1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年四月十八日(木曜日)
午前十時四十八分開会
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出席者は左の通り。
委員長 山本 米治君
理事
雨森 常夫君
棚橋 小虎君
委員
青山 正一君
大谷 瑩潤君
郡 祐一君
西郷吉之助君
田中 啓一君
河合 義一君
宮城タマヨ君
国務大臣
法 務 大 臣 中村 梅吉君
政府委員
法務大臣官房調
査課長 位野木益雄君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
説明員
最高裁判所長官
代理者
(事務総局総務
局長) 関根 小郷君
最高裁判所長官
代理者
(事務総局総務
局総務課長) 海部 安昌君
最高裁判所長官
代理者
(事務総局家庭
局長) 菰渕 鋭夫君
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本日の会議に付した案件
○連合審査会開会の件
○判事補の職権の特例等に関する法律
の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
○裁判所法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
の件
(被疑者補償に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/0
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001・山本米治
○委員長(山本米治君) これより本日の会議を開きます。
まず、初めに連合審査会につきましてお諮りいたします。本院社会労働委員会におきまして審査中の旅館業法の一部を改正する法律案につきましては、売春防止法の施行運営の上に密接な関係を有する条項もあり、問題となる点が多いと考えられますので、本法律案につきましては、社会労働委員会と連合審査会を聞くことにいたしたいと存じますが、さように決定することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/1
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002・山本米治
○委員長(山本米治君) 御異議ないと認め、そのように決定いたしました。委員長は、直ちにこの旨を社会労働委員長に申し入れることにいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/2
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003・山本米治
○委員長(山本米治君) 次に、判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案並びに裁判所法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。以上両案は、一昨十六日に本付託となっておるものであります。
御質疑の方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/3
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004・棚橋小虎
○棚橋小虎君 この職権特例判事補を高等裁判所の方に処分代行で仕事をさせる場合には、裁判所法第十九条という規定があるのであります。その規定と、それからこの問題になっております法律とは、どういう関係がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/4
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005・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 裁判所法第十九条の規定は、高等裁判所でその裁判官に病気とか留守とかいう、そういうふうなやむを得ない差しつかえがある、あるいは裁判事務が非常に輻湊いたしまして、しかし急に定員の増加もできないというふうな場合に、その裁判専務を補助させるといいますか、取り扱わせる、そのために地方裁判所の裁判官等に、高等裁判所の判事の職務を行わせるという趣旨で、個別の、臨時的な場合の応急措置ということを中心に考えられた規定だというふうに考えております。この今度の判事補の職権特例法の」改正案の内容として考えておることは、この第二審の強化のために裁判官の中でも経験の深い人、判事の資格を持っている、こういう人を地方裁判所になるべく回したい、そのために高等裁判所の方が手薄になるおそれがある。そういたしますと、そういう場合に、判事補の中でも相当老練な人があるわけですから、すでに、五年以上もたち、十年近い人もあるわけでありますから、そういうふうな人を高等裁判所に配置し得るようにしたい、これは、そういうふうな一審強化の必要に応じて特別の必要があるというふうに考えましたので、十九条の場合とは違いまして、やや、何と申しますか、組織的と申しますか、全国的な規模に基いた計画的な必要性に応ずる措置というふうなことになりますので、十九条の規定でまかなうというのは少し無理じゃないかというふうな考え方から、ことにまた高等裁判所の恒久的な構成員としての判事補というものを、今の裁判所法では認められておりませんので、そういうふうな関係もありまして、やはり別の条文として作った方がいいというふうな考え方から、このような改正案を立案いたしたと、こういう経過であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/5
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006・棚橋小虎
○棚橋小虎君 それから職権特例判事補のかわりに、今度は高等裁判所かり地方裁判所に配置がえされる裁判官については、やはり裁判所法の第二十八条に特別に規定があるわけですが、これとの関係は、やはりそういうふうに考えていいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/6
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007・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 大体同様な趣旨でございます。二十八条の方は、地方裁判所の裁判官に差しつかえかある場合を予想しているわけですが、この場合には、この規定を待たなくても、判事補の人は、本来地方裁判所に勤務し得ることになりますので、これの規定でまかない得る余地は、十九条の場合よりも強いかと思いますが、しかし理由も違いますから、これとは直接の関係は少いということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/7
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008・棚橋小虎
○棚橋小虎君 そういう目的がはっきりしているわけなんですが、それならばこの本法の第一条の二というとろに「最高裁判所は、当分の間、」と、「当分の間、」と、こういうふうに断わってあるのはどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/8
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009・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 本米この判事補の職権の特例の法律と申しますのは、この第一条の方に「当分の間、」というふうになっておりまして、臨時的な措置ということになっているのぐございます。と申しますのは、本来裁判所法では、判事補は一人では裁判ができない、あるいはそのほかの職権の制限がある。ところが判事の欠員がございまして、その充員がなされるまでの間は、五年以上の経験がある判事補に、判事と同じような職務を行わせ得ることにする必要があるということから、そのしばらくの間、充員がなされるまでの間、判事補でも五年以上の経験があって、最高裁判所の指定した者に判事と同じ職務を行わせ得るように、臨時措置を認めている、その改正法として今度の規定を加える、そういう裁判官、判事の充員がなされましたならば、この本来の判事補の職権の特例の第一条の必要性はなくなる、で、この第一条の二の必要性も同様になくなる。そういう意味で、この「当分の間、」ということになるわけです。もう一つ、この第一条の二について特別に考えられますことは、お手元にお配りいたしております資料に載っているのでありますが、判事補で十年以上在職いたしますと、判事に任命され得る資格を取得するわけでありますが、この判事補ですでに相当年数がたっている人が、数年いたしますれば相当ふえてくるわけであります。ここ二、三年はちょうど戦争の関係なんかがありまして、判事になり得る資格の人が非常に少いのです、少い年は十人台……、このお配りいたしました参考資料の四ページをごらん頂きますと、判事補の在官年数十年以上という人は十七人、九年から十年までは十九人、八年から九年までが、五十八人、七年から八年までが五十六人、六年から七年という人が九十八人、五年から六年という人が八十五人、四年から五年という人が五十五人、こういうようなことになっておりまして、ここ数年いたしますれば、相当この判事に任官し得る人がふえまして、判事が相当ふえてくる、こういうことも考えられますので、そういうようなところから「当分の間、」として、そういう時代になりますれば必要性がなくなるということも考えられますので、「当分の間、」というふうにいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/9
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010・棚橋小虎
○棚橋小虎君 それからこういう方法をとられたことは、いわゆる第一審の強化ということが最大の目的だと思うんですけれども、長い間地裁でもって判事をして、そうして高等裁判所の判事になった、そのまた判事を逆戻りさして地裁の判事に配置がえをするというようなことによって、うまくいく見込みですか、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/10
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011・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 御承知のように今訴訟体系等の点から、第一審の強化ということが非常に重要であるということが、各方面から主張されるようになりまして、特に昨年あたりから最高裁判所を中心として第一審強化方策というものを朝野の法曹、学識経験者等を集めて論議いたしておったのでありますが、そういうようなところから、まあ法制的にもれわわれ何か一審強化の方策について、制度の改善をすべきではないかということを考えて、今研究中でありますが、この第一審の強化、特に刑事裁判における第一審中心主義の点からも、第一審の裁判は非常に重要であるということが認識されつつあるし、また相当認識されているということがいわれると思うのであります。裁判所の内部におきましても、このことが相当強調されまして、非常にそういうふうな機運に向っていると思います。そういうふうなことからいたしまして、別に高裁から地裁におりるから、何か左遷されたとか、そういうふうな感じは持たないというふうに考えておりますが、なおこういう実施の方面でございますから、裁判所の方からあるいは御説明が伺えればそちらからお聞きいただいてもいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/11
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012・棚橋小虎
○棚橋小虎君 なお、あれですね、この高等裁判所の方から地方裁へ配置がさえれる判事のかわりに転補されていく特例判事補というものが、これは今まで第一審におったけれども、どうもちょっと役に立たないから、高裁の判事と入れわかって、高裁の方へ入るんだ、こういったような印象は、周囲に与えることがないのでしょうか、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/12
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013・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) そういうことはないと考えておりますが、これもちょっと資料をごらんになっていただきたいと思いますが、この点御説明しておいた方がいいかと思いますが、今の資料の三ページの特例判事補というところでございます。その総数が二百六十七と、合計の欄で出ております。この中でこの陪席をしている人、合議の陪席ばかりをしているという人が四十六人、右陪席が二十一人、左陪席が二十五人単独で、やっているという人が五十二人おります。それから合議と単独を兼ねて陪席をやっているという人が百六十九人、それで内訳が右陪席が百四人、左陪席が六十五人をいうことになっておりますがこのうちで、さしあたり第一審強化として高等裁判所の方へ——方へと申しますか、高等裁判所の裁判官がもし地方裁判所へ来たという場合に、かわってもらいたいというのは、純単独となっているところの五十二人でございますね、こういうふうなところがさしあたり単独で、やっているというところでございますから、一番必要性が多いというふうに考えております。こういう人といきなりこれを交代するかどうか、これはまた内部の人事のやりくりにかかるわけでございますが、しかし、やはり高等裁判所に行かれるということは、むしろ抜擢されていくという傾向になるのじゃなかろうかと想像いたしているのでありますが、少くとも役に立たぬから行くというようなことはないというように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/13
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014・棚橋小虎
○棚橋小虎君 それからこれはまあ第一審強化ということを考えて、こういう方法をお考えになったのでありましょうが、単にこういうその判事の配置転換ということだけでなくて、第一審強化の方法として、ほかに何かお考えになっていることがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/14
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015・関根小郷
○説明員(関根小郷君) ただいま棚橋委員からのお尋ねの点でありますが、これはいろいろ一審強化のための方策が考えられておりますが、まあ大体一審強化方策が出て参りました根源と申しますか、これを一言申し上げますと、戦前は、地方裁判所は三人の裁判官から成ります合議体でございました。ところが戦後英米流の裁判所制度が採用されまして、原則として単独制ということになりました。その結果、一人の裁判官よりも、まあ三人寄れば文珠の知恵と申しますか、やはり多数の方がいいという感じが、どうしても当事者の側からもございます。それで、一人の裁判官で単独制の裁判をするんなら、何とかもう少し一審充実を考えたらどうか、そういうことから今度の判事補と高裁の左陪席の判事との入れかえということが考えられたのでございますが、そのほかに、何と申しましても、ただいま申しましたように、原則として単独制ではございますが、事件によりまして、なるべく三人の合議制に持っていく、その事件を選びまして、重要な事件については三人の合議制に持っていくということが考えられて、実際にその方向に進んでいるわけでございます。
それからなお立法問題といたしましては、一人プラス一人ということで、二人制の合議ということが外国の例にもございますので、そのことにつきまして、ただいま位野木政府委員から、お話がありました昨年の第一審強化方策協議会におきまして、二人制の合議について、採用しかるべしという答申が出まして、それを最高裁判所の方から、最高長官の名前で法務大臣にお願いしておるわけでございます。で、ただいま法制審議会で、その当否につきまして審議中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/15
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016・棚橋小虎
○棚橋小虎君 裁判は戦前なんぞには単独判事、判事に任命されてすぐ一つの裁判に単独判事として仕事をして、あまり国民の力からえらい批判なども受けなかったように思うのですが、最近五年以上もみんな判事補として仕事をしておって、そうしてなおこういうような、一審が非常に弱体であるというような批判をこうむらなければならぬというようなことは、何か判事補の制度とか、あるいは判事補の訓練というような問題について問題があるのか、その点はいかがですか。お考えがありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/16
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017・関根小郷
○説明員(関根小郷君) 新しい裁判所制度になりまして判事補制度が採用され、原則として判事補は一人で裁判することができないという原則が立ちましたのですが、何しろ事件が多く殺到いたします関係から、五年以上の判事補につきましては、特例判事補として単独でも裁判かできるということにいたしました。でありますから、五年の期間、修習と申しますか、実際の合議体の陪席として経験を積んでおります関係から、戦前に比べまして少しもその裁判の実体が低くなったということは言えないと思います。しかも御承知の司法研修所におきまして、判事補に任官いたしましてすぐと、それから五年過ぎる直前とにおきまして、相当期間研修をまたしておるということでございますので、何分にも制度といたしましては、一人立ちができないということの例外的なこととなっておりますけれども、実質は、相当な裁判ができる素質を持っておるわけでございます。ただ、比較的に申しますると、十年過ぎましたほんとうの判事の方が、特例判事補よりはすぐれているというところから、今度の法案が立案されるということになったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/17
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018・棚橋小虎
○棚橋小虎君 ついでにもう一つお尋ねねしますが、最高裁の調査官というものがあるわけなんですが、これは裁判官の身分のままで今調査官をやっておる人は何人くらいおりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/18
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019・関根小郷
○説明員(関根小郷君) ただいま二十四人おるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/19
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020・棚橋小虎
○棚橋小虎君 それらの人は、裁判官としての経験も相当ある人でありましょうが、そういう人を一幕強化に活用するというような、こういうことはお考えになっておりませんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/20
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021・関根小郷
○説明員(関根小郷君) 今、棚橋委員のおっしゃる通りその方向に進んであるわけでございまして、なるべく若い判事補と交代する方針に進んであるわけでございます。現に裁判官会議におきましてその方針を確認いたしまして、個々の折衝に入っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/21
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022・山本米治
○委員長(山本米治君) ほかに御質問ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/22
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023・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 まことにしろうとでよくわかりませんが、また、今この際質問していいか悪いかもよくおかりませんけれども、私ふだんから考えておりますことを、ちょっと伺ってみたいと思っております。一体全国のまあどの裁判所におきましても、その判事の刑の量定などというようなものは、みなそれは裁判官の認定によって判決されることなんでございますけれども、最高裁判所あたりで事務的にごらんに騰なりますというと、たいていその刑の量定などというものは、各所で大体同じようなことになっておりましょうか。それとも……私がそういうことを質問いたします心配点は、ここに古い裁判官と新しい裁判官とが、考え方も、ものの見方も非常に違っておるのじゃ、ないか。すると、自然にそれが刑の量定に響いてくるのじゃないか。そうすると、ある所では同じ犯罪でございましても三年ときめ、ある所では三カ月ときめるかもわからない。そういう、心配を私は持っておりますが、事実はどうなのでございましょうか、一つお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/23
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024・関根小郷
○説明員(関根小郷君) 宮城委員のお尋ねごもっともな点だと思いますのですが、実は御承知のように、刑罰法規が長期と短期というふうにきめておりまして、その間において裁判官が具体的の事件ごとに裁量できめるわけでございます。しかし、長期と短期の間が非常に幅がございますので、その結果、同じような性質、種類の事件でありながら、刑が違うということがあり得ることでございますが、しかし、何と申しましても、御承知のように、裁判で判決をする前には、検事の側から求刑ということがございまして、検事が求刑いたしますにつきましては検事同一体の原則で、そこの事件の種類、性質が同じようなものなら同じような求刑をする、そういう求刑がまず先にございまして、それから裁判所の裁判ということになります。もとより裁判所は検事の求刑にとらわれるわけではございませんけれども、そういった一つの材料もあるわけでございます。それから何と申しましても、古くから刑事の裁判につきまして、この種類の性質の事件についてはこの程度の刑でということが、大体慣習と申しますか、大体においてきまっておるわけでございます。そのほかになお刑の量定が、新しい法律などにつきましてまちまちだということが考えられる場合には、特に研修所におき、まして、そういった事件が起きる裁判所の裁判官に集まっていただきまして、そうして具体的に事件を離れまして、抽象的な問題として、自分の所はこういうふうな事件についてはこういう刑の裁判を言い渡したというようなことを、お互いに話し合いまして、今後の資料にするといったことをやっております。でありますから、簡単に結果だけを申し上げますれば、そう同じような種類、性質の事件につきまして、刑の量定が違うということは、大体においてないと申し上げてもいいのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/24
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025・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 この点は、私もう少し研究いたしまして、またあらためて伺いたいと思っております。
いま一つは、最南裁判所のきめます判例でございますが、裁判の。あれは各事件と申しますか、特別に判例になるものだけを判例として示されるわけなんでございますか。これもはなはだしろうとらしいことを申しますけれども、わかりませんのでございます。といいますことは、今私の現在の問題にいたしておりますことは、一昨年でございましたか、売春婦の前借を踏み倒して本いいという判例がございましたね。そのために、今はもうことごとく、何十万でございますかの売春婦が踏み倒してもいいということで、そのために今業者の転業ということが大へん困難になっておる。正しい転業を業者がようしないで、そうして女とともにかわっていこうというので、宿屋それから下宿業が……まあすべて業者が転業するという陰には必ず女とともにやっているのでございます、洗ってみれば。このことはもっともっと研究していってみますというと、たくさんと言われる前借は十五万円内外、少くも五万円くらいの前借があるそうでございます。それをその判例によって踏み倒せということを、私どもも言いたい方ですけれども、これを言えば業者は非常な痛手で、だからどうでもこうでも変な転業の仕方をしなければならないという結果に、私はなるのじゃないかと思っております。それはもちろん長い間女が搾取されて、虐待されて、そうして高利を払っておりますことは事実でございますけれども、だが、普通の社会生活でもやはり不当な高利で金を借りて、そうして、丁度同じような結果を今日招いてあえいでいる人もたくさんあると思う。そういうものを不都合だからみんな踏み倒せといったら、世の中は、どうしておさまっていくかということを考えておりますがね。そこで、今の判例についてちょっと伺いたい思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/25
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026・関根小郷
○説明員(関根小郷君) 今申しました判例ということは、おそらく最高裁判所の判例として、特に印刷物になりまして、そに載るものをおっしゃるのじゃないかと想像いたしますが、これは特に最高裁判所におきましては、最高裁判所の裁判官の方と、それから調査官の方と集まりまして委員会を構成いたしまして、そこで最高裁判所がいたしました裁判のうち、重要と認められるものを、特にああいう印刷物にいたしまして公刊いたしております。それ以外の裁判については、それでは判例にならないかと申しますと、全部やはり判例として今後の裁判につきましての影響力を持つわけであります。ただ、理屈だけ申し上げれば、判例と申しましても、具体的にはその事件だけについて下級裁判所を拘束するわけでございますが、しかし、何と申しましても、同種の事件がくれば同じ判断が下される。たとえば、今申しました前借金の契約が無効だという判断が出ますと、今後その判断が、出た判決が、変更されない限りは、大体それに従うという結果になると思います。ですから、今中しました判例というのは、すなわち、どんな判決でもやはり判例になるということになるわけで、特にそのうち重要だから印刷物といたしまして公刊いたしますが、印刷物に載らない判決もやはり判例になるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/26
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027・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 印刷物にならないのも判例だというように伺いますというと、最高裁判所の判決は全部判例だというように解釈していいのでございますね。そうして、たとえば、さっき申しました前借金踏み倒しの判例があると、こういいますけれどもども、あれはあの事件についてはそれで納得もできて、国民みんなが納得できますけれども、でも判例としてみんな全国にそのことをやるということになると、やはり異論が出るのじゃないかと思っておりますが、そこは、どうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/27
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028・関根小郷
○説明員(関根小郷君) 宮城委員のおっしゃる通りでございまして、判例と申しましても、具体的な事件についての裁判でございますから、少しでも性質、種類が違ってくれば、違った判、断か出ると思います。たとえば、前借金契約につきましても、あるいは有効の場合もあり得る場合が出てくると思います。最初から業者を詐欺するつもりで、前借金で体を売ったというような場合は、そのときに果して借り入れた金を払い戻さすことができるかできないかは、また別問題だと思います。最初から業者をだまして金を取り上げようというような場合は、この間のような判例が果して適用になるかどうかは別問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/28
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029・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そうすると、最高裁の判例というものは、高裁や地裁で判例にあるからということに拘束されなくてもいいのでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/29
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030・関根小郷
○説明員(関根小郷君) 今おっしゃいましたその拘束するということは、裁判所法の第四条に「上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束する」。とございます。「その事件」というのは、具体的のその事件なんでございますね。ですから理屈だけ申し上げますと、それ以外の事件については拘束されないわけなんです。その同種の事件について一つ判例が出ますと、大体それに似たような判断が下されるであろうということが実際問題として出てくるだけでございます。ですから具体的事件によって、確かにおっしゃるように違った判断が出るべきであり、また出ていいわけなんでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/30
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031・山本米治
○委員長(山本米治君) 次に、前回に引き続き、被疑者補償に関する件の調査を行います。被疑者補償規程につきまして、経過内容等については前回の法務省当局から説明を聴取いたしましたが、本日は、これについて大臣から御方針を伺いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/31
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032・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 前回の会議に、私あいにく衆議院の方の委員会がございまして、出席いたしかねたものでございますから、政府委員が参りまして、被疑者補償規程の実施につきまして御説明を申し上げたような次第でございますが、なお、本日私から付け加えまして、かような措置を講ずるに至りました経過並びに考え方を申し上げて御了解を得たいと思います。
実は、かねてから国会方面にも被疑者として身柄の拘束を受けて取調べを受けた者が、人違いであったとかその他の事情によって、全くその人が迷惑を受けたような事件もたまたまありましたので、そういうような場合に刑事被告人に対する刑事補償と同じように、被疑者に対する補償の道を講ずべきではないか、こういう意見がございまして、また衆議院におきましては、一部の議員から、そのような議員立法の提案のあったことさえもあるのでございます。この点はまことにごもっともでございまして、刑事被告人として無罪になりました者について、刑事補償の道がありますが、起訴にならないまま被疑者で身柄の拘束を相当期間受けて、そうして事件が見当違いであった、こういうような人たちに対する補償の道がないということは、均衡の上からも、また、その人の名誉の上からも、考慮しなければならない事柄であるというのが法務省としての考え方でございまして、昭和三十二年度の予算編成に当りまして、これに所要の予算要求を実はいたしました。その結果、わずかではございますが、予算の計上を見るに至りましたので、これを、どういうふうに一体措置したらばよろしいか。予算額は御承知の通りわずかに百万円でございます。従ってこの百万円の範囲内において、あるいは若干の超過がそこにやむを得ず起れば、これは予備費等からの支出もできるのでありましょうが、まあ基本といたしましては、計上された予算の範囲内において適当な運営をはかってみたい、かように考えまして、立法措置を講じまするよりは、行政措置によりましてその予算の範囲内で、初めての試みでもございますし、また外国にもあまり立法例かない前例のないことでございますので、行政措置によりまして適当な運営をしてみたらどうか、かような方針になりまして、先般お手元にお配りいたしましたような行政措置によって、間違いであった被疑者に対する補償の道を誹じたのでございます。この補償額は御承知の通と一日四百円以下となっておりまして、非常にわずかでございますから、今日の時勢にはあまりに少な過ぎる感じがいたしますが、一方法律で成立いたしております刑事被告人に対する補償法の方も補償いたしまする場合には一日四百円以下ということになっておりますものですから、これとの均衡もございますので、一日四百円以下ということにいたしたような次第でございます。
そこで、百万円の金で一体どのくらいのことができるかということを考えますと、被疑者の場合には、身柄の拘束に、刑事訴訟法上日数の規制がございますから、それ以上の日数を検事勾留にいたしますと十日間であって、さらにこれを再勾留いたしましてももう十日延長するというような程度であり、まあそういうふうに逮捕はして勾留はしましたけれども、どうも見当が違っておったというような場合には、満期になるよりも前に気づく場合の方が多いというような事例から見まして、日数が刑事補償のように何十日、何百日にわたるようなことはございませんから、従って相当人数の補償ができる、かように考えておる次第でございます。まあかような行政措置によりまして、少くとも被疑者に何らの過失がなく見当違いで検挙をしたような事件が万一にも起きましたならば、これに対して補償の道を講じる、同時にその人が名誉回復のために官報または新聞に公告掲載方を希望する場合には、そういうような名誉回復の公告掲載の措置を講ずるというようなことにいたしましたような次第でございます。このお配りいたしましたような基準によりまして、まあできるだけ適正な運営をとりあえずいたしてみたいというのがこの行政措置でございます。
くわしい点は、前回に刑事局長から御説明申し上げたと思いますから省略をいたしまして、もし御質疑等ございましたらお答えをすることにいたしたいと思いますが、大体の考え方といたしましては、今申し上げましたような考え方から、予算の範囲内でできるだけこの目的を果すようにやってみたい、かような考えから被疑者に対する補償規程の実施をしてみたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/32
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033・山本米治
○委員長(山本米治君) 御質疑の方は御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/33
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034・棚橋小虎
○棚橋小虎君 被疑者として勾留または拘禁を受けて起訴されなかったという者に対してこういう補償をされるという、この点まことに当然のことであるが、けっこうなことだと思いますが、少しそれについて、この規程にどうも理屈に合わぬというふうに考えられるところがありますので、一、二その点について質問いたしたいと思います。とにかく被疑者として勾留までして調べたところが、どうしても起訴するだけの理由がない、こういうところで不起訴になったということは、これはまあどう考えてみても検察庁のミスだ、黒星だということになるわけですけれども、ところがそういう人に対して補償をすることを、その補償の裁定ということが、その検察官の所属する検察庁の検察官、こういうことになっておるわけですが、これはまあ自分たちがやったことを、これは失敗であったと、ミスであったということを認めて、そうして今まで、きのうまでは被疑者としてあらゆる方法をもって起訴しようとして取調べをしておった者に対して、今度は一転して、その者が、不当に権利を侵害されておる、これに対して補償をしようというその裁定を、当の取調べをした検察官もしくは検察庁の検察官がやると、これはどう考えても、ちょっと私は果してそれでもって公平なことができるか、今までの検察官としての考え方を、感情を一掃して、そうして公平に補償の裁定ができるかということ。これはだれが考えても無理じゃないかと、こう思うのです。まあ普通の人間——神様のような人であれば、そういう場合に育ちに自分のミスを認めて悪かったといって、それに対して公平な考え方を持つこともできましょうが、なかなか普通の人間にはできない、きのうまで取調べ官としてそこまでやっておった者が、これはいけなかったと、自一分のミスを認めて、そしてそれを今度は補償裁定をしようということは、これはとても普通の人には期待できないと思う、ことに検察官なんかは、こういうようなことはとてもできない、これは一般の見方だと思うのです。そこで、これに対しては、これは非常に急いでこういうものをお作りになったというので、十分そういう点は、あるいは御検討になったかならぬか、そういう点もあろうかと思いますけれども、そういう点については、大臣としてどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/34
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035・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) これは、実は補償の裁定をいたしまする機関を、準則のようなものを作りまして定めたいと思うのでありますが、この規程自身によりますと、その補償すべき問題に該当する事件を、取調べました検察官の所属する検察庁の検察官ということになっておりますが、実際の運営といたしましては、各地方検察庁の監督者の立場にある者、まあ例をあげますと、大体次席検事のような人を補償裁定者として、あらかじめ検察庁ごとにきめておきまして、その一般検事よりも一段上の、監督の地位にある者がその裁定の職務を行うというようにいたしたいと考えておる次第であります。かようにして参りまして、検事の側から自発的に——これは、やってみたけれども、見当違いであったので、被疑者に気の毒であるという場合には、自発的に裁定の主任者に申し出まして、自発的に裁定をして補償する道もございます。それから被疑者の方から、自分はこういうことで迷惑を受けたから補償をしてもらいたいという要求がありました場合には、裁定担当者が審査をいたしまして裁定をすることになるわけであります。
なお、行政措置でございますから、その裁定に不服がございましたならば、当事者は、その裁定者の監督官庁でございます高等検察庁に対して不服申し立てができる、さらに高等検察庁でそれに対して、その際申し出のぜひを決定いたしました場合に、不服があれば上級官庁である最高検察庁にも申し出ができる、こういう工合になって参りますから、大体その点は遺憾のないようにさばき得ると、実は考えておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/35
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036・棚橋小虎
○棚橋小虎君 いろいろその方法も考えておいでになるようでありますが、被疑者としてきのうまで勾留までされて、いろいろな点において厳重な取調べを受けておったのが、その当の検察庁に対して、不起訴になったからといって、直ちに補償の申し立てということができるかどうか、これはまあ非常に権利思想が発達しておる人たちに対しては、これはそういうことも期待できましようけれども、日本の一般の、ことに地方などに参りますというと、まだそのようなことはとても私はできないと思いますね。そうしてかりにそういうしっかりした考えを持っておって申し立てをしましても、補償の裁定をするものは当の検察庁である。なるほどその取調べをした検察官ではない、その上級地方検察庁の検察官あるいは次席検事というような人がやられるわけでありますから、個人的には別にそういうことはありませんでしょうけれども、しかし、検察庁というような所は、やはり検察庁の威信というようなことも考えます。そうなれば、ことにまた同僚の、自分が監督しているものでありましても、とにかく同僚のしたことを、やはりそれの、ミスを認めて、そうしてそれに対する補償をして、やるということは、これは私はなかなか言うべくして行われないことだと思うのであります。それで、私はこういうものに対してはやはりそういう審議機関みたいなものを作りまして、そうしてこういう今まで取調べをした官庁とかいうようなものとは関係のない、まあどういう構成にしますか、そういうものを作って、そうしてそういうものに対して申し出をする、ここでもって裁定をするということによって、初めて一般国民の信頼が得られるのだろう、こう私考えますが、その点いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/36
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037・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) まことにごもっともなお説でございます。できるだけこういう補償措置を講じます以上は、関係者をして納得せしむるということが非常に大事だと思いますから、さような点も……。とりあえず今回の場合、このような規程によって、初めての試みでございますから、運用をいたしてみまして、将来の発展に応じて、できるだけ合理的な制度にして参りたい、完成して参りたいと、かように考えております。
なお、先刻こういう措置を講ずるに至りました動機、理由について申し上げた中に、申し落しましたが、従来も検察庁側あるいは実際その衝に当りました検事自身にいたしましても、こういうような補償の道をぜひほしいという部内からの要望も相当強かったようなわけであります。申しますのは、検察官は、町に出て、事件について直接検挙するということはほとんどいたしませんで、第一線の治安を担当いたしております警察関係が事件を検挙し、それが検察官に連絡をされ、そして検察官は公益の代表として事件を公判に付するういう職務を行いますので、事件の大体燃え初めの起りは、警察から起ってくる場合が多いのであります。で、自分が直接事件を調べた結果、全く人違いであった、見当違いであったその人に犯罪があって、まあ気の毒だから起訴猶予にするとかというのとは違いまして基本的に間違いであった場合がまれには起り得るのでありまして、そういった事態に遭遇しました検察官あるいはその属する検察庁としては、非常に気の再であった、何とかしてあげたいけれども、する道が、制度としても、予算としてもないというようなことで、検察官側自身が、何とか補償なり名誉回復なりをしてあげたいという場合が、まれにはあるようでありまして、そういうような場合の救済方法として、何らかの措置をほしいというのが、やはり検察官側の、法務省部内からも起っておりまして、たまたま国会方面でも先ほど申しました意見が近年出て参りましたのでこれらを勘案いたしまして昭和三十二年度の予算編成に当って、わずかではございましたが、一応の予算措置が講ぜられましたような次第でありますから、初めての試みとしてまた諸外国にもあまり例のないことでございますが、ぜひ今回予算の計上されました機会に、とりあえずの措置として、今回お配りをいたしましたような補償規程によりまして補償の道を実施いたしたいというのが、法務省側の実は考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/37
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038・山本米治
○委員長(山本米治君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/38
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039・山本米治
○委員長(山本米治君) 速記を始めて。
それでは、先ほどの問題に立ち返りまして、判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案及び裁判所の一部を改正する法律案を議題として、質疑を続行いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/39
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040・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 家庭局長に伺いたいのでございますが、家庭裁判所の調査官の研修所の問題でございます。これは、この研修所の教官の顔ぶれを見ますというと、非常にりっぱな方々がお集まりになって、りっぱな講義がなされておるようでございますが、私、一番お願いたしたいと思うことは、この調査官の、何といいましょうか、人物の修養といいますか、ほんとうの調査官らしい調査官を求めたいという意味合いで、そういう点についてどういうお手当ができておりましょうか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/40
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041・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) ただいまの御質問につきましては、この講師の表には載っておりませんけれども、まずその点を一番先に考えまして、所長さんとして該当裁判官にお願いいたしまして、そういう点を考慮しまして、まずいろいろの方面の方が来られておりますし、また調査官は、今まで裁判所関係の業務にほとんどタッチされなかった方が参っておりますので、裁判所がいかなるもので、どういうふうにやってきたかということも、よくおわかりにならぬ方が多いと思いますので、所長さんからそういう方に精神をたたき込んでいただくというふうに考えておりますし、またその教官の、調査官の教官がおりますけれども、特にそういう点を顧慮いたしまして、そういう今の方をお願いしたようなわけで、その点はまた随時、第二学期、第三学期というふうに、各裁判所に実習に行ってもらいますときに、そういう点をお願いする。また、私らも随時出かけまして、座談会とか、場合によりにましてては、行ったときにそういう話をするというふうにしまして、まず第一に、そういう裁判所の人としてふさわしい人格を作ることを、研修所の第一の要諦というふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/41
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042・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 私いつも申しておりますが、やはりこの仕事は、お人柄のいい方にやっていただくことが、理屈は上手よりも、口がうまいよりも、一番大事なことで、そういったような意味合いで、十分にこの研修所の教授要綱といいますか、教科内容についてお考え願いたいということが一つ。
それから地方を歩いて見ますというと、東京などあまりひどいことはありませんでしょうけれもど、そのやり方、そしてまた調査官のおります部屋が、刑事部屋とあまり変らないような空気を見るというようなこともございまして、私は、これははなはだ遺憾なことだと思っております。これは全く調査官の人格のしからしむるところであると、そういう点を、私遺憾に思っておりますので、お含み願いたい。これはお願いでございます。
それからいま一つ、全国の家庭裁判所の少年部の方の統計を見ますというと、不開始不処分という数が非常に多い。ほとんど五〇%以上になっております。それは、まあ内容をずっと深く調べてみますというと、これは道路交通違反なんかで、当然それでいいのもございますけれもど、しかし、また割合にそういったような各月に隠れて、もっともっと調査官が深く掘り下げれば、これは不開始不処分ということはできない事件も私はあるのじゃないか。聞きますというと、旧少年法の一号、二号、三号処分をしておりますという説明を、ときどき聞きますけれども、もし、それをほんとうにされておるなら、これは重要な、旧少年法の一号、二号、三号なんというものは、実にうまみのある処分法だと思っておるのでございますが、そういう処分の記録というものを私は残して、やはり不開始不処分で消してしまうということは、非常に残念だと思います。その点について、家庭局長の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/42
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043・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) 初めの御要望の点はよく了承いたしました。その御趣旨に沿うように努力いたします。
ただいまの不開始不処分でございますが、これにつきましては、今先生のおっしゃいましたように、各方面からいろいろ批判がございまして、これはしさいに内容を分析いたしますと、必ずしも簡単にやってるわけじゃなくて、相当やっておられますけれども、いかにも記録が残っておりません。その、審判に至ります調査の経過が何にも記録に残っておりませんので、あとで問題になりましたときに、実はこれはこういうふうにやったのだ、こういうふうに訓戒を与えてやった、そういうふうにおっしゃっても、またそういうことが記録上見えませんので、実は家庭局でも各方面の批判にこたえる意味におきまして、この間から検討いたしておりまして、これをもう少し記録に残す、どういうふうにして残したらいいかということを考えまして、大体ただいま家事調停で行なっております経過表というのがございまして、そこにいろいろのことを書いてもらえば、これはそれぞれ調査官あるいは裁判官が検討して、こういう結果になったのだということが、一目瞭然にわかりますので、そういうふうにしておきますと、また、どの事件でもそのようにするようにいたしますと、調査官も裁判官も必ずそのように、また、しさいに検討して、事件を検討してやっていただくようになると思うのでございますので、そういう方向に進みたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/43
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044・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 もう一点だけもちょっと伺いたいのでございますが、調停委員の人選というものは、全国的にこれは統一されておるのでございましょうか、どうでございましょうか。各地で非難がございますのは、不適当な人が自薦他薦で、そうして推薦する人にいい地位の方を持っておる人は、結局その選の中に入る。結果から見たら、とんでもない人がその地位を占めておるというような非難が非常に多いのでございますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/44
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045・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) 民事調停の方は、私はよく存じておりませんが、家事調停の方におきましては、各地の裁判所では裁判官会議にかけてやることになっておりますが、その前に、それぞれ委員会を作って、その委員会で検討してやっておる。というふうに聞いております。また、各地に調停委員の団体がございますが、非公式にその団体から、調停委員を選任する前に、意見を聞いてくれというような要望もございまして、それは正式には取りつけないことになっておりますけれども、所によりましてはそういう方の御意見を聞いたり、あるいは私の知っている範囲におきましては、各事務局の人が、その調停委員の推薦がございますと、いろいろのうわさなりなんかを調査いたしておりますし、あるいは警察に聞くというような場合もございまして、なるべく新しい選任については過誤がないようにやっておりますが、中には、あるいはそういう御指摘のようなことがあるかと思いますけれども、漸次、昔のように有力者がなるというのでなくて、だんだん社会各層の方がなっておられますので、調停委員になられた後に、調停委員の内部の自治的の練磨によりまして、そういうような方がなくなってくるんじゃないか。また事件の選任に当りましては、そういうような評判のある方につきましては、各主任の裁判官の方が、そういう方に事件をやっていただかないようになっているんじゃないか、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/45
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046・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 調停委員は一年だけのお願いというような形なんでございますね。それがもう七十になっても、それ以上になっても、全くボスみたいな格好で、よぼよぼしながらやっているというような人がずいぶんあるような気がいたしますし、せんだって私ども参議院から家庭裁判所に視察に参りましたときなんか、ある部屋で、これはきっと嫁しゅうとめの関係か何かだったに違いございません、事件の内容はよく存じませんけれども、年をとったおばあさんの調停委員が、私らの嫁時代にそんなことでも言ったらといって、旧憲法時代か何か、古いことを言って、とんでもない嫁の言い分だというようなことをおっしゃっているのを聞きまして、こんな感覚で調停されたら、一体どういうことになるんでしょうかと私は思いましたが、実際世間では、調停にかかってはみたんだけれども、とてもあんな所じゃだめだというふうな非難もあることは事実だと私は思っておりますが、これは一年お願いといったら、一年たったら、ありがとうございますと言って、一ぺんみな清算して、どんどん流するように一つやってみたらどんなものでございましょうか。どういうふうなお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/46
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047・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) 七十才以上の力はあるように聞いておりますけれども、新任のときには、私の知っている範囲におきましては、七十才以上の方は全然お願いしないというふうに大がい各地ともなっているように聞いております。それから、従来調停委員の方にお願いして、毎年法制上は一年ごとに候補者の選任ということになるんですけれども、やはり別段調停委員として不都合なことがなくて、そうして今度の新年度から調停委員でないということになりますと、その方の社会的活動に非常に影響する場合もあり得るというふうな顧慮から、各地の裁判所では、あるいはそういうふうにずっと、選任されましたら毎年選任を続けていくというようなことになっているかもしれませんけれども、私が知っておりますところでは、現に私が奈良におりましたときには、毎年、年末に裁判官会議を開きます。そのときに、調停に関係ある裁判官から、不適任と思われる方の審議をいたしまして、そのときには毎年二、三人、ずつ選任に漏れるということかございまして、そういうようなことが漸次各地にこれから行われていくのじゃないか、そうしますと、選任に漏れた方は非常に憤慨されまして、裁判所に抗議を申し込んでくる方もございますけれども、それは一年ごとの選任だからというので、われわれの方で受け付けない、各地とも漸次そういうふうに、一年ごとの交代に、選任につきまして慎重に考慮するようになっているのじゃないか、そういうように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/47
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048・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 この調停委員ということを一つの肩書きとして、まあ名誉職みたように思われておりますようでございますが、もちろんこれはお手当も少うございますから、ほんとうに一種の名誉職として御奉仕されているには違いございませんけれども、地方なんかに行きますというと、調停委員という肩書きがあれば、もう大体その人の人物は評価されているというような結果になっておりますけれども、心の中では、やはり小づかい稼ぎでございますので、もっと値段を上げてくれ上げてくれという声があり、ずいぶん私どものところに陳情されております。そういったような意味合いにおいて、だが仕事は大事な仕事なので、やっぱり大物を選んで使っていただかなくてはならぬ。そこで、原則としたら、一年お願いということを、ただ各回だけでなしに実行していただいて、そうしてどんどんかわることを原則にしていただきたいと思っております。昨年暮の東京の状況なんかは、わずか十人か十一人という、結局はやめてもらえないので、そうしてわんさわんさと運動した人が百人以上だったということを聞いております。そうすると、そこにはまことに醜い、聞きにくい問題などもあるようでございますが、一つ新局長におなりになりました際に、十分にこの点を考慮していただきたい、これもお願いでございますます。私、きょうはこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/48
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049・棚橋小虎
○棚橋小虎君 今、宮城さんから調停委員の任命について御質問があったのですが、ずいぶん地方の裁判所なんかでは、調停委員になっても、何回となしに出て、いわゆるボスになっちゃって、非常に評判が悪いのです、裁判所ボスということで……。そういう者はどこの裁判所にも私は五人や六人はおると思うのですが、これは非常に裁判に対する信頼を失うし、それから調停というものに対する国民の信頼をやはり失わしめておる大きな原因だと思いますのでこれはどんどんと新しい人々にかえて、また新しい人の方が熱心でもあり、それからまたいろいろな社会情勢というものをよくわかっておる、そういう人にかえていくことが私は必要だと思うのでございますが、どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/49
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050・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) ただいま宮城委員にお答えいたしました通りに、いろいろそのことについては、各裁判所でお考えになっておると思いますけれども、なお、そういう御要望のあることは、機会あるごとに伝えて、交流をはかる、新しい方を入れていただくというような方向に進めたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/50
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051・棚橋小虎
○棚橋小虎君 調停委員の任命というようなことは、全然地方裁判所におまかせになっておるわけなので、こちらい方からは別にそういうことについて、一般的にでも、何か指令、訓令というようなものは出せないわけなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/51
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052・菰渕鋭夫
○説明員(菰渕鋭夫君) 家事調停と民事調停とございまして、民事調停の方は私関係しておりませんので、ちょっとわかりかねるのでございますが、民事調停の方は関根総務局長から……。しかし、裁判官会議できめることになっておりますので、やはり裁判官会議の裁量にゆだねておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/52
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053・棚橋小虎
○棚橋小虎君 やはり調停委員の人選というものについて、非常に弊害が現在ではあって、それが調停に対する民衆の信頼を失わしめておると思うので、そういうことについて裁判官会議でありましても何でありましても、中央の方からして、特にその点について御注意になるとか、あるいは指示されるとかいうようなことをされてはいかがかと思いますが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/53
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054・関根小郷
○説明員(関根小郷君) 今棚橋委員のお話の点非常にごもっともなことが多いかと思うのです。実は最高裁判所におきましては、調停委員の選任規則ということを数年前に制定いたしまして、それに基きまして調停委員の資格等を定めまして、しかも各裁判所におきまする調停委員の数をきめまして、その数をこえてなおかつ名目的な調停委員を選任することがないようにいたしたわけでございます。
それから今申されました、調停委員自身の、何と申しますか、修養と申しますか、そういった点につきましては、各地方裁判所ごとに調停委員の会同を催しますほか、毎年一回最高裁判所におきまして、全国の調停委員の代表者を集めまして、短かい期間ではございますけれども、調停委員自身につきましての切瑳琢磨と申しますか、そういうことを協議検討をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/54
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055・棚橋小虎
○棚橋小虎君 いろいろ裁判所とされましても、そういう点について御考慮になっている点はよく認めるのでありますが、どこの裁判所へ行って見ましても、調停委員というものは大ぜいいるけれども、そのうちに数人の大ボスがあるわけなんです。それが何年も出て、そうして最後までかわらない数人の人がおりまして、それが調停委員会というような、調停委員の人たちの実権を握っておるわけでして、結局これらの人は裁判官とも心やすくなっており、いろいろ民事事件なんかについて、裏面から裁判官に運動をするというようなことも、私はあると思います。果して裁判官がそういう人たちの言うことを取り上げるかどうか知りませんが、しかし、自分たちは裁判所に特別に出入りをする者であるというような顔つきをしまして、そうして庁内でもっていろいろ民衆の依頼を聞いておるということが、確かに私はあると思う。こういう点を根絶していかないと、これは司法の威信というものに非常に関係してくると思う。それはどこに原因があるかといえば、結局何回も何回も同じ人を調停委員にしてしまって、そうしてそれが裁判所の特別な出入り人というような格好になってくることに私は原因があると思うので、この点についてどうか法務省あるいは裁判所の力におきましても、十分御考慮を願いたいと、こう思います。希望を申しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/55
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056・関根小郷
○説明員(関根小郷君) 御趣旨ごもっともでございまして、実は調停委員の側におきまして、ただいま法律の上におきましては一年ごとに交代ということになっておりますのを、二年に延ばしたらどうかという要望がございます。それに対しまして、われわれの方では、それはやはり困るのだということで拒絶しておるようなありさまで、悪い意味で長い間調停委員を続けたいという意味じゃなしに、調停委貸としのなれているから続けてもらいたいという希望のように聞いておるのでありますが、しかし、何と申しましてもただいま申されましたように、調停委員が調停屋に——調停屋と申しますか、職業的調停委員にならないように、われわれの方としては常々心がけておりますのですが、なお一そう御趣旨を体しまして、気をつけたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/56
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057・山本米治
○委員長(山本米治君) 本日は、これにて散会いたします。
午後零時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102615206X01519570418/57
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