1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十三年四月十九日(水曜日)
午前十時三十二分開議
出席委員
委員長 菅波 茂君
理事 石橋 一弥君 理事 藤波 孝生君
理事 渡部 恒三君 理事 木島喜兵衞君
理事 嶋崎 譲君 理事 有島 重武君
理事 曽祢 益君
井上 裕君 石川 要三君
久保田円次君 小島 静馬君
坂田 道太君 玉生 孝久君
塚原 俊平君 中村 靖君
長谷川 峻君 浜田 幸一君
水平 豊彦君 小川 仁一君
千葉千代世君 中西 積介君
長谷川正三君 湯山 勇君
池田 克也君 鍛冶 清君
伏屋 修治君 中野 寛成君
山原健二郎君 西岡 武夫君
出席国務大臣
文 部 大 臣 砂田 重民君
出席政府委員
文部政務次官 近藤 鉄雄君
文部大臣官房長 宮地 貫一君
文部省初等中等
教育局長 諸澤 正道君
文部省大学局長 佐野文一郎君
委員外の出席者
文教委員会調査
室長 大中臣信令君
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委員の異動
四月十九日
辞任 補欠選任
石田 博英君 井上 裕君
石橋 一弥君 浜田 幸一君
同日
辞任 補欠選任
井上 裕君 石田 博英君
浜田 幸一君 石橋 一弥君
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四月十七日
公立高校新増設のための国庫補助制度拡充等に
関する請願(石橋政嗣君紹介)(第三一八一
号)
同(小川仁一君紹介)(第三一八二号)
同(安島友義君紹介)(第三二〇九号)
同(井上泉君外一名紹介)(第三二一〇号)
同(井上一成君紹介)(第三二一一号)
同(小川国彦君紹介)(第三二一二号)
同(小川省吾君紹介)(第三二一三号)
同(岡田春夫君紹介)(第三二一四号)
同(川崎寛治君紹介)(第三二一五号)
同(安宅常彦君紹介)(第三二四六号)
同(井上普方君紹介)(第三二四七号)
同(岡田利春君紹介)(第三二四八号)
同外十二件(福岡義登君紹介)(第三二四九
号)
同(山原健二郎君外一名紹介)(第三二五〇
号)
同(伊賀定盛君紹介)(第三二九〇号)
同(楯兼次郎君紹介)(第三二九一号)
オリンピック記念青少年総合センターの存続等
に関する請願(斎藤実君紹介)(第三一八三
号)
同(池田克也君紹介)(第三二一七号)
同(長田武士君紹介)(第三二一八号)
同(北側義一君紹介)(第三二一九号)
同(正木良明君紹介)(第三二二〇号)
同(新井彬之君紹介)(第三二五一号)
同外一件(池田克也君紹介)(第三二五二号)
同(大野潔君紹介)(第三二九二号)
同(鳥居一雄君紹介)(第三二九三号)
私学の学費値上げ抑制及び教育・研究条件の充
実等に関する請願(松本善明君紹介)(第三一
八四号)
同(松本善明君紹介)(第三二五五号)
女子学校事務職員産休代替制度の早期成立に関
する請願(荒木宏君紹介)(第三一八五号)
同(東中光雄君紹介)(第三一八六号)
同(正森成二君紹介)(第三一八七号)
同(三谷秀治君紹介)(第三一八八号)
私学に対する国庫助成増額に関する請願(池田
克也君紹介)(第三二一六号)
同(玉城栄一君紹介)(第三二五四号)
私学助成に関する請願(草川昭三君紹介)(第
三二二一号)
同(草川昭三君紹介)(第三二五三号)
私学に対する助成増額等に関する請願(永田亮
一君紹介)(第三二二二号)
長期療養児の教育体制確立に関する請願(中野
寛成君紹介)(第三二九四号)
同(和田耕作君紹介)(第三二九五号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法
の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/0
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001・菅波茂
○菅波委員長 これより会議を開きます。
国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。嶋崎譲君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/1
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002・嶋崎譲
○嶋崎委員 きょうは放送教育開発センターの各党の集中審議に入るわけでありますが、最初ちょっと時間をかりまして、参考人並びにいままでの委員の討論の中で、二、三まだわからないところがございますので、それをお聞きさしていただいて、それから放送教育開発センターの問題に移らしていただきたいと思います。
昨日、十八日に、例の国立大学協会の特別委員会が須田学長のメモを討議するという日程があったと思いますが、その結果はどうなっておりますか、その経過をお聞きします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/2
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003・佐野文一郎
○佐野政府委員 昨日、須田委員長が特別委員会の終了後に文部省の記者クラブで経過を報告されましたが、それによりますと、委員長見解につきましては、特別委員会は全員一致で委員長見解を了承した、そう報告されておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/3
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004・嶋崎譲
○嶋崎委員 それはそういう経過ですね。先般の参考人をお呼びしたとき、須田学長に私がお聞きした限りでは、この説明メモは御承知のように非常に単純なものであります。立法府でいま審議されている細かな経過は十分に新聞で報道されておりませんから、各特別委員並びに国立大学協会傘下の大学の教官にはまだ十分にインフォメーションがなされているとは思いません。しかも、この上越と兵庫の教員大学については開校並びにその学生が入学してくるのは大分先でございます。その間、国立大学協会としては、いままで出ている資料では教員大学の組織、それから各教育課程等々についてまだ不明確な点があるので、今後、国大協としてはそれらについて意見を申し上げる機会があれば申し述べたいということを申されたことは、局長、御存じですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/4
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005・佐野文一郎
○佐野政府委員 承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/5
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006・嶋崎譲
○嶋崎委員 したがいまして、この委員会での先般のわが党の中西委員の質問にもあったような、まだ十分に教員大学についての構想の全体像が明確になっていない点がかなりありますので、今後、国大協が立法府での私たちの議論を踏まえて新しい教員大学のあり方について意見を述べるようなことについては、お話はございませんでしたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/6
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007・佐野文一郎
○佐野政府委員 昨日の記者会見のときに須田委員長は、特別委員会として、今後この教員大学が既設の大学にいい影響を及ぼすものとして育っていくように、これからも特別委員会はその整備の状況等を見守ってまいりたいということをおっしゃっておりますし、私たちも特別委員会とは十分に協議を重ねてまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/7
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008・嶋崎譲
○嶋崎委員 昨日の会議に文部省からだれか出ておられましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/8
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009・佐野文一郎
○佐野政府委員 昨日の特別委員会には文部省からは出席をいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/9
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010・嶋崎譲
○嶋崎委員 そうしますと、この間の共産党の山原委員の、昭和四十一年の大学設置分科会総会で了承している「教員養成大学に設置される大学院に関する審査方針について」、これについての方針変更を局長はお約束なさいましたが、そのようなことについては特別委員会は御存じでないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/10
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011・佐野文一郎
○佐野政府委員 新聞で報道されましたので、その点についてはその限りにおいては御承知だとは思いますが、文部省の方から特別委員会にその経緯を正式に御説明をしたことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/11
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012・嶋崎譲
○嶋崎委員 いままでの大学を創設したりすることに関連して、大体立法府は、でき上がってきてから、いよいよ法案審議になってからしか議論をしておりません。経過の中ではいろんなところで専門的な議論が行われております。しかし、その経過に関連する資料を踏まえまして立法府ではかなり長い時間をかけて議論をしたわけでありますから、立法府で議論になった問題点もまた今後国大協の特別委員会で審議していただく素材にしていただけるものと私たちは確信をしています。予算をつけなければなりませんから。したがいまして、今後、立法府で議論されました教員大学をめぐる問題点並びにそこで出たこういう一連の基準変更等々に関連する問題を含めて、特別委員会に資料を提出して、再度討議をしたりする機会を与えるように手配をしていただきたいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/12
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013・佐野文一郎
○佐野政府委員 須田委員長と御連絡をとりまして、国会において問題になった事項、それについての文部省としての考え方、そういったものを御説明を申し上げて、特別委員会からも御意見を承る、そういう機会を設けるようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/13
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014・嶋崎譲
○嶋崎委員 いまの局長の答弁ですと文部省で判断して……。というのじゃなくて、私たちは、採決にも出てきますように幾つかの点において教員養成大学で文部省と一致するところと一致しないところというのが出ていて、法案に対する意思表示がきょう行われると思います。したがいまして、客観的な事実として、立法府では各党がこのような考え方の討論をしたという意味でのインフォメーションを含めて御伝達を願いたいと思います。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/14
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015・佐野文一郎
○佐野政府委員 そのように運びたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/15
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016・嶋崎譲
○嶋崎委員 そこで、この間の議論の中で残っている問題に関連して、須田さんのこのメモの中にありますが、五十三年度予算で「「教員養成系大学院」に関する調査費も計上され、」と書いてあります。この調査費は具体的にはどのように使われることになっていますか。大学が幾つかありますか、名前を挙げてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/16
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017・佐野文一郎
○佐野政府委員 この大学院の改革構想に対する調査費は、予算上は特定の大学の固有名詞を挙げることなく、大学院の改革構想に関する調査費ということで計上をいたしております。したがいまして、この予算をどの大学に対して配賦をするのか、これは複数の大学になると思いますが、その問題と、それから五十四年度の概算要求に当たって具体的に愛知教育大学に続く修士の課程の設置についてどのような考え方をとるか、その両者を含めてこれから検討するわけでございます。具体的に、現在の段階でどの大学の大学院に対して調査費を配賦するかを確定しているわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/17
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018・嶋崎譲
○嶋崎委員 しかし、普通、調査費をつけるときには、大体個別的な検討なしにそんな漠然としたつけ方をするのですか。一月十八日のこの会合では、二、三ないし四つか五つかに調査費をつけるという口頭の報告があったと聞いています。これは私も間接に聞いていますが、どういう意味なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/18
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019・佐野文一郎
○佐野政府委員 五十三年度予算では、大学院改革調査経費として約一千万円を計上いたしておりますが、この内訳といたしましては、千葉大学薬学系大学院、教員養成系大学院ほかということになっております。したがいまして、千葉大学の薬学系の大学院については固有名詞を挙げておりますが、教員養成系の大学院については先ほどお答え申し上げましたように固有名詞を挙げてございません。これをどのように配賦をするかということについては、当然複数の大学になると思いますけれども、それをこれから大学側と相談をしながら決めるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/19
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020・嶋崎譲
○嶋崎委員 では、その問題はそれだけにしておきましょう。
この問の中西委員の質問の中で、創設準備費のついている鳴門の問題がありました。その鳴門についての局長の答弁は、今後徳島大学教育学部と相談の上検討するというような趣旨のあいまいな回答だったと思います。しかし、創設準備費ですから、何を創設するかの具体がなければ創設準備費ではないと思います。これはちょっとあいまいなので、もう少し具体的な中身についてお教え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/20
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021・佐野文一郎
○佐野政府委員 鳴門の場合には今年度から創設準備費を計上しているわけでございますから、教員大学を創設しようということでその創設準備に入るわけでございますが、具体にどういうものとして鳴門における教員大学を構想するかということになりますと、徳島大学の教育学部との関係というものを十分に検討しなくては具体の構想は固まってまいらないわけでございます。もちろん、創設準備費を計上すれば直ちにその次年度に創設費の計上に進むということではないわけでございます。従来とも、兵庫の場合あるいは上越の場合、それぞれ数年の創設準備の過程を経ております。私たちも、鳴門については徳島大学の教育学部の考え方というものも十分に伺いながら具体の構想を進める、そういうために創設準備室をどのような形で設けていくかということを含めて早急に詰めたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/21
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022・嶋崎譲
○嶋崎委員 この須田メモの中に一と書いて「昭和四十三年度以来、」云々とありますね。その最後に「「教員養成系大学院」に関する調査費も計上され、既設の教育系大学・学部の大学院設置について、積極的な姿勢が見られ、また、高校教育中心の大学院も構想されたことは評価することができる。」というふうに須田さんがこのメモで言っておりますが、この高校教育中心の大学院の構想というのは須田さんにどう示されて、須田さんのこの文書になるにはどういう具体的な経過がありましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/22
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023・佐野文一郎
○佐野政府委員 特別委員会において口頭で、五十三年度において筑波大学の教育研究科に高校教員を主として対象とする教科教育専攻を設けることになった、そのことを御説明したことを受けてのことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/23
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024・嶋崎譲
○嶋崎委員 わかりました。まだ二、三ありますが、あとは質疑、討論等々の中で具体的に述べることになろうかと思います。
放送教育開発センターの問題について御質問をいたします。
大臣が提案理由の説明をなさった際に「第七は、放送教育開発センターの新設についてであります。これは、放送利用の大学教育に関する研究開発を行う国立大学共同利用機関を新設しようとするものであり、」まずこう書いてありますね。「これにより、この面における国・公・私立大学の連携協力の推進と大学開放の促進を図り、あわせて、放送大学の創設準備を推進することをねらいとしております。」
よくわからないのです。どうわからないかというと、まず、放送利用の大学教育に関する研究開発とは何か。そして、このセンターは、あわせて、放送大学の創設準備を推進することをねらっておる。そうすると、放送大学を推進するために放送教育開発センターというものをつくるのか、放送大学以外のことも含めてやるという趣旨なのか。いままでの長い、昭和四十五年以来今日までの放送大学に関する討議の経過から見て、実は放送大学の創設準備を推進するところをねらいとしているのか、それともそうでないのか、この点があいまいなのでまずお聞きをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/24
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025・砂田重民
○砂田国務大臣 放送大学創設の諸準備を引き続いて進める必要があることはもとよりでございます。そのためにも放送教育開発センターは役立ってくれるものと考えているわけでございますが、それだけにとどまらずに、やはりこの構想の推進に伴いましてその実現が期待されておりました放送利用の大学教育に関する研究及び開発、また大学開放の推進でありますとか、国・公・私立大学の連携協力の推進、大学の一般教育の充実など、放送大学構想に伴って期待をされておりましたこれらの事柄も大学教育の進展を図る上で推進をしていく必要がありますので、その双方を考えての機関としての放送教育開発センターを設置することとしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/25
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026・嶋崎譲
○嶋崎委員 そうしますと、「放送教育開発センターの概要について」という、私たちがいただいた資料、これの一の「放送教育開発センター設置の経緯」という中に「文部省においては、かねてから、放送大学創設の構想を推進してきたが、諸般の事情から、昭和五十三年度においては、これを見送ることとした。」と書いてあります。そうすると、センターをこしらえて、見送ったものをやはり構想するのですか。まずここで諸般の事情というのは何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/26
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027・砂田重民
○砂田国務大臣 いろんな事情がございましたけれども、その中の非常に大きな事情の一つは、やはり、放送電波をどういう大学の事業主体であるならばみずから電波が持てるか、こういうことから特殊法人ということを考えたわけでございます。それは現行放送法が変わらないということを前提にしてのことでございます。しかし、特殊法人を新しく創設するということにつきまして、政府では行政改革の基本方針として特殊法人というものをむしろ減らしていこうという基本的な考え方があったものでございますので、この壁もまた、打ち破れなかった諸般の事情の中の非常に重要な一つでございます。そして、いまおっしゃいました一遍見送ったものということでありましたけれども、五十三年度におきましてはこれを見送ったわけでございます。将来とも見送ったわけではございませんので、それの準備にも役立っものとしての放送教育開発センターという考え方を持ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/27
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028・嶋崎譲
○嶋崎委員 それが五十三年一月十日のサンケイや毎日などに載ったこの趣旨ですか。この新聞にはこう書いてあります。「五十四年度予算でも要求」「放送大学は特殊法人で」とそれぞれの見出しで、内容は「砂田文相は九日午後、福田総理に会い、五十三年度予算案について説明したが、この中で来年度予算で設立が認められなかった放送大学については、五十四年度に再び、特殊法人の設立を要求したいとした。これに対して、福田総理はこれを了承した。」というのがサンケイの記事です。毎日の記事は「五十三年度予算案で特殊法人の設立が認められなかった「放送大学」について「特殊法人設立が認められなければ、国が電波を直接持てるよう放送法を改正しなければならないが、やはり特殊法人として設立するのがスジだ」と強調、五十四年度には特殊法人を発足させたい意向を表明した。これに対して首相は「やはり特殊法人で行くのが本筋だろうな」と同感の意向を示したという。」この両方に言っている、一口で言えば、大臣は来年度予算に向けて、センターはことしできるとして、センターで放送教育について幅広く充実した共同利用の体制を一方でつくりながら、来年度は特殊法人という設立形態で放送大学を設立するという考え方に基づいて現在こういう行動をなさったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/28
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029・砂田重民
○砂田国務大臣 いろいろなことを総理と話をいたしました中で、放送法改正ということを考えなければ、放送大学がみずから電波、その波長を持つのはやはり特殊法人でなければ許されないという考え方を示したわけでございます。ですから、政府としてのいろいろな手続のことではなくて、構想としてはそういう考え方で政府部内の了解が取りつけ得られるかどうか、いろいろな説明を関係機関にしながら検討を進めてまいりたい、こういうことを総理にお話をいたしたわけでございます。政府部内の検討をひとつ進めてくれという返事があったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/29
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030・嶋崎譲
○嶋崎委員 特殊法人の設立形態で来年度予算に向けて動き出すというのが大臣の方針ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/30
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031・砂田重民
○砂田国務大臣 まだ最終的に決めておりません。と申し上げますことは、関係機関もあることでございますから。ただ、御承知のように、電波を持つというのは放送法でいろいろな制約を受けるわけですから、放送法を改正をして、放送大学というものが何かの形の事業主体で改正された放送法のもとで電波が持てるようになるのか、それとも放送法の改正というものが全く考えられないで、現行放送法の枠内ではどういう形で放送大学がみずから電波を持てるだろうかと考えれば、いまの放送法の枠内では特殊法人しかない、そのようなことを踏まえながら関係機関とこれから協議をしようということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/31
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032・嶋崎譲
○嶋崎委員 そうすると、この新聞に書いてあるのは正確じゃないですね。つまり、大臣の方針は、五十四年度予算案について特殊法人の設立を要求したいという考え方。毎日の報道も、特殊法人設立が認められなければ放送法の改正をしなければならない、しかしそれはなかなかできない、だから特殊法人という設立形態の方がよろしいという考え方を、文部省の方針ないしは大臣の方針としている、というふうにはまだ言えないということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/32
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033・砂田重民
○砂田国務大臣 現行放送法で考えれば、特殊法人しか電波が持てないわけですから、そういうことになっているよという話をクラブの人たちにすれば、クラブの人たちがそこに書かれたような記事のように受け取られることもこれは自然なことだろうと考えます。私としてはまだ最終的に方針を決めておるわけではございません。五十四年度の概算要求までに固めなければならないことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/33
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034・嶋崎譲
○嶋崎委員 われわれも、予算に関連しては立法府で議論をした上で決めることですから、これからの議論にかかると思いますが、けさの理事会では小委員会を設けるという方針が決まったようでありますから、きょうは郵政省、大蔵省、科学技術庁その他の関連する役所を全部呼んでやろうと思っていたのですけれども、問題を放送教育並びに放送大学にしぼって、そういう大きな関連の問題は小委員会その他でまた議論をさせていただくことにしたいと思います。
そこでお聞きしますが、放送大学の目的は何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/34
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035・佐野文一郎
○佐野政府委員 放送大学の場合には、一つには、やはり新しい形態による高等教育の機会を広く国民に提供するということにございます。そういう意味では、生涯教育的な観点にも立って、社会人特に家庭の婦人等に対して大学教育を受ける機会を与えるということ、あるいは高等学校あたりを卒業する人に対しても、従来の大学とは異なった形態の大学教育の機会を提供するということがございます。
しかし、放送大学の場合にはそういったことだけではなくて、やはり放送大学のさまざまな仕事に広く国・公・私立の大学の先生方が参加をする、そして授業科目等の作成なり放送番組の作成等に参加をしていただくことを通じて、国・公・私立大学のいわば協力の体制というものを整えるということに寄与するでございましょうし、あるいは放送大学の番組というものを既存の大学が利用するということによって、特に大学の一般教育の面においていい意味での刺激を与えるということができるでございましょうし、さらには、これは各大学の積極的な御判断によらなければなりませんけれども、単位の互換等を通じて現在の大学の全体の構造というものをもっと柔軟なものにしていくこともできるであろうと思います。
そうした、新しい高等教育の機会の提供ということと、それから放送大学というものを場とした高等教育の柔軟性等の改革の推進と、二つのねらいを持っていると言うことができると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/35
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036・嶋崎譲
○嶋崎委員 そうしますと、放送大学は、一つは教育の機会均等、特に勤労青年や主婦や老人を含めて広範な国民諸階層に高等教育の条件を保障する。もう一つは、いまある大学学校制度の中で、国・公・私立その他の大学に対して総合的な影響を与えることによって、大学そのものの柔軟な対応というか、大学自身の改革の芽をつくるとか、そういう二つのねらいを持っているということだと思いますね。
その前提になる教育の機会均等という場合に、現行の法律にあるにもかかわらず、機会均等を保障する手だてが行われなかったということはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/36
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037・佐野文一郎
○佐野政府委員 教育の機会均等ということを趣旨として、文部省はこれまでさまざまな施策を講じてきております。もちろん、その施策の講じ方が必ずしも十分でないということによって、たとえば高等教育機関の大都市への集中がきわめて著しくて、地方における高等教育への進学の機会というものが実際問題として大都市の場合よりははるかに少なくなっているおそれがあるということがございましょう。それからまた、育英奨学の拡充によって、経済的な理由によって進学がむずかしい方々に対する措置というものを講じてきておりますけれども、その育英奨学についてさらに改善充実を要するということも承知をいたしております。しかし、方向としては、高等教育への進学の機会をできるだけ確保するための努力は続けてきていると存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/37
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038・嶋崎譲
○嶋崎委員 学校教育法の五十四条には「大学には、夜間において授業を行う学部を置くことができる。」と書いてある。五十四条の二項には「大学は、通信による教育を行なうことができる。」こう書いてあります。そして、これは画期的な制度として、勤労青年にも学位が保障されるというので、開放された大学のあり方として、そういう意味でこの法制度はかなり高い評価を受けた。当時は、昭和二十二、三年ごろは大変高い評価を受けたことは御存じだと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/38
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039・佐野文一郎
○佐野政府委員 御指摘のとおりだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/39
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040・嶋崎譲
○嶋崎委員 それに基づきまして大学通信教育基準というのが出ていますね。御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/40
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041・佐野文一郎
○佐野政府委員 承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/41
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042・嶋崎譲
○嶋崎委員 この法律では「大学は、通信による教育を行なうことができる。」と書いていますけれども、これに基づいた大学通信の教育基準がこの昭和二十二年に大学基準協会で決定をしております。その後これは変更されたことはありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/42
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043・佐野文一郎
○佐野政府委員 二十二年に決定をされましてから、二十六年、五十年と一部の改定は行われておりますが、大綱は当初のままでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/43
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044・嶋崎譲
○嶋崎委員 この法律に基づく大学通信教育という点について、国立大学はこれに関与したことはありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/44
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045・佐野文一郎
○佐野政府委員 国立大学には、通信教育を実施をしている学部はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/45
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046・嶋崎譲
○嶋崎委員 では、現在までその通信教育をやった大学と学生数、現在やっているところを、時間がありませんから簡潔に要領よく述べてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/46
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047・佐野文一郎
○佐野政府委員 五十二年度で、大学は、通信教育を実施するものが十二、入学定員が四万九千六百、在学者は八万八千三十三名。短期大学は、同じく七校、入学定員が八千五百、在学者数が一万七千五百七十六。トータルをいたしまして、大学、短期大学を通じ十九校が実施をし、現在在学している者は十万五千六百九名でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/47
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048・嶋崎譲
○嶋崎委員 それは全部私立大学ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/48
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049・佐野文一郎
○佐野政府委員 私立の大学、短期大学でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/49
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050・嶋崎譲
○嶋崎委員 法律で五十四条の二項に、大学が通信教育というものをやることができると決め、書き、そして同時に大学通信教育基準というものを大学設置基準協会で決めて、これを言えば時間がありませんから小委員会でいずれ議論するとして、もう実に広範な勤労青年や主婦や老人を含めて、学士号の資格を得る要件というものが、これは制度が動き出せば備わっている。これはイギリスのオープンユニバーシティーがこれに学んだと言われておりますけれども、いままである学校制度以外にこういう制度的なものが法的に決められているのに、なぜいままで国立大学で援助やそのための努力はなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/50
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051・佐野文一郎
○佐野政府委員 私どもは、大学通信教育というのは、勤労青少年その他社会人に高等教育の機会を提供するという意味で、非常に大きな役割りを果たしていると評価をいたしておりますし、また、これからの高等教育の構造の柔軟化を考えていく場合にも非常に重要な役割りを果たすものと考えております。国立大学でもその設置を考えるべきではないかという御指摘は十分にわかるわけでございますが、率直に申しまして、国立大学はこれまで整備をすべき多くの課題をそれぞれの大学が抱えている、そのために通信教育を実施するという方向に各大学の考え方が向いていないということであろうと思います。大学を整備していぐ場合には、やはり基本的にそれぞれの大学がどのような整備の計画を持ってそれを推進されるかということを受けてわれわれは考えていくわけでございまし、実態として大学側にそういった御計画がこれまで出ていなかったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/51
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052・嶋崎譲
○嶋崎委員 大学側に責任があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/52
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053・佐野文一郎
○佐野政府委員 大学側だけに責任を押しつけるつもりは私どもはございません。文部省自体としても積極的に国立大学に通信教育部を設けようという、そういう計画は少なくともここ四、五年の間はございませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/53
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054・嶋崎譲
○嶋崎委員 昭和二十二年にこういう制度をつくろうという国の方針を立法府で決めて、いまだに、それについての国の予算を計上したり、そのための調査費をつけたり、そのための創設準備費を組んだりしたことはないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/54
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055・佐野文一郎
○佐野政府委員 四十四年以来進められてきております放送大学の構想というのは、ある意味では国の責任において広く高等教育の機会を提供しよう、放送大学も広い意味では通信教育の一つの形態を考えているわけでございますから、そういう意味で放送大学の調査が進められてきたわけでございますが、直接的に通信教育部というものの設置についての調査というようなものを行ったことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/55
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056・嶋崎譲
○嶋崎委員 だからおかしいのですよ。これは問題点の一つ。通信教育と放送教育並びに放送大学とはどのような関係を今後持たせるか、これ、どう考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/56
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057・佐野文一郎
○佐野政府委員 一つには、放送大学を設置するためには、放送大学の設置に当たっての基準というものを考える必要がございます。その放送大学の設置の基準というのは、当然、単に放送大学について特例を設けるということではなくて、現在御指摘のような形での基準はございますけれども省令としての設置基準があるわけではございませんので、一般の通信教育を含めた通信制の大学についての基準というものを考える必要がございます。その場合に、まず、既設の通信教育を担当されている私学の関係者の参加も求めまして、大学基準分科会の中で現在通信制の大学の基準というものを検討しております。この基準ということを通じて、やはり放送大学、通信教育を通じてのさらに充実した発展というものを期待をするということが一つございます。
それから、放送大学の構想を検討するに当たりましても、これまで私大の通信教育を担当している方々の参加を求めまして、連絡協議会を幾たびか開催をして御意見を伺うということをやってきておりますし、また具体の調査の場合でありましても、放送大学を実施していくために必要な教材の問題等について私大通信教育協会の方にも御協力をお願いをしているということがございます。実際に放送大学がスタートをしたときにおきましても、放送大学についてはできるだけ私立の通信教育の側においてもこれが活用できるような方途というものを考えていかなければならぬということで検討をしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/57
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058・嶋崎譲
○嶋崎委員 そうしますと、いまの局長の答弁では、通信教育という大きなバックグラウンドがあって、そのバックグラウンドの中で、放送を使ってやる放送大学というのも通信教育の中の一つの形態である、こう理解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/58
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059・佐野文一郎
○佐野政府委員 放送大学は、やはり法律的には独立の通信制の大学ということになると思います。その内容がラジオあるいはテレビの電波を最大限活用して教育を実施するという点において、既存の通信教育とは異なるということであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/59
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060・嶋崎譲
○嶋崎委員 それは異なるけれども、放送大学というのは教育の手段としてメディアが大きな主力、これにはハードとソフトがありますよ。文部省はソフトの方はわかっていないとぼくは思うけれどもね。だから、メディアを使ってやる教育という意味で広範な放送大学というものと、通信教育は放送は要らぬということはないのです。イギリスのオープンユニバーシティーは放送をどのくらい使っていますか。放送というものを教育の手段としてどの程度使っていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/60
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061・佐野文一郎
○佐野政府委員 一週三十時間程度使っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/61
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062・嶋崎譲
○嶋崎委員 大体三割ぐらいですよ。だから残りは依然として通信教育的なものです。イギリスは御承知のように、伝統で、一対一でやっていく教育課程というものを非常に重視しますから、大量にメディアを使って、それを手段として使えばいいというような考え方に対しては批判的です。しかし、イギリスの伝統と日本の伝統は違いますから、何もイギリスのまねをせいというのではありません。
したがって、これから議論するときに、まず前提として大変大事なのは、通信教育と放送大学の教育との関係いかんという、この関係の問題を全体として明確にしておく必要があると私は思う。もし、いままで文部省とともに国立大学が通信教育について十分なる経験と、それからそれに投入した国費による遺産というものがあるならばこれはいいのですけれども、いままでそれはないのです。私学で細々とやっていたのです。イギリスのオープンユニバーシティーに比べてみて、慶応大学の通信教育なんて、教授は一人しかいないのですから、こんなものは通信教育としても実質というのは伴わないものだと私は思います。ですから通信教育というものについていままで非常に消極的か、もしくは努力が足りなかった。そういう意味でそういう経験がない。片一方で、昭和四十五年以来突如としてばかでかい構想の放送大学が出てきた。その放送大学は、この資料を読んで見ますと、いままで大変な経費と大変な人を使って、そして全国民と言ってもいい、十八歳以上の人たちを対象にして、メディアを使ってやっていこうという考え方です。ですから、いままでの経過から見ると、せっかく昭和二十二年に学校教育法の中で大学における通信教育というものを考え、そして通信教育の大学の設置基準というものを決めて、勤労青年やその他に対して広範に教育を開放するという制度を設けていたのに、そちらに対する努力なしに突如として放送大学というものがクローズアップされて前に出てきている、そういう印象を免れないわけであります。
したがいまして、今後放送大学の問題を考えるときには、ここは問題点だけにして次に移りますが、昭和二十二年の学制改革の中で通信教育という、広く大学というものを国民に開放していくという制度を設け、その構えをしたにもかかわらず今日まで行われなかったという原因はどこにあるのか、大学側だけの問題なのか、国の方針なのか、そこら辺いろいろ今後検討しなければならぬ反省点があろうと私は思う。それと、放送大学というのはメディアを使う大学だという意味で、あくまで放送というのは手段であって、放送イコール教育ではありません。したがいまして、広範な通信教育というもののねらい、つまり、勤労青年や婦人や老人まで含めて高等教育の機会を保障するという制度のバックグラウンドの中で放送大学というのはいかなる位置を占めるのか、そしてそれが今後どう機能をしていくか、そういう観点に立ってこの問題を詰めなければならぬという点をまず第一の問題点として指摘しておきます。
それで第二番目に、イギリスのオープンユニバーシティーと放送大学とはどこが共通していてどこが違うのですか。それについてどう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/62
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063・佐野文一郎
○佐野政府委員 オープンユニバーシティーの場合も、やはり放送利用の大学教育機関であるという点においては放送大学の構想と共通はいたしておりますけれども、御指摘のように、放送に依存をするシェアが、これはイギリスの考え方あるいはイギリスにおける電波事情等があるわけでございますが、われわれが構想をしている放送大学よりははるかに小さいということがございます。
それから、いま御指摘のように、わが国では通信制の私立の教育というものが広範に行われておりますので、当然それと相まって放送大学の位置づけというものを考えていかなければなりませんから、放送大学でねらいとしているのは、いわば教養学部と申しますか、広い一般教育の分野をカバーしようということを考え、既設の通信教育の場合にはそれぞれ法学部、経済学部その他専門分野の教育を御担当いただくという形で、従来、私立の通信教育協会とも話をしてきております。そこのところはイギリスの場合とはかなり態様を異にすると思います。
それからもう一点は、オープンユニバーシティーの場合には、大学がございますけれども、その放送についてはBBCが実施をするという構えになっておりますが、放送大学の場合には、できればこの大学がみずから、大学を設置すると同時に放送事業の主体になることを望んでいるというところが違うかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/63
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064・嶋崎譲
○嶋崎委員 もっと基本的な違いは、日本の通信教育は、制度はあっても、いままでほとんど内容は十分なものでありませんでした。その日本の通信教育の制度をむしろイギリスが学んでオープンユニバーシティーができたとさえ言われております。また、特にBBCがNHKの放送教育番組の影響を受けて、それと結びついた。そういう歴史的な経過があると思いますが、イギリスの場合には御承知のように全国に大変なネットワークをつくり上げている、教育の諸体系というものを大きな意味でネットワークと称するならばですね。それぞれの大学を中心にして、これはカレッジみたいなものですが、スタディーセンターを設けて、そのほかに個人指導者、それからクラスチューター、それから相談員、カウンセラー、そしていま言うような地域センター、リージョナルセンターとそれからスタディーセンター、これはオックスフォードやケンブリッジなんかのカレッジに相当するものですけれども、そういう非常に教育を受けたいという一般のたとえば勤労青年がその地域で受けられるように、大学ではないけれども全く大学と同じように個人的な指導、クラス的な指導、それからスクーリング、それから進学に単位なんかを取る世話役活動、相談員ですね、そしてそのカレッジみたいなものを設けるぐらいに、つまり地方をバックにして、中央にある建物は管理棟だけですよ。だから、あくまでそういう通信教育的なものにウエートを置きながら、その教材として、教育の手段として放送をBBCが担当するという形でカバーしていくという考え方だと思うのです。
ところが、いままで私が資料を読ましてもらった限りでは、いままで構想されておる放送大学はそれとは全く違い、いわば地方は後回し。地方については、地方にセンターをつくると書いてあるけれども、そのセンターは、たとえば図書館の構造はどうなのか、カレッジみたいなものを地方の大学とどんなふうな関連で考えるのか、それからそれには個人相談臭みたいなもの、カウンセラーをどうするのか、個人指導をどうするのか、クラス指導をどうするのか、そんなことについてのいわば下から積み上げていくような基盤の上に出てきているというよりも、将来は放送衛星も頭に描いているようだけれども、そういう科学技術の発展でメディアの果たす役割りを非常に重視して、それでもってとにかく波を出してしまうと、そこで各大学がそれを受けて広く教育を受けられる機会を保障していくという、全く逆立ちしたと言うと悪いけれども、上からつくってきているもの、それから下からそれを支えていかなければならないものとの、この双方のアプローチの仕方というものは片手落ちのように思えるのです。
したがいまして、日本の経験をイギリスが学び、そしてまたわれわれもイギリスのオープンユニバーシティーを片目で見ながら日本のこれからの通信教育と放送大学というものを考えるとすれば、その放送大学という言葉で大学を設立するのがいいのか、やはり公開大学と言われるオープンユニバーシティーというような意味の大学で出発しながらメディアをどういうふうに使うかというふうに考えたらいいのか、これはやはりまだ詰めなければならぬ今後の問題点のように私は思います。したがって、いま最初に言った、現行法で大学における通信教育というものを制度的に保障しながらも、十分ではなかったことを今後どういうふうに充足していくかという関連の中で、放送大学のあり方、並びに、その放送大学も、イギリスでやっているようなオープンユニバーシティーのような経験をどのように生かしながら放送大学のメリットを生かすのか、この点についてはまだ討論をし、考えていかなければならぬことがあると思います。
というのは、立法府は予算をつけると考えますと、どういう予算のつけ方をして放送大学をいいものにしていくかというのには手順があると思うからであります。だから、簡単にいままで言われているような、二つ東京と大阪だけが始めるとかでなくて、考えてみると東京や大阪には国立大学やら私立大学やら夜間大学やら、いっぱいあるのですよ。努力すれば行けるところはあるので、むしろ地方の方こそ、勤労青年たちがさて勉強しようと思っても、東京や大阪、名古屋には行けない、そういうところにこそ先に手を打っていくことだってあっていいわけです。だから何でも都会中心、東京中心で物を考えるのじゃなくて、地方からその経験を生かして拡大していくというやり方をとることの方が必要ではないか。いまの教育を考えてみますと、東京と名古屋と関西で日本の高等教育の施設の七五%ぐらいを占めているんじゃないですか。だから、四国だとか私の北信越なんていうのは、あれは線引きをやり直さなければいけませんね。関西に北陸を入れて、新潟の方を関東に入れるから、北陸や信越は結構水準が高いように見えるけれども、北信越だけをくくってみたらあんなデータは出てきませんよ、高等教育懇談会で出しているような数字は。だからもっと線引きもやり直さなければいかぬと思うが、いずれにしても、高等教育の施設がいまどこに集中しているか。そういう中で、教育を受けたいけれども受けられない勤労青年、そういう希望者は、人口的に見れば東京は多い。大都会は多いから割合は大きく出てくるに決まっている。しかし片一方にはそういう機会があるとすれば、そうでないところからどういうふうにして動かしていったらいいかというようなことも考えなければならぬだろうと思う。技術的にそれが可能なのかどうか私はわかりません。だからもっといわゆるメディアの専門家たちの意見も聞きながら、そういう安上がりの経費で、しかも能率的で国民のためになる予算の使い方をするのにはどうしたらいいかということと、設置計画、実施計画というものは絡んでいくと思います。その際、オープンユニバーシティーというようなもの、通信教育というものをバックグラウンドにしているイギリス型のタイプと、わが国でいままで追求しようとしてきた放送大学というのは、どこによさがあり、どこにデメリットがあるかも含めて議論をしていくという問題点をまず一つ指摘しておいたわけであります。
そこで、教育とメディアという関係についてどう思いますか。メディアを利用しての教育という問題と教育の本質ということとの関連いかん。大変でかい問題ですけれども、これは、放送大学を論ずる場合にはどうしてもこの本質論はいずれやらなければならぬ。きょうはここで長々とやる意思はありませんが、どう考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/64
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065・佐野文一郎
○佐野政府委員 うまくお答えができるかどうかわかりませんが、要するに基本としては、学生に対してどういう教育を行うかということがまず基本にあるわけであって、メディアというのはあくまでもその手段として、その教育の内容を最も効果的、適切に行うために何を利用するかということにとどまるものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/65
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066・嶋崎譲
○嶋崎委員 具体的に考えてみますと、われわれが大学で講義をする場合とテレビに教授が映って講義をしていく場合とでは、教育の過程は大変に違うわけです。人間そのものを具体的に見るのとメディアを介してあらわれるのと。たとえば、講義の中ではばかみたいな脱線したりしている時間がありますね。ところがメディアはそんなに脱線している時間がありませんからね。そうすると短い時間の間にユーモアも入れなければならない、引きつけなければならぬという大変なテクニックが要るわけです。そうすると、メディアによる教育のメソッドの問題と現場で教育をやる場合のメソッドの問題とはイコールではありません。そうしますと、メディアを使って人間教育をしていくというその手段が、下手にいくとそっちにばかり力点がかかってきて、これが目的化したら大衆操作の問題になってしまうのです。マスソサエティーの基本問題である人間の疎外という問題に根本的に関連してくるところの、マスメディアによる大衆操作という問題と密接不可分であります。だからこそ、マスメディアというものは大変便利なものだけれども同時に非常に危険だというところから、教育の中においては人間と人間の触れ合いやそういうものを重視した。教員養成大学をいままで皆さん構想されたのもそれでしょう。教育実習の問題だとか、もっと教育実践というもののプラクティスメソッドを考えなければだめだというところからやはり教員養成大学を構想したのでしょう。それだったら、今度勤労青年が教育を受ける権利というものを保障する場合に、メディアを大量にやって、メディアでもって与えていくというところに力点がかかったら教員養成大学を言った皆さん方の趣旨と違ってくる。これは大衆操作の対象になってくると思うのです。本質的に言えば。だから、教育というものを考えるに当たって、いわば個人指導、クラス指導、カウンセラーですね、それから図書館、それから全体の研究者の共同によるところのカリキュラム編成の集中討議、そういう長いプロセスが、学生と教授や学生と教師の間の多様な人間的な触れ合い、ヒューマンリレーションをつくり上げて、その一こま一こまが全体として教育というものの立体像をつくっていく。その中の一つとしてメディアを使って教材にするということはちっとも悪いことじゃないと思います。
たとえば現在国立大学に文科系の学部でテレビを使っているところがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/66
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067・佐野文一郎
○佐野政府委員 具体的にどの大学で使っているかということは私は存じませんが、教員養成系の大学ではかなり教育工学センター等を活用してテレビによる検討が行われていることは承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/67
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068・嶋崎譲
○嶋崎委員 国立大学の法文系や教育、教育にはひょっとしたら教育工学センターとの関係でやっているところがあるかもしれませんが、まず皆無でしょうね。そうすると、いままでメディアを使わないで、今日、戦後三十年間の大学の中で高等教育の専門家をつくり上げてきたこの経験は、極端なことを言えばメディアを使わなくてもいいということを意味していると思うのです。もちろん、近代の科学技術は発達していますから、教育方法の問題や教育の素材として、一人の人間のできないことを、多くの人間の知恵を凝集したメディアを使うことによってプラスに転化することはできる。だからぼくは放送を使うことをむだだと言っているんじゃありません。しかし、放送大学という問題を考えるときにはいま言ったようなことから、あくまで教育とメディアという関連性についてもっと本質的な討議があるべきなのではないか。もちろん、いままでの調査会や準備会の中では、相当たくさんのプロフェッサーが参加していますからそういうことはずいぶん議論をしているはずだと思う。しかしそういう議論はこの調査報告書には出ておりません。だから、私はマスメディア論なんかは専門家でもありませんからわからぬことだらけですけれども、一般国民の側から見て、世の中で一般的に議論されているマスメディアによる大衆操作と人間疎外という問題がやはり大きな社会問題として存在しているということを抜きに、放送大学という名前で、そういう設置形態で教育権を国民大衆に開放するというのがいま直ちに日本でやっていい道かどうか。放送大学の場合に、もちろん通信教育との関連を深く考えればぼくは一つも否定する理由はない。しかし、どうもそこら辺の問題についてはまだ議論が詰まっていないのではないか、まだ詰める必要があるのではないかという気がするわけであります。この調査報告書の学者のメンバーを見ましても、もっと、たとえば社会学者でかなり広いマスメディア論みたいなものをやっている人とか、哲学なんかでその疎外の問題を論じている人たちとか、まだまだいろいろな人の意見を聞くことが必要なのではないかなという気が私はするわけであります。いずれにしても、その基本的な問題として、最初は制度を言いましたけれども、現行制度の中で通信教育と放送大学との関連という問題があるように、今度はその本質として教育とメディアという問題について考えながら、放送大学や放送教育というものの考え方を少し議論しておく必要がありはせぬかという問題点を出したわけであります。
そこで今度は二番目に、放送大学の設置形態、実施方法という問題に関連して、いままで文部省と郵政省との間でいろいろな議論があったことも議事録をみんな読みましたからわかっています。大蔵省がこれに対してなかなかシビアであるということもわかっています。そういうのを総合した上で、イギリスの場合に、BBCとオープンユニバーシティーとの間に、どのように組織的、連関的に関連づけているでしょうか。日本の放送法上の問題と同じような問題はイギリスにはないんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/68
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069・佐野文一郎
○佐野政府委員 イギリスのオープンユニバーシティーの場合には、先ほどもお答えをしましたように、放送番組の制作と放送はBBCが実施をしているということでございます。したがって、わが国で言えば、国立大学で放送大学を設置して、そしてその番組の制作、放送はNHKが行うというような形になっているものと承知しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/69
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070・嶋崎譲
○嶋崎委員 わが国の場合に、NHKとの間でそれがなぜできないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/70
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071・佐野文一郎
○佐野政府委員 五十三年度の概算要求の段階で、御案内のように、文部省としては、途中の段階でございますけれども、放送大学を特殊法人で創設をすることが行政改革との関係できわめて困難であるとすれば、国立大学をもって放送大学を設置し、その放送番組の放送については、既設の放送事業者に委託をして行う方式がとれないかということを考えたことがございます。したがって、事柄として、民間放送事業者あるいはNHKにお願いをして、いわばその番組を買う、あるいは放送を委託するということで実施をすることは不可能であるとは思いません。
ただ、実際問題としては、それによって確保できる帯、いわば時間帯に限りがある。放送大学の放送を効果的に実施をするために十分な時間帯が確保できるかどうかという問題がございます。それからもう一つは、放送大学の方には、大学としてやはり大学の自治あるいは教授の自由という問題がございます。これはもちろん放送法の制約のもとに行われることであり、大学自身として、放送ということを前提とした大学における自主的なチェックも行われるでございましょうし、また放送法のチェックもかかるわけですけれども、大学としてこういう番組を放送したいということがあります。そのことと、放送事業者の側における番組の自主編成という問題との間にフリクションが起こることは予想できないことではないわけであります。できれば、やはり放送大学がみずから放送事業の主体となる方が、大学全体の教育というものを効果的に行うためには望ましい、そう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/71
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072・嶋崎譲
○嶋崎委員 時間もきょうは短いですから、問題点を整理してみまして、要するに特殊法人を新設してそして大学というものをつくる、そういう方式ですね。そしてみずから送信所を持つ、そういう方式か、もしくは国立大学の形態でいくか。国立大学そのものが持つという議論、国営放送という議論、いろいろあるけれども、いままでの議論の経過でも、そのどっちかに問題がしぼられてきたわけですね、ある意味では。ところが、そこにはみんな法制度的な隘路があるというところが問題になったわけですね。
そこでわれわれは考えなければならないのは、国民の側に立って、国の予算をどういうふうに使って、そしてそれがどのように有効であるかという観点に立って、大学の目的である広範な人に高等教育を保障するというためにベターでいい方法があるならば制度を変えればいいんですね。われわれ立法府の仕事はそれです。ですから、郵政省であれ文部省であれ大蔵省であれ、大事なことは、現行法の枠の中でできるかできぬかいう議論をいつまでやってもできぬに決まっておる、あっちもこっちも役所はセクショナリズムですから。大事なことは、われわれ国民の側に立って、いまこの受験地獄の中で大変な人間疎外が進んでいる中で、より多くバイパスコースというのを考える。そのバイパスコースの中に通信教育が一つ大きく位置づけられている。同時にまた、国が、放送大学かどうかは別としても、メディアを使いながらそういうものを保障していくような制度を考えていこうというふうに考えたときに、やはりこういう時代でもあるだけに、国民の税金は余りむだに使わずに、しかも制度的にそれがより保障できるというふうになるにはどうするかと考えてみて、そして憲法改正、そんなことになっちゃどうもならぬけれども、放送法だとか短波の監理に関連する法律だとか学校教育法だとか、極端なことを言えば、そんなもろもろの制度というものをどう変えていくか。既存の制度はちぐはぐなんだから、やろうとしたってできないような仕組みでいままでやっているから、できないわけですからね。新しいことをやろうとすれば矛盾が起きるに決まっている。そうすれば、立法府としては、その制度をどう変えて、一番基本的な問題が解決できる制度をつくるかというふうに発想していかなければいけないと思う。
それが、いままでの経過を見ていると、文部省が少し先行して郵政省と話をしている、それで何かそこら辺の話し合いが少しついたような気がするというような感じですよね、あの議事録をずっと読んでみると。少しずつ詰まっていっているよ。実験放送の場合でも、無線局をつくる許可なんかがどうとか、そんな議論をいろいろやっておるけれども、結局現行法の枠の中でしか物を考えないものだからだめなんです。国民がいま要請しているものに最もこたえ、しかも、大学自治、学問の自由という問題と、それから片一方で放送事業者の制作番組の自由という問題、この二つの基本的人権は上下の関係はないのですから、憲法では大学の自治、学問の自由、それから制作番組の自由というのは基本的な人権としては同質な、同じレベルのものなんですから、これを両立させるような制度を考えて、そして国民の側に立ってそれが保障される仕組みはどういうふうにしたらいいか、こういうふうに議論していかなければ、せっかく新しい制度をつくるときにこれはその理念に即した制度にはならぬとぼくは思う。そういう意味で発想の転換が要るんじゃないか、設置形態問題に関しては。いままでのような与えられた枠の中では特殊法人の方が一番いいんだというふうに決めてしまう。イギリスのBBCがやっているというけれども、これは実際にオープンユニバーシティーの中で使っているのは三割だから、それは向こうの番組を使って単位互換というのはできるわけです。いまNHKがやっている市民大学みたいなものがもっと充実したものになれば、それとオープンユニバーシティーみたいな通信教育をバックにして考えて、そして単位互換を考えていけばできぬことはないわけです。そのときに片一方では制作番組の自由という放送法の三条を盾にする。片一方は大学自治がある。しかし、これは相対立するものじゃなくて、本来統一して理解しなければならない基本的な権利なんですから、人権なんだから、その上に立って、放送大学を具体化するときの制度的な隘路がこことこことここに問題があるとしたら、どう変えたら国民にそれがこたえられるか、こういうふうに発想しなければいかぬとぼくは思う。
そういう意味では、いままでの経過を見ていると、そういう発想の転換をしながら、これは与野党含めて、単に与党が推進しているのに対して野党がどうだという話じゃなくて、いまの日本の進学のめちゃくちゃな受験体制というものを緩和していくためには、最も合理的なバイパスコースをつくらなければ絶対だめだとぼくは思っているんです。世界どこを見たって先進国は全部バイパスコースで解決しているんですから。イギリスを見たってスウェーデンを見たって、アメリカに行ったってドイツへ行ったってみんなそうです。だから、そういう意味のバイパスコースの一つとして、これが全部じゃありません、一つとして、通信教育の問題やオープンユニバーシティーの問題や放送大学の問題をどんなふうに考えるかというのは、日本の教育の根幹に触れる教育制度改革とも結びついていると思う。それだけに問題が大きくて、しかも非常に重大な改革であるだけに、既存の制度の枠の中でいじくっていたんじゃだめじゃないですか。そういう意味で、もう一遍国民の側に立って、この設置形態、その他実施方法などについても検討を要することはあるんではないか。これが私の今後議論していく第二点の問題であります。
そして今度第三番目に、もう時間がありませんから、今度はこの概要を少しお聞きします。
「放送教育開発センターの概要について」というこの概要の中からお聞きしますが、「諸般の事情」というのは、私はちょっと質問したけれども、さっきのでいいかどうかは知りませんが、議事録や何かを読んでおりますからこの意味は大体わかります。
問題は、この1の(2)に言っている「しかしながら、放送大学創設の諸準備を引き続き進める必要があることはもとより」だから、まず放送大学をやるのは基本なのです。「もとより、この構想の推進に伴ってその実現が期待されていた放送利用の大学教育に関する研究及び開発、」放送大学というものの創設の準備に真っすぐ進んでいく、それは私がいま言った一、二の問題があるからその検討も要るが、そこに進んでいくに当たって「その実現が期待されていた放送利用の大学教育に関する研究及び開発、大学開放の推進、国公私立大学の連携協力の推進、大学の一般教育の充実などについては、」と大体四つの要件を挙げていますね。四つやらなければならぬことを書いてある。「などについては、今後、大学教育の進展を図る上で早急にこれを推進していく必要があるため、そのための機関として、放送教育開発センターを設置することとしたものである。」と書いてある。この意味がよくわからない。
放送大学創設、放送大学というのは放送をメディアとして使う大学ですね。その場合に、メディアとして使うに当たっての教育上の研究開発、そういう意味ですね。この最初の「放送利用の大学教育に関する研究及び開発、」というのはどういう意味ですか。大学教育そのものではないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/72
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073・佐野文一郎
○佐野政府委員 御指摘のとおりでございます。ただ、やはり放送大学は大学として創設されるものでございますから、そこにおいては当然大学として必要な教育研究が行われるわけでございます。その放送大学の教育研究の内容としては、単に放送大学が放送をメディアとしてどのように実施をしていくかということについての検討にとどまらずに、広く国・公・私立の大学の先生方の参加を得て放送大学のプロジェクトは進んでいくわけでございますから、そういった方々によって、広く放送を利用した大学教育についての研究というものがそこで展開をされ、深められていくということを私たちは期待をしているわけでございます。そのことは、放送大学がスタートをしなければできない、あるいはそれまで待っているというよりは、できるだけ早くそういった方向というのは、放送大学が行う放送を利用した教育ということに限らずに検討を進めていかなければならない、そのことを考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/73
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074・嶋崎譲
○嶋崎委員 そうすると、大体日本語が正確じゃないのでしょうね。ここに書いてあるのは「放送大学創設の諸準備を引き続き進める必要がある」というのでしょう。そして「この構想の推進に伴ってその実現が期待されていた放送利用の大学教育に関する研究及び開発、」ですね。だから、これはやはり放送利用による教育の仕方ですよ。並びに、それがどう実施されるかということに伴う開発でしょう。だから、これはある意味では、メディアを使う教育のプラクティスメソッドの問題ではないですか。そして、それと同時に、それを送る施設の開発の問題、これを研究するのがセンターではないですか、ここに書いてある意味は。普通の大学がやっているような大学教育と、たとえば社会学で問題にしているようなメディアと教育だとか、同時にまたメディアと大衆心理とか、そういう人間とメディアみたいな基本的哲学的問題はここではやらぬのでしょう。この趣旨はそうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/74
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075・佐野文一郎
○佐野政府委員 ここに書いてある趣旨は先生が御指摘のとおりだと思います。ただ、開発センターなり放送大学なりが将来そういった問題にどのように取り組むかということは、大学なりセンターなりが今後どういうように研究開発に取り組んでいかれるかにかかることではあろうと思います。しかし当面は先生の御指摘のとおりだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/75
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076・嶋崎譲
○嶋崎委員 だからこれは、さっき言ったメディアと人間というようなことについて、一方で基本的な研究を深めながら、放送大学というものが教育の中で果たすであろうメディアの役割りみたいなものがここでは研究の対象ではないということをこれは示していると思う。
今度は二番目、「大学開放の推進、」何ですか、この中身は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/76
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077・佐野文一郎
○佐野政府委員 現在、具体的には広島大学あるいは東北大学の御協力を得まして大学公開議座を放送を利用して実施をいたしております。これも放送大学の創設を準備していく場合の調査研究の一つの重要な分野として行ってきたものでございます。そういった点をここに掲げているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/77
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078・嶋崎譲
○嶋崎委員 それは大学開放ですか、公開議座は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/78
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079・佐野文一郎
○佐野政府委員 やはり大学開放の一つの大きな分野であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/79
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080・嶋崎譲
○嶋崎委員 大学の中でやっているものを外に出しただけじゃないですか。それが大学開放ですか。いままで聴講生の制度もあるし、それを公開議座としてやっただけでしょう。そんなものを大学開放と考えていたら放送大学の精神と矛盾しませんか。あなた方の考えているようなものは大学開放ということじゃないのじゃないですか。どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/80
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081・佐野文一郎
○佐野政府委員 放送教育開発センターが具体的にこれから仕事をしていく場合に、従来行っておりました、広島なり東北なりにむしろ御協力を申し上げて行っている放送を利用した公開議座というのは、さらにそれを拡充をしていくということを考えていくと思います。そのときに、両大学以外の大学で公開議座を実施されようというところがあれば、センターの施設を利用しあるいはセンターのスタッフが協力をしてそれを実施するということがございますので、このことを掲げているわけでございます。もちろん、放送大学ということを通じて考えていく大学の開放というのは、そういった公開議座ということだけにはとどまらないで、さっき申し上げたような大学問の流動をもっと高めていくと申しますか、そういったことまでを含んで私たちは考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/81
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082・嶋崎譲
○嶋崎委員 時間がありませんからこれで議論しようと思わぬけれども、皆さん方がぼくらにくれる資料というのはいつも抽象的でわからぬのです。あなたたちだけわかっているので、こういうものは立法府が議論する材料じゃないのです。これは、大学開放の推進というのじゃなくて、いまおっしゃったように、広島大学や東北大学などで今日まで進めてきた公開議座はメディアを使う教育の一つの重要な実験なので、これを拡大するというふうに書いてくれれば何もやかましい問題は起き得ない。大学開放という言葉を使うからには、既存の学校制度を改革するということを前提にしなければ大学開放などというのはないのです。だから、皆さんができもせぬことを書いてわれわれを混乱させているので、これを読んでみて本当に役人の文章というのはわからぬなとぼくは思う。たとえばその後に「国公私立大学の連携協力の推進、」何をやるためにどうすることが国・公・私立大学の連携協力の推進になるのか、これでは何もわからぬ。ただ言葉が書いてあるだけです。日本語というものは、実体を頭に描いて、こういうことをすることが連携になり、そしてそれが国・公・私立の大学の柔軟な改革につながるというならば、もっと具体的に言わないとわからぬですよ。
次がまたわからない。「大学の一般教育の充実」でしょう。大学の一般教育の充実でいままで放送大学で構想された三コースがある。それは要するに、簡単に言えば学際を頭に置いた組み方です。そうすると、一般教育の充実というのは学際を頭に置いてコースを考えるようなことをやるのが一般教育の充実なのか。一般教育の充実というのはものすごく多面的な問題でしょう。そうすると、放送教育開発センターというのは何をするかと言ったら一般教育の充実と言われてみたって、予算を使って何をするのかぼくらはさっぱりわからぬ。だからこれもわからない。したがって、「しかしながら、」から「放送教育開発センターを設置することとしたものである。」までは、結局何を言っているか、わかるようで何もわからないというのがこれをもらったときの私の正直な印象です。
そこで次を聞きましょう。今度は「目的及び事業内容」で、「放送教育開発センターは、国立大学における教育の発展に資するための国立大学共同利用の機関として設置される」これは何とはなしにわかる。
そしてその次に「放送を利用して行う教育の内容、方法等の研究及び開発」これはさっき言ったマスメディアを使う教育メソッドの研究開発ですね。そして二番目は「国公私立大学の教員その他の者でこの機関の目的たる研究及び開発と同一の研究及び開発に従事するものに利用させることを目的とする」だから、あっちこっちの大学の中でメディアを使ってそういうメソッドを研究している人たちをセンターに集める、自由に出入りできるようにしましよう。そうしてその人たちの経験を生かして、放送教育センターは一つのその遺産や経験を財産にしよう、そういうのでしょう。しかし、これだったら、現在国立大学の中でメディアを使ってやっている教育がどれだけあって、そしてそれが、いまの国費を使って研究するに当たって日本の大学教育、高等教育全体の中でどういう重要な位置を占めているのか。われわれ予算というものを考えるのだから、ただ新しいものに予算をつければいいというものじゃないですよ。全体の日本の高等教育の中で、いまわれわれが緊急で、しかもやらなければならないときに、こういう研究開発並びに研究開発の人たちが利用できる。そうするとそれ以外の人は利用できないのですから、限定されているのですから、ここには。そうでしょう、こういう書き方をすれば。皆さんの意図と違うなら文章を書きかえなければいかぬわ。だから、いまたとえばある教育大学なら教育大学でメディアを使って教育をやっている人、それからまたその開発を考えている人、そういう人たちが集まるのだとすれば、それ以外のいわゆる哲学者や経済学者や法学者というような者は直接ここは利用できないわけね、この文章ならば。そうすると、基本的なメディアと教育みたいなものが依然として議論されない研究センターになるわけよ、結果として。そういうものでいいのかどうかという点については疑問があるわけ。なぜならば、通信教育という問題と、その中でメディアをどう使うかという基本問題が現行法の体系の中にあるわけですから、現行法の中ではやはり通信放送と言っているのですから、そうでしょう、通信放送によるとちゃんと設置基準の中に書いてあるのだから。そうすればその中に放送は含まれているわけよ、すでに。だとすると、ここに利用させることを目的とすると書いてある、このことが非常に限定された利用の共同センターになっているわけ。
その次に今度は、「また、放送教育開発センターは、国公私立大学から要請された場合には、」ここには目的語がないわけ。何を要請するのかわからぬわけ。「国公私立大学から要請された場合には、その要請に応じて当該大学の教育に協力することをも、その目的とするものである。」でしょう。なぜ要請してくるのか。「その要請に応じて当該大学の教育に協力する」でしょう。そうすると、現在の大学の中で、具体的に言うならば、たとえば広島大学、東北大学がやっている公開議座みたいのがありますね。そのほかに私立大学がやっている通信教育に関する協会のやっているものがありますね。そういうものだけではなくて、広く「国公私立大学」ですからね。広くそういう要請があるはずだね、何か。あるのでしょうよ。だから書いているのだから。そうすると、「国公私立大学から要請された場合には、その要請」というのは何を要請したのかわかりませんが、「その要請に応じて当該大学の教育に協力すること」を目的とすると書いてある。これはわからぬね。中身はどういうことかぼくにはわからない。だから概要を書いているかどうかわからないわけ。時間がないから小委員会でこれから議論すればいいので、こんなことをぼくはせんさくするつもりはないけれども、立法府でわれわれが議論するにしては、もう少し親切な解説とデータが欲しいということです。ぼくの言っているのは。そうせぬと議論になりません。調査研究だけが先行していて、出てくるレポートだけをもらって、そしてつくるというたらこの概要が来るわけ。これでは立法府というのは何を議論していいかわからないという前提の問題があるわけ。
次、いきましょうか。「イ なお放送教育開発センターは、従来、文部省において取り進めてきた放送大学創設準備の事業を、実質的には承継することとしており、」と書いてありますね、今度は。そうすると今度は開発センターは実質的に継承するのですね。これは「実質的に」とわざわざ入っておるのですから。この実質的にという意味のとりようによっては、開発センターというのは放送大学設立のためのことを基本に据えて実質やるということや。そうかと思うと広い放送教育みたいなものも広範にやると言ってみたり。よほどそのレクチュアを受けぬとぼくはわからないの、本当に正直言って、いじめている意味じゃなくて。立法府としてまじめに議論するにしては、この概要ではつかめない。
そういう意味で、今後小委員会で私たちが議論するに当たりまして、ことしの予算項目、ここに書いてあるけれども、これでもよくわからない。たとえば予算額の中の「放送大学実験番組の制作及び放送」というと、いままでの放送大学の実験番組ですか。いままでやったようなああいうことを言っているの。これは大学放送実験番組じゃないの。そういうことじゃないの。これはひっくり返さなければわからぬよ。ぼくは大分考えた、二十分ほど考えたよ、これ。ははあ、これは文章が間違っておる、大学放送の実験番組の制作及び放送じゃないかな。そうすると、ぼくは審議官から聞いていますけれども、たとえば今度の開発センターにスタジオを持つというのでしょう。そんなこと、これじゃさっぱりわからぬわけよ。そんなことは具体的に書いた方がいいですよ。何もスタジオを持つことがおかしいと言うのじゃない。そうすると、スタジオを持つということになるとプロデューサーというのが物すごく重要ですね、今度はハードとソフトの問題が出てくるのですから。だから、いままで大学はハードでやれたけれども、今度は、ソフトを含めてメディアを使う教育のメソッドというのは大変新しい技術が入ってくるわけですね。そうしますと、そういうことの調査研究というのは、ここで言うと「実験番組の制作及び放送」になるのでしょうね、恐らく。そうして今度は「学習指導方法の実験」というと、これ何ですかね。それとこれとどこが違うの。この(イ)の項目と(エ)の言っている予算の項目が具体的にどんなふうに違ってくるか。これはいずれ聞きましょう、ここでこんな議論をしないでも。
いずれにしても、この放送教育開発センターをつくろうとしているが、どういう目的でつくられ、そして何をやって、そして何を将来意図しているのかつかめないわけ。だから私が言ったように、この開発センターというのは、放送教育ではあるけれども、通信放送を含めて通信教育と放送との関係はどうあるべきかというような、イギリス型のオープンユニバーシティーみたいなものもここで研究するのか、それからメディアと人間というような基本問題もやるのか、それともでかい放送のメディアだけを使ってやるそのメソッドとその実験だけを目標にして、そのための経験的なものを積み上げるためのことをやるのか、この辺が全体として内容がつかめない。しかし、全体として、いずれにしろ放送というものを使って、今後日本のバイパスコースみたいなものを教育改革との関連においてつくることは私は賛成です。ですから、つくることに反対しているのじゃないが、それをせっかくつくって国の予算を使うならば、それがどういう守備範囲でやって、そしてどういう限定的なものであり、将来つくるものとどんな関連があるかという、われわれが立法府で議論しやすいデータを提出するように、今後の小委員会の議論の材料を検討しておいていただきたいと思うのです。
したがって、きょうは、広範ないろいろな議論は小委員会での議論に譲りまして、簡単に言えば大きな資料の提出のし直しということや。その資料提出のし直しと、それから基本的な、通信教育、普通教育というものをバックグラウンドにした現行法体系の中での問題と放送大学との関連いかん。その場合に、NHKの今日の膨大な施設があるわけだ。それで非常に進んだ科学技術を駆使している、そこと、大学の自治を前提にしてやる放送大学との関連いかんを、設置形態、実施方法などを含めて国民の側から検討し直す必要がありはせぬかという問題点だけを指摘しまして、私の質問を終わります。
大臣、この辺、資料提出その他について御決意をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/82
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083・砂田重民
○砂田国務大臣 放送大学の問題、それから開発センターがこれから取り組まなければなりません各種各様な広範な研究対象と申しますか、そのようなことを大変うんちくを傾けていただきまして、非常な勉強をさせていただいたわけでございます。いま嶋崎委員が御指摘になりました非常に広範な各種各様の問題とこのセンターはまた取り組んでいかなければならないことでもございます。当委員会に小委員会設置をけさの理事会でお決めいただいたそうでございまして、大変私どもとしてはありがたい、うれしいことでございますので、可能な限りの詳細な資料を次々に御提出をいたしまして、小委員会の検討に供していきたい。また、小委員会の御意見を承りながらこの準備に取り組んでまいりたい、かように思うものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/83
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084・嶋崎譲
○嶋崎委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/84
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085・菅波茂
○菅波委員長 午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時五十九分休憩
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午後一時十分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/85
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086・菅波茂
○菅波委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。
この際、佐野大学局長及び諸澤初等中等教育局長より発言を求められておりますので、これを許します。佐野大学局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/86
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087・佐野文一郎
○佐野政府委員 先日有島委員から御質問のありました国立の教員養成大学学部の整備充実につきまして、次のように進めてまいりたいと存じます。
第一に、教官組織の充実につきましては、過去十年間に約八百三十人、一六%の増員を行ってきましたが、今後とも教科教育の分野、特殊教育の分野等を中心に充実に努めてまいりたいと存じます。
第二に、課程の拡充等につきましては、初等教育教員及び特殊教育教員の養成課程等を中心に整備充実に努めてまいりましたが、今後とも諸課程の均衡、地域の事情等を勘案しながら、課程の拡充等に努めてまいります。
第三に、大学院の設置につきましては、東京学芸大学、大阪教育大学に続いて昭和五十三年度に愛知教育大学に新たに設置することといたしておりますが、その他の大学につきましても、各大学の教育研究体制の整備状況、大学院構想の検討の進捗状況等を勘案しながら、逐次計画的に進めてまいりたいと存じます。
第四に、付属施設の整備につきましては、教育工学センター等の諸施設をこれまで三十一設置してまいりましたが、今後ともこれらの施設の整備充実に努めてまいります。
第五に、付属学校の整備につきましては、養護学校、幼稚園等を中心に新設整備を図ってまいりましたが、今後とも養護学校の新設等、必要な整備に努めてまいります。なお、付属学校につきましては、その趣旨、目的に沿った運営が行われますように、教育方法等改善経費等の増額、入学者選抜方法の改善等を進めてまいります。
第六に、設備費、校費等の充実につきましては、過去十年間に教員養成学部設備費を二・六倍に増額したほか、教育特別設備費、実習施設設備費等を積算対象に加えることといたしまして、全体で四倍の増となっております。また、学生当たり校費につきましても三倍の増を見ておりますほか、非実験科目の実験化等を進めてまいりましたが、今後ともこれらの総合的な充実に努めてまいりたいと存じます。
そのほか、教員養成学部学生の海外留学経費を昭和四十八年度に新規計上し、その後その拡充を図っておりますほか、教員養成課程学生特別指導費を計上しておりますが、今後ともすぐれた教員の養成確保のための施策の充実に努めてまいりたいと存じます。
次に、教育実習の改善につきましては次のような施策を講ずることとしております。
第一に、教育実習の改善につきましては、大学として、実習生の精選を図るとともに、事前指導の充実、教科教育等の関係科目の工夫改善を図ること、大学としての学内の統一的な実施体制を確立すること、地域連絡協議会の設置等、大学と受け入れ校側の協力関係の増進を図ること、さらに、大学及び協力校による実習内容、方法に関する研究活動の推進等の方向で改善の促進を図ってまいります。
第二に、国立の教員養成大学学部における教育実習のあり方として、特殊教育諸学校や小・中学校における特殊教育学級における教育実習を組み込むように、日本教育大学協会とも相談して積極的に進め、さらに、そのような教育実習の教員養成に果たす意義、あるいは効果、実習の内容、方法等について十分な研究を進めたいと存じます。
第三に、国立の教員養成大学学部においては、付属施設として教育実習研究指導センターを東京学芸大学及び岡山大学に設置いたしました。また、各大学に教育実習運営協議会を設けるための経費を計上しておりますほか、学生実習特別経費等の増額を図ってまいりましたが、今後とも一層の充実に努めてまいります。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/87
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088・菅波茂
○菅波委員長 次に、諸澤初中局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/88
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089・諸澤正道
○諸澤政府委員 教員研修の充実につきまして先般のお尋ねがございましたので申し上げますが、まず一般的に研修に対します考え方を申し上げますならば、昨年の小・中学校の学習指導要領の改定に際しましての教育課程審議会の答申は、これからの教育というものは、一人一人の子供が自分で考え、正しく判断する力を養うことを基本に置けということでございますから、そういう教育を展開していただきますためにも、教員の方々が絶えず研究と修養に努めていただくということが非常に大切なことであると考えます。そしてそのためには、国や教育委員会等が行います教育の内容や方法に関しますところの伝達的な講習ももちろん必要でございますが、やはり一人一人の先生方がみずからの創意に基づき、自発的、創造的な研修活動をしていただくことが大切であり、そうなることを期待いたしますとともに、われわれもそういう活動が助成されますように努力したい、こういうふうに考えるわけでございます。
そのような一般的な考え方に立ちまして、これからの具体的な研修の充実につきまして申し上げますと、一つは、いま申しました新しい学習指導要領が五十三年度から逐次移行措置によって実施されるわけでありますが、その趣旨とするところを十分理解していただきまして今後の教育活動を充実していただく意味におきまして、昨年度から年次計画によりまして全教員を対象とした学習指導要領の内容についての趣旨徹底をやってきたわけでありますが、今後もその充実を図って、新しい学習指導要領への円滑な移行が図られるように努力をいたしたいと思います。
二番目といたしましては、いま申しましたような先生方の自主的な研修の推進を図るために、各種の教育研究団体への助成を通じまして、それらの団体の行いますところの研究大会や研究調査の一層の充実を図ってまいりたい、こういうふうに考えるわけであります。
三番目に、各都道府県にありますところの県の教育センターや特殊教育センターはそれぞれの教育の内容や方法の研究のよりどころでありますが、同時にまた、そこに多くの先生方が集まって中期あるいは長期の研修を実施される場所でもありますので、こうしたセンターの研修における役割を重視いたしまして、一層センターの整備充実を図ってまいりたいと思います。
四番目に、先生方が外国へ行かれまして、その国の教育、文化、社会等の各般の実情を視察していただきますことは、その視野を一層広げ、そうしてまた教師としての誇りを持っていただくという上でも非常に有効に働いておるわけでありまして、このような教員の海外研修につきましては、これからもその充実を図りますとともに、研修前の事前の打ち合わせあるいは事後の情報交換等を通じまして、一層の内容の充実を図ってまいりたい、かように思うわけであります。
五番目に、五十二年度から新規採用教員の研修につきまして新たに授業研修を取り入れることといたしたわけでありますが、その趣旨といたしますところは、在学中に十分できなかった実際の授業に対する資質と能力の向上という点にあるわけでありまして、今後ともそのような授業研修を内容とする初任者教員の研修の充実につきましては一層努力をしてまいりたい、かように思うわけであります。
六番目に、現在文部省が主催いたしておりますところの中堅教員を対象とする研修講座につきましても、従来からその充実を図ってきたところでありますが、今後とも一層その内容の充実に努めたいと考えます。
七番目に、先般御指摘のございました、公開研究授業を通じて教師の指導能力を高めるための研修の充実について一層努力をすべきではないかという御指摘でございますが、その趣旨に即しまして、これが本当に効果あるためにはどういうふうな形で研修を奨励したらよろしいか、その内容、方法等につきまして鋭意検討をしてみたいと考えておるわけでございます。同時に、現在、国、県、市町村がそれぞれ行っております各種の教員研修の実態把握に一層努めまして、それらの研修が有機的に作用するように今後努力をいたしたい、かように考えます。
八番目に、現職教員が長期にわたって研修を受ける場合に、先般来お答え申し上げましたように、現在も千二百名程度のその期間における代替教員の定数の加配措置を行っておるところでありますが、第四次の五カ年計画が終わりました現時点におきまして、今後このような代替教員をどういうふうな形でさらに充実していくかということは、次の教員全体の充実計画と関連して十分検討してみたい、かように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/89
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090・菅波茂
○菅波委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鍛冶清君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/90
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091・鍛冶清
○鍛冶委員 ただいま上程されております法案の中で、放送教育開発センターの創設に絡んで御質問を若干いたしたいと思います。
これは小委員会を設置して、放送大学関係について今後審査を進めていくということでございますので、細かいいろいろな点はその小委員会においてということにいたしまして、大枠の中で、飛び飛びになるかもわかりませんが若干の質問をしたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。
最初に、放送大学をぜひともつくりたいということで、午前中の質疑に対する大臣の答弁の中でもその方向でやっていく、こういうことがございました。近い将来これが達成できたといたしまして、その時点で、今回予算に上がって設置されるようになっております放送教育の開発センター、これはどういう形になっていくのか、まずそれをお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/91
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092・佐野文一郎
○佐野政府委員 放送教育開発センターはそれとして十分に積極的な意義を持つものでございます。国・公・私立の大学の連携協力のもとに放送を利用した大学教育についての研究開発を行うという事業は、放送大学が創設された場合においても十分積極的な意義をそれとして持つものでございます。私たちは、放送大学が創設をされた場合におきましても、このセンターの機能と放送大学の機能とがいわば密接に連携することによって効果を上げることができると期待をいたしておりますけれども、しかし、このセンターの性質は放送大学の構想と深くかかわります。したがいまして、最終的に放送大学が設置をされた場合にセンターをどのように取り扱うかということにつきましては、その創設の段階における検討にゆだねなければならない点が多いとは思います。最終的にはその段階で判断をすべきことではございますけれども、事の性質としては、併存をして連携協力をするということが望ましい姿として十分に考えられることと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/92
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093・鍛冶清
○鍛冶委員 昭和四十四年に社会教育審議会の答申が出されておりますけれども、その答申の内容から今日放送大学の特殊法人として発足させようという考えに至るまでの間に、いろいろ考え方が変わってきている点があるように思うわけでございます。若干具体的に申し上げますと、「映像放送およびFM放送による教育専門放送のあり方について」というこの社会教育審議会の答申の中において「放送は、大学が効率的な教育活動を展開するうえに、きわめて有効な媒体となりうる。すなわち、大教室講義や実習等へテレビを導入し、テレビ授業と討論を主とした授業とを適切に組み合わせることによって密度の濃い質の高い授業が可能となる。さらに、放送は大学相互間の教授、研究活動における提携協力にも、有力な手段となるであろう。」こういうふうに答申の中で言われているわけでありまして、この方向につきましては、私たちも大変これはいい方向である、こういうふうに考えておったわけでありますが、その後、放送教育の取り組みの中で、昭和四十四年以降に放送大学懇談会が設置されましたし、またさらに放送大学準備調査会の設置もありましたし、それによる報告等いろいろ出てくる中で少しずつ当初の答申から変わってきた。そして放送を主体とした大学を別に設けるという形に変わってきているわけでありますが、その間の変わってきたいきさつ、理由等について御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/93
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094・砂田重民
○砂田国務大臣 いま御指摘の社会教育審議会からいただきました答申、この答申をいただきます前に文部省が同審議会にいたしました諮問の背景に、実用化の見通しがついたUHFの放送、それからFM電波を一般的に公開するという郵政省方針があったわけです。しかし、この時点では一般に開放するという計画があったにとどまったわけでございまして、どのような形で、どういう数、波長がとれるかということが明確ではなかったわけでございます。そこで、いただきました答申、いま御発言がありましたようなことがございましたけれども、それに並んで、教育放送の拡充を実現するためには、大学、教育委員会等、個々の教育機関でみずから非営利の放送局を持って番組の制作、放送に当たることが望ましいという一項目の答申をいただいたわけでございます。ところがその後、郵政省におきまして電波の具体的な割り当て計画を検討いたしました結果、教育専門放送に割り当て得る電波というものは必ずしもそう多いものではないということがわかってまいりました。社会教育審議会が提案しておりますように、大学なり教育委員会なりが個々の教育機関としてそれぞれがみずからその電波を持つというような余地がなくなってまいったわけでございます。こういう事情の変化がございました結果、また当時の英国のオープンユニバーシティー構想等が具体化をしてまいりましたので、そういうことも参考にし、社会情勢の変化もありまして、放送を主たる手段とする独立の放送大学という構想に変わってきたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/94
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095・鍛冶清
○鍛冶委員 この社教審の答申から方向転換したとき、その当時の転換の理由の中で私たちがちらっと聞いておりますのは、答申は出して世間に問うてみたけれども、各大学においてこの答申を受け入れる意思といいますか、全くその反応がなかったというようなことが方向転換の一つの理由になっておったというふうに伺ったことがあるのですが、その点についてはどうだったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/95
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096・佐野文一郎
○佐野政府委員 確かにその点については、たとえば当時の「ジュリスト」の誌上で放送大学についていろいろな立場でお考えになっていた方々が座談会をされておりますが、その座談会の中ででも、当初の社教審の考え方というのはむしろ社会教育的な考え方に立って、欧米における成人教育的な行き方というものを考えて、そしてそれを大学の単位としていくという方向を考えていた。そのためには大学側のそれに対する積極的な対応というのが当然前提になっていたけれども、大学側からは、当時はそれを積極的にそれぞれの大学において行おうという構えが出てきていなかった。片方では公開大学というような構想が現実にスタートをしてきた、そういったこともあって、関係者の間に独立の放送大学の構想というものが検討されるようになったというような御発言がある。そういう事情があったことは、そういう発言を通じて私は承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/96
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097・鍛冶清
○鍛冶委員 いま、そういう発言があったということはやはり大きな転換の理由になっておったということですが、その当初の答申の先ほど読み上げましたような内容からいきましても、わが党がその前から大学の充実のための施策としていろいろ申し上げた中に合致しているということで大変好ましい方向だという形があったわけです。しかし、こういう、大学が答申を受け入れる意思がなかったというようなことを聞き、さらにまた、当時大変学園紛争が盛んであった、そういう中からこういう放送大学という方向の考え方も出てきたのだというふうなことも言われておるわけですが、特にその中で私たちが重視したいのは、大学が答申を受け入れる意思がなかったということについて、いまの御答弁では文部当局がそういう形でやったのではないというふうな形には受けとれるわけですけれども、考え方として、それでは、答申を文部省が受けて、その答申について積極的に大学側とこういう内容についての懇談なり交渉なりというようなもので、方向性なりの検討なんかをやられたことがあったのだろうか。ただ答申を出して発表しただけでは、当時の情勢、学園紛争が多かったという事情の中では、恐らくこういうものを検討してやるというような各大学に余裕もなかったんじゃなかろうか。そういう意味でこの社会教育審議会の答申というものから大きく転換したんではなかろうかというような気もしておるわけでございますが、そういう点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/97
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098・佐野文一郎
○佐野政府委員 当時の事情からして、大学側がなかなかみずから非営利の放送局を持って番組の制作、放送に当たるというような構えになれない状況にあった。それは、それぞれの大学が非常にたくさんの整備すべき課題を抱えておりましたからそのことは十分に考えられることでございますけれども、行政的にはむしろ、先ほど大臣からもお答えを申し上げましたように、UHFの電波というものをそれぞれの大学なり教育機関なりがそれぞれ割り当てを受けて放送局をつくっていくほど余裕がない、やはり全国UHFとFMを郵政省に大学のために一波確保していただくということが、いわば現実的に対応できる限度であったということがございます。それを前提として、それを最大限活用した独立の大学をつくろうという方向に構想の検討が向いていったということであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/98
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099・鍛冶清
○鍛冶委員 大学の中で放送講座といった形を取り入れてやっていくという上でのメリットというものはどういうところにあるのだろうかと思うわけですが、文部当局の御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/99
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100・佐野文一郎
○佐野政府委員 放送大学というのは、午前中もお答えを申し上げましたように、一つには、放送というメディアを活用して、従来なかった新しい高等教育の形態において大学教育を広く国民に提供をする、そういうことによって教育の機会均等というものを実現していくというところに大きなメリットが一つございます。それと同時に、放送大学におきましては、教材の作成の段階から広く国・公・私立大学の教員の協力を求めてそれが行われていくということでございますし、また放送大学の授業が、放送を初めビデオテープあるいは録音テープ等各種の情報媒体を通じまして公開され、そしてそれが既設の大学に利用される、あるいは放送大学の放送それ自体が既設の大学の授業内容なり授業方法の改善充実に寄与するというようなこともあろうと思います。さらに、放送大学におきましてはほかの大学との間に単位互換というものを積極的に進めようとしておりますし、また単位の累積加算制というような、現在の状況ではなかなか実施できないような課題につきましても、放送大学というものをいわば場として、そこで単位の累積加算とか、あるいはほかの学校との、たとえば専修学校、専門学校との連携というような試みについても具体的な検討に入ることができるだろうと思います。そういう意味で、放送大学というのは単に教育の機会の均等ということに貢献をするということだけでなくて、高等教育全体の構造を柔軟なものにし、あるいはより流動的なものにする、それを促進する契機になると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/100
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101・鍛冶清
○鍛冶委員 特に既設の大学との関連で、私どもは、先ほどちょっと触れましたように昭和四十三年十一月に大学高校問題特別委員会より、大学紛争の最中に、大学改革案というものを提示を申し上げました。その折に、テレビによる大学放送講座の利用というものを提唱したわけですが、そのときの考え方の大きな一つとして、この放送講座を導入することによって、既設の大学の質を高め、または先生、教授がこういうことを活用することによって時間的余裕を持つ中で、非常に質の高いものができてくるというようなことを一つの考え方として持っておったわけですね。それからまた、既設の大学の中の教室など、施設等の効率的な運用というものもこういうことを併用することによってできるのではないだろうか。また、集中した高い講義が最新の題材等を取り入れてやる余裕も出てくるのではなかろうか。いま出ました単位の互換、いろいろ含めて検討しておったわけですが、そういう放送大学というものを設置する中で、既設の大学とのどういうかかわりあいの中でメリットを高めていくかということを、いまお答えもございましたが、単位の互換だとか、それから少人数教育の機会をこの機会に拡大できるとか、いろいろメリットが考えられるわけですが、さらに具体的に突っ込んだ議論としてこういったものをおやりになっておられるとすれば、どういう問題があるのか、それをお聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/101
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102・佐野文一郎
○佐野政府委員 まず、この問題については、放送大学の創設準備にかかわっている者だけが検討するということでは不十分なわけでございまして、国立大学協会なりあるいは私立大学側に対して、放送大学というものにどのように協力をしていただけるのか、また、それは単に放送大学の創設について協力をするということだけではなくて、いま御指摘の、放送大学を通じて大学間の単位の互換その他の問題を具体的にどのように推進をするかということを検討していただく必要がございます。そういう意味で、私たちは国立大学協会の関係の常置委員会の方へ、放送大学の構想についてぜひ御検討を賜りたいということをお願いをいたしております。具体的に国大協の常置委員会における検討は進捗いたしておりませんけれども、文部省としては国大協に対してそういった形での問題提起はいたしております。また、既設の私立の通信教育との連携というのも非常に重要な課題になりますが、これについては、放送大学の構想を検討している段階ですでに通信教育の関係の方々の御参加を得てきておりますし、いろいろと通信教育の側からも御要望も出ておりますので、それを十分にこれからの放送大学の構想の中に生かしてまいりたいと思います。いずれにしましても、まだそういう状況で、この放送大学を使ってどのように各大学が単位の互換なりあるいは単位の累積加算というようなものを推進をするかということについて具体的な検討が始まっているわけではございません。これはそういう方向で、放送大学を通じて大学あるいは高等教育全体のあり方を改革していきたいという趣旨をもって現在検討をしているところであると御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/102
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103・鍛冶清
○鍛冶委員 単位の互換とか、特に単位の累積加算制、そういったものは導入していこうという考え方は一応持って検討はしているということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/103
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104・佐野文一郎
○佐野政府委員 単位の互換につきましては、すでに制度的には開かれておるわけでございますから、問題は、それをどのように各大学が実現をしていくかということでございます。学部段階の単位の互換というのは、制度的には各大学がそれぞれ規定を整備する作業を進めておりますが、具体の互換というのはなかなか進捗をいたしておりせん。しかし、一般教育の段階では、放送大学の行います番組を通じて単位の互換を進めるというのは、これまでとは別の意義を持ったものとして各大学に受け取られるであろうことを期待しておるわけでございます。
単位の累積加算制は、単位の互換のように現行の制度の中で開かれているわけではございません。これからの検討課題でございます。しかし、いずれにしても、単位の累積加算ということで、それをもって大学卒業の資格を認めていこうということになりますと、その資格を認めるために、学生がそれぞれ多様な教育機関で取得した単位を全体として評価をして、それが大学を卒業したというに足りるほどのまとまりを持って、あるいはレベルを持って取得されているかを考える機関が必要でございます。文部省としては放送大学が、その性質上そういった役割りを担う機関に十分なり得るということを考えて検討しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/104
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105・鍛冶清
○鍛冶委員 次に進みまして、放送大学の問題についてはイギリスにおける公開大学の問題が再々例に引かれているわけですが、アメリカにおいては大学放送講座というものが現在行われておるわけでございますけれども、このアメリカにおいて行われているこういった講座のあり方について、文部省のお考えをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/105
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106・佐野文一郎
○佐野政府委員 アメリカにおきましては、御指摘のように放送を利用した大学教育がいろいろと多様な態様において実施をされております。しかし、イギリスのオープンユニバーシティーやあるいはわが国で現在検討しております放送大学の構想のように、全国的な統一放送を利用して、いわば放送を利用した通信教育によって卒業資格を与えるということを目的としたものはまだ設立をされていないように考えております。アメリカの場合には、放送を利用して大学教育を広く地域の方々に提供する、それによって所要の単位の一部を取得させる、そうした方法を通じて高等教育への進学をいわば誘引すると申しますか、奨励をする、あるいは通学の負担の軽減を図る、そういったことをねらいとしているのが一般でございます。放送の実施の形態も、地元の放送局の利用によるもののほかに、大学がみずから放送局を設置して実施をしているものもございますけれども、いずれもそれは地域的な範囲での放送の実施ということのように承知をしております。こうしたアメリカの教育放送の現状は大変示唆に富んだものだというふうに考えております。放送を利用して大学教育というものを公開していくということからは一つの行き方を示すものでもございますし、また、かつて先ほど御指摘のあった社教審の答申が考えた方向ともある意味では沿ったものになるわけでございます。
しかし、アメリカにおけるそういった放送を利用した大学教育の主体の相当部分を占めておりますコミュニティーカレッジの整備の状況であるとかあるいは高等教育全体の状況がわが国とはかなり違います。基本的には、わが国とアメリカの場合の放送事情、電波の事情の相違ということもございますので、わが国が直ちにこれを参考としてそのような方向で実施をするというわけにはまいらない点がございます。それは、社教審の答申をいただきながら方向転換をしていったということともある意味では軌を一にするものでございますけれども、少なくとも各大学が積極的に放送を利用して大学の教育というものを広く地域の方々に提供しようとしている、そういう姿勢というものは、わが国の場合でもやりようによっては実現をすることができるわけでございますし、また、これまで広島なり東北なりの大学と協力をして公開議座を実施しているのも一つにはそういったことをねらっているわけでございますから、アメリカの状況も参考にしながら、それに直ちによるわけにはまいりませんけれども、私たちも大学の教育のあり方というものについて各大学の御意見を伺いながら改善を進めてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/106
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107・鍛冶清
○鍛冶委員 次にまいりまして、文部省では放送大学は特殊法人として設置していこう、こういう方向です。当然のこととして、放送を媒体としてやるわけですから、この教育目的に利用する場合、この特殊法人という形でやるに至るまでには、放送法や電波法その他いろいろなものを種々検討された上で特殊法人が一番よろしいということで方向づけをされたと思うのでありますが、この特殊法人化が望ましいというふうに決定された理由についてお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/107
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108・砂田重民
○砂田国務大臣 放送大学に関する調査研究会におきまして、放送大学は、その授業内容を放送番組に編成をいたしましてこれを放送することを主たる教育手段とするものとして構想をされているものでございます。したがって、同構想におきましては、教学側の意図する授業内容が適切に放送番組化されるということを考えまして、教学組織と放送機構が一体のものとして構成されること、すなわち大学の設置主体が同時に放送事業の主体でもある、これが望ましい姿とされているわけでございます。現在の大学の設置形態といたしましては、国立、公立、私立、いずれかによらなければなりませんが、以上のような放送大学の設置形態といたしましてどのような形態が最適であるかにつきましては、文部省といたしましてもさらに慎重に検討をしなければならないと考えておりますが、放送大学の基本構想あるいは放送大学の基本計画に関する報告、これによりまして、放送大学の設置形態につきましては、国・公・私立のいずれにもよらず、新たに特殊法人を設けてこれを大学の設置主体とするとともに、当該特殊法人が放送局の免許を受けて、みずから放送番組を制作して、そしてこれを放送する、それに必要な施設及び人的組織を持つものとするという考え方があるものでございますから、こういうことに基づいて特殊法人が望ましいという考え方を持ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/108
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109・鍛冶清
○鍛冶委員 特殊法人でいくのがいいか悪いかという議論はいろいろ出てくると思います。いま大臣からお答えいただいた中でいろいろな形態が考えられたということもおっしゃっておりますし、事実そういう形があるわけです。そういったものを一つ一つチェックなさったと思うのですけれども、その上で特殊法人がよろしいという形でなられたと思うのですが、それに至るそういう資料を小委員会等でまた御用意をいただいて御提出を願いたいと思います。小委員会ができる前から注文みたいで申しわけないですが、たとえば、一般放送事業者としてやる場合、また国立大学としてやる場合、また場合によっては私立学校法人等でやろうというような考え方とか、いろいろ形態は考えられたと思います。そういうものを種々検討された中で、こういうことでこっち、これはこれでだめだというようなことで特殊法人にしたんだというようないきさつがわかるような資料をぜひとも御用意しておいていただきたい、こういうように思います。
それから、いい悪いは別のことでお伺いしたいのですが、特殊法人がよろしいということで御決定になって、これが今回の予算措置をしようという段階で残念ながらつぶれたということでこのセンターの設置ということに振りかわっているわけですが、その理由の一つに、いま政府全体の方向として特殊法人は減らしていくというような閣議における決定もありますし、行管の方向もあるようです。しかしながら、もし文部省がそういうことで特殊法人が最大で、しかも国民の皆さんのためにも、大学を開放し、レベルアップのためにもぜひ必要であるというのならば、悪い特殊法人はなくしていかなければならぬということでありましょうけれども、そういう国民サイドから見て必要だと文部省であくまでもお考えのようであるならば、そこらあたりを争点として、もっと強気でやって、その予算の獲得並びに放送大学の設置というところまでいくべきではなかったのか。そこらあたりが大変腰が弱かったのではなかろうかというふうな気がするわけですが、そこらあたりはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/109
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110・砂田重民
○砂田国務大臣 実は行政改革の方向づけというものも重要な問題でございます。そしてその基本的な行政改革の取り組み方というものが決定をされますと、新しく特殊法人をつくるという問題も当然その行政改革の方の基本方針の制約を受けざるを得ないわけでございます。いま、腰が弱かったではないかという御指摘がございましたけれども、私、着任いたしまして早々のことでございました。ただ、基本的に考えておりますことは、税金の使途について、国民の皆さんは当然安い行政を期待されるわけでございまして、その御要請にこたえていかなければなりませんが、たとえば放送大学というものが勤労青少年を含む広い国民各界各層にどれだけのメリットをもたらすものであるか、それに必要な資金であるならば国民の皆様のお許しがいただけるかどうかというところに一番大きな問題があろうかと思いますので、そういう御理解をいただく努力をいたしながら、また当委員会に小委員会も設置されることでございますから、小委員会の御意向も承りつつ、政府部内での意見の一致を見るための努力を続けてまいりたい、かように考えるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/110
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111・鍛冶清
○鍛冶委員 放送大学設置についてはこれから小委員会で議論されるわけですから、私どもとしても賛成の立場とか反対の立場とかいうことを明らかにして御質問しているわけじゃございませんので、その点は明らかにした上でさらにお伺いをしたいのです。
仮に特殊法人として発足いたしました場合、膨大な予算が必要になるというふうに言われているわけです。資本的経費では八百七十億円、それからこの放送大学が最終的な規模で最大の規模になった場合には経常的な経費が年間二百九十億円必要であるというふうに私たち伺っているわけですけれども、数字が違っておれば御訂正願いたいのですが、こういう非常に膨大な予算を使いながらこの大学は運営されていくわけであります。そこで私どもは非常に心配をいたしますのは、経常費でさえ二百九十億円というものが毎年かかるという中でこれが実施された場合に、果たして効果的に効率よく運営されるのかどうか。実際にこの放送大学を利用して、そして望む方向にいった場合はいいわけですけれども、逆にいく場合も考えられるような気がするわけです。もしそうなりますと重大問題になるわけですが、そういった問題もお考えになっていらっしゃるのかどうか、その点、お伺いをいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/111
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112・砂田重民
○砂田国務大臣 資本的投資あるいは経常費等の数字は御指摘のとおりでございます。
放送を利用して大学教育を行います場合に、通常の大学教育でありますと必要とされない放送番組の制作等、あるいは放送に要します経費を伴うことから、放送大学というようなもの、オープンユニバーシティーあるいはアメリカのようなすでに実施をしておりますところでも、経費とその効率について論議をされているところでございます。その効率はやはり学生数の多少にかかわるところが非常に大きいわけでございまして、英国のオープンユニバーシティーにつきましては学生一人当たりの経費が通常の大学に比べて三分の一以下という評価がされております。これは私どもの非常に大きな参考になることでございますが、わが国の場合につきましても、多数の希望者の参加を得て効率の高い教育が行われることを期待いたしながら準備に取り組んでいるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/112
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113・鍛冶清
○鍛冶委員 特殊法人として出発した場合、当然、国から大変な予算がいくわけで、独立しているとはいいながらやはり予算のチェック等が行われるわけであります。その場合に、どうしても国からいった予算を含みながら独立採算という形が強く言われるのではなかろうかというふうに私どもは思うわけです。その中で、たとえば放送大学にはこの地域においてはどれくらいの人が入学しているんだというようなことが全国的にわかってまいりました場合に、杞憂かもわかりませんけれども、財政的な面から考えた場合に、あるいは独立採算という立場からいえば、もうちょっと入学者をふやさないといけないとかというようなノルマ的な形でプッシュされるというようなことがあるとこれまた大変な問題になるのではないかという懸念を持つわけですが、そういった点についてはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/113
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114・佐野文一郎
○佐野政府委員 御指摘のように、放送大学は非常に大きな事業になりますし、またわが国にとっては初めての試みでございます。したがって、この放送大学をつくっていく手順としては、先ほど御指摘のございましたような全国にネットワークを張った最大規模に達するまでの間はやはり慎重なステップを踏んでいく進め方が必要であると思います。そこで現実のそういったいろいろな条件を十分に考えながら創設を進めていかなければなりませんので、五十三年度に特殊法人を新設する要求をいたします際には、さしあたって東京タワーから電波の届く範囲を対象地域として第一期計画を立てる。その第一期計画では、資本的な投資が約百六十一億、経常的な経費が約四十七億程度の計画になりますが、それを立てて、そこにおける実施の経験、あるいは実際にどのような学生がどのように入ってきてどのように勉強していくかというところを十分に見きわめながら次のステップを踏んでいくということを考えたわけでございます。そういう慎重な対応をしながら、御指摘のような点について実際にスタートした後でそごを来すことのないように慎重に進めてまいらなければいかぬと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/114
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115・鍛冶清
○鍛冶委員 そこで、放送大学の法的な性格としては、昭和四十五年七月に出されております放送大学準備調査会の報告の中で「放送大学は、学校教育法上の正規の大学とする。」というふうに、これは文部省でお出しになっている資料でもそういう形で出されておるようであります。いわば放送大学を成功させた暁には社会的に高い評価を得るようにしたいという考えがあるようであります。ところが、放送大学という内容からしますと、私たちはいわゆる入学してくる方々の質の問題が大変心配になるような気がするわけです。こういうように法的に学校教育法上の正規の大学という規定づけ、枠がはまってまいりますと、当然いろいろ整備しなければならなかったり、講座の内容についても余り開放的なものやレベルダウンしたものはできないというようなことがあるだろうという気もするわけであります。ところが、文部省の調査結果を見てみますと、どうも国民の皆さんの中では大学を開放講座的なものとしてやってもらいたいというような意向も大変強く出ているようでありまして、そこらあたりが大変一つの問題になってくるような気がするわけでありますが、そういった点についいてのお考えをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/115
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116・佐野文一郎
○佐野政府委員 御指摘のように、放送大学についての需要の予測調査をいたしました際に、放送大学を通じて勉強したいという者の数は五〇%近いものがございます。しかし、その中で、放送大学で大学卒業の資格を取りたい、あるいは卒業の資格でなくても単位の取得をしたいという人の数、あるいは、そういうことを希望される方の中で、放送大学が必要とする自宅における学習であるとかあるいは学習センターにおけるスクーリングだとか、そういったものにも参加できるという積極的な意欲と余裕を持っている方のパーセントは全体の七%程度のものでございまして、それにいたしましても、そうした人々は学歴的にも年齢的にも非常に多様な形態の方々が当然予想されるわけでございます。予測調査でもそういった実態が出てきております。したがって、その質的な水準がどのようなことになるかということについての懸念があるというのは御指摘のとおりであろうかと思います。
しかし、放送大学の授業は放送を通じて広く国民の前にオープンになるわけでございます。その内容、水準あるいは教材は社会一般に明らかにされるわけでございます。そういったことによって、放送大学の実施する教育のレベルというものは国民一般の前に明らかになるということが一つでございます。そして試験問題等についても、もちろん多数の教官が参加して、そして適正な問題がつくられ、客観的な水準を持ったものとして試験が実施されて、それに合格した者が単位を取得し、それを積み重ねて卒業していく、それぞれの段階でチェックが行われ、認定が行われていくわけでございますので、この大学は、入学のときにはこれは定員いっぱい、試験というようなことではなくて、いわば先着順と申しますか、そういった公正な方法で学生を受け入れるということになると思いますけれども、出るときにはこれは非常に出るのはむずかしい。入りやすくて出にくいという大学になるでございましょうし、またそういったことによって大学の評価あるいは学生の質というものは確保されていくと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/116
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117・鍛冶清
○鍛冶委員 いま答弁の中で先着順というような話があったのですが、これは希望する者は全部入学をさせるというたてまえなのか。先着順というお言葉があるところを見ると、多少選抜といいますか、選別をするようなふうに聞こえるわけですが、そこらあたりはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/117
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118・佐野文一郎
○佐野政府委員 第一期の計画では、入学定員について一万名を考えているわけでございます。これは普通の大学と違ってかなり弾力的に学生を入れることはもちろんできるわけでございますけれども、やはり単位を取得していこう、あるいは単位を取得して卒業しようということになりますと、大学として必要なスクーリングを実施をしなければなりませんし、また通信教材による添削も実施をしていくわけでございますから、そういう意味では無制限に受け入れるというわけにいかない点がございます。入学定員は非常に大きいわけでございますけれども、それをオーバーした場合にはやはりお断りをしなければならない場合がある。ただそのときに一般の大学のような学力による選抜というようなことではなくて、やはり御希望にできるだけ沿うということを考えて、先ほど先着順というようなことをたとえばとして申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/118
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119・鍛冶清
○鍛冶委員 先ほどにちょっと戻りますが、大学としてこれは質的な内容も含めて維持していくということになりますと、当然大学としての研究体制の問題、大学では研究ということが重要な任務の一つになっているわけでございますが、こういったものはどこで研究体制というものを組み、行われるように整備をしていくのか。また図書館等も当然必要になってくるであろう、大学院の問題も考えなければいけないのではないかというようなことが考えられるわけですが、その点についてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/119
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120・佐野文一郎
○佐野政府委員 放送大学は、教養学部を置く正規の大学でございます。事の性質上、この大学には他の国・公立の大学の先生方がいわば客員教授のような形で非常に広く参加をしていただくことが必要であろうと思います。そういった先生方がそれぞれの所属する大学で研究をされたその成果がこの放送大学の教育の中に生かされる、そういう面を強く持つ大学になってほしいわけでございますけれども、しかしながら、正規の大学である以上、やはり大学として放送大学固有の学術的な研究を欠きますと、これは学術研究機関としての大学の存立の意義が失われるという点がございます。放送大学の基本計画に関する報告によりましてもこの点の御指摘がございまして、「放送大学にふさわしい学術研究体制を整える必要がある」という御指摘をいただいております。今後どのように放送大学の学術研究体制を整えていくかにつきましては、大学の創設それ自体がこれから全く新しいものとしてつくっていく分野でもございますので、今日の時点であらかじめ固定をするというのはむずかしいと思います。今後創設準備が進められていく過程で関係者の意見を徴しながら固めていくということであろうと思います。基本的な方向としては、やはり大学にふさわしい教育研究体制というものは整えなければならないことはもとよりでございます。図書館につきましても、大学である以上は必要でございます。ただ、どのくらいの蔵書数を持つのか、あるいは座席数をどのくらいにするのかという点につきましては、この大学は学生がキャンパスに通学をしてくるということではないという特殊性を持っておりますので、そういった点を考えながら、今後大学設置審議会の基準分科会等での検討をお願いしていかなければならないところだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/120
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121・鍛冶清
○鍛冶委員 あと二点お伺いしたいのですが、大学の通信教育をやっておるところとの兼ね合い、これは先ほども嶋崎議員から御指摘がございました。これは大変な問題がいろいろ今後考え得ると思います。詳しい内容等については小委員会等でいろいろとお尋ねしながら進めていきたいと思っておりますが、ただ一つ、放送大学を設置しますと、当然設置基準が考えられると思うわけですが、たとえば通信教育をやっている大学と比べて設置基準が大変厳しくなりますと、通信教育をやっている大学の側がいろいろ厳しい対応を迫られるだろう。またさらに、逆に基準を甘くすれば、たとえば学生が放送大学の方に集まって、特にスクーリングの場合はそういう傾向が出てくるのじゃなかろうかというような心配もあるわけですが、そういった形について御検討なさっていらっしゃるのかどうか、その辺の御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/121
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122・佐野文一郎
○佐野政府委員 放送大学は、教育方法におきまして放送を利用するということがございますけれども、制度的には、現在の私立大学の通信教育と同じように通信による教育を行う大学として、通信教育の一つの態様をなすものと考えております。このために、放送大学に係る大学設置基準を検討するに当たりましては、放送大学を含めた大学通信教育一般に適用される設置基準を想定いたしまして、それをどのように適切なものとするかについて、現在私立大学の通信教育の関係者も御参加をいただきまして、大学設置審議会の大学基準分科会の中に大学通信教育・放送大学特別委員会というのを設けまして御検討を賜っているところでございます。まさに、非常に高い基準を要求することは現在の通信教育にとって矛盾を生ずることになりますし、また安易に現状と妥協してしまうということになりますと通信教育全体のレベルを将来ダウンさせることにつながりますので、そういったことのないように、現状を十分に踏まえながらも最も適切な基準というものをつくっていただくということで現在御検討をいただいております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/122
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123・鍛冶清
○鍛冶委員 最後の質問になりますが、いまの件は、通信教育をやっていらっしゃる大学、これは私立大学が全部でありますが、大学の教育を開放するということで大変に先駆的な立場で苦労して今日までこられておるわけでありますし、そこらあたりが圧迫されるというような形は万が一ないとは思いますけれども、そういったことを含めてよく意見をお聞きいただいて、設置基準等についても公正な形でお考えを願いたいと御要望を申し上げておきます。
最後の問題ですが、放送大学が設立されますと、放送法との関係で一つだけちょっと気になることがあるわけですが、それは大学の学問の自由というものとの関連でございます。放送法の中では、五十一条の二の中で放送番組に対する審議機関を設置するということになっております。そして、そこで四十四条の三項の規定に適合しているかどうかという、放送の番組の内容をチェックするような形にたしかなっておると思います。その中で政治的に公平であること等々何項目かチェックするようになっているようでありますが、これが大学の学問の自由を侵害するというようなことのおそれが出てくるのではないかというふうな心配をいたしておるわけですが、その点についてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/123
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124・砂田重民
○砂田国務大臣 放送法におきまして、放送大学の学問の自由との関係で問題と考えられます点が二点あると思います。その第一点が放送事業者の番組編成の自由の問題、第二点が政治的公平の保持の問題、番組編集の準則等の問題でございます。
第一点の番組の編集権の問題につきましては、放送大学におきます基本的な問題でございまして、大学と放送事業者の意見が対立をするようなことがありましたならば大学の意図する番組が放送されないというような事態が起こるわけでございます。まさに大学の学問の自由というものがそこで貫徹されないということになるわけでございます。そういう事態を避けるために、従来の放送大学構想におきまして、放送大学の設置主体を放送事業の実施主体と総合していく、こういう考え方に立ちましたのも、大学がみずから放送を行うことによってこのような摩擦点が生じないように考えたからであって、これが一つの事業主体構想を立てた理由でございます。
第二点の政治的な公平の保持の問題は、大学みずからが放送主体となります場合に問題となることでありますけれども、見方によりましては教授の自由にかかわる問題であると考えられます。放送大学の番組にありまして、放送番組として直接家庭の中に入っていくものであることを考えますと、この問題は大学として自律的に当然留意すべきことであるわけであります。また、教育基本法の政治的活動禁止の趣旨からいたしましても、放送法の規定をまつまでもなく、大学自身におきまして守っていかなければならないことでございますので、この点については学問の自由を侵害するということには当たらないのではないか、こういうふうに考えているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/124
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125・鍛冶清
○鍛冶委員 それでは、あと時間がありますが、関連質問として有島議員と交代をいたしたいと思いますので、私の質問はこれで終わらせていただきます。大変ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/125
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126・菅波茂
○菅波委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。有島重武君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/126
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127・有島重武
○有島委員 関連いたしまして二、三の質問をさせていただきます。
ただいまも話題になっておったことですけれども、通信教育との関係は一体どうなっていくのだろうかという点です。それで、いまの大学局長のお答えですと、通信教育の一種である、そうお答えになったようなんですけれども、それでよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/127
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128・佐野文一郎
○佐野政府委員 通信教育の一つの態様であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/128
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129・有島重武
○有島委員 御承知のように、通信教育というのは現在では大学に属して、それで大学の一学部の扱いでやっているわけですね。一つの態様であるというのは微妙な含みがあるようなんだけれども、これは別に理屈で言おうと思っているのじゃないのでして、いま通信教育が非常な努力をなさっているのですけれどもなかなかはかばかしくはいかない。いま御説明があったように、このセンターにおきまして通信教育の方々にも御意見を承っておると言いますけれども、それは本当にがっちり四つに組んで、通信教育も充実していく方向なんだというふうに四つに取り組んでおるのか、ちょっと意見だけは聞いておこう、そういったニュアンスでやっていらっしゃるのか、その辺はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/129
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130・佐野文一郎
○佐野政府委員 広く言って通信教育の一つの態様であると思います。ただ、制度的に申しますと、御案内のように、現在の通信教育は、たとえば中央大学の法学部が通信による教育を行うということで実施がされているものでございます。既存の学部があって、そしてその学部がいわば通信による教育を行うというたてまえになっておるものでございます。放送大学の場合には、ある意味ではそれを一歩進めて独立の通信制の大学ができる。既設の教養学部があって、その教養学部が通信教育を実施するというのではなくて、もっぱら通信による教育を行う学部ができるという点において既存の通信教育とは若干異なるところがあります。そのことは、放送大学がもし今後国会に御審議をお願いをしてスタートするということになれば、そういったことを前提として通信教育全体の設置基準の改定を考えなければなりませんし、また必要であれば学校教育法の改正を考えなければなりません。そういう場合には、放送大学と別に独立の通信制の大学が別途できるということも、ある場合には制度的には可能性が開かれるということに相なろうかと思います。そういった関係にあるわけでございます。
そのことはそのことといたしまして、放送大学がスタートをしたときに、既存の通信教育がそれによってダメージを受けるというようなことでは全く趣旨に反することに相なります。これまで通信教育の振興につきましては、放送大学の調査研究がスタートして以来、たとえば通信教育の教材が非常に古いもののままで改定されずに使われているというような実態がございましたので、これは各通信教育を実施している法人やあるいは通信教育協会に対して、教材を改定しあるいは開発をするための補助を従来実施をしてきておりますし、その他、放送大学を設けるための調査研究の過程におきましても、いろんな形で通信教育の方々に御援助を賜ってきております。通信教育協会の方々からは、放送大学がスタートをする場合に、いわば既設の通信教育との間の共存共栄の関係というものを確保していこうではないか、そうして国としてもより私大の通信教育に援助の力を入れてほしいという御要望が出ておりますし、そのことは私どもも全く異議のないところでございます。これからも通信教育の担当の方々と十分に御相談をしながら、具体的にどのような措置を講じていくかについて検討していきたいと考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/130
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131・有島重武
○有島委員 わかりました。そうすると、通信教育の設置基準改正というようなこともいまお考えになっておる、そういったことを含んで共存共栄していかれるようにいま通信教育側とお話をセンターでし合っていく、そういうことでよろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/131
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132・佐野文一郎
○佐野政府委員 新しい設置基準の内容が既設の通信教育の側にとって困ったものになっては非常に大変でございますから、設置基準を検討する基準分科会の特別委員会に私大の通信教育の関係者の方にすでに御参加をいただいております。私大の通信教育の方々からも、改善である、前進であるという評価を受けるような基準をつくりたいと考えて努力をしております。そのこととは別個に、たとえば、放送大学がスタートした場合に、地方における学習センターを放送大学だけが使うのではなくて、その学習センターの一部を既設の通信教育がスクーリングに活用できるような方法はとれないか、そういった点についてもこれまで話し合いをいたしてきておりますし、私たちはできるだけ通信教育側の御要望に沿えるような形で構想を固めていきたいと思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/132
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133・有島重武
○有島委員 文部省では従来とも通信教育は決して軽視はしておらないということでございました。それで今後ともというようなことだけれども、やや質を違えて重要視していかざるを得ないというふうになってきたというように受け取っていいのじゃないかと思うのですけれども、文部省内に通信教育の部局というものはあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/133
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134・佐野文一郎
○佐野政府委員 特に通信教育だけを担当する部局というものはございません。これは事柄に応じまして、大学の通信教育というものについて全体として大学局の大学課が対応いたしておりますし、また私学助成という面からは管理局が対応しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/134
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135・有島重武
○有島委員 将来そういった部局をおつくりにならなければならないというようなお考えがおありになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/135
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136・佐野文一郎
○佐野政府委員 これからの高等教育の改革を考えていく場合に、いわゆる高等教育の構造を柔軟化していく、高等教育に国民が入ってくるチャンネルをもっとふやす、そうして各高等教育間の流動性をもっと高めるというような基本的な方向がございますが、その上で通信教育というのが非常に重要な役割りを持っているということは私たち十分に認識をしております。ただ、そのことと、通信教育を担当する部局を新たに設けることが適当であるかどうかということとは若干事柄を異にするように思います。通信教育を担当する特別の部局を設けることがいいのか、いまのように大学教育の中に通信教育というものを位置づけて、そして大学教育を全体として担当する課がそれを推進していく方がいいのか、そこのところはメリット・デメリット、それぞれあると思います。検討はさせていただきますけれども、直ちにいま特別の部局をつくる考え方は持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/136
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137・有島重武
○有島委員 課はあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/137
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138・佐野文一郎
○佐野政府委員 課としては大学局の大学課が担当をしているわけでございます。あと、私学助成の方は管理局のそれぞれの課が担当いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/138
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139・有島重武
○有島委員 教育という問題と教育メディアという問題があるわけでございまして、放送というのはメディアの一種である。メディアといえば、いままでの印刷物による、これも一種のメディアであったわけですね。そこで鍛冶委員からもやや古い話がいろいろと持ち出されておりましたけれども、私ども、大学が量的に大変拡大されてきた、そしてそれが質の向上とやや相伴わないところがあるんじゃないだろうか、そういった問題意識を持って当時取り組んでおったわけです。
そしてもう一つは、教育そのものが教育メディアの方にどんどん寄っていって、何かメディアがあるとそこに教育があるような、やや手段を目的と履き違えてしまうような状況が起こっているんじゃないだろうか。そこに人間疎外というような状況も大きなかかわり合いを持つのではないだろうか。私どもは、人間教育の場として学校制度、社会教育も家庭教育もですけれども、それが一番の中軸だと思っております。そこで、大学において形の上でもってあらわせるのは少人数の教育というものをどうしても確保しなければいけないんじゃないだろうか。ところが少人数教育を確保するということはきわめてむずかしい。それじゃ、少人数教育は確保する、そのかわりに授業形態というものをさまざまにすることにして、それで少人数教育、大体五人以下ぐらいのいわゆるゼミといいますか、あるいはイギリスでは一般化をしておりますチューターの制度といいますか、ほとんど一人の先生に何年かは師事していく、そうしながらいろいろな学問をやる、そういった方向が望ましいんじゃないかということを考えたわけです。それである場合には、今度は四十人クラスもあってもいいだろう。四十人以上になると顔と名前が余りよくわからなくなるわけでして、大教室もあってもいいだろう、そして放送メディアも使ってもいいだろう、あるいはカセットのようなことでもってやってもいいだろう、そのかわりそれは少人数教育というものを確保するのが一番大切なことだ、そういうふうに私たちは考えてこの放送大学の問題をずっと研究してきたわけなんです。
そこで、このことについて、これは大臣に御見解を確かめておきたいわけなんだけれども、国民一般に開放する放送大学、これはいわゆる拡大という方向には非常によろしいわけです。それに伴ってスクーリングというようなことはこれは十分留意されておると思うのですけれども、その中で、やはり担当主任教授といいますか、担当教授といいますかで少人数の本当に人間的な触れ合いというものを深めていく方向、こういったことを十分ごしんしゃくいただきたいと思うわけです。いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/139
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140・砂田重民
○砂田国務大臣 放送大学というものが具体化されていくその過程におきまして、先ほど大学局長がお答えをいたしましたように、第一次の計画は東京タワーから電波の届く範囲ということで第一期の計画を立てているわけでございますけれども、当然全国にだんだん広めていかなければなりませんし、そういう段階で地域的なセンターというものも当然置いてまいらなければなりません。そのセンターにおきましてどのようにスクーリングをやっていくか。いま有島委員がおっしゃった、勤労青少年を含む国民各界各層の非常に広い範囲の中に電波をもって教育の機会均等をさらにふやしていく、広げていくということと、そのセンターにおきます。それが補助的なものでございましても、やはりそのスクーリングのあり方等、まさにこれからの大切な検討課題であると考えておりますし、いま有島委員が御指摘になりました点も含めて、重要なこれからの放送大学のあり方としての大切な検討課題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/140
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141・有島重武
○有島委員 イギリスのオープンユニバーシティーや何かの場合には、イギリスそのものに、イギリスというかブリテンというか、チュートリアルのシステムというものが定着しているものですから、各地域においても担任の教授、そういうものがあることになっておるようです。そういったことが可能かどうか、これは御検討いただきたいわけです。
それから、そういったことのまた延長になろうかと思うのですけれども、さっき大学局長から鍛冶委員に対してのお答えの中に教材という言葉が出てきた。教材研究ということが出てきた。一般に教育における教材の扱いということが、これは担当初等中等教育においても議論されてきたわけです。それで教材というと恐らく、ぼくが危惧するのは、文部省の方から見れば責任ある教材を出さなければいけないであろうということにおなりになろうかと思うのですね。
それを裏返して言うと、教材の権威づけというようなことが大切になってくるんじゃないだろうか。そうすると今度は権威づけのために教材というものが大変また制約されてくるというようなことが起ころうかと思うのです。
さっきも大臣から番組編成の問題、それから政治的公平の問題というようなことが出ました。これも、絶対公平ということを期するなら本当に手も足も出なくなるようなことも起こり得るわけですね。いろんな工夫はあってもどこかから文句が出てくるということが起こり得るでしょう。そういうことでもって変に硬直した騒ぎになるということは余り望ましくない。センター側としてはなるべく公平に、なるべく正しいものをというような、なるべくという限定づけしかできないわけですね。それは衆知をしぼってもそうなるでしょう。
そうなってまいりますと、教材に対してどういうふうにそれを受け取っていくかという、聴視者側、学生側の主体性ということが今後一層問われてくる時代が来るでしょう。いまもきっと、放送大学ができなくても、恐らくいろんな電波が飛んでおりますし、いろんな本が出ているんです。それで、小学校や中学校、特に高校などにおける教育の仕方が、いまは教材を記憶していくということに偏り過ぎているというようなことがあろうかと思うのですね。だから、記憶されてしまうのだから完全無欠でなければならない。したがって、これはよくよく検査してみなければいけないというようなことにつながってくるのだろうと思うのです。むしろ、いまの小・中なんかの教育についても、教材が非常に優秀になった代償として、実物に触れていくあるいは実生活の一つの経験を積ましていくというようなことが欠落しやすいという点が一つと、それから教材に頼り過ぎて、先生もそこに引っ張られ過ぎてしまう。教材を用いていくというふうになかなか言うべくしてなりにくいという状況が現在もあろうかと思います。今度も学習指導要領なんかではそういった考慮も払われているようですけれども、放送をメディアとして本格的にやり出すということにかかわって、小学校、中学校あるいは高校の教育のやり方についても相当な配慮が払われなければならないのじゃないだろうかと思うわけであります。いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/141
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142・砂田重民
○砂田国務大臣 有島委員の御質問の前段の部分は、放送大学を設立するための一連の法律の御審議をお願いする段階までに、国大協等のお考え方もいただきながらだんだん固めてこなければならないことであると思うのです。ですから、きょうここの場で直ちに具体的に文部省だけが何か勝手な決めつけ方をすべき筋合いではない。まさに重要な研究課題であることの御指摘でございまして、これから私どもといたしましては、センターの設置が認められて、このセンターが中心になりまして国大協等々とともに検討していく課題であろうと思います。
それから後段の御指摘の、小・中・高の教育内容にも関連をしてくるではないか、こういうことでございましたけれども、すでに決定をいたしました小・中学校の学習指導要領というものは、有島委員が御指摘になりましたような、暗記、暗記で、それこそ暗記の積み重ね、それを改める、基礎、基本を、暗記ではなくて理解をしてもらう、理解をさせるというところに重点を置いた学習指導要領の改定であったわけでございます。それのうまい形での移行措置を願っているところでございます。この放送大学というものができました将来、小・中・高の教育にも関係づけられてくるということには、私もそのような感じを持ちますということ程度はお答えができると思いますが、なお具体的にその細部につきましてはまさにこれからの検討課題である、かように御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/142
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143・有島重武
○有島委員 具体的に申しますと、家庭の茶の間に流れているテレビの番組、たとえば漫画の番組、こういったことが学校の教室でもって話題になって議論をされておるかどうか、そういった試しがあるかどうかということと、それから、そういうような扱いをする教師は望ましいかどうかということですね、どうでしょうか。これは諸澤さんにちょっと伺っておきましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/143
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144・諸澤正道
○諸澤政府委員 小・中学校の段階でも、テレビの放映された教材を一斉に見させるというようなことをやっているところはございます。実際に私なんか学校へ行って見てみますと、教科書のほかに副読本あり、各種のスライドあり、実物見本ありというので、むしろ教材のはんらんではないかというふうに印象を私は持っているわけです。ですから、テレビの放映を利用するということも、それは利用の仕方、その方法、取り扱い、こういうことは教師がよほど配慮をしていただいてやる必要があるのであって、そのこと自体は私はうまく使えば有効だと思いますけれども、漫然とテレビを見せる、あるいはいろいろな教材があるからそれをみんな使わせればいいというものではないのじゃないかという感じを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/144
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145・有島重武
○有島委員 これもちょっと誤解があったかもしれません。いつも教室に囲っておいて、そこで見せるというのが教材だというのではなくて、子供たちがほとんど共通に見ている漫画だとかそういうものがあるわけです。そういうものをとらえて子供たちと議論をするというようなマナーは、いろいろな見方があるわけです。それで子供たちもそれによって非常に生き生きと議論をいたしますし、それをまた家庭に持って帰ることもあるわけですね。そういうようなことが、いまはゆとりがないせいか知りませんけれども、欠けておるのじゃないか。それから、学校に持ち込んで、これが教材であるというものが教材のような錯覚を起こし過ぎているのじゃなかろうか。こちらの態度さえしっかりすれば、いろいろなところに教材は転がっておるのだというような構え方ですね。そういうような構え方に移行していくということが、この放送大学を出発させていくのと大体並行して進んでいかなければ、さっきの公平なようにいろいろ注意をしても、神経ばかり使って、ますます何かおもしろくないものになるという可能性があるのじゃなかろうか、そういう危惧だったわけです。大臣、いかがでしょう、大体おわかりでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/145
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146・砂田重民
○砂田国務大臣 実はまだはっきりわからないのです。ただ、学校で提供する教材だけが教材だとは私は毛頭考えません。やはり児童、生徒には、社会のいろんな現象、お父さんお母さんに連れていってもらった公園での遊び、その公園での大人たちの振る舞い、それがいい教材になったり悪い教材になっているのは現実の問題でございます。いま、テレビで漫画を見るとおっしゃいましたけれども、漫画にもまた好ましい漫画もあれば困る漫画もございます。しかし、非常に大ぜいの子供たちが見ている、そういう漫画を教室で先生方が取り上げて、子供たちと一緒にその漫画の内容について考えるということは、私は大変好ましいことだと思います。そういう指導を先生方の創意工夫でむしろもっと考えていってほしいということを期待をいたすものでございます。わからないと申し上げたのは、そのことと放送大学とがどう結びつくか、ちょっともう一つわからないものですから、申しわけありませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/146
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147・有島重武
○有島委員 国民一般に、そういった与えられた教材だけが教材じゃないのだというようなことが一般化していく、それから何か話題になったことについて本当にディスカッションし合っていく、そういうような態度がしっかり根づいていくということ、これがないと、幾ら機会均等だといってますます拡大しても、それはこちらの期待したほどのなかなか結果が生じないのじゃなかろうか。放送大学というのはあってもなくても、いろいろな情報は拡大し、教材が多くなっていくわけですから、ますます今度は初等中等教育の段階からそういった配慮をむしろ意欲的に持つように、文部省でもって指導できる部分とできない部分とあるかもしれませんけれども、そういった意識を持っていただきたい、そういうことなんですよ。おわかりいただけるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/147
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148・砂田重民
○砂田国務大臣 わかりました。そういう意識を持ってまいります。学校で提供される教材だけが教材ではないということを私申し上げましたが、これは小・中・高校を通じてまさにそうであろうと思います。およそ教育の場とは関係ないような、たとえばロックの歌詞の文句でも、青少年、子供たちはその歌詞の中から、平和を大事なものだと思い、友情を大切なものだと思う、そういう教材にまたなっているわけでございます。そしてまた放送大学も教養学部を考えているわけでありますだけに、広く人文、自然にまたがる非常に幅の広い教育内容に放送大学の教育内容がなっていかなければなりません。先ほどメディアのお話がございましたが、メディアが重要なものであるということは認識をいたしますけれども、メディアはメディアであって、そのこと自体研究の対象にしてまいらなければなりませんけれども、そのメディアを通じて流す教育内容はむしろそれよりも大切なことでございますから、その中身につきましては、これも大学局長が先ほどお答えいたしましたように、国・公・私立にまたがる優秀な先生方でこの教育内容を検討していただくわけでございますが、その教育内容の幅のことについても、いままで枠をはめられていたような、いままで考えられていたような教材だけでいいかどうかということをあわせてひとつそういう場で検討をしていただくように私どもも心がけていこうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/148
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149・有島重武
○有島委員 いまの問題は教員養成の問題ともややかかわりがあることでございますけれども、そういった構えでもっていってくだされば、今度はセンターの中のお仕事はお仕事として小委員会の方でもっていろいろ議論もさせていただきたい、そう思うわけです。
最後に、放送大学というふうに言っておりますけれども、私どもからすれば、どうして大学というふうに格づけをしなければならないのか。そうじゃなくても、共同利用ということでもってよろしいのではないか。各大学がその教材を共同に利用できるものはどんどん利用していきましょう。放送大学というやや閉鎖的なものをつくって、そこの卒業資格を与えますというようなことは、大変お金ばかりかかって、入学者は多かったけれども卒業者は非常に少ないという結果に必ずなるであろう。だから、あながち一つの閉ざされた大学にしなくてもいいじゃないかというふうにこれまで考えてまいりましたけれども、大学局長、その辺はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/149
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150・佐野文一郎
○佐野政府委員 たとえば、放送教育開発センターが創設されることによりまして、各大学が放送を利用して大学公開の授業を活発に実施をする、あるいは放送教育開発センターの放送番組を各大学が授業に利用する、そういうことが広く行われることになりますればそれなりに大学教育の開放が進展をいたしますし、また大学教育の改善に資するところは非常に大きいと考えられます。また、それを契機として単位の互換あるいは単位の累積加算の制度の検討が進むということになれば、これまたその面の意義は大きいと思います。しかし、各大学による個別的、地域的な大学公開議座の実施であるとかあるいは大学教育の中に放送教育を取り入れていくというような方向では、受講生に体系的な大学教育の機会を提供されることになるのかどうか、その点にやはり困難な問題があると思います。方向としては確かに、一たん社教審が答申をしましたように、各大学がそれぞれ放送事業の免許を受けて放送局を持つというようなことが考えられた時期があるわけですし、それはそのメリットを私たちは十分に理解をいたしますけれども、現実の課題としてはなかなかそこのところは、うまくそういう形で電波を使うわけにはいかないであろうという点があるわけでございます。各大学が地域の民間放送事業者と連携をして、その電波を使って放送教育を各大学として実施をするということもあるかもしれませんけれども、これまたいま申し上げたようにやはり局地的なもの、部分的なものにならざるを得ないと思います。広く社会人あるいは家庭婦人に体系的な大学教育の課程を放送を利用して効果的に提供するということでございますと、従来の構想に従った放送大学を設立するということが必要になるというふうに考えるわけでございます。単位の互換を進め、あるいは単位累積加算の制度を実効あらしめるためにも、やはり中核となる機能を果たす大学の存在が必要であって、放送大学はそのような機能も果たし得ると期待をしているわけでございます。いずれにしましても、放送大学と各大学における放送教育というものとが、両者相まって、相互の成果を活用していくということが望ましい方向ではございますけれども、共同利用機関をつくることによっていま考えられているようないろいろな改革の構想が実現できるかということについては、やはり限界があると考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/150
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151・有島重武
○有島委員 申し上げているのは、大学に相匹敵する放送を流す、これは大変いいと思いうのです。しかし、そこでもって資格を取らせるための一つの放送大学としなければならないのかどうか、この辺はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/151
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152・佐野文一郎
○佐野政府委員 これまでの調査研究の過程で大学の関係者も、また一応予測の際に出てきた国民の考え方も、大学は正規の大学としてつくる。もちろん、そこで全部が全部単位を取るために勉強するわけではございません。電波が広くそれぞれの家庭にまで届くわけでございますから、それを利用して勉強をされるということは十分に考えられるわけですけれども、やはり特定の単位あるいは特定の科目群の単位あるいは卒業ということを前提とした勉強がしたいという方は非常に多いわけでございますから、それに対応するということを考えるべきではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/152
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153・有島重武
○有島委員 大臣、私が案じまするのは、もし放送大学の卒業資格ということを重んじた形でもって出発いたしますと、数年ならずして大変挫折感の中に陥ってしまうのじゃないかと思うのです。いまの通信教育であっても、入った方々の数と出ていく方々の数に非常に懸隔があるわけですね。恐らく放送大学の場合にはさらにそれが、広く大ぜいの方が入学を希望された、だけれどもそこでもって資格を取っていくという方は非常に少ないことになろうかと思うのです。だから、放送大学の主目的をそこに置き過ぎるとかえってこれは失敗であったというような感じになるのではないか。いまの大学局長の話だと、副次的なメリットといいますか、それに至らなくても大ぜいの方々が聞いていてくださるだろう。恐らくそっちの方が主目的になるのじゃないだろうかと思うのです。むしろそっちの方を主目的に最初からしておいた方が成功ということになるのじゃないだろうか、そういうふうに私は思うわけなんですが、わかりにくいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/153
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154・砂田重民
○砂田国務大臣 実は私にわかりませんのは、主目的をなぜ一つにしぼらなくてはならないかということが私にわかりにくいのです。二つの主目的を持ってもいいのではないかと思う。まさに将来考えております放送大学というものはその二つの目的を持っているわけでございます。学位を取りたいという勤労学生が非常にたくさんおられる、その人たちの要望にこたえるということも大事なことであり、また、学位を取ろうとは思わないけれども、もう子供も大きくなって暇になったから、放送大学のどういう科目だけはひとつ勉強をしたいという主婦もまたたくさんおられる、そういう方々のいわゆる生涯学習の要望にもこたえる。私はこの二つがあっていいと思うのです。その二つをぜひとも目指したいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/154
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155・有島重武
○有島委員 それなら結構です。どちらか、というか、余り大学資格の方に偏り過ぎちゃうことがないようにと思っているわけです。
それで、大学局長、さっきおっしゃった単位の互換制の方は大体わかった。単位の累積加算についてはなお検討しなければならない、制度を開いていかなければならないとおっしゃいましたけれども、この通信教育ないしは放送教育の分野においてこそ累積加算の制度は不可欠になってくるのじゃないでしょうか。いまの通信教育についても、大体年限が決まっておるようでございますけれども、この分野からひとつ累積加算の制度を目に物見せて開いていくように努力していただきたいと思います。局長、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/155
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156・佐野文一郎
○佐野政府委員 御指摘のように、放送大学の場合には非常に開かれた大学でございますから、この放送大学というものを場として単位の累積加算の制度を考えるということが最も現実性があると考えております。そういう点で今後積極的に検討してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/156
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157・有島重武
○有島委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/157
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158・菅波茂
○菅波委員長 山原健二郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/158
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159・山原健二郎
○山原委員 主として放送教育開発センターの質問でありますが、最初に、この二、三日、教員大学問題をめぐっての動きもありますから、そのことについて質問をいたします。
一つは、昨日の国大協の特別委員会のことでありますが、これは委員長の記者会見で発表されておるということで、委員長がこの前出されました「評価する」というのを全員で認めたということをけさほど嶋崎さんの質問でお聞きしたわけですが、この点でちょっと伺いたいのです。
一つは、国会における討議などが正確に国大協の特別委員会に伝達をされるとか、あるいは国大協特別委員会が把握できるような状態があったのでしょうか。
さらには、資料の問題ですけれども、前に私もここで取り上げました国大協に渡されました文部省からの資料ですね、同意とかあるいは参与的組織の面は欠落したといいますか、書かれていないもので昨日も討議されたのか、あるいはその後文部省の方から何らかの討議資料というものを国大協特別委員会に示されたのか、その辺の実情はどうなっていますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/159
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160・佐野文一郎
○佐野政府委員 文部省から、一月十八日以降昨日の特別委員会までの間に、改めて資料を特別委員会の先生方に送付をしたりあるいは御説明をしたりしたことはございません。須田委員長はもちろん参考人として出席されて質疑を受けておられますから、国会での論議の問題点は十分に御承知になっていると存じますけれども、文部省の方から説明をしてはおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/160
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161・山原健二郎
○山原委員 参考人として須田委員長がお見えになったわけですね。それは参考人に対する主としてわれわれ側の質問であります。したがって、これはこちらが資料を提供するというような立場での参考人の招致ではなかったわけです。その後はある程度新聞に報道された面がございますけれども、これも新聞の記事の紙面の関係もありましょうし、全面的なことは書かれていないわけで、とにかく各議員の皆さんとも質問に次々と立ちましてかなり危惧の念なんかを表明されたわけです。第一、ほんのこの間の金曜日の質問もあるわけでございます。議事録はもちろん出ていませんが、それらのことが文部省から何らかの形でなされておるのかなと思ったわけですけれども、それもないという状態で昨日の記者会見になったわけですか。もう一回伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/161
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162・佐野文一郎
○佐野政府委員 私の方からは、特別委員会に対してその後の状況の説明、国会における御論議の説明等は行っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/162
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163・山原健二郎
○山原委員 きょう、いま資料をいただいたわけですが、同じ四月の十八日、昨日、声明書が出ております。これは日本教育学会に所属しておる方たちが多いようでありますが、約四百人に近い有志の署名によりまして「「教員大学」創設計画を留保し慎重な検討を求める声明」というのが出ております。この中には国立大学の教官もずいぶんだくさん入っておるわけでございますが、その中でやはりまだ危惧の念が出されておるわけです。それから、その中でまた、教員養成等について非常に関心を持っておる方たちの中に、たとえば「教員養成問題に深い関心を示し、あるいはこれを専門的に検討したことのある教育学者においてすら、「殆んど何も知らない」状態におかれている。」こういう言葉があるわけでございます。そうしますと、国大協の御意思に対して私はとやかく言うわけではありませんけれども、かなり少ない資料で討議をされたのじゃないか。あるいは国大協全体としての意向というのはまだまとまった形になっていない、また資料不足のためになり得ない面もあるわけですが、これらはどういうふうに理解したらいいのか。そんな危惧の念があったところで、もはやこの法律は衆議院ではもう採決の段階へきょう来ているわけですけれども、これをほうっておいていいものかどうかですね。国会の論議で明らかになったものもなかなか学者の皆さんにも提示できるような状態ではありません。議事録なんかをお読みいただくというようなこともまだないわけです。そうすると、とても全面的に討議できるような状態にないということは、これは教員養成のある意味での改革でございますから非常に重要な問題でございますが、そういうわからないままに新構想の教員大学というのが生まれていくということになるわけですね。
そこで、この教員大学というのは開学はまだ先でございますから、その間にこれらの学者や関係者の意見がどういうふうに反映されていくのか。あるいは文部省としてはそういう意見を積極的に取り入れていくというお考えなのか。たとえば、一番むずかしい、ここで論議をしました教育委員会の同意の問題にしましても、開学までにあるいはこの問題について別のよい方法が出てくるかもしれませんが、そういう教育関係者あるいは教員養成に非常に関心を持ってきた人たちの声というようなものをこれからどのようにされようとしているか。おっしゃるならおっしゃりなさい、しかしこっちはもう既定方針どおり進みますよという形でいくのか、その辺の関係について、文部省という教育を担当する最高の行政機関としてはどういう基本的なお考えなのか、この点をはっきりお聞きしておきたいのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/163
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164・佐野文一郎
○佐野政府委員 午前中もお答えを申し上げましたように、須田委員長も記者会見の席上で、今後とも、この大学の整備の進め方については、それがいいものとなるようにわれわれは見守っていくということをおっしゃっております。文部省としましても特別委員会と十分な連絡をとって、そしてこれまでに御指摘をいただきましたさまざまな問題、それに対して文部省はどのように考え、どのように対応しようとしているのかということはさらに御説明をもちろんいたします。私たちはこれまでも、この席上でお答えをいたしましたような基本的な方向、態度を持って特別委員会に対しては対応してきたつもりでございますけれども、さらにそれは説明をいたしてまいります。また、創設準備室における準備がさらに進捗をし、財政当局との協議を経て構想がさらに固まっていくわけでございますけれども、その構想の進捗していく状況に応じて、そのことも特別委員会の方には御報告をして御意見を賜っていく。いずれにしましても、既設の教員養成大学学部を含めて大学の関係の方々の御意見を十分に承りながら、この教員大学がまさに創設に当たって趣旨としているところがよりよく実現をされますように私たちも努力をしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/164
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165・山原健二郎
○山原委員 もう一言。たとえば文部省の見解にしましても、教員養成の大学に設置する大学院の基本的な方針というのを、ある程度現在の段階で変更を大学設置審の方に要請するというようなお話もこの前の質疑の中で出ましたから、文部省自体としても、この大学大学院設置についてはある程度基本的な見直しといいますか、ある程度の変更というものをお考えになっているということは明らかになっています。そういうかなり基本の部分が動いている状態の中で、しかも特別委員会あるいは日本教育学会とかいうようなものがある程度教員大学の構想を頭に入れて、そしてそれに対して一定の提案をしていく、文部省に対してもこういうふうにしてもらいたい、あるいは創設準備室に対してもこういうふうにすべきではないかというふうなまとまった意見が出てくればこれを聞くにやぶさかでない、またそういう意向をできるだけ反映できるような努力がなされるというふうに、改めて伺いたいのですが、そういうふうに理解をしてよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/165
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166・佐野文一郎
○佐野政府委員 各方面からこの構想に対していろいろな御意見をちょうだいできるということは、私たちはありがたいことだと思います。そういった御意見を十分に拝聴して、この構想がよりよいものとして実現されていくように努力をしたいと思います。ただ、私たちは、教員大学を創設しようとしている趣旨についてこの委員会でもるるお答え申してまいりましたけれども、そういった考え方はこの大学の構想を考えて以来私たちは考えていることでございますし、またそのことが十分に御理解をいただければ、既設の大学の先生方の御意見というものもおのずから教員大学の創設について理解をし、評価をし、そしてそれに協力をしていくということになっていただけるものと私は確信をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/166
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167・山原健二郎
○山原委員 そこのところですね。皆さんがお考えになり、そしてこの委員会でいろいろな質疑に対して御答弁になった考え方を持っておられるわけですが、この考え方をさらに普及をし説明をしていけば、評価し、納得していただけるものと思う、こういうお考えですね。そうしますと、そういう点で文部省の考え方を出されて、それに対して各団体や研究者の方、学者の方たちがいろいろな意見を出すこと、そこのところが一番大事なところですね。ここで衆参両院を通じて法律案が決まったとします。決まった場合に、開学までの間にそこのところの論議がなされる保証があるかどうかという問題です。一方、文部省はもうこれだけで押しつけていくという考え方、しかし一方では、いやそれに対してはまだ疑義があるという考え方の論争が行われれば行われるほどこの大学はより充実したものになっていくと思うのです。それがすれ違いであったり、そういうことがいままで論議しておる段階ではほとんどなされていないという状態ですから、文部省が積極的にそういう意見を反映する、あるいは意見を聞く、またそれに対して資料を提供する、そういうことが行われて初めていいものになっていくわけなんですが、そういうお考えかどうかですね。そういう論議を巻き起こすような姿勢で臨まれるかどうかという点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/167
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168・佐野文一郎
○佐野政府委員 私どもは論議を巻き起こすつもりはございません。ただ、教員大学についての御疑念というものを晴らすために、できる限り、広報等を通じて、私どもも私たちの趣旨をお伝えいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/168
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169・山原健二郎
○山原委員 結局、いまお話を聞きますと、国大協の特別委員会に対してもさほどの資料は提供されていない。私どもがこの前ここで指摘しましたような資料以上にはほとんど出ていないと思いますし、またそういうふうなお答えなんですね。そうすると、資料とは一体何かというと、恐らくこの教員大学大学院についての資料というのは、この国会における審議の議事録以外に深まったものはないんじゃなかろうかと思うのですね。だからこれが関係の先生方の論議の材料になるのではないか。国会議員の方の質問と文部大臣や大学局長やその他の方々の答弁との関係で、資料面では初めて教員大学というものの構想が出てくるという関係にあると思うのです。だから私はまさにこれから意見がいろいろ出てくると思いますが、これは文部大臣にもお伺いしておきたいのですけれども、そういうある程度の資料を得まして意見が出てくれば、その意見を聞く聞かぬは別にしまして、積極的にそれを吸い上げていくとか、そういう意向を聞くとかいうことがこういう新構想と呼ばれる大学をつくる上では大変必要なことじゃないか。その点は閉鎖的な立場を文部省としてもとるべきではない、こういう意味で質問をしているわけです。おわかりになっていただけると思いますが、その点、大臣の御見解はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/169
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170・砂田重民
○砂田国務大臣 須田委員長も昨日の記者会見で、この大学のこれからの進み方を見守っていく、よりよき大学になっていくようにという期待をお持ちいただいているわけでございます。私は幸いなことだと思いますので、今後とも須田委員長に御相談をいたしまして、特別委員会でさらに御疑念がありましたならば、ここでお答えをいたしましたのと同様のお答えをするのが当然でもございますし、意思の疎通を図りながら、須田委員長が期待をしてくださいますところの、特別委員会が期待をしていただきますようないい大学を目指して一層の努力をいたしてまいることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/170
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171・山原健二郎
○山原委員 次に、今度の法律でも幾つかの大学学部の改組が行われるわけですが、この改組の問題で一言お聞きしておきたいのです。これは局長にお尋ねいたしますが、たとえば私の県に高知大学がありますが、これは文理学部が人文学部と理学部とに分かれました。このことは大変大きな前進でございますけれども、この事務機構が一つになるという問題が出ているわけです。これは各大学ともそれに対してのいろいろな意見が出ています。当初は、もちろん学部を改組したいという要求がありますから事務機構の問題については多少そっちの方が先行して遠慮した向きもあるのですが、これは事務が一つなんですね。事務長が一人ということになりますとこれは大変な問題になりまして、学部自治のたてまえからいっても事務は二つ置くべきじゃないか、それぞれの学部へ置くべきではないかという考え方があるわけです。これは、既存の大学の充実という問題がいままで出ていますから、改組されたばかりの暫定的なものじゃなくて、これは明らかに学部自治のたてまえから、あるいは大学の自治の基本的な単位でありますところの学部の構成員としての事務職員の面があります。そういう点から考えまして、これは当然各学部に置くべきではないかという主張があるわけですが、これは将来お考えになる御意思があるのかどうか、お聞きしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/171
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172・佐野文一郎
○佐野政府委員 国立大学の事務組織のあり方につきましては、大学における教育研究組織のあり方との関連もございますが、それを考えながらできるだけ効率的な組織編成を考えていかなければならない。そういう意味において、現在の大学の事務組織のあり方についてはなお工夫、改善をしなければならないところがあるというふうに考えております。これまでも、医科大学における医学部の事務部と付属病院の事務部とを一体化する、あるいは筑波大学における学部事務部の統合、そういったことが行われてきたわけでございます。今後、各大学におきまして事務組織のあり方については全般的に見直しと改善をしてほしいと、私たちはかねて各大学にお願いをいたしておりますが、当面、従来の一つの学部を分離改組をするというときには、御指摘のようにもちろん二つの学部の教育研究に支障が生じては困りますけれども、支障が生じないような配慮をしながら、共通的な事務処理が可能なものにつきましては引き続いてその共通処理の体制を維持する、そういう観点から事務部については二つ設けない、一つで対応するということを考えております。もちろん、この場合には事務長補佐を増員するというようなことで、御指摘のように二つの学部にまたがる仕事をするということに伴う支障の生じないような手当ては別途いたしておりますけれども、これは暫定的な措置ということではなくて、やはりこういったことを進めながらさらに既設の学部についてもいろいろな改善、工夫をしていただきたい、そういう意味で実施をしているものだと御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/172
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173・山原健二郎
○山原委員 いまの大学局長のお考えは改善じゃなくて改悪ですね。お考えの意図はわかりますよ。事務機構を一本化したいような気持ちもちらっと出てくるわけでございますけれども、いわゆる学部自治という観点からいえば問題があるのじゃないなでしょうかね。私は、現実に改組が今度の法案にも出てくる中でこういう問題が出てくると思いますから、いまのお考えに賛成するわけにはまいりませんけれども、当然大学側の意向というものを十分反映して、それに基づいて改善がなされるべきであると思うのですよ。いまの言い方だと、これは本当に文部省の官僚的な立場で、定員法の問題もあると思いますけれども、それではいままでの大学の自治の観点とは違ったものになってくるということを指摘しておきたいと思います。これは時間の関係でこれ以上申し上げません。
次に、今度の放送教育開発センターの問題について伺います。
一つは、いままで共同利用機構としては、たとえば高エネルギーの場合にしましても生物科学総合研究機構の場合にしましても、それぞれ関係学会その他からの要請があって行われたわけですね。あるいは学術会議等の要請もあって行われたわけですが、今度のこの放送教育開発センターというのはどういう要請のもとに、たとえば学者とか学会とかいうようなところからこれについての要請があってつくられようとしておるのかどうか、その辺の経過を伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/173
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174・佐野文一郎
○佐野政府委員 御指摘のように、これまでの共同利用研究機関はすべて、学術会議等の御要望があり、学術審議会等の御意向に沿って逐次設置をしてきたものでございます。そのつくり方と、今度の放送教育開発センターのつくり方とは異なっております。これはそういう学会からの御要望があってつくるということではなくて、文部省が、放送教育開発センターを設けることが当面必要であり、またそれが緊急を要するということでお願いをしているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/174
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175・山原健二郎
○山原委員 そこで設立の経過でありますけれども、最初、文部省は特殊法人として放送大学学園の要求を持っておった、それが、特殊法人については政府間に意見もあって結局放送教育開発センターということになった、報道関係から見ればそういう経過をたどっておると思います。そこで、文部省はいま文部省主導型で共同利用機関をつくろうとしているわけですから、どうして、最初文部省がお考えになっておった構想と違ったもので、突如こんな放送教育開発センターというふうな形になってきたのか、その経過を聞きたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/175
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176・佐野文一郎
○佐野政府委員 御指摘のように、かねて放送大学の創設の構想を推進してまいりましたけれども、五十三年度においてはその実現を見ることができなかったわけでございます。しかし、私たちは、放送大学の構想をもって実現をしようとしていた多くの事柄については、それは放送大学の創設を今後検討していくその期間を待つということではなくて、もっと積極的に検討を進めていく必要があると考えまして、その検討を進める形としては、やはりできるだけ広く国・公・私立大学の先生方の参加を得て進めることが必要であるし、またその研究成果の利用につきましても、広く国・公・私立大学の教育の発展に寄与するような形で利用されることを期待したわけでございます。そういうことを考えますと、やはり放送教育開発センターというものを共同利用の研究機関の形で設置することが最も時宜に適しているという判断をしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/176
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177・山原健二郎
○山原委員 いま経過の説明があったわけですけれども、かなり唐突な感じでやっておることには間違いなくて、何か文部省の最初構想されたものが少しずつ変化する。変化するのはときにはまた当然でありましょうけれども、何となく御都合主義的な出方で法案となってあらわれてきている。私ども審議する場合に、幾らこれを見ても、けさから嶋崎さんからも大変わかりにくいものだということがありましたが、実際国会にとっては迷惑な話で、審議がずいぶん困難な状態です。私もよくわからなくて汗をかいて質問しているような状態なんです。そのことを指摘しておきたいのです。
そこで、放送教育の内容、方法に関する研究開発ということが目的となっていますが、これはどういう意味ですか。この開発というのは共同利用機構としては初めて聞くわけですが、どんな中身をお考えになっておるのですか、伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/177
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178・佐野文一郎
○佐野政府委員 単に放送教育についての研究を行う純然たる研究所というような趣旨のものではなくて、そこでこれからの大学における放送を利用した教育というものを有効に推進していくための成果というものを、それこそ開発していただきたい。そういう意味では、高エネルギー研究所と同じように研究機関としての性質を持つものではございますけれども、やや従来の共同利用研究機関と性格を異にするところが事の性質上ございます。もちろん、大学入試センターのような、同じ共同利用であっても入試の実施というような性格を強く持つものとは異なりますので、共同利用機関の中に規定をすることといたしましたけれども、センターに期待するところがやや異なりますので研究開発というような用語を用いることとしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/178
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179・山原健二郎
○山原委員 だからその放送教育の内容、方法等に関する研究開発という言葉が出てきたと思います。そういう意味では、いま御説明のあったとおり従来の共同利用研などとは少し性格が異になっていますが、その仕事というのは、たとえば予想されますところの放送大学ではやらないものなのでしょうか。放送大学の場合は、たとえば研究開発というようなことはやらないのか、あるいはやるとすればこのセンターとどこが違うのかという点はどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/179
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180・佐野文一郎
○佐野政府委員 まさに御指摘の点が問題のところであろうと思います。このセンターは決して放送大学の構想にかわって出てきたものではございませんし、また放送大学のいわば前身的な意味を持つものではなくて、それとして積極的な意義を持つものとして構想をしているわけでございますけれども、このセンターで実施をしていこうとする研究開発というのはやはり放送大学の事業と密接な関係を持ちます。私どもが当初放送大学の構想を考えているときに、放送大学の機能の中にこういった放送教育開発センターで実現をしようとするものを含んでいたということは率直に申して事実でございます。したがいまして、放送大学がスタートをした場合には、当然これらの構想を果たし得る体制を整えなければならないと思います。そのときに、この共同利用の機関である放送教育開発センターがその機能を分担して放送大学と連携をするのが適切であるのか、あるいは非常に密接な関係があるということで放送大学の機構の中に取り込んでしまう方がいいのか、そのことは、これからのセンターの運営の実態ということもございましょうし、また放送大学をつくる場合の関係の大学の方々の御意見もございましょうから、その時点で判断をすべきことではなかろうかと思います。事柄としては当然放送大学と併存をし、連携をして事業を進めていくことのできるものではございますけれども、事の性質が密接にかかわるということは御指摘のとおりでございますから、その時点で判断をするということにさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/180
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181・山原健二郎
○山原委員 その点は、自民党の与党質問に対してもそうお答えになって、当面併存をして、しかも密接な連絡をとりながら行く、それから放送大学ができた暁には検討するというお話ですね。そうするとその場合、いわば放送大学ができるまでのつなぎの措置のような感じがするわけです。つなぎ措置的なものであれば、これは何も設置法でやるというほどのものでもないんじゃないか、設置法の場合は恒久的な面を含んでいますから。そういう点でも何かこの開発センターというものがつなぎの措置みたいな感じもしますし、何となく便宜的に出てきたような感じもするわけですが、その辺はいまのところ将来の検討にまつということで、その性格、手段をはっきりしないというふうに受け取ってよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/181
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182・佐野文一郎
○佐野政府委員 文部省としては、決して放送大学をつくるまでのつなぎの機関として御提案をしているものではございません。恒久的にこういう施設が存在をするということが、わが国の大学教育の改革のために有意義であると判断をしてお願いをしているわけでございます。放送大学がスタートをした時点においてどのようにそれを判断するかというのが別途の課題になるということは、事の性質上あり得るわけでございますけれども、基本的には、放送大学とこのセンターとは十分に併存をし、連携協力をする体制というものがとれる、またそういう性質のものであると私たちは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/182
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183・山原健二郎
○山原委員 もう一つ指摘したいことは、研究目的は、概要にも書かれておりますように、また質問もあったと思いますが、放送教育の内容、方法に関する研究開発、こういう規定の仕方が非常に狭いのではないか。共同利用機構としてあるならば、もっと基本的なといいましょうか、たとえば放送教育が国民教育でどういう役割りを果たすべきかとか、あるいは放送教育のあり方など、こういった課題がこのセンターには課せられるべきではないかと思うのですが、結局放送教育の内容、方法というふうにぐっと狭めているところに私は問題を感じているわけです。その点はどうですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/183
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184・佐野文一郎
○佐野政府委員 午前中の嶋崎先生の御質問で御指摘を受けた点でもあるわけでございます。御指摘のように、私どもは、このセンターの行う研究というのは、言葉が適切ではないかもしれませんけれども、教育工学センターのいわば拡大延長のようなものであってはならないと考えております。もっと基本的に深い研究というものが行われてしかるべきだと思っておりますし、このセンターがそういうものとして発展をしていくことを期待しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/184
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185・山原健二郎
○山原委員 通常、他の共同利用機関の場合には、たとえば放送教育に関する調査研究というようなものが出てくるわけでありますけれども、もう一度申し上げますが、何か目的をかなり小さくしぼっているというところからいろいろな問題が出てくるような感じがするわけでして、その点でこれも指摘をしてとどめたいと思うのです。
それから、いまおっしゃったように、この開発センターが結局放送大学の創設準備しか考えていないことはわかりますけれども、とにかく大学の創設準備というのはどこでやられるのですか。やはりここでやるのですね。ほかに放送大学の創設準備室などというものはつくらなくて、ここが一つの仕事場となるというふうに理解していいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/185
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186・佐野文一郎
○佐野政府委員 放送大学は、現在までの調査、準備の過程におきましてかなり事柄は詰まってまいっております。残っている問題としましては、設置形態の問題がもちろんございますけれども、そのほかに教育課程の編成の問題、あるいは授業科目の構成の問題等を具体に進めるということがあるわけでございます。それらは同時に、この放送教育センターで検討しようとしている教育の内容、方法の研究開発とうらはらのことになりますので、放送大学の創設準備というのはこのセンターで進めていくことが可能でございます。そういう意味で、放送大学の創設準備は実質的にはこのセンターで行うということを明らかにしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/186
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187・山原健二郎
○山原委員 次に、研究部門の五つの部門というのが出ておりますが、これはどんなものでしょうか。どういう規模のものでございますか、大体お考えがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/187
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188・佐野文一郎
○佐野政府委員 研究部門に関しましては、当面、専任の教授を五名、それから客員の教授を二十名、その他相当数の非常勤の講師を配置しまして研究開発部を設けて、五つの研究室を配置しようという構えにしておるのでございます。この研究室の内容につきましては、ことしの四月一日に発足をいたしましたセンターの創設準備室におきまして検討を進めていただくわけでございます。十月にセンターが発足をするわけでございますが、それまでの間に国・公・私立の各大学の先生方の十分な御協議を経て適切な研究室の配置ということが決定されていくという運びになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/188
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189・山原健二郎
○山原委員 次に、放送大学のことについて伺うのですが、この放送大学というのは、いまの文部省の構想としてはいつごろ発足させるという目途を持っておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/189
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190・佐野文一郎
○佐野政府委員 五十三年度の概算要求に当たりましては、五十五年から学生を受け入れるということで概算要求をしております。五十四年度に当たって放送大学についてどのような概算要求をするかということは、先ほど大臣からお答えを申し上げましたようにこれから検討させていただくわけでございます。また、この委員会における小委員会の御議論というものもあるわけでございますから、それらを十分に踏まえて、放送大学をどのように創設していくかということについて五十四年度の概算要求の時点までに私たちの考え方を決めたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/190
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191・山原健二郎
○山原委員 この放送大学がうまく運用されれば効果はもちろん多いわけでございますけれども、しかし、まかり間違えば、あるいは宣伝とかさらには国民世論の誘導とかいうことになりかねない危険性も持っているわけですね。そういうことに対して、そういうことにはならないんだという保障はどういうところでお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/191
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192・佐野文一郎
○佐野政府委員 放送大学は、大学でございますから、まさに大学の自治としてその教育の内容を決定していくわけでございます。先ほど御質問もあったところでございますが、大学は、大学の責任において番組がそれぞれの家庭まで届くということが前提になりますので、それに対応した自主的なチェック機関というものを大学に設けてまいります。また、実際に放送番組をつくり、放送していく場合でも、従来の大学のようにいわばその大学の中で一人の教官が限られた者に対して授業するということでないということから、番組をつくるつくり方からして、多数の教官が討議をし、チームによってつくっていくというような形がとられるわけでございます。そういった番組をつくる過程あるいは番組をチェックしていく学内の自主的な機関というものの機能を通じて内容がチェックされるでございましょうし、また、そもそも一般の国民の前に放送大学の教育内容は番組を通じてオープンになるわけでございますから、その批判というものが当然あるものだと思います。また、放送法の規定の適用を受けるわけでございますから、放送事業者としていかなる番組を放送するかという放送法上のチェックはもとよりかかってくるわけでございます。そういったことを通じまして、この放送大学の放送番組というのは中正な適切なものになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/192
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193・山原健二郎
○山原委員 そこのところは一番大事なところだと思うのですね。とにかく国民全体が見得る状態であるわけですから、そういう意味で国民側の監視というものもあると思います。それから放送法の関係もあると思います。大学内におけるいろいろな討議もあると思います。たとえば憲法一つにしても見方は違う。経済学だって見方は違う。それを一方的な学説だけでやられるのではまた問題が出てくる。この放送大学がもし発足しました場合の大学の自治あるいは学者の学問の自由というものと、それからそういう放送法などに出ているところのそれをどうチェックして適切なものにしていくかという、ここのところが一番大事なところだと思います。そういう意味で、できた放送大学のたとえば教授会とかいうものの民主的な運営とか、そういう保障がきちっとされていないと大きな問題が出てくるわけです。そこらは小委員会等で意見がずっと煮詰まっていくと思いますし、またそれぞれこのセンターの中でもお考えになるだろうと思うのですけれども、これはやはり日本の戦後の大学の理念、大学の自治、学問の自由というものを基礎にした、しかも憲法や教育基本法をしっかりと根に置いた立場での論議ができる、総合チェックができるという民主的な保障というものが一番必要になってくると思いますが、この点は文部省としてもお考えになっているかどうか、もう一回伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/193
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194・佐野文一郎
○佐野政府委員 これまで調査会で発表されております基本構想あるいは基本計画におきましても、この大学の運営についての基本的な考え方が示されております。大学の自治、学問の自由というものを基本に置きながら、しかもいま御指摘のようなむずかしい問題がございますので、それを大学の自律的な機能としてどのようにチェックをするのか、そのための適切な機構をどのように整備をするのかという観点からこれまでも議論がなされておりますが、いずれにいたしましても、具体的にそれをどのようなものとしてつくるかは、これから創設についての法案をお願いいたしますまでの間にさらに十分に検討したいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/194
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195・山原健二郎
○山原委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/195
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196・菅波茂
○菅波委員長 西岡武夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/196
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197・西岡武夫
○西岡委員 本案についての質疑に当たりまして、新自由クラブは、結論を申しますと賛成をいたします。
同僚議員各位からすでに詳細にわたって質疑がなされておりますので、私は、時間の関係もございますので基本的な教員養成制度のあり方、免許制度のあり方の問題を中心に、ごくしぼりまして短時間質問をさせていただきたいと思います。
〔委員長退席、藤波委員長代理着席〕
大臣にお尋ねをいたしますが、私は、今回の教員大学院大学の創設は、教員の養成制度、教員の再教育について一歩前進したものであると評価をいたします。ただ問題は、これだけ大がかりに新しい大学を創設するにしては、たとえば実習のあり方一つとりましてもいささか中途半端なのではないだろうか、新しい大学を創設するのならばもっと本格的な取り組みがあってしかるべきではないだろうかということを特に感ずるわけでございます。
もう一つは、戦後三十三年経過いたしまして、新しい教育制度がスタートをしてちょうど満三十年になるわけでございますが、わが国の教育全体が再検討を求められている、その中でも学校教育に問題を限って申しますと、何といっても教師のあり方、教師の資質というものが学校教育問題のほとんど九九%を占める重要な課題であると考えるわけでございまして、そういう考え方に立つならば、教員養成のあり方というものはこういう新構想の大学を幾つかっくるということで解決すべきことではなくて、本来、既存の教育大学あるいは学部を含めた教員養成の制度全体を抜本的に改革するという取り組みがなされるべきではないのか。それが諸般の事情の中で、とにかく見本的なと申しますか、先導的試行、中教審的な言い方をすれば、そういう大学を幾つかつくって、そうして新しい方向に既存の大学をある意味では実績を通じて誘導していくということなのだろうと思いますが、そういうやり方は非常に手ぬるい、手ぬる過ぎるのではないか、こういうふうに私は考えるわけでございます。この二点の問題についてまず大臣の御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/197
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198・砂田重民
○砂田国務大臣 まず、私も、今日の教育の問題を考えますときに、教師の資質向上という問題がこれほど世論から希望され期待されている時代はかってない、このように感じておるものでございます。また、教師自身もさらに一般の研修に努めなければならないという、教師自身の研修、研さん意欲の高まりもかってなかった今日の状態ではないかという感じを持つものでございます。
そして、御指摘のございました教員養成の基本的な問題につきまして、すでに教員養成審議会からいろんな問題点の御指摘をいただいているところでございます。
〔藤波委員長代理退席、委員長着席〕
これの指摘をいただいております問題点については、もう十分西岡委員御承知のところでございますから細かいことは申し上げませんけれども、一つ一つが非常に重要な検討課題であることは間違いございません。そしてまた私どもといたしましては、一般大学と教員養成大学とがそれぞれの特色を発揮しつつ、教員養成により一層の役立ちをと期待をしてまいったわけでございますが、これからは、御審議いただいておりますこの法案を成立させていただきましたならば、一般大学と教員養成大学、そして新しい構想によります教員大学が、三者それぞれの特色を発揮しつつ、より一層の教員の資質の向上のための役立ちをしてくれるように、かような期待をしながら取り組んでいるわけでございます。
そして、先ほど実習の問題についても御指摘がございました。今日の実習の状態がいろんな困難に直面いたしておりますことも、もう実情を十分御認識でございますが、これらの問題、教養審から指摘をされております各様の問題に取り組んでまいりますにつきましても、一つ一つの問題の底辺にあります基盤の整備に努めてまいりませんと、御指摘をされた問題点だけを先んじてこれをどう変えてみてもどうなるものでもございません。私どもといたしましては、教員大学の御審議をいただいております段階で、当委員会におきましても既存の教員養成課程の各大学の整備強化をお答えをしてきたことでございますが、これら一連の基盤整備にいま真剣に取り組まなければならないときである。そして、こういった基盤整備の上に立って、教養審から指摘をされております具体的な免許の問題、実習の問題等についての改善に取り組んでいく、基本的にはこのように考えなければならないのではないかと考えているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/198
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199・西岡武夫
○西岡委員 問題は、具体的な改善をいつの時点で、どういう形でやるかという問題だと思うのです。
そこで、先ほど大臣もおっしゃいましたように、教育職員養成審議会が昭和四十七年に建議を出されているわけでございます。それに先立ちまして中教審が昭和四十六年に答申を出している。その中でも教員養成のあり方について言及されているわけでございます。こういう問題の指摘をいたしますと、検討しなければいけないという答えが必ず文部省から、あるいは他の問題については他の省から返ってくるわけでございますが、この審議会において審議をするということ自身が検討をすることであって、審議会が建議なり答申を出したという時点では、それを実施するかしないかという決断だけが残されているというふうに私は理解をいたします。もともと、審議会の方式についても私自身は根本的な疑問を持っておりまして、この教養審の審議自身も、文部省の事務当局が具体的にかかわって、ある程度事務的に考えても実現できるという範囲内に建議の内容自身もとどめられているのではないかというふうに私は思います。そうであるならば、この中教審の答申の中で言っている教員養成についてのあり方、あるいは後ほど触れたいと思っております試補制度というようなやり方、そうした問題についてもすでにもう方向は出ている。こういう非常に変化の激しい時代の中で、教育の制度について、未来に向かって新しい制度というものをいまの時点でつくり上げていくということが私ども自身の大きな役割りであるというふうに考えているわけでありますが、答申が出てから五年も六年も七年も、場合によっては放送大学のごとくちょうど十年目になってようやくこういう形になってきたわけでございますが、そんなにのんきに構えている時間がわれわれに一体残されているのかということを強く感じます。
したがって、大臣の御見識をぜひ承りたいのですが、大臣としてはどうお考えなのか。いままでのいろんな事務的な経緯はとにかくといたしまして、少なくとも教員養成の制度の抜本的な改善、片方でこういう新しい大学というものを一つのあるべき姿としてつくり上げていくということについては賛成でありますが、それと並行して、既存の教育大学学部を支えている制度自体をいじる、根本的に変えていくというお考えを大臣はお持ちかどうか、この点をお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/199
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200・砂田重民
○砂田国務大臣 一つの考え方を持つこと、西岡委員がいま御指摘になりました、どういう方法で、いつやるのかというのが重要であるということが冒頭に御意見の中にございました。まさにそのとおりであろうと私は思うのです。教養審から指摘をされておりますような、免許制度のあり方あるいは教育実習の充実、教員養成カリキュラムの改善、研修の充実、教員資格認定制度の問題、諸般の改善方策が示されておりますけれども、いずれもこれは取り組まなければならない問題であることはもう議論の余地はございません。
いつ、どのようにということになりましたならば、これは私は率直に申し上げまして、やはり基本的に財政の問題が大きく立ちふさがってきたのがこれまでのことだと思います。いまおっしゃいました既存の各大学の改善等につきましても、改善をしようという意欲を持つだけで事は済む問題ではございません。非常に多数の場所におきます基盤の整備に資金も必要でございましょうし、そこで教育の問題と取り組んでいただく方々のこれまた研修、養成も必要でございます。たとえて申し上げますならば、教員資格のことについて一年間の試補制度というような御提言もございまして、国民の各界各層でこれを支持する意見は強うございますけれども、それではどの場所で、だれが、どういうふうにしてその一年間の教育を施すのか、それからして整備にかからなければならないわけでございます。基本的な大臣の考えという御質問でございますから率直にお答えをいたしますけれども、やはり教育全体に対します国家資金の投入というものが従来の惰性であってはならない。まさに教育、学術、文化の高揚ということが永遠の国の根幹の政策であるという認識を、政治の社会全体でより強めていくことが当面の私の任務であると基本的に考えるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/200
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201・西岡武夫
○西岡委員 財政の問題になりますとなかなか困難だということでございますが、これは文部大臣が、まさに、日本の将来は教育にかけられている、教育にもっと財政を振り向けるべきであると、不退転の決意でお取り組みになればおのずとこれは解決する問題であるというふうに私自身は考えているわけです。したがって、財政の問題でこの問題はなかなか簡単ではないという形の御答弁を私は求めているわけではないわけで、やるかやらないかという、その基本的な大臣の取り組む御姿勢をお尋ねをしているわけでございまして、それを端的にお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/201
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202・砂田重民
○砂田国務大臣 やらなければならない問題だと当然考えておりますだけに、財政の問題が解決していないではありませんか、それを解決するための努力をいたしますとお答えをいたしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/202
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203・西岡武夫
○西岡委員 私のいままでの浅い経験で申しますと、いつからやるか、どういう具体的な内容でやるかということをまず決めて初めて財政も獲得できると考えております。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/203
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204・砂田重民
○砂田国務大臣 したがって、私もそういう方向でやらなければならない問題として真剣に取り組むと申し上げているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/204
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205・西岡武夫
○西岡委員 それではいつからお取り組みになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/205
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206・砂田重民
○砂田国務大臣 いつからということはまだ検討しなければならないことでございます。短い経験と言われるが、長い御経験からしても御理解いただけるところだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/206
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207・西岡武夫
○西岡委員 私のこれまでの経験から申しますと、まず、いつからやるということを決めて初めて問題は動き出すというふうに思います。したがって、いつからやるかということをお答えいただきたい。教養審の建議が出ているのは四十七年ですが、いままでほとんどこの中身が放置されているわけですね。中教審の答申が出てからもうあと数年すると十年にもなろうとしているわけでして、大臣も日本の将来は教育にかけられているという御認識で意欲を持って御就任になったはずでありますから、いつから自分はやろうと考えているというふうにぜひお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/207
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208・砂田重民
○砂田国務大臣 中教審の答申が出ましてからすでに十年近くがたっているわけでございます。私が就任いたしましてから五カ月たったわけでございます。いつからということを決断をいたしますのにいましばらく時間をいただかなければ、五カ月の大臣には今日この場ではお答えがなかなかむずかしいわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/208
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209・西岡武夫
○西岡委員 私は、それだけの御決意がなければ大臣に大体御就任になるはずはないと実は思っているわけです。したがって、こういう重要な問題について、五カ月しかたたないからということで答えられないというのは私は納得ができない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/209
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210・砂田重民
○砂田国務大臣 取り組まなければならない問題であると冒頭にお答えをいたしました。私の真意はおくみ取りをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/210
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211・西岡武夫
○西岡委員 大臣のその御答弁では私は全く納得できません。ただ、きょうは時間の関係もございますから、一般質疑の中でなおこの問題は続行してお尋ねをすることにいたしまして、教育制度全体について、教員養成制度全体の改革についていつから文部大臣が着手するということについては質問を留保いたしまして、次の問題に進みます。
教育実習の期間につきまして、新構想のこの大学で十六週間ということになっているようでございますが、これで十分だとお考えでしょうか、大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/211
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212・砂田重民
○砂田国務大臣 教育実習の改善につきまして、現在教育職員養成審議会でそのための専門委員会も設けていただいて、円滑かつ効果的な実習を図るための検討を願っている段階でございます。いまの時点ではいまの期間が精いっぱいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/212
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213・西岡武夫
○西岡委員 私がお尋ねをしているのは、精いっぱいということではなくて、十六週間で教育実習は十分であるとお考えかどうかということをお尋ねしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/213
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214・砂田重民
○砂田国務大臣 十分だとは思いません。これは、十分というのはどういう状態を十分と言えるか。実習がより充実された長期間の実習であることが望ましいことは、私もさよう考えておるわけでございます。したがって、先ほど申し上げました改善と取り組まなければならない重要な課題であるというお答えの中には、当然実習のことも含まれているわけでございます。(「世の中に十分というのはあり得ない」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/214
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215・西岡武夫
○西岡委員 私が十分とお考えかどうかということをお尋ねしている意味は、教師として教壇に立ったその時点で、その経験年数とかそうしたことは全く抜きにして、五年やっておられる教師の方もきょうから教壇に立たれる教師の方も二十年教師をやっておられる方々も、教壇に立たれたその瞬間から、児童、生徒に対しては重大な責任をともに同じく持っておられる、このように認識をいたします。そういう教師を養成するためにどうしてもこれだけは必要だ。世の中に十分ということはあり得ないなんという、そういうわけのわからないやじが飛んでおりましたが、そういうことを申し上げているのではなくて、教師としてやはりこれだけは必要だ、そのためにこれは十分かとお尋ねしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/215
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216・砂田重民
○砂田国務大臣 私は大変欲が深いものですから、あえて申し上げますけれども、やはり教師の資質というものをどういうところに望むかと言えば、大変高望みをいたします。それだけに、今日の状態は決して十分ではないということを申し上げているのでございまして、十分な研修期間を確保いたしますためにはやはりそれなりの実習の場を確保する等の基盤整備が必要だ、そのことに懸命に取り組みますということをお答えしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/216
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217・西岡武夫
○西岡委員 それでは、この新構想の大学における教育実習の期間も、これがあるべき姿ではなくて仮の姿である。本来ならば、条件が整えば教育実習というものはもう少し長期間行うことが望ましいと基本的に大臣はお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/217
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218・砂田重民
○砂田国務大臣 基本的に、四週間というのを十六週間やろうというわけでございますから、やはり、国立の教員養成大学、そして今回の教員大学については十六週間というものは相当改善されてきたものであると考えていただくべきだ、私はさように考えるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/218
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219・西岡武夫
○西岡委員 私がお尋ねをしているのは、全く問題にもならないことを前提としてその四倍だというようなことではなくて、これを十六週間というふうに定めたのは、いまのところこれくらいするのが精いっぱいなんで、本来ならば、条件が整いさえすれば教育実習というものはもう少し長期間行うことが望ましい、そういうお考えで、なお問題としては残っているというふうに大臣はお考えなのか。それとも、もうこれで大体完了した、これがそのまま中身が充実していけばこれで十分だというふうにお考えなのか。これは仮の姿かどうかということをお尋ねしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/219
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220・砂田重民
○砂田国務大臣 私は、期間だけでそれが十分か十分でないか、それでは実習の内容の条件を判定をいたしますのに足りないという気がいたします。内容の改善についても当然取り組まなければならないわけでございます。そして、十六週間という、問題にならない四週間の四倍と言われますが、しかし四倍のものを確保できたことは、教師全体に対する一つの実習の制度的なものとしてはその部分については改善ができた。なお一層の改善を目指さなければならないと考えるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/220
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221・西岡武夫
○西岡委員 私の質問にお答えになりませんので、これ以上申し上げても答えは出てこないようですから先に進みます。
免許制度の問題でございますが、大臣は、現在のわが国における高等教育への進学率の実情というようなものも踏まえながら、教職員の免許の基準、あるいは免許の種類という問題にもなるわけですけれども、こうした免許制度全体を抜本的に改革、改善をしていかなければいけない時期に来ているというふうにお考えでしょうか。私は免許制度の改革に着手しなければいけないと認識をいたしておりますが、その御認識についてまずお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/221
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222・砂田重民
○砂田国務大臣 免許制度の問題を真剣に検討しなければならない時期に差しかかっていることは、私もさように考えます。しかし、この問題と取り組みますにつきまして、やはりいろいろな他の制度とも関連をすることでございますから、基盤整備を進めながら免許の問題を検討するのでなければこれは砂上楼閣といったものになってしまう。基盤整備の努力を進めながら免許制度の問題の検討をこれからしていくということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/222
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223・西岡武夫
○西岡委員 免許制度というものは学校教育の一つの基盤ではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/223
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224・砂田重民
○砂田国務大臣 一つの基盤でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/224
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225・西岡武夫
○西岡委員 大臣は先ほどから、実習の問題についても基盤整備とおっしゃっておりますが、私はそれをすべきだということを申し上げているわけで、免許制度を改革するために必要な基盤整備とは何でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/225
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226・砂田重民
○砂田国務大臣 免許状の種類の改善のこともございましょうし、あるいは大学院を一般大学に置いて、教員養成課程の大学にもっと大学院を整備拡充していくこともございましょう。それぞれのことが大事な、必要な、お互い絡み合った基盤整備でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/226
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227・西岡武夫
○西岡委員 免許制度というものは、いま大臣がおっしゃったことが免許制度なんでして、それを改善、改革をしていく時期に来ているのではないか。私が免許制度の問題を来年からすべきだというのはそういうことを申し上げているのではなくて、免許制度自身にもう改革をしなければいけない問題点が出てきているという認識について、大臣はどうお考えかということをお尋ねしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/227
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228・砂田重民
○砂田国務大臣 私もそういう意味でお答えをしているつもりでございます。免許状の種類、それも免許制度の一つの重要な問題点でございます。たとえば免許状の種類にいたしましても、大学院卒の者の免許状をどうするかという問題も一つあるわけでございますね。それにはやはり教員養成課程を持ちます大学院の整備、まさにそこに、私が先ほどから申し上げております基盤整備の一つの大事な要件があるわけでございます。こういうものができてまいりませんと、大学院のあり方をいまのままでおいて大学院卒の教師の免許状をどうすると言っても、それは砂上楼閣のものではございませんかと申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/228
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229・西岡武夫
○西岡委員 問題はちょっと違うのですけれども、たとえば十五年の経験を持てばそのまま単位を新しく取得しなくても上級免に上進する、こうした制度が現行の制度の中にあるわけですが、こういうような制度は、現在の高度に進歩している学問というものを考えれば早急に改革、改善しなければいけない問題の一つであると思いますが、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/229
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230・砂田重民
○砂田国務大臣 十五年ゼロ単位の問題は、教職にある間の体験や研修による指導力の向上を期待をし、前提として置かれている制度でございます。ただ単なる経験年数、十五年の長さというよりは、十五年の中身がどうであったかということが問題であろうかと思うわけでございまして、経験年数の経過のみで上達を安易に認めることは確かに問題があると思います。したがって、今後、在職教員の研修の充実に一層配慮をして、十五年の長さそのものよりは十五年の中身の充実に努めてまいることは当然でございますけれども、この制度自体の改廃につきましては、免許制度全体の改善とも関連をして検討をしなければならない重要課題であると認識をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/230
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231・西岡武夫
○西岡委員 大臣の先ほどからの御答弁をそのまま理解をいたしますと、免許制度を改善するのにはなお相当の時間がかかる。そうはおっしゃっていませんけれども事実上そういうふうにしか受けとめることはできないわけですが、個々の問題について改善すべきところが出てくればそれを随時改善をしていくという考え方で取り組むとすれば、いま指摘を申し上げたような点はその部分に当たるのではないかと思います。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/231
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232・砂田重民
○砂田国務大臣 基本的には、免許制度を真剣に改善をする、そのことをスタートさせるための基盤整備をやるわけですけれども、可能なものから逐次着手をしていくということは、基本的には私は賛成でございますし、そうなければならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/232
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233・西岡武夫
○西岡委員 それではこの問題はいつから手をつけられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/233
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234・砂田重民
○砂田国務大臣 いつからという日限を切ることはいましばらく時間をちょうだいいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/234
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235・西岡武夫
○西岡委員 そうしますと、こういう、先ほどから大臣がおっしゃっておりますいろいろな条件、前提になる整備が根本的に進められなければ手をつけられない部分とそうでない部分とを分けた場合に、そういう免許制度全体の再検討、どこから手をつけるかという問題も含めた検討を文部省はお始めになる。その検討を始めるということについては直ちに検討に入る、こう理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/235
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236・砂田重民
○砂田国務大臣 それはもうそのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/236
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237・西岡武夫
○西岡委員 そうしますと具体的に、私は審議会というようなものは余り好きではございませんが、何らかの検討の機関を直ちに設けられるというふうに理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/237
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238・砂田重民
○砂田国務大臣 すでに中教審にもこれの検討をしていただいているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/238
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239・西岡武夫
○西岡委員 先ほども申しましたように、中教審は三年半も幾らも長い時間をかけて検討をして答申が出て、そして七年も八年も放置されているわけでございますから、また中教審で検討するというのはどうもいただきかねるわけで、そういうようなことではなくて、本来文部大臣の責任において、文部省の責任において具体的な案をつくられるべきではないか。その過程の中で、もちろん教職員の皆さん方も含めて、関係者の意見を十分お聞きになって案をつくられるということについては言わずもがなでございますが、文部省の責任において案をつくり、それを国会の審議にかけるということが本来のあり方であると思います。そういうやり方で直ちに文部省としては責任を持って免許制度のあり方について御検討になる、そしてある時点で国会にその案を提出するというふうに理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/239
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240・砂田重民
○砂田国務大臣 すでに教養審の相当具体的な建議をいただいているわけでございますから、これに基づきまして、文部省の責任で構想を練って原案を考え、各方面の御意見をその上でちょうだいをしたい。責任を持ってというお言葉でございましたが、文部省が責任を持って原案を考え、その上で各方面からの御意見をいただきたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/240
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241・西岡武夫
○西岡委員 それでは大臣が御在任中に、具体的な案を大臣の責任でお出しになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/241
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242・砂田重民
○砂田国務大臣 在任中にということですが、いつまでであるか明確ではございませんけれども、そうありたいと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/242
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243・西岡武夫
○西岡委員 それでは大臣が御在任中に具体的な案が提出されることを期待をいたしております。
そこで、有島議員からも多分御提案等があったと思うのですが、教師に求められるいろいろな資格、資質、能力というものの中で、私は、心身障害の子供たちの教育に携わる教師の方々の姿に教育の基本的な問題がある、そこに原点があるというふうに考えます。そういうふうに考えますときに、いま心身障害児教育に携わる教師の資格が別建ての形になっているわけでございますが、一般の教諭になるために取得する単位の中に、心身障害の教育に必要な単位というものを必須にするということが必要なのではないか。こうしたことは具体的に文部省の方で推進なされば直ちにできることであろうというふうに思いますが、この点について改善をなさるお考えはないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/243
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244・砂田重民
○砂田国務大臣 私も文部大臣に就任いたしまして一番初めに参観をいたしましたのが養護学校でございます。その養護学校で先生方の取り組んでおられる姿を見ましてまさに教育の原点はここにあるという感じを持ちましたことは、ただいま西岡委員の御指摘のお気持ちと同じことでございます。やはり教員に求められる一番基本的な問題、教育に対する使命感、教育的な愛情について、体に障害があるようなお子様の教育はその場から非常に効果ある先生方への勉強になるということは同感でございます。ただ、これを直ちに必修にいたしますためには、やはり、先ほどから御議論がありましたことに含まれますけれども、実習の場を確保するということに問題点がございます。したがって、そこを大学当局にも文部省側から積極的に働きかけて、この問題をどういうふうに克服し、積極的に進めていくか、検討をさせていただきますというお答えを有島議員にもしたわけでございます。そういう姿勢で取り組んでまいりたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/244
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245・西岡武夫
○西岡委員 この問題は厚生省等とも十分連絡をとって御検討になれば一つの方向が出るのではないかと私は思います。検討ということでございますが、そのお答えはいついただけますか。これは大臣にお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/245
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246・砂田重民
○砂田国務大臣 国立の教員養成大学の学部におきます教育実習のあり方として、特殊教育諸学校や小・中学におきます特殊教育学級、そういう場におきます教育実習を組み込みますように日本教育大学協会に文部省から積極的に相談を持ってまいりまして、そのような教育実習の教員養成に果たす意義や効果及び実習の内容、方法等について十分な研究を進めたいと思いますが、その検討の時期はできるだけ早い時期と信じてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/246
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247・西岡武夫
○西岡委員 歴代の文部大臣の御答弁を振り返りますとにわかに信じがたいわけでございます。
同じように学校保健の問題についても、これは体育の先生あるいは保健の関係の先生だけに任せられるのではなくて、本来学校保健の問題はすべての教師が関心を持たなければいけない問題だというふうに理解をいたします。そういうことを考えますと、学校保健の科目についてもこれは必修という形で、教師の資格の必要な単位というふうに組み込まれるべきではないのか、こういうふうに考えます。いまの問題とあわせて御検討いただきたいと思います。
それからもう一つ、新しい提案として申し上げたいのは、現在わが国の学校教育の中で一つおくれている分野として、教育機器というものが十分活用されていないのではないか。これだけコンピューターが発達をしている時代に依然として視聴覚教具の範囲から出ていない。こういうことを考えますと、現在のコンピューターを活用した教育機器、マルチメディア・コミュニケーション・システム、そういうようなものを学校教育に全面的に導入すべきである。そういうことを考えますと、現職の教職員の皆さん方の再教育の問題も含めて、新しくこれから教師になられる方の一つの資格としてこういう教育機器を操作できる能力というものがまた求められてくるのではないか。こういう視点でも教員養成の必須科目等について相当洗い直しが必要なのではないかというふうに私は思います。この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/247
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248・砂田重民
○砂田国務大臣 学校保健の問題につきましては、やはり教師の免許基準にかかわる問題でございますからいま直ちにというわけにはまいりませんけれども、これはひとつ重要な検討課題として、特殊教育の問題と並べて検討させていただきたいと思います。
新しい御提案のありました、そういう機器の学校への導入が大変おくれているということ、私も同じ感じを持ちます。ただ、やはりこれは相当慎重な研究をいたしませんと、率直に申し上げますとずいぶん教育機器メーカーというところは進んでおりまして、売り込み競争にたえられる体制をとらなければなりません。また取捨選別をいたさなければなりません。何が一番子供たちに好ましいのかという判定もいたさなければなりません。そういう力を文部省自身がまず持たなければなりません。その準備に取りかからなければならないと私も考えているところでございますが、それを扱ってもらう教員の資質のことにも絡んでまいることは御指摘のとおりでございます。教員養成の内容というものはますます多彩化され、より高度化を要求されてくることでございますから、そのことも含めて、これからの教員養成の問題、大変な問題であるという認識のもとに取り組んでまいる、さように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/248
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249・西岡武夫
○西岡委員 この問題は、文部省の教育機器についての取り組み方がおくれているために民間におけるそういう非常にばらついた形で、いろいろな玩具めいたものから始まって相当高度なコンピューターを使用した教育機器に至るまでいまのような状態で、文部省がこの問題に積極的に取り組んで、学校教育の中で教育機器を正当に位置づけるのでなければ全く別のシステムができ上がる可能性がある。この問題について、やはり教師がそういうものを十分に活用できるだけの能力を持たなければいけないのではないか。それをいまのうちに手を打っておかなければいけないのではないかということを含めて、教員養成の必須の科目単位の中にコンピューターを操作できる、プログラミングまでを含めてということは申し上げませんけれども、そういうようなものを必須の資格として持てる、持つということが必要になってきているということを、いまの心身障害の子供たちの教育の問題、学校保健の問題とあわせてぜひ直ちに御検討をいただきたいということを要望しておきます。
あと、最後に二点だけお尋ねをいたします。
一つは、先ほど触れました試補制度が必要ではないかということがかなり国民的な要請として声がだんだん大きくなってきているというふうに私は認識をいたしますが、大臣として試補制度の導入について基本的な考え方と、この試補制度をやるとすればどういうような取り組み方で進めていかれようとするのか、基本的なお考えだけをぜひお聞かせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/249
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250・砂田重民
○砂田国務大臣 試補制度の提案をなさる方がたくさんございまして、その御趣旨は私は理解をいたすものでございます。試補制度と申しましても、どうもいろいろな方のお話を承っておりますと二つの方法が主張されているようでございます。一つは採用後一年間を仮免許にするという考え方、もう一つは一年程度の実地研修をやらせる、そういうお考え、どうもこの二通りあるようでございますけれども、どちらにいたしましても、またおしかりを受けるかもしれませんけれども、財政上の問題がやはり絡んでまいります。それは、これから数年間の児童、生徒数の大変な増に対応するということも一つの重要な問題点でございます。もう一つは、その一年間だれが、どこで、どういう内容で教えるのか、その体制の準備ができませんと試補制度についても踏み切れることではございません。したがって、当面は初任者に対します研修というものの内容を充実をさせていく、こういうことに真剣に取り組んでまいりつつ、制度上の問題もございますから試補制度の問題は慎重に検討をいたしたい、かように考えるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/250
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251・西岡武夫
○西岡委員 これもなお一般質問の中でさらに大臣の御見解をただしてまいりたいと思います。
もう一つ、最後の質問は、大学行政にいろいろ問題があるわけですけれども、その中の一つの問題として、非常に大きな規模の大学の場合の大学内の運営、行政というものは一つの都市運営に匹敵するだけの規模を持っている。そういうことを考えますと、大学の事務職の方々が他の行政職とは違った能力を求められるのではないか。これは大学紛争の非常に激しいときに議論された問題でございますが、学校のいわゆる事務、行政の専門家というものを養成すべきではないか、マネジメントが要求される。そういうような観点からひとつ大臣に御検討いただきたいのは、小・中・高等学校の事務職の皆さん方の特別の役割り、県庁や市町村の役場の事務職の方々とは違う、児童、生徒を対象とした小・中・高等学校の事務職の皆さん方の御苦労、あるいは教育的にも間接的に果たさなければならない役割り、使命というものを考えれば一つの新しい資格というものが求められるのではないか。いまの大学行政についての専門家というものを養成するという問題も含めて、御検討いただく大きな課題ではないだろうか。これについて大臣の御見解だけで結構でございますから承りまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/251
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252・砂田重民
○砂田国務大臣 大学が、学問の自由を守る真の大学の自治を確立するためにりっぱな運営をしていただかなければなりませんし、大学運営のあり方について心配をいたしております一人でございます。ただ、それはまず大学の自主的なお考え方から大学の体制というものをおとりいただくのが教育という問題の一番基本にあろうと私は思うのです。ただいま御指摘の大学の事務職員の身分、待遇等を全く別のものに考えろ、重要な御提言だったと思いますけれども、大学の事務職員の身分、待遇というものを別個の取り扱いにするということは公務員制度全体に絡んでくる問題でもございますので、当面は実務研修を通じての資質向上に努力をしながら慎重に検討させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/252
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253・西岡武夫
○西岡委員 小・中・高等学校の事務職の問題も含めて御質問したので、大学とはちょっと別でございますので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/253
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254・砂田重民
○砂田国務大臣 小・中・高についても検討させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/254
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255・西岡武夫
○西岡委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/255
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256・菅波茂
○菅波委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/256
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257・菅波茂
○菅波委員長 この際、本案に対し、自由民主党提案に係る修正案が小島静馬君より、また、日本社会党及び日本共産党・革新共同の共同提案に係る修正案が小川仁一君外一名より、それぞれ提出されております。
この際、両修正案について、提出者より順次趣旨の説明を求めます。まず、小島静馬君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/257
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258・小島静馬
○小島委員 ただいま議題となっております国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案に対する修正案について御説明申し上げます。
案文は、すでにお手元に配付されておりますので、朗読を省略させていただきます。
修正案の趣旨は、本法律案の施行期日はすでに経過しておりますので、これを公布の日から施行することとし、これに伴う在学年数の計算について必要な経過措置を講じようとするものであります。
何とぞ委員各位の御賛成をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/258
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259・菅波茂
○菅波委員長 次に、小川仁一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/259
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260・小川仁一
○小川(仁)委員 私は、日本社会党、日本共産党・革新共同を代表して、国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案に対する修正案を提出いたします。
説明をいたします。
一、修正案の趣旨。
改正案中、上越教員大学及び兵庫教員大学の設置に係る部分を削除する。
二、修正案提出の理由。
今回提案されている兵庫教員大学と上越教員大学は、主として現職教員の研究、研さんの機会を確保するための大学院に全体として重点を置き、あわせて初等教員養成のための学部を持つ大学であり、そこでの教育研究は、学校教育に関する実践的な教育研究を推進することとされている。
今回の新教員大学構想には、現職教員の研修のあり方や教員の養成のあり方、また大学院のあり方を含めた大学制度全体に影響を及ぼしかねない重要な問題が含まれており、徹底した審議を行い、問題点の解明を行うことが国民に対する国会の責務である。
また、学生や大学院生の受け入れ年度が、兵庫教員大学においては一九八〇年度(大学院生)、上越教員大学では一九八一年度(学部学生)と提案をされている点からも、時間をかけるなど、徹底した審議を行うことは無理なことではない。
一方、信州大学の経済学部など他の学部の新設や改組、あるいは愛知教育大学への大学院の新設などは、学生募集などとの関係から、教員大学についての審議によって成立をおくらせることには問題がある。
これが教員大学に関する部分の分離を要求したい趣旨であるが、法案採決に当たっての技術的な問題もあり、削除する修正案を提出することになったものである。
何とぞ同僚各位の御賛同をお願いを申し上げ、提案の理由といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/260
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261・菅波茂
○菅波委員長 以上で両修正案の趣旨の説明は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/261
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262・菅波茂
○菅波委員長 これより原案及び両修正案を一括して討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。嶋崎譲君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/262
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263・嶋崎譲
○嶋崎委員 私は、日本社会党を代表し、先刻提出されました日本社会党、日本共産党・革新共同共同提案の修正案に賛成し、政府提出原案に反対する討論を行います。
その理由を申し上げます。
政府提出の法案は、大きくは二つ、国立学校設置法の一部改正と、国立養護教諭養成所設置法の一部改正とから成っています。
さらに、国立学校設置法の一部改正は、われわれの見解によれば三つの構成部分から成っています。その一つは、上越、兵庫に創設が予定されている新しい構想の教員大学と大学院に関する部分、その二は、放送教育に関する放送教育開発センターの設置に関する部分、その三は、福井、山梨医科大学の新設や信州大学に経済学部を増設するなど、大学の新設、既設の大学の増設、改組などに関連する部分であります。
その二の放送教育開発センターについては、文教委員会の中に放送教育小委員会を設置することが理事会で決まっていますので、今後その場で討論を深めることができます。
第三の大学の新設、増設などについては、異論もなく賛成であります。
しかし、新構想の教員養成の教員大学・大学院については、次に述べる理由で、今日の段階で採決されるならばいまだ賛成しかねます。
第一には、国大協は教員養成大学構想には長年疑義をはさみ、批判的な見解が発表されており、その疑義や批判がいまだに解消されたものと判断することができないからであります。確かに、四月十八日の国大協の教員養成制度特別委員会は、去る一月二十日の須田委員長が発表された委員長見解に基づいて、その見解をほぼ了解されたと聞いております。しかし、国大協総会及び各大学での討議を行うならば、国立大学の総意を反映しているものとはとうてい考えられないからであります。その証拠は、同じ四月十八日、当面三百六十八名の教育学者有志が「「教員大学」創設計画を留保し慎重な検討を求める声明」を発表していることに示されています。その数はまだまだふえると思います。声明は、「教員大学の具体的内容について、ひろく教育、大学関係者、教育学界などに明らかにし、その意見を十分に聴取するよう配慮すること。」「また、現職教育のあり方について教職員関係団体との問の協議を無視することは将来にわたり教育の現場に混乱をもたらす危惧が大きいところからその点の十分な配慮をおこなうこと。」などを提案しています。
第二には、既設の教育系大学学部における大学院の増設、予算措置上の改善、免許制度の改善など、教員養成を充実させるための改革の方向は委員会審議の中で次第に明らかになりつつありますが、いつ、どのような方法で、どのような内容でなど、いまだその保障が明らかではありません。
第三には、委員会の審議の過程で明らかになったように、現職教員の教員大学の大学院入学には、教育行政当局の実質的規制が加わるおそれがあること、全国の教師の研修権の平等と自由が侵害されるおそれがあることを否定することはできません。
第四に、大学の管理運営についても、現行法の枠の中で行うと言いながらも、副学長その他の組織として、研修その他の計画について広く国民の意見を聞くという理由のもとに、連絡協議会的なものを参与制との関連で追求されているようであります。しかし、この点も不明であります。
第五に、教員大学という名称は、教員という職業を前提とする一種の職能大学であって、国立学校設置法で言う大学の名称としてはふさわしくない。それはあたかも医師養成の大学を医科大学と言わずに医師大学と称するに等しい。名は体をあらわすのことわざにもあるように、一種の研修所的性格を示しているように思われてなりません。
以上の理由から、現行法の「教員養成は大学で行う」という理念は、教員養成制度という枠の中で教員養成のあり方を規制するものではなく、大学のアカデミックなあり方の中ですぐれた教員養成を可能にするために大学が関与すべきものであることを意味しています。教員大学だけが教員養成の大学ではありません。したがって、二つの教員大学・大学院の創設には、国大協を構成する各大学、教育学界、教職員団体など多くの国民の世論に耳を傾ける必要があります。
したがって、「教員大学創設計画を留保し慎重な検討を求める」段階であるという意味において創設を留保するという立場を明らかにし、日本社会党、日本共産党・革新共同共同提案の修正案に賛成し、政府提出原案に反対し、したがって自民党提出修正案にも反対し、私の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/263
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264・菅波茂
○菅波委員長 有島重武君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/264
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265・有島重武
○有島委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案並びにこれに対する修正案に対する討論を行います。
まず、法案を三つに区分して賛否を申し上げます。
第一は、本法案中、上越教員大学・大学院及び兵庫教員大学・大学院の名称については、後に述べる理由によって反対の意向を表明します。
第二は、放送教育開発センターの設置については、本委員会に設置を予定されております小委員会において十分な審査を継続することを条件として、その設置を認めます。
第三に、以上を除く部分については賛意を表明するものであります。
なお、以上の趣旨により、各修正案には反対表明をいたします。
以下、反対部分について述べます。
およそ、教員の資質能力の向上については、教員養成制度の改革拡充及び現職教員研修研究の充実が不可欠であります。本委員会の審査の過程では、既存の制度の改善充実についての政府の積極的意欲は評価すべきものがあったと認められます。特に、初等中等局長より、現職教員研修の充実については、教員自身の自主的意欲を重んじ、上意下達的なものに陥らぬよう留意するとの表明がなされました。今後その実績を期待して見守りたいと思います。限られた審議日程の中では、いわゆる社会的要請に対応するための抜本的制度改革については、なお後日にまたねばなりません。
以上のことを前提として初めて、教員養成及び現職教育のための高等教育機関の新設は是認すべきものと考えます。
次に、新設機関の名称について、原案の教員大学・大学院の名称を、以下の理由により修正すべきであると提議するものであります。
一、原案の上越教員大学・大学院及び兵庫教員大学・大学院は、現職教員のいわゆる研修所ではなく、学究的資質を持つ現職教員に研究の機会を開く構想に支えられるものである。また、当該大学院は、現職教員のみが修学するものではなく、一般の学部卒業者の修学をも予定している。これら二つの性格は、将来設置されるべき各教育大学の大学院と本質的には同様である。
二、原案の上越教員大学及び兵庫教員大学の学部は初等教育教員を養成する学部であるが、これらは、原案中の広島大学に新設される学校教育学部と同趣旨である。
三、仮に、上記の大学・大学院が、本委員会の審査における政府答弁とは別に、将来にわたって他の教育大学・大学院とは全く異質であることを固執する意図があるならば特別の名称もあるいは必要であろう。しかし、本日までの本委員会審査の結果から判断するところによれば、特別な名称に拘泥する理由はない。それのみか、かえって将来に禍根を残すおそれがある。教育制度の問題は、十年−三十年の見通しに立って配慮し、判断すべきものと考える。
以上三点。よって、原案中の上越教員大学・大学院を上越教育大学・大学院に、兵庫教員大学・大学院を兵庫教育大学・大学院に修正することを提議するものであります。
第八十四国会の会期及び審議の場はなお残されておりますので、各位におかれましてはこの提言に御留意いただき、賛同せられますよう期待いたしまして、討論にかえるものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/265
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266・菅波茂
○菅波委員長 曽祢益君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/266
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267・曾禰益
○曽祢委員 私は、民社党を代表いたしまして、いま提案されておりまする国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案並びに右に対する自民党修正案に賛成、これに関する社会党並びに共産党の修正案に反対の討論を行うものでございます。
すでに本員並びに中野委員の質疑等におきまして明らかにいたしましたように、私どもは、今回の一番大きな問題になった教員大学並びに大学院の設置に当たりましては、これは一つの先導的試行と考えまして、これに賛意を表するのにやぶさかでございません。
ただ、この機会に特に強調しておきたいことは、これは質疑のときにも申し上げましたが、とかく文部省が、新しい構想については非常にやるけれども、現時点においてすでにできている教育に関する施設、機関並びに教員の養成等に関する問題についての改善については非常におくれている。この点を非常に遺憾といたしまして、二点にわたって強く文部省に反省を求めたいと思います。
その第一点は、教員大学の設置と既存の教育関係の大学の充実との整合性に留意していくことが必要である。
第二点は、教員、なかんずく初等教育を担当する教員の養成、教員資格認定の条件、免許前の実習、任用後の定期研修等の改善、充実に努め、もって、これら教員の資質、経験等の改善についての国民の期待にこたえることが緊急に必要である。
かように考えまして、この点を強く政府に要請する次第であります。
第二に、放送大学につきましては、これは同僚委員からもお話がありましたように、本委員会において小委員会を設けてさらに検討を重ねるのでございまして、本法案に出ている放送教育開発センターの設置そのものについては、これは当然に賛成の意味で、この放送大学の検討は小委員会においてこれからも継続的にやっていく意味におきまして、原案に賛成する次第であります。
以上をもって討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/267
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268・菅波茂
○菅波委員長 山原健二郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/268
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269・山原健二郎
○山原委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案の採決に当たり、日本社会党、日本共産党・革新共同の提案に係る共同修正案に賛成し、政府原案に対し反対の討論を行います。
この法案に対する採決が、私どもが賛成する部分と反対する部分を混在させた一括採決でありますので、それぞれについて態度を明らかにして討論をいたします。
まず第一に、信州大学経済学部など学部の新設や改組、あるいは愛知教育大学への大学院の新設などには賛成であります。
しかし、第二として、この法案には、ただいま共同修正案提案の際、理由が述べられましたように、われわれがもっと徹底して審議もし、広く教育関係者や研究者等の意見を反映すべきだと主張する新構想教員大学・大学院の設置も包含されています。
質疑の中で明らかになりましたように、新構想教員大学・大学院については、まだ数多くの不明の部分や疑点が解明されておりません。特に、戦後、大学の基本的な理念である大学の自治と学問の自由がどのように守られるかという重要な問題もあります。ことに、入試に当たり教育委員会の同意書添付の問題が、教育行政側の恣意的な選択にゆだねられないという保障も明確ではありません。また、上級教師、エリート教師をつくるものだとの従来からの批判に対しても、そうでないという歯どめも確固たるものとなっていません。さらに、現存の教員養成大学の充実は関係者の年来の悲願にも近い切実な要求であるにもかかわらず、これに対応する計画も存在しておらず、一層矛盾の拡大する可能性もないとは言えません。
教員養成と現職教員の研修は、将来の日本の教育にとってきわめて重要かつ緊急な課題であり、わが党はいささかもそれを軽視するものではなく、積極的に前進させなければならぬと考えておりますが、新構想は、事が重要であるだけに、関係者の衆知を結集し、教育公務員特例法に定める研修の本旨にのっとり適切な方針を打ち出すべきであるとの立場から、現状において教員大学・大学院構想については賛成することができず、反対するものであります。
第三に、放送教育開発センターの設置についてでありますが、このセンターの目的が、放送教育の内容、方法等の研究開発を行うとされ、研究目的そのものが狭く限定されています。これは、文部省によってこのセンターが放送大学の創設準備のための機関に位置づけられてきたことに原因があると思われます。
わが党としては、国立大学共同利用機関が放送教育の内容、方法等について研究開発すること自体や、こうした研究の成果が放送大学の設立や他の大学の教育に利用されること自体に反対するものではありませんが、将来設立される放送大学での研究開発内容との関係が不明確なまま設立されることには問題がなしとしないのであります。
この点から、放送教育開発センターの設立には、現段階では棄権の態度をとる考えであります。
なお、この件に関し小委員会設置が合意されていますが、十分審議されることを期待してやまないものであります。
以上の理由から、本法案には賛成すべき部分を持ちながらも、一括採決に当たっては総合して反対の立場をとるものであります。したがって、日本社会党、日本共産党・革新共同の共同修正案に賛成し、政府原案について反対をいたしまして、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/269
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270・菅波茂
○菅波委員長 これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/270
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271・菅波茂
○菅波委員長 これより採決いたします。
まず、小川仁一君外一名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/271
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272・菅波茂
○菅波委員長 起立少数。よって、小川仁一君外一名提出の修正案は否決いたしました。
次に、小島静馬君提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/272
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273・菅波茂
○菅波委員長 起立多数。よって、小島静馬君提出の修正案は可決いたしました。
次に、修正部分を除いた原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/273
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274・菅波茂
○菅波委員長 起立多数。よって、修正部分を除いた原案は可決いたしました。
なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/274
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275・菅波茂
○菅波委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/275
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276・菅波茂
○菅波委員長 次回は、来る二十一日開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時五十五分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108405077X01519780419/276
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