1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年六月二十三日(金曜日)
午前十時三十七分開議
出席委員
委員長 森下 國雄君
理事 正示啓次郎君 理事 砂原 格君
理事 丹羽喬四郎君 理事 廣瀬 正雄君
理事 石川 次夫君 理事 岡本 隆一君
理事 稲富 稜人君
天野 光晴君 伊藤宗一郎君
池田 清志君 佐藤 孝行君
田村 良平君 高橋 英吉君
森山 欽司君 早稻田柳右エ門君
渡辺 栄一君 井上 普方君
工藤 良平君 佐野 憲治君
福岡 義登君 内海 清君
小川新一郎君 北側 義一君
出席国務大臣
建 設 大 臣 西村 英一君
出席政府委員
建設政務次官 澁谷 直藏君
建設省計画局長 志村 清一君
委員外の出席者
専 門 員 熊本 政晴君
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六月二十一日
委員小川新一郎君辞任につき、その補欠として
石田幸四郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十三日
委員大野明君及び石田幸四郎君辞任につき、そ
の補欠として天野光晴君及び小川新一郎君が議
長の指名で委員に選任された。
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六月十五日
阪神高速道路大阪三号分岐線建設計画変更に関
する請願外一件(吉田泰造君紹介)(第一三〇
七号)
宅地建物取引業法の一部改正に関する請願(早
稻田柳右エ門君紹介)(第一三一六号)
機械化工事完成保証制度の確立等に関する請願
(金丸信君紹介)(第一三二八)
同(森下國雄君紹介)(第一四一〇号)
建設機械近代化資金法制定に関する請願(金丸
信君紹介)(第一三二七号)
建設機械貸与公社振興法制定に関する請願(金
丸信君紹介)(第一三二九号)
戦傷病者に対する公営住宅割当に関する請願(
伊能繁次郎君紹介)(第一四二二号)
同月二十二日
元近衛師団司令部建物の保存に関する請願(田
村元君紹介)(第一五一六号)
日光東照宮境内地の切取り及び老杉群伐採中止
に関する請願(森山欽司君紹介)(第一五三九
号)
戦傷病者に対する公営住宅割当に関する請願外
一件(田村元君紹介)(第一五六六号)
同(中野四郎君紹介)(第一五六七号)
同(藤井勝志君紹介)(第一五六八号)
同(大橋武夫君紹介)(第一六四八号)
同(原健三郎君紹介)(第二六四九号)
同(西村直己君紹介)(第一七一四号)
特別不動産鑑定士及び同鑑定士補試験の特例に
関する請願(灘尾弘吉君紹介)(第一五七七
号)
特別不動産鑑定士及び同鑑定士補試験に関する
請願(横山利秋君紹介)(第一六四二号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
土地収用法の一部を改正する法律案(内閣提出
第六一号)
土地収用法の一部を改正する法律施行法案(内
閣提出第六二号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/0
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001・森下國雄
○森下委員長 これより会議を開きます。
土地収用法の一部を改正する法律案、土地収用法の一部を改正する法律施行法案、右両案を一括議題とし、審査を進めます。
質疑の通告がありますので、これを許します。佐野憲治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/1
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002・佐野憲治
○佐野(憲)委員 ただいま上程になっております土地収用法の一部改正案につきまして、実はきょう大臣からゆっくりと、この法案をめぐりまして、私は三つの点について、一つは立法政策の面からの問題として、第二の点は、法技術の面から見て問題点が相当あるのではないか、第三の点として、憲法論の問題として、以上三つの点につきまして、ゆっくり、時間をかけて逐条審議にまで入りたい、かように考えてまいったのですけれども、どうも理事会の申し合わせでは、あと二人も続いておるそうで、本日は深くそれらの点に対して審議されないのは非常に遺憾ではありますけれども、別の機会に逐条審議をさせていただくことにしまして、きょうは二、三の点につきまして大臣の所信を伺っておきたいと思います。
まず第一に、立法政策の問題といたしましても、提案説明にありますように、いま物価の騰貴が国民生活に対しまして重大な影響を及ぼしておる。その一環として本法が必要であるのだ。あるいはまた、公共用地の取得が非常に困難な状態にある。これに対処するためにもこの改正案が必要である。第三点としては、開発利益の帰属の合理化、合理性、これらの点から考えましても、ごね得その他を阻止したい、かような趣旨が大臣の提案説明の中に詳しく述べられているわけでありますが、私は、これらの事実そのものに対しましては、大臣と同じような認識に立つわけです。確かに大きな問題だと思います。しかしながらこの問題に対処するのにこの法律がはたしてそれにこたえることができるであろうかどうか。立法政策の面からいたしまして私はどうも理解できない。もちろんこの点につきまして多くの賛否があるだろうと思います。そういう意味におきまして大臣の所信をもう少し明確に聞かしていただきたいと思うのであります。
その第一点といたしまして、少なくとも大臣もしばしば口にしておられますし、前の大臣も機会あるごとに述べておられますように、土地利用政策の確立が一番大切だ、いままで欠けておるこの土地利用政策を確立する計画を立てる、このことが何よりも先決なんだ、かように主張されてまいったわけでありますが、一体、国土総合開発の面としての土地利用政策なり土地利用計画に対しまして、大臣はどのような理想とどのような基本構想を持って今日対処してまいっておられるか。この点について率直にまず承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/2
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003・西村英一
○西村国務大臣 土地利用計画を考える場合に、その考え方として国土全般についての考え方あるいはまた部分的な都市の周辺についての考え方、また都市そのものについての考え方、国土土地利用計画といいましても、その考え方の基本に立っていろいろのことを考えられると思うのであります。
まず第一番に、国土全般についての土地利用計画は一体どうだ。こういうことになりますと、私たちといたしましてはやはりいつも言っておりますように、つまり国土の均衡ある発展をはかりたい。また国土というものは適性がございますから、やはりその適性に応じてはかりたい、こういうことでございます。そのためには国土総合開発法の観点に基づきましてやらなければならぬ。いままで政府がとっておった態度といたしましても、あまり都市だけに人口が集まるような国土の利用のしかたはよくないから、地方は地方で産業が興るところは産業の特別都市をつくろうじゃないか、あるいは工業の特別都市をつくろうじゃないかと、いろいろ法律を制定してまいったのであります。しかしその成果はあまりあがっていないようにも見受けられます。あがっていないということは全部があがっていないのじゃありません。やはりそういうような新産業都市をつくって何年には産業がどれだけいく、出荷がどれだけある、生産がどれだけあるということ。人口がまたこれだけ地方に集まるだろう、引きとめることができるだろうということにつきましては、生産とか出荷というものはおおむね目的を達しておりますけれども、予期したほどやはり人口を引きとめることができないのであります。したがいまして、やはり地方からどんどんこの特定の都市に集まっておることは佐野さんも御承知のとおりであります。このことは私が考えますと、いまの新産都市に工業を誘致する、工業の誘致のしかたは大工場の誘致に非常に力を入れておるようでございます。一体に大工場というものは生産高が多くてもやはり人を使うことにはあまり効果がないのであります。そういうことから私はその新産都市は思うようにいかなかったのだ、こう思うのでございます。いずれにいたしましても、政府はやはり公共事業なりその他の政策を持ちまして新産業都市あるいは特殊な工業地域の開発に力をいたしたいと思っております。
それからもう一つ、最近地価が高騰するから大いに土地利用計画をやらなければならぬと申しております宅地審議会の答申、あるいはまた総理大臣の諮問機関である物価問題懇談会の答え、あるいは関係閣僚等のその他の意見も聞きまして、この土地利用計画というのはやはり市街地における土地利用計画をいっておるものと私は解釈するのであります。と申しますのはどうかと申しますると、前でも土地の利用計画はなかったわけではありません。その土地利用計画をやっておったものは、いままでは都市計画法でやっておったのでございます。しかし都市計画法は、ある一つの町村、ある一つの市を単位として、その中で、ここは住宅地区にしたらいい、ここは商業地区にしたらいい、ここは工業地区にしたらいいということで考えておったのでございます。しかし御案内のとおり半世紀前の古い法律でございまして、大正八年の都市計画の法律でありますが、そのときにその都市計画の対象になっておった都市は六つしかないわけであります。六大都市のみを対象としておったのであります。しかし今日ではだんだん全国都市化の傾向がひどくなりまして、都市計画法の対象になっておる都市は、市にして五百、町村にして八百五十、千三百五十が対象の市町村になっておるのでございまして、また都市そのものの性格といたしましても非常に変貌いたしておるのでございますから、ここにおいて土地の利用計画を考える場合には都市計画法の改正が必要であろうと私は絶対に思うのでございます。したがいまして建設省といたしましても、鋭意都市計画法の改正について今後も力を入れ、皆さん方にも御協力を願いたい、かように思っております。
もう一つの土地利用計画は、やはり都市を見直して有効に使うために都市の周辺のみにばらばらな都市をつくらないように、そして都市のまん中があき地にならないようにもつと土地を利用すべきだという観点から、今回建設省といたしましては都市再開発法という法律を提案をいたしたのでございます。
私の言いたいことは、要するに土地利用計画はそのおのおのの立場に立っていろいろな性格を持っておる、それを並行的にやってこそ初めてうまくいくのではないか、かような考えを持っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/3
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004・佐野憲治
○佐野(憲)委員 話を聞きましたけれども、私がまず大臣にお尋ねして所見を聞きたいと思うのは、国土総合開発法が制定されましたのは昭和二十五年です。その第一条にはっきりと「国土の自然的条件を考慮して、経済、社会、文化等に関する施策の総合的見地から、国土を総合的に利用し、開発し、及び保全し、……社会福祉の向上に資する」、こういう規定を置いておるわけですね。二十五年にこれが制定された。そうしてこの中に四つの計画を立てなければならぬ政府の責任が明示されておる。全国的な国土総合開発計画、都府県総合開発計画、地方総合開発計画、特定地域総合開発計画、これはどうですか。全国総合開発計画ができてまいりましたのは一体いつですか。ここにありますように「全国総合開発計画」、この経済企画庁の最終草案が閣議決定されたのが三十七年ですから、ようやく三十七年に全国総合開発計画ができてまいった。一体十年間何をしておったのです。その間に特定地域総合開発計画、都府県総合開発計画がどんどんばらばらに進められてまいった。しかしながら大事な基本となるべき国土総合開発計画ができ得なかった。だから私は、土地利用政策に対する基本的理念と基本構想は一体どうなんだ、どのような形で取り組んでおるのかということをお聞きしたわけであります。待望の、できてまいりました新産都市法でも、大臣が指摘されるように、この「全国総合開発計画」によらなければならないとされております。それからいままでできておりますところの都府県の総合開発計画並びに特定地域の総合開発計画も、これを訂正するときにおきましてはこの「全国総合開発計画」によらなければならない、そういうぐあいに規定されておるわけです。
ではこの総合開発計画の中で土地利用政策というものは一体どこにいってしまっておるのですか。総合開発計画はできてまいりました。しかしながら土地利用政策は一体どこに述べられておるか。第一条の目的が一体どこにいってしまったか。よく見てまいりますと、第四章「産業基盤の整備」 この中の第三節「土地の利用」 この中に入っておるわけですね。この第四章の「電力の確保」 「用水の確保」 「交通通信施設の整備」、こういう産業基盤整備の中の一節として「土地の利用」、しかもこれはページを見てごらんなさい、二、三ページに書きなぐってあるだけでしょう。一体これはどういうわけなんですか。土地政策のないところにいろいろな計画が生まれ、いろいろなことがばらばらに行なわれてまいっておる、このことが大きな問題を一つ引き起こしておるのじゃないですか。抜本的な土地政策を持たなければならない。土地利用政策を持たなければならない。そうしなければ今日の混乱というものは防ぐことはできないじゃないか。一時的、糊塗的、現象的にはいろいろな施策を建設省もどしどし出してまいっております。各省もやっております。しかしながら、病気にかかっているものにその根本的な病気の治療をやらなければならないときに薬だけを飲ませる、こういうことでは、いま言った、大臣の憂えておられる問題はちっとも解決できないのじゃないですか。だから政府として、国務大臣として閣議の中において、土地利用政策について一体どのように主張されておられるのか。どういう基本的理念を持って、どういう構想を持って日本の土地利用政策を確立しようとするのか。もしこれができなければ、中位の段階にあるところの地方開発計画、特定地域開発計画、その下位にある府県開発計画なんというものは、できっこないでしょう。しかもこれはいま申し上げましたように、あくまでも「産業基盤の整備」この中の土地利用計画にしか出てないじゃないですか。これでは私は、最初の国土総合開発法第一条の目的で、すでに昭和二十五年、新しい日本として敗戦の中から新しい土地政策を持たなければならない、そのことの条件、基本的な方向というものは明示されておるのに、大臣の先ほどの説明を聞くと、てんでそのことは忘れてしまっておるというふうに考えるのですが、この点はどうですか、もう一度お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/4
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005・西村英一
○西村国務大臣 私はいま、佐野さんが土地利用計画は一体どう考えるかと言ったから、いまのような説明を申し上げたのでございますが、元来国土総合開発があるんじゃないか。それはしかしあるけれども、総合開発の中のいろいろ全国的な総合開発、地方的な総合開発というようなものがあまりしっかりしていないじゃないか、またそれといま建設大臣が言うものの結びつきはどうかというふうに受け取れるのですが、この国土総合開発法というのは昭和二十五年の法律で、いまから考えると相当に古い法律でございます。しかしそのときの考え方は、戦争によって国土も崩壊するし、いろいろ産業も衰微した、どうせいろいろ開発しなければならぬ。国土総合開発は土地のみではございません。土地があるし、水もやらなければならぬし、災害も防がなければならないし、電力も興さなければならぬ、そういうようなものの開発を主眼にして、こうあるべきじゃないかということをいってみたのでございますが、それも非常に広範なことでございますから、御指摘がありましたように十分にそれぞれのものをつくり得なかったのでございます。
私が言いますのは、そのうちの現在の地価の高騰、それが産業その他の発展を妨げておるから、その土地の利用計画というものについてこうすべきだということを言ったのでございまして、必ずしも矛盾はないと思います。総合開発は土地のみではございません。あらゆる産業につき、あらゆるものについていっておるのでございます。しかしいまから考えますると、この総合開発がもう少し実行できるように、計画がちゃんと立つような方向にこれを改正する必要があるんじゃないかと思われるわけでございます。府県総合開発なんということをいっておりますけれども、府県でもきちんとした総合開発をつくっているところも少ないようでございますから、矛盾はしないが、しかしわれわれが考えておる都市計画法にいたしましても都市再開発法にいたしましても、この総合開発法はやはりその上位に位する法律であろうと思われますから、これに矛盾しないように立てていくことはもちろんでございます。
何か答弁もどこに行くのかあまりわからぬようなあれですが、質問も非常にむずかしい質問ですから、したがってそういうような答弁にならざるを得ないのです。要するに、国土総合開発は土地のみではないのだ。あらゆるものの開発をいっておる。古い法律だから、これも端的に申し上げますと——もっともこれは経済企画庁の所管でありますが、国務大臣としてはもちろん責任がありますから、これも改正する必要があるんじゃないか。土地利用計画というものについては今度ひとつ建設省としていろいろの法律でもって対処したい、これが私の言いたいところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/5
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006・佐野憲治
○佐野(憲)委員 大臣の気持ちはわかりますけれども、大臣は誤解しておる。国土総合開発と言うと、何だかむずかしい総合開発と考えるかもわかりませんけれども、この第一条にはわかりやすく、決してそんなむずかしいことは書いてなくて、日本の政府のとるべき土地政策の基本的理念、構想、こういうことを述べておるのです。大臣はむずかしそうに言われますけれども、繰り返しますが、「国土の自然的条件を考慮して、経済、社会、文化等に関する施策の総合的見地から、国土を総合的に利用し、開発し、及び保全し、並びに産業立地の適正化を図り、」こういうことをなすというのに名づけて国土総合開発ということばを使っておる。基本をなす国土の利用、開発、保全、産業立地の適正化、こういうことのために、第二条におきましては、計画を立てなくちゃならない、その計画はちゃんと五項目に詳しく述べておるわけでしょう。二十五年にできたから古くさいとかいうのではなくて、二十五年にできたのが、三十七年になってようやくできたものはこの目的と全然違ってしまった。大事な土地の利用政策というものは産業基盤の一節の中に埋没してしまっておる。根本的な土地利用政策に対する基本理念なり構想というものはなくなってしまっているところに、今日における国土の混乱が起こっておるのじゃないか。土地利用政策の欠除が指摘されておるのじゃないか。こういう点を指摘いたした中で、これ以上この点は繰り返しませんけれども、そういう見地に立って国が国土の利用政策を持たなければ、地方において混乱が起こるのは当然だ。ですから、地方におけるところの地域開発も、全部バラ色の絵の具を塗ったような計画が出てくるわけです。全体的な土地利用計画がないところで地域だけでそういうものをつくってみたって、これは工場誘致が、単なる地方財政の貧困からくる一時しのぎの工場誘致政策による財源の補てん、こういうばかげた——本来地域住民の福祉の向上が目的であるのに、目的が手段と変わってしまっておる。工場誘致は手段だったのが、手段が目的のような形における混乱が、地方におけるところのいわゆる土地利用政策なり開発、保全政策の中に出てまいっておる。こういうところが大きな公害問題なり、いわゆる土地の値上がりなり、いろいろな問題を起こしておる最大の原因になっておるのじゃないか。根本の病気にメスを入れることがいま一番緊急の大切なことじゃないか、そのことを抜きにして、法的、技術的でもって一体これを押えることができるであろうか、こういう疑問を私は第一に持つわけです。
第二点として、地価対策の一環だ、こう言われますが、一体地価のメカニズムに対する把握なり正しい理解というものが政府としてとられておるのですか。地価は一体どうして高騰するのだ、地価のメカニズムに対するところの把握ができておるのですか。この点に対して、大臣のしばしば委員会における発言その他を通じましても、どうも私にはぴったりこないのですが、一体どのように理解しておられるのですか。土地のメカニズムに対して……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/6
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007・西村英一
○西村国務大臣 土地の値上がりに対して、メカニズムに対してどんなに思っておるかということですが、私たちはまあ自由経済主義を奉じておりまするから、やはりその土地に対しての価格に対して特別なメカニズムを持っておるわけではございません。したがいまして、この前も問題になりました土地というものは商品じゃないか、まあ私は特別な商品だと言っておこられておるのですが、そういうような考え方はおのおのあります。しかし土地がなぜ上がるかということは、土地が売り手市場か買い手市場かという、その需要供給の関係にあるということであろうと私は思うのです。で、足らないから高くなるんだということでございまするから、需要があるから、それは住宅であるか工場であるかあるいはそのもろもろの用途であるか知らぬが、でも需要があるのだ、それに対して供給がないからだ、それでやはり高くなるのだ、それを安定した地価に押えるのにはやはりその供給のほうを十分にしなければならぬ。供給のほうを十分にするためにはいろいろのことを考えなければならぬ。場合によっては私権の制限もしなければならぬ。土地の売りやすいようにすることも必要でしょうし、ごね得をなくするようなことも必要でしょうし、いろいろな方法をもって、とにかく安定した地価をつくりたいということでありまして、いま佐野さんの言われる土地の価格についての何かメカニズムがあるかということについては、どういうお答えを期待しておるか知りませんけれども、とにかく土地に対する特別なメカニズムというものは、いま私が言うようなことがメカニズムならメカニズム、あらゆる方法をもって需要供給のバランスをとっていきたい。そうすれば土地というものは落ちつくんだ。土地の値段が幾らであったらいいかというような適正な値段というものはあり得ないと私は思います。ある製品ならそういうものはあるのです。その生産コストに利益を加味してという……。しかし土地についてはどれが適正値段であるかということはなかなかないのでありまして、その辺は特別な値段ということになろうかと私は思うのでありまして、ちょっと物価、地価としてのメカニズムというようなことについては私はあまり考えがありませんが、まあ以上のような答弁しかできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/7
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008・佐野憲治
○佐野(憲)委員 よく地価が四倍に上がったとか五倍に上がったとかいうことを言われるのですけれども、一体政府の中に、定期的にそういう地価に対する上昇のメカニズムに対して、あるいはまたそういう統計資料なんかを収集して分析している機関があるのですか。よく皆さんのほうからは、一般物価に比較して土地の高騰は激しい、四倍なりあるいは五倍だ、昭和三十年から三十七年の間に四倍だ、こういうことが言われるのですけれども、一体これはどこでどういう調査をどういう機関がやっておるのですか。そういうものを皆さんのほうで持っておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/8
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009・西村英一
○西村国務大臣 私の知っておる限りではあまりありません。全然ないわけじゃありませんが、非常に組織的なのはあまりないと思います。もちろん注意しておりますし、経済企画庁等によってやっています。ただ私たち一番参考にしたいのは、櫛田光男さんの日本不動産研究所あたりのデータを参考にしておりますが、事務的なことでございますから局長からひとつ御説明申し上げます。私が知らないのかもしれませんから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/9
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010・志村清一
○志村政府委員 補足さしていただきます。
私どもが市街地価格についていろいろ御説明申し上げている基礎は、ただいま大臣から申し上げましたように、日本不動産研究所の市街地価格の調査でございます。市街地価格につきましては、そのほか建設省におきまして、地価調査というのを最近約三年にわたりまして大都市の周辺で始めておりますが、まだ始めて間もないものでございますので、基礎的なデータは十分そろっておりません。さような状況でございます。農地価格等につきましては、農林省でいろいろ調査もございまして、それについての発表があったかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/10
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011・佐野憲治
○佐野(憲)委員 ただいま皆さんのお話を聞いていると、四倍に上がったとかいうのは日本不動産研究所の土地の物価指数と日銀の卸売り物価指数とを割って、四倍なりあるいは三倍なり、こういう数字を出しておられるのだろうと思うのです。しかしながらそれらに対しまして、土地の性質上やはりいろいろな態様があると思います。また物価上昇のメカニズム、これらに対するメスを入れなければほんとうのことが理解できないのじゃないか。たとえばジュリストですかにだれかが調査の結果述べておるように、こういう石油化学なり機械工業の地帯におきまして、土地はものすごく高い。しかしながらその工業生産額から割ってまいると決して高くない、けっこうこれでそろばんが合うのだ。あるいはまた、横浜とかその他川崎等のいわゆる商業地帯におけるところの商業販売額と、いわゆる土地、その商人たちが手に入れる土地の価格を比較すると、ちっとも高くない、けっこうこれで商売はやっていけるのだ。こういうことで、ちっとも騰貴そのものがいわゆる阻害されていない、生産活動を阻害してない、流通関係に阻害をもたらしてない、こういう数字も出てまいっておるわけです。ところが一般の住宅地帯におきまして、土地が安かったのがどうして高くなってきたか、ここに工業が進出してくる、あるいは商業が進出してくる、そういうことによって波及的に地価の騰貴を、宅地の騰貴をもたらしていっている、だからその地帯を捨てて他の地帯へと、こういうような上昇メカニズムに対するいろいろな研究がなされておるわけです。そういうことを抜きにして、ただ単に地価が四倍に上がった、たいへんだ、一般物価指数よりも上がっておる、だからこれは押えなくちゃならないのだ、こういうことを単に法律技術によって何とかしたいのだということは、私はこれに対処する道でないのではないか。これらに対するところの根本的な、いわゆる土地価格上昇のメカニズムに対する根本的なメスを入れる、正しい把握をなす、この中で一体対策をどうするか、根本的に病気を一体どうなおすか、こういう問題に真剣に取り組まなくて、単なる都市計画法なり再開発法をいじくったところで問題の解決にはならないのじゃないか。かけ声はりっぱだけれども実際上の効果ができていないということが、過去におけるいろいろな施策を見ましても、新産業都市の場合でもそうですか、そのかけ声がすばらしいにもかかわらず実効がほとんどあがっていないという。これは土地の上昇のメカニズムに対する正しい理解を欠いている点にある。単なる、都市に対する人口が集中してまいった、需給のバランスだ、こういうことはだれでも口にすることばだと思います。あるいは産業構造の変化なんだ。それらの具体的な土地上昇のメカニズムに対するところの正しい把握というものが経済学的ないろいろな面からもなされないんじゃないか、こういう点に対しまして、一体どのような立場でほんとうに対処しておられるのか、この機会にもう一度お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/11
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012・西村英一
○西村国務大臣 今度の質問はよくわかりました。つまり土地が、住宅地より工場用地のほうが高いのです。なぜ高いかというと、工場はそれだけの土地の値段で買っても結局引き合う、あるいは引き合わせるということでそうなるのであります。したがいまして、そういうようなところに別な方法をもって一それはその地価をつり上げているのですから、そういうようなところに工場がこないようにするような方法を考えてくれ、それが一つのあなたの言うメカニズムということになるのでありますが、これは大事なことでございます。たとえば、それにはやはり工場がさましたらある程度固定資産税とかあるいは都市計画税とか、いろいろな税制の方法をもって、工場がむやみやたらに地価をつり上げないようにする必要があろうと思うのです。これはまた別な政策をもってすれば、たとえば新産業都市に工場がいくものについてはいろいろな便宜を与えてやる、そうすればむやみに高い土地に集中しなくてもいいというようなことは考えられるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/12
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013・佐野憲治
○佐野(憲)委員 大臣は参議院に行かれるそうで、行ってもらってもいいのですが、一つだけ大臣に。話を聞くだけで返事は要らぬですから。
田中角榮さんが十六日福岡で、土地収用法の改正が問題になっているけれども、土地収用法の改正によって物価を押えるなんて、ばかげたことだ、できもしないことだ、このようなことを述べておられます。あなたはこういうのを4同じ自民党のしかも最高幹部である田中角榮さんがそういう形で、土地収用法の法案がいま国会で問題になっておるけれども、こんなことでは物価なんて押えられるものじゃないんだ、ばかげた話だ、こういうことを述べておられるということをひとつ頭に置いて取り組んでいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/13
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014・西村英一
○西村国務大臣 結局それは非常に極端な言い方をしたのです。あの人は非常にものを極端に言うのです。それは、収用法でやっても土地の価格は押えられるものじゃない、税金を高くすれば売り手にならぬじゃないかということを、周辺の土地の問題を言っているのです。非常にあの人はオーバーに言う人ですから、半分くらいに聞いておればいいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/14
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015・佐野憲治
○佐野(憲)委員 第三点として、立法論としてもう一つ、ごね得を解消する、開発利益の帰属を適正にする、これも改正法案の一つの重要な目的だ、こういうぐあいに説明しておられるわけです。これに対しましていずれ岡本委員が大蔵大臣その他の出席を待って具体的に質問するはずでありますけれども、開発利益の帰属を適正にする、このためにこの法律だけを出してまいる、それで租税特別措置法によって一千二百万円の譲渡所得に対する控除を出してまいっておる。前回のときにおきましては、違った形、そしてまた遊閑地税なり、あるいはまた宅地審議会から答申されているいろいろな問題に対しても取り組まなければ開発利益の帰属が適正にならないんだというように主張しておられたわけです。ところが今回はそうではなくて、この改正法案だけを出してまいっておられる。これで一体開発利益の帰属の適正化並びにごね得をなくするということができると考えられますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/15
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016・澁谷直藏
○澁谷政府委員 開発利益の適正な還元をどうするかというのは、これはきわめて基本的な重大な問題でございまして、御指摘のように今回提案いたしておりまする土地収用法の改正案ではその点には触れておらないわけでございます。その意味におきましては前回から見て一歩後退の印象をこれは与えておるわけでございますが、私どもは、この重大な開発利益の適正な配分なり還元というものを、このままほうっておいていいという認識には立っておりません。いな、むしろ、それだけ基本的な重大な問題でございますから、税制全般、あるいは所得税全般の広い観点から、もっともっと根本的に掘り下げて、しっかりした成案を得たい。それには、税制調査会なりあるいは大蔵省のほうにおきましても、今度の国会にはとうてい間に合わない、一年間の期間をいただいて十分な検討を得た上で成案をまとめて国会に提案をしたいということで、今回は見送っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/16
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017・佐野憲治
○佐野(憲)委員 基本的人権、私権ということばを使われますけれども、しかしながら基本的人権を尊重しなくてはならぬというところには、私権もまた公権だと思います。しかもこの弱い被収用者の公権を公権力をもって抑圧する。こういうときに、単に開発利益によって不当な利益を享受しておる。これに対するところのメスを入れることはでき得ない。弱い立場に立つ、しかも全く自由を失われる収用法の中で、しかも権利が保障されていない中で、しかもこのような法の改正を提案してまいられる。もっと大きな利潤、もっと大きな開発利益を独占をしておる、享受をしておる、これに対するメスを入れることはでき得ない。一体これほど不公平な立法政策というのはあるだろうか。もっと総合的にこれらの問題に対するところの根本にさかのぼっての土地利用政策の確立のないところに、こういう安易な方向に入らざるを得ない立場があると私は思います。地価上昇のメカニズム、これに対する正しい把握、分析を通じて、ここにメスを触れていく。税法の上におきましても、これもやらない、逆にいろいろな恩典を与えようとしておるのが最近の租税立法だ。逆な方向に行ってしまっておるじゃないですか。そうして、弱い、しかも憲法においては基本的人権として保障されておるけれども具体的に保障される道のない多くの公権、私権が、公権力によって剥奪される。こういう状態の中で、それを強化する法律を出してくる。私は、最も均衡を欠いておる、かように考えるのですけれども、次官、一体どのように考えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/17
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018・澁谷直藏
○澁谷政府委員 先生御承知のように、土地収用法は、公共の目的のために必要な土地を適正な補償を与えて収用するわけでございますから、その手続なりあるいはその補償の額が適正であれば、これは決して不当な私権の圧迫ではない、私はかように考えております。ただ、御指摘のように、ただそれだけが先行しておるという点ははなはだ不均衡ではないかという御質問に対しましては、私は同感だと答えておるわけでございます。しかしながら、何もかも一ぺんにやるといってみたところで、実際問題としてなかなかこれはできません。先ほどから先生がいろいろと指摘されておりまする土地の問題、これはもうきわめて根本的な重大な問題でございまして、したがってこれは全般が関連しておる。一部分だけをこうすれば地価の問題は解決するといったような名案は、これはあるはずはございません。したがいまして、土地の問題あるいは地価の問題、そういった全般に総合的に関連する問題について、一つ一つやはり対策を積み上げて、その積み上げが全般として重なってここに一つの結果があらわれてくる、効果があらわれてくる。これしか現実の問題としてあり得ないと思うのでございます。そういう考えに立ちまして、私どもはこの土地収用法の改正もやりたい、都市再開発もやりたい、さらにはまた土地の利用という根本的な観点に立って都市計画法の改正もやりたい、こういうことで現在鋭意努力をいたしておる次第でございますので、御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/18
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019・志村清一
○志村政府委員 ちょっと補足さしていただきます。
現在の土地収用法におきましては裁決時の価格である、それが改正法案においては事業認定時の価格を基準として考えるということによりまして、先生のおっしゃるように、もらう絶対額、支給される絶対額としては減るということになるのじゃないか、そうすると周辺地とのバランスがとれぬじゃないかというような御指摘かと存じますが、さような御指摘も事実でございますので、それらに対応するために、事業認定が行なわれますと、直ちに権利者は補償金の支払い請求ができる。補償金の支払い請求をいたしますと、事業認定時の時価、周辺地の時価に相応した金が手に入るということによりまして、現在の裁決時価格によって補償する、そして裁決があってから手に入るというのとバランスをとっていくということにいたしております。さような意味において、収用法の中自体においてバランスを一応とっておる。そのほかに今国会において御可決いただきましたように、収用される方につきましては、喜んで土地を売るという方と情勢が違うわけでございますので、大幅な減税をいたしまして、できるだけ優遇をしてまいりたい、かような措置を講じてまいりたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/19
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020・佐野憲治
○佐野(憲)委員 立法技術論だけで時間をかけてもあれですから、また別の機会に掘り下げさしていただきたいと思いますけれども、ただやはり土地政策に対する基本的な理念なり基本構想というものが欠けておる、地価上昇のメカニズムに対するもう少しきめのこまかい分析が必要じゃないか。たとえば設備投資のために狂奔して、どれだけの土地を設備投資の中に投げ込んだか。これは銀行借り入れだ。この銀行は庶民の預金したお金だ。しかも財政投融資資金としてそれらの工場に通ずる公共用水なりあるいはまた道路なりいろいろなものを補完しなければならない。多くは財政投融資資金だったといたしましても、これも零細な郵便貯金その他だ。そしてあすの家を持ちたい、あすの土地を持ちたいとして貯金した者がその土地を追われていかなければならない、まさしくそうした悲劇が起こる政策がとられてまいっておると私は思います。だから部分的にいろいろな薬をいま用意しておるのだ、この薬でなおるか、私はなおらぬだろうと思います。それで経済事情なりその他の変化があると、少しは陽気がぽかぽかするとなおったような気がするけれども、またやがて病気はもっとひどくなってくる。根本的な病気に対する治療がなくて、小手先だけのことでは問題は済まされない段階にいまきておるのではないか。そういう意味におきまして、私は立法政策論としても考慮すべき多くの問題点を含んでおるのではないかという点を指摘しておきたいと思います。
第二の問題点として私があえて聞きたいと思いますのは、法的技術論であります。一体この法律によってどういう効果を期待しておられるのだろうか。それで昭和二十六年に土地収用法が制定されましてから、三十六年に公共用地の取得に関する特別措置法が生まれてまいったが、最近はどうですか、この法の運用状態に対しまして、土地収用法に対する運用、公共用地の取得に関する特別措置法に対する運用、これはどうなっておりますか。何かここにおいて重大な欠陥が感ぜられますか。あるいはどういう問題が一体欠陥となっておるか、改正しなくちゃならない理由についてどうもはっきりしないわけです。どういう具体的な問題——それほど膨大な件数が土地収用委員会において裁決に持ち込まれておるのかどうか。事業認定は一体何十万件なされておるのか、公共事業だけでも四、五十万の件数になるのでしょう。そのうち一体幾らが土地収用の事業認定として認定申請されておるのか。収用委員会における裁決まで持ち込まれたものが幾らか。この二つに分けて、最近、一昨年なら一昨年だけでもいいですから一応お知らせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/20
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021・志村清一
○志村政府委員 最近の事業認定件数でございますが、昭和三十九年度から申し上げますと、三十九年度は事業認定件数は四百三十七件でございます。昭和四十年度は三百五十九件、昭和四十一年度は五百二十件でございます。このほか、特定公共事業の認定を受けました件数は、昭和三十九年度が十件、四十年度が四件、四十一年度は三件でございます。このほか、実は収用法の事業認定とみなされる都市計画の事業決定、これらは大体年間六百件程度でございまして、合計いたしますと千百件程度になろうかと存じます。また裁決件数でございますが、昭和三十九年度から申し上げますと、三十九年度におきましては六十三件、昭和四十年度が八十三件、四十一年度が九十八件と、漸次件数がふえてまいっておる状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/21
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022・佐野憲治
○佐野(憲)委員 ただいまの数字を見てまいりましても、土地収用法対象事業として掲げられておる何十万もある公共事業、そのうちわずか四、五百しか事業認定をやっていない、しかも収用委員会における裁決は、年間わずか二、三十件しかできない、各県にとりましては、一件も裁決をやらない収用委員会もたくさんあるわけですね。公共用地の取得に関する特別措置法の場合におきましては、裁決は一年間に一件だ。こういうような状態のもとで、一体どこに障害が起こっておるのですか。法そのものに何か欠陥があるわけでもなし、事業認定をやればよろしい、そうしてまたその事業認定に対する細目の公告なり、建物、土地の調書なり、いろいろな手続を踏まれておる。任意協議も行なわれておる。そうしてわずか二十件か三十件が裁決の対象になっておる、裁決されておる。特定公共用地も、あれだけ大騒ぎをして、いま産業構造の変化に呼応して緊急に設けなくちゃならないのだ、これが必要なんだ、これをやらなければ大きな経済界における混乱が起こるのだという当時の説明だったわけでしょう。ところが年間にそれが一件しか裁決がなってない。そうなってまいりますと、一体これは土地収用法そのものを改正しなくちゃならぬという大きな障害というものがあるのですか。今日のままでもけっこうやっていけるのじゃないですか。どこにその問題があるかという点をもう少し説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/22
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023・志村清一
○志村政府委員 ただいま佐野先生御指摘になりましたことは、宅地審議会あるいは公共用地審議会といったような審議会を開催いたしました際に、学識経験者の中からもさような意見は相当出ておるわけであります。確かに土地収用法があるにかかわらずそれを十分利用しない、起業者側もあるいは権利者側も土地収用法を使うことをきらう、それはおかしいのじゃないか、もっと現在の収用法を十分使うべきではないかというふうな議論が相当ございました。皆さん御賛成になっておられるわけでございますが、片方現行の土地収用法におきましては、先ほども御説明申し上げましたように、裁決時価格というものが原則でございます。そのために現行の土地収用法を用います場合におきましても、早期に協力をいたしました方は結局手取り額が少ない。そして相当時間をかけまして最後までねばられた方が一番額としては多い額を受け取られる。そのために早期協力というようなものが少なくなるしまた時間も非常に長くなるという欠陥が事実上出ているわけでございます。さような欠陥を防いで早期に協力した方も決して損はしない、損をしたような気持ちもしない、手続もスムーズにいくという方向に収用法を改正いたしまして、それによりまして収用手続に入る件数もふやしてまいる、そのようなことが必要ではないかという意見が非常に強かったわけでございますし、私どももそのように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/23
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024・佐野憲治
○佐野(憲)委員 しかしながら事業認定を求めるのが三百か四百だ。事業認定ですよ。ですから、事業認定を求めるのが三百か四百ということは、そこに任意における協議が行なわれておるわけでしょう。あるいはまたその事業計画から事業認定までのこの間に相当いろいろな、皆さんの資料を見ましても七十日ないし八十日かかっておる。事業計画から事業認定申請までこんなに時間がかかっておるわけでしょう。ですから、できるならば、祖先伝来の土地を離れなくちゃならない、その生活再建なりいろいろな問題が出てくるわけですが、それらに対するところの理解がなければやはり事業は進まない。こういう現実があるわけでしょう。ですから、そういうために、話、事業計画の説明、納得、協力あるいはまたそういう形の中で、時間を相当食われることは事実でしょう。であるとするならば、いまの法を改正してみましても、同じことが言われるわけじゃないですか。皆さんは一体三十万か四十万ある公共事業、この土地収用法の対象になっているやつを、全部ひっくるめてすぐ事業認定申請するのですか。そうならば、事業認定する、それから裁決は一年以内だ、これによってきめるのだ、事業認定時をもって価格を決定するのだ。一体そうするつもりなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/24
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025・志村清一
○志村政府委員 あらゆる公共事業を全部事業認定しなければならぬというふうな義務を課する改正法にはなっておりません。お説にございましたように、権利者のいろいろな事情もございますので、権利者に十分に説明をきちっといたしまして、その上で事業認定に進むというのが段取りかと存じます。しかし従来は、事業認定等の手続を経まして土地収用法の手続を経たにしても、かえって時間が長くかかる、あるいはごて得の弊を引き起こすというおそれをもって事業認定を受けないという例もあったように考えられますしいたしますので、今回の改正をいたしました場合においては、起業者は地主さんといろいろお話をしてもなかなかケリがつかぬというような事態におきましては、できるだけ早期に事業認定を受けるように指導してまいりたいと存じます。
片方、今度の改正法におきましては、従来の収用法が起業者側からの行動だけでいろいろ動いてまいったのでございますが、今回の改正によりまして、権利者側もこの収用手続にどんどん参加して、たとえば裁決申請を出すようにという請求もできる、あるいは支払いの請求もできる、また明け渡し裁決の申し立てもできるというようなことで、収用法が本来要求いたしておりました起業者と地主さん等の権利者が対等の立場で収用委員会の場を利用するということをさらに強めてまいるということで、起業者側にとりましてもまた地主等の権利者側にとりましても使いやすい収用法になってまいる、かように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/25
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026・佐野憲治
○佐野(憲)委員 じゃ、具体的に国際空港の問題がありますね。皆さんも道路その他をもう始められるそうですけれども、それなら国際空港の場合にあなたが言われるようなことが一体やれますか。いま県知事自身が細目公告の場合に、立ち入り調査の場合にいたしましても、これはたいへんな問題だ、もっと時間をかけてくれろと交渉しておるでしょう。一体できますか。国際空港をつくる。これは対象になるでしょう。土地収用法によってその特別措置法が適用になるとそれは事業認定をすぐやってしまう、一年以内なんて、あなたそれはできますか。現実問題としてそういう事業計画に対する説明なり納得なり、これに対していま現に話し合いが行なわれておるし、まだ納得できない生活権の問題その他の問題も出てまいっておる。非常に複雑な問題がここにからんできておる。これがいま具体的に姿をあらわしておるでしょう。そこで国会でこの法律が通る、事業認定をやった、知事が地元の人と話をする、それなら一切御破算だ、事業認定でいきますよ、こんなことが一体できますか。この法律が通っても現実にはでき得ないでしょう、やはり話し合いその他がまとまらなければ。そしてまた多くの時間をかけておる問題を見てまいりますと、公共補償という問題が一つ出てまいっておる。土地収用法は個々に対する補償だ。しかしながら、それと関連して、どうしても大量に公共用地を取得しようとすれば公共補償の問題が出てまいる。その公共補償の問題がととのわなくて、その中の土地買収だけが一体進んでまいりますかね。現実的に、この法律が通ったとしても現在における法律のもとで進めるよりしようがないという状態の中にあるわけでしょう。土地政策に対して確たる基本的な理念が貫かれていない、地価対策ができていないという中で、法律技術的にやれますよ、やれますよということを宣伝することはやすいかもしれませんが、実際上の効果が期待できますかね。千里タウンの場合なんか現にいまやっておるでしょう、万国博。万国博なんて三、四年前からわかりきってしまっておる話です。一体どうですかね。千里タウンを最初に買ったとき、昭和三十三年なんかは一千八百余円で買っておるでしょう。万国博その他という大量な施設その他を必要とする場合におきまして二万三千円から出しておるじゃないですか。こういう場合にどこで、事業認定ということが一体やれますかね。そういうものにはやらない、そういう巨大なものにはやらないで、弱い農民、弱いものに対しましてはこれをもって貫いていくということは、私は逆に不均衡を助長するのじゃないかと思う。今日の現実問題に対処することができ得ない、それにたえられないような土地収用法であって、しかも弱いものに対しましてはがくっといける、強いものに対してはやれない、こういう欠陥は一体どこで補強することができますか。その点に対して具体的な問題を通じてでもひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/26
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027・澁谷直藏
○澁谷政府委員 一つの法律を改正してその法の力だけですべてが解決できるという考え方は法律万能主義の考え方でございまして、実際問題としてそういう考え方は通用いたさないと私も考えております。当然、数十万件の年間を通じまして公共用地の取得が行なわれておるわけでございますから、しかもそれはその個人個人にとりましては自分の重大な生活に結びついておる問題を含んでおるわけでございますから、あくまでもこれは話し合いによって円満に解決をしていくということが私は最も望ましいと考えておるわけでございます。また実際問題として数十万件の公共用地の取得の中で、実際に土地収用の事業認定なり裁決を受けておる件数は、先ほど答弁申し上げたように数百件というごく一部分にすぎないわけでございます。この現実は、大体の問題が話し合いで円満に話が進んでおるということを示しておるわけでございます。しかしながら全部が全部そういった円満な話し合いで解決できるならば一番いいのでございますけれども、実際問題としてはそうはいかない。現に数百件のものは話し合いでは解決できないで、土地収用法の対象となって上がってきておる。これもまた現実でございます。それが現実でございますから、私どもはそういう数百件のものが毎年毎年ある以上は、やはり現行法の不備があればその不備の点を是正していくということは、当然政府としてとるべき措置だと考えておるわけであります。今回提案をいたしております土地収用法の一部改正は、そういう観点に立って、現行の土地収用法よりも一歩大きな前進であるという考え方に立って提案をいたしておるわけでございまして、この改正ができればこれで全部が全部もう万能で解決できるのだというふうには考えておりません。先生が一つの例として出してまいりました千葉の空港の問題にいたしましても、事柄があれだけの大きな問題でございますから、これは土地収用法の改正法案が成立した、これでさっといくのだというように私どもはもちろん考えておりませんし、あくまでも地元民に対する事業計画の説明なり話し合いというものを重ねて、できるだけ円満にこれを進めていくように努力していくことは当然だと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/27
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028・佐野憲治
○佐野(憲)委員 もう少し逐条的に問題点をただしたかったのですけれども、時間がありませんので恐縮ですけれども、ただ私はやはりこうした問題を考える場合におきまして、一体この法律の中で皆さんがうたわれておることがほんとうに実効があがるだろうか、こういう疑問すら実は持ってくるわけです。ただ単にそういう土地政策なりあるいは地価政策の欠陥を、いわゆる法技術的に何とかやっていくのだというようなことでは、私はちっとも問題解決しないのではないか。しかももっと具体的に改善すべき問題がたくさんあるのじゃないか。たとえば公共用地取得に伴う損失補償基準要綱にいたしましても、この基準要綱によって、閣議了解ですか——これは独立の機関で、しかも独立の職権を持つところの土地収用委員会に、政府がこれに準じてやるべきだなんというようなこういうむちゃなことを平気でやるような考え方なり、私はまたそうした中にあってもこういうものは守られているだろうかどうか。建設省の直轄事業に対するところの訓令は存じております。国鉄総裁の国鉄用地に対する通達、あるいは電電の水没に関するところの規定、これも存じております。一体これに準じておりますか。ある県の土地収用委員であって大学教授が述べておるように、国鉄の複線電化による裁決と、県単の土地改良事業におけるところの河川改修に伴う裁決と二つ比較した場合におきまして、片方は立地条件、経済価値その他から見ても一団地だけだから換地ができる。こういうところに膨大なお金が出されておる。片方においては農業においては大切な土地の問題だ、つぶれる。しかしながらこれに対してはわずかの金で裁決しなければならない。こういう過少な裁決があまりにも地方においては多過ぎるのじゃないか、こういうことも指摘いたしまして、裁決に至らない場合におきましても、話し合いの中で解決していっておる。公共用地に関するこういう閣議決定そのものが全く骨抜きになってしまっているでしょう。鉄道新幹線でごらんなさい。新幹線の買収、一体国鉄総裁通達と公共用地取得に伴う損失補償基準要綱というものと全く違ってしまっているでしょう。そういうことが片方にやられているわけですが、これに対しても統一でき得ないわけです。あるいは下筌ダムのときにもいろいろ問題になり学者の論議を呼び起こした。二十条です。二十条におけるところのいわゆる認定は、大臣に対して起業者の大臣がやる、これは全くナンセンスであります。起業の理論としてはそういうことが立つかもわからない。しかしながら実際問題として、大臣が起業者である、その大臣に対して事業認定を行なう。こんなのはフリーパスでしょう。これはもう少し行政権の使用をチェックするということが必要ではないかということが、下筌ダムの裁判を通じても、各大学の研究会の中でもしきりに出ておる。そういうことに対しては目をふさいでしまっているでしょう。大体こういう法律があるというのがおかしいのだと参議院か何かにおいて政府委員が答弁しておるわけです。そういうばかな行政権の恣意をどこでチェックしていくのだ。こういう具体的に提起されている問題に対してもあなたたちは何らそれを解決しようとしない。あるいは事業損失にいたしましても、この公共用地取得、これに対しましての土地収用法七十三条ですか、また九十条に関連して事業損失問題が述べられているわけでしょう。その要綱の四十一条と閣議了解の第三項、あれを一体どういう理解をわれわれがしていいわけですか。残地補償には事業損失は行なわないのだ。しかしながらいろいろなことが予見される場合には損害賠償としての前渡しをやってもよろしい。一体損害賠償というのは不法行為による国家損害賠償法による損害賠償しかないでしょう。不法行為であることを予見をして、しかもそれに対して賠償金額を払うのだ、払ってもよろしいのだ、こんな閣議了解というものは一体どこで解釈したらいいのですか。収用委員であるとするならば、裁定する場合においては、残地の損失補償は認めない、しかし予見される損害賠償は支払うというのでは、全く困る場合に遭遇する。このような多くの問題が見られるのです。この問題はちっとも解決してない。しかも閣議決定なり閣議了解というものはそのままになってきておる。法理論的にも問題点、論争を巻き起こしている、それに対して何ら触れてない。触れているのは、いま申し上げましたところの裁決時を認定時に変えたという程度でしょう。これでは実際問題としての解決ができるであろうか。あるいは公共用地取得にいたしましても、説明だとか意見を聞くというが、説明をして意見を聞いても聞かなくてもいいわけでしょう。おそらく一つも聞いたことがないでしょう。しかもそれは、他の法律でも倫理規定は入っていますね。やらなくたって何ら法律的な効果には影響はないわけでしょう。倫理規定だけ置いておる。もう少しこういうものを法制的に手続として確立していく、こういう面がなければ、被収用者の弱い権利というものは私は守る道がないと思う。そういう問題も補強していくという中で手続問題としてある程度迅速化するということなら、まだしも理解できると思いますけれども、全然こういう問題に対しては手を触れていない。私はこういう問題に対して非常に問題点があると思います。いずれまた逐条審議の場合におきましてもう少し具体的に突っ込ましていただきたいと思います。
それからもう一つ、最後にお聞きしておきたいのは、日米安保条約に伴うところの特別行政法ですね、これは一体どうしてこの中に関係法の中に入れたわけですか。日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法、昭和二十七年法律第百四十号、こういう特別法をこういう中に一体なぜ入れなくちゃならないのですか。砂川問題を中心といたしましても、最高裁まで持ち込んだいろいろな問題をかもしておるときに、現にまた砂川問題が新しく一つの問題化しようとしておる。これは調達庁なり内閣総理大臣なりが法律に基づいてやっていけばいいのに、なぜこういう特別条約をこの中にあえて政令で入れなければならないのか、こういう点に対して一体どういう考え方のもとになされたのか、こういう点をひとつお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/28
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029・志村清一
○志村政府委員 第一点は補償基準の問題でございますが、確かに閣議で公共補償基準の要綱をきめたわけであります。それに基づきまして公共事業あるいは公益事業を行なう者は、補償の具体の細目をつくりまして、統一した補償基準によって補償をしていこうということに決定いたし、そのモデルとして建設省の訓令によります補償基準をきめたわけでございます。建設省以外の公共用地を取得する各官庁等はございますが、それらにつきましては用地対策連絡会というものをつくりまして、そこでずいぶん議論をいたしまして、建設省のつくりました規定に準じておのおのの特色も加味して規定をつくるということにいたし、着々ほとんどでき上がっておると考えております。ただお説のとおり、補償基準におきましても非常にむずかしい点がございまして、ただそろばんを入れましてぱっと出るというような公式ができにくい点は先生御承知のとおりでございますので、それらにつきまして具体の答えが多少違ってまいるという点もあるわけでございます。これらの点につきましては補償基準そのもの、あるいは補償基準の運用の問題等につきまして、先ほど申し上げました用対連が逐次会合を持ちまして、できるだけお互いに詰めていく、そうして同じような結果が出るような補償の中身を検討していくという努力を続けているわけでございます。また具体の問題につきましても、同じような地域について別の事業主体が用地がほしいというような場合には、連絡をつけながらやっていくという申し合わせをいたして進めております。御指摘のような事例が出るということは、はなはだ遺憾でございますので、今後ともその辺の努力は続けてまいりたいと思っております。
また、補償基準につきまして、これを土地収用委員会がどう使うかという問題でございますが、おしかりをいただきましたが、閣議決定におきましてもこれを土地収用委員会が使わねばならぬというようなことは申し上げていないわけでございまして、これはいろいろ検討した結果、こういう基準ができたが、これは第三者機関、独立の機関である、収用委員会もお使いになっていいのではないかと思うという程度のことで考えているわけでございます。もちろん収用委員会は、御指摘のとおり半独立の機関でございますので、収用委員会独自の立場においての問題の展開は当然でございますが、それにつきましてもこの補償基準要綱は大いに参考になろう、かように考えておった次第でございます。
次の安保問題でございますが、施行法におきまして駐留軍に関する特別措置法の改正をいたしております。この駐留軍の特別措置法は、実は補償原則をはじめといたしまして、具体的な収用手続のほとんど全部を土地収用法をそのまま適用するなり準用するなりいたしておるわけでございまして、今回土地収用法が補償原則なりあるいはいろいろな手続につきまして改正をいたしましたのを、そのまま土地収用法自体に加えられた改正後の手続をそのまま駐留軍の特別措置法に取り入れるという、全く技術的な措置でございまして、別に新しい法制度をつくるということではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/29
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030・佐野憲治
○佐野(憲)委員 時間もございませんので、それらの問題は少し他の委員の方から突っ込んで煮詰めていただくとしまして……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/30
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031・森下國雄
○森下委員長 あとに内海、北側両君が控えておりますので、時間もだいぶ過ぎておりますから、どうぞさよう御承知願いとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/31
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032・佐野憲治
○佐野(憲)委員 わかりました。
そういうわけですから、特にいまの局長の話の中に半独立の機関であってということがありましたが、半独立じゃなくて、明確に県知事の所管のもとに独立の職権を行使するという独立機関ですよ。そういう点でひとつ誤解のないように。それからまた異議の申し立てにいたしましても、これは百三十一条ですが、純司法的な裁決機関であるものが裁決したのを大臣が異議申し立て審査をする。これも他の行政法から見てもおかしな問題じゃないかと思うのです。もちろんそれに対しまして単なる審査をする。片や純司法的裁決機関だ。独立の機関だ。所轄の独立機関だ、こう規定を置きながら、大臣は百三十一条によって審査をする、こういう点も他の行政法から見て不統一だと思う。もう少しこれらの点に対しましても検討する余地がこの中にたくさんあると思うのです。もちろん二十六年にできた法律ですから、しかもそれに行政不服審査法ができてまいった。いろいろなことからそういうような趣旨でもう少し統一する必要があるんじゃないか。
以上申し述べまして、質問は留保して、具体的な問題は次の機会にもっとさせていただくとして、内海さんにかわらしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/32
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033・森下國雄
○森下委員長 内海清君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/33
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034・内海清
○内海(清)委員 土地収用法の一部改正につきまして、若干の質問をいたしたいのでありますが、時間の制限もあるようで、十分な論議ができぬかもしれませんが、けさほど来いろいろ論議がございましたが、土地収用法の大きい目的というものは、公共用地の取得にあたりまして適正な補償をするということが重要な問題だと思うのであります。ところがすでに御承知のように、この問題は土地収用法、考えようによれば、それ以前の問題でして、いろいろいままでも論議されてまいりましたが、地価の高騰という問題、これは非常に重要な問題と思うのであります。去る十八日にも、物価安定推進会議の第三調査部会等におきましても、地価の問題につきましての問題を提起されておる。すなわち、地価問題は物価問題の一環として考えるということであると思うのであります。
ところが土地につきましてはいままで論議がありましたが、前の建設大臣は商品でないと言う。西村建設大臣は特殊な商品であるというふうに、これはいろいろ議論があると思いますが、いずれにいたしましても、土地は生産されないというところに問題がある。そうして需給の関係から地価がだんだん高騰してくるということであると思うのであります。そこでこの限られた土地というものをいかに効率的に利用するかということが重要になってくると思うのであります。いわゆる土地利用計画が問題になると思うのであります。これは非常に重要な基礎的な問題だと私は考えるのであります。
私はこの春に日航の世界一周航路の開設にあたりまして党代表で参りました場合に、財界の人もかなり行っておったのでありますが、その財界のきわめて有力な人でありますけれども、その人のことばにも地価問題こそが物価問題の基本であるというふうなことで、もっと国会でもこの問題は十分論議してもらいたいという要望もあったわけであります。しかしきょうは時間の制限がありまして、なかなかこれらの問題につきまして十分掘り下げる余裕がございません。
そこで、私はまず地価問題につきまして少し御質問申し上げてみたいと思うのであります。日本不動産研究所の資料によりますと、土地の値上がり状況というものは非常なものであります。すなわち昭和三十年の土地価格に対しまして六大都市平均では工業地が一五・一倍になっておる。住宅地域が一〇・七倍になっておる。商業地域が七・一倍である。さらに東京二十三区の状態を見ますと、ここでは住宅地域が一一倍、工業地域が一〇・七倍、商業地域が八・三倍となっておるのであります。六大都市総平均してみまして約十一倍、東京二十三区で約十倍、こういう値上がりの状況になっておるのでありまして、地価上昇はまさしく異常な状態であると言わなければならぬと思うのであります。こういう地価の高騰は、個人の立場に立ちましてもあるいは企業の立場に立ちましてもあるいはまた公共の立場に立ちましても、おのおのにとりまして、宅地、工業用地あるいは公共事業用地の取得難ということになってあらわれておる。これに対しまして一部の地主と土地ブローカーを除きましては、地価問題はすべての国民の上にかかってきておることは周知の事実でございます。したがいまして根本的な地価対策、これが実施されますことがいま最も大事なことであることは政府も十分お考えのとおりでございます。
そこで私は一、二これらについてお伺いいたしたいと思うのでありますが、不動産研究所の資料によってもいま申しましたようにきわめて明らかでありますが、地価の値上がりというものが全く異常な状態にある。これはなぜそういうことになったかということにつきましては、わが国の経済が急速に高度成長したということもございましょう。あるいは国民の生活水準というものが非常に向上してきた。これに伴いまして公共用地あるいは工業用地あるいは住宅用地などの需要が非常に膨大になってきて、そこで需給のアンバランスということがその第一の原因じゃないかと思うのであります。特に住宅用地の不足はきわめて著しいのでありまして、この点に関しまして前回のこの委員会におきまして大臣もこの点は十分認められておるのでありますけれども、その際大臣は宅地の大量供給をはからなければならぬ、また大量の宅地造成を行なわなければならぬ、こういうふうな答弁をされておると思うのでありますが、この宅地の開発に関しましては地価対策閣僚協議会の決定事項、これは四十年の八月であったかと思いますが、これにも、また宅地審議会の第三次答申におきましても指摘されております。政府も今日まで団地などでできるだけの努力をしておられるということは私ども認めるのでありますが、しかしながら現在では団地程度の規模のものは、鉄道の沿線の通勤可能地を利用する以外は道がない、こういうふうに思われます。ところが今日ではほとんど開発可能地が残されていない状態であります。また規模が団地程度であるために、生活機能としては既存都市に寄生せざるを得ない。こういう状態がありまして、そのために生活環境等の関連公共施設の不備によります都市計画上の混乱を生ぜしめておるのであります。さらにまた関連公共施設の整備という重荷が地元の市町村にかかっておる、こういう状態。このことが最近団地返上というふうな形にさえあらわれておるのであります。さらにこの規模が小さいために、需要があとから追いかけてまいりますだけでありまして、宅地難解消という方向には現在踏み出されていない。かえって開発利益を生み出したために周辺の土地の地価の上昇を誘発しておるのじゃないか、そういう役割りをしているのじゃないか、こういうふうに言っても過言ではなかろう、かように考えるのであります。こういう三点からいたしまして、従来の開発はいまでは行き詰まってきておる、こういう状態だと思います。
そこでお伺いいたしたいと思いますが、こうした宅地開発におきまする問題に対しまして、どういうふうなお考えを持っておられるか。これは非常に重要であると思います。さらに今後の宅地開発の政府としての基本的な方針、これはどういうふうになっておるか。まずこの二点をお伺いいたしたい、かように考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/34
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035・志村清一
○志村政府委員 ただいま御指摘になられましたとおりでございまして、私どもといたしましても宅地供給は今後とも大いにつとめてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
長期的な一つのめどといたしまして、住宅建設五カ年計画に即応いたしまして、今後五カ年間に大体一億五千万坪程度の新しい宅地が要るのではないか、かように推定いたしております。これらの相当大規模の宅地を新しく開発するためには、公共機関はもとよりでございますが、民間の宅地造成というものも大いに推進してまいらねばなるまい。大体公共機関によるものと民間事業によるものと半々。多少民間のウエートが高うございますが、そういうようなことで今後大いに進めてまいりたい。
特に公共機関によるものにつきましては、新住宅市街地開発法に基づきます事業、これは公団等がやったりあるいは地方公共団体等がやったりいたしておりますが、それとか、あるいは土地区画整理事業によります宅地開発、これも公団あるいは公共団体が施行いたしまして区画整理を進めております。そのような方法、あるいは、住宅金融公庫が公共団体あるいは公社等に宅地開発の金を貸しておるわけでございますが、かような方策によります一般宅地開発事業というものを推進いたしまして、この五年間に大体二万三千ヘクタール程度のものを供給いたしたい、そのような計画で進めておる次第でございます。
次に民間事業でございますが、民間事業につきましては、地主さんが組合をつくって土地区画整理をやっていく、そして新しい町づくりをやるという新しい方法でありますが、これはイニシアルコストが足らぬというために難渋をいたしておりますので、国と公共団体が共同いたしまして無利子の金を貸し付けるという方法で進めてまいりたい。また民間の事業者による宅地造成でございますが、これにつきましては先国会で、住宅金融公庫によります金融保証を九割までいたすというようなことで、民間事業の宅造に対して良質なお金が入るような施策を進め、また同時に、相当の規模でございまして公共用地が四分の一以上、しかも売る値段が非常に適正であるというような大きな事業につきましては、若干の減税もはかるというような方策で、民間事業の宅地造成を進めることにいたしております。かようないろいろな方策によって進めて、民間事業によるものは大体二万五千四百ヘクタール程度と見込んでおります。
さような長期計画でいろいろ進めておりますが、御指摘のとおりこれからの団地につきましては、鉄道はもとよりといたしまして、関連公共公益施設をどう整備していくかということが非常に大きな課題でございます。これらにつきましては、私どもといたしましては、道路あるいは公園、下水道といったような補助対象となる事業につきましては、できるだけ新しい町づくりのための補助事業を進めるということにいたしたい。と同時に補助裏、補助金がつくまでのつなぎの問題がございます。これは弱小な公共団体等では耐え切れないという問題がございます。これにつきましては住宅公団、住宅金融公庫がそれの立てかえの貸し付けをするというふうな方法で若干の予算を計上いたしてまいっておるわけでございます。今後これらの問題につきましては、さらに相当思い切った対策を講ぜねばならぬだろうということで、関連公共公益施設に関連します問題点の整理を、宅地審議会に対しまして建設大臣からお願いをいたしまして、現在いろいろ審議を進めている段階でございます。
また、団地の大きさの問題でございますが、非常に小さな団地をぽつぽつ建てるということのほうがかえっていいのだという御意見と、それから、やはり相当まとまったものがなければならぬという御意見と、両方あるわけでございますが、こまごましたものをたくさんつくりますことによって周辺地の値上がりを来たすというのも御指摘のとおりでございます。それらの問題に関連いたしまして、大阪、名古屋、東京といったようなところにおきましては、百万坪単位の相当大きな宅地造成を始めております。東京では多摩、名古屋では高蔵寺、大阪では千里あるいは泉北というところで相当大きな規模の宅地開発を進めてまいっております。これらにつきましては、私鉄あるいは国鉄等と関連いたしまして鉄道の輸送の確保ということについても、運輸当局とも相談をしながら進めておるわけでございますが、それとあわせまして中規模程度の宅地造成も同時に進めねばならぬ。大規模のものはなかなか時間がかかりまして進められない問題もございますので、あわせながら進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/35
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036・内海清
○内海(清)委員 いまいろいろな御答弁をいただいたわけでありますけれども、いずれにいたしましても、現在まで行なわれてまいりました政府施策の行き詰まりが今日の状態になっておる。したがって、この問題を打開していかなければならぬと思いますが、いまお話しのようにいろいろな施策が考えられておるようでありますけれども、これは私は、やはりひとつ思い切った施策をしなければ、ただ目先の問題のみを解決するという態度では相ならぬと思うのです。
ことに団地などの地方自治体からの返上という問題、これはいまお話がございましたので、これに対する多少の助成というものは今後生まれてくるわけでありますけれども、団地を持ち込むために地方自治体の財政が苦しくなるという状態では、これはとうてい今後この問題の解決にはならぬと思うのであります。この問題につきましては、十分論議する時間がありませんから、いずれまた別の機会にしますけれども、ひとつ抜本的な対策を進めていただきたい。
さらに、団地等の問題につきましてもいろいろいま御答弁があったわけでありますが、私はこういう問題もいま考えてみておるのです。やはり今後は思い切った、都市施設の完備した大規模な、いわゆるニュータウン方式ですね、こういうふうな宅地開発を進めていく、これを重点的にやるべきだと思うのです。もちろんこれは通勤あるいは用地の取得などで中規模のものもあるかもしれませんけれども、国として最も重点を置かれるべきものはやはり大規模のニュータウン方式、これをやるべきじゃなかろうかということを考えるのであります。
私も前回イギリスに参りましたときに、イギリスのニュータウンも二、三視察してまいりました。これは必ずしも全部が成功しておるということでもないようでございます。しかし、いまお話しのような日本におきますたとえば大阪の千里ニュータウンあるいは東京の多摩ニュータウン、これは現在建設が進行中であります。最終人口を十万以上三十万程度、こういう単位の新しい町づくりを事業主体の一元的な都市計画のもとに行なうということによりまして、生活環境等の関連公共施設の不備の問題、あるいはまたそれによる市町村財政の圧迫、あるいは宅地開発返上等の問題、これは解決してくると思うのであります。
また、私ども聞くところによりますと、千里ニュータウンの例をとりますと、開発当初におきましてはやはり地価が上がった、ところが最近ではかえって地価が下がりつつあるのじゃないか、こういう傾向にあるということを聞いておるのであります。これは何かといえば、大きな宅地群というものが一時に圧倒的にそこに生まれてくることによって、これが提供されることによって、地価が下がるということであると思うのであります。したがって、これは、地価抑制の面から考えましても非常に効果的のものではないか。団地ができるために周辺の地価が上がるというふうなことは、これでまた防げるわけであります。これは十分にそういう点を私は立証しておると思うのです。そういう点から考えまして、今後やはり二十万あるいは三十万程度の規模のニュータウンというものを、首都圏等においては五つでも六つでも、これを同時に進めていくということ、こういう施策が必要ではないか、こういうことを私は考えるのであります。これに対しまして、大臣の御所見をひとつお伺いいたします。
〔委員長退席、正示委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/36
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037・西村英一
○西村国務大臣 ニュータウン方式、まあ三多摩あたりの方式であろうと思うのですが、やはりその場合も一番問題になるのは、その公共公益施設をどういうふうにしてやるかということでございます。これは国家が全部持ってしまってやるんだといえば簡単ですけれども、そうもいかないのであります。しかしその問題につきましては、先般も宅地審議会に、そういう団地の場合の公共公益施設の負担の問題につきまして、ひとつ検討をお願いしました。いずれにしましても、やはり相当思い切った方策をとらないとなかなか防げないということは確かでございますので、いま手をつけておりまするところもなるべくピッチを上げまして、これをひとつ推進したい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/37
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038・内海清
○内海(清)委員 大臣の御答弁でございますが、もちろん現在進められておるものは、あくまでも十分進めていただかなければならぬと同時に、私がいま申し上げましたような規模のものを一つずつやるというのでなしに、たとえば首都圏の周囲に五つなり六つなり同時にこれを開発していくことによりまして、地価対策に対しましても大きな役目をなすのじゃないか、こういうことを私は考えるのです。その点につきましてはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/38
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039・西村英一
○西村国務大臣 いま東京付近でも三多摩のみならず、またほかの地区も相当大規模にやっておるところもあります。したがいまして、やはり適地を見つければ、それは並行的にやっていくこともけっこうであります。どういう地区をどういうふうにやっておるかは局長からひとつ説明させますが、とにかくやはり大規模にやらないとなかなか一しかしその場合大規模にやるのは、いま局長が言いましたように相当に日にちがかかりますので、その点がなかなかたいへんと思う。三多摩あたりも、ずいぶん前にかかったものですけれども、行ってみれば、部分的には相当できておりますけれども、しかし、これはやはり適地を見つけまして進めたい。私は、どこということははっきりしませんが、数カ所やっていると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/39
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040・内海清
○内海(清)委員 あとから局長のほうに御答弁いただきます。これは、適当のところが見つかるというのでなしに、やはり国の施策として計画的に、どういうふうにこのニュータウン方式というものをやるか。数カ所やられておると言いますが、それはやはり団地程度のものだと思うのであります。いわゆる二十万、三十万というニュータウン方式はそうないんだと思うのであります。このニュータウン方式というものを同時に手をつけるということ、これはもちろんある程度の時間はかかりましょう。しかし手をつけなければ、これはますます困難な状態になるわけであります。地価も上昇しますし、これはいまのうちに、そういう施策は国の責任において十分行なわれなければならぬ問題だ、私はこう考えるのであります。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/40
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041・志村清一
○志村政府委員 先ほど申し上げました東京の多摩ニュータウン、御承知のとおりあれは相当大規模でございまして、施行面積は一応二千七百五十二ヘクタールという程度のものでございます。また同時に、約一千万坪程度の筑波の研究学園都市の形成でございますが、これは研究機関、学園等をそこに導入いたしまして、新しいほんとうの意味におけるニュータウンをつくろうということで、逐次用地買収等を進めておるわけでございます。
また、神奈川県の、桜大線と申しまして桜木町から大船の間に新しい鉄道が敷けておりますが、あの途中で洋光台あるいは港南台というような団地、これは二つの名前に分けておりますが、事実上は連続しておるようなものでございますが、これも坪数にいたしますと百五十万坪以上の大団地でございまして、相当の規模のニュータウン的なものになり得る、かように考えております。
そのほか、私どもといたしましても、相当大規模なものをむしろ積極的に開発すべきじゃなかろうかということで検討を重ねているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/41
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042・内海清
○内海(清)委員 これは早急に、現在やられておるもの以外に、計画的な構想のもとにこれも進めていただきたい。この点をひとつ要望しておきたいと思います。
さらに、現在の交通機関を利用しての通勤可能地域におきましては、新たな住宅開発ということは、もうほとんど余地がない、こういう状態になっておると思うのであります。これはやはり新線建設あるいは既存の鉄道、軌道などの延長ということが行なわれていかなければ、今後の開発はむずかしいということであります。これは首都圏を一つ例にとってみましても、やはり五十キロ圏内で宅地開発可能の土地というものはかなりあるといわれておる。私の聞いておりますのでは、二十三億坪くらいはあるであろう、こう言われておるのであります。むしろ、これほどあれば、この開発地の選択に困るくらいな状況だと思うのです。しかし、交通機関が乏しいために、これの開発が今日行なわれておらぬのが現状だと思うのであります。
そこで、この新線建設あるいは既存のものの延長ということが大事であります。ところが、日本の状態を見ますと、戦前の私鉄の建設というものが、いまになってみますと、市街地形成に先行して行なわれておって、そのおかげで今日沿線地域がりっぱな住宅地になっておるのです。これは明らかにそういうことを立証しておると思う。そこで、どうしても開発するためには、新線の建設もしなければならぬだろうし、既存のものの延長もしなければならぬということは当然であります。ところが、この問題についても、戦後は、この種の新線建設がほとんどといっていいか、行なわれていないということであります。これはいろいろな原因がございましょう。戦後の既存路線の復旧合理化に力が入って、とても新線の建設がむずかしかったということもあると思うのであります。それといま一つは、やはり運賃統制がありますために、これをやりましても、なかなか私鉄としてはこれにたえ切れないということもあったと思うのであります。いわゆる企業ベースに乗らないということもあったと思うのでありますが、そこでこういうものに対しましては、これは直接建設省の所管ではありませんけれども、やはりそういう開発をするためには、建設省が主体になってそういう新線建設につきましては特別な国の助成措置というもの、これが強力に考えられていかなければ、今後この問題は進んでいかぬ、こういうふうに私は考えるのであります。そこで、開発予定地に対しましては、ひとつ積極的な新線の建設を行なう、このことをあわせて国の施策としてやらなければならぬ。これにつきましても各省間のいろんな問題があると思いますけれども、そういう開発ということからいえば、やはり建設省が中心になってこれを進めていかなければ、新線が開設されたらそこに持っていって開発の土地を見つけようというのではこれは間に合わぬと思うのであります。こういうことに対する御所見をひとつお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/42
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043・志村清一
○志村政府委員 ただいまのお説のとおりかと存じます。国鉄におきましても、いわゆる角本構想というようなものが発表されまして、そういうような新線と関連して大規模な宅地開発をやったらどうかという議論も出ておるわけであります。私どもといたしましても、その点につきましては、十分検討せねばならぬ大事な問題であるということで、随時運輸省とも打ち合わせいたしまして、また実際宅地開発を担当しておりますのは住宅公団でございますので、公団の中に運輸省の人たちも入れました新しい審議室を開設いたしまして、そこでさような問題等も含めまして検討させてもらっておるわけでございますが、今後ともこの問題につきましては、そのような見地から推進をせねばならぬ問題かと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/43
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044・内海清
○内海(清)委員 これはいろいろ進められておるようでありますけれども、しかしやはりこれにつきましても国が責任を持ってこれを推進するという体制ができなければ、議論のみに終わると思うのであります。でありますから、今日社会問題にまで発展しようというこの宅地造成の問題、これは政府としても最も重点的な施策の一つのはずであります。したがってそれに対しましては、いま申し上げましたような事項を今後十分ひとつ前向きの姿勢で積極的に進めていただきたい。これは大臣に特にひとつ強く要望しておきます。
それから次に、道路とかあるいは住宅とかいうふうなものを主にしまして今後ますます公共事業を推進していきまして、社会資本の充実をはからなければならぬことはもちろんであります。これにつきまして地価上昇の状況を見ましても、最近では市街地区よりも、むしろ都市周辺の地価の高騰のほうが激しいという、こういう状況があらわれておるのでございます。私はそういうように思うのでありますが、その実態はどういうふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/44
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045・志村清一
○志村政府委員 市街地の内部におきましては、先ほど来いろいろ御議論ございましたように、六大都市の市街地価格の推移指数を見ましても、三十九年度の後半以来上がり方はたいへん落ちついております。これは半期ごとに表が出ておりますが、四十年三月では前期に比べて三%のアップ、それから九月、四十一年の三月、九月、いずれも一%程度のアップでございます。さような意味におきまして、市街地内の価格は、最近においてはいろいろな経済情勢も反映いたしまして、比較的安定しているわけであります。郊外地につきましてはまだまだ相当上がっております。これらにつきまして、私いま手元に資料を持ち合わしておりませんけれども、東京の周辺などにおきましても相当の地価の値上がりを見せておることは事実でございます。
〔正宗委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/45
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046・内海清
○内海(清)委員 これがまた宅地造成その他の公共用地の取得に大きな影響を持っておるわけであります。この郊外地の地価を安定せしめるということが今後きわめて重要な問題だと思うのであります。
これはまたあとからなにするといたしまして、いま一つお尋ねしてみたいと思いますのは、公共事業費の中で、これに占めます用地費と補償費、これが総事業費に対しましてどういうふうな割合になっているか、またその推移はどういう方向にあるかということ、これをちょっとお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/46
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047・志村清一
○志村政府委員 公共事業費に占める用地補償費の割合でございますが、これは用地費と移転補償あるいは営業補償、そういったものを両方込めておるわけでございますが、三十五年から建設省の所管事業で申し上げますと、所管事業合計に対しまして、昭和三十五年は一二%でございます。三十六年は一五・一%、三十七年は一五・二%、三十八年は一六・七%、三十九年一九・四%でございます。かように逐次上がっております。
それから、ただいま申し上げました用地費及び補償費のうち、プロパー用地費は一体どれくらいかということでございますが、これは実は事業によりまして非常に違うわけでございます。たとえばダム事業というようなものでございますと、用地費よりも補償費のほうがずっと大きいということがございますが、大体平均いたしまして用地費の用地補償費全体に占める割合は六〇%ないし六五%、残りの四〇%ないし三五%が補償費ということでございます。また補足いたしますと、用地補償費が逐年上がっておるということにつきましては、事実土地代が高くなっておる、補償費が高くなっておるという問題もございますが、また事業によりましては用地先行ということで、事業予算の中に占める全体の用地費が、先の分まで買っていくという対策をとっておるために多少上がりぎみになっておるという面もあろうかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/47
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048・内海清
○内海(清)委員 ただいま御答弁のありましたような状況でありまして、地価の高騰によって用地費が増大しつつあって、ますますこういう事業が困難になりつつあるということです。これは公共事業を進める上におきまして、これが用地の確保難という問題になってまいります。用地費の高騰ということが、また事業進捗の上に大きな障害になっておる、こういうことだと思う。特にこの長期の計画、これが常に変わっておる。次々と変わるわけであります。これは状況が変わるからやむを得ぬ場合もありますけれども、その原因の一つは、工事費の上昇で計画実施が不可能になる、ここで計画をやりかえなければならぬということが、非常な一つの大きい原因でもあると思うのであります。でありますから、いまのままにしておきますならば、こういう傾向はますます進んでまいるわけであります。そこで、やはりこれらの公共用地の安定確保ということにつきましては、政府もひとつ根本的な検討をこの際するときじゃなかろうか、こういうふうに私は考えるのであります。
そこで、長期的に見ましてこういうことは考えられぬか。特にいま特定な事業目標を持たなくてもあらかじめ土地を取得しておく、この先行取得によりますところの公有地を基盤にいたしまして事業を進めていく、これによりまして、新しい事業のために土地を買い地価をつり上げる、このつり上げられるのも防ぐ、かつ事業のスムーズな推進がはかられると考えるのでありますが、こういう点につきまして今日まで検討されたことがあるかどうか、その点をひとつお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/48
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049・志村清一
○志村政府委員 公共用地等の先行取得の問題でございますが、先生御指摘の点につきましては、私どももいろいろ検討を進めまして、都市地域におきます先行取得、特に工場等が疎開したいという申し出があるときにそれが買えないというふうなことで、せっかく用地を取得する機会を逸するという事態もありますので、昭和四十一年度から都市開発基金制度を設けまして、市街地におきます工場等の用地の取得あるいは公共事業用地の先行取得ということをいたすことにいたしております。ただいかにも予算が少のうございまして、昭和四十一年度は十五億でございます。四十二年度は倍以上になりましたが、まだ三十五億程度でございますが、今後この方向を大いに進めてまいる必要があろうかと存じております。
また、さような都市開発基金とは別に、公共用地そのものを先行的に取得するということが必要じゃないかということで、各事業予算におきましても、先ほどもちょっと触れましたが、道路の用地あるいは河川の用地等につきましても、予算をまず先につけて用地を先に買っていくという方向に進んでおります。これらにつきましては、今年度から自治省におきましても、公共用地の先行取得のための地方債、これは昭和四十二年度約六十億円でございますが、これを計上いたしまして、公共用地の先行取得につとめるという体制をとっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/49
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050・内海清
○内海(清)委員 これは若干進められておるようでありますけれども、この程度では、まあもちろんないよりましでありますけれども、たいした効果はないだろうと思いますが、これはことに公共用地の問題につきまして、公共事業をやるにつきましては、単年度予算ということがいろいろ問題があると思うのであります。そこらにむずかしい問題はあると思います。しかしこれは地価問題を解決し公共事業を進める上から申しますと、現在の状況ではどうしてもこういうことが強力に進められていかなければなかなか解決つかない問題が多いと思うのであります。この問題はひとつ今後——本年度も少し予算がふえておりますけれども、十分ひとつお考えいただいて進めていただきたい、こういうふうに思うのであります。
それから、これはひとつお伺いしてみたいと思うのでありますが、都市計画との関連があろうかと思いますが、これは私よりも十分御承知のことでありますけれども、フランスで行なわれておりますZADですか、こういう制度があります。つまり長期整備地域というものを設ける、この制度であります。これは公共機関の先買い権、つまり指定地域については、地主が土地を売りたいときは公共機関に売らなければならぬというふうな制度のように思うのであります。こういうふうな方式のものはわが国では採用できないかどうか、こういうことです。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/50
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051・志村清一
○志村政府委員 先生御指摘のように、フランスにおきましてはZUPとかZADとかというふうな地域の指定をいたしまして、新しい町づくりにあたりまして先買い権を事業主体が持つというふうな制度がございます。わが国におきましては、ZUPとかZADに類する組織といたしましては新住宅市街地開発法に基づきます新開発事業がございます。これの事業決定が行なわれますと、そこの地主さんはよその方に売る際に施行者に先買い権があるという制度になっております。かような制度等を今後十分運用してまいらねばならぬと存じますし、またZUP、ZAD等のフランスの制度等もさらに検討を進めなければならぬ、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/51
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052・内海清
○内海(清)委員 こういう式の制度につきましてはわれわれが現在わが国の状態において採用し得るかどうか、これはひとつ十分御検討いただきたい。これはわれわれしろうと考えで見ますれば、この際、わが国の今日の状況から見ればこういうふうなものもある程度考えなければならぬのじゃなかろうかというふうに思うのであります。時間がありませんので、掘り下げた論議ができぬわけでありますけれども、いずれ機会を見てまた質問申し上げたいと思います。
次にお尋ねしたいと思いますのは、今回の収用法の改正案、これの提案理由を見ますと、開発利益の帰属の合理化、これは先ほども佐野委員からもいろいろ問題を提起されたと思いますが、この開発利益の帰属の合理化をはかることが、また一つの重要な問題になっておるように思うのであります。開発利益が一部の地主や土地ブローカーにのみ帰属するという現状、これはどうしても是正されなければならぬと思うのであります。今日の改正案でそれが十分できるかということにはいろいろ論議があると思いますが、今日の改正案では、起業地の不当な開発利益の帰属の問題の解決が十分でないのじゃないか、私はそう感じるのであります。起業地周辺の土地あるいは過去の公共事業による開発利益等につきましては、何ら解決の糸口がついていないのじゃなかろうか、こういう気がするのであります。本来この開発利益というのは、土地の効用の増加をもたらしました投資者に帰属するのが本筋だと思うのであります。ところがわが国の場合は、土地の効用の増加が、ほとんど公共事業投資によるものが多いのでありますが、何らこの当該事業主体に還元されていない、こういう一つの問題があると思うのであります。今日、先ほどいろいろ申しましたような事業費が非常に窮迫するということ、さらにはそういうことによりまして事業の進捗が妨げられておるという状態でありますが、そこでお尋ねいたしたいと思いますのは、第一点は開発利益の帰属の適正化ということについて、どういうふうに対処しようとしておられるのか。今日の改正案では私はこれは不十分である、こういうふうに見ておるのであります。その点についてひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/52
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053・志村清一
○志村政府委員 先ほど政務次官からもお答え申し上げましたように、開発利益全体についての問題といたしましては、御指摘のとおり十分な措置が今回とられてなかったといえるかと存じます。ただ収用法の適用のあります事業地の地主さんの問題でございますが、事業認定時の価格を基準として定められる、従来の裁決時の価格とでは、絶対額において大きな差がございます。それにつきましては、アンバランスが生ずるではないかという問題につきましては、補償金の支払い請求という制度を設けまして、事業認定がございましたら直ちに事業認定時の時価に相当するものを支払いを受け得るということにいたしまして、ちょうど現行法の裁決がありまして裁決時の価格を受け取れるというのと符節を合わせるというかっこうにいたしております。さような意味においては、収用法上の起業利益の排除ということは可能なわけでございますが、それでは公共事業一般について、あるいはその他の社会開発一般について土地が相当値上がりする、その手当てはどうするかという別の大きな問題につきましては、今回の収用法の守備範囲をちょっと越える問題でもございますから、触れてないわけでございます。これらの点につきましては、政務次官が先ほどお答えいたしましたように、今後税制調査会におきまして十分検討さしていただきたいというふうなことになっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/53
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054・内海清
○内海(清)委員 これはいまお話がありましたように、昨年はその問題が出ておったのだと思うのです。これをことしはずされたということ、これはどういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/54
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055・志村清一
○志村政府委員 昨年、土地収用法と並行いたしまして、土地に関する税制の改正案が大蔵委員会で御審議いただいたわけでございます。このときにおきましては、御承知のとおり、譲渡所得税につきましては、値上がり幅の大きなものについては年を経るごとに税率を高めてまいろう、そしてできるだけ開発利益の吸収をいたそうという案で国会に提案されたわけでございます。ところが大蔵委員会におきまして種々御議論がございました。たとえば譲渡所得税を高めるというのは、かえって需給のバランスをくずすことだ、その他いろいろ御議論があったわけでございますが、その結果自民、社会、民社三党共同で修正がございまして、土地収用法が施行になった日以後新たに土地を取得してそれを売った方にのみその税率の適用を考えよう、こういうことに修正になったわけでございます。そういたしますと、いわゆる投機的な土地の売買というものはいかぬ、それについてはひとつ税率を少し高めようじゃないかという案に変わったわけでございます。ところが現在の税制におきましては、すでに土地を新たに取得しまして三年以内に売った場合には譲渡所得の全額について課税対象に合計するということになっておるわけでございます。したがいまして多少その割合をふやすといっても、現在ございます短期譲渡所得の税金のほうが高いわけでございます。さような修正案が成立いたしましても、三年から四年以後になってぽつぽつ適用になるということでございますので、この機会におきましてはひとつ抜本的ないろいろな所得税全般その他につきまして税制調査会で基本的に御議論いただきまして、新しい方策を打ち出したい。その余裕をいただきたいということで、今回は前年提案いたし修正になりました案を、しばらく猶予願った次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/55
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056・内海清
○内海(清)委員 まあいろいろな経過があると思いますけれども、これは並行的に行なわれなければやはりそこに非常な弊害も起こるわけであります。収用された土地、これは補償金の請求もできますが、補償金の請求をして金が入りましても、その周辺の土地は結局買えませんよ。そういう問題が出てくると思う。だからそれによって救済されるということはもちろんできないわけです。この問題はいまここで議論してもあれだと思いますが、早急に解決しなければならぬ問題だと思う。そうなけらねば、この収用法ができましてこれの効果が十分出てまいりません。この収用法の改正によって、地主のごね得ということはある程度なくなると思う。阻止されるかもしれない。ところが開発利益の適正化という問題については多くの疑問が残る。見方によればある程度解決されるという考え方も出るかもしれませんけれども、私どもはこれはまだ多くの問題を残す、こう考えておる。しかしこの周辺地については今後十分な措置が早急に考えられなければならぬ、こう思うのです。今回の収用法と並行的にこれが審議されなかったことを非常に遺憾に思いますけれども、これは早急な問題であると思うのであります。したがって起業地と周辺地の間に全面的な開発利益についての措置がとられていない、そのためにかえって不均衡が生ずる状態が出てくるであろう、こう思うのであります。そういう状態が出てまいりませんかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/56
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057・志村清一
○志村政府委員 先ほども御説明申し上げたわけでございますが、現行法におきましては裁決時の周辺地の時価によって補償するわけでございます。したがいまして裁決時以降におきます起業利益というものまでそこでは見ないわけであります。その思想をそのまま事業認定時に持ってまいりまして、事業認定時にすぐに御請求に応じてお支払い申し上げる、しかし事業認定時以後の開発利益というふうなことは、従来の原則に応じまして見ないというたてまえでございます。たださようなたてまえではありますが、先ほども申し上げましたようにいろいろな問題が内在し、複雑な問題もあろうかと存じますので、税制の面におきまして大幅に減税をいたす。すなわち土地収用法の対象になる方々は必ずしも喜んで土地を出すわけではございません。いやいやながら出すという方も相当あるわけでございますから、さような意味においてさような方々については譲渡所得の中から千二百万円を差っ引きまして、さらにそれを半分にして、それからさらに基礎控除の三十万円をして、もう一ぺんそれを半分にするということで、事実上、たいへんなお金持ちの方は別でございますが、通常の場合はほとんど税金はかからないという形に持っていくということによって、そのほうのカバーをしたい、かように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/57
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058・内海清
○内海(清)委員 税制の問題が今回取り上げられることは承知いたしております。しかしまだそれのみでは私は解決できないのじゃなかろうか、こう思います。時間がございません。先に進めさしていただきます。
前回の委員会で大臣は適正な地価とは何か、現在適正な地価をきめられない状態であるというふうなことを言っておられます。これは非常にむずかしい問題であると思いますが、現在、土地に対しましては明確な地価対策、体系というもの、これがないと思います。これが公共用地の取得価格の不統一という状態になってあらわれてきておる。地価高騰等を一そう無秩序に拡大さしておる現状であると思うのであります。建設省では不動産鑑定士というもの、これは鑑定士補もおるのだと思いますが、制度を設けられて、さらに、大都市の周辺に地価調査を行なっておるということを承っておるのでありますが、これにつきまして、標準地価というものを公示する考えがあるかどうか、もしあるとすればいつごろからこれは可能か、こういう点をひとつお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/58
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059・志村清一
○志村政府委員 大都市、特に東京の周辺等につきましては、地価調査につきましてはことしで四年目ぐらいになろうかと思います。大阪はまたそれから一年おくれて地価調査を実施いたしております。その地価調査におきましては、鑑定士の資格を持っておられる方三人ぐらいをグループにしまして調査をさせる。そのグループが幾つか集まった一つのブロックでまた検討させる。そのブロックを幾つか集めてまた検討するというかっこうで、従来地価の評価をやってまいってきたわけでございます。これは地価調査をやると同時に、鑑定評価制度が何しろまだできたてでございますので、鑑定士相互間の研修と申しますか、地価鑑定についての勉強会ということも兼ね合わせましてやってまいったわけでございますが、三年やってまいりましてある程度の自信も出てまいりましたので、本年度あたりはできれば地価調査の結果を標準地を設定いたしまして、大体鑑定士が総員で出て調べたところ、この程度だということを発表することを考えたいと思います。この発表の方法とか日時等につきましては十分検討した上で進めたい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/59
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060・内海清
○内海(清)委員 これはいまいろいろ詰められて、近くそういうものができるだろうということでありますが、これは時間がないから要望にとどめますが、公的な地価鑑定機関を一つ設けて、権威のある地価公示をやる、これをひとつ早急にこの際急ぐべきだと思う。早急に進めなきゃならぬと思います。この点はひとつ十分考えて、権威のあるものを、地価公示をやってもらいたい、こういうことを、これは強く要望しておきます。
それから、現在不動産相談所が東京に四カ所ですか、大阪に三カ所……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/60
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061・森下國雄
○森下委員長 内海君、だいぶ時間が超過しておりますので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/61
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062・内海清
○内海(清)委員 はい、わかっております。
これを全国の主要都市までに広げる。そうして標準地価の形成あるいは土地取引の公正化を促進する、これはもっと重要な問題だと思うのです。この点についてひとつお考えを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/62
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063・志村清一
○志村政府委員 不動産に関する相談所の設定でございますが、先生御指摘のとおり、公共団体等におきまして最近非常に熱心に不動産のさような相談所の開設につとめております。また公共団体だけでなくて、住宅公団とかあるいは住宅金融公庫におきましても、そういった不動産の相談所を設定いたしまして、皆さん方の御相談に応ずるというかっこうをとっております。また同時に、宅建業者自身が、今回大体業者間に大同団結ができつつございますので、その団体でひとつ相談所をつくりたい。すでにできているのもございますが、大いにつくってまいりたいということを申してきております。私どもといたしましても、業者間でさような相談所をつくることについては賛成でございますので、いろいろ相談に乗っておるのでございますが、かような民間の相談所、あるいは公共団体の相談所、あるいは公団公庫の相談所といったものを今後大いに進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/63
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064・内海清
○内海(清)委員 それじゃ時間がありませんから、まだずいぶんお尋ねしたいことがありますが、もう一点でやめます。
この公共用地の買収価格の決定にあたりまして、地価評価の不統一ということがいろいろ問題になっております。いろいろな例があるわけであります。接近した地域で幾つかの公的機関というものが用地買収を行なう場合に、一方が非常に高く買う。そのために他の機関の計画が非常にそごを来たす。場合によれば中止したのもあるということを私は承っておるのです。たとえば神奈川県の新横浜駅付近におきましては、これは国鉄が一万円で買った。ところが、神奈川県は五千円でこれを評価したということで、神奈川県は中止をしたというような例もあるわけであります。また、一方が用地買収が困難になった場合に——そういう場合がいろいろあるわけでございますが、いまのは神奈川県は中止をしたのでありますが、そういうために一方の機関が非常に困難になってくるわけです。国際空港の場合あるいは筑波研究学園都市の場合、ここにもいろいろ問題が出ております。三里塚は坪当たり三千円、それから筑波学園都市のほうは千三百円ということ、そこで筑波学園都市は非常に買収が困難な状況にいまあるということであります。それからさらに、著しい買収価格の異なっておる場合としましては、名神高速道路と、これは岐阜県だと思いますが、奥五条線との交差点、これは非常な開きがある。道路公団は六千五百円で買った。それで、尾西という市は二千五百六十五円という評価をした。これは私どもが聞いておるのでもこういうふうなものがあるのであります。この物価安定推進会議の最初に申しました第三調査部会、この報告におきましても、買い手側の政府機関の姿勢がばらばらである、そのために結局地価をつり上げておるんだ、こういうことであります。この用地取得関係の部門の統一的な体制を早急につくらなければ、そういう国が関係しておるようなものでもってますます地価をつり上げるという状況にいっておると思うのです。
そこでお尋ねしたいのは、政府機関で公共機関が同一の買収単価を示すような処置はできぬのかということ、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/64
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065・志村清一
○志村政府委員 先ほども佐野先生から御質問ございましたが、閣議といたしましては損失補償基準要綱をきめておりまして、それに基づきまして各損失補償の統一的な規定を設けるということにきまったわけでございます。それにつきまして建設省を中心といたしまして、比較的大手の公共用地取得の関係機関が集まりまして、用地対策連絡協議会をつくりましてそこで議論した結果、建設省の規則もできまして、各関係官庁もそれに応じた補償規則でもって進めておるということになっておりますが、補償規則は何しろ個々別々の問題がたくさんございまして、なかなか統一的な計算方法ができにくい点がございます。同じような土地でございましても、表地と裏地とで違うというふうなことがございます。それらにつきましては補償基準に盛り込み得ない点もございます。運用基準とか、実際の評価の方法等につきまして用地対策連絡協議会をさらに逐次勉強させまして、なるべくお互いに協同ができるように、また競合する場合にはお互いに連絡をつげながらやるという努力を進めておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/65
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066・内海清
○内海(清)委員 いま建設省を中心として各省庁の関係で用地対策連絡協議会というものがあるようでございますが、それが十分な機能を発揮していない。これにつきましても今後十分ひとつ機能が発揮されるようにこの点を強く要望いたしておきたいと思うのであります。
〔発言する者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/66
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067・森下國雄
○森下委員長 内海君、約束を守ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/67
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068・内海清
○内海(清)委員 それでは一応質問をおきますけれども、まだ問題がかなり残っておりますので、この前は時間的な制限がありましたから大体一時間でやった。きょうは時間的な制限は実は承っておりません。それできょうは三人やるということを承りました。そういうことで少し時間が延びて恐縮でございましたけれども、そう皆さんからやかましく言われる筋合いでもないと思う。この辺で一応きょうは打ち切りますので、いずれまた機会を得まして質問の機会を与えていただきたい、こういうふうに考えるのであります。
いずれにいたしましてもこの地価問題が基本であります。同時に、この問題が十分解決されなければ、今回収用法がせっかくでき上がりましても十分な効果を発揮し得ないであろう、こう私は考えますので、いま申し上げましたような問題につきまして今後十分なる御検討を願って強力に進めていただきたい、このことをひとつ強く要望申し上げまして質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/68
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069・森下國雄
○森下委員長 北側義一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/69
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070・北側義一
○北側委員 上程されております土地収用法の一部を改正する法律案につきまして、若干質問をしたいと思います。
まず、今回の改正案につきまして私の見たところで一番矛盾する点は、いままでもたびたび言われておりますが、公共事業の実施にあたりましてそれに伴う開発利益、これは一体だれに帰属するのかということは、起業地におきまするところの収用される土地所有者は開発利益というものは押えられるわけです。ところがその周辺部につきましては開発利益を得ていくことができる、このような非常に矛盾した点があるようにも私は思うのですが、その点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/70
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071・志村清一
○志村政府委員 土地収用法自体におきましては、先ほども申し上げましたように、従来裁決時価格であって、裁決時における付近地の時価を補償する。その付近地の時価と申しますのは裁決時以降の値上がりというものは考えないわけでございます。さような裁決時価格を裁決があってから受け取るというたてまえになっております。それを今回は、事業認定時の時価を基準にして考えるが、事業認定がございましたならば直ちに支払い請求ができる。そして受け取ることができるというふうなことに改めておるわけでございまして、その間におけるアンバランスはまだ若干残ろうということで、先ほど申し上げましたような租税の大幅な減税を加えるということでございます。ただ確かに周辺地とかあるいはその他公共事業によって値上がりをした利益は一体だれがとっておるかという問題は残ろうと思います。これらにつきましては、現行法におきましても譲渡所得税におきまして譲渡所得の短期につきましては全額、長期につきましては二分の一額を普通の所得に加算いたしまして、それが個人については累進課税になって大きいものは相当大幅な税金をとられる。法人については国税、地方税を合わせますとほぼ五〇%近い税率になるわけでございまして、それがとられるということで開発利益は一応国あるいは公共団体等に相当入るというたてまえになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/71
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072・北側義一
○北側委員 財産権の不可侵、これが憲法二十九条で明記してあるわけです。しかしその三項に「正当な補償の下に、」公共の福祉のために財産権もあえて侵すこともいたし方ない、このような項目があるわけです。たとえば改正される前のいわゆる土地収用法の場合には裁決時の正当な補償、現在の改正案では事業認定時の正当な補償、これは幾ぶんか感じが違うように私はとるわけなんですが、その点どのような御見解を持っておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/72
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073・志村清一
○志村政府委員 現行土地収用法においては裁決時価格でございまして、今度の改正案においては事業認定時価格という点で時期的なずれが相当あるわけであります。これにつきましては確かに先生御指摘のとおり考え方が多少違うじゃないかということであろうかと思いますが、それらをカバーするために、先ほども申し上げましたように事業認定がございますと、そのお金を直ちに支払ってくれという支払い請求がある。もしその支払い請求に応じなかった場合には、改正法案にございますように日歩五銭という非常に多額の罰則的な罰金的な利息を払わなければならないということになっております。また、起業者が本来百万円が相当なのに一万円しか払わなかったというふうなばかなことがありますと、その差額に応じて最高日歩五銭というような懲罰的な過怠金を課するということによりまして、事業認定時の価格をなるべくすみやかに、しかも正当な補償を地主さんに与えられるような方策をとっておりますので、根本趣旨においては変わらぬ、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/73
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074・北側義一
○北側委員 聞くところによりますと、事業認定時から裁決時まで、この期間が平均約三百日と聞いております。この間の地価の値上がりは押えられると思うのです。ところが事業計画して認定時までの間、この期間のこのような値上がりがいわゆる認定時になったから押えられる、そのような考え方に立って全般を——そうしますと、裁決時から事業認定時まで早めたことが無になるのではないか、このような考えもあるわけです。また事業認定時まで計画時から一体何日くらい期間があるのか、また私の問いに対してどのような考えでおられるか、これをひとつお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/74
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075・志村清一
○志村政府委員 先生お尋ねのように、事業認定時の価格を基準にするよりも、むしろ当該計画ができたときの価格を基準にすべきではないかという御議論も一部ございます。ただ収用法上のたてまえから申しますと、事業認定を受けまして初めてその土地が収用にたえ得る事業用地であるということがきまるわけでございまして、事業計画ができた段階におきましてはまだその土地の確定ということがないわけでございます。したがいまして、多少の修正、変更ということも考えられますし、またさような時点におきましては、先ほど申し上げましたように補償金の支払い請求ということを与えるというのも問題がございますので、さような意味におきまして事業認定時価格として、事業認定時においての価格を基準にしてものを考えていこうという方式にいたしたわけでございます。ただ計画設定と事業認定までの間の期間でございますが、これらにつきましてはそういつまでもだらだらしておってはいかぬ。同時に、計画設定につきましてはいろいろ地元とのお話し合いもございましょうから、そうかつてなことでやるわけにもまいらぬ、これらにつきましては良識ある態度で進みたい、かように考えている次第でございますが、いたずらに事業認定をおくらせるということは適当でございませんので、その点につきましては私どもといたしましては指導をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/75
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076・北側義一
○北側委員 そこでただいま私が、いまの質問は決して事業認定時以前の計画時にこれをとどめてそうして補償金を決定せよ、こういうことを私は言っているわけじゃないのです。ただ計画決定されてから事業認定まで、その間に、いままでは裁決時までであったのですが、このたびは認定時に早くなった、だからそれに伴って土地の価格というものがいままでと同じように上昇する機運が行ってくれたらいいですが、やはりこういうことをみな知っております。起業地のいわゆる収用される者は知っております。また周辺も知っております。そこでずっと急激に上がり方が早くならないかという心配を私はしているわけなんです。そういうことなんです。その点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/76
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077・志村清一
○志村政府委員 お説のようなことは私はあまり起こらぬのじゃないかと考えております。事業認定時で価格が固定されることになる、いわば事業認定時の価格を基準にして補償金が支払われるようになるから、事業認定時までに値段をどんどん上げておかなければ損であるというふうなことかと存じますが、私ども従来から考えておりました収用法の考え方もそうでございますが、近傍類地の地価と申しますのは特殊な地価、これはおれが最も大事にしたものだから、普通では十円で買えるかもしれないけれども一億出さなければだめだというような議論については——あるいはそれで買う人がおるかもしれませんが、そういうものは正常の価格でないというたてまえでございますので、実質的な近傍の類地に反映する実質価格というふうなものを基準にして考えるわけでございますから、計画時から事業認定時までの間に従来とは違った形で非常に大きく上がってくるんじゃないかという御心配はおそらくなかろうと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/77
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078・北側義一
○北側委員 政府委員のおことばによりますと、そのようにそう大きな地価の値上がりはない、このような見解に立っておられるわけですが、そうしますと事業認定から裁決時ですね、それまでは平均いままでは、これは早くなるでしょうが三百日、この期間に対する地価の上昇というものは当然これはいままでと同じように上がっていくんじゃないか、このように私は思うわけなんです。その場合に、土地を収用されたいわゆる起業地の土地所有者は非常に大きな不満を持つんじゃないか、このように私は思うのです。わずかの——当然これはごね得なんかというのは決していいことではないのです。悪いことです。しかし全部がそのようなごね得をやった人か、そうじゃないと思うのです。これからますます公共事業が多くなされなければならない。ところが一部のそういうごね得のために良識ある人たちまでがこの事業認定時にくくられて、補償金額の決定がくくられて、そうしてそれ以後に大きく起業地の周辺が、開発利益が伴って、そして地価が値が上がった、このようなことになりますと、ともに土地を収用された人たちの大きな不満というものが、人間である以上私はわいてくるのじゃないか、そういうことに対してはどのような考え方を持っておられるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/78
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079・志村清一
○志村政府委員 従来の実際の例から申しますと、先生も御指摘ありましたように、収用裁決まで至るというのはごく少数でございます。大部分の方は良識を持って妥当な線で妥結をされているわけでございます。さような実態が今後なくなるということでございますが、さような実態は従来と少しも変わらない、むしろ従来はごねればごねるほど値段が上がるものでございますから、早期に協力いたしたくても実は協力できない。絶対額よりも、隣の人より私のほうが値段が安かったということのほうが問題でございまして、さようなこともなくなりますので、早期協力者がかえってふえてくる、そして任意協議の場もふえてくるという逆の効果があるのじゃないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/79
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080・北側義一
○北側委員 見方が甘いような感じがするのです。私は。と申しますのは、やはり土地を持っている土地所有者、特に起業地の収用される人たちというのは、大きなばく大な土地を持っている人はいざ知らず、小さな土地をこつこつとお金をためて買ってそうしてたまたま家を建てた、このような場合には、それに対して大きな愛着があろうと思うのです。そうして、しかもそれが認定時で補償金の価格がきめられて以後起業収益があがってくるのに対して不満を抱かないのはちょっとおかしいと私は思うのです。
また、あなたがいま言われましたとおり、このような改正法案が国会を通過しましても、私は、当然このことにつきましては協議して、話し合って、そしてきめていくべき問題である、このような改正案をだんびらとしてやられては、これはたまったものじゃないと思うわけです。いま非常に数が少ないから、このような御答弁でございますが、なおかつ今後もこのような改正案が通りまして、それがむやみやたらに使われるようなことがあると、これはますますわずかのごね得を——それからこの法を使用する間におきまして、これはむしろ改正案以前の法でいいのではなかろうか、このような考えも出てくるわけです。これはもう現在この改正案が国会を通過しましてもその使い方によると思うのですが、その点はどのように考えておられるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/80
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081・志村清一
○志村政府委員 お互いに、起業者とそれから土地所有者等の関係人との間で十分話し合いをしなければならぬという御指摘かと存じますが、それにつきましては改正収用法案におきまして、事業認定をする前からあっせんという制度がございます。現行法では事業認定をしてから土地細目の公告がある以前というふうになっておりますが、改正案におきましては事業認定の前におきましてもあっせん制度がございまして、どちらか一方が話し合いをしたいということであっせんを申し出ますと、あっせんをするということもございます。また、事業認定を経た後におきましても協議の方式がございまして、お互いに相談がまとまりますと協議の確認という制度がございまして、土地収用法における裁決と同じような効果を持ち得るという制度も残しておるわけでございます。また、裁決申請が出てしまって収用委員会で議論をするという場になりましても、なお和解の制度が残っておりまして、お互いに話し合いがつくということになりますと和解が成立するというふうに十分の手当てはつけております。お互いに話し合いがつくようなかっこうにいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/81
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082・北側義一
○北側委員 次に、事業認定時におけるところの補償金の決定でありますが、これは不動産鑑定士によるところの鑑定評価ですね、これによってなされると思うのですが、その鑑定をするに際して、その基準がどのような基準でその事業認定時の補償金額を決定するのかということについて、ちょっとお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/82
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083・志村清一
○志村政府委員 事業認定時の価格の評価でございますが、これは従来の裁決時の価格の評価と大体同様でございまして、近傍類地の取引価格等を十分参酌してきめていこうということになるわけでございます。それにつきまして土地収用法におきましては、鑑定を頼む場合には鑑定士を必ず一名入れなければならぬということに相なっております。収用委員会で鑑定士に鑑定を依頼する場合も多かろうと存じますが、鑑定士につきましては、鑑定法におきましていろいろな制約を受けておりますし、また鑑定基準と申しますか、さようなものもつくっております。土地の価格をいかに評価するかということは、たいへんむずかしい問題でございますが、たとえばいままで費やした費用から合成していく複合価格の方法とか、収益還元の方法とか、あるいは類地の価格からアプローチする方法というようなことを十分に活用いたしまして鑑定評価額を出すというたてまえになっておるのでございます。それらを援用しながら、事業認定時の価格を鑑定士は評価するものと考えられる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/83
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084・北側義一
○北側委員 今回までの土地収用でありますと、先ほどお話がありましたとおり裁決時で補償金額が決定される。今回は変わって事業認定時ということになるわけです。その場合に、起業地の開発利益を見込んで補償金の決定がなされるのか、その時点で補償金の決定がなされるのか。これは鑑定士も、ここは起業地で、たとえば駅ができる、ぐんと上がるということは承知なんです。そういう点で、補償金の決定に際してそういうものが感情的に動くのではないか、このような見方もできるのではないかと思うのですが、その点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/84
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085・志村清一
○志村政府委員 それは先ほども申し上げましたように、土地の鑑定というのはたいへんむずかしい問題でございまして、全くの田畑と漸次市街化しつつある田畑、それから市街地が明確になっている田畑と値段が違うというふうな問題があります。これにつきましては、鑑定基準の中におきましても、一体土地の現況がどうであるのか、将来見通しはどうなるのかというようなこと、各要素を取り上げながらいっておるわけでございますが、しかし将来こうなるであろうということがわかりましても、そのこうなるであろうという値段を全部そのときの値段にぶっかけることはおかしいのでございまして、それらの期待価値というものをどの程度通常の価格には見込まれるかという問題でございます。これらは鑑定についてのいろいろ技術的な問題もございますし、また実勢等も勘案しながら考えてまいろう、かように存ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/85
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086・北側義一
○北側委員 たとえば起業地におけるところの用地の買収でありますが、買い手となるのはあくまでも政府機関であり、また地方公共団体がおもになってくると思うのです。これはたとえば例をあげますと、もちろん土地の価格はその周辺違うと思うのですが、ある方面では、どう見てもそう変わらないような場所で補償金が倍近く差がある。そういう例も私はしばしば見たり聞いたりするのです。そのような用地の取得機関部門の統一というか、ばらばらな買い方ではなくして、公平にそういうものをきめなければいけないように思うのですが、私はそれがないような感じがするわけです。その点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/86
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087・志村清一
○志村政府委員 まことに遺憾ではございますが、場所によっては公共事業主体で価格がある程度違うという例もなきにしもあらずのように聞いております。これはまことに遺憾なことでございますので、先ほど来御説明申し上げているように、閣議においてもそういう問題がないように公共補償基準要綱というものを定めたわけでございまして、どちらかと申しますと要綱は非常に抽象的でございます。さらにそれを精密にするために、用地関係の関係官庁が集まりまして用地対策連絡協議会をつくって建設省の補償基準を作成し、各省もそれに準拠してつくる。ところが基準と申しましても、なかなかそろばんにさっと入るような基準はむずかしいし、また不可能でもございますので、具体の運用の問題とか、それらについても十分配意をいたして研究を進めておるわけでございます。また現実に同一個所で幾つかの事業主体がぶつかり合うような場合には両方で相談をするという態度もきめておるわけでございます。
ただ、一つ申し上げたいと思いますのは、道路にしてもダムにしてもそうでございますが、たとえばダムの場合、湛水地に一坪でも土地が残ったということになりますと、これは湛水ができない。湛水ができないとその期間だけ発電ができない。そうすると、それだけの費用を計算いたしますと、一坪に対して幾らよけい払っても採算上はちっとも差しつかえない、おくれるほうがかえってまずいという極端な例があるわけであります。これは道路なんかの場合にもあり得るし、鉄道の場合にもあり得るわけでございます。そういうことになりますと、一体どうしてかと申しますと、一つには、先ほど申し上げましたように、逐次値が上がってくるというのを追いながら価格を決定していかなければならぬという土地収用法上のたてまえになっておりますので、それを改めて、事業認定時を基準にするということによってそういった不安はなくなってくる。ごねてもねばってもあまり得にはならぬ。しかし早期に協力されれば、売った方もちっとも損はない。そういうふうにバランスをとっていくような方式がぜひ考えらるべきだということで、今回の改正案も提案いたしたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/87
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088・北側義一
○北側委員 また少し逆に戻るような形になりますが、今日までは裁決時において補償金の決定がなされたわけです。それは一つの理論として、収用されるところの損失補償金は、近傍に同様の代替地を入手できる額でなければならない、このようにいわれているわけですが、補償金をいただいても、収用された土地と同じような土地が買えるかどうか、これは私は大きな疑問だと思うのです。それを局長さんのほうではそのように言っておられますが、事業認定時の補償価格をいただいても、周辺の土地が上がるということはわかり切っておるのに、その事業認定時の価格ではたして周辺部が売ってくれるかどうか、これにつきましては私大きな矛盾を感じるわけなんです。その点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/88
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089・志村清一
○志村政府委員 事業認定からだいぶ時間がたってまいりますと、おそらくさような問題が出ると思います。しかし、先ほども御説明申し上げましたように、事業認定がございますと直ちに補償金の支払い請求ができる。これはちょうど現在の、裁決があってからお金をもらう、それは裁決時の価格であるというのとシステムとしては同じでございます。従来の土地に相応するような土地が入手できるという価格は何かと申しますと、やはりその時点における近傍類地の取引価格を基準とした価格、こう考えざるを得ないと思うわけでございますが、ただ、その問題について、先生も御指摘になられておりますように、町の中とか、その他非常に問題のある個所はあるわけでございます。それらにつきましては、従来も市街地改造法というようなものによりまして、町の中でもうちょっとでもうしろへずれないというようなところにつきましては、立体換地の方法で、うしろの土地を収用して、うしろの住宅地の人が二階、三階にいっていただいて、前の商店の人は一階に入るということで、立体換地の方法でものを考えていこう。あるいは土地区画整理の方式等も考えていこう。今回はそれらにつきまして都市再開発法案として国会の御審議を待っておる次第でございますが、あるいはまた新住宅市街地開発法のように、地主さんが土地を収用される。そうしますと優先譲渡というかっこうで、地主さんがどうしても自分で使う必要があるというようなものにつきましては優先的にお返しするという方式を考えるというようなこと等の手当ては進めておる次第でございます。また、収用法の中においても現物補償の規定もございまして、施行者が持っている場合あるいは国にそういうものがある場合等につきまして、できるだけ権利者の要請に応じまして、つとめるということになっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/89
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090・北側義一
○北側委員 またこの改正案におきましては、「収用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、……事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とする。」このように定めておるわけです。この物価の変動率というものは、世間一般でいわれているところの全国的な地価の変動率、それとは違うものですね。むしろ全国的な全般的な地価の変動率に私は改めるべきではないか、このような考え方をいま持っているわけですが、それに対しての考え方はどのような考え方か。やはりもうこの考え方はこのように出ておるわけですが、どのように思われるか、それについてお尋ねしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/90
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091・志村清一
○志村政府委員 今回の改正は事業認定時の価格をその後の物価の変動に応じて修正するということになっておりますが、これは事業認定時の実質価格を補償したいという趣旨でございまして、事業認定時以後の近傍類地の価格の上がったり下がったりということは、一応補償には関係がないというたてまえをとっておるわけでございます。と申しますのは、一種の理論的な問題になりますけれども、事業認定を受けますと、たとえば道路敷になりましたということがはっきりいたすわけでございます。そうしますと、近傍類地とは性格が全然違うわけでございます。通常の場合にはそこの取引はないわけでございまして、本来事業認定時の価格というものを援用するのが一番理論的に正当じゃないか。しかしそれは額として考えた場合に、物価の変動がございまして不当に安い額になってしまうということでは、まことにお気の毒でございますので、物価の変動に応じまして逐次引き上げをしていくということにいたしているわけでございます。また裁決時までの間に相当時間がかかりますけれども、随時御説明申し上げましたように、その金は支払い請求によりまして、事業認定があればすみやかに支払われるというかっこうになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/91
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092・北側義一
○北側委員 本会議も二時からあるようですから、できたら次会にあと残りの質問をしたいのです。最後に質問するときはいつもこうなるのですよ。これではいけないと思うのです。できたら保留して次にやらしていただきたい。そうさしていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/92
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093・森下國雄
○森下委員長 一応了承いたします。
それでは、本日はこの程度にとどめ、次会は二十八日水曜日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することといたし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時四十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504149X01719670623/93
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