1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十一年十月二十五日(月曜日)
午後一時十三分開会
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委員の異動
十月二十二日
辞任 補欠選任
戸塚 進也君 棚辺 四郎君
十月二十三日
辞任 補欠選任
山田 徹一君 塩出 啓典君
十月二十五日
辞任 補欠選任
片山 甚市君 川村 清一君
塩出 啓典君 山田 徹一君
木島 則夫君 中村 利次君
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出席者は左のとおり。
委員長 森 勝治君
理 事
長田 裕二君
原 文兵衛君
最上 進君
茜ケ久保重光君
委 員
迫水 久常君
新谷寅三郎君
高橋 邦雄君
棚辺 四郎君
土屋 義彦君
案納 勝君
片山 甚市君
森中 守義君
塩出 啓典君
藤原 房雄君
山中 郁子君
中村 利次君
青島 幸男君
政府委員
郵政大臣官房長 佐藤 昭一君
郵政大臣官房電
気通信監理官 松井 清武君
郵政大臣官房電
気通信監理官 佐野 芳男君
事務局側
常任委員会専門
員 竹森 秋夫君
公述人
武蔵大学経済学
部助教授 前田 貞芳君
サンケイ新聞論
説委員 山本雄二郎君
評 論 家 北沢 方邦君
主 婦 河合 和子君
主 婦 菅谷八重子君
東京大学経済学
部助教授 植草 益君
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本日の会議に付した案件
○公衆電気通信法の一部を改正する法律案(第七
十七回国会内閣提出、第七十八回国会衆議院送
付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/0
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001・森勝治
○委員長(森勝治君) ただいまから逓信委員会公聴会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
戸塚進也君、山田徹一君及び木島則夫君が委員を辞任され、その補欠として棚辺四郎君、塩出啓典君及び中村利次君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/1
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002・森勝治
○委員長(森勝治君) 本日は、公衆電気通信法の一部を改正する法律案につきまして、六人の公述人の方から御意見を伺います。
この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
皆様には御多忙中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。
御案内のように、電報電話料金値上げに関する公衆電気通信法の一部を改正する法律案は、目下、参議院において審議中でございますが、その内容は国民生活に重大な関係がございます。したがいまして公述人の方々から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本案審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
これより公述人の方々に順次御意見をお述べ願うのでありますが、審議の進行上、まことに恐縮でありますが、お一人十五分程度でお述べを願い、公述人の方々の御意見の陳述が全部終わりました後、各委員からの質疑を行うことにいたしたいと存じますので、あらかじめ御了承をお願い申し上げます。
それでは、まず前田公述人にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/2
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003・前田貞芳
○公述人(前田貞芳君) それでは、今回の電電公社の値上げ案につきまして、私の意見を述べさしていただきたいと思います。
今回、電電公社は大幅な赤字を理由に、電電の大幅な値上げ案を提示してきたわけですけれども、公社の値上げは、御存じのように、われわれの国民生活に非常に大きな影響を及ぼすわけで、その点を公社というふうなものの性格を踏まえ、そこにおける料金決定のあり方を踏まえながら、主として公社が挙げております赤字の理由と、そしてその赤字を放置することがこれからの公社のサービスに影響を及ぼすというふうな点を踏まえ、それじゃ本当にわれわれが公社に期待しているサービス提供という観点から赤字が計上されているのかどうか、そうしてそれが料金決定のところにどのような形であらわれているのかどうかということを中心にいたしまして、私の意見を述べさせていただきたいと思います。
先に結論的に申し上げますと、どうも公社としての考え方そのものがわれわれ国民的なサイドから十分になされているとは言えず、それがたとえば原価の算定の側面、それから具体的な料金を算定するときにどのような形で反映させているかどうかというふうなことに関しまして、かなり疑問があるように感じられるわけです。そういうふうな点、これから詳しく述べますけれども、その点から考えまして、今回の値上げについてはやはり速やかにそれに賛成するというふうなことはできないように思われるわけです。
以下、順を追いまして、私がこの値上げ案に関して考えられる点につきまして、特に原価算定、それから公社の料金のあり方、それを踏まえながら公社の経営状況及びそれが今回の値上げについてどういうふうな形で取り上げられるべきか、というふうなことを中心に考えていきたいと思います。
まず、言うまでもなく、公社というふうなものの存在でございますけれども、これはわれわれ国民生活に非常に大きな影響を及ぼす業務であるというふうなこと、すなわち非常に公共的な性格が強い、そういうふうな点に存在意義があるわけでございますから、基本は国民福祉の向上を中心としたナショナルミニマムの達成というふうな観点から考えられなければならないかと思われます。ですから、そういうふうな点から考えてみますと、公社そのものの中に、福祉というふうな点からかなり政策的な側面が多く入ってき、それがいわゆる私的企業における経済性を犠牲にするという形であらわれてくる側面が一方で存在するかと思います。
具体的に申し上げますと、たとえば典型的には生活保護世帯等々の負担能力がない、そういうふうな人々に対しても公共的のサービスの供与をするというふうな権利を認め、そういうふうな点をやはり一方で考えておかなければならない。それから他方で、当然、公社というふうなものは経済的な自立性を持っているわけで、その面から、たとえば産業あるいは負担力のある一般国民の層、そういうふうなところに対してサービスを提供し、その対価を受けて事業の運営に当たるという面があるわけでございます。
したがって、そういうふうに考えてみた場合に、一方で経済性を貫徹できる側面、他方で公共性が非常に強いというふうな点から経済性をある程度犠牲にしなければならない側面がその中に含まれているというふうに考えなきゃならないかと思います。したがって、われわれは公社における料金水準を決定する場合に、そういうふうな二面性があるということを一方で踏まえつつ、その上から料金の水準を決定していかなきゃならないというふうに考えなきゃならないかと思います。
そこで、先ほども言いました二つの要素は、まあ明確に分けることはかなりむずかしい問題であろうかと思いますけれども、それは一定の分析をすることによってある程度は明確化できるものというふうに考えられるかと思います。とりわけ公社というふうなものが自立性を持つということは非常に基本的なことであるわけですけれども、公共の負担、いわゆる福祉的な面における料金負担の問題については、その不足分については何らかの形で公的な補助、すなわち国家ないし地方公共団体が一定程度負担するようなことをやはり考えていかなければ、公社そのものが国民的なサイドからそのサービスを提供することが不可能になっていくというようなことが考えられるのじゃないかというふうな気がいたします。ですから、その料金水準を決定する場合において、その公的な補助そのものがどの程度必要であるかどうかということをまず検討していくというふうなことが一方で必要かというふうに考えられております。
さて、それを踏まえた上で、具体的に料金の水準をどのような形で決定していくかどうかということになるわけでございますけれども、これは言うまでもなく公企業の場合にはそのサービスを受ける人の層、それからその提供するサービスの質、いわゆる受益者の側にとっては効用ですね、それから負担能力というふうなものがかなり違ってくるわけでございますね。そういうふうな点が一方であるわけですけれども、総額として公社がやはり自立的経済単位として確立していくためには、その公的補助の問題は先ほどありましたが、その問題を考慮しつつ、総括原価、すなわち事業全体がそのサービスを提供しているだけのコストをカバーするような形で決定されていかなきゃならないというふうなことが言えるのではないかというふうな気がするわけでございます。そういう意味で、いわゆる一般に言われますように事業全体の総括原価を基礎にして、その上で具体的な個別料金の問題を、輪郭を考えていくというふうな仕組みにならざるを得なかろうというふうに考えられるわけです。
それからもう一つは、その際、問題になる点でございますけれども、公社は、やはり進歩していく社会の中において、その社会の要請に対して一定の役割りを、サービスを提供していくことを課されているわけでございますから、たとえば新しいサービスの提供というふうな側面に関して一定程度の建設資金、あるいはサービスを提供する資金というふうなものを確保していかなければならない。いわゆるこれは公益企業に一般に言われておりますように必要余剰というふうなものを何らかの形で認めていくというふうなこともある程度必要であろうかと思います。もっとも、この辺につきましては後で述べますように、当然、原価そのものが国民的なサイドから本当に納得し得るような形で算定されているというふうなことが条件になるわけでございますから、その点を考慮することなく必要余剰云々というようなことをただ単に論ずるということは非常に問題があろうかと思います。
この点に関しては、今回の公社の値上げ案において、それに相当するようなものと思われるものがいわゆる改良投資というふうなものがそこに入っているわけで、これは全体の収入の三%程度を見込んでいるというふうに言われているようでございますけれども、その根拠は過去十年間の平均がそうであるというふうな、それだけの理由のようであるわけで、それ以上の突っ込んだ内容が余り明示されていないような感じを受けるわけです。そういう意味で、後で述べますように、公社経営の実態は多少、多少というか、かなり先取り、先行投資的なものと、こう考える。いわゆる産業に対して新たなサービスを提供するというふうな側面がかなり強く出ているような感じを受けますので、それを基礎にして収入の三%であるというふうなことはかなり問題があるというふうな気がするわけでございます。
一応、こういうふうな形で料金の算定を考えていくわけでございますけれども、その際、今回の値上げにおいても非常に赤字が大きいというふうに言われているわけですけれども、果たしてその赤字がそんなに大きいものであるのかどうかということを、公社の原価算定に関する側面にスポットを当て、とりわけそこで問題となる点について二、三指摘しておきたいと思います。
そこで、公社の公表している資料等を見ればわかりますように、いわゆるその中で原価の側面に着目して考えなければならないのは、資本費用、いわゆる減価償却費と金融費用ですね、その二つを足したものがかなり大きな割合を占め、それがだんだん多くなってくるような傾向があるというふうなことが明らかになろうかと思います。ちなみに昭和二十八年ですと、事業支出の約二六%であったものが、四十九年度には事業支出の四五%というふうな形で大幅にふえているわけでございますね。それで、その中身を考えてみますと、一つの要因は、金融費用、いわゆる利子の増大、それからもう一つは減価償却費の増大というふうなものがその中に挙げられていることが明らかになろうかと思います。
それで個々にその内容について簡単に見ていきますと、利子の増大はいわゆる加入者債券の負担が増大してきている。これは五万円であったのが昭和三十五年よりは十五万円くらいふくらんでいるという事実。それから負担に関する期間の延長、四十七年までの時限立法であったものが十年間の延長を見ているという事実。それから昭和四十七年以来、いわゆる資金不足のために、これは主として建設投資等に関係するあれがあろうかと思いますけれども、特別債を発行してきている、そういう事実が存在するわけですね。そこで、その結果、利子費用は昭和二十八年が支出の五%であったものが四十九年では一一%に増大しているというふうな経過がうかがえるわけです。
さらに、これを一般の企業、ないしは公社と比較がある程度可能である企業と比較してみますと、昭和四十七年現在で、公社の金融費用——この場合、債券発行償却差損が若干含まれますのでやや高くなろうかと思いますけれども、公社の場合は総費用に対して金融費用は一二・四%になっているわけです。それで、これは主要なものを見ていただきますと、国鉄の一二・六%は別として、あとはどこの企業、業種よりも、あるいは主要な企業よりも多くなっているわけでございますね。それからもう一つはアメリカのベル系の会社の費用と比べますと、ベル系の場合は八・七%であるわけですから、それよりもかなり大きいという事実がわかろうかと思います。
それで、この理由は二つの側面にあろうかと思います。それは一つは、建設投資がかなり急速にふくらんできているという事実が存在するわけですね。そしてそれがその費用として正味の固定資産のあれだけを見ますと、昭和四十九年末に五兆円になり、これは昭和二十八年の約二十倍にふくらんでいるという事実がその中から明らかであろうかと思います。もっとも、この側面は、その建設投資が国民サイドの要求によってなされたものであるという事実があれば、一概に否定することはできないことであろうかと思いますが、しかし、その建設内容の内訳を見てみますと、必ずしも国民的な視点からそれがなされているというふうなことは言えない面があるんじゃないかというふうに感じられるわけです。いわゆるビル電話とか専用線、データ通信等に関する当面産業向けのサービスを提供すると思われるようなものに多くの投資がなされているというふうに感じられるわけです。これは五十一年度から五十三年度の計画に盛り込まれている部分についても同様に見られる傾向であるというふうに考えられるわけです。
そこで、その面が一つあるわけでございますけれども、これはいわば産業優先の先行投資的なものが非常に急速に多くなっているというふうな事実に関係するというふうに理解できょうかと思います。そしてこの事実が実は第二の減価償却費の増大にやはり顕著にあらわれてくるというふうに考えられるわけです。この減価償却費の推移について見てみますと、昭和二十八年度において事業支出の二一・三%であったものが昭和四十八年、四十九年度になりますとすでに三〇%を超えているというふうなことが明らかになるわけでございますね。その結果、他企業と比較してみますと、公社の総費用に対する減価償却費の割合は四十七年度において三三・八%。それでほかの企業の実態を見てみますと、民間のたとえば電力等で一七・八%、それから国鉄で一一・三%、まあ比較が可能であろうと思われるベル系の場合ですと一七・七%と、かなり開きがあるということが明らかになるというふうに考えることができるわけですね。それで、結局、これは急速に固定資産が増大しているという事実が一方で存在し、他方でかなり重要な意味を持っていますのは耐用年数を短縮しているわけですね。昭和三十六年に機械、線路設備等について耐用年数を短縮した結果、償却率が短縮前の結二倍にふくらんでいるというふうな事実が一方で存在するわけです。
それからもう一つ考えなきゃならないのは、償却方法の変更が昭和四十一年に建物、工作物等についてやはり定額法から定率法に行われているわけです。そこで、この償却率も、同じように比較してみますと、やはり変更後は二倍強になっているわけでございますね。こういうふうに考えますと、これ自体が非常に耐用年数の短縮それから定率法への変更というふうな形で早期に償却をしてしまおうというような思想がその中で明らかになっているわけでございます。
もう一つ、それに関連して、別の側面からいわゆる固定資産に対する償却費の比率を考えてみますと、これはやはり民間よりも高くなっております。それで米国のベル系の場合と比べてみますと、昭和三十五年で公社が七・二二%、それからベル系が五・四三%。それが昭和四十七年になりますと、公社の場合は一三・一三%、それからベル系の場合は六・二%で、その推移の割合を見てみますと、公社の場合は昭和三十五年を一〇〇にして四十七年は一八二、一・八倍になっているわけで、他方、ベル系の場合は昭和四十七年には六・二%と、わずかにふえているにすぎないわけでございますね。これはやはり最大の原因は、公社が償却方法として定額法をとらずに定率法をとっているというふうなところに非常に大きなゆえんがあるというふうに考えられるわけでございます。
それでは、公社において減価償却方法はどういうふうなことをとるべきかどうかということを考えなければ、これはただ単に比較してこちらが多いからだめだというふうな形になるわけでございますから、その点を理論的に考えてみますと、公社というふうなものはナショナルミニマムの点から国民全般に対してサービスを提供していくというふうなことがあるわけで、そういうふうな点を考えてみますと、できるだけある一定の設備から提供されるコストは均等な形で計上していくというふうな方が望ましいというふうに考えることができるんじゃないかと思います。その点を考えますと、定率法は、言うまでもなく早期に償却しますから、どんどんどんどん先行投資をやっていきますと多額な資金を早期に回収していくというふうなパターンがそこにでき上がるわけでございます。したがってコスト負担は非常に大きなものになっていく。まあこれはもちろんただ単純に同じものを取りかえていくというふうな形で考えていきますと、定額法と定率法の差はそれほど大きくないわけでございますけれども、新しいものをどんどんどんどん早期に導入していこうというふうなことを考えますと、減価償却の割合は非常に大きなものになるというふうなことが言えるわけですね。
そこで先ほどの例にありますように公社の場合はベル系に比べて約二倍の償却率を誇っているわけですから、その点、仮にやや乱暴な例でございますけれども、単純に減価償却費をもし定額法にしたというふうに仮定して考えてみますと、五十一年度から五十三年度において大体減価償却として計上されているのは二兆八千億円ぐらい、その結果赤字が一兆七千億、まあその程度になるというふうな試算がされているわけですけれども、減価償却費を変更するというふうに仮定しますと、二兆八千億円の半分一兆四千億円のコストが計上されなくなるというふうなことができるわけですね。それを考えてみますと、そのレベルで赤字の幅が約一兆七千億円から三千億円に短縮されるというふうなことが明らかになるわけでございます。ですから、この辺がとりわけコストの面から考えてみた場合に、公社のコストの計算、とりわけ減価償却の計算が果たして公社の性格を考えてみた場合、妥当であると言えるのかどうかという点をもう一度考えてみなきやならないことであろうかと思います。その点、理論的に考えてみた場合には、私の考えでは否定的とならざるを得ないというふうな結論に達するわけでございます。
さて、それで次にもう一方の側面でございますけれども、これは収入の側面、これはいわゆる料金の体系そのものをどのように考えていくかというふうな問題にかかわってくるわけでございますけれども、その点について考えてみますと、基本的には、先ほど来申し上げてますように、公社の場合はナショナルミニマム的視点からサービス原価を基礎にしつつも、そこにおけるサービスの価値、それから利用者の負担能力等々を考えて、それに適合するような料金体系をとらなければならないというふうに考えるわけでございます。そこで、じゃその利用者の区分をどのように考えるかというふうなことが問題になるわけでございますけれども、その点について考えてみますと、私の考えるには、まずいわゆる企業向けといいますか営業用、事務用の側面、それからいわゆる住宅用というふうに言われる一般利用者の側面、それからもう一つは福祉サービスを享受する人の側面、この三つに大きく分けて考えるということが必要じゃないかというふうに考えられるわけです。それを基礎にした上で各利用者区分の原価の算定を行う、そしてやはり同様にしてそれに基づいて利用者区分による収入の算定を行うというふうなことが考えられるわけですね。その上で各区分の収支を一応把握し、それから負担能力を加味して個別の利用者の料金体系を決めていくというふうな考え方が必要じゃないかと思います。
もっとも、この場合、非常にむずかしいのは、収入を算定していくときに、それを料金の決定に関して利用者の受益の度合いをどのような形で把握していくかどうかということが一つの問題になるわけでございますけれども、この点に関しては、公社の値上げ案の内容等々を考えてみますと、かなり検討の余地がある側面があるんじゃないかと思います。まあこれはほかの方々も言われていますように、いわゆるいまの考え方ですと発信者の側面、かけるというふうな側面から受益の問題が考えられているわけでございますけれども、他方、これは受信するというふうな側面からも考えてみなきやならないというふうな気がするわけです。これはいわゆる産業用の場合ですと、非常に単純な例を挙げますと、たとえば銀行に対してどこかから振り込みがあったというときは銀行の方で電話をしてそれで済ます。これはりっぱに産業用に役立っているというような側面になるわけでございますね。まあ非常に単純な例でございますけれども、そういうふうな側面が一方である。それからもう一つは、市内領域の区分の再検討、これはかなり固定的な形で考えられていますけれども、この点についてはイギリス等で行われていると言われてますグループ料金制というふうなものなんかも導入する検討が必要であろうかと思います。まあそういうふうな側面についても必ずしも十分な検討が行われているというふうには言いがたいように考えられるわけです。というのは、料金決定に関する原則を公社として一体どのような形で考えているのかどうかということが私の知る限りにおいては必ずしも明らかになっていない。私が先ほど申し上げましたようなことを十分検討していないというふうなことになるんじゃないかと思います。それにもかかわらず、公社の場合はかなり区分計算を行っていると見えて、パンフレットとか新聞等によりますと、事務用は黒字である、住宅用は赤字であるというふうなことをかなり強くそこに示されているというふうな気がするわけですけれども、その点についてはその区分計算がどのような形で行われているのかどうかということが明確にならない限りは、にわかにわれわれは信用することができないんじゃないかというふうにまあ感じられるわけでございます。
以上、ナショナルミニマムの達成というふうなことを公社がやっぱり果たすべきであるというふうな観点から、今回の値上げについて考えてみますと、まず、先ほど申し上げましたように、受益の度合いが十分に評価されていない面がある。それから、この点先ほど申し上げませんでしたけれども、負担力の大きい企業の専用料金の値下げというふうなものが他方で行われているというふうな事実があるわけでございますね。それから、先ほど申し上げましたように、料金決定の重要な一つの支柱となる、あるいはそれを根拠にされている赤字の原因に関係して、原価算定の面で、とりわけ減価償却の計算方法に大きな問題点がひそんでいるというふうな点。それから先行投資的な部分が過大というふうには考えられないのかどうか、その辺が実は資金不足に関連してくるというふうなことが考えられるわけです。
そのような形で考えますと、今回の値上げについては、再度、国民的な視点から料金決定をどのような形で行うのかどうかというふうなことを再検討する必要性があるというふうに感ずるわけでございます。したがって、その意味では、今回の値上げ案についてはにわかに賛成することができないというふうに言わざるを得ないというふうに考えられます。ちょっと長くなって恐縮でございますけれども、私の意見を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/3
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004・森勝治
○委員長(森勝治君) どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/4
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005・森勝治
○委員長(森勝治君) 次に、山本公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/5
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006・山本雄二郎
○公述人(山本雄二郎君) それでは、公衆電気通信法改正案について若干の意見を申し述べまして、今後の御審議の参考に供したいと思います。
初めに、この料金問題を考える前提といたしまして、公衆電気通信、実際にはその中心は電話でありますけれども、その電話が現代の社会でどういうふうに位置づけられているかということをはっきりさせておく必要があると考えます。
現在、電話の加入数は三千万を超えまして、いわば電話大国というような状況になってまいりました。しかも、この量がふえたというだけではなくて、質の面でもきわめて良質でありまして、これは世界的にも定評があるところだろうと思います。この事実は、実は、非常に重大でありまして社会としてあるいは国民として非常に大きな資産を持っているというふうに言えるかと思います。最近は、電話がどこにでもありまして、ダイヤルさえ回せばいつでもどこへでもかけられるわけでありまして、電話というものは日常生活あるいは経済活動の中に非常に深く入り込んできておりまして、大きな恵沢をもたらしているというふうに考えられます。この点をまず正当に評価することが私は出発点だと思います。
で、私自身の経験によりましても、職業柄非常によく電話を使うわけでありますが、以前は、この電話について大変な苦労をなめたものでした。私が入社した当時、ちょうど二十年代の終わりごろでありますけれども、当時、私は宇都宮におりまして、東京本社と連絡するということが非常に大変だったという経験をしておるわけであります。当時、予約通話という制度がありまして、たとえば午後四時五十分から十分間、次は午後五時半から十分間というふうにあらかじめ申し込んでおきまして、それで早口で原稿を読み上げて本社の速記者にとってもらうというような形で原稿を送ったわけです。なぜそんな予約通話をしたかと言いますと、当時は、電話を申し込んでもいつつながるかわからないという状況があったからでありますが、それ以外に何か事件があって現場へ行きましても、連絡のための電話を探すこと、あるいは探した後申し込んで相手が出るのを待つこと、これはもう大変なことでありまして、現在では、そういうことが全くなくなってしまったわけで、非常に今昔の感がするわけであります。
それからまた、外国へ行きましても、同じように電話の苦労というのは現在でもさせられるわけです。アメリカではそういう経験はありませんが、ヨーロッパ諸国ですと、大抵相手が出ないとか、間違ってかかるとかいうようなトラブルを何回も経験いたしました。で、これはまあ旅行者として電話の扱い方になれていないということかと思ったのですが、そうでなくて、現地におります同僚の特派員に聞きましても、みんな頭を痛めておるということのようであります。フランスでは電話が非常に不便であるために、年間五百億フランから一千億フランの貿易上の損失をこうむっているということが書いてあるのを読んだことがありますが、これはあながち誇張とは思えません。
以上申しましたように、まあ過去の例あるいは外国の例を見ますと、今日の電話がいかにすぐれたものであるかということがおわかりいただけるかと思いますが、その事実を踏まえて考えなくてはいけないのは、これまでの電信電話事業がっくり上げてきた大きな社会的な資産というものを守り、維持し、これを正常に機能させていくということが必要でありますと同時に、それがもたらす恵沢をあまねくすべての人が享受できるような状況にしていくことが大切であり、また、それが今日の社会的な要請であるというふうに考えます。そういう視点から問題をとらえることが料金問題を考える前提として必要ではないかというのが私の意見であります。
そこで、料金についての基本的な考え方でありますが、料金のあり方、それから料金の水準、料金の決定方式の三点を中心に申し上げたいと思います。
第一の料金のあり方でありますが、これは公共料金というものをどういうふうに考えるかということに関連すると思います。で、いろいろな見方があり得ると思いますが、電信電話の場合は、公共財、つまりみんなが使うものをみんながうまく使えるような、あるいはだれにでも役に立つような、そういう料金にすることが望ましいと考えます。したがって安ければ安いほどいいというふうには必ずしもなりません。もちろん物価との関連というのは無視してはなりませんけれども、基本的にはいま申し上げたような線を崩すべきではないというふうに考えます。その意味で、公社としての独立採算あるいは利用者負担といったような原則は今後とも貫かれるべきでありまして、またさらに料金は単に運営費を賄えばいいというだけのものではなくて、サービス改善のための投資も可能にするようなものにすべきだというふうに考えます。
第二は、料金の水準でありますが、この現行の料金水準が高いか低いかについては意見の分かれるところだろうと思います。しかし、私はやはり低いというふうに考えます。たとえば電話の通話料でありますけれども、自動通話の度数料の場合、一度が七円になっております。これはたしか昭和二十八年だったと思いますが、五円から七円に改定されたわけですけれども、当時の七円というのは、その当時の水準から考えますと、それほど安いものではなかったはずであります。たとえばバスの一区間は当時十五円、地下鉄も同じように十五円でありまして、約その半分であったわけですが、今日はバスが七十円、地下鉄が六十円になっております。これは非常に単純な比較でありますけれども、この一事をもってしても、現在の料金水準が高いということは言えないのではないでしょうか。まあこの低い料金水準でも経営が安定しておりましたならば問題はないわけでありますけれども、四十九年度以降、公社の経営が急速に悪化してきているという事実があります以上、料金水準の見直しは、この際、やはり必要であろうというふうに考えます。
ただいま原価計算の方法について疑問があるという御指摘もありましたけれども、同じ方法をとっておりましても、四十八年度以前は黒字であり、四十九年度以降赤字になったということは事実でありますので、その方法の是非はさておくとしましても、経営が悪化してきているという事実だけは、これは否定できないと思います。
それから第三は、料金の決定方式でありますが、現行制度のもとでは、電信電話料金は国会が決める、いわば料金法定主義というふうになっております。この料金法定主義については、最近、各方面からいろいろな議論が起きていることは御承知のとおりでありまして、今後、もっとこの議論を呼ぶものと思われます。しかし、その法定主義の是非は今後にまつといたしまして、現行制度のもとで考えなくてはならないのは、国会はその意思決定を速やかに行う責任があるのではないかという点であります。
国会がこの国民生活に密接な関係を持つ料金について審議をし、それを決定するというのは確かに一つの理にかなった方法であることは否定できません。しかし、その場合には幾つかの前提がありまして、国会が正常に機能していること、あるいは国会が責任を持って意思決定をすること、その意思決定が可及的速やかに行われること、そういったような条件が満たされませんと、この料金法定主義というものは機能しません。過去の例を見ますと、たとえば国鉄の値上げ法案のような場合がそうでありますけれども、そういう条件が満たされないために、いろいろ問題を起こしたケースがあったことは事実だと思います。今回の改正案については、これまでのところ、政府案に対して各政党からも対案が示されまして、前向きに対処していこうというふうな様子がうかがえますが、これは従来と比べるときわめて大きな前進でありまして、その点は評価されてよいし、また、今後とも、そういう姿勢が貫かれることを期待したいと思います。
次に、現在、提案されております公衆電気通信法改正案について申し上げたいと思いますが、結論を先に申し上げますと、今回のこの改正はやはり認められてよいというふうに考えます。
まず、この電話料金でありますが、通話料、使用料、設備料、いずれも大幅に引き上げられることになっておりますが、電話というものを冒頭に申し上げたような社会的な視点からとらえます場合、それに必要な経費を利用者が負担するというのはやはりやむを得ないし、また必要なことだと考えます。ただし、福祉料金については、いろいろ議論があるところでありますが、私の考えでは、料金決定の枠外で行われるべきものでありまして、もし福祉料金的なものが必要であるとするならば、それは社会保障の一環として行うことが妥当ではないかと考えます。
それから電報料金についても大幅な値上げが行われることになっておりますが、私は、むしろもっと大幅に引き上げてもよいというふうにすら考えます。といいますのは、電報を現在の形のまま継続していくことはきわめて困難でありまして、場合によっては廃止することを考えざるを得ないような状況になってくるというふうに考えられるからであります。もちろん現在の段階では電話が一〇〇%普及しているわけではありませんから、緊急電報が必要になる場合もありましょうし、一挙に廃止することはできないと思います。しかし、将来は、新しい通信手段、たとえばテレメールのようなものに取ってかわられることも考えられますし、また郵便との関係を見直して、郵便の中に組み込まれるということが行われるようなことになるかもしれません。それまで過渡的に電報を残さざるを得ないということになりますと、電報料金というものは、なるべく原価を償うことのできるような料金に近づけるべきでありまして、特に慶弔電報のような緊急性のないものについては、もっと値上げをしてもいいのではないかというふうに考えます。
最後に、今回の料金改定に伴いまして電電公社への要望でありますけれども、料金が値上げになれば、それだけ利用者により多くの負担を強いることになるわけでありますから、今後、重ねて利用者に過度の負担をかけることのないように一層合理化に努め、さらに、その技術革新の成果を取り入れていくように努力してもらいたいと考えます。
それからまた、値上げを行います以上、利用者にとって直接何らかの形で新しいサービスを提供するようにすることが必要ではないかというふうに考えます。まあたとえばでありますけれども、着信人払いの制度をつくるとか、夜間の割引をもっと大幅にするとかというようなことであります。それからまた、最近非常に話題になっております三木首相へのにせ電話事件というのがありましたけれども、そういった電話をめぐる事故あるいはトラブル、そういったものに対して防止するためのシステムの開発というようなものも考えられてよいのではないでしょうか。
この電信電話事業の料金改定は、いずれにしましても急を要する問題でありまして、改定がおくれますとそれだけ事態は悪化しますし、特に関連事業各社への影響は深刻なものがあると憂慮されますので、今回の改正案の内容についても、いろいろ問題はあろうかと思いますけれども、
〔委員長退席、理事茜ケ久保重光君着席〕
引き続き、その点は今後の検討にまつことといたしまして、少なくとも今回の改正案については、良識の府にふさわしい審議と、速やかな意思決定を行うように期待して、私の公述を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/6
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007・茜ケ久保重光
○理事(茜ケ久保重光君) どうもありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/7
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008・茜ケ久保重光
○理事(茜ケ久保重光君) 次に、北沢公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/8
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009・北沢方邦
○公述人(北沢方邦君) ここでは電信電話料金等の値上げが適正であるかどうかということが問われているわけでありますが、それを問題にする前に、私は、情報社会とか、あるいはその管理社会の問題を専門に考えている者といたしまして、このような財政計画を提出した電電公社の経営姿勢及びその経営体質ですね、そしてその経営内容、この三つの点でそれぞれ問題があるのではないかと考えまして、それを申し述べてみたいと思います。
まず第一は、経営姿勢の問題でございますが、すでに公社は一九六七年に十年後の電信電話のビジョンというものを発表し、また一九六九年に昭和六十年の電電公社のビジョンというものを発表しております。その中で、電電公社は情報産業の中核体となるので、そういう使命を果たさなくてはならないんだというような決意を述べているわけでありますが、これは具体的には新全総——新全国総合開発計画、それに見合って全国の即時通話体制をつくるとか、あるいは航空機、自動車、船舶などの移動電話サービスをするとか、あるいは電話ファクス、データ通信などによる情報サービス、情報処理サービスなどを行う、そういうことをうたっております。こういうビジョンに基づきまして、かなり大きな先行的な設備投資を次々に行ってきました。そして、その情報社会の推進力となろうとしてきたわけですが、現在、この段階で、まずこの姿勢が問題とならなきゃならないんじゃないか。
なぜなら、それはまあ公社ですね、公共企業体でありながら、情報社会来るという、そういうかけ声に踊っている面があるのではないか。つまり、本来、情報の技術サービスに徹底すべきなのが公社の使命だと思いますが、そうではなくて、政策に先んじてある種の長期的ビジョンを出した、それに基づいて既成事実を次々につくっていって、そしてある意味で政策を誘導してしまって、そうしてその既成事実のレールの上に国の情報問題を乗せていこうというような若干危険な徴候がそこにあるのではないか。
〔理事茜ケ久保重光君退席、委員長着席〕
確かに情報社会と申しますものは、それが到来するということは歴史的な必然であるというふうに考えてよいと思います。そして国民のすべてが水道や電気やガスなどの資源エネルギーの公平な配分を受ける権利がある、それと同じように情報サービスというものが国民すべてが公平に受ける権利というものがございます。しかし、国民が受けるべき情報サービスの質や量や内容が一体どのようなものであるかということは、これは政治が政策として決定し、それに従って電電公社が技術的手段を開発し、情報サービス網をつくり上げていくべき本来性質のものでございます。確かに従来の政府の情報政策がかなり貧困であったということは否めないかもしれませんが、それを理由として一公共企業体が先走りして疑似的な政策を出すことが果たしてよいことであるかどうか。むしろそれを推進することによって電電公社は情報社会のあるべき姿をゆがめているのではないか。それは意図すると意図しないとを問わず、情報によって国民を管理するといういとうべき管理社会への道を準備していると極端に言えば言えないこともございません。
こういう考え方は、単に思い上がりというよりもかなり危険なものでありまして、こういう独走は、単に一公社だけの問題ではなくて、関連するハードとかソフトのさまざまな情報産業、そういう情報産業の産業界全体を引き連れることになり、結局、日本の経済体質というものをそのような方向に方向づけるかなりの力を持っている。ですから、それが逆に、そういうふうな既成事実が政府の情報政策を拘束したり引きずるようなことになるということさえも考えられるわけであります。まず、こうした経営姿勢、それをやはり私はいまこの段階で考え直すべきではないか。
今回、提出された建設計画や財政計画においても、基本的にそのいままでの方向が変わっていないと私には判断されます。確かにナショナルミニマムとか福祉というものを重視するということがうたわれていますが、たとえば当面の建設計画を見ますと、相変わらず開発先導的なシステムを中心とするデータ通信サービスなど情報産業向けのかなり高度成長的な開発というものが依然としてそこに大きく盛り込まれています。すでに石油ショック以後、高度経済成長政策の根本的な見直しというものが始まっておりまして、新全総もすでに本来の行き方が考え直され、環境保護的な姿勢に変えられようとしています。こういう状況にあっても、公社は若干の手直しをするだけで、基本的にはどうも高度成長的な姿勢や経済体質を変えずに、相変わらずその大きな設備投資を続けるように私には見えます。経営内容の赤字問題にしても、この根本的な姿勢が変わらない限り、料金値上げによって当面の赤字というものは糊塗できるかもしれませんが、長期的には再び大きな破綻を招いたり、再度の大幅値上げを必要とするというような悪循環を繰り返す危険もございます。経営姿勢のまず問題点というものはこういうところに一つあるのではないかと思います。
第二は、経営体質の問題です。これは言うまでもなく経営姿勢の問題に必然的に関連してまいります。
すなわち、本来情報の技術サービスに徹すべき一公共企業体が、情報産業といういわば星雲と申しますか、星の雲の中核として君臨して日本の情報政策を左右するまでになるということは、公社が単に独占企業体というだけではなくて、外部や内部からさまざまなチェックや歯どめがきかない、あるいはそういうメカニズムを持った一つの独占的な企業である、そういう意味でそれ自体が一つの管理社会というふうに言えるからではないでしょうか。この点でも、公社は、いわば管理社会を先取りしたモデルというふうに言えないこともありません。
すなわち、管理社会というのはごく少数の技術管理層——ハーバード大学のガルブレイス教授によれば、それをテクノストラクチャーという用語で名づけておりますが、そういう技術管理層が中央集権によって独占的排他的に経営管理をし、プロジェクトを行い、そのこと自体によって権力支配を結果として行っている、これが管理社会であります。で外部の利用者はおろか、内部の一般職員・労働者でさえも経営内容や管理内容には全くタッチすることはできないし把握することもできない。そしてまた、こういう問題を審議する国民の代表、したがってその利用者の代表である国会ですら予算や決算というインプットとかアウトプットしかとらえることはできないわけでありまして、そしてその経営内容、管理内容というブラックボックスの内部にまで実質的に立ち入ることができないのではないか。この全国的規模にわたる巨大な独占的な管理社会をいまここでもう一度考え直し、そして内部や外部においてそのチェックや歯どめの可能な全国的な公共企業体に改革する必要があるのではないか。そしてそういうチェック機関や歯どめの機関によって料金値上げや財政計画が真に適正であるかどうか、建設計画が真に国民全体の利益に沿ったものであるかどうかということを考える必要があります。
第三の問題は、経営姿勢、経営体質の問題に必然的に関連した経営内容の問題であります。
今回の料金値上げ問題を引き起こしました原因である赤字問題を考えてみますと、やはり、これは基本的にその情報社会推進の中核体という、そういう気負った経営姿勢とそれと深くかかわっている抜きがたい高度成長的な財政体質というものから来ていると思われます。すなわち、大きな赤字は電報、データ通信、電話の三部門でありますが、電報は日本に限らずどこでも赤字であり、これは不急の、たとえば儀礼的な電報などを除いて、緊急電報というものは、基本的にはたとえば国鉄の地方赤字線などと同様に、純粋な公共サービスの問題として考え、解決しなくてはならないのではないでしょうか。すなわち、それに対しては、国家的政策として電報がどうあるべきか、国民のためにどう必要であるかという判断を政治が行い、その線に沿って電報部門の赤字をもう一度再考する必要がある。
しかし、その第二のデータ通信部門については非常に大きな問題があります。すなわち、これこそ本来情報の技術サービスに徹底すべき公社が、情報社会来るのかけ声に踊った、私があえて申せば、一つの錯誤の結果ではないか。つまり、巨大な先行投資を続けてデータ通信の独占を図った結果として、社会の批判によって回線の自由化などを行いましたけれども、それによって当初の財政もくろみが大幅に狂ったのがこの赤字の真相ではありませんでしょうか。データ通信の独占を図ること自体が管理社会の推進者という批判を浴びても仕方がありませんように、技術サービスに徹底すべきものが情報内容の生産にまで従事するということは、第一に巨大企業の独占禁止問題から言っても、第二に需要者・消費者である国民や民間の要求にかかわりのないところで一方的に需要をつくり出し、その架空の需要によって開発や設備投資を行うという点から言っても、かなり危険な倒錯現象と言わなくてはなりません。もし公共的な情報システムの開発やそのためのハード技術の研究開発が国家的政策としてどうしても必要であると判断されるなら、そうした需要に直接かかわるセクターにおいてこうしたものを行うべきであって、回線施設の提供者である電電公社が行うべきではないんではないか。そして、いわばこの錯誤の所産とも言うべきデータ通信部門の赤字を電話利用者である一般国民にまで負担させようというのは許さるべきではないと私は考えております。
第三のその電話部門の赤字についても、問題はかなりあると思います。公社は電話の通話度数料が世界一安いと宣伝しておられますが、いかにもそれによって電話料金全体が安いような印象を与えていますが、そうではなくて、実質的には時分制や長距離料金の高さ、そうしてまたかなり高額な設備料や、世界に類を見ない利用者に強制的に買わせる債券制度などによって低所得層にとっては電話はかなり高価なものとなっています。いまや電話は、水道や電気、ガスなどと同じく、一般的な公共的情報サービスであるというふうに考えなくてはいけない。すなわち、情報社会の到来を説く電電公社は、まずこの情報社会の一番基本的な認識を持たなくてはならないんではないか。すなわち電話とは低料金、低設備料で万人が利用できるようにして、利用率のアップによって増収を本来図るべきであるのにもかかわらず、公社は値上げによってますます高くなる電話によって利用率を引き下げ、情報社会の国民に対する基本サービスを逆行させようとしております。その一方では、大企業向けの専用回線料金などを引き下げたり、大いに大企業にサービスに努めていますが、これでは公社の顔は大企業のみに向けられているという一般の批判を受けるのは当然ではないで
しょうか。
その上、電話部門の赤字を含めて全体にかかわる問題は、すでに所々で指摘されておりますが、債券依存体質とも言うべき財政体質であり、また、かなり無原則としか思われないような減価償却の償却費の問題であります。たとえば前者におきましては電話の普及率や利用率のアップを妨げる要因として債券依存体質はありますし、また内部においても利子支払いや償還によって財政アップの原因となっております。これは一種の悪循環のメカニズムであります。また、後者について、すなわち減価償却費については、技術の陳腐化のスピードが速いと言われておりますけれども、第一には、基本的に技術革新というものはクライマックスや山があって、その前後の時期を除いてはそう常に速いスピードの技術陳腐化があるのではありません。第二に、事実上陳腐化のある分野とそうでない分野というものをすべてひっくるめて陳腐化の速い設備の方に基準を合わせるということなど、かなりそこにも問題があるんではないか。この二点についてもやはり改革の必要があるんではないかと思います。
以上、経営姿勢、経営体質、経営内容の三つの問題について論じてまいりましたが、その解決策というものは、おのずから明らかではないでしょうか。
すなわち、第一に、経営姿勢というものを管理社会促進型、独占支配型、高度成長主義型から根本的に方向転換をし、管理社会ではなくて、国民のための情報社会実現の方向に向け、情報の技術サービスに徹底するという公社設立の本来の目的に返るべきではないでしょうか。
第二に、経営体質の問題としては、公社自体が管理社会化している現状を根本的に改革し、国民のための公共企業体として民主化しなくてはなりません。そのためには職員や労働者の経営参加、真の国民代表、利用者代表によるチェック機関の設置など、具体的な方策が考えられ得ると思います。
男三に、経営内容を以上二つの改革に応じて転換をしなくてはなりません。すなわち、公共サービスとしての緊急電報については、すでに述べたように、国家的な規模と見地によって配慮を行う。それからまた、過大な設備投資を要する赤字部門であるデータ通信は、回線サービスを除いては、これをやめるくらいの大手術を考えなくてはなりません。もし国家的政策として公共的情報システム開発や研究が必要であるならば、それはその需要に直結した別のセクターで行い、また必要があれば、別の公社を設立して行うべきであります。これは巨大独占企業体解体のためにも必要であります。また、電話部門は、債券依存体質や異常な減価償却を徹底的に改革した上で、ナショナルミニマムや福祉の観点を、単にかけ声だけではなくて、実質的に導入し、低設備費、低料金でむしろ普及率、利用率のアップを図るという基本的な方向転換を考えるべきであります。
以上の経営内容全体にわたる大改革の上で、なおも赤字が出たときには、初めてそこで適正な料金値上げが問題となるのであります。それがもし適正なものであるならば、われわれ国民はその料金値上げを納得するに違いありません。しかし、以上、経営姿勢、経営体質、経営内容の三つの問題で公社が大改革を行い建設計画や財政計画をもう一度練り直して国会に提出しない限り、今回の料金値上げについては、私は、絶対に反対したいと思います。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/9
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010・森勝治
○委員長(森勝治君) どうもありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/10
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011・森勝治
○委員長(森勝治君) 次に、河合公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/11
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012・河合和子
○公述人(河合和子君) 河合でございます。
私は、いま二人の子供を持つ家族四人の主婦でございます。昨年、電信電話事業に興味を持ちまして電電公社のモニターを経験しました。そこで私なりにいろいろと勉強させていただいたわけです。今回の料金改正について、むずかしいことはわかりませんが、私なりに感じたことを申し上げたいと思います。
家計を預かる主婦として、値上げは頭の痛いものでございます。特に、ここ数年次から次へと値上げが発表されるたびに私たちは娯楽費を抑え、生活費に回すといった状態です。ですから、今回の値上げが成立すれば、公社の赤字は埋まるかもしれませんが、そのかわり私たちの家計簿が赤字になるという心配がございます。値上げをしてほしくないというのが多くの主婦の意見であり、私の気持ちでもあります。しかし、私は、電電公社が公共の立場にある以上、国民に余り負担がかからないようにしていただきたいとは思いますが、公社の状況をいろいろ伺いますと、私たちとしてもうなずける面もかなりありますので、ある程度の値上げはやむを得ないものと思われます。その上で、さらに、よりよいサービス、合理化、電気通信の発展に努めていただきたいからです。
公社がいままで行ってきた防災対策や種々のサービス、これには福祉電話とか電話機の改良、また心電図伝送装置、データ通信等、こういったことを行ってきた上に、料金については二十三年間据え置かれてきた努力というのは評価されてよいことだと思うんです。六月値上げの予定がきょうまで延びて長引いているということは、いままでがんばってきて、さあ値上げというときにほかの値上げと重なってしまったというところに不利といいましょうか、運の悪い面があるんではないでしょうか。
公社は公共企業体ですから、公共性から見れば、所得の高低にかかわらず多くの人々に利用できるよう個人の負担は軽く抑えるべきですが、一つの企業体と見れば、経済の原則によって動くものですから、人件費や工事費が上がれば当然コストも上がりますし、今日電話の収入も伸び悩み状態にあるということですので、値上げはやむを得ないと思います。
もし赤字が解消されないまま累積していくと、回復に時間がかかり、かえって国民に大きな負担となって返ってくるのでは困ります。また、赤字分を各企業に大きく負担させ、私たち一般の負担を小さくしても、各企業が受けた負担が今後製品等へはね返り、高くなっては悪循環となります。全体でできるだけ抑えた形で負担するのがよいのではないでしょうか。料金改良のおくれによるサービスダウンがあっては私たちの生活にも支障を来しますし、公社に関連している人々の生活にも響くのではないでしょうか。
電話は、いまでは生活の必需品です。家庭における電話の働きで精神的に果たす役割りは大きく、特に核家族の多い都心では何々相談とか、悩み相談あるいは各種の情報提供、さらに主婦のストレス解消と幅広く使われているため、なくてはならないものとなっています。
電話の普及率は、約四人に一台、公衆電話は人口千人当たり約十一個と、最も進んでいる国ということです。私たちはいつどこででも電話できる状態にあり、またそれを当然のごとく考えております。住宅用の電話の普及が赤字の原因の一つであるなら、今後、それを維持していくために基本料金は見直さなければならないと思います。また、電話のダイヤル化率は九九%までに達し、全国にすぐ通話できるようになったことは非常に便利なことです。その単位料金の七円についても、諸外国また日本において他の物価に比べ安いと考えられます。いま私が十円を持って何ができるでしょうか。電報については、本来の役割りを失い、虚礼的なことに多額の経費を使うのですから、値上げをされてもよいように思います。
私は、今回の値上げが解決されましたら、ぜひ次のようなことをお願いしたいと思っております。
一番目に、経営は効率的に行い、料金はできる限り低く抑え、また二、三年のうちに値上げというようなことのないようにお願いします。
二番目に、遠距離の市外通話をもう少し安くしていただきたい。これはよりよい人間関係をつくるためにも、夜間の割引の時間帯の変更あるいは日曜、祭日にも安くなるような制度を考えていただきたいと思います。
三番目に、電報料金はさらに一層見直しが必要と思います。電話が一〇〇%普及されるまでは本来の電報は考慮されるべきですが、虚礼的な電報はかかる経費の実費を取っていってよいと思います。
四番目は、福祉電話や心電図伝送装置といったものはさらに私たちのためにも進めていくべきであり、安く、より多く普及されるようお願いしたいと思います。プッシュホンによる計算機ですけれども、これはむだであったような気がするのです。現在、電卓がこのように出回っているいま、どれだけ必要とされるでしょうか。考えていただきたいと思います。
最後に、サービスである一〇四番の電話番号案内のあり方、電話帳のあり方、これについても今後大きな問題だと思います。電話の普及に伴い量がふえてきているので、それらをいかにさばくか、またこれらを有料にし、その分を基本料、通話料をより安く維持できないものでしょうか。そしてさらに電話番号という膨大な数をコンピューターとかに入れて、より簡単に、より正確に伝える法はないでしょうか。
以上のようなことをお願いして、私の意見を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/12
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013・森勝治
○委員長(森勝治君) どうもありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/13
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014・森勝治
○委員長(森勝治君) 次に、菅谷公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/14
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015・菅谷八重子
○公述人(菅谷八重子君) 本日は、一般公募として数多い希望者の中から私をお選びいただきましたことは、大変光栄に存じております。私も一般消費者として、また一家庭の主婦として今回の電話料金の値上げについて御意見を申し上げると同時に、抜本的な改革を一部お願いしたいと思いまして、きょう出てまいりました。
このたびの提案されている電信電話料金の値上げ案に対しては、反対の意見を申し上げたいと思います。
まず最初に、今日、電話は国民の日常生活にとって不可欠の生活必需品であります。で、これによる値上げは家計に対する影響がきわめて大きいものであります。社会福祉実現のため、また経済社会に果たすべき役割り等を考えますと、その公共的立場から値上げは絶対にしてはならないと考えられます。私たちの家計を見ますと、電話料金は主食である米の代金とほぼ等しい額を示しています。それは最近生活が非常に多様化し、繁雑になってきたために、電話での連絡が最も便利な手段となったからです。高い交通費を払い、満員電車にもまれて済ませていた用事も、いまは電話で事足りるようになりました。また、遠い故郷にいる親の健康状態などもいながらにして知ることができ、安心して毎日を送ることができます。また、さきに行われた郵便料金の大幅値上げによって、手紙を出すよりは電話の方が速くて安いということから、電話を利用することが多くなってまいりました。時間的、経済的むだをいかにして省くかにわれわれ一般庶民は知恵をしぼっているわけです。米価を初めとして相次ぐ公共料金の値上げは、諸物価のつり上げにつながり、不況下のインフレを促進し、私たちの生活はますます苦しくなっていきます。こうした中で、憲法で保障された最低の文化的生活と言えるのではないかと思う電話の料金引き上げには絶対に反対いたします。
第二は、今回の値上げ案は非常に大幅値上げであるにもかかわらず、その内容について一般国民に納得できる説明が行われていない点が挙げられます。公社は赤字だから値上げすると言っていますが、高度成長に乗って急速に普及した電話は、その利用状況から推察してみても、とても赤字だとは思えないのが私たちの実感です。公社は二十三年間も値上げをしていないと申しますが、私たちのまだ記憶に新しいところでは、東京の場合をとりますと、これまで何分かけていても七円であったが三分刻みで七円ずつ料金がかさむといういわゆる度数制となりました。このときに、女の長電話をやめさせるためだとか、大変女性を悔辱するような尾ひれがついたことを覚えております。市外通話もこれに準じて改定されました。このことは実質的には大変な大幅な値上げであったわけです。また、設備料にしましても、三十五年に一万円であったものが四十三年には三万円に、また四十六年には五万円にと急激に引き上げられました。また、加入者債券にしても、当初五万円であったのが三十五年には一挙に十五万円にも引き上げられたわけです。
このたびの値上げ案によりますと、度数料、基本料の値上げによりまして、住宅用電話で五十一年度末に四七%、五十二年度からは七五%のアップとなり、中小零細企業などの事務所用で五十二年度には七〇%の値上げとなるそうです。また、設備料も五万円から八万円に引き上げられるようになっております。このように家庭や中小企業の負担を大幅に引き上げようとする一方では、大企業などの利用するビル電話や専用回線、またデータ通信などは今回は値上げを行わないと言われています。それどころか、昨年は、これらについては大幅な値下げをしたそうです。専用電話料は私たちの使用している一般加入電話料の五分の一という安さです。一般加入者に対する電話料金や設備料の大幅引き上げによって、電話を持ちたくても持てない層がふえることは確実です。国民に大きな負担をかけることは電話需要を抑制し、需要減を見込んで積滞をなくすというような意図が考えられます。
先進諸国に比べ、わが国はまだまだ電話がすべての国民のものとなっていないのに、これが逆行することは公共企業としてのナショナルミニマムの思想に反することになるのではないでしょうか。いままでにも国民の高負担によって公社は膨大な固定資産を蓄積したと言われています。今後の料金の値上げによる増収によって設備投資を強化し、さらに固定資産をふやし、帳簿上は赤字を計上しながらみずから着々と資産を蓄積していこうと図っているとしか考えられません。そしてまた、公社の事業支出の三分の一を占めると言われる減価償却費は公社財政を圧迫していると言いますが、設備の耐用年数をアメリカなど諸外国に比べて不当に短くしたり、大企業に便利な新しい機器をどんどん取り入れることによって減価償却を過大に見積もっているのではないでしょうか。このようなむだをしながら情報機器大手メーカーを大きく育てていくのではないでしょうか。企業優先の料金体系により、公社と企業の癒着を強化していくのではないかと考えられます。
このところ、国鉄、バス、タクシーの値上げがメジロ押しに控え、赤字国債の発行により物価がすさまじい値上がりをするであろうことは目に見えております。失業者や倒産は相変わらず続いているという現状の中で、勤労国民にばかりしわ寄せがくるということを考えますと、非常な怒りをさえ覚えます。
次に、一般消費者の立場から、最低、次のような改善点を要求したいと思います。
一つには、大企業優先の料金体系を改め、一般加入者の利用度の少ない部分の値上げは据え置くこと。電話が勤労国民の日常生活に深いかかわりを持つようになった今日、まず体系の洗い直しが必要であると考えられます。一般利用者の五分の一の料金の大企業優先の専用回線やデータ通信などのように、実際の収支より安くなっている料金体系を改めて、適正な料金に引き上げていただきたいと思います。そして利用度数の少ない、たとえば一カ月二百度ぐらいのところの住宅用や中小零細企業の事務所用の料金は据え置いていただきたいと思います。そして国民の負担を軽くして、すべての家庭に電話が引けるような方向で値上げ案の再検討を行っていただきたいということです。
二番目に、電気通信事業のあり方の再検討を要求します。電気通信事業は、産業、経済だけでなく、政治、教育、医療などきわめて広範な分野にわたって国民生活に重大な影響を持つようになってきました。このような立場に目を向けて、国民福祉の向上を初めとするナショナルミニマムの実現を最優先とする事業のあり方を追求していただきたいと思います。
三番目に、身障者及び老人世帯の負担の減免措置を講ずること。社会情勢の変化によって核家族化が進んできた今日、一人暮らしの老人や寝たきり老人、重度心身障害者対策などのおくれが問題になっております。一人暮らしの老人の死が何日も何週間もわからなかったという例がマスコミをにぎわしました。このような世帯にこそぜひ電話が必要なのです。これには社会保障の立場から、原則としては国が負担すべきでしょうが、当面、国と地方自治体、公社の三者で負担するように望みます。しかし、地方財政危機が叫ばれている中で、福祉の負担を自治体に負わせることは基本的には誤りで、当然、国が負うべきことであることを忘れないでいただきたいと思います。
四番目に、公共企業の原則に立って、経営の民主化を図るべきであると思います。電気通信事業の実態が国民にほとんど知らされていないという現状を改めて、経営の内容を公開して国民のための事業とするため、国民の監視とか監査を受ける場をつくり、また、さらに国民の意見を反映させるために利用者委員会のようなものを設置することを望みます。
五番目に、世界に類のない電話債券の押しつけは直ちにやめていただきたいと思います。利用者の側から考えますと、公社に多額の金を貸した上に、それを返してもらうために料金を引き上げられるのではないかというふうに考えられますので、こんなばかばかしい話はないと思います。
最後に、電報について一言申し上げますと、電話の急速な普及によりまして電報の利用が著しく減少したことはやむを得ないと思います。たとえ収支が合わなくても、電話を持たない人の緊急の場合や中小企業にとっては必要なものです。電報収入が公社の全事業収入に占める割合は〇・八%程度だと言われていますが、これを値上げしたとしても、全体の収支に大した影響を与えるものではないと考えられますので、値上げをする必要はないのではないでしょうか。
まだまだたくさん申し上げたいことはありますが、時間に制約がありますので、ともかく大企業を保護して赤字のツケはすべて国民に押しつけるという政策は一切やめていただきたいということを申し上げまして、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/15
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016・森勝治
○委員長(森勝治君) どうもありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/16
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017・森勝治
○委員長(森勝治君) 次に、植草公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/17
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018・植草益
○公述人(植草益君) 植草でございます。
結論から先に申し上げたいと思いますが、端的に申し上げまして、今回の電話電信に関する値上げ案に関しましては、条件つきで賛成という立場に立っております。賛成という面では、諸般の事情を考えますとこの程度の値上げはやむを得ない。しかし、条件つきという点では、私は料金理論を勉強している者の一人といたしまして、従来から電話及び電信についての料金体系には幾つかの疑問を持っておりましたが、そのほとんどが是正されることなく今回のような形で大幅アップいたしますと、さまざまな問題が倍加される、そういう点を考慮いたしまして条件つき賛成という考え方を持っているわけであります。
以下、公益事業の料金理論の観点から、幾つかの点を申し上げたいと思います。
電話料金は、御承知のとおり、基本料と度数料の二部料金制を基本体系といたしまして、基本料と度数料のそれぞれの各種の種別の料金格差が設けられ、さらに新規加入時に設備料というものが付加される体系になっておるわけでございます。これらの料金体系のそれぞれについて勉強してみますと、これまでにも二部料金体系という、この二部料金の基本料と度数料のコスト配分及びその収入比率はどうあるべきかということは、理論的にも大変むずかしい問題を含んでおりまして、現行でいいかどうかもむずかしいわけですが、さらに二番目といたしまして、基本料の各種種別格差があるわけですが、この中で特に住宅用と事務用の料金格差というものがどの程度であるべきかということにも問題が幾つか含まれております。第三番目には、度数料に関しまして距離別の逓増の市外料金というのがありますが、これも果たして現行でいいかどうかが問題であろうと思うわけです。さらにこの度数料について、市内及び市内近郊にある市外料金との配分の問題も考えられなければならないし、さらに設備料ないし架設料というものについてもどうあるべきかは実にむずかしい問題を含んでいるわけであります。
さて、まず基本体系であります二部料金制について見ますと、経済学の学問的な観点から申し上げますと非常に専門的になりますから、簡単に結論だけ申し上げますと、資源配分効率というのと企業の経営のある程度の安定化というものを両立させる大変画期的な、理論的には画期的な、したがって合理的な体系を持っておるわけです。しかし、その基本料と度数料の配分の仕方につきましては、一方ではコストを考え、一方では支払い能力というようなものを考えながら体系化されなければならないわけですが、今回、住宅用、事務用ともに二倍にアップする案が提起されたわけです。これは、近年、住宅用電話比率が増大いたしまして、その利用度が低いということが電話収入の逓減傾向をもたらす、そこで住宅用にも何らかの応分の費用負担をしてほしいということで、基本料の大幅アップということになったのだろうと思います。しかし、この問題につきましては、消費者、私たち住宅用を利用するものといたしまして見ますと、度数料を減らして、この料金を何とか家計支出で少なくしたいという行動をとろうといたしましても、基本料も大幅にアップするということで、そういう行動はとれないわけです。そこで何らかの措置が必要になる。
一体、その住宅用と事務用というものの電話の料金というものは、どういうふうな組み合わせが必要かという点では、まず第一には、コストがどうなっているかということがわからなければならないわけです。公社の資料などによりますと、そう大きな格差はないけれども、住宅用より事務用の方がある程度高いというふうに言われております。したがって、ここでは住宅用より事務用の方が高くさるべき原価主義的な点での性格を持っていると思います。
次に、料金というものは単に原価だけでははじけないのでありまして、その持っている価値とか支払い能力というようなものが絡みまして、それぞれの財のないしはサービスの性格といたしまして需要の価格弾力性というようなものが考慮されてこなければならないわけです。振り返って言いますと、事務用というのは住宅用よりも明らかに価値が高いと思われますし、支払い能力も高い、そこで料金を少々上げてもその需要はそう減らない。それに対して住宅用の方は料金を上げますと需要が減る。それは価値と支払い能力との関係であるわけです。そうしますと、原価ばかりでなく、価値主義ないしは支払い能力主義の観点に立ちましても、住宅用は事務用よりも安くせざるを得ない経済的特性を持っておるわけです。したがって原価だけに関して、どの程度下げるべきかということから、もう一つ重要なのは、この需要の弾力性というものでありまして、残念ながら、この集計は、数値はわが国では余りありません。したがって、どの程度の格差をつけるべきかを理論的に申し上げることはできませんが、今回、住宅用が一挙に二倍に上がるということになりますと、家計への負担は非常に大きくなる。度数料を減らそうとしてももう基本料で取られてしまうということですから、先ほどの原価主義、価値主義、支払い能力主義の観点に立ちまして、もう少しこの住宅用の基本料には手直しが必要ではないかと考えるわけです。
どんな手直しがあるか——いろいろ考えられると思います。第一には、端的に住宅用の基本料を二倍から幾らか安くする。しかし、これは今後利用度の低い住宅用がふえるということで公社収入がある程度逓減傾向に入るということになりますと、消費者もある程度応分の負担をしなければならないというところで、そこと乖離して、ないしは交錯いたしまして、なかなかそうはいかない面を持っているわけです。思い切って政策的にやればできることではありますけれども、もしそういたしますと、住宅用電話が今後もふえますから、さらに値上げ値上げという形にならざるを得ない側面を持っているわけです。したがってこの案はやや問題がある。
第二番目には、基本料は予定どおり二倍とするが、度数料について従来どおり七円ということにしたといたします。これも一つの考え方かと思います。しかし、これにつきましては、基本料についてはかなり大幅にアップいたしまして、公社経営の安定が図れますけれども、一般消費者から見ますと、基本料で大幅にすでに取られてしまっている、節約をしたいという行動が余りとれないという点でも問題が残るわけです。
そこで、いろいろ考えてみましたが、私は、一つのアイデアといたしまして、最低度数付基本料というものを考えてみました。これは基本料は予定どおり二倍アップといたしますけれども、住宅用につきましては、基準はありませんが、たとえば三十回ないし五十回はこの基本料の中に含める。そのたとえば三十回ないし五十回を最低度数といたしまして、その上で基本料を二倍にアップする。こういたしますと、まず公社側から見ましても、今後の住宅用電話比率がふえるということについての収入の逓減傾向をある程度とめられるという点が満足されますし、同時に、消費者にとりましても、今度のアップは苦しいながらも、ある程度、三、四十回ないし五十回は使えるということであるならば満足できるのではないか。しかも、このような制度をとれば、ある程度の福祉料金的な意味合いも持ちます。特に、私たちのような低所得者層へは大きな福祉料金としての意味を持つのではないかと思うのです。したがいまして具体的にはこの最低度数付基本料値上げ案というのを提案をいたします。
第二番目に、度数料金の問題につきまして申し上げたいと思いますが、従来から多くの方が指摘されていたようでありますけれども、市外電話料金というものにつきましては、わが国では十三段階に分かれております。三分最低料金を基準にいたしますと実に五十二倍の距離別の逓増料金になっている。これは諸外国にも余り例が見られない、非常に高い市外料金体系になっておるわけです。市外料金につきましては、そのコストの面を見ますと、これまで長距離の電信電話の搬送コストというのは、同軸ケーブルとかマイクロウエーブというような新しい技術革新成果が積極的に取り入れられまして、コストは著しく下がっていると言われております。したがいまして料金とコストとの乖離が現在でもかなり大きいと言わざるを得ないのではないかと思います。さらに今回のように一律アップいたしますと、その乖離はますます大きくなると言わざるを得ないわけです。
そこで市外料金については、どのような具体案を持つか、大変むずかしいわけですが、諸外国では歴史的には長距離コストの逓減を反映させまして安くしていく、ないしは距離段階を大ざっぱに区分するというふうな方法をとってきているわけです。イギリスにおいては、近い将来に全国一律料金にまでするという案があるそうですが、ここまでドラスティックなことはできない。そこで十三段階区分をもう少し大ざっぱにくくるということと同時に、シャープな上昇逓増の距離別料金をもう少し水準としても下げてやるということが必要であろうと思います。この場合には、コストとの乖離という点がある程度解消されるということと同時に、料金には、先ほど申し上げましたような需要の価格弾力性ということを考えなければならない。この場合に、長距離料金がある程度安くなれば、当然、需要はふえると期待されます。したがって、これもよろしいというふうに考えられるわけで、具体的には、やはり長距離料金を安くするということをすべきであるというふうに第二番目の点で具体的に提案いたします。
第三番目に、現在、巨大都市圏におきましては生活圏、経済圏が著しく拡大しておりまして、東京に働きながらその近郊衛星都市に住むという人はたくさんおるわけです。しかし、近郊都市に住む人たちは、東京都内の人の市内料金ではなく、市外料金を払わなければならない。しかも経済圏や行政圏というものが拡大している中で、各地方自治体もこのような料金格差には悩んでいると聞いております。各国では、このような生活圏、経済圏、行政圏の拡大に対応いたしまして市内料金区域の広域化を進めております。わが国でも、御承知のとおり、広域時分制採用の折にある程度の広域化が行われたわけですが、巨大都市圏についてはほとんど手がつけられなかったと私は記憶しております。そこで、この巨大都市圏における生活圏、経済圏、行政圏の拡大にかんがみまして、市内料金区域というものの拡大を図り、広域均一料金制の採用に踏み切るべきであろうと考えております。
参考までに私が調べました限りでは、アメリカでは現在これまでも帯域料金というような形で広域化を進めておりますが、そのほかにいま新しく進めているのはそう巨大に広域化するということはできないので、たとえば私ですと府中に住んでおりまして、東京大学に勤めておりまして、そのほか幾つかの必要な個所がありますから、そういう何カ所かを選択する。その選択したものについては均一料金、市内料金で済ますという選択料金制を検討しているとまで言われております。そのような幾つかのアイデアを参考にしながら、広域料金制というものについても早速踏み切るように要望したいわけです。
もう一つ、市内と市外との分かれるところにありますところですが、極端に言えば、道路を隔ててこちらは市内で、あちらは市外というふうな矛盾が存在するわけでありまして、そういう問題にも余りこれまで手がつけられてないわけですが、この点でも西ドイツのような近隣通話制、通称カメの子型と言われますが、そういう利用者の不平等というものをなくすための配慮が必要であろうと思うわけです。
以上、申し上げたような電話料金体系については、基本料について、特に住宅用につきまして最低度数付基本料案を提案し、市外電話については大ざっぱなある程度の段階区分に改正し、そしてまた水準として下げる。そしてまた三番目に、巨大都市圏における均一料金化、それからまた近隣通話制というようなものを図るべきだろうと思います。
さて、電話から電報に転じますが、電報料金というものは、これはなかなかむずかしい問題を含んでおりまして、幾らにすべきかはなかなか算定できない。たとえば、いま言われている収入に対する支出の大幅な赤字ということを考えまして、一挙に相当の値上げをいたしたといたしますと、だれでも予想されますように、電報利用者の中には、かなりの電話を持てないような低所得層が存在するということで、この点ではそう大きな値上げを一挙に行うというわけにはいかないわけです。
そこで、この点では、第一に、公社内部で合理化の徹底を行うということと同時に、ある程度の補助、さまざまな形での補助がやむを得ないのではないかと私は考えております。これは今回の料金値上げとはかかわらない形で幾つかの形のことができる。この点はこの議会の方々も御承知のことと思いますので、行えればいいのではないかと思います。
さて、最後に、料金問題を勉強してまいりますと、幾つかの問題に感想を持つわけでありますが、よく言われますどころの法定主義という点について簡単な意見を申し上げたいと思います。
私は、この中で皆様方の努力に対して最大の敬意を払うわけですが、世界の料金規制の体系を見ますと、法定主義ないしは国会が最終権限を持つというふうな形はほとんどとられていない。アメリカにおきましては、すでに一九〇七年から各州において議会による決定ないしは法定主義はやめてきておるわけでして、その背景は何かと申し上げれば、物の本によりますと、州議会や州立法による規制ではさまざまな政党政治の政略に使われるということで、かなり民主的なプロセスからはずれるということがしばしばあるという点が強く反省されております。同時に、専門家というものの意見がなかなか反映されないし、一般民意も必ずしも反映されないということが書いてありますが、それらの点について、ここでこの日本のあり方をそのまま申し上げようとは思いませんが、このままだとは申し上げようとも思いませんが、やはり民主的なプロセスに変えるということは考慮されるべきことだと私はかねがね思っておりました。
しかし、アメリカの方式をそのままとるわけにはいかないのは、わが国では、アメリカのように民営ではなくして、公社形態でありますから、ある程度国会ないし大臣、主務官庁というものが監督権限を持たざるを得ないわけです。そこで、私は、諮問委員会というものをこの中につくることをぜひ提唱して、専門家及び民意の反映ということに一層努力されるよう努めたらいかがかというふうに考え、提案申し上げます。
以上、いささか失礼な表現もあったかと思いますけれども、私の意見を述べさしていただきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/18
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019・森勝治
○委員長(森勝治君) 以上で公述人各位の陳述は終わりました。
ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/19
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020・森勝治
○委員長(森勝治君) 速記を起こしてください。
暫時休憩をいたします。
午後二時五十五分休憩
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午後三時九分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/20
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021・森勝治
○委員長(森勝治君) 公聴会を再開いたします。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/21
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022・森勝治
○委員長(森勝治君) 速記を起こしてください。
これから公述人の方々に各委員からお聞きをいたしますが、各先生方にあらかじめお断りしておきたいのでありますが、おいでいただいております山本公述人及び北沢公述人から、先約がある関係上、午後四時までに退席したいとの申し出がございます。あらかじめ御了承の上御質問をお願いいたします。
それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/22
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023・片山甚市
○片山甚市君 前田先生にまずお伺いしたいんですが、実は、今回の値上げ法案は、五十一年から五十三年度の建設計画として五兆四百億円のお金を使うことになっています。そのうち電話は総額で四兆六千七百億円で、その内訳が純粋に加入電話と言われるのが四兆二千四百億円になる。各種電話サービス、プッシュホンとかそういうものを含めますが、四千三百億円、こういうことです。そしてデータ通信が二千七百億円、画像通信が二百億円、専用線等が八百億円ということで、実は、今回の値上げの基礎になりますのは、外部資金を借りておるんですが、それをどうしても少なくしたい、そのためには値上げをしてそれを穴埋めしたい、こういうことであります。
ちなみに公社の借入金は、御承知と存じますが、全部で一兆二千六百三十二億円、五十年度ですが、そういうことで、総費用のうち金融費用、金利あるいはそのお金を借りた費用を返す、元本を返す金が総費用のうちの一三%になる。先ほど言いました固定資産がございます、その減価償却が先生から御指摘ありましたが、定率法を一律に使用していますから三〇%を超える費用があり、こういうことで実は値上げの根本、一番大きなのは、装置産業だからそういう設備投資はあまりまえではないか、そういうお金は、当然、受益者負担だから電話を持っておる者から一律に取り上げるべきだというのが大体今度の考え方。そこでそれに私は反対をする立場から、こういうような莫大な金をかけるんでありますから、長期に低利の資金を債券あるいは政府のお金で安定的に——長期といいますと、三十年とかそこらぐらいの債券になりましょうが、すべきだと私たちは考えています。そのことが一つあるわけですが、そのことについての先生のお考えを聞きたい。
今回のいわゆる公社の料金値上げのねらいは、ポスト電話と言われるように、加入電話、住宅電話などを引くというのは一つの手でありまして、本来言うと新しいファクシミリのようなものでありますが、そういうものを入れるデータ通信を発達させるというためにお金を集めよう、こういうふうに考えていますと思うんですが、いかがでしょう。
特に、先ほどお話ありました減価償却については、技術が非常に日進月歩というか発達するんで、私も、先日のこの委員会では、もう終わった、そう珍しいものはない、そういうことはしなくていい、安定経済ではないか、新全総も見直されて五十年代前期経済計画などということで、ゆっくりやろうじゃないか、こう言っておるのに、電電公社だけが何か金星か火星かに行ったような気持ちでうろうろしているが、どうもわからぬ。わからぬというのは、金がほしいから何でも言いますわね。悪いことをやったら、白を黒と言ってでもつじつまを合わせてくるんだが、これ納得できないんだが、先生はどう思うか、これが一つです。
二つ目に、電話料金の体系には、遠藤総務理事がいみじくも言っておりますが、日本の国にだけしかなくて、外国にはないんだが、検討してみたいというふうな——検討してみたいというのは当てにならないことが多いのですが、今度は本当にするそうですが、福祉電話、事業用の電話あるいは家庭用の電話という三つの三本立てにする、こういうふうに言っておるようです。私たちの言うことはわかったというのですが、そういうようなときに、先ほど総合原価方式をとったときに個別にどのような厳密なものをつくるべきか。
と申しますのは、電電公社は大きらいのようですが、電気事業界、いわゆる電力会社のやっておる程度の原価報告をしたらどうかと言うのだが、それは違うと、こういうことであんまり明確な答えをしておりません。そういたしますと、都合のいいところでは電報が赤字になってみたり、どこが赤字になってみたりするのだが、さしずめ突っ込んでいくと、それは収支を割り掛けただけだ、こういうことになるので、この点についての御意見をまず先生から承りたい。料金の決定の原則の問題について、先ほど特に原価についての公表ですね、それについての御発言ございましたが、この原価というものをもう少し詳しく説明を願いたいと思います、とりあえず。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/23
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024・前田貞芳
○公述人(前田貞芳君) それでは、御質問がありましたので、順次お答えしたいと思います。
第一点は、五十一年度から五十三年度の建設計画に関しまして、そこにおける趣旨がデータ通信を中心としたものであるというふうな点、それに関連しまして金融コストが非常に高くなる、それから減価償却も非常に多くなるというふうな点、それからさらに長期の低利資金を政府の資金で導入することの是非というふうなことだろうかと思います。
それで、先ほどお話ししましたように、やはりこれまでの公社の経営姿勢そのものは高度成長政策を基点として、ほかの民間企業あるいは国際的にどこにも負けないようなものを先取りしていくというふうなところにかなりの主要な視点があったかと思います。それはたとえば住宅用に関しましてはダイヤル式とか自動化ということでかなり国民的なサイドから反映される面もあるわけですけれども、いま電電公社が指向しているのはデータ通信という形で、恐らくわれわれ国民一般にとってどの程度必要であるかどうかというふうなことが非常に疑問のある側面であろうかと思います。したがって、そういうふうなものに関する計画を中心に置き、それで収支が合わないから値上げをするんだというふうなことはやはり根本的におかしいというふうに考えなければならないわけです。
それがそのような経営姿勢をとっているがために金融コストが非常に大きくなり、さらに減価償却の方法として定額法ではだめで定率法をとらざるを得ないというふうな関連性がそこに存在するわけでございますね。したがって、その経営姿勢そのものをやはり根本的に見直して、その視点から考えていけば、減価償却の方法そのものも定率法をとる必然性は出てこない、むしろ定額法でやった方が実情に合うというふうな形になろうかというふうな気がするわけでございます。
それで、もう一つの問題で、資金の調達の問題でございますけれども、これは実は経営姿勢そのものとうらはらの関係にあるわけでございまして、その点が解明されない限り、やたらに政府資金をその中に導入するというふうな論点はやや疑問の余地も含まれている面があるんじゃないかというような気がするわけです。が、しかし、公社そのものがどのようなサービスを提供していく、そしてその提供するサービスそのものが国民的なサイドから非常に不可欠であるという側面についてはやはり積極的に政府資金の導入を図っていくというふうなことは当然考えてしかるべきであろうかと思います。その典型的なものとして考えられますのが、先ほど申し上げましたように、福祉的な側面に関してはそれにかかるコストそのものは政府の、あるいは国あるいは公共団体の負担というふうな形を考えると同時に、もしどうしてもそれを建設するための資金が手当てできないのであれば、長期的な資金を導入していくというふうな方向は当然考えてしかるべきじゃないかというふうに考えております。これが第一点に関する問題でございます。
それから第二点、料金体系の問題に関連しまして、これは先ほど申し上げましたように、総合的には公社もやはり自立的な経営単位でございますので、その範囲内で事業を運営するに差し支えないような形の収入を上げていくというふうなことは当然考えていかなきゃならない事実であるわけでございますね。その意味で先ほど全体としての総合原価あるいは総括原価をもとにして料金は考えていかなきゃならないというような面がやはりあるというふうなことを申し上げたわけです。が、しかし、実態は受益者の側でかなり違った特質を持っているものがある。それを、私は、福祉、それから事業用、それから家庭用という形に三つに大きく分けて考えた方がいいんじゃないかというふうに申し上げたわけです。
そこで、じゃそのときに個々の経営の計数的な把握をどのような形で行うか、いわゆる原価把握の問題になるわけでございますけれども、それは不要であるかどうかというふうな問題になるわけですけれども、やはりこの点は一つのめどとしてどれだけのものがあるのかどうかというふうなことはある程度把握しておかなきゃならない、その上で利用者の負担能力等々を加味して料金全体の問題を考えていく必要があろうかと思います。
そこで、現在のところ公表されているのを見ますと、住宅用と事務用でございますか、それは分けて計算をしている節はあるわけでございますね。したがって先ほど申し上げましたように、新聞等には、住宅用は赤字で事務用は黒字であるというふうなことがかなり頻繁に出てくるわけでございますけれども、残念ながら、私どもにとってはそれがどのような理論的な根拠のもとで、どのような区分のもとで、収入を把握し、さらにコストを把握しているのかどうかということは一切把握できないわけでございますね。したがって、その結果として出てくる数値そのものだけを見れば、確かにああそうなのかなあという形でとられがちな傾向を持っていると思います。これは恐らく私専門が会計学でございますので、いつも学生を初めいろんなところで申し上げているんですけれども、その出てくる数字の根拠自体が問題であるので、それとの関係を踏まえなければ、出てきたのは余り意味がないというふうなことをいつも話すんですけれども、私の知っている限りにおいては、どうも公社の区分計算はそれに近いような側面を持っているんじゃないかというふうに感じているわけでございます。
したがって、そういうふうなもしそれが明確に区別する根拠というふうなものがあるのであれば、それもはっきり公表するような形でわれわれ国民の前にさらし、それが本当に正しいのであるかどうかということの判断に資するべきであろうかと思います。そうでないと、ただ住宅用はこれこれ、あるいは事業用はこれこれだということでもはなはだ信用ができないんじゃないかというふうな感じがいたします。ですから、したがって恐らく原価公表の問題は非常にむずかしい側面を持っていることは事実なわけですけれども、やはりそれはどういうふうな形で区分しているのかどうかということは根拠があるわけでございますから、その根拠を明確に示して、それが適正であるのかどうかということの判断に資するようにする必要はあるんじゃないかというふうに考えます。
これはほかの公述人の方からありましたように、結局、いまの公社の経営姿勢のあり方として、われわれサービスを利用する受益者の意見とか、判断が余りできないようなシステムになっているような気がするわけでございますね。ですから、たとえば利用者委員会であるとか、あるいは料金決定に関してより専門的な立場からの検討をする委員会であるとかいうふうなものをもう少し広げて考えていく必要を感ずるようなわけでございます。
以上が御質問に対する答えでございますけれども、まだ何かありましたら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/24
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025・片山甚市
○片山甚市君 いま御説明いただいたのですが、実は、公社が今回提案したときに、五十四年度以降は完全充足をしておるから三千五百万ぐらいの電話があるだろう、それには毎年改良のために二百四、五十万の電話を改めなければならぬ、こうおっしゃいました。さらに核家族等の問題があって二百五十万台の電話の新規申し込みがあるだろう、こういうようにおっしゃるわけです。ですから、今度の出されている問題というのは、やはり住宅電話が赤字だとか黒字だとかいうのは一つの手でありまして、一番ねらっておるのは、資金を調達して、いままでの公社の独占的な機器メーカー、通信業界を潤すために、そのバネに使われておる、こういうように私は考える。
なぜそんなことを言うかというと、改良費といって三千億円組んでおります。見ていただいたかと思いますが、十年間の計によると収入の約三%程度は必要だ。で先ほど改良費以外に申しましたように、加入が二百五十万ふえる、そうすると五百万の電話をつけることになりますね。先生はそれを見てどういうふうにお考えになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/25
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026・前田貞芳
○公述人(前田貞芳君) それではお答えいたします。
ここで具体的に問題になりますのは、恐らく改良投資の三千億円というふうなものと、それからそれがどのような理論的な根拠のもとにそこに必要とされているのか、そうしてそれが公社の言うように住宅用の電話の改良あるいは電話の増設というふうなもののために必要であるのかどうかというふうなことであろうかと思います。
それでこの辺になりますと、率直に申し上げまして、五十四年度以降にどういうふうな形で家庭用の電話の改良が必要になってくるのかどうかというふうな側面でございますね、それから核家族化の問題、確かにこれは進行しているわけでございますけれども、その根拠がどのようなものであるのかどうかというようなことに関する分析を、私自身、余りそういまのところ突っ込んで行っているというふうな側面がないわけで、正確に申し上げることはできないわけでございますけれども、ただ、それに関連して改良投資三千億円ということに関して考えてみますと、はなはだやっぱり理論的な根拠が私の見る限りではないような感じであるわけです。
こう見ますと、過去十年間の実績、その実績が一体どういうふうなことで出てきたのかどうかということを考えてみますと、これも先ほどのところで申し上げましたように、この十年間の過程は、公社が新しいデータ通信等というふうなところに進出をしていくための一つの経営姿勢をもって展開されてきたというふうな事実が存在するわけでございますね。ですから、そういうふうな事実を踏まえておいて、過去十年間こうだから、これだけのものが必要である、他方において家庭用電話の改良のためにこれだけ要る、それから増設のためにこれだけ要るというふうな根拠は、ちょっと論理的にも筋が通らないのじゃないかというような気がするわけでございますね。したがって、そういうふうな点を考えてみた場合には、やはり公社はこれまでの経営姿勢そのものを追求していく、あるいは維持していくというふうなために、どうしてもこれだけの三千億円というふうなものの改良投資分を含まなきゃならないというふうなことがあるというふうに読み取る方がむしろ妥当じゃないかなというふうな感じがいたします。
これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/26
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027・片山甚市
○片山甚市君 北沢先生にお伺いするのですが、私は社会党の立場から電気通信監理委員会を設けて、もっといわゆる経営の状態を国民の手の中でやってもらいたい。経営委員というのは委員が五人で特別委員が二名、七名になっていますが、小佐野さんが入っておる程度のものでありますから、大体、どんな者がやっておるかということはおよそ想像がつくと思いますが、これを改めてもらいたいと思いますが、大臣は、いやだと言う、いや、もうこれでいいんだ、どうでもいいんだというようにとれますが、わからぬから。私は、そういうふうな立場から言って、いま国民に開かれた事業とするチャンスじゃないか、こんなときにせなきゃならぬということで、われわれが提案をして大臣並びに総裁の諮問機関として、政府の諮問機関をつくることになりました。そのときに、北沢先生なら、それにどのような期待を、そんなとこではどんなことを議論をしてもらいたいと思われるかどうか、それが一つであります。先生の日ごろのお話を聞いておると、何かユニークな話が出るんじゃないかと楽しみにしてお伺いをしたいと思う。
その次に、私たち、またこれ社会党ですが、国民あるいは利用者、当該労働者などの意見を反映する場として、電気通信の利用者委員会というものを提案し、せんだってからこれも大臣、総裁などとこの場を通じて議論をしたときに、そのような趣旨でやろうということになりました。私はやはりサービスの内容と建設のいわゆる計画、料金、この程度はちゃんと利用者委員会というか——電話を持っておる人ですよ、内線扱いはだめ。自分も払わぬで人に払わしておるような程度の者はだめですね、あれは身にこたえないから。そういうような者が来て話をするようにと言って、大体それでよろしいでしょうなどと言っているけれども、これ値上げが済んだら知らんぷりするかもわからぬから、ちょうど先生おられるときで、そういうようなことで先ほど利用者のチェック機能を行え、こういう意見と、経営のいわゆるガラス張りというか、公開的な意味のことをお話ししていただきました。私はその節の者ですから、余り数字を言うとぐあいが悪いから、公述人である北沢先生のお考えで、私のいま申し上げたようなことがこの国会を通じて実現をするとすれば、望ましいのかどうか。料金値上げに反対だと言っても、これはほっといても、どないしてもきちんとせにゃなりませんので、そのあたりを少しお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/27
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028・北沢方邦
○公述人(北沢方邦君) ただいまの御質問でございますが、私は、いま片山委員からお話しのあったその二つの提案については全面的に賛成でございます。
その具体的な内容をどうするかということは、もちろん今後大いに議論しなくてはならないと思いますが、第一に、たとえばアメリカあたりと比較した場合に、非常に違うところは、電電公社が非常に大きな独占企業体である。確かに公社という形をとって、いわゆる私的資本主義ではございませんが、しかし非常に大きな独占体である。アメリカの場合には、多数の民間企業がありまして、しかも民間企業でさえも公共事業であるということで非常に大きな種々の制約を受け、厳密にチェックを受けているわけでございます。ところが、日本の場合には、そういう非常に全国を独占している巨大な独占企業体であるにもかかわらず、それをチェックする機関や機能というものが非常に弱いし、希薄である。これがやはり私が最初に申し上げましたように電電公社が独走する要因になっているのではないか。
私、この際、あえてここが逓信委員会であるということで、委員の皆様に要望申し上げたいと思うのですが、いま日本は情報社会の方向に向かっているわけですが、個々のセクターとか個々の企業、個々の産業なんかがいわばそれぞれ独走していて、全体に一体国家政策として情報政策をどちらの方向に目標を設定していくのかということについて余り明確なものが出ていない。これははなはだ困るわけで、先ほど申し上げましたように、既成事実だけが先行してしまって政策が後から追っかけていくという、そういう事態になりかねないわけです。ですから、国会でももちろん、それからさらに、いま片山委員からお話しのあったような各種の委員会というものをつくるということは、やはりそういうある種の独走をチェックし、そして本当に国民のための基本的な一つの情報産業や情報企業のあり方ですね、それを決めていく、その方向を決めていくということに非常に大きな役割りを果たすべきではないかと思います。
それから、経営の参加の問題ですね、労働者、職員などの経営参加の問題。これはもうすでにヨーロッパあたりでは、たとえ資本主義国であっても非常に大きな常識になりつつあって、具体的に経営にどう参加していくかということがいま現在プログラムになっている状況であります。ですから、この点でやはりわが国が種々の側面で非常におくれているわけです。特に、こういう独占企業体に関しては、やはり内部からのチェックというものも非常に大きな必要があるということなんです。
それからもう一つ、いまお話しのありました利用者の問題です。これはやはり本当の利用者受益者といいますか、それに対する一方的なサービスだけではなく、その利用者が一体どんな要望を持っているのか、あるいはその利用者自身によってそういう独走が起こり得ないようにいわば監視体制をつくるとか、さまざまな形で独占企業体をチェックするということが、むしろ私は公社の内部あるいは公社の立場においても実は必要なことではないか。今後、そういう大きな日本の情報政策の基本的な方向が打ち出されていくときに、それと並行してこういうさまざまなチェック機関を設立するということは同時に必要になるのではないか、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/28
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029・森勝治
○委員長(森勝治君) ちょっと速記とめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/29
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030・森勝治
○委員長(森勝治君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/30
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031・最上進
○最上進君 自由民主党の最上でございます。
若干の質問を申し上げたいと思いますが、山本先生お時間の関係があると思いますので、先に一点お伺いをしておきたいと思います。
このたびの法案審議に当たりまして、大臣の提案趣旨の説明の中にもございました、いわゆる今回の料金値上げの前提になっております公社の経営悪化の最大の要因というものは、やはりどう見ても人件費の増大の問題であろうというふうに私どもは考えているわけであります。特に五十一年度の予算を見ましても、二兆七千億に上ります事業支出の中で約三分の一、九千百三十九億円が、これが人件費でございます。特に千二百九十四億円、五十年度対比でありますけれども、増加をいたしておりますし、特にこの中には仲裁裁定分の八百五十七億円も含まれているわけでありますけれども、こうしたやはり今回の料金値上げの前提となっております経営悪化のいわゆる原因として人件費の増大ということを私どもは考えているわけでありますけれども、この点について山本公述人はどのようなお考えを持っておられるか、お伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/31
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032・山本雄二郎
○公述人(山本雄二郎君) ただいまの御質問ですが、やはり昭和四十八年の石油ショック、その後での大幅なベースアップ、こういうものがありまして、そのために人件費が増大して、その結果、経営が悪化したというのは、いま最上委員の御指摘のとおりだと思います。
ただ、電電公社の場合は、他の公共企業体と比較してみますと、これまでかなり合理化あるいは技術革新の成果を取り入れるというような努力が行われておりまして、具体的には国鉄なんかと比較してみるとよくわかると思うんですが、人件費による圧迫というのはほかから比べればまだ少ないと思います。しかし、これから先まだ人件費が今後増大していくことが考えられると思いますので、その経営悪化を再び招かないためには、その人件費の合理化という点については今後一層の努力が必要であろうと思われます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/32
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033・最上進
○最上進君 次に、前田公述人そして北沢公述人お二人にお伺いしておきたいと思うんであります。
実は、二十二日の日に、私どもは委員会を移動いたしまして、福岡市で地方公聴会を開いてまいりました。その際にも、必ず、野党の推薦の参考人の方々の意見の指摘の中にいわゆる減価償却費の問題がありました。その際に、私は指摘をしておいたんでありますけれども、特にいまお話を伺っておりますと、北沢公述人のお言葉の中にも異常な減価償却ということできめつけをされておるわけでありますけれども、その異常な減価償却ということは北沢公述人の場合にはどういう現象をとらえておられるのかお伺いしておきます。
〔委員長退席、理事茜ケ久保重光君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/33
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034・北沢方邦
○公述人(北沢方邦君) あえてきつい言葉を使いましたから、もしお気にさわりましたらあらかじめ御了承いただきたいと思うんですが、あえてこういう言葉を使いましたのは、これは一般的な問題で、電子技術だけの問題ではございませんが、大体、技術史的には一九五〇年代に現在の技術革新の一番基本的な理論はもうほとんど完成しておりまして、一九六〇年代にそれの具体的な開発を始める。これが重化学工業とか電子工業とかいろんなところに非常に大きな世界的な技術革新の波というものが押し寄せてまいりました。その電子工学においても大体同じような道をたどったわけなんですが、先ほど報告の中でそれぞれ技術には波がある、あるいは山があるということを申し上げましたけれども、そういう意味で一九六〇年代というものがたとえばそういう電子工学においても一つの山で、技術開発の山であったということが言えるんではないか。確かにその時点をとってみますと、技術の陳腐化というものはもう非常に大きなスピードでなされているわけです。
これは確かに認めなくてはいけないと思うんですが、ところが、現状では、電子工学に限らずほぼ主要な技術的な開発は終わりまして、あと、たとえば電子で言えば非常にスピードやキャパシティのある装置をどう開発するかというような、そういう効率化の問題のみにいわば限定されてきている状況であります。
しかも、そういう極度の効率化を必要とする分野はむしろコンピューターとかそういった部門でありまして、果たして電話にまでそれほどの大きな効率化が必要であるかどうかということは、現に私利用者の一人として考えた場合に、現在の電話でこれで私自身は満足しているわけですけれども、こういう技術史上の一つにいろんな波がありますが、技術革新のクライマックスのときの技術陳腐化のスピードをそうでない時期にまで当てはめるということは非常に大きな無理がある。ですから、装置の更新というものの年限を非常に短く設定しております。それが減価償却費の率を上げることになっております。そういう辺をもう一度やっぱり根本的に考え直す必要があるんではないか、そう思いまして、先ほどあえて異常なというような挑発的な言葉を便った次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/34
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035・最上進
○最上進君 そこで、前田公述人にお伺いしておきますが、これは福岡市での地方公聴会のときに私が指摘したことでありますけれども、御承知のとおり、ただいまの御指摘にありましたいわゆる定率法を定額法に改めていく、こういう定率化、定額化という考え方の前提に、耐用年数という問題があるわけであります。
この耐用年数という問題を考えるに当たりましては、私どもが少なくとも考えられますことは予測する数値である、いわゆる実際にこれがどのくらいもつものであるかという、そういうことについて絶対に正確な数値というものはあり得ないのであって、あくまでも予測される数値である。したがいまして、そういう若干狂いが生じることの可能性のある数値であるということに立ちますと、私は、この定率法というものが、御承知のとおり、自動的に調整をする調整機能というものを持っている非常にすばらしい一つの方法、考え方であるというふうに考えております。この若干狂いが生じることもあるのだというそういう可能性を前提にして考えますと、定額法の場合には、いわゆる過小償却とかあるいは過大償却——過小額、過大額、こういう問題が当然出てくるわけでありますけれども、この点については前田公述人はどのようにお考えであるか、お伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/35
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036・前田貞芳
○公述人(前田貞芳君) それでは、お答えいたします。
確かに御指摘のとおり、減価償却の方法は定率法、定額法に限らず、その他たくさんの方法があるわけでございまして、どのような方法がより適切であるのかどうかということは学問的にもいろいろな議論があるわけでございます。もともとこの減価償却に関する問題は、アメリカにおいて公共料金問題、主として鉄道の問題に関して非常に多くの議論があったことであるわけでございますね。それで、その点を踏まえて私の考えを申し上げましたのは、公社というふうなものがどのような役割りを果たしているのかどうかというふうなことを基本に置きながら、それで減価償却の方法を考え、それを料金の問題に関連さしていくべきであるというふうな形で考えているわけでございます。
ですから、確かに耐用年数の決定は予測の問題であって、予測の問題ですから当然狂いが生ずるわけでございますね。ですから、それをどのような形で調整していくかどうかということで議論があり、それがおっしゃいましたように、定率法は自動調整機能があるという形で考えているわけです。確かに私もその事実は認めるわけでございますけれども、じゃ他方でもう一つ考えておかなければならないのは、御承知のように、このような形でどんどんどんどん先行投資をしていく企業においては定率法をとるということがむしろ自動調整機能を果たすのじゃなくて、それによって資本を蓄積するというふうな機能が非常に大きいという形で使われてきたのが事実であるわけでございます。これはアメリカにおいて減価償却の発展のあれを見ていただければ、恐らく大体うなずいていただけるかと思います。したがって予測に狂いが生ずるというふうなことをある程度認めつつも、それでもなおかつ、やはり公社においては、あるいは公益企業においては、定額法の方が料金負担というふうな問題から見て望ましいというふうな論理的なことが言えるのだと思います。したがって恐らくアメリカにおいてなぜ定率法が採用されることが認められないかというような論拠はまさにこの事実にあるわけでございますね。
その提供するサービス、それが国民の公共的なものである、したがってそれに即した経営内容が行われている、それが公平な料金の負担というふうな点から考えてみますと、定率法そのものは非常に問題があるというふうな事実が指摘されているわけでございますから、わが国よりもさらに会計学の分野でも進んだ領域にあるわけですが、その分野においてもいまだに定率法が認められていないという事実、そのところが、むしろ、ただ計算的に自動調整機能があるというふうなことと比較してみるわけにはいかないのじゃないかというふうに私は考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/36
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037・最上進
○最上進君 きょうの公聴会には、公募されたお二人の公述人の方はともに家庭の主婦であるというお話でありますので、この際、公聴会というのは専門の方々の意見を聞くことも大事でありますけれども、やはり国民の声を聞くという意味では大変貴重な意見を聞かしていただいたというふうに私は考えています。
その意味で、お二方にちょっとお伺いをしておきたいのでありますけれども、公共料金の値上げという問題は、確かに電報電話の問題だけでなくて、家計費に大変圧迫を加える、これはもう間違いないことだというふうに考えておりますけれども、大体、いま住宅用の電話の料金の問題が今回の委員会での質疑の中でもいろいろ取りざたされているわけでありますけれども、お二方の家庭におきまして、毎月どのくらい電話料金を——恐らく住宅用電話であると思いますけれども、どのくらいお払いになってこられているか、それがどのくらい家計費の中で占める割合を持っているか、この辺についてぜひ聞かせておいていただきたいと思います。
〔理事茜ケ久保重光君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/37
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038・河合和子
○公述人(河合和子君) 申しわけないんですけど、私、現在、家計簿をつけておりません。つける余裕がないと言った方が正しいんですけれども、私の、事実、電話にかけているお金というのはすでに五千円を出ている状態で、それは肉親が地方にいる場合ですと、やはり大きな打撃がございます。で、極力、私は手紙を書くことによってその分を出しているわけですけれども、これから事実上がるということは痛いわけですけれども、私が今回賛成という立場で来ましたのは、やはり私たちにこれだけ役に立っている電話というものに対してもう少し寛大になってあけたいという気持ちが多いからなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/38
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039・菅谷八重子
○公述人(菅谷八重子君) 私のところでも、やはり先ほどの公述の中に述べましたように、大体、お米の代金と同じぐらいなんです。で電話の料金というのは家族の数とかあるいは年齢によってもそれぞれ違うと思っておりますけれど、私のところでは五千円ぐらい支払っております。で、これが家計に占める割合というのは、まあ収入二十万としますと、それが五千円でどのぐらいになるかはおわかりになると思いますが……よろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/39
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040・塩出啓典
○塩出啓典君 それでは北沢先生、お時間の制約がありますので、まず北沢先生に一点お話を承りたいと存じます。
先ほどから公社の体質というものがいわゆる高度経済成長のそういう体質が改まっていない、こういうことはわれわれよく聞くわけでありますが、さらに具体的には、どういう点が高度経済成長の体質であるのか。私たちも、国全体の経済が高度成長から低成長になれば、当然、電話の需要もそれに応じていかなければならない、そのように考えるわけでありますが、その公社の改まらざるゆえんはどういう点にあるのか、これを承りたいと思いますが、簡単で結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/40
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041・北沢方邦
○公述人(北沢方邦君) いまの御質問にお答え申し上げます。
その経営体質が高度成長型であるということは、今回、さまざまな計画その他が出ておりますが、確かに多少の減速を図らなくてはならないというわけで減速はなされておりますが、私は、現在、電電公社に限らず、全体として高度成長自体がもうすでに終わった時代であって、ある意味で高度成長政策というものがこれから先は通用しないんだという、そういう国際状況を初めとして厳しい状況になってきていると思うんですが、そのときに、いままでの高度成長的な体質をそのままにして減速するということは、当然、さまざまな面で大きな赤字を出すという結果になるわけであります、ですから、今度の公社の値上げ問題の一番問題点は、そういう体質をそのままにして減速をするから赤字になる点がかなりあるんじゃないかと思います。
それを、要するに、非常に安易に値上げしてしまうと、高度成長のもう一つの特徴は絶えざるインフレーションの促進といいますか、それがあるわけですが、つまり体質を改善しないでそのまま高度成長的なインフレーション的な傾向にいわば乗って、安易な値上げをしようというところがまず一つの根本的な問題点ではないか。ですから、いま日本経済全体がそういう減速を要求されているわけですが、体質をそのままにして減速するということはやはり非常にさまざまな面で問題を生まざるを得ないし、それを利用者に負担させるというのは大変困ることである。
私が問題としたいのは、体質といっても具体的に一体どういう点がその体質であるかということは、大変それぞれの細かい具体的な部分でも問題がございますが、つまり全体としてやはり高度成長で伸びてきたそれの考え方がまだ根本的に改まっていない、つまり安定経済に対して一体情報サービスをどうすべきかという基本姿勢がまだ定まっていないような印象を受けるわけです。ですから、この際、こういう安易な料金値上げを出すんではなくって、安定経済に向けて一体どういう情報サービスを行うべきかという基本方針あるいはビジョンを、それこそ十年前に出したビジョンをいわば転換させる基本的なビジョンを出していただき、その上でいろいろ議論をすべきではないかと、そう考えているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/41
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042・森勝治
○委員長(森勝治君) ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/42
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043・森勝治
○委員長(森勝治君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/43
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044・塩出啓典
○塩出啓典君 そこで、これは北沢、前田両公述人に御質問いたしますが、前田公述人の御回答は後でも結構でございます。
先ほどから減価償却のことが問題になりましたが、やはり高度経済成長というものは当然技術の急速な発展、ということはやはり設備の陳腐化というものを急速にし、それが一方では非常に合理化というものがされ一人が少なくなっていく。そういうことで、やはり高度経済成長政策というものは当然技術の急速な進歩、したがって減価償却においても定率法というものは非常に適したのではないかと思いますが、これからは余り急速に技術が進歩して陳腐化するということは、資源の面から、あるいは失業者を増大させる。そういうような点から、私は、やはりこの減価償却というものを依然として定率法を採用していくということ自体が一つの高度経済成長の体質ではないかと、そのように考えるわけでありますが、それについての御見解を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/44
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045・北沢方邦
○公述人(北沢方邦君) いま御指摘のあったことは、そのままそのとおりと申し上げたいと思うのですが、技術陳腐化の問題に関して二つ要因があったと思うのです。
一つは、先ほど申し上げましたように、技術史的な問題でございまして、この技術史、一九六〇年代における非常に大きな技術革新というものが電子工学においてもなされた。これは確かに事実でございまして、電子工学に限らずあらゆる分野での技術革新がまた逆に高度成長を促進したという面と、それから高度成長がまたそういう技術革新を要求した、その複合的な面がございます。ところが、現在は、一方技術史的に申しましても、もはやある種の大きな波はいわば越えられて、技術的な安定時代に入った。また遠い将来もっと大きな技術革新があり得るかもしれないけれども、それは当面の問題ではない、そういうような時代にひとつ入ってきておりまして、それからもう一つは、資源その他の理由でもう高度成長が続けられないという、そういう状況に来ております。
ですから、この二つの面から、減価償却に占める装置の耐用年数とかその他の点でやはりいままでどおりの高度成長的な考え方をそのまま続けるということは、これはまあ不可能である。先ほど高度経済成長的な経営体質が改まってないと申したけれども、減価償却費というのは、そういう意味でははなはだ象徴的なことであると、私ばそう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/45
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046・山中郁子
○山中郁子君 御意見をありがとうございました。
北沢さんと山本さんがお時間の都合があるらしいので、お急ぎだと思いますが、一点ずつ簡潔に初めにお考えをお伺いしたいと思います。あとの方に対する質問はまた後に回してさせていただきます。
初めに山本さんにお伺いしたいんですが、電信電話料金値上げやむなしという立場での見解が述べられたわけですけれども、その前提として、日本の電話は大変良質であると、世界でも最高の水準であるというふうに言われました。これは電電公社もいつもそういうふうにして宣伝しておられることなんですけれども、一方、今回の値上げの問題に関して一つの大きな問題になっているのが耐用年数のことです。いま皆さんからもいろいろお話がありました。
そこで、私は、大変いつも矛盾だというふうに思って公社にそのことを質問しても合理的な返事はいただけないんですけれども、技術がどんどん進んで大変良質な事業をしているということを誇示しておられるとすれば、なぜ耐用年数が、たとえば昭和二十八年総合的に二十四年半だったのが現在もう十三年半と、半分ぐらいに縮まっている。で良質になって、技術革新をするために、あるいは開発をするためにたくさんのお金を投資してきたとすれば、物はもっともちがよくなっていいはずじゃないか、素人は、素人というか一般的にはそういうふうに考えると思うんですけれども。そうして、もし耐用年数が昔に比べてこんなに短くなければ、決して支出の大きな要素となる減価償却がこんなにふくらむということはなかったわけです。この点についてどのようにお考えになるか。まあ世界でも良質な電話サービスであるというふうにおっしゃられることとの関連で、お伺いしたいと思います。
それから北沢さんには、一番最初の経営姿勢の問題で指摘なされたことと関係あるんですけれども、私も、簡単に申し上げまして、一般の国民の福祉——これは公衆電気通信法の第一条でその目的として掲げられているわけですけれども、その国民の福祉を増進するということとは直接的に関係のないデータ通信サービスその他を、公社がこういう形で、それを引き受けた形で、莫大な建設投資、開発投資そうしたものをして、そのための必要な費用が国民への料金としてかぶさってきているということには、私は根本的な疑問があるというふうに考えております。その点については北沢さんからの御意見もあったわけですが、一番根本の問題として、公衆電気通信法との関連でもう一つ突っ込んだ御意見が伺えれば幸いだと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/46
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047・山本雄二郎
○公述人(山本雄二郎君) ただいまの御質問ですが、私は会計学を専門としているわけではありませんので的確なお答えができないかもしれませんが、その点をあらかじめお許しいただきたいと思います。
耐用年数が短くなってきたんではないかという御指摘がありましたが、これは事実そのとおりだと思います。それで私の理解しております範囲では、この耐用年数というのはたしか法人税法にのっとって行われているものでありまして、たとえば電電公社だけが特別のものをやっているというふうには理解しておりません。したがいまして、先ほど山中委員御指摘のように、質がよくなれば耐用年数がそれだけ延びるではないかという御指摘でありましたけれども、確かに設備といいますか施設といいますか、そういうハードウエアそのものの耐用年数といいますか、もちがいいということは事実あると思いますけれども、それを使いこなして効果を上げるといいますか、その機能といいますか、ソフトウエアの面まで含めますと、その二十八年当時の耐用年数を現在の施設その他にそのまま適用することが妥当かどうかというふうに考えます。といいますのは、やはりこれだけ技術革新が進んでいる中では、北沢公述人によりますとすでに波は山を越したとおっしゃいますけれども、しかし、少なくとも二十八年当時と比べますと技術革新の波はまだ依然としてうねりは大きいわけですから、耐用年数が現在の状況にあるということはある程度私は理解できることだと思います。
それから、そういうことによって減価償却費が必要以上に大きくなったのではないかという御指摘でありますが、まあ定率法、定額法の問題は先ほど来お話が出ておりますのであえて触れませんが、一部、たとえば建物のようなものまで定率法で処理する必要があるかどうかという点は、私自身も若干疑問に思っております。たとえば国鉄の場合はたしかそれは定額法でやってると思うんですが、その辺のきめの細かい見直しというものは今回のような値上げが行われる場合は当然検討されてしかるべきでありますし、もし時間的に間に合わないというようなことがあれば、今後、早急に検討して結論を出す必要があるんではないかというふうに考えます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/47
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048・北沢方邦
○公述人(北沢方邦君) いまデータ通信の問題に関しての御質問でございますが、私、先ほどの報告で、要するにデータ通信を切り離すべきだということを申し上げましたんですが、実は、これはやはり根本的には私は国家政策の問題だと思います。で国家政策として、一体、そのデータ通信に代表されるような一つの基本的な情報政策をどうするかという、実は、国民的な論議とその上での合意があった上で、そしてなお赤字を覚悟しても国家的な投資を行うべきだという場合には、そのデータ通信を行うべきだと思うんですが、現在、いままでのところ、公社が先ほどから申しますように先行投資を続けまして、そしていわば独走するというような、そういう形になってるのが私やっぱり一番大きな問題だし、それから、なるべく巨大独占企業というものは分割していくというのが今後来るべき福祉社会とかそういったものの要求である、なぜなら国民によるチェックが巨大であればあるほど非常に困難になるから。
その二点におきまして、私は、データ通信というものはいま少なくとも公社の企業からは切り離して考えて、そして切り離すのを機会に徹底的に国家政策の問題としてどうあるべきかを議論し、そしてその上で必要があれば一つの独立したデータ通信の企業体をつくるべきであると、そういうふうに申し上げたわけであります。ですから、本来の電電公社の役割りは、たびたび申し上げますように、国民に対する公平な情報サービスでありますから、その点を徹底して行うのが公社本来の目的ではないかと、そう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/48
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049・塩出啓典
○塩出啓典君 先ほどの質問に対して、前田公述人のお答えを。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/49
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050・前田貞芳
○公述人(前田貞芳君) それでは、お答えいたします。
減価償却の方法に関連して、それが経済成長政策のとき、それから安定成長政策のとき、どのような関連があるかというふうなことでございましたけれども、確かに歴史的にこの償却方法の推移を考えてみますと、定額法から定率法へというふうな形の大幅の変更というか、その移行が民間の間にも行われましたのは、産業の発展の速度が高まった段階に続々と企業が採用してきたというふうな事実があるわけでございますね。したがって、その理由は、定額法、定率法の比較に関しましては、その安定的な成長のときとそれから成長政策のときどのような違いがあるかどうかということで考えていかなきゃならないわけでございます。
それで安定的な成長政策をとっているときに関して考えていきますと、定額法による場合と定率法による場合では大きな差が出てこないわけでございますね、回収する時点で非常に新しく投資されるものがわずかな割合でしかふえていかないわけですから。同じ方法をずっと継続的に採用してる場合においては定率法の場合は確かに早期回収できるわけですけれども、同じ速度で更新されているときというふうな前提をそこに置きました場合には、非常に大きな差が出てくるというふうには考えられないかと思います。ところが、問題は、どんどん新しいものを採用していくというふうな段階になった場合、いわゆる高度経済成長政策の段階になってきますと、御指摘のように技術の急速な進歩によって陳腐化の速度が非常に速まりますから、企業の方としてはできるだけ危険を早期に回避したいというふうなものが働いて、それが定率法へいく一つの大きな理由になっているわけでございますね。まあ自動調整機能云々というようなのは、これは後から、こう検討してみた結果そういうふうなものがその中で果たされるというようなのが恐らく私の知っている限りのあれだと思います。
確かに、そういうふうな機能はあるわけでございますけれども、そういうふうに考えていきますと、これは民間企業の場合においては、それをやりませんとほかの企業におくれをとるというような企業の存立にかかわる面を持っていますから、その定率法を採用する根拠というのはある意味では十分理解可能なわけでございます。ところが、公社の場合においては、とりわけ日本の場合においては独占企業体であるわけですから、ほかとの競争云々ということは考える必要はほとんどないわけでございますね。ですから、そういうふうな場合においても定率法をなぜ採用していくのかどうかというような根拠は、私自身には、仮に高度経済成長政策をとっている段階においても、公社というふうな性格を考えた場合には十分納得し得る理論は存在しないんじゃないかというふうな考えを持っているわけでございます。ですから、先ほど来、定額法、定率法でかなりこだわるようでございますけれども、その辺の問題がそこにあるというふうに考えております。
したがって、とりわけ安定成長的な段階になってきた場合には、確かに両方の差はないというふうなあれを申し上げましたけれども、そのあれが完全に充足されない限りは、やはり定率法ではなくて、定額法に戻しておくというような方が好ましいことである。また、料金の利用者の公平な負担というふうな点から考えてみた場合には、ある設備が機能してそのサービスを提供するというふうな事実を考えてみた場合、それは均等にサービスを提供するというふうに考えられるわけですから、そういう意味で考えてみた場合には、その期間内においては料金には均等な形で負担させていくというふうな方が納得のいく面が非常に強いんじゃないかというふうに考えておるわけであります。ですから、そういう意味で成長政策それから安定政策の場合においても、私の場合は、定額法の方がむしろ望ましいんじゃないかというふうな考えでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/50
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051・塩出啓典
○塩出啓典君 どうもありがとうございました。
それから河合公述人、菅谷公述人にお尋ねいたしますが、今回の料金値上げは、特に設備料とかですね、これが五万円から八万円になっていく。いままで私たちは電話はついておるわけですから、そちらは大体基本料が上がるのと七円が十円ということなんですが、これから新しくつける人にとっては非常に大きな負担と申しますか、八万円にもなるんならちょっとつけるのをためらおうかという、こういうことになるんじゃないか。そういう意味で、私は、今回賛成の河合公述人にいたしましても、ちょっと値上げが急速過ぎるんではないかと、こういう感じを私は持つんでありますが、利用者の立場から率直にどう考えられるかですね、これを承りたいと思います。
それと植草公述人にお尋ねいたしますが、先ほどからいろいろ料金体系のあり方についていろいろ示唆に富んだお話を承ったわけでありますが、いまのいわゆる設備料が非常に上がると、そういうことはやっぱりこれからつけようという需要を抑制をしていく結果にもなって、公社といたしましては、いわゆる赤字と言われておる住宅用のふえ方が減ることは、ある面では経営内容にプラスしていくという、そういう面もあるんではないかと思うんですけれども、しかし、やはり日本全体の文化生活の向上という点から考えれば、いわゆる設備料の急激な増加と、また基本料金が二年間で倍になる、こういう急激な変化というのはやはり福祉政策に逆行するんではないか、こういう点についての御見解を承ります。
それともう一つは、先ほど長距離をもっと下げろと、諸外国の例に比べて日本は長距離が高過ぎると、そういう原価から乖離をしておると、これは確かにわれわれもそのとおり、長距離はもっと下げるべきである、しかし、長距離を下げて近距離が上がったんではこれは非常に困るわけですが、しかし、先ほどのお話では、長距離を下げればそれだけ需要がふえるから結局別に近距離を上げなくても長距離を下げても採算は合うというような、そういうように私理解をしたわけでありますが、そういう点について、さらにどういう根拠でそういうことになるのか。いわゆる私たちの言う長距離を安くして近距離が高くなるんじゃなしに、近距離はいまのままにして長距離はさらに安くなる、その方が一番望ましいわけでありまして、それについての心配があるわけで、御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/51
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052・河合和子
○公述人(河合和子君) 先ほどの設置料ですけれども、設備費として八万円になるということですが、確かに安いとは申し上げられないと思うんです。ですけれども、八万円になって電話をつけるかっけないかということになりますと、やはりその人の個人の価値観と申しましょうか、電話が自分に対してどれだけの意味を持つかということによって、いまの方は十万円でも買う場合には買うわけです。ですから、八万円という額が自分にとってプラスになるものであれば、つけるというふうな方向に私はなると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/52
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053・菅谷八重子
○公述人(菅谷八重子君) 五万円から八万円になるという点ですが、これは大変な値上げになるわけです。聞くところによりますと、実質架設料というのは一万三千円ぐらいとかって聞いておりますが、これをなぜ八万円にしなければならないかと、そういう点から考えますと、このほかに引く場合にはさらに十五万円の電話債券を買わされるわけです。いまは電話債券はその場ですぐに横に流れていくようなシステムになっているようですが、その場合には割引されるわけですね。その割引された分の負担は消費者にかかってくるわけで、まるまるそろえるとなると八万円の十五万円で二十三万円を用意しなければ電話がかけられないということは、やはり先ほど申し上げましたように、これは明らかに需要減につながることを見込んでいる政策ではないかと思いますので、この八万円の値上げには反対したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/53
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054・植草益
○公述人(植草益君) 三点御質問があると思います。一つは、いまの設備料、もう一つは基本料、三番目は長距離料金に関してであります。
実は、私は、きょうの公述の中で設備料には触れなかったわけであります。これは非常にむずかしい問題を含んでおりまして、なかなか簡単に割り切れない、理論的にも割り切れないというので、いわば意見を保留したという内容を持ちます。それはなぜかと申しますと、アメリカのようにすでに需要に対して供給の方が過剰になっているような国におきましては、新設のための投資資金というのはそれほど大きく必要がない。需要に対して供給の方が過剰であるというのは、私たちがアメリカなんかで生活しましても電話が引きたいと思えばいつでもすぐに引ける、そういう意味で非常に余っているわけですね。そういうふうな国では新規投資のためにはそう大きな資金が要らないわけです。
ところが、わが国におきましては、戦後、滞貨が非常にふえて、年々たくさんの電話をふやしていかなきゃいけない、固定設備も、また各家庭への一本一本の設備にしましても、非常にふやさなきゃいけない。この点に関して本当にふやすべきなのかふやさざるべきなのか、これはずいぶん問題があろうかと思います。たとえばフランスのように、ある程度不便であっても余りふやさなくていいというのであれば、この基本的な設備費用のための資金は余り要らないというか、もう抑えてもいい。そうしますと、減価償却その他の資金ですべて固定投資費が賄えないというときには、何としてもこのような設備費というものと債券というものが必要になるわけですが、どの程度にすべきかというのは、コストは私もわからないので、実際のコストがわからないからまた意見も保留したわけですが、この点では、設備費についてはまさに日本国民の選択の問題でありまして、もっともっとふやすと、核家族化が進んでその人たちに一台一台ふやさなきゃいけないとなれば、どうしてもやはり設備費というものはふやさざるを得ない。投資資金勘定からいってもそういうふうな形にせざるを得ないというふうに考えます。
わが国の高度成長から減速経済という話がありましたけれども、今後の全体の経済、それに見合うところの電話のあり方、その他通信手段との関係というようないろんな複雑な問題がこの中に集約されてまいりますので、私自身はなるべく安い方がいいとは思いますけれども、そう簡単に理論的には言えないというふうに申し上げて、回答は回避するような形になりますが、保留させていただきたいと思います。
基本料も、今回の場合は、二倍という形で非常な大幅アップであります。先ほどから申し上げましたように、二部料金制度の場合、基本料と度数料の比率をどうすべきかというのは非常にむずかしい問題であります。理論的には固定費的なものは基本料、変動費的なものは度数料というふうな形と、それから需要の弾力性みたいなものをいろいろ考慮して決めなきゃならないわけですが、電話の場合にはほとんどが固定的費用であって、電気料、電力の費用であるとか、その他余り変動費的なものは大きくないわけでありますが、そうしますと、もしコストだけから考えたら、ほとんど基本料で取るというような体系になってしまうわけです。これではとても国民はがまんできないわけです。そこで需要の弾力性みたいなものを考えながら、納得する案を、おのおのの国がおのおのの形で選んでいるわけです。
多くの場合に 住宅用については各国とも基本料は余り上げないでほしいということで、消費者代表の意見が非常に強く反映される形で基本料は抑えていたわけです。その場合に、先ほど最低度数付基本料、特に住宅用にはそういう案をと申し上げましたのは、実は、アメリカでもすでにそういうことを早くから行ってきているわけでありまして、そういうのを参考にすれば、住宅用についてのある程度の高負担が解消できるだろうという考え方、これを入れ込んだ形である程度の基本料の値上げをいたしませんと、先ほど申しましたように、やはり住宅用がふえるということは電話収入の逓減傾向が起こるというのは、これはもうどうしても否めない事実、これはもう各国ともそういうふうな経験をしておりますし、アメリカもそのために頻繁なる値上げが行われております。そういうふうなことを考えますと、基本料もある程度上げざるを得ないというふうに私は理論的には考えているわけです。
さて、長距離料金を下げるように提言いたしましたけれども、私は、先ほど申し上げましたように、コストとの乖離が余りにも大きいということと、もう一つは、長距離料金を下げれば需要が相当伸びるであろう。たとえば簡単に言いましても余り電話が高ければ手紙にする、ないしは自分でみずから電車に乗っていく、ないしは汽車に乗っていくという人たちが電話で済ませられるというふうな形で、他の通信手段を使っている人もどんどんふえるであろうというふうな形を考えますと、需要が相当ふえると私は見込みます。
先ほど申し上げましたように、どの程度ふえるかということは残念ながらわからないわけですけれども、これまでわが国では料金の部分的改定はありましたけれども、今度のような大改定は二十数年ぶりだというふうな形になりましたが、この時期にもし上がった場合にそれらの負荷をすべて綿密に分析して、コスト変化とかそれから需要の弾力性の変化というようなものをはじけば出てくると思いますが、そういうふうな経験がないために出てこない。私は公社自身にもぜひお願いしたいのですが、そういうふうな研究を内部自身でももっともっと進めるべきだということを申し上げたいのです。
さて、長距離料金を下げましたら市内料金は上げざるを得ないのではないかというような趣旨のお話がありましたけれども、私はそうは余りいま思っておりません。今回程度の値上げであるならば、それで十分ではないかというふうな内容です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/54
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055・片山甚市
○片山甚市君 それで先ほどお話がありましたように、七円の度数料を十円にするのだから余り大きな負担でないではないかというお話があり、また設備料の話、先ほどの八万円、また債券の十五万円のお話がございました。そういうことで比較をしてみると、日本の国のいわゆる電話料金というのは他に比べて七円だけを引き比べれば非常に安い話ですが、いま植草さんの方からも市外電話料金は差があるはずだ、こういうようにおっしゃる。そういうように見てまいりますと、いわゆる七円というのは一つの物差しでありますから、計算をして倍数をかける物差しでありますから、七円を十円にするということは、そういうような簡単な七円が十円ではなく、倍率になってくるということで、十分にこれは御判断を願いたい。
そこで、私から菅谷さんにお伺いをしたいんですが、家計に占める電報電話の負担について御家庭のことについてはお聞きしました。私の方が手元で調べてみると、四十九年には平均で言うと家計では一万六千十四円、そうして電話をかける度数は百十度数と、こういうように言われております。そこで、先ほど植草さんの方からもお話がございましたが、家庭電話のナショナルミニマムみたいな保障をこの際確立をする、そのために、暫定的な措置もさることながら、これから諮問会議などで十分に皆さんの意見が入ってやっていくようなことはどうなんだろうか。これはもう皆さんとしてはこれだけの電話を一日に三回なり幾らかける程度のものは、これはこれくらいで据え置いて、それからどんどんかけてくれた人にというような計画があるかもわかりません。私たちとしては、そういうように考えるのが一つであります。
それから老人、あるいは老人というよりは一人暮らしの人たちの問題を含めた福祉の問題について、地方自治体に負担をさせるわけにいきませんから国ということになりますが、このことが今度三千百五十万の電話を四千万に広げていくときに最も優先的に福祉電話というものをすべきだと考える。なぜそういうことを言うかというと、家庭用電話にすべてのものの罪をかぶせる。もう一人の自民党の方がおっしゃるように、人件費が全部悪を重ねる、労働者、働いている者について非常にこの赤字の原因をつくろうというような魂胆に対して、私は非常に憤激をしておるわけです。
そういうことで電報をなくしたらいいというような寝言の話を聞くんですが、これは電報というのは、テレックス、データなどを使えない方々、そういうような大きい施設を持てない人で、電報を使うことがいい企業家の諸君もいましょう。「チチキトク」とか、そういう緊急のはパーセンテージにして二%か三%ですから、それはしかしそういう中でも国民生活に密着した電報がいままでの通信のすべてであったわけです。ついこの間、戦後昭和二十七年には百四十万個しか電話がなかった、それが皆さんのお力で、労働組合が全面的に協力して自動化したからです。これはほかのところだったらどうなっていますか、なかなか、それは皆さん勉強していただいたらわかるけれども、日本の電信電話の従業員ほど今日先端を行くようなことはしたことがないと思う。大体そんなことがわからずに、それは協力するのはあたりまえだと思っているやつがおる。そうういうことでは電報に対してその人は年寄りなんです、もう。
相当の人がトンツーというのを教えてきた。そんなことをしてきた人がおるんです。いまさら仕事をいろいろ変えて切り捨てるとか、そういうあこぎなことを言うのでは血が通うとかナショナルミニマムとか、こういうことはないと思うんです。そのために新しいサービスをどう開拓するのかということでは、私たちは公社に対してファクシミリの問題が出たりあるいはメールグラムといいますか、電報によるところの手紙、そういうものについて早く見通しがつくように、こうしてもらいたいと思っておるんです。特に電報は委託業務として郵政に四百二十五億円ほど一年間電報の委託費を出してやっておるんでありまして、ここへ帳面に出ておるものだけじゃないのです、おわかりでございましょうか。そういう人たちの雇用問題、そういういろんなことを考えると気安くそう考えられません。
そういうことでお年寄りの問題についてお話をしたかったんですが、最も身障者あるいは年寄りの電話を優先につける、家庭電話といっても、ほかの電話はつけぬでいいから、とりあえず電電公社はそれをつける、こういう使命があるんだと思うのかと言ったら、さあもうからぬ、もうからぬものはもう見とうもない、こういうのが電電公社の幹部の腹ですね。もうからぬものは大きらいですね。もうかるものは何ほかというと、実は、こんなことがあるんですね、一年間の収入、昨年で言いますと二兆一千百三億、その二%ですから四百二十二億円ぐらいになるでしょう。それで研究所というところでお金を使ってどんなものをつくっておるかというと、電子交換機、大量伝送方式といってそれぞれ四メガヘルツなどの回線などをつくっておるのですが、それから画像通信、テレビ電話、移動通信、これはそれぞれ船とか船舶の人。それからデータ通信、先ほどから問題になった、こういうものをいわゆる研究するんです。大企業というか日本電気だとか沖電気とかいうような会社と一緒になって研究して、その会社がもうかるように金を出すわけですね、これは正直に言うと。全部とは言いませんが、大体天下りや何やというのもそこから出てきます。これだけの研究費をいただいていますから、いいやつができると全部その会社が勝手に独占的に電電公社に売り込める。こういうように金はないのじゃなくて、そこへ使うために今度値上げするというように考えます。
農村の電話、無電話部落がないようにきちんとするとか、お年寄りのために、また身障者のために、そのために無電話の家庭がないようにするとかということでなくて、ほかに力を入れられておる、こう思うんです。私は、菅谷さんの方で主婦として電報の問題やそういうものについての御所見があれば、私の質問といいますか、私はそういうことを重点的に福祉というならばやるべきだ、こう思うんですが、いかがですか。
〔委員長退席、理事茜ケ久保重光君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/55
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056・菅谷八重子
○公述人(菅谷八重子君) まず最初に、度数料が四十九年で平均百十度数というようなお話をいま伺いましたけれども、私も提案したいことは、百から二百ぐらいの低い利用者、そういうところの料金は据え置いてほしいということを希望するわけです。というのは、一般利用者、われわれの階級ですと庶民ですね、庶民のところはそういう負担を安くしていただきたいということです。それと中小零細企業などはやはり非常に圧迫が強くなりますので、二百度数ぐらいまではいまの料金で据え置いていただきたいということを申し上げたいと思います。
それから、七円から十円になるというのは、七円という単純なことだけではなくて、これが地域によって七円で何秒というふうに時間が刻まれていっているわけなんです。ですから、長距離にかけるときにはこれが十円になった場合には非常に料金が高くつくということから、やはり七円という点だけにしぼって考えないようにしていただきたいと思います。
それから、一人暮らしの老人とか寝たきり老人の対策につきましては、これはもう本当に全面無料にしていただきたいと思うくらいなんです。福祉対策というのはやはり原則としては国が持つべきものですが、当面、地方自治体と国とそれから公社とで持っていただきたい。具体的には基本料金は国で持って、度数料は地方自治体で、架設料は公社でというような具体案は先生方でお考えいただきたいと思います。ともかく、こういう家庭のは真っ先に優先していただいて無料にまで持っていっていただきたいという点です。
それから、電報につきましては、これはやはり廃止すべきではないかと思います。全体のパーセンテージからいきますと企業の収入の中の〇・八%ぐらいで、非常に低い割合を占めておりますが、やはりこれに携わる労働者のこともありますので、合理化することが必ずしもいいとは考えられないわけです。そうして電報でなければならないという場合がまだまだ残されているわけですね。国民全部が電話を持つようになったらどうかわかりませんが、まだまだ過疎地とかあるいは本当に低所得者層では電話を持っていない家庭が多くあります。また零細企業なんかではやはりテレックスなどを持てなくて、電話では証拠が残らないから、電報を利用するという商業とかあるいは企業上の方法が残されているわけですので、そういう点からいっても廃止すべきではない。そして低い企業収入のパーセンテージですので、これは値上げしても別にどうということはないと思いますので、値上げをする必要はない、そう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/56
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057・片山甚市
○片山甚市君 私は、電報は値上げをしたら通数が減るだろう、減ることをねらって無理にいわゆる値上げをしておる、上げていって。通信研究などでは将来のために毎年四百二十億円の金を使える余裕のある電電公社ですよ。しかし、国民の零細な電報には目くじら立てる、資本蓄積するためには減価償却は率でして、うんとがばちょととにかく取り上げる、できるだけ金は借りてそれから利子も払ってみんなに割りを掛ける、こういう仕組みになっているということだけ私は主張したかったのです。
最後に、前田さんにお伺いするんですが、いろいろとおっしゃったのですが、植草さんもおっしゃいましたけれども、その中で最も基本的なのはいまの七円がかけられる範囲、基本的なエリア、これについての是正は、広げることじゃなくて、全国どこでも同じような状態になる、すなわち植草さんが言われたドイツではという言葉でカメの子、イギリス流に言うとグループ料金、こういうものを日本の国情に合うようにこれは早急にやるべきだ。不公正の最たるものはここだ。それができないうちに、また皆さん欲得が深いから、すぐに市外料金を下げろ何を下げろ、こういうふうにおっしゃるが、基本の足元がぐらついているときに、そんなことは思いつきだと私は思います。
じゃ、あなたが思うか思わぬか知りませんよ、前田さんが。そんなきれいごと言っても始まらぬから。とにかく二十三区では二十キロの範囲ではないか、どこそこでは三キロではないか、次々に市をつくったり、町つくって町村合併をし、いろいろやったわけです、電話に関係なく。電話局は電話局でもうけたらいいとは言わぬが、それを直すには大変です。大阪の電話で言えば吹田も尼崎も大阪市内だという。豊中に入っていないから朝から晩までごねてごねて総裁、副総裁ひどい目に遭うて何とかいま市内に入れる。広域時分制になってから、ごまかしたというか、うまいことできた。広域時分制だって大変だったんです、これ意見が。そんなことでも解決しないんです、これは。
今度の料金問題に関しては、グループ料金といかカメの子型というのか、日本でどこでかけても一つの電話のエリアについておおむね不公平がないようなことをすることが最大の急務ではないか。そうして大体これだけ光ファイバというか、なんや知らぬけれども、捨てるほど回線ができるといって喜んでいますね、先ほどから。ここに書いてある。回線などというのは見てもない。テレビ電話というおもしろいやつつくっている。このぐらいですから、これは植草さんが言うまでもなく、市外回線などというのはあるのかないのか、要らないのかわからぬですね、これ。
昔は実線でつないでおったのですから、銅線で。七円のときは、電話料金を払うときには交換手がおって、それで銅線をつないでおるんで七円だったですからね、昭和二十八年のやつは。私は東京におりましてこの辺よく知っておるんです。ですから今度はそれはとんとんですわ。ですからそういう点ではどうでしょう。よほど世の中変って、電電公社が努力したことは人件費を増大させなかったこと、一つありましょう。いわゆる合理化で自動化した。泣く泣くひどい目に、十万の人が異動したんですよ、その間に。覚えておいてほしいです、質問する立場から。十万の人が職場を変わった、そのためにやったので。それから画期的な技術革新で技術陣が努力した。ですから今日その技術を継承するために総収入のいわゆる二%をつぎ込んでおる。そうして新しい技術をしようとするので実は金が足らない。先ほど言いますように減価償却でやったやつをもう一遍改良費といって三千億円取ると、こう言っておる。前田さんはそうおっしゃらぬけれども、私みたいなわからぬもんから言うと、減価償却で取り上げたもんを今度、その金は知らぬと、わしは知らぬと、今度新しくつくるんだといって改良費で三千億円取ると、こういうふうに考えておると思う。単純に考えないと、皆さんみたいに頭よく回りませんから。それはおもしろくないなと思う。
そういうことで、いまの質問について、グループ料金制度あるいはカメの子型と言われるもの——すべてではありませんよ、そういうことをやっていくことが大切だし、それからもう一度、福祉電話という場合には、日本の国の電話がないところ、農集がないところ、有放がないところ、そこに電電公社が公共的な福祉ということでは電話をつけること。そこにはもうほかのものはつけなくてもいい。こういうようなことと、先ほど菅谷さんにもお聞きしたけれども、寝たきり老人とかそういうものに対してはもう何はさておいてもするというような政策が完成されたときに、三木さんが言うライフサイクルというような寝言みたいな言葉、あれが実現するんじゃないかと思いますが、前田さんはいかがでしょう。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/57
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058・前田貞芳
○公述人(前田貞芳君) それでは、お答えいたします。
私は、先ほどの公述のときにお話ししましたように、確かに今回の値上げのあれにつきましては、現在とられている料金の体系あるいは料金のかけ方そのものに対する根本的な検討が何らなされていないわけですね。ですから、いろんな方々から御指摘ありますように、近距離、遠距離の問題、それからいま片山委員の方から申されましたようないわゆるグループ料金制、あるいはカメの子型のそういうふうな問題について、まあ内部では検討されているのかもしれませんけれども、われわれの目に触れるときは、そういうふうなものが一切出てこないというふうなことに関しては、われわれ電話のサービスを受ける者にとっては非常に大きな疑問があるような気がいたします。あれだけ大規模な組織を誇っているところになぜそういうふうなものを根本的に検討するところがないのかということに関しては、私自身は非常に大きな疑問を感ずるわけでございます。ですから、私の考えでは、そのグループ料金制あるいはカメの子の問題も含めて、どういうふうにしたら公社が課せられている責務を最も合理的に果たすことができるのかどうかということを根本的に検討していただいて、その上で料金値上げの問題というふうなものを具体的に提示していただくというふうなことが望ましい姿であるというふうに考えております。
それからもう一点の方でございますけれども、福祉目的の電話でございますけれども、これも先ほど来申し上げていますように、非常に実際のところむずかしい問題を含んでいる。どこまでを福祉というふうに考えるのかどうか、それをどの程度国家ないしは地方の負担とするのか、あるいは公社の負担とするのかどうかという問題が実はやっぱりあるわけでございますね。ですから、その点につきましても、やはり公社というふうなものが課せられている目的が一体どこにあるのかどうかということを念頭に置いて、それをやはり推進していく必要があるように考えられるわけです。したがって、そういうふうな視点から考えていった場合に、私なりに考えますと、やはり福祉目的の電話については国の資金を投入する方向で優先的にそれを設置していくというふうなことをまずやっぱり考えるべきじゃないかというような気がいたします。ただ、もっとも、この点については先ほど来申し上げておりますように、無条件にそれを投入しますと公社経営そのものの自立性が他方で問題になってきますから、この点は十分考えておく必要があるわけでございますけれども、そういうふうな条件をつけてやはり福祉に関する問題は早急にやるべきであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/58
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059・山中郁子
○山中郁子君 最後になりますので、私は、二つの点について三人の公述人の方にお尋ねをしたいと思います。まとめてお伺いをいたしますので、よろしくお願いします。
初めは設備料の問題ですが、これは内容的にもいろいろ問題ありますが、限られた時間でございますので、設備料の経理上の処理の問題について前田さんと植草さんにお尋ねをしたいと思います。
御承知のように、設備料はかなり大きな収入ではありますけれども、公社は損益勘定に収入としてこれを計上してないわけです。たとえば具体的な例を申し上げますと、五十年度の場合は一千六百五十二億円の収入になっています。そしてこれはいままでの累積でいきますと、内部留保として一兆一千四百四十二億円も積み立てられています。一々数字は申し上げませんが、こういうものが収入として計上されているならば、建設投資の支出の関係等はあっても、いずれにしても損益勘定の収入はそれだけふえるわけですけれども、それが結局資本剰余金として繰り入れられて、完全な収入であるにもかかわらず収入になっていないというところに大きな問題があるというふうに考えています。その上に、さらにこのことによって設備料として取ったお金で設備したものが固定資産として今度は損益勘定から減価償却されている、こういう関係になっていて、二重の利益隠しというふうに私どもは考えざるを得ないんですけれども、この点についての御見解をお伺いしたいというふうに思います。
それからもう一つの点は、これは河合さんにお尋ねをしたいんですが、河合さん何回か御意見の中で、電電公社に対して大変寛容な立場で料金値上げもやむを得ないではないかという御意見を述べられました。その中の一つに、たとえば企業用の電話などについてもっと負担を重くすべきではないかという意見があるけれども、そうしたことをすれば、それはまた商品のコストにはね返ってくるので、そうする必要はない、ないしはそうしなくてもいいのではないかという御趣旨の発言がありました。私は、この点についてはすでに菅谷さんも具体的なことでお触れになっておりましたけれども、たくさんの資料がありますが、それは申し上げませんが、たとえばの話、公正にそうしたものがいま現在使用料として、料金としてあるいは設備料としてそれぞれ賦課されているならともかく、それが非常に不公正な実態にあるということはどういうふうにお思いになるか、庶民感情として、うんと素朴な形でも結構ですけれども。
一つだけ例を申し上げますと、たとえばいま私が申し上げました設備料ですけれども、この問題につきましても、先ほど菅谷さんからも若干御指摘があったんですが、公社の主張によりましても一般電話の場合は一万六千円かかるんだけれども五万円取っていて、これをさらに八万円に上げようとしているということですね。これに対して企業が主として使うビル電話では実際の架設費は十六万七千円かかるというふうに公社は言っております。だけれども、これに対して設備料は二万五千円しか取っていません。それからデータ通信の公衆回線も二十万円かかるというふうに公社は言っておりますが、これも五万円しか取っていません。テレックスについても九十四万円かかるけれども五万円しか取ってない。たとえば設備料の問題で言えばこういうふうに大変な不公正があるわけです。そのほか料金問題でも、専用料金その他でいろんな不公正がございます。
ですから、もし、細かいこれらの議論は横に置いて、仮にそうした意味での不公正が現実に存在するとすれば、これは現実に存在しているわけですけれども、公社もかなりな程度にそれは認めざるを得ないということはいままでの審議の中で明らかになっておりますが、そういう事態のもとでもなおかつ企業に対して公正な料金を負担すべきだということはしなくてもよろしいというふうにお考えになるかどうかということについてお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/59
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060・前田貞芳
○公述人(前田貞芳君) 設備料の経理上の問題でございますけれども、実は、この問題は非常にむずかしい問題で、私自身もどのように考えたらいいのかどうかという点で、かなり考えてはいるわけでございますけれども、いろんな判断が可能になってくるわけでございますね。しかし、確かに現在の設備料の収入ですと、これは利用者にそのあれを負担させて、それを具体的な設備を設置するというふうな形をとっているわけでございますね。ですから、その分に関しては、いわゆる私的企業の場合に関連して考えますと、まあ利用者は資本家になるというふうな関連の仕方が最も単純な理論になるんじゃないかというような気がするわけです。ですから、どんどんどんどん設備料が増加することによって企業の、公社の資本の方が蓄積されていくというのが一方で考えられるわけでございますね。他方で、もし仮にその設備料に相当する固定資産が購入されたとしますと、またそれに基づいて今度は料金算定にかかわる損益計算上の問題をそこで考えていきますから、その意味でやはりその側面においても、いわゆる自己金融的な機能、いわゆる内部留保的な機能をやっぱり果たすというふうに考えられるわけでございますね。
したがって、これをどのように考えたらいいのかどうかということは非常に問題があるわけでございまして、非常に複雑な内容を持っているように考えるわけですけれども、結論的に申し上げますと、やはりどうもこの処理方法自体は、いまの段階では、最終的にどうであるかどうかということは、ちょっと私もこの分野に関するあれを十分やっていませんのではっきり申し上げられないんですけれども、このやり方自体はやや問題を含んでいるような感じがするわけでございますね。その点でちょっと答えになっていないかと思いますけれども、御勘弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/60
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061・植草益
○公述人(植草益君) 大変むずかしい問題でありまして、私も明快な答えはできません。資本剰余金勘定に設備料が入るということの合理性は一体何なのかという点は、現在のところでは明らかにされていませんし、私は会計学が専門ではありませんけれども、この問題についてやはり考えてみたことがあります。
ただ、損益計算に入れましても、当然のことながら、それはやっぱり資本剰余金として最終的には投資勘定の方に入りますから、二重になるという点はやはり疑問がありますけれども、先ほど前田さんからお話しになりましたような、一種の電話保有者が投資をし、資本家みたいな形になるというシステムの論理で考えなければならない。ただ、これが年々債券という形でふえまして、それが利子がかかりまして、そしてそれが年々損益勘定に利子として入ってきて、過大というか膨大な利子を計上することになるという点は、むしろ債券のあり方ということに問題がありまして、いまのように十年とか二十年とか三十年とか、いろいろな債券の期間を、これを一種の資本保有であるということで永久債的なものにして、電話保有者がおのおの公社に投資をしているというふうな形ではっきり形態をすれば、理論的にもある程度解けますけれども、現在のところでは、私は、これはどういうふうに考えるべきか、明快な理論的組み立てができないので、申しわけありませんが、答えは保留さしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/61
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062・河合和子
○公述人(河合和子君) 私もちょっとむずかしいことはよくわかりませんということでさきに申しましたけれども、私が考えますに、企業がこのように安く設置できる、確かに普通の一般と比べて数字の上では不公正な数字だとは思うのです。ですけれども、企業に対してこれだけの費用で設置しても結局その使われる利用数というのでしょうか、それは現実問題、電電公社にとっては収入としては増ということで出ているわけです。個人の一般の家族における電話については、一台同じ設置しても、それだけを見込む収益というのが上がっていないわけですから、すでに最初の段階でかけるときに、それを見込んで常におかなければならないという状態だと思うのです。
私が心配しますのは、もし企業に多く負担がいったときに、今度は知らず知らずのうちに私たちにかかってくる諸物価すべてが高くなっていたというようなことで、結果としては、私たちもそろばんはじいたときに同じ結果になっているということを恐れるのです。ですから、今回、電電公社のこの赤字を早く埋め合わせなければ、結局はまたいつかは私たちのところにそれがはね返ってくるという心配があるからです。
〔理事茜ケ久保重光君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/62
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063・案納勝
○案納勝君 では最後ですから、私は簡単に二、三点だけ伺います。
まず、植草公述人にずばり聞きますが、先ほどから諸外国の例などを引かれておりました。まず減価償却、すでに論議をされております国内の主要設備集約企業の総費用に占める減価償却費の比率は、電電公社の場合は三一・五%、同じような装置産業であります国際電電では一五・二%、アメリカのATTでは一七・二%、その中間のものは私省きますが、この減価償却のあり方について、特に建物まで定率法を適用するのが適正償却と言えるかどうか、あなたはどう思いますか。
それから第二点です。私たちが国会で審議をするのは、公衆法及び日本電信電話公社法に基づく、あまねく利用者の利用の公平を期し、国民に公平な情報サービスを提供して福祉を増進をする、このことが中心になって電電公社という独占企業のあり方が、いわゆる国の企業の中でどうあるべきなのか、どこに国民の福祉の増進が行われるかということで、料金は適正なのか、業務運営は円滑なのかというのを審議をするわけです。
いま公社としての役割りというのは、一つは役務提供に伴う料金というのは原価主義をとる。第二点目は非営利企業である。で公社というのは、そういう公共の福祉、公共の利益、公平な情報サービスを通じて、今日情報化社会と言われ、国民の必需品化している電話電信について、どうやって国民の電話を守っていくかということだと思う。そのために一般の国営企業から、公社として自主性を持たせ、その自主性は適正な原価主義に基づいて非営利の企業として運営をしていくというのが特徴になっている基本的性格なんです。
二点目は、河合さんに質問をするのですが、金を出せば利用する、要するに価値観が違うのだと、よけいな金を出せば、出した人は利用できる、持たない人はしようがないと、こういう言い方なんです、きつい言い方をすれば。価値観が違うのだから、それはしようがない、値段が変わってくるのは、こう言う。私は、そういう方法は電信電話企業の場合、あり得ないと思うんです。金がない人もある人も一定の情報化社会の中におけるこれら公平なサービスを受けるという、そのサービスを提供していく、それに伴う最低の役務の料金については適正な原価主義に基づいて負担をしていくという、そういう立場に立つのが私は公共事業だと思う。だから、そういう金のある人が出せばいい、価値観のある人がいいということになれば、じゃ企業というものはその意味で電話をかけることによって利潤をもうける、こういう一般の国民の場合は必需品化されている情報化社会に欠かしてはならない通信業務、一定の私は最低の料金でそれを確保していく、その意味で料金制度についての考え方をもう一歩はっきりさせて、前進をさせるべきときにきていると思うのですね。
私がここでお聞きをしたいのは、役務提供に伴う料金というもの、原価主義に基づく料金というものをベースにして、それで産業用の場合はどうあるべきなのか、国民生活の最低の条件、情報提供あるいは情報化社会の必需品化されている今日の最低の条件をどう守っていくのか、そして福祉はどうあるべきかは、福祉の場合、国家負担、ベースを最低のベースにしてそこを応能主義によって負担をとっていくというのが私は今日公共事業体としてあるべき姿ではないかと信じているんです。
そういう意味で私はお尋ねをしますが、これは河合さんにお尋ねします。そういう原則に立って、できるだけ電信電話料金というのは大衆負担を少なくする。産業用については利潤を生む、そのことによって。一定のベースの上から応能の負担をしていく。福祉料金については国が一定の負担をする。そういうところに料金の原則というものを立てていくべきだと思いますが、河合さん、どういうふうにお考えになるか、これは河合公述人にお聞きします。
三点目は、これは植草公述人にお尋ねします。
七円を十円に、基本料を二倍に。私は、基本料というのは設備料が入っていると見ています。これは公社への質問の中で明らかにしていきますが、さらに設備料を八万円、債券を十五万円、ずばりお答えいただきたい。これは適正原価というふうにあなたはお考えになって値上げに賛成されたのか。この原価、これが適正なるもんだということが立論されないと、単に賛成だということについて私は論理的にはっきりしません。したがって、それは適正原価だというふうにお考えになっておられるのかどうか、これはずばりでいいですから、この三点だけひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/63
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064・植草益
○公述人(植草益君) 第一点は、減価償却費の計上の仕方でありますが、御意見に御異議を申し上げるようなことをして申しわけありませんが、公社の減価償却費が三一%、国際電電が一五・二%、アメリカのAT&Tが十二・七%というのは、実は、比較にならないと私は思います。
なぜならば、国際電電は、電電公社の国内設備を使って国際面だけをやっておりますので、本来比較にならない。アメリカも、またすでに先ほど私申し上げましたように、供給が過剰ぎみなような、古い設備も多く使うような状態ですから、新しい国の新しい発展段階にあるものとは比較にならない。
ただ、私も減価償却についてどのようにすべきかについてはいろいろ考えております。減価償却についてずばり定率法で今後やっていくのがよいかという御質問に対しましては、やはりいろいろの技術進歩のあり方、それから摩滅のあり方、したがって技術進歩によってどのくらいの速さで耐用年数を決めるべきかというようなことについて、それぞれの技術についてきめ細かくやる必要があります。そういう意味では、建物についてまで定率法を採用するというのには余り賛成はしておりません。
第二番目、現在の今回公社が提案されている料金値上げについて、原価主義に基づいて果たして原価と対応した適正なものかどうかということについては、全面的にはこれは私にはわからないわけです。ただですね、このように、たとえば減価償却費についても、またそれぞれについてもいろいろ問題がありますから、すべてを含めてわからないと言うわけではない。ちょっと言葉をかえさせていただきます。減価償却費等について今後改めなければいけない点もありますから、現在の原価算定が本当に正しいかどうかには一部確かに疑問がありますけれども、現在の大幅赤字はこれは明らかでありまして、それに基づくところの改定というものについては、水準としては現在の赤字を解消する料金水準を決めざるを得ない。そういう水準の仕方とか水準の決め方については私は異議がないと申したのであって、その水準と非常に絡まる料金の体系については、やはり考慮すべきだという考え方を申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/64
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065・河合和子
○公述人(河合和子君) 先ほど価値観という言葉を使ってしまったことに、私も、確かに公共性を欠いた言葉ということで反省しております。
で、私も先ほども申しましたように、電電公社という立場、その公共性の立場に立てば、やはり国民にできるだけ負担のかからないようにしていただきたいというのがもう基本的な願いです。で、ただ、今回設備費が八万円かかるということで公社の方が打ち出しているこの額に対して、つけるかどうかということで、八万円でもつけるときはつけるだろうという意見であって、これが八万円でなくて六万円で済むものなら、そうしていただきたいというのは、もうそれは願いです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/65
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066・森勝治
○委員長(森勝治君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。
公述人の方々には、長時間にわたり有益な御意見をお聞かせいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表し、厚く御礼を申し上げます。
本日は、これをもって公聴会を散会いたします。
午後五時六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/107814821X00119761025/66
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