1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成八年五月十五日(水曜日)
午後一時十一分開議
出席委員
委員長 辻 一彦君
理事 武部 勤君 理事 細田 博之君
理事 村田 吉隆君 理事 久保 哲司君
理事 古賀 敬章君 理事 高木 義明君
理事 赤松 広隆君 理事 高見 裕一君
衛藤 晟一君 高村 正彦君
佐藤 静雄君 蓮実 進君
林 幹雄君 堀内 光雄君
茂木 敏充君 横内 正明君
江崎 鐵磨君 工藤堅太郎君
実川 幸夫君 東 順治君
緒方 克陽君 左近 正男君
寺前 巖君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 亀井 善之君
出席政府委員
外務大臣官房審
議官 西田 芳弘君
外務省アジア局
長 加藤 良三君
運輸省運輸政策
局長 土坂 泰敏君
運輸省海上交通
局長 岩田 貞男君
海上保安庁長官 秦野 裕君
委員外の出席者
環境庁水質保全
局企画課海洋汚
染・廃棄物対策
室長 吉田 徳久君
水産庁振興部沿
岸課長 石木 俊治君
海上保安庁警備
救難部長 武井 立一君
建設省河川局防
災・海岸課海岸
室長 西口 泰夫君
運輸委員会調査
室長 小立 諦君
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委員の異動
五月十五日
辞任 補欠選任
橘 康太郎君 蓮実 進君
志位 和夫君 寺前 巖君
同日
辞任 補欠選任
蓮実 進君 橘 康太郎君
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本日の会議に付した案件
連合審査会開会に関する件
領海法の一部を改正する法律案(内閣提出第八
五号)
海上保安庁法の一部を改正する法律案(内閣提
出第八七号)
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一
部を改正する法律案(内閣提出第九一号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/0
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001・辻一彦
○辻委員長 これより会議を開きます。
この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りをいたします。
海洋法に関する国際連合条約及び千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約第十一部の実施に関する協定の締結について承認を求めるの件について、外務委員会に対し連合審査会開会の申し入れを行うこととし、また、内閣提出、領海法の一部を改正する法律案、海上保安庁法の一部を改正する法律案及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案について、外務委員会から本委員会に対し連合審査会開会の申し入れがありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/1
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002・辻一彦
○辻委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
なお、連合審査会の開会日時等につきましては、関係各委員長間におきまして協議の上決定いたしますので、御了承をお願いいたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/2
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003・辻一彦
○辻委員長 内閣提出、領海法の一部を改正する法律案、海上保安庁法の一部を改正する法律案及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。茂木敏充君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/3
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004・茂木敏充
○茂木委員 自由民主党の茂木敏充でございます。
領海法の一部を改正する法律案、海上保安庁法の一部を改正する法律案、海洋汚染防止法の改正につきまして、亀井大臣並びに関係部局に質疑を行わせていただきたいと思います。
言うまでもなく、我が国は四面を海で囲まれました島国でありまして、国土面積も必ずしも広いとは言えないわけでございます。にもかかわらず、私の認識では、日本のこれまでの領土や領海に関する交渉や条約締結の経過を見てみますと、我が国の権益の保全、こういった問題に対して、諸外国と比べて必ずしも積極的に取り組んできたとは言えない面も否めないのではないか、そのように考えております。
例えば、今回の国連海洋法条約でも、この条約には海洋国家としての我が国の利益に大きく資する事項が数多く規定されているわけでございます。したがって、この利益を享受するために海洋法条約の速やかな締結が不可欠なわけでございますが、我が国は世界の国々と比べてみましても、締結に向けて素早い対応を行っているとは言えないような状況にございます。
御案内のように、既に現在九十カ国に近い国々が海洋法条約を締結していると聞いておりますし、お隣の韓国でも、ことしの初めには既に締結が済んでいるわけでございます。このような状況を考えてみますと、古くから漁業や海運が発達して海洋国家としての誇りを有している我が国といたしましても、もっと早い時期に海洋法条約を締結して、その関係の国内法令を整備して、世界の諸国、そして近隣の各国におくれることなく、むしろ率先して新しい海洋の秩序の確立、こういつた問題に取り組んでいくべきだったと私は考えておるわけでございます。
一昨年の十一月の海洋法条約の発効以来、今回ようやくにして条約が締結される、こういう運びになってきているわけでございます。もちろん、海底資源の管理等々の複雑な問題があったのはわかるわけでございますが、条約が作成されてから、考えてみますと、一九八二年ですから、既に十五年近くが経過しているわけでございまして、どうしてもっと早く海洋法条約への取り組み、締結を図ろうとされなかったのか、海洋法条約の第十一部にあります実施協定によって具体的に今後何が変わっていくのかも含めまして、まずその理由につきまして、外務省からお越しいただいていると思うのですが、お尋ね申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/4
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005・西田芳弘
○西田政府委員 条約の締結についてのお尋ねでございます。
お答え申し上げます。
我が国を含みます先進国は、国連海洋法条約第十一部に規定しますところの、先生御指摘のとおり、深海底の開発制度、これが現実に合致していないということを理由といたしまして、これまで同条約の締結を控えてきたものであります。しかしながら、この海洋法条約の十一部の規定を改善するための交渉の結果、一九九四年、一昨年でございますけれども、この条約の十一部の実施に関する協定が採択されました。その結果、同条約第十一部の規定が実質的に改善されることとなりまして、先進国を含む国際社会の大勢が同条約を締結するための道が開かれたわけでございます。したがいまして、我が国政府といたしましても、同条約及び同実施協定を早期に締結すべく、今回御審議をお願いしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/5
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006・茂木敏充
○茂木委員 その実施協定なんですが、今まで海底資源、深海底のものについて、国際的な管理、これが企業等々がある程度イニシアチブをとれる、こういう形になってきているかと思うのですけれども、そこいら辺が実施協定によりまして具体的にどのように変わってきているのか、もう少し御説明いただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/6
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007・西田芳弘
○西田政府委員 先ほど、実施協定によりまして条約の深海底開発制度が実質的に改善されたと申し上げました。その幾つかの点がございます。
例えば、従来でございますれば、締約国でございますとかあるいは深海底の開発に参加いたします企業等の財政的な負担が相当大きいものになっていたということでございますとか、生産認可制度等、生産活動を必ずしも促進することにはならないような制度があったということ、それから現状の深海底をめぐる状況にかんがみまして、必ずしも費用対効果という観点から現実的ではないというような批判が先進国を中心としてあったということでございます。それらの点につきましては、今回の実施協定によりまして実質的に改善されているというふうに承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/7
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008・茂木敏充
○茂木委員 時間の関係がありますので、具体的に領海法の方についてお尋ねに入りたいと思っているのですが、今回の改正案によりますと、領海の幅を測定するための基線として新たに直線基線を採用する、こういうことになっているわけですが、我が国の基線はこれまで低潮線を原則としており、いわゆる海岸線から領海の幅をはかることとなっているわけでございます。
私は、今回の法改正は、航海や漁業をする立場から見ましても、また海上警備の立場からしてむ有意義な改正だ、このように考えているわけでございます。
一方で、世界の国々の状況、この点について見てみますと、既に七十カ国近くが直線基線を採用している。また特に、我が国の近隣国である韓国、中国、ロシア、これも既に直線基線を採用しているわけでございます。領海の範囲を決めるための基本であります基線の設定、採用に関しまして、我が国の対応は近隣諸国とも比べても出おくれたのではないか、こういう感があるわけでございますが、今回の直線基線の採用は我が国にとつて具体的にどんなメリットがあるのか、また、これが大きなメリットがある、こういうことであれば、なぜもっと早い時期に設定、採用されなかったのか、この点につきましてお伺い申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/8
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009・西田芳弘
○西田政府委員 お答え申し上げます。
現在、領海法のもとで採用されておりますのは通常低潮線等でございます。その結果、我が国の領海の限界線は、海岸の曲折した地形や多数の島の存在によって複雑に入り組んでいるわけでございます。直線基線を導入することによりまして、そのような複雑に入り組んでいる領海の限界線がいわば直線的に整形されまして明確なものになります。その結果、我が国の周辺海域を航行する外国船舶にとってのみならず、沿岸国として法令を適用いたします我が国にとりまして、双方にとりまして実益をもたらすものであろうと考えております。
また直線基線は、接続水域でございますとかあるいは排他的経済水域、大陸棚の限界を測定する基線としても用いられるわけでございますので、我が国がこれを導入することによりまして、既に直線基線を採用している近隣の国と同様の立場に立つことができるものというふうに考えております。
これまで直線基線を採用してこなかった理由についてのお尋ねでございますけれども、昭和五十二年の領海法の制定当時には、国際社会全体でも二十一カ国が直線基線を採用しているにすぎませんでした。我が国といたしましては、各国の国家実行の趨勢を見るという観点からも、その当時は直線基線を採用しなかったわけでございますけれども、その後、近隣国や多くの海洋先進国を含む七十カ国以上の国や地域が直線基線を採用するに至っておるわけでございまして、そういうことから、先ほど申し上げたようなメリットも勘案いたしまして、我が国としても直線基線を導入することとしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/9
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010・茂木敏充
○茂木委員 確かに一九七七年当時、これは二十カ国程度であったわけですが、それからかなり進んできているわけですね。冒頭にも申し上げたように、やはり海洋国家としてこういう問題にはほかの国以上に私は前向きに取り組んでほしい、こんなふうにも思ったりしているわけなんですが、同時に、今回領海法の改正のもう一つの大きなポイントとなっておりますのは、密航、密輸を初め一定分野の犯罪の防止のために、今度は新たに領海の外側に十二海里の範囲で接続水域を設定することだと思うわけです。
既に世界では五十二カ国がこの接続水域を設定して、近隣でも中国は設定済み、それから韓国でも原則的には設定したと聞いているわけなんですけれども、この接続水域の設定について、その意義、メリット、設定によって具体的に何がどう変わるのか、お尋ね申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/10
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011・秦野裕
○秦野政府委員 今回の措置によりまして接続水域が設定されますと、ただいま先生お話しのとおり、通関ですとかあるいは出入国ですとか、そうした一定の法令に違反します行為につきまして、それを防止し、あるいは処罰するということが可能になるわけでございます。
一番典型的な例としましては、昨今大変社会問題化しております麻薬あるいは銃器等の密輸入の問題、あるいは大量の不法入国等のいわゆる密航の問題といったような問題が、当該水域におきまして早期に発見をすることが可能になる、あるいは領海に侵入してくることを防止することができるということで、犯罪の予防にとって極めて効果的なものだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/11
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012・茂木敏充
○茂木委員 この接続水域の設定に関しましては、やはり状況というか犯罪の発生なりが変わってきている、こういうことで、今後設定されましたらこれまで以上に密航、密輸といった犯罪の予防について対応が的確になること、こういうことを期待申し上げたいと思うのですが、それでは、状況が変わってきた、そういう中で、現在我が国の周辺海域において密航や密輸の発生状況はどうなっているのか。最近は、数十名単位で密入国者を乗せた船が我が国の周辺、近海でも発見されたとの報道に接することも多いわけでございます。
また、密輸についても、特にけん銃や薬物、これが盛んに問題として取り上げられております。けん銃そして薬物といったものは、言ってみますと、ブランド品のバッグとか時計といった一般の商品とは違いまして、単に密輸という犯罪を構成するだけでなくて、それが一たん国内に持ち込まれますと、人を殺傷したり、また薬物を使用したりといった形で深刻な社会問題を国内にも投げかける性格のものでございます。何としても水際での的確かつ厳重な取り締まりを行うことが重要、必要であると考えているわけでございます。
また、密航、密輸以外の分野でも、従来から外国漁船の緊急入域の問題があると聞いておるわけでございます。漁船の緊急入域自体は国際的にも正当に認められたものでありますけれども、最近では正当な緊急入域の要件がないまま、特に韓国船を中心にしまして多数の漁船が日本の沿岸部に集まって、付近の漁民の方々や海岸近くで生活する人々に心配をかけたり迷惑をかけたりと、こういう実態がある。こういうことも聞いているわけでございまして、このような外国漁船の無秩序な緊急入域の現状、これについても、密輸の問題等々と含めてお知らせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/12
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013・秦野裕
○秦野政府委員 密航、密輸の問題につきまして、私どもは、ただいま先生お話しのとおりの問題意識を持っておるわけでございます。また、密入国、不法入国の方でございますけれども、やはり我が国周辺諸国と我が国との所得格差ということを背景としまして、依然として後を絶たない状況でございまして、最近特に国際的な暴力団が関与するというようなことで、組織化したりあるいは巧妙化するということで一段とその度合いを強めておるというふうに思っております。件数の方も、検挙件数が大体毎年二百人前後で推移しておりましたのですけれども、本年はもう既に現在時点で二百人を超しておるというようなことで、まことに憂慮すべき状態であるというふうに考えております。
それから、密輸入、特に薬物あるいは銃器といったようなものでございますが、その大半は、今先生お話しのとおり、船舶あるいは航空機を利用して外国から持ち込まれてくるというものがほとんどでございます。特に、船舶を用います場合には、洋上で例えば日本の船舶に積みかえるとか、あるいは、大きな港ではなくて余り人のいないような離島に陸揚げをしてそこから内地の方へ輸送してくるというような、手段もだんだん巧妙化してくるということで、私どももその対策にさらに検討を加えていかなければならないという状況にございます。
それからもう一つ先生お話しの、緊急入域のうちの、いわゆる緊急入域と称して島の方に入ってくるという例でございますが、特に島の場合には人口も非常に少のうございますので、そこに大量の漁船が余り正当な理由があるとも考えられない状況で停泊をして、島の方々の漁具を壊すとか、あるいは深夜に大声で騒ぐとか、大変日常生活に不安があるという状態が各所から訴えられているという状況にございまして、この対策につきましても進めていかなければいけないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/13
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014・茂木敏充
○茂木委員 この海上保安庁法の改正の具体的な内容を見てみますと、海上保安官が犯罪の予防などの措置を現場において講じる場合の措置の発動要件を明確にする、こういうものになっていると思うわけなんですけれども、そこでこの発動要件の明確化という改正、これを行うことによりまして、今お話しいただきました密航、密輸、無秩序な緊急入域といった問題の取り締まりについて、具体的に海上保安庁の方の対応がどう変わっていくのか、もうちょっとそこら辺のイメージのあたりをお聞かせいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/14
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015・秦野裕
○秦野政府委員 そうした密航、密輸等の問題につきましては、もちろん犯罪として捜査することも一面としてあるわけでございますが、もう一面、そういうことが発生しないような予防措置を講じるということも重要なことであるというふろに考えておるわけでございます。
現在の海上保安庁法の十八条という規定がございまして、そこで、一定の要件の場合に、海上保安官が船舶等に対しまして措置を講ずることができるという規定があるわけでありますが、その率動要件が、海上保安官が「その職務を行うため四囲の情況から真にやむを得ないとき」という要件になっておりまして、非常に包括的と申しますか、抽象的な規定になっておるわけであります。特に侵害される利益が大きいか小さいかということに関係なく、一律な規定になっておるということでございます。
一方、先生御案内のとおり、最近では、特に単説、判例等で、憲法三十一条等によります、いわゆる適正手続保障と申しますか、そういうもの歩はっきりすべきだということが言われておりまして、ただいまの、申し上げたような十八条の規定が、若干そういう流れにそぐわない状況でございます。
したがって、今回海上保安庁法を改正いたしまして、どういう場合にどういうことができるかという、特にどういう場合にというその発動要件をはっきりさせて機動的な対応ができるようにしたい、そういうことをはっきりさせることによりまして、先ほど来御指摘の密航なり密輸といった問題に対して海上保安官が適時適切な対応が可能になるというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/15
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016・茂木敏充
○茂木委員 お聞きしますと、随分海上保安庁の警備とか対応の体制が大きく変わっていく。言ってみると、予防的、機動的かつきめ細かに警備を行っていく、こういうことになってくると思うのですが、移行についての準備についてちょっとお尋ね申し上げたいと思うのですが、たしか海洋法条約が我が国に効力を生ずることになる日、これを踏まえまして、今度の改正海上保安庁法の施行日、これは法案の成立から三月以内で政令で定める日とされていると記憶いたしております。
そこで、海上における警備が今後ますます複雑かつ多岐にわたる内容になってくる、こう思われるわけですけれども、これから、言ってみると三カ月の間に、短い期間で、中央から現場に対すろ適切な指示等を内容とします通達、多分、かなりマニュアル的なものにして、膨大な量になってくると思うのですが、それから、現場の巡視船艇や航空機において事案に直接対応することになってきます海上保安庁の保安官の対応準備、これは間に合うのだろうか、こういう多少の懸念を私は持っているわけでございます。現在の準備状況が、この法律の制定に、法律の可決に備えてどこら辺まで進んでいるのか、また、今後三カ月以内くらいでどういうスケジュールでこういったものを進めていくのか、この点についてお伺いを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/16
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017・秦野裕
○秦野政府委員 確かに、実際にこれを運用していくのは現場の第一線の海上保安官でございますので、今回の改正の趣旨がそうした者たちに適切に周知されていないとまずいわけでございます。
それで、当然のことながら、この法案を成立させていただきました段階で、各現場機関に至りますまで通達を出しましてその趣旨の徹底を図るわけでございますが、何分三カ月という期間でございますので、それに十分間に合うように現在から下準備は進めております。法案が成立し次第、速やかに第一線まで適切な伝達がいくように私も努力してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/17
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018・茂木敏充
○茂木委員 改めてお伺いしたいのですけれ,も、例えば、かなりの数になる海上保安官に新たなトレーニングが必要なのかとか、体制を増強したりとか、ではそういうマニュアルをつくった場合にどういう形でそれを周知徹底していくのかとか、そこら辺の今後の体制なり準備というものについてもう少し詳しくお伺いいたしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/18
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019・秦野裕
○秦野政府委員 今後のことでございますので必ずしも明確には申し上げられませんが、基本的一は私どもでマニュアルを作成いたします。そういたしまして、本庁幹部、地方の管区本部の主要だメンバーを集めまして、それに対して、説明会〉申しますか、その周知徹底を図ります。それに伴いまして、各管区本部が地元に持ち帰りまして、今度はさらに第二次出先機関の関係者を集めてこれを説明するという段階で周知を図っていくというのが通例でございますけれども、その際、当駅各地からいろいろな問題点の指摘が、疑問と申しますか、わからない点も出てくると思いますので、そうした点については本庁の方で適切に対応していくということで全体としての周知を図りたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/19
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020・茂木敏充
○茂木委員 今回、やはり世界的な問題ともなつています海洋汚染、これに関する防止法についても、本来だったらもう少し、これから詳しくちょっとお聞きしたいと思ったのですが、時間の都合で、せっかく関係の方にお越しいただいているのですが、お聞きできませんでした。
ただいま質問申し上げました領海法、それから海上保安庁法の改正を初めといたしまして、こういった法制の整備が極めて重要であることはもちろん当然であるわけでございますけれども、これらの法令によって構築されることになります新しい海洋の秩序、これを確立してかつ維持していくためには、先ほども質問させていただきましたように、各法令の取り締まりを実施する海上保安庁の体制が整備されているということが何といっても大前提になってくると思うわけでございます。特に、実際の警備を行う巡視船艇や航空機等の監視、取り締まりの体制を充実させていく、こういうことが必要不可欠であると私は考えているわけでございますが、最後に、この点につきまして亀井運輸大臣の方に、お考え、今後の方針について、決意ですか、お伺いを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/20
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021・亀井善之
○亀井国務大臣 お答えいたします。
今委員からいろいろ御指摘をいただきました。また、海上保安庁の体制というものを強固なものにしていかなければならない、このように考えております。特に、昭和五十二年のいわゆる領海十二海里及び二百海里の漁業水域の設定以来、巡視船艇、航空機によりまして広域哨戒体制の整備を進めてきたわけでありますが、先ほど来御指摘もいただきましたとおり、集団密輸事犯であるとか薬物、けん銃、こういう密輸入の問題等で大変深刻化をいたしております。そのような観点に立ち、また今回のこのような法改正、そういう中で、近代的な装備を有する高性能な巡視船艇や航空機、この整備を早急にいろいろ図ってまいらなければならない、このように考えております。
昨年来、補正予算あるいは今年度予算でもそれなりのことをいたしておりますが、現実にこれからこれらの対応をするには、来年の予算要求等々につきましても、さらにいろいろ努力をいたしましてその体制を確立してまいりたい、このように考えておりますので、またぜひひとつ御支援をよろしくお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/21
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022・茂木敏充
○茂木委員 今回の法改正、まさに海洋国家としての日本のレゾンデートルといいますか、あり方が問われているな、こういうことで、運輸省並びに関係機関の皆さんにはしっかりした対応をぜひお願いしたい、このことを最後にお願いいたしまして、私の質問を終わりとさせていただきます。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/22
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023・辻一彦
○辻委員長 以上で茂木君の質疑は終わりました。
緒方克陽君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/23
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024・緒方克陽
○緒方委員 社会民主党の緒方克陽でございます。
ただいま議題になっております領海法の一部を改正する法律案外二案について質問をさせていただきます。項目が少し多うございますので、端的に質問いたしますから、御回答をお願いしたいと思います。
まず、三、四点お尋ねしたいのは、先ほども御質問がございましたが、直線基線の問題についてであります。
今回の法改正で、領海の幅を測定するために直線基線というものを導入するということを決めたわけでございますが、昭和五十二年の領海法制定当時になぜ採用をしなかったのか、その理由と、今回採用することになったのはなぜなのかということについてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/24
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025・西田芳弘
○西田政府委員 お答え申し上げます。
昭和五十二年の領海法制定時に直線基線を採用しなかった理由でございますけれども、その当時、国際社会全体でも二十一カ国が直線基線を採用しているにすぎませんでした。我が国としては、各国の国家実行の趨勢を見るという観点からその当時は直線基線を採用しなかったものでございますけれども、その後の動向を見ておりますと、近隣国や多くの海洋先進国を含みます七十カ国以上の国や地域が採用するに至っているわけでございます。我が国といたしましては、領海の限界線の明確化等の直線基線の効果を勘案いたしまして、これを採用することとしたものでございます。
その直線基線採用の意義、メリットということでございますけれども、今もちょっと申し上げましたけれども、現在、我が国の領海の限界線は、海岸が曲折した地形を持っているところがある、あるいは多数の島が存在していて複雑に入り組んでいるというところがございます。直線基線を導入することによりまして、複雑に入り組んでいる領海の限界線というものが直線的に整形されまして明確なものになります。我が国の周辺海域を航行する外国船舶及び沿岸国としての我が国の法令適用の双方の観点から、実益をもたらすものだというふうに考えているわけでございます。
また、直線基線は、接続水域あるいは排他的経済水域、大陸棚の限界を測定する基線としても用いられるために、我が国が直線基線を導入することによりまして、既に直線基線を採用している近隣国と同様の立場に立つことができるということが指摘できると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/25
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026・緒方克陽
○緒方委員 今メリットのことばかり申し上げられましたけれども、デメリットというのはないのかどうか、その辺はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/26
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027・西田芳弘
○西田政府委員 特にデメリットとして特段申し上げるべき適当なことはないかと思います。
直線基線を引くに当たりましては、これは国連海洋法条約の第七条に関連規定がございまして、それに定めるところによって、先ほどもちょっと御紹介をいたしましたとおり、海岸線が著しく曲折しているところとか、あるいは海岸に沿って至近距離に一連の島がある場所に引かれるものでありまして、そのほか、直線基線を引くに当たりましての要件というものが国連海洋法条約に定めてございます。
したがいまして、仮定の議論でございますけれども、国際法上の要件を満たさないような直線基線を採用する、国際的に許容される限度を超えるような直線基線を採用するということでございますれば問題が生じますけれども、ただ、我が方といたしましては、国際法上の要件を満たし、国際的に許容される限度を見きわめつつ、どこに直線基線を引くのが適当かということを検討しているわけでございまして、特段デメリットはないかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/27
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028・緒方克陽
○緒方委員 そういうことですが、それでは、今回の法律によって直線基線が引かれるわけでありますが、その引き方及び政令で定める具体的な場所はどういうことを考えておられるのか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/28
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029・西田芳弘
○西田政府委員 先ほど国連海洋法条約第七条に定めるところによりまして直線基線を引くものであるということを申し上げましたけれども、国連海洋法条約第七条には、海岸線が著しく曲折しているか、海岸に沿って至近距離に一連の島がある場所に引かれるというふうに書いてございます。
そのほかの要件といたしまして、直線基線は海岸の全般的な方向から著しく離れて引いてはいけないということになっております。また、その直線基線の外側は領海になるわけでございますけれども、直線基線の内側は内水としての規制を受けることになるわけでございます。したがいまして、その直線基線の水域が内水としての規制を受けるために陸地と十分に密接な関連を有しなければならないということもまた条約に定めているところでございまして、これらの要件に合致するような直線基線を引くべく、現在、そのような要件を満たし、かつ、国際的に許容される限度を見きわめつつ、政府部内で鋭意検討しているところでございます。その直線基線は政令で具体的に定めるということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/29
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030・緒方克陽
○緒方委員 それから、特定海域ということで、津軽海峡とか対馬海峡ですか、これも幾つかあるようですけれども、五海峡については領海三海里を残すということになっているわけでございますが、その理由についてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/30
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031・西田芳弘
○西田政府委員 今回の領海法改正案におきましては、領海の幅員については改正規定を設けておりません。
特定海域におきまして領海幅員を三海里にとどめる理由のお尋ねでございます。
我が国は、海運あるいは貿易等、多くを海に依存している海洋国家でございます。そのような海洋国家たる我が国といたしましては、世界の重要な海峡におきまして自由な通航を維持する政策を各国がとるということを促進することが適当だと考えておりまして、我が方の国際航行の要衝たる五海峡につきましても、現状を基本的に変更しないということが適当だというふうに考えている次第でございます。
国連海洋法条約の中に国際海峡における通過通航制度の規定がございますけれども、これは条約に定めはございますけれども、現在までのところ各国の実行の集積が十分でないという点がございまして、この制度につきましては不確定な面がありまして、そのような観点からも、現行の自由な通航を維持するということが適当だというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/31
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032・緒方克陽
○緒方委員 それでは次に、追跡権の問題について三点ほどお尋ねをしたいと思います。
内水または領海から行われます追跡に係る我が国の公務員の職務の執行及びこれを妨げる行為ということになっておりますが、そういう妨げる行為とはどういうものを具体的に念頭に置いておられるのかということについてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/32
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033・西田芳弘
○西田政府委員 法案にございます追跡に係る我が国の公務員の職務の執行というのは、具体的には、追跡に係る、例えば司法警察職員による刑事手続の執行等をいいます。したがいまして、これを妨げる行為ということでございますれば、その追跡に係る職務を執行する公務員に対して、その職務の執行を妨げる行為であって、例えば、取締官に対する暴行行為でございますとか、あるいは取締船の往来を妨害する行為、あるいは犯人を隠秘する行為等を想定いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/33
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034・緒方克陽
○緒方委員 それでは次に、追跡権と海域の問題でお尋ねいたしますが、そういうことで追跡を行っていくわけでありますが、その追跡権が行使できる海域はどういう状況でどこまでならできるのかということについて、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/34
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035・西田芳弘
○西田政府委員 追跡権につきましては、国連海洋法条約にも関連の規定がございます。
これは、条約によりますれば、例えば内水あるいは領海、接続水域からの追跡が規定されているわけでございますけれども、外国船舶が自国の法令に違反したと信ずるに足りる十分な理由があるときには行うことができるというふうにされております。ただし、接続水域からの追跡ということになりますれば、接続水域の設定によって保護しようとする権利の侵害があった場合に限り行使することができるというふうに条約は定めております。
追跡につきましては、そのほか条約に、当該外国船舶、あるいはそのボートが追跡国の内水、領海、接続水域等にあるときに開始しなければならない、また追跡権は、軍艦、軍用航空機もしくは政府の公務に使用されている船舶または航空機で、その権限のあるものが行使することができるというような規定もございます。
それで、追跡は中断されないことが必要でございまして、追跡される船舶がその旗国あるいは第三国の領海に入ると同時に追跡権は消滅するということになっております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/35
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036・緒方克陽
○緒方委員 次に、条約と今回の規定の関係でございますが、条約には無害でない航行の規定が明記されているわけでありますが、この法では無害でない航行に関する規定を設けていないわけであります。公務員の職務執行権限の明確性との関連で言えば、双方これはきちんとした方がいいのではないかというふうに思われるわけですが、これはどういうわけなのか、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/36
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037・西田芳弘
○西田政府委員 お答え申し上げます。
今回改正を御提案申し上げております領海法というのは、我が国の領海の基線、範囲を定める基本法でございます。今回、接続水域に関する規定等を設ける改正を提案申し上げているわけでございますけれども、そのような規定が設けられる場合におきましても、このような領海法の基本法としての性格を変更するものではございません。
領海における外国船舶の無害でない通航についてのお尋ねでございますけれども、これを領海法の中に一般的に禁止するといった規定を置かなくとも、現状におきまして、我が国として取り締まりが必要な行為につきましては、個別の法令に基つく規制等によりまして所要の措置をとることが可能と考えているわけでございます。これらの規制に伴う執行措置につきましては、海上保安庁法でございますとかあるいは刑事訴訟法等に定められているとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/37
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038・緒方克陽
○緒方委員 それでは続いて、接続水域についてお尋ねをしたいと思います。
接続水域というのが設けられるわけでありますが、これは何のために設けられて、どういう意味があるのかということについてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/38
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039・秦野裕
○秦野政府委員 接続水域につきましては、領域におきまして、通関あるいは出入国管理といった法令に違反する行為につきましてこれを防止し、あるいは処罰をするというための必要な措置をとれる水域ということであります。
今般、この接続水域が設定されることによりまして、先ほど来お話のございます密輸の問題あるいは密航の問題といった問題につきまして、そうしたことをいたしております船舶を早期に発見する、あるいは領海の中に入ってくるのを防止する、これは今回の海上保安庁法の改正でその要件を明確にしておるわけでございますが、そうしたものを用いまして犯罪の発生を防止するというような意味を持つということで、極めて有効な制度であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/39
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040・緒方克陽
○緒方委員 引き続いて接続水域についてでありますが、北方四島、あるいは竹島、そして尖閣列島、沖の鳥島にもそれぞれ接続水域を設定されるのかどうかについて、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/40
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041・西田芳弘
○西田政府委員 接続水域についてのお尋ねでございます。
今般御審議をお願いいたしております領海法の改正法案に基づいて接続水域が設定されることになりますけれども、同水域の設定に当たりまして、一部の水域を除外するということは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/41
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042・緒方克陽
○緒方委員 はい、わかりました。
それでは、これにちょっと関連しますが、沖の鳥島がいろいろ話題になっております。いわゆる地球の温暖化、気候温暖化ということの中で水没の可能性があるのではないかということがいろいろ言われておりますし、いろいろな関心も呼んでいるわけでございますが、この問題について、温暖化による海面上昇の問題などについてはどういうふうな御認識をされているのか。あるいは、沖の鳥島を日本の領土としてきちっとしていくどいうことでいろいろな諸施策もされているやに聞いておりますが、どういう諸施策をされているかについてお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/42
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043・西口泰夫
○西口説明員 沖の鳥島には北露岩、東露岩と呼ばれる二つの露岩がございますが、この保全工事につきましては、昭和六十二年度から建設省直轄工事といたしまして実施しておりまして、平成元年度に工事を完了したところでございます。最近の状況につきましては、ことしの二月、現地に設置しております観測機器の維持のために職員を派遣しておりまして、露岩に当面異常がないということで報告を受けてございます。
御質問の、地球温暖化に伴う海面上昇につきましては、今後とも十分な資料収集が必要であると考えておりまして、関係省庁とも連携を図り、観測を継続し、注意深く見守ってまいりたいというところでございます。
よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/43
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044・緒方克陽
○緒方委員 それでは次に、海上保安庁法の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。先ほど、茂木同僚議員からも御質問がありましたけれども、今回の法改正で海上保安庁はさらに大きな役割を担うということになったわけでございますし、きちっとした対応でぜひ頑張っていただきたいということでございますが、いろいろ問題もあるのではなかろうかというふうな気がするわけでございまして、二、三点お尋ねをいたします。
まず第一は、保安庁の基本的な立場といいますか、そのことについてのお尋ねでありますが、最近ではいろいろ近隣国との間で領土のトラブルなどが起きておりますが、そういうものに際して、領海とかあるいは接続水域に対して海上保安庁は基本的にはどういう立場で臨まれるのか。監督あるいは警備の担当官庁でございまして、非常に重要な問題であろうと思いますが、その点についての立場をどういうふうにお考えなのか、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/44
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045・秦野裕
○秦野政府委員 海上保安庁は、海上におきまして犯罪の捜査あるいは予防、あるいは海難救助、法令の励行といった幅広い業務を実行しておるわけでございますが、ただいま先生のお話にもございましたように、特に最近は、海上という性格上、近隣諸国と海で隣接するということもございまして、領土問題が典型的な例でございますけれども、いろいろな国際摩擦の種にもなりかねないということがあるわけでございます。
したがって、私どもとしましては、法令に従いまして毅然とした態度で業務を執行していくということとあわせまして、国際間の無用のトラブル、摩擦が生じないように慎重な対応が必要であるという面もございます。そうした二面をうまく使いまして処理していくということで、非常に難しい面もあるわけでございます。
したがって、いろいろな事案につきましては基本的なマニュアルを各現場まで通達してございまして、それに従ってやるわけでございますが、やはり個々の事案につきましては、必ずそのとおりのことが発生するとは限らないさまざまな局面があるわけでございますので、そうした場合には、現地から私ども本庁にまでいわばホットラインのようなものがございまして、情勢の把握あるいはそれについての対応というものが本庁から現場まで一体となってできるような体制をつくっております。
また、それと同時に、海上保安庁のみでは判断し切れない問題というのも当然発生してまいりますので、そうした場合には内閣を初め関係の機関と迅速にかつ十分に打ち合わせができるように、日ごろから連絡調整を密にして、政府全体としての意思が体現できるように努めているということがそのあらましてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/45
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046・緒方克陽
○緒方委員 今長官答弁されましたように、二つの面を持ちながら、現場で実際にトラブルが発生したりあるいはしようとするときには大変難しい判断を求められるということがあろうと思いますので、そういう点については、連携をとると同時に、やはり現場の第一線の保安官が十分そういう国際情勢も認識しながら的確な対応ができるように、ぜひ日常的な意思疎通といいますか、あるいは判断に当たっての意思統一といいますか、そういうものをやっておく必要があるのではないかと思いますので、これは御要望として申し上げておきたいと思います。
それから二つ目に、今回の改正による職務執行権限があるかないのかということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/46
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047・秦野裕
○秦野政府委員 今回の海上保安庁法十八条の改正の趣旨でございますが、現在の職務執行権限の規定といたしまして、十八条に、四囲の状況から真にやむを得ないときに海上保安官がいろいろな措置をとることができるという規定になっておるわけでございます。非常に抽象的な規定でございます。したがいまして、これを明確にいたしまして、どういう場合にどういうことができるということを場合を分けて明確に規定したものでございます。
したがって、いわばその範囲が大幅に広がるとかそういうふうなものではございませんで、基本的には行える範囲は現在と大きな変化はないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/47
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048・緒方克陽
○緒方委員 基本的には職務権限の中身については大幅な変更はないということですが、しかし条文は、勉強会などで聞いたところでは、いずれいつかはしなきやならぬと思っていたけれども、これを機会にというようなこともあるやに聞いたことがあるわけでございます。そういうこともありまして、このことは非常に重要だというふうに思っております。
そこで、今お話ありました十八条について、もう少し具体的にお尋ねをしたいと思います。
法第十八条の第一項では「海上における犯罪が正に行われようとするのを認めた場合」ということと、同条二項の「海上における犯罪が行われることが明らかであると認められる場合」という表現が一項と二項とあるわけですけれども、この意味の相違についてはどういうふうなものなのか、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/48
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049・秦野裕
○秦野政府委員 場合を分けて規定をいたしましたものですから、全体として条文の長さが非常に長くなりまして若干お見苦しいところがあるかもしれませんが、そういう趣旨でございますので御理解をいただきたいと思います。
十八条一項の方でございますが、これは「犯罪が正に行われようとするのを認めた場合」というふうに規定しておりますが、これは犯罪を行う危険性が切迫しているという場合でございます。例えば、旅客船の乗船者が凶器を振りかざしている、ほかの方に危害が及びそうになっているという場合、あるいは船舶に対して何か危険物、石とかその他の危険物を投げつけようとしている場合、そういうような危険性が切迫している場合、そういう場合でございます。
それから第二項の方でございますが、これは主として海上におきます秩序維持の観点からの規定でございまして、ここで「犯罪が行われることが明らかであると認められる場合」というふうに規定してございますが、これは、周囲の事情から常識的に判断いたしまして、犯罪が発生することが確実であるというふうに認められる場合でございます。例えば、接続水域におきまして、我が国に密入国を企てて我が国の方へ近づいてくる船があるというような場合がこれに該当するというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/49
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050・緒方克陽
○緒方委員 次に、今回の改正によりまして海上保安庁の職務執行体制の変更があるのかどうか、通達などを出されるということになると思うのですが、これはきっちりしていかなきやならないと思うのですが、その点についてはどういうふうになっているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/50
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051・秦野裕
○秦野政府委員 この法案を成立させていただきました場合には、発効までに最大約三カ月間の期間があるわけでございますが、それまでの期間の間に、私どもの方で通達をし、あるいは関係の会議を開くということによりまして、文字どおりこれを運用してまいります現場第一線の保安官がこのシステムについて十分理解し、適切な運用を図れるように万全を期していくつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/51
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052・緒方克陽
○緒方委員 それでは時間が参りましたので、最後に大臣にお尋ねをしたいと思います。
本会議でもそれぞれの党なり議員から、今回の海洋法条約の批准によって保安庁の哨戒海域が拡大していくし、いろいろな仕事もふえていくということで、体制の強化が必要ではないかということが質問されまして、大臣の方からは新しい船艇や航空機の導入などで対応したいというようなお話もありましたけれども、私も過去ずっと運輸委員会に所属しておりまして、かなり古い船艇もありまして、幾らか変わりましたけれども、そんなに充足されたものではないなという認識を今でも持っております。同時にやはり、船艇、飛行機もそうでありますが、人的対応も十分しなければこういう法改正に伴う体制ができないのではないかというふうに思いますが、その体制の強化について、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/52
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053・亀井善之
○亀井国務大臣 いろいろ御意見を承りました。
特に今回の法改正によりまして、現在大型巡視船四十六隻、こういうことで対応しておるわけでありますが、やはり変わるわけでありますので、そういう面からは、いわゆる高性能の巡視艇あるいは航空機の整備が当然必要でございます。これからいろいろ、先ほども申し上げましたが、補正予算や今年度の予算でもいろいろ努力をしておりますが、来年に向けて、予算要求等々につきましても、このような状況、そしてさらには密輸の問題等々、いろいろ状況の変化もあるわけでありますので、最大限の努力をしてその体制が確立できるように努力をしてまいりたい、このように考えておりますので、どうぞまたひとつ御支援方をよろしくお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/53
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054・緒方克陽
○緒方委員 大臣のそういう決意をお聞きをいたしまして、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/54
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055・辻一彦
○辻委員長 以上で緒方克陽君の質疑は終わりました。
久保哲司君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/55
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056・久保哲司
○久保委員 今般提案されております運輸関係三法並びにその根元であります海洋法条約といいますか、こういったことに関連しては、昨日も外務委員会の場で、いわゆる拡大外務委員会という形で、運輸大臣も御出席され、各党の委員から質疑がございました。私もその場で領土、領海のこと等々も含めて、総理また外務大臣、運輸大臣に質問をさせていただきましたけれども、きょうは、そのときにも申し上げましたように、もう一歩ちょっと細部について海上保安庁を中心に質問をさせていただきたい、このように思っております。
先ほど来各委員仰せのように、我が国はまさにある意味で世界に冠たる海洋国家であろうというふうに思います。まさに四万が海に囲まれておる。そういった意味では、海洋資源も含めて、海そのものが我々の生活と切っても切れない密接な関係にあるものだろうというふうに思います。
海洋、まさに自然の宝庫でありますけれども、この海洋に関しては、古くからいろいろな国々がそこでの権益を争い、いろいろなつばぜり合いがありました。そのことによって戦争状態になったことも世界の歴史を見れば多々あるわけでありますけれども、そんな中で、軍事上、経済上、政治上、さまざまな状況がありはした。だけれども、大きくは、第二次世界大戦が終結して以降、国際連合という場を中心に海の秩序というものを何とかつくり上げなければならない、そんな機運になってきたのではないか、こんなふうに思います。
そんなところで、国連の方ではそれこそ日本の年号でいいますと昭和三十三年から三次にわたって国連海洋法会議が催され、十年近くたってようやく何とかまとまりかけた。そして直近では一九七三年、二十三年前でありますけれども、一九七三年から約十年間にわたってさらにその詰めの作業が行われ、そして一九八二年に海洋法条約が採択された。それの発効が一昨年の十一月という、まさにある意味では非常に長い年月と歳月を要して、海の憲法とも言われ、また海の国連憲章とも言われる海洋法条約が日の目を見るに至ったわけであります。
この海洋法条約は、お聞きするところによりますと、私はとてもじゃないが中身は読めませんが、条文にすると五百条にも及ぶ大部なものだということであります。まさに各国の英知、そして世界人類の英知が寄り集まってできたこの海洋法条約というものを、何としても有効になるように各国が力を合わせ、また我が国もそのことに努力をしていかなければならない、このように考えるわけでございます。
そういう基本的な認識のもとに、まず冒頭、大臣にお尋ねをしたいわけでありますけれども、いろいろな報道を見ておっても、過日の本会議の総理並びに関係大臣の答弁、そしてまた昨日の外務委員会における総理並びに関係閣僚の答弁でも、基本的にはこの条約の批准というのは我が国の国益に合致しておる、このような答弁だったように思います。と同時に、新聞を初めさまざまな報道機関もそのような報じ方をしております。この点について、閣僚としての運輸大臣はどのように認識しておられるのかお伺いしたいことが一点。
あわせて、先ほど来話が出ております、この後詳細をお聞きしたいとは思っておりますが、この条約批准に伴うさまざまな国内法整備に伴って間違いなく業務量が増大する、その責務を負う運輸大臣として、そういう側面からはこれまたこのことをどのように評価されておられるのか、この点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/56
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057・亀井善之
○亀井国務大臣 今、委員いろいろ御指摘をいただきました。全く私も同意見でございます。
国連海洋法条約は、国際社会における安定した海洋の法的秩序の確立に資するわけであります。また、海洋一般に依存するところの大きい海洋国家としての我が国の長期的な、かつ総合的な国益に沿うものであるわけでありまして、そのような視点からも、政府といたしましても同条約の早期締結を目指しておるところでもございます。
また、運輸省及び海上保安庁は、海洋環境の保護、保全、海上における取り締まり等を所掌しておりまして、海洋環境の保護、保全に関する沿岸国の管轄権の及ぶ範囲が拡大することや、接続水域の設定によって密航、密輸の効果的な防止等が可能となることは、運輸省及び海上保安庁といたしましても極めて意義の大きいもの、このように考えております。
したがいまして、それらの体制に沿うような体制というものを、省を挙げて万全な体制を期してまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/57
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058・久保哲司
○久保委員 今の大臣の御答弁を総論、入り口として、順次、詳細についてお尋ねをしたいと思います。
この条約が批准されますと、その結果として、接続水域と呼ばれるものが領海の外にさらに十二海里設定される、さらに排他的経済水域と言われる概念のものを領海基線から二百海里以内でもって設定しよう、こういうことになるわけであります。
きのうもちょっと海上保安庁の方にパンフレットをいただいて見ておったのですが、そこに、今既にそれなりに設定されておる漁業水域というものが、二百海里だったらほぼここら辺でっせというのが書かれています。日常、東京−大阪間だけを新幹線で動いている人間にとっては、この距離を見ただけで気が遠くなるほど、まさに広大なエリアを所掌することになるわけであります。こうなると海上保安庁としては本当に大変なことやなというのが、正直申し上げて実感であります。
そこでお尋ねをしたいのですが、海上保安庁の現行法令で定められた任務といいますか、業務といいますか、これは当然あろうかと思うのですけれども、領海が直線基線をもとに十二海里設定され、しかも二十四海里までの接続水域が設定され、そして二百海里の排他的経済水域というものが設定されたときに、海上保安庁が今なさっておられる仕事が質的に量的にどのように変化するのか。また、新たに発生する業務としてはどのようなものがあるのか。この点についてまずお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/58
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059・秦野裕
○秦野政府委員 何点かに整理して申し上げます。
まず最初に排他的経済水域の設定の関係でございますが、そのうちのまず第一点としまして、外国漁船の取り締まりの問題がございます。
これは御案内のとおり、東経百三十五度以西の日本海の西部から東シナ海に至る水域というものが新しく排他的経済水域になりますので、ここにおきまして、隣接国の漁船に対します監視、取り締まり業務というものが新たに発生してまいります。次に、現在既に設定されております我が国の二百海里の漁業水域におきまして、現在適用除外になっております韓国あるいは中国の漁船に対します監視、取り締まり業務というものが新たに入ってまいります。
それから第二点としまして、外国船舶によります海洋汚染の事犯の関係でございますが、領海外におきます外国船舶による海洋汚染の事犯につきまして、今般、排他的経済水域におきまして適用関係が生じてまいりますので、これに対しまして、いわゆる海洋汚染防止法の改正によりますボンド制度の運用といった業務が新しく追加されてまいりますし、またもちろん、それに対する捜査活動というものも新たな業務として入ってまいります。
それから、大きな二番目としまして、接続水域の設定の関係でございます。
これは先ほど来御説明しておりますように、近年の密航、密輸事犯に対応いたしまして、現在は十二海里ということでございますけれども、その外側の接続水域におきまして、そうした事犯に対する未然防止、あるいはそれに基づく海上保安官のいろいろな措置というものがここで新たにとれるようになるということで、そうした種類の業務が増加してくる。
以上が大体大きな変化でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/59
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060・久保哲司
○久保委員 今、接続水域あるいは排他的経済水域ということに立て分けて御説明をいただいたわけでありますけれども、日本の領土、領海、領空といいますか、そのエリアにおける治安の維持というのは、言うならば、陸上ないし完全な内水面というのは警察署の所管、そして海の上が基本的には海上保安庁、こういう任務の立て分けになっておるというふうに私は認識しております。
その観点からいきますと、まさに漁業に関しては、ある意味で、中国、韓国を除く他の国については、百三十五度以西を除いては今と基本的には同じだ。ところが、百三十五度以西に排他的経済水域が設定されることによって、新たな仕事がふえます。それ以外の水域においても、韓国、中国が除かれているので、それがふえる、このようなお話。それ以外に、油関係の汚染となると、外国船籍についてですけれども、これは排他的経済水域という、十二海里がまさに二百になる、こういうことになる。
そうなると、この排他的経済水域がスムーズにすっと引けるかどうかというのは領有権問題とも絡んで大きな問題ではありますけれども、そのことはちょっと横に置いておくとして、そうなったときに、今の海上保安庁がお持ちの勢力、このパンフレットにも、船がこれだけある、ヘリコプター等をこれだけ持っている、人員はこれだけということでお示しをいただいておりますけれども、この勢力でもって、果たして今長官がおっしゃった業務量に対応できるのやろうか。例えば、百メーターの間に十人の警官が立っておれば、十メーター間隔に見渡せるわけですけれども、これが一キロの間に十人やとなれば、一人の人間が百メーターの間を見ないとあかん。これはある意味では物理的に不可能という部分も出てくるわけで、そんなことを考えたらこれは本当に大変な話やな、こう思います。
そこで、ここに示されております現状の機材、人員、これでもってどこまでのことができるのか。あるいは今後、航空機の補充、船舶の補充あるいは要員の増加といったことについて、基本的にはどのような方針をお持ちなのか。これをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/60
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061・秦野裕
○秦野政府委員 海上保安庁では、昭和五十二年に領海が十二海里になり、また今先生お示しの漁業水域二百海里というものが設定されまして以来、いわゆる広域的哨戒体制の整備ということで、巡視船艇、航空機を充実し、あるいは性能のアップということを図ってまいりまして、先ほどお示しのパンフレットに示すようなところまで整備してきたというのが実態でございます。
ただ、今お話しのように、今回の海洋法条約の批准に伴いまして、今後私どもの業務は質的にも量的にも非常に拡大してまいります。現在の体制でそれが可能であるかと言われますと、これは非常に難しいというふうに申し上げざるを得ないわけでございまして、私どもとしましては、こうした新しい必要に向けての海上保安庁の体制の整備というものをさらに一層拍車をかけてやっていかなければならないというふうに考えておるわけであります。
その具体的な内容について現在鋭意詰めておる段階でございますが、特に、現在整備しております船自体、かなり古くなっておる船あるいは航空機というものもございまして、そうしたものについての性能アップということも含めまして、全体の体制整備はどうあるべきかという点について、今鋭意検討を進めておるという段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/61
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062・久保哲司
○久保委員 いずれにしろ、これは先ほどの大臣の答弁にもありましたけれども、相当力を入れて頑張らぬといかぬ話かな、こんなふうに思います。
そこで、昨日午前の当委員会で、運輸大臣から海上保安庁法の一部改正について提案理由の説明をいただいたわけでありますけれども、その提案理由の説明の中で、「このような新たな法制度の導入にかんがみ、」これは海洋法条約が批准されるということを受けての言葉でありますけれども、「また、最近における密航、密輸等海上における犯罪等の発生状況を踏まえ、海上における取り締まりに係る法整備を行う必要があります。」このように述べられて、その後具体的な改正点をおっしゃったわけであります。
確かに、法の整備という点では、先ほど来長官がお答えになっておりますように、四囲の状況にかんがみという非常に抽象的な部分を明確化しましたと。このこともわかりますし、また、それぞれの条文内容についても、読ませていただけばそれなりの一定の理解はできるわけでありますけれども、法の整備は法律を変えれば、変えればといっても簡単に変えられるものじゃないかもわかりませんが、変えればそれで済むわけでありますけれども、やはりこれを具体に実効あるものにするには、組織なり体制なりの整備がついていかなかったら結局は絵にかいたもちになってしまうということではないかな。そういう意味では、法の整備というのは総論であって、組織の整備、体制の整備というのが各論として具体性を持ってその後をフォローしていくことがなかったならばどうしょうもないのじゃないか、そんな思いがいたします。
今長官御自身がおっしゃいましたけれども、海上保安庁が今持っておられる航空機あるいは船舶等の資機材、かなり老朽化しているものもある。耐用年数が過ぎているものも結構数あるやに伺っております。こうなりますと、随分前ですが、それこそいっとき新聞でも報ぜられましたけれども、警察のパトカーが一生懸命追いかけようと思うけれども、逃げておる車の方が性能がよくて捕まらへん、こんな話を聞いたことがあります。陸上の場合だったら、せめてナンバープレートさえちゃんと確認しておけば、いっかどこかで追いかけて捕まえられるわけでありますけれども、海上というのは私の余り詳しくないジャンルであります。それこそ船の名前を隠しておったりとかさまざまなこともあるようでありますし、こうなりますと、やはり能力をきっちり備えないと、冒頭申し上げた海洋法条約の趣旨というものを生かすことができない、こんなことも危惧されるわけであります。
そうなりますと、それこそ警察に警察学校があるように、海上保安庁も当然のことながら、幹部養成あるいは中堅幹部の養成機関として海上保安大学校あるいは海上保安学校というものをお持ちでありますけれども、将来のことを見通せば、今定員何人か知りませんが、ここの入学人員を一・五倍にするとか二倍にするとかいうことも含めて対応していかなかったならば、本当の意味での目的達成にはほど遠いのではないかと思います。
そこらあたり、先ほどのお答えにプラスして、もう一歩突っ込んだ具体論の部分でどのようにお考えか。これはまだ法案が通ったわけじゃないですから、保安庁として具体の作業にはまだ取りかかっていませんよということかもわかりませんけれども、そこらあたりについてのお考えをお聞かせ願えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/62
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063・秦野裕
○秦野政府委員 まず老朽船艇の関係でございますが、私どもの巡視船艇あるいは航空機のうちで、耐用年数の関係で申しますと、船で既に耐用年数に達しておりますものが四十隻ございます。これは平成八年度までの数字でございますが、これを仮に、平成九年度以降五年間でさらに耐用年数に達するものを足しますと、巡視船艇で九十五隻、航空機が三十五機ということになりまして、私どもが持っております巡視船艇でいいますとほぼ三分の一、航空機で申しますと約半分に当たるものがこの五年間の間に耐用年数が来るということでございまして、まずこれの代替を行わなければならないという大問題があるわけでございます。
その際には当然、今お話のございましたように、その間相手の船舶の性能もいろいろ上がっておるというようなこともございますので、さまざまな性能の面での向上というものもあわせ図りまして、質的な面での増強も進めていきたいということを考えております。
それから要員の関係も、業務量の増に伴って要員の増も当然必要になってくるわけでございまして、その際やはり質の問題というものもございます。海上保安大学校あるいは海上保安学校におきます教育カリキュラムの見直しあるいはその養成規模の拡大といったような問題も、今の船艇、航空機の整備計画の策定とあわせまして、同時に検討を進めていかなければならない問題だというふうに考えております。
現在、その検討に着手した段階でございまして、現時点で具体的にこういう数字ですということをちょっとまだ申し上げられないのは大変残念でございますが、先生の御趣旨を体して万全を期するように一生懸命やっていくということを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/63
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064・久保哲司
○久保委員 何度もくどいように申し上げまずけれども、そこは本当に力を入れていただきたいし、我々国会としてもできるだけの支援は、私一人ぐらいが言ったってどうしょうもないかもわかりませんが、やらせていただきたいな、そんなふうに思います。
次に、先ほど海上保安庁の業務ということについて御説明をいただきました。領海内ということに限って言えば、基本的には従前どおりというふうに思います。接続水域ということになりますと、通関その他で犯罪を犯した者を追っかけていける水域が広がった、あるいはまた、密航等で入ってくるのを事前にとめてみたりとかいう部分が広がる、こういうことが中心なのかなと。さらに、排他的経済水域というところでは、先ほど来お話しいただいたように、漁業面でのこと、そして油の漏えい、こういうことであります。そういった業務が質、量ともにふえる。
そうなってまいりますと、漁業に関していいますと、今既に二百海里があるとはいうものの、中国そして韓国の問題がある。そしてまた、実際に深刻な事態を引き起こしておるのがその両国でもあるわけで、そうなってくると、これはそれこそ、漁業協定そのものとかいうのは当然のことながら農水省の所管かとも思いますけれども、今海上保安庁として掌握されている、あるいは現場で業務に従事していただいている中で、外国漁船の違法操業の実態といいますか、どういつだ形態、類型があるのか。
資料を見させていただきますと、検挙件数こそここ数年確かに減ってきてはおるようでありますけれども、やはり全体としての事案というのは決してそんなに減っているわけでもないし、種類違いでまたふえているような部分もありますが、違法操業の実態並びに海上保安庁の取り締まりの実態、状況についてお教えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/64
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065・秦野裕
○秦野政府委員 私どもは、我が国の領海内あるいは漁業水域内で操業を行っております外国漁船に対しまして当然ウォッチをしております。違法操業であれば検挙をし、あるいは領海外に退去を命じ、あるいは立入検査を行う、いろいろなことをやっております。
ただいま先生お話しの検挙件数で申しますと、平成三年から七年までの五年間で検挙しました外国漁船は百四十八隻でございます。年別にこれを見ますと、平成三年の四十隻に始まりまして、四年が三十九隻、五年も三十九隻、六年が二十一隻、七年が九隻ということで、確かに減少傾向にあるように見えるわけでございます。
これは、もちろん私どもの取り締まりが、若干我田引水でございますが、効果があったということもあろうかと思いますけれども、それに加えまして、外国漁船にかかわります判決の罰金が非常に高くなってきたということで、これが心理的にやはり漁船側に影響を与えているのではないかということ、あるいは、平成五年に日韓首脳会談がございまして、その際に違法操業是正等につきまして申し入れを行った結果、韓国側の方も指導、取り締まりを強化したというようなことが原因ではないかというふうに考えております。
そういうことで、検挙件数そのものは減っておるわけでありますが、漁業水域内で操業を行っております外国漁船の隻数ということについて見ますと、平成五年に二千二百五十隻余でありましたものが、平成六年には二千九百隻、平成七年になりますと四千七百三十隻ということで非常に急増をしておるわけでございます。
したがって、今後ともそういう問題が生ずる余地というものはぬぐえないわけでございますので、私どももこうした面に着眼しながら慎重に対応していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/65
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066・久保哲司
○久保委員 うがった見方をすると、検挙件数が幸いにして減っておるというのは、逆に言うたら逃がした者がいっぱいおるのかもわからないということにもなるのかなと思うたりするのですが、今おっしゃったように、漁業水域内で操業しておる外国漁船というのが飛躍的に増大しておる。犯罪統計じゃないですが、母数字に比例して悪いことする者もいいことする者もそれなりにふえるということを考えたら、やはりこれはまた取り締まり対象がふえるということにもつながるのでしょうし、そう思うと、なおのこと頑張っていただきたいことが山ほど出てくるな、こんな思いがいたします。
魚釣りをする人はほとんど経験がありますけれども、逃がした魚は大きい、こんなやつやったんやという話がよくありますけれども、海上保安庁の、先ほどの老朽船ではないですが、能力不足というか、あるいはその他の理由で、悪いことをしておる、違反しておるのはわかったけれども拿捕できなかったというか、捕まえることができなかった、そんなものというのは、これは数字としては言いにくい数字かもわかりませんが、どの程度事例があるものなのか一遍聞きたいな、こう思っております。
また、エリアが広がっていることもあって、今の海上保安庁のお持ちの資機材並びに人員による能力では把握し切れない水域とかいうものがあるのかどうか。このことについて、もし差し支えなければお教えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/66
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067・秦野裕
○秦野政府委員 違法操業を犯しました外国漁船を捕捉できなかった、ちょっと件数そのものは手元にございませんけれども、例といたしまして一つ申し上げますと、平成二年に山陰沖で発生しました事例でございます。
この船は、まず船名と登録番号を消しております。そして、私どもが停船命令をかけましたところ、それを無視しましてジグザグで逃げ出したわけでございます。私どもの方の巡視船が幾度となくそれに対して強行接舷をしょうとしたわけでございますけれども、その漁船は、まず船体の周りに漁網を張りまして、これで保安官が乗り移れないようにうまくいたします。
それから、船尾からロープを流す。流しますと、そのまま突っ込みますとスクリューに絡まって私どもの船は動けなくなるというようなことで、これをよけながら走らなきゃならぬということで船の間が開いてしまうわけでございます。
あるいは、近づいてまいりますと、ボルトとかナットあるいは乾電池といったものを船員がこち
らに向かって投げつける。それで、その間に逃げていってしまうということで、結果的にこの船は捕捉できなかったといったような例があるわけでございまして、こういう場合は大変悪質な例でございますけれども、これに似たような例が数例あることは事実でございます。
それから、見つからなかったと申しますか、要するに漁船の方から違法操業しているよという通報がございまして、私どもの船が現地へ参りました時点でもう既にその漁船がどこかへ行ってしまったというようなケースはもちろんあるわけでございまして、私ども、やはりなるべく、そういうような違反のある海域というのは大体ある程度想定ができますので、そうした海域にあらかじめ船を張りつけておきまして、そうした違法操業に対して迅速な対応ができるように対応いたしております。
もちろん百点満点というところにいくのは非常に難しゅうございますが、少なくともそれに近づけるように努力をしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/67
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068・久保哲司
○久保委員 確かに広い海洋でありますから百点を期待するのは無理でしょうし、さりとて点数が下がらないように、偏差値が下がらないように頑張っていただきたい、こんな思いがします。
これからますます暑くなり、海洋レジャーという点ではピークを迎えるわけですし、こちらの方もいろいろな船舶の能力等々が向上していますし、そうすると、そういうことにより外洋に出る人もふえる。それに伴って事故も起こる。そうすれば、当然のことながら人命救助といった仕事もまたふえてくるかとも思いますし、さらには、きょうはもう触れませんけれども、我々の生命あるいは生存ということに深くかかわる犯罪、薬物事犯であるとか銃器事犯、これらは、どうも統計を見させていただきますと、むしろ銃器事犯は近隣諸国の不安な要素も含めてふえておるようであります。
こういったまさに広範な業務を行っていただくこと、我々、海上のこととて日ごろは直接目にしない作業ではありますけれども、陸の外でまず入ってくることを防備していただく、その仕事に長官以下さらに精励を尽くしていただきたい、そんな思いがいたします。
次に、農水省の方、お越しいただいていますか。ちょっと関連で農水省にお聞きをしたいのですが、今現在我が国の二百海里漁業水域というのは、ソ連が一九七七年に設定したことに対抗して、北方領土の問題もあり、我が国がそれに対抗して、対等の条件で交渉を進められるようにということで漁業水域に関する暫定措置法という法に基づいて設定をし、そしてその中には、二百海里でやるよ、近いところは中間線でやるよということでやった。その結果、ソ連との間では、今ロシアですけれども、その間では比較的漁業そのものに関してはおさまっておるわけでありますけれども、これがやはり中国、韓国の方では今なおそういう状況にはなっていない。
それらを包括して、今設定されておる漁業水域、その漁業水域の設定に伴って今現在日本が行っておる漁業操業、それによる生産、これと、今回新たに設定しようとする排他的経済水域のもとでの漁業に関する主権的権利の行使とは一体何がどのように違うんやろうか。
排他的経済水域という言葉、その冒頭についておる排他的ということを強く読めば、自分のところの国の漁業の優先度が高まり、外国のものはできるだけ排除するというか追い出すというか、そういう傾向があるのかなとも思うのですけれども、漁業という観点から見たときに、先ほど来申し上げましたように、今現在設定されている漁業水域ということに伴う漁業操業と、近い将来設定されるであろう排他的経済水域、そのもとで行われる漁業というのはどういう違いがあるのか。排他的経済水域というのは、資源に関しては主権的権利を持ちますよ、領海と同じですよ、このような考えであるようであります。
それこそ、いっときJRで言われたE電、エー電と言うのかイー電と言うのか。この排他的経済水域はEEZと書いてエーゾと言うらしいのですけれども、ほんまに日本の国民にとってええぞという結果になるのか、そのことをちょっとお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/68
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069・石木俊治
○石木説明員 お答えいたします。
水域の性格等につきまして、委員がただいまおっしゃったとおりでございますが、現行の漁業水域における管轄権と排他的経済水域における主権的権利、それに基づきます権利の行使の内容でございますが、これは漁業水域の暫定措置法をつくるときから海洋法条約のもとの案のようなことを参考にしていたこともありまして、今漁業に関したところを比べますと、その内容は同様のものとなっております。
ただ、現行の漁業水域というのは、委員御指摘のとおり東経百三十五度以西の日本海それから東シナ海等については設定されていないということでありますけれども、今般設定されることになる排他的経済水域ではそういう除外水域というのは設けないことにしておるということがまず違いますし、それからまた韓国、中国との関係につきましても、今後漁業協定を改定して、両国の国民に対しても排他的経済水域に基づく漁業の主権的権利の適用を予定しているということがございます。したがいまして、我が国が漁業に関して主権的権利を行使することができる水域の範囲、それから対象者でございますが、これが拡大することになるというところが違ってくることだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/69
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070・久保哲司
○久保委員 漁業に関しては大きくは基本的に変わらないということでありますけれども、やはり百三十五度以西が、排他的経済水域の設定によってある種確定するといいますか、そのことによって海保の仕事の範囲もはっきりするというか広がるというか、そういう結果になるのだろうと思います。
そこで次に、せっかく農水省にお越しいただいたので、多少方向は違うのですけれども、ひとつお尋ねをしたいと思います。
この条約を批准することが日本の国益に合致するのだと言われておる、その直接的なイメージでそうやそうやと思う部分というのは、多分に漁業に関してということかなというふうに思うのです。ただ、それだけではなくて、冒頭申しましたように、漁業資源というものが日本人の食生活、生存にとって欠かすことのできないもの、また多くの国民が人間の生存にとって必要な栄養源であるたんぱく、こういったものを魚から得ているという、そんなことも含めて考えますと、まさに我々にとってはこれはゆるがせにできない問題かな、こう思うわけであります。
昨年末の新聞の社説なんですけれども、「日本の漁業が危機的な状況を迎えている。近海の資源が乏しくなっているだけではない。輸入増大、生産減少、魚価低迷に加え、中国、韓国漁船による近海での乱獲が続いているからだ。」このような書き出しで、次に海洋法条約に及んで、「日本も同条約を批准して直ちに二百海里水域を設定し、両国に全面適用せよとの要求が、西日本や北海道の沿岸漁民から高まっている。」さらには「資源管理に基づく漁業への移行は世界の常識であり、漁獲量世界一の中国と、同三位の日本が現状を放置することは許されない。」このような趣旨の社説、今ちょっと読ませていただきましたけれども、こういったことがございます。
そんなことを考えますと、今漁業水域二百海里が決まっていないのは地球上で地中海とペルシャ湾と、そして日本近海の日本海から東シナ海そして中国の黄海に及ぶあのエリアだと言われております。世界に名だたる先進国である日本が、この三つ残っている中の一つ、何としても今回ぜひ積極的に日本がリーダーシップを発揮しながら設定をしていただきたいと願うものであります。
それにしても、この海洋法条約の批准を契機に、農水省としては今後の我が国の漁業生産の安定確保と、そしてそのためには漁業、漁村の活性化ということを明確にさせていかなかったなら
ば、日本の将来にとって大変なことになるのではないか、こんなふうに思います。
統計によれば、数年前の漁獲高に比べたら、水揚げ量は今三分の二ぐらいに落ち込んでおるというふうな統計もございます。一方、その分は輸入に頼っているというような部分があるようでありますけれども、そういった漁業生産の安定確保あるいは漁業、漁村の活性化という点についてどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/70
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071・石木俊治
○石木説明員 国連海洋法条約の締結に伴います排他的経済水域の設定、それから漁獲可能量制度の導入等は、いずれも我が国の周辺水域における漁業資源の維持増大に資するものであると考えております。このような新たな漁業秩序に的確に対応して、我が国水産業の振興を図っていく必要があると考えております。
このため、特に資源管理を円滑に推進するための各般の施策を講じていくこと、それからつくり育てる漁業の振興を通じました漁業生産の維持増大、それから漁業生産基盤の整備等による漁村の活性化等のための施策について充実を図っていくことが重要であると考えておりまして、平成八年度予算におきましてもこれらの施策を着実に推進することとしているところでございます。今後ともこれらの施策の充実を図りつつ、新たな海洋秩序のもとでの我が国の水産業の振興が図られるよう、全力を挙げてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/71
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072・久保哲司
○久保委員 ありがとうございました。
それでは次に、再び海上保安庁の方に戻りまして、海洋汚染のことについて少しお尋ねをしたいと思います。
事故による油の流出とかあるいは故意、過失による油の流出、ゴミの投棄なんというのはまさに故意でしかないのだと思いますけれども、こういったものがまず海洋汚染の中心かな、このように思うわけであります。
ことしの三月六日の業界紙である海事新聞に、まさに「海洋汚染、依然後絶たず」というのが大きな見出しで載っております。海上保安庁が二月に出された速報によると、九十五年は五年ぶりにむしろ増加した、さらに中身はやはり油によるものが過半を占めておる、こういった記事が出ておるわけであります。これはいわゆる速報をもとにこの記事が形成されておるわけでありますけれども、要するに工場からの廃液等を、昔の水俣病ではないですが、隠れて流し込んでいるとか、あるいはそういったものを船に積み込んで捨てに行っている事犯の事例が一つ紹介され、別途また油の流出についての事案も紹介されております。何か東京湾でめちゃめちゃふえておる、こう書いてあります。
いずれにしろ、故意、過失といった汚染原因を問わず、海洋汚染事犯は依然として後を絶たない。これだけ地球環境ということがさまざまなところにおいて声高に叫ばれておる中で、また多くの人たちが、この地球というものを自分たちの子孫に安全ですばらしい状態で送り届けなければならぬ、残さなければならぬ、そんなことが言われているときに、この海洋汚染というものが依然後を絶たず、むしろふえておるというのは、ある意味で悲しい現状で、もう何とも言えないわけであります。
今までの取り締まられた実態等から、この海洋汚染の事例というのはどのようなものがやはり典型的なものとして存在するのか、また海上保安庁はそれに対してどのような対応をされ、今後どのような対応をしていかなければならないというふうにお考えなのか、これをちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/72
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073・秦野裕
○秦野政府委員 海洋汚染の発生状況でございますが、ただいま先生のお話しのとおりでございまして、平成二年以降減少傾向にありましたものが、昨年、平成七年に五年ぶりの増加を見ておるわけでございます。
その内容的にも、お話しのとおり、油によります汚染が平成七年、昨年に大幅にふえたということによるものでございまして、典型的な例といたしましては、いわゆる小型船舶が、ビルジと申しまして、船底にたまりました油性の混合物でございますが、これを夜陰に乗じて、あるいは人目につかないところで故意に排出してしまうというケースが非常に目立ってふえてきておる状況でございます。もちろんそのほかに、今お話のございました陸上の廃棄物の海洋投棄とかいろいろなケースがございますけれども、一番典型的なのは、今申し上げた船舶からのビルジの排出というのが多い例でございます。
私ども、やはり監視、取り締まりというものがもちろん第一義でございますけれども、やはりそうした海洋環境の保全というものは大切なのだということをよく関係の皆さんに周知徹底を図るということも非常に大きな仕事だと思っております。従来、公害モニターといういわゆるモニター制度で何人かの方に委嘱して見ていただいておったのでございますが、それをことしから拡充いたしまして、人数もふやし、またその仕事の中身も、単なるモニターだけではなくて、そうした海洋環境の保全のための周知、宣伝、PR活動にも従事していただくということで、原則ボランティアで協力をいただいておるわけでありますが、そうした方々の人数をふやしまして、全国各地で周知・啓発活動を展開するというようなこと、あるいは、一定の期間を環境保全のための強化月間といたしまして、その間に集中的なPRなり取り締まりを行うというようなさまざまなことを総合的に講じまして、少しでも海洋環境の悪化を防止できるように努力をしているところでございます。
〔委員長退席、赤松(広)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/73
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074・久保哲司
○久保委員 いずれにしろ、地球を守るという、これまた議論が大きく抽象的に広がるような話をして恐縮でありますけれども、よろしくお願いをしたいと思います。
海洋汚染については、今までは外国船あるいは日本国籍の船に対してそれぞれ海上保安庁の対応の仕方というのは違った、このように聞いておりますけれども、外国船について言いますと、今までは領海内のみ対処、領海を出てしまった場合にはその旗国に通報をする。それが今度、先ほどもお話がありましたように、排他的経済水域というものが設定をされますと、二百海里の先までがそれなりに捕まえもし、注意もし、警告もしなければならぬ対象エリアになる。そういう意味では、エリアの増大という点では、海洋汚染の防止という部分が今まで漁業等に関してやっておられた仕事に比べれば絶対的にボリュームのふえるところかな、こんなふうに思うわけであります。
さりとて、対象範囲が広がったといったって、事故によってタンカーがぼきっと折れて油が流出したとかいう、だれも好んで事故を起こす人なんて世の中どこを探したっておらぬわけですから、そういう意味では、事故によるものはやむを得ないというか、横へ置くとしても、いわゆる犯罪行為、故意の場合、過失の場合というのがありますけれども、特に故意というのは、当然ながら悪質なんでしょう。
そうなった場合に、犯罪に当たるものとして、今までもさまざまな事案に遭遇をされたのだとは思いますけれども、何といいますか、この間うちの騒がれたイギリスの狂牛病ではないですけれども、知ってはおるけれども見たことない、日本には関係ないというこの手の話、この手の話というのは変な言い方ですけれども、範囲が広がった、今までは日本に関係ないところでぼんぼんやっておったというような、海上保安庁が今後そのエリアが広がったときにひょっとしたら直面するかもしれぬそういう新しい類型の犯罪形態といいますか、こんなものというのは何か想定されるものがあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/74
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075・秦野裕
○秦野政府委員 外国船舶の特徴といたしましては、かなり油が多いということ、それから油の排出につきましても、非常に初歩的なミスと申しますか、そういうものが多いというのが特徴でございまして、我が国の港に入港しました際に、いろいろな方法によりまして指導なり監督を行っておるわけでございます。
今般、先生のお話のとおり排他的経済水域にまで対象範囲が広がってまいりまして、私どもの業務がふえていくわけでございます。私どもとしましては、日本の南岸から南西諸島に至りますいわゆるタンカールートがございまして、特に高知の沖あたりがちょうど日本に参ります船のタンククリーニングをする場所に当たりまして、そこで油を違法に排出するというケースが多いことから、そうしたタンカールートなり海域に重点的に船艇、航空機を配置いたしまして監視、取り締まり体制を強化していくということで、今後ますますそうした業務に力を入れていく必要があろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/75
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076・久保哲司
○久保委員 今ちょっとおっしゃっていただいたように、例えば高知沖あたりでタンカーがタンククリーニングをする。これは今までだったら、領海内でない限りは、おお、やっておるなというだけで、見て、ほっておかないとしようがない。そこでもしも何か排出したとしても、これは取り締まり対象ではなかったわけですね。そういうのは、ある意味では明らかに対象として入ってくるということだろうと思います。
そこで、今回の具体的な法改正の部分で一点お尋ねをしたいのです。
海洋環境の保護、保全といった分野で、沿岸国の管轄権を排他的経済水域まで拡大しよう、あわせて海洋汚染事犯を引き起こした外国船舶、先ほどおっしゃったまさにクリーニング、その後何かやった場合にはそれに当たるのだろうと思いますけれども、これに対していわゆる担保金の支払いを条件に速やかに釈放する制度、ボンド制度と呼ばれておるようでありますけれども、これを創設するんだ、このように書かれています。
新聞の社会面等で日常出てくる、今凶悪な犯罪としてはオウム、裁判中でありますけれども、こういったものに対する我々の一般的な感覚でいえば、刑罰の種類でいえば、科料から始まり、罰金があり、禁錮、懲役、死刑と、こうあるわけでありますけれども、重大な、重いものほど刑務所にするというか、これが一般的な感覚なんだろうと思うのです。船の場合に早期釈放、お金の支払いを前提にということでありますけれども、このボンド制度を取り入れられたこの趣旨というのは、一般人にわかるように言うた場合に、なぜなんや、そのことが全体としてこのことに資するからなんやという理由が当然あろうかと思うのですけれども、この点についてちょっとお教えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/76
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077・秦野裕
○秦野政府委員 海洋環境の保護とかあるいは保全という分野につきましては、今回の海洋法条約で大幅に沿岸国の管轄権の範囲が拡大したわけでございます。ただ一方で、例えば船舶自体を差し押さえる、あるいは航行を差しとめるということになりますと、やはり経済的な損失というのが非常に大きい。したがって、そうしたものについての保護措置も講ずる必要があるだろうということがこの海洋法条約の検討の過程で問題になりました。したがって、現在の条約上の規定では、外国船舶が海洋汚染事犯を引き起こしました場合に、合理的な手続、例えば保証金あるいはその他の適当な金銭上の保証に従うことを条件にして速やかに釈放する制度を設けるということで、条約上そういう制度になったわけでございます。
これは、保証金を積むということは、要するに、釈放はいたしますけれども、これは別にそこで無罪になったというわけではございませんで、当然次の刑事処分が行われる際に当たって出頭しなければ、その保証金が没収されるという意味での担保金ということでございます。したがって、そうした違反者の刑事手続への出頭を担保する担保金の提供ということを条件として速やかに釈放を行うといういわゆるボンド制度について、海洋法条約の規定を受けまして、私どもの海洋汚染防止法においても同様の規定を設けたというのが今回の改正の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/77
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078・久保哲司
○久保委員 今までるるお伺いをしてまいりました。今後海洋法条約の批准並びに国内法の制定、それに伴う諸外国との折衝ということが始まるわけでありますけれども、漁業交渉等についても当然改定しなければならぬ部分が出てくるのかなと思います。また、排他的経済水域の設定ということになりますと、それこそ領有権等、種々の問題が山積をしておるわけであります。
このことに関する新聞を初めとする報道を見ていますと、ほとんどの報道内容が、まずは竹島あるいは尖閣諸島の領有権問題との絡みでもって報道されております。二番目に多い内容が言うたら漁業に関する内容、場合によってはいわゆる安全保障のような問題にまで発展しているような報道も一部見受けられるわけでありますけれども、きょう私が申し上げたような、海上保安庁大変なことになりまっせというような報道はちょっと一向に目にしません。目にしませんけれども、これは本当に僕は、日本のある意味での国益を守るという観点からいいますと、まさに、地道ではありますが、新聞屋さん好みにしないのかもわかりませんが、大事なことではないかな、そんなふうに思えてならないのです。
そこで、今までお聞きしたように、とにかく領海基線を、領海をつくるための基線を直線にすることだけでも、何十メーターか何百メーターか知らぬけれども、言うたら海上保安庁の守備範囲というのがふえるわけで、そんなことからいっても、要は、今回の仕事を海上保安庁という立場からいえば、運輸省という立場からいえば、業務がふえるということだけは間違いない事実、そう思ったときに、これは本当に心してかからぬとあかん話かな、こんなふうに思います。
時間も参ったようですので、最後に大臣に、今お聞きしてきたこと全体を含めまして、この事態にどのような決意で対処されるおつもりなのか、大変御苦労なことだと思いますけれども、御所見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/78
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079・亀井善之
○亀井国務大臣 今回の海洋法条約の批准に伴いまして、接続水域、排他的経済水域の設定、これは監視区域、監視、取り締まり水域の拡大ということは当然出てくるわけでありまして、先ほど来御指摘のように、近年、集団密航であるとか密漁であるとか、あるいは薬物及びけん銃等々の密輸入の問題等々も深刻化をしておるわけであります。そういう面から、海上の警備というものがますます重要になってくることはまさに御指摘のとおりでございます。
そういう中で、いろいろ的確な対応をしていかなければならない。船艇の整備あるいは高性能な船艇、航空機、こういうことが、水域が拡大をするわけでありますから、その面積に比例をしたような中での人員の問題も、あるいは装備の問題も当然出てくるわけであります。これらの問題、今事務当局でいろいろその作業をいたしておるわけでありますが、当面は今年度予算でも若干の増強ができるわけでありますが、さらには来年度の予算要求に当たりましても、そのような拡大ということを十分全うするために、またその使命を全うするために最善の努力をしてまいりたい、大蔵当局にもそのつもりで対応してまいりたい、こう考えておりますので、また先生方の御支援をよろしくお願い申し上げます。
〔赤松(広)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/79
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080・久保哲司
○久保委員 先ほど御質問の中で、いわゆる陸上の警察に比べれば、我々、日常的には海上保安庁のお仕事に直接お目にかかることが少ない、こんなふうに申し上げました。六月二日に羽田沖で総合訓練を実施されるようで、私も寄せていただいて見させていただき、船のつぶれかかった、つぶれかかっていないですかね、それもつぶさに見させていただいて、また私として頑張るところは頑張りたい、このように思いますので、大臣初め海上保安庁、御苦労ですけれども、ぜひ全力を注いでやっていただきたい、このことをお願いして、私、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/80
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081・辻一彦
○辻委員長 以上で久保哲司君の質問は終わりました。
東順治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/81
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082・東順治
○東(順)委員 本日の委員会は私で四人目でございます。いろいろと重なる質問もこれは当然出てこようかと思います。大変でございましょうが、ひとつまた丁寧に御答弁をいただきたい、このように思いますので、よろしくお願い申し上げます。
最初に、領海法の一部を改正する法律案でございますけれども、まず私は、この基線という問題をちょっとお伺いしたいと思います。
直線基線というものを五十二年の領海法制定時に採用されなかった、それはなぜなのか、そしてまた、今回採用するようになった、この理由はどこにあるのか、採用するようになってどのようなメリットがそこに生ずるのか、この辺の基本的なところをまずお伺いしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/82
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083・西田芳弘
○西田政府委員 昭和五十二年に制定されました領海法におきましては、基線といたしましては低潮線等と規定しているわけでございますけれども、その当時は、国際社会全体を見ましても、直線基線を採用しているのは二十一カ国にすぎませんでした。我が国といたしましては、各国の国家実行の趨勢を見るという観点からも、その時点におきましては直線基線を採用しなかったわけでございますが、その後、近隣国や多くの海洋先進国を含む現在七十以上の国や地域が直線基線を採用するに至っていることから、これらの点を勘案いたしまして、我が国としても直線基線を導入することとしたものでございます。
直線基線のメリットということでございますけれども、現在の低潮線等を領海の基線といたしますと、我が国の領海の限界線は、その場所によりまして、海岸の曲折した地形あるいは多数の島の存在というものがございますので、その結果、領海の限界線が複雑に入り組んでいるということがございます。直線基線を導入することによりまして、そのような複雑に入り組んでいる領海の限界線が直線的に整形されまして明確なものになり、そのことは我が国の周辺海域を航行する外国船舶に実益をもたらすのみならず、沿岸国としての我が国の法令適用の観点からも実益があるというふうに考えております。
また、直線基線は、領海法改正の中に提案申し上げています接続水域、あるいは別途の法案の形で御提案申し上げております排他的経済水域あるいは大陸棚の限界を測定する基線としても用いられるわけでございまして、我が国がこれを導入することによりまして、既に直線基線を採用している近隣国と同様の立場に立つことができるものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/83
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084・東順治
○東(順)委員 ということは、採用する外国が数がふえてきたので、我が国も採用することになったというようなことでございますが、それはつまり排他的経済水域やあるいは接続水域、海というものは外国の海と面していますので、つながっていますので、やはり外国との関係の中でこの水域というものは考えられていかなければならない、そのもとになる基線というものはそれでもって考えていかなければいけない、したがってその関係する外国がふえればふえるほど微妙な影響が生ずるので、やはり基線もこの直線基線というものを採用して考え直していかなければいけない、このような理解で基本的にいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/84
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085・西田芳弘
○西田政府委員 直線基線を採用するに当たりまして、これは国際法あるいは条約に定めるところによりまして、国際法上、条約上の要件、条件に合致したものであるべきだというふうに考えております。例えば、その直線基線が乱用されるということになりますれば、海洋法の秩序の維持という観点から望ましくはございません。
また、昭和五十二年当時の我が国の判断の問題といたしましては、直線基線を採用しているのはまだ二十一カ国程度であったということで、国家実行の趨勢を見ると、どのような国が直線基線を採用しようとしているのか、あるいはどのような対応によりまして直線基線を引こうとしているのかということをなお見るということが適当だというふうな判断が当時あったものだと理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/85
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086・東順治
○東(順)委員 それでは、今回の直線基線の引き方及びこれから政令で定めようとしておる具体的な場所、どんなところをお考えになっておられるのか、この辺はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/86
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087・西田芳弘
○西田政府委員 直線基線の引き方でございますけれども、国連海洋法条約におきましても幾つかの要件、条件が規定されております。海岸線が著しく曲折しているか、または海岸に沿って至近距離に一連の島がある場所において直線基線を引くことができるということが書いてございます。また、その直線基線は海岸の全般的な方向から著しく離れて引いてはならず、また、その内側の水域は内水としての規制を受けるわけでございますから、そのような規制を受けるために陸地と十分に密接な関連を有しなければならないとされているところでございます。
このような国際法上の要件に合致し、かつ国際的に許容される限度の範囲内で直線基線を引くべく現在鋭意検討中でございます。具体的な直線基線は政令に定められることになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/87
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088・東順治
○東(順)委員 したがって、どういうところを直線基線にするかという場所の検討、そしてまたそれを決めていく基準、そういったものをお示しいただける範囲の中でお示しいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/88
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089・西田芳弘
○西田政府委員 国連海洋法条約に書かれておりますところの規定につきましては、先ほど御紹介したとおりでございます。それから、各国がどのような具体的なところに直線基線を引いているのかということも子細に検討をした上で、我が国の周辺の個々の地形に照らしまして個別具体的に十分な技術的な検討を加えるべきものだと考えております。現時点におきましては鋭意検討中でございますので、具体的にどこに引くことになるのかというのは現段階ではまだお答えできませんが、政令に定めることができるよう鋭意準備中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/89
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090・東順治
○東(順)委員 続きまして、先ほどもどなたか御質問されておったようですが、五つの特定海域の問題ですね。宗谷、津軽海峡あるいは対馬海峡東、西水道、大隅海峡ですか、この五つの特定海域の領海というものを、いろいろすったもんだあった末に最終的に三海里という現状維持にとどめたこの考え方、理由というものについて御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/90
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091・西田芳弘
○西田政府委員 先生御指摘のとおり、今般御提案申し上げております領海法改正におきましては、領海の幅員の改正規定は含まれておりません。海運、貿易等海洋に多くを依存いたします海洋国家たる我が国といたしましては、世界の諸外国が重要な海峡におきまして自由な通航を維持する政策をとるということを促進すべく、我が方といたしましても国際航行の要衝たる先ほど御指摘の五海峡、つまり宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道及び大隅海峡におきましては、現状を基本的に変更しないこととしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/91
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092・東順治
○東(順)委員 それで、この議論のときに二つあったのだろうというふうに認識をしております。一つは、海峡の真ん中を、中央を他国の船舶が自由に通航できる公海、これにして、両方を領海とするということで、領海を三海里から広げることによって真ん中を通航できる、外国の船が通航できる公海の幅を狭めるべきじゃないかという議論が一つあったのだろうと思います。
それからもう一つは、海峡すべてをもう領海にしてしまったらどうだ。そして、そのかわりに各国船舶の通過通航権というものを認める形をとったらどうか、こういうふうにあったと思います。
この最初の、中央を通れる公海を狭くしてしまって領海を広げていくという考え方の背景に、例えば朝鮮半島なんかの非常に不安定な状況がある。いつどういうことが起こるかもわからない。仮にの話ですけれども、そこで大量の難民が発生をする、あるいは海賊行為等の不測の事態が生ずる、そういったときに、できるだけ真ん中の公海というものを狭くしておけば、それだけ我が国に対する危機的な状況というのは少なくて済むのじゃないかというようなことも、先ほどおっしゃった御説明のほかにあったのではないかというように私は認識をしております。私はむしろそのような考え方で、この領海を広げて真ん中の公海を狭くしていくことの方が、今後の我が国にとっていい選択ではないのか、個人的にはこのように思っておるのですが、これについていかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/92
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093・西田芳弘
○西田政府委員 通過通航制度のお話がございました。国連海洋法条約の中には、国際航行に使用されている海峡におきまして一定の条件を満たす場合におきます通過通航制度というものが規定されております。これは、従来三海里の領海を拡大した場合に、その海峡内に航行上あるいは水路上の特性において同様に便利な公海、あるいは排他的経済水域が今般条約に規定されておりますので、公海または排他的経済水域の、同時に申し上げまずけれども、航路が存在しなくなった場合におきます通航の制度として導入されたものでございます。
ただ、条約に規定が置かれましたけれども、いわゆる国際海峡におきますところの通過通航制度については、現在までのところ、各国の実行の集積が十分でないために不確定な面がございます。我が国といたしまして、領海を拡大して通過通航制度の適用を受けることが適当かどうかということにつきましては、そのような各国の実行の集積が十分でないために不確定な面があるということも十分勘案いたしまして慎重に対応する必要がございましたので、五海峡におきましては現行の自由な通航が維持されるということが適当だというふうに考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/93
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094・東順治
○東(順)委員 国際海峡の領海の見直しというのは大変刺激的な話で、これは周辺諸国を刺激しかねないというようなこともあったのだろうというふうに思います。それで、結果的にこのように現状維持ということになったのだろうと思いますけれども、私は我が国の将来を考えたときに、やはり何かがあったときに非常にこの海峡というのは象徴的な場面が起こりやすいところでございますので、こういったことを機にして、できるだけそういう不測の事態が生じないような予防の意味合いも持ってこの両方の領海を広げておいて、そして真ん中の公海の部分を狭くするというような考え方に立つべきではなかったかな、このように私は思っている次第でございます。
続きまして、外務省おいでになっていらっしゃると思いますが、竹島問題について基本的な考え方をもう一回確認をしておきたいと思います。
現在、韓国が竹島を実効支配をしている、こういう実態があるわけでございます。これにつきましてどのような見解を持っておられるか、基本的なところをお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/94
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095・加藤良三
○加藤(良)政府委員 竹島の領有権の問題についての日本側の立場は一貫したものでございます。しかし韓国側は、韓国としての立場に基づいて竹島の事実上の占拠を長年にわたり継続してきております。日本といたしましては、韓国側のこういう行動は容認し得ないところでありまして、これまでもあらゆる適当な機会をとらえて我が方の立場を申し入れるなど、外交努力を続けてきております。
他方、この問題に関する日韓両国の立場の相違が両国民間の感情的な対立に発展して、両国の友好協力関係を損なうことは適切ではないとも考えております。あくまでも韓国とは友好国として冷静に話し合える状況を保つよう努力することが必要であり、今後とも両国間で冷静に話し合いを積み重ねて努力してまいりたいと考えております。
以上が、基本的な立場として政府が一貫して御答弁申し上げてきているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/95
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096・東順治
○東(順)委員 その基本的な考えは私はよく理解するところでございますけれども、要は、竹島の領有権問題の再燃ということをできるだけ避けて、そして一九六五年に締結した日韓漁業協定にかわる新漁業協定というものをどうつくるかというところに腐心をなさっておられるわけでございますが、仮にこれができたとしても、やはり竹島という問題は最終的には正面から見詰めなければいけないという、これは大きな外交問題でございます。
それで、これをどうするかということでいろいろな議論があるようでございますけれども、私は、これも大体二つに収れんされるのではなかろうかというふうに思っています。
一つは、竹島という島そのものが存在しないものとみなして、両国領土の間の中間線というものを引いてこれを境界線とする、こういう考え方。それから二つ目が、国際司法裁判所にこれを付託する、そして何らかの形で領土問題に決着をつけた上で線引きをする、こういう考え方。こういうものに収れんされているのではなかろうかというふうに思いますが、この二番目の国際司法裁判所に付託するということですが、これはもう韓国が拒否をしておる。重複する水域では関係国との合意で境界線を画定するというふうに韓国の基本スタンスがあるようで、そうなってくると、日本はどちらの方向を基本的にとるのか。
もちろんさまざまな友好的な努力というのは当然積み重ねるわけでございますが、基本的な方向が決まっていなければならないわけで、いっかは対峙しなければいけないことなので、しかも、この国際司法裁判所に付託というのは韓国が拒否をしているということになれば、島は存在しないものとみなして両国の領土の間の中間線を引くというような考え方に日本として基本スタンスを置くのかどうか。この辺について少し突っ込んだ答弁をいただければありがたいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/96
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097・加藤良三
○加藤(良)政府委員 三月二日の日韓の首脳会談におきまして、竹島問題についての日本政府の立場は一貫していると橋本総理から明確に述べた上で、国連海洋法条約の批准に伴ってとる措置は、竹島問題に関する日韓それぞれの立場に影響を及ぼすものではないことを前提とすることを金泳三大統領との間で確認されたわけでございます。これは、国連海洋法条約の批准に伴って生じ得る漁業にかかわる問題などについては、竹島の領有権にかかわる問題とは切り離しつつ解決を模索していきたいという、我が方の従前の立場を明確な言葉で今後の作業の前提として確認したものでございます。
これを踏まえまして、ですから一方においては、竹島問題については今後とも両国間で平和的解決を図る、そのために外交努力を積み重ねていくことになるわけでございます。切り離すとはそういう意味でございます。
他方において、韓国との漁業関係については、韓国側との協議によって、国連海洋法条約の趣旨を十分踏まえた新たな漁業協定が早期に締結されることとなるように鋭意努めてまいる所存である、これが政府の立場でございます。まだ実は韓国との境界画定交渉というものは開始されておりません。これは四月三十日の日韓の外相会談において、早急に話し合いを開始することとするということで意見の一致を見ておりますけれども、日程は今詰めておるところでございます。
そして、こういう経過を通じてこれからの協議が開始されるところでございまして、そのような時点で、例えば具体的にはこうこうこういう考えがあるだろうというふうなことは、事柄の性質上、今の時点で申し上げることができないということを御了解いただきたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/97
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098・東順治
○東(順)委員 私は、答弁にぜひ外務大臣に出てきていただきたいということで実は要求をさせていただいたわけでございますが、いろいろな状況これあり、きょうおいでになれませんでした。しかしへこれは非常に重要な問題で、確かになかなか、交渉事ですから、こういう場面で、こういう基本的スタンスでいくぞ、方向でいくぞということは言いにくいことだろうと思いますが、やはりこれは、ここでおっしゃられなくても、一つの方向は独立国家として毅然とした形できちっと持っておかないと、状況追随で振り回されてしまうということがあろうかと思います。
だから我が国としては、この竹島問題についてはこういう物の考え方で、これでいくのだということをきちっと持って、そして交渉にぜひ当たっていただきたい。人によっては譲渡という考え方をとれと言う人もいるのですねつ要するに、竹島は日本が譲る、譲るということは日本に主権があるということの裏づけにもなるのだ、だから主権は日本にあったというところをとって島そのものは韓国に譲れ、したがって譲渡という考え方もいいではないか、こういう論を吐く人もいる。さまざまあるわけでございまして、これは利害が絡んでいるから、韓国側から見て、日本から見て、それはいろいろな考え方があるわけでございますので、くどいようですが、独立国家として、どうか毅然とした一つの方針のもとにこの問題は対応をしていただきたいというふうにお願いをしたい次第でございます。
それで引き続いて、竹島が出ましたので、尖閣諸島についても私お伺いをしておきたいと思います。
中国領海法で尖閣諸島を領有しているということを明記している、こういう状況の中で、この尖閣諸島というのは当然二百海里の、我が国の排他的経済水域に入るわけでございます。そうすると、この二百海里水域内の資源は沿岸国に優先権があるわけで、当然我が国にこの権利はあるわけでございます。
ところが、中国の第八期全人代常務委員会第十九回会議というところで、五月十五日に国連海洋法条約を批准する、中国がもうこれを明確にしている。こういうことになれば、当然これをてこにして、海洋権、権益の保護というものを当然これから強く主張してくることが考えられる。そうなってくると、中国がこの海洋法条約を批准すれば、尖閣の領有権の領有主張というものと連動させて、東シナ海海域での地下資源の探査活動を正当化させてくるということも確実である。
それで、エネルギー資源の開発を大変急いでいる中国でございますので、こういう形になってくると、これからまたこれが外交問題として極めて刺激的な問題になってくる、既になっておりますけれども。この尖閣についてのこれまた基本的な我が国の考え方、これもお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/98
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099・加藤良三
○加藤(良)政府委員 基本的立場でございますが、尖閣諸島が日本国有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、現に我が国はこれを有効に支配しております。したがって、中国との間で解決すべき領有権の問題というものがそもそも存在していないというのが私どもの立場でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/99
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100・東順治
○東(順)委員 それは、お互いがそれを言い合えば、もうぶつかり合うしかないわけでございますので、我が国の立場としては私は当然そうだろうというふうに思いますが、大陸棚の資源問題というのが現実にこの尖閣で絡んでくるわけですね。日本は、日中間の大陸棚の線引きについては経済水域と一致するという形で領土間の中間線というものを主張する。片や中国は、いやいや、そうじゃないんだ、大陸棚の一番先頭の端まで実は自国の大陸棚、つまり自然延長論というものをとっておる。つまり、これでいくと、沖縄の海溝のところまで中国の権利がずっと海の底から及んでくるという、これはもう全然違う考え方がここでぶつかり合っているわけですね。
ところが、海洋法条約では、当該国同士がバランスのとれた合意をしてほしいという極めて抽象的な言い方でしか定義をしていない。当然ここから外交問題というものでわあっと火がついてくるものでございます。それで、国際司法裁判所の判例を見ますと、当該国の位置関係によって中間線、自然延長、この両方の要素を組み合わせるというようなことになってきていて、要するに、当該国同士で決めなさいというような感じなわけです。
ところが、エネルギーということを考えていったときに、石油というのは大変重たい比重を占める。特に二十一世紀のエネルギー問題を考えたら、我が国にとってもこれを確保していくということは、これはもう大変大事なエネルギー戦略でございます。これは同時に、中国でもそうだろうというふうに思います。既に中国はこの大陸棚の石油資源の開発にもう実際に着手をして、我が国の再三の抗議にもかかわらず、昨年からことしにかけて、中間線の日本側に入ってきて石油の探査なんかを行っている、こういうふうな状況でございます。
そこで、これも最終的にこれからどうしていくかということでございますが、一つは、先ほどもありました国際司法裁判所に付託をする、それから二番目に、資源を日本と中国で共同開発をしていく、こういう方向性が考えられるのではなかろうかというふうに思います。これもどちらでいこうとしているのかというようなところをお答えいただければ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/100
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101・加藤良三
○加藤(良)政府委員 なかなか基本的な点に係る御質問でございます。
実は、御承知のとおり、四月の九日と十日に日中間では第一回の非公式実務者レベルの協議が開かれたわけでございます。このときに、新しい漁業秩序に向けての話し合いの文脈で、日本側から、日中両国が国連海洋法条約を締結しようとしている状況を踏まえて、この条約にのっとって、中国との間で新しい漁業秩序に移行する必要があると考えていると説明いたしまして、国内の状況等を十分説明しながら、我が方として、正式の漁業交渉を早急に開始して、この交渉を速やかにまとめる必要があるということを強調した経緯がございます。
これに対して中国側からは、今後の漁業秩序を考えるに当たって、日中間の長期にわたる友好的かつ安定的な漁業関係を踏まえながら対話を通じて移行する必要があるが、漁業を含めて、海洋法の諸問題について日本側と十分に話し合っていきたいということを強調するところがございました。
中国側はその冒頭発言において、大陸棚の問題について、中国としては自然延長論をとっており、日中間の大陸棚の境界画定の問題はこの原則に基づき解決すべきであるという立場を簡単に説明いたしました。しかし、この会合は第一回のいわば皮切りの会合でございましたので、我が方の立場をこれに対してきちんと説明した以上に突っ込んだやりとりはまだ行われておりません。
日本側の立場でございますけれども、東海における大陸棚のように、相対する国の間における大陸棚の境界画定は中間線原則によるべきであると考えているわけでございます。排他的経済水域及び大陸棚に関する法律案においても、そういう我が国の主張を反映して、相対国との間の基線間の距離が四百海里未満である海域においては、相対国との間で合意した中間線にかわる特段の線がない限り、中間線までが我が国の大陸棚であるということが明記されている次第でございます。
したがって、今後、日本と中国との間の大陸棚の境界画定を行うに当たりましては、中間線原則を基本としながら両国間の話し合いによって決めるべきものであると私どもとしては考えております。
その後どういうふうになるか、それはまたその交渉の過程を通じていろいろと双方に納得のいく解決法というものを探らなければいけないと思いますけれども、韓国の場合と同様に、今現在、交渉がこれから進もうという段階でございますので、個別の方途、方法についての御説明は差し控えさせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/101
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102・東順治
○東(順)委員 加藤局長、確かに大変難しい問題で、これからの御努力というのは、これは大変なものだろうというふうに思います。
私、漠然と、あるいは素朴に感じているのですが、私たち日本から見て、例えば韓国とか中国というのは、こういう領土問題などに対しての、自分たちはこう考えるんだという意思がはっきり見えるのですね、日本にいて。同じように、韓国あるいは中国にいて、日本の外交の顔というのでしょうか、この領土問題について、尖閣には私たちはこうなんだ、竹島にはこうなんだということが、果たして韓国側にきちんと、私たちにかの国が見えるように、向こうでも日本の顔が見えているとお思いでしょうか、どうでしょうか。
大変漠然とした質問で申しわけないのですが、私が言いたいのは、きちんと日本の意思というものが向こうにはっきり見えていて、しかも独立国として毅然たる態度というものをきちっと表明しているという認識が向こうに持たれておれば、これでイーブンで外交の話し合いになるわけですからいいわけで、ひょっとして、何か漠然として、何となく見えているような見えていないような状況に映っているのではなかろうか、あるいは状況が変わったら何となく追随外交的な感じでくるのではなかろうかというふうなイメージで見られていたら、これは私は大変心外だなという思いがあるものですから、その辺どういうふうにお考えかということをちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/102
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103・加藤良三
○加藤(良)政府委員 我が国の竹島の領土問題についての立場は一貫したものであることをさきに申し述べたところでございます。
それから、尖閣諸島ということについては、そもそも領土問題が存在しないというのが日本側の立場であるということも申し上げました。
中国との関係を先に申し上げれば、そういう日本側の立場を中国側は十分に承知していると思っております。
例えば、委員が御指摘になられたかと思いますけれども、中国がかつて領海法というのを制定いたしまして、尖閣諸島を中国領と明記したことがございます。このときにも日本は、直ちに在中国の我が方大使館の公使から中国外交部に正式に抗議し、さらにその後、小和田外務次官が在京中国大使を招致いたしまして正式に抗議を行うというようなことで、そういう形でも我が方の立場というのは機会を逸することなく明らかにしてきているわけでございます。その立場とは、すなわち、尖閣諸島については、そもそも棚上げとかなんとかということの対象になるべき領土問題が存在しないというその立場でございます。
それから、韓国との関係でございますが、竹島について政府の十分なPRがなされていないのではないかというおしかりをしばしば受けることがあるわけでございます。
ここで、たまさか一例でございますけれども、韓国が先般、竹島に船舶の接岸施設を建設したということがございまして、そのときに金太智駐日韓国大使を池田大臣が招致して日本側の立場を申し入れたことがございますけれども、その際、金大使から、独島、すなわち竹島でございますが、独島の領有権については韓国の立場は一貫しており、右は韓国固有の領土である、他方、日本がいかなる主張をしているかは承知しているということを申し述べておりまして、今たまさか一例としてこの金大使の言葉を御紹介申し上げましたけれども、類似の反応というのは折に触れてあるわけでございまして、私どもとしては、竹島についての日本側の立場ということを韓国は十分承知していると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/103
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104・東順治
○東(順)委員 日本の外交の顔がしっかり見えている、意思はしっかり見えているという御認識であろうというふうに今伺いました。その姿勢でしっかり御検討いただきたいというふうに思います。
やはり外交は硬軟両様であらゆる手を尽くすということだろうと思いますが、基本としてこうするという筋だけはきちっと一貫したものがなければなかなか難しいのだろう、このように思いますので、なかなか大変な問題でございますけれども、どうぞ御検討をよろしくお願い申し上げます。
続きまして、海上保安庁法についてお伺いしたいと思います。若干細かくなりますけれども、御答弁をよろしくお願いを申し上げます。
まず、この第十八条の改正の必要性という問題でございます。
というのは、現行法でも十分可能ではないんですか、それをあえて変えるのは何なんですかということなんですが、例えば一例を申し上げますと、現行法では「四囲の情況から真にやむを得ないとき」というこの文言が、改正案では第一項と第二項に細かく分けられていますね。私確かにこれを見たときに、抽象的、漠然としたそういう文言よりも、こういうふうに具体的に、第一項で一、二、三、第二項で一、二と、ケースを想定してこういう文言にした方がかえって具体的で、法としての効力がより発揮されやすいんだなと思ったんですけれども、同時に逆に、このように第一項の一とか二とか三、第二項の一とか二というふうに規定するよりも、「四囲の情況から真にやむを得ないとき」というようなこういう規定の方が、むしろ柔軟性があっていろいろなケースに即応できるんじゃないかというような考え方もあるんじゃないかな、こういうふうに思ったものですから、この辺について、改正の必要性についてまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/104
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105・秦野裕
○秦野政府委員 今お話しのとおり、現在の庁法の十八条では、海上保安官がいろいろな措置を講ずる場合に、その発動要件として、「その職務を行うため四囲の情況から真にやむを得ないとき」という規定になっておるわけでございまして、確かに今先生お話しのとおり、非常に柔軟にいろいろなケースに対応できるという面ももちろん持っておるわけでございます。
ただ、一方におきまして、現在の学説あるいは判例といった流れを見ますと、いわば憲法上のデュープロセスと申しますか、適正手続保障という観点、まあこれは基本的には刑事処分に適用されるものでございますが、そういういわゆる行政手続上もやはり同様のことが要請されるというような一連の流れが一方においてあるわけでございまして、そうした流れから見ますと、そうした発動要件が抽象的あるいは一般的であるということは、やはりそうした流れに若干そぐわないという面があろうかと思います。
したがって、現場の海上保安官がこれを運用いたします場合に、どういう場合に何ができるかということをはっきりさせておくということが、海上保安官にとってもやりやすうございますし、それから相手方にとりましても、そういうふうに明確化されている方が都合がいいということもございまして、この際、この海洋法条約の批准を契機にこういう点を改正しようというものでございます。これによって、現在複雑になっております、いろいろな海上におきます警備事案等について、機動的な運用がむしろ図られるんじゃないかというふうに私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/105
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106・東順治
○東(順)委員 項目を設けたことで、どちらに該当するのかと逆に現場で判断に迷うというようなそういう心配はほとんどございませんか。まあ心配ないということでこの項目を設けられたんでしょうけれどもね。
例えばこの発動要件で、先ほども御質問があっていましたけれども、第一項と第二項で、長官が答弁なさっておられましたけれども、もう少し具体的に御答弁いただきたいんですが、「海上における犯罪が正に行われようとするのを認めた場合」というこの「場合」と、「行われることが明らかであると認められる場合」というこの「場合」の違いですね。これはなかなかやはり難しいんじゃないかなというふうに思うんです。
先ほど、危険性が切迫した場合、例えば凶器だとかそういうものでまさにそこで凶行が行われようとしているというようなときがこの第一項の「犯罪が正に行われようとするのを認めた場合」とおっしゃいましたよね。そして、二項の「犯罪が行われることが明らかであると認められる場合」は、密航船がまさに入ってこようどしているというような場面を想定すると、こうおつしゃいましたけれども、これは、例えば凶器を持って何らかの形で犯行に及ぼうとしているというような場合も「犯罪が行われることが明らかであると認められる場合」に入るんじゃないでしょうか。この違いがもうずっとよくわからないんです。その辺のところをもうちょっと砕いて御説明いただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/106
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107・秦野裕
○秦野政府委員 十八条の第一項と第二項の関係は、先ほど先生からお話のあったとおりでございます。
要するに、一項の方は犯罪発生について切迫性があるということ、それから、二項の方は犯罪発生について確実性があるということでございまして、先ほど御指摘になりましたように、切迫性というのはある意味では確実性を含む概念、つまり、凶器を振り上げているという段階では確かに切迫性でもありますし、犯罪が行われていることが明らかであるという意味では確実性でもあるわけでありますが、いわゆる逆は必ずしも真ならずということで、確実性があるからといって必ずしも切迫性があるというわけではないわけであります。したがって、前者が後者に含まれるということから必ずしも後者が前者に含まれるという関係にはないわけでございまして、その切迫性の方についてだけ、例えば、人の生命等に対する危害発生のおそれがある場合に限って人の行為の制止ができるということで、その発動要件と、それに対する海上保安官のとり得る措置というものが一つのセットになっておるわけであります。
要するに、危険の切迫性がある場合には人の行為の制止までができる、しかし、危険が確実であるということにとどまる限りにおいては単にその船での行動を抑制するということに限られるということで、その発動要件と、それによって海上保安官がとり得る措置との間に当然強弱のニュアンスがあって、それが一つのパッケージとなって条文を構成しているというふうに御理解いただければ幸いであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/107
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108・東順治
○東(順)委員 パッケージになって構成していると、こういう考え方ですね。よくわかりました。
それから、この「措置」のところで、第一項で、六番目として人の行為に対する措置というのを加えて明記されていますね。これは、わざわざこの六番目を加えられたということは、職務執行の権限が広がったというふうにとらえていいんでしょうか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/108
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109・秦野裕
○秦野政府委員 現行の十八条におきましても、下船を制限するとかあるいはほかの船との間の交通を制限するとか、そういう人に対する行為の規制の一部が書かれておるわけであります。
ただ、最近におきます海上警備の実態から見ますと、船に対して船の行動を抑制するというよりは、むしろ直接その人に対して行為を規制する、例えば、ゴムボートに乗って、危険を承知でほかの船に対して突っ込んでいくというような場合があるわけでありまして、そういう場合には、むしろ海上保安官がゴムボートの方に乗って、その人の行為を抑えるということの方がより警備が実効的に上がるという場面も想定されるわけでございますので、そうした行為につきましても、今後、この改正の規定によりまして行うことができるように明確に規定をすることにしたというのがこの趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/109
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110・東順治
○東(順)委員 この「措置」の人に対する措置というのは、危害を加える人間というよりも、むしろ危険に遭遇している被害者の側の人に対する措置をイメージしているんですね、加害者というよりも。この辺はどうなんでしょうか。それとも両方なんでしょうか、この人というのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/110
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111・秦野裕
○秦野政府委員 観念的には両方含まれると思いますけれども、主として想定されますのはやはり加害者の側、つまり、凶器を振りかざして他の乗船者を傷つけようとしているまさにその当該者の行為を抑制するということが主たるねらいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/111
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112・東順治
○東(順)委員 大変細かくなって申しわけございません。
それで、じゃ加害者ということでありましたら、人の行為の制止の具体的事例、例えばシージャックが起こった、そこで凶器を持って乗客にまさにピストルを撃とうとしている、あるいはもう刺そうとしているというようなことが起こったりした場合に、この職務権限を行使する限界といいますか、つまり、ありていに言ったら、この犯人は今殺さないと実際に乗客に危害を加えようとしている、だから犯人を射殺せよとか、そういう現場の指揮官の判断というものがどのぐらいまで許されるのか、その現場の指揮官の判断の限界といいますか、その辺はいかがなんでしょうか。ちょっと具体的例をもし挙げていただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/112
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113・秦野裕
○秦野政府委員 海上保安官がどの程度までとり得るかということは、行われている犯罪の態様、その危険の発生の度合いによって当然変わってくるわけでございますが、実際にこれを講じます際には、当然要件を厳正にしておきませんと、非常に過剰なことになってはいけないわけでございますので、一つは、海上保安官は、まさに犯罪が行われようとしているのを認めた場合、そして人の生命に危害が及んでいるとき、そして急を要するときという、要するに発動要件を非常に厳しくいたしておりまして、この要件の範囲内でその態様に応じた、主として加害者でございますが、加害者に対する行為を制止するための措置をとるということで、そのあたりはマニュアル等を通じまして現場の保安官に十分徹底するつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/113
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114・東順治
○東(順)委員 人に対する行為ということですから、これは権限が過剰になり過ぎますと場合によっては人権問題に発展したりするわけで、しかも外国人を相手にというようなケースもたくさん出てくるわけでしょうから、国際問題まで発展しかねないというような、非常に微妙なものをはらんでいるわけですから、それで私お伺いしているわけです。したがって、その辺のところをよく勘案して、現場の指揮官が判断し、指示ができるように十分注意をしていただきたいというふうに思う次第でございます。
それから、先ほど来からどなたもこれはお聞きされておるようでございます。私もこれを伺いたいと思うのですが、業務内容が拡大したことによって、広がったことによって、やはりこれからその体制の強化の問題とか、いろいろなものを手がけていかなきゃいけないというふうに思います。
まず最初に、今回の法改正に伴う海保のソフト面での業務の増大というものはどんなものが考えられるのか、この辺についていかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/114
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115・秦野裕
○秦野政府委員 今回の改正によりまして、例えば私どもの海上保安庁の組織自体に改正があるとか、そういったことは現時点では考えてございませんけれども、実際の運用状況、海上保安庁法の運用あるいは海洋法条約批准に伴うさまざまな業務の内容の変更がございますので、これに対して各保安官が十分その変更の状況を認識し、的確に業務を執行していくということがぜひ必要でございます。このために、現在私どもの方で、本庁の方でマニュアルについての整備を検討中でございます。この法案を成立させていただきました段階で、関係の地方支分部局に対しましてこれらの趣旨を徹底させまして、その運用に遺漏なきを期するようにいろいろな手段で周知徹底を図っていきたいというふうに考えております。
それからもう一つ、海上保安大学校でこれからの保安官に当然そういうことを周知しなければなりません。この保安官の卵となります大学校あるいは学校の学生にも、カリキュラムの中にこれを統一的に入れていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/115
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116・東順治
○東(順)委員 マニュアルだとか保安大学校での周知徹底だとか通達だとか、いろいろな膨大な、しかも重要な作業が続くんだろうというふうに思いますけれども、これはやはり重要なことでございますので、きちんと行っていただきたいというふうに思う次第でございます。
それと同時に、この批准に伴う哨戒海域の拡大、それに伴う海上保安庁の体制の強化ということで再三先ほどから質問がございました。私もここに実は重大な関心を持っております。だれが考えても守備範囲が二倍ぐらいに広がるわけですから、それを今の力量でもって守備しようとしたら当然これはできなくなるわけですから、これはどういうふうに広げるのかねということになるんだろうと思います。単純に考えて、十二海里から二十四海里に接続水域が広がったということは、面的にもそれだけ広がるということですからね。しかも接続水域の中でやるべき仕事がきちっと具体的に指示をされている。それからまた追跡ということもある。その追跡も、相手の国の、旗国の領海に入るまでは追跡をしていくんだという、どういうのでしょう、仕事量としては、面的に、質的に随分広がるのだろうというふうに思います。
先ほど久保議員がおっしゃっていましたね。何て言ったかな。おもしろいことを言っていましたね。エーゾ。本当にええぞというふうに言われるようにしっかり守備できるためには、これは言葉で言えてもなかなか難しいのだろうというふうに思います。
それで、答弁を伺っていましても、ともかくきちっと整備をしていきますだとか、目下検討中でございますという御答弁であったのですが、実際問題、東経百三十五度以西海域に排他的経済水域設定ということになってきますと、これは中国あるいは韓国漁船に対してもうわあっと警戒のエリアが広がるわけですから、もうこれ一つ見たとしても物すごいエネルギーが要るだろうというふうに思います。
それから、先ほど私も触れましたけれども、もう既に尖閣の方では中間線を越えて中国船が石油の探索に動いてきておる、こういったことに対しても、これはどうしていくんだ。あるいは朝鮮半島なんかも非常に不安定な情勢がずっと続いているわけで、これはもう万々が一のことが起こったときに、ボートピープルみたいな形で難民みたいなものが大量に発生しかねないというようなこともある。あるいはまたピストルとか銃器の事犯というのが急激にふえていますね、ちょっと資料を見させていただきますと。こういうことに対する取り締まりも、またこれは昔と違って随分大変だろう。それから違法操業の船がまた漁業水域内では急増している等々考えますと、この辺は具体的に拡充していく体制強化の問題というものを本当にやらないと、これは大変なことになると思います。
さっきもちょっと出ていましたけれども、マスコミ的には竹島だ、尖閣だといって、非常にセンシティブなそういう問題ばかりが表に出てきますけれども、現実は、やはり海上保安庁の守備の体制の強化ということはもっと大事な問題だということだというふうに私は、もっとという言い方は極端ですけれども、同じぐらいに大事な問題だと思います。
そういうことからして、具体的にこれから体制強化をしていくのにどういうお考えに立っておられるのかということをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/116
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117・秦野裕
○秦野政府委員 問題認識につきましては、私どもも先生のお話しのこととほとんど同一でございます。業務の内容が質的にも量的にも増大いたしますので、それに対応した体制整備をしていかなければならないということでございます。
私どもの今の体制整備に当たっての基本的な考え方だけ申し上げますと、まず巡視船艇につきましては、沖合海域とそれから領海、接続水域、割と手近なところ、それから湾内あるいは港内、大きく分けて三つになろうかと思います。
そのうちまず沖合の海域につきましては、ヘリコプター搭載型巡視船あるいは大型巡視船というものを配備いたしまして、ヘリコプターとの連携を強化しながら救難なりあるいは監視の体制をつくるというのがまず第一でございます。
それから領海あるいは接続水域の周辺の海域につきましては、高速の中型あるいは小型の巡視船を配備いたしまして、これは領海警備なりあるいは各種の事案に対する即応体制をつくるということでございます。
それから一番手前の方の湾内あるいは港内につきましては、これはさらに小さな高速の巡視艇を配備いたしまして、これは航行の安全ですとかあるいはその他の事案に対応していくということでございます。
それから航空機につきましても、沖合についてはジェット航空機あるいはヘリコプター搭載型巡視船に積んでおりますヘリコプターといったものにおいて対応いたしますし、沿岸については、中型飛行機あるいは各基地におりますヘリコプターの配備によりまして救難体制をつくるということが基本になるわけでございます。
それで、今お話しのように、これから業務内容が質量ともにふえてまいるわけでありまして、当然一定の充実強化が必要なわけでございますけれども、例えば現在、漁業水域あるいは沖合に大型のヘリコプター搭載型の巡視船が配備されておりまして、海難救助等のための業務を既に行っておるという部分がございます。したがって、これからふえます業務を、ある一部はそうした、現在既に配備しております巡視船あるいはヘリコプター、航空機等によってカバーできる部分というのは当然あるわけでございます。
そうした既存の業務と今後拡大するであろう業務との兼ね合いと申しますか、膨らみぐあいを総合的に勘案して、それでは今後どの程度の体制にしていくかを検討しているということで、まだ結論を得るに至っていない点についてはまことに申しわけないと思いますけれども、そういう方向で現在検討を進めておるということを御報告させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/117
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118・東順治
○東(順)委員 今の航空機と船の連携の問題で、今、管区本部制というのがありますね。それぞれの管区ごとに責任体制がありますね。例えば、これを超えて追跡する場合、管区のエリア、それぞれの責任分野を超えて追跡できるような形はあるのでしょうか。それとも、あくまでも管区本部制の制約の中で、追跡権というか、そういうものは行使されるのでしょうか、これが一つです。
それともう一つ、整備強化拡充の問題ですけれども、具体的に、例えば海上保安庁としての体制を整備強化する五カ年計画みたいなものをきちんと策定をして、そして五年後には我が国の海保の体制をここまで持っていく、大型巡視船は何隻まで要る、巡視艇は何隻まで要る、それはどうだああだというような五カ年計画みたいなものをきちんと出せないのかどうなのか。事はそういうことまで要求されているのではなかろうかというふうに思います。先にだあっとエリアばかり広がっちゃって、そして、近隣諸国の状況は非常に緊迫感がいまだに続いていて、これからさらにさまざまな事柄も起こってくることも想定される、これはどうなのか。
この二つについて質問して終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/118
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119・秦野裕
○秦野政府委員 まず第一点目でございますが、巡視船艇、航空機もそうでございますが、各所属の保安部がございまして、その保安部はそれぞれ担任水域を持っております。その担任水域の中で行動するというのは、これは原則でございます。
しかし、何か事案が発生しました場合には、当然、他の保安部あるいは他の管区から応援が参ります。応援に参りました巡視船艇は、当該水域を担任する保安部長の、あるいは場合によっては管区本部長が直接の指揮をとるというような場合もございますけれども、その指揮の中で行動するということになります。そういう点では、海上保安庁は全国組織でございますので、運用は極めて機動的に対応できるということでございまして、これまで特にそういうことでトラブルが発生したことはございません。
それから二番目の整備の点につきましては、確かに計画的に進めるということが必要だと思います。五カ年計画という名前になるかどうかはわかりませんけれども、少なくとも目標を立てまして、それに向かって計画的に整備を進めていくということが必要であると思います。その方向で検討したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/119
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120・東順治
○東(順)委員 こういう問題というのはどうしても状況追随になりがちなんですね。事態がこれだけ広がったからこれだけ整備しなければいけない。これだとやはりいつまでも追っかけっこみたいなことになると思いますので、例えば五年先ぐらいの状況をしっかり見越して今から手がけておいて、そしてどのような状況になろうとも完璧に守備ができる、まあ一〇〇%ということはないのでしょうが、ベターな守備がきちっとできるというようにしていくことが肝要だろうと私は思います。したがって、ぜひ計画性ある整備拡充というものを手がけていただきたいというふうに思う次第でございます。
この辺につきまして大臣の御決意なり所感なりをお伺いしたがったのですけれども、もう既に先ほどから何人もの方の質問でお答えいただいていますので、私はその決意を了といたしますので、どうぞ全力を挙げてこの体制強化に取り組んでいただきたい、このように要望申し上げ、質問を終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/120
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121・辻一彦
○辻委員長 以上で東順治君の質疑は終わりました。
寺前巖君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/121
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122・寺前巖
○寺前委員 四つの点についてお聞きをしたいと思います。
一つは国際海峡をめぐる問題です。それから一つは、担保金制度が持ち込まれましたので、その問題。それから、事故の非常に多い便宜置籍船対策はどうするのか。それから、産業廃棄物投棄が海に随分やられているから、これに対する対策はどうするのか。大体四つの点についてお聞きをしたいと思います。
最初に、国際海峡の問題です。
国際海峡では、米軍などの艦船や航空機の自由通航権が規定されたようです。そこで外務省にお聞きをしたいのですが、核兵器積載艦船あるいは核兵器搭載の航空機、そういうものも自由通航ということになるのですか、ならぬのですか。それはいかが取り扱われているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/122
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123・西田芳弘
○西田政府委員 国際航行に使用されている海峡につきまして一定の場合に適用される制度といたしましての通過通航制度が、国連海洋法条約の中に規定がございますけれども、現在までのところ、その通過通航につきまして国家実行の集積が十分でないために、御質問の核搭載艦も通過通航権を有するのかという点につきまして、確定的な結論を述べることは困難な状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/123
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124・寺前巖
○寺前委員 よくわからなかったのだけれども、要するに自由なんだね、核兵器を持っている船も飛行機も。そういうことでいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/124
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125・西田芳弘
○西田政府委員 通過通航制度は、領海におきます無害通航制度に比較いたしまして、外国船舶及び航空機により自由な通航の権利を認める制度でございます。条約に規定がございますけれども、継続的かつ迅速な通過のためのみに航行及び上空飛行を行っている限り、通過通航の権利は害されないものというふうに規定されております。
御質問の、核搭載艦につきましても通過通航権の行使が認められるかどうかという点につきましては、以上のような通過通航制度の趣旨に照らして判断する必要があると思われますけれども、現在までのところ、通過通航につきましての国家実行の集積が十分でないために、確定的な結論を述べることは困難であるということを申し上げている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/125
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126・寺前巖
○寺前委員 確定的には言えないということ、どうなの。ちょっとはっきり言ってほしいんや。わし耳が遠いのか、音声が悪いのか、ちょっとはっきりそこのところを言ってよ。
要するに、国際海峡、日本に五つある。この五つの国際海峡を、核兵器を持っているところの軍艦なり飛行機が、米軍が通る。これについては、問答無用で自由でございますというふうに理解してよろしいのかどうかということなんですよ。よかったらよかったと言ってもらったらいいし、聞こえぬのが悪いのか、何かはっきりしないんだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/126
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127・西田芳弘
○西田政府委員 核搭載艦も通過通航権を有するのかという御質問に対する答えといたしまして、私が先ほど来申し上げておりますのは、現在までのところ、通過通航についての国家実行の集積が十分でないために確定的な結論を申し述べることは困難であるということでございます。
他方、我が国の五海峡につきまして通過通航制度が適用されるのかという御質問でございますれば、通過通航制度は、先ほども申し上げましたけれども、国連海洋法条約が領海の幅を従来の三海里から十二海里に拡大することを許容したということに伴って創設された制度でございまして、いわゆる五海峡につきましては、先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、領海の幅をなお当分の間二海里に現状維持するということとしておりまして、従来と比較いたしまして外国船舶の通航に変化をもたらすものではございませんので、国連海洋法条約に規定する通過通航制度の適用はないというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/127
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128・寺前巖
○寺前委員 そうすると、何か何ぼ聞いてもようわからぬのやけれども、我が国では従来どおり三海里という規定をこの地域については位置づけている。さわっていない。それで国際海峡だ。その国際海峡の自由通航というのは、核兵器を持った軍艦であろうと飛行機であろうと一切自由に通過することができるんだという解釈でよろしいんやな。間違うているというんだったら出てきて。そう言わぬと何かわからぬから。間違うているの、その私の解釈は。自由通航権の中に、国際海峡、我が国の場合には三海里で国際海峡を位置づける。そこで、その国際海峡では自由通航で、核兵器を持った飛行機も艦船もどうぞ御自由にということで理解はよろしいんやな。よろしいのか悪いのかだけ言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/128
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129・西田芳弘
○西田政府委員 通過通航制度と核搭載艦との関係について申し上げれば、私が先ほど来申し上げておりますのは、国家実行の集積が十分でないために確定的な結論を述べることは困難であるということでございます。
他方、五海峡におきますところの通航でございますけれども、三海里になお当分の間現状維持するということでございますので、従来と比較いたしまして通航に変更をもたらすものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/129
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130・寺前巖
○寺前委員 大臣、わかりましたか。僕の言っておるとおりの解釈でよろしいと大臣は理解しましたか。あなた提案者だから聞くわ。あなたはどう解釈したのか、今の話を聞いて。説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/130
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131・亀井善之
○亀井国務大臣 今外務省からいろいろ説明をしたとおりに御理解をいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/131
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132・寺前巖
○寺前委員 それで、私の解釈、間違うているというのか合うているというのか、どっちや。あなたは横で聞いておってどう思ったか。こういうのははっきりしておかないかぬからね。提案者の大臣がようわからぬままで提案しましたというわけにいかぬから。だから、大臣はどう聞こえた、どう思って提案をしているんだ、はっきり言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/132
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133・西田芳弘
○西田政府委員 五海峡におきましては、従来の通航に変更をもたらすものではございません。したがいまして、領海におきましては無害通航が認められます。
他方、領海を越える公海部分あるいは経済水域の部分につきましては、航行上は航海の自由が認められるということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/133
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134・寺前巖
○寺前委員 そうしたら、ちょっとついでに、何かよくはっきりしないから言っておくんだけれども、十二海里までそれぞれの国の領海にするということが一般的に今度はできるようになった。そうしたら今度は、従来のまま三海里にしておくというのは、何で十二海里まですることをしなかったのか。十二海里までしたら米軍に対する制約を加えることになるからだ、こういうことですか。そこはどうなんです。
それは提案者の側に発言があってしかるべきなんでしょう、日本の国内法だから。大臣、どうなんですか。外務省が交渉して決める話じゃないんだから。領海をどういうふうに設定するのか。どうなんです、大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/134
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135・西田芳弘
○西田政府委員 今回、五海峡におきまして領海の幅員を三海里にとどめることといたしました理由でございますけれども、海洋国家であります我が国といたしましては、世界における諸外国が重要な海峡において自由な通航を維持する政策をとることを促進すべく、国際航行の要衝たる五海峡につきまして、なお当分の間現状を基本的に変更しないこととしたものでございます。
その際、いわゆる国際海峡における通過通航制度につきましては、現在までのところ、先ほど来申し上げておりますとおり、各国の実行の集積が十分でないために不確定な面がございますので、現行の自由な通航がなお維持されるようにしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/135
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136・寺前巖
○寺前委員 要するに、日本の沿岸の領海をどうするかというのは日本の国が決めることでしょう。だから、日本の国が自分で決める領海をここ遠慮させてもらいますわと。遠慮させてもらいますわと言う以上は、遠慮させてもらう理由がなければ遠慮することはないんでしょう。大臣、違いますか。領海について、何で三海里まで遠慮しなければならないのか。
しかも日本の国は、核兵器については国是としておるんだ。国是としている以上は、きちんと位置づけて、それは自由にさせるわけにいきませんで、あきませんで、領海ですからという発言をきちんとするというのが常道じゃないのか。大臣、不思議に思いませんか。
いや、それをやったら、外国へ行っている日本の船がようけあるさかいに、そこのところで制約を受けたらかなわぬさかいに、そのためには国是を曲げさせてもらいますのや、そういうことでもあるんですか。大臣はどう思われますのや。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/136
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137・亀井善之
○亀井国務大臣 このことにつきましては、海洋国家たる我が国として、諸外国が重要な海峡における自由な通航を維持する政策をとることを促進すべく、国際航行のこの五海峡につきましても現状を基本的に変更しない、こういう視点に立っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/137
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138・寺前巖
○寺前委員 そうしたら、従来と変更させたくない。変更させたくないけれども、日本の国の国是となっている核兵器の問題を問題にするということを何でしないの。それはおかしいと思われるんだったら、検討してくださいよ。どうですか、大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/138
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139・辻一彦
○辻委員長 西田審議官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/139
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140・寺前巖
○寺前委員 いや、違うねん。それは外交の話を言っているんじゃないんだ、日本の国内の話を言っているんだよ。大臣は領海法の提案者だ。提案者として、これはやはりちょっと検討しなければならぬなと思われませんかと聞いているのです。いかがですか、大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/140
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141・亀井善之
○亀井国務大臣 ただいま私が答弁したとおりの考え方で提案をしているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/141
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142・寺前巖
○寺前委員 そんな態度だったら、大臣、私は不安でかなわぬわ。確信を持って、これはこうなっている、これはおかしいとか、ちゃんと意見を持って、それは検討するとかなんとかしなかったら、そんなのは官僚に動かされているだけやということになる。だからこれは、僕はやはり検討をきちんともう一回やってもらわなければいかぬと思う。
僕はもう時間の都合もありますから次に進ませてもらいますけれども、今度担保金制度が導入された。外国の船舶が不法投棄などして汚染をするという問題などについて、連れていかれても、金を一定出したらもう釈放してやる、後の話は後でけりをつけようか、こういう話になるのだろうけれども、その担保金の水準というものが、うかつにやはりやれないという水準でないと困るじゃないだろうか。一体どの水準にこの担保金を置こうとしているのか、ちょっと具体的に御説明いただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/142
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143・秦野裕
○秦野政府委員 担保金制度と申しますのは、事件が発生しました後の取り調べあるいは起訴、公判といった一連の刑事手続の進行を担保するためのものでございまして、求められた出頭に応じなかった場合などには国庫に帰属せしめるということでございまして、刑事処分たるいわゆる罰金とは性格を異にするものでございます。
その正当な手続でございますが、改正の海洋汚染防止法第六十五条の四項によって定めることになっております「主務大臣の定める基準」というものがございまして、これに従って具体的に取り締まり官が決定するということでございます。
この基準を定めるに当たって考慮すべき事項というのは、やはり同じ条文で政令によって定めることになっておりますが、そこで私どもが現在考えておりますのは、例えば油の排出禁止違反であるかあるいは航行停止命令違反であるかといったような違反の類型、それからそれに対応した罰金額、さらには違法排出を行った油の量、あるいはそうした油が海洋汚染に及ぼす影響、あるいは初犯であるか累犯であるかというような別に考慮するということで検討いたしております。
この基準が定まりましたならば、取り締まり官がそれに従って個別事案ごとに担保金の額を算出するということになるわけでありますが、ただいまの先生のお話のとおり、要するに、いわゆる逃げ得になってはいけないわけでございます。したがって、当然逃げ得にならないように罰金の額を考慮した額ということで、個々の事案に応じて算定するようにこの基準の中で措置をしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/143
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144・寺前巖
○寺前委員 そこで私は、金さえ払えばいいということにならないようにと今長官おっしゃったから、その方向できちんとやってほしいということと、同時に、先ほどからもお話があったけれども、追跡する船の装備状況が、ああ逃げられたわということでは、どんな制度をつくったって、何しているのや、こういう話になると思う。
夜間にライトをつけてぱあっとされるとか、ともかく近代的な装備をきちんとおやりにならなかったらあかんので、だれかがおっしゃったように計画的に、すぐに全船にわたってといったってならぬだろうから、そこは計画的に、指をくわえるというようなばかなことにならぬような対応策だけはきちんとやっていただく、そういう計画を立ててやりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/144
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145・秦野裕
○秦野政府委員 御指摘のとおり、いわゆる計画的な整備ということで巡視船艇なり航空機の充実を図りまして、そうしたタンカールートその他海洋汚染の発生可能性の高い海域を重点にした取り締まり体制の展開を図っていくということでございますが、それと同時に、いわゆる船艇、航空機以外にも、例えば赤外線監視装置といった、要するに夜間に監視ができるような装置、これにつきましても既に昨年度の補正で整備に着手をいたしております。こうした近代的と申しますか、高性能な装備についても十分手当てをしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/145
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146・寺前巖
○寺前委員 それじゃ、よろしく頼みます。
それから、便宜置籍船が世界の船腹量の四分の一を占めているのです。その便宜置籍船の全体の中の四割を日本が使っている、こういうのですね。我が国の商船隊の中に占めている便宜置籍船の割合は一体どの程度のものなんだろうか。これはどなたが説明してくれますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/146
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147・岩田貞男
○岩田政府委員 お答え申し上げます。
世界の中に便宜置籍船が何隻あるかというのは、ちょっと私ども、今手元に資料がありませんし、またそれは定義によって違いますので、お答えできませんが、我が国の商船隊、我が国の海運企業が持っている船のうち、外国用船が千七百隻程度あります、年によってかなり変動いたしますが、この三、四割、六百隻程度が外国に籍を置いている船だと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/147
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148・寺前巖
○寺前委員 我が国の商船隊が千九百九十隻ほどですから、外国用船というのは大きな位置を占めている。その大きな位置を占めている三、四割というのが便宜置籍船だ。
ところが、この間調べてみたら、これの事故というのが非常に大きな位置を占めているのですね。全日本海員組合の調査をこの間読んでいましたら、タンカーの船体損傷による行方不明、全損及び重大海難事故の集計で、一九九〇年から一九九三年当初までの二万重量トン以上のタンカー事故は六十五件発生している。このうち便宜置籍船の事故は三十八件、第二船籍を含めると四十一隻だというから、これは三分の二までこういうことになっているのですね。
そうすると、便宜置籍船を持つことを奨励したというのか、日本の政策としてこうなってきたわけだけれども、ここが海上汚染をつくっていく非常に大きな位置を占めてきているということになったら、この便宜置籍船に対する対応というのは日本の国際的な責任でもあるし、また世界的にもこれは考えなければならぬ問題だろうというふうに思うのですよ。
そこで、便宜置籍船の不法投棄の場合に、刑事罰等について、実質支配している日本の船会社がその責任が負える体制に今なっているんだろうか。どういうことになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/148
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149・土坂泰敏
○土坂政府委員 便宜置籍船が不法投棄をいたしまして法令に違反をした場合に、当該行為者は当然処罰の対象になるわけでございますが、今御指摘の会社でございますけれども、便宜置籍船の会社というのは外国に所在しておるわけでございますから、我が国の法令が直接には及びません。したがいまして、今お尋ねの点に正確にお答えすれば、我が国の法令でそれを処罰することは現実にはできない。
ただ、条約に基づきまして通報制度というのがございます。これは我が国が法令に違反をしているというふうに調査の結果判断をいたしまして、一定の措置が必要である場合には、旗国、旗国というのはフラッグカントリーでございますが、そこへ通報をいたします。そうすると、その国で調査をした上で必要な措置をとって我が国にまた連絡をする、こういう制度がございますので、その制度によってそういうものに対する対応をしていきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/149
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150・寺前巖
○寺前委員 それでは、失礼な話だけれども、パナマやリベリアに通報したからといって、それに対応する役割をやってくれることになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/150
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151・土坂泰敏
○土坂政府委員 現実に通報制度というのは条約に基づいてずっとやってきておるわけでございますが、今までに全体で五百件近い旗国通報をいたしております。そのうちパナマの分が約百七十件ぐらい、それに対してパナマ側で一定の措置をしていただいたのが大体八十件近く、こういうように聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/151
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152・寺前巖
○寺前委員 UNCTADの一九九五年の海運報告を見ても、便宜置籍船受け入れ国のパナマは四一・五%、総登録重量トンに占める我が国の支配船率はそういうことになっておる。あるいは、リベリアの場合は一〇・〇%になっている。自国の一千重量トン以上の船舶は一隻もないわけでしょう。このような自国船も持たないようなところが、船をどうこうしようとか、あるいはどういう被害を与えようと、そんなことに責任を持てる状況にないことはもう明らかだと思うのです。
そういうことを考えたら、本当に海を汚さないようにしょうと思ったら、こういう国に対してどういう取り扱いを我々がしていったらいいのか。便宜置籍船に対する対応策というのを、世界の中でもまた日本自身がどう対応すべきだという方向を積極的に打ち出さなかったら、責任を果たすことにならないのではないだろうか。何かお考えがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/152
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153・土坂泰敏
○土坂政府委員 いわゆる海防法違反という海の汚染行為をした場合に、我が国の領海の中でそれが行われれば当然法令の適用が従来からもあったわけでございますが、今回は排他的経済水域が設定されますので、領海の外でも排他的経済水域の中ではそういう行為に対して我が国の法令が及ぶことになります。
また、いわゆる行為者でなくて会社そのものをどうするかという点につきましては、これは実は便宜置籍船に限ったことではございません。外国船全部について同じ問題がございます。つまり、我が国の法令が直接外国の所在の会社に及ばないというところに問題があるわけでございます。これにつきましては、先生先ほどからいろいろ御提案がありましたけれども、やはり旗国の法律に従って適切な処分をしていただくというのが一番効果のあることであると思います。
実は、これはOILPOL条約といいまして、海の汚染について初めて規制をした条約、これは昭和四十二年の条約でございますが、我が国は批准しておりますが、そのとき以来ずっとMARPOL条約を通じてお互いに通報し合って、旗国で自分の責任で処理をするということでやってきておりますので、やはりそのやり方できちんと対応するのがいいのではないだろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/153
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154・寺前巖
○寺前委員 私は、これは無責任だと思いますよ。要するに、あそこやったら税金はつかぬわ、何やら便宜やったら得やでということでやってきて世界に迷惑をかけているということを考えたときに、これは世界的に考えなければならない対応の問題だ、御検討いただきたいということを大臣に申し上げておきたいと思います。
最後に、産業廃棄物の問題について、ロンドン条約、廃棄物などの投棄による海洋汚染の防止条約では原則禁止になっていますけれども、実効性が非常に危ぶまれているわけです。こういう問題について、具体的にどういうふうにこれからやろうとしておられるのか。
あるいはまた、今回の条約改正でも非水溶性無機性汚染のいろいろな汚染問題や有機性汚泥の下水道汚泥やしょうちゅうかすなど、我が国の主要な海洋投棄物が適用除外になっている。こういうことになってくると、これは一体どういうことになるんだろう。海に対するところの汚染を防ぐための対応策というのを真剣に考えなければいかぬのじゃないだろうか。環境庁おりますか。どういうふうに対応していこうとしておられるのか、御説明をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/154
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155・吉田徳久
○吉田説明員 お答えを申し上げます。
御承知のように、我が国におきましては廃棄物の海洋投入処分に関しまして、従来より廃棄物の処理は陸上において行うことが原則である、したがって海洋を安易な投棄場所として認めるべきではない、こういう基本的考え方に基づきまして、これまで国内法令の整備を果たしてきておるわけでございます。
加えて、今御指摘のございました国際的にも海洋環境保全を図る観点から、廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約、いわゆるロンドン条約によりまして海洋投入処分に係る規制が行われているところでございまして、我が国としてもこの条約の規定にも対応した国内法令の整備を進めてまいっております。特に一九九三年十一月にロンドン条約の附属書が改正をされまして、産業廃棄物の海洋投入処分は本年一月一日から、天然に起因する汚染されていない有機物もしくは汚染されていない地質学的物質等一部の例外項目を除きまして、原則的に禁止されることになりました。
我が国におきましても、中央環境審議会での御審議をいただいた上で、昨年の七月に廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行令の改正を行いまして、条約に適合した規制措置を導入しているところでございます。
なお、この施行令の改正に当たりましては、条約上は海洋投入処分が認められている種類の産業廃棄物でございましても、海洋投入処分の実績がないものについては海洋投入処分を将来にわたって禁止をすること、それから海洋投入処分を認め得るか否かの廃棄物の汚染性に関する判定条件をおおむね従来の十分の一から五十分の一という厳しいレベルに設定をいたすことなど、廃棄物の海洋投入処分に伴う海洋環境への影響の発生の可能性を極力低減するために、条約上要請されている以上の規制措置を講じてきております。
さらに、本年秋にはロンドン条約の大幅な改正も予定されておりまして、今後ともこのような条約の改正に対応して、廃棄物の海洋投入処分に係る規制措置を的確に実施いたしまして海洋環境の保全に努めてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/155
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156・寺前巖
○寺前委員 時間が来ましたのでこれでやめますが、ひとつ大臣、積極的に検討してください。よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/156
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157・辻一彦
○辻委員長 以上で寺前巖君の質疑は終了しました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時三十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603830X01119960515/157
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