1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十四年三月三日(火曜日)
午前十時四十五分開議
出席委員
委員長 鈴木 善幸君
理事 亀山 孝一君 理事 纐纈 彌三君
理事 渡海元三郎君 理事 丹羽喬四郎君
理事 吉田 重延君 理事 門司 亮君
理事 安井 吉典君
相川 勝六君 天野 光晴君
飯塚 定輔君 田中 榮一君
津島 文治君 山崎 巖君
太田 一夫君 佐野 憲治君
中井徳次郎君 北條 秀一君
矢尾喜三郎君
出席政府委員
自治政務次官 黒金 泰美君
総理府事務官
(自治庁財政局
長) 奧野 誠亮君
総理府事務官
(自治庁税務局
長) 金丸 三郎君
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三月二日
地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一七七号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一七七号)
地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提
出第一六六号)
地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出
第一五三号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/0
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001・鈴木善幸
○鈴木委員長 これより会議を開きます。
昨日本委員会に付託になりました地方税法の一部を改正する法律案を議題とし、政府より提案理由の説明を求めます。自治政務次官黒金泰美君。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/1
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002・黒金泰美
○黒金政府委員 地方税法の一部を改正する法律案についてその提案理由とその要旨を御説明申し上げます。
現行の地方税の徴収に関する制度は、ほとんど明治時代に定められたままで、若干の部分的な改正が加えられたにとどまっているのでありますが、わが国の経済、社会の発展状況から見まして、また戦後の税制改正による租税体系のはなはだしく変化いたしました実情等にかんがみまして、国税及び地方税を通じて全面的に再検討すべきことが従前から強く要望されていたのであります。このような事情から、政府は、昭和三十年に租税徴収制度調査会を設け、租税徴収制度の改正について意見を求めたのでありますが、同調査会から昨年十二月、三カ年にわたる慎重な審議の結果答申がなされたのであります。政府は、この答申に基き、国税については、国税徴収法を全面的に改正することとし、すでに本国会にその改正案が提案されておりますが、地方税についてもこれに準ずる改正を行うこととし、この法律案を提出した次第であります。以下、改正案の内容について御説明申し上げます。
御承知のように地方税の徴収につきましては、一般的な事項は総則中に規定し、滞納処分に関する手続については、原則として、国税徴収法に規定する滞納処分の例によるが、各税目ごとに所要の事項を規定しているのでありまして、改正案においても、この方法をそのまま踏襲することとしております。従いまして、改正案の内容は、総則の部分と各税目にわたる滞納処分関係の二つに分れております。
総則の改正部分のおもな内容といたしましては、第一に租税徴収の確保、第二に私法秩序の尊重、第三に徴収制度の合理化の三つをあげることができます。
第一は、租税徴収の確保に関する事項であります。地方税は、地方団体の財政需要をまかなう基盤をなすものでありますから、その徴収を確保する必要があることは言うまでもなく、また地方税として住民に賦課されたものを確実に徴収することは、租税負担の公平な見地からも最も重要なことであります。このような観点から、この改正案におきましても、従来通り地方税の私債権に対する優先権を認めるとともに、徴税機関による自力執行権を維持することといたしております。
第二は、私法秩序の尊重に関する事項であります。すなわち、一方において租税の徴収を確保する必要があると同時に、他方において私法秩序を尊重し、個人の権利を不必要に不安に陥れないように十分配慮すべきであることは言うまでもなく、このような観点から、私法秩序の尊重と租税の徴収の確保との要請の調整をでき得る限りはかることとしたのであります。
その一は、質権または抵当権と租税との関係に関する事項であります。現行制度においては、質権及び抵当権によって担保される債権は、その設定時期が地方税の納期限より一年以上前であるものに限り、地方税に優先することになっているのでありますが、これを改めて、地方税の法定納期限以前に設定されたものは、地方税に優先することとしたのであります。この改正により、抵当権者等がその抵当権等の設定の時において予測できない租税の発生により不測の損害をこうむることを防ぎ、取引の安全をはかったのであります。さらにこれに関連いたしまして、質権、抵当権の証明方法につきましても、現行の公正証書による証明を必要とする制度を改め、登記登録のある抵当権等は証明を必要とせず、その他のものについても内容証明郵便による証明等によることとし、株式その他有価証券に対する質権については、その事実の証明で足りるように措置することにしたのであります。
その二は、先取特権及び留置権と租税との関係に関する事項であります。先取特権及び留置権につきましては、従来は地方税の徴収に際して何らの保護も加えられていなかったのでありますが、私法秩序を尊重する見地から質権及び抵当権との権衡を考慮して、それぞれの地位に応じた適当な保護を加えることといたしたのであります。
第三は、徴収制度の合理化に関する事項であります。
その一は、徴収の緩和措置に関する事項であります。災害や疾病等の理由で税金を納めることが困難な場合に認められる徴収猶予は、従来は一カ年間に限って行われていたのでありますが、事情によっては二年まで延長できることとし、また、滞納処分の執行猶予の制度につきましては、換価処分の猶予と名称を改め、大幅にその要件を緩和し、従来事実上の猶予ないし納付誓約として行政的に処理されておりましたものについても、原則として、換価処分の猶予を適用することとして、納税者の権利の保護をはかることにいたしたのであります。
その二は、譲渡担保及び仮登記によって担保される債権と地方税との調整に関する事項であります。前に述べました通り、抵当権等によって担保される債権に対し、租税の優先徴収権を制限することとした反面、経済的実質において抵当権等と同一の性質を有する譲渡担保によって担保される債権につきましては、抵当権等によって担保される債権と同様に扱うこととし、譲渡担保の設定が法定納期限後に行われた場合に限り、譲渡担保設定者の租税をその譲渡担保の目的となった財産から徴収することができる措置を講ずることとしたのであります。担保の目的でされている仮登記についても同様であります。
その三は、担保権付財産の譲渡と地方税との調整に関する事項であります。すなわち、抵当権等の設定された財産が譲渡されたときは、その譲受人の地方税は、常に抵当権等に劣後することとする反面、財産の譲渡による地方税の回避を防止するため、地方税に劣後していた抵当権等が財産の譲渡という偶発的なことにより利益を受ける部分については、抵当権者等から譲渡人の地方税を徴収することができる措置を講ずることとしたのであります。
その四は、法人の形態を利用する等第三者の地位を利用する地方税の徴収の回避を防ぐために、従前から同族会社、財産譲受人等に対して行われていた第二次納税義務制度を整備合理化するとともに、実質課税が行われた場合等にもこの第二次納税義務制度を拡充することとしたのであります。
その五は、地方税についても、国税徴収法改正法案と同様に、民事訴訟法の仮差し押えに準じた保全差し押えの制度を設け、地方税の徴収を確保できるよう措置したのであります。その他、地方税法中徴収関係規定の整備合理化をはかることといたしました。
各税目にわたる改正のおもな内容は、滞納処分に関する事項であります。地方税の滞納処分手続につきましては、従来通り国税徴収法の規定の例によることといたしておりますが、地方税法自体に定められている事項については、滞納処分手続の合理化と第三者の権利保護をはかる、督促制度、異議申し立ての期間、第三者の占有する差し押え動産等の搬出及び換価の制限等につきまして所要の改正を行うことといたしました。なお、その例によることといたしております国税徴収法改正法案の滞納処分手続においては、第三者の権利の保護をはかり、差し押え禁止財産の合理化、特に給料等の差し押え禁止範囲の合理化を行い、その他滞納処分手続の整備をはかろうとしているものであります。
以上が、地方税法の一部を改正する法律案の提案理由及びその要旨であります、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/2
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003・鈴木善幸
○鈴木委員長 次に本案について、政府当局より補足説明を聴取することといたします。金丸税務局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/3
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004・金丸三郎
○金丸政府委員 ただいま政務次官から御説明を申し上げました地方税の徴収の手続に関します地方税法の一部を改正する法律案につきまして、補足的に御説明を申し上げたいと存じます。
まず第一に税の形式でございますが、お手元に配付いたしてございます地方税法の一部を改正する法律案をちょっとごらん願いたいと存じます。国税徴収法が全面改正になります関係で、地方税法の徴収手続に関します改正も相当広範囲になって参るのでございます。御承知のように現在の徴収関係の規定は、地方税法では、たとえば住民税でございますとか、事業税でございますとか、固定資産税でございますとか、各税目ごとに滞納処分に関する規定を収めてございます。それ以外の一般的な徴収に関します規定を総則の中に規定いたしておるのでございます。今回の国税徴収法の改正は全部の改正でございまして、地方税法につきましても一つにまとめたらどうかとか、あるいは一カ所にまとめたら、こういうような議論もあったわけでございますけれども、現在の体系は維持するという考えのもとにこの法律案を作成いたしたのでございます。従いまして、住民税でございますとか、事業税でございますとかいうような各税目中に規定されております滞納処分に関する規定は、それぞれそのまま残しておきまして、それにつきましては、所要の規定の整備をはかる、こういうような行き方をとったのでございます。そういたしまして一般的な租税徴収に関する規定を総則の中に盛るという趣旨から、新たに国税徴収法の改正に伴いまして設けなければならない所要の規定も総則の中に設ける。滞納処分の手続の中から、徴収の猶予とか滞納公売等に関します手続の一部を総則の中に、滞納処分という処分から国税の方でも抜くことにいたしましたので、それを総則の中に設けることにいたしたのでございます。総則はそのようにいたしまして相当根本的に変って参りますのと、規定が相当にこまこうございますので、できるだけ府県の徴税の吏員、あるいは市町村の徴税の職員が、この改正法律案を理解しやすいようにするということを企図いたしまして、若干法律技術的には従来の考えを一歩進めまして、読む人が理解しやすいように法律案の改正の形式を考えたらどうかということで、できるだけ全文改正という形式をとっております。あちらを直したりこちらを直したりいたしますと、読む人が非常に読みづろうございますので、できるだけまとめて全文改正というような形で総則の規定は改めております。そういたしまして新たに第一節から第十三節まで節をこまかに設けまして、納税の義務に関することから徴収、それから時効、雑則、罰則というような体系を作るようにいたした次第でございます。
それでは次に内容について御説明を申し上げたいと存じますが、非常にごたごたいたしておりますので、法律案自体によりませんで、お手元に配付申し上げました法律案の改正の要綱の説明というのがございます。これによりましておもな点を御説明申し上げて参りたいと思います。
〔委員長退席、亀山委員長代理着席〕
第一は方針でございますが、これはただいま政務次官から御説明申し上げました通り、大体今回の改正の要点は、第一は徴収制度を合理化するという方針でございますが、その中で、租税の徴収を確保するということが一つのねらいであり、もう一つは私法秩序を尊重する。従来、どちらかと申しますと、国税や地方税のために私権が圧倒されておると申しましょうか、必ずしも尊重されていなかった。それを現在の経済、社会の実情から考えまして、私法秩序をできるだけ尊重して、国や地方の税によって私債権が不必要に脅かされないようにする、そういうねらいが一つでございます。そうして総体的に租税の徴収の手続を合理化する。こういう三つの大きな原則と申しましょうか、目標のもとに、今回の国税徴収法並びに地方税法の徴収に関する規定の整備をいたそう、こういうふうにしておるわけであります。
方針の第二にございますが、滞納処分の手続につきましては、現在の地方税法は原則として国税徴収法の例によるということにいたしまして、大部分の規定をみずから独自に設けないで、国税徴収法の例によることといたしておるのでございます。この行き方は従来通りの行き方を踏襲する、こういうふうにいたしておるわけでございます。
以下、第二、要領から御説明を申し上げます。
第一は、地方税は原則として他の公課、すなわち手数料とか、あるいは使用料とか、そういう他の公課及び私債権に対して優先する。こういう原則は従来通り踏襲するということにいたしております。御承知のように、国税が優先しましたり、地方税や府県税が市町村税に優先したり、そういうようなことはございませんで、税は、国税、府県税、市町村税とも平等なスタンドに立つ。こういう原則は維持することにいたしております。
二ページに参りまして、第二でございますが、地方税の法定納期限以前に設定された抵当権、質権に対しましては、地方税を優先して徴収しない、これは国税も優先して徴収しない、こういうことにいたしておるわけでございます。これは、国税が私債権に対して優先するという従来の考え方と、それから私法秩序を尊重する、私債権をできるだけ保護する、こういう両面からにらみ合せてこのような一つの原則が立てられたわけでございます。地方税と抵当権または質権によって担保されておる私債権との関係を申しますと、従来は、地方税の納期限、かりにある税の納期限が三月三十一日であったと仮定をいたしますと、それより一年前に抵当権、質権等が設定をされておりまして、それが公正証書によって証明されておる。こういうような場合におきまして、元来その私債権の方が地方税に優先するということになっておるわけでございます。しかし、一年前でございますから、抵当権、質権を設定いたしましたあとで、その設定者が地方税を滞納いたしました結果、その財産が滞納処分に付されるということになりますと、私債権者はせっかく一年以前に抵当権、質権等を設定しておるにもかかわらず、十分な利益を受け得ないということになりますので、今回は、税の納期限を基準にいたしまして、それより以前に質権、抵当権が設定されております場合には、その抵当権、質権によって設定されておる債権の方が地方税に優先をする、そのあとであれば質権、抵当権は税に全く負けてしまう。こういうふうにして、税と私債権との優先するかしないかを、税の法定納期限によって定めることにしたわけでございます。二ページの二行目にありますように、法定の納期限は、税によりまして四月とか六月とかそれぞれきまっておるわけでございますが、更正や決定が法定納期限後になされた場合には、法定納期限によることは適当でございませんので、その場合には納税告知書を発した日を基準にする。地方税につきましては、所得税または法人税の課税方針を基準として賦課するものがございます。この所得税を基準にするものは個人事業、住民税等があります。法人税を基準にするものには法人事業税があるわけでございます。こういうものは特別に地方税の法定納期限によらないで、所得税、法人税を基準といたしておりますから、それがきまりますれば、自然に地方税の税額等もきまって参るわけでございますので、これらの地方税については、これらの国税の法定納期限をその法定納期限とする、こういうふうにいたしておるわけでございます。
次は、三ページに参りまして、三でございますが、抵当権または質権が設定されておる財産が第三者に譲渡されました場合、譲受人の地方税はその抵当権や質権に対して優先して徴収しない、こういうことにいたしますと同時に、その抵当権等が譲渡人の地方税に劣後するものであります場合には、財産の譲渡によって租税を回避する、そういう弊風が発生することを防ぎますために、当該抵当権等から譲渡人の地方税を徴収する、こういうようなことにいたしたいと考えておるわけであります。これは最高裁判所の判決が昭和三十二年にございまして、それによって従来の考え方と違って参りました関係から、立法的に解決をしよう、こういう趣旨でございます。若干ごたごたしておりますから、四ページの表をごらんいただきたいと思います。
甲というのが納税人で、Aが甲の財産に抵当権を設定しておる債権が百万円である。この甲が乙に自分の財産を譲り渡した。乙は甲から財産を譲り受けます場合には、すでに抵当権が設定されておることを承知の上でございますから、乙が、納期限三月三十一日である地方税の滞納が六十万円あったといたします。こういう場合に、乙の地方税は抵当権者等の債権に劣後する、乙の方の地方税はAには勝てない。こういうふうにはっきりと立法的に解決をしようという趣旨でございます。
次は五ページの例でございますが、乙が財産を丙に譲り渡します。甲が乙の財産に対しまして抵当権を設定しておった。こういう場合でございます。乙が税金を六十万円滞納をいたしておる。租税は三月三十一日が納期限で、抵当権は五月三十一日に設定をいたした、譲渡は七月の一日になっておる、こういう関係だと仮定をいたすわけでございます。この場合、丙に財産が譲渡されておりますと、普通ならば乙の滞納いたしました地方税はかかって参らないわけであります。ところが、この財産を甲が自分の債権百万円のために公売に処したと仮定をいたします。そうすると、甲はその財産が百二十万円に売れましたので、債権百万円だけ百二十万円のうちから取れるということになるわけでございます。ところが、もしこの財産が乙から丙に譲渡されていなかったと仮定をいたしますと、国税は、抵当権の方がこの税よりも劣後いたしますので、先に六十万円だけは取り得るわけでありますが、この場合は譲渡されておりますので、この抵当権の設定者は百万円の債権でございますが、百二十万円に売れますので、税金を引いたあと六十万円しか甲は取れない、こういうことになるわけであります。そこでこの新たな制度といたしましては、財産は乙から丙の方に譲渡されてしまっておるわけでございますが、抵当権を背負っておる財産であります関係から、丙は甲に負ける、甲は乙の地方税に負ける。こういうような因果関係から、たとい丙に譲渡されておりましても、この地方税は甲が乙の手元にありました場合に受けた金額、甲の債権百万円から六十万円を差し引いた残りの四十万円だけは地方税として徴収し得る。こういうふうにいたしまして、甲の立場も保護しまた税金の徴収も確保しよう、こういうふうに立法的に解決をしようという次第でございます。
次は六ページでございますが、留置権と先取特権につきまして、質権、抵当権に準じて地方税を優先しないようにしよう、こういう事項でございます。現行法では留置権、先取特権はすべて地方税に劣後することになっておりますけれども、やはり私債権の保護という見地から申しまして適当でございませんので、大体登記されました質権や抵当権に準じて、法定納期限等によりまして、あるものは地方税が優先をし、あるものは留置権や先取特権が優先するようにしよう、こういう事項でございます。
第五は、徴収猶予及び換価処分の猶予の要件を緩和し、納税者の実情に即した地方税の徴収を行うようにしようということでございます。現在納税者が災害や疾病等の理由で税金を納めることが困難な場合、あるいは法定納期限から一年を経過した後に地方税が確定いたしましたような場合、一年以内の期間に限りまして徴収猶予をすることができるのでありますけれども、なお猶予した期間内に納付することができないというやむを得ない理由があります場合には、さらに一年期間を延長して徴収猶予を認める。それから徴収猶予の期間内には新たに督促や滞納処分はできない。こういうふうにいたしましたり、徴収猶予をした金額が五万円以下、現在は二万円以下でございますが、それを五万円に上げまして、そういう金額であります場合には担保を徴さないでもいい。こういうふうに納税者の保護をはかっておるわけであります。
その二は、滞納者につきまして滞納処分を続行することにより滞納者の事業の継続を著しく阻害するおそれがありましたり、また同時に、執行猶予をしました方が直ちに強制執行をいたしますよりも租税の徴収上有利だと認められますような場合には、滞納処分を猶予する。こういうようにすることができるように国税徴収法ではなっております。地方税法もそれによっているわけでございますが、今回国税徴収法が改正をせられまして、この制度を換価の猶予という制度にいたし、その要件等も緩和いたしまして、納税者が誠実な意思を有すると認められる場合には、今申し上げましたような要件を全部充足いたしませんでも、実際上の執行猶予をするということになりますので、それに合せまして地方税法でも同じように改正をいたそうといたしておるわけであります。
次は滞納処分の執行によりまして滞納者の生活を著しく窮迫に陥れるおそれがある場合、滞納処分の執行停止をすることになっているわけでございますが、今回これを滞納処分の停止というふうに国税の方でいたしますので、地方税法でもそのようにし、これは総則の中に入れよう、こういうふうにいたそうとしておるわけであります。
次は、譲渡担保と担保の目的でなされている仮登記の制度でございますが、現在ではこれは法律的にはっきりいたしておらないと申しましょうか、ある面ではむしろ非常に強い力を持っておったりいたしまして、租税の徴収との関係で実際上は担保でありながら、名目上譲渡という形式をとっておりますために、著しく強い、むしろ強過ぎるような面があったりいたしますので、これを質権、抵当権等と同じように扱いますために、法定納期限の前後によりまして、地方税が優先したり、あるいはこれらによって担保される私債権が優先されたりするようにしよう、こういうものでございます。御承知のように譲渡担保は法定外の制度であり、所有権を担保権者に移転をいたします結果、租税が全然追求できないわけであります。しかしこれも実際は担保でございますから、質権や抵当権と同じようにしよう、こういう次第でございます。
次は十一ページの七でございます。現行の同族会社及び財産の譲受人に対します第二次納税義務制度を合理化するとともに、実質課税が行われました場合等にも、この制度を適用することにしたい。その一は、現在第二次納税義務につきましては、徴収手続が規定されておりませんので、それを明確にして権利を保護しようということでございます。二は、現行法では同族会社の株式または出資の取得、低額譲渡、または人格のない社団等の財産の払い戻しまたは分配が、地方税の納期限の二年以前以降に行われた場合に、第二次納税義務を負わせることにしておりますのを、納期限一年前以降というふうにして、第二次納税義務を合理化しようというわけでございます。三は、この制度を拡充をいたしまして、実質課税がありました場合の法律上の名義人、同族会社の行為計算の否認がありました場合の行為の相手方、共同的な事業を行なっております場合の特殊関係者にも第二次納税義務を負わせよう、こういう趣旨でございます。
第八は、滞納処分の手続につきまして、国税徴収法の規定が相当に改正を加えられております。地方税におきましては、先ほど申し上げましたように、滞納処分につきましては、原則とてし国税徴収法の例によるということにして、多くの規定は国税徴収法によりまして、ごく必要な一部の規定だけを規定いたしておるわけでございます。
以下申し上げますのは地方税法に規定をしておるものではございません。国税徴収法の今回改正のおもな内容でございます。
第一は、差し押えの禁止財産の範囲を拡充をするということでございます。第二は、滞納者の生活を窮迫に陥れるおそれがある場合に、滞納処分の執行停止をするということであります。第三は、抵当権その他第三者の権利の目的となっております滞納者の財産の差し押えは、滞納者の他の財産について行いまして、それで十分に税の徴収ができない場合、最後的に行う、こういうふうにしようというものでございます。第四は、第三者が占有いたしております動産の差し押えは、現在必ずしも引き渡し命令を発しないで行うことができますけれども、第三者の立場を保護いたしますために、引き渡し命令を発して、これに応じない場合に限って行うこととして、かつ前払いの賃料につきましては租税に優先させる、こういうふうにしようというのでございます。内容はもういろいろございますが、これは説明を省略させていただきます。第五は、滞納者の財産の捜索につきましても、原則としてその財産を占有する第三者の同意を得て行う、こういうことにしようというのであります。第六は、留置権、先取特権につきまして、先ほど御説明を申し上げましたように、税との優先の関係を規定することにいたしました関係上、質権、抵当権に準じてこれらに配当する規定を新たに設けておるわけでございます。第七は、公売手続を安定させる措置を講じて、買受人の保護をはかる手続が失敗に帰しました場合、買い受けた人が損をいたしますので、そういう場合には徴収機関が賠償するとか、そういうふうの規定を設けまして、買受人の保護をしよう。また、公売の手続ができるだけ各段階ごとに安定するように、異議の申し立ての制度を改めるというふうにいたしております。第八は、徴税の合理化をはかりますとともに、滞納処分の手続をできるだけ細目に至るまで法律で規定をいたしまして、多くの人がこれによって自分の立場を擁護できるようにしよう、こういう次第でございます。
第九は、その他の徴税の合理化のために関係規定の整備を行うというものでございます。その第一は、相続、または法人などの合併がございました場合、権利義務を承継するわけでございますが、相続の場合、被相続人の死亡を知らないで被相続人の名儀でした書類につきましては、相続人の一人に書類を送達すれば、全部に効力が発生するようにいたします。第二は、共有物その他いろいろこまかい事項でございますが、規定の整備をいたそうという事項でございます。第三は、木材引取税の関係。第四は、地方税と他の地方税、国税、公課または私債権の間の優先の関係について混乱を生じております場合、租税の先着手主義とか、交付要求の先着手主義とか、従来のいろいろとっておりました考え方に関係なく、租税の一定期限と担保権の設定の時期によって、優先の時期、配当すべき金額等をきめるようにしようというものでございます。国税犯則取締法による強制調査の場合の保全差し押え等に関します規定を整備いたしますとか、第二次納税義務の告知、繰り上げ徴収の告知、徴収猶予等に関しまして、取り消し等の通知を受けた者が異議の申し立てをできることにいたしますとか、書類の送達の方法について規定を明確にいたしますとか、期間計算につきまして民法の規定を準用いたしますとか、法定納期限が休日の場合、翌日を法定納期限にいたしますとか、あるいは第九にございますように、第三者が地方税を納付できるということを新たに規定をいたしますとか、地方税と地方団体に対する金銭債権とでは相殺ができないということを明確にいたしますとか、その他国税徴収法の改正に伴いまして、地方税の関係規定を改めるようにいたしておるわけでございます。
最後に、二十一ページにあります第十、この改正法の施行期日でございます。附則の第一条に「公布の日から起算して九月をこえない範囲内で政令で定める日から施行する。」こういうふうになっている次第でございます。この改正の範囲が非常に広範囲でございますのと、また内容的に相当重要な改正がございますこと、徴収機関だけでなくて、私債権を持っている人に改正法の趣旨を十分に承知していただく期間を置く。こういうような必要等もございますので、九カ月という期間を法律上設けることにいたしておるわけでございます。私どもといたしまして、できるだけ徴収の職員に改正法をのみ込ませるように努力いたしますことはもちろん、納税者その他に対しましても、改正法の内容の周知ができますように努めたい、かように考えておる次第でございます。
以上、大へんおわかりにくかったと存じますが、私からの補足説明を終らしていただきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/4
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005・亀山孝一
○亀山委員長代理 次に、地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の両案を一括議題といたしまして審査を進めます。
この際、地方交付税法の一部を改正する法律案について、政府当局より補足説明を聴取することといたします。奧野財政局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/5
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006・奧野誠亮
○奧野政府委員 お手元に地方交付税算定方法改正案という一枚刷りの紙をお配りしてあります。それともう一つは、地方交付税算定方法改正試算という数字の一枚紙をお配りしてございますので、この二つで御説明さしていただきたいと存じます。簡単なことですから資料がなくてもけっこうでありますが、読みながら申し上げさしていただきます。先日大臣から御説明申し上げましたのは、法律案を中心として申し上げておりましたが、法律の改正のみなりませず、総理府令の改正等もあわせまして、一括して大綱をお話し申し上げたいと思います。
方針の一つは、「地方団体の財政需要の増加に対応する財源を賦与するため、基準財政需要額の増額をはかること。」でございます。その結果、道府県では基準財政需要額が平均五・二%くらいの増加になり、市町村では基準財政需要額が平均で三・二%くらいの増加になる見込みでございまして、方針の二は、「基準財政需要額の算定方法の合理化をはかり、地方団体間の財源の均衡化を前進させること。」でございます。
〔亀山委員長代長退席、纐纈委員長代理着席〕
このように平均的には相当な伸びを示すわけでございますけれども、いわゆる貧弱団体の伸び率は特に府県の場合にぐっと大きくて、反面財政力の豊かな団体の伸びは非常に少いというような形において基準財政需要額の増額を行っているわけであります。要するに、増加いたしました財源を強い傾斜をもって貧弱府県の方につけていくというようなやり方をしようといたしているわけでございます。
改正事項は、そこに九つにわたって列挙いたしておりますが、第一は「都市的形態の度合に応じて定めている職員給与費、物価差等の隔差を縮めるため、道府県分態容補正において十三種地以下の種地については同一係数を用いて算定することとすること。」御承知のように市町村の態容によりまして一種地から二十種地に区分いたしております。純山村でありますと一種地、東京、大阪のようなところでありますと二十種地というような区分の仕方をいたしておるわけであります。区分をいたしますに当りましては、一つは物価差で点数をつける、物価差を見るために暫定手当の支給地域の区分を用いています。第二には各地の平均価格によって点数をつけております。第三には経済構造によって点数をつけております。産業人口の中で第二種及び第三種の就業人口が多ければ多い歩合率に応じて高い点数をつけていくわけであります。第四には人口規模によって点数をつけております。この四つの点数によって一種地から二十種地までの区分をいたしておるわけでございます。法律に定めております単位費用は従来十種地を基礎にして単位費用を定めて参ったわけであります。種地が低いほど採用する職員も従来から学歴も若干低い、本俸も比較的安い、こういうようなことでございましたので、それに応じた補正をやって参ったわけであります。平衡交付金制度、今の地方交付税制度、これができた際に多額な財源が増加すればこのような差を一挙に縮めることができるわけでありますけれども、必ずしもそうは参りませんで、一応現在使っている地方財源を基礎にして均衡化を実施していくということになりますと、現在使われている額を基礎にして需要額を算定するよりいたし方ございませんので、このような補正をやって参ってきているわけでございます。しかし、こういうようなことは交付税制度の精神からいきますと漸次差を縮めていくのが筋合いでございますので、今回一種地から十三種地までは同じようにこの学歴差、本俸差においては扱っていきたいという考え方を持ったわけであります。従いまして、農山村の多い地域、従来から行政施設のあまり進んでいなかった地域は、結果的に種地が低いわけでありますので、そういう団体には多額な需要額の増額が行われるということになってくるのでございます。御参考に現在の十三種地を県庁所在地について申し上げますと、浦和、新潟、金沢、岐阜、和歌山、鹿児島でございます。十四種地をこえまするところが、県庁所在地で十五、六ございます。要するに半数以上のところに線を置いて、それ以下のところはみんなそこまで引き上げてきた、こういう考え方をとっているわけでございます。このような種地の引き上げによりまして、交付団体で四十億円の財源の増額を行うわけであります。この四十億円の財源の増額は種地の低いものについてのみ行われるわけでございますので、種地の高いものについてはいささかも増額にならない。こういうことになるわけでございますので、非常な傾斜をつけた基準財政需要額の増額ということになるわけでございます。
二番目は、「道府県分段階補正について、規模の小さい県の経費が割高となる事情を反映させるため、段階補正係数を引き上げること。」府県の単位費用は人口でいいますと百七十万のところを基礎にして算定をしております。人口が少くなりますと、それに応じて需要額は少く算定されるわけですけれども、人口割には経費が割高になって参りますので、段階補正を用いまして、人口の少い段階については若干割増して計算をするというやり方をしているわけであります。その程度をもっと強めたい。人口の少い段階につきましてもあるべき施設というものを想定する、その想定の仕方がかなり窮屈でありましたのを相当にゆるめていくというような計算の結果生まれる段階補正係数を用いたい。その結果、そういうような団体に府県分で七億円の財源をつけるようにいたしたい、こういう考え方をとろうとしているわけであります。鳥取県でありますとか、徳島県でありますとかいうような団体が、段階補正係数の強化によって財政需要額が増額されていくということになるわけでございます。
三番目は、「納税義務者一人当りの税額が少い県の徴税費が割高となる事情をさらに的確に反映させるため、その密度補正係数を引き上げること。」徴税費は、税額を測定単位として基準財政需要額を計算して参りました。しかしながら、納税義務者一人当りの税額が少いと徴税費はかなり割高になるわけでございますので、密度補正をやっておるわけでございます。しかしながら、その度合が必ずしも十分じゃございませんので、現在の密度補正を二倍程度に引き上げたい。そうしますと、たとえば鹿児島のような一納税義務者当りの税額の少いところはかなり救われていくということになるわけでございまして、この徴税費の密度補正の合理化によって三億円程度の財源をつけるということになって参るわけでございます。
四番目は、「公共事業費等特定の事業費の財源に充てるため発行を許可された地方債の元利償還金の一部を道府県の基準財政需要額に算入するにあたり、財政力の弱い団体について定められている補正率を更に引き上げること。」昭和三十年度までは地方団体に一般財源を増額することにかえて借金を増発さしてきたというようなことから、その元利償還金の財源に充てるために地方交付税率の引き上げ等が行われてきた関係もございまして、これらの公共事業費のために発行した地方債の元利償還金の二五%は基準財政需要額に算入するのだという処置が昨年来とられて参ってきているわけでございます。しかし、財政力の弱い団体につきましては五〇%まで基準財政需要額に算入するという方式がとられているわけでございます。それをさらに、財政力の貧困な団体につきましては、元利償還金の圧迫が特に強く感ぜられるわけでございますので、七割五分まで引き上げていきたい。こういう考え方をとろうとしているわけでございまして、こういうような措置によりまして七億円の財源がそういうような団体についてだけ増額されるということになるわけでございます。
第五は、「あるべき投資的経費及び消費的経費に要する財源を賦与するため、現実の施設を測定単位としないで、その他の諸費の測定単位として新たに面積を加え、これと、従来の測定単位である人口について需要額の増額を図ること。」地方交付税の精神から考えますと、現実にどれだけ金を使っているかというようなことから、基準財政需要額を算定いたしませんで、どれだけの金が客観的に見て必要であるかというようなところから、基準財政需要額を算定すべきだと思うのであります。しかしながら、一挙に理想的な線まで持っていけませんので、先ほどもちょっと申し上げましたように、現在どれだけ金を使っているか、これを基礎にして一部は基準財政需要額を算定するというやり方もとって参ってきているわけであります。しかし、この制度がだんだん進んで参りますならば、やはり、できる限り現実の財政需要額から、あるべき財政需要額の算定に移しかえていかなければならないわけであります。そういう意味の改正を今回行いたいと考えておるわけであります。たとえば投資的な経費でいいますと、道路橋梁は何を基礎にして算定していくか、現在は現実の道路の面積や橋梁の面積を基礎にして算定しておりまして、先進の地域では必要な道路はどんどん作っております。必要な橋梁はどんどんかけております。
〔纐纈委員長代理退席、委員長着席〕
こういうような現実の施設を基礎にして算定しております限りは、これから道路をつけたいのだ、これから橋梁をかけたいのだというところの財政需要額が的確に算定されないわけであります。そういうようなところから、すでにできている施設をとりませんで、これからどれくらいの投資額を必要とするかというようなことを見ていきたいということで、面積を基礎にして投資的な経費全体を測定するようなやり方を考えたいといたそうとするわけでございます。また、消費的な経費でありましても、たとえば高等学校の経費に金が幾ら要るか。先進の地域ではどんどん高等学校を設置している。後進地域においてはなかなか県立高等学校も作れない、自然入学率もきつくなっていくというような問題もございますので、人口を基礎にしてそういう需要額を算定するようにしていきたいということにいたしたわけでございまして、面積の新設によりまして、府県分で基準財政需要額の増額をはかる額が三十億円、市町村分について四億円でございます。それから人口を基礎にして算定して参ります基準財政需要額の増額が——今申し上げました意味における人口を基準にする部分であります。府県で五十五億円、市町村で三十五億円、合計いたしまして九十億円ということになっておるわけでございます。結果的に、人口を基礎にする部分につきましては、職員の昇給財源や初任給改定の財源というようなものがそれで算定されていくということになっているわけであります。また面積を算定する部分につきましては、結果的には、地方財政の再建を促進するために、臨時に公共事業費の国庫負担率が引き上げられておった。それが三十四年度からもとに戻してしまいますので、その結果起りますところの地方負担増をカバーするというようなことになって参ると考えているわけでございます。
第六は、「農業行政費を増額するため耕地の面積にかかる単位費用を引き上げること。」でございます。府県で農業に対して事業税が課せられていない反面、米を生産してどんどん県外に移出しているそういう団体の財政力が十分でない。従って、県外移出米について何か助成金を交付すべきだというような議論があったわけであります。しかしながら、そういうことで助成金を出すことについてもいろいろ問題がございまして、またいろいろ掘り下げた議論をして参りますと、農業県の必要な行政費が十分に基準財政需要額に見積られていないというようなことに発展して参りまして、その結果、土地改良等の費用を今より十分に算定するようにしたいというようなことから、耕地の面積を測定単位にして農業行政費を算定しています部分について、その増額をはかることといたしたわけでございまして、六億円程度の増額に結果的にはなって参るわけでございます。
第七は、「災害復旧事業費に類する特殊土じょう地帯災害防除及び振興臨時措置法に基く特殊土壌対策事業費にかかる地方債の元利償還金を災害復旧費の測定単位の数値の中に算入するものとすること。」でございます。昨年の改正によりまして、地盤沈下でありますとか、あるいは地すべりでありますとかいうような仕事に当てるために発行しました地方債の元利償還金は、公共災害復旧事業費の半分程度の額にしぼって基準財政需要額に算入することにいたしております。こういうような経費は積極的な利益をもたらすものではなしに、若干災害復旧に類した性格を持っているということから、このような措置がとられたと考えているわけでございます。ここに述べましたような特殊土壌の関係から起って参ります事業費も同じような見方ができるわけでございますので、そのために発行された地方債の元利償還金につきましては、今申しました地盤沈下あるいは地すべりの事業のために発行した地方債の元利償還金と同じ扱いにいたしたい、かように考えるわけでございます。
第八は、「制度の改正等に伴い必要となる経費を算入するため、関係行政費の単位費用について次のような改正を行うこと。」であります。その一は、駐在所勤務警察職員の配偶者等に対する報償費を算入するため、警察費にかかる単位費用を引き上げることであります。その二は、消防行政、社会教育行政、学校給食等にかかる職員の増加に伴う所要経費を算入するため、府県分のその他の諸費、そこで市町村の消防行政の委託費でありますとか、あるいは訓練のための経費でありますとかいうような経費が見積られておるわけでございますので、三人程度の増員が行い得るように単位費用を引き上げることを考えておるわけでございます。市町村分のその他の教育費で、社会教育行政の費用を見積っておるわけでございますので、人口三万以上の市町村については、社会教育主事が一名ずつ増員できるように考えているわけでございます。小学校費につきましては、児童九百人について一人の学校給食婦の経費を算入しておりますのを、二人に算入するように改めたいと考えているのであります。かような意味で単位費用を引き上げております。その三は、期末手当の増加所要額を算入するため、職員費を含む関係行政項目の単位費用を全体的に引き上げを行なっておるわけでございます。
第九は、その他所要の調整を行うことでありますが、若干従来の規定の仕方に是正を加えまして調整をはかっておるわけでございます。実体的には変っていないわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/6
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007・鈴木善幸
○鈴木委員長 次に、引き続き質疑に入ります。質疑の通告がありますので順次これを許します。佐野憲治君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/7
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008・佐野憲治
○佐野委員 だいぶ時間も経過いたしておりますので、細部の問題につきましては後日に譲って、本日は総括的に地方税大綱に対する二、三の質疑を行いたいと存じます。
まず第一に、昨年の暮れに地方税の減税あるいは起債の総額、これらに対する細部の折衝が非常に熱心に行われていることを新聞によって見たわけでありますが、それらが一段落いたしましてから、地方財政計画が政府の手によって成って、二月三日に決定された。こういう経緯を見て参りますと、私は、これは逆じゃないかと思う。地方財政計画の原案ができて、それを中心として減税をどうする、起債の総額はどうあらねばならないか、こういうことが論議さるべきではないか。かように考えておりますし、法の建前もそうなっているのに、本年度におきまして、どうして逆な方向をたどられたのであるか、この点について説明を願いたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/8
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009・黒金泰美
○黒金政府委員 ただいま御質問の点でありますが、それは国の予算と地方財政計画とは両々相待って進んでいかなければならないことでございまして、いずれが先にきまり、いずれがあとにきまるというものではないと思うのでございます。御説の通り、最後の計数がまとまりまして皆様に御発表申し上げたのはおくれておりますけれども、しかし、われわれは予算の際におきましても、絶えず財政計画というものを念頭におきまして、それとの関連で予算等の折衝も行い、いろいろいたしておりました次第で、こまかい数字については別問題でございますが、大綱につきましてはお話しのような御懸念はなかったと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/9
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010・佐野憲治
○佐野委員 私は、率直に申して、自民党の公約にとらわれて、その点に問題点がしぼられておったのではないかと思います。自民党の公約を読んでみましても、非常に抽象的に表明されておる。まあ選挙ですからやむを得なかっただろうと思いますけれども、そういうものにこだわっているようであります。地方交付税法の第六条の三の二項に、「毎年度分として交付すべき普通交付税の総額が引き続き第十条第二項本文の規定によって各地方団体について算定した額の合算額と著しく異なることとなった場合においては、地方財政若しくは地方行政に係る制度の改正又は第六条第一項に定める率の変更を行うものとする。」とありますが、この条文の趣旨から考えてみましても、当然地方財政計画ができて、国の地方財政に対する措置が明らかとなって、そういう中から現在の問題が、場合によりますれば、地方財政あるいは地方行政に対する制度上の改正、そしてまた第六条第一項によるところの交付税率の変更、こういうことが論議されてくるのが妥当な道筋じゃないか、かように私は考えるわけであります。もちろん国の予算編成をめぐりまして、今おっしゃる通り、国、地方を通ずる編成が大切であります。だからこそ地方財政計画が立てられなければならない。それが逆になっておるのじゃないかというところに矛盾を感ずるわけですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/10
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011・黒金泰美
○黒金政府委員 ただいまお話しの点でございますが、ことしかなり減税が大幅でありましたから、これを中心にお考えになるのもごもっともかと思いますが、それのみならず、あるいは補助率の問題でありますとか、いろいろ国と地方との間に金の出入りがございます。国の方の所得税の減税もございましょうし、あるいは入場税の減税もございましょうし、一方におきましては、今御指摘のありましたように、また今詳細説明を申し上げましたように、交付税率の引き上げもございましょうし、そういう全般の問題を念頭に入れながら、来年度の地方の財政がどうなるか、どんな姿でやっていかれるか、これを絶えず念頭に入れまして、国の予算編成に当りましても仕事をして参ったような次第でありまして、今御懸念のありましたような本末転倒ということはないんじゃないか、私はかように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/11
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012・佐野憲治
○佐野委員 後ほど具体的な問題を通じて明らかにされることと思いますけれども、地方自治の建前から考えて、やはりこういう点は大きな問題じゃないかと思います。あとから数字上のつぎはぎをやっておる。根本的に地方財政計画の原案というものができて、その中からやはりいろいろな問題が出てくると思いますが、それをどう解決していくか、これが建前だと思います。それでなければ地方自治の建前がくずされるし、財政の健全性、能率化というものも喪失させる大きな原因になるのじゃないか。ただ数字的に合せるというだけの問題じゃない。特にその点は地方交付税法の第二条の七号の単位費用に対する規定、これらの規定の精神から考えてみても、政府の今とっておる態度を改めてもらいたい。私はかように考えるわけですが、その結果として具体的にどのような矛盾が出てきておるか、その結果として組まれておる地方財政計画の内容につきましては、いずれ別の機会に質疑が行われると思いますので、私は、根本的にそういう間違った方向をたどっておるのじゃないか、こういう点を指摘する程度にとどめて次の点に入りたいと思います。
第二の点といたしまして、財政収入の見地から見て参って、公平、平等の原則、あるいは地方自治の立場から見た自主性という問題に関連するわけでありますが、自治庁が出しております地方税制の現状と運営、この資料を読ませていただきましても、固定資産税あるいは電気ガス消費税等に関する非課税措置によって、地方税の減税は三百七十五億円を上回っておる。あるいは国税の租税特別措置法による地方税の減収見込みは百八十一億円、合せますと、五百五十六億円という膨大な措置がなされておるわけですが、こういうことに対しまして、特に非課税規定だとか特別課税の規定というのは、今申しました原則から考えて整理されるべきじゃないか。こういうことと、もう一つは、こういう税法によって特定の産業あいるは特定の事業を保護するという政策は非常に不明朗なものを伴うのじゃないか。行政上の措置としていろいろなされることこそが産業の育成——もちろんこれらの措置がとられていることにはそれぞれの理由があげられておりますが、しかしながら、それらのものは行政面においてやっていくべきであって、租税の面から特定の産業、特定の業界に対するこういう規定を設けておくということ自身が、私は不明朗な問題を惹起しておる原因じゃないかと思う。もう一つ見主性という観点から考えて参りましても、所得税、法人税において明確に把握されているにもかかわらず、法律によって課税を免れる。こういう規定を設けるということも、自主性を阻害するという意味からやはり整理されるべき問題じゃないか、かように考えるわけです。その点は、しばしば地方制度調査会において出した意見書を見て参りましても指摘されておるにかかわらず、大資本擁護の政策がどうして取り除かれないのか、これらに対するお考え方をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/12
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013・黒金泰美
○黒金政府委員 ただいまお話しのございました点は、一方において取るべき税は全部取りまして、他方でもって補助金その他歳出によって補助していったらいいじゃないか、こういう考え方も一理あると存じますが、実際問題といたしまして、今税負担もなかなか軽くない。こういう状態でありますために、やはりある程度の補助を減税の形を通じまして行なっていくということも、いろいろな沿革的な理由もございましてそう一がいに否認はできないのではないか。かように考えておりますけれども、ただいま御指摘になりましたようないろいろな点で種々雑多なものがございます。中には、当初は必要であったかもしれませんが、今見直してみれば、あるいはまた今の状態からいえば、やめた方がいいんじゃないか、あるいはまたほかとの権衡上そのものをやめる、あるいは新しく追加するものもあるんじゃないか、いろいろな問題があろうかと存じます。ことしの議会に提出する改正案の中にも、そういう点まで突き進みまして検討を加えたい考えでおったのでありまするが、十分な時間もございませんでしたために、この問題は今後の慎重な検討に譲ることにいたしております。今お説のような点につきましても、今後十二分に検討いたしまして成案を得たいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/13
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014・佐野憲治
○佐野委員 原則論となって参りますと、今の議論のやりとりになりますけれども、具体的に固定資産税の場合における問題あるいは電気ガス消費税の適用、こういう点を具体的に見て参りますと、やはり公平の原則から考えて納得いかないというのが非常にたくさんあると思う。いずれまた具体的な税法の細目の質問のときにいろいろ指摘されると思いますけれども、そういう点については、非常に納税に対する不信感を抱いている。大資本を優先して、しかも零細な税目までも探し求めておる今日のあり方に対して、非常に疑惑を持っておると思う。こういう点から、私は今国会におきまして自治庁側からも当然提案をされるものだと、実は期待いたしておったわけでありますけれども、何らその点に触れておられないのは非常に遺憾だ。かように考えるわけですが、この問題に入りましたときに具体的な問題についてまた質疑を行いたいと思います。
続いて、事業税に対しまする考え方と申しますか、これに対する見解をこの機会に明らかにしておいていただきたいと思います。いろいろと課税標準をめぐりまして、外形標準がよいか収益標準がよいか論議されておるわけでありますが、これらに対しまして私はいささか心配と申しますか、そういう考え方があるかどうかということをお聞きしておきたいと思います。日本租税研究協会から出しておる第十回研究大会の地方財政と地方税体系に対する議長報告の中で、大村府県税課長さんが、近き将来において流通税としての付加価値税または売上税の導入等が検討されておるということを指摘しておられるわけですけれども、この点につきまして現在どういう考え方を持っておられるか。いわゆる収益標準か外形標準か、これは古くかつ新しく論議さるべき問題でもありましょうけれども、これらに対する現在の考え方は一体どうなのか。政府内部においてそういう付加価値税あるいは売上税の租税というものは具体的に検討されておるのかどうか、この点についてお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/14
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015・黒金泰美
○黒金政府委員 売上税の問題につきましては、御承知の通り長年検討されておる問題でございまして、今すぐにこれを実行するとかなんとかいう問題は別といたしまして、現在の日本の国税あるいは地方税全体を通じます租税体系の改正を論議する場合には、どうしても触れざるを得ない問題であります。可否、採用するかしないかは別といたしまして、今後ともに一番大きな問題になって参ると存じます。同時に、それがかりに国税として実行されますならば、これに伴いまして地方税としての事業税その他についても、これとの関連でやはり検討しなければならないと思います。御承知と思いますが、政府で租税関係の調査会をまた開くことに法案を提出してお願いいたしておりますが、こういった調査会を通じまして慎重な審議が今後加えられることを期待いたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/15
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016・佐野憲治
○佐野委員 付加価値税がいかに悪法であるかは、シャウプ勧告に基いて政府案が提案されて、国会が紛糾したことを想起しても大きな問題だと思います。ですから、非常に慎重に検討される必要があるのじゃないか。大阪においてそういうようなことが自治庁の課長から見解として述べられておるということは、非常に衝撃を与えておるんじゃないか、非常に大きな問題だと思いますので、念のためにお尋ねしたわけです。
それからこの事業税に農業課税を拡大するということが三十、三十一、三十二年度にわたって地方制度調査会から答申が出ておるわけでありますが、これに対する政府の見解はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/16
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017・黒金泰美
○黒金政府委員 ただいまの農業に関して事業税を及ぼすかどうかという問題につきましては、今後とも慎重に検討いたしたいと存じます。今これをするかしないかということは、まだ研究を十分にいたしておりませんので申し上げかねますが、その委員会の答申その他につきまして十分検討いたして参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/17
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018・佐野憲治
○佐野委員 いつも問題がありますと、調査会の意見を聞いてから、調査会の答申を見てから答弁される。答申が出てきますと、これに対して遺憾ながら、遺憾ながらと言う。われわれは見解を明らかにするのが当然だ、かように考えるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/18
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019・黒金泰美
○黒金政府委員 率直に申しますならば、今のところは農業に関係いたしまる事業税を行おうということは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/19
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020・佐野憲治
○佐野委員 明快なる答弁をいただきましたが、次に市町村民税における課税方式の選択制の問題ですが、十月の臨時国会におきましても私は指摘して御検討をお願いし、また誠意をもって検討したい、かようにお答えになっておられたわけです。それから、地方制度調査会からの十一月二十九日に出しておりまする地方財政に関する当面の措置についての答申にも、この点について取り上げられていると思いますが、これに対して、なぜこの国会におきまして、非常に矛盾に満ちており、しかも町村間における負担の不均衡——同一納税者が地域市町村を異にすることによって、同一条件であるにもかかわらず非常に激しい不均衡を来たしている。こういう点につきましては納税不振の原因ともなりますので、すみやかに是正するのだ、こういう考え方だと受け取ったわけですが、なぜ今度の国会の税法改正でこの点に触れられなかったのか、その理由をこの機会に明らかにしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/20
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021・黒金泰美
○黒金政府委員 この問題につきましては、だんだん御意見があると存じます。ただいろいろと地方の実情にもよりまして、また今までの沿革的な理由もございまして、早急に一本にすることはなかなかむずかしい。やはりおのおのの市町村におきましての自主性も考えていかなければなりませんし、まだなかなかこれを一本に統一していくところまで、率直に申しまして踏み切りがつかなかったもので提案をいたしておりません。御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/21
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022・佐野憲治
○佐野委員 この点につきましては、前にも資料をお示ししたと思いますが、非常に問題を含んでいるのではないか。たとえば富山県という一つの県を見ましても、政府の町村合併促進の名によって、原始産業をもって構成されている一つの郡があげて一つの市になった。こういう珍しいケースもありますけれども、その隣には高岡市がある。これは従来からの市でありますけれども、しかしながらそれは氷見市と近接いたしておる。そういう中にあって、同じ条件のもとにおける納税者に対する税金が非常に違っている。それは二十五万円の所得層で、扶養家族五人の者が、高岡市の場合には五百四十円で済む。氷見市の場合におきましては五千四百円、十倍の税金を払わなければならない。こういう近接地域において、同じ会社に勤めておる勤労所得者にとりますれば、このようなおかしな差が出て参るということは、いろいろな意味において納税者に対する不信を高めると思われますが、こういう面から考えれば、この問題は随所にあると思います。だからこそ地方制度調査会も取り上げておるわけでありましょう。ですから、こういう間違っている選択方式で、地方の自主性を尊重しようじゃないかと言われるけれども、尊重しているのではなくて、どうもしようがないから一番高いところから取ろうじゃないかという形をとって参っている、第二方式ただし書きで多く取られているわけですが、これによりましても、実態を調べて参りますと、ほとんどめちゃくちゃの税率をかけている。これぐらいの準拠税率ができたじゃないか、それによって不合理は是正されているじゃないかと言われますけれども、実際富山なら富山の県庁で調べてみますと、準拠税率を使っているところは一つだけで、あとは全部、準拠税率をもって特別交付税を経過措置として恩恵を受けるよりも、このまま税金を取っていった方がいいのだ、また取らなくてはいけないのだ、こういうように地方財政が窮迫しておると思います。窮迫しているから取れるだけ取るのだというような考え方は、租税負担能力の限界から考えて、非常に大なきな問題ではないかと考えるわけでありますし、特に減税問題が大きく取り上げられている国税において、減税しなければならない最低課税の限度はどうか、これは一本にしようじゃないか、こういう点がしきりに地方財政の場合において取り上げられているから、政府も減税を公約いたしたと思います。しかしながら、現実的に国、県、あるいは町村の財源、こういう租税と並びに公租公課あるいは寄付金あるいは負担金と申しますか、法令による負担金、こういうものを合算いたしますと、膨大な金額になるわけであります。国が、三十万円以下に対して、これは一つのブルジョア的な意味における負担公平の原則の限界だと考えて、今日減税案を出しておる。しかしながら、それ以下のものは原則的にとることができないという政府の考え方に立っているにもかかわらず、地方税においては逆に、そういう三十万円以下の方に税金がしわ寄せをされてきておる。あるいは町村民税の場合におきましても、国の社会保障政策上から考えても、これ以上の税金は無理じゃないかということから免除しておる層に向ってまで、応益原則という名のもとに租税の財源をあさっておる。そういうものの特徴的な例は、この住民税の場合じゃないか。これは人頭割で取っておる。ほとんど生活線すれすれの、政府の厚生白書にもある一千二百万人に近い低所得者を遠慮会釈なく地方税法の対象として取っておる。まさしく封建的な人頭割という性格を持つものを取り入れておる。町村民税に対する所得割というものは、そういう低所得者に財源を求めておる。その上に、これらの者に最も押しかかってくるものは教育費である。貧乏人も金持もひとしく小学校に学ぶ以上、教育に対する負担金を取られるし、後授会費、学校建築費、それから水利使用費などの水利関係における問題、いろいろな形において取られる。あるいはまた町村合併によって町村はなくなったけれども、新しい部落協議会とか自治会、町内会、こういうような形のものをみずからの手によってやっておる。これらの点を租税体系として総合的に見て参ると、低所得者に対する税金というものは非常に重いのではないか。しかも、その特徴的なものは町村民税に表現されておるのではないか。そこに矛盾が出ている。高額所得者に対する不均衡というものは、それほど目立たないかもしれませんが、低額所得者にこのような五つの選択制を設けること、それが選択制だ、地方自治だと、言葉は美しいけれども、現実においては貧乏人から取り立てるのだ。こういう無責任な税法を残しておくことは、地方の自主性とはちっとも関係がないのじゃないか。早くこれを一本化する。単に市町村民税だけではなくて、これにたよっておる県民税にもこの矛盾が反映しておる、ますます拡大されて参っておる。こういうような現状ではないかと思いますので、これらの点に対して、自治庁としては真剣に取り組んでおるのかどうか。取り組んだけれども間に合わなくて、今度の税法改正には出さなかったのだ、しかし一応どの程度までその問題に対する研究が進んでおるのか、これらに対して説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/22
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023・黒金泰美
○黒金政府委員 今御熱心な御質問がございましたが、確かに選択制のために異なる方式をとっておりますれば、その団体相互間では不均衡と申しましょうか、負担が違って参ることは事実でございます。でき得るなら一本にした方がいいだろうと思いますが、しかしまた一面から見ますると、それぞれ給与所得の多い場所もありましょうし、農業所得の多いところもありましょうし、そういった点から見まして地方の実情はいろいろとございます。同時にまた地方の歳入歳出関係でもおのおの団体ごとに違っておりますので、今一気に、今までやっております沿革をすべて改めてしまって、一本にすることはいかがなものか。いろいろ研究はいたして参ったのでございますが、いろいろ一利一害もございまするし、今すぐこれを思い切ってやってしまうというだけの自信も得ておりませんので、目下まだ検討を続けておるような次第でありまして、この点は御了承を賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/23
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024・佐野憲治
○佐野委員 その場合におきましてもおかしいと思うのです。予算編成を前にして当面の措置を求められて、当面の措置として答申をした。それほど矛盾、不合理、不均衡があるというので取り上げられてやっているのに、これをまだ研究してみるとか、沿革がどうのというようなことを言っておられる。十月の臨時国会におきましては、鋭意それらの御趣旨に沿うように作業を進めていると言われたから、もう出るかと思えば、まだ出てこないというのはちょっとおかしいのではないかと思いますが、それらの点はまた後日にお伺いいたします。
次に固定資産税の評価の問題ですが、前回門司委員からもいろいろな角度からそれらの問題を取り上げておられましたけれども、確かにこれらの評価機構の確立基準を徹底させること、町村間の評価の均衡を確保すること、これらは非常に大きな点ではないかと考えるわけです。特に同じ住民にいたしますれば、皆さんが考えておられるほど国、地方というものを分離して考えていない。生活の豊かさを求めて明るい地域を作りたいという一念でやっております。それで住民といたしましては、そういうように国がこうだから、地方がこうだからという複雑な機構に対する理解を持っていない。ですから非常に不平不満が起っている。こういう点に対しまして、たとえば固定資産税の場合でも、課税標準の基礎になる価格、固定資産税、不動産取得税、あるいは相続税、あるいは贈与税、それから登録税、これらの一連の税の価格がみんなばらばらである。こういう点に対してもっとこれを一元化する、あるいは場合によっては委託事務制をとってもいいのではないか、何もそれが地方自治侵害にはならないと思う。住民に対して最もわかりやすく、手っとり早くいかないで、国においても、また地方においてもばらばらである。こういうようなことは最も戒むべき点ではないか。それらの点がしばしば指摘されているにもかかわらず、今日までこれが一元化をはかられないのはどこに原因があるのですか、その点をお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/24
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025・黒金泰美
○黒金政府委員 今の点は、あなたのおっしゃるところもまことにごもっともだと思います。たとえば国税におきまして今おっしゃる登記の関係なり、あるいはまた相続税の関係なり、固定資産税の関係、そういったものの評価がぴったり合いまして、しかも現在の実情に合った時価で評価される。その間に不均衡がないことが最も望ましい姿でございまして、今まで調査する人が違っておりましたり、また同時に、戦争戦後を通じましてその評価に適当な機会がなかったり、いろいろな関係がございまして、区々になっていることはまことに遺憾なことでございます。従いまして政府といたしましても、今法律案を提出いたしておりますが、調査会を作りまして、国と地方関係両方が衆知を集めて統一した標準を作っていきたい。調査方法をきめ、どういう機構でやっていったらいいか、こういう点につきましてこれから研究を進める段階に相なっております。ただ、実際問題といたしましてなかなか大へんな仕事でございます。従いまして、多少の時間をかけなければ結論は出ないと思いますけれども、これはそれこそほんとうに熱心に仕事を進めておりますので、どうか御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/25
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026・佐野憲治
○佐野委員 さっそく熱心に研究されるそうで、できるだけすみやかに一元化をはかることが今非常に大切ではないかと思います。小さいような問題でございますけれども、やはり一人々々の国民にとってみますと、どうも政府のやっておることはわからぬ、なわ張り争いのような感じを受けますし、役所によって評価の基礎になる価格が違ってくるのでは、これじゃやはり変に思うのは無理ないと思うのです。ですから、早急にこれらに対する一元化をやってもらいたいと思います。
私は最後に、それらの税制に対して国においていろいろ検討されるならば、やはり根本的に現在の租税体系自身が一体どうなっておるか。それから個々のそれぞれの税を見てみますと、いろいろ皆さんの説明もお聞きもし、調べまして、それぞれやはり一つの体系があると思います。しかしながら、それらの体系がばらばらである。相互補完性をもって考えてみる。結局それらが実証的にどうなっておるか。結局は、大資本に対する租税の回避ということが巧妙に組み立てられておる。意識するとせざるとは別といたしまして、租税の実証的な評価と申しますか、これらをやっている文献を見て参りましても、結局国、地方税を中心としてとられている租税体系というものは、客観的には、現実的には、大資本の租税回避、逆な意味でいうと、資本蓄積への道、意識的か無意識的かは知りませんけれども、こういうことがとられておるんじゃないか。これらの点がやはり明確にされなければならぬじゃないか。国民の担税能力というものを重点に置いて考えなければならないのに、大資本を中心として租税体系ができておるが、それは根本的に作り変えられなければならないのではないか。こういう点を強く私は皆さんに指摘いたしますと同時に、国と地方団体間における事務配分の合理化と負担区分の適正化、この二つをもっと明確にしなければ、いつまでたっても地方財政の混乱は続きますし、そうした中における地方税法が、思いつきのように次から次へと作られて参る。その結果として、結果的に出て参りますのは古い租税利益説、国家利益説、応益原則、こういうもはやすでに十九世紀末をもって葬り去られた封建的要素の強い税源をあさってきて、これを日本的な法律的表現に置きかえて、これが地方自治だ。とんでもない地方自治が生まれてきてしまうところに、今日の地方税体系の混乱というものがあるんじゃないか。そういう点に対しましても、根本的なメスを今こそふるわれなければ、非常な不均衡と矛盾というものはますます拡大し、地方財政の困窮化と相待って、住民の地方自治に対する不信、地方自治に対してたよることができないという気持をますます強めていく原因になるのではないか。これらの点を一応申し上げて、時間もおそいようですから本日の私の質問は一応終らしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/26
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027・鈴木善幸
○鈴木委員長 本日は、これにて散会いたします。
午後零時二十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104720X01619590303/27
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