1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十年四月十一日(木曜日)
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議事日程 第十七号
昭和六十年四月十一日
正午開議
第一 電子情報処理組織による登記事務処理の
円滑化のための措置等に関する法律案(
内閣提出)
第二 商工組合中央金庫法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
第三 住宅金融公庫法及び北海道防寒住宅建設
等促進法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
第四 農業改良資金助成法及び自作農創設特別
措置特別会計法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
第五 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
第六 農業近代化資金助成法及び漁業近代化資
金助成法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 電子情報処理組織による登記事務処
理の円滑化のための措置等に関する法律案(
内閣提出)
日程第二 商工組合中央金庫法の一部を改正す
る法律案(内閣提出)
日程第三 住宅金融公庫法及び北海道防寒住宅
建設等促進法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
日程第四 農業改良資金助成法及び自作農創設
特別措置特別会計法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
日程第五 農林漁業金融公庫法の一部を改正す
る法律案(内閣提出)
日程第六 農業近代化資金助成法及び漁業近代
化資金助成法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
国際貿易摩擦問題に関する緊急質問(川崎寛治
君提出)
国際貿易摩擦問題に関する緊急質問(坂井弘一
君提出)
国際貿易摩擦問題に関する緊急質問(宮田早苗
君提出)
国際貿易摩擦問題に関する緊急質問(野間友一
君提出)
午後零時三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/0
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001・坂田道太
○議長(坂田道太君) これより会議を開きます。
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日程第一 電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律
案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/1
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002・坂田道太
○議長(坂田道太君) 日程第一、電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。法務委員長片岡清一君。
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電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔片岡清一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/2
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003・片岡清一
○片岡清一君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、最近における登記事務の処理の状況にかんがみ、電子情報処理組織の導入によるその処理の円滑化を図るための措置等につき必要な事項を定めようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。
第一に、法務大臣が指定する登記所においては、登記簿に記載されている事項を電子情報処理組織によって登記ファイルに記録することができるものとすること、
第二に、何人でも、登記ファイルに記録されている事項を証明した書面の交付を請求することができるものとし、その書面は、他の法令の規定の適用については、登記簿の謄本または抄本とみなすものとすること、
第三に、国は、電子情報処理組織を用いて登記を行う制度その他の登記事務を迅速かつ適正に処理する体制の確立に必要な施策を講じなければならないものとすること等であります。
委員会においては、三月二十六日嶋崎法務大臣から提案理由の説明を聴取した後、参考人の意見を聴取する等慎重審査を行い、去る九日質疑を終了し、討論に付したところ、日本社会党・護憲共同及び公明党・国民会議から賛成、日本共産党・革新共同から反対の各意見が述べられ、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/3
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004・坂田道太
○議長(坂田道太君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/4
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005・坂田道太
○議長(坂田道太君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第二 商工組合中央金庫法の一部を改正
する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/5
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006・坂田道太
○議長(坂田道太君) 日程第二、商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。商工委員長粕谷茂君。
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商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔粕谷茂君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/6
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007・粕谷茂
○粕谷茂君 ただいま議題となりました商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
御承知のとおり、商工組合中央金庫は、中小企業等協同組合等の組織金融機関として設立され、自来、組合金融の円滑化に大きく貢献しております。
本案は、このような商工組合中央金庫の役割の重要性と最近の金融自由化等我が国の金融環境の変化にかんがみ、商工組合中央金庫の機能の拡充を図るための措置を講じようとするものであります。
その主な内容は、
第一に、昭和十一年の設立認可の日より五十年となっている存立期間に関する規定を削除すること、
第二に、所属団体等に関する業務として、国債等の窓口販売、有価証券の貸し付け等の業務を追加すること、
第三に、所属団体等の事業活動の円滑化に資するための業務として、中小規模の事業者による共同出資会社、所属団体等が設立した海外現地法人に対する貸し付け等の業務を追加すること、
第四に、商工債券の販売力維持のための業務として、商工債券または国債等の所有者からの預金の受け入れ等の業務を追加すること、
第五に、国、非居住者等の預金受け入れ先の拡大、余裕金の運用及び役員等の規定について所要の整備を図ること等であります。
本案は、去る三月十九日当委員会に付託され、四月三日村田通商産業大臣から提案理由の説明を聴取いたしました後、四月十日参考人を招致して審査を行い、同日質疑を終了し、採決の結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告を申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/7
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008・坂田道太
○議長(坂田道太君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/8
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009・坂田道太
○議長(坂田道太君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第三 住宅金融公庫法及び北海道防寒住
宅建設等促進法の一部を改正する法律案
(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/9
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010・坂田道太
○議長(坂田道太君) 日程第三、住宅金融公庫法及び北海道防寒住宅建設等促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。建設委員会理事中島衛君。
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住宅金融公庫法及び北海道防寒住宅建設等促進
法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔中島衛君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/10
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011・中島衛
○中島衛君 ただいま議題となりました住宅金融公庫法及び北海道防寒住宅建設等促進法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、国民の良質な住宅の取得の促進と良好な居住環境の確保を図るため、住宅金融公庫の業務等について宅地造成資金貸し付けの対象者の拡大、災害復興住宅購入資金貸し付けの新設、住宅改良資金貸し付けの償還期間の延長、貸付手数料の新設及び公庫の特別損失に係る補てん措置等の措置を図ることとしております。
本案は、去る三月十九日本委員会に付託され、同月二十七日本部建設大臣から提案理由の説明を聴取し、四月十日質疑を終了、討論、採決の結果、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
なお、本案に対しましては、住宅金融公庫融資の根幹的金利の維持等四項目の附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/11
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012・坂田道太
○議長(坂田道太君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/12
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013・坂田道太
○議長(坂田道太君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第四 農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第五 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第六 農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/13
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014・坂田道太
○議長(坂田道太君) 日程第四、農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置特別会計法の一部を改正する法律案、日程第五、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案、日程第六、農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。農林水産委員長今井勇君。
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農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置時別会計法の一部を改正する法律案及び同報告書
農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案及び同報告書
農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔今井勇君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/14
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015・今井勇
○今井勇君 ただいま議題となりました内閣提出の三法案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
最初に、三法案の内容について申し上げます。
まず、農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置特別会計法の一部を改正する法律案は、農業改良資金制度について生産方式改善資金及び経営規模拡大資金を設けるほか、政府の都道府県に対する助成を貸付方式に改めるとともに、自作農創設特別措置特別会計制度について農地保有の合理化を促進するための事業に係る助成及び農業改良資金制度に関する政府の経理の追加等を行おうとするものであります。
次に、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案は、農林漁業金融公庫の貸付金に係る資金種類の整理統合、貸付条件の改定等を行うほか、特定農林畜水産物について新規用途の開発等に必要な資金を同公庫の貸付対象とする等の措置を講じようとするものであります。
次に、農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成法の一部を改正する法律案は、農業近代化資金及び漁業近代化資金の貸し付けの最高限度額を、それぞれ現行の二倍に引き上げようとするものであります。
委員会におきましては、以上の三法案を一括議題に供し、三月二十六日佐藤農林水産大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、四月二日及び三日には参考人の意見を聴取する等五回にわたり慎重に審査を重ねてまいりました。
かくて、四月十日質疑を終局したところ、まず、農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置特別会計法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・新自由国民連合から、法律の施行期日を公布の日に改める旨の修正案が提出され、趣旨説明の後、直ちに採決の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決しました。
次いで、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案に対し、日本共産党・革新共同から反対討論があり、採決の結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
次いで、農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成法の一部を改正する法律案について直ちに採決の結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、右三法案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/15
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016・坂田道太
○議長(坂田道太君) これより採決に入ります。
まず、日程第四及び第六の両案を一括して採決いたします。
日程第四の委員長の報告は修正、第六の委員長の報告は可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/16
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017・坂田道太
○議長(坂田道太君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり決しました。
次に、日程第五につき採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/17
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018・坂田道太
○議長(坂田道太君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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019・長野祐也
○長野祐也君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
すなわち、この際、川崎寛治君提出、国際貿易摩擦問題に関する緊急質問、坂井弘一君提出、国際貿易摩擦問題に関する緊急質問、宮田早苗君提出、国際貿易摩擦問題に関する緊急質問及び野間友一君提出、国際貿易摩擦問題に関する緊急質問を順次許可されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/19
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020・坂田道太
○議長(坂田道太君) 長野祐也君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/20
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021・坂田道太
○議長(坂田道太君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
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国際貿易摩擦問題に関する緊急質問(川崎寛治君提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/21
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022・坂田道太
○議長(坂田道太君) まず、川崎寛治君提出、国際貿易摩擦問題に関する緊急質問を許可いたします。川崎寛治君。
〔川崎寛治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/22
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023・川崎寛治
○川崎寛治君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、日米経済摩擦をめぐる政府の対外経済政策について緊急質問を行うものであります。(拍手)
そもそも、アメリカ議会の対日非難決議は不名誉な話であります。それが一月、中曽根総理とレーガン大統領との日米首脳会談後、日たたずしてのことでありますから、なおさらと言えましょう。私は、日米間の経済摩擦をここまで悪化するに任せてきた総理の怠慢と政治責任をただしたいのであります。既に一九八一年、日本の対米黒字は百八十億ドルに達していました。これは、日米経済摩擦の泥沼化を示唆する重大な兆候ではなかったでしょうか。さらに八四年、三百六十八億ドルという巨額に膨れ上がりました。八一年以来、政府はこれまでに六回の対外経済政策を発表してきましたが、ポーズの連続では本格的な解決はできません。事態は悪化の一途をたどってきたのであります。総理の無為無策ぶりが、泥沼化しつつある日米経済摩擦の要因の一端であると言っても過言ではありません。総理は、みずからの怠慢と無策が招いたこの事態にどのような政治責任をとるつもりなのか、所見を厳しく問いただすものであります。(拍手)
きのうの東京株式市場は、今回の市場開放政策が摩擦緩和の決め手になるまいと、その反応は極めて鈍いのであります。総理は、黒字減らしにどの程度の効果があるとお考えか、見通しを明らかにしていただきたいのであります。総理は突然、舶来品愛用国民運動本部長になられました。国民の皆さんに、一人当たり百ドル、二万五千円の舶来品を買ってくれれば百二十五億ドルの輸入額になり、黒字減らしに役立つと言われました。あなたのお勧め品は何でありますか。牛肉の輸入枠拡大で将来展望を失い雌牛を屠殺している畜産農家に、レーガンさん愛用のカウボーイハットを買って牛飼いをやれとでも言うのでありましょうか。今、舶来品はドル高で大変高い買い物なのです。「増税なき財政再建」で賃金を抑えられ、福祉や教育や農業の予算が削られ、また減税見送りで実質増税となり、そのために個人消費が落ち込んでいるのです。総理の認識を疑わざるを得ないのであります。
日本国民の舶来品購入は六万円余に対して、ヨーロッパは三十二万円余と中曽根キャスターは指摘されました。そもそもヨーロッパと日本とは経済構造が違うのです。ヨーロッパ大陸は地域間の分業体制ができているのに対して、日本は自己充足型の経済構造という大きな違いがあります。アメリカのブッシュ副大統領は、舶来品購入を勧める総理の発言を勇気ある発言と言っていますが、さっぱり効果が見られないときは、またまたリップサービスとして非難が高まることは火を見るよりも明らかと言わざるを得ません。
総理は、内需拡大策について全く触れておりません。なぜですか。大来佐武郎座長の対外経済諮問委員会報告書の対外経済政策の部分だけをつまみ食いしているのであります。報告書は、経済摩擦の主因である対外不均衡の是正を図るためには、市場アクセスの改善に加えて国内需要の喚起を図ることが肝要である、内需拡大は、それによって輸入の拡大効果があるばかりでなく、輸出圧力が減少するという意味において対外不均衡是正に寄与すると、内需中心の持続的成長を強調しております。また大来氏は、内需拡大に役立つ税制改革と設備、住宅関連の投資優遇措置の実現を提唱しています。一方、ボルカー・アメリカ連邦準備理事会議長は四月三日ワシントン市内で講演をし、日本は自国及び世界の利益のためにも国内経済の刺激策をとるべきだと指摘し、内需拡大策により輸出に傾斜しないような経済運営を日本に求める見解を明らかにしました。日本政府は今こそ内需を力強く盛り上げ、貯蓄率に見合う高い国内投資を実現しなければなりません。
時あたかも春闘の山場です。賃金大幅引き上げ、人事院勧告完全実施、時短、週休二日制の実施、そして今与野党間で話し合われている所得減税、政策減税実現による個人消費の拡大を基調とするマクロ経済政策への根本的転換を図るべきであります。総理並びに大蔵大臣の明確な所見を求めます。(拍手)
二月四日の米予算教書によると、八六会計年度の財政赤字は実に千八百億ドルに及びます。歳出規模は前年度比わずか一・五%増なのに、国防費は支出ペースで二千七百七十五億ドルと一二・七%もふえ、まれに見る大砲優先予算となっています。また、二月五日議会に提出された米大統領経済報告では、貿易赤字についてはドル高主犯説を初めて明確に認めました。日米貿易不均衡の根本原因がドル高にあることは言うまでもありません。この解決なくしては、日米貿易摩擦の真の解消もあり得ません。政府は四月十一日、すなわちきょうあすにかけてのOECD閣僚理事会並びに来月二日開会予定のボン・サミットにおいて、ドル高、高金利是正策をヨーロッパ諸国とともに勇気を持ってアメリカに要求すべきでありますが、総理の明確な方針を伺いたいのであります。
私は、日米経済摩擦の解消をめぐる政府の手法についてただしたいのであります。
歴代政府は、対外経済摩擦の解消に当たり、常に基盤の弱い国内産業に犠牲を転嫁して一時を糊塗する手法をとってきました。今回の対外経済政策においても、木材関連産業があたかも日米経済摩擦の象徴的産業であるかのように扱われているのであります。本来国際競争力が弱い森林・林産業や木材、紙製品産業を保護育成する政策の展開こそ国民が求めている政治であります。我々は、あくまでも関税率引き下げに反対であります。森林・林業、木製品、紙パルプ等の振興、特に中小地場産業の振興を図り、労働者の雇用安定を図るべきでありますが、総理並びに関係大臣の具体的な施策をお尋ねします。
今回の四分野の日米交渉で最ももめたのは電気通信分野でありました。四月一日、電電公社は百年を超す官営の歴史を閉じて民間会社として発足しましたが、高度情報化社会の国際企業として、その任務は極めて大きいものがあります。独立国の通信政策の策定に対してアメリカ側の意見陳述の機会、電気通信審議会への委員指名などをなぜ行わなければならないのですか。それは内政干渉ではありませんか。EC諸国などの扱いはどうなっているのですか。なぜこの種の問題が発生してきたのか、経過を明らかにしていただきたいのであります。また、電気通信事業法等の国会審議の経過からして、国家としての通信主権をいかに確立するか、明確にお答えをいただきたいのであります。日米間の資材協定に基づいて、一九八三年六万台の電話機を日本は購入しましたが、いまだ四千台そこそこしか売れていないと聞いていますが、いかがですか。売れようが売れまいが、日米経済摩擦解消のためには輸入することが必要なのですか。総理並びに郵政大臣の所見をお伺いします。
最後に、私は、アメリカの市場に過度に依存する我が国の対外経済政策の是正が急務であることを強く指摘したいのであります。
現在のような異様な対米市場依存の根底には、総理の自説である西側同盟政策があると言わなければなりません。成長と活力の地域であるアジアNICS、中国、ASEAN諸国やオセアニア、中南米など環太平洋諸国との平等互恵の経済交流をむしろ積極的に拡大すべきであります。また、紛争周辺国への戦略援助を改め、飢餓に苦しんでいるアフリカ諸国へのODAを思い切って拡充すべきではないでしょうか。過度の対米依存の是正と環太平洋諸国との平等互恵の経済関係の密接深化こそが、内需重視のマクロ経済政策への転換とともに日米経済摩擦打開の唯一の道であることを私は改めて強調したいと思います。総理の所見を求めて、私の緊急質問を終えたいと思います。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/23
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024・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 川崎議員にお答えをいたします。
まず第一は、なぜこのような貿易摩擦の激化が生じたかという御質問でございます。
一言で申し上げれば、日本の輸出が非常に大きく伸びて、ドルが非常に日本に蓄積し過ぎたという外国側の見方、それからもう一つは、日本の市場の開放が十分でないという批判等が基本にあると思います。それに、アメリカ側におきましては、先般自動車に関しまして、レーガン大統領は、これを自由にする、規制を撤廃するという言明をいたしました。日本側は、それによりまして四、五月集中豪雨的に輸出が殺到しては大変だ、かえってアメリカ議会の反感を買って問題が大きくなる、そういう観点から一定の自粛の数字を示したのでございます。これが、市場開放を逃げてアメリカ側が自由経済をやろうというのに対して逆の方向に行った、日本側の善意が十分伝わらないで、そういうような反応を起こしたという点もあります。
日本側といたしましては、いわゆるキャプティブインポートという、アメリカと提携しておりまする例えばクライスラーとかGMとかと提携しているそういう会社の車の多少の増量と申しますか、そういう点も考えざるを得ないというので、若干の数量増加はこれは考えざるを得ないという立場にもあったのでございます。そういうような面から、日本側が善意をもってやったことが理解不足のために誤解を受けたという点も引き金になったと我々は検討しておるところです。
しかし、これを大局的に見ますと、一つは、主としてアメリカと日本との景気の発展のずれがあります。アメリカは早く景気が物すごい率で上昇いたしまして、日本がこれに次第に追いついていった、この景気のギャップがあります。そこで日本品がアメリカへ入ったという点があります。第二は、日本の非常に高い生産性、アメリカの高金利、アメリカの高いドル、この問題が第二にあります。第三番目は、遺憾ながら日本の市場というものは必ずしもアメリカレベルに自由に開放はされてないという面もなきにしもあらずであります。また、アメリカ側においては売り込みの不足という点も非常にあるのです。日本の商社や企業ほど熱心に市場開拓の努力をしてない、これも明らかな事実であります。第四番目は、日本とアメリカ及び外国との間における行政や政府の責任に関するギャップがあると思います。日本では、政府がある程度国民生活の面倒を見まして責任をしょっておる。特に公害が起きましてからは、そういう政府責任というものが非常に言われるようになったのであります。それが規制とか基準の厳格さという形になってきておるのです。アメリカ側は、それは消費者が自分でやることであって、もし間違っていた場合には会社に賠償の訴訟を起こせばいい、そういう消費者の責任と自由において選択するというやり方です。日本の場合は、むしろ政府が消費者をかばっていかなければならぬという国情の差もあるのであります。
そういうようないろいろな面から大きなギャップが起きまして、アメリカ議会においては、上院において九十二対ゼロ、下院において三百九十四対十九という大差で日本に対する反省を求める決議が成立いたしました。このような事態に対しまして、政府としては、全世界を見詰めながら市場開放等に関する緊急政策を発表する必要がありまして、そのように措置をしたのであります。
第二番目に、どの程度効果があるかということでありますが、今回の措置によりまして、市場のアクセスは一層改善をされ、輸入は増加するものと期待しておりますが、一面において、為替相場の問題あるいは内外の景気の動向あるいは先方の売り込みの努力、そういう問題もやはり関連してくるのであります。具体的に幾らという金額を推定することは困難でありますが、我々としては、輸入量を増大するために官民そろって努力してまいりたいと思っております。
次に、ハイテクや電気通信の分野についての御質問でございます。
四分野にわたりましていろいろ交渉いたしましたが、先方が一番力を入れたのは電気通信の分野でございます。これらの分野につきましては、ほとんど日米間において合意は達成されたと思っております。我々もこれらをフォローアップいたしまして、これが実施、実現について今後とも一層努力してまいるつもりでおります。
次に、日本の市場というものを世界的に広げていく必要があろう、アジアあるいは環太平洋あるいは社会主義諸国等々の御指摘がございました。
その点は同感でございます。やはり原則的に足場を広く全世界的に持っていくということが、安全保障や経営の安定性の面から見ましても好ましいと思っておりまして、その線に従って我々は努力もしたし、今後も努力してまいるつもりであります。
次に、いかにして完成品の輸入ができるかという御質問でございます。
これは外国と日本の事情は違いまして、日本の場合は、千四百億ドルぐらいの輸入量の中で、九百億ドルは曲とか鉱産物とかあるいは農産物、食糧でございます。約六百億ドルが油であり、それから約三百億ドルが鉱産物とか農産品とか、そういう原料でございます。したがって、製品というものは四百億ドルぐらいであります。製品輸入率を見ますと、アメリカが六一%、ヨーロッパが五五%、日本は二二%でございます。これは、そういう物を輸入して製品にして外国に売るという日本の国情、資源がなくてそういう貿易国家として生きていかなければならない日本の国情からしからしむる点があるのでございます。しかし、そうとはいえ、もう一つは近隣に大きな工業国家がない、したがって、その相互間における製品の輸入、相互輸出輸入という率がヨーロッパに比べて少ない、そういう面もあるのでございますが、しかし、いずれにせよ、この製品輸入を促進してくれというのは強い外国側の要望でございまして、特に機械であるとか自動車であるとか航空機であるとか、あるいはブドウ酒、食料品あるいは消費物資、こういうものに関する強い要望がございます。我々も、輸出を今後とも続けていくためには、ある程度相互的に先方の気持ちも酌んでやる必要があると思いまして、今後も努力してまいりたいと思います。
内需中心の成長を図れというお考えでございます。今度の緊急対策にも内需を拡大するというふうに決めておりまして、できるだけ努力してまいるつもりであります。
次に、春闘賃金あるいは人事院勧告の問題の御質問でございます。
賃金問題については、これは労使が自主的に決定するものでありまして、本年の賃金交渉におきましても労使が国民経済的視野に立って諸般の情勢を認識して自主的に決めていただいた次第でありますし、また期待しておる次第でございます。なお、政府は、今後とも景気の持続的拡大、雇用の安定の確保、物価の安定の維持等に努めて、消費の拡大も努めてまいります。人事院勧告の取り扱いにつきましては、勧告調度尊重の基本姿勢に立ちまして、勧告が出されれば、その段階で国政全般との関係を考慮しつつ、勧告の完全実施に向けて最大限の努力を尽くす所存であります。
次に、ドル高あるいはアメリカにおける財政赤字の問題等の御質問でございます。
米国に対しましては、従来から高金利並びにドル高是正が必要であるということは強く指摘してきたところでございます。サミットにおきましては、各国ともみんな問題を抱えておるわけであります。アメリカはドル高、財政赤字、あるいはヨーロッパは産業調整の不活発、日本の場合は輸出の超過、こういう問題を抱えております。サミットの国々はこれらが調和ある解決を図るように、お互いが善意を持って協力し合う、そういうことでまいりたいと思っております。
次に、軍縮の問題でございますが、この平和と軍縮の問題は日本政府も最大関心を持っておる重大な政策でありまして、今後とも努力してまいるつもりであります。ジュネーブ交渉がスムーズに進行するように念願もし、そういうような環境醸成に努めてまいりたいと思います。アメリカの国防政策は、アメリカの主権に基づいて抑止力の信頼性の維持に努めて実行しておるものと考えております。
次に、農産品等に対する御質問でございます。
農林水産業は、食糧、木材等国民生活にとって最も基礎的な物資の供給を初め、国土、自然環境の保全等極めて重要な役割を果たしております。その上、地域社会に対しては就業機会の提供あるいは健全なる地域社会の発展の大きな基盤でございます。したがいまして、この農林水産業の対外問題処理につきましては、関係国との友好関係に留意をしつつ、国内農林水産物の需給動向等も踏まえ、我が国農林水産業の健全な発展と調和のとれた形で行われることが基本的に重要であります。そのためには、生産性の向上等を通じて足腰の強い農林水産業にしていく必要があり、構造政策、生産基盤の整備、技術や情報の開発等全面的な施策の推進に努めてまいります。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/24
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025・竹下登
○国務大臣(竹下登君) お答えをいたします。
まず、対外経済問題諮問委員会の報告書におきましては、「内需中心の持続的成長に役立つ税制の見直しが重要である。基本的には貯蓄・消費・投資のバランスを図る観点から検討を行う必要がある。」と述べられております。一方、今後の税制のあり方を検討するに当たりましては、公平、公正、簡素、選択並びに活力、こういう基本的観点に立って、広範な角度から税制の見直しを、国会の議論等を踏まえながら税調にお願いをしようとしておるところでございます。それからいま一つは、御案内のとおり、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、社会民主連合の幹事長・書記長会談においての申し合わせというものも存在しております。それらを総合的に勘案して対処すべき課題である、このような事実認識の上に立っておるわけであります。
さて、いま一つの長期資本問題でございますが、最近の我が国の長期資本の流出は、経常収支の黒字を背景にしまして、好調な米国経済に裏づけられたドルに対する信認の増大、内外金利差の要因によって、市場原理によって生じたものであります。したがって、この不均衡を是正するには、まず米国自身において節度ある財政金融政策をより一層強化し、ドル高、高金利の是正を図っていくことが必要であると考えられますので、今後とも機会あるごとにこの点を指摘していく所存であります。それから、もとよりのこととして行財政改革を着実に推進し、規制緩和、民間活力の活用等による国内民需中心の持続的成長を図っていくことは言うまでもないことであります。
次は、林業問題であります。
対外経済対策におきましては、森林・林業及び木材産業の活力を回復させるため、一つ、木材需要の拡大、二つ、木材産業の体質強化、三つ、間伐・保育等森林・林業の活性化等を中心に、財政金融その他所要の措置を当面五カ年にわたり特に講ずることとする、このように決まったところでございます。具体的には所管省において今後検討されていくことになろうと思いますが、今後十分農林水産省等との協議を行ってまいりたい、このように考えます。(拍手)
〔国務大臣佐藤守良君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/25
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026・佐藤守良
○国務大臣(佐藤守良君) 川崎議員の御質問にお答えいたします。
まず、合板等の関税問題と我が国森林・林業の振興策についてでございますが、今回の措置は、林業、木材産業の深刻な不振の中で、森林・林業及び木材産業の活力を回復させるため、木材需要の拡大、木材産業の体質強化、間伐・保育等森林・林業の活性化等を中心に、財政金融その他所要の措置を当面五カ年にわたり特に講じようとするものでございます。関税問題の取り扱いにつきましては、これまでも申し上げてまいりましたとおり、以上の国内対策の進捗状況を見つつ、おおむね三年目から引き下げを行うべく前向きに取り組むこととしております。また、国内の林業、林産業の振興につきましては、今回特に講ずることといたしております国内対策のほか、二十一世紀に到来が予想される国産材時代に備え、まず第一に、木材のよさの普及啓発を図り木材の需要を拡大することとし、さらには、造林、林道等の林業生産基盤の整備と林業地域の活性化等各般の施策を積極的に推進してまいる所存でございます。
次に、米国農業の不況を背景として市場開放要求が強まるのではないかとの御質問についてでございますが、現在米国農業は、世界的な需給緩和、ドル高等から穀物等の輸出が伸び悩み、米国農業全体が厳しい不況に見舞われております。このため、これまで以上に農産物特に世界市場のシェアが低下している穀物、大豆を中心に輸出志向を強めてくるものと思われます。しかしながら、穀物、大豆については、我が国はこれまでも米国から安定的に買い付けてきており、直接的な影響は小さいものと考えております。(拍手)
〔国務大臣左藤恵君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/26
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027・左藤恵
○国務大臣(左藤恵君) お答え申し上げます。
まず、電気通信事業法の関係法令の見直しにつきましては、電気通信に関する米国との交渉に当たっては、あくまで我が国の通信主権を確保した上で電気通信市場に対する参入障壁を可能な限りなくすという、そういう観点に立って行ってきたところであります。電気通信事業法及び関係政省令につきましては、内外無差別、簡素、透明を原則としておりますが、施行していく中でこの原則に照らして問題が生じた場合には、必要に応じて法の規定に従って国会に対して法改正を提案し、また関係政省令の見直しを行ったりすることはあり得るものと考えております。
次に、新電電の資材調達についてお答え申し上げます。
電電公社は、五十八年度、ノーザンテレコム社との間で電話機六万台の納入契約を締結いたしまして、昨年十一月上旬から中旬にかけて、東京、関東、近畿及び東海管内で売り出しを開始したところでありますが、本年二月現在で約四千七百台を販売してきているところであります。また電電公社は、五十九年度、GTE社と電話機六万台の購入契約を締結し、本年三月末一部納入が開始されたところでありまして、まだ販売開始に至っておりません。電電公社は、新電電となりましても、政府調達協定及び日米政府間取り決めに基づいて内外無差別の競争的な調達手続を採用しており、この手続にのっとって国内外から良質な製品を求めているものでありまして、外国製通信機器を無理やり購入しているのではなくて、今後とも良質で安価な製品を国内外から広く求めることによって、より良質の電気通信サービスを国民に提供してくれることを期待しているものであります。(拍手)
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国際貿易摩擦問題に関する緊急質問(坂井弘
一君提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/27
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028・坂田道太
○議長(坂田道太君) 次に、坂井弘一君提出、国際貿易摩擦問題に関する緊急質問を許可いたします。坂井弘一君。
〔坂井弘一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/28
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029・坂井弘一
○坂井弘一君 私は、公明党・国民会議を代表して、さきに政府が決定いたしました対外経済対策につきまして、総理並びに関係大臣に質問するものであります。
一昨日、対外経済対策を決定しました直後の総理の記者会見をテレビで拝見いたしまして、厳しいこの日米貿易摩擦に対応しようとする総理の努力を多としながらも、その一方ではもう一つ割り切れない気持ちを払拭することができなかったのであります。それは、中曽根内閣になってから既に数回対外経済対策を講じながら、なぜにここまで追い詰められた形で対策を実施しなければならなかったのかということであります。
率直に申し上げまして、私は、最近の米国、なかんずく米議会における我が国に対する批判はいささか冷静さを欠いているのではないかと思わざるを得ません。米上院における対日報復決議案の採択、引き続く、大統領に通商摩擦についての対策をとることを求めた財政委員会の対日報復法案の可決、さらには下院における対日批判を内容とする決議案の採択、相次ぐ対日批判を盛り込んだ法案の提出等々まさに異常とも言えるほどであります。
しかしながら、この背景には、米商務省の統計によりますと、昨年の米国の貿易赤字は前年の六百九十三億ドルを大幅に上回る一千二百三十三億ドルに達しておりまして、しかも、このうち約三分の一に当たる三百七十億ドルが対日貿易赤字であるという事実につきましては、私は米国の側に多くの責任があるとは考えますものの、やはり我が国としてそれなりの対応が必要であったと言わざるを得ないのであります。一体なぜここまで事態が悪化したのか、政府の対応が後手後手に回っていたからではないのか、まず総理の率直な見解をお伺いするものであります。
また、米国は、対日輸出数量がふえるかどうかによって我が国の市場開放の度合いを推しはかる意向のようでありますが、今回の対策によりまして我が国の対米黒字は日に見えて減少することが期待できるのか。もし今回の措置によっても対米黒字が減少しないとなりますと、総理の意図に反しまして、米議会の対日批判は鎮静化ところか、ますます悪化さえするおそれなしとしないか、甚だ危惧を持つものであります。総理は、今回の措置によって米議会の厳しい対日批判が和らぐという見通しを持たれているのかどうか、あわせてお尋ねをするものであります。
米国の一千億ドルを超える巨額な貿易赤字は、我が国の対米輸出の著しい増大にも一因があるとは思いますが、それ以上に私は、米国の好景気やドル高が輸入の増加に拍車をかけ、それが貿易赤字の増大をもたらしている面が極めて大きいのではないかと思うのであります。事実、米国自身、大統領経済報告におきましても、一九八〇年と一九八四年を比較いたしまして、この間の貿易収支悪化幅である八百五十億ドルについて、そのうちの六百億ドルから七百億ドルはドル高が原因であると分析をしているのであります。このように、米国の貿易収支の大幅赤字は財政赤字によってもたらされている高金利、ドル高に大きな原因があることは、これは極めて明らかであります。したがって、私は、米国の高金利、ドル高の是正がなければ貿易収支の改善は甚だ困難であると思いますが、総理のこの点に関します見解並びにドル高・円安状態の是正のために今後具体的にどのような取り組みをなされるのか、お伺いするものであります。
さて、日米貿易摩擦の今後を考えるとき特に懸念されるのが、米国経済がことしから来年にかけ成長率が鈍化するのではないかとの見方があることであります。そうなりますと、失業者の増加が見込まれますし、貿易摩擦は一層厳しさを増すことさえ予想されるのであります。こうした厳しい環境の中で、貿易摩擦を解消するとともに保護主義の台頭を抑えるためには、我が国が国際社会の中でその経済力に見合った責任を果たしていくことであります。私は、我が国経済の成長が外需依存型から内需拡大に政策転換していくことが極めて重要であると考えます。すなわち、個人消費や住宅投資、設備投資等の内需を本格的に拡大していくことのほかにその道はないと考えるものであります。
今日まで我々は、再三にわたって、輸出主導型の経済を続けるならば著しい対外不均衡を招き、我が国は世界の批判を一身に浴び、保護貿易主義の台頭に手をかす結果になりかねないことを警告してまいりました。しかし、総理は、我々のこの主張に耳をかそうとせず、昭和六十年度予算でも明らかなように、緊縮財政に固執する経済運営をとり続けてきたのであります。その結果が現在のような深刻な事態を招いていると言っても決して過言ではないと私は思います。
総理、自由貿易体制の中でしか生きる道のない我が国は、今こそ積極的な内需拡大策を講じ、我が国経済を内需主導の安定成長軌道に乗せるべきであります。にもかかわらず、今回の対策には本格的な内需振興対策が見られないことはまことに遺憾であります。総理は、国民に向かって輸入の拡大を訴えられました。しかし、内需が停滞している限りそれは不可能ではありませんか。この際、私は、内需を拡大するためにまず大型所得税減税を速やかに実施するよう強く要求いたします。恐らくや今回の対策によっても日米貿易摩擦の解消は容易ではないと思いますが、私は、我が国が米国に対してまず何よりも誠意を示すという意味からも、大幅所得税減税を検討せざるを得なくなると思うのであります。総理の見解を伺うものであります。
あわせて、投資減税の拡充、公共事業の拡大、さらには人事院勧告の完全実施等により内需を拡大すべきであると思います。また、労働時間の短縮、週休二日制の一層の普及は、消費機会を増大させ、内需を拡大するという側面を持ち、これまた極めて重要であります。それぞれにつきまして総理の明快な御答弁をお願いいたしたいと存じます。
この際、政府の財政運営に関連いたしまして、ここで重要な指摘をしておきたいと思います。
それは、政府・自民党が画策する大型間接税の導入問題であります。大型間接税の多面的な経済効果を検討してみますと、大型間接税の導入が物価上昇を招き、個人消費の低迷をもたらし、さらにはそれが設備投資にも影響し、生産の停滞から輸入の減少を招く一方、企業収益の確保のため輸出拡大を迫られるという点であります。要するに、大型間接税の導入は、結果的には経常収支の黒字を増加し、対外経済の不均衡を拡大するという側面を持つということであります。したがって、こうした視点からも我が国の将来を展望した場合に、大型間接税の導入は断じて見送るべきであります。総理の答弁を求めるものであります。
次に、対外経済対策の中身につきまして何点かお伺いいたしたいと思います。
今後我が国は、市場参入につきまして、原則自由、例外制限の方針を明確にいたしました。しかしながら、一方、国民生活の維持、安全にかかわる分野を原則自由の例外とすることといたしておりますが、農産物、農業につきましては原則自由の例外とするのかどうか。世界の多くの国が、それなりの事情を背景に輸入制限を認めるなど一定の保護政策をとっているのでありますが、政府の方針を明らかにしていただきたいと思います。
また、米国における農業に関する政府介入の緩和の動きの中で、今後、米国から農産物の輸入圧力がこれまで以上に高まることが予想されるのでありますが、私は、安易な農産物の輸入の拡大は我が国農業を崩壊させかねない危険を指摘せざるを得ません。農産物の市場開放問題についての政府の考えを改めてお尋ねするものであります。
次に、今回の対策の中で最後まで焦点となった合板問題についてであります。
御承知のとおり、合板業界は大半が中小企業でありまして、かつ、今日住宅建設不振の影響から極めて深刻な不況下にあります。今回の対策によります関税引き下げは、国内対策を講じながら「おおむね三年目から」となりましたが、国内対策を講じながらとはいえ、関税引き下げの影響は、合板業界のみならず、木材業界、森林・林業に至るまで多大な影響を与えることは避けられません。政府は、関税引き下げに関し関係業界の理解を十分に得たのかどうか。また、関税引き下げによる影響をどのように見ているのか。おおむね三年目からの引き下げとは、国内対策いかんで三年後、四年後ということもあり得るのかどうか。さらには、森林・林業、木材、合板業における体質強化としてどのような具体策をどれくらいの予算で行うのか。それぞれについて、農林大臣から明確な御答弁をいただきたいのであります。
ODA、つまり政府開発援助につきましては、今回の対策では、六十一年以降も引き続き中期目標を設定して着実な拡大に努めるとしておりまして、この面では評価するにやぶさかではございません。しかし、ODAの水準は、どれだけ国際社会へ貢献しているかのバロメーターでありまして、私は、これまでのように、五年間で倍増するというように具体的な目標値を決めるべきであると思いますが、総理のお考えをお伺いするものであります。
また、通信衛星の輸入を促進するための条件整備を図っておりますが、こうした措置と、一方、国産技術の開発、宇宙産業の育成という方針の整合性は一体どうなるのか、わかりやすく御説明願いたいと存じます。
最後に、かつて日米貿易摩擦と関連する問題として提起されました米国への武器技術供与についてお尋ねいたします。
昭和五十八年二月の予算委員会におきます私の武器技術供与に関します質問に対しまして、安倍外務大臣は、日米以外の第三国が加わっての共同研究はあり得ない旨の答弁がございました。現在、米国が進めている戦略防衛構想、SDIへの研究参加を求められているのでありますが、次の点につきまして、改めてお答えをいただきたいと思います。
SDI研究が仮に日本、米国以外の第三国を含む多国間の共同研究を伴うものであれば、武器輸出三原則に照らし我が国は参加できないと私は解しますが、政府の明確なる見解をお示しいただきたいと思います。
なお、SDI全体のシステムの中で日本と米国、米国と第三国がそれぞれ別個に共同で技術研究を行うことは形式的には可能でありましても、実体的、実質的には、一つの目的を持ってそれらが組み合わされ、集合技術として完成する以上、それは多国間共同研究でありまして、我が国の参加は不可能と考えますがどうか、あわせて御答弁をいただきたいのであります。
私は、最後に、総理に対しまして、今回のこの当面の事態に的確に対応するとともに、我が国が国際社会への貢献のために内需拡大に積極的に取り組まれますよう改めて要求をいたしまして、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/29
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030・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 坂井議員の御質問にお答えをいたします。
第一問は、米議会の対日批判に関するものでございます。
これは、日本の市場開放措置が不徹底である、あるいは大幅な対日貿易赤字等々が累積いたしまして今日のような強い批判が出てきたのでございます。しかし、今回の処置によりまして、また、我々が今後これを実施する努力によりまして、米側からも理解も得られ、評価も得られるものと信じております。
なお、今日こういう事態が起きたのはなぜかという御質問でございますが、昨年の大統領選挙中におきましては、共和党も民主党もこの問題に触れることを避けておったのであります。選挙が終わりましてからこの問題は出ると私も考えておりまして、アメリカ大統領と速急に会談をしてそれを処理する方法を相談したいと思って、一月冒頭にロサンゼルスの会談となったのであります。
その会談におきまして、これを処理する方法として、ハイレベルの高級官僚間で四分野にわたってこれを詰めよう、そういうことで、自来その詰める努力をいたしました。ここで、言いかえればアメリカのフラストレーションや米議会のその熱を処理する場所を事務的につくろう、そういうわけで四分野の交渉を詰めてやったのであります。そして今回のような処理になった、そういうことであります。
次に、市場開放策の効果でございますが、これを数字的に明示することは難しいと思いますが、今後の我々の努力によりまして相当程度改善できるものと思いますが、やはり為替の動向とか、景気の動向とか、先方側の売り込みの努力とか、そういうものにもかかっているように思います。
次に、ドル高是正の問題でございます。
高金利とドル高是正については、我々もつとにアメリカと話し合っておるところでございます。その原因は、アメリカの経済力が非常に強くなってきたという、そのアメリカに対する信頼性、あるいはさらに、米国の巨大な財政赤字から来る高金利、こういうようなものがやはり原因になってきていると思います。今後とも、これらの問題の打開に努力してまいるつもりであります。
次に、米国景気の動向でございますが、アメリカ側におきましては、かなり強気の考えをまだ持っておるようであります。政府筋では大体年四%程度の経済成長率を見込んでおりますが、OECDでは三%程度と見ております。これらの景気の動向が日米間に及ぼす影響も大でございますので、我々もこれを最大の関心を持って注目してまいりたい、そう思っております。
次に、内需拡大策でございますが、民間需要を着実に推進して拡大してまいりたいと思っており、現にそれは実行されつつあると思います。今後とも機動的な経済運営に努めまして、持続的拡大をさらに図ってまいりたいと思います。昭和六十年度の公共事業関係費につきましては、一般公共事業の事業費についてはいろいろ工夫いたしまして、五十九年度を上回る水準を確保するなど景気にも配慮しております。投資減税につきましても、六十年度において試験研究促進のための基盤技術研究開発促進税制及び中小企業技術基盤強化税制を創設したところであります。所得税の減税等につきましては、各党間の合意を踏まえまして、その結果を見まして政府としても尊重してまいりたいと考えております。
次に、労働時間の短縮の問題でございますが、労働時間の短縮は、労働者の生活の充実、国際化への対応等の観点に加え、消費機会を増大させ内需を拡大するという側面もありまして、政府も推進したいとつとに考えているところです。週休二日制の普及、年次有給休暇の消化促進等を重点にその推進に努めてまいりますが、この民間における労働時間短縮問題については、各会派の合意が先般ございまして、その協議の結果を尊重して適切に対処してまいりたいと思います。
人事院勧告の問題につきましては、勧告が出されれば、その段階で国政全般との関係を考慮しつつ、勧告の完全実施に向けて最大限の努力をいたす次第でございます。
大型間接税については、これは税制改正全般につきましては白紙の状態であると申し上げましたが、いわゆる多段階、網羅的、投網をかけるような、そういうていの大型間接税はやりたくないと前から申し上げているとおりであります。
ODAの問題でございますが、今回の決定におきましても、昭和六十一年以降新たな中期目標を設定して、引き続きODAの着実な拡充に努力していくということを決めた次第であります。その内容につきましては、今後各省間で引き続き検討する予定でございます。
通信衛星に関する御質問でございますが、引き続き衛星の自主技術開発を進める方針でありますが、この購入問題については、昨年及び今度の対外経済対策決定を踏まえつつ、民間の動きを十分見守り、適切に対処してまいります。とりあえずは民間購入について周波数の割り当てを急ぐつもりでおります。
次に、武器技術の供与、研究に関する問題でございますが、SDI研究への対応については、今後米側から提供される情報等を踏まえまして、十分な情報の提供をもらい、その判断の材料、条件を整えた上で我々は十分検討してまいりたい。現段階において仮定の上に立って議論することは差し控えたいと思います。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣佐藤守良君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/30
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031・佐藤守良
○国務大臣(佐藤守良君) 坂井議員の御質問にお答えいたします。
まず、諮問委員会報告についてのお尋ねでございますが、我が国農業は、食糧の安全保障や国土保全等の面において重要な役割を果たしており、その意味におきまして、諮問委員会の報告の原則自由、例外制限の分野に農業は含まれるものと理解しております。
次に、米国農業の不況を背景として市場開放要求が強まるのではないかとの御質問についてでございますが、現在米国農業は、世界的な需給緩和、ドル高等から穀物等の輸出が伸び悩み、米国農業全体が厳しい不況に見舞われております。このため、これまで以上に農産物特に世界市場のシェアが低下している穀物、大豆を中心に輸出志向を強めてくるものと思われます。しかしながら、穀物、大豆につきましては、我が国はこれまでも米国から安定的に買い付けてきており、直接的な影響は小さいものと考えております。
次に、合板等の関税問題の取り扱いについてでございますが、合板等の関税問題の取り扱いにつきましては、森林・林業及び木材産業の活力を回復させるための国内対策の進捗状況を見つつ、おおむね三年目から関税引き下げを行うべく前向きに取り組むこととしております。
また、関税引き下げによる影響と国内対策についてでございますが、関税の引き下げを行えば、深刻な不況下にある合板業界等に影響を与えることが考えられます。現在の森林・林業が置かれた厳しい現状を見ると、単に合板業界の体質改善のみならず、中長期の視点に立って木材産業及び林業を通じた対策を進める必要があると考えております。このため、森林・林業及び木材産業の活力を回復させる観点から、木材需要の拡大、木材産業の体質強化、間伐・保育等森林・林業の活性化等を中心に、財政金融その他所要の措置を当面五カ年にわたり特に講ずることとしており、現在鋭意検討中でございます。(拍手)
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国際貿易摩擦問題に関する緊急質問(宮田早苗君提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/31
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032・坂田道太
○議長(坂田道太君) 次に、宮田早苗君提出、国際貿易摩擦問題に関する緊急質問を許可いたします。宮田早苗君。
〔宮田早苗君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/32
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033・宮田早苗
○宮田早苗君 私は、民社党・国民連合を代表して、現在国際的に重大な問題になっております対外経済摩擦問題に関しまして、政府に対し緊急質問を行うものであります。
一九八四年の貿易統計によりますと、我が国の対米黒字は一昨年に比べ急激に増加して三百七十億ドルにも及び、史上最高の黒字を記録いたしております。また、対EC諸国に対する黒字額も百億ドルを超え、同じく史上最高を記録しておるのであります。このように、我が国の大幅な貿易黒字を背景として、米国を初めEC諸国や東南アジア諸国との間の貿易摩擦は激化の一途をたどっておるのであります。特に日米間においては、米国議会を中心に、日米関係は開戦前夜の雰囲気である、また米議会は忍耐の限度を超えた、こういった感情論的な激しい発言が相次ぎ、上下両院の対日報復決議案の可決に見られますように、危機的な状況にまで発展しつつあります。
世界経済の中心的な存在であります日米両国が、政治的危機を深めながら相互の利益を見失い、ひいては世界経済全体に暗雲を投げかけるような事態だけは絶対に避けなければならないと思うのであります。その意味においても、日米両国経済の健全な発展と揺るぎない信頼関係の構築は最も重要な課題であります。
〔議長退席、副議長着席〕
そこで、まず第一にお伺いしたいのは、今回の措置により米国議会のいら立ちを抑えることが可能かどうかという点でありますが、これに対する総理の見解を求めるものであります。また、世界の他の諸国は我が国の今回の対策をどのように評価しているのか、あわせてお伺いする次第であります。
第二に、貿易摩擦に対する政府の対応の遅さについて御質問をいたします。
政府は、昭和五十六年十二月以来、過去六回にわたって対外経済対策を実施してきましたが、項目ばかりが多く、小出しで総花的であるとの印象はぬぐえないのであります。それがために、対外経済対策が発表された直後には摩擦も鎮静化したかのように見えますが、すぐまた非難の声が大きくなるといった繰り返しであります。今までの対外経済対策が本当にそのときどきの情勢に応じて最大限実行可能な措置としてまとめられてきたのなら、なぜ今回の対策の中にミネラルウオーターの輸入対策のような初歩的な対策が入っているのか、また、今回の開放対策の多くは、基準・認証、透明性の確保など事務、行政レベルの問題でありますが、例えば食品等の輸入手続の簡素化を今回の対策に盛り込むまでに、なぜこれほど長い年月をかけなければならなかったのか、甚だ疑問を感ずるものであります。
第三に、市場開放問題に対する省庁間の縄張り問題について御質問をいたします。
今回の対策の中で、米国のマンスフィールド駐日大使が、日本の電気通信市場開放をめぐる交渉では米側は九〇%目的を達したとの見解を示されましたが、日本側の決定に至る過程において、通産省と郵政省とによる官庁の縦割り行政が官庁間の摩擦を生み、そのことが米国のいら立ちを増幅させ、不信感を招く大きな原因となっていると思うのであります。総理は、市場開放を三年以内に実行する行動計画を速やかに作成すると発表され、中期的に思い切った対策をとることを強調されましたが、これまでのような省庁間の縄張り争いの中で、果たして実効ある行動計画の策定が可能でありましょうか。より徹底した市場開放を進めるためには、官僚機構内部に強く残っているこのような意識を改めさせ、実質的な輸入制限と批判されないような仕組みにするため、閉鎖的な官僚機構の実態を総点検すべきであると考えますが、総理の見解をお伺いする次第であります。(拍手)
また、これまでの貿易摩擦に対する政府の姿勢は、米国やEC諸国などからの圧力に対し、その場しのぎの妥協を図るという解決手法を繰り返してきただけで、問題の根本的な解決にならないばかりか、いたずらに諸外国の不信感を増大させてきたにすぎないと思うのであります。政府は、このような姿勢を改め、世界のGNP一〇%国家として自由貿易体制の維持発展のため、その経済力にふさわしい貢献をしていかなければならないと思うのであります。着実な実行と信頼の回復は我が国に課せられた使命であり、世界の平和と繁栄の礎となるものであります。総理のお考えはどうか、お伺いする次第であります。
次に、経済政策について御質問をいたします。
今回の措置は、米国議会などの日本はアンフェアであるという批判にこたえ、我が国市場における公正な競争の確保が目的でありますが、これでどのくらいの輸入がふえるかどうか、甚だ疑問を抱くものであります。なぜなら、我が国経済は、御存じのように昨年十月−十二月期の実質経済成長率はその八割が外需に依存したものであり、内需主導による潜在成長力の顕在化というにはほど遠いものと言わざるを得ないからであります。特に、内需の過半数を占めます個人消費の伸び悩みや公共投資の鈍化の中にあっては、大幅な賃上げや減税を実行することによって国内の消費景気が盛り上がるようなことにならない限り、国産品はおろか輸入品を買う状況にはならないと思うからであります。我が国経済を内需主導による適正成長軌道に乗せ、より一層発展させていくためには、所得減税の実施や公共投資の拡大など積極的な景気対策を講ずるべきであると考えますが、政府の考えをお聞かせ願いたいのであります。(拍手)
同時に、貿易不均衡の拡大を招いている行き過ぎたドル高・円安という為替相場の是正を行うため、政府は最大限の努力を払うとともに、米国に対しましても高金利政策の是正を粘り強く求めていくべきであると考えますが、総理のお考えはいかがでありましょうか。
次に、労働時間短縮問題について質問をいたします。
今回の米欧の批判の中には、我が国の長時間労働に対しての問題意識があるものと思われます。二千時間を大幅に上回る我が国の労働時間を先進工業国にふさわしい水準まで短縮することは、国際的に見て緊急を要する課題であります。この問題は、貿易摩擦を引き起こす要因を少しでも減らすという消極的な意味だけでなく、国民の余暇時間をふやし生活にゆとりを持たせる上でも、極めて緊要な課題であります。この見地から、我々の要求に基づき、先般、与野党間で労働時間短縮、連休等の休日増加を検討する懇談会が発足したのは周知のとおりであります。また、この問題については、今回の政府の対外経済政策の土台となった大来諮問委員会の提言でも取り上げられているところであります。しかし、政府方針では、これが取り上げられていないのは全く不可解であります。それはいかなる理由に基づくものなのか、また、政府は労働時間短縮に今後どのように取り組む方針なのか、この際明らかにするよう求めるものであります。
次に、国内産業対策についてお伺いいたします。
今回の対策の柱であります関税の引き下げについては、合板問題が焦点になっておりますが、これは国内の中小合板企業等に多大な悪影響を及ぼすことが予想されます。政府は、今回の措置によって、例えば合板産業にどのような影響が出るものと予想しているのでありましょうか。これらの大きな打撃を受けると予想される産業については、雇用対策を含め十分な対策を講ずべきであると考えますが、政府は今後具体的にどのような施策をとろうとしているのか、お伺いをいたします。
最後に、新ラウンドについてお伺いいたします。
保護貿易主義の台頭を抑え、自由貿易体制を維持発展させるため、発展途上国をも含めた新たなる貿易ルールの確立に向けて、新ラウンドを積極的に推進していくべきだと思いますが、政府の見解を伺うものであります。また、東南アジア諸国は、かねてから我が国の対外経済対策が米欧に偏っていると非難してきましたけれども、今後、途上国との関係改善をどのように行い、新ラウンドに参加させていくのか、あわせてお尋ねいたし、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/33
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034・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 宮田議員にお答えをいたします。
まず第一問は、対日批判の問題でございます。
既に申し上げましたような事由で厳しい摩擦が起きましたけれども、先般の一連の処置により、これを忠実にフォローアップすることによりまして鎮静もし、また、評価も次第に得られるものと確信し、今後努力いたしたいと思っております。
次に、アジアやEC諸国の評価の問題でございますが、一般的に見まして、期待と失望とが入りまじっているというのが正直なところであると思います。それと同時に、今後の努力を見守るという態度であります。これらの期待にこたえまして、今後とも努力してまいりたいと思っております。
食品や化粧品に係る基準・認証の問題でございますが、従来も改善措置を講じてきたところでございます。しかし、今回はさらに一歩踏み込みまして、原則自由、例外制限、こういう形にいたしまして、さらに一層の簡素化、迅速化を図り、透明化を図ろうとしているものなのでございます。
次に、アクションプログラムは可能であるかという御質問でございますが、党と内閣と一体になりまして推進機構を整え、また、各省庁を督励いたしまして、おのおの作業グループをつくらせまして、そして政府・与党一体になりまして、これを推進してまいるつもりであります。そして、この報告にまとめました、ことしの四月中に方針を決め、七月中に骨格を決め、そして三年以内でもできるだけ早く実施して実現していく、こういう考えで進むつもりであります。
その次に、各省の縄張り争いがあったのではないかという御質問でございますが、従来から、対外経済対策のまとめに当たっては、経済企画庁が中心になりまして関係各省庁と連絡調整を行ってきたのでございます。今回も同じように関係閣僚会議や関係局長会議等を開催してまとめてまいりました。いろいろ各省によりまして見解の相違があることは事実でございます。しかし、最終的には内閣の統一のもとに一致させまして、さらに一層のアクセスの改善あるいは連絡調整の緊密化に向かって努力してまいるつもりでおります。
その次に、内需拡大、減税の御質問でございます。
政府としても、今後とも適切かつ機動的な経済運営によりまして内需の持続的拡大を図ってまいりたいと思っております。所得減税につきましては、厳しい財政状況のもとで赤字公債を発行してやるということはできない状況でございますが、私は、原則的に所得税、法人税の減税をやりたい、そう申し上げているとおりであります。また、今回の与野党の合意を踏まえまして、その結果を尊重してまいりたいと思っておるところでございます。
労働時間の短縮につきましては、労働者の生活の充実や国際化への対応等あるいは消費の機会増大等のためにも必要であります。週休二日制の普及、年次有給休暇の消化促進等を重点に行いたいと思っております。
次に、ニューラウンドの問題でございます。
自由貿易体制の維持強化のためには、やはり責任とコストを負担する立場に立ってニューラウンドを推進していきたいと思っています。本年中に正式準備を開始して準備を急ぎ、明年春にも交渉を開始すべく、ECその他世界各国に働きかけてまいります。これにつきましては、途上国の御理解、御協力をいただくことが非常に重要でございますので、ASEAN諸国を初め途上国につきましても十分配慮してまいるつもりでおります。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣佐藤守良君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/34
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035・佐藤守良
○国務大臣(佐藤守良君) 宮田議員の御質問にお答えを申し上げます。
関税の引き下げを行えば、深刻な不況下にある合板業界に影響を与えることが考えられます。現在の森林・林業の厳しい現状を見ますと、単に合板業界の体質改善のみならず、中長期の視点に立って、木材産業及び林業を通じた対策を進める必要があると考えております。このため、森林・林業及び木材産業の活力を回復させる観点から、木材需要の拡大、木材産業の体質強化、間伐・保育等森林・林業の活性化等を中心に、財政金融その他所要の措置を当面五カ年にわたり特に講ずることとして、現在鋭意検討中でございます。(拍手)
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国際貿易摩擦問題に関する緊急質問(野間友
一君提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/35
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036・勝間田清一
○副議長(勝間田清一君) 次に、野間友一君提出、国際貿易摩擦問題に関する緊急質問を許可いたします。野間友一君。
〔野間友一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/36
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037・野間友一
○野間友一君 私は、日本共産党・革新共同を代表し、現在緊急かつ重大な問題となっている貿易摩擦問題に関し、総理並びに関係大臣に質問いたします。
アメリカが対日貿易赤字を取り上げ、その原因が日本市場の閉鎖性にあるとして市場開放を求めるやり方は、一九八一年以来繰り返してやられてきました。政府はその都度対策を決め、既にそれは六回にも及んでおります。この間政府は、残存輸入制限品目の削減、関税引き下げ、牛肉、オレンジの輸入枠の拡大、金融、サービスの自由化、電気通信機器市場の開放などアメリカの要求をその都度受け入れてきました。その上アメリカは、我が国の慣習、国民の嗜好、文化がアメリカと異なることまで非関税障壁として問題にし、国民の安全、健康を守るための制度まで合わせるよう要求してきたのであります。食品添加物の例に見られるように、政府はこうした不当な要求まで受け入れてきました。
しかも重大なことは、政府はかかる屈辱的対策をとるたびに、貿易摩擦があたかも解消するかのような宣伝をしてきましたが、おさまるどころか逆に一層拡大してきたのであります。今回の対外経済対策も、これまでのこうした対策の延長線上のものにすぎないと断ぜざるを得ないのでありますが、この点について、まず総理の明確な見解を求めるものであります。(拍手)
次に、総理は、一昨日の記者会見において、アメリカなどとの貿易摩擦を解決しなければ日本の死命を制するような重大事態が発生するおそれがあると述べられました。総理は、いわゆるロン・ヤス関係をいかにも得意げにされておりますが、これでは、ロン・ヤス関係とはまさに対米従属関係そのものではありませんか。総理の見解を求めるものであります。
次に、貿易不均衡、対米貿易黒字の拡大についてであります。
まず、その原因について総理の認識を伺います。政府が今回、アメリカの要求を一方的に受け入れた対策を決定したことは、とりもなおさず、主な原因が日本市場の閉鎖性にあるとする主張を認めたことを示すものでありますが、総理、あなたは本当にそうだと考えておられるのでしょうか。我が国の関税は、一九七九年時点で既に世界最低であります。非関税障壁についても、その代表格である輸入制限品目において欧米と遜色のないことは、総理自身が認めてきたことではありませんか。対日圧力の急先鋒であるブロック通商代表でさえ、私は次のような悪夢を見る、それは日本がアメリカの要求をすべてのんで市場開放したにもかかわらず、事態は全く変わらないという悪夢だと述べ、マンスフィールド米駐日大使も同様の発言をしております。米当局者自身、市場開放では解決できないと見ているのが一般的であります。
総理、貿易摩擦の原因が我が国の市場閉鎖にあるという根拠のない論理に基づき、農林業や中小企業等を直撃する市場開放を強行するほど日本国民にとって悲劇はありません。総理、今回の対策でどれだけ対米黒字が解消できるとお考えですか。これまで以上の市場開放をしても、日米貿易不均衡の是正に役立たない事実をはっきり認め、アメリカに対して毅然と発言すべきではありませんか。総理の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
貿易摩擦は一九六〇年代の終わりから繰り返し起きてきましたが、政府の対策はいずれも一方的な対米譲歩に終始し、摩擦の真の原因には手を触れませんでした。我が党が早くから指摘してきた真の原因にメスを入れていたならば、事態は大きく変わっていたでありましょう。そこで、私は、改めて日米貿易摩擦の二つの原因にメスを入れるよう強く要求するものであります。
その第一は、最大の原因となっているドル高の是正をアメリカに要求することであります。
アメリカの貿易赤字の原因がドル高にあることは、本年二月の米大統領経済報告でさえ認めているところであります。さらにその原因として、レーガン政権の大軍拡政策による軍事費増大が財政赤字を拡大し高金利を招いたことにあることは、今や広く指摘されております。総理も記者会見でドル高是正を挙げました。しかし、その原因に言及されなかったのはなぜでしょうか。日米貿易摩擦の解決を真に願うならば、おずおずとドル高是正を請うのではなくて、具体的な原因の除去、すなわち、大軍拡政策をやめるようはっきりと要求すべきであります。これを実行せず、ドル高も原因の一つなどと発言するだけでは、国民を欺瞞するものと言われても仕方がないではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。
貿易摩擦の第二の原因は、我が国大企業の持つ異常な国際競争力の強さであります。
我が国の輸出額は一九七〇年から八三年の間に五・一倍にふえておりますが、中小企業性製品の伸びはこの間二・九倍にとどまっており、大企業性製品の伸びがいかにすさまじかったかを示しております。しかも、輸出額上位二十社が全体の四〇%強を占めていることを見れば、貿易摩擦を引き起こした国内要因が一部大企業の輸出急増にあると言っても過言ではありません。こうした大企業の強い競争力を保障してきたのが、労働者の低賃金、長時間超過密労働、下請中小企業への激しい締めつけ、収奪であり、さらに、電気機械、自動車などの特定産業を選択し、財政、金融、税制上のあらゆる優遇措置を動員した政府の産業政策であったことは明白であります。こうした政府の大企業本位の政策を転換することなく、そのツケを一方的に国民、農林業や中小企業に押しつけることは断じて許されません。
さらに総理は、貿易の拡大均衡を図ると格好よく発言されました。しかし、どう転んでも大企業の輸出がふえざるを得ない政策を進めながら、一方で国民に対し、外国製品をもっと買ってほしい、一人当たり二万五千円ずつ買うてもらえば輸入は百二十億ドルもふえるなどとお願いするのは、まさに政策の破綻そのものと言わざるを得ません。総理及び通産大臣の明確な答弁を求めるものであります。本気で国民に輸入品を買えというのであれば、我が党が要求しているように、一兆円規模の所得減税、軍事費の大幅削減、大企業補助金の削減、福祉、教育予算の充実、中小企業対策費の拡充、生活保護家庭など弱者いじめに行き着く補助金カット一括法の撤回などを行い、国民の購買力向上を図るべきであります。総理並びに通産大臣の答弁を求めます。(拍手)
次に、いわゆる対米四分野の市場開放策について具体的にお聞きします。
まず、電気通信分野の問題であります。
大型VANの手続の簡素化、端末機器の基準の引き下げに道を開いたことは、我が国の政策や制度をアメリカに合わせるよう変更することにほかなりません。しかも、他方、郵政次官は、市場参入への現実の障害が認められる局面になれば、必要な場合は法律改正等を国会に提出する、また、その間でも必要ならば一年以内にも関係政省令を改正するとの手紙をアメリカに送っております。こうした政府の立場は、既にATT・三井グループ、IBM・三菱グループなど日米巨大企業がなだれ打ってこの分野に進出しようとしている中で、立法府である国会の役割をもアメリカの要求に従属させ、あらかじめ拘束することになるのではないでしょうか。この責任をだれが、どうとるのか、明確にすべきであります。米国の通信衛星購入とKuバンドを米国衛星用に開放する決定も、レーガン大統領と関係の深いヒューズ社の衛星を購入する、すなわち、米軍事大企業の個別の要求にこたえるものでしかありません。宇宙開発における自主開発政策を我が国は放棄するのでありましょうか。
電気通信分野の開放策は、結局アメリカ巨大企業の要求を代弁したレーガン政権の圧力に屈服し、我が国の経済主権を損ない、さらには国会をも軽視するものであり、直ちに撤回すべきであります。総理並びに郵政大臣、お答えいただきたい。
世界的に緑の危機が叫ばれている今日、全世界の緑を、また我が国の森林、木材産業を守るためには、これまでの外材大量輸入政策を転換し、我が国の低い関税率をせめてアメリカ並みに引き上げることこそ本筋であります。ところが、これを逆に引き下げるという今回の決定は、一時的な救済策はとるものの、将来、栄養失調による死を覚悟せよと言うに等しく、さらに緑の危機を深刻化させる以外の何物でもありません。今回の決定を直ちに撤回し、我が国森林、木材業の抜本的な再建策を講ずることこそ百年の大計であり、政府の責務であると考えますが、農林水産大臣の答弁を求めます。
次に、医薬品、医療機器の問題であります。
その承認審査に当たって、今回の決定が人種差に関係ないものについては外国臨床試験データを受け入れるとしたことは、まことに重大であります。こうした基準が、各国人の体格、食生活、医療慣行によって差があるのは当然であります。人種差に関係のないものとは、一体どこで、だれが、どのような基準に基づいて判断するのか。これは国民の健康や医療に直接重大な危害を与える危険があり、到底認めることはできません。これまでに規制緩和された食品添加物なども含め、今回の一連の措置は、まさに日本国民にアメリカ国民になれと言わんばかりの内容であります。総理はこれでいいと考えられるのか、明確な答弁を求めるものであります。
最後に、私は、日米両国の大企業の利益を図り日本国民に犠牲を強いる今回の対外経済政策を撤回し、国民の暮らしを守り、経済主権を確立する立場に立った対応に改めるよう強く要求して、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/37
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038・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 野間議員にお答えをいたします。
最初は、従来の市場開放政策の効果でございますが、従来もいろいろ努力してまいりましたが、今回の措置によりまして国内市場へのアクセスは改善され、一層輸入量はふえるものと考えております。内外経済条件の変化によりまして新しい問題が出てまいりまして、今回の措置になったのであります。
次に、アメリカの要望に対する御質問でございますけれども、世界経済活性化への積極的貢献を行うとの立場から対処したものであり、日本のような貿易国家におきましては、みずからの利益のためにもこれを行う必要があったので、アメリカから押しつけられたものでは断じてありません。
次に、市場開放の効果でございますが、今回の措置によりまして相当程度の開放が行われる、また、それを推進したいと考えているところでございます。
次に、アメリカの軍事費の問題でございますが、今回の貿易不均衡の原因にはドル高あるいはアメリカの金利高等の原因もございます。それらについては我々は是正を強く要請しているところでございます。アメリカの国防政策については、抑止を旨とした防御的なものであると考えております。
次に、六十年度予算と内需の問題でございますが、六十年度予算は厳しい財政事情にかんがみて強力に財政改革を推進したものであり、御指摘の諸点については見直しする考えはありません。
次に、貿易不均衡と国内施策の問題でございます。我が国としても、アメリカに対しましては言うべきことは言い、また一方に、国際経済社会に占める我が国の地位を踏まえて市場アクセスの改善等対外経済政策を決定したところであり、今後もこの政策を推進してまいります。
第二種事業に関する対米交渉の問題でございますが、いずれにせよ、立法府の機能を侵すことのないように十分配慮して行ったところであり、今後もその考えでおります。
衛星購入の問題でございますが、政府は、自主技術開発を進める一方、通信衛星購入につきましては、昨年及び今次の対外経済政策決定を踏まえて、民間の動きを十分見守りながら適切に対処してまいります。
次に、周波数の問題でございますが、国際ルールの枠内における従来からの方針に沿って対処してまいります。
次に、医薬品やあるいは食品添加物の問題でございますが、これらはいずれも専門家の研究班及び審議会を経まして慎重かつ科学的に検討していただいた結果でありますので、御心配は要りません。
最後に、対外対策と国民の暮らしの問題でございますが、今回の対策は国内調整にも十分配慮しつつ我が国経済を支える自由貿易体制の維持強化を目指すものであり、国民の暮らしを守ることになるものと理解をいたしております。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣村田敬次郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/38
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039・村田敬次郎
○国務大臣(村田敬次郎君) 全般的な問題につきましては総理から御答弁がございましたので、私からは二点のみお答えを申し上げます。
第一点は、貿易拡大均衡と産業政策の問題でございますが、我が国の産業政策は、国民ニーズに対応した福祉の向上、国際経済社会への貢献などの基本的目標の達成に向けて、我が国全体としての産業の発展と調整が効率的に行われるよう市場メカニズムの働きを補完するものであり、大企業による輸出拡大の促進を目的としたものではございません。政府は、我が国経済を取り巻く厳しい国際環境を踏まえ、今般市場アクセスの改善等を内容とする対外経済対策を取りまとめたところでございまして、自由貿易体制の維持強化などを図るため、これらの対策を実施してまいる所存であります。
第二点は、内需の拡大と中小企業の問題でございます。
製品の輸入拡大のために、政府といたしましては、これまで種々の施策を実施してまいりました。市場開放、輸入促進等各般の対策を今回も前広に講じることとしたわけであります。一方、内需中心の経済成長の発展、達成を図ることが重要と認識をいたしておりまして、中小企業の振興を図るために、従来から所要の予算を計上し、中小企業対策の積極的展開を図っているところでございます。その内容は、新しい時代の中小企業をめぐる環境の変化に対応し、技術力の向上、情報化への対応、経営基盤の安定強化等に重点を置いたものでございます。これらによって、厳しい環境変化に積極的に対応し得る創意と活力にあふれた中小企業の育成を図ってまいる所存でございます。(拍手)
〔国務大臣左藤恵君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/39
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040・左藤恵
○国務大臣(左藤恵君) 総理からお答えがございましたが、私からも補足させていただきたいと思います。
特別第二種電気通信事業の登録制度及び端末機器の技術基準・認証制度につきまして、政省令の制定に当たりましては、内外無差別、簡素、透明の原則が徹底されるよう措置したものでありまして、我が国の通信主権は確保されていると考えております。電気通信事業法を施行していく中でこの原則に照らして問題が生じた場合には、必要に応じて法の規定に従って国会に対して法改正を提案いたします。また、関係政省令の見直しを行うということもあり得るものと考えております。
次に、通信衛星の周波数の問題についてお答えを申し上げます。
Kuバンドの周波数の一部については、一九七九年の世界無線通信主管庁会議において通信衛星にも使用できることとなったものでありまして、我が国においても通信衛星用としても利用できるよう既に割り当てていたものでありまして、今回初めて特別に措置したものではございません。(拍手)
〔国務大臣佐藤守良君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/40
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041・佐藤守良
○国務大臣(佐藤守良君) 野間議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、国際森林年関係のお尋ねでございますが、その記念事業として、森林・林業に関する国民の理解を深めるため、国際森林年記念の森の造成、国際的な記念シンポジウム等幅広く計画しております。また国際的には、国際協力事業団等を通じた造林や森林保全等の林業分野における経済協力等を一層推進していく所存でございます。
次に、木材製品の関税問題についてでございますが、現在の森林・林業が置かれた厳しい現状にかんがみ、森林・林業及び木材産業の活力を回復させる観点から、木材需要の拡大、木材産業の体質強化、間伐・保育等森林・林業の活性化等を中心に、財政金融その他所要の措置を当面五カ年にわたり特に講ずることとしたところでございます。関税問題につきましては、これらの対策の進捗状況を見つつ、おおむね三年目から関税引き下げを行うべく前向きに取り組むこととしております。
次に、我が国林業、林産業の振興策についてでございますが、先ほども申し上げましたとおり、財政金融その他所要の措置を当面五カ年にわたり特に講ずることとしておるところでございます。また、二十一世紀に到来が予想される国産材時代に備え、まず第一に木材のよさの普及啓発を図り、木材の需要を拡大することとし、さらには造林、林道等の林業生産基盤の整備と林業地域の活性化等各般の施策を積極的に推進してまいる所存でございます。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/41
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042・勝間田清一
○副議長(勝間田清一君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時五十七分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X02019850411/42
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