1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年三月三十一日(土曜日)
午前十時開会
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委員の異動
一月十二日
辞任 補欠選任
石井 一二君 中西 一郎君
岩上 二郎君 秦野 章君
二月二十七日
辞任 補欠選任
関 嘉彦君 小西 博行君
二月二十八日
辞任 補欠選任
小西 博行君 関 嘉彦君
三月三十一日
辞任 補欠選任
久保田真苗君 梶原 敬義君
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出席者は左のとおり。
委員長 後藤 正夫君
理 事
鳩山威一郎君
宮澤 弘君
松前 達郎君
抜山 映子君
委 員
大鷹 淑子君
嶋崎 均君
中山 太郎君
夏目 忠雄君
秦野 章君
原 文兵衛君
平井 卓志君
梶原 敬義君
八百板 正君
黒柳 明君
和田 教美君
立木 洋君
関 嘉彦君
秦 豊君
国務大臣
外 務 大 臣 安倍晋太郎君
政府委員
外務政務次官 北川 石松君
外務大臣官房長 枝村 純郎君
外務省アジア局
長 橋本 恕君
外務省北米局長 北村 汎君
外務省中南米局
長 堂ノ脇光朗君
外務省中近東ア
フリカ局長 波多野敬雄君
外務省経済局次
官 恩田 宗君
外務省経済協力
局長 柳 健一君
外務省条約局長 小和田 恒君
外務省国際連合
局長 山田 中正君
外務省情報文化
局長 三宅 和助君
事務局側
常任委員会専門
員 山本 義彰君
説明員
文部省大学局大
学課長 坂元 弘直君
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本日の会議に付した案件
○在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務
する外務公務員の給与に関する法律の一部を改
正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/0
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001・後藤正夫
○委員長(後藤正夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
去る一月十二日、石井一二君及び岩上二郎君が委員を辞任され、その補欠として中西一郎君及び秦野草君が選任されました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/1
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002・後藤正夫
○委員長(後藤正夫君) 北川外務政務次官から就任のごあいさつがあります。北川外務政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/2
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003・北川石松
○政府委員(北川石松君) ただいま御紹介を受付ました政務次官の北川石松であります。
安倍大臣のもとでよくお仕えをし、委員長初め委員皆々様の御趣旨を体してその職責を全ういたしたく思っております。
何とぞ今後ともよろしくお願い申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/3
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004・後藤正夫
○委員長(後藤正夫君) 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。安倍外務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/4
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005・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について御説明いたします。
改正の第一は、在外公館の設置関係であります。今回新たに設置しようとするのは、在ブルネイ及び在セント・クリストファー・ネイヴィースの各日本国大使館であります。ブルネイは、本年一月に英国から独立したものでありますが、同国には実際に事務所を開設し、大使を駐在させる実館を開設する予定であります。セント・クリストァー・ネイヴィースは、昨年九月に英国から独立したカリブ海の国でありますが、同国に設置される大使館については、他の国に駐在する我が方大使をして兼轄させる予定であります。
改正の第二は、これら新設の在外公館に勤務する在外職員の在勤基本手当の基準額を定めるものであります。
改正の第三は、現在ジュネーブにある軍縮委員会日本政府代表部の名称を軍縮会議日本政府代表部に名称変更させるものであります。
以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/5
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006・後藤正夫
○委員長(後藤正夫君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/6
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007・松前達郎
○松前達郎君 まず、外務大臣にお尋ねをいたしたいんですが、最近の国際情勢の中で日本の果たすべき役割というのは非常に重要な部分を占めてきたんじゃないか、こう思うわけなんですね。ですから、国際的に非常に大きな役割を持つ。そこで、今回はブルネイ及びセント・クリストファー・ネイヴィース、この二つの日本大使館の新設の問題ではありますけれども、とりわけアジア外交に関していアジアといえば日本はアジアの一員であるというそういうことから考えまして、アジア外交の今後の展開、とりわけ外務大臣は今回中国においでになったわけでありますが、対中外交の展開等についてのビジョンをまずお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/7
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008・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) 今、御指摘がございましたように、もちろん日本はアジアの一員でありますし、やはりアジア外交というものは日本外交の根幹をなすものであるわけであります。そういう中で、基本的にはアジアの安定と平和というものが日本の平和と安定に直接につながっておるわけで、いわゆる死活的な要素であろう、こういうふうに思うわけでございます。したがって、アジアの諸国と友好協力関係を緊密化させる、また我が国の国力だとかあるいは国情にふさわしい協力をしていく、これがやはりアジアに対しての日本の一つの責任であろう、国際的責任であろう、こういうふうに考えるわけであります。特に、日中間の友好協力関係を長期間にわたって続けていくということは、両国のみならずアジアと世界の平和と安定にとって重要でありまして、これは一貫して我が国の外交の主要な柱の一つでございます。我が国としましては、国交正常化以来一貫して日中関係の発展に努めてまいりまして、着実に成果を上げてきておるわけでございます。
私は、日中の国交回復が行われて以来、今日の日中関係の状況というものは最高である、最高に友好的な状況にある、安定した関係にある、これから成熟化していく一つの時期を迎えつつある、こういうふうな認識を持っておるわけです。特に、昨年胡耀邦総書記が来られました。この成果は私は非常に大きかったと思います。今度中曽根総理とともに中国に参りまして、いろいろと政府・党の要人と接触をしたわけでございますが、胡耀邦総書記が、日本の各界の皆さんと会われて非常に感銘を受けたと。そして、日中関係を思い切って前進させなきゃならぬ、また日本に大きな協力を求めなきゃならぬ、日本に学ばなきゃならぬ、こういう趣旨が徹底をしておりまして、大歓迎の裏には、そうした胡耀邦総書記の日本において受けられた感銘というものがいろいろと反映をしてきたということを強く感じたわけでございます。
こうして、昨年からことしにかけての日中両国の首脳間の交流を軸にいたしまして、各方面の日中間の交流を全面的に進めることによって、いわば平和友好であるとか、平等互恵であるとか、相互信頼、長期安定といった日中間でかたく約束しておりますところの四原則に基づきまして、これから力強く前進をしていかなきゃならぬ。日本外交にとりまして日中関係を安定させるということは、日本外交の世界的な立場において最も重要な柱であるというふうな確信を持って、私は今後これに取り組んでいきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/8
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009・松前達郎
○松前達郎君 中国に関しては、中国へ行ってみますと、政治あるいは経済、そういった行政面でのシステムそのものの十分なネットワークがまだ完成されていないような気がしてならないのですね。これは細かく検討したわけではありませんけれども、広い国ですから地域がそれぞれ独立した形で行政を行う。とりわけ指導者は北の方に多いというふうな、そういう感じを受けるわけなんですね。ですからある面で言うと、日本が外交を進めていくその裏側に、やはりそういった中国のシステムに関して相当安定したという判断をしての外交でないとなかなか――例えば経済援助にしろ何にしろ、果たしてそれだけぶち込んでいいのかどうかとか、いろんな問題が出てくるのじゃないかと思いますが、その点はどういうふうにごらんになっておられるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/9
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010・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは、今の中国のいわゆる体制というものは、上部体制というものは非常に整ってきているんじゃないか。鄧小平主任ですか、この人が第一線から退いているような形ですけれども、やはり最も大きな最高第一人者でありますし、そのもとに胡耀邦総書記と趙紫陽首相がおられるわけでありまして、先般鄧小平主任に会ったときも、天が落ちてもこの二人の体制というものは変わらない、そしてお互いに相互協力をしながら中国の現代化を進めていくというしっかりした協力関係というものはでき上がっておると、こういうことを言われました。まさに我々ずっと、これは去年以来私も痛感しているわけですが、胡耀邦総書記と趙紫陽首相の非常に密接な協力関係といいますか、そういうものが確立されておるような感じがいたしております。胡耀邦さんが外へ出ているときは趙紫陽さんが残る、趙紫陽さんが外へ出ているときには胡耀邦さんが北京に残るというようなことで、そういう点ではどちらに話しても大体いろいろと意思が疎通しますし、どちらにも通ずるということで、私は日本としてはそういう面で安心して――政府関係はむしろ趙紫陽さんですが、趙紫陽さんを通じてもあるいは胡耀邦さんを通じても安心して話ができて、それが確実に下まで通っておるというような感じを私は直接持っておりますので、相当な体制はまずできつつあるんじゃないか。もちろん、完全と言えないわけでしょうけれどもできつつある。ですから、経済協力問題等も、そういう意味では向こうも行政改革が行われまして非常に部局も縮小されておりますから、そういう中で、ポイントに話せば大体これが進むような形に今なっておるというふうに私は感じとして持っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/10
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011・松前達郎
○松前達郎君 それともう一つお伺いしたいのは、アメリカが台湾問題で大分苦労しておったわけですね。例えば、武器の問題とかそういうものに原因していろいろと国際的な問題にまで発展を――アメリカと台湾の問題あるいはアメリカと中国の問題、こういう問題で非常に国際問題になりそうになった。そういうことが昨年来あったわけなんですが、我が国として、この台湾問題について中国とお話し合いをされたか、あるいは何かそういったことについて意見等が出たのか、その辺をお聞かせいただければと思うんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/11
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012・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) 我が国と中国との間で台湾問題についての語は、これは首脳会議におきましてもあるいは外相会談におきましても一切出ませんでした。ただ、アメリカと中国との米中関係における台湾問題については中国側の意見の表明がありましたし、あるいはまた香港の問題についての中国側の詳細な説明がございました。そういう中で台湾問題が出たわけでございますが、日本と直接中国との間における台湾問題は、何ら我が方も言及しませんでしたし、それからまた中国側からも言及はございませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/12
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013・松前達郎
○松前達郎君 台湾問題についてなるべく触れないというふうな感じの点で、日本の場合には台湾との正常な国交はないわけですね。これらについて今後我が国としてどういうふうな、今までどおりのやり方といいますか、その関係をずっと維持するのか、あるいは何か新しい提案、あるいは新しい展開を求めて外交をするのか、その辺について、将来の問題としてお考えをお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/13
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014・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) 台湾の問題については、現在日中間において何らの問題もないわけでありますし、起こってもおらないわけでございますので、日本政府としては、日中の国交回復のいわゆる日中共同宣言さらに日中平和友好条約の趣旨を重んじていく、これを尊重していくという姿勢を貫いていけば、今の台湾問題につきましては、現実的に今日まで行っておるこの路線を続けていくことは一向に差し支えないことではないか。現在において問題が起こっておりませんから、私は現在のスタンスを続けていく、いきたいと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/14
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015・松前達郎
○松前達郎君 それと、今度は中ソの問題ですね。これもいろいろな報道等もされておるわけなんですが、これは日本とソビエトの関係というものもありますし、中国を大国だと言うと中国はそうじゃないと言うかもしれませんが、非常に両方とも大きな国であることは間違いない。ソビエトは全くそのとおりでありますね。ですから、ソビエトの問題も重要な問題だと思うんですが、中ソの問題について何か話し合いあるいは意見等がありましたでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/15
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016・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) 中ソの問題、あるいは最近行われた中ソの事務レベルの内容等につきましては、外相会談のとき呉学謙外相から詳細な説明がございました。また首脳会議でも、短時間ではありましたが、中ソの関係について趙紫陽首相から中曽根総理に対して説明があったわけでございます。
概略要約して申しますと、中ソ関係には依然として三大障害という三つの大きな基本的な問題が残っておるので、いろいろと党の方の関係であるとか、あるいはまた国と国との間の文化交流、人的交流、あるいは経済――経済については相当拡大したと言っておりましたが、そういう経済の拡大等は行われておるけれど、しかし肝心の三つの障害、さらにもう一つそれに加えてINF、いわゆるSS20の最近における急激な増大、そういうものについて中ソ間では意見が合わない、根本的に対立している、こういうことで今大きな前進を期待することができないと、こういうのが中国の要約した考えでございました。これは今後ともそう簡単には解決する問題ではないだろう、しかし我々としては会談は続けていくと。
また、最近はソ連のアルヒポフ第一副首相が中国にやってくることになっておるので、この副首相に対しては、中国は、かつて中国がソ連から非常に援助を受けたときの責任者の一人であったようで大変な好感を持っておるので、彼に対しては歓迎しようと思うけれども、しかしそれ以上のものにはなかなかいかないであろうと、こういうことでありました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/16
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017・松前達郎
○松前達郎君 それでは次に、このブルネイの問題なんですが、ブルネイと日本の関係、独立したばかりですから、相当深い関係とかそういうものがまだ進展していないかもしれませんけれども、現状におけるブルネイと日本の関係について全般的な問題、簡単で結構ですから御説明いただくのと、それからもう一つは、このブルネイというのは貿易等については日本とは相当大きな貿易をやっているわけですから、今後このブルネイに対する我々の外交についての方針ですね、これをひとつお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/17
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018・橋本恕
○政府委員(橋本恕君) お尋ねのブルネイと日本との関係でございますが、これは経済関係、特にエネルギー供給源としてのブルネイということで、我が国と非常に緊密な関係にございます。
一つの端的な例を申し上げますと、この東京地区におきまして使われる都市ガスの四〇%はこれはブルネイ産でございます。それから、大阪地区で使われております都市ガスの二五%も、これまたブルネイ産でございます。それから電力で申し上げますと、東京地区――関東と言ってもいいんですけれども、つまり具体的には東京電力が原料としておる東京電力発電所の一五%、これまたブルネイ産の原料でもって東京電力が動いていると、こういうことでございます。
この一つをとりましてもおわかりいただけますとおりに、日本とブルネイとのこの種の関係は非常に緊密でございます。一方、ただブルネイは、資源がやっぱり百年近くで切れるという不安がございますので、将来に、約百年後に備えまして国づくりを、つまり油とかLNGが出なくなった後のことを心配しております。日本から、農業関係を初めといたしましてさまざまの技術協力をお願いしたいということでこれまでもかなりやっておりますし、また今後もこの点についてブルネイに協力していきたいと、こういうことでございます。
なお、御承知のとおりにブルネイは、ことし一月一日に独立いたしましたすぐ後、ASEANの正式加盟国になっておりましてASEANのメンバーでもございますし、政治関係におきましても、我が国の対ASEAN外交重視の一環としてブルネイとの関係を次第に深めていかなければならぬということでございまして、来月早速にブルネイの国王が日本に国賓として、来週でございますが訪日されるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/18
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019・松前達郎
○松前達郎君 そうしますと、これからあらゆる面での協力をしていこうと。あらゆる面というか、今おっしゃいましたのは技術協力関係を中心としてブルネイと日本の関係を強化していくということだろうと思うんですが、森林資源といいますかね、林業といったらいいのか、恐らくこれはブルネイだけじゃないんですが、あの地域の国々として非常に森林が多いわけですね。こういったようなものについてたとえば日本が、森林を伐採してそれを木材として輸入する、そしたらその後が荒れ果てたままになっているというようなことがかつてあったような、これはブルネイとは限りませんが、そういうことも聞いてはいるんですけれども、この林業関係ですね、これらの技術開発とかあるいはその計画に関する参加とかそういうもの、あるいはそれと近いんですが農業ですね、こういうものに関しての交流なり支援なり援助なり、こういうものをやる計画がございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/19
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020・柳健一
○政府委員(柳健一君) お尋ねの森林の問題でございますが、実はブルネイに対しましては、すでに昭和五十六年度と昭和五十七年度と二年間にわたりまして森林の造成でございますね、造成のための開発調査というものを実施してきております。それから、ただいままでのところ農業問題につきましては、五十八年度でございますが、稲作の機械化とかあるいはかんがい排水、そういう分野につきましても研修員を受け入れまして技術協力を実施してきております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/20
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021・松前達郎
○松前達郎君 これは最近国連でも、地球が砂漠化するというので一生懸命森林の確保というか、森林をもっとふやそうとか――今ふやすのはとても無理かもしれませんが、これがなくなっていくのを防ごうというんで一生懸命皆さんでやられているようでありますけれども、どうもとまりそうもない。将来の見通しというのは非常に暗いんだということですね。ですから、そういう意味で考えますと、やはりこの森林の問題というのは非常に重要だと思うんですね。ESCAPの国々の代表の方々で、実は国際会議というかシンポジウムをやったことがあるのです。これはことしなんですが、問題は農業のシンポジウムであったのですが、やはり森林関係の問題が非常にクローズアップされていたようであります。ですから、そういった面も十分気をつけてこれからやっていかなきゃならないんじゃないかと痛感をしてきたわけなんですけれども、今お伺いしますと、それらに対する問題にも取り組んでいるということであれば、これをますます強力にやっていっていただければと、こういうように思うんですね。
それから農業の場合も、東南アジアの皆さんに言わせますと、日本からトヨタ、日産、そういうものが盛んに自動車として入ってきた、我々はむうそれは要らないんだと。これは皮肉かもしれませんが、それよりも農業機械とか、あるいは伐採した後のそういうところに対する農業計画ですね、こういうものについて指導をしたり援助をしてくれないかと、こういう意見もあったわけですね。ですから、やはり農業についても国じことで、今もお話がありましたように機械化といいますか、農業機械を援助して、それによって農業の近代化と言っていいかもしれませんが、機械化ということを図っていく、これもひとつ大いに今後日本としては援助をした方がいいんじゃないかと、こういうふうに私は思ったわけです。
そこで、もう一つ問題があるんですが、大体先進国というのは普通工業化された国が多いのですね、ほとんどがそうだと思うのです。農工というのは恐らく農業が要らない、工業で発展をするんだと。それだけではどうも人間の生存に関しての基本的問題が解決されていないんで、やはり農業生産というのも必要だと思うのですね。それから工業ももちろん必要だと。
それで問題は、お金でもって解決するということが一つあるかと思いますけれども、それよりもどうも最近の傾向からいくと、その国々がそれなりの力で、自分の力でもって自分の国の経済を発展させることができるようなそういう手だてを我々の方から援助していこう、その方がどうも長い目で見ると有効じゃないかという気がしてならないのです。その中の一つに教育援助というのがあるんですね。工場が幾らつくられても、その工場のコンベヤーから先のもっと高度なものはみんな日本製であると。例えばそういったものの開発に関する研究所なり、あるいはそういう指導をするセクションがそこにできても、機械はたくさん行くんですけれども使う人がいない。医療もそうですね。ですから、そういうことではちょっと困るんで、やはりそれを使いこなせるような中堅の技術、技能をやはり植えつけていかないといけないのじゃないか、そのためにはやはり教育というものが基本になるんじゃないかと思うんですね。ですから、教育に対する支援、その国の教育を我々が牛耳るなんてこれは越権行為になりますからこういうことはできませんけれども、しかし彼らの要求しているニーズがあるわけですから、そういう問題について、やはり今後対外協力としては重点にしていかなきゃならないのじゃないか、こういうふうに思うんです。その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/21
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022・柳健一
○政府委員(柳健一君) ただいま御指摘の点は大変ごもっともだと思うわけでございまして、実は先生も御案内のとおり、我が国は特にこの近年、教育援助を含めました人づくり援助に力を入れてきているわけでございます。それで、私どもの経済技術援助という見地からも、例えば学校の建設とか、それからあるいは教育器材の供与だけじゃなくて、教員を派遣いたしましたりして大変教育部門の援助については力を入れております。
一例を申し上げますと、例えば昭和五十八年度でございますが、協力隊で派遣いたしましたのは約五百人ぐらいおりますが、そのうち四分の一強は日本語の教育であったり、理科教育であったり、あるいは音楽の先生とかそういった教育分野の人が四分の一強になっております。
それから、無償の援助の中においても、教育関係のそういう技術協力を助けるものとして器材の供与、その他そういうもの、五十七年度におきましては無償供与の援助の全体の一二、三%でございましたのが、五十八年度には倍近くの二三%までふやすというふうに、近年特に教育分野の援助には力を入れてきている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/22
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023・松前達郎
○松前達郎君 その点、ひとつ今後もまた強力に推進していただければと思うのですけれども。
そこで、ブルネイに今度日本大使館の設置ということなんですが、この日本大使館の機能として何か特別障害その他はありますか。それとも、設置すれば普通のほかの国と同じふうにこれがスムーズに運営されるという見通しでありましょうか。その点、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/23
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024・枝村純郎
○政府委員(枝村純郎君) 私どもといたしましては、この予算は実は三カ月予算でございますけれども、何とか差し繰って――今度ボルキア国王が見えることでございますので、早い時期に開設いたしたいと思っております。そのために、すでに現地には駐在官が一人おるわけでございますけれども、早目早目に館員を発令いたしまして開設の準備を整えていきたいと、こういうふうに思っております。
特に現在のところ、開設のために格別の困難がある、あるいは開設後に何か難しいことがあるということは私ども予想いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/24
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025・松前達郎
○松前達郎君 我々さっき冒頭で申し上げたように、とりわけ国際的な面での役割というのは大きくなったというふうに申し上げたわけですが、これは当たり前の話なんですけれども情報ですね、情報の交換というか、情報を伝達する能力というものが非常に問題になるんですね。通信関係はどうですか、どういうふうにされるのか、無線でやるのか有線なのか知りませんが、通信関係がスムーズにいくかどうか。これは何もブルネイだけじゃなくてほかの東南アジアの国々も含めて現状はどうなっておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/25
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026・枝村純郎
○政府委員(枝村純郎君) 通信関係につきましては、在外公館の重立ったもの等はいわゆる専用回線でつないでおります。したがいまして、これは二十四時間随時連絡ができるわけでございまして、この点で特に困難があるとは感じておりません。ブルネイにつきましては、恐らく当初の段階では商業回線のテレックスでつなぐことになると思いますが、その点の設備はかなりきちんとしておりますので、そういう点での困難はないと思います。ただ御指摘のとおり、必ずしもそういった通信面でのインフラストラクチュアが十分でないような国もございますし、特に緊急事態の場合に連絡に非常に困難を感ずるということでございますので、私どもとしては、そういう事態の予想されるようなところについては緊急連絡無線綱というものをいわば控えとして、予備として整備することも一方では進めておる次第でございます。ただブルネイにつきましては、今のところそういった心配はしなくていいんじゃないかと、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/26
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027・松前達郎
○松前達郎君 緊急のときの問題はポーランドのときにあったわけですね。これは別に、今申し上げるからそのとおりされた方がいいというわけじゃないんですが、通信衛星などを日本は上げていますし、ちょうどあのブルネイあたりの真上にいるわけですね。ですから、そういう面ではこういうものも利用して、これは暗号通信でやればいいんでしょうから、そういうものも考えた方がいいんじゃないかとか、これは軍事利用じゃありませんので、大いにこういうものも考えていただければというふうな気もしたものですから、今お伺いしたわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/27
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028・枝村純郎
○政府委員(枝村純郎君) まさに将来の問題として、外交通信用の衛星の利用ということもぼつぼつ検討を始め、研究を始めている段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/28
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029・松前達郎
○松前達郎君 さて、今度ちょっと話が変わるんですが、今ちょうど日本で言うと年度末になるんですけれども、外務大臣が前にアメリカに行かれたときにお約束されたという三月三十一日で、これは農産物の交渉ですね、これが大分いろいろごたごたしているようでありますが、輸入枠拡大についてアメリカが相当強硬であると、特に高級牛肉、これについて相当強力に押してきているということだろうと思うんですが、これが解決しないと相当厳しいことをけさあたりの報道でもアメリカ側が言っておるわけですね、これについて現状でどういうふうに展開をされるつもりなのか、その点をお聞かせいただければと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/29
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030・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) 農産物の日米交渉につきましては、御承知のようにアメリカは自由化を強く求めてきておりまして、これに対して日本は、自由化には農村の立場から絶対に応ずることはできない、こういうことで突っぱねまして、その結果としてアメリカは、それじゃ枠の拡大ということで協定を結ぼうということで、一応自由化の主張は横に置いて枠の拡大交渉に応じてきたわけでございます。そして、これまで事務当局間で鋭意この枠の拡大交渉について折衝が行われたわけでございますが、最終的にはこの牛肉、かんきつについての両国の言い分に開きがありまして、そしてこれは到底このままでは妥結の道はないというところになってしまったわけでございます。
そこで、我々がアメリカに対して強くこれまで申してきましたのは、やはりこのままの状況で置きますとこれはもう決裂せざるを得ない。しかし、今後の日米間の懸案の処理というものを考え、また日米関係全体を考えると何とかこれは妥結したいものだと。しかし、それにしても日本としてなかなか枠についての拡大に限界があるので、今度事務当局が出した案というものは、非常に日本が誠意を持って努力した結果のぎりぎりの限界に近いものであるので、ですからアメリカにもそういう点を十分理解してもらって、そしてやっぱり長期的な立場に立って、この日本の出した案を中心に交渉にひとつ臨んでもらいたい、アメリカが出した案から一歩も引かないということでは到底妥結の道はない、ですから、日本があれだけ努力して出している誠意のある回答にアメリカもやっぱり近づいてきてもらわなきゃならぬ、そうなれば日本側としても、大臣折衝ということになれば多少また弾力性も出てきて妥結の道も開かれてくるかもしれない、まずアメリカの弾力的な対応を求めるということで、実は私も努力に努力を重ねてまいったわけでこざいます。
その結果、シュルツ国務長官からもメッセージが参りました。あるいはまたブロック通商代表からもメッセージが参りまして、両者とも大局的な立場に立ってひとつ解決をしていこう、アメリカとしても我々は政治家としてこれに対応しましょうと、こういうふうな趣旨の手紙が参りまして、我々から見ますと事務当局間で対立しているようなかたくななことではなくて、何かアメリカにも少し弾力的に対応してくるという空気がほのかに見えたわけでございます。したがって、こういう段階において、やはりこれは大臣折衝に持ち込む以外にないと。三月三十一日に切れるわけですから、そしてその三月三十一日をめどにお互いに交渉しましょう、努力しましょうということを申し合わせておるわけです。これは切れるわけですから、やはり切れる段階において放置するわけにもいかないんで、この段階で大臣同士の話し合いで緒論を出すと。これはアメリカがどうしても折れてこない、アメリカが今の提案を一歩も引かないということなら私は到底これは妥結の道はないと思います。やはりアメリカ側も折れてこなきゃならぬと思いますし、日本もそれなりの大臣としての責任における対応というのもあるだろうと思いますが、日本は相当ぎりぎりのところまで出しておるわけでございますから、そういう中で全体を判断して両大臣の折衝というものが行われなければならない。
いずれにしても重要な問題、象徴的な問題ですから、結論を出すには、事務当局だけで意見が合わなかったからといって決裂というわけにまいりませんから、どっちにしたって結論を出さなきゃならないんじゃないか。その日にちがいつになるかは、今自民党そして政府の中でいろいろと検討を進めておりまして、山村大臣がいつ行かれるかということについては大臣自身の判断にお任かせをしておるということで、まだその辺のところは明らかでないわけでございますが、いずれにしても三月三十一日に期限が切れるわけでございますから、多少時間を延ばしたとしてもいつまでも延ばせるものじゃないですから、近く大臣同士で話をするということが絶対に必要であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/30
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031・松前達郎
○松前達郎君 アメリカの方の公聴会の問題とかいろいろ言われているわけですね。ですから、比較的時間は迫っているんじゃないかと私は思うんですが、農林大臣が訪米されるなら、これは政治的な解決を目指して行かれるんじゃないかと思いますし、今のお話ですと、多少アメリカ側が譲歩というのか、そういう感触もなきにしもあらずというふうにおっしゃったわけなんですが、これがうまく妥結すればいいと私どもも思っておるわけなんで、その点はひとつバックアップしてあげていただきたいと思います。
私の質問をこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/31
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032・黒柳明
○黒柳明君 法律案に入ります前に、まずけさの報道からちょっと二、三お伺いしたいんですが、北朝鮮がオリンピックに対する統一チームというような提案を韓国側にしたという報道がありますが、大臣、どういう感触でこれをお受けとめになられましたでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/32
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033・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは私も初めて新聞で見たわけですが、一見したところ、両方がそういうことで合意ができれば大変結構なことじゃないか、そういうように感じとしては直感したわけですが、ただ、今の状況で果たしてやれるかなという疑念も持ったわけですが、これが進んでそしてそういう方向になれば、大変これは朝鮮半島の緊張緩和には大きなやはり前進であろう、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/33
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034・黒柳明
○黒柳明君 テレビの、あるいは新聞の活字の中では、今までの経緯を踏まえて非常に難しかろうと、今大臣のおっしゃったように。政治的なにおいが強いと、こんなコメントもつけられておりましたが。三国の提案問題にせよ今回の問題にせよ、朝鮮半島をめぐっての北朝鮮側の動きというのが若干あるわけでありますけれども、それをすべて政治的なスタンドプレーだ、こう片づけるのもどうかなという感じもするわけであります。
なかんずく日本政府としては、これも活字の方が先行しているみたいですけれども、中国を仲介する人道問題について、北朝鮮側に何らかのやっぱり答えを出してもらう可能性があるときなものですから、こういう問題につきましてもすべて政治的なスタンドプレーだ、こういうふうに片づけない方が私はいいというような感じ――かといって、日本は当事国じゃございませんものですから云々する立場ではございませんけれども、当然韓国との緊密な関係もあるわけでありまして、朝鮮半島の問題はこれはもう看過できない立場にあるわけでありますので、北朝鮮のこういう一連の平和攻勢と断定していいかどうかわかりませんが、そういう中における一環のまた動きだろう、こう思うのですが、基本的に北朝鮮との関係がない我が国でありながら、中国を仲介して人道的な配慮を願う日本の立場、こういう問題につきましてもそれ相応のやっぱり考え方というものを持っていなければならないんじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでありますが、今申しました、すべて政治的なものだ、こうネダることの善悪というものは私疑問に思うのですが、基本的に大臣、この北朝鮮の一連の平和攻勢みたいな動きについての感じはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/34
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035・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) 私、こうした北朝鮮の一連の動きがどういう真意に基づくものか、その辺のところは見届ける必要があるんじゃないか、こういうふうに思っております。
私が非常に残念に思うのは、ラングーン事件の起こる前までの状況は、実は南北問題につきまして相当水面下の動きが進んでおりまして、中国、そしてアメリカ、日本、韓国もそうですが、そういうものを含めてある程度方向としては進んでおったんじゃないかと私は思うわけです。それがどういうことかビルマの発表によれば、北朝鮮のしわざだ、こういうことに断定されてしまったわけでございますが、あのような事件が起こってそして韓国の要人が殺されてしまう、こういうことになってしまって、今まで実は少しずつ進んでおりました空気が一遍に吹っ飛んで、緊張が一挙に激化したわけでございまして、私は去年からずっと外務大臣をやっておりまして、その辺が実は非常に残念に思うわけなんです。あれがなかったら、私はちょっと局面が変わってきたんじゃないかと思うのですが、その辺の真相がこれはビルマの言うとおりで、ビルマがそういうふうな発表をしているわけですから、そういうふうに我々もとらざるを得ないわけでありまして、そういうことで日本もテロに反対という立場で措置をとらざるを得ないということになりまして、いろんな面で冷えてきておるわけです。
しかし、その後もやはり依然として三者会談の提案だとか、あるいは今突然のこうしたオリンピックヘの共同チームをつくろうという呼びかけとか、いろいろな動きが北朝鮮からも出ておるわけでございますから、その辺のところは北朝鮮側に一体どういう真意があるのかと、そういう点がまさに日中関係という深いつながりの中でいろいろと話し合いもしてきたわけであります。というのは、中国なら北朝鮮の真意というものがつかめるわけでございますから話もしてきたわけでございますが、我々としては今後の北朝鮮の動きを見、さらにまた中国側の反応というのもあると思います、それからまたアメリカとの間、あるいは韓国との間で我々いろいろと相談をしながら、いろいろな問題はあったとしても、長期的に見れば、この朝鮮半島の緊張緩和の方向に向かって基本的にはお互いにこれは努力をしていかなきゃならぬ、そういうように私は思っておるわけでございまして、そういうふうな基本的な立場で対処しなきゃならない。
そういうことで、今のこのオリンピックの参加問題とか、それから中韓の今の非政治的面での交流の拡大であるとか、あるいはまた我々の、中国を通じての北朝鮮に対する人道的ないろんな要請であるとか、そういうことを積み重ねることが私はある意味において重要なことであろうと、こういうふうな基本的な認識を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/35
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036・黒柳明
○黒柳明君 先ほどちょっと触れたんですが、予算委員会でも私発言しましたが、総理と外務大臣の意見が食い違ってないと私はあのとき言ったんですが、報道で見る限り、知る限りは何か若干こうちょっと違っているのかな、こんなような感じを受けるんですが、外務大臣の方は非常に対ソ問題でも積極的ですしね、北朝鮮の問題でも、そういう立場にある直接の責任者ですからそうならざるを得ないかと思うんですが、人道問題のこの三項目、私も言って、活字にもきのうあたり出ておりましたが、この検討はされて、当然胡耀邦総書記が北朝鮮を訪問する時期に合わせなければこれは意味がないんでして、その時間は若干ありますけれども、当然それに合わせて仲介の労をお願いする、それについての検討はもう終わったのか。あるいはその時期も、早く正式にお願いしなきゃならないんだと思うんですが、何か活字の方では先行してもう決まったみたいな、あるいはもうお願いするんだと、こういうふうな感触を受けますが、外務省としてはその点は具体的にはどういうふうなことになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/36
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037・橋本恕
○政府委員(橋本恕君) 北朝鮮と我が国との人道問題に関する諸問題、先生は先ほど三点を御指摘になりましたけれども、その検討した後で中国にお願いする、こういう点につきましては国会でも大臣が何度も明らかにされましたとおり、私ども、大臣の御指示で現在検討を急いでおる段階でございます。
これは第一義的には、何と申しましても先生御指摘の三つの問題、それぞれ日本側の関係者の御意向をまず十分に承る、その方々のために政府は動くわけでございますから、つまりそれを、日本側の関係者の御意向を今十分承るべく努力をしている。具体的な対応を考えて、やっぱり中国にぶつけると申しますか、お願いするわけでございますが、ただ中国と北朝鮮との関係から申しましても、何でもかんでも困ったことは全部中国に頼むということでは、中国もこれまたお困りでしょうから、中国として受け入れられるであろうと思われるような点はどういうことであろうかということもまた考えながら、もちろんこれは最終的には大臣、総理の政治判断として御決裁をいただいて中国に頼む、こういうことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/37
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038・黒柳明
○黒柳明君 そうすると、基本的には仲介の労をお願いするという姿勢はもうこれは決まっていると。当事者、日本国内の関係者のいろいろ意見を聞きながら中国が仲介の労をとって失礼にならない、そういうものを提案したい。それと同時に、また胡耀邦の北朝鮮訪問という時期をずらすわけにいかない。この時期もやっぱりタイムリミットがある。この点はもうはっきりしているわけですね。
それから外務大臣、直接交渉を持っていない国でありますが、中国に仲介の労を頼んで、これは具体的にどういう提案をするかわかりませんけれども、それでどういう返事が返ってくるか、これはさらにわからないわけでありますが、そういうことを機会にして、ラングーン事件はラングーン事件でビルマの国が断定的に北朝鮮の関与であると、こういうふうな発言をした、これは事実は間違いないと思うんですが、それはソ連のアフガン侵入と同じようにやっぱりぬぐい去れない国際的な汚点であるかと思いますけれども、しかしながら、我が国が直接人道上の問題で仲介の労を頼み、また話し合いというか、そういう何らかの返事が返ってくる、そんな変な返事が返ってくることはないと思うんですが、そういうときをやっぱり一つのチャンスにしまして、ラングーン事件前に戻る努力というものは、さっき外務大臣もおっしゃったように基本的には関係というものは結んでいかなければならないと、その時期は今ちょうどタイミングとしてはいいんじゃないかと、こう思いますが、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/38
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039・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) やはりラングーン事件というのが非常に大きな傷跡を韓国に残しでおりまして、これは当然のことですが、我々もああいう事件というのは今後とも排除していかなきゃならない重大な事件であろうと思いますし、忘れることはできないわけなんですが、そこで私も中国側にはやはり率直に言ったわけです。北朝鮮が例えば第三者会談を進めるとしても、韓国がどうしてもつかえるのは、このラングーン事件について何らかやはり北朝鮮が誠意を示すということが心要じゃないかと。これに触れないで第三国会談を提案してもなかなか韓国としては受けられない、これは北朝鮮にも伝えてもらいたいということを私は率直に言ったわけでございます。
同時にまたもう一つは、三者会談で、米軍の韓国駐留がいわば三者会談を行う一つの入り口の問題になっておりますので、これも韓国側としては初めから米軍撤退なんというようなことを前提にした三者会談をやれと言っても受け入れられる筋合いのものじゃないし、アメリカも受け入れられる筋合いじゃない。これは出口として、平和協定でもできたときにそういう方向に行くのなら、それはそれなりの一つの朝鮮半島の安定という道筋であろうかもしれぬけれども、入り口でそういうことを条件にしてもできないんじゃないかと。だから、その辺は公正に、非常に親しい中国から北朝鮮にやはり伝えてもらいたいと、我々の考えも伝えてもらいたいということを述べたわけでございますが、北朝鮮がこれに対してどういうふうに反応するのかわかりませんけれども、しかし北朝鮮としても、今までのいろんなアプローチを見てみますと、本当の真意はまだ十分把握はできない点もありますが、しかし相当熱意を持ってやっておることは事実であろうと思われます。
それで我々としても、ラングーン事件の傷跡はまだ残っていますけれども、ラングーン事件によって、今お話のようにやはりこれまでの枠組みを壊してはならないと私は思うわけです。日本と北朝鮮の枠組み、あるいはまた日本と韓国の枠組みはこれは当然のことですが、そういう枠組みはやっぱり基本的には壊してはならない。そういう中でこれから長期的な朝鮮半島の情勢の緩和ということに向かっていろいろな動きが出てくるでしょうから、そういうことを長期的に踏まえながらやはり適切に対応していくということが大事じゃないかと。頭を冷静にしてこの問題に取り組んだ方が、東北アジアの安定のために、平和のためにいいんじゃないかと、日本もその役割は果たしていかなければならない、そういうふうに私は率直に感じておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/39
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040・黒柳明
○黒柳明君 済みません、もう一、二点お願いしたいんですが。
先ほど触れました農産物交渉ですけれども、私も一九八〇年、レーガン政権誕生すぐの三月に、ちょうど自動車の問題ががたがたしていまして行きまして、ブロックさんとお話もして非常に物わかりがいい人という感じを受けました。しかしながら、行政府も向こうは議員に対する何らかの配慮をしなければならないし、議員は当然選挙民に対する配慮をしなければならないということでやっぱりそれなりの苦慮をしていましたが、特別にあの結果というものは、日本の自動車業界に対して予想に反したといいますか、非常に常識的な結末を得たと。ですから、シュルツさんにしてもブロックさんにしても、そんなに日本政府をただ単に困らせるという観点での交渉、立場ではない。ただ、その前には地元民の利益を代表する議員がいると、こういうことで、これは日本でもアメリカでも同じですが、農林水産大臣が訪米することはただ単に山村さんの一存では当然ないわけでありまして、内閣全体、あるいはアメリカと交渉の最前線に立つ外務大臣もこの意向を相当に酌まなければならない、こういうことだと思うんです。
しかし、先ほど大臣もおっしゃったようにまだ自民党内の調整もできていない、大臣はどうも行く気がないと、私たちがマスコミの報道で知る限りは。ただ問題は、先ほど大臣が何度もおっしゃったように、あしたで期限が切れるわけであります。それから、何か私が向こうといろいろ話している感触ですと、自動車以上に、向こうの行政府が今回は非常に怒っているという私なりの感触は持っております。自動車の場合にはそんなに行政府が怒っているという感触じゃなくて、むしろ議員の中で怒っていると、こういう感じの方が強かったんです。しかし、今回は行政府の方が非常に怒っていると。このままでいくと、大臣も感じていられるように、日米間の貿易摩擦がこの二つに集約されているようなこういう感じにもなって、これは何かおかしな雰囲気だとなりますと、やっぱりあしたが期限切れ、それから言われておる二日が公聴会、ここらあたりが非常に一つのデッドラインのタイムリミットのときであること、これは間違いないと思うんです。だからこそ事務レベルでわざわざ訪米して一生懸命局長は交渉したし、向こうからもアプローチはあるんだと。
ただ、こちらの決断というのが今のこの時期の大きなポイントかと、こう思うんですけれども、あした、それから明後日の二日、あした、あさって、しあさってですか、この時期を失すると、公聴会の後というのは非常に世論というもの、ムードづくりというものが難しくなるかと思うんですが、これは外交の当事者として前から行くべきだ、行くべきだと発言していた大臣でありますから、むしろ自民党がまとまっていない、農林大臣が行く気はないというよりも、内閣全体として日本の国としての問題になる、こういうような感じが私はするんです。大臣、これはやっぱり日米間がここまでよくいっているわけでありますから、防衛、安保でよくいっているから、貿易摩擦で悪くいっていいんだというわけにはいかないんでありまして、これは外交の当事者として是が非でも、この政治折衝の最大の責任者である、最後の責任者である農林大臣に――これは時間を失することが今は一番日本にとってマイナスだと思うんですが、私ごときがこの場で何も大臣に言うことじゃなくて、大臣はこの何倍も頭を悩ましている問題だと思うんですが、こんなことをひっくるめて大臣はどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/40
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041・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) 黒柳さんはアメリカでいろいろとルートを持っていらっしゃると思いますが、今お話を聞きまして、私もやはりその感触というのは相当正確ではないかと思います。我々の感じとしても相当やはりアメリカは深刻になってきておりまして、自動車問題以上といいますか、まさに象徴的な問題になっておるわけでございますが、ただ我々から見ると、アメリカも農産物の問題に関しましては少し欲張り過ぎているといいますか、日本の実情というものを十分把握していないという点がどうしてもありまして、その辺に我々はアメリカに理解を求めるわけなんで、日本にもっと農村の国際競争力ができてくれば、これはもう自由化にでもなんでも応ずるわけですが、今の状況では自由化には到底応ずることもできない。そしてまた、農業というのは各国ですべて保護政策をやっているのは御存じのとおりで、ECなんか日本以上に補助金まで出して、EC全体としての相当保護政策をやってアメリカとは対立しているわけです。ただアメリカの自由化を求める、そして自由化に等しいものをやはり今ここで日本に求める、そこでもってすべてのことを、すべてのここまで積み上げた問題を、日米関係というものを非常に悪いものにしてくるということは、私はアメリカ自体としても決して賢明ではないと、こういうふうに思うわけです。
その点はアメリカ政府に対して――議会は恐らく、確かにおっしゃるように公聴会がありますから二日ごろから動いてくると思いますが、今行政府が予想以上に強硬でありますので、行政府に対して、我々としては今申し上げましたような立場から弾力をもってこの問題を、日本としてもぎりぎり譲れるところは譲るという決意を持っておるので、そして既にオファーしたのも大体そういう線でオファーしているわけですし、そしてまた大臣が行けばそれなりの政治判断をしてくるわけでしょうから、それはそれなりのことを考えでいっている。日本としても限界があるわけで、その辺のところはやはりアメリカも十分弾力を持って踏まえてもらいたい、もっと前に出てもらいたい、日本がけしからぬ、もうこれ以上は譲れないということでは、これは幾ら何でもどうにもならぬ。
おっしゃるように、ブロックさんは非常に柔軟な人で私も長い間つき合っておりますが、今回に限っては、何と言いますか、我々から見ると大変かた過ぎるというふうな感じを率直に持つわけであります。ですから、何とか柔軟にもっと弾力的に対応してもらいたい。
幸いにして我々のそうした要請といいますか、日本の主張がアメリカ全体としても反映をされまして、やっぱりこれは大局的に対応しようと、そして、アメリカとしても政治家としてこれにブロックさんもシュルツさんも対応しょうと、ですから山村大臣においでいただきたいと、こういうところまでなっておるわけでございますから、ここで期限が切れる、そして大臣の訪米が決まらないままに一日、二日と期限が過ぎるということになる、公聴会が一方では開かれる、議会で火がつくということになりますと、思わぬところで日米関係に非常な亀裂が起こってくることを私も心配をいたしております。少なくとも、行くのはいつにしても、一日、二日多少おくれることがあったとしてもやはり行って、とにかく両責任者間で話をつけるということまでは何とかきょう、あすじゅうにでも決めてもらわないと、これはアメリカに対してもなかなか言いようがないなと。そして、期限が切れてアメリカはどうするかということになるわけですから、そういう基本方針だけは何とか決めておいてもらいたい。これは総理大臣も含めて、おっしゃるように政府全体の問題としてこれからひとつ相談をして、そして農産物の問題が日米間全体を悪くしないように、こんなことで日米間を悪くしないようにひとつ最大の努力を傾ける決意であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/41
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042・黒柳明
○黒柳明君 この法律を見ますと、セント・ヴィンセントとセント・クリストファー・ネイヴィースと在外公館の給与体系が相当選うんですが、これは国情は相当やっぱり違うわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/42
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043・枝村純郎
○政府委員(枝村純郎君) 在外公館の給与を定めます場合、特に兼轄公館の場合でございますと、これは周辺のその国における我が方の館員の在勤手当でございますとか、あるいは実際に開設前に周辺の大使館から人を出しまして現地の物価の状況その他を調査いたします。それからまた、そこに置かれております外国の在外公館がありますればこれの状況なども、在勤手当の状況なども調査してやるわけでございます。そういった調査の結果、御指摘のような違いが出ているわけでございます。国情の点で格別の違いがあるということじやございませんが、物価その他の関係がそういうふうになっておるという調査の結果でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/43
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044・黒柳明
○黒柳明君 私ども海外へ行きますとよく聞くんですが、特に先進国で、住宅手当というんですか、支給されているがやっぱり住宅事情が悪いと、こういうことで、外交官のメンツとか威厳といいますか、体裁といいますか、それを保つためにはやっぱりその住宅手当をオーバーしたところに入らなきゃならないと。先進国へ行きますと、押しなべてそういう意見を言うわけじゃないんですが、意識する限りにおいてはまずほとんどそうなんです。これは行革の最中ですし、当然どこにおいても窮屈なんですが、特に限られた数の外交官の皆さん方からそういう面で意見を私耳にすることが多いんですけれども、当然そういう外勤をされた経験が、あるいは先進国でそういう経験があるかと思うんですが、こういうことについては実情というものはどうなんでしょうか。調査するまでもなく全部そういう中においてやっているんだと、いやそんなことはないんだと、みんな苦労しているけれども、おのおのうまくやればそんなことはないんで、きちっとその手当の中で処理できるんだと。調査をやったこともないと思うんですが、御経験からどのように判断されますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/44
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045・枝村純郎
○政府委員(枝村純郎君) 率直なところ御指摘のようなことがあろうかと存じます。と申しますのは、私どもといたしまして十分な予算があれば、この住居手当の限度額というものを先回り先回りで、現地の状況などに応じ、各館員の職務内容、交際の必要、そういったことも勘案して十分な広さの、また十分に設備の整った家が借りられるようにしてやりたいわけでございますけれども、現実には予算の制約その他がございまして、査定をいたしますときにも、どうもあそこは限度額を超過しているのが多いと、そういうことでそういったものをやや後追い的に改善していっているというのが現状でございまして、どうしても今御指摘
のような不満が、ただいま先進国とおっしゃいましたが、先進国のみならず、より条件に恵まれないところでも深刻な状況があるのが実情でございます。
今後とも関係方面の御理解を得ながら改善していかなければならない点だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/45
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046・黒柳明
○黒柳明君 これから選挙制度でも、海外在留邦人の選挙権をどうするかとか、あるいは教育改革の中で帰国した海外の在住者の子女の問題をどうするかとか、こういう問題がこれからテーマになって出てくるかと思います、政治的に。まず皆さん方も、皆さん方偉い人は今後は大使になられるわけでありまして、大使の公邸に住まわれるからそういう問題は全くないんでありますけれども、過去においてやっぱりそういう経験をされたかと、こう思うんです。特に、各国に比べて非常に数が少ない日本の在外公館の外交官の中においての活躍なものですから、私もたまに外交官のうちにお邪魔しますと、やはり実情に反して決してぜいたくをしているような感じもしない。その中においてまあまあ身分相応のと言えばそれだけのものですけれども、やっぱりもうちょっと何とかしてもらった方がいいなと。これは予算の中でと、こういうことになるんですが、ひとつこれも今後――皆さん方当事者も当然そういう意識はお持ちだと思うんで、ぜひ当局との折衝の中においてそういう面もやっぱり改善しつつ日本外交――住宅問題だけがすべてのテーマじゃないのですが、一つのテーマにしていかなければ、限られた中においての思うような活動というものについても幅広くできないんじゃなかろうかと、こういう感じも受けておりますので、ひとつ官房長を中心にぜひ御検討願いたいと、こう思います。
以上です。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/46
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047・後藤正夫
○委員長(後藤正夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。
ただいま久保田真苗君が委員を辞任され、その補欠として梶原敬義君が選任されました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/47
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048・抜山映子
○抜山映子君 我が国の外交予算額を先進サミット国と比較いたしますと、米国は日本の五倍、ドイツ連邦共和国は日本の二・五倍、フランスは日本の一・七倍、それぞれ非常に高いわけでございます。その結果、外務省の定員もこれらの国より目立って少ない。さらにインドやイタリアよりも日本の外務省の定員は少ないという実情でございます。
そういうわけで、在外公館の必要最小限の定数は、館長を初めといたしまして政務、通信、それから警備に至るまで最低八名が必要だと言われておりますけれども、現在、在外公館の四四%が七名以下というありさまであると伺っております。さらに実館と兼館がございまして、在外公館二百二十八の中、六十四の兼館があると聞いておりますけれども、兼館はその任地に建物もなく、そしてスタッフも実館と兼務である。こういうことではこの国際社会において情報収集もできなければ、多様化した国際社会にも対応できない、こういうように心配されるわけでございます。
外務省は、昭和六十年度までに定員を五千名にしたいということを希望しておられますけれども、これが達成される予算上あるいは人材確保上のめどについてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/48
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049・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) 今おっしゃるように、外務省は予算、定員とも先進諸国に比べまして随分おくれておりまして、人員につきましてもようやく五十九年度にお願いをして、その結果三千七百九十五人ということになるわけで、これは先ほどお話のようなインドの五千人に比べましてもはるかに落ちるわけですし、それからイギリス、ドイツ、フランス、そういう国々に比べましてもずっと少ない人員でやっておるわけで、これだけの外交用務、外交の仕事が多くなった状況の中でほとんど限界を超えていると言ってもいいわけでありますが、今の財政の状況からいきますとなかなか定員も思うように――ほかの各省に比べまして少しでもふやしてはもらっておりますけれども、今のままでいきますと十年たっても五千人には到底なりにくい、こういう状況でございますが、しかし外交の実施体制についての重要性というものについては、国会におきましても与野党通じて大変な御理解をいただいておりますので、我々はそうしたお力もかりましてできるだけ早く最低五千人体制にもっていきたいと思いますし、あるいはまた予算の点につきましても、この財政再建の中ではございますが、特に重要な海外経済協力であるとか、その他情報の収集活動であるとか、そういうための予算措置等はこれはやっていかなきゃならない。時代からおくれてしまうわけですからやっていかなきゃならぬ、こういうことでひとつ力を尽くしてまいりたいと思うわけでございます。
五十九年度予算も我々の目途とするところまではいきませんでしたけれども、しかしある程度の御支援は得たと思いますが、これからもひとつ全力を傾ける決意でございます。
なお、今御指摘のいろいろな兼轄等の問題については官房長から説明をさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/49
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050・枝村純郎
○政府委員(枝村純郎君) 確かに御指摘のとおりに、十分な外交を果たすためには兼轄という形は全く望ましくないわけでございますが、他方、先生も御指摘になりましたように、小規模公館が余りに多いというのも実態でございます。私どもとして今考えておりますのは、どちらかといいますと実館のひ弱いのをこれ以上ふやすよりも、少なくとも小規模公館というもの、特に大使館につきましては四人とか五人とかというもので大使館の看板を掲げておる、こういったものは充実していく、そっちの方を先にいたしまして、兼轄公館を実館化していくという方はもうちょっと先にしようじゃないか、そのかわりには親公館を強める、そこに優秀な館員を配置する、さらには旅費なども潤沢に配賦いたしまして兼轄の地域をしばしば訪問できるようにする、そういったふうな体制でいきたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/50
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051・抜山映子
○抜山映子君 在外公館に勤務する人の一国当たりの駐在期間なんですが、日本の場合は平均二年数カ月というありさまなんですね。外国の例を見ますと、長い人は十年以上にも及んで、その国についてはプロだというようなことがあるわけでございます。このように二年数カ月の滞在期間でございますと、現地にやっとなれて重要人物とも人脈ができ、語学も上達したころにその任地を去ってしまうということになって大変効率が悪いように思うのでございます。もちろん、開発途上国には医療の問題、気候風土の問題、物資調達の問題、治安、子女の教育、情報欠如、もろもろの問題があることはよく熟知しておりますけれども、特にマラリアにかかるとか高山病にかかるという国はさておきまして、もうちょっと在任期間を一国当て長くすべきではないか。もちろん、現在外務省においては在外公館百六十四のうち九十二を不健康地として指定して、不健康地については一年半ごとに故国に休暇をとって帰れる、その他の国については三年ごとに帰れる、こういう制度があることは存じておりますけれども、さらにこの問題を拡充して、一年ぐらいで大幅に二カ月ぐらい休暇を与えて日本でリフレッシュすることができるということにして、在任期間をもう少し長期にして本腰を入れて外交に取り組むべきだと思うのでございます。この点について御意見をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/51
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052・枝村純郎
○政府委員(枝村純郎君) まさに御指摘のとおりでございまして、現在の各在勤地における外務省員の在勤期間は二年数カ月ということでございます。数年前からこれを三年間に平均して延ばすように努力するという目標を掲げております。
他方、これも御指摘のとおり、そのためには特に社会的、文化的あるいは気候的条件の悪い地に在勤する人たちが十分安心して在勤できる体制を整える、いわゆる私ども不健康地対策とか瘴癘地対策とかと申しておりますが、そういったものの充実を図りませんとこれは不可能でございますので、特にただいま御指摘のございました休暇帰国制度の中で不健康地指定のある在外公館、この数をふやすということを一つの大きな目標といたしまして、三年ぐらい前からこれは査定当局の理解も得て、今の在勤期間延長計画の一環として、先ほど御指摘の九十二公館までふやしてまいったわけでございます。そのほか不健康地対策を、宿舎の面あるいは電気、ガス、その他物資の面について講じております一つの目標といいますか目的も、ただいま御指摘の在勤期間の延長にあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/52
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053・抜山映子
○抜山映子君 ところで、その帰国休暇の制度でございますが、完全に消化されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/53
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054・枝村純郎
○政府委員(枝村純郎君) 消化と申しますのがその希望者といいますか、有資格者がそのとおり帰れているかという御指摘であれば、確かに若干おくれおくれにはなっておるわけでございますけれども、数字で申し上げますと、五十六年度に実施いたしましたのが三百十三件、五十七年度に実施いたしましたのが三百九十件でございます。五十八年度、今終わろうとしておりますが、四百十五件を実施できる見込みでございまして、先ほど申し上げましたような予算上の手当てもございまして、ここ三年ほどでかなり改善を見ておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/54
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055・抜山映子
○抜山映子君 相当積み残しがあると聞いておりますので、そういう面からもひとつ充実していただきたいと思うのでございます。
現在外務公務員の国家試験は、上級職員が二十歳から二十八歳未満、専門職員が十九歳から二十七歳未満という年齢制限があるわけでございますが、これでは日本の大学を卒業いたしまして海外留学した、あるいは海外駐在した、語学においても非常にすばらしい、そして海外知識においても非常に豊富な人材が締め出されている懸念があるように思うのでございます。もちろん外交官は、十年ぐらいキャリアを積みませんと本物になりませんので、若くなくちゃいけないという要請はわかりますけれども、もう数年この上限の枠を上げてはいかがかと思いますが、この点の御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/55
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056・枝村純郎
○政府委員(枝村純郎君) 御指摘のところでございますが、私どもといたしましては、そういう上級職なり専門職なりの職員を採用いたしました後、本省における研修あるいは見習い的な意味での実務経験というものを積ませました後、在外に勤務に出しまして語学の研修を中心にした研修をさせるわけでございます。そのためにはやはりなるべく若い方が言葉の勉強にはいいわけでございまして、したがいまして、現在のような年齢制限というものを設けているわけでございます。他方、先生御指摘のとおり、せっかくそういう外国の大学を出たりあるいは外国でいろんな分野で活躍した人、これも外務省は採るべきじゃないかという御指摘は、まさに私どもそのとおりだと思うわけでございます。
ただ、この人たちに試験を受けて入ってこいといいますと、いわば今までの三十五歳なら三十五歳まで積まれたキャリアがまたゼロになって二等兵から始めるわけでございますから、それよりもむしろそういったものを尊重して、中途採用という形でしかるべき格付をして活躍していただく、この方が適当であろうと思います。現に私、よくこういったときに例に引くんでございますけれども、前の人事課長をしておりました人はそういう形で、ハーバード大学の講師をしていたのを途中で採用したわけでございます。そういうのをちゃんと官房の人事を扱う人事課長にもしているわけでございます。そういう面では、私ども大いにその中途採用という人を活用いたしております。特に今度定年制の実施がございまして大分退職者がふえると思いますので、ここ一、二年の間優秀な人を中途採用したいと、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/56
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057・抜山映子
○抜山映子君 しかし、中途採用はあくまでも外務省の裁量でこの人がいいかどうかということで決められるわけでございますので、やはり道は狭いと思うのでございます。この点、もう一度上限を引き上げることについて御検討いただきたいと思うのでございます。
語学の問題でございますが、出発前、大使につきましては、赴任の発令から実際の赴任までの間に長い人では約二カ月、短い人で二週間ないし四週間の語学研修があると聞いております。しかし、大使以外のスタッフにつきまして本人の専門語学以外の国に赴任する場合、一週間とか二週間の研修があればいい方で、ほとんど研修が行われていないと聞いております。これでは現地の情報収集は非常に難しくなる。せめて二カ月なり三カ月なりの研修を設けるべきと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/57
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058・枝村純郎
○政府委員(枝村純郎君) ただいま特殊語学の赴任前の研修のことについてのお尋ねでございました。これは必ずしも大使に限っておるわけではございません。一般の職員につきましても、スペイン語でありますとかアラビア語でありますとか、中国語、ベトナム語、さらにはフランス語なども赴任前の研修の機会を与えておるわけでございます。それから若い五等級以下の館員でございますと、赴任した後も特殊語学研修と申しまして、能力に応じて初級、中級、高級に格付をして格別の手当も出しまして現地で勉強させる。あるいは最近やや実験的に進めておることでございますけれども、できますれば赴任地に赴任しました後、館務を離れて数カ月の現地での研修をさせる、そういうこともいたしております。
しかし、いずれにせよそういう研修をするためには人を割がないといけないわけでございます。先ほど大臣も申し上げましたように、また先生からも御指摘がございましたように、定員が少ないとそういう研修をさせる余裕がないわけでございます。これが私どもの最大の悩みでございます。何といっても人が欲しいというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/58
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059・抜山映子
○抜山映子君 実際に研修が行われているような御説明でございましたが、私の聞いておる範囲では、若い方は非常に忙しいために研修はなくて、いきなり現地に行って家庭教師を雇って非常に苦労をしておると、こういうことでございますので、もう少し実情を御調査の上、出発前の研修にお力を入れていただきたいと思います。
さて、現在新聞紙上で農産物あるいはVAN等、それに限りませんけれども、外務省と他省庁間、特に大蔵、通産省との間において非常にセクショナリズムが強くて、対外的な対応が統一されていないケースがあるように見受けられるわけでございます。これは対外的な信用を落とすことにもなりますので、何とか外交チャネルを一本にまとめるように前向きの対策を講じていただきたいんですけれども、これについて有効な対策がないものか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/59
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060・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) 確かに日本の役所の権限争いというのは相当激しいものがありまして、私も実感しております。最近ではVANの問題をめぐっての郵政省と通産省、それからソフトプログラムをめぐっての文部省と通産省、それから外交、通商の分野で外務省と通産省、いろいろと問題がありまして、これはもう日本だけじゃないようです。アメリカでもUSTRと商務省なんか随分張り合っているようですから、あるいは国務省といろいろと問題を起こしているようですから日本だけでもない。私は役人をやったことがないですからよくわかりませんが、役所の世界というのはそういうあれがあるのかもしれませんが、権限争いは相当激しいわけです。しかし、これはやはり統制といいますか、調整をしていかなきゃならぬ。そのために総理大臣あるいは総理官邸というものがあるわけですし、官房長官がそういうところで調整役はやっておるわけでございますし、曲がりなりにもそれはやってきておると思いますが、事、外交に関しましては、やっぱりこれは外交の一元化でして、どうしても対外的に貫いていかないと日本の威信に関するわけでございますし、外交が効果的に行われない、相手の国に日本が信用されない、こういうことになるわけでございますから、我々は、外交については外交一元
化ということでこれを進めておりますし、この原則だけはどんなことがあっても崩して。はならない、こういう信念で取り組んでおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/60
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061・抜山映子
○抜山映子君 海外から帰国した子女の受け入れの問題でございますが、一つの例ですけれども、現在、国立大学で特殊に書類選考で受け入れているという大学、しかもこのうちの特定の学部だそうでございますけれども、わずか十二校でございます。このようなことでは、安んじて外交官も子女を同行して任地に赴くことができませんので、何とかもっと枠を広げていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/61
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062・坂元弘直
○説明員(坂元弘直君) 帰国子女の我が国の学校への受け入れの問題でございますが、今先生から御指摘のありました入り口の問題だけではなくて、私どもとしましては、従来から大学の入学資格についても、最近は我が国と外国の教育制度がかなり違うということもございまして弾力化をいたしておりますし、それから学期の受け入れも、原則的には四月一日から三月三十一日というふうに我が国の学校制度ではなっておるわけですが、これも二年ばかり前に制度を改めまして、必要ならば九月入学も可能なようにいたして、帰国子女の受け入れ、あるいは外国からの留学生の受け入れなどに支障のないような対策を講じておるところでございます。
それから、今御質問のございました帰国子女の入学の入り口での受け入れの問題ですが、確かに本年度国立大学で、先生が御指摘したような学部の大学の数しか帰国子女のための特別の入学受け入れ枠と申しますか、入学試験を別個に行うという大学の数はまだ少ないわけですが、これは昨年度と比較いたしますと、昨年度は四大学しかございませんでした。それが本年度はそれだけの大学にふえたと。あるいは公立大学につきましても昨年度までは二大学でございましたが、五十九年度、本年度はその大学が五大学にふえた、私立大学につきましても年々受け入れ枠を別に設ける大学がふえてきております。そういう関係で、私どもとしましては、入学試験そのものは各国立大学、各私立大学等が自主的に行うわけではございますけれども、帰国子女が安心して外国に行き、そして我が国に戻ってこられるというために、大学の入試においても特別の枠を設けるということを今後も進めていきたいと思います。単に帰国子女の受け入れだけの問題ではなくて、大学の入学試験全体の改革の問題として、私ども、もっと窓口を多様化したらどうかという指導を国公私立に行っそおるわけですが、そういう窓口を多様化するということの一環としても、ぜひ今後とも帰国子女の特別入試を行う大学をふやすという方向で鋭意指導を続けてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/62
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063・抜山映子
○抜山映子君 我が国の在外公館が、日本に留学した留学生を全くアフターケアしておらないようなんですね。やっぱり日本に留学してよかった、日本が懐かしいというように留学生に思っていただいて、今後の日本とその国との友好を進める上に力になってもらうために、もっと在外公館が留学生に――帰国した留学生にですね、これのアフターケアをしていただくわけにいかないものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/63
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064・柳健一
○政府委員(柳健一君) 国際協力事業団が受け入れました外国からの研修生がそれぞれ途上国に帰りまして、そのアフターケアとしての大きなことを申し上げますと、三つぐらいのことをいたしております。
一つは、日本で学びました技術、それをさらにブラッシュアップするために巡回指導チームを派遣したり、あるいは関係の文献を送ったり、それからもう少し親睦の意味を含めまして、帰国研修員の同窓会をつくりましてそしてときどき集まるようにする、こういうようなことをいたしておりますが、そういう今申し上げました三つの活動におきまして、在外公館はいわば中心的な役割を果たしておるわけでございます。特に事業団の場合、必ずしも在外事務所はたくさんございませんから大使館の果たす役割は非常に大きくなっておるわけでございます。また例えば、在外公館長が、帰りました研修員を集めて時には一席設けてゆっくり懇談するというようなこともいたしまして、そのアフターケアについては従来とも一層努めておりますが、今後ともさらに努力をしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/64
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065・抜山映子
○抜山映子君 時間もございませんので希望だけ申し上げておきますが、海外青年協力隊の隊員が国内に帰国いたしました折に、派遣時間が就職とかあるいはキャリアの上でマイナスになるということで、若い人が海外青年協力隊に行きたいと思いながら、日本でのデメリットを考えてやめるというケースも多いようでございますので、ひとつ、海外派遣期間についてマイナスにならないような身分措置をお考えいただけたらうれしいと思います。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/65
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066・立木洋
○立木洋君 ジュネーブの代表部が軍縮会議日本政府代表部と名称を変えるわけですが、このことに関連して、私は再々軍縮の問題について要望してきたわけで、その点てきよう若干の質問をしたいわけです。
先日、イラン、イラク戦争の中での化学兵器の使用の問題に関して外務大臣が談話を発表されていますですね。これは、化学兵器の使用というのは極めて遺憾なことだ、だから、今後そういうことがされることのないように強く訴えていきたいというふうに談話で出されておりますけれども、その遺憾だと言われる点の内容、さらに、今後どういうふうに政府としてこの化学兵器の禁止の問題に対応されていかれるのか、そこのところを若干お尋ねしておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/66
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067・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) 化学兵器につきましては、これは何としても世界から抹殺をしなきゃならない兵器であると私は思っております。そういう中で、今度のイラン・イラク戦争で化学兵器が使われた。イランの申し入れによって国連が調査したところそれは間違いないと、こういうことで確認されたわけでございまして、だれが使用したかということについては言及されておりませんけれども、しかし使用されたことは事実であると確認されたわけですから、我々としては大変残念なことでありますし、先般外務大臣談話を発表したようなことで、我々としては内外に対しまして日本の化学兵器に対する立場を鮮明にして、そして同時にまたイラン・イラク戦争についても早期終結を強く要望したところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/67
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068・立木洋
○立木洋君 化学兵器の新たな開発の問題や、それから現実にそういう形での使用ということが問題になっているわけですから、国連の舞台その他ジュネーブの軍縮会議等においても積極的な努力をしていただきたいと思うんですが、そういう点については具体的にどういう対応をされていかれるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/68
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069・山田中正
○政府委員(山田中正君) 今、御指摘にございました化学兵器の生産の禁止の問題でございますが、我が国といたしましては、軍縮の非核部分の中で最重点を置いて従来から取り組んできたものでございます。現在のジュネーブの軍縮会議でもこれが議題になっておりまして取り組んでおるわけでございますが、従来から私どもが主張いたしておりますのは、化学兵器の生産、貯蔵を包括的に禁止すること、それから、それを実効的にあらしめるために十分な検証措置をするということでございます。この点につきまして、従来ソ連が検証の問題について必ずしも前向きでございませんでした。最近、部分的にではございますが、廃棄についての検証を認めるという方向を打ち出してまいりました。ただ、これではまだ不十分でございまして、生産の段階、貯蔵の段階、これも十分検証できるような形の包括的なものをぜひつくりたいと考えておりまして、今後ともその方向で努力していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/69
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070・立木洋
○立木洋君 山田さんね、化学兵器の禁止の問題、これは一つの重点課題として取り組んできているというふうに御説明があったんですが、昨年の十二月に化学兵器の禁止に関する決議というのが三本ほど出されていますよね。けれども、化学細菌兵器の禁止三八の一八七A、これについては日本政府は棄権していますね。化学兵器、細菌兵器の禁止に関する決議、これはどういう理由で棄権されたんでしょうか。どこのところがまずいのだろうか、ちょっと御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/70
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071・山田中正
○政府委員(山田中正君) 今、先生御指摘になりました決議案、東独を初め東側が提案いたしたものでございますが、実はその化学兵器、先ほど申しましたように軍縮会議の場でどのような剤を禁止するのか、それから化学剤は平和目的にも使われますので、その辺の非常に技術的な検討が必要なわけでございますが、この御指摘のございました提案につきましては、例えばバイナリー兵器、新型化学兵器の生産配備の抑制のみを特記したような、これから交渉いたします内容につきまして前もって一定の方向を与える点があるわけでございます。こういうことを国連の場で前もって決めるのは適当ではないと、そういう趣旨から我が国が棄権したものでございます。
ただこの棄権が、この問題についての我が国の立場の消極的なことをあらわしておるのではもちろんございませんで、すべての問題を含めてジュネーブの軍縮委員会で条件を付すことなく検討したいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/71
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072・立木洋
○立木洋君 大臣ね、今述べたようなことなんだけれど、どうも納得できないんです。バイナリー化学兵器というのは御承知の、それ自体二つ組み合わせると猛毒になるということでしょう。そういうのが開発されてきて、それ自体単独で生産されている分には大した毒ではないと、そういう新しい化学兵器というのが開発されてきているわけですね。だけれど、これは人類の生存という見地からも、いわゆる化学兵器が禁止されなければならないという観点から見ても、こういう新しい化学兵器の開発というものが望ましくないということはこれは明白なわけですから、そういうことを、先行きを問題にしておるという形でこの決議に棄権をしたというのはどうも納得しかねるんですけれども、大臣どうなんですかね、今の局長の答弁で。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/72
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073・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) 今の局長の言い分はそれなりに妥当性があるんじゃないかと思います。基本的にはもちろん日本は絶対的に化学兵器の禁止を主張しておりますわけですし、あるいはジュネーブ議定書を守るべきだということは内外に向かって声明しておるし、そういう方向に向かって、軍縮会議等でこれからも積極的に取り組んでいくということは基本的な路線としては貫いておるわけですが、検証その他技術的な問題でどうしても現実性がないという点については、やはり多少の留保をつけることも、前向きにこれは実現されていかなければ意味がないわけですから、そういう点は多少あるんじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/73
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074・立木洋
○立木洋君 大臣ね、この化学兵器の禁止の問題に関しては、三八の一八七のABCと三つ国連に出ているのですよ、これね。ところがBとCは日本政府として賛成しているのですよ。Aだけなんですよ、棄権しているのは。そして、例えばCなんかの場合だったら、アフガンだとか何かああいうところの問題も想定して述べられている。内容的に若干違う面があるけれども、いずれにしろ化学兵器を禁止しよう、そういう方向で努力しようじゃないかという内容ですよね。ところが、BCには賛成しているのにAだけはどうも棄権だと。見てみると、このAの条約というのはアメリカだけが反対しているのですよ。アメリカがただ一カ国反対しているのですよ。だから、アメリカだけが反対しているのに日本政府が棄権している。というのは、アメリカで今開発しているバイナリー化学兵器の問題、これがレーガンのもとでやられているわけですから、そういうことに差しさわりがあるということにもしかなるとするならば、これはやはり、日本政府が化学兵器の禁止ということを最優先課題として掲げている見地からするならば、適切ではないのではないか。日本政府として化学兵器を禁止するという立場を最優先課題の一つとするならば、軍縮の問題で、そういう点にも明確な筋の通った態度をやはりとるべきだというふうに考えるのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/74
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075・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) 化学兵器の禁止については、日本はそれは絶対的にこれを主張しているわけですし絶対的な要件だと、世界の平和のための要件だと考えておりますし、これは基本であることは事実ですし内外にこれを声明しておるわけです。その今の条約について日本が留保しておるという点につきましては、これは局長から技術的な問題も含んでおるでしょうから明快に答弁させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/75
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076・立木洋
○立木洋君 短くていいですよ。あと時間が余りありませんから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/76
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077・山田中正
○政府委員(山田中正君) 化学兵器の問題につきまして、先生御指摘のように国連総会で三つの決議がございますが、今御指摘のございましたB、これは日本政府のむしろ共同提案したものでございます。そのことから、化学兵器についての日本政府の積極的な態度は国連の場でも十分理解していただけると思っております。
先生御指摘のように、Aについてはアメリカが反対しているということでございますが、それに追随して我が国が賛成しなかったということではございません。理由は先ほど申し述べたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/77
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078・立木洋
○立木洋君 局長、その追随したわけじゃないと強弁されることは、決して追随してそうしたというふうに私も考えたくはないけれども、しかしアメリカが現実に開発しようとしている化学兵器、開発を進めている化学兵器、これが、問題が明記されているかも先ほど棄権をされたのだということを述べられたわけですから、だから、このバイナリーの化学兵器というのはアメリカが開発を進めているわけですからね。それが問題にされているので棄権されたということになれば、アメリカ自身が、その開発を進めておる当の本人が反対しているわけですから、結局はそういうことにならざるを得ない。ですから、先ほど局長が言われた二月の二十一日のジュネーブの軍縮会議で、ソ連の場合ももちろん、これは化学兵器の廃棄という過程だけではあるけれども、現地の常駐監視体制という問題に同意する、そういう方向で態度が表明されているわけですから、こうした問題についてもやっぱりどんどん詰めて、事実的に現実的にこういう化学兵器が禁止できるように今後とも努力をするようにしてほしいというふうにこの点を要望しておきます。
もう一つ、先ほど来同僚議員が何点か出されている点ですけれども、日米農産物交渉の問題で三点だけちょっと大臣にお尋ねしておきたいのですが、一つはアメリカの対応ですね。これは非常に厳しい。しかしシュルツ・メッセージによれば、あるいは若干弾力的に対応するのではないかという感触もあるというふうに述べられたわけですが、そういうふうな判断で甘くはないだろうかという感じが若干あるので、アメリカの対応についてどういうふうに考えるか、これをもう一点確認しておきたいのです。
それからもう一つは方針ですが、これは日本政府が今後農産物交渉で対応していく方針について言いますと、これは我々最低ぎりぎりの線まで努力してきたんだから、アメリカがもう少し何とか考えるべきではないかということで今後とも努力をされるのか、やはりその場合、多少なりとも日本がもう少し考えないと、向こうにばっかり突っぱねておるとまずいんではないかというような、こちら側としてももう一遍よく考えてみたいという、そういうことを方針の内容としては含んでいるのかどうなのか。
それから三点目、今後の見通しですが、私もこれは、何も決裂した方がいいだとかなんとかという問題ではなくて正しく解決されることが、日本の農民なんかの対応も含めて正常な形で解決されるということが望ましいわけですが、今後の見通しですね、この風通しの問題で言いますと、例えば日米航空協定の問題がありますわね、あれは不平等の内容が大変あるんで相当日本側としても頑張っている、だけどこの問題についてもまだ合意ができていないですよね。だから、不平等な問題を解決する、筋の通らない問題については、いわゆる拙速でまずいのに何か妥結をしてしまうというのは外交上適切ではないだろうと思うんです。やっぱり述べるべき点はきちっと述べる。そして、何でも譲歩するという形が本当の意味での解決にはならないわけですし、日米航空協定の不平等な内容に対する日本政府の態度ということも先例がないわけではないわけですから、そういう見通しの問題について、この三点を大臣に述べて、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/78
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079・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) 農産物交渉についてアメリカの対応は非常に厳しいと思います。
これはシュルツ長官のメッセージ、あるいはブロック大使のメッセージ等では、政治家として最後はやりましょうというほのかな弾力性というものは見えておりますけれども、政治家としてやるんだということはこれはそれなりの、私なんかの感じから見ればほのかなあれはあると思いますけれども、いろいろと情報を集めてみますと大変厳しいと、アメリカがオファーしたこの線から後退はほとんど考えていないというふうな感じが率直に言ってします。それに対して日本もぎりぎりのところを出しておるわけでございまして、これはなかなかそう簡単に譲れるものじゃありません。そうした日本の出した案とアメリカの出した実とには開きが相当あるわけですね。しかし、これは事務当局の両方が出した案ですから、政治家同士で、ここで責任者同士で会って話をするということになればそれはそれなりに――外交交渉ですから手のうちまで全部見せるわけにいきませんけれど、それなりのやはり弾力性というものはお互いになきゃならぬ。ですから、アメリカにこれでもってだめだということじゃこれはもう交渉にならないわけですから、アメリカにもその辺は弾力性を求めていきたいと思いますし、日本も大臣が行けばそれなりの日本の農村という立場、農業という立場を踏まえて農林大臣が交渉するわけですから、その限界ぎりぎり、限界というところで弾力性を持った対応というものは――交渉は妥結したいということで努力はされると思いますが、しかしそれも限界があるわけです。現在の状況ではやはり大変厳しいということははっきり言えるわけです。
しかし、それだからといって事務当局で対立したままでほっておいたら、三十一日に切れちゃって、そして新しい事態も起こってくるわけでありますから、これは何とかやはり継続をして、そうして最終的には大臣同士でけりをつけるということが、これは何の交渉でもそうですが、必要なことであろうと。それはいつの時点でどういうふうにやるかということは、それは農林水産大臣を中心にして考え、政府全体として決断をすべきことであろうと、こういうふうに思うわけでございます。
全体的に見まして今は本当に胸突き八丁といいますか、両方ともそう簡単に譲れるような問題でありませんから頑張っておるということで、それでは見通しが明るいかというとなかなかそういうことも言えない、それでは決裂間違いないかということになるとそうとも限らぬと。もう少しお互いに頑張ってみて、何とかここまできた以上は妥結をしたいものだと私は考えておりますが、しかし全体としてこれは考えなきゃならぬ問題です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/79
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080・秦豊
○秦豊君 ブルネイは後に触れたいと思いますが、外務大臣ね、さっきから伺っていたんだけれど、四月第一週カットアウトと、一件落着とはまいりませんね、牛肉、オレンジは。やっぱり担当だから山村さん、わかるけれども、最後は外交全体のすり合わせですから、延びて、そして向こうも議会対策、四月第一週が一つの山ですから対応するのはいいでしょうが、最後、選挙期間のいろいろなタイミングを見てアメリカも圧力を強める、弱める――弱まることはないにしても、間合いをはかっていると思うんですよ。だからある段階で、農水大臣は中間的な措置、やはり安倍外務大臣とシュルツ氏という局面が私予測されてならないんですがね。そういう対応を余儀なくされるんじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/80
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081・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) 今のところは事務当局間の話は決裂しておりますから、これはアメリカに弾力性を求めて、そして農林水産大臣に行ってもらって何とか決着という路線で進める以外にはないんじゃないかと。三十一日で切れるわけですから継続ということにして、そしてごく最近のうちに大臣に行ってもらう。ただ、今それに対しては相当我が党内におきましても政府の中におきましても、農林水産大臣の訪米ということに対していろいろと問題もあるわけで、ただ、今この段階においてどういうふうになるということはまだ聞いておらないわけでございますが、いずれにしてもこれは日米関係の将来、それから、日米関係の懸案全体を考えると非常に重要な問題ですから、政府全体としてこの問題については責任を持って対処していかなきゃならぬ課題だと、そういうふうに思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/81
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082・秦豊
○秦豊君 申し上げる意味はね、中曽根総理自体に山村さんで決着という断然さがないんですよ。だから、やっぱり安倍さんのところへまた回ってくるというのが私の見解――一種の偏見でしょうかね。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/82
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083・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは政府全体として取り組んでいかなきゃならない、大変難しい、日米両方にとって非常に象徴的な問題になりましたから、私はもっと冷静にこの問題は話ができる問題だと思うんですけれど、非常に象徴的になったものですから、これの波及効果が大変大きいということを考えると、やはり政府全体として早急に結論を出すということが、そして今の私が申し上げましたようなパターンでこれは何とか決着をすべきじゃないかと、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/83
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084・秦豊
○秦豊君 この問題では最後に一つ。
外務大臣御自身も、農水大臣の訪米で決着とはお考えじゃないんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/84
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085・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) いや、これは日本がこれだけ譲っているわけですから、アメリカがこれで決着をしないということはアメリカ自身にとっても決してプラスじゃない。ただ、何かアメリカは非常にきつい状況ですけれど、これは最終的にはやはり大きな政治判断であろうと思いますからそう悲観したことでもないと思いますが、しかし必ずうまくいくとも言えないわけです。悲観する状況では私は決してないと、まだ道は残っておると、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/85
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086・秦豊
○秦豊君 テーマは一転しますけれども、この間の北京の日中会談をずっと見ていると、中越――中国・ベトナムの感触はこぼれてないんですよね。それについては何か感触をおつかみになりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/86
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087・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは確かに会談ではこの問題は出ておりませんが、しかしこの問題については、中越関係についてはこれまでもいろいろと我々も情報を持っておりますし、中国の考え方はわかっておりますし、あえて議題にはならなかったと。雑談の間では私も呉学謙さんとの間で、中国とベトナムの状況はどうですか、カンボジアにおける三派が、ポル・ポト勢力が相当巻き返しをしているようじゃありませんかと、こういうふうなことも質問してみましたが、これに対して中国側は、我々はカンボジアからベトナムがとにかく撤兵をすればベトナムとの間には何もないんだ、これだけが我々の要求だということを言っておりました。同時にまた、確かに今の三派勢力がだんだんと力を強めておる、こういうことは非常に自分たちは力強く思っておるし、そういう中で日本がシアヌークさんを招待するということは高く評価する、こういうふうなことを言っておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/87
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088・秦豊
○秦豊君 これは確認ですけれども、今ハノイに対する援助は凍結されていますね。これを解除する条件は、もちろんカンボジア絡みですが、変わっておりませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/88
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089・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは変わっておりません。カンボジアからベトナム軍が撤退しなければ援助をしないという方針です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/89
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090・秦豊
○秦豊君 それから、フィリピンヘの援助問題を私これからも取り上げますけれども、緊急援助の中の商品借款ですね。これはいつ実行されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/90
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091・柳健一
○政府委員(柳健一君) 商品借款は先生御案内のとおり、五十八年度の第十二次円借款の中身として出すわけでございますから、十二次円借款全体が決まった段階で一緒に出ていくと、こういうことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/91
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092・秦豊
○秦豊君 いつごろ交渉をまとめるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/92
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093・柳健一
○政府委員(柳健一君) 五十八年度の第十二次円借款の内容はまだ確定しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/93
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094・秦豊
○秦豊君 ビラタ担当大臣から、大川マニラ駐在大使経由でフィリピン政府から公文書が参っていると思いますけれどもね、十二次円借款に絡んで。その中には十五のプロジェクトが含まれているのか。それから、サンロケ・プロジェクトはそのトップにランキングされているのか、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/94
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095・橋本恕
○政府委員(橋本恕君) 今の先生と経協局長との間で御議論になっております当面の円借款の交渉につきましては、サンロケは排除されております。つまり入っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/95
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096・秦豊
○秦豊君 それから、これは外務大臣にちょっとお聞き取りいただきたいんですが、フィリピン政界の最長老、八十五歳になられたタニヤダ氏がきのう来日されまして、与党からは赤城宗徳先生初め鯨岡兵輔先生、石原慎太郎さんなど、野党の社会党その他含めて十名の国会議員が対応しました。
タニヤダさんが再三口をきわめて述べられたことは、今度の商品借款を含め、これまでの円借款も含め、もっと円借款の使われ方に日本の政界人は関心をお持ちいただきたい、お調べをいただきたいということが一つ。それから、今度の援助のうちの特に緊急性の高い商品借款のごときは、しょせんマルコス政権と、それと親しい実業家を潤すだけにすぎない、この実態をもっと把握していただきたいと、これを再三るる述べられたわけです。外務大臣としてはこの対比援助は大変問題があり過ぎると。今交渉中でもありますしね、円借款第十二次は。慎重の上にも慎重というふうな基本的なお心構えで取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/96
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097・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) 円借全体について見まして、これはその国に対して非常に効果的に使われておるんじゃないか。かつていろいろなこと空言われた時代もあったわけですが、プロジェクトごとに両国政府で十分精査をして、そして日本政府としても最終的に見届けという形で援助しておりますから、これは相当生きて、その国の経済、民生の安定に使われております。ですから、最近はASEAN等へ行きましても、この点は政府だけじゃなくて、国民全般の日本に対する評価が円借を通じて非常に高まってきておるということを私は強く感ずるわけであります。
フィリピンについてこれまでも同様であったと思うのですが、今回いろいろと御意見もあります。これに対しては慎重に我々としても取り扱ってきておるわけですが、基本的にはフィリピンの経済は、もちろんよって来たるゆえんは政治不安、アキノ暗殺というようなところから来ていると言えないことはないわけですけれども、経済が非常に悪くなっておりまして外貨もほとんどなくなっておる。こういう状況でこのまま放置すれば大変な事態になり得るということもあって、日本としては隣国ASEANの一国ということで、マルコス政権を助けるということじゃなくて、やはりフィリピン経済の安定が非常に重要だという意味で、フィリピンの国民にとりましても非常に重要だということで取り組んでおるわけですが、しかし慎重に考えながらこれは取り組んでおるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/97
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098・秦豊
○秦豊君 安倍外務大臣の第二期目の外交の中で、ぜひ具体化していただきたいことがあるんです。
それは、国会論議のパターンとしてはやや恒久的な、古典的な命題になっている対外援助のあり方論ですね。特にその効果、円借款の使われ方などを、年に一度は特定地域を対象とした調査を丹念に行ったものを納税者に報告するというシステムを、形式ではなくてもっと具体的、生き生きしたものにつくり上げておき、それを実行する必要が今やあると私は思うのですが、どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/98
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099・柳健一
○政府委員(柳健一君) 援助の評価と申しますか、効果測定が重要であるという先生の御意見は全くごもっともだと私ども存じております。実は、昭和五十六年度から私どもがいたしました援助の実際の効果を評価いたしまして、その結果を、一昨年の秋でございましたが、まず五十六年度分からまとめまして公表いたしております。今までのところ、昭和五十六年度分と五十七年度分と二年度にわたりまして、もちろん全部ということは不可能でございますが、できる限り私ども、あるいは一部民間に委託したり評価いたしました結果を公表いたしております。今後ともさらにこれを推進いたしていきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/99
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100・秦豊
○秦豊君 特に、フィリピンを特定して一度調べていただきたいと思うのです。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/100
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101・安倍晋太郎
○国務大臣(安倍晋太郎君) それはよく局長にも申し渡しまして十分調査します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/101
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102・秦豊
○秦豊君 最後にブルネイですけれども、今度国王がいらっしゃる、大変結構だと思います。たしか橋本さんのお話にもさっきちょっとありましたが、七三年から操業開始されたはずの日本向けのLNGの輸出ですね。たしか契約が二十年単位じゃないかと思うのです。そうしますと七三年だから九三年。時間がありそうに思うが、ほかの国々はもう次の交渉の準備を始めているようですが、そろそろ準備をされてはいかがかという点が一つ。
それから、ブルネイ問題の一つとしては、韓国が我が国より先に今年の一月一日に大使館を開設していますね。調べてみると、LNGの関連工事の受注を初め物すごくアクティブであるというふうなことを含めて、ラングーン事件がなければ大統領がブルネイを訪問する予定さえあったくらいですから、そういうことは動向もよく注意をする必要があるのではないか。ところが、逆に親善関係は表面的で、日本―ブルネイという場合にビザの取得が大変に難しくて、現実にエンジニアなどの入国に大変支障を来たしておるんですよ。せっかく国賓として見えるんですから、そういう事務的なものも含めてもっとスムーズに両国関係が進むように取り計らいを願いたいという要望を申し上げて、答弁を求めて終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/102
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103・橋本恕
○政府委員(橋本恕君) 一番最後の御指摘のビザから申しますと、これはずっと昨年来交渉しておりまして、まさに先生おっしゃいますとおりに、ビザを取得するのに非常に時間がかかるという問題がございます。そこで、実は今度御指摘のとおり国王が来日されますので、それを機に一挙に解決したいと考えたのでございますが、なんぼなんでもビザの問題で国王と総理との会談というと大げざ過ぎますので、これは早期に解決するように努力いたします。
それから、前段につきまして先生御指摘のような心配も確かにございますが、この点は十分心してまいりたいと、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/103
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104・後藤正夫
○委員長(後藤正夫君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案の採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/104
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105・後藤正夫
○委員長(後藤正夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/105
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106・後藤正夫
○委員長(後藤正夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時十一分散会
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110113968X00319840331/106
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