1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年五月二十四日(水曜日)
午前十一時十三分開議
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○議事日程 第十一号
昭和四十二年五月二十四日
午前十一時開議
第一 国務大臣の報告に関する件(中小企業基
本法に基づく昭和四十一年度年次報告及び昭
和四十二年度中小企業施策について)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
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001・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X01119670524/1
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002・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、国務大臣の報告に関する件(中小企業基本法に基づく昭和四十一年度年次報告及び昭和四十二年度中小企業施策について)。
通商産業大臣から発言を求められております。発言を許します。菅野通商産業大臣。
〔国務大臣菅野和太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X01119670524/2
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003・菅野和太郎
○国務大臣(菅野和太郎君) 中小企業基本法に基づきまして、先般、政府が国会に提出いたしました「昭和四十一年度中小企業の動向に関する年次報告」及び「昭和四十二年度において講じようとする中小企業施策」の概要を御説明いたします。
御承知のように、四十年末ごろから回復過程に入ったわが国経済は、四十一年に入ってから次第に順調な上昇過程をたどっております。このような経済全般の回復とともに、中小企業の生産、流通活動は活発化し、設備投資も次第に増勢を強めています。しかしながら、一方では、経営面での回復は十分でなく、企業倒産も高水準で推移しています。経営面での回復が十分でないのは、人件費、資本費が上昇基調で推移しているのに対して、生産性の向上によってこれを吸収するまでに至っていないためでありますが、これは、労働力需給の逼迫、需給構造の変化、市場条件の変化等の中小企業をめぐる経済的諸条件の変化に対して、中小企業が十分適応できていないことによるものと思われます。
さらに、このような経済的諸条件の変化は、中小企業における構造変動をもたらしております。
中小企業の生産は、昭和三十年代においてかなりの伸びを見ましたが、大企業の生産の伸びが中小企業の生産の伸びを上回ったため、工業生産に占める中小企業の比重は若干低下しております。しかしながら、この間において生産の迂回度が高まり、消費が高級化、多様化したため、比較的中小企業の比重が高い分野での成長が高くなっており、中には、中小企業から大企業へと成長を遂げるものもかなり見られております。したがって、今後においても、経済の成長に伴い、中小企業の発展の可能性は大きいものと考えられます。
また、下請小規模産地等の主要な中小企業分野においては、経済的諸条件の変化により、下請企業における親企業との取引関係の不安定性、小規模企業の地位の低下、産地企業の生産品種の転換等の構造変動が進展しております。
さらに、商業におきましても、卸売り業では経営規模の拡大傾向が見られ、小売り業でもスーパーマーケット等の大量廉価販売店の発展が見られております。しかしながら、わが国商業は、全体としては、いまだ経営効率の低い小規模企業が圧倒的に高い比重を占めており、このため、消費者物価安定の見地からも、中小商業を含む流通機構全体の早急な近代化が特に要請されております。このように、中小企業は種々の問題に直面しており、今後においても、経済的諸条件の変化に対応した中小企業者の自主的な適応努力を中心に、その解決をはかることが必要であります。
政府としましては、このような状況に対応して、昭和四十一年度においては、構造変動に即応した中小企業の近代化のための施策を一そう充実するとともに、中小企業をめぐる環境の整備を進めました。また、中小企業の大部分を占めている小規模企業については、きめのこまかい考慮を払って、その体質改善に努力いたしました。
これらの施策は、中小企業者の努力と相まって、一応の効果をあげておりますが、前述のごとく、中小企業がきびしい構造変動に直面しており、特に、資本自由化問題にも対処しなければならないことにかんがみ、今後は、事業の協業化、共同化等による構造改善対策を中心として、諸対策の総合的な推進をはかる必要があります。
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昭和四十二年度においては、このような認識に基づいて、次のような諸施策を推進する所存であります。
まず第一に、中小企業の生産性の向上をはかり、中小企業をめぐる経済環境に即応した存立基盤を確立するため、業種ごとのビジョンを策定するとともに、協業化事業に対して、資金助成と指導とを有機的、総合的に実施する機関として、中小企業振興事業団を創設し、また、協業化を推進する新たな法人組織として、協業組合制度を設けることとしております。
第二に、中小企業の経営管理の合理化及び技術水準の向上を推進するため、指導事業を一そう充実するとともに、特に、総合的な指導体制を整備するため、都道府県ごとの中小企業総合指導所の増設強化をはかることとしております。
第三に、中小企業の労使関係の適正化、従業員の福祉の向上、労働力の確保等のための労働対策を拡充するほか、中小企業の需要増進をはかるため、輸出の振興につとめるとともに、官公需確保対策の強化につとめる所存であります。
第四に、下請企業の問題につきましては、下請代金支払遅延等防止法の運用強化等により、下請取引の適正化をはかるとともに、下請企業振興協会を活用して、下請取引のあっぜん、指導を通じて、受注の安定を確保することとしております。
第五に、小規模企業の育成振興には特別の配慮を払うこととし、個人企業の家族専従者に対する完全給与制の実施、小規模企業共済制度の拡充、経営改善普及事業の強化等の所要の施策を講じます。また、立ちおくれの目立つ流通部門の近代化をはかるため、中小企業振興事業団、設備近代化資金等により、重点的に助成することとしております。
第六に、政府関係中小企業金融機関の貸し出し規模の拡大、無担保保険及び倒産関連保証の特例の恒久化等の信用補完制度の充実等により、金融の円滑化を進めるほか、税制面におきましても、個人企業の家族専従者に対する完全給与制の実施、協業組合に対する特別措置等の改善を行なうこととしております。
以上、「昭和四十一年度中小企業の動向に関する年次報告」及び「昭和四十二年度において講じようとする中小企業施策」について、その概要を御説明した次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X01119670524/3
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004・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。近藤信一君。
〔近藤信一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X01119670524/4
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005・近藤信一
○近藤信一君 私は、日本社会党を代表して、ただいま報告のありました「中小企業に関する年次報告」について、総理並びに関係大臣に若干の質問をいたしたいと思います。
この報告は、中小企業基本法第八条によって提出されたものでありまして、政府は、毎年国会に、中小企業の動向及び中小企業に関して講じた施策と、動向を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成して、提出することになっているのであります。動向については毎年よく勉強されて、今回も実に詳細な報告が出たわけであります。ことに、中小企業の構造的変化を綿密に調査し、従来欠如していた商業に関する調査にまで及んでいることには、敬意を払うのであります。しかしながら、大方の批評を見ると、中小企業に対するビジョンが描かれていないという非難があるのであります。将来の問題については、基本法では、講じようとする施策を述べろとあります。そこで、政府は、四十二年度の予算と法案だけを書いて、失礼ながら無味乾燥な小さなパンフレットを一冊つけて出してまいりました。この中にも本年度の政策宣伝はあるわけですけれども、中小企業の将来の姿や運命については全く触れていないのであります。何もその年度だけに限る必要はないのではないか。もっと長期的にわたっての施策を明確に打ち出し、基本法の前文にもあるとおりに、「中小企業の進むべき新たなみちを明らかにし、中小企業に関する政策の目標を示すため」にも、この白書において中小企業のビジョンを示すことが最も肝心なことではないか。先ごろの経済審議会の答申である「経済社会発展計画」の中でも、「中小工業の業種別長期ビジョンを確立し、業種形態の実情に応じて施策を重点的に実施する」とあるだけでございまして、まことに不明確であります。
衆議院で、佐藤総理は、わが党の永井議員の質問に対して、「私からは、一中小企業の位置づけ、あるいは今後の見通しにおいての中小企業のあり方をお尋ねのようなので、その点でお答えして、その他の点は各大臣の答弁に譲る」といたしまして、御答弁があったのでありますが、実は、その中身は何もなくて、位置づけも、見通しも、少しもお答えになっていないのであります。そこで、端的にお伺いしたいのでありますが、たとえば、五年先、十年先に、日本で中小企業の数は現在のような数を維持できるだろうか。従業者数や生産高でどんなシェアを占めることになるだろうか。総理は、さきの答弁で、「中小企業の方々が、政府の施策とこれへの協力によって、必ず近代的企業としてりっぱに成長することを確信する」と述べていますが、現在でさえ過剰と言われる中小企業者が、みんな近代的企業に成長できるのか。生産過剰にならないのか。総理のお考えを承りたい。いまはなき池田元首相は、大胆に、中小企業者が倒産し、思い余って自殺する者が五人や十人出てもやむを得ないと言い、また、農業のビジョンについて、農業人口は十年後には五分の二ぐらいになるだろうとまで言っていた。そういう点では、佐藤総理の答弁はきれいだが、この前の批評にあったように、ヤマブキ式の答弁である。総理の所見を承りたいのであります。
次に、このビジョンとも関連するのでありますが、当面する国際的諸条件の変化と中小企業のあり方について、総理に伺っておきたいのであります。御承知のとおり、最近日本で開かれたエカフェの年次大会でアジア諸国の開発が問題になって、日本もアジア諸国の開発に大きな役割りを負わねばならないのでありますが、そういうアジアが、当面、工業化の道は、日本と競合するような業種の発展が予想され、すでに香港や台湾にその例が見られます。これら発展途上国の開発と発展とにらみ合わせて、日本の中小企業がいかにあるべきか。業種転換すべきもの、あるいは高級品化すべきものなどが当然にあるはずですが、いかなる対応策を持つべきか。また、最近妥結したケネディ・ラウンド(関税一括引き下げ交渉)に見ましても、今後、各国が関税を引き下げて国際分業を一そう盛んになることが予想されますが、その中で日本の中小企業はいかなる運命をたどらされるか。そしてまた、現在日本の最大関心事である資本の自由化において、外資がねらっている業種は何であるか。大企業と中小企業では受ける影響にいかなる差があるか。そして、日本の中小企業はどんな変貌をしいられるのか。そういう点について、総理の御意見を承りたいのであります。
次に、年次報告は、四十年、四十一年における中小企業の動向を、生産、輸出、価格、設備投資、金融、経営など、各方面から分析しておりますが、ここで目につくことは、景気は立ち直り過程に入り、順調な回復をたどっているにもかかわらず、中小企業の収益の回復がなお十分でなく、企業倒産がふえていると指摘していることであります。中小企業の倒産件数も、四十一年は、不況の年といわれた四十年を上回る六千百八十七件と、史上最高という数を示しておりますが、本年に入っても、まだ倒産旋風は衰えを見せておりません。経済が安定し、景気が上昇している中で、今日でも倒産していく企業が多いということは、どこに原因があると考えているのか。
年次報告では、工業における各業種を分けて、特に多い中小企業業種、大企業も中小企業も同様のシェアを持つ共存業種、大きなものが大部分の大企業業種として、その消長を分析していますが、これによりますと、中小企業の業種が、業種全体としては最近に伸び率が高い。しかし、同じ業種の中でも、いずれかと言えば、規模の比較的大きなものが伸び、あるものは大企業にもなり、現在では業種そのものが大企業業種となっているものもあるというのであります。こう見てまいりますると、中小企業のやっている業種が決して需要の少ないものではないが、その中で栄えるのは大企業ないし中堅企業である。したがって、業種としては栄えても、大部分の中小企業、ことに小規模企業は、没落転換等の運命にもなるということです。こういう事実が読み取れるのですが、それでよいのかどうか。そういう企業が協業化やまた共同化で助かるかどうか。とても全部救うことは困難で、大部分は倒産の運命ではないか。通産大臣の御意見を承ります。
次に、中小企業の構造改善ということで、共同化、協業化、集団化等、中小企業の高度化政策をとっております。本年度は指導と助成を有機的かつ総合的に実施すると称して、中小企業振興事業団を創設することをもって中小企業対策の最重要施策としております。中小企業者は「事業団さえできれば」と聞かされていると思います。けれども従来の、行なってきた高度化、近代化の政策は、中堅企業を対象として行なわれてきているのが、残念ながら実情なのであります。したがいまして、政府が新しく振興事業団をつくっても、それは結果的には中堅企業——優等生の育成政策になりかねないのであります。そして、優等生と他の中小企業、特に小規模企業との間の格差をますます拡大することになり、必然的に多くは没落転換を余儀なくされるのではないでしょうか。先ほどの経済計画を見ましても、経済の効率化ということを大きな政策目標としております。中小企業についても、近代化、高度化を推進すべきであるとしながら、他方で「経済全体の効率化のためには、一部企業の事業転換を円滑にはかる」と述べているのであります。このことは、近代化政策に乗ることのできないような、きわめて数多い中小企業、特に小規模企業は、整理、転廃業を余儀なくされるであろうことを示唆していると思うのでありますが、いかがでしょうか。また、転換指導などはいかにして行なうのであるか。通産大臣からこの点を明確に御答弁を願いたいのであります。
次に、資本の自由化については、先ほども申し上げましたように、中小企業として最近その恐怖を感じておりますが、外資が直接中小企業業種をねらわない場合でも、部品を輸入で持ち込んで組み立てる場合、下請に日本の中小企業を使う場合にも、優良な下請企業を傘下におさめ、既存の系列を混乱さすおそれがあり、さらに、外国企業が技術従業員の引き抜きを行なうというように、直接、間接に、中小企業に大なり小なりの影響を持つと予想されるのであります。一体、今後どんなスケジュールで自由化を行なうつもりか、それについて中小企業への影響を最小限に食いとめる方策をいかに考えているのか、政府のお考えを明らかにしてほしいのであります。それと同時に、外資に対し、日本の企業は、わが国の高利で外国の低利に対抗しなければならなくなりますが、中小企業はいまでも高利に悩んでおり、倒産原因にも金利負担の増大が大きく叫ばれている状態なので、中小企業の金利負担の軽減について、大蔵大臣はどう考えておられるのか。そのため、本年度も政府関係機関の貸し付けワクの拡大をはかるというが、どれもこれも一律に一八・三%増という芸のない形をとっていることに見ても、政府の施策に自信のないことがうかがわれるのでありまして、一段の奮起を期待したいのであります。政府は中小企業金融制度の改革を目ざしているらしいのですが、その方針に対して、得意先たる中小企業を忘れて、単なる金融機関のための改革を意図しているという批評さえありますが、政府の方針を承りたいのであります。
最後に、基本法にいう事業活動の不利の是正という点について、特に下請を中心にしてお伺いいたします。
申し上げるまでもなく、下請事業者は常に弱い立場にあり、いろいろな形で大企業の犠牲を転嫁されております。下請単価の切り下げ、支払い代金の遅延等で、下請企業は泣かされておりますが、下請代金支払遅延等防止法は改正後も依然として、ざる法で、大企業側の下請企業に対する、ものの考え方を変えさせる必要があるので、昨年、同僚永岡君は「総理みずから大企業を説いてこの問題に積極的態度を示すべきである」と主張したのであるが、総理はこれにいかにこたえているか。さきに経団連へ行って演説されたようであるが、その際、下請問題の解決を大企業に要請したかどうか、総理の熱意を伺いたいのであります。これに関し、最近、商工会議所が中心となり、大企業と下請企業の関係者が集まって、下請取引の公正なルールというべきものをつくり、その順守を各方面に呼びかけたことがあるけれども、政府もこれが推進に努力すべきだと思います。しかし、このようなことを業界の自主的なルールにまかせようとすることは政府として怠慢というべきではないか。やはり総理のお考えを伺います。
下請代金の手形による支払いは、その手形サイト長期化の傾向があるため、昨年標準手形サイトをきめ、機械、鉄鋼関係は百二十日以内、繊維関係九十日以内としておりますが、これが守られているかどうか、その他の業種についても標準手形サイトを設定される用意があるかどうか、承りたいのであります。
以上で私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X01119670524/5
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006・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 近藤君にお答えいたします。
ただいま、提出いたしました白書について、よく読んでいただいたようで、まず、ほめられましたことに厚くお礼を申し上げます。
しかし、御指摘にありましたように、この白書は中小企業基本法第八条に基づいて提出したものでございます。しかして、ただ単に、四十年、四十一年、そういう短期的なものではございません。中をごらんになれば、長期的な、同時にまた、基本的な問題を取り上げております。たとえば、労働集約的な経営から今度は資本の集約的経営に移る必要があるのだとか、あるいは事業の共同化、あるいは協業化をはかるべきだとか等々、近代化をはかるにいたしましても、一年だけででき上がるものではございません。そういう意味で、やはり一つのビジョンを持ち、そして中小企業全体の今後のあり方についての一つの方向を示している、かように私は思っておりますので、その点ではどうか御理解をいただきたいと思います。
また、しからば、今後の事業者は一体どうなるかというお話でありますが、具体的に申せば、昭和三十五年時分、事業者数は三百五十五万といわれておりました。それが三十八年になりますと三百八十八万といわれておる。四十一年に実に四百二十万。事業者数はただいま申し上げるように順次増加いたしております。倒産その他のことが云々されておりますが、事業者数はふえている。また、従業員数も千八百万、これは三十五年の統計でありますが、千八百万をちょっと越しております。それが三十八年になりますと二千百万、これは越している。また、四十一年は二千四百万、これもふえております。しかし、全体から産業従業者の割合といいますか、比重を見ますると、農林水産業を除くと、一般的にその比重は——ウエートは、中小企業者数のほうがこれはやや下がっております。まあ、それだけ経済は発展しておる。しかし、この従業員の数はふえているが、総体に対するウエートは下がっている。かように御了承いただきたいと思います。また、売り上げ高はどうなっているかと申しますと、これも経済の発展につれまして、売り上げ高も増進しております。しかし、これも長期的に見ますると、わずかではありますが、売り上げ高に占める中小企業の比重、これまた低下の傾向がございます。また、この中小企業は、生産の伸びのぐあいはどうかというと、大企業の生産の伸びを上回っている。そこで、経済的な諸条件の変化、これに十分適応していくならば、中小企業の成長の期待は大きい、こういう結論になるのであります。これは統計の数字から、ただいまのような結論を出したのであります。
そこで、たいへん御心配になっていらっしゃるのですが、中小企業全部が近代化される、そうすると、過剰生産になるのではないかと、こういうお尋ねであります。中小企業対策は、業種、業態、規模の実態に即応して近代化を進めていくということでなければならぬと思います。特に、そういう際に力をいたすべき、注意すべき重点は、過当競争を防止する、排除する、こういうことにあると思います。そういうことで事業活動を行なっていけば、ただいま申し上げるように、協業化あるいは共同化、こういうものも進んで、過当競争も防止できる、中小企業の存立の基礎ができる、かように私は考えておるのであります。そういう意味で各種の法律も整備されているのであります。
そこで、最近の発展途上国との関係において一体どうなるのかと、こういうお話であります。この辺もしばしばいわれておることでありますが、わが国の中小企業の扱う商品、これは高級化しなければならない。経営も技術導入をして、そうして近代化をはかって、発展途上国のそれよりも絶えず一歩先んずると、こういう心がけで整備していかなければならぬと思います。
ケネディ・ラウンドについてのお話でございます。これは貿易量が増大する、自由貿易が拡大されると、こういうことで効果はございますが、同時に国際競争は非常に激化すると、かような覚悟をしなければならぬと思います。そういう意味で、先ほど来申しましたような中小企業の対策、近代化等を、積極的に進めていくことは、この際必要でございます。
また、外資導入等について、これは私がお答えするまでもなく、担当大臣からお答えすると思いますが、この外資導入の問題については、政府も近くその基本的な方針を決定いたします。これは、それぞれの審議会からの答申も出てくるようでありますから、来月上旬あるいは中旬までには政府の基本的態度を国民に示すつもりでございますが、とにかく、いろいろな事態が起こるだろうと、いまも言われましたように、下請産業を利用してあるいは組み立て工場等ができるではないか、そういうようなことについても対策があるかというような具体的な御質問でございます。これらにつきましても、十分、担当省においては対策を練っておるような次第であります。
また、大企業と下請産業との関係についていろいろ具体的なお尋ねがございました。どうも政府が怠慢ではないか、あるいは具体的に経団連等に出かけて、そういう指示をしていないじゃないか等々のお話がございました。しかし、私はこの大企業と下請産業と、その二つの関係は、唇歯輔車とでも申しますか、いわゆる共存共栄の立場にあるそれぞれの産業が、それぞれ所を得て栄えるところに、この大企業と下請産業の関係が樹立されておるのだ、かように考え、あらゆる機会にその点を説明いたしておりますので、今後のあり方等についても十分監視していただきたいと思います。
以上お答え申し上げます。(拍手)
〔国務大臣菅野和太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X01119670524/6
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007・菅野和太郎
○国務大臣(菅野和太郎君) 中小企業の問題につきましては、大体おもな点は総理からお答えになりましたから、私は、それを補足する意味で、中小企業の問題についてお尋ねになったことに対してお答えいたしたいと思います。
中小企業は、全体的に中小企業というものが斜陽産業で、これはもう浮かばないじゃないかというような御趣旨の御発言があったようでありますが、先ほどの白書にも述べてありますとおり、中小企業というものは、過去を見れば発展しておるのでありまして、これは私は斜陽産業ではない。また、中小企業から大企業に進展するような産業もあるのでありますからして、したがって、私は、中小企業の今後は安定をはかるということ、また、その発展をはかるというところに、中小企業の対策があると、こう考えておるのでありまして、これを斜陽産業として決してながめてはいないというところに、今後の中小企業の対策の基本があるということを、一応申し上げておきたいと思うのであります。
なお、経済の発展に伴って、同時に、大企業も発展しますが、中小企業も発展しておるということは、いままでの実績によってこれがわかるのでありまして、大企業が発展すれば、同時に、大企業の生産はいわゆる迂回生産でありますからして、したがって、関連産業が多くなります。関連産業は、勢い中小企業によらざるを得ないということになるからして、大企業が発展すると同時に、中小企業も発展いたしまするし、また、最近の日本の経済の発展は消費生活の向上ということが原因になっておるのでありますが、消費生活が向上すれば、また中小企業というものが、その消費生活に必要な物資をつくったり、あるいはこれを流通したり、販売したりということによって、中小企業というものが発展してくるというようにお考えくださればよいと思うのであります。
それから、中小企業について、先ほど総理から発展途上国との関係について高級化するというお話がありましたが、それに対する対策といたしまして、今回皆さん方の御審議をお願いしておる特定繊維工業構造改善臨時措置法案というものは、まさしく発展途上国との関係においてこの法律案を考えてあるのであります。勢い、低開発国というものは、軽工業、ことに繊維産業に突入いたしますからして、したがって、それに対応するためには日本の繊維産業の構造改善をしなければならぬということで、今回皆さん方の御審議をお願いいたしておるのであります。そういう意味におきまして、発展途上国との関係においてはそれぞれ対策を講じておる次第であります。
それから、自由化の問題についても総理からお答えがありましたが、この自由化の問題で私たちが最も心配しておるのは中小企業であります。であるからして、この自由化に対して、中小企業の産業に混乱を来たさないような対策を講じなければならぬということで、今日われわれのほうでもいろいろと苦心をいたしておるのでありまして、したがいまして、資本が自由化になるからといって、にわかに全部自由化にするわけではありません。資本の自由化によって国際競争力を持ち得るようになった産業については自由化を認めていくということであります。しかし、それまでには、中小企業の体質改善、構造改善をやって、これであれば資本を自由化しても対抗できるという見通しをつけたときに、この資本の自由化を認めるのであります。したがいまして、これは五カ年間でこの自由化をやりたい、こう考えておりますから、漸次、体質が改善されて競争力を持つような中小企業に対して自由化を認めるという方針で行きますからして、決して御心配になられるようなことは起こらないと存じておる次第であります。
それから倒産の問題については、総理からもお答えがありましたが、先ほども申し上げましたが、倒産がふえてきたことはまことに遺憾に存じております。これは、倒産が起こってきた一つの原因は、労働力の不足、あるいは経営力、資本力の不足というようなところがその原因なのでありますからして、したがいまして、小規模者を中心として、中規模者を主要な目標として考え出したのが、今回の中小企業の振興事業団でありまして、これは主として小規模者をねらって考えておるのでありまして、これには、小規模のものはできるだけ力を合わせて協業化あるいは共同化をやるということで指導したい。また、その協業化あるいは共同化ができない中小企業があります。それらに対しては、特別の資金の融通、あるいは税制についての特別の措置等を講じて、それぞれ協業化できなくても自立できるような対策を講じておる次第であります。
それから、下請のことについても、総理からお答えがありましたが、お話のとおり、やはり親企業が下請業者を育てるという気持ちでなければ、決して親企業自体も発展していかないということは、もう、いま実業界のこれは事例でありまして、したがって、下請業者を搾取するような親企業というようなものは長く存立しないということで、われわれのほうも、親企業に対しては、下請業者を育てるつもりで親子関係で行くべきだということを、機会あるごとに、親企業の団体である商工会議所その他について申しておるのであります。したがいまして、先ほども近藤さんのお話のとおり、日本商工会議所におきましても下請のルールをつくっていただいて、そうしてひとつ下請業者を育てようじゃないかということで、親企業にそれぞれ考えていただいておるのであります。したがいまして、たとえば手形のサイトの問題などでも、これは親企業が守っていくというように考えてもらっておるのでありますが、同時に、私どものほうでお願いしたいことは、下請業者自身も、やはり協業化、共同化をしていただいて、そして親企業に対しては下請業者が団結して、親企業等に向かって対等の位置でお互いが取引するというように育てていきたい、こう考えておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X01119670524/7
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008・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) 自由化に関連するわが国の金利の問題についてでございますが、御指摘のように、わが国の民間の貸し出し金利水準は、昭和三十九年から連年低下して、短期金利、長期金利とも大幅に低下して、その結果、わが国金利の割り高状態はかなり是正されてまいっておりますが、まだ長期金利の部面において相当引下げをしなければならぬ余地がございますので、この点について今後十分努力するつもりでございます。
それから、政府関係機関の中小金融三機関についてのお話でございますが、貸し出し規模は確かに前年に比べて一八・三%増と、御指摘のとおりでございますが、この貸し出し規模を保つために、財政投融資計画の中でこの三機関に投入する額は、大体本年度は三千億でございまして、この三千億の金は財政投融資全体の額の八分の一ということでございます。伸び率から見ましても、財投の伸びは本年は一七・八%という伸び率でございますが、それをはるかに上回る率でございますので、私どもとしましては、今年度の財政投融資計画、金融計画では、中小企業金融に相当重点的配分を行なったつもりでございます。まあ環境衛生公庫、中小企業振興事業団、ここに入れる融資その他を考えますというと、昨年に比べて相当大幅に中小企業への金融は伸びている、こういうことでございますが、自由化を控えたときに、先ほどお話がございましたように、中小企業には特別な考慮をしなければならぬと思っています。特に、もし自由化によって、日本の企業経営が外資に掌握されるというようなことはめったにございませんが、かりにありとしますと、大企業に対するよりも中小企業に対するほうにむしろその可能性があると言われておりますので、こういう点については慎重な措置を私どもは考えたいと考えております。(拍手)
〔政府委員北島武雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X01119670524/8
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009・北島武雄
○政府委員(北島武雄君) 公正取引委員会といたしましては、親事業者が下請事業者に対しまして支払いますところの手形の長期化を、極力これを短縮せしめるという目的のもとに、中小企業庁と共同いたしまして、昨年の三月に繊維工業と機械工業、それから昨年の十二月に鉄鋼業と非鉄金属業につきまして、標準手形期間を示して、そしてその短縮をはかってまいったわけであります。その期間が、ただいま御質問にもございましたように、繊維工業につきましては九十日以内、それから他の機械工業、鉄鋼業、非鉄金属業につきましては百二十日以内と、こうなっておるわけでございます。その後、当委員会におきましてその状況を調査いたしましたところ、繊維工業につきましては、昨年の一月初めでございますが、その当時九十日未満の手形が三〇%程度にすぎなかったのが、その後の調べでは四〇%を上回っておるのでございます。それから機械工業につきましては、昨年の初め百二十日未満の手形が三五%程度でございましたが、最近の調査では四一%というようにふえております。また、機械工業につきましては、比較的長期の手形が従来多かったのでございますが、百五十日以上の期間の手形が、昨年の一月には二一%程度でございましたが、最近では一六%というように減ってきている。漸次手形の長期のものは短縮されつつあると、こういうふうに見ております。
鉄鋼業と非鉄金属業につきましては、昨年の十二月に標準期間を示して指導を開始いたしましたのでございますが、ただいま周知徹底をはかっている状況でございますので、まだ計数的には把握いたしておりませんが、これまた漸次改善されつつあるものと考える次第でございます。
その他の業種について、さらにこれを推し進めないかと、こういう御質問でございますが、公正取引委員会といたしましては、これはもう、ただいま申しました業種だけに限らず、今後実態調査を進めまして、そうして他の業種につきましても、できたものから、こういった標準の手形期間を示しまして、できるだけその期間におさまるように指導してまいりたいと、こう考えておるわけでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X01119670524/9
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010・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X01119670524/10
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