1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十五年三月二日(水曜日)
午後一時四十七分開議
出席委員
委員長 村瀬 宣親君
理事 小坂善太郎君 理事 西村 英一君
理事 保科善四郎君 理事 前田 正男君
理事 岡 良一君 理事 北條 秀一君
天野 公義君 橋本 正之君
細田 義安君 南 好雄君
石川 次夫君 石野 久男君
大原 亨君
出席国務大臣
国 務 大 臣 中曽根康弘君
出席政府委員
総理府事務官
(科学技術庁長
官官房長) 原田 久君
総理府事務官
(科学技術庁原
子力局長) 佐々木義武君
総理府技官
(科学技術庁原
子力局次長) 法貴 四郎君
委員外の出席者
科学技術事務次
官 篠原 登君
総理府技官
(科学技術庁原
子力局原子力開
発機関監理官) 武安 義光君
参 考 人
(日本原子力事
業株式会社社
長、日本原子力
産業会議理事) 瀬藤 象二君
参 考 人
(東京都立大学
理学部教授、日
本学術会議原子
力特別委員会原
子炉共同利用小
委員長) 千谷 利三君
—————————————
本日の会議に付した案件
日本原子力研究所法の一部を改正する法律案(
内閣提出第一五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/0
-
001・村瀬宣親
○村瀬委員長 これより会議を開きます。
日本原子力研究所法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、参考人より意見を聴取することといたします。御出席の参考人は、日本原子力事業株式会社社長、日本原子力産業会議理事瀬藤象二君、東京都立大学理学部教授、日本学術会議原子力特別委員会原子炉共同利用小委員長千谷利三君、以上の方々であります。
この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
本日は御多用中のところ、本委員会の法律案審査のためわざわざ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。厚く御礼申し上げます。
本委員会は、ただいま日本原子力研究所法の一部を改正する法律案について審査をいたしておりますが、本案につきまして、参考人各位の忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。なお、主として日本原子力研究所の共同利用の点につきまして、御意見をお述べ願いたいと存じます。御意見は約十五分程度としていただきまして、そのあと、委員諸君の質疑によりお答えを願いたいと存じます。
まず、瀬藤参考人よりお願いいたします。瀬藤参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/1
-
002・瀬藤象二
○瀬藤参考人 ただいまお話のありましたような点に重点を置いて、意見を申し上げようと思います。
現在議案となっております、理事の数を五人から六人に増すということについては、私はもちろん賛成でございますが、そのほかに、この際、原子力研究所はこうありたいものだというようなことをまぜて、いろいろ意見を申し上げたいと思います。
自分としては、この原子力研究所法というものを、このたび読み直してみました。そして、これは産業界として直接経験したことでありますがどうも予算が足りないから、研究所でほしいものの値段を引いてほしいというような話がしばしばあるのであります。どうもこれはふに落ちないと思って、規定を調べてみましたところが、予備費というものがありまして、その予備費によって支弁し得る道が開かれておるようでありますが、予見し得ることのできなかった品目については、必要と認めた場合に、理事者の方でこれを使って、あと内閣総理大臣に通知することでいいようになっております。なお、予見し得る品目の金額の増加については、流用についての規定がありまして、これは、あらかじめ内閣総理大臣及び大蔵大臣の承認を受ける必要があるということになっております。この規定二つがうまく運用されますならば、それでけっこうなのでありますが、一応調べてみると、予備費の不用額というものが前年度などにすでに相当額あったようでありまして、これは、不用額として出てくるのをちょっと不思議に思ったわけであります。原子力のような日進月歩の分野では、理事者が予算を作るときと、実施に入るときとでは一年以上も違うわけでありますが、その間に事情が大きく変わることが多いのでございます。また、研究というものは、未知の領域に進んでいくのでありますから、そういう意味では、見込み違いといいましょうか、事情の変化によってやり方を変えなければならぬということがしばしば起こるのでありまして、そういう場合に、たやすく機動的な処置をとり得るようになっていなければならないと思うのであります。しかるにどうもそういうふうにはなっておらないかのように実際の運用が見えるのでありまして、そういうことは、一つお変えになることがわれわれとしても要望すべき点ではないか、こう思ったのであります。
そのほかに、原研の業務遂行上、理事者に対してどんな権限が委任されているのかということを調べてみたのでありますが、非常に大まかに、規定の上では、内閣総理大臣がきめた基本方針に従って業務を行なえ、特別に指示することがあるということが書いてあるのであります。これは特別の指示でありますから、そういうもののない限りにおいては、理事者は相当大きなことをまかされて運営の衝に当たっていいことになっておるようでありますが、どうもそういうふうに実際に動いておるようにも見えないのは不思議でならないというようなことがあります。
それから、産業界から出資をいたしております。この出資は、今は政府の出資から見れば非常に割合が少のうございまして、総額の一割にも達していないようでありますが、この額は少ないけれども、せめて、民間出資分だけでも、政府の出資とは別に、理事者が自由に、機動的に、かつ有効に使えるようなことにしたいものである、これはたびたびわれわれ話し合っておることでありますが、もしそうでなかったら、こういう特殊法人として、民間出資をさせるようにした意味がほとんど失われるのではないか、こういうふうに私どもは思っているわけであります。
次に、仕事のことでありますが、研究所は独創的な研究によって日本の原子力のおくれを取り返すための努力をすることが、もちろん一番要望されておる主任務であります。しかしながら、それだけでいいのかということになって参りますと、これから申し上げるようなことが、われわれとして要望したいことであります。それは、たとえば、材料試験炉というものが考えられます。これは相当大きな金額の設備を要し、また、それに経営費も相当必要とするのでありますが、民間の事業者がそれぞれ持つということは無理でもありますし、また、適当でもないというふうに考えられる。従いまして、どこか中枢的な存在でそのようなものが設置され、そうして、そこで中性子の非常に密度の高い状態でいろいろの材料をさらして見て、それがどういう変化をするかしないかというようなことを突きとめておかなければ、ほんとうの原子力の進歩発展の基盤になる資料に欠くることがあるのであります。こういうふうな仕事は、ほかでやるのもけっこうでございましょうが、原子力研究所のようなところでやってもらいたい。これは普通の、いわゆる狭義の研究という仕事とは少し違います。どちらかというと、実験という名前で呼ばれるようなものでありまして、それだけに、その仕事をやる人は、非常にその仕事に忠実に、綿密に、粗漏のないような態度で仕事を進める必要がある。その人が調べて出した結果なるものは全国的に信用さるべきものであることであります。国立の研究所というものは、由来そういうふうな仕事を中核としてどこの国でも発達したのでありまして、たとえば、アメリカのビュロー・オブ・スタンダーズ、イギリスのナショナル・フィジカル・ラボラトリー、ドイツのフィジカリッシュ・テヒニッシェス・ブンデスアンスタルトというような名前で呼ばれておるのでありますが、それぞれの国立の研究機関は、そういうふうにじみだけれども、国民全体の必要とする研究、試験結果をはっきり打ち出す任務を相当大きく取り上げておるのであります。原子力についても、そういうふうな仕事が非常に必要であるのでありますが、それが行なえるようにありたいものである。産業界としては、このような仕事を積極的に取り上げて下さることを要望しておるのであります。またこのような仕事はいささかじみな仕事でありますから、それを普通の意味の狭義の研究者にやらせるということは、事柄の性質上、必ずしも適当でないのであります。そういうふうな仕事を取り上げるということになりますと、今考えておる研究所の機構といいましょうか、組織は、かなりその面に重点を置いた部分をつけ加えることにおいて頭を切りかえなければならぬ。また、人も、そのつもりで入れなければならぬということがございます。これらのことがうまくいくことになれば、今、国費を相当につぎ込まれて、そうして重点的に原子力の研究、開発をはかられようという初めの趣旨、並びに現在行なわれている予算措置その他も、相当その目的にかなうようになるのではないか、こう考えるのであります。単に理事者を一人増すということだけでなく、今申し上げたような諸点を十分慎重にお考えになって、この原子力研究所が国民の要望にこたえるようにお考えを願うことが、この際私たちの申し上げたいと思う事柄であります。
なお、もう一つ、人の問題でありますが、何をするにしても最も大切なことは、その仕事に適した人を必要とするだけ集めて、それがよく働けるような状態に保つということであります。原研の場合には、その供給源というのは、大学で申しますと理学部出身者と工学部出身者の両方面から得られるわけでありますが、現在、一番充足に困難を感じておるのは工学関係の研究者、技術者であろうと思います。これらの人が喜んで原研に集まってくるようなことにするために、この研究所設立の当初において、所員の給与についてある程度特別の考慮を払ってあると聞いておりますが、厚生施設をも含めて、現状がはたしてどうなっておるのかということは、私自身は直接調べてはおりませんが、しかし、民間の給与と普通の国家公務員の給与とのちょうど中間くらいだろうというようなきめ方であったそうなのが、民間の給与は、その後相当大幅にいわゆるべース・アップされておりますので、そのようなことを考慮すること、やはり実情に合うような給与の増額を考えることが必要であろうと思います。しかし、結局のところ、日本全体として人が足りないのでありますから、原研だけに集めるような手を打っては、かえってどこかほかのところで穴があくことになりましょう。それは、急がば回れということわざもありますように、若い人を採って、そうして自分で教育し、訓練するということのほかに、そう特別の方法は考えつかないのでありますが、まあ、しいて言えば、年は若くとも、ほんとうに能力のある者はどんどん責任のある地位につかせて、その人間がほんとうに働きが発揮できるようにすることが必要であろう。産業界からも原研に協力するために社員を出せということをときどき言われるのでありますが、われわれ産業界自身も技術者、科学者の不足に悩んでおる状態でありますから、その要望に対して十分に沿えないのはまことに遺憾でありまして、これはすべて全面的に人の不足ということに基因することであろう、こう考えております。
一応私の考えておることを申し上げましたが、何か御質問でもありましたら、また補足説明をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/2
-
003・村瀬宣親
○村瀬委員長 次に、千谷参考人にお願いいたします。千谷利三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/3
-
004・千谷利三
○千谷参考人 私は、現在まで学界が東海村の原子炉をどのように利用させていただいたかという経過を申し上げまして、最後に、将来こういうふうにしていただきたいという希望を申し上げたいと存じます。
原研で現在動いておるのは第一号原子炉でございますが、第一号原子炉の共同利用ができるようになりましたのは、昭和三十三年度でございます。さっそく、学界といたしましては、文部省から四百二十万円の科学研究費の補助を受けまして、全国的にアンケートを出しまして研究を募集いたしました。全部というわけではございませんが、その中で、すぐやっていただく価値のあるものをやっていただいたわけです。それで、どのくらいの数が集まったかと申しますと、生物系が十三件、物理系が十二件、化学系が二十件、計四十五件でありまして、それに約四百二十万円使ったわけであります。そのうちに、その年の秋になりまして一万キューリーのコバルト60の共同利用ができるようになりましたので、さらに文部省の科学研究費五十万円を追加していただきまして、そのコバルト60についても同じ方法によって共同利用させていただきました。それは生物系が七件、物理系が六件、化学系が十九件ございました。こういう状態だったのでございますが、三十三年度はそれで終わったわけであります。
次が二十四年度でございます。三十三年度のころは、私どもも原子炉というものを使った経験がまだなかったものですから、中には、へまなことをやった場合もなきにしもあらずであったのですが、だんだん原子炉の妙味がわかって参りましたので、さらに興味のある方が大ぜい集まられたのでございます。そこで、総額五百万円の研究費をちょうだいいたしました。集まりまして実際行ないました研究は、生物系が十四件、物理系が十一件、化学系が十九件、合計四十四件それから同じくコバルト60につきましては、生物系が九件、物理系が七件、化学系が十九件、計三十五件でございます。件数から申しますと、三十三年度と大した違いはないようでございますが、今申しました通り、だんだん原子炉あるいはコバルト60の使い方に学界としてもなれて参りましたので、この研究の内容はさらに向上いたしております。それでは、どういうところから研究者が集まっておるかと申しますと、研究所を利用させていただいた研究機関は、関東地区では十七カ所、それから中部、近畿地区が八カ所、中国四国、九州地区が五カ所、北海道、東北地区が四カ所、計三十四カ所、ほとんど日本全国にわたっております。
それから、研究のこまかい内容を申し上げますと、これはあらゆる分野にわたっておりますので一々申し上げることはできませんが、現在ございます第一号原子炉というのは、中性子束が平均1011程度でございますので、そういうところで利用できるものとしては、一番利用件数の多かったのが放射化分析でございます。中性子を当てまして、そうして、ある物質の中に入っているごくわずかな、ほかの方法ではなかなか検出できないような、ごくわずかなものに放射性を帯びさせまして、その放射性からどんなものが入っているかということを分析するわけです。たとえば、実際行ないました例としては、銅、現在、日本で使っております銅は電気銅と申しまして、電気分解によって作った銅であります。日本産の銅は、金などが入っておるのが特徴でありまして、電気分解で金を取っちゃうのですが、そういう場合に完全に取り切れるかどうか、そういうようなことです。それから、さらに珪素、高純度のシリコンというものが電子工学の上からは大事なものになって参りましたが、そういうものを作ったときのごくわずかな不純物がどうなっておるか、あるいは、土壌の中にいろいろ植物がはえますが、わずかに入っておるところの金属によりまして、植物がうまくはえたりはえなかったりするわけです。そういう土壌の中に含まれておるごく微量の金属の分析とか、こういうものを今の原子炉を使いまして放射化分析をやる。これが圧倒的に多かったわけでありまして、そのほか、アイソトープを作るとか、あるいは、高分子に当ててその性質を変えるとか、殺菌だとか、蛋白質の変化とか、遺伝、それからいろいろなものにわたっております。だんだんと原子炉の利用の方法が学界としてはわかりますとともに、利用方法も上手になりまして、大へんいろいろなおもしろい研究がこれから現われてくるのではないかと存じます。これが現在までの状況でございます。今申し上げました通り、現在の原子炉の中性子束というのは10の11乗でございますが、これが今言ったくらいしか利用できないわけでございます。さらに第二号原子炉というものを作るのだろうと思いますが、CP5になりますと、これが平均二けたになりまし10の13乗てくらいになって参りますれば、さらにおもしろい研究ができるのではないかと存ずるわけであります。
学界としては将来どういうことをお願いしたいかと申しますと、まず第一に、どんどんそういう新しい原子炉を作っていただきたい。今、瀬藤先生からお話がありましたような、できるだけ中性子束の高い原子炉をどしどし作っていただきたい、こういうことであります。と同時に、お値段の方がまた問題になるわけでございまして、現在どれくらい学界として照射するために払っておるかと申しますと、ものにより、時間により、それから、どれくらいの強さを当てるかによりいろいろ違うのでありますが、原子炉の方でございますと、最低一つにつき三千円から七千円、それからコバルト60の方は、一つにつき一番低いのが二千五百円から四千円、こういう形になっております。これを、原研側としても大へん御同情願いまして、三十三年度は、コバルトの方も、それから中性子を当てる原子炉の方も、輸送は全部同位元素協会でやっていただいておったのでありますが、三十四年度からは、コバルト60を当てる方は、これは放射能を持ちませんから、できるだけ手数料を省くという意味で原研自身でおやり下さって、これは大へん助かりました。それだけ値段が安くなって助かったわけでございます。けれども、中性子がどっさり当たると値段が高くなるのでございますから、今申し上げました通り、だんだん中性子の密度の高い、中性子束の高い原子炉を置いていただきたいのでございますが、これが、中性子束と比例して照射料が高くなって参りますと、一けた増せば三千円が三万円になるし、二けた増せば三十万円になってしまいます。何と申しましても、そのうちに日本の学界も、今お骨折りによってだんだん研究費も潤沢になると思いますが、現状におきましては、そんなに取られてしまったらわれわれはシャット・アウトでございまして、研究ができなくなるわけでございますから、大へん勝手なお願いでありますが、できるだけ中性子束の高い原子炉をどんどん作っていただきたいということと、照射料はできるだけ安くしていただきたい、こういうことであります。
もう一つは現在原子炉を共同利用させていただいておるわけでございます。ただ輸送して照射していただく分は割合簡単なんでございますが、現場へ出向いてやらなければならない研究がございます。そういう場合が大へん不自由でございますので、できることならば、共同利用のための実験室のようなものをお作り下さったら助かる、これが学界としての意見でございます。
私の意見はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/4
-
005・村瀬宣親
○村瀬委員長 以上で参考人の方々の御意見の発表は一応終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/5
-
006・村瀬宣親
○村瀬委員長 引き続いて質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、この際、これを許します。北條秀一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/6
-
007・北條秀一
○北條委員 ただいま、お二人から大へんいい御意見を聞いたのでありますが、今度の法律の一部改正では、お話にあったように、わずかに一人の人間をふやすということでございます。私は、この問題については十分勉強しておりませんので大へん恐縮なのでありますが、今、瀬藤さんがお話になりました材料の試験炉を作るということでございます。これは、現在の法律を改正しなければできないものかどうか、改正しなくても、現行法だけでこういうものは十分措置できるのではないかというふうに僕は考えるのですが、その点について、どういうふうな御意見を持っておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/7
-
008・瀬藤象二
○瀬藤参考人 私は、法律の方は、この間ちょっと調べただけで、あまり詳しいことを存じないのですが、原子力研究所設置の法律にはいろいろの業務のことが掲げてありまして、その中に、今お話に出ました、私がさっき申しました材料試験炉のようなものをあそこに置いて、それによっていろいろな試験成績をとるということは、あの文面から考えてもできないことではなく、また、原子力関係の非常にたくさんの専門家が集まっておるのでありますから、その限りにおいては、あそこに置くことが一番適切な措置ではないか、こう考えておりまして、法律の方はあまり詳しくありませんが、置けばあそこだろう、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/8
-
009・佐々木義武
○佐々木(義)政府委員 材料試験炉は、今の法律を改正しなくとも、研究所の方で要望し、政府の方でもその必要性を認める際には、設置できます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/9
-
010・北條秀一
○北條委員 局長にお伺いしますが、それでは三十五年度の予算でそういう処置はできると言われるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/10
-
011・佐々木義武
○佐々木(義)政府委員 三十五年度予算にはこの経費は計上してございませんので、三十五年度はできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/11
-
012・北條秀一
○北條委員 重ねてお伺いいたしますが、三十五年度はやれない。民間には、やはりそういうふうな計画があるのかどうかということと、三十五年度中に準備して、三十六年度にはそういうことをおやりになるお考えがあるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/12
-
013・佐々木義武
○佐々木(義)政府委員 前段の、民間の方の計画でございますが、これは三十五年度の予算を組み立てる際に通産省の方から要望がございましたので、いろいろ審査いたしますと、まだ設置をするというところまで具体的な案が固まっておらぬ関係等もありまして、一応三十五年度の予算には上げなかったわけです。三十六年度以降、この問題をどう扱うかという点でありますけれども、御承知のように、材料試験炉というものは非常に高いものでありまして、年の運転経費も大へん高価なものでございます。何億というような運転経費がかかるわけでありますから、これを設置いたします際には、よほどこれに対する現実的な需要というものを見きわめませんと、なかなか設置に踏み切りかねるものでございます。例をあげますと、欧州では、もちろん一国では持ち切れませんから、数カ国が共同いたしましてベルギーの研究所にこれを設置して、欧州の各国がそれを共同で使用するというふうな、ああいう非常に国の富んだところでもそういう措置をしているほど、非常に高いものでございます。従いまして、わが方ですぐこの炉を設置するという時期かどうかという点も十分勘案いたしました上で、最終的な決定をしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/13
-
014・北條秀一
○北條委員 瀬藤さんと千谷さんのお二人にこの際御意見を伺いたいのでございます。今、原子力局長から御説明がございましたが、日本の国内において材料試験炉を早く設置しなくてはならぬという声だけあって、実際にできた際に、材料試験炉を利用するものがないというようなことでは、これは意味がないわけです。実際に、現在材料試験炉を必要とするということについて、どういうふうな事情になっておるか、その点について御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/14
-
015・瀬藤象二
○瀬藤参考人 佐々木局長からお話がありましたが、相当高い初度調弁費を要します。また、それの経営運転のためにも相当多額の費用が要るということは事実でございます。国産で原子炉の相当大型のものを作ります場合には、それぞれの国産材料が、中性子の照射を受けるときにどういうふうな性質を呈するか、どういう変化を起こすかということを見きわめてありませんと、ほんとうに安心して、りっぱな原子炉を作るのに欠けるところがありますので、その意味において、なるべく早くそういうものを持つべきであるということは、業界一般に考えておるところでございますが、それができますならば、もうすでに予備的な調査をしたところでも、非常に大きな原子炉が遊ぶようなことなしに、相当活発に使われるような使用希望があるわけであります。ただし、それには相当多額の金額を要しますから、その使用料がべらぼうに高かったならば、やはりちゅうちょする。それらとの見きわめにおいてきまることなのでありますが、少なくとも、われわれの要望しておりましたのは、これだけの大きいものを建設するためには、早くに調査を始めて、そうして、どうせアメリカあたりでも第一基よりも第二基の方がずっと進歩しておりますから、そういうふうな進歩の激しいものであるために、よほどよく調べた上で、どういう型の、どういう大きさのものにするかということをきめる必要がある。われわれは、少なくとも、来年度あたりから、その調査に着手することにしたいものだ、こういうことを要望したわけであります。ところが、いろいろな都合がありまして、三十五年度の予算ではそういうところまで踏み切れなかったようでありますが、国外に材料試験炉の調査団を派遣するくらいのことは、産業界が一致して今すでに計画しております。少なくとも、それくらいのことから始めて、そうして時期が参りましたならば、この調査結果によって必要な処置が早急にとれるような準備はいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/15
-
016・千谷利三
○千谷参考人 私、学界の方といたしましても、瀬藤先生がおっしゃったことと同じことなのでございますが、学界としても、つまり、原子炉を作るといろいろ材料が要るわけでございますね。そういう材料を試験するためには、そういう炉がないとできないわけです。学界とすれば基礎研究でありまして、実際炉を作るわけではありません。ある遮蔽材を作った、こういうものが持つかどうかという基礎研究をするためには、そういうものがあった方が非常にけっこうです。ただ、学界は実業界よりもさらに貧乏でございますから、あまり高かったら使えないものになる。同じことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/16
-
017・村瀬宣親
○村瀬委員長 石野久男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/17
-
018・石野久男
○石野委員 瀬藤参考人にお尋ねいたします。参考人は、原子力研究所のことにつきましては、産業界の出資した分くらいのものは自由に使えるようにという御希望を述べられたようでありますが、その産業界が出資した分くらいは自由に使えるようにということの意味は、なかなかわかりにくいのですけれども、どういうようなことを意味しておるのでございますか、ちょっと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/18
-
019・瀬藤象二
○瀬藤参考人 あまりに端折って申し上げたので、ちょっとわかりにくかったかもしれませんが、やはり国家の費用として、大蔵大臣あるいは内閣総理大臣の承認を得た上でなければ使えないという、これは国費を使う限りにおいては一応もっともな制約であると思いますが、しかし、私ども産業界の出したくらいの金は、何らそうやかましく言わずに使っていいようにできないものかなあというのが、私どもの雑談的にしょっちゅう話しておる事柄であります。法制的にどういうふうにすればいいかとか、現在取りきめられておる規則をどう変えればいいかという具体的なこととはちょっと違うのですが、それとからんで、さっきの予備費の問題なんかもなかなか使いにくいようなふうに見えるということを勘案しますと、これは特殊法人として出発したいきさつから考えても、もう少し自由に使えるような道が何かの方法で講ぜられればいいがなあという、ばく然たる希望の表明でありますけれども、しかし、それは必ずしもはずれてないと考えているから、この席で申し上げたわけであります。給与にしましても、いろいろな点で考えて、理事者としては、こういうようにしたいということがございましょう。そのときに大蔵大臣、内閣総理大臣まで認可を求めなければやれないという線があまりに強くありますと、私ども民間人が出した金というものはあまり使えないのじゃないか、ごく卑近な言い方をして言えば、そういうふうに考えておるわけでございます。なお、よく調べれば、そういう道は開かれておるとおっしゃるかもしれませんから、それは、私どもが、ただそういうふうに感じておるということを申しておるだけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/19
-
020・石野久男
○石野委員 重ねてお尋ねいたしますが、そのことの意味は、たとえば、理事者が年度内におけるところの研究項目はこれこれこういうふうにやるという一つの案を立てて、それが予算化されますね、その場合に、今、参考人がおっしゃられる、民間が出したものくらいは自由に使えればということの意味は、理事者が立案する年度内におけるいろいろな研究項目の中へ、産業界の意向がもう少し入っておればということの意味なのでございましょうか。それとも、やはり計画は計画であるけれども、随時必要が出てくる場合に、そのときの計画とは別個に、いつでも使えるようにと、こういう意味なのでしょうか。その計画の中へどうも産業界の意見が入らないからという不満から出てくる意見なのか、そのどちらですか。もう少し詳しく一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/20
-
021・瀬藤象二
○瀬藤参考人 原子力研究所の研究の年度計画をお立てになるときに、産業界の意見も幾らか聞いておられるようです。そして、その面に関する限りにおいては、どうせ新しいことでありますから、産業界がこういうことをやってほしいなあと思うことと、原子力研究所がやろうと思うこととは、多くの場合に合致するのでありまして、初めにおあげになったような意味での、研究項目の採択について民間の意見を反映することができないということよりも、むしろ、もう少し各項目の金の使い方ということになりましょう。これは、私もよく調べたわけじゃありませんから、まあ、一つの感じとしてお聞き取りをいただくことにしたいと思いますが、あそこの家を建てておるときに、私が見に参りましたが、あそこに上塗りをしてはいけないということを大蔵省がおっしゃるそうです。大蔵省は裸の家ですから、自分たちと同じにしろとおっしゃるのかもしれません。建築構造上、それではたしていいのかどうか、これは非常にデリケートな話ですが、そういうふうなときに、民間の金で塗ろうかというような話まで出た。こういうふうなことが、やや自由にやれるというようなことも一つの例かもしれません。あるいは、その中の厚生施設にしても、国家公務員諸君に対してやっておる以上のことにはある程度の難色があったり、すべて国の施設とにらみ合わせて、ぜいたくであるとか、もっと内輪にしろとかいうふうな話が出ないとも限らない。それらのときに、自由度があればいいのじゃないかというような、ばく然たることは言えると思います。御質問の意味にぴったりしておるかどうかわかりませんが、今、私の頭の中にあることは、そういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/21
-
022・石野久男
○石野委員 大体言おうとしておられることはわかるような気がいたすのでありますが、もう一つ、重ねてお尋ねいたします。
大体、今、民間が出しておるくらいのものは何とか自由に使えるのがよいのであって、特に研究とか試験とかいうようなことで、さしあたって非常に不自由を感じたとかなんとかいうようなことが具体的にございますならば、それを一つ、二つ教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/22
-
023・瀬藤象二
○瀬藤参考人 私も、日常その方に直接タッチしておりませんので、具体的の例を今ここで思い起こすことはちょっと無理でありますが、しかし研究の機動性といいますか、そういうようなときに、私たち自身でも、会社の中で、そういう点であとで十分責任を持ちながら、使える金というものがありますと非常に工合がいいことがしばしばあります。役所に近いような運営になりますと、どうしてもその点はぎごちない、不自由だ、あるいは束縛を受けることが多いのでありますから、それはお察しがつくと思いますが、決してだらしのない使い方を奨励するという意味ではございませんけれども、ある程度の自由度を持たせて、運営に機動性を持たせるということを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/23
-
024・石野久男
○石野委員 佐々木局長にちょっとお尋ねいたしますが、今の問題で瀬藤参考人のおっしゃられておることは、最後におっしゃられた、研究とかいろいろなことについての予算の機動的な使い方ということについての若干の民間の不満が表わされておるものだと思いますので、予備費の使い方などは、やはり相当機動性を持った使い方ができるようになっておるのじゃないかと思うのでありますが、何かそういう点について、今、参考人の言われたことについて局長のお考えがありましたら、一つ聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/24
-
025・佐々木義武
○佐々木(義)政府委員 瀬藤先生のお話は一々ごもっともな話でございまして、私どもも、できますれば、民間の出資等は、できるだけ研究所の自主的な判断で自由に使い得れば非常によろしいのではないかと考えております。そういう希望は一応持っております。いろいろ研究をしたのでございますが、実際は、そういうふうな運びにすることは非常にむずかしい問題がございます。と申しますのは、研究所から年度予算の要求がございまして、そうして、それを原子力委員会としては査定したと思います。その査定したものを大蔵省に持ち込みまして、大蔵省が最終的に予算の範囲、内容をきめるわけでございますが、その際のきめ方といたしましては、研究所の事業は、三十五年度はこういう事業である、従って、こういう予算を要するという査定の仕方になっておるわけでございます。あくまでも、事業の範囲というものが予算の基準になってくるわけでございます。従いまして、この事業をきめます際には、国の出資分と民間の出資分とを合わせたものが全事業の内容ということにきまってくるわけであります。それを基礎といたしまして、毎年事業計画あるいは予算計画を研究所に作ってもらいまして、そしてこれを承認するというような格好になっております。その際、民間の出資分というものは、あらかじめそういうふうに事業の中に入っておらなければ処理しいいのでございますけれども、予算の中に入って、収入あるいは支出の項目に入っているものですから、なかなか勝手に使うわけにいかないということに現在なっております。しからば、それを是正する方法があるかどうかという点もいろいろ研究したのでありますけれども、なかなかむずかしい問題でありまして、たって可能にするには、現物出資のような方法でも考えれば、あるいは御希望に沿えるのじゃなかろうかという感じも持っております。
それから予算の使用が非常に窮屈だという点でありますけれども、前は、実は補助金で政府から研究所に出しておった関係上、御承知のように、補助金に対しては非常に厳格な規制方法がございまして、いわば、一件々々全部、事前審査にかかるというような格好になっておるものですから、非常に研究所の方でも初期においては干渉と申しますか、あるいはその手続の審査の煩瑣にたえかねておったような状況でございましたが、その後、出資に変わりましたので、その点はだいぶ改善されまして、ただいまは、ほとんど自主的な視野で考えて問題を処理できるというふうになっておるのではないかと私は考えております。
それから、予備費の使用でございますが、やはり予算の中では給与関係の予算と予備費の使用というものが、御承知のように一番うるさい問題でありまして、予備費というものは、いわば原則としては使わぬというのが予備費でございまして、先ほどもお話がありましたように、予見することのできない突発事故のような場合に予備費というものは使うべき性質のものである。あらかじめ予見できるものであるならば、全部予算の中に含んでおくことが予算の本質でございますので、これの使用に関しましては、やはり事前審査をいたしませんと、自由にというわけには参りませんし、さらばといって、絶対にそれでは不可能かといいますと、原子力研究所では本来あるべからざる予備費というものはない、また、逆説的に申しますと、ただいまのような、いろいろな研究がどんどん進んでいくときに、年度の途中に方針変えをしなければならぬという場合になければ困るというのが予備費でございますので、そういう点もかみ合わせまして、普通の予算のようにあまり厳格にいってもいけない。さればといって、ルーズにもできないというので、その辺は、状況に応じて処理していくというふうな態勢になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/25
-
026・石野久男
○石野委員 出資額に応じて、それを自由に使うことがいいか悪いかの問題は別にいたしまして、やはり原子力関係、特に原研についての予算などについては、予備費の性格というものは、他のところとは違った面があると思います。そのため、予測しないような研究を必要とすることが出てくる場合を予測して予備費があるということも考えなければなりませんので、この点は、参考人の言われるように、ある程度機動性を持たすような使い方をしなければいけないのではないかという感じを私どもはしておるわけであります。これはあとで委員会などでも論議しなければならぬ問題だろうと思います。
私は、もう一つこれは千谷参考人にお尋ねしたいのですが、参考人は、なるべく共同利用の実験室を作ってほしいという御意見でございました。それは輸送されるものならいいけれども、自分自身がそこまで行って研究するというのは非常に不便だからというような意味もあるのだろうと思います。そうなりますると、この共同利用の実験室というものは、たとえば、原研の中へそういうものを作るということなのか、それとも、ほかのところへそういうものを作ってほしいというのか、その位置的な関係も一つあるのじゃなかろうかと思いまするし、それから、それの施設の大体の構想なんというようなものもあるのだろうと思いますが、参考人の御意見をこの際一つ聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/26
-
027・千谷利三
○千谷参考人 共同施設が必要であるということになった具体的な例を申し上げますと御理解を願えると思うのですが、たとえば、先ほどの放射能分析というのがございます。中性子を当てますと、微量に入っているものが放射性を帯びるわけでございますが、これは大へん寿命の短いものでございまして、ちょっとしばらく置いておくとなくなってしまう。そういうものを、九州の方が、そういう放射能の分析をしたいというので郵送します。行きには放射能を持っていないから、何日かかってもかまわないのでありますが、いよいよかまから取り出したものを、やっちら、おっちら九州まで運んでいるうちには、まるでなくなってしまう。そういう場合に、中性子を当てたものを、ほかほかしているうちに測定したい、つまり、原子炉でやったものをできるだけ早い時間に実験したい、そういうことがございます。
それから、物理の方でも同じことでございまして、ある低い温度でもって照射した、それが暖まらない状態のうちに早く測定したい、だから近くにある方がいい、そういう点では、その共同施設は原子力研究所でなくとも、どこでもよろしいのでございます。学界としては、文部省でもけっこうでございますが、できるだけ近いところにほしい、こういうわけでございます。今は、便宜上わがままを言いまして、そういう遠くて間に合わないという方、どうしてもそばでなければならないという方は、原子力研究所で実際研究なさっているところに割り込んで、おじやまになるわけですが、研究をやらしていただいております。生きものでも、そういう点がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/27
-
028・石野久男
○石野委員 共同実験室をほしいという御意見は、大体そういうようなことだということはよくわかりました。
なお、二人の方にお尋ねをいたしますが、従来、研究所の研究内容というものは私たちの想像している以上のものが次から次へと新しく出てくるわけであります。そうして、その研究は、ほとんど放射能の作用を利用するものになるわけでございますだけに、研究の重要性というものが深まっていくと同時に、今度は、その放射能の持つ障害の安全性の問題などについて、相当考えなければならぬのではなかろうか、こういうふうに私たちは思っておるのでありますけれども、そういう安全性の問題などについて、両参考人はどういうふうにしたらいいか、安全性の研究とか対策について、現在原子力関係についていろいろ運用されている面から見て、どういうふうにしたらいいかということについてのお考えがありましたら、一つお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/28
-
029・瀬藤象二
○瀬藤参考人 数字的なことは今持ち合わせませんが、今、私が特に関係をいたしております日本放射性同位元素協会が相当問題にぶつかっているということを申し上げたいと思います。それは動物実験もありますし、いろいろな放射能の物質を現に各所で扱っておりまして、それらのものを扱っている間の安全関係については、相当厳重な規制を法律でもきめてありまして、それに従って処理していただいているわけですが、それを使ってしまったあと、もう役に立たなくなったときのものを廃棄物といっておりますが、それの処理については十分な方策がまだ立っておらない。やっと日本放射性同位元素協会がお世話をして、各方面で出てくる廃棄物を、なるべく安全な入れものに入れて格納しておくということが緒につきました。しかし、それは格納でありまして、その後だんだん増加して参りますと、終局的な処理に及ばなければいけない。その問題については、どこかに集中して扱える相当完全な設備を持つ必要がある。これは原子力研究所のようなところでやってもらいたいものだとわれわれは念願しておるのでありますが、まだ、ほんとうにその計画がすっかり固まってできていると申せない状態である。おいおいそういうことが問題になり、それをほんとうに取り上げるようなことにしてもらいたいものだというのが、この方面に関係をしておるものの念願であります。これから原子力発電を大幅に取り上げられますと、もちろん、今申したのとは比較にならないような大量のものを扱うような設備が必要になります。これらの一貫した、いわゆる廃棄物処理ということが、われわれ関係者の間では非常に大きな問題になりつつあるのでありまして、それを必要な時期に必要な量が扱えるようなところにまで準備を整えるということが、現在の一番必要な状況である、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/29
-
030・千谷利三
○千谷参考人 原子力というのは、いつも安全性が問題になりまして、ごもっともなお話なのでございます。これは火事と同じでございまして、三つに分かれるわけでございまして、火事ができるだけ出ないように、こういうわけであります。火事が出たらすぐ消すように、それでも広がったら、保険会社が保険を払ってくれる、それとよく似たようなわけでありまして、まず第一の、安全的にできるということは、技術者の責任でございますので、できるだけ高級技術者を養成する、これが大事なことだと思っております。ことに、原子力関係の安全なことを研究する部門のことを保健物理と言っております。また、現在、日本じゅうには保健物理の講座というものを持った大学がございません。みな自分でいろいろと勉強してやっておるのです。もう一つ、私、もとへ戻って申し上げますが、つまり、東海村に限りません、これから原子炉があちらこちらに持たれる、原子力関係の施設が置かれる全般的の問題でございますが、そこには、なるべくそういう保健物理の専門家が、一つの設備には少なくとも一人ぐらい必要だと思います。そこがまた弱い面であります。それから、出たらできるだけ早く消す消防夫、これもやはり保健物理の方の一つのテーマになっております。それから、いよいよ、それまで尽くしても、なお火事が出てしまった、これだけ防火思想が発達しているにもかかわらず、ときどき火事が出ることがございます。そういうときには、保険制度、これが私は大事ではないかと思うのです。その保険も、あまり高い保険料になりますと、もぐりみたいなことになりますので、できるだけかけられるような保険制度、この三つであって、火事とよく似ているような気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/30
-
031・村瀬宣親
○村瀬委員長 岡良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/31
-
032・岡良一
○岡委員 私ども、原子力研究所ができましたときに、できたら、これが日本の研究、開発の中核となり、同時にまた、産業界、学界の協力の、いわばくさびともなって、さらに行く行くは原子力国際機関などの援助も得て、アジアにおけるセンターにまで発展せしめたいという念願を持っておったわけでございます。現在もそういう強い希望を持っているわけでございますが、そこで、念のためこの際お聞きしておきたいことは、日本の原子力の研究、開発の基本計画は、四年ほど前に、将来の展望の上に立ったきわめて原則的なものが一応発表されましたが、あれ以後、あの計画は改定されておらないのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/32
-
033・佐々木義武
○佐々木(義)政府委員 岡先生のおっしゃるのは、基本計画の内定した作文の分かと思います。総括的なのは、あれ以後はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/33
-
034・岡良一
○岡委員 そこで、日本原子力研究所としては、あのきわめて包括的な、原則的なレールの上に、今度は、具体的な研究、開発のプロジェクトを作らねばなりません。それは、たとえば最近どういう計画になっておるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/34
-
035・佐々木義武
○佐々木(義)政府委員 包括的な基本計画のあとに、たとえば電源開発、原子力発電の長期計画とか、あるいは燃料問題に対する考え方といったような、いろいろな部分のものがございますが、原子力研究所の年度初めの事業計画を作ります際の態度と申しますか、もちろん、そういう今まであります国の基本方針がございますれば、それにのっとって計画を作るのは当然でございますけれども、しかし、ただいまお話がありましたように、非常に包括的なものであり、かつ、年度からいっても相当古いものだということになりますと、現実の段階では、それではよりどころがないじゃないかということに相なるのではなかろうかと思います。そこで、実際にはどうなっておるかと申しますと、継続で研究を進めて参ります。基礎的な分野は、これは一年、二年できまる問題ではございませんので、ますます深めてその問題を研究していくわけですから、これはそう大して問題になるわけではございませんし、新しい問題としてどういう問題を取り上げていくかといったような問題になってきますと、ただいまの基本計画と、それから現実に進みたいという、新しいもくろみと申しますか、計画とが、一体どういうふうな調整になっていくかという点が一番問題になろうかと思います。そこで、私どもといたしましては、事前に、こういう研究を頼みたいというふうに、原子力委員会の方から注文を出すことはあまりございません。むしろ、研究所内部の各研究者がそれぞれ出しました計画を、研究所の理事会にスクリーンしまして、そして、こういうものをまずやりたい、あるいは、こういう炉を作りたい、あるいは、こういう設備をほしいというように、自主的に向こうから出て参りましたのを基礎にいたしまして、そして予算の編成方針と申しますか、開発方針と申しますか、そういうものを全般的に、研究所ばかりでなしに、全部をひっくるめまして、一応委員会としてホール・マップと申しますか、概略的な希望図を書いてみまして、そしてその面から、研究所では新規のものをこれこれ希望するけれども、どれを一つやらしたらどうか、あるいは、その中の金額が妥当な見積もりであるかどうかという点もたんねんに検査いたしまして、そして、きめていくという段階でございます。一例を申しますと、たとえば、核融合の問題等が新しい問題として出てくるわけでありますが、そういう際に、政府では専門部会を設けまして、核融合の研究を片方で進めまして、全体として核融合というものをどういうふうに進めたらいいかということを検討しております。その結論のつかぬ前に、研究所といたしましては、自分の方としては、その問題に対してはこういう研究をしたい、その問題は来年度はしたくない、まだ時期尚早ということで、独自の判断で計画書を持ってくるわけでありまして、その際に原子力委員会といたしましては、専門部会の進捗状況等をにらみ合わせまして、そして、何々くらいのことは三十四年度にはしていただこうじゃないかというような工合に話がきまりますと、首脳部の方に来ていただきまして、そしていろいろ具体的な相談をしながら、その問題を処理していく、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/35
-
036・岡良一
○岡委員 原子力の研究、開発として、基本計画なり原子力発電の長期計画は、これは今日大きな反省期に入っておる、再検討する時期に入っておると思いますが、この問題は、いずれまた他の機会に譲ります。
ただ、さっき申し上げましたように、日本原子力研究所の将来は、ますますこれをアジアにおける、また日本における大きな研究、開発のセンターたらしめるという立場からすれば、やはり国に一つの開発基本計画がなければならない。その大きなレールの上に、具体的な短期の計画があってもいい。そして、そういう線に沿うて研究、開発が具体的に進められ、これが年度の事業計画になる。しかし、そういう国の計画なり、あるいはその事業計画なり、短期の研究所の運営の計画というものは、やはり、単に研究所側の研究者の一方的な自由な意思のものでもなければ、原子力委員会が上から押しつけたものでもなく、そういう計画を作るときには、やはり学界なり、産業界なりの意向を十分に組み入れて作っていく、こういう形が、原研が産業界、学界の協力を得るくさびになる大事なめどじゃないかと私は思うわけであります。
そこで、そういう論議は、いずれまたあとの機会にいたしまして、具体的にお聞きいたしますが、国産炉については、燃料、減速材、反射材、その他必要なる金属材料、デザインなどは、全部国産でやれますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/36
-
037・佐々木義武
○佐々木(義)政府委員 国産炉に関しましては、御承知のように、ずいぶん前から、研究所はもちろんのこと、関係者でそれぞれ研究を進めておりまして、最終的には、この型の一番進んでおるカナダの力も借りまして、こちらから人が参り、向こうからも来ていただきまして、そして、重水系統の原子炉は、自分らの研究から見ますと、こういう点が一番注意しなければいかぬ点であるというふうな、いろいろサゼスチョンをいただきまして、ただいま精密設計が終わって、注文が済んでおるわけであります。日本だけでやっていけるかとおっしゃいますと、これははなはだ答弁に苦しむのでありますけれども、現状は、ただいま申し上げたような経過でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/37
-
038・岡良一
○岡委員 私は、そこで申し上げたいことは、先ほど瀬藤さんからも御発言があった材料試験炉の問題なんです。私どもは、この委員会で、繰り返し、材料試験炉を動力試験炉より先に入れた方がいいのではないか、そして国産炉は、できるだけ日本の技術、日本の材料で作り上げるというのが、原研の大きな具体的な目標ではないかということをいつも申し上げておったわけですが、たまたま瀬藤さんからも、その御指摘があったわけです。たとえば、動力試験炉を入れるか、材料試験炉を入れるか、工学用の試験炉を入れるか、これは相当予算の伴う、しかも、原研にとっては大事な事業計画でございますが、こういう決定について、はたして学界なり、産業界なりの意見を公正にお聞き取りになるという、そういう手続がとられたのか、また、そういうものを聞くような機構というか、組織というか、慣習というものがあるのか、これが今後の原研運用の一つの問題点だと思いますので、その点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/38
-
039・佐々木義武
○佐々木(義)政府委員 大臣からもしばしば申し上げておりますように、本年度、基本計画の改定をいたしたいというので、ただいまその準備作業に入っておる段階でございます。十二月末を目標にいたしまして、初めには、考え方そのものの基礎を固める、二番目には、その考え方に基づきまして、今度は具体的に、研究所、あるいは学界、あるいは産業界等で持っております案をそれぞれ持ち寄りまして、今後の十カ年等の長期にわたる基本計画を作成したいというので、進めておる最中でございます。そこで、ただいまの段階では、まだ広範に御協力いただけるところまではいっておりませんけれども、ただいま考えております段階では、財界は産業会議、学界は学術会議なり、あるいは原子力学会等を中心にいたしまして、そして考え方そのものに対してもいろいろ御批判なり御教示をいただきますし、その後の研究計画あるいは開発計画等に関しましては、各機関から十分資料もちょうだいいたし、また、御協力もいただきたいということで、思い切った動員——といっては言葉が非常に悪いのですけれども、広範な御協力のもとに、雄大な計画を作りたいというのが私たちの希望であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/39
-
040・岡良一
○岡委員 将来のことをお聞きしているのじゃないので、問題は、動力試験炉を入れるか、材料試験炉を入れるか、これはやはり国産炉を作ろうと決意した以上、大事な原研の事業計画の内容になるわけです。私どもは、材料試験炉を入れなさいということを始終申し上げておる。ところが動力試験炉になったが、その是非をここで申し上げるわけではございません。ただ、問題は、いずれを入れるかというようなときに学界なり産業界なりの諸君の意見を傾聴して入れる、こういう心細みがあって、事実それがなされたかどうか、こういうことなんです。これは瀬藤さんから伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/40
-
041・瀬藤象二
○瀬藤参考人 今、岡さんからの御質問の点で、私の知っている範囲でお答えいたします。
原子力研究所には参与という制度がございまして、その一員に私も入っております。そのほかに、原子力研究所の事業遂行に関して、先ほどお話のありました動力試験炉を入れるか、あるいは、それよりも材料試験炉が先かということについて、相当切実な討議を重ねる委員会を持ちました。そしてその結論は、あの当時においては、まず動力試験炉を入れてみようじゃないかというところに、その委員会の意見も一致したわけであります。さらに申しますが、原子力局、委員会に対しても、産業界は非常に熱心な協力をいたしております。現に、私はどういうわけか二つ専門部会の部会長を言いつかって協力しております。一つは、動力試験炉の非常に綿密、詳細なる比較検討の専門部会であります。もう一つは、原子力関係の科学者、技術者の養成計画のための専門部会であります。それらの作業をいたしますには、もちろん、原子力局の諸君の手では足りませんので、産業界及びそれに関係しておる者がみな協力し、かつ、学界からも非常にたくさんの人が協力をしております。大体、今、原子力関係では、官民一致して意見を調節し、それによって結論のつくようなことが、こちらなり、いろいろの面に提案されておる、こう御了解いただいていいじゃないかと思っております。
そこで、ちょっとつけ加えますが、先ほど来私が原子力研究所についていろいろ希望を述べましたが、原子力研究所はうまくいっておらぬから、こう直せということを申したのではありません。だれが原子力研究所の理事者になりましても、あれほどのむずかしい、また、重要なる仕事をやりますには、非常に困難なことがつきまとうのでありまして、これはみなが協力して、そのむずかしいことを達成するために、一つでもいいことなら取り上げようじゃないかという、いわば望蜀の考えで申しておるわけです。あれはみなうまくいっておらぬから、こうしてほしいというほど強くお感じになっていただかない方がいいと思います。つづめて申せば、御質問に応じたことになろうかと思いますが、官民一致してやるとうい線は、ほかの他の産業、他の部門における以上に行なわれている、こう申し上げていいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/41
-
042・岡良一
○岡委員 別に、あなたの意見が、現在の原研の運営に対して手きびしい非難であろうとは考えておらないのです。ただこうして、当初は三億にも満たないような原子力予算が、四年、五年の間に百億をこえるというふうに、非常に膨張いたしまして、同様に、原研もいよいよ二つ目の炉もでき、また、国産炉もでき、また、国産炉もできるというふうに、事業も非常に大きくなったので、今が非常に大事なときではないか、この大事なときには、私先ほど申しましたように、産業界、学界の協力による国策として、どうこれを発展せしめるかということに私は関心を持っておる。その立場から、この運営については、できるだけ、まず計画を持つべきではないかということを先ほど来申し上げておるわけです。基本計画は、長い展望の上に立ったきわめて原則的なものであるから、それを今度は何年かの年次に縮めた具体的な計画を立て、さらに予算要求のためには、その年の一カ年間の事業計画を立てる、そういうような行き方でなければならぬと思います。
そこで、瀬藤さんにお尋ねをいたしますが、現在のCP5、あれは先ほど御指摘のように、相当強力の中性子も出ることでありますし、若干の実験孔も縦横にあります。しかし、CP5のようなものでは、ほんとうに国産炉のための材料の試験とか、そういうようなことはなかなか困難ではないか、ほんとうに日本でやろうと思うならば、アメリカへでも送らなければならない事態になるのではないかということを、しろうと目にも感じられるのでありますが、実際その方面の、いわば専門的な知識を持っておられる瀬藤さんとしては、あのCP5の活用と国産炉について、どういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/42
-
043・瀬藤象二
○瀬藤参考人 詳細かつ立ち入った御説明をここで申すのは少し時間をとりますが、大体の方向を申し上げますと、CP5としてあそこにできるようになっておるものは、もちろん、ある程度の役に立ちますけれども、原子力産業界で特別にその調査のために委員会を設けまして、材料試験炉の問題を相当掘り下げて調べてみたのであります。そうしますと、CP5ではこれこれのことしかできない、具体的に申せば、中性子の密度が足りないために、あそこに入れて、大型炉の中で起こるようなことに相当するような実験をやろうとすると二十年かかる、非常に長い間さらさなければ結果が出ない、そういうふうに結論が出て参ったわけです。これは、まあ初めからわかっておるじゃないかといえば、それまででありましょう、しかしそれほど密度の高いものが国産のためにはやはり必要であるということが結論として出て参ったのであります。あのまます飛んで、いきなり材料試験炉にいった方がよくはなかったかというお説も出ましょうけれども、これはやはり、あれだけのものを置いて、早くあれが使えるようになることが第一段階、さらに、ここ四、五年の間にもっと密度の高いものが、りっぱなものとしてでき上がることが第二段階、そういうふうに私どもは一応割り切って考えておるわけなのです。国費を相当多くつぎ込んでいただく必要も起こりましょうが、それは国費の関係上、そのころまでに、つまり、今、原子力研究所で計画をしておる幾つかの仕事がやや峠を越したころに、材料試験炉のための経費がそこへ入り込めるようになることが一つの大きなめどじゃないか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/43
-
044・岡良一
○岡委員 瀬藤さんは、特に産業界の方のタレントでいらっしゃいますから、私お聞きしたいことは、御存じのように、原子力産業会社というのが六つか、日本ですでに発足をいたしております。一方、英国の場合は、五つのグループが三つに整理をされた。その事情も、いわば市場と供給との関係において、経済的に産業グループとしては立ちいかぬということが一つの大きな整理の原因であったように私は聞いておるわけです。そういうように、一方では、きわめて先進国で、外国へ大型の動力炉を輸出しようという国が、原子力産業グループが整理をされておる。日本では、まだ国産もおぼつかない。英国から三百五十億出して買えば、二百億は英国へ払わなければならぬというような日本で、幾つもの会社がお互いに競い合うということになりますと、これは当然経済の原則としても不要な過当競争が起こる。そのことは、産業界にとっても、日本の原子力学界にとっても、原子力そのものの研究、開発の発展のためにも、私は決してプラスの現象ではないと思うわけです。そういう意味から申しましても、原子力に関する技術はもとより、また、燃料なり、その他必要のもろもろの資材から金属材料の国産化へという道は、私は、やはり当然な常識的な大きな原則だろうと思う。そういうような立場から見まして、動力試験炉を入れるよりも、材料試験炉をCP5の次には入れるというのが日本の原子力開発のためには当然なことであった。それが、今、お話を聞けば、官民協力のうるわしい姿の中で動力試験炉ということになったということなら、私どもの考える日本の原子力の研究、開発の正しい、健全な体制という立場から見ると、むしろ、きわめて迂遠な回り道を通っているのじゃないかとさえ言いたくなるのです。しかし、この点については、瀬藤さんはお客様で、議論をするためにお呼びしたのではないのですが、重ねて一つ率直なところをお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/44
-
045・石野久男
○石野委員 関連して。ただいま岡委員からお話がありましたように、いろいろな問題を、集中的に効果を上げるように持っていかなければ原子力開発ができないということがだんだんはっきり出てくる時期に、岡委員から指摘がありましたように、日本における原子力産業会議というものは、各企業ごととか、産業資本ごとに幾つかできておるという事実があるわけです、これらのものは、先ほど共同研究機関をなるべく持ってほしいという学界からの要望もあり、また、瀬藤参考人自身も、そういうようなことの意味を述べられていると思いますときに、どうもこれと矛盾しておるように思われるわけです。岡委員も言われますように、適当競争が、原子力分野においておくれておる日本において非常に活発に行なわれるということは、まずいことだと私どもも思っているわけであります。それでございますだけに、この際、産業界を代表する瀬藤参考人にお尋ねをしたいのですが、原子力産業会議などのグループがたくさんあるわけですけれども、これを統合する機運は今業界にはないのかどうか、また、参考人自身は、そういうようなことについて、統合しないでも、このままやっていく方がかえって日本の原子力産業にはいいとお考えになっているのか、むしろ、それを統合した方がいいとお考えになっているのか、どうもわかり切ったような質問でございますけれども、私たちには解明のできない問題がありますので、率直な御意見をこの際承れればけっこうだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/45
-
046・瀬藤象二
○瀬藤参考人 あらかじめ申し上げなければならなかったのですが、きょう私が出ましたのは、産業界を代表してというような意味であったら御辞退するはずであります。私は、産業界を代表する発言をここでしょうと思って参ったのではないということだけは御了承いただきたいと思います。岡さん及び今の方の重要なる御質問に対して、私個人の考えをここで申し上げることにいたします。
イギリスにおいてたくさんのグループができたのが、その後仕事の都合やなんかで縮小したようだが、日本ではそれとあべこべに、非常にたくさんのものがまだやろうとしておる、それは過当競争を誘致することにならぬか、かような御質問かと思います。これは非常に大きな問題を含んでおりますので、もし、今ここで正確なお答えをすることになりますと、私も相当時間をいただく必要があろうかと思いますが、大体の考えの筋を申し上げたいと思います。
原子力の事業は、日本以外においても方々で非常に大きく取り上げられました。その包含しておる人数も非常にたくさんかかえ込んでしまった。これはアメリカにおいてもそういう事実がありますし、また、イギリスにおいてもそういう事実があったといっていいだろうと思います。それは、いわゆるそういう特別の事象の起こったときにしばしば起こりがちな、自由主義的な経済を行なっておる国柄においては起こり得る事柄であります。私ども自然現象を観察しておるときにも、しばしば振子が左の方に早く行き過ぎて、また、あとまで戻ってくるということが行なわれております。それと人間の営むところの産業においても似通ったことがあるのは事実だと思います。今、日本においてどれだけの規模で、幾つかの産業が、それぞれ独自の考えのもとに、これから先の発展に資しようとしておるかという内容に属することだと思います。適当に諸外国における行き過ぎその他の事象を考えながら、それぞれの産業が自主的の見解を持って将来に備えるというやり方を、私は一応了承し、また、それが当然の姿じゃないか、こう考えるのであります。ただ、しばしばほかの産業界において見られるように、あと困ったら政府に泣きつけばいいという考えのもとに進めるようであってはならぬということだけははっきり申し上げる。今、それぞれの産業グループが相当の人を持って進めておりますが、その規模たるや、とてもイギリスや何かの持っておる規模とは比較にならぬほどの小さい規模であります。現在やっておる仕事は、むしろ将来に備えて、適当な規模のもとに、自分たちが国策に協力し、そうして、将来必要なときに、必要な人間が得られるような用意をしておこうという段階と私は考えております。この程度の進み方ならば、そう御心配の要らないことじゃないか、こう考えておるのであります。ただ、しかし、それは程度の問題でありますから、何らのブレーキもかからずにとっ走ってしまうようなところは、自分で将来火中のクリを拾う必要があろうかということだけは、これはもちろんのことであります。産業の進歩発達の見通しということについては積極主義の見通しの人もありましょうし、消極主義の見通しの人もありましょうから、これは一律に論ずることはむずかしいと思いますけれども、少なくとも、私の関係しておる範囲では、そういう考慮を払いながら進めておる、こういうことだけは申し上げられると思います。御質問に当たっているかどうかわかりませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/46
-
047・岡良一
○岡委員 私も、気持だけ率直に最後に申し上げて、お尋ねを終えたいと思うのですが、問題は、御存じの通り、技術革新の時代、そのトップに立っておる原子力の平和利用、そこで、この技術革新の時代ということ、そのこと自体が、やはり技術の国産化ということを至上命令にしておると思うのです。外国からでき上がった技術を買い、完成品を買い、そして運転だけを学ぶというふうな従来の安易な行き方では、技術革新の時代に正しい態度とは言えない。そこへ持ってきて貿易・為替の自由化という問題が起こってくる。そうすれば、われわれは何で外国と市場において競うかといえば、今や、この技術の重要性というものが高く評価せられてきたことは申し上げるまでもない。ところが、いわゆる新産業である原子力産業の上において、幾つもの会社ができた。なるほど、それぞれの規模は小さい、しかし、それらの会社が、たとえば、あなたの会社が、ゼネラル・エレクトリックとの従来の取引や信用の関係で、今度は自由化された市場にいるのですから、どんどん新技術を取り入れる、私は、おくれたものを補うためには、それも必ずしも全的に否定すべきものとは思いませんが、過当競争がまず起こってくる。今度はまた、別な会社がウェスチングハウスと技術提携ということで多額の技術料を支払う、特許料を支払う、ノーハウを払うということになる。そういう形で、まず、過当競争が、原子力の分野における国産技術の確立から全く反対の方向に日本の原子力産業界を引きずっていくような結果になっていきはしないか、そういう形になっていくと、さて、日本の原子力研究所は、学界と産業界を結びつける大きなくさびとして、日本人の手による自主的な、独自な研究、開発をめどとして発展をしていこうとしているときに、ここで日本の原子力研究、開発のレールである学界と産業界というものが並行線で一つの方向に走る、その上にがっきと日本の原子力研究、開発体制が乗らないで、一方はぐっとずれていくということになると、日本の原子力研究、開発列車というものが脱線しやしないかという心配もあるわけです。そういう点で、私はこの機会に、特に瀬藤さんはきわめて進歩的な方でございますので、そういう点を非常におもんぱかってものを見るということを、一つ御銘記を願いたい、こう申し上げて、質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/47
-
048・村瀬宣親
○村瀬委員長 他に御質疑もないようでありますから、参考人各位からの御意見の聴取はこの程度にとどめます。
参考人各位に申し上げます。
本日は、長時間にわたり、しかも、貴重な御意見の開陳をいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表して、私から厚く御礼を申し上げます。
次会は来たる四日開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103403913X00519600302/48
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。