1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年四月二十一日(水曜日)
午後零時二分開議
出席委員
委員長 吉田重延君
理事 金子 一平君 理事 藤井 勝志君
理事 有馬 輝武君 理事 堀 昌雄君
理事 武藤 山治君
天野 公義君 伊東 正義君
岩動 道行君 奥野 誠亮君
鴨田 宗一君 木村 剛輔君
木村武千代君 小山 省二君
砂田 重民君 田澤 吉郎君
地崎宇三郎君 西岡 武夫君
毛利 松平君 渡辺 栄一君
渡辺美智雄君 佐藤觀次郎君
只松 祐治君 野口 忠夫君
平岡忠次郎君 平林 剛君
藤田 高敏君 横山 利秋君
春日 一幸君 竹本 孫一君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 田中 角榮君
出席政府委員
大蔵政務次官 鍛冶 良作君
大蔵事務官
(証券局長) 松井 直行君
大蔵事務官
(国有財産局
長) 江守堅太郎君
委員外の出席者
検 事
(刑事局刑事課
長) 伊藤 栄樹君
大蔵事務官
(大臣官房財務
調査官) 塩谷 忠男君
専 門 員 抜井 光三君
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四月二十日
国有の会議場施設の管理の委託等に関する特別
措置法案(内閣提出第一三三号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
国有の会議場施設の管理の委託等に関する特別
措置法案(内閣提出第一三三号)
証券取引法の一部を改正する法律案(内閣提出
第八九号)
金融及び国有財産に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/0
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001・吉田重延
○吉田委員長 これより会議を開きます。
おはかりいたします。
国有の会議場施設の管理の委託等に関する特別措置法案を議題として、政府より提案理由の説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/1
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002・吉田重延
○吉田委員長 異議なしと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/2
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003・吉田重延
○吉田委員長 それではこれより提案理由の説明を聴取いたします。鍛冶大蔵政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/3
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004・鍛冶良作
○鍛冶政府委員 ただいま議題となりました国有の会議場施設の管理の委託等に関する特別措置法案の提案理由及びその概要を御説明申し上げます。
政府は、かねてから京都市に国際会議場施設を建設しておりましたが本年秋に完成する見込みとなりました。これに伴い、この施設の管理を効率的に行なうため、国有財産である会議場施設の管理を関係地方公共団体に管理委託することができることとする等の必要がありますので、ここにこの法律案を提出いたした次第であります。
以下、この法伊案の概要を御説明申し上げます。
まず、国有財産である国際会議場施設で京都市左京区松ケ崎に存するものの管理を、その施設の所在地をその区域とする地方公共団体その他その関係地方公共団体に委託することができることとし、その施設の管理上必要があるときは、施設に備えつける物品を当該地方公共団体に無償で貸し付け、または譲与することができることにしようとするものであります。
また、管理の委託を受けた地方公共団体は、管理の委託を受けた施設を使用し、または収益することができることとし、さらに、当該地方公共団体は、管理の委託を受けた施設の管理に関し通常必要とする費用を負担するとともに、施設の収益行為から生ずる収入は当該地方公共団体の収入とすることとしようとするものであります。
以上が、この法律案を提出いたしました理由及びその概要であります。
何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さいますことをお願いいたします。
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〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/4
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005・金子一平
○金子(一)委員長代理 金融に関する件及び国有財産に関する件について、只松祐治君より発言を求められておりますので、これを許します。只松祐治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/5
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006・只松祐治
○只松委員 本日はLPGの問題について前回に引き続いてする予定でございましたが、さっきの理事会のようなことでございまして、なお本委員会と非常に関係のある若干の問題がございますので、資料要求をいたしたいと思います。
その内容と申しますのは、吹原産業株式会社社長吹原弘宣とおっしゃる方でございます。まず国有財産局長にお願いをいたしますが、この吹原産業株式会社、あるいは北海道では北海林産興業株式会社という名前も使われておるようでございますが、この吹原さんが関係しておる会社で現在まで——ずっと古くは北海道の洞爺丸が沈没いたしましたときにたくさんの倒木があったわけでございますが、これをはじめといたしまして北海道の釧路におきまする国有山林の払い下げというふうなことがあるように聞いておりますが、どの程度どういうところをお払い下げになりましたか、その数量あるいは払い下げ価格、また払い下げるにはそれぞれ理由がついておるわけでございます。たとえばドリームランドをつくるというような名義になっておって、それが必ずしもそうでないというようなこともあるように聞いておりますが、そういう払い下げ理由等が明らかであると思います。そういうものの一覧表をひとつ資料として御提出をいただきたいと思います。ここでももしそういう関係で答弁ができますれば御答弁いただいてよろしゅうございますけれども、できなければ資料として……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/6
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007・江守堅太郎
○江守政府委員 吹原産業に関係いたしますことは私詳細を存じておりません。いまお話しになりました洞爺丸の事件の時分の風倒木の問題あるいは釧路の山林の問題等でございますならば農林省の営林財産関係でございます。でございますが、そのほかにもありますかどうですか、詳細を調べまして資料を御提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/7
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008・只松祐治
○只松委員 次に、銀行局長にお尋ねをいたしますが、塩谷財務調査官ですか、同じく吹原産業関係にいろいろな銀行がいろいろな事件で関係をして問題が起きておる。ある銀行では何か告発をしたとかしないとかいううわさまで聞いておるのでありますけれども、この吹原産業関係にたとえば三菱銀行などがばく大な金を貸しておるとかいううわさもあるわけです。銀行でございますから、信用上あるいは預金の秘密の問題もありまして、なかなか出しにくい面もあるかと思いますが、ひとつできる範囲におきまして、できるだけ吹原産業関係の——まあ銀行関係からすればなかなか不正であるか不正でないかというのはむずかしいかと思いますけれども、不正融資と思われるような面の貸し出しがたくさんあるということを聞いておるわけであります。こういうことを御存じであるかどうかということをまず一点。それからこれに関する貸し出し状況、その他またこれをめぐりましてそういう手形詐欺等の事件が起こっておるというようなうわさもあるわけです。もしこういう事件が起こっておれば、当然管理の立場にある銀行局として知っておられると思う。ここでできなければ、これも後日資料をお出しいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/8
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009・塩谷忠男
○塩谷説明員 ただいま御指摘のございました吹原産業の問題につきましては、私はほとんど内容について存じておりません。多少そういううわさがあるという程度のことしか聞いておりませんものでありますから、具体的な事実関係について事情を調査いたしたいと存じております。個々の問題につきましては、銀行の信用問題等に関連いたします場合にはいろいろむずかしい問題がございます。事情をよく調査いたしまして御返答申し上げたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/9
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010・只松祐治
○只松委員 法務省関係の方にお聞きしますが、この吹原産業事件についてとかく政界、財界等にうわさをお聞きするわけでありますけれども、法務省当局でこの事件について御存じであるかどうか。また事件でありますから内容はなかなか公表しにくいと思いますけれども、どういう状況になっておるかお差しつかえなければひとつお知らせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/10
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011・伊藤栄樹
○伊藤説明員 御指摘のようなうわさがあることは検察当局も存じております。現在東京地方検察庁におきまして調査をいたしておると思います。その調査につきましては将来本格的な捜査をいたすというようなことに、もし相なりますと、捜査の密行との関連がございますので、ごかんべん願いたいと思います。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/11
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012・金子一平
○金子(一)委員長代理 証券取引法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の通告がありますので、これを許します。只松祐治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/12
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013・只松祐治
○只松委員 先ほど申し上げましたように、きょうはLPGガスの問題でまた論議をいたそうと思って、証券のほうはあまり準備をしてきていないので、まあ一、二点関係した問題点についてお聞きいたしたいと思います。
まずこの法文の審議の前に、いま問題になっておる投資抑制という問題が、単に証券界というよりも財界、経済界全一体を通じて大きな問題になっている。したがってこういう重要な法案の審議にあたりましては、当然に大臣がお出になって、少なくとも最初ごろは討議に参加されるということが当然のことだと思うのです。きょうはLPGの問題でございましたし、したがって大臣の要求がなかったのかもしれませんが、ぜひこういう重要な法案の審議には、これは責任者が来てひとつ責任ある答弁をしていただきたいということをまず申し上げたいと思います。
そういう趣旨からもいま申し上げますことは、一証券局長の問題としては、これは重きに失する問題であるかと思いますけれども、この投資抑制の問題について、まあこれは論ずればいろいろな角度からいろいろな論じ方があるわけでございますが、一応当面皆さんのほうは抑制をされておる。しかし銀行のほうはなかなか金が足りない。どうしても直接増資の中から資金調達をはかっていかなければならない、こういう要求が非常に出てきております。一部外資導入をしておる会社等の関係では、こういうものが若干ワク外というような形で認められてもおるわけでございますが、こういう問題について証券局の基本的な方針というものがありましたら、ひとつお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/13
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014・松井直行
○松井政府委員 お答え申し上げます。
企業の設備資金、特に新規投資資金をまかないますルールなりその量的な規制の問題は、非常に基本的な問題でありまして、おそらく経済運営の根本に関する問題であろうと存じます。
私、証券局を担当いたします範囲だけについて申し上げたいと思うのでございますが、御存じのとおり企業の資金調達は、増資いう形におきまして株式で調達する金、それから社債という形で長期の借金をいたします形、それから銀行借り入れという形、大きく分けまして三つ、このほかに内部留保というものがあるわけであります。一方銀行からの貸し出しにつきましては、融資ルールの確立というテーマで、いま金融界、産業界あげて問題になっておるとは御存じのとおりであろうと存じますが、家計、銀行、銀行から企業というものへの金の流れにつきましてもある種のルールをつくろうということが議題になっております。
そこで、われわれの直接投資の関連から申しますと、いわゆる増資という形での企業の新しい資金調達の問題でございますが、株式以外の社債にしろあるいは銀行融資にしろ一種の規制といいますか、統制といいますか、自由という概念からは相当かけ離れた形の規制が行なわれておることは御存じのとおりでございます。ただ一つわりあいに自由な市場という形で資金が調達されますのは、株式市場を通じて行なわれます増資であることは申すまでもございません。過去振り返って見ますときに、ここ三年間の証券界、ことに株式界の不況があったわけでございますが、従来増資の態度といいますか、企業の増資態度というものは、ほんとうに自由な市場を相手にいたしまして、増資できるにふさわしい企業が、ふさわしいだけの増資をしてきたかどうかというところに今日の証券市場の不況の大きな原因があるということも申すまでもないことでございまして、新しく株式という形で外部から資金を集めますときには、これは借り入れ金に対する利子にしろ、あるいは労働の給付に対する賃金の場合にしても同じでございまして、それぞれ適正な配当という形で資本利子が払えるということが前提であろうと存じます。過去二年ないし三年間はこういう原則が幾ぶん乱れてまいりまして、いわゆる金融づけのための増資だとかあるいは食い逃げ増資だとかいうことで、新たに増資いたしましても期待しただけの資本収益をあげ得ない、企業が食い逃げしておる増資だという形が弊害の大きな原因になっておったわけでございます。そこで、昨年八月に産業界、金融界、証券界の協力を得まして、これら三者の合同意思で合意が成立いたしまして、当分ことしの二月から増資をストップするという形をもって、市場におきます株式の過大供給といいますか、不良な思わしくない増資が行なわれた結果、あり余りました株式というものの供給を一時押えるということでもって流通市場の機能の回復をしようということで、いま増資調整、事実上増資のストップが行なわれておるところであります。過去の貴重な経験に顧みまして、われわれといたしましては、これはどこまでも企業が自由な経済活動をやるという前提でございますので、基本的に大蔵省官庁の統制をやるというつもりは毛頭ございませんが、企業家が本来の企業家精神に立ち上返るという前提でもって、企業家の自発的な判断、証券界、金融界、産業界あげての協力の形でこの道を打開していきたいと考えておるのがわれわれの基本的な姿勢でございます。しかし、自己資本の充実が叫ばれております今日、いつまでも増資をストップするという変調な状態を続けるわけにはまいりません。かと申しまして、去年までの轍を踏むということはもはや許されないわけでございます。繰り返しますが新しい資本を投資家から投入しますためには、新しく資金を提供した人にそれ相応な資本利子が払える企業のみが増資を行なえるというのが基本的な原則でございますので、やがて増資が再開される機運といいますか、企業の新しい資金調達の必要もありますし、自己資本の充実という観点から申しましても、市場の状況が許すならばできるだけ早く増資を再開したいということでもって、いま産業界、金融界、証券界でいろいろ自発的に協議を進めておりまして、十月以降くらいから再開したいという意向でございますが、このときにも全く野方図に従来のような投資家に十分報いられないという形の増資は行なわないということで、ある種のルールと申しますか、基準といいますか、総運転資本一単位当たりの収益力なりあるいは配当性向なりあるいは株価なりを基準にいたしまして、本来あるべき増資というものはこういうものだという基準を設定いたしまして、そういうルールに沿って増資が再開されるという機運が各界に起こってきております。われわれといたしましても、そういう方向で増資が再開されることをいま期待しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/14
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015・只松祐治
○只松委員 いま長々と局長のほうから御説明がありましたが、次官にお尋ねをいたしたいと思います。資本主義というのは、自由主義という別名みたいに、自由経済というのが原則なわけです。その一番基本をなす証券市場というのは、これは全く自由濶達、自由であらねばならない。ところが過日共同証券や保有組合等の問題で論議して、これは資本主義ということばをあなたたちはお変えにならなければならないのじゃないですか、こういうことを私は大臣に言ったこともあるのですが、政府与党といたしまして、いま局長のほうから御説明があったように、あるいは共同証券その他のいままでのいきさつから明らかなように、自由に資本が調達できないということは私は完全な自由主義経済ではないと思うのですが、次官もそういうふうにお思いになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/15
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016・鍛冶良作
○鍛冶政府委員 御説のとおりです。自由主義経済であります以上は完全に自由にやられるということを本則とするのだと思います。しかし、いろいろの現象があらわれました結果やらなければならぬことは別でありますが、そういうことが自由主義の原則であろうとおっしゃれば、そのとおりでございますと申し上げるほかはありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/16
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017・只松祐治
○只松委員 そういたしますと、自民党は、少なくとも大蔵政務次官の関与する限りは、資本主義経済というものを、ことばを改めるということではないと思いますが、本質的には変わりつつあるということを認められたことだと思うのです。それはそれといたしまして、そういうふうに本来自由であるべき資本市場が、こうやって共同証券をつくって、そっちから助けたとおっしゃるけれども、これは別な意味からはワクがはまって締められる、また増資のほうでワクがはまってこっちでまた締められるというようなことで、あとでまたお聞きいたしますが、企業の面からもいわゆる強い企業は生き残っていくけれども弱い企業はつぶれていく。いま新しい資本を導入してその資本に対して相当の利潤が払えるものから増資を認めていきたいというふうな意味の答弁があったわけでございますけれども、これも、主観的にはそういうことが言えまずけれども、客観的に、ではどこに基準を置いてどれ以上がそういう新しい資本を導入して利潤がその利潤にふさわしいのかということはなかなかむずかしいだろう。過日証券界の方々が参考人としてお見えになったときもいろいろ言われておりますように、株価百五十円前後というのが一つの線として出されておりますけれども、そういうところをめどとして、大体そういうふうにお考えになっておるのか、いわば具体的な増資ワクの基準というものはどこに置こうとされておるのか、お答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/17
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018・松井直行
○松井政府委員 本来自由であるべき増資でございますので、基準というものができましても、たとえば大蔵省の指導とか通達とかいう形では行われないことが好ましいことは先ほど申し上げたとおりでございます。その点で、株価百五十円であるとかあるいは配当率が一〇%以上はいいとか、あるいは資本収益力が何%以上、あるいは配当性向が何%以上とかいうことは、一応理論の上ではあれこれいろいろな指標を組み合わせることによって適正なところが発見できるであろうとわれわれ思いますが、しかし本来それはいま委員のおっしゃったように自由な市場でございますので、投資家が歓迎するような、企業が歓迎するような量だけ増資するというような、自由にまかせていいことであろうと思います。したがって、詳細に量的質的に基準をきめるのは実はおかしいわけでございますけれども、しかし増資がストップされて今度再開されるにつきまして業界内で不当な競争が起こらないようにという観点からおのおのの企業なり証券業者なりが守るべき基準というものを何かの形でおのおのの心に持ってもらう必要があろうかと思いますので、これはそうした、できればそんな詳細な、あるいは数値にあらわれたような形でなくして、もう少し大ざっぱであるけれども企業の収益力を反映し新しい投資家に十分資本収益が報いられるような基準が発見されることをわれわれ期待しておるわけでございまして、基準が詳細であればあるほどいいということは、本来自由であるべき市場から申しますとかえって逆行するという感じ方をとっておりますので、目下産業界、証券界の自由な合意が成立するのをわれわれ待っておるという段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/18
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019・只松祐治
○只松委員 いまいろいろ御説明がございましたが、なかなか基準がむずかしい。たとえば株価百円あるいは百五十円、二百円、いろいろございましょうが、たとえば基準を百五十円ということにするとする、そういたしますと、過日の山陽特殊製鋼のときの論議じゃございませんけれども、一般の株主に対しては黒字の粉飾決算を報告しておいて、それで配当する、そして自分ももちろん株の配当を受ける——まあ山陽特殊製鋼の社長は多少吐き出すようでございますけれども、そうやって株の操作をやる。百二十円くらいしかしないものを、百五十円なら何とか増資ができそうだからということでうんと水増しして配当もして、百五十円につり上げるということでできるわけですね。しかし今度は逆に国税庁に対しては赤字だということで、七年間も赤字を続けておったわけなんです。税金を納めておらない。そこでこの前の委員会のとき堀委員からもこの関係についてきびしく追及が行なわれて、資料要求もあったと思うのです。したがって単に株の値段とか表面的なものではなくて、証券局は、この前問題になりましたように、国税庁等と連絡をとって、そういう面からこの会社の実態というものはだれよりもよく把握できるわけですね。税金も納めておらない会社が百五十円も株価をつけるというのは、これはある意味ではたいへん——それもたまたま何かでつまずいて赤字が出て一年というなら別として、二年も三年も四年も赤字が出ている。ところが一方では百五十円もして増資ができるということはたいへん不合理である。また一方、税金を一生懸命納めておって、たいした配当もできない、株価が百円くらいしかしておらないということもあると思う。こういうばか正直なところは増資ができない。こういうことにもなるわけです。過日、証券業界の代表が来ていろいろお話しになっておりましたけれども、こういう表面上の問題、端的に言うならば、これは四大証券の市場占有率、株価の操作その他、そういうものと全部関連してくるわけでありますけれども、いわゆる強いものだけが、そういうごまかしだけとは申しませんけれども、うまく渡るものだけが増資ができる。こういうことではたいへん不合理な状態だと思う。そういう規制をすることが、ある意味では長い目でみればかえって証券界を混乱におとしいれる、あるいは証券界の不振をつくる、こういう原因を起こさしめることもなきにしもあらずだと思うのです。したがって、いまお答えになったような面だけではなくて、大蔵省としては、特に国税庁というのは、最も正確な資料を得る立場にあるわけですから、そういう面から皆さん方が指導され、あるいは判断されるということがあなたたちのほうでとり得る最も適切な方法の一つではないかと思うのです。そういう点についてどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/19
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020・松井直行
○松井政府委員 非常に重要なことをおっしゃったと思います一ある企業が増資可能かどうかの一つの判定資料として株価を使うという案がございますが、その株価自身が、うその企業財務報告書によっておる場合に、大衆が欺瞞されやしないかというおそれが一つ。それからもう一つは、自由な流通市場を通じまして証券業者が主として加担する形における株価操作の問題というふうに、私いま二つの問題の側から取り上げたわけでございます。
あとのほうの株価操作の問題につきましては、これも先般ここで春日委員からも相当つつかれたところでございますが、証取法にも規定がございますし、大蔵省といたしましても各証券業者に勧告をするほかに、毎日の株価の変動、出来高につきまして、証券取引所が自律的にこれを監視監督するという方法をとっております。なお一そうこれを徹底させる必要があることは申すまでもございませんが、毎日の形成される株価、これは株価を公表することによって一般の投資大衆に投資するかどうかということを判断させる非常に重要な使命を持っておるものでありますので、単に相場が上がった下がったというだけの意味ではなしに、投資家の重要な判断の指標でございますので、証券取引所が公表いたします株価につきましての監視監督も十分進めていきたいと考えております。
第一番目の企業の経理、財産内容を正確に反映した有価証券報告書等が大衆に提供されておらぬじゃないかという点でございますが、この問題も山陽特殊製鋼等特殊な企業の事例につきましてここで相当御審議もいただき、御叱正を受けたわけでございますが、これは投資家に自由な判断で自分の責任で投資をさせるという前提をとる以上は、企業の内容をできるだけ正確に一般大衆に知らしめるというのがこれは現在の証取法の大きな基本の立場になっているということはもうおっしゃるとおりだと思います。
そこで、それを担保する方法といたしまして、現在公認会計士の監査証明をつけて一般に公開するということになっておりまして、実質的に大蔵省、特に証券局が各企業全部シラミつぶしに現場へ参りまして、帳面をひっくり返して、会社が出してきた資料が正確かどうかということまで確かめることが望ましいかもしれませんが、物理的にもできないということは、これは御理解いただけることだろうと思いますが、その媒体といたしまして先進諸国におきます公認会計士の制度をとってまいりました。いまだにこれが地についておりませんで、十分その機能を発揮していないという御叱正を受けることもごもっともであろうと思いますが、われわれ公認会計士制度全般につきまして再検討を加えようと思っております。公認会計士の責任追及はもちろんのこと、監査機能の向上をはかるためにも、あるいは公認会計士の企業体としての地位といいますか、発行会社の側の従属的地位に立つのを何とかして脱却させる方法といたしまして、公認会計士の企業体のたとえばパートナーシップですか、あるいは共同監査という方向へ持っていきたいということでいま検討いたしておりますし、監査基準につきましても、この場でいろいろ御注意も受けましたので、現在どういう点に目をつけて必ず監査をしなければいけないかという監査基準等につきましても、改正に関していま企業会計審議会に諮問をいたしているところでございます。非常に不都合なことでございましたが、あれこれ非常に貴重な経験を生かしまして、証券取引法の期待する投資家保護の実を上げたいと思いまして、いま鋭意勉強いたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/20
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021・只松祐治
○只松委員 いま言いましたような趣旨から、さっきのLPガスのあれだって無理に取らないでも、税金を納めていないような会社は増資させないくらいの方針をお出しになることは、徴税技術からも、いろいろな面からも一つの案だと思う。税金だけじゃないですよ。税金も全然納めていない、それも一年だけじゃない、何声もというのはおかしいわけですから、こういうのも一つの方法だと思う。そういう点もひとつお考えいただきたい。これは答弁はいいです。
それから証券界の一つの問題として株の保護預かり、運用預かりの問題がある、こういうふうに私たちは聞いております。この問題だけを掘り下げましても証券界というものはたいへんな問題が生ずる、こういうふうに聞いておるわけでございます。きょう私はこれを初めから予定しておりませんので、いずれまたこういう問題についてもお聞きいたしますれけども、保護預かり、運用預かりというものは一体どういうもので、いま証券業界の中においてどういうふうに取り扱われ、処理されておるか、お知りになっておる範囲で御答弁いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/21
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022・松井直行
○松井政府委員 お答え申し上げます。
第一番目の保護預かりの問題でございますが、投資家が株式を売買いたしますとき、特に買い付けましたときには、自分の名義に書きかえたいという場合が多うございますので、名義書きかえも証券業者に依頼いたしますが、名義書きかえの済んだあとにおきましても、自分の家で保管するよりも、将来その証券業者を通じて売ることもあるという関係もございまして、まず安全に保管できる、次に売るときにも便利だというわけで、取引の証券業者に預ける例が非常に多うございます。法律的には単純寄託じゃないかと思いますが、こういう形で証券業者の倉に相当預かってございます。一方商売の関係から申しましても、証券業者は、自分の店で買い付けてくれたお客さんの株を自分の店で預かっておりますと、今度それを売るときに必ず自分の店を通じて売ってくれるという関係で、固定したいいお客を自分のところでつかんでおくという関係からも、証券業者の側から保護預かりを進んで受けるという傾向もあろうかと思います。証券業者の資産内容が非常に堅実であり、かつ有価証券を保管いたす関係上、保管設備その他が十分できておるならば、寄託でございますからそのままお返しすればいいわけで、少しも心配のないところでございますが、いわば一種の信託的な行為でございますので、お客さんの保護に万全を期するという観点から申しまして、現在万全かどうかということにつきましていろいろ問題があろうかと思います。ごくまれな例ではございますが、ついお客さんから預かってあったものを、証券業者自身が自分の計算で売買するときに、拝借する、使ってしまうというようなことがあるわけですが、これはもう申すまでもなく証券取引法以前の問題でございまして、こういうことが絶対に起こらないように証券界の自覚も高まってきておりますので、今度は非常に減ってきておると思いますが、ただ営業形態が非常に悪くなってまいりますと、こういうことが起こらないという保障はないと思います。したがって、将来免許制でもしかれまして、信頼がおけるという証券業者になりますならば、少なくともこの単純寄託であります保護預かりというものは、当然通常の証券の売買に伴います付帯業務として、証券業者にはやってもらわなければならない業務の一つじゃないかと思います。そのためには、繰り返しますが、基本的には証券業者自身の資産内容がりっぱという保障があること、保管施設が十分だということ、この二点の条件を充足さすように指導してまいりたいと思います。
それから運用預かりの問題でございますが、証券業者の金融づけの一つの方法といたしまして、お客さんが消化いたしました割引金融債をそのまま預かる。これは一三五五号を預かってそのまま一三五五号をお返しするという意味ではなくて、一種の消費貸借契約ということでございまして、同じ性格のものを返せばいいという性格のものでございます。これは証券業者がコールを引きます非常に重要な担保になっておることは事実でございます。一般の企業がなかなか銀行からも正常な金融づけを得られないといいますが、証券業者も同様でございまして、証券金融の問題も根本的に検討し直すという大きな課題をわれわれ控えておるわけでございますので、将来取引銀行を通じて正常な金融がつくめどがつけば、こうした運用預かりというような形で、預かりました金融債を担保にしてコールをとるとか、あるいはほかから借金するという、一種の非常に不安定と申しますか、筋として好ましくない資金借り入れの方法は、できるだけ少なくしていきたいというふうに考えておりますが、いまにわかにこれを廃止いたしますときには、金融債を発行しております会社の関係もございますし、それからその金融債を消化したお客さんも、表面の利回りのほかにいわゆる品貸し料というものをもらうわけでございまして、運用利回りがそれだけ上がっているという関係もありますし、それから証券業者の金融全般のやりくりの問題もございまして、極端なことはできないということでございますが、先般ここで申し上げましたように、割引金融債を預けたお客さんの保護を徹底さすという意味におきまして、もう現在以上には運用預かりはふやさないという方針で、預かった金融債のうち、いつでも返却できる準備として現金を二割以上手元に置くということを厳格に規制いたしておりますので、お預けになった投資家にはいささかも御心配をかけるまでにはなっておりません。こういう証券業者の金融力をつける一つの方法としての運用預かりがこのままでいいか、将来証券業者の正規の金融ルートの確立という観点から今後検討を進めていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/22
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023・只松祐治
○只松委員 いま一般の投資家にはそう心配をかけることはないというような話がありましたが、まあ当局者としてはそう言わざるを得ないと思います。ほんとうに山一で五百億円の赤字があるとかなんとかいううわさが巷間伝えられております。こういう問題から始まりまして、証券界の実態というものを、あるいは特定の証券会社の問題を大衆に知らしめる、こうやって運用預かりの問題等をついていって、ほんとうに運用預かりをしている人が取り返してしまえば、これは会社によっては相当痛手を受けたり倒れてしまう、取りつけ騒ぎが起こるだろう、こういうことが言われております。これは決して心配がないということではなくて、むしろ預けた人の無知と言っては失礼ですけれども、あまり実態を知らないという面からの安心感からそういう問題が起こってきておらないと思うのです。こういう問題については、もっときびしくあなたのほうで検査あるいは監督をしないと、小さい問題では、たとえば保証預かりしているようなものを、リクリエーションの費用をひとつ出そうかというようなことで、ちょっと売ってまた月曜日にあれするというような操作が行なわれておる。こういうことも私は聞いております。大はここでは言いませんけれども、いろいろ問題があると聞いております。こういう問題についてひとつもっときびしい検査あるいは監督をしないと、もっと株が落ち込んでくる——共同証券やなんかで買いざさえまして、何とかこれが維持されているからいいけれども、もっと落ち込んできたときにはえらいことになる、こういうふうに言われている。ひとつきびしい監督をお願いいたしたいと思います。
それから最後に、この前、四大証券の税金やなんかの問題についてはいろいろ資料をいただきました。市場占有率——まあ表面上の市場占有率と、実際上、中小証券の中でも、表面上は七割、これも九割くらいは四大証券の息がかかっている、何らかの関連がある、こういうふうに言われているわけです。実際上の問題はなかなかデータにすることは困難だと思いますが、ひとつできる限りの占有率のデータを今後の討議の参考にお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/23
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024・松井直行
○松井政府委員 証券を中心といたします市場占拠率の資料、これはつくってお出しいたします。ただ、どんな項目ということを御要求になっているのか、また詳しいことは別途協議をさせていただくことによりまして、いい資料をつくりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/24
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025・金子一平
○金子(一)委員長代理 横山利秋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/25
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026・横山利秋
○横山委員 この間、私は二つのことを申し上げたのですが、もう一度根本的な問題についてひとつ御意見を伺いたいと思うのです。
今回の改正に伴う免許制の問題については、目的が一体どこにあるかという点について私はまだ疑念なしとしない。先般参考人の皆さんに聞いたのですが、何か登録制を免許制に切り変える、そのことは私は必ずしも非難はしないのだけれども、必要以上にこれによって官僚統制を強化するという傾向に流れるおそれがある。そして根本の問題が検討が足りないのではないか、あとでやるといっても、実際はいまやらなければならないことを結局回避することになるのではないかと思うのです。この問題が提起されました点で、いわれます点は二つある。一つは、非会員、地方業者の乱立を登録制では防げない。二つ目は、お客さんとのトラブル、事故多発の原因について大蔵省が責任を回避する。こういう考えがあったのではあるまいか。しかし、実際にはこういうことに問題があるのではなくして、政府や大蔵省の従来の証券政策に根本的な問題があったのではないか。それがどうもなおざりになっているのではないかと私は考えるのです。資金調達の任務を最優先にして、流通市場、公正な価格形成をおろそかにしたことに大きな問題が生まれたのではないか。今回の免許制を検討する前に、この問題を深く検討して、それについて確固たる政府や大蔵省の考えがわれわれの前に提示されなければならぬと思います。証取法の中心命題は投資家保護であり、詐欺、背任行為による事故はむしろ証取法以前の問題で、証取法として取り上げる投資家保護の中心課題は、公正な価格形成でなければならぬ。この点において、アメリカにおいても、株価の人為操作に関して一番大きな関心が払われている。株価の人為操作を禁止し、投資家をその渦の中に巻き込まないということです。公正な価格形成、円滑な流通、証券会社の責任、これが証取法の骨子であって、資本調達はみずからその基盤の上に開かれることであって、資金調達のみを最優先とする政策は、必ずどこかで無理を生じ、破綻を招くと私どもは考える。たとえば、見せかけの株価によって増資を誘おうとすれば、その会社の次の増資が不可能になるばかりでなく、不信が全般的な資金調達の道をふさいでしまうものだから、それゆえに、常に公正な価格形成が保たれることが、資金調達の道につながるものである。すなわち免許制に入る前に、現在日本の証券界が公正な価格形成に最適当な構成になっているかどうかを検討する必要があると思う。私はこの点で二点まずただしたい。
第一は、市場の六〇%をこす占有率を持つ四社の存在が適当であるかどうか。これはずばりとひとつ答えてもらいたい。
第二点目は、取引所及び協会の理事を四社及びその系列で占めることは、その運用において適当であるかどうか。いまこれをどうしろというわけではない。しかし、この二点についてずばりとしたものの考え方が基礎になっていなければならぬと思う。まずその点についてお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/26
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027・松井直行
○松井政府委員 お答え申し上げます。
証券政策の根本問題に触れることでございまして、特に資金調達というよりは、むしろ公正な価格形成が市場の生命であるということは、私は全面的に賛成でございます。これはよその人のことばをかりるようですが、ロンドンの取引所の理事長が、取引所の使命にあわせて、証券行政の使命というものと振りかえて申してもいいと思うのでありますが、そのことばに、グッド・ブローカー、いい証券業者、グッド・シェア、いい有価証券を投資家に提供する、グッド・フォーメーション、公正な価格の形成という三つをあげております。今回の証券取引法の改正は、一番最初のグッド・ブローカー、いい証券業者であるかどうか、ほんとうに投資家に信頼を得られるりっぱなものにしようということをねらいにした証券業法的な改正の面でございます。ダッド・シェアにつきましては、これも、先ほどから御指摘を受けておりますように、いわゆる企業の内容のディスクロージャーに関連した発行の問題でもあろうかと思います。それにもまして公正な価格形成ということが証券取引法が企図しております最高の目標であろうと私も信じております。これが最後に残された課題であり、なかなかむずかしい問題であろうと思いますが、これに関連します御質問の大証券の占拠率が大きいということ。
第二番目には、業者が組織いたします自治団体の責任の問題であろうと思います。実は公正な価格決定を阻害いたしております原因がたくさんございます。大証券の市場占拠率が大きいということは、公正な価格形成に非常に大きな支障があると私も信じます。特にそれがいろいろな業務、たとえばアンダーライター業務であり、自己売買業務であり、ブローカー業務を憎んでおりますときには、市場占拠率というものいかんにかかわらず、質的に価格決定の上の大きな障害になるものと私も信じます。しかもブローカーオンリーでありましても、いろいろ問題があるわけでもありますので、ましてやいろいろな業務をあわせ行なっておる大証券というものの力が過大になにすることによって起こる弊害が大きい。今度の証券取引法の改正も実はこれとは無縁のものではないわけでございまして、こういう点についての調整を行なうことを一つの大きな目的にいたしております。
それから証券取引所ないし証券業協会の問題でございますが、本来自由な市場でございますし、非常に複雑多岐な商いでございますし、公正な慣習、規則、あるいは統一慣習、規則というようなものにつきましては、政府が介入せずに、業者みずからお客さんのためにどうすればいい取引ができるかという観点から、彼ら自身がつくり上げるのがほんとうであろうと私は思います。しかし、日本のあらゆる産業界、企業界を見ましても、自主調整だけで理想的なところへ持っていけるという民主的な本来の機能というものは十分果たされていないのが、現在の日本の状況だろうと思います。したがいまして、ある経過期間暫定的に、会員組織をとります自分たちのクラブでありましても、これを一そう広い目で、国民経済的な立場から公正な運用が行なわれるためには、完全な自治というものにばかりたよってはおれない。何らかの形で、たとえば公益代表を加えるというようなことも一つの構想であろうかと思いますけれども、本来自由な証券取引の市場におきましては、それを担当いたします証券業者の完全な自治規則によって行なわれるのが理想には違いない、私はこう信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/27
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028・横山利秋
○横山委員 聞きたいことがたくさんありますので、整理を多少してきましたから、簡潔にひとつお尋ねして、この法案の審議、及びその法案がかりに通過した場合におけるあとあとのために、あなたの意思を確めておきたいと思います。
その問題を解明いたしますために、まず三つのことがありますが、最初は、投信との兼営並びにその運用の問題。証券会社が投資信託を兼営することの是非については、もうすでに結論が出て、三十五年より委託販売の独立した投信会社が分離されましたが、これは形式を整えたにすぎない。投信そのものが分離したことではなくて、実質的には本体の直営と何ら変わりがない、こう言い得られると思う。アメリカにおいても証券会社の投信はあるが、その数はわずかで、むしろ独立した投信会社のほうが圧倒的に多いから、運用上の弊害は証券会社のみに投資信託を許されている日本とは比較にならない。日本の投資信託の欠陥は、本体の証券会社の利益本位に運用されてきたことと、集中度が多過ぎるために売るべき時期を失するか、あるいは売る機能を持たないことにある。第一の証券会社本位という点は、設定日には株価が高くなるという過去の例を見ても、一目瞭然なのですが、それにマニピュレーションの弊と投信の受益者の利益が害されていることを見ることができると思います。また解約させ、新規設定に乗りかえさせる販売方法にも、手数料本位と見なされる点が実に多いのです。また組み入れ銘柄にしても、証券会社の幹事会社が争っておるということが反映されている場合が多い。第二の売る機能を持たないという点は、現在の日本の証券界の構造を考え、はたしてこれでよいかと思われます。集中度の偏在を物語る端的な例ともなるのでありますが、投信が売りに出れば値くずれするという流通市場の不円滑化にあります。また政策も資金調達に急のあまり、投信を何かたな上げ機関のごとく考え、投資家受益者の利益保護に意を用いることが少なかったと私たちは考える。この点について意見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/28
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029・松井直行
○松井政府委員 アメリカで申します証券投資公社、それは日本で投資信託委託会社というようになっておりますが、仰せのとおり戦後証券の民主化を進める一段隅といたしまして、投資信託を新しく生みますときには、大証券会社がこれをみずから生む以外に方法はなかったわけでございます。したがいまして投資信託制度ができましてから当分の間、いわば投信の運用というものとそれから本業であります証券会社の運用というものが不離一体であった。投信を犠牲にして本業がもうけたということもあったのじゃないかといういま御指摘でございますが、そういう場合もあったかもしれませんし、反対に投資信託というものを育成し、証券業者自身の営業活動範囲を広げるという観点から、むしろ親会社が犠牲になっておったということもございます。しかし犠牲になろうともうけようと、投資信託が完全に独立の形で運営されておらないというところに問題があるわけでございます。先ほど販売会社が分離しただけで実質上分離が行なわれていないのじゃないかというお話でございましたが、販売会社をつくりましたほかに、投資信託委託会社の株式を、最初は親会社たるブローカーが全株持っておりましたが、公正取引委員会から分散の猶予の許しを得まして、五年間でございましたか、ぼつぼつ親会社が株式を分散いたしまして、大証券につきましては昨年の暮れに投資信託委託会社の株はいずれも本業が一〇%以下の待ち株になっております。
それから役員の兼業関係につきましても、御趣旨の線に沿いましてわれわれ指導してまいったわけでございまして、投資信託委託会社は全く本業と兼業関係なし、独立の役員で占めるというところに現在持ってくることが可能でございまして、そうなっております。
それから昨今の例で申し上げるのが適当かどうかと思いますが、役資信託が持っております株式のたな上げの問題につきまして、実は本業と投資信託委託会社との間に利益が相反します。と申しますのは、投資信託は高く買い取ってもらってたな上げすることによって投資家の財産をふやしたい。しかしたな上げされた株式は三年先に、これは本業が組織いたします証券保有組合自身が処分をいたすことに相なっておりまして、そのときの損失は組合員たる親会社である証券業者が負担するということになるわけでございますので、銘柄、株価その他につきまして投資信託の持っております株のたな上げにつきまして、実は従来ほとんどこういう対立関係は見られなかったのですが、投資信託委託会社の幹部それ自身が相当自己主張をいたしまして、親会社と利益が相反するという男女があらわれたところでもって御判断願えるとおり、実質的に投資信託委託会社の独立性というものは漸次実があがってきておるものとわれわれ考えます。しかしながら御指摘の点まだ完全でない点もございますので、本業とそれから投資信託委託会社の関係につきましては、一そう投資家保護の観点からその独立性を明確にするように、今後とも努力を続けていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/29
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030・横山利秋
○横山委員 運用預かりについて先ほども御答弁がございましたが、一度売った割引債券をある預かり料を払って客から預かり、それを担保に使って資金をつくる、それを会社で運用する、使用する、もちろん契約上は万一の場合は預かったものがなくなってしまうということもあるわけですが、預託者はそれほど深くこれを考えない。しかもそれを売って得た資金によって株の思惑投資をやるとしたら、これほど危険な制度はないと私どもは考える。しかもこれが大証券の現在の唯一の資金源であります。すなわち資本金は固定資産以下であるし、流動資金を考えたら四社に持ち株の余裕はとうていないのですから、運用預かりを頭金としてさらに買った株を担保にするところに、はじめて四社の膨大な資金が生まれる。株価の人為操作等の弊害もまさにここから始まっておるといっても過言ではありません。過去のブーム時の過熱状態は、まず株価をみずからの買いでつり上げ、顧客の購売欲、投機欲をそそり、大量の推奨販売を行ない、一方投信の募集に人海戦術を用いたのであります。すなわちそれらの資金源がこの運用預かりである点を考えると、この制度を存続させることの長短、この利害について、大いに研究をしなければなりません。今回の免許制の中でディーラーとブローカーの分離云々等の改善もこの運用預かりの制度を当然検討し取り上げるべきであって、これさえなければ過去のディーラーの弊害も生ずる余地もなくなり株価操作の危険もなくなるとすら考えられる。さらに運用預かりを持たない中小証券は割引債券を売るほうについても不利な条件に立たされる。一方大証券の膨大な資金量に圧倒されて、過去における格差が大きくついた原因でもあったわけであります。現在はそのとがめが出て、大証券も非常に苦しいのですが、今度は運用預かりをしているがためにつぶすことができない。あるいは取りつけの危険等の理由で政策的な保護が大証券にのみ集中している現状で、それ以外の中小証券はまあつぶれても、あるいはつぶれたほうがいいというような考え方があるのではあるまいか。この運用預かりについての御答弁、先ほどちょっとありましたけれども、根本的に運用預かりをこれからどうすべきかという点について、率直な見解が伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/30
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031・松井直行
○松井政府委員 わが証取法はアメリカを母法にいたしておるわけですが、一九二九年の大恐慌に非常にこりまして、アメリカで一九三三年の証券法と三四年の証券取引法というものができたわけでございます。そこで銀行と証券界というものをはっきり区分いたしました。と申しますのは、銀行界をはじめ、わけのわからぬ金が非常に大量に証券界に流れ込んでおりまして、これが過当投機の大きな原因であったということでございます。その後三三年法、三四年法におきまして、証券業者の借金量というものを非常に制限する規定を証取法の中に置いております。これを踏襲いたしまして、わが方にも実は取り入れておるわけでございますが、その運用が十分かどうか大いに検討いたしまして、今度の新法におきまして、正味資産に対する証券業者の総負債額というものもある程度適正なものに押えようという観点の条項が取り入れられております。これはいま横山委員がおっしゃいましたことにつきまして、大きな目から、証券界のそうした不当な借金、過大な借金というものを押える一つのめどになる債務の担保になるとわれわれ信じておりまして、この面で健全な運営をやっていきたいと思っております。あわせて、量的にはそうして制限はできるが、金融づけの方法として不健全ではないかという問題が私確かに残っておると思います。ただ先ほども申し上げましたように、金融債の消化は、お客さんが証券業者に預ける品貸し料をもらうことでもって、幾分利回りが上がる。その利回りが基本になりまして、消化をされておる、発行銀行が金銭を発行しておるという現実の事態がございますので、いまにわかに根本的にたとえばこれをやめるというようなことは非常にむずかしいことだろうと思いますが、はたして証券業者の健全な金融のつけ道かどうか、これも先般申し上げましたけれども、無担保でお客さんから借りる、一種の預金業務といっては非常に失礼かもしれませんが、無担保で証券業者が一般投資大衆から資金を調達するということに近いものでございますので、健全な証券金融のあり方というものとの一環、その中の非常に重要な問題として検討したいということは、先ほど申し上げたとおりでございますが、いまだわれわれ、横山委員のおっしゃったように、厳格にこの面は検査の機会を通じて指導もし、検査もしてまいっておりますし、現にその二割はいつでも支払い準備として持っておるということを励行しております。この面から取りつけが起こったことはいまだに一件もございません。しかし安心ばかりもしておるわけにもまいりませんで、基本的に証券業者の健全な金融づけのルールはどうあるべきかということの一環として、今後最も力を入れて検討していきたい課題であると信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/31
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032・横山利秋
○横山委員 第三の問題は、社債の引き受けの問題であります。四社は各社すべて社債の二〇%ずつを引き受けるようになっておるそうでありますが、これは一体どういう根拠でそうなっておるのであるか。この問題は四社と発行会社の結びつきに多くの問題が含まれることで、先ほど言った二つの問題と角度が若干違いますけれども、社債市場が発育しないこと、また社債市場ができた場合には、先ほどの二つの問題と同様な問題にぶつかると思うのです。この八〇%を四社が独占をするという形は何によってなされておるのか、これはどういうふうにすべきであるかについて見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/32
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033・松井直行
○松井政府委員 お答え申し上げます。証券業者の引き受け能力は、一体何が決定するかということでございますが、一つは引き受け会社の信用力といいますか、ある会社が増資をする、あるいは社債を発行するときに、幾らの条件ならどれくらいの量が大衆に消化し得るかどうかという知恵を得る、かつその知恵に基づいて発行会社が判断して、社債を発行しますときに完全に投資大衆に消化さしてみせますという危険を負担するというのがその引き受け業者の使命でございます。そういう観点からいいますと、小証券よりも大証券におきましては販売能力も多うございますし、それからいま投資大衆は、何分の利回りなら一体買うかどうかということの判断につきましても、市場調査が徹底しております。そうした証券業者の活動範囲といいますか、質的にも量的にも活動範囲の大きいものが引き受け能力がやはり大きいというのは、自由の原則に従ってもそうなるものと思われます。戦後別にだれがきめたというわけでございませんが、四つの大きな証券業者ができ上がったというのも歴史的な事実でございますし、この四つの証券業者が自然に大きな引き受けのシェアを持つということになったのも歴史的事実でございまして、ただその間に二〇、二〇、二〇、二〇というワクができたことは、おそらく過当競争を押えようという趣旨からできたものだろうと思います。したがいまして、理屈、理由立ては何もございません。力のある者が引き受ける。ただその間の競争を不当に押えるという意味において、二〇ずつ四社が持ったという形でございます。この現状をわれわれ決していいとは思っておりません。というよりも、むしろその前に実際私が先ほど申したような意味におきます、真実の引き受け会社といいますか、発行会社が社債を十億発行した。これは完全に、一体六分五厘なら六分五厘で十億をお客さんにはまるものかどうかという危険を負って証券業者が引き受けをするという事態は残念ながらございません。増資は旧株主割り当てでございますし、社債も大部分金融機関引き受けということでございまして、ほんとうの意味における自由な引き受けというのはまだその機能を発揮しておる段階になっておりません。こういう事情もございますので、いまにわかに八〇というワクをくずすことによって、次にどういう適当なルールといいますか、シェアの分け方があるかどうか、にわかに発見しにくいところでございますので、はっきり割り切った自由な世界に一拳に入るというわけにもまいりませんが、やがて引き受け業務というものは、本来の危険も伴う引き受け業務というものが日本に発達してまいります場合には、それぞれの証券業者の引き受け能力によって自由に、かつまた発行会社との特殊な関係において自由に引き受け額がきまり、自由な競争において信用力のある引き受け業者がたくさん引き受けるという形になるのが望ましいところでございます。ただ、いまはむしろ小証券が圧迫せられて大証券がどんどんますますシェアをふくらますのをチェックするという意味におきまして幾ぶん役立っておるかとも思いますけれども、いつまでも八〇%を占拠しておるという理由はございません。多くの証券業者に、すぐ有力な証券業者が出てまいりまして、真実のその引き受け能力を発揮しますときには、やがて自由な競争の原理に基づきまして、それぞれの分に応じた引き受けが行なわれるという事態を一日も早く招来したいと念願いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/33
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034・横山利秋
○横山委員 大臣にお伺いをしたいのですが、証券会社の姿勢という問題でございます。この間参考人にお伺いしたところ、だれしも私に明確な返事をしてくれなかったわけであります。といいますのは、たとえば株を持っておる株主、その株主権という問題でありますが、どこの会社でも株主総会をいたします際に、時間が早ければ早いほど、五分で済めば、いな三分で済めばその会社は非常にいいのだということで、商法その他に定められております株主権というものは全く形骸化しておるのであります。事業会社が株主を大事にするといったところで、法律に基づいた株主権を大事にしておる。株主の言いぶん、意見を聞くというところは皆無であります。そうだとしたならば、その証券を扱う証券会社がいま少しこの株主権擁護の、株主の代理をして利益を守る立場になるべきではないか。それにもかかわらず、証券会社は事業会社の幹事会社になるためにまさに狂奔して、そして汚職まで生まれておる。無理な増資をしようとするところについては一番証券会社が知っておるのであるから、いま絶対に増資すべきでないということを言うべきだと思う証券会社が増資をするなら自分のところで増資なさったらどうですかということで狂奔した責任というものは免れがたいと私は思う。この点について参考人に、証券会社が株主の利益を代表する立場はどうかと言うたらお答えをなさる方が少なかったわけであります。幹事会社として一生懸命にやって、そして推奨して、幹事会社でなくても推奨した株が下落をして、言ったことが間違っておっても証券会社は何らの責任をとろうとしない。これは責任を法律上とれというのはあるいは無理な場合があるかもしれない。しかしながら証券会社が投資家の利益を守り、株主権を代表する立場に証券会社の姿勢をこの機会に変えさせるべきではないかという点について大臣はどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/34
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035・田中角榮
○田中国務大臣 御指摘のとおり証券会社が非常に小さい規模でありますので、つい利に走って大局的から見ますと大衆の不信を買うというような過去の業績があったことは理解できます。これから証券取引法の改正を機会にいたしまして、証券業者自体を育成強化していくと同時に、証券取引所の規定等もだんだんと拡充強化をしてまいりまして、いやしくも発行会社の内容が世に公開をせられた場合には公開せられた数字というものに対しては取引所もしくは引き受け業者が責任を持てるような体制をとっていかなければならないという考え方で、証券取引法の改正もお願いをいたしておるわけであります。証券業君が一時的な利益のために会社の内容をつまびらかにせず大衆に売り込み、その結果暴落をする。暴落をした結果証券市場及び証券会社が非常に不信を買う。究極的な結果から見ますと、証券業者は一時の利に走って結局的に大きな損害をこうむるということになりますので、証券業者のためにもより発行会社の内容に対して責任を持つというようにしむけていかなければならないという考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/35
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036・横山利秋
○横山委員 この法案を見ますと、実に多くの重要な点が政令ないしは省令にゆだねられている。私が整理をしたものをちょっと見ているのですが、三十二条の証券会社の資本、五十四条の負債と純財産額の計算方式、六十二条の登録に関する手数料、それから附則等が政令にゆだねられる。省令では三十条、五十条、五十四条、五十六条、五十七条、六十二条、六十四条、認可事項が三十三、三十四条、承認事項が四十二、四十三、五十六、五十七条、まさにこの法案というものは非常に原則的なことをうたって、そして三年後の認可の場合においてもそのときの状況に応じてどちらともとれるようなやり方、つまり自由裁量が実に多いということであります。これが私はこの法案が一つの法案として体をなさないとすら思っている。
それからもう一つの問題は、大臣がお見えになる前に局長に重要な問題を列挙したのですけれども、これは主として証券業を認可するという一つの形と、もう一つは外務員の悪いことをたしなめるという形式論、あえて言いますけれども形式論だけの法律であって、この審議を通じて議論されております根本論、価格の形成は根本的にどうあるべきか、証券業界の体質をどうするかという根本論にはこの法案は差し示すところがない。これが第二番目の欠陥だと私は思う。それはあとで逐次やるというけれども、しかしながら結果として私は洞察をせざるを得ないのですが、景気がある程度よくなればまたまあまあということになる可能性が実に多い。根本には結局売れずに、形式論でこの問題を取り過ごそうとする結果を私は想定する。これがこの法案についての私の最も根本的な主張である。もう一ぺん言いますが、実にこの法案は抽象的であって自由裁量があまりにも多過ぎる。第二番目には認可だとか外務員のごとき問題、さまつ的な問題で根本的な問題が、やると言っているけれども結局やらずにあいまいに終わってしまう可能性がある。この点について大臣に御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/36
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037・田中角榮
○田中国務大臣 政令、省令の委任事項が多いから法律の体をなしておらぬという御指摘でございますが、省令や政令にゆだねなければならないものは何で一体ゆだねるのかということをお考えいただきたいと思います。省令や政令にゆだねるものは現在画一的な法律の規定を置くにはどうも複雑多岐である、また現在の証券界の状態、証券業者の状態等一律画一的な規定をもって律することができないというような現実に徴しまして弾力的な運営というものが必要である、こういう状態でやむを得ず省令や政令に委任をするところが存在するわけでございます。いま銀行法というものがございますが、銀行法は非常に大ざっぱな法律でございます。この大ざっぱな法律をもとにして政令、省令というようなもので銀行行政に対してやっておるものがございます。ございますがそう問題があるわけではございません。現在の証券取引法というものを考えまして、理想的な証券取引法の姿というものは描けるわけでございますが、一ぺんにそこまで持っていくことは非常に困難な現実がございます。そういう意味でまず法律の基本的な姿勢を示し、こまかい問題に対してはどうしても省令や政令で規定をしなければ実際上画一的な法律条文を定めることは非常にむずかしいという条項に対しては政令委任を行なっておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/37
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038・横山利秋
○横山委員 私が言っていますことは、非常に重要なことが政令にゆだねられておる。この政令をまた三年後の様子を見てそうしてきめるというような零囲気でありますから、政令もまた抽象的になるおそれがきわめて強い。そうするとこの法律並びに政令はいかようにでもなる。つまり政府の自由裁量及びその運用においても自由裁量になる部面がきわめて多いということを指摘したい。これは決して芳しいことではないということの意見であります。
第二番目には、これからぽつぽつとおっしゃるのだけれども、私はぼつぼつということがあいまいになると言っている。先ほど指摘をいたしました四大証券に関しての運用預かりの問題だとか、投信の分離だとかあるいは社債の引き受けの状況など、私の主張には局長は原則としては同意をなさった。同意をなさったけれども実際それをおやりになるのか。この取引所にしても証券業協会にしても、本来ならばその改正案と本法改正案とをあわせて議論をしなければわれわれは審議のしようがない、それを私は言いたい。その点について大臣に私どもの主張であるこの証券市場の格差の是正のため取引所、証券業協会について必ずおやりになるかどうかということを聞いておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/38
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039・田中角榮
○田中国務大臣 私もこの証券取引法の改正という方向でいくのか、あるいはまた証券取引法は業者の規制法にするのか、いろいろなことを考えてみたわけでございます。みたわけでございますが、なかなかいますぐ体系的なものを根本的に変えるということにつきましてはいろいろ議論もございますので、さしあたり証券取引法の改正ということで御審議をいただいておるわけでございます。これはお手元にお届けしてあると思うのですが、まあ政令、省令の委任事項が非常に多いということは、先ほど申し上げたとおり画一、一律的に法律で規定するにはあまりにも複雑な現状であり、現状を無視して法律で規定をしていくということも非常にむずかしいので、やむを得ざるものについてだけ省令及び政令に委任をしたわけであります。この省令や政令の要旨も大蔵省ではつくっておりますけれども、御必要があれば提出もいたしますので、現在の段階において省令、政令に委任しなければならないものは現実に徴して必要やむを得ずということで委任事項を規定しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/39
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040・横山利秋
○横山委員 たとえば免許の問題を取り上げてみても、三十一条の三つあります条文を見ますとまことに抽象的なものであります。たとえば三十一条の一号は「営もうとする業務を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有し、かつ、その者の当該業務の収支の見込みが良好なものであること。」、これには政令がないようでありますから、まことに抽象的でごもっともな話でありますが、何らの基準がない。第二号の「免許申請者が、その人的構成に照らして、その営もうとする業務を公正かつ的確に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有するものであること。」、一体人的構成とは何だ。健全だとか的確に遂行するとはだれが一体判断するのですか。第三の、「免許申請に係る証券業が、その営まれる地域における有価証券の取引の状況、証券会社及びその営業所の数その他その地域における経済の状況に照らして、必要かつ適当なものであること。」、全くの作文ではないか。何によってこれの基準があるのか。だれが一体判断するのか。そういたしますと、結局これはお役人の自由裁量、自由判断です。免許をしたことが適当であるかどうかということは神さまでも判断ができかねる、こういうことだと私は思う。一事が万事だと思う。しかしこれは水かけ論になるおそれがあります。私は例としてこれを言っておる。それから二十九条は、「大蔵大臣は、前条第一項の免許に条件を附することができる。前項の条件は、公益又は投資者保護のため必要な最少限度のものでなければならない。」、これはつまりできる限り免許はしてやるよ、免許はしてやるが条件はつけるよ、こういうわけです。これは政令では何にもこの条件についてはどういうものであると書いてないでしょう。二十九条は政令事項ではないですね。そうすると、このいわゆる最低の限度というものは何であるか、これも省令でも政令でもきめないでお役人の全くの自由裁量ではないか、気持ちの問題でできる限り免許はしてやるけれども、それには条件をつける、それだけの話です。これはお役人の官僚統制をここに利用しようとしたならばいかようにでも判断ができる、こういうばかげたことはない。この必要最低限度の条件というものは何であるか、一体なぜ政令や省令でこれをきめないのか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/40
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041・松井直行
○松井政府委員 まず三十一条は、免許の際に基準に適合するかどうかを審査しなければならないということでもって、いまお読み上げになりました三つの要素があがっております。これもいかにも抽象的だという御判断でございますが、戦前の法律はもちろんのこと、あるいは戦後にできました法律でも、免許の基準というものは、免許を受けようとする一般人が理解できるところまでできるだけ詳しく書けということが新憲法下における要請であろうという観点から、いまおっしゃったようなことは同意するところでありますけれども、一体財産的基礎が健全であるか、業務の収支の見込みが良好であるかどうかということにつきまして、あえてここで詳しく法律あるいは政令で書くべきものでもないと申しますか、非常に複雑多岐でございますし、結局いままでの経営者あるいは一般の事業でもそうでありますが、特に証券業につきましては、どういう形の経営方針が健全なものであるかということにつきましては、たとえば経常収支が何%以上なければならないということは、多年の経験によって積み重ねた準則というものがございます。したがいまして、そういうものは、法の精神を受けまして、実際に運用しますときには、そうした確立された準則になるべく近いものでもって内規をつくることによって適当に運用したい、かってに恣意でこれを動かそうとするものではありません。
それから二十九条の免許の際に条件を付することができる、これは非常に重要なことでございまして、免許制をとっておりますいろいろな条文にも、こうした条件を付することができるという規定もあります。たとえば酒団法なんかにもこういう条件があったと思います。この証券取引法におきましては、二十九条は、非常に重要な意味を持っておるとここで御説明申し上げることによって、おわかり願えると思いますが、実はその前の二十八条に業格別に四種類に分けて免許するということを条件にいたしております。これは一種の職能分界の方向づけということでもって免許に際しますときに非常に重要な要素をなしておるものでありますが、先ほど横山委員がおっしゃいました公正な価格形成の最終、最高の目標を達するために、現在証券業者の分業といいますか、職能の分化が行なわれておらない、そこに大きな欠陥があることをわれわれは承認いたします。しかしながら、いまにわかに二十八条の一号、二号、三号、四号をばらばらに、おのおの一つしか営めない業者しか存在を許さないというふうに持っていきますときには、それぞれの個別企業の存立にも関係するし、現に動いております証券市場の機能を混乱におとしいれるということもございますので、当面はこれらを兼業していくという形をとらざるを得ないと判断しておるのでありますが、その際に兼業することによって起こる、たとえば先ほどおっしゃいました市場占拠率からくる公正な価格の形成の障害ということに着目いたしまして、兼業するときは、たとえばブローカーが本来の純粋のブローカーに純化すれば一番いいのでありますが、自己の計算による自己売買のできるディーラー業務もあわせて行なわざるを得ない現状であるときに、このあとのディーラー活動が非常に巨大になってまいりますと、証券経営自身の安全性の問題はもちろんのこと、証券市場に与えます影響力といいますか、市場占拠力に非常に影響があるものでありますから、条件の一つの代表的な例といいますか、われわれの一番身近な例は、そうした経営をするときにディーラー業務をある程度制限しよう。もって市場の公正な価格と市場の秩序維持をはかろうというのが主たるねらいでございまして、免許の際にこういう条件をつけることによって、そのような弊害を除去し、公正な市場に持っていきたいと考えております。
一番のポイントは併営の場合がその動機になっておるわけでございますが、個々の、一つ一つの種類の業種しか営めない場合におきましても、不羈奔放にたとえば一号の自己売買業務なら何でもやってもいいかどうかということにも相なりますと、やはり併営の場合と問題は違いましても、ディーラーならば、無条件に資本金が幾ら大きくてもいい、どんな業務範囲のことをやってもいいということにはまいりません。公正な価格と秩序ある市場の維持という観点から、それぞれ一つ一つ純化いたしました種類の業務を営む免許を受けましても、必要な条件というものはつけていきたい。しかしながら証券取引というものは、経済の発展に伴いまして刻々変動もいたしております。取引量もふえます。新しい商品もふえます。取引方法にも変動があるものですから、一々ここですべて条件とは何かと固定的に規定をいたしますのは、非常に困難なことでもありますので、単にここに条件を付することができると書いてございますのは、法全体を流れる趣旨といいますか、目標とするところを生かそうとしておるところに主たる目的が存するのだということを御理解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/41
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042・横山利秋
○横山委員 三十四条を見ますと、大蔵大臣の認可を受けなければ会社の議決は効力を生じないとされておる。証券会社の合併、営業の全部もしくは一部の譲渡もしくは譲り受け、これはまあいいとしましょう。
第二番目に、証券業の廃止または証券会社の解散の決議、つまり株主総会で自分のところはもう廃止だ。廃業するというても、大蔵大臣はだめだというてその効力がある。これは本人がやめるといっておるのに、大臣がやめてはならぬ、こういうのはどういうわけか。一体どこに商法その他の法律上の根拠があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/42
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043・松井直行
○松井政府委員 お答え申し上げます。
この合併の場合あるいは解散、廃止の場合、それぞれ市民社会におきます普通の民法上の契約とか合意とかいうものを、われわれ別に否定してかかろうというわけのものではありません。ただかってに営業譲渡が行なわれ、かってに証券業が廃止されるというままで一体いいかどうかということでございますが、従来活発に営業をいたしております間に、相当程度のお客さんとの関係がございます。先ほど議題になりました運用預かりもございますし、保護預かりもございます。あるいは信用取引の未決済の関係のものも相当残っておるわけでございますので、一応こういう譲渡なり譲り受けなり廃止なり解散の決議なり、その効力発生を、大蔵大臣の認可にかからわしめましたゆえんは、そうした生きておる間——生きておるといいますか、営業をやっておる間における投資家との間の清算なり関係なりがうまく決着がつくという保証をいたす責任が、免許制の会社でもありますから、大蔵大臣にあるという観点から承認を、この効力発生にかからしめておるものでございまして、他意はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/43
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044・横山利秋
○横山委員 他意はないというけれども、本人たちがやめたというておるのに、それは認めぬ。これは一体どういうことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/44
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045・田中角榮
○田中国務大臣 認めないといっていつまでも赤字を出さしておくということではないのです。いま証券局長が述べましたとおり、免許企業でありますから、免許した会社が清算を必要とするというような場合には、その清算が円滑に行なわれ、この法律の趣旨によって免許せられた企業が、最終的な状態においてもお客さんに迷惑をかけないというようなことを確保するためにも、こういう条文を置くということは必要であると思います。これは銀行法にもまた保険会社でも、みな免許企業に対しては当然そういう条文があるわけでございます。これが先ほども御答弁申し上げましたが、民法上の権限を制約することを目的としてつくられておるものだということではないわけであります。こういう法律をつくって証券業者そのものを免許にしなければならないというのは、企業の持つ公的使命目標にしてこの法律がつくられるわけでありますから、これが全然ほかの法人と同じように、いつでもやめたり、いつでも合併したりということではこの法の目的は達成せられないということで、この条文を置くことはけだし当然だと思います。銀行においても保険会社においても支店をつくる場合も、大蔵大臣の認可でつくるわけでありますし、合併する場合も当然でございます。そういうことが証券業者にも要請せられるということは、この法律の趣旨からいっても必要な条文だ、こう考えます。
大体証券取引法というのは、銀行を育成した銀行法、こういう考えで証券業者そのものを大きくしていきたい、健全なものにしていきたい、こういう使命を持っておりますので、この条文の存在価値は御理解いただけると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/45
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046・横山利秋
○横山委員 四十三条で兼業禁止がある。この兼業禁止について、現に兼業しているものについては、本法はいつからどうしろといっているのであるか、また大蔵大臣の承認で、有価証券に関する業務で、支障がない場合においては差しつかえな
いといって逃げ道をつくっておるのであるが、こ
の有価証券に関する業務とは一体何か。これにつ
いて何ら政令、省令にゆだねていないというのはまたいかなるわけであるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/46
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047・松井直行
○松井政府委員 いま御審議願っている法案は施行期日を十月一日からということにいたしておりますが、四十三条の兼業関係につきましては、やはり整理の経過期間が必要だというわけで、これは来年の一月一日以降適用されるという経過期間上の配慮を置いております。この四十三条が、現行法も同じような法律があるわけでございますが、改正法どおりに直しました趣旨は、一つは、従来は大蔵大臣の承認を受ければ何でもできる、洗たく屋でも八百屋でもできるということでございますが、証券業者というものは、やはりその本業に専念してもらおうというところに趣旨がございまして、証券業以外の業務を営むことができないということを原則にいたしております。しかしながら証券業務に付帯いたしまして、先ほど申し上げました信託的業務、証券を預かりましたり、運用預かりをしたりあるいは名義の書きかえの代行業務とか、証券に関連いたします信託的業務というものは相当あるわけでございますので、そういうものは公益または投資者保護のために支障がないと認められた場合に限って、しかもそれは証券に関連したその範疇に属するものに限って大蔵大臣がこれを承認するということでもって、およそ証券に縁のないものまでも免許するつもりはないし、証券業に専念さすという趣旨ととっております。
ちょっと失礼いたしました。私いま返答を間違えました。経過規定を置いておりませんので、四十三年四月一日以降四十三条の兼業の規定は有効になりますので、その間に整理をする余裕を与えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/47
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048・横山利秋
○横山委員 なぜ政令でこれを規制しないか。かってに判断をさせたらいかぬじゃないですか一発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/48
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049・松井直行
○松井政府委員 先ほど大臣からお答えになりました一般的な政令、省令に委任する趣旨と同様でございますが、証券取引業務あるいは投資家の投資のあり方等につきまして、いろいろ時代によって変遷が起こってまいります。いまのところ運用預かりとか保護預かりとかあるいは名義書きかえ代行業務とかいうものがおよそ頭には浮かんでくるわけでございますが、どういうものが起こってくるか、時代の変遷に応じて変わるところでもございますので、確定的にこうこうこういうものを兼業の対象とするというのをいまにわかに確定し、それだけに限定するのは不適当であると判断したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/49
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050・横山利秋
○横山委員 この一条をもってしても、私は何回も言うのですけれども、この法案はお役人の判断、自由裁量にゆだねられることが実に多い。この点について私は、弾力性云々ということではなおざりにできないものを感じているわけです。
次は五十条、「役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。」とある。それが三つある。この三つもまた非常に証券業の機微に触れた問題であり、判断に非常に問題が生ずると思う。「有価証券の売買その他の取引に関連し、株式その他価格の変動する有価証券について、価格が騰貴し又は下落することの断定的判断を提供して勧誘する行為」、ここで言えることは、断定的判断がいかぬと言っておる。断定的判断というのは一体どういうことなのか、必ず上がる、必ず下がると言う人はないでしょう。結局必ず上がるということの必ずということが、投資家と証券会社の間にその断定的判断ということについて非常に紛争の生ずるおそれがある。二番目、「有価証券の売買その他の取引につき、顧客に対して当該有価証券について生じた損失の全部又は一部を負担することを約して勧誘する行為」、これはきわめてはっきりしておる。しかしながら「負担することを約して」という「約して」とは一体何をさすか、文書をもって約すのか、口頭でそいうことを言った言わないということになるのか。従来の実績は一体どうなのか。第三号では、「有価証券の売買その他の取引に関する行為で投資者の保護に欠け、若しくは取引の公正を害し、又は証券業の信用を失墜させるものとして大蔵省令で定める行為」とある。「投資者の保護に欠け、若しくは取引の公正を害し、又は証券業の信用を失墜」する行為とは一体何であるか。きわめて抽象的に投資家保護の立場に立っているけれども、実際これが運用される場合に実行力について非常に私は心配をする。いかなる決意をもってこの条項を投資家保護のために徹底しようとするのか。「断定的判断」の正確な意味、「約して」という意味、それから第三号の抽象的な文句、これを後日のために明確にしておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/50
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051・松井直行
○松井政府委員 お答え申し上げます。
まず、ことばの意味でございますが、一号の「断定的判断」と申しますのは、株にしろあるいは社債にしろ、あるいは投資信託にしろ、過去の動き等を参考にして出すのはいいのですが、その傾向がいつまでも続くものと断定した言い方でお客さんに勧奨するということでございます。
それから第二番目、これは口頭であろうと文書であろうと、約束したという意味でございます。そもそもここに一号、二号とあげまして、三号に大きく網がかけてございますが、実はお客さんと証券業者の間におきまして証券会社の不当な行為といいますか、不当な勧誘行為、結局お客さんをだまし、お客さんに迷惑をかける行為をしてはいけないということはもう当然のことでございますが、いままでこういう条項が証取法に書いてございません。先ほども申し上げましたように、ほんとうに証券業者が信用を回復し、投資家保護のために徹底するためには、当然気をつけなければならないところでございまして、現にこの種の法規といいますか、ルール、レギュレーションは、証券取引所では証券業協会の公正慣習規則とかあるいは統一慣習規則というものに相当盛られておるところでございます。特にここにあげましたのは、証券業者の信用力を回復するために、証券取引の特殊性にかんがみまして、少なくともこのことはやってはいけないということを証券業者ないし証券業者の役員、使用人に担保する基本的な条項だけをあげたつもりでございます。したがいまして、個々の内容の具体的な適用につきましては、さらに証券業協会等が自主的に、過去のいろいろな事例の積み上げでもって、おそらく公正慣習規則あるいはその解釈通達というようなことでもってこの運用が行なわれることを期待したいと思います。現にアメリカにおきましても、こういう禁止事項はNASDといいますか、証券業協会連合会の規約並びに規約の解釈ということでもって、各証券業者の間に統一された慣行として行なわれておるというのが実情でございます。したがいまして、法で何でもかんでもそこまで書き切るというのには不適当な条項であろうと思います。
なお、第三号に「前二号に掲げるもののほか、有価証券の売買その他の取引に関する行為で投資者の保護に欠け、若しくは取引の公正を害し、又は証券業の信用を失墜させるものとして大蔵省令で定める行為」として大きく網をかぶせてございますが、一号、二号が一種の例示であがっておるわけでございまして、それに引き続きまして、いまわれわれが考えておりますのは、お客さんをだます目的でやるその表示、反事実記載、不明瞭な表示行為、あるいは一号に関連した問題ですが、確定しない配当等についても断定的な判断を提供して行なうような行為、あるいは二号は損失補償でございますが、むしろ利益を保証する、投資信託五千円にお入りになりましたら五年先には七千円で必ずお返ししますというがごとき利益保証を約して行なう勧誘行為、その他証券業者の役職員の事項を見ますと、少なくとも基本的に禁止すべきであるとわれわれが考える事項を省令に盛りたいと思いまして、それの解釈、運用並びにこれ以外にいろいろな新しい禁止すべき行為というものも起こってくることが予想されてくるわけでございますが、証券業協会役職員等のセルフコントロールにまかすというのがよろしかろうとわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/51
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052・横山利秋
○横山委員 大臣に一つ、二つ伺いたいのですが、たとえば私の名古屋におきましては、二十三年でありますか、支店会社が五社、地場が五十一社くらいございました。いまは三十五社くらいになっておるわけです。この法案の意味するものは、さらに小さい証券会社を行政指導をもって統合させるということにあるのか、そうではないのか。いまの証券業の状況からいいますと、まだまだつぶれていくものが出るのではなかろうかと私は思うのです。あまり少なくなりますと、証券市場の機能の発揮ができなくなるのではないかということも考えるわけであります。しかも冒頭申しましたように、証券市場の驚くべき格差というものは、ますます小さいところをつぶしていって、四大証券をますます大きくさせるというところに現実的方向があるのではないか、こう考えますが、統合の方向で行政指導を一体なさるおつもりであるか。また、強く私どもが言っていますが、証券業協会の格差を是正して、四大証券の規模を圧縮し、そして均衡のとれた証券市場をつくろうとなさるおつもりであるか。法案の趣旨、それから現実的な大臣の覚悟を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/52
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053・田中角榮
○田中国務大臣 証券市場も証券会社も将来の日本の資本市場のにない手、こういうものとして一体適当であるかどうかということを考えますと、必ずしも適当でない、こういう考えであります。でありますから、証券業者は現行法では届け出制度でありますから、届け出をするかわりにばたばたとつぶしていく、こういう悪循環をやっておるわけであります。でありますから、その過程において顧客には相当の迷惑をかけておる、こういうことであります。でありますから、この法律の改正案の趣旨は免許制にしよう。免許制にした以上、免許をしたものに対しては当然政府も責任があるわけでありますから、そういう立場で強力にこれを育てて理想的なものにしたい、こういう考え方であります。四社の行動を押えて、下のものをレベルアップする、それで格差をなくする、こういうことではありません。総体的に引き上げたい。また現在四社が非常に大きいといわれておりますが、それは他の業者に比べて大きいというのにすぎないのであって、私は現在の四社の機構等が、将来の日本の証券市場に対するにない手としてこれでいいんだという考えではありません。もっと大きなものにしなければならないという考えであります。でありますから、現在届け出をして営業をやっておる方々の中でも、その過程において合併が進むということは、現実的には私は起こり得ることだと思います。究極の目的としては、日本には銀行法に基づく銀行があります。それから、保険業法に基づく保険会社があります。また、相互銀行法に基づく相互銀行があり、信託銀行法に基づく信託銀行があります。こういうものの中で政府が、長い間保護をしたり、育てたというものは非常に大きなものになっております。なっておりますが、国際的な自由化の波に抗して、いつでも自由化に耐え得るのかというと、まだいまだしという状況でございます。証券業者というものに対しては、なぜもっと早くやらなかったか。私は証券局の設置をお願いしましたときも私の考えをるる申し述べましたが、現在の状態で証券取引法の改正をやって、証券業者を信託銀行や地方銀行や都市銀行のように、なぜもっと大きくこれを育成しなかったかということ、これはだれでもが論じている問題だと私は思います。でありますから、究極においては銀行を育て、信託銀行をつくり、地方銀行を育て、信用金庫や相互銀行を育てたような、高い理想に近づけるようにしていきたいというのがこの法律の趣旨であります。しかし現実的には、現在あるものを直ちに理想的な状態にすることは、これはむずかしいことでありますので、十分行政指導もしながらこの法律が企図している方向にだんだん育成強化していく、こういう考えであります。でありますから、その過程においては中小業者といいますか零細業者といいますか、こういう業者が合併をして、みずから大きくなろうという機運に対しては、大蔵省自体としても賛成する、こういう態度であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/53
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054・横山利秋
○横山委員 私どもと非常に意見が違うような気がします。大臣がお見えになります前に私は二つの点を指摘しました。一つは市場の六〇%をこす占有率を持つ四社の存在が適当であるかどうか。第二番目は、取引所及び協会の理事を四社及びその系列で占めることは、その運用において適当であるかどうかということであります。局長は原則として私の意見に賛成をなさったのであります。私は必ずしも四社をぶちこわせと、こう言っているわけでありません。この現在の証券業の実勢というものは、このような格差の中では公正な価格形成が行なわれていない。ここに問題の中心があると、私は先ほどからいろいろな角度でるる言っているわけであります。それからいまの私の質問は、行政指導で合併させるということについては好ましくないという立場で言っているわけであります。業界が自主的に合併をし、自主的にやるということならばこれは否定しない。しかしこの法律が合併を促進し、そして四社は引き続き育て上げるということであるならば、私どもはこの法案の差し示す方向に非常な反対をいたします。それではだめだ。そういうことならばもうだめだと言いたいのであります。この点について私の考えていることと大臣のお考えとは、非常に開きがあるような気がいたしますので、あらためてもう一度お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/54
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055・田中角榮
○田中国務大臣 開きがあるというのはあんたの見方だけで開きがある。私の見方で見ると開きはありません。近視眼的に見て現実だけをあなたは議論されておりますが、そうではなくて、理想的には日本の資本市場が大きくならなければいかぬ。また世界的にも匹敵するような資本市場をつくらなければならないということは異論のないところであります。中期経済計画で八・一%の成長率を続ける、これが八・一%でも七%であっても、少なくとも年々、今年度の設備投資は四兆八千百億といわれておりますが、こういう大きなものが必要である。こういうことであるならば一体金はどこから出すか。こう言えば、直接資本市場と間接資本市場のバランスをいまの状態よりもより大きくしなければならないということは、これは当然のことであります。そういう意味から理想的な環境をつくるためには、資本市場をもっと大きくしなければならない、こういう一つの目的を持っております。でありますから、大きくなる資本市場のにない手である証券業者も、究極的にはもっと大きな状態をつくることこそ望ましい、これはだれでも反対はないと思います。私はそういう究極の目的を前提とした場合には、現在の四社が大きいものであるという考えは持っておりません。アメリカのいまの銀行と証券業者とのバランスを見ますと、理想的とまでいかないにしても、いずれにしても非常に大きなものができておりますし、社会的な信用も国際的な信用も、日本においては銀行のウエートが非常に高い、しかしアメリカにおいては必ずしも銀行のウエートが証券業者よりも高いというような状態でありません。銀行からはなかなか政府には人を送りませんが、証券業者では国際機関で大いに活躍をしているということは御承知だと思います。でありますから、現在の状態と証券市場の将来ということを区分して考えるべきであります。目標としては日本の資本市場を大きくしなければならぬ。大きくすればそのにない手である証券業者そのものも、国民の信頼にこたえ得るような業者の体制をつくらなければならないということであります。しかしその過程において急激に理想論を進めますと、どうしても官製合併というような議論が御指摘のとおり出てくるわけでありますが、そういうことをこの法律の改正は企図いたしておりません。しかし新しい時代の要請に対して業者が自主的に合併をするというような場合には大蔵省は賛成いたします、こうお答えをしておるわけであります。でありますから、現実問題としては四社が大き過ぎて公正な市場構成ができないということはよくわかりますから、そういう問題は個々に対処してまいります。またまいらなければ正常な資本市場はできないわけでありますから、そういうことは十分やってまいります。やってまいりますし、同時に中小業者も大きくなる、信用をつなぐということにみずから努力をしなければ、いつまでも格差というものは縮まるわけはありません。でありますから、現実の状態は十分理解しておりまして、こういう法律をいま出しておるわけでありますから、現実論的な現実の問題は十分考えて前進体制をとりますし、究極の目的としてはより強固な資本市場、証券業者を育成してまいりたい、こういうことであります。これは銀行でも保険会社でも過去に同じ状態を通って今日の日本の銀行があり、今日の保険会社があるわけであります。でありますから、われわれがこういう法律をつくって過去に銀行や保険会社やその他の現在ある機関を育成してきたという方法と何ら変わらないわけでありますから、あなたと私の考え方は大きく違うというような御指摘でありますが、私は一向に違わないと思う。私が二つ申し上げておる中の一つだけを取り上げて御指摘になっておるにすぎないというふうに理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/55
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056・横山利秋
○横山委員 見方が違うのです。あなたは直接資本をどういうふうに集めるかという立場から言っておられる。私は、証券業協会の格差が開き過ぎているから公正な価格形成ができない、格差の是正という立場から論じておる。見方が違うのはあなたのほうです。
最後にお伺いをいたしたのは、この間参考人にこういうことを言いました。この法案によれば政府の直接指導といいますか、証券業に対する直接行政の方向に入る、こんなみっともないことはないではないか、なぜ証券業協会がみずから体質改善をし、みずから自主規制をし、政府の介入をまたずしてみずから体質改善をはかるということがどうしてできないのか、こう言いましたところ、十六年になりますが後進性があります、証券業の中には非常な後進性がありまして御指摘を受けて恐縮であります、こういう返事でありました。私は、非常に残念なことだと言いましたが、この後進性の中に最もそれがあらわれておりますのが労使問題であります。今日の証券業に働く労働者とそれから証券業の使用者との間はうまくいっておりません。いろいろなところで鋭角的な争議がある。私はこの労働運動というものを自分が体験をいたしましたがゆえによけいに思うのですが、近代的な経営をなさればそんなに鋭角的な問題になるわけはないのです。残念ながら、証券業協会は産業の最先端におられながら実は労働問題では一番といっていいほど非近代的なやり方をしておるわけであります。この点についてさらに今後発展するおそれがあります。いままではやめたい人はやめていったけれども、これからは合併なり廃業あるいは縮小となりますと、さらに人員整理等無理が伴うわけであります。現にすでに多くの証券業行の中で不当労働行為が出ております。この法案が行きつくところさらにその問題が発展をすると思う。この問題はただに労働省の問題とは言い切れません。証券局長も十分に労働法を御勉強なさって、そして不当労働行為最も憎むべきは不当労働行為であります。労働者はこれで首切られ、あるいはほっぽり出されるのでありますから、防衛の態度に出るのは生活上当然なことであります。その防衛の態度に出るということが証券業の人たちにとってはおもしろくないことになるわけであります。そこに無理が伴う。したがって、いまの証券業の状況にあっては避けることのできない問題が出てきますけれども、円滑な労使関係が樹立され、円滑に解決をいたしますためには、どうしても労働省にまかせることなく、大蔵省としても十分な配慮をしなければならぬ、これがむしろ最大の問題ではあるまいかとすら私は思います。今日証券会社で起こっております人員整理問題を証券局長よく御存じでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/56
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057・松井直行
○松井政府委員 具体的に一、二証券業者の合理化に関係いたしまして問題が起こっておるということも聞き及んでおります。しかしながら、免許制が同時に合理化、合理化が同時馘首というふうに結びつけて考えることは私少し早計だろうと思います。現状のままにおきましても投資家を保護し、証券業者が健全なものになるためにそれ相応の合理化を進めなければならぬということは当然であろうかと思います。ただ証券業者が企業として、企業主が自己の責任で自分の企業を合理化しますときには、当然店舗の整理のほかに人員整理をやることも事実でありますが、労働問題、労使関係というものは非常に重要な問題であるということは私ども承知いたしておりますし、接近いたします証券業者にも機会あるごとにその旨も伝えておりますし、昨今におきましては仰せのとおりわりあいに無事に——無事にといいますか円滑に労働の移動が行なわれておりますが、今後におきましても労使の関係というものはできるだけ円滑に持っていく、特に労働問題というものは経営者にとっても最重要な仕事の一つであるという認識を私も持っておりますし経営者も持っておるものと私信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/57
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058・横山利秋
○横山委員 大臣にお願いをしたいのですが、まず第一に、この法案が通過しない前から始まっておるのでありますけれども、労働問題について、証券業者が不当労働行為をしないこと、これはもう明らかに法律違反でありますから不当労働行為をしないこと。それから二番目にかりに職を去る者があったら十分に就職のあっせんなりあるいは退職金なり労働条件については遺憾のないようにさせること。それから労使の間にあって十分に話し合いが行なわれること等について、今日並びにこの法案が通過いたしました際における大臣の行政指導を十分に、以上三点やってもらいたいと思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/58
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059・田中角榮
○田中国務大臣 御指摘のことは当然のことでありまして、少なくともこの法律の改正案は、証券企業をよりよくしたい、また証券企業に働いておる方々にも将来の保障をしたい、こういう目標でこの法律が出されておるわけでありますから、この法律成立を契機にして、不当労働行為が行なわれたり首切りが行なわれたりということであったら、これは関係なくても私たちが企図するところではありませんから、いまからでも御指摘のような問題に対しては十分反省を促してまいりたいということを申し上げておきます。
いま私は率直に申し上げて、私も代議士でありますから、たくさんの大学の卒業生の就職の世話をしたり、身元引き受け人になっております。四、五年前は、私のところからも百人くらい各社に行ったと思うのです。ところが、このごろその連中がみな来て、どうです、証券業界は将来いいですか、まあそろそろ結婚したいからもっといいところがあったら移りたい。やはり入るときは、一社三千人も一年間にとった。よくもとったなあ、こういうことが今日の証券業者そのものの内容にもなっておるわけでありますが、まあ中の人間の異動というものは相当早いようであります。でありますから、合理化を進めるというよりも、社内における人間の異動ということも相当大きな問題になっておるようでありますから、労働法上遺憾の行為があったりしてはたいへんでありますので、こういう問題に対しては十分証券業者にも注意をいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/59
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060・金子一平
○金子(一)委員長代理 本会議散会後委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
午後二時二十二分休憩
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午後三時五十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/60
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061・吉田重延
○吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。岩動道行君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/61
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062・岩動道行
○岩動委員 私は今回の証券取引法改正に関しまして、特に証券業者の関係を中心として、若干の質疑を行ないたいと思います。
〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕
今回の法改正の目的あるいはそのねらいというものは、証券業の最近における公共性、証券の民主化あるいは大衆投資というものがきわめて行き渡ってまいってきております今日におきまして、証券業者の社会的な責務というものはきわめて大事なものになってきておると思うのでございます。したがいましてこれに対する政府の監督、指導というものも十分に行なってまいりませんと、投資者に対する保護に欠けるところもある。したがいましてこのような観点から今回の登録制から免許制への切りかえの法案が提出されたものと思うのでございます。ただ今日の証券界の実情から申しますると、単に証券業者の登録制から免許制への切りかえということだけでは、問題の解決は不十分でございます。売買取引の問題、あるいは証券取引所の問題あるいは証券業協会の問題等、幾多の残された問題があるわけでございまするが、特に今回免許制に関してだけ法案を提出されたその趣旨について、まず政府側の御意向を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/62
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063・松井直行
○松井政府委員 お答え申し上げます。この証券取引法がアメリカから輸入されたものではございますが、新しい資本主義の行き方と符合して考えますときには、やはり相当すぐれた基本的な考え方に立つものと思っております。しかしながら戦後輸入されたものでございますので、一挙に民主主義の徹底した国の制度をそのまま適用いたしましても、なじまない点、つまり一国の風土と申しますか、あるいは日本の経済の実情に沿わない面もございますので、本来的にアメリカの証取法がねらっている線をねらってもいいのではございますが、やはり日本の実情に合って線に持っていくことによって、資本市場の育成をはかっていきたいというのがわれわれのこの趣旨でございます。その立場に立ちますときには、午前中も申し上げましたように証券業者のあり方のほかに、証券業者が組織いたします証券取引所の問題、あるいは証券業協会の問題、あるいは証券金融、あるいは証券の発行制度、全般の問題につきまして、わが国の実情に合うように改正する必要のある問題点が相当あることは御指摘のとおりでありますが、過去三年間の不況時に投資家がこうむりました迷惑、あるいは証券業者がほんとうに証券市場のにない手として生きていくためには、現状のままではとうていいけないということが、証券業界の自覚としても高まってまいりますし、昨年一ぱい金融業者、特に日本銀行からも多大の金融を仰ぎ、あるいは増資もストップというようなことで、金融界、産業界に多大の迷惑をかけておるところでございますので、まず証券業法的な面に着目いたしまして、証券業者の脱皮と申しますか、将来のあり方を規定する方向へ第一歩を踏み出すことをもって、第一義的に重要なことと考えました。こういうラインに沿いまして、証券取引審議会で長らくかかって審議をしていただいたものでございますが、今回は免許制を中心に答申がございました。その趣旨に沿いまして立法化をお願いしているところでございますが、答申の中にもあわせていまお示しのとおり、もっと広い視野に立った資本市場全体を改革するための基本的な問題について、引き続き検討する必要があるということを書いてございますので、御趣旨の線に沿いましておっつけこれを通していただいた暁には、次の問題にすぐ取っ組んでいくという覚悟をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/63
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064・岩動道行
○岩動委員 日本の証券取引の関係は米国の制度に大体ならっておるというお話でございますが、占領下において今回のこのもとになっております証券取引法が司令部時代にでき上がったわけでございまして、そのときにもすでに幾多の、日本の風土になじまない制度が取り入れられてまいってきたわけであります。そういう関係から今日まで千六百社くらいの業者が、約千社くらい出ては消えてしまうというように、非常な浮き沈みの激しい結果を生んでいるわけであります。最近また答申に基づきましてさらに次の改正を目途として、大蔵省ではアメリカあたりに係官を派遣して種々実情を調査しているという話も聞いているのでございますが、今後アメリカだけを手本として日本の証券市場の姿をつくり上げていくということに対しては、すでに過去の実績から見ても幾多の問題があったかと思うのでありますが、ヨーロッパの制度についてもこれを検討する、あるいは日本独自のものをその中からつくり上げていくというお考えがおありになるかどうか。あまりアメリカだけをお手本にされますと、将来またいろいろと支障も起こってくるのではないか。日本の風土に合ったような考え方をもう少し取り入れる必要があるのではないか、かように考えますが、その点について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/64
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065・松井直行
○松井政府委員 近代的な資本主義が発達いたしました先進国といたしましてアメリカをその例にとるというのも、これは一つの意味のあることだろうと思います。たまたまお示しのとおり、わが証券取引法もその略法をアメリカに仰いでいるわけでございますので、その実施の状況、それからその後アメリカにおきましても実施した結果、どこに弊害が生じたか、いろいろその後の取引制度の変革もございますので、実地について勉強したいというわけで、いまアメリカを中心にいろいろ勉強もいたしている段階でございますが、お示しのとおりアメリカのみが最も進んだ資本主義国家、特に証券市場のあり方として、アメリカ型が一番いいのだというふうに断定するのは、非常に危険があろうかと思います。ロンドンあるいはパリ、フランクフルト、それぞれ発達した市場ないしは証券取引所を持っているわけでございます。ただしおのおの歴史的な経過なり風土というものを持っているものでございますから、そのまま日本には適用しがたいものもあろうかと思われますが、各国それぞれ苦労いたしまして、自分たちの国の風土に合った取引制度、あるいは取引所制度というものを樹立すべく努力いたしております姿も、ぜひ勉強する必要があると思います。そういう観点からアメリカのみならず、ヨーロッパの取引制度あるいは実情等も、仰せのとおり広い視野に立って広く勉強し、その中でわが国に最も適応したものを発見し、つかむという広い視野に立った態度が必要であるというようにわれわれも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/65
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066・岩動道行
○岩動委員 そこで登録制から免許制に切りかえてまいります場合に、免許制というのは、政府が特別にその事業を行なうことを許すという非常に重要な内容を含んでおり、登録制とは、きわめてきつい立場で政府が責任をとっていかなければならない。そういう制度に切りかえるわけでございます。従来のように登録制でその出入り、その転廃業がかなり自由に行なわれておったのが、今回はこの免許制によってそれが自由でない、先ほどの質問にも、開業するについては大蔵大臣の承認が要るというような問題も起こっておったわけでありますが、政府がその責任をきわめて強くとらなければならないということから、逆に申しますと免許を受けた業者は、その免許の上にあぐらをかくと申しますか、なかなかやめなくても、政府が免許した以上は何とかめんどうを見てくれるというようなことから、安易に流れてしまうおそれもあるのではないかという心配もあるのでございますが、政府としては、今後このような免許のもとに生まれた業者に対しては、どのような態度で臨んでいかれるか。特に監督をきわめて厳重にいたし、少なくとも法令違反等、あるいは投資者保護に欠けるような場合には、きびしい態度で業者に向かっていかなければならない、かように考えるのでございますが、政府の基本的な態度をひとつ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/66
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067・松井直行
○松井政府委員 証券業のみならず、これ以外の業態におきまして、免許制をとっておるものの中には、場合によっては特権の上に安住すると申しますか、そういう弊害の起こっているものもあろうかと思います。したがいましてもし証券業につきまして、免許制へ移行をするということに相なりますときには、そうした先例にもよくかんがみまして、免許の趣旨が生きるように運営その他配慮しなければならないということは、申すまでもないところであると思います。いま断定的にこういう方法がいいということを、ここで決定的なことを申し上げるのは不適当かと思いますが、免許になった暁の場合を仮定いたしまして、われわれの少ない経験から、私の個人的な意見になるかと思いますが、次のような手が考えられると思います。
免許制によって少数の業者が特権的な地位を占めるということがかえって弊害を伴うという場合には、適格者がさらにあれば新しい免許を与えることによって、相互の間において自由な競争を通じまして、公正な経済環境をつくり上げるということが一つ考えられ得るのではないか。したがいまして免許の運用についてはよほど考えていかねばならないと思います。
第二は、免許制になりましたがゆえに、これは大蔵省といたしまして、先ほどお示しのとおり投資家に対して現在よりも相当重い責任を負うわけでありますので、事前に投資家に迷惑をかけないように、予防的な監督措置をとるという重い責任を負うことになることは申すまでもないことでありまして、われわれそのことを覚悟して踏み切らざるを得ないという決心をしたわけではありますけれども、えてして免許業者というものは、もう免許した以上は、たとえ重大な法令違反があろうと、あるいは財産状態が不健全なものになろうと、免許という名をかり、あるいは免許制度であるがゆえに、なかなか免許取り消しができないという弊風の起こっている業界があろうかと思いますけれども、もしこの免許制に伴う行政指導というものが的確に行なわれ、業者もそれを正当に受けて立っていく場合には、そういう危険性はないのでございますが、間々重大な法令違反あるいは財産状態が不健全になる等のことでもって、投資家に不測の損害を与えるという場合があると仮定いたしますならば、免許制ということでもってすべて取り消しは行なわれないのだということでなしに、そこはいろいろな事情を勘案いたしまして、取り消すべきときには思い切って取り消すという勇気といいますか、果断な措置が必要ではなかろうかと思います。
いままだ仮定の場合といたしまして、一、二心がまえを申し上げた次第でございますが、運営していく途中におきましても、十分この点は考えまして、免許制の弊風のみが起こらないように、業者が免許の上にあぐらをかくということがないように、十分注意してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/67
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068・岩動道行
○岩動委員 そこで二十八条におきましては、免許に四種類があるわけで、第一番が自己売買業、いわゆるディーラーと申しますが、第二が委託売買業、いわゆるブローカーでありますか、第三が引き受け業、いわゆるアンダーライター、それと売りさばき業の四種類を免許の対象といたしておりますが、今後の日本の証券業がこの四種類のうち、どれに集中的に出てくるのか、つまり免許の今後の姿がどんなものになるのか、これをどう大蔵省は考えておられるのか。そうしてこの分業主義というものを強力にこの際推進するというお気持ちでおられるのか、この辺について承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/68
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069・松井直行
○松井政府委員 お答え申し上げます。戦後アメリカから制度を輸入して出発して今日まで二十年になったわけでございますが、不幸にしてわが証券業者というものは、こういう分類別に職能が専門化されるということが行なわれずじまいになっております。大部分の業者は、ここにあります二号のいわゆるブローカー業務と申しますか、お客さんの売り買いを取り次いで執行するという業務が中心になっておりますが、これにあわせまして第一号のいわゆるディーラー業務、自己計算による売買というものを行なっておるのが実情でございます。さらに大きな業者、大きなブローカー、ディーラーになってまいりますと、第三号のいわゆる引き受け業というものを兼業する、こういう形になっておりますが、指導方針といいますか、われわれがあるべき姿を考える場合には、お客さんの注文をそのまま取り次ぐという第二号の業者が、数の上から言っても取引量の上から言っても、大部分の業者がやる仕事になろうかと思います。このときに、午前中にもお話しいたしましたが、第一号のディーラー活動もあわせて行なうときには制限がつくということでもって、市場の価格形成の公正を期そうということになろうかと思いますが、できるだけ第二号のブローカーに純化するという方向が望ましいと思います。ただしそのときには、はたして市場で証券の流動性と価格の継続性という形で、秩序ある市場が保持できるかどうかに多分に疑問が生じてまいります。これは先進国の例を見てもよくわかることでありますが、場内にやはり第一号の自己の勘定によるディーラーというものの介在がございませんと、取り次ぎの注文だけでは、値がつきにくい、値がぎくしゃくするという傾向がございますので、できれば専門の一号業者というものが場内にできることが非常に望ましい形ではなかろうかと思います。現にロンドン、ニューヨークにおきましては、こういう業者が独立の形で存在しておるという状態でございます。
なお第三号は引き受け業者でございますが、先ほど大蔵大臣からもお話がございました国際的水準といいますか、それを行く証券界にならねばならない。そのときに国際的な関係が生じてまいるのはこの引き受け業務でございます。現在は海外に資本を仰いでおる日本の状態でございますが、やがて資本の蓄積が日本でも行なわれるようになってまいりますと、低開発国の起債が東京において行なわれるということも、やがて近い将来来ると思いますが、そういうときには、国際的な証券業者として活躍するのは三号のアンダーライターでございます。いまは二号の大ブローカーがこれを兼業するということで当分まいるのではなかろうかと思いますが、やはり職能の専門化ということから考えますときには、独立のブローカーから、あるいは自己売買業からも独立した専門のアンダーライターというものが実現することを期待したいわけであります。
第四号のセリンググループでございますが、投資信託につきまして、いま専門の売買業者、売り出しの取り扱い業者というものができておりまして、普通の株のブローカーとは一応分離した形でできております。たとえば投資信託の受益証券につきましては、そうした特殊の会社のみならず、これはもっとたくさんのブローカーが使えるという方向に持ってまいりたいというふうに考えておるところでございまして、いずれにいたしましても現在もし免許が行なわれるとすれば、どの号の業者が多いかということはいま申し上げたとおりでございますけれども、これを併営することによって、兼営することによって起こってまいります弊害をできるだけ除去するという方向で、職域の明確化、分離が進むことを期待したいと思います。ただそのためには、証券金融はじめ、発行条件、あるいは証券取引の純化、あるいは機関投資家の発達等、すべて証券市場を取り巻きます経済的、社会的な環境の育成を待たない限りは、こういう理想体系には一がいに行きにくいということが言えるわけでございまして、将来の理想方向としてそうした明確な専門化を期待したいところでございますが、当面この法のねらいますところは、併営することによって起こる弊害を除去していこうという形で、専門化を期待しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/69
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070・岩動道行
○岩動委員 二号業者が数の上では中心的になるように承ったわけでありますが、問題は三十二条で、資本の額が免許の条件に入ってくると思うのであります。そこで現在業界においても、その資本の金額がどれくらいになれば免許の条件に合致するのかという点で、いろいろな予想が出ておって、不安な状態も聞いておるのでありまするが、大体この免許制度によって業者の数を整理するというお気持ちで、その辺をおきめになっていくのかどうか。現在業界は非常に不況で、その経営内容はきわめてよくない事情にあると思うのでありますが、そこら辺からしましても資本の額をどういうふうにしていくのか。そして整理をする気持ちでいくのかどうか。あるいは業者に一定の期間の間に努力をして内容をよくしてもらうような気持ちで、できるだけ現在の業者は救われていくのであるかというような立場で政令内容をおきめになるのか、そこら辺の基本的な方針を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/70
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071・松井直行
○松井政府委員 三十二条、これは免許申請者にこういう条件に当たる者は免許してはならないというところで、資本の額の規定がございまして、これが政令委任になっておるわけでございます。一そこで証券業者の数がやや過ぎるのではないかということにつきましては、私も同感でございます。ただ数が幾らになればいいのかということは、にわかに断定しがたいことでもあるし、大きな証券業者あり、小さな証券業者ありで、ただ数だけでは何とも言えないのがほんとうであろうと思います。それから整理の方向に進むのではないかというお話でございますが、たとえこれが免許制でなくても、現行法のままでありましても、証券業者が証券界のにない手としてりっぱにその機能を果たしていくためには、いままでのような経営態度あるいは資産内容であってはならないという自覚が証券界にも高まっておるときでございますので、当然合理化が進むものと思います。ただ免許制ということになりますと、それが三年先に一つ大きな関門があるものでございますから、それを目ざして証券企業は企業主の責任において、できるだけ早くそうした免許の条件に合うようにみずから持っていくように一そう努力するであろう、そういう目標を与えることになろうかと思います。したがって免許の条件の第一項にございましたが、財産的に的確な基礎を有して収支の状況が良好であるということが、非常に抽象的であるというふうに言われておりましたけれども、単に資本金が大きい、小さいということだけでもって、その証券業者の存在の可否を決定するのは誤っていると思います。ことに先ほど申しましたように二号のブローカーが占める割合が非常に多いと考えられますが、ブローカーはお客さんの注文を忠実に市場で執行するということが本来の業務でありますので、あながち形式資本金が大きいというばかりが能ではないわけであります。むしろ資本金が小さくても実態がしっかりしておる、内容がいいということが生命であろうと思います。したがいまして免許制によって整理をするのだという意図は全然ございません。このことは証券業者の最低資本金を原則として引き上げる必要はないのではないかという、政令をきめる際の心がまえとしてそういうふうに考えておりますが、ただ証券取引審議会の答申にもございましたとおり、たとえば第三号免許を受けます引き受け業者につきましては、私が先ほど申しましたような使命と機能を持っておるというような業者でございますので、現在の最低資本金二億円というのがいかにも低過ぎるというわけで、これは相当程度引き上げる必要があるのではないかというふうに現在考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/71
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072・岩動道行
○岩動委員 若干逐条的に質疑を進めてまいりたいと思いますが、二十九条の免許の条件につきまして、これは先ほど横山委員も質疑をされたわけでございますが、この規定がきわめて抽象的で、内容がよくわからないということは、私も全く同感でございます。たとえば才取り会員などは、おそらくこういったようなときには条件をつけられて、取引所内での会員相手のブローカーとして業務を制限されるというようなことが、おそらくこういう中から出てくるかと思うのでありますが、ただ規定がいかにも抽象的でございます。したがいまして免許の条件というものについてはその他に出てまいってきておりますが、ここで大蔵大臣がきわめて自由に幅の広い条件をつける可能性もあるわけでございます。したがって、この規定は、用いようによっては非常に危険な規定にもなるわけでございます。不当な義務を、あるいは過当な義務を証券業者に課するというおそれも、場合によってはないとはいえない。したがいましてこの規定の運用については、きわめて慎重を要すると思いますし、あるいはこれをもう少し具体的に事例が予想されるならば、若干の例示規定をあげつつ条件を付するということにするのも、一つの考えかと思うのであります。特にディーラー、ブローカーの併営のような場合には、自己売買の制限をどのようにしておやりになるのか、この辺の点につきましても、実情に沿った考え方が出てこなければならないのでありますが、ここに書いてあることばだけではきわめて抽象的で、どんなものが出てくるのか、きわめて不明瞭と申しますか、業者にとりましては非常に心配な点も出てくるわけでございます。したがいましてこの規定の運用、また具体的な例示規定を設けるほうがむしろよくないかというような感じもいたしますので、この点について伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/72
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073・松井直行
○松井政府委員 お答えを申し上げます。条文だけから見ますと、何でも条件がつけられる、また程度のひどいものでもつけられるというふうにも読めるかと存じますが、第二項に「前項の条件は、公益又は投資者保護のため必要な最少限度のものでなければならない。」ということで、一つのくさびが打ってあるつもりでございます。このくさび自身がまた非常に抽象的ではないかということを言われるおそれがあるかと思いますが、いまお示しの趣旨の中にもありましたし、先ほど私が申し上げましたところでございますが、二十八条のこの免許にからんでの条件でございます。したがいましてこの免許のときに、この四種類に実ははっきり区分して免許すればいいのでございますが、実情はなかなかそうはいかない。特にブローカー、ディーラーの分離ということが非常に大きな課題になっておりますので、併営する場合の制限ということに実はこの問題の発端があったわけでございまして、ねらい自身もそこにあるわけでございます。ただ制限の内容は一体どうなるか、これは非常に規定のむずかしいところでございますが、やはりブローカーとしての商い量、あるいはそのブローカーの正味資産等を基準にいたしまして、商品、有価証券の現在高の最高を押えるというのが最後の目安になるかと思いますが、免許自体につけます条件といたしましては、何億何千何百何十万円というわけにもとうていまいりませんので、抽象的な文句にはなるかと思いますが、そういう趣旨に沿いまして、そのあとの条項で、どこかで業務方法書を証券業者自身がみずからつくって出すということになっておりますので、こまかい具体的なそうしたディーラー業務の範囲の制限等につきましては、業者みずからが業務方法書の中で自己限定をしてくるという形になろうかと思います。その他の条件につきましては、おのおの一号、二号、三号、四号、それぞれ単独で行ないます場合もあり得ると思います。たとえばいまおっしゃいました二号免許の中で、証券市場の中におきまして、うしろにお客さんの注文は取らない。場内におきましてほかの証券業者のみを相手にいたしまして媒介という仕事をやっております才取り会員というものがございます。その行為自体は二号のブローカー行為でございますが、お客さんを取らない特殊な業態であるという関係から、そうした職能分化の観点からいいましても、職域、職能の基本的なことに関連する問題でありますので、たとえ二号の免許を受けましても、場内において証券業者のみを相手としてやるブローカーということで、ここに業態の基本的性格を規定するという意味において、条件をつけるというようなことに相なるわけでありまして、むやみに何でもつけられるということでもって、個別企業としての存立が危うくなるとか、そろばんが合わなくなるとか、そういうことまでやるつもりは毛頭ございません。職域分化の方向への意義づけと、全体といたしまして証券市場の円滑な運営といいますか、公正な価格の形成と円滑な流通、ひいては国民経済の発展に資するという観点から、必要な最小限度の制限をこの免許の際につけるという趣旨でございます。お示しのこともございますので、よほど慎重に考えまして運営してまいりたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/73
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074・岩動道行
○岩動委員 その点については重ねて、十分に慎重におやりになっていただきたいと存じます。
次に、政令に盛られてまいります内容がどのようなことになるのか、それをひとつ伺いたいと思います。まず先ほども触れました三十二条の関係でございますが、これは引き受け業に関しては大体どの程度のことを考えておられるのか。引き受け業だけをやる場合には二十億であるとか、あるいは引き受け業の免許とその他のブローカー業務とを併営する場合は五十億であるとか、そういったような話も出ておりますが、そこら辺の点をどのように考えておられるのか、あるいはその他の業態については現行の資本金額を大体踏襲していくのか、あるいはそれを引き上げるのか。先ほども若干触れられたわけでありますが、さらにこの辺のところを、現在考えておられる点を明らかにしていただきたいと思います。これは業界におきましても、きわめて切実な問題でもあり、またこれがどのようにきめられるかということによって、今後の業界がそれぞれみずからの責任において新しい体制に切りかえていくきわめて根本的な重要な内容を持つものでございます。また地方の産業を受け持つ地方の証券業者が、小さな発行会社の引き受けをするというような場合には、いわゆる大証券会社の引き受けとは別個の、もう少しやりやすいような形も考えてやらなければいけない、かように考えておるわけでありますが、そこら辺もあわせて資本金の額を大体どのように具体的に考えておられるかをお示しを願いたいと思います。
〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/74
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075・松井直行
○松井政府委員 証券会社の資本の額に関します政令の案でございますが、まだ確定的にはわれわれきめかねておる段階でございます。ただ、いまお話しになりましたとおり、大部分のブローカー等につきましては、あえて資本金を思い切って上げるということはないにしても、引き受け業につきましてだけは、非常に大幅な引き上げがあるというふうに巷間うわさもされ、証券業者の中でいろいろ問題になっているように、一つの大きなポイントであろうと思いますので、考え方の方向と大体の目安につきまして、可能な限りお話を申し上げたいと思います。
現在引き受け業を営業の全部または一部の内容とする会社につきましては、最低資本金二億円ということになっておりまして、現在二億円以上の会社で引き受けができる会社は五十幾つ、六十未満でございますが、引き受け業者の機能といい、それに何を期待するか、どういう営業規模であってしかるべきかということは、先ほど申してきたところによりましておわかりのとおり、相当大きな財産的基礎と信用を兼ね傭えたものでなければならないということは当然でございまして、二億円ということは非常に低過ぎるとわれわれも考え、おそらく一般の社会の考え方もそうであろうと思います。ただこのときに、現在すでに既得権として引き受け業ができる業者を、ほとんど全部その特権を剥奪してしまうという形で、極端なことをやるということも穏当ではございません。そこでこういう考え方をとっております。引き受け業者の中におきましても、実際発行会社と発行額なり有価証券の発行条件について協議をし、知恵を与え、両者の間で引き受け契約の大部分を協議いたします主幹事になります証券業者というものがございます。それ一社または二、三社ありまして、それに十とか二十とか、共同で引き受ける引き受け証券業者がそこにくっついてくる。全体でシンジケートを形成しているというのが実情でございます。この主幹事になるいわゆるマネージング・アンダーライターにつきましては、相当程度引き上げる必要がある。しかしこれが独立して企業として成り立つためには、現在の大証券がやっておりますような引き受けの規模程度の営業でもって採算が合うためには、どれくらいの資本金であれば適当かどうかということを、実地につきましていろいろ計算を置いておりますが、少なくとも十億以上ぐらいの資本金が必要であることは間違いないところであろうと思います。ましてやそうした主幹事とそれからブローカーをあわせて行ないますときには、ブローカーとしての最終担保、投資者保護のための最終担保の確保という観点からもそれよりもさらに相当大きな資本金が要るということに相なろうかと思いますが、そうした主幹事になれない証券業者は一体どうするかということでございます。幹事会社をやらない現在のアンダーライターは、二億円でいいのではなかろうか。ただし地方の産業でございまして、地方の小規模の証券業者が事実上の主幹事になることがございます。主幹事になるためには、たとえば十億とか二十億とか資本金が要るということにいたしますと、地方産業の育成ということにも支障がございますので、発行会社の資本金なりあるいは一時の引き受け額なりで一定の水準を置きまして、それ以下の小さな発行会社のものであるならば、たとえ資本金が二億円以上のものであっても、地方産業の育成という観点から、主幹事になることができるというこまかい配慮といいますか、段階つけをつけることによりまして、アンダーライターとして要請される資本の充実と、現状にわかにひっくり返すことによって起こってくる摩擦の回避とを考えていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/75
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076・岩動道行
○岩動委員 そういたしますと引き受け業のうちでも、主幹事となる場合には最底十億円、それから引き受け業と大ブローカーを兼ねた場合には最底三十億と考えてよろしいかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/76
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077・松井直行
○松井政府委員 先ほど申し上げましたとおり引き受け業を専業にしてやる場合に、どれくらいの資本金であれば、たとえば一割配当が可能かという陣容その他、いまモデルケースをつくりながらそろばんをはじいておるところでございまして、確定的なことは申し上げられませんが、その責任と担保力から申しますと、引き受け業専業者であるならば、当然十億以上ということを考えるのが常識であろうと思います。それから兼営の場合には、これは非常にむずかしゅうございますが、いまおっしゃいました金額以上のものが適当ではなかろうかということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/77
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078・岩動道行
○岩動委員 続いて政令関係、五十四条第二項で、負債の合計金額あるいは純財産とか、こういうものについてはどのような方式を考えておられますか。具体的に御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/78
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079・松井直行
○松井政府委員 お答え申し上げます。五十四条の趣旨は、大蔵大臣の是正、保全命令、証券業者の免許制に伴いまして、事前に証券業者を指導監督できる規定を整備いたしたものでございますが、この本文にありますとおり、証券会社の業務または財産の状況が次の各号の一に該当する場合においては、業務方法の変更、営業の停止、その他監督上必要なことを命ずることができる。その一番最初に「負債の合計金額の純財産額に対する比率が大蔵省令で定める率をこえた場合又はこえるおそれがある場合」、こういう場合には是正、保全等の保護処分ができるという趣旨の規定でございますが、その一号の負債の合計金額の純財産額に対する基準、これは現行でも営業用純資本額の倍率ということで規定がございますのを、その趣旨を承継したわけでございますが、現在は流動資産と流動負債というものとを比べまして、その流動資産の超過する部分といいますか、純財産額と営業用の流動負債の倍率が二十倍以内でなければならないということでもって、借金の規模をそこで押えるということでございますが、証券業の最終的な信用の担保ということから言いますときには、やはり自己資本が中心になるわけでございまして、これに見合わせるに総負債をもってするというのが確立された慣行でございますので、計算方法その他倍率の分子、分母を幾分現行法とは変えますけれども、企業として外部から借金ができる最大限をこれでもっで押えるということによりまして、証券企業の健全性を担保したいというのが趣旨でございます。計算方法、規定等幾ぶん変わりますので、現在の二十倍以下というものは、計算の結果いろいろ変わってはくると思いますけれども、基本的なものの考え方は現行の規定を承継したものということができると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/79
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080・岩動道行
○岩動委員 それでは五十四条に触れましたので、この健全性の規定で、ただいま倍率について、現在は大体二十倍というお話でございましたが、新しいやり方によりますと、大体どれくらいになるのか、そこら辺の見当はついておられるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/80
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081・松井直行
○松井政府委員 これも一つの適当な例示として、いい証券業者を数多く集めまして、現在二十倍になっておるのが一体幾らくらいに当たるかということを結果としての計算をいたしておるわけでございまして、現在以上に規制を厳格にしようという趣旨は全くありません。そこでまだ数少ないモデルしか拾い上げておりませんが、大体二十倍というのが大体十倍以内ぐらいになるのではなかろうか、現在の作業の途中ではそういうふうに踏んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/81
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082・岩動道行
○岩動委員 そうしますと、五十四条の第一項第二号、健全性の準則、これは大蔵省令ではどのようなことを中身として考えておられるのか。証券会社の財産の保有状況等はいろいろむずかしい問題を含んでおり、先ほども問題になりましたように、保護預かりあるいは運用預かりの問題に対する基準をどうされるのか、あるいは不動産の保有の割合をどのように考えていくのか、いろいろ具体的に企業にとってもきわめてむずかしい、また関心の深い中身を持つと思うのでありますが、ここら辺についてのおおよその考え方をこの際お示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/82
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083・松井直行
○松井政府委員 御質問の件は、同じ五十四条の大蔵大臣が保護処分ができる場合の一つとして大蔵省できめる健全性の準則に反した場合、この大蔵省で定める健全性の準則とは何かという御質問であるかと思いますが、その前の部分にございますように、「金銭若しくは有価証券の借入れ、受託若しくは貸付け又は有価証券その他の資産の保有の状況が」、健全性の準則に反するということでございまして、いまのところ次のようなものを考えております。
一つは、商品、有価証券の保有量ないしその銘柄のへんぱ性ということでございまして、先ほどから申し上げておりますように、ブローカーである以上、できるだけ必要最小限度の有価商品は証券の保有に限定したいということでございます。それから銘柄につきましても、ある特定の銘柄、少数銘柄に分散するということは非常に危険性がございますし、流動性の少ないものをたくさん持っておるというのも、一つの不健全の象徴であろうと思います。
二つは、今度は証券業者がお客さんその他に対する貸し付け金、立てかえ金でございますが、商売の状況、業様に比して非常に多額の貸し付けをやる、立てかえをやるというのも不健全でございますし、返済期限がべらぼうに長過ぎる、あるいは金を貸す以上は、立てかえる以上は、十分な担保がとってあるかどうかというような点についての妥当性を判断したいと思います。
三つは、今度は証券業者の借金でございますが、借金の金額の規模、返済期限、あるいは非常に高利の金を高利貸しから借りているというような状態は、健全性の準則に反するというふうにも考えております。
四番目には、有価証券を預かります場合には、やはり適正な規模というものも必要ではなかろうか。それから安全にこれを保管できる施設を持っているということも必要ではなかろうか。
第五番目には、いまお示しになりましたのは不動産の保有卒でございますが、やはり自己資本のうち不動産を幾ら持っているかということは、一種の健全性をあらわす指標といたしまして、ある程度確立された準則がございますので、証券業者に最も適当なそうした不動産率というものを算定いたしまして、それをこえることがないようにというふうに指導してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/83
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084・岩動道行
○岩動委員 次に第三号で「大蔵省令で定める場合」とは、どういうふうなことを考えておられるのか、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/84
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085・松井直行
○松井政府委員 三号は、いま申し上げました一号、二号以外の場合で、「公益又は投資者保護のため業務又は財産の状況につき是正を加えることが必要な場合として大蔵省令で定める場合」ということでございますが、次のようなことを考えております。一つは資本の欠減を来たすような状態、これは当然申し上げるまでもないことであります。二番目は経常収支の問題でございます。これは九〇%がいいか、九五%がいいか。いま銀行とか信託銀行あるいは相互銀行等について、それぞれある種の率が示されておりますが、証券業者につきましても証券業者にふさわしい率をきめまして、これをこえた状態がある場合には是正を要するというふうに判断するということでございます。三番目は不良資産をたくさん持っております場合、しかもその償却が済んでいないというときには、償却を命ずるということが必要になろうかと思います。これは財産の状況につき是正を加える必要のある場合ということでございますが、その他業務につきましても、是正、保全命令ができることになっております。たとえば推奨販売を大々的に、しかもそれを常態化してやっている。それから皆さん御存じのとおり株が下がってまいりますと、お客さんからのはね返りをリーダー活動を通じまして、自分でかかえ持ち、値が下がり評価損をたくさん出すということが、証券企業の不健全の大きな原因になっております。それから引き受け業務の過当競争でございます。その次には、上場証券は一応流通もございますし、市場価格も毎日立っておるのでございますが、非上場証券につきましては、流動性からいいましてもあるいは価格の安定性からいいましても、不安要素が非常に多いものでございますが、非上場証券を過大にかかえるというようなことも、業務といたしましても、あるいは財産状況といたしましても、好ましい状態だとは言えないと思います。その他一般的に決算処理の原則に反したようなことを証券業者がやった、あるいはやろうとしているというような場合につきましては、あらかじめ大蔵省が事前に指導できるように持ってまいりたいということにいたしたのがこの規定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/85
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086・岩動道行
○岩動委員 先ほども政令で定める財産の計算方法については伺ったわけでありますが、この中で不動産の評価については、これはおそらく簿価によるのが正しいと思うのでありますが、一方において資産内容を現在の企業の状態から見ると時価を非常に希望すると申しまするか、時価と簿価の差がきわめて大きいので、ここら辺について具体的には簿価であるべきでありまするが、さらに時価をどのように組み入れていくかということを、企業のためにも、また今後の経営の内容を健全化するためにも考えていくべきであるか、そこら辺の実態をひとつ承りたいと思います。大体証券業者は、現在ほとんど評価がえをしていると思うのでありますが、もし簿価のままで計上しているときには、これは含み資産として健全な内容ということも言えるのでありまするが、実際には時価でやりたいという希望等があった場合には、これをどのように指導していくべきか、この辺についての原則と、さらに指導方針について承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/86
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087・松井直行
○松井政府委員 質産科目の中の不動産の評価の問題でございますが、その後経済情勢が変化してまいりまして、不動産価値、特に土地というものが非常に上がってくるという場合には、企業内部にいつまでも簿価で表示いたしておりますときには、大きな含みを持つということに相なろうかと思いまするが、企業の健全性という観点から申しますならば、それを容易に評価がえして、評価益を出すということは好ましくないと思います。ましてやそういう不動産、たとえば建物、ビル等が、自己自身の営業活動に使っておる店舗であるという場合には、それをそのままさら地、さらビルのごとく簡単に処分して、売買益をあげるということは困難な状態にあることは申すまでもないわけでありますので、そのまま時価評価するということは困難であろうかと思いますが、場合によりましては、たとえばさら地を持っているとか、あるいはいろいろな場合もございましょうし、まことにやむを得ない場合も考えられると思いますが、そういう場合には、場合によって時価で評価し得るという道も開いておく必要があるということはお示しのとおりであろうと思います。ただ不動産担保で金融をつけますときには、これは金を貸すほうの銀行側の判断でございますが、やはり時価は時価なりに評価して貸してくれる場合もございますので、金融力という観点から見ますときには、こうしたかたい経理ばかりを守ってはおらない。もう少し高く評価してもらっておるという実情にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/87
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088・岩動道行
○岩動委員 条文に戻りまして、五十条の規定で、禁止規定の第三号では、「大蔵省令で定める行為」ということで、一括して省令にゆだねられることになっておりますが、この具体的な予想される中身をひとつお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/88
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089・松井直行
○松井政府委員 新しい五十条の規定は、証券会社またはその役員もしくは使用人が、こうこうこういう行為をしてはならない。これは投資家保護、それから正常な証券市場の秩序維持という観点から、基本的に守ってもらわなければならない証券取引に、特異な基本的な課題だけを拾い上げてやるものでございますが、一号、二号に例示的にあげまして、三号に一括して大蔵省令で規定をいたすという予定にいたしております。午前中にも申し上げましたが、この種の規範はすでに取引所におきまして、取引所の会員が守るべき準則として、あるいは証券業協会の定款その他規約、つまり公正慣習規則なりあるいはその他の内部規律におきまして、証券業協会の協会員として守るべき準則というものをすでにつくっておるのでございますが、その中で特に基本的かつ証券取引には特有の基本的なものとして、第三号で現在考えられる必要なものを拾い上げようといたしておるところでございますが、例示といたしましては、一つはお客さんに対してうそを表示する、あるいは不明瞭な表示をするというような行為、二番目は、確定もしてない配当について確定的な、断定的な判断を提供しまして勧誘をする行為、あるいは利益保証を約束いたしてやります勧誘行為、あるいはお客さんの収入状況、家計、財産状況を全然考えずに、過当な投機的な取引を無理やりに勧誘するというような行為をやってはいけない、あるいは最後には証券業者の役員、職員の自己思惑、これは現在徹底した内規を持っております証券業行におきましては、厳格に禁止されておることでありますが、残念ながらまだこの役職員の自己思惑というものは完全になくなっているということがない、そういう後進性がまだ証券界にありますので、こうした役職員の自己思惑の禁止というようなことをおもなる項目といたしまして織り込みたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/89
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090・岩動道行
○岩動委員 いまの御説明の中で、たとえば未確定の配当等について断定的判断を提供して行なう勧誘行為はいかぬ、こういうお話でありますが、これは発行会社のほうで近く増資をするというようなことをかりに言っております場合には、員としてはそのようなことを言っておりますからと言って勧誘をした場合には、この禁止行為に触れるのかどうか。その増資が決定したという時点をどこでとってまいるのか。重役会できまっているのかどうか。そこらへんで一つ時点をつかまえて、禁止行為に触れることになるのかならないのか、そういう点を一つの例示として参考のために伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/90
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091・松井直行
○松井政府委員 抽象的に禁止される行為として私いまあげましたけれども、現実に具体的にどう適用するかは、慣習の積み重ね、行為の積み重ねで確定していく以外になかなか方法はないと考えますが、いまおっしゃいました事例につきましては、およそこんなふうに考えていいのではないかと考えます。決算重役会で配当率を一応きめるのでございますが、それ以前にある担当重役が今期幾らぐらいの配当率になるはずだということを申したという事実があったという場合に、それを一種の伝聞として伝えるということにつきましては、ここにいう断定的判断ということにはならないかと思いますが、そうした決算重役会で決定したあととか、あるいは株主総会で決定さるべき事項につきましては、総会で決定したあと、その議決の内容を真実なものとして、こういう決定があったというふうにして提供することは、これには触れるものではないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/91
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092・岩動道行
○岩動委員 大体政令、省令の規定する具体的な構想について、ただいまの御説明でおおよその見当がつきましたので、私の質問はこれで終わりたいと思いますが、なお最後に売買損失準備金、証券取引責任準備金というものを新しく設けられたわけでありますが、それの趣旨と、さらにこれにも省令がつくことになっておりますが、その内容、またそれぞれの制度について税法上どのような措置を考えられておるのか。証券取引責任準備金については、租税特別措置法のほうですでに損金算入がきまっておると思うのでありますが、売買損失準備金については、今後これを損金として算入するのが制度になります以上は、妥当ではないかとも思いますが、これについて大蔵省はどのようにこれを処理されるか、伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/92
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093・松井直行
○松井政府委員 売買損失準備金は、このほかにこの法律でもこれと同じ性質のものが二、三ございますが、証券業者の内部留保を充実するという趣旨のもとに設立を予定しておるものでございます。これは証券業者の収入の中にはブローカーとしてブローカーレージがございますが、ここに申し上げます売買損失準備金と申しますのは、ディーラー活動におきまして仕切り商いによって売買益と売買損がございますが、通算して売買益が残った場合でございますが、売買益が残ったからといって、それがそのまま配当原資等になりまして社外に流出を許される場合には、すぐその直後あるいはあくる年あるいは翌々年等の市況の環境変化等によりまして、また大きな売買損を生ずるということがございます。過去数年の実績をいろいろ分析いたしてみた結果によりますときには、やはり景気の波によって売買益が出た年、売買損が出た年が周期的にまいっておりますので、売買益があった年に全額社外流出していいということになりますときには企業の健全性も害されるというわけで、売買益が売買損をこえた部分について内部留保をさそうというものでございます。ただ仕切り商いの場合におきましては、事実上ブローカー・レージに相当するものがございますので、それをとったネットを売買益として考える。あるいは売買益がありまして、それに法人税等の公租公課がかかってまいりますと、それだけ社外へ金が出るわけでございますので、公租公課の分を含めて積ますということは不適当でございますので、そうしたブローカー・レージに当たる部分あるいは租税負担になる部分を除いたネットの売買益部分につきまして、それに一定率を乗じたものを責任準備金として積まそうというわけでございます。一定率と申しますのは、自己売買専門の業者ですと、その売買益のみが営業の収益でありますので、これを全額準備金に積むということも不適当でございますので、自己売買業者等につきましてはおよそ半分前後のものを積ます。まあブローカーを兼営しているものにつきましては、それより少しよけい目の率のものを積ますという程度のものをいま考えておりまして、証券業者の内部留保の充実に資したいと思っております。
本件は全く新しい考え方に立ったものでございまして、今年は税制の改正の際にこれを特別措置法の中に織り込んでもらうひまがございませんでした。しかしながら証取法が施行されまして、この準備金に関する規定が実際に運用になりますのは来年の九月期の決算からでもありますので、次の機会に税法上の扱いを特別措置として入れてもらうようにひとつ折衝してみるつもりではありますけれども、税法の恩典がないからといってこれをないがしろにしていいわけのものではありません。税法上損金扱いを受けなくても、これは積み立てさすべきものだとわれわれは考えております。
それから証券取引責任準備金、これは証券業者とお客さんの間に起こりました事故につきまして、証券業者の賠償責任を円滑に実施さすために積ましておくものでございまして、株式の売買一株当たり三銭ずつ積んでおるわけでございます。これを特定の資金といたしまして、証券業協会等に別途積み立てさしておくのでございますが、積み立てのものにつきましては租税特別措置法上、税制上恩典がございます。税法上はこのままでございますが、それを証券取引法の中にも取り入れまして、証券取引責任準備金を証券業者として積む義務を課すというのがこの規定の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/93
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094・岩動道行
○岩動委員 最後に政務次官に御要望申し上げておきますが、この改正案はきわめて重要な内容を含んでおりますが、特に証券業界の体質の改善、近代化、合理化というためには、この法律の規定を厳正に運用していただかなければ所期の目的を達成することはできないと思います。つまり免許の上にあぐらをかくことのないように十分なる指導監督が必要であろうかと思います。
一方におきまして証券界の現況にかんがみますと、その体質はきわめて弱体化をいたしておりまして、非常に憂うべき状態であると思います。したがいましてこの法律の運用にあたりましては、もちろん業界の意向も十分にくんで、実情に即した新制度への移行もまた十分な配慮をしなければならない、かように考えるわけでありまして、法律の所期の目的を達成するための進め方、あるいはまた業界の現実に即した進め方、いわばこの若干相矛盾するような姿においてこの法律を進めていかなければいけない、かようにむずかしい立場にもあると思いますので、この点について大臣にかわって政務次官から一言その基本的な態度、また方針についてこの際承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/94
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095・鍛冶良作
○鍛冶政府委員 先ほど来御議論のありましたとおり、本改正案を出した目的は、業者の基礎を固めること、そしてそれを固めるについての監督官庁としての監督の厳正を期するということが眼目だろうと考えるのであります。したがいましてその監督の任に当たります当局としては、それだけの頭をもって、また態度をもって厳正公平に臨まなければならぬ。特にあらゆる方面を研究して、先ほど来御指摘になったような弊害のないことを期さなければならぬことは当然だと思います。その反面また相手方の業績についてもいろいろ思いやりがなくては、とうていりっぱなものはできぬと思いますから、この点についても業者との間に連絡を密にしまして、研究を重ねて十分遺憾なきを期したいものだ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/95
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096・吉田重延
○吉田委員長 奥野誠亮君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/96
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097・奥野誠亮
○奥野委員 たいへんおそくなっておりますので、お尋ねをさらに重ねますことは、同僚委員の方々、その他にたいへん御迷惑だと考えるわけであります。したがいまして二、三の点をごく簡単に端的にお尋ねするにとどめまして、あとは後日に留保させていただきたい、かように考えるものでございます。
お尋ねしたい一つは、外務員について設けられました六十四条の規定に関する点でございます。証券業について免許制を採用せられたということに並ぶ重要な規定だ、かように考えているわけでございます。証券界の現段階から見ますと、投資家保護を徹底していくという必要がきわめて大切であるという認識においては、私も強いものを持っているつもりでございます。
たまたまさきの参考人の意見聴取の際に、武井参考人からこの規定について非常な不安を表明されました。さらに私が読み返してみますと、やはり何か問題があるのじゃなかろうかという気持ちを抱いたのでございます。現在においては投資家保護がまず何よりも大切だ。しかし法律規定は長く将来にわたって規定されてまいるものでありますだけに、いまの事態だけ考えるのもいかがなものだろうか、かような気持ちを持っているものでございます。六十四条では、外務員は有価証券の売買等に関して一切の裁判外の行為を行なう権限を有するものとみなすと規定されているわけでございます。そう規定の適用のないのは、相手方が悪意であった場合だけにとどめられておるわけでございます。私は重大な過失が相手方にあった場合でも、この一項の規定が働いていくということに若干問題があるのじゃないだろうか。もとより証券業者は外務員の監督に万全を期していかなければなりませんが、それには限界がある。同時に相手方にもある程度の注意力が必要ではなかろうか、こういうような考え方を持つからあえてこの点についてのお尋ねをしたいわけでございます。
簡単にいたしますために私が一例を先にあげてしまいたいと思います。たとえば外務員とお客との関係が長く特別な信頼関係が持ち続けられておる。したがって外務員がお客さんに株式を売る。その場合に正規の預かり証を渡さないで名刺の裏に書いて預かり証を渡しておった。長くそれをずっと続けてきておる。会社としては、常に預かり証はこういう様式のものでなければならないのだ、それをそのつど会社から渡すんです、相手方に、お客さんに対して注意を喚起してきている。そういう場合に事故が起こったとしますと、顧客にもやはり重大な過夫があったと見られるのじゃないだろうか。会社としては注意の喚起に常につとめてきた。これはこの規定からいいますと、その取引は証券会社にかわって権限を有するものとみなすということで、会社の行為になると思うのであります。悪意は相手になかったのだ、重大な過失が相手にあったのだ、その場合にもやはり証券会社の責任になってくると私はこの規定に関する限りは考えざるを得ないと思うのであります。この点についてのお考えをまずただしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/97
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098・松井直行
○松井政府委員 この条文が置かれようといたしております趣旨はおっしゃるとおりでございますし、証券業者が不安に思いますこともわからないわけではありません。この条文の趣旨を簡潔に申し上げますと、いまおっしゃいました事例との関連において申し上げますと、これは外務員が現行の規定におきましては「証券業者は、その使用人を、自己の営業所以外の場所において有価証券の募集若しくは売買又は有価証券市場における売買取引の委託の勧誘に従事させようとするときは、」云々という規定がございまして、託券業者とお客さんとの争いに関します判例等におきまして、えてして外務員の代理権限というものは単に勧誘行為だというように狭く解しまして、証券業者が責任を免れようといたしておる事例がございます。しかしながら証券取引の実態にかんがみますときには、外務員と申しましても証券業者の営業所外の表へ出まして、現実にその場でお客さんの注文もとってまいりますし、株も預かってまいります。それから現金も預かってまいります。外務員の代理権限を非常に狭く解しますときには、そうした株とかあるいは現金とかの受領については代理権限がないのだという主張もできるかと思いますが、しかし一般投資家の保護という観点あるいは取引の実情等から考えてみますときには、証券取引の実態に即して私がいま申し上げたような外務員の行為につきましても、これは外務員としてすでに授権が行なわれている以上は、そういう範囲まで証券業者にかわって行なう権限を持っておるものだとみなすという規定を置いただけでございまして、あらゆる場合においてすべて証券業者のためにやったものとみなすということを書いておるわけではございません。代理権限がございましても、自分の仕えております証券業者のために代理人としてやることもございましょうし、自分の個人的な行為としてやる自由も持っておるわけでございますので、いまお示しになりました事例につきましては、代理権の範囲は非常にこの条文で広くなっておりますが、具体的にいま代理人のなした行為が証券業者のためになしたかどうかということはまた別個の問題でございまして、お客さんとの間に特殊な関係があり、もはや外務員は証券業者の代理人として行動したと見るよりもむしろお客さんのために行動したと見るというような事態がありますときには、証券業者の免責が行なわれておるという判例もあるところでございますので、この代理権の問題とは少し違った第二の、別の問題として具体的な事例に即して解決さるべき問題であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/98
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099・奥野誠亮
○奥野委員 私いまの御答弁にちょっと納得できないのであります。この法律をずばり読みますと、私があげた事例はやはり証券会社の売買行為ということになるじゃないか、かように考えるわけでございます。時間の関係でくどくど申し上げることは省略いたしますが、私の考えは、相手方が悪意であるかどうかは、これは証券会社の立証すべき事態になることが通例だろう、かように考えるわけでございます。それ以外に、いま申し上げたような場合まで全部証券会社の責任だということになってくると、外務員の監督についても行届き得ない場面が出てくるのではないだろうか、その程度は救ってあげておいたほうがよいのではないかという心配を持ったからでございまして、たとえて言いますと、第一項にただし書きをつけて、外務員が相手方との特別の信頼関係に基づくものであって、相手方に重大な過失のあるものについてはこの限りでないというような程度のクッションは置いておくべきではなかろうか、こういう考え方を持っておるわけでございます。一応いまの問題について政務次官に御見解を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/99
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100・鍛冶良作
○鍛冶政府委員 これはずいぶんむずかしく考えられるのです。旧来われわれもずいぶん経験があるのですが、旧来は登録というものはなかったものですから、はたしてその店の外務員、店の使用人とでもいいますか、店の業務をやっておる者であるかどうかということがなかなか認定できなかったのです。だから私らはたいてい証券会社の顧問として仕事をしたのですが、それは違うんだ、こっちの者じゃないんだといってみんな店に責任がないことになったのです。そういうところから、今度は外務員という以上は登録をしておる。登録してある以上はその店の雇い人だ、雇い人がやるとすれば、もうこれがなくても損害賠償の規定でもいけるのですから、当然店が責任を負うべきものだ、こういう前提から外務員のやった行為は店がみな責任を負う、こういうことになっておる、それが第一番の理由だと思うのです。ところが外務員だ外務員だということで、登録せよといいましても登録しないで出てくる者なしとしないと思います。私はどこそこの外務員でありますといって出てくるのですね。そのときに、おまえは登録しておるか、登録していないかと聞けばいいのだが、そうかと言ってそれを相手にして店と取引したつもりでやる、そういう場合もあり得るわけです。そのときに、登録しておらぬし、店が自分のほうでそれは使っておる者ではない、彼が私の店の外務員だと言うことは彼の潜称であります、こういうた場合には、そういう中でも私は店に責任があるのじゃないかと思います。そのときに相手方が登録のないことも知っておるし、そしてあの名前は言うておるけれども店のほんとうの使用人ではないということを知っておったら店は責任を負わぬでいいのだ、こういうふうに分けて考えるべきものではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/100
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101・奥野誠亮
○奥野委員 時間ないので恐縮しながら質問しているものですから納得していないのですけれども、私が申し上げましたような規定をおかぬでもいいのだという結論を強く言えるのかどうか、もう一ぺんお考えいただいて、お尋ねを重ねさしていただきたい、かように考えるものでございます。
その次に四十三条のところで、「証券会社は、証券業以外の業務を営むことができない。ただし、有価証券に関する業務」、これはおそらく証券業以外の有価証券に関する業務と読むのだろうと思うのですが、全面的に大蔵大臣の承認にかからしている。こう考えるのですが、そのとおりでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/101
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102・松井直行
○松井政府委員 先ほど御説明申し上げましたとおり、本来の証券業務に専念したいただこうというのがこの趣旨でありますので、およそ兼業を承認する場合であっても、証券業に関係のないものは承認するつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/102
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103・奥野誠亮
○奥野委員 もし私のお尋ねが重複しているようでしたら、速記録を見よとおっしゃっていただいてけっこうです。
私は、一般的に承認にかからしめる場合には、裸で承認を受けるというように行政庁の恣意にゆだねてしまうという考え方にはあまり賛成でないほうの人間でございます。したがいまして、この場合でも有価証券に関する業務の範囲を明確に規定すべきではなかろうか、運用預かり、保護預かりなんかもこの中に入るのだろうと思いますけれども、名義の書きかえを顧客に頼まれて会社に出向いていく、そういうこともこれに入るのか入らないのか、私にはよくわからいのであります。また預かり証を出し、四日以内に受け渡しをしなければならないわけでありますけれども、それ以上越えれば全部保管業務になるのかならないのか、その辺もよくわからないのでございますが、その範囲をどのような形で示されようとしているのか、また明確に示してもらいたいからお尋ねするわけであります。
同時にまた、どういう場合には承認になり、どういう場合には承認にならないのだという基準も明確にすべきだろうと思いますが、これもどういう形でそうしようとされているのか、お伺いをしておきたい。同時に、そういう場合にこの条文を読んでみますと、たしか売買報告書については省令で定めると書いてあるようでございます。預かりの預かり証なんかについてもそのような方法をとっていただいて、顧客がわかりやすいようにPRをしていただく必要があるのではないかという希望を持っておりますために、そういうことを申し上げるわけであります。同時にまた承認の取り消しの場合につきましても、基準を明確にしていただいたらいいのじゃなかろうかと思うのでございますが、そういうもの全般についてどういう方針をお持ちになっているか、それだけお聞かせいただけばけっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/103
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104・松井直行
○松井政府委員 考えております内容は大体いま奥野委員からおっしゃいましたことでございまして、現実に行なわれております兼業業務のうち証券業の兼業業務としておよそ確立されたものは、いまおっしゃいました運用預かり業務、それから普通の取引に関連して預かります一時的な預かりじゃなしに、たとえば貸し金庫等を設けることによって広く一般大衆から有価証券なり物を預かるという一つの保管業務、それからいまおっしゃいました名義書きかえ業務、それから公社債の元利金の支払いの代理業務、大体いままで慣行として確立をされておりますのは、この中に入る考え方でございます。これはわりあいに概念としても明確でございますが、明確であるということと、それからまた別に取引形態がどんどん進んでまいりますと、またどういうものが起こってくるか、あるいは証券業者として兼業して差しつかえないものも起こってくることも予想されますので、あえてここに明示しなかったわけではございますが、しかし運用におきましては、裸とおっしゃいましたが、「公益又は当事者保護のため支障を生ずることがないと認められるものについて、」という前提がございます。しかしあわせて現行法におきましてはこういうものを営むことによって証券業の本業の支障になるようなことがあってはならないという考え方もあわせて取り入れまして、適切な運用をしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/104
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105・奥野誠亮
○奥野委員 簡単にするために、いまお尋ねしました「有価証券に関する業務」の種目、それから承認の基準要旨を書いていただくことはいかがでしょうか。資料としてそれを出していただけばけっこうだと思いますが、出していただけましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/105
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106・松井直行
○松井政府委員 どういう種類の業務が兼業として承認されるかということにつきましては、やはりおっしゃいましたとおり広く証券業者に公開するのが適当であろうと思いますが、たとえば運用預かり業務ということを申し上げましたけれども、どんな資格のある業者のみが許されるかということを一義的に規定するのは非常に困難な問題もあろうかと思います。したがいまして業種、種類等につきましては、こういうものが兼業として許されることあるべしということを公開することは、必要であり、また適当であろうとも思いますけれども、おのおのの業務が許される条件をこまかく書くということはこれまた非常にむずかしい問題でもありますし、証券業者の商いのしぶりも変わってまいりますし、そこは一義的にきめたものを公開するということはなかなかむずかしいのじゃなかろうかと現在考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/106
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107・奥野誠亮
○奥野委員 私当初に申し上げましたように、行政庁に裸に権限を与えてしまう法律にはあまり賛成じゃないのであります。したがいまして、承認事項にするならどういう場合に承認するのだということを公にすべきではないか、こういう考え方を持っておりますので、こういう気持も頭に置いていただいて、いま私がお願いしましたことをさらに御検討いただきたいと思います。
時間の関係上次に進ませていただきます。もう一つ五十四条のところで、たとえば五十四条の一号の負債倍率の規定がございます。この間明らかにされた政令案要旨では、あるいは証券会社の実態いかんにかかわらず一律にきめられるのじゃないだろうかという感じを受けたのでありますが、私の考えは、やはり証券会社の資本金でありますとか、あるいは売り上げ、経営の規模、そういうものに応じて差をつけるべきじゃなかろうか。銀行でありますとか、信用金庫でありますとかいうようなものによって差をつけていると同じように、規模の小さいところでは負債倍率は低いほうがいい、大きくなってくれば負債倍率は高くてもいいのじゃないかと考えるものですから、その点についてのお考えをちょっとただしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/107
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108・松井直行
○松井政府委員 負債倍率の趣旨は先ほど申し上げたところでございますが、大きな企業、小さな企業というものによる区分よりも、むしろわれわれは二十八条の種類別免許に関連いたしまして、業態というものが、ディーラーなり、あるいはブローカーなり、アンダーライターなりに明確に区分できるようになりましたときには、区分別にするのが適当であろうとわれわれは考えておりますが、それがまだ十分進捗いたさない間は、できるだけ広く最大限に業者を全部包摂し得るような基準をきめる以外に方法はなかろうか、出発はその辺から出発したいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/108
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109・奥野誠亮
○奥野委員 この規定のままでも私の言うような規模別のきめ方ができるように思うのですけれども、そのようにきめる、きめないの問題は後日にゆだねることにしまして、いずれ大蔵省できめられるものだと思いますから、この規定のままでもできるように思うのですが、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/109
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110・松井直行
○松井政府委員 省令で委任されておりますから、やろうと思ったらできないこともないと思いますが、同じブローカーでありましても、業態の大きい、小さいによって、全借金額が自己資本に対して何倍かという差を規定に設けるのがはたして適当かどうか、われわれはいまのところ消極的に考えておりますが、もう少し検討さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/110
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111・奥野誠亮
○奥野委員 省令の問題ですから、それで私けっこうだと思います。この条文であってもそれができるということでありますが、ただ金融界がそういうきめ方になっているものですから、そういう意味で証券界についてもそのほうが妥当ではなかろうか、かように考えたわけでございます。非常に時間がおそくなっておりますから、質問は後日に留保さしていただいて、これで終わらしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/111
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112・吉田重延
○吉田委員長 次会は、来たる二十三日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後五時四十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X03319650421/112
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