゃ、多少中小企業の問題は一律にはいかぬというようなことを言うわけだ。現実にしからばどうするのか、その具体案が少しも出てこぬわけですよ。しかし、私は、ほんとうに法務当局がこの問題と取り組んで、そのような不正義なことが行なわれぬようにしていこうという気持ちになれば、できる問題だと思う。現に裁判所にたくさんケースがあるじゃないですか。それをずっと拾い上げて、これはこういうふうになったからこの条文を利用されているんだと、それじゃこれをひとつ利用されぬようにするのにはどうしようかとか、ある条文については中小企業者については適用しないとかなんとか真剣に入り込めば、具体案が出てくると思うんですがね。どうも、そういう意味では、やはり中小企業者の悩みというものがほんとうにわかっておらぬように思うんですね。どうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/10
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011・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) その点は、先ほど申し上げましたように、現在の株式会社法という非常に精緻をきわめた法律の規定が小規模の株式会社のすみずみまで適用されていいかどうかという問題に帰着するわけでございます。もともと大規模のものをねらった株式会社法であるといたしますれば、それに向かないような実体の小規模の会社についてこまかい煩瑣な規定を適用するということは確かに無理があるわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、現在の株式会社法制というものが中小規模のものに一律に適用されるべきものになってはおりますけれども、実態としてはたしてそれでいいのかどうかということは別に考えていかなければならぬわけであります。お説のように、ある規定については小規模の会社については適用を除外するということも、確かに一つの考え方であろうと思うわけであります。そういう意見の方もおありのことは承知いたしておるわけであります。そうかと申しまして、それでは一体中小規模の会社というものはどの範囲のものを言うのかというふうなことになってまいりますと、これまたなかなか限界を画することが困難な問題でございます。一億円未満のものであれば中小企業と言っていいのかどうか、あるいは、それ以上のものでも、かりに規模は大きくても株主の数は少なくて同族的な会社もあるわけでありまして、そういったものにこまかい株式会社の規定を全部一律に適用することがいいかどうかという問題も逆にあるわけでございます。そういうことで、株式会社法というものをどういう実体の会社に適用するのが最も適当であるかという根本問題になるわけでありまして、今後この点は株式会社法の中心課題として検討をしなければならないわけでありますが、とりわけ中小企業方面のそういった不都合について、その苦情とか苦しみとかいうものを十分に受けとめてこれを法律の改正のための検討の素材にするということも、これは確かに必要でございます。
われわれの立場といたしましては、当初申し上げましたように、どちらに偏するということなく、株式会社法そのものを今後どうあるべきかということを考えていかなければなりませんので、従来の訴訟になっておる具体的な案件、あるいは中小企業の団体方面の意見、希望、そういったものを十分参酌いたしまして今後の研究を進めてまいりたいというふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/11
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012・亀田得治
○亀田得治君 私は、中小企業につきましてこれを株式会社法からはずすというふうな考え方は、やはり現実に沿わぬと思うのです。たとえば有限会社法というのができたけれども、あまり活用されぬわけですね。活用しない者が悪いんじゃというふうなことを言うてみたって、これはやはり株式会社という一つのものにみんなが執着を持っておる以上はしかたがない。それはやはり社会の一つの大きな現実ですから、これは認めていかなきゃならぬと思うんです。したがって、中小企業だから株式会社法のワクからはずしてしまうという行き方、そういう行き方をしますと、これはかえって苦しめることになる。それはまたかえって非常に混乱が起こると思う。だから、現状の株式会社法の中に置いておいて、相当きびしい規定があるわけですが、それらの条文については、中小企業者に対しては強制をしないで、選択できる余地を与えるんですね。だから、選択できる余地を与えるのですから、きっちりこの株式会社法でやっていこうと思っておられる会社は、たとえ小さくても、それでやってもらったらいいわけですよ。それをさい然と区別してしまおうとすると、一体、区別の標準をどこに置くのかというふうなこと自身がなかなかむずかしくなってくる。だから、いまのような選択的な規定ということにすれば、大企業と中小企業の限界点の設定なども、ある程度おおまかなものであっても、実務上そんなに差しつかえは出てこぬと思います。で、そういうふうな考え方をきめて、それじゃどの条文とどの条文なんだろうかというふうなことをずっと研究していけば、これはずいぶん総会屋に悪用されたりいろいろなことをしておるケースが多々あるわけですから、おのずからちゃんと整とんがついてくると思うんですよ。そういう基本的な考え方を皆さんがもっと持たぬか。持てばこの作業はできると思うんですよ。りっぱな法律専門家がたくさんそろっておるんだから、そんなに困難なことじゃないと思う。むずかしいですか、そういう選択的な規定にすれば。どっちでもいいんですから。しかし、それは外部からわからないといかぬというなら、もしそういう選択的な規定を活用していこうという会社であれば、当初から定款にそのことを書いて誤解がないようにしておくという方法もあるんだし、それによって生ずる弊害なんというものはいくらでもまた打つ手があるし、むしろそのほうがよほど喜びますよ。それは理想的な形じゃないかもしらぬ。しかし、ともかく何十万という会社があって、みんな悩んでいるんですよ。それはそういう内輪げんかがない、スムーズにいっておるところは、それでいいですよ。ところが、もめてきて、ここをつかれやせぬか、あそこをつかれやせぬか、そんなことを一々気にし出したら、とてもじゃないが事業にほんとうに打ち込むという熱意に欠けてきますよ。そういう心配は、日本の中小企業内部の書類関係なんというものはほとんど全部かかえておるんですよ。そんな不安な状態のままで知らぬ顔をして、問題が起きたところだけ裁判所でごちゃごちゃやっておる、こんなことはほんとうに私は不親切だと思うんですよ。それは、法務大臣もそういうことはずいぶんお聞きになっておると思うんですよ。だから、その決意ですよ、この問題を片づけようと。それは、理論的に言えば、そういう適用除外の規定などを設けるのは、それはもう株式会社の理論の趨勢からいけば逆行だと、確かにそんな議論は起きますよ。それは私もそういう気がせぬでもない。しかし、あなた、実体がそうなんでしょうが、実体が。その実体がだんだん近代化されて変わっていけば、そういう例外規定を落としていけばいいでしょう、もうここまで来たからこういう例外規定は落とそうと。だから、決してそういう前進することを私は否定するものじゃないんです。あまりにも・実体とこの法律の趣旨が反しておる。そのために、言うてみれば虚偽なことをやっておる。それがすべて経営者にとっては非常なやっぱり頭痛の種になるんですよ。実体と合わぬことをやっておるということは、正直な人であれば、たとえそれが問題にならなくても、それは気持ちのいいことじゃないんです。そんなことを国家が強制しているなんということは、全くなっちょらぬと思う。これは大臣のひとつ考え方を聞かしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/12
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013・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) 先ほどからの亀田さんの意見、私は非常に傾聴いたしております。今度の商法の改正案の中にそういうところまで及んでないという問題がたくさんあると思うのであります。おっしゃるとおりに、中小企業の関係の人たちでいろいろな問題で苦しんでおる面がたくさんあるということもいろいろ聞きます。そういう問題等も取り上げるべき問題だと。そんなものはどうでもいいというべき問題じゃなく、さっき局長が申しましたように、中小企業関係の会社がたくさんあるわけなんです。そのほうが数が多いという状態でございますから、そういうふうな問題の数も自然多い。裁判所の係争事件の中にもそういう問題が自然多いということになるわけでございまして、そういう問題も引き続きまして、これで法改正は終わりと言うべき問題でもないと思います。全般的な大きな商法の改正という問題に関連いたしましていまのような問題等を引き続いて研究をいたしていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/13
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014・亀田得治
○亀田得治君 ひとつ引き続いて研究してもらうわけですが、具体的に法制審議会に対する提案などをしていただきたいというふうに私は思っているのですが、そこまでおやりいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/14
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015・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) 研究いたすということは、研究して、できれば当然そういうふうなこともするということでありまして、私どもは、学者じゃなく、実務を扱っておる者でございますから、私どもも勉強して研究した結果を得ましたら、必ず手順を経て何らかの形で出すように努力をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/15
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016・亀田得治
○亀田得治君 民事局長の御意見は先ほどからるる承っておりますが、一、二点あなたの考えでいいですから聞いてみたいと思うのですが、そういう中小企業の法体系をいかにするかという場合に、私の考えは、やはりこれは株式会社の中に置いておいて、そうして先ほど申し上げたような方式をとるべきだ、選択的な規定を置いて緩和していく。これは選択的じゃないといかぬと思うのです。つき落としてしまうかっこうにするのはよくない。そういうふうに私は根本的にはこれはいろんなケース等も経験して思っておるんですが、そういう点について、民事局長の考えでいいです、参考にちょっと聞かしてほしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/16
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017・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) たいへん重要な問題でございますし、まだ私としてそれに対してはっきり意見を申し上げるところまで研究を重ねておりませんけれども、要は、株式会社の形態をとりました場合には、株主の立場、さらにまた会社の債権者の立場ということを考えましてこまかい規定を定めておるわけであります。したがいまして、そういうところに非常にむずかしいこまかい規定が出てまいりますために、それを一から十まですべての会社について適用させるのは無理じゃあるまいかということになってこようかと思うのであります。ところが、これを選択的に法規によっては適用の余地を残して置いたらどうかという亀田委員の御意見のようでございますが、これは個々の条文にも当たってみなければなりませんけれども、株式会社法で一番気を使っておると思われます点は、何と申しましても、先ほど申し上げたような株主の保護ということと会社債権者の保護ということに終始すると言っても過言でないと思うのであります。こういった点の規定を緩和できるかどうか。株式会社という形態をとる以上は、どうしても最小限度必要なものということで現在の規定が置かれておるようにも考えられるわけでございますので、これを会社の規模等によってあるものは自由に適用除外することができるような仕組みにすることが結果的に妥当な結果になりますかどうか、この点をもう少し研究してみなければなりませんけれども、ごく一般的に申しますならば、いまのような詳細な規定を一律に適用しなくてもいい、別な特則のようなものをむしろ設けていくということのほうが妥当なのではあるまいかという感じがいたしておるわけであります。これはもちろん法務省としてそういうふうに考えておるわけでもございませんけれども、ただいまの亀田委員の、法規によっては選択的に適用させていくというお考えも一つの御意見だろうと思うのでございますが、いま申し上げたような株式会社というものの法制の立て方から考えますならば、選択的に適用を認めていくという仕組みがいいのか、あるいはある程度の同族的な閉鎖的な会社については適用すべき法規を簡素化したものにして現在の株式会社法の特例のようなものを認めていくほうがいいか、こういった点が議論の分かれ目になるような感じがいたすわけであります。先ほど来申し上げておりますように、現在の株式会社法というものがピンからキリまである株式会社に一律に適用されるということに実は問題があるわけなんでございますが、その点、適当な方法が考えられますならば、これにこしたことはないわけであります。十分御意見も尊重しながら研究させていただきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/17
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018・亀田得治
○亀田得治君 それは、選択的に選ばすという方法か、あるいは特則のようなものを設けていくというふうな方法か、まあいずれにしてもそれは大した違いじゃないと私は思うんです。商法の規定の中で、どれとどれが無理がある、あるいは必要がない、むしろ逆に弊害がある、悪用されるというふうなことをいままでの経験に徴して具体的な検討をやってもらえば、おのずから結論が出てくるはずだと思うんです。私はこう考えておりますので、ぜひこれはひとつ具体的な取り組みをやってほしいと思います。
まあ株主の保護というふうなことがこの株式会社法の一つの大きな柱であることはもちろんなんですが、ともかく経営者一人が全部株を持っておる、事実上ですよ、そういうのがずいぶん多いわけなんですね。だから、こんな会社にとっては、株主の保護ということを切り離して考えてみること自体がおかしいわけでしてね。それじゃ、それはもう会社じゃないんだから、そんなものはやめてしまえというのも、現状では実態に沿わぬわけですから、それはやめるわけにはいかぬ。これは何といっても大きな矛盾なんですから、いつまでもこういうふうにほうっておくわけにはいかないと思う。ぜひ、先ほど大臣の言われましたような立場で、至急積極的な取り組みをお願いしておきます。
それから、株式会社が非常に多いわけですが、民事局長は、その理由をどういうふうに理解しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/18
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019・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) これはわが国の経済界のいろいろの事情によるのだろうと思うのでございますが、概して、株式会社という形をとりますと、内容のしっかりした大きな会社であるというふうに、ごくしろうと考えでございましょうけれども、そういうふうに受け取られる節が多分にあるのじゃないかと思うわけでございます。合名会社であるとか有限会社であるとかというふうな形をとりますと、しろうとの方々が考えまして、ああその程度の会社かというふうに軽く一蹴されてしまうというふうに見られるのを避けるといいますか、そういった感じが非常に強く働くために株式会社形態をわざわざとっておるというふうに考えられるわけであります。実体から申しますれば、何も株式会社形態にして、めんどうな規定の適用を受ける必要もない程度のものも、続々と株式会社になっておるというふうな実態、その原因がどの辺にあるかということなんでございますが、こまかい事由はよくわかりませんけれども、どうも株式会社にしておくほうが一般の信用を得るにも都合がよろしいというふうなことがおもな理由ではあるまいかというふうに考えられるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/19
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020・亀田得治
○亀田得治君 それも一つの大きな理由だと確かに思いますが、たとえば、八百屋さんとか、小さなお菓子屋さんとか、そういうものまでが会社組織になる。われわれ相談を受ける場合に、税法上の問題がやはり非常に大きく響いておるんです、もう一つはね。だから、きょう国税庁にちょっと来てもらったほうがよかったんですが、そういう点の不公平を国として直せば、相当この問題はまた違った形になると思うんです。株式会社として出てくる以上は、国のほうでその生まれた会社が不便でないように先ほど申し上げたようなことをやってもらわなきゃなりませんが、しかし、ほんとうはそういう会社はあまりふえんでもいいんですね、実体からいうと。しかし、その理由は、一つはやはり税の関係があると思います。私は税務署の関係者にも言うことがありますが、同じ仕事をやっておって、人数から扱いからみんな同じなんですよ。それでいて、会社であれば税金が安い、個人であれば高い。それはおかしいじゃないか。法規がこうこうこうなっておる。いや、そんなことを聞いておるんじゃない。常識的に考えた場合に、同じことをやっていて、たまたま形を違えてやれば、一方は税金が高い、一方は非常に安い、そんなことはおかしいじゃないかということをちょいちょい議論をすることがあるんですがね。それは基本的にはおっしゃるとおりだというようなことを言う署長がおりますが、あなたはどういうふうにそれはお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/20
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021・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 税法上のことはよくわかりませんけれども、よく言われますことは、ただいま亀田委員のおっしゃいましたように、株式会社組織にして置くほうが税の関係で有利だということは確かに言われておるようでございます。まあそういうこともございましょうし、さらに、法律的に申し上げますならば、個人企業で、個人が全責任を負ってある企業の経営をやる場合と、個人と会社に二つに分けて会社を中心にしてその企業を経営していくというふうにする場合と、この二つ考えてみますと、全責任が個人にかかってまいります個人経営の場合よりは、むしろ、万一の場合に企業がつぶれても、会社がつぶれるだけで個人のほうは助かるというふうな考えも一面にはあるのじゃないかと思うわけでございます。それやこれやのいろいろの事情によりまして小さなものが株式会社組織をとっているということも考えられるのじゃないかと思いますが、税のことはちょっとこまかいことはわかりませんけれども、そういったいろいろの事情が重なりまして株式会社の形態をとるものが多くなっておるのであるまいか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/21
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022・亀田得治
○亀田得治君 そういうつぶれた場合のことを、どういうふうにうまく逃げようとか、そういうことを考えておるのは、これは相当余裕のある人です。そうでないのは、出発点は税という問題が非常に大きいんですね。だから、こういうことがもり少し何とかできないものか。たとえば、会社の場合であれば、全くそれは実質は個人企業であてっも、会社の経理の中からちゃんと社長としての給料をとれる、こういう仕組みになっておりますね。しかし、それは個人だって一緒じゃないですか、経費のかかることはね。そういうことが個人の場合にはなかなか把握しにくいとかなんとか言いますけれども、しかし、それは会社のそういう支店に行きますと、会社が帳簿と言うとるのは大体いいかげんなんです、みんな。そういう段階の場合のは。だから、それはつっつこうと思えばいくらでもっつけるのですね。どんな小さい会社にしておっても。だから、私はそれは大同小異だと思うんです。国自身が、何か会社とかというと信用するようなかっこうをとる、個人の場合だと信用しない、こういうふうな感じがあるんですね。私は、これはもう人間形成という面から見ても、そういうことは間違いだと思うんです。何かかっこうをつくっておったら、それは認めていく。個人の正直なおっさんがこれはこういうふうにしてやっておるんでこれだけ費用がかかると言うたって、なかなか認めない。こういうことをやっておれば、それは心ならずなんだ、そういう人が会社にするのは。決して会社ではないんです。七人の株主、これは虚偽ですわね。金も出さぬ人を集めてきてそうしてなにする。だから、そういう税制の面からも私はほんとうに検討してもらわんきやならんことだと思うのです。個人にすれば税金が把握しにくいというたって、そんなことないです。実際、個人の場合だって、青色なりいろいろ帳簿上の指導をしておるわけなんで、同じことですよ、それは。ただ会社という名がついておると、税務署は、税務関係の指導方針として、こういう場合にはもう通しておけと軽く通すことになっておるんです。それで皆その規則に合うようにちゃんとつくっておる。これはもうみんな虚偽なんだ、お互いに。なれ合いです、悪く言うたらね。だから、そういう点の税務面からの不公平というものを改める必要があるんです、本当に。現実に私はそんなことで会社をつくっておる人をたくさん知っています。次の委員会に、国税庁長官にちょっとその点で一ぺん確かめてみたいと思うので、呼んでほしいと思います。
それで、総論はこの程度にしておきましょう。これはいくらやっておっても片がつきませんから。
そこで、提案されておる各条文につきまして若干私のお聞きしてみたいと思った点についてだけお尋ねすることにします。
今度は株式の譲渡制限を可能ならしめることにしたわけですが、昭和二十五年にこれを一切禁止したわけですね、譲渡禁止はできないことに。当時はアメリカからの影響が強かったんでしょうが、それにしてもこれは乱暴じゃないかという気がするわけですが、どうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/22
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023・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 昭和二十五年に改正いたしました当時、御承知のように、株式の民主化というふうなことが非常に盛んに言われまして、そういう風潮に乗ったということもございましょうし、また、株式会社の株式というものは本来譲渡自由であるべきものであるという考え方が司令部方面からも示されたように承知いたしておるわけであります。そこで、従来の株式の譲渡の制限禁止の規定を撤廃いたしまして、禁止も制限もできないというふうに改めたわけでございます。株式会社の実情から申しますならば、当時、相当の株式会社につきまして譲渡制限をしなければならなかった、また、現に譲渡制限をしておった会社があったわけでございます。昭和二十五年当時の実情を、ごく一部でございますが、日本橋の登記所において最近調べたところによりますと、三百八十の会社の中で三百二十二社、パーセンテージにいたしますと八四・七%がその当時譲渡制限の定めを設けておったようでございます。概して八〇%あるいはそれ以上のものが譲渡制限をやっておったというふうに見てよかろうと思うわけでございます。そういう状況下において、突如として譲渡制限を禁止するという措置がとられたわけでありまして、これは改正いたしました当時から問題がずっと現在まで引き続いてあったようでございます。従来、そのような状況下にありながら、譲渡制限を撤廃するのは困るという声が現在まで続いておりました。改正直後からこの問題は一応問題として取り上げられたようでございますが、何ぶんにも二十五年の大改正をやりまして間もなくのことでございまして、現在までそれが実現を見なかったということが株式会社の運営の面にいろいろ不都合を生じてきておるという結果になりまして、今回の改正案によりましてある程度もとへ戻すと申しますか、二十五年以前の禁止制限というところまでは持ってまいりませんけれども、ある程度の利限をすることができるようにすることによって中小企業の株式会社の困った点を直していこう、こういうふうに考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/23
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024・亀田得治
○亀田得治君 これは、ともかく株式の民主化とかなんとかそういう抽象論で現実のこの制度をこまかいところまで押し切れるものではないわけでして、その全体の民主化ということは、もちろんわれわれ別に反対でもない、むしろ積極的に賛成なわけですが、八〇%以上も譲渡制限をしておる現実に対して、いやそれはまかりならぬ、こういうことは、私は立法家として非常識だと思うんですよ。これはほかの人道上の問題とかそういう問題なら、相当強硬に行かなければならぬ場合もありますよ。そうじゃない。株式の民主化といったって、さっきからも申し上げるように、七人で株を持っておるといったって、実質は一人なんです。そういう一人会社というものはたくさんあるわけなんですよ。それで、譲渡制限の禁止を幸いにして、実質の権利はないけれども形だけ権利を持っている者が、じゃこれをだれかに譲ると言ったら、それはもんちゃくでしょう。社長は、おまえは金を出しておらぬのだから権利はないんじゃと言うだろうし、いや、そんなことはない、金は出しておらぬけれども、いろいろ助言したりお手伝いしているというようなことを言うて、そうなると、なかなか第三者からはわからない、内情をよく調べてみなければ。それで裁判上の紛争になる。
ともかく、その当時すっすっとそういうことが通ったんですか。一ぺん私はこれ聞いてみたいと思っていたんです。いくらアメリカの影響が強いといったって、これはおかしいじゃないですか、あまりにも。どうなんですか、実情を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/24
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025・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 昭和二十五年に改正されました当時のわが国の置かれました特殊の事情からしまして、おそらくそう大した問題もなく通ったのではあるまいかと、これは想像でございます。私こまかいところ存じません、そのように考えられるわけであります。これはアメリカに一部そういった例があったのでこのようになったと思うのでございますが、各国の立法例なんか見ましても、戦前のドイツにおきましても、また、戦後の西ドイツにおきましても、あるいはスイスとかイギリスというふうな諸国におきましても、この譲渡制限の規定はあるわけであります。どうして譲渡制限を撤廃しなければならなかったかということは、これはひとり株式会社法だけの問題ではございませんで、もうほかの占領下におけるいろいろの制度の改正も同じ運命をたどったものがあろうと思うのであります。占領下における特殊の事情としてこれはやむを得なかったというふうに考えざるを得ないわけであります。もう少し実態を踏まえてその上に立っての改正を考えるべきであったのではあるまいかということは、確かに言えようと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/25
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026・亀田得治
○亀田得治君 こういうところにやはり日本の商法学というものが新しいものばかり追うておって、そうして中小企業などを見落としておるという一つの欠陥があると思うんです。それは、アメリカの諸君の持ってくる理論であれば、やはりそういうことになるでしょう、株式の民主化というものを振りかざしてくれば、日本の学者にしても、それに対するそういう面ばかりの研究をしておるのですから、それはなるほどそうだと、そうするのが進歩的なんだと、こういうふうにすぐ意気投合してしまって、そして実際の実態を置き忘れている。やはり平素の効力目標というものに欠陥があるから、こういう大事なところで失敗する。これは単にそんなあなた占領治下だからやむを得なかったというのは、これは少し同情的に見過ぎるんで、私はやはり平素の株式問題に対するしっかりとした取り組みのなかった欠陥だと思うんですよ。だから、そういう点では、当時の関係者だけの責任じゃなしに、全体としてこういうことを反省してもらわなければいかぬ。はなはだこれは私はひどいことをやったもんだと思う。こういうことになったために、一人会社の株主が株式をほかに譲ると、こういうふうなことが起きて紛争が起こるのはどれくらいであるんですか。そんなことは調べてないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/26
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027・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 譲渡制限の規定がございますれば、その規定に違反する、あるいは株式の譲渡が無効であるというふうな問題も起きるわけでありますけれども、撤廃してしまってございますために、株式の譲渡に関する規定に関連する問題としての事件はないのではないかと思うわけであります。現在株式の譲渡は自由になっておりまして、これを制限し得ないわけでございますので、そういった制限することによって生ずる紛争というものは当然考えられないわけでございます。そういう意味で、これについての事件というものはないと考えざるを得ないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/27
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028・亀田得治
○亀田得治君 いや、そうじゃなしに、自由になったのだから、それを悪用して、実質的には無権利者である者が、自由にそれをほかへ譲るということはあり得ることですわね。譲渡制限になっておれば、初めから起こらない。あるいは、それが何らかの重役会の決議にかけるようなワクでもかかっておれば、そこでまず相談になるから、相談になれば、君はそういうことを言うが、おまえ初めから無権利者じゃないか、こういうような議論を面と向かってやれば、それはやっぱり引っ込むわけで。私はやっぱり問題は起きていると思うわけです、ただわからぬだけで。だから、これを改正して、ほしいというまた要望も中小企業者にあるわけでしょう、法律的な紛争になるならぬは別として。第一、不安でしょう、自分の物がいつ半分になるかもわからぬ。形だけ分けてあるものが、ばっと他人にね。相続の問題もあるでしょうしね。代がかわったら、なかなか先のことはわからない、実際に金を出した出さないということは。だから、不安料だけだってたいへんでしょう。それはあなた、紛争が起きておらぬ、大したことはないと、それだったら、このままにしておいたらいいんですよ。そうじゃないから、これは変えなければいかぬと言うのでしょう。それは全く現状にそぐわないものですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/28
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029・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 御質問の趣旨を誤解した向きもございますが、いまおっしゃいますような意味でございますれば、これは非常に不安があるわけでございます。何びとにこの株式が譲渡されるかわからないというふうな状況、まあいわばその当事者にとってみれば危険にさらされておるというふうなこと、これはたくさんあるわけでございます。だからこそ、中小企業、ことに同族的な会社におきましては、ことさらそういう心配があるわけでありまして、だれに株式が譲渡されるかわからないと常にそういう不安にさらされ、いつ他人の支配下に置かれるかわからないというような状況下に置かれて恐々としておる会社も、これはたくさんあると思うわけであります。ただ、この実態がどのくらいあるかということは、ちょっとつかみようがございませんので、何とも申し上げられませんが、経済界が非常にこれを希望しておりますということは、逆に申しますれば、中小規模の会社が譲渡を自由に認められておることによって生ずる不安、危険というものに常時さらされておる、したがって、会社の経営にも不安を生ずるし、安定しないという弊害が出てきておる、こういうふうに考えてよろしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/29
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030・亀田得治
○亀田得治君 今度の改正法ができますと、現在は自由になっておりますが、新たに定款できめることになるわけですね。そういうふうになった場合に、どの程度この改正法を生かして譲渡制限をする会社が出てくるというふうに考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/30
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031・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) これも的確な数字は申し上げられませんけれども、先ほど申し上げましたように、昭和二十五年の改正当時におきまして八〇%以上の会社が譲渡制限の定めをいたしておったといたしますと、おそらくその程度の会社につきましては譲渡制限の定めが設けられるのではあるまいかというふうに考えております。現に、この商法の改正案が国会に提案されましてから、いろいろの経済団体にこの点についての問い合わせというものが非常にたくさん参っておるそうでございます。一般国民のこの点について関心の強いところがあらわれておる証拠でございまして、これが実現いたしますならば、中小規模の株式会社につきましては非常に有利な措置がとり得るということでこれを期待しておるものと信じておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/31
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032・亀田得治
○亀田得治君 私は、そういう中小企業の方の要望というものを考えますと、定款変更の条件ですね、この改正法に規定しておる、これが少しきつ過ぎるんじゃないかというふうに考えるんですがね。結局、なんでしょう、総株主の過半数、それから発行済株式の総数の三分の二、この二つの条件がそろわぬといかぬですね。こんなにしぼる必要はない、もっと軽くしていいように思いますがね、昭和二十五年の改正が間違いなんですから。そうでしょう。間違ったものをもとに戻すんですから。それはほんとうは二十五年の改正はだめじゃったんだから、あの当時そういう制限をしていた会社は法律上当然もとに戻るんじゃというふうな規定をすれば、これは一番手っとり早いわけですが、しかし、国が間違って自由にしたんですから、もっとそこを楽に戻せるようにしたほうがいいんじゃないですか。そうしませんと、先ほど申し上げますように、個人会社といいましても、いろいろですからね。社長が株式はたくさん持っておるけれども、しかし人数が七人要るんじゃということで、ともかく少しずつ渡しておった株主が、どうしても半数にならぬで、六対一になる。ほかの者は、みんな多少不利になるわけですから、社長の痛いところだからこれはここで六人団結して反対してやろうと。まあ極端な例ですがね。だから、そういう二つの要件にしぼるというのは、私はせっかくこういう規定を設けながら、実情に合わぬように思いますがね。この条件については法制審議会あたりでも相当議論があったんだろうと思いますが、どうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/32
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033・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 確かに、今回の譲渡制限につきましては、三百四十八条の規定によりまして定款変更の要件を厳重にいたしてございます。これは、現在の株式の譲渡を自由にしたことがいい悪いは別といたしまして、とにかく二十五年以来株式の民主化ということが叫ばれまして、非常に株式が大衆化され、多量の株式が発行されておるという現実も、これは無視できないわけであります。株主の立場というものも十分考えながら、同時に会社のほうで譲渡制限を必要とする場合には、一定の要件に従って譲渡制限の定款の定めをするというふうにしなければならないわけであります。そこで、株主の意向も十分に反映させて譲渡制限をするかしないかということをきめるのが適当であろうというふうに考えまして、このように総株主の過半数にして発行済株式の三分の二以上に当たる多数をもってきめるというふうにいたしたわけでございます。旧法当時におきましては、通常の定款変更手続において譲渡制限の定めを設けることができるようになっておったのでございますが、しかし、事柄が株主の地位に非常に重大な影響を及ぼす問題でございます。単なる多数決でこれがいいかどうかということにつきましては非常に議論があったようでございまして、当時におきましても一般の学説は全株主の同意がなければ譲渡制限はできないというふうな意見もあったようでございます。そういういろいろの点を考えまして、株主の立場も十分反映させると同時に、会社の都合によってどうしても譲渡制限をしなければならないというような場合には、こういう方法でその旨の定款を定め得るようにするのが適当であろう、こういうふうに考えて今回のような規定にいたしたわけであります。
要するに、株主の意向を十分に反映させるということが必要でございますので、それにはどういうふうな仕組みにしたらいいかということなんでございますが、総株主の少なくとも過半数の人がこれに同意しておるというところまでは必要なのではあるまいか、このように考えたわけであります。もちろん、大規模の会社になりますと、これだけの頭数の賛成者を得るということは非常にむずかしいことになろうと思います。これに反しまして、中小規模の会社でございますと、総株主の過半数の同意を得ることも、大会社に比べますと比較的容易であろうというふうに考えられるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/33
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034・亀田得治
○亀田得治君 中小企業の場合には、株式総数の三分の二、株式のほうはわりあい集めやすいだろうと思います、これはもう社長が大部分持っておるわけですから。それにプラス総株主の過半数ということを付け加えておるわけでしょうが、これが私はなかなか問題じゃなかろうかと思っているんです。これは名目的なのがずいぶん多いわけですからね。頭数は多いわけです、そのほうが。だから、その点で、スムーズにいけばいいわけなんだが、ごてられると、だれが見てもこれはもう同族会社、個人会社なんで、これは定款を変更して譲渡を制限していくのがあたりまえなんだと思っておっても、なかなかできない。そういうことがうまくいかぬところは、今度はそのうち何か考えているのじゃなかろうかというふうなまた心配も出てくるわけなんでね。そう言うても、たとえ中小会社であっても、みんなが出資をして、そうしていままでは自由だったんだというふうな場合には株主の立場も相当尊重しなければならぬということからこういう規定になったのかと思いますが、ちょっと問題点があるように思います。これはひとつ実行してみて、その結果によってまた検討されたらいいと思います。
それから、次に、譲渡方式の点で一点だけお伺いしておきたいと思います。
これは二百二十六条ノ二ですか、株主が記名株式について株券の所持を欲しない、こういうことを会社に申し出る、そうすると、会社のほうは、株券を発行しない旨を株主名簿に記載するか、または株券を銀行または信託会社に寄託する、こういうことになっておりますが、これは会社の自由選択になるわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/34
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035・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 会社が株主名簿に記載いたしまして株券を発行しないようにするか、あるいは、銀行、信託会社に株券を寄託するか、これは会社の自由というたてまえになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/35
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036・亀田得治
○亀田得治君 これは何でこういう会社の自由選択にかからしたんでしょうか。むしろ、こういうことをするのであれば、株主自身に、所持は欲しない、ともかく株券そのものをなくしてくれとか、あるいは、それは置いておいてもらってどっかへ預けておいてくれ、あんたのほうで保管してもらうんだとか、もっとそういうふうにはっきり言わせたほうがかえってスムーズにいくように思うのですがね。そうしませんと、人によっては、自分は株券は会社へ返した、それでもう消えてしまったんだと。ところが、いや、そうじゃなしに、会社の考えでそれはまだ生きておって、どこそこに預けてあるんだと。それで実害がどういうふうに起こるか起こらぬかは別として、何か不本意なことが選択されるという場合もあるんじゃないか。だから、こういう規定にするのであれば、申し出そのものをはっきりさせたらいいように思いますが、これはどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/36
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037・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 今回の株式の譲渡方式を改めますことに伴いまして、株主側に若干の不安が残るのではあるまいかということも考慮いたしまして、今回の株券の不発行あるいは株券の寄託という制度を考えたわけでございまして、これによって株主の安心を得られるようにしようという趣旨なのでございます。株券を所持したくないという場合もいろいろ考えられるわけでございまして、いわゆる安定株主として、株式の譲渡をする意思がない、ただ自分は株主としての利益だけ享受していればよろしいというふうに考えている株主もございます。このような株主につきましては、株券を残して銀行、信託会社に寄託してもらう必要もないわけでございまして、これはもう株主名簿にその旨を記載しまして株券を発行しないことにしてしまうということで足りるわけでございます。それからまた、そうでなくて、一応現在自分が株券を所持しておることには不都合が生じるけれども、行く行くまたこの株券を返してもらってこれを他に譲渡するかもしれないというふうな場合には、不発行の措置をとってしまいますと、また再発行の手続も必要になるわけでございまして、むしろ、そういう場合には、銀行に寄託してあるものを会社を通じて簡単に返してもらうということのほうが株主にとっては便利なわけでございます。そういう点を考えまして、このように不発行あるいは寄託というふうな制度を設けたわけであります。発行会社の側からいたしますれば、株主のそういう希望も考慮に入れましてその辺の処理のしかたを変えていくであろう、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/37
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038・亀田得治
○亀田得治君 しかし、法文そのものから考えますと、株主のほうは、どちらの方式を希望するのか、そういうことは明らかに出さぬでもいいことになっていますね。それはむしろ出さしたほうがいいのじゃないですか。株主にしても、おれは所持を欲しないのだと言うて、それがどうなってもいいという意味じゃないんですからね。だから、この第一項と第二項をもう少し合うように、第二項の処置いずれかを株主に申し出させる、このほうが私はわかりいいように思うんですがね。どうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/38
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039・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 確かに、株主の意向を尊重して発行会社としてはその処理をしたほうが実情に合うと思うわけでございます。実際問題としましては、株主の希望をいれまして希望に合うように発行会社で処理するようになるだろうというふうに考えておるわけでございます。ただ、規定の体裁といたしましては、所持を欲しない旨を申し出るという簡単な申し出によってその後の扱いが二通りに分かれてまいりますので、亀田委員の仰せのようにつながりがどうも明確でないという御非難はあろうかと思うのでございますけれども、場合によれば、株主としましても、不発行にしてもらってもいいでしょうし、また、銀行、信託会社に寄託してもらっても差しつかえないという人もあるわけでございましょうから、これをどちらにしなければならないというふうにきめてしまうのもかえって運用上窮屈になりはしないだろうかという点もあるわけでございます。実際の運用といたしましては、会社対株主の問題でございますので、できるだけ株主の希望を尊重して発行会社で措置されるものというふうに考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/39
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040・亀田得治
○亀田得治君 これは、条文をつくる過程において大して論議がなかったのでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/40
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041・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 株式の譲渡方式の改正につきましては、現在の裏書きあるいは譲渡証書による株式の譲渡というものが有名無実になっているということから、こういうふうに譲渡方式そのものを改めたわけであります。法制審議会の過程におきましても、この二百二十六条ノ二の規定を置くべきであるということにつきましては、譲渡方式の改正に関連して当然に出てきたということには必ずしもならないのでありまして、理論的には譲渡方式の改正とは関係ないわけでございますけれども、やはり株主の不安が多少とも残るといたしますれば、われわれの立場といたしましてはその株主の不安を解消する措置をとるべきじゃないかというので、この二百二十六条ノ二の規定が新しく考案されて加わったという経緯になっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/41
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042・亀田得治
○亀田得治君 局長は、会社のほうは株主の意向に反したことをせんだろうと言われますけれども、会社の都合によって、意向に反してほかの処理のしかたをとったということがあっても、これは条文の上からは違法ということは言えませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/42
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043・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/43
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044・亀田得治
○亀田得治君 それは私は立法としてはちょっと不十分じゃないかと思いますね。それで、会社はこれこれのことをすることを要すると、それに続いて、この申し出者の明確なる意思には反することができないと、何かそういうものを一つ入れておきませんと、せっかく株主のためにこういう規定を置きながら、違った結果が出てくるというのはちょっとおかしいですね。局長は、まあ株主の意向を尊重して会社は処理されると思うと、こう言いますが、だから、そういうスムーズにいかぬ場合の歯どめをつけておくのがやはり法律として大事なんでしょうから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/44
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045・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 株券の不発行の措置と、銀行、信託会社に寄託いたします措置と、どちらがいいかという問題も実はあるわけでございまして、不発行の措置をとりますと、一応株券というものはなくなってしまいます。したがいまして、株主から要求がございますれば、株券の再発行の手続をとってまいります。これは手数がかかるわけでございまして、会社としましてはあまり望ましくないということが考えられるわけでございますが、そうかと申しまして、銀行、信託会社に寄託するということになりますと、むしろこれは経費のほうがかかってまいります。これも株主にとってみれば一種の不利益を受けるような結果にもなるわけでございますが、これは、しかし、株券を寄託いたします関係上、まあ当然やむを得ない問題であろうかと思うわけであります。どちらがはたしていいのか、また、株主が特に不発行の措置をとってくれと言った場合に、わざわざそれを銀行、信託会社に審託するというふうな措置をとると、株主の意向を無視したような結果になりますので、これもまた不都合じゃないかという御意見もこれはごもっともだと思うのでございますけれども、要は、先ほど来申し上げておりますように、いろいろの会社の立場、あるいは株主の希望、そういったものをそれぞれ考えましてこの場合どういう措置をとるかということを会社としてきめていくというふうにするほかはあるまい、こう考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/45
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046・亀田得治
○亀田得治君 株主としては、今回は記名株式の譲渡についても従来よりは非常に簡略になり、そういう点でまた心配されておる向きもあるわけですね。まあいろんなことから、それならもういっそのこと株券なんていうものをなくしておこう、そのほうが一番安全だというふうに考えて、そのように申し込んでおく。ところが、会社のほうとしては、なるべくそういうことは——あとからまた出してくれと言ったらめんどうくさいから、会社としては思わしくないというふうなことで、第二の寄託のほうにほうり込んでしまう。こういうことになると、これは非常に株主の動機、気持ちというものを踏みにじるし、それから結果としても要らない費用がかかってくるわけでしょう。この寄託の費用は株主の負担ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/46
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047・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 寄託の費用につきましては、第五項に規定されておりますように「株券ノ寄託二要スル費用ハ会社ノ負担トス」と、こういうふうになっております。ただ、株券の返還を請求いたしましたときの措置につきましては、このただし書きにございますように、株券発行の場合に株主が負担する費用に相当すべき支払いを請求する、こういうことにいたしましてまして両者間の調整をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/47
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048・亀田得治
○亀田得治君 まあ、いずれにしても、寄託をしておけば、そんなに心配なことはないわけです。ないわけだが、ともかくそんなものはないほうがいいと、おれは株主名簿にだけちゃんと載っておれば一番安全でいいんだと、こういう気持ちでやっておるその気持ちをわざわざ裏切る必要はないと思うのです。だから、そういうことができぬようにきちんとしておくべきじゃないですかな、こんなことをわざわざせずに。
それからもう一つは、「定款二別段ノ定アル場合ヲ除クノ外」となっているんですね。定款では、制限することができるわけですね、こういうことのできないように。これは定款で制限する必要はないんじゃないですか。こういうことこそ自由にできるようにしておいていいんじゃないでしょうか。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/48
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049・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 先ほど申し上げましたように、譲渡方式を改めることに伴う株主側の若干の不安を解消する方法といたしまして不発行あるいは寄託ということを考えたわけでございますが、これも一律にすべての株式会社に強制的に措置をさせるということができるかどうかという問題も実はあるわけでございまして、そういう意味におきまして、どういう措置を講ずるかということにつきましては、それぞれの会社に自主的にきめていただくというふうに考えましてこのような規定を設けたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/49
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050・亀田得治
○亀田得治君 これは、もし定款で制限するとしたら、それはおもに大会社ということになりますか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/50
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051・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 必ずしも大会社だけが定款の制限をするとは考えられないわけでありまして、これは定款の変更になりますので株主総会の特別決議によってきめてまいるわけでございますので、各会社の事情に応じてそれぞれ定まっていくものであろうと申し上げざるを得ないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/51
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052・亀田得治
○亀田得治君 これは、定款のきめ方によって、会社の処理が二通りあるわけですが、そのどちらか一つに限定するというふうな、何といいますか、非常に部分的なそういう制限というようなことは可能なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/52
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053・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 差しつかえないものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/53
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054・亀田得治
○亀田得治君 それじゃ、次に移ります。
議決権の不統一行使の点ですが、会社が不統一行使を拒むことができるという場合を規定しておるわけですが、それはどういう場合のことを具体的には考えておるのでしょうか。拒めない場合はここに書いてありますね。拒めるというのは一体どういうようなことを頭に置いておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/54
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055・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 議決権の不統一行使につきましては、考え方はいろいろあるわけでございまして、従来は、必ず統一して行使しなければならないという考え方、それから統一しないで行使することができるという考え方、両々相半ばするような状況にありましたが、最近の実際の経済界の実情に照らしまして、議決権の行使は必ずしも統一して行使する必要はないというふうな考え方が多くなってきておるわけであります。そこで、それでは無制限に不統一行使を認めたらどうかという考え方もあるわけでございますけれども、そこまで参りますには若干抵抗を感じると。したがいまして、現実に必要な場合にはこれはやむを得ませんけれども、そうでない場合には会社のほうでこれを拒否できるようにいたしまして、いわば通常の場合には統一的に議決権を行使してもらうようにしようというのがこのねらいなんでございます。ここに二百三十九条ノ二の第二項に書いてございますように、株主が株式の信託を引き受けたことその他他人のために株式を有することを理由としない場合、こういう場合にはすべて会社が不統一行使を拒否できるということにいたしたわけでございます。拒否するかしないかは会社の自由でございます。ただ、第二項の頭書きにございますように、他人のために株式を有することを理由としておるという場合には、これは一項の手続を踏んでまいります以上は拒み得ないということにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/55
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056・亀田得治
○亀田得治君 そういたしますと、その条文に書いてある信託なり他人のために株式を有する、そういう場合には不統一行使ができる。これは申し出がある以上必ずできる。ところが、それ以外の場合には、特段の理由はないけれども、その会社が認めれば不統一行使はできると、こういうことになるのでしょうか、やはり。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/56
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057・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) お説のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/57
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058・亀田得治
○亀田得治君 それはどういうことから必要があるんでしょうかね。不統一行使の拒み得ないこの理由はわれわれわかります、書いてある通り。ところが、そのほかの場合に、特別な理由がない、一万株持っておるそれを三千と七千で賛成反対をするというふうなことが会社が認めればできるということになるようですが、一体そういうことは筋が通るのですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/58
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059・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 先ほど申し上げましたように、議決権を行使いたします場合に、必ず統一して行使しなければならないというふうに考えられる点も確かにありますが、他方におきまして株主の議決権というものは本来統一しないで行使しても差しつかえないものであるというふうにも考えられるわけであります。たとえば、百株持っておりますうちの七十株については賛成であるが、三十株については反対であるというふうに議決権を行使しても一向差しつかえないという考え方もあるわけでありまして、現在の学説といたしましては大体そういう方向に向かいつつあるやにうかがわれるわけであります。これは外国の立法例にも不統一行使を表面から認めておる例もあるくらいで。ございまして、今後の議決権の行使のあり方といたしまして、すべて画一的に不統一行使を許すというふうに持っていくのも一つの方法であろうと思うのでございますが、しかし、さしあたり必要性のございますのは信託の場合その他他人のために株式を保有する者が議決権を行使する場合に必要なわけでありまして、まあそこから今回の不統一行使の問題が出てまいったという経緯もございまして、妥協的な考え方でございますけれども、完全に不統一行使に徹してしまうということには、現在の実情、これまでの経緯からいたしまして若干無理があるのではないか。そうかといって、会社のほうでそれを拒まないということであれば、これをいけないと言う必要もないのではないだろうか。そういうところからこの二項のような規定になったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/59
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060・亀田得治
○亀田得治君 信託並びに他人のために所有しておるという場合の不統一行使、これは私はむしろ当然だと思うし、これは非常に意味があると思うんですが、そうでない場合ですね、不統一行使というようなことを会社が認めれば可能だというようなことは、これは何か問題が紛糾して、そういう場合に取引の材料に使われるというふうな感じもするわけですがね。やはり同一人が持っている株ですからね。ある株については賛成であるが、ある株については反対だ、私は、そういうこともやはり大会社中心の理論じゃないかと思いますがね、一つは。こんなことは中小企業の場合にはなはだぴんとこない。説明しても、それはなかなか理解されぬだろうと思うんです。理解されぬような規定はやはり商法の体系全体に不信を起こすので、こんなことをきめるくらいだからわれわれのことはあまり考えておらぬというようなことにもなりかねない。なかなかこんなこまかいところまで読まないでしょうけれども、よく考えてみると、大経営においてはそういうふうなことも何か考えられるような気もするけれども、いわんやそれはあなた経営と株主というものが一体となっているような中小企業あたりでは、こういう規定自体が何かおかしいんですな。本質的にも問題があるんですが、信託と他人のために所有する場合、そういう場合だけに限定していいんじゃないですか。何かどこかの会社で実はこういうことがあって非常に不便であったというふうなことがあるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/60
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061・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) この不統一行使の規定を置くことによりまして株主総会で何らかの取引の具に供されるのではあるまいかというふうな御懸念もおありのようでございますが、二百三十九条ノ二の第一項にございますように、不統一行使をしようといたしますときには、総会の会日より三日前に会社に対して書面をもって自分は不統一行使をしますということを通知することになっております。この通知がございませんと不統一行使はできないのでございまして、総会の段階になりましてこれを理由にして取引が行なわれるということもちょっと考えられないわけでございます。
また、明確にする意味におきまして、信託の場合あるいは他人のために株式を有することが明らかな場合に限って不統一行使を認める、こういうふうに書くことも一つの方法であろうと確かに思うわけでございます。そうすれば、規定の趣旨が非常に明確になるという利点は出てまいるわけでありまして、亀田委員の御意見も確かに傾聴に値するわけでございますが、しかし、もしもそういうふうに限定的に書きますと、他人のために株式を有することを理由とする場合には拒むことを得ずと、こう書かざるを得ないわけであります。そうなりますと、万一これを拒みました場合に、はたしてそれが他人のために所有するものであるかどうかという認定の問題がからんでまいりまして、これは争いの一つの原因をつくることになるのではないか。大事な株主総会の決議におきまして、ちょっとしたことによって総会の決議に瑕疵がある、あるいは無効であるというふうな主張が出てくることは、極力これは避けなければなりません。そういう意味におきまして、理論上も不統
一行使が許されるというふうに考えますならば、むしろこのように会社の自由にまかせまして、他人のために株引を有することを理由としていない場合でもしいて拒まなくてもいいというふうにしておくほうが株主総会の運営上はむしろ問題がなくなるんじゃないか、このように考えまして、このような表現にいたしたわけでございます。理論上の問題がございますことと、株主総会の決議にそういった瑕疵の原因を加えるといったようなことがないようにいたしますためにはこの辺のところが一番よろしいのではあるまいか、このように考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/61
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062・亀田得治
○亀田得治君 二百三十九条ノ二の第一項の書面による通知ですね、この通知には、たとえば一万株を持っておる人が一般的な理由で不統一行使をしようという場合に、七千と三千に分けて行使するんだというふうなワクはやはり明示する必要があるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/62
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063・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 一万株のうちの七千株は賛成、三千株は反対というふうに、自分の行使しようとする議決権の方法まで明示する必要はございません。単純に不統一行使を行なうということ、及び、その理由を通知すればよろしいと、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/63
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064・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、内訳を別に書かないわけですから、大いに取引の対象になるわけですね。むしろ取引の誘い水になるかもしれない。どうもあの男は平素の行動から見ると反対らしかった、ところがこれが不統一行使と言うてきたから、場合によっちゃ自分のほうに半分ぐらい回ってくる可能性があるぞというふうな意思表示にもなるわけですね。そうして、その回り方は話次第じゃ、こういうことになるわけだ。数字が明確にされておらないわけですから、文書には。取引の材料にならぬですか、それは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/64
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065・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) これは、不統一行使を行ない得るから議決権の行使について取引がなされるかどうかという問題ではないのではないかというふうに実は考えるのでございます。不統一行使がございませんでも、反対者を賛成のほうに回ってもらうように、工作するとか、あるいはその逆の場合とか、いろいろのことが考えられるわけでございまして、この不統一行使の規定を設けることによって特にそういうことが行なわれるようになるというふうには考えられないと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/65
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066・亀田得治
○亀田得治君 だけれど、不統一行使でなければ、黙って株主総会に来るわけですね。ところが、不統一行使ということを言うた以上は、両方にこれが散るんだと、その散り方ははっきりしないと、こういうことで、非常にそれはあなた、取引の対象になりやすくなりますよ。黙っている人にあまり誘いをかけるわけにはいかない。だから、私その辺のことは勘ぐって考え過ぎておるかもしれませんが、何か非常にこういうことがないと不便なことがあるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/66
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067・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 最も顕著な例と申しますのは、投資信託の場合が最も適例であろうと思うわけでございます。その場合、実質的には証券会社と銀行の関係になるわけでございまして、形式的な株主でございます銀行が議決権の行使に当たるわけでございますが、その場合に証券会社の指図に従って賛成か反対かという議決権の行使をいたすわけでございます。したがいまして、銀行の立場といたしますと、たとえば一万株のうちの七千株については賛成、三千株については反対という議決権の行使をしようというふうにきめておりますのも、実はこれは実質的に株主としての利益を受けます証券会社の指図に従ってそのようになっておるわけでございます。したがって、銀行のほうで勝手にこれを変えて五千株・五千株の議決権の行使を行なうということは、その信頼関係にもとる結果になりまして、実際問題としてはそういうことは行なえないだろうというふうに考えるわけでございます。議決権の不統一行使を必要とするというそもそもの発端はその辺にあったわけでございまして、一般の場合にはこれが行なわれるということはまずあるまいというふうに考えられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/67
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068・亀田得治
○亀田得治君 その信託なりの場合は、私も当然しかるべき制度だと思っておるんです。一般の場合ですよ、私の懸念するのは。非常にイージーなことが何かかえって誘発されるというふうに思ったものだからお聞きしておるわけです。
それからそれに関連して、前の条文になるわけですが、二百三十九条で、二人以上の代理人を総会に出席させるのを会社が拒める、こういう規定を新たに加えたわけですが、これはどうしてこういうことにしたんでしょうか。議決権の行使を分割してやれるというのであれば、むしろ行使の数に応じて一人ずつ出しておくということのほうがかっこうもいいのじゃないですか。一人の者が賛成と反対と両方手をあげるというのは、それはごくかっこうが悪いじゃないですか。何でこういう規定を置いたのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/68
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069・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 議決権の不統一行使と理論的につながる問題ではございませんけれども、ただいまお話しのように、一部賛成一部反対という議決権の行使ができるということになりますと、それを理由として多数の者を代理人に仕立てて総会に臨むということも考えられるわけであります。それが一種の総会荒らしというふうな問題と結びついていくのではあるまいか。議決権を
一株について一個ずつ持っておるということから、一株一株について代理人を出し得るというふうにいたしますと、かえって総会の混乱を招く結果になるのではないか。そういうことから、むしろこの際株主が二人以上の代理人を出席させるということは会社側としては拒み得るということにいたしまして、総会の運営を円滑にはかり得るように配慮したつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/69
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070・亀田得治
○亀田得治君 そんな総会屋が株主権の行使を幾つにも割って、そうしてその一つ一つについて代理人を立ててくるというふうな作戦をとっても、これは二百三十九条ノ二の段階で会社が拒めばいいわけでしょう。そういう場合は不統一行使できないんですから。だから、そんなものは二百三十九条ノ二でそれは会社がちゃんと封ずることはできるわけですよ。信託などがあればこれは当然二つになるわけでしょう。その場合に——あ、二人まではいいんですか。「二人以上」とは、二人はいかぬのでしょう。そういう意味でしょう。だから、そういう場合に二人出てもいいじゃないですか。総会屋の場合は、承認しなければいいんですから。承認したやつについて二つ投票するんですから、ひとつ二人行こう、それから本人が一人ともう一人行くという方法もあるでしょうけれども、それはいいですね、そういうのは代理人は一人ですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/70
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071・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 議決権の不統一行使と申しますのは、本来一人の株主が賛成もするし一部反対もする、こういうことなのでございます。したがいまして、賛成反対の議決権の行使をするからこれを二人に割らなければならないということにはならないわけでございまして、本来株主は一人でございますけれども、その一人の者が議決権を行使するについて賛成反対の二様の議決権を行使できるということになるわけであります。したがいまして、当然に代理人がその場合に二人以上出なければならないということにはならないわけでございまして、代理人としては、あくまで本人である株主の代理として、株主の意向に従って一部賛成一部反対という議決権の行使をすればよろしいわけでありまして、しいてこれを二人以上何人でも出席させることによって生ずる混乱等をむしろ避けるべきではないか、このように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/71
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072・亀田得治
○亀田得治君 この不統一行使は、一人でやるんだ、本来それが原則だ、一人の人が賛成もし反対もするんだ、こう言われますけれど、しかし、それは株主の意向によって代理人でやらしたっていいわけですね、別に。代理人でも結局はそれは株主がやっているわけですから、ちっとも差しつかえないじゃないですか。二人の代理人を立てるということは、二人であっても、それは株主がやっていることなんですからね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/72
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073・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 確かに、一般論としましては、亀田委員のおっしゃいますように、数人の代理人を出すことは差しつかえないわけでございます。しかし、それを許すことによって、たとえば百株の株主が百人の代理人を送り込むというふうなことも許されることになりますと、これは結果的に総会の円滑な運営を阻害する危険性もそこに出てまいるわけであります。そのようなことはないようにするということと同時に、議決権を行使いたしますのに何も二人以上の代理人が出なくても、一人の株主、代理人が一人出れば、十分用を果たし得るわけでございまして、あえてそういう危険が生ずるような多数の代理人まで認める必要はないんじゃないか。むしろ、代理人は一人にしておくということのほうが総会の運営上は望ましいと考えられるわけであります。これも、二百三十九条の新設の第六項にございますように、会社が「拒ムコトヲ得」というふうに書いてございますので、会社のほうで数人の代理人を認める分においてはこれは差しつかえないわけでございます。ただ、会社の側といたしまして多数の代理人に出て来られて総会の運営が円滑にいかないという懸念がございますれば、これは拒んでよろしいと、こういうことにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/73
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074・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/74
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075・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/75
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076・亀田得治
○亀田得治君 それでは、次に、新株発行の点につきまして簡単にひとつお聞きすることにしますが、例の証券会社の一括しての買取引受の点だけを聞くことにします。
これは、実際はどういうふうに実務が運ばれるんでしょうか、その点からまず御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/76
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077・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 買取引受の問題でございますが、現在は、商法二百八十条ノ二の第二項の規定にございますように、発行会社が証券会社との間に買取引受の契約をいたしますと、証券会社に新株の引受権を形式的に与える結果になるわけであります。したがいまして、それにつきましては株主総会の特別決議が必要であるということに現在の法律上は解釈されるのであります。そこで、その特別決議がはたしていかなる理由で必要であるかということにかかってまいるわけでありますが、そもそも新株発行の手続におきまして株主総会の決議を必要といたしました理由は、株主以外の者に対して新株の引受権を与える場合に特別に有利な価額で新株の引受権が与えられるということになりますと、株主の利益を害する結果になる。そこで、株主総会の決議によってこれを規制しよう、こういうことにされておるというふうに理解されるわけであります。しかし、形式上は、少なくとも現行法の二百八十条ノ二の第二項の規定によりますと、単に株主総会の特別決議が必要だというだけの表現になっておりますので、いろいろこれは訴訟におきましても問題になりまして、その手続が違法であるという判断を受けるに至ったわけでございます。しかし、新株発行の過程におきましてそのような違法のかどがございましても、新株を発行してしまった段階におきましては、その株式の発行そのものは有効であるということにこれは下級審の判決も最高裁判所の判決も同じように判断いたしておるのでございます。つまり、手続の過程において違法な点が出てまいるということに帰着するわけであります。 そこで、実際界におきましても、買取引受の手続の中にそういう違法なものが生ずるということになるのでは困るというので、現在におきましては買取引受の形引を差し控えておるというのが実情のようでございます。
今回の改正におきましては、ただいま申し上げました趣旨を明確にする意味におきまして、株主以外の者に特に有利な発行価額をもって新株を発行する場合には三百四十三条の特別決議が必要であるということにいたしまして、ただいま申し上げました趣旨をこれによって明確にしようということにいたしたわけであります。この改正が実現いたしますと、従来の一般の適正な価額で新株を発行するために発行会社と証券会社との間におきまして買取引受契約が行なわれる場合には、株主総会の決議は不要でございます。ただ、特別に有利な発行価額をもって新株を発行しようという場合には、これは株主の利益に影響いたしますので、株主総会の特別決議を必要とする、こういうふうになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/77
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078・亀田得治
○亀田得治君 買取引受契約の中に発行価額というものが明記されることになるのでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/78
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079・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) これまでの買取引受契約におきましては、発行会社から証券会社に渡します株式の価額と、それから証券会社が一般の投資家に分売いたしますときの売買価額、これをいずれも契約書に明記してございます。しかも、それはどちらも同一の価額になっております。したがって、証券会社が特にその間の株価の変動によって利益を得るとかいうふうなことはできない仕組みに現在なっているわけでございます。これが買取引受の実際の契約の慣行的なものになっていると理解してよろしいのではないかと思うのでございます。証券会社のほうは単にその取り扱いの手数料だけを発行会社からもらっているという形になっているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/79
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080・亀田得治
○亀田得治君 その手数料というのはどれくらいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/80
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081・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) お手元に資料を差し上げてございまして、その資料の三六二ページに契約書のひな形が載せてございます。頭書きの二行目の終わりのほうにこれこれ「を公募するに当り」と、こういうふうに出ております。この買取引受契約を定める趣旨は、もともと株式を公募するための一つの方法としてこういうものが考えられたということがここでわかるわけでございます。
それから第一条で一株について二百六十円とございますが、これが発行会社から証券会社が引き取る価額でございます。第三条に売出価額が掲げてございますが、一株につき金二百六十円で、やはり同じ金額でございます。そういたしまして、第六条をごらんいただきますと、引受手数料は一株につき七円五十銭、こういうふうに契約の上に明記されておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/81
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082・亀田得治
○亀田得治君 これはずいぶん手数料が高いように思うのですが、こんなものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/82
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083・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) これは、発行会社が大量の株式を発行いたしますときにみずからこれをやりますと、全国的に株式を公募することになりますので、非常な手数と経費がかかるようでございます。そこで、いろいろの出先機関を持っております証券会社に委託いたしまして株式の公募をするためにこういう形態をとるに至ったわけでございます。したがいまして、発行会社がみずから発行する場合の経費と買取引受の手数料というものはおのずからそこにバランスがとられておるものというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/83
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084・亀田得治
○亀田得治君 まあ発行会社が直接やるとしたらずいぶん経費がかかる、これは想像されます。専門でもないし、たいへんだろうと思う。そのために専門の機関を使うわけでしょうが、しかし、専門機関としては一株につき七円五十銭というのは、これは何かずいぶん多いように思うんですが、大体こういう標準になっておるのでしょうか、どういう場合でも。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/84
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085・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 一般的にこの七円五十銭が手数料として授受されておるかということになりますと、ちょっとこの点は明確でございませんが、ここにもありますように、この株式は一株二百六十円ということになっておりますので、その株価との関係を考えて当事者の間で七円五十銭という数字が出ておるのではないかと思うわけでございます。たとえば百円で発行する場合にも同じ手数料かということになりますと、どうも合理的でないように感じます。個々の場合によってこれは発行会社と証券会社の間で取りきめられるものであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/85
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086・亀田得治
○亀田得治君 それは、しろうとがやれば非常に経費がかかるが、専門家に頼めば簡単にいく。だから専門家をみんな利用するわけで、これは株だけじゃない。それにしても、適正なものでなければやはりいかぬわけでして、これはほかのやつも実際にどの程度になっておるのか、調べてみてくださいな、次回まででけっこうですから。
そこで、通常は、特に有利なことはしないということであれば、特別決議が要らないわけですが、したがって、そういうことをしない普通の状態、商法でいうようなそういう決議の対象にならぬような普通の場合ですね、それは時価に対してどの程度の扱いになっているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/86
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087・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) これも、先ほどの資料の三七七ページをお聞きいただきたいと思います。表がついております。この表の右側に「公募要項」というのがございます。そこの二番目に「公募価額の決定は決定前日の株価の何%以下に定めたか」という欄がございます。これを、こらんいただきますと、(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)と、四つに区分して回答しました会社の数が掲げてございますが、一〇%以下が二十五、一五%以下が二十五ということになっておりまして、一〇%ないし一五%というところが圧倒的に多いわけでございます。この程度の株価の差異というものは、これは発行しますときの事情によりまして一般的に見られている差額であろうと考えられるわけでございます。この発行価額をどのようにきめるかということは非常に問題でございますが、将来の払込期日における株価との関係も考慮いたしませんと発行価額はきめにくいわけでございまして、そういった点を考えますと、一〇%ないし一五%の差があるということは、これは一般的にやむを得ない事態であろうというふうに考えるわけでございます。したがいまして、それ以上に安く、たとえば——これはそれぞれの案件によりまして具体的にきめる問題ではあろうと思いますけれども、ごく一般論として申し上げますと、二〇%、三〇%も安く定めるということになりますと、通常の場合の発行価額とはかなり開きが出てまいります。こういう場合に、特に有利な発行価額になるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/87
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088・亀田得治
○亀田得治君 時価に比較して一〇%ないし一五%程度安い価額で出すのが普通のようだし、その程度なら特別決議の対象にならないと、こういうことになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/88
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089・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) そのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/89
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090・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、それ以下の安い価額で発行するということになると、これは全部特別決議の対象に入ってくると、こういう理解ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/90
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091・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 一律に一〇%、一五%までは差しつかえないということも、これは言い切れないだろうと思うので、ございまして、ごく大まかなところを申し上げますと、その程度安く出すのが一般の例になっております。また、それに伴って問題も生じていないということになりますと、一〇%ないし一五%くらいのところは許されるべきであろうというふうに考えるわけであります。ただ、これはごく一般論でございまして、この基準からはずれたらすべて特に有利なものになるというふうに言い切れるかどうかも問題でございます。各発行会社の資産状況とか、あるいは株式市場の一般的な趨勢、あるいは当該株式の傾向、さらに市場における取引高、そういったものもいろいろ考慮いたしまして発行価額というものがきめられるわけでありまして、一律に一〇%、一五%ということのみによって特に有利かどうかという判断の基準にすることは困難であろうと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/91
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092・亀田得治
○亀田得治君 一〇%ないし一五%安い価額であっても、有利という概念には入るのでしょうね。本来ならば、時価にきちっと合うておれば一番いいわけでしょう。だから、一〇%ないし一五%というのは、やはり有利という概念に入るのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/92
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093・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 金額の比較の面におきましては、確かに払込期日におきまする株価と比べますれば安いわけでございますので、金額的には安いと、したがって、その限度において有利になるというふうには言えるわけでございます。しかし、ここで申します有利な価額をもって発行すると申しますのは、特定の株主以外の者に対しまして特別の価額で特に安く発行するということを言っておるわけでありまして、ただいまお話しのように、一〇%ないし一五%低目に発行価額をきめることが、これは有利だということには考えられますけれども、単に有利なのではなくて、特に有利な発行価額をもってきめた場合には二百八十条二ノ第二項の規定によって株主総会の特別決議にまたなければならない、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/93
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094・亀田得治
○亀田得治君 一〇%ないし一五%というのは、これは相当大きな有利性と違いますかね。これは、株をたくさん扱う場合には、ずいぶんな金額になる場合もあるのじゃないですか。そうして、それらの株を大して手間もかからないで大口のところでさっと引き受けていくというふうなかっこうに証券会社が、これはまあ証券会社の腕でしょうが、そういうふうにやっていきますと、まとまっておるだけに、たとえ一〇%ないし一五%のものであっても、相当特別有利というような感じが出てくるのと違いますかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/94
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095・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 買取引受によりまして、そうして証券会社を通じて新株を募集するわけでございますが、この場合に、先ほど申し上げましたように、引き受ける価額と一般の投資家に分売いたします価額とは同額になっております。単に証券会社は新株発行の経由機関、トンネル機関のような存在なのでございますので、特別にそれを安く引き受けたからといってその分だけ証券会社がもうかるというふうに当然にはならないものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/95
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096・亀田得治
○亀田得治君 いや、それは私もそのとおりだと思う。私の言うのは、一〇%ないし一五%程度といいますけれども、これは大きな株の引受の場合にはずいぶん大きな利益ではないかというふうに思うわけでしてね。この委員会で一〇%ないし一五%は特別決議の対象にならぬのじゃというふうな標準を一体出してしまっていいのかどうか、その点の判断が私は非常に疑問があると思っているんです。小さな会社のわずかな株なら、それは大した金額にはならぬだろうけれども、その点はどういうふうにお考えでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/96
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097・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 先ほど申し上げましたように、一般の例を見ますと、一〇%ないし一五%の開きがあるということは言えるわけでございます。ただ、これもすべてがそうだというわけではございませんで、大多数の発行の状況がそのようになっておるということから逆に考えますと、その程度のことは許されるのではあるまいか。従来の実際の扱いから申しまして慣行的にその程度のものは従来認められてきておるということになりますれば、それを基礎にして考えると、一〇%ないし一五%というのがごく一般的にはその限界を示すものであろうというふうに言えると考えるわけでございます。しかし、これも、一律にそうだとは必ずしも言いきれない面がございまして、先ほど申し上げましたようないろいろの要素を考えまして株式というものの発行価額は決定されるわけでございますので、必ずしも一五%だから特に有利ではないと言いきれない場合も出てまいるのじゃないかと思うのでございます。これは個々の株式の発行のそのときそのときの事情を考慮してきめられるべき問題であろうと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/97
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098・亀田得治
○亀田得治君 一〇%、一五%は、おのおの二十五、二十五となっておりまして、従来のやつが大部分一五%まで考えると救われてしまうわけです。特別決議の対象からはずれてしまうわけなんです。私は、こういうのはできるだけやはり時価に近いようにという趣旨から考えますと、どうも一五%まで救い上げてしまうのは行き過ぎじゃないかと思うんですね、考え方としては。それは個々の会社によって数字が変わることはわかるのですが、標準的に考える場合ですよ、五%以下でもやっているところはあるんですからね。だから、できるだけ時価に近づけていくという立場から考えると、せめて一〇%、こういう程度で努力をしていく、そうしてどうしてもそれ以上安くしておかぬとどうもぐあいが悪いという場合には、これは特別決議の対象にしていく。この考えはどうですか。できるだけやはり時価に近づけていくというのが私は本則だろうと思うんですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/98
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099・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 発行価額はできるだけ時価に近づけていくということは、確かにそれが理想であろうと思います。ただ、株価の変動ということも考えて発行価額をきめるわけでございますので、払込期日におきます価額が発行価額より下回ってしまうというようなことになりますと、これは新株発行が成功しない結果にもなってしまうわけでありまして、その辺の危険性を考えて、ある程度の幅は持たせる必要はこれは確かにあるわけであります。一割が相当か一割五分が相当かということは非常にむずかしい問題でございまして、先ほども申し上げておりますように、一律に一割五分あるいは一割というふうにきめてしまうことは、これは無理があろうと思うのでございますけれども、おおよその見当といたしまして大体その程度のところが一つの目安になるだろう、このように考えるわけであります。
それから、特に有利な発行価額で新株を発行することによって不利益を受けますのは、株主でございます。そこで、今回の改正におきましても、その次の条文の二百八十条ノ三ノ二におきまして、「会社ハ払込期日ノニ週間前二新株ノ額面無額面ノ別、種類、数、発行価額、払込期日及募集ノ方法を公告シ又ハ株主二通知スル」、こういう措置を講じまして、その発行価額がどの程度になっておるかということを一般に知らせますと同時に、株主にもこれを知らせる、これによって発行価額の公正を期するというふうに措置いたしたわけでございます。ことに、これにつきまして、株主が、特に有利な発行価額をもって新株を発行しようとしているにもかかわらず株主総会の決議を経ないということになりますと、これは二百八十条ノ十の規定によりまして差しとめの請求もできる、このようになるわけであります。ただいまの三百八十条ノ三ノ二の規定によりまして発行価額を公正に定められるようにという配慮はいたしたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/99
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100・亀田得治
○亀田得治君 従来、買取引受で時価より若干低くして発行価額をきめて、実際の払い込みのときに時価より高くなってしもうてえらい困ったということはほとんどないんじゃないか。実績のほうですね、私が申し上げておるのは。やはり、その段階になっても、株の若干の変動はあっても、低く相当出ているのではないかと思いますが、逆に発行価額より、それが高くなってしもうてえらい困った、御破算になったとか、そんな経験はないでしょう。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/100
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101・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 確かに、新株の発行が不成功に終わるということはあまりないと思います。ということは、裏を返して申しますと、発行価額にかなりの幅が持たされているということになるのではないかと思うのでございます。そういたしませんと、払込期日における株価との関係上、そんな高い株を引き受ける必要もないというようなことに当然なるわけでございます。どうしてもその点はある程度の幅を持たせて発行価額をきめておきませんと、新株の発行そのものが成功しないということになるわけでございます。にそれが成功しなかった例というものが非常に少ないとか、あるいはないかもしれませんが、ということは、その間に発行価額について一般の株価よりは若干幅を持たしてある結果によるものと、こう考えざるを得ないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/101
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102・亀田得治
○亀田得治君 まあ低くし過ぎておるから失敗もしなかったというふうにも言えるわけなんでね。これはどうなんですか、諸外国といってもそうよけい公告するわけでもないですが、アメリカあたりではこういう点はどの程度のパーセンテージですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/102
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103・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) アメリカにおきましては一三%内外と聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/103
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104・亀田得治
○亀田得治君 一三%内外というと、一五あたりも入るのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/104
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105・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) その事案事案によって違うと思いますけれども、平均的に考えますと、大体一三%くらいのところが限界というふうに理解されておるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/105
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106・亀田得治
○亀田得治君 そこで、特に有利な価額であると思われるにもかかわらず、特別決議の対象に会社がしないという場合に、どういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/106
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107・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 先ほどの二百八十条ノ三ノ二の規定によりまして株主といたしましてはその発行価額を知り得るわけでございますので、これに基づいて新株の発行を差しとめる権利がございます。また、これが看過されまして発行されてしまいますと、現在の法制下におきまして出されております裁判所の判決と同じように、株式の発行そのものは有効になるわけであります。しかしながら取締役の責任はやはりそこに残るのでありまして、発行された株式は有効に発行されたことになりますけれども、特別に会社あるいは株主にとっては不利益な結果になるわけでございまして、取締役の責任はやはり残る、このように考えております。
〔委員長退席、理事松野孝一君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/107
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108・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、なんですか、きわどいパーセンテージの程度だと、取締役会のほうで押し切ってやってしまえばそれでチョンだと、そういうことになりますね、事実上。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/108
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109・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 取締役会におきましてこれなら大丈夫だと思いましても、株主の側からいたしますれば新株発行の差しとめの請求ができるわけでございます。ことに、どういう条件で新株を発行するかということは、個々の株主に通知されますので、株主はそれによって手を打っていくということはもちろん可能でございます。したがって、少々のことであれば取締役会で押し切ってしまうということも、これはなかなか実際問題としてはむずかしい問題であって、株主から差しとめ請求を受け得るという危険をおかすことになりますので、そうたやすくそういうことが行なわれるとは考えられないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/109
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110・亀田得治
○亀田得治君 まあそこら辺に問題があるから、実際上の指導といいますか、これは法務省がやるのじゃなしに、大蔵省あたりかとも思いますが、適正なひとつ運用を要望しておきます。
時間がございませんので、この程度にしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/110
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111・松野孝一
○理事(松野孝一君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にいたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後一時四十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02219660531/111
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