1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年六月二十五日(水曜日)
午後一時五十二分開議
出席委員
委員長 松本 一郎君
理事 前田榮之助君 宇田 恒君
上林山榮吉君 小平 久雄君
瀬戸山三男君 高田 弥市君
内藤 隆君 西村 英一君
藥師神岩太郎君 中島 茂喜君
増田 連也君 佐々木更三君
出席国務大臣
建 設 大 臣 野田 卯一君
委員外の出席者
参議院議員 田中 一君
建設事務官
(河川局次長) 伊藤 大三君
建設事務官 多治見高雄君
建 設 技 官
(都市局都市建
設課長) 高谷 高一君
專 門 員 西畑 正倫君
專 門 員 田中 義一君
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本日の会議に付した事件
公営住宅法の一部を改正する法律案(参議院提
出、参法第一三号)
ダイナ台風による被害状況に関する件
請願
二 国道一号線中浜松市の幅員拡張工事反対に
関する請願(松岡駒吉君外一名紹介)(第
九七四号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/0
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001・松本一郎
○松本委員長 ただいまより建設委員会を開会いたします。
本日の議題の第一は、本月二十一日より二十四日にかけて本邦を襲いました、ダイナ台風の被害状況につきまして調査を進めます。まず建設大臣より被害状況について説明を聽取いたしたいと思います。——建設大臣間もなく出席と思いますので、まず河川局の伊藤説明員より説明を求めることにいたします。伊藤説明員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/1
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002・伊藤大三
○伊藤説明員 ダイナ台風の進路並びにその被害の現在までにわかりました状況につきまして簡單に私から御報告申し上げます。ダイナ台風は、実は六月十九日ごろフイリピンの南方の海上にできました熱帶性低気圧からだんだん発達して参つたものでありまして、これは二十二日九時ごろには台湾の東方、北緯二十三度五十分、東経百二十四度付近に達しまして、このころからだんだんと発達しまして、進路も今まで北西ないし北々西でありましたのが、北東ないし北々東にかわつて参つたのであります。そうしてこのころから台風の眼が飛行機から観測されるようになり、中心示度も千ミリバール程度のものが、この付近に参りますと九百八十ミリバール、そうしてその中心付近の風速は三十五メートルというような程度に達しまして、ここで初めてダイナ台風と命名されるに至つたのであります。それ以後、このダイナ台風ほ進路を北東に進めまして、二十二日の夜半ごろにはさらにこれが発達して参りまして、北々東ないし北東にそのまま進んで参つたのであります。それから二十三日の九時ごろには、鹿兒島の南方のおよそ二百キロ程度に達し、飛行機上からその台風眼が十分観測されておりました。台風になりましてからこの地点に達するまではあまり勢力は大きな消長を見せなかつたのでありますが、このあたりから気圧がかわつて参りまして、大体九百二十ミリバール、それから中心付近の風速も三十五メートルを越すというようなことになり、その速度も六十キロという程度で進んで参つたのであります。このままで進みますれば、ちようど二十四年の六月のデラ台風のように九州を縦断するかと非常に心配しておつたのでありますが、二十三日の正午ごろ大隅半島に接近しましてから進路を東に曲げまして中心のミリバールも九百八十と下りまして、中心付近の風速もまた弱まつて参つたのでありまして、これから以後は大体熱帶性低気圧として取扱うことになつたのであります。それから後はさらに東にまわりまして日向灘に入りまして、午後三時ごろには四国の足摺岬の南西およそ六十キロを通り、室戸岬の南端を経ましてさらに東北東に転じまして、和歌山県から潮ノ岬の北方を経まして、大体紀伊半島の南を横切りまして、さらに速度は大十キロの早さで北東ないし東北東に進行して参りました。そうして気圧は大体九百八十ミリバール、中心付近の風速も二十五メートルぐらいとなつておりけまして九州南東を横切つてから遠州灘に入り、さらに駿河湾を拔けまして、東京湾を経て、千葉を横切つて鹿島灘に抜けた。こういう実情でございます。
大体雨量につきましては、今回の台風はデラとかそのほか過去に起きました大きな台風ほどの雨量はなく、一番多いところにおきましてもほんの局地的でありまして、それも三百ミリを越えないという程度のもので、二百を越したというところは十数箇所という程度のものでございました。
これが被害につきましてはお手元の方へ書類としてお配りいたしておるのでありまして、大体土木被害と一般被害と載せておるのであります。土木被害につきましては、その初めに書いてありますように、大体二十四日の十九時現在で調べておりますので、その後の状況は時々刻々かわつて参つておりまして、なおこれが相当ふえるものと予想いたしております。報告が十分集まりましたならば、またその場合におきましてこの委員会へ御報告いたしたい、こう存じておるのであります。簡單でありますが、ダイナ台風の被害の状況並びにダイナの進路の一般につきまして簡單に御説明を申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/2
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003・松本一郎
○松本委員長 本件に関し御発言があればこれを許します。瀬戸山君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/3
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004・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 ただいま御報告のように、現在調査中でありますので、詳細はわからないのはあたりまえだと思うのであります。ただいまいただきました資料のうちの昭和二十七年六月二十四日十二時現在の報告の統計と申しますか、それには橋梁その他の具体的な決壊箇所が記載されておりますが、同日十九時現在の被害額についての各県の表示がしてないのは、これは被害額については何らの報告がなかつたということなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/4
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005・伊藤大三
○伊藤説明員 この表にあげてない県につきましてはまだ問い合せておりまするが、いろいろ通信の関係からまだ入つていないものはあげてないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/5
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006・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 私がふしぎに思つたのは、二十四日の十二時現在には具体的に各災害の具体的事例が数字であげてあるのですが、それが損害の額としては出ておらぬ県がたくさんありますから聞いておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/6
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007・松本一郎
○松本委員長 瀬戸山君、御質問の御趣旨をいま一度おつ上やつていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/7
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008・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 ダイナ台風被害状況、二十七年六月二十四日十二時現在、河川局防災課という一枚刷りのものがありますね。これには各県の被害の人的被害、建物、耕地、その他土木、船舶等について記載されておるわけです。ところがこのいわゆる被害額の報告書には、その後につくられた書類が出ておりませんので、それはどういうわけでしようかというのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/8
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009・伊藤大三
○伊藤説明員 一枚刷りのものは、実は私の方から国警へ連絡いたしまして、国警へ入りましたる報告に基いてつくつたのでございます。それからこちらの方は、私の方から土木の方の関係へ連絡をつけて知らせを受けてつくつておりますが、土木の方の関係の詳細なものがまだ入りませんので、これに載つておらない実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/9
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010・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 その点はわかりました。辛いにして現在のところでは思つたほどの被害はないようでまことに喜ばしいと思います。しかし今後実情を調査すれば、ここに資料として出されました今の御報告よりも被害の額はふえるものと思います。これは毎年同じことを繰返しておるわけでありますが、今度のこのダイナ台風の災害に対しては、例の通りに緊急に対策を立てられる考えがあるかどうかということを大臣でもけつこうでありますから、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/10
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011・野田卯一
○野田国務大臣 今回のダイナ台風のために各地に被害が発生いたしておりますことにつきましては、まつたく御同情にたえない次第でありまして、ただいままでに集まつて参りました情報につきましては、ただいま伊藤君から申し上げたことと思いますが、まだ情報が完全でない。従つて今後報告によりまして被害の真相が漸次明瞭になつて来ると思いますが、今回の災害で固まつて起つておる所は、岐阜県の長良川の堤防の決壊に基く海津郡一円の水浸しの問題、それから瀬戸川の氾濫による焼津市の水浸しの問題で、これがとまつたところでは一番大きいようであります。まだ今後いろいろ大きい問題の報告が来ると思います。政府といたしましては、災害の復旧に極力迅速に有効な手を打ちたいと思つております。方法等につきましては、もうすでに瀬戸山委員等も十分御承知と思いますが、政府の打つ手並びにこれに協力して各府県あるいは民間における手の打ち方はきまつておりますので、迅速果敢に進めて行きたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/11
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012・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 これは恒例のものでありますから、私がこの際要望いたしておきますのは、災害を受けた方も、これに対する処置をとられる政府側でも、非常になれておられるはずでありますから、ああいうお祭り騒ぎの陳情団が来る前にひとつ対策を立ててもらつて、国会でも大騒ぎして特別委員会をつくつて云々というものでもないことでありますから、恒例の手段によつてすみやかに対策を立てられることをこの際希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/12
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013・松本一郎
○松本委員長 ほかに御発言がないようなら次の議題に移ります。
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014・松本一郎
○松本委員長 次に公営住宅法の一部を改正する法律案を議題といたします。これより質疑に入ります。質疑は通告順にこれを許します。西村英一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/14
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015・西村英一
○西村(英)委員 公営住宅法改正の第一点の問題は、この公営住宅及びその共同施設を耐火構造とするように努めなければならぬという事項を第五條に入れた点であります。耐火構造にしなければならぬということは、普通の常識としてはたびたび問題になつていることでありまして、あえて私も不賛成ではないのでありますが、特にわざわざ耐火構造にしなければならぬというような言葉を法律を改正して入れなければならぬというのには、提案者には耐火構造にすることについてのある御意見を持つてのことであろうと思いますが、真意はどういう真意であるか、その点を承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/15
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016・田中一
○田中参議院議員 お尋ねの件でございますが、これは多少私見にわたるのでお許しを願いたいと思います。国が建てる建造物については、結局税金でまかなつている関係上、木造というのは今日までの通例でありますけれども、今日以後は財産を守る意味におきましてもそれではいけない。かつてわれわれが戰争中に戰禍を受けた体験から申しましても、少くとも恒久性ある、価値づけられるものでなければならぬ。私はまだ木造の家に住んでおりますが、できるならば耐火構造の家を建設したい、そうして生命、財産その他のものを守りたいというような見地から、この公営住宅法では耐火構造のものとすることが当然でございまして、三箇年計画で、できるならば全部そうした国有財産を長く保つというような考え方でもつて耐火構造にして行きたい、しかしながら土地、立地條件によりまして、むろん木造でもさしつかえございませんし、あるいは山岳地帶、農村その他住宅の密集しない農家などは当然木造でもよい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/16
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017・西村英一
○西村(英)委員 提案者の抽象的な御説明はわかりましたが、さらに私は提案者並びにこの改正法律案が通りましたときにおける政府の腹構えをお聞きしたいのです。公営住宅法の三箇年計画におきましては、すでに木造と耐火建築との比率は、木造は六五%、耐火建築は三五%ということで、先般国会の協賛を経たわけです。にもかかわらずわざわざこの法律でその後に耐火構造にしなければならないという條項をうたわれたのは、提案者は、この建設三箇年計画の木造六五%、耐火建築三五%という比率は、あまりに耐火建築の方が少な過ぎるから、これをある比率に変更したいというような意図があるのじやなかろうかと私は想像しておつたのです。また政府の方では、こういうような條項がうたわれましたことによつて、公営住宅建設三箇年計画の木造と耐火建築の比率を変更することになるのであるかどうか。田中さんも御承知のように、ごく最近にこの比率は国会の協賛を得てきめたのであります。にもかかわらずわざわざ法律をこういうぐあいに直すことについては、三箇年計画の比率が間違つておるというような見地であるならば、すでにわれわれがきめました数字を、数学的にこういうふうに変更することが妥当である、従つてこういうような文句を入れて行政庁を督励するんだということになるのかどうか。また政府は、この條文の挿入によつて、建設三箇年計画における木造及び耐火建築の比率を変更する意思があるかどうかにつきまして、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/17
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018・田中一
○田中参議院議員 衆議院と御同様に、参議院におきましても三箇年計画の承認を与える場合に、委員会において十分質疑をいたしました。その際、なぜあの計画案を政府が立案したかということにつきまして、私承知しておりますところでは、二つの理由があつたかに記憶しております。一つは、公営住宅の補助金を交付するについては、地方的な條件から木造の方が余分にという地方からの要求があつた。もう一点は、予算の面の考え方のように伺つております。国が大体において公営住宅の予算を計上する場合に、やはり従来のように木造とアパート、その他の耐火建築にわかれておつた。しかしながら予算の面で多少苦しいところから、木造の方に多く出すのだということを私伺いました。しかしながら政府もでき得るならば、全部耐火建築にいたしたい、かように三箇年計画の承認の際に委員会では審議しております。従いまして予算の面で制約されることが一つと、地方からの申出によりまして、耐火建築よりも木造建築の方が安いという点から、そのような希望があつたと伺つておりますので、できるならば、今後どういう形になりますか、政府の考えておりますところの考え方は、ぜひ耐火建築で全部やりたいのだ、こういうような根本的な考え方がございますものですから、その意味で、その方に推進しようという点で、この改正案を提出したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/18
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019・多治見高雄
○多治見説明員 お答え申します。御承知のように、この法律案は議員の方の御提案でございまして、ただいま御質問のありました第五條の新しく加えられました一項の趣旨につきましては、ただいま提案者から御説明がありましたように、政府といたしましてもはなはだけつこうな御趣旨であると考えております。それで御質問のありました三箇年計画を変更する意思があるかどうかという点につきましては、三箇年計画の立案にあたりましてはいろいろな條件——国の財政とか地方公共団体の負担能力といつたあらゆる條件を考えて立案いたしましたので、この條文が制定されました場合に、ただちに三箇年計画を変更するということはちよつと考えられないと思います。それでよほど大きな事情の変化がございまして、国の財政に非常に余裕ができる、あるいは地方で地方の熱意が非常に高まりまして全部耐火構造にしたい、しかもまた地方にもその能力ができるということがない限り、三箇年計画を目下のところ変更するつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/19
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020・西村英一
○西村(英)委員 政府の意見によりますと、條文の挿入の改正はしごくもつともであるけれども、それによつて別に建設計画をかえる意思はないんだ、木造と耐火の比率をかえる意思はないんだということであれば、提案者はこれをどうお思いになりますか。わざわざ法律を改正して、こういうような條文を入れなくともいいと思いまするが、どういうことが御心配になりましたか。つまり耐火構造とするように努めなければならぬというふうなきわめて緩和的な條文でありまするが、何を期待してこの法律を改正するか。この條文で少しも変化はない。こういうような條文を入れないと、どこが心配になるのか、提案者はおそらく木造六五%、耐火三五%の比率はよくない、従つて少くとも耐火と木造とは半々くらいにしなければならぬとか、あるいは極端に言つて、予算が許すならば、全部公営住宅は耐火建築でなければならぬということであると私たちは思うのです。従いましてそういうようなことを積極的に建設計画を変更せしめるために、改正したいというお気持じやないかと思つたのですが、どうも提案着にも、わざわざ改正しておいて、非常にあいまいな点があり、政府は、改正しても、條文はごもつともだが、これを変更する意思はないというのであつたならば、こういうような條文はいりません。その点についてもう一ぺんお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/20
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021・田中一
○田中参議院議員 お答えします。私は、三箇年計画の承認を与える場合、速記録にも残つておりますが、委員会におきましてこの三箇年計画を一応承認するけれども、できれば、全部耐火構造にしてくれということを要求いたしました。そのときに政府委員は、一応この案を立てるけれども、ただいま説明員から御答弁いたしましたように、できるだけ早く耐火構造の率を上げるように努める、かように言われております。
今説明員の方から、絶対にあの三箇年計画を変更する意思はないという御言明がありましたが、できますならば、参議院におきまして私どもが審議いたしました経過にかんがみまして、住宅局長または大臣からでもちよつとお聞きとりを願いたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/21
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022・西村英一
○西村(英)委員 それ以上は押問答になりますが、私はそういうような気持でこういう法律を訂正するんだつたら、今の法律は全部訂正しなければならぬと思う。このくらいの條文を入れるために訂正するんだつたら、訂正するものはたくさんあると思う。どうもこの修正の理由が薄弱だと私は思います。
次にもう一点お尋ねしたいことは、第何條かに、家賃の滯納の問題があつたようでございます。これは特別の理由があるときに家賃の滯納を認めるというような條項であつたと思いますが、現在この家賃を低減せしめる場合があるわけです。特別な場合必要と認めれば家賃を低減する、これとの関連がどうなるかということであります。また、これは資料もいただきましたが、現在家賃の滯納が多少あるようであります。私は家賃を滯納するというような特別の場合もあるかと思いますが、あえてこの法律を改正してこういうような文句を入れますと、家賃を滯納した人に特別な理由を与えるようなことになるのではないか、一方家賃が滯りがちである者には、特別な理由があれば減額するという條項があつたと思うのであります。従つてそれとの関連はどうなるのか、その辺についてお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/22
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023・田中一
○田中参議院議員 現行法では減免規定がございます。これはむろん一箇月ないし二箇月、三箇月その家賃が払えないという理由に基いて、減免規定を動かしておりません。むろん一年あるいは半年というような長期のものです。私は法律よりも、東京都の調査で承知しているのでありますが、半年とか一年とか二年とか、あるいは廃業になるとか、また生活を支えておつた主人が死んでしまつた場合に減免規定を適用しております。むろん強制徴収といいますか、三箇月滯納した場合には明渡ししなければならないという條文がある半面、非常に温情的な減免規定を持つておりますけれども、ただ一箇月待つてくれ、あるいはもう少し待つてくれというようなものがたくさんあるのでございます。これはたとえば日雇いの人聞が降雨期に入つて、雨があがつて働けるようになると家賃が払えるけれども、今月のところは少し待つてくれないかという事実がたくさんございます。この際、三箇月滯納した場合には明渡しをしなければならないというような強い條項だけでは——片方において減免規定があり、片方においては減免規定に適用されるものは三月以上過ぎなければこれを採用しておらない関係上、一箇月、二箇月の場合、情状によつては待つてやろう、猶予してやろうというようなものを明確にしておきたい、かように考えましてこの修正をいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/23
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024・西村英一
○西村(英)委員 そういうような場合が確かにあると思いますが、そういうようなことは行政措置でできると思います。つまり家賃を払うのに、これは均等の割賦償還ということをはつきりきめるのでありますが、家賃の支払い方法その他については行政措置でできるように、私は何條でしたかで解釈いたしているのであります。一箇月待つというようなことを、何も法律できめなくてもいいように思います。むしろきめることによつて払わない口実をつくる。すでに公営住宅に入つているということそれ自身が非常な恩典に浴せしめているのであるから、さらにその上に、家賃を払わぬでもいいのだというようなことを法律にうたうということはどうかと思う。むしろこれは、皆無とは申しませんが、そういうようなことがある場合には、私は行政措置で十分できると思います。その点につきまして、改正の気持はわかりますが、あまりよくない。私はかような見解でありますが、もう一回伺いたい。これは政府もどういうような方法によつて今までやられているか、こういうようなことはもつともであるかどうか、参考までに伺いたい。私にはちよつとふに落ちない点があります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/24
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025・田中一
○田中参議院議員 お答えいたします。これもおもなる都市について十分調査をいたしてみました。東京都はこういう規定を持つておりません。それから神奈川県では、一応これに準ずるような扱いをいたしております。ただ東京都でもつてなぜそういう神奈川県と同じような扱いをしてくれぬかといいますと、やはりもとであるところの法律の問題でございます。減免はできるけれども、猶予規定というものは條例に入れておりません。事実において、ある一方の地方自治体は法律をまつこうから承知いたしまして、そういう減免はするけれども猶予はしないという建前をとります。ある場合には、それを扱いといたしまして、神奈川県のように減免はむろんいたします、しかしながら猶予も心がけておるというようなところもございますので、法律できめられて同じことを実行しておるものならば、少くとも公営住宅は庶民に対する一つの政策と考えておりますので、條例の扱い方を明確にした方がいいのではないか、かように考えましてこの一項を入れたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/25
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026・西村英一
○西村(英)委員 政府にお尋ねいたします。現行法によりましては、減免はできるのだが——これは明らかでありますが、つまり延ばすことはできないのかどうか。現行の法律においてできるのかできないのか、その辺をお尋ねしてみたいと思います。できないならば、どういうわけでできないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/26
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027・多治見高雄
○多治見説明員 お答えいたします。法律の規定によりますと、家賃の徴収猶予については現在まで全然規定はございませんので、実際上は徴収猶予ということは別に国民の権利を抑制するようなことではなくて、反対に尊重するような行為でありますから、法律の規定がなくてもやれると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/27
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028・西村英一
○西村(英)委員 法律の規定がなくてもやれるというのですが、行政措置でやれることなら行政措置でやつてもけつこうだと思う。つまりそれは九〇%あるいは九四、五パーセントは正当に納めるわけです。わずか五%納めないとか、あるいは三%納めない人があるために法律の根本をかえるということはどうかと私は思うのです。現在の法律でも、それは猶予することができるということはうたつてないけれども、猶予してはいかぬということはうたつてない。つまり支払い方法は正確にきめてないと思う。従つてかくのごとき特別な理由があつてもつともだと思われるときには、行政措置でもつて延ばすことができる、かように私は考えておるのでありまして、政府委員の答弁もそうでありまするから、わずか三%や五%の範囲の人に対することを本則にして、延ばすことができるのだということは本末転倒ではないか。こういうふうに考えられますが、しかし私の気づかないところがあるかもしれませんから、提案者より御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/28
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029・田中一
○田中参議院議員 お答えいたします。減免ということは、公営住宅に入らなければならない方々に対して大なる特典です。むろん公営住宅は税金によつて建設しておりますところの住宅でございますから、それが減免というまでの特典を与えてやることは非常にけつこうだと思うのであります。しかしながら事実におきまして、減免をされるというものはごく少いのでございます。ただいま東京都の調べを見ますと、九七・二四%というものが家賃の完全徴収の形になつております。これはむろん一箇月、二箇月、三箇月と延びるような場合も、ある一定の費用をさいて徴収統計をとつております関係でむろん延びる場合もあるのです。しかしながら法律においてははつきりと三月以上滯納した場合には明渡しをしなければならぬ。法律では減免規定というような恩典を与えておりながら、やはり三月以上滯納した場合には、むろん相手が何人であろうとも明渡し要求ができるのだという強い法律がございます。しかしながら事実においては猶予をしなければならない状態のものは猶予しておるように伺つております。しかしながらこれも法律の建前からいいますと、明渡しをしなければならぬということになつておりますから、そこに入居者の不安があるわけでございます。たとえば特定の人間をいかぬとかいいとか言うことはできませんけれども、やはり吏員が自分の行政を執行する場合に、えこひいきがあつてはならないのです。扱い方の問題です。これはただいま申し上げましたように、條例できめてもいいのでありますが、條例できめられない範囲があるのではないか。東京都では條例ではきめておりません。従いまして減免というものと、三箇月滯納した場合に明渡しを要求する云々という場合と比べますと、非常に天と地の違いがあるわけでございます。その間に一箇月待つてやれば、あるいは十五日待つてやれば払えるのだ、それぞれ矜恃を持つておるものでありますから、減免までしてもらわなくてもよろしい、もう少し待つてもらえれば払えますというので払つておる事実もあるようですから、それが減免までの特典を与えるというこの法律の気持の緩和になるのではなかろうか。そこまでしてくれなくてもよろしいけれども、待つていただきたい、こういうようなことがあつた方が、実際この公営住宅法を制定した精神から申しましても正しいのではなかろうか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/29
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030・西村英一
○西村(英)委員 私の言うことも盡きましたし、提案者の説明もそれ以上に出ないと思いますが、これはもう少し考える必要があろうと思います。それば金がないから来月にしてくれというので一箇月延ばすというようなことは、行政措置によつてもやれると政府は言うのですが、今の法律を私どもが見てもやれそうなんです。そうすればこれは払うことが建前でありますから、事情があつて一箇月待つてくれ、あるいは二箇月待つてくれというようなことについては、何も法律に入れなくても行政措置で行ければ提案者の御心配のようなことはカバーできるのではないか、わざわざ法律に入れることは、かえつて延ばすことについての理由を与えるようなものではないか、かように私は考えるのでありますが、これ以上は見解の相違でもありましようし、私もその点はもう少し確かめてみますから、一応この辺で私の質問は打切つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/30
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031・上林山榮吉
○上林山委員 公営住宅はわれわれ心ある有志議員によつてつくられた法律でありますし、かつまた本法の修正を試みている田中参議院議員は右派社会党に属する人でありますので、住宅政策についてはわれわれの意見と大体似通つているという点からいたしまして敬意を表するのでありますが、先ほど西村委員から適切な質問かあり、かつまた提案者からもるる答弁があつたのでありますけれども、まだまだ私どもはふに落ちない点が二、三ありますので、これから質疑を試みてみたいのであります。
まず第一点は、改正の第一の理由でありますところの「公営住宅及び共同施設の主要構造部を耐火性能を有する構造とするように努めなければならない。」、この改正の点でありますが、これは提案者の説明によつても、あるいは政府側の説明によつても、私ども聞いておりますと單なる精神的規定であつて、決して実用にならないところの改正点であるというように考えるのであります。こういうものをあえて改正する必要がどこにあるか、これくらいのことは行政措置によつてあるいは国会の議員の活動によつてそれぞれ補い得る程度の問題ではないのか、こういうふうに考えますので、この改正を企図した理由は、西村委員にもお答えになつたようでありますが、あえてこれをもう一度聞いてみたいと思います。
〔委員長退席、淺利委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/31
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032・田中一
○田中参議院議員 お答えいたします。ただいま西村さんにも御答弁いたしましたが、この改正案は実は大分前から考えておりまして、参議院におきましては各政党にも話合いを進めておりました。ところが御承知のように衆議院でも三箇年計画を承認し、また参議院においても三箇年計画を承認いたしました。その質疑の過程におきまして、政府は三五%と六五%の比率で満足するかどうか、満足をするものではない、また場合によれば、この理由としましては地方から来るところの木造の要請と、それから国の予算面の上からいつてどうしても木造をふやさなければならない、かような答弁がございました。国といたしましては、国の建造物でございますから全部が耐火構造でなくてはならない、かように考えましてその意味の質疑もいたしております、ただいま政府委員は、ここにおいてあの三箇年計画は変更する意思はない、何か特別な事情があり、財政面が楽になるならば耐火構造にする場合もあるかもわからないというような御答弁でありました。私はどこまでも財政面の余裕のない、たとえば木造建築をするような価格でもし耐火建築ができるならば、むろんこれは三箇年継続の事業計画を変更するのは当然と考えております。また建設大臣あるいは政府委員はさような答弁をいたしております。ただなぜ木造の方に希望が多く、なぜ木造の方に六五%の高い比率をやつたかと申しますと、結局建築費の問題が大きな要素になつたのではなかろうかと思います。地方にいたしましても政府にいたしましても、できるならば耐火構造でやりたいという希望は十分あると考えております。またそのように答弁しております。その際にこの法律を改正する趣旨は、できるならば将来とも三箇年計画も修正し、耐火構造が余分になる、かようにも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/32
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033・上林山榮吉
○上林山委員 われわれも公営住宅に限らず、公営の建造物については不燃住宅あるいは耐火建築をした方がよろしいという主張をしている一人ですが、これは私は公営住宅に限らず別途に大きく考えて行かなければならぬ問題だと思つているのでありまして、ただちに社会政策的立場からつくられている公営住宅であるからという理由によつてだけ本問題を取扱うべきものではない、むしろわれわれは、全体の都市計画における不燃住宅に対する国家の奨励、助成、こういうような方面も大きく考えて行かなければならないのだ、こういう見地に立つ場合に、先ほど申し上げた通り、社会政策的見地によつて、公営住宅という理由によつて、これが優先すべき必要はないのだ、こういうふうに考えるのであります。そこで実際問題といたしまして、精神規定だと思うのでありますが、ただいま提案者は理想論を説かれました。これもわれわれもわからぬわけでない。しかし現実の問題として、木造建築をたくさんつくり得るのか、あるいは鉄筋の不燃住宅、あるいはそれに類するものをたくさんつくり得る状態であるか。これが住宅政策を急ぐという見地からいつてキー・ポイントにならなければならぬと私は思うが、私の見るところではやはり木造をつくることが、現段階において住宅難を緩和する近道だというふうに考えるので、三五%の不燃住宅と六五%の木造住宅というのは、あるいは行政措置によつて五%ぐらいは変更できるかもしれない。六〇%対四〇外ぐらいの比には一行政処置ないしは予算の編成方針によつて是正できると思うが、それ以上のことはどうしてもできないのではないか、こう考えます。
そにで第二段の質問でありますが、主要構造部を耐火性能を有する構造にしなければならぬというふうに嚴密に言う必要はないのではないか。だからこれにかわるに適当な言葉をもつてするなり、あるいは私をして言わしむれば公営住宅及び共同施設は耐火性能を有する構造とするように努めなければならないという程度の字句でよいのではないか。主要構造部という点を除いた方がかえつて正面でよいのではないか、こういうふうに考えますが、提案者の御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/33
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034・田中一
○田中参議院議員 この改正のねらいはもう私が申し上げるまでもなく、上林山さんよく知つておられることです。ですからあえて提案者の考えは申し上げません。瀬戸山さんもむろんよく御承知だと思いますので、提案者の意図のあるところをおくみとり願いまして、答弁はひとつ許していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/34
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035・上林山榮吉
○上林山委員 かんかんかくかくの議論をされる田中参議院議員が、実におとなしい戰法で答弁を拒否されたのでありますが、私は賛否の結論は別として、いまだ納得ができないのでぜひ先ほどの主要構造部という文句を除いた方がよいではないかということのお答えを願いたいと思います。
続いて申し上げたいと思いますが、修繕の問題について範囲を非常に拡大されております。これも建築物を長く使うという意味で、あるいは入つておる人にできるだけ危險をなくしてやろうという趣旨で、こういう点はわれわれも了といたしますが、しかし修繕の範囲をあまり広く拡大されることは、実情からいつてはたしてできるかどうか。私は公営住宅法の設立の趣旨は、生活保護法による者よりも上の階層を対象とした住宅政策であり、社会政策である、こういう考えを持つておりますが、これに対して提案者はどういう考えを持つておられるか、これが第二点。ことに公営住宅は第一種と第二種にわけておる。私はせめて第一種のものだけについては、もう少し住宅政策の一環として反省をしておく必要があるのではないかと思う。これについては御承知の通りに半分だけ地元の地方公共団体が負担をしておるのである。半分だけが国庫補助によつてできておるのでありますから、カード階級を対象とする社会政策という点については別途に積極的な政策を持つべきであつて、一切のものをこういう住宅政策に、しかも一種の公営住宅にまで及ぼして転嫁して行くということは、はたしてこれが健全な秩序ある社会政策とみなすことができるかどうか。こういう点は根本に触れますので、お答え願います。これが第三点。続けて申し上げます。第四点は、今申し上げた通り、改正は、修繕の範囲を、「家屋の壁、柱、床、はり、屋根及び階段」こういうのをばさらに拡大いたしまして、「家屋の壁、基礎、土台、柱、床、はり、屋根及び階段並びに家屋の内部の給水施設、排水施設、電気施設その他省令で定める附帶施設について修繕する必要が生じたときは、遅滯なく修繕しなければならない。」こういうまことに広い嚴格なもので、こういうことがはたして地方公共団体の立場になつてみて、十分になし得る範囲であろうかどうか。私はこれを多少拡張することは賛成です。しかしあまりに拡大し過ぎていはしないか、こういう感がするのであります。この一つ一つについて論議するともつとよくわかるのですけれども、何べんも立つのは足が痛くて困つておりますので、便宜重ねて質問いたしました。よつて率直にひとつ見解を披瀝せられて、了解を得るように努めていただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/35
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036・田中一
○田中参議院議員 第一の、なぜそうしなければならないかということにつきましては、先ほど御答弁申し上げました通りよく御存じと存じますから御了承願います。
第二の、一種、二種にわける問題につきましては、これはむろん地元の住宅のない市民なりあるいは県民の要請によつて、負担能力の問題が非常にからんでおると思うのです。私も今の上林山さんと同じようにそういうものをわけずに、まつたく正しい社会施設としましては、そういう階層を持たない方がいい、同じものをつくりまして、入居者の負担能力に応じて家賃をとつた方がいい、かように考えております。おそらく上林山さんのお考えもそうと思います。国が同じような一定の基準の住宅を建てまして、これに対して家賃は、負担能力によつてある者から千円とり、ある者から八百円とるというような線にまで行くべきではないかというような含みのあるお言葉と考えます。その点については同感であります。
それから修繕の義務の問題につきましては、本法ではたしか基礎と土台というものが抜けておるのじやないかと考えるのです。第十五條にははつきりと分類をして、「家屋の壁、柱、床、はり、屋根及び階段」こう書いてありまして、これだけが修繕の義務になつておりまして、基礎または土台がくさつたり、こわれたりするような場合には修繕の義務がないように明記してある。これはどうしても基礎、土台は入れた方がいい、かように考えまして、修正したいと考えておるのであります。
それから次の附帶設備につきましては、たとえば水道が破裂するということはたいへんなことなんです。われわれも借家に長く住んでおるのでありますが、家主に向つていくら直してくれと頼んでも直してくれないのです。ことに直接これによつて利益を受けている家主の場合は、これは場合によれば家賃を払つてくれないのじやなかろうかと思うから割合に来てくれますが、かように公共施設になりますと、なかなか事実においてやつてもらえないのです。そして応急に自分で金づちなんかで鉛管をたたくと、また別なところも破れて来るということがありますので、大体において家屋の修理は公共団体が率先してやるというふうに、家屋の損傷を——家屋の壽命は木造ですと十年ないし十五年の壽命しかございませんが、そうした義務づけられたところの修理をいたしますと、これが二十年または二十五年も持ち得るということもございますので、その点を明らかにしまして、地方公共団体が所有しておりますところの財産が長く命を保たれるようにというような考えでございます。ただこの附帶設備に対する修繕の義務は、大体において家屋内にあるものというような考えを持つております。家屋外のものに対しては別に考えております。その場合に事業主体の方にたくさん負担がかかるのじやなかろうかという危惧がございますが、これは、本法の施行令の第四條に載つておりますが、家賃の限度及び算定方式、これにむろん算入されます。木造または簡易耐火構造に対しては修繕費の乗率が百分の一・〇九、こうなつております。それから特殊耐火構造は百分の〇・七六三、耐火構造の場合には百分の〇・四三六の乗率をもつて家賃を算定しております。木造の場合には附帯工事等全部を含めて百分の一・二九五になるのです。この修繕費の義務づけと同時に、将来家賃が多少上るような形になります。それは非常に少い率でありますが、これを義務づけると、現行法よりも家賃が二種の場合には二十九円十八銭上ります。一種の場合には木造の場合四十円十八銭家賃が上ります。しかしながらたとえば私が視察に参りましても、戸のちようつがいがはずれてがちやがちややつている。うつちやつておくわけには行かないから、しろうとでもつてこんこん釘を打ちつけますと、家も損傷されるし住む者も不愉快になるのであります。従いまして事業主体は十分にこれを管理しあるいは修繕しなければならない。こういう総体的な意味で修繕義務というものを拡大したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/36
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037・上林山榮吉
○上林山委員 公営住宅を永久に使うという意味においてはこれは心がけなければならぬことです。しかし修繕義務を拡大したために家賃が上つたという印象を与えることは、右派社会党といえどもあまり好むところではなかろうと私は考える。だからこれはでき得る程度に範囲を広げて、まあがまんできる程度はがまんしてもらう、こういう行き方をしなければならぬものと考えます。それから第二に考えたいことは、あなたのお考えは、新しい家も古い家も一律に考えておられるが、そういうことをむしろわれわれは改正の要点としなければならぬと考えます。たとえば地方公共団体の五割の負担あるいは三分の一の負担というように、その建物に対するところの負担が違つている。だから一種と二種の場合については、この点を考慮に入れて家賃を考えなければならぬとか、あるいは修繕の範囲を考えてよいのではないかとか、あるいは十年たつたならば家賃も相当取入れたし、それから先の分については修繕を要することも多くなつて来るのであるから、そういうような年限を考慮に入れて家賃を考えるとか、あるいは修繕も考えて行くとかいうふうにバランスをとつた考え方をして行かなければ、家をつくつて行くところの国家及び地方公共団体の立場を考えても、あるいは入つている人たちの便宜を考えてみても、そういうところに考えを及ぼして行かなければならぬのではないか、だからこういうふうなただ範囲を拡大してこの程度に家賃が上るからそれでよいという単純な考え方は、社会政策的見地から家をつくつている人の立場を考えても、入つている人の立場を考えても、一方的であり、不親切である、こういう気持がするのでありますが、これに対して提案者の説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/37
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038・田中一
○田中参議院議員 お答えいたします。普通の家主ですと、自分の所有家屋の耐えられる年数を一応考えまして、償還というか償却というか、そういう面において償却と利益とを加味した家賃を算定しております。公営住宅の場合には、そうした意味の利益または償却というものを修繕費の乗率によつてきめておるだけであつて、剰余金があるという考え方をしてないことは上林山さんもよく御存じだと思います。私社会党の右派に属しますが、決して権利だけを主張して義務を負わなくてもよいのだという考え方は持つておりません。自分の住み心地のよい家が保持されて住む、台風のあとに戸が吹つ飛んだり、建具がゆがんだりしたものをそのままこの法律の裏づけがないからうつちやつておかれる、そうして不愉快な家で不愉快な生活をするよりも、かりに自分の資金でそれを修練して手直しをして住むというのが入居者の真撃な考え方であります。従いまして今日までそういう拡大した修繕義務がなかつたものですから、これを多少拡大いたしまして、快的な生活を営みたい。そのかわりこれに対しては今言うところの修繕費が必要でございます。これは自分の負担においてやる。権利を主張するかわりに義務を負う。こういう考え方が一つと、それから実際において私川崎に参りまして調べたのでございますが、川崎では二千八百戸公営住宅を持つております。そのうちの千戸に対して、むろんこの政令できめますところの乗率によりまして、修繕費と管理費をとつておりますが、千戸に対して年々五百万円の予算をとつておるそうであります。従いまして、この算定基準でやりましても、なお五百万円の予算をとらなければならぬということになりますから、川崎市ではもうこの千戸の住宅を売りたい、あるいはただやつてもいいんだ。公営住宅法の四分の一を経過したから、ただやつてもいいという実情を市長は訴えております。ちようど四分の一の経過をしますと、大体分讓をしてもいいということになつておりますから、おそらく川崎市は市議会の協賛を経て、分譲するのじやなかろうか、かように考えております。これも今言う通り、多少法の不備があつたのではなかろうかと思うのであります。これが修練の義務を拡大しまして、常に管理を十分にしておきますと、あるいはそうした莫大な管理費、修繕費などはいらなくても済むことになつたのじやなかろうか、かように考えております。従いましてこの修繕の範囲の拡大は、むろん、入居者に修繕してくれという権利を与えると同時に、それを修繕してくれた場合には、自分が義務を負う、かように考えまして、この修正をいたしたわけであります。むろん、そのために家屋の寿命が延びるということは上林山さん御承知の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/38
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039・上林山榮吉
○上林山委員 本問題について、もつとゆつくりお尋ねをいたしたいこともありますが、これから始めますと、二、三時間かかりそうですから、本日はこの程度で質疑を保留いたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/39
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040・淺利三朗
○淺利委員長代理 本案に対する質疑はこの程度にとどめます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/40
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041・淺利三朗
○淺利委員長代理 次に請願の審査に入ります。
当委員会に付託になりました請願及び陳情書は、請願及び陳情書審査小委員会で審査いたしたのでありますが、本日日程に上げました各請願は問題もあり、影響するところも大であると思いますので、本委員会において審議いたしたいと思います。
請願日程第二、国道一号線中浜松市の幅員拡張工事反対に関する請願、松岡駒吉君外一名紹介、文書番号第九七四号を議題といたします。
本件につきましては、当委員会において再三審議いたしたのでありますが、なお残る点を盡したいと思います。
前田榮之助君より発言を求められておりますので、これを許します。前田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/41
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042・前田榮之助
○前田(榮)委員 浜松市の都市計画が全般的に他都市に比較いたしまして進捗率が低いことはまことに残念な至りでありまして、ただいま議題となつた点は、御承知のように、浜松市の中心街路になつておるわけでありまして、早く都市計画を強行いたしましたら、こういう問題は起らなかつたはずであります。荏苒日を過しているような結果となつたために、相当永久的な建造物が建ちまして、これを現在計画を立てられたような状態になりますると、そこに該当している建築物の改築が莫大な費用を要するのみならず、結果といたしまして、その換地も不十分なような問題まで引起しまして、反対運動が相当広範囲に行われておるのであります。私は前の都市局長に会つて、その点を申し上げましたところが、都市局長は、早く都市計画を実行すべき陳情を受けた方が数が多いのであつて、反対の声はきわめて少いのだ、ことに地方の関係議会等の決議もそうなつておるのだ、正式な手続上からも建設省へ来ておるものは、反対の声はほとんどないのだ、こういうようなお話であつたのであります。実情を調べて、ほとんど一軒々々にわたつての調査によりますと、おそらく一%か二%ぐらいにすぎない程度の賛成者であつて、あとの九七、八パーセントは反対であることを書面をもつて申し出ており、これは都市局の方へも明確に書面が出ておるわけであります。こういうことをなざしめた一部の責任は、都市局にないとは言えないのであります。ことに都市局の方では事実とは違つた観察のもとに、反対者は少いのだ、早くやつてくれという陳情をよけい受けておるのだ、地方で合理的に変更しようと考えてもそれは相ならぬ。もしやらぬのならば、すべての補助金も浜松市に対しては建設省としてはやらぬことにするぞ、こういうようなことまで行われて非常に險悪な状態になつたためにますます都市計画の遂行を困難ならしめた。これはむしろ実際に当つてよく適当な方法を講じたならば、この問題はすらすらと解決するのではないか。浜松市のみならず、他にもこういう問題が起つている市が二、三あるようでありますが、そういう場合においてもあまり形式的にとらわれずに、現地の実際に即応したようなものをやれば、問題を割合に早く解決づけるのではないかと思うのであります。従つて私は現地を見まして、ある程度の道路の幅員拡張はやむを得ない、またやるべきものだと思いますが、むしろこの際、耐火建築促進法に基いた建築をなさしめて防火帶として、いわゆる火災はその方で予防するようにするのが、現在の日本の中小都市の実情に即するのではないか。それから交通量の問題につきましては、浜松市に関する限りは、以前に国道変更の方針を持つておられた駅前道路と大体並行いたしているのでありまして、一万交通をやれば、交通量の問題はさして支障のない点だと思うのであります。聞くところによりますと、浜松市の方でも、あるいは建設省の方でも現地へ行つていろいろ調査をされて、そういうような方向に大体砧がついたようなことを読売新聞で見たのでありますが、現在どういう事情になつているか、お聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/42
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043・高谷高一
○高谷説明員 浜松市の戰災復興事業の区域に入つております国道一号線の拡張反対の問題でございますが、この六月五日の参議院の建設委員会でやはりこの問題の請願がありまして、その際都市局長が出まして、もう一応よく現地を調査し、実情を見てその上でひとつこれに対して市民も納得し、反対派も納得の行くような何かいい案があればそれに向つて善処しようということをお話されまして、私はその翌日の六月六日に浜松市に参つてこの実情を調査して参りました。その場合に現地の市会の建設委員の方々、それから一部反対派の方々にもお会いいたしまして、三十六メートルの方に当つておりまず連尺町の方の方にもお会いいたしまして、いろいろ実情を調査しました。
その結果を申し上げますと、現在のところ、浜松市の全体の復興事業は今前田先生からお話のように非常に遅れておりますが、この問題になつております第一工区——工区をわけておりまして、第一工区の進捗状況は、私が参りまして調査いたしました結果、全体的場にその工区だけの進捗率は五九・五%という比率になつております。そのうちで換地及び確定測量というものは一〇〇%進捗しております。それから建物移転におきましては五五%、街路の整地、砂利敷に至つては六七%、それから街路の側溝でございますが、これもやはり六〇%程度に進捗しているようであります。以上のようでございまして、ただいまこの幅員の二十五メートル街路を現在のままにしてくれという地元の意見をいれてやりますと、そこにもう一度換地のやり直しをしなければならぬ。それからすでに建物移転済みのものを、またもとの所にもどすというようなことになりまして、この手もどりというものが現在までかかつた金額の二、三倍くらいの費用をかけなければ、もとこもどらぬというような実情にあります。それからまたこの三十六メートル街路の方に面しておるところでございます。これは、一部、市役所の今度予定されております位置の附近が約六割延長しまして六割程度のものはもうすでに三十六メートル街路としてでき上つております。この区域の者は、三十六メートル街路を縮小すれば、自分の方からもまた縮小運動を起すというようなことを言つております。そういうことをいろいろ考えてみますと、やはりこの換地の決定をまたやりかえる、あるいは街路を現在通りにしておくというようなことにしたのでは、収拾つかなくなるのではないかというふうに実情を見て感じた次第でございます。今二十五メートルの方の国道一号の線は、現在の幅員は十四メートル五十でございまして国道がたとい外の方に迂回するといたしましても、この十四メートル五十では狭過ぎるのではないか。反対派の方はもう現状のままでよろしいと言つておりますが、将来の交通、国道がたといかわるにしましても、あの中心街でございますから、現在の幅員では将来に相当禍根を残すのではないかというふうに実情を拝見して感じた次第でございます。なおそういう事情で、もうここの大割近くまでこの工区が進捗を見ておるというような実情でございまして、これを変更いたしますことは容易でないというふうに私は感じて参りまして、局長にもその旨を報告した次第でございます。
それから一方市長並びに市会議員の方では、市会も全員一致、市長さんもこれはあくまでも既定方針通り実行するのだというふうに言つておりまして、私らの方としては、その反対派をなるべく同調するようにるる説明をして、そうしてこの計画に協力するようにひとつ盡力してくれというふうに市長さん及び市会の方には申入れをしております。そして私は反対派の方たちにも、もう一度よく市長なりあるいは市会の建設委員会なりとよく相談をしてやつてくれというふうに申し上げました。そうして今お話のように、そのところに今度どうせ二十五メーターなりあるいは広がりますと、建物の移転とか後退というふうな問題が起きますので、そういう面につきましては、防火建築とかいろいろな面も考えられると思いますが、これは参議院の田中先生も非常にお骨折りされておりまして、この反対派の方たちを説得されておるようでございます。何分にもこの反対派の人たちが今いきり立つておるような状態でございまして、市長さん及び市会議員の方の方たちも一生懸命にこの反対派の方たちを説得する方向にただいまでは向つておるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/43
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044・上林山榮吉
○上林山委員 本問題は前田委員が御熱心に主張されている問題でありますので、まことに気の毒に思うのでございますが、私はこの前この問題について基礎的な立場から、近代中都市の建設という立場からいささか希望を申し上げたのでございましたが、ただいま政府側の説明を開きまして、政府側がさらにこの問題を調査されたその結果によると、六〇%以上仕事が進捗しておるし、ものによつてはもつと以上に仕事が進んでおる。しかしこれをめぐつて市長側あるいは市会議員側というような公的機関は、既定方針通り進んでやつて行きたいというのであるけれども、二面反対の意見も相当にある。こういう実情から、これをただちに本委員会が採択とか採択しないとかいうような決定をなすことは、非常に困難じやないかというふうに考えますので、しばらく時間をおきまして、さらに再検討するということにして、その前提として当委員会から数名の者が行きまして、さらに政府の調査が事実に合致しておるかどうか、あるいはその他の事情がどういうふうになつておるのかということをよく調査した上で、本委員会が採否を決定したらいいんじやないか、こういうふうに考えますので、この点非公式に前田委員にもただいま相談したところでありまするが、前田委員も当委員会が調査することについては異議がないというようなふうに承りましたので、本日はこの問題はこの程度にしておくように委員長に希望を申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/44
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045・淺利三朗
○淺利委員長代理 ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/45
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046・淺利三朗
○淺利委員長代理 それでは速記を始めてください。
ただいま上林山君の御発言もありまするから、いずれこの問題についでは実地調査等をとりはからう必要があろうかと思います。ついては、この処置については委員長に御一任願うことにしてはいかがでしようか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/46
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047・淺利三朗
○淺利委員長代理 御異議がないようでありますから、さようにとりはからうことにいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時二十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304149X04419520625/47
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