1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年二月十三日(月曜日)
午前十一時二十二分開議
出席委員
委員長 高橋 禎一君
理事 池田 清志君 理事 椎名 隆君
理事 福井 盛太君 理事 佐竹 晴記君
小林かなえ君 犬養 健君
林 博君 小島 徹三君
横川 重次君 世耕 弘一君
吉田 賢一君 横井 太郎君
菊地養之輔君
志賀 義雄君
出席政府委員
法務政務次官 松原 一彦君
検 事
(民事局長) 村上 朝一君
委員外の出席者
判 事
(最高裁判所事
務総局家庭局
長) 宇田川潤四郎君
専 門 員 小木 貞一君
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二月十三日
委員神近市子君辞任につき、その補欠として辻
原弘市君が議長の指名で委員に選任された。
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二月十日
人権擁護に関する予算増額の請願(加藤鐐五郎
君紹介)(第四五八号)
同(櫻内義雄君紹介)(第四八四号)
同(相川勝六君紹介)(第四八五号)
同(中山マサ君紹介)(第五一五号)
同(伊藤郷一君紹介)(第五一六号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭に関する件
家事審判法の一部を改正する法律案(内閣提出
第二号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/0
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001・高橋禎一
○高橋委員長 これより法務委員会を開会いたします。
この際、家事審判法の一部を改正する法律案の参考人決定についてお諮りいたします。すなわち、先ほどの理事会で協議の通り、家事審判法の一部を改正する法律案についてなお参考人より意見を聴取いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/1
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002・高橋禎一
○高橋委員長 御異議なければ、さよう決します。
なお、参考人の人選については委員長に御一任を願います。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/2
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003・高橋禎一
○高橋委員長 家事審判法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。
なお、本案について最高裁判所当局より出席発言いたしたき旨の申し出があります。これを許可いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/3
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004・高橋禎一
○高橋委員長 御異議なければ、さよう取り計らいます。
質疑は通告順に従ってお許しいたします。池田清志君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/4
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005・池田清志
○池田(清)委員 私はこの際二、三の事柄につきましてお尋ねをいたしますが、憲法の問題から触れたいのでありますけれども、御承知のように、三権の分立は日本国憲法におきまして厳にこれを規定し、現にこれが履行されつつあることは御承知の通りであります。この一つの司法のことにつきましては、第七十六条がこれを明定いたしておりまして、「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」、こういう規定を盛っておる次第でありまして、その二項におきましては、「特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。」というような旨を明らかにいたしておりまして、事司法につきましては裁判所というものがこれを行うということになっておる次第であります。ところが、今も読み上げました第七十六条の第二項に書いてありまするように、「行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。」という規定のありまするところを見ますと、行政機関も裁判を行うことがある、ただ終審としてはできない、こういうことに読めるのでありまするが、このことにつきまして、現在における実例をお尋ねを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/5
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006・村上朝一
○村上政府委員 現在におきましては、御承知のように、かつてありました行政裁判所あるいは軍法会議のような裁判権を行う機関は司法裁判所以外には設けられていないのでありますが、ここに「行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。」とありますが、裁判と申しますのは、実質的には裁判所の裁判に類似した作用を行政機関が行う場合でありましても、それをもって終局的のものとすることはできないという趣旨に理解するのであります。現在の制度のもとにおきまして、行政機関が、終審ではないが裁判類似の作用を営むものといたしましては、特許庁における特許事件の審判、あるいは公正取引委員会がやっております審決等がこれに当るのではないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/6
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007・池田清志
○池田(清)委員 裁判所におきまする裁判のほか、今も行政機関において特例としてそういうものをやっておるところがあるという実例を伺ったのでありますが、裁判所の名称を持っておりまする中において、裁判所がそれぞれ分化傾向、分業傾向になりつつあるのではないかと思うわけであります。たとえて申しますと、家庭裁判所は、家事の関係とか親族関係とか、そういうようないわゆる親しい間柄のことを取り扱うことが主でありまするし、交通裁判所におきましては交通事犯等を専管するというようなことにもなっておりまするし、さらにはまた憲法裁判所を作ろうじゃないかというような話もありまするが、これはつまり裁判所というものが分業傾向にある、こう考えるのでありますけれども、これにつきまして、司法当局といたされましてはどういうお考えでありましようか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/7
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008・村上朝一
○村上政府委員 現在設けられておりまする裁判所の種類は、申すまでもなく、最高裁判所の系統における下級裁判所として、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所及び簡易裁判所の四種類があるわけであります。この中で審級によりまたは事件の種類によって管轄を異にしておる裁判所があるわけでありまするけれども、これをさらに労働事件あるいは商事事件等につきましてそれぞれ特殊な管轄権を持った下級裁判所をふやす必要があるかどうかにつきましては、ただいまのところ、政府といたしましては、これ以上に下級裁判所の種類を多くすることは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/8
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009・池田清志
○池田(清)委員 裁判所の結論として公けにされまするものは判決ということで呼ばれておるわけであります。ところが、先ほどもお答えがありましたように、審判というようなものも裁判の一つであるかのごときお話もあったのでありますが、そこのところをもう少しわかるように御説明をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/9
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010・村上朝一
○村上政府委員 裁判という言葉を形式的に理解いたしますならば、これは事件について管轄権を有する裁判所の意思表示でございまして、その中に判決、決定、命令の区別があることは御承知の通りであります。ただ、家事審判法におきましては、家庭事件についての家庭裁判所の決定を審判という名前で呼んでおりますが、これは実質は裁判所における決定と何ら異なるところはないと考えております。また、先ほど憲法の条文にあります行政機関が終審としてでなく裁判類似の作用を営む場合としてあげました例は、その作用が裁判所の裁判に類似しておるという意味で申し上げたのでありまして、いわゆる裁判という言葉の定義の中に入るという趣旨で申したのではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/10
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011・池田清志
○池田(清)委員 家庭裁判所は、判決という文字ではなくて、審判、調停という文字がことさらに使ってあり、そして裁判所が判決をする機関であるというところから考えますと、家庭裁判所自体は、裁判所という名前は冠しておりますけれども、実質的にはいわゆる行政機関であるのではないかという疑問を有するものでありますが、これにつきましてはどういうお考えでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/11
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012・村上朝一
○村上政府委員 裁判所が事件について裁判をいたします形式は、判決によるのが最も多いわけでありますけれども、先ほども申し上げましたように、訴訟法におきまして必要的口頭弁論に基いて行われる裁判だけを判決と呼び、口頭弁論を経ずに行われ、あるいは口頭弁論を経てもそれが任意的の口頭弁論であります場合には、合議体裁判所の裁判官全員が関与しまたは単独裁判所の裁判官が合議体裁判所と同様の立場に立って裁判いたします場合に、これを決定と呼んでおります。また、合議裁判所でなく、裁判長による受命判事、受託判事の行います裁判を命令と呼んでおるわけであります。この判決、決定、命令、いずれも裁判所が司法権を行使するに当って裁判所の意思を表示する一つの形式でございまして、判決をやる裁判所だけが厳正な意味における裁判所であって、判決をやらない裁判所は裁判所ではなく行政機関ではないかというふうには考えておりません。普通の裁判所におきましても、非訟事件手続法による裁判のごときは、判決によらず決定でもって裁判をすることになっております。また、家事審判法におきまして決定の性質を持つ審判で裁判をすることになっておりますけれども、これは家庭裁判所が憲法にいう裁判所の一種であることを妨げるものではない、かように解釈いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/12
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013・池田清志
○池田(清)委員 裁判所におきまして判決、決定、命令があるということはわかります。ところが、行政機関におきまして審判、調停ということをやっておるわけであります。たまたま家庭裁判所は裁判所という名称を冠しておりますが、元来そのやっております結論といたしましては、法律上の用語としては審判と調停なのであります。でありますから、これだけを考えますと、行政機関のやっておる審判、調停と何ら変るところないじゃないか、こういう疑問が現われて来、従って家庭裁判所は実質的には行政機関ではないかという疑問が生まれてくるわけでありますが、その点、もう少しわかるようにお話を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/13
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014・村上朝一
○村上政府委員 まず、家庭裁判所が癖判を行う場合でありますが、これは裁判官が審判という形式で司法権を行使するのでありまして、まさに厳正な意味における裁判に該当するものと考えます。ただ、判決という形式をとりませんのは、先ほども申し上げましたように、必要的白頭弁論を経ないでやる裁判の形式だからでありますけれども、それならば、なぜ必要的口頭弁論を経ずにやるか、判決という形をとらずにやるかという、もう一歩突っ込んだ理由につきましては、従来の考え方といたしましてある権利の存否を確定するという作用は判決でやるべきであります。しかし、争いある法律関係を確定するのでなくして、新しい法律関係を形成する作用、これは判決の中に形成判決というようなものもございますけれども、形成する作用は必ずしも判決という形をとらなくてもよろしいという伝統的な考え方があるように聞いております。非訟事件手続法の形をとっております。非訟事件の形をとっております事件は、おおむねその性質は形成の裁判でござ、まして、その点、家庭裁判所のやります家事審判も、一般の非訟事件手続法と同様、非訟事件と申しますか、形成的な内容の我側が多いわ庁であります。憲法の要求する、司法権は裁判所これを行うという、その司法権の意味をごく狭く解釈する見解に従いますと、争いある権利関係を確定する作用だけは少くとも司法権の範囲と見なければならない、しかし、形成の作用は必ずしも裁判所が司法権の行使としてやる必要のない場合もあると説かれておるのであります。その意味で、裁判所のやっております非訟事件なりあるいは家庭裁判所の家事審判事件というものは、行政機関のやる裁判類似の作用に近いような感じを与えるのでありますけれども、これらの非訟事件あるいは家庭事件の審判事件を裁判所がやることは、もとより憲法の禁止しておるところではないのでありまして、事柄の性質に従いまして、裁判所に行わせることが適当であるという考え方に基きまして、従来これらを裁判所の所管にしておるものと考えられます。
また、調停につきましては、これは裁判官だけでやるのでなく、裁判官と調停委員とで構成いたします調停委員会が原則として調停に当るわけでありますけれども、これも司法上の法律関係に関する争いを調停して、この調停の結果債務名義としての効力を持たせるためには裁判機関に行わせることが適当であるというところから、裁判所の権限とされておるのでありますけれども、もちろん行政機関をして行わしめることができない性質の作用であるとは考えておりません。ただ、これは、先ほど申し上げましたような理由で、家庭裁判所に行わせることが適当であるという理由で、裁判所の所管とされておるものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/14
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015・池田清志
○池田(清)委員 裁判所の行いましたところの判決、決定、命令等につきましては、これを実行するやり方としましては、制度といたしまして、当車者の間で自発的に解決するものはそれでけっこうだし、解決しないところの金銭的な債務でありましたら、強制執行ができるし、あるいはまた刑罰の関係でしたら刑を執行するというやり方によって行われておるのであります。たまたま、家事審判法の一部改正法律案におきましては、家庭裁判所の行いました審判、調停ということの実行について、さらに家庭裁判所がめんどうを見てやる、すなわち履行を勧告するというような事柄にまで乗り出すのでありますが、ほかの司法機関等におきまして、そういうようなあとまでの世話を見てやるという実例等ありましたら、この際お伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/15
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016・村上朝一
○村上政府委員 従来のわが国の法制におきましては、かような先例はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/16
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017・池田清志
○池田(清)委員 そういたしますと、その点におきまして、この法律の改正は、わが国の司法機関に一つの新しい任務を与え、新しい分野を開拓せんとするものでありまして、わが国の憲法並びに関係法制全体として画期的なことであると考えるわけであります。なお、現在国内における実例はないというお答えでありましたが、外国におきましてはこれらについてどういうことに相なっておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/17
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018・村上朝一
○村上政府委員 外国の例につきましては、先日ごく簡単に申し上げたのでありますが、アメリカでは一般に裁判所の命令に服従しない者に対する裁判所侮辱罪という制裁が伝統的にございます。家庭事件につきましても、裁判所が発した扶養命令に従わない場合には、裁判所侮辱罪に当るものとして拘禁あるいは罰金の制裁を課することになっておるようでございます。ただ、これは家庭裁判所が刑事事件としてこれらの処分をするわけであります。今度の法案にありますような、審判または調停をやった裁判所が裁判後のめんどうを見るという例には、ぴったりこないかと思います。また、イギリスにおきましても、扶養命令に従わない者について拘禁することができるようになっておるようでありますが、これも同様英国の特殊の伝統に基いて認められておるものと考えるのであります。そのほか、英国では、扶養料の取り立てを円滑にするために、裁判所に徴収官が置かれまして、裁判所の扶養命令の金銭の給付が徴収官を通じて行われるという例になっておるようであります。また、アメリカにおきましても、家庭裁判所に扶養局と申しますか、サポート・ビューローというのが置かれまして、これが義務者から扶養料を即り立てて、これを権利者に交付するというような立法をしている州があるようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/18
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019・池田清志
○池田(清)委員 家庭裁判所におきましては、審判、調停の履行を確保し、お互いのめんどうを見るために、一歩前進いたしまして、義務の履行を勧告をする、こういうところまで乗り出しておりますることは、法案にありまする通りでありまして、このことは、国内においては画期的な問題であり、外国においては一、二の例があるということはよく伺ったところであります。その義務の履行を勧告をいたしまして、それによりまして義務者が履行してくれればまことにけっこうでありますが、履行しない者につきまして、さらに一歩家庭裁判所が前進をいたしまして、履行の勧告に従わない者については行政罰、過料を課す、こういう仕組みに進められておるのであります。外国のアメリカ等の立法例に比較いたしますれば穏やかなものであるとは思いますが、何としても日本国においては画期的なことでありまして、よほどこれについては論議が重ねられなければならないと思う次第であります。裁判所といういわゆる司法機関が行政罰を課するのでありますが、現行制度におきまして、わが国でそういう事例のありますのは、すでにできておりまする家庭裁判所がやっておることはわかりますけれども、その他の司法機関においてどういうところで行われておるか、お尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/19
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020・村上朝一
○村上政府委員 一般の裁判所におきましても、たとえば民事訴訟法におきまして、証人を喚問いたしますが、証人が正当の理由なく出頭いたしませんときには過料の制裁を課することになっております。そのほか、民事訴訟には、裁判所の書類提出命令等に従わない場合にも過料の規定があったと思います。要するに、裁判所の命令の実行を確保するために、行政罰と申しますか、秩序罰の過料の制裁を課する例は、従来も数多くあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/20
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021・池田清志
○池田(清)委員 過料を課しまして、その履行を実現しよう、こういうところまで親切心が進んでおるわけでありますが、一たび過料を課しましても、履行ができないという事態が現われてくることがあると予想いたします。その際に際しましては、二度、三度の過料を課することによって、どこまでも履行させようということであろうかと思いますけれども、この点はどういうことになっておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/21
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022・村上朝一
○村上政府委員 履行を怠った者がある場合において、家庭裁判所が相当と認めるときは申し立てによって履行命令を出すことになっておりまして、それに正当な理由がなく従わない場合に五千円以下の過料に処するという規定になっておるのであります。この過料の裁判は非訟事件手続法の規定によってやることになっておりますが、非訟事件手続法の二百七条でしたかの規定によりますと、必ず当事者の陳述を聞くことになっております。また、過料の裁判に対しましては即時抗告も許されることになっております。裁判官が当事者の陳述を聞くわけでありますから、従来も、過料の裁判というものが乱用されると申しますか、必要以上に行われたというような事例は聞いていないのでございます。さらにまた、このたび新たに設けられますこの履行命令につきましても、過料の前提としての命令でございますから、家庭裁判所は何らかの機会に当事者の陳述を聞くことと考えるのでありますが、新しい制度でございますし、その点を明らかにする趣旨で、あるいは最高裁判所規則の中でその履行命令を出す場合には当事者の陳述を聞くことを必要とするというような規定を設けられることもどうか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/22
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023・池田清志
○池田(清)委員 家庭裁判所の行いますところの審判、調停は、これがなされますと確定をするわけでございます。その審判、調停において金銭上の債務が確定をいたしますると、それはいわゆる強制執行の手段によりましてその履行が求められる、こういう制度になっておる次第であります。それに加えまして、今回のこの法律の改正によりまして、強制執行と並行いたしまして家庭裁判所が義務の履行を勧告し、しこうして不履行の者に対しましては過料を課する、こういうことになるわけでありますが、この両方の執行がそれぞれ並行して進められるということが、法律上はそういうふうに考えられるのでありますけれども、もしそれが並行して行われるということでありますならば、これは義務者の方に相当の無理、不利益が現われると思うのであります。これらにつきましてはどういうようにお考えになっておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/23
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024・村上朝一
○村上政府委員 民事訴訟法に定めております強制執行も、またこの法律で新たに設けられます履行命令も、形の上では無関係に行われることになっておりますが、本来、履行確保に関する措置というものは、家庭事件の性質上、当事者が強制執行の手段によることを避けて強制執行以外の方法で履行の満足を得たいという場合に、従来も家庭裁判所の職員が事実上協力してやっていたのを法制化するというところから出発したのでございますので、もとより一方において強制執行を進めながら一方において履行命令を出して過料の裁判を課するということが同時に行われるということは予期していないのでございまして、先ほど申し上げました当事者の陳述を聞く際に、すでに強制執行に差手している、あるいは近く強制執行をやるつもりであるというような状況がわかりましたならば、家庭裁判所は、この履行の命を令行うことは相当でないと認めて、履行命令を発しないことになると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/24
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025・池田清志
○池田(清)委員 実際上の取扱いと申しますか、問題につきましては、御答弁通りにお考えになっていらっしゃることはわかります。しかしながら、法律上の問題としましては、両々独立し、両々並行して行われるおそれが残っているわけであります。ですから、御説明の通りに、施行するということでありまするならば、そのようなことが法制の上に現われない限りは、どうも満足がいかないと思いますけれども、この点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/25
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026・村上朝一
○村上政府委員 一方において強制執行が行われつつあるにかかわらず、他方においてこの法律による履行命令あるいは過料の裁判等が行われるというような懸念がもしあるといたしますれば、これも、家庭裁判所の手続に関する最高裁判所の規則におきまして、さような場合には当事者を審尋する機会には強制執行に着手したかどうかというようなことを確かめるべきであるというような規定を設けることも可能かと考えますので、これは最高裁判所側と打ち合せたわけではございませんが、そういう措置もとり得る、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/26
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027・高橋禎一
○高橋委員長 佐竹晴記君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/27
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028・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 履行の勧告、それから履行命令、これはいずれも裁判所の決定でなされましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/28
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029・宇田川潤四郎
○宇田川最高裁判所説明員 勧告の方は事実行為と考えておりまして、あるいは書面あるいは口頭によって行う。別段これを決定で行うというようには考えておりません。ただ、履行命令の方はやはり決定の性質を有する裁判で行うことにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/29
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030・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 それに対する制裁もやはり非訟事件手続法による決定でなされるでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/30
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031・宇田川潤四郎
○宇田川最高裁判所説明員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/31
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032・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 そこで、村上局長にお尋ねをいたしたいのでございますが、審判並びに調停によって決定された債務を履行しない者に対して履行命令を発し、これに応じない者に対して過料の制裁を加えることができるという規定は何回も繰り返してできるのである、こういう御説明がありました。正当の事由のある場合に限りますことはもちろんでありまするが、数回繰り返して履行命令を発することができるという御見解は間違いないでありましょうか、さらにこの際確かめておきたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/32
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033・村上朝一
○村上政府委員 前回も申し上げました通り、裁判所が相当と認める場合には繰り返し履行命令、それに応じない者に過料を課することが理論上は可能である、かように考えております。ちょうど民事訴訟法における証人喚問の例について考えましても、裁判所が呼び出したにかかわらず喚問に応じないという場合には過料の裁判をいたしますが、さらにまた呼び出しても出頭しないというときには二回、三回とやることも理論的には可能であるというふうに一般に理解されておると承知いたしますが、この場合も同様と考えるのでございます。ただ、実際の運用上、これが数回、数十回、過料の額にして数十万円というような額にまで上ることがあるかというような点につきましては、先ほど池田委員にもお答え申し上げました通り、本来過料の裁判をする際には当事者の陳述を聞くことになっておりますし、また新しい規定によりまして履行命令を出す場合にも当事者を審尋するということで、当事者の意見を聞く機会を必ず作るという最高裁判所規則を事務総局の方でも用意しておるように聞いておりますが、裁判官を信頼する限りにおきまして、これの非常識な運用が行われるということは考えなくてもよい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/33
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034・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 証人喚問の場合を例に引かれて何回でもできるのだという御説でありますが、私は、それと同一に解していいのかどうか、疑問を持たざるを得ないのであります。証人喚問でございますと、たとえば一月の十五日口頭弁論期日に出頭しろ、こういう命令に応じなかったとき、その一月十五日に出頭することを命ぜられた事実に反した者に対して制裁を与え得ることはもちろんであります。そこで、出頭しない者に対して、さらに二月の一日に出頭しろと命じた。そのときに応じないときに、二月の一日に出頭しなかった事実に対してさらに制裁を加え得ることはもちろんであります。ところが、本件の場合はそれと違うと私は思うのであります。たとえば、昭和二十九年十二月三十日までに金一万円を支払うべしという審判があったとき、その請求権は一個であります。そこで、昭和二十九年十二月三十日までに金一万円を支払うべしという債務について、その履行命令を出した。その履行命令は決定であります。一個の事実に対して一個の決定が与えられました。そこで、一事不再理の原則に基いて、昭和二十九年十二月三十日までに金一万円を支払うべしという履行命令は、一個の決定によって、もはや再び命ずることはできないではないかと私は思うのであります。その一個の不履行の事実に対して一個の決定が与えられた後に、さらにまた昭和二十九年十二月三十日までに支払うべき債務、すなわち金一万円を支払えということを、さらにいま一度決定という裁判の形式においてなし得るかどうか、この疑問を私は持たざるを得ないのであります。御所見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/34
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035・村上朝一
○村上政府委員 私、先ほど引きました証人喚問の例は、もし比喩として不適当だという御意見でございますれば撤回いたしますが、要するに、この過料の制裁は履行命令違反の制裁でございまして、履行命令が一たび出たにかかわらずそれに違反したというときに過料の制裁が課される、それでも履行しない場合にさらに重ねて履行を命ずる、その命令に違反したときにはさらにまた過料の制裁を課することができる、その意味では形が似ていると考えて引いたのでございますが、もとより証人喚問の場合とこの履行命令の場合とは事柄の性質が違いますので、あるいは適当な例でなかったかもしれません。御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/35
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036・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 私の疑問とするところは、その履行命令を二度繰り返してできるかということが問題なんであります。この間も法務省の方が、あなたの方の何か係の方でございましょうが、数回制裁をなし得るのは、履行命令に対して応じないから、それに対して制裁を加えるのだ――履行命令が数回できるという見地に立って何か権力解釈をなさっておるようでありますが、それではなしに、その履行命令は決定の形式によってやるのだから、決定の形式は、一個の不履行の事実に対して一個の決定が与えられたならば、一事不再理の原則に基いて、もうその一個の不履行の事実に対して二個以上の履行命令はできないではないかというのが私の疑問であります。二個以上の履行命令ができないとすれば、二個以上の制裁は与え得ないではないか、この見解が間違っておるであろうかということが私の質問であります。
先ほど、宇田川局長は、勧告の場合は事実行為である、履行命令は決定の形式であるとお答えになりました。そこで、勧告のごとく事実行為であるならば、これは何回もできます。それから、履行命令も、事実行為ならば何回でもできます。しかし、事いやしくも履行命令が決定という裁判によってなされる以上は、その裁判で一個の不履行の事実に対して履行せよという一個の決定が与えられた以上、これは一事不再理の原則で二個以上できないではないか、こういう疑問を私は持つのであります。ことに、先ほど御説明のごとく、非訟事件手続法の規定により、その決定に対しては即事抗告が許されることになっておる。従いまして、一個の不履行の事実に対して一個の決定が与えられる、その決定に対してはさらに救済方法が与えられておるときに、当事者といたしましては、すなわち義務者といたしましては、その一個の不履行以上に何ものも加えておらぬ。二十九年十二月三十日までに金一万円を支払うべしというのに対し、支払わぬという事実があるだけなんです。一指もそれ以上加えておらぬ。ただ不履行という一個の事実があるのみであります。もし、それに対して、単に不履行の事実に対して二個以上の裁判ができるということになれば、ここに昭和二十九年十二月三十日までに金一万円を支払うべしという判決があったときに不履行のままで置いておいたときに、一年後にもう一度訴えを起して、さらに昭和二十九年十二月三十日までに支払うべかりし金一万円を支払うべしという判決をもう一度できることにならねばなりません。しかし、判決の場合においては、明確に一事不再理の原則でそれはできないということになりましょう。決定も裁判の一つの方式だといたしますならば、そういった場合も同一原理が適用されるではないかというのが私の疑問であります。もう一度御説明をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/36
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037・村上朝一
○村上政府委員 ただいま、給付判決におきまして、一度確定した給付判決があるにかかわらず、繰り返して同じ債権について給付判決はできないではないかという御意見で、ございましたが、まさにその通りでありますが、これは、私法上のある債務の存在を確定して、その履行を命ずる裁判がありました以上、繰り返して同じ内容の裁判をもらう利益がないということによりまして、裁判が権利保護の利益なしということで訴えが棄却されるわけであります。この法律によります過料の制裁及びその前提となります履行命令は、もとより、問題となっております審判で定められた金銭の支払いその他の財産上の給付を目的とする義務の存否を確定し、その支払いを命ずる内容の裁判ではないのでありまして、言いかえますと、この過料は、審判並びに調停で定められた義務自体の不履行に対する制裁と申しますよりは、この義務を履行させるためにとられる裁判所の措置である、かように理解することによりまして、いわゆる一事不再理の原則というようなものの適用がないということが言えるのではないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/37
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038・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 判決の場合にはさらに判決する利益がないからとおっしゃるけれども、それは、たとえば訴訟の中でも確認判決のように即時確定の利益のないような場合においてはその通りかもわかりません。しかし、一事不再理の原則というものは、ただそういった簡単なものではないと思います。一たび権力機関によって一個の事実に対して一個の判定が与えられた以上、もうそれは不動のものであるのだ、さらに同一の事実に対してあとで別個の証拠をもっていたしましても動かすことができないのだ、こういう、そこに確定力を与えるためにできておるのが一事不再理の原則であり、判決の効力であります。もう一度やったときに利益があるということであったら、今度は、利益があるからといってもう一度やってみたら、次の裁判に別の証拠が出て、前の裁判と別の判決をしなければならないようなことになってくると、裁判制度を転覆するからいけないというのが確定力の問題だろうと思います。単に執行の上において利益があるかないか、そんなことが私は問題ではないと思います。もし利益問題を中心としてこれを論ずるといたしますならば、それは数回履行命令を出して数回制裁を与え得る、だから利益があるのだといったような御見解のようでありますが、そういったことになりますと、制裁を与えるがために数個の履行命令を出す利益があるというようなことになります。それは本末転倒の議論ではないかと私は思います。少くともここに一個の不履行の事実があって一個の履行命令が出た以上、私は、もうそれでいいのじゃないか、かように考えるのであります。が、ただいまのせっかくの御答弁もあることでありますから、それに対して私はさらにとくと考えてみたいと思います。
続いてお伺いをいたしたいのは寄託であります。寄託を受けることは第三者のためにする契約であると一応解釈をなさっておるようでありますが、寄託によってその所有権は裁判所に移るでありましょうか、それともこれは事実上単に預かっておるというだけでありましようか。寄託の中にも、消費寄託もあります。あるいはほとんど信託に類するものもあります。ことに第三者のためにする契約だとおっしゃいますと、一たん国家が、すなわち裁判所がその所有権を得て、そうして権利者に引き渡す義務を生ずる。そして受益の意思表示がないときはもとの義務者にこれを返還する義務を負うといったことになりましょうが、そのときに、その金銭なら全銭の所有権はどちらに帰属するでありましょうか。これを承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/38
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039・村上朝一
○村上政府委員 この寄託の性質は、目的物が金銭でございますから、もとより不規則寄託、いわゆる消費寄託と解釈いたしますので、金銭の所有権は国に帰属すると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/39
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040・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 そうすると、国家の会計法の適用を受けることになりましょうか。そう解してよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/40
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041・村上朝一
○村上政府委員 いわゆる歳入歳出外の保管金ということになると思いますが、保管金規則その他の会計法通りにはいかない場合もありますので、第十五条の四によりまして、最高裁判所の規則によって保管金規則に対する特例が設けられるものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/41
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042・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 そうなりますと、そういったような金銭の寄託を受けることは、裁判所法中にその権限を明記すべきではないかと思いますが、いかがでございましょう。すなわち、単にこういう家事審判法の改正を出して参りまして、この家事審判法の一部でこういう権限が与えられたということを規定するだけではなしに、その家庭裁判所にこういう権限を与えるのだという、基本的な裁判所法中にその権限を明記する規定を設くべきものではないかと思いますが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/42
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043・村上朝一
○村上政府委員 国家機関が国家のために金銭を保管するためには法令の根拠が必要であることは、佐竹委員のおっしゃる通りでありましてこの法律案の第十五条の四がその根拠規定になると考えるのであります。裁判所の権限に関することであるから裁判所法に規定することがいいのじゃないかということも一つのお考えだと思います。従来も、たとえば民事訴訟の予納金のごときも、これは歳入歳出外の保管金でありますが、民事訴訟法には根拠がございますが裁判所法には特に規定はいたしてないのでございます。さような例に従いまして、手続法でありますところの家事審判法に規定を設けた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/43
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044・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 民事訴訟の予納金のごとき、証拠調べに関する規定に伴うものは必然的のできごとであります。そうして、証拠調べをなし得ることは、この裁判所法中に、これこれの民事事件、これこれの刑事事件についてはこれを扱うと書いてあるのです。従って、それに伴う証拠調べに必要な予納金を扱うということは裁判所法中に当然書いてある、その条項の内容に入っておると私は考えます。ところが、今度の寄託のこの規定というものは新しく与えられたる権限であります。この規定なしには、国家がその所有権を取得する、そういう権限を持った行為はできないのです。すなわち、旧来は、預けて来るものは、単に事実上判事がその個人的責任において預かって取り扱ってあげるにすぎない。それを国家の歳入歳出外収支となるように、国家の権利に帰属するようにその金を預かる権限がなかった。それがこの法律において初めてできるのです。そういった場合において、民事の予納金などと同様に考えるわけにはいかぬの。あって、特にこの規定によってのみての権限が与えられるものでありますから、基本法であるところの裁判所法中にこれを規定すべきものである。現在の裁判所法中にはその規定がないのでありますから、それからまず改正すべきではないかと考えますが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/44
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045・村上朝一
○村上政府委員 御意見ごもっともだとは思いますが、ただいまの裁判所法では、家庭裁判所の権限規定には家事番判法で定める家庭に関する事件の審刊及び調停というふうに規定してありまして、その内容はあげて家事審判法に譲っておるのであります。なおまた、この裁判所法には「家庭裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に定める権限を有する。」という規定本ございまして他の法律、この場合で申しますれば家事審判法でありますが、で定めることは裁判所法が当然予定していることと考えるのでありまして、裁判所の権限を具体的に詳細に規定せずに、先ほど申し上げましたような家事審判法で定める家庭に関する事件の審判及び調停という大ざっぱなきめ方をしております立法の体裁から申しまして、これだけを特に裁判所法に規定いたしますよりは、家事審判法に規定する方が妥当だ、かように考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/45
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046・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 現在までの裁判制度と申しますか、それは裁判をする者、調停をする者は、それぞれ裁判官がこれをやる、執行については別の機関にやらせる。それで、裁判をした者が執行をすることができるとすると、裁判をした者が熱心の余りに何がなんでも力を加えてその内容を実行しようと無理なことをやるおそれがありますために、裁判というものと執行というものを二つに分けて考えておる。そういう制度が自然にでき上っております。そこで、今日までのこの裁判制度は、裁判をする者は裁判をする者、それから執行する者は執行する者と区別しています。ところが、その執行の規定が不十分であるからといって、ここに新しい規定を作ろうといたしておりますものが今回の改正案であります。つまり、普通の旧来の裁判制度に何ものか新しいものを盛ろうといたしております。このことが、私は、裁判をする者に強制力を与えて、つまり制裁などを与えて、その内容の実現を強制せしむるような権限を与えるというようなことになると、裁判というものと執行というものの制度を紛淆せしむろおそれはないであろうかということが、当初から聞いておるゆえんであります。そういったような場合における履行命令や制裁や寄託といったような新しき観点に立ってできまする制度を作り、また国家が金銭の所有権を取得する。これが歳入歳出外の国家取扱いの金銭になる、国家の所有に属する金銭になるといったようなことになりますと、こういったような新しいものを盛った場合においては、これは新しく裁判所法中にそういう権限を規定してしかるべきではなかろうか。局長のおっしゃるものは、先ほど申し上げる普通の状態のもとに、旧来の裁判制度のもとにおける、その普通の状態を予想いたしまして、裁判所法以外の他の法律に基いて権限が与えられた事件と包括的な文字で規定できましょうが、今回の改正案のように新しい制度、権限を認めようとする場合においては、裁判所法中に規定するのが穏当ではなかろうかと言うのであります。いま一度御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/46
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047・村上朝一
○村上政府委員 裁判所法に規定を置くということも一つの方法だとは存じますが、これまでの法制の体裁から申しまして、家事審判法に規定をいたしましても別に不都合はないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/47
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048・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 提案理由の説明を承わりますと、今回の改正は金銭債務の場合を想定し、かつその執行なども少額の債務であることを中心といたしましての改正であり、また寄託の規定のごときも金銭債務を中心といたしまする改正であります。ところが、家事事件は金銭債務以外の義務を命ずる場合も非常に多いのでありますが、その金銭債務以外の義務についてもやはり本件の履行の勧告や履行命令あるいはそれに伴うところの制裁などを加えることができるようすべきだと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/48
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049・村上朝一
○村上政府委員 家庭裁判所の審判または調停で定められます義務の内容には、いわゆる財産上の給付を目的とするもの以外のものも含まれるわけでありますが、その履行条件の調査及び履行の勧告につきましては別段制限を設けておりませんが、履行命令につきましては金銭の支払いその他財産上の給付を目的とする義務の履行を怠った場合だけに限定いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/49
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050・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 たとえば夫婦同居を命じたところの審判並びに調停なんかがあったとする。あるいは子供引き渡しに関する調停が行われたとする。あるいは財産管理に関するいろいろのことを約定した調停が成立いたしたとする。そういったような場合においても、いな、そういう場合においては、むしろ強制執行はほとんど困難であって、履行命令をやる。履行命令を聞かなければ制裁を与える。むしろそういう場合においてこそ、この改正の各条項、すなわちアフター・ケアをやるに値する事態が起るではないかと思いますが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/50
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051・村上朝一
○村上政府委員 ただいま佐竹委員のおあげになりましたような例は、義務の性質が本来直接の強制執行に適しないということで、執行の方法といたしましても、あるいは間接強制の程度、あるいは強制執行の方法によってたとえば夫婦の同居義務の履行などを執行機関が執行するというようなことは不可能でございますので、そういうものは強制執行の事件としては現われないのでありますが、そういうものにつきまして履行確保の規定によりまして過料の制裁及びその前提としての履行命令というようなものを出すことも、やはり債務の性質上妥当を欠くのではないかと考えるのでございます。もっとも、ある考え方によりますと、そういうものこそ家庭裁判所独特の事件であるから、そういうものだけについての過料の制裁ならばいいが、金銭債務その他の事実上の給付を目的とする債務については家庭裁判所独特の債務でないから家庭裁判所だけに認める必要はないじゃないかというような意見も一部にあったのでありますけれども、むしろ、ただいま申し上げましたように、本来、夫婦の同居とか幼児の引き渡しというようなことは、あまり強い強制力を加えない方が適当ではないか、やはり任意に履行する場合でなければ、たとい裁判が確定しましても、本来十分な効果を上げ得ない性質のものであるというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/51
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052・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 せっかくこういう改正をなさろうといたしておりますとき、家庭裁判所における一番大切な人の問題を解決するのに、こういう規定を適用すればてきめんに効果があろうと思われるのにかかわらず、それだけを除外するなどということは、とうていこれは理解ができません。改正しようというところの精神いずこにありや、理解することができない。また、その反面、御説明によると、今回の改正というものは単に金銭債務の強制執行の補助規定であると解するよりほかにございませんが、その強制執行の補助規定ならば、強制執行の場合は、どのような強烈な強制執行をやっても、向うが不履行であった場合にそれに対して過料の制裁を与えるような事態は起りません。本来、このほんとうの目的が、強制執行では十分ではないんだから、それを補助する補助規定をこしらえ、補助規定の方がもとの強制執行の規定よりもっと強いものになったなどということは、これは本末転倒もはなはだしいではないかと考えます。いな、むしろ、ただいま申し上げましたところの夫婦同居とか、子供の引き渡しの義務、そういったような普通の強制執行のできないものについてこそ、どんどんこういった改正規定を適用して、この内容を実現するようにいたしましてこそ、今回の改正の理由があるではないか、こういうふうに考えますが、いま一度伺っておきたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/52
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053・村上朝一
○村上政府委員 考え方の違いかもしれませんが、履行命令あるいは過料の制裁を金銭債務等に限りましたのは、金銭債務等につきましては、いやいやながらでも強制執行によらないで履行してもらえばいいのであります。ところが、夫婦の同居とか幼児の引き渡しとかいう問題は、いやいやながらではいけないのでありまして、どこまでも納得ずくで裁判の内容が実現されることが必要なのであります。もとより、十五条の二の勧告の方は、そういうものについてもやることができることになっております。つまり、納得ずくで、夫婦が同居し、あるいは子供を引き渡すというようなことが行われることは、もちろん望ましいことでありますから、その意味で履行の勧告をいたすのでありますけれども、履行命令を出し、過料を課するというようなことは過当でない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/53
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054・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 夫婦同居のごときは、これは納得いたしませんと目的を達し得られないことはお説の通りであります。しかし、子供引き渡しのごときは、夫婦の間に争いができて離婚したような場合に、互いに顔を見るのもいやだといったようなときでも、子供に対する愛着は、同じ親でありますから変りありません。こういったようなときに、納得ずくで引き渡しをしようということになると、とうてい引き渡さないものだから、そこで家庭裁判所の事件になる。そこで裁判所をわずらわして調停ができるのです。そのときに、今言ったような履行命令で調停に現われている事項を実現すれば、それで目的は達するのです。そういったような場合に、納得ずくでという一言によって、そういう問題に本件改正規定を適用することを排除する理由というものは、ごうまつも考えられませんが、あまり議論にわたるようなことは避けたいと思いまして、この程度にいたしておきます。
続いて、二十八条の第二項に「調停委員会又は家庭裁判所により調停前の措置として必要な事項を命ぜられた当事者又は参加入が正当な事由がなくその措置に従わないときも、前項と同様である。」といって、これにまた過料の制裁が加えられていることになっております。この二項の調停前の必要な事項を命ぜられたということに関しまして、一つ御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/54
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055・村上朝一
○村上政府委員 この二十八条の第二項は、現行法の家事審判規則百三十二条にございます規定をそのまま取り入れたのであります。この規則の趣旨及びその運用の実情については家庭局長から御説明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/55
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056・宇田川潤四郎
○宇田川最高裁判所説明員 家事審判法改正案第二十八条の第二項の「調停前の措置として必要な事項を命ぜられた当事者又は参加入」云々という、この調停前の措置として必要な事項というのは、先ほど民事局長が言われたように、家事審判規則の百三十三条に規定がございます。これは、ある調停の事件で、債務者である夫が五万円を月賦五千円で支払うというようなことを言い、妻の方は十万円を毎月月賦で一万円支払えというようなことで争っている間に、何分妻の方は子供をかかえているから、日々の生活が困るというような場合に、とりあえず、五千円払うと言っているし、またそういう五千円を払わすことが妻の生活を確保するために必要だという場合に、この五千円の月賦を亘二十三条の規定で命ずるわけであります。これに従わなかったときには、この二十八条第二項の規定によりまして五千円以下の過料に処するということに相なっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/56
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057・村上朝一
○村上政府委員 先ほどちょっと説明が足りませんでしたが、改正案の二十八条の第二項の規定そのものは、現行法の二十八条を新しい改正規定の第二十八条の第二項としたのであります。つまり、第一項の、履行命令違反の場合の制裁が新たに加わりましたので、それを第一項として、従来の二十八条の規定を第二項に置きかえたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/57
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058・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 ひっきょうするに、仮処分によって命ぜられた内容を履行しない場合に罰則を与えるという規定のようでありますが、これは仮処分で、かりにそういう方法をとっておるので、まだ請求権も確定いたしておるわけでも何でもございません。こういったようなものの履行を強制し、そうしてそれに対して制裁を与えるというごときは、何の弊害も起らないものであろうかどうか、これについて最初立案に際して何らかの御考慮が払われたかどうか、これをいま一度確かめておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/58
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059・村上朝一
○村上政府委員 これと同様の規定は現在の民事調停法にもございますし、その前の民事調停法その他の各種調停法にもこのような規定があったと思うのです。それらの規定を受けて規定いたしましたので、立案の際に弊害の有無についてどういう検討が行われたかについては十分承知いたしておりませんが、運用の実情から見まして、この規定が乱用されておるというような、その他弊害を生じているというようなことは私どもとしては聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/59
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060・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 それでよろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/60
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061・高橋禎一
○高橋委員長 椎名隆君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/61
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062・椎名隆
○椎名(隆)委員 簡単に二、三お尋ねしたいと思います。
この十五条の二並びに十五条の三でありますが、履行の勧告並びに履行の命令は権利者の申し出に基いてできるのは当然でございますが、なお、家庭裁判所の調査官が調査した結果履行遅滞の場合、これは職権によっても履行の勧告並びに履行命令は出し得ますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/62
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063・村上朝一
○村上政府委員 十五条の二の履行の勧告の方は申し立てによることを条件といたしておりませんので、抽象的に申しますと職権でもやれる、――たまたま調査官が履行遅滞の事実を知った場合でも履行の勧告はできるという解釈になると思いますが、実際の運用といたしましては、これの当事者が裁判所に申し出てきて初めてその履行を怠っているということを知って義務者に勧告するということが原則となるであろうというふうに考えております。
それから、十五条の三の方の履行命令、これは「権利者の申立により」となっておりますので、扶養義務について申しますと、扶養を受ける側の者が申し立てたときに限り履行命令が出せるのであります。裁判所審判官なり調査官がたまたま履行の遅滞があることを知ったという場合には、職権で履行命令を出すということはできないと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/63
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064・椎名隆
○椎名(隆)委員 履行命令は何べんでも出し得るということはよくわかりますが、たとえばこういう場合、――債務者は一月十日に金五千円を支払うべしという命令を出した。ところが支払わなかった。さらに一月二十日に金五千円を支払うべしという命令を出した。これも支払わなかった。一月の三十日にまた金五千円を支払うべしという命令を出した。これも支払わない。ところが、二月に入って二月の十日に、債務者は金五千円を支払うべしという命令と同時に、一月の十日、二十日、三十日の三回、つまり履行遅滞を条件とした過料を三回一緒に課することができましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/64
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065・村上朝一
○村上政府委員 これも、法律の解釈としては、数個の履行命令違反に対して数個の制裁あるいは過料を課することもできますし、また、いつ幾日かの命令、いつ何日の命令に対する制裁ということで一括して課することもできると思いますが、そういうことがひんぱんに行われるとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/65
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066・椎名隆
○椎名(隆)委員 それは実際の運営に当っては私も大して心配ないと思うのです。今までもしばしば私たちは証人の呼び出し等において実際そういう事実がないのだから心配はいたしておりませんが、理論の上からいきますと、履行の遅滞を条件として過料を課せられるということになってくると、結局私は権力の乱用ということになるのではないか、これが非常におそろしいのです。たとえば、一万円を分割して十回に支払うべし、一回千円ずつ支払え、それを月末に支払わなくて、それに対する履行命令が出た。たった千円の金に五千円の過料が三回も四回もつくということが想像できるのです。これが十回ということになると、一万円の慰謝料を十回に分割して支払うのに過料を何万円も支払わなければならないというばかげた問題が出てくる。しかも、そのとった過料が相手方、いわゆる権利者の方に行くなれば、これはまだ容認できるかもしれぬが、結局国家が収入を得ることになるのです。そうなってくると、画期的のこの規定が、かえって、権利者には大して利益でもないのに義務者にのみ過重な負担を負わしむることになる。家庭裁判所の調査官がいつ設けられたか知りませんが、今まで、調停委員会のやり方は、東京等については私よく知りませんが、いなか等におきましては、よく村長さんとか町の有力者が大体調停委員になっておる。たまたま当事者として出て行った連中が調停委員の顔を見ると隣のだんなだった。それで、何でもこの事件を調停してしまえ、成立せしめろと無理に言われて、だんなの命令、いわゆる調停委員の命令で成立せしめた。結果は支払われない。そういうのがたくさんあるのじゃないかと思うのです。この規定が出てくるのは、結局、義務者の履行が満足たものでなかったから、権利者の方に何とかこの調停の結果、審判の結果を満足なものにしようという関係から私はこの規定は出たのだと思う。家庭裁判所の調査官ができてから後における履行遅滞というのはどのくらいあるのか、それがなかったときはどのくらいの遅滞があったか、そのパーセンテージはわかりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/66
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067・宇田川潤四郎
○宇田川最高裁判所説明員 椎名委員の御質問に対してお答え申し上げます。調査官制度ができて当事者を援助したために不履行が少くなったという数のお尋ねでございますが、これはちょっと満足な統計がありませんので、正確な数字は申し上げられませんが、この前法務省民事局から配付いたしました家事審判法の一部を改正する法律案参考資料というものの第四表の(1)というところに「履行状況と裁判所職員の援助との関係」という表がございます。が、この表によりますと、援助したものが昭和二十八年の七月一日から二十九年の六月末まで一カ年間に千八百九十八件ございます。そして、援助しないものが二千五百三十一件ございまして、援助したかどうかわからないものが二百四十六件ございます。この援助したということは、おそらくそれまでは援助しなかったならばほとんどが不履行になっておったから、援助を申し出て援助したと思うのでございますが、それによって履行済みになったものが四百十九件、それから、現在まで履行というものが五百八十三件、一部履行が六百八十五件、全然履行せずが百九十三件、無記入のものが十八件、計千八百九十八件になっておりますので、パーセンテージをここではっきり申し上げかねますが、相当数調査官の勧告というようなことによりまして援助されたといったものが多いのじゃなかったかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/67
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068・椎名隆
○椎名(隆)委員 私はこういうふうに考えるのです。結局、家事審判法の一部改正のしわ寄せと申しましょうか、それはこの前参考人にもお聞きしたのですが、大体参考人の方々はほとんど調停委員の方が多かったのですが、今まで、過去の問題から言うと、調停委員が無理に調停を成立せしめた結果、債務者が義務の履行を怠っておった、それをカバーするために、結局義務者が履行をしないからといって義務者の方にこのしわ寄せを持っていった結果、この家事審判法の一部を改正しなければならないような状況に至ったのじゃないかというふうにも考えられるし、また、権利者の方から言うと、大体権利者の方が女であって、そうしてその日暮しの生活をしておる人間が多いのだ、それを何とか実現せしめなければ非常にかわいそうな女連中が多いということを聞いておりますが、この規定を作るよりも、むしろ家庭裁判所の徴収官というようなものを作って、簡単に何とか徴収せしめるような方法を御考慮にならなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/68
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069・村上朝一
○村上政府委員 調停委員の人選等が適当でないために無理な調停が行われておるという点でございますが、あるいはそういう事実も場所によってはあるかもしれないと思います。そこで、裁判所当局には、調停委員の人選及び調停委員会の主任判事の指導と申しますか、調停のやり方等についてももっと積極的に責任のある運用をすべきだということを進言いたしておるのでありますが、根本的には、その調停委員会の構成並びに調停委員のやり方、心がまえ等にあると思うのであります。さような無理な調停というものは根絶する努力をしなければならぬと考えますけれども、法自体は、無理な調停が多いために履行がうまくいかないから、そのしわ寄せとしてこの法案が考えられたというふうには、私ども考えておりません。先週の金曜日ですか、参考人として御説明になった方々は調停委員を兼ねておられる方もあるようですが、こういう万々はりっぱな調停委員でありまして、決して調停自体について無理をやっておられるとは考えられないのでございます。そういう無理な調停を成立さしておる調停委員側の要望ではなくて、全く模範的なと申してよいような調停委員の方々からの要望だったのであります。
なお、徴収官の制度を作ったらどうかという御意見ですが、先ほど、外国の例として、裁判所に扶養局が置かれて、これが義務者から扶養料を取り立てて権利者に交付するという立法例があると申し上げましたが、そういうことができればそれが一番理想的たと思います。ただ、そのためには、いわゆる立てかえ払いをするわけで、相当な取り立て不能による国庫の負担ということもございましょうし、また相当職員を新しく作らなければならぬということで、かなりの予算が必要になってくるのではないか、ただいまの日本の財政状態から申しまして、そこまで望むのは無理ではないかと考えて、徴収官というような制度は断念いたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/69
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070・椎名隆
○椎名(隆)委員 今強制執行の制度が審議中だそうでありますが、やがて強制執行の中にこれらの点か包含せられて研究せられた場合は、この規定は削除しますか。それまでの周に合せの規定でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/70
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071・村上朝一
○村上政府委員 この法律案は、強制執行に対する改正案かできるまでの暫定的なものであろうとは考えておりません。もとより、強制執行の制度につきましても、執行吏その他執行機関をどうするかというような問題、あるいは財産の換価方法を適正迅速にするのにはどうしたらよいかというような根本的な問題がございますので、それらにつきまして改正案を研究中でございますけれども、他面、少額債務についての裁判並びにその執行をもっと簡単な手続で迅速にやれるようにしろという要望もかなり各方面からございますので、少額事件の取扱いというものについても、裁判制度及び執行制度を通じて検討して参りたいと考えておりますが、それらのことと、このたびの法案に盛られております家庭事件の特色からくる履行確保の方法というものとは、別個のものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/71
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072・椎名隆
○椎名(隆)委員 暫定的の規定ではない。しかし、過料の制裁をつけたものはおそらくこれだけであろうと思いますし、また、先ほどの御答弁から見てみますと、画期的な規定で、これだけという話でありますが、過料の性格がいわゆる刑罰的な性格を有しておるのか、裁判所の命令に違反したがゆえに過料に処せられるのか、あるいはまた義務違反したがゆえに過料に処せられるのか、この過料の性格はどんな性質なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/72
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073・村上朝一
○村上政府委員 過料の性格は、私法上の債務不履行に対する制裁という意味ではございません。裁判所の出します履行命令というものの実効を上げるために行われる秩序罰と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/73
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074・高橋禎一
○高橋委員長 吉田賢一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/74
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075・吉田賢一
○吉田(賢)委員 ちょっと一、二伺ってみたいと思います。
法案十五条の三の命令の対象事項の範囲の問題でありますが、この際財産上の給付義務に限っておるようでございます。今佐竹委員からも御指摘になったのでありますが、幼児引き渡しの問題でございます。これはやはり、この法律が各般の調停制度の実現以来かなり実際上の需要に応ずる行政的な旬が拡大されてきたということを容認する以上は、私はやはり、その思想でいく以上は、十五条の三というところは、可能な範囲広げるのが原則でないか、こう思うのです。そこで、幼児引き渡しにつきまして、われわれが実際上の経験からしばしば困ることは、私自身も最近経験を持っておるのでありまするが、子供を隠してしまって出さぬというようなことがございまして、実にいろいろ困難な経緯をたどって解決したというようなこともあるのであります。この際、財産上の給付に限らず、たとえば幼児引き渡しの行為の義務があるような場合を除いた理由はどこにあるのか。さっきの御説明ではどうもはっきりいたしません。ただ消極的に財産上の手続を目的とするものに限定したというふうな御説明であって、幼児引き渡しの最も重要なものが逸脱いたしました理由が積極的に明らかにされておらぬ。何かの弊害があるだろうか、あるいはそこまで介入することは危険とでもお思いになるのだろうか、なぜ一体これをおとりになったか、もっと積極的な御答弁を願いたい。家庭局長でも民事局長でも、どっちでもけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/75
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076・村上朝一
○村上政府委員 先ほど幼児引き渡しについて詳細なお答えはいたしませんでしたが、幼児引き渡しの義務につきましても、納得ずくでなくても、いやおうなしに連れてくれば、それで解決するというような場合も中にはあるかもしれませんが、むしろ、多くの場合、たとえば母親の手元を離れて父親の方に引き渡すという話がきまった場合に、納得ずくでなく引き渡したのでは、その後子供の養育を妨害されても困りますし、幼児引き渡しの問題が円満に解決するとは考えられないのでありまして、多くの場合は、やはり十五条の二の勧告によりまして、納得ずくで引き渡して、あと子供の養育及び将来の幸福を両方の当事者が協力してはかるというふうに持っていかないと、うまくいかないのじゃないか、かように考えまして、これも十五条の三以下の適用を対象としては適当でない、かように考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/76
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077・吉田賢一
○吉田(賢)委員 一応ごもっとものようでありますけれども、どうもそこがはっきりしないと思うのであります。納得ずくを前提といたしましたらば、やはり十五条の三の規定は設けるべきではない。これは反面において威嚇をしながら強制履行を誘うというのでありますから、威嚇の間接的な履行要求は国家権力によってなされようとするのでありますから、基本的にやはり納得ずくというのを強く打ち出していくというのであるならば、どうも少し行き過ぎではないか、こういうふうにも考えられますが、そうではなくして、やはり十五条の三を設ける以上は、財産上の給付に限るべきでなくて、可能な範囲において広げるべきで、幼児引き渡しは確かに一つの重大な解決すべき時期でないか、こういうふうに思うのであります。この点につきましてはこの程度にとどめておきまするけれども、要するところ、どうもそこは思想的に首尾一貫を欠いておるのではないかと思う。なぜこういうことを申しますかといえば、やはり三権分立的な大陸法的な考え方で首尾一貫すると、やはり調停制度、初期におけるいろいろな議論が出ましたごとくに、この種の司法行政的な事務の範囲が裁判所の事務として拡大されるということは議論が尽きぬと思うのです。けれども、やはり実際上の必要によって法律は行なったらよいのであって、裁判制度といえども、やはりそういった観点から改善すべきものは改善して、国民の生活に必要な方面に広げていくということはかまわぬじゃないか、こういったような議論が許されるとしますならば、こう、いう点についても、裁判官を信頼してやらせる以上は、できるだけ実際の必要に応ずるような考え方をずっと打ち出していくべきではないか。法律を改正しないで議論するならともかく、一たん大胆に改正するというのでありますから、私は、そこらにおいても、もっと徹底した考え方で案を練っていただきたかったと思うのであります。これは将来の問題になるかもわかりませんので、もう一応、これらにつきまして、あなたの方の立案の過程においてこういったことが爼上に上ったかどうか、そうして作成されたかどうか、これらについても御意見を伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/77
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078・宇田川潤四郎
○宇田川最高裁判所説明員 実は、この立案につきまして、外国の諸制度をいろいろ研究しますと、さような問題にいろいろな考慮がなされておるのでございます。そこで、私どもといたしましても、そういう問題について研究いたしましたが、現在家庭裁判所のケースとして比較的にそういう問題が少いということが一つと、それから、現場の裁判官が、そうこのたびの改正のような勧告制度、金銭その他財産上の給付に関する義務の履行に関する制裁制度、寄託制度ということについてそれを比較的強く要望されなかったというような点もございますので、この際いま一つ研究したいというふうに考えたのでございます。と同時に、先ほど法務省が答えられましたように、十五条の二でまかなってみよう、そうして、これでどうしてもいけないというような場合には別途いろいろな施策を考えてみよう、こういうようなことを私どもは考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/78
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079・吉田賢一
○吉田(賢)委員 ですから、この法律を実施するためには、たとえば、ことに十五条の四の寄託関係につきましては、いろいろな実際上の規則の必要もあろうと思いまするが、これはやはり最高裁判所規則ですでに要綱が準備されておると思うのでありまするが、御準備になっておるとするならば、やはりこの法案の審議終結までに一つ出していただきたいと思いますが、その辺の御準備の点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/79
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080・宇田川潤四郎
○宇田川最高裁判所説明員 ただいま審議中でございまして、本日も午後、家庭裁判規則制定諮問委員会の幹事会を開いて、そうして慎重に審議したいと考えております。しかしながら、その素案は一応でき上っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/80
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081・吉田賢一
○吉田(賢)委員 これは別に怠慢と責めるわけではありませんけれども、やはりこういうような画期的な重要な法律案を国会に御提案になるときは、これが実施に必要なる規則はすでに準備して、やはりわれわれに目を通さす機会も与えていただきたいと思うのであります。今後のことでございますので、そういった点は、きょうもやる、あすもやるということであるならば、一両日のうちに一つ要綱だけでも御提出いただきたいと思いますが、これはお約束できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/81
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082・宇田川潤四郎
○宇田川最高裁判所説明員 提出させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/82
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083・吉田賢一
○吉田(賢)委員 今の十五条四の寄託の問題で、佐竹委員もいろいろ御追及になっておったのでございまするが、一体これは私も妙な規定だと思って、ちょっと気にしておったのであります。これは金庫にでも金を入れておくのですか。日銀へ当然国家の金として預金するというのですか。また、日銀へ預金するということであるならば、金利関係はどうなるのであろうか、そういった手続につきましては、たとえば今の供託に関する各般の事務手続のごとくに、いろいろ手落ちなくお考えになっていると思うのだが、一体、そういう保管の方式、所有権を取得いたしました国はその財産をどういうふうに保管するのか、金利なんかどうするのか、こういう辺はどうお考えになっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/83
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084・宇田川潤四郎
○宇田川最高裁判所説明員 この寄託は、先ほど村上局長の説明された通り、消費寄託でございますので、家庭裁判所が預かりますと、会計関係の諸法規に基きまして、一応会計の職員の手に入り、それから、会計法規を見ますと、こういう金銭につきましては日銀の方に無利息で預けるということに相なっているそうでありますが、それの手続で預けるということになりますので、利息等につきましては無利息でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/84
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085・吉田賢一
○吉田(賢)委員 これは異なことを承わるのであります。一体、国が金を預かりまして、これを自己の所有物として消費することを自由な状態に置いて、それで無利息とはどういうわけですか。国は、一切の金について、国民に使わせて金利をとる。国がこれを使うことのできる状態に置いて、金利を払わぬとはどういう意味ですか。金利を払う方法はほかにないのですか。銀行預金というものはすなわち金利がつくのであります。ことに、これを消費することができるといたしまして、物件費なんかに使ってしまうということもできるのですかどうですか。こんなことをやられましたら、実にこの趣旨にも反することになると思うのです。これらについて、もっと考え方をまとめておいてもらわなければいけません。やむを得ず厄介な問題を預かっているというような考え方から、そういうようにきわめて消極的な扱いになるのではないか。かりに百万円なら百万円の財産分与のような場合、百万円なら百万円を預かったということになりましたら、やはり百万円の金利というものは相当なものです。そういった場合に、ただ少額なものを、手数もかかるから、従って金利も払わないというようなものではないのでありますから、もし第三者にこれを寄託する、あるいは普通市中銀行に預金するということであれば、当然金利がつく。そういうようなことをあれこれ考えましたときに、寄託を受けた場合の保管の手続、制度というものは非常に消極的で、当事者の利害を考えない考え方のように思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/85
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086・宇田川潤四郎
○宇田川最高裁判所説明員 かような趣旨の官の預かる金につきましては、私、ここではちょっと手元にその法律がございませんので、詳細は存じませんが、何でも古い法律でございますが、特別な規定のない限り利息を付さないということになっておりまして、現に裁判所で預かっております予納金その他保釈に関する保証金、そういうようなものにつきましても利息は付していないのでございます。なお、供託の場合には付することになっておりますが、これはさような特別の規定がございますので付するように聞き及んでおります。なお、十五条の四の寄託の金銭は、多くの場合寄託したあくる日とか数日中に取るのが原則だそうでございます。東京の家庭裁判所の実情を聞きましても、債権者の方は首を長くして待っておるという関係から、寄託があったということを知らせる前に取りに来るというくらいで、そう長い間家庭裁判所に保管することはないように聞いております。そういうような点も考慮いたしまして、また、手続があまりめんどうになりますと、かえってそのために債務者なり債権者が非常に迷惑するというようなことで、なるべく簡易に預かって簡易に支払う、そしてなるべく国民に迷惑をかけないようにいたすというような点などもございまして、利息の問題等につきましても、その点は考慮しなかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/86
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087・吉田賢一
○吉田(賢)委員 それはいかぬですよ。あなた方は、調停のこと、あるいは家庭的、道義的、あるいは人道的な、そういったことを非常に重視される。それはけっこうなんだけれども、一体、裁判所のあらゆる部門におきまして、経理とか会計という面はとかくおろそかになっておる。あなたもはっきり御答弁ができませなんで、私は遺憾ですが、これはやはり、最高裁として、かりにも財産上の給付を目的としたものに対して、一方において過料の制裁をもって、いわば強権を振りかざしつつ履行を強要していこうという法律を作る以上、その財産の給付義務が裁判所の寄託行為にかかるような問題の範囲におきましては、これを会計経理の厳格な建前から相当お考えにならなければいかぬと思うのです。それは必ずしも複雑にするのではない。複雑にするとか何とかいうのは、やはり考え方が足りないと思う。数日のうちに取りに来るのが常例だ、そんな便宜的にこれを考えたら、みんな間違うと思うのです。やはり、反対給付ということもあるだろうし、双務契約ということもあろうし、また、ある条件を付して、それでは百万円を出しておきましょうということになるかわからない。そういったときに、数日のうちに取りに来るからという、そういう例がたまたまあったかもしれませんが、実際必ずしもそうだということは限定されない。かく考えてきました場合、いざ寄託とか、交付とかというときには、やはり時期等きちっときめておかなければいけません。こういうことは裁判所としてルーズにしたら大へんですよ。ことに、今民事局長は、所有権を取って使ってもいいような法律上の考え方らしいのです。しからば、そういうときに、裁判所は、たとえば紙代が足りないとか、――今川口の簡裁で問題になっておりますあの高井裁判官の行動をごらんなさい。紙が足りないというので検察庁の紙を持ってきていろいろ裁判所の帳簿を作っておりますが、物件費にこれを使うということは可能なんですかどうですか、その点はっきり聞いておきましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/87
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088・村上朝一
○村上政府委員 金銭の所有権が国庫に帰属するだけでありまして、国の収入になるわけではございません。また、物件費その他の国の歳出は、予算に定められたもの以外を使うことはできないのでありますから、保管金をもって裁判所の物件費を支弁するというようなことは法律上許されないものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/88
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089・吉田賢一
○吉田(賢)委員 それは、会計法規、財政法等に流用移用を厳禁してあることもわかりますけれども、ただ預かっておくという考え方が、便宜主義でこういうものをやっていきますと間違いが起ります。これらにつきましてはずれ規則の内容として相当きちんとしたことをおきめになるものと思いますから、一つそれらを期待しておくことにとどめましょう。
そこで、もう一つ伺っておきたいのでありますが、これは実施の面に関しまずことで、根本論じゃないのでありますが、この法律は本年七月一日から施行するということになっており、先般の御説明によりますと、この予算総額は三十一年度といたしまして二百十五万余円、こういうことになっておるかのように承わったのでございます。そこで、その内容を見ますと、金庫の購入費が七十三万九千円、あるいは会合その他の事務的経費が百四十一万二千円、こういうことであり、それからまた、本日いただいた資料には、人件費といたしまして調査官、調査官補、こういったものに三億四千六百万円、こういうものが計上せられておるのであります。そこで、調査官制度でありますが、この調査官というのは一体何をすることを任務とした公務員ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/89
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090・宇田川潤四郎
○宇田川最高裁判所説明員 家庭裁判所の調査官の職務は、裁判所法の六十一条の二にございますように、「各家庭裁判所に家庭裁判所調査官を置く。家庭裁判所調査官は、第三十一条の三第一項第一号の審判及び調停並びに同項第二号の審判に必要な調査その他他の法律において定める事務を掌る。」と書いてあります。なお、三十一条の三の第一項第一号の審判、調停とは、これは家事審判調停ということでございます。それから、同項の第二号の審判というのは、これがいわゆる少年審判でございますから、これらの調査をつかさどるのがおもな役割でございますが、「その他他の法律において定める事務」、これは少年法とかあるいは家事審判法その他の法律によって定めた事務ということになっておりまして、少年法におきましては、少年を同行するというようなことは調査ではございませんが、そういう事務も、家庭裁判所調査官がつかさどっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/90
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091・吉田賢一
○吉田(賢)委員 そこで、調査官が十五条の二の調査をし、あるいは三の調査をするのでしょうが、資料によりますると、調査官並びに調査官補を合計いたしまして一千百十九人を東京以下全国のほとんど各家庭裁判所に配置される予定でございまするが、ほんとうにこの法律で所期の目的を達しようといたしましたならば、やはり相当通信とか交通とかあるいは筆墨等とか、そういった経費が伴って、ただ一ぺんの事務とかいうようなものでなしに、実情を調査して、一回で済まなければ二回も三回もする、こうして初めて第十五条の二の勧告の目的も達し得るのじゃないだろうか、第十五条の三は、これは過料が伴うというのでありまするから、一そう周密に念を入れて調査する必要があるのじゃないか、こう思うのでありますが、この程度の、たとえば人事費が三億四千六百余万円ということになり、物件費としては金庫を買う費用、その他打ち合せをする費用ということになっておりますが、結果的に今の裁判所職員の事務量増ということになって、他の裁判及び行政の事務にも負担加重、悪影響するということになるのではないか。その辺につきまして、予算がこれで相当なりということの御計算でできたのであろうかどうか。たとえば、この程度で済まず、その数倍を要求しておったけれども減ったというのであるか、あるいは、ほかのものを節約してこれに充てるというのか、あるいは、これで手一ぱいというのか、余るというのか、その辺について一つあけすけに御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/91
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092・宇田川潤四郎
○宇田川最高裁判所説明員 お手元に差し上げております調査官の配置表は、数年前からかような配置表で行なっております。従いまして、今度新しい制度ができましたので、勧告する前に調査を厳重にやるというような点、その他このたびの家事審判法の改正の諸制度を運用するのには、相当数の増員ということは確かに委員の言われるように必要であります。従いまして調査官約五十名の増員を要求いたしましたけれども、現在の予算状態からして、これを予算案に盛っていただくことができなかったのでございます。しかし、一方、考えますと、多少不穏当ではございますが、現に勧告制度も先般来御説明申し上げたようにやっておりますので、無理をすれば今の職員で何とかまかなえるのじゃないか、ことに調査官の養成制度などについては多少の予算も計上されておりますので、さような点でも調査官の技術その他能力を養成することによってこの制度の運用を期したい、こういうふうに考えておるわけでございます。申すまでもなく、欲を言えば確かに相当数の増員ということは望ましいと存ずる次第で浸ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/92
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093・吉田賢一
○吉田(賢)委員 失礼しました。私は増員なさるのかと思ったのですが、増員五十名を計画して一人も実現せずというのでは、まことにこれは失望にたえません。
きょうは以上でとどめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/93
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094・高橋禎一
○高橋委員長 過般の委員会で佐竹委員から要求のございました資料について、最高裁判所家庭局から、「地方裁判所及び簡易裁判所における債務名義に基く執行申立率と家庭裁判所における債務名義に基く執行申立率との比較」という表と、「家事審判法の一部を改正する法律案審議資料」という表を提出されましたので、これは各委員の手元にお届けしてございますから、御了知願います。
他に御質疑がなければ、本日はこの程度にとどめ、明日午後一時より本案について参考人より意見聴取を行いたいと存じます。
これにて散会いたします。
午後一時三十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405206X00619560213/94
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