1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十九年一月二十四日(木曜日)
午前十時八分開議
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○議事日程 第七号
昭和四十九年一月二十四日
午前十時開議
第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
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○本日の会議に付した案件
一、請暇の件
一、常任委員長辞任の件
一、常任委員長の選挙
以下 議事日程のとおり
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/0
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001・河野謙三
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
この際、おはかりいたします。
小枝一雄君、田中茂穂君、浅井亨君からいずれも病気のため三十日間、中沢伊登子君から海外旅行のため来たる二月五日から八日間、藤井恒男君から海外旅行のため来たる二月五日から十日間、それぞれ請暇の申し出がございました。
いずれも許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/1
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002・河野謙三
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/2
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003・河野謙三
○議長(河野謙三君) この際、おはかりいたします。
逓信委員長茜ケ久保重光君から、常任委員長を辞任いたしたいとの申し出がございました。
これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/3
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004・河野謙三
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/4
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005・河野謙三
○議長(河野謙三君) つきましては、この際、日程に追加して、
常任委員長の選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/5
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006・河野謙三
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/6
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007・森勝治
○森勝治君 常任委員長の選挙は、その手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/7
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008・柴立芳文
○柴立芳文君 私は、ただいまの森君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/8
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009・河野謙三
○議長(河野謙三君) 森君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/9
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010・河野謙三
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。
よって、議長は、逓信委員長に川村清一君を指名いたします。
〔拍手〕
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/10
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011・河野謙三
○議長(河野謙三君) 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
去る二十一日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。藤田進君。
〔藤田進君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/11
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012・藤田進
○藤田進君 私は、日本社会党を代表いたしまして、田中総理の施政方針演説並びに先般行なわれました三大臣所信表明に関連いたしまして、ただいま国民大多数が大いに疑問とするところをただしたいと思うのであります。
その第一は、田中内閣と、それをささえてまいりました自由民主党の政治責任についてであります。
今日、異常なる物価の高騰、品不足に見るごとく、国民生活を極度に荒廃せしめ、なお全く今後の見通しさえも明らかになし得ない政治責任はきわめて重大であります。インフレは、すでに池田内閣、池田さんが、卸売り物価が上がっていないんだからと胸を張っておりましたが、今日、卸売り物価はすでに対前年三一%上がっております。じりじりとすでに十二年前から忍び寄ってまいりましたインフレ、いわゆるクリーピングインフレーションとして、社会党をはじめ多くの識者から指摘されたにもかかわりませず、自民党歴代内閣は、大資本を中心に生産優先の高度成長政策を続けて、ついに今日の事態を招くに至ったところであります。しかるに、今日これを改めようとはせず、田中内閣に至っても列島改造論なるものを掲げ、四十八年度大型予算を契機に異常な卸売りまた消費者両物価の高騰が現実化したのであります。昨年の施政方針に対して、社会党をはじめ野党の質疑や、予算委員会における審議の過程で見られますごとく、かかる大型予算、また加えて列島改造論に見られるようなそういう政治姿勢そのものが、悪性インフレを招来するということを明らかにし、指摘してまいったところであります。田中総理をはじめ財政当局は、インフレなる要素は全くないとこれを否定してまいりました。与党である自民党とともに多数を頼み、強硬に悪性インフン政策を遂行いたしましたわけであります。特に、重要法案の一つであった国鉄運賃の大幅引き上げ及び消費者米価の引き上げにつきましては、他物価の値上げを誘発することは必至であるということから、値上げを思いとどまるように、インフレ抑制の政策をとるべきであるということをわれわれが主張いたしましたにもかかわらず、国民周知のごとく、自民党単独強行採決までいたしまして値上げを決定するなど、全く反省の色は見られなかったのであります。しかるに、昨年、四十八年度予算成立直後、公共事業について契約率を引き下げ、次いで一兆円余の大幅な執行の繰り延べ、こういった事態に政府は追い込まれてまいりました。社会党の指摘いたしますことに耳をかさず、後手後手の政策に終始してきたことが今日の重大な事態を招いたと言えるのであります。国民のマイホーム建設の夢は、資材の暴騰や、またこれに伴う消費者物価等々、その実現は不可能となります。先般来のトイレットペーパーや洗剤の品不足などに見られる人心の荒廃は、そのよって来たるところは、国民の政治不信にあると指摘せざるを得ません。政権担当能力を失った田中自民党内閣は、責任をとって退陣すべきであります。総理の所信をお伺いいたします。
政府は、国鉄運賃、消費者米価、郵便料金、その他一連の公共料金等につきましては、参議院選挙の不利をおそれて、参議院選挙終了まで値上げを一時延期することといたしましたが、参議院選挙終了後、これらを含めまして一斉に大幅値上げとなることは明らかであります。せめて年度終了の五十年三月まで、インフレの動向も見定めながら、一カ年間以上はこれをたな上げ、繰り延べすべきではないでしょうか。総理は、今回の施政方針演説の中で、過去のいきがかりにこだわることなく、反省すべきは率直に反省し、改めるべきは改め、思い切った発想の転換と強力な政策を推進してまいりますと、こう表明されておりますが、過去を反省し、思い切った転換がはたして実行されるかどうか、国民はいまだ疑問とするところでありましよう。
そこで、私は、総理をはじめ、関係大臣に明確な御答弁を求めるものでありますが、今日の政治諸悪の根源であり、物価高・インフレの要因の一つでもある大企業からの巨額の政治資金の徴収であります。田中総理をはじめ、これから指摘をいたします関係大臣について見るに、昭和四十七年度における政治献金の実態を、自治省の公表に基づいてこれを見ますと、いわゆる田中派十三億四千七百六十万一千円、福田派十六億七千四百五十二万四千円、大平派十三億九千七百四十二万円、三木派十億五千七十万円、中曽根派八億四千三百二十五万七千円、こうなっているのであります。毎月に直してみても一億をこえるのであります。さらに、四十六年の上期から四十八年の上期——いま、四十八年まではわかっております。この二カ年半を累計してみると、田中派が二十一億八千八百二十万八千円、福田派が二十六億六百八十三万九千円、それから大平派が二十二億五千八百十万円、三木派が十五億四千百四十二万円、中曽根派が十六億三千六百六十七万七千円となっているのであります。以上、田中総理を含む五派への政治献金は、実にここ二年半で百億をこえているのであります。これは実は氷山の一角ではないでしょうか。自由民主党本部、さらに自由民主党衆参両院議員個々がそれぞれ政治献金を受け、これを集計いたしますれば、ばく大な金額となることは明白であります。総理の言うように、率直に反省し、改める、というのが真実であるならば、また、先般の所信表明で福田さんがその一節に「物さえあれば、金さえあれば、自分さえよければという物と金とエゴの支配する時代は、過去のものとしなければならないのであります。」と、こう言われております。したがって、総理以下関係大臣にお伺いいたしますが、今後かかる政治献金を徴収しないということをまず国民に約束すべきであると思いますが、それぞれ明確な御答弁をいただきたいのでございます。
およそわが国の経済運営についてこれを見るとき、政府の無策と企業のあくなき利益追求の当然の帰結として、物価その他に見られるごとく、無政府狂乱の様相が実態であります。その根源も巨額の政治資金にあると言わねばなりません。独占ないし寡占化された今日の資本家がやみの協定をして物価をつり上げております。しかしながら、政府は政治献金ゆえにこれを厳重に取り締まることさえできない状態にあると言わなければなりません。
物価の異常な上昇は、あの施政方針のもとでは、安定基調に転換することはきわめて困難と考えるのであります。よって私は、この際、不公正な取引を徹底的に取り締まりますその当局である公正取引委員会の権限とその機能を抜本的に再検討して、少なくとも、政権と企業が癒着したり、公正取引委員会を時の政府が支配したりということのないように、また、人員不足による業務の停滞はおびただしいものであります。これらを改善いたしまして、公取が国民にかわり不公正取引の規制に万全の措置をとり得るよう具体策を講ずべきだと考えるのであります。
従来、かかる観点から公取の強化が叫ばれてまいりましたが、政府は、今年度予算においても、公取の要求であった五十四名の増員要求に対しまして実質六名の増員にとどめているのであります。他方、四次防による自衛隊の増員を行ない、また、昨年度に引き続きまして二年連続九千名にのぼる警察官の増員を行なっております。
このように、本気でインフレ・物価抑制に取り組んでいるとは見受けられないのであります。総理は、公正取引委員会を質量ともに強化することについてどのように考えておられるのか、お答えをいただきたい。
また、今回、公取は、株式保有など巨大化いたします総合商社のわが国経済に対する支配力強化についてメスを入れようとしているようであります。新しい財閥の形成という事態の出現に対して、はたして本気でこれに対処する意思が政府にあるのかどうか、総理の方針をただしたいのであります。
第二は、当面する最大の国民的課題である物価についてであります。
政府は、総需要の抑制を呼号しながらも、物価は暴騰する一方であります。インフレ・物価の抑制について、その時期的あるいは今後の有効な具体策については皆無であると言わざるを得ません。昨日の衆議院における答弁を聞いても全くあいまいであります。一体、政府は、物価鎮静化のおよそのめどをいつごろに置いているのか、その具体策は何であるのかを明示すべきであります。
政府は、あたかも地球上すべての国が物価高で悩み、石油危機が今日の異常な物価上昇を招来しているのだ、かような印象を国民に与えようとしておりますが、それは基本的な問題把握に誤りがあると言わざるを得ないのであります。
今日、わが国の物価上昇は、本年一月上旬の前年同月比で卸売り物価は三〇%をこえております。昨年末の消費者物価は一七%と、いずれも主要国で最高の上昇率となっているのであります。石油原油の値上がりはこれに追い打ちをかけたが、物価高騰の原因は、基本的には、積年の高度成長政策のもとに、一昨年来の過剰流動性の放任、土地・株への投機、土地対策・インフレ対策なき列島改造論の宣伝、第一次円切り上げのデフレ効果の過大視、不況カルテルの継続等、政府の経済政策の失敗によるものであります。政府は、この際、過大な利益を得たものに対しては、超過利得税あるいは法人税加算等を立法化し、今後については、企業経理内容の公開、企業利潤適正化法等によって、総理の言うように、正直者がばかをみることのないようにすべきではないか。政治献金をあきらめていけば、こういう立法等は政府提出で可能ではないのでしょうか。総理、大蔵大臣の所見をお伺いいたします。
また、この際、緊急に福田大蔵大臣の所信を伺いたいのでございますが、昨日、外為東京市場を見ますと、一日で七億ドルとなっております。日銀が盛んに買いささえをしてまいりましたが、世界の見るところ、この買いささえは続かないだろう、こういうふうに伝えられております。これはどこまで行くか。円の暴落、ひいては輸入等に大きな影響を持ち、国内消費者物価に値上げ方向での影響を持つわけであります。これが対策を含めてお伺いをいたします。
第三は、インフレの犠牲を常に受けてまいりました勤労大衆の生活を少しでも救済する、こういう方途として、四十九年度財政の福祉転換、大幅減税、社会保障の充実、教育費など国民負担の軽減、その他課税外支出の緩和等、きめのこまかい政策を実行に移すべきであります。
政府は、一般会計では公共事業の伸び率がゼロであり、社会保障費は三六・七%の伸びであることをもって、福祉重視の予算である、としておりますが、その実は、社会保障費の増加の大半は、実質的な福祉の向上ではなくて、単に不十分なインフレ調整に終わっているのであります。わが国の社会保障制度は欧米先進国並みに整備されたというのが政府の見解でありますが、わが国の財政支出に占める社会保障費等移転的経費を欧米諸国と比べてみますと、その水準は著しく低いのであります。制度というワクはともかくといたしまして、その質的水準は先進国に約三十年立ちおくれているというのが通説となっております。
また、今次二兆円減税なるものを見ましても、実質は一兆二十億円にすぎません。自然増収は三兆六千八百億です。この減税の内容も、税率の緩和に重点を置いて、いわゆる金持ち減税に終わろうとしております。資産所得者の過度の優遇による不公平の是正は何ら手をつけないままとなっているのであります。
社会党は、このような政府物価調整的金持ち減税案の対案として、所得減税では四人家族で給与所得者二百三十五万円まで、事業所得で百六十八万円まで、一方、住民税のほうでは、給与所得者で百八十七万円まで、事業所得者で百二十一万円までを無税となるように減税の構想を明らかにしております。中所得層以下の階層こそ、激しい物価上昇の波を真正面から受けて、生活の危機にさらされているのであります。これを減税の手段によって救済すべきでありますし、また、それこそが政治の責任とも言うべきであります。総理並びに大蔵大臣の所信をお伺いいたします。
次に、来年度千六百八十億円に及ぶ膨大な地方交付税財源を国に留保することにしている点であります。かつて昭和四十三年度から四十五年度までの三カ年にわたり、地方団体の固有の財源であるはずの交付税を国に留保したことについて、国会で時の福田大蔵大臣は、このような臨時異常の措置は、私もはっきり申し上げておるのですが、もうこれで終止符を打ちたいと、こう言明しているのであります。ところが、その後四十五年度予算において再度地方交付税の減額を、第三次佐藤内閣の福田大蔵大臣がこれを強行したのであります。これに対しまして参議院地方行政委員会では、地方交付税の一部を国に留保する措置を解消すべしとの決議が行なわれたのであります。しかるに、政府は、四十八年度補正予算に続いて、来年度予算においても、再び国会の意向を無視してこれを断行し、一般会計予算規模の伸び率を二〇%以下に押えることとしているのであります。これらについて福田蔵相にお伺いするものであります。
次に、総理は、施政方針の中で特に教育問題に言及しておりますが、教育は国の諸施策の基本的問題でありまして、青少年教育のあり方いかんは今後のわが国の発展にとって重大な影響をもたらすものであります。しかるに、今日のインフレ下においては、私学はまさに重大な危機に直面しているのであります。これを国立との比較において見ると、大学では、その学校の数において私学は七三%を占める二百九十校、学生数では七六%を占める百十五万九千人であります。また、在学者一人当たり教育費は、国立の六十万八千円に対して私学はわずかに二十七万九千円と、国立の四六%にすぎません。さらに、本務教員一人当たりの学生数をとって見ますと、国立は八・四人、これに対して私学は三十一人と、国立の三・七倍になっております。そのほか、校地、建物、研究諸施設、設備等においてはさらに大きな格差があるのであります。また、国の予算から見ても、学生一人当たりの国庫負担額は、国立の七十万円に対して、私学は一万七千円と、国立の約四十分の一にすぎません。このような実情から、私学においては、インフレ、物価高の影響をもろに受けて、人件費は学費収入のほとんどを引き当てなければならない結果になっているのであります。総理の言う教育の刷新、充実はとうてい望めない状態であります。そのために、勢い、大幅な学費の値上げをせざるを得ない。これがまた大学紛争の導火線ともなっているのであります。そこで、政府は、父兄の教育費二重負担を解消し、教育の環境と水準を維持向上させるために、人件費のみならず、施設設備を含め、国立に準ずる私学の国庫助成を断行すべきであると考えますが、総理と関係大臣の所信をお伺いしたいのであります。
また、大学の運営に関する臨時措置法について、総理は衆議院においてまことにあいまいな答弁でございました。この際、この存廃等について所信をお伺いいたします。
第四は、田中自民党内閣の外交政策についてであります。
総理は、訪中を皮切りに一連の外遊をいたしましたが、今次東南アジア各国の歴訪について見るとき、戒厳令下のフィリピンは論外といたしまして、タイ、マレーシア、特にインドネシア、ここにおける反日感情には大いな油を注ぎました。あらためて世界に深刻な排日、反日、こういう根強さを喧伝する結果となってしまいました。在外邦人に肩身の狭い思いをさせたのみならず、わが国の将来にとってまことに遺憾と言わなければなりません。膨大な外交機関を持ち、それぞれ現地には大使などが駐在していまして、かかる事態が発生することは容易に予知し得たにもかかわらず、インドネシアにおいてはただいまのところ十名の死亡者と多数の重軽傷者を出し、一方、日本製を含む自動車の焼き打ちは、現在わかっているだけでも三百六十三台といわれております。一国の首相の外遊については、慎重の上にも慎重を期し、かかる事態の発生することのないよう対処すべきであったと考えるのであります。思うに、エコノミックアニマルといわれているごとく、利益追求のためにはなりふりかまわず発展途上国の経済を撹乱し、街頭あるいはテレビを通じての猛烈なコマーシャル、かって気ままな名ばかりの経済援助は問い直されるべきであります。同時に、東南アジアのみならず、金大中氏事件の処理がうやむやの中に処理されたあの韓国を含めて、わが国の経済援助がその国の民衆にとって好ましくない政権の維持のためのものであり、さらに腐敗の助長、貧富の拡大など、その意に反して逆効果を招来しております。このことは、政府に経済協力に対する基本理念が欠除し、明確な経済援助計画もなく、ましてや貧しい大衆の役に立てるための十分な事前調査も行なわれず、単に市場や安い労働力確保をねらって経済進出をはかろうとする姿勢にその最大の原因があると思うのであります。この際、確固たる理念に基づいて長期の援助計画を樹立し、喜ばれる経済援助が可能となるような制度を再検討すべきだと思いますが、総理並びに外務大臣の所見を、お伺いいたします。
また、アラブ産油国につきましても、国連安保理事会決議の二四二号、すなわち占領地からのイスラエル軍の全面撤退、この決議に賛成はいたしましたが、対米追随外交はイスラエル寄りの外交となり、産油国側に日本外交に対する不信を招き、その結果、不利な扱いを受けたと見なければなりません。政府は、昨年十一月二十二日に至り、急遽閣議において油ほしさのアラブ寄り外交を表明し、現在一応友好国扱いとなっているものの、具体的な対イスラエル政策の実効を見きわめた上で検討し直されることになっております。過般の友好国扱いが固定化したものと見るのは誤りであります。したがって、政府は多極化せる今後のわが国外交政策の基本方針と、その一環としての対イスラエル並びに対アラブなどに対する具体的外交政策について、いかなる方策をとろうとするのか、お伺いしたいのであります。
第五は、中小企業と農林漁業対策についてであります。
大企業においては、三月期決算は、便乗値上げなどによりまして売り上げ、利益ともに膨大な額が予想されております。その反面、中小企業は悪性インフレの直撃を受けております。加えて公定歩合の引き上げ、金融引き締めによる資金難、石油危機も加えての原材料の値上がりなどによりまして倒産が激増しておるのであります。今後もさらに深刻な事態が予想されております。この際、これらを防止いたしますために、中小企業に対するつなぎ資金、運転資金を中心に低利長期の資金確保と融資ワクの拡大をはかるなど、適切な施策をすみやかに講ずべきと思うが、その具体策をお示しいただきたい。
また、農林漁業についても、石油の供給削減や価格の上昇は深刻な悪影響をもたらしております。たとえば、ビニールハウスのビニールや、あるいは施設園芸用の石油、漁船その他陸送用の石油の不足を招来し、物価高を誘発しているのであります、政府は、これらに対する増配などを含め緊急に抜本対策を講じ、農水産物の供給体制について遺憾なきを期せられるように強く希望いたしますとともに、具体的措置について総理の御所見をお伺いいたします。
最後に、今日、悪性インフレ、物価高、石油問題が大きくなった反面、公害対策、衆参両院議員選挙区定数是正等の問題が政府の施政方針演説の中では軽視されております。しかしながら、これらは依然として早急な対策を講ずべき重要な問題と考えるのであります。参議院は本国会終了直後半数改選となります。地方区定数については、宮城県、岐阜県あるいは東京をはじめその他多くの府県について定数のアンバランスを生じております。次期選挙には、総理の言うように改めるべきは改めるという意味からも、これが改正をすべきであると考えるが、総理の決意をお伺いいたします。
また、公害対策については、昨年六月に水銀等対策推進会議が設置されましたが、今日までわずかに三回の会議が開催されたにとどまっております。具体的措置は遅々として進行していないと見受けられるのであります。これが今後の具体的実施計画並びに日程等についてお伺いをいたします。
さらにまた、公害問題と今回の石油危機により、省資源・省エネルギー政策の推進を政府みずからも叫んでおりますが、社会党は、これを国民福祉の向上と両立させながら推進するとともに、長期展望に立ちまして、環境の保全や生活環境整備など国民生活を優先し、輸出優先の工業生産を改め、また、無秩序な交錯輸送によるエネルギー資源などのむだをなくするために、日本を三ないし四ブロックに分け、装置工業製品を中心としたブロック内自給度を高めることを基準にいたしまして産業構造の転換を主張しているものであります。政府においては、省資源・省エネルギー政策を進めるために、具体的にどのような産業構造を考えているのか、また、どのように転換しようとするのか、総理、通産大臣にお伺いをいたします。
以上、当面する主要な問題点を指摘してまいりましたが、要するに、田中自民党内閣に対する政治不信、ひいては政治そのものに対する国民の不信感は、いかなる政策も実効が期待できないところに実は最大の危機があると思うのであります。
われわれ日本社会党は、当面するこれら諸問題に対しまして、国民の声を十分に受けとめて、本国会におきましても国民の期待に沿えるようこん身の努力を払うことをここに表明して、私の質問を一応終わるものであります。(拍手)
〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/12
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013・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 藤田進君にお答えをいたします。
まず第一に、物価に対する政治責任等に対しての御質問でございますが、物価高騰の要因は、国際的国内的諸要因に加えて、今次石油の供給制限と輸入価格の上昇がこれに拍車をかける結果になったわけでございますが、端的に申し上げますと、過去十年間世界の主要工業国の卸売り物価は三・五%ないし四・五%という水準で維持してまいりましたことは御承知のとおりでございます。しかし、日本は、これに比べまして十カ年平均で一・三%という低位に押えられてまいりました。そういう意味では、資源を持たない日本が、資源を持つ国々、また資源は持たなくとも戦前の特殊な関係を持ち関税政策その他ではるかに優位に立っておる国々よりも低い物価水準で押え得たということは、日本人の勤勉性その他によるものだと考えておるわけでございます。しかるに、四十七年から四十八年にかけての急速な卸売り物価の上昇の要因は何かということは、これはまあ世界各国で議論をせられておるように、国際的な物価要因が直接影響しておるのでございます。特にその場合は、日本は資源の大部分を外国に仰いでおるということで、資源が上がれば卸売り物価が高騰するということに直接響くわけでございまして、他の主要工業国の卸売り物価上昇率よりも日本のほうが今度ははるかに響く率が大きくなったということでございます。その直接の要因は、御承知のとおり、ソ連、中国、インドというような地球の中で大きなほとんど人口の半分を占める大幅な帯のような状態の地域が二年間にわたって食糧の大不作であり、ソ連といえどもアメリカから年間二千万トンの小麦を急遽買い付けなければならないというような事態が、国際的に直接物価高を招来をし、日本の卸売り物価を押し上げる主力となったことはいなみ得ない事実でございます。まあやっとこの地帯の農産物も史上最高の豊作というのでやれやれと大体考えておったと思いますが、そういう状態に突如として起こったのが中東戦争の勃発でございまして、石油の供給を受けておる国々がすべて影響を受けておることは当然でございます。しかも、外国からわずか四%しか石油を受けておらないアメリカでもあのような規制を行なっておるのでございますが、そのほとんどのすべてを外国から受けておる日本といたしましては、抑制を受け、しかも価格の高騰が直接国内の物価問題に影響することは、これは当然でございます。しかし、制限を受けるというのは、十二月、一月、これから影響が出てくるわけでございまして、いままでは世界で産出する三十億トンのうちの一割、三億トン近くを輸入しようという産業構造そのものにも問題はあったにはしても、いずれにしても、いままでの状態から考えると、流通経路にも相当な物資があることは事実でございます。ただ、石油が抑制を受け石油の値段が上がると、電力の消費が押えられ、生産が抑制され、需給のバランスがくずれる。だから先高を見越しての売り惜しみ、買いだめというような状態が調整され未然に防げれば、物価の問題に対しては大きに寄与できるわけでございまして、政府は、緊急三法の立案等をいただいたわけでございますので、国民の支持と理解を得ながら、十分なる成果をあげてまいるように全力を傾けてまいりたいと考えるのでございます。まあしかし、私が申し上げたいのは、戦後のもっともっと困難なときでも日本人は理解をし合って乗り越してきたわけでございますから、それとは比べものにならないほど豊かな生産力を持ち、そして在庫も、流通経路にも品物を持っておるのでありますから、お互いが憎しみを覚えたり反発をし合ったりするような状態を起こさないような国民的理解の中で物価問題は解決をしなければならない、戦前の強制割り当てや切符のような避けがたいような状態をつくらないように最善の努力を尽くしてまいりたいというのが政府の基本的な姿勢でございます。
第二は、鉄道運賃及び米の政府売り渡し価格など、半年といわぬで一年間も延ばしたらどうかという御提案でございます。まあしかし、財政負担も要することでございますので、それ以上に延ばせるかどうかわかりませんが、あのぐらい慎重な御審議をいただいたものをまた半年間延ばしておるのでございますから、政府の物価に対する意のあるところもひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
それから政治資金につきましては、金のかかる選挙制度というものをこれをひとつなくさなければならないということで政治資金の規制ということに対してはお互いが考えておりますが、過去何回も国会に提案しながら審議未了になっておるということは御承知のとおりでございます。政治資金規正法の問題だけではなく、選挙制度、選挙の定数、それから金のかからない清潔な国民に理解できる政治資金規正法というものを一緒に出すべきだということは、過去二十四年間権威に集まっていただいて第七次答申まで得ながら、国会の審議にゆだねてすべては国会できめていただこうと思っておったにもかかわらず、国会に提案にも至らないということは、はなはだ遺憾でございます。しかし、少なくとも、これらの問題は、日本の民主政治体制、議会制民主政治を守る基本ともなる問題でありますので、これからも真剣に考えてまいりたいと思います。
また、企業から政治資金を受けないように努力をしなさいと、それはもう当然のことでございます。同時に、政治資金の問題については、これは審議の過程において指摘をせられたように、労働組合活動の名において現実に政治活動をしておるものもあわせて検討すべきである、こういう問題もあるのでございまして、ただ一方の角度からだけ政治資金問題を取り上げられる問題ではありません。日本の民主政治体制をどうするかという基本的な問題として、広い角度から政党政派を越えて、みずからの利益や損失というものを越えて、後代百年のためにこそ制度の完備をはかっていかなければならない問題である、こう考えます。
第四は、独禁法の問題でございますが、御承知のとおり、独禁法上、公正取引委員会はその職権行使の独立性が保証されておりまして、政府としてもこれを従来から十分尊重いたしておるところでございます。
また、公取の権限強化につきましては、現在、法改正を含めて検討しておると聞いておりますので、政府といたしましてはその結果を見ながら対処してまいりたいと考えておるのでございます。
総合商社の支配力強化等の問題に対して御言及がございましたが、公正取引委員会は、商社の動向及び実態の把握につとめ、その行動に競争政策上問題となる点がないかどうか、要すれば商社の株式所有自体についても規制を加える必要の可否について検討をいたしておると聞いておりますので、私も関心を持っておるところでございます。
なお、超過利得の問題についてでございますが、企業が目先の利益にとらわれて便乗値上げや投機的行為に出ないよう強く自制を要請いたしますとともに、かりにこれらの不当な行為等によって過大な利益を得たものに対しましては、関係法規の厳正な運用をもって対処してまいることは、すでに申し上げておるとおりでございます。しかし、なお超過利潤規制につきましては、政府部内でも検討を続けておりますが、与野党の間においても研究を続けておられるようでございますので、いずれ結論を出してまいりたいと思うわけでございます。
なお、企業の経理内容の公開や企業利潤適正化法の制定という御提案については考えておりません。
それから課税最低限につきましての御質問がございましたが、課税最低限につきましては、来年度の所得税減税におきまして、夫婦子二人、いわゆる標準世帯の課税最低限を現在の百十五万円から百七十万円にということにいたしましたし、独身の給与所得者の場合、現行四十五万円から七十七万円というところに引き上げることにしたわけでございます。また主要国の課税最低限を夫婦子二人の給与所得者の場合で申し上げますと、アメリカが百二十九万円、イギリスが七十九万円、西ドイツが八十七万円、フランスが百二十六万円というものに比べて百七十万円ということでございましたし、野党の皆さんもせめて百五十万円にすべしという御提案を半年前になさったわけでございますので、野党の要請にも十分こたえたということでございます。(拍手)
次は、私学の助成についてでございますが、わが国の高等教育における私学の役割りと私学経営の状況、父兄負担の問題等に特に配慮し、四十九年度におきましては私立大学等経常費助成を大幅に拡充し、対前年度比四七・五%増しの六百四十億円を計上いたしておるわけでございます。しかし、これをもって足れりとしておるわけではないわけでございまして、今後、高等教育における国・公・私の役割り、分担等の基本問題を含めまして、国の助成のあり方等も慎重に検討してまいりたいと考えておるわけでございます。
大学管理法の問題を一体どうするのかという御質問でございますが、今日、大学の運営に関する臨時措置法が施行された当時とは実態が変わってきておりますが、学園内における党派的対立や暴行等の威圧行為により正常な教育研究が阻害されている事例は少なくないのであります。このような事態を防止し、学問の府にふさわしい秩序ある学園環境を確立するためには、大学当局の努力を助けるための何らかの法律は引き続き必要だと考えておるのでございます。しかし、大学の運営に関する臨時措置法の廃止期限までにはまだ期間もございますので、皆さんの声を十分お聞きをしてまいりますし、実態も十分まだこれから検討しながら慎重に対処してまいりたいと存じます。
それから政府の外交や経済政策等についての御質問でございましたが、詳細は外務大臣からお答えをいたすことにいたしますが、わが国の援助が量の面で拡大し質の面で改善されるにつれ、これまで以上に長期計画を策定し、効率的、機動的に援助を実施していく必要が生じておることは、御指摘のとおりでございます。まあ、今度ASEAN五カ国を回りました結果につきましては、いろいろ指摘をされるものもございます。特にインドネシア訪問のときにおいて、ジャカルタにおいて起こった問題に対しての御言及がございましたが、これはいろいろな示唆を含むものだと考えておるわけでございます。それは日本の企業進出に対しては確かに問題もございますし、経済——お互いの交流が拡大をすれば摩擦も起こってまいります。日本とアメリカの間に、一年間の貿易の四〇%がアメリカと日本との間に起こる貿易だというと、一年間に四十二億ドルもインバランスの問題が起こってくれば、日本とアメリカにおいてさえあれだけの摩擦が起こるわけでございますから、少なくとも、人的、経済的、文化的交流が拡大していけば、ある種の摩擦というものが起こり得るのはやむを得ないことでございますが、これを未然に起こさないように配慮をしなければならぬことは当然でございますし、特に日本人の経済活動その他わがほうに起因する問題で摩擦を起こす面がありとせば、これが除去に対して、われわれ日本人全体、特に政府が全力をあげなければならぬことは申すまでもないのでございます。
しかし、率直に申し上げると、日本人の経済活動ということに対して私は五カ国で共通に指摘されたことは、たった一点であります。それは、日本人の活動はわれわれの国々にとって絶対に必要である、だから、今度の騒動のようなことを契機にして、日本との経済交流の道が閉ざされたり、日本から輸出をするようなものがもしとめられるようなことになったら、これこそたいへんである、ですから、今度の問題を契機にしても、お互い二国間、ASEAN五カ国との間における日本との交流というものは拡大、密接化に努力をすべきであって、これがお互いの疎外感をつくらないように両国は十分配慮をしてもらいたいというのが、これはもうほとんどの人々の念願でございます。なぜならば、日本は、石油とか、ガスとか、木材とか、いろいろなものをASEAN諸国、いわゆる開発途上国から輸入をしなければならない立場でございます。同時に、日本から鉄鋼やそれからアルミの原材料やまた肥料が届かない場合のアジアの国の混乱は、それはもうたいへんなのでございます。いまでさえも主食が非常に困っておるというところに、五十万トンの要求に対して、既契約三十万トンの肥料の輸出ができても、あとの二十万トンの肥料の輸出ができなかった場合を仮定する場合は、それはジャカルタに起った学生騒動のごときものでは済まないのであります。そればかりではなく、いま日本から行っておる原材料の中で、動いておる生産施設の九〇%は日本から原材料を供給しておる企業もございます。七〇%、六〇%、最低でも三五%の原材料は日本から供給しておるのでございますから、日本に対する石油の供給が削減されて生産が落ちて、これらの原材料が東南アジア諸国に供給されない場合には、稼働しておるいまの生産施設がほとんど稼働休止をするわけであります。いまでさえも就職の場がなくて問題が起こりつつある東南アジアの現状を見るときに、お互いは理解をしながら、この事態の認識の上に立って、どんな苦労をしても、国内に供給すると同じような好意をもって計画的供給をしてもらいたい。そのかわりに、シンガポールなどは、自分の国内における石油の需要を抑制しても、日本に対するナフサの供給は確保いたします。全くギブ・アンド・テークであって、日本人だけが日本の面で考えるような状態で東南アジアを見ることはできないと思うのでございます。私は、そういう意味で、わが国が開発途上国の開発のため負うておる責任は完ぺきに果たしてまいらなければならない、このように考えております。ただ、経済的なプロジェクトだけではなく、農業、医療、社会、また教育その他全般の問題に対して、計画性のある、お互いの国民が理解ができ、そうして日本の援助や協力に対して真に評価ができるような体制がつくられることが望ましいし、政府も努力を続けなければならないということは事実でございまして、これはもうはだに感じてまいったわけでございますし、また、東南アジアを回ってこられた方々も、同じ日本人ですから、私と同じことを聞き、同じことをはだに感じてこられておるはずでございます。そういう意味で、ひとつ事実をよく認識をして、東南アジアを含めた世界各国との交流、外交の基礎を確立してまいる必要があると考えるわけでございます。
中近東アラブ諸国に対しては三木副総理を派遣いたしましたし、また、中曽根通産大臣を派遣したり、両国の交流というものに対してはより幅を拡大し、厚みを増す真の友好的な状態をつくり上げてまいりたいと、こう考えておりますし、中東問題を合理的、早期に解決するためには努力を続けてまいりたいということは、御承知のとおりでございます。
中小企業対策に対しての問題でございますが、これはもう特に中小三機関の貸し出し規模の拡大の問題、無担保無保証の小企業経営改善資金貸し付けの資金量の大幅増加、貸し付け条件の改善等、四十九年の予算においても努力をしておるわけでございますし、一面においてドルショック以来、中小企業や零細企業というものに与える影響をおそれたあまり、とにかく中小企業を守ることが先決であるというために金融、税制その他大幅な緩和処置をとったということは、そのために幾らかインフレを助長したんじゃないかという議論が存するほど努力をしておるわけでございますから、これは与野党を問わず政府も一丸となって、世界に例のない中小企業、零細企業対策に取り組んでおるんだということは理解していただきたいと思うのでございます。
また、税制面におきましては、所得税の大幅な減税、中小法人に対する法人税率の据え置き、その適用範囲の拡大等の処置を講ずるほか、地方税につきましても個人事業税における事業主控除額の引き上げを行なうなど、こまかい配慮をいたしておるわけでございます。
また、農林漁業の問題につきましては、農林漁業用の石油については、その適正な必要量が確保されるよう特別な配慮を行なっておる次第でございますし、肥料をはじめ農林漁業用資材の確保につきましても、関係省間で十分連絡協議をさせて、遺憾なきを期するつもりでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、日本の国内の農林漁業用の問題に対して確保するとともに、ほんとうに日本の援助協力を待っておる世界各国の開発途上国、特に東南アジアの国々に対する農林漁業用の資材及び肥料等の輸出確保に対しては最善の努力をなすべきだと考えておるわけでございます。
定数是正の問題がございましたが、これはまあ、定数是正の問題はいままででもやってまいりましたが、万全のものではございません。衆議院の定数を五人のものを一人ふやして三人区を二つにしたというようなものはやってはまいっておりますが、不均衡是正ということは、これはもう前々から御指摘のとおりでございますが、これだけやってできるものではないのだ、これは制度全体の問題であり、政治資金の問題でもあり、政党は政党中心の政治をやらなきゃいかぬ。政党中心となれば、小選挙区となるのですが、小選挙区は絶対反対だと、こう言っているようなところに問題があるわけでございまして、まあそこらはひとつ十分お互いに研究してまいらなきゃならぬ問題だと思うのです。われわれの時代だけに国会制度があるのではなく、これから末長きにわたって議会制民主主義は維持してまいらなきゃならぬわけでございますから、そういう意味で、選挙制度の問題は、ひとつこれから国会審議中も、皆さんの御意見も聞きますが、政府の意見もひとつ十分聞いていただきたい、こう思うわけでございます。
それから藤田さんは、せめて今度参議院の定数だけでもということでございますが、これは衆参両院、両院あってはじめてのものでございまして、これを別々に取り扱うということは、これは均衡も欠きますし、なかなかむずかしい問題でございますのは、過去の経緯に徴しても十分御理解がいただけるところでございます。
最後は環境問題についてでございますが、豊かな国土と良好な環境を実現するために、公害を防止し、自然環境を保護する施策を強力に推進するという政府の方針にはいささかの変更もございません。四十九年度におきましても、従来に引き続き、下水道、廃棄物処理施設、公園等の生活環境施設整備の充実をはかりますとともに、大気汚染、水質汚濁等に対する対策の強化、自然保護の充実、公害防止技術の開発の促進等、施策の推進をはかるほか、公害健康被害補償対策を一段と充実させることによりまして環境保全に万全を期してまいりたい、こう考えるわけでございます。
残余の問題に対しては、関係大臣から答弁をいたします。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/13
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014・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) まず、超過利得税または法人税加算税制度の問題でありまするが、いま国民が物価問題を非常に心配しておるわけです。私もこの状態は狂乱状態だとまで言っておるんです。そういうときに、買いだめ、売り惜しみ、便乗値上げ、こういうことをあえてする人がある。その結果はもうけをする。私は、それに対しましては、これはもう国民全体だと思いますけれども、憤りを覚えておるんです。これに対しましては何らかの経済的制裁を加えなきゃならぬ、こういうふうに考えます。ただ、総理からも申し上げましたとおり、これを具体化するということになりますと、税の面で言うと、暴利と正常利益との区別をどうするか、あるいは消費者転嫁のおそれはないかとか、あるいは暴利を税として徴収する、そうすると、みんな使っちゃえと、どうせ国に取られちゃうんだ、使っちゃえということになったら、これはたいへんだろう。これは非常に心配ごとであります。そういうようなことで、まだ私も結論を得ないのでありますが、何かひとつみんなして考え合っていい結論を出したらいいものだと、こういうふうに考えております。藤田さんにおかれましても、何かいい考えがあったらひとつぜひ御教示願いたい、かように考える次第でございます。
税制改正についていろいろ御所見がありましたが、この問題は総理からもお答えがありました。私もこの問題はいろいろ考えてみたんです。こういう際に大幅な減税をする、これは物価対策と矛盾するんじゃないか、そういう意見もあります。しかし、いわゆる二兆円減税、これは国民が非常に期待を持った、それから物価騰貴で苦しんでおる、そういう被害を救済しなきゃならぬ、こういう問題もある。そこで、私も決心をしたわけであります。まあ大決心をしたつもりですが、百七十万円が限度である、こういうことであります。御理解を願いたいと思います。
それから交付税の問題でございますが、これは経緯につきましては藤田さんのおっしゃったとおりでございます。私は、その経緯を見るときに、まことに申しわけないと思う。しかし、今日は、総需要を中央も地方も抑制しなけりゃならぬ、その財政調整をしなけりゃならぬ。いろいろそういう臨時的措置としてひとつぜひとも御理解を願いたい、かように存じます。
それから円の問題は、これは国際収支がどうも不安定になってきておる、悪化してきておる、そこに問題があると思うんです。これを強化しなけりゃならぬ。これが根本政策である。そこで、私は、国際収支、これは物価と同じウエートの問題だと、こういうふうに考えまして、その強化の政策を進めたい、これで円の安定をはかりたい、かように考えております。
政治資金の問題につきましては、総理からるるお話がありました。御理解を願いたい、かように存じます。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/14
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015・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) まず、省資源、公害対策の問題でございますが、日本は一九六〇年代の石油の安いときに大量の石油を入れまして重化学工業化を進めましたが、その結果、公害問題と資源の浪費ということが出てきたわけでございます。われわれは、この結果について大いに反省をすると同時に、御指摘のように省資源化への政策を急速に進める必要があると思います。しかし、いわゆる知識集約型産業というものがどういう体系になるかというアウトラインがまだ世界的にも出てきておりません。コンピューターとかあるいは電子精密産業、たとえば電子顕微鏡とかあるいはさらに航空機産業——民間航空機のことであります、あるいはさらにデザイン等を中心にするファッション産業、そういうことが知識集約産業であろうといわれてはおりますが、これが露呈してくる——体系として出てくるにはまだ時間が多少かかるわけです。しかし、鋭意その青写真をつくる必要がございますし、それに向かって積極的な推進を行なう必要がございますので、私は、通産省の事務当局に命じて、すでにこの三月を目途に青写真をつくれと、そういうことを言っておりまして、鋭意作業しております。石油の問題でその見通しが若干撹乱されましたので作業は少しおくれがちでございますが、これが一応素案としてできましたら、産業構造審議会に提出して御参考に供したい、産構審のいろいろな御議論を経て推進していきたいと、そういう考えでおります。
次に、水銀汚染の対策でございますけれども、これは環境庁長官から御説明があると思いますが、この会議をやりまして、暫定基準の作成、あるいは有明海における住民の健康調査、あるいは中小企業に対するつなぎ融資の実施、あるいは水俣等環境調査の実施、それから特に通産省の関係しておりまする苛性ソーダについて隔膜法への転換とクローズドシステムへの急速な仕事の完了、こういうことをやっておりまして、クローズドシステム化については昨年末で全部完了いたしました。隔膜法については五十年の九月までに三分の二完了する、五十二年末までには全部完了する、こういう計画で融資等の措置を講じていま鋭意やらしておるところでございます。
それから中小企業対策でございますが、御指摘のように、十月、十一月には倒産件数が八百件でありましたのが、十二月になりまして九百三十一件、八百台から九百台に上がってまいりました。そこで、この年末にかけまして約三千四百億円のプラスの資金を三機関を通じて出しまして、そのほか、民間金融機関についても中小企業に対する特別のワクの増配を要求いたしまして実施したところでございます。
それから個別物資に対するあっせんをやらなければならぬというので、塩ビ管とかあるいは丸棒とか重要な物資について、七つの物資についてあっせん相談所をつくり、また、石油につきましてもつくりまして、目下実施しておるところでございます。
それで、そのほか、例の小口の零細金融、無担保無保証、これについては昨年は三百億の予算でございましたが、ことしは一挙に千二百億円に上げまして、設備資金のワクも百万円であったのを二百万円にことしから上げる、期間も二年であるのを三年に上げる、こういうふうな前進をことしからやるつもりでおります。
なお、中小企業関係の予算、人員につきましては、中小企業庁に小企業事業部というものをつくりまして、零細中小企業関係にことしから大いに政策を強化するつもりでおります。予算につきましては、昨年度は中小企業庁、中小企業関係の予算が八百億円台でございましたが、ことしは千二十一億円、政府全体の予算の規模は一九%アップですが、中小企業については二七・一%アップにいたしました。三機関の融資のワクもことしは二兆二百三十三億円の予定でございまして、これも昨年に比べて二一%増というふうに手配をしております。
政治資金につきましては、これはできるだけ自粛して国民から誤解を受けないような措置をやるべきであると考えまして、総理の御答弁のとおり、われわれも自粛してやっていきたいと思っております。(拍手)
〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/15
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016・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) 経済援助の基本姿勢につきましては総理からお答えがございましたが、政府といたしまして、正直なところ、ただいままでの経済援助は、工業化にやや力点が置かれ過ぎた思いをいたしております。したがいまして、政府演説でも申し上げましたとおり、今後、その重点を農業、医療、教育、通信、民生等、福祉の方面に移すように努力をしてまいるということと、それからこの条件の緩和につきまして特段の配慮をするということは、申し上げたとおりでございます。
それから藤田さんは、発展途上国の援助について、わが国として長期計画を樹立する必要があるのではないかという趣旨の御質問がございました。仰せの趣旨は、よく理解できますけれども、開発途上国の開発の現状、その計画能力、援助要請の内容、国際経済の動向、それからわが国の財政事情等というのは、なかなかこれは計画化してまいるということになりますと非常に困難を伴うことであろうと思います。しかし、政府としては、そうした条件を十分吟味しながら、いわゆるあなたの御質問される長期的ビジョンのもとに、総理がおっしゃったように効率的で機動的な実施をはかっいてかなければならぬと考えております。
それから中近東政策に関連いたしまして、アメリカとの関係について言及がございました。われわれがとりました中近東政策というのは、われわれの対米政策と一向矛盾いたしていないわけでございます。その点につきましてはアメリカ側もよく了解をいたしておるわけでございますので、対米政策と中近東政策がばらばらになっておるということでは決してないということを御了承いただきたいと思います。
それから政治資金の問題につきましての関連しての御質問がございまして、現行法のもとにおきまして、私ども、公明な調達と公正な使用という点に慎重にいたしておるつもりでございますし、今後も注意を傾けてまいる所存でございますが、しかし、これを一切断わるというような考えは持っておりません。(拍手)
〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/16
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017・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 藤田議員にお答えをいたしますが、第一点は、水銀等汚染対策推進会議というものがあんまり遅々として実効がおくれておるというような御批判でありましたが、政府のこういう会議としてはこの推進会議は実効をあげておる会議だと私は信じておるわけでございます。いままで水銀等汚染に関する対策というものは、この推進会議できめて、それを実行してまいりましたが、一つの問題は、この海域あるいは水域にたまっておるヘドロ、これを除去するということが、汚染の禍根を断つと申しますか、必要であり、そのために暫定の除去基準というものをつくって環境調査を全国的にやっておるわけであります。したがって、暫定基準をこえておる富山湾であるとか、有明海、水俣湾、徳山湾、あるいは酒田港、こういうものに対しては、早急にヘドロ除去に着手する予定であります。また、それ以外の水域、海域においても、基準をこえておるものに対してはこれを除去したい、そして汚染というものを根本的に除去していくことが必要である、こういうことを今後やっていきたいと思っております。
第二点は、政治資金の問題であります。
政党の近代化と関連して、政治資金というものに対しては検討を要すべき問題であると私は考えております。しかし、現在のところは、やはり、政治資金というものは節度を持つこと、もう一つはそれが公正な明朗なものであるということで、いやしくも国民の疑惑を受けることのないように心がける必要があると考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/17
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018・河野謙三
○議長(河野謙三君) 藤田進君。
〔藤田進君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/18
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019・藤田進
○藤田進君 答弁を承りましたが、議場お聞きのとおり、全く実のない、これ以上の期待はかえってむなしいかと思いますが、なお数点について要約して再度お伺いをいたしたいと思います。
私が総理に伺いましたのは、政治資金規正法の改正云々、これではなくて、むろん必要ではございますが、衆議院の昨日来の答弁を聞いてみて、それよりもむしろ、当面指摘いたしましたごとく、いかにも膨大な政治資金を徴収している、このこと自体を問題にしたのであります。これに対して、福田大蔵大臣その他、総理がるる申し述べられたようにと言ってみな逃げていきました。総理はるる何も言っていないんです。何も言っていないんです。組合などがどうだという捨てぜりふを残して下がったにすぎないのです。組合は確かに今日いろいろございますが、一人が百円とか、あるいは千円とか二千円くらい、三年に一度か、そういった個々のものを私は論ずる必要もないし、弊害もないと思います。今日、不当な利得をあげ、膨大な資本を擁して買い占めたり、そういうものから大量の資金を吸い上げておいて、おまえもうけ過ぎだ、超過利得を取るぞなんというようなことが言えないでしょう、案外それは義理も人情もない人で言えるのかもしれませんが。私はそれを問題にしている。それが今日の物価高の大きな弊害の一つだということを言っているのです。一体、これからも皆さん続けるのかどうか。三木さんは若干前向きなことを触れてはいましたが、まあ明朗に取り明朗に使えばいいんだと。量は幾ら取ってもいいとは言わなかったけれども、これは量が問題なんですよ。われわれと同じように国会議員としての歳費も取っている。総理大臣だから日常政治資金が月に一億余り入っているわけですが、所得税は払っていない。しかし、やめた佐藤さんも、金額はまあ披露いたしませんが、今日これまた莫大なものですね。ですから、一連のそういうものがいかに政治を毒し、日本のいまの経済を毒しているかという点を指摘し、これをひとつ改めてもらいたいということを申し上げた。再度ひとつ御答弁をそれぞれいただきたいと思います。
それから過剰利得についてでありますが、これは総理並びに福田大蔵大臣は全くあいまいもこであります。経理は公開しない。私は、テレビや新聞に公開しろと、そんなむちゃなことを言っているんじゃないです。超過利得があるかどうかということを査定するためには、それ相当の信頼と権威を持った機関が経理を逐一検討し、そういう意味では、やはり企業内だけでない、公開をしなければ、これを査定することは困難でございます。このことが非常に大切になっております。それぞれ物価を上げてきますが、はたして原価は幾らかということは、これはもう極秘中の極秘なんじゃありませんか。
それから定数是正、簡単に申し上げれば、かりに北海道と東京、東京は日本の総人口の一割、一千百万、だからこれを参議院の定数の一割出せ、そんなむちゃなことをいま言っているんじゃないです。北海道のほぼ倍の人口を東京都は持っている。だから、北海道と同じ四人ではこれは全く不都合じゃありませんか。岡山県よりはうんと人口の多いところが、宮城だ、岐阜だ、あるんです。少ないところが二名で、人口の多いところが一名なんということは、何としても不合理じゃありませんか。これが衆議院との関連でどうだと、そういうことは遁辞にすぎません。もっと論理的にひとつ国民を代表するという代表権等の見地からも考えてもらいたい。
それから超過利得について、良策があればと。良策があるからこそ三点を示したのであります。これは昨日来政府委員も大ぜいやってきて、詳しい説明をしてあなたにレクチャーしてあるんです。あるから示したんです。これについてはひとつもっと真剣に取り組んでいただきたいと思います。
要は、以上、再度お尋ねいたしますが、なお予算委員会並びにそれぞれの委員会でメスを加えていく必要があることを痛感いたしました。(拍手)
〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/19
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020・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) お答えをいたします。
政治資金そのものにつきましては、これは議会制民主主義、民主政治そのものの根本に関する問題でございますから、十分に慎重な配慮をしなければならぬことは申すまでもありません。しかも、戦後占領軍のメモケースの尤なるものといわれておったこの両院制度でございますが、定着をしておりますし、選挙法そのものや政治資金規正法というようなものはやっぱり日本に適合するような状態に改正せられるべきだということは、これは申すまでもないことであります。ただ、御承知のとおり、政治資金規正法というものは、ただ感情論や何かでちょっとの現象論や感情論だけで考えられるケースのものでないというのは、この法律制定の過程を見れば、国会の記録に明らかなはずでございます。これはメモケースの非常に強いものでございましたが、日本政府がこれを受け取ってもなかなか国会の提案——政府提案にできない、議員立法でもって提案すべきではないかというように慎重に配慮をした結果、政治資金規正法ができました。ただ、そのメモにもございましたように、また審議の過程にあったように、国民は——主権は在民でありますから、国民は直接投票によって権利を行使する道もあります。政治活動を援助するという方法における間接的な政治参加の方法もあります。資金提供という間接的な提供も有力な民主政治を守る手段であると。ただ、それはあくまでも主権者の前に公開をされることによって最終判断は主権者である国民が判断すべきであって、政府がこれに介入すべきではないと、こういうのが政治資金規正法の一番初めからの精神でございますので、その意味で、政治資金規正法の改正案というのは、お互いが何回も議論をして国会に何回も提案したじゃございませんか。しかし、提案をすると、野党側は企業側の、企業側からのものだけを制約をしたい、そうすると、議論にあったように、労働組合の名において七十億も八十億も年に集めておるような、とにかく団体があるのですから、現実的に政治活動をしておるじゃありませんか。一人に二千円ずつを割り当てておる、これが当か不当かを裁判で争われておるというような問題さえあるのですから、こういう問題が問題になっては法律は成立をしないわけであります。そういう意味で、もう長い長い歴史を経て今日に至っておるわけでございますから、御自分の立場からだけではなく、百年の将来にわたる日本の民主政治、議会政治を守るために政治資金規正法はどうあるべきか、こういう考えでなければならないので、政府はそういう考えなんです。ですから、政府よりも、この立法の趣旨から言ってほんとうは議員立法であるべきなんです。成立の過程から言っても国会は唯一無比の立法府である、こういうのでございますから、与野党が話がつけば、これは議員立法が一番望ましいのでございます。そういう意味で、私たちは、この政治資金そのものに対しては国民の疑惑を招いたり、国民の信を失うようなものであってはならないというようなことに対しては、清潔な政治、国民の理解を得られるように十分な配慮をしておりますと、こう述べておるのです。それでもう、一つずつ出しては通りませんから、出すなら一括して、これはもう選挙制度、政党中心でなければ金のかからない政治はできなくなるわけですから、そういうものも全部一緒に国会の議題といたしたい、こういうことを考えておるわけでございます。
それから法人や企業から受けることによって弊害が起こらぬかというところが、藤田さんが一番御心配になっておるところであります。それは、行政が受けておれば、やはりまあ気は心というようなことで何か行政執行に対して制約を受けないかということでございますが、そういうことはいささかもあってはならない、こう、もう身を正しておりますから、そういう御心配はございません。
それから国民が——国民のほうから見まして、とにかくこういういろいろな問題があるときに、大きな政治資金というものが企業から出ることに対して民主政治そのものに対して批判が起こったら困るので、もう一切自民党は受けない、これは第三者の国民協会その他が——全くだれから金を受けたかわからない、それが行政や政治に影響しないと、こういうもう配慮を行なっておるわけでございまして、非常に民主政治や政治資金規正法の明朗化のためには努力をいたしております。
派閥は全部禁止したらどうかというのですが、これは派閥というよりもグループというものに対する、いろいろな学友関係とか、またいろいろな応援とか、これは国民の間接的政治に対する関与であるということで、いま外務大臣が一番最後に素直に述べましたが、国民的権利を制約してまで提供してもらうものを拒むという意思はございませんということであります。あくまでも受動的である、こういうことでなければならないということをひとつ御理解賜わりたいと思います。
また、公営をやってはどうかという議論が過去二十何年かありましたが、公営を完ぺきにすると、選挙は官営選挙になってしまって、これはもう形の変わった宣伝の選挙になる、これじゃ無所属の人はどうなるのか、こういうものになるので、そこまで議論をしなければならないほど重要な問題でございます。
定数不均衡の問題に対してもございますが、これはまあ藤田さんも十分御承知のとおり、参議院の定数は、確かに東京と鳥取県を比べれば相当違うじゃないかというような具体的な問題はございますが、これはその意味で全国区と地域制度に分かれたのです。そういう意味で、やっぱりただ人間の数だけではないんです。水を提供する、土地を提供する、資源を提供するというので、人間の数だけではなく、定数をきめるときには面積比率も加えるべきであるという有力な提案があったことは御承知のとおりであります。(「そんなものはないよ」と呼ぶ者あり)あります。そういうような状態で、これはただに地方区の数だけできめられる問題ではありません。これは全国区という、それを補完するために全国区という制度をとっておるわけでございまして、衆参両院あわせて一ぺんに考えないで——まあとんでもない不均衡のところはいままででも直したわけでございますが、現在の状態で千百万人に合うように東京都の定数を十五名にすればいい、二十名にすればいいというふうなものの結論が早急に出るものだとは遺憾ながら政府は判断しかねておるのでございます。
超過利得の問題については大蔵大臣からお答えをいたします。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/20
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021・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 政治資金の問題につきましては、これは量と質の問題があるのじゃないか、そういうふうに思います。
量の問題につきましては、これは政治資金がだんだんだんだんと膨大化しておる、これは御指摘のとおりであります。私はもう常々感じておるんですが、選挙に金がずいぶんかかる、かかるようになってきた。私は二十一年前に初めて代議士になりましたが、その当時の選挙状況と今日と比べてみますと、全く雲泥の差があるくらい金がかかるような状態でございます。私は、選挙と申しましても、二十日間、二十五日、その期間内という意味じゃないんです、常時活動を含めての意味でありますから。その辺に政治資金の膨大化してくる理由が、根源がある。これをどういうふうに是正するかというと、総理が申し上げたように、根本的には私は制度の問題がひっからまると思うのです。やはり私は、小選挙区制度あるいは比例代表制度、つまりその辺に政治資金の量的規制の根本問題があると、こういうふうに考えております。
また、質的問題につきましては、私は、これは制度の問題もありまするけれども、主としてはこれはまあ政治家の倫理の問題である、そういうふうに考えます。私といたしましても、今後とも量の面でも努力をいたしますけれども、特に質的側面につきましては世間から批判を受けることが絶対あってはならぬ、かような決意のもとに対処していきたい、かように考えております。
超過利得の問題につきましては、先ほど申し上げたとおりなんです。私も何とかしてこれを実現をしたい、経済秩序を紊乱するような者に対する制裁、これはぜひしたいのだ、こういうふうに思っておるのです。しかし、その方法をいろいろ考えてみましたら、まあそういう感情論を満足させるというメリットはありまするけれども、また先ほど申し上げましたようなデメリットがある。そういうことを考えてまだ結論に到達しないと、こういうのです。なお私も検討してみます。しかし、皆さんもお知恵をおかしくださいと、こう申し上げておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/21
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022・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) 政治資金につきましては、藤田さんおっしゃるように、量の問題が非常に重大だという御指摘は、仰せのとおりだと思います。したがいまして、私どもも可能な限り政治資金が少額で済むように一生懸命に努力をいたしておるつもりでございます。私も、あなたと同様、政治家といたしまして国民の信頼をかちとらなけりゃならぬわけでございますから、ぶざまなことはできないわけでございます。政治資金をできるだけ節約してまいるということ、そしてその調達は公明でなけりゃならぬということ、そしてその使途は厳正でなけりゃいかぬということ、現行法のもとにおいても慎重にやってまいらにゃいかぬということは、私はかねがね考えておるつもりでございます。今後も努力してまいりたいと思いますけれども、先ほども申しましたように、自発的な政治資金の拠出、浄財を断わるつもりはありません。
〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/22
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023・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 政治資金につきましては、先ほども、自粛すべきものであると考えますと申し上げました。ただ、現在の政治活動を見ますと、時局、時代が非常に変わってまいりまして、やはり国民に対する世論調査、あるいはわれわれからする国民との話し合い、そういうような調査、研究、あるいは青年に対する研修、説得、宣伝、それから出版、こういうことにかなり費用がかかる事態になっておるわけです。これは候補者になっていらっしゃる皆さま方はとくと御理解いただけるところであると思います。そういう時局において、あれを助けてやろうと国民の側で積極的に乗り出してきてくれる人を拒否するということは、やはり政治参加を拒否するということであって、その結びつきというものが政党政治の一番大事な政治的自由という点ではないかと思うんです。問題は、やはり、それが巨額にのぼったり、あるいはその使い方が問題である、私はそういうふうに思います。しかし、政党政治をやってお互いに切磋琢磨をやっていくということになりますと、古参議員になりますと、やはり友情の発露として助け合いという点においてお互い助け合うという点も出てくるわけでございます。私は、そういう人間の自然の友情の発露ということまで否定するわけにはいかぬ、そう思います。そういう意味において、この政治資金自体を否定することはできない、しかし、出てきたものについてこれを適正に使う、そしてできるだけこれは縮小させて自粛すべきものである、そういうふうに考えている次第であります。
なお、企業からの政治資金があるからといって企業に対して手心を加えるというようなことは、断じてありません。
〔国務大臣三木武夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/23
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024・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 政治資金の問題というのは、確かに、今日の政治不信の一番大きな原因の一つになっていると思うのです。それはしかし、どうしていろいろ政治に金がかかるようになったかということについては、これは各政党とも一つの政党政治の課題として真剣に取り上げる必要がある。選挙に金がかかる。また、その後、選挙区の維持培養に金がかかる。私も長い政治生活の中でこんなに金がかかる時代は知らない。日本の民主政治の大きな問題点を含んでおると思うのであります。したがって、選挙法の改正とかいろいろな点を各政党が——政党政治はそういう点からくずれてくる危険性を持っておると私は思う。これを各党派の課題ではなくして、日本の政党政治の課題として政治資金の問題というものは掘り下げてみる大きな問題を含んでいると私は思っております。私も先ほどの答弁に申し上げましたごとく、しかし、現在のところでは、政治資金が節度を持つことと、そのことがやっぱり明朗なものであって国民の疑惑を受けない、現在の時点ではそれよりほかにない。しかし、この問題は根本的に掘り下げるべき課題であると私は考えております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/24
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025・河野謙三
○議長(河野謙三君) 郡祐一君。
〔郡祐一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/25
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026・郡祐一
○郡祐一君 私は、自由民主党を代表いたしまして、現下のきわめてきびしい時局に、全力を傾けて物価を引き下げ、国民生活を守って、経済の永続的な安定をはかり、民主政治の擁護の実をあげ、現在法秩序がややもすれば破壊されようとしているときに、国民の期待しておりまするところに対して田中内閣総理大臣はいかなる決意をもって対処しておられるか、率直に伺うものであります。
〔議長退席、副議長着席〕
総理大臣が思い切った発想の転換をし、強力な政策を推進して物価の安定をはかられるということは、私は、野党の言われるところとは違って、国民の大多数は心からなる期待をしておると信ずるものであります。
以下、物価の安定をはかるに必要な応急及び恒久の方策であり、これによって経済活動の正常化と秩序ある国民生活を維持するために必要な事項を逐次あげてまいってお尋ねしたいと思います。
第一にお尋ねしたいことは、当面いかにして急速に物価抑制の実をあげるかであります。
中東戦争の勃発とこれに伴うアラブ産油国の動向を契機として、石油製品をはじめ引き続く全面的な物価の暴騰は、国民生活を著しい不安と困難におとしいれたのであります。しかしながら、これについては政府も少しあわてたというところが率直に言えばあるのじゃないだろうか。直接的には石油問題が物価高騰の原因になっておることは明らかでありまするが、わが国の卸売り物価が従来きわめて安定した推移をしてまいった。このことはわが国の輸出が逐次伸び、アメリカはじめ各国とのアンバランスが生じたがために種々な問題を惹起したことは、われわれの経験したところであります。それが、四十七年に入ってからは卸売り物価は急激な上昇を続けて今日に至りました。そういたしますると、わが国の物価情勢が諸外国に比してきびしくなった原因を明らかにいたし、それに即した対策を講ずることができるはずだと思います。また、できなければなりません。
物価について伺いたい第一は、このように急激にきびしくなった原因とともにその解決の方途を示して、国民のいたずらな不安を取り除く方策を講ぜられたいのであります。総理大臣から承りたいと思います。
昨年十月から十二月までの原油の輸入量の通関実績は、前年同期に比して五百三十万キロリットルと七%の増加になっております。当初の輸入計画に比べて多少減っておる程度にすぎません。政府が石油の民生用需要の優先充足を行なっておられますることは、この際は私は国民の焦燥を緩和するために適当だと思います。昨年末、石油メーカーの便乗値上げがまず起こり、これを口実とする各般の値上げとなったのでありまするが、石油について危機感をあおり過ぎた感がありますことは政府においても反省していかなければいけないと思います。したがって、私は、現状においては、むしろ国民に鎮静した感じを与える、これを主とすべきだと思います。国民の協力を得て物価抑制の短期決戦をいたしますためには、物価について統制経済におちいることなく、もちろん悪性インフレに悩んだブラジルがとりました物価スライド国債のような荒療治でなく、総需要抑制でマクロに解決いたしますためには、政府と国民とが信頼を深め合うことがまず第一の要件だと思うのであります。ただ、私は石油について国民に鎮静感を与えるべきだといま申しました。安心しながらも、大切なのは、国民にこの際節約する風をつけてもらいたいことであります。すでに資源節約の生活は始まっております。社会全般に資源の節約を徹底させる、産業界は労使を通じて現在の節約を続ける、石油が今日より潤沢に入るようになりましてももとへ戻させないという、資源の少ないわが国にふさわしい態度をこの際あらかじめ国民にしみ込ませ持たせる方途を講じていただきたいのであります。
物価について第二に総理大臣の御所見を伺いたいのは、物価についての行政が遺憾なく行なわれているかどうかであります。
私は、行政がなお不活発、不徹底なところがあるがために国民の不信を招いている節があるのではないかと思います。率直に反省していただきたいのであります。物価が高騰すれば、物資の偏在と相まって生活必需品の需給のアンバランスを生じ、経済社会の混乱を惹起することは当然でございましょう。したがって、政府が国民生活安定法、石油需要適正化法、いわゆる買い占め売り惜しみ防止法の制定あるいは改正を行ないましてその適正な運用を公約し、一面、財政は総需要を抑制する措置に出られたことに対しましては、国民は現下の難局打開の方途として適切なるものとして賛意を表したのであります。しかし、まだ国民の十分な納得を得る実効はあがっておりません。物資の買い占め売り惜しみの動きや便乗値上げなどに対する政府の監視は、はたして十分行なわれていると申せましょうか。生活安定法については、灯油、LPガスの二品目が指定物資とされましたが、標準価格の算定根拠は必ずしも明らかではありません。標準価格制度そのものが高値安定を招来するのではないかという気もするのであります。十分留意を要するところであります。指定物資を今後どの程度に拡大するかも検討をし、逐次実施してまいらなければならないときに来ております。そこで私は、しょうゆ、砂糖、食用油等の農林物資、また、洗剤、セメント、トイレットペーパー等につきましては追加すべきではないかと思うのであります。聞くところによりますると、その一部については近く追加されるとも聞きます。しかし、たとえば食用油はほとんどその全部が大豆油でなければ困るのですが、品質を落とされては無意味になるのであります。高値安定となっても困るのであります。最近値上げをいたしましたしょうゆなどについてはその懸念があるのではございますまいか。これらの点については経済企画庁長官のお答えをわずらわしたいと思います。
次に、買い占め売り惜しみ防止法につきましても、買い占め売り惜しみ等を行なって多量に保有する者に対しましては売り渡し命令を発し得る等権限が強化されましたが、立ち入り検査を一向に実施していないような状況から見て、その運用ははなはだ不十分であります。なお、安定法、買い占め売り惜しみ防止法については、ともに地方公共団体に権限が委譲できることになり、知事、指定都市の長への委任が実施されたのでありまするが、地域の実情に応じた機動的な執行体制としてはまだ整備されていない感がいたします。なお、地方における国の出先機関も十分積極的に活動させるべきであろうと思います。私は、物価に関するそれぞれの法律の執行はもちろん、物価そのものについて行政としては政府が全責任を負うべきことが三権分立上当然であると考えます。しかしながら、住民から指摘されてから調査の始まるようなありさまでは困るのであります。徹底した物価抑制を期待する国民の願望にそぐうように、国民の要望に即した物価行政の能率が発揮されますために、総理大臣が行政庁に対し徹底した指揮権を発動されることを期待するのであります。この指揮権なら、国民は喜んで共鳴すると思うのであります。総理大臣の勇断を求めます。
田中総理大臣に物価問題に関連して伺いたい第三は、昨年十一月以来の石油危機に乗じて便乗値上げをして不当な利得を得ている企業があれば、その反社会的行動に対していかなる断固たる処置をおとりになるかということであります。合成洗剤の場合にも見られるところでありまするが、流通段階での売り惜しみが顕著であり、明らかに石油値上がりを口実とした便乗先取り値上げをしております。過当利得の吸収には、国民生活安定法の課徴金の活用の方法も一つでありましょう。しかしながら、むしろ国民はインフレ機運を醸成してまで便乗かけ込み値上げをはかろうとする企業等に対しては一そう断固とした措置を望んでいるのだと思います。不当な利益を得ている企業に対して税によって吸収する超過利得税のごときものは、すでに両院においていろいろ論じられておりますが、これの創設なり、その他適切なる措置を講ずることについてのお考えを承りたいのであります。
また、現在のような物資、物価の状況においては、一部の企業が高い利益をあげているような場合に、企業については配当を一定の水準に押える必要もございましょう。賃金と物価との悪循環を生ぜしめないためには、賃金のベースアップについてもこれと同様の考えもしなければならないと思いまするが、総理大臣はどのような御所見でおられましょうか、承りたいのであります。
なお、具体的な例として通商産業省に伺いたいのでありまするが、さきに述べましたように、石油の供給削限は当初予定されたほどでなかったにもかかわらず、石油業界は価格をつり上げ、今期の収益を例年の数倍にし、臨時のボーナスを支給したと聞くのであります。一体、業界に対してどのような指導を行なってこられたのか、また、今後どのような措置を講ぜられようとするのか、伺いたいのであります。もし、権限として強化することが望ましいものがあれば、それについての御所見を聞かしていただきたいのであります。
このようにして、国民に協力を求め、行政によって適切な運営をはかりまして、必要なれば立法措置を講じ、物価を鎮静すべきであります。
最後に物価について伺いたいことは、わが国の産業構造を資源節約型のものに持っていくとして、どのような段階で考えてまいるかということであります。総理大臣はいかなる構想をお持ちでありましょうか。
消費財の節約は当然であります。現在やっております。しかしながら、わが国として情報産業なりあるいは精密機械のように付加価値の高い資源効率利用型あるいは知識産業型経済に体質を改めてまいるのには、いまがむしろよい時期だと思います。わが国の石油の消費が全世界の石油消費の九%を占めている状況は、欧州全部が二七%であることから考えましても、公害の問題を取り上げるまでもなく、このままでは過ごし得ないと思います。このような転換を産業構造に行ないますことは、経過的にはわが国の経済に著しい変化を与えましょう。失業等の事態も考えられます。わが国からの輸入に依存する開発途上国にも影響は深刻でございましょう。しかしながら、総理大臣が施政方針演説で省資源型産業構造への転換を言われましたように、その及ぼす反作用の大きいことを考えながらも、資源の乏しいわが国としては断行しなければならないと思うのであります。総理大臣の勇断を求める次第であります。
第二に、四十九年度予算及び国際収支、国際通貨についてお尋ねしたいと思います。
政府が四十九年度予算案において、総需要を抑制し、公共事業を四十七年度並みとする一面、社会保障関係についてはかつて見ない大幅な増額を断行し、サラリーマン減税を中心とする平年度二兆円に及ぶ空前の大型減税をいたしましたことは現下の難局に即したきわめて適切な措置であって、国民のひとしく賛意を表するところであります。公共事業費が二十年ぶりに前年度比でマイナスになったということに徴しても、この緊縮財政を主柱として暴騰する物価にストップをかけようとする政府の誠意は、これを何人も認めなければならないと思います。ただ、このような財政の態度には、ある程度の副作用があることを覚悟しなければなりません。にもかかわらず、私は、思い切った縮減を行ない、また、この方針を当面続けていくことが国民のためだと思うのであります。しかしながら、同時に、このような難局に処しております際には、さらにきめこまかな注意というものが財政金融の全面にわたってなされることが望ましいと思うのであります。荒療治の行なわれる結果、一例として考えても、だれの頭にも出てまいりますのは中小企業への影響であります。現に甚大であります。中小企業者の倒産が増加していくありさまでありまするし、今後金融引き締めが一そう浸透していくのに伴っていよいよ苦しくなっていく弱い立場に中小企業者はおります。景気停滞下の物価上昇という事態のもとでは、一番影響を受ける者に対して行き届いた対策が必要であります。無担保無保証融資のワクの拡大、融資限度の引き上げなどの措置がとられはいたしましたが、さらに、今後影響を深刻に受けると思われる中小企業に対しては、あらかじめ備えるところがあってほしいと思うのであります。老人、心身障害者、母子家庭、生活保護世帯等に対してもかなり深い配慮がなされておりますが、物価の動向とにらみ合わせて、はたしてこれで十分であろうかという危惧の念を持つのであります。私は中高年齢婦人福祉対策議員連盟という未亡人の福祉をはかる議員連盟のお世話をしておりますが、食べ盛りであり学校に通っているお子さんをかかえた未亡人から、買いだめどころか、子供のほしがるクレヨンを買うのも控えておりますよ、じっとこらえておりますよ、こういう実情をしばしば見聞きするのであります。私は、これらの方々に対して、政府が責任をもって総需要の抑制に全力をあげておる、物価の安定がきっとできますよと説いてはおりまするけれども、その不安と焦燥を解くために端的に総理大臣に伺いたいと思います。
総需要を抑制し、金融引き締めの措置を強化している効果が、どのような段階を経て、どのようにあらわれてまいって物価が安定するものと期待しておられましょうか。国民は確実な見通しを要望しているのであります。それは、国民は、戦争直後の物資の全くなかったときと異なって、物資のあることは知っております。納得できる物資の出回りなり物価の安定の見通しがあれば動揺しないのであります。総需要抑制の効果が正しく物価に影響を及ぼすことを待っておるのであります。
また一面、約束していただきたいのは、先ほども申しましたように、物価騰貴の影響を最も受けやすい層に対して、状況に応じて必ず思いやりのある措置を講ずることをあわせてお答えいただきたいのであります。たとえば、未亡人、老人、心身障害者、遺族、傷痍軍人、旧軍人等恩給生活者、いずれも弱いのであります。国はこれを守っているのだということをはっきりと態度であらわしていただきたいのであります。
総需要抑制の効果は、地方財政についても同一の基調であらわれてまいらなければなりません。地方の行政投資を極力抑制いたしますとともに、経費の節減、合理化をはからねばなりません。同時に物価行政については、地方自治体の働いてもらわなければならない部分がきわめて多いのでありまするから、地方団体に対して十分な措置がとられておりましょうかどうか、あわせてお伺いをいたします。
次に、国際収支の問題について内閣総理大臣及び大蔵大臣にお尋ねいたします。と申しますことは、国際収支の問題は、物価とともに国民が深い関心を持ち、また、物価以上に不安を蔵している部分もあると思うからであります。
最近の国際収支の状況を見ますと、経常収支については、昭和四十七年中に六十六億ドルの黒字でありましたのに対して、四十八年は黒字はほぼゼロに縮小しました。長期資本収支については、四十七年中約四十五億ドルの赤字は、九十七億ドルの赤字にその幅を拡大して、その結果は総合収支では四十八年中に約百億ドルの大幅な赤字を見るに至っております。このような国際収支の状況を反映して、わが国の外貨準備高は、昨年二月のピーク時の百九十一億ドルから、昨年末には百二十二億ドルと減少しております。このような国際収支の赤字傾向のもとで行なったアラブ産油国による原油価格の大幅な引き上げがわが国の国際収支に深刻な影響をもたらすのは当然だろうと思います。過日ローマで開かれたIMF二十カ国委員会の大臣会議においては、今回の原油価格引き上げによって非産油国にもたらされる経常収支の赤字は、四十九年中には六百五十億ドルに達するとの見通しが明らかにされたそうであります。この数字を見て、私は、石油輸入依存度のきわめて高いわが国が、その中で受ける影響は少なからぬものがあろうと思うのであります。政府は、今後の国際収支の動向について、どのような判断をしておられましょうか。四十八年について見られるような長期資本の大幅な赤字をそのまま放置しておくことは問題であると思いますが、これに対する政府の対策について伺いたいと思います。
三つ目には、国際通貨問題について、ローマでの国際通貨制度改革の大臣会議に出席されました大蔵大臣から承りたいと思います。
石油価格の引き上げの影響もありまして、先進諸国の国際収支は今後悪化を余儀なくされると思われます。そうすると、これに関連して、各国が国際収支の悪化を避けようと、為替レートの切り下げを競って行ない、あるいは貿易制限措置をとるようなことがありますならば、世界経済の発展のためには、はなはだ好ましくない影響をもたらすと思うのであります。このことは、戦前、それも一九三〇年代に、各国が為替レートの切り下げ競争を行ない、その結果、世界経済の混乱と縮小をもたらしました苦い経験からも、絶対に避けなければならないと思うのであります。最近、フランスはEC共同変動相場制から離脱いたしましたが、この結果、フランス・フランの相場が下落しまして、これが各国の為替レート引き下げを誘発し、一連の為替レート引き下げ競争を引き起こすおそれはないのでございましょうか。大蔵大臣は、ローマでの国際会議から帰国されたところでありまするが、石油問題の解決、切り下げ競争の回避等、世界経済が支障なく拡大発展していくための諸方策について、いかなる検討をされ、また、あらかじめ用意されるところがあるか、その所見を伺いたいのであります。
第三には、最近総理大臣が歴訪された東南アジア諸国に対する外交姿勢と、現下特に重要と思われます資源外交についてお尋ねいたしたいと思います。
国際情勢は、アラブの石油戦略にも見られるように、きわめて複雑であります。東西外交、大国外交、南北問題が新たに見直されなければならないときに来ております。総理大臣は、最近東南アジア五カ国を訪問され、わが国とこれら諸国との友好親善関係の発展につとめられ、その所信を施政方針演説で明らかにされました。現在は、わが国の安全保障の確保維持のための要素である日米の関係は、幸いにして安定しております。日中、日ソの間の友好も進められておりますから、ただいまは、特にわが国がアジアの隣人として東南アジア諸国との密接な関係の維持増進を総理自身もはかっておられる点に限ってお尋ねをいたします。東南アジア諸国との経済、貿易の相互依存の関係から見ても、これら地域の平和と安定は、わが国にとっても、世界平和への貢献から見てもまことに緊要であります。にもかかわらず、わが国が工業産出国であるのに対し、東南アジア諸国は原料の供給国である関係がにわかに改められず、その結果著しい貿易の片寄りを免れません。タイ、インドネシアに見られた強い対日非難の動きについては、これら国民の感情的な反発によるとは思いまするが、貿易状況の改善、また、現に今回も総理大臣が努力された経済協力の徹底が特に望ましいのであります。東南アジア諸国との理解を深め、友好を固めていくにあたって、政府の外交努力だけでなく、企業なり国民一人一人なりの自覚ある行動が望まれるのでありますが、まず伺いたいのは、田中総理大臣は、その直接な訪問の御経験から、わが国が極東の安定勢力というような気負った態度ではなく、真に東南アジア諸国の平和に貢献する友邦としての姿勢はいかにあるべきことが望ましいか、率直に述べていただきたいのであります。総理の言われる平和と繁栄を分かち合うよき隣人同士の関係が真に実を結ぶためには、長い時間をかけなければならないからと思うのであります。
次に、総理大臣の施政方針演説にもありましたように、また、ニクソン大統領が最近アメリカのエネルギー自給対策の樹立を説いておりまするように、石油にかわる代替エネルギーの検討、国内資源の開発はきわめて大切であります。当然促進していただきたいのであります。しかし、ここで伺いたいのは、さしあたっては、依然として資源の大部分を海外に仰がなければならないわが国として、海外からの資源確保のためいかなる資源外交を展開しておられるか、外務大臣の御所信を伺いたいのであります。
アラブ諸国からの石油の供給は、三木副総理の中東訪問の成果として、日本を友好国とし、その削減が緩和されましたが、今後日本に入ってまいる石油の流れはどうであろうか、われわれ国民は今後の見通しに深い関心を持っているのであります。みずから資源を持つという意味ではきわめて脆弱なわが国が、資源の供給を一般の商業ベースにのみまかせておくことは、どうしても種々な摩擦を生じます。資源の保有国は、資源ナショナリズムというか、有限な資源をできるだけその国その国民の利益のために活用しようという強い願望があります。無理からぬところだと思います。単に資源を買いたたいて日本に持ってこようというのでは、反発を招くことは明らかであります。石油危機を契機に資源の問題はきわめて急速かつ激しく動いておりますから、資源外交もそれに即して多面的な展開を必要といたしましょう。その一面、いたずらに時の流れに右往左往してはならないことは、このたびの石油の状況から見ても明らかであります。太い筋の通った外交が行なわれるべきものでございましょう。もとより資源外交と申しましても、相手の国により、資源の種類により、対応のしかたはおのずから異なってまいりましょう。その事情に応じたアプローチが必要だと思います。資源ナショナリズムは、その国としてはそれだけの理由があることであるといたしましても、これを放置いたしますならば、当然世界的な摩擦が生じてまいります。国際会議等の場での協力が望ましいと思いますが、ニクソン大統領の提案する主要先進消費国会議の内容がいかなるものでありましょうか、もしわかっておりましたならば承りたいと思いますし、また、これを外務大臣はいかに評価しておられるかを伺いたいと思います。
第四に、すなわち最後に、総理大臣の御所信を伺いたいと思います。
現在は確かに経済的に見てむずかしい時局であります。その見地から各種の施策を講ずべきでありますけれども、それのみにとどまらず、民主政治のあり方そのものにも関連する事態があるのではないだろうか、総理大臣の民主政治を擁護する決意を明らかにしていただきたいのであります。と申しますのは、現下の異常な物価上昇も、その要因のうちには社会の中に法秩序ないし社会秩序に対する意識の弛緩があることを認識せざるを得ないではありますまいか。言いかえますならば、法秩序ないし社会秩序の維持確立が物価安定についてもまず不可欠の基盤とならなければ相ならぬのであります。物価安定のための当面の経済的施策に力を注ぎますとともに、法秩序、社会秩序の維持の基盤の確立をもはからなければなりません。むしろこのことに総理大臣は心を用いていただきたいのであります。経済不安とそれによる人心の不安に乗じて国家の法秩序を撹乱することを企図する者が出現し、まじめな多数の国民に対して大きい被害を与えるような事態の発生は、全く杞憂と言ってよろしいのでありましょうか。私はそうは思えないのであります。過激派集団をはじめ諸勢力が、国民の経済不安を利用して大衆を巻き込み、暴力事犯を惹起する危険は、決して絶無とは言えないと思うのであります。
私はまず第一に、内閣総理大臣が、国民の法秩序ないし社会秩序の維持に対する意識の高揚あるいは秩序の破壊防止の対策についてどのような所信を抱いておられるか、物価の抑制、国民生活の安定という重要であり、またきわめてデリケートな問題をつとめて平静にかつ急速に解決しなければならない現在であるだけに、率直に伺いたいのであります。
次に考えるべきことは、現在のようなむずかしい時期に、社会に秩序が必要であるように、個々の人間が信頼され得る徳性の高い日本人に育成されることであります。
民主的な教育の完成は、みずからの自由と独立を確保すると同時に規律と責任の自覚のもとに他人の自由と尊厳を重んずる人づくりを行なうことでございましょう。これに反して、利己主義的な物質的欲望の追求に流れる人間が多くなるとしたら、売り惜しみや買いだめを法律で阻止しようとしても、木によって魚を求めるたぐいの結果になると思うのであります。教師がスケジュール闘争を繰り返していて、はたしてほんとうの人づくりができるものでございましょうか。総理大臣は、今次の東南アジア請国の訪問においても、国際社会において信頼される日本人の育成の要をお感じになったと思います。
そこで結びの第二として、現在の危機を乗り越えて、真に安定した経済と国民生活を期待するためにも、いかにして徳性の高いりっぱな日本人を育成されるか、総理大臣の御所信を伺いたいのであります。(拍手)
第三に、民主社会のあり方として私がお尋ねしたいのは、企業側の責任と相並んで労働者側の責任であります。このきびしい物価情勢のもとで総需要が抑制されているさなかに、春闘共闘委員会は月三万円以上、三〇%以上あるいは四万円以上とも伝えられます、とうてい常識では考えられない大幅賃上げを要求し、国民経済と国民生活に重大な支障を来たすゼネストをもって戦い取ると呼号しているのであります。これでよろしいものでございましょうか。昨年の順法闘争の場合に国鉄上尾駅において混乱が起こりましたが、今次のような異常な大幅賃上げ要求を長期ゼネストという手段で押し通そうとするとき、その混乱と不安ははかりがたいものがあります。また、かりに全部ではなくてもその無法な要求のかなりの部分が通ったとして、現在の物価抑制の努力も水泡に帰して労働者みずからの生活を破壊するということに思い至らないのでございましょうか。春闘の激化の状況によっては、社会不安の招来が高まり、物価の安定どころか、ただ物価上昇に拍車をかけることになるのをおそれるのであります。企業側も労働者側もよくそのもたらすところを考え、良識ある解決を促進されたいのであります。(拍手)もとより交渉は労使が自主的になすべきものであり、政府の介入すべきものではございません。しかし、総理大臣が精力的に労使の自覚と節度ある態度を要求することを重ねられることを期待するものであります。春闘の成り行きいかんは社会秩序に決定的な影響を及ぼすことを私は特に憂えるからであります。総理大臣の誠意ある努力を尽くすことによって問題が良心的に解決されることを望んでやみません。総理大臣の御所信を伺いたいのであります。
田中内閣が現下のきわめて重要な時局に処して国民各層の寄せられる期待にこたえ、物価その他の緊急問題の早期解決に当たっておられる努力に敬意を表し、よくその成果をあげられることを確信いたしまして、私の代表質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/26
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027・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 郡祐一君にお答えいたします。
まず第一は、わが国の物価情勢は諸外国に比して急激にきびしくなったが、その原困はいかに考えるかということでございますが、先ほども申し述べましたとおり、過去十年の卸売り物価は先進工業国に比べて異常に低かったのでございますが、食糧事情を契機にして急速に日本の卸売り物価が上がってまいる。卸売り物価が上がってくると、半年後には消費者物価にはね返ってくると、こういうことでございまして、いままで十年間半分であったものが——まあ、半分であるといえば、一・三と、アメリカの三%ぐらいと比べても半分以下なわけであります。まあ十年間分を足してその分だけ引き上げられるということになると、急激な上昇ということになってくるわけでございます。それは感じの上として、国際的に物資の依存度が日本が一番高いということで、日本の経済に与える影響が一番多かろうという考え方から、実際的に日本に搬入されるものが少なくなったわけではないわけでありますが、日本人もなかなか情報が非常にこう発達をしておりますし、日本人も勉強しておりますので、先も見えますし、まあ先が見え過ぎるだけに、どうも先高であるという感じ、そういう感じのもとに、産業の稼働率が落ちておらないにもかかわらず物価が上昇したと、こういうこともございます。一面、一五%、昨年のように二〇%賃金の上昇ということは、国際賃金の最高水準に比較をするとそう高くはないということで、ようやくイタリアを越し、フランスを越し、ことしは名目賃金において西ドイツを越すという程度だと思いますが、しかし、一年間対前年度比の上がりが名目二〇%ということになると、これは影響絶無とは言いがたいのでございます。そういういろいろな問題がございまして、各国よりも物価に急激な変動があった。これはまあ一口で言うと資源のない国、ですから、資源をストップされたら日本の物価は上がる、端的なそういう面が今次はあらわれたわけでございまして、政府は、国民に対する情報の提供不足とかいろいろな問題にも基因するものだと思いまして、これらのマイナス面に十分是正してまいりたい。現に在庫しているもの、流通経路にあるもの、日本の生産力の実態、そればかりではなく、各国が、いままあアメリカの例をとりますと、アメリカは石油は四%しか外国から入れてないんです。それで対前年度比二〇%も国内石油は増産されているんです。にもかかわらず、石油は切符制にしているわけです。これは申すまでもなく民需を押えて産業用を確保しているわけです。民需を押えて産業用を確保しておれば、産業活動を削減しなければ、供給物量というものは少なくならない。そうすれば物価は安定する。それでもなおだめなら、輸出を禁止しても国内物価を押えますと、こう言っておるわけでございますが、まあ日本はそういうことまでしなくても済むだろうと、また済ませなければならないというところに政府の苦慮があるわけです。いつまでも甘い考えを持っておりません。おりませんが、事情が違うんです。ヨーロッパの諸国やそれからアメリカは、石油の供給をとめられても日本とは違う情勢にあります。しかし、日本よりも非常に優位な中にあるにもかかわらず、物価対策に真剣に取り組むために民間の需要を押えている。産業を確保しているというのは、申すまでもなく、国民産業の生産力の中に占める縮減のできない部分があるわけでございます。これは申すまでもなく軍需生産であり国防生産でございます。この軍需生産と国防生産のウエートを絶対に落とせないというためにはどうするかというと、民需を押えて産業を確保するということになるわけでございます。ですから、日本にもいろいろな議論がございますが、国民総生産に占める防衛費というものの比率が非常に低い。そういう意味で、まず国民生活を安定し物価を下げることが先だと。そのためには国民の協力を得なきゃならないということで、産業用の電力や石油を削減しておっても、その部分ぐらいは流通段階で十分確保してあるという自信のもとに、民需用の抑制をまあできるだけ小さくしようというところに、各国との——日本の政策は逆じゃないかと学者が指摘をする面もございますが、そういう事情に基づくものである、こういうことをよく国民がわかっていただければ、もっと物価は落ちつくはずなんです。ですから、そういう問題をひとつ十分政府もPRをしてまいりたい、こう思うわけでございます。
それからアラブ石油の、石油の削減の危機感をあおり過ぎたということでありますが、これはまああおり過ぎたというわけじゃないんです。事実を政府が申し述べ、通産省が言ったわけでございまして、まあやっぱり最悪の場合には政府に権限を与えられておかなけりゃならぬと。私はヨーロッパへも行ってみましたが、アメリカにもどこにも、みんな、緊急のときに政府が物価の凍結ができるような、賃金の凍結ができるような、地価も凍結ができるような強力な権限で与えられております。どこの国にもあるんです。ところが、悲しいかな、日本にはないんです。御承知のとおり、これは戦前にあったんです。これは総動員法として存在をしたわけでございますが、総動員法は御承知のとおり、物価統制令と価格統制令という二本の柱にささえられて存在しておりましたが、総動員法の廃止と同時に価格統制令の廃止をして、残っているものは物統令だけが残っておるというのが状態でございます。その意味で、地震や災害の場合どうするかということが国会で議論になって緊急立法が行なわれた経緯は、御承知のとおりでございます。しかし、あくまでも政府の調整権は最小限に限られるべきであるという現行法を読んでみると、これで一体大水や地震に対処できるだろうかというようにこまかい制約が行なわれております。これは昭和三十七年という時代につくられた法律でありますから、新憲法の精神、国民の権利の制約は最小限でなけりゃいかぬ、政府の介入は最小限でなけりゃいかぬというふうになっておったわけでございまして、そういう意味では、石油のこのような削減という事態に対処できるような準拠法が政府に与えられておらないのであります。だから、まあ今度は売り惜しみ買いだめ防止、それから石油二法、国民生活安定という、真にやむを得ない場合に発動できる準拠規定を持った法律を御審議をいただいたわけでございますから、今度は国民の協力を得ながら政府自体にも大きな責任——政府は大きな責任を果たしてまいらなければならない、このように考えておるわけでございまして、どうもあおり過ぎたということではなく、真実を述べ過ぎたと。これはまあ世界の一年間の石油の生産量は三十億トンでありまして、その十分の一の三億トンを日本が輸入しようというところに問題があるわけです。実際においてその一割、一五%というものが削減をされた場合、日本に対する影響が相当あるということをまず国民に申し上げたわけでございまして、そういう意味では、まあ、あおったということではなく、事実を述べて協力を求めようとしておるということでございます。
それから物価行政の執行体制についてでございますが、これは買い占め等防止法等に基づく特別の調査等を要する特定物資としましては、これまでに洗剤、トイレットペーパー等二十二品目を指定いたしまして、需給、価格動向等の厳重な監視を行なっておるわけでございます。また、価格上昇の著しい生活関連物資等についても地方支分部局をフルに活用して関係業者の在庫調査を行なっておるところでございます。さらに都道府県知事等に対し立ち入り検査権等の一部を委任することといたし、国、地方公共団体間において法の運用の細目につき密接な連絡調整を行なっておるところでございます。しかし、まあ私は政府の与えられる統制権限というものはできるだけ避けていくのが望ましい。戦後の混乱の中からでも日本人が理解をし、協力をし合えば、血の粛清も行なわれず、血の犠牲者も出さずして敗戦経済から自立経済へ、国際経済へと三段飛びをなし遂げたわけであります。もう戦後の状態から比ぶべくもないほど潤沢な状態、言うなれば民生安定のために生産をフル活動するには世界百四十五の中で日本が最大の力を持っておると、こう言っても過言ではないこの状態を国民に知っていただければ、私は国民の理解も得られるし、不正常な経済行為も排除できて正常なものになるんだと。私は、だから、心から実態を国民に訴えて、この困難な状態を乗り切っていきたい。しかし、にもかかわらず一部に反社会的行動が起こったとすれば、それは政府の責任として排除して、国民の生活を守らなければならない。こういうき然たる態度を国民の前に明らかにしてまいりたいと、こう思うわけでございます。
超過利得の問題につきましては、先ほども申し上げましたとおり、超過利得と同じようなことをやったのが、企業の所有した土地に対して二〇%重課を行なったということでございます。また、今年度は法人税に対しまして三五%を四〇%にした、五%引き上げたわけでございます。これは、一・七五の暫定税率がことしでもって切れるわけでございますが、まあ切れれば基本税率三五%、五%一ぺんに上げる。これはたいへんな上げ方でございますが、しかし、その上になお不当利得というものがあるとすれば、まあ不当利得と言われるか、超過利得と言われるか、そういうものに対しては、いろいろ考えていかなければならないと思うんです。問題は、税率の中でもってやろうとすると非常にむずかしい。ここらにあとから大蔵大臣から述べると思いますが、これはなかなか不当というもの——公定価格とか標準価格が全部きまっておれば、それに対して不当ということになりますが、標準価格や公定価格をすべてをきめるということになると、それはもう経費の積み重ねということも全部やらなければなりません。そうすると、それは形の変わった所得政策ということになるわけです。配当だけ制限して賃金を制限するなというわけにはいかないんです。ですから、そういう意味で所得政策はなかなか国民の合意を得られる段階にないと思いますので、慎重にやらなきゃならぬと思いますと、私はこう答えておるのでございますので、自分だけよくて、そして全部は締められればいいというような考えでなかなか超過利得というものの算定がむずかしい。しかし、反社会的な行為というものに対しては、これはいま物統令もあるわけでありますし、とにかくいまの税体系でもできるわけです。少なくとも現地を調査したものは税務署や警察に対して通報しなければならないことになっておりますので、通報を受ければ税務監査を行なうわけでございます。税はその年度だけではなく五カ年間にさかのぼって調査、査察を行なうわけでございますから、これはもうそういうことの通報を受けないように、正常な経済体制を維持していただきたいということが一つ考えられます。
その次には、国民生活安定法や、売り惜しみ買いだめ法によってなお制裁が加えられるという方法もあるわけでございます。また、いま問題になっておりますが、その上になお特に立法せよと、こういう問題でございますが、これは与野党の中にもございますから、そういう意味ではまあできるだけ政府も勉強いたしますが、与野党の方々も、国会は唯一無二の立法府である、国権の最高機関である、こういうことでございますので、これはひとつ十分御勉強の上、しかるべく結論を出していただきたい、こう思っておるわけでございます。
産業構造の変革につきましては、先ほどから申し上げておりますとおり、省資源型とかいろいろなものに変えていかなきゃならないと思います。いままで、まあ石油一つとりましても、全世界で産出する一年間の産油量が三十億トンであり、社会主義国全部集めても一年間に使うのが約三億トンである。一億一千万人の日本人が使いたいという石油が三億トンであるというんですから、まあここらで転換するか、もしくは新しいエネルギー——水力発電といえどもまだ三千万キロ、四千万キロの立地があるわけでございますから、それをやるとか原子力発電をやるとか、新エネルギーやクリーンエネルギーをもっと進めるべきだ。そういうこともやらないで、水力発電よりも安い石油がいつでもどこからでも買えるというものの考え方、こういうものが前提にあったということが今日の状態をもたらしたものであって、やっぱり一つの転機を迎えたものでございまして、省資源型のまあ付加価値の高いものに変わっていくということもございますが、これにも限度があるんです。郡さん述べられたように、あんまり省資源型のものになると、日本から原材料、中間製品を受けてこれから立ち上がろうとするASEAN諸国や東南アジアの国々はどうなるのだと、これは全くそういうことなんです。これはいまのタイなどでは動いている工場の九〇%が日本から製品、原料を入れて稼働しておるわけでございますから、これは日本がとまってしまったらもちろんそこも全部とまってしまうわけでございます。そういう意味で、日本は国内的なものだけではなく、開発途上国に対する責任も十分果たしていかなきゃならぬのだということだけは、これは間違いのないことでございます。今年度の経済見通しを見てもおわかりになるとおり、年間の貿易量は九百億ドルをこすわけでございます。インドネシアは七三年度二十億ドルでございましたから、今度はまあ物価も上がって三十億ドルと、こう勘定してみても、それでもなおあのような問題が起こるのでございますが、しかし、ほんとうに、日本のただ省資源型、日本だけの視野での産業構造の転換というのではなく、やはりお互いが十分連絡をしながら日本の構造変革もやっていかなきゃならない。そのためにこそ海外経済協力大臣をつくり、国際協力公団というものの設置をお願いしているんです。協力公団とは、経済だけではなく、社会、教育、医療、いろいろな問題を含めた、お互いの国民が理解できるようなものが計画され、長期的な展望のもとに協力が進められなければならない、こういうことを考えておるのでございまして、国際協力の面からも十分考えていただきたいと、こう思うわけでございます。
総需要の政策が中小企業の事業に支障を来たさないようにということに対しては、十分な配慮をいたしておりまして、中小企業対策費は前年度に比して一二七・一%の額を計上し、なお、政府関係中小企業金融三機関の融資も二兆円をこす二一%の増の規模を見込んでおることでございまして、まあこれらに対してもこれからひとつ事態に対処しながら柔軟な体制をとっていかなければならないと思います。
それから総需要抑制をやったりいろいろなことをやっておりますが、物価はいつごろ一体下がるのかということでございますが、きのう衆議院本会議でも御質問がございましたが、これは短期決戦、こういうことを言っておるんです。短期とは一体一カ月か三カ月か六カ月かと、こういうことでございますが、まあ早いにしくはない。早いにしくはないが、これはただ算術上計算できるものじゃないんです。国民の理解と支持がなけりゃできないわけであります。そういう意味で、政府が行なわなければならない責任は果たしてまいりますが、しかし、年間を通じての卸売り物価及び消費者物価を五%前後としておるわけでございます。それに一−三月のげたを含めて一五%一〇%足らず、こういうふうに計算をしておるわけでありますから、一−三月を除くと年間平均というものは四・何%、五%ということでございますので、まあ六月、四−六というのは一つのめどである。一つのめどであるよりも、ここらでひとつどうしても物価問題には勝負をつけたい、こういう熱意をもって施策と正面から取り組んでおる。そのためには、国会の皆さんからのひとつ多大なる御理解と御声援もいただきたいと、こう思うわけでございます。
身体障害者や母子家庭に対する措置は、これはもう御指摘のとおり、こういう事態に一番しわの寄るところでございますので、手厚い保護を必要とする人々の生活の安定に対しては、ぜひ確保してまいりたいと考えておりまして、四十九年度の予算におきましても、特にこの点を配慮いたしておるわけでございます。しかし、予算だけでもって配慮しておるというだけではなく、事態の推移に応じて実情を十分把握し、これら不幸な人々にしわの寄らないような十分な配慮をしてまいりたいと考えるわけでございます。
それから今後の国際収支の問題に対しては大蔵大臣から申し上げますが、ただ、いままではドルが余り過ぎておるので、余ったドルをどうするんだというのが国会で議論になったわけです。このドルは国際機関に寄付をしたほうがいいという議論もございました。これはどこかでもってブロックせい、当分の間塩づけにするほうが望ましいというようなこともございましたが、そうではなく、国際経済協力のためにこれをうんと使おうということで、手持ちドルは、出すことに対しては大いに政策的な努力をし、入ることに対しては日本は非常に強い為替管理制度をもって、完ぺきだと言われるほどの為替管理制度がございますので、これによって入るものはぴたり押えておったと、こういうようなところで、今日の状態でございますが、私がいつでも申し上げておりますとおり、国民生活に必要なものを緊急輸入するに足る外貨は十分保有してございますと、こう述べておるとおりでございます。長期的には、引き締め政策がきけば、総需要抑制政策がきけば、これは輸出が伸びるにきまっておるわけでございまして、国際的な紛争を起こさないように、そして国際的には協調がいまよりもより保たれるような状態において輸出が自然と伸びていくような状態でございますので、国際価格が上がってある意味において輸入価格が上がるとしても、長期的な見通しにおける国際収支の安定ということは十分にはかれるのではないかと考えておるわけでございます。
それから東南アジア諸国の繁栄に貢献するにはどうするか。まあASEAN五カ国の共同的な機構をつくろうというような提案もございます。また、安全保障その他に対しての御提案もあるようでございますが、これらに対しては、日本は直接介入してどうするというのではない、ASEAN五カ国がお互いの間で意思の疎通をはかり協力体制をとられることは望ましいことである、日本が経済、技術その他で応分の協力ができるならばその面で協力をいたしたいと存じます、日本もアジアの一国である、ただ、日本はまあ三十年前のことがございますので、非常に謙虚に要請を受けて進出をするというのが基本的態度でありますので理解を願いたいという発言に対して、われわれは日本に期待し、日本の協力をどうしても必要としているんだから、あまり謙虚な立場だけではなく、もっと積極的に進出をし、お互いとの間に経済協力を拡大されたいというのが、私が訪問した五カ国すべての首脳者の要請でございます。しかし、いろいろな問題を起こさないように十分な配慮をしてまいりたいと考えるわけでございます。
法秩序、社会秩序の確立が必要である、これはもう申すまでもありません。民主政治擁護のためにも、平和を守っていくためにも法秩序が守られなければならないことは申すまでもないことでございます。法秩序が守られる、社会秩序が確立されて、そこにはじめて平和が育つわけでございます。私はそういう意味で、企業その他あらゆるものがこんなときこそ民族愛というものを十分自覚しながら、反社会的な活動をしないように十分自戒をしてもらうように政府は協力を求めてまいりたいと思いますし、やむを得ざる場合には、法律に基づく権限の行使によって不正なもの、いわゆる反社会的な行為に対してはこれを排除してまいる責任を果たしてまいりたいと思うわけでございます。また、こういう中で放火が続いたりいろいろなことをしておることは、これも政府はもっとこういうものに対して民心の安定をはかり、国の平和、社会秩序の確立をはかるためには、国民の協力を得て努力をしていかなければならぬと思います。学校も表向き平静のようでありますが、中で人殺しが平然と行なわれる、こういうようなことが平和な日本、法秩序が守られている日本などと言えたものではございません。そういうものに対して学園の自由、学問の自由を守ることは当然でありますが、政府や地方公共団体が行なわなければならない公的な責任というものは当然果たしてまいらなければならないと思うわけでございます。
また、最後に申し上げますが、必要以上に物がなくなるんだと、これはあおり行為というのかもしれません。とにかく灯油がなくなるんだとかちり紙がなくなるんだといって三日間で日本じゅうの団地に全部広がって、すべての物がなくなってしまう。これはちり紙はいいにしても、灯油は、二かん、三かんずつ廊下に積み上げておって中でガス自殺をする人が起こったら、まるまるとアパートじゅうが爆発するわけでございますから、これはたいへんなことなんです。こういう問題に対しては、国民の理解を十分求めてまいりたい。政府は、そういうことを言っている人はどこにいるのかということは、これは取り調べております。こういう問題に対しては厳重な態度で取り調べを行なっておりますので、社会的秩序の確立をはかってまいりたいと考えるわけでございます。
なお、国際的な国際人としての日本人をいかに育成するかという問題でございますが、東南アジア、ASEAN諸国に行かれたときになぜこのようなものが起こるのかということ、これは大学を卒業しても就職の場所がない、これが一番問題なんです。インドネシアにおいては一億三千万人が一万三千の島々に住んでおるわけでございます。島の数は一万三千もあるわけでございます。そういうわけで、まず一億三千万人のうち七千五百万人ないし八千万人がジャワ島に集まっておる。そのうちまた五百万人ないし五百五十万人がジャカルタに集まっておる。こういうところに問題があるのであって、日本人に対するほんとうのまず不満ということを指摘をするとすれば、それは企業活動とかそういうものに対してよりも、特に言いにくい話ですが、若い人たちが非常に閉鎖的である、こういうことを指摘されました。私も申し述べました。それは外国語を知らない日本人は、外国人の中へ入ってなかなかやるわけにいかないのだと。しかし、日本人がこれだけ影響力を持っておることは事実なので、やはり商工会議所が開いたパーティーには日本人も出てきてもらう。ところが、日本人は一人も出てこない。日本の若い人たちは自分のグループ活動以外に現地人との活動は全くない。私が最も驚いたのは、われわれがとにかく薄いものを着ているときに、ちゃんと上着を着、ネクタイをしてくつをはいているということよりも、日本の若い人たちも外へ出るならばアロハとぞうりでもって出るような、そういう国際的な感じを持ってもらうことがお互いの理解を深めるゆえんである。私はやはり、国際人としての日本人の教育というものは、自分だけよければいいんだというような閉鎖的なものではだめだということをしみじみと感じました。日本の国内においては人に干渉されない、自分の生活だけ守ればいいという、そういうことが外国に出るとひんしゅくの最も強い原因になる、日本人排斥のもとになるということを考えますと、国際人としての日本人の教育ということがいかに大切であるか。私は一言だけ申し上げますが、五カ国で共通なことを言われたんです。日本人は修身教育をいつやめたんですかと、こういうことでございます。これはやはり謙虚に聞かなければ、ほんとうに国際人として信頼される日本人ができるとは思いません。私は、そういうまじめなことを考えないで、口先だけでもって国際人をつくろう、平和な日本人をつくろう、そんなことで国際的な尊敬される日本人はできない、すなおにそう考えておるのでございます。(拍手)
一番最後に、春闘の問題に対し申し上げますが、賃金交渉は労使の自主的な話し合いによって決定さるべきものでございまして、政府は、これまでも労使双方に対して、労使がその影響の重大さを十分に自覚をして国民経済的視野に立って節度ある態度をとるように強く求めておるわけでございます。
しかし、ここで一言申し上げるのは、物価が上がるからとにかく賃金の前払いをし、年度内減税を行ない、大幅な賃金アップをしなさいということも一つの考え方でございます。しかし、物価と賃金との悪循環というようなものを絶対に起こさず、まず物価の安定が先だと。そのためには方法はあるはずであります。いまはここでがまんをするが、安定したら、半年後、一年後にその追加分をどうしろという考え方もあるわけでございますから、そこらは労使の間で私は十分な理解が得られると思うんです。そうじゃなく、一方交通で、ゼネラルストライキをやるんだと。この上ゼネラルストライキが行なわれて、物価が急激に上がっても、物価が下がることに働くはずはありません。国民の生活にマイナスの影響があっても、プラスの影響があるわけはありません。そういう問題に対しては私も、政府の責任者として労働者代表ともまた使用者代表とも会って、この実情を訴え、協力を求めるつもりでございます。
以上。(拍手)
〔国務大臣内田常雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/27
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028・内田常雄
○国務大臣(内田常雄君) おおむね総理大臣からお答えがございましたので、私から簡単に補足をさしていただきます。
第一の標準価格の指定につきましては、お説のとおり、現在二品目だけが指定されておりますが、今月中にも若干の追加指定が関係各省によって行なわれることになっております。なお、このことは、地方公共団体に権限を委任いたしましたので、地方における取り締まり体制との関係もございますので、取り締まり体制の整備に応じながらさらに今後追加の方向でまいりたいと考えております。また、それまでの間は、品目によりましては、国民生活安定緊急措置法を裏打ちとして行政指導価格というようなものの設定、運用による場合もあろうかと考えております。
二番目の買い占め防止法の執行体制をもっと強化すべきであるという御意見につきましては、私も全く賛成でございまして、去る一月十六日から関係各省の協力によりまして、全国約千カ所程度の事業所、倉庫等につきまして、たとえば合成洗剤、印刷用紙、塩化ビニール、トイレットペーパー、砂糖、小麦粉等々十二品目にわたりまして現在臨検調査を執行中でございます。これは関係各省の担当役人に執行させるのみならず、御承知のように私自身が先般率先いたしましてある品目につきましてそういうこともいたしたことがございますが、これらの結果に応じまして所要の対策を順次講じてまいる所存でございます。
三番目の課徴金の問題につきましてもお触れでございましたが、これはまず標準価格を設定いたしまして、その運用の状況に対処いたしながら今後必要な運用をいたしてまいる所存でございます。
超過利得税の問題につきましても、総理、大蔵大臣からお話があったとおりでございますが、私は、経済企画庁長官といたしましても、大企業の先取り値上げ、便乗値上げというようなことが無意味になるような制度をとるべきだということを先般来唱道いたしておるところでございまして、これら利得税の問題等も含めまして、お話がございましたような、立法府である国会における与党、野党の御検討の成果を期待いたしておるものでございます。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/28
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029・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) まず、中小企業の対策でございますが、先ほど御答弁申し上げました緊急対策が必要であるという情勢になれば、金融あるいは信用保証の保険あるいは債務返済の繰り延べ、そのほか、かつてドルショックでやりましたような政策に準じた政策をやるように、いま各省で検討を加えております。必要に応じて発動してやるつもりでございます。
それから輸出政策の問題でございますが、輸出政策と物価政策とは相矛盾するところがあります。輸出増進をやれば物価が上がってくるということになります。そういう意味において、通産省に対して、少なくとも上半期は物価引き下げを中心にして、輸出ドライブというようなことは積極的にやる必要はないと、物価引き下げがわれわれの焦点であると、そういうことを指示してやらしております。後半につきましても、やはり日本が輸出ドライブに入ったというようなことは国際的に悪影響が出てまいります。したがって、現在のフロート制度のもとにおいては自然の推移にまかしておくということが当面賢明な政策ではないかと思っています。円が安くなってくれば輸出力は自然に出てまいります。
それから油の輸入量につきましては、来年度におきましては二億七千万トンを一応予定しておりますが、これは総需要のカットをかなりきびしくやっておりますから、その面から油の輸入量も自然に制約されてくる。これをクォータ制度をまた復活することによって積極的に作為的に輸入量を限定するとなると、保護主義に転じたという悪影響が国際間に出てまいります。そういう情勢も考慮いたしまして、自然の推移にまかせるということで当面私たちは行きたいと思っております。
それから石油産業が思惑その他でもうけてはいないかという御質問でございますが、昨年十月にOAPECが、九月に対して二五%の削減をやる、それから毎月さらに五%ずつ削減するという宣告が行なわれまして、日本としては前途を非常に心配した次第です。世界じゅうも引き締めの政策に入りまして、われわれも最悪の事態を想定して諸般の政策を進めました。石油産業の一部においても、でありまするから、先行きを見越して、多少操業度を維持していくために自分たちのストックを多くして供給のほうを締めるという傾向があったのではないかとにらんでおります。その結果、一部の部分に心理的なパニック状態が起きたものでございますから、灯油あるいはLPGにつきまして緊急対策をやった次第です。その後、国会の御協賛を得まして二法を通過され、いろいろ諸般の最悪の事態に対するかまえをやったわけであります。ところが、十二月及び一月における油の着荷を調べてみますと、われわれが最悪の事態と予定したよりかなり増量のものが入ってきておる。あるいは、これは、メジャーズが日本の将来の大きな市場を見越して、あまり日本を減らしてはいかぬと。われわれもメジャーズに申し入れをしまして、減らすなということをやっておるので、それにこたえて向こうが、全世界的に彼らは供給量をあんばいしておりましたから、日本に対しては考慮したのかもしれぬ。あるいはOAPECの国において二五%削減すると宣告したけれども、実際は手心を加えておったのかもしれません。この辺はまだよくわからないところです。いずれこれらの原因の究明をやっておりますが、ともかくわれわれが最悪の事態と予定したよりは、十二月、一月について増量が出てまいりました。しかし、それにしても、いまの一五%の規制をやっておりまして、二月末のストックは、初め五十九日分あったのが四十九日分に減ります。それで、日本の産業を維持するためには四十日分はどうしてもストックとして必要なのであります。そこで、いま兵力の引き離しその他の情勢に応じて油の前途はまだ予断を許しません。かりに和平交渉が進むとしても、南ベトナムの和平交渉の場合を考えてみても、パリ会談が進行しても大量の北爆をやったり、あるいは機雷投下が行なわれておる。こういう国際情勢の推移というのはいつ逆転するかわかりませんから、いまの規制を当分やはり維持していく考え方に立っております。しかし、確実に安定的に長期にわたって増量の可能性が出てくれば、私たちは、機動的に一部のストックを放出しても、この際物価引き下げをやらなければならぬ。そういう時期が来るか来ないか、いま見当をつけておりまして、これで石油の増量がかなり出てくれば、かなり卸売り物価も下がるだろうと思っております。そういう機動的な措置も辞さないという考えでいま情勢を見きわめております。
石油産業の一部においてインフレ手当を支給した云々というお話でございましたが、そういう情報も得ております。しかし、これは労使の問題で、話し合って解決すべき問題で、われわれが介入すべき問題ではありません。しかし、もし万一それが便乗価格のような形でもうけてそういうことが行なわれたとすれば、これは自粛してもらわなければならぬところであります。
それで、一月以降の油の値段は、OAPECの通告によりますと、昨年の春に比べて約四倍に上がってきておるわけです。その油が二十日過ぎにいま日本へどんどん入ってきておるわけです。そうすると、これからの原油は高くなります。そういう場合に、石油産業がもし昨年度もうけたところがあるならば、その高くなるのをできるだけ下げてもらう、上げる分をできるだけ縮小してもらう、そういう方向で私たちは行政指導をしていきたいと思っております。
以上で御答弁を終わります。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/29
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030・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
まず、わが国の国際収支についてでありますが、これにつきましては、ただいま総理から詳しくお答えいたしましたので、省略さしていただきます。ただ、国際収支は、それを改善するために少し時間がかかります。しかし、これは着実に改善の方途を講じ、時間をかけてもバランスをとる、こういうふうにいたしたいと、さように考えております。
次に、世界通貨情勢でございますが、これは率直に申しまして不安定な状態だと、こう申し上げておいたほうがいいと思います。つまり、各国ともフロート制をとっておる。このフロート制が当分続きそうである。そこで、主要各国がどうしても節度ある国際通貨運営、これをしなければならぬ、こういうふうに考えておるんです。そこへ石油問題がまた介入してきておる。これまた非常に通貨問題を複雑かつ困難にいたしておるわけであります。そういう事態を考えてみますと、これは通貨問題だけじゃない、これはもう経済問題に非常に大きく波及してくる。第二次世界大戦争前のあの経済混乱時代、あるいはそれ以上の混乱を来たすおそれがある。そこで私は、いまこそ世界の指導者たちが最も高い良識を発揮して協調そして融和の道を発見するということに努力しなけりゃならぬ、こういうふうに考えます。わが国もそういう立場に立ちまして、まあわが国もとにかく経済的には工業力としては非常に大きな力を持っておる、その立場を踏まえまして、ほんとうにその先頭を切って協調的な役割りを演じなきゃならぬ、そういうふうに考えておるのであります。
それからフランス・フランの問題が通貨切り下げ競争に発展するおそれはないかというお話でございますが、私もあるいはこれは弱ったことになったなあという心配もしてみたんです。しかし、実際の結果は非常に平静でございます。おそらくそういう事態には発展しないのじゃないか。しかし、いずれにしても世界はフロート体制下にある。したがって、いつどういう事態が起こるかもしれない。そういう状態でありますので、やっぱりわが国としては、世界先進諸国と相協力する、そしてその協調のもとにとにかく通貨安定をはかっていく、そういう努力を続ける、そのほかないのじゃないか、かように考えておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/30
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031・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) 私に対する第一の御質疑は、資源ナショナリズムとの調整策についてのお尋ねでございます。
これにつきましては、資源保有国といたしまして有限な資源について主権を主張するのは当然のことでございまするし、それらの国々がみずからの国づくりを構想して先進国の協力を求めてまいるのも自然の道行きであろうと思います。それに対して十分な理解を持つことが第一だと思います。しかしながら同時に、この資源の価格の値上げあるいは数量の規制等が過度にわたりますと、そのために世界経済全体が破壊的な様相を呈し、それが資源保有国にももろ刃のやいばとして打撃を与えるというようなことになりかねませんので、それにつきましては十分の自制を求めながら資源保有国側に対して理解ある態度に終始してまいらなければならぬと考えます。
第二の御質問でございますが、ニクソン大統領の提唱にかかわる来月予定されておる石油消費国外相レベル会議の評価でございます。
このことにつきまして、スポンサーでございまするアメリカからは、具体的な議題の通告はまだ受けておりません。しかしながら、こういう重大な問題は、一国だけの力、あるいは各国がばらばらで対処していいはずはないのでありまして、国際協力を最も必要としておる課題であることは間違いないと思います。で、この会議におきましては、おそらく、価格の問題、あるいは新エネルギーの開発問題、オイルダラーの問題等が討議されることと予想されます。しかしながら、われわれが注意しなけりゃならぬのは、消費国の集まりでございましても産油国との間の対立を来たすことのないように、むしろこの会議をして産油国との間の協調の第一歩を踏み固めていくというような、意味のあるものにいたすべきであると考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/31
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032・森八三一
○副議長(森八三一君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107215254X00719740124/32
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033・森八三一
○副議長(森八三一君) 御異議ないと認めます。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時十五分散会
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出席者は左のとおり。
議 長 河野 謙三君
副 議 長 森 八三一君
議 員
塩出 啓典君 喜屋武眞榮君
野末 和彦君 山田 勇君
藤原 房雄君 栗林 卓司君
藤井 恒男君 青島 幸男君
沢田 実君 木島 則夫君
中山 太郎君 矢追 秀彦君
三木 忠雄君 阿部 憲一君
松下 正寿君 黒柳 明君
柏原 ヤス君 原田 立君
中沢伊登子君 中尾 辰義君
鈴木 一弘君 宮崎 正義君
中村 利次君 高山 恒雄君
熊谷太三郎君 川上 為治君
山田 徹一君 二宮 文造君
多田 省吾君 小平 芳平君
向井 長年君 村尾 重雄君
小山邦太郎君 斎藤 十朗君
寺下 岩蔵君 中村 登美君
細川 護煕君 橋本 繁蔵君
棚辺 四郎君 永野 鎮雄君
矢野 登君 柴立 芳文君
高橋 邦雄君 嶋崎 均君
桧垣徳太郎君 二木 謙吾君
橘 直治君 岡本 悟君
玉置 和郎君 高橋雄之助君
山内 一郎君 温水 三郎君
濱田 幸雄君 鹿島 俊雄君
大森 久司君 植木 光教君
植竹 春彦君 木内 四郎君
新谷寅三郎君 上原 正吉君
古池 信三君 杉原 荒太君
重宗 雄三君 高橋文五郎君
楠 正俊君 柳田桃太郎君
山本茂一郎君 石本 茂君
志村 愛子君 古賀雷四郎君
黒住 忠行君 河本嘉久蔵君
金井 元彦君 川野辺 静君
今泉 正二君 安田 隆明君
山崎 竜男君 世耕 政隆君
佐藤 隆君 竹内 藤男君
原 文兵衛君 長田 裕二君
菅野 儀作君 佐田 一郎君
藤田 正明君 木村 睦男君
西村 尚治君 岩動 道行君
土屋 義彦君 内藤誉三郎君
平泉 渉君 鍋島 直紹君
増原 恵吉君 米田 正文君
小笠 公韶君 柴田 栄君
大竹平八郎君 郡 祐一君
安井 謙君 堀本 宜実君
塩見 俊二君 剱木 亨弘君
吉武 恵市君 前田佳都男君
長屋 茂君 若林 正武君
田 英夫君 梶木 又三君
岩本 政一君 上田 哲君
工藤 良平君 星野 重次君
戸田 菊雄君 杉原 一雄君
佐藤 一郎君 茜ヶ久保重光君
杉山善太郎君 野々山一三君
田中寿美子君 宮崎 正雄君
久保田藤麿君 寺本 広作君
森中 守義君 鶴園 哲夫君
伊藤 五郎君 平島 敏夫君
山本 利壽君 山下 春江君
中村 英男君 森 勝治君
田口長治郎君 八木 一郎君
羽生 三七君 中村 波男君
松永 忠二君 片岡 勝治君
辻 一彦君 佐々木静子君
須原 昭二君 沓脱タケ子君
小谷 守君 神沢 浄君
鈴木美枝子君 宮之原貞光君
加藤 進君 和田 静夫君
大橋 和孝君 川村 清一君
鈴木 力君 小野 明君
塚田 大願君 星野 力君
林 虎雄君 松本 賢一君
小林 武君 瀬谷 英行君
矢山 有作君 須藤 五郎君
竹田 現照君 占部 秀男君
鈴木 強君 横川 正市君
大矢 正君 小柳 勇君
河田 賢治君 藤田 進君
沢田 政治君 村田 秀三君
足鹿 覺君 加瀬 完君
野坂 参三君 春日 正一君
国務大臣
内閣総理大臣 田中 角榮君
国 務 大 臣
(環境庁長官) 三木 武夫君
法 務 大 臣 中村 梅吉君
外 務 大 臣 大平 正芳君
大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
文 部 大 臣 奥野 誠亮君
厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君
農 林 大 臣 倉石 忠雄君
通商産業大臣 中曽根康弘君
運 輸 大 臣 徳永 正利君
郵 政 大 臣 原田 憲君
労 働 大 臣 長谷川 峻君
建 設 大 臣
国 務 大 臣
(近畿圏整備長
官)
(中部圏開発整
備長官)
(首都圏整備委
員会委員長) 亀岡 高夫君
自 治 大 臣
国 務 大 臣
(国家公安委員
会委員長)
(北海道開発庁
長官) 町村 金五君
国 務 大 臣
(内閣官房長
官) 二階堂 進君
国 務 大 臣
(総理府総務長
官)
(沖繩開発庁長
官) 小坂徳三郎君
国 務 大 臣
(行政管理庁長
官) 保利 茂君
国 務 大 臣
(防衛庁長官) 山中 貞則君
国 務 大 臣
(経済企画庁長
官) 内田 常雄君
国 務 大 臣
(科学技術庁長
官) 森山 欽司君
政府委員
内閣法制局長官 吉國 一郎君
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