1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年五月十二日(木曜日)
午前十時一分開会
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委員の異動
四月二十六日
辞任 補欠選任
本岡 昭次君 小野 明君
四月二十七日
辞任 補欠選任
岩上 二郎君 田辺 哲夫君
三治 重信君 柳澤 錬造君
四月二十八日
辞任 補欠選任
大島 友治君 福田 幸弘君
永野 茂門君 大河原太一郎君
田辺 哲夫君 岩上 二郎君
吉川 春子君 宮本 顕治君
四月三十日
辞任 補欠選任
宮本 顕治君 吉川 春子君
五月六日
辞任 補欠選任
大河原太一郎君 永野 茂門君
福田 幸弘君 大島 友治君
柳澤 錬造君 抜山 映子君
五月九日
辞任 補欠選任
抜山 映子君 柳澤 錬造君
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出席者は左のとおり。
委員長 名尾 良孝君
理 事
板垣 正君
岩本 政光君
大城 眞順君
野田 哲君
委 員
岩上 二郎君
大島 友治君
岡田 広君
亀長 友義君
古賀雷四郎君
永野 茂門君
桧垣徳太郎君
堀江 正夫君
小野 明君
久保田真苗君
飯田 忠雄君
峯山 昭範君
吉川 春子君
柳澤 錬造君
国務大臣
国 務 大 臣
(内閣官房長官) 小渕 恵三君
政府委員
内閣参事官
兼内閣総理大臣
官房会計課長 河原崎守彦君
内閣官房内閣広
報官室内閣広報
官
兼内閣総理大臣
官房広報室長 宮脇 磊介君
内閣総理大臣官
房審議官 本多 秀司君
内閣総理大臣官
房参事官 平野 治生君
総務庁恩給局長 石川 雅嗣君
事務局側
常任委員会専門
員 原 度君
説明員
厚生省援護局庶
務課長 新飯田 昇君
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本日の会議に付した案件
○平和祈念事業特別基金等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/0
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001・名尾良孝
○委員長(名尾良孝君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
去る四月二十六日、本岡昭次君が委員を辞任され、その補欠として小野明君が選任されました。
また、四月二十七日、三治重信君が委員を辞任され、その補欠として柳澤錬造君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/1
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002・名尾良孝
○委員長(名尾良孝君) 平和祈念事業特別基金等に関する法律案を議題といたします。
まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。小渕内閣官房長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/2
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003・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) ただいま議題となりました平和祈念事業特別基金等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
恩給欠格者問題、戦後強制抑留者問題、在外財産問題などのいわゆる戦後処理問題については、近年国に対し補償措置等を求める声が強まり、種々の論議が行われてきました。このため、昭和五十七年六月に学識経験者による戦後処理問題懇談会を設置し、同懇談会においてこれらの戦後処理問題についてどのように考えるべきかについて二年半にわたり慎重かつ公平な検討が行われました。
その結果、昭和五十九年十二月に内閣官房長官に対し、いわゆる戦後処理問題については、もはやこれ以上国において措置すべきものはないが、関係者の心情には深く心をいたし、今次大戦における国民のとうとい戦争犠牲を銘記し、かつ、永遠の平和を祈念する意味において、政府において相当額を出捐し、事業を行うための特別の基金を創設する旨の提言が行われたところであります。
政府としては、同懇談会報告の趣旨に沿って所要の措置を講ずることを基本方針とし、その具体的内容等について種々検討調査を行ってきた結果、平和祈念事業特別基金を設立し、関係者に対し慰藉の念を示す事業を行うとともに、戦後強制抑留者の問題については、これらの方々が戦後酷寒の地で強制労働に従事させられ大変御苦労をされたという特殊な事情を考慮して、本邦に帰還された方々に対し個別に慰労の措置を講ずることとしたところであります。
以上の経緯を踏まえて、ここにこの法律案を提出することとした次第であります。
次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
まず第一に、この法律の趣旨は、旧軍人軍属であって年金たる恩給等を受ける権利を有しない者、戦後強制抑留者、今次の大戦の終戦に伴い本邦以外の地域から引き揚げた者等、関係者の戦争犠牲による労苦について国民の理解を深めること等により関係者に対し慰藉の念を示す事業を行う平和祈念事業特別基金を設立するとともに、戦後強制抑留者に対し慰労品の贈呈等を行うことについて必要な事項を規定するものであります。
第二に、平和祈念事業特別基金についてであります。その目的は、今次の大戦におけるとうとい戦争犠牲を銘記しかつ永遠の平和を祈念するため、関係者の労苦について国民の理解を深めること等により関係者に対し慰藉の念を示す事業を行うことであります。
基金の資本金は十億円とし、政府がその全額を出資することとしております。なお、昭和六十三年度から五年度を目途として、政府の出資額が二百億円となるまで基金に追加して出資するものとしております。
また、基金に、その運営に関する重要事項を審議する機関として、基金の業務に関し学識経験を有する者十人以内で組織する運営委員会を置くこととしております。
基金の業務は、関係者の労苦に関する資料の収集及び展示、調査研究、出版物その他の記録の作成その他基金の目的を達成するために必要な業務としております。
このほか、財務会計に関する事項等所要の規定を設けております。
第三に、戦後強制抑留者またはその遺族に対する慰労品の贈呈及び慰労金の支給についてであります。
まず慰労品の贈呈でありますが、戦後強制抑留者またはその遺族に総理府令で定める品を贈ることによりこれらの者を慰労するものとし、基金にその慰労の事務を行わせるものとしております。
次に慰労金の支給でありますが、戦後強制抑留者またはその遺族で日本の国籍を有するものには、慰労金を支給することとしております。ただし、年金恩給等の受給者等には支給しないこととしております。
慰労金の支給を受けるべき遺族の範囲は、配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹とし、その順位はそれぞれこの順序によることとしております。
慰労金の額は十万円とし、二年以内に償還すべき記名国債をもって交付することとしております。
また、慰労金の支給はこれを受けようとする者の請求に基づいて行うこととしておりますが、この請求期間は昭和六十八年三月三十一日とし、この期間に請求のない場合には慰労金は支給しないこととしております。
なお、慰労金の支給に関する事務のうち、請求の受理及び審査に関する事務を基金に行わせるものとしております。
このほか、慰労金の支給等に関し所要の規定を設けております。
以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/3
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004・名尾良孝
○委員長(名尾良孝君) 以上で本案の趣旨説明の聴取は終わりました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/4
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005・名尾良孝
○委員長(名尾良孝君) この際、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
本案審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/5
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006・名尾良孝
○委員長(名尾良孝君) 御異議ないと認めます。
なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/6
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007・名尾良孝
○委員長(名尾良孝君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/7
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008・名尾良孝
○委員長(名尾良孝君) それでは、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/8
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009・野田哲
○野田哲君 官房長官大分お取り込みのようでありますけれども、法案の内容に入る前に所管事項について二つばかり伺いたいと思います。
まず最初に、きのう総理府の中で家宅捜査があり逮捕者が出た、こういうショッキングな事件が報道されております。行政機構の中枢であり、総理や官房長官の直属のところにこのような不祥事件が起きたということは、これは大変重大なことだと思います。この事件の概要と、官房長官としてはどのような所見をお持ちであるのか、まず伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/9
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010・本多秀司
○政府委員(本多秀司君) 先に概要につきまして私の方から御説明させていただきます。
実は、昨日のことでございまして、私どもまだ十分把握し切れない面がございます。いずれにいたしましても、昨日の朝九時三十分ごろでございましたか、東京地方検察庁によりまして、総理府の元管理室長である橋本哲脂に対する収賄被疑事件につきまして令状執行の上、関係書類等の差し押さえ、捜索を受けたというのが事実でございます。この元幹部職員の汚職被疑事件の事実関係につきましては、現在司直の手にゆだねられているところでございますので、その捜査の状況を見守っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/10
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011・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 概要につきましてはただいま答弁申し上げたとおりでございますが、官房長官といたしましては、公務員は全体の奉仕者として職務の公正な執行に関し自粛自戒し、厳正な規律を保持しなければならないことは言うまでもないことと考えております。今回の事態は、元職員であるとはいえ、まことに遺憾かつ残念な事柄であります。改めて姿勢を正し、国民の信頼を回復すべく政府として努力いたしてまいる所存でございます。
なお、昨日、総理府といたしましては今回の不祥事につきまして、一、広報予算執行に関するチェック体制の見直し、二、業務適正化委員会(仮称)の発足、三、綱紀粛正の徹底についての通達、四、人事管理・人事配置の見直し等につきまして、早速に幹部職員を集めましてその対応策について対処いたしていくことを定めた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/11
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012・野田哲
○野田哲君 中曽根内閣時代のことでありますけれども、片や公務員に対しても行政改革によって厳しい給与の抑制など耐乏を求めながら、片やその中枢においてこのようなことが行われたということは、私どもとしても大変これはやはり問題があったというふうに考えているわけです。
けさの新聞などによりますと、橋本が収賄によって得た金額は五千数百万円という報道があるわけであります。しかも、単に広報関係だけではなくて、他の省庁に対しても事務機器等の納入についてあっせんをしてその報酬を得ていたというようなことで、これが五千数百万円になっている、こういう報道があるわけでありますが、そういたしますと、これは単に総理府部内だけにとどまらない。かなり各省庁に及んでいるのではないか。具体的には文部省へ事務機器の納入についてあっせんをした、こういう報道があるわけでありますけれども、それらの点について、どういう省庁に対してどのようなあっせん工作をしていたのか、そういう点については総理府としては自主的に内容の審査をやられるのか、それとも挙げてこれは司直の手にゆだねるのか、その点はどういうふうに考えておられるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/12
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013・本多秀司
○政府委員(本多秀司君) 私ども総理府部内におきまして、先ほど官房長官からお答えがございましたとおり、私どもに対しまして四つの点につき指示がございました。早速きのう業務適正化委員会を開きまして、今後のあるべき対応策につきまして協議をしたところでございます。したがって、まず第一義的には総理府部内におきまして公務員の綱紀粛正という観点から、今後の業務の見直し等につきましては当然対応していかなければならないというふうに考えております。
各省庁につきましては、これは私ども現時点におきましてはまず総理府部内の姿勢を正すということが第一義的であるというふうに考えておりますので、他省庁関係につきましては、これは司直の捜査の結果に期待いたしたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/13
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014・野田哲
○野田哲君 彼が収賄によって得た金額の大きさを考え、しかも文部省の担当者に事務機器の納入等についてあっせんをしていたというようなことを考えますと、私どもある程度行政機構に通じている者でも、総理府の担当の室長といいますか管理室長というんですか、このポストはそんなに権限を持っているものかなと不思議に思えるわけでありますけれども、そういう面からの行政機構についてのチェックといいますか見直しといいますか、そういうものが必要になってくるのではないかと思うんですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/14
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015・本多秀司
○政府委員(本多秀司君) 御指摘のとおりでございまして、これも先ほど官房長官がお答え申し上げましたとおり、一つの非常に重要な検討事項といたしまして、例えば総理府における人事管理体制がどうなっているのか、あるいは適正な業務の執行を行うためのチェック体制はどうなっているのか改めて見直しまして、今後こういう不祥事態が絶対に起こらないように対処してまいりたいという決意で対応してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/15
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016・野田哲
○野田哲君 とにかくこの件につきましては、総理、官房長官の直属の言うならば行政機構の中枢のところで起きた問題でありますだけに、綱紀粛正という立場からこれは徹底的に解明されるべきだと思いますし、政府自身としても自浄のための対応措置を適切にとるべきであるということを強く指摘して、次の問題に移りたいと思うんです。
奥野国務大臣の発言が回を重ねるごとにエスカレートして、隣の韓国や中華人民共和国の国民感情を非常に刺激しておりますし、これらの国々のマスコミの論調も日ごとに厳しさを増してきているわけであります。竹下内閣の対応を見ると、ひたすら風が通り過ぎるのを待つというような態度にしか見えないわけでありますが、事は逆の方向に広がっていると思うんです。中国や韓国の政府も直接とうとう不快の念を表明するという事態にまでなってきているわけでありますが、政府としてはこの問題をどう処理されるおつもりなんですか。ただひたすら風が通り過ぎるのをこれからも待つということなんですか。それとも、何らかの対応措置をとられようとしているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/16
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017・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 奥野国土庁長官の発言が中国、韓国の新聞等で批判的反応を招くという事態になったことにつきましては、心から遺憾の意を表するところでございます。過去の歴史に対する政府の認識は、韓国との間では日韓共同コミュニケをもとにし、また日中に関しましては日中共同声明等を中心にして対処いたしておるところでございまして、従来からその認識にはいささかの変化もなく、今後ともその立場を守って対応いたしていきたいと思っております。
そこで、御指摘のありました点につきましては、昨日参議院の本会議におきまして奥野国務大臣がみずから御答弁されまして、政府の方針につきましてはこれを遵守していくことを申し述べられておるところでございまして、特に中国に関する問題につきましては、総理並びに官房長官の発言を是認するという御答弁ぶりでございますので、政府といたしましてはこの長官の公式の発言をもって政府の方針と一体のものである、こういう認識をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/17
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018・野田哲
○野田哲君 今の官房長官の発言で、政府の方針に沿ってそして総理や官房長官の発言に沿ってということで、奥野国務大臣の発言は総理や官房長官と一体だという説明があったわけでありますけれども、これはちょっと官房長官、違うんじゃないですか。
それでは具体的に伺いますが、盧溝橋事件は偶発的に起こった問題だと、こういう発言がきのう奥野国務大臣から参議院の本会議でなされているわけであります。そして、日中戦争というのはあれは事変であると、宣戦の布告によって起こった戦争ではないんだ、こういう趣旨を述べておられるわけです。この奥野長官の発言が総理や官房長官と一体で矛盾はないんだということになりますと、これは長官大変なことになりますよ。盧溝橋事件は偶発的に起こったことだということは、つまりその背景である日本が当時中国の領土である旧満州地域にかいらい政権をつくって、そして関東軍という陸軍を派遣して実質的な支配を行ってきた、さらに北京の周辺にも陸軍を駐留させた、これが盧溝橋事件の背景になっているわけであります。それをあれは偶発的に起こったものだ、こういう一言で述べられているこの発言というのは、これはそのような盧溝橋事件に至るまでの中国に対する軍事的な支配介入、この歴史的な事実を否定することになるし、日中共同声明に具体的に述べてあることに反することになるんじゃないか、私はそういうふうに思うんですが、長官いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/18
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019・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 誤解がありましてはいけないことでございますので、私が申し上げましたのは、昨日の答弁ぶりの中の長官として言わんとすることの趣旨について、政府としては基本的に奥野長官が竹下内閣におけるいわゆる侵略云々の問題についての考え方については内閣の方針と違背するものでない、こういうことを実は申し上げたわけでございまして、その点につきましては、第一に過去の誤ちを深く反省しその反省の上に立って行動していかなければならない、それから、二、戦争中に侵略的な行為があったことを否定しないという私の発言ぶりも是認をしておるということで、その点について奥野長官の考え方と異なるものでない、こういうことを申し上げたわけでございます。
そこで、御指摘の盧溝橋問題につきましては、これは個々の事件の歴史的な評価、解釈はいろいろあり得ることでございまして、この点につきましては歴史家の評価にゆだねるべき側面もあろうが、一般論としては歴史は流れの全体として評価すべきものと考えておりまして、いずれにしても政府としては、昭和四十七年の日中共同声明の中で述べられているとおり、「過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」という認識は不変であり、戦争は二度と繰り返さず平和国家としての道を歩んでいく決意であるということでございまして、本件につきましては奥野長官御自身もライシャワーさんの著書の中の考え方を引用されたものだというふうに認識をいたしておりまして、政府としてこのことを是認するとか否定するとかという立場にない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/19
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020・野田哲
○野田哲君 奥野長官のきのうの発言というのは、今長官も言われたライシャワー元駐日大使の「ジャパン」という本の中の一節を引用されたということでありますけれども、私も同じ立場に立っているんだというふうにあのときには述べているんです。つまり、私も同じ立場に立っているんだということは、日中戦争は昭和十二年の盧溝橋事件に端を発した、これは全く偶発的に始まったんだと、このことは私も同じ立場に立っているんだと、こういうふうにきのう述べておられるわけです。そして、あの日中戦争については戦争とは認識をしていない、こういうふうに述べておられるわけですね。このことは、今長官も述べられた「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」、この日中共同声明に述べている趣旨とは大きく異なっているわけだし、そして日中戦争に至る侵略の具体的な歴史的事実、このことを偶発的に盧溝橋事件が起きたと言うことは否定をすることに通じるわけであります。
したがって、長官に重ねて聞きますが、きのうの参議院本会議における奥野長官の発言が内閣の方針とは異なっていないということであれば、内閣そのものがこれは盧溝橋事件は偶発的に起こったことだと言うことであり、あの日中戦争は戦争ではないんだという認識に立つことを肯定することになるわけでありまして、共同声明の精神とは大きくこれは異なることになるわけでありますが、この点そうではないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/20
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021・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) ただいま御答弁申し上げさせていただきましたが、基本的な考え方として、日中間の戦争状態にありましたことに関しまして、侵略云々ということがございました過去の奥野長官の発言に対しまして政府としての考え方を私も委員会において述べましたが、その考え方と基本的には背馳しないものであるということを申し述べたところでございます。
そこで、ただいま御指摘をされました点につきましては、これは奥野長官の個人的な思想なり考え方に存するものであろうと考えておりまして、この点については政府の考え方であるということではないことは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/21
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022・野田哲
○野田哲君 その盧溝橋事件に関連する発言、戦争観というものが個人的思想に関することだと、こうおっしゃったわけですが、そのことについて奥野国務大臣はこういうふうに数日前に述べていますね。閣僚にも思想の自由がある、こういうふうに開き直っておられるわけです。新聞の報道によりますと、「私は内閣の一員であっても、思想、信条の自由は許されていると考えており、率直に私の考え方を述べたわけで、そのことが閣内の一致を乱すとか乱さないとかにかかわりはないものだ。」、こういうふうに述べておられるわけです。官房長官も今、奥野国務大臣のきのうの発言については個人的思想に関すること、こういうふうに述べたわけですけれども、そこで私は国務大臣にも思想、信条の自由があるということについて長官に伺いたいんですが、奥野誠亮個人には思想の自由があるとしても、国務大臣としては憲法上、法律上おのずから制約を受けており、憲法上、法律上の義務が課せられているのではないかと思うんです。
まず、憲法九十九条で国務大臣は憲法を擁護する義務を負う、こういうふうになっています。だから、奥野さんが大臣でないときに靖国神社問題とかあるいは日本の歴史観等についていろいろ発言されていることについては、これは思想、信条の自由があるんだから国会で特に問題にされたこともないし、私と奥野さん、マスコミを通じて二人で対談をして大論争をやったこともあるわけです。しかし、国務大臣である限りはこれは憲法擁護の義務を負っている。
そしてもう一つは、内閣法の二条の二項、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。」、こういうふうになっているわけであります。したがって、衆議院、参議院の本会議あるいは委員会における発言が総理大臣あるいは政府の決めた方針と大きく異なった発言、これはいかに個人的な思想といっても許されることではないんじゃないか。きのう本会議で発言されたことは明らかにこれは内閣法の二条の二項の「国会に対し連帯して責任を負う。」、このことに外れているのではないですか、個人的思想だということであれば。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/22
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023・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 御指摘のように、個人的な思想、信条の自由を保持するということと閣僚としての発言ぶりについてのその重さ等に対する御指摘につきましては、理解するところでございます。そこで、国務大臣が憲法九十九条の規定によりまして憲法を尊重し擁護する義務を負い、また内閣法の関係規定から見て内閣の方針に従う義務を負うことは当然のことであり、国務大臣の言動についてはこれらの義務に反することのないように行われるべきものと考えることは当然であると思います。
一方、国務大臣といえども個人として思想、信条の自由や表現の自由を有することは言うまでもないところであり、したがって、そのような立場から国務大臣がある事柄について個人的見解を表明することは直ちにこれらの義務に反するものではありませんが、このように個人的見解を表明する場合においては、その地位の重さからして、これらの義務の遵守について疑いを抱かせることのないよう十分慎重でなければならないと考えるわけでございまして、特に先般来の奥野長官の発言ぶりにつきましては、冒頭申し上げましたように、いろいろ諸外国からもマスコミ等の紙面で御指摘があるところでもありまして、慎重を要していただくべきものと考えております。
なお、先ほどのライシャワー発言をめぐっての問題点につきましては、政府としてこれを担保しているものではないということは申し上げたところでございまして、政府としてはこうした問題につきましてはそれぞれ、先ほど申し上げましたように、いろいろの見方があるのが自由主義国家でございますので、そうしたいろいろの御意見も聞きながら対処していかなきゃならないという立場でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/23
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024・野田哲
○野田哲君 いろいろ今説明されたわけですが、どうも歯切れが悪いんですね。ことしの夏には総理も中国を訪問されるという予定もあるようでありますが、中国や韓国など隣国との関係が奥野さんが発言をすればするほどぎくしゃくする。波風が高くなっている。これを官房長官、竹下内閣としては時日が過ぎれば波が静まるだろう、風が静まるだろう、これでは私は隣国との友好関係、信頼は得られないと思うので、これはやはり政府として責任を持って結末をつけなければならないと思うんですが、どういう結末のつけ方を考えておられるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/24
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025・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 今苦慮いたしておるところでございまして、長官の真意は、先ほど冒頭申し上げましたとおりに、参議院で述べられた文章の中で竹下内閣の方針と一致をしておるということのお答えを公式の場でいたされておりますので、我々はそれを信頼しておるということでございます。ただ、御指摘のありましたように、一部本会議での御答弁ぶりの中での事柄につきましては、これは個人の考え方として申し述べられたものでないかと思いますが、これは政府として是非を論じておるところではないわけでございます。
いずれにいたしましても、日中もそうですし日韓もそうでございますが、隣国の心情を十分配慮しながら、特に閣僚というような任にある者は細心の注意を払って発言し、いやしくも他国の皆さんの感情を害するということのない配慮はいたすべきところでございますので、政府の中におきましてもさらに長官の真意を承りながら、竹下内閣とともに、日中問題で言えば条約十周年を迎える今日でございますので、より友好関係が維持発展のできるように、ともどもに内閣の一員としてやっていただけるように努力をお願いいたしたいと思いますし、対外的には中国並びに韓国に対しましてもその真意を十分、竹下内閣の基本路線に何らの変化もないことをお伝えして御理解をいただきたい、その努力をいたしていきたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/25
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026・野田哲
○野田哲君 奥野さんは私もよく知っておりますが、あの人の真意を述べさせようとすればするほど問題がエスカレートしていくわけでありまして、私はやはりこれは閣僚の地位を去ってもらうしか方法はない、こういうふうに思っているんですが、まあ長官苦慮しているとおっしゃったので、苦慮の結果がどうなるか、これからまた引き続いて衆議院、参議院の議院運営委員会やその他の場でもこの問題が究明されるようでありますから、私どもとしてはこのままでは国務大臣として済まされる問題ではない、こういう点だけ最後に述べて善処を望んでおきたいと思います。
そこで、もう一つ法案の内容に入る前に法案の前提の問題について伺っておきたいと思うんですが、先ほど長官はこの法案を提出する根拠として戦後処理問題懇談会を挙げられたわけであります。この戦後処理問題懇談会というのは一体どういう性格の機関なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/26
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027・平野治生
○政府委員(平野治生君) 戦後処理問題懇談会、五十七年の六月三十日に当時の総理府の総務長官、その後行政改革等ございましてなくなりましたが、当時の総理府総務長官がいわゆる戦後処理問題についてどういうふうに考えたらいいのかという問題について御意見を聞こうということで民間有識者の方々にお集まりをいただいた、こういう会合でございます。したがいまして、いわゆる審議会と申しますか、国家行政組織法八条に基づく審議会等ではない、そういった民間有識者の方々による懇談会である、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/27
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028・野田哲
○野田哲君 私的諮問機関ですね、つまり簡単に言えば。国家行政組織法の八条に基づく審議会ではない私的諮問機関。私は非常に不可解に思うものは、私的諮問機関として設けられた懇談会の答申が法案の提出の趣旨説明の中で根拠として理由づけをされている、これは非常に問題があるのではないか、こういうふうに思うんです。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/28
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029・平野治生
○政府委員(平野治生君) お話しのとおり、いわゆる私的懇談会でございます。答申ではございませんで私どもも報告というふうに言っているわけでございますけれども、この辺の経緯を若干申し上げさせていただきますと、御承知のように、いわゆる戦後処理問題につきましては昭和四十二年の時点で引揚者等に対する特別交付金の給付、こういうような措置をもって一応終わったというふうに考えられてきたわけでございますけれども、いわゆる恩給欠格者の問題とか、あるいは在外財産引揚者の問題、あるいは戦後強制抑留者の問題、こういったような問題につきましては、先ほど提案理由の中でも大臣からお話がございましたとおりに、いろいろ問題が出てまいりました。
そこで、こういうような問題についてどのようにすべきかということについて政府あるいは党ともいろいろ相談したわけでございますけれども、そういう中で、やはりこういう問題については民間の有識者の方々の意見を聞こうと、こういうことになったわけでございます。したがいまして、この問題をいろいろ考えていく中では、その懇談会の中におけるいろいろな御審議と申しますか、御意見というものをやはり政府の方でも非常な大きな重みを持って受けとめてきた、こういう経緯があるわけでございます。そして、もちろんこれは私的懇談会でございますのでその報告のとおりではございませんで、そういうものを尊重するという立場をとりながらも、さまざまな状況、さまざまな問題についてさらに調査検討を加え、そして今回ただいま御審議をいただいている法案を作成し御審議をいただいている、こういう状況になったわけでございます。そういう経緯がございますのでいわゆる提案理由の中にも引用させていただいたと、こういうことがあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/29
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030・野田哲
○野田哲君 提案説明の中ではこういうふうに述べているんですね。「昭和五十九年十二月に内閣官房長官に対し、いわゆる戦後処理問題については、もはやこれ以上国において措置すべきものはないが、関係者の心情には深く心をいたし、今次大戦における国民のとうとい戦争犠牲を銘記し、かつ、永遠の平和を祈念する意味において、政府において相当額を出捐し、事業を行うための特別の基金を創設する旨の提言が行われたところであります。
政府としては、同懇談会報告の趣旨に沿って所要の措置を講ずることを基本方針」として種々検討した結果この法案を出した、こうなっているわけであります。
ここのところは、私は少なくともこういう提案理由の説明の中に提起をすべきではない。このくだりは私は提案理由の説明から取り消すべきだと思うんです。なぜならば、昭和六十一年十月三十一日の閣議で総務長官の発言というのがあるわけです。つまり、これは各省庁あるいは各大臣のところに私的諮問機関がやたらにふえていった、こういう状況に対してこれを規制するための発言として閣議で行われているわけであります。そして、私的諮問機関についてはこういうふうに述べているわけです。あくまでも行政運営上の意見交換、懇談の場として性格づけられるものでありますので、これら懇談会等につきましては、その運用におきまして審議会とは区別が明確になされるように留意されたい、こうなっているわけであります。
そしてまた、国会での審議の中でも、当委員会でもこの私的諮問機関が、粗製乱造という言葉は適切かどうかわかりませんが、やたらに私的諮問機関がふえる傾向について何回もここは議論をしているんです。そして、昔の行政管理庁長官、総務庁長官等々は、私的諮問機関というのはまとまった答申を行うところではない、大臣が私的に有識者の意見を聞くところであって、それはまとまった答申や提言を行うところではないと、こういうふうに答弁をされてきているわけなんですが、各行政機関そして政府の取りまとめに当たる官房長官のところで、私的諮問機関が言ったことをこういうふうに法律の提案の根拠として提案理由の説明の中で挙げられるということは、私的諮問機関の運用に対して示しがつかないことになってくる。これはどう思われますか。これは平野君じゃない。これはやっぱり長官が判断してもらわなきゃ困ると思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/30
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031・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 野田委員の御指摘も、それぞれ総務庁長官の発言その他を引用されてそのとおりだろうと思うんですが、この戦後処理問題につきましてはその処理方が非常に実は困難でございまして、そういった意味でこの問題の取り扱いにつきましてはいろいろ経過があったわけでございますが、内閣としては法律でもって選ばれました、内閣が任命した内閣官房長官が私的諮問機関といえども考え方を求めるということは、これはお許しいただけることだと思います。
そこで、そこで出てきた報告そのものはやはり極めてこれを酌み取るに値する考え方だという判断をいたしまして、その他各般の方面とも御相談の上この法律案を提案してきた経緯がございますので、その一つの契機になりましたと、こういう趣旨でここに述べさせていただいたということでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/31
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032・野田哲
○野田哲君 長官ね、私はこういう法律を出されたことを特に問題にしているわけではないので、それは前の藤波さんの時代からの私的懇談会でこういう報告があったということは知っていますが、それはそれであくまでも私的なんだから、私が問題にしているのは、私的なものは私的なものとして扱っていくべきであって、この法律の提案理由の説明の中でこういう説明の仕方をして、私的諮問機関である戦後処理問題懇談会がこういう報告をしてきたからこれをもとにして法律を出したんだ、その趣旨に沿ってやっていくんだ、こういう説明の仕方をされると、今まで何回も内閣委員会で行政機構のあり方や審議会のあり方、私的諮問のあり方を私どもとしては審議してきた、そしてその都度政府からも見解を承ってきた、そういう経過の中で先ほど述べたような私的懇談会についてはこういう性格なんですよということが政府としても確認をされているわけでありますから、こうずけずけと私的懇談会からこういうことで報告、提言があったからやりますよ、こういう説明をされると、その説明のくだりは私どもとしてはどうしてもこれ受け入れかねる。だから、このくだりは説明から外されるべきじゃないか、こういうふうに思うんですよ。私的諮問機関が法律の提案説明の中へ堂々と根拠として出てくるというのは納得できないんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/32
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033・平野治生
○政府委員(平野治生君) 先生のおっしゃることは私どもよくわかっているつもりでございますが、ただこの問題の極めて重要性と申しますか難しさという中で、この問題がどのような形で今まで検討されてきたか、こういう経緯をこの提案理由の中で述べた方がやはりベターではないだろうか、こういうふうに考えまして、おっしゃるようにこれは私的な懇談会でございまして、答申とかそういうものじゃないということは私ども十分承知いたしております。また、六十一年の十月の御引用になりました総務庁長官の発言も承知しているわけでございますけれども、この問題、そしてこの法案にまとまった経緯というものはやはり提案理由の中できちっとしておいた方がむしろいいのではないか、こういうことで書かせていただいたわけでございます。ぜひ御理解をいただきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/33
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034・野田哲
○野田哲君 これは御理解できないんです。私的諮問機関が法律を提案する根拠を示すなんということは、これは黙って見過ごすわけにいかないんです。今まで何回もこの席で歴代の官房長官や行政管理庁長官、総務庁長官が、私的諮問機関の場というのは大臣が学識経験者の意見を聞くだけの場であります、まとまった提言を受けてそれを根拠にするものではありませんと何回も言ってきたんですよ、ここで。だから、今平野室長の言うような説明は、戦後処理問題懇談会からどういう意見が出されたかということは審議の中で質問されれば答えればいいのであって、こういうふうに法律の提案の根拠にするというのは行政の運営を乱すことになる。そして今までの内閣委員会の審議を無視することになる。この法律はまあいいんですよ、これはこれから審議するんだから。提案説明をこういう形でなさるということは私は了解するわけにいかない、こういうふうに言っているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/34
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035・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) ここの御指摘のところにつきましては、この法律案を提案いたしまする経緯の中で、私的といえども極めて重要な御審議をちょうだいいたしました事柄の内容につきまして述べておくことの方が望ましいのではないかという考え方に基づきまして読み上げさせていただいたわけでございまして、この三問題の処理について法律案作成に至る過程の中で一つの発端として御勉強いただきましたこの懇談会の内容について、やはりそれをもとにしてその後種々の各方面の御議論もいただきながら、かつ政府としての考え方を取りまとめて、そして法律といたしたわけでございますので、ぜひその点御理解をいただいて、この懇談会の考え方をこの中で申し述べることをお許しいただきたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/35
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036・野田哲
○野田哲君 これは何回繰り返しても、今までの当委員会での政府の説明と違うわけでありますから、これは了解するわけにいかないんですよ。繰り返しこの問題について今までの官房長官や総務庁長官は、私的諮問機関というのは学識経験者から大臣が意見を聞くだけのことなんです、まとめたものを答申を受けるというようなものではありませんと、こういう説明をやってきているんです。そういう説明をやってきた私的懇談会が、事もあろうに「いわゆる戦後処理問題については、もはやこれ以上国において措置すべきものはないが、関係者の心情には深く心をいたし、」云々という形で、これでもって一切戦後処理問題は終わりですよというような報告を出されて、そしてだから政府としてはこれだけの法律を出しましたということでは、それを私どもとして黙って聞いておるわけにいかないんですよ。
これはもうこれ以上私は質問を午前中は続けることはやめて、官房長官の日程も迫っておるわけでありますから、委員長、ここで休憩にしていただいて、あとこの問題は当委員会としても理事会で協議をしていただきたい、こういうふうに思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/36
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037・名尾良孝
○委員長(名尾良孝君) 午前十一時三十分に再開することとし、休憩いたします。
午前十時五十八分休憩
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午前十一時三十七分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/37
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038・名尾良孝
○委員長(名尾良孝君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。
本委員会は午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。
午前十一時三十八分休憩
─────・─────
午後一時三十一分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/38
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039・名尾良孝
○委員長(名尾良孝君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、平和祈念事業特別基金等に関する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/39
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040・野田哲
○野田哲君 官房長官、午前中の私の質疑のところでありますけれども、私的諮問機関の扱いについては当委員会で何回も議論をし、閣議でも総務庁長官が発言をして、八条機関と私的諮問機関、懇談会等の扱いは区別をして扱うようにと、こういう発言を行って閣議で了解してきた経過がある。それにもかかわらず今回私的諮問機関である戦後処理問題懇談会の報告や経過を提案理由の説明の中で根拠として挙げていることはいかがなものか、こういうことについて問題の提起をしているわけですが、この問題は引き続いて恐らく同僚委員からも指摘があると思いますので、その上で官房長官の善処を求めて次の質問に入っていきたいと思います。
そこで、今問題になっている戦後処理問題懇談会の審議の経過であります。戦後処理問題というのは広範多岐にわたっているわけでありますが、この戦後処理問題懇談会で戦後処理問題を恩給欠格者問題、それから戦後強制抑留者問題、そして在外財産問題、この三つに絞っているわけでありますけれども、そしてまた法案についてもこれに限った扱いになっている、これはどのような理由であるのか、まずその点について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/40
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041・平野治生
○政府委員(平野治生君) 御承知のように、いわゆる戦後処理問題についてはいろいろな問題があるわけでございます。政府といたしましては、今までいろいろな形で措置をしてまいったわけでございまして、既に御承知のとおりに、昭和四十二年に行われました引揚者に対するいわゆる特別給付金の支給措置をもちまして、いわゆる戦後処理に関する措置は一応終わったということにいたしたわけでございます。その後、先生がただいま御指摘ございましたいわゆる恩給欠格者問題、あるいは戦後強制抑留者問題、また引揚者在外財産問題、こういう問題につきましては非常に強い要望等が出てきたわけでございます。
そこで、戦後処理問題懇談会におきましてはこれらの問題を中心にいろいろ議論をしてきたという経緯があるわけでございまして、ただいま先生のお尋ねでなぜ三問題だけに絞ったのかというお話でございますけれども、いろいろ流れの中でこの三つの問題が非常に大きな問題として私どもの方で取り上げる必要が生じてきた、こういうことから処理懇においてこの三つの問題を中心に御検討をいただいた、こういう経緯があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/41
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042・野田哲
○野田哲君 戦後処理問題というのは広範多岐にわたっているわけでありまして、私どもとしては、戦後処理問題というのは今取り上げられた問題以外に、原爆被爆者の救済措置の問題であるとか、あるいは中国残留孤児の問題であるとか、あるいは朝鮮民主主義人民共和国いわゆる北朝鮮の残留孤児の問題であるとか、あるいは同じく北朝鮮の日本人妻の問題、それからサハリンに残留している朝鮮人の人たちの問題、こういう重要な問題が残っていると考えているわけでありますし、関係の国々との間でもこれらの問題の扱いはまだ残っているわけであります。私が懸念をするのは、これらの問題について先ほど問題にした戦後処理問題懇談会の報告の中でこれをもって戦後処理問題は一切打ち切るんだという報告になっている、これを盾にとって政府としてはもう一切一件落着、戦後処理問題はもうこれを限りにこの法律の処理が終わったらなくなっていくんだ、ピリオドを打たれたんだということになるとするならば、これはやはり非常に問題があると考えているわけでありますが、その点はどのように考えておられるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/42
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043・平野治生
○政府委員(平野治生君) ただいま先生が御指摘いただきました問題、多々まだあるかと思います。私一つ説明が足らなかった点を今反省しているわけでございますけれども、この戦後処理問題懇談会でいろいろ御論議をいただく際の一つの考え方として、外交問題に触れるような問題、あるいは他の省庁で既に何らかの形でまあ所管と申しますか、いろいろ施策を講じているような問題、こういうような問題については別にしてという実は一つの括弧づきみたいな問題がございます。そこで私しばしばいわゆる戦後処理問題というふうに言わせていただいているわけでございますけれども、そういうことでございますので、総理府以外でそういうような問題がまだあるということは私どもも承知しているつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/43
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044・野田哲
○野田哲君 そういたしますと、この法案が成立した後といえども、これから後に議論をする強制抑留者の範囲の問題とかあるいは慰労金の給付制限の問題などもあるわけでありますけれども、そういう問題をも含めて、やはり該当者といいますか国民の皆さんには政府に対して請願しあるいは陳情する権利もあるわけでありますし、他の省庁で扱っている問題も現にあるわけでありまして、原爆被爆者問題について厚生省で扱っているとか、あるいは中国残留孤児の問題とか、朝鮮民主主義人民共和国の問題とか、いろいろ外交上の問題として扱われている問題もあるわけでありますから、この戦後処理問題懇談会の報告の中にある「この際戦後処理問題に最終的に終止符を打つために、」「以下のことが適当と考える。」、こういう報告になっているわけでありますけれども、これで一切打ち切ったということではないということで確認をしてよろしゅうございますか。これは官房長官からお答えをいただいておきたいと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/44
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045・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) ただいま御答弁申し上げましたように、外交問題あるいは他省庁にかかわる問題についてはそれぞれで対処することといたしまして、他省庁に属さない問題として戦後の処理の問題といたしましては、この懇談会としてはこれをもちまして措置すべき問題はないという考え方でございますので、政府としてもこれをもって一応の区切りといたしたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/45
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046・野田哲
○野田哲君 後で議論いたしますが、今総理府で扱う問題、この法律に盛られている問題については、抑留の地域の問題とかいろいろぜひまだ対象として扱ってもらいたい、こういう問題が該当者あるいは遺族の方々からも要望はこれからも引き続いていくわけでありますから、その点はひとつこれでもう切ったんだということでないように対応してもらいたいと思うんですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/46
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047・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) そのことは、これから設置されますこの基金の運営委員会でいろいろ御議論になっていただけるものであるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/47
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048・野田哲
○野田哲君 そこで、内容に入っていきたいと思うんですが、まず戦後抑留者の対象範囲について伺いたいと思うんですが、昭和二十年九月二日以降「ソヴィエト社会主義共和国連邦又はモンゴル人民共和国の地域において強制抑留された者」、こういうふうになっているわけですね。ところが、実際問題としては強制抑留があったのはこれ以外に、いわゆる千島列島で抑留されて戦後労働に服してある期間経過して帰国した人、それから二番目にはサハリン、昔樺太と呼んでいたあの地域で労働に服して帰国した人、それから当時ソ連の租借地であった大連、旅順、ここで労働に服した人、それからさらに強制抑留された人で現地で抑留期間中に死亡した人がいるわけでありますけれども、こういう人たちは今のこの法案では慰藉の念をあらわす人の対象に入っていないわけでありますけれども、どうしてこういう人たちが除かれているのか、その見解を示してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/48
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049・平野治生
○政府委員(平野治生君) この平和祈念事業特別基金これ自体の実は対象といたしましては、第一条の「趣旨」にもあるいは第三条の「目的」にも書いてあるわけでございますが、戦後強制抑留者などの関係者の「戦争犠牲による労苦について国民の理解を深めること等により関係者に対し慰藉の念を示す事業を行う」、こういう意味におきましては、ただいま先生の御指摘がございました例えば現地で亡くなった方々も当然含まれるわけでございますが、一方におきましていわゆる第三章以下にございます戦後強制抑留者に対する慰労品あるいは慰労金等の支給につきましては、これは御指摘がございましたとおりに限定があるわけでございます。法第二条に「定義」がございまして、既に御承知のとおりでございますが、「この法律において「戦後強制抑留者」とは、」ただいま御引用がございましたとおりに、「昭和二十年八月九日以来の戦争の結果、同年九月二日以後ソヴィエト社会主義共和国連邦又はモンゴル人民共和国の地域において強制抑留された者で本邦に帰還したもの」という限定をつけたわけでございます。
今回こういう定義をいたしました戦後強制抑留者の方々に慰労の品あるいは慰労金というものを支給することといたしましたのは、これは戦後酷寒の地でこれらの方々がいわゆる強制労働に従事した、そういう特別な事情を考慮した、こういうことに着目いたしましてこういう措置を講ずることとさせていただきたい、こういうふうに考えているわけでございます。御指摘の千島あるいは大連、南樺太、そういうところにおきましてもいわばいわゆる抑留という事実があるいはあったかもしれませんけれども、それはいわゆるシベリア抑留、よく言われております本当に御苦労されたというシベリア抑留とは少し違った態様、状況じゃなかったのか、こういうことでそういうところは外してある、対象のほかにしてある、こういうことでございます。
また、現地で亡くなった方々、この方々も本当に大変だったわけでございますが、こういう方々につきましては、既に御承知のとおりに、いわば公務上の死亡でございますから言ってみれば戦死者と同じように扱いまして、既に公務扶助料等も支給している、国の措置としては何らかの措置と申しますか、国として措置をしている、こういうことがございますので、今回のいわゆる慰労品あるいは慰労金の対象から外した、こういうことでございますのでぜひ御理解をいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/49
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050・野田哲
○野田哲君 これは二条は、こういうふうに慰藉の念をあらわすことなんですからね、コンクリートに固めてしまわないで、多少ここに幅を持って扱えるような余地を残しておいた方がいいんじゃないかなという感じがするんです。よく政府も法律なりいろんな文書で「等」というような言葉を使って、「等」にはこういう人たちも含めることもあるんだというような扱いをすることもあるんですが、多少そこに私は幅を持たせておいた方がいいんじゃないかと思うんです。もしこれからいろいろ千島列島の該当の人たちとか樺太の該当の人たちとか陳情があってなるほどなと思っても、この法律を変えなければどうにもならぬ、こういう扱いですよ、この条文では。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/50
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051・平野治生
○政府委員(平野治生君) この法案の作成に当たりましては、先ほども少し申し上げましたとおりに、各方面のいろいろな意見を聞いて政府として方針を定めたわけでございます。その中で当然と申しますか、いわゆる自由民主党の方とも十分政府といたしましてはいろいろ検討をし一定の合意を見たわけでございますが、その際にこういう形でやろうということが一昨年の政府・党の合意あるいは昨年予算編成時におきます了解ということで行われたわけでございます。そこで、おっしゃるように法律的にどういうふうに表現するかということは法制局でもいろいろ議論させていただいたわけでございますけれども、現時点で政府・党合意でこういう方針でやろうということを決めた原則というものを法律上はしっかり書いておくべきであろうと、こういうことでこのように規定させていただいたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/51
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052・野田哲
○野田哲君 各方面の意見を聞いたとおっしゃるんですがね、各方面の意見を聞いたその関係団体の中からも私が主張したような意見もあるわけでしょう。それは余り聞いたことになっていないようですがね。
次へ進みますが、今自民党からも意見を聞いたとおっしゃるんですが、戦後強制抑留者の処遇改善に関する議員連盟という自民党の中の集まりといいますか連盟があって、齋藤邦吉さんが会長をやっておられるわけですけれども、そこで決議をされている。六十三年二月四日。この決議は官房長官のところにも届いていますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/52
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053・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 拝見いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/53
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054・野田哲
○野田哲君 この決議の第三項に「被抑留者に支給する書状、慰労の品及び慰労金の支給等に関する事務を全抑協に委任すること。」、こういう項目があります。この全抑協というのは二つ団体があってどっちも全抑協という略称を使っておられるんですが、恐らくこれは相沢衆議院議員が会長をやっておられる全国戦後強制抑留補償要求推進協議会中央連合会、この団体を指しているんだろうと思うんですけれども、今度この法律によって発足する基金の事務を委任するということは、これは強制抑留者の団体は二つあるわけでありますから、その中の一つの方にだけそういう形で委任をするということは、これは民間の自主的な団体に、要するに組織競合をしている団体に対して行政が介入をして片一方にだけ看板を与えることになる。これは民間の組織に非常に無用な摩擦を政府が起こすことになるんじゃないかと思うので、これはやはり平等に公平に扱われることが望ましいと思うんですが、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/54
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055・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 今御答弁申し上げましたように、この決議は拝見いたしました。したがいまして、この決議の存在も承知をいたしておりますが、御指摘のように、その運営につきまして公正に行うということにつきましては十分法執行の上で配慮をいたしてまいりたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/55
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056・野田哲
○野田哲君 ぜひそうしていただきたいと思います。
それから、もう一つ基本的なことでありますけれども、この慰労金の支給について恩給の受給者やそれから遺族援護法による年金援護の受給者を除外することになっているわけであります。しかし、この慰労金というのは、法律にも書かれているように、戦後強制抑留者に対する慰藉の念をあらわす、こうなっているわけであります。恩給というのはこれは恩給法に基づく国家補償、それから障害年金などは旧軍人軍属の公務上の負傷や疾病、死亡に対する国家補償、こういうふうになっているわけでありますから、この恩給や障害年金などの国家補償と今度の法律による慰労金の支給というのは性格が違うのでありまして、恩給や障害年金などを受けているからということでそれを対象外にする、これは少し私はいかがなものかな、妥当性を欠くのではないかな、こういうふうに思うんですがいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/56
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057・平野治生
○政府委員(平野治生君) 御指摘がございましたとおりに、今回の強制抑留者またはその遺族に対する慰労金等の支給につきましては、特に個別に慰労の気持ちをあらわすためということで、書状、慰労品及び十万円の慰労金を贈ることとしたわけでございますけれども、恩給等の受給者は除いたわけでございます。
もちろんいろいろな考え方があるかと思いますし、また、各団体、関係者の方々からもいろいろ陳情をいただいていることは私ども十分承知いたしているわけでございますが、この法案の作成に当たりまして、先ほども若干申し上げましたとおりに、各方面といろいろ意見を調整し、特に最終的には自由民主党と政府との間で一つの合意、六十一年十二月の合意というものを基本としながらこの法案をつくってきたという経緯があるわけでございます。その際、こういう方々、恩給受給等をしていらっしゃる方々につきましては、シベリアにおける抑留期間というものがその恩給等の在職年の計算の中に入っているということは御承知のとおりでございます。言葉をかえますと、シベリア抑留期間というものがそういう恩給の計算の中に入っているということで、国として慰労の気持ちと申しますかそういうものがその中に入っているのではないか、こういうようなことでこれを除外させていただいたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/57
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058・野田哲
○野田哲君 説明の中で自由民主党ともこういう相談をいたしましたというのを何回も繰り返されるわけですが、私どもはその相談とは無縁のことなのであります。私どもにそういう説明をしたからといって、それは説得力はないんです。私どもとしてはこの法律は政府が出したと思っているわけで、その前に自由民主党とどういう相談がされたかというのは全く知らされていないんですから、そういう説明だけはひとつ遠慮してもらいたいと思うんですよ。また、そういう説明をされたからといって、それは私どもには説得力はないですよ。
そこで、今抑留期間が恩給の年限計算の基礎に入っているんだから除外したんだということなんですが、これが国家補償の別の制度ならばそういう説明でいいと思うんですけれども、これは要するに長い間外地で抑留されて強制労働に服されて御苦労さんでしたという、法律にも書いてある「慰藉の念」をあらわすためのものなんだから、これは恩給に入っていようといまいと性格が別なんだから関係ないことじゃないかと思うし、恩給受給者も対象にしたからといって大変な負担がかさむということでもない。一回こっきりの問題ですからね。私は、せっかく慰藉の念をあらわすために何かしてやろうというのに、そういう人たちを一つ一つ洗いざらいこういうものは除くぞこういうものはだめだよということで、対象地域の問題にしてもあるいは恩給や援護法との関係についてもぎりぎり詰めて外していったことは今回の趣旨には少し合わない冷たい扱いだなと、こういう感じを持っています。
それから、次に進めます。基金をつくるということですが、この特別基金を以前言われていたような特殊法人ということでなくて認可法人にしたのはどういう理由でありますか。それから資本金の規模の二百億、これは何か数字的に根拠があるのかどうか、それからこの二百億についての政府出資の計画はどのようになっているのか、以上の点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/58
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059・平野治生
○政府委員(平野治生君) お話しのとおり、この特別基金、法人の形態としてどういうものがいいかということは、先生の御指摘がございました特殊法人、全くこれは国がすべてやるという形になっているわけでございます。ただ、御承知のように、この特別基金の仕事、もちろん慰労品の贈呈とか慰労金の支給とかそういう問題もあるわけでございますが、この基金の基本的な目的は「関係者の労苦について国民の理解を深めること等により関係者に対し慰藉の念を示す事業」、こういうものを行っていくんだということで、二十七条には、既に御承知のとおりに、やや各号列記的ではございますけれども、資料の収集とか保管とか、調査研究とか出版物とかという若干例示的なものが挙がっているわけでございます。
こういう事業を行っていく上でどういう形が一番いいんだろうかということを私どもも内部で随分検討させていただいたわけでございますけれども、言ってみればこういう事業を弾力的に行っていく体制をとることが一番いいのではないか、もとより国が責任を持って行うという点は変わらないわけでございますから、特別の法律に基づく法人というものをつくっていきたいということではございますけれども、私が先ほど申し上げた特別基金の二十七条一項に列記されているような事業、そういう事業を進めていくためには、国民の理解と協力を得ながらその展開を図っていくと申しますか、事業を進めていくということが極めて重要だろうというふうに思うわけでございます。そういう観点からいたしますと、この基金をつくる当初から民間の方々のお知恵をかりていくことがいいのではないだろうかと、このように考えたわけでございます。そこで、その発起人の中に国だけではなしに民間の方も入れようと、こういうふうに考えまして認可法人とさせていただいたわけでございます。
それから第二のお尋ねの二百億円、この根拠は何かということでございます。率直に申し上げまして、昨年の暮れの予算編成のときいろいろ紆余曲折がございました。その結果としていわば二百億円が出てきたわけでございまして、この特別基金はこの二百億円の基金を元にしていろいろ事業を行っていくということになったわけでございます。ただ、いろいろな関係がございまして当初は、法律にも明記してございますとおりに、今年度は出資額は十億円ということになっているわけでございまして、法律で申し上げれば附則の方にその二百億円にするということが書いてあるわけでございます。附則の第三条だったかと思いますけれども、「政府は、」「昭和六十三年度から五年度を目途として、」政府から「出資される金額が二百億円となるまで、基金に出資するものとする。」と、こういうようなことを書いて将来の展望、二百億にするよという政府としての姿勢を示したわけでございます。
ただいまお尋ねの、それでは今後どのような年次計画と申しますか進め方で二百億円にするのかということでございます。この点につきましては、既に御承知のとおりに、予算というものは毎年毎年いろいろ積み重ねていくということでございますので、今後六十四年度の予算編成におきましても、最終目標二百億円にするということを念頭に置きつつも、一方におきまして財政状況等もございますので、そういうものを勘案しながら決定されていくことになるのではないかと、このように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/59
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060・野田哲
○野田哲君 民間の知恵をかりるために認可法人にという説明があったわけですが、そこで役員の問題ですが、理事長一人、理事が一人、監事が一人、非常勤理事が一人、こういうふうになっているわけです。これは何かもう人事の構想を持っておられるわけですか。どういう人を予定されているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/60
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061・平野治生
○政府委員(平野治生君) 今御指摘がございましたとおりに、そういう役員を置くことを法律上明定しているわけでございます。それで、この委員になる方につきましては当然のことながら、基金の業務が円滑かつ適正に執行できる能力と申しますか、そういう力を持った高い視野に立った人を選びたいというふうに考えているわけでございますが、現時点では具体的にどういう方にするというところまでは至っていないというのが正直なところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/61
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062・野田哲
○野田哲君 これは官房長官にお願いしておきたいんですが、今の役員の人事の問題でありますけれども、平野参事官の方からは高い能力と視野を持った人、こういうことで説明があったわけで、まだ具体的に持っているわけではないということですが、私ども内閣委員会でいろいろ特殊法人の問題なども議論する、そしてせっかく議論をして後で政府の方で人事を決めると、その人事がいかにも高級公務員のポストをつくるための法人の設置であったかのようなそしりを受けることが往々にしてあるわけでありますから、私は必ずしも元役人だからいけないとは思っていないので、やはり能力のある人なら、またそれなりの理由があれば結構だと思うんです。しかし、そういう点は国民の皆さんからせっかくこういう目的でつくる法人について、いかにも高級公務員の退職後のポストをつくるためではなかったのかというそしりを受けないような、ひとつ国民の皆さんが納得されるような公平な適切な人事を心がけるべきだと思うので、その点についての長官としての御見解を承っておきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/62
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063・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 野田委員御注意の点はもっともなことだと思っておりまして、適正公正な人事をすることがこの基金の運営を全うするゆえんだろうと、こう考えて十分注意をして人事をいたしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/63
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064・野田哲
○野田哲君 それから同じく基金の運営のことでありますけれども、基金の運営に関する重要事項を審議する機関として十人以内から成る運営委員会を置くことになっているわけであります。そして、この委員は、「基金の業務に関し学識経験を有する者のうちから、総理大臣の認可を受けて、理事長が任命する。」、こういうふうになっているわけであります。やはりこの委員の任命に当たっては、それぞれ直接の関係団体もあるわけでありますから、戦後処理問題についての見識の深いといいますか、経験の深い人を関係団体の意見を聞いて公平に扱っていくべきだというふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/64
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065・平野治生
○政府委員(平野治生君) 御指摘のとおりに、基金に運営委員会を置くことにいたしておりまして、その運営に関する重要事項を審議する機関として置かれるわけでございます。この委員といたしましては、二十四条の三項にもございますとおりに、「基金の業務に関し学識経験を有する者」と、こういうことになっているわけでございます。ただいま先生御指摘がございましたのは学識経験者としては関係者が一番いいのではないか、重要な有力な学識経験を有する者ではないかという御指摘かと存じております。私どもも関係団体ということになりますといろいろあるかと思っておりますけれども、こういう関係者の中からこの三つの問題それぞれについてお詳しい方、こういう方の御推薦があった場合には、できる限りそれを尊重していくことが必要ではないだろうか、この基金の適切な運営をするためにはそういうことが一番いいのではないかと、このように思っているわけでございます。そして、その委員の任命に当たりまして、これも御指摘ございましたとおりに、公正に行っていくべきだという点につきましては私どもも全く同感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/65
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066・野田哲
○野田哲君 二十七条一項五号で、「第三条の目的を達成するために必要な業務を行う」、こういう項があるんですが、この「必要な業務」というのは今どういう業務を予定されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/66
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067・平野治生
○政府委員(平野治生君) 二十七条第一項第五号、ただいま御指摘のあった点でございます。第三条には、この基金の「目的」といたしまして「関係者の労苦について国民の理解を深めること等により関係者に対し慰藉の念を示す事業を行う」、これを目的にいたしているわけでございます。この慰藉の念を示す事業の、私先ほど例示と申しましたけれども、主なものといたしまして二十七条の一項の一号から三号まで、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、資料の収集、保管、展示、あるいは調査研究、さらには出版物その他の記録の作成等が列記してあるわけでございますが、これ以外にこの第三条の目的を達成するために「関係者に対し慰藉の念を示す事業」というものはあるのではないだろうか、こういうふうに考えるわけでございますが、今のところ私ども具体的に書くまでに至っていないということでございます。そこで、この第五号を設けまして、今後そういうことが出てまいりましたらこの第五号でできることに法律上しておくべきではないだろうか、そういう若干ゆとりを持たせた書き方になっているわけでございます。そういうことでございますので、この第五号は極めて重要な意味を持っているんじゃないかという点も私ども思っている点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/67
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068・野田哲
○野田哲君 これはあれですか、個人給付のことも含まれる、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/68
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069・平野治生
○政府委員(平野治生君) この第五号ででは具体的に何をやるのかという点になるかと思います。これは先ほど申し上げました運営委員会、ここで事業のあり方について協議をしていただこう、こういうふうに私ども考えているわけでございます。そこで決まったこと等につきまして、この第二十七条の五号でできるかどうか、こういうこともまた検討していく必要があるんじゃないだろうか、このように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/69
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070・野田哲
○野田哲君 慰労の品を贈るというのがあるわけですね。慰労金と慰労の品。この慰労の品というのは何ですか、これ。そして、人員それからその総金額は大体どういう予定なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/70
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071・平野治生
○政府委員(平野治生君) 第三章の第四十三条に「慰労品の贈呈」という項がございます。そこで「総理府令で定める品を贈ることにより」ということが書いてあるわけでございます。私ども関係者の御意見も聞いたわけでございますけれども、ただいまのところ私どもの方では銀杯ということを総理府令で定めたい、このように考えているところでございます。
その慰労品のいわゆる対象者でございます。これは第二条で定義してございますけれども、いわゆる戦後強制抑留者、シベリアに抑留されまして本邦に帰られた方及びその遺族。こちらにお帰りになられてからお亡くなりになった方もいるだろうということでございます。言ってみれば、シベリア等からの帰還者というふうに言うべきかと思いますけれども、そういう方々でございまして、私どもの調べによりますと約四十七万人いらっしゃるわけでございます。そこで、今後どのぐらいの方々がこのうち御申請と申しますか、御連絡をいただけるかということもあるわけでございますけれども、六十三年度の予算におきましては、この慰労品だけの予算といたしましては支給事務費も含めまして十七億一千九百万円ほど、このほど予算計上しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/71
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072・野田哲
○野田哲君 それから慰労金のことですが、十万円ということですけれども、これは少しささやか過ぎるんじゃないか、こういう感じがするわけであります。「慰藉の念」ということなんで、慰藉というのはこれは広辞苑によりますと、「慰めいたわること。同情して慰めること。」、こうなっておりますが、十万円で同情し慰められるのかな、こういう気がするわけであります。
それはともかくとして、戦後の抑留者、それから遺族の都合というようなことを考えてみますと、引揚者に対するこういう慰労金の支給、こういう仕事は都道府県の方にやっていただくようにした方が私はうまくいくんじゃないか、こういうふうに思うわけなんです。都道府県の場合には同様なケースの業務を今までやってきた経過があるわけでありますから、取り扱う基礎的な条件があると思うんです。都道府県を経ないでこれを扱っていくというのは事務的になかなか容易なことじゃないんじゃないか、こういうふうに思うんです。
そこで、その点ともう一つは慰労金の対象者で、先ほどの慰労品、品物の方は四十七万人ということなんですが、この十万円の慰労金の方も大体同じ人員ということになるんですか。そうじゃないでしょう。これは大体どのぐらいいるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/72
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073・平野治生
○政府委員(平野治生君) 逆になりますがその人数の方でございますが、私どもの推定では約二十八万人というふうに考えております。
ところで、冒頭に十万円では少な過ぎるじゃないかというお話もございました。こういう慰藉の念を示す慰労金の額はどのぐらいがいいのかということは、確かにいろいろな考え方があるかと思います。私どもといたしましては、財政状況等も勘案しながら、国の気持ちをあらわす額として十万円で適当ではないか、こういうことで決めさせていただいたわけでございます。
ところで、御提案がございまして、都道府県にこういう事務をやらせたらどうかというお話でございます。確かにこの種の仕事と申しますか、例えば厚生省あるいは恩給局がこれらの仕事等につきまして都道府県の絶大な御協力をいただいていることは私ども承知いたしているわけでございます。ただ、私ども今回つくる法人特別基金というもの、これが関係者に対し慰藉の念を示す事業を行うということになっているという点が基本的には一つあるわけでございますが、あるいはまたいわゆるシベリアに抑留された方々の資料、名簿というのでございますか、そういうものが実は国に、厚生省にあるわけでございます。各都道府県にも全くないということはあるいはないのかとは思いますけれども、ナホトカから舞鶴なり函館なりにお帰りになった方々の名簿というのが厚生省に基本的にはございます。そこで、私どもといたしましては厚生省のまことに古い資料をもとにいたしまして、私どもなりに資料を整理させていただいたということが一つあるわけでございます。
と同時にまた、都道府県の方々ともいろいろ御相談はさせてはいただいたわけなんでございますけれども、できる限り都道府県には負担をかけない方がいいのではないかということ、あるいは特別基金の組織、人員というものをやはり効率的に使うということもまた必要なんではないだろうか。それから、これも申すまでもないことでございますけれども、関係者の方々のいろいろな御協力もいただきながら、この事務というものが円滑に進むように私どもとしてもできる限り努力していきたい、こういうこと等もございまして、都道府県ではなしに、いわば直接に基金の方から国民の関係者の方々に呼びかける、そして直接御連絡もいただいて慰労の品等もお贈り申し上げたい、このような仕組みをとらせていただいた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/73
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074・野田哲
○野田哲君 先ほどの慰労の品物の方は、これは帰ってきて亡くなった人ですか。現地で亡くなった人は対象でない。今度のこの慰労のお金ですけれども、現地で亡くなった方はこれも対象になってないわけですね、品物も金もどっちも。これはどうして亡くなった人は外したわけですか。これはやはり現地で亡くなった人についても、慰藉の念をあらわすということであれば遺族に対してお渡しをするということがいいのではないかと思うんですが、現地死亡者を品物でもお金でも対象にしていない理由を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/74
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075・平野治生
○政府委員(平野治生君) お話は私もよくわかるのでございます。ただ、私どもの考え方といたしましては、先ほどもちょっと申し上げたわけでございますけれども、現地で亡くなられた方というのはいわば公務上の死亡ということでございまして、恩給法等に基づく公務扶助料などが支給されている。そして、その支給されている公務扶助料等の中に国としての気持ちがあらわされている、こういうふうに考えまして、今回と申しますかこの法案上では対象の外にさせていただいた、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/75
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076・野田哲
○野田哲君 やっぱり国家補償ということと慰藉の念をあらわすということをこれはごっちゃにしているんじゃないかなと。私は慰藉の念をあらわすのは国家補償とは別なんだから、これはやはり併給であってもいいんじゃないかという気がどうしてもぬぐい切れないんですよね。
それから、平野参事官はいろいろ都道府県にも迷惑をかけるので基金の自前でやっていくんだということなんですけれども、この慰労金あるいは記念品の支給について、請求主義ですね。関係者やその遺族のところにきちっとこういう法律ができてこういう基金ができたからこういう手続をとりなさいということが行き届くのはこれはなかなか大変だと私は思うんですが、何か周知徹底についての具体的な方法を考えておられるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/76
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077・平野治生
○政府委員(平野治生君) おっしゃるとおりに、この周知徹底というのがまず当初の問題として非常に重要な課題となってくることは私ども承知いたしております。もとより基金がまず行うということになるわけでございます。先ほど私、先生の御提案に対しまして都道府県でいわゆる支給事務というものはしていただかないと申しますか、しないで直接にやりたいということを申し上げたわけでございますけれども、実際問題としてそういう関係者の方々に対するPRと申しますか徹底ということになりますと、これは当然都道府県、市町村、こういう方々の御協力を得なければできないわけでございます。
都道府県、市町村を使わなかったという理由は、先ほど申しましたとおりに、資料そのものが国にあるということも実はあるわけでございまして、そういう意味でやったわけでございますけれども、そのPRあるいはそういう方々に対する御説明とか、そういうものについては都道府県、市町村の方々の御協力もぜひいただきたいというふうに思っているわけでございます。もちろんその他のPRの方法といたしまして、一般的ではございますが、できる限りいろいろな媒体を使って、そしてまた関係者の方々、団体もあるわけでございますけれども、そういう方々にもいろいろお願いを申し上げて、そういうことが少しでもないようにできる限りの努力をいたしていきたい、このように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/77
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078・野田哲
○野田哲君 関係団体の広報紙などを見ると、いろいろ法律が制定された場合の請求手続についても、代行でやっていくようなといいますか、手はずも整えておられるようでありますけれども、問題は、そういう抑留者団体に会員として入っておられる人はそれで届くと思うんですが、二つある団体どちらにも存在すら知らないで入っていない、こういうような人がいるのではないかと思うので、そういう人たちが取り残されるんじゃないかなという心配がある。
それから、恩給局の方も見えているんですが、私ども長年内閣委員会に籍を置いて恩給問題などの審議をしておりますと、国民の皆さんから時々相談を受けて、あるいはまた年金の問題についても相談を受けて、履歴書を持ってこられて私はこういう経歴があるんですがこれ通算の手続してもらえるんでしょうかとか、あるいは恩給を受ける権利があるんじゃないでしょうかという相談を受けて、よく調べてみると確かに資格があって、それから手続をとって対象にしてもらえる、支給をしてもらえる、こういうことになるケースが幾つかあるわけであります。公的な国家補償としての恩給や年金についてもそういううっかりするとロスがある。国民の該当者の方が知らないで受けるべき年金が受けられていない、こういう例がちょいちょいあるわけですから、私はやはりこれはちょっと周知徹底方、そして事務を一体だれが指導してあげるのか、こういう点で懸念を持っておりますので、ロスのないようにひとつ十分気をつけてやっていただきたいと思うんです。
それから次に、今度の祈念事業でありますけれども、厚生省の方でやはり一つの構想を持っておられるわけですね。戦没者遺児記念館構想というんですか、何かそういう構想があるというふうに思うわけです。そういたしますと、この厚生省の構想による事業といいますか記念館、そこでやる資料の収集とか展示とかの事業と今度のこの法律によってやろうとする平和祈念事業、同じような性格のものが重複するような感じもあるわけでありますけれども、この点はどうされるおつもりなんでしょうか。まず厚生省の方から伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/78
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079・新飯田昇
○説明員(新飯田昇君) お答え申し上げます。
私どもの構想として持っております戦没者遺児記念館は、戦没者遺児に対する慰藉を主たる目的としているものでございます。一方、平和祈念事業特別基金は主としてシベリア抑留者、恩給欠格者、在外財産喪失者に対する慰藉に重点を置いているものと理解しておりますので、目的が異なるものと基本的に考えております。しかし、今後構想を具体化していく段階におきましては、この特別基金事業との調整に十分配慮していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/79
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080・平野治生
○政府委員(平野治生君) 特別基金におきましても、二十七条一項等に明記してございますとおりに、資料の収集、展示、保存、こういうことになるわけでございます。ただいま厚生省の方から御答弁もございましたが、私どもの考えておりますそういう展示の方法と厚生省の構想でございます遺児記念館、対象は今御答弁がございましたとおりに若干違うということではございますが、確かにこれまたおっしゃられましたように似ている点も非常にあるわけでございます。ですから、私ども特別事業を具体的に進めていく上に当たりましては、厚生省とも十分連絡をとりながら他の事業との重複を避ける、その他いろいろな点に留意しながら進めてまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/80
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081・野田哲
○野田哲君 戦後処理問題の別の問題で最後に政府の見解を伺っておきたいと思うんですが、いわゆる戦後処理の三問題、つまり恩欠の問題、強制抑留の問題、それから在外財産の問題、この問題の中でいわゆる恩欠者、恩給欠格者関係の人数が一番多いわけですね。これらの関係者は国家の命令によって家庭も犠牲にして、非常な犠牲に耐えて生命を賭して厳しい任務に従事してきたわけであります。それから戦後四十年以上にわたる今日の日本の経済の再建復興に大きな力を尽くしてこられているわけでありますけれども、このために尽くした労苦や犠牲は大変大きなものがあったと思うわけです。大変な犠牲を受けているわけであります。
これらの関係者に対して、国として個人補償を含めて満足のいくような戦後処理措置がとられていない。関係者の団体からも毎年毎年政府や国会に対しても陳情が続けられているわけでありますが、これらの方々、いわゆる恩給欠格者、恩給法に定めた年数に足りないということでずばり線引きをされて対象になっていない、こういう人たちがいるわけでありますけれども、これが先ほど言いました戦後処理問題懇談会の報告によってもうこれでピリオドを打たれた、こういうことであったのでは大変該当者の方々には身もふたもない扱いになるわけでありまして、いろいろ陳情や請願も出ているわけでありますけれども、官房長官としては、これらの方々への対応についてどのようにお考えになっているのか、その点を伺っておきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/81
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082・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) いわゆる恩給欠格者問題につきましては、平和祈念事業特別基金内に設けられます運営委員会におきまして事業のあり方等について協議されることになっておりますので、その推移を見守ってまいりたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/82
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083・野田哲
○野田哲君 これは、官房長官、基金ができてそこの運営委員会だけではとても処理できるような問題じゃないと思うんですよ。やはり政府として基本的な構想を持ってその実務を運営委員会の協議の中で処理していく、これでなければとても、政府の方針が決まらないのに基金の運営委員会ですべて取り仕切るということはできないと思うんですが、そうじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/83
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084・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 取り仕切るということでなくて、この運営委員会でどういう方向が定められるか、どういう考え方が出てくるかということを十分御検討願いまして、そこで出てきたものについては政府としても誠実におこたえしていくということになるのではなかろうか、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/84
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085・板垣正
○板垣正君 私は、法案について御質問申し上げる前に、今問題の奥野発言につきまして私の見解を申し述べたいと思うわけであります。
私は、奥野発言は政府の方針を否定するものではない、つまり政府の方針に反しない、こういう考え方に立つものでございます。お互い過去に対する反省、その上に立っての日中友好を願う気持ちにおいては私は皆一緒であろうと思うのでございます。私もまたそうした立場において申し上げるわけでございます。しかし、本当の友好、本当の相互理解、これはやはりお互いの努力で積み重ねていかなければならない、こう考えるわけでございます。過去の不幸な歴史につきましても、これをどう説明するか、どう子孫に伝えていくか、これは我々日本国民として課せられた責任でありまして、また国のまさに基本にかかわる問題であろうと思います。そうした意味におきまして、これらの問題がタブー視される、あるいはある一色に塗りつぶされる、あるいはある雰囲気で支配されている、そういう状況はむしろこの自由なる我が国においては不自然ではなかろうか。
現に奥野発言に対しましても、我が党内におきましてもまた国民の中にもこれを支持する者も少なくないわけであります。私も去る五月十日、私の属します日本遺族会の中国・四国のブロック会議役員会に出ましたが、ここにおいては奥野発言を支持する、そういう全会一致の決議も見ておりますし、あるいは日本遺族会の全国の支部から激励の電報が奥野長官のところに寄せられている。これも一つの現実であります。そうした意味におきまして、私は奥野発言を支持するものであります。このことにつきましては、長官の御答弁は求めません。長官のお心にひとつとどめておいていただきたいと思うのであります。
それでは、本論の質問に入らせていただきます。
このたびの平和祈念事業特別基金等に関する法律案、これはまことに多年の年月の中、いろんな経緯の中、いろんな積み重ねの中できょうここに審議の日を迎えているということは、私自身かつて四年半ソ連抑留生活を体験した一人として、あるいはいわゆる恩給欠格者の一人として、また党内におきましても同志の先輩の方々あるいは各団体の皆さん方とここに至りますまでのまさに幾山河の過去を顧みまして、非常に感慨が深いわけでございます。今回の法案は、もちろん政府の責任において取りまとめられ提出されたわけであります。しかし、そこに至りますまでもちろん戦後処理問題懇談会の報告、これも大きな参考になっておりますとともに、一昨年の年末もあるいは昨年末も我が党と政府側において、それこそ夜を徹して夜明けまでかかって論議を尽くし、そういう中からまさにぎりぎりの線として出されてきた、こういう内容も含まれておりますし、かつ、後から申し上げますけれども、まだ盛り込まれていない問題もあるわけであります。そうしたことで、私はまずこの法案に対する政府の基本姿勢をお尋ねいたしたいわけであります。
この年末ぎりぎりまでの折衝の中で、これは政府と我が党の間で了解事項としての文書が署名のもとに取り交わされている経緯もあるわけであります。一昨年の「戦後処理問題に関する政府・党合意」でございます。これは我が党執行部三役等々あるいは官房長官、当時の大蔵大臣、総務政務次官等も署名をいたしておりますけれども、ここには第一項に、「いわゆる戦後処理問題については、先の戦後処理問題懇談会報告の趣旨に沿って、特別基金を創設し、関係者の労苦を慰藉する等の事業を行うことで全て終結させるものとする。」というのがあるわけですね。これは非常に重大な、またここに政府の決意をお尋ねしたい問題があるわけであります。
去る昭和四十二年にも戦後処理はこれで終わりという経緯があったことは御案内のとおりであります。しかし、実際問題としては戦後処理はまだ終わらない。ただ、既に戦後四十三年目を迎え関係者もどんどん年をとって、あるいはどんどん亡くなっている、そういう面におきましてはまさにこれ急がなければならない問題であります。といって、これすべて終結するという形で一方的に打ち切ってしまう、ある線を決めて打ち切って片づけてしまう、私はそういう趣旨ではないのではなかろうか。やはり決着はつけていく。しかし、少なくとも今回取り上げられている問題なりその周辺の問題、一応の決着はつけていかなければならないけれども、そこにはやはり温かい配慮のもとにできるだけ関係者の慰藉が行われるような姿においてこのすべてを終結させる、これが政府・党の了解でもあり、またこの法案にも盛り込まれている気持ちではなかろうか。その辺につきましてまず官房長官の基本的な見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/85
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086・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 最終的には国民が判断をすることになる問題だろうとは思います。しかし、現内閣としてはいろいろの経過の中で、あるいは戦後懇の問題御指摘等もありまして、過去確かに四十二年に政府としては一応戦後の処理問題については解決済みだという考え方でございましたが、その後旧陸海軍従軍看護婦あるいは日赤の看護婦等に対する措置の問題等を処理いたしてまいったわけでございまして、もろもろいろいろ戦後問題として関係者の皆さんが御指摘をされることの幾つかが出てまいりまして、今日この三つの問題の処理をこうした形で行うことになりました。政府といたしましては、今回の措置をもちまして戦後の処理問題について一応の区切りをつけたいという考え方でございますので、御理解を得たいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/86
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087・板垣正
○板垣正君 では次に具体的な問題で、まず基金の問題でございますが、二百億円基金の造成、こういうことで附則の第三条には昭和六十三年度から五年度を目途に二百億円までこの基金に出資する、こういうことがございます。先ほども御論議がございましたけれども、この基金造成は大体何年ぐらいでこれ積み立てようという気持ちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/87
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088・平野治生
○政府委員(平野治生君) ただいま御指摘がございましたとおりに、この法律の附則第三条、「政府の出資」という条があるわけでございます。そこに書いてございますとおりに、「昭和六十三年度から五年度を目途として、」「出資される金額が二百億円となるまで、基金に出資する」ということが法律上明記してあるわけでございます。今年度の実は政府の出資額につきましては、これは大分前の方の条になるわけでございますけれども、十億円ということが書いてあるわけでございますが、この基金のいわば最終目標と申しますか、最後には二百億円となるまでとにかく国としては政府が出資するということが明記されているわけでございます。
今後、ではこの二百億円をどのくらいの期間を通じてやるのかというお尋ねでございます。法律上は「五年度を目途として、」というふうに書いてあるわけでございますので、その五年度を目途としながらこの最終目標二百億、こういうものを視野に入れながら六十四年度以降毎年度の予算でできる限り積んでいきたい、このように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/88
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089・板垣正
○板垣正君 例は別でございますけれども、御承知だと思いますが、北方領土の周辺地域の基金造成の問題がございます。これは議員立法ででき上がりまして、これも百億という金額は法律には入っておりませんけれども、五年をめどに百億というそれが一応暗黙の合意のもとでスタートしたはずであります。ところが、この五年をめどにというのが一体それは三、四年でやればいいことなのか、六、七年かかってもいいということなのか、そういう辺が非常にある意味ではあいまいである。現に、この大事な北方領土の基金も五年で百億というのが五年で半分しか積めなかった。また法律を改正しさらに五年延長して、それで毎年毎年この積み立てに苦労しているというのが現実であります。
今回のこの基金も考え方としては、ぜひ関係者の慰藉をこれで進めていただきたいと思いますけれども、やはり一つのポイントとしてはこの二百億を一日も早く積み立てる、五年以内にでも積み立てる、これは相当の決意を持って臨んでいただかないと難しい問題であろうと思うんですが、このめどというのはどういうふうな解釈なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/89
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090・平野治生
○政府委員(平野治生君) 非常に難しい御質問かと思っております。確かに五年と明記せずに五年を目途と、こういうふうに書いてあるわけでございます。それは五年の周辺ということなんだろうというふうに私どもは思っております。今、じゃそれは六年なのか七年なのか、あるいは三年なのか四年なのかと言われるとちょっと困るわけでございますが、いずれにいたしましても私ども附則にこのめどである「五年」というのと「二百億」というのを両方書かせていただいた経緯もあるわけでございます。私どもといたしましては、財政状況等も勘案することはもちろん必要ではございますが、できる限りの努力はいたしてまいりたいと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/90
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091・板垣正
○板垣正君 今の問題を含めてあともう少し具体的な問題で後で長官の御見解も承りたいと思いますが、次の具体的な問題に入りたいと思います。
運営委員の構成、任命ですね、この問題についてはこれまた政府・党の了解事項によりますと、これは昨年の暮れですね、基金内に関係者のうちから推薦された者を含む運営委員会を設ける、慰藉事業などを含めた事業の検討をするということで、これも今度の基金運営の上において理事長なり理事に適任の方を得るということは、これはもうもちろん大事なことでございますとともに、やはり実質的に運営をされる方々がその道について関心を持たれ見識を持たれまたある意味の経験を持たれている、そうした方々がしかも公平に選ばれるということが一つの大きなポイントではなかろうか。その辺について重ねて伺いたいと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/91
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092・平野治生
○政府委員(平野治生君) 法律の第二十四条に運営委員会のことが書いてございまして、「基金に、その運営に関する重要事項を審議する機関として、運営委員会を置く。」、三項に「委員は、基金の業務に関し学識経験を有する者のうちから、内閣総理大臣の認可を受けて、理事長が任命する。」と、こういうことになっているわけでございます。ただいま先生から御指摘がございましたとおりに、この運営委員会の役割と申しますか、公正な運営というのは極めて重要であるということは私ども承知いたしております。そうであるからと申しますか、したがいましてこの委員の任命ということにつきましては、この「学識経験を有する者」がどういう者を含むかということがまず基本的に問題になるわけでございますけれども、ただいまのお話もございました、あるいは先ほど野田先生の御質問もあったかと思いますけれども、やはり基金の業務に詳しいという意味になりますと関係者の方々、こういう方々も含んだ形にした方がより運営委員会の公正な運用に役立つと申しますか非常にプラスなのではないかと、このように考えているわけでございます。いずれにいたしましても、御指摘のとおりに、委員を公正に選ぶということがこの委員会ひいてはこの基金の業務の適正な運用に極めて重要であるということを私どもも十分認識してこれから当たってまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/92
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093・板垣正
○板垣正君 次はこの運営委員会の運営ですね、特にこの運営委員会の提言の扱いであります。今言われたように、二十四条、基金運営の重要事項を審議する機関としてこの運営委員会が設けられ、この事業について提言をするわけですね。しかし、この提言については、これは事業内容は内閣総理大臣の認可あるいは総理大臣は大蔵大臣と協議をすると、これは二十七条三項あるいは四十二条、こういうふうに定められております。そうしますと、運営委員会で一生懸命審議してもこれがなかなか実現ができないとか、単なる作文に終わってしまうとか、そうなってきますとまた同じことの繰り返しになりかねない。その面でこの審議の運営委員会のウエートといいますか――これは例えば多数決でやるんですか。あるいは合議でやるんですか。あるいは事業の内容等についてそれぞれの意見を並列的に出す、こういうふうな格好になるわけですか。その辺の運営はどうやるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/93
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094・平野治生
○政府委員(平野治生君) この運営委員会の具体的な運営につきましては、まさに基金ができてそして運営委員会が構成されてから、そこで御論議をいただくということになるんだろうと思っております。ただ、この運営委員会の重要事項、例えば毎年度の計画とか予算とかということと同時に、先ほどもちょっと申し上げましたとおりに、事業のあり方についても協議するということになるわけでございますから、多数決ということになるのかどうか、いろんな意見を出していただいて、それを政府の方に出していただいた段階でまたいろいろ検討させていただく、こういうことになるのではないだろうかなというふうに思っております。ただ、繰り返しになりますが、あくまでこの運営委員会の運営というものはこの基金において運営委員会ができてからそこでお決めいただくということになりますので、私今の時点でどういうふうになるのかということについてここで申し上げることはしばらく差し控えさせていただきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/94
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095・板垣正
○板垣正君 そこで、官房長官の御見解を今までの問題について承りたいと思うわけでございます。
つまり、第一に二百億円の基金を早期に造成するということ、第二に運営委員会の委員の任命を公正に行うということ、第三番目に運営委員会の提言を尊重すること、この以上三点が特に今後の運営において肝要と思われますが、これに対しての責任担当大臣としての長官の御見解、御決意を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/95
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096・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 御指摘のありました三点につきましては平野参事官から既にお答えしたところではありますが、この基金の積み立てにつきましては、先ほども板垣委員御自身の御経験での北方領土の基金の積み立ての御苦労をお話しされておりましたが、法律としてこう定めました以上は、目途といたしておりますけれどもできる限り早く、目標としておる積立金についてはそれを積み立てるということとして努力すべきものではないかというふうに私考えております。しかし、予算は単年度主義をとっておりますので今から申し上げることはできませんが、気持ちとしては、最終の目標を設定して基金としてそれをベースに活動を行うことが必要じゃないかというふうに考えております。
それから運営委員の任命の問題でございますけれども、これも御指摘のように、公平に立派な学識経験者を配するということがこの基金の目的を達するゆえんだろうと考えておりますので、だれから見ても批判をされないような立派な方を選任いたしていくべきものだろうと思っております。
それから、運営委員会でいろいろ定められることにつきましては、その事柄について政府としては、先ほども御答弁申し上げましたが、誠実に検討し、実施いたしていくべきものについては一日も早く実施していくべきものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/96
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097・板垣正
○板垣正君 それから平野室長に一つ伺います。補助金ですね、これは政府・党の間では一項あったと思いますが、法律には余りはっきりしておりませんけれども、これは当然のこととして法律にはうたわれていないわけですか。補助金は期待できるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/97
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098・平野治生
○政府委員(平野治生君) お話しのとおりに、この法律には補助金に関する規定はございません。ただ、先ほどもちょっと申し上げましたとおりに、二百億円の基金を積むということでございます。そしてその利息と申しますか、その運用でということになるわけでございますが、今年度の出資額は十億円ということになっておるわけでございます。したがって、いわば事業費と申しますか、この事業を行っていくための経費につきましては、当然のことながら別途補助をしていく必要があるというふうに私ども考えているわけでございます。したがいまして、法律には書いてはございませんが、その辺は財政当局とも十分御相談をさせていただきながら、必要な額については補助をお願いする、こういうことにいたしてまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/98
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099・板垣正
○板垣正君 それじゃ、具体的に関係の問題についてお尋ねしたいと思います。
まず第一に、戦後強制抑留者、いわゆるシベリア抑留者の問題でございます。これはいろんな経緯、また今度法案に出されました問題について、いわゆる慰労金について恩給を受けている人が外されておる、あるいはせめて記念品等についてという気持ちがあるわけですが、この現地で亡くなった方々ですね、これは私はやはりぜひ対象に加えていただきたいと非常に切実に要望するわけでございます。先ほども御論議がございましたけれども、恩給を受けられる方は当然恩給というのは権利でありますから、そういう立場において国家補償として、あるいは類似遺族年金等もそうでございましょうが、そうしたものと今回の抑留者に対する慰労金、これはやはり性格を異にするものでございます。
特に、関係団体、関係者の方々が一つの合い言葉として、同じ苦しみをともにした者は同じ扱いをしてほしい、同じ報いをと。同じ苦しみ、つまりあのソ連抑留の苦しみというものは、無慮五万五千の方がシベリア本土で戦後抑留中に亡くなっているわけですね。そして、辛うじて四十七万三千の方は耐え抜いて戻ってこられましたけれども、これはやはりお互いの助け合いがあり、その間で支えがあって耐え抜いてきた。しかも、その帰ってきた人々に耐する戦後社会の扱い、そもそも我が国のそうした抑留体験者あるいは引揚者等に対する扱い、これは非常に立ちおくれた面が多かったし、したがいまして抑留者の方々みずからが身銭を切って仕事をなげうってその切実な訴えを長い間叫び続けて、そしてまたこれは恐らく国会におきましても超党派的にこの問題には理解を示され今日に至ってきたわけであります。その一番根底にありますものは、やはりあの同じ苦しみをともにした者は同じ扱いをしてほしいということで、きのうまで一緒にあの地で苦労し、ともに引き揚げてきてそれから再起して、そして今日までこの苦しい運動も一緒にやってきて、亡くなってしまったためにその報いがない、あるいはたまたま恩給を受けているためにそうしたものから除外される、これはいかにも心のない扱いではないでしょうか。
元来、これは関係者が要望してきているのはむしろ補償なんですね。現地でまさにただ働きさせられた、ある意味では国の賠償がわりにただ働きさせられたという思いもあります。そういう者に対してやはり国家が国家の責任において補償すべきだと、これが長年の懸案であり運動の中核に据えられてきたことは御案内のとおりでございます。しかし、いろんな曲折の中から今回のこうした基金構想、そして抑留者に対する慰労金という中で、生存者に限らず、とにかく舞鶴なり函館なりに上陸した四十七万三千人は、これは一応記念品等は対象にしましょうと。そこまでいけばやはり恩給を受けようと受けまいとそうした方々にもささやかな――だからこれらの方々は一緒にやってきた仲間が外されるようなら我々は受け取れない、辞退するというくらいの思いつめた、そういう叫びすらあることも事実でございます。
やはり根底にあるのは、自分だけもらえばいいとかいうことじゃなくて、また単なるお金ということじゃなくて、その辺は御理解いただけると思いますが、これは六十四年度持ち越しの問題ということで党の方はいろいろな経緯はございますけれども、ぜひこの機会に政府のお立場においてもこの抑留者問題については、そういう姿において極めて関係者は不満足でありますけれども、しかし、そこまで国としてのぎりぎりの配慮としてということであればという気持ちも持っておられるようでもありますので、どうでしょう、この辺はやはりこのことについての長官のお気持ちを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/99
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100・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 御質問の中にもありましたが、紆余曲折を経ましてかような結論に到達をしたということで、この成案を得て国会に提出させていただいておるところがぎりぎりのところでございます。先ほど来各委員からも御指摘のありました点でもございます。御意見として承らせておかせていただきたいと思います発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/100
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101・板垣正
○板垣正君 ぜひ善処をよろしくお願いいたします。
次に、いわゆる恩給欠格者の問題であります。この問題の本質はやはり官民格差の問題だと思うんですね。つまり、赤紙で若くしてとにかく何年間か至上命令のもとで国のために尽くされた、その方がたまたま公務員になられるとか何かすればそれは年金等に通算される。しかし、一般民間あるいはそうしたものがない人々はそういうことに対する何もない。ですから、これまたいわゆる個人補償という形での運動が続いてきたわけでございますけれども、やはりそうした気持ちというものは何らかの形で個々人について国家の名において配慮されてしかるべきではないのか。
この問題については、衆議院でこの法案を審議成立させました際に附帯決議がございますね。五月十日の衆議院内閣委員会において附帯決議が何項目かございますけれども、これは全会一致で「恩給欠格者に対する慰労の個別的措置については、引き続き検討を加えた上、速やかに実施するよう努めること。」、こううたわれております。この附帯決議を踏まえて恩給欠格者、これらに対しても何らかの形における個別的な措置、これをぜひ御配慮いただきたい。これは先ほどいろいろ説明がございました二十七条のその他の事業といいますか、第五号でも法律的にも決してこの法律を無視するあるいは違反するものではないのではなかろうか。
さらに敷衍すれば、これは昨年十二月二十七日の政府・与党の了解でございますけれども、「運営委員会を設け、慰藉事業などを含めた特別事業等のあり方を協議し、政府に提議する。」と。シベリア抑留者の問題もやはりこれは基金の枠内ですね。私はそう解釈している。基金の事業として行われると。したがいまして、今回の法律でやはりいろいろ審議検討され、基金の事業としてやはりそうした官民格差の問題を本質とする恩給欠格者関連問題についてもそういう立場において個別的な措置を行うこと、これは今回のこの法律においても実行できることではないのか、まずその点伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/101
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102・平野治生
○政府委員(平野治生君) 確かに、第二十七条第一項第五号「前各号に掲げるもののほか、第三条の目的を達成するために必要な業務」、この内容が今のところ具体化されていないわけでございます。したがいまして、関係者に慰藉の念を示す事業、こういうものとしてどういうものがあるのかということを今後検討していくことになるのではないだろうかというふうに思っているわけでございます。そういうことにつきましては、運営委員会におきまして事業のあり方について協議をしていただこうということになっておりますので、その辺のところを見ながらそういう内容等も具体的に決まっていくのではないだろうか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/102
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103・板垣正
○板垣正君 次に、六十三年度予算に計上されている六千万円ですか、調査費が計上されているはずですね。これで特に恩給欠格者の実態調査ということが関係者からもいろいろ要望があるようでございます。シベリア抑留者の場合は、資料としても厚生省等がかねて掌握しておられる面もある。ただ、この恩給欠格者の実態というものはその総体の人数等についてもいろんな説がございます。どの程度掌握しておられるのか、その実態を。それと、この実態調査ということについてはどういうふうに考えておられるのか、承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/103
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104・平野治生
○政府委員(平野治生君) いわゆる恩給欠格者の方々の数、率直に申しまして私ども必ずしも十分に把握しているわけじゃございません。私どもが承知いたしておりますのは、現在そういう方々で生きていらっしゃる方の数、これがおおむね二百七十五万人というふうに承知いたしております。ただ、例えばそういう方が何歳であるとか何年ぐらい行った軍歴があるのかということについては、まだ承知していないというのが実態でございます。
そこで、ただいまそういうことも恐らく含めたという意味だと思いますけれども、恩給欠格者の方々の実態調査を行ったらどうか、そのために六千万円もあるのではないか、こういうお尋ねかと思っております。もとより恩給欠格者の方々の実態をつかむことは必要かと思っておりますが、この六千万円をどういうふうに使うかということにつきましては、基金に設けられます運営委員会等におきましても今後いろいろなことが御協議されていくわけでございます。そういう中で調査も必要が出てくるということもあるかとは思っておりますので、その辺のところの動きを見ながらこの実態調査費六千万円を有効適切に使っていくことが極めていいのではないか、このように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/104
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105・板垣正
○板垣正君 それと、懇談会そもそものスタートは、いわゆる恩欠者なりシベリア抑留者そして海外からの引揚者、これらの方々もやはりいろいろ切実な思いを持っているわけですね。これらの方々も当然今回のこの法案、基金の中で何らかの慰藉の事業、こうしたものが計画され取り上げられる。あるいは、運営委員の中にもそうしたお立場の関係者も入られて、これらの問題もいろいろな立場からいわゆる従来の経緯もございます。この問題についてはどういうお考えをお持ちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/105
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106・平野治生
○政府委員(平野治生君) この法律の第一条の「趣旨」あるいは第三条の基金の「目的」のところにも書いてございますが、この基金そのものの対象は、既に御承知のとおりに、ただいま御論議等がございましたいわゆる恩給欠格者の方々、あるいは戦後強制抑留者、いわゆるシベリア抑留者の方々と、もう一つ法律上で申しますと「今次の大戦の終戦に伴い本邦以外の地域から引き揚げた者」、こういう表現になっているわけでございますが、いわゆる引揚者、在外財産の方々、こういう方々もこの基金の対象となっているわけでございまして、こういう方々に対しまして慰藉の念を示す事業を行う、こういうことになっているわけでございます。したがいまして、引揚者、在外財産関係の方々につきましても、そういう方々の御労苦に対する資料の収集と保管とか、調査研究とか出版物その他の記録の作成とか、こういったような基金の業務の対象とはなるというふうに御理解を賜りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/106
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107・板垣正
○板垣正君 それと、そうした大きな会ではなくても、具体的に申し上げますと満州開拓関係の方々の団体等もございますね。拓友協会、満州開拓青年義勇隊等、現実に国家補償を受けておられる方々もおられますけれども、この満州開拓の方々というものはもちろん相当多くの抑留経験者もおられると思います。これらの方々というのはまさに当時の国策のもとで一番厳しい環境の中で非常な苦労をされ、しかも今日もああした満州開拓関係の方々が現地に再び合流をされて現地における農業の指導であるとか、向こうから人を迎えて農業のあれをするとか、そういう面でも非常に建設的な役割も果たしておられる。こうした団体は決して抑留者や恩欠者や引揚者というふうな大きな会として今回取り上げられていませんけれども、そうした会の人々もせめて国家のそうした国策のもとで奉仕をしたんだというふうなあかしとしての何らかのものをやはり国家の名において考えてほしいという声もあるわけでございます。私はやはりこうした方々の思いというものもぜひ今回のこうした基金のスタートに際して取り上げ、また検討していただけるようにお願いをいたしたいと思います。この問題についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/107
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108・平野治生
○政府委員(平野治生君) ただいま御指摘がございましたいわゆる戦前の満州の開拓に従事された方々、具体的にはおっしゃるように拓友協会とかあるいは満蒙の開拓義勇隊というのでございますか、そういうグループもあるようでございます。そういう方々の中で、確かにこれも御指摘がございましたとおりに、シベリアの方に抑留されたという方もいらっしゃるわけでございまして、そういう方々はあるいはいわゆる戦後強制抑留者ということになるのかなというふうに思いますが、そうではなく満州で非常に御苦労されてそしていろいろな苦労をされた上で本土にお帰りになった、こういう方々もいらっしゃるわけでございます。こういう方々は私どもも広い意味での引揚者の方というふうに考えておりまして、この基金の慰藉の念を示す事業、例えば二十七条に列記されているようなことにつきましても除外するとかそういうことじゃなしに、含めて当然考えていくべきだろうというふうに思っております。
ただいま先生からお話がございましたそういう方々が国から何らかのあかしが欲しいという御要望は、実は私も直接受けたこともございます。今後、基金の運営委員会等におきましてもこういうことも含めてあるいはいろんな形で御議論がされるのではないだろうか、このように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/108
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109・板垣正
○板垣正君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/109
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110・峯山昭範
○峯山昭範君 私は、官房長官、今回のこの法案に関連をいたしまして三つ質問したいと思っています。一つは奥野発言の問題であります。それから、もう一つは先ほどから問題になっております戦後処理問題懇談会の扱い並びに私的諮問機関のあり方、これが二つ目。それで、三つ目は法案の中身について質問をしたいと思っております。
そこで、まず初めに奥野国土庁長官の発言の問題についてお伺いをしたいのでありますが、きょうは官房長官、衆参の議院運営委員会でもこの問題についてそれぞれ長官出席をされましてお話があったそうでございます。その間私ども委員会を休んでいたわけでございますが、現時点におけるこの問題に対する官房長官のお考え並びに政府としての考え方等について初めにお話をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/110
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111・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 大変当委員会に失礼をいたしましたが、衆参両院の議院運営委員会におきまして、いわゆる奥野国務大臣の発言問題につきまして招致を受けまして、内閣としての立場を表明せよと、こういうことでございました。お伺いいたしまして申し上げたことは、奥野国務大臣が最近種々御発言をされておりますが、このことが一つは内閣の基本的方針に一致するものかどうかという点でございました。いま一つは、やはりこうした重責を担う者の発言が国際的関係に対していかなる影響を与えるかということにつきましてその配慮いかん、こういうことだったと思います。
そこで、現内閣の方針に背馳せざるものか否かということにつきましては、先ほど野田委員の御質問にもいささかお答えいたしましたが、究極、奥野大臣の発言といたしましては、昨日の本院本会議における御本人の御答弁において集約されるものではなかろうかということを申し上げ、引用させていただきましたように、竹下総理が昨日御答弁されましたことを受けまして自分も全く同じ考えであるという御発言、さらに侵略的な行為云々ということにつきましては、私が衆議院内閣委員会におきまして答弁いたしましたように、現内閣としては二度と過ぐる大戦は起こしてはならないものとの反省に立っておる、さらに、前内閣において総理大臣が御答弁されたように、侵略的な行為があったことは否定し得ないということ、さらに、諸外国も含めて我が国に対して極めて侵略戦争であったという厳しい批判のあることについての認識は持っておるということにつきまして、その方針について昨日、官房長官の発言についてはいずれも同じような考え方を持っておるわけでございますという答弁をされておられるわけでございまして、そうした意味で竹下内閣の基本的な考え方と背馳するものではないということで、両院議院運営委員会における野党各党から同国務大臣のみずからの辞任並びに内閣として罷免をいたすべきだという御要求がございましたが、内閣といたしましては現在国務大臣間における意見の不一致はないことを実は申し上げたわけでございます。
しかし、了承されるところとならず、明日再び議院運営委員会に出席を要求をされることがあれば、そのときにまた内閣としての考え方を述べよということで、実は両院の議院運営委員会において結論を得なかったと、いずれにおいても結論を得るに至らなかったという判断を両委員長ともされまして、私ども残念ながら政府の考え方を了承していただいておらないというのが現在のこの問題に対しての立場でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/111
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112・峯山昭範
○峯山昭範君 奥野長官の発言は、四月二十二日の発言に端を発しているわけであります。そして四月二十五日の衆議院の土地問題対策特別委員会、そして同じく五月九日の衆議院の決算委員会、そして昨日の参議院の本会議と、続いてずっと問題になっているわけであります。奥野長官が個人として要するに言論の自由とかそういうふうな面での発言というのは、私は何を言おうとそれは構わないと思うんです。しかしながら、竹下内閣の重要閣僚の一人として、しかも午前中にも議論がございましたが、憲法上もいろいろな制約を受けているわけです。その大臣がこういう発言をするというのは、私は非常にけしからぬと。要するに、先ほど長官は二つおっしゃいました。一つはいわゆる竹下内閣の方針に背馳しているかどうかということ、それからもう一つは国際的にどうかということ、二つおっしゃいました。これは一遍お伺いしたいんですが、長官は、二十二日の発言から昨日の発言まで奥野長官がどういう発言をされたか、これは精査をしていらっしゃいますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/112
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113・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) すべて承知しているかどうかは自信がございませんが、記者会見における発言ぶりあるいは御指摘のありました各委員会での答弁ぶりの中でのお考え等につきましては、それぞれ承知をいたしておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/113
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114・峯山昭範
○峯山昭範君 そうしますと、奥野長官の発言はそれぞれ承知した上で竹下内閣の方針に背馳していないと長官はお考えなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/114
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115・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 一つ一つの経過はございましたが、最終的には一番近いところでの御本人の発言ぶりがやはり公式に院というこの場所において御発言をされたことでございますので、私どもはその発言をもって奥野長官の現時点における最終の判断だということでそれを信頼しておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/115
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116・峯山昭範
○峯山昭範君 これは長官、奥野長官は自分は中国との国交とかそういういろんな問題について悪口を言うつもりはないと、二十二日の発言もそうです、私は中国の悪口を言うつもりはないと、こうおっしゃりながら全部言っているわけです。これはやっぱりあの人流のやり方でございまして、これは直接私は聞いたわけじゃございませんから、新聞の報道とかそういうもので見る以外にないわけでございます。これをこの席で紹介するのは大変はばかられるわけでございますが、これはこれからの議論の上でしょっぱなの発言、二十二日の発言からこの問題が出ているわけでございますから、長官もよく考えていただきたいのでございます。
奥野長官に対して、靖国神社に参拝したのは公人として参拝したんですか、私人として参拝したんですかという質問に対して、普通なら、私は公人としてですとか私人としてですとか、簡単な答弁でいいわけですよ、本当言うたら。ところがこの人の答弁というのは、「それは占領軍に聞いてみて下さいよ。」ということで始まるわけです。
占領軍は昭和二十年十二月に
「公務員の資格で、いかなる神社にも参拝してはならない」と禁止指令を出した。再び米国に立ち向かえるような体制はとらせない、とにかく団結を破壊したい、ということだった。神道は祖先を氏神さまとして祭ろうというもので、人はみな死ぬと神になる。氏神さまの頂点にあるのが天皇家だ。参拝が公人か私人かでいま問題になっているが、戦後四十三年たったのだから、占領軍の亡霊に振り回されることはやめたい。
これから先が中国が問題にしているところなんですよ。
中国はいろいろ誤解しているが、共産主義国家だから宗教への理解が少ない。だんだん理解してもらえるのではないか。鄧小平氏の発言に国民みんなが振り回されているのは情けないことだ。中国の悪口を言うつもりはないが、中国とは国柄が違う。占領軍は国柄、国体という言葉も使わせなかった。神道に関することは教科書からも削除したが、神話、伝説をもっと取り上げたらいいと思う。
これからがまた問題なんですけれども、
白色人種がアジアを植民地にしていた。それが、日本だけが悪いことにされた。だれが侵略国家か。白色人種だ。何が日本が侵略国か、軍国主義か。開国して目をさましてみたら、軍事力強化の立場に追い込まれていた。鄧小平さんが言っていることを無視するのは適当ではないが、また日本の外交当局がそれなりに対応されていいと思うが、日本人の性根を失ってはならない。
これはまあこのとおりおっしゃったのかどうかは、私も直接聞いていないわけですからこれはわかりません。しかしながら、中国とけんかするつもりはない、悪口を言うつもりはないと言いながら、言わずもがなのことですね。また、大臣としてはこういうことは言ってはいかぬことですわね。そうじゃありませんか。ここから問題が出てきて、このことについて四月二十五日にこれは問題になっているわけです。しかも、今度は四月二十五日には開き直っている。これは一つ一つ全部読み上げるのは私はもうはばかりますが、開き直っている。どこが悪い。そういう意図はなかったと。
今の官房長官のお話をお伺いしておりますと、参議院の本会議の話がとこうおっしゃっていますが、参議院の本会議の発言そのものにも問題がある。盧溝橋事件の話、それから御存じのあのライシャワーさんの「ジャパン」という本の引用、こういう点を一つ一つ言えばこれはもう切りがないぐらい問題点があるわけです。そうしますと、こういうふうな発言をすることそのものが要するに竹下内閣の方針に反していないということになるんですか、これは。そうすると、私は竹下内閣の姿勢そのものが大きな問題になると言わざるを得ないんですけれども、こういう一つ一つの発言はやっぱりそれなりに行き過ぎであったり、あるいは陳謝すべきであったり、あるいは間違いであったとすべきではないんですか。竹下内閣として明確に姿勢を示すべきじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/116
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117・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 御指摘にありましたような御発言ぶりにつきましては、委員もお話しのように、そのことがそのとおりだったかどうかは速記録でもございませんのでわかりませんが、そのような趣旨の御発言があったことは承知をいたしております。そこで、午前中に野田委員からも御指摘がありましたが、憲法で保障されたように個人としての信条、そういうものを吐露されるということはこれまた許されるべきことではありますが、同時に閣僚という重い任務に当たっておる者といたしましては、諸外国の国民の神経を逆なでするようなことがあってはこれは友好善隣の実を上げ得ないわけでございますので、より慎重であるべきであるというふうに考えております。
そこで、発言の幾つかにつきましては個人の考え方をそのまま率直に申し述べた点もございますので、発言が過去において個人的な発言とあるいは閣僚としての発言との間で全くすべて一致するものであるかどうかについては私どもも検討させていただきたいとは思いますが、重ねてでございますが、内閣との一致という問題につきましては、昨日御本人が最終的に申されている御発言を我々は信頼し、内閣とともに歩むという姿勢、またその発言ぶりで今後いかれるものだというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/117
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118・峯山昭範
○峯山昭範君 官房長官、宇野外務大臣のこの間中国の外務大臣と会談した際の発言の中でも、これは竹下内閣の姿勢みたいなものが出てくるわけです。これは具体的にはどういうことであったか私もわかりませんが、新聞の報道によりますと、中国の外務大臣が奥野発言のこの問題については「あまり触れたくないが、日本の閣僚の一人が非礼な発言をした」という問題に言及をした後、宇野外務大臣も「私も非礼だと思っている。中国の新聞で批判を受けたことは遺憾だと、国会でも答弁している」と、こういうふうに答えた。ところが、この問題について宇野外務大臣の「非礼だったと思う」というこの「非礼」という問題について、外務省の首脳は九日の夕方になって、この「非礼」という言葉はそうした事実はないということでこれを否定してしまったわけですね。一たん記者団にこういう問題に「非礼だったと思う」というふうに答えたことを紹介をしながら、その後その言葉を撤回している。というのは、これはどちらが本当かわかりませんが、いずれにしても日本政府の、もっと簡単に言うと竹下内閣のいわゆる歯切れの悪さといいましょうかね、やっぱりそこら辺が私どもから見ておりましてもおかしいんじゃないかなと思うわけです。この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/118
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119・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 今委員の最初に御指摘の点につきましては、宇野外務大臣が訪中いたしました折に銭其シン外交部長より日本の大臣の一人が礼儀を欠いた発言をされたとの言及がありまして、宇野大臣よりかかる発言が中国の新聞等の批判的反応を招くという事態になったことはまことに遺憾であり、政府としては日中共同声明の中で述べられている過去の歴史に対する認識にはいささかの変化もないということを説明したと承知をいたしておるところでございます。
その後段の歯切れの悪さということでございますが、政府としてはこの対中国問題につきましても従来からの路線についてその線上ですべて処理をしておるわけでございまして、特段に改めて竹下内閣として新たなる方針を打ち出したというものではありません。あるいはそのようにお感じになるかもしれませんけれども、従来の線上で誠実に外交も進めていくということでありますので、御理解をいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/119
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120・峯山昭範
○峯山昭範君 官房長官ね、きのう奥野長官が参議院の本会議で発言をされました。竹下さんもそれを聞いておられたわけです。奥野さんの発言に対しまして与党の席から大変な拍手が沸いた。私はやっぱり奥野さんの発言に対していろんな問題があると思う。もちろん参議院の本会議における前段はいいんですよ。竹下総理の言ったとおり、前段はいいんです。それなりに理解できるところもあるんです。ところが、後段になってくるとだんだん開き直ります。ということは、逆に言えば奥野さんの発言に同調する人がたくさんいるというふうな印象を与えたんじゃないかなと私は思うわけです。私は事実は違うと思うんです。
また少なくともこの共同声明の中でうたわれた精神というのは、これはもう長官もよく御存じのとおり、「日本側は過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」。言葉で云々言うよりも、竹下内閣の方針に違反しているかどうか。奥野さん、あの態度で本当に深く反省しておるんですかね。あの態度、その後の新聞のいろんな報道、一々私はここで申し上げませんが、少なくとも私が見ても反省しているなんてこれっぽっちも見えませんよ。開き直り以外の何物でもない、そう思います。それをあえて竹下内閣の方針に背馳してないなんて頑張るということは、竹下内閣もあの奥野さんと同じなんだなと、こう思って私心配しておるわけですよ。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/120
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121・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) いろいろと御印象を持たれてはおるかと存じますが、御本人は参議院の本会議において、過去の過ちを深く反省しその反省の上に立って行動していかなければならないと速記録で私承知をいたしておるので、本人としては日中問題についてもそのような過去の反省にのっとって従来の政府の方針を受けとめながら行動していかれるというふうに信じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/121
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122・峯山昭範
○峯山昭範君 これは共同声明だけじゃないんです。御存じのとおり、昨年は衆参両院におきまして共同声明並びに平和友好条約の精神を一層我々としては増進を図るために最大限の努力を図る、こういう決議をしておるわけです。そして、最大限のこの友好のための努力を図るその先頭に立ってやるのが少なくとも私は閣僚だと思うんですよね。その閣僚が靖国参拝の公式であるか私人であるかということを問われて、何で中国の話をせないかんのですか。またその後の一つ一つの発言なんというのは――奥野さんにあなたの発言を変えろとか謝れなんて言ったってだめですよ、あの人は。今までこれは何回もやっているんですから。憲法問題に対する発言もいっぱいあるんですから。そういう点からいきますと、あの人にあの発言をどうこうしろとか考え方変えるなんて言えませんね。言えないと思います。
そういうふうな意味では、やっぱり竹下内閣としてこの国会、衆参両院における国会の決議とかこういうようなものから見ても、何とかこれをちゃんとするためにも、竹下総理は中国へ行かれるわけでしょう、近々。中国に行かれるに当たっても、少なくともこの問題を何らかの形で明確にしていかないと、やはりそれなりの私はお話が出てくると、そう思います。そういうふうな意味でも、私は非常に重大な問題であると思います。そこら辺のところをやっぱり竹下内閣としてそれなりのきちっとしたけじめをつけるべきだと、こういうふうに思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/122
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123・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 今委員の御指摘の点は、先ほど申し上げましたが、両院の議院運営委員会におきましても同様な御指摘がございました。竹下内閣としては、国務大臣としての奥野大臣の御発言についてこのような御指摘も受け、かつ、中国、韓国において各種の報道を通じて御批判をいただいておることについては、責任の重き立場の者の発言として御批判をいただくようになりましたことについてはあらかじめ遺憾の意を表しつつ、本日両院の議院運営委員会に出席しそのことを申し述べたところでございます。
一方、奥野長官としては本務と申すべき国土庁長官としての重大な任務もあるわけでございまして、現在も多極分散の法律を抱えまして御審議を願っておるところでございます。そこで、奥野長官につきましてのいろいろ両院での各野党の御指摘につきましては、建前から申し上げれば、これは三権の中それぞれではございますが、議院内閣制のもとで国会の御意思を十分拝聴しながら行政も運営していかなければならないこともこれまた確かなところでございますので、本日のところ両院の各野党からの御指摘につきましては率直にこれを承りまして、政府としていかように対応するか考えておるところでございます。
いずれにしても、日限を限られましてその返事を再度待つということでございますので、ただいまの御意見等も十分承りながら対処をいたしたいと思いますが、私どもといたしましては、国際的にもできる限り親善友好の実を上げるためにそれぞれの国民の心情を思いつつ発言をいたさなければならないという反省とともに、内閣としては、重要閣僚でございますので内閣の方針に基づいて行動されることを期待しつつ、奥野大臣にもその向きのことは申し上げることといたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/123
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124・峯山昭範
○峯山昭範君 いずれにしましても、この問題はそう簡単にうやむやに済ますことはできなくなってまいりました。その責任の所在あるいはこの発言に対するみずからの責任というものもあると思います。また、政府の責任というのも私はあると思います。いずれにしても早急にこの問題に対する結論を出していただきたいと思いますし、またそれなりのきちっとした方向でいかないと、これは対外的な問題もございますので尾を引くことは間違いないと思います。そういうような意味でやっぱりきちっと処理をしていただきたい、これだけ要望しておきたいと思います。
それでは次に、今回の法案に関連をいたしまして、先ほど同僚議員の方からも質問がございました、官房長官、私的諮問機関というこれですね、私的諮問機関というのは官房長官どうあるべきだとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/124
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125・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) これは六十一年十月に閣議で総務庁長官が発言されておりますけれども、懇談会等はあくまで行政運営上の意見交換、懇談の場として性格づけられるものでありますということでございまして、私もそういうものであるべきものだ、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/125
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126・峯山昭範
○峯山昭範君 実は、当内閣委員会におきましてこの私的諮問機関のあり方につきましては昭和二十六年から議論が行われておりまして、私は二十年ほど前ですけれども昭和四十五年ごろからこの問題を当該委員会で議論しております。とにかく、いわゆる私的諮問機関と国家行政組織法に基づく八条機関との関係というのは非常に大事な関係でございまして、特にさきの中曽根内閣の時代に、要するに中曽根総理大臣になるや否や私的諮問機関というのをえらいたくさんつくりました。本当にもう次から次とつくるわけです。そうして、しかもいろんな行政運営の面にそれを利用したということで、この問題につきましては当内閣委員会でもあるいは予算委員会でも随分議論になりました。その本質的なところは、実はいろいろあるんですけれども、やはりその区分をはっきりする、そして国家行政組織法に違反しないようにしてもらいたいというのが私どもの考え方であります。
しかし、実は私どもからすれば大変残念なことだったんですけれども、昭和五十七年だったですかね、もうちょっと前かもわかりませんが国家行政組織法の改正がありまして、国家行政組織法の第八条がいわゆる私的諮問機関というのもすべて法律によってつくるということになっておったわけです。ところが、国家行政組織法の改正で、その法律の第八条にも書いてありますが、法律並びに政令によってと、こうなったわけです。なぜ政令によってとなったかといいますと、要するに法律によってつくるということは大変難しい。難しいというよりも立法府で絶えず議論しないといけないわけですから非常につくるのに手間がかかる、皆さん方の立場からすれば。したがって、いわゆる八条機関をもう少しつくりやすくしてほしいという御意見もいろいろありまして、政令でつくれるようになった。
したがって、今回のこの戦後処理問題懇談会というのも、本来なら政令なりにしかるべき措置をきちっとしてつくって、そして私は処理をすべきだと思うんですね。それが、これは今さきの同僚議員の質問の中にもありましたが、いわゆる戦後処理問題懇談会というのはそういうような処理を全くしないで私的諮問機関として出てきて、しかも答申とか報告とかという形になっておりますが、そういうようなものから出てきたものがいわゆる法律をつくる根幹になってきている。ということは、逆に言えば国家行政組織法にまともにぶち当たるということになるわけです。ここら辺のところはこれはどういうふうにお考えなのか、今後のこともありますしこれはきちっとしていただきたいと思いますので、一遍お伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/126
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127・平野治生
○政府委員(平野治生君) この法案、御承知のとおり非常に難しい状況の中で、政府におきましても真剣に取り組んできたわけでございます。その過程におきまして、政府でいろいろ考えていたわけでございますけれども、民間有識者の方々の御意見も聞く必要があるのではないかということで、この懇談会を設置させていただいた。当時は総理府の総務長官、その後内閣の官房長官でございますが、そういう経緯がございました。そして、そういう経緯を踏まえながら政府としては、当時の内閣官房長官にそういう御提言がございましたので、それを踏まえてさらにまた各方面といろいろ折衝をいたしまして、そして政府としてこの法案を決定したという経緯があったわけでございます。そこで、この提案理由を書くときに、それまでのいろいろな経緯というものをきちっと書いておいた方がむしろいいのではないか、こういうふうに思いまして、私どもこういう提案理由にさせていただいたわけでございます。
ただ、先ほども野田先生から御指摘もあり、また今峯山先生からも御指摘があり、私どもこれをもってすべて政府の方針を決めたわけじゃないのではございますけれども、いろんな点で至らない点があったのかなというふうに反省いたしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/127
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128・峯山昭範
○峯山昭範君 これは官房長官、官房長官のところから出てくる法律がこういうことになってしまっては非常に困るわけですよ。何でかいうと、各省庁の大臣に対して官房長官が注意せないかん立場にあるわけです。それがこうなってくると困りますので、今までの経過からもうちょっと官房長官にわかっていただきたいのであえて申し上げますが、官房長官、これは三十八回国会の当時の池田総理の答弁ですけれども、私的諮問機関のあり方についての答弁です。「これが一つの行政機関として意思決定をするというふうなこと、これはいけません。」。要するに、「これはいけません。」というのは、私的諮問機関が一つの行政機関としての意思決定をするというのはこれはいけません、こういう意味です。「これは絶対にいかない。しかし、大きい問題につきまして民間の専門家等がお互いに話し合うという一つの懇談会――意思決定をせずに――ということは、私は政治をする形として、ごく軽い意味でやった方がいいんじゃないか。」。このとおりや。「行政機関としての審議会ではなしに、私は最小限度においてはやむを得ないのじゃないか。」「しかし、最小限において専門家の経験その他意見を述べてもらう機会を作り、そうしてそれを民主的に意見の交換ということであれば、意思決定というのではなしに、私は、ある程度は大目に見ていただく場合もあると考えまして、」「しかし、行政組織法八条の関係もございますので、その意見が行政機関としての意見になるようなことは、厳に慎まなければならないと思っております。」、これが総理の答弁です。
それからもう一つ、これは当時の林法制局長官の答弁です。これはすぐ名称を変えたり、答申でなくて報告書になっているとかいろいろなことを言う人がおりますけれども、この点についてもこういうことになっています。その名称のいかんにかかわらず実態が八条機関に当たるものであれば当然法律で設置しなければならない、要するに問題はその実態です、何人かの人をある問題についてずっと呼んで委員各自の個人個人の意見を聞く、これは今の八条には抵触しない、しかし一つの組織体をつくってその組織体としての意見をそこで出させるということはこの八条に該当する、そういう二つの明確な線があるわけであり、閣議決定等で懇談会を置く場合はその前者に引きつけて考えており、十分けじめをつけて八条に抵触しないよう注意していただきたいというのが、これは法制局長官の答弁です。
それからまだいっぱいあるんですけれども、もうこれ余り言いませんが、これは行政管理庁の通達、「いわゆる懇談会にあっては、合議機関としての意思が表明されることなく、出席者の意見が表明されるにとどまるところにあります。したがいまして、懇談会は、出席者の意見の表明又は意見の交換の場であるにすぎないのであります。」。これずっとこう見ていきますと、いわゆる国家行政組織法で言う八条機関と私的諮問機関とはもうおのずから違いがあるわけです。私たちはこの法案実は賛成なんですよ、これね。賛成なんです。しかしながら、やっぱり私たち長い間内閣委員会でこの問題について議論をしてきた、そういう点からいきますと、これを見逃してしまったんじゃ今まで何のために議論してきたかわからないわけですよ。
しかも、戦後処理問題懇談会の「いわゆる戦後処理問題については、もはやこれ以上国において措置すべきものはないが、関係者の心情には」云々という報告を引用して――本当は結論を出したりこういう報告書はつくっちゃいかぬ。そういう組織体をつくるということも問題になっているわけですから、本当から言えば。それは組織体の意思がちゃんと出ているわけですからね。しかも、その意思に基づいて「政府としては、」と、こう書いてあるんです。この私的諮問機関の懇談会の「報告の趣旨に沿って所要の措置を講ずることを基本方針とし、」と書いてあるんです。これは室長さんが何と言おうと何と答えようと書いてあんねん、きちっとこれ「基本方針」やと。
ということは、もう国家行政組織法を正面から平気で破ってこの法案ができておる。私たちは今までのいろんないきさつ等わかっておるわけです、十分。この戦後処理問題というのはどんなに大変だったかということはよくわかっておる。この内閣委員会で随分議論してきたわけですから。しかし、だからといってこういうふうなことをやったんじゃ、これはやっぱり問題が大き過ぎる。これ先ほどから同僚議員の方からもお話ございましたが、ここら辺の項目はやっぱりちょっと削除していただかぬと、これが後々まで残りますと困るわけですよ、本当。ですから、そういうことも含めまして、これは官房長官の御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/128
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129・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 過去の池田内閣以来の御答弁ぶりについて勉強させていただきました。
今回のことにつきましては、御指摘の点についてはこれまでの経緯を述べたものでありまして、政府としてはこれらの経緯を踏まえまして、各方面の意見を参考にしつつ、究極には政府の責任において法案を作成し国会に提出いたした次第でございます。ただ、誤解を招いたことはまことに申しわけなく、今後とも十分注意をいたしてまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/129
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130・名尾良孝
○委員長(名尾良孝君) 午後四時三十分に再開することとし、休憩いたします。
午後三時五十八分休憩
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午後四時四十二分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/130
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131・名尾良孝
○委員長(名尾良孝君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、平和祈念事業特別基金等に関する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/131
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132・峯山昭範
○峯山昭範君 官房長官、御苦労さまです。きょうはもう本当に行ったり来たりで。
先ほどの続きですけれども、これはどうしてもやっぱり官房長官にわかっていただきたいので、もう一回今度は先ほどの御紹介した分とは違うところを紹介したいと思うんですが、これも当時の行政管理庁の通達です。こういうのがありますね。「懇談会等行政運営上の会合の開催について」という通達です。これの一番目に「懇談会等は個々の個人の意見を聞くのみで行政機関としての意思の決定を行わないものであるというのが国会における政府答弁の要旨である。」、これが一つですね。それからその次に、「行政運営上の単なる会合で、」――この私的諮問機関のことです。「その都度参会者に参集依頼状を発して開催するのは、大臣決裁、局長決裁等で臨時、随時行われているところであるが、」、これから先が問題なんですけれども、「関係書類に審議会、協議会、調査会等の名称を冠すること、」、これはいかぬというんです。それから「「設置する」と言うような記載をすること、」、これもいかぬというわけです。それから「参集者に委員、参与等を委嘱すること等は疑惑を招くおそれがあるので適当でない。」、こういう通達が出ておるわけです。
そうしますと、今の戦後処理問題懇談会というこれは、一ページの今の大臣が読み上げられました提案理由の説明ですけれども、「戦後処理問題懇談会を設置し、」と書いています、これね。設置しなんというのはいかぬと言うて通達しておるわけです。それをわざわざ「設置し、」とこう書いてある。それからその次は、「二年半にわたり慎重かつ公平な検討が行われました。」と。八条機関で公平という意味は、大体委員の任命――私的諮問機関が何でこう規制されているかといいますと、要するに私的諮問機関は大臣の自由な裁量によって自分の好きな学者の皆さん方から意見を聞けるわけです。ですから、逆に悪い意味で言えば自分の都合のいい人だけの意見を聞いてもいいわけですね。そういうことがあっちゃいかぬから、要するに人選やそういうところについて法的な規制がきちっとかかっているわけです。そういう点が公平という意味なんですよ。だから、この戦後処理問題懇談会というのはそういうような意味では公平でも何でもないわけですよ。要するに国家行政組織法で言う政令なりそういうものできちっとしてないから。それは実際集まった人たちが悪いという意味じゃありません。法律の上ではそうなるということです。
さらに、その次に問題なのは、しかもこの戦後処理問題懇談会では内閣官房長官に対してその会としての結論をいろいろこういうことをするという提言が行われたとなっている。この提言もやっちゃいかぬとなっておるわけです。そうすると、これは一つ一つ内閣の通達にそれぞれ抵触するわけですよ。そういうようなことは当内閣委員会で何回も何回も議論をして、こういう疑惑を持たれるようなこと、例えば答申という名前がいかぬということになったら今度は報告あるいは中間報告、いろいろな名前でやるようになった。ところが、そういうことが問題になったので、先ほど言ったように、林長官はその名前がどうのこうのというんじゃなくて実態が問題なんですと、こういうように法制局の方では解釈しておられるわけですね。
そういうふうに見てまいりますと、この問題は非常に大事な問題でありまして、したがって提案理由の説明の中のこういう部分は本当はカットしていただいて、要するにそういう懇談会からも意見を聞きまたいろんなところからの意見を聞いて政府としてこういう方針を決めたんですと、こういう書き方ならそれなりの理解のしようもあるわけです。ですから、そこら辺のところはやっぱり当内閣委員会で少なくとも議論をするからにはそれなりの措置が必要じゃないかなと私は思うんですけれども、そういうことを踏まえて御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/132
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133・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 御指摘のありました私的懇談会の扱いにつきましては、今後十分注意をいたしてまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/133
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134・峯山昭範
○峯山昭範君 あと法案の中身に入りたいわけでございますが、法案の中身につきましては先ほど同僚議員から相当細かい点まで質問がございました。私も大体同じようなことを質問するつもりで参りましたので、重複することになりますので私は以上で質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/134
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135・吉川春子
○吉川春子君 本法案に直接入る前に一つお伺いしたいと思います。
それは、昨日の朝刊、夕刊に一斉に報道されました総理府の汚職事件ですが、政府広報番組などの発注をめぐる汚職事件で総理府の元幹部職員が逮捕されました。わいろをもらった業者に広報を発注するなどということはもう論外のことです。政府の広報番組は行政権を執行する上で国民に周知するために行うものでありますが、時の政権の都合のいい宣伝のための広報というものであっては困るわけで、正しい広報が求められています。そういうためのチェック体制というのは今あるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/135
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136・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 今般の事犯の発生につきましては、まことに遺憾かつ残念であります。改めて姿勢を正して国民の信頼を回復すべく政府として努力してまいる所存でございますが、執行体制につきましては改めて業務適正化委員会を発足させまして、こうした問題につきましていま一度チェック体制の見直しを行ってまいりたいと思います。いずれにしましても、従前から常に組織の中でそうしたチェックを図ってきたところでございますが、こうした事態になりましたことに際して、改めてさらにその機能の見直しを行い実を上げてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/136
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137・吉川春子
○吉川春子君 政府の広報関係予算が非常に大幅に伸びています。例えば田中内閣一九七三年と今年度八八年度を比べてみますと、かなり大幅に伸びているんですね。その数字を示せますか。その理由についてもお知らせいただきたいと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/137
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138・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 最近の数字を申し上げますと、昭和五十七年百三十六億八千六百万を最近では最高にいたしまして実は漸次減少いたしてきておりまして、昨年度の百十五億六千四百万円まで累減してきているところでございますが、六十三年度につきましては若干の増加を見まして、百十八億二千七百万という数字に相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/138
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139・吉川春子
○吉川春子君 臨調行革で各部門の予算削減というのはおびただしい数字に上っているわけですけれども、広報予算はかなりふえているんですね。その理由はどういうところにあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/139
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140・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 政府といたしましては、政府の行ってまいります事柄につきまして広く国民の衆知を求めて理解と協力のもとに政策を遂行していかなければなりませんので、その国民の理解を求めるために必要な経費と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/140
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141・吉川春子
○吉川春子君 広報関係予算の詳しい内訳についてお示しいただきたいんですが、例えば今年度の予算で言いますとテレビ関係は三十八億九千百万円、ラジオが一億九千万円、新聞、雑誌が三十四億三千三百万円、その他四十三億千三百万円、こういうふうになっておりますけれども、その中身はどういうふうになっていますか。例えばテレビ関係はどういう費用なんですか、これ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/141
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142・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 今ここにあります資料から申し上げますと、六十三年度予算案の中ではテレビ、ラジオ等放送関係は四十四億三千四百万ということになっております。内訳につきましては、ただいま担当者参りましたので御答弁申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/142
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143・本多秀司
○政府委員(本多秀司君) 広報室長、今ちょっとおくれて参りますので、大変恐縮でございます。
今官房長官が申し上げましたように、六十三年度の広報予算、約百二十億弱でございますが、いわゆる契約の観点から申しますと、約七億程度がいわゆる一般企画競争ではなくて随意契約に基づいて行われる部分であるというふうに理解しているわけでございます。その理由は、広報媒体を選ぶに際しましてその業者、その代理店でないと広報目的に照らしまして実行ができない、そういう特殊なあるいは特定的な性格を持った媒体につきましては随意契約によってやらざるを得ないということでございまして、その額がおよそ七億、百二十億弱のうち約七億程度でないかというふうに推定されるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/143
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144・吉川春子
○吉川春子君 それでは、広報関係の予算の中身についてはちょっと後で資料で提出していただくことにいたしまして、今随意契約という答弁がありましたのでそちらの方に問題を移しますが、登録業者に企画を提出させて公平に選ぶ、そういう競争入札ではなくて、随意契約にして今回の逮捕者がツルの一声で発注先を決めていた、こういう驚くべき事実が明らかになったわけですが、今その業者でなければできないんだというようなことを言いましたけれども、業者選定の基準というのはどういうふうになっているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/144
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145・本多秀司
○政府委員(本多秀司君) これも実は私直接その業務を担当しておりませんのでやや一般的な言い方になることを御了承いただきたいと思いますが、広報関係につきまして言えば一つの基準に従いまして登録された団体がございます。広告につきましては約七十団体、それから映画制作につきましては約四十団体といいますか、業者の数でございますが、そういった登録されたいわば資格のある団体、この中から政府広報としてふさわしい業者が選ばれるわけでございますが、その選定につきましては一つは一般競争、いわゆる企画競争でございます。もう一つは先ほど申しました随意契約によるもの。そして、その随意契約によらざるを得ないといいますか、よりますのは過去の実績を踏まえその業者、その代理店が特色ある広報の媒体を提供する、つまりその業者以外にはその媒体の性格を発揮するようなものができない、例えて言いますならばタクシーのリア広告、いわゆるタクシーの後ろの窓につけます広告、こういう広告につきましては特定の業者以外にはノーハウを持っていない、そういう業者につきましては随意契約をやるという仕組みになっておりますが、詳しくは広報あるいは会計の担当者の方から御説明させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/145
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146・吉川春子
○吉川春子君 そうしますと、登録されている団体がどういう基準で選ばれているか、そして随意契約が一般競争かという区別はどういうふうにしてやるか、これは何か文書での規定があるんでしょうか。決まりがあるんでしょうか。それを提出していただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/146
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147・本多秀司
○政府委員(本多秀司君) 先生まことに申しわけございません。私が答弁する立場にございません。その担当者が来ましたら早速説明させていただきたいと思いますので、次の質問に移っていただければ大変光栄だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/147
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148・吉川春子
○吉川春子君 私も通告しておいたつもりなんですが、ちょっといろいろうまくいっていませんので、今言った資料と先ほど申し上げました予算の詳しい内訳、それについて提出していただくということをお約束いただきまして、次の質問に移ります。いいですか。提出していただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/148
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149・本多秀司
○政府委員(本多秀司君) かしこまりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/149
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150・吉川春子
○吉川春子君 当委員会はいわゆる戦後処理の法案が幾つか提案されて審議をしてきたわけですけれども、政府の戦後処理に対する基本姿勢を伺います。
それは、再びあのような侵略戦争の愚を繰り返してはならない、こういう反省に立って政府は戦後処理を行っているというふうに理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/150
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151・平野治生
○政府委員(平野治生君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/151
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152・吉川春子
○吉川春子君 奥野国土庁長官の発言は、外交問題になっておりますけれども、日本国憲法に照らしても容認できるものではありません。きのうの参議院本会議におきまして盧溝橋事件は偶発だったと発言されておりまして、日中戦争の侵略性を重ねて否定しておられます。官房長官にお伺いしますが、長官は日中戦争、盧溝橋事件、これらは偶発的なものだった、こういうふうにお考えなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/152
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153・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 個々の事件の歴史的評価、解釈はいろいろあり得るところであり、また歴史家の評価にゆだねるべき側面もありますが、一般論として言えば、歴史は流れの全体として評価すべきものと考えております。いずれにいたしましても、政府としては昭和四十七年の日中共同声明の中で述べられておるとおり、過去において日本が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについて責任を痛感し、深く反省をいたしておるとの認識は不変であり、戦争は二度と繰り返さず平和国家としての道を歩んでいく決意であります。
お尋ねにありました私としてどう思うかということでございますが、私といたしましてもこの問題についてはまだ十分な研究をいたしておりませんので、的確に御答弁は申し上げられませんが、いずれにいたしましても中国との関係の中でこの事件が起こったことは事実であり、この事件の評価につきましてはなかなか難しい判断でございますので、今直ちに偶発的であるか否かについては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。しかし、いずれにしても日本としてはまことに不幸な事件であり、全体としていわゆる侵略的な事実、これを否定するものではないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/153
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154・吉川春子
○吉川春子君 ライシャワー氏の著書を引用されたわけですけれども、これはきょうの新聞の報道ですが、ライシャワー自身も侵略性を認めて次のように書いているわけです。
日本帝国が大きくなっていくにしたがって、中国人の抵抗も激しいものとなっていった。東アジアに侵略し、一大帝国を築きあげようと野心にかられた日本は、世界史的にはいささか遅きに失していた。
こう書いてありますし、南京での日本軍は暴行、略奪をほしいままにした、こういうような記述もあるわけで、ほんの一部分を取り上げて偶発的だ、そして自分もそう思う、こういう参議院本会議での答弁は大変適切ではないものであると私は思うわけです。
今回の事件で、奥野長官は時には弁明めいたことをおっしゃりながら一貫して侵略戦争を弁解しており、現憲法下での国務大臣として全くふさわしくないというふうに思うわけです。政府が今近隣諸国との友好関係を推し進めよう、こういう立場に立っているのであれば、こういう人はそういう内閣の大臣としてはふさわしくない、このように思います。もちろん憲法九十九条の公務員の憲法遵守義務、こういうものにも反するわけなんです。そしてまた外務大臣の御答弁、軍国主義的な侵略行為であったというものとか、あるいは総理も非常に消極的ですけれども侵略ということを認めている、こういうことを見ますと憲法に反する、そして閣内不一致だ、日本の大臣としてはふさわしくないというふうに思うので、私たちは奥野長官を罷免すべきだ、その地位をやはり去るべきだ、こういうふうに思うんですけれども、その点についてはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/154
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155・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 奥野大臣の発言につきましては、しばしば御答弁申し上げさせていただいておるところでございまして、政府の基本的な中国に対する認識において変わるものでないという考え方でございまして、昨日の本院本会議における答弁ぶりもそのように相なっておりますので、私どもとしては奥野長官におかれてはこの内閣の方針に基づいて行動をされるものだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/155
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156・吉川春子
○吉川春子君 盧溝橋事件が偶発的な事件だ、そういう個人の考えは自由だというようなことをさっきちょっとおっしゃいましたけれども、私は、言論の自由とかというのは国民の国家権力に対する権利でして、権力を握っている者が憲法の枠を踏み越えていろんなことを言う、これを言論の自由ということですりかえることはできないというふうに思いまして、こういうふさわしくない大臣はその地位を追われるべきだ、このことを指摘しておきたいと思います。
今回の平和祈念事業特別基金等に関する法律案、この提案の経緯について伺いますけれども、これは昭和五十九年十二月二十一日の戦後処理問題懇談会報告、そして昭和六十一年十二月二十九日の政府と自民党の「戦後処理問題に関する政府・党合意」によったものである、このように理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/156
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157・平野治生
○政府委員(平野治生君) この法案をつくる過程におきまして、そういうふうにただいま先生も御指摘になりましたとおりに、戦後処理懇の報告あるいは政府・党合意、こういうものを踏まえまして政府として方針を固めて、今回この法案の提出に至ったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/157
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158・吉川春子
○吉川春子君 戦後処理問題懇談会報告ではいわゆる恩給欠格者問題それから戦後強制抑留者問題などについて検討を行った結果、個人補償についてどういう結論に達しているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/158
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159・平野治生
○政府委員(平野治生君) 戦後処理懇の報告の中におきましては、これらの問題につきましては「もはやこれ以上国において措置すべきものはない」という結論を一応うたった上で、「しかしながら、我々は、戦後四十年にならんとしてなお強い要望を寄せている関係者の心情には深く心を致さねばならない。」、こういう前提のもとに、
戦争損害が関係者にとって心の痛みとして償われることなく残っていることをふまえるならば、求められることは、これらの尊い損害、労苦が時日の経過とともに国民の記憶の中から忘れ去られ、風化していくことを防ぎ、更に後世の国民に語り継ぐことであり、国民が戦争により損害を受けた関係者に対し衷心から慰藉の念を示すことである。
こういうふうにうたった上で、
このため、今次大戦における国民の尊い戦争犠牲を銘記し、かつ永遠の平和を祈念する意味において、政府において相当額を出捐し、事業を行うための特別の基金を創設することを提唱する。
こういう報告になっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/159
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160・吉川春子
○吉川春子君 そういたしますと、この懇談会の結論そして今度の法案の立場は、個人補償を含む戦後処理に最終的に終止符を打つための特別基金を創設する、こういうことでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/160
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161・平野治生
○政府委員(平野治生君) 戦後処理懇の報告自体はそういう趣旨だったと思います。ただ、先ほど申しましたとおりに、この法案をつくる過程におきましてはさまざまな方面からの御意見もちょうだいし、また自民党とも御指摘のございましたとおりに確かに合意を見ましてやったわけでございます。そういう意味で見ますと、個別に慰労の気持ちをあらわす、こういう措置についてもこの法案の中に明記されていることでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/161
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162・吉川春子
○吉川春子君 それはいわゆるシベリア抑留者に対する十万円の慰藉するための支払いということだと思うんですけれども、そのほかの個人補償についても、この法案に直接具体的な措置が書かれている以外の個人的な措置についても、政府は否定するものではないんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/162
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163・平野治生
○政府委員(平野治生君) 繰り返しになりますが、一昨年の政府・党の合意、これは既に御承知かと思いますけれども、「いわゆる戦後処理問題については、先の戦後処理問題懇談会報告の趣旨に沿って、特別基金を創設し、関係者の労苦を慰藉する等の事業を行うことで全て終結させる」ということになっているわけでございます。ここに書いてございます「関係者の労苦を慰藉する等の事業」、これが法律の上におきましては「関係者に対し慰藉の念を示す事業」というふうになっているわけでございます。ただこの内容等につきましては、先ほどもちょっと御答弁申し上げましたとおりに、今後運営委員会等で御協議いただくということになっておりますので、その推移を見守ってまいりたい、このように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/163
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164・吉川春子
○吉川春子君 そうしますと、戦後処理問題に関する政府・党合意、これでは「先の戦後処理問題懇談会報告の趣旨に沿って、特別基金を創設し、関係者の労苦を慰藉する等の事業を行うことで全て終結させるものとする。」、こういうふうになっているんですけれども、これと政府の立場とは若干違うということなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/164
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165・平野治生
○政府委員(平野治生君) 政府といたしましても、今回提出させていただきましたこの法案でもっていわゆる戦後処理問題については最終的なものにいたしたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/165
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166・吉川春子
○吉川春子君 私ども日本共産党は、戦後処理問題については、今日なお苦しんでおられる一切の戦争犠牲者の生活に対する完全な国家補償を行うべきである、こういう立場です。具体的に言えば、例えば、一、旧軍人軍属の恩給未受給者の救済について、戦地加算を含め、軍務に服していた期間を共済年金に準じて国の負担で公的年金制度に通算するなどの個人補償の措置をとること。二番目は、ソ連抑留者については長期にわたる強制労働に対する国家補償の要求を支持しております。そして、旧軍人に対しては恩給法上の抑留加算をふやして、民間人については慰労金新設など個人への救済措置を講じて、遺骨送還、墓参地域の拡大の早期実現、こういうことを私たちは主張しているわけです。また在外財産の補償については、日本国がサンフランシスコ条約で国民の在外財産の請求権を放棄した経過から、国は国の責任で補償すべきである。政府は過去二回総額二千五百億の交付金を支給しましたけれども、これは非常に不十分である。他の戦争犠牲者への補償との均衡を図って改めて補償措置を講ずるべきである。これが私どもの党の基本的な立場なんですね。そういうことで言いますと、今度のこの法案が個人補償をもうこれ以上は絶対に認めないものなのかどうかという、そこが非常に重要なことなんですけれども、今私が申し上げましたようなことを今度の法案は全面否定することになるのではないか、こういう危惧を持っていますが、これは私の杞憂なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/166
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167・平野治生
○政府委員(平野治生君) ただいま先生がおっしゃった幾つかの点、例えていわゆる恩給欠格者の問題で申し上げますと、在職年あるいは加算年、そういったものを考えながら、例えば共済年金等の通算というようなお話がございました。これは私どもの所管というよりかはこの共済年金なりあるいは国民年金等を持っていらっしゃる所管の問題になるわけでございますが、非常に難しいという話を私ども聞いております。そういうこと等の関連におきまして、先ほども申しましたとおりに戦後処理懇の趣旨を体しながら、また自民党との合意といったものを踏まえて、こういう法案を出させていただいたわけでございます。そういうことでございますので、ひとつぜひ御理解を賜りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/167
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168・吉川春子
○吉川春子君 先ほど来問題になっておりますその提案理由、趣旨説明でも、いわゆる戦後処理問題についてもはやこれ以上国において措置すべきではないというふうに言っているんですけれども、官房長官の御答弁を伺っておりますと、運営委員会での話し合いの推移を見守っていくと、こういうふうにおっしゃっているわけですね。そうしますと、運営委員会の結論次第によっては個人的な補償も政府としてはやる用意があるんだ、こういうふうに理解してよろしいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/168
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169・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) この事柄につきましては、あくまでも設置される運営委員会の中で御議論をいただきまして、その推移を政府としては見守っていくということになろうかとは思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/169
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170・吉川春子
○吉川春子君 問いをもって問いに答えるというような御答弁でちょっと納得いかないんですが、具体的にお伺いします。
個人補償も政府は否定しないというニュアンスの答弁だったと思うんですけれども、この二百億の果実でもっていろいろな事業を行うというのがこの法案ですね。仮にこの基金の二百億の果実で個人補償も行うんだという立場に立つ場合に、まず恩給欠格者の人数は先ほど二百七十万ですか、というふうにおっしゃられましたね。そうしますと、その二百七十万の方々に例えば今度のシベリア抑留者と同じように十万円ずつの補償をするとなると、どれぐらいお金がかかるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/170
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171・平野治生
○政府委員(平野治生君) 単純に二百七十五万といたしますと二千七百五十億円ということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/171
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172・吉川春子
○吉川春子君 二百億基金が積み立てられたとして、そしてその果実というのは、恐らく財テクでもやるんでしょうが、どれぐらいの果実が生まれるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/172
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173・平野治生
○政府委員(平野治生君) これは法律にも書いてあるわけでございますけれども、元金が保証されるものにつきまして、現在のいろいろなシステムがございますからそれを最高限に活用して果実を生むようにいたしたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/173
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174・吉川春子
○吉川春子君 ですから、それによってどれぐらいの果実が年間生まれるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/174
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175・平野治生
○政府委員(平野治生君) 仮に五%といたしますと、十億円程度かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/175
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176・吉川春子
○吉川春子君 二百億になってからの話ですからまだ数年先の話ですけれども、それで十億円程度年間果実が生ずると。そしていろいろな事業を行い、あるいは個人補償も行うとしますと、二千七百五十億補償するとすればどれぐらいかかるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/176
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177・平野治生
○政府委員(平野治生君) 先生のおっしゃっている意味が十億円ずつとして二千七百五十億ということになれば単純に計算いたしますと二百七十五年でございますか、そういうことになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/177
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178・吉川春子
○吉川春子君 その十万円の金額自体も大変少ないわけで、こんな補償でシベリア抑留あるいは恩給欠格者の方々の御苦労がねぎらえるものとは思えませんけれども、しかし単純に十万円と計算して、果実がさっきの五%という計算でいくと二百七十五年かかるということは、実際問題としてこの二百億の基金の中で個人補償をしていくということは無理なんじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/178
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179・平野治生
○政府委員(平野治生君) まだこの基金でどういういわば関係者に対し慰藉の念を示す事業を行うかということが明確になっていないわけでございます。いずれにいたしましても、運営委員会でいろいろな点が御議論になるかと思います。そういうのを見守りながら、私どもとしてもいろんな点を考えていく必要があるのではないか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/179
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180・吉川春子
○吉川春子君 ですから、全額を個人補償に使ったところで二百七十五年かかるという計算ですから、そのほかにいろいろな事業をやるということになれば、実際問題は個人補償などということは全然念頭にない基金だということは明らかじゃないですか。もし本当に個人補償をやるのだったらば、なぜ法律の中ではっきり書かないんですか。法案の条文の中になぜはっきり書かないんですか。もしやる意思がないのにあるような、運営委員会の出方を見守るなどというような答弁でごまかすとすればこれはもうとんでもないことだと思うんですけれども、個人補償をおやりになる意思があるのだったらば、そういう余地を残す条文を一項設けるべきじゃなかったかと思うんですけれども、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/180
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181・平野治生
○政府委員(平野治生君) 先ほどから先生の方で個人補償という言葉を使っていらっしゃいます。補償という言葉は一般的に申しますと何か、例えて言うならば、言葉があれかと思いますけれども、義務みたいなものがあってそれに対して補償するんだと、こういうお話かというふうに思っております。そういう意味の個人補償という言葉でございますと、それはやるという話にはならないんだろうというふうに思っております。ただ、私どもが申し上げておりますのは、関係者に対し慰藉の念を示す事業、この具体的内容につきましては二十七条におきまして具体的に一項に書いてあるわけでございますが、同時に五号にもその基金の目的に適合するものであるならば業務としてやることができるという規定もあるわけでございます。
じゃ具体的にどういうことが考えられるのか、こういう点につきましては、今の段階では運営委員会での協議の結果を待とうというのが私どもの基本的な考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/181
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182・吉川春子
○吉川春子君 さっきから繰り返しの答弁になっていると思うんですね。ですから、苦しい答弁だと思うんですけれども、官房長官にお伺いします。
いろいろなそういう戦争の被害者、あるいは戦地で御苦労なされた方々に対して、一般的なこういう事業で慰藉するんだと。資料館を建設するのかどうかわかりませんけれども、そういうような形で一般的に慰藉してそれで終わりというのがこの法案だと思うんですが、この法案を離れてか、まあ含めてもいいんですけれども、個人的な補償について運営委員会の出方を見守るという、じゃ運営委員会次第なんだということになると思うんですけれども、そうじゃなくて政府としての個人補償に対する確固とした考え方というのはないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/182
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183・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 戦争の結果そのもろもろ受けられた被害というものについては、戦後政府としても全力を挙げて遺家族に対する対策等を含めまして努力をいたしてきたところでございますが、なおかつ今問題になっております三つの戦後処理問題というものにつきまして、過去いろいろと御議論がありました。そうした経過を踏まえて政府としては今度このような形で対処しようということになった次第でございまして、直接に、先ほど平野参事官が申しましたように、義務ある立場でこれを補償するという形で考えるべき問題ではない、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/183
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184・吉川春子
○吉川春子君 今の官房長官の答弁で、要するに個人補償ということを政府は考えていないということが明らかになったと思うんですね。それはもうそれ自体大変けしからぬことで、私たちはこういう個人補償も切り捨ててこれで一切戦後処理は終わりだというような今度のこの法案について、とても御苦労なさった方々の気持ちから考えても賛成できるものではありません。
時間の都合もありますし厚生省にも来ていただいていますので、この問題はまた引き続き伺うとして、中国残留孤児の問題について一言お伺いしたいと思います。
私も埼玉県の荒川村の村長さんに案内していただいて残留孤児の皆さんのいろいろの生活実態を見てまた話し合いもしてきた中で痛切に感じたのは、やはり日本語の習得が非常に困難で、そのために就職もできない、結婚もなかなかうまくいかない、いろいろな困難に直面しているんですけれども、この日本語の習得とそして日本の風習を身につけるということが最大の課題ではないかというふうに思うわけです。で、残留孤児の皆さんあるいは二世の皆さんの日本語教育ということについて今まで厚生省も努力してこられたと思うんですけれども、本当にきちっと身につけていただくためにやはりもっと積極的な対策が必要ではないかということを痛切に感じるわけなんですね。
それで、厚生省が日本語教室を新たに設けたりすることをやっておられますけれども、この新しい制度でもって例えば埼玉県には一カ所できるとか二カ所できるとか、こういうふうになるわけですね。そうしますと、埼玉県というのは面積が小さい県ですけれども、しかし荒川村と岩槻市というふうに考えた場合とても通える距離じゃないわけなんですね。そういうような形で本当に実の上がる日本語教育ができるのかどうか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/184
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185・新飯田昇
○説明員(新飯田昇君) お答え申し上げます。
御指摘のように、中国帰国孤児が一日も早く地域社会になじみ定着自立するためには、日本語の習得が極めて重要なものと考えております。私ども、六十三年度の新規事業といたしまして、所沢など全国六カ所に中国帰国孤児定着促進センターというのがございますけれども、ここの四カ月の生活を終了後、地域社会に定着しました孤児に対しまして引き続いて日本語指導を中心にした生活指導をするための自立研修センターというのを全国で十五カ所設置することにいたしました。この自立研修センターにおきます日本語教室と申しますと、四カ月の初歩的な勉強の後でございますので、実践的な日本語指導を行う、あるいは孤児の言葉の覚え方に応じまして複数のコースを設定するというようなことを考えております。
なお、帰国孤児の日本定着につきましては、私どもまずもって孤児自身に主体的に自立する意欲を持ってもらうことが大事ではないかと考えております。このため、帰国を希望する孤児に対しましては、中国に在住するときから中国政府の協力を得まして日本の教育、住宅、職業等の情報を提供するとともに、言葉を勉強する教材等を提供しているわけでございます。また、帰国して定着促進センターに入所したところで、今申し上げました主体的に自立する意欲を持つということにつきまして積極的な指導を行っております。今年度設置することにしました自立研修センターにつきましても、今申し上げたようなことで事業内容についてきめ細かな配慮を行うとともに、その事業の趣旨等につきまして、自宅派遣の自立派遣員等を通じまして研修への積極的な参加を指導するということにしたいと思います。また、通所が可能な孤児は私ども必ずしも一〇〇%と見ておりませんけれども、自立指導員によるきめ細かな生活指導を地域的には実施していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/185
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186・吉川春子
○吉川春子君 ちょっとまたこれも時間がなくなって中途半端になるんですけれども、中国残留孤児の問題も大変重要な戦後処理の問題でして、今おっしゃられました自立のために自立指導員というのが非常に重要な役割を果たしていると思うんですけれども、これも非常に県によって差があって数が少ないと。しかも、委嘱とか臨時職員のような身分で非常に身分も不安定なんですね。だから、私は最後に要望として申し上げておきたいのは、この自立指導員についても身分を安定させてしかるべき待遇を改善して、本当に広い県に一けたの自立指導員というような形ではどうにもなりませんので、この自立指導員の数をふやし中身を充実させていく、こういうことを全力を挙げてやっていただきたいと思います。その点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/186
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187・新飯田昇
○説明員(新飯田昇君) お答え申し上げます。
自立指導員は、基礎的にはボランティア的な立場で御参加いただいてきめ細かな日常生活上の指導をしている方々でございまして、私ども全国的に見ますとその数は必ずしも不足していると思いませんけれども、御指摘のように地域的には充足されてないというようなことがあろうかと思いますので、そうした地域につきましては、都道府県と協力しながら自立指導員の数をふやしていくという方向で検討していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/187
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188・吉川春子
○吉川春子君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/188
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189・柳澤錬造
○柳澤錬造君 官房長官に冒頭お願いしておきたいんですが、この法案の持っている性格というか意義というのは大変これ重要なものがあると思うんです。したがって、そういう点でもって、表現が適当じゃないんですけれども、お役人が書いた作文を読んでの答弁じゃなくて、官房長官の本当の真情から出たお答えをお聞かせいただきたいと思うんです。
最初に、まずこの法案の目的としては、第三条で「今次の大戦における尊い戦争犠牲を銘記し、かつ、永遠の平和を祈念するため、関係者の労苦について国民の理解を深めること等により」云々、こうなっている。ところが、あの大戦でもってたくさんの人たちが戦争に行って生命を失ったんですけれども、その人たちについての慰霊祭というものを国家としてはいまだにやっていない。国のために命をささげた人たちに対して国がその人たちの霊を弔うお祭りをやっていない国というものは、私は世界の中で日本以外にはないと思うんです。ですから、そういうことについて政府としてどういうお考えをお持ちなのかということをまず第一にお聞きをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/189
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190・平野治生
○政府委員(平野治生君) 先生のお尋ねでございます、さきの大戦で国家のためにというお話がございました。これは私どもの所管ではございませんが、政府主催ということで厚生省が事務方といたしまして、いわゆる毎年八月十五日戦没者を追悼し平和を祈念する日ということをやっているわけでございます。これが先生のおっしゃる慰霊祭に当たるのかどうかは別でございますが、政府としてはそういうものもやっているところでございます。また、厚生省におきましてはそれぞれの戦域における戦没者を慰霊するために、遺族を主体とした慰霊巡拝などを毎年実施しているというふうに伺っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/190
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191・柳澤錬造
○柳澤錬造君 その辺から既にやっぱり戦争ということについての私は認識が若干ずれていると思う。八月十五日の戦没者の慰霊祭というか、天皇陛下までおいでいただいて、私は必ず行きますよ。しかし、あれは八月十五日に日本の国民で戦争犠牲者のすべての人たちのことをあそこでやるんだけれども、じゃ翌日になったらどうなるんですか。これはどこの国へ行ったって、その国へ行ったらその国のために命をささげた人たちの、いわゆる外国でも無名戦士の墓と言うんだけれども、そこへ必ず行って花輪をささげて霊を弔うということは、少なくとも国賓で来るような人たちはみんなやるわけよ。私が知る限りは、エリザベス女王が来たときもそれをしたいと言ったときに、日本政府はお断りしたはずです。連れていくところがないわけなんだから。
八月十五日のあれは一年三百六十五日の中でたった一日、あのときのあれも一つの行事だ、それはね。だから、その点は認めますし、正午を期して国民全部が、黙祷するしないはさておいて、そういうことをしてくださいとやっているんですから、これも一つのそういう意味は持っているけれども、そういうあれではなくて、外国から国賓がおいでになったらちゃんと行ってそして花輪をささげて霊を弔っていただく、日本の政府としても国家としてそういうことをやるべきであって、そういう点はもう一回きちんとこれは官房長官、やってないんだから、日本は。世界にそんな国どこにありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/191
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192・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 私も総理のお供をいたしまして過去諸外国を訪問する機会に恵まれましたが、いずれの国に参りましても先生御指摘の無名戦士の墓等しかるべきところに花輪をささげて、その国のために尽くされたとうといみたまに対して、外国の最高責任者として慰霊の意を表しておるところに私も参列をさせていただきましたが、我が国におきましてはそのようなことが行われる場所、機会を得ておらないことは大変残念だというふうに思います。いずれにしても、このことは国民全体の気持ちが一つになってそうしたことが行われることが望ましいことであり、現時点においては国民全体の考え方がそうしたことを行わしめる動きになっておらないことについては残念に思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/192
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193・柳澤錬造
○柳澤錬造君 ここですぐそれをやりますという答弁を官房長官に求めても私は無理だと思いますからそれ以上申し上げませんけれども、それはぜひ御検討いただきたいと思います。
それから次には、法案の「定義」のところでもって「戦後強制抑留者」ということを言っているわけですが、この第二条では、「「戦後強制抑留者」とは、昭和二十年八月九日以来の戦争の結果、同年九月二日以後ソヴィエト社会主義共和国連邦又はモンゴル人民共和国の地域において強制抑留された者で本邦に帰還したものをいう。」とある。先ほども同僚議員からも若干出たんですけれども、あの酷寒零下何十度の地でもって長い間強制抑留をされて、強制労働をさせられてそのまま異国の地でもって命を失った人が何万とおるが、これらの氏名は正確にはわかっていないはずなんだ。おわかりになっているんですかね、政府は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/193
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194・平野治生
○政府委員(平野治生君) 厚生省の資料によりますと、約五万五千人の方々が現地でお亡くなりになったというふうに聞いております。そういう方々に対しましては、恩給法に基づく公務扶助料あるいは一般の方でございますと援護法に基づく遺族年金が出ているというふうに聞いておりますので、そういう五万五千人の方々のお名前はわかっているというふうに承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/194
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195・柳澤錬造
○柳澤錬造君 それは平野さん、持っていかれたのがたしかこれだけいるはずだといって当時の名簿をなにして、それで帰ってきたのがこれだけ帰ってきたわといって消していって、残ったのは結局それじゃあの異国の地でもって死んだのであろうという形で、その数字が今言われた数字のはずですよ。ソ連政府に再三日本政府から要求しても、ソ連政府からはいわゆる病気だろうが何だろうがともかくこれだけの人はこちらで死にましたよという名簿は来ていないはずなんだ。だから、そういう点からいくならば不確定なはずであって、私はむしろそういうふうなことは遺憾だと思うんですけれども、しかし、それにしてもあの酷寒零下何十度という、言うなら人間として生きる限界を超えるような状態の中でもって強制労働をさせられて、そしてともかく生き抜いて耐え抜いて何とかして日本に帰ってこれたわけでしょう。私の知っているのでも一番長いのは十年超えているわけですよ。そのぐらい長い間そうやってやられてそして帰ってきた。それで、戦後何十年になって今になってその人たちにお気の毒ですといってここでこの法案で言っているのは、たった十万円の国債を支給しますと。先ほどどなたかの質問のときに平野さん財政的に云々という言葉を使ったけれども、今は学校出て就職した人たちの初任給だって十万よりか多いでしょう。たった一カ月働いてもそのくらいの収入があるわけなんです。それを今まで四十年もほったらかしておいて――ほったらかしておいたわけではないんだけれども、今になってお気の毒だから慰藉の念を示そうといって考えた、それがこの十万円の国債です。あれだけの戦争から戦後の強制労働させられたその苦しみというものについての政府の評価はその程度なんですかとお聞きしたいんですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/195
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196・平野治生
○政府委員(平野治生君) 私どもも、先生がおっしゃるとおり、シベリアの非常に寒い地で強制労働に服された、そういう方々がいろいろな御苦労を重ねた上我が国にお帰りになった、そういう方々の御苦労を思いますと非常に胸が痛む思いがするわけでございます。そこで、確かにいろいろのお話はあったかと思いますが、国といたしましては、今もう遅いじゃないかというお話もあるいはあったかもしれませんけれども、諸般のいろんな事情の中からやっぱりそういう方々に対して個別に慰労の気持ちをあらわす必要があるというふうに思いまして、本邦にお帰りになった方々に対しては、慰労の品、書状、こういったものを差し上げるとともに、十万円、確かにいろいろあるかと思います。私先ほども、先生も今御引用なさいましたとおりに、財政状況等も考えまた個別に慰労の気持ちをあらわすためとしては十万円、いろいろ御意見はあろうかと思いますけれどもそれでお願いしたい、こういうことで恩給等を受給されてない方には差し上げる、こういうことにいたしたわけでございます。
先生のおっしゃること私なりによくわかるのでございますが、そういうことでございまして、政府としてはできる限りのことを今させていただきたい、こういうことで法案を出させていただいておりますので、ぜひひとつ御理解を賜りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/196
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197・柳澤錬造
○柳澤錬造君 御理解をしてくださいなんてよく言えますねって言いたいわけ。まず、これは官房長官も聞いておいてほしいですけどね、はっきり認識しておいてほしいと思いますのは、あの大戦に参加をした人たちというのは自分が戦争が好きで行ったんじゃないわけでしょう。国家の命令でもって行かされたわけです。そうして、帰ってきた人たちの中でいわゆる恩給資格のない欠格者というのがたくさんおられて、これらの人たちが長年にわたっていわゆる補償をという格好でいろいろ要望し訴えをしてきたわけですけど、それが今度こういう平和祈念事業ということで政府は提案をしてきたわけです。その通称いわゆる恩欠者、私に言わせたら恩欠者という言葉が極めて不適切な、そういう表現は使うべきじゃないと思うんだけれども、そういう人たちがこれで喜ぶと思うんですか。こんなことをしてくれと頼んだはずはないわけでしょう。こんなことでもって我々の気持ちを救ってくれとお願いしたはずはないんです。
それで、政府としてこれが最善なものだというお気持ちでこれをお出しになったのか、その辺はどうなんですか。もう一度そこのところをちょっと聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/197
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198・平野治生
○政府委員(平野治生君) 言葉もあるいは通当じゃないかもしれません。私もそういう意味でいわゆる恩給欠格者という言葉を使わせていただいているわけでございます。そういう方々の御要望を私どももいろいろな方々から、いろいろな団体から毎日のように承っております。そして、その中で非常に多いのがやはり個人的に何かをしてほしいという問題であることは私も承知いたしております。もちろん中には私どものやったこと、自分たちの苦労というものを何らかの形で後世に残してもらいたい、こういう御要望があることもまた事実でございます。あるいは私どもがやったことを何らかの形で国として認めてもらいたい、こういう御要望があることも事実でございます。
そういうような状況の中で、いわゆる恩給欠格者の方々に対し今回この特別基金をつくり関係者に対する慰藉を示す事業、確かに一般的にはいろいろな二十七条の第一項、特に一号から三号まで、そういう関係者の労苦について資料の収集、展示、保管とか、あるいは調査研究とか、出版物の記録その他の作成とか、そういうことが具体的に書いてあるわけでございます。そういうことにつきましても、しかしそういうこともやってもらいたいが、自分たちの長い間の苦労、こういったものが自分たちの子供あるいは孫たちの間でだんだん忘れ去られてしまうことは非常に寂しいことだ、こういうふうに私どもの方に切々と手紙等で訴えられた方もいるわけでございます。私どもそういう多くのいわゆる恩給欠格者の方々にどの程度お報いすることができるのかどうか、いろいろ考えさせられる点があるわけでございますが、私ども現時点におきましてこの法案を作成いたしまして、こういう問題につきましても私どもとしてできる限りのことをしていきたい、このように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/198
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199・柳澤錬造
○柳澤錬造君 平野さんは戦争の御経験がないからそういうことを平気で、そして何かそういう人たちの気持ちを酌んでさもやってあげたようなことをしゃあしゃあとしゃべる。だから、これは官房長官やっぱり答えていただかなきゃいかぬですけれども、戦後軍人恩給が復活したのが昭和二十八年の八月、その後若干修正がされてはきているわけです。しかし、考えていただきたいのは、いわゆる昭和三十年前後のあのころの日本経済の実力というか、それは二十年代の敗戦の中からやっとひとり歩きができるようになった程度のことで、今なんかでは考えられない状態だったわけでしょう。それが現在はといえば、もう世界じゅうからいろいろと文句ばかり食うようなこれだけの言うならば経済力を持った国になったわけなんですよ。そうしてくると、この平和祈念事業というふうなこういう法律をつくって、それでもって戦争の苦しみを味わった人たちに対して慰藉の念を示すんだといっていろいろここに提案をしているんだけれども、今のこの経済力に見合ったそういう国家としての慰藉の念を示したということになるんですか、どうですか。
今日これだけの経済力を持った。長いこと御苦労していただきましたけれどもここまで来たから、それこそ二十八年なり三十年なりそのころなら、先ほど平野さんが言われたように、今の国の財政からいけば、それはわかるけれどもなかなかできませんと言っておっても済んだかもわからぬけれども、もうこれだけの経済力を持ってきたならばそういう言葉は通用しないのであって、今の経済力にふさわしいやっぱり慰藉の念を示しますといってこれだけのことをいたしますと、そこへどうしたってつながらないじゃないですか。イコールしないですよ。官房長官だって自分ではそう思っているんでしょう。それ、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/199
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200・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 実は私も平野参事官と同じ世代でございまして、戦争体験というものをみずから経ておらない世代の者でございます。しかし、今日の日本のことを考えますと、あの大戦でひとしく大変な御苦労をされた方々、または戦後の厳しい社会を生き抜いてきた方々の御努力によって今日の日本の姿があると思い、我々としてもそうした方々に対してでき得る限りの恩返しをしなきゃならぬということでおることは事実でございます。そこで、御指摘にありましたように、それぞれ政府として戦後処理問題に取り組んできましたが、やはりプライオリティーの問題がありまして、必ずしもその対象者が多いとか少ないとかでなくて、やっぱりそれには順番があってそれぞれ対応してきたことだろうと思います。しかし、それぞれに厳しい体験を経た方々に対して国家としてどういうふうに考えるかという形で、一つ一つ処理してきたと思うのでございます。
そこで、先生御指摘のように、全体の経済力の問題はなるほど今日大きなものになっていることは事実でございますが、こうした御苦労された方々にどのように対応するかということは、最終的には基本的に国民の皆さんが御判断されることであり、それを代表する国会の先生方の御判断でもあるわけでございまして、なるほど国自体は大きな経済力を持つ世界二の自由主義国家になりましたが、率直に申し上げて国家財政としては大変厳しい状況であることもこれまた事実でございます。したがって、そうしたことをもろもろ政府とあるいは与党である党とも御相談をしながら、こうした方々にいかに慰藉の気持ちをあらわすかという形でぎりぎりまとめ上げましたのが今回の法律案でございまして、ぜひその点を御理解いただきたいと、こう思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/200
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201・柳澤錬造
○柳澤錬造君 国家財政が火の車だという、そのいわゆる国債の問題とかなんかになったらそれはその言葉は通用するけれども、ここでそんな議論をする時間もない。しかし、じゃ今の国の財政の支出の予算のその中身の状態からいったならば、どれだけのところへどれだけのむだ遣いの金を使っているかというのはたくさんあるわけですよ。そんなことは一々もう言わない。だから、その辺は後の宿題の方へ残しておいて、それでさっき二十七条のところで一、二、三号のところで出たから、この関係のところも一言やっぱり私は言っておかなきゃいけないと思うんです。
いわゆる平和祈念事業の特別基金ですか、この基金の目的を達成するために次の業務を行うといって、先ほど平野さん言われたここに数項目掲げてあるんですね。これは私に言わせていただくならば、こんなことははるか昔にそれこそ何十年も前に、戦争直後は無理なことだけれども、ある時期になったときにはこの程度のことはやっておくべきことだ。この平和祈念事業の基金制度をつくってそれでこういう事業をやるんですなんていけしゃあしゃあとここへこう書かれているんだけれども、恥ずかしくないですか。もし今までやってなかったとすれば、それは政府の職務怠慢。先ほど言った十万円がどうだとか、これからいろいろなことをおやりになる、それは実際にお金が伴うことだ。しかし、ここに掲げたこういうことをやるんですというこの業務なんということは、こんなことはお金がどうこうのことではなくて、言うならば政府の日常業務の中で処理されるべきものなんです。だから、それをしていなかったならば、それは政府の職務怠慢ですよ。恐らくある程度のことはなさっておったと思うんです。
もう一度申し上げますけれども、自分が好きで戦争に行ったんじゃないんです。国家の命令でもって言うならば自分の職業を放棄をして行ったわけですよ。それで、それぞれ年数はまちまちだけれども、長い人もおれば短い人もあれば、大なり小なりの犠牲を払ったし、その大なり小なりの犠牲を払ってきたその人たちに、政府としてやっとここまで来たから何らかのことをやって報いなくちゃいけないなと思って、こういうことをお考えになった。その何とかできるようになりましたといって報いるのがこの程度のものなんですかという、そこが私は情けないなとこう思うのだけれども、どうなんですか。情けなくないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/201
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202・平野治生
○政府委員(平野治生君) 確かに、二十七条第一項一号あるいは三号ぐらいまで書いてあることについて、法律がなくても本来今までやっておくべきであったという先生の御主張、私もよく耳が痛いほどわかるわけでございます。ただ、私ども今回この法案を作成するに当たりまして、先ほど申しましたとおりにいろいろ御意見を承ってきたわけでございますけれども、その中の一つの柱といたしまして、いろいろ先ほども御指摘を受けて私も反省はいたしておりますが、戦後処理懇の報告というものも一つの私どもの判断の材料にさせていただいたわけでございます。その中で、やはりそういうさきの大戦におけるさまざまな苦労、そういう御苦労されたことを後世にきちっと伝えることをまさにやるべきだということも改めて指摘を受けたわけでございます。
先生おっしゃるとおり、それは各省庁においてまた少しずつはやっているかと思ってはおりますけれども、そういう御指摘も受けまして、私どもこの基金におきましては、こういういわば国の監督下に置かれる基金でございます。国の責任においてこういうこともきちっとやろうということを考えて法律にも明記した、こういう経緯があるわけでございます。非常にいろいろ思いもございますが、ぜひこういうことをやっぱりやることも大変必要なのではないかというふうに思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/202
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203・柳澤錬造
○柳澤錬造君 処理懇の問題は最後にまた私の方からも若干見解を言ってお答えを聞きたいと思うんですが、いわゆる恩給資格の欠格者の人たちが訴えていること、特にその中で、いろいろ言っておりますけれども、私が受けて大変大事だと思う点は次の三点だと思うんです。これはもうぜひ官房長官お聞きをいただいて、お答えをいただきたいと思うんですよ。
第一点は、恩給をもらっていない恩欠者がなぜ平和祈念事業をやられなければならないのかということ。それから二点目には、生きて帰ってきたことは正直に言ってありがたいと思っている、だからこそ今まで我慢してきたのであって、同じ戦争に参加した者が不公平な扱いをされていることを私たちは問題にしているんですよと言っている。そして三点目には、したがって極言するならば金をよこせと言っているのではないんです。軍人恩給もやめてそれから公務員の共済年金の軍歴通算をも廃止をするというならば、私たちは何も言いませんと言っている。こういういわゆる恩給資格の欠格者の人たちの声というものを政府側としてどう受けとめられて、そしてこの人たちが納得するような、いや本当に胸に響いて胸に落ちるような、そういうやっぱり答弁を聞かせていただきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/203
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204・平野治生
○政府委員(平野治生君) 先にちょっと……。
今三つの点について、関係者の方々がおっしゃっている点を承りました。参加した者が不公平な扱いを受けているという点、私どういうことかなというふうに少し考えてみました。私もそういう陳情と申しますかお話を承ったことが間々ございます。結局問題は、戦前の恩給法におきまして加算年も含めた在職年が十二年以上の者に恩給を差し上げる、それに至らない者はいわゆる一時恩給に終える、こういう制度があったわけでございます。と同時にまた、いわゆる戦前の恩給法の適用を受ける者が軍人といわゆる現在で言う公務員、当時の文官等でございますけれどもそういう者であった、そういう制度であったわけでございます。
ただ、この恩給制度というものが、これは私が言うのは大変僣越ではございますけれども、そういう制度であって、加算年も含めて十二年に達した人には恩給を差し上げるという制度であった。ただ、さきの大戦が非常に広範なものに至りまして、そしてまた多くの方が参加と申しますか軍務に服さざるを得なくなった、こういう経緯の中で、十二年に達しない方が出てきたということなんだろうというふうに思うのでございます。先ほど、おまえは戦争を知らないからというふうにおしかりを受けたわけでございます。私、確かに戦争は知らないわけでございますけれども、そういった制度上の問題、これは不公平といえばあるいは不公平かと思いますけれども、いろいろこういった年金制度的なものについては常にいわゆる最短年限というものがあるのではないだろうか。それに達しない者は不公平といえば不公平でございますが、それは一つの決まりではないんだろうかというふうに思うわけでございます。したがいまして、三つ目のお話でございます軍人恩給をやめるということは、これは国として、軍人として勤務に服されるときには在職加算年も含めて十二年以上の人には恩給を差し上げるということを、当時、いわゆる戦前当時お約束をしたわけでございますから、なかなか難しいのではないかというふうに思うわけでございます。
ただ、平和祈念事業これだけでいいのかという第一点のお話でございます。私どももこういう点もいろいろあることを十分承知いたしているわけでございますけれども、今回この二十七条等に書いてございます業務、関係者に対し慰藉の念を示す事業、こういうものをやることによっていささかでもというふうに思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/204
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205・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 恩給制度の根本に触れる問題についてのお尋ねかと思いますけれども、政府としては毎年の予算編成の過程の中でそれぞれの方々に対して財源の許される範囲で最大の努力を払ってきたことでございますが、しかし先生御指摘のように、そういうことで毎年若干の改善が行われてくる一方、その恩給制度に年限を定められ、もとよりこのことは法律をもって国会の御意思もちょうだいをしての上でございますが、そういうことで年限がまあ極端に言えば一日足らないためにその恩恵を受けられないという方々が、時の経過とともにいろいろ御不満もありますし、何とかしなけりゃならないという声が大きくなってきておることは事実でございます。
かく申します私も昭和五十四年に、実はこの恩欠の問題のそもそもは官民格差論その他もございまして、数人の先生方と御一緒にこの問題に取り組みをした経緯もございまして、それ以来の経過についても十分承知をいたしているところでございます。よって、何らかの形でそうした方々にお報いをし、一方では恩給をもらえる方々、一方では恩給欠格者となりそしてその後役所に勤められた方と民間に入られた方との格差その他の問題ございまして、いろいろ御意見のあることは承知をいたしてまいりましたが、そういったことの経過を踏まえながら、この時点で何らかのお報いをするとすればという形で、このような慰藉の気持ちも含めてあらわすこの法律案となった次第でございまして、私も今政府の立場で考えますと、与党と十分相談の上まとめ上げた成案でございますので、この際はぜひこの法律をもって一応の区切りとさせていただきたいということで今御提案させていただいておるということでございますので、何とぞよろしく御理解のほどをお願いいたす次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/205
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206・柳澤錬造
○柳澤錬造君 官房長官、現在の段階でお答えいただけばそういうことだと思います。
それから、もう一つ大事なことは、戦前には戦前でもうこれどこかで線を引くことはこれはあったんですから。しかし、じゃいろいろの諸制度が戦前にあったものは今日も戦前がこうだったからこうしますというふうにしているかといったら、全く違うわけでしょう。だから、今日の時代というか今日の情勢にマッチした、そういう手直しはされてもいいわけだ。それで、今のその不公平の問題は私は平野さんの御答弁を聞いているときには納得いかなかったが、官房長官の方はよくわかっていて答弁で触れられたから、それはもう再度言いません。
それで、最後にもう時間もなんですから申し上げておきたいのは、五十七年六月に設置された戦後処理問題懇談会、このときの委員がだれだったかなんてことをもう聞こうとは思いませんけれども、やはりこのメンバーというものが、私先ほども言ったように、戦争を知らない人たちが多かったと思うんですよ。そうでなければ、五十九年に官房長官に提言をするときに、いわゆる戦後処理問題については「もはやこれ以上国において措置すべきものはない」がというふうな、こういう言葉は出てこないはずなんです。戦争は国家が起こしたんでしょう。それで、その後遺症というものはいまだにずっと続いて、いろいろのところに問題があるわけですよ。それを今までもいろいろやってきたけれども、いまだにやっぱり始末がつかないものはたくさんある。あってそれはやはり長い時間がかかるわけだけれども、国家が戦争を起こしてそして国民のたくさんの人がその戦争に参加をして実損を受けた。そのことをどこまで救済するかということであって、それを「もはやこれ以上国において措置すべきものはない」なんて、こういう言葉の出てくるところにこの戦後処理問題懇談会というもの、私に言わせたらそういう意味においては戦後処理問題懇談会というものがいささか僣越だと思うんです。失礼千万なんて言ったらなんですけれども、そういう点がある。したがって、官房長官にもう最後に、今きょうここだけですぐ片がつけられるものじゃないんですから、いろいろとこの法はこの法としてことしの段階でここまで前進をしたんですから、そういう点ではこの法としてこれは一歩前進をさせて、さらに今後ともいろいろその問題については検討を続けますという、その点だけはやはり官房長官の方からお答えをしておいていただいて、それできょうは終わりたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/206
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207・小渕恵三
○国務大臣(小渕恵三君) 名前は戦後未処理問題かあるいは戦後処理問題かわかりませんが、いずれにいたしましても国民が要望する課題につきましては、政府として十分国民の協力を得つつ実行していくように努力いたしていくことは当然のことと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/207
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208・柳澤錬造
○柳澤錬造君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/208
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209・名尾良孝
○委員長(名尾良孝君) 本案に対する本日の審査はこの程度とし、これにて散会いたします。
午後六時八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214889X00819880512/209
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