1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年二月七日(水曜日)
午後一時三十五分開議
出席委員
委員長 夏堀源三郎君
理事 小山 長規君 理事 西村 直己君
有田 二郎君 川野 芳滿君
佐久間 徹君 高間 松吉君
清水 逸平君 三宅 則義君
宮幡 靖君 宮腰 喜助君
竹村奈良一君 中野 四郎君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 池田 勇人君
出席政府委員
大蔵事務官
(主計局法規課
長) 佐藤 一郎君
通商産業政務次
官 首藤 新八君
通商産業事務官
(通商化学局
長) 長村 貞一君
委員外の出席者
通商産業事務官
(通商化学局ア
ルコール課長) 井上 猛君
專 門 員 椎木 文也君
專 門 員 黒田 久太君
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本日の会議に付した事件
郵政事業特別会計の歳入不足を補てんするため
の一般会計からする繰入金に関する法律案(内
閣提出第七号)
厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案(
内閣提出第八号)
アルコール專売事業特別会計から一般会計への
納付の特例に関する法律の一部を改正する法律
案(内閣提出第一一号)
当面の財政金融問題に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/0
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001・夏堀源三郎
○夏堀委員長 これより会議を開きます。
本日は大蔵大臣がお見えになつておりまするので、現下問題になつておりまする資本蓄積に関する問題、農業共済組合連合会事業不足金整理に関する問題の二点を議題としたいと存じます。
委員長より簡単にお伺いいたしたいと存じます。現下の緊迫せる国際情勢に対処して、わが国の経済の急速なる安定と復興を期するために、資本の蓄積が焦眉の急務であることは御承知の通りであります。政府は予算の面より相当な財政金融上の適当な措置を講じておるようでありまするが、民間の資本蓄積の面において特に証券市場の育成について、いかなる構想を持つておられるかということをお伺いいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/1
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002・池田勇人
○池田国務大臣 資本の蓄積には、資本を集めるということと、その集まつた金をうまく利用する、この二つの方面から考えなければならぬと思うのであります。しこうして資本の有効適切なる利用方法として、証券市場を育成しなければならぬことは当然のことであるのであります。先般来資本蓄積の育成につきましては、相当努力して参つたのでありまするが、その効果が十分でないのであります。従いまして、財政演説にも申し述べましたように、まず証券取引所の運営の方法、あるいは株式取引の方法につきまして改善を加えたい。取引の改善につきましては、大体今の取引所法は昔のような長期清算取引、あるいは短期取引を大体は予想していないのであります。アメリカ式のレギユラー・ウエイの方法を予定して取引所法ができているのであります。従いまして、私としては取引方法としてレギユラー・ウエイの方法をひとつ実施して行こう。このレギユラー・ウエイの方法につきましても、ただいま信用供與率を五五%としておりますが、これをかえて行つて取引の円滑を期するように考え、取引所法の改正を本国会に出す予定でおるのであります。一部にはレギユラー・ウエイの方法では非常に資金がいつて、なかなか思わしく行かぬというような議論があるのでありまするが、私は一足飛びに昔の清算取引に帰ることにつきましては、今の状態ではいかがかという気持を持つておるのであります。従いまして、まずレギユラー・ウエイの方法でやつて行つて、時を見て清算取引を加味して行つたらどうかというような考え方で進んでおります。また証券金融の方につきましても、御承知の日本証券金融会社あるいは大阪の方にもこれに似たものがございまするが、これに対しまして、今大体二十数億円の別わく融資をいたしておりまするが、これを倍額くらいにして、そうして株式の貸付等によりまする金融をはかつて行く。三、四年前やつておりました投資信託の方法も復活させて行つて、いわゆる証券に関しまする関心を高めて行こうという方針で行つておるのであります。辛い最近の取引市場は一年前のそれほどまでに回復いたしました。株価も大体きのうが八十七、八円の平均でございまして先般来のように七十円そこそこのときから見ますと、よほどよくなつております。取引も過去一週間くらいは、多いときは一日六百万株あるいは七百万株、少いときでも三、四百万株というかなりの活況を呈して参りました。私は今後証券市場は相当活況を呈して、今までの不振の域を脱して来るのではないかと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/2
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003・夏堀源三郎
○夏堀委員長 証券市場の現在は決して満足すべき状態ではないと考えております。なるほど今一時的にはちよつと株価も上つたようにも見えますけれども、決して安定はしておらぬ。このようないわゆる景況化いたしつつある状態は、やはりこれはどこかに原因がなくてはならぬのであつて、その原因は結局発行市場そのものの不備もさることながら、これと並行しての流通市場の未確立が、重大な影響ではないかというように私どもは考えております。流通市場の機能の完全なる発揮ということは、やはり清算取引の取入れが非常に必要である、こう私どもは考えておりますが、この点は大蔵大臣とちよつと違つた考えになるのでありますけれども、結局活発なる運営によつて株価も上り、資金の不足面もある程度調整ができるというように、私どもは考えておるのでありますが、この点に対して大蔵大臣はどのようなお考えを持つておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/3
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004・池田勇人
○池田国務大臣 夏堀委員長は清算取引の復活をお考えになつておるようであります。御承知の通り昔は清算取引もやはり、しかも長期、短期と日本独得の方法でやつておつたのでありますが、敗戦後の今の取引員の財政経済事情、また先般の経済界のそれから申しまして、短期はさておいても、長期清算取引を今すぐ始めるということは、信用状態からいつていかがなものかという危惧の念を持つておるのであります。どうしても証券界がもう少ししつかりした信用を持ち、財力を持つておるときでないと、なかなかむずかしいのではないかと思います。これは大量取引をし、そこに公正なる値段を出すということが、いわゆる証券市場の発達に最も必要なことではありまするが、転売、買いもどしの方法によるいわゆる長期取引ということを、今ただちに日本においてやつていいか悪いかということにつきましては、私はよほど検討を要するのではないかと思います。従いまして取引界におきましても、東京におきましてはレギユラー・ウエイで一応行こう。あるいは大阪、名古屋の方は一足飛びに長期清算取引に入ろうという意見があつたようでありますが、私の考えを先般証券業者にお話いたしましたところ、大体賛同を得ておると思うのであります。すなわち先ほど申し上げましたように取引所法を改正して、レギユラー・ウエイで一応出発して行く。そうしてそれから情勢によつて清算取引を加味して行く。私はこれが堅実な行き方ではないかと考えておるのであります。従いまして長期清算取引というこの清算取引を、私は今否定するものではもちろんございません。一つの公正な大量取引により公正な株価を判定する方法としては、まことにいいものでありますが、いいものだけによほど地固めして行かないと危險性がある、こういう考えでおるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/4
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005・夏堀源三郎
○夏堀委員長 この問題は私としてはレギユラー・ウエイと清算取引と並行すべきものであると考えておりますけれども、いずれ委員諸君よりもまた質疑があると思いますので、この問題はそれとして打切ります。
なお農業共済組合連合会の事業不足金整理に関する問題でありますが、これは委員長の手元に何百通という電報が参つておりまして、相当大きな問題でありますので、前臨時国会で本委員会においてもこの問題を取上げて、大蔵大臣から御答弁にあずかつておるはずであります。日本の経済が順調に進んでおることはその通りであります。特に鉱工業のごときは戦前を上まわつておるようでありますが、原始産業はその反対にまことに窮迫せる状態に陷つております。これは経済力の足らぬ点であると思いますが、そうしたようなことが農業共済組合連合会の事業不足金の整理ということになつたのじやないかと考えておりますので、根本の対策を立てなければならぬのじやないかと考えておりますが、さしあたり二十億円の不足金に対して、政府はどのような御処置をお考えになつてるかをお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/5
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006・池田勇人
○池田国務大臣 農業共済保険につきましては、御承知の通り最近の異常災害、超異常災害につきましては、一般会計から一応繰入れまして当座をしのいでおるのでありまするが、通常災害あるいは異常災害の一部を負担いたしまするいわゆる農業共済組合並びにその連合会の資産状態は、お話の通りに昨年までの分で大体十二億円ばかり、そしてまた昨年の麦その他を入れますと、これが五億ばかりであり、また別に家畜の方を加えますと、お話の通り二十億円に相なるのであります。従いましてこの連合会の不足金をどういうふうにこれからやつて行くかという問題は大問題であり、農林当局と大蔵当局の間で先般来熱心に検討を続けております。何分にも農業共済に対しまする掛金率は、昭和元年から二十年までの大体の平均で算定しておるのでありまするが、二十二、三年来の災害は従来の平均災害を相当越えておりますので、こういう不足金が出て来ておるのであります。従いまして根本的に災害の掛金率につきまして、再検討を加えなければならぬのじやないかという考えを持つており、それを検討いたしております。また異常災害、超異常災害につきましての保険金算定につきましても、検討を加える必要がありましようし、また全国的に申しまして、災害の非常に多いところと少いところと、この間の差をやはり検討して行かなければならぬ問題があるのじやないか。また地区ごとの連合会におきましても、調整基金制度有無相通ずる金の貸し借りをするような調整基金制度を設けたらどうか、こういうふうな考えも持ち、その方向で検討いたしておるのであります。しかし何分にも二十億程度の不足金がありますので、これをそのままほうつておくわけには行きませんので、私はこれに対しまする根本的の改革案ができるまで、またそれによつて今までの不足金を補充するまでにつきましては、利子貸付の方法をとるとか、とにかくこの不足金を徐々になくして行くような根本対策を講じなければならぬという考えのもとに、今検討を事務当局でいたしておるのであります。できるだけ早い機会にごらんに入れたいと検討を続けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/6
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007・夏堀源三郎
○夏堀委員長 非常にむずかしい問題でありますので、ここで明確な答弁を求めることは無理であるかもしれません。二十億円の金、これはたいへんな金でありますが、一応これを預金部資金か何かでまかなつておくようなことはどうか。先ほど利子の貸付というように伺いましたが、何か利子補給金のような別個の方法をお考えになるようなことはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/7
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008・池田勇人
○池田国務大臣 これは今でも農林中金から借りておるのであります。従いまして今まで十二億数千万円ばかり借りておりまするが、二十五年産麦の分でまた五億程度出ると思つております。これもやはり農林中金から一時借りて行くよりほかにないと思います。預金部から貸すということは、今まで制度として認められておりませんので、農林中金から出す。しかし農林中金から出す金につきましては、預金部がある程度そのうしろを見るというような方法でやつて行きたいと考えております。しかして家畜を入れて二十億円になんなんとする分につきまして、利子がだんだんかさんで参りますから、その利子の分につきましては、これは御承知の通りに、今御審議願つておりまする政府の農業共済特別会計の二十五億円の出資金を予定しておりますので、これとある税度差繰つて、その二十五億円の運用として利子の貸付をやつて行つたらどうか。利子の貸付でなしに利子補給にしてくれという議論もあると思います。しかしこの問題につきましては、根本的の立て直しの案のときにとくと考慮したい。今からすぐに利子補給するのだということには結論が出ないのであります。とにかくさしむき利子は立てかえておこうということくらいしか、御返事できないと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/8
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009・夏堀源三郎
○夏堀委員長 農林中央金庫に一時預金部資金の方からまわして、農林中金の方から共済組合の方に融通するということに解釈してよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/9
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010・池田勇人
○池田国務大臣 そう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/10
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011・夏堀源三郎
○夏堀委員長 それは全額二十億でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/11
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012・池田勇人
○池田国務大臣 今の分は、多分農林中金から十二億くらい麦その他の災害に出ておりますし、家畜の三億円も多分そつちから出ておると私は記憶しております。従いまして二十億になるというのは、二十五年産米の分が、要求は五億八千万円来ておりますが、大体五億足らずで話がつくのではないか。これだけの拂いをするのは、やはり農林中金から借りて行く。そして支拂いをしたいという考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/12
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013・夏堀源三郎
○夏堀委員長 農林中金では、何かこれに対する貸し澁りといいましようか、なかなかうんと言わないそうですが、預金部資金の方からまわしてもらつて、それを融通するということでなければいかぬということも聞いておるのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/13
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014・池田勇人
○池田国務大臣 それが今私が申し上げた通りで、預金部が直接に貸し付けるというわけにはちよつと行かぬと思います。従いまして預金部が農林中金の債券を引受ける等いたしまして、そして農林中金から出すのが最もいい便利なやり方ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/14
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015・夏堀源三郎
○夏堀委員長 わかりました。
次に資本蓄積に関する問題につきまして、質疑を許しまする西村君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/15
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016・西村直己
○西村(直)委員 第一に大蔵大臣にお伺いしておきたいのは、証券投資の問題でありますが、本会議の財政方針の演説の中に入つておりましたように、証券投資はどれくらいの利子をお考えになつておりますか。大体われわれが承つておる八分前後の利子で、はたして投資信託によつて——もちろんこれには保証もないわけでありますから、資金の吸収ができるかどうか。言いかえれば、経済が今のようにまだ完全な安定状態でないときに、はたして投資信託によつて資本の蓄積ができるやいなや。これに対する大蔵大臣のお考えを伺いたい。かつて戰争中に投資信託を一、二の会社がやりましたときには、これは敗戦経済によつて明らかに失敗に終つておる実例がある。はたして民心がこれにくつつくやいなや。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/16
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017・池田勇人
○池田国務大臣 これは御承知の通り、かつてやつたときにも全部の証券会社がやつたわけではありません。一部のものがやつたのでありますが、これはやはり一定の金額を信託いたしまして、証券業者が各銘柄に分散して投資する、こういうかつこうでありまして、私は、投資になれない人の株式への投資を勧奨するものには、一つのいい方法ではないかと考えております。これによりまして、そう多くを期待することはできませんが、一般大衆の投資に向うようにする一つの方法だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/17
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018・西村直己
○西村(直)委員 その点は議論になりますが、証券民主化をあれほどやつたけれども、一面においてずいぶん証券民主化では農村方面に迷惑をかけておる面もある。従つて証券投資を政府が率先しておやりになるときに、そういう結果に陷らないように——いささか先走る考えかもしれませんが、御考慮を願わないと、政府がこういつたものをかりにやつたとしても、政府が宣伝するほどの利益を與えないという場合には、証券を通じての資金の吸収にかえつて逆効果を生じはしないか。これは私の意見でありますから、この点は別としまして、第二の問題に入りまして、大蔵大臣にこういう席でお目にかかるときも少いので、二、三質問を申し上げたい。
私、一昨日名古屋で税の懇談会に出ましたときにも、ほとんど全部の意見がこういう問題を地方で取上げております。大きい問題といたしまして、要するに勤労所得を通じての源泉徴収が非常にきついということと、一方申告所得に対しましては、どうしてもまだやみ経済が残存しているという面から、税務署の査定が抜けている。そこで勤労者に対してはかなり税法がきつく当つている、こういう不平の声が相当強いようであります。ことに今度は御所管ではないが、地方税において住民税等の源泉課税というようなものを考えた場合に、さらにその現象が跛行的に強くなつて来る。所によつては、大体シヤウプの勧告案によつて、所得税を中心に住民税あるいは事業税等を、みな並行的にそれに比例してかけて来る税制が、はたして正しいのかどうか、こういう議論を税務署長自体が言つているところもあるが、これに対する大蔵大臣の御所見を承つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/18
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019・池田勇人
○池田国務大臣 先ほどの投資信託の制度は、政府が直接にやるというのではございませんけれども、税法上投資信託の制度を認めますことは、一般投資者と証券業者との間でやります投資誘導策としては、一つの手かと考えております。
次に所得税におきまして、源泉徴收の所得税は、非常に根こそぎとられるが、事業所得等申告納税の所得税は十分に行つていない。従つて勤労階級と事業者階級との間に非常に不権衡があるということは、われわれもよく耳にするのであります。従いましてこの事業所得、申告納税所得に対しましては、できるだけ調査の適実を期しておるのであります。沿革的に申しますると、分類所得税時代は勤労階級には弾力性が少い。事業所得は資産所得と勤労所得の間で、勤労所得よりも弾力性があるというので、税率を区分しておりましたが、所得は何の所得であつても同じだという考えのもとに、今は税率では区分しておりません。ただ所得の計算方法が違つておりますので、勤労所得はシヤウプの勧告案では一割控除ということであつたのでありますが、一割五分の控除で行つておるのであります。要は結局勤労所得がすつかり把握できる。しからば事業所得の方をしつかり把握することに努めるよりほかにはないと思います。従いまして従来とは違つて、できるだけ納税者の店舗について実地調査をして、適実な所得額を把握することに努めるほかにないと思うのであります。もし申告所得の方は所得額の把握がむずかしいからというので、勤労所得の控除をたくさんにするということになりますと、これまた課税の公平はなかなか期し得られない。根本はやはり事業所得の方の申告所得額を、適実につかまえるということよりほかにないと考えております。従いまして事業所得額の把握につきましては、年とともによくなつて行くと私は確信いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/19
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020・西村直己
○西村(直)委員 一応ごもつともな議論で、政府の立場から考えて行けばそういう御説明ができるわけでありますが、実際問題としてこういう問題が起る。お店を張つている人のうちに学校の先生が下宿していると、学校の先生の方がむしろ住民税が多くなるが、それは所得税に比例して来るからである。こういうようなわけで、実際現在各地で起つている問題は、大蔵大臣のおつしやるような形で事業所得が把握できていればいいが、把握できていない場合には、二階の間借りしている人の方が住民税が高い。たとえば市役所に勤めている課長級の方が、土地の名望家よりも、しかもぜいたくな生活をしている人よりも、はるかに住民税が高い。こういうのが実際末端における現象でありまして、その点これは政治が貧困であるということを語るものであると思います。
いま一つは、大蔵大臣が言つておられるように、住民税については、前年度の所得をもつて計算の基礎にして行くというふうにわれわれは拜聴しておるが、これを当年所得にかえてもらいたいという要望がある。前年度において勤労者が退職金等をもらつて新しい職についた場合に、前年の所得税を基準にし、あるいは所得を基準にして本年度の住民税をかけられると、勤労者はそれを使い切つている場合に非常に困る。しかも国民というものは、日夜頭に税を考えているのではなくて、税務署のあの令書が来、あるいは市役所からその割当が来たときに、初めて税というものを考える。そのときに隣りと比べて予想外に高いと、税法のむずかしいことを一々知つているわけではありませんから、それを目の前で比べたときに公平であるような形に持つて行かぬと、政治の貧困ということになりはせぬかと私は思う。こういう点でありますが、前年度の所得、あるいは当年所得のいずれを対象にすべきか。この点に対する大蔵大臣の御所見を承りたい。むしろこれは地方税の問題かもしれませんから、お答えがなければそれでもけつこうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/20
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021・池田勇人
○池田国務大臣 所得をその年の予算課税にするか、前年の実績にするかということは、数十年来非常に議論のあるところであります。国税におきましても、ある所得は前年度の実績により、ある所得は本年の予算によるというふうなやり方をいたしておつたのでありまするが、最近は国税の方におきましては、その年の予算によつて課税するということにいたしたのであります。しかるところ地方税におきましては、ただいま前年の実績によつてやつておりまするが、これを予算によるかどうかという問題につきましては、これまた非常に議論のあるところであります。やはりこれは調査能力、調査の程度によりましてかわることでありまするが、今地方税につきましては、やはり前年の実績によつた方が、徴税技術、徴税機構から申しまして、非常に楽に行くのではないかという考えを持つておるのであります。住民税等の金額は、所得税に比べて相当少いのでございまして、これを理論的にその年の予算によるということになりますと、なかなか困難な点があるのじやないかと思います。お話のあつた退職金等の場合は、これはごくまれな場合でございますし、また退職金につきましても、これを全部一ぺんに課税するわけではなく、五年間平均課税という方法に相なつておりますので、この点は予算課税によるか、実績課税によるかという問題とは離れておると考えておるのであります。ただこれは重要な問題でございまして、議論のあるところでございますが、国税は予算課税にいたしております。地方税はやはり今の制度がいいのではないかというふうな気持を私は持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/21
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022・西村直己
○西村(直)委員 次に、それと多少関連をして参りますが、むしろこれは大蔵省直接の御所管ではありませんが、当面大きく問題になつているのは、国においては健全財政が大体できておるのであるから、これから来るインフレはない。問題は地方財政であります。これは平衡交付金と非常に関連がありますが、各府県あるいは大きな都市においては、今年度は相当赤字を出すであろうという議論が行われておるのであります。一方地方税の負担は軽くない。これを大蔵大臣あるいは地方財政担当の大臣は、政府のお立場において将来どういうふうに考えられるか。たとえば行政の再配分であるとか、あるいは府県の廃合までやらなければ、この問題は解決しないのか。あるいは何かこういう大きな問題が残つておるように私は思う。国だけの方は大蔵大臣の力によつて非常に整備されたが、そのしわを地方に寄せて、しかもそこに平衡交付金という調節弁が非常に苦しい状態になつておる。地方自治体は選挙に追われて、財政がある一面においては相当伸び過ぎている。こういうようなものを大蔵大臣としては、どういうふうに調整されて、地方財政から来る面を健全化されて行くか。と同時に住民負担というものを少しでも軽減されて行くか。これに対する御所見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/22
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023・池田勇人
○池田国務大臣 お話の通りに、国税の方では予算のスケールはだんだん減つて参つておりまするが、逆に地方の予算規模はふえて行つておるのであります。従いましてその不足分は地方債の増廃によつてまかなつておるのであります。何分にも六・三制の問題その他自治体警察の問題等、一時的に相当の出費がふえて参つておりますので、昨年三百七十億、今年四百億程度の地方債の発行はやむを得ないのじやないかと思いますが、全体といたしまして、そう地方がひどくインフレ予算とも考えていないので、まあやむを得ぬ程度で、そう心配することはないと考えております。ただ将来の問題といたしましては、やはり国も地方も同じように健全財政で行くべきだと考えておるのであります。地方債の発行にいたしましてもできるだけ少くするように——地方の財政状態によつて一概に申し上げられませんが、相当の冗費があるとすれば、やはりこれを極力減らして行くように努力すべきだという考えを持つております。またそうやることが地方財政としても最も望ましいことであると考えまして、機会あるごとに私は地方の財政の建て直しを言つておるのであります。しかし何分にも今の状態といたしましては、ある程度の増大はやむを得ないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/23
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024・西村直己
○西村(直)委員 これも私の意見でありますが、はたしてただ冗費の節約とかいうような面からだけでこの問題の解決がでるか。行政事務の再配分をせずに、この狭い日本が四十七府県で知事選挙をやつたり、あるいは小さな市町村が何千とおのおのその財政を持つておることで、はたして解決できるか。これは政府全体の問題でありますから、私ここで述べませんが、この観点から地方財政と国家財政とのつながりを、御検討いただくことが必要ではないかという段階に、すでに入りつつあるのではないか。講和会議を控えております今日、その点を希望申し上げておきます。
次に当面の問題を一点最後に伺います。人事院から官公吏の給與の問題について合理化の勧告案が出るとか、出ないとかいううわさが立つておりますが、現在国会の公報をごらんになりますれば、地域給の問題について、現在の水準を維持してくれ、あるいはあるところでは地域給を新しい指定によつて引上げてくれ、こういう問題が連日各市町から出て来ておりまして、これは政府が何らかの形でこの問題を取上げるか、取上げないかという問題が起つて参るわけです。これは私どもの住んでおる県から言うならば、第十五次決定以来地域給はストツプされておりますが、隣りの県が両方とも大きな工業地帶を持つておれば、そこだけは二割五分の地域給がつく。その間にはさまつた県等は地域給が非常に低い。しかるに物価差はほとんどない。この地域給の問題は、所管は人事院でございますが、もし合理化案を出してこれを合理化すれば、国家財政にすぐ響いて来る重要な問題でございますし、おそらく全国の官公庁の勤労者は、これに対して非常な関心を持つておると思うのでありますが、もしおさしつかえなければ御意見を承りたい。まだおきまりにならないとするならば、後日に御答弁を留保していただいてもよろしゆうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/24
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025・池田勇人
○池田国務大臣 今地域給の問題につきまして、全国の公務員が非常な関心を寄せられておるということは、とくと承知をいたしておるのであります。この地域給の改正は、御承知の通りさきの国会におきまして一応御審議を願つたのであります。そうして二十六年度の予算も一応御審議を願つておるのであります。従いまして私は、予算の範囲内におきまして人事院が適当な考慮をして、こちらの方に持つて来られるものと思つておりますが、ただいまのところまだわれわれのところ参つておりません。いずれ参りましてから、しかとした御返事ができるのではないかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/25
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026・宮幡靖
○宮幡委員 本日はせつかく大蔵大臣がおいでになりましたので、時間が許したら少しお教えをいただこう、かように思つておりましたが、個人のことを申してはなはだ恐縮ですが、汽車で旅行しなければならぬという関係で、きわめて重要な点だけをお伺いいたします。特に野党の諸君に御了解を得たいことは、われわれはあとで質問すればけつこうなのでありますが、さような状況でごく短かい時間先にやらしていただくことを、まずおわびしておきます。
そこで大蔵大臣にお伺いいたしたいのでありますが、本日は主として資本蓄積に関する問題、こういうふうに委員長から宣せられておるわけですが、それに関連いたしまして、ただいま巷間に伝わつておる一つのうわさと私は考えたいのでありますが、一万田日銀総裁が目下滞米中でありまして、あちらでいろいろお話することの詳細はもちろんわかりませんが、つんぼの早耳と申しましようか、若干漏れ伝わるところがありました。それが誤報であるか、正確なものであるかはしばらく別でありますが、どうも一万田さんのお話を総合いたしますと、国内通貨の名目的な切下げを行うのではないか、こういう心配があるということを各方面でうわさしております。この問題については、すでに大蔵大臣のお耳にもお入りになつたと思いますが、また同僚の北澤予算委員が予算委員会で質問されたことについて——為替相場の変更はないかということについて、明快なる大蔵大臣の御答弁もあつたようであります。この点は避けますが、相関連しましていわゆる一万田さんの所説のように伝わつております二重通貨制度と申しますか、兌換券と硬貨もしくは管理通貨、こういうものを国内に二本建で流通する。もつと深くつつ込んで言えば、昔一応考えられましたようなA号軍票、B号軍票というような性格を持ちました円建の通貨が生れて来るのではないか、こういうことも心配しております。たとえて申しますならば、国際取引におきます為替相場は、三百六十円をかりに堅持いたしましても、国内の通貨は三百六十分の一の一円、それが対外的には三百六十円に通用するのだというような観念に誤伝されておりますが、この点につきまして大蔵大臣はどういう御観察を持つておりますか、一応お教えをいただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/26
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027・池田勇人
○池田国務大臣 私は二重通貨のことか、あるいは今の三百六十円をどうこうするという考えは持つておりません。中にはゼロがたくさんつくからやつかいだとか申しますが、フランスにおきましても、フランスがやはり一ドル三百三十フランだつたかと思います。初めは二通りも三通りもありましたが、三百フラン余りであるのであります。どうして日本だけでこんなことが論じられるのか、どうも気の早い連中が多いというか、取越し苦労をしたがるというか、これを三百六十分の一にするとか、あるいは百分の一にするとか、そういう必要は全然ないのであります。そういうことをすることによつて、経済の混乱と申しますか、非常な不便が来ることが考えられるのであります。もの珍しいような議論をなされる方の気持が知れぬ、こういう状況であります。私は一萬田君がとやかく言つておることは存じませんが、大蔵大臣としては毛頭考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/27
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028・宮幡靖
○宮幡委員 ただいまの大蔵大臣の御所見はしごくごもつともで、私ども非常に安堵いたしたわけでありますが、およそ国内の資本の蓄積を論ずる立場におきまして、貨幣建の変更とかあるいは為替相場の変更がみだりに起るといたしましたならば、資本蓄積論というものは雲散霧消するわけです。大蔵大臣において不動の信念をお持ちになつてこそ、初めて達成せられるところの問題であろうと思いますので、私どもは大蔵大臣の所信の御表明に対し全幅の信頼を抱いて、資本蓄積の問題を考究して参りたいと思うのであります。
そこでまず最近起つております輸出インフレの問題でありますが、ただいま進行いたしております外為会計の状況をしろうとながら判断いたしてみますと、どうも三月の年度末におきましては相当の支拂い超過になる。特にユーザンス手形の期限の延長等をとりはからいました場合においては、三千億に近い円資金の必要が生れて来るのではなかろうかと思う。と同時に徴税の時期にもなります。そのほか支出の抑制とか、いわゆる財政面からの強力なる資金調節作用あるいは日銀の信用調節等をいたしましても、見込まれますところの引上げ超過というものはおおむね二百億程度、この程度にしか思われませんので、結局健全財政を堅持して参りました全体の国の財政面から行きまして、五百億程度の赤字がどうも出るのではないか、こういう心配がありますが、これはもちろん私ども外の方におる者の考えでありまして、そこに相当の誤謬もあろうと思います。いわゆる建前は黒字財政に組まれておりますが、もしこの外為会計のために年度末におきまして一応赤財政——しかしこれは財政が破綻するというような意味ではありません。その瞬間的な金繰りという点につきまして、やはり資本蓄積と相並んで、一応考慮に入れなければならぬ問題であります。この点についての御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/28
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029・池田勇人
○池田国務大臣 お示しのような状態でございまして、私どもの見通しといたしましては、日本銀行の信用供與が相当ふえて参りまして、一月末には大体二千百億程度の信用供與であつたのであります。それが三月末には二千八、九百億円に相なるのではないかと思います。こういう関係から申しまして、昨年度は一——三月は九百億余りの引上げ超過になつておりましたが、今後租税は予定通りとりましても、私はあまり引上げ超過にならないと思います。これは毎日の貿易状況によつてかわつて参りますが、当初は五、六百億円の一——三月の引上げ超過を計画しておりましたが、三百億円くらいの引上げ超過になるのではないかと思います。そういたしますと、大体各会計を通じまして六百億余りの散布超過、こういうことに相なると思います。六百億になりますか、七百億になりますか、昭和二十五年はその程度の散布超過になる。しかしこれが一——三月の貿易におきましても、今輸入が非常に伸びて参りまして、輸入の許可をいたしましたのは、輸出をはるかに超過いたしております。片一方、また一月の二十三日から、ポンド・ユーザンスをやるための信用供與がこれに乘つかつて参りますから、本年の五、六月ごろまではこの信用供與がふえまして、そうして七、八月ごろからずつと引上げ超過になつて来る。本年度の六百億余りの散布超過というのは、これは一時的な現象でございまして、五、六箇月の特殊の現象でございます。来年度におきましては、二十六年度はとんとんになる、あるいは少し引上げ超過になる、こういうふうな計画でおるのでございます。従いまして、この二、三月、四、五月はちよつと信用を造出し過ぎるような気がいたしますが、ほんの一時的の現象でございます。従いまして私はこれがつつかい棒をさす意味におきまして、見返り資金の方で予定しておりました債務償還の五百億をとりあえずやめて行こう、そうして二十六年度にこれを出す、預金部の方でも六百六十億円余りを翌年度に繰越して、今使う金はあるのでありますが、日本銀行の信用供與が非常に一時的に多くなりましたから、これのつつかい棒に見返り資金と預金部で千五、六百億円の金を置いておこう、こういう計画で進んでおるのであります。これは決して赤字というものではなしに、一時的の貿易の増加によります信用供與、こうお考えいただけばけつこうだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/29
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030・宮幡靖
○宮幡委員 ただいま大蔵大臣のお見通しによりまして、一時的に現われます散布超過と仰せられましたが、それは順次解消して平常な形になることも十分考えられるわけでありまして、この点につきましては御答弁によりましてまつたく了解いたしました。そこで最近資本蓄積方法といたしまして、市中銀行の短期債の発行、こういう問題が取上げられております。この短期債券の発行の是非につきましても、いろいろの議論があろうと思いますが、もし真に民間の資金を吸收し得るとするならば、これは現在の資本蓄積の一方法として考えることに、私どもは躊躇しないものであります。ただたまたま東京銀行が貿易証券を発行するという意味の発表をいたしましたが、それに対しまして大蔵大臣のお考えとして新聞等に伝わります面から行けば、その発行條件をついては相当考慮を拂わなければならぬ、こういうようなことも申されております。ところがこれに関連しまして、東京銀行と琉球銀行との間にコルレス契約が成立したという発表がありました。これが公式であるか非公式であるか判然といたさないのでありますが、もし現段階においておさしつかえがなかつたならば、東銀と琉球銀行とのコルレス契約の成立の有無及びその内容——なければ内容はないわけでありますが、それと東銀のいわゆる貿易証券というものの性格、これに対しまする大蔵大臣のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/30
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031・池田勇人
○池田国務大臣 普通銀行の短期債の発行につきましては、銀行家の間に議論がございます。私は今の制度から見て、こういうことはできることであるし、また非常な資本金を持つていて、預金の少いのに対して、定期預金のかわりとも見らるべき一年期間の五分利付債券を出すということは、資金吸收の一つの方法として適当な方法ではないかという考えをもつて、貿易証券という名のもとではなしに発行をしてもいいかという相談を受けましたときに、それはけつこうじやないかと答えたのであります。これは何も大蔵省の許可を得るとかなんとかいうことに相なつておりません。ただ大蔵大臣としましては、民間の定期預金が一時に厖大な額が横流れするとかどうこういうことがありますと困るので、條件とか発行額につきまして適当な方針を授けたのであります。東京銀行が琉球銀行とコルレス契約を結んだか、結ばないかということにつきましては、私はまだ聞いておりません。ただ問題はあり得るかと思います。最近も司令部のある方が向うへ参りましたし、また財政金融に関しまして、琉球の方から顧問のような人をよこしてくれないか、こういうような申出が二、三箇月前にございました。そうした取引が相当円滑に行くようになつて来ておりますから、そういうことはあり得ることだと思いますが、できたかできないか、まだ聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/31
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032・宮幡靖
○宮幡委員 市中銀行の短期債券の発行については、條件さえそろつておれば拒む方法はない、こういうような御議論のようでございましたが、この債券はもちろん無記名で発行されるということが予想されるのであります。これに関しましては、私の聞き違いかもしれませんが、これを一種の匿名預金と考えた場合には、一つの問題が起つて来ると思うのであります。この短期債の性質から言つて、これがやはり無記名で発行されて——ちよつと言いにくい言葉になりますが、関係方面で示しております方針と矛盾するということに、事実上の問題としてならないのでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/32
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033・池田勇人
○池田国務大臣 私はその点は気がつきませんでしたが、多分割引証券で行つておると思いますから、最終の拂込みだつたら五分二厘くらいになるかと思います。何か新聞紙の伝えるところによりますと、無記名定期預金はいけないということを関係方面の方が言つておりましたが、私は無記名定期預金でないからとめておりません。適当に運営されることと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/33
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034・宮幡靖
○宮幡委員 無記名定期預金は文字通り無記名でありまして、そうは思つておりましたが、一応お考えを伺わないと安心が行かないので、これは愚問で恐縮に思います。
次に、最近大蔵省の御方針でありますかどうか、資本蓄積の一方法といたしまして、貸倒れ準備金というものを大幅に認めて行きたい、同時にこの貸倒れ準備金を資本勘定へ繰入れをしたい、こういうような評判でありますが、事実上大蔵省の税務当局の御発表でございましようか、伝わつておるのであります。これにつきましてはなかなか解釈がむつかしいのでありまして、現在の法制下におきまして貸倒れ準備金を資本勘定に繰入れるということは、法律解釈でできるのか。それとも新たな立法によつてやるのか。この点については、やるという趣旨にはわれわれ賛成でありますが、どういうところへお進みになつておりますか。その点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/34
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035・池田勇人
○池田国務大臣 銀行の貸倒れ準備金につきましては、一定の方法を大蔵省できめておると思つております。それによりまして積み立てられました貸倒れ準備金は、私は債券の発行につきましては、積立金つまり資本勘定と見てさしつかえないのではないか、こういうふうにして行きたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/35
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036・宮幡靖
○宮幡委員 その点はよくわかりました。そこで固定資産の償却の問題が、資本蓄積の問題と関連していろいろやかましく言われておりますが、時間もないようでありますので要点だけ申し述べますと、修繕費の引当て、これは機械を更新するための引当て及び設備更新の引当て、これは同じ性質のもので、運用はいろいろ違いましようが、これらにつきましても、一般法人に対しましてかような引当てを許容しよう、これは将来にわたつての損金計算で認めようというお考えを持つておるか。あるいは現在審議されております予算及びこれが裏づけをいたします税法等の中に、さような趣旨が盛り込まれた点があるかどうか。この点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/36
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037・池田勇人
○池田国務大臣 修繕費の問題はやつかいな問題でございますが、通常の修繕費ならば、これは損金であることは問題ございません。ただ修繕費引当てというのが、これが償却限度内のものであつたら、これは当然認むべきものであると思いますが、それはやはり固定資産の普通の償却限度内であるかいなか。また今後は特別償却、いわゆる緊要な産業の特別の設備に対しましては、特別償却の方法を認めようといたしておりますので、その範囲のものならば、修繕費積立金という名目でありましても、これは実際上認めて行くべきものではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/37
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038・宮幡靖
○宮幡委員 先ほど通商産業大臣がお見えになりましたので、両大臣から伺えば一層はつきりすると思いましたが、幸い首藤政務次官が御出席でありますので、この際大蔵省と通産省の両方の御意見をあわせて承りたいと思います。これもやはり償却に関連したことでありますが、ただいま巷間に伝わつておりますところでは、産業機械設備近代化法というものを通産省としてお考えになつておる。そうしてその伝わりますところの内容を一応検討して行きますと、どうもその全部が税法に関係するものであります。少くとも所得税とか法人税とかあるいは固定資産税とか、そういうようなものを対象といたしました考え方でありまして、これは通産省が独自に切り離して近代化法と銘を打つて考えるのは、ふさわしくないような構想になつておりますが、両省の話合いで、これを税法の一環に織り込んでいただきまして、通産省の希望されるような税の面からの近代化の促進、こういうことを達成したらどうか、こう考えておりまするが、この点につきしまして、両省の御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/38
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039・池田勇人
○池田国務大臣 産業設備近代化法と
いうのは、実は私まだ見ておりません。しかし設備の近代化ということは最も必要な政策でありますので、私は税法その他につきましても、できるだけこれを織り込んで行きたいという考えを持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/39
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040・首藤新八
○首藤政府委員 ただいま御質問の産業近代化の問題でありまするが、ぜひとも産業をこの際徹底的に合理化したい。それにはどうしても機械の更新が必要である。しかもこれには莫大なる資金を必要といたしまするので、この国会にぜひとも提案いたしたいと考えまして、今準備を進めておるのであります。これにはいろいろ予算措置を考究いたしたのでありまするが、どうしても税制面で協力を得る以外にちよつといい方法が見つかりませんので、ぜひとも大蔵省の了解を得まして、この面で進んで行きたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/40
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041・宮幡靖
○宮幡委員 簡単に重要な点を申し上げますが、それは安本長官がお見えになつたときに大蔵大臣の御所見を伺うのがよいので、あるいは予算委員会等で伺つた方がよいのではないかと思いますが、私は単独なる大蔵委員でありますので、この際ちよつと伺いますが、最近物価が相当上る傾向を持つております。予算説明書にもあります通りに、卸市場の指数は順次上つて来ておる。しかしこれもやはり現在の施策が浸透して参りますれば、ある時期を限度といたしまして、依然として横ばい的なものになるのではなかろうか。ますます生産が増強せられ、日本の経済の実力が出て参れば、さらに下落の過程をたどる、こう私どもは考えたいし、またそれが日本の現在の進み行く方向であろう、こう信じております。しかしながら物が上つて消費生活が苦しくなるということに対しまする批判というものは、さような冷静な判断を下しておりません。大体端的に物が上つたじやないか、生活が苦しいではないか、これはまずい政策だ、まずい政治だというような批評を受けるわけであります。そこで安本のお考えになつております物価安定策というものを一応検討いたしてみますると、まず第一番に貿易面からの需給の調整をいたしたい、こういうことを言つております。これは輸入を確保いたし、輸出を抑制するというような行き方であろうと思いますが、その方法をもし強度にとりますると、これは統制経済以外に存在しない方式であります。少くとも特需優先主義を排除いたしまして、内需確保を最重点として転換するというようなことが、言葉の上では言えまするが、事実は統制方式を用いない以上はできないように考えられます。そこで、この程度の物価上昇の傾向に対しまして、かような安定策までとらなければならないか。私どもは今日まで現在の閣僚を初めといたしまして、與党自由党が中心となつて考えて参りました経済政策の成功というものを、何らか否定するような気持がしてならぬのであります。そこでこういうことを一体理論としては考えられるが、方法論から見ますると、実は残念ながらこれに賛成できない、こういうことを大蔵大臣としてお認めになつておるか。あるいは通商産業省としてもこういうことをやらなければならないのか。この点についての一応の御見解を承つておきたいと存じます。
あわせてお尋ねいたしますが、今度特別会計を設けられまして緊急物資の備蓄もできるようになりました。国民生活の不安というものは、まず食糧と衣料であります。衣料も特に日本におきましては繊維製品でありますので、こういう面におきましては、十分手持ち外貨等を活用いたしまして、国内に十分の備蓄をし、食糧については政府の施設となりまする食糧倉庫とでも申しますか、こういうようなものを設けまして、国民に一応安心を與えて行くというような方法をもとらなければならないのではなかろうか、こう考えております。と同時に、安本の言う言葉にもう一つあります。金融の質的統制の強化、これは質の悪いやつには貸さぬのだと考えれば簡單な言葉でありますが、やはり質的な統制でありましても、統制という言葉は、はなはだもつて現在の金融政策とそぐわない言葉であります。これももう少し緒論を加えたいのでありますが、時間がありませんので、荒筋だけお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/41
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042・池田勇人
○池田国務大臣 私は今お話のように、また統制して行こうというふうな考えは持つておりません。国内物資の確保のために輸出を抑制するというようなことは、日本の経済を縮小に持つて行くようなものでありまして、とるべきではない。輸出もどんどんやりますが、それ以上に輸入の方に力を入れる。こうすれば、宮幡委員のお話のように、一時的の現象でありまして、行く行くは輸出がふえて来れば安定することと考えているのであります。
なお金融の質的統制、こういうようなことを言つているとかいう話でありますが、この大蔵大臣は金融の質的統制というのは、意味はわかりませんが、そうむちやくちやに金が使われているというわけでもございませんので、とにかく合理的なことはやつて行かなければなりません。金融の情勢を見まして、いわゆる効率適用の率をある程度かえるとか、こういうような金融政策として一つの大きな筋道は考えて行かなければなりませんが、今までの金融統制、昔やつておつたような統制をやる考えは持つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/42
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043・首藤新八
○首藤政府委員 最近物価がだんだん上昇しておりますことは事実であります。しかしこれは日本だけの物価高でなくして、いわゆる国際商品が一齋に上つておりまして、これにマツチした現状でありますので、これに対して日本だけが抑制の方法を講ずるということは不可能でありまするし、おそらく安本もさような考え方は持つていないと存じているのであります。そこで通商産業省といたしましては、この際できる限り輸入の促進にあらゆる努力をいたしまして、もつて供給を確保する、そして経済界の安定に資する、こういうような構想のもとに、現在のところは輸入の促進にあらゆる努力を拂つている次第であります。ただ一時的に非鉄金属が若干不足するのではないか。従つてこの不足することによつて、日本だけ特殊な高値を示すようなことになりますれば、それが全般の経済に非常な影響を及ぼしますので、この面に対しましては若干の輸出の制約をやるとか、その他の方法によつて価格の無数な上昇を押えたい、かような程度の考え方にすぎないのであります。なおそれがためにできる限りこの際重要資材の輸入を促進いたしまして、備蓄をいたしたい。そして緊要なる輸出をますます振興すると同時に、国内の供給をはかつて行きたい、かような所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/43
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044・宮幡靖
○宮幡委員 これでやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/44
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045・宮腰喜助
○宮腰委員 大蔵大臣にお伺いします。朝鮮動乱に伴う特需関係等で本年度は輸出超過で、経済界は再びインフレになるような状態になつて参ります。ことに貿易状態は非常な有利な状態にありまして、大正八年以来の好景気と聞いております。ただ本年度も現在の七億ヤールを上まわつて、十億ヤールの生産に近いようながんばり方でありまして、それと同時にまた機械を六十万錘もつくりたい。綿花代金として七百億も必要である。それからまた機械の製作に百三十億も必要であるというような状態で、今年度はそういうような関係で、相当一部には膨脹する資産を獲得できる。他方また農村においては、農具は高くて採算がとれないというような方々も出て参ります。こういう問題に関しまして、特需業者に対して特別税をかけたらどうかという前委員会での私の質問に対しまして、法人税に対しては特別な税をかけない、こうおつしやつておりますが、現状の段階で行くと、これは一方的なインフレであつて、農村や漁村に対してはほんとうに迷惑な事態が生じておるのであります。政府はこういう場合にも、法人税に対して特別税の処置を考えないつもりでありましようかどうか。その点をひとつお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/45
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046・池田勇人
○池田国務大臣 特需の方に特別税をかけてはどうかというお話でありますが、これは景気のいいのは今の特需ばかりではございません。世界の市場の変化によつて来ておるのであります。特需と申しますと、自動車の製造とか何とかいうのがまず考えられるようでございまするが、それ以上に、やはり特需には相当関係はございまするが、人絹が一番いい。それから今の紡績がいい。こういうようなものであつて、特需関係者だけに特別の税をかけるということは、技術上なかなか困難なことであります。しからば翻つて昔のような超過所得税をとつてはどうかという考え方もあるやに聞いておりまするが、私は今の法人に対しまする課税というものは、昔とは違いまして、個人の延長という考えでやつておるのであります。資本の蓄積の必要な場合におきまして、特に昔のような超過所得税とか、臨時所得税とか、臨時利得税、こういうことはただいまのところ考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/46
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047・宮腰喜助
○宮腰委員 大蔵大臣は、昭和二十六年度の予算編成は快心の作であるということを言明されておりますが、しかし朝鮮動乱の結果、さらにまた重大な事態が来る。そうして予備隊強化というような問題が起きて参ります。こうなつた場合に、やはり増税という問題を考えて行かなければいかぬようなことも起きて参ります。また大臣は減税をするということを言明されておりますが、減税ができない事態になる場合もあり得るのではないかと思いますが、その点をひとつお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/47
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048・池田勇人
○池田国務大臣 私は御審議願つておりまする予算で、大体二十六年度は切り拔け得ると思つておるのであります。しかしこういう情勢のもとでございまするから、いかなることが起つて来るかもわかりません。そのときにはまたそのときで御審議願えばいいので、こうなつた場合にはどうするか、ああなつた場合にはいかなる措置をとるかということは、ただいまのところ考えておりません。増税は私は最もきらいな一人であるのであります。減税は最もすきなものの一人でありますので、増税どころか、できれば減税したいという気持は、今も今後もかわりないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/48
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049・宮腰喜助
○宮腰委員 時間もないようでございますから、もう一点お伺いいたします。
不動産金融機関の問題でありますが、これは前の委員会、前々の委員会でも再三私お伺いしたところでありますが、重ねてもう一回お伺いしたいと思うのであります。実は農地調整法等によつて農村の金融はほとんど閉塞状態になつておりまして、いかなる方法によつても金融の処置ができぬという段階になつております。そこで私は一般銀行、特殊銀行、いわゆる興業銀行、勧業銀行、北海道拓殖、ああいうものを一般銀行に繰入れて、不動産金融機関をたな上げにしてしまつたというようなことが、農村金融の今日のこの困る状態になつたのではないかと思います。こういう際に、私は全国の地方銀行あたりが一丸となつて、不動産金融機関をつくつていただくか、あるいは場合によつては、こういうものについて政府も援助を與えるというような形で行けば、この不動産金融機関ができるのではないかと思います。この金融機関ができないために、中小資金に困つたり、あるいは農漁村の中小資金に困つたりというような状態が続いておるわけでありますが、この不動産金融機関を何とかもう一度再現する。いわゆる昔の勧業銀行の貸付のようなものがぜひ必要だと思うのであります。政府はごく最近に何々金融金庫をつくるのだと盛んに言つておりますが、私は現在の政府や自由党の考え方から言えば、いわば国家経営の金融機関というものは、現政府でも賛成しないはずだと思うのであります。こういうような際に、ぜひともそういうことでなく、りつぱな不動産金融機関をつくつていただいた方がかえつて効果的である、こう思いますが、これについて政府の考えを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/49
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050・池田勇人
○池田国務大臣 不動産担保の金融につきましては、前から議論もございますし、われわれもこれにつきましては相当関心を持つて研究をいたしているのであります。一時勧業銀行が不動産銀行的の部面を持つたらどうかということでやつてみましたが、何分にも今の資金コストはかなり高うございます。しかしてまた銀行経営にも相当の費用を要しますので、不動産専門の銀行としてはなかなか立ち行かない。二割程度の貸付金の率でやらなければできない、こういうふうな状況で非常に困つているのであります。御承知の通り昔の不動産銀行と申しますと、三分五厘か四分程度の長期債を発行してやつておつた。そしてその事務にも相当なれておつたということもあるのでありますが、今これをやることはかなり困難な問題であるのであります。しかして問題は、不動産銀行のことで今お話の出ました農業者関係の不動産金融につきましては、私は組合その他の結成によりまして、農林中金の方から相当出し得るのじやないか。そういうふうな方向に指導して行きたいと思つておるのであります。また市街地不動産金融につきましては、普通の銀行の中小企業金融の部面でも考えたいし、また最近もできると思うのでありますが、見返り資金は普通銀行だけの取扱いでありましたが、今後は無盡会社、信用組合の方にもこれを取扱わせるように今交渉しております。多分できると思いますが、そういうふうな既存の金融機関を通じまして、できるだけ市街地の方の不動産金融をやつて行きたい。要すれば今の無盡会社等につきましては、相互銀行の制度を確立して不動産金融の一部に充てたいと思います。何分にも不動産専門と申しますると、繰返して申しまするが、なかなかコストが高くついてやりにくいのであります。どうも專門銀行というのは、ちよつと今の過渡期におきましては、なかなか存在がむずかしいのではないか、やはり既存の銀行を使つて、既存の銀行が出しいいような方法を考え出すよりほかにはないかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/50
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051・三宅則義
○三宅(則)委員 私は大蔵大臣に一つ質問があります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/51
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052・夏堀源三郎
○夏堀委員長 参議院から大蔵大臣の出席を求められておりますので、三分程度でお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/52
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053・三宅則義
○三宅(則)委員 アルコール専売事業というものは、これは通産省の所管になつていると聞いているのでありますが、アルコールと酒とはきわめて密接な関係があるのですから、これは専売公社、大蔵省所管に移した方が国家財政上も便利であると思いますが、それをどういうふうに考えておられるか、これが一点。
第二点は、事務当局から聞きますと、何かアルコールの工場は官営でありますが、まだ三分の一しか能力を出していない。三分の二は余力がありますけれども、製造していない。こういうことを言われているのでありますが、私どもは国家の今日の情勢から考えまして、ガソリンというものに依存することが必ずしも最高ではない。場合によりますと、ガソリンが多少不潤滑になるというようなことも、考えられないとも限らないと考えますから、ぜひアルコールをフルに全部使うというように、機械を拡充した方がいいと思いまするが、これに対しまして、政府といたしましては、原料でありまするいもの買付とかその他の関係もございましようが、十分なる能力を発揮せしむるように、国策として政府も考えておかれたらいいと思いますが、これに対する大臣の答弁を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/53
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054・池田勇人
○池田国務大臣 アルコール専売は昭和十一年ごろにやりまして、十六年まで大蔵省所管であつたと思うのでありますが、戦時体制に切りかわりまして、これが今お話のように軍需に非常に関係がありますので、昭和十六年に通産省の方に行つたのであります。その後致酔飲料との関係がありますので、大蔵省の専売公社の方へ移したらどうかという議論はあるのであります。これは今通産省とも相談いたしまして研究をいたしております。一部面は酒と関係がございます。一部面はいわゆる一つの工業原料でありますので、今せつかく両省で協議をいたしておるのであります。
次にアルコール製造設備は官営の方でもほとんど半分以上遊んでいる。これは官営工場ばかりではありません。民営の工場にしましても四割程度しか動いていない。これをうんと動かしたらどうかというと、これは原料がないので、今年なんかはいもが相当入るという予定でおりましたところ、かえつていもが出ないので、四割も動かないのじやないかという状況であるのであります。原料が十分にありますればつくりたいのでございまするが、またうんとつくつて、さあこれをどうするかという問題になりますると、飲んでしまうわけにも行きませんし、ガソリンへまぜてもどの程度の原価になりまするか、増産には熱意を持つておりまするが、これも程度の問題だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/54
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055・三宅則義
○三宅(則)委員 それでは通産次官にお伺いいたしたいと思うのですが、このアルコールから液体燃料、いわゆるガソリンに混入するとか、あるいは高度に研究すればガソリンに匹敵するような性態のあるアルコールもできる、こういうことを聞いておるわけであります。原料の入手ということにつきましては、これは国内産のいもでできるわけでありまするからして奨励もし、もしくは将来のガソリン対策ということにつきまして、最も十分なる研究と同時に、液体燃料といたしまして相当御研究があるはずと思いますが、これに対しまして政務次官はどういうふうに考えられておりますか。将来においてもアルコールを原料といたしまして、相当活発にやるという御覚悟がありますか、お伺いいたします、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/55
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056・首藤新八
○首藤政府委員 最近燃料用としてのガソリンの需要が漸次増加して参つたのであります。これは一時中止しておつたのでありまするが、他の燃料との供給面を考えて、一昨年から使用を許可して参つたのであります。しかしながらその後の情勢を見ますると、その消費量はわれわれの期待したほど増加してないのであります。なぜ増加してないかと申しますと、第一価格の面が他の燃料に比較しまして高いということが、一番大きな原因になつておるのであります。しかもただいま三宅委員から申されました通り、現在四割より操業してない。ちようど本年はいもの豊作であつたので、もつと増産できる計画をいたしておつたのでありますが、われわれの予想した価格は二十円であつた。ところが実際は他の方面の需要が多くて、三十円ないし三十五円という高値で、その方面に獲得されたという事情もありまして、予定ほど増産をしてないのであります。かりに二十円といたしましても、現在のところ他の燃料に比較してまだ高い。どうしても今後の消費をふやしますためには、増産も必要でありますし、さらに進んで原価をできる限り低廉にしなければならぬという面に、格段の努力を拂わなければならぬと考えておるのであります。御承知の通りガソリンはその大部分が輸入品でありまして、外貨を必要とします。また一方アルコールは幸いに国産品の原料が使えまするので、何とか将来できる限り価格を低廉に、しかも品質のいいものをつくらせるという方向に努力して参りたい、かように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/56
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057・三宅則義
○三宅(則)委員 今通産政務次官の御答弁で大分了承して参りましたが、私はもう少し希望申し上げたい。昨日も事務当局から詳細に承つたのでありまするが、われわれとしまして戦時体制ではありませんが、国外の情勢等から考えまして、相当日本におきましても液体燃料を考える必要があるのは、申すまでもないことでありまして、わが国のガソリンは需要量の約一〇%しか国産品ではない。九〇%は外国品の輸入にまたなければならぬ、こういう点でありますが、この九〇%の外国品のみに依存しておるという事柄は、はなはだ穏当を欠くのでありますから、これは政治家であります首藤政務次官にひとつお尋ねしたいのでありますが、外貨はいりませんから、経費はかかりましても国内産のアルコールからガソリンをつくるとか、ガソリンに匹敵するような液体燃料をつくるようにしたい、かように考えますから、閣議でもあるいは政務次官会議におきましても、こういうような液体燃料につきましては、日本といたしましては必需品でありますから、多少これに補助をいたしましても、あるいは値段の高い原料を買うような方法をとりましても、ぜひ液体燃料の製造のために格段の努力を拂われたいと思いますが、これに対しましてもう一ぺん、ひとつくどいようですが、御覚悟のほどを承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/57
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058・首藤新八
○首藤政府委員 先ほど申しましたごとく、今後できる限り外貨を節約する。そしてこの国産の原料をより多く使つて自立経済に寄與したい。これは御質問があるまでもなく、われわれは強くこれを主張しておるのであります。従つて今後も御質問の趣旨に沿つて、あくまでもその実現に邁進いたしたいと考えておりますが、先ほど申しました通り、価格の高いことが一番大きな原因であります。もう一つは自動車の燃料としての質の関係も、相当影響しておると考えておるのであります。従つて将来は価格を低廉にいたすとともに、自動車燃料としての適格品をぜひとも製造するような方向に指導して参りたい、かように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/58
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059・西村直己
○西村(直)委員 郵政事業特別会計の歳入不足を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案、及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案、アルコール専売事業特別会計から一般会計への納付の特例に関する法律の一部を改正する法律案、この三法律案は審議も大体済んだと思いますので、質疑を打切りまして、後日討論あるいは採決せられんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/59
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060・夏堀源三郎
○夏堀委員長 西村君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/60
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061・夏堀源三郎
○夏堀委員長 御異議ないようであります。さようとりはからいいたします。明日は討論採決に入りますから、ぜひ御出席を願います。
本日はこれをもつて散会いたします。
午後二時五十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X01019510207/61
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