1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年三月三日(火曜日)
午前十時二十九分開議
出席委員
委員長 長谷川四郎君
理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君
理事 小平 久雄君 理事 中村 幸八君
理事 南 好雄君 理事 加藤 鐐造君
理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君
赤澤 正道君 新井 京太君
岡部 得三君 岡本 茂君
鹿野 彦吉君 木倉和一郎君
坂田 英一君 始関 伊平君
關谷 勝利君 中井 一夫君
野田 武夫君 野原 正勝君
濱田 正信君 細田 義安君
渡邊 本治君 板川 正吾君
内海 清君 大矢 省三君
勝澤 芳雄君 久保田 豊君
小林 正美君 鈴木 一君
中嶋 英夫君 永井勝次郎君
水谷長三郎君
出席政府委員
通商産業政務次
官 中川 俊思君
通商産業事務官
(軽工業局長) 森 誓夫君
通商産業事務官
(石炭局長) 樋詰 誠明君
委員外の出席者
農林事務官
(農林経済局肥
料課長) 山路 修君
通商産業事務官
(軽工業局科学
肥料部長) 村田 豊三君
専 門 員 越田 清七君
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三月二日
委員永井勝次郎君辞任につき、その補欠として
阿部五郎君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員阿部五郎君辞任につき、その補欠として永
井勝次郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月三日
委員堂森芳夫君辞任につき、その補欠として久
保田豊君が議長の指名で委員に選任された。
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二月二十八日
石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法
律案(内閣提出第一七五号)
は本委員会に付証された。
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本日の会議に付した案件
石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法
律案(内閣提出第一七五号)
硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法の
一部を改正する法律案(内閣提出第一一五号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/0
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001・長谷川四郎
○長谷川委員長 これより会議を開きます。
去る二月二十八日に当委員会に付託されました石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし審査に入ります。通商産業政務次官より趣旨の説明を聴取することといたします。中川通商産業政務次官。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/1
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002・中川俊思
○中川(俊)政府委員 今回提出いたしました石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び法律案の要旨について御説明申し上げます。
石炭鉱業合理化臨時措置法は、昭和二十八年以来の深刻な石炭不況を背景として昭和三十年八月に制定されたものでありまして、同法は、石炭鉱業の合理化をはかり、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的として、石炭鉱業合理化計画に基いて石炭鉱業の整備、抗日の開設制限及び未開発炭田の開発等を行うことを主なる内容とするものであることは御承知の通りであります。このうち、石炭鉱業の整備は、石炭鉱業の体質を改善し、あわせて石炭コストの引き下げをはかるため、石炭鉱業整備事業団で年間生産能力三百三十万トンを目標にして非能率炭鉱の買い上げを実施しているものであります。
今回の改正法案は、本年一月二十八日間催しました、石炭鉱業審議会において、石炭鉱業整備事業団による非能率炭鉱の買収ワクをさらに百万トン増加する旨の答申がありましたので、この実施に必要な費用に充てるため、石炭の採掘を目的とする採掘権者及び粗鉱権者の納付金の納付期間をさらに一年間延長して昭和三十六年八月末までにしようとするものであります。
御承知のように、最近におきましては鉱工業生産もようやく上昇の傾向にありますが、千百万トンをこえる膨大な貯炭に直面している石炭鉱業におきましては、予想される石炭需要の回復が直ちに現在の不況解消をもたらすと期待することは困難でありまして、むしろ、事態の推移いかんによりましては、再び昭和二十八年、二十九年当時の混乱状態に立ち至ることも懸念されております。このため、政府といたしましては、本年度以上の生産調節の指導、貯炭資金の確保、輸入エネルギーの節減、石炭需要の喚起等の諸施策の実施により不況の打開に努める方針でありますが、このたびの法律改正は、不況対策の一環として非能率炭鉱の買上ワクを増加して、不況時において予想される非能率炭鉱の倒産に伴う各種の弊害を除去しようとするものであります。
以上がこの法律案の提案理由及び要旨でございますが、今回の買上増加に伴い離職する鉱山労務者は、職業紹介の強化その他公共事業及び失業対策事業等により極力これを吸収するよう十分の措置を講ずる考えであります。
何とぞ慎重御審議の上、御賛同あらんことを切に希望する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/2
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003・長谷川四郎
○長谷川委員長 以上で趣旨の説明は終りました。なお本案についての質疑は後日に譲ることといたします。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/3
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004・長谷川四郎
○長谷川委員長 次に、小売商業特別措置法案、商業調整法案、硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法の一部を改正する法律案、輸出品デザイン法案、右四件を一括し議題といたします。審査を進めます。勝澤芳雄書。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/4
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005・勝澤芳雄
○勝澤委員 私はただいま議題となりました硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法の一郎を改正する法律案についての質問をいたしたいと存じます。大臣がお見えになっておりませんので、その分につきましては一つ次官の方からお答えを賜わりたいと存じます。
まず硫安工業の合理化の現況について一つ御説明を賜わりたいと思うのですが、硫安工業の合理化の最終的な目標は、トン当り五十ドルということでこの肥料二法が成立をし、当時の価格が六十五ドルであったから、この五年間に十五ドル程度を下げるのがこの合理化の目的だったと存じます。その内訳は、硫安工業の合員理化に基くものが七・二ドル、操業度向上によるものが三・二ドル、関連産業の合理化によるものが四・六ドルというように承知をいたしておりますが、最近の実績を見てみますと、合理化の効果と考えられるものが四・七ドル、増産の効果と考えれらるものが三・三六ドル、合計して八・〇七ドルにすぎないわけでありまして、十五ドルの引き下げの目標が今日達成されていない。当時五十ドルの目標ですら甘過ぎるではないかとか、四十五ドル程度を目標にして、もっと積極的な合理化というものを進めるべきではなかろうか、こういうことがいわれておったのでありますが、一体この目標はどういう隘路があって達成できなかったか、こういう点についてちょっと御説明を願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/5
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006・森誓夫
○森(誓)政府委員 ア系窒素肥料工業の第一次の合理化計画は、昭和二十八肥料年度から三十二肥料年度にかけて行うことになっておったのでございまして、この現在の肥料二法が制定実施されると同時に、正確にいえば、そのちょっと前から、実施に移されていたわけであります。そのときの計画といたしましては、まず合理化の方法としましてガス源の合理化をやる。これは現在われわれがいっております、また世間でいっておりますような原料の流体化を促進するというよりは、むしろ石炭を原料として使うが、その合理化の方法をやるということで、たとえばコッパース炉を使うというような、そういう新しい方法を一応当時考えておったのであります。そのほかその後の段階におきます加工設備の改善で、たとえば高圧一貫方式の採用とか、あるいは流動焙焼設備を作るというふうにして、アンモニア合成あるいは硫酸の製造等の合理化のことも同じような強さをもってうたっていたのであります。またそのほか肥料形態の変更とか、あるいは多角経営への進出といいますか、そういうふうなことが合理化のおもなる方法としてあげられておりました。そのほかに量的な増産によるコストの引き下げということも考えていたわけでありまして、ただいま勝澤先生が御指摘のように、当時六十五ドルのコストのものを五年後には五十ドルに引き下げるという計画であったのであります。またこれを実施するための生産能力の変化としましては、昭和二十八会計年度では能力が二百九十万トンございましたが、それを五年後に三百十万トンにするという計画でございました。また所要資金は三百十億円を投下するということであったのであります。
そのような計画が今日になってどういう実績を示したかと申しますと、第一には、生産能力は当時の目標としておりました三百十万トンはすでに昭和三十年度に実現してしまって、昭和三十二会計年度末では能力が四百六十万トンになっております。六割の増加ということで、これは当時予想しなかったほどの大きな増加でございます。その増産によるコスト低下ということは、こういう能力の大量の増加によってずっと実現できたということがいえるのであります。それから投下資金でございますが、実績から見ますと、計画は三百十億円でありましたが、実績は六百億円を投入しております。当初の約倍投入をいたしております。コスト引き下げの効果としては、当時六十五ドルであったものを昭和三十三肥料年度のマル公を基準にして見ますと、マル公は五十五・〇五ドルでございまして、おおむね十ドル近いものが下っておるということが言えるわけであります。しかしながら、これは当初の目標に比べまして、三分の二程度の達成率でございます。なぜこのように達成率が当初の目的に比べて低いかと申しますと、過去五年間で原材料の値上り、特に石炭系の増が一四、五%くらいございます。それから労務費の値上りもございまして、これは大ざっぱに言って、大体給与べースにして四割くらい上っておるわけであります。それから運賃もやはり一四%前後上っております。そのほか、このような大量の資本投下のために、償却あるいは金利が、当時予想しておりましたよりも大きくなっております。そういうようなにとで、当初予想していたよりも悪い条件がいろいろありまして、これが大体六ドルないし七ドルくらいに相当していると思いますが、そういうマイナス効果がありましたために、差引の結果としましては、マル公として十ドル前後の引き下げにとどまったということになっております。もしそういう要素が、マイナスの効果がなかったとしますならば、当初の目標の十五ドルの引き下げは実現できておったというふうに考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/6
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007・勝澤芳雄
○勝澤委員 五十ドルの目標が達成できなかった原因として、三つの問題点をあげられておるのですが、しかしこの問題も、この肥料二法を制定する当時の見通しとしては、十分この見通しはわかっておるはずだったと思うのです。この見通しをもって当然この目標というものは立てられたと思うのです。その当時の目標の立て方が甘かったんじゃないか、こういうように思うのですが、その点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/7
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008・森誓夫
○森(誓)政府委員 御指摘のような点もなくはないと思いますが、ただ、こういう計画を作る場合に、少くとも、たとえば給与べースがこれこれ上るというようなことを前提にすることは、非常に悪影響もございまして、そういうことはできないことであろうと思います。また石炭等の値上りにつきましては、どの程度の値上りになるか、むしろ当時は、大いに石炭鉱業の会合理化をやって、相当炭価は下げるというふうな政策をとろうとしておった時期でございまして、そういうものの値上りということは予想できなかったことだと考えますが、いずれにしろ、こういう原価の将来を推定する場合に、あまりそういう要素の値上りを計算に入れるということは、いろいろほかにも関連した悪影響も起って参りますので、それはやはりそういう考え方はとれなかったのだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/8
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009・勝澤芳雄
○勝澤委員 今労務費の値上りという問題を少し言われておるのですが、これは肥料審議会の三十三年七月二十九日のこの議事録を見てみますと、こういうことが河野委員から言われておるのです。たとえば、二万円以上の貨金を払っているのは、大体バルク・ライン内の生産費の安いところで高い賃金を払っているということです。バルク・ラインに落後しておるのは結局賃金が安い、バルク・ラインの中に入っているところで生産費が安いところは、高い賃金を払っておる。そしてバルク・ラインに落後しておるのは貨金が安い、こういうことを言われておるのですが、この点からいくと、労務費が上った上ったということよりも、生産コストを下げるためのもっと合理化といいますか、生産費の削減といいますか、こういう点に欠けておったのであって、労務費が上ったことで目標が達成できなかった原因というように考えられているということは、少しごまかしのように思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/9
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010・森誓夫
○森(誓)政府委員 設備の合理化あいるは近代的な生産方法をとるということは、生産費にどういう影響を与えるかと申しますと、これは製品のトン当りの労務費の節減あるいは原単位を向上することによって、トン当りの材料費を節減するというふうに働いてくるわけであります。従って、コストの非常に安い工場というのは、やはり設備あいるは製造方法の合理化をやることによって、製品のトン当りに含まれておりまする労務費なり材料費をほかの工場よりもさらに引き下げたということが言えるのでありまして、そのためにコストが安くなるというわけです。従って、給与べースが上りましても、いろいろな合理化をやることによって、製品のトン当りに含まれておりまする労務費というのは、これはだんだん下ってくる、そういう傾向になってくるわけであります。従って、もし給与べースが横ばいにいっていたとするならば、製品のトン当りに含まれている労務費はもっともっと少くなっただろうということが言えるわけであります。同じことが材料費についても言えるわけです。たとえば材料費の石炭一トンの値段はかりに上るにしても、硫安一トンの中に含まれる石炭費というものは、原単位の同上等によって、合理化によりまして、下ってくるということが同じように言えるわけでありまして、そういう場合にも、やはりもし材料費の単価が上らなければ、さらにトン当りの材料費は下ってくるということが言えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/10
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011・勝澤芳雄
○勝澤委員 それでは、このコスト引き下げのために、通産省として、この法律を制定した当時からこの五年間に、具体的にどういうような指導をされてきたか。あるいは投資資本の状態、あるいは政府のこれについての融資の手配といいますか、こういう問題について一つ御説明を賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/11
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012・森誓夫
○森(誓)政府委員 お手元にお配りいたしておりまする資料の中で、肥料工業に対する資金の投下実績というのがございます。この統計を集めました中で、十九ページにそれが出ております。第一次の会合理化計画の当初の資金投下計画は、先ほど申し上げましたように三百億円であったわけでありますが、それがこの合理化の途上におきまして、六百億円と約倍に達しております。この資金の調達に当りましては、それぞれの内訳別の数字が出ております。こういう中で、市中融資あるいは別口外貨その他こういう一般的な融資につきましては、われわれとしては大蔵省と連絡をとりまして、そういう市中金融機関、これに準ずるものの利子についていろいろ便宜をはかってもらうようにお願いをしておったわけでありますが、特に直接的に働くものとしては、財政資金というのがございます。これは初めの三年間ぐらいは、ここにありまするように、多いときは十億あるいは八億という、こういう財政融資を実現してきたのであります。三十一年度は下っておりますが、これは一般に金融が非常に緩和いたしまして、大体市中融資で原則として産業資金をまかなうというふうな機運になったために、こうなっておるのでありますけれども、大体五年間に三十四億という財政融資をいたしておるわけでございます。このようにいたしまして、財政資金の面でも特に市中融資のつきにくいような企業者に対しましては、別に政府が融資をして、これを一つの中核といたしまして融資の促進をしていくということにいたしてきたのであります。その、ほか合理化設備につきましては特別の償却を認めるとか、あるいはその機械の輸入については輸入税を免除するとか、あるいは外国技術の導入についても十分な審査をして、いいものを選んでいくというふうな、そういう行政指導をやって参っておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/12
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013・勝澤芳雄
○勝澤委員 この資金の投下実績を見てみましても、また先ほどの説明の中でも、三百十万トン計画について四百六十万トンと生産量はふえて、資金の投入についても三百十億の予定が六百三億も投入されている。設備も十分よくなり、それから生産計画も上っているにかかわらず、コストだけが旧態依然たるものだ、そしてなおかつ最近肥料会社は経営がはなはだ悪い悪いということを言っておるけれども、現実にはこの投資の状態を見ても、大部分というものが自己資本を中心とした投資でやられておて、財政投資というものは三十四億だけだ、そうすると相当肥料会社というものはもうかっておる、こういうことが言えると思うのですが、その点どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/13
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014・森誓夫
○森(誓)政府委員 肥料工業の経理状態あるいは収益状態については、やはりお手元にお配りしました資料の終りの方にいろいろな角度から見たものが出ております。たとえばこの資料の二十一ページのところで、総資本収益率、配当率及び配当金対社内留保の推移、それから二十二ページの配当率の推移、その次の総資本収益率の推移、こういう角度から肥料工業の経理あるいは収益状況を計数的に表わして、他の一般製造工業平均あるいは化学工業平均との比較を見やすく図表にして表わしてあるわけであります。これによって容易にごらんいただけますように、第一次合理化計画の当初の時期では、肥料工業の大体そういう収益を表わす諸指標は、他の産業と比べましてそう遜色はなかたのでありますが、大体三十一年上期から、ごらんのように他の産業に比べまして非常に悪くなって参っております。これは何に原因するかということなんでございますが、一口に言いますと、国内の価格が合理化を督励するような非常にきびしいものであって、あのバルク・ライン方式のやり方でいた場合に、内需是の範囲でコストの安い工場だけの生産費の加重平均をいたします関係上、全体の生産量に占める内需量の比率がだんだん低下していくに従って、そのマル公は非常にきびしいものとなってくるわけであります。このバルク・ライン方式を実施いたしました二十九年当初のころは、輸出量が全体の二割程度であったわけです。従って、全体の生産量の八割のものをコストの安い順から拾っていきまして、その加重平均をしておったわけです。従って、このときのマル公は全工場にとっても割合耐えやすいものでございましたが、最近の昭和三十三肥料年度のマル公の設定に当りましては、生産量は非常にふえておりますが、内需はそれほどふえてない、従って輸出量が非常にふえまして、輸出量が全体の生産量の四割を占める。半面からいいますと、コストの安い工場からずっと拾っていって、全体の生産量の六割に達するまでの工場を拾って、その加重平均をするということであって、バルク・ラインに入ってくる量が、輸出がふえました関係で、だんだん減ってくる結果になる。その加重平均をとりますものですから、マル公が非常にきびしいものになって参るわけであります。具体的に言いますと、お配りいたしました資料にもございますが、三十三肥料年度の計算では、バルク・ラインに入ってくる工場が八工場ございます。その八工場の加重平均をいたしますから、マル公で大体予定した利潤を上げられる工場は三工場ということになります。これが昭和二十九年のものと比べますと、バルク・ラインに入るのが十工場で、マル公で大体予定した利潤を上げ得るものが五工場ということです。そのように、最近になってだんだん輸出量がふえてくる結果、バルク・ラインに入る工場の数が減って、そのためにマル公が非常に低いところできめられるということになってきているわけでございます。この表はお手元にお配りいたしました資料のうちの十二ページでございます。十二ページにそういうバルク・ラインの推移についての表がございます。そういうことが、最近になって肥料工業の経理は他産業に比べて悪くなったということが言い得る一つの原因だと思います。
もう一つは、輸出価格がだんだん下って参りまして、最近に至りましては輸出赤字がだんだんふえてきているということが、実質的に経理を苦しめている原因になっていると思います。もちろん一応その赤字は硫安輸出会社で形式上は遮断いたしておりますけれども、硫安輸出会社の赤字即メーカーの赤字と考えていいと思いますが、肥料工業の赤字は、内外からの原因でふえてきているような情勢にあると申していいと思うのでございます。とにかくそういうふうにして、経理が苦しいか楽であるかということは、最初に申し上げまよしたように、肥料によってごらんいただけば一目瞭然であると思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/14
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015・勝澤芳雄
○勝澤委員 コストの問題はまたあとでお伺いするといたしまして三十三肥料年度におけるところの生産の状況、それから内需並びに輸出の見通し、これらについて一つ御説明を賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/15
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016・森誓夫
○森(誓)政府委員 お手元の統計集の第二ページに、昭和二十八肥料年度から三十三肥料年度までのア系窒素肥料の生産、内需、輸出等についての数字が詳細に出ております。この三十三肥料年度について見ますと、ア系窒素肥料全体の生産は四百四十三万六千トンであります。内需は二百六十五万九千トン、輸出が百九十四万三千トン、この輸出とありますのは輸出可能量、輸出してもいい余力という意味でございますが、そのようにして在庫が、翌年度に繰し越すものが十八万トンということになっておるのであります。大体過去五年のこれらの項目の数字の推移の大勢について出し上げますと、生産は毎年大ざっぱにいいまして、三十万トンないし五十万トンくらいずつふえております。特に最近になって五十万トンくらいふえておるという大量増加の傾向が見えております。ところで、これに対して内需は大ざっぱにいって毎年十五万トン程度しか増加しない。従って、生産増加量を内需で消化できないその差額が輸出可能量として出てくる。その結果として、輸出可能量は最近加速度的に増加いたしておるわけでございます。輪中量について見ますると、たとえば昭和二十八年度は五十万トン前後でございましたものが、三十二肥料年度は約百二十万トン、それが三十三肥料年度では百九十万トンの輸出余力を持つ、こいう状態になっております。三十三肥料年度のこの数字は、肥料審議会できめました三十三肥料年度の計画でございます。実績はまだ完全に締め切ることのできない段階でございますが、大体これとはそう大きい食い違いのない状態にただいま進行いたしております。もっとも輸出につきましては、ただいまの見通しとしては百六十万トン前後ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/16
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017・勝澤芳雄
○勝澤委員 二月二十八日の日本経済新聞の報道によりますと、「二十六日ワシントンで行われたインドの肥料国際入札で、西独、イタリアなどが日本よりかなりの安値で入札したことがわかった。」ということが出されておりました。この中で、この状態というものは、西独やイタリアの安値の問題は、日本の肥料輸出に対する巻き返しではないだろうか、従ってこれとの競争をして、お互いが価格競争をやることはどろ沼に入るのじゃないか、こういう点から、やはり何らかの国際的な話し合いが必要ではないだろうか、こういう点をいわれております。それと同時に、業界としてこの肥料の延べ払いを認めてもらいたい、あるいは肥料を賠償物資に指定する、あるいはまた中共貿易、こういうような要望が強いようでありますが、これに対するお考え方を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/17
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018・森誓夫
○森(誓)政府委員 先般インドで西独とかイタリアが国際入札をいたしたということは、ただいまお話の通りでございますが、これはその前にやはりことしの初めでございますが、日本が四十三ドルでインドの大量需要約三十万トンの落札をいたしたのでございます。この際はドイツ、イタリア等は手が出なかったのであります。それに対する巻き返しとして今度はインドが入札をいたしておるのでありますが、この量は三万五千トン程度であります。わが方としましても、今後大量の国際入札に際しましては、これを必ずとるという強い態度でいかなければならないと思っておるのでございますが、インドの場合はそういうわけで日本が見送ったわけでございます。今後輸出の振興方策としましては、ただいま御指摘のように賠償物資に指定していく、あるいは決済条件を緩和するとかあるいは求償貿易の中に入れまして、地国から物を輸入する場合に、それとだき合せて肥料を輸出山するというふうなやり方をとるということを進めていかなければならないと思っております。そのほか現在政府としては海外の肥料の生産事情あるいは市価等につきまして調査をするような調査団を派遣する、また海外の、たとえば東南アジアの需要を喚起する、あるいは日本の肥料をそういう地域に対して宣伝するためのサービス・センターを設置する、これは現にバンコックに設置して今活動中でございますが、そのようなことをやる、また輸出用の肥料の非需要期におきまする一種の滞貨と申しますか、それに対しては相当の融資をして、あまり安売りをしないでもいいような、力をつけるというふうな一連の輸出振興策を今後とも政府としては強力に推し進めていきたいというふうに考えております。先ほど私ちょっと間違ったことを申しましたが、ことしの初めにインドで三十万トン落札をいたしたと申しましたのは、昨年の十一月のことでありますので訂正さしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/18
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019・勝澤芳雄
○勝澤委員 輸出価格についの国際的な話し合いについてはどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/19
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020・森誓夫
○森(誓)政府委員 現在国際的の輸出競争が非常用に激しい、まさに戦国時代とでも言ってよい状態でございまして、これは将来何らかの形で秩序づけられるということが望ましいものと考えております。まだ正式の動きにはなっておりませんが、現在いろいろな国際間の無秩序な競争が、ある程度調整されるような動きも若干出てきております。われわれとしてはそれが日本の不利にならないように、軌道に乗ることを希望いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/20
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021・勝澤芳雄
○勝澤委員 この法律をまた延長するという建前のり中で、合理化の計画が出されておりますが、この計画を見ますと、この計画の中では五十四ドルから四十七ドルに下げることを目標として強力に合理化を促進するものだ、こういうふうに書かれておりますが、先ほどの御説明では五十五ドルということが言われておりますが、まずそれはおいて、四十七ドルに下げるということを具体的な目標にしておる、こういうことを言われておるのですが、現在でさえ四十一ドルですか、四十三ドルですか、こういうようなお互いに国際入札を行なっているのに、五年後四十七ドルということは大へん甘いじゃないだろうか、一方では三十七、ハドルということも言われておるのでありますが、積極的なコストの引き下げに対する意思がどうも不明確のように思うのです。そこでコストの引き下げ、合理化の具体的な可能について、もっと根拠のある御説明を一つ承わりたいと思うのです。特に肥料審議会の意見としても、合理化達成のためにはガス源の転換あるいは肥料形態の変更あるいは経営の多角化を進めながら低利の財政資金の融資、税の減免等の優遇措置、原料価格の安定措置等を講ずるものとする、こういう意見も出されておりますので、具体的な計画、そうして量は今までの五カ年問の中で倍にもなったけれども、設備投資も同じように行なったけれども、コストだけが下っていない、こういう点からコストが下るという見通し、根拠について御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/21
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022・森誓夫
○森(誓)政府委員 第二次の合理化計画におきまして、一番画期的なコスト引き下げの効果を持ちまするものは原料の流体化でございます。これは第一次の合理化計画ではあまり進んでいなかったのでございます。これは当時世界的にいっても、そういう技術を採用することがまだ一般的でなかったのでありまして、最近に至って日本の業界がその流体化を強力に推進しても大丈夫だという自信を持つに至ってたので、第二次合理化計画に至って初めてこれが本格的に採用されるということになったわけでございます。この原料を流体化するということは、天然ガスあるいは原油あるいはコークス炉ガスなどというふうなガスなり液体を原料にしてアンモニアを作ることでございまして、これは固体原料と普通いわれておりまする石炭とかコークスを使う方法に比べまして、相当に安くできるわけでございます。石炭とかコークスで作って参りますると、硫安にしてもいろいろな生産条件もありましょうが、大ざっぱに言って五十五ドルとか六十ドルぐらいのコストになろうと思うのでございまするが、この流体原料でやりますると、四十五ドル前後で仕上がるということ、それほど大きな違いがあるわけでございます。ところで、そういう原料の流体化を今後どのように進めていくかと申しますと、過去において昭和二十八年の第一次合理化計画を出発したときには、わずかにそれは全体の生産能力の五%を占めるにすぎなかったのでありますが、それが昭和三十三年四月の能力で見ますと、全体の能力の約二八%を占める程度に進んできております。しかし、これはまだ大きいウエートを持つとは言えないのでありますが、今後五年後、つまり昭和三十八年にはそれを全体の能力の八二%を占めるように持っていこうというのでございます。従って、今後のコスト引き下げは、主としてそういう流体化の促進ということによって大きく期待できるというふうに考えているのでございます。そうしてこれを実行するためには、政府としては原油の輸入税を免除するというふうな助成措置を講じております。あるいはまた講ずることになっております。それからまた開銀の特別の利子で所要資金の調達に資するようにいたそうということになっておりまして、これらの点は従来と比べて一歩政策を強化したと言えることかと思うのでございます。そのようにいたしまして、今後の五カ年間の能力の増加としては、昭和三十三年四月を基準にしますと、百五十万トン前後でございますが、その反面に約二百三十万トン程度の旧設備の流体化への切りかえ、リプレースといいますか、そういうことをやりまして、それで先ほど申しました流体化の流体設備が全体の設備の八二%を占めるというところまで持っていこうとするものでございます。またこの全体の資金は今後五年間の合計としまして一応三百六十億円ぐらい要るだろうというふうに予想いたしております。そのほかに維持、補修なども百十億円ぐらい考えております。こういうふうな大体の計画で、今後の第二次の合理化計画を進めていきたいというふうに思っておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/22
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023・勝澤芳雄
○勝澤委員 現在五十五ドルで、五カ年後に四十七ドルの目標である、こう言われておって、現実には輸出が相当比重の上で大きなウエートになっておる。そうして今日四十一ドル、四十三ドルで相当赤字を出しておる。そして五年後に四十七ドルだと、ますます輸出会社の赤字がふえる、こういう計画なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/23
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024・森誓夫
○森(誓)政府委員 五年後のコスト四十七ドルは、これは一応国内販売を前提としていろいろなコストを計算したものでございます。従って、国内の各地へ輸送する輸送費等も含んでいるのでございますが、輸出用のものは工場から海岸まで出せばいいのでありまして、輸送費なんかの点で非常にコストが少くて済むわけであります。従って、その四十七ドルというものは、輸出用にしますと、FOBで四十五ドルぐらいで売って引き合うものである、引き合うといいますか、赤字が出ないものであるということが言えると思うのであります。最近一年間の輸出価格を平均いたしてみますと、大体FOB四十五ドルということになっております。この最近の価格が将来五年間にわたってどのように変っていくであろうかということは、これは推定は非常に困難でございまするが、われわれの見方としては、いろいろな情勢を考えて、さらにそう下らないじゃないか、かたく見て今後四十五ドルくらいを前提にしていっていいじゃないかというふうに考えております。なお、欧米諸国のFOB価格は今後四十一ドルから四十四ドルくらいの間で、長期的に見ていくのではないか、その場合に、東南アジアを目標にして考える場合には、日本は幸いに地理的に近いところにあり、そういう運賃差のメリットが四ドルないし七ドルくらいあると考えております。従って、欧米諸国と東南アジアにおいて競争する場合には、運賃差の日本が有利なその四ドルないし七ドルという範囲では、日本がコストがかりに高くても償っていけるというふうに考えておりますので、一応この目標で将来五年後には国際競争を一応一本立ちでやっていけるようになれるであろうというふうに思っております。ただ、その間現在のコストは五十四ドルでございますが、これから五年後に四十七ドルに下るまでの間は、ある程度の輸出赤字が発生することはやむを得ない、それは五年後に輸出が黒字に転換する時期が来、それ以後においてさらにコストが下ってきた場合に、それでだんだん解消していこうというふうに一応考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/24
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025・勝澤芳雄
○勝澤委員 これも私はあまり専門屋でないのでよくわからないのですが、一番不思議に思っておるのは、輸出は国内より安い、韓国には四十一ドル、あるいは台湾、インドへ四十三ドルに売っておる、それで日本のわれわれ国民には五十五ドルで売っておる。どこのために肥料会社というものがあるのかという点は、いつも私は不思議に思うんですが、その上外国の食糧の方が安いということで、日本の農民を圧迫しておる。一体輸出で四十一ドル、四十三ドルで売れるものが、なぜ日本の工場で作ったものを、日本の農民にはこれと同じ価格で売れないのでしょうか。この点を一つ御説明を賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/25
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026・森誓夫
○森(誓)政府委員 輸出価格は国際競争価格でありまして、生産したものを販売するためには、どうしてもやむを得ない価格で、これによって肥料工場が利潤を上げておるというものではございません。国内価格は一応マル公制度で生産要素をだんだん積み上げまして、しかも先ほど申しましたような内需バラルク・ライン方式によって、コストの安い工場を中心にした計算をして、一応生産費に見合った価格を出しておるのでございまして、これは少くともこの価格で売らないと利潤は期待できない、つまり赤字になってくるということになります。先ほどお話しのありましたように、外国に安く売って、その結果安い農産物を日本が入れるといいますが、これは現実にはそうでございませんで、日本から輸入した肥料はFOB価格は安いのでありますが、これを買い入れた政府機関その他が相当高い価格で売っております。台湾にしても韓国にしても、正確な数字を私はここで申し上げませんが、とにかく百ドル近いくらいの価格で向うの農民は買っておるわけであります。従って、日本から出す肥料のFOB価格が安いことと、向うの農産物が安く入ってくることとの間には、論理的な関連はないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/26
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027・勝澤芳雄
○勝澤委員 食糧の問題はわかりますけれども、それじゃ日本の農民も国際入札をやれば四十一ドルから四十三ドルで買える、こういうことになるのですか、どうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/27
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028・森誓夫
○森(誓)政府委員 四十一ドルとか四十三ドルというのは、すべての輸入する場合の価格ということは言えないと思うのです。日本が輸出している価格について見ましても、台湾とかあるいは韓国のような大量で取引する場合には、そういう激しい国際競争にさらされる関係上、非常に安い価格になっているのでありますが、現にインドネシアとかあるいはフィリピン等に対して少量出している場合は、やはり五十ドルとかあるいはそれよりちょっと上回ったような価格で出しておるわけでございます。もし日本に肥料工業がないとするならば、おそらくそういう安い価格で常に日本が肥料を買えるということは言えないと思います。これは日本に肥料工業があるからこそ、われわれはそういう強いことが言えると思うのであります。そういうわけで日本に肥料工業がなかった場合に、果して日本の農民が安い肥料を買えるであろうかというにとについては、まあこれは非常に大きい論議になりますが、これは非常に大きな問題になると思いますので、相当これは検討を要する事項だと思います。で、先ほど申しましたが、そういう赤字の輸出を生産量の四割もやっておる、そのために大量生産によるコストの引き下げという恩典をむしろ国内販売の肥料についても認めることができるわけでありまして、もし日本がこの際輸出を全然やめてしまうということなりますと、四割生産量が減る、その結果コストはおそらく二割ぐらい上るということになります。従って赤字で輸出しているということは、反面国内価格を安くする上にも非常に貢献しているということが言えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/28
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029・勝澤芳雄
○勝澤委員 量を多く作ればコストが下るということを言われておるのですが、現実に五年間に計画より上回ったけれども、コストの方はそんなに下っていない、こういうことでありまして、先ほど私が質問いたしました問題は、なおかつ私もよくわからない。国内が高くて輸出が安い、こういうことはどういうように説明してもよくわからないと思うのです。そこでその輸出の問題が、これも赤字という形で日本硫安輸出会社に残されているようでありますが、一体この輸出会社の赤字は現在どのようになっておりますか。そしてこれからどういうふうにしようとされているのですか。その点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/29
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030・森誓夫
○森(誓)政府委員 硫安輸出会社は昭和二十九年の八月に発足いたしたのでございますが、その後の経理状態をずっと見てみますると、二十九肥料年度あるいは三十肥料年度は輸出価格が五十五ドルないし六十ドルぐらいでありましたためにほとんど赤字を出していない、きわめて少額の赤字であったのであります。そしてほんとうに赤字がまとまった数字で現われ始めましたのは、三十二肥料年度に入ってからでございます。このようにしまして過去四年間の経理を集計いたしてみますると、つまり昨年の七月現在で赤字がどのぐらいあるかと申しますと、資料の九ページにそれが出ておるのでございますが、二十五億円という赤字の累計になっております。この二十五億円のうちで二十一億円は、三十二肥料年度に発生したものでございます。それから三十三肥料年度の見通しはどうかと申しますと、三十三肥料年度に入りまして、今日までに輸出した価格を平均いたしてみますと、大体四十五ドル前後になります。従って三十三肥料年度は、従来の三十二肥料年度に比べて、もっと大きい赤字が出るのではないかというふうに考えられるのでございます。今後合理化が完成して一応……。(勝澤委員「じゃ三十三年度の赤字の具体的な数字を示して下さい。」と呼ぶ)それはまだあと七月まで相当残された期間がありまして、その推定を具体的な数字で申し上げるということは非常に困難でございますが、数十億円ぐらいのものになろうかというふうに考えております。それで今後も大体国際競争価格が四十五ドルということで、ずっと推移するとすれば、合理化が完成するまでは、まだまだ赤字が累積するということになろうかと思うのであります。三十八肥料年度以降でこれが黒字に転化する。そのために合理化を大いに推進しまして、ぜひ三十八年度のコスト四十七ドルの合理化目標まで持っていくようにいたしたいということで、せっかく政府としてはいろいろな助政策を講ずることになっておるわけでありますが、反面先ほども申し上げましたように、いろいろな輸出振興策と輸出価格の維持あるいは改善に努めて参りたいというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/30
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031・勝澤芳雄
○勝澤委員 この三十三肥料年度までに相当赤字が出る、こう言われた。三十八年度以降に黒字に転化したいと思っておるが、その目標は四十七ドル、こういうことですから、三十八年度以降も四十七ドルでは黒字でなくて相当赤字になる、こういうことになりやせぬでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/31
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032・森誓夫
○森(誓)政府委員 三十八年度に四十七ドルになりますと、その年一年をとってみますと、大体とんとんあるいは黒字になるわけでございまして、それまでに発生いたしております赤字は、三十八年度以降において徐々に消化していくということになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/32
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033・勝澤芳雄
○勝澤委員 この輸出会社によって輸出のカルテルが結ばれておる、それで輸出カルテルの反面、片方に国内的なカルテルも結ばれておる、そこで赤字が出た、こう言われた。赤字というものは、これは実質的なものであるか、形式的に赤字になっておるのかという点が、どうも私はよくわからないと思うのです。この赤字そのものが生産業者の輸出ワクによって売掛金になっておる。片方では貸し倒れ準備金とかその他の準備金で積み立てておる。それで政府もまた大臣もこの赤字は農民には転嫁しない、こういうことを再三言われておるようでありますが、この赤字というものをこういう準備金で取りくずすということにかりになれば、結局何か転嫁されたようになるのじゃないだろうか、こういうふうに思うのですが、その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/33
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034・森誓夫
○森(誓)政府委員 現在の肥料二法が作られましたそもそもの動機を考えてみますと、これは当時非常な出血の輸出をいたしまして、その出血を国内価格に転嫁した、そのために国内価格が相当高くなったということ、そういう事態でございます。こういう事態の起らないようにということで、この二法を制定いたしまして、マル公制度を作り、国内価格についてはそういう適正なもののめどを、はっきり作るということをしたわけであります。別途輸出につきましては、硫安輸出会社というものを作って、そこで輸出の赤字を一応ためておく。内需用と外需用と経理的にはっきり区分するという形をとったわけでございます。今後もわれわれとしてはこの二法を存続して、こういう輸出赤字が子憩されるような今後の事態に対処していこう、つまり輸出の赤字が国内に転嫁されないように、やはり二法を存続していきたいという希望を持っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/34
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035・勝澤芳雄
○勝澤委員 私は輸出会社自体があることが、どうもこの合理化を阻害してきたのではないだろうか、こういう疑問がどうしても起きてくるのです。この法案の成立のときも、この輸出会社自体大きな問題になっておりました。結局この輸出会社の赤字というものが、肥料会社が赤字だというふうにいわれる。そのことが農民に転嫁しない、転嫁しないと、言いながらも、現実的には合理化を促進する意欲というものが、安易な形で国内に転嫁され、そして輸出会社に赤字が累増されていく、こういうように思うのですが、この輸出会社についても当時相当反対があったのですが、今お考えになって、やってみてどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/35
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036・森誓夫
○森(誓)政府委員 お話の輸出会社の存在が合理化意欲を減殺するということについては、ちょっと私理解いたしかねるのでございますが、輸出会社の存在とあわせて価格の公定制度というこの二つの仕組みによりまして、輸出の出血は国内価格に転嫁されないような、そういう仕組みになっておるわけでございます。もっと具体的に申しますると、国内のマル公をきめる際には、原価要素を一々政府の方で洗っていきまして、輸出赤字が国内に転嫁されるようなおそれのあるものは、排除いたしております。たとえば硫安輸出会社の赤子は、メーカーの側から見ると、輸出炭会社に対する売掛金という形で計上されるわけです。この売掛金に対して金利等を認めて、それをマル公のコストに入れますると、これは輸出の赤字を一応国内に転嫁したということになるかもしれません。そういうところを十分に注意して、それはマル公に入れないようにやっております、そういうわけで、マル公制度の適正な運用によりまして、輸出の赤字は現在国内に転嫁されないような形になっておるわけでございます。輸出会社の存在が、メーカーの合理化意欲をそこなうことになりはしないかという旨の御質問に対しましては、私はもちょっとその真意がわかりかねますけれども、結論として申し上げまするならば、この会社の存在が、メーカーの合理化意欲を減殺するということになってはいないというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/36
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037・勝澤芳雄
○勝澤委員 最後に意見として。特に目標というものを設定をされて、その目標でいろいろと努力をされてきたと思うのです。そしてそのように、行政としてもいろいろめんどうを見てきた、しかし現実にはその目標にも及ばなかった、そして今回五カ年間延長することによって、一つのまた四十七ドルという目標を立てておるけれども、今日の情勢ですら、四十七ドルという目標が甘いじゃないだろうか、こういう点から考えてみますと、合理化の促進というものについては、相当な力を入れねばならないと思うのです。それと同時に、今日輸出会社にある赤字というものは、これはどんな形でその赤字が解消されるかということは、国内の農民の立場からいうならば、相当これは関心を持ち、また重大な意見も持っていると思うのです。こういう点から、今までこの赤字については国内に転嫁しないということを、政府は何回となく言われておるようでありますが、一つこの問題については、十分な御留意を賜わりたい。
なおコストの問題につきましては、やはり私は現在五十五ドルだという説明が、ほんとうに五十五ドルかどうかという点についても、相当疑問があるわけでありまして、この点につきましては、肥料審議会などでも十分論議をされていることだと存じますので、一つ十分な監督によって、今日のいろいろの問題点をすみやかに解消するように要望いたして、私の質問は終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/37
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038・長谷川四郎
○長谷川委員長 始関伊平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/38
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039・始関伊平
○始関委員 私は最初に硫安工業合理化の目標という問題についてお尋ねをいたします。この法律の施行以来五年近くの月日がたちまして、その間に合理化によるコストの低下がある程度進み、また硫安の公定価格というものも大体一割程度下っておるということでございまして、これはいろいろの物価がむしろ上昇ぎみである、特に硫安の原価を構成する物資も若干の騰貴の傾向もあるという際におきまして、私は関係の政府当局並びに業界において相当の努力をしたものと存じまして、これをある程度評価をいたしておるのでございます。今後さらにこの法律を五カ年間延長いたしまして、アンモニア系窒素肥料の合理化を進めていこうということでありまして、この合理化を進めるに当りまして、合理化の目標というものが、私は非常に大事な問題になると思うのであります。そこで、これは政府の決定だろうと思いますが、三十四年一月のアンモニア系窒素肥料に関する対策要綱というものを見ますと、今後おおむね五年間にア系窒素肥料の生産費を、国際競争に耐え得る水準まで引き下げるために、強力に合理化を推進する、こういうふうに書いてございます。一方臨時肥料需給安定法の十三条によりますと、肥料の公定価格は、「生産費又は輸入価格を基準とし、農産物価格、肥料の国際価格その他の経済事情を参しゃくして定める。」とあるのでございます。ここに国際競争に耐え得る生産費水準という観念が一つある、もう一つ肥料の国際価格、こういう観念と二つ出て参っております。国際競争に耐え得る生産費水準という考え方につきましてはあとの方に譲りまして、最初に肥料の国際価格という観念でありますが、先ほどお話がございましたように、韓国なりあるいは台湾、ああいったように肥料の生産のない国の農民の支払っております肥料価格というものはべらぼうに高い、こういう話でございます。
〔委員長退席、中村(幸)委員長代理着席〕
場合によっては百五十ドルとかあるいは百六十ドルとかいう話も聞く。そういうものは論外といたしまして、主要な肥料生産国の国内価格を調べてみますと、たとえば英国では一九五八年で五十九ドル、西ドイツでは同じ年度に六十三ドル、さらに米国では五十七ドルというようなことでございまして、これは日本の五十六ドルというものに比べると、若干日本の方が安い、こういうふうになっておるわけであります。そこで、肥料の国際価格と言われるのだが、これは客観的にこれが国際価格だというものはないと私は思うのでございます。肥料の国際価格と抽象的に申しますが、そういう言葉を使っておられますが、肥料の国際価格というものは一体何を言っているのかという点を、一つお示しを願いたい。先ほど具体的なコスト引き下げの目標は四十七ドルだというお話でございますが、その肥料の国際価格というものと四十七ドルとの関係も御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/39
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040・森誓夫
○森(誓)政府委員 この肥料の需給安定法十三条二項にありまする肥料の国際価格という言葉、これは日本と競争関係に立つ外国の生産費あるいはまた日本がねらっている世界における実際の輸出価格この二つを総合して意味しておるものであるというふうに考えております。しからば日本の競争国の生産費というものは、どのくらいであるかということになりますと、諸外国はそういうことは全然公表をいたしておりません。わずかに建設会社がプラントの宣伝をするときに、うちのプラントで作ればこのくらいで肥料ができるのだというよつうなことが出ておりますが、そういうきわめて間接的な方法で、手探りで調査するということで、外国の文献を総合合して見、あるいはこちらから海外視察に行った者が勘でつかんでくるというようなことで考えておりますと、おおむね競争国の生産費は四十五ドル見当ではあるまいかというふうにわれわれは考えておるのでございます。
また国際的な販売価格がどうであるかということについては、これは市場の性質あるいは取引のそのときの条件等によって一律にどうとも言いかねる状況でございまして、従って需給安定法で書いております肥料の国際価格というものを、一本の係数で出すということは非常に困難であるというふうに考えております。われわれとしては当面今後数年の国際競争の推移、あるいはただいま申しましたような外国の生産費等の事情から考えてみまして、生産費四十七ドル、輸出価格としては四十五ドル、この程度にできるように生産費を下げていけば、まず一応国際競争にたえ得るのではあるまいかというふうに考えて、今後の第二次合理化の目標を一応四十七ドルというふうにきめたわけでございます。もちろんこれは安いに越したことはないので、もう少し引き下ぐべきではありましょうが、実現の可能性ということも考えなければならない、そういう理想と現実とを総合いたしまして、一応四十七ドル程度が第二次合理化計画の目標としてはいいところではあるまいかというふうにして、実はきめたようなわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/40
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041・始関伊平
○始関委員 ただいまの御説明によりますと、国際的な生産費の水準というものを四十五ドルと一応推定される、それからもう一つその場合のFOB価格というものから持ってこられて、このFOB価格というものが合理化をする場合の一つの目標だ、こうおっしゃるのですか。――そこで私は平素疑問に思っておりますので伺うのですが、輸出の場合のFOB価格というものは、先ほどお話になっておりましたけれども、国際的に何らかの協定なり何なりに到達するという場合においては話が別になりましょうけれども、ただいまの情勢のもとにおいてはこれは合理性のある価格ではない、たとえば英国の場合には国内価格が五十九ドルだが韓国の入札価格の場合には四十六ドル、西ドイツは国内が六十二ドルに対し輸出は四十二ドル、これは先ほどお話の、かりにイギリスや西ドイツのコスト水準が四十五ドルであるという事実を認めましても、なおかつこれは出血価格である。そこで私の疑問はただいまのような輸出競争の激しい情勢のもとにおいてFOB価格というものを持って参りまして、これを合理化を進める場合の目標というふうに考えることは不合理なのではないか、なおこの際伺いますが、イギリスや西ドイツでは輸出の価格と国内で販売する価格とをプールいたしまして、そのプールしたものが肥料会社の生産費を償うような、そういう価格のきめ方になっている、こういうふうに開いているのでありますが、当局としてはそういう事実を確認しておられるか、これを伺いたい。
なお欧米――イギリスとか西ドイツとかいうところは、日本と違いまして、いわゆる補助金とか補給金とかそういうものを出すことの非常にきらいな国柄だと承知しておりますが、それにもかかわらず、ただいまのような方法で肥料価格を計算いたしますと、純粋のコストに比れば多少高い価格で国内に販売するようになる、これはそういう結論、結果になるわけでございますが、そのために国内に売る肥料の価格に対してはある程度の補給金と申しますか、そういうものを出している、こういうふうなやり方になっているというふうに聞いておりますが、一言にして申しますと、現在のような国際競争の激しい場合のFOB価格を持って参りまして、これを目標にするということは私は意味がないと思うし、なおそれを国内価格にもしようということはまるでむちゃくちゃな議論でありまして、これは現在の国際競争の現実を認識する以上は、そういうことは考えられない。かりに四十五ドルまで日本の価格を下げましても、日本が国際市場に立ち向っていかなければならぬということになりますと、さらにもっと低いFOB価格を考えなければならぬということになりますので、FOB価格は合理化の目標として参考にはなるだろうが、これを直接に考えるということは私は不適当だろうと思うのであります。この点について一つはっきりした見解を伺いたいと、思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/41
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042・森誓夫
○森(誓)政府委員 今後の国際競争にたえるためには、コストの引き下げだけではだめではないかという御指摘のようであります。そういう点まことにごもっともだと考えます。諸外国と競争するのでございますから、諸外国のやり方を十分検討し、それに対坑できるだけの手を打たなければならないのでございます。一口に言いますと、諸外国はコストが安いということのほかに、国の助成がやはり間接に輸出を助成するような結果になっている。一種の輸出補助金を外国は出している。生産費が安いことと、国の補助金、その二つの競争力でわが方に向ってきますので、われわれとしてもそれに対抗するような輸出競争力を作ることを考えなければならないと考えております。そういう点は御指摘の通りだと思います。具体的に申しますと、ドイツの場合は、農業基本法及びそれに基く告示によりまして、ドイツの農民は肥料購入費に二割の補助金をもらっております。これは窒素肥料に限らず、燐酸とかそういう他の種類の肥料にも及んでおりますが、大体肥料の購入費として二割の補助金を国からもらっている。これは反面から見ますと、肥料メーカーの手を離れるときは相当高く売ってもいいということであります。現に最近のドイツの硫安の国内価格は六十二ドルということになっております。メーカーの手を離れて正式の販売ルートでは六十二ドルでいっておるのでありますが、消費する農民の手に入る場合には、二割の補助金を国からもらうために相当安く買うことになります。このにとは、反面からいうとメーカーがそれだけ輸出余力を国から与えられておるということで、生産費だけの競争力に加うるに、そういう国の補助金で間接に輸出力を強化しているということになっております。このことはドイツに限りません。イタリアもそうであります。イギリスはあまり肥料の輸出出国として、われわれそう強大な競争国とは考えておりませんが、それでもイギリスにおきましても四割の補助金を出しておるという状態であります。ヨーロッパのわれわれの有力な競争国は、そういうふうにいたしまして、コスト以外の、国の助成措置で輸出競争力を肥料工業につけておるわけであります。これに対してわが方といたしましては、先ほど申しましたようなコストの点でも、大体欧米諸国のコストに近づくような、そういうふうな合理化目標を設定いたしたのでございますが、そのほかに何らかの国の助成によって、そういう輸出競争力を強化することを考えなければならないわけでありますが、遺憾ながらわが国の財政事情といたしましては、ドイツのやっているような補助金を出すことは許されません。ドイツの場合、年間そのようにして出す補助金が二百八十億円に達しております。もし日本でドイツ式の制度を採用するといたしますと、年間大体百億円程度の補助金を出さなければならないことになると思います。これは農民に直接渡すようなことにするにいたしましても、それだけの大きい補助金を今の財政状態で支出するということはどうかと思われまするし、またいろいろな産業の輸出振興策としても、日本の乏しい財政力からしてそれほど思い切った助成も、どこの産業に対してもやっておりませんので、そういうバランスの関係もありましょうし、政策のバランスも考えまして、日本でそういうドイツ式の補助金政策をとるということは、ちょっとむずかしいことだと考えておるわけであります。従ってわれわれとして許す程度まで、合理化を促進するための政府資金の低利の融資あるいは原料の原油の輸入税を免除する、こういうふうなことを、今回の第二次合理化計画の出発に当りまして新しく採用したわけでありますが、そのほかに従来からのいろいろ税制上の恩典も加えてみたい、あるいは輸出振興のためのいろいろの措置、これは先はど勝澤先生の御質問に対してお答えしたのでありますが、そういう措置を講ずることによりまして、輸出競争力を強化していきたいというふうに考えておるわけであります。しかしそういういろいろな助成策をまとめてみましても、これは端的にいえば、ドイツのようなやり方に比べますと、その力は弱いというふうに認めざるを得ないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/42
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043・始関伊平
○始関委員 せっかくの御答弁ですが、それじゃだめなんだろうと思います。肥料の輸出は、これはいわゆる完全輸出であって、貿易の振興、それから国際収支の改善に非常に寄与するものである、同時に輸出用の肥料を作るということが肥料工業全体のコストの低下に非常に役に立つ、そういう意味で私は肥料の輸出というものは非常に大事だと思う。その場合に、これは肥料に限りませんが、国内の価格をむやみに引き上げていいという議論を私はするわけではございませんけれども、一体輸出の場合には、国内で若干低い価格で売る、そうしてそれをプールして生産会社の採算がとれる、これが普通のやり方なんだろうと思う。
〔中村(幸)委員長代理退席、委員長着席〕
これは自由主義諸国、いわゆる資本主義体制の国においてそうであるばかりではなく、私は経済体制が根本的に違っておりましても、その点はそうだ、ただプールの範囲がもう少し広くなるという点が違うだけだろうと思います。ところで肥料については、先ほど、も議論がありましたが、非常に素朴的な非常に根強い農民層、またそれを代表する勢力からの意見というか反対がございまして、この場合においては、私が申しましたような意味の経済原則に従ってやれない、こういうことだろうと思います。といたしますれば、私は西ドイツなりイギリスなりでやっている、ああいうような政治的な解決策を講ずることが至当ではなかろうかと思うのであります。なお同時に、これは五年前肥料会社が発足いたしましたときにも、あの肥料会社が赤字会社になるということは自明の理だったと思いますけれども、五年間の経験を経た今日、しかも合理化を進めて国際競争価格はどうなるかわからぬという情勢のもとにおいて、この赤字会社をそのままの形で続けていこうということは、全くこれは無為無策であって、これが肥料業の合理化、肥料業界のすっきりした姿というものを実現する上におきまして、非常に大きいガンになると思うのであります。五年間の経験を経た今日、肥料会社をこのまま放置しておるのは全くおかしいと思いますが、この辺は政治問題でございますので、政務次官のこれに対する御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/43
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044・中川俊思
○中川(俊)政府委員 非常にむずかしい問題なんですが、果してこの第二次合理化計画によって、お尋ねのように五年後に採算がうまくとれるようになるかどうかということも、今日までの実績に照らして考えますと、ただいまお説のようにあるいはできないかもしれぬ。しかしできないかもしれぬといって、そのままにほっておくわけには参りませんで、今お話のように、ドイツやその他の関係国のように、農業基本法であるとか、いわゆる国内内需に対する補助の問題を考えたらどうかというお説のように承わったのでありますが、これは一政務次官がここで責任をもって答弁をするということは、これは大きな問題でありますから、自民党の政調会あたりで一つ十分に対策をお立ていただいて、政府と密接な連絡をとっていただきまして、そういうふうに持っていかれるならば、私どももそれが一番いいのではないかと思っております。これは一通産省におきましてもできることでもありますまいし、また一農林省におきましてもできることでもないと思います。私どもも、先ほど来お話のように、国内価格と輸出価格との間には非常に差があって、内需は値段が高い、出血輸出をやるために輸出値段が安いということにつきましては、しばしば選挙区に帰っていつも農民の諸君から詰問をされる点でございます。私もよくわかりませんが、ばかげた話だというような感じを持っておったのでありますが、しかしよく事情を検討してみますと、先ほど来しばしば局長との間に問答が繰り返されておりますような事情があるわけでございます。しかしいずれにいたしましても、ただいま始関さんのお話のような点につきましては、私どもといたしましては、それぞれの関係機関と協力をいたしまして、そういうことが果してできるものかどうか、十分検討いたしたいと考えておりますから、どうぞ政府をお持ちになっております自民党におきましても、十分政府と緊密な連絡をとっていただいて対処されたいということをお願い申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/44
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045・始関伊平
○始関委員 合理化を進めて参ります上におきまして、私はどうしても見落すことのできない大きな問題は、現在のところでは工場別に見ました生産費が非常に大きいということだろうと思うのであります。硫安の工場が十九ばかりあるそうでございますが、その生産費の調査を見ますと、これは三十三肥料年度でございますが、最低は回収硫安の七百十五円というのが一番安い。同時に、最高は九百二十四円というのがある。ちょうど階段を一段々々上るような工合に、最低のコストから最高のコストにずっと段階がついておりまして、最低のコストから見ますと最高のコストというものは約三割開きがございます。こういうような開きがあるからこそ、いわゆるバルク・ラインのとり方がどうだとかいうような問題が起る。また公定価格のきめ方もむずかしいというようなことになるのでございまして、五年間も合理化をやってきたのに工場別の生産費の違いがこんなに大きいということは、私は不思議なような気もするのでございます。一体コストの差がこんなに大きい原因というものは何であるか。先ほど合理化の一番大きい方法としていわゆる流体化、アンモニア原料の流体化というようなお話がございましたが、そういう対策を実施することによって、この工場別に見られるこういう大きいコストの違いというものは、アンバランスというものは是正できるのか、合理化でコストの引き下げができたかどうか、といっても、特に工場別の違いがあったのでは一がいには言えないと思うのでありまして、そういう点について私はこの合理化法を五年間延長するという場合に当りまして、当局側が相当はっきりした見解があるはずだと私は思うので、その点を一つ、ございましたらはっきりお話しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/45
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046・森誓夫
○森(誓)政府委員 お話のごとく昭和三十三肥料年度の工場別の生産費についてみますと、資料の十一ページに出ておりますが、トップの工場がトン当り二万九千円、一番ビリの工場が二万四千六百円と、いうようなことで相当な大きい開きがあるわけでございます。この工場別の生産費については、詳細に見ますると、それぞれの特殊事情があろうかと患われますが、たとえば労務費が必ずしも各社一律のものではない、いろいろないきさつで過剰労務者を抱えておるようなところもなきにしもあらず、そういうようなところは労務費が多少高くなっておる、あるいは設備が主設備でありますので、付帯設備の発電設備が能率が非常に悪いというようなことで高くなっておるとか、そういうような特殊な事情によってコストが高くなっていることは別としまして、通則的に言えますことは、やはり原料を何に仰いでおるかということが、一番大きいところであろうかと思います。こつの辺で、安いところはやはり石灰コークス炉ガスを主原料に使っておるものとかいうふうな、原料の流体化されたものを使っておる、あるいは石炭を使っておる場合でも非常に進んだ方式の炉を用いてやっておる、そういうようなところが、コストが安いところでございます。しかし、今やと石炭を使う製造方法は、どういう新しい方法を使っても、これはとても流体原料を使うやり方には追いつかないということは明瞭でございまして、おそらくここでバルク・ラインの前の半分の方に入っておるような優秀工場でも、従来のやり方をやっておりますと、これはもうバルク・ラインの外へ出てしまわなければいけないことになると思います。従って通則的に申しまして、一番工場のコストの差をつけるものは、原料を、個体原料によるか、または流体原料によるかということによって違ってくると思うのでございます。今後の流体化の促進計画、つまり第二次合理化においては、現在の流体化の程度が二七%程度、全国のアンモニアの製造能力の二七%程度が、天然ガスとか原油あるいはコークス炉ガス等を使っておるのでありますが、これが三十八年度には八二%を占めるというふうに大量の率の上昇があるわけであります。これが実現した場合には、ほとんどすべての工場が流体原料を使うという格好になって参ります。従って、こうなりますと、バルク・ラインの計算の際にこのように資料を作ったとしましても、おそらく先頭の工場と最後の工場とは、コストの差が非常に縮まってくるものだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/46
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047・始関伊平
○始関委員 私は合理化を進める以上、コストの一番低いものと高いものとの違いは、今のようにたくさんあっては意味がないと考えますので、ぜひそのようにお骨折りを願いたいと思います。
その次は、これは政務次官にお尋ねをいたしたいのでございますが、私は硫安の公定価格のきめ方を、今後どうするかという問題についてはお尋ねをいたしたいと思いませんが、ただ、少くとも現状を基礎とする限り、今きまっておる公定価格は相当無理がある。これは、バルク・ラインで申しますと三工場しか入らないというようなお話でありますし、硫安会社、特に硫安専業会社の経理状況あるいは利益率、さらにまた配当率を見ますと、だんだん下っておるということによっても、現在の公定価格に無理がある。しかも、国際的に見て今きまっておる公定価格は、かなり低いもの、だと、いうことを言わざるを得ないのでありまして、従ってその公定価格について業界方面には相当な不満があるということは、私は無理からぬ点があると思うのであります。一方、硫安の需給を見ますと、生産が非常にふえて、需給はほぼ均衝の状態に来ておる。しかも一方現状においては公定価格というようなものはめったにないのだから、このような状態に到達したならば、これは政治的にきまっておるから、いろいろな方面でうるさいので、むしろ公定価格なんかやめてしまった方がどうだろうかということを、この際一応考えてみる必要があろうかと思うのでありまして、この点についてなお御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/47
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048・中川俊思
○中川(俊)政府委員 これも非常にむずかしい問題だと思います。しかしこの点につきましては、この法案を提出して、先ほど来お話がございますように、合理化を促進し、そうして五年後には何とか採算がとれるように、また黒字に転化するようにということで、せっかく進めておるときでございますから、一応これでやってみて、できなかったらまたそういうことも考えられるのではないかと思う。現在としましてはそういう今御質問のような点は考えていないわけでございます。価格安定法によって従来通りやっていくという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/48
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049・始関伊平
○始関委員 さて次に、もう一、二点伺いますが、合理化の急速な効果的な促進をはかるためには、生産設備の新増設をやる、その新増設は合合理化効果の著しいものに限ってやる、同時に需給に著しい混乱を招来しない範囲で認める。著しい混乱を生じない範囲で認めるという意味は、生産量がこれ以上ふえないということだろうと思いますが、これは要するに、一言に申しますと、設備規制を行おうという意味になると思うのであります。それにつきましては法律の根拠なしにやろうということになると思うのでありますけれども、この辺をどういうふうに進めて参るのかという点をお伺いいたしたい。それからいろいろ限定しておりますけれども、設備の新増設というものを認める限り過剰設備がだんだん出てくるおそれがあると思うのでありますが、これをどうするか一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/49
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050・森誓夫
○森(誓)政府委員 今後原料の流体化への切りかえをはかるために設備の改善といいますか、あるいはまた増設といいますか、そういうような事態が起って参るのでございます。しかしすでに現在の生産能力は、一部過剰と見られるような状態にも達しておるわけでございまして、百九十万トンの輸出しなければいけないという状態に現在なっておるのでありますが、それほどの輸出をする見込みは中共貿易が再開でもしない限り、ちょっとむずかしいという事情でございまして、今後これ以上国全体の能力をふやして参りますと、非常な需給の混乱を生じてくるということになるわけでございます。一方、そういう合理化計画を実行するためには、先ほど申しましたような四百七十億円、約五百億近い資金を調達していかなければならない。そういうためには、あまり肥料の市場が混乱をして、生産業者の経理が非常に悪化するということは望ましくないことでございまして、需給の混乱を防止しながら、この合理化を進めていくということが必要なわけでございますが、それをやるためには、既存の設備を切りかえて、そうして固体原料を使っておったものを流体原料を使うように切りかえていくというふうにすることを重点にしてやっていかなければなるまいかと思うのであります。そういう意味で、この第二次の合理化計画では、電解法のうちで高い電気を使っているようなもの約三十万トン分、それから固体原料、石炭とかコークスを使っておる設備のうちで約二百万トン分、合せて二百三十万トン分の、いわゆるリプレースを行なっていこう、能力の増加は来たさないが、しかも流体化が非常に進んでいくという、そういう方針を中心にして参って、この合理化を進めていきたいと思います。別途すでに技術導入の許可済みの設備の増設の計画がございます。これらはほとんど流体原料を使う設備でございますが、これは大体九十五万トン程度ございます。これは一応その分が今後能力のふえるものということになろうかと思います。そのようにいたしまして、三十三年四月現在のア系窒素肥料は四百五十八万トンでございますが、これを昭和三十八年の四月に、先ほど申しました約六百万トンに持っていこうということになっております。約百五十万トン程度ふえますが、これは先ほど申しました、これまでに技術導入を許可してしまったもので、今後工事が完成するものが大体九十五万トン分、それからあと五十万トン程度は何か新しいものができるだろうという予想をいたして、約六百六万トン程度に三十八年度は持っていきたいと思っておりますが、しかし、これもただいま申しますように、今後新しく作る五十万トン程度のものは、今後中共貿易の再開とか、あるいはそのほか他の国際市場への輸出見通しの確定とか、そういう需要の増大ということについて自信が持てたときに手をつけようというふうに考えておりますが、このような輪郭で、能力はそうふえないが、しかも合理化は非常に進むというやり方をやろうとしておりますが、これを実行する方法としましては、まあ行政指導でやっていくわけでありますが、全然法律に手がかりのない行政指導ではございませんで、外国技術の導入については政府の認可を受けなければいけないという法律上の規制がございますが、そういう制度を中心にして、その他いろいろ行政指導でもって、こういう、能力の増加をさして伴わない合理化を進めていきたいと考えております。
また過剰設備についてはどうするかというお尋ねでございますが、肥料工業におきまする過剰設備は、石炭の場合の過剰能力とはちょっと違うと思いますが、過剰といいましてもその過剰なものを合理化されたものに切りかえることが可能なわけでございます。先ほど申しました旧設備を合理化された設備に切りかえる。二百三十万トン、これは一見過剰設備でございますけれども、それを合理化されたものに切りかえていってりっぱな生産の戦列に入って働けるものでございます。そういう意味で大部分の一見過剰設備と見られるものは、合理化設備として再生するわけでございます。従ってほんとうの過剰設備というものはきわめて少量のものであろうかと思います。これはきわめて少量でございます。これらにつきましてはまあ少量のものでございまするので、しかもまた償却も相当進んでおるものでございますので、われわれとしては過剰設備について、特に国が何とか特別な援助をするとかそういうことは考えておりません。工場としてもおそらくこれはもう使わないで廃棄するという考えで、これを処理していくことになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/50
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051・始関伊平
○始関委員 合理化を進めるための具体的な方策として、一番最初に申しました要綱を見ますと、第一に低利の財政資金を確保する、第二に税制上の特別措置を強化する、第三に電力、石炭それから原重油などの主要原材料の確保及びその値上りの抑制に努める、こうありますが、抽象的の方針はそうでしょうけれども、この中で具体的にこういうことを実施するのだということがきまったものとしては、一体どういうものがあるのか、その効果はどうかという点を、これを簡単でけっこうでございますが、ちょっと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/51
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052・森誓夫
○森(誓)政府委員 ここに書いてあります助成策のうちで、原油の輸入税免除と低利財政資金を確保するということは、この第二次合理化計画において初めて実行しようとするものであります。石炭、電力等原料の確保とか、あるいはこれをできるだけ安く入手できるようにしようということは、これまでの合理化計画においても努力してきたところでございます。最初の二つの、この恩典によってどのくらいのメリットを肥料工業が受けるかということについては、ただいま原油の輸入税免除につきましては、一応はっきりしたことが言えるかと思いますが、年平均にして一億七、八千万円程度の恩典を受ける。これは課税された場合と比べまして、それだけ負担が軽くなるものと思います。
それから低利の財政資金についてどの程度のメリットがあるかということにつきましては、これはただいま大蔵省とその資金のワクにつきまして折衝中でございまして、総額が見通しがつきませんために、明確な数字をもってお答え申し上げることができませんが、おおよその勘でいいますると、原油の輸入税免除の約半分くらいのメリットがあるのではないか。われわれが理想としておりまする三年間に百億の開銀の低利融資がもし受けられるとすれば、それはやはり一億七、八千万円くらいの恩典が肥料工業にくるのだという計算は、一応しておりますけれども、現実にはそれがどういうふうになっていくか、きまって見ないとはっきりしたことがわかりません。まあそういうふうな点を今後の合理化計画には加えまして、その強力な推進をはかっていきたいと思っておるわけでございます。
それから電力、石炭につきましては、電力は肥料については従来のいきさつもありまして、特別に安くしてもらうようになっております。この制度は今後も一つ続けるように努力していきたいというように考えております。石炭につきましては肥料用を特に安くしてもらうということはちょっとできないのでございますが、これは通産省でもやっておりまする行政でございまするので、通産省全体としてできるだけ肥料工業の合理化に役立つように配慮をしていきたいというふうに考えます発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/52
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053・始関伊平
○始関委員 私に与えられました時間が過ぎたのでありますが、最後に簡単にもう一点だけ伺います。それはこの法律と輸出入取引法、それから独禁法との関係でございます。将来の問題でありますが、この二つの法律の改正案が、まだ出ておりませんけれども、通りました場合におきましては、特別に硫安工業については独禁法の適用あるいは輸出入取引法の適用を排除いたしませんでも、実際上はその必要がないというようなことになるのでございますか、その辺の関係をちょっと伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/53
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054・森誓夫
○森(誓)政府委員 独禁法はまだ提案されておりませんし、どういう内容になるのかわかりませんので何とも申し上げられませんが、輸出入取引法の改正についてはすでに提案もされております。今度の改正点の一番大きいところで、しかも肥料に関連が及ぶかもしれないと思われることは、輸出振興のために国内向けのものについてもその生産とか販売について、協定ができるというふうなことが新しく加わった点だろうかと思います。しかし肥料につきましては、御承知のようなこういう二法がございまして、生産等については毎年肥料審議会の意見を開きまして需給計画を作る。また価格につきましても肥料審議会の意見を聞いて最高販売価格を、きめるという建前になっております。また輸出についても二法によりまして硫安の輸出会社が一手買取販売をやるということになっております。従っていわば生産過剰によってそのための減産のカルテルを作るとか、あるいは価格の暴落を支えるための価格カルテルを作るとかいうようなことは、この二法の適正な運用によって防止できるわけでございまして、そういう点について輸出入取引法の適用をする必要も、またその余地も、きわめて少いものと考えられるのでございまして、肥料につきまして輸出入取引法を適用するということはまずあるまいというふうにわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/54
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055・長谷川四郎
○長谷川委員長 久保田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/55
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056・久保田豊
○久保田(豊)委員 私は実は農林水産委員の方から差しかえになってきたものでありまして、主として農業の見地からお尋ねいたしたいと思います。
重要なつ点については後刻大臣が出席されるようでありますから、その際に譲りたいと思うわけであります。時間もありませんから、だいぶありますがまず第一の前提についてお尋ねをいたすわけであります。
御承知の通り現行の肥料二法ができましたのは、昭和二十八年に非常な出血輸出が行われまして、その結果国内向けの肥料特にア系肥料について、その輸出の赤字の転嫁が行われるのではないか、こういう不安が農民唐から深まりまして、これが政治問題化して今日の肥料二法になったわけであります。そこで私は特に通産省関係の方にお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、日本の農業の構造と日本のア系肥料工業未との連関性について、今日の時点においてどういうようにお考えになっておるかという点を、私ははっきりお伺いをいたしておきたいのであります。問題が少し抽象的になろうかと思いますので、私どもの知っておる事実を少し出し上げておきたい。一つは、日本の農業の場合は、肥料特にア糸肥料というものは、外国と同じような取扱いはできないということであります。一つは、御承知の通り日本の今日の時点においては、米を初めとして政府与党がいつも非常に自慢をされるのは七割程度の農産物を不十分ながらいわゆる公定制度をとって頭を抑えておるわけであります。御承知の通り農産物価格安定法によってそういうように頭を押えておる。そのほか三割というものは、最近のいろいろなものについても――統制をとっておるものでも今過剰生産の傾向を持って、値段は大勢としてぐんぐん落ちてきておるのが実情であります。しかも日本の農業は、御承知の通り非常に零細農業であります。従いまして数の多い零細農業が、こういう経済全体の中で、特に大きな資本攻勢のはなはだしい中で、農産物の価格維持をはかるなどということは非常に困難で、事実上できないというのが今日の実情であります。しかも米を除いては外国の安い農産物の圧迫もだんだん強くなってきておるのでありまして、辛うじて米なり麦なりについて、ある程度の政府の統制がきいておりますので、不十分ながら価格維持ができているという実用であります。その中で日本の零細農業はだんだん追い詰められているのが実情であります。しかもその経済的な構造ないしは技術的な構造を見ると、これは皆さんも御承知の通りいわゆる堆肥農業であります。世界で日本が一番肥料を使いますが、その堆肥農業のうちの一番重点は何といってもア糸肥料であります。これは経常的に見ても大体において農業支出の三四、五%が肥料であります。あるいは最近では三七、八%になりましょう。一番おもな米を見ましても、肥料の全体の生産費の中における支出が二〇%ないしは二四、五%になっております。しかも最近の傾向は肥料の使い方がますますよけいにならざるを得ない構造になっておる。しかも肥料をよけい使えば病気と虫がよけいになってくる。従ってこれに対する農薬の消費がよけいになる。従ってそれだけ経営費の増ということになってくる。さらにこれを克服する道はいろいろありますが、零細農業という制約のもとでは基本的なと三圃農法とか、あるいはその他農機具の深耕方法というようなことがほとんど実行できない。辛うじてきわめて浅い――能率的には多少いいかもしれぬが、浅い耕土をやるような農機具の負担が最近では非常によけいになってきておる。こういう非常にゆんだ、しかも非常に不安定な技術構造といいますか、こういう上に日本の零細農業は立っていかざるを得ないというのが今日の実情であります。この技術構造の一番中心になっているのが堆肥農業であり、これに結びついているのが今の肥料工業であり、特にア糸肥料であります。しかもそれは最近の傾向でいえば、四年間の豊作続きといいますが、こういうきわめて不安定ながらまた農家の負担を増すような形の技術構造の上に、日本の農業が立っておるというのが実情であります。これを根本的に解決する道は少くとも政府や現在の制度の中ではできない。しかもそういう中において農産物価格はだんだん落ちてくる。そうして工業と農業との間のアンバランスはますます大きくなってくる、こういう制約の中で日本の農業を発展させていこう、少くとも維持させて安定させていこうというのが、今の国の最高の政策でなくちゃならぬと思う。こういう深い日本農業との技術上ないしは経営上、経済上の連関を土台にして国の肥料政策というものを立てておられるのかどうか。今もいろいろ始関委員からお話がありましたが、肥料工業の見地から見れば、今の肥料二法の運用にもいろいろ文句がありましょう。不十分な点がありましょう。いろいろな点からいって、いろい文句がありましょうけれども、私は日本の全体の国民経済の中で、農業というものはどういう地位を占めておるのか、また農業の構造がどうなっておるのか、それに対して、肥料工業特にア系肥料というものがどういう連関を持っているかという基本の観点が明確にならなければ、私はこれからの肥料合理化も、あるいは農業の運営も正常な正しい線というものが出てこないと思うが、この点についてどうお考えになっておるのかお聞かせ願いたい。というのは、この肥料工業の問題については、いろいろ国会で議論が戦わされてきておる。しかし根本問題に触れた議論は一つもない。肥料会社の採算が悪いとか、あるいは利回りが悪いとか、あるいは国の援助が不十分だとか、いろいろなことがありましたけれども、私は一番基本は、ここから出発するのが正しいと思うが、こういう点についてどういうふうに考えておるのか、これらから見れば、第一の問題はア系肥料特に硫安の価格をさらにもっと、少くとも日本の農業は最低の経営線を維持するための必要な価格の低下というものをはかることが必要でしょう。こういう結論にならざるを得ない。さらにもう一つは、最近問題になっておる硫安と尿素あるいはその他の塩安ないしは高度化成、こういうものが今の技術体系の中に、今主として硫安会社の利益というものを中心として肥料収入の転換が急速に行われる、今度の合理化計画の中でもそれが重点となっております。この点も再検討した上でやっておるのか、私どもからいうと、なるほど無硫酸根肥料という意味では尿素がいいでしょう。しかし今この日本の農業の技術というものは、果して、これがほんとうに今の計画にマッチして、これに重点が置かれていっているのかという点が第二点として、大きな問題となってくると思う。こういう点について一つはっきりした当局の御見解を最初に承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/56
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057・森誓夫
○森(誓)政府委員 私は通産省の人間でございまして、通産省の角度からしかお答えができないのでございます。それをお許しを願いたいと思います。肥料が農家経済の中で占めておる比重が、非常に大きいということは、だれしも認めるところでございます。従って農家に対してできるだけ安い肥料を豊富に供結するというにとは、一つの現在の行政の非常な重点であらねばならないと思うのであります。しかしながら一方そういう目的を円滑に達成するためには、肥料工業が健全に発達をしていかなければならないのでございまして、農家経済の安定ということと、肥料工業の健全な発達という、この二つのことをあわせ考えながら、私たちは肥料工業の行政も進めていかなければならないというふうに考えているわけでございます。また肥料形態の転向問題につきましては、できるだけ合理的な方向に肥料工業を進めていくという意味で、尿素とかあるいは高度化成、そういうものの生産なりあるいは使用を推進していくようにするのがよろしいと思っておりますが、これは需要関係を担当いたしております農林省とも打ち合せた上で、そういうこともやっているわけでございます。今度の第二次の合理化計画におきましても、そういう点をある程度進めていきたいというふうに、計画をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/57
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058・久保田豊
○久保田(豊)委員 これは通産省の局長さんに聞くのは少し無理かと思うのですが、この点については農林省ともなお深く基本的な検討をしていただきたいということを、この際要望を申し上げておきます。特にこの肥料行政その他については、どうしても何と申しますか、大体において通産省の言い分の方が強くなりがちであります。与党の諸君は口ではいろいろおっしゃるが、決して悪口ではありませんけれども、ともするといつの間にか、しまいには要するに肥料工業の立場に立ちがちであります。これは無理のないことだと思いますが、私は少くとも日本の国民経済の基本課題が、工業と農業とのアンバランスをある程度解消するという基本的な発展を維持される限り、この肥料工業の問題については、これを将来輸出産業として、基本として育てるのか、あるいは国内産業というものに、がっちり重点を置いてやっていくのかということが今後の合理化のやり方についても、あるいはさっきから問題になっております価格の立て方についても、あるいは施設の規制その他の点についても、すべての問題の出発点になろうと思いますので、この点についてはここではっきり御当局と意見を根本的に戦わそうとは――農林省が来ておれば私はやりますけれども、農林省がきょうはおいでになっておりませんから、省きますが、この点についてくれぐれもお願いしておきますのは、日本の肥料工業のよって立つ基本というものは何といっても日本の農業発展の基礎的事件として育てていくということが、基本の線である。この基本線の上に立って余力があった場合において、初めてこれは輸出産業としても発展させていくということが、根本でないと、この点がくずれますとすべてが混乱をして参る、こう思いますので、特にこの点について御希望を申し上げておくわけでありますが、これは問題が非常に深い政策問題になりますので、これは政務次管から特に基本線について、どのコースをとって今後の合理化その他の肥料行政をやっていかれるのか、国内の農業の育成といいますか、発展を期待した肥料工業の発展を考えていくのか、あるいは輸出工業としてやっていくのか、重点を置いてやっていくのか、この二点であります。この点を明確に御答弁をいただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/58
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059・中川俊思
○中川(俊)政府委員 久保田さんのお尋ね私も全く同感でございます。一体どちらに基本を置かれるのかということについて、私どもしばしば選挙区に帰って質問されるたびに、実は困っておるようなわけでございます。しかし現在としましては、国内産業あるいは輸出産業両方面に、どちらを基本というわけではございませんが、とにかく両方面に対して目を配らなければならない、こういう建前で進んでおるわけです。しかし何と申しましても先ほど来お話のございます通り、農家経済が日本経済に占めますウェートというものが、非常に大きなものでございますから、私どもがしろうと考えからいたしますならば、まず国内産業、国内農業というものに重点をおいて、さらにこれを輸出産業に飛躍せしめる、こういうことが本旨であろうと思うのであります。しかしこれは私個人の意見でございますが、私はそういうふうに考えておる。しかし先ほど申し上げました通り、政府といたしましては両方面に重点を置いてやっておるというのでございますから、その点で御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/59
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060・久保田豊
○久保田(豊)委員 今政務次官からきわめて常識的な答弁があったのでありますが、どうも両方面に重点を置いてやるのでは因りますので、この点ははっきりどこに日本の肥料工業特にア系肥料工業の基点を置くかという点を、さらにもう一度通産省、農林省は十分に御検討の上において、この輸出産業としてのからみ合せといいますか、これをどうやるかということを、もっと明確にしていただきたい。こういうことを希望申し上げて次の質問に移ります。私は肥料のことについてあまり専門ではありませんから、いろいろと間違った意見を申し上げる点もあろうと思いますが、こういう点は遠慮なくお教えいただきたいということをあらかじめお願いをしておくわけです。
そこで第二の問題点としては、第一次五カ年計画でいろいろ御説明がありましたが、これを全体としてどう評価されておるかという点、あるいはどう反省をされておるかという点を、私はここでお伺いいたしたいのであります。と申しますのは、今まですでに明らかにされたように、金は当初予定の大体倍くらい食った。そうしてなるほど生産力は予定よりも三倍もふえた、そうしてどうしても輸出に相当程度依存をせざるを得ないような規模にまででき上った。ところが一番肝心であったところのコスト・ダウンという問題については、五十ドルというのが大体において五十五ドルないし五十四ドルというところにとまった。その理由はと言って三つばかりおあげになりました。しかしそういうことがその当時の段階において予想もされなかったということはないわけです。私はあのときも肥料の合理化計画について当局に御質問申し上げた。そのとき軽工業局長なり肥料部長はわれわれに、絶対に間違いなく五十ドルに下げます、原料の点、その他労賃の点、そういう点もすべて織り込み済みで、大体こうなりますと言って明確に御答弁になった。ところが今日はそれとははずれて、いやあの当時はわからなくてついこういうことになりましたということなんです。そういう過程の中で今出てきておる問題は何か。現実にア系肥料はどうなっておるかというと、国内では消化できない。どうしても相当程度輸出をしなければならぬ。ところが輸出は、輸出競争が盛んになる、あるいはその他いろいろな悪条件があって、国内価格を相当に下回らなければできない。しかもこれは装置工業というふうなア系肥料の一つの特性から見て、繰業度を今の九二%から落せばさらにコストがアップしてしまう。こういうにっちもさっちもいかないところにきておるというふうに、現状は全体としてなっておると思うのであります。こういうところに持ってきたことについて政府としてはどういうふうに反省をされておるか。この反省なり批判なりというものを真剣にやらなければ、私の次の第二次合理化というものがうまくいくはずはないと思うのでありますが、この点についてばどういうふうにお考えになっておるのか、それをお開かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/60
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061・森誓夫
○森(誓)政府委員 第一次合理化計画につきましてどのような反省をしているかという御指摘でございますが、価格の点につきましては先ほども申し上げましたように、いろいろな原価要素のかね合いがあったために所期の十五ドル引き下げが実現できなかったのでございますが、そういうマイナス要素がそれぞれもしなかったと仮定いたしますると、実は十五ドルをちょっと上回る程度のコスト引き下げができたであろうということは言えるわけでございます。そこでそういう原材料価格の値上りを当然予想しないでいたのが間違っていたのじゃないかという御指摘でございまするが、これは五年後の物価を正確に測定し、あるいはまたその測定線に落ちつけるということは、大へんむずかしい仕事でございまして、人間がやる限りはそういう点でどうもおしかりを受けるような結果になることはやむを得ないことかと思いますが、ただものの考え方としましては、主要な原材料あるいは労務費が大体横ばいであった場合にはどういう結果になるかという数字を出しておいて、あとそういう要素の変動に応じて、またこれを修正していくということしか、こういう五カ年計画という長期の計画を作る場合にはできないのじゃないかというふうに思います。ただその間、たとえば石炭その他の価格が思うように下げられなかったということは、通産省としても責任を感じております。今後ともこういうにとはできるだけないように努力をいたしたいと思っております。
それから能力の点でありますが、これは現在の能力では、内需から差し引きまして約百九十万トンの輸出をしなければならないというとにろまできているわけでありますが、将来の日本の輸出見込みについて考えてみますると、昭和三十八年にはおよそ二百二十万トン程度の輸出を計画しても大丈夫であるということを、いろいろな資料から結論を出しているのでございます。大体東南アジアの要輸入量が昭和三十八年度には四百五十万トン程度になります。この半分くらいのものは日本で当然供給していいものであろうというふうに考えております。特に日本は地理的に一番東南アジアに近いし、特に肥料というものはかさばったもので運賃が相当高くつく、そういうことを考えますと、東南アジアの市場におきましてその輸入量の半分を日本が受け持つということは、あまり大きい計画ではないというふうに思うのであります。従って、その四百五十万トンの半分、二百二十万トン程度のものは、今後昭和三十八年における輸出計画として一応持ってもいいのじゃないか。なおそのほかに東南アジア以外のものの需要を考えてみますと、日本が輸出することのできるものは、さらに九十万トン程度のものを中南米その他の地域で予想できます。そういうことで昭和三十八年の一肥料年度の輸出量を二百二十万トンというふうに考えてみまして、現在の能力と比べてみますると、今後の能力の増加は、従来のように年間五十万トンとかいうようなあまり大幅なものにしてはいけないということが考えられるのであります。そういう意味で、今後の合理化計画におきましては、能力があまりやたらにふえないようにしようというので、先ほど御説明申し上げましたような、一応六百万トン程度のものを、会後の輸出可能性をにらみながら、実現していこうということにきめておるのでございまして、能力につきましては、この際政府で乱設なり、あるいは無計画な増加を相当抑制するというような措置を講ずることが、一番適切であろうというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/61
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062・久保田豊
○久保田(豊)委員 いろいろ第一次計画についての政府側の反省点が述べられたわけですが、決してあげ足をとるわけではありませんが、国民所得が年々ふえているのに労賃だけが据え置きになるというふうな前提は、初めから無理な話であります。また石炭や電力の合理化が行われるにしましても、今のような形においての合理化が行われる限りは、石炭や電力のコストが急速に下る――全体が大きな長期のインフレ的な傾向の中で、これが急速に下るなんてことを予想されることも、少し無理じゃないか。当時はそういう答弁ではなかったわけであります。今仕方がないからそういうふうに言いわけをしてつじつまを合せておられるのであろうと思いますが、政府の五カ年計画だって、それほどお先まっくらでは立っておらなかったはずであります。
こういう点はいいにいたしまして、私はやっぱり今のようなア系肥料の現状になりました根本は何かというと、政付が硫安資本家の言う通りになっておったということが一つだろうと思います。たとえば合理化法の三条ですか、四条ですか、一応の規制その他ができるはずになっているが、これが発動したことはほとんどないでしょう。にもかかわらず、業者の方はどうかというと、世界全体の市場の状況なり、硫安工業全体の動向ということはほとんど正確にキャッチせずに、むしろ合理化ということは――もちろん合理化もその当時の段階ではあったわけですが、施設の増強によってコスト引き下げをしよう、むしろコスト引き下げということよりは施設の増強によって、自分の市場における地位を有利にしよう、それによって利益を増そう、こういうふうな傾向の方が非常に強かったというふうに私どもは思う。これに対して政府が何らの規制を加えることがなかったということ。それから御承知の通り流体原料化の問題が、日本でも大体昭和三十一年度から二年度にかけて、急速に取り上げられてきております。しかしこれはアメリカなりその他西欧諸国では、すでにその二年くらい前から、こういう問題が業界においては問題になっており、着手もされておったのです。これはパテントや何かのいろいろな関係もあっておくれたのかと思いますが、二十九年を基点にして日本の硫宏工業の合理化をはかろうという以上は、政府も業者もこういう新しい合理化の基本的な方向について明確な認識を持って、そうして適当な合理化計画というものを進むべきではなかったか。ところがこういう点については、今言ったようなパテントその他のいろいろの関係もありましたでしょうけれども、こういう点は割合に軽視をいたしまして、そうして業者は主としてあの段階における古い技術体系における施設増強といいますか、増産といいますか、これによってコスト・ダウン――コスト・ダウンというよりは、むしろ自分の市場における競争力を有利にしよう、そうしてそれによって利益を増そう、こういう衝動にかられてやって参って、これを政府がほとんど野放しにしてきたというところに、私は根本の原因があるように思うのであります。なぜこの点をこういうように申し上げるかといいますと、第二次計画では基礎条件が変わっております。ですから、この点はよほど厳格に政府側として御反省になり、業界もこれについてに本的な反省がないというと、私は今後の第二次五カ年計画というのがうまくいかないのじゃないかという点が心配されますので、この点を特に申し上げるわけでありますが、この点については、政府側としてはどのような反省をお持ちになっているか、私はこの点を明確に一つお聞かせいただきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/62
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063・森誓夫
○森(誓)政府委員 第一次合理化計画におきまして、能力が非常にふえた。大体当初と比べて六割くらい増加いたしております。非常にふえておりますが、これがコストの切り下げにも相当役には立っているわけであります。大体大ざっぱに言いまして、量産によるコスト引き下げが、全体のコスト引き下げと三分の一くらいを占めておるかと思いますが、その程度の貢献はいたしておるわけでございます。このような合理化によるコスト切り下げに加えて、量産によるコスト切り下げをやったわけでありますが、しかしすでにこういう大きい能力に達した時点に立って考えますると、今後の合理化計画におきましては、従来のような考え方は、御指摘のように切りかえなければいけないというふうに考えております。今後は実質的な合理化を中心にして、あまり能力をやたらにふやすということは、極力これは押えていくという方向で、この合理化計画を進めて参りたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/63
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064・久保田豊
○久保田(豊)委員 どうもその程度のことでは、実は満足いたしませんが、時間の関係もありますから、次に移ります。
そこで、さっきから各同僚委員から問題にされておりましたこの第二次五カ年計画のコストの目標、これは大体現在五十五ドルないし五十四ドル、総ならしでと言いますか、これは総ならしじゃなかろうと思いますが、一応そういう現状から出発して、これを四十七ドルに下げる。それは国内価格が運賃あるいは利潤その他を加えて、大体四十七ドル見当にいく。国際価格は陸上運賃は要らないから、四十五ドル見当なら大体太刀打ちができる、こういう評価の上に立って、見通しの上に立って、五年後に四十七ドルということでありますが、これは各委員から御指摘のありましたように、私はこれでは五年後になってもおそらく現状と同じようなほぞをかむことになりはせぬか、こう思うのであります。それはなぜかといいますと、今もいろいろ皆さんから御指摘のありました通り、三十二年度の十一月の朝鮮でしたか、あれは御承知の通り三十七ドル五十セントという競争入札の価格が出ているわけですね。三十八ドルというふうなのも出ております。さらに三十三年度については、四十一ドルないしは四十二、三ドルというのが出ておる、ことしになっても四十二、三ドルというのが出ております。こういう世界的に見て、国際価格が非常に競争が激甚になっておるということも一つであります。それともう一つは、大体各国も盛んにこの硫安ないしはアンモニア系統の工業の合理化を、今進めておるわけですね。そしてそれらのコストがどのくらいになるかという点は、さっきもお話のありました通り、秘中の秘でなかなかわからない。わからないことは事実でありますが、いろいろの本だの雑誌だの見ますと、かなり徹底をしてやっているところが多いようであります。ある雑誌等によりますと、どのくらいになっておるかといいますと、英国の一番大きな会社の、何といいますか、これに書いてありますが、その会社あたりの裸コストは大体において二十四・七五ドルだというふうになことが、ある雑誌に載っております。また米国のアイラドですか、これなんかも三十ドル、二十ドルだ、こういうふうな裸コストが出ております。これはどの程度真実か私どもはわかりません。しかしいずれにいたしましても、実質的な合理化つまり流体化によってコスト・ダウンしておることは事実だと思います。これは私はあとでこの問題に触れていこうと思います。これは私は決して不可能ではないと思うのであります。しろうとでありますからよくわかりませんが、この点はあとで触れますが、私はそういう実情から見て、今後五年間技術の進歩があり、合理化がどしどし行われる際に、従って国際価格というものはますます安くなったころと思う、こういう際に、大体において輸出四十五ドル――当局のお考えでいえば、裸で大体四十五ドルということでしょう。裸というと語弊がありますけれども、少くとも四十五ドルで工場のコストは出そう、こういうことでしょう。これではとても国際的な太刀打ちもできぬし、日本の農業についての肥料を安くしようという要求にもこたえられないと思うのですが、この点についてはどういう根拠で四十七ドルというものを出してこられたのか、この点についてはっきりした御答弁をいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/64
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065・森誓夫
○森(誓)政府委員 ただいまいろいろ外国の硫安の生産費について御指摘がありましたが、私たちこれに対して何とも申し上げかねるのでありますが、われわれの調べたところでは、これより安いものはきわめて例外的なものではないか、普通の本格的な生産をやった場合には、やはり四十ドルをこえるものでありまして、日本でわれわれが言う四十七ドルというのは全工場的な平均の数字でありますが、そういう式に考えていくならば、諸外国ではやはり四十五ドル程度と見ていいのではないかと思っておるわけでございます。それで、これは生産費が安ければ安いほどいいことはもちろんでございますが、現在の企業の計画を基礎にして実現可能なものをはじいて参らないと、結局机上の空論になって参るのでございますが、四十七ドルという数字は、できるだけ流体化を進めてコストの切り下げをやろうという意図のもとに、われわれが各会社の計画をずっと洗って、そして実現可能だと思われるところで線を引いて、ある程度の行政指導を加えていく、そしてできたものであります。そういうわけで、理想と現実を両方かみ合せて、一応適当なものということころがこの辺でございます。幸いにそれが国際価格に比べてみて、あまり遜色がないものであるというふうに考えておるのでございますが、外国が日本よりも非常に安いのは、結局流体化が日本よりも非常に進んでいるからでございまして、日本も昭和三十八年度には、流体化が現在の二七%から八二%にまで進んで参りますが、外国はちょうど日本の今の五年後のような状態で、あろうと思うのであります。あるいはまたそれよりちょっと進んでおる国もございましょうが、大体そういうふうなことでございまして、外国が今流体化をほとんど八〇%、九〇%まで進めていて、それから先どういう合理化をやってコストを下げるか、これは現在の技術の方式では、ちょっと予想はつきませんが、少くとも日本はこの流体化を今後進めていく、これをなるべく七〇%に近いところまでに持っていくことが現在の技術で顧慮できる合理化の一番の究極の姿であろうというふうに考えているわけでございます。そういうわけで四十七ドルというのは、FOB価格にして四十五ドル、その辺で行くことが一応実現可能であり、また際競争にもたえ得るところではないかというふうに思うのでございます。ただ、先ほど始関先生の御質問にもございましたが、コストだけで競争することばかりを考えてはならぬのでございまして、外国はそういう間接的な国の補助金というものをささえにしてダンピングをやておる、これに打ち勝つためにコストを上げようったって、これは無理な話だと思うのです。それはまた別途政府として何かいろいろな輸出振興の助成策を講じるべきであろうと思いますが、コストの切り下げの目標は、一応この程度でやっていくのがわれわれは適当だろうというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/65
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066・久保田豊
○久保田(豊)委員 大体海外に四十五ドル、国内に四十七ドルというのが実現可能な線である、それで十分たえ得るという大体のお見込みでございます。問題は、私はなかなかそれでもって外国との競争ができるとは考えられません。またもう一つ今の考えの中で、今までもすでにそういうお答えがあったわけですが、現在ある既存の工場を土台にして、流体化をはかろう、こういうところにやはり計算の基礎が出てくると思います。皆さんからいただいたこの資料を見ましても、従来の合理化はむしろ尿素肥料に切りかえる点とか、あるいは合成化とか、あるいは合成化学、高度化成の方に切りかえる、こういう点が大体合理化の重点であります。そうしてそのうちにはなるほど一番安い原料である廃ガス――いろいろの種類の廃ガスを入れているのも多少あります。ありますが、そういう点が重点になっております。また硫安肥料工業合理化計画の概要というものの最後の格工場別の工事面を見ますと、廃ガスその他を使ってコストの一番安いものをやるのは大体九工場で、原油によるガス源転換がほとんど大部分であって十一工場です。こういうことになっております。ところが、私はしろうとでよくわからぬので専門家に聞いてみますと、硫安を安くする一番根本はその原料である水素をいかにして安いのをとるかということである。尿素肥料は御承知の通り大ざっぱに言って水素と尿素をくっつければできる、硫安は水素と硫酸をくっつければ大体においてできる、こういうことだろうと思います。従って一番コストに大きく影響するのは、原料のうちでも水素をいかにして安く手に入れるかということが根本だということを私は聞いたわけです。そこで、外国はどうやっているかということ、ここにも出ておりますように、たとえば石油精製工業の廃ガスを使うとか、製鉄工業の廃ガスを使うとか、コークスの炉ガスを使うとか、あるいは天然ガスを使うとか、こういうことによって水素のコストを非常に下げることをやっておるわけです。この点についても日本とアメリカあたりとは少し差があるようです。アメリカあたりではたえば製鉄のガスは一立方メートル当りが大体一円八十銭くらいです。百本ではこれが大体売買をすることになると四月から高いところは七円、こういうことになっているようです。イギリスやその他の国についても、たとえば製鉄の廃ガスは二円二、三十銭から三円五、六十銭どまり、日本はこの点では原料輸入その他の関係もありましょうが高いようであります。天然ガスについてもそうであります。外国では大体三円二、三十銭、高くてそんなものだそうです。ところが日本では現在硫安と工場が買っているのは安いところで五円五十銭から七十銭くらいじゃないですか。私はここらにも非常に問題があろうと思います。現在そういう点で外国ではどんどん廃ガスというか、大きく言って廃ガス切りかえを積極的にやっているようであります。つまりあらゆる近代工業の排泄物を利用してア系肥料を作るという体制をどんどん進めておるようであります。ところが日本のこの合理化計画は、それも一部取り上げております。しかし主体は原油のガスか、重油のガスかということが重点であります。これでは私はコストは下らないと思います。現在の工場に重点を置いて、これらの流体化をはかるということにするのか、日本では、こういう製鉄関係、製油関係あるいは天然ガスあるいはコークス炉ガス等が、どの程度利用されているかというと、まだそんなに利用されておらないようであります。たとえば製鉄のガスにしましても、これを今使っておりますのは九万トンぐらいでしょう。ところで大体においてどのくらいガスができるかというと、相当にできるようであります。今の製鉄のガスだけでも、全都これをフルに使うことができるかどうか技術的にはわかりませんが、それを使えば二百八十五万トンぐらいの原料にはなる。これが四十年度になると四百二十万トン程度のガスが出るというふうな計算をしているものもあります。これはどの程度正確かわかりません。わかりませんが、私はこういう点について、もっと徹底した施策を講ずることがぜひ必要ではないかと思う。これらによりますと、アンモニア一トンの原料は、もう少しこういう廃ガスや天然ガスのコスト・ダウンをはかれば、大体において五千円以下にはなろうというふうに見られております。それからたとえば製鉄ガスが四円五十銭と見れば、千四百五十立方でもって一トンの硫安の原料ができる。それが六千五百二十五円になり、これで作ると大体一万五千円以下の硫安ができると言われております。それから天然ガスの場合、六円としてみて、これは九百三十立方で、これによりますと五千五百八十円が大体アンモニアの原料になるコストになり、これによって硫安を作ることになりますと、一万二千円というふうな硫安の原価になるようであります。こういう点で、なお徹底してこの廃ガスを安くするということをやれば、一万円程度のものができると言われている。これは私はある程度の専門家に聞いたので、しろうとですからはっきりわかりません。しかしこれは開いてみますとそうでもなさそうであります。こういう点はもう少し徹底をした検討されないと、――皆さんの方の計画によると、主力は原油のガス化によって流体化をはかろうとしておられるが、そうではなくて原油のガス化よりも一歩進めて、日本の近代工業――鉄とか石油工業とかその他のそういうものが排泄する廃ガスを積極的に利用することによって、私は相当コスト・ダウンができはせぬか、特に現在までのところ、あなたの方で言う現在の五十四ドルというふうな基準をとってみますと、これ以下の生産費でできる工場は三つか四つしかない。ほとんど大部分はこれ以上の価格の工場です。そういうときに原油のガス化によるのと、いわゆる廃ガスによるのとどういうふうにコストが違うか、現有工場で利用ができるのか、利用ができないとすれば、その施設を作ろうというのは当然だと思う。こういう点思い切ってやらない限りは、なかなか国際競争にたえ、そうして国内の農業の需要に合うような安い硫安なり、あるいは尿素というものができてこないと思うのですが、これは私はしろうと論であります、聞いた話でありまして確信はありません。ですから、皆さんがごまかそうと思えば幾らでもごまかせます。けれども、ごまかして御答弁でなしに、私は必要があれば、専門家を呼んで来て意見を聞いてみたいと思う。そういう点も考えまして、この点について一つ当局の御意見をお開きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/66
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067・森誓夫
○森(誓)政府委員 先ほどのお話に、今後の合理化重点は肥料形態の変更よりもむしろ水素を安く入手するところにあるのだと言われましたが、全くその通りでございまして、われわれの原料の流体化への切りかえの中心というものは、これは水素を安く入手するというためのことでございます。そういう意味で、先生のおっしゃる方向にわれわれの合理化計画というのは向っておるわけでございます。
それから次に、いろいろな廃ガス類を活用して、非常に安くできる具体的ないろいろな数字の御提示もございましたが、これについてはなお別に検討をさせていただきたいと思います。非常に安過ぎて材料費程度のものをおっしゃっておるのではないかと思いますが、これはあとで別途検討させていただくことにしまして、われわれとしても廃ガスを大いに活用するということ、はできるだけ心がけておるわけでございます。石油化学の廃ガスも、もちろん川崎地区等においてはこれを活用して、某肥料工場で肥料を作るというような計画になっているわけであります。そのほか製鉄のガスにつきましては、これもできるだけ活用いたしたいというふうに思っております。ただいまお話のありました二百八十五万トンとか、四百二十万トン、これくらいのものを作るガスが現にもう製鉄工場で廃ガスとしてあるのだというお話でございましたが、これは廃ガスとしてあるのか、あるいはもう鉄の――私の感じでは、これくらいの肥料を作ろうと思えば作れるかもしれませんが、そうすると製鉄事業に支障を来たすのではないかというふうに思いますが、廃ガスだけでこれほどたくさんの肥料ができるとは思えません。私の方で今製鉄会社の計画をとっておりますが、これは二ヵ午後くらいに相当コークス設備を増強いたします。それによって廃ガスが相当出て参りますが、これで大体七、八千万トン程度の肥料ができるであろうという数字を実は持っておりますが、そういうふうな方向もできるだけいたしていきたい。製鉄所の廃ガスも、できるだけ肥料の合理化に導入いたしまして、これを生かしていきたいというふうに考えております。ただ企業形態等についてはいろいろ問題もありましょう。少つくともそういうガスは大いに活用してコストの切り下げに努めていきたいというふうに思っております。
それからなお、この合理化計画の主たる部分が石油のガス化にある、原油のガス化にあるということを御指摘を受けましたが、大体一番大きい分野を占めるのは石油でございます。これは大体全体の四割程度でございます。そのほかに廃ガスとしては、一応今はっきりしているのは一割程度ということになる。全体のアンモニアの生産量の一割程度、それから天然ガスが二二%くらい、それからコークスのガスが大体八%ということで、それらを大体合せてみますと、八二%という流体化の合計の量が出るわけでございます。そういう廃ガスの活用はわれわれも今後大いにやっていきたい。ただ遺憾ながら日本のそういう製鉄業なりあるいは石油精製業なりは、アメリカその他のものと比べまして規模が小さいために、その廃ガスの量が小さくて、それによる肥料の生産量が外国でやっているほど大きいものに達しないということは、これはどうも否定できない点でございますが、将来はそういうものの活用に向っで極力努力していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/67
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068・久保田豊
○久保田(豊)委員 これもしろうと論でよくわからないのですが、今お話のように製鉄なりあるいは天然ガスなり、あるいは石油精製工業の廃ガスというものは、どのくらいあるかということは御調査がついておるのですか、どうですか。私が見た雑誌によりますと、現在の製鉄の合理化計画によりましても、三十五年度では三千百四万立方メートルの廃ガスが出る、これを硫安化すれば二百八十五万トンになる、ただし今当局が御計画になっておるのは七十万トン程度だ、これが四十年になると今の計画でいくと、四千二百六十万立方メートルになる、それによる硫安の生産量は、これを全部換算すると四百十万トンある、こういうふうなことがいわれております。ですから、私は製鉄の廃ガスなり石油の廃ガスなり、コークス炉ガスなり天然ガスなり、これはいろいろほかにも用途がありますから、全部これにやるというわけにはいきますまいが、基本的な資源調査をされて、その上で計画を立てられることが必要ではないかと思います。もちろんそういう点も第二次合理化計画の中には織り込んだとは思いますが、少くともいただいた資料で見る限り、そういう点よりは一番手っとり早くいける石油のガス化を中心にしてやっていこうという点が、これは現在の工場施設をそのまま生かしていこう、転用していこうという点に重点が置かれ過ぎて、こういう国の貴重な資源を全面的に使っていこうという点に――そうしてコスト・ダウンをほんとうにやろうという点よりは、むしろ現在の工場を生かしていこうというにとの方向に重点が置かれているように私どもには見受けられるのですが、この点はどうかという点と、少くともア系肥料工業の流体化、これに活用のできる資源というものは、実際にどのくらいあるのか、こういう点の調査がついておるのか、ついておらないのか。それと今言った既設の工場を中心にした合理化計画か、あるいは新しいそういう資源に対応した新しい施設をやっていくのか、この点も明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/68
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069・森誓夫
○森(誓)政府委員 第二次合理化計画は一応お手元に差し上げてございますが、これは単に原材料がこの程度、つまり供給可能であるということで、このくらい生産ができるであろうというふうな単なるぺ一パー・プランではございませんで、名工場が一応現実に持っておる計画を取りまとめたものでございます。そういう意味で、はなはだ先生のおっしゃるような理相的な要素が足りないのではないかという非難も出るのではないかと思いますが、現在計画としてお出しするとするならば、こういう程度のものしか出せないと思います。これを作るためには、今後五カ年間にそういう廃ガスのようなものでも、現実に企業化できるものははっきりつかんで行きたにいということであります。つまり計画に非常に具体性を持たせるために、そういう理想的なものは、あるいは御希望のようなものがたくさん入っていないかもしれませんが、これは現在のところ計画としてきまったものとしてお見せする限りやむを得ないことだと思います。将来の問題としては、そういういろいろなところの廃ガスを集めてきて、これがいつ企業化されるかという時期をはっきりつかんだ上で、またこの五年以内にそういうことがあるならば、この計画が修正されることになりましょうし、あるいは多くはむしろこれから後に、そういうことになるかもしれないと思っております。いずれにしてもそういう安い資源の調査につきましては、今後私どもいろいろ進めていきたいと思います。ただあちこちに少しずつ資源が、散らばった廃ガスがあったのでは、計算上それがみな硫安になれば何トンというふうに出ましょうが、企業として作っていく場会合には、それをそのまま硫安に換算するわけにはいくまいと思います。工場への輸送距離あるいはまとまった量にならなければならぬ。そういう意味で企業化するために、さらに調査をその上に重ねていかなければならないと思いますが、これらはさらに私の方で努力していきたいと思います。
それから既存の工場を中心にして計画を作っているという御非難でございますが、立地にとらわれないで流体化をやっていこうとすれば、どうしても原油のガス化になるわけです。天然ガスにしてもガスの出る近所に工場を作らなければならない。また廃ガスにしても廃ガスの出る近所に作らなければならない。立地条件の制約なしで流体化をやっていこうとすれば、石油にならざるを得ない。こういうことで現在進めておりますが、しかし将来そういう廃ガスの活用につきましてはさらに計画を作りまして、企業形態としてはこれが既存の工場と提携して、水素の供給を、そういう製鉄とかそのほかの工場から受けまして、そしてできるだけ既存の工場と提携して、できるだけその生産をやっていくようにすれば、能力はそうふえないが、合理化は非常に理想的に推進できることになるのでありまして、そういうふうな方向で製鉄ガスの活用もしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/69
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070・久保田豊
○久保田(豊)委員 もう一点今の点に連関して。私が申しました筋は一般的な筋だろうと思うのです。従ってこれを具体化するにはどれだけ企業化できるかということが重点になってくると思います。そこで、今のお話にもありましたように、現存の工場を中心にして、こういう廃ガス資源を企業化できるかという点がその出された計画だろうと思います。そうなると、今御説明のあった通り、原油のガス化が重点になって、ほかのものはある程度は利用されますけれども、ほとんど進まないという結果になろうかと思います。私はこれではやはりいけないのじゃないかと思います。もちろん企業化ということが重点になります。ですから私は、日本のこれからの、第二次合理化では、既存の工場重点主義ということでやるだけではなくて、こういうガス資源の企業化という観点から、もう一度基本的に調査をされて、既存の工場ばかりにとらわれないで、新しい施設も十分に企業化できて、しかもそれが十分安く上げ得るならどんどんそういう工場を作るということでいくことも必要だと思うのであります。この点についてなお一そう御研究と御調査をお願いいたしたい。
それに連関して申し上げたいのは、さっきからいろいろ御説明がありましたけれども、これからの合理化は既存の工場を中心にして、そして大体能力的にいうと三十八年度で約六百万トン相店、肥料懇談会等では五百万トン程度というようなことが一応の施設の目標になって、そしてできるだけ新施設や、そういう能力を増すような施設は押える。そして既存の工場の合理化というか流体化を推進する。これは基本的にはそれでよろしいと思います。しかしこれの運用を誤まりますと現存工場中心主義になって、新しいものは出てこない。これでは私はやはりだめだと思う。ですから私は十分に企業の採算が合って、しかも現存工場を土台にして流体化をはかるよりも、新しい工場を作って流体化をはかった方が、なお安くできるというものについては、能力のいかんにかかわらず、全体としてその能力の増のいかんにかかわらず、どうしても私はどしどし作るべきだと思う。そして能率の悪いものはどんどん切って落す、あるいは転換をさせるという程度のことをやらなければ、かの四十五ドルなり四十七ドルの線というものは、なかなか破れないのじゃないかと思います。私は今の合理化の一番基本の点はそこにあるのではないかと思う。この点で、現存工場を流体化するということを土台とすれば、大体今御説明のあった程度の四十五ドル程度にしかいかないかもしれない。しかし、私はそういう新しい企業の条件に合ったものをどしどし作らせる。そうして立地条件その他によって落ちていくものは当然あるわけです。それをとってつけたような合理化をしても、なかなか基本的な合理化にいかぬ点があろうと思います。そういう点は厳格に行政指導なり、あるいは二条、三条なりの発動を通じて、むしろ一面においては、そういう非常に安くできるいいものはどしどし工場を作っていく、一面においては悪いものは切っていくなり、業種転換をはかるということで、積極的にやっていかなければ、まず現在の工場能力を中心にしてということでは、うまくいかないので、この点はどういうふうに考えられておるのか。今までの御説明では、政府のお考えはそれとは全く反対のようです。既存の工場の流体化をはかるということが現状である。そうすると立地条件その他のいろいろな条件から見て、どうしても石油のガス化というようなことが重点にならざるを得ない。ところが、世界各国の、日本以外のところのものは、もっとそれより先にどんどん行くのではないか。そうして五年後には、またせっかく四十五ドルを実現しても、そのときにはまた片びっこになって、いろいろな問題が出ることになろうかと思いますが、この点についてのお考えはどうなっておるのか。工場の新増設の能力の規制の問題と、今の合理化の基本的な要求といいますか、進め方の問題との調整をどういうふうにはかっていくつもりか、この点を一つ明確に御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/70
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071・森誓夫
○森(誓)政府委員 ただいま今後の能力につきまして肥料懇談会では、五百万トンを目標にしてというようなお話がございましたが、これは生産量の目標でございます。従って能力に換算します場合には、およそ一割増になりまして五百五十万トン、そのほかに工業用アンモニアが五十万トン。能力六百万トン程度と私たちが申し上げておるのは、生産五百万トン、肥料用のアンモニアの五百万トンの計算になるわけであります。これは昨年の四月と比べますと、百五十万トンくらいふえるわけであります。すでにわれわれも従来立地にとらわれないで、どんどん合理化を進めるようなことをやってきておるわけです。またそういう点については技術導入の面でありますが、政府が許可を与え、天然ガスの工場などに新設等も認めてきておるわけです。そういうすでに認めたものは現に工事中である。それがだんだん完成していくものが九十万トン前後あるわけです。それから現在六百万トンの計画の中には純然たる増加が、やはり五十三万トン前後一応組み入れてあります。その程度の増加を考えておるわけです。既存工場以外に全然新しいものを認めないという考え方ではないわけであります。それから合理化を端的に進める上におきましては、ただいま御指摘のような点、これはまことにごもっともなことでございます。それから先、それはそれで全部を割り切ることも問題があろうかと思いますが、それは需給の混乱を来たさない範囲で、そういう方針を実行していくということが、現実の行政としてはやはり大事なものであると思います。しかし、少くとも今後五年間に数十万トンの能力の増加は一応予定しておるわけであります。それ以上の増加を認めるかどうかということになりますと、やはり合理化推進上の効果と需給の混乱を防ぐという、この二つをにらみ合せながら処理していかなければならないと思っておるのでございます。御指摘の点は一番りっぱな考え方でございまして、われわれもそういう考え方を中心にしてこれから進めていかなければならないというふうに思っております。ただ需給の混乱をきたして、建設特に合理化の設備資金について市中融資もつかなくなってくるという事態を招来することは、これまた警戒しなければいけないことであろうかということでございまして、根本的な考え方においては、私は御趣旨には賛成でございます。そういう需給の状況を見ながら、そういう方針を実現していくということで、今後進めていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/71
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072・久保田豊
○久保田(豊)委員 今の点、大体根本において賛成だということでありますから、ぜひそういうふうにやっていただきたいと思います。ただ、今の需給の混乱の問題とか金融の問題、これらは当然調整をはかっていかなければならない問題で、それもただ何でもどんどん作れというわけではございませんが、どうも政府の今度の計画の中では、既存工場重点主義というのが、あくまでも基本として貫かれておるように思うのでありまして、この点はもう一度一つ御検討いただきたいと思うわけです。そのほかの問題については時間がありませんから、この次に続いてあとの問題については御質問をいたしたいと思います。そういう意味で質問を保留いたしまして、一応ここでやめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/72
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073・長谷川四郎
○長谷川委員長 永井勝次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/73
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074・永井勝次郎
○永井委員 最初に委員長にお願いをいたしたいと思いますが、肥料の問題はメーカー側の立場と消費者の立場といろいろむずかしい問題をはらんでおりますし、中には問題を正確に理解し合わないというところから生ずるいろいろな誤解もあろうかと思いますから、こういう案件がここで議題となりました機会にメーカー側、消費者側、学者側あるいは廃ガス生産者というような関係のものを、一つ理事会等にお諮りいただきまして、この委員会に参考人としてこれらの人々を呼んでいただいて、十分この問題を審議していただくというふうなお取り計らいをお願いいたしたい、これは委員長に対するお願いであります。
簡単に一、二お尋ねいたしたいと思います。第二次五カ年計画によってコストを四十七ドルに引き下げるという目標を持っておられる、これは単なる目標ではなくて、五カ年計画でありますから、積み上げられた数字だと思うのでありますが、四十七ドルがどういう形でコスト・ダウンできるのか、こういう積み上げた数字を伺いたい。
もう一つは、先ほど来久保田君からいろいろお話のありました通りに、その四十七ドルのコスト・ダウンができたときの産業構造というものが、どういう工場配置、どういうような内容になるのかということであります。たとえば廃ガスなり天然ガスなりあるいは回収ガスなり、こういうようなものがどんな形で活用され、そして既存の工場がどんな形になるのか、たとえば力のある方の工場だけが合理化が進んで、力のない方の工場があるいは脱落するとかいうようなことになるのか、あるいは力の弱いところに合理化を促進して、そこがずっと盛り上ってくるのか、四十七ドルという一つのコスト・ダウンができた場合の肥料メーカーの構造というものがどんな形になるのか、こういうことを一つ簡単にお答えを願いたい。
第二点は、第一次合理化が量産に重点が置かれて、第二次合理化はやはり価格の問題に重点が置かれ、その問題を追求していかなければならないと思うわけであります。これはなかなか困難な、白紙にものを書くのではありませんから、既存の工場もありますし、非常にむずかしい困難な問題がそこにあろうと思います。急激な変化を与えてはいけない、こういうようなこと、いろいろなものがあると思いますが、そういうようないろいろな問題を含めて、第二次合理化計画というものが樹立されたわけであろうと思います。そういった関係を追求していきますためには、私はやはり西ドイツあたりが企業の一つの金科玉条としているように、メーカーは消費者に奉仕するのだ、消費者に奉仕しない企業というものは、究極において成立できないのだ、こういうようなことを一つの企業の心がまえとして考えて参りますならば、私はこのコスト・ダウン、あるいはコスト・ダウンの方向にしましても合理化の性格にいたしましても、大体はっきりした数字が出てくるのではないか、かように考えますので、その点と、二点を一つ明確にお答え願いたいと思います。
〔委員長退席、小川(平)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/74
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075・森誓夫
○森(誓)政府委員 第一点の四十七ドルという合理化目標を達成後のコストは、現在に比べるとどういう点が違っておるのか、どういう原価構成要素が違ってきておるのかということでございますが、これは先ほどもお話のありましたように、水素を最も安く入手するというところに、今後の合理化の重点があるわけでありまして、従って現在の平均コストと、この四十七ドルとの違いは主として原材料費の低下ということになるわけでございます。
それから合理化達成後のメーカーの姿はどういうことになるかと申しますと、従来固体原料、つまり石炭、コークス等を使っておったものの能力が、去年の四月は二百六十万トンございましたが、それが昭和三十八年にはわずかに六十三万トンというふうに約二割程度にと圧縮されてしまいます。半面に流体原料を使う設備の能力が去年の四月は百二十万トンございましたのが、昭和三十八年にはこれが約五百万トンくらいになるということで四倍くらいふえることに相なります。そういうふうにして質的な合理化の面で非常な躍進が見られるわけでございます。なおまたこの間天然ガスとか、あるいは廃ガス等を使うような工場の出現も若干予想しておるようなわけでございます。大体第二点といたしましては、そのような変化の状態を申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/75
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076・野原正勝
○野原委員 関連して。もう時間もありませんから、私質問は次会に保留しますが、ただいま永井委員からお話がございましたが、この問題は非常に重大な問題でもあるし、生産者の方や消費者の方の側からも参考人を出していただいて開きたいという永井委員の提案に私も同感でございます。さようにお取り計らいを願いたいと思います。
なおこれは肥料二法という大きな問題でありますので、今までの五カ年の結果と、今後の計画というものについて、やはり折り目を正す意味でけじめをつけたい、一応一つ過去における実績と今後の計画というものを十分検討してみる必要があると思うのであります。そういう点からこれらの問題を十分検討した上で、この問題を国会を通過させるにしましてもやはり十分納得のいくまで審議するということで行きたいと考えております。さようにお取り計らいを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/76
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077・久保田豊
○久保田(豊)委員 資料の要求を一ついたしたいと思います。それの第一は、政府の第二次の五カ年計画の原料別のコストが出ておりましたら、これは大体見当がつくだろうと思いますが、そういうものと、石油のガス化の場合はどういうふうになる、あるいはコークスのガス化の場合はどういうふうになる、天然ガスの場合はどうなるという、もっと基礎的な資料を一つ出していただきたい、こう思うわけです。これを一つお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/77
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078・小川平二
○小川(平)委員長代理 次会は明四日午前十時より開会いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時三十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104461X02219590303/78
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