1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和五年六月十三日(火曜日)
午前十時十分開会
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委員の異動
六月八日
辞任 補欠選任
高橋はるみ君 世耕 弘成君
六月十二日
辞任 補欠選任
世耕 弘成君 堀井 巌君
六月十三日
辞任 補欠選任
堀井 巌君 朝日健太郎君
山崎 正昭君 友納 理緒君
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出席者は左のとおり。
委員長 杉 久武君
理 事
加田 裕之君
福岡 資麿君
牧山ひろえ君
谷合 正明君
川合 孝典君
委 員
朝日健太郎君
古庄 玄知君
山東 昭子君
田中 昌史君
友納 理緒君
堀井 巌君
森 まさこ君
山崎 正昭君
和田 政宗君
石川 大我君
福島みずほ君
佐々木さやか君
清水 貴之君
鈴木 宗男君
仁比 聡平君
衆議院議員
修正案提出者 宮崎 政久君
国務大臣
法務大臣 齋藤 健君
大臣政務官
文部科学大臣政
務官 伊藤 孝江君
事務局側
常任委員会専門
員 久保田正志君
政府参考人
内閣府大臣官房
審議官 畠山 貴晃君
警察庁長官官房
審議官 佐野 裕子君
警察庁長官官房
審議官 親家 和仁君
こども家庭庁長
官官房審議官 野村 知司君
法務省大臣官房
政策立案総括審
議官 上原 龍君
法務省刑事局長 松下 裕子君
国土交通省航空
局安全部長 平井 一彦君
参考人
武蔵野大学副学
長
同大学大学院人
間社会研究科教
授 小西 聖子君
大阪大学副学長
同大学大学院法
学研究科教授 島岡 まな君
神戸大学大学院
法学研究科教授 嶋矢 貴之君
大船榎本クリニ
ック精神保健福
祉部長 斉藤 章佳君
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本日の会議に付した案件
○刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案(
内閣提出、衆議院送付)
○性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物
に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記
録の消去等に関する法律案(内閣提出、衆議院
送付)
○参考人の出席要求に関する件
○政府参考人の出席要求に関する件
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/0
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001・杉久武
○委員長(杉久武君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、高橋はるみ君が委員を辞任され、その補欠として堀井巌君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/1
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002・杉久武
○委員長(杉久武君) 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案、両案を一括して議題といたします。
まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。齋藤法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/2
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003・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
性犯罪は、被害者の尊厳を著しく侵害し、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続ける悪質、重大な犯罪であり、厳正に対処することが必要です。
平成二十九年には、刑法の一部を改正する法律により、性犯罪の構成要件を見直すなどの改正が行われましたが、同法の附則において、性犯罪における被害の実情や改正後の規定の施行状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加えることとされており、性犯罪について、被害の実情や事案の実態に即した規定とすることが求められています。
そこで、この法律案は、近年における性犯罪をめぐる状況に鑑み、この種の犯罪に適切に対処できるようにするため、刑法及び刑事訴訟法を改正し、所要の法整備を行おうとするものであります。
この法律案の要点を申し上げます。
第一は、性犯罪の罰則規定が安定的に運用されることに資するため、強制わいせつ罪及び準強制わいせつ罪並びに強制性交等罪及び準強制性交等罪をそれぞれ統合した上で、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態でのわいせつな行為又は性交等であることを中核とする要件に整理し、不同意わいせつ罪及び不同意性交等罪とするものであります。
第二は、若年者の性被害の実情に鑑み、現行法上十三歳未満とされているいわゆる性交同意年齢について、十六歳未満とした上で、その者が十三歳以上であるときは、行為者が五歳以上年長である場合に処罰することとし、これにより、十三歳未満の者に対してわいせつな行為又は性交等をした者に加えて、十三歳以上十六歳未満の者に対し、わいせつな行為又は性交等をしたその者より五歳以上年長の者についても、不同意わいせつ罪又は不同意性交等罪として処罰することとするものであります。
第三は、若年者の性被害を未然に防止するため、わいせつの目的で、十六歳未満の者に対し、威迫、偽計、利益供与等の手段を用いて面会を要求する行為等を処罰対象とする罪を新設するものであります。
第四は、性犯罪の被害申告の困難性等に鑑み、性犯罪についての公訴時効期間を五年延長するとともに、被害者が十八歳未満である場合には、その者が十八歳に達するまでの期間に相当する期間、更に公訴時効期間を延長するものであります。
第五は、被害状況等を繰り返し供述することによる心理的、精神的負担を軽減するため、いわゆる司法面接的手法を用いて被害者から聴取した結果等を記録した録音・録画記録媒体について、一定の要件の下、反対尋問の機会を保障した上で、主尋問に代えて証拠とすることができることとするものであります。
このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
なお、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案については、衆議院において一部修正が行われております。
続いて、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
平成二十九年には、刑法の一部を改正する法律により、性犯罪の構成要件を見直すなどの改正が行われましたが、同法の附則において、性犯罪における被害の実情や改正後の規定の施行状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加えることとされています。
近時の性的な姿態の撮影行為等をめぐる実情に鑑みると、性的な姿態を撮影する行為や、こうした撮影行為により生成された記録を提供する行為等は、撮影対象者に重大な権利利益の侵害を生じさせかねないものであり、こうした行為等に厳正に対処し、そうした撮影行為により生成された記録等の的確な剥奪を可能とすることが喫緊の課題となっています。
そこで、この法律案は、性的な姿態を撮影する行為等の処罰規定を整備するとともに、そうした撮影行為により生成された記録等の剥奪を行うための手続等を整備し、もって性的な姿態を撮影する行為等による被害の発生及び拡大を防止するため、所要の法整備を行おうとするものであります。
この法律案の要点を申し上げます。
第一は、性的な姿態を撮影する行為、これにより生成された記録を提供する行為等について、罰則を新設するものであります。
第二は、性的な姿態を撮影する行為等の犯罪行為により生じた物を複写した物等の没収を可能とするものであります。
第三は、検察官は、その保管している押収物が性的な姿態を撮影する行為等により生じた物又はこれを複写した物等である場合において、当該押収物が電磁的記録を記録したものであるときは、その記録状況等に応じて、当該押収物に記録されている電磁的記録を消去し、又は当該押収物を廃棄する措置を講ずることができるものとし、当該押収物が電磁的記録を記録したものでないときは、これを廃棄することができるものとするなどの仕組みを設けるとともに、これらの措置等について聴聞手続や不服申立て手続等に関する規定の整備を行うものであります。
このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
以上が、この法律案の趣旨であります。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/3
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004・杉久武
○委員長(杉久武君) この際、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員宮崎政久君から説明を聴取いたします。宮崎政久君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/4
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005・宮崎政久
○衆議院議員(宮崎政久君) ただいま議題となりました刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の衆議院における修正部分につきまして、その修正部分の趣旨及び内容について御説明申し上げます。
第一に、今般の法改正では、同意しない意思の形成等が困難な状態でのわいせつな行為等であることを中核の要件とする、いわゆるノー・ミーンズ・ノーの不同意わいせつ罪等を設けることとしております。これに対し、イエス・ミーンズ・イエスのような要件にまで踏み込むべきではないかとの御指摘があったことも事実です。
今回はノー・ミーンズ・ノーにとどまったとしても、性被害に係る犯罪規定は社会の受け止め方や意識の変化に対応して定められるものでありますから、この改正法が施行された後一定期間を経過した場合には、その時点における性的同意についての意識なども踏まえた上で、性被害に係る犯罪規定の在り方が改めて検討されなければなりません。
そこで、この改正法の施行後五年を経過した場合に、政府が、速やかに性犯罪に係る実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる旨の検討条項を附則に設けることとしております。
この検討に関連して、今般の法改正では、公訴時効期間を延長することとしていますが、性被害を申告できるようになるまでどれくらいの期間を必要とするのか、どれだけの困難さを抱えているのかといった実態を踏まえ、その妥当性を判断する必要がありますし、また、衆議院の委員会質疑においては、今般の法改正に当たって若年者や障害者の性被害の実態についてどれだけ把握しているのかとの御指摘があったところであります。
そこで、政府は、この検討がより実証的なものとなるよう、性被害を申告することの困難さその他性被害の実態について、必要な調査を行うものとしております。
第二に、今般の法改正では、性交同意年齢を引き上げる一方で、その処罰範囲を適切に画するため、十三歳以上十六歳未満の者を相手に性的行為をする場合のいわゆる五歳差要件を設けております。
しかし、衆議院の委員会質疑や与野党の修正協議において、五歳差未満であれば行為者が十八歳以上の成人であっても全部許されることになるのか、中学生が守られないことになるのではないかといった強い御懸念が示されたところです。
このような御懸念も踏まえ、附則に、政府は、この法律による改正後の刑法等の規定が、性被害の実態及びこれに対する社会の意識の変化に対応して、刑罰を伴う新たな行為規範を定めるものであることに鑑み、今般の法改正は、五歳差未満であれば十八歳以上の成人が何をしても許されるというものでは決してなく、また、中学生をしっかり守るという意図に基づくものであるということを含め、その趣旨及び内容について国民に周知を図るものとする旨の規定を追加することとしております。
以上であります。
何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/5
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006・杉久武
○委員長(杉久武君) 以上で両案の趣旨説明及び刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の衆議院における修正部分の説明の聴取は終わりました。
速記を止めてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/6
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007・杉久武
○委員長(杉久武君) 速記を起こしてください。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/7
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008・杉久武
○委員長(杉久武君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案外一案の審査のため、本日の委員会に武蔵野大学副学長・同大学大学院人間社会研究科教授小西聖子君、大阪大学副学長・同大学大学院法学研究科教授島岡まな君、神戸大学大学院法学研究科教授嶋矢貴之君及び大船榎本クリニック精神保健福祉部長斉藤章佳君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/8
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009・杉久武
○委員長(杉久武君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/9
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010・杉久武
○委員長(杉久武君) 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案、両案を一括して議題とし、参考人の皆様から御意見を伺います。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、小西参考人、島岡参考人、嶋矢参考人、斉藤参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず小西参考人からお願いいたします。小西参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/10
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011・小西聖子
○参考人(小西聖子君) よろしくお願いいたします。
皆様、おはようございます。武蔵野大学の副学長を務めております小西聖子と申します。
精神科医で、専門はPTSDの治療及び研究です。被害者のお話を伺うようになって三十年になります。前回の二〇一七年の改正のときの法制審議会、それから今回の検討会及び法制審議会に委員として参加してまいりました。現在、東京都の性暴力被害者支援ワンストップセンターと連携を持って精神科の外来をしております。また、裁判、特に刑事裁判における被害者の精神状況について鑑定を行うこともございます。
本日は、私の臨床経験と内外の研究に基づき、改正案について幾つか意見を申し上げたいと思っております。
性暴力は、もう皆様がおっしゃっているように、被害者の心身に大変深刻な影響を与えます。
最初の資料一を御覧くださいますか。
これは、WHOの行った国際的なメンタルヘルスの疫学調査です。七万人近くを対象に行われた調査ですが、トラウマ体験の影響が調べられています。
例えば、資料の二番目の黒ポツのところ、トラウマ体験の後、最もPTSDになりやすい被害は、全てのトラウマの中で、レイプが一九%、DVが一一・七%、その他の性暴力一〇・五%で、これが最も高い、例えば戦争とか事故とか災害を抑えて一番高い値になっています。それでもこの値は低めであると、有名な疫学者なんですけれど、この論文を書いた人も言っていて、大体これまでの先行研究では、性的な被害を受け、レイプの被害を受け、PTSDになる値というのは大変高くて、二〇%から五〇%辺りにあります。
それから、四番目のポツのところですが、レイプとその他の性暴力はいずれもPTSD診断の平均持続期間が百十か月を超えており、長期にわたって存在する。事故や災害の平均が四十一・二か月ということになっています。この百十という数字を考えてみると、平均で十年近いということになります。学校に行けなかったり仕事ができなくなるような期間が十年が平均だとしたら、日常生活、社会生活は崩壊することが容易に想像できます。
そういう意味では、PTSDは重い疾患です。自殺リスクを増やすことも分かっていますし、貧困や医療費用の増大などとも関わりがあります。さらに、身体的な慢性疾患とも関わりがあることが分かっています。性犯罪の被害を受ける方の四分の一から半分近くがこのような状態にあるというふうに考えてみると、これは大変なことであることが分かります。
実際に私が自分の臨床で被害の様子を聞いたり患者さんの状態を見ますと、法律がこれまでモデルとしてきた被害者像は余りにも現実と懸け離れているということは、これはもうずっと思ってきました。二〇一九年の名古屋地裁岡崎支部で無罪判決の出た事例などもそうです。
私は、このケースについて一審後に精神鑑定を行い、実際に被害者の話を聞きました。詳細は避けますけれども、性的虐待の被害者によくある感情や行動がありました。しかし、第一審の司法の関係者にはその特徴は見えていなかったのだと思います。虐待の下での被害者の行動を、普通の人の普通の場の感覚で考えて終わりにしているように見えます。法律家には、この一審判決は抗拒不能の解釈が偏っていることが問題であるというふうに感じられているようですが、私にとっては、虐待される人、性的にトラウマタイズされる人の心理、行動について余りにも無知で、関心がないというふうに感じられました。
性的虐待を長時間にわたって受ける子供は、深刻な被害を受けているにもかかわらず、表面上は明るかったり何にも気付いていないように、傷ついていないように見えることが多いです。被害を受けた人の心理がどのように被害者の意思形成や行動に結び付いているのか無視されたまま司法の場で評価されるというようなケースもあったことをこの裁判は示していますし、このような状況をほかの被害者の例でも私は繰り返し経験してきました。
性的虐待の被害者は抵抗できないのが普通です。今回の法案の中にその項目が明示されるようになったということについては安堵しています。
今ちょうど性的虐待の話をしましたので、公訴時効の延長について簡単に述べたいと思います。
性的虐待の被害者が自分で被害を被害だと認識できるまでに、三十代ぐらいまで掛かることもあります。子供の時期の被害なのに、医療に受診される方の年代は性暴力被害者の中でも高く、三十歳前後が普通ですし、四十歳過ぎて初診ということもあります。治療は時効はありませんから、二十代の方と変わらず治療ができますが、これまで、臨床の中で複数の患者さんが弁護士等に相談したが、もう時効だったので何もできなかったというふうに言われていました。いずれも性的虐待の被害です。そういう意味では、公訴時効の延長は是非必要なことだったと思います。
ただ、今回の延長案は、公訴時効については最大で三十三歳ということになるんだと思うんですが、これは平均的な方には何とか間に合っても、更に時間の掛かる人もかなりいらっしゃいますので、もう少し延ばすべきだと私は考えています。
次に、不同意性交等罪について意見を述べます。
被害者の同意のない性交は犯罪であるということが基本であるということについては、法制審議会でも確認されました。私も、以前の強姦罪という名称、それから強制性交等罪という名称が不同意性交等罪という名称になったことには賛同します。特に、今回の八項目の例示は、私は今の日本社会においては是非必要だと考えています。明示的に、具体的に書かないと、社会の中に多くの偏見がある状態では様々に異なった解釈が繰り返されるおそれがあります。
例えば、恐怖に突然さらされるときに人がどんな反応をするかについても、これは近年、生物学的な解明が進んできています。詳細は資料の二を御覧ください。
いろいろな説明が可能ですけれども、例えば、体が凍り付くように動かなくなったり、フリーズですね、感情が麻痺したりという反応は、生存に役に立つ、動物の段階では生存に役に立つ適応的な反応だったからこそ、進化心理学的に今の人類まで残ってきているものです。このような事実に基づいた法律にするべきです。
ただし、この八項目は例示列挙であって、網羅的な分類ではなく、同意を示せないこれ以外の状況がないわけではないということも確認しておきたいと思います。医学的に言えば、急性期の解離などもその一つになると思います。この書き方が最善かどうかは将来にわたって検証し、より良い方向に改正していく必要があると思います。
それから、いわゆる性交同意年齢の引上げに関して意見を述べます。
法制審議会の議論の中でも、何歳までが同意できないのか、発達科学的にそのことが実証されているのかという御質問を、多分、心理学や医学の専門家に向かっていただきました。しかし、人の発達に関することで、ある誕生日から突然誰でもできるようになるということは当然ながらありません。発達は連続的なものです。さらに、人との関係性の理解の能力や対応能力も人によって実は様々です。
こういう状態の中でどうやって条文を作るのが一番適切に罰するべきケースを罰し、不適切なケースを罰しないで済むのか、議論がなされたと思います。
私は、ちょっと、法律家ではないので、表現が正確ではない点は御寛恕いただきたいと思いますが、年齢差要件というのは、外から見て分かりやすく、これで全ての罰すべきケースを拾えるわけではないですが、子供と成人との非対等な関係性を利用した性犯罪のある部分については適切に罰することができると考えます。
十六歳以上あるいは十七歳以上、この辺りをいわゆる性交同意年齢の下限とすることは、ほかの多くの国でも行われています。生物学的な脳の発達からいっても、思春期の被害者に一定の同意能力の限定があると考えることは妥当だと思います。
今回、新たな法案が対象としているのはほぼ中学生の年代ですけれども、例えば、SNSを使った、子供に成り済ました成人からの誘いによって中学生が性的被害に遭うというようなことが頻発していると。そういうこと一つから考えても、この年代が、性行為に関する理解はあるとしても、知識、判断力などの不足、制御力の不足、感情の不安定などから、危険な事態に対応する能力に欠けるところがあると言えると思います。それでも個人差があったりすると思います。この事態を解決するために、不適切な刑罰を防ぐという刑法上の観点も含めて、これだけ違えば明らかに対等ではないという年齢差を切り取るということは仕方がないことかなと思っています。
もちろん、これは決して子供の性被害についての完璧な解決とは言えません。この条文だけではやや年齢差の近い罰すべきケースを見逃す可能性があります。例えば、性的いじめのケースなどでは年齢差がないことも多いですが、実際には不同意なのに周囲の圧力でそれを示せないというケースもあります。年齢差だけが非対等な関係をつくる原因ではないからです。
ここで、このような切取りにすると対象から漏れてしまう被害がある可能性は残念なことですけれども、それでも、前より適切に罰するという方向に一歩進むと思います。その漏れるケースは、百七十六条、七条の一項の八項目の方で考慮されるというふうに理解しています。
この分野でも日本の実証研究は十分ではありませんから、運用し、また検討する必要があります。衆議院における附帯決議もこのことに言及しており、賛同するものです。
また、この法律を有効に活用するためにも社会の啓発や学校での教育が是非とも必要です。もう今の状態をかなり超える教育が必要だと思います。施行後の調査研究、法律の検証も必要だと思います。
こういう性交同意年齢の問題が大きく取り上げられるのは、思春期も含めた子供の被害が非常にクリティカルであるということを示してもいます。
次の資料の三ですが、これは内閣府の調査をそのまま持ってきたものですけれども、被害に遭った時期を見ますと、未成年者が大変に多いです。女性で約七〇%が二十代まで、男性はもっと多いですね。男性の被害者の絶対数がまだ少ないので、数字が信頼できるというところまで行っていないかもしれませんが、女性よりも更に若い被害が多い可能性があります。ちなみに、海外では、男性被害は女性被害のほぼ一〇%ぐらいという研究が多いです。
最後の資料四に関しましては、これはSARC東京の昨年と今年の相談数、SARC東京というのは東京の性暴力被害者支援ワンストップセンターですけれども、そこの相談数を示していますが、これで見ますと、男性被害も内閣府の調査と類似した割合となっています。社会がこのような被害について認めるようにならないと調査にも出てこないということがあるので、男性の被害の数は今後更に伸びてくる可能性もあると思います。
例えば、性的虐待と非行の関連、性被害と非行の関連は有名です。日本でも矯正施設等における研究で繰り返し示されています。子供や若い年代の人々を性犯罪から守るということが社会の将来にとっても大事なことです。
ちょっと司法面接についてお話しする時間がなくなったのですが、供述が汚染されやすい子供のケースなどで是非必要だと思います。話を何回も聞くことができない状況の最初の時点で注意深く取られた資料を裁判官が判断の材料にできないのは不合理だと思いますし、大人の性被害などでも元々障害があったりして尋問に対して脆弱な人がいますので、そのような場合にそれを証拠として使用できるということには賛成します。一方で、被告人の権利も当然守られる必要があり、反対尋問の確保は必要だと思います。
ただ、一つ、私がこれをやるためには条件があると思っていまして、どのような場合でも十分な技術を持った専門家が行うことで、その専門性を担保するべきであると考えています。司法専門家が行う場合でも、その中で更に司法面接の専門家の育成に努める必要があるのではないかと私は思っています。
衆議院での附帯決議には全面的に私は賛成します。法制審議会の会議中にも、今このように説明があっても実際に施行されたときにどのように運営されるのか、大丈夫かということで不安になることもありました。司法過程で様々な異なる判断が出されていることが現実だからです。五年後の見直しと、そこに至る調査も是非必要だと思っております。
社会の変化を感じる現在ですが、それでもまだ日本は特に性暴力に関しては根強い偏見が残り、法律的にも更なる検討が必要な国だと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/11
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012・杉久武
○委員長(杉久武君) ありがとうございました。
次に、島岡参考人にお願いいたします。島岡参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/12
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013・島岡まな
○参考人(島岡まな君) 大阪大学の島岡でございます。
本日はこのような場で発言の機会を与えていただき、どうもありがとうございます。
肩書が大阪大学副学長となっておりますが、本日の私の発言は刑法学者としての研究の知見に基づいた個人的見解ですので、御了承ください。専門は刑法、フランス刑法、ジェンダー刑法でございます。
この資料のタイトルが性犯罪関係改正法案に対する評価と課題となっておりますが、時間の関係で、不同意性交等罪、性交同意年齢の引上げ、公訴時効の延長を中心にお話しさせていただきたいと思います。
まず、初めにを御覧ください。
私は、今回の刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案提案理由を読みまして、もう感無量でございました。と申しますのは、今の現行刑法典が、明治四十年、今から百十六年前の家父長制の下で男性のみによって起草された刑法典ですので、自覚はないかもしれませんが、女性差別的な規定が幾つか残っていると考えておりました。その最たるものが性犯罪規定と思いまして、ここに書きましたような「ジェンダーと現行刑法典」という二〇〇三年の論文でその問題性を指摘してから二十年でございます。それから、その後に「新基本法コンメンタール 刑法」の二〇一二年に出た解説書の中で性犯罪規定の持つ問題性を、刑法学者としては初めてだと思うんですが、主張してから十一年たちました。ですので、感無量ということです。
そして、性犯罪の本質が、被害者が自由意思に基づき任意に与えられた同意に基づかない性行為が全てであるということが二〇一一年のイスタンブール条約で既に記載されていたんですけれども、そこには、行為が男性器挿入に限定されることはないとか、暴行・脅迫要件もどこにも出てきませんでしたし、配偶者間強姦を明記するように既に言っていたにもかかわらず、御案内のように、百十年ぶりになされた二〇一七年の改正ではこれがどれも取り入れられなかったということで、私は半分絶望しておりました。
でも、ようやく六年後の二〇二三年、今年に入って、国際水準にかなり近づいた性犯罪改正が行われようとしております。これを絶対に先送りしてはならず、必ず今国会で成立させていただきたいと心から願っております。
それでは、不同意わいせつ罪、不同意性交等罪の新設についても簡単に御説明します。
たくさん書いてしまったんですが、評価する点は、括弧一はちょっと読んでいただいて、括弧二が中心ですね、暴行、脅迫のほか、心身の障害やアルコール、薬物の摂取又は影響等八項目の具体例を挙げ、その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な場合に性犯罪が成立したことです。どのような客観的行為が性犯罪となり得る危険があるかを一般人や裁判官にも分かりやすく示し、かつ性犯罪の本質は、不同意の形成、表明、全うが困難な中での性行為であることを明確に示した優れた規定方法であると思っております。
二ページ目に続きます。
従来の刑法の構成要件としては少し違和感がある規定方法だと思われるかもしれませんが、やはり罪刑法定主義の要請と一般人や裁判官に解釈の指針を与えるために分かりやすく例示する要請という二つのバランスを考慮した、非常に苦労して、何というか作成された案だと思いますので、私は、性犯罪に関する刑事法検討会や法制審議会委員の先生方の御尽力のたまものと感謝して、評価しております。
次の米印が実は重要なのですが、単なる不同意を要件にしてしまうと、意思に反したというだけにしてしまうと、性行為の意味が分からず不同意を形成できなかった場合が入らず、ドイツ刑法の他の者の認識可能な意思に反して、ノー・ミーンズ・ノー要件では、不同意を表明できなかった場合をカバーできないと思うんですね。
でも、それが今回の改正では入る、案では、どちらもカバーするだけでなく、しかも、一旦不同意を表明しても相手の圧力に屈して恐怖の念から諦めてしまった場合、これが非常に多いというふうに聞いておりますが、この場合でも、全うすることが困難な状態での性行為ということで、性犯罪となり得るということで、今まで涙をのんできた多くの被害者を救う可能性があると高く評価して、是非そのように解釈していただきたいと思っております。
時間の関係で三と四は抜かします。
課題、懸念なんですけれども、括弧三の例示というところで、八番目の項目で、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益の憂慮という要件がありますが、これ処罰範囲が不当に限定されないだろうかというふうにちょっと懸念を持っております。と申しますのも、教師と生徒とか、施設職員と入所者、まあ障害者のように、被害者が未熟で不利益を憂慮する能力さえない場合に不処罰となってしまうのではないか、もう少しはっきりとこういうものを規定した新しい立法が必要ではないかと思っています。でも、先ほど小西先生もおっしゃったように、五年後の見直しで検討していただければと思っています。
それから、括弧四の故意の認定ですが、これも行為者が同意だと誤信したということで無罪になっている判例が、ここに挙げましたように最近でも出ております。それで、かつては強い暴行、脅迫が要件となっていたので、それがない場合に同意の誤信が認定されやすかったと思います。
しかし、改正法成立後は、犯罪の故意が構成要件該当事実の認識ですので、条文に規定された八類型の事情を認識すれば、被害者が同意の形成、表明、全うが困難な状態にあることを慎重に確認すべきという規範が働き得るのではないかと考えております。ですので、それをしなかった加害者の方が悪いということで、加害者の言い逃れを許さないためには、裁判官は他の犯罪と同様に客観的状況から未必の故意を適切に認定するよう解釈すべきであると私は考えております。
では次に、性交同意年齢の引上げに入ります。
評価する点は、もちろん、十三歳から十六歳への引上げが、今まで私が長年論文等で主張してきた内容ですので評価します。そして、十三歳から十五歳について五歳以上の年齢差を要件とすることにつきましては、青少年の対等で自由な性的自己決定権を尊重し、不要な処罰を避けるという意味では一定の評価はしております。
ただ、課題、懸念としましては、括弧三に書きましたように、成人、十八歳と十四歳の中学生では、たった四歳、まあ五歳差はないんですけれども、経済力等の差は明らかで、権力関係が生じやすいです。十三歳の中学一年生と十六歳の高校生でも同様です。将来的には三歳差にすることも検討の余地があるのではないかと考えております。
四番のわいせつ目的で若年層を懐柔する行為、いわゆるグルーミングに係る罪の新設については時間の関係上詳細は省略させていただきますが、大人が児童を手懐けて自由恋愛と思わせる性的搾取が横行しており、最近、故ジャニー喜多川氏による未成年者に対する性加害も社会問題化しておりますので、三ページ目です、そのような行為は未成年者保護のためにきちんと処罰すべきで、刑法典の中に新設されることを評価しております。
五番目の公訴時効についてです。
これも、評価する点は、成人年齢までの実質的停止と五年の延長、今の時効よりも五年の延長は、現在よりはまだ良いという意味で評価しております。
ただ、課題、懸念を申し上げますと、しかし、いまだ圧倒的に不十分だと思います。スイスは未成年時の性犯罪の時効を撤廃したと聞いておりますし、私の専門であるフランス刑法は、成人から三十年、四十八歳まで告訴可能でございます。
その私見と次書いたところですが、時効の理由とされてきた証拠の散逸というのはやはり過去の話で、現在の技術革新により、スマホの映像やデジタルデータ等、半永続的に証拠が残る場合もございます。そのような場合は時効の意味が半減すると思いますので、むしろ被害者の保護や加害者処罰による正義の回復の方を重視すべきではないか、先進国はそのように考えていると思っています。
米印ですが、その他、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案についても、時間の関係で省略をいたしますが、盗撮が社会問題となり、各自治体の条例だけでは適切に処罰できない事案もあるため、特別刑法で処罰し、記録の消去等も速やかに行えるようにする方向性には賛成いたしております。
最後に、終わりになんですが、性犯罪、性差別的暴力の根絶は刑法改正だけでは決して実現しないと思っております。
性犯罪、DV、セクハラ等は、性差別、ジェンダー差別に根差した暴力、人権侵害で、決して許されないというのが先進国の常識でございます。性犯罪はまさに人権問題です。性犯罪の遅れは日本のジェンダー不平等の反映であると私は二十年来主張してまいりました。日本のグローバルジェンダーギャップ指数は、御案内のとおり、百四十六か国中百十六位でございます。ちなみに、私の専門のフランスは十六位でございます。日本とフランスの間は百か国も差があるということを考えていただきたいと思っています。
必要なことはやはり三点あると思っております。
最初に、ジェンダー平等意識を促す包括的性教育、これは人権教育だと思うのですが、これは犯罪を未然に防止するために絶対に必要だと思っております。ここに書きましたが、妊娠の経過は扱わないとされているということなんですが、それだけでなく、対等なジェンダー平等意識の醸成、セクシュアル・リプロダクティブヘルス・ライツ、SRHRの涵養等、海外では当然学校教育で教育される包括的性教育は、イコール人権教育がなされていないことが日本の大きな問題であり、加害者も被害者も出さない性犯罪根絶のためには最重要課題だと考えております。
金曜日の本会議の方の質問、答弁をちょっと拝見させていただいたんですが、永岡文部科学大臣の答弁が、性に関しては個人差があるということで、全体に共通の教育はしないけれども、個別に指導することは重要だというふうにお答えになっていたんですが。
ここで私の個人的エピソードで御紹介したいんですが、恐縮ですが、私は二人の子供をフランスの教育を受けさせまして、下の息子が五歳だった二十年前です、既に二十年前に、学校から帰ってきて、お母さん、今日、赤ちゃんがどうして生まれるか習ったんだよと私にフランス語で説明してくれました、卵子と精子が結合して、こうこうこうなるんだよと。私、もう顔が真っ赤になっちゃうぐらい、当時は二十年前ですから、びっくりしたんですね。
でも、私考えたのは、そうやって恥ずかしいという観念を生まない早い段階で教えてしまった方が、それで親子ともオープンに性のことを話せる雰囲気をつくり出すということでは大変いいと今は考えております。そして、北欧もそうだと、本当に一桁代のときから教えるというふうに言っています。
ですから、もう日本の小学校高学年で性に対する個人差が出てきてしまう、思春期になってからでは遅いんですね。むしろ、もっとその前に共通に教えるというのが世界標準だということを御紹介させていただきます。
そして、二番目の被害の早期発見や被害者支援の充実というのは、弱者保護、人権擁護のために必ず大切ですけれども、これはもう多くの方が、既にワンストップセンターの設置とか支援とかいうことはいろいろなところでもう出ておりますので、省略させていただきます。
それから、三番目の加害者プログラムの充実というのも、こちらも、やはり被害者に非常に焦点当たっていますが、これから斉藤参考人がお話しすると思うんですが、再犯防止のためには必ず必要ですので、是非そちらの方も充実させていただければと思っております。
早口で失礼いたしました。御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/13
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014・杉久武
○委員長(杉久武君) ありがとうございました。
次に、嶋矢参考人にお願いいたします。嶋矢参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/14
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015・嶋矢貴之
○参考人(嶋矢貴之君) おはようございます。神戸大学の嶋矢と申します。
刑法の研究をしておりまして、今回の改正に関しては、法制審議会刑事法部会において幹事を拝命しておりました。
本日は、このような意見を申し述べさせていただく貴重な機会を設けていただき、誠にありがとうございます。簡単な項目表でございますが、そちらを参照しながらお聞きいただければと思います。
本日は、専門に関わります実体法について、時間の関係もありますので、特に百七十六条、百七十七条の性犯罪の基本成立要件の改正と、若年者保護の強化に関わる部分について意見を申し述べさせていただきます。
初めに、今回の改正は、本日お話しいたします実体法のテーマにつきましては大きく分けまして二つのことが目的とされています。
一つは、処罰範囲の明確化のため、性犯罪の基本部分である強制わいせつ罪、強制性交等罪の成立要件を改めることです。現行法は、百七十六条、百七十七条で暴行、脅迫を手段とし、百七十八条で心神喪失、抗拒不能にさせ、あるいはそれらに乗じて性的行為を行うことを処罰しております。この点の規定ぶりを大きく改め、八つの例示の困難事由を定め、それによって同意しない意思の形成、表明、全うを困難な状態に被害者を置いて性的行為をすることを処罰する規定となっております。
また、もう一つの目的は、性犯罪の被害にさらされやすい、また、被害に遭った場合には非常に重大な影響を受ける若年者に対する性的保護の強化です。こちらは二つの改正が該当し、一つは、現在十三歳と規定されておりますいわゆる性交同意年齢を十六歳へ引き上げるものです。もう一つは、いわゆるグルーミング、懐柔行為を新たに犯罪として新設することです。
処罰範囲の変化という観点から申しますと、前者は、基本的に現行法の処罰範囲を維持することとなりますが、後者は処罰範囲を強化、拡張することとなります。そうしますと、新たな処罰範囲を設定するという場合には、そこから誤った処罰や行き過ぎた処罰が生じないように慎重に検討を行うという視点も必要となります。刑事処罰という強い手段で介入し、捜査や裁判の実績のない行為を処罰対象として取り上げることになるからです。
以上のような理解からしますと、一つ目の性犯罪の基本部分の改正は、これまでの処罰可能であった行為をより明確に処罰の実態を明らかにし、捜査、訴追、裁判でのばらつきがなくなるようにすることが重要となります。それに対して、新たな処罰の設定は、狙いとする処罰目的を達成する明確な規定を説得的な理論的根拠に基づいて設けつつ、誤った処罰や行き過ぎた処罰が生じないように配慮することも重要となります。
以下では、改正案の具体的部分につき、まず不同意性交等罪からお話ししたいと思います。
前提として、従来の規定においてなぜ不明確性やばらつきが生じたのかという点を考えますと、三つの要因が考えられます。
一つは、百七十六条、百七十七条の暴行、脅迫に解釈上、程度が要求され、その程度の理解につき振れ幅が大きかったこと。二つ目は、百七十八条、心神喪失や抗拒不能は、その言葉だけ見ると全く何もできない状態を意味しているようにも思われますが、そうではなく、暴行、脅迫以外により、抗拒が困難となる場合にも積極的に成立を認める裁判例も複数ありました。しかし、その理解が十分に共有されていませんでした。三つ目として、以上のとおり、現行百七十八条による積極的処罰の余地は十分にあったのですが、百七十六条、百七十七条が原則で、百七十八条はやや例外的に適用する場合とのイメージが持たれていたこと。これらが見通しの悪さや、ばらつきをもたらしていたのではないかと個人的には考えております。
そのような観点から改正案を見ますと、八つの困難事由について、程度を要求することなく、従来の裁判例で認められていた類型や、心理学、精神医学の知見から同等の事態が想定されるような類型、それを取り出し、定めている点が注目されます。その上で、改正案は、それら困難事由により、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態での性的行為の処罰を定めており、意思決定、実現のプロセスに着目しつつ、性犯罪としての法益侵害の実態である意に反した同意のない性交が処罰されるものとなっております。また、現行の百七十八条に当たる事由も統合して規定することで、いずれかが原則、例外という関係にあるものではないということが明らかにされているのかと思います。
従来、明確性に欠け、ばらつきをもたらしていた原因が除かれ、より適切な規定となっているものと思います。これにより、社会一般に、こういう場合は性的行為をしては駄目だ、あるいはこういう場合には十分に相手の意思を確認しないとまずいなというようなことが普及し、行為規範として機能することも期待できます。さらに、捜査、訴追、裁判に関わる法律専門家の間でも理解の共有が進み、判断の振れ幅が小さくなるのではないかと思います。
本改正では、以上の基本部分の改正に関係し、次の三つの指摘すべき事項があります。
一つ目は、欺罔、誤信による場合の処罰規定です。従来、現行百七十八条、準強制性交等で処罰されていた性的自己決定の前提となる基本的事項の欺罔、誤信について、他の性犯罪と同等の侵害性を有すると考えて規定されたものです。欺罔、誤信がある場合の全てを処罰するのは行き過ぎとも思われますことから、このような規定となっているものと思われます。
二つ目は、婚姻関係の有無にかかわらずと規定したところで現在の一般的な理解を確認し、性犯罪の法解釈としては、婚姻関係によりそれを左右する余地は全くないということを明確化しております。
三つ目は、この点のみ処罰の強化に当たるものですが、性交等の中に陰茎以外のいわゆる異物挿入を加え、現行百七十六条の強制わいせつに当たる行為をより重い百七十七条に当たる行為であると規定しております。この点は、性犯罪被害実態という面で、膣、肛門の場合には挿入されるものによって被害は変わらないという理解から変更したものと理解しております。
次に、若年者保護の強化についてお話ししたいと思います。
若年者の性的保護を強化すべきであり、そのための処罰規定を強化、拡張すべきであるという点については大方の一致があり、異論はないところです。被害が重大で、長期に人生を及ぼすこと、加害に対して特に脆弱であること、それが理由となります。そのような共通理解から、性交同意年齢の引上げによる処罰の強化、懐柔行為の処罰規定の新設が改正案に含まれております。
まず、性交同意年齢の引上げについて、従来は十三歳が基準で、その年齢未満の者は性的行為の意味を理解できないと解されることから性的行為から絶対的保護をされておりました。しかし、この点は若年者の能力を十分に理解しないもので、年齢的に低過ぎるのではないかとの批判もあったところです。そこで、性的行為に関する能力をより立ち入って分析をし、従来言われていた性的意味の理解能力だけではなく、性的行為が将来にわたって自己に及ぼす影響を理解する能力、性的行為に直面した際それに的確に対処する能力なども重要であり、それがある程度備わり発揮できるのは十六歳程度であろうということで、今回の改正案となっております。
ただ、他方で、十六歳未満であるとはいえ、近い年齢の者同士の性的行為を全て処罰してしまってよいのかという懸念も共有されていたところです。そこで、先ほどの能力の分析から、年齢が大きく離れていなければ直ちに対処不能となるものではなく、性的行為に関するイエス、ノー、希望を表明し対応することも可能な場合があるのではないか、それが含まれるような年齢差の場合には処罰から除外すべきではないかと考えられたところです。
その検討の際には、改正案と異なり、対処能力が足りないことに乗じたなどの実質要件を加えるべきではないかという議論、五歳差は年齢差として大き過ぎるので三歳差とすべきではないかという議論もあったところです。難しい問題ですが、本規定は、困難事由や同意しない意思の形成等の困難化の認定を要することなく、一律に処罰をする規定と理解されます。そうしますと、実質的判断を入れるのは規定の趣旨に反するということから、実質要件は入っておりません。
他方で、三歳差では、例外なく年齢差により同意しない意思の形成等が困難になる性的自己決定の侵害があると言えないのではないか、それも規定の趣旨に沿わないのではないかということから、五歳差の案となりました。この点は、年齢という形式判断のみによる処罰強化を及ぼす範囲を理論的に問題がない範囲に限定し、若年者同士の性的行為に配慮をしたものと理解しているところです。
もちろん、この点は、五歳差がなければ対等であるという趣旨ではなく、一歳差、同年齢であったとしても、百七十六条や百七十七条の困難事由である社会的地位利用などによって、若年者の脆弱性を十分に踏まえつつ、個別に判断されるべきこととなります。
最後に、懐柔行為についてお話し申し上げます。
この規定は、これまで全く存在しなかったもので、若年者の性的自由が侵害された後に処罰することと同等かそれ以上に未然に防ぐことが重要であるという理解に基づくものです。特に、いわゆるグルーミングと呼ばれ、大人が若年者と信頼関係を築き、あるいは恋愛関係にあると信じ込ませる等して関係性をコントロールして、望ましくない性的行為に至るような事態を防ぐことが重要と考えられました。
もっとも、それをそのまま条文化することが難しいことも課題でした。大人と若年者が日常的にコミュニケーションを取ること自体、あるいは信頼関係を築くこと自体は禁ずべきことではありません。性的目的でそれらが行われた場合に処罰をする考え方もあり得ますが、そうしますと、処罰の可否が専ら行為者の内心に依存することとなり、明確性と安定性に問題が生じ得ます。
そのような考慮から、改正案百八十二条は、一号で威迫、偽計等による、二号で拒まれたにもかかわらず反復して、三号で利益供与等によるという手段を定め、面会要求をすることを処罰しております。不当な手段を用いて意思決定を左右することを定め、かつ、会うことで性的被害の危険が飛躍的に拡大することから、それを要求する行為を処罰する形になっております。これにより、外形的、客観的に処罰すべき行為が明確となり、誤った処罰や行き過ぎた処罰となることを慎重に防ぎつつ、若年者が性的被害に遭わない性的保護状態という法益を守ろうとする規定になっております。
以上のとおり、処罰の明確化や処罰の強化、拡張が必要であるという大筋の共通の理解を共有しつつ、その範囲につき誤った処罰や行き過ぎた処罰に至らないように慎重に考える意見も踏まえた法制審議会の要綱及びそれに基づく改正案であるというふうに考えます。刑法研究者として、性犯罪の処罰範囲の明確化、若年者の性的保護を大きく前進させるものと積極的に評価をしております。
私からの意見は以上でございます。御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/15
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016・杉久武
○委員長(杉久武君) ありがとうございました。
次に、斉藤参考人にお願いいたします。斉藤参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/16
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017・斉藤章佳
○参考人(斉藤章佳君) おはようございます。大船榎本クリニックの斉藤といいます。
私は、榎本クリニックという依存症の専門医療機関で現場のソーシャルワーカーとして働いております。
現在、榎本クリニックは都内に六か所、あと鎌倉市に一か所、計七か所あります。規模としては、アジア最大規模の依存症の専門医療機関と言われています。私自身は、そこに約二十年間勤める中で、様々なアディクション問題、いわゆる依存症の問題に関わりながら、約十六年前から性加害を繰り返す方の再犯防止プログラムを日本で初めて社会内処遇の枠組みでクリニック内でスタートし、現在、昨年の三月末までに二千五百名を超える性犯罪加害者の再犯防止プログラムに関わってまいりました。恐らく、人数でいうと、一番日本で性犯罪加害者に会っている専門家というふうに言えるんではないかと思います。
そういうバックグラウンドを持ち、今日私ここに座っているわけですが、最初、被害者支援団体の方から今日このような会があるということで是非出てほしいと打診を受けたときに、私は捕まった側の再犯防止プログラムをやっておりますので、果たして私がここで話す意義があるんだろうかというふうに思ったんですが、その方から、是非今日参加される方々に子供への性加害者の実態をしっかりと知ってもらうということと、是非加害者目線で見た刑法改正の意義ということを話してもらいたいという非常に大きなテーマをいただきました。
果たして十五分でそのテーマにしっかりと応えられるか、少し自信はないんですけれども、私は現場の人間ですので、現場の中で見てきた、つまり二千五百名の加害者を見てきた中で積み重ねた知見を通して、今日少しお話しできればと思います。
大きく分けると、今日のお話のテーマは三つになります。
一つは、子供に対する性加害者の実態についてです。日本ではまだまだこの分野に関する研究がほとんどありません。なぜなら、彼らはなかなか臨床の現場に出てこないからです。ですから、データも非常に少ないというのが現状です。その中で見えてきた実態についてお話しできればと思います。二つ目は、加害者視点から見た公訴時効の延長についての視点になります。三つ目は、先ほど島岡先生おっしゃりました加害者のプログラムについてのお話をしたいと思います。
では、青いパワーポイントのスライドの資料と、二〇二二年八月三十一日付け朝刊の朝日新聞の記事を参考に進めていきたいと思います。朝日新聞の記事は最後のページに恐らくあるかと思います。
まず、二枚目のスライドです。
私自身は社会内で性犯罪の再犯防止プログラムにも携わっておりますが、実は刑事施設でも、つまり受刑中の方へのプログラムの提供やスーパーバイズなんかも行っています。
これは、某、ある累犯の刑務所での性犯罪のプログラム参加者の実際の生の声です。実は、このような類いの声を私たくさん聞いてまいりました。先生、俺このまま刑務所から出たくないよ、また絶対に小さい子をやってしまうの分かってるから。つまり、刑務所から出ずにずっと刑務所内で過ごしたいと。その理由としては、また再犯するのは分かっているという切実なメッセージでした。
実は、私、このメッセージは日本の刑事司法の問題が凝縮されたメッセージだというふうに感じています。性犯罪の問題は、どうしても、逮捕、起訴、勾留、そして判決が出るまでは非常にメディアも盛り上がりますが、実は、その後の受刑、そして出所、そして出所後のコミュニティーへの再統合、そして就労、そして再犯せずにどう生きていくかというのが、実はこの加害者臨床と言われる中で非常に重要なポイントになります。
ですから、彼のメッセージというのは、つまり、出所後、野放しで、どこにもつながれる場所がなく、最終的に再犯するという選択で再びまた刑務所に戻るしかないと、このような満期出所者の非常に厳しい現状を表したメッセージだというふうに感じています。
実は、子供性加害者の当クリニックでのヒアリング調査、百十七名の調査によると、初めての加害行為から専門治療につながるまでの平均の年数は十四年というふうに出ています。つまり、十四年の間にかなりの数の被害者を出しているということになります。
なぜ十四年掛かるのか。例えば痴漢の場合は八年、盗撮の場合は七・二年というデータが出ています。それよりも、この子供性加害者の場合は十四年掛かっているわけです。もちろん痴漢や盗撮に比べて母数のデータはちょっと少ないんですけれども、約倍ぐらいの期間が掛かっています。これは、彼らが泣き寝入りしそうな、そして訴え出なさそうな、特に小学校一年生から三年生を主に狙っている加害行為を繰り返している人たちだからです。つまり、子供は性被害を受けているとき何をされているか分からないから。
彼らの中には、実は男児を狙う者が非常に多いです。これ、理由は、同性愛者ではなくて、女児よりも男児の方が声を上げにくいと知っているからです。昨今、某芸能事務所の男児への性加害の問題がメディアで出ておりますが、実は加害者というのは、自分が逮捕されないために、この問題行動を続けるために何が一番選択として正しいのかを知っているわけです。そのために男児を狙うという加害者が実は結構多いという事実が余り知られていないなというふうに感じます。
次のスライド行きたいと思います。
子供性加害の実態ですが、一つ目は、これは実際のプログラムを受けている当事者の言葉です。その常習性と衝動性は他の性倒錯の群を抜いている、好みの子供を見ると、まるでそれに吸い込まれるように近づいてしまうんだ、このような発言はよくプログラムの中で見られます。
有名な研究で、少し古いんですが、アメリカのジョナサン・エイブルの研究では、未治療の性犯罪者が生涯に出す被害者は平均三百八十人であり、延べ五百十八回の加害行為に及ぶと言われています。これは子供性加害だけではなくて、あらゆる性暴力を含むアメリカの研究です。
私、刑務所等のプログラムで必ずこのデータを出すんですが、先ほどの刑務所から出たくないと言った方のグループでこの話をしたときに、たまたまそのグループは五人参加していて、三人が子供性加害の受刑者だったんです。累犯です。皆さん刑務所に五、六回は入っている方々です。このデータを見て彼らの一人が、私はその三倍はやってきましたと言いました。私はやっぱりびっくりしまして、ほかの方の顔を見たら、ほかの方もうなずいていました。実は、この子供性加害の問題、これだけの現象を見て確定的なことは言えませんが、非常に暗数が多く、そしてその背景には何十人、何百人という被害者がいるんだなというふうに現場で実感いたしました。
法務総合研究所の調査、これも少し古いですが、子供への性犯罪前科二回以上の者の再犯率は八四・六%と言われています。これ、ちょっと母数が少ないのでもう少し母数取った方がいいと思うんですが、現場でこれは私自身が感じている実感と非常にシンクロします。
次のスライド行きたいと思います。
これは、実際に子供性加害を繰り返した方が当院の再犯防止プログラムにつながる際に、診断名として小児性愛障害という診断が付くケースが多いです。実際に子供に性的な関心を持つ人は、男性では人口の五%、女性では大体一%から三%と言われています。その対象は同性、異性どちらもあります。
実際に、私は今女性のペドフィリアの加害者の治療に当たっています。初めて私も女性のペドフィリアの加害者に出会ったんですけど、現場で。ただ、多くは加害者は男性です。そして、被害者は女児もいれば男児もいるということは言えると思います。
小児性愛障害のタイプとしては、純粋型と混合型二つに分かれます。純粋型は十三歳未満の児童のみが対象です。混合型は十三歳未満も、それ以上、成人も対象としています。当院の百十七名のデータでは、約一割が純粋型、そして残りの九割は混合型でした。
あと、小児性愛障害を診る上での留意点として、これ臨床的なところで重要なポイントとして挙げておきました。児童への性的嗜好は、必ずしも直接的な加害行為を含むわけではありません。実際に児童への性交を想起しながらも、生涯加害行為を実行に移さない人も一定数存在します。
また、セクシュアリティーの複雑さというのも実は余り知られていません。小児性愛障害の方のセクシュアリティーの複雑さということで、今回、キッズライン事件と言われる事件の朝日新聞の記事を持ってきました。私、この方の担当を今もずっとしているんですが、この方に関しては、成人の男性、女性も性対象ではなく、児童に関しても、女児は対象ではなく男児のみ性対象という方です。ほかにもこういう方がいらっしゃいました。成人の場合は男女とも性対象だが、児童の場合は男児のみ性対象で女児は性対象ではないと。
このように非常に複雑なセクシュアリティーを持った加害当事者がいますので、初診のときには必ずその方のセクシュアリティーを確認するようにしています。
次のスライド行きたいと思います。
実際に彼らが見ている世界というのはどういう世界なんだろうかというのを少しまとめてみました。
今回、刑法改正の中で、不同意性交等罪ということで、同意という言葉が入ったのは私も非常に画期的だなと思います。
彼らの考える同意の概念、どういうものでしょうか。彼らの考える同意というのは、自分の行為は、これ、行為というのは加害行為です、受け入れられて当然であるという認知のゆがみに支えられています。つまり、子供は無条件に自分を受け入れてくれているという中で、加害者自身は承認欲求を満たしています。実際に、純愛幻想、飼育欲、支配感情という三つの特徴がありますので、そちらは目を通していただければと思います。
よく彼らはかわいいという言葉を使います。このかわいいは、我々の子供に感じるかわいいとは質的に異なります。その背景にある言葉は、相手を絶対に脅かさないという保証がそこに含まれています。だから、彼らは子供をかわいいというふうに感じるわけです。
彼らの同意というのは、支配、被支配の中で成立するものです。ですから、この法律の中に不同意性交罪、この同意という概念が入ったことによって、彼ら自身も治療の中でこの同意の概念をアップデートしていく大きなきっかけになりますので、是非この名前で法律ができるということを私は強く望んでいます。
最後のまとめです。性犯罪の再犯防止に重要な視点として幾つか挙げました。
一つは、やはり刑罰や監視によるアプローチというのはもう限界が来ています。先ほども申し上げたとおり、過去に二回以上子供に性犯罪で逮捕されている人の再犯率は八六%でした。刑罰だけでは防げないというのがもう目に見えております。ですから、やはり医療モデル、教育モデル、社会福祉モデルを統合的に加えたアプローチを普遍化していくことが重要だと思います。
そして、一つ気を付けないといけないのは、これは我々自戒を込めてですが、医療機関でこういうプログラムをやっている以上、診断名が付きます。そのことによって過剰に病理化してしまうことは、本人の行為責任を隠蔽してしまう機能があります。彼らは交番の前ではやりません。ですから、非常に選択的な行動と言えます。ですから、この辺の行為責任と疾病の部分、しっかり分けて考える必要があります。
そして三番目は、関わる支援者が子供への性暴力に対する正しい知識と認識を持つことも大事だと思います。昨今から出ています男児も性被害の対象になることや、カミングアウトにはやはりそれ相応の時間が掛かります。ですから、この辺りもしっかりともう世間一般の常識として知ってもらいたいですし、グルーミングという言葉に関しても是非多くの人が知ってもらいたい言葉だなと思います。
最後になりますが、性犯罪に関しての一次予防、二次予防、三次予防というふうにまとめました。
一次予防は、先ほどから出ています啓発、そしてやはり性教育です。
包括的な性教育の重要性というのは、私もこのプログラムを通して感じています。実は、昨年の九月から、我々の加害者のプログラムで性教育のプログラムを始めました。実際に助産師の櫻井裕子先生に来ていただいて、月一回ではあるんですが、性教育、学校で受けるような性教育のプログラムを行っています。これ非常に参加者に好評で、こういうことをもっと早く知っていたかったと加害当事者が言っています。ですから、この包括的性教育を幼少期からしっかり学ぶということの重要性は当事者も声を上げているということを知っていただきたいと思います。
あと、二次予防に関しては、早期発見、早期治療。先ほど、初めての加害行為から専門治療につながるまでかなりの期間を要しています。この辺りは刑事手続も含めて早い段階で治療につながっていくようなシステムの構築が重要だと思います。
最後は、再発防止です。これは今我々が取り組んでいるプログラムになります。まだまだ少ないので、もう少し増えていくといいなと思います。
最後ですが、今回の資料から引用したデータ等は、こちらの「「小児性愛」という病―それは、愛ではない」という本の中に書いてあります。もう少し詳しくデータとかまとめたものがこの本の中には集積されていますし、実は加害者自身も過去に小児期の逆境体験を多く経験しています。つまり、彼らも過去被害者だった経験があるわけです。このような被害と加害の負のサイクルを断ち切るためにも、我々がやっている加害者臨床の意義というのは非常に大きいなというふうに感じています。
御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/17
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018・杉久武
○委員長(杉久武君) ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/18
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019・加田裕之
○加田裕之君 自由民主党の加田裕之でございます。
本日は、四名の参考人の先生方から本当に現場に即した中での御意見いただきましたことに感謝、御礼申し上げたいと思います。
まず、小西参考人にお伺いしたいと思います。
私も兵庫県ですので、先生が県立こころのケアセンターの外部評価委員していただいておりますことに感謝申し上げます。
実際、今回ちょっと私がお伺いしたいのは、障害の特性を踏まえた性犯罪の創設の必要性についてなんですけれども、小西参考人は、様々な研究、そしてまた先ほど言いましたいろいろな機関の委員もされておりましたり、いろいろな方の研究も長年されているんですが、被害者の方に障害がある場合なんですけれども、健常者とやはり異なる困難を抱えることになると思います。その点について、どのような形の困難さというものがあるのかということについて、現場の経験からお伺いできればと思います。よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/19
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020・小西聖子
○参考人(小西聖子君) お答えします。
ちょっとまとまったお答えできるかどうか分かりませんが、障害といった場合に、多岐にわたるわけですね。例えば、身体障害もあれば、精神障害もあれば、それから知的障害ということもこの性犯罪の被害ということについては結構関わってくると思います。それぞれが、今回の法案に沿って言えば、意思のその形成、まあ認識のところですね、そこで、例えば年齢が成人に達していてもこれが被害だと分からないというようなこともあれば、あるいは、全うのところで、同意しないことは思っていても何も表出ができなかったというようなこともあるわけで、法に述べてある三段階の中の様々なところで引っかかってくると思います。
今日、私が述べたその性的虐待の被害者の場合も、これまあPTSDだけではなく、障害名として言うのであれば解離だとか、あるいは、中にはこういう被害を受けていることでもう精神障害が出ているような方もいらっしゃいますので、そういうときには、更に、その同意の意思の形成、表明、全うですかね、その三つの様々なところでできなくなる。だから、全体的な言葉で言えば脆弱であると言えますけど、済みません、個別で本当にケースによって違いますので、そこを評価することが必要だというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/20
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021・加田裕之
○加田裕之君 ありがとうございます。
続いて、次、斉藤参考人にお伺いしたいと思います。
本当に、加害者視点という形でということで、私も事前に資料を読ませてもらいまして、本当になかなか聞くケースがない中でのお話だったので、大変参考になりました。
そうした中におきまして、先ほど言いました複雑なセクシュアリティーの中でいろいろなケースが想定ということで、組合せみたいにお話があったんですけど、その中で、また障害のある性犯罪被害ということについて、その要素が入りましたときにまたより一層複雑化すると思うんです。
実際、斉藤参考人から見て、加害者側ですね、被害者の障害を知り得る立場にある性被害という部分についての特徴とか事例について、ありましたら教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/21
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022・斉藤章佳
○参考人(斉藤章佳君) ありがとうございます。
加害者が被害者に障害があるということを知っている場合の加害者の特性ということでよろしいでしょうか。
私も様々な加害者を見てきましたが、基本的に彼らがターゲットとするのは加害行為を達成しやすいかどうかが基準になりますので、そういう意味では、例えば軽度知的障害や発達障害を持つような児童はターゲットとされやすいというふうに言えると思います。
そういう場合は、やはり教職員の加害者の方なんかは、そういうケースで加害行為を行って我々のところに来る方もいらっしゃいますし、非常に子供に関わる職業を選択している方の中にも小児性愛障害の当事者の方いらっしゃるので、そこの辺りというのは少し何か配慮が必要なのかなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/22
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023・加田裕之
○加田裕之君 ありがとうございます。
やはりそういう部分で、実際、声を上げにくいところを巧妙に狙ってやってくるということがあります。先ほど斉藤参考人がおっしゃいましたように、教職員の方とか、本来であれば一番守る立場である保育される方とか、キャンプの指導員とか、そういう方の立場がそういう形になるということで、これをどういう形で、もちろんですけど、ぱっと見る、一見すれば分かりにくいんですが、どうすればこれはちょっと分かるようになるのか。特徴的とかそういう部分についての見解がありましたら、ちょっと再度教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/23
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024・斉藤章佳
○参考人(斉藤章佳君) 当院のデータでは、初診時、教職関係、子供に関わる仕事に就いていた方の全体のパーセンテージで一五%でした。ただ、事件によって職をなくしている方も来ているので、そういう方も含めると約三割、全体の三割が子供に何かしらの教育的な立場で関わっていた方々でした。
ですから、今おっしゃったように、どこの辺りまで、例えば加害者のことをデータベース化するにしても、今回のキッズラインで起きた事件に関して見ても、実はマッチングアプリで起きた事件の件数よりも圧倒的に多いのは、キャンプ場とか親が夏休みに子供に自主的に参加させたいというような、そういう中で起きているケースが結構多いので、どこまでを規制していくか、データベース化していくかというのは非常に範囲が難しいなというふうに感じています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/24
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025・加田裕之
○加田裕之君 ありがとうございます。実際、この範囲というものと、またデータベース化の部分についても、またこれも我々も考えていきたいと思います。
次に、嶋矢参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、現行刑法が、被害者に障害のある場合、心神喪失として扱っていることの限界についてなんですけれども、その点について嶋矢参考人に御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/25
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026・嶋矢貴之
○参考人(嶋矢貴之君) ありがとうございます。
現行刑法の心神喪失についてということですね。
行為者が心神喪失である場合には、責任能力を欠き、処罰されないということになります。心神喪失につきましては、精神の障害により、是非弁別の能力あるいは行動制御能力いずれかについて著しい障害があるという場合に責任能力がないというふうに考えられて処罰をされないということになり、先ほど申し述べました二つの能力が減弱している場合には、心神耗弱ということで処罰が減軽されるという取扱いになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/26
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027・加田裕之
○加田裕之君 ありがとうございます。
次に、島岡参考人にお伺いしたいんですけれども、フランスの事例の方が最後に言われていたんですけれども、フランス刑法におけます被害者に障害がある場合の取扱いということについての今の現状というものについて教えていただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/27
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028・島岡まな
○参考人(島岡まな君) 御質問ありがとうございます。
フランス刑法は、暴行、脅迫、強制、不意打ちが行為要件になっておりまして、そこで実質的に性犯罪の成立を検討します。そして、障害がある場合とか、脆弱性ですね、障害だけじゃなくて妊娠なども入るんですが、身体障害、精神障害、あるいは性別とか様々な要件が入っていまして、そちらの脆弱性が認められた場合は行為者に刑罰が加重されるという方向で規定になっていますので、今回の日本の規定とは少し違っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/28
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029・加田裕之
○加田裕之君 それで、再度お伺いしたいんですけど、やはりこの部分について、日本という、今回もちろん改正、我々もやっていくんですが、今後のその課題点ということについて、フランスとの比較という部分について、もちろん今はこの部分についての改正案の議論ではあるんですけど、今後のこれからの課題ということについては、先生の御見解をお伺いできたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/29
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030・島岡まな
○参考人(島岡まな君) ありがとうございます。
評価と課題については先ほどの意見陳述で述べたとおりなんです。それで、フランス刑法は、今申し上げたように、かなり広く、処罰範囲が広い規定が一九九二年からあったものですから、私は今までずっと、フランスの方が進んでいる進んでいるというふうにずっと申し上げてきたんです。ところが、四月にボルドー大学に客員教授で参りまして、この新しい改正法案を、ほやほやのを紹介しましたところ、もう大学院生がとってもびっくりしていまして、日本はすごい進みましたねと、これではフランスが追い越されてしまいますねというふうに評価されたんですね。
ですから、今のところは課題もあるかと思うんですが、先ほど申し上げたような、それよりも、是非この新しい改正法案を通していただければと思っております。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/30
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031・加田裕之
○加田裕之君 以上で終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/31
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032・福島みずほ
○福島みずほ君 立憲・社民の福島みずほです。
今日は、四人の参考人の皆さん、今までの長年の研究、仕事、取組、本当に敬意を表します。そして、今日いろいろ、非常に私たちにいろんなことを教えてくださって、心から感謝をしております。
小西参考人は、私がセクシュアルハラスメントの裁判やるときに原告のカウンセリングをしていただいて、本当に感謝しています。法律家が見えないこと、分からないこと、やれないことが本当にたくさんあるというふうにも思っております。ありがとうございます。
今回、不同意性交罪や性交同意年齢の引上げ、このことは本当に必要であり、ノー・ミーンズ・ノーというのが、何とかこれを刑法にどう位置付けるかということでいろんな議論があり、今回提案に至ったことは心から歓迎します。今回の改正案には本当に賛成です。
その上で、今回の百七十六条ですが、まさにその明確性とばらつきをなくす、それからどうするというところの、本当にそのノー・ミーンズ・ノーをどう法案にするかという、非常に、苦肉じゃないけれども、すごく努力をされたんだと思います。
それで、刑法を習ったときに、一番初めにやっぱり罪刑法定主義、憲法三十一条に基づく罪刑法定主義、明確性、類推適用の禁止というのがまずイの一番にたたき込まれるわけで、今回その百七十六条が八項目あり、かつ地位利用などが入っているので、逆にこういうことについて気を付けるというか、十分配慮して同意をちゃんとあるようにというふうに世の中がなるようにと、こう思っているんですが、ただ、刑法って割とやっぱり明確性が必要で、人を殺したる者は、他人の物を窃取したる者はと明快なのが、ちょっとそのセクシュアルハラスメントガイドラインではないけれど、分かりやすい面とどうなっていくのかという若干ちょっと不安な面と正直あるんですね。
この百七十六条に類する行為というのがあって、これ類推適用になったりすると、これまた本当に問題ではないかと思い、この点について、島岡参考人、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/32
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033・島岡まな
○参考人(島岡まな君) 御質問ありがとうございます。
御質問の趣旨は重々承知しております。ただ、嶋矢参考人も御発言なさったんですが、今まで認められていたものをここにもっと分かりやすく、それでもまだばらつきがあったので、むしろ明確性を担保するためにこの八類型を規定したという理解でありますので、そして、確かにこれだけでは言い切れないところをこれに類する行為というふうに包括的なものとして入れましたけれども、その後に一番大事なのが同意の形成、表明、全うが困難である状態であったという、この要件が一番重要なものがあるわけですから、そこで類推適用ということはなく、ここでしっかりとその要件に当たるかどうかを厳格解釈されるものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/33
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034・福島みずほ
○福島みずほ君 ありがとうございます。
今日は、性教育、包括的性教育の必要性ということをそれぞれおっしゃったんですが、確かに代表質問に対する文部科学大臣の答弁は、本当にちょっと、正直私ももっと踏み込んでほしいというふうに思いました。
小西参考人、それから島岡参考人、それから斉藤参考人に、この性教育はどうあるべきかということについて、私は、性暴力の被害者、加害者、傍観者にならないということも必要だし、性の権利ということも必要であると。人生においてどういう自分が性的な関係を人と持つかということに伴う性の権利ということも必要だし、何にも教えられない状況は良くないと思っているんですね。
とりわけ、斉藤参考人、先ほどもちょっと性教育おっしゃいましたが、どういう性教育をすれば、先ほど加害者の人がこんな性教育早く受けたかったとおっしゃったとおっしゃいましたので、どういうことをすれば本当に、本当にいいのかと思いますので、それぞれ性教育の今後の在り方について、小西参考人、島岡参考人、斉藤参考人、教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/34
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035・杉久武
○委員長(杉久武君) では、まず小西参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/35
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036・小西聖子
○参考人(小西聖子君) 性教育については、要するに多角的、要するにここの場での子供に必要な伝達すべき情報は何かということから考えると、いわゆる狭義の性教育ではなくて、様々な面での教育が必要だと考えております。それは今先生が言われたこととほぼ共通しているかもしれません。
例えば、それは、その権利の問題でもありますよね、人権の問題でもある。それからもう一つ、体を触ってきたり、悪意を持って近づく人がいることもやっぱり事実として知っていく必要がある。それからもう一つ、じゃ、自分がどうやってこれは被害なんだと気付けるか。身を守る、よく水着で隠れるところは大事なところだから触っちゃいけないというような言い方で教えるということがありますけれども、実際上、防犯といいますか、被害を防止するためにどうすればいいかということも必要ですよね。それらを統合するところで、ある年齢からはやっぱり性そのものについても教えていく必要があります。
だから、発達上、それから様々なところからの角度から教育をしていく必要があるというのが私が思っていることです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/36
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037・杉久武
○委員長(杉久武君) 続いて、島岡参考人、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/37
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038・島岡まな
○参考人(島岡まな君) ありがとうございます。
もう私の資料の三ページに、ジェンダー平等意識を促す包括的性教育というふうなことでどういうことが必要かというふうに書きましたので、ここに書いてあるとおり、対等なジェンダー平等教育を醸成したり、おっしゃったようなセクシュアル・リプロダクティブヘルス・ライツ、権利をきちんと教えたりということが非常に重要かと思っております。
それで、またエピソードを一つ御紹介したいのですが、私、一九九〇年に初めてフランスに留学しましたけれども、三十三年も前ですが、大学院、グルノーブル大学というところへ行って、授業の前に健康診断を受けたんですけれども、そこで女性の医師さんが最初に言ったのが、あなた、ピルはちゃんと使っていますよねという一言だったんですね。もう衝撃を受けまして、三十三年前ですから、見たこともありませんと言ったら、どんな後進国から来たんですかというふうな目で見られまして、あなた、その年齢で自分の身は自分で守れなくてどうするの、すぐ行きなさいと言って、無料でそこでもう配布してくれるアソシエーションがありましたので、そこに行って、もらった覚えがあるんですね。
そのぐらいフランスでは、五歳から妊娠の経過を教え、それからずっと対等な関係を教え、中高になったら避妊教育をしっかり教え、ピルをちゃんと飲むように指導するというふうな、もうそういうシステマチックな性教育が行われているということをちょっと御紹介させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/38
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039・杉久武
○委員長(杉久武君) 続いて、斉藤参考人、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/39
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040・斉藤章佳
○参考人(斉藤章佳君) 御質問ありがとうございました。
昨年の九月からクリニックの方で、月一回、外部の講師を招いて性教育のプログラムをやっております。このプロジェクトのテーマは、性的同意は世界を救うという名前のプロジェクトです。
まだまだ広がりとしてはそんなに大きくないんですが、私自身がこのプログラムを長年やる中で、なぜ性教育、つまりその包括的性教育が必要だなと感じたきっかけは、私、性加害のプログラムは、成人だけじゃなくて少年事件も結構扱っているんですね。少年事件の加害者、いわゆる非行少年に鑑別所等で面会に行くと、彼ら自身が、こんなに大ごとになると思いませんでしたと。相手は自分に好意持っていたと思うし、まさかこんなに大ごとになって、引っ越さないといけないことになったり転校しないといけないことになると思いませんでしたと。
彼ら自身が、自分がやった加害行為によってどういうことになるかの想像力が非常に貧困だったということに加えて、私自身、少年事件ということもあって、性的同意に関するパンフレット等を今大学等で配っているので、そういうものを参考に、まずはその再犯防止のスキルを学ぶよりは性的同意について学んでいこうということで関わりを始めたら、そのセッションが終わる頃にその少年たちが、先生、僕、これを知っていたら、もしかしたら今回の事件しなかったかもしれませんという少年が実は結構いたんですね。
私、この性的同意という言葉、学校でも教えてもらったことないし、親からも聞いたことないし、やっぱり性について自然に覚えるものだと思っていたし、ユーチューブとかティックトックとかいろんなSNSで見て、今回の行為、自分はこんなに相手が傷つくと思っていませんでした、だからこの性的同意という言葉をもっと早く知りたかったですという非行少年の言葉が実はきっかけでした。
それから、去年の九月からプログラムを始めるようになって、実際にプログラムをやる中で、参加者からも、性教育どんなものを受けていましたかという質問に対して、みんな受けていないですね。僕たちの性教育の教科書はAVでしたという答えがほぼ全員でした。もちろんフィクションとノンフィクション分けて彼らも生活はしていましたけど、AVをまねて加害行為する人も中にはいらっしゃいます。
そういうところからも、やはりこの性教育の重要性というのは未成年だけじゃなくて大人も必要ですし、私、このプログラム、実は今週の金曜日、第十回目をやるんですが、今回のテーマは、性加害者における恋愛と結婚というのがテーマです。私、このプログラム、一緒に助産師さんとやりながら、私自身が性教育ちゃんと受けてきていないなということを実感しました。ですから、私も一緒にプログラムで学びながら、彼らと同意の概念をアップデートしていっているというのが現状です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/40
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041・福島みずほ
○福島みずほ君 同意の概念を性的同意も含めて学校で教えれば随分変わるのかなと思いました。
小西参考人にお聞きをいたします。
先ほど、岡崎支部の判決で、実際鑑定書を書かれて、そして、暴行、脅迫、同意がなくても暴行、脅迫がないから無罪ということにどうしても法律家が着目するけれど、それだけではないとおっしゃったわけで、是非そこの、それだけではないという部分をもう少し教えていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/41
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042・小西聖子
○参考人(小西聖子君) この事件で無罪になったということが、法律の雑誌なんか読みますと、その抗拒不能の解釈というところに問題は収れんしていて、そうじゃないことも十分あり得たというふうに書いてあるんですけれども、でも、この人が本当にどういうふうに傷ついていたかということをその一審の関係者が分かっていたとは、記録を見ると、私には思えません。
どっちかというと、被害を受けた人は、そんな泣いたり苦しんだり、そういう状態で人の前には現れないんですね。加害者がいるところでそういうことをしたらどうなるかというと、更にやられる。何でもないというふうにやってこそ、生き延びられるわけです。
そういう形で生き延びてくるからこそ、その虐待の被害を受けた子供というのは、一見何でもなさそうに見える。でも、よく聞いたり症状について調べたりすると、とても傷ついているし、本人が苦痛を感じていたり、とても不利な状況をそのまま甘受したりというようなことがあり、それがまた、今度は加害者の方の行為を招いたりするわけですね。
そういうような被害者の方の脆弱性を増すようないろいろな被害、それから相互作用におけるその問題、そういうようなところは全く捉えられておらず、その虐待の問題ということがとても平面的にというか、形式的にしか扱われていないというのが私の感想です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/42
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043・福島みずほ
○福島みずほ君 島岡参考人にお聞きをします。
性的な姿態を撮影する行為などについてと、グルーミング罪について一言評価を、評価というか、お考えを教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/43
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044・島岡まな
○参考人(島岡まな君) ありがとうございます。
先ほども本当に一言申し上げたんですけれども、まず、グルーミング罪の新設は、先ほども申し上げましたけど、性的搾取が横行しており、未成年者が非常に、弱者である未成年者が十分保護されていない現状がありますので、これらをきちんと刑法典の中に、何というんですかね、こういう行為はしてはいけないんだというしっかりと規範として入れることには、私は評価しております。要件もそんなに、何というんですか、無制限に広がらないようにきちんと考えられているのではないかと思っております。
それから、性的な姿態、撮影等の法律ですが、こちらもやはり繰り返しになりますが、やはり自治体の条例等で盗撮が規定されていますと、例えば有名なもので、飛行機の中でスチュワーデスの盗撮が、どこの、上空では何県か分からないということで結局条例が適用できなかったというニュースもありましたので、このようにきちんと全国に適用される法律で、特別法で規定されたということには、規定されそうだということには非常に評価しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/44
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045・福島みずほ
○福島みずほ君 どうも本当にありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/45
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046・佐々木さやか
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。
今日は、参考人の皆様、大変貴重な御意見をいただき、また、私も非常に改めて勉強をさせていただいております。
最初に、小西参考人にお聞きしようと思うんですが、今日改めてお話をいただいた被害者の被害時の心理のこと、改めて、やはり徹底的に抵抗する人は臨床でもほとんど見たことがないと、こういったお話をいただいたわけであります。
この事実というのは、おっしゃるとおり、本当に残念ながら、裁判所若しくは司法関係者にはこれまで認識されてこなかったと思います。司法試験でも出ませんし、その後の司法研修所の修習でもこういったことは一切勉強いたしませんし、その後、最近ですね、恐らく、裁判所においてこういったことも裁判官に、これは任意だと思いますけれども、研修をしていただくような機会も出てきたと。
こういったことというのは、小西参考人始め関係者の皆様、それから何よりやっぱり被害当事者の方々が声を上げて、当時の心理というのはこういうものなんだということを表に声を上げていただくようになった前回の改正以降、本当にこの流れがあって初めて、残念ながらといいますか、認識され始めたのはいいことなんですけれども、これまでは本当に認識されてこなかったなというふうに思っています。
ですので、今回の改正を踏まえて、よりこのことについてしっかり司法関係者、そして国民、広く認識をして、そして性的同意ということについてしっかり啓発、教育をしていくと、これが本当に今改正の肝であるなというふうに私自身も思っております。
それで、まずちょっと小西参考人にお聞きしたいのが、今申し上げた、この裁判官へのやっぱり研修、恐らく昔よりは良くなってきたんじゃないかなとは思うんですけれども、私が法務省じゃなくて最高裁に聞きましたら、一応、高裁管轄で、任意でこういう研修があるということを裁判官に声掛けをして、ほかに予定がなかったら行くというような形での研修は実施されていると聞いておりましたけれども、やはりしっかりもう必須のものとして、事実認定を行う上でやっぱりこういった被害者の心理状態というのは本当に必ず理解していただかないといけませんので、裁判所、それから検察官、警察、特にやはりこの関係者への研修ということについて御存じのこととか、問題点とか課題とか、現状、何かございましたら是非教えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/46
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047・小西聖子
○参考人(小西聖子君) そうです。例えば、裁判官向けの司法研修所における研修とか、あるいは法務総合研究所における検察官の研修、警察官の研修、いろんな研修の中でこういう被害者の心理ということについて取り上げていただき、私もそのうちの幾つかに講師として参加したりしています。おっしゃるとおり任意ですので、全体のこういう裁判に関わる法曹の人たちに伝えるということができていないのはとても残念だと思っています。
実態をお話しすると、そういう方たちもむしろ衝撃を受けたりするというようなことが伝わってくることもあって、本当にどういう状況にあるのかというのを御存じないんだなというのが、最初は、むしろ私にとっても衝撃でした。
そういう点では、以前に比べればその研修が増えていることも間違いないと思いますが、必修になっていないとか、それから、やる側から言いますと、一時間半でこの被害の実相をどういうふうに伝えるのかというのがすごく難しいです。
例えば、事例を挙げて出せば、やっぱり細かいところまで分かっていただけますよね。だけど、そうすると全体像を示せないし、今度、全体像を抽象的に語るだけではこれまでの状態と何も変わらないわけです。さっきのその虐待の、受けた人たちが一体どうして黙っているのか、それから、被害を受けたときに何の抵抗もできないときに何が起こっているのかと、そういうことをちゃんと説明しようと思うと、そういう具体例で分かりやすくするのと抽象的に語るところが同じ時間でできなくて苦労しています。
だから、本当は、私の立場からいえば、必修で多くの時間を割いていただけると有り難いというふうには思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/47
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048・佐々木さやか
○佐々木さやか君 ありがとうございます。
次に、島岡参考人と嶋矢参考人にお聞きしたいと思います。
先ほど話題になりました、小西参考人がお示しいただいたような被害者の被害時の心理状態というものは、これをしっかりと踏まえていただいて法制審でも議論をしていただいて、今回、適切な処罰がこれまで以上にされるような刑法の改正ということがなされるんだというふうに理解をしておりますけれども、やはり、法曹関係者にとってはこの暴行・脅迫要件というのが非常に、何といいますか、強いイメージがやっぱりありまして、やっぱりまず暴行、脅迫があったかどうか、しかも、被害者の抵抗を著しく困難にする程度の暴行、脅迫はあったのか。ないとなると、そうすると結構難しいかなと。ほかの事情でいろいろ事実認定できるかもしれないけど、どうしたらいいかなというような思考回路だったと思うんですよね。
その中で、今回の法改正というのは、暴行、脅迫という文言はありますけれども、それは程度を問わないと。そのほかの様々な困難事情を例示列挙をしていただいて、分かりやすく明確に適切な処罰がよりなされるようになるというふうに私も思っております。
恐らく、今までも、これは処罰すべきだというものは処罰されなければならないし、従来の刑法であっても使い方によってはそれを処罰するということはできたんだと思いますけれども、その使いにくさというところがあって、やはり使う人によって判断が分かれたりとか、何となくこの明確性というか適切な判断がなされなかった場合があったのではないかと。それを誰が使っても適切にそういう処罰ができるように、より良いものになるのではないかと思っています。
質問といたしましては、先ほど話題になりました小西参考人がお示しいただいたような被害者の実相、被害者の被害時の心理というものをしっかりと、これが適切に考慮されて処罰されなければ今回の法改正は余り意味がないと思いますので、これが今回のこの条文で示された構成要件によってこうした被害者の心理をしっかりと、状態を踏まえた処罰がなされるということでよろしいのかという確認をさせていただきたいというふうに思います。
じゃ、島岡参考人、嶋矢参考人の順でお願いできればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/48
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049・杉久武
○委員長(杉久武君) まず、島岡参考人、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/49
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050・島岡まな
○参考人(島岡まな君) 御質問ありがとうございます。
おっしゃるとおりなんですけれども、小西参考人がおっしゃったように、やっぱり被害者がすぐに抵抗しない、そういう状況というのがいろいろありますけれども、例えば、新しいもので、六号に当たる、予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させることでフリーズしてしまうわけですよね、急に驚いて。まさかそんな事態になると思っていないときにそういうことをされるとフリーズしてしまったり、あるいは、七号の虐待に起因する心理的反応を生じさせることなんというのは、まさに岡崎事件なんかでもあったように、もうずっと長年虐待を受けてもう諦めの気持ちになってしまっているし、ここで抵抗したらまた何か悪いことが起きるんじゃないかということで抵抗しないとか、今までさんざん問題になってきたことをもうずっと何年も掛けて議論していただいて、ここにきちんと明確に規定されていただいたことで非常に状況は改善するのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/50
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051・杉久武
○委員長(杉久武君) 続いて、嶋矢参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/51
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052・嶋矢貴之
○参考人(嶋矢貴之君) 御質問ありがとうございました。お答えさせていただきます。
心理について着目するという点については、今、島岡参考人がおっしゃられたとおり、百七十六条の六号とか、さらには二号その他の、七号など、虐待に起因する場合など、被害者の心理がそういったことを抵抗、抵抗じゃなくて同意をできないような事態をもたらし得るということ、そういったことに着目した規定となっており、また、未成年者の保護に関しましても、未成年の者の能力的な問題、性的意味の能力、性的意味の理解能力だけではなくて、影響力の理解とか対処の能力などの児童の心理、能力等に着目した考え方を取っております。
その上で、基本となる構成要件につきましては、それらの心理が作用したということを確証するために、同意しない意思を形成、表明、全うするということを困難にした、困難な状態にし、あるいはそういう状態に乗じてという定め方をしておりまして、その被害者の心理が最終的な侵害につながるという点をそこで担保する形で条文が作られているというふうに理解をしております。
ですので、御質問につきましては、被害者の心理を捉えた質問が、ごめんなさい、なされた処罰が今後はなされるというふうに理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/52
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053・佐々木さやか
○佐々木さやか君 最後に、性教育、包括的な人権教育を含む性教育のことについてお聞きしたいと思います。
時間があれですけれども、斉藤参考人と島岡参考人にもお答えいただければと思うんですが、これ非常に重要だと思っていまして、政府としても、この法律が成立した場合には、内閣府それから文科省、学校現場での性教育を含めてしっかりやってもらいたいと思っているんですけれども、やっぱり学校現場はなかなか現状難しい部分もありまして、先進的に取り組んでいただいているところももちろんあると思うんですけれども、やっぱり、文科大臣の答弁をお聞きいただいたとおり、なかなかこの日本の学校現場でそこまで十分な教育がなされるかどうかというのは、私は少し心配に思っています。
ただ、生命の安全教育ということで、数年前から、日本にしては私は画期的だなと思っているんですけれども、そういった中でこの性的同意的な教育もされますし、ただ、現在、教材がやっぱりないので、文科省がそういったものを作るというのはなかなか専門性の観点からも難しいので、そういうこともあって、まだまだいろんな課題があるなと思っています。
ですので、私は、この学校現場での教育もそうですけれども、同時に、地域とか民間においてきちんと専門的な十分に信頼性のある教育というものを進めていって、教育を受けたいな、受けさせたいなと思うような御家庭が利用できるようにしていくというのも私は同時並行的に日本においては重要じゃないかなというふうに思っていまして、例えば乳幼児健診というのがありますけど、発達健診ということで一歳とか三歳とかありますけど、そういうところで例えばチラシを、行政の側がこういう講座がありますから関心あれば受けてみませんかとか、そういうアナウンスをして、やっぱり行政がやっているということであれば行ってみようかなというような御家庭もあるかもしれませんので、なので、そういった民間での教育、啓発というところについても日本でもっとやっていくべきではないかなと思うので、済みません、ちょっと、あと残り二分になってしまったので、大変申し訳ないんですが、端的にお答えいただければと思います。斉藤参考人からお願いできますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/53
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054・杉久武
○委員長(杉久武君) では、まず斉藤参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/54
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055・斉藤章佳
○参考人(斉藤章佳君) ありがとうございます。
実は、実際に文科省のホームページから資料がダウンロードできるように今なっていまして、学校現場でどのようなパワーポイントを使って教えるかというのは文科省のホームページを見ると分かるんですが、もう実際に当院のプログラムで、そのパワーポイントを使って加害者の人から見た生命の安全教育の足りない視点というディスカッションをもう既にしております。
そこから出た意見としては、もちろん被害者にも加害者にもならないための性教育ではあるんですが、実際見ると、禁止、回避、性行為はやってはいけないというような、そういう内容が結構中心で、そもそも、性というのは非常に神聖なものであって、相手との親密な関係の中で行われるものであって、大切にしていかないといけないものなのにもかかわらず、そこを回避するような内容が中心で、さらに加害者にも被害者にもならないと言いながら、加害者の視点でどう加害者にならないのかというような内容がほとんどなくて、ちょっとその辺りが非常に足りない部分だなというふうに感じました。
あれを使って、学校の先生たちがこれから教材を使ってやるところというのは、非常に、なかなか大変な作業だろうなという感想を持ちました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/55
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056・杉久武
○委員長(杉久武君) 続いて、島岡参考人、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/56
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057・島岡まな
○参考人(島岡まな君) お答えします。
そうですね、学校教育、是非進めていただきたいんですが、その前に、やはり子供たちだけではなくて大人の意識を変えるということが重要だと思いますので、やはり民間の、私なんかは今ダイバーシティーの方のアンコンシャスバイアス研修というのをやっているんですが、それは民間でいろいろ新しい研修材料とかが出ているので、そちらを利用したりもしています。
ですので、おっしゃるように、行政と民間と協力してこの点を進めていけばいいのではないかなと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/57
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058・佐々木さやか
○佐々木さやか君 終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/58
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059・清水貴之
○清水貴之君 日本維新の会の清水と申します。
今日は本当に貴重なお話をありがとうございました。
まず初めに、斉藤参考人、よろしくお願いいたします。加害者側の立場としては本当になかなか聞くことができないお話、教えていただきました。ありがとうございます。
小児性愛障害についての話なんですけれども、これをどう再犯防止をしていくかという中で、私が疑問に思ったのが、この小児性愛というのはいろんな性的嗜好がある中の一つと捉えることもできるのかなとも思ったり、これ、行為に及ばなくて、頭の中でイメージしている分には、いろいろなその性的嗜好の中の一つと捉えることもできますし、ただ、そういったところから犯罪、加害行為に発展することもあるので、そこの時点からもうある意味治療するといいますか、止めていくような教育みたいなものをしていくのか、それとも、やっぱりそういうことは、加害行為はしては駄目なんですよという、そういうことを教えていくのか。この辺りが非常に何か、私、お話聞いていて難しいなというふうな感じを受けたんですけれども、現場ではどのように対応されていらっしゃるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/59
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060・斉藤章佳
○参考人(斉藤章佳君) ありがとうございます。
初診の段階で、子供性加害の方以外も含めて必ず聞く質問が一つありまして、逮捕されていなければ、ずっとこの加害行為を続けていましたかという質問を必ずします。受診された方は、一〇〇%はいと言います。ということは、逮捕されたときが治療的介入のチャンスということになるんですね。逆を返して言うと、逮捕されなければずっと続けているということになります。
ですから、自身の問題性を自覚して、自らこのままだと僕は事件を起こす可能性があるから再犯防止プログラムを事前に受けたいという問合せは今までほとんどありません。特に、子供性加害の性嗜好を持っている方は自分の性嗜好を隠したがります。実際に逮捕されて弁護人が付いて、弁護人から、あなた、治療を受けた方がいいよと勧められても、いや、治療に行ったら自分の子供への性嗜好の話をしないといけないから治療を受けたくありませんと、刑務所に行く方がいいですと、こういう回答をする加害者もいるので、そもそも事前に子供性加害者かどうかをフィルタリングするのは非常に困難ではないかなというふうに感じています。
海外ではアベルテストという事前にフィルタリングを掛けるテストがあるとは聞いていますが、実際に現場で働いていると、そういうテストだという前提でもし試験を受けたら、彼らはより問題を隠そうとしますので、そういう意味では初犯は防げないが再犯は防げるというのが現場の意見です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/60
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061・清水貴之
○清水貴之君 本当になるほどというふうに思いながら聞かせていただきました。ありがとうございます。
続きまして、小西参考人、そして、続いて島岡参考人にお聞かせいただけたらと思います。
この後、我々、午後は対政府質疑が準備されておりまして、その場で私が質問しようとしているのが、精神科医や心理カウンセラーの方々による性的加害というんですかね、性被害を起こしてしまうというケースもこれ残念ながら起きてしまっておりまして、実際逮捕者なども出ていると。こういったことを、じゃ、どう防いでいくかということをちょっと今回法務省に聞こうと思っているんですけれども、これ、今回の八つの要件のうちの、例えば精神科医と患者さんでしたら、これ、薬を使うことも、治療として使うことも出てきます。八番の要件の社会的関係上の地位というのも、これは先生と患者さんですから発生をすることになります。
こういうのが進んでいくと、陽性転移というんですかね、恋愛感情のような感情が生まれてしまうこともあるという中で、これをどう、治療なのか、それとも加害なのか、同意あるないはどうやって判断して、これ本当に難しい問題かなというふうに思っているんですが、まずは小西参考人に、現場いらっしゃって、これどういうふうに見ていったらいいのかなというのを教えていただいてよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/61
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062・小西聖子
○参考人(小西聖子君) おっしゃっているような加害というのは実際にございますし、例えば薬を使ってやるものもあるし、それから、カウンセリングの中で、恋愛感情を持ったように、ようにという言い方があれですけど、なって、後で訴訟になっているケースなんかも実際に経験しておりますので、医師、患者、それからそのカウンセラー、クライアントの関係というのはやっぱり対称ではありませんから、当然、職業的な倫理が非常に要求されるものですよね。それが守られていないということで、これはこれで一つどうやって防止していくかというのは問題だというふうに思っております。
例えば、倫理として患者さんと恋愛関係になってはいけないというぐらいのことはどこかで言われたりするんですけれども、これがパワーの関係として非常にハラスメントが起きやすいものだというような教育はなされていないと思います。それから、こういう事態が実際には常に発生しているわけですけれども、それに対してどうシステムとして応えていくかというのも、やっぱり例えば医道審議会みたいなところまで上がらないケースというのが結構たくさんあると思うので、医師の側に、あるいはカウンセラーの側にこういうことがあるということをその団体がまず意識してシステムをつくるということも必要なのではないかなと思っております。
本当におっしゃるようなことは実際に結構ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/62
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063・清水貴之
○清水貴之君 ありがとうございます。
続いて、島岡参考人にも同じ内容をお聞きしたいんですが、先ほどの陳述をいただいたときに、課題、懸念の部分で、ここの八番の要件、八の部分触れていただいておりまして、また、海外でこれは法律ちょっと見てみますと、イギリスとかドイツなどは、そういう同意があるなしではなくて、そういう立場、特にイギリス、ドイツ刑法か、相談、治療又は世話を行う関係を利用した性的虐待というのはもう完全に禁止されているということなんですね。
こういうことを見ますと、今回の要件八でそういったことが十分に防げるのか、ちょっと曖昧な部分があるのではないかとも考えてしまうんですけれども、この辺りについてお聞かせいただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/63
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064・島岡まな
○参考人(島岡まな君) ありがとうございます。
そうですね、ここは本当に悩ましいところでございまして、これを取り出して、もうそれだけで、その地位と、何というんですかね、地位、関係があるだけで性犯罪成立するというふうにしてしまいますと、それこそ医者と患者の恋愛が全くないか、あるいは先ほどおっしゃらなかったんですが、おっしゃりにくいかもしれませんが、大学教授とドクターの学生とか、意外とあるんですね、実は、ハラスメントの方になっちゃいますけど。そうなりますと、それを全部刑法で処罰するのかということになったら大変なことになりますので、それはできないと。そうしますと、やっぱりある程度実質的な不利益の憂慮ですとか、実質的な考慮が入らざるを得ないんですね。
フランス刑法も、さんざん悩んだ上に、やっぱり実質的な性犯罪は性犯罪としておいておいて、あと地位、関係性がある場合は加重事由というふうに、そこの実質判断終わった後で、もう地位があったら刑を加重するという構成にしております。ですから、ここは本当に難しい問題だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/64
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065・清水貴之
○清水貴之君 ありがとうございます。
続いて、嶋矢参考人、お願いをいたします。
グルーミングのお話、陳述の際にいただきまして、私も、これも後半で、ここで質問をしようと思っているところなんですけれども、非常にこれも難しいところがあるなと。まず、加害者側というんですか、そうやっている大人側からしますと、そういったわいせつ目的ではなかったとか、あれはあくまでネット上であるとかSNS上でつながるわけですから、相手が未成年、十六歳未満だとは知らなかったとか、まあ何とでも言い訳ができるようなところもこれ残っているかなと思います。
もう一点、嶋矢参考人もおっしゃったとおり、やはり今ネットでつながった、例えば、そういった中で教育をするとか、先生と生徒だったりとか、部活動の関係であるとか、習い事の関係とか、日常的に使うこともあるんだとは思うんですよね。そういった中で、このグルーミングによる加害、被害をどう防いでいくかというのが、これもまた非常に難しい問題かなと思っているんですが、嶋矢参考人、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/65
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066・嶋矢貴之
○参考人(嶋矢貴之君) ありがとうございます。
グルーミングの規定につきまして、百八十二条、解説の中では一部の解説にとどめさせていただいたところでありますが、それも絡めて少し補足してお話しさせていただきたいと思います。
グルーミングの百八十二条の一項と二項、こちらが面会の要求と面会について処罰をしており、こちらにつきましては、どうしてもやっぱりわいせつの目的という目的がないと処罰をするのが難しい、そもそも保護法益を性的な保護の状態と、性的な保護の状態というふうに定めるということからいたしますと、それを加味しつつ、しかし、それ以外の客観的な部分でかなり絞り込めるというふうになっております。
そのような客観的な様々な事実関係とか状況などから、わいせつの目的とか、あるいは十六歳未満での故意など推認できるような場合であればそれを認めることができますし、それが認められないというような場合であると、それは処罰が難しくなってくるということになるかと思います。
また、三項では、ネット上のものを想定して、画像を送信、映像を送信するということを要求する行為を処罰しております。こちらはわいせつ目的というような規定などは特に定めず、その内容的な部分から、直ちにその送信を要求することを処罰するものとなっております。ネット上ですと、会うだけで処罰するというのはやや早過ぎるというようなことから、このような映像の内容を規制して、要求する行為を処罰するという形で対応する規定になっております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/66
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067・清水貴之
○清水貴之君 ありがとうございます。
続いて、再び小西参考人、お願いをいたします。
PTSDについてなんですけれども、私、お話聞いていてちょっと疑問に思ったのが、犯罪、犯罪じゃない、被害を受けた、その受けた状態とか期間とかによって、その後の心の傷、PTSDの、例えばある程度戻るとか治るまでの期間に差が出るのかというところなんですが。被害にも非常に様々な形態があって、本当にもう短時間でとてつもない被害を受けてしまうときもあれば、親子関係のように長期にわたって支配をされてしまうような、こういった場合もあると思います。こういったことによって、受けた側の心の傷であったり、そういったものに対しての何か違いみたいなものが生じるのかというのを教えていただけたらと思うんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/67
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068・小西聖子
○参考人(小西聖子君) おっしゃるように、基本は、ドーズリスポンスと言ったりするんですけれども、受けたその被害の量、量といいますか、期間も含めて、それが重ければ症状が重いという基本は当然ございます。
ですから、PTSDが発現するというところには幾つか段階があって、例えば、例えば典型的なレイプという言い方がなかなかできないんですけれども、そういうものがあったときに、一回限りの被害で、知らない人から、今までの刑法でも扱われていたようなことがあったときに、発生率が例えば二〇%、三〇%であるというようなことは分かるわけですね。
期間も当然、人によって違います。もう一つ、個体要因というのも当然あるわけで、例えば直前に、直前にというか、そもそも家で虐待を受けている人と、とても対人関係が安定している人、あるいは何らかの障害がある人、そういう個人の側の要因も当然影響はしてきます。先ほど挙げた数字は、そういうものを全部含めて国全体で見たときにどれくらいの値になるかという値を示しているんだというふうにお考えいただくといいです。
具体的に言うと、やはり、治療期間というもので見ましても、虐待や繰り返しの被害ですね、繰り返しの被害というのは、結構長期監禁なんかの例もあるので虐待だけではありませんけれども、繰り返しの被害があるときは重くなりがちです。それから、一回限りの被害でも、その周囲の状況、例えばそれが集団強姦で、ごめんなさい、集団の強制性交であるというようなときなんかにも当然重くなってきます。
治療期間として具体的にお示しすることがちょっとできないんですけど、私のところでの臨床データだと、単回の被害の方の平均が大体一年ぐらい、そうでない繰り返しの被害の場合にはやっぱり数年掛かる。私のところは一応治療のいろんな技術は持っているんですけど、それでもそれぐらい掛かるし、途中で続けられない方もいるという状況です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/68
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069・清水貴之
○清水貴之君 最後、あともう一分ぐらいになってしまって、島岡参考人、最後一点だけお願いします。
配偶者間強姦の話もコメントされていましたので、これも私、非常に難しい、夫婦間の話ですので非常に難しいなという。本当に目に見える形で何か無理なことがあったら分かりやすいんですが、そうじゃないケースも様々あると思いますので、これについての考えをお聞かせいただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/69
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070・島岡まな
○参考人(島岡まな君) ありがとうございます。
ちょっと難しいですけれども、やはりいろんな、法案提出理由にもありましたように、裁判例とか学説の大半は、もう配偶者間でも不同意性交等が成立するということは言われていたけれども、中にはまだ戦前のいろいろ、配偶者にはそういう性交を応じる義務があるというような考えがある方もいらっしゃったので、そこら辺を明確にするために、刑法の中に規範として入れることによって、むしろ犯罪を未然に防止しようというか、そういう効果があるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/70
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071・清水貴之
○清水貴之君 以上で終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/71
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072・川合孝典
○川合孝典君 国民民主党・新緑風会の川合孝典と申します。
四名の参考人の先生方には貴重なお話を頂戴しまして、ありがとうございました。
私から、まず斉藤参考人に御質問させていただきたいと思います。
今回の参考人質疑に斉藤参考人にお越しいただくことを実は私自身がお願いをしたわけでありますが、その背景にありますのは、今回の法案の衆議院の審議において、再犯防止というところが余り実は扱われてまいりませんでした。その結果、附帯決議にもこの再犯防止というものが実は触れられていないわけであります。
したがって、今回、この法改正を行うことで被害者のいわゆる救済ということには大きく寄与することにはなりますが、そもそもの問題として、こうした被害、性犯罪を起こさせないということが前提としてあった上でのこうした議論でなければならないと私自身は思っておりますので、そこで、再犯防止の重要性というものを改めて参議院の法務委員会の委員の先生方にもお聞きいただいた上で、今後、再犯防止に向けた取組を要はより強力に推進していこう、いきたいという、そういう思いがあって実はお願いをしたということであります。
そうした考え方に基づいて、まず斉藤参考人にお伺いをしたいと思いますが、性犯罪加害者の再犯防止について、処罰と更生プログラムを今いろいろとお進めいただいているということなんですが、この再犯防止に効果をどのような形で発揮するのか、どのような効果が期待できるのかということ、このことについて斉藤参考人の御所見をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/72
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073・斉藤章佳
○参考人(斉藤章佳君) ありがとうございます。
私の基本的なスタンスは、刑罰よりも治療をというよりは、刑罰だけではなくて治療をというのが私自身のスタンスです。
やはりこの問題は、加害行為によって被害者がいるわけですから、その自らの行為責任を取るという部分での刑罰はやはり必要だと思います。
ただ、常習化していくと、ある特定の状況や条件下で衝動の制御ができなくなる人たちも実はいらっしゃいますので、こういう方々はやはりちゃんとした治療的なアプローチをしないと、刑務所に行って、出所してまたすぐ再犯というようなことを繰り返していく方がいらっしゃいます。
実際に、クリニックで治療のプログラムをやっていても、もう少し早く治療につながっていれば行動変容をもっと早くできたんじゃないかというケース、たくさん見てきました。もちろん、彼らは逮捕されないとなかなか治療に行こうという動機付け、外発的な動機付けが形成されないので難しいところはあるんですが、それよりも、刑務所一回行くよりも一回行く前に来るとか、例えば執行猶予中の再犯をする前、一回目の裁判のときに来るとか、こういう早期発見、早期治療のシステムの構築というのを非常に重要だなというふうに思っています。
そういう意味では、ちょっとこれは刑事手続の制度的なものもあるんですが、執行猶予の判決がもし出るんであれば治療とセットにするような、そういう試みができれば、もっと早い段階で行動変容につなげていけるんじゃないかという実感は持っております。
もちろん、当院の実際のデータを公表すると、例えば二千五百名の受診者のうち、実は一回の受診で来なくなる方が半数です。自らが保険証を持って自分の性の問題に向き合おうとして来るわけですが、やはり、来たんだけれどもグループでの治療は嫌だとか、来たんだけどちょっと自分の考えているのと違ったとか、家族や弁護士に勧められて来たんだけれども治療を受けるほどではないと考えている実は当事者が多くて、半分ぐらいの方が一回でドロップアウトというのが現状です。我々は、長期定着群を一応三年というふうに考えております。三年の長期定着群がやっと百名を超えたというのが今の状況です。
ですから、先ほどの執行猶予判決が出るんであれば治療とセットにというような、ちょっと語弊があるかもしれませんが、強制治療制度のようなものがシステムとしてつくれれば、もう少し行動変容に早く移れ、そして被害者を出す件数が減っていくんではないかというのは現場の感覚としてあります。
あとは、やはり実際に自分の医療費を使って来ることになりますので、この辺の、もちろん被害者へのサポートも重要なんですが、加害者が治療を受ける際に何かしらその通院のサポートのようなものがあれば、もう少し加害者の行動変容のプログラムを始めるような医療機関とかNPOの受皿とか、もうそもそも今非常に少ないのが現状ですので、増えてくるんではないかというふうに感じています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/73
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074・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
嶋矢参考人にお伺いをしたいと思いますが、法制審の議論の中で、再犯防止ですとかいわゆる更生プログラムの必要性等についての御議論というのがあったのかどうかということ、それと、先生御自身はこの問題についてどう捉えていらっしゃるのかをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/74
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075・嶋矢貴之
○参考人(嶋矢貴之君) ありがとうございます。
今回の法制審におきましては、被害者の保護に特に力点を置き、その点を大きく変えるという点に力を注いでおりましたところもあり、加害者の再犯防止というようなところについて明示的に議題となって取り扱ったという記憶はないところであります。
私自身、再犯防止についてどのように考えるかというところでございますが、確かに非常に難しい問題で、先ほどちょっとお話を聞きながら、現行法の枠内で何かできることはないのかなというようなこともちょっと斉藤参考人の話を聞きながら思ったところであるんですが、病気が重篤化して責任能力にも影響を及ぼすというようなレベルであれば、先ほどちょっと話にも出ましたが、心神喪失者等医療観察法というようなことで強制的に医療措置をするというようなことであるとか、あるいは執行猶予に保護観察を付けて、その保護観察の中で一定の遵守条件を付けて何かを強いるというようなことはあり得るかもしれないですけれども、それが果たしてうまく再犯防止に結び付くのか、あるいは今言ったような制度がそういったものを受け付けて回っていけるものなのかどうなのかというのはちょっと分からないところでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/75
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076・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
続きまして、島岡参考人に御質問させていただきたいと思います。
いわゆるフランスにおける思春期前の性教育のお話をしていただきましたけれども、先ほどもほかの委員の先生からも御指摘ありましたが、実際にこれ、日本でそれを導入しようとした場合に大変高いハードルが幾つも考えられるわけでありますし、同時に、文科省の答弁聞いていても、そもそも教える側の意識が全く付いていっていないという、そういった状況があるわけでありますので、したがって、選択的にカリキュラムの中で教師、先生の御判断で取り組むといった程度にこの間ずっととどまってしまっているということなわけだと私は捉えています。
その上でなんですが、フランスでは、こうした性教育のいわゆるプログラムがきちっと構築されたのはどういった経緯、どういった知恵があってフランスではこれが可能になったのかということをもし御存じでしたらお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/76
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077・島岡まな
○参考人(島岡まな君) ありがとうございます。
それはちょっと、私、専門家ではないので、教育の方とか、いつから導入されているかもちょっと正確なところは知らないんですけれども、やはりフランスという国は本当に、何というんですかね、人権意識、人権教育がもう幼いときからされていまして、平等教育がすごく進んでいて、法律も、真の女男平等法とかいうのが二〇一四年にできていたり、御案内のように二〇〇〇年にパリテ法という議員候補者同数法などができていて非常に進んでいますので、そのような社会であったことから、人々の声が、これは平等を進めるためには性教育、包括的性教育が必要だという意見が出て、私が知る限り三十年前にはもう既にそのような性教育が行われていたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/77
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078・川合孝典
○川合孝典君 このいわゆる性教育の在り方についての議論というのはこれまでもずっとなされてきているわけなんですが、動かないんですね、実は。その動かない原因がどこにあるのかということと同時に、具体的にどうアプローチすればこの問題を前に進めることができるのかということを、いよいよ真剣にこの問題と向き合わなければいけない時期が来ているんじゃないかと私自身は実は思っておりますので、ちょっとこの問題については私ももっと勉強してみたいと思います。
続きまして、小西参考人にお伺いをしたいと思います。
PTSDのことをいろいろとお話を頂戴しまして、いわゆる精神的外傷性健忘症というんでしょうか、いわゆる性暴力被害によって生じるPTSDということ、これは、実際に被害に遭ってから、いわゆる記憶を、その被害の記憶を失ってしまって、数十年もしてからその記憶がフラッシュバックするといったようなケースが少なからずあるという御指摘を実は受けたことがありまして、そうした要はPTSDの症状があるということを考えたときに、今回のいわゆる公訴時効の五年延長というものをどう先生としては御評価されるのかということと、本来この公訴時効の在り方というのは、期間というのはどうあるべきだとお考えになられているのかということを、このことを小西先生にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/78
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079・小西聖子
○参考人(小西聖子君) 今おっしゃった健忘だけがある場合は、どちらかといえば解離性障害というふうになりますが、でも、もちろんPTSDの中にも健忘の症状はございます。
様々な理由により、大体PTSDの患者さんというのは回避的なので、できたら事件のことは考えないでなかったことにしようというのが最初の反応なんですね。それがずっと続いて、うんと後になって出てくるという場合に、私の経験では、一番多いのは結婚とか特に出産ですね。虐待のその記憶だと、自分が子供を産んで自分が子供と向き合ったときにその自分の記憶が出てきたり、もっと心身の不具合が出てきたり、PTSD症状があらわになってきたりというようなことは実際に経験します。
そういうふうに考えますと、今結婚年齢がだんだん遅れていることを考えると、四十歳ぐらいでこういうことが起こることも理論的にはあり得ます。そうなった場合に、じゃ、そこで何かしたいというふうになったときに、今の場合では足りない。先ほども申しましたが、ちょっと現在の法案の中にある時効の延長というのは不足だと私は思っています。やっぱりそういうケースも含めると、もう少し延ばさないといけないんじゃないか、四十歳ぐらいまではいけるようになっていないといけないんじゃないかというふうに思います。
ちょっと時効の性質というのが私の専門ではないんですけれども、もし、だから、性犯罪についてそういうことが起こるということを前提にするのであれば、本当に必要かどうかということも議論できるんだなと、むしろ伺っていて今思いました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/79
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080・川合孝典
○川合孝典君 島岡参考人にも、今深くうなずいていらっしゃいましたので、同様の御質問をさせていただきたいと思いますが、この問題について島岡参考人はどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/80
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081・島岡まな
○参考人(島岡まな君) お答えします。
先ほどフランスの例を出しましたけれども、四十八歳まで時効延長になるんですが、それが二〇一八年なんですね。その前は二十年でした。ですから、三十八歳で時効になってしまう。そうしたら、今おっしゃったように、四十代で急にフラッシュバックして性加害を思い出した女性がいまして、そうしたら時効だったんですね。で、メディアにさんざん出まして、お隣のドイツでは五十一歳まで時効ができるのに、私はちょっと離れたフランスに住んでいただけでこのような不正義があっていいんでしょうかと、やっぱりフランス女性強いので、さんざん言ったらすぐ、また数か月でフランス議会は法を改正しまして、三十年延長になりました。
ですから、これからスイスのように撤廃になるかどうか、時代の流れによって時効必要ない犯罪もあるということが意見共有できましたら変わっていくと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/81
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082・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/82
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083・仁比聡平
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
四人の参考人の皆さんの知見と、それからこれまでの取組に心から敬意を申し上げたいと思います。
島岡参考人が感無量というふうに冒頭表現をされたんですけれども、私、六年前の二〇一七年改正の参考人質疑、この同じ委員会室から考えたときに、隔世の感がするという思いがいたします。Springの山本潤さんが被害当事者としてフリーズの紹介をされた、御自身の体験を紹介をされたときに、やっぱり与野党超えて認識が全くずれていたんじゃないのかという思いは共有できたのではないかと思うんですね。
そこで、まず小西参考人にお尋ねしたいと思うんですが、法律がモデルとしてきた被害者像は現実と懸け離れているとおっしゃいました。そのことは、この六年間の、前回改正からの取組を経てなお今度の改正案にまだ残っている。だから、これから五年のうちにはちゃんと見直しをしなければならないという附則が衆議院の段階で付けられたのではないかなと思うんですよ。
小西参考人がおっしゃった、法律あるいは法、司法関係者と言ってもいいかもしれませんけど、がモデルとしてきた被害者像が現実と懸け離れている。ここに追い付いて今回来ているのかもしれないけれども、例えば、先ほどお話のあっている公訴時効の問題にせよ、あるいは性的同意年齢の規制の在り方にしても、更なる改正に向けた実態をちゃんと政府そして我々国会議員が把握するための調査が必要なのではないかと。小西先生がずっと取り組んでこられて到達しておられる認識を、我々がきちんと立法府として共有できるような調査が必要なのではないかと思うんですけれども、どんな調査が必要かとか、こういう調査は政府としてやるべきなんじゃないかとか、そういう御意見がございましたら是非お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/83
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084・小西聖子
○参考人(小西聖子君) そうです。要するに、その法律がモデルにしているものは、嫌だったらノーと言うだろう、考えなくちゃいけないときは考えて判断するだろうみたいなモデルに私には思えるんですけど、とても人間はその特殊な事態に置かれたときにそうはできない。そのことは、前回のときにはほとんど皆さん無反応でしたけれども、今回はかなり勉強されているんだなというか、理解されているんだなというのは法制審議会でも感じました。
その中で、お尋ねのどういう調査かということなんですが、日本では、犯罪社会学的といいますか、その被害時の行動、それから加害時の行動でもありますが、それから心理、そういうことに関しての実証的な調査というのが非常に欠けています。例えば、どれくらいの人が実際に抵抗でき、どれくらいの人がこういう状態になり、例えばフリーズになった人はどれくらいというようなことが海外では結構研究されています。もちろん、日本でも、今回の法制審議会の前に齋藤先生や山本さんたちが研究されましたけれども、もっと大きい、洗練されたというか、ちゃんと検証ができる大規模な調査をやっぱりやるべきだと思うんですね。
だから、その性的な被害があったときの人の行動ということについてもっといろんなことを調べるべきです。例えば、ディスクロージャーというのは、いつ話すか、人に話すかということですけど、これも一つ分野が実際には海外にはあります。ディスクロージャーの時期やディスクロージャーをする要因ということについて調べられているんですけれども、これも日本にはありません。
それから、今の公訴時効の問題にしても、一体どれくらいそういうニーズがあるのかということも調べられていないわけですね。私たちが直接持っている被害者の大きい情報って、本当に内閣府の被害調査ぐらいしかないんですけど、それでは不足です。
そういう意味では、その性犯罪と被害者の行動、それから加害者の行動にまつわる実証的な研究が是非必要ですし、この法律ができたときに、そこで変わったことがどういうふうに実情に合わせて使われるかも当然検討する必要があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/84
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085・仁比聡平
○仁比聡平君 今、小西参考人もお話あったように、今回の公訴時効の問題についても、立法事実として援用されている内閣府の性暴力に関する調査は、これは一般的な統計法に基づく調査で、この性刑法の改正の必要性について、あるいは今、小西参考人がおっしゃったような特性みたいなものをきちんと大規模に検証可能な形で、あるいは国民的にと言ってもいいと思うんですけど、調査したものではない。だからこそ、これからこの法律成立後、徹底した調査が私必要だと思っているんですけれども、小西先生もうなずいていただいているので。
島岡参考人、その件について、島岡参考人が、フランス始めドイツも含めて、立法プロセスで調査の果たす役割について御認識あればお話しください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/85
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086・島岡まな
○参考人(島岡まな君) ありがとうございます。
私は、もうまさにそれが一番日本で足りない点だと思っております。
例えば、性刑法に関してのどういう調査が必要かというのは、今、小西参考人が専門家の立場からおっしゃっていただいたので、私はもうちょっと一般的なお話をしたいんですけれども、やはりフランスでは、何か問題が起きたらまず実態調査をするということで、それは個々の民間とか研究者の小規模なものに任せているわけではなくて、もう国が公費で調査官何百人というのを使ってやるんですね。
それで、例えば、今問題に、別のところで問題になっているカルトの問題なんかも、最初に国会の国民議会の調査報告書が出たのが一九八三年です。今から四十年も前に第一回目の報告書が出て、九六年に第二回目が出て、二〇〇〇年にカルト規制法って作っているんですね。
だから、やはり法律を作るためには、まず調査、国会の調査が絶対に必要で、そういうサイクルができているものですから、フランスではどんな問題が起きてもすぐに調査チーム立ち上げられて、調査して、実態が分かった上で立法事実をしっかり認識した上で、それに適した法律を作っているというサイクルを、まず日本でもつくらなくてはいけないのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/86
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087・仁比聡平
○仁比聡平君 ちょっと戻りまして、小西参考人、法制審でもそういう議論があったのか、それから、法制審に二度にわたってこの問題と関わってこられて、これからの更なる見直しに向けて、政府にちょっとこうやってほしいという、みたいなことがあれば。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/87
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088・小西聖子
○参考人(小西聖子君) 調査の必要性というのは、その折々に、特に今回の法制審では話されていたと思います。例えば、一番分かりやすいのが公訴時効の延長についてのその内閣府のデータの不十分さなんですけれども、そのために意図された調査ではありませんから、答える人の六割が誰にも言っていない。誰にも言っていないけど、言っている人の中で、例えば三十三まで延びれば大丈夫だと言われても、言わない人は、きっともっとできない人たちだということが予想されますよね。そういうふうに、その統計の不十分さみたいなところが指摘はされる、そういう議論はされていました。
前回のときはもうそこまで全く行っていませんでした。本当に私も隔世の感だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/88
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089・仁比聡平
○仁比聡平君 ちょっと、刑法の理論的な話で、島岡さん、嶋矢さんにお尋ねしたいと思うんですけれども、故意の問題で、島岡参考人の方で、従来の著しい暴行、脅迫や抗拒不能というその構成要件が、つまり命懸けの抵抗をしなければならないということが求められていた、あるいは求められているかのように読めたということによって、故意を誤信、故意というか、状況を誤信することによっての故意が阻却されるという無罪が現にあったじゃないかと、これはどう変わるのかと。
今回の不同意性交等罪への転換で変わるのかという点について、それぞれお答えいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/89
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090・島岡まな
○参考人(島岡まな君) 先ほど申し上げましたように、大きく変わるのではないかと期待しております。
というのは、やはり八類型がきちんと明記されたことによって、このような事由によって同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難になり得るんだということをちゃんと行為者が考えろという規範がそこに示されていると思うんですよね。だから、それがそろったらすぐ犯罪が成立するという意味じゃなくて、こういう事由の場合は被害者が同意しない意思を形成、表明、全うすることは困難なんですよと示して、それが分かっていたら、やっぱりそれを知らなかったという、そういう状況をちゃんと認識していたなら考えるべきだったのに、それをしないことによって、知らなかったという言い逃れはできにくくなるのではないかと大変期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/90
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091・嶋矢貴之
○参考人(嶋矢貴之君) 御質問ありがとうございます。お答えいたします。
故意につきましては、もちろん、新しい条文によりまして特別なルールが定められたという、故意に関して定められたというわけではありませんで、原則どおり、構成要件に該当する事実を認識する必要があり、各困難事由のいずれか、あるいはそれに類するものを認識するということと、困難な状態にさせ、あるいはその状態にあるということを認識するということと、わいせつ、あるいは性交等を行うということが必要になってくるかと思います。
その上でなんですけれども、あくまで、何でしょうね、理論的に必然的なものではないかとは思うんですが、このように困難事由を具体的に定めたことによりまして、これらによって困難が生じるということ自体は広く理解され、認識されるというふうにはなっているということがある種前提にはなってまいりますので、こういった事情を認識していれば、その後の困難な状態とか、その状態にあることに乗じてという方の認識を場合によっては推認しやすくなるという関係は出てき得るのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/91
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092・仁比聡平
○仁比聡平君 慎重なおっしゃり方ながら、島岡参考人と同じことを嶋矢参考人もおっしゃっているのではないかと私としては受け止めました。
最後に、斉藤参考人にお尋ねしたいと思うんですけれども、加害者の考える性的同意という先ほどのお話、あるいは治療の中でアップデートしていくことになると。この提起というのは、私にとっても本当に大切なことを学ばせていただいたなと思っておるんですけれども、先ほど来何回かお話がありましたけれども、受刑者、矯正中の更生プログラムの中で、あるいは社会内処遇、執行猶予中のというお話が、御提案が先ほどありましたけれども、そういう取組の中で、転機をつくる、行動変容の転機をつくっていくために、どんなことが刑事司法に対して、あるいは政府に対して期待をされるか、それから、先ほど行動変容につながるのがもっと早ければというふうなお話があったんですけれども、ターニングポイントになることというのがどんなことなのか、教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/92
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093・斉藤章佳
○参考人(斉藤章佳君) ありがとうございました。
まず前提として、性暴力や性犯罪は学習された行動であるという前提が重要だと思います。生まれながらにして性犯罪者というのはいないので、例えば赤ちゃんのときに、私は将来性犯罪者になりたいと思っている人は恐らくいないと思います。じゃ、なぜ性犯罪を繰り返すようになったのかというと、この社会の中で学習してきたものだからだと思います。
ですから、まずこの視点として、性犯罪は学習された行動であるという前提が私はすごく大事だと思っています。だからこそ、学習し直すことでやめることができるわけです。そこに専門の治療が最もエビデンスがあると、刑罰ではなく、刑罰プラス治療をしていくことが重要であると言われているということが前提としてあります。
その中で、ターニングポイントをどのようにつくっていくのかというのは、私もこの十六年間の加害者臨床の中でいろいろ悩みながらケースに関わってきました。今月も二件、府中刑務所に出所前の環境調整で性犯罪の受刑者の方に会いに行くんですけれども、私の最初の冒頭で申し上げたとおり、どうしてもこの性犯罪の問題自体が判決が出ると国民若しくはもうメディアの関心が薄れてしまい、その後、彼らがどうなっていくのかというのを余り知られていないというような現状があります。
でも、我々、入口の支援の中でも関わりながら、実際に実刑判決が出た方も受刑者支援という形で手紙を通してつながりを続ける。そして、出所前には、実際に刑務所には分類の担当官というのがいますので、その方から連絡をもらい、出所前に面会をし、出所後の生活環境調整を受刑中にちゃんとした上で、出所後また生活をしていく場所に定着させていくと、こういう連続した実は関わりが非常に重要になってきます。
ですから、ピンポイントでどこにターニングポイントをつくるかというよりは、実は、事件を起こして刑務所に行ったらそれで関わりが終わるんではなくて、彼らが出所後も社会とのつながりを持てるような連続したやはり関わりが必要になってくるかなと思います。実質、例えば出所の日に身柄引受人がいない方は、私、刑務所に出所の日に八時半頃迎えに行くんですけれども、これは全部持ち出しというか、ここに何の予算も付いていません。実際にその人が治療につながらない場合もあれば、治療につながるケースもあります。
ただ、やはりどんなハイリスクな性犯罪者であっても、出所後どこかにつながれる場所があるというのは実は再犯を繰り返さない上でもやはり重要ですので、もし国の方に何か提言をということであれば、やはりその入口と出口の段階でのサポートだけではなくて、その後も継続してつながれるような、そこのコーディネーターや調整する機能をもっと強化してほしいなというのが私自身十六年間やってくる中での感想ですし、矯正施設内処遇と社会内処遇が今かなり分断されている状況ですので、やはりここに連続した処遇ができるような制度とか予算が付くことを私自身は望んでいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/93
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094・仁比聡平
○仁比聡平君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/94
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095・杉久武
○委員長(杉久武君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。
参考人の皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
午後一時四十五分に再開することとし、休憩いたします。
午後零時五十六分休憩
─────・─────
午後一時四十五分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/95
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096・杉久武
○委員長(杉久武君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
委員の異動について御報告いたします。
本日、堀井巌君及び山崎正昭君が委員を辞任され、その補欠として朝日健太郎君及び友納理緒君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/96
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097・杉久武
○委員長(杉久武君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案外一案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省刑事局長松下裕子君外六名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/97
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098・杉久武
○委員長(杉久武君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/98
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099・杉久武
○委員長(杉久武君) 休憩前に引き続き、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案外一案を一括して議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/99
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100・友納理緒
○友納理緒君 自由民主党の友納理緒でございます。この度は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案について質問させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
法案に対する質疑に入る前に、法務省における男女共同参画の取組についてお伺いをいたします。
先日五日、政府が男女共同参画会議で、女性活躍・男女共同参画の重点方針二〇二三の原案を示しました。
そこで、法務省の状況についてお伺いをいたします。
齋藤法務大臣が大臣に御就任されてから、数々の審議会、審査会、委員会、検討会その他の会議が立ち上がったことと思います。それらの委員などは、恐らくまず法務省の方がある程度人選をなさるのだと思いますけれども、それに対し、女性の比率等、男女共同参画の視点を入れて対応をなさったことがおありでしょうか。お分かりになる範囲で、現在の女性比率等をお教えください。大臣、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/100
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101・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 法務省におけます国家行政組織法第八条に基づく審議会等の臨時委員を除く委員は、令和五年の六月十三日時点で六十四名でありまして、そのうち女性は二十三名ということで、割合は三五・九%になっています。
それ以外の審議会、検討会等のうち、私が就任後に設置された会議として、例えば高校生向けデジタル教材企画検討部会、これが女性割合三六・四%、それから、例の名古屋刑務所職員による暴行・不適正処遇事案に係る第三者委員会、これが女性割合三三・三%でございます。また、私の就任以前から設置されていた会議で私の就任後に委員等の交代があったものといたしまして、例えば再犯防止推進計画等検討会が女性割合四四・四%、それから法制審議会の刑事法部会が女性割合四五・五%でございます。
人選につきましては、多様な意見を反映できるようにすることが私は大事だと思っていますので、それぞれの会議におきまして、その設置の趣旨ですとか目的ですとか、個々の政策課題に応じて、男女共同参画の視点も含めて多様な意見が反映できるようにすることが必要であるということで、そういう方針で人選を進めているということでございます。
私が大臣就任して、令和四年度に新規に任官した検事さんに訓示をするというのがありました。七十一名新人検事さんおられたんですが、三十五名が女性でありまして、ほぼ半分ということでありましたので、恐らく来年辺りにはもしかしたら逆転をするのではないかなと思ったりするぐらい、私が勤めておりました経済産業省に比べまして、法務省では随分女性活躍の機会が多いなと思いました。
大臣秘書官も女性でありますし、私も経済産業省で大臣秘書官やっておりましたけど、経済産業省で女性の大臣秘書官が少なくとも私の前に出たことはありませんでしたし、その後もちょっとどうかなという、確認はしていませんが、思うぐらいでありますので、引き続き適材適所という観点を見失わない範囲で努力をしていきたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/101
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102・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。取組を進めてくださっていることに感謝申し上げます。
女性の比率が増えることは、それによってできる政策や法律に幅を持たせることになると思いますので、引き続き取組を進めていただければというふうに思います。
それでは、法案に対する質疑に入らせていただきます。
強制わいせつ罪、強制性交等罪等の要件の改正についてお伺いいたします。
私自身、幼い頃から電車で通学をしておりましたので、抵抗ができない幼い頃ほど痴漢に遭う機会が多く、怖くて動けないということを何度も経験してまいりました。また、弁護士としては、性犯罪の被害者の方の支援を行う中で、現行法上の課題に直面し、悔しいといいますか、悲しい思いをすることもありました。そのため、現行法の改正を行うこと、その方向性として同意のない性的行為が適切に犯罪行為として処罰されるようになることについては心から賛成いたします。
他方で、我が国は、法の支配を基礎にして、適切な刑罰法規による適正な手続でのみ刑罰が科されることを大原則としています。今回の条文を見ますと、刑罰法規の明確性、類推解釈禁止など、罪刑法定主義の観点から若干の懸念を覚えざるを得ません。男女を問わず、自分の周りの大切な人たちが思いも寄らずこの法律が適用され、性加害者だと言われてしまう可能性がないかとの不安を少し感じるところです。本来処罰されるべき同意のない性行為を処罰するだけではなく、その周辺にある同意のある性行為も処罰されてしまうケースがあるのではないかという心配を少し持っております。
今回の法改正がそういったものでないことを確認するために、今後の質問をさせていただきたいと思います。
そこで、まず本改正の趣旨と処罰範囲についてお伺いいたします。
今回の改正案、例えば不同意性交等罪の条文などを見ますと、百七十六条一項各号及びそれに類する行為に該当した上で、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態に該当すれば成立をするというふうにされています。
この各号を見ますと、行為や状態など様々なものが含まれ、文言が抽象的なものもございますので、事前の御説明では、中核となるのは同意しない意思の形成、表明、全うすることが困難な状態であり、各号で原因行為をある程度広く取ったとしても、結局その同意をしない意思の形成、表明、全うすることが困難な状態でなければ処罰されないのだから問題はないということでした。
この点、現行法では、暴行、脅迫等の要件が、判例上の解釈として、抗拒を著しく困難にさせる程度であるということを要するとされていましたので、罪の成立範囲を限定してしまう余地があったことからこのような改正がされたと理解しています。
そこで質問ですが、今回の改正は現行法百七十六条ないし百七十八条が想定している処罰範囲を広めるものでしょうか。それとも、その処罰範囲を広めるものではなく、その構成要件を一層明確にすることによりその外延を明らかにするという趣旨の改正でしょうか。お考えを、御見解をお聞かせください。法務大臣にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/102
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103・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 本法律案は、現行刑法の強制性交等罪や準強制性交等罪などについて、暴行又は脅迫、心神喪失、抗拒不能という要件の下でその解釈によって成否が決せられるのを改め、より明確で判断のばらつきが生じない規定とするために、性犯罪の本質的な要素であります自由な意思決定が困難な状態で性的行為が行われるという点を、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態という文言を用いて統一的な要件として規定をして、その状態の原因となり得る行為や事由を具体的に列挙をするという、そういう構成になっているわけであります。
この改正によりまして、現行法の下で処罰できない行為を新たに処罰対象として追加するわけではないものの、現行法の下でも本来なら処罰されるべき同意していない性的行為がより的確に処罰されるようになるというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/103
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104・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
次に、不同意わいせつ罪、不同意性交等罪の構成要件についてお伺いをいたします。
まず確認ですが、この同罪の成立には、性的な行為を行うことのほか、一号から八号等、同意しない意思の形成、表明、全うすることが困難な状態というそれぞれの要件を満たすことが必要という理解でよろしいでしょうか。もちろん故意についてもこれらについて必要という理解でよろしいでしょうか。政府参考人、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/104
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105・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立するためには、まず客観的要件といたしまして、改正後の刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為、事由、その他これらに類する行為、事由のいずれかに該当すること、それによって被害者が同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態になり又は当該状態にあること、その状態の下で又はその状態を利用して性的行為が行われたことが必要でございます。
そして、主観的な要件として、故意、すなわち行為者がこれらの事実をいずれも認識していることが必要でございますが、その際、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態であることについても、また各号に掲げる行為、事由についても、いわゆる規範的な認識、法律上の評価にわたる認識は不要でございますが、それを基礎付ける事実の認識があれば足りると考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/105
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106・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
次に、刑罰法規については、自分自身の行為について、済みません、これらに類する行為の考え方についてお伺いするんですが、刑罰法規については、自分自身の行為について犯罪が成立するか否かについて法律家以外の一般の市民が理解できるように規定されなければならないとされています。今回の一号から八号の内容、さらにそれに類する行為というのは、一般人の理解からしても犯罪に該当する行為が明確だとは言えないのではないでしょうか。
そこで、これらに類する行為の考え方についてお聞かせください。政府参考人、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/106
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107・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
改正後の刑法第百七十六条第一項のその他これらに類する行為又は事由は、各号に列挙された行為、事由ごとに見たときに、それぞれに類する行為、事由を意味するものでございます。例えば第一号に掲げる行為に関して言えば、同号の暴行若しくは脅迫を用いることに類する行為を意味するものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/107
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108・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。考え方お示しいただき、ありがとうございます。
次に、困難な状態についてお伺いいたします。
一号から八号である程度広く拾うとなりますと、同意しない意思の形成、表明、全うすることが困難な状態という要件が重要になります。これまでの御説明から、意思決定過程と困難な状態という客観的な状態に着目して犯罪の成否を画するということですけれども、この困難な状態とは、誰を基準にして、どの程度の困難性があることが必要なのでしょうか。政府参考人にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/108
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109・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えします。
同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態であるかどうかは、被害者本人を基準といたしまして、客観的、外形的に判断すべきものと考えられます。
その上で、困難ということにつきましては、これを限定する文言は加えておりませんで、文字どおり、それをすることが難しいことを意味するものでございまして、その程度を問わないものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/109
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110・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
困難な状態であることの立証は、被害者にとっても被告人にとっても難しい部分があるかと考えています。客観とはいえ、一般的に、性犯罪、特に夫婦間などは自宅などで起こることが多いですから、客観的な状態を把握する方法が本人の証言しかないということもあります。今後、運用をする際には、今回の法改正の趣旨が没却することのないように、適切に運用をしていただければというふうに考えています。
次に、司法面接についてお伺いいたします。今回創設される新たな伝聞例外の規定についてです。
今回の法改正で刑訴法三百二十一条の三が新設され、いわゆる司法的、ごめんなさい、司法面接的手法を用いて聴取した録音・録画記録媒体について、証拠能力の特則が新設をされます。これは、新たな伝聞例外の創設となりますので、慎重な対応も求められるところだと考えています。
そこで、まず、三百二十一条の三第二号イ、ロに規定される必要な措置とは、それぞれ具体的にはどのような措置と考えておられるのでしょうか。政府参考人、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/110
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111・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
改正後の刑事訴訟法第三百二十一条の三第一項第二号に掲げる措置は、いわゆる司法面接的手法による聴取においてとられるべきとされている中核的な措置を掲げるものでございます。
まず、同号イの供述者の不安又は緊張を緩和することとしては、例えばラポールを形成すること、すなわち供述者との間で信頼関係を構築すること、また、聴取を行う場所として、供述者が安心して供述できるよう配慮された場所を用いることなどが想定されるところでございます。
また、同号ロの誘導をできる限り避けることといたしましては、例えば、できる限りいわゆるオープン質問を用いる、オープン質問と申しますのは回答が自由に再生できるような形の質問のことでございますが、それを用い、いわゆるクローズド質問、選択肢を提示した質問ですとか、WH質問、いつどこで誰がといった質問が必要になったとしても、これらの質問を重ねることで供述者を意図せず暗示、誘導したりすることがないように、回答が得られたら更にオープン質問に戻る方法で質問を行うことなどが考えられるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/111
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112・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
済みません、通告しておりました次の質問は、法律上は反対尋問後の再主尋問は可能ということでしたので、ここは飛ばさせていただきまして、次の質問に移ります。
聴取の主体についてです。
平成二十七年に、子供に与える負担をできる限り少なくする必要があるとの認識の下、厚労省、最高検察庁、警察庁が同日付けで通知をお出しになりました。この趣旨からしますと、少なくとも、子供に対する代表者聴取を行う際の聴取主体は、子供の認知発達能力、心理、司法、福祉についての専門的知識を有する専門家とすることが望ましいと考えます。法改正案も、法文上、聴取者を限定しておりません。事案に応じて、検察官以外の児童相談所の職員ですとか心理士、民間の専門家や専門団体による聴取が可能であると理解してよろしいでしょうか。政府参考人、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/112
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113・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
改正後の刑事訴訟法第三百二十一条の三におきましては、司法面接的手法による聴取の結果を記録した録音・録画記録媒体の証拠能力の要件としては、聴取主体がどのような立場であるかではなく、司法面接的手法において求められている措置がとられたことこそが重要であり、かつ、それで足りるということから、法律上の要件としては聴取主体の限定はしておりません。
ただ、他方で、現在の運用におきまして、検察、警察、児童相談所が連携し、これらの代表者が聴取を行うなどの取組を実施しているものと承知しておりますけれども、これらとは別の者が聴取主体となることにつきましては、司法面接的手法による聴取を効果的に行うためには福祉と捜査の双方に習熟している立場の者が聴取することが適切であるという指摘がある中で、これにふさわしい方が具体的に想定できるのかといった点のほか、特に民間の方を聴取主体とする場合には、捜査情報の秘密の保持をどのように確保するのかといった点について慎重な検討を要するものと考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/113
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114・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
次の質問ですが、アメリカには子供の権利擁護センターがあり、子供の利益を中心に据え、福祉機関、訴追機関、医療機関等、多様な専門機関が多機関連携チームとして関わり、その発達段階や特性を踏まえた司法面接技法を利用して聴取を自ら実施しています。
我が国には、本年四月にこども家庭庁が設立されました。このこども家庭庁の下に、中立的な専門機関として、専門の司法面接官を擁する子供権利擁護センターを設置することなどが望ましいと考えますが、いかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/114
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115・野村知司
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
御指摘の子供の権利擁護センターでございますけど、これは米国において児童虐待への対応に際し、警察、検察などの多機関連携して対応するためのNPO法人であるというふうに認識をしております。
翻って、我が国でございますけれども、こども家庭庁、こちらの方は児童福祉制度の企画立案などを担当しながら、個別事案への対応は各都道府県などの機関である児童相談所が担っております。また、刑事手続を行う裁判所や捜査機関と果たすべき役割がこれ基本的に異なっていることなどを考えますると、御指摘の機能を持ったようなセンターをこども家庭庁に置くということについては課題があるものと認識をしております。
ただ、現状といたしましては、子供の心理的負担の軽減などの観点から、児童虐待事例に関して司法面接を行うに際しましては、児童相談所の職員が聴取方法の協議に参画をしたり、あるいは検察官などが聴取代表者となった場合には別室から助言を行うことなどの連携を警察、検察との間でも図りながら、連携を図りながら対応しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/115
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116・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
次の質問として、代表者聴取の録音・録画結果の共有についてということをお願いしておりましたけれども、これは是非、検察官主導で行った代表者聴取の結果も児相などと適切に共有をしていただきたいというちょっとお願いに代えまして、その次の質問に移させていただきます。
ワンストップ支援センターについて御質問させていただきます。
性犯罪の被害者への対応として、ワンストップ支援センターがとても重要だと考えています。以前、愛知県で、病院内にあるワンストップ支援センターを訪問しました。そこでは、性暴力の被害者ケアの専門知識を持つ看護師が二十四時間対応していますが、このサポート体制を維持することが財政面でとても難しく、病院の理解があって初めて成り立っているということでした。
衆議院の質疑や本会議の代表質問でも交付金の話が出ていましたが、交付金がどの程度支給されているのか、またこの交付金では運営が困難であることを前提として、今後の対応についてお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/116
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117・畠山貴晃
○政府参考人(畠山貴晃君) お答え申し上げます。
ワンストップ支援センターは、被害直後からの医療的支援、法的支援、相談を通じた心理的支援などを可能な限り一か所で提供する機関であり、全ての都道府県に設置されています。
内閣府においては、センターを設置する都道府県等に対し、性犯罪・性暴力被害者支援のための交付金によりセンターの運営の安定化や支援機能の強化等を支援しているところです。この交付金の予算額は、令和四年度約四億五千万円、令和五年度約四億八千万円となっており、各都道府県等の申請に基づき所要額を交付しているところです。
引き続き、この交付金につきまして必要な予算を確保し、ワンストップ支援センターの運営の安定化等に努めてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/117
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118・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
ワンストップ支援センターを法律に位置付けるなどして適切に運営をしていただきたいという願いをお伝えして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/118
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119・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 立憲民主・社民の牧山ひろえです。よろしくお願いいたします。
さて、今回の改正では、婚姻関係の有無にかかわらず不同意わいせつ罪及び不同意性交等罪が成立するとされました。ですが、従前から婚姻関係の有無を問わず強制わいせつ罪及び強制性交等罪は成立するとされていたことから、平成二十九年の改正では明記することが見送られた経緯がございます。
そうでありながら、今回あえて明文化するに至った経緯を御説明いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/119
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120・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 改正後の刑法第百七十六条第一項及び第百七十七条第一項において、婚姻関係の有無にかかわらずと規定しておりますのは、配偶者間であっても強制わいせつ罪、強制性交等罪が成立し得るという一般的な理解を確認的に明文化する趣旨であります。
平成二十九年の刑法改正の際には、これに先立ち開催された検討会におきまして、配偶者間においても強姦罪が成立する旨の確認規定を置く必要はないとの意見が多数を占め、また、社会一般において配偶者間で強姦罪は成立しないとの誤解が生じないように広報啓発活動を推進していくことも重要であるという指摘がなされたことも踏まえて、そのような確認規定をあえて置く必要はないと判断をされたというふうに承知をしています。
もっとも、本法律案の立案に先立って開催されました法制審議会の部会におきましては、複数の委員から、配偶者からの性行為には応じるべきという社会通念は今なお存在する、被害者自身も配偶者間で強制性交等罪が成立するという認識を持っていない場合があるといった指摘がなされたところであり、学説の一部にも配偶者間における性犯罪の成立を限定的に解する見解がなお存在をすると。
そういう状態におきまして、本法律案におきましては、配偶者間における性犯罪の成立範囲を限定的に解する余地をなくし、不同意わいせつ罪及び不同意性交等罪が配偶者間においても成立することを条文上明確にするために、婚姻関係の有無にかかわらずとの規定を設けることとしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/120
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121・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 では、明文化することによって、今までいわゆる泣き寝入りだった事案が事件化するなどの効果が見込めるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/121
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122・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 先ほど申し上げましたとおり、婚姻関係の有無にかかわらずと、その規定は、婚姻関係があっても不同意性交等罪などが成立することを確認的に明文化をするというものでございます。
したがって、この改正によって、現行法の下で処罰できない行為を新たに処罰対象として追加するわけではないわけでありますが、処遇されるべき性的行為が配偶者間であっても処罰対象であることが明示されて、より的確に処罰されるようになるものと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/122
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123・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 そもそもの配偶者間の性暴力が刑事事件として取り扱われた現在の事件数は、皆様にお配りした資料にありますとおり、ごくごく僅かなものだということが分かります。性暴力の被害者支援に携わるNPO団体などに伺いますと、実情はとてもこのようなものではないというふうに述べられております。
警察庁にお伺いしますが、昨日出していただいたこの数字は実情を反映しているのか、それとも、本来は事件として処理すべき事案が背後に大量に隠れているのか、どうお感じになっておられますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/123
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124・親家和仁
○政府参考人(親家和仁君) お答えいたします。
現行の刑法におきましても配偶者間で性犯罪は成立すると解釈されておりまして、そうした認識は警察においても共有しているところでございます。また、警察におきましては、被害の届出がなされた場合は即時に受理して捜査を行うよう指示してきたところであり、これは配偶者間の性犯罪でも同様でございます。
昨日お示しし、本日配付されている資料にもある数字につきましては、こうした前提の下、警察に届出がなされた配偶者間の性犯罪について法と証拠に基づき捜査を行った結果被疑者を検挙した件数でありますけれども、一方で、届出がなされない事案が配偶者間の性犯罪についてどれくらいあるかにつきましては、警察においてはお答えしかねるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/124
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125・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 明文化した趣旨からも、本来は刑事事件として処理すべき悪質な事案が様々な事情から見えない状態で存在しているのではという問題意識で実情を見守っていくことが必要ではないかなと感じております。
さて、今回、配偶者間の性暴力の可罰性が規定されたとはいえ、究極のプライバシーと言える夫婦間の性関係に関することでありまして、現場での判断や取扱いが難しい局面が多々生じると思われます。
まずですが、法規制自体の周知、それだけでなくて、配偶者間の性暴力が起こった場合に取り得る対応策の周知が必要ではないかなと思いますが、いかがでしょうか。
済みません、もう一つ続けて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/125
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126・杉久武
○委員長(杉久武君) どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/126
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127・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 もう一つ、済みません。
また、これらの周知の必要性について御同意いただける場合は、その具体的な周知方法についてどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/127
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128・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、性犯罪について適正な処罰を実現するためには、本法律案による改正をするだけではなくて、今、牧山委員御指摘のように、その趣旨、内容を十分に周知、広報することが重要であるというふうに考えています。
それらの具体的な周知方法等につきましては現段階で確たることをお答えすることは困難でありますけど、法務省としては、本法案が成立した場合には、関係府省庁、機関や団体とも連携をしながら、適切にしっかりと周知、広報していきたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/128
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129・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 周知方法はまだ検討中ということですけれども、やっぱり周知がなされてこそ法文で明記した意味があると思いますので、是非早急にお願いしたいと思います。
その一方で、そのような事案に対処する職種、例えば司法警察職員、それから検察官や裁判官並びに配偶者暴力相談支援センター、男女共同参画センター、地方自治体窓口などに対して法改正の趣旨を周知徹底して、十分な研修などを行うべきと考えますが、これらについていかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/129
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130・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 先ほど申し上げましたとおり、法務省といたしましては、本法案成立した場合には、御指摘のような関係機関に対しても改正の趣旨や内容について適切に周知、広報するとともに、各関係機関、団体において十分な研修等がなされるよう必要な協力をしていきたいというふうに考えています。
検察官に対する研修につきましては、検察官の経験年数等に応じた各種研修を行っておりまして、本法案が成立した場合には、その趣旨、内容についても必要な研修を実施していくものと承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/130
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131・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 夫婦間の争いに関与する職種の方々が紛争解決の鍵を握っていると思うんですね。事前に様々な想定を行って問題解決の方策をなるべく多様に持っておくべきで、その中には刑事事件としての解決手段も含まれるはずだと思います。
研修と関連しますけれども、例えば一一〇番通報があって夫婦の一方から性暴力があったとの訴えが現場の警察官にされた場合、現在どのような対応がなされているのでしょうか。そして、法制定後においてはどのような対応が望ましいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/131
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132・親家和仁
○政府参考人(親家和仁君) お答えいたします。
警察に対し、配偶者から性犯罪の被害を受けたとの申出がなされた場合は、当該申出人に被害申告の意思が認められるのであれば、被害届を即時受理し、必要な捜査を行うこととしております。
こうした届出について、警察におきましては、届出内容が配偶者間の行為に係るものであるか否かにかかわらず、法と証拠に基づき適切に対応することとしているところでございます。
法改正後におきましても、改正の趣旨等を踏まえた適切な対応が取られるよう、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/132
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133・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 基本的には、被害届の提出を起点とした対応ということになるのかなと思うんですが、緊急性が高く即応が必要なケースですとか、あるいは警察以外の専門機関につなぐべきケースなど、本当にいろんな事情があると思うんですね。本来は対応の手引とかガイドラインを作るべきだと思うんです。少なくとも、研修においては、性暴力とか、まあ性暴力として取り扱うべきケーススタディーなどなるべく収集して、現場での適切な判断ができるようにすべきだと思います。
さて、今回の改正で性的姿態の撮影行為などが処罰の対象となったのは、このような行為の蔓延に対応するための大きな意義のある立法だと評価させていただきたいと思います。
その前提の上で質問させていただきますが、性的姿態等撮影罪に当たる行為と各都道府県で制定されている条例、迷惑行為防止条例などにおける盗撮との相違を御説明いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/133
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134・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
まず、各都道府県のいわゆる迷惑防止条例における盗撮規制につきましては、これを網羅的に把握しているものではございませんけれども、一般的には、その卑わいな行為を禁止して都道府県民の生活の平穏を保護するものでございまして、公共の場所における盗撮行為に限って処罰対象とするものや、私的な領域における盗撮行為も処罰対象とするものなど、各条例によって場所の要件が様々であり、また犯罪が成立する撮影対象は必ずしも性的な部位に限られないものと承知をしております。
そして、性的姿態等撮影罪につきましては、自己の性的な姿態をほかの機会に他人に見られないという性的自由、性的自己決定権を保護法益とし、撮影場所にかかわらず、意思に反して性的な姿態が撮影されれば保護法益が侵害されることから、撮影行為が行われた場所の限定はしておらず、犯罪が成立する撮影対象は性的な部位や性的な部位を覆う下着などとしているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/134
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135・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 それぞれに異なった目的と適用場面があり、相まって盗撮行為の抑制に機能するために、刑事罰が規定されても条例の必要性は維持されるということだと思うんですね。賜りました。
今回の立法では、一般的には性的姿態とされていない制服やユニホーム姿などを性的な目的で無断撮影する行為などは処罰対象とならないとされています。その理由について御説明いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/135
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136・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
ユニホーム姿のスポーツ選手や制服姿の方を性的な目的で撮影する行為が社会問題となっているということは承知をしております。
本法律案の性的姿態等撮影罪が成立する対象につきましては、先ほど申し上げましたとおり、自己の性的な姿態を他の機会に他人に見られないという性的自由、性的自己決定権が侵害されると言えるものを掲げることとしておりますところ、御指摘のような、ユニホームや制服などの着衣の上から撮影する行為は、それが性的な目的であったり、胸などを殊更にズームアップするものであったといたしましても、通常他人に見られている部分を撮影するものでございまして、ただいま申し上げた保護法益を侵害するとは言えないことから、今回の対象とはしていないところでございます。
また、ユニホーム姿のスポーツ選手に対する撮影行為の処罰につきましては、法制審議会の部会でも議論ございましたけれども、具体的に何をどの程度まで強調して撮影すれば構成要件に該当するかについて法文上明確に規定することが極めて困難である、また、そうした撮影は、撮影者の意図は別として、外形的には通常の方法、態様で行われることが多いと思われ、撮影の方法、態様自体によって処罰範囲を明確に画することが困難である、また、撮影の方法、態様によって処罰範囲を明確に画することが困難であるとすると、わいせつの目的という行為者の主観だけを根拠として当該撮影行為を処罰することとなってしまうわけですが、それは適当とは言い難いといった様々な問題点があるとされていたところでございまして、本法律案の性的姿態等撮影罪の対象とはしなかったところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/136
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137・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 皆様のお手元に配付物としてお配りしていますけれども、航空会社の客室乗務員を対象に行われた調査では、合計で七一%が勤務中に盗撮された可能性があるというふうに回答しているんですね。そのうち、今回の立法で性的姿態として可罰対象となるのは本当にごく僅かなんです。航空会社の客室乗務員だけではなくて、広く接客業従業者等も盗撮の被害に遭っているんですね。問題ない撮影と問題ある撮影の見極めは難しいのは分かっているんですけれども、被害が出ている以上、法解決を諦めるわけにはいかないと思います。
今回の規制対象以外の盗撮について、実情の把握の努力を行うとともに、解決すべき課題と位置付けて必要な検討を行うべきと考えますが、いかがでしょうか、大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/137
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138・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 御指摘のような撮影行為を処罰対象としていない理由については先ほど刑事局長から申し上げたとおりでありますが、もっとも、そのような撮影行為が社会問題となっているということは承知をしています。
この点に関しましては、衆議院における御審議の結果、附則が修正されて、政府において施行後五年を経過した場合に検討を行うこと等が定められるとともに、附帯決議におきまして、性的姿態等以外の人の姿態や衣服で覆われた部位を性的な意図をもって撮影する行為等を規制することについて検討を行うことが求められております。
法務省としては、これらの趣旨を踏まえて、本法律案が成立した場合には関係府省庁とも連携をして適切に対応していきたいというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/138
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139・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 是非、積極的な取組、それから持続的な研究、是非よろしくお願いしたいと思います。
今回の立法を最大限活用して生かす措置が必要だと思うんですね。法案成立時には、当局においても旅客に対する規制法に関する周知徹底が必要ではないかなと思うんです。その具体策も併せて御答弁いただければと思います、国土交通省。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/139
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140・平井一彦
○政府参考人(平井一彦君) お答え申し上げます。
航空機内の無断撮影行為につきましては、乗務員の職務を妨げるなど、航空法上の安全阻害行為等に該当する場合には現在でも禁止されておるところでございます。国土交通省としては、無断撮影行為等を禁止する撮影ルールについての周知徹底は重要と認識しており、これまでも、航空業界とも協力し、ポスター等による旅客への注意喚起を行っております。
本法案が成立した際には、その内容とともに、改めて、無断撮影行為が禁止されていることについてより明確に周知するなど、航空業界や関係省庁等と連携し、盗撮行為の未然防止に努めてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/140
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141・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 旅客に対して周知されてこそ抑制の効果も出てまいりますし、また客室乗務員が毅然と対応するための根拠となると思うんですね。特に、被害の声の大きい航空会社の客室乗務員等に周知は是非積極的に行って、効果が判明した施策については積極的な横展開を行うべきだと思います。いろんなところから聞いておりますので、もう長らくこの問題は続いておりますので、是非お願いしたいと思います。
また、航空機の安全な運航という観点から、警察との連携強化や、国土交通省令が定める安全阻害行為に、悪意を持った、あるいは専ら性的関心に基づく客室乗務員の無断撮影の明記も検討すべきと考えますが、国交省、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/141
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142・平井一彦
○政府参考人(平井一彦君) 繰り返しになりますが、航空機内の無断撮影行為については、乗務員の職務を妨げるなど、航空法上の安全阻害行為等に該当する場合には現在でも禁止されております。
引き続き、無断撮影行為について安全阻害行為等になり得る旨をポスター等で明示して旅客への注意喚起を図るなど、航空業界や警察庁等と連携し、無断撮影行為の未然防止に努めてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/142
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143・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 無断撮影も解釈によって安全阻害行為に含まれるとの説明を事前に受けましたけれども、解釈で含まれるとされるよりも直接的に明示した方が分かりやすいですし、また効果も見込まれると思うんですね。そのような発想で、議題は違いますが、先ほど私が取り上げました配偶者間の性犯罪については、前回は解釈で既に示されていたんですけれども、それでは不十分だということで、今回の改正をもって配偶者間の性犯罪もあり得るんだということを明確に明示したわけです。是非、この無断撮影行為についてもしっかりと明記していただくように、御検討よろしくお願いいたしたいと思います。
さて、近年における性犯罪をめぐる状況に鑑み、この種の犯罪に適切に対処するため、今回の改正が提起されております。特に障害児者に関しては、各種の実態調査などから、健常者より性暴力を経験するリスクが高いことが指摘されております。ですが、今回の改正案において障害児者の扱いについては記載が少ない印象があるんですね。その辺りにつきましては質疑で確認させていただきたいと思います。
刑法改正案第百七十六条並びに百七十七条では、心神喪失、抗拒不能に代わる例示列挙事由として、心身に障害があることが挙げられています。知的障害がある方の発達は、軽度と呼ばれる人々でも小学校五年生から六年生程度の学力にとどまります。刑法改正案第百七十六条二並びに百七十七条二に規定されている、行為がわいせつなものではないと誤信させること並びに行為がわいせつなものではないと誤信していることという要件についてお伺いしたいと思います。
知的障害等により行為がわいせつなものではないと誤信する状態、行為がわいせつであることが認識できない状態、わいせつという概念自体を認識できない状態についてはこの要件に該当するんではないかなと思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/143
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144・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
百七十六条二項の行為がわいせつなものではないとの誤信とは、現に行われようとしている行為がわいせつ、すなわち法的性質、法的意味を有するものであるのに、そうではないという錯誤があることを意味するものでございまして、例えば真実はわいせつな行為であるのに医療行為であると誤信している場合などがこれに当たります。
また、お尋ねのように、知的障害等の影響により、真実はわいせつな行為であるのにそのような行為ではないと誤信している場合も含むものでございまして、そのことに乗じて性的行為を行った場合には、改正後の刑法第百七十六条第二項、第百七十七条第二項に該当し得ると考えております。
また、知的障害等の影響によりどのような行為がわいせつか自体を理解ができず、心身の障害があることにより性的行為に同意しない意思を形成すること自体が困難な状態である場合に、そのような状態に乗じて性的行為を行った場合には、改正後の刑法第百七十六条第一項、第百七十七条第一項に該当し得ると考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/144
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145・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 行為がわいせつなものではないと誤信させ、又は誤信をしていることに乗じてわいせつな行為をした者が、故意に誤信させた場合だけではなくて、障害の程度によって被害者が行為がわいせつであることが分からない状態若しくはわいせつという概念自体を理解できない状態にある場合もこの条項は適用される必要があると思います。
刑法改正案第百七十七条では、心神喪失、抗拒不能に代わる例示列挙事由として、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮していることが挙げられています。
福祉職、医療職、教育職といった心身に障害があることを知り得る立場にある者がわいせつな行為をした場合は、刑法改正案第百七十六条並びに百七十七条の、二、心身に障害があること、八、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮していること、そのどちらに該当するのでしょうか。当局の見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/145
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146・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
改正後の刑法第百七十六条第一項各号の具体的な適用関係につきましては、個別の事案ごとに具体的な事実関係を踏まえて判断されるべき事柄ではございますけれども、事案によっては複数の行為、事由に該当する場合もあり得ると考えております。
したがいまして、御指摘のような場合、事案に応じて、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させることと心身の障害があることに乗じることのいずれか又は双方に該当し得るところであり、その上で同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態で性的行為をした場合には不同意わいせつ罪、不同意性交等罪が成立し得ると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/146
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147・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 時間となりましたので、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/147
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148・佐々木さやか
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。
今回の刑法改正、強制わいせつや強制性交等罪を要件を整理をしていただいて、不同意性交等罪、不同意わいせつ、こういった形に変えるという内容でございます。
また、先ほどもほかの委員からございましたが、障害のある方々に対する性的被害ということ、これも、今回の議論を通じて、かなり国としても、また社会としても正面から向き合って議論を重ねてきていただいたというふうに思っております。
改めて、この間の関係者の皆様の、特に被害当事者の皆様、支援団体の皆様の御努力に心から敬意を表したいというふうに思っております。
今回のこの不同意性交等罪、この罪名、条見出しを是非変えてほしいということを、私、以前から申し上げてまいりました。やっぱりこの法案が成立した際には、これもかねてから申し上げているんですけれども、今回の法改正については、本当にしっかりと、司法関係者のみならず国民一般の方々に是非理解をしていただきたいというふうに思っております。そのためには、包括的な人権教育を含めた性教育、そして国民広く一般に対する啓発活動ということ、絶対に欠かせないなと思っておりまして、是非皆様のお力をいただきたいというふうに思っております。
今日はこの不同意性交等罪等に関する構成要件の関係ですとか様々お聞きをしたいことはあるんですが、今日はちょっと時間が限られておりますので、関連はするんですけれども、今、芸能事務所の社長から所属する未成年を含む多くのタレントが性暴力被害を受けたというような告発が相次いであります。こういったことというのは、現行法でも、強制性交等若しくは児童福祉法違反、こういった犯罪が成立する、明確な犯罪として許されないことであります。
こういったことを、被害をもうこれから繰り返さない、防いでいくというためには何が必要かということ、様々あると思いますけれども、現行法でも、先ほど申し上げたように強制性交等罪に当たるというふうに私は理解をしておりますけれども、この今回の改正との関係でちょっとお尋ねをいたしたいと思います。
この被害者の方の申告によりますと、この芸能事務所の社長からの被害については、強度の直接の暴行、脅迫等があったということでは必ずしもないのかなと。どちらかというと、この絶対的な立場にある社長からの性暴力を拒絶するということが困難であった、またそういった行為をされて、戸惑いや恐怖で明確な拒否ということが難しかったのではないかなというふうに私は理解をしております。
現行法では、御存じのとおり、暴行、脅迫によってということで、必ずこの暴行、脅迫がなきゃいけないと、しかもその暴行、脅迫の程度というのは狭い意味に解されていて、強度のものがないといけないということが一般的に解釈、運用されてきたと。
ただ、その中でも、ほかの事情も様々含めて、被害者の抵抗が困難だったということで犯罪は成立し得るとは思うんですけれども、今回の改正法との関係でいいますと、現行法では明示されていない経済的、社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮、それから予想と異なる事態との直面に起因する恐怖又は驚愕ということが現行法では明示されていない、これを今回明示するわけであります。
ですので、本改正では、こういったところを、こういった点を明記をするということによって、従来の現行法よりも、こういった直接の強度の暴行、脅迫がなかったような事案についてもより的確に処罰されるというふうに私は理解をしているんですけれども、この点、どうでしょうか。お聞かせ願えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/148
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149・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
恐縮でございますが、個別の事案における犯罪の成否ということにつきましては、捜査機関により収集された証拠に基づいて個別に判断されるべき事柄でございますので、法務省として言及することは差し控えさせていただきたいと存じます。
その上で、あくまでも一般論として申し上げますと、改正後の不同意わいせつ罪、不同意性交等罪におきましては、例えば第百七十六条一項の第六号、予想と異なる事態に直面した恐怖、驚愕ですとか、八号の経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮などによりまして、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて性的行為をした場合には処罰し得ることとしているところでございまして、これによって、現行法の下でも本来処罰されるべき同意していない性的行為がより的確に処罰されることとなると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/149
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150・佐々木さやか
○佐々木さやか君 現行法でも改正法でも、本来処罰されるべき対象というのは処罰、現行法ですね、現行法でも本来処罰されるべき対象というのは処罰できることにはなっていると思うんですけれども、ちょっと使いにくい部分があって、それがために、使う人によっては、裁判官によっては違った判断になってしまうということもあったと思います。それを今回整理をして、言わば誰が使っても、誰が判断をしても適切に処罰がなされるというような方向への改正なのではないかなと私は理解をしております。
公明党は、六月二日に、政府に対しまして、性犯罪から子供や若い世代を守るための緊急提言を行いました。今回の芸能事務所の事案についても、関連して関係省庁連絡会議、こういったものを立ち上げて、被害に遭って声が上げにくい状況の子供や若い世代の心情に寄り添った支援体制の在り方等、必要な対応を検討することと提言をしております。
こういった提言を受けて、本日午後にも関係省庁による会議が開催されるというふうに聞いておりますけれども、法務省としても関係省庁としてしっかり取組をお願いしたいと思います。大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/150
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151・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 子供や若年者に対するものも含めまして、性犯罪は、被害者の尊厳を著しく傷つけ、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続けるものであって、決して許されるものではありません。
御指摘のとおり、本日、性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議及びこどもの性的搾取等に係る対策に関する関係府省連絡会議の合同会議が開催をされ、子供や若者の性被害防止について、関係府省庁が一層連携をしつつ、取組の強化を図るための検討が進められることとなるものと承知をしています。
これらの会議には法務省の幹部職員も構成員として参加しているところでありまして、法務省としては、これらの枠組みなどを通じて関係府省庁と連携しつつ、子供や若者に対するものも含め、引き続き性犯罪、性暴力の根絶に取り組んでまいりたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/151
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152・佐々木さやか
○佐々木さやか君 是非お願いをしたいと思います。
法務省として取り組んでいただきたいこと、様々ありますけれども、やはり子供たちを性犯罪、性暴力から守るためには、そういったことは犯罪であると、絶対に許されないことであると、そして、子供の権利といいますか、人としての本当に尊厳を奪う重大な人権侵害でもあります。そういったことをやはりしっかりと周知啓発をしていただく、これもやはり法務省にやっていただきたい大きなことであります。
子供や若者をこの性犯罪から守るという観点でいいますと、今回の刑法の改正は、性交同意年齢、これを十六歳ということで、引き上げるものでありますので、その年齢に達していない場合にはもう本当に一律に犯罪ということで、より明確になるわけでありますし、仮に十六歳以上であっても、先ほど申し上げたような、例えば経済的、社会的関係上の地位に基づく影響力を利用するなど、子供に対して一定の影響力を持つような人物がそうした性行為を強いるということは明確に犯罪であるということであります。
これについて、やはりしっかりと周知をしていただくということもお願いしたいと思います。大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/152
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153・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 本法律案におきましては、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮により同意しない意思の形成等が困難な状態で性的行為をすること、それから、十三歳未満の者に対して性的行為をすること、十三歳以上、十六歳未満の者に対して五歳以上年長の者が性的行為をすることをいずれも不同意わいせつ罪、不同意性交等罪として処罰することとしています。
本法律案につきましては、衆議院における御審議の結果、附則について一部修正が行われ、政府は改正後の規定等の趣旨及び内容について国民に周知を図るものとされております。
法務省といたしましては、本法律案が成立した場合には、附則の趣旨を踏まえまして、不同意わいせつ罪及び不同意性交等罪の趣旨や内容について、関係府省庁、機関や団体と連携しつつ、適切にしっかりと周知、広報してまいりたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/153
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154・佐々木さやか
○佐々木さやか君 午前中の参考人質疑で、加害者の再犯防止に取り組んでいらっしゃる専門家であります斉藤参考人からも意見を聴取をいたしました。
その中では、子供への性加害の実態ということで御意見を頂戴したんですけれども、この日本の社会というのは、残念ながら、子供に対する性加害、それから、特に男児ですね、男性も含めて性暴力、性犯罪の被害者になり得るんだということ、これについて目を背けてきてしまったといいますか、社会の危機意識が十分ではなかった。また、それに対する対応、何か声が上がったときの支援の体制というのも十分ではないというふうに思います。ですので、やはり年齢、性別を問わず、そのような被害に残念ながら遭ってしまったという場合には、安心して相談して、また適切な支援が受けられるようにしていかなければなりません。
先ほど申し上げた我が党の提言では、被害者は悪くないということなどの周知啓発に加えまして、ワンストップ支援センター、それから、性犯罪被害相談電話共通番号、シャープ・ハートさん、八一〇三ですね、こういった身近なところで相談できる体制、それからSNSの相談体制、やっぱりこういうなかなか人に言いにくいというような被害についてはSNSを活用して相談窓口を設けた方が効果的ではないかというふうにも思いますので、こういった相談体制を強化するようにお願いをしております。これについてしっかり取り組んでいただきたいと思います。
それから、その場合には、先ほど申し上げたように、男性や子供も被害に遭う場合があるということもしっかり周知をすると。そして、その場合には、アクセスをしていただけるように、正直、ワンストップ支援センターとか内閣府さんのこのいろんな啓発のことも一生懸命やっていただいているんですけど、やっぱり女性の被害者を想定している場合が多いですので、例えば色とかピンクを基調にしていたりとか、それは適切な色を考えていただければとは思うんですけれども、男性側も、若しくは男児ですね、小学生とか中学生とか、そういった子供たちがアクセスしようと思ったときにしやすいと、そうしたことも私は必要であるというふうに思っております。そういった観点も踏まえて、しっかりとこの支援、相談の体制強化をしていただきたいと思います。
今日は内閣府さんと警察庁にもお越しいただいておりますので、それぞれお答えいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/154
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155・畠山貴晃
○政府参考人(畠山貴晃君) お答え申し上げます。
内閣府においては、女性に対する暴力をなくす運動や若年層の性暴力被害予防月間といった機会を通じまして、同意のない性的な行為は性暴力である、悪いのは加害者であり被害者は悪くないといったメッセージをSNS等を活用しながら発信してきたところです。また、年齢、性別を問わず、ためらわずに相談できることを周知しております。
また、性犯罪、性暴力被害者への相談体制としては、ワンストップ支援センターへの支援については、センターを設置する都道府県等に対し交付金を交付することにより、センターの運営の安定化や被害者支援機能の強化等を支援しているところです。
さらに、子供、若年層、男性を含む多様な相談者が利用しやすいよう、ワンストップ支援センターにおけるメール相談、SNS相談、オンライン面談などの活用等の取組を交付金により推進するとともに、内閣府においてもチャットやメールで相談できる性暴力に関するSNS相談、キュアタイムと申しますけれども、これを実施しております。
引き続き、御指摘も踏まえまして、必要な周知啓発やワンストップ支援センターなどによる支援の充実に努めてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/155
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156・佐野裕子
○政府参考人(佐野裕子君) お答えいたします。
シャープ八一〇三、通称ハートさんにつきましては、令和元年度に二十四時間対応化及び無料化を行ったほか、可能な限り相談者の希望する性別の職員が対応するなど、性犯罪被害者の方々が相談しやすい環境を整備しているところでございます。また、それぞれの性犯罪被害者の方々の心情に配意した適切な対応がなされるよう、男性、子供のほか性的マイノリティーの方への対応について、担当する警察官等への研修を行っているところでございます。
警察といたしましては、性別や年齢を問わず性犯罪被害者の方々が悩むことなく警察に相談しやすくなるよう、引き続きハートさんの広報に努めるとともに、どのような方にも対応できるような適切な運用を図ってまいりたいと考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/156
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157・佐々木さやか
○佐々木さやか君 ありがとうございます。よろしくお願いします。
午前中の、先ほど御紹介した斉藤参考人のお話では、そういう子供を狙って性加害を加える加害者にいろいろと話を聞いて、そうした加害者心理というもの御専門なわけですけれども、女児を狙う加害者の数というのが恐らく割合としては多いんだと思います。ただ、男児を狙う加害者というのも相当数いて、その理由というのの一つが、男児の方が声を上げにくいと、被害に遭っても男児の方が声を上げにくいのであえて狙うというような加害者もいるということで伺いました。
非常にショックなことでありますし、本当に、もちろん女児も含めてですけれども、特に子供たちというのは、何かそういった被害に遭っても、まずそれを認識して大人に相談するということ、それをやはり日頃から訓練をしていないと、いざというときにそういったことができないというふうに思います。
今日は性教育に関しては特段お聞きするつもりではなかったんですけれども、文科大臣政務官にお越しをいただいております。
質問としては、今申し上げたとおり、やっぱり子供たちを守っていかなきゃいけないと、文科省でも本当に子供たちを性加害、性暴力、性犯罪から守るための取組、様々行っていただいておりますけれども、やっぱり何かあったときに、親、家庭でも相談もちろんしてほしいんですけれども、日頃子供たちのそばにいる大人というのは教師の先生方でありますので、やはり学校で何かあったときに、男子児童生徒も含めて相談ができる、支援につなげることができるという学校であっていただきたいなと思います、もう本当に先生方お忙しいんですけれども。
そして、ですので、学校においてもこういった性犯罪被害等に遭ったときの相談支援窓口のまず周知、男の子も含めてそういう被害に遭い得るんだよということの周知と、そうなった場合にはどうしたらいいかということ、これを是非しっかりと力を入れて周知啓発、また教育に取り組んでいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/157
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158・伊藤孝江
○大臣政務官(伊藤孝江君) お答えいたします。
文部科学省におきましては、男子児童生徒を含め、子供たちを性暴力の加害者、被害者、傍観者にさせないための生命の安全教育の教材及び指導の手引を作成し、全国の学校での取組を推進をしております。
この生命の安全教育におきましては、男子児童生徒が被害者になっている事例も取り上げながら、児童生徒の発達段階に応じて、自分や相手、一人一人を尊重する態度や、性暴力が起きたときなどに適切に対応する力等を身に付けることができるように取り組んでおります。
また、相談支援窓口を児童生徒等へ周知することは専門機関による適切な対応を受けることにつながり、非常に重要と認識をしております。このため、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター等の相談先について生命の安全教育の教材等で紹介をするとともに、教育委員会等に対し周知を行っているところです。
引き続き、子供たちが性暴力の被害者にならないように必要な取組を進めてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/158
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159・佐々木さやか
○佐々木さやか君 ありがとうございました。
午前中の質疑では、生命の安全教育の教材についてもう少しブラッシュアップした方がいいんじゃないかというような指摘もありましたので、是非、何というか、これからも研究を深めていただければというふうに思います。
今日準備した質問が以上で終わりましたので、また続きは次回にさせていただきたいと思います。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/159
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160・清水貴之
○清水貴之君 日本維新の会の清水です。よろしくお願いをいたします。
今日は、精神科医や心理カウンセラーとその患者さん、クライアントとの関係などについて伺っていきたいと思います。
心身に不調を抱える患者を相手にする精神科医や心理カウンセラーが、患者さんの方がやはり立場が弱いですと、その立場や不安定さに付け込む形で性的関係を持つと、こういった事件が残念ながら少なからず起きてしまっています。逮捕されるような事案まで、これは起きてしまっています。
こういうことが起きているということで、今回、この不同意性交等罪の要件の、特に三と八に当たる部分についてお伺いをしたいんですけれども、精神科医、心理カウンセラー、三はアルコール、薬物の影響ということですが、精神科医などが薬物を、薬物、まあ薬ですよね、治療のために使うこと、これは日常的にあることだと思います。ただ、医師の指示の下、適切な量を守って正当に治療として使われている場合であったとしても、例えば薬の影響で判断能力が低下していると、確かにそういった薬を飲んでぽおっとすることとかありますので、そういったことも考えられると。そういった状況を、患者が向精神薬などを使った治療中であることを主治医であるとかその他ケアラーさんというのはもちろん知り得る立場にあるわけです。そういった状態に付け込んで性的関係を求めてきた場合、患者さんにとっては、薬の影響でもう判断力が鈍っているという状況ですから、不同意ということを示すのは、これ非常に難しい状況なわけですね。
こういった場合に、この要件の三ですね、薬物の影響下にある中において、今お話ししたような状況において、この要件三というのが当てはまるのかどうなのか、これについてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/160
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161・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
改正後の刑法第百七十六条第一項第三号のうち、アルコール若しくは薬物を摂取させることは、行為者自身が被害者に対して性的行為の手段としてアルコール又は薬物を摂取させる行為を、また、それらの影響があることという規定は、被害者が第三者によって飲酒させられたり薬物を摂取させられ、あるいは自ら飲酒したり薬物を摂取してそれらの影響を受けている場合を、それぞれ想定したものでございます。
また、同項の同意しない意思を表明することが困難な状態とは、性的行為をしない、したくないという意思を形成すること自体はできたものの、それを外部に表すことが困難な状態を意味するものでございます。
その上で、犯罪の成否といたしましては個別の事案ごとに具体的な事実関係に基づいて判断されるものではございますけれども、例えば、向精神薬の影響があることにより、性的行為をしない、したくないという意思を表すことが困難な状態にある患者さんに対して、主治医や心理カウンセラーのような立場にある方がその状態にあることに乗じて性的行為を行った場合には、行為者に故意が認められるのであれば、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立し得ると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/161
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162・清水貴之
○清水貴之君 その場合、不同意であることを示すのは難しい状態ですよね。そうであっても成立するという認識でよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/162
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163・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/163
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164・清水貴之
○清水貴之君 続いて、この要件の八の、特に社会的関係上の地位の部分にも、先ほどのこの関係というのは当てはまるのでないかと思います。
精神科の主治医や心理カウンセラーとその患者さん、クライアントというのは、力関係で差があるわけですよね。そういった中にあって、これ陽性転移というそうですが、いろいろ心の内面などを話をしたり自分をさらけ出すような状況になりますから、ある意味恋愛感情になる、すごい信頼関係が生まれるというような状況になることも、これは比較的多くあるということなんです。
そうなったら、今度は、患者さん側からすると、もう見放されたくないと、もう自分は完全に信頼している、依存しているような状況にありますから、そうしますと、これ、なかなか今度は容易に、そういうことを求められた場合に、性行為を求められたりした場合に、離れたくないという思いが強いですから、不同意をこれも表すのが難しい状況にあると。
こういったものが八の社会関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮、これに当てはまるのかどうかというのはどう考えたらよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/164
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165・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
改正後の刑法第百七十六条第一項第八号の経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益の憂慮といいますのは、自分やその親族等に不利益が及ぶことを不安に思うことを意味しておりまして、社会的関係とは、社会生活における人的関係を広く含むものでございます。
その上で、犯罪の成否は個別の事案ごとに具体的な事実関係に基づいて判断されるものではございますけれども、例えば、精神科に通院している患者で、主治医との性的行為に応じなければ主治医に見放されて診察してもらえなくなるという不安により、性的行為をしない、したくないという意思を表すことが困難な状態にある者に対しまして、主治医がその状態にあることに乗じて性的行為を行った場合には、行為者に故意が認められるのであれば、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立し得ると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/165
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166・清水貴之
○清水貴之君 それはそういった判断でいいのではないかなというふうに思います。
陽性転移が起きていた、先ほどお伝えしたような恋愛感情みたいなのが起きていた場合、不同意を示したくても示せない、こういったケースもあると思うんですが、それとはまた別に、ある意味恋愛関係、恋愛感情みたいなものがあったとしたら、外形上は、これ、双方の同意が成り立っているというふうに見ることもできるわけですね。ですから、患者さん側はもうその時点で恋愛感情みたいなものをお医者さんの方に対して持っていると。これ、例えば捕まったというか逮捕されたりしたケースで、そのドクターであったりとか心理カウンセラーの方なんかは、いや、同意があったんですと、こういうことを、その後の、ある意味説明であったり言い訳であったり、ことをするということが非常に多いんではないかと思います。
ただ、その後なんですけれども、その時点ではそういった関係が外形上は生じていたかもしれないんですが、ある意味ちょっと心理的に不安定な状態にあったりとかそういったことがあるので、後ほど患者が冷静になってその当時の行為などを振り返った場合、えっ、何でそんなことが起きてしまったんだろうと、これなかなか理解ができず苦しむようなケースも、これもあるということなんですね。
ですので、陽性転移によって逆らえない状況で性的関係を持ったと、でも、その後、患者が不本意だと気付いた場合なんですけれども、こういった場合でも、八というのは、社会的関係上のこの要件八、これというのは、適用というのは可能なものなんでしょうか、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/166
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167・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
改正後の刑法第百七十六条第一項第八号に掲げる事由や、同項の同意しない意思を表明することが困難な状態の意義につきましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、また、その同意しない意思を形成することが困難な状態というのは、性的行為をするかどうかの判断、選択をする契機、きっかけや能力が不足し、性的行為に同意しないという発想をすること自体が困難な状態を意味するものでございます。
その上で、犯罪の成否は、繰り返しで恐縮ですが、個別の事案ごとに具体的な事実関係に基づいて判断されるものではございますけれども、例えば、精神科に通院している患者さんで、主治医との性的行為に応じなければ主治医に見放されて診察してもらえなくなるという不安により、性的行為に同意しないという発想をすること自体が困難であったり、あるいは性的行為をしない、したくないという意思を外部に表すことが困難な状態にある者に対して、主治医がその状態にあることに乗じて性的行為を行った場合には、行為者に故意が認められるのであれば、患者自身が被害認識があるかどうかということにかかわらず、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立し得る場合があると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/167
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168・清水貴之
○清水貴之君 もう一度、多分、後日この質問あると思うんで、後ほどまた改めて再度聞きたいと思うんですが、そのときはそうだったかもしれないけど、後になって振り返って、遡ってみたら、えっ、あれは何だったんだというふうな状況ですね、こういった状況についてのこと、また後ほど、次の機会で聞かせていただきたいと思います。
また、今回の、今後の課題として、不同意が要件ではなくて、これドイツやイギリスの刑法を見てみますと、これ大臣にお答えいただけるんですかね、これはそういった立場の違いがある、精神科医と心理カウンセラーとその患者さんと、この関係でいいますと、ドイツやイギリスの刑法では、同意があったとしても、もうその立場がそういう立場だったらもうこれは駄目ですよという形で法が整備されているわけですね。
ですから、ここまで行く必要があるのかどうなのか、今後の検討として、大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/168
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169・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 本法律案におきましては、例えば、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させることにより、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせて性的行為をすることを不同意わいせつ罪、不同意性交等罪として処罰することとしているわけであります。
他方、こういった状態に陥っていないのに、一定の地位、関係性にある者が性的行為をしただけでこれらの罪と同じ法定刑での処罰対象とするような明確かつ限定的な要件というものを設けることはなかなか困難なんではないかというふうに考えられます。そのため、本法律案においては、ただいま申し上げた処罰規定とは別に、御指摘のような犯罪類型を設けることとはしていないわけであります。
いずれにいたしましても、本法律案につきましては、衆議院において附則の一部修正が行われておりまして、政府において施行後五年を経過した場合に検討を行うこととされているところでありまして、その趣旨を踏まえて適切に対処していきたいというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/169
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170・清水貴之
○清水貴之君 私の質問、ここまでにします。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/170
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171・鈴木宗男
○鈴木宗男君 委員長、八日の質疑、委員以外の国会議員が来まして、相当委員会審議を妨害したと私は見ていますし、受け止めています。にもかかわらず、委員長が淡々と粛々と入管法成立に向けて議事進行したことに敬意を表します。
あわせて、あのときの一部国会議員、山本太郎さんという人が実力行使をしました。これは決して許されるものではありません。委員会としても、しっかり理事会でもこれは協議されておりますので、議院運営委員会に申入れをしていただきたいとお願いをします。
あわせて、東京新聞の望月という記者が、そこに、まさに指さしているところにいて、石川議員の討論のとき、そうだそうだという大きな声で相づちを打っています。この望月記者はその前の委員会でもやっているんです、一週間前の。常習者です。ここは絶対私は、規則違反になりますから、参議院の、厳しく委員長からもまたこれ議運の方に申入れをしていただきたいと、こう思って、お願いをまず最初にしておきます。
時間がありませんから、齋藤大臣、御苦労さまです。この刑法及び刑事訴訟法の一部改正、簡単に、現行法と比較して改正する意義だとか、あるいは、比較してこういった面で格段の、時代に合ったというか、今の時宜に合ったものであるという説明を国民に分かりやすく示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/171
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172・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、性犯罪は被害者の尊厳を著しく侵害をし、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続ける悪質、重大な犯罪であり、厳正に対処をするということが必要であると考えています。そこで、近年における性犯罪をめぐる状況に鑑みまして、この種の犯罪に適切に対処できるようにするため、今回、刑法等一部改正法案において、刑法及び刑事訴訟法を改正し、所要の法整備を行おうというものでございます。
主な点を申し上げますと、強制わいせつ罪及び準強制わいせつ罪並びに強制性交等罪及び準強制性交等罪をそれぞれ統合した上で、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態でのわいせつな行為又は性交等であることを中核とする要件に整理をいたしまして、不同意わいせつ罪及び不同意性交等罪とすると。
現行法上、十三歳未満とされているいわゆる性交同意年齢につきましても、十六歳未満とした上で、その者が十三歳以上であるときは、行為者が五歳以上年長である場合に処罰をすることとすると。
そして、性犯罪についての公訴時効期間を五年延長するとともに、被害者が十八歳未満である場合には、その者が十八歳に達するまでの期間に相当する期間、更に公訴時効期間を延長するなどの法整備を行うということにしておりまして、性犯罪の抑止につながるものというふうに認識をしています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/172
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173・鈴木宗男
○鈴木宗男君 そこで、大臣、この十三歳から十六歳、私はこれはもう評価するものですけれども、ちょっと先ほど佐々木委員の質問聞きながらも、教育で私はもっとこの性交について教える必要があると思うんですよ。これもっと法務省と文科省でよく連絡取って、これ義務教育で教えないといけないと思います、倫理観だとか、この社会人としてのあるべき姿としてですね。今その規定が全く教育でないんですね。ですから、ちょっと価値観があやふやになっているという面がありますので、この点、質問通告していませんから質問は入れませんけれども、佐々木委員の質問聞いておって、私は教育の面でこれはしっかりしていかなければいけない、文科省との、法務省との連携が大事かと思うんですけれども、大臣の認識はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/173
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174・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、この法案が成立をしましたら、私どもといたしましては、このいわゆる性交同意年齢を引き上げる法改正の趣旨や内容について、文部科学省を含めて、関係府省庁、機関や団体とも連携しつつ、周知を、広報してまいりたいと思っています。
そして、教育の現場でという御指摘がありました。これは私どもの所掌範囲を超えますので、今日の御指摘を文部科学省にお伝えをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/174
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175・鈴木宗男
○鈴木宗男君 是非とも、法務省、文科省、連携してやれば済む話でありますし、やっぱり教育で、子供のときからやはりしっかりした社会人になるべく教えていくというのは私は大事なポイントだと、こう思っておりますので、今の大臣の答弁を是非とも文科省にもお伝えいただいて、連携して、より良い私は日本社会づくりというものを目指していただきたいと思います。
もう限られた時間ですから、私は、委員会で毎回、質問に立つたびに袴田事件を言っております。また、大臣の顔からすれば、またかという感じもするんですけど、私は、これはもう避けては通れない大人権問題だと、こう思っているんです。
そこで、大臣、五月二十九日にも三者協議行われましたが、検察の姿勢が示されていないんです。今度は六月二十日に三者協議があります。大臣、ただ一点なんです。検察が有罪立証するかどうかの判断に懸かっているんですよ。この一点なんです。これをはっきりすれば再審に向けて動くんですよ。どうか、袴田さん、八十七歳です。その袴田さんを支えているお姉さん、九十一歳です。どう考えても、人生限られているんですよ。
ここは是非とも、大臣、大臣としては、検察に方針を明らかにすれと言えば済む話なんです。難しい話じゃないんです。有罪立証の考えでいくのか、もう一つは、もう再審決まっているわけですから、それをのんでいくしかないわけですから、是非とも大臣、ここは大臣としての私はリーダーシップを発揮していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/175
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176・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、私は、鈴木委員がこの問題に本当に熱心に取り組んでおられるし、私も思いを共有しているところは正直あるんですね。だけど、法務大臣としての立場で検察との関係をどこまで私が踏み込めるのかという、そういう非常に難しい問題が立ちはだかっているということであります。
検察は、これから、もちろんどういう方針をするかということは明らかにすると思います。ただ、そのために、少し、これ従来からお話し申し上げているように、全く新たな審理を行うのがこの再審でありますので、その再審の方針を決めるに当たってはある一定の時間が必要なんだということについては、彼らも急いでいるとは思いますし、それから無用に引き延ばすという趣旨もないとは思っておりますが、ただ、それでも、全く新しい審理を行うことになるものですから、ある一定の時間が掛かっているということだと思いますので、私としては、彼らにこうしろああしろということではなくて、彼らが一生懸命やることを信じているということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/176
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177・鈴木宗男
○鈴木宗男君 大臣、大臣もいろいろ考えて言葉使っていると思いますけれども、私が言っているのは、指示すれだとか命令すれという話じゃないんです。三月十三日に再審判決出ました。二十日がタイムリミットで、特別抗告はしませんでした。それから、四、五、六、もう三か月ですよ。何で時間掛かるんでしょうか。我々はこの方針でいくんだと言えば済む話なんですから。そして、検察の主張があるならば、そう裁判で言えばいいんじゃないんですか。なぜ時間が掛かるかということ。
同時に、大臣、検察は法務省の一部なんです。何も特別な機関じゃないんです。今の大臣の答弁していると、検察に使われている話ですよ。法務省を預かるのは法務大臣なんですから。行政組織の一部なんです、検察は。この点、勘違いしないで是非とも対応してもらいたい。
もう時間が来ていますからこれでやめますけれども、大臣、方針を早く決めるというのが私は大臣の権限だと思っております。どうすれああすれじゃないんです、中身じゃないんですから。もう三か月たつ。どう考えても、世論的に見ても、時間が掛かり過ぎているぞという空気感があるわけですから、ここはやっぱり人としての判断も大事だ、このことを強く大臣から私は指導していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/177
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178・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 私がやはり、繰り返しになりますけど、直接こうしろああしろということを個別の事件について検察に言うということは慎重になるべきだと思っていますが、今日ここでの議論というものも検察はしっかりと見ていると思いますので、それで御容赦いただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/178
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179・鈴木宗男
○鈴木宗男君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/179
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180・川合孝典
○川合孝典君 国民民主党の川合孝典です。
私は、本日は、性的姿態撮影処罰等法の方から質問入らせていただきたいと思います。
先ほど牧山委員の質問にも一部ありましたが、航空機業界で客室乗務員さんに対するいわゆる盗撮の問題がこの間社会問題になってまいりまして、今回法律が改正をされるということで、航空業界でもその法改正に大変期待が集まっているところであります。したがって、今回の法律改正が今後実効性の高い対策につながるかどうかということが今後は問われてくると思いますので、具体的な事例について、今回の法改正によってどう変わるのかということについて少し確認をさせていただきたいと思います。
まずなんですが、法務大臣にお伺いしたいと思いますが、客室乗務員の盗撮に用いた機材、携帯電話ですとか、機材が押収されて、その機材に人が身に着けている下着のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分の撮影が確認をされた場合は、これはこの処罰法の処罰対象になるという理解でよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/180
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181・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 犯罪の成否は捜査機関が収集した証拠に基づいて個別具体的に判断されるべき事柄でありますが、一般論として申し上げますと、人が身に着けている下着のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分、この部分を撮影する行為が行われ、かつ、例えば、正当な理由がないのにとか、ひそかになどといった第二条第一項各号所定の要件を満たす場合には、性的姿態等撮影罪が成立し得るということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/181
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182・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
次の質問ですが、スカートの中を盗撮をするということ以外にも、胸部や臀部といったいわゆる性的な部位を撮影されたという申立てが一定数やっぱりあるということでありまして、今回この法案における性的な部位の定義は性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部ということになっておりますが、こうした部位が撮影された物証が確認された場合の当局の具体的な対応はどのようになるのかということについて、これは政府参考人にお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/182
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183・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お尋ねは個々の事案における捜査機関の活動内容に関わる事柄でございまして、一概にお答えすることは困難でございますが、あくまでも一般論として申し上げれば、捜査機関におきましては、刑事事件として取り上げるべきものについては、この性的な姿態を撮影する行為や、これにより生成された記録を提供する行為などを処罰するというこの本法案の趣旨を踏まえまして、法と証拠に基づいて厳正に対処するものと承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/183
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184・川合孝典
○川合孝典君 大臣に次の質問させていただきたいと思いますが、今回の改正法では未遂についての処罰も規定をされているということなんですが、実際に盗撮行為が行われたものの、人が身に着けている下着のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分の撮影に至らなかった、まあ盗撮に失敗したということなのかもしれませんが、そういう場合であっても、そういった行為が現場で発見されたことをもって処罰対象になるという理解でこれはよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/184
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185・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) これも犯罪の成否については個別に判断される事柄でありますが、一般論として申し上げれば、人が身に着けている下着のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分を撮影しようとして撮影機器を操作したものの、現に撮影して記録するには至らなかった場合であっても、実行に着手したと認められる場合には未遂罪として処罰対象となり得ると考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/185
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186・川合孝典
○川合孝典君 そこでなんですけど、実行に着手したという、いわゆる未遂ということについて、誰がこれはどのように立証するものなんでしょうか。これは政府参考人で結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/186
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187・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
個別事案における捜査の在り方につきましては、個々の事案の内容や証拠関係に基づいて判断されるべき事柄でございまして、一概にお答えすることは困難ではございますが、いずれにしましても、あくまでも一般論として申し上げれば、捜査機関においては、個別の事案における捜査や立証上の必要性を踏まえて適切に証拠を収集し、それらを評価するものと承知をしております。
お尋ねのような性的姿態等撮影未遂罪の嫌疑がある事件につきましても、例えば、被疑者の撮影行為についての防犯カメラ映像ですとか目撃者、あるいは被疑者が撮影行為をしている場合にはその現に撮影した映像、それにたとえ下着が撮影されてなかったとしてもですね、そういった映像など、様々な証拠を収集した上で、これらを適切に評価して対処していくものと承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/187
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188・川合孝典
○川合孝典君 今の答弁について確認なんですが、そのいわゆるビデオ映像等とおっしゃいましたけど、そもそも機内に、要は機内を撮影するビデオなんかないですよね。だから、機内で客室乗務員が盗撮をされたということをどうやって立証するのかということに対して今の御説明では現実的じゃないと思うんですけれど、機内でそういった問題が生じたときにはどうやって立証するんですか。ビデオ映像はないですよね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/188
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189・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) ビデオというのはその防犯カメラ映像という趣旨で申し上げたんですけれども、それがないとしても、目撃者がいらっしゃる場合にはその目撃者にお話を伺うということだと思いますし、その撮影行為をしているところを、それをしていたということをどう立証するかということで、別に映像がなくても、その第三者ないし、もちろん被害者本人がその撮影行為を目撃していれば、それが目撃者の供述ということになりますし、ということで様々な証拠が考えられますので、そういったことから、その撮影している行為があったということが証明できる証拠を収集する方法というのはあるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/189
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190・川合孝典
○川合孝典君 それが、例えば立証するためにはやっぱりファクトが必要なわけでありますので、その周りの方の証言だけでそれが証拠能力として認められるという理解でよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/190
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191・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 証拠の能力という意味でいいますと、いわゆるそのビデオ映像みたいな、その動かないものでなくても、人の記憶に基づいて、その目撃した証言という人の供述であっても証拠としての価値は一緒でございますので、ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/191
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192・川合孝典
○川合孝典君 しつこくこの話を実はさせていただいている理由は、従来から様々な法律や規制が当然あるわけでありまして、その規制に基づいてそれが適正に運用されていればこういった問題は起こっていないはずなんですが、にもかかわらず、要はこの盗撮行為というのは起こっているどころかむしろ増えているということでありまして、その背景に一体何があるのかということをきちっと検証した上で、それに対応した形でのいわゆる法の運用というものが結局求められているということなんだと思います。
現実問題として、客室乗務員の皆さんの御意見を伺っておりますと、要は判断に苦しむというか、これで本当に言っていいんだろうかということについても、繰り返し、その個別事案に対しては答えられないから一般論でというお話をされますけど、そこがあるがゆえに、要は、被害に遭ったと疑わしき事例についても言いたくても言えないような状況が生じてしまっているということなんです。
そうしたことを踏まえてこの問題にどう対処していくのかということが必要なわけでありますし、同時に、今回せっかくこの法律改正することで、いわゆる盗撮行為に対しての処罰規定を入れたということなのであれば、それが適正に運用されるようにするために、条文の解釈だけではなくて、運用を具体的にどうするのかということ、ここまで踏み込んで議論しなければいけないと私は思うんですけれども、済みません、大臣、通告いたしておりませんけど、この点について大臣の御所見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/192
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193・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) おっしゃっている意味はよく分かるわけでありますが、一般論、一般論と申し上げていますのは、私がここで答弁したことがそのまま裁判で用いられることになるということでありますので、余り具体的な運用に踏み込むのは難しいという側面もあるので、一般論でお答えをさせていただいているわけでありますので、そこはちょっと御容赦いただきたいなというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/193
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194・川合孝典
○川合孝典君 ただ、例えばガイドラインですとか、明示的に、こういう場合にはこういうふうにしてくださいといったようなことを要はお示しすることは可能だと思うんです。疑わしきは取りあえずちゃんときちんと申告してくださいということを言っていただけるだけで現場の方々は非常に助かるということなんで、その辺りのところは是非検討をいただきたいと思います。
大臣がおっしゃったことが法的拘束力に次ぐ拘束力を持っているということは十分承知した上で私自身も質問させていただいておりますので、是非、大臣には、その点よろしくお願いしたいと思います。
次の質問、国交省さんの方に確認をさせていただきたいと思いますが、盗撮行為や盗撮未遂行為は、航空法の施行規則で定められている、乗務員の職務を妨げ、安全の保持、乗客の財産の保護、秩序、規律の維持に支障を及ぼすおそれのある行為に該当するものと考えられますけど、この理解でよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/194
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195・平井一彦
○政府参考人(平井一彦君) お答えいたします。
委員御指摘のございました航空機内の盗撮行為や盗撮未遂行為につきましては、乗務員の職務を妨げることに該当する場合等には航空法上の安全阻害行為に該当するものと考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/195
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196・川合孝典
○川合孝典君 盗撮行為はその行為に当たりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/196
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197・平井一彦
○政府参考人(平井一彦君) その行為自体が乗務員の職務を妨害することなどに、いわゆる安全阻害行為等に該当するというふうに判断できる場合には該当するものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/197
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198・川合孝典
○川合孝典君 この航空法の施行規則があるにもかかわらずこの問題が解決しない理由について、じゃ、国土交通省さん、どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/198
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199・平井一彦
○政府参考人(平井一彦君) まさに、盗撮行為によって乗務員の職務をどの程度阻害するかというふうなところの具体的な指針等をやはりより明確にしていくということが必要だと思っておりますので、本法案成立の際には、関係省庁とも連携の上、しっかりとしたマニュアルを作成して、そこの対応をしっかりやっていきたいというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/199
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200・川合孝典
○川合孝典君 今御答弁されたことをもう一度後で確認していただければと思うんですけれども、その盗撮が疑われる行為をしたと認められる場合には該当するものと考えられるというニュアンスで要は御答弁をされましたけど、盗撮は、盗撮自体は罪ですよね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/200
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201・平井一彦
○政府参考人(平井一彦君) まさに、航空法に規定しておりますように、職務を妨げ、あるいはその規律の支障に、おそれの、及ぼす、ある行為ということに該当する場合には、まさに航空法上の安全阻害行為に該当いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/201
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202・川合孝典
○川合孝典君 職務を阻害する行為、写真を撮っただけで職務を阻害する行為に当たるかどうかということをおっしゃっているわけですけど、それだけでいえば、別に物理的に何をやっているわけでもありませんから、盗み撮りしているだけですから、職務上何も影響ないですよね。この解釈のところで現場の皆さんが困っていらっしゃるんですよ。分かりますか。
だから、盗撮は罪なんだということで、そうしたことが疑われる場合には、まずは申立てを行った上で、仮にそれ、事実がないのであれば、そのときには、要は容疑が疑われた方々の身分を回復するための様々な措置を講じなければいけないかもしれませんけれども、そういう行為が疑われるときにはまずは言いなさいということを国土交通省さんとして言えるかどうかという、ここの部分だけで全然変わるんですよ。
だから、今の答弁では、法律が変わったって現場は何も変わらないということだと私は思いますよ。その点も含めて、ちょっときちんと御検討いただけないですか、ここは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/202
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203・平井一彦
○政府参考人(平井一彦君) 航空局としましては、これまでも航空業界とも協力して航空機内の撮影ルールについて注意喚起を行ってございますが、本法案が成立した際には、盗撮行為自体が犯罪になったとする改正内容を周知するなど、航空業界や警察庁等と連携して盗撮行為の未然防止に努めていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/203
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204・川合孝典
○川合孝典君 ちょっと済みません、言い方がきつくなったかもしれませんので、そこはおわびをしなければいけないかもしれませんけれども。
これまでも、もちろん取組としてはいろいろと配慮して行おうとして努力されてきたことは分かるんですよ。でも、結果から見ると、それには何の、実は余り効果がないというか、抑止力にはなっていないということなんですよね。そのことを踏まえて今回この法律が改正をされたということなわけでありますから、この改正された法律の趣旨をきちんと理解した上で、現場でその改正法に基づいて対応して、運用していただけるようなことを、どう正確に国土交通省さんとして航空業界の皆さんとお話をされるのかということ、ここができるか、やるかやらないかで、法律改正したって何の意味もなくなっちゃいますから、そこだけはよろしくお願いをしたいと思います。
時間、ほぼなくなってまいりましたので、私の質問、本日はこれで終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/204
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205・仁比聡平
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
公訴時効の延長特例に関して、先週金曜日の本会議代表質問で、私が、本法案によっても、被害をようやく認識して捜査機関に相談した時点で公訴時効が成立しているという事態が起こるのではありませんかと質問したのに対して、大臣は、御指摘のような事態が生じないとは言えませんとお認めになっておられます。
この問題にも関わるんですが、午前中の参考人質疑で、武蔵野大学の小西先生が参考人として、法律がモデルとしてきた被害者像は現実と懸け離れていると厳しく指摘をされた、そのことはこの改正案にも刺さっていると思うんですよね。特に、公訴時効に関わって、PTSD診断の平均持続期間が百十か月を超えているというこの知見というのは、私は重く受け止めるべきだと思います。PTSDと診断され続ける平均の期間だけでも十年になると。
となると、もちろん個々の被害者によって様々な状況があるわけですから、本会議で私が御紹介をしたSpringの二〇二〇年実態調査にいう、挿入を伴う本来重大な性被害を被害と認識するのに二十六年以上掛かったという方が三十五人、三十一年以上掛かったという方も十九人ある、あるいは被害の記憶そのものを長期にわたって喪失しておられた被害者もいらっしゃると。これが性被害の人格に対する深刻なダメージ、侵襲の重さなんだというところに立って、附則、衆議院で修正をされましたけれども、二十条二項に言う性的な被害を申告することの困難さというこの問題をちゃんと捉えていく必要があると思うんですね。
そこで大臣に、この性被害、とりわけ幼少期、思春期の性的加害が被害者の人格にどんな負の影響を与えると法務省としては認識しておられるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/205
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206・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 大事な御指摘だと思います。
性犯罪につきましては、一般にその性質上、被害申告が困難であることなどから、他の犯罪と比較して類型的に被害が潜在化しやすいという特性がございます。
本法律案の立案に先立って行われました性犯罪に関する刑事法検討会や法制審議会の部会におきましては、性犯罪の被害者心理や精神医学についての知見を有する有識者が委員として参画したほか、若年時に被害に遭った性犯罪の被害当事者の方や性犯罪被害者に関する知見を有する専門家等からヒアリングを実施したものと聞いています。
そして、御指摘の幼少期等における性犯罪の被害の特性といたしまして、反復的、長期的な被害の影響で解離が生じ、被害についての記憶が失われる、犯罪に遭った場合もそれを性犯罪の被害と認識することができない、PTSDを発症しその症状が重いため被害について話すことができないといった点があり、それらが原因で被害を外部に表出することができなかったり、表出するのに時間を要する場合が多いといった御指摘がされているものと承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/206
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207・仁比聡平
○仁比聡平君 午前中も申し上げたんですけれども、六年前の法改正のときに山本潤参考人がこの場でお話をされた、今、そうした突き付けられてきた認識が法の趣旨として大臣の答弁として語られるようになったと、この六年間の間の隔世の感を私は本当に深く感じるんです。
なんだけれども、大臣も、今の答弁、そういう指摘がされているという、法務省自らが調査をし実態として整理をしてきているものではない、専門家がそういう指摘をしてきていると。もちろん、法制審の場でされているんですから、大変重いものなんですよ。なんだけれども、そういう指摘がされてきているということがオーソライズされつつあるというのが、まだ今の、今日の状況だと思うんですよね。
午前中、小西参考人は、そのPTSDというお話と併せて、急性期解離反応というお話もされました。感情、感覚が麻痺してしまう、離人感、非現実感、あるいは、被害が長期にわたる場合は解離の慢性症状に加えてマインドコントロール様の支配が被害者に対してなされている状態になると。これは、被害時なぜ抵抗しないのかについての説明として紹介をされたんですけれども、これ、なぜ申告できないのかというこの問題にも関わる知見だと私思うんですよね。
法制審の議論の中で、脳科学の専門家の桝屋二郎准教授のヒアリングが行われていますけれども、小児期逆境体験が健康や寿命に及ぼすメカニズムというテーマで、幼い頃に受けたいろんな逆境体験、心の傷が神経発達の混乱を生んで、その神経発達の混乱のために、その後様々な社会的障害、例えば認知が少しほかの人とずれていったり、情緒面で落ち着かなくなっていったりと。そのことが更に社会的な不適応を生ずることになって、健康を害する。例えばお酒をすごく飲むとか、自傷に及ぶとか、性的な逸脱が出てくるなどの問題行動を経て病気の状態になり、更に不適応が深まってしまう、最終的に早く亡くなるなどの、アメリカにおける大規模な調査によって得られた知見を御紹介になっています。
あるいは、様々なそうした虐待を受けると脳の一部が萎縮をしてしまうということ、そもそも人の脳の成熟というのは、生後二十年以上、研究によっては二十五年以上掛かって実っていくと、こうした知見が科学的に明らかになってきているわけですよね。
ですから、これを専門家の方から伺って、そうですねというだけじゃなくて、こうした観点を持って政府が私はしっかり実態を調査するということが必要だし、附則二十条の二項が求めている必要な調査というのはそういうものでなければならないと思うんですが、大臣、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/207
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208・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 本法律案では、今御指摘のように、衆議院における御審議の結果、附則が修正されて、政府において、施行後五年を経過した場合に施策の在り方について検討を加えること、より実証的な検討となるよう、性的被害の申告の困難さ等について必要な調査を行うことが定められるとしたわけであります。
我々といたしましては、こうした御審議の結果を踏まえて、本法律案が成立した場合には、御指摘の実態調査の方法や範囲などについても、関係府省庁とも連携し、適切に対応してまいりたいというふうに考えているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/208
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209・仁比聡平
○仁比聡平君 衆議院やあるいは本会議での答弁からちょっとだけ踏み込まれて、方法や範囲という調査の方向性について御答弁になったことは大事なことだと受け止めたいと思うんですけれども。
そのことに関わって、本会議でも御紹介したNHKが昨年の三月から行った被害実態調査について、主要な三枚だけお手元に、皆さんにお配りいたしました。これ、僅か一月半で三万八千三百八十三件もの方々が、そして、その多くの方々が初めて回答しますと、そういうふうにお答えになってなされたものということで、とても大事な調査だと思うんですね。被害に遭ったときの年齢は、十代が五四・三%、十歳未満が二〇・三%で、二十歳までの間に七四・六%の方々が被害に遭っている。平均でも十五・一歳と。
こうした中で、たくさんの声がここに寄せられていますから、定性的な意味での被害者調査、エピソードの調査という意味でも極めて画期的といいますか、とても大切なものなんだと思うんですけれども、こうした大規模な国民的な調査というのをこれまで法務省として行ってこられたことはないと思うんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/209
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210・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 御指摘のような、いわゆる国民に向けてこういったことについて直接お尋ねするような調査というのは行っていないと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/210
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211・仁比聡平
○仁比聡平君 これまで私も求めてきましたけれども、検察が不起訴にする事案の中に様々な、今申し上げているような状況もあって不起訴になっているという事案もあるのではないですかという調査を求めてきましたが、これは刑事局長、どんな成果を上げているんですか。
不起訴事案についての集積と、その一定の分析をして、この間の検討会などで述べておられると思うんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/211
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212・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 御指摘の点につきましては、性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループにおきまして、御指摘のようなことに、実態調査に関連する調査の結果を収集したり被害当事者の方からヒアリングを実施するなどしたものでございまして、そういったことを踏まえて本法案の、法律案の作成に至ったというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/212
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213・仁比聡平
○仁比聡平君 もう今日時間がありませんから、詳しくはそうした調査を皆さん当たっていただければと思いますけれども、つまり不起訴事案の調査については一定されていないわけじゃない、検証はされているということがこの六年間の間に行われたんですが、結局、アメリカが先ほど御紹介したような大規模な国民的な調査というのは、日本社会で行われたことがないんですよ。そこに、著しい暴行、脅迫が必要だとか、抗拒不能にならなきゃ駄目だとかいうみたいな身勝手な規範ですね、これが被害者を苦しめるという状況になってきて、それが社会の中に一定沈殿しているといいますか、規範化されちゃっているというところを私打ち破っていかないと、性犯罪の被害者が正当にその被害を回復していくということはできないんじゃないか、だからこそ公訴時効の期間はもっと延長しなきゃいけないんじゃないかと。
ドイツではそうした被害調査が行われて、時効、公訴時効は三十歳でしたか、まで動かないというふうになっているんですが、そのことについての認識を法務省に伺うと、ドイツ法がそうなっているということは認識していますという御答弁にどうやらとどまりそうなので。ですので、今回の法改正において法務省が、大臣もですけど、唯一挙げておられる内閣府の性暴力に関する調査、令和二年度で申告までに五年間というような大臣答弁もありますけれども、その調査についてちょっとお尋ねをしたいと思うんですけれども。
配付資料の続きに調査の概要をあえてちょっと紹介をしました。これ、元々DV防止法だったり男女共同参画基本計画だったり、そういうものに基づいて、統計法的な一般調査として行ってきているものなんですよね。ですから、性刑法の改正をどうすべきかということについての深掘りをした調査ではない、元々が。その項目の中で、内閣府にお尋ねをしますけれども、相談ができない、やっと相談ができても相当な期間が掛かっているという実態は明らかだと思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/213
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214・畠山貴晃
○政府参考人(畠山貴晃君) お答え申し上げます。
内閣府におきまして令和二年度に実施した男女間における暴力に関する調査では、無理やりに性交等をされた被害経験について調査をしており、無理やりに性交等をされた被害経験があったと回答のあった百四十二人について、複数回答可として被害の相談経験を尋ねているところ、いずれかの相談先に相談した方が五十二人、どこにも誰にも相談しなかった方が八十五人となっております。
相談したと回答された五十二人につきまして、複数回答可として相談までの期間について尋ねているところ、三日以内が二十四件、四日から一か月未満が十一件、一か月から一年未満が十六件、一年から五年未満が五件、十年以上が五件となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/214
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215・仁比聡平
○仁比聡平君 時間が来たんで、申し訳ないんですけれども、大臣、こうした内閣府の調査のこれまでの積み重ね、蓄積に、しっかりお願いもしてですね、法務省自らで国民的な大規模な調査ってなかなか難しいと思うんですよ。だから関係省庁と連携してと大臣おっしゃっていると思うんですよ。で、その主要な相手は、私、今御答弁された男女共同参画局だと思うんですよね。大臣から是非お願いして、そういう調査をやりたいとおっしゃるべきだと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/215
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216・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 先ほど御答弁申し上げたように、附則、衆議院の審議の結果の附則におきまして、より実証的な検討となるよう、性的被害の申告の困難さ等についての必要な調査を行うことと定めておりますので、先ほどの答弁と重なりますけど、御指摘の実態調査の方法や範囲などについて、関係府省庁とも連携し、適切に対応してまいりたいというところを深く理解していただきたいなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/216
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217・仁比聡平
○仁比聡平君 更に踏み込んで、速やかに調査を始めるべきだということを申し上げて、今日は質問を終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/217
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218・杉久武
○委員長(杉久武君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後三時四十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X02120230613/218
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