1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十三年五月十一日(木曜日)
午前十時六分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 中尾 辰義君
理 事
八木 一郎君
山本 富雄君
寺田 熊雄君
宮崎 正義君
委 員
上田 稔君
大石 武一君
初村滝一郎君
丸茂 重貞君
秋山 長造君
小谷 守君
橋本 敦君
円山 雅也君
江田 五月君
国務大臣
法 務 大 臣 瀬戸山三男君
政府委員
法務大臣官房長 前田 宏君
法務省刑事局長 伊藤 榮樹君
公安調査庁次長 鎌田 好夫君
事務局側
常任委員会専門
員 奥村 俊光君
説明員
運輸省航空局監
理部長 永井 浩君
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本日の会議に付した案件
○連合審査会に関する件
○人質による強要行為等の処罰に関する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
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001・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
連合審査会に関する件についてお諮りいたします。
新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法案について、運輸委員会に対し連合審査会の開会を申し入れることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/1
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002・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/2
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003・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/3
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004・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 人質による強要行為等の処罰に関する法律案を議題といたします。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/4
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005・寺田熊雄
○寺田熊雄君 前回の当委員会の審査におきまして、
〔委員長退席、理事八木一郎君着席〕
刑事局長に対して本法第一条の「凶器」の概念についていろいろとお尋ねをしたわけであります。その際の局長の御答弁を伺いますと、本法に言う凶器の中にはいわゆる性質上の凶器が含まれることはもとより当然ではあるけれども、さらに用法上の凶器もときとして含まれる場合がないではない、たとえばその物が存在するだけで直ちに凶器になるわけではないけれども、人の殺傷に使用される意図が明らかに外部的に覚知される、そして性聴覚上直ちに危険に照らし、人の視「社会通念を感ぜしめる」ような状態になったときに初めて凶器性を帯びるものではあるけれども、しかしそのような場合もないとは言えないので、用法上の凶器を排除するものではないというような趣旨のものであったように記憶しておるのであります。ところが、刑法の二百八条、枝番号はちょっといま忘れたけれども、刑法の中に凶器準備集合罪を挿入した際に、参議院の法務委員会におきまして亀田得治委員の質問に対して時の竹内刑事局長は、用法上の凶器の中でとりわけ労働運動に乱用されるおそれがあると考えられるプラカード、それから旗であるとか、そういうものはこの「凶器」の中には入らないという答弁をしておるわけであります。その答弁が結局現在の時点では訂正されたと、こういう結果になるわけですか。その点、局長、どうして訂正せざるを得なかったのか、そういう点をちょっと御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/5
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006・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 御指摘のように、凶器準備集合罪、刑法第二百八条ノ二を新設いたしました際に、参議院の法務委員会におきまして当時の竹内刑事局長が、凶器という概念の中には性質上の凶器のみならず用法上の凶器も含むという前提を置きながら、具体的な事例といたしましてプラカード、旗ざおなどは、それが通常の形態のものである限り凶器に当たらないというふうに御答弁申し上げておることはそのとおりでございます。
ところで、考えてみますと、竹内元局長が御答弁申し上げました時点は昭和三十三年という時点でございまして、当時用いられておりました、通常の整然としたデモで掲げられたりしておりましたベニヤ板に細い支柱をつけたにすぎないようなものを念頭に置いてこのような答弁を行ったものと思われるのでございますが、その後昭和四十年代に入りましてから過激派学生らを中心としまして、太い角材にプラカードの板を打ちつけたもの、あるいは角材にくぎを打ち込んだようなもの、こういうものを使用するような状況が出てまいりまして、これが現実に人を殺傷する道具として用いられるというような事象が生じてきたというようなことから、裁判所の判断におきまして、そのような場合には用法上の凶器と見ざるを得ないという判断が逐次示されてまいったわけでございます。
さような観点から申しまして、結論的に言いますと、昭和三十三年当時のプラカードの柄と、今日の時点におきます過激派学生を中心として用いられますプラカードの柄とはやはり質的に異なるものになってきたと、こういうふうに見ざるを得ない。そういう社会現象の上に立ちまして、今日の時点で同じような御質問に対してお答えするといたしますと、プラカードの柄というようなものでありましても、場合によっては用法上の凶器に当たるというふうなお答えをせざるを得ない状況になっておると思うのでございます。
その点に関しまして若干御参考までに蛇足を加えますと、プラカードの問題につきまして、プラカードないしはその柄に当たるような角材、これの用法上の凶器性について示しました代表的な裁判例といたしまして、二つだけ簡単に御説明申し上げたいと思いますが、昭和四十五年十二月三日に最高裁第一小法廷で決定のございました、いわゆる清水谷事件と称します凶器準備集合罪の事件で、長さ一メートル前後の角棒というものにつきまして用法上の凶器性を積極的に解しておりますが、その判示をよく見ますと、当該「角棒は、その本来の性質上人を殺傷するために作られたものではないが、用法によっては人の生命、身体または財産に害を加えるに足りる器物であり、」とした上で、その後で「かつ、二人以上の者が他人の生命、身体または財産に害を加える目的をもって
〔理事八木一郎君退席、委員長着席〕これを準備して集合するにおいては、社会通念上人をして危険感を抱かせるに足りるものであるから、」凶器に該当するということで、凶器の所持の態様によりまして用法上の凶器性が認められる場合があることを指摘しておるわけでございます。
それからもう一つ、世間で飯田橋事件と言われております事件、これの第一審判決、これはおおむね最高裁の判決によって支持されておるやに見受けられる判決でございますが、これにおきましても、過激派の学生ががんじょうな角材の柄つきプラカードで警察部隊になぐりかかったのにつきまして、用法上の凶器性を認定するに当たりまして、プラカードを担いでずっと行進をしてきたのだけれども、そのうち一部の学生が警察部隊に本件角材の柄つきプラカードでなぐりかかった段階においては、「客観的状況からして右物件はプラカードとして使用されるのではなく、闘争の際に使用される意図が明らかに外部的に覚知され、社会通念に照らし人の視聴覚上直ちに危険性を感ぜしめる状態になったものと思料され、右段階において本件物件は兇器性を帯有するにいたったものといわなければならない。」、こういうふうに判示しておるわけでございまして、以上申し上げましたことを端的にまとめますと、その後のプラカードの柄というものの素材の変化、それと現実にこれを用いて人を殺傷する行動がとられるようになってきたと。その殺傷をするものと認められるような状態になった場合には、もはやそのようなプラカードは用法上の凶器と言わざるを得ないと、こういうことになってきておるわけでございまして、そのような点から、元刑事局長竹内壽平氏の御答弁をその範囲で御訂正申し上げなければならぬと、こういうふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/6
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007・寺田熊雄
○寺田熊雄君 そうすると、局長の御答弁は、この最高裁判所昭和四十五年十二月三日第一小法廷の決定、いわゆる清水谷事件の最高裁の決定の要旨第一とある「原判示長さ一メートル前後の角棒は、その本来の性質上人を殺傷するために作られたものではないが、用法によっては人の生命、身体または財産に害を加えるに足りる器物であり、かつ、二人以上の者が他人の生命、身体または財産に害を加える目的をもつてこれを準備して集合するにおいては、社会通念上人をして危険感を抱かせるに足りるものであるから、刑法二〇八条の二にいう「兇器」に該当するものと解すべきである。」、この判示と、それから東京高裁並びに最高裁によって支持されたいわゆる飯田橋事件の判決、その中で判示されているいわゆる用法上の凶器、この場合ではプラカードであるけれども、それは「一見してプラカードとしての機能を有することは否定し難」いと。したがって、そのままの状態でいけばそれは凶器ではないけれども、というのは、「人を殺傷する能力を備えていても、社会通念に照らし、人の視聴覚上直ちに危険性を感ぜしめるものとは未だいえず、これを直ちに兇器とみなすことはできない。」と。しかし、「客観的状況からして右物件はプラカードとして使用されるのではなく、闘争の際に使用される意図が明らかに外部的に覚知され、社会通念に照らし人の視聴覚上直ちに危険性を感ぜしめる状態に」至ったと、その段階においては「兇器性を帯有するにいたったものといわなければならない。」、こういう東京地裁、これは一昨日この委員会に最高裁長官の代理として出頭した牧事務総長が裁判長をしておったのだけれども、そのときの判旨、そういうものを踏まえてそして答弁を変更すると、こういうふうにおっしゃるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/7
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008・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) そのとおりでございます。基本的には大正十四年五月二十六日の大審院判例以来、裁判例が堅持しております用法上のいわゆる凶器であって、社会の通念に照らし、人の視聴覚上直ちに危険の感を抱かしむるに足るもの、こういうものを凶器というのだという基本的な立場をとりつつ、その時代における社会現象を見ながら用法上の凶器というものを考えてまいりますときに、竹内元局長が御答弁申し上げた内容は、言葉そのものをとらえますと訂正をしなければならぬと、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/8
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009・寺田熊雄
○寺田熊雄君 この点は、余り私が細かくせんさくし過ぎるというような感じを抱かれるかもしれないのですが、これは非常にそのことを危惧する法曹がかなりおるわけですね。それで私もできるだけこの「凶器」の概念を当委員会で明確にしたいと考えたわけです。大臣は前回の御答弁で、この法律が労働運動に乱用されるということはまあないと思うけれども、そういうことのないようにできるだけ努力をするという御答弁でしたけれども、その中に大臣の御答弁をよく玩味してみますと、本法は初めから人質をとってやろうという行動であると、人質をとって要求するという目的でやっておるのであるというその目的ですか、それを非常に強調していらっしゃる。それからまた、ただいまの凶器の問題でも、清水谷事件の決定は、「二人以上の者が他人の生命、身体または財産に害を加える目的をもってこれを準備して集合する」と、目的をかなり強く表面に出しているわけであります。そうといたしますと、やはり労働運動などで、たとえば団体交渉を要求すると、あるいは解雇の撤回を求めると、あるいは工場閉鎖の撤回を要求するというような目的で労働者あるいは支援の団体が工場に詰めかけると、そしてその詰めかけたときに支援団体が当然プラカードを持つでありましょう、工場閉鎖を撤回せよとか、あるいは解雇を撤回せよとか、団体交渉に応ぜよとか、そういうプラカードを掲げるということは、これは容易に考えられることであり、それからまた何々労働組合という赤い旗を立てるということも考えられると。それがこの事件に判示されているように、いつもの旗ではなくして、そのときに特に太い角材を用意して旗をかえたとか、あるいはプラカードで特に人を殺傷する目的を持って太い角棒を用意したとかというのではなくして、単にいわゆる表現の自由の範囲内でプラカードを掲げると、いつもの旗を持って詰めかけて団体交渉を要求すると、そういう場合に、そういう労働運動でたまたま労働組合の勢いがすさまじいために工場側の者が奥へ隠れて出てこないと、それがたまたま一昼夜にわたったというようなことが想定されても、本法をそういう場合に適用する余地は全くないと、こう考えてよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/9
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010・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 仰せのとおりでございまして、清水谷公園につきましての最高裁判例も「目的」でというような表現をとっておりますけれども、先ほど申し上げました大正十四年以来の判例の積み重ねを基本として見ますときには、その状態が、そういう二人以上の者が人を殺傷する目的で集合しておるという状態がこの社会通念に照らし、通常人の視聴覚上危険感を抱かせるということが用法上の凶器性を帯びる必須の要件でございますから、ただいま御指摘のような場合には、万々御提案申し上げております第一条に該当するということはないと信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/10
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011・寺田熊雄
○寺田熊雄君 なお、ステッキ、なわ、手ぬぐいなどは社会通念上直ちに危険感を抱かせないということから、これはいかなる場合にも凶器の概念の中には入らないのでしょうね、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/11
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012・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) ただいま御指摘のステッキ、なわ、手ぬぐいのごときは、社会通念に照らしまして、通常人の視聴覚上縦から見ても横から見ても危険感を抱かせるというような性質のものではございませんので、いかなる場合でも用法上の凶器とは、この本条にいう「凶器」とは言えないと思います。これは判例通説も一致しておるところではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/12
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013・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから、前回私が爆発物についてたしかお尋ねしたと思いますが、手りゅう弾、火炎びん、ラムネ弾などは凶器に入りますけれども、火薬それ自体、あるいは爆薬それ自体は、つまり器物性がないということで、これは凶器には入らないのじゃないかと思いますが、この点いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/13
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014・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) ただいま御指摘になりましたような物件あるいはさらには劇物、毒物というようなものについて、一部の学説で凶器に含めてもいいのではないかという説もあることは承知いたしておりますが、御指摘のように器物性がございませんから、私どもとしては凶器性がないと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/14
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015・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから、いま大体局長の御答弁で私の理解というものはいったわけなんですが、人をして義務のない行為を行わせるということの中には、労働組合が使用者に対して団体交渉の要求をすると、それからこれは労働組合法の第七条第二号で、労働組合の権利であり、使用者が当然それを受け入れるべき筋合いのものでありますから、たとえ争議中といえども、これは労調法二条後段の規定によって、やはり団交を拒否し得ないものである。ところが、しばしば経営者の中で、労働法の理解のない人々は、ストライキをするような組合とは団体交渉ができるかというようなことで団交を拒否する。それからまた第六条の受任者による団交要求の場合に、たとえばまだ未成熟の組合で使用者に一喝されますとなかなか思ったことが言えないというような場合には親組合に団体交渉を委任する。あるいは総評の事務局長に団体交渉を委任する。そこで親組合の書記長なり、その地評の事務局長などが参りますと、第三者には団体交渉なんかとても応じられないと言って断わる場合があります。これは労働法規の無理解によるものでありますけれども、そういう場合に団体交渉を要求するということは、義務のない行為を行わせようとして要求したものではない、このことははっきり言えると思いますが、この点も確認しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/15
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016・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 御指摘になりますように労働組合法によりまして当該組合から団体交渉に関する委任を受けました者、これも労組法七条二号に言います労働者の代表者というふうに解するのが通説でございまして、したがいまして、ただいま御指摘になりましたような状態において正当な団体交渉の要求をいたしますのに対しまして、会社側がなかなか応じない、そういうような場合におきまして生じますような出来事、御指摘のような出来事は、当然義務なきことを行わしめるということにはならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/16
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017・寺田熊雄
○寺田熊雄君 それから「人質」の概念について、前回局長がいろいろとこれを御説明になりましたけれども、その中に、第三者の憂慮に乗じてという御説明があったわけでありますが、私どもは、この第三者の憂慮というものが突拍子もないものであってはいけない、仮にそれが事実、憂慮して要求に応じたというようなことがありましても、健全な社会通念に照らすと、憂慮するというようなことが非常識であると思われる場合には、それは本法の適用はない。つまり、その憂慮というものは、やはり合理的なものでなくてはいけない。何人が考えても憂慮するのは当然であると考えられる客観性を持たなければいけないと思っておるのでありますが、それはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/17
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018・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) この第一条の「人質にして、」という、人質にして要求する、こういう行為を第一条は規定しておるわけでございます。したがいまして、犯人において第三者の憂慮に乗じて義務なきことを行わしめてやろうというような場合がこの構成要件にあてはまるわけでございますから、構成要件の解釈自体としては、犯人が、この第三者は憂慮するであろうと思って要求をするということで犯罪は成立すると言わざるを得ないと思います。したがいまして、その犯人がたとえば思慮浅薄で、全く当該人質をも意に介しないような人を第三者といたしまして要求をしました場合でも本罪は成立すると言わざるを得ないと思います。しかしながら、犯罪現象の実態といたしまして、およそ人質をとって要求をするというような場合に、全く当該人質の生命、身体などを意に介しないようなものに対して要求するということは観念的にはあり得ても現実の問題としてはちょっと起こり得ない事柄ではないか。したがいまして、実際の犯罪現象のあらわれを客観的に見ますと、ただいま御指摘のように常に憂慮する第三者に対して要求が向けられる、こういうことにはなろうかと思います。ただ、純粋な構成要件の解釈といたしましては、先ほど私が申し上げましたような考え方をとるのが相当ではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/18
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019・寺田熊雄
○寺田熊雄君 まあ、余り具体的な事例というのがいますぐには思い浮かばないのだけれども、たとえば他人の子供を自分の支配下に置いたということはあったとしても、それが女性であって非常にその子を愛しておって、それからまた何人からもその状態が望見し得るような状態で支配下に置いていると。で、見た場合に、そうその子供が恐れている状態が見えない、客観的にね。そういうような場合、どうも危害を加えるというようなことは考えられないのだけれども、非常にしかし神経質なお母さんがこっちの方に、片方にあって、あるいはお父さんがあって、そしてその要求に応じたりします。まあ、そんなに心配は要らないじゃないかと、第三者から見ればそういうふうに思われるというような場合、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/19
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020・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 確かに第一条の構成要件を多少外れまして考えまして、犯人が人質にとったような形の子供を、頭をなぜながらにこにこしておるというような状態を考えれば、観念的には御指摘のような問題点が生ずるかと思いますが、本条で規定しておりますのは、二人以上の者が凶器を示して逮捕、監禁するというところから始まるわけでございまして、そういう状態に人質が置かれておる場合には、およそ人間的な感情を持っておる者ならば、だれしももう憂慮にたえないのではないか、こういうふうに思うわけでございまして、確かに御指摘のように、全く観念的に考えますといろいろなことが考えられるかと思いますが、この構成要件全体を充足していくような事犯においてはちょっと私も適切な例を考えつかないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/20
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021・寺田熊雄
○寺田熊雄君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/21
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022・宮崎正義
○宮崎正義君 まず私は、本法案によります人質による強要行為等の処罰に関する法律案の提案理由の説明の中から質問に入りたいと思いますが、提案理由の説明の二枚目のおしまいの方に「この種事犯の再発防止のための抜本的対策の一環として法改正を要する対策のうち、早急に取りまとめの可能なものについてなされたものでありまして、」、こうありまして、ここのくだりまでは、私はその前文からも、その前の方にあります「かねてから各般にわたる防止対策を強力に推進して参ったのでありますが、先般のダッカ事件を契機として」云々ということが後に続いておりますが、この種の事犯ということについての抜本的対策の一環ということ、これについての立法措置というものは、四十五年の「よど号」の事件をきっかけにして、私が申し上げることもなく、航空機強取法が制定され、四十八年のリビア、べンガジの空港における日航機の爆破事件をきっかけとして今度は航空危険法が制定されたほか、ハイジャッキングに関する国際条約であるいわゆる東京条約、そしてまたヘーグ条約、四十六年の十月十一日に条約第十九号によって行われた。それからさらに、モントリオール条約等でこれら以外の立法処置としてこういうものを一環としての一環ということだと私は解するわけですが、そういうふうに解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/22
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023・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 提案理由説明の一枚目の真ん中辺からの記述について御指摘でございますが、まず、「もとより、政府としては、かかる事態を前にして、かねてから各般にわたる防止対策を強力に推進してまいったのでありますが、」と、ここまでのところはただいま御指摘いただきましたように「よど号」事件でございますとか、日航ジャンボ機ハイジャック事件等にかんがみまして法律を制定したり、あるいは条約の加盟を促進いたしましたり、その他当時定められましたハイジャック防止対策要綱がございまして、これに所持品検査の強化等も含めましていろいろ書いてあったわけでございます。しかしながら、昨年ダッカ・ハイジャック事件が起きてみますと、その当時立てました防止対策要綱が必ずしも万全に実施されていないことを政府として反省し、かつ新たな対応を迫られたわけでございます。そこから後のことがただいま読み上げました次の「先般のダッカ事件を契機として、更に一層有効な取り締りを実施する観点から、」云々と、こういうところになってきたわけでございます。したがいまして、ダッカ事件を契機といたしまして再発防止のための抜本的対策を政府として講ずることになったわけでございまして、それが御承知の昨年十一月八日の「ハイジャック等防止対策について」というものでございまして、ハイジャック等非人道的暴力防止対策本部において決定を見た諸施策でございます。「日本赤軍対策」でございますとか「国際協力の推進」でございますとか「安全検査等の徹底」、「出入国規制等」「国民に対する理解と協力の要請」、「在外公館等の警備の強化等」、さらに「法律改正」と、こういうような事項を総合推進することが抜本的対策であると、こういうふうにされたわけでございまして、その抜本的対策の一環として航空機強取等の処罰に関する法律などの改正が立案され、第八十二回国会において御可決をいただいたわけでございます。そういう経過を経まして、さらになすべきことにつきまして検討の結果提案いたしましたのがただいま御審議いただいております法案でございますと、かような趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/23
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024・宮崎正義
○宮崎正義君 そうしますと、この字句にとらわれるわけじゃございませんけれども、「抜本的対策の一環として」ということで、「抜本塞源」とかいう言葉がありまして、「根本の原因を抜取って本源の弊害をふさぐ」ということが言われておりますし、また原因になるものを徹底的に取り除くというふうに、抜本というふうに広辞苑だとか辭苑あたりで引いてみますとなっているわけですが、そうしますと今度のこの人質による強要行為の処罰に関する法律というこのものが先に抜本的な対策をやっていったのだと。さらにこの次も抜本的対策になるのかどうなのか。その抜本的対策というのを何回も繰り返していかれるのかということは、なぜそんなことを言いますかというと、衆議院の法務委員会におけるわが党の飯田委員、長谷雄委員が質問をいたしております。先ほど寺田委員の質問もありました凶器の問題等のことに相当時間をかけての論議が重ねられております。
それから長谷雄委員は、一人ではどうかというようなことで論議を進められております。その中で刑事局長の御答弁があります。そのほかの委員の方にもあるように思えるわけですが、しばしばこういうふうに結んでおられるわけです。「刑法全面改正の際に一般の人質強要罪でそれをすくい上げるという方途をとりたい、こう思っておるわけでございます」とこういうふうに結んでおられる。これは四月七日の飯田委員の発言に対する御回答なんですがね。
それから四月十一日には長谷雄委員にはまたこういうふうにおっしゃっています。「そういう問題につきましては、将来刑法全面改正の一環として十分検討してまいりたい、こういうふうに思っておるわけであります。」とこうなっているわけでございます。そうしますと、結論には本法の刑法というもの、これの全面改正をすることが本当の意味の抜本的改正というふうな意味になるのか、またこの一環、一環、一環で、「一環」という言葉を使いながら改正を次へ次へといろいろな事犯が出てくるたびに一環、一環というような言葉をもって変えていこうとする根源は、短い刑法という言葉の中の本法を改正しなければだめなんだという結論なのか、その辺を伺っておきたいと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/24
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025・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 提案理由の御説明の中に出てまいります「抜本的対策」と申しますのは、現在の時点で考えました場合に昭和五十二年十一月八日にハイジャック等非人道的暴力防止対策本部が発表いたしました「ハイジャック等防止対策について」というものでございまして、その中に「航空機以外の場における人質強要罪の新設」というようなことも織り込みまして、全部で大柱で七本の柱を立てていろいろな施策を書いておるわけでございまして、これらを総合的に実施し、推進し、絶えずこの実施について検証をして確認をしていくというようなことが抜本的対策であるとされておるわけでございまして、その一環ということで一部八十二国会で法改正が実現し、八十二国会に間に合わなかったものにつきましてただいま御提案申し上げて御審議をいただいておると、こういう意味において「抜本的対策の一環」であると、こういうふうに申し上げておるわけでございます。したがいまして、この「抜本的対策」と申しますのはハイジャック等非人道的暴力行為、こういうものを防遏するための抜本的対策という意味でございます。
一方、それでは場面を変えまして、人質をとって第三者等に強要行為をする、こういう行為について抜本的に、それこそ抜本的に考えていく必要はないかと、そういう場面で考えますと、ごらんいただきますように、この法案の第一条は「二人以上共同し」「凶器を示し」というような限定をつけまして主として過激派によって犯されるような人質強要犯罪を防遏する、こういうことをねらっておるわけでございますが、翻って考えてみますと、「二人以上共同して」あるいは「凶器を示して」という要件を伴わないような人質強要行為もやはり独立した構成要件をつくりまして処罰する必要があるのではないかというふうに思われるわけでございます。この点につきましては改正刑法草案ですでに一部提案がされておるわけでございます。さような点につきましては、過激派対策という場面を離れて刑罰法令全体の整合性を考えながら、刑罰法規を整備すると、こういう観点からなお研究、検討していかなければならない問題だと思っております。したがいまして、衆議院の委員会でも御答弁申し上げましたように、今回はハイジャック等非人道的暴力行為の対策としての一環として、この第一条以下の本法案を御提案申し上げているわけでございますけれども、ハイジャック等非人道的暴力行為対策の場を離れた頭で考えますと、将来刑法の全面改正の時期までにこの人質強要罪の対応する場面が本法案だけでいいのかどうか。これを十分検討して不備のないものにしていく必要があろうと、こういうふうに思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/25
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026・宮崎正義
○宮崎正義君 その時点ですでに継ぎはぎだらけの法律を次から次へとそのときのいろいろな情勢によって、動向によって変えられていくということで、本法で一番基本法である刑法そのものの全体の中からながめて取り上げていく問題の中から、恐らくこの法律もお考えになって法案を出されたろうと私は思うわけですが、いずれにしましてもその後にこういうくだりがございます。「その後世論の動向、関係機関の防止対策の推進等諸般の状況を踏まえて引き続き検討を行った結果、」今度のこの法案というものを出したというふうな意味に私は解しておりますが、それでよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/26
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027・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 先ほど来御説明申し上げております「ハイジャック等防止対策について」の第七の法律改正の部分におきまして、「航空機以外の場における人質強要罪の新設」というのがございますが、これはその前の柱を見ますと、「今後次の事項について検討する。」と、こうなっておりまして、すなわち「航空機以外の場における人質強要罪の新設」につきまして検討の結果、その検討の仕方といたしましては、「その後世論の動向、関係機関の防止対策の推進等諸般の状況を踏まえて引き続き検討を行った」と、こういう結果、やはり防止対策の一環として「航空機以外の場における人質強要罪の新設」等が必要であると、こういう結論に達して本法案になった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/27
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028・宮崎正義
○宮崎正義君 わかりました。
そして、先ほど刑事局長ずっとおっしゃっておられます五十二年十一月八日のハイジャック等非人道的暴力防止対策本部の防止対策についての一から七まであるという説明も伺いました。その七のところに、やはり局長も説明をなさっておられましたけれども、対策本部が基本方針というものを、抜本的対策に対する考え方というものをこの時点でまとめられて、そして第七の法律改正の中に1、2とあります。2項のところの、「今後次の事項について検討する。」という、そこで一つは「刑事訴訟の迅速化を図るための刑事訴訟法の一部改正」、これは衆議院でいま論議を進められております刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律案と私は思うわけです。それから二番目の「航空機強取者の人質強要行為に関し死刑をもつて臨む場合を設けること。」それから第三番目が、「航空機以外の場における人質強要罪の新設」というふうに重要課題としての対策案として三つを掲げられておりまして、そして、しかもこの中の第二条ですか、二条を取り入れられているということ等につきまして、二条を取り入れていくためには、以前の法律によって航空機強取者対策云々というところの問題の中にあるのを、なぜ今回の中に人質というものは先に入れなかったのか、こういうふうに思うわけですが、したがってほかの法律から持ってきて第二条を設定しているという考え方、この考え方がどういうわけで取り入れられたのか、その間の経緯といいますか、お考えを伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/28
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029・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 御質問からやや斜めにそれる部分があるかと存じますが、ただいまお挙げになりました「今後次の事項について検討する。」とされました三つの事項のうち、最初の「刑事訴訟の迅速化を図るための刑事訴訟法の一部改正」、これは先ほど御指摘いただきましたように、暫定的特例法の形で現在衆議院で御審議を願っておるわけでございます。
それから二番目の「航空機強取者の人質強要行為に関し死刑をもつて臨む場合を設けること。」これはこの事項について慎重に検討いたしました結果、このテーマからやや斜めにそれておるかもしれませんけれども、ただいま御審議いただいております法案の第三条といたしまして、人質強要行為を犯した者が人質を殺した場合に「死刑又は無期」に処するという形で取り込んでおるわけでございます。
第三の問題につきましては、先ほど御説明したとおりでございます。
ところで、そういう観点から、今後の検討事項とされましたものの第二点、第三点を立法化しようということで検討の結果、本法案をまとめたわけでございますが、その際本法案の第二条になっております部分は一御指摘を待つまでもなく、第八十二回国会におきまして航空機強取等処罰法の第一条の第二項として新設をさせていただきましたものと全く同文でございます。これをなぜ本法案の方へ取り込んだかという点について御説明申し上げますと、前回の航空機強取法の改正の際には、とりあえず間に合ったものから御提案申し上げるという政府の方針でその部分だけの改正をいたすことになったわけでございます。そうしてみますと、わずか一カ条の部分でございまして、航空機強取犯人が人質をとって強要行為をしたという構成要件でございますので、既存の法律の中の一番その時点としてはまりやすいところは航空機強取等処罰法であるという観点から航空機強取法の方に入れさせていただいたわけでございます。ところで、今回ごらんのような人質強要行為に関します法律を単独立法としてつくることにいたしまして、さて八十二国会で新設させていただきましたハイジャック人質強要罪、これをどういうふうに扱ったらいいかということを検討いたしたわけでございますが、航空機強取等処罰法と申しますのは、ごらんいただきますとおわかりいただけますように、刑法で言いますと強盗罪の特別類型をもともと規定しておったわけでございます。
ところで人質強要行為と申しますのは、刑法の立場でいいますと強要罪の特別類型になるわけでございます。そういうふうにして考えますと、航空機強取法の方は強盗罪の特別類型を一まとめにして規定する。それから人質強要行為処罰法の方には強要罪の特別類型を一まとめにして規定する。そういたしますことが法律的な性格も一貫いたしますし、また一般の方がごらんいただく場合にもごらんになりやすいのではないか、こういう観点から、せっかく第八十二回国会で新設していただきました航空機強取処罰法の一条二項を本法案の二条としてそっくり取り込むと、こういうことをのたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/29
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030・宮崎正義
○宮崎正義君 このような特例規定というものが設けられてくるわけでありますが、私はどうもよくわかりませんけれども、本法があって、その本法をそのままにしておいて、長い間そのままに草案等で考えられてきておりますけれども、その特例規定、特例規定というふうにやっていくということ自体、法務省みずからが法の秩序を乱しているように思うわけですが、そういうふうな場当たり的——場当たり的と言っちゃ申しわけありませんけれども、そういうふうに思うわけでありますが、計画性が余りにもないようにも思えますし、そうした結果、総合性のない法体系というものがつくられていくのじゃなかろうか、こう思うがゆえに申し上げているわけですが、この点どういうふうにお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/30
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031・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 確かに御指摘はごもっともな点が多いわけでございまして、やはり国民にとって一番わかりやすいという立場をとりますと、一つの刑法典におよそ自然犯的な刑罰規定は全部網羅されておる、国民としてはそれを見ればすべてがわかると、こういうことにいたすのがよろしいのではないかと思います。しかしながら、近時特別な単独立法によりまして刑罰法規、本来刑法典の中に規定をしましてもちっともおかしくないようなものをこういう形で御提案させていただく機会が多いのでございますが、これは刑法の全面改正作業がいま進展しております段階で、たとえばこの人質強要行為の処罰に関する諸規定を既存の刑法典のどこへ置いたらいいのか、現在の刑法典は御承知のように、国家に対する罪あるいは社会に対する罪、個人に対する罪というような並べ方をしておりますが、時代の変遷に伴いまして、たとえばこの人質強要行為につきましても、国が被害者になる場合もございますし、それから個人が被害者に——被害者と申しますか、第三者になる場合もある、そういうことになりますと、いわゆる害される被害法益が国家の関係なのか、個人の関係なのか社会の関係なのかわからない社会現象に伴う刑罰法規をつくらざるを得ないということになっておるわけでございます。もう一つ例を申し上げれば、いわゆる公害犯罪処罰法などもそれでございます。これらにつきましては、一応われわれの及ぶ限りの完璧な刑法典をなるべく早くつくって、これで全部網羅統合いたしまして、一般の国民の方に理解しやすい形になるべく早くいたしたいと思っておりますけれども、ただいま御説明申し上げましたような明治年間にできました現行刑法典のどこへはめ込むべきかというような問題、それから現行刑法典にございます諸規定との関係上、現行刑法の関係規定をいじらなければならぬのではないかというようないろいろな問題が出てまいりますので、確かにお言葉のとおりある意味においては場当たり的なお感じをお持ちになるような単独立法が続いておるわけでございまして、この点は私どもといたしましてもなるべく早く刑法全面改正の実現を目指しまして、その中で取り込むべきものは取り込み、その際整理すべきものは整理をいたして、わかりやすいものにしたいと、かように思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/31
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032・宮崎正義
○宮崎正義君 本法案の第四条ですね、これなんかも刑法第二条の点にあるわけでありますが、いまお話しのございました面からも考えられなければならない諸問題が伏在されているのじゃなかろうかと思うわけであります。さらに先ほど、話は違ってきますけれども、寺田委員から、爆薬物だとか劇物、毒物に関するものが凶器でないという、これは小ちゃなライターの中に仕込んでいっても、どんなふうなことでもできるという時代、時勢がいまきているわけでありますから、こういったようなことを考えていきますと、果たして凶器でないということがいいのかどうなのかというような面からいきますと、危険物取扱法という法律の全面改正だとか、そういったようなもの等を含めていきながら考えていきますと、今時点におけるところの法律というものの見直しというものを全体的に考えていかなければならない、こういうふうに私は思うわけであります。
そこでくどいようですが、もう一度その御回答を願いながら、大臣にもお考えのことを伺っておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/32
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033・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 確かにおっしゃいますとおりでございまして、たとえば太政官布告でございます爆発物取締罰則、こういうものでいま爆発物の取り締まりをやっておると、それからまた火炎びんにつきましては単独立法があると。しかしながら、最近出しておりますたとえばプラスチック爆弾でございますとかいろいろなものが出てきておるわけであります。また、たとえば最近核爆弾だって素人でもつくられるというようなことも言われておる。そういう十年、十五年先を見通したいろいろなことを考えまして、御指摘のような体系的な刑法典をつくるという作業をぜひ推進してまいりたいと思っておるわけでございます。それに関連いたしまして御指摘のように、いろいろな各省所管の法律の間にギャップがないとは言えません。危険物の問題でございますとか、火薬の取り扱いでございますとか、いろいろな問題がございます。そういう問題もその作業の過程でそれぞれ関係省庁にアドバイスをしながら何とか体系的なまとまったものをつくりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/33
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034・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 法典の構成上の問題等については、ただいま刑事局長から御説明いたしましたような事情でございますが、刑法の全面改正というものを御承知のとおり、もう長い間かかって検討をいたしておるわけでございます。しかし、これは申し上げるまでもなく、国民に重大な関係のある国家の基礎的法律になっておりますから、いろいろ各方面の意見を聞き、また参酌しながら、可能な限り国民の合意を得るような案をつくりたい、こういうことで努力をいたして、私どもの方としてはできるだけ速やかにという気持ちでやっておりますが、非常に意見の分かれるところもありますし、また国民に理解を得ない法律をつくってもこれは実行が伴いませんから、ややおくれておるというのが現状でございます。
反面、社会現象は次々に変わっていく、犯罪現象も想定もしないような犯罪現象が起こる、こういう事態でありますから、できれば一つの法典の中で整合性のある、また国民の側から見ても見やすい、こういう法律をつくるのがこれはベターでありますけれども、実際問題としては社会現象、犯罪現象の特異性に対応できない、これでもまたいけませんから、やはり特別な法律をつくって、こう言っちゃ恐縮でございますが、当面の問題と、さしあたりこれに対応する備えだけはしなければならない、こういう事態になっているわけでございます。御注意の点は重々われわれも心に銘記して進みたいと、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/34
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035・宮崎正義
○宮崎正義君 私のことを言って申しわけありませんが、四十一年の予算委員会のときに農薬取締法という問題を取り上げまして、当時は農薬禍と言っておりましたのですが、公害のこの字もまだ出てない当時でございます。この農薬取締法というものが本当にわずかな個条書きしがなかったのが、現在の農薬取締法という長い条文が一ぱいできておりますが、やはり見直すときには見直していって、一つの体系立った法律の改正というものに取っ組んでいかなきゃならないのじゃないかということもあわせながら要請をいたしたいと思っております。
次に、本法案の題名の中にあります、先ほど刑事局長、「強要行為等の」という「等」ということの説明もございましたけれども、衆議院でも「等」ということにつきましては大分論議をされているようでございますが、私わかりやすく御説明を願いたいのは、この法律案の題名の人質による強要行為等の処罰に関する法律というのと、それから「理由」における「最近における人質による強要行為の実情にかんがみ、この種の強要行為に対する処罰を強化する等の措置を講ずる必要がある。」ということの「等」の使い分けといいますか、違いといいますか、端的にお伺いをしておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/35
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036・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) まず表題の「等」でございますが、人質による強要行為等の処罰に関する法律の「等」でありますが、これは、この法律案はごらんのように第一条、第二条で人質による強要罪を規定いたしまして、第三条で人質殺害罪を規定いたしておるわけでございます。したがって、第一条、第二条は人質による強要行為についての処罰規定でございますが、第三条はその行為と関連をしてはおりますものの法的評価としては全く別個の人質殺害罪の処罰規定を定めようとする趣旨でございますので、この題名におきまして「等」を入れましたのは、第三条の規定がございます関係上入れたわけでございます。
それから、「理由」の方の「この種の強要行為に対する処罰を強化する等の措置を講ずる必要がある。」と、こちらの方の「等」につきましては、実は衆議院の委員会に対してはおわびをしなければならぬ次第があるわけでございますけれども、当初私はこの「理由」の方の「等」と申しますのは第四条の国外犯の処罰規定を指すのであると、こういう御説明をいたしまして、いささかそれにこだわりましたきらいがございまして、その点申しわけなく思っておるわけでございまして、「等」が二つ重なる場合には後の方の「等」だけで始末をするという一つの慣例がございまして、正確にいいますと、「実情にかんがみ、この種の強要行為等に対する処罰を強化する等の措置を講ずる必要がある。」というふうにいたしますと表題と整合いたすわけでございますが、前の方を省いてあると、こういうことに御理解をいただきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/36
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037・宮崎正義
○宮崎正義君 私もそういうふうに思っておりました。それでいまあえて質問を申し上げたわけでありますが、いずれにしましても私も何と言うのですか、ある人から教わったことなんですが、こういうふうな日本のいまの長ったらしい——長ったらしいと言っちゃ申しわけありませんが、長い長い題名、本文の題名というものは、アメリカの法律のつくり方を終戦後輸入をされたものだと、そしてGHQあたりの占領中にこの指示によってこんなような法律の長い題名が出されて今日にきているのだと、同時にその折りに「等」というのを入れる用い方というものが非常に多くなってきたと、こういうふうに聞いているわけでありますが、国民から見れば、いまのような「等」の御説明も衆議院の段階で長いあれ読んでいきましても、何の話が何が何だというような、国民がすらっとあれを拝読しましても相当ややっこしいのじゃないかと思いますし、国民から見れば非常にわかりずらい、判断に困る場合が非常にあるように私は思うわけなんですが、この点につきましてでも、今後「等」ということに対する御研究をしていただけることになりますかどうか伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/37
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038・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) まず最初に、大変恐縮でございますが、私の個人的な感想を述べさせていただきますと、確かに御指摘のように法律の題名が長くなり過ぎております。たとえば占領中にできました法律で俗に独禁法と言われます法律なども、六法全書の索引の「ど」のところを探しても出てこないわけでして、「し」のところを探さないと出てこない。それから、公害罪の法律にいたしましても「こ」のところを探しても出てきませんで、「ひ」のところを探さないと出てこない。「人の健康に係る」と、こういうふうなことになっておる。そういう意味で、どうも法律の題名が長くなるのは私個人といたしましてはなはだ不本意に思っておるわけでございますが、戦後長年にわたって正確を期するというところに主眼が置かれまして、大変長い法律の題名がふえてきておることは事実でございまして、その流れに沿って私どもも政府の一員としてやらせていただいておるわけでございますが、将来たとえば刑法の全面改正でございますとかいろいろなことがあるわけでございます。そういう場合に、題名だけ長くて国民にわかりにくいというようなことではまことに申しわけないことであろうと、こういうふうに思っておりますので、私も私の立場におきまして、国民にわかりやすい法律題名というものを目指しましてなお努力をしてみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/38
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039・宮崎正義
○宮崎正義君 次に、先ほどのハイジャック等非人道的暴力防止対策本部でお考えになっている点、あの七項目の問題につきましてそれぞれお伺いをいたしたいのでございますが、特に時間の関係がございますので、私はさきの八十二国会でいわゆる航空機強取法の審議の際に十項目にわたっての附帯決議がございます。その附帯決議の十項目についての御説明をしていただきながら、このハイジャック等非人道的暴力防止対策本部との兼ね合いの考え方、そういうものについてお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/39
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040・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 法務省の所管に属する事項につきましては十分なお答えができると思いますが、それ以外の部分につきましては、私ハイジャック等非人道的暴力防止対策本部の幹事として知っております範囲においてお答えを申し上げます。
まず附帯決議の一でございますが、これにつきましてはすでに申し上げましたように、十一月八日に「ハイジャック等防止対策について」を取りまとめまして、その後同本部の幹事会を恒常的に開きまして、各種の対策の実施及び実施状況の点検を行ったりいたしております。昨年十月以来、対策本部は四回、幹事会は十一回開催されて、その都度活発な論議、検討が行われておる次第でございます。
御決議の第二項の趣旨に沿います法務省関係の施策は次のとおりでございます。
去る三月三日、日米犯罪人引き渡し条約が調印されまして、四月二十一日に、今国会においてその御承認を得たのでございますが、これに伴いまして犯罪人の引き渡しに関する国内手続につきまして所要の整備を行いますとともに、犯罪人引き渡しに関する国際協力を一層推進いたしますために、わが国に対して引き渡し条約に基づかないで犯罪人を仮拘禁することの請求がありました場合の手続などに関する規定を新設することを内容といたします逃亡犯罪人引渡法の一部改正案を今国会に提案いたしまして御審議を願っておるわけでございまして、近く当委員会でも御審議いただくと思いますが、これが成立いたしますれば、国際的な相互協力が一層推進されることになると思います。
また、本年四月五日から私ども法務省刑事局に犯罪人の引き渡しや司法共助、捜査協力など刑事に関する国際協力を推進いたしますために、国際犯罪対策室を設けさせていただきました。また、東京地方検察庁に国際犯罪に関する資料・情報を収集整備いたしますための国際資料課を新設させていただきました。かような組織もこさえていただきましたので、これによりまして国際的協力体制の整備を図ってまいりたいと努力しておるところでございます。
それから第三項の条約関係でございますが、外務省が中心になりまして国連の場で未加盟国に対するハイジャック三条約の加盟の呼びかけを行っておりますほか、未加盟国との条約あるいは協定の交渉の際、その他あらゆる機会を利用して加盟を呼びかけていくという努力をしておるところでございます。
それから人質行為防止に関する国際条約の成立を目指しまして格段の努力をすべきであるという仰せの点につきましては、法務省におきましてもこの条約の成立を推進すべきであるという立場から、外務省に協力してその成立に努めているところでございます。
次に、第四項の逃亡犯罪人引渡条約の拡大の問題でございますが、日米犯罪人引渡条約の関係は、先ほど申し上げましたけれども、その他の諸国とも可能な限りこの種条約を締結することが望ましいと考えますので、先ほど申し上げました国際犯罪対策室の新設を機会に、さらに人員を加えまして、現在対象となるべき相手国の法律制度やその運用ぶりなどについて調査中でございまして、今後とも外務省と協力いたしまして必要性の高い国から、順次、引き渡し条約を結ぶ方向で努力をしてまいりたいと思っておるところでございます。
それから第五項の関係でございますが、警察当局からの連絡によりますと、ダッカ・ハイジャック事件の釈放犯につきましては、すでにICPOを通じて手配済みでございますし、また犯人のうち氏名を特定することができましたものにつきましては、逮捕状の発付を得ておるというふうに各般の措置をとっておるようでございます。
それから第六項の司法共助の関係につきましては、先ほど申し上げましたように、国際犯罪対策室を中心に一層努力をしてまいりたいと思っております。
第七項の機内持ち込み品の制限その他でございますが、これにつきましては、昨年十一月十四日開催されましたICAO、国際民間航空機関の理事会におきまして、わが国が西ドイツとともに手荷物検査の徹底、ダブルチェックの実施、空港警備体制の強化など六項目の決議案を提出いたしまして、これが何らの反対なく採決されましたほか、昨年十一月から十二月にかけまして運輸省係官などが諸外国に派遣されまして、日航南回り線寄港空港計三十五のうち、空港警備体制に問題があると思われます十七空港を含めまして合計十九空港について実情調査を行って、外国空港における安全検査の徹底を期しておるようでございます。
なお、ダブルチェックにつきましてはこの調査の結果、必要性があると認められた七空港においてすでに実施をいたしておるとのことであります。
それから第八項の旅券法の関係でございますが、法務省といたしましては、過激派対策の一環ということで、旅券法十三条第一項第二号の改正が行われたという趣旨を十分踏まえまして、これを真に実効あるものといたしますために、人権の不当な侵害を防止いたしますために、各検察庁に対しまして刑事局長通達を発しまして、法改正の趣旨を十分徹底させ、その運用に遺憾なきを期しておるところであります。特に行き過ぎ等のございませんように、十分注意をいたしておるところでございます。
第九項、ハイジャック事件以外の犯罪の取り締まりの関係でございますが、暴力団犯罪や内ゲバ事件などの非人道的暴力行為に対しましては、特に厳正な取り締まりを励行しておるところでございまして、単に表面にあらわれた事件の処理に終わることなく、その背後関係についても徹底した捜査を実施いたしますとともに、検察当局におきましては公判廷で悪性の情状立証に力を注ぎ、厳正な科刑の実現に努めておるところでございます。
なお、そういった過激派の法廷におけるルールを無視した闘争に対する対応策といたしましては、刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律案を提出いたしておりますことは、先ほど御指摘のとおりでございます。
最後に、第十項に仰せになりました、これらの措置を実行するに当たりましては、一般国民の基本的人権に不当な制限を与えることのないよう特に留意すべきであると、こういう点につきましては一同十分銘記いたしまして、これらの施策の推進に努力しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/40
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041・宮崎正義
○宮崎正義君 大変御苦労なさっておられますけれども、より積極的にやっていただく以外にないと思いますので御要請をしておきます。本委員会等で行われましたこの内容につきましては、会合の折にはぜひとも強力な処置を講じていけるように原動力となって進めていただきたいことも重ねて要望しておきます。
それからハイジャック等非人道的暴力防止対策本部の対策として、第一「日本赤軍対策」というもので、私はきょう警察庁の人によく聞こうと思いましたけれども、成田空港等の問題でこちらに出席できないということなんで、これはまた後日にいたしますが、いずれにしましても報じられたところによりますと、過激派極左の暴力集団の系統図というようなものから見ていきますと、五流二十二派が交錯をしてやっているというようなことで、第一によりますと、「日本赤軍に対する情報収集および取締りを強化する。このため早急に所要の専従組織を発足させる」とか、いろいろ手配のあれが出ておりますが、対策の内容が出ておりますが、いずれにしましてもきょうはこれは省きまして、附帯決議の七番目の問題について運輸省の人が来ておりますのでお伺いをいたしますが、現在の羽田で行われておりますチェックのやり方で十分かどうか。また、今後こういうふうに考えていきたいということがあれば御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/41
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042・永井浩
○説明員(永井浩君) 現在羽田で手荷物の検査あるいは旅客のボデーチェックを行っておりますが、チェックそのものは厳重にやっているつもりでございます。
ただ施設が非常に狭いために、ラッシュ時には非常に混雑をするということで、安全面を十分に確保いたしますと、どうしても利用者に不便をかけると、早目に来てもらうというようなことにならざるを得ない状況でございます。したがいまして、将来国際線が成田空港に移りますと、施設的に余裕ができますので、そういった面では利用者に対する不便は緩和されると思います。安全面においては十分やっておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/42
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043・宮崎正義
○宮崎正義君 私はもうのべつ国内線を利用しているのですが、あるときにはカチンと鳴るしあるときには鳴らない、同じ服装をしていてそういうようなことがもうしょっちゅうございます。それからあのごった返している状況の中で大丈夫なのかどうなのかということはいつも不安に思っています。ゲートに向かう廊下の狭いところ、もう入港しておりる人、これから出発する者、それが交錯して歩いているわけです。そこへ今度は中を走っているトラックとか乗用車とか人の歩いているところを抜けて出ていくわけですから、お客さんが優先なのか車が優先なのかわからないような状態もございますし、また、特に一番心配されるのはあそこで働いている人方がどんなふうなチェックをされているのか。航空会社の人もおるでしょう、また工事を請け負っている請負者の方々もおいでになるでしょう。また、おりる人、乗る人の客の中にはいろいろな人たちがおいでになる。こういう状態を見ていきまして、事故が起きないのが不思議ぐらいに私は思っておるわけですが、こういうことについての考え方、チェックだけしたって、チェックした先が問題でありますし、これは大変大きな事件が、それこそ推理小説じゃありませんけれども、衆議院ではわざわざ参考人の方々を呼んでいろいろな事件を想定したお話なんかも伺っているようでありますが、そんな話を伺わなくても羽田のあのごった返している状態というのを御存じでございますか。いかがでございますか、チェックの状態は大丈夫だというようにさっきおっしゃいましたけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/43
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044・永井浩
○説明員(永井浩君) 問題は幾つかあろうかと思います。
一つは、搭乗客がチェックを受けた後の待合室において、逆に飛行機からおりてきた旅客との交流があるのではないか、こういう御趣旨かと思いますが、これにつきましては、国内空港におきましては離島など小型プロペラ機の離発着する空港を除きましてすべて金属探知機を備え、あるいはガードマン一によるチェックを行っておりますので、旅客相互間の交流によるそういった問題は第一次的には起こらないのじゃないかというふうに考えております。
それから、空港の中にはいろいろな人たちが出入りしておりますが、航空会社を初め、いろいろな給油、荷役その他の作業で常時あそこへ勤務しておりますのが一万九千人程度ございます。これはすべて会社を通じまして身元をチェックして空港事務所が通行証を発行いたしております。そのほかに貨物等を運んでまいりますトラック等が参りますが、その都度これは通行証を発行している、こういう状況でございます。ただ非常に広い空港でございますので、そのほかに万が一ということも考えまして、特に警戒を要するような情報が入ったと、そういったそのほかの場合には航空機の周りにそういった作業の監視をする監視員を配置したり、あるいは夜間の警備を強化する等そういった措置を講じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/44
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045・宮崎正義
○宮崎正義君 その警備体制ですね。警備体制のことについて詳しく御説明願いたいのですが、とても問題があるように思うのですが、現在の体制でいいのかどうなのかというようなことを私は心配しているのです。全日警会社だとかパシフィック警備会社だとか、こういうふうな方々がおやりになっているようでありますし、また、ハイジャックの防止チェックについては各航空会社がこういうふうなことを依頼しておやりになっているということも知っているわけですけれども、現在のこの管理というものがどんなふうに進められているのか、そういう点を非常に私心配するのですが、航空危険法というのがありますけれども、いつ何どきどんなふうな人が入ってくるやらわかりません。成田の方のあれを御案内のように、何でもない民間の農家まで焼き払ってみたり京成電車を焼いてみたり、いろいろな手段が出てくるわけです。いま成田に集中していますけれども、羽田が一朝事あったらどういうことになりますかね。ですから警視庁の方と運輸省の方にきょうはこういう問題でずっと煮詰めていく予定で資料も整えてきているわけなんですけれども、残念ながらこっちの受け持ち時間がきょうありませんし、まだ本案の方の問題もいっぱい抱えている、質問もあるのですけれども、せっかく運輸省で御苦労なさっている方がわざわざ来ていただいたので質問をしておるわけですが、本当にいいのかどうなのか、この組織系統というもの、これをまた示していただきたいことを私は要請をしたいのですけれども、どうなんでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/45
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046・永井浩
○説明員(永井浩君) 空港全体の管理の責任は羽田空港の場合には国営空港でございますので、空港事務所、その長である空港長が行います。さらに、個々の施設につきましては空港の中に立地しておりますそれぞれの企業が自己の管理する施設を警備しておるわけでございます。そのほかに旅客あるいは手荷物の検査が行われるわけでございますが、空港全体の管理につきましては東京空港事務所に警務課という組織がございまして、これが常時警察当局と協力しながら全体をチェックしておるという現状でございます。
そのほかに各企業の警備体制があるわけでございますが、たとえば旅客が一番使います旅客ターミナル、これは空港ビル株式会社が管理しておる建物でございますが、ここでは約百名の保安センター要員というのがございまして、これが特別のプロジェクトチームをつくって常時旅客ターミナルをパトロールしておる、あるいは各種消火器具とかその他の点検を行っておる、こういう実情でございます。そのほか各航空会社も同様な自主警備をやっております。概略そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/46
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047・宮崎正義
○宮崎正義君 私、要請しておきますが、空港長等を中心にしまして——総合の総監督の立場にあるのですから、その空港長を中心にして各関係会社、業者、その方々の綿密な打ち合わせ、これをやらなかったらえらいことだと思います。こういう点は、また非常に私の伺っている範囲では、もう再々やっているとは聞いておりませんし、一朝何かあったら、現在のあの一分間も休みのない発着陸のこのごった返しているその間を縫って貨物車が走る、あるいはバスが走る、まことにちょっとでもぶつかり合ったらえらい爆破事故が起きてくると思うのです。まことに恐ろしい状態であるということを私は申し上げて、よほどの綿密な打ち合わせが行われていなかったらえらいことになるという、これを徹底していただきたいことを要請しておきます。
時間が参りましたので、さらに本法案の問題点につきましていろいろお伺いをいたしたいと思いますが、ともあれ私は刑法そのものの整合性というものについてお考えを願って、また次に機会がありますればこの法案の一部分をまたお伺いをするようにして、きょうの質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/47
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048・橋本敦
○橋本敦君 イタリアのモロ事件あるいは西ドイツのシュライヤー事件、文字どおり世界を震憾させた凶悪な事件でありまして、こういう事件が起こったことに対してまことに遺憾であると同時に、このような凶悪な事件を起こす極左暴力集団のテロ行為には等しく怒りを持って対処しなければならぬという、そういう決意も一層深いわけでありますが、そういう中でこの法案がきょう審議をされて採択されようとしている。そういう観点から言いまして、私は、凶暴な手段により人質という残忍かつ陰惨な手段で不法な目的を遂げようとするようなことは断じて許さるべきでないし、法の立場からもこれを防遏する、禁圧をするというそういう趣旨はこれそれなりに合理性があると見ております。ただ、問題は、衆参両院の審議を通じて多くの委員も指摘しましたように、一たん成立したこの法律が適用の場合に拡張、乱用されて、市民、労働者、農民の権利を不当に侵害するようなことがあってはならないという、この一点に一つの大きな問題が尽きるかと思います。かねてから、暴力行為処罰法に関して政府答弁では、小作争議や農民運動に適用しないという答弁がなされているにかかわらず、まことに一般的に適用される一般法のような形になったという問題が指摘されておるわけですが、この今度の法案について特にそのような心配はないと、こういうように法務省当局としてお考えになっていらっしゃる要点はどこにあるのか、重ねてひとつまず最初にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/48
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049・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) その点につきましてはすでに他の委員の御質問に対してもお答えしたところでございますが、およそ労働運動あるいは学生運動、農民運動等におきまして、たとえば労働運動におきまして経営者をいわゆる人質にとって、これに凶器を示して逮捕、監禁し、そうして人質にとって何かを要求すると、こういうような概念にはおよそ当てはまることが考えられないのではないかと。ただ、仮に観念的に考えるとすれば、本当に刃物を突きつけたり、あるいは角材を振り上げて、もう抵抗不能の状態にして監禁をして、そうして第三者に対しまして何かの要求をしていく。それに応じなければ、いまこの監禁されておる人がどんなことになるかもしれないというようなことでおどし、憂慮させるというような形しか考えられないわけでありますが、およそ一般の労働運動あるいは農民運動、学生運動等におきましてさようなことは私どもとしてちょっと想定がしかねるところでございまして、そういう意味でお尋ねのような、これがいわゆる一人歩きをしてその種の正当な運動に適用になるということは全くあり得ないというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/49
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050・橋本敦
○橋本敦君 私も労働運動なり農民運動あるいは市民運動、学生運動が、いわゆるこの法が処罰しようとしているようなそういう凶悪性、不法な目的を持ったそういう運動ということには本来なじまないものだというように考えていますから、いま局長がおっしゃったようにあり得ないことだというように期待をしたいわけです。しかし、私はここで一つ思い出す事件が例のポポロ座事件であります。たとえば、平穏な学生集一会、市民の集会、そこにプラカードを持って集まってくる。そこへ警察官憲が私服でもぐり込んでそうして参加者をチェックし、あるいはカメラで顔写真を撮ると、こういう事件が起こったときに、プラカードを持っている人たちが集まってそうしてその警察官を詰問をする。そしてその場所から一定の建物に連れていって、そこで何のためにそれをやったかという質問をする。一方、カメラを撮っていた警察官はそこから逃れて警察署へ帰ってくる。その場合に、そのフィルムを抜き取りなさい、ここへ持ってきて返しなさいという要求をすると、警察署に対して。というような事件が起こった場合に、この凶器というのが、用法上の凶器という意味で局長が答弁されておりますように、現在、いろいろ社会情勢の変化で用法上の凶器という概念が動いてまいります。そうすると、いま言ったように、本来はプラカードということで持っているものも、それも凶器だというように見られ得る可能性があるといたしますと、私はこの第一条にいうこれに該当しないという保証はないのじゃないかという心配をするわけです。そういう場合に、一体、法の適用ということで検察庁はどうお考えになるのだろうか、その点はどう判断されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/50
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051・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 御指摘の具体的案件は、学園の自治の問題とかいろいろな憲法上の問題がございますから、それについて端的にお答えするということは適当でないと思います。しかしながら、単に集団の威力によりまして脱出不能にしたというようなことでは当然この法律は働かないわけでございまして、しかし、なおかつ将来あり得るかもしれないそういう抽象的な危惧の念というものがいささかでもあるということになりますれば大変なことでございますので、私どもといたしましては、当然、この法律が成立いたしますれば、この行政解釈あるいはここで御説明申し上げました議事録そのものというものを捜査機関には徹底いたしますし、またその運用に当たって、衆議院におきましても附帯決議をいただいておる関係もございます、あるいは当院におきましても附帯決議をいただくことになるかもしれませんが、それらのことを十分拳々服膺いたしまして、通達もいたしますし、また近く予定されております検察庁の長官会同等におきまして趣旨の徹底を図ってまいりたいと、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/51
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052・橋本敦
○橋本敦君 ぜひそういう趣旨の徹底はお願いしておきたいと思います。
私は一つここで構成要件的な問題として考えるのは、いま言った用法上の凶器ということで考え方が動くということに含まれる危険性というものも一つあるのですが、いわゆるこの「凶器を示して」という、この「示して」というところをどう限定するかというわけですね。たとえば、いまお話ししたような事例で、プラカードを持っている、警察官が入ってきたと、さあそれを取り囲んだ、そのときにプラカードを捨てて多衆の力で平穏無事に連れていったらいいですが、あわてふためいてみんながプラカードを持って、それでもって取り囲む手段の一助にそれを使ったという場合は、私はこれは、「凶器を示して」という意味における、この法にいう「凶器を示して」といういわゆる相手の身体、名誉、生命、これに直接的危害を加えるという目的が客観的に看取されるようなそういう意味の示し方ではありませんから、この「示して」という、ここのところの構成要件でしぼる方法もあると、私はこう見るのですが、この「示して」というところはどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/52
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053・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) ただいま御指摘のとおりに私ども考えております。性質上の凶器につきましては、たとえばあいくちをちらつかせるとかピストルを見せるということでよろしいと思いますけれども、用法上の凶器は、先ほども寺田委員の御質問に対して私申し上げましたように、最近飯田橋事件の第一審判決等にも示されておりますように、これが凶器として使用されるというふうに客観的に社会通念上、視聴覚上認められるということで初めて用法上の凶器になるわけでございますので、かつ、その凶器を示したことになるわけでございますので、御指摘のとおりであると私も思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/53
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054・橋本敦
○橋本敦君 そういうことで、一つはまさにこの凶悪性ということに主眼を置いて構成要件的解釈をやっぱり厳密にやるという必要があるということで、その点はいま局長の御答弁で私も了解ができるわけですが、その次に今度は人質という問題について第三者の憂慮に乗じてということを先ほど御説明になりました。この場合、第三者の憂慮というのが客観的合理的な憂慮ということは当然であるというお話ではありましたけれども、往々にして私はこの憂慮というのは感情的なものだと、あるいは心情的なものだということが社会生活上は通念として多いわけです。だからしたがって、まさに憂慮した側の憂慮の度合いとか、あるいはその場合の心情とかいうことを客観的にどう評価するかという問題について、ここも私はなかなかむずかしいと思っておるわけです。たとえば、いわゆる人質とされた者と第三者との関係が、たとえば団体交渉の場合だったら社長と重役といたしましょうか、そうすると社長であれ重役であれ、これはともに団体交渉応諾義務であるという責任を負う者同士であります。しかし、主観的に社長の側から言えば、これはもうどういうことになるか私は大変な心配だという憂慮感があるわけですね。だから、こういう第三者の憂慮という問題は、これは主観的心情的なものというのじゃなくて、人質とされた者と第三者との間の関係ですね、この関係がいま私がお話ししたようなそういう相手との対応で何らかの必要的な応諾義務があるような場合は、この第三者の憂慮性というものは客観的に非常に私は少なくなってくるという考え方だってあり得ると思うのですね。だからといって団体交渉で人質行為をすることはもちろん正当じゃありませんよ。正当じゃありません。が、その場合は重い処罰法ではなくて、別の法律を適用するということもあり得るわけです。そこらの差をこの第一条を適用するか、もしくは仮に違法行為だと認定された場合に強要罪もしくは不法監禁罪の適用にとどめるかという区別は一体どこでなさるのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/54
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055・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 団体交渉の場でいわゆるとりこになっておるのが重役であり、第三者に当たるのが社長であるという場合のことをお述べになりましたけれども、やはり第一条の構成要件をずっとこう見てまいりまして、二人以上共同して凶器を示して監禁をしてこれを人質にしてというものに当たるとはとうていどうも考えられないのでございます。それは一つには先ほどお尋ねになりました凶器を示しという問題が一つ。それから、人質と申しますからには、これは諸外国の立法例にもございますけれども、人質の生命身体の安全というもの、これをカタにとっておるということでございます。したがいまして、団体交渉の場で、いまお述べになりました例でまいりますと、重役の生命身体の安全をカタにとるというようなことは恐らく考えられないのじゃないか。もし仮にそんなことであればそれは重く処罰されてもしようがないのではないか。しかし、そういうことを——殺してしまってどうなるかということでございますので、その「人質にして、」という概念の基本はその人質の生命身体の安全というものをカタにとるところにあると、その事柄によっても外れるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/55
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056・橋本敦
○橋本敦君 だからしたがって、いま局長がおっしゃったような人質としてとられた者の生命身体の安全を著しく害する危険性のある状況をつくり出すということをやっぱり構成要件的解釈の背景として考えますと、通常の場合はどこかわからないところへ連れていって、だれが見ても行方不明になっている、救出不可能になっている、そういう客観的な状況があって、いま局長のおっしゃった生命身体に対する不安感というのが客観的に大きくなるわけですね。だから、そういうような適用ということに局長のお話をずうっとしぼっていきますと、私が心配している適用の拡張というようなことがやっぱり防げていく一つの考え方だと思うのですね。だから、そういうようなことで今後の適用については、いまおっしゃった通達その他で厳格におやりいただくということをいま言った例からも強く期待しておきたいと思います。
そこで、私が心配するのは、あの成田の事件で管制塔襲撃等凶悪な暴力破壊活動をやって逮捕された人たちに対して、話し合いの条件として戸村氏の方はまず釈放してもらいたい、これが話し合いの条件だということを言っている。私はそのことで何を心配するかといいますと、あのモロ事件でもレッドブリゲートの連中がいま裁判になっているそれを釈放せよという要求を出している。私はこういうことが繰り返されるようでは、これはいかに法律をつくっても、これはなかなか大変な問題が後に残っていく。たとえばこの法律で人質としてその者を殺害したときは「死刑又は無期」と、こうなるわけです。その死刑判決ということを仮に裁判所が許しがたいということでおやりになったら、この死刑判決を受けた者を救出するために新たなテロ行為を彼らは策動しないとも限らない。だから、重罰ということは、いまの国民感情から見ても、たてまえから見ても、これ自体わかるのですけれども、重い刑罰に処するということがテロの凶悪化を一層促進しないという保障が歴史的にも社会的にもないわけですね。私はそういう点を一つは心配するのですが、これについて大臣何かお考えがおありでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/56
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057・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 私は法治国家というものは法律に従って行政、司法を扱うことが、それがすべての国民に適当であるという、妙な言い方でございますけれども、そういう趣旨だと思います。成田の事件で話し合いの問題がいまお述べになりましたが、これは検察なり裁判所が身柄を拘束する必要がないという意味で法律に従って釈放する場合もあるわけでございます。しかし、話し合いの前提条件として法律に従わないでも、法律の趣旨を逸脱してやるという習慣をつけますと、法律というものの意義がなくなってくる。そういうことを繰り返しますと、まさに暴力によって社会が支配される、こういう結論になるわけでありますから、これは少なくとも法治国家を考える以上は断じてあるべからざることであります。これはどなたがお考えになってもそうだと私は思っておるわけでございます。モロ事件とかシュライヤー事件とか引用されましたが、すべてこれはそういう観点からなったことと思います。
いま重罰の問題にお触れになりましたが、私どもには理解できない考え方でやっておる連中でありますからどういうことになるかわかりませんが、これはあらゆる施策を総合して、そういう暴力の支配に屈しないという方法をとる以外にはないのじゃないかと思います。重罰に処すると、これを救出するためにもつとひどいことをやるかもしれない。これは想定されないというわけにはいきませんから、それにはただ刑罰のみでなく、あらゆる施策を講じて、法律の許す範囲でこれを防遏する、この手段を講ずる以外に方法はない。また、社会全体がそういう法治国家の本義をやはりわきまえて対処する、こういうこと以外にはないのじゃないかと、私はさように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/57
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058・橋本敦
○橋本敦君 私はいまの大臣の御意見に全く賛成であります。要するに、私は彼ら過激テロ暴力集団というのは、全く間違った確信犯的な要素を持っているのですね、狂信的な。だから、そういう意味ではこの法律ができて、刑法の持つ一般予防的効果ということだけで期待できない連中なんです。だから、それだけにやっぱり社会の世論の厳しい批判と社会的に彼らの行動というものを孤立されているというような国民的な運動というのは必要だし、同時にいま大臣がおっしゃったように、この法律をつくると同時に、あらゆる政府の断固たる方策で彼らの野望を鎮圧するという処置と相まって所期の目的は達せられるだろう、そのことが私はまさにいま要求されているように思うのです。それでまさにモロ氏は民主主義の犠牲者だということで世界じゅうが心から悼んでおりますが、あのような犠牲者を日本で断じて出しちゃならぬ、私もこう思っておりますが、そこで心配するのがいま日本にある過激派集団の動向で、政界あるいは財界、政府関係、要人に対するテロ、こういったことをねらうようなそういう状況があるのかどうか、こういう問題を察知されておられるかどうか、この点、公安調査庁の方の現在の把握状態、わかっておりましたらお話しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/58
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059・鎌田好夫
○政府委員(鎌田好夫君) ただいまの成田問題に絡みまして、過激派諸集団の中には要人テロを含む無差別ゲリラを呼号しております。そういった抽象的な意味での情報は入手しておりますけれども、具体的にだれに対して、あるいはいつどういう形でやるかという具体的情報を入手するまでには至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/59
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060・橋本敦
○橋本敦君 いまおっしゃった要人テロを含む彼らの策動ということが情報としてあるというのは、具体的に言いますと、彼らの機関紙でどう言っているとか、彼らは記者会見もいろいろやったりしますけれども、具体的に言えば要人テロというのはどういう派がどういう機会にどういう形で表明しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/60
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061・鎌田好夫
○政府委員(鎌田好夫君) 現時点で余り具体的なことを述べるのは遠慮させていただきたいと考えますが、どのようにしてその情報を入手したかと言われますと、抽象的に申し上げますと、われわれの調査活動によって入手しておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/61
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062・橋本敦
○橋本敦君 そこで法務大臣、これは私は法務大臣に御見解をお聞きしたいのですが、あのモロ事件ということはわが国にとっても他人事でないという状況があり得るということなんですね、そういう情報を入手している。
そこで私はあのような成田事件が起こったときに政府は声明を出されまして、そして法と民主主義に対する挑戦として断じて許せないという政府声明をお出しになった。今度は政府声明という形がいいかどうか私はよく政治的にわかりませんが、政府の姿勢、要人テロということを彼らの一部が考えておるという情報が公安調査庁に入っていると、こういうことですから、あのモロ事件に対して政府としては他人事でない、わが国自身の民主主義の問題としても断じてああいうことは許してはならぬということと同時に、そういう要人テロを含む彼らの策動が情報としてあるという問題について、政府としては断じてこういうことは許さぬという政府声明という形になりますか、法務大臣談話になりますか、断固として私はこのモロ事件を契機にして彼らのテロ、人質行為、こういうものは断じて許さぬという強い姿勢を法務大臣談話あるいは政府声明、官房長官談話でもいいですが、いまあのモロ事件に関連して国民が心を痛めているときにお出しになり、そしてこの法案が通過する機会に大臣のおっしゃったそういう諸方策も含めてわが国では断じて許さぬのだ、こういう姿勢を示す一つの機会ではないだろうか、こう私は思っておるのです。大臣のお考えはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/62
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063・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) いまの橋本さんの御意見、重要な参考意見として承っておきます。どういう措置をとるかはこれは慎重に扱わなきゃいかぬと思います。
先ほどモロ氏等の問題についてお話がありましたが、わが国でもいま公安調査庁からお話がありましたように、必ずしもないとは限らないと私は思います。かような一部には非常な激烈な考え方を持っておると私も見ておりますが、私はモロ氏の場合は非常な悲惨な人間的にはまことに涙なくしていられない状況であります。イタリアあるいは欧州の国民の姿がそういうふうに私に映っております。これは決して欧州の問題だけじゃない、わが国でも当然警戒すべき問題だと思います。モロ氏の場合はまさに私はいま橋本さんの御意見を承りながら考えておるわけでございますが、民主主義といいますか、法治国家といいますか、これらの犠牲であったと思います。身を挺してイタリア国民はこの犠牲のもとに法治国家を守ろうという決意をしております。それで思い出すのでありますが、やはり法治国家あるいは自由主義とか人権思想とか、こういうものはなかなか人間社会では一挙にできるものではありませんから、私は常に申し上げておりますように、多くの犠牲のもとにこれがベターだという社会あるいは制度ができておる。
そこで思い出しますのは、御承知のとおり、明治初年いわゆる封建制度から移る場合にいろいろなわれわれの先輩は自由民憲思想というもので非常に活動されて、その際板垣退助氏がそれの反動として殺されたことがあります。「板垣死すとも自由は死なず」というまことに歴史的な名言を吐かれておる。私、それにちょっと似ておるような気がするのです。モロ氏がどういう心境であったかわかりませんが、モロ氏はまさに現代法治国家のそういう意味における大きな犠牲であった。こういうのをお互いに現代国民は無にしてはならない、かような考えでございますから、これは国民全体がそういう気にならなければ、仕方ないのだということでは法治国家は守れない、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/63
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064・橋本敦
○橋本敦君 公安調査庁の方に、具体的なそういう恐るべき彼らの野望の憂慮すべき情報が入っているという事態ですから、私が申し上げた点を踏まえて法務大臣としての適切な処置ですね、これは御検討していただきたいと思います。
それからもう一つ、これに関連をして、法務省の中で先ほど刑事局長からお話がありました国際犯罪対策室を設置して対処をされておるということですが、これは大体どういう活動を主眼として現在進められておりますか。機構的にあるいは人員的にはどの程度のものになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/64
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065・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 機構といたしましては、刑事局参事官を室長といたしまして、現在のところ合計六人で構成しております、部屋を二部屋都合いたしまして。現在やっております事柄は、まずもって第一に逃亡犯罪人引渡し条約締結国の増大のための準備、すなわち条約の相手国として考えられる国の関連法令の検討収集、こういうものをまずやっております。
それから第二に条約関係といたしましては、わが国が加盟をしようとしており、あるいはそれが日程に上っておるような条約につきまして、法務省刑事局関係の事項について検討を行うという作業をやっております。
第三に——第三以下の方が今日的には重要かもしれませんけれども、国際的な犯罪情勢の一般的な把握。この分野に関しましては、警察庁の国際刑事課等と緊密に連絡をとりまして情報を集め、法務省の所管行政上あるいは検察運営上あるべき対応策というようなものを考究する、こういう仕事をいたしております。
それから第四に、国際的な司法共助あるいは捜査共助、この中には具体的な逃亡犯罪人の引き渡しの問題も入るわけでございますが、それについての必要な準備作業、こういうことをいたしております。
それから最後に、これは事務のウエートからすれば余り大きくないと思いますけれども、先ほどもちょっと他の委員の御質問でお触れになりましたが、旅券法に基づきます過激派の海外流出を防ぐためのチェックのお手伝い、こういった仕事をやっておるのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/65
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066・橋本敦
○橋本敦君 非常に大事な仕事をやっていらっしゃるということで、今後その仕事が一層充実されることを私は期待するのですが、いまその問題に入る前に、大臣、公安調査庁がおっしゃった、要人テロという彼らの策動の情報がありたという事態の中で、検察庁もしくは公安調査庁、わが方の警察が、これを許さないために断固たる処置をいまからとっていかなければならない、情報が入っているのですから。こう思うのですが、何かその対策はいまとられているように大臣お聞きになっていらっしゃいますか。あるいは、公安調査庁の方は対策をやるところじゃございませんが、何か対策について情報がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/66
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067・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 具体的に対策ということを私から申し上げる材料はございませんが、公安調査庁なりあるいは法務省刑事局それから警察庁、あらゆるそういう情報をお互いに交換しながらそういう事態の発生を防ぐために全力を挙げておることは、これは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/67
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068・橋本敦
○橋本敦君 本当を言えば私は、そういう問題は国民的な厳しい批判で徹底的に彼らを孤立させるということが大事なので、公安調査庁にその情報はどういう情報源か、どういうセクトか、それを話していただきたかったのですが、きょうは話していただけないわけですが、私は、やっぱりそれをきちっとここでおっしゃっていただいて、厳しい国民的批判を徹底的に浴びせるべきだと思うのですね。そうでなくて、情報を知りながら徹底対策をとらないということになると、私どもがいつも言う、泳がせているのじゃないかという批判を私どもはやらざるを得なくなってくる、こういう問題がある。きょうは時間をそこで使う予定はございませんが、大臣がおっしゃった徹底的な取り締まり対策、これをぜひとも強化されることをお願いしておきます。
そこで、この国際犯罪対策室で私は大臣一つ提言があるのですが、これから彼らの凶悪な犯罪は、日本赤軍の動向を見ましても、そしてまた彼らが外国で起こった事件の手口をすぐまねをするということから見ましても、この国際的な情報の収集、交換というのは非常に大事になっております。きのうの夕刊を見ましても、モロ事件に関連をしてEC諸国は早速情報交換の作業を開始しているという報道もございます。私は、西ドイツなりイタリアなりは政府もあるいは各政党もそれこそ心血を注いでこの問題の解決に当たったと思いますし、もちろん警察当局、検察当局もそうだと思います。こういう事件が起こったときに、その情報交換も含めその教訓もくみ出すために、この国際対策室の検察官をいち早く派遣をして情報交換もしくはそこから多くの教訓なり対策を学ぶという処置も思い切ってとるぐらいに、公然と大胆に広く活動するという機動性を持った活動ができるように、予算措置その他も今後御検討なさるのが適当ではないかという気がいたしておりますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/68
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069・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 国際犯罪対策室は御承知のとおり発足間もないわけでございます。人員もこれで十分と私は率直に思っておりませんつこういう犯罪の国際化しかも凶悪化という現状に照らして、機構縮小あるいは人員をふやさないという政府の方針の中でも、これは現実の問題としてきわめて重要であるということで一応設置を認められ、また、先ほど説明いたしましたように、検察庁にもそういう組織をつくる、また警察でも一つの組織をつくって、国内外にわたって調査をするという組織をつくったのもそのためでございます。先ほどその仕事の内容は刑事局長から御説明いたしましたが、公安調査庁でも海外にわたって調査をするという予算もある程度つきましたしやっておるわけでございますから、いまおっしゃったようなことも十分検討してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/69
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070・橋本敦
○橋本敦君 そういうことで、この国際犯罪対策室ですね、特定のこういう重大な国際的な事件が起こったときは機動性を持って——外務省を通じて情報をとっておるということになりますと、法務大臣も御経験があると思います、私も経験がありますけれども、なかなか来ないのです。また、クッション、クョションになるのですね。だから直接派遣をして、今度のモロ事件、シュライヤー事件、これについてそれなりの、必死で対応なさったはずですから、教訓を得てくるというような方向で、いま大臣がおっしゃったように積極的な検討をお願いしておきたいと思います。
私の持ち時間もきょうは少ないですし、以上で大体私お聞きしたことを終わったわけですが、基本的には、何といいましても、このようなテロ暴力集団の根絶ということが国民世論だと思います。そういうことに向けて、大臣がおっしゃった、法案だけでなくてあらゆる方策を通じて徹底的に取り締まりを強化し根絶していく、こういう御決意に変わりはないと思いますが、一言その点伺って質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/70
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071・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 橋本委員その他の皆さんの御意見も十分に体して処置をとりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/71
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072・橋本敦
○橋本敦君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/72
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073・江田五月
○江田五月君 一番最初に確認をしておきたいわけですが、この法律は、何度もおっしゃっているとおり、一部過激分子による事犯が非常に看過するにたえない事態になっているので、したがって本法案第一条が禁止しようとしている行為というのは、提案理由説明書の文章によりますと、爆発物、銃砲等によって武装した数名の集団によって計画的組織的に一部過激分子による航空機の乗っ取り、在外公館占拠等の不法事犯が企てられた際の、関係者の人命を盾としてわが国政府に対し身のしろ金の提供あるいは被拘禁者の引き渡しを強要するなどの行為、必ずしもそれにぴたりと当てはまるかどうかはわかりませんが、おおよそそういうような行為であって、したがってそのために法定刑の方も相当重くしてあるというお考えだというふうに理解してこの法案の審理を進めていってよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/73
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074・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) さようなものを主たる目標として立案したものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/74
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075・江田五月
○江田五月君 主たる目標とおっしゃるのは、もちろん一条だけのことですけれども、ほかに外れたとしても大体定型としてそのような類型の行為を禁止の対象にしているということでよろしいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/75
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076・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) さようでございます。念のために申し上げておきますと、たとえば昨年起きました長崎におきますバスジャック、この辺までは入ってくるものだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/76
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077・江田五月
○江田五月君 現在のように一部過激分子による不法事犯が非常に凶悪な状態になっている、特にヨーロッパにおいて先ほどもお話にあった凶悪事犯が起こっているようなときに、そういうことに対処するという目的でお出しになっている法案に対してあれこれ細かくせんさくするのはあるいは時宜を得ているのかどうかという点はよくわかりませんが、やはり一つの刑事法規、刑罰法規ですから、これが禁止しようとしている行為を明確に表現すると同時に、もともと禁止しようとしていない行為まで含むことのないような周到な注意がなされていなければならないし、仮にもともと禁止しようとしているような行為以外の行為が含まれるような表現になってしまっておるとすれば、それを改めなければならない、あるいはそうした周辺の行為まで含むものであるならば、法定刑をそれほど重くするわけにはいかない、そういう筋のものになろうかと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/77
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078・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 御指摘のとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/78
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079・江田五月
○江田五月君 どうも局長が労働運動、農民運動、市民運動、学生運動等に、それがもちろん一部過激分子の非常に凶悪なような行為に該当するような場合は別ですが、通常ある程度法を逸脱して行われる多少の不法事犯というようなものにまで適用されることはないということを何度も強調されているので、ある意味で軽く安心して考えておったのですが、何かじっくりとこの条文を読んでまいりますと、なかなかどうもそうではなく、かなり広い適用の可能性があるのではないかという危惧を持ってきておりますので、多少質問をさしていただきたいわけですが、第一条に特に限っていろいろ御質問いたしますが、この表現はとうてい一部過激分子のいまのような行動、過激な行動のみをあらわしているとは読めないと思います。それは、一つは、「二人以上共同して、かつ、凶器を示して人を逮捕又は監禁」するという行為と、数名の集団により計画的、組織的に爆発物、銃砲等によって武装して人を逮捕、監禁するという行為の違いが余りにも大き過ぎる。
二つには、人質をとった要求行為、それと関係者の人命を盾にした要求行為というのは、相当これも違うのじゃないだろうか。
三つ目には、強要ということと、政府に対し身のしろ金の提供とか、あるいは非拘禁者の引き渡し等を強要するようなそのような行為と、それもまた相当に違っている。
四つ目は、何度もおっしゃる説明の中で前提にされているのが、本一条の行為が集合犯であることを前提にされているように説明されますが、これは集合犯ではないのじゃないだろうかという、そういうあたりに疑問があると思います。
順次伺っていきますが、これはまず集合犯かどうかということなんですが、「二人以上共同して、かつ、凶器を示して人を逮捕又は監禁した者」が、その後一人になってもその逮捕、監禁した人を人質にして、第三者に対し強要すれば、この一条に該当するわけではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/79
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080・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) そのとおりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/80
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081・江田五月
○江田五月君 したがって、先ほどの説明の中にときどき出てくる二人以上共同し、かつ凶器を示した人質強要行為というのはいささか説明が簡単に過ぎることになるのじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/81
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082・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 「二人以上共同して、かつ、凶器を示して人を逮捕又は監禁した」上での人質強要行為であると、こういうふうに正確には申し上げたらいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/82
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083・江田五月
○江田五月君 趣旨説明の中ではその辺は注意深くお書きになっているようですが、「二人以上共同して、かつ、凶器を示して人を逮捕又は監禁した」後に人質強要行為の故意を生じて、そして、その逮捕、監禁のときには二人いたけれども、そのうちの一人は脱落するなり逮捕されるなりして一人になった後に強要行為に及んだ場合も含まれるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/83
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084・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 多少ずっと早口で仰せになりましたから、的確に把握しておるかどうかわかりませんが、たとえば二人の者が凶器を示して、客観的にですね、凶器を示して人を逮捕、監禁したと、そして人質強要行為をしたと、そのうち一人は凶器を示したと、もう一人の者は一人の者が凶器を示したことを知らなかったと、こういうような、まあそういうことがあり得るかどうかは別として、理論上の問題として考えますと、凶器を示したその一人は第一条の罪が成立いたしますし、それから相手方が、相棒が凶器を示したことを知らなかった者については、認識を欠きますから刑法三十八条二項で、本条の適用はない、こういうことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/84
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085・江田五月
○江田五月君 いま伺ったのは、二人以上共同し、そのうちの一人が凶器を示して、まあ、その凶器を示していることについては共同認識があったとして、人を逮捕、監禁した後に、そのうちの一人だけが犯罪から脱落して、一人だけになって、その一人は凶器を示した人があるとしてよろしいが、その後に人質強要の故意を生じてその行為に及んだ場合に、これは本法に該当するのではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/85
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086・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) その場合には本条には該当いたしません。凶器を示して逮捕、監禁したところが逮捕監禁罪として評価され、その後の部分は人質強要罪の一般規定がありませんから、強要罪であるいは恐喝罪で処断される、こういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/86
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087・江田五月
○江田五月君 それでよろしいかな。
それから、凶器については用法上の凶器も含まれる。ということは、用法上の凶器がいかなる場合に成立するかという問題はありますが、これは含まれるわけですね。先ほどのような過激派の不法事犯に対処するならば、凶器という用語じゃなくて、たとえば爆発物、あるいは銃砲刀剣、あるいは毒物、劇物というような、そういう用語でこの凶器を特定することをなぜされなかったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/87
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088・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) まず両面から考えるわけですが、まあ凶器という言葉が一応法律概念として熟しておるということが第一。すなわち法律概念として熟しておる凶器というものは、人を殺傷するに足りる能力のあるものであると、こういうことが一つ。それからもう一つ、いまお挙げになりました爆発物とかいろいろなことをこう掲げていくという方法でありますけれども、これは将来いかようなものが利用されるかもわからない。爆発物、火炎びん、銃砲刀剣、こういうものはすでに現実の問題としてわかっておるわけでありますが、将来の問題としてはそういうものでなくても、あるいはそれこそ鋭利な肉切り包丁でありますとか、いろいろなものが考えられるのじゃないかと、そういう意味で両面から考えまして、凶器という概念を使ったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/88
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089・江田五月
○江田五月君 凶器というのは熟している言葉であるといえば熟している言葉でありますが、用法上の凶器がどこまで入るかということは、まだそれほど熟していないのではないかと思います。
まあそれはそれとして、次に人質のことなんですが、人質の定義というのが、この間局長に答弁をいただきましたが、逮捕、監禁された者の生命、身体の安全に関する第三者の憂慮に乗じその解放、返還、安全に対する代償として第三者に不法な要求をする目的で被逮捕者の自由を拘束することと、およそそういう表現であったと思いますが、そこで、身体の安全に対する憂慮というその身体の安全とは何でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/89
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090・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 生命身体の安全というふうに申し上げたつもりでございますが、生命身体の安全でありますから、生命が冒される、あるいは身体の健全さが冒されると、こういうことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/90
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091・江田五月
○江田五月君 生命の方はよろしいわけですが、身体の安全という場合には、通常、傷害の場合は身体の完全性または生理的機能に対する侵害であるというようなこと等考えていると思いますが、そういう刑法における傷害の考え方とほぼ同様に身体の安全ということを考えてよろしいわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/91
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092・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 傷害という概念は、ただいまお述べになりましたように、身体のいわゆる機能を害するということであればそれで傷害でありますけれども、ここで生命身体の安全と言っておりますのは、要するに命が危ない、あるいは体そのものが重大な棄損を受ける、そういう程度のものを生命身体の安全と、こういうふうに申し上げたわけでございまして、したがいまして、傷害という概念を持ってきて考えますれば、軽度な傷害等はもちろん除かれると、そういうふうに考えます。それはすなわち第三者、要求を受けた第三者のすべての人が憂慮するというような、そういう安全でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/92
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093・江田五月
○江田五月君 憂慮というのもなかなかこれもむずかしい言葉で、そう著しい生命身体に対する棄損があることでなければ憂慮にならぬというわけのものでもないだろうし、身体の安全という場合に、すぐに、特別の重大な加療を要するような傷害のおそれがあるということだけを意味しているというふうにもなかなか考えにくいので、そういう点から言うと、どうも「人質」という言葉がなかなか不明確だという非難もあながち杞憂に過ぎるということもないのじゃないかという気がするわけでありますが、この場合に、人質ということでなくて、人命への危害を明示、黙示に告知するというような表現で、この「人質にして」ということによって言いあらわそうとしている行為を表現することはできないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/93
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094・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) そういうアプローチの仕方もあるいはあるかもしれないと思うのでございますが、人質にするという言葉が最も簡潔でその実態をよくつかまえておるのではないかと。現に諸外国においても、ドイツ、フランス、アメリカ等においても人質ということで理解されておるわけでございまして、私どもとしては人質という概念で十分御理解いただけるのじゃないかと思っております。
なお、申しわけありませんが、先ほど御質問を私ちょっと取り違えて御答弁した点があるようでございますので訂正いたします。
二人以上の者が凶器を示してある人を逮捕、監禁して、そのうちその犯人の一人が脱落して、残った一人がそれを逮捕、監禁した状態に置いたまま人質にして要求をしたという設例であったということでございますが、そうでございますと、その脱落しなかった者については本条の罪が成立いたします。
大変失礼いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/94
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095・江田五月
○江田五月君 その人質ですが、「人質にして、」ということなんですが、これはその「人質」というのはいまの自由を拘束することであると。そうすると「人質にして、」というのは、そういうふうに拘束してということであるのか、それとも拘束した人の解放等をする代償として何かを要求するという、そういうことをこの「人質にして、」という「にして」はあらわしているのでしょうか。これは別にいま逮捕、監禁している者を解放するから何かをしてくれというふうに明示、黙示に要求の条件としていなくても、ただ自由を拘束している、そして第三者がそれに憂慮をしている状況を知っているという限度で「人質にして、」ということは成立してしまうのじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/95
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096・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 「人質にして、」ということでありますから、逮捕、監禁されている者の生命身体の安全を交換条件にして要求をすると、こういう概念でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/96
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097・江田五月
○江田五月君 次に「強要」なんですが、強要もいろいろな態様の強要があるわけで、この強要自体をいろいろ限定するということも可能なのじゃないかと思います。強要の相手方を、第三者をそうすると限定するということになるかもしれませんが、政府その他の公的機関に限定するとか、あるいは強要の目的を身のしろ金とかあるいは法令により拘禁、拘束中の者の解放等に限定するとかというようなことも可能であったと思いますが、「強要」ということになると非常に広い行為、類型になってしまうと思いますが、そしてこの法律が目的としているところをはるかに越えてしまうことになりはせぬかと思いますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/97
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098・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 確かに御指摘のように要求の内容をある程度限定するということは一つのアプローチの仕方であろうと思います。そういうことによりまして法定刑の下限をぐっと引き上げるというのも一つの立法政策であろうと思いますが、今後予想されます要求の内容というものは、まことに私どもにとりましても予測のつかないことが多いと思われるわけでございまして、そういう意味で、この要求はおよそ不当な要求であればよいということで構成要件を決めたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/98
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099・江田五月
○江田五月君 この第一条は、身分犯であることはよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/99
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100・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 身分犯のような形になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/100
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101・江田五月
○江田五月君 そうすると、真正身分犯なんでしょうか、不真正身分犯なんでしょうか。ちょっと読み方によってはあるいは不真正身分犯のようにも読めなくもないのですが、どういうお考えでいらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/101
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102・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 講学上の不真正身分犯、真正身分犯という言葉を使って御説明するのが適当かどうか、きわめて新しい形の構成要件でありますから——ですが、いまお引きになりました言葉をどちらが近いかとおっしゃれば、真正身分犯の方に近いのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/102
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103・江田五月
○江田五月君 そうすると、これもかなりいままだ学説も判例も流動している、これほど古い法律なのにいまだに流動しているという点でもきわめてあいまいなものであるかもしれませんが、刑法六十五条の適用の関係では、二項の適用はないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/103
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104・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 六十五条の共犯と身分の関係ですが、身分により特に刑の軽重があるというような構成要件じゃございませんから、二項の適用はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/104
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105・江田五月
○江田五月君 ただ、「二人以上共同して、かつ、凶器を示して人を逮捕又は監禁した者」でない者が「第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求したとき」は、これは単純な強要になるわけで、そうすると身分の有無によって多少刑の軽重がある場合だというふうに考えられなくもないのかと思うわけですが、そうはお考えになってないということですね。
それで次に、そういまずっと伺ってきた範囲ですと、二人で共同して、かつ用法上の凶器を示して人を監禁した、そしてそのうちの一人の人が、もう一人の人が脱落した後にその監禁されている者に関する身体の安全についての人の憂慮に乗じて、戻してやるからというので、その第三者に、憂慮している第三者に非常に重大とまで必ずしも言いがたいようなことを要求した場合でも無期または五年以上の懲役になる。具体的にどうかということは別として机の上で考える限りではそういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/105
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106・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 机の上で考える限りはそういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/106
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107・江田五月
○江田五月君 そうしますと、五年以上の懲役という法定刑なんですけれども、どういうふうにしてこの法定刑を決められたかと、この前局長、法定刑については、なかなかこうだという決め手となるような議論はないのだというお話でしたけれども、まあいろいろな他の犯罪の法定刑との比較考量でお決めになったということであろうと思いますが、もう少し科学的といいますか、実証的といいますか、計量的といいますか、そうしたことが法定刑の決定に導入できないものかどうかという気がするわけです。たとえば監禁と強要が一連の行為で犯された事案、それが併合罪になるか牽連犯になるかちょっとはっきりしませんけれども、そういうものについての裁判所の量刑の調査というようなものですね、こういうものはなさった上でこういう法定刑の決定をされているのでしょうかどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/107
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108・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) 一応の調査はしております。しかし、裁判所の具体的量刑というものと、法定刑をいかに定めるかということとは直接関連はない、この場合は。新しい構成要件をつくるわけでありますから。そこで私どもが考えましたのは、まず既存の刑罰罰則で刑法二百二十五条ノ二の身のしろ金誘拐がございます。これが無期または三年以上の懲戒であります。本罪と身のしろ金誘拐との関係を見ますと、身のしろ金誘拐に対して本罪は特別類型になります。加重された特別類型になります。したがいまして、下限は三年を超えることが相当であろう。
それから航空機強取法の一条二項のハイジャック人質強要罪の罪の法定刑の下限が十年である。ですから十年未満でなければならない。その間のどの辺に法定刑を定めるかということにつきましては、第一条に定めるような行為というものは、一般社会的に評価をすれば刑法二百三十六条の強盗罪に比すべき卑劣な行為であろう。したがって、強盗罪の法定刑の下限である五年というものが一つのメルクマールになるであろう。しかし、先ほど来御指摘がありましたように、この第一条に該当する事案といたしましても、机の上で考えていきますと、ある程度情状酌量すべき事案があり得るわけであります。したがいまして、酌量減軽をしても執行猶予のつけられないようなそういう法定刑では適当でないのではないか。それらの点を総合勘案して下限を五年と、こういうふうにしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/108
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109・江田五月
○江田五月君 机の上で考えるというふうに私自身も申しましたけれども、まだいま実際に発動されていないから机の上で考えざるを得ないわけですが、たとえば強盗致傷のような場合に、形式上は強盗致傷に非常に当たってしまうというような場合に、実務上、実際にはいろいろと事案の実際の妥当性を考えてあえて恐喝と傷害で処理をするというようなケースもたくさんあるわけで、本件でもどうも机の上で考えたことというのは案外実際に起こることがあるわけでして、起こってみて、これに当たってしまうけれども、どうもこれに当てるといって五年以上の懲役に処すには余りにも重いというような事案が起こるのじゃないかというおそれが非常にするわけであります。そういう場合に実際の処理としては監禁と強要というような、人質の点を何とか取り上げずに処理をするというようなことも可能なんでしょうが、そこまで一人一人の検察官に裁量の余地を与えてしまうというのも、またいろいろ問題だと思うわけで、どうもこの五年以上の懲役というのはこの法律をつくるときに念頭に置かれていた行為を罰する法定刑としては妥当でありましょうが、これが奨来実際に動き出したときに出てくる非常に軽い類型の者や何かを処理する法定刑としては重きに失すると言わざるを得ないと思います。
最後に、こういう法律を制定しなければどうしてもいまの過激な事犯に対処できないということならば、多少いろいろ難点があっても仕方がないということもあるかもわかりませんが、このいただいた資料で見ますと、どの事犯についても五年以上あるいは無期の刑を宣告することは本法がなくても十分可能なのではないかと思いますから、そういう点でも、必要性の点でもいま緊急の必要があるわけではないという気がいたしますし、それから、どうもこれを制定したから過激派による不法な事犯がなくなるのだというところの、どういう機序でなくなるのかということもなかなか説明がむずかしかろうと思いますが、ちょっとそういう点を考えますと、安易に立法され過ぎているが、のじゃないかという感想をぬぐえないのですそんなことありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/109
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110・伊藤榮樹
○政府委員(伊藤榮樹君) そんなことはありません。「二人以上共同して、かつ、凶器を示して人を逮捕又は監禁した者が、これを人質にして、第三者に対し、」て不当な要求をするという行為は、一般類型としてやはり五年以上の懲役で臨むのが相当であろうと、情状真に酌量すべきものがあれば酌量減軽によって二年半まで下がって執行猶予がつけられる、こういうことにしておるわけでございます。もちろん刑罰法規と申しますのは、刑罰法規ができたからといって犯罪がすなわち発生しないと、こういうものではもちろんないわけでして、先ほど来他の委員の御質問に対して申し上げておりますようなあらゆる施策にわたりまして、万般にわたりまして努力をしてその防遏を期すると、反面、国の姿勢といたしまして、そういう破廉恥な犯罪に対してはこれだけの刑罰をもって臨むという決意を示すということが適当ではないか、もちろんそういう考え方の基礎には、およそ刑罰法規には犯罪防止の力、一般予防の力があると、こういう国民的な確信を基盤としておるわけでございますが、しかしながら即効薬の効果がないことはもちろん言うまでもないことであります。あらゆる施策、それにも増して国の毅然たる姿勢と、こういうものが背後にあって初めて有効に機能するものであると、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/110
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111・江田五月
○江田五月君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/111
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112・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) ほかに御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/112
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113・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
人質による強要行為等の処罰に関する法律案を問題に供します。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/113
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114・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
寺田君から発言を求められておりますので、これを許します。寺田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/114
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115・寺田熊雄
○寺田熊雄君 私は、ただいま可決されました人質による強要行為等の処罰に関する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、日本共産党、新自由クラブ及び社会民主連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
まず案文を朗読いたします。
附帯決議(案)
政府は、本法が一部過激分子による航空機の乗取り、在外公館の占拠等の重大事犯に対処する目的で制定された経緯にかんがみ、本法の運用に当たつては、その本来の目的を逸脱し、正当な労働運動や、農民運動、市民運動などに対して濫用することのないよう万全の配慮をなすべきである。
右決議する。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/115
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116・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) ただいま寺田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/116
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117・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 全会一致と認めます。よって、寺田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定をいたしました。
ただいまの決議に対し、瀬戸山法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。瀬戸山法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/117
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118・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 人質による強要行為等の処罰に関する法律案につきましては、各般の問題点について慎重に御審議をいただきまして御可決いただきましたことを厚くお礼を申し上げます。
なお、その間においていろいろ御注意等がありましたことを厚くお礼を申し上げます。
ただいま議決されました附帯決議につきましては、本法の趣旨から言って当然のことと思いますので、この運営に当たっては、正当な労働運動あるいは農民運動、市民運動などに対して乱用することのないように十分気をつけることを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/118
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119・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/119
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120・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/120
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121・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 次に、逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。瀬戸山法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/121
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122・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案について、提案の趣旨を御説明いたします。
明治十九年に締結された日本国亜米利加合衆国犯罪人引渡条約及び明治三十九年に締結された日米間追加犯罪人引渡条約は、いわゆる引き渡し犯罪が殺人等の伝統的な犯罪に限定されている等の理由により、近年における著しい交通機関の発達に伴ういわゆる国際犯罪の増加等の事態に適合しない面があり、この種事犯抑圧のための国際協力の必要性がますます高まったため、主として引き渡し犯罪の罪種の拡大を目的として数次にわたりこれらの条約の改定交渉を行った結果、去る三月三日東京において日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約の署名が行われたのであります。
そこで、まず、日米新条約が締結されたことに伴い、犯罪人の引き渡しに関する国内手続について、所要の整備を行う必要が生じたのであります。
それとともに、現行逃亡犯罪人引渡法のもとにおいて、いわゆる仮拘禁制度は、わが国との間で引き渡し条約が締結されている外国から同条約に基づいて請求があった場合に限って適用されるため、たとえば、犯罪人がわが国に潜入する可能性があるとの情報により、わが国との間に引き渡し条約が締結されていない外国から、犯罪人の発見に備えて、わが国に仮拘禁の請求があっても、これに応ずることができないこととなっているのでありますが、いわゆる国際犯罪が増大し、犯罪者の国外逃亡事例がますます増えつつある今日、このような取り扱いは、必ずしも適当でないと考えられますので、この際、犯罪人の引き渡しに関する国際的協力を一層推進するため、相互主義の保証を要件として、引き渡し条約に基づかないで仮拘禁の請求が行われた場合にも、これに応ずることができるものとし、この場合における仮拘禁の要件、手続等に関する規定を整備する必要があるであります。
改正の要点は、次の四点であります。
その一つは、日米新条約においては、犯罪人が引き渡しの請求に係る犯罪について第三国で無罪の判決を受け、もしくは刑罰の執行を終えているとき、または締約国及び第三国からの引き渡し請求が競合するときは、引き渡しを行うかどうかを被請求国の裁量に任せる旨の規定が設けられましたので、このような場合を含めて、一般に現行逃亡犯罪人引渡法第四条第二号に定める場合のほか、逃亡犯罪人を引き渡すかどうかについて日本国の裁量に任せる旨の引き渡し条約の定めがある場合において、法務大臣が外務大臣と協議して、当該定めに該当し、かつ、逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認めるときは、当該犯罪人を引き渡さないことができるものとする点であります。
その第二は、引き渡し条約に基づかないで犯罪人を仮に拘禁することの請求があったときは、当該請求をした外国から日本国が行う同種の請求に応ずべき旨の保証がなされた場合に限り、(一)請求に係る者を逮捕すべき旨の令状が発せられまたは刑の言い渡しがなされていることの通知がないとき、(二)請求に係る者の引き渡しの請求を行うべき旨の保証がなされないときを除きまして、これに応ずることができるものとする点であります。
なお、この引渡条約に基づかない仮拘禁は、右のように、当該請求をした外国において逮捕状等が発せられまたは刑の言い渡しがなされていること及びその外国が必ず引き渡し請求を行うことの保証がなされていることを要件とするものでありますが、この仮拘禁も、東京高等裁判所の裁判官があらかじめ発する仮拘禁許可状により行われるものであり、また、仮拘禁後二カ月以内に引き渡し請求が行われないときは当該犯罪人を釈放することとしているのでありまして、これらの点は、引き渡し条約に基づく仮拘禁の場合と同様であります。
その三は、日米新条約において、一方の締約国が他方の締約国から、その国の官憲が第三国から引き渡しを受けた犯罪人を当該締約国の領域内を通過して護送することの承認の請求を受けた場合には、一定の要件のもとでこれを承認すべき旨のいわゆる通過護送の承認に関する規定が新設されたことに伴い、外国から外交機関を経申して当該外国の官憲が他の外国から引き渡しを受けた者を日本国内を通過して護送することの承認の請求があったときは、(一)請求に係る者の引き渡しの原因となった行為が日本国内において行われたとした場合において、当該行為が日本国の法令により罪となるものではないとき、(二)請求に係る者の引き渡しの原因となった犯罪が政治犯罪であるとき、または当該引き渡しの請求が政治犯罪について審判し、もしくは刑罰を執行する目的で行われたものと認められるとき、目請求が引渡条約に基づかないで行われたものである場合において、請求に係る者が日本国民であるときを除きまして、法務大臣が外務大臣と協議して、これを承認することができるものとする点であります。
その四は、以上の改正に伴い、関連規定につき所要の整備を行う点であります。
以上がこの法律案の趣旨であります。
何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/122
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123・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時三分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X01219780511/123
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