1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年四月九日(金曜日)
午前十時二十八分開議
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議事日程 第三十一号
昭和二十九年四月九日
午前十時開議
第一 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X03119540409/0
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001・河井彌八
○議長(河井彌八君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
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002・河井彌八
○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X03119540409/2
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003・戸叶武
○戸叶武君 私はこの際、内閣総理大臣の長期国会欠席についての政治責任に関する緊急質問の動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X03119540409/3
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004・矢嶋三義
○矢嶋三義君 私は、只今の戸叶君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X03119540409/4
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005・河井彌八
○議長(河井彌八君) 戸叶君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X03119540409/5
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006・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。戸叶武君。
〔戸叶武君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X03119540409/6
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007・戸叶武
○戸叶武君 私は日本社会党を代表し、吉田首相の長期に亘る国会欠席に対する政治責任の追求に関して、政府に緊急質問を行わんとするものであります。
吉田首相は、国会が予算案及び重要法案の本格的審議に入つた三月中旬以来、神経痛と称して大磯の私邸に籠り、又数日前、東京の官邸に帰京しても、約一カ月間一日も国会に登院しておりません。私は吉田首相の病気そのものには、別に疑わず、病気に対しては、衷心から同情の意を表します。私たちの忿懣は、吉田首相並びに緒方副総理らの政府の首脳部の不誠意な態度にあります。日本の憲政史上において、一国の総理大臣たるものが国会開会中に病気を理由として、かくも長期の欠席をした前例はいまだ曾つてないのであります。
私は先ず第一に、緒方副総理に質問を、試みんとするものであります。緒方副総理は、予算審議の過程において野党側の質問に対し、二、三日後には総理大臣を出席さすべく努力すると誓約しておるのであります。ところがこの約束は、一度も果されておりません。私たちは今まで我慢に我慢を重ねて来ましたが、国会をよそに政局転換に狂奔する政府の状態を眺め、吉田首相が病気だからといつて、これを黙視することはできなくなつたのであります。政府は、現在の内閣制度の下において、若し総理が病気であるならば、総理は幾日でも欠席できる。この間副総理で代行できるとの考えでありましようか。内閣法第九条には「内閣総理大臣に事故のあるとき、又は内閣総理大臣が欠けたときは、その予め指定する国務大臣が、臨時に、内閣総理大臣の職務を行う。」とあります。政府は、その事故のあるとき又は欠けたるときを、如何ように解釈するのでありますか。それは、止むを得ない事故等の場合に対処する臨時的措置であつて、決して長期間を意味するものではないと私は信じます。又緒方副総理は、吉田首相が外遊の場合も、副総理が総理大臣の代理を、そのままやると答えております。これに対して私たちは、総理大臣の外遊期間中、副総理が総理の代行を勤めるような場合は、あらかじめ国会の了解或いは承認を得る必要があると思います。憲法第四十一条で示されているごとく、国会は、国権の最高機関であります。そして内閣総理大臣は、憲次第六十七条で「国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。」と規定せられております。総理大臣の職務が代理たる副総理の他人格に移行する場合に、而もそれが長期に亘るとき、このことを国会の了解なり承認を得ること必要なしと考えるとするならば、国会軽視も甚だしいと言わねばなりません。(拍手)国会を母胎として生まれた内閣総理大臣が、病気診断書の提出、又は一片の通告をしたのみで、病気或いは海外旅行の場合、国会の了解なり承認を求めずして、長期欠席するこは断じて許されません。さような理窟が押通されるに至つては、憲法上由々しき大事であります。日本の副総理は、アメリカの副大統領とは根本的に違つております。万一、総理大臣に不幸があつた場合に、副総理がそのまま居坐るというようなことは許すべからざるところであります。吉田首相は、自由党の総裁であるから与党内でワンマンたることは勝手であります。併し吉田首相も緒方副総理も、国会に対して、もつと謙虚な態度を示さねば、如何に多数を擁しても国会と内閣との衝突を避けることは出来ません。殷鑑遠からず、すでに参議院においてはその実例が起つておるのであります。吉田首相が、参議院の予算審議の重要な段階に長期欠席したため、参議院においては、十分予算審議果すことができず、遂に四月二日深更に予算案の自然成立を見るに至りました。この不祥事は、吉田首相並びに政府当局の不誠意から招いたものであります。(拍手)国会の権威は、審議権の擁護にあり、国会の審議権を蹂躙した吉田首相及び政府与党の態度は、議会政治否定のフアツシズムである。私たちは政府のかかる態度を断固糾弾いたさねばなりません。
この危局に面し私たちの追憶に浮んで来るのは、東京駅頭でピストルを射込まれた浜口首相のことであります。浜口首相は、体内に幾つかの弾丸を留めたまま、命旦夕に迫りながらも、国会の権威を保つために、又総理大臣としての重責を果すために、最後まで国会の予算討議に臨んだのであります。浜口雄幸氏と吉田氏とは、共に土佐の生んだ宰相でありますが、その責任感に至つては雲泥の差があるのでございます。(拍手)
緒方副総理に対する質問の第二点。権威ある新聞の伝えるところによれば、緒方構想が放送せられた去る三月二十八日の吉田、緒方会談以来、更に吉田首相の上京を契機に、保守合同の機運が急速に進展したとのことでありますが、どの程度まで進んだのでありましようか。緒方構想なるものは、政局収拾に当つて連立政権の各党割拠では、政界刷新の実が挙らない。よつて保守合同による新党樹立に邁進すべしとの主張の上に立つとのことであります。又、側近がこれに不満で、自衛上保守連立の線を打ち出しておるとのことであります。吉田首相及び緒方副総理は、果して如何なる構想の下に動いておるか。陰謀によらず筋を通さんとするならば、この際、国会を通じて天下に公表して頂きたい。緒方副首相と気脈を通じておると見られておる改進党の芦田氏は緒方氏との会見のときにも、緒方氏と私との会談は、要するに新規まき直しで政党を建て直し、自粛を挙げることによつて道義頽廃、経済打開を立てるベきである。それには、国会の過半牧に満たない政治力では、果敢な政治を行うことができない。強力政権なくしては、海外の信をつなぐことができないから、速かに合同して実現しようということであつたと告白しております。緒方、芦田両氏の心境が同じだとするならば、その意図するところは、強力な保守政権の実現であります。そして保守党共同防衛政権の圧力によつて、汚職事件の進展を阻止し、臭いものに蓋をして自分たちの意のままになる政治を強行し、それによつて海外からの支持を受けようということであります。吉田政権の延命策に最も熱心な人たちは、造船疑獄、その他の汚職事件で、すねに傷持つ保守政党の幹部と池田、麻生氏らの側近派であります。彼らの強腰は、汚職事件を頬被りするため、MSA受諾による再軍備強化を取引とし外来権力からの強力な後押しを期待していると世間では取沙汰しております。独立日本として、誠に不名誉な話であります。蒋介石政権の没落の前夜、うちに国民から信を失い、外来権力に頼つて、政権維持に汲々とした醜悪なるあの姿が、そのまま私たちの眼前に彷彿として展開された感があります。
次に、緒方副総理から、具体的な言動をめぐつて、責任ある答弁を承わりたい。緒方副総理は七日の参議院本会議において、汚職の如何にかかわらず、保守合同は、政局安定の有力な手段であると強弁されたが、それは如何なる根拠と信念に基くものでありますか。又先に国会において、汚職事件が閣僚の一人にでも及ぶならば、政府は政治責任をとると明言しておきながら、七日の本会議において、内閣に及んでも軽々に辞職しないと言明したのであります。この二枚舌のいずれが緒方個人の信念に基くものか。人格の分裂を統合して、明快な答弁がなされんことを望むものであります。(拍手)道義を無視し、力の政治で押切らんとする者は、必ず力によつて倒されます。孔子は、政治上及び社会上の崩壊は皆上層よりきざしたと考え、大義名分を立てること、即ち正名を以て時弊を救わんとしたのであります。孔子は論語の中で、緒方総理のような位置の人に向つて、政は正である。今国の代表とも言うべきあなたから率先して己れを正しくなさつたら、下民はこれに倣つて、正しくなるであろうと説いております。緒方個人はどんなに立派であつても、吉田内閣の副総理として、吉田内閣の共同政治責任者として、その進退を誤まるならば、百世にその汚名が残ることでありましよう。芦田氏は、緒方氏との会談の直後、改進党の同志に向つて、汚職による政治責任が追及せられているが、これは保守党全体の問題で、他党の責任追及だけでは建設的でないと語られたとのことであります。吉田首相並びに緒方副総理らが当面の汚職事件、経済的行詰りに対する政治責任をとることなく、自分たちの手によつて再び政界刷新、道義高揚、経済振興を説いても、それは世間の笑話になるだけであり、冗談音楽に材料を徒らに提供するだけに過ぎません。道義不感症患者たる芦田氏と、政界再編成による政権維持を企てるようなことが実現されるならば、小菅の刑務所は、道義高揚の最高の修養道場となることでありましよう。水も長きに亘つてとどめおくと、溜り水にぼうふらがわきます。溜り水からぼうふらをかい出しても、ぼうふらのわく根源たる溜り水を全部捨て去らなければ駄目であります。吉田首相は、英国に内閣制を樹立せしめたウオルポール及びチヤーチルにも似た、日本人としては大政治家であります。その晩年における進退が大切であります。ウオルポールの長期政権も、ウイリアム・ピツトの腐敗政権弾劾に席を譲らなければなりませんでした。又チヤーチルは、曾つて反対党たる労働党に政権を托した後、アメリカに個人の資格で外遊したため大歓迎を受けたのであります。汚職政権の宰相吉田としてよりも、野に下つて人間吉田として、日本の憂うべき現状世界に訴え、祖国の窮状打開を図つたほうがより効果があるでありましよう。西ドイツのアデナウアーは七十八歳、英国のチヤーチルは七十九歳、この両人に比ぶれば、吉田さんはまだ若いのであります。裸になつて個人吉田として世界旅行をすべきであります。
最後に犬養法相に承わりたい。汚職事件の手はどこまで伸びたか。現に前閣僚及び閣僚中にも疑惑に包まれている人たちがあるのであります。あなた自身すら、甚だ不明朗であります。造船疑獄を中心とする今回の汚職事件は、政局の転換と不可分の関係にあります。この際、突込んだ報告と見通しを語つて頂きたい。
又、険悪な世相を背景に吉田首相の身辺が危うしとの流言が頻りに飛んでおります。これは汚職そのものでなく、汚職事件に刺激を受けてのテロの誘発であります。犬養法相は、曾つて吉田首相の九州旅行の際、その厳重な警戒の弁明として、長きに亘つて政権を維持した場合、その政治権力の中心人物は、歴史の経験からしてテロに見舞われる危険性があると説明されたが、当時すでに何か具体的な証拠を握つておつたのではないでしようか。吉田、緒方会談の前後、大磯の吉田首相私邸に、汚職に明け暮れている世相を慨歎して、もつと立派な政治をとの手紙と共に、ダイナマイトが送り込まれたのであります。犯人は誰か。如何なる系統の者と思いますか。犯人は誰かでなく、直接行動に訴えんとする危険思想は、現実の社会の憂欝な底流の中に培養せられております。危険物は水素爆弾の死の灰だけでなく、社会のよどんだ空気の中にもあります。輿論の動向を御覧なさい。吉田内閣支持の人心はすでに自由党を去つております。この現実を無視し、時勢の流れにさかろうて、言論や政治行動の自由を極端に抑圧すれば、それが原子爆弾の破壊のごとく危険な社会的爆発を誘導することは当然であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X03119540409/7
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008・河井彌八
○議長(河井彌八君) 戸叶君、時間が参りました。戸叶君、時間が参りましたから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X03119540409/8
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009・戸叶武
○戸叶武君(続) この深刻な段階に突入して、緒方副総理、犬養法相から、懇切丁寧な御答弁を賜らんことをお願いして、質問を終る次第であります。(拍手)
〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X03119540409/9
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010・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
総理大臣が、国会の重要法案の審議中、特に二十九年度の総予算案の審議に際しまして、出席ができなかつたことは、病気の故であると申せ、私ども非常に遺憾に存じておるところであります。でありますが、今お挙げになりました、二、三日中に総理の出席が可能であろうと言うたことも事実でありますけれども、その後病状の変化に応じまして、医師の診断書を添えて本院の御了解を得たことも、これは戸叶君、御了承の通りであります。
私が、副総理という法的な名前はありませんが、あらかじめ、総理の事故ある場合に、その職務を代行する国務大臣といたしまして、その際に予算委員会或いは本院に出席いたしましたことは、これは、その事故が起つて、私が臨時に総理の職務代行しなければならぬ場合に立至りましたことを議長まで御報告申上げて、その職務を代行いたしたのでありまして、その間には、何ら不都合はないと考えております。この私の資格が、総理の外遊中、ただそれだけでよいのかという御質疑に対しましては、私はその総理の外遊が、内閣法第九条に規定しておりまする、総理の事故ある場合ということであれば、又政府といたしましては、その場合に当てはまると考えておりますが、その事故が起つたことを国会に通告し、そうして国会の御了承を得れば、それで私の資格が生ずる、総理の外遊中に代行する場合が生じたということになると考えております。それから総理に何か異変が起つた場合、そのまま居坐ることを考えていないかというような御質問だと思いますが、その場合のなにということは、どういうことであるか了解ができませんけれども、総理大臣が新たに任命されます場合には、これは如何なる際におきましても、国会の指名によることでありまして、そういう居坐りというようなことを仮に考えましてもできることではない。これは私が改めて申上げるまでもないと考えております。
それから保守合同についての、いわゆる緒方構想をはつきりしろと、これは緒方構想という名前は、新聞紙が命じたところでありますが、これは過般来、申せば昨年の総選挙以後、政府が言い続けておりまする保守合同でありまして、政局の安定のために政府が常に熱望してやまないところのものでありますが、特に昨年の秋、鳩山自由党の復帰の際に、同憂の諸勢力が必ずや大同につくことを期待すると申した、その希望を持ち続けておるのでありまして、その方法につきましては、仮に機運が熟したといたしましても、その諸勢力との間に意見、或いは政策等につきまして十分の協議を要することであると、さように考えております。これが、汚職をごまかすためではないかという御質問でありますが、私どもは、そういうことは夢にも考えたことはございません。又それによつて機運が非常に動いておるという、これは戸叶君の御観察であります。若し機運が戸叶君の御観察のように動いておるとすれば、それはこの保守合同、それによる政局の安定ということが、今日国民の、国民的な要望である。それを証明する以外の何ものでもない。さように考えております。
それから保守合同に関連しまして、汚職の問題をお取上げになり、そうして私が、何か汚職の問題が政府に及んでも軽々には進退しないというふうに申したように今言われました。而もそれも、私の人格分裂という激しいお言葉をお使いになりましたが、私は、今汚職に関するいろいろな噂がとんでおる。その騒音雑音によつて軽々に進退すべきではない。内閣の代任というものは、そういう軽いものではないということを申したのでありまして、汚職が政府に及んだ場合云々ということを申したことはありません。汚職が及んだ場合、なお且つ政府が進退をしないというようなことは言うたことはございません。汚職につきましては、その実相が司直の取調べによつて判明いたした場合、その程度に応じまして政府が善処するということは、先日来たびたび申上げた通りであります。(拍手)
〔国務大臣犬養健君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X03119540409/10
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011・犬養健
○国務大臣(犬養健君) お答えを申上げます。
先ず第一の、造船その他に関する不正事件の経過、将来の見通しというものはどうなつておるかという御質問でございます。実は先日、亀田議員の御質問に答えまして、造船その他不正事件に関する今までの経過は、丁度、これを読み上げたわけでございますが、若し更に御要求でございましたならば、後ほど又再び御説明をいたしたいと存じます。併し、若し御了承を得れば、この間の説明で了承を得たいと思います。将来どうなるか。これは今捜査中にも属することでございますので、ここで詳細に申上げることのできないことを誠に遺憾に存じます。
それから吉田総理の身辺警戒につきまして、私の参議院の予算委員会でお答えしました内容を御指摘でございましたが、実はあれは、当時こういうふうに申上げたのであります。即ち御質側のきつかけは、お前は治安責任の大臣として、総理大臣に最近警衛の車を一台殖やしたが、それは何か具体的な聞込みでもあつて殖やしたのかという当時の御質問に答えまして、具体的ではありませんが、過去の幾多の総理大臣の時代のでき事に鑑みまして、長く政権が維持され、殊にその総理大臣が強い性格の人の場合には、過去の二、三人の総理大臣の場合のように、警戒をするほうが先ずよいと、警戒を怠り過ぎるより警戒をしたほうがよいという私の政治的な見通し、即ち私の責任において殖やしたのだとお答えしたのでありますが、その後、総理大臣の御注意よつて減らしたのでございます。従つてそういう意味で、私の判断に基いて、当時殖やしたということを御承知願いたいと思います。
それから御指摘のダイナマイトが吉田総理大臣の自宅に送られたということは、事実でございまして、これは三月二十八日に、大磯の私邸に、おもちやの箱に入りまして、五つ入つて、それを贈り物のようにして送つたのでありますが、普通の贈り物のような恰好をしておりましたので、家人は何か普通の食べ物か何かと思つて放つて置いて、その後内容がわかりまして警視庁に送つたと、こういう事件でございます。そこで目下ダイナマイトの製造元、それから包装紙、手紙の筆蹟、郵便切手の種類、それから東京中央郵便局にその小包を持ち込んだ人の、俗に言う人相といいますか、そういうものから、目下厳密に捜査をしておりますが、どういう見当の男だというふうなことは、ここで捜査の必要上、ちよつの申上げにくいのでありまして、これは御了承願いたいと存じます。(拍手)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X03119540409/11
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012・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第一、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます、厚生委員長上條愛一君。
〔上條愛一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X03119540409/12
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013・上條愛一
○上條愛一君 只今議題と相成りました戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案につきまして、厚生委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
戦傷病者戦没者遺族等援護法は、昭和二十七年四月に成立いたしまして以来、今日までに約百九十三万三千件の裁定をいたしているのでありますが、今回援護の対象を拡大する等のため、本法に所要の改正を加えようとするものであります。
改正の第一点は、弔慰金の支給対象を拡大したことであります。現行法におきましては、援護の対象となつております遺族は、戦没者が公務上生じた傷病によつて死亡したものに限られているのであります。多数の戦没者の中には、公務によるものであると認定できない者が少くなく、すでに約一万九千件が、この故を以て却下され、又、現在調査中のもの約六万五千件のうちにも、同様の理由で却下されるものが相当あることが想定されるとのことであります。かくして却下された事案でありましても、その死亡の原因は、軍人の勤務と密接な関連性を有していたものと言うべきであります。然るに死亡の原因が公務に起因すると認定されたときは、遺族援護法、恩給法によつて、遺族年金、公務扶助料及び弔慰金が支給されるに反しまして、公務に起因しないと認定された場合は、これらの法律その他の諸立法において何らの処置が講じられないという不均衡が生じているのでありまするから、これを是正するため、太平洋戦争に関する勤務に関連して負傷し、又は疾病にかかつて死亡した場合においては、弔慰金を支給することにいたしたのであります。なお、軍人が支那事変に関する勤務に関連して受傷罹病し、これにより昭和十六年十二月八日以後において死亡し、又は終戦後、即ち昭和二十年九月二日以後において死亡が判明した場合においても、同様に弔慰金を支給することにいたしてあるのであります。この弔慰金は、死亡した者一人につき五万円を国債で交付することになつておりまして、その支給を受ける者の数は、約七万五千人と推定されております。
第二点は、障害年金支給対象の拡大等であります。
恩給法におきましては、すでに旧軍人に対し、第七項症の増加恩給又は旧第一款症から旧第四款症までの傷病年金を支給することになつているのでありますが、旧傷痍軍人に対するこれらの措置に応じまして、本法においても、恩給法別表第一号表の三に定める第一款症から第三款症までの不具廃疾の状態にある旧軍属に対しては、障害年金を支給する措置をとることとなつたのであります。但し、これらの款症にある者に、障害年金を支給するのは、結核性疾患等におけるごとく症状が続き不安定な状態にある者に限ることといたし、その他の者、即ち症状が完全に固定している者に対しては、障害一時金を支給することにいたしてあるのであります。
以上が、今次改正の大要でありますが、そのほか、これらの措置に伴いまして、所要の調整を行なつているのであります。
この法案は、衆議院におきまして次の通り一部修正の上議決されたのであります。即ち衆議院における修正の要旨は、昨年恩給法の一部改正が行われまして、軍人恩給が復活することになりましたのに伴いまして、従来、戦傷病者戦没者遺族等援護法により援護を受けていた者の大部分が、恩給法の適用を受けることと相成つたのであります。このために、若し恩給法の改正がなかつたとすれば、この遺族等援護法により援護を受け得る期待権を有していた者が、恩給法の改正の結果、恩給法及遺族等援護法のいずれの法律でも援護されないという事例が生じているのであります。かような場合におきましても、本法によつて遺族年金を支給し得るようにするため、附則の中において所要の修正を加えてあるのであります。
厚生委員会は、三回に亘り開会いたし、先ず政府当局より提案理由並びに法案の内容について、又、衆議院の高橋議員より衆議院における修正点について、それぞれ詳細なる説明を聴取いたしましたのち、慎重審議を重ねたのであります。本委員会におきましては、父母又は祖父母が婚姻により氏を改めたときは、遺族年金を受ける権利を失うことになつている現行法の規定は不当ではないかという問題、又、満蒙開拓青少年義勇軍に対する遺族等援護法の適用問題その他に関しまして、熱心なる質疑応答が行われたのでありまするが、その詳細は、速記録によりまして御了承願いたいと存じます。
かくて質疑を打切りまして、討論に移りましたところ、廣瀬委員より、本法案に対する修正動議が提出されたのであります。修正案の要旨は、本法の施行期日に関する修正がその骨子でありまして、原案におきましては「昭和二十九年四月一日から施行する。」となつておりましたのを、「公布の日から施行し、昭和二十九年四月一日から適用する。」と改めるほか、所要の条文整理を行おうとするものであります、この修正案に対しまして、湯山委員が賛意を表されたのであります。
かくて討論を終りまして、先ず修正案について採決いたしました結果、全会一致でこれを可決いたし、次いで修正個所を除く残余の部分について採決いたしましたところ、これ又、全会一致をもちまして衆議院送付案通り可決いたしたのであります。即ち本法案は、修正議決すべきものと決定いたした次第であります。
以上、御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X03119540409/13
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014・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X03119540409/14
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015・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致をもつて、委員会修正通り議決せられました。
本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報をもつて御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午前十一時七分散会
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○本日の会議に付した事件
一、内閣総理大臣の長期国会欠席についての政治責任に関する緊急質問
一、日程第一 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X03119540409/15
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