1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年五月二十七日(金曜日)
午後三時一分開会
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出席者は左の通り。
理事
仁田 竹一君
重盛 壽治君
木島 虎藏君
委員
岡田 信次君
川村 松助君
一松 政二君
高木 正夫君
内村 清次君
大倉 精一君
小酒井義男君
片岡 文重君
政府委員
運輸政務次官 河野 金昇君
運輸省海運局長 粟沢 一男君
運輸省船舶局長 甘利 昂一君
運輸省自動車局
長 真田 登君
事務局側
常任委員会専門
員 古谷 善亮君
常任委員会専門
員 田倉 八郎君
説明員
運輸省海運局定
期船課長 岡田京四郎君
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本日の会議に付した案件
○自動車損害賠償保障法案(内閣送
付、予備審査)
○船舶積量測度法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
○海上運送法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
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001・木島虎藏
○理事(木島虎藏君) それでは、これより運輸委員会を開催いたします。
まず、自動車損害賠償保障法案を議題といたします。河野運輸政務次官の提案理由の説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/1
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002・河野金昇
○政府委員(河野金昇君) 最近における自動車運送の発達はまことに目ざましいものがありまして、本年二月末の車両数は、百三十四万二千両に達し、戦前最高であった昭和十三年に対しまして六倍をこえるという盛況を呈しているのであります。
これとともに、自動車事故の発生も急激に増加し、昨年一カ年において七万二千五百人にも上る死傷者をもたらすという憂慮すべき事態に立ち至っているのであります。
ここにおきまして、諸般の事故防止対策の強化徹底にもかかわらず不可避的に発生する自動車事故による被害者の保護に万全を期しますため、今世紀初頭よりつとに実施されております諸外国の立法例にならい、自動車損害賠償保障制度を確立するため、本法案を提出したものでありまして、道路運送法第百二十五条の二にあります自動車事故による損害賠償を保障する制度の確立に努むべき旨の規定の趣旨にも沿おうとするものであります。
次に、本法案の骨子について御説明申し上げます。
第一は、自動車による人身事故の場合の賠償責任を適正にするための措置であります。このために、人身事故につきましては、自動車側に故意過失がないとともに被害者または第三者に故意過失があったことを自動車側で証明できない限り、自動車側に賠償責任を負わせることにいたしまして、その責任を無過失責任主義に近づけたのであります。
第二は、自動車側の賠償能力を常時確保するための措置であります。
その一は、強制保険制度でありまして、原則としてすべての自動車について賠償責任保険契約の締結を義務づけるものであります。この場合の保険者は民間保険会社といたしますが、本法案の目的を達成するために、引受義務、非営利的料率の算定等について保険業法等の特則を設けますとともに、免責事由の縮減等について商法の特例を設けることにいたしております。さらに、本保険につきましては、その特殊性にかんがみ、政府がその百分の六十を再保険する措置をも講じております。なお、多数車両の所有者に対しましては、例外的に自家保障の道をも開いております。
その二は、自動車損害賠償保障事業でありまして、ひき逃げ事故のように加害者が不明な場合等におきまして、政府が被害者に損害を填補する措置を講じようとするものであります。
以上が本法案の要旨でありますが、なお、本法案による政府の再保険事業及び保障事業の実施につきましては、約二千六百万円を一般会計から繰り入れる予算案がすでに御審議を受けており、またこれに伴う自動車損害賠償責任再保険特別会計法案も本法案とともに提出されております。
以上によりまして、本法案の提出理由についての御説明を終りますが、自動車事故による被害者の保護をはかり、自動車運送の健全な発達に資しますためには、ぜひとも本法の制定を必要とするものと考えられますので、何とぞ十分御審議の上、すみやかに可決されるようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/2
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003・木島虎藏
○理事(木島虎藏君) 質疑は次回に譲りたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/3
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004・木島虎藏
○理事(木島虎藏君) それでは御異議ないと認め、そのようにいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/4
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005・木島虎藏
○理事(木島虎藏君) 次に船舶積量測度法の一部を改正する法律案を議題といたします。まず、政府委員より補足説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/5
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006・甘利昂一
○政府委員(甘利昂一君) 従来より、船のトン数をはかります場合に、一般には密閉された容積をはかって総トン数を出しておるのでありますが、そのうち、特に船の安全及び航海上必要な場所、たとえば機関室であるとかあるいは船員室等については、総トン数からこれらの容積を控除いたしまして、その残った純トン数についてトン税その他の税金を賦課するようにしておりますが、そのやり方について非常に不合理の点がございましたものですから、これを今回改正したいと思うのであります。
その不合理の点と申しますのは、機関室の容積と全体の総容積の比率が一三%以上二〇%以下の場合には、従来総トン数に対して約三二%を控除しておったのでありますが、一三%以下の場合にはそれが急に減って参りますので、最近の機関室は一般に舶用機関の発達によってだんだん小さくなってくるにかかわらず、トン数の方で免除されるものが、一三%以下の場合には、先ほど申しましたように控除トン数が少くなるものですから、わざわざ機関室の容積を大きくしなければならぬというふうな不合理の事態が起っておりますので、それでこれを舶用機関の発達に即応したようにいたしたいと思いまして、今回の改正をいたしたわけございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/6
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007・木島虎藏
○理事(木島虎藏君) ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/7
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008・木島虎藏
○理事(木島虎藏君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/8
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009・甘利昂一
○政府委員(甘利昂一君) それでこういう船のトン数につきましては、お互いに各国がはかったトン数を認めるというような互認の協定がございます。従って、たとえば日本ではかった船がイギリスの港に入りましたときに、その港でとるいろいろな、岸壁使用料であるとか灯台税とかいうそういうような税をとります場合、本来ならば、その船をもう一ぺんイギリスの測度法によってはかり直してそれによって税をとるのが建前でありますが、ただ、しかし日本の測度法とイギリスの測度法と非常に似ております。実質的にそう差がないということから、日本のはかったトン数をそのままイギリスで認めまして、そのトン数に応じていろいろな税をとる。お互いに、またイギリスの船が日本に入りました場合にも、同様に向うではかったトン数をそのまま認めて、それをもとにして税をとっていく、こういうふうなことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/9
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010・木島虎藏
○理事(木島虎藏君) 御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/10
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011・岡田信次
○岡田信次君 この「外車ヲ備フル船舶」というのは、日本に何そうあるか。また少しく、さっきのお話だと、税というものに関係するのですが、現在外車を備えた船で外国へ行くということは考えられないんですが、そういう点から「外車ヲ備フル船舶」というのは、この法律から取っちゃったらどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/11
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012・甘利昂一
○政府委員(甘利昂一君) 現在おそらく一、二はいしか外車を備える船は日本にないと思いますが、後刻これは詳細に調査いたしまして御報告いたします。
ただ、一ぱいでもある場合に、この船が新しい測度法を適用したととが有利であるということであれば、この新しい測度法によって測度してもらいたいという申請を提出することができますので、その場合に、やはり一隻でもある以上は、この法律を適用するためにはこういうものを書いておかなければいけないのじゃないか、こういうふうに考えております。
それから、先ほど、こういうことによってどれだけいろいろトン税とかそういうものが違うかというお話ですが、一応計算してみますと、全般において純トン数が減って参りまするので、国内においてとるトン税その他において、大体今の船腹量から見ますと、二百四、五十万円収入において減りますが、日本の船舶が外国へ行ったときにとられる税金は千四、五百万円少くなります。従って、国全体から考えますと、それだけ差引外貨の支払いが少くなりますので有利になる、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/12
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013・岡田信次
○岡田信次君 ちょっとごもっとものような御答弁ですが、おそらくこれから外車を備えた船舶は今後ないんだろうと思いますから、付則かなにかにそういうのをつけておいたら、非常にごの法律も簡単になると思いますが、御再考いただけないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/13
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014・甘利昂一
○政府委員(甘利昂一君) これは先ほど申し上げましたように、お互いに互認しておりますし、向うのやはりとういう法律にも外車の項が書いてありますので、従来通り書いてある方が便利じゃないかと思いますが、しかしお話の趣旨もごもっともと思いますので、もう一度よく考慮いたしたいと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/14
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015・仁田竹一
○仁田竹一君 一応もっとものように考えられますけれども、一体船を作りますのに、あの狭い容積のうちで、主としてことにある税金だけの関係で機関室を広くする、従って貨物あるいは客室を狭くすることにもなるというのですが、税といったところで、貨物を積みあるいはお客さんを乗すことによって得る料金より、その額の少いことは当然のことなんです。従って、主として税金をたくさん払うことがいやだから、小さく狭くても済む機関室を特に広くする、そうして今の貨物なら貨物、客船ならお客さんを乗せるという主たる目的の方の容積を狭くするということは、ちょっと、私ども常識では考えられないと思うけど……。なおまたイギリスの例がありましたけれども、もしイギリスと日本とが同じような事情であるというならば——イギリスと違うというのなら何だけれども、まあ何といっても海運王国たるイギリスが日本と同じような測度法によってやっておるということも、この問題をなぜ、そういうふうに改正しなければならないじゃないかという理由には—対外的には逆の理由になるのじゃないか。なぜ一体日本はイギリスと違った測度法によらなければならないかということが、むしろ主になってくると思うので、いかにも公正らしくていいようでありますけれども、そのために客室の中あるいは貨物を収容する容積を狭くするということになると思うのですが、この点どうでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/15
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016・甘利昂一
○政府委員(甘利昂一君) 今御説明申し上げたように、わざわざトン税を少くするため機関室を大きくして、貨物の容積あるいは旅客の容積を少くするというようなことは、あり得ないと思います。ただ、今御説明申し上げましたように、急に一三%とそれ以下のものと段ついておりますので、実際自分の必要な機関室なりをとった場合に、たまたまその段より下になっていた場合に、今のような規定でありますと、急にトン数の控除が減って参りますから、わざわざトン数を減らすために、機関室そのものはとにかく、機関室の上部の囲いやなにかを少し大きくして、これをトン数に入れてくれというようなことで申請される場合がありますから、われわれはむしろそういうトン数を減らして、それによる税金も少くするという意味より、むしろ今までのこの規定が不合理であった、そこにギャップがあるのが不合理であった、こういうのを直したい、こういう趣旨であります。
それからもう一つ、イギリスの測度法に従う必要はないじゃないかというお話ですが、これはイギリスに限らず、各海運国ともおのおのその国で定めた測度法があります。それによってやっているわけでありますが、大部分の点においては似ておりますが、細部のいろいろなはかり方において幾分違っているころもあるわけです。それはおのおのその国の解釈によってきめておるわけでありますが、従ってイギリスに限らず、オランダであらうと、ベルギーであろうと、みんな多少違っておりますが、大体似たような測度法を持っておるのでありまして、特にそういう状況から申しまして、これを世界的に画一的に統一した方が便利じゃないかというふうな議論が数年前から持ち上りまして、現にそれの画一条約に関する案が北欧四カ国から提案されまして、数年前から国際会議にかかっておるのでありますが、ただなかなか今のように既存の船主に対する利害関係があるものですから、イギリスであるとかあるいはアメリカのごとき、主要海運国がなかなかこれに賛成をいたしませんので、まだ締結になっておりません。おそらく、しかし将来はだんだんそういう方向に向っていくのじゃないかと思います。ですから、今おっしゃったような御議論は、今後逐次実現する方に向っておると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/16
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017・仁田竹一
○仁田竹一君 従来のスチーム・エンジンの膨大な容積をとる機関室、それに伴う石炭の貯蔵所でございますね、それでは困るというので、トン数に対する税などというものを考えておる船主はいないのでして、これはディーゼル・エンジンにしますと、場所は狭くて済むし、石炭を入れる所はなくて、重油だけで済む。だから、容積も客室を広くするためにやっておるわけです。従って、今あなたのおっしゃった理由はどうも納得がいかないわけでして、大体そういうふうにするのが公正だと言われるならば、これは別だけれども、それを理由に船主がそういうようなことをするのだ、船主が横着なんだというような考え方、これは逆ですよ。だから、その点はお間違いのないように……。そんなことは船主から言いはしませんよ。
それからイギリスの関係も、イギリスは日本と同じような取扱いができているものの、要するにそういう問題が起きておるでありましょうけれども、もしイギリスがこういうふうになっておるのだから日本の方をイギリスに近づける必要があるということなら別だけれども、イギリスがやっておることの逆な方向に、将来はどうか知りませんけれども、日本の測定法を変えていこうということは、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/17
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018・甘利昂一
○政府委員(甘利昂一君) この改正は、むしろイギリスの方からそういう提案がなされて、関係の方面に連絡があったわけです。関係方面でも一々国内の事情を調査いたしまして、むしろこういう方法が合理的であるというふうな見解に達したために、各海運国ともイギリスに対して同意の旨を答えております。従って、イギリスが最初の提案者でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/18
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019・仁田竹一
○仁田竹一君 そういうふうな機運にあるのにかかわらず、日本が、しかも今即刻に、それを改正しなければならないというような特別の理由があるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/19
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020・甘利昂一
○政府委員(甘利昂一君) イギリスはすでに昨年の七月から実施いたしております。各国とも法律の改正をやっておりますので、日本としても合理的な改正であれば成るべく早急に改正して、今後作る新しい船については、こういう合理的な方法で測度するのが適当ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/20
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021・仁田竹一
○仁田竹一君 あなたの説明で、イギリスは日本と同じような取扱いになっておるんだとおっしゃったから、私はそういう話をしたんです。今のあなたのお話は、イギリスの船は昨年から変えておるというんですね。どっちがほんとうなんですか、あなたの言うのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/21
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022・甘利昂一
○政府委員(甘利昂一君) 先ほど私どういうふうに申し上げましたか、あるいは誤解を招くような発言をしたかもしれませんが、あとから申し上げました、イギリスから提案があって、すでにイギリスは変えておるというのがほんとうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/22
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023・木島虎藏
○理事(木島虎藏君) ほかに御質疑ございませんか。
ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/23
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024・木島虎藏
○理事(木島虎藏君) 速記を始めて。
それでは、提案理由にいろいろ問題がありましたから、この次提案理由を整理して、そして次回に質疑を続行することにいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/24
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025・木島虎藏
○理事(木島虎藏君) 次に、海上運送法の一部を改正する法律案を議題といたします。まず、政府当局の補足説明を伺うことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/25
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026・粟沢一男
○政府委員(粟沢一男君) 海上運送法の一部改正の法律案につきまして、内容をやや詳細に御説明申し上げたいと思います。お手元に前回のときにプリントを差し上げてあると思います。
まず第二条の定義につきまして、第二項の船舶運航事業という定義の中に「有償で」という三字の字句が入ります。これは無償で運送する事業につきましては本法の適用を受けないことを明らかにいたしました。また第四項で、旅客定期航路事業の定義を特に「人の運送をするもの」というふうに限定をいたしました。現行法では、旅客船によりまする定期航路事業であれば、実際は人を運送しなくて貨物を運送しておる場合でも、旅客定期航路事業の規制を受けることにほっておりまして、はなはだ不合理でありますので、この点を是正することにいたしております。
次に、第三条から第十九条の三までの改正は、旅客定期航路事業の規定を是正する内容でございます。
改正の第一点といたしましては、一般の旅客定期航路事業と特定の旅客定期航路事業とに分離いたしました。特定旅客定期航路事業とは、特定の者との契約で特定の範囲の人の運送をする旅客定期航路事業でありまして、これらの事業は、その性質上、旅客定期航路事業に関する規定を全面的に適用する必要が認められませんので、運送の秩序維持の面から必要と認められます事業の免許と運航計画の変更の認可以外の規制は、これを行わないことにいたしたのであります。
第二点といたしましては、第四条の免許基準について改正を行なったことであります。改正案におきましては、一応条文の全体が書き改められておりますが、実質的に改正されました箇所は、現行法の第二号と第五号を削りましたこと、第七号は別の条文といたしまして第五条といたしましたこと、及び新たに第五号及び第六号といたしまして、事業者の能力に関する基準と事業開始の公益上から見た妥当性に関する基準をつけ加えることにいたしましたことであります。第二号を削りましたのは、この基準が第一号と第四号の基準と重複しておりまして不必要と認められるからでありまして、現行法の第五号は、事業の経理的基礎に関するものでありますが、旅客定期航路事業は、強度の公益性を有しております上多数の人命を預かるものでありますので、改正案におきましては、第五号といたしまして、事業者については、その資産信用力のほかに、旅客運送に関する知識経験をもあわせた事業遂行能力を審査の対象とすることにいたしたのであります。第六号といたしまして「当該事業の開始が公益上支障のないものであること」の基準を加えておりますが、これは、近年遊覧客の増加に伴いまして遊覧船が著しく増加する傾向にありますが、一定の限られた水域内におきましては、需要に応じて無制限にこれを認めますと、航行の安全等の面から支障を生ずることが予想されますので、当該事業と利用者との間の関係のみでなく、一般公益の見地からもこれを審査しようとするものであります。
第三点としましては、第六条の運輸審議会の公聴会開催に関する規定を削除いたしたことであります。現在運輸審議会は、本条の規定がありますため、旅客定期航路事業の免許につきまして運輸大臣から諮問を受けました場合には、必ず公聴会を開かなければならないということになっているのでありますが、事案の中には、公聴会を開催するほどの重要性が認められないものがありますので、このような事案につきましては、公聴会を開催することなく、書面審理のみでも答申できるという道を開く必要があったので、これを削除いたしました。しかし本条を削除いたしましても、運輸省設置法によりまして、運輸審議会は利害関係者の申し出があった場合、あるいは運輸大臣の指示があった場合、公聴会を開かなければならぬという規定がまだ生きておりますので、その規定に従いまして公聴会は開かれるということになるわけでございます。
第四点は、旅客定期航路事業者がその事業を休止いたしますときは、第十五条によりまして運輸大臣の許可が必要なのでありますが、その事業の休止の許可は、一年をこえる期間についてはすることができない旨を法文上明定いたしまして、免許を受けた事業者が空虚な権利のみを保持しつつ惰眠をむさぼるのを排除できるようにいたしたことであります。
第五点は、第十六条を改正いたしまして、旅客定期航路事業者が船舶安全法または船舶職員法のごとき安全関係
法令に違反しましたとき、正当な理由がないのに許可または認可を受けた事項を実施しないとき、及び第五条に掲げてあります欠格事由に該当することになりましたときには、事業の停止を命じ、または免許を取り消すことができるようにいたしたことであります。特に安全関係の法令違反を取り上げましたのは、旅客定期航路事業者のような多数の人命を預かる者につきましては、特にその厳重な励行を要求する必要があると認められるからであります。
第六点は、第十八条第二項及び第三項におきまして「会社」とありますのを「法人」と改めることにいたしたことであります。この改正は、現行法におきましては、旅客定期航路事業を営む法人の合併及び解散につきましては、特に会社の場合についてのみ規定があるのでありますが、旅客定期航路事業者の中には、協同組合その他会社以外の法人がありますので、その実際に合致するように改正をいたしたわけであります。
第七点は、第十九条の「サービスの改善に関する命令」の規定を改正いたしまして、旅客定期航路事業に使用する船舶その他の輸送施設が老朽化し、あるいは補修不充分等のため利用者の利便を阻害している事実があります場合には、事業の公益性にかんがみまして、その改善を命ずることができるようにいたしたことであります。以上が旅客定期航路事業に関する規定の改正であります。
次に、第十九条の四として対外旅客定期航路事業に関する規定を設けました。この規定は現行法の第二十条の二の規定に改正を加えて移したものであります。改正いたしました点は、現行法におきましては、事業開始の届出が事後届けでありますのを事前の届出制といたしましたことと、旅客及び手荷物の運賃及び料金その他の運送条件等につきまして、公示し、かつ、実施する前に運輸大臣に届け出なければならないものといたしましたことであります。なお、現行法の第十九条の三及び第十九条の四の規定は貨物定期航路事業の届出並びにその賃率表の公示及び届出に関する規定でありますが、これらの規定は、改正案におきましては、二条ずつ繰り下げるとともに、現行法が事業の開始または賃率表の設定の際にのみ届出を要求しておりますのを、その変更についても運輸大臣に届出を要するものといたしております。
第二十条から第二十五条までにつきましては、次のような条文の移動及び改正を行なっております。
改正案におきます第二十条は現行法の第二十三条と第二十四条を合せて一条文としたものでありまして、その次に、第二十一条から第二十三条の四までとして新たに旅客不定期航路事業に関する六カ条の規定を設けております。
旅客不定期航路事業と申しますのは、不定期航路事業の中で、国内の一定の航路に旅客船を就航させて一般旅客の運送をするものと定義されております。これらの事業は、不特定多数の旅客を運送いたすものでありまして、これを貨物運送を主とするその他の不定期航路事業と同一に取扱うのは不適当と認められますので、これについては、事業の開始の際に運輸大臣の許可を要することにいたしますとともに、運賃及び料金、運送約款、運航計画等につきましては旅客定期航路事業に関する規定を準用することにいたしまして、運送の秩序維持と利用者の利益擁護をはかることにしております。
改正案の第二十四条及び第二十五条は、現行法の第二十一条及び第二十二条を移したものであります。
以下第四十四条までにおきましては、若干の改正点がございますが、これらは、条文の移動に伴う整理またはすでに死文化した規定の削除に関するものであります。
第四十五条の二は、職権の委任に関する規定でありまして、現行法におきましては、五トン未満の船舶のみによる旅客定期航路事業に関する職権のみが地方海運局長に委任できることになっておりますが、改正案におきましては、その他の事業に関する職権につきましても一般に広く委任できるようにいたしております。なお、このように職権委任の範囲を拡大いたしますのに伴って、地方海運局長の行う処分の公正を期するため、新たに第四十五条の三の規定を設けましで、重要な事案につきましては、処分に先だって、聴聞を行わせることにいたしております。
第四十七条以下は、以上の改正に伴って罰則を整備いたしたものであります。量刑の程度は、いずれも現行法の相当条文と同一に定められております。
付則におきましては、この法律改正に伴う運輸省設置法、港湾運送事業法、及び木船運送法の改正並びに経過措置について規定しております。以上がこの改正案の概要であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/26
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027・木島虎藏
○理事(木島虎藏君) 御質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/27
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028・岡田信次
○岡田信次君 船舶運航事業で無償でやるというのは、どういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/28
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029・粟沢一男
○政府委員(粟沢一男君) 実際問題としては、私ども普通には考えられないのでございますけれども、法律としましては有償でやるもののみを規定するという意味でございまして、無償のものもあるけれどもそれを特に除いたのだということでは、実はないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/29
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030・岡田信次
○岡田信次君 そうすると、実際問題では、無償でやるのもあるのですかないのですか、あれば、どんな例ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/30
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031・粟沢一男
○政府委員(粟沢一男君) 実際やりますのは——はっきりいたしませんが、たとえば公営事業で渡船等を経営して、それは公益的な事業であるから無償で渡すというふうなことも、考えれば考えられるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/31
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032・岡田信次
○岡田信次君 どうも、そうすると、いたずらに法律の字句にとらわれたような改正ですね。今までこの有償という字が入っていないと、何か不便を感じたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/32
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033・粟沢一男
○政府委員(粟沢一男君) そのため特に不便を感じたということは聞いておりませんが、今度不定期まで入れますと、そういうものもあるいはあり得るというふうなこともございまして、やはり必要の限度に限定するという点には意味があるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/33
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034・岡田信次
○岡田信次君 どうも、この問題はあまり納得できませんね。
次に第四条の五の「申請者が当該事業を適確に遂行するに足りる能力を有するものであるごと」どういう能力ですか、具体的にいいますと。今の御説明によると、旅客運送に関する知識、経験をもあわせた事業遂行能力というのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/34
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035・粟沢一男
○政府委員(粟沢一男君) 普通申します。要するに財政的な能力、これは事業経営のための財政的な基盤という意味で、やはり一種の能力と考えられるものでございます。なお、そのほかに、相当過去においてこういう事業に関係いたしておりまして、相当な知識もありあるいは経験もあるというふうなものも、一応の能力というふうに考えられるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/35
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036・岡田信次
○岡田信次君 もう一つ、今の問題は具体的に免許基準ですから、免許を受ける方にとってはなかなか真剣に考えなければならないのですが、今のお話では漠としてわからないのですが、もう少しはっきりした考えはないのですか。
その次の六の「当該事業の開始が公益上支障のないものであること」をいっておるけれども、先ほどお話がありましたが、乗る方にとっては回数も多くどんどんふえれば便利であるが、それがあまり混雑するというふうな点もあるでしょうけれども、その点とにらみ合してなかなかむずかしいのですが、この二つの事項は、海運局として、実際に免許の基準として出てきた場合に、どういうふうに取扱われるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/36
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037・粟沢一男
○政府委員(粟沢一男君) 確しかに具体的には非常にむずかしいと思うのでございますが、やはりある程度の限度を考えまして、両方の理由を比較検討して、その間の適正な基準を見出すというふうなことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/37
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038・岡田信次
○岡田信次君 今の答弁は、法律として免許基準の中の一つの項目として出しているので、はっきりした観念がないと、おかしいですね、非常に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/38
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039・岡田京四郎
○説明員(岡田京四郎君) 私から補足的に説明いたします。
従来の経理的基礎が確実ということから見まして、広く事業遂行能力ということにいたしましたのは、人的な知識経験と申しますのは、なかなか実際に、判定の基準をどこにおくかということになると、困難な点があるわけでございますが、これは従来のその事業に携わろうとする者の経歴その他を、総合的に判断しなければいけないというふうに思うわけであります。実際の運用面におきまして、この面だけを切り離して、他の基準においては該当している、ところがこの分だけが該当していないというときに、これを発動して却下するということはなかなかむずかしい点があろうかと思いますが、他の要素との総合判断と申しますか、そういうものも相当あると思うわけです。
それから新しい、公益上支障がないものということを加えますのは、これは具体的に考えておりますのは、たとえば最近横浜港におきまして、いろいろ小さい船が遊覧船事業を行うものが非常にふえおります。ところが、そのために、大型船の航行の上に非常に支障を生ずるということが起って参っております。ところが、従来の免許基準で申しますと、その第一号の需給関係というものが中心になりまして、それ以外の基準に該当しており、また需給関係から見て、これを押えるということを考えるといたしましても、遊覧船事業でございますから、新たな事業ができて、新たな設備を提供し、また一方において宣伝等をやりまして旅客を誘致いたしますと、十分需要はまだ出てくるということが考えられます。ところが、一方大型船の航行というふうなほかの目的から見ますと、これ以上事業者をふやし船をふやすこと自体が、適切でないということが考えられるわけです。そういった場合を大体想定しているわけです。従ってこれは、今は横浜港内の例で申し上げましたが、その他湖において、川においてというような場合、特殊な狭い水域等におきましてそういうことが実際に考えられる。それ以外の他の理由というものは、私たちあまり今のところ考えてはいないのです。大体そういうような特殊な場合に、これを限定的に考えるということで、この規定を作ったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/39
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040・岡田信次
○岡田信次君 初めの方の説明がどうもおかしいので、今度改正して特にとういうふうにするんだという御提案だから、もう少し確たる考えがあってしかるべきだと思うのですが、これ以上、わからないようだから、今日はこの程度にしておきますが、もう少しお考え願いたいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/40
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041・岡田京四郎
○説明員(岡田京四郎君) ちょっと補足さしていただきますが、第五項に「事業を適確に遂行するに足りる能力を有するものであること」ということにしたことが、今岡田先生のおっしゃったような点がなかなかむずかしい点もあるわけでございます。一方におきましては、安全の確保その他を考えました場合に、単に経理的な面だけでなく、知識経験というふうなものを特に重視していくということがやはり、これは単に理想といいますか、そういう方をただ追求し過ぎるきらいがあるかとも思いますが、やはりこういうものを基準の一つとして要求すべきではないかというふうに考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/41
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042・仁田竹一
○仁田竹一君 私も岡田委員と同じ意見でありますが、免許基準として「能力を有するものであること」というのは非常にぼんやりして、もう少しはっきりしなくてはならぬと思うのですが、こういうふうな場合どうなりましょうか、免許を受けるときには能力あるものとして申請をさす。認可になると、その後その会社の内容——会社の個人でもいいのですが、内容が不健全になった。あるいはその当時は非常に能力の適当な人だと思ったけれども、その後そういうような人は、特に会社等の経営不振などの場合に会社の重役がかわったというような場合には、どの法律によりまして免許を取り上げるとか取り消すというような方法ができるのでしょうか。まだ十分見ておりませんけれども、ちょっと今私が見たところでは、とにかく改正以前のあれでは、十六条ですか、「資産状態が不良となり、又は事業設備が不十分となったため事業経営が著しく困難となったと認められるとき」には免許の取り消しができる、こういうふうになっておりますが、今度の改正はどうもそういうふうな条項は削除されていないようなふうに思われますが……。まだ十分見ておりませんから、私間違いがあれば、そうおっしゃっていただきたいと思います。能力自体でも多少の問題があると思いますけれども、将来に向っての認可権に対する政府のお考えを、どういうふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/42
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043・粟沢一男
○政府委員(粟沢一男君) 大体こういうふうな場合には、改善命令等もございますし、一応既得権を尊重しまして、大臣の方から改善を促して、それでなおそれが改善されないような場合には、認可の取り消しを認める、こういうふうな関係になっておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/43
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044・仁田竹一
○仁田竹一君 従来非常にはっきりした法律がありましたものを、特にいろいろ、大臣がああするこうすると、二段も三段も手がつかなければ処置ができないようなふうに変えなければならない理由は、どこにあるのですか。従来そういう法律がありましたものを、削除してしまっておる。しかも、ただ心配しますのは、申請するときには相当能力のある者をして申請なさしめておる。会社がよく行くときにはよいのですが、悪くなったときには重役などがやめてしまう。そういう無責任なことになった場合には、一体どういうふうにするのですか。大臣は、法に触れた場合には取り消されますが、法に触れない場合にはこの取り消しができますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/44
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045・粟沢一男
○政府委員(粟沢一男君) 今までの実施上の結果を見ておりますと、そういうふうな場合には、事業の経営が著しく困難になったというふうなことがなかなか認定も困難でございますし、通常はそういう場合には自分でやめておるというのが実際でございまして、この規定を削除しても事実上はそういう支障がないというふうな考慮のもとに、削るごとにしたわけでありまして、実際といたしましては、やはり先ほど申し上げました勧告、命令、その他の方法で一応の手続を踏む、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/45
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046・一松政二
○一松政二君 議事進行について…。僕は、今日初めてこれは上程されております。趣旨の説明があったばかりで、すぐ質問に移っても、こっちはなかなか予備知識を持たないので、この次に譲ってもらいたいということと、それからこの次までに考えてきてもらいたいことがある。それは今岡田君、それから仁田君が指摘したように、改正せなければならぬ理由がわからない。この法律全体としては、改正せなければかくかくのごとき顕著なことがあって、どうしてもこれは改正せなければならぬという、一体差し迫った事情があったのかなかったのか。ただ、技術的に条文の整理かなにかの意味なら、それならそれの意味でこっちもまた考えようがあるけれども、今読んだ理由によると、ただ条文を整理しているような格好になっちゃって、そうして場合によったら改悪じゃないかと思われるようなものが、今仁田君の質問を聞いておると、あるかもしれない。ただ、こっちは、条文の説明を聞いただけじゃ、改正をせなければならぬというはっきりした大きな理由を、ちょっとつかめないように思う。だから、それをもっと研究してきてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/46
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047・木島虎藏
○理事(木島虎藏君) 質疑はまだたくさんございますようでございますから、次回に譲りまして、本日はこれにて散会いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01019550527/47
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048・木島虎藏
○理事(木島虎藏君) 異議ないと認めます。それでは、これにて散会いたします。
午後四時八分散会
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