1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十九年五月十六日(木曜日)
午前十時四分開会
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委員の異動
五月十四日
辞任 補欠選任
吉武 恵市君 木島 義夫君
五月十五日
辞任 補欠選任
藤田 正明君 大竹平八郎君
鍋島 直紹君 山本 利壽君
木島 義夫君 増原 恵吉君
西村 尚治君 稲嶺 一郎君
木村 睦男君 長谷川 仁君
工藤 良平君 加藤シヅエ君
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出席者は左のとおり。
委員長 伊藤 五郎君
理 事
平島 敏夫君
八木 一郎君
田 英夫君
委 員
稲嶺 一郎君
杉原 荒太君
増原 恵吉君
山本 利壽君
西村 関一君
羽生 三七君
沢田 実君
星野 力君
国務大臣
外 務 大 臣 大平 正芳君
政府委員
外務大臣官房長 鹿取 泰衛君
外務省経済協力
局長 御巫 清尚君
外務省条約局外
務参事官 伊達 宗起君
外務省国際連合
局長 鈴木 文彦君
運輸省船員局長 住田 俊一君
労働政務次官 菅波 茂君
労働大臣官房長 北川 俊夫君
事務局側
常任委員会専門
員 服部比左治君
説明員
外務省アジア局
次長 中江 要介君
農林省農林経済
局国際部長 山田 嘉治君
通商産業省通商
政策局経済協力
部長 森山 信吾君
運輸省航空局飛
行場部管理課長 服部 経治君
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本日の会議に付した案件
○在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務
する外務公務員の給与に関する法律の一部を改
正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関
する条約の締結について承認を求めるの件(内
閣提出、衆議院送付)
○業務災害の場合における給付に関する条約(第
百二十一号)の締結について承認を求めるの件
(内閣提出、衆議院送付)
○国際協力事業団法案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/0
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001・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
去る十四日吉武恵市君が委員を辞任され、その補欠として木島義夫君が選任されました。また、昨十五日藤田正明君、鍋島直紹君、木島義夫君、木村睦男君、西村尚治君及び工藤良平君が委員を辞任され、その補欠として大竹平八郎君、山本利壽君、増原恵吉君、長谷川仁君、稲嶺一郎君及び加藤シヅエ君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/1
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002・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(衆議院送付)を議題といたします。
前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/2
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003・星野力
○星野力君 きょうは法案の審議ですから、私少なくとも三十分ぐらい質問させてもらえるかと思って準備してきたのですけれども、十分とか十五分とかいうことですから、ひとつ簡単にまとめて承りたいと思います。
昨年九月、日本とベトナム民主共和国の国交が樹立しまして、これは在給法についてですけれども、大使の交換、大使館の設置を取りきめながらすでに八カ月になろうとしておる今日、それらのことが実現しておりません。この法案には私たちも賛成でありますから、あすにでも成立するでありましょうけれども、この状態では、国交樹立一周年を迎えても大使館の設置はむずかしいのではないかと思われるのであります。日本政府としては、すみやかに大使を交換し、大使館を設置することに異存はないが、それに対応するベトナム側の体制が整わない。すなわち、原因はベトナム側にあると考えておられるようでありますが、もしそうだとしますならば、ベトナム側の原因はどこにあるのか、その点についてもお聞きしたいんですが、私は、両国の国交正常化を進めていく上で政治的な障害が取り除かれていないためではないかと考えるのであります。太平洋戦争における仏印進駐という名前の日本のインドシナ侵略によって人命財産の上で最も大きい犠牲をしいられたのは北ベトナム地域の民衆でありますが、それにもかかわらず、戦後三十年になろうとしておるのに、そして国交が樹立されたにもかかわらず、この問題が解決されようとしていないこと、これが政治的な障害の一つ。もう一つは、昨年一月締結されたベトナムに関するパリ協定に対する日本政府の態度、日本政府はパリ協定を尊重せよというベトナム側からすれば要求、この二点に両国の国交正常化を進めていく上での基本的な問題があると思うのでありますが、政府の見解はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/3
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004・中江要介
○説明員(中江要介君) 日本と北ベトナムとの間の外交関係の設定の合意ができましたときの経緯につきましては、すでに国会でも何度か明らかにされているところだと思うんですけれども、一口で端的に申し上げますと、無条件で外交関係の設定に合意を得た。で、その外交関係の設定についてのいろいろの準備のために、ラオスにありますわが国の大使館が同じくビエンチャンにあります北ベトナムの大使館との間で鋭意話し合いを続けておるわけでございますけれども、いまだに大使館設置、具体的な大使館の開設に至ってないという点は、私どもも非常に残念に思っているところですが、これは御承知のように、わがほうだけが設置して終わるという問題でなくて、相互に設置するという話になるわけでございますので、北ベトナム側の事情とわがほうの事情というものを、あらゆる角度から意見を交換しながら、具体的な設置へ、遅々としてではございますけれども、話し合いを進めているというのが現状でございまして、その場合に、いま先生御指摘の二つの問題点のうちの第一の点につきましては、冒頭に申し上げましたように、無条件で外交関係の設定に合意したという、その合意に達した経過の中で明らかにされておりますように、日本側としては法律的にはこれはベトナム共和国との間の戦争終結と、あるいは賠償の問題そういう問題で解決しているという立場でありますし、北ベトナム側には北ベトナム側の事情があったことは当然でございますけれども、そういう過去の始末についてこまかい法律的な立場をいつまでも議論するのでなくて、前向きに、日本とベトナムとの間の建設的な関係を持とうというところで最終的に合意に達した経緯がございまして、戦争中の日本の行為につきましての考え方は、これはともかくといたしましてベトナムに対する援助の問題というのは、戦争が終わってからあの地域で発生しました不幸な事態であるベトナム紛争から生ずるいろいろの困難というものを、これは南ベトナム、北ベトナムを問わず、インドシナ半島全体についてあるわけでございまして、このインドシナ半島全体の不幸な災害に対する日本のでき得る寄与、協力というものについては、これは差別なく、インドシナ半島全域にわたってこれを行なう用意があるということは、再三表明しておるところでございますので、この辺のところは、北ベトナム側でも事情は十分理解した上でのいまの話だと、こういうふうに思っております。
それから第二点のパリ協定に関連する部分は、これは先生の御指摘のとおり、パリ協定というのは四つの当事者以外の国もこれを尊重するようにということが訴えられておりまして、日本政府もいち早くパリ協定を尊重するという基本的な姿勢は明らかにしておりますし、その線に沿って早くベトナムにおける和平が定着することを望んでおるわけでございますけれども、最近の事象にも見られますように、なかなかパリ協定の筋書きどおりに進まないむずかしさというものが引き続きあるわけでございますけれども、日本政府としてはパリ協定を尊重して、その線でのベトナムの和平の定着を強く望むという点は変わりはないわけです。ただ、パリ協定を尊重するということと、ベトナムにおける政権なり政府なりに対するそれぞれの国の承認関係、あるいは国際法上の地位の評価のしかたというものとは、これは切り離して考えられるべきであるということは、これはパリ協定自身からも出てくる問題でございまして、日本政府は南ベトナムにおいてはベトナム共和国政府を一貫して正統政府と認めているという立場は、これは立場としてくずすわけにいきませんけれども、しかし、他方臨時革命政府というものがパリ協定の当事者であるという事実は、これは尊重していかなきゃならないという、そのワク内で対処していくという方針で臨んでいるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/4
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005・星野力
○星野力君 経済援助の問題について、北ベトナム側は多数国による共同援助は受けることに反対しておるようでありますが、日本政府としては、二国間援助という方式でも北に援助する方針かどうかという問題であります。
関連してお聞きしますが、昨年十月、世界銀行とアジア開発銀行の共同招請でインドシナに関する会議がパリで開かれました。インドシナに対する共同援助問題を討議するための十五カ国、四国際団体の国際会議であります。日本からは、ここにおいでになります御巫経済協力局長が団長で、外務、大蔵、通産、経済企画庁の各省庁から、たしか九人と思いますが、九人からなるところの参加代表団中最も多人数の代表団が参加されたわけであります。会議の文献を読んでみますと、対インドシナ援助計画、インドシナということばが随所に使われてはおりますが、主要な課題はベトナム共和国、すなわちサイゴン政権に対する国際援助機構を設置することを話し合うことにあったと思われるんであります。その辺のこともお聞きいたしたい。
それから続けて申し上げますが、アメリカはみずから署名したパリ協定で、ベトナム民主共和国の復興に経済的協力をすることを約束しながら、今日までそれを完全にボイコットしてきておる。他方では、サイゴン政権のための国際援助機構をつくり上げようとしておる。これではパリ協定は結ばれても、ベトナム問題の真の解決への前途はなお遠いと思うんであります。そういうアメリカの計画に、いま申しましたパリでの会議などに示されたように、アメリカのそういう計画の日本政府が最大の協力者になっておるということを、この会議の内容は明らかにしておると思うんでありますが、そういうパリ会議であります。会議の文献には、会議開催についての日本のイニシアチブを高く評価した個所があります。あの会議の実際の提唱者は日本政府ではなかったのか、これも質問でございます。
それからあの会議は今後も引き続いて開くような前回の決定になっておりますが、あの会議に今後も参加されるのか、まずその辺のことを簡単でよろしゅうございますから、お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/5
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006・御巫清尚
○政府委員(御巫清尚君) 若干誤解がございますようですので申し上げますが、昨年十月のパリの会議は非公式の会議でございまして、御指摘のように、アジア開発銀行と世界銀行とが主催いたしました会議でございます。したがいまして、この会議はあくまでも、普通ですと、こういう種類の会議では最後に共同発表のようなものが行なわれますが、非公式会議ということから何も発表も行なわれないで、ただもう一度さらに集まろうではないかということだけが結論で終わっておるということでございます。
それからこの会議の目的とするところは、御指摘のように、インドシナ全域にわたる国際的な援助の仕組みをどういうふうにするかということでございまして、そのインドシナという意味が、先生御指摘のように南ベトナムだけを意味するというのは全くの誤解でございます。
それからいま申し上げましたように、第二回目を続いて一月、二月ごろにもやろうというような計画をそのときは考えましたけれども、諸般の事情から、現在までのところ、第二回目の会議は開かれておりません。しかし、第二回目の会議を開くことが決定されまして、世界銀行及びアジア開発銀行からこういう会議に参加してほしいという要請がございました暁には、私どもその両銀行の加盟国でもございますし、インドシナ全域に対する国際的な援助の仕組みというものについての討議に参加することはきわめて有益であると存じておりますので、おそらく参加するという決定が行なわれることになると思われます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/6
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007・星野力
○星野力君 先ほど申しましたように、表面的にはインドシナ全域ということがうたわれておるんでありますが、その中でも、正直なものでして、当面の対象はインドシナ全体であるべきである、少なくとも四カ国のうちどれかの国がみずから除外されるのを望んでいることが明らかになるまではそうであるべきだ。言いかえれば、ベトナム民主共和国がそういう多数国の共同援助を拒否することはわかり切っているから、それは向こうが言うまではインドシナ全域ということばを使っておこうというような露骨な表現までこの会議の文献にはあらわれておるわけであります。この問題については、あらためてまたお聞きする機会があると思いますから、きょうは時間ないからそこでやめておきますけれども、もう一点、南ベトナム共和臨時革命政府に対する日本政府の態度の問題でありますが、先ほど次長のほうからお話ありました、臨時革命政府に対して日本政府が一気に外交関係を樹立するというようなことにはいかないにしましても、臨時革命政府と何らかの接触を持つということが必要ではないかと思うんであります。パリ協定は、先ほどのお話にもありますように、南に存在する二つの政権の一つとして臨時革命政府の権威を承認しておるのでありますから、パリ協定を尊重するというからには、その方向で対処することが必要であると思うんであります。たとえば、臨時革命政府の支配区域の人々の日本への入国を認めるなどということは、当然であると思うんでありますが、そういうお考えがあるかないか。先ほどのパリの国際会議では、臨時革命政府を全く黙殺、無視しておるわけでありまして、臨時革命政府ということばは、どこへも、一言も出てこない。この会議は、それ自体パリ会議に逆行しておる。パリ会議の尊重という方向には逆行しておる。その会議で日本が大きな役割りをになっておるというのでは、臨時革命政府はもちろんでありますし、ベトナム民主共和国にしましても、日本のそのような態度に好感を寄せる道理はこれはないと思うんであります。
そこで、時間の関係でもう一つ質問いたしますが、私たちも含めまして、国会の、全会派の国会議員の有志で、ベトナム民主共和国国会代表団及び南ベトナム代表団の招待歓迎実行委員会というのがつくられております。その実行委員会の招待で、ベトナム民主共和国の代表団が、もうごく近い時期に来日することになっております。実行委員会としましては、引き続いて、南の政治団体、南に国会まだできておりませんから、臨時革命政府地域におけるところの政治団体、南ベトナム解放民族戦線と民族民主平和勢力連合の代表団を招待したいと思っておりますが、その場合、これらの代表団の入国を認めるべきだと、こう思うんでありますが、それについての政府の方針、これもあわせてひとつお聞きしたいと思います。
質問それだけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/7
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008・中江要介
○説明員(中江要介君) ただいま御指摘の入国の問題についてお答え申し上げたいと思うんですが南ベトナムにあります臨時革命政府の関係者、あるいは臨時革命政府の支配地域から来る南ベトナムの人たちの入国問題について、日本政府がどういうふうに対処しているかということは、これも繰り返していままで説明があったと思いますが、日本政府としては、これを一がいに、すべて認めるとも、すべて認めないとも、そういう態度をきめているわけではなくて、その申請のありますごとに、その入国の問題のメリットに応じた、適当な措置をとっていくという方針で臨んでおるわけでございまして、最近、横浜で開かれましたアジア卓球大会で、臨時革命政府の地域から日本におもむくということで、入国申請のありましたピンポンチームに対して、入国許可を、渡航証明書による入国を認めたという経緯は、御承知のとおりですが、あの一つのケースをとってみましても、その入国してからのあとの受け入れ団体と、日本政府当局との間の了解に、必ずしも合致しなかったという遺憾な事柄があったりいたしまして、なかなかいまの段階では、クリヤーに、本件についての一般的な方針というものを打ち出すには至っておらないわけでございますけれども、基本的には、申し上げましたように、パリ協定の当事者であるという地位と、それから他方日本は、ベトナム共和国政府を南ベトナムにおける唯一の合法政府として認めてきているその立場と、そういうものを十分勘案いたしまして、そしてベトナム全域について、日本の考えるような和平が定着するように、つまり、言いかえますれば、パリ協定に基づく和平が定着することに貢献するような方向で検討していきたいということでございます。そういう一般的な方針から、いま具体的に、一応、将来の問題として御提案のございました、南ベトナムにおけるサイゴン政権以外の政治団体の代表の方の入国の問題はどうかという点でございますけれども、これも、したがいまして、その時点において、そういう具体的な入国申請がありました時点において、パリ協定に基づく和平の動きがどういうふうな状態にあるか、また、その言われます団体というものの性格、また、それの入国を認めることと、わが国がサイゴンの政権を正統政府と認めている立場との間で、どのような調整が可能なのか、可能でないのかということを、そのケース、ケースに応じまして、慎重に考えていきたいと、こういうこと以上に、いまの段階で、何らかのはっきりした態度というものは出せないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/8
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009・星野力
○星野力君 大臣のほうはございませんか——じゃあやむを得ません、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/9
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010・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/10
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011・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより討論に入ります。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/11
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012・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/12
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013・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/13
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014・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約の締結について承認を求めるの件
業務災害の場合における給付に関する条約の締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)
以上両件を便宜一括して議題といたします。
両件につきましては、去る五月九日の委員会におきまして、趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/14
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015・田英夫
○田英夫君 最初に、いわゆるモントリオール条約の関連から御質問をいたしますが、これは一九七一年の九月に、いわゆる国際民間航空機関の、いわゆるモントリオール会議という形ででき上がったわけですけれども、日本代表はこれに出席をしておりましたが、署名をしなかったといういきさつがあるわけですが、これがどういう理由だったのか、この点からまず伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/15
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016・伊達宗起
○政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。
御指摘のように、わが国はこの会議に参加しておりましたが、署名はいたさなかったわけでございます。と申しますのは、協定の内容上でありますが、第一条、つまり、この協定の対象となるその犯罪の定義と申しますか、内容につきまして、特に「業務中」と、「業務中の航空機」を破壊するというようなことも一つの犯罪とするという規定がございまして、この「業務中」という概念が、わが国の国内法にはございませんでしたし、その点について、どの程度国内法において手当てし得るかの確たる見通しが得なかったこともございまして、その当時、条約の会議自体におきまして、署名は差し控えたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/16
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017・田英夫
○田英夫君 あとのILOの問題でも御質問しようと思っていたんですけれども、その条約と国内法との関係という点で、国内法の整備がおくれているために、あるいは国内法が不備であるために、条約批准ができないという状況がかなりあるんではないかと思いますが、これもどうもその一つの例ではないか。いま伊達さん言われたとおり、国内法のほうに、そういう不備といいますか、あるいは整備がおくれている部分がある、あるいはこの条約の表現と、日本の国内法とがどうも一致しない部分があるということであったということは理解できますけれども、了解できますけれども、この条約自体の考え方からすれば、特に日本はハイジャック関係は非常にしばしば巻き込まれているわけですから、現にこのモントリオール条約の精神にある地上の問題については、羽田自体で起こっているわけですから、そういうことからすれば、早急に国内法を整備するというのはやるべきだと思うんですね。ところが、三年かかっているというあたりが、非常にどうもいまのお答えがあったにもかかわらず、納得できないんですが、その辺は一体どういうことなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/17
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018・伊達宗起
○政府委員(伊達宗起君) 条約と国内法との関係でございますが、条約は当然のことながら、国内法の改廃ないしは新しい法律を制定する必要のある条約につきましては、条約自体も国会の御承認を得るべきものとして、国会に御提出して承認を得ている次第でございますが、その条約に入るために、やはり国内法というものを条約の規定を実施できるものとして、国会の御承認を得ておかなければなりません。したがいまして、ILOの場合には、国内法を条約に入れるように整備いたしまして、そのあとで条約に入るというような手続を慣行としてとっております。その他の条約につきましては、多くの場合、その条約の御承認を仰ぐ同一の国会に国内法の改正案を出しまして、同時に御承認を得るというふうにしてございます。
このモントリオール条約につきましては、同時に今国会に運輸省の関係法律といたしまして法律案が出ております。時間が、批准がおくれるということでございますが、国内法の整備というものが、なかなかそう、やはり量刑の問題等もございまして、国内での検討に若干時間がかかったということは事実でございます。確かに、モントリオール条約が作成されましてから三年近くたっているわけでございますけれども、モントリオール条約の発効いたしましたのは、去年の一月の末でございますので、確かにおくれていることはおくれているんでございますが、それほどこの条約への参加がおくれているということではないというふうに御了解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/18
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019・田英夫
○田英夫君 いまこの条約、まあ今度日本が加わることになるわけですが、加入状況はどの程度になっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/19
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020・伊達宗起
○政府委員(伊達宗起君) この条約の加入状況は現在五十一カ国が加入いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/20
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021・田英夫
○田英夫君 その加入国の色分けといいますか、たとえば西ヨーロッパの国が多いとか、一番問題なのは、ハイジャックということになれば、すぐアラブの国ということが思い浮かぶわけですが、アラブの国の状況はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/21
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022・伊達宗起
○政府委員(伊達宗起君) アラブの国でこのモントリオール条約に入っておりますのは、現在のところ、イラン、ジョルダン、リビアと三カ国でございます。署名した国は、エジプト、ジョルダン、イエメンの諸国が署名いたしてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/22
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023・田英夫
○田英夫君 大体その署名をしているということからすれば、まあ正式に加入する、批准するということは見通しとしてあるわけでしょうけれども、一番ハイジャック問題で関連の深いアラブ諸国が非常に熱心であるというふうには思えないのですが、その辺の背景は何か理由がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/23
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024・伊達宗起
○政府委員(伊達宗起君) アラブ諸国がこの条約に入ることに熱心でないかどうか、実は私どもとしてその点判断し得るような情報もございませんし、申し上げる立場にもないわけでございますけれども、ただいまの状況では、エジプトは現在批准のための国内手続をとっているという状況にございます。また、イラクでは本条約への加入はすでに決定して、同様に国内手続を進行中でございまして、ここ数カ月中に加入手続を完了するであろうということでございます。レバノンでも国会審議中でございまして、一カ月くらいの間に批准をしたいということを、レバノンの当局は述べております。アルジェリア、チュニジア等については、加入の意向はまだ明らかでございません。大体賛成の立場はとってございますけれども、近い将来において加入が実現するとかあるいは国内手続を進行中であるということではないようでございます。クエートは、昨年来、東京、ヘーグをも含めまして、この三条約の批准を国会に求めているわけでございますが、いずれにいたしましても、この東京、ヘーグの最初の二つの条約のほうを先に入りたいというような方向で国内手続をとっておるようでございます。そのような状況であると御承知いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/24
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025・田英夫
○田英夫君 もう一つ、われわれにとって記憶が非常に生々しいのは「よど号」の問題ですから、北朝鮮のことが気になるわけですが、これは加わっていないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/25
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026・伊達宗起
○政府委員(伊達宗起君) 北朝鮮はこの条約には入っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/26
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027・田英夫
○田英夫君 これは見通しがどうなのか、特に日本と北朝鮮の状況は現在のような状況になっているということが、「よど号」のような事件が起きる遠因でもあるし、また起きたときに非常に困難な事態を招いていると思うので、この点は根本はむしろ別のところにあると思いますけれども、この条約に関する限りでも、北朝鮮が加わるというような見通しは全く持てないのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/27
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028・伊達宗起
○政府委員(伊達宗起君) 全く持てないかどうかについて、私もよくつまびらかにしておりませんけれども、現在のところ、私どもの承知しておりますところでは、北朝鮮がこの条約に興味を示したとか、ないしはこれに加入するために具体的な態度を示したというようなことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/28
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029・田英夫
○田英夫君 もう一つの問題は、このハイジャックが起きたときに犯人に対する着陸地点の国の態度ですね、これはまあ非常に問題になるわけですが、いわゆる制裁条約というものが考えられているということですが、この点に関連して日本の政府の外務省のお考えはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/29
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030・伊達宗起
○政府委員(伊達宗起君) 御指摘のように、へーグ、モントリオール条約につきまして、これらの条約上の義務を怠ったような、犯人を処罰しなかったり、あるいは犯人の引き渡しをしなかったような国に対して制裁を加えて、両条約の有効性を担保しようという思想がございまして、昨年夏ローマで会議が開かれたわけでございます。ただ御承知のように、遺憾ながらいろいろとこの制裁の内容、程度それから制裁者をだれにするかというようなことにつきまして、各国まちまちの意見が出まして、その間の調整には失敗して、結局決議を採択いたしまして、なるべく多くの国がこれらの条約に入れという決議をいたしまして、終わったという状況でございます。この間におきまして、わが国の態度は、やはり、ヘーグ条約、モントリオール条約というものの実効性を確立することを何か国際間で考えることは非常に意義のあることであるということで、ひとつこれらの義務履行を担保するような独立の条約をつくったらどうであるかということで、この会議にも参加したわけでございますが、先ほども御説明申し上げましたように、いろいろと各国ばらばらの意見が出て、結局まとまるに至らなかったという実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/30
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031・田英夫
○田英夫君 もう一つ、具体的な問題として、昨年の夏に日航機がアムステルダム離陸後に乗っ取られた事件があって、これが結局、ほうぼう回ったあげくに、ベンガジの空港で爆破されたという事件があったわけですが、リビアの政府が犯人をその後どういうふうに取り扱っているのか、いまの問題に関連をして、外務省接触しておられると思いますが、その後の状況はどうなっているか、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/31
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032・伊達宗起
○政府委員(伊達宗起君) 御指摘の事件につきましては、事件直後、外務省といたしましては、もしリビア側において犯罪人を処罰せず、ないしは犯罪人に対しての裁判権を行使した後において、日本国政府といたしましては、適当な措置を講じたいということを申し入れた経緯がございます。リビア側の当時の反応といたしましては、いま申し上げました日本側の申し入れをする以前に、すでに向こうの情報文化大臣が犯人を処罰するということを明言しておりますし、それからその後におきましても、向こうの政府当局の話では、犯人を処罰することは確実であるというような言明をいたしております。ただ、先ほど申し上げました日本側の申し入れは、これは犯罪人引き渡しを申し入れたわけではございませんで、その予備的な日本政府の意向の表明というだけに終わっているわけでございます。犯人の処罰に関しまして、その後の情報は、実は私ども入手いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/32
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033・田英夫
○田英夫君 こういう条約ができることは大きな前進であり、けっこうですけれども、これだけではとうてい、この一連の条約ができても、ハイジャックが防止できるかどうかということは非常に疑問だと思います。そこで、運輸省の方もおいでになっていると思いますが、この日本の空港の、何といいますか、検査状況ですね。私も実は全国、あるいは外国にもしばしば出かける関係で、空港で遭遇をするのですけれども、実は、率直に言ってきわめて不愉快ですね、いまの状況は。何かくふうがちょっと足りないと思います。たとえばチューリヒあたりですと、個室ができていて、電話ボックスみたいなものがずらっと並んでいて、そこを通らないと待合室に入れない仕組みになっていて、そこで公衆の面前でなくて、男女別にボデータッチをやったり、荷物を調べるという一種の配慮があると思うんですよ。ところが日本の場合は、何か若い警備会社の人間が、公衆の面前でやっている。先日も私羽田通ったらなぜか私が通過したらブザーがなったんですね。別に身に寸鉄を帯びていたわけじゃないんですけれども。そうするとそのガードマンが飛んで来て身体検査をするというから拒否しましたけれども、私なぜ拒否したかといえば、警察官はその権限を持っているけれども、法律的には私はそれを拒否できると思っておりますから、いまのガードマンならば。それで拒否をしたら向こうは引き下がりました。そういうことでいいのかどうか問題ですし、配慮が足りないと思うんですね。で、配慮し過ぎればこれは何のために検査をしているかわからない。この辺はいまのでいいと思っておられるのか、あるいは改善の余地があるのかどうか、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/33
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034・服部経治
○説明員(服部経治君) たいへん面目のない御指摘をいただきまして恐縮をいたしております。もともとこのような乗客の方々を対象といたしました、実際からだに触れたりする方法で行なわれる検査につきまして、それを受けられる側の方がそれを非常に不愉快にお感じになる、そういうことは私どもも十分承知はいたしております。したがいまして、実際の検査に当たっておりますガードマンその他航空会社の職員等に対しましては、日ごろから十分そういうことのないように、できるだけ丁寧な配慮、検査を行なうように指導はいたしておるつもりでございますが、間々行き違いがございますことは、私どもとしても今後とも十分注意をしていかなければならない点であるというふうに考えております。
それから、いま御指摘のございました検査を拒否できるかどうかという点ですが、これは非常に突き詰めて申しますとむずかしい問題を含んでおるわけでございますが、現在のところ、私どもは航空会社の運送約款の中に、そういったハイジャック等の不法行為を防止するために必要な場合は、持ち込み手荷物、あるいは所持品の検査をすることがあるということを明記いたしまして、同時に手荷物の検査を拒否された場合には、その手荷物の機内持ち込みをお断わりすることがある、あるいは身体の検査を拒否された場合には、旅客の搭乗をお断わりすることがあるというような運送約款を各航空会社が設けまして、それを根拠にいたしまして、実際の検査をやっておるような次第でございます。
それから、なお今後の検査につきましてもっと改善すべき余地はないか、もっといいくふうはないかという点の御指摘につきましては、今後とも私ども至らないところはくふうをいたしまして、努力をしてまいりたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/34
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035・田英夫
○田英夫君 いまの点は別の委員会でも機会がありましたらぜひいろいろお聞きをしたいと思います。現状は私自身の経験でもきわめて不満足だと思いますし、また、人権上の問題からも非常に問題があると、それから外国の実例などももっとお調べになったほうがいいのじゃないかと思いますが、時間がありませんから、次のILOの問題に移りたいと思います。
労働政務次官おいでいただいておりますので、まずこのILO条約の批准という問題についての政府の根本的な態度を伺いたいのですけれども、実は例の問題になりました八十七号条約、たいへん大きな騒ぎになりましたが、あれ以来、どうもILO関係の批准ということについては非常に消極的なのではないかと、こういう感じがしてしかたがないのですね。さっき関係国内法との問題をちょっと触れましたけれども、たとえば今度のモントリオール条約の場合には、伊達さんから言われたように、条約を外務委員会で批准を求めると同時に、同じ国会で関係国内法を提出されて、並行的に体制をでき上がらせていくということになっているんですが、なぜかILOの問題だけは、関係国内法のほうを整備しないと条約を批准しない、こういう形になっていると思います。この点は何か原因があるのか、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/35
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036・菅波茂
○政府委員(菅波茂君) 労働問題の分野においては、ILOの条約は一般的な原則を定めておるものが多いわけでございまして、したがって、国内法令上は技術的な細目の規定も非常に多いわけでございまして、条約と国内法との関係、必ずしも明確でない部面も多いわけでございます。したがって、ILO条約の場合には、条約の順守に支障を来たさないようにするためにも、労働行政を円滑に推進するという見地に立って、条約の締結にあたっては、やっぱり事前に国内法令中抵触するような部分の改廃、あるいは新たな立法措置をするというのが妥当であるとまあ考えておるわけでございます。ちなみに、田先生も御承知のとおり、政府は昭和二十八年の十二月の閣議で、ILO条約の批准に関しては、立法を要する場合には、批准前に立法の措置を講じてこれにつき国会の議決を求めるというふうな慣例がございまして、それに従っておるわけでございます。しかしながらやはりできるだけILOの加盟国でもあります、まして理事国でもありますから、できるだけ積極的にその方向にやはり進んでいくのが当然であろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/36
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037・田英夫
○田英夫君 いまおっしゃった昭和二十八年の閣議決定そのものが実は、私らの立場からすると問題があるんじゃないか。つまりこのILO関係の問題は、労働組合が対象であり、労働者が対象であるという状況の中でいろいろ問題がある。特に、自民党政府の立場からは問題があると。そこでそういう閣議決定をされたんだろうと思うんですけれども、そこに非常に問題があると思いますね。で、むしろ現行の日本の国内法、政府・自民党が整備されている国内法が国際的な労働関係の通念と違っていると、そういうものが多いから、まあ非常に手直しをしなければならない。ほかの一般的な条約の場合ですと、関係国内法はこれは条約と並行してその精神にのっとったものがつくりやすいけれども、なぜか労働問題については、自民党側のお立場から国際通念と違った法律をつくってしまっていると、ここに問題があるんじゃないかと、私ははっきりそう思うわけですが、この点について政府はどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/37
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038・北川俊夫
○政府委員(北川俊夫君) 田先生御指摘のように、ILO、いわゆる労働問題に関しましては、労使の意見の対立、あるいは非常に微妙なものの考え方の違いというものが、いままでの条約批准に反映をしていないということは言えないと思います。ただ、いま政務次官が御答弁いたしましたように、ILOの条約の中には、ものによって原則のみを述べておるものもございますが、きょう御批准の承認の審議をお願いをしておりますたとえば百二十一号条約等につきましては、業務災害につきましてどの程度の額を補償すべきか、あるいは対象とすべき職業病の名前はこういうものをというような、別表でたいへん詳しいものをあげておるものが多うございます。したがいまして、労働関係の法令との突き合わせという点では、一般の条約国内法と違いまして、専門的、技術的な検討を要するという点は特質性としてやむを得ないんではないか、そういう観点で、私たちは条約の批准にあたりましては、やはり国内法に詳細にわたって不備のないような検討をいたして批准をするという従来の方針をとらざるを得ないと思います。ただ、その方針のゆえに、ILOの条約について消極的である、あるいは非常におそいではないかという御批判につきましては、このところ私たちも十分反省をいたしておりまして、この数年の間、毎年国会に二件ないしは三件、あるいはことしは一件でございますけれども、条約の批准案件の審議をお願いをするという態度をとっておりますので、この点御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/38
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039・田英夫
○田英夫君 そういうお答えにもかかわらず、たとえば今度の公務員のスト権の問題などは最も明快な実例だと思います。これはもう御説明するまでもなく、ILOの空気というものははっきりしている。ところが、日本の国内法では、公務員のスト権を禁止して、それをたてに日教組の大弾圧というようなことをいまやっているわけですね。こういうところに問題がある。みずから悪いものをつくっておいて、国際通念からはずれたものをつくっておいて、しかもそれを国際的に指摘されていながら、この悪法を振りかざして弾圧を加えるということは非常に問題があると思うのです。そういうことを繰り返していって、一体結果としてどういうことになるのか、ただ日本の立場を悪くするだけじゃないかという気がしてしかたがないのですね。そういう流れの中での、このILOの関係条約の批准のおくれということで、いままさに官房長おっしゃったように、毎国会一件か二件というような形で、もうたまりにたまっているわけですよ。この問題は非常に大きな問題ですから、もっと根本的に議論をしていかなければならないと思いますし、この場で議論してすぐに意見が一致するとも思いません。しかし、一つ伺っておきたいのは、二十八年の閣議決定というものを私が申し上げたような考え方もあるわけで、この際これを取り消すということですね、こういうお考えはないかどうか、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/39
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040・北川俊夫
○政府委員(北川俊夫君) ILOの条約批准の審議をお願いいたします際に、常にその点は御指摘をいただいておるところでございますが、先ほど御説明を申しましたように、労働関係の基準に関して詳細な内容を含んでおるILOの条約批准にあたりましては、二十八年の閣議決定の趣旨はわれわれは妥当ではないかと考えております。ただそれからかなりの年月を経ておりますし、また、労働関係につきましては国際的に先生おっしゃるような事情の変化もございますので、今後検討をさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/40
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041・田英夫
○田英夫君 あと具体的に伺いたいんですが、ILOの百二号条約ですね、これはずいぶん以前にILO総会で採択されているわけで、社会保障の最低基準に関する条約。で、たしか九つの条件について三つですか満たされればいいと、こういうことだと思いますが、これなどは、日本の国内法と照らしてすでにその最低の条件は満たされているんじゃないかと思いますが、この問題についてはどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/41
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042・菅波茂
○政府委員(菅波茂君) いま田先生のおっしゃったとおりでありまして、ILOの百二号という条約については、疾病とかあるいは失業、老齢及び業務災害の各部門において条約の基準に適合しており、批准可能とは考えておりますけれども、社会保障全般にかかわる実は問題でもありますので、ただいま厚生省とも協議の上、批准の方向に検討を進めてまいりたいと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/42
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043・田英夫
○田英夫君 これなどはぜひ、さっき私が申し上げたような意味からも、次の国会にはぜひお出しいただきたい。
もう一つ、百十一号条約、これはつまり差別待遇をしない、雇用及び職業についての差別待遇をしないという目的の条約だと思いますが、これはもともと日本がかつてベルサイユ平和条約時代に主張したのがもとだといわれているそうで、これなども、いわゆる人種差別ということに対して日本政府が積極的に取り組んでいるということを示す意味からも、いまアパルトヘイトなんということが非常に問題になっているときに、特に南アフリカヘの日本の経済進出ということに関連をして日本政府に対する批判がアフリカ諸国からある、こういう中でこの条約を批准するということは、非常に外交的にも意義があると思うんですが、この点、労働省並びに外務省のほうのお考えも伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/43
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044・北川俊夫
○政府委員(北川俊夫君) 百十一号条約につきましては、いま御指摘のように、人種とか、あるいは皮膚の色、それから国民的出身、社会的出身等々を理由として雇用、職業の差別待遇をしないこういう内容のものでございます。わが国においては、御承知のようにそういうことでの差別がございませんし、法令においてもこれに反するようなことはございませんので、おおむね条約の内容は満たしておると思います。ただ、皮膚の色とかあるいは国民的出身、そういうものにつきまして法令上明記する必要があるのかどうか、その辺のことを従来からILOと詰めを行なっておりますが、まだ明確な答えを得ておりませんので、いまその点の詰めを行ないまして、先生のおっしゃるように、国際的事情から百十一号条約の批准ということはたいへん望ましいと、こう考えておりますので、前向きに検討いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/44
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045・鈴木文彦
○政府委員(鈴木文彦君) ただいま御指摘ございました点につきましては、いま労働省のほうから御説明ありましたような点も加えまして、特にその人権関係の条約、できるだけ早く日本も参加すべきであるというたてまえから検討を続けておりますが、具体的に御指摘のありましたこの百十一号条約につきましても、関係省との間にできるだけ早く国会の御承認を仰ぐ手続を進めるようにということで、目下鋭意努力いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/45
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046・田英夫
○田英夫君 時間がありませんが、もう一つ具体的な条約について伺いたいんですが、六十九号ですか、船舶の料理人の条約ですね。これも日本では使用者側も、労働者側といいますか、料理人の側も、きわめて積極的であるというふうに聞いているんですけれども、この問題、これをやはり早く批准すべきではないか、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/46
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047・住田俊一
○政府委員(住田俊一君) お答え申し上げます。
この六十九号条約というのは、先生ただいま御指摘のように、船舶調理人の資格証明書の有すること、受けること、それから資格付与、こういった要件について定めた条約でございます。これによりまして、船内におきまする食生活の向上なりあるいは司厨関係者の地位、あるいは資質の向上こういったことを目的とした条約でございます。ちなみに、この採択は一九四六年に付されまして、発効は一九五三年でございまして、批准国数は二十カ国でございます。で、これにつきましては、運輸省といたしましても、非常にこの条約の重要性にかんがみまして、鋭意関係方面と検討を加えておったところでございまして、特に問題点は次の点でございまして、この条約の適用船舶をどういった点に限るかということが第一点、それから年齢をどうするかということ、それから海上の勤務期間をどうするか、こういった三つの点がポイントでございまして、これにつきましては、運輸省といたしましても、従来この司厨部員に関しまする詳細な調査を行なってまいりました。また、これにつきまして現在集計中でございます。またあわせまして、船主関係と労使が一体になりまして、この問題についての検討を加えております。そういうことで、極力早い機会にこの条約について批准にもっていきたいと、こういうことで考えておりまして、この点につきましては労働省あるいは関係機関と密接な連絡をとりまして、極力先生の御指摘のように早い機会に批准にもっていきたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/47
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048・田英夫
○田英夫君 いまの料理人の問題も、関係国内法は局長のお答えでもあんまり問題がないと思いますが、国内法のほうはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/48
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049・住田俊一
○政府委員(住田俊一君) お答え申し上げます。
現在これにつきましては、国内法令の整理を前提として検討しておるわけでございますが、特に法令につきましては省令の改正ということを前提にいたしまして、部内はもとより、関係機関とも検討している段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/49
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050・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 他に御発言もなければ、両件に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/50
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051・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより両件の討論に入ります。——別に御発言もないようですから、これより順次採決に入ります。
まず、民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約の締結について承認を求めるの件を問題に供します。
本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/51
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052・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
次に、業務災害の場合における給付に関する条約(第百二十一号)の締結について承認を求めるの件を問題に供します。
本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/52
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053・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/53
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054・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/54
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055・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 国際協力事業団法案(衆議院送付)を議題といたします。
本案につきましては、前回の委員会におきまして趣旨説明及び補足説明を聴取しておりますのでこれより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/55
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056・西村関一
○西村関一君 私は、経済協力事業団法案の質疑に入ります前に、わが国の経済協力の基本姿勢、基本方針、そういうものについてまず伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/56
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057・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) どこの国もそうでございますけれども、とりわけ、わが国の平和と繁栄が世界の平和と繁栄に深くかかわりを持っておる、最も深くかかわりを持っておる国の一つだと思います。したがいまして、われわれがかち得た繁栄はこれをひとり占めすることなく、発展途上国に分かち合うということはわが国の国際的義務でもございまするし、世界の平和に寄与するゆえんであると思うのでありまして、国際的義務として経済協力を今日まで推進してまいり、今後も推進していかなければならぬと考えております。その場合の方針といたしましては、わが国の経済的利益に奉仕させる、あるいはわが国の経済的支配を確立するというようなことであってはいけないわけでございまして、援助を受け入れる相手国のアスピレーション、計画、そういうものを十分理解して、それに対しましてわが国が資金的にも技術的にもどのように協力するかということでなければならぬと考えておるわけでございます。で、その場合、第三の問題といたしまして、わが国の経済協力はそれじゃどの程度までやりますと、一応の評価を世界的に受けられるかという目安でございますが、私どもとしては、先進諸国、わが国もそれに仲間入りをいたしておりますけれども、先進諸国の平均、先進諸国並みのところまでは持っていくべきでないかと思っておるのであります。で、その場合、わが国の場合は、量的には先進諸国並みのところへ持ってきて——到達してまいっております。GNPに対する比率から申しまして一%に近くなってきておるわけでございまして、それ自身は誇るべきことであると思うんでございます。しかし、内容に立ち入ってみますと、まず第一に政府援助が少ないということでございます。たいへん先進国に比べましてその点見劣りがするわけでございます。政府援助が少ないということは、次に申し上げる援助条件が先進国に比べまして全体としてきびしいということにも通ずるわけでございますが、質的に申しまして、援助の条件が先進国に比べて見劣りがするということでございますので、当面、政府援助をふやし、あるいは条件の緩和、質的改善をはかるということに力点を置いていかなければならぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/57
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058・西村関一
○西村関一君 わが国の利益を優先するんじゃなくって、相手国のニードを中心とした協力である、またしたがって、もとより相手国を支配するという意図が隠されておるというようなことは絶対にない、そういうことではないんだというお話でございますが、また、その経済協力援助の質も量も相当増加しておる、また、その内容もよくなっておるというのでありますのに、なぜ開発途上国における対日感情、特に東南アジア諸国におけるところの対日感情が必ずしもよくないか、むしろ各地において非常に悪化しておる、その状態がいまだに消滅してないというところは一体どういうところにあるんでしょうか。その点に対する政府の反省の上に立って、この事業団の審議を国会に求めておられるというふうに理解するんです。その点いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/58
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059・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) わが国の経済援助というのは、いま御指摘になりましたわが国に対する受け入れ国側の評価ということとの関連でございますが、経済援助ばかりでなく、わが国の経済進出、そういうものも一緒になりまして、対日感情、対日評価が出てきておるわけでございまして、経済援助だけを取り出しまして、それに対する反響はどうかということになりますと、私が先ほど御答弁申し上げましたような点について十分気をつけてまいりますならば、その点に関する限りにおきましては、さほど大きな批判、攻撃にさらされるというようなことは私はないものと思うのであります。しかし、わが国は自由体制をとっておる国でございまして、わが国の経済的進出が民間人の手で、民間のイニシアチブにおきまして、先方の民間人と話し合って進められておるわけでございまして、その限りにおきまして、数々の問題が出ておることは御指摘のとおりでございます。で、これにつきましては、そういうことを通じまして、その国のGNPもふえてまいりますし、雇用も増大してまいりまするし、経済の自立も進むわけでございますからマクロに見ますと、その政府としても、国民といたしましても、冷静に見るとそれなりの評価はしていただけると思うのでございます。しかし、その経済進出に伴う成果を直接身に受ける方は限られておるわけでございまして、多くの国が多くの失業者を擁しておるという場合におきまして、一部の者が利益を受けておることに対して、すなおにそれを評価されるということが必ずしも期待できない場合が私は多いのではないかと思っております。同時に、その場合わが国として反省せなならぬことは、それぞれの国はそれぞれ個性的に発展を遂げ、固有の伝統を持っておる国でございますので、そういう社会に入っていく場合におきまして、その社会との調和ある融和をはかってまいらなければならぬわけでございまするけれども、往々にして日本人というのは閉鎖的でございまするし、善意ではございますけれども独善的であるところもございまするし、先方の商慣習に必ずしもなじまないということが往々にして起きましていろいろな摩擦が起こっておることでございます。したがって、そのあたりは、先生の言われるように、われわれのほうで十分反省もし、十分の用意をもってかかっていかなければならぬ部面じゃないかと思っております。しかし総体といたしまして、われわれの経済援助とかあるいはわれわれの経済進出に対しまして、批判がない状態が期待できるかというと、私はできないと思うのでございます。つまり経済的プレゼンス自体がもう批判の対象になるわけでございまして、ちょうどわが国におきましてアメリカという国がいつもプレゼンス自体が問題になるようなものでございまして、非常にエモーショナリィに問題になるのでございます。そういう意味では、そういう批判がなくなるなんということを考えるのはオプティミスチックに過ぎるのではないかと思っております。私どもとしては、鋭意具体的に改善すべきものは改善しながら、相手国の立場に立って、十分な理解をもって進めてまいるように努力を続けてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/59
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060・西村関一
○西村関一君 従来、日本の経済援助のあり方につきまして、ややもいたしますというと、相手国の資源並びに労働力を目当てにして、日本の企業の進出をはかるというようにとられるきらいがないではなかった、
〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕
そういう点につきまして、大臣の先ほどからの御答弁によりますと、そうではないのだ、あくまでも相手国本位の経済協力外交でなければならないということでありますが、通産省は必ずしもそういう考え方に立って従来から相手国に進出する日本の企業に対して臨んでおったかどうかといいますと、必ずしもいま大臣のおっしゃったような考え方に立っていたとは言えない過去の問題があると思います。そうでありますから、いろいろなトラブルが起こってきておるんじゃないか。で、その意味におきまして、私はこの事業団法案はもちろん外務省が主管であり、主務大臣は外務大臣でありますから、大臣のおっしゃったとおり行なわれると思いますが、通産、農林等の関係各省との緊密な連絡、提携ということが、この事業団法をお出しになる時点においてできておるかどうか、そしてまた、今後、いま大臣の述べられたような方針に関係各省が一致した理解のもとにやれるかどうか。つまりことばをかえましたならば、わが国の経済協力外交といいますか、まあ局長もここに来ておられるんですが、そういうことが必ずしも十全でなかったというふうに私は感ずるのであります。つまり経済外交のあり方、経済協力政策の実態がどういうところに進められてきておるかということの反省とまた転換がなければ、相手国の反日感情をなくし、かつ喜んでこれに応ずると
つまりそういう相手国の、大臣のおっしゃっている相手国本位の経済協力、経済援助でなければならないと、こう思うんでございますが、その点、局長は当面の担当者ですが、これは各省との関係はどうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/60
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061・御巫清尚
○政府委員(御巫清尚君) 西村先生御指摘のような、従来からの各省間の連絡の不十分というようなことがもしありましたとすれば、それは政府開発援助についてというよりは、むしろ民間企業、先ほど大臣からお答えいたしたような経済的なその他の行為なんかについてもあるいは言われるのかもしれませんが、ただ今回のこの国際協力事業団に関します限りは、この法案の第四十三条「(主務大臣等)」というところに規定してございますように、農林業につきましては農林大臣及び外務大臣、それから鉱工業に関しましては外務大臣及び通商産業大臣の共管ということになっておりまするし、そのほか法律上協議をすべき大臣も定められておりますし、またそれ以外にも関係各省にわたる事項が多々ございますので、実際上いろんな点で緊密な連絡をとりながら、外務大臣が主管大臣としてやるべき仕事をなさっていくというふうに私どもは考えておりまして、今後この事業団ができますことによって、従来もしかりにそういった点に欠陥がありましたとしても、今後はますますこれを改善する方向で進めてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/61
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062・羽生三七
○羽生三七君 関連。
いま西村委員から経済協力に対する基本的な姿勢についてお尋ねがあって、その関連で外務省と他の省との協力関係についてもお尋ねがあったわけですが、そこで私どうしてもわからぬことは、相手国——被援助国と日本側が援助や協力問題について協議をする場合に、外交案件として外務大臣が協議の任に当たるのか、あるいは最初からこの事業団の主務大臣がこれに当たるのか、あるいはおおよそ外務大臣が話をつけたものを、この実務だけを主務大臣が扱うのか。この点は、お互いに協力関係といったって、それはそういう抽象的なことばではわからないので、具体的に、相手国と経済協力をやる場合には、外交案件として問題になった場合に外務省が主管をしていくのか、最初から事業団の主務大臣も一緒になってやるのかあるいは外務省がおおよそきめたものを主務大臣が事業主体としてやるのか、そういう点もっと具体的に説明していただかぬと、単なる協力関係ということだけでは理解できない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/62
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063・御巫清尚
○政府委員(御巫清尚君) ただいまの私の御答弁は、この国際協力事業団に関する限りの各共管とか協議とかいう大臣間の関係を申し上げたわけでございますが、この国際協力事業団は、そもそもわが国が行ないます経済協力のすべてをカバーしておるものであるとは考えておりませんで、従来からたとえば政府借款を出しますような場合に、これは借款を出しますのは経済協力基金を通じ、あるいは輸出入銀行を通じて借款を出すわけでございますが、そういう場合の従来からのやり方というものは、そのまま継続されるという点の御認識をいただきたいと思うわけでございます。
で、その点の従来からのやり方と申しますのは、大体におきまして、関係の各省が集まりまして、今度のこういう案件についてこういうような報告も出ておるから、この程度の借款をこういう条件で供与しようというような相談を関係各省はいたすわけでございますが、その際、土台となります何といいますか基本的な考え方を作成するのは、大体において従来から外務省が責任者として主としてこういう場合、外交案件と羽生先生おっしゃいましたけれども、という部類に入るものでございますから、外務省がそういう討議の基礎をつくって、それを関係各省と協議して関係各省の合意の得られたところで、また外務省の出先を通じあるいはまた先方からやってまいりました代表団との交渉も外務省の場において行なうと、その際にも、先方の出しますいろいろな要件等の変化が見られました場合には、そのつど各省と協議をして緊密な連絡をしていくというようなやり方でやってまいっておりまして、今後もそういう点につきましては変化はないわけでございます。事業団につきましては、もちろん主務大臣間の協議共管という点につきまして、今後ますますこの法文の規定しますような密接な連絡をとっていきたいいう点が新たに加わってくるというふうにお考えいただければありがたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/63
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064・羽生三七
○羽生三七君 もう一点だけ。
外務省なり他の各省間との協議ということはわかりますが、事業団の主務大臣は一体どういう役割りを果たすのかということですね。各省と協議を一緒にやるということなのですか、事業をやる場合の主体が主務大臣ということなのか、その辺はこれどうもはっきりしないのですが、外交案件なりあるいはその他の問題について、たとえば外務省なり農林省なり通産省なり、それぞれが協議をすることはわかりますが、事業団の主務大臣は一体何をやるのか、どうもそこのところ、はっきりしないので、もう少し詳しく。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/64
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065・御巫清尚
○政府委員(御巫清尚君) 政府が事業団といったようなものをつくります目的は、政府自体の手で実際上の仕事をやることが必ずしも適当でないというような場合、そういう事業団とか公団とかいうものをつくって、それを通じて政府のやるべき仕事を行なわせるという形でございまして、この場合もまさにそのとおりでございまして、国際協力事業団というものができますれば、政府が本来直接手を下してやらなければいけないようなことも事業団にかわってやらせるというようなことが起こってくる。
〔理事平島敏夫君退席、委員長着席〕
その場合に、監督官庁たるものがその主務大臣という名前で呼ばれるわけでございまして、それにつきましてこの法文の第四十三条に示しておりますとおり、事業団の役員、職員とか会計とか、そういった管理的な業務に関しては外務大臣が主務大臣。その前に、第三十八条に、主務大臣がこの事業団を監督するとまず書いてございまして、そのあとにその主務大臣の意味として、四十三条がいま申し上げたような管理的業務は外務大臣。それから事業団の業務の範囲の中で、第二十一条に示されております従来海外技術協力事業団がやっておりました第一号、第二号の業務について、それから海外移住事業団がやっておりました第四号の業務について、並びにその他若干の事項については外務大臣が主としてその監督をなさると。それから第二十一条のうちで第三号に掲げる業務の中で、先ほど申し上げましたように、農林業の開発に関係するものと、それらの業務に関係するものについては外務大臣と農林大臣。第二十一条第一項三号の中で鉱工業の開発に関係するものについては外務大臣と通商産業大臣が主務大臣となると。すなわち、そういうものについては、共管のお二人の大臣がそれぞれ監督をなさると、こういう意味でございまして、実際に業務を実施いたしますのは、この場合は国際協力事業団がこれを実施するということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/65
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066・羽生三七
○羽生三七君 もう一点だけ。そこで、その対外折衝する場合に、事業団の主務大臣もたとえば外務大臣と一緒になって協議するような場合があるのか、きまったものを事業団の主務大臣が運営するとか実行するという事柄だけなのか、対外折衝の場合は一体どういう投割りを持つのか、その点を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/66
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067・御巫清尚
○政府委員(御巫清尚君) これは、たとえば例を従来から存在しております海外技術協力事業団、このいまの申し上げました法文でいきますと第二十一条の一項一号の場合のようなことで考えてみますと、技術協力でございますので、どの国にどういうような技術協力をやろうかというような基本的なことは、まずその予算の問題がございますから、外務省の中にそのための予算が計上されて、それが海外技術協力事業団に交付金とか委託費とかいうかっこうで渡されるという形になります。そしてまた、海外技術協力事業団がそのために必要なこまかい計画、たとえば研修員の受け入れという事業でございますと、その年の予算の範囲の中でどこの国からは何人受け入れるというような計画を、大体これまで出ております要望等を照らし合わせてつくります。そうしてそういった計画に基づいていよいよ相手国との折衝に入ります場合には、外務大臣を、もしくはその出先でありますところの在外公館を通じて相手国と話し合う、そこのところを羽生先生が外交案件というふうに御指摘になるのでありますれば、外交案件たるその部分は外務大臣がみずからおやりになるわけでございますが、実際に今度そこで研修員を、たとえば十人派遣するということを先方が希望して、こちらもそれを受け入れるということになりますれば、あとの実務は今度は事業団がまた実施するという関係になってくるのでございます。それと同じことが今度の事業団においても起こるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/67
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068・西村関一
○西村関一君 いやどうも御巫局長の御答弁、私も伺っておって、羽生委員の質問に対する答弁、まだちょっと私もわからない。しかし、それに触れてるとほかのことが言えないから、また次の機会にいたしますが、私がいま大臣に伺っておりますのは、この事業団法の中に盛られている条文の根底にある理念の問題、経済協力の理念の問題及び過去の経済協力に対する反省の上に立って、どのような具体的な方向転換をしていくべきであるかということを伺っておるんでありまして、その点につきまして、先般の衆議院の外務委員会における附帯決議が出ておりますね、この附帯決議によりますと、南北問題が一段と複雑多様化しておるので、これらの相互間に摩擦と緊張を招いているという現状を踏まえて、先進国の一員であるところのわが国は、国際連帯の原理に立脚して、互恵平等、内政不干渉の原則を確認するとともに、長期ビジョンの策定を行なって、これまで蓄積してきた資本と技術を活用し、供与して、これら開発途上地域の経済及び社会開発と国民福祉向上のための自助努力に協力し、開発途上地域の緊張と摩擦をやわらげ、究極的に永続的な世界平和を経済的繁栄の基礎固めに貢献すべきであると、こういう附帯決議がついているわけなんです。この附帯決議の文言にかんがみて、政府としては長期ビジョンに立った政策策定、こういうことをやらなければならない、その用意があるはずだと思うんでございますが、その考え方に基づいてこの事業団法が国会の審議を経た上で実施される場合に、たとえばある一定の時期に報告書を国会にお出しになるというお考えがあるかどうか、その点伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/68
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069・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) 先ほど御巫君からも御説明申し上げましたように、事業団それ自体は実務を遂行する手段にすぎないわけでございましてポリシーメーキングはあくまで政府の責任でございます。したがって、衆議院で附帯決議がございましたが、これは政府に対しまして、経済協力政策を推進していく場合に心がくべき指針として決議されたものと了承いたしております。したがって、いま西村先生のおっしゃるそういう方針に従ってやりました結果を、どういう姿で国会をはじめといたしまして一般に御報告し、御理解をいただくかということでございまして、これは事業団そのものよりは政府の責任であると思います。そのことにつきまして、従来御案内のように通産省が経済協力について相当まとまった報告をお出しになった経緯がございますが、これはいわゆる経済協力白書というタイトルのものでは、まだそこまではなっていないわけでございまして、そこで私どもといたしましてはいまからいろいろ用意いたしまして、各方面の御要望もございますので各省と協力して政府として経済協力白書というようなものを一つ用意してみる必要があるんじゃないかと考えておりまして、これは経済協力事業団まあ国際協力事業団ばかりでなく、オーバーオールな経済協力全体につきまして御理解をいただく便宜のために考えてみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/69
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070・西村関一
○西村関一君 次に、海外投資のあり方につきましてお伺いしたいと思いますが、大蔵省はきょうは呼んでなかったと思うが、来ておられますか。大蔵省、それから通産省はどうですか、大蔵省は見えてないですね。これは従来海外投資の実績につきまして、業種別、地域別及び今後の予測等につきまして、大蔵、通産から、いま、そういうことをにわかに出せと言っても無理かもわかりませんが、国会に出していただく、委員会に出していただく用意がございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/70
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071・森山信吾
○説明員(森山信吾君) ただいま御質問の点でございますが、まず実績につきましてこの席で御答弁さしていたざきたいと思いますが、昭和二十六年度からいわゆる海外投資がスタートしたわけでございまして、四十八年の十二月までの実績をただいま持っております。合計いたしますと、総件数にいたしまして約八千八百件、金額にいたしまして九十六億ドル、こういう実績になっております。
それから、御質問の第二点の今後の予測でございますが、これは御承知のとおり、現在投資は自動認可制になっておりまして、これは一部例外ございますけれども、原則といたしまして自動認可制になっております。日銀の窓口で受け付けをすれば投資ができる、こういう仕組みになっておりますので、必ずしもどの程度の予測をすることができるかということはむずかしい問題でございますが、国際収支の観点その他からの調整は、今後大蔵省あるいは外務省とも十分協議しながら検討さしていただきたい、かように存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/71
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072・西村関一
○西村関一君 この海外投資のあり方につきまして、へたをいたしますと相手国を摩擦するという心配があるわけです。ですから、この海外投資のあり方につきましては、やはり大蔵、通産と緊密な連絡をとりながら、外務省がきちんとしたチェックをしなければならない。チェックをすることが海外投資の自由化に伴ってなかなか困難だと思うのでございます。しかし、経済外交、協力外交ということを考える場合に、そのことを抜きにしてはやはりむずかしい、こう思うのですが、その点外務省としては、どう考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/72
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073・御巫清尚
○政府委員(御巫清尚君) 確かに仰せのとおり、その各地域、あるいは各国別、あるいは各業種別にそういったようなチェックができることは望ましいということは仰せのとおりでございますが、外務省といたしましては、各地域、各国につきましてそういった業績を情報として常時フォローはいたしておりますが、それをチェックして、ここは多過ぎるとかというようなことを具体的に各関係省に申し上げるだけの権限もございませんし、必ずしも現在そういう点までは実行はしておりません。将来は、できるだけそういった日本の海外経済協力といったような面から見て、不ぐあいの起こらないように、できる限りの努力をしていきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/73
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074・西村関一
○西村関一君 私は、権限の問題を言っているんじゃなくて、そのことの必要であるかないかということを言っているわけです。これはやはり政府として、その点の相手国側の国民感情及び相手国側の資源及び労働力を日本が収奪するということのために投資されておるというような印象を与えないような、地域的な配慮が私、必要だと思うのです。それが外務省として権限があるかないかということじゃなくて、内閣として私はそういう配慮のもとにやらないと問題の解決にならないと思うのです。その点大臣いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/74
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075・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) ついこの間まで、日本はまあ資本の輸入国であったわけです。それでようやく日本が資本が非常に輸出国に成長してきたことは、たいへん私は日本の名誉のためにいいことであったと思っているわけでございまして、そういう意味では、むしろ逆に海外投資というものを促進してまいるということが政府の態度でなければならぬと思うのでございます。のみならず、OECDに日本が加盟いたしまして、あのOECDのコードを受諾する場合にいろいろ日本が留保をつけておったんでございますが、これはOECDとしては資本の輸出あるいは輸入、そういうものについてできるだけこれを自由化しよう、それにあなたが言われるようにチェックするということに対してはきわめて厳格な態度で、そういう障壁を取り除くという方向にOECDが機能しまして、日本もだんだんと国際収支面でも改善を見てまいりましたので、逐次、在来留保しておったものもはずしてまいって、投資の自由化というところにきたわけでございます。その後、したがって、そういう貿易の自由化と同様、資本の自由化ということをいかにして実現するかということが戦後日本政府がかかえておりました国際経済政策面における非常に重要な課題であったわけでございまして、それがようやく世間並みのところに持ってこられたいまの段階でございます。それはそれとして着実に進めてまいることが、わが国の国際信用から申しまして必要だと思うのであります。ただ、いまあなたが御指摘になった問題は、それと全然角度が変わった問題でございまして、資本輸入国側における民族感情からいたしまして、その資本のマナーについて、あるいはその資本を輸入すること自体がいいか悪いかの問題もそういう角度からもう一ぺん輸出国側で、根っこでひとつ検討をしてみる必要があるではないかという御指摘でございます。それはそういうポリシー、そういうお考え方も、私、一応理解できます。理解できますが、従来の経緯はいま私が御説明申し上げましたような経緯で、それをむしろ自由化の方向にいっているということをまず御理解いただきたいということで、それはそれなりに進めなければならぬという立場にあるということも御理解いただきたいと思いますが、いま御提起になりました問題につきましては、一つの問題意識をお示しになられたと思うのでございまして、どのように考えていくべきかということについて、とっさに私も御答弁申し上げる用意がいまないのでございますが、御指摘の点につきましては、御趣旨をよく承りまして検討をさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/75
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076・西村関一
○西村関一君 次に、中東諸国に対する経済協力の問題でありますが、先般、政府が中東諸国に対して約束せられました経済協力の内容、規模、実行時期、効果の見通し等について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/76
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077・御巫清尚
○政府委員(御巫清尚君) 昨年十月に中東紛争が発生いたしまして以後、政府が特使というような形で大臣その他に御出張願ったのは三件ございまして、第一番目に昨年十二月に三木副総理が特使としてお出かけになりましたが、その際お約束になりましたのは、エジプトにおきましてスエズ運河の拡張工事の計画がございますんですが、これに対しまして三百八十億円を金利二%、返済期限二十五年間、そのうち据え置き七年、こういう有利な条件で円借款を供与するということをお約束になりました。その後、エジプトからはハテムさんという副総理がやはり日本にお見えになりまして、二月でございますが、その際に、三木副総理との間に、これは商品援助と、それからプロジェクト援助という形によりまして三百億円の円借款を供与するということをお約束になりました。最初に申し上げましたエジプトのスエズ運河の場合は、御承知のように、現在兵力引き離し等の影響を受けまして、スエズ運河の再開の方向に向かって事態が進みつつございますが、まだこの運河それ自体には船が沈んでおりますとか、土砂が詰まっておりますとかいうことがございますので、これをまず片づけなければいけない、これをするのに約一年ぐらいの日子が必要であるという話でございます。したがいまして、それが終わって、現在の運河のままで通行可能になった後にこの拡張工事に取りかかるということでございますのでしばらくまだ公式のお約束にはならないであろうと思われます。
それから二番目の三百億円の円借款につきましては、半額がプロジェクト援助でございまして、その中にどういうプロジェクトが盛り込まれるかエジプト側の意向等も聴取しておる段階でございまして、間もなくそういったようなところがはっきりし次第、公式のいわゆる交換公文というような形ができ上がるものと期待しておりますが、その後に、さらに貸し付け機関との間に貸し付け契約ができ上がれば実施に移るということでございます。ただし、商品援助につきましては、昨年の四月の末に、別に商品援助が一千万ドルでございますが、供与されておりまして、それが現在進行中でございますので、そちらのほうの様子も見て実行の様子も見ながら進めていかなければならないと、こういう事情がございます。
それからその次に、中曾根通産大臣がやはり中近東諸国をお歩きになりました際にできましたお約束は、これはあるいは森山部長から申し上げたほうがいいのかもしれませんが、イラクにおかれまして、たとえばLPGのプラントでありますとか、製油所でありますとか、そういうものに対しまして、民間の信用供与と政府借款とを合計して約十億ドルというものを供与する、その割合といたしましては、大体一対三の割合というようなことで、その平均の金利といたしましては五・二五%というようなことでお話し合いをなされました。これにつきまして、その後イラク側と細部の打ち合わせを続けておる段階でございますが、同時に並行して、これは三木特使がおいでになりましたときからのお話でございますが、経済技術協力協定といったようなものをつくりたいという先方の希望がございますので、それについての案文を目下日本政府内部で固まり次第先方に提示していく、この両者がからみ合っておりますので、いまその準備をしておる段階でございます。
それから続いて小坂特使が三木特使の回られなかった諸国をお回りになりましたわけでございますが、その際お約束になりましたのは、アルジェリアに対しまして円借款百二十億円、それからジョルダン、スーダン、モロッコの三国に対しましてそれぞれ三十億円ずつの円借款を供与することをお約束になりました。これらにつきましては、大体において電気通信関係のプロジェクトが中心になるものというふうに思われておりますが、先方からプロジェクトの内容等がだんだんにはっきりし次第、公式の交換公文を取り結んで実行に移していきたいというふうに、目下それぞれ相手国と話し合いを続けておる状態でございます。
こういうことによりまして、もちろんこれらの諸国は、あるものは産油国でもございますが、あるものは——これらの諸国は、いずれも中東にありながら開発途上国ということで分類されておるわけでございますので、これらの国の経済的発展をいささかなりともわが国のこういった経済計画によって促進することができるであろうということを期待しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/77
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078・西村関一
○西村関一君 政府が、いまお答えになりましたように、中東諸国に対して広く、また、きめこまかく手を伸ばされて援助のお約束をなさったということは、それなりに私は理由があると思うし、批判するものじゃありません。ただ、近年石油危機が世界的に、特にわが国を襲ってまいりましたその時点で、石油資源を求める身かわりとしてこういう経済援助がなされるということは、少し私は日本の経済外交のポイントをはずれているんじゃないかと思うんです。これは長期の見通しに日本政府が立っていない、私はそういうことを言いたくないのですけれども、出たとこ勝負のような印象を受けるんであります。あくまでもこの経済援助がそれぞれの国の民生及び福祉、それから国民の経済生活の向上という点に当てられておるということが根本だと思いますけれども、一体資源の所在というものはどこにあるか、資源ナショナリズムといわれる問題が、資源はこれは世界の人たちのものだという考え方と、それからそれぞれの国のものである、資源ナショナリズムといわれる点とのかみ合わせを政府は一体どういうふうにとらえておられますか、これは大臣にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/78
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079・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) 中東諸国に対しまして政府があたふたとミッションを繰り出して、場当たりで経済協力を申し出たというように見えるじゃないかということでございますが、実は、中東諸国に対しましては従来とも技術協力、経済協力をやっておるわけでございまして、今回のことが、何も新しいことを特にやったわけではないと御理解をいただきたいと思うのであります。
それから第二点といたしまして、このお三方をわずらわして向こうへ参りましていろんなお約束をいたしましたことは、オイル外交というように世間でとられておるんでございますけれども、非常に心外なんでございまして、私ども別に油ほしさでやったわけでは決してないんです。あなたがいま言われましたように、長い信頼と友好の基盤をつくることでございまして、経済協力政策の基本をはずすことなくやって、経済協力を進めていく純粋なものと御理解をいただきたいんでございますが、当時の雰囲気から申しますと、油の危機がございましたもんですから、何か政府がなりふりかまわず経済協力を押し売りして歩いておるじゃないかというように受け取られたことは非常に心外なんでございますけれども、実はそうでないんでございます。その証拠に、油をちょうだいしておるのはサウジであれクウェートでございますけれども、その他の諸国からそんなにわれわれのほうは油をちょうだいしていないわけでございますし、今後もそんなにちょうだいする展望もないわけでございまして、多くの国に対しまして、それぞれわれわれ日本として考えられる協力を差し伸べようという意味のものでございますので、その点そういう意味のものとして御理解をいただきたいと思うんでございます。
それから資源ナショナリズムの問題でございますが、これは国連におきましても、資源というものはその所在国が主権を持つという原則はすでにもう確立されておるわけでございまして、私どももそれに賛成をいたしてきておるわけでございまして、その点につきましては異議を差しはさんでいないわけでございます。それを、ただそれが、あなたが仰せられるように、世界のために、世界平和のために、世界の繁栄のために有効に働くことが望ましいと考えておるわけでございまして、それをどのように資源を活用されるかという点につきましては、その資源保有国の主権というものは尊重していかにゃいかぬと考えておるわけでございます。わが国のように、目に見える資源というのは乏しい国でございますけれども、われわれはまた目に見えぬ資源を持っておりまして、これはわれわれの主体的な判断で、われわれの技術、われわれのノーハウというようなものは、これまたわれわれが世界のために役立つようにこれを行使していくのと同じ理屈でございまして、そういうものがお互いに互恵平等の立場で交換されて、世界のためになるように考えてまいるべきものと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/79
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080・西村関一
○西村関一君 もう私の時間がなくなりましたので、あと一点だけ質問をいたしまして質問を終わりたいと思います。
この事業団は、いわゆる新規業務として開発途上地域等の社会開発、それから農林業及び鉱工業開発に協力するための必要資金を供給することになっておる。具体的にどのような計画がなされているか、社会開発、それから農林業及び鉱工業開発に協力するための必要資金を供給するどういうプロジェクトを持っておられるか、それは個々にわたっては私もいろいろお尋ねしたいことがございますけれども、時間がありません。その点だけを伺って、またそのあとの質問は次の機会に譲りたいと思うんです。その点をお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/80
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081・山田嘉治
○説明員(山田嘉治君) 農林業開発関係の協力のプロジェクトにつきまして、私からお答え申し上げたいと思います。
現在東南アジアでございますとか、あるいは中南米諸国等におきまして、これらの国におきますところの食糧の自給度をまず向上させたいという欲望、それから同時に、これらの国の輸出農林産物の生産を拡大したいというような観点から、これらの国におきましては農林業開発に非常に最近積極的に取り組みつつございまして、これに関しましてわが国に協力をしてほしいという期待が寄せられております。
若干の例を申し上げますと、たとえばフィリピンでは稲作、トウモロコシ等の開発、あるいは森林を造成してほしいというようなこと、それからタイではトウモロコシの開発をやりたい。それからアフリカのマダガスカルでは肉牛の開発、それからブラジルでは大豆、マイロ——これはコウリャンでございますが、マイロ等の開発につきましてわが国に協力をしてほしいという要請が寄せられております。
このような相手国からの要請を踏まえまして、現地の実情に即しまして具体的には対象の地域とか、対象の事業をこれからきめてまいるということになるのでございまして、まず十分な事前調査を行ないまして、また相手国側とも十分な話し合いを行ないまして、先ほど御答弁がありましたように、あくまで相手方の立場に立ってこの事業をやっていくという立場で慎重にとり進めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/81
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082・森山信吾
○説明員(森山信吾君) 鉱工業の分野につきまして、私からお答え申し上げます。
通産省関係は、この国際協力事業団におきまして新規事業となっておりますけれども、実は、昭和四十五年の二月以来こういった関連の事業を実施いたしておりまして、これは財団法人海外貿易開発協会というところで事業を実施いたしておるわけでございまして、それが引き続いて、この新しい協力事業団ができますれば、そちらのほうに移行して国のベースで仕事をやる、こういうことになるわけでございます。したがいまして、そういう意味では、実質的な新規業務というわけではないわけでございまして、従来の業務を引き続いてやるということでございますが、現在考えております鉱工業分野の開発プロジェクトにつきましては、実はまだばくとしたものだけでございまして、これはといったものをきめておるわけじゃございません。これは先ほどから話のございますように、相手国の御要望に応じましてプロジェクトを考えてまいりたい、こういうふうに考えておりますが、ただ、私どもにいま非常に強く相手国側から注文を受けておりますのは、たとえばインドネシアのアサハン計画というのがございまして、これはインドネシアのスマトラのトバ湖という湖の水を利用いたしましてアルミ製錬をやりたい。同時に、この水力開発をすることによりまして地域住民の福祉の向上といいましょうか、スマトラ地域の中小企業の振興、あるいは電力のない住民に対しまして電力を供給する、こういう業務に一体となった計画をぜひ推進してほしいということがいわれておりますので、この問題につきましては、通産省といたしますればぜひ取り上げさしていただきたい、こういうふうに思っておりますけれども、まだ関係官庁との十分な打ち合わせは行なわれておりません。
それからペルーにミチキジャイという銅鉱山がございますが、これも相手国政府から非常に強い要望がございまして、この銅鉱山の開発はきわめて有望なものでございますけれども、ただ残念なことに非常に山奥にございまして、その辺のインフラストラクチュアの整備が行なわれてないために銅鉱山の開発がなかなか進まない、ぜひこれは日本の手で協力をしてほしい、こういう要望もございますので、この点につきましても、関係官庁の御了承が得られればぜひ推進をしてまいりたい、かように存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/82
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083・御巫清尚
○政府委員(御巫清尚君) ただいま農林業及び鉱工業についての御説明がございましたので、残りますのはいわば住民の福祉向上のための社会開発関係の業務でございますが、これにつきましては全くこれ新しいことでございますので、具体的にどういう仕事をどういうふうにやるかは、事業団が創設されまして以後に慎重に検討して実施をさせていただきたいと思っておる次第でございますが、その関係いたします分野として例示されておりますのは、第二十一条一項三号のところに「文化、交通、通信、衛生、生活環境等」というふうに例示されておりますので、そういったような分野が主として対象のところに入ってくるというふうに御理解願えればたいへんありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/83
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084・羽生三七
○羽生三七君 ちょっといまのところに関連して一点だけ。
いまのあとの、後段の点についてですが、たとえば開発援助を行なう場合に、この条文で見ると「地方公共団体その他の公共的団体」の場合とありますが、そういう場合に、政府が何かうしろだてで保証するんですか。地方公共団体あるいはその他の公共団体自体が相手の主体になるのか、それの背景となるものが政府であって何らかの保証をするのか、その辺はどういうことになっておるのか承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/84
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085・御巫清尚
○政府委員(御巫清尚君) ただいま羽生先生の御指摘になりましたのは、いまの法案の第二十一条一項三号のハ号の中の文章のことであると思いますが、ここで申しておりますことは、まず第一番目に、日本政府と、それからこの国際協力事業団によります各種の経済協力を受ける相手国政府との間に、一号の冒頭に掲げておりますように、まず政府同士の約束ができる、それからその上で、今度はその相手国の、開発途上地域にあります国の政府または地方公共団体あるいはその他の公共的な団体、これはどういうものになるかは、そのときどきによって違うと思いますが、そういうところからこの事業団に向かって委託があった場合に、この事業団がみずからこの整備事業を行なうことができるという規定でございまして、そのときのお金がどうなるかという問題は、このハ号では直接触れておらないという形でございまして、いま政府の保証とかいうようなことをお考えでございますが、それはそのときそのときの、お金をどこから持ち出すかというのによって変わってくるのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/85
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086・羽生三七
○羽生三七君 それはそれでいいんですがね。やっぱりその点は、そのときのケース・バイ・ケースでしょうが、そのときの事情によることもあろうけれども、やはりその国の政府の背景がなければ非常に不安定なものになるので、これは明確にしておく必要があると思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/86
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087・御巫清尚
○政府委員(御巫清尚君) その点につきましては、冒頭に申し上げましたように、相手国政府と日本政府との間の約束がまずでき上がるということが前提でございますから、その点は不明確にはならないというふうに存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/87
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088・羽生三七
○羽生三七君 明確にならない……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/88
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089・御巫清尚
○政府委員(御巫清尚君) 不明確な点は残されないというふうに存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/89
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090・羽生三七
○羽生三七君 政府が背景になるということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/90
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091・御巫清尚
○政府委員(御巫清尚君) そうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/91
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092・伊藤五郎
○委員長(伊藤五郎君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。
午後零時十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107213968X01219740516/92
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