1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年三月十九日(火曜日)
午前十時二十五分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 山本伊三郎君
理 事
鹿島 俊雄君
黒木 利克君
大橋 和孝君
委 員
紅露 みつ君
山下 春江君
山本 杉君
横山 フク君
杉山善太郎君
藤原 道子君
小平 芳平君
中沢伊登子君
政府委員
厚生政務次官 谷垣 專一君
厚生大臣官房長 戸澤 政方君
厚生省医務局長 若松 栄一君
厚生省保険局長 梅本 純正君
社会保険庁医療
保険部長 加藤 威二君
事務局側
常任委員会専門
員 中原 武夫君
説明員
大蔵省主計局主
計官 辻 敬一君
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本日の会議に付した案件
○社会保障制度に関する調査
(国立療養所の特別会計繰入れ問題に関する件)
(健康保険臨時特例法施行後の諸問題に関する
件)
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001・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
社会保障制度に関する調査を議題といたします。
まず、国立療養所の特別会計繰り入れ問題に関する件について質疑を行ないます。
御質疑のある方は御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/1
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002・大橋和孝
○大橋和孝君 きょうは、国立療養所の特別会計移管について一、二質問をさせていただきたいと思うわけであります。
このたび特会に移行するというわけでありますが、そういうことになる動機を私はどうも疑うわけであるわけです。全国に百六十カ所の国立療養所がありまして、そして、いままでは、非常に難治であり、長らく療養を要するという形で、結核というものに対して取り組んでこられて、この結核の療養のためには非常な経費もかかり、いろいろ家庭的な問題もあるために、そうしたものを保障していかなければならないという立場から、予防法も施行され、行なわれておるわけであります。その数が少し減ってきたからというので、最近は、そこに、また非常に難治であるところの、あるいはまた手のかかるところの、お金のかかるところの病気である、いわゆる心身障害児の重症なものだとか、あるいはまた肢体の不自由なものだとか、あるいはまたいろいろ後遺症によって長らく治療を要するし、あるいはまたお金がかかるというものが収容されつつあるわけであります。こういう状態の国立療養所にもっとお金をかけて、そしていいものにしていってもらいたいということは、私はかねがねこの委員会においてもお願いをしながら進んできたわけであります。そういう観点からいえば、むしろいまのままの一般会計で国がもう少し金を入れていくというのがあたりまえではないかと、こう考えるわけでありますが、それができないから今度は特別会計に持っていこう、こういうふうな考え方は、私は、頭から考え方が間違っているんじゃないかというふうに考えるわけでありますが、その問題について一体どういうふうに考えられて特会にしたいとおっしゃるのか、そこのところがどう考えてもどっちから考えても納得がいかないので、ひとつ納得のいくように説明してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/2
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003・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) このたび特別会計に移行するということにお願いしてございますけれども、この問題は、実は、数年前から私ども事務当局のほうでは相当深刻に検討をしてまいった問題でございまして、結核の医療というものは国民医療の中で非常に重要なものであり、また、結核患者に対して相当なめんどうを見なければならぬということはお話のとおりでございますけれども、一面、国立の医療機関としての国立療養所というものは、御承知のように、戦後におきまして、傷痍軍人療養所であるとか、あるいは陸海軍病院であるとか、あるいは医療団の施設等を一括国に移管いたしまして、国がそれを引き続いて運営したという実態がございまして、この施設設備というものはきわめて老朽の著しいものでございまして、近時における進歩した医療を担当するには全くふさわしからぬような設備施設に成り下がってしまっております。それに対しまして、一般の医療機関は、いろいろな方面の社会的あるいは個人的な投資によりまして近代化が進められておりましたので、その結果といたしまして、戦後二十年間で国立療養所というものと一般の医療機関の間の施設設備の格差というものはきわめて大きなものになってしまいました。
結核医療それ自体も、このような粗末な医療機関でやっていくということについてはいろいろ不便がございますし、また、一方、結核患者も確かに減少しております。しかし、一面、結核医療以外に、精神の医療、あるいは重度の心身障害児あるいは交通関係の傷害に基づくリハビリテーション云々という新しい長期慢性的な医療の要求というものが非常に高まってきております。このような医療も一般医療機関でやるということについては、かなり困難が伴います。したがいまして、国立の医療機関がこのように政策的に展開をしていかなければならない医療部門を担当するということもきわめて必要なことになってきつつあります。このような医療を担当いたしますにつきましても、現在のような国立療養所の施設設備の現状におきましてはきわめて不満足であり、その円滑な遂行が困難でございます。そういうような意味で、いろいろな意味で国立療養所の体質の転換、あるいは使命の転換、またそれに伴います施設の充実というようなものが必要になってまいりますので、従来から相当な社会的な投資を行なってこの充実をはかってまいりたいと努力してまいりましたけれども、遺憾ながら一般会計予算におきましては財政的な面からも大幅な資金を投入するということもきわめて困難でございます。これは事実上困難であったわけでございます。
一方、国立病院におきましては、そのような困難の一部を打開するために、数年前から借入金等の制度を導入いたしまして設備の近代化等をはかってまいりました。これも相当急速に設備が改善されてまいりました。そういうような事例から見ましても、国立療養所の急速な整備をするということは、単年度予算主義の一般会計のもとではきわめて困難であり、やはり長期的な先行投資というような資金をつぎ込んではじめてこの急速な整備が可能である。そういうような観点から、特別会計に移行することによって長期的な資金を導入する。あるいは、特別会計の性格として、国立療養所が持っております自己財産の処分を自主的にやる能力を獲得する。また、経営そのものにつきましても弾力的な運営をしていく必要がある。特に、一般会計におきましては、薬品費等におきましても、現実に医療の量が多くなりまして、そのために医療に直接必要な薬品費等の経費が不足になりましても、一般会計ではこれを簡単に補正するということもきわめて困難であります。ところが、特別会計におきましては、そのような予測しない事態に対しましても、弾力条項の適用等の操作によりまして比較的円滑にその欠点を補うことができるわけでございます。
そのようないろいろの観点から、われわれは、国立療養所を特別会計に移行して運営したほうが、より合理的、効率的に行なえるという意味で、特別会計に移行をいたす決心をいたしたわけでございます。これは、結核医療に対する国の責任、あるいは医療それ自体の公益性というようなものに対して、何ら抵触するものではないという考え方に立っておりますので、そういう医療それ自体の本質ということよりは、どちらかというと、医療機関の整備あるいは運営の便宜というような趣旨から特例会計へ移行するということにいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/3
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004・藤原道子
○藤原道子君 関連して。きょうは大臣が御出席でないので残念でございますが、いまの局長のお話を伺いまして納得がまいりません。国立病院がかつて特会制に切りかえられますとき、昭和二十四年の五月十八日に、当時の林厚生大臣が、全国病院長を東京に招集して訓示を行なうと同時に、「特会制の利点と欠点」という文書を配付いたしております。それを拝見いたしますと、利点につきましては、
イ、人員、金銭に機動性をもつができる。
ロ、能率をあげることが要請され、各職員がその能力を発揮する。
ハ、運営が合理化され、各種統計が迅速となる。
こういうことがあげられております。欠点といたしましては、
ニ、然しながら、反面欠点があらわれる。特別会計制の最大の欠点は、収入をあげなければ運営が不可能となる結果、必然的に収入第一を目的とするようになり、そのため公的医療機関としての特色が稀薄となり、少い支出で多くの収入をあげようとすることになる。このため具体的な欠点は、
イ、診療内容が不適正となり、実質的な医療費の高騰を来す。粗悪な薬品を使用し、診療費の徴収を目的として不必要な治療を行うようになる。
ロ、収入のあがらない患者を敬遠し、難病、慢性病を歓迎しない。
ハ、治療、診断などの基礎的な研究などの業務が等閑に附され、行った場合もその費用は患者の負担となる。
ニ、災害時、伝染病流行など、公衆衙生面の活動がおろそかになる。
ホ、新設、大修繕等大きな営繕工事が困難となる。
三、以上の欠点を矯正するため、一般会計より全経費の二割五分の受け入れを予定している。ホの欠点については公共事業費として一般会計より支出を予定する。
こういう文書が配付されております。ところが、二割五分の投入どころか、漸次減少いたしました。現状は、たしか一一%ぐらいより支出しておりません。一体、厚生省の医療対策はどこに観点を置いているのか。収入をあげるとか、あるいは施設の拡充ができない、いまのような貧弱な施設では目的が達成されない、そんなことは理由になりません。公的医療機関の果たす役割りはおのずから別にあると思う。林厚生大臣がすでにこういうふうな欠点を認めていらっしゃる。その欠点が、結核の場合を考えますと、今度これをやることによってさらに悪化してくることはあたりまえじゃありませんか。これに対してどうお考えになるか。こうした欠点を認めておいでになるのか。二十四年の五月十八日の会議で発言し、さらにこうした文書を配付している。局長はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/4
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005・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) 二十四年に国立病院が特会に移行いたしました当時はまずいわゆる占領行政下でございまして、そのためには、このような公的な事業も、いわゆる親方日の丸的な考え方でなしに、もっと合理的な経営をやれというような意向があったことは確かであったと思います。そういう意味からもしも採算主張というものに走るといたしますれば、ただいまお話のありましたような欠点におちいる可能性はあろうと思います。しかし、現実には、それ以後の国立病院の運営について、すでに二十年近くなっておりますが、国立病院が営利主義に徹して、重症患者を敬遠するとか、悪い薬を使うとか、安い薬に頼るとかいうようなことは、事実としてそれほど心配するような事態にはならなかったものと私どもは了解いたしております。また、大きな営繕関係等はかえって不自由になるのではないかというような点もございますけれども、すでに実態で御存じのように、一般会計においては大きな営繕等の事業がきわめてやりにくかったのを、特別会計で借入金導入等の手だてによりまして大きな営繕も逆に特別会計なるがゆえに可能になってきたというような事実もございますので、確かに理論的には利害それぞれあることでございまして、それらのいい点をできるだけ伸ばしまして、欠点となりやすいような点についてはできるだけ心して、そのような欠点が起こらないように配慮するということでこの特別会計の制度を国民のためになるようなできるだけいい方向で運営したいというのが私どもの念願でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/5
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006・藤原道子
○藤原道子君 この場だけをのがれればいいのではございません。国病が特会制になるときも、いまおっしゃったとおりのようなことをみな答弁している。ところが、現実にはそうなっていない。だんだん悪化してきている。と同時に、借り入れ金ができるようになる。借り入れ金は返すんでしょう。利子がつくんでしょう。それは一体どこから出すのです。国が補助するか。それもだんだん減ってきている。いまでさえ療養費でやり切れない。それが借金をして利子を返して——いまはなるほど建物はできるかわかりません、機械は入るかわかりません。けれども、この借金を返すのは一体どうなさるのか。ここが問題になる。だから、国病だけでだんだん克服してやっているというけれども、だんだん差額ベッドがふえてきているじゃありませんか。大きな特別室等の差額は別といたしまして、大部屋の差額さえとられていることを御承知でしょうか。だんだんそうなるんですよ、収益を上げようとすれば。だから、借り入れ金は将来どうしてお返しになるのか。療養費から返されるんでしょう。ということになれば、その療養費をどうお上げになるか、これを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/6
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007・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) 国立病院におきまして、現在まで約百五十億程度の借入金をいたしております。これはしかし非常に長期な資金でございますので、長期にわたって返済してまいるわけでございます。本年度から国立病院におきましては借入金に対する元金の返済が始まります。しかし、これは国立病院の全体の運営から見ますと少額でございまして、今後相当の額に上りますいわゆる償還金の最高のピークの状態に至りましても、現在の私どもの予想をしておりますところでは、診療収入の約一・数%程度が最高になるわけでございまして、その診療収入に対する一・数%というのもごく短期間でございまして、それ以外二十数年間にわたって返済いたしますそのほかの年次はすべて診療収入の一%以下のお金を元金の償還に充てることになります。したがって、経営面全体としてはそれほど重荷にはならない。一方、全体の経営面の赤字補てんという形、あるいは国立病院に対する資本的投資、あるいは本来診療収入でまかなうべからざる看護婦の養成等の経費を合わせまして、先ほども御指摘がありましたように、現在でも総経費の一二%を一般会計から繰り入れております。したがって、現状におきましては、一般会計よりの繰り入れが一二%、将来借入金の償還が最高に至りますときにおいても診療収入の一%程度ということで、総体といたしましてそれほど国立病院の経理を圧迫し、すべてを診療収入でまかなうんだという考え方にはならないと思います。
なお、借入金の利子については、これはすべて一般会計の負担においてお願しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/7
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008・藤原道子
○藤原道子君 私、関連ですから、納得がいきませんので、あとで系統的にお伺いしたいと思います。失礼しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/8
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009・大橋和孝
○大橋和孝君 いま藤原委員のほうからの質問の中にもありましたのですが、私、もう少し現状について詳しく聞きたいと思います。
特に、いま百六十カ所ですかありまして、六万五千床かなんかと聞いているわけですが、一体、いま国立療養所はどれくらいあって、そして、その占める率は、結核が何ほど占めて、それからどういうものにどれくらいの病床を与えておるか、そして、その充足率はどれくらいになっているか、そういうふうなことをひとつ御説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/9
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010・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) 国立療養所が百七十一カ所ございますが、らい療養所十一カ所を除きますと百六十カ所になるわけであります。そのうち、結核を主としてやっております結核療養所が百五十三、精神患者をもっぱらあるいは大部分入れておりますのが六カ所、また、脊髄損傷患者を専門に入れておりますのが一カ所でございます。
そして、その収容能力は、建物といたしましては、先ほどおっしゃいましたように、総数として六万床程度の収容できる建物の広さを持っておりますけれども、現実に患者を入れ得る設備あるいは人的な配置をしておりますのは、結核関係で五万一千四百床、精神関係で二千五百十床、それから脊髄療養所として百二十床を用意いたしております。これで合計五万四千三十床になるわけでございます。
なお、実際の患者数につきましては、四十二年十二月一日現在で、結核関係では、五万一千四百に対し四万一千八百九十三、したがって、約一万程度の差がございます。精神につきましては、二千五百十床分に対して二千二百十五、脊髄については百二十床に対して百二十という状況で、総計いたしますると、国立療養所といたしまして、らいを除きまして、五万四千三十床分の用意をいたしております中で、入っております患者は四万四千二百二十八と、約一万床分が空床ということになるわけでございます。
なお、全結核ベッドに対する国立療養所のベッドの比率というものをいま手元に持っておりませんが、結核ベッドというのは現在二十二万程度であろうかと思いますので、その中の約五万ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/10
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011・大橋和孝
○大橋和孝君 療養所のいままでのようなやり方では十分設備がやれないというようなお話があったわけでありますが、一体、いままでの間にどれだけの設備を改善されて、どういうふうにして、なぜぐあいが悪いのか、私はそこのところを明確にしていただきたい。特に私が言いたいのは、これほど大事な、まあ結核関係の療養所のできた本来のときであれば、入る患者も満員になるし、そしてそれは他にも伝染を及ぼす、隔離もしなければならないということで、非常な要求のもとに療養所はできたわけですね。そして、いまこの充足率を見てみますと、一万床が全体であいているだけであって、二割の空床率でありますからして、そうものすごい空床率とは言えないわけで、もう少しこれを充足しようと努力すればこれくらいの範囲は簡単にできそうな範囲であります。いままで私どもが説明を受けておった中では、非常に結核が減ってどうもならぬというようなお話を聞いておった。私がいま聞いておったところではそういうふうな感じを持つわけであります。そういうふうな形から考えてみまするならば、事の起こりが、結核に対して真剣に取り組んでおるのか。いまになってから、設備が十分できていないと。実際、私もあちらこちら見ましたけれども、これほど近代化されつつあるのに対して、あまりにも設備の改善を怠っておると思うわけでありますが、一体それは何でそういうことになってきておるのか。私は、その現実というものは、国が国の費用でもってやらなければならぬやつをサボっておった、やらなかったというところに非常に不まじめさがあるのだということを、いま説明を聞くだけでも腹立たしく思うんですね。会計が云々と言う前に、一体その経過がどうなっておるのか、その間の推移を説明して、いままでの間ほうっておかれた理由を明確にしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/11
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012・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) ただいま、五万程度に対して四万の患者、八割程度の充足率であるから、これは長期療養施設としてはむしろ普通の利用状況ではないかというお話でございます。実は、先ほども話が出ましたように、国立療養所としてこれをフルに活用すれば六万人収容できる程度の施設を持っております。現に、昭和三十二、三年ごろにおきましては、六万人まで収容いたしたことがございます。それが五万人になり四万人になりというぐあいに、約十年間で二万人患者が減ったことになるわけでございます。ただいま私どもが五万一千床程度持っているというのは、建物だけではなしに、それを運営するのに必要な設備並びに職員というものを考えた場合に、五万一千程度を収容し治療するだけの能力を確保しているという意味でございます。したがって、いわゆる医療法上のベッドというものは六万近くあるわけでございます。それに比べますと約二万のあきがあるということになるわけでございます。
なお、施設の整備につきまして非常に老朽化したということを申し上げましたが、それならば早くから設備の整備をやり老朽化を来たさないようにすればよかったではないか、怠慢ではないかという御指摘でございます。私どもも、確かに、整備に力が十分入らなかったという点は認めざるを得ないわけでございます。日本の経済が復興いたしまして医療機関等の整備が急速に進みましたのはやはり昭和三十年以降でございますが、三十一年以降におきまして、国立病院におきましては三十一年から三十五、六年くらいまでは年々十億程度を施設の整備につぎ込んでおりましたが、国立療養所においては五億程度しかその整備に金をかけておりません。また、三十年代の後半に至りまして、国立病院は、三十七年に借入金を導入いたしまして、それ以後急速に整備費の強化をはかってまいりまして、三十五年に十一億程度でありましたものが四十年には五十億にまでなるという状況でございましたが、遺憾ながら、国立療養所におきましては、三十五年に五億であったものが四十年度におきましても二十億程度ということで、四十年ごろになりますと国立病院と療養所の整備費の格差が大きく開いてしまったわけでございます。しかし、療養所におきましても、その後三十七年ごろから、非常に広大な土地を持っております部面、あるいは療養所の敷地が周辺が都市化してまいるというようなことで、国立療養所が非常に広大な土地を持っていて必ずしも現在緊急に使用しなければならないというような土地でない、いわゆる空閑地的なものが目立ってまいりましたので、それらの一部の処分をいたすことによりまして十億程度ずつの資金を獲得いたしまして、それでかなり整備をはかってまいったのでございますが、何ぶんにも一般会計からの繰り入れはそれほど伸びません。といいますのも、先ほど申しましたように、一般会計の予算は単年度主義でございますので、長期を見越した先行投資というふうなものを単年度予算の中で大幅に認めていくということはきわめて困難でございます。長期的な先行投資に類するようなものは、どうしても財政投融資等の長期的な資金にたよりませんとなかなか困難であります。そういう意味で、国立病院におきましても借入金を導入し、今度国療特会におきましてもこれらの資金を導入するということによりまして急速な整備をはかりたい。そういう意味で、国立療養所の整備もこの特会移行を機に急速に拡大してまいりたい、おくればせではあるけれども急速にやりたいということで、一般会計からの資金の導入もはかり、かつまた、土地の処分もやり、借入金の導入も行ないまして、明年度におきましては国立療養所の整備費を六十三億程度、そのほかに国庫債務負担行為等を加えますと八十億をこえる整備費を予定いたしたわけでございまして、おくればせではございますけれども、ここで何とか大幅な整備に踏み切らなければならない、過去の累積をある程度一挙に取り戻さなければならないというような状況になってまいったわけでございまして、いままで整備の促進できなかったということに関しては確かにある程度の責任は感ぜるざを得ないわけでございますが、これもなかなか財政事情等によりまして私どもの力の及ばなかった点は多々あることを認めざるを得ないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/12
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013・大橋和孝
○大橋和孝君 それは、努力していただいてできなかった、あるいは財政上の問題のあることはよくわかりますが、そういう意味におきまして、いままでの間に、結核の対策、あるいはまたそういうようなものに対しての関連というものは、これは国がやらなければならぬ性質のものであるし、法律でもそうなっておるわけなんですね。生活保護だとか、あるいはまた結核予防法だとか、あるいはそのほか公費負担に属するものが多いわけでありますが、そういう対象に対していままで長い間できなかったという理由が、財政の関係でというだけでなくて、もっともっと詳しくその間の事情が説明をされて納得のいくものならば私は納得ができるわけですが、いままで話を聞けば、たとえばいまのような状態では、いま一般会計から出されているのは一一%だと思うのですが、その金がほとんど人件費に回ってしまう。最近では、新しく開発された薬が結核患者に使われていない状態なんです。もし特会制にしてもらったらそういうものが使えますので特会制にしていただきたいという所長なんかの申し出を聞いても、私は納得がいかぬですね。いま、国がやっておる国立療養所で、いい薬ができているのに、会計上できぬからといってその薬を与えないというのは、これは人道上の問題じゃないですか。こういうことがいま療養所の中では行なわれている。しかも、おんぼろでほうってあって、しかも、六万程度あるとすれば、四万だったら二万も余っているんだからたいへんだ——あたりまえじゃありませんか。ほうっておいて雨の漏るようなところに入院しなさいといったって、入院できますか。私はむしろ極端に言えばそのくらいのことが言えるのじゃないかと思うのです。それでいままでやらなかったということは経済の問題で国の力が足らなかったくらいの話で納得できますか。これは納得できないと思うんですよ。いま大蔵省の主計官が来ておりますから、大蔵省のほうから、この問題についてどういうふうに考えられて、どのように予算のつけ方をしておったかということをあわせて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/13
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014・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) 国立療養所において薬品にさえ事欠くのじゃないかというお話でございますが、国立療養所におきましては、従来からも、健康保険等で結核の新薬を導入するというような場合におきましては、その時点におきまして薬価基準の登載等を機にいたしましてそれが使えるように補正予算等によりまして薬品費の増加をはかってまいっております。そういう意味では、高価な薬を使わないというようなことはないように配慮しているつもりでございます。しかし、現実に、結核の新薬の登場というようなことだけでなしに、医学、薬学が日々進歩しておりますので、どうしても予想しない薬品費の増高等があらわれてまいります。そういう意味で、国立療養所におきましては、薬品費が不足をするということが特にこの一、二年目立ってまいりまして療養所の医師等の不満を買っていたことは事実でございます。そういう意味で、このたびの特会移行に際しましては、薬品費を約十一億大幅に増額いたしましてこれらのことのないように十分な配慮をいたしたつもりでございます。
なお、特別会計におきましては、いわゆる弾力条項というものの適用ができますので、年間途中におきましても、新しい薬あるいは結核専門薬以外にもいろいろな薬ができまして薬品費の増加が起こるというような場合には、当然それに伴ってある程度の収入の増も出てまいりますので、予想いたさなかったような薬品費の増等が起こりましても、ある程度の収入の増が起こりますと、年度途中におきましても、いわゆる補正予算でなしに、弾力条項の適用によりましてこれを予算化し、薬品の購入等に充てることができ、そういう意味では従来の一般会計時代よりも非常に弾力的な運営ができるということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/14
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015・辻敬一
○説明員(辻敬一君) 医薬品費につきましては、ただいま御指摘のとおり、非常に重要な問題でございまして、従来とももちろん必要な予算の計上につきましてはできる限り配慮してきたところでございます。ただ、ただいま医務局長から御説明いたしましたように、一般会計でございますと、その制約もございまして、弾力的に対処するという面につきましてはやや問題があったのでございますが、今後これを特別会計にいたしまして、弾力条項等を活用いたしまして医薬品の需要に機動的に対処してまいりたいと、こういうことに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/15
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016・大橋和孝
○大橋和孝君 一般会計だと窮屈でできない、それから今度は特別会計制度にすると弾力条項も適用できると、こういうような御説明ですが、いまになって特別会計を考えられましたけれども、特別会計の考えられない去年までの時点で、一体、それじゃそういう状態をどういうふうにして解決しようと考えておられたのか。これは特別会計に移して独立採算制にしなかったら絶対解決ができないものであるかどうかということはあとから聞きたいのでありますけれども、いままでのところ特別会計を考えない時点においては一体どういうふうにしていこうと思われたのか、これを、医務局長、何かあればお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/16
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017・谷垣專一
○政府委員(谷垣專一君) たいへんあれですが、先ほどからの御質問の問題が、実は、私たちが今度特別会計に踏み切りましたときにいろいろと検討いたしまして苦労をいたした点を御質問になっておりますので、ちょっと申し上げておきたいと思うのでございますが、確かに、特別会計で行くのが是か、いままでの一般会計で行くのが是か、これはいろいろ議論があると思います。問題は、しかし、過去の問題とかその他の問題がいろいろございましょうけれども、いまの財政の状況でこの療養所の非常な老朽化しておる現状、これを建て直すのにどちらがいいだろうかという現実問題が非常に大きく私たちの上におおいかぶさっていろいろと検討させられたわけでございます。現在の療養所の老朽の状況をそのままにいたそうとはだれも思っておりません。しかし、これがこれほど窮迫してまいりますと、かなりスピードを上げて、しかもある程度の年次計画のもとに確実にこれをやっていくという手を打ちませんというと、これはそのほかのいろいろなことをやっても間に合わない。一般会計でそれがやれればこれは一番筋の通る問題であろうかと思いますけれども、現実問題としていまの一般会計の予算からそれだけの資金を投入する状況がなかなか生まれていない。それがいいか悪いかは問題は別になると思いますが、現実にはそういう状況であるという判断をいたしたわけでございます。
御存じのように、これはしかし企業特別会計ではございません。たとえば道路会計は、一般の道路予算もあれば、ああいうふうに特別会計で行なわれておる道路会計もございます。あるいは国立病院のように、これは非営利事業ではございますが、特別会計ということでやっているものもございます。いまの療養所の特別会計は、私たちは企業特別会計とはむしろ性格的には反対の性格のものであろうという感じを持っておりますけれども、しかし、先ほど来お話がありますように、ある程度の長期の見通しをする。あるいはまた、他から借入をしてやっていける余裕を持つ。さらに、現在の療養所の持っておりまする非常に広い面積の土地で必ずしも現在それが十分に活用されていない、将来の問題といたしましてももう少し節約できるじゃないかというような土地が現実にございます。これが、一般会計の場合でございますと、そういうものを売り払いました収入というものは一般会計の収入の中に入りまして、それは売ったんだからこちらのほうへ寄こせという要求をいたしましても、現実問題としてはそこのつながりがぎくしゃくしてまいりまして十分な要求を満たされるわけにいかない、こういうような事情がございますので、いまの段階で考えてみて、ここで思い切って計画的な設備の充実というものをやっていくならば、これは特別会計の制度に振りかえたほうがより便利じゃないかという考え方を私たちは持ったわけでございます。しかし、その中で一番大切なことは、これが特別会計のために、長期の療養を要するようなこういうような療養者の問題が一種の独立採算制のような問題に追い込まれてしまっていくんではどうもいけない、この点を実は私たちも一番懸念をいたしました。将来ともにこの問題は、私たちは、独立採算制と申しますか、一種の収入に見合っただけでやっていくというような形でいくべきものではないと思いますし、また、そういう療養所の対象といたします長期の療養される者はそんなことでまかなわれる筋のものではないと思っております。ただ、現実の設備が激しい朽廃を重ねておりますものを見ますと、これを何とかしなければならないという問題と、それから何と申しましても特別会計にいたしまするというと会計制度の上で融通性が持たされます。先ほど言っておりますような薬品の問題等におきましてもそういう点が出てくると思いますけれども、そういう点を勘案いたしまして実は特別会計制度に切りかえることで御審議をお願いをしておるという考え方でございまして、先ほど来両先生がいろいろと御心配になっておられます問題は、実はこれを切りかえます場合に政府部内におきましても実は非常に激しく議論をいたした点でございます。最終的には、いま私が申し上げましたような点を考えまして、この際これを切りかえていこうじゃないか、そして計画的に療養所の設備を充実していかなければいけないじゃないか、こういう考え方に立ったのでございます。
あとのいろいろとこまかい技術的な問題等がございますし、将来も問題を残しておりますけれども、そういうつもりでこの振りかえをいたそうとしたわけでございますので、これは基本的な問題でございますので、お答えをさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/17
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018・大橋和孝
○大橋和孝君 いろいろ苦労をなされ、いろいろ議論のあげくこれが一番いいということになったんだろうと、私は初めからそれを考えながらやっておるわけでございます。しかし、いまの次官の御説明の中でも、急速に設備をするためには借り入れができるからいいんだと。もし借り入れを急速にやっちゃって、たくさんの借り入れというものは、これは利息もつくし、金も返さなければならない。そうすると、公費で負担してやらなければならぬ人を対象として療養さしておる療養機関でそういうことが可能なんですか。あるピークのときにきたら、非常に赤字になって困ることがあるのじゃないか、私はむしろそういうことも考えるわけですが、それ以前に、いままで一般会計だからできなかった、特別会計だからできるんだということの中にもう少し掘り下げてそこのところを聞いておかないと、私は、それに移行してなるほどそのほうが矛軟性があっていいんだという結論にはどうもなれぬのですね、どう考えてみても、ですから、そこのところを、私は、自分の頭が整理できるようにひとついろいろ教えていただきたいというつもりできよう質問しておるわけです。
私の考え方では、いままで結核というのはいろいろ開発されたからいまのような状態になってまいりましたが、この前から私もいろいろ調べてみてまいりますが、老人なんかにもふえてまいりましたし、在宅患者で開放性の結核というのはいまたくさんあります。こんなものはもっとすすめて入院させなければならない。ところが、すすめに行っても入院しないというのは、生活の裏づけがないから入院しないということが率直に言ってあるのじゃないか。だから、そういうことから考えて、入院させることができるとしたら、いまの二万床なんか当然埋まってしまって、まだ入れなければならぬ人がたくさんあるわけです。そういうことができないということはどういうことかと考えていけば、設備も悪いし、それからまた、新しい薬ができてもなかなかその薬が使ってもらえぬのだと、こういうようなことになれば、行く人は足が重いでありましょう。また、生活にしても、家におれば薬を飲みながら多少動いて収入があるけれども、入院してしまったら収入の道がとだえる。だから、自分のからだをすり減らしながらも、また、他人に菌をまき散らしながらも、まだ家庭におるということです。また、手錠をはめて連れてくることはできないから空床があるんです。極端にいえばそういうことになるのじゃないかと思うんです。そういうことになったとして、いままでの間にそれがもう少し喜んで入院できるようなことがなぜ処置できなかったかということを十分に納得させてもらえない限り、この次に移行したほうが便利だということにはどうも少し飛躍がありそうな感じです。だから、一般会計なんかでも、いままでの時点でなぜそれができなかったのか。する方法がなかったのか。絶対ないということだったらないのでありますが、そういうことについても、大蔵省の考え方も、また、医務局のほうの考え方も、そこのところをおのおの一ぺん聞いておきませんと、もしいままでの間でも改良していけることがあれば、今度はそれもどうなるかということを考えてみたいのでありますが、絶対それはできないものでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/18
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019・谷垣專一
○政府委員(谷垣專一君) これは、御質問のように、絶対にできないという問題ではないと思います。国家の財政全体の問題それに対しますいろいろの要求の問題でございますので、これは絶対にできないというそういう性格のものではないと思います。ただ、現実に、終戦後、昔の傷病兵のをいろいろ引き継いだあと、事務当局は事務当局なりにいろいろ苦労してやってきたと思いますが、現実はああいうふうになっております。詳しくはいろいろ当局のほうで苦労してやってきていると思いますので、事務当局から答弁させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/19
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020・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) 国立療養所の医療内容が悪い、あるいは設備が悪いために患者が入りにくい、患者の希望が少ないということがあり得るかということでございますが、私は、国立療養所において医療内容が他に劣るというために敬遠されるということは、これは万々あるまいと存じております。ただし、現実には、患者が結核で入院しようと思っても、国立療養所を見に行きまして病室へ案内されて、ああ、この病室じゃとてもはいれないということで入院をあきらめたというような事例があったことは確かでございます。そういう意味で、施設がもう時代おくれ的になっているために患者にきらわれるという実態は確かにございます。そういう意味からも、療養所の整備という問題もぜひ急速にやらなければならない問題である。そうして、この整備を行なうための資金として、私どもといたしましては、現在のところ、一般会計からの繰り入れと、土地処分と、それから借入金という三つの方法を持っております。
一般会計の繰り入れにつきましては、これは年年努力をしておりますけれども、一般会計という単年度主義の予算の限界というもののためになかなかそう伸びてこない。また、土地処分につきましても、これも先ほど政務次官から御説明がありましたが、われわれとしては土地処分を相当やりたいということでも、土地処分の見返りの代金は一般会計からもらわなければならぬわけであります。したがって、われわれが土地処分をしようと思っても、一般会計にそれだけの十分な余裕がありませんと、その見返りをもらうことそれ自体もなかなか困難である。したがって、土地処分自体も私どもの自主性が阻害されるわけでございます。それが、特別会計におきましては、今度特別会計自体で処分することができますので、そういう意味で一般会計のワクをくぐるという拘束がなくなりまして自主性が回復されてまいります。また、そのほかに借入金の導入という便宜も与えられますので、そういう意味で、いろいろな点からいままでのような欠点を補うためにこのような諸制度を採用したいという趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/20
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021・大橋和孝
○大橋和孝君 それじゃ大蔵省のほうにちょっとお尋ねしたいと思うのですが、いままでの経過では、土地を売れば大蔵省へ取り上げてしまって、そうしてそれはなかなか厚生省の自主性がないというわけですから、それはどちらかといえば、土地を売らしたら大蔵省がもうけて取ってしまう。そうして、患者が見に行ったらこの療養所ではとてもはいるのはいやだといって逃げ出さなければならぬような療養所をほうっておく。これを考えてみますと、療養所のことだけ考えてみれば、国は、そうした患者に犠牲を与えておいて、その敷地を売ったものまで自分のほうへとっている、ほかへ回してしまうという、俗に聞けばそういうふうに受け取れるわけですけれども、そういうえげつないことを大蔵省はやっていたわけですか。それでは大蔵省は鬼みたいなものじゃないかと思うんです、そういう話を聞けば。私は、大蔵省というようなところは、国民のために生命に関係するようなことをそんなことをやっているとは思わないのでありますけれども、いままでに大蔵省はもっと積極的にこういうふうな療養所に対しては一般会計からお金を出す——いまおっしゃっているのは単年度だからできないというのですけれども、年度計画ならできるということですか、一般会計から出せば。そういうようなことを含んでいままでやってもらえなかったということは大問題だと思うのですけれども、大蔵省の考え方はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/21
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022・辻敬一
○説明員(辻敬一君) 国立療養所の整備につきましては、従来とも重点的に行なってきたところでございますが、何ぶんにも御承知のように膨大な施設を持っています。一方におきまして、一般会計の財源は限定されております。さらに申しますならば、これらの療養所は多く旧軍の施設でございまして、戦時中に建てられましたものが多い上に、耐用年数の関係上そろそろ一斉に更新せざるを得ないというような状況でございまして、整備のために相当膨大な財源を要するわけでございます。そこで、再三御説明いたしておりますように、今回、土地の売り払い収入でございますとかあるいは借り入れ金制度というようなものを導入活用いたしまして急速に整備をはかりたい、こういう趣旨でございます。
なお、お尋ねの、一般会計でございますと土地の処分収入は一般会計全体の財源に入りますので、それと整備費の歳出というものは直接には関連性を持たせることはなかなかできにくい事情がございます。特別会計でございますと、この点の関連性がはっきりするわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/22
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023・大橋和孝
○大橋和孝君 だから、関連性を持たせなかったのは、いままで渡してなかったということですね。売り上げの分は何ぼか大蔵省へ入れてしまって知らぬ顔をしていた、そういうことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/23
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024・辻敬一
○説明員(辻敬一君) 従来とも土地の引き継ぎ額等も勘案いたしまして整備費の額を決定いたしていたわけでございますが、先ほど申し上げましたように、直接の関連性はないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/24
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025・大橋和孝
○大橋和孝君 それじゃ、もう一つ大蔵省のほうにお尋ねしたいと思うのですが、一般会計のままに置いて、何年計画かを立てて、そのお金を出していくことによって整備をやるということになれば、とても天文学的な年月を要して、病院の改築あるいはまたよくすることに対してはできないという見通しでいま特会制を云々されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/25
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026・辻敬一
○説明員(辻敬一君) 先ほど申し上げましたように、耐用年数等の関係からしましてある程度急速に整備する必要がございますので、そういうような場合には借り入れ金の制度の活用がなじむのではないかと、このように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/26
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027・大橋和孝
○大橋和孝君 だから、私は、そのことで割り切れないのは、いままでの間何年かほうっておいて、急にこれが悪くなってきたと。悪くなるのは、何年たったら悪くなっていくということはだれが見てもわかるでしょう。それをいままでほうっておいて、急にこれをやらなければならぬからせんならぬという、そういう考え方が飛躍しているような感じがするんです。どうしても納得できない点なんです。だから、たくさん要るんだったら、いま、何とか一般会計の中でもやっていけるような、たとえば五年計画なり七年計画なり十年計画なりをもってやればどれだけかかるということは考えられませんか。もしそれが考えられぬとするならば、どういうようなところに障害があるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/27
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028・辻敬一
○説明員(辻敬一君) 先ほど申し上げましたように、一方におきまして、国立療養所の施設は、非常に多数膨大な施設でございます。他方におきまして、一般会計の財源というものは、御承知のような状況で非常に限定されております。そこで、現在の状況におきましてある程度急速に国立療養所の整備をはからなければならないのであるならば、借り入れ金の導入なり、土地の処分収入を活用するほうが適当ではないか、そういう判断に立っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/28
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029・大橋和孝
○大橋和孝君 それは、借りてきてやれば、一ぺんに金が入ってきますから、一番楽でございます。私どもいつもやりくりの家計をやっておりますけれども、借りるときは一番うれしいんです。一ぺんに入ってきますから、金をもらったような気がして非常に喜ぶわけですが、あとからすぐ払うやつが来るから、今度は目をつり上げて首をつらねばならぬようなことにわれわれの家計ではなっているわけでして、国ですからそういうことはないかもしれぬけれども、そういう金を借りてやるのが一番いいから金を借りたと。そのあとはどういうふうに返済されるのですか、どういう計画で。金を借りて一ぺんに整備したほうがいいという、それは私も大賛成だと思います。整備されること自身はですよ。けれども、特会で金を借りてやるほうがいいというそこら辺はどういうようなことになるのか。私ども小さなあれで、貧乏人ですから、大きな会計のことはよくわからぬけれども、それはそれなりにいい方法があるのかはしりませんが、その点をちょっと説明してください。どうも納得できない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/29
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030・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) 一足先に借入金を導入いたしまして整備を始めました国立病院の場合のことを、先ほど、藤原先生の御質問にお答えいたしました。国立病院におきましては、すでに百五十億借りておりますが、この償還は五年据え置きの二十年の償却でございますので、先ほど申しましたように、国立病院の計画といたしましては、ピークになる年でも診療収入の一・数%どまりでいけるということで、しかも、国立病院でも、総計費の一〇数%の一般会計の繰り入れもあるということを申しましたが、国立療養所におきましては……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/30
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031・大橋和孝
○大橋和孝君 何ぼですか、いま繰り入れているのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/31
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032・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) 国立病院は一二%でございます。国立療養所におきましては、国立病院ともまた違いまして、一般の運営費自体も相当な赤字が出てまいります。したがって、一般の運営費についても、将来とも一般会計で負担をしていただかなければならない状況になっております。したがって、償還におきましても、償還計画としては、やはり国立病院のように長期になりますと、診療収入の中の一%とか二%とかいうものが償還金額になる可能性が出てまいります。まだ借り入れが一年だけでございますので、長期の償還計画の金額までははじいておりませんけれども、その際にも、おそらく、全経費から見ますと、一%、せいぜい二%程度のものが償還の資金に充てられることになると思います。その間に、国立療養所の経営の規模もどんどん拡大してまいります。医療費というものは数年間で倍増するというのがいままでの例でございます。したがって、二十年というような長期にわたって返済いたします場合には、借り入れ金の償還というものは全体の経営規模の拡大に相応して相対的に小さなものになってくるということ、これは長期借り入れ金の非常に有利な特性であります。そういう意味で、負担それ自体はそれほど大きなものにならない。一方、それらの弁済金をも合わせまして総体的な赤字については相当程度は一般会計から補てんをするということになりますので、返済のために返済金をかせげかせげというような形の督励にまでおちいる心配はないものと存じております。
なお、利子につきましては、これは国立病院の場合と同様、一般会計でまるまる負担していただくことにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/32
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033・大橋和孝
○大橋和孝君 いまの説明を聞きますと、やっぱり運営費は赤字だと。ですから、入ってきている患者さんから、運営費まで赤字なくらいだから、とれないわけです。それが総収入のうちの一%そこそこでもって返すぐらいの割合で収入があがってくるわけですか。そうしたら、一体どこからとるのですか。おかしな話で、いま話を聞いておったら、私は頭の回転が悪いのかもしれぬが、運営費まで赤字になっておってそれがみんな公費だ、それから入ってくる金が数倍に急にふくれ上がるので、二十年の長期になったら一%か二%にしか返還金がならないというと、何かごっそりもうかるやつを連れて来ぬ限りできないわけですが、特会制になったら一ぱいもうかる対象ができるわけですか、そこをちょっと説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/33
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034・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) 国立療養所がこれから毎年毎年相当の資金を借り入れをいたしましたといたしまして、これを五年間据え置きでその後に償却が始まるわけでございますが、その後二十年間にわたって償却をすることになります。したがって、初めは少し、途中で大きくなり、そうしてまた最後には小さくなっていくという償還の金額の計画が立ってくると思います。その際のピークになるような時点におきましても、まだ借入金の総ワクがきまっておりませんので総体的な計画は詳細ではございませんけれども、国立病院の例等から見ましても、経営費全体から見ますと、おそらく一%、あるいはどんなに大きくなっても二%程度でとどまるのではないかという予想をいたしております。一方、現在の経営状態は、現実には国立療養所におきましては四九%の一般会計からの繰り入れがございます。ですから、収入が人件費にも当たらないという程度の運営状況でございます。そういう状況でございますので、結局、償還の金額というものも形の上としては診療収入から返還するという形にはなりますけれども、全体の経営が相当な赤字になり、一般会計からの繰り入れということになりますので、償還金それ自体を何とか生み出し、はじき出すために、特定の努力をしなければならぬというような事態はない。もちろん診療収入の中から償還をしてまいりますけれども、それは療養所経営全体としてはそれほど目の上に上がる金額ではなく、しかも、より膨大な経営収支の不足分を一般会計からもらっているという形になりますので、経営自体を圧迫したり、あるいはそのために経営の内容を悪化したりというようなことにはならないで済むということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/34
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035・大橋和孝
○大橋和孝君 何かキツネにつままれているようでよくわからぬのですが、結局は、そうなると、診療収入からは人件費がまかなえぬような程度である、運営費は赤字であるというような状態ですね。それでもピークに行ったら一%くらいで全体の経営からはできるのだというと、それは、一般会計のほうから補助してもらうからですね。そういうふうに受け取っていいわけですか。収入からは入ってこないわけですね、そういうものが対象なんだから。それだからして、ピークになってきたら払わなければならぬものは一%余りくらいにしかならないということになれば、どこかから入れなければならないわけですね。そうすると、それは一般会計から入れてもらうということで解釈していいんですか。診療のほうで返すような努力をせぬでもいいとおっしゃるのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/35
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036・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) 一般会計の繰り入れは、現在のところ、経常的な経費の赤字分までを負担してもらっております。したがって、経常的な経費の赤字というものは、人件費もありますし、診療収入もいろいろ込みでございますので、経常経費の中で結局償還をいたしてまいるわけでございます。しかも、経常経費に相当な赤字が出ました場合には一般会計で補てんをしていただくというたてまえをとっておりますので、診療収入がどうしてもこれまであがらなければ返せないというようなことにはならない。総体の診療収入、それから一般会計の繰り入れを含めました経費の中で返却していくということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/36
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037・大橋和孝
○大橋和孝君 何かおかしなことで、ぼくはまだ納得できぬのですがね。それは何やら言い足らぬ言い方であって、また、私が聞き足らぬかもしれぬのですが、結局、それだったら、金を借りたものを返す分は診療で別に努力せぬでもいいとおっしゃるのでしょう。そうしたら、診療収入はいま人件費にも満たないようなものしかあがってこない、そうして運営費の赤字になったやつは国で持ってもらうとしたら、あなた、借りた分はどうなるのですか。返す金額が全体の中の一%ちょっとくらいにしか当たらないということがどうしても受け取れないのですがね。やはりそういうときには繰り入れするのでしょう。だから、繰り入れていくからして診療のほうを圧迫しないということじゃないですか。私はそうじゃないかと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/37
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038・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) 借り入れ金でございますので、これは診療収入で返却するというたてまえをとっております。もちろん、施設の整備が進み、また、患者に大いに利用していただくようになれば、診療収入もあがってまいることと思います。したがって、現在の状態よりは診療収入も相当ふえる可能性もございます。したがって、そういう中から借入金の元金を返済していくという余裕が出てくることは確かであろうと思います。しかし、それでもなお全体の運営から見ますと赤字であることは間違いないわけでございまして、その全体の経営の赤字については、これは診療収入が少ないという面もございましょうし、人件費が多過ぎるという面もございましょうが、できるだけ合理的な経営にもちろんつとめますけれども、赤字が出た分については、これは総体として運営費の赤字分を一部補てんをしていただくということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/38
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039・大橋和孝
○大橋和孝君 また、あなた、さっきおっしゃったこととちょっと話が変わってきたですね。診療を圧迫させない、それをまた診療収入で払うというのですが、そうなると、ちょっとおかしいんじゃないですか。そうすると、診療収入を得んならぬためには、いま、たとえば結核の患者、重度心身障害者、こういうような人を入れておったら、これはそんな人からそんなにとれないでしょう、実際は。だから、あなたのおっしゃっておるのはどうかといえば、そういうものはちょっとほうっておいて、金が払えるようないい患者を集めていこう。そうすると、今度は、国立病院がやっておるようにりっぱなベッドをつくって、差額一万円とか二万円というものをこしらえなければ金が入ってこぬということですね。そうすると、いままでやっておった社会保障的な、たとえば隔離せぬならぬというような人たちのことはちょっとすみっこに置いておいて、そういう人はほうっておかなければこれは返せぬという初めからの考え方なんですか。それをやろうという考え方なんですか、そこをひとつはっきりしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/39
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040・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) 診療収入というものは相当高額になってまいります。明年度におきましても約百八十億以上を考慮しておりますが、借入金の返済というものはそれに見合いましてきわめて少額のものでございます。したがって、その中から借入金の元金は返済していく。しかし、療養所全体として見ますと、診療収入だけではとうていやっていける経営ではございません。特に、御指摘がありましたような重症心身の施設であるとか、あるいは長期慢性の患者をかかえておりますために、医療自体が不採算の面が多々ございます。したがって、国立療養所としては将来とも決して運営全体が黒字になるなどということは予想できません。したがって、療養所全体の経費の赤字分については一般会計から補てんしていただくという趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/40
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041・大橋和孝
○大橋和孝君 じゃ、大蔵省にちょっとお尋ねしますが、いま、局長のほうでは、やっぱり赤字になる性質のものだからして、これは国のほうから補助してもらうと。そうですわね。先に借りてしまうて、しりぬぐいせぬならぬのが厚生省のほうではようせぬ、それがお手あげだということになれば、これは大蔵省のほうからしりをふいてもらわなければ破産してしまう。そういうことになるわけですから、これはたいへんなことになるわけですから、それはしてもらえるだろうと思います。そういうような場合には、長期二十年の払いだから、大蔵省のほうからは出しやすい。だから、今後は、運営は赤字だと、診療収入は人件費にも満たないと、こういう状態で、そのあとの借り入れ分なり赤字分は全部やっぱり大蔵省のほうからしりをふかれるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/41
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042・辻敬一
○説明員(辻敬一君) 借り入れ金の償還につきましては、ただいま医務局長からお答え申し上げましたとおり、借り入れ金の投入によりまして施設設備を近代化いたしますと、それに伴ういろいろな医療の向上による収入の増加も期待できますので、たてまえとしてそういうものから返済するわけでございますが、一方、全体として見ますと、国立療養所の収支がとんとんになることは期待できませんので、その全体の収支の差額は一般会計から繰り入れると、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/42
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043・大橋和孝
○大橋和孝君 そうすると、私は大蔵省のほうにお尋ねしたいのですが、そういう観点からいえば、少し長期計画にして国が金を出していく。どうせこれは借り入れさせておいて、あとになったらしりをふかぬならぬわけですからね。だから、そのあと始末をするということばかりじゃなくて、いまからそんなものを特会にしないで、長期計画をしてしりぬぐい分を徐々に出していく。その額は、徐々にふえるかもしれないけれども、その出し方のあれによりますわね。ところが、今度は、特会制にしても、百六十の施設を一ぺんに出せぬわけでしょうから、何十年計画かでやられるわけでしょう。そのかね合いの問題であって、一般会計で逐次出していかれても別に変ではないじゃないか。そして、いまおっしゃいましたけれども、土地を処分した、これは別に関連性がないから、あるいはなってないというけれども、一方で収入があって、やっぱり大蔵省のふところ勘定では一緒になるように私は思うのですね、こちらから入ってくるのだから。そうすると、いまやられようとしている特会制にしたら処分しやすいということではなく、大蔵省の会計に入ってくるのだから、それは大蔵省のふところへ入るわけですね。それをよけい出してやって一般会計から国立療養所に出せば、同じ理屈じゃないかと思うのですがね。したがって、いままでむしろやられなかったので、今後それを急激に設備をしなければならぬということだったら、急激にそれをやるような一つの方法でそのかね合いさえ考えてやれば、借金をさせておいてあとから穴埋めをしていくのも、出していくのも、同じじゃないか。むしろそれはそんなことよりは徐々に出してやったほうが利息を補給せぬだけいいと私は思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/43
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044・辻敬一
○説明員(辻敬一君) 療養所の施設の現状を見ますと、先ほどお答え申し上げましたとおりに、ある程度短期間で整備する必要がございますので、借り入れ金の投入が可能であり、かつ土地処分と歳出との関連性がはっきりいたしますれば、特別会計に移行いたしましてできるだけ急速に整備したい、こういう考えに立っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/44
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045・大橋和孝
○大橋和孝君 どうもそこのところはまたちょっと水かけ論になりますから、私は別な方法でこれからいろいろさしていただきたいと思いますが、私は、いま全部やらなければいけないという状態にあるところを、どこが重点であってどこが一番悪いか、どういうわけでどこをそういうふうにしていかなければならぬかということを詳しく書いた資料をひとついただきたいと思います。結局、百六十のうちでどういうふうになっているか。大蔵省の話を聞くと、これは一ぺんにやらなければならぬ、こういう話ですが、一ぺんにやらなければならぬというのも格差があるだろうと思うのです。それはどういうふうなところがどういうふうになっているかという現状を詳しくデータにしていただきたい。
ぼくは委員長にお願いしたいと思うのですが、このようなことをここで議論しておっても、すれ違いになります。ですから、療養所の実態をもう少し委員会としては実調をして、その上で一ぺん見てみる必要があるのじゃないかと思うのです。一ペん理事会なんかで御相談を願いまして、そうして実態調査、それから参考人としていろいろな人に来てもらってよくその実情を聞くというようなことと同時に、その資料を出してもらって問題を少し深く検討してみないと、私自身も納得いかぬのです。おそらく委員の方々もそう簡単には納得せられないだろう。しかし、政府の側としては、いろいろ検討された上だから、いまさら何を言うているかと言うかもしれませんけれども、しかし、私らが発言しているということは、私個人ばかりじゃなしに国民がどう受け取るかということで私は国民の気持ちに立ち帰って話をしているつもりでありますから、そういう意味からいっても、こうした話のしかたは、そう簡単に木で鼻をくくったような答弁で進んでいってはならぬと思うのです。だからして、そういうことはわれわれ国民が納得するように段階を追うて審議を進めてもらいたいということをこの問題についてお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/45
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046・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) ただいま大橋委員の言われました療養所の実態調査並びに参考人の件については、理事会におはかりして委員会の御意見によって決定したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/46
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047・藤原道子
○藤原道子君 ちょっと……。伺えば伺うほどわからなくなります。私は、いずれ大臣もおいでになったときに、同時にまた、いろいろな方法で調査等をしてから、基本的にお伺いしたいと思いますが、ただこの際一点伺っておきたいと思います。
厚生省の設置法によりますと、国立病院とか国立療養所の性格の規定というのがありますね。その中に、二十一条では、「国立病院は、医療を行い、あわせて医療の向上に寄与する機関とする。」以下省略して、二十二条では、「国立療養所は、特殊の療養を要する者に対して、医療を行い、あわせて医療の向上に寄与する機関とする。」、こう規定されております。そこで、厚生省設置法の二十一条の国立病院が、二十四年の七月一日から特別会計に移行したわけであります。その後十九年間、療養所はずっと一般会計の運営でやってきた、その理由をまずお伺いしたい。
それから二十四年の四月二十日の第五回の国会で、衆議院の大蔵・厚生連合審査会で国立病院の特会制についての質問が行なわれております。そのとき、野党議員から、この法律は、国立の医療機関として国立病院と国立療養所の二つがあるが、国立病院だけを特別会計にするということがわからない、これをはっきりせよという追及がございました。これに対して、厚生省の久下政府委員は、こう答えておる。国立療養所の中にはらいと結核があるが、らいは全額無料であり、結核も昭和二十三年度の支出に対して収入は四五%くらいである。これらはいずれも収入を目的とするよりも、本質的には疾病の予防を国の施策で行なうもので、また、財政的にも、このように大きな一般会計繰り入れをしなくてはならないものは特別会計に適しないというのが厚生省の考え方でありますと、こう答弁している。これらからずっと推してみましても、一般疾病の平均入院日数は一人平均三十日ぐらい、結核は三百六十日ぐらいとなっておりますね。ということをずっと考えてみますと、十九年来この久下さんの答弁のとおりに行なわれてきたものが、ここで、いろいろさっきから理由はおっしゃるけれども、理由にならないんです。これだけの特別会計にしてもやっていけるくらい大衆のふところが豊かになったとお考えなのか。結局、先ほど来、収入が目的じゃないなんて言いながら、一%とか二%くらい、そのくらいは将来あがるだろうということもちょろりと答弁していらっしゃる。やはり増収が目的でしょう。結核の予防と治療、こういうものよりも、まず収入、こういうことに考えがいっておるのだろうと私は理解せざるを得ないのでございます。いま、健康診断なんかだって、わずかしか行なわれていない。四二%くらいですか、いま。ということになると、このごろの病気はお年寄りと子供に多いんですね。まだまだ密度ある健康診断をすれば、病人はもっとふえる。ふえたって、特別会計になって二割引きがなくなってくれば、一体どうなる。と同時に、先ほど来ご指摘のございますように、結核のみならず、重度心身障害の問題、あるいは高血圧の後遺症の問題、交通災害の問題、リハビリの問題、こういうものを国立が二割引き廃止になったからといって一般病院で全部やっていけるろうか。貧しい人はたくさんある。どうしてもみなければならない人はたくさんある だが、こういうことがわかりながら特別会計に移行するという政府の意向が私には考えられない。二十四年の久下さんの答弁のように、特殊の問題だからこれだけ国が補助しなければならないものを、これを特別会計にすることはふさわしくない、それが厚生省の考えでなければならぬと思う。血も涙もない、収入の前には。そういうことを顧みないで、これだけ多くの不安を国民が持っているときに、特別会計に無理やりに持っていこうとする。そうして、その理由を聞けば、ああだこうだとおっしゃるけれども、聞いているうちに、あっちにもぼろが出て、こっちにも穴がのぞいております。こういうことでは、私は、国民の医療を担当する厚生省としては相済まぬじゃないかと思うんです。こういうように十九年も一般会計で運営してきた療養所を、この際なぜ急速に切りかえなければならないか。当時の政府委員の答弁が間違っていたのか、これをどういうふうに考え直しておられるか、それでこういう方向へ移行されんとしておられるか、こういうことについてお伺いしておきたいと思います。
私は、もっと国民の健康を慎重に考えてもらわなければ困るんで、何もあなたを責めるために言っているんじゃない。療養所の性格というものからしてこういうことは無理じゃないかと思うのでございますが、それをお聞かせ願います。あとで、いまお話のあったような方法で今後検討を展開していきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/47
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048・谷垣專一
○政府委員(谷垣專一君) 先ほどお答えをいたしましたように、現在の療養所の朽廃をしたあの状況は、一日もゆるがせにできないと思います。それを一般会計でやるのが是か、特別会計でやるのが是かという問題でございますが、現実問題として、これをやっていく場合には特別会計のやり方のほうがやりやすい、これが今度これを切りかえました現実的な問題でございます。
それから先ほどお話がございましたが、いわゆる二割の割引の問題これは、患者といたしまして、あるいは診療を受けておる諸君といたしまして、実際的には二割引きの恩典がそのまま続くことになります。ただし、保険のほうから払われるものまで二割を認めるというわけにはいきませんけれども、本人の負担にはならない、従前と同じような二割引きになる、こういう形態をとっていこう、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/48
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049・藤原道子
○藤原道子君 このほうが便利だとおっしゃるけれども、国債発行のとき私たちは反対した。便利だからあれはやったんでしょう。ところが、それが原因で今日経済の硬直化なんていって、そのしわ寄せは国民大衆の上にはね返ってくる。ことしの社会保障費、あんたたち、ちっとも要求は通っていないじゃないですか。いつでも弱い者の上へしわ寄せがくるのです。便利な方法をとる、安易な道をとるということがやがて大きな破綻を来たすということは、いま国債発行で明らかになっているじゃありませんか。大橋さんが言われたように、建物が古いものだから荒廃がその極に達しておる——何年かたてば荒廃するのはわかり切っているのです。それを今日までのほほんと手をこまねいて見ていて、いまここで一挙にこれをやろうというのは暴挙ですよ、われわれからいえば。わかり切ったことをやらない。そして安易な道をとる。そのしわ寄せは病人の上に来るのです。弱い病人の上に来るのです。だから、荒廃なんてことは申しわけになりません。やればいけたのです、いままで。それをやらずして今日こういうことを一挙にやろうというところにわれわれは納得がいかない。いずれ、委員長、あらためて質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/49
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050・谷垣專一
○政府委員(谷垣專一君) だんだんとおしかりを受けておるわけですが、現実のこの状況をどうするか、この問題はぜひ考えなければいかぬ問題だと思います。過去におきましてこのままほうっておいたのはいかぬじゃないかという御議論がございました。過去は過去で努力をいたしておったようで、その結果がこうなったのでありますから、今日の現状でおしかりを受けることもこれはやむを得ぬと思います。しかし、現在の状況をほっておいてはたしていいのかどうか、この問題はどうしたって解決していかなければならぬと思います。
それから、先ほど申しましたように、現在入院している人たち、あるいは新しく入院する諸君の上に、実際的にいままでの二割引きの恩典——制度の上では二割引きを廃止するのでございますが、しかし、それは、保険等で本人の直接出さなくて済むようなものは二割引きを廃止いたしまして、そしてこちらのほうでの収入ということにいたしますけれども、本人自体に直接のそういう従来に変わりました負担がかかるということはさせない、そういう方針で進んでいくつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/50
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051・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/51
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052・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 速記をつけて。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/52
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053・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 次に、健康保険法の臨時特例に関する法律施行後の諸問題に関する件について質疑を行ないます。
御質疑のある方は御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/53
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054・大橋和孝
○大橋和孝君 それでは、去年の八月臨時特例法が施行されて以来の推移について、ちょっと一、二だけお尋ねしておきたいと思います。
あのときには、財政上の問題も含めて、ああした初診料が百円が二百円になり、あるいはまた、外来患者には薬済の十五円が徴収されるようになり、また、入院料の一部負担が増額したというようなことが行なわれたわけでありますが、あの当初われわれはそういうことをすることが非常に受診制限になるのではないかというようなことをいろいろ考えたし、あるいはまた、その考え方がほんとうに受益者負担といいますか、薬をもらった人がその分を払うというようなことに考えられたということでありまして、これはやはりほんとうに社会保障的な医療保障という面からは非常に悪いんではないかということでいろいろ意見を申し上げておったわけですか、その後行なわれました推移を見ますと、一時は非常に受診の件数も減ってまいったようでございますが、また一月ごろからふえてまいったというようなことを聞いておるわけでございますが、その間の経緯はどういうふうになったのか、同時にまた、厚生省のほうではそういうふうな変わりぐあいをどう把握していられるのか、そういうふうなことをひとつお知らせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/54
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055・加藤威二
○政府委員(加藤威二君) 昨年の特例法の実施以後の政管健保の受診状況について申し上げますと、確かに先生いま御指摘のように、九月は初診料の百円が二百円、あるいは三十円が六十円と負担増になったわけですが、九月はほとんど影響らしい数字は出ておりませんが、薬価の一部負担が実施されました十月に受診件数が相当下がっております。本人について申し上げますと、十月は前月に比べまして九・七%受診件数が下がっております。それから十一月が前月に比べて約六%、しかし、十二月からはまたふえ始めまして、前月比二・一%の増、こういうことになっております。
これに対して、私どもはどういうぐあいに見ておるかということでございますが、一つの傾向といたしまして、九月、十月、十一月は比較的気候のいい時期でございまして、例年受診件数は減る、これはまあ毎年の傾向でございます。ただ、いま申し上げましたような、たとえば十月の前月比九・七%という数字は相当大きい減り方であるということは認めざるを得ないわけでございます。ただ、この特例法に全然関係のない家族の受診件数を見てみますると、十月に前月比七・七%下がっておるわけでございます。そうしますと、全然特例法に関係のない家族も七・七%下がっておる。本人は九・七%下がっておる。こういう数字をにらみ合わせますると、この九・七%というのは非常に下がり方が数字としても大きいわけでございますが、これが全部特例法の影響によるものというぐあいにはなかなか認めがたいのじゃないかという感じがするわけであります。そうすると、その九・七%のうちの何%ぐらいが特例法によって下がったのかという認定はなかなか困難でございまして、確かに新聞等にいろいろ書かれましたので、被保険者たちが、あるいはその家族までが誤解をして、これはなかなかお医者さんに行けなくなるということで、一時お医者さんに行くのを差し控えたという傾向があるかもしれませんが、しかし、現実に私どもは薬剤一日一剤十五円程度の負担ではそう著しい受診抑制にはならないという見方をいたしておりますが、やはりその後の傾向も、先ほど申し上げましたように、十二月以降はふえてきております。これはまあインフルエンザ等の影響もあると思いますけれども、しかし、特例法の影響というのは、まだもうしばらく時間をかしていただかないと、これがほんとうに受診抑制的な傾向を続けることになるのかどうかということは、いまの段階ではなかなか見通しがむずかしい、こういうぐあいに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/55
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056・大橋和孝
○大橋和孝君 仰せのように、それは病気のはやりぐあいによるでしょうし、また、そういう精神的なものもあるでしょうと思いますが、どの新聞だったかにも出ておったように、非常に赤字が減少してきておるという見方は、私はずっとデータを見てみてそういう傾向ではないかと思うわけでありますが、数カ月たたないことには結論は出ぬでありましょうけれども、いまのところで、厚生省のほうでは、この特例法の影響を見て、その影響がどういうふうになっておるかということをどういうふうに受けとめておられるか。もっと端的に言うならば、結局、これは、赤字財政の云々ではなくて、やっぱりその仕組みの問題を考えていただきたい。八月の時期にあのようにして特例法が実施された経過を振り返って見ますと、厚生省の中では、一体那辺にその目的があり、そしていまの現段階ではそれがどういうふうなことに満たされているとかいないとか、将来の展望はどういうふうに受けとめられているのかどうか、この特例法が改正されて以後、これが主体になって赤字が解消されてきたと、こう受け取っておられるのか、この仕組みは、もう医療保障ではなくて、みなから取り上げるという薬価の一部負担、あるいは初診料、あるいはまた入院料の一部負担、あるいはまた保険料の値上げというふうなことでこうやっていくというシステムにおいて確立した、こう把握されておるのか、その辺のところを端的に御心境を聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/56
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057・加藤威二
○政府委員(加藤威二君) 御質問に的確なお答えになっているかどうかわかりませんけれども、私ども、この特例法を制定いたしまするときに、先ほども申し上げましたように、一日一剤十五円程度ということでございますし、それからまた、国会の修正もございまして相当大幅な免除の制度もございます。現に、被保険者が千二百万おりますけれども、そのうちの約七百万の比較的低所得者は全部免除されるということになっておりますので、薬の一日一剤十五円という一部負担をかけられます者は、被保険者の中でも比較的月給の高い人たち、そういう人たちに限られておるわけでございます。そういう意味におきまして、この制度をつくりますときには、この一部負担によりまして、それから標準報酬の改定等によりまして、特例法による財政効果は百八十一億という程度、約百八十億の赤字をこれによって減らそう。それによって受診抑制というふうなものは起こらないだろう。したがって、波及効果というふうなものも見込まなかったわけでございます。そういうことで、現実に波及する効果が出たかどうかということは、先ほどもお答え申し上げましたように、十月については若干ショック的なあれかもしれませんけれども受診件数が減りました。いずれまたこれは盛り返してきているということで、波及効果が皆無であったということは申し上げかねますけれども、非常に僅少なものではないか、こういう感じがするわけでございます。
今後これを制度として定着させて確立していくかどうかということについては、特例法も時限立法でございますし、抜本改正の段階においておそらくこういうものは根本から再検討されて、また、よりよい制度があればそれに移り変わっていくであろうというぐあいに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/57
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058・大橋和孝
○大橋和孝君 新聞紙上なんかで言われているのを見ると、赤字が非常に解消されてきているということは、いまおっしゃるのではそれはあまり期待されていない、こういう考え方でありますが、あのころにそういうふうに受けとめられたことは、いま厚生省の中でデータの上に立ってかなり検討してもらった上では間違った報道であって、そうしてやはり赤字というものはいまの受けとめ方ではほんとうの対策にはならない、初期にはわずか百億ないしそれくらいの程度のものじゃないかということで、いまでもそういうふうなお考えでおりますか。私の考えでは、もっと赤字というものが解消されているんじゃないか、していけるんじゃないかという見通しのもとに質問しているわけですが、あなた方はどういうふうに受けとめておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/58
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059・加藤威二
○政府委員(加藤威二君) 特例法を制定いたしましたときに、四十二年度の赤字、単年度の赤字の見込みは三百二十億であったわけでございます。それを昨年十月までの実績に基づきまして年間の収支を再計算いたしますと、約三百二十億出るであろうと見込まれた赤字が、大体百九億くらいになっておるという見通しでございます。したがいまして、約二百十一億程度赤字が減少すると新聞等にも報道されておったと思います。これは間違いじゃないわけでございまして、赤字はしたがって特例法当時の見込みより約二百億以上減る、こういう見通しでございます。ただ、それは、もちろん特例法の効果——特例法の効果と申しますのは、先ほど私が申し上げた百八十億というのは、そういう対策をやりまして、そして当初の赤字は七百四十五億という赤字だったわけでございます。それをそういう特例法によって百八十億を減らしたり、それから国庫負担を入れたり、そういうことでやりまして、しかもなお三百二十億赤字が出る、こういう見見しであったわけでございます。その見通しの赤字が二百億減りましたので約百億余りになってきた、こういうことでございます。
それじゃ、それはどういうことで減ったのか、こういうことでございますが、本年度の医療費の見込みが当初見込みよりも減ってきているということが一つと、それから収入がやはり見込みよりもふえております。保険料の収入が上がってきておる。大体二百十億ばかり赤字が減るということを申し上げましたが、そのうちの約半分の百八億程度が医療費の減によるものでございます。残りが約百三億くらいございますが、これが保険料収入の増、それから現金給付が減ったというようなことで、それで合計二百十億ばかり赤字が減った。それじゃ医療費の減というのは何で減ったかということでございますが、この特例法は、先ほど申し上げましたように、九月から一部負担が始まったわけでございますが、その以前、三月、四月、五月、六月、七月、八月と、この月にすでに見込みより医療費が減っておるわけでございます。医療費が減っておるというのは、一日当たり金額等はあまり変わっておりませんが、受診率がもうすでに特例法の始まる前から数カ月にわたって見込みよりも少し下回っていた、こういうことのために医療費が百八億ばかり見込みより減ったということでございます。しかも、その見通しは、先ほど申し上げたように、十月までの実績ですから、薬の一部負担が始まった一カ月が入っておりますけれども、それまでの実績をもとにして再計算いたしまして二百十一億ばかり赤字が減った、こういうことでございます。その医療費の減は特例法の影響というよりも、それはあるかもしれませんけれども、それ以前の特例法の始まる前から医療費がある程度落ちついてきておる、受診率において落ちついてきておる、そのために赤字が減った、残りは収入がふえた、こういうことのために赤字が約二百億ばかり見込みよりも減ってきている、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/59
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060・大橋和孝
○大橋和孝君 話を聞いておりますと、受診率の動向ですね、これは、九月ごろはなにでしたけれども、あのころに発表しておられるのを見ましたら、千百六十万件でしたか、何かで発表をされておったようですが、これの推移はどういうふうになっておるのか、それも一ぺんあなたのほうから聞かしていただきたい。私も調べたものを持っておりますが、聞かしてもらいたい。
また、その受診件数は、何でも一月になってからだいぶふえてきておるという話も聞いておりましたが、その辺の動向はどういうふうになっておるのか。それなのに医療費のほうは二百億以上もあれが出てまいりまして、そうして赤字はわずか百億余りだと、こういうことになってきておる。その辺のところのかね合いも一ぺんずっと説明をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/60
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061・加藤威二
○政府委員(加藤威二君) 医療費の問題でございますが、医療費は、御承知のとおり、一日当たりの金額と一件当たりの日数と受診率と、この三つで予算の見通しを立てまして予算を組むわけでございますが、一日当たりの金額につきましては、本人入院外が一番多いウエートを占めておりますが、それについて申し上げますと、予算では一日当たり金額は被保険者の外来で六百五十九円と見ましたが、十月までの実績ではそれが六百五十円と若干減っておりますが、ほとんど違わないという実績が出ております。それから一件当たりの日数、一度お医者さんに行った場合に何日かかるかという一件当たりの日数、これの被保険者の入院外について見ますると、予算では四・〇七日、外来で被保険者がお医者さんに行くと四・〇七日になる、それが十月までの実績を見ますと四・〇九日、これもほとんど予算どおりの数字が出ております。それに対しまして、受診率は、予算では、被保険者の入院外の受診率、これは被保険者が一年間に外来で何回お医者さんにかかったかという数字でございますが、これが五・一五回お医者さんに行く、こういう予算の数字でございましたが、それが今回の見込みでは四・八八回に減っておるわけでございます。この数字が私どもは非常に大きな数字であると思っております。受診率で前年の伸び率を見ますと、予算では前年に比べて被保険者入院外は六・一%伸びるだろうと見たのが、わずか〇・八%の伸びしかなかった。この点が非常に大きな医療費の食い違いの原因になっておると思うのでございます。その受診率は、先ほど申し上げましたように、八月以前から毎月見込みよりも三十万件から四十万件件数は減っております。そういうことで、医療費が見込みより約百八億ばかり下がった、あわせて保険料の収入その他で百三億ばかりふえましたので、赤字が二百十一億ばかり減った、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/61
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062・大橋和孝
○大橋和孝君 赤字がこれほど減れば、目的の赤字解消にはなった、ある程度。もうあと百億ほど減らせば、政管健保については単年度の赤字は何とかできるんだということに帰着すると思うわけなんですが、そうなった実態を考えられた場合に、非常に気やすくちょっと悪いときに医者にかかれたのが、かかりにくくなって減っておるわけでございますから——一つにはそういう乱診乱療という面から出てきておるかと思いますけれども、一面から見て、先ほどのお話を聞きましても、一件当たりの日数は少しですが伸びているわけなんです。何日伸びましたか——〇・〇二日しか伸びていないから、数は少ないと思いますが、平均で日数が伸びてきておるわけです。というのは、これを表面的に考えれば、これは一つの病気をなおすための日数ですから、やはりそれだけ日にちがかかるわけです。こういうことがもう少し進んでまいりますと、件数はだんだん少なくなってまいりますけれども、一つの病気をなおすのに日にちがかかる。日にちがかかれば、同時に薬品代とかいろいろなものがかかってくるということになるわけですけれども、そういうようなことで、私は、そういうところのかね合いというものをある程度詳しく一ぺん調べておく必要があるんじゃないかと思って調べてまいりまして、それは後刻そういうデータについての御質問をさせてもらうつもりで、少しありますけれども、きょうは資料を持って来ておりませんが、そういうようなところから私はいまいろいろ心配いたしておるわけですが、厚生省としましては、そういうものを、いわゆる病気が少々あってもやめておいたためにあとから病気が重くなってくる、あるいはまた、早期発見を非常に阻害するという面では、いまの時点でいまのデータから見てどういうふうにお考えになっておるか、その点をちょっと聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/62
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063・加藤威二
○政府委員(加藤威二君) 先ほど受診率が落ちてきたという御説明を申し上げましたが、その際にも申し上げましたように、受診率は、特例法を実施する以前から、本年度の始まった三月、四月、五月、六月、七月、八月と軒並み落ちているわけでございます。これは、特例法の一部負担がまだ実施されていない時期にすでに落ちている、こういうことでございまして、受診抑制とは少なくともその時期の時点では関係ないわけでございますが、それが非常に落ちているために赤字が減っているということでございます。その後、特例法が実施されまして、十月、十一月あたりが受診件数がまたがたっと減っておりますが、しかし、それにつきましては、私どもは、とにかく受診率が四十二年度当初から相当落ちてきている。これは特例法の制度のない前からの傾向でございますので、どうして受診率が落ちてきているのかという原因はまだわからないのでございますが、数字から見ますとそういうぐあいに落ちてきている。それは必ずしも受診抑制の結果とは私どもは考えていないわけでございまして、特例法が施行されました前後の一、二カ月は落ちましたけれども、また復活してきているという傾向から見まして、私どもといたしましては、別に受診抑制の結果ということじゃなくして、原因は何かわかりませんけれども、すでに年度当初から受診率が、予想は過去数年の平均で受診率を見ておりますが、それよりも落ちてきている、こういう傾向でございまして、必ずしも受診抑制の結果、お医者さんに行きたいという人が行けなくて受診率が落ちたというようには考えていないわけでございまして、繰り返すようでございますが、先ほど申し上げましたように、低所得者の、とにかく被保険者の六割近くの人は免除されております。そういうことで、私どもは、特例法の一部負担の金額というものはまあ比較的軽い金額でございますので、ほんとうに病気でお医者さんにかからなければいかぬという人が特例法のためにお医者さんに行けないという事態ではないのじゃないかというぐあいに見ておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/63
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064・大橋和孝
○大橋和孝君 それでは、九、十、十一、十二の月別で、免除の対象者はどれだけあって、そのうち実際に免除を受けたのはどれだけあるか、それをちょっと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/64
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065・加藤威二
○政府委員(加藤威二君) 月別の数字は持っておりませんが、四十三年一月三十一日現在の数字を申し上げますと、証明書の交付の枚数が六百五十八万枚でございます。それで、これは、免除対象者に対する交付割合が八三・一%でございます。
それからこれはもう一つ別の資料でございますが、これは基金のほうで調べた数字でございますが、四十二年十月分でございますけれども、四十二年十月の本人の外来件数が政官で四百八十六万件でございまして、そのうちで投薬の一部負担金を負担した件数が百七十五万件、パーセントにいたしまして三六・一%でございます。これは医科の分でございます。したがって、医科の分につきましては、十月に政管の被保険者で外来の診療を受けたという人のうち、一部負担をやったのが三六・一%で、六三・九%は一部負担がなかった。一部負担のないというのは、大半の人は免除された人だと思いますけれども、しかし、薬を全然もらわなかった人は、これは特例法の関係はございませんから、そういう人も入っておるかもしれません。十五円以下の薬をもらった人も入っておりますが、このうち、六三・九%で、全部免除というわけではありませんけれども、一部負担を課せられた人が三六・一%、こういう数字が出ているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/65
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066・大橋和孝
○大橋和孝君 四十三年一月三十一日現在のは、枚数を交付して、それで実施した人はわかりますか。枚数を聞いただけではこの統計は意味をなさないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/66
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067・加藤威二
○政府委員(加藤威二君) 先ほど申し上げました一月三十一日現在で免除対象者に対する交付割合が八三・一%という数字を申し上げましたが、それがどういうぐあいに使われたかということは、実は四十二年十月のデータしかいま持ち合わしておりませんので、なお今後調べまして御報告申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/67
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068・大橋和孝
○大橋和孝君 基金のほうのは、これは免除した人の数だけであって、減免とは全然関係ないわけですね。減免されている人がはっきりつかめないですけれども、もしこれを調べてくださるならば、なんぼ対象者があって、その中でなんぼ免除したかということ、これは当然もらっていない人もみんなひっくるめての数になりますから、逆算しにくいわけですが、それは調べてもらったらわかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/68
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069・加藤威二
○政府委員(加藤威二君) これは、基金のほうでは、とにかく来た人のうちで証明書を出したのは何人いるかというようなことは全然わからない。基金では、要するに、請求書だけを見るわけでございますから、請求書に一部負担金をとったものはとったという数字が出るわけでございますから、一部負担をとったという数字が基金でわかる。したがいまして、被保険者が外来で何人来て、そのうち十五円以上の薬をもらった人がどれだけおって、そうしてその中で免除を受けた者はどのくらいおるかということは、これは医療機関個々について調べないとわからないわけでございます。私どものほうは、社会保険病院等を使いまして極力調べるようにしておるわけでございますが、いまのところ最近の数字についてはちょっと持ち合わせておりませんので、また調べまして、一々医療機関に当たらないとわからないものですから、極力調べまして御報告申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/69
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070・大橋和孝
○大橋和孝君 なかなかその調査はむずかしいと私も思うのですが、少なくとも国の保険庁の病院あたり、そういうようなものを調べてもらいますと大体の傾向がわかると思いますから、一、二そういうものを調べてもらいまして、どのくらいのパーセントで減免が実施されているかということのデータをいただきたい。同時に、また、その調査のところで、どこどこの病院ではどういうふうな経緯になっておる、たとえば受診率はどうなっておるか、あるいはまた医療費はどういうふうになってきているかということの、一つの病院単位でいいですから、そういうもののデータをいただきますと、それは一つのサンプルになると考えられるので、ひとつそういうものを二つ三つ直接の保険庁の病院で出していただきたい。そうすると、ローカルによりまして多少それが統計上わかると思います。たとえば、東京だけであれば、東京のことしかわかりませんから、東京とか、あるいは京都とか、あるいは大阪とかというふうにして、少し地域的にずっと分けてもらうと、大体客観的なものがつかめるように思いますので、それをひとつ至急出していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/70
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071・加藤威二
○政府委員(加藤威二君) 仰せの資料については、できるだけ調査いたしたいと思います。
ただ、一つ資料がちょっと見つかりましたので御報告申し上げますが、四十三年の一月中に、健康保険病院の七つの施設、これは任意抽出いたしましたけれども、七つの施設について、ある程度証明書の提示状況について調査をいたしました。その結果、免除該当者で十五円以上の薬をもらった者のうち証明書を提示した者、これがしたがって証明書を提示して免除をしてもらった者が大体六五%、こういう数字が出ております。これは一つの例でございますが、一応申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/71
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072・大橋和孝
○大橋和孝君 こういうところから見ましても、この病院だけ見ましても、そういう適用が六〇%前後ということになるだろうと思います。八〇%が交付されて、そうしてやっぱり六〇%ぐらい、まあ納得のいくようなパーセントじゃないかと思うわけですが、こういうことから考えてみても、低所得者に対してかなり手厚く指導しているのじゃなくて、やっぱり四割近くはこぼれているのじゃないかと思います。そういうこぼれている人は、かかりにくいんじゃないかと思います。医療機関で証明書を提示するということは、かなり恥ずかしいことを思い切ってやるわけですからね。ですから、非常に、何と申しますか、提示しにくい。みんながまんして、提示するくらいなら行かぬでおこうかということにこれは帰着しやせぬかと思うのです。受診抑制もある程度意義があると思いますが、それでなくても受診抑制にはなると思いますが、先ほどのからいって、受診抑制にはならないという見解を厚生省はお持ちになっているようでございますが、受診抑制というのはかなり効果は大きくなっているのじゃないかと考えます。それがために、パーセントの上からも変化がきておりますし、実際赤字も解消されてきているということになるわけでありますから、こういう観点からも、ああいうふうに報道されているようにいまの状態では赤字というものがかなり解消されてきたから、だからしていままでのような危機感がなくなってきた、こういうことがある程度厚生省の中でもあるいはまた一般のそういうふうな関係者の中でもとられているかもしれませんけれども、その裏にはやっぱり低所得者に対しては非常につらく当たられている結果が出てくるのじゃないか。そういうものについてはいまデータをちょっと調べておりますから、詳しくそのことについてのお話は私のほうのデータに基づいてあとで質問させていただきたいと思いますけれども、きょうはちょっとその上つらだけを——時間もありませんので、三十分という話でありますから、あんまり深くは入れませんけれども、厚生省にいまこの時点でお願いしておきたいということは、今度の特例法自身そのものも、一般の患者に対して受診抑止にはなるし、あるいはまた、医療機関に行きにくくなってあとから病気をこじらすという例が出てくるのじゃないかという心配がありますから、そういうことの歯どめのできるような観点からいまのうちから考えていただきませんと、これはあの時分から私どもは主張してまいりましたので、健康保険法そのものの改正に対しては、一歩改正の中に踏み込んできているものと受け取っているわけでありますし、それがやっぱり相変わらず被保険者なりあるいはまた病気をしている者に大きなしわ寄せをされているという現実がどうしても出てくるのじゃないかという心配が、私のいままでのデータではすでにそういうものが出てきていると思います。こういうことについて、私どものデータがそろい次第、一ぺんそれをもとにして議論をしてみたいと思いますけれども、そういう観点で、どうかひとついまのうちから、健康保険のあり方というものに対しても、もう一応この特例法の現実を見て、そしてしわ寄せにならないように、あるいはまた、そのたてまえができるだけ保障するという線にいけるような形が出てくるためにはどうかということも心にとめて今後考えをめぐらしていただきたい。将来は、抜本改正も、来年の八月が時限立法であるために云々とされておりますが、また、一面、赤字がだいぶ解消されてきておるから期限を延ばせばいいのじゃないかという意見もあるやに聞いておりますけれども、いずれにしても、被保険者に、あるいはまた患者にしわ寄せにならぬということを、こういうことのデータを踏んまえて考えてもらう場合にも十分ひとつ配慮していただきたいということをお願いして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/72
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073・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十二分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105814410X00519680319/73
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