1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十三年四月四日(火曜日)
午後一時八分開議
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○議事日程 第十三号
昭和五十三年四月四日
午後一時開議
第一 国家公務員等の任命に関する件
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一
一、昭和五十三年度一般会計予算
一、昭和五十三年度特別会計予算
一、昭和五十三年度政府関係機関予算
一、国会議員互助年金法の一部を改正する法律
案(衆議院提出)
一、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する
法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)
一、国会議員の秘書の給料等に関する法律の一
部を改正する法律案(衆議院提出)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/0
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001・安井謙
○議長(安井謙君) これより会議を開きます。
日程第一 国家公務員等の任命に関する件
内閣から、公正取引委員会委員に早川晴雄君を任命することについて本院の同意を求めてまいりました。
内閣申し出のとおり、これに同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/1
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002・安井謙
○議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、これに同意することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/2
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003・安井謙
○議長(安井謙君) この際、日程に追加して、
昭和五十三年度一般会計予算
昭和五十三年度特別会計予算
昭和五十三年度政府関係機関予算
以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/3
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004・安井謙
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。予算委員長鍋島直紹君。
〔鍋島直紹君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/4
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005・鍋島直紹
○鍋島直紹君 ただいま議題となりました昭和五十三年度予算三案につきまして、予算委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
昭和五十三年度予算は、財政の節度維持に配慮しつつ、国の内外から強く求められている景気の速やかな回復と国際収支の黒字幅の縮小を図るため、財政が主導的な役割りを果たすため、臨時異例の財政運営を行うこととしております。
昭和五十三年度一般会計予算は、景気浮揚のための公共事業関係費の拡大を柱に、前年度当初予算に対し二〇・三%増の三十四兆二千九百億円の規模となっております。
また、財政投融資計画は、民間資金の活用を図りつつ、一般会計に準じ、事業部門の投融資に重点を置くこととし、前年度当初計画に対し一八・七%増の十四兆八千八百七十六億円となっております。
五十三年度の公債は、経常経費の財源に充てる特例公債を極力抑制しているものの、不況に伴う歳入不足を補うため、十兆九千八百五十億円の発行を予定いたしております。
これら予算三案は、去る一月二十四日国会に提出され、二十六日村山大蔵大臣から趣旨説明を聴取し、三月七日衆議院からの送付を待って、翌八日から審査に入りました。自来、本日まで委員会を開くこと十八回、その間、二月二十一日に札幌、名古屋、広島の三カ所で地方公聴会を開催したほか、三月二十七日、二十八日の両日、経済展望、財政展望、農業並びに教育、福祉等に関し集中審議を行ったほか、中央公聴会、分科会を開く等、終始意欲的に審議を行ってまいりました。
以下、委員会における質疑の主なる要旨を御報告申し上げます。
まず最初に、円高問題に関し、「昨年暮れ以来二百四十円台で小康を保っていた為替相場が三月初めからの円の急騰で二百二十円前後になったが、日本経済に与える影響と対策とを聞きたい。国際通貨不安の最大の原因はアメリカのドル安放置にあるから、アメリカに対し対策を要求すべきではないか。黒字減らし策としての緊急輸入は効果が上がっていないのではないか。余剰外貨を海外投資、無償援助等に積極的に活用するとともに、投機的資金や短資流入の規制強化を図るべきではないか。さらに、貿易黒字が大幅にふえ続ける現状から、早晩貿易管理令等による輸出規制が必要となるのではないか」等の質疑がありました。
これに対し、福田内閣総理大臣並びに関係各大臣より、「円高の影響は、相場水準もさることながら、相場が不安定なことが企業マインドに不安要因となり、景気回復を阻害することは避けられない。三月からの円高の影響は目下調査中であるが、昨年末の二百四十円当時の調査でも、二、三の業種を除いて輸出産業は赤字で、中小企業中心の七十九地区の輸出産地は全部やっていけないというような深刻な影響が出ていた。こうした中で、企業の経営努力によってぼつぼつ輸出契約が進み始めていたやさき、今回の円高の打撃は相当厳しいものがあると考える。円高の原因は二つあって、一つは、わが国の経常収支の大幅黒字によるもので、その対策は五十三年度の公共事業を中心とした内需拡大によって黒字の縮小を図ることであり、いま一つは、円高と言うよりもドル安と言うべき最近の状態で、これはアメリカが基軸通貨国としての責任を自覚し、ドル価値の安定に本気で取り組むことが不可欠なのであって、機会あるごとにアメリカの注意を喚起し、努力を要請しており、最近ではアメリカの空気も変わりつつあるように思う。ただ、国際通貨問題は非常にデリケートで、重要な影響を醸し出す性格のものなので、対処の仕方は慎重でなければならない。緊急輸入については、三月中に十億ドル程度が実現するほか、五百万キロリットル程度の石油のタンカー備蓄は逐次具体化すると思う。さらに、航空機輸入、希少金属等重要物資の備蓄を検討中で、今後とも適当な輸入対象物を探して追加していく考えである。経済援助等による黒字減らし策は、日本の援助物資を使う従来の援助方式を改め、第三国の産品を援助に使うようなやり方も今後検討したい。投機資金等による為替市場の乱高下には従来とも日本銀行の介入によって防止することにしている。さらに、先般自由円預金の準備率を五〇%から一〇〇%に引き上げたほかに、公定歩合の引き下げによってわが国の金利水準が国際的にも低水準になったので、流入資金の縮小と円建て外債の増加等を期待している。今後の貿易政策の進め方として、五十三年度の輸出は数量ベースではほぼ前年度横並び程度を目途に行政指導を強化していく考えである。ただ、輸出品の値上げと円高の影響で、ドルベースではなお相当の黒字が出ることは避けられない。さらに、主要輸出品については、鉄鋼がトリガー方式を、カラーテレビが昨年来の数量規制を、自動車も自主規制をそれぞれ実施することにしている。貿管令等による強制的な輸出規制は直ちに国内の雇用問題にはね返るほか、景気浮揚にも悪影響を与え、さらにこうした縮小均衡の貿易政策は、下手なことをすると世界的な保護貿易を誘発しかねないので、とるべきではない。景気回復による輸入拡大によって黒字幅が縮小するように全力を挙げて努力したい」旨の答弁がありました。
次に、景気の動向について、「五年越しの不況は福田総理の責任ではないか。五十三年度実質七%の成長見通しは高過ぎるとともに、最近の急激な円高でその実現は非常に困難ではないか。公共投資偏重の景気浮揚策は業種と地域に偏りが生じ、経済全体の回復になりにくいのではないか。また、公共事業の大部分をこなす地方自治体は技術者不足や煩瑣な事務手続によって事業の執行が阻害されるのではないか」等の質疑がありました。
これに対し、福田内閣総理大臣並びに関係各大臣より、「これまでの経済運営は、国際収支が石油ショック当時の百二十億ドルの大幅赤字から今日では百億ドルを超す黒字で、よくなり過ぎて海外から批判を受けるほどである。また、狂乱物価は、今日卸売物価が前年水準を下回り、消費者物価は上昇率四ないし五%に落ちついている。さらに、経済成長は五十二年度五・三%と、主要国中最高の成長を遂げ、五十三年度七%程度を目指す状況で、石油ショック後の経済運営は大筋において間違いはなかったと思う。昭和五十三年度七%程度の成長については、さきごろ発表の五十二年度第三・四半期の国民所得統計速報値から実質五%台の成長に確信が持てるようになり、また、昨年までの国民経済各分野の活動を阻んでいた過剰在庫も、ことし初めから建設資材を中心に在庫調整の動きが見られ、順次他の分野に波及しつつある。さらに、昨年来の財政面からの累積効果を期待できるので、政府の目標は実現できると思う。また、最近の円高デフレ効果は否めないが、世界経済が動揺している現在、これらの影響によって七%程度の成長基調に大きな変化がある際は時を移さず積極的に大胆な政策を果敢に打ち出し、政府見通しの成長実現を図る決意である。来年度公共事業重点の景気対策を選んだのは、限りある財源を使った場合、速効性、乗数効果等から見て効率がいいためである。御指摘の地域的な偏りは、予算執行の過程で、失業多発地域や構造不況業種が存在する地域に重点を置いて実施することにしている。公共事業の消化は、地方財政計画で財源対策を講じたほか、技術者不足は、自治体が行政職員を減らす中で技術職の増員を図り、また、配置転換、民間企業からの技術者受け入れ等の工夫をこらしている。さらに、設計や補助金交付等の事務は可能な限り簡略化することにしている」旨の答弁がございました。
次に、中長期的観点からの財政経済運営に関する質疑として、「三木内閣時代の五十年代前期経済計画は、その後の大きな情勢の変化によって政府の経済運営の指針になり得ないのではないか。政府の公共投資は景気対策に利用され過ぎて、問題が起きてからの後追い型になっており、長期ビジョンに欠けるのではないか。さらに、生活不安に対する自己防衛のあらわれである世界一の高い貯蓄率は、長期的には引き下げるような政策をとるべきではないか。財政収支試算と経済計画との整合性、並びにケースCで租税負担率が二八%と、五十二年度に比べ七・四%も高まることになっているが、来年度からの増税の中身を示してほしい」等の質疑がありました。
これに対し、福田内閣総理大臣並びに関係各大臣より、「世界情勢は変化しているが、わが国の安定成長の基本路線を修正しなければならないとは思わないので、経済計画の改定は目下のところ必要がない。公共投資の進め方について、政府は、五十年代前期経済計画、公共事業別の長期計画、さらに第三次全国総合開発計画等に従って計画的に進めており、その方針は今後とも変わらない。貯蓄率の高いことに危惧を持つのは誤りで、貯蓄がふえるようでないと国の経営はできない。特に、大量の国債の消化には国民の貯蓄が大切で、個人消費を拡大するために政策的に消費を刺激するようなことは妥当でない。財政収支試算は五十二年度に特例公債を打ち切ることを目標につくられており、ケースCが経企庁の暫定試算とほぼ整合している。ケースCの負担率は自然増収分を含んだ数字であるが、財政再建に増税は避けられない。しかし、どのような増税を行うかはまだ決めていない。国民に収支試算の方向と財政の姿を理解してもらい、そのときどきの経済情勢を十分勘案して進めたい」旨の答弁がありました。
次に、五十三年度から始まる水田利用再編計画に関し、「政府は四十六年度以降の減反政策失敗の責任を農民に転嫁するものではないか。また、来年度以降の生産調整に実質的なペナルティーを設け、強制することは不当ではないか」等の質疑がありました。
これに対し、中川農林大臣より、「米の生産調整を八年間近く続けてきたが、その間、予想外の米の消費減退と自主開田等による根強い米の増産によって政府手持ち米が四百六十万トンを超え、五十三年度単年度で百七十万トン程度の過剰米が予想される実態であるから、生産は消費量見合いで行うほかないので、やむを得ない。しかし、五十三年度からの再編対策には、従来のような緊急避難的な考え方でなく、自給率の低い麦類、大豆、飼料作物等への転作を推進し、食糧の総合自給率を高めることにして、転換作物については四万円から七万円の奨励金を出して農家の所得を保証するほか、土地改良、転作対策特別事業等に特に配慮をしている。生産調整のための作物転換面積を多年度にわたって調整する方式は、ペナルティーではなく、これによって農家の間で実行した者としない者との不公平を防止し、その政策を実効あらしめるための必要最小限度の措置と御理解願いたい」旨の答弁がありました。
最後に、防衛問題として、「自衛隊は憲法上ICBM等の戦略核は持てないが、防御用の戦術核は保持できるとの福田内閣の憲法解釈は、他方、非核三原則を憲法的国是と説明していることと矛盾するのではないか」との質疑に対し、福田内閣総理大臣並びに金丸防衛庁長官より、「自衛のための必要最小限度の範囲内であれば、核兵器であっても憲法九条二項に違反しないと解釈できるが、わが国は非核三原則を堅持し、これを持たないという政策を選択しており、矛盾は起きない。また従来もそうであったが、自衛隊の装備については、国防会議の審議を経て、最終的には国会での御判断をいただくシビリアンコントロールの原則が厳守されることも御承知願いたい」旨の答弁がありました。
なお、質疑はその他広範多岐にわたって行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
かくて、本日をもって質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して竹田委員が反対、自由民主党・自由国民会議を代表して中村委員が賛成、公明党を代表して多田委員が反対、日本共産党を代表して内藤委員が反対、民社党を代表して井上委員が反対の旨、それぞれ意見を述べられました。
討論を終局し、採決の結果、昭和五十三年度予算三案は、いずれも多数をもって原案どおり可決すべきものと決定をいたしました。
以上御報告を申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/5
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006・安井謙
○議長(安井謙君) 三案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。吉田忠三郎君。
〔吉田忠三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/6
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007・吉田忠三郎
○吉田忠三郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十三年度一般会計予算、昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算案に対し、反対の討論を行うものであります。
現在の日本経済は、とどまるところを知らない円高相場に象徴されているように、前途に明るさの見出せない混迷の中を漂う日本丸といった状況にあります。政府は、本予算編成に当たって、景気回復と対外均衡の達成を目標に、歳入の三七%を借金に依存した公共事業一本やりの財政運営を図ったのでありますが、予算執行を前にして、すでにその誤りが現実となってあらわれているのであります。
経済成長率七%目標の背景となっていた円高防止の効果は一向に上がらず、この一カ月間だけで円相場は八%近い上昇を示す一方、国内景気、中でも最も重要な政策課題となっている雇用問題については、完全失業者が百三十六万人に達し、史上最悪の雇用情勢が必至といった局面を迎えているのであります。特に、失業者は十四カ月連続で百万人の大台を超えており、今後数年にわたってこのような状況が続くと言われていることから、ますます深刻な事態を予測せざるを得ません。
五十三年度予算は、旧来の成長優先の発想のもとに形成された税財政構造、産業構造の変革に積極的に取り組む方針に立って編成され、かつ運営されなくてはなりません。政府案にはその観点がなく、臨時異例を名分に、大企業中心の景気対策を依然として続けているのであります。その結果は、弊害のみが累積され、国民生活は一段と苦境に立たされております。その上、景気対策の最後の手段としての超低金利政策によって、勤労国民の零細預貯金の目減りは一兆円にも及ぶのであります。
政府の五十三年度予算は、国民生活を犠牲にした、財政面でも経済面でも展望のない内容となっていることは、本院における審議を通じてますます明らかになり、もはや自称「経済の福田」には任されないということがだれの目にもはっきりしていると思います。(拍手)本予算成立を待たずして補正予算云々は、その端的なあらわれと言わざるを得ません。
以下、本予算に反対する主な理由を申し上げます。
反対理由の第一は、国際収支、国際経済上の問題であります。
円高問題は、単に通貨の問題ではなく、経済社会の基本にかかわる問題であります。予算審議においてわが党が円高対策に重点を置いて質問したのも、ここにあるのであります。政府は、明確有効な対策を示さず、確固たる腹構えも披瀝できなかったのであります。政府は七%成長がすべての問題を解決するように考えていますが、国内産業政策を転換し、輸出ドライブを抑制できる産業構造を確立しない限り、今日の事態は打開できません。百億ドルを超える黒字が自動車などの特定産業、特定企業の輸出増によってもたらされている陰には、多くの中小零細な輸出関連企業が犠牲となっているのであります。国内景気回復策として輸出増加を先導にする政策は不可能になってきているだけに、かえって国内産業間格差を拡大し、産業構造転換にも好ましい影響を与えないのであります。いまこそ輸出産業偏重、大企業優先の経済体質そのものにメスを入れ、その転換を図らなければならないのであります。対外経済協力についても、対韓協力に見られるような不明朗、不正な協力を断ち切り、発展途上国の発展に寄与する経済協力を強力に推進すべきでありますが、政府にはその意欲が見られません。根本的な国際収支対策を欠いているのであります。
反対理由の第二は、政府の景気対策が公共事業偏重となっていることであります。
いわゆる十五カ月予算では、四三・一%増という、かつてない大盤振る舞いをいたした公共事業費は、多くの問題を抱えているのであります。政府は、わが党を初め野党の強い要求であります所得税減税も、いわゆる物価調整減税の小幅のものを認めただけにとどまり、景気刺激に及ぼす波及効果では減税が公共投資に劣るとの見解をとり続けましたが、これは高度成長型モデルの計算結果でしかなく、経済の実態はそうではないのであります。現在必要な需要喚起策は、幅広く、きめ細かい施策を講ずることであり、この観点から、個人消費の拡大となる所得減税及び年金支出等の政府の振替支出の増加が求められておるのであります。しかし、政府は、社会保障費を抑え、公共事業費の増加のみを行っているのであります。
そこで、公共事業の内容といえば、二十八兆五千億円の第八次道路整備五カ年計画がスタートしたことにあらわれていると思いますが、道路中心の投資構造となっており、国民生活環境整備のための社会資本投資とはなっていないのであります。しかも、今回の公共投資は、地方自治体支出等を含めた総額二十五兆六千億円に上る巨額なものとなっており、その執行に当たって、すでに専門技能者の不足を生じている一方、セメント業界は異常な活況を呈するといったアンバランスが生じているのであります。五十二年度の住宅公団の住宅建設が二万五千戸も建設不可能となり、予算を削減せざるを得ないことは、住宅難、土地取得難といった背景を考えると、放置されるような問題ではありません。と申すのも、地価は三年連続上昇を続け、その上、上昇率も年を追って高まってきていること、また、今回土地税制の緩和が行われたことから、ここに巨額の公共事業費が支出されるならば、地価の値上がりに拍車をかけないという保証はないのであります。まさに公共事業偏重、大型プロジェクト中心の景気対策は国民生活の圧迫になると断ぜざるを得ません。
反対理由の第三は、いまや社会問題化してきている雇用対策に十分な配慮が見られないことであります。
政府の大型公共事業は、特定地域、特定資材の需要効果はあっても、雇用の確保に直結するとは言えないのであります。現在の失業者の特徴である中高年齢者の雇用機会の創出にはならないのであります。雇用確保は、低成長経済のもとでは基本政策の一つの柱であります。したがって、地方自治体が中心となって、公共サービス部門の雇用創出に積極的に取り組み、必要な財政措置、制度の確立を図るべきでありますが、政府にはその発想もなければ、その政策も見ることはできないのであります。旧態依然たる後追いの労働政策に終始し、前向きの雇用創出計画はなく、もっぱら民間の経済活動に依拠しようとする姿勢は、今日の厳しい雇用情勢、勤労者の置かれる立場を理解しないものであります。円高問題と関連して、国際的批判を浴びている労働時間の短縮、週休二日制など、直ちに計画的実施を図ることが、雇用創出効果と相まって、いわば一石二鳥の施策であるにもかかわらず、いまなお逡巡していることは許すことができないと私は考えているものであります。公共事業の発注も中小企業に直接発注するなどのきめ細かさに欠け、公共事業支出と新規雇用効果とを関連して把握できないなど、時代に即応しないずさんな運営は断じて認めることはできません。
反対理由の第四は、中長期的展望が欠如していることであります。
日本経済にとって、いまほど中長期的展望を求められているときはありません。企業はもとより、各界各層、各領域で待望しており、これなくして企業の設備投資も盛り上がらず、雇用の創出も出てこないし、ましてや深刻な経済財政危機も克服不可能であると思います。政府の特例国債脱却のための財政収支試算には、具体的、政策的意図を明示した内容は含まれていません。単なる増税のための数字の羅列にすぎず、国債の償還計画もまたしかりであります。中期財政計画、それは当然に、歳出の洗い直しと不公平税制の是正を出発点とするものであり、その策定に着手しない限り、借金返済のための借金財政の悪循環に陥りかねないのが日本財政の実情であります。政府には、その誠意と決意が見られません。
また、産業構造転換と投資計画についても、中長期的な計画が必要であります。内需拡大についても、重化学工業中心の構造変革の観点からいっても、知識集約型、省資源型産業に対する育成政策を盛り込んだ計画が必要であります。製造業の二割は構造不況業種と言われている状況からいっても、産業転換の具体的方向を明示すべきであります。これが今日の経済の基本課題なのでありますが、その能力を政府に認めることはできません。
これはまた、農業においても減反政策の強化という逆立ちした政策となってはね返ってきておるのであります。農林漁業の再建計画を確立し、第一次、二次、三次産業全体の改革計画を提示すべきなのでありますが、そのような展望は見受けることはできません。
そこで、特に中期的財政改革の観点から見て、税制面における不公平の拡大が行われていることが反対理由の第五であります。
政府の発表した財政収支試算によっても、特例国債依存の財政から脱却するためには、数年間に、国においては十兆円、地方においては四兆円余の増税が必要であると試算しております。このような逼迫した財政のもとでは、不公平な税制はもはや許されないのでありますが、政府の税制改正はこれに逆行し、かえって、景気刺激を理由に、企業優先の税制を新設しているのであります。すなわち、民間設備投資刺激のための投資減税がそれであります。省エネルギー関連設備、公害防止関連設備及び中小企業者等の取得する機械についての取得価格の一〇%相当額の税額控除を一年限りの臨時措置として認めようとする措置であります。その減税額も千二百億円が見込まれていると言われております。しかし、今回の措置によって特に設備投資が刺激される効果は期待できません。現在設備投資が冷えているのは設備過剰が原因であり、需給ギャップのある業界の投資促進には役立たず、投資の余裕のある好況業種に対して恩恵を与えるにすぎません。また、今回の対象業種には、すでに特別償還などの優遇措置を講じているものが多く、重複しないための選択制がとられるのであり、なおさらその効果は限定され、不公平だけが増大するのであります。
企業の優遇措置の点では、土地税制の緩和も同様であります。宅地の供給を促進することに名をかりて、土地を大量に買い占め金利負担にあえいでいる企業の救済を目的とするもので、断じて容認することはできません。法人の土地譲渡益に対する現行の重課税の適用除外のため、譲渡価格の二七%という適正利益率を廃止し、国土利用計画法に基づく適正価格に置きかえるとなれば、地価上昇を追認するだけではなく、企業経営の立場から地価上昇を招くことさえ考えられるのであります。しかも、宅地供給がふえる保証は全くないのであります。土地税制の緩和は、政府税調の答申ですら消極的見解を示していたものが、政治的配慮によって実施される措置であり、国民感情を逆なでするものであります。
反対理由の第六は、防衛関係費でございます。防衛関係費が着実に増額されてきていることであります。
一兆九千億円の支出に当たって、今回は特に、憲法第九条が禁止している戦力保持に抵触するP3C、F15の新規購入費が計上されております。国防会議は、P3C四十五機、F15百機の導入を決定し、総額一兆一千億円の支出を今後計画的に予算計上していくとしております。五十三年度予算では、新規契約十七億円が支出されるのでありますが、防衛関係費支出の大きな特徴は後年度予算を先取りする国庫債務負担行為にありまするが、今回もわずか十七億円の支出に二千二百億円の国庫債務を負うているのであります。かかることからして、防衛関係費は財政硬直化の大きな要因の一つであります。
その上、今回の予算審議の中で、政府は、「自衛の限界は国際情勢、軍事技術水準その他の諸条件によって変わる」との見解を明らかにいたしましたが、このことは、防衛力整備に当たっての歯どめを実質的に取り払い、戦略兵器を除けばいかなる兵器の装備も許されると主張していると言っても過言ではありません。しかも、政府は憲法上核兵器も保有できると明言していることからいって、防衛力の増強のための布石を私は断じて認めるわけにはまいりません。
しかも、今日の経済不況対策の一環として軍事産業の育成強化論が一部に主張され始め、防衛産業の拡大によって経済危機の突破口にしようとする危険な願望も現実に産業界にはあるのであります。かてて加えて、日米両国間の貿易不均衡という焦眉の問題を抱えている現状では、黒字減らしの緊急対策として、さらには根強いアメリカの極東防衛の肩がわりという要求にこたえ、防衛費支出が雪だるま式に増加し続けかねないのであります。家計も赤字、国の財政も赤字のいまこそ、日本の防衛のあり方を根本的に検討し直し、防衛関係費をいわゆるゼロベース予算編成の俎上に上せるべきでありまするが、政府はこれと全く逆行した方針を立てているのでありますが、国の防衛の大本は国民生活の安定にあることを熟慮すべき段階なのであります。
最後に反対する理由は、政治姿勢と行財政運営の改革に意欲のないことであります。特に地方財政重視の観点が欠落をしていることを指摘しておかなければなりません。
五十三年度地方財政計画の特徴は、国の景気対策重点に歩調を合わせた、公共事業中心、借金依存の財政運営にあります。それは、地方自治体の自主的運営が一段と後退し、国と地方一体、より正確に申し上げますれば国への従属的運営が高まったことであります。四兆百億円の地方債の発行に当たっては、国の規制が強まるでありましょうし、三兆五百億円に上る財源不足対策でも、地方交付税率の引き上げという制度改正が行われることなくして、資金運用部資金からの借り入れなど従来の域を出ていない便法によって処理されています。景気回復がなければ地方の自主性も財政健全化もないという政府の論理では、今日の危機の認識はもとより、その対策でも大きな間違いを犯していると断定せざるを得ないのであります。
今日の行財政構造も一つの危機に直面しているのであり、地方財政危機を単に経済危機の結果と見るだけの対応では危機打開は不可能であり、いまこそ中央集中の行財政から地方分権重視の行財政改革に着手する好機であると私は思うのであります。そのような発想の転換は、政府には全く見ることができなかったのであります。
国債依存率三〇%厳守は守られず、予算審議の過程で野党の意見に真剣に耳を傾け、予算修正も辞さずといった約束も実行しないといった姿勢では、国民の信頼を失うばかりではなく、政治的術策だけではもはや対応できないことを知るべきでありましょう。
七%成長率決定過程のあいまいさ、その根拠の薄弱さ、数え上げれば枚挙にいとまがないのであります。しかも、これらは日ならずして国民の前に明らかになるでありましょう。この結果、なお一層の政治不信をもたらし、経済にもマイナスの作用を与えていることを深く反省すべきであります。
行政改革も断行されず、不公平税制も是正されず、国以上の深刻な危機にある地方財政対策も中央中心の域から脱せない糊塗策で対処し、社会保障長期計画はつくれないとなれば、今日の事態の解決策を打ち出せないのは当然であります。もはや私は、福田総理は政権担当能力がないと言っても言い過ぎではないと思うのであります。(拍手)
私は、ここに、本予算三案の問題点を国民の前に率直、大胆に指摘して、反対討論を終わります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/7
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008・安井謙
○議長(安井謙君) 内藤誉三郎君。
〔内藤誉三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/8
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009・内藤誉三郎
○内藤誉三郎君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となっております昭和五十三年度予算三案に対し、賛成の趣旨の討論を行おうとするものであります。
総理は、予算委員会の席上、「物価、経済成長率、国際収支のどこをとらえてみても、今日の日本は世界の先進国中第一クラスの安定度を示している。卸売物価は前年並み、消費者物価はわずか四・五%、実質成長率は五・三%、国際収支などはもうよ過ぎて世界じゅうから文句を言われている」と答えられております。このような状況を五年前の石油ショック当時、果たして何人が予想し得たでしょうか。わが国の産業及び生活上重要な地位を占めている石油の価格が四倍にもはね上がって、貿易立国たる日本がそれだけの外貨をかせぎ出していく力があるかどうか、百三十億ドルを超す莫大な国際収支の赤字の解消が果たして可能だろうか、三〇%以上という狂乱物価が果たして鎮静するだろうかという心配をした国民の一人一人にとっては、まさにこのことは奇跡であります。恐るべき日本経済の底力と言うほかはありません。これというのも、一にかかって国民の英知、営々たる努力のたまものでありますが、同時に、わが政府・自民党がとってきた経済政策が適切であったことであります。(拍手)特に、総需要抑制政策の選択の正しさにかかるところ大きいと言わなければなりません。あの選択が、産業界、労働界の理解を得て、賃金と物価の悪循環を断ち切り、さしもの狂乱物価が収拾へ向かうきっかけとなったことは、いまだに国民の印象に鮮やかなところであります。
転じて、いまの国民的緊急課題は、円高問題であります。円高は日本経済の実勢を反映したもので、円高により輸出は伸び悩み、輸入の拡大を促進し、国際収支の改善に役立つ一方、原材料が安く輸入される結果、物価の安定にも資するものでありますが、急激な円高がわが国の産業経済に悪影響を与えるのでありますが、昨年秋、米国並びにEC各国から巻き起こった円高攻勢、通商摩擦、これがもたらした倒産、失業等、昨今の不況はまことに深刻であります。この事態に対し、福田総理がこのたび示された選択、政治的決断こそが昭和五十三年度予算であります。
政府が本予算編成に当たって最も心配されたことは、施政方針演説でも明らかなように、世界経済の動向であります。それには、保護主義への兆し、一九三〇年代の世界恐慌への逆戻りの危険を察知して、自由貿易体制の発展と世界経済の安定の立場から、ぜひとも日本が経常収支の黒字是正の方向に踏み切らねばならないと決意されたのであります。そのために、内需主導型の経済運営によって輸入拡大を図り、同時に、財政を主体として国家資金を総動員して景気回復を図る、これすなわち臨時異例の予算編成という政治的決断であります。
この決断は、決してなまやさしいものではなかったと察するのであります。特に、昭和五十年大幅な財政赤字に転落して以来、日夜財政再建に心を砕き、また、国債依存度三〇%をターゲットとして財政節度の維持に努められてきた財政当局初め政府としては、まさに忍びがたきを忍ぶという心境ではなかったかと思います。今回の英断により、国民各界各層の理解が深まり、日本経済の底力が発揮されて、このトンネルを必ず切り抜けることができるものと確信しております。
以下、予算の内容に関し、賛成の理由を申し上げます。
まず第一に、実質成長率七%程度、経常収支六十億ドルの黒字と、その達成目標を内外に明示された点であります。
申すまでもなく、経済発展の原動力は民間における経済活動であり、その根幹は企業家の企業マインドであります。その企業マインドをふるい立たせるかどうか、一にかかって政治における明確な指針の提示いかんにあります。その意味で、今回総理を初め大蔵、経企、通産の三大臣が、そろって、しかも繰り返し、七%程度の成長は何としてでも達成したい、また達成できるとの強い意思を表明された。さらに総理は、事態の推移によっては適時適切、積極果敢な措置をとるとの決意のほどを明らかにされたことは、まことに力強く、国民はその実現を強く要望しております。同様に、経常収支六十億ドルと明示された意味も決して少なくはありません。必ずや国際的評価の好転につながるものでありましょう。経常収支大幅黒字の縮小は、日本の国際的立場からもきわめて重要な問題でもありますので、今年度こそは万全の措置を講じて、責任を持ってその実現に邁進していただきたいと存じます。
賛成理由の第二は、景気回復の道を、所得税減税ではなく、公共事業中心に置かれた点であります。
わが国は、高度成長時代を通じ、産業基盤は着々と整備されてまいりましたが、西欧諸国に比べて社会資本の立ちおくれは否めません。今回、この機会にそのおくれを取り戻すために公共事業を超大型化し、とりわけ住宅、下水道等、生活関連施設に重点を指向されたことは、まさに時宜を得た措置と言えましょう。このことにより、関連企業の設備の拡大、雇用の増大を図り、内需の拡大に資するとともに、景気の回復に役立つことは明らかであります。
西欧諸国が景気政策を減税に求めるのは、すでに社会資本の整備が進み、公共投資に期待し得る余地が少ないからであります。減税か公共事業かのいわゆる波及効果に関する一昨年来の論議は、昨年実施した減税措置がどれだけ個人消費の伸びに貢献したかを振り返ってみれば、すでに勝負はついたと申しても過言ではありますまい。それはともかくとしても、現に三十兆円を上回る大量の国債を抱え、消化していかなければならない日本の現状からは、大幅減税で消費を刺激するといった策は絶対とるべきではありません。七%の経済成長を達成し、景気回復に必要なのは、公共事業の拡充と並んで構造不況業種対策であります。造船、繊維等の構造不況産業から航空機を初め知識集約産業への方向転換が緊要であります。政府の英断と、思い切った積極的助成策を切望いたします。
賛成理由の第三は、財政節度の維持、財政体質の健全化という点であります。
いかに今年のように財政が経済を引っ張らねばならぬときであっても、財政本来の要請、その長期的観点から見て、常にその節度維持に努め、財政体質の硬直化は厳に戒めてゆかなければなりません。
財政の節度維持の見地から、本年度から予算編成に当たって、経常部門と投資部門に区分することとし、既定経費の徹底的な見直しに踏み出す決意を固められたことも賛成でございます。
政府は、本予算審議に当たり、財政収支試算を発表し、財政の置かれた地位、並びに将来の見通しについて国民の理解と協力を求め、昭和五十七年度には特例公債から脱却したいという強い意向を表明されたことも適切であります。
最後に一言申し上げます。
総理は、本予算成立後、五月には米国カーター大統領との会談に臨み、さらに、七月には先進国首脳会議への出席が予定されております。国民は、これらの会談に大いなる期待をかけております。世界も自由世界第二の経済大国たる日本の福田総理の言動を注目しておるでありましょう。世界は、変動相場制に移行してすでに五年、いまだ安定した通貨体制を見出しておりません。総理は、これらの機会を通じて米国には強く基軸通貨国としての責任を求め、先進国首脳とともに、国際通貨安定の道を探っていただくようお願い申し上げます。これが、世界の中における日本としての責任であります。総理は自信と誇りを持ってこれに対処していただきたいと思います。以上をもって討論を終わります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/9
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010・安井謙
○議長(安井謙君) 峯山昭範君。
〔峯山昭範君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/10
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011・峯山昭範
○峯山昭範君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております昭和五十三年度予算三案に対し、反対の討論を行うものであります。
オイルショック以来、不況脱出の出口の見えないまま五年を過ぎた日本経済は、昨年秋口からのとどまるところを知らない円高によって、経済不安が一層深刻化しております。中小企業や構造不況業種を初め、企業倒産は依然として一千件台を数え、しかも大型化が続き、完全失業者は二月末で百三十六万人を超え、この二十年間の最悪の状態となり、国民は、雇用の安定と倒産防止に政治の救いを待ち望んでおります。これが、石油ショック以来、「全治三年」、昨年は「景気の梅雨明け」、さらに「九月の二兆円の総合対策で決定打」と、国民に対して思わせぶりに言い続けてきた福田内閣の経済政策の結果であります。
福田総理は、最近、円高という予期しない出来事が景気の回復を妨げたと、みずからの責任を回避して、もっぱら外圧に転嫁しておりますが、その外圧の原因も、もとをただせば福田総理の旧態依然たる経済政策と、後手後手に回った対策のおくれが引き起こしたものにほかならないと言っても過言ではありません。さらに、今日の不況に対する総理の認識は、企業収益の低迷、操業率の低水準への陥落、在庫調整のおくれなど、企業活動が萎縮した戦後最大の不況の中で誘引された物価上昇の鎮静という現象をとらえて、先進国随一の安定ぶりであると自画自賛しています。現実には、円高による為替差益が、石油、電力を初め個々の商品に反映されてなく、国民のささやかな価格引き下げの期待をも裏切っています。さらにまた、国内需要の停滞による国際収支の大幅黒字に対しても、過去の国際収支の赤字に悩まされたときから見れば夢のような経済力であると、むしろ黒字の累増を誇示しております。これでは、外圧はおさまるどころか、四面楚歌を助長するばかりであります。
国内需要の喚起策についても、総理は、安定成長論者と自認しながら、十一兆円もの大量国債発行に頼る公共投資偏重予算を編成し、大型プロジェクト、新幹線、高速道路建設を推進しようとしていることは、列島改造予算の田中内閣の大盤振る舞い予算とその中身は少しも変わるところがないと言わねばなりません。したがって、私は、福田総理に安定成長の理論と政策はないと断ぜざるを得ないのであります。
わが党は、国民生活に身近な生活基盤を整備し、国民福祉を増進させ、国民の消費生活を高めることによって国内需要を喚起すべきであることを強く訴え続けてまいりました。しかし、福田総理は、これを前向きに理解することなく、拒否していることは、まことに遺憾と言わざるを得ないのであります。こうした姿勢では一七%経済成長達成による景気の回復、経常収支六十億ドルの国際公約の達成は、再び空手形に終わる危険性が非常に高いことを指摘しておきます。
最近の国民世論調査によれば、いずれも福田内閣の支持率は低下を続けております。その原因を福田総理は何と理解しておられるのでありましょうか。「経済の福田」を一枚看板に総理の座につきながら、悪くこそなれ、一向によくならないわが国経済の現状の中で、福田内閣のやり方に対する国民の不信のあらわれにほかならないのであります。
以下、数点にわたり予算案の項目について反対理由を申し上げます。
まず、反対の第一の理由は、本予算案が公共投資偏重予算であることであります。
臨時異例と称される大型予算も、実はその内容を見ると、あの高度経済成長時代の考え方から一歩も前進しておらず、もっぱら道路、新幹線、大規模工業基地開発等の大型公共事業に偏し、安定成長時代における国民福祉の充実という国民的コンセンサスを無視し、生活関連事業や個人消費の喚起という点には全くと言っていいほど配慮がなされていないのであります。公共投資の波及効果について、福田総理は、われわれが強く要求した減税をいまだに実現せず、相変わらず、減税より公共投資の方が需要創出効果が高いと、自説を変えようとしておりません。経済企画庁モデルでも、公共投資の波及効果は一・三に下がっていることを認めているではありませんか。最近の公共事業について、政府が発表している公共事業受注関連の指標を見ますと、官公庁関係の工事量が二〇%の高い伸び率で増加する中で、民間工事は逆に月を追って鈍化し、民需拡大にスムーズにつながっていかないのであります。このように、公共事業をふやしても公共投資だけが空回りしている現下の経済体質を、福田総理はどう考えているのでありましょうか。しかも、公共事業の消化、契約問題など大手優先、官僚天下り優先の従来の誤った契約体制を温存した大量の公共事業の発注は、結局大手企業を喜ばせるだけで、景気の底上げにならないことは明らかであり、賛成するわけにはまいりません。
反対の第二の理由は、政府の場当たり的な住宅政策についてであります。
政府は、わが国の経済を、フローからストックへ、量から質へとの考えに基づいて五十三年度の住宅政策を進めていく方向を示しておりますが、果して政府の目標としている百六十五万戸建設達成は実現可能な数字なのでありましょうか。言うまでもなく、マイホームは国民大衆の希望であり、これを実現させることは大きな政治課題と言っても過言ではありません。しかるに、政府は、住宅問題が土地問題と表裏一体であることを承知しながら、これまでその対策を全く野放しにしてまいりました。その上、長期不況で所得が減少し、生活不安が高まっているにもかかわらず、住宅取得のための政策的配慮を欠いております。これでは、住宅を建設しようにも、住宅資金を蓄えようにも、しようがないと言わざるを得ません。五十二年度の民間における新設住宅着工戸数は、政策不在によってその伸び率は前年を下回っているように、五十三年度に民間住宅建設に高い増加を期待することは絶望的と言わざるを得ないのではないでしょうか。
政府が住宅対策を真剣に推し進めようとするならば、住宅購入の借入金返済に対して、欧米先進国でも行われている二世代にわたる超長期のローン支払いも、現段階において考えられる有力な住宅対策と言えます。しかるに、政府は、こうしたわが党の提唱に対し、まともにこたえようとしないばかりか、住宅問題の根本的解決の熱意を持たず、国民生活の実態に対する見識を欠いたまま、口先だけの住宅建設を推し進めようとすることは賛成できないのであります。
反対の第三の理由は、国民福祉と逆行し、また、緊急課題である雇用の安定及び中小企業対策にきめ細かな具体策を講じようとしていないことであります。
長期不況で生活不安が高まっている中で、老人、身障者、生活保護世帯などの生活は、想像以上に深刻な状況に追い込まれております。にもかかわらず、社会保障関係費の伸び率は一般会計の伸び率を下回り、公共事業偏重のしわ寄せを大きく受けております。老齢福祉年金にしても実質のあめ玉年金と言っていい低水準であり、国民年金その他の社会保障給付の引き上げも何ら生活改善に役立つものにはなっておりません。また、雇用対策についても、失業者が増大し、あすの生活におびえている現状を無視して、雇用対策に見るべき施策は講じられておりません。加えて、企業倒産が激増している中で、中小企業関係予算は一般会計の伸び率を下回るのみならず、構成比も〇・六%のわずかな状況が相変わらず続いており、中小企業対策とは融資政策といった高度成長下の政策そのままで、倒産を防止するためのきめ細かな具体策はきわめて不十分であります。
このように、弱者切り捨て、中小零細企業の窮状や勤労者の生活悪化放置とさえ言える予算案は、政治に対する国民の期待を裏切り、不信を増長するばかりであります。社会保障の増進、雇用安定政策などは、究極的に国内経済改善の方向と、対外摩擦の回避に役立つにもかかわらず、冷淡な措置に終始している福田総理の感覚は、今後の日本政治に大きな不信を呼ぶものと警告せざるを得ないのであります。
反対の第四の理由は、政府の言う本年度臨時異例予算と、これをベースとする中期財政収支試算であります。
五十三年度予算は臨時異例予算と言われています。一体、臨時異例とはどういうことを指すのでありましょうか。国債依存度を実質三七・八%に高め、税の年度収納区分を変更することがそれでしょうか。公共事業費を大きく伸ばし、構成比を高め、その分だけ社会保障費等をカットすることでしょうか。国債償還について申し上げるなら、国債整理基金の余裕金が五十二年度で九千九百億円もたまっているにもかかわらず、赤字国債を発行し、これを財源として、法令上の措置とはいえ、さらに定率繰り入れなどで三千億円を上乗せするやり方は、五十三年度に償還に使われない余裕金を巨額に積み上げることとなり、まさに不急不要の予算計上と断ぜざるを得ません。福田内閣のベストの予算とは、こうした惰性の上に編成されていることを指摘せざるを得ません。さらにまた、財政収支試算によれば、五十四年度は、本五十三年度予算よりさらに巨額の国債に頼る財政にならざるを得なくなっております。
かくして、臨時異例とは言いながら、財政のフレームは旧態依然の域を一歩も出ようとしておりません。四十年に臨時に発行した国債が、十三年間にわたって恒常化したごとく、このままでは財政危機が恒常化、深刻化するばかりであります。低成長下の財政の使命は国民生活の保障が最優先課題で、そのためには、経常支出部門を罪悪視した財政収支試算の考え方は完全に間違っていると言わねばなりません。しかるに、政府は、五十三年度の公共事業一辺倒予算をベースに、公共事業は相当の量を年々確保しておく一方で、福祉関係費用の切り捨てが恒常化されているのであります。また、福祉を高めてほしいのなら増税に甘んぜよと要求をしているのであります。まさに、みずからの中・長期的な行財政改善や、不公平税制の改善、さらには財政の計画化こそ先決であるにもかかわらず、これを怠り、不況であえぎ、政治の救いを、わらをもつかむ思いで期待する国民にだけ負担の責任を押しつけようとしているのであります。
さらにまた、巨額の国債依存による公共事業費の大型化によって、大企業だけを花見酒に酔わせて、その後のツケを一体どうするというのでありましょうか。最終的には国民にツケを押しつけることは明らかだと言わざるを得ません。安定成長、国民福祉充実のレールを踏み外す政府予算案は、断じて賛成できないのであります。
このほか、地方公共団体の財政赤字是正については、交付税率引き上げが本旨でありながら、交付税法の本来の趣旨を没却した財源対策で糊塗しているほか、仮定の上とはいえ、核兵器の保有が憲法上禁じていないとする政府の見解は、ますます防衛力の拡大となり、国民を戦争の危機に追い込むものであり、まことに遺憾であり、承服できないものであります。
さらに、ロッキード裁判の進行とともに、昨日の伊藤証言など、事件の核心が国民の前に明らかにされてきております。政府・自民党は、灰色高官の証人喚問等に応じ、その真相を明らかにする責任があるにもかかわらず、依然としてこれをあいまいにしていることは全く納得できません。総理に、この際、事件の真相究明のため、灰色高官の証人喚問を強く要求するものであります。
以上をもって私の反対討論を終わります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/11
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012・安井謙
○議長(安井謙君) 内藤功君。
〔内藤功君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/12
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013・内藤功
○内藤功君 私は、日本共産党を代表して、昭和五十三年度予算三案に対し、反対の討論を行うものであります。
本予算案は、さきに成立した昭和五十二年度第二次補正予算とともに十五カ月予算として、すでに執行中と言うべきものであります。本予算委員会での審議中にも、円は一気に二百十円台にはね上がり、また、完全失業者も百三十六万人と、史上最高と言われるまでに急増しております。中小企業の倒産や農漁民の窮状も深刻であり、その上、過剰流動性の増大を背景に、株価の過熱、地価の値上がりなど、危険な徴候もあらわれております。かような事態が急激に進行していることは、本予算案が、わが国経済と国民生活の危機を解決できるものではないことを物語るものであります。
わが党は、本予算案のかような性格にかんがみ、予算審議の中で、大幅減税、福祉の充実、賃金の引き上げなどによって国民の購買力を向上させること、また、公共投資の重点を大企業優先の大型公共事業から生活密着型の公共事業に転換させること、それによって国民生活の擁護と経済危機の打開を統一的に進めるのが最良の道であると主張し、経済政策の転換を求めてきました。また、この道こそが、低賃金、低福祉を基盤とした大企業の集中豪雨型の輸出を抑制し、円高問題解決の基本条件を整えるものであることを明らかにしてまいりました。それにもかかわらず、政府・自民党がかたくなに原案に固執し、いまこれを成立させようとしていることは、政治、経済の根本目的が一にかかって民生の安定にあるということを忘れたものであって、われわれの断じて容認し得ざるところであります。
反対の第一の理由は、この予算案が、アメリカの要求と日本の財界、大企業の要求に従って、七%経済成長を至上命題とし、このために大型プロジェクト中心の公共投資を三四・五%まで拡大させるなど、大企業奉仕の予算案であるところにあります。
わが党議員の質問でも明らかになりましたように、高速自動車道路は、その工事のわずか八・五%を中小企業に発注しているにすぎないのであります。同様に、新幹線工事の中小企業発注率は七%、本四架橋に至っては、わずかに三・五%にすぎません。しかも、政府提出の資料によってさえ、産業基盤整備公共事業に比べて、生活密着型公共事業の方が、生産誘発効果はほとんど同じであって、しかも雇用誘発効果はすぐれていること、また、国民の消費支出の増大の方が、公共事業よりも一・四倍も雇用効果が大きいことも明らかにされております。わが党の提言の正当性は、政府自身の資料によっても明らかなのであります。
反対の第二の理由は、このような大企業に対する手厚い対策の反面で、国民生活の圧迫を一層深刻にしていることであります。
本予算案は、住宅困窮世帯が一千万にも上っているにもかかわらず、公営・公団住宅の建設を前年度より三万戸も削減し、生活保護基準の伸びをわずか一一%、老人の切実な願いである老齢福祉年金は月額わずか千五百円の引き上げにとどめております。
その一方で、大学、高校の授業料の五〇%の値上げ、国鉄運賃の一四%値上げの予定、減税見送りによる所得税の実質上の増税、酒税の引き上げ、石油税の新設など、国民に一層の高負担と重税を強いております。また、農民に対しては、減反の押しつけと、オレンジ、果汁、牛肉などの輸入枠の拡大によって、新たな打撃を加えております。
しかも、政府は、このような国の予算に地方財政を組み込み、地方財政を大企業優先の不況対策に動員して、地域住民の福祉切り詰めをさまざまな手段で強要しております。一層激しくなる地方財政の赤字を、地方交付税率の引き上げによるのではなく、一層重い借金で賄わせるなど、地方交付税法に反するやり方までとっているのであります。
反対の第三の理由は、本予算案が歳入の三七・八%もの国債の大増発で賄いながら、不公平税制を依然として温存しようとしているところにあります。
悪名高い租税特別措置の改廃は、初年度わずか十億円の増収の程度にとどめておりますが、逆に土地税制を緩和して、かつて土地を買い占め、地価を暴騰させた大手不動産会社などを、宅地供給の名のもとに救済しようとしております。
かような政策のきわまるところ、公債発行残高は、本年度末には四十三兆円にも及びます。これは国民に何をもたらすか。政府が昭和五十四年度から五十七年度までの向こう四年間に二十六兆七千億円、国民一人当たり税負担は十五万七千円から三十六万八千円へと、実に二・三四倍もの大増税を試算していることを見れば明らかであります。
反対の第四の理由は、政府が財政制度の改悪を進めていることであります。
歳出を、大型公共事業などを中心とする投資的経費と、社会保障費、文教費などを中心とする経常的経費とに分けて、前者を拡大し後者を圧縮するという方向を制度として確立したこと、さらには、国税収納期間を延長して、決算調整資金制度とともに、一層の放漫財政への道を開くなど、財政民主主義を踏みにじる改悪を推し進めていることであります。
最後に、私は、予算審議の過程で明らかにされた福田内閣の政治姿勢について、特に三つの点を指摘したいと思います。
第一は、わが国は核兵器を持つことができる、生物化学兵器も保有できるという、憲法の恒久平和の原則に逆行する憲法解釈論なるものをことさら強調し、軍事力の拡大を図ろうとしていることであります。
これらは米韓合同演習での核ミサイルの通過など、米極東戦略展開のための基地の全面利用、米原子力潜水艦のためのロランC基地の首都圏への設置、日米核通過協定の密約の暴露により明らかにされました。これは、福田内閣が安保体制下での米日韓軍事同盟の一層の強化と、P3C、F15の配備など、莫大な国費を投入し、憲法違反の自衛隊の増強を急ぐ危険な方向に進もうとしていることを改めて浮き彫りにしたものであります。
また、戦後十四万六千件に及ぶ米軍の日本国民に対する事故、犯罪が、米側の法廷でどのように裁かれたのかさえ全く知ろうとしない政府の無責任な態度が明らかにされたことは、安保条約が国民の生命と安全に対し、きわめて危険であり、屈辱的なものであることを事実をもって証明したものにほかなりません。
第二は、わが党独自の調査によって明らかにし、また米議会の調査でも明らかにされております、金大中事件は韓国KCIAの犯行であるとの指摘を無視し、また、浦項製鉄所をめぐる疑惑をも解明しようとしないことであります。
この背景の一つとして、勝共連合と政府・自民党との協力関係を指摘せざるを得ません。昨日も本院予算委員会で、いま韓国KCIAとの関係が暴露されつつある勝共連合とも、反共で一致するので協力をすると公言していることは、現内閣の政治的体質を示すものとして重視せざるを得ません。また、公判の中で灰色の疑惑も決定的になったにかかわらず、政府・自民党はロッキード隠しの態度を改めておりません。
第三は、成田空港事件であります。
わが党は、従前から、学園その他を策源地とする、にせ左翼暴力集団の犯罪と暴力行為を告発し、厳重なる取り締まりと一掃を要求してきたところであります。長期にわたって彼らを甘やかし、泳がせる政策を取り続けてきたと言わなければなりません。成田空港事件は、まさにこうした歴代自民党政府の積年の政治姿勢と政策に起因するものでありまして、その責任は重大であると言わざるを得ないのであります。
以上のような政府の政治姿勢を厳しく追及し、その経済、財政政策と政治姿勢の根本的な転換を強く要求いたしまして、反対討論を終わるものであります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/13
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014・安井謙
○議長(安井謙君) 栗林卓司君。
〔栗林卓司君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/14
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015・栗林卓司
○栗林卓司君 私は、民社党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十三年度予算三案に対し、反対の討論を行います。
政府は、この予算案に対し、臨時異例の処置だと言われました。しかし、今日異例なものは単に財政だけではありません。個人の家計、企業経営、著しい輸出、そして円高、すべてが異例であり、異常であります。では、この中にあって、財政はいかなる任務と役割りを果たすべきか。この認識と対策が今回の予算案でもなお十分ではありません。
問題の発端は、言うまでもなく、原油価格の大幅な引き上げであります。その結果、余分に海外に流出することになった外貨は、当時の一年間で百三十億ドル。これは波及効果を含めて八兆円に近い有効需要の喪失であります。これは、成長率の著しい落ち込みと相まって、わが国のデフレギャップをきわめて深刻なものとしました。
しかし、この事態に対して財政はこれまで何をしてきたのか。たとえば、一昨年の昭和五十一年度予算を見ると、所得税減税ゼロ、政府固定資本形成の伸び率はわずかに一・一%であります。内需が大きく減速している中で財政が背中を向けたら、企業の存続と雇用確保にとっての道は輸出しかありません。当然の結果として、輸出の伸長は急速であり、経常収支は大幅な黒字を記録いたしました。海外諸国が、日本政府が輸出ドライブをかけたと感じたとしても別に不思議はありません。しかも、この間日本銀行は円高を抑えるために市場介入を続け、ときに円安の事態をさえもたらしたのであります。海外の誤解がさらに増幅されたのも、また当然と言わなければなりません。そして、年が明けて昭和五十二年、火を噴くような海外の攻勢が高まり、現在二百二十円を割る円高に立ち至ったのであります。
この一連の経過を振り返って、政府にどのような反省があるのでありましょうか。それは、まさに内需の不振が輸出の増加を招き、それが円高となり、円高が一層の内需の不振をもたらすという縮小均衡的悪循環の連続でありました。
この間、民社党は、昭和五十一年度に大幅な補正予算の早期提出を要求し、昭和五十二年度には思い切った内需の喚起策を求め、三割の公債依存率に固執する誤りを指摘し続けてまいりました。しかるに、政府は耳を傾けようとせず、その都度楽観的な見通しで答えるのを通例としてまいりました。そして結局はどうにもならなかったのであります。
では一体これからどうするのか。
経済白書は、いまの危機を脱出する道として、第一に、国民及び企業経営者に対して将来に対する信頼感を回復すること、第二には、企業の設備投資意欲をかき立てること、第三には、高い貯蓄率を引き下げること、そのためには老後、住宅、教育等について社会的手段による解決の道を拡大すること、以上三点を指摘しております。この点について別に異論はありません。しかし、問題なのは、経済白書が指摘している内容すら政府が積極的に具体化する意欲に乏しいことであります。将来に対する信頼感を回復するためには、政府の言行が一致しなければなりません。そして具体的な政策の裏づけをもって中期的な展望を明らかにしなければなりません。しかし、いま政府が資料をもって国民に示しているのは、増税計画のみであります。進行する円高と、それがもたらすデフレ効果にどう対応するか、この差し迫った対策さえ何ら明らかにされておりません。
民社党は、財政の再建が重要な課題であること、そのために増税も必要であることを率直に認めながら、そのためにも、ことしと来年の二年度に思い切った内需喚起策を講ずるよう強く求めてまいりました。それは、一時財政事情の悪化をさせるように見えるかもしれません。しかし、経済そのものの回復を早め、結局は財政の再建を早めるものと確信しているからであります。そして五十三、五十四の二年間を、最大の目標を国民経済の回復に置きながら、同時に、行政改革と税負担の公正化に全力を注ぎ、五十五年度から五十七年度にかけての三年間を、雇用の安定を確保しながら財政の再建とあわせて安定成長への適応を図るための期間とするという、かねての民社党の主張を重ねて強調しておきたいと思います。
以上の立場に立って考えた場合、今年度の予算は、まずその規模において大きく不足しております。行政改革も、税負担の公正化も進んでおりません。しかも重要なことは、政府には中期的展望そのものがありません。今年度の補正予算でさえ、いまだに雲をつかむような状況であります。やむを得ず、われわれは、年金、住宅、雇用、減税にしぼったぎりぎりの予算修正を要求いたしました。限られた予算の効果を高めるには、公共事業一本やりの対策よりも、多岐にわたる対策の総合の方が効果が高いと判断したからであります。しかし、政府は、乗数効果の違いを盾にとって、われわれの主張を全面的に退けました。しかし、白書も指摘するごとく、現在の余りに高い貯蓄率は、デフレの原因であり結果であります。国民が将来に対して抱いている不安感のあらわれでもあります。国民が不安に沈んでいるときに、公共事業の乗数効果は果たして期待できるのでありましょうか。これまでの相次ぐ公共事業の効果は、砂漠に水が吸い込むように消えてまいりました。その原因は、政府がたびたび指摘する過剰在庫の問題だけなのでありましょうか。何よりも重要なことは、年金、住宅、教育は経済政策の手段なのか、目的なのかということであります。
現在、戦中戦後に苦労して国を支えた人たちは、日々老いております。一方、年金制度は発足以来年が浅く、制度として成熟しておりません。また、核家族の傾向が一般化する中で、高齢者が家族との結びつきを維持しながら地域社会との関係を深めながら暮らしていくためにはどうしたらいいか。見合う住宅がありません。自力で建設しようとしても、価格と収入に見合った社会的援助の制度はきわめて不十分であります。また、やがて高齢を迎える人たちが将来に身構えて準備しようとしても、その家計の大きな負担になっているものが子弟の教育費の問題であります。こうした問題を単に乗数効果の数字をもってのみ論ずるのは誤りであります。それは、政策の目的であり、優先順位決定の問題であります。だからこそ中期経済社会計画が不可欠だと言わなければなりません。そして、国民が将来に対して持っている不安を軽減していくことが社会の活力を高め、経済と財政の健全化に結びつくのではありますまいか。
かつて福祉元年が言われたとき、政府は、たとえば経済社会基本計画のごとく、それが計画としての実態を持っていたかどうかは別として、とにもかくにも経済と社会が一体のものという認識を示しておりました。しかし、いま存在するのは、昭和五十年代前期経済計画であります。一体「社会」はどこへ行ってしまったのか。ここに今年度予算の基本的な欠陥があります。政府は、いつまで財政の窓を通してのみ国民生活をながめ続けていこうとするのか。政府が掲げる七%の成長目標も、六十億ドルの経常収支目標も、狭い財政の窓から日本経済と国際経済社会を見渡した希望的願望の数字のようであります。今年度の下期に大きな不安を感ぜざるを得ません。
政府に対し、過去の政策の真剣な見直しと、補正予算の早期提出を強く求めて、反対の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/15
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016・安井謙
○議長(安井謙君) これにて討論は終局しました。
これより三案を一括して採決いたします。
表決は記名投票をもって行います。三案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。
議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。
〔議場閉鎖〕
〔参事氏名を点呼〕
〔投票執行〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/16
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017・安井謙
○議長(安井謙君) 投票漏れはございませんか。——投票漏れはないと認めます。投票箱閉鎖。
〔投票箱閉鎖〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/17
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018・安井謙
○議長(安井謙君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
〔議場開鎖〕
〔参事投票を計算〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/18
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019・安井謙
○議長(安井謙君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 二百三十四票
白色票 百二十五票
青色票 百九票
よって、三案は可決されました。(拍手)
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〔参照〕
賛成者(白色票)氏名 百二十五名
安孫子藤吉君 青井 政美君
浅野 拡君 井上 吉夫君
伊江 朝雄君 岩動 道行君
石破 二朗君 石本 茂君
糸山英太郎君 稲嶺 一郎君
岩上 二郎君 岩崎 純三君
上原 正吉君 植木 光教君
江藤 智君 衛藤征士郎君
遠藤 要君 遠藤 政夫君
小澤 太郎君 大石 武一君
大島 友治君 大谷藤之助君
岡田 広君 長田 裕二君
加藤 武徳君 梶木 又三君
金井 元彦君 金丸 三郎君
上條 勝久君 亀井 久興君
亀長 友義君 河本嘉久蔵君
木村 睦男君 北 修二君
久次米健太郎君 楠 正俊君
熊谷太三郎君 熊谷 弘君
源田 実君 小林 国司君
古賀雷四郎君 後藤 正夫君
郡 祐一君 佐々木 満君
佐藤 信二君 斎藤栄三郎君
斎藤 十朗君 坂野 重信君
坂元 親男君 山東 昭子君
志村 愛子君 嶋崎 均君
下条進一郎君 新谷寅三郎君
菅野 儀作君 鈴木 正一君
鈴木 省吾君 世耕 政隆君
園田 清充君 田代由紀男君
田原 武雄君 高橋 圭三君
高橋 誉冨君 高平 公友君
竹内 潔君 玉置 和郎君
塚田十一郎君 土屋 義彦君
寺下 岩蔵君 戸塚 進也君
徳永 正利君 内藤誉三郎君
中西 一郎君 中村 啓一君
中村 太郎君 中村 禎二君
中山 太郎君 永野 嚴雄君
夏目 忠雄君 鍋島 直紹君
成相 善十君 西村 尚治君
野呂田芳成君 長谷 川信君
初村滝一郎君 鳩山威一郎君
林 寛子君 林 ゆう君
原 文兵衛君 桧垣徳太郎君
平井 卓志君 福岡日出麿君
福島 茂夫君 藤井 裕久君
藤川 一秋君 藤田 正明君
二木 謙吾君 降矢 敬義君
降矢 敬雄君 細川 護煕君
堀内 俊夫君 堀江 正夫君
真鍋 賢二君 前田 勲男君
増岡 康治君 増田 盛君
町村 金五君 丸茂 重貞君
三善 信二君 宮田 輝君
最上 進君 望月 邦夫君
森下 泰君 八木 一郎君
安田 隆明君 山崎 竜男君
山内 一郎君 山本 富雄君
吉田 実君 有田 一寿君
柿澤 弘治君 野末 陳平君
円山 雅也君 森田 重郎君
河野 謙三君
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反対者(青色票)氏名 百九名
阿具根 登君 青木 薪次君
赤桐 操君 茜ケ久保重光君
秋山 長造君 穐山 篤君
案納 勝君 上田 哲君
小野 明君 大木 正吾君
大塚 喬君 大森 昭君
粕谷 照美君 片岡 勝治君
勝又 武一君 川村 清一君
栗原 俊夫君 小谷 守君
小柳 勇君 小山 一平君
佐藤 三吾君 坂倉 藤吾君
志苫 裕君 瀬谷 英行君
田中寿美子君 高杉 廸忠君
竹田 四郎君 対馬 孝且君
寺田 熊雄君 野口 忠夫君
野田 哲君 浜本 万三君
広田 幸一君 福間 知之君
藤田 進君 松前 達郎君
松本 英一君 丸谷 金保君
宮之原貞光君 村沢 牧君
村田 秀三君 目黒今朝次郎君
森下 昭司君 安恒 良一君
安永 英雄君 山崎 昇君
吉田忠三郎君 和田 静夫君
阿部 憲一君 相沢 武彦君
和泉 照雄君 太田 淳夫君
柏原 ヤス君 上林繁次郎君
黒柳 明君 桑名 義治君
小平 芳平君 塩出 啓典君
渋谷 邦彦君 白木義一郎君
鈴木 一弘君 田代富士男君
多田 省吾君 中尾 辰義君
中野 明君 二宮 文造君
馬場 富君 原田 立君
藤原 房雄君 三木 忠雄君
峯山 昭範君 宮崎 正義君
矢追 秀彦君 矢原 秀男君
渡部 通子君 上田耕一郎君
小笠原貞子君 河田 賢治君
沓脱タケ子君 小巻 敏雄君
佐藤 昭夫君 下田 京子君
立木 洋君 内藤 功君
橋本 敦君 宮本 顕治君
安武 洋子君 山中 郁子君
渡辺 武君 井上 計君
柄谷 道一君 木島 則夫君
栗林 卓司君 三治 重信君
田渕 哲也君 中村 利次君
藤井 恒男君 向井 長年君
柳澤 錬造君 和田 春生君
青島 幸男君 市川 房枝君
喜屋武眞榮君 下村 泰君
江田 五月君 田 英夫君
秦 豊君 加瀬 完君
前島英三郎君
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/19
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020・安井謙
○議長(安井謙君) この際、日程に追加して、
国会議員互助年金法の一部を改正する法律案
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案
国会議員の秘書の給料等に関する法律の一部を改正する法律案
(いずれも衆議院提出)
以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/20
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021・安井謙
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。議院運営委員長木村睦男君。
〔木村睦男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/21
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022・木村睦男
○木村睦男君 ただいま議題となりました国会議員互助年金法の一部を改正する法律案外二件について御報告申し上げます。
まず、国会議員互助年金法の一部を改正する法律案は、昭和四十九年三月三十一日以前に退職した国会議員等に給する互助年金について、本年四月から基礎歳費月額を五十四万円に引き上げようとするものであります。
次に、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案は、本年四月から文書通信交通費の月額を六十五万円に改めようとするものであります。
以上二件は、いずれも、委員会におきましては、審査の結果、多数をもって可決すべきものと決定いたしました。
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次に、国会議員の秘書の給料等に関する法律の一部を改正する法律案は、いわゆる第二秘書の給料月額を本年四月から秘書官三号俸相当額に引き上げようとするものであります。
委員会におきましては、審査の結果、全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/22
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023・安井謙
○議長(安井謙君) これより採決をいたします。
まず、国会議員互助年金法の一部を改正する法律案並びに国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案を一括して採決いたします。
両案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/23
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024・安井謙
○議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、両案は可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/24
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025・安井謙
○議長(安井謙君) 次に、国会議員の秘書の給料等に関する法律の一部を改正する法律案の採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/25
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026・安井謙
○議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。
本日は、これにて散会いたします。
午後二時五十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415254X01319780404/26
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