1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年六月一日(木曜日)
午前十一時二十七分開議
出席委員
委員長 川野 芳滿君
理事 藏内 修治君 理事 佐々木義武君
理事 齋藤 邦吉君 理事 竹内 黎一君
理事 橋本龍太郎君 理事 河野 正君
理事 田邊 誠君 理事 田畑 金光君
天野 光晴君 大石 武一君
菅波 茂君 世耕 政隆君
田中 正巳君 地崎宇三郎君
中野 四郎君 中山 マサ君
藤本 孝雄君 増岡 博之君
三ツ林弥太郎君 箕輪 登君
粟山 秀君 山口 敏夫君
枝村 要作君 加藤 万吉君
川崎 寛治君 後藤 俊男君
佐藤觀次郎君 島本 虎三君
西風 勲君 八木 一男君
山本 政弘君 本島百合子君
和田 耕作君 大橋 敏雄君
北側 義一君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 坊 秀男君
出席政府委員
厚生政務次官 田川 誠一君
厚生大臣官房長 梅本 純正君
厚生省公衆衛生
局長 中原龍之助君
厚生省社会局長 今村 譲君
厚生省児童家庭
局長 渥美 節夫君
厚生省年金局長 伊部 英男君
厚生省援護局長 実本 博次君
社会保険庁年金
保険部長 網野 智君
委員外の出席者
総理府恩給局恩
給問題審議室長 大屋敷行雄君
専 門 員 安中 忠雄君
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六月一日
委員浅井美幸君及び大橋敏雄君辞任につき、そ
の補欠として北側義一君及び伊藤惣助丸君が議
長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
る法律案(内閣提出第七九号)
戦没者の父母等に対する特別給付金支給法案
(内閣提出第八〇号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/0
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001・川野芳滿
○川野委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案及び戦没者の父母等に対する特別給付金支給法案の両案を議題として審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。山本政弘君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/1
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002・山本政弘
○山本(政)委員 厚生大臣にお伺いいたしますけれども、戦傷病者戦没者遺族等援護法の提案が一番最初になされましたのは、たしか昭和二十七年でございましたね。そのときに、この提案理由の説明は「戦傷病者、戦没者遺族等は、過去における戦争において国に殉じた者でありまして、これらの者を国が手厚く処遇するのは、元来国としての当然の責務でございます。」こういうことであったと思うのです。そこから、きのう実本政府委員のおっしゃった賠償理論による国家補償の精神がここへ生かされた、こう思うのですけれども、今度の戦没者の父母等に対する特別給付金支給法案につきましては、これはやはり同じような趣旨に基づいてなされておるのかどうか、その点をまず第一番に大臣からお伺いいたしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/2
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003・坊秀男
○坊国務大臣 やはりそういう国の犠牲になられたといったような人に対する慰謝の気持ちがその中には含まれておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/3
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004・山本政弘
○山本(政)委員 その慰謝ということは、もちろん提案の理由に書いてあります。だが、この慰謝ということが、昨日実本政府委員のほうから御答弁があったように、この法案もいわゆる賠償理論に基づいた国家補償の精神によって行なわれておるのかどうかということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/4
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005・坊秀男
○坊国務大臣 やはりその規定には、国家賠償というような精神が含まれておると思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/5
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006・山本政弘
○山本(政)委員 これはあとで問題になると思いますから問題を残しますけれども、それでは、二十七年の当時、この戦傷者戦没者遺族等援護法の提案がなされたときに、それと同時に、それとはまた別に二億円の予算が計上されております。それの目的は、遺家族の子弟の育英を充実する、これが一つあったと思います。もう一つは、合同慰霊の式典を行ないたい。それから、さらに第三点は、身体障害者を一定の事業所に雇用させるような措置をとりたいということで、二億円の予算が計上されておると思います。この点につきまして、遺家族の子弟育英を充実する、あるいは身体障害者を一定の事業所に雇用させる措置をとるということについて、一体どのような措置がとられたのか。あるいはどのように子弟の育英を充実さしていったのか。ひとつ経過をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/6
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007・実本博次
○実本政府委員 先生のいまのお話で、二十七年に二億円の予算が計上されたその中身についてお示しがありましたが、いまちょっと私のほうはここで確かめられませんが、少なくともここで申し上げられますことは、全国の戦争犠牲者の慰霊のための追悼式の経費につきましては、厚生省のほうで、その執行について、そういった試みを行なっております。そのほかの子弟の育英の問題その他につきまして、いま、ちょっとつまびらかにできませんので、後刻調べまして御返事申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/7
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008・山本政弘
○山本(政)委員 これもあとから御質問申し上げたいと思うのですけれども、戦没者の対象件数は一万件とここにありますけれども、その内容、つまり戦没者の父母というのは一体今日どれくらいおられるのか、これをひとつお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/8
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009・実本博次
○実本政府委員 戦没者の遺族としての父母がどのくらいかというお話でございますが、その要件を満たしておる父母といたしましては、一万件を推定いたしております。それ以外の一般的に戦没者の父母としてどのくらいいるものだろうかという数字でございますが、これは、昨日も先生からの御質問のありましたときに出ました、恩給の公務扶助料をもらっている方のうちで七十歳以上の者をきのうお示しいただきましたが、おそらくそれは父母に当たる者であろうというふうな推定がつくわけでございますが、そのほかに一つ一つの件数といたしましては、めどはまだいまつけておらぬわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/9
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010・山本政弘
○山本(政)委員 私は昨日この原爆被害者の実態調査に関して大臣にお伺いいたしました。それは、過日七人委員会が要請をしたことに対して、大臣が、実態調査をしてから立法のことについては考えたい、こう申しておられます。片方のほうは実態調査をするということで立法化については遅延されておる。今日ここで私がお伺いして、大体二万件で内容的には私が申し上げた数字だろうというようなことでは、私はたいへんうなずけないのです。こういうものについては、少なくとも実態調査をしてやるべきだと私は思うのですけれども、そういう点について何か非常に便宜的にお考えになっているような気がするわけですが、その点についてお伺いいたしたい。これは大臣にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/10
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011・坊秀男
○坊国務大臣 何らかの形で援護をしなければならないこういったような対象につきましては、すでに実態調査ができた上においてそういう措置をとっておる。一般的のそういうものに対しましては、もし必要としてこれに対して措置をとるとすれば、これはやはり実態調査をしていかなければならない。さような意味におきまして、原爆被爆者といったような方々については、これは実態調査をした上で措置をとる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/11
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012・山本政弘
○山本(政)委員 時間の関係もございますので、原爆の被害者についてはあとで詳しく御質問をいたしたいと思います。
条文に入りたいと思います。この法案の第二条の第一項第五号に、外地関係共済組合、こういう項がありますけれども、これには関東州というのは含まれておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/12
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013・実本博次
○実本政府委員 外地関係共済組合の制限につきましては、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法に規定されておりまして、ここには含まれておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/13
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014・山本政弘
○山本(政)委員 関東州には共済組合があったと思うのですけれども、あったのかなかったのか、その点をひとつお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/14
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015・実本博次
○実本政府委員 この旧令共済の中に関東州の関係は入っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/15
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016・山本政弘
○山本(政)委員 入っておるのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/16
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017・実本博次
○実本政府委員 はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/17
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018・山本政弘
○山本(政)委員 つまり救済措置はあるわけですね。その点はっきりしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/18
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019・実本博次
○実本政府委員 救済措置はあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/19
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020・山本政弘
○山本(政)委員 それでは第三条の第三項に「前項の規定により特別給付金を受けるべき順位にある戦没者の父母等が、」こうありますね。このあとに引き続いてカッコがあります。「(その者が同日までに二年以上生死不明であるときは、一年以上)」とカッコを閉じております。ここに書いておる「二年以上生死不明であるときは、一年以上」ということは、おそらく厚生大臣のあたたかいお気持ちで、いままで生死不明であるから一年でも早くこういう特別給付金の支給を与えてやりたいという親心だと思うのです。そうでしょうか、どうですか。それをひとつお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/20
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021・実本博次
○実本政府委員 第三項の規定は、おっしゃるとおり、そういうはからいを考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/21
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022・山本政弘
○山本(政)委員 立法の趣旨は慰謝にある、こうおっしゃっていますね。それならば私は一つの考え方としては、老齢であるから一年でも早くそういう支給を与えるという措置をしたほうがいいというお考えもあるかもわかりません。しかし同時に、三十年に戦争が終わった、三十五年に、昨日の話ではございませんけれども、ともかくも、あなた方は待ちに待って、十五年間たってやっと死亡宣告というものをやったといういきさつもあります。これは満蒙義勇軍ですか、このことについて説明したときに、これは十五年たっておりますと言われた。それくらいお待ちになるくらいの親心があるならば、なぜ一年といわず二年ということにしてこのカッコを削除するというお考えにならないのか。ということは、最近やはり出かせぎ労働者とかなんとかということで、生死不明ということで親さがし運動なんか始まっておりますよ。
そういう実態の中で、私はそれくらい待ってやるという解釈もなり得るだろうと思うのです。あなた方のような解釈もできるかもしれないけれども、同時に、待つならば精一ぱい待ってやって、そうして支給をさしてやるということのほうがあたたかい気持ちだと思うのですけれども、その点をどうお考えなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/22
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023・実本博次
○実本政府委員 お説のような考え方はございますが、この戦没者の父母につきましては、もともとその法律に書いてございますように、公務扶助料を現に受けておる方、あるいは年金を受けておられる方、その他共済組合のほうですでにいろいろな給付を受けておられるということで、その対象がそういった法律制度に結びついた対象になっておりますたてまえ上、比較的身元がわかっているというふうな方々でございますので、原則を二年にいたしたわけでございます。そういうふうな前提に立っておりますので、こういった不安定な状態で、長く置くということよりは、なるべく早い機会にそういったものを整理したほうがいいということを考えまして、一年以上ということにカッコをセットしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/23
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024・山本政弘
○山本(政)委員 いま政府委員は身元がわかっていると言われた。身元がわかっているということは、実態を把握しているということになるわけじゃございませんか。あなたは、実態がわからない、こう冒頭におっしゃっておりますけれども、実態がそれではおわかりなわけですか。と同時に、余命率がだんだんと伸びてきているということもあります。あなたのおっしゃるように、かりに実態がわかっておるならば、その実態というものがどうなのであるかということをもう一度調査をした上で、この条文を一年を二年にするとか、つまりカッコの中を削除するとかいうことは、当然私は考えられると思うのですよ。あなた方は実態がわからないと言いながら、いまの御答弁では実態をつかんでおるからだ、こういうお話のようでございますけれども、その点ひとつはっきりお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/24
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025・実本博次
○実本政府委員 この実態の問題でございますが、援護法なりあるいは恩給法なりの国家補償の精神に基づいてやっております年金なりあるいは扶助料におきましては、そのきわめておくべき実態というものは、それが戦没者なりその他の方々との間において、形式的に親子関係があるとかないとか、たとえば戸籍をもって調べておくとかいうような、形式的な点を調べておくということがその実態をきわめる行政上の必要でございまして、これが、たとえば生活保護であるとか、あるいは福祉行政をやります場合においては、その人の生活実態というようなところまで行政上調べる、あるいはきわめるということは、この場合には、そこまでのところをきわめておくことに越したことはございませんが、行政上の必要上、最小限度そういったものをもってそこをただしておく、こういう実情でございます。
なお、そういう父母のうちで、この法律の対象といたしておりますような子供を持っておられた方が全部なくなったんだろうか、あるいは一番最後になくなった子供さんが公務の傷病でなくなられたかどうか、そういった意味の調査と申しますか、実態が必要なわけでございまして、そういうものについての数を、実態調査として一応一万件というものを予定したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/25
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026・山本政弘
○山本(政)委員 それではこれは大臣にお伺いいたします。一応戸籍上によって戦没者の父母がつかめる、こういう言い方が妥当かどうかわかりませんけれども、つまり実態は別として形式的につかめる、こういうことでございますね。したがって、この本旨からすれば、そういうことによって慰謝というものをするのだ、こういうことでしょう。そうすると、そこには大臣のおっしゃるような、つまり賠償理論というものが、国家補償の精神というものがそこに働くかどうか。さっきあなたが申しましたように、大臣は先ほども、国家補償の精神に基づいておるのだ、その根底はそこにあるのだ、こうおっしゃっておりますけれども、論理的にそうなりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/26
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027・坊秀男
○坊国務大臣 国が慰謝の精神を何らかの形で具体化する、こういったような場合に、戦没されたり犠牲になられた方、そういう方の家族、一番近いのは妻でございますが、そういったような方々に対して、なくなられたり犠牲になられたりした方々と非常に関係の深い方——形式的にでございますが、それをはっきりさせまして、それに対して何らかの措置をするということが、これはやはり国家の賠償義務と申しますか、そういった精神と、それに措置をとることは、国家の慰謝の精神と相背馳するじゃないかということには相ならない、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/27
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028・山本政弘
○山本(政)委員 先に進みたいと思いますけれども、私がこだわるのは、戦傷病者の妻に対する特別給付金支給には、こういう規定はございませんね。つまりこういう考え方の規定というものは入っておりませんね。入っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/28
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029・実本博次
○実本政府委員 入っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/29
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030・山本政弘
○山本(政)委員 じゃ、なぜここに入れたか、それをもう一ぺん説明していただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/30
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031・実本博次
○実本政府委員 妻の場合はいま単独でございますが、老父母の場合は、一応父母ということで一体になっておりまして、その違いがありますので、そういうふうな配慮をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/31
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032・山本政弘
○山本(政)委員 これは率直に申し上げまして、こういう関係法案というのはたいへん難解なんですけれども、この第二条三項の一、二は、戦没者の妻が遺族年金を支給されておる場合に、父母あるいは祖父母はいままでは特別給付金の受給対象にならなかった。それをこの項で父母あるいは祖父母にも受給権を与える、こういうふうにしたわけなんですね。この点ひとつお伺いいたしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/32
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033・実本博次
○実本政府委員 これに入れましたのは、この三項の意味するところは、おっしゃいますように、たとえばこれは順位を待っておられる妻、父母のことが一号でございまして、それから、まだ六十歳に達しないために扶助料なり遺族年金の受給権が発生しないという父母のために設けられました、いわば救済規定ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/33
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034・山本政弘
○山本(政)委員 これは私もよくわからないのでお伺いしたいのですが、ここの項の規定によって父母もしくは祖父母が給付金を受ける。そのときに父母もしくは祖父母がかりに死亡したというときには、その継承権というのは妻にいく場合があり得ますか、あり得ませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/34
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035・実本博次
○実本政府委員 妻としてはまいりません。もしかりに、その妻が請求権者である父母の——こういう例はあまりないと思いますが、養子にでもなっているというふうな場合は、養子として相続するということは考えられますが、妻そのものとしては、たとえ父母と同居しておろうと、それには請求する権利というものを発生させる予定はいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/35
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036・山本政弘
○山本(政)委員 第七条で、受給権を持つ父母等が死亡したときには、相続人はその受給権を継承できることになっております。この場合、父母が昭和四十二年四月一日に生存していたときにのみこれは適用されますね。そうすると、それ以前、たとえば四十二年三月一二十一日に死亡した場合には、これは適用されませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/36
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037・実本博次
○実本政府委員 その場合、残念ながら適用されません。法律が四月一日から施行されるわけでございますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/37
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038・山本政弘
○山本(政)委員 私は立法趣旨として——立法趣旨という言い方は語弊があるかもわかりませんが、とにかく法律を立てるというときには、これは十分に慎重に立てなければならぬと思うのです。しかし同時に、一日違いで支給が受けられない、あるいは少なくとも一カ月くらいのうちにおなくなりになったときにそれが遡及、できない措置というのは、私は、考え方としては非常に冷たい考え方じゃないか、こう思うのですよ。と同時に、これはあとでまたお伺いいたしますけれども、今度は支給する場合には、どんどん相続権といいますか、そういうものが働いていって、ともすれば、無原則という言い方はちょっと酷かもわかりませんけれども、範囲がだんだん広がっていく、こういう考え方についてちょっと疑問を抱くわけです。その点について、この担当の方々は、ある一定期間については遡及をさしていって救済をするという考え方がおありになるのか、ならないのか。これは慰謝との問題がありますから、もちろんそういうことも考慮に入れなければならないと思いますけれども、その点についてのお考えをちょっとお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/38
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039・実本博次
○実本政府委員 その点につきましては、昨日先生から御質問がございました、二十七年の四月二十九日までの間に結婚を解消されました妻、それ以降に再婚解消されました妻等について、お示しがあったようなアンバランスといいますか、法律上の立て方のために、権利が得られる者と得られない者とが出てくるということにつきましては、まさしくいま御質問のございました戦没者の父母に対する特別給付金についても同じ問題があるわけでございまして、こういう一時金を対し上げることを規定いたします場合、給付金につきましては、すべて、こういったある時点をとらえまして、その時点の状態において法律上の権限の設定をきめるというふうな立て方になっております関係上、どの時点をとらえてつくりましても、時点をとらえて立て方を考える以上は、そういう問題が出てまいるものでございまして、この点につきましては、従来からの立法でございます戦没者の妻の場合、あるいは戦傷病者の妻の場合、その他の給付金の問題につきまして常に起こっておる問題でございますが、これはそういう制度上の問題として、一日違いで権利が得られないという人にとっては非常にお気の毒なことでございますが、これはどうにもやむを得ないというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/39
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040・山本政弘
○山本(政)委員 それでは第六条。前後して申しわけありませんが、この第六条は、私は解釈がなかなかつきかねるのですけれども、こういうふうに解釈していいのですか。六条の考え方というのは、たとえば父方の祖父母とか、あるいは母方の祖父母、こういう方と考えられていいのですか。つまり「特別給付金を受ける権利を有する者が数人ある場合においては」というのですが、この「数人ある場合においては」という考え方ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/40
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041・実本博次
○実本政府委員 これは父方の祖父母と母方の祖父母といったようなときに、どちらか一人、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/41
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042・山本政弘
○山本(政)委員 そういうふうに考えておるわけですね。私は率直に申し上げますよ。この数人が同時に同じ権利を有するという場合に、むしろ特別給付金を同町に渡すことによって摩擦が起きることがあると思うのです。人間というものは、ある場合には非常に強い場合もある。しかしある場合には非常に弱い場合もある。せっかく皆さんがお考えになって特別給付金をお与えになるときに、公的に順位をつけないで、そうして同時に並列で全部受けられる、こういうことになったときに、家庭の中で逆に摩擦が起きてトラブルを起こす、こういうことをお考えになったことがございますか。ございませんか。私は、そういう場合についても、やはり順位というものは明確にすべきだと思うのですけれども、この点ひとつお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/42
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043・実本博次
○実本政府委員 この六条の問題でございますが、この法律が予定いたしております最も大部分の対象者は父母ということでございますので、父母の中でこういう六条のようなことをしなければならないケースはほとんど少ないと思いますが、おっしゃるように、そういうふうな数人の方がおられるというケースもございますので、こういう規定を設けたわけでございます。こういったことをこちらのほうから順位をきめて差し上げるというやり方もございますが、この場合は、やはり父母であり、あるいは祖父母であり、母方の父母であり、父方の父母であるといった関係の方々での間でございますから、事実上なるべく話し合いをおつけになってしていただくということを前提にして規定いたしたわけでありまして、お示しのような、こちらから順位をつけて差し上げるというやり方もございますが、前者のほうをとったわけでございます。
〔委員長退席、佐々木(義)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/43
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044・山本政弘
○山本(政)委員 私は父母の場合には問題がないと思うのですよ。しかし、祖父母の場合に、この六条が政府のようなお考えだとすれば、これは当然将来問題が出てきますよ。あなた方は、特別給付金を支給すればそれでいいのだ、政府はそういうあたたかい気持ちがあったのだ、こうおっしゃるかもわからぬけれども、しかしその気持ちが、受給者の手に渡ったときに、あるいは渡ろうとするときに、そういうあなた方の親心と逆な現象が生じるということをお考えになれないですか。私はそういう点について、当然起こるべきことだというふうに考えるわけです。
なお、この法案をずっと一貫して見ますと、恩給法を基本にして、援護法とか、それからこのような種類の特別給付金の支給全部が、そういう一つの線に沿ってずっと流れていっている。ほんとうにあなた方がこういう遺族の方々あるいは父母の方々について親身になって考えているか。非常に考え方が画一的だと思うのですよ。その点どうお考えなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/44
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045・実本博次
○実本政府委員 この法案でそういう場合も考えてありますのは、第三条の二項をごらんいただきますとそういう父母、祖父母の場合に、「特別給付金を受けるべき戦没者の父母等の順位は、父母、祖父母の順序による。この場合において、は、父母及び祖父母について、それぞれ当該死亡した者の死亡の当時その者によって生計を維持し、又はその者と生計をともにしていた者を先にし、」それから「同順位の父母については、養父母を先にし実父母を後にし、」といったような一般的順位をつけておりまして、そのうち生計をともにしていた者を相当先順位に置いておりますので、先生のいまのお話のような場合は、なるべくこちらから実際上の指導といたしまして、生計をともにしていた者のうちからこの該当者を出したらいいのではないかという指導もしてやれるかと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/45
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046・山本政弘
○山本(政)委員 そのことについては、父母についてはこれは別ですが、ここの三条の二項における順位というのはよくわかりますけれども、その先の配慮が足らないということだけを申し上げて、この条文に対しては終わりたいと思います。
第八条に、「特別給付金を受ける権利は、三年間行なわないときは、時効によって消滅する。」と書いてあります。この国債の償還は五年間ですね。五年間の場合に三年間ですから、あと残り二年間です。あなた方がそれだけの親心でやられるのだったならば、なぜ五年間ぎりぎり一ぱい待てないのか。つまり時効なんというみみっちいことを言わないで、五年間ぎりぎり一ぱいにして、そういう瞬間にそういう事実があれば救済ができるような措置をなぜお考えになれないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/46
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047・実本博次
○実本政府委員 これも先ほど申し上げましたように、この時効の考え方につきましては、時効の整理のしかたにつきましては、基本権が三年ということで、この基本権に基づきまして発生いたします支分的請求権の対象たる国債の償還金の消滅時効は、国債に関します法律の規定によりまして十年というふうに定めてあるわけでございますが、基本権を三年にいたしました考え方は、先ほども申し上げましたように、戦没者の父母というものは公務扶助料その他の順位によりまして、もうはっきり相手がわかっておるものでありますので、その周知徹底とか、あるいはそういった権利をよく本人にのみ込ませるというふうなことが、この三年という期間があれば十分であろうということでこういうふうな時効期限にいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/47
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048・山本政弘
○山本(政)委員 戦没者の父母等に対する特別給付金支給法案というのは、これは私どもから見てもたいへん難解だと思うのですけれども、これは昨日もあれしましたけれども、もう一度確認をしたいのですが、戦没者の妻、戦没者の遺族、それから戦傷病者の妻、戦没者の父母等に対して国として手一厚い各種の保護をなされている。これはたいへんけっこうだと思いますが、しかし同時に、私は、昨日の冒頭に、総合的に、社会保障の見地から抜本的な対策というものを考えてもいい時期にきたのではないか、こう申し上げたと思います。
ただ一番危惧しますことは、最後に残っておるものは戦傷病者の父母でございます。この点については大臣にお伺いいたしたいのですけれども、実施をいたしておりません。しかし、今後実施をしないということについてお約束が願えますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/48
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049・坊秀男
○坊国務大臣 いまの段階におきましては、戦傷病者の父母に対しての措置ということについては考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/49
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050・山本政弘
○山本(政)委員 なぜ私がそういう質問を申し上げるかと申しますと、はっきり記憶いたしておりませんけれども、昨年の末の国会でございましたか、旧勲章年金受給者に関する特別措置法が出ましたね。たしか受給者は八千八百三十一人だと思います。その後に来た日華事変あるいは太平洋戦争に関してそういう動きが出ておるということを聞いております。そういうものがだんだんと際限なく広がっていくということは——私は先ほどから繰り返し申し上げておるように、むしろそういう面については社会保障の見地から考えていくべきだと思うのです。ただそういう要求があればだんだんこれが拡大されていくということを実はおそれます。そういう点で、前の話はわかりましたけれども、この勲章年金受給者に対する今後のお考えについて、ぜひ大臣の御見解をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/50
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051・坊秀男
○坊国務大臣 この問題は、援護とかなんとかをやっております厚生省が、直接にはお答えをする問題ではないと思います。これについては、総理府なりそういうところで考えていく問題でございますので、私がここでこれに対してはっきりしたお答えを申し上げることは、ひとつごかんべんを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/51
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052・山本政弘
○山本(政)委員 これも私の記憶ですと、たしか中山委員が厚生大臣のときだったと思いますが、阿波丸の見舞い金に関する法律が出ました。そのときに出た見舞い金というものは、死亡者一人に対して七万円だったと思います。そしてそれが二人になれば漸減をしていく、三人になればまた漸減をしていくという形になっております。この人たちは、当時の状況からいえば、南方における俘虜に対して医薬品とか衣料品とかを送るということで非常に貢献したと思うのです。しかも、そこには緑の十字が入っておるという中で、当然こういうものは国際問題として処理されましたけれども、こういう入は状況から考えればたいへん気の毒だと私は思うのです。そういう人に対しては一時金でおしまいになってしまっている。片や援護法に対してはだんだん金額においてもふえてきておる、こういう事実がありますね。この阿波丸事件なんというのは全く不慮なんですよ。しかも雷撃など受けられないはずの人たちが受けているわけです。しかもその人たちに対しては、見舞い金というだけで済まされておる。この辺については、私、普通の人よりか、むしろ考え方によればなお気の毒のような気がするのですよ。このことについては、あなた方は配慮をしてやるというお気持ちはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/52
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053・実本博次
○実本政府委員 いまお話の阿波丸事件の犠牲者に対します見舞い金の問題でございますが、これは、二十五年に外務省から阿波丸事件の見舞金に関する法律案を提案しまして、成立いたしております。外務省の所管でございますが、私の知っている範囲で申し上げますと、このときはちょうど二十五年でございまして、いまお話しのように、一人七万円というふうな一時金を出すにあたりまして、すべての請求権を放棄する——これはアメリカの潜水艦が不法攻撃したということは、アメリカ政府自身が認めたケースだと承知いたしております。その不法攻撃に対します賠償請求権というものはすべて放棄する。放棄するかわりに、政府としてそういった人たちに対する見舞い金の措置をとるという趣旨で、立法措置が行なわれたかに聞いております。金額の問題にいたしますと、当時、御承知のように恩給法も全部ストップされておりまして、戦争犠牲者の人たちも非常に苦しい状態であったわけですが、その当時におきまして、一応金で、しかも現金で七万円というものが、一応見舞い金としてそういった犠牲者に出されたわけでございます。いまの貨幣価値で評価するとどのくらいになるか、ちょっとむずかしゅうございますが、当時として相当な見舞い金を差し上げたという措置であったというふうにわれわれ考えておるわけでございます。ちなみに、乗っておられました方々の中には、軍属の身分を持った方あるいは船員の方々というふうな方がおられまして、なくなられた方々の大部分が、そういった恩給なり援護法の対象になる方であったわけでございました。これは公務死として扱われまして、それぞれ公務扶助料なり遺族年金なりがいっておるわけでございまして、そういう意味からいたしましても、これに対します措置というものは、まあまあじゃないかというふうにわれわれは考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/53
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054・山本政弘
○山本(政)委員 軍人軍属はいいですよ。しかし軍人軍属以外の方はどうなりますか。軍人軍属は、あなたのおっしゃるように、恩給などの救済措置があります。しかし、軍人軍属でない人も、かなり乗っておったというふうに聞いております。そういう人たちには救済の道がないじゃありませんか。あなた方は、片一方は救済措置があるからいいだろうとおっしゃっているけれども、救済措置のない人に対してどう救済するかということが、私は国としてのとるべき立場だと思うのですよ。そのことに対しては、問題を避けておられるような気がいたしますが、その点はどうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/54
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055・実本博次
○実本政府委員 それは先ほど申し上げましたように、二十五年当時において、一時金で七万円という見舞い金が出ております。その際には、その法案が通りますときに、やはり国会の御審議で、すべての請求権は放棄するかわりに、これはそのかわりだということで、その時点においては、身分のある人もない人もございますが、もちろんそれも含めまして、その措置で適当であるというふうな結論が出ているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/55
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056・山本政弘
○山本(政)委員 あなたはそうおっしゃるけれども、個人についての七万円に対して、日本郵船株式会社は見舞い金手七百八十四万三千円を受け取っております。そういうおっしゃり方をするならば、これを現在の金で換算すると、一千七百八十四万三千円というのはたいした金額だと思うのですよ。会社に対してはそういうふうになさっております。
それではお伺いしますが、ほかの船はやはり沈められたときにこういう補償をされているわけですか。その点、たいへん無理な御質問かもわかりませんけれども、おそらくその場合は補償されてないと思うのですよ。阿波丸に対しては日本郵船株式会社は補償されておる。そして今度は個人に関しては七万円でぶつ切りで、今日まで遺族の方々で苦労されている人が現実におる。しかもその数というのは、そんなにたくさんな数じゃございません。いま一律に父母とか祖父母という方々に特別に給付をされるというお考えに対して、私は反対をするものではございません。しかし同時に、その方々の中にでも、境遇いかんによっては、そうお困りでない方もおるかもわかりません。こういう言い方はたいへん申しわけないかもしれませんが、しかし同時に、阿波丸の人たちは、中には子弟をかかえて生活にお困りの方も現実におります。それを、七万円を差し上げたからそれでいいではないか、こうおっしゃっています。と同時に、この問題は外務省の所管であってこういうふうになったと御説明がありましたけれども、国際問題、国際間の問題で解決したので、国内の問題としては、当然政府としてはそのことに対して配慮すべきでしょう。あなたのお答えは、国内にそういう犠牲者がおるだろうということに目を向けないで、逆に国際問題で解決したからいいではないか、こういうふうに私は受け取ったのですが、その点について再度御質問をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/56
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057・実本博次
○実本政府委員 これは外務省のほうからの正式なお答えでないので、私の私見ではなはだ恐縮なんでございますが、いまお話は、援護の措置としてそういう人たちを何とかもう少し見直す必要があるのじゃないかというような御意見だと思いますが、先ほど申し上げましたように、この阿波丸事件の犠牲者にとってみますと、いま的確な資料を持っておりませんが、約二千名のうち軍人軍属その他一般の文官、外務省の高等官など乗っておられたわけですが、そういう方々は、全部それぞれの共済法規の中で遺族年金なり公務扶助料なりというものが出ているわけでありまして、豪族であられた奥さんとか子供といった方々がたしか八十六名だったと記憶いたしておりますが、その方々には、その当時の一時金で七万円という見舞い金が、そういった人たちに対する国の社会保障的な措置のしかたであるということで出ているわけでございまして、そういった意味での国の措置というものはそれで完結しているのではないであろうか、こう考えられるわけでございます。ただ、なお、そういった八十六名の何も身分を持っておられない方でそのときに見舞い金の七万円をもらった方々と、実体上同じような方々でまだ七万円の見舞い金すらもらっておられないような犠牲者が、ほかにもあるわけでございます。たとえば、ソ連が参戦いたしました昭和二十年八月九日以降、満州から引き揚げてくる途上に非命に倒れられた一般の邦人の方々といったような場合、その場合と全く同じケースでございますが、そういった方々も援護の必要があるかないかという問題が出てまいりますれば、これまた問題として考えなければならないわけでございまして、いまの阿波丸事件の場合は、先生の御意見だと、いまのあれから見てまだ少ないのではないかとおっしゃいますが、二十五年当時で一時金として七万円の見舞い金が出ておられる方でございまして、われわれといたしましては、この際、そういった方々に対する国の援護措置といたしましては、それで一応の措置がしてあるというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/57
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058・山本政弘
○山本(政)委員 それで、私は初めから申し上げておるのですけれども、ソビエトから帰るときに非命に倒れられたそういう方に対する救済措置はまだなされておらない、こういう問題がありますね。そういう問題に手をつけないで、何か立法化されたら、その立法に従って——だんだんと法律というものが現実にはつけ足されていっているわけですよ。しかし、それは私から言わせるならば、これは言い過ぎかもわかりませんけれども、だんだんつけ加えられていっている。私はそのこと自体も問題があると思いますけれども、その反面に、そういう人たちに対する救済措置——あなたがおっしゃったような救済措置がないということに対して、たいへん不満なんですよ。だから、初めに申し上げましたように、もう一度、これは総合的な対策というものをいまこそ確立しなければいかぬのじゃないか。社会保障の観点から考えていかなければいけないのではないか、こう思うのです。
そこでお伺いいたしたいのは、これはせんだって私いただきました厚生省の原爆被害者の実態調査でございます。この調査から見ても問題になるのがあるのです。たとえばこの官報の十六ページの就職状況から見ても、被爆者は、一般の人たちの集団と比較すると、男の人はやや低いと言っておる、女の人はやや高いと言っている、こう書いてあります。高ければいいのかというと、これは高いところに問題がありそうな気がするのです。男の人の低いということは私はわかるのです。つまり原爆の被害を受けたので、身体的に欠陥があるとか、あるいは作業がなかなか常人と一緒にできないという問題があると思うのです。逆に婦人が高いということについては、これは逆の面から言えば、あとのほうのデータと考え合わせますと、結婚できないとかそういう問題をかかえておると思う。自然に自分で働かなければならないという境遇になってきているから高いのだというふうに私は解釈いたしております。この就職状況についても、同時に配偶関係について見てみてもそうなのです。「全国の一般集団に比較して有配偶率は低く」と書いてある。ここにも社会的な問題があると思うのです。それから結婚についての差別、これもこの資料によると婦人は低いのですね。これはきのうのお話では、中間報告である、こういうふうにおっしゃいました。ここに出ておるのは基本調査である、あと健康調査、それから生活調査をしておるのだ、こう言っておられます。これは四十年の十一月に実施されたものでございますけれども、それからもう一年以上たっておりますが、いつそれでは生活調査あるいは健康調査というのができ上がるかどうか、この点をひとつお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/58
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059・実本博次
○実本政府委員 いま公衆衛生局の担当の方がいないのでわかりませんが、われわれの聞いているところでは、この秋にこういった中間報告をも踏まえて最終的な精細な調査報告ができ上がる、こういうふうに聞いておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/59
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060・山本政弘
○山本(政)委員 それでは大臣にお伺いいたしたいのですが、前国会でもこれは附帯決議がございましたね。これは衆参両院でございました。そうしてこれはページ数からいえばただ二ページしかありません。これだけでもそれだけのデータが出てくるわけです。この調査が完成されたら、すみやかに原爆の被害者に対する援護法というものをおつくりになるお考えがございますかどうか。これは大臣にお答えをお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/60
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061・坊秀男
○坊国務大臣 いま御提示のように、基本調査で配偶の関係あるい雇用、就職の関係等についてもこういうような事実があるじゃないか、そういうお話でございますが、そこで、ただいまその御提示があったのは中間報告でございまして、さらに、この基本調査の中間でなしに、最終調査、健康調査、生活調査といったようなものが、ことしの秋にまとまりましたならば、いまのお示しになったようなことよりは、もっといろいろな何とかせなければならないというような事態があるいは判明するかもしれません。あるいはこれはどういうことになるか知りませんけれども、こういうことになっておるけれども生活は非常に苦しいということと、もう一つは、そうでないといったような調査も、報告も、必ずそういうことはあろうとは期待も何にもしておりませんけれども、客観的にそういうことがあるかもしれない。だから、私どもといたしましては、できるだけ手を尽くした精細なる調査の結果が判明いたしましたならば、その調査の結果に基づきまして、ぜひとも何らかの措置をとるということが必要であるということならば、これはそういう方向に前向きに考えたいと思いますけれども、いろいろ先ほどからもお示しになりましたように、戦争が終わったが、しかしその戦争のつめあとが私はまだ残っておると思います。そういった残っておるものもありますので、そういったようなものの中で、どれが先、どれがあとというようなことでなしに、そういったものをできるだけすみやかにやらねばならないという措置があるならば、そういう措置をとってまいりたい、こういうふうに思っておりますので、とにかくその結果を見まして検討をしたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/61
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062・山本政弘
○山本(政)委員 だから、先ほどから私申し上げておるように、戦傷病者の援護については、かなり政府当局としては手を尽くしておられるような気がするわけです。率直に申し上げて、実態というものが把握できないで、これは戸籍上の云々だということで、再度私がお話ししたときに、形式的であるかもわからぬが戸籍面から云々と、こういう話がございました。つまり援護関係では、そういうものができたら、それに付随して次々とそういうものができてくる。しかし、片っ方では忘れられたものがあって、しかも、この単なる簡単な実態調査の報告を見ただけでも、気の毒だという人が現実におるわけですよ。しかし、そのことに大臣は目をおおって、実態調査ができたら、できたらということで、次には生活調査、あるいは健康調査と、こういうことをおっしゃって、そしてあとは、気の毒な方がおられるかもわからぬけれども、同時にあるいは生活にお困りでない方もおるかもわからぬから、こうおっしゃっておるわけですね。私、その点が非常に理解ができないのですよ。いつ原爆の症状というものが出るかもわからぬわけです。きょう元気であっても、一週間ぐらいあとにその傷あとが出るかわからぬわけです。しかも現実には、そのきわめて簡単な報告の中から、たいへん気の毒だという実態が出てきておるじゃありませんか。私は、生活に困っていない方を救え、こう申し上げておるのじゃないのですよ。しかし、被害を受けて、そして現実に困っておる人がわかっておるのだったら、逐次救済の措置をやっていく、しかも、法律的にそれを補完をしていけばいいではないか、こう申し上げておるのです。現実に、この戦傷病者の援護は、だんだんそうやって補完をされてきておるわけでしょう。しかし、原爆の被害者に限っては、何回となく言われ、そして決議までできておるにかかわらず、それがなされていないのです。そしていま大臣がおっしゃったような理由をおつけになって延期をされておる。私はその点がたいへん納得がいかないわけですよ。再度大臣の御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/62
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063・坊秀男
○坊国務大臣 戦争による犠牲者という中には、その犠牲を受けたことが、何か国家の権限と申しますか、強制と申しますか、そういったことに基づきまして、国家の公務員的なものであるか、あるいは準公務員的なものであるといったような方と、それから、そうでないが非常に重大なる犠牲を受けられたというのと、これは両方があるのじゃないか。そこで、直接ストレートに国家の強制による一極の身分があって、そしてその戦傷なり犠牲を受けられた方と、そうでない——およそ日本国民が全部犠牲を受けておりますが、その犠牲を受けた中で、いまの原爆などというものは、たいへん犠牲の激甚なるものでございますけれども、いまお話ししたとおり、一つの地位なり身分があったから、どうしたってこれはのがれようとしてものがれられないということと、客観的に見て、広島、長崎の方々は、これはのがれようとしてのがれられない一つの地理と申しますか、何と申しますか、これは広島の市民であり長崎市民であり、のがれられないことでございましたけれども、これは強制的に、強権的に一つの国家の直接の地位に伴ったということではない。そういうことで今日までの立法というものは分けてきたのであろうと私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/63
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064・山本政弘
○山本(政)委員 お話はよくわかります。だから、一つの条件を持っておる方々は、これはだんだんと救済措置がなされておる、しかも、経済的な条件に伴って改善もされておる、こういう面がこちらに一つあります。と同時に、底辺層の人たちの生活保護という問題もございます。ボーダーライン層の問題にも、これらに対しても一つの救済措置が与えられる。これはしかしたいへん不十分ですね。大臣、不十分ですね。しかし、この中間の人たちは、何も条件が満たされておらないから、気の毒だけれどもどうしようもないということでは困ると思うのです。現実にあなた方も知っておられるようにお困りなんですね。あの人たちは自分で運動しておりますよ。自分たちでどう救済をするかという、そういう運動をしております。
そういうことに私は目をおおうべきではないと思うのです。これはぜひ、そのあとの調査ができてからとか何とかということではなくて、基本調査ができれば基本調査に基づいて、そうして一つの立法措置を講じていただく。それに付加すべきものが出てくれば、そういう面で付加をしていく。
こういう考え方にぜひ立っていただきたいと思うのです。と同時に、いま申し上げたように、この条件を持っておる方と、それから生活保護の方と、あなたのおっしゃる中間の方と、これらの方々のやはり総合的な保障、こういうものをひとつぜひすみやかに考えていただきたいということを一応はっきりしておきます。
次の質問者もおられますので、一応私の質問はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/64
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065・佐々木義武
○佐々木(義)委員長代理 島本虎三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/65
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066・島本虎三
○島本委員 答弁側の方がそろっておりません。
そろっておりませんけれども、大臣のみに関する点はございません。いや、あり過ぎて、大臣のみでこれらは完全な答弁ができるというような問題はまずないのであります。したがって、この点では補佐陣営は十分だとは思いますけれども、そろってからやりたい、こう思います。しかし先ほどの山本委員からの引き続きの問題がありますから、その分等につきましては全部そろっておりますので、それから入りたいと思います。順序は若干不同になりますけれども、この点は委員長においてもう十分に配慮をしてもらいたい、こういうふうに思います。
では、大臣にひとつ聞きたいと思います。大臣にまず聞きたいと思いますのは、私は、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案、こういうのが出ておりまして、この全般についてまず聞いてみたいと思っていたのですが、全般について聞くためには、大臣の意向と同時に、各局部長あたりに対しても、一つずつ事務的にも聞いてみたかったのであります。そういうような点に順次入っていきますから、この点はひとつよろしく願いたいと思います。その中で、原爆被害者の援護の問題について、先ほどから山本委員から質問を展開されておったわけです。私もこの問題につきましてはふに落ちない点が若干ございますので、大臣に聞いてみたいと思います。
それは、毎回これは問題になるのですけれども、前大臣が国会で答弁したこと並びに附帯決議がつけられ、それに対してその趣旨を尊重して対処するということを必ず申し述べるわけであります。しかし、大臣がかわる場合には、こういうような附帯決議や、そういうような本会議に上程された決議文等につきましては、大臣はこれに対してどのような実施の意思を持っておありなのか、この点等についてまず承ってから、私の聞きたいことを順次聞いてまいりたいと思います。決議に対して、また附帯決議に対して、それに対処する大臣の決意を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/66
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067・坊秀男
○坊国務大臣 私が厚生大臣として就任いたしましたのは去年の十二月でございますが、佐藤さんがやはり総理大臣でありました。佐藤内閣の政策というものはそれで改定されたということでない。そこで、その前大臣のあとを襲いまして、厚生大臣に就任をいたしました。そうすると、個人としての私は前大臣とかわりましたけれども、政策におきましては、佐藤内閣の政策として当然踏襲をしていくべきものである。私が就任中に新たに何らかの構想に基づいてやるのならば、これは別でございますけれども、前大臣の時代に国会において附帯決議を受けたのだ、それだから私には関係がない、さようなことは毛頭考えておりません。国会の附帯決議は、これはその趣旨を体していくべきものであるというふうに考えておりまして、たとえ大臣がかわろうとも、前大臣がお約束をされた、あるいはその時代に国会で御注文、御要請をいただいたというものは、これはその御趣旨を体して尊重してまいらねばならぬものである、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/67
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068・島本虎三
○島本委員 昭和三十九年三月二十七日、これは参議院の本会議、それから四月の三日衆議院の本会議、この両方の本会議場で原爆被爆者援護強化に関する決議というようなのがはっきりなされておるわけでございます。そしてそれも満場一致で採択されているのであります。そしてその中には、いま大臣がいろいろ申されましたことでは少し手ぬるい。決議のほうはもっときびしく、その点は厚生省や関係大臣に対して、これははっきり申し上げておりますよ。こういうように思われる衆議院の決議文があるわけでございます。それは大臣の手元におありでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/68
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069・坊秀男
○坊国務大臣 その決議があったという事実は、私も承っておりますし、今日もここに資料として持ってまいっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/69
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070・島本虎三
○島本委員 その中の最後に、原爆被爆者に対する施策としては、なお十分とは認めがたい、したがって政府はすみやかにその援護措置を強化して、生活の安定につとむべきであるということをはっきり言ってあるのです。
そして、そのほかに大臣にもう一つお伺いしたいのは、これは昭和四十一年六月二十一日に衆議院の社会労働委員会において、戦傷病者戦没者遺族等援護法の改正に伴う附帯決議、これが成立しているのです。その中にも明確に、これは言っておるのですよ。この内容は大臣御存じでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/70
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071・坊秀男
○坊国務大臣 承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/71
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072・島本虎三
○島本委員 そのあとで、厚生省は当然被爆者実態調査の開始をしたというふうに私は存じておりますけれども、いままでの調査の結果を、私にもう一回大臣から明確に御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/72
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073・坊秀男
○坊国務大臣 経過の詳細につきましては、事務当局から説明いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/73
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074・実本博次
○実本政府委員 順序が逆になりますが、まず、いまお話しになりました五十一通常国会におきます援護法の改正の場合の、当委員会におきます附帯決議につきましては、先生の御存じのように、「原爆被爆地において、旧防空法等による国家要請により、防空等の業務に従事中死亡又は身体に障害をこうむった者に対し、昭和四十二年度を目途として具体的な援護措置を講ずること。なお、被爆地以外の地域についても必要な措置につき検討すること。」ということでございまして、被爆地におきます旧防空法によります防空従事者の人たちに限定いたしまして、この決議をいただいたわけでございまして、これは昭和四十二年度の予算で、すでに、原爆被爆地におきます犠牲者のうちの、防空従事者の関係の長崎医大の学生に対しまして、これが原爆被爆による死亡といたしましまして、この者に対しましては、文部省から行政措置として、その遺族に特別支出金を支給するという経費が予算で成立いたしましたわけでございます。
なお、原爆被爆の問題に関しまして、先ほどお示しの三十九年の附帯決議の問題につきましては、昭和四十年十一月に実施しました原爆被爆者実態調査について、本年の二月に、御存じのように基本調査の概要を発表いたしたわけでございます。この結果、被爆者の数、分布状況、性、年齢構造、被爆状況、健康診断の受診状況、就業状況、配偶関係、及び就職、結婚についての差別意識などの概要を、先ほど山本先生も明らかにされたような概要の発表を行なったわけでございますが、なおこれに加えまして、被爆者の健康面、それから生活面等の細部につきまして、現在なお調査の結果を整理いたしておりまして、これを今秋の初めごろまでに完全な実態調査の発表をいたしたい、かように考えております。
〔佐々木一義一委員長代理退席、斎藤(邦)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/74
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075・島本虎三
○島本委員 公衆衛生局長いま出席ですので、あらためてもう一回質問しますが、衆参両院のいわゆる原爆被爆者援護強化に関する決議案が、昭和三十九年三月二十七日に参議院、四月三日衆議院本会議で、それぞれ可決されたあとで 厚生省では、それぞれ基本調査、健康調査、生活調査、こういうような点を重点に九項目に分けて、それぞれ調査を実施しておるということの中間報告があったわけです。間もなくこの結論が出るという話であります。いままで被爆者数、被爆者の地域分布など九項目に分けてやったこういうような調査の結果が、現にまだ一つもできていないのか、できたのがあるのか、この状態はどうなっているのかということなんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/75
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076・中原龍之助
○中原政府委員 現在、この実態調査の集計につきましては、先ほど援護局長から答弁があったと思いますけれども、実態調査は中で三つに分かれております。一つは基本調査、それからもう一つは生活調査、それから健康調査、こう三つに分かれております。現在まで集計がある程度できて中間発表されたものが、いわゆる基本調査でございます。
その基本調査につきましてのいわゆる中間発表の概要は、調査した被爆者の数、性、年齢構造、被爆状況、健康診断の受診状況、就業の状況、就職就業についてのいわゆる差別、こういうものを受けたことがあるかないかというような本人の感じの問題、それから配偶の状況、それから婚姻について差別があったかどうかということについてのいわゆる基本調査の集計でございます。基本調査につきましても、なお若干この集計のしかたによりまして、たとえば世帯主の問題とか世帯員の構成の問題とか、いろいろ問題が出ております。
それから、次のいわゆる健康調査につきましては、これは被爆時の状況、あるいは被爆後の身体の状況、それから現在のいろいろの身体の状況、これは医学的に調べた上でその調査項目に従って集計しつつあるわけでございます。
それから、生活調査そのものにつきましては、これが一番調査項目も多く、それからこれの解析が、いろいろのものを組み合わせた解析をやるというようなことが多いために、健康調査とこの生活調査の面を現在おもに集計をやっている最中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/76
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077・島本虎三
○島本委員 そのうちの就業調査の点はどういうふうになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/77
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078・中原龍之助
○中原政府委員 就業調査につきましては、これは手帳を受けている被爆者につきまして、年齢補正をした就業率によりまして、全国一般の集団と比較してその就業状況を出しております。それによりますと、全国の一般の集団というものにくらべて、長崎、広島、これを合わせたものは、男においてはやや低く、女においては就業している者がやや高い、こういうような結果が出ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/78
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079・島本虎三
○島本委員 その生活の状態はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/79
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080・中原龍之助
○中原政府委員 このいわゆる生活の状況というのを組み合わせるのが、生活調査のほうに入っておるわけなんでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/80
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081・島本虎三
○島本委員 したがって、その状態はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/81
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082・中原龍之助
○中原政府委員 これは私どものほうにまだ統計が出ておりませんので、わかっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/82
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083・島本虎三
○島本委員 配偶関係の調査はどうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/83
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084・中原龍之助
○中原政府委員 配偶関係につきましては、男については、いわゆる有配偶率、未婚率、離別等の率、こういうものは、あまり全国の一般集団と差は認められませんでしたけれども、女につきましては、全国の一般集団に比較しますと、有配偶率というものがやや低く、それから未婚率、離別率というものがやや高いというような結果が出ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/84
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085・島本虎三
○島本委員 それで、もう一つ聞きたいのですが、結婚についてのいろいろな調査はどういうふうなことになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/85
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086・中原龍之助
○中原政府委員 結婚についての調査は、この差別につきましていろいろ差別を受けたかどうかというようなことにつきまして、本人の意識といいますか、そういう考え方といいますか、そういうものについて調査をしたわけでございまして、結婚につきまして差別を受けたことがあるという者が全体の二・六%でございます。これは特別手帳、こういうものを持っている者は三・三%。それから一般手帳を持っている者はこれより低く一・七%。それから手帳の交付を受けなくて新たにいろいろ申請した者がございますが、これはまた別グループで計算をいたしておりますが、これで見ますと、この者が一・五%。これもやはり低くなっております。現在の配偶関係で見ますと、有配偶あるいは死別のケースでは、差別を受けたことがありという者が二・四%あるいは一・一%でございますが、未婚及び離別のケース、これは若干高くなっておりまして四・一%、それから五・七%というふうになっております。それから年齢別に見ますと、若年層、特に未婚、離婚のケースが三十歳から三十九歳の年齢層でやや高くなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/86
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087・島本虎三
○島本委員 三十五歳から三十九歳までのデータがありましたら、それを発表願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/87
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088・中原龍之助
○中原政府委員 男子につきまして、被爆者の配偶関係、これをちょっと見ますと、やはり三十五歳から三十九歳では、被爆の方は未婚が四・〇%。それから全国の集団では未婚が三・八%。有配偶者の場合において、被爆者が九四・五%、一般が九四・九%。それから死別につきましては、被爆者〇・三%、一般集団〇・三%。離別が被爆者丁二%、一般集団一・一%でありますが、これが女になりますと、未婚が被爆者が七・五%、全国の集団が六・五%。有配偶は被爆者が八五・六%、全国一般集団が八七・五%。死別が被爆者が二・六%、一般が二・六%。それから離別が被爆者が四。四%、一般集団が三・五%、こういうふうになっております。それから差別を受けたと答えた者につきまして、これは三十五歳から三十九歳が四・七%でございます。そのうち未婚者が一一・四%、有配偶者が四・一%、死別者が五・三%、離別者が九・一%、このようになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/88
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089・島本虎三
○島本委員 私のほうの調査によりますと、三十五歳から三十九歳までの未婚の男子、被爆者で一二・一%となっているのです。それから同じく女子の被爆者で一一・一%差別を受けているということになっているのです。私のほうの調査が間違いであるのか、いまのあなたのほうの調査が正しいのか、これはまことにあまり違い過ぎるからこれじゃぐあいが悪いのですが、これはどれが正しいのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/89
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090・中原龍之助
○中原政府委員 ただいまいわゆる結婚の差別について、受けたことがあると答えたものにつきまして、ただいま私が申し上げましたのは、それを含めた総数について申し上げました。したがいまして、男の場合は、未婚の場合は一二・一%、先生のおっしゃった数字と同じでございます。、偶の場合四・六%、死別の場合一七・二%、離別の場合一三・〇%。女の場合になりますと、未婚の場合一一・一%、有配偶三・五%、死別四・〇%、離別七・九%、こういうふうになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/90
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091・島本虎三
○島本委員 そのとおりだと思います。低い率だけを抜き書きして読んだりしないように答弁してもらいたい。そういうふうになってみますと、そのように差別を受けている。パーセンテージが高いのです。それをわれわれのほうは知らないと思って、そういうふうなことをしないようにしてください。
それと同時に、大臣にお聞きしたいのですけれども、昭和四十一年の十一月十一日、前鈴木厚生大臣は、援護法制定のために、すみやかに原爆被爆者援護審議会を設置してほしい、こういうように被団協が言っておりますけれども、その要請に答えて、援護審議会設置の構想には賛成であり、四十二年度予算で運営できるように、官房長官、総理府総務長官らと話を進める。そうして橋本官房長官のほうからは、判明した事項から必要なものにつき予算措置を講ずる、このようにはっきり言ってあるのであります。いま答弁をちょうだいすると、中間報告といいながら、もうすでにだいぶ調査が結実している点が多々ある。これでは、大臣がさっき言ったように、前任者の言を受け継いで、誠意を持ってこれを実施するとするならば、もう調査が出ているのですから、その問題についてすぐ四十二年度から予算化するという、この言を当然生かすべきだと思うのです。これはどうですか、大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/91
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092・坊秀男
○坊国務大臣 前大臣がいろいろ約束されたことにつきましては、私といたしましては努力をすることは当然でございますけれども、 いまのおっしゃられた協議会ですか、審議会ですか、それにつきましては、附帯決議、そういったようなものにつきましては、はっきりと私はお聞きもいたしまして、すでに承知もいたしておりますが、いまのお示しになったことにつきましては、これは非常に私の手落ちかもしれませんけれども、まだそこまではっきりとはお聞きをいたしていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/92
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093・島本虎三
○島本委員 私がいままでいろいろと質疑を繰り返しておりました中で、いろいろな大臣もおりましたけれども、坊厚生大臣は誠実な人である、私はそういうふうに思っているのです。ほんとうに私は誠実さだけは十分買っていたんです。ですから、今後もその誠実さだけ持ってやったら、人間の持ち味として、その人間性において、他のいずれの大臣よりもまさるものである、私はこういうふうに信じてやまないわけなんです。そういうような点からして、実態の調査の結果の判明した事項から予算措置を講ずるのだ。これは、四月二十七日、日本原水爆被害者団体協議会が佐藤総理及び当時の橋本官房長官に面会し、陳情した。この人たちと会ったときの答弁なのであります。それだけではないのであって、これがただことばのやり取りであったら、私もそれだけにして大臣の意向だけを伺うことに重点を置くのですが、これはそうじゃないのです。それ以上に、援護審議会設置の構想に賛成であり、四十二年度予算で運営できるよう、官房長官、総理府の総務長官らと話を進める、こういうふうに言っておる。そのあとの総選挙で、これは世論調査じゃありませんが、われわれもよくやられたんですが、文書回答を求められているんです。その中で「一、昭和三十九年四月三日の衆議院本会議における決議、原爆被爆者援護強化に関する決議は、わが党は立法府の決議を尊重し、できるだけの線に沿って努力したい。二、審議会設置の構想についての鈴木前厚相の回答を尊重し、努力したい。三、援護措置についての前進に努力することはもちろんである。」この三つだけは文書による回答を自民党さんとしてもしてあるのです。ですから、これは前厚生大臣の答弁、それから橋本官房長官の答弁並びに文書による自民党からの回答にも、はっきりこれが載っておるわけであります。したがって、その中で、もうすでに先ほどからいろいろ私が聞きましたように、中間においてもう調査がまとまっておる点もいま発表されておるようにあるのです。そうなりましたら、当然四十二年度の予算からこれは始めるというのですから、もうすでにでき上がったものは途次予算化し、この援護に当たらなければならないものである、それがすなわちこの決議尊重の趣旨である、私はそういうように思うのですが、私の考えは違うでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/93
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094・坊秀男
○坊国務大臣 国会のたびたびの決議、それからいま御提示になりました党の御回答、そういったものは、私も党員でございますから、当然尊重しなければならぬと思います。そういうものであると私は思います。だから、そういうことを尊重いたしまして、できるだけ正確なる事実をつかまえまして、その事実の上に対策を立てていきたい。決してそういったようなものを軽視するということではございません。尊重するがゆえに事実をはっきりつかまえる。いま幾つも判明したこともあるじゃないか、こういうお話でございますが、それは先ほども事務当局が申し上げておりますとおり、それがそのことに関する最終の結論というわけではないようでございます。中間の報告ということでございますので、そういったような事項につきましても、できるだけすみやかに最終の答申を得たい。いま判明しておることが、あるいは最終の答申においても変化がないかもしれません。しかし、これになお変化がありまして、いろいろな数字その他データに変更があるかもしれないということも考えられますので、できるだけ精細にして正確なる事実を把握いたしまして、そしてその上に何らかのやるべき措置があるならばやっていきたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/94
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095・島本虎三
○島本委員 誠実なる大臣のその答弁をそのまま私は期待し、信用しておく。したがって、私のいま言うことは、一刻も急がなければならないのだということを言っておるわけなんであります。私の手元にいろいろ調査した資料、ことにこれは衆議院の社会労働委員会の調査室からの資料も届いておるのであります。それによって見ましても、この問題等につきましては、なかなか急がなければなりませんし、これは調査ができ次第当然やらなければならない、こういうような状態です。被爆者が、いまの状態では、完全な生活保障、医療保障、こういうような点が行なわれておらないことが、いろいろと陳情や運動としてあらわれているわけでありますから、こういうような方面に重点を置いて今後は対策を立てなければならない、こういうように思っておるのですが、この生活保障の関係と医療保障等の関係については、現在のところ大臣はどういうように考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/95
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096・坊秀男
○坊国務大臣 生活保護につきましては、これは生活保護に該当するという方々に対しましては生活保護をやっておる、それから医療につきましては、原爆医療法、現行法がございまして、それによりまして、いろいろな態様もございますけれども、治療を公費でやっておる、こういうことでございます。
なお、それで実態が足りないじゃないかというような結論が調査の結果出てきますれば、これに対しましては、必要なる措置はとっていかなければならない。結局、実態調査の最終段階におきまして何らかの措置をとらなければならないならば、これはとっていかなければならない。現段階におきましては、いま申し上げましたような制度のもとにおきまして、生活保護並びに医療の公費負担ということをやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/96
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097・島本虎三
○島本委員 そうして、現在行なっているところの原爆被害者の医療法ですか、こういうようなやり方によって、これで厚生省では満足だと考えておられるのですか。
〔斎藤(邦)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/97
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098・坊秀男
○坊国務大臣 医療援護の面につきましては、いま申し上げました原子爆弾被爆者の医療等に関する法律によりまして、十分の措置を講じておるところでございますが、今後も引き続きましてその充実強化につとめてまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/98
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099・島本虎三
○島本委員 この問題等については、大臣も知っておられるように、以前からこの問題については厚生省でもいろいろ配慮しておったように思っておるのです。しかし、具体的にあらわれてきた問題は、なかなか発展しておらないわけなんです。発展しておらないどころか、現在のような状態のままでは、被爆者援護の実を十分あげておらないということなんです。したがって、被爆者援護の実をあげるためにここにはっきりとした対策を講じなければならない。もうその調査もできつつある。そうして、できたならば、これははっきり対処しなければならないことは、私が言う必要もありません。その場合には、この被爆者の生活の保障の面と、それから医療の保障の面だけは、これは完全にしてやらなければならないものである。
現在の状態ではまことに不備である、こういうようなことを言っておるわけなんです。それで不備な状態ですから、これを直すにやぶさかであってはいけないのですけれども、これは今後調査できたならばおそらくは——いつごろできるのでしょうか、これは調査がまとまったならばすぐこれに対処してもらわなければいけないと思うのです。
この調査結果はいつまとまり、いつ発表なさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/99
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100・坊秀男
○坊国務大臣 調査の結果は大体ことしの秋ということに目途を置いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/100
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101・島本虎三
○島本委員 その場合には、いま言ったように、完全に被爆者の補償を考える。東京地裁においてのいろいろな判決も出ておるようですが、この場合には、国は被爆者に対して十分な救済策をとるべきである、こういうようなことまではっきり申し述べられてあるはずです。被爆者に対する十分な救済措置をとるべきであるというこの判決が出た以上、大臣もそれに対しては忠実に、実施してもらいたいし、しなければならぬのではないかと思うのです。この判決との関係で、大臣はどういうふうに対処なさろうとするお考えでしょうか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/101
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102・坊秀男
○坊国務大臣 実態調査の結果を、これはやはり調査の結果でございますから検討をする必要がございます。検討というのは、あとへ送る、あとへ送るというわけではないのです。調査は、これは一応検討いたしまして、その結果これは必要であるということにつきましては、必要なる措置はとることにやぶさかではありません。判決につきましても、その判決が出た以上は、その趣旨を当然尊重いたすべきものでございまして、その線と、それからよく実態について調査された結果につきまして検討いたしまして、そうして善処すべきものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/102
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103・島本虎三
○島本委員 私はその調査の結論を出した上で善処するように心から望んでやまないのです。そうしてその実態調査の中でも、ことに衆参両院の附帯決議を尊重されて、被爆者のほうが、非被爆者に比べて死亡率が高い、それと同時に貧しい。月収が一万五千円以下の階層の人が八〇%以上もいる。それから月収二万五千円以下の人がまた六〇%にもなっている。そうして、それは健康上は、完全にこれは不健康を訴えている。こういうような状態で、やはり原爆症と貧困の悪循環が行なわれているというこの実態にメスを入れて、大臣としては、この結果に基づいて今後の対策を完全に行なうのでなければならないと思うのです。
いま申しましたように、裁判の判決まで出ている問題でもありますから、それとあわせて、この対策を十分考えるのでなければならないと思っているのです。そういうような貧困からの救済、救貧という点からも、これはそのままにしておいてはいけない問題だと思うのです。これはただ、生活保護があるから法の適用を受ければいいのじゃないかというように、事務的に簡単にこの問題は考えてはいけません。もし、そういうようなことで考えるとするならば、政府の行なっている政策全体にひずみが出てくるのです。農地報償の問題でも、在外財産の問題でも、それに対しては手厚い態度をとっている。同じ国内で被爆した人には、生活保護だとか、現在の法律があるがままにこれを律しておくとすると、これは差別もはなはだしいことに相なってしまうわけなんです。こういうような点は、一つの戦後処理としても十分考えて対処しなければならぬと思っているのです。
大臣この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/103
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104・坊秀男
○坊国務大臣 原爆被爆者の中には普通の被爆者より貧乏なる者、豊かならざる者が非常に多い、原爆被爆者が普通の被爆者よりも激甚なる身体的障害を受けておる、そのために生活能力もない貧乏な人間が多い、こういうお話でございますが、それは現在のところ、たとえば、普通の被爆者百人の中で十人が非常に貧乏である、生活保護の対象になっておる。ところが原爆被爆者百人のうち、四十人も五十人も生活保護を受けなければならないような程度であるというようなことでございまするならは、当然——それはいまの生活保護でも私は十分だと思っておりませんよ。十分だとは思っておりませんけれども、当然普通の被爆者よりも原爆被爆者に生活保護に該当する方が多い、こういうわけでございまして、きわめて平板的に考えますれば、生活保護法が原爆被爆者の方に当然、自然にでございますが、厚くいっておるわけでございます。しかし実態調査の結果、なおそれでもいけないんだというような事態がキャッチされますならば、必要なる措置につきましては、これはその措置をとることにやぶさかではない、こういうことを申し上げたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/104
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105・島本虎三
○島本委員 今回の戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案の中で、いろいろ法律改正事項が出てきております。この出てきておるこういうような問題を総体的に見まして、大臣、これはやはりよくして喜ぶのは当然なんです。よくしてやることは大いにけっこうなんです。大臣は考え方として、こういうような軍人関係のほうはこのようによくするけれども、他のほうの年金や他の保険、保障の関係とあわせて何かお考えがあるんじゃないかと思いまするけれども、この社会保障全体に対する一環としてこれを考えるのか、これだけは別だと考えているのか、考え方をひとつお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/105
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106・坊秀男
○坊国務大臣 先ほどもお答えを申し上げましたが、戦争で直接強権によって、一つの国家的地位に縛られて犠牲を受けた分野の者と、それから社会保障の対象となる、ことに生活保護等の対象になる、あるいは老人、そういったものとは、そこに少しニュアンスの違いがあろうと思います。単純なると言うとあれですが、純然たる社会保障の対象、それから国家が縛ったためにそういうようなことになったというものに対する国家賠償というものとは、これは同じ平面の上において比較はできまいと思います。しかし、両方ともそれぞれの意義を持ったことでございます。だから、どちらに厚くどちらに薄くというようなことであってはならない。それぞれの立場、それぞれの意義、これをよく認識いたしまして、そしてそれにふさわしいような措置をとっていくということでなければならない。どうだから片方は厚くする、片方は薄くするということではならない。しかし、そのニュアンスにおきましては、純然たる社会保障と国家賠償というにおいなり意味なりを加味したものとは、これは違う。そこの点において違うと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/106
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107・島本虎三
○島本委員 そういうふうにして、戦争の被害を直接受け、命を失ったり、またけがをされたりした、そういうようなことに対しては、国家補償、これもまあ社会保障の一環としてそれを加味して行なうのだという意味のようです。そうですね。——それならは、原爆の被害も当然同じじゃありませんか。原爆の被害者はそれと別々に扱われなければならないという理由はないじゃありませんか。社会保障の一環として完全にやって、そのほかに国家賠償とは申しませんが、国家補償も一環に加えて、これを手厚く考えているのだ、こういうようなことだとすると、当然原爆の被害者も同じ被害者じゃございませんか。その方面も、やはり恩給を受けたり、現在法律案に出ているこの人たちの受けるものと同等以上に、これらも待遇をしてやらなければならないはずじゃございませんか。私はその点は、いままでの答弁の中で、やはり前段において聞いてきた原爆の被害者に対するいろいろな措置のほうが、あまりにも法律適用的であって、この援護法のほうに対しての考え方とは、同じ状態にありながらちょっと違うのじゃないか、こう考えられるのですが、大臣は、これはやはり違った処理で正しい、こういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/107
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108・坊秀男
○坊国務大臣 原爆被爆者が非常な激甚なる障害を受けた、精神的にも肉体的にも財産的にも非常に大きな障害を受けたということは、これは私もよくわかります。そのとおりでございます。ただ、いま私が申しました援護だ、何だというような制度でもってやっていくものは、これは国家の一つの強権的な制度でもって、たとえば軍人とかあるいは軍属とか、そういったようなもので、国家がこれを縛って、一つの国家的な地位をそれに付与をいたしまして、その強権的基盤による地位において、これはどこへ戦争に行けといわれたならば、国家の支配されることに抵抗ができない、断わることのできないといったような身分、地位というようなものを持った方々が犠牲になったのと、実質的には広島、長崎へ住まっておられた方は、これはいろいろな関係から——たとえば、ここへあした原爆が降ってくるということがわかっておっても、そこを避難することができなかったかもしれませんけれども、これは強権的な縛りをかけたということではない。その人の自由なる意思によって広島あるいは長崎におられた。国家との関係で、縛られるといったような法律上の地位におった人ではないというような点から考えますと——私は実質的な障害は認めます。非常に大きな障害を受けられたということは認めますけれども、さような点におきましては、障害の甚大さにおいて、これは非常にたいへんなことでございますが、ほかの被爆地における爆撃を受けた人、こういう方々と地位において、身分においては私は変わりはないと思います。ただしかし、ほかに比べて非常な大きな損傷を受けられたということは、これはもう比較にならぬほど甚大なものであるということはよくわかります。それで、とにかくそこへ縛りつけられておったということではないということは、島本さんも御了解願えるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/108
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109・島本虎三
○島本委員 大臣の考え方はまだよくはわかりませんけれども、大体わかりつつあります。それで、この中で私自身も心から理解しておきたいと思いますのは、これはいろいろと軍人恩給の関係もあるんじゃないかと思うんです。厚生省がいろいろやっている社会保険並びに公的年金、これと恩給局でやっておられます恩給の関係、こういうようなものはやはり国が行なっている一つの事業でございますから、こういうようなのは、横の連絡がなしに、かってに一つだけがぽんとやっているはずのものじゃなかろうと思うんです。私が聞いておるのは、やってもいいならば、やってもいい理由がちゃんとあるはずだと思います。これは社会保障的なものだとするならば、当然厚生省のほうでもそういうような点を見て、生活保護の問題から始まって、公的な年金やそのほかのいろいろな保険の問題等も考えて、これは必要によって上げるのが私は正しいと思うのです。今回の場合、いろいろ軍人恩給の問題等もあるようでありますけれども、それも聞いておきたいと思います。しかしながら、今回の場合は、上げるのはけっこうですが、社会保障の面、他のいろいろな公的な年金や保険の面との差というようなものは、これはあるのですか、ないのですか。これはやはりこの程度上げるパーセントによって、他のほうも全部上がっておりますかどうか、この点をひとつ恩給局の方もせっかくいらしておるようですから、大臣と大屋敷さんのほうの御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/109
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110・実本博次
○実本政府委員 いまの島本先生のお話で、遺族援護法に関しましても、やはり今回この年金の増額をやっておるわけでございますが、先生の御承知のごとく、援護法の対象になっておりますものは、軍人、軍属、準軍属といったような国家の直接身分がある者、あるいは国が総動員法等によって強権を発動して、そういう特別な権力関係において強制的に労働配置したといった方々、そういった方々に対しますいわば使用者責任としての、国家補償的な立場からの給付を差し上げるというたてまえになっておる法律でございまして、恩給の場合も、これは恩給局からあとからお話があると思いますが、恩給の場合も、そういった軍人、軍属、主として軍人に対します給付でございます。その点では援護法も恩給も対象者が大部分同じであるわけでございますが、とにかく、いずれにいたしましても、恩給の中には、そういう国家補償的な面で制度の運用を考えていかなければならない面と、それから普通の文官恩給あるいはいわゆる普通扶助料の関係、そういった国家公務員共済組合の中から移りました、普通の社会保障制度の中の年金制度というものの仕組みの中で考えていくべきものと、両方ダブってやっているわけでございまして、援護法と恩給法の中で共通いたしました部面は、先ほど申し上げましたように、国との直接の身分関係のありました軍人、軍属についての、国家補償的な面での要対象者を対象にしているわけでございます。
したがいまして今回の改正につきましては、お説のように、一般の社会保障制度におきます公的年金とのバランスというものも考えてやらなければならぬのじゃないかというお説、ごもっともなことでございますが、いまかりに遺族援護法によりまして給付いたしております年金の額と、それから社会保障制度の他の公的年金の中で、非常によく似通っておりますものとの金額の比較をしてみますと、非常によく似通ったものといたしまして、船員保険法の業務災害補償部門の年金に例をとってみますと、職務上による障害年金の一人当たりの平均額が、昭和四十年度において約十一万四千六百円というふうな額にのぼっております。
これに対しまして、援護法による障害年金の平均額が、同じく四十年度におきまして約十万八千二百円というふうな額になっております。また、船員保険の職務上の遺族年金一人当たりの平均額は、同じく昭和四十年度におきまして八万二千九百円というふうになっておりますが、援護法によります同じ遺族に対します年金の平均額は七万八千七百円というふうなことでございまして、両者の間にはあまり相違は見られない。どちらかと言いますと、公的年金制度の中での船員保険給付のほうが若干高いといったような実情でございます。これは単に一例を引いただけでございますが、国家補償といたしまして考えております援護法なり、あるいは恩給の中の戦争犠牲者に対します部分につきましては、現在それほど高いものでないというふうな一例がここに見られるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/110
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111・大屋敷行雄
○大屋敷説明員 恩給は、御承知のように退職当時の条件できまるわけでございまして、本質は、在職中の功績とかあるいは勤務年数、そういうものによって、国家によって、経済的能力を失ったという観点から補償するというもので今日までまいってきておるわけでございます。しかしながら、一般の年金にも言えることでございますが、特に戦後の経済条件とかいうような意味合いで、年金の実質は下がってまいりました。こういう場合にはある程度生活保障的な色彩が出てくるのは当然である、こういうような観点から、今日の恩給は、主体はあくまでも戦前の趣旨と変わらないのでございますが、やり方といたしましては、社会保障ではございませんが、若干社会保障的な色合いをつけた処遇の方法をとるということは事実でございます。
今回の恩給の増額でございますが、そのように恩給は本質的には社会保障と違っておりますので、過去の増額のルール、これもおのずから違っておるわけでございます。今回の増額は、御承知のように、昨年の法律で恩給法その他公的年金制度にもいわゆる調整規定というものが入ったのでございますが、その調整規定の検討というかね合いで、恩給審議会というものが昨年の五月に設けられております。今回の増額はその審議会の答申に基づきまして、一応調整規定は今後どういうような方法をとるかというのは今後の検討問題としまして、それまでに、恩給年額が従来のルールに従いますと非常に水準が低いのだ、そのような御判断のもとに、今回一般の場合は一〇%、年齢によりましては二〇%、二八・五%こういうような増額をいたしておるわけであります。恩給といたしましては、社会保障とは現在でも一線を画しております。これは先日新聞で見ましたが、社会保障制度審議会の答申案でございますが、これにもやはり一般の公的年金制度に何らかのプラスアルファというふうな考え方で進めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/111
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112・島本虎三
○島本委員 それでは、あんまり時間がたっても困りますので、最後に一つだけ言って本会議に臨みたいと思いますが、厚生大臣、いま言ったような趣旨からして、衆参両院の附帯決議を尊重して、この調査が済んだならば原爆被害者に対してはすみやかに措置をするということを私は期待しておきたいと思います。この点、このように期待し、これのはっきりした答弁を求めて私は終わりたいのですが、いま言ったようなことでいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/112
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113・坊秀男
○坊国務大臣 実態の調査をいたしまして、その答申を検討いたしまして、そうして必要であれば必要なる措置をとることにはやぶさかではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/113
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114・島本虎三
○島本委員 それでは、次回の機会にまた直ちにこの続きをやらしてもらいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/114
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115・川野芳滿
○川野委員長 次会は、来たる六日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時五十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01519670601/115
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