1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年五月三十一日(水曜日)
午後一時四十分開議
出席委員
委員長 八木 一男君
理事 天野 公義君 理事 小山 省二君
理事 丹羽 兵助君 理事 板川 正吾君
理事 島本 虎三君 理事 折小野良一君
田村 良平君 葉梨 信行君
三原 朝雄君 河上 民雄君
工藤 良平君 中井徳次郎君
中谷 鉄也君 吉田 之久君
岡本 富夫君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 大橋 武夫君
出席政府委員
警察庁保安局長 今竹 義一君
大蔵省関税局長 谷川 宏君
厚生政務次官 田川 誠一君
厚生省環境衛生
局長 舘林 宣夫君
水産庁次長 山中 義一君
委員外の出席者
文部省体育局体
育課長 西村 勝巳君
運輸大臣官房審
議官 鈴木 珊吉君
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五月三十一日
委員加藤万吉君辞任につき、その補欠として中
谷鉄也君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員中谷鉄也君辞任につき、その補欠として加
藤万吉君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律
案(内閣提出第六〇号)
産業公害対策に関する件(産業公害対策の基本
施策)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/0
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001・八木一男
○八木委員長 これより会議を開きます。
船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますのでこれを許します。折小野良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/1
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002・折小野良一
○折小野委員 ただいま御提案になっておりますこの船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案、この法律が成立するということになってまいりますと、当然に、この法律の目的でありますところの船舶の油による海水の汚濁を防止するために、船舶から海上に油を排出することが一般的に禁止される、こういうことになるわけでございます。
ところで、この法律におきましては、その第三章におきまして、廃油の処理事業を行なおうとする者につきまして、種々の監督規定を設けておるわけでございます。この廃油処理事業を行ないます者が、この事業を行なうために、すなわちタンククリーニングの施行あるいはスロップ水の処理、こういうことのために処理施設を有する港に入港する、入港しなければならない、こういうことが起こるわけでございますが、そうした場合におきましては、これはあくまでもこの法に基づいて海水の汚濁を防止する、そういう目的に沿った作業のために入港する、こういうことになるわけでございます。その入港の姿というのは、通常の場合の船舶の入港というものとは当然違っておる。その目的が異なる、こういうことがいわれるわけでございます。ところが、現行法の制度のもとにおきましては、こういう場合におきまして入港する船舶から入港とん税を取る。入港とん税を支払わなければならない。あるいは不開港の場合に不開港手数料を支払わなければならない、こういうようなことになっておるように承知をいたしておるわけであります。もともとこの法律の趣旨は油による海水の汚濁を防止するのが目的でございますし、その目的を果たすために廃油処理事業者の許可を行ない、またその事業を有効に行なわせようというのが目的でございまして、その作業のために入港のつどとん税あるいは手数料をとるごいうようなことは本来の趣旨に沿わない、こういうふうに私ども考えるわけでございます。こういう事態に対します運輸省としての御見解をお伺いをいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/2
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003・長谷川宏
○谷川(宏)政府委員 ただいまお尋ねのとん税及び特別とん税または不開港に入ります場合の入港手数料の問題でございますが、本法が公布され、施行されますのはことしの秋ごろというふうに承知しておりますので、それまでに私ども結論を出す予定にしております。考え方といたしましては、御承知と思いますけれども、とん税法の第七条に、外国貿易船が開港に入港した場合におきましては、たとえば「海難その他航行上の支障が生じたことにより入港する場合」「検疫のみを目的として一時入港する場合」こういう場合にはとん税を課さないことになっております。また、この法律の規定によりまして、いま申した理由に準ずるやむを得ない理由があるときは同じくとん税を課さない、私どもの解釈といたしましては、廃油の処理のみを目的として入港する場合、すなわち、ほかの荷物を積みおろししない、廃油の処理のみを目的として入港する場合におきましては、この検疫のみを目的として入港する場合に準ずるものとして、そういう方向でとん税を課さない。したがいまして、特別とん税あるいは不開港におきましても不開港入港手数料を課さないような方向で通達を出す予定にしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/3
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004・折小野良一
○折小野委員 ただいま大蔵省としての御見解をお聞きいたしました。ただいまの大蔵省の御見解と申しますのは、おそらく運輸省の御見解とも通じての大体のお考えだろうというふうに考えるわけでございますが、この秋ごろからということになってまいりますと、やはりはっきりさしておいたほうがいいのではなかろうか。ただいまとん税法の七条の検疫のみを目的とする場合に準じてという御意見がございましたが、通常考えまして、この規定に準じてということは、どうなんでしょうか、検疫のみを目的として入る場合に廃油の処理を目的として入る場合を準じて考えるということは、法律理論的な問題等もいろいろあろうと思いますが、はたしていかがかと思います。したがって、この際、そういうような面がありますならば、何とか制度を早急に改めて、この法律が成立いたしますと同時にそのような規定が整備されるということが望ましいことじゃないかと思うのでございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/4
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005・長谷川宏
○谷川(宏)政府委員 ただいまお尋ねのように、私どもこの法律が施行される際に間に合わせるように、このとん税、特別とん税、不開港手数料を課さない措置を講じたいと思います。念のため申し上げますと、七条の法律の規定は、一応とん税法ができましたときに、考えられます事例を列挙しておりますけれども、そのほかに法律の文面で「又はこれに準ずるやむを得ない理由があるとき」、これは今回のような法律ができまして、検疫に準ずるような、こういう特別な法律による義務的な入港ということも予想いたしましてこの法律の規定ができております。そうして従来も準ずるという事例といたしましては、LPG積載船等がガス抜きの作業等のために入港する、そういう作業をやる目的のみを持って、たとえば不開港へ入港した場合には、その手数料を徴しないという扱いを現にやっておりますので、この法律の精神に照らしまして、今回の場合は当然にこのやむを得ない理由があるといたしましてとん税を課さないという処理を、法律の施行と同時にやるつもりにしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/5
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006・折小野良一
○折小野委員 一応とん税法七条の解釈でやるというふうな御意見でございます。しかし、この際はっきりそれについて法の改正を行なうということのほうが妥当じゃないかと私は考えます。と申しますのは、いまのとん税法の七条の検疫のみに入港する、そういう場合に準じてというお話でございますが、この規定の精神は検疫というその事柄、準ずるというのは結局その事柄に準ずるということであろうと思うのです。そうしますと、やむを得ないということに準ずるというような御見解は、少し法の解釈からいたしますと拡張解釈に過ぎるんじゃないか。そういうふうな解釈からいたしますと、いろいろな場合がほとんどやむを得ないということでそれに入ってしまう。法が列挙的に掲げておるそういう趣旨に必ずしも合致いたさない、私どもはそう考えるわけです。もちろん、それまでに時間的な余裕がないということでありますならば別といたしまして、現在の段階におきまして、まだまだ時間的な余裕がないということはいえないわけであります。もちろん、政令につきましては政府自体で改正してやっていかれることはできるわけでございますが、法律につきましてはやはりそういうわけにまいりません。できることでありますならば、今国会の会期中にはっきりさしていただくということのほうが、法運営あるいは制度運営上よろしいんじゃないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/6
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007・大橋武夫
○大橋国務大臣 運輸省も、このことにつきましては大蔵省のほうにとん税の不徴収のお願いをいたしたわけでございまして、この問題につきまして大蔵当局と研究をいたしたのでございますが、これは法律に規定してないことを準じて取り扱うという意味ではございませんで、これこれの場合及びこれに準じて取り扱うことを相当と認めるような場合にはとん税は課さないという趣旨の規定になっているわけでございます。そのこれこれの場合というのは、ただいま大蔵省政府委員から、検疫のみを目的として一時入港する場合ということも引かれましたが、これも引いてもいいかと思いますが、その前に、第一号には、海難その他航行上の支障が生じたことによって入港する場合という規定がございます。したがいまして、お示しになりましたような場合は、廃油を捨てなければ航行上支障を生ずるわけでございますから、むしろこの一号がそのまま適用になるというような場合もあるのではなかろうか。いずれにしても、この第七条の本文に「第一号又は第二号に規定する理由により入港した場合(これに準ずるやむを得ない理由がある場合を含む。)」、こうありますので、法律の中に書いてないのを法律の解釈として準じた扱いで免税しようということでなく、法律の条文そのものの解釈としてこの第七条に基づいてとん税を徴収しない、こういう解釈でございまして、私は法律解釈として大蔵省のその御解釈は正しいものと存じますので、ただいま御指摘になりました、このためにとん税法を改正するというお考えにはむしろ不賛成でございます。この条文がせっかくあるのでございますから、無用の改正はする必要はない、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/7
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008・折小野良一
○折小野委員 御意見私どもはよくわかるのであります。しかし、大蔵省からおっしゃいました検疫のために一時入港する場合に準ずる、あるいはただいま大臣のおっしゃった航行できないがために一時入港する、そういう場合に準ずる。これはいずれにいたしましてもどうもあんまり準用のしかたが幅があるような気がいたしますし、どうもはっきりしないような気がいたします。もちろん、当時海水油濁の問題というのは当面問題になっていなかったわけでございますし、また、そういう法律もなかったわけでございますので、そういう面が予想されなかったことは当然でございます。しかし、今度新たに条約を批准し、こういう法律がはっきりできたということになりますならば、この法律に伴うこのような案件というのはやはり具体的に法の上で明らかにするということ。これはただ単に予想できるかできないかというような問題でなしに、もうすでに制度の上で明らかになっておるわけでございます。これは明らかにそこに規定をするということのほうが正しいのではないか、私はそう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/8
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009・長谷川宏
○谷川(宏)政府委員 ただいまの御意見は御意見だと思いますけれども、そういたしますると、この法律の明文の規定で、準ずる場合ということを狭く解釈いたしますると、現在すでに私どもが準ずる場合としてやっておりますところのバラストの注入のためあるいはクリーニングのための作業のみを行なう目的で入港する場合に、とん税等課しておらないわけであります。今後こういうような場合、一々法律の規定がございませんととん税を取らなければいけなくなるということでは、これは一般的に船会社に対しましても不ぐあいになるかと思いますので、従来の法律解釈の慣例に従いまして、せっかく法律ができたわけでございますけれども、いままでの慣例といたしまして通達によって処理することが適当だ、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/9
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010・折小野良一
○折小野委員 こういう場合は取らないのだということは、これははっきりおっしゃっていただいてわかるのですが、現実の問題としてはあまり問題は残らないわけであります。しかし、ただいまのお話にありましたように、緊急の場合にこれに準じてというようなことはいろいろあり得ると思います。しかしながら、明らかに処理業者というものができて、その処理業者の日常の活動としてそういう作業を行なうということになるならば、これは決して緊急の事態ではないのです。したがって、緊急の場合にということと、この場合はやはり別に考えるということが必要ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/10
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011・長谷川宏
○谷川(宏)政府委員 ただいまの法律による入港は当然の場合でありまして、法律の規定するところに従いまして、列挙する場合に準ずる場合として当然にとん税は課さないという扱いによって処理したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/11
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012・折小野良一
○折小野委員 取らないということがはっきりいたしました。私の質問は大体目的を達成いたしました。ただ法の整備の問題につきましては意見いろいろございましょうが、十分御考慮いただきまして、時代に沿うような正しい法律整備あるいはそれに基づきます法の運用というものをお考えいただきますようにお願いをいたしまして、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/12
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013・八木一男
○八木委員長 中谷鉄也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/13
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014・中谷鉄也
○中谷委員 大臣に次のような点をお尋ねをいたしたいと思います。
この法案によりましていわゆる五十海里以内の規制が規定されておる。そうすると、ほかにこの法案と関連する法案としては港則法の中に規定があって、港則法の関係においては、一万メートル以内についてみだりに物を捨ててはならないというふうな規定があるわけでございます。そういたしますと、この法案の提案の趣旨説明の中にありました海水浴場さらにまた漁場、いわゆる養殖漁場などについては港則法の適用を受けないわけでございますね。そうすると、一体この船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律は、前回の大臣の御答弁によりますと、この法律によって九〇%程度の油の排出は防止できるだろう、こういうことでございますけれども、海水浴場の汚濁防止あるいは養殖漁場の汚濁防止ということにどの程度の法律効果があるかどうか。この点について、私法案を拝見いたしまして若干疑問を感じました。この点についてひとつ御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/14
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015・大橋武夫
○大橋国務大臣 従来は港則法だけでございましたので、港の周辺一万メートル以外の海域はどこでも油を捨てることができました。このために、港に遠い海岸では自由に油を捨てまして、そのために海水浴場であるとかあるいは養漁場等が非常な被害を受けたことは事実でございます。今回この法案が成立いたしますと、すべての日本の沿岸から五十海里以内は大型船舶の油の投棄が禁止されますので、これによって取り締まりを受けないものということになりますと、全く小型船だけになるわけでございます。したがって、従来からの油の汚濁は、港内は別といたしまして、大きな海水浴場とか養漁場のありますような一般的な海浜におきましては、主として大型船による油の汚濁あるいはタンカーによる油からくる汚濁というものが主たる原因であったと思うのでございますけれども、今後は取り締まりの及びません小型の漁船であるとかあるいは小型の遊覧船というようなことになりますので、まず被害の大部分は防止できるだろう、こう考えてよろしかろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/15
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016・中谷鉄也
○中谷委員 五十海里以内という基準の中において、九〇%程度の油の汚濁が防止できるだろうという予測と、そのような法律効果をこの法律は持っている、こういうふうな御答弁でございました。いわゆる三海里説というようなこともございますけれども、海水浴場というようなことになってまいりますと、五十海里という範囲内における油の汚濁の割合が何トン以上の船かということはあまり問題じゃないと思うのです。要するに、海水浴場というものの定義を私ずいぶんさがしましたけれども、特段に法律上の定義はないようでございます。とにかく何十海里の先まで海水浴場というものがあるはずがないわけなんで、そういう海水浴場に関しての汚濁については、大きな船よりも、百五十トン以下の船、要するに本法による規制の対象外の船による汚濁のほうがむしろ多いのではなかろうか。大臣の御答弁はそうじやないという御答弁でございますけれども、そのような汚濁の原因は一体どういうことになっているんだろうか。百五十トン以下の船の分担すべき汚濁のパーセント、あるいは百五十トン以上の汚濁のパーセントというようなことについて、ひとつ政府委員の方からも御答弁をいただきたいと思うのです。何か聞くところによりますと、五十海里といいますか、三十海里とか四十海里のところでの油というのは、別に海岸のほうへは寄ってこないのだというふうなことも聞きました。それからまた、まだ厚生省の方おいでいただいていないようでございますけれども、たとえばし尿の海上投棄というような問題も、何も五十海里まで向こうに行って投棄しているわけではございませんね。そういうこととの関連において、海岸線に近い、すなわち海水浴場の汚濁の責任を追及されるべき油汚濁の原因というのは、むしろ私は百五十トン以下の船にあるんじゃないか、こういうような感じがいたしますので、答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/16
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017・大橋武夫
○大橋国務大臣 従来湘南等でよく海水浴場の海水に油が浮いているということで問題になったことがございますが、これらの原因は、詳細調べたわけではございませんで確たる根拠に基づいて申し上げることはできませんが、大体いままでの調査によりますと、まず外洋に面する海岸において五十海里以内の範囲内で大型船並びに百五十トン以上のタンカーの油の投棄を取り締まれば、大体それによっていままでの汚濁の九〇%は防止できるだろう、こういうふうに一般的に測定をいたしているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/17
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018・中谷鉄也
○中谷委員 政府委員に御答弁をいただきたいと思います。
私が関心を持って問題にしているのは、五十海里というその範囲内における全体の汚濁防止がどの程度この法律によってできるかということは、大臣の明快な御答弁がありましたので、それはよくわかりました。九〇%ということはよくわかりました。この前提でお尋ねをするわけです。もう一度、しつこいのですけれどもお尋ねをいたしますけれども、海水浴場といわれるそのような場所における汚濁の場合は、その九〇%というのではなしに、むしろ百五十トン以下の小型船のいわゆる汚濁などというふうなものがより多く影響するのではないか。逆に、今度四十八海里とか四十七海里のところでかりに油が排出されておっても、それほど、要するに海流に乗るわけでございますから、和歌山のほうでいえば黒潮に乗って太平洋に流れて行ってしまうわけですから、別に海岸のところまでこないじゃないか。そうすると、海水浴場の汚濁というのは、この法案によって海水浴場の汚濁を取り締まるのだ、そういうことのないようにするのだとおっしゃるけれども、法律効果がどの程度期待できるだろうか。私こういうふうなお尋ねのしかたをしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/18
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019・大橋武夫
○大橋国務大臣 いろいろ御質問を聞きながら私も考えてみたのでございますが、まず海水浴場には、日本の場合には内湾における海水浴場と外洋に面した海水浴場とあろうかと思います。外洋に面した海水浴場の場合におきましては、百五十トン未満の船の航行する割合は少のうございます。こういうところのいままでの海水の汚濁は、主として五海里なり十海里なり、すなわち五十海里以内の水面で油を投棄したというようなものが波に流されて押し寄せるというようなものが多かったと思います。これが全面的に今度排除されるわけでございます。次に、内湾における海水浴場も相当ございますが、内湾におきましては、小型船の往来がかなりひんぱんだと思うのでございます。従来からの港則法の規定によりまして、それが港湾から一万メートル以内で港則法の適用区域でございますと、これは港則法の関係で押えられておりました。しかし、それ以外の内湾においては、もともとそういう大きな船はめったに通りませんし、もともとから通っておった小さな船が引き続き通るわけでございますから、これに対しては、この法律ができてはたしてどの程度改善の実があがるかということになりますと、これは外洋に比べれば効果は薄いんではなかろうか、一応常識的にこういうことは考えられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/19
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020・中谷鉄也
○中谷委員 私自身いわゆる港則法という法律について詳しく検討し理解をしているわけではないのですけれども、要するに、港則法の目的というのは、港内における船舶交通の安全と港内の整とんをはかることが目的の法律であるということは理解しております。ただしかし、その港則法の中に二十四条の規定があって「何人も、溝内又は港の境界外一万メートル以内の水面においては、みだりに、」云々、要するに、ごみその他を捨てちゃいけないんだよという規定がある。そうすると、港則法の法目的とは若干違うにしてでも、海水浴場の何千メートル近くでものを捨てちゃいかぬ、あるいは、特に日本の場合は外国と違って養殖漁場というのは非常に多いと思うのですが、そういう養殖漁場の何千メートル以内でものを捨てちゃいかぬという、この港則法二十四条と同趣旨の規定を設けること、これは港則法の中に追加されるのか、あるいは港則法の目的とは全然違いますから単独立法ということに相なるのか、この点についての大臣の前向きの御答弁をひとついただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/20
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021・大橋武夫
○大橋国務大臣 御質問の御趣旨ははっきりわかりました。御指摘のとおり、港則法の適用も受けないし、五十海里以内の海岸ではあるけれども、しかし小型船すなわちこの法律の適用外になる船舶からの油によって海水浴場あるいは養殖漁場等の海水の汚濁があるではないか、これに対しては、この法律は解決策にならないおそれはないかという点でございますが、その点は私、確かに御質問のようなきらいのある点を認めるものでございます。そこで、この法律といたしましては、たびたび申し上げましたるごとく、海水の汚濁防止に関する国際条約を海運国たる日本としてはぜひとも批准しなければ体面が立たない、また、国内の公害対策としても必要だ、こういう見地でこの法律を出したわけでございます。そこで、内容的には条約と全く同一のものを取り締まるという点に主眼が置いてあるわけでございます。それ以外の養殖漁場、海水浴場等における海水の汚濁というのは、これは条約を離れたわが国の現状に即した一つの公害問題として今後社会的に無視することはできない問題であると思うのでございます。これにつきましても、できるだけそれを防止する措置をとることができるならばとるべきものだ、こういう考えはもちろん否定するものではございません。私どもといたしましても、そこまでいけば望ましいとは思っておりますが、御承知のとおり、この法律でもおわかりいただけますように、油の海上投棄を禁止するにあたりましては、廃油の処理事業というようなものも準備しなければ法の徹底を期するわけにまいりませんので、一般的に養殖漁場の付近とかあるいは海水浴場の付近というような場合において小型船の油の取り締まりもするということになりますと、そういう区域についてもやはりそうした問題が当然伴ってくると思うのであります。もちろん、公害防止の立場からいって、それも必要なことではございますが、運輸省の今回の法案提案における立場といたしましては、まず国際条約の批准ということを第一段階にいたしまして、その範囲で必要な規定を国内法で用意をしよう、一般的な海水の公害問題については今後の検討にまとう、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/21
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022・中谷鉄也
○中谷委員 水産庁の政府委員の方にお尋ねいたしたいと思います。
お尋ねをいたしたいことは、特に養殖漁場などというふうなものの存在、これはどんどんふえてくると思います。これに対する油などの、工場廃水等はもちろんでありますけれども、被害が非常に大きい。この場合、この法案によりますると、条約に右へならえしたんだ、だから百五十トンの油送船というところで条約どおりにこれも押えたんだということだけれども、この日本の現状から申しまして、百五十トンで押えられることによって、いわゆる養殖漁場の被害防止ができるのかどうか。さらに、いろいろなむずかしい問題はあるでしょうけれども、百五十トンというものを下げる、その点についての防止装置をつけるかどうかというふうな点についての要望が水産庁のほうにはないかどうか。さらに、いま私が大臣にお尋ねをいたしました、養殖場の付近においては港則法の規定に準じたような規定を設けて、油等による汚染を防ぐべきではなかろうかというような点についてひとつ御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/22
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023・山中義一
○山中政府委員 ただいまのお尋ねの点でございますけれども、私どものほうの関係で養殖場、特に油の関係ではノリの養殖場が大きな影響を受けるわけであります。これで申し上げますと、北のほうから大どころ被害を受けておるところが宮城県の……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/23
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024・中谷鉄也
○中谷委員 私の申し上げた質問にだけ答えていただけばけっこうですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/24
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025・山中義一
○山中政府委員 その点、大型のタンカーから出てくるというか、大型のタンカーが加害原因であります場合が大きな被害の場合は大部分それでございます。しかし、直接被害でなくて、におい等によりましてノリが値段が幾らか下がってしまうというような場合は、これは比較的原因がわからない小さいものに類するものではないかというふうに考えられます。しかし、世上あるいは水産界でかなり大きな問題になりましたノリの大被害、これはやはりみな東京湾あるいは三重県の四日市沖その他比較的五十海里以内での大型タンカー等の油の流出による、こういうことが多く考えられます。
それから、いまの養殖場について、特に業界からの要望の点につきましては、これは油の油濁問題という形でなくて、ノリ業界からは、公害基本法のほうで被害を考えてほしい、被害者に対することを考えてくれというような要望は聞いております。
それから、百五十トン以下に下げる、あるいは一般の船を、いま五百トンになっておりますが、それを以下にするという点につきましては、部内ではいろいろ検討してまいりましたし、漁船については、その点できるだけ指導して、曲水の分離装置をつけるなり何なりして、われわれとわが手でよごすということはないようにつとめてまいりたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/25
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026・中谷鉄也
○中谷委員 同趣旨のお尋ねを厚生省の政府委員の方にお尋ねいたしたいと思います。
私がお尋ねをいたしたいのは海水浴場についてです。私は同じことを繰り返すのはあまり好きではありませんけれども、要するに、海水浴場あるいは養殖漁場というようなものは、港則法と同趣旨の法によって保護さるべきだというようなことを考えているのですが、それはさておいて、私は海水浴場というのをいろいろなところで調べてみましたけれども、一体海水浴場というのは厚生省のほうで何なのでしょうか。海水浴場ということばが特にこの法案の趣旨説明の中にも出てきているのですけれども、海水浴場というようなものについての明確な定義というものはあまりございませんですね。それで海水浴場の汚濁を防ぐのだというのですけれども、これは非常に常識的に海水浴場なんだよといってしまえばそれまでなんですけれども、一応その点についてひとつ御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/26
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027・舘林宣夫
○舘林政府委員 一応の調査によれば、全国で約六百カ所海水浴場があることになっております。しかし、お尋ねのとおり、正式に地方の条例等によって海水浴場として許可を受けて海水浴場を開いておるというようなところは、確かにそれが正式の海水浴場として考えることはできますけれども、条例等によって明らかに海水浴場という正式な指定が行なわれていないところは、これが海水浴場ということをだれが認知するのかということは、非常にむずかしゅうございます。一応各都道府県の観光関係の役所が、どこそこの海水浴場というような呼称をしておるものを集計したものが、ただいま申し上げましたような六百カ所に近い五百数十カ所、こういうような数字になっておるわけであります。
これらに対しまして、お尋ねのような海水浴場の生活環境を保全するためにどのような配慮が必要であるかということでございますが、これはいずれ公害基本法が制定されまして、それに基づきます水質基準がきまります場合に、地域によってこれはもちろんある程度相違があると思います。やはり海水浴場のような環境を維持する必要があって規定がなされるということであれば、その基準を守るためにいろいろの面で今後保護していかなければならぬ。その場合に、今回ここで御論議をいただいております油の関係の法律もそれに協力をいたしますし、またふん尿のようなものの投棄に関しましては、清掃法というものが今日ございまして、一定の海面には汚物を流せないということになっておりますが、それらのものが相協力してその水質の維持をするように運用においてつとめる。もし運用だけではうまくいかないということであれば、個々の法律を改正してでもその基準を守る方向でいく。かような運びになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/27
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028・中谷鉄也
○中谷委員 一つ私疑問に思っている問題について、たまたま政府委員の御答弁の中に、公害基本法のというおことばが出ましたのでお尋ねをしたいと思うのですけれども、いわゆる現在審議しているこの法案は、五十海里以内の油の汚濁の規制に関する法案でございますね。そうすると、環境基準ということに相なりますと、いわゆる三海里領海説との関係において、環境基準の設定というのは、この法案では五十海里以内の油の汚濁に関して規制している。そうすると、どの範囲まで公害基本法は——この法案との関係において親子の関係に私はある面において立つと思いますが、そういう関係において環境基準の範囲の設定はどういうことに相なるのか。環境基準の範囲というのは相当の地域——こまかいことは聞きませんけれども、要するに三海里以上五十海里以内の環境基準の設定ということはお考えになっているのでしょうか、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/28
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029・舘林宣夫
○舘林政府委員 今回の公害基本法の基本的な考え方の底に流れるものは、国民の人としての生活が中心になっておるように考えております。しかしながら、同時にその人に関連する動植物関係の環境をも考えていく。それに対する、たとえば水産あるいは植物というようなものに対しての公害も考えるという考えが入っておるわけであります。ただそれを非常に広く考えますと、単に五十海里にとどまらず、漁業の地域に至るまですべてこれは波及するかということでございますが、やはり通常の領土という意味合いからいって、三海里以内が普通の国内行政の規制の範囲にある、かように考えるものでございますので、これは今後まだ検討すべき問題でございますが、おそらくは大体三海里以内の水域を中心に考えていくことになると思います。ただ同時に、この法律で問題となっておりますような五十海里というものも、やはり考慮の中には入れるかもしれませんが、本筋といたしましては、やはり三海里以内の通常の領域の範囲内の問題として把握してまいりたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/29
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030・中谷鉄也
○中谷委員 厚生省の政府委員の方に重ねて御答弁をいただきたいと思うのですが、海水浴場の数を六百近く——そのとおりなんです。何か朝日新聞の民力測定資料によりますと、一九六五年の警察庁の調べで五百九十ということに相なっております。ところが、そこの和歌山県のところを見てみますと——これは和歌山県のことを聞くのじゃないのです。私、それを見てみますと、そんな海水浴場ありませんよ。もう泳げなくなっているのですね。そういうところがあります。そこで一九六五年の段階において五百九十近くということです。いま政府委員の御答弁にも六百近くということでありましたけれども、泳げない海水浴場、これは海水浴場じゃありませんね。一体厚生省のお調べで六百近くあるということだけれども、工場排水の問題あるいは下水の問題、あるいは油の汚濁等原因はいろいろ複合的であろうと思いますけれども、泳げない海水浴場というのは一体どの程度なのか、六百近くの海水浴場がどの程度だめになっておるのかということをお尋ねいたします。同時に、一体この点については、すでに厚生省のほうにおいては詳しい資料等もお出しをいただいておるようでございますけれども、泳ぐべきでない海水浴場というのが幾つかあると思います。泳げない海水浴場ということではなくて、泳ぐべきでない海水浴場、これは六百近い海水浴場の中でどの程度なのか、原因が複合的でありますから、本法案とは直接関係ないと思いますけれども、公害問題という観点からお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/30
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031・舘林宣夫
○舘林政府委員 お尋ねのとおり、この五百九十カ所という一九六五年三月三十一日付けの資料の中には、今日すでに大阪南部、和歌山県北部等において、汚濁のために海水浴場としての機能を失ったものがあることは御指摘のとおりであります。私どもとして、全国的にその五百九十カ所の中の何カ所が今日使用不能になっておるかという調査資料は持ち合わせておりませんけれども、お尋ねのとおり、すでに大阪府下には使用不能の海水浴場がふえてまいりまして、その代替といたしまして、プールを漸次つくってまいるというようなことが行なわれておるわけであります。
どのような状態におちいりましたときに海水浴場が使用不能であるかというようなことでございますが、これは昭和三十一年に厚生省から通達を出しまして、大腸菌数等によって一定の限度をこしたものは適当でないということで、大腸菌数、すなわちし尿によって汚染されておるということを目標に、公衆衛生上の見地から使用に適切でないという判定を下すようにしてあるわけでありますが、実際今日使用不能におちいっておる主たる原因は、むしろ、先ほど来種々問題になっておりますような油とか工場排水とか、そういうものによってきたない海面になってしまって、ばい菌よりはむしろそういう面で海水浴場として適当でないという状態におちいっておるわけでございまして、そのような海の中のよごれがどの程度であるかというようなことの詳しい基準が今日まだ設定されていないというの、が現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/31
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032・中谷鉄也
○中谷委員 いま政府委員が御答弁になりましたのは夏季観光地等の清浄化に関する件という通達であろうかと私思います。一体、そうすると、子供の心理を考えてみます。子供を持つ親として私考えてみますけれども、子供は泳ぎたがるのです。そういうふうな泳ぎたがる子供について、子供がもう飛び込むのはいやだというほどよごれている場合は、これはもう子供は飛び込まないでしょう。ただしかし、親の立場から見て、保護者の立場から見て、泳ぐべきところでないところで泳ぐところに危険があると思うのです。そうでございますね。そういう点で、いわゆる水質についての基準というふうなものの厚生省として明確な御方針がないというふうにいまの御答弁をお聞きしましたけれども、これは私ちょっと意外であります。一体、大腸菌等の問題もありまするけれども、泳ぐべきでない基準というふうなものを明確に、早急にお立てになるべきではないか、この点が一つ。いま一つは、水質検査について調べてみましたけれども、水質検査を一体どこがだれの責任でやるのか、この点についてのあまり明確な取りきめというか、行政指導の方針がないようですけれども、この点についてもあわせてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/32
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033・舘林宣夫
○舘林政府委員 昭和三十一年の海水浴場に関する指導通達の内容におきましては、各都道府県知事に、その清浄化に関する指示をいたしておるわけであります。したがいまして、実際面では末端の保健所が必要に応じて検査をすることになっておりまして、現に各都道府県を私どもが調査した範囲では、必ずしも十分とは言いがたい状況ではございますが、保健所がそれぞれ海水浴場の水質の調査をいたしておりますし、また条例が制定されておるところにおきましては、さらに保健所がひんぱんに、あるいは必要に応じてはその海水浴場の開設者に検査の義務を課しておる、こういう状況でございますが、お尋ねのように、それらの検査は従来は主として細菌を中心に、細菌感染ということを防止する目的で検査が主として行なわれておったわけでありまして、海水浴をするにふさわしい水であるかどうかというような面の化学的な分野での水質ということをあまり配慮してなかったわけであります。これらの点は、ただいま申し上げましたように水の環境基準というものができる機会に当然に配慮すべきである、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/33
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034・中谷鉄也
○中谷委員 防止の問題をお尋ねしているわけではないのです。防止の問題について行政努力をするということは当然のことだと思うのです。ただ問題は、もうすでに六月、七月、子供は海水浴に行くわけなんです。そういうふうな場合に、厚生省としては早急に、子供の健康を守る、国民の健康を守るという観点から水質検査、そうして泳ぐべきでない海水浴場、またどの程度が健康に害があるかどうか等について検査をすべきであろうと思うのです。防止の問題としてではなしに、現実に近づいてきている子供が何万人、何十万人と海へ行くという状態の中でそのことを措置すべきだ、この点について次官のほうからひとつ明確にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/34
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035・田川誠一
○田川政府委員 大腸菌のような、いわゆるはっきりした面ではある程度規制ができると思いますけれども、たとえば重油であるとかというようなことになりますと、濃い薄いもございまして、なかなかこれは判定がむずかしいと思います。しかし、いずれにいたしましても、海水浴場の水の問題は何らか検討しなければならない段階ではあると私思います。ただ私、たいへんこれはむずかしい問題だと申し上げますことは、海水浴をやる場所、これはその場所によってそれぞれ非常に違うと思うのです。東京湾のような、内海で、そしてさらに湾がある、そういうような場所と、また相模湾、太平洋に面したような海水浴の場所、こういうような場所とは非常に環境が違うと思うのです。そうしてそういう表海に面したようなところで、たとえばある日は油が少しあった、しかしそれは一時的なものであって、すぐ翌日からはきれいになってしまうというような場所がございますので、一がいに一つの基準を設けて、この場所は泳ぐことは絶対いかぬとか、あの場所はいいとかいうふうにはっきりきめられない面もあるのではないかと思います。しかし、中谷委員のおっしゃられた海水浴場の問題は、ほんとうにこれは保健衛生上もっと私どもも考えてみなければならない問題であるということは重々認識しておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/35
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036・中谷鉄也
○中谷委員 この問題についてはもう少しお尋ねいたしたいと思います。
要するに、子供は本能的にとにかく海に行って遊びたい、こういう気持ちを持っていると思うんです。そういう中で計測的ないわゆる環境基準といいますか、こういう状態の場合には泳いではいけないのだということをまず早急におやりいただくことが一つ。同時に、子供が海へ来た、とにかく油が流れておってとても泳げない状態だというので引き返すというのならいいんですよ。そうじゃなしに、きょうはこういう状態で泳いじゃいかぬのだ、健康に害がありますよということは、そうすると一体どこに責任があるんですか。保健所がそういう問題について、こういう日には泳いじゃいけませんよということを子供に指示をする、そういうことを周知させるという厚生省、要するに保健所に責任があるのか。それとも、警察庁の方もおいでいただいていると思いますけれども、警察のほうで責任という問題が出てくるのかどうか。それとも一体、夏休みだけれどもこれは文部省の学校の先生なんだということになるのか。学校の先生というのはおかしいですね、警察というのもおかしいですね。やはりまた厚生省に戻ってまいりますよ。そういうようなことについて、現在これほど海水が汚濁していることは何も厚生省の責任じゃないと思うのです。だからといってこういうふうな状態を放置しておくわけにいかない。また海水浴の季節が近づいてきた。海水浴に行ったために子供の皮膚が荒れた、病気になったというような例を私ども聞いておりまして、これは非常に残念なことだ、こういう点についての措置をどうされるか。非常にしつこいようですけれども重ねてお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/36
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037・田川誠一
○田川政府委員 いまおっしゃられたように、保健衛生の面については私どもののほうでこれは監督をしなければならないわけであります。従来からも指導しておりますが、今後も都道府県を通じて、また保健所を通じまして保健衛生上遺漏のないように私どもは万全を期してまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/37
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038・中谷鉄也
○中谷委員 まあ万全を期されるとおっしゃるのですけれども、いわゆる水質基準そのものができていない。水質検査をどういうふうにおやりになるかという御方針も立っていない。ですからその点についての早急な、御専門の政府委員もおられるのだから、現在の措置として、いま一度明確な御方針を私はやはりお出しいただきたいと思います。
それから、文部省の方においでをいただいておりますので、本法案の審議に直接の関係はないと思いますので簡単にお答えいただきたいと思いますけれども、要するに、海水浴場が汚濁いたしまして子供は海を追われていったというような状態、文部省の対策としてはプールをつくっていくということに相なっておりますけれども、同時に、プールの水質検査についても、厚生省はすでにこの点については方針を決定しておられるようですけれども、文部省におきましても、プールの水質が健康に非常にふさわしくないというような状態があると思うのですが、こういうような点も、これは海がよごれたということの原因、それが結局今日に及んできているという問題だと思いますけれども、子供の健康を守るという観点から文部省にもお答えをいただきたいと思います。
厚生省、もう一度水質検査というような点を御答弁いただきたいと思いますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/38
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039・舘林宣夫
○舘林政府委員 これは、ただに海水浴に限らず川もかなり水泳の対象となっております。川を含めまして、水域における健康に影響する要素というものは、早急に検討する必要があるわけであります。それはただにかぶれを生ずるような油だけの問題ではなくて、化学工場等から排出する種々の化学薬品というものが、全部これは規制の対象として検討する必要があるわけであります。今後私どもとしては、できるだけ早く、海水浴をする人々がどのような健康障害を受け、どの程度以上の濃度のものであれば障害があるか、また、それを監視する監視網をどのようにするかということは考えていく必要があるわけであります。ただ、先ほど来お話がありましたように、海水浴場は、一応六百カ所と申しましても、日本の海岸はほとんどすべて泳げるような場所でございまして、これらの地域を全域四六時中検査するということは容易でございませんので、保健所が重点的に多数の人々が集まるところを十分能率的に検査をするというようなこと、並びに検査の方式も考えるということで、今後指導を強化してまいりたい。そうするための基準というものは早急に検討してまいりたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/39
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040・西村勝巳
○西村説明員 学校の水泳プールの水質検査でございますけれども、文部省では学校衛生基準というものをつくりまして、詳細にそのやり方を指導しております。浄化装置のつくり方からプールの水の消毒の問題、使用のしかたとか、かなり詳細なものができておりますが、これをさらに徹底してまいるように努力してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/40
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041・中谷鉄也
○中谷委員 舘林さんにお尋ねします。
何も全部の海岸線になんということで申し上げているのじゃないのです。五百九十カ所という前提でお尋ねをしているのです。そういうふうに御答弁になるなら、もう一度こういうふうにお尋ねします。要するに、一日に五千人以上六月から八月までの間に人が行く海水浴場の数というのは、警察庁で調べていただいたところによると三百五十八カ所であります。それから、三万から八万の人が集まるところが六十カ所ございます。それから八万人以上人がとにかく一日に集まるところは二十八カ所あるのです。そういう五千人以上というふうなところについて、強制的に泳ぐなということを言えるとか言えないとかいう問題は別として、子供の健康を守るという意味から、少なくとも一日五千人以上六月から八月の間に人が集まってくる海水浴場三百五十八カ所、それから五千人から三万人まで一日に人が来る二百七十カ所、その他というふうなところについては、少なくともこの六月ころまでには、いろいろな観点からの水質検査、どのように海水浴場が汚染されているかという問題については厚生省はやはり責任を持って御調査いただきたい。それについて、それを直ちに規制をできる状態であるかどうかということをお聞きしているのじゃない。そういうようなものについて御調査があって、そういう御調査が明確に出てこそ、あらためてこの法案等についてもさらに将来改正すべき点は改正をするというふうな問題が私は出てくると思うのです。この点についてはお約束をいただきたいと思います。政務次官にひとつ御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/41
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042・田川誠一
○田川政府委員 ただいまおっしゃられたような、大ぜい泳ぎをされる海水浴場、そういうようなところにおきましては、できるだけ御趣旨に沿うように水質の検査を今後厳重にやるように努力してまいります。
それから現在でも、先ほど局長から言いましたように、たとえば神奈川県なんかにおきましては、保健所で毎週二日ぐらい水質の検査、菌の検査をやっておるというところもございますし、大ぜいの集まるようなところでは、できるだけそういうような検査をやっていくように今後指導してまいります。
ただ、話がまた繰り返しになりますけれども、それでは、それでもってすべて規制をするということになりますと、かえってこれがまた国民の積極的な健康保持という面で萎縮をする面もございますし、そういうことも考慮をしてやってまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/42
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043・中谷鉄也
○中谷委員 だから、私自身も申し上げているように、それが直ちに規制につながるという観点ではなしに、どの程度汚染しているのかということは、厚生省の責任において早急にと、これは一言でけっこうですが、いま一度その点を御答弁いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/43
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044・田川誠一
○田川政府委員 早急にやってまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/44
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045・中谷鉄也
○中谷委員 そこでこれは私、大臣に御答弁をお願いするわけではないのですけれども、お聞きいただきたいと思うのです。
と申しますのは、私自身、やはり港則法の規定と同じような、三千メートルとか五千メートルとかよくわかりませんけれども、とにかく海水浴場とか養殖場の近くではものを捨ててはいけないのだ、百五十トン以下の船、すべての船についてですね。そういう規定がなければ海水浴場の汚濁というものは防止できないのではないかということを何べんも、これはしつこいのですが、そういうことを感ずるのです。そこで、そういうふうな海水浴場の汚濁に伴いまして、先ほど舘林さんの御答弁の中にありましたように、子供が海で泳ぐときに、いわゆる遠浅のところから出ていってしまって、要するに汚濁してないところをさがし始めているわけです、ことに和歌山なんかでは。だから、どこで子供が泳いでいるかわからぬ。とにかくきれいな海があったら子供が泳ぐというふうなかっこうになってきている。というふうなことで、私は、遠浅の海水浴場の汚濁というふうなことが、最近子供の海難事故の原因にもなっているのではないか、こういうふうな感じもいたします。特に河川等におきましても、従来は泳いでおったけれども、そこが泳げなくなった。したがって急流で泳ぐというふうなことで、子供の水難事故が非常に多くなっている。これも私は一つの公害、海の汚れたことの一つの悪い結果だと思うのです。
警察庁の方おいでいただいているようでありますので、最近の子供の、海におぼれた、川におぼれた、そういうふうな状態について、これは交通事故に匹敵するあるいはそれを上回るような数というふうに私聞いております。こういう残念なことがあってはいけないことだと思うのです。そういうような点について警察庁の立場から御答弁をいただきたい。同時に、この機会に、そういうふうな子供の命を守るという点について、どういうふうにすべきか。ことに建設業者が穴を掘って砂利を採取して、そのまま原状回復しておかないということで、深みにはまるということもずいぶんあります。こういうことで警察庁の御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/45
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046・今竹義一
○今竹政府委員 最近の子供の水の事故でございますが、海の問題を見ておりますと、必ずしも御指摘のように水泳に行って水泳でおぼれる、もちろんそれは基本的な形でございますが……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/46
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047・中谷鉄也
○中谷委員 詳しく年齢別に言ってもらいましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/47
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048・今竹義一
○今竹政府委員 水泳等のほかに、たとえば小さい子供でございますと、水のそばで遊んでおって落ちるというような、ほかの遊びをしておって水に落ちる、あるいは魚釣りとか魚とりというようなことをしておって水にはまって死ぬ、あるいはボートその他で水遊びをしておって死ぬというような、いろいろな形の事故が起きておるのでございます。特に未就学の小さな子供で申しますと、大体家の近くの川あるいは用水堀、せき等で水遊びをしておる、あるいは水辺で遊戯をしておるというような事故が四十一年の場合で七百九十七件ほどございます。
それから小学生、中学生になりますと、そういう水辺の遊戯というものではなくて、海とか川とかいうところへ行きまして水泳をしておる、あるいは水遊びをしておるというような形のものを中心に、事故が四十一年の場合七百七十四件ございます。
それからあと高校生等は、大体水泳中のものが大部分でございまして三百九十九件、こういうふうに発生いたしております。
私ども、こういう海水浴場あるいは河川等の施設管理者あるいは地域の自治体その他と協力いたしまして、そういう危険個所の遊泳の禁止、あるいはそういう広報活動の強化、それからまた事故の起こりました際の救助活動、救助体制の整備というようなことによりまして、水による死亡事故というものの減少につとめておる、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/48
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049・中谷鉄也
○中谷委員 それじゃ一点だけ厚生省にお尋ねいたしまして、最後に大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、神奈川県と大阪府などには海水浴場に関する条例があるようでございますが、厚生省としては、このような条例が各都道府県に設けられる——条例の内容は問題だと思いますけれども、設けられるということについては適当だ、設けられる方向で行政指導をされるかどうか、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/49
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050・田川誠一
○田川政府委員 条例を設けるほうがよろしいというふうに私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/50
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051・中谷鉄也
○中谷委員 では、また法案についてお尋ねいたしますが、大臣の先ほど、また前回からの御答弁によりますと、いわゆる油送船について百五十トンという規定は、条約と、それからいわゆる経済的な負担というふうに前回お聞きしたやに記憶をいたしますが、要するに百五十トンということの規定のよってきたる原因、条約にそうあるからというだけでは必ずしも合理的だと思えないのです。百五十トンのところに線をお引きになった理由について、いま少し御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/51
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052・大橋武夫
○大橋国務大臣 何トンを境にしたらいいかという問題だと思います。お説のとおり、法律は国内の海水汚濁を実質上取り締まるのであるから、百五十トンがいいか、あるいは百トンがいいか、もっと研究の余地はないか。この点につきましては、まことに御質問の御趣意はそのとおりであると思いますが、前回来申し上げておりまするごとく、さしあたりまして国際条約の批准をいたしたいと思いますので、国際条約を批准するにあたりましては、少なくとも百五十トン以上の油送船については取り締まりが必要であることは事実であります。そこで、とりあえず条約の要求する百五十トンというところを境にいたしまして、一応この法律を実施してみたいと思います。今後の実績によりまして、必要に応じてこの法律を拡充整備していくことが適当ではなかろうか。したがって、百五十トン以下の船舶の取り締まりが欠けておるために海水汚濁防止の実績が期待できないというような場合がありましたら、その際に十分に重ねて検討いたしまして、適切なる変更をいたしてまいるべきものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/52
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053・中谷鉄也
○中谷委員 非常に率直な御答弁をいただきまして、実は私もこの点については、なぜ百五十トンのところに線をお引きになったのだろうかということについて、私なりに調査あるいは聞いて回ったのですけれども、必ずしも皆さんのほうから明確な御説明がなかったわけなんです。
そこで政府委員の方にお尋ねをいたしますけれども、いわゆる百トン程度の船の場合に、ビルジ排出防止装置をつけることが、船舶所有者の経済的な負担になるというふうなことはあるのでしょうか。また、そういうことはたいした問題でないということなのかどうか、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/53
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054・鈴木珊吉
○鈴木説明員 ただいまの御質問でございますけれども、小さいものにつきましては金額はたいしたことはないと思います。ただビルジは、これは海をよごす程度は非常に少なうございまして、タンカーのバラストが一番大きな問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/54
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055・中谷鉄也
○中谷委員 最後に一点だけ、大臣のほうから、いわゆる様子を見て将来検討すべき場合には検討しようという御答弁がありましたので、一点だけ私申し上げておきたいのですけれども、要するに条約ということですけれども、日本の国と申しますか、日本の場合は外国に比べまして非常に養殖漁場が多い。たとえば私の和歌山でいえば、ノリであるとかカキとか、いろいろなそういう養殖漁場が多い。こういうことで養殖漁場のあまりない外国の場合と同一視すべきではないじゃないかという、いわゆる百五十トン以下にすべきじゃなかろうかという意見は、私、調査の結果聞いてまいりました。こういう点をひとつ十分に御検討をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/55
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056・大橋武夫
○大橋国務大臣 確かに適切な御意見を承りまして、私どもも大いに啓発されるところがあったわけでございまして、お説のとおり国際条約は欧米から起こりましたので、養殖漁場という点では日本は全く条件を異にいたしておるのでございますから、百五十トンというものについて別の考えをする必要があるかもしれませんし、また日本において百五十トン以下のタンカーが相当多いというようなことも考えなければならぬことだと存じまするので、この法律をまず施行いたしましたならば、そういった点について続いて調査してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/56
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057・中谷鉄也
○中谷委員 一応きょうはこの程度にしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/57
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058・八木一男
○八木委員長 河上民雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/58
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059・河上民雄
○河上委員 私は、先日船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案につきまして、総括的な御質問をいたしましたので、きょうは二、三そのとき漏れましたような点について重ねて御質問することを許していただきたいと思います。
いろいろあるのでございますけれども、その第一点でございますが、その後もう一度よく国際条約と、ただいまここで審議されております国内法を少しく読み比べまして、両者の間に多少違いがあるのじゃないかという印象を受けたのであります。それはどの点かと申しますると、国際条約における第一条(1)のところに、用語に関する定義がいろいろ書いてございます。その中に、この条約の中で一番基本的な概念になると思います「排出」というそのことばについて、「「排出」とは、油又は油性混合物についていうときは、原因のいかんを問わず、すべての排棄又は流出をいう。」というふうに書いてございます。原文を見てまいりますと、排出ということばはディスチャージということばになっておりまして、「すべての排棄又は流出」というところを「ディスチャージ・オア・エスケープ」、こういうふうなことばを使ってあるのであります。このディスチャージということばとエスケープということばの違いというものは、一体どういうように理解しておられるのか。そして国内法を見てまいりますと、この排出ということばに関しましては何の定義も加えておらないのでございます。国際法におきましてあえて「ディスチャージ・オア・エスケープ」ということばを、二つの概念というものをはっきり示しておりますにもかかわらず、わが国内法においては、そういうことについて何ら触れておらない。これはおそらく英語のことばの意味を考えてみますると、ディスチャージのほうは意識的に捨てた場合、エスケープのほうはそう意図せざる場合にあやまって油が出た場合、こういうふうな区別をして、このあやまってやった場合にも当然この国際条約の対象になるというふうに、そういう基本的な考え方に立っているのじゃないかというふうに私は思うのでございます。このことは、わが国内法におきます第五章「罰則」というところがございますが、三十五条、三十六条あるいは三十七条にいろいろ罰則が書いてございますけれども、その罰則と非常に関係があると思いますので、この点について伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/59
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060・鈴木珊吉
○鈴木説明員 ただいまの御質問でございますけれども、国内法では排出ということばだけしか使っておりませんけれども、実質的には条約と同じ内容のものを規定しておるわけでございます。したがいまして「排出」という意味は、条約でいいます「排棄又は流出」というのを合わせた意味だというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/60
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061・河上民雄
○河上委員 もしそういうことでありますれば、これは後の罰則の場合に非常に関係があるわけでございますが、もしそういう解釈であるあらば、はっきりと法律にうたうべきじゃないか、私はそういうふうに思うのでございます。仕事で向こうへ行った船乗りの話によりますと、アメリカなどのごときは、あやまってこぼした場合でも非常にきびしい罰金を課せられる、しかも即決で金を払わなければならぬ、こういうふうになっておるのでありまして、そういう国際的常識という点から見まして特に「ディスチャージ・オア・エスケープ」ということばを使っておるのでございます。したがって、国内法におきましても、排出とはどういう行為をさすのかということを定義しなければ、この法案全体がほとんど無力になるというおそれがあると思うのであります。その点ははっきりとここで大臣の責任ある御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/61
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062・大橋武夫
○大橋国務大臣 第五条の油の排出禁止の違反者に対しましては、第三十六条で、違反となるような行為をした者は懲役または罰金という規定ができております。この行為というのは作為及び不作為でございますから、したがって、排出という結果を生ずることを知りながらある行為をした者、またはそれを防止するに必要な行為を怠った者、この両者を含んで罰則が適用になる、こう思うのでございます。その場合に、明らかに過失に基づくものであるということになりますと、その場合におきましても、やはり罰をかけるという解釈だそうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/62
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063・河上民雄
○河上委員 ただいま大臣からは、そういう解釈があるそうですという……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/63
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064・大橋武夫
○大橋国務大臣 いや、政府の解釈はそういうことだそうですということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/64
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065・河上民雄
○河上委員 しかし、この国際条約の場合でも、もしそういうおそれがないとすれば、解釈で済ますことができるはずでございまして、特にここに明記してあるというのは、過去の長年にわたる実例からそういう必要を感じたからこそこういう条約ができておると思うのでございます。その意味におきまして、国内法におきましても、そういう点をはっきりと、作為的な場合と気がつかないでやってしまった場合と、はっきりと両者を含むということを排出の定義としてここに入れていただかなければ、この法律の意味がなくなるおそれがある。また大臣がかわられたり、局長がかわられたりいろいろいたしますと、いや実はそういう解釈がないというようなことになるおそれもあると思いますので、そのことをここではっきりさせる必要がある、私はこういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/65
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066・大橋武夫
○大橋国務大臣 ただいまの解釈は法制局の認めた解釈でございまして、そういう解釈のもとにこの法案を提案いたしておる次第でございまして、大臣がかわったからという——私、個人的な意見を申し上げたわけではございません。この私の答弁は長く速記録に残りまして、この法律解釈のための重要な参考資料と相なるのでございますから、運用上は差しつかえないものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/66
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067・河上民雄
○河上委員 こういう問題は、必ず非常に微妙な限界の上で事件が起こる可能性が多いわけでございます。そういう意味からいって、もしそういう解釈が確定しておるならば、当然法律の上に明記すべきではないか、私はそう考えるのでございまして、この法案はまだ成立に至っておらないわけでございますから、その論議の過程を通じてはっきりそういう点に持っていかなければいかぬというのが私の感じでございます。ひとつそういうふうに努力するというお約束をここでいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/67
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068・大橋武夫
○大橋国務大臣 私は、この法案は修正の必要はないと考えるのでありまして、「排出してはならない。」これが第五条の規定でございまして、その「排出」というのは、この条約を施行するためにできた法律であり、その条約の中には「排出」の定義がすでにうたってあるわけでございます。その条約で定義された「排出」という字句を使いまして、「排出してはならない。」こういう規定がある以上は、その「排出」という解釈は条約と同じに解釈することは解釈上当然でございます。それから「排出してはならない。」という規定の違反となるような行為をなした者は罰せられるという趣旨でございまして、行為には作為と不作為があります。すなわち、排出という結果を生ずるということを知りながらあえてその原因となるべきような行為をした者、これは作為による違反であります。また、排出という結果が生ずることが明らかでありながら、それを防止する行為を故意または過失によって怠ったということは、これは不作為による違反でございまするので、法律解釈といたしましては一点疑いを差しはさむ余地はないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/68
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069・河上民雄
○河上委員 これ以上押し問答いたしましても、時間も限られておりますので、いまの大橋さんの御解釈は、国会の議事録を通じまして長く記録されて拘束力を持つものだと私は考えますけれども、やはりそういうことは、法律というものはある基準を示して指導するという役割りも持っているわけでございますから、そういう点はもっと疑いを生じないようにはっきり書くべきでないかというのが私の考え方でございます。
第二点といたしまして、先ほど中谷委員からも、そして私も先回お尋ねしたのでございますが、例の百五十トンという線でございます。百五十トン以下の小型タンカーについてどういうふうに取り締まるかという問題が一つ出てくることと、それからこの前お答えをいただきましたあと、神戸港の実情をちょっと調べてみたのでございますけれども、それで見ますると、内航船トン数別の入港隻数ですね。船の数を見てまいりますと、これは四十年度の神戸港の数字でございますが、百トンまでが三千七百九十一隻、全体の七・四%、百トンから五百トンまでが三万二千五百八十九隻、パーセンテージにいたしまして六五%ということでございます。つまり、これを合わせますると七二・四%、隻数におきましては、五百トン以下の船が実に七二・四%も占めておるのでございまして、そういう数字を考えてみますると、百五十トンあるいは五百トンという線がはたして適切であるのかどうか、ことに瀬戸内海のように内航船の多い場合においては、はたしてこれでよいのだろうかという疑問が出てくるのでございます。その点につきまして、前回は大橋さんから、この新しい法律だけで九〇%の油による被害を除去することができるという御答弁をいただいたのでございますけれども、こういう点から見ますると、そういうことがそう簡単にいえるかどうか、トン数と隻数では基準のとり方が違ってまいりますが、その点をちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/69
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070・大橋武夫
○大橋国務大臣 この五百トン未満の中には百五十トン以上のタンカーも相当あるのじゃないかと存じますので、その分は隻数からも減ってくると思いますが、それはまあ別問題といたしまして、いままで海水を汚濁しております最も大きな原因は、何といってもタンカーのバラスト水によるものなんでありまして、この点につきましては百五十トン以上は今度は罰則でもって禁止されることになりますので、これは有効に防止できると思います。問題は、御指摘になりました、また先ほど中谷委員からも仰せになりました百五十トン以下のタンカーのバラスト水の取り締まりがないじゃないかということでございます。これにつきましては、さしあたりは私どもといたしましてはこの法律で直ちに禁止する措置はとっておらないのでございます。この法律を実行した上で、なお瀬戸内海とかあるいは海水浴場養殖場付近であるとか、そういうところにおいて海水の汚濁がなお耐えがたいというような場合におきましては、ある程度行政指導によって措置いたしますとともに、必要に応じましては新たなる立法によりまして百五十トン以下のタンカーについても取り締まりを励行するという決意をしなければならぬと思います。要は法律施行後の公害の程度いかんでございまして、その状況を見て態度を決定したいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/70
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071・河上民雄
○河上委員 ただいまの問題、百五十トン以下の小型タンカーについてなおかなりの被害があるとすれば、またあらためて法改正を行なうつもりであるというお答えでございましたが、なお念のため申しますと、タンカーにつきましても、これは正確な数字じゃございませんが、神戸港の場合ですと、百五十トン以上のタンカーというものは五〇%くらいにしかならないというようなことをちょっと聞いたのでございますが、つまり隻数の場合です。トン数ではございません。そういうことから考えまして、タンカー百五十トン、一般船五百トンという線は、どうも日本の実情から考えますとやや甘いと申しますか、合わないというか、そういうおそれが非常に多いように思うのでございまして、そのことを十分お考えいただきたいと思うのでございます。
続いて、今度の法を施行する場合に、それに伴う予算措置と取り締まり方針につきまして若干お尋ねしたいと思うのでございます。
まず第一に、従来とも港則法で十分にそういう問題を取り締まっておったというふうに考えられるといたしましたら、海上保安庁では従来こういう問題について港則法に基づいてどの程度のことをやっておったのか、そういうことを一度お伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/71
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072・大橋武夫
○大橋国務大臣 まあ、政府委員をお呼びいただきまして聞けば、いろいろこうもやった、ああもやったというようなことをお答え申し上げるかもしれませんが、実際上正直なところを申し上げますと、いままでそれだけの十分な船舶あるいは人員等を持っておりませんので、何か特別に苦情があったりあるいは関係者から訴え出たときに取り締まりに出向くというような程度でございまして、積極的にパトロールして、そして厳格に法を実施するというようなところまでは手が届いていなかったということが、偽りのない実情だと存じます。政府委員が参っておりませんから、その程度で御理解をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/72
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073・河上民雄
○河上委員 担当者の方がおられないということでございますが、その場合、従来ともそういう取り締まりが十分に行なわれておらなかったといたしますと、一体今度は、この法律ができた場合にどの程度の熱意を持っておやりになるつもりか。それに伴ういろいろな予算措置なり取り締まりの方針なり、そういうようなことについて御決意を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/73
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074・大橋武夫
○大橋国務大臣 御承知のとおり、本法実施に伴いまして予算措置を講じまして、主要なる港湾には逐次廃油処理施設を設けることに相なっておるわけでございます。従来海上保安庁の取り締まりが行き届かなかった一つの大きな原因は、実際取り締まろうといたしましても、廃油処理施設というものがなかったので、どうもしかたがないだろうといったようなことになりがちであったのでございますが、今後におきましては、法律がはっきりでき、そうして無責任な海上投棄を防止するための必要な廃油処理施設も完備することでございますので、今後は取り締まりに留意させることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/74
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075・河上民雄
○河上委員 ついでにお伺いいたしますけれども、港則法で取り締まる場合、本法との区域の間に若干のギャップがあるわけでございますが、そういう点については、従来どおり、その適用外のものについては野放しにするおつもりでいらっしゃいますか、それとも何らかの便宜的な措置をとられるおつもりでいらっしゃいますか、その点をお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/75
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076・大橋武夫
○大橋国務大臣 今度こういう法律ができましたので、法律の適用外のものにつきましても、できるだけ法律の趣旨に従って廃油の処理をやっていく、そうして港域を汚濁させないようにつとめたいと存じます。また、その決意さえありますならば、港則法のいままで適用が困難でありました条項について、これを厳格に適用するという措置によってその方針がなし得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/76
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077・河上民雄
○河上委員 いま海上保安庁の担当者の方がおられないということでございますので、このことはまた追ってお伺いしたいと思っております。
また法案に返りまして、罰則という第五章がございますけれども、この中で第三十六条に「第五条第一項又は第六条第一項の規定の違反となるような行為をした者は、三月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」とあるのでございますけれども、ちょっと私が調べましたところによりますと、アメリカなどはそういう場合非常に罰金が重いそうでございます。大体どのくらいになっておるのか、それを伺いたいということが一つ。
それから第二に、油が流れた場合に、それをされいにする薬か何かあるそうでございますが、それをやるのに少なくとも十万円ぐらいは軽くかかってしまうというような話でございまして、量が多ければもちろんもっと高くかかるわけでございますが、そうしますと、そんなことをするよりは罰金でも払ったほうがいいんじゃないかというようなことになりかねないようにも思いますし、うまくやれば免れてわからないというようなこともあると思うのでございまして、何も罰金を重くする必要はないと思いますけれども、この罰金で適当だとお考えになっておられるかどうか、また、その基準など伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/77
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078・大橋武夫
○大橋国務大臣 すべて罰則は法務省の刑事局に相談をいたしまして、刑の中身をきめてもらっております。この「三月以下の懲役又は十万円以下の罰金」がどういう理由で適当かということにつきましては、ひとつ法務省の政府委員をお呼びいただきました節にお聞きをいただけばしあわせでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/78
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079・河上民雄
○河上委員 私は、要するに実効をあらしめるという観点からこれがはたしていいのかどうか、そういうふうに伺っておるわけでございまして、私どもあまり技術的なことを知らないのでございますが、先ほど申しましたように、自分の責任において自発的に処理していくというふうに誘導していくということのほうが大切であるというのが基本的な考え方でございまして、そういう観点から見て、こういう罰金が妥当であるかどうか、そういうことをちょっと伺ったのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/79
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080・大橋武夫
○大橋国務大臣 この法律では、罰金刑ばかりでなく三月以下の懲役刑がございますので、懲役刑とのつり合いというような点から十万円の罰金ということがきまったものだと思いますけれども、この刑の罰条の制定につきましては法務省の所管になっておりますので、刑事局の関係者をひとつお呼びいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/80
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081・河上民雄
○河上委員 どうも、これは後日呼ばしていただきまして、きょうはいまこれ以上いろいろお尋ねいたしましてもお答えが得られないように思うのであります。これは当然港則法における罰則、過去における事例あるいは外国における事例、そういうようなものを勘案してやるべきものではないか。要するに、こういうものをつくった場合に、やはり実効あらしめるということが大事でございまして、その点からちょっと伺った次第であります。
それから次に、今度の法律によりますると、港湾管理者にいろいろの防除施設をつくらせるようにしておるわけでございますけれども、国際条約の原文と比較をいたしますると、私の読み方が間違っておればまた御指摘いただきたいと思いますが、その点は第八条の(1)の(b)というところに「油の荷積み場」云々ということが書いてありまして、それを原文によりますると、「オイルローディング・ターミナルス」となっておるのでありますが、この感じからいいますると、必ずしも港湾管理者の責任であるという感じを受けないのでございますが、一体そういう点はどうなっておるのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/81
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082・大橋武夫
○大橋国務大臣 お説のとおり、港湾管理者以外の者が自発的にそういう施設をつくることは望ましいことでございまするが、しかし、そういう施設を民間で自発的につくらない場合において、港の出入ということを考えまするというと、やはり何らかの形でそういう施設がつくらなければならない。そこで今度の法律の立案にあたりましては、その場合には港湾全体の利用施設の管理者になるべき港湾管理者に、港湾管理権の一つの内容としてこういう施設をつくらせるということが適当じゃないかというわけでございます。しかし、そういう港湾管理者が施設をつくりましても、それ以外に民間の人が自発的につくることは、もとより歓迎すべきところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/82
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083・河上民雄
○河上委員 そういたしますと、条約では必ずしもそういうことは義務づけられておらないけれども、日本の特殊事情からそういうことを妥当だと認めた、そういうふうに解釈してよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/83
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084・大橋武夫
○大橋国務大臣 日本の港湾管理の現状から見てこれが適当だ、こう考えた次第でございます。お説のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/84
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085・河上民雄
○河上委員 最近の日本における石油の消費量というものはウナギ登りに上がっておりまして、今後また十年間に相当それは大きくなると思うのでございますが、そういう場合に、当然こういう施設も増設しなければならないということになるわけですけれども、とりあえずの措置として港湾管理者に責任を負わすことはやむを得ないといたしましても、今後ふえていく分につきまして、いつまでもそういうことを港湾管理者の責任にすべきかどうか。それとも石油業者のほうにより強く義務制を、少なくともそういう指導をすべきではないかというように私は考えるのでございますが、その点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/85
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086・大橋武夫
○大橋国務大臣 法案の二十五条には「自家用廃油処理施設」という表題の条項がございまして、ここには石油業者が自家用のための施設をする、あるいは船主が自家船のためにつくるとか、そういう港湾管理者以外の民間の自発的な施設が規定されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/86
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087・河上民雄
○河上委員 そういう義務の分担みたいな問題だけではなくて、将来拡張が予想されるわけですけれども、そういう拡張の負担まで港湾管理者が負うべきかどうか、その点に私は疑問を持っているわけでございます。今後の一つの行き方としては、石油業者は、自分たちがそれによって利益を得るわけでございますから、当然石油業者の責任においてやる。当座は間に合わないからやむを得ず港湾管理者がやるとしても、拡張が予想される将来においては業者の責任とすべきではないか、こういうふうに私は考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/87
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088・大橋武夫
○大橋国務大臣 この法案におきましては、現在将来を通じまして、自家用のものも認めるし、また自家用の施設が不足する場合においては港湾管理者の施設を認める、こういうことでございます。それで港湾管理者の施設に対しましては、政府もその費用を分担するという意味において二分の一は国庫補助という制度に相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/88
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089・河上民雄
○河上委員 私の申しましたのは、この法の解釈ではなくて、一つの政策として、全般に企業は涼しい顔をしておって、地方公共団体がその負担を全部かぶるというようなことが公害基本法その他一切に流れているわけでございます。そういうことの一つのあらわれじゃないかというふうにおそれるのでありまして、その点をはっきりさせるべきではないかというふうに私は考えるのであります。その点、もう一度重ねてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/89
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090・大橋武夫
○大橋国務大臣 今後の運用方針といたしましては、私どもは港湾施設の管理者に廃油処理の責任を負わしたということは、これは大きな港湾になりますると、とても独力をもって自家用の施設をつくることのできないような小規模経営者の船がたくさん往来をいたします。また、その港に平素出入しないような臨時入港船などもございまするので、そういうものが、他のもののつくった自家用の施設というものが営業行為をしてくれれば別ですが、自家用専門だということになりますると、どうしてもだれかが施設してやらなければならぬわけになります。そういうものを港湾管理者にやらせるというのが主でございまして、港湾管理者の負担によって全施設を設備させ、そうして始終入港する石油業者、あるいは相当多数のタンカーを持っておる船舶業者、そういうものが自分の自家用の施設を怠って、のうのうと港湾管理者のつくったものを使うというようなことは予想いたしておりません。また、運輸省の海運関係の指導方針といたしましても、そういう考えで今後とも進みたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/90
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091・河上民雄
○河上委員 いまの大臣の御答弁の中に、地方公共団体に対する財政援助のお話が出てまいりましたが、初めその率が七五%くらいのように聞いておりましたのですけれども、五〇%になってあらわれてきておるわけでございますが、財政全体の事情が必ずしも潤沢ではないということもあろうかと思いますけれども、しかし、今日の地方財政の現状から見まして、こういう形で地方財政に大きな負担を与えるということは非常に大きな問題であろうと思うのでございます。ことにこれはへたをいたしますると、そうやってできた施設の利用の料金などにも相当はね返るおそれがあるのではないかということを私は考えるのであります。これはしろうと考えかもしれませんけれども、ごく一般的にそういうように見ることができると思うのであります。そういう点を考えますと、もう少し財政援助については——この油による海水汚濁の問題が非常に緊急であることを考えますと、もう少し考慮すべきではないか、こういうように考えるのでございますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/91
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092・大橋武夫
○大橋国務大臣 これは河上委員もいま仰せられましたとおり、利用者には有料で使用させるということになるわけでございまして、有料で使用させる施設に対して政府が五割という国庫補助をするというのは、まず一般の補助率といたしましては、私は相当率のいいものだ、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/92
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093・河上民雄
○河上委員 しかし、それにもかかわらず七五%という話が初めからあったわけでございまして、そこにはそれだけの根拠があったと見るべきではないかと思うのであります。ただその場合、いまお話がありまして確認されたように、有料でやるということになりましたが、その場合内航のタンカーがみんなそれを払うわけだと思うのですが、そういうように解釈してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/93
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094・大橋武夫
○大橋国務大臣 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/94
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095・河上民雄
○河上委員 そういたしますと、どうもこの問題の解決の中で、いわゆる石油業者と申しますか、そういうものが本来一番大きな恩典を受けておる、利益を受けておるにもかかわらず、この問題をいままで伺った範囲では、石油業者は何もしないで済むという感じになってしまうのでございまして、やるのは実際に油を運ぶ小さな——大きいのもありましょうけれども、タンカーである、また地方公共団体であるというようなことになってまいりますと、どうも一番利益を受ける人が実は何もしないでいいんだということになるおそれが十分にございます。今度の法案が、いまこのままほうっておきますと、海運企業と申しますか、そういうものに非常な経済的圧迫を与えるおそれがあると思うのです。実際に内航タンカーがそういう石油業者と契約を結ぶ場合に、いままでよりもその分だけレベルをアップして契約が結べるかというと、なかなかその点はむずかしいのじゃないかと思うのです。そういう点についての大臣の御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/95
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096・大橋武夫
○大橋国務大臣 この利用料金は、当然タンカーの運航コストの一部をなすことになりますので、これは当然料金にはね返るべきものと私どもは考えております。したがって、最終的には、石油業者が運賃として負担することになるべきものだと思うのでございます。その際において、運航業者と石油業者の間ではたして運賃の値上げが認められるかどうかという問題であると思いますが、内航の運賃につきましては、運輸省も責任を持っておりますので、今後とも適正な運賃は取れるようにできるだけ海運業者に協力してまいりたいつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/96
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097・河上民雄
○河上委員 すでに大臣の御予定の時間がきたようでございますし、私も大体質問したいと思うことは残っておりません。ただ最後に、海運企業に今回の法律が経済的な過重にならないようにする、ことに中小企業に過重にならないようにするという御確約をここでいただいて、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/97
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098・大橋武夫
○大橋国務大臣 内航海運の運賃につきましては、運輸省が標準賃金というものをきめまして平素から指導をいたしておるのでございます。ただ、中小業者の相互的な競争のために、ややもすれば運賃がくずれるおそれがありますことは、かねてから遺憾に思っておったところでございます。こうしたことを契機にいたしまして、特に運賃指導の面におきましては今後とも努力をいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/98
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099・河上民雄
○河上委員 それでは私の質問はこれで終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/99
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100・中谷鉄也
○中谷委員 委員長にお願いしたいと思うのですけれども、河上委員のほうから御発言がありました点に関連をいたしまして、資料の提出方をお願いしたいと思うのです。内容は、本法案の罰則と関係があると思われる港則法関係の罰則による最近までの検挙数と、そうしてそれに対する量刑についての資料、非常に資料がむずかしいようですけれども、これは本法案の罰則がはたして適切であるかどうかということと関係があると思いますので、その点が一つ。もう一つは、本法案と重要な関連があります条約締結国のうち適当と思われるおもだった国のいわゆる国内法における罰則、これがどういうことになっているか。この点について委員長に、ひとつ関係当局のほうから資料を提出していただくようにお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/100
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101・八木一男
○八木委員長 ただいま中谷鉄也君からの御発言の資料要求については、委員長のほうにおいて善処いたしたいと思います。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/101
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102・八木一男
○八木委員長 この際、産業公害対策に関する件について調査を進めます。折小野良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/102
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103・折小野良一
○折小野委員 先ほどに引き続いてでございますが、公害対策を行なう際に、現実の対策として問題になってまいりますのは、いわゆる基準を設定して、その基準を中心にして規制をし、あるいは取り締まりをする、こういうようなことになってくると考えます。基本法ができておりません従来の状態におきましても、いわゆる排出基準というものをそれぞれ設定をいたしまして、そうしてこれをもとに排出の規制を行ない、公害対策を講ずる、こういうやり方でやってこられたわけであります。今回基本法を制定されるにあたりましても、やはり排出の規制については基準等を定めてやっていくということが掲げられているようでございます。今日までの排出基準の設定並びにそれに基づきます規制の点から考えますと、この排出基準の設定にはいろいろな問題あるいは欠点、こういう面があるように私ども考えられるわけでございます。たとえば排水で一つの例を申し上げますと、一つの工場について一定の基準に基づいた規制を行なった。ところが、その後次から次にそういうような排水を行なう工場が出てきて、結果的にその集積によって公害が一向なくならない、あるいは一定の工場の排水については、一定の基準に従って規制を行なったが、それに今度は都市排水が加わることによって現実に公害が発生してくる、あるいは農薬が加わる、あるいは排出されたあとでその河川におきまして異常発酵が起こる、あるいは沈でんして集積されたものの被害が生じてくる、いろいろなことが考えられるわけでございます。こういうような例から考えましても、今日までのそういう経験を基礎にして今後なおかつ排出基準を設けて規制をしようということにつきましては、どういうふうなやり方、あるいは改善すべきところはどういう点を改善して、その効果をあげようというふうに考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/103
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104・舘林宣夫
○舘林政府委員 今後各種——各種と申しましても、環境基準が一応当面設けられますものは大気汚染、水質汚濁、騒音等でございますので、その定められた環境の基準を守るためには各種各様の公害対策が行なわれる。その各種各様の公害対策の中でも特に重要な対策は排出の規制であります。お尋ねのように、ある一定の水域の排出の基準がきめられた場合には、それ以上川の水をよごさないために、その川に流れ込む各種の排水につきまして規制をする、それは従来の水質保全法の活用によって行なわれることになるわけでございますが、その際に、ただいまお話のございましたように、単純に工場排水の規制だけでは川の水はきれいにならないという実態があることはお説のとおりであります。多摩川のごときは、半分は工場排水以外の染水源によって汚染されておるということでございますので、その定められた水の基準を守るためにどのような方法がその川に関しては有効であるかということは、かなり総合的に組み立てられ、比重を考え、またそれぞれの必要経費、その規制を受けるべき側の負担、財力というようなものも全部調べ上げまして、その上で総合施策が組み立てられ、その結果この程度排出規制が行なわれる、というようなことになろうかと思うわけであります。それはこまかく言えば個々にはそういうことでありますけれども、おおむね一般的な類型別に、河川の種類によりましてそのような配慮が根底にありまして排出規制基準というようなものが想定される、こういうことになるわけであります。従来の排出基準は、そのような環境の基準というものなしに、今日の技術水準において、排出規制を受ける側の現状、あるいは科学水準、そのようなものを配慮した上で、今日考えられる最高度といいますか、でき得る限りの排出規制が行なわれるというたてまえにはなっております。これは、現状は科学の進歩と必ずしも並行しておるわけではございませんので、内容的には多少の食い違いはございましても、考え方の根底はそのようなことでいままで行なわれてきたわけでございますが、今後におきましては、その際に環境基準における——健康を守るだけでなくて、それ以上の生活環境を守る意味合いでの環境基準の部分については、他産業と排出規制を受ける企業との間の調整を考えながら、適正な経済バランスといいますか、それぞれの企業といいますか産業のあり方、経済発展ということを広く考慮いたしまして、妥当な線をさがし出して規制も考えていく、かような配慮が必要であろうかと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/104
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105・折小野良一
○折小野委員 確かに妥当な基準が設けられ、適切な対策が講ぜられるということが一番大切なことでございます。そのことは何も抽象的なことでなしに、現実的にどのような基準が設けられるかということにかかってくるわけであります。と同時に、それをどういうふうにして運営するかということにかかっておると思うのであります。その点から私が考えまして、運営のしかたにいろいろあろうと思いますが、そういう面について御意見を伺いたいと思います。
一つは、従来一つの基準を設定いたしました場合に、それがほとんど固定化される。ところが、現実にはいろいろな事情等がございまして、その基準がもう古くなって、あるいはもっともっと高い基準に改むべきである、こういうような情勢になっておるにかかわらず、なおかつ当初きめられた基準がいつまでも行なわれる、こういうようなところにも一つの問題があるのじゃないか。ですから、基準の設定というのは固定したものではなしに、必要に応じて変えていく、必要に応じて強化していく、こういうような運用が必要なんじゃなかろうかということであります。これを一つ考えます。
それから排出量の規制でありますが、公害物質が排出されました場合、たとえばばい煙その他のガスが空気中に排出される、あるいは汚水が河川に排出される、そういうような場合におきましては、自然はもともと自浄作用、こういうものを持っておりますから、したがって多くの空気、多くの水の中に多少のものが排出されましても、それほどそれを汚濁しない。しかしながら、排出される量が非常に多くなってまいりますと、その空気あるいは水の自浄作用というものまで殺してしまう。そうすることによって結局死の川というようなものを現出してくる、こういうような状態になってくるのではないかと考えております。
そういう面からいたしまして、排出量の規制、こういうものも現実に考えられていいのではなかろうか。今日までそういう量の規制というものが考えられたということを聞いておりませんのですが、こういうこともそれぞれの実態に応じては必要なことではないか。また、それを考えるために、そういう公害源を発生するような事業者の集中の排除、こういうようなことも同時にあわせ考えていくということも必要なことじゃなかろうか、こういうことを感ずるわけでございます。こういうような点につきまして、今後基準の運営についてどのようなことをお考えになっておりますか。また、現在までの経験からいたしまして、新しくその運用について今後こういうふうにやっていくことによって効果をあげたい、こういう点をお考えになっておることがございましたら、お伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/105
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106・舘林宣夫
○舘林政府委員 非常にデリケートな部分のお尋ねでございます。それはこういう点であると思われるわけでありますが、今日の排出規制は一定度以上の量に対して規制が行なわれる。あまり少量の、少さい町工場のようなものは規制対象になっていない。あるいは家庭汚水のようなものは規制対象になっていない。規制対象になったものにつきましては、量のいかんにかかわらず濃度は一定でございます。同一濃度を規制しておるわけであります。そのようなことをしないで、大量出すものについては濃度はきびしくしたらどうかというような御意見でございます。これは今後の公害対策を進める上に当然に話題にのぼってくることでございまして、濃度のいかんにかかわらず、非常に大量の汚物、汚水を流すということであれば、当然その川に対する負担は特にその企業は多くかけるということで、これに対してそれほど多くない排出量のものに対すると同じようなレベルの規制でいいかということは十分考える必要がある。
私がここで、ただいまの排出規制を変えるということは申し上げかねるわけでございます。今日のこれに関する直接の法律は水質保全法でございまして、経済企画庁が所管し、またその実施の監督は関係各省がしておることでございますので、ここで私は即断してお答えは申し上げかねますが、ただいま先生のお尋ねのような配慮で少なくとも今後の立地規制は考え、またでき得ることであれば排出規制においても考慮していくことでなければ、環境基準を守るための公害規制というのは非常にむずかしかろう、かように考えます。今日はこの程度お答えできるにとどまるわけでございますが、基本的には先生のお説のように考えざるを得ないのではないか、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/106
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107・折小野良一
○折小野委員 たとえば水についてお伺いいたしたいのでありますが、ただいまおっしゃった水質保全法、これによりますと、個々に指定をして基準をきめ規制をしていくということなんでございます。これは必ずしも水に限ったことではないのでありますが、それ以外にたとえばこういうことも考えられるのじゃなかろうか。たとえば一般的に工場排水PHは幾ら、BOD幾ら、これ以下に必ず浄化しなければならない、あるいは場合によっては有害物質ごとに、たとえば銅イオンはこの程度以上出しちゃいかぬ、水銀はこの程度以上出しちゃいかぬ、あるいはアンモニアはこの程度以上出しちゃいかぬ、こういうようなきめ方というものも一つの方法として考えられていいのじゃなかろうか。またそういう方法をもって規制をすることが、従来の水質保全法における規制がなかなか十分な効果があがらない、こういう点を補うことができるのじゃなかろうか。そういうふうに考えるわけでございますが、今後の水質保全法の改正あるいは公害基本法が出たあとの具体的な法制度の考え方においてどういうふうに御考慮になっておりますか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/107
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108・舘林宣夫
○舘林政府委員 お尋ねのように、従来は水の酸度あるいはBODというような包括的な水の汚染というものの指標をとらえて規制をする方向にあったわけです。しかしながら、お尋ねのように、今後におきましては環境基準の設定そのものもそうでございますが、大気汚染等において亜硫酸ガスとか、一酸化炭素とか、そういうようなとらえ方をすると同じように、水においても、水銀のイオンとかあるいはシアンのイオンというような個々別々にこれを把握して、それぞれの許容限度といいますか、限界をきめるというようなことの方向に当然に考えられるもの、かように私どもも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/108
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109・折小野良一
○折小野委員 最も的確な規制は、今日までも行なわれておりますし、今後も行なわれるでありましょう排出の基準を設定して規制するということが最も的確な規制になっていこうと思うのです。しかしながら、そこには、先ほども申しましたように、いわゆる公害の集積というような問題等から考えますと、排出基準の設定にもまた一つの大きな欠陥がある。こういうような点もありまして、ただいまの御答弁の中にもありました環境基準、こういうものが新たに今回の公害基本法の中にはっきり打ち出されてきておるように私ども承知をいたしているわけでございます。この環境基準でございますが、これに対する考え方はいろいろな面から考えられるわけでございましょうが、まずその環境基準をどのような程度の広さで考えていこうとしておられるのか。たとえば、広くは日本全体という立場で環境基準を考えることもございましょう。あるいは都道府県単位というような考え方、あるいは市町村単位というような考え方、あるいはどこどこの工業地帯というような考え方、いろいろな考え方があろうと思いますが、この環境基準の環境の幅ですか、そういう点についてお考えになっておることをお述べいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/109
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110・舘林宣夫
○舘林政府委員 環境基準をきめる水準のとり方は、まず第一にこれ以上よごれたらといいますか、大気であればこれ以上よごれたら、水でも同じでございますが、あるいは騒音でも、これ以上激しくなれば人間の健康がそこなわれるという基準を先にさがし出しまして、それだけにとどまらず、その上にさらに、単に人間が病気にならぬというだけではなくて、住むに快適なこの程度の生活環境を保ちたいというレベルまで考えていく。すなわち、人間の健康が保持されるためには百の環境があればよろしいものを、それ以上もっときれいに五十くらいにまでそれを下げていくということは、生活環境をよりよくするということで下げていくわけでございますが、その百までの、生活環境でなくて健康の保持される限度というものは産業に対して何らの妥協をしないということでございますので、その水準そのものは全国一律、少なくとも大気については、あるいは水についても同じでございますが、全国的に人間の健康がおかされないという範囲はどこでも同じはずでございます。ところが、それにプラスして生活環境をよくしてほしいというような産業とのバランスをとって考える部分については、地域地域において考え方が違うわけでございます。また河川であれば、その河川の目的によって違うわけでございまして、もはや水道の水もとらないし、またそれほど魚もいないので漁業を考えないというような河川であるのか、そうじゃなくて、あくまでも従来から相当量の漁業をやっておる、また重要な水源水になっておるというようなところとはおのずから違うわけであります。したがって、この生活環境の考慮の部分は地域によって配慮が違うということによりまして、かなり類型別に地域的に環境基準は違っていくことになるであろう。
その類型別に違っていくものは、どんな類型でどんな範囲で違うかというお尋ねでございますが、この点は、大気であれば、あまり狭い地域の大気というのは意味をなしませんので、当然に京浜地区というような、今日の市町村の広がりをさらに越えた一つのブロック、産業集中地域というようなことで配慮をいたしますし、河川におきましては、その河川の使用目的といいますか、河川の利用範囲というものが、もう下流は水道水源をとらないということであれば、その下流は下流としての環境基準がきまりましょうし、同じ河川を二本に分けることもあり得るわけでございますが、一般的には一つの河川ごと、あるいは一つの海面ごと、一つの湾ごとというようなことにもなりましょうし、いま一つ騒音などにつきましては、住宅地域、工場地域というような、その地域の特性というものを考慮して考えていくということを私どもとしては考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/110
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111・折小野良一
○折小野委員 ただいまの御答弁で、人間の健康を保護するという立場からいったら何ものにも妥協しない。しかし、生活環境を保全するという立場からいきますならば、経済の発展との調和をも考えていかなければならない。こういうふうにさい然と区別して御答弁になっておるわけでございますが、現実の公害がそのようにはたしてさい然と区別できますものかどうか。私どもが普通考えましても、騒音、これは命には差しつかえない。別にそれによってからだも特別悪くするわけじゃあるまい、こういうふうに普通考える。しかし、そういう騒音につきましても、これは厚生省自身で御調査になった結果が新聞等に発表されたところを見ますと、騒音というものも相当生理的に、心理的に、すなわち人間の健康に非常に大きな影響がある。もちろん、そのときそのものが直ちに人間の健康を害するということでなしに、そういう環境の中に長くおることによって人間の健康がそこなわれる、こういうような調査の結果も出ておるようでございます。これは必ずしも騒音だけじゃない。大気その他についてもいわれることでございますが、現実には、人間の健康を保護するということと生活環境の保全ということは、これは単なる程度の問題でありまして、おっしゃるようにはっきり区別して考えていくということがはたしてできるものでしょうか。私どもはちょっとできそうにない、むずかしいように考えるのですが、お考えをお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/111
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112・舘林宣夫
○舘林政府委員 私の申し上げようが不十分で、あるいは別の意味におくみ取りいただく部分があったかと思いますので、この点訂正して申し上げますが、健康を守る基準と生活環境を守る基準と二本立てにするという意味合いで申し上げておるわけではございません。まず健康を守るためにはこの程度の基準が要る。それ以上きびしい基準にするのだ。結局最後は、それ以上きびしい基準だけが残るのです。それが天下に公表する環境基準になるわけであります。そのそれ以上きびしい基準の中に健康を守る基準が隠されているといいますか、当然に健康を守る基準以上のきびしい基準にする、こういうことでございます。そこで、それにしてもまず設定にあたっては健康を守る基準はどのくらいなんだ、それ以上きれいにするにはどれくらいきれいにすればどういう環境が得られるかということは、すべて科学的に明確にした上で、どの基準をとるかということをきめていくことになるわけでございますが、これはあくまでも得られる限りの調査資料並びに外国の資料、WHO等の資料をもとにいたしまして、推定でなくて、できるだけ科学的に私どもとしては確保したい。動物実験その他、あるいは産業衛生等の分野でかなりそういう公害と人体との関係という研究も進んでおりますので、できるだけそういうものを使いまして、しかもそれにある程度の安全率を見ておきまして、健康に対してはどうしてもこの程度の基準が必要であるというようなことを考え、さらにたとえば隅田川を例にとれば非常にわかりやすいのでございますが、これ以上隅田川がよごれればあそこから有毒ガスが出てくる。それによってあの周辺の人たちが、せきが出る、目がしょぼつくというようなことは、どの限度なんだということは、先ほどの先生の仰せられましたように、水が腐敗するかどうか、自浄作用を保てるかどうかという限界が、もうすでに学界的にはいわれてきているわけであります。それ以上になったらきわめて有毒なガスが出てくる。しかし、それでは隅田川は依然として透き通っていない、魚も一びきも住まない、死んだ川に近いような川になってしまう。それ以上に、さらに進んで隅田川をよりよい川にするということで調べて、その限度をどこまで持っていくか。ハゼぐらいでとめるか、あるいはコイ、フナぐらいまでいくか、もっとよくしてアユぐらいまでいくかという限度は、それを保つために必要な、先ほど来先生の仰せられたような排出規制その他の規制があらゆる産業に対してきわめて大きな影響を及ぼす。あるいは都市の下水道の建設に直ちに響いてくるというようなこととのバランスを考えてその環境の程度をきめていく、こういうことで環境基準をきめてまいるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/112
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113・折小野良一
○折小野委員 もう一つ、ただいまの前の御答弁に関連してでございますけれども、健康を保持するための基準はきわめて厳密にきめていく。それ以上のものについては、場合によって経済の発展との調和をはかる。そういう考え方に合わせまして、そこにきれいな空気が、あるいはそこにきれいな水があるということ、これは経済的な意味でなしに、私たちの住んでおります自然環境としてそれが望ましい。また、子供たちにとって、メダカの住んでいる川、住める川、あるいは子供たちが水遊びできる川、そういうものも、これは経済的な価値という面からいけば別問題でございましょうが、私どもが生活するに望ましい社会環境としては、やはりそういうものも必要になってくるのじゃないかというふうに考えます。そういうような面と経済の発展という面との調和、こういう面はどういうふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/113
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114・舘林宣夫
○舘林政府委員 したがいまして、望ましい生活環境というものをどこに置くか。これは、たとえば東京の都市の中を流れる川はどの程度が望ましいかということでございまして、あくまでも子供たちの生活を中心に考えれば、いなかの小川と同じようであってほしいし、さらには上高地の小川のごとくあってくれれば望ましいことは申すまでもございませんけれども、そういう極端なことでなくても、日本の都市の川としてこの程度は望ましい、やはりそういう目標を考えていく必要があるわけでございまして、たとえば多摩川というものがどの程度の川として都市近郊を流れ、そこを都会人が散策し、レクリエーションの場としていくのにふさわしいか、今後日本の都会をどのような環境の中に置こうとするかということ、これは国民のすべて考えていくべき将来の都市づくりの問題であるわけであります。それは相当な犠牲を払っても、私は今後国民が守っていってもいいことだろうと思うわけであります。ただ、それのために中小企業がほとんど倒産に瀕するほどの激しい規制を設けるかどうかということは、実際問題として十分考えていく必要があるわけでございまして、この点は、その及ぼす影響等を十分考え、また、それらに対して助成がどの程度及ぶか、どうしてもだめなら工場を移転してまで守らなければならぬかどうか、こういうような配慮も加えて、あくまでも理想はできるだけ高く置いて私どもは検討してまいりたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/114
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115・折小野良一
○折小野委員 御意見はよくわかります。しかし現実には、あえて私どもそういうようなことを言っております。しかしながら、望ましい生活環境というものは日一日と侵害をされつつあるわけであります。毎日毎日侵害されていっており、毎日毎日その侵害されておる程度というものは高まっていっておる。私たちの周囲には、子供たちが楽しく遊べるようなそういう緑もなく、また川ももうすでになくなってきておる、こういうのが現実なんであります。そういうような点から考えますと、せめてそういう自然を少しでも残していきたい、こういうふうに考えるのは、やはり公害対策の立場からいきましても必要なことじゃないか、かように考えております。
ところで、この排出基準にしろ、環境基準においてもそうなんですが、今日までの経験からいたしますと、一定の基準を設けることによりまして、反面、その基準までは出していいんだ、その基準まではよごしていいんだ、こういうような気持ちというものが出てこないというふうに言うわけにはなかなかまいらないと思う。そういうような事態が私どもの目にも見えるわけであります。すなわち、一定の基準をつくることによってむしろ自然をよごしていく、大気をよごしていく、水をよごしていく、こういうような事態があるわけでございます。こういう点をどういうふうに考慮しているか。私どもは、せめて現在よごされていない川、よごされていない大気、こういうものはできるだけ現状のきれいなままで保存をしていきたい、そういうきれいな状態を保持していきたい、こういうふうに考えます。そういう面が、予想される公害基本法におきましては何ら考慮されていない、こういうふうに考えるわけでございますが、そういう点についてのお考えをお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/115
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116・舘林宣夫
○舘林政府委員 実は、ただいまお尋ねのありました将来の日本の環境というものをつらつら考えてみますと、これはゆゆしい状況に当面しておると私は考えております。昭和六十年を予測した先般の国のビジョンから考えまして、公害の最も大きな発生源たる石油の使用量あるいは自動車の台数、そういうものは今日の数倍にも及ぶことが予測され、日本国民の所得がアメリカを追い越そうというほどの勢いの所得をこの狭い国土から生み出していく方法としては、当然に公害を最も発生しやすい重化学工業の発達にまつよりほかしかたがない。そういうことで、わが国は公害の非常な発生地になるおそれのある危険をになっておるわけでございます。したがいまして、いかに国民所得が増したといいましても、この国土が住むにたえないほどの土地になるということは、国民として十分考える必要があることでございまして、当面少しぐらい金がかかるということでありましても、たいへんなものを失うことになるということを国の上下ともに十分に肝に徹し、将来を予測した対策を立てる必要があるわけでございまして、その場合に、環境基準をきめたからといってそこまで許されるということは十分警戒をする考え方でありまして、むしろ、環境基準は許されても、少しでもよごさないという努力をさせていく必要があることは御指摘のとおりです。
ただ一点だけ、その点に関してはこういう配慮も一応しておく必要があると思いますのは、先般ある地域で、かなりな公害施策を伴った地域開発という計画があったにもかかわらず、そもそも公害が発生するという恐怖のために工業立地がとめられたという事例があるわけであります。したがって、やはり今日の日本の都会においては、ある程度のがまんはしかたがないという面がある。これをそちら側からものを見ますと、受忍限度ということばを使うわけでございます。住民もこれまではがまんしていただきたい、相当国も金を使い企業にも負担を負わせてきびしい措置はとりますが、しかし、ここぐらいまではやむを得ないという受忍の限度という考え方が環境基準の底にはある。しかし、それを表に押し立てていけば、もうそれ以上にはるかに汚染するおそれがございますので、考え方としては先生のお説のとおりではございますけれども、環境基準というものの根底に流れる精神の中には受忍の限度ということばもあるということを申し上げておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/116
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117・折小野良一
○折小野委員 現実の問題におきましてはいろいろむずかしい問題があろうと思っております。ところで、ただいま申し上げました私の意見でございますが、今回制定されようといたしておりますのは公害対策の基本法でございます。したがって、一つの目標を定めるということ、これも基本法としては大切なことじゃないかというふうに考えます。そういう点から、今回の基本法に、現在のきれいな空気あるいはきれいな水、きれいな生活環境、これはできるだけ国民のすべてがきれいなままで保持をしていくべきである、そういうお互いの覚悟を基本法で明確にする必要が私はあろうと思っておりますが、これに対する政務次官の御答弁をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/117
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118・田川誠一
○田川政府委員 ただいまの御質問でございますが、今回の基本法は、あくまでも国民の健康を守るということが第一番でございまして、先ほど来お説のように経済の健全な発展との調和ということばも入っておりますけれども、優先して国民の健康を保護するということを今回の基本法の目的に入れておるわけでございまして、あくまでそういう精神で今度の立法にわれわれ着手をしておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/118
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119・折小野良一
○折小野委員 私が申し上げましたのは、これはある意味において道義的な規定、そういうようなものにもなろうかと思います。したがって、その規定の法律的な実効というものがどうこうという問題ではありません。そのような目標の宣言といいますか、これがこの法の一カ条としてあることが望ましいのじゃないか、それを入れられるお気持ちがないかどうかということをお伺いいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/119
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120・田川誠一
○田川政府委員 御承知のように、この法案は数日前に国会のほうに提出をすでにされておりますので、あと皆さま方の御審議にまつというような段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/120
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121・折小野良一
○折小野委員 いずれにいたしましても、この基準の設定というのは、公害対策を実質的に効果あらしめるかどうかという問題が一番ここにかかっておるわけでございます。そういうような面につきましては、具体的にこの法律の中で基準を個々にきめていくというわけではございません。今後政令その他によってきめられていく、あるいは行政指導その他によってやられていくということになっていこうと思うのでありますが、いずれにいたしましても、担当の行政機構の組織として、あるいは担当の皆さんとして、この法の趣旨を十分お考えいただいて、そして基準の設定を行なわれ、またその運営を行なわれるということが最も大切な問題ではなかろうかというふうに私ども考えるわけでございます。そういうような趣旨で、今後法案の審議に入りましたらさらに十分この法律の効果を高めるような審議を進めてまいりたい、またそのような立場において法の運営をお願いするということで、これで私の質問は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/121
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122・八木一男
○八木委員長 次会は来たる六月七日水曜日午後一時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時二十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00719670531/122
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