1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年三月一日(木曜日)
午後二時五分開会
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本日の会議に付した事件
○経済調査庁法の一部を改正する法律
案(内閣送付)
○法務府設置法の一部を改正する法律
案(内閣提出)
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001・河井彌八
○委員長(河井彌八君) これより内閣委員会を開会いたします。
経済調査庁法の一部を改正する法律案、これは予備審査でありますが、これを議題といたします。先ず政府から提案の理由の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/1
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002・小峯柳多
○政府委員(小峯柳多君) 経済調査庁法一部を改正する法律の提案理由につきまして御説明申上げます。
政府は、昨年五月の経済調査庁法の改正によりまして、経済調査庁をして、一年間を限り特別調達庁の業務の調査及び経理の監査を行わせることといたしましたので、経済調査庁におきましては、可及的に期限内に所期の調査を完了するよう、鋭意努力いたしますと共に、調査の結果につきましては、随時、勧告その他所要の措置によりまして、調達業務運営の改善並びに国費の節減に寄与して参つたのであります。併しながら、何分にも、調達業務は極めて広汎に亘つておりますので、遺憾なから現在までに未だ調査に着手するに至り得なかつた部門も相当残されており、すでに調査いたしました部門につきましても、期間の関係上抽出調査を余儀なくされたものもあるような実情であり、更に調査を続行する必要を生じて参つたような次第であります。これらの事情からなお当分の間、引続き経済調査庁をして特別調達庁の業務の調査及び経理の監査を行わぜる必要がありますので、本改正を行わんとするものであります。
何分速かなる御審議と御賛同をお願いたす次第であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/2
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003・河井彌八
○委員長(河井彌八君) 本案につきまして委員諸君から御質疑がありますれば、この際お願いいたします。
では経済調査庁法の一部を改正する法律案につきましては、まだ予備審査でもありまするから、もう一回更に次に続行することにいたしまして、法務府設置法の一部を改正する法律案を議題といたそうと思います。御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/3
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004・河井彌八
○委員長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。それでは法務府設置法の一部を改正する法律案、これを議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/4
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005・高木松吉
○政府委員(高木松吉君) 只今上程になりました法務府設置法の一部を改正する法律案につきまし、て、その提案の理由を簡單に説明いたします。
先ず少年院の分院の本院への昇格から申しますと、御承知のように、昭和二十四年一月から新少年法が実施され、それ以来、少年院の施設につきましては、絶大な御支援の下に、相当程度の充実を見たのでありますが、このたびの少年法の適用年令の制限解除に伴い、更に一層その切実さを加えて参りましたので、分院の現状から見まして、(一)本院から遠距離にあるもの、(二)本院とその性質を異にしているもの、(三)分院が多数あるため本院の負担が過重になつているもの等、特に指揮監督及び運営上少なからず困難を伴つております分院を選び、これを本院に昇格させてその悪條件を取り除き、併せて必要な施設を拡充して、少年の矯正保護の実を挙げることが必要なのであります。この観点からしまして、十一カ所の分院を本院に昇格させるため、新たに別表五に加えたいと考えるのであります。
分監の監獄への昇格につきましては、横須賀刑務支所は、昨年十一月の連合国人に対する刑事事件等特別措置令の施行に伴い、従来連合国の管理下にあつた連合国人受刑者を引受ける必要を生じましたので、これをここに集禁ずることとし、新たに入所する外国人と共に、專ら外国人刑務所として運営することによつて過誤のないことを期しますため、又広島拘置支所は、在来の広島刑務所拘置監の被告人が相当多人数で、拘置所としての独立準備中のところ、その工事が昨年完成を見ましたので、刑事訴訟の全き運用と被告人、被疑者の権利擁護を図りますため、それぞれ本所に昇格させたいと考えるのであります。
医療矯正保護施設の名称の統一につきましては、その社会復帰のために治療を第一義とすべき受刑者が多数あることに鑑みまして、専門的な医療施設として、八王子少年刑務所と北方刑務所の二カ所をこれに充て、その実体を表示するため、名称を医療刑務所として、その性格を明らかにしようしたのであります。又従来からの四つの医療少年院中関東医療少年院を除き、その区々な名称を改めて医療少年院というようにしたいと考えるのであります。
その他施設の位置の変更に伴う所要の改正を若干いたしておるのであります。
以上が、提案の理由であります。何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/5
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006・河井彌八
○委員長(河井彌八君) 本案につきまして何か御質疑がありますればこの際お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/6
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007・郡祐一
○郡祐一君 これは設置法でありまするけれども、少年犯罪なり、それから今御説明のありました医療矯正保護、こうしたことが特に必要であり、その性格をはつきりさせるためというのが御説明にございましたが、そういう点について現在の模様、それから注意すべき動向というような点がございましたら一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/7
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008・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 御承知のように少年法の年齢が二十歳に引上りまして、その実施は過去二年間延期されて参りましたのでございまするが、本年の一月一日から全面的にそれが実施せられて参りました。その結果十九歳という相当成人に近い心身の発育を見ておる者の犯罪事件を、家庭裁判所において先ず保護事件として扱うという、保護の面が非常に大きな部門を占めて参つたのでございます。この家庭裁判所の運営如何によりましては、相当社会の治安の面にも影響があることでございまするので、関係当局におきましては常に連絡を緊密にいたしまして、新らしい制度による法の運営に遺憾なきを期しておる次第であります。只今までにわかりましたことをここで御披露申上げるのに材料が非常に少いので苦しむのでございまするが、一般的に申上げますれば、少年法というものが先ず少年の福祉ということを第一義にして、それと社会の福祉との兼ね合いを考えて、少年に刑事処分或いは保護処分をしておるのでございます。その性質上勢い保護処分というものが多くなりまして、少年に対する刑事処分がやや手薄になる、それが一般の犯罪に、少年の犯罪に或る程度の影響を与えておるということは、これは一般的傾向として認められるのでございます。併しその点も将来におきまする運営において、間違いがなければ漸次是止されると思うのでございます。
なお少年院に保護処分として入つて参ります者が、従来ならば刑事裁判所に送られて少年刑務所に入るべきものという者が成る程度多かつたということもあつたのであります。さような一般的な傾向が出ておりまするので、今日二十歳までに引上りましたにつきましては私どもは非常にこの法の適切な運営を期するために一段の努力をいたさなければならんと思つておるのでございます。
なおこの医療少年院というものは、これは今度の少年法によりまして、少年院の一部として規定せられておるのでございます。少年院は御承知のように初等少年院、中等少年院、特別少年院、それから医療少年院という四種に規定されておるのでございます。その医療少年院と申上げるのは、精神的或いは肉体的に医療を要する少年を收容して、適切な措置を講ずるというための施設でございまして、医療少年院におきましては、結核を收容する所、或いは精神病質的な者を收容する所、その他性病その他のものを收容するという所等が今日あるのでありまして、それぞれ専門的な治療を施すことになつております。まだこの少年院ができましてから二年の経験でございまして、予算その他の点で制約を受けまするために、十分な業績を挙げていないことは申訳ないのございまするが、すでに相当部分の少年院におきましては、例えば精神疾患、精神病質的な少年につきましては、一般精神医学で行う治療等、電撃療法や前頭葉切断とかいうような手術もいたす程度になつておるのでございます。
刑務所につきましては、只今北方刑務所と八王子少年刑務所が今度の法律案の議題になつておるのでございまするが、北方におきましては、主として成人の低格者、精神病質的な犯罪者を集めまして同じような治療をいたしておるものでございまして、八王子は主として少年の低格者等を收容しておるのでございます。更に最近この施設が拡充いたしましたので、その他の種類の受刑者を集禁したいと思つておるのでございます。
大体御質問に対するお答えを申上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/8
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009・郡祐一
○郡祐一君 今御説明もありましたが、恐らく予算で制約されて、少年院についても本院に昇格はしたが、まだ十分でないという所があるのではないかと思いますが、何と申しまするか、法務府の当局の理想としておられるところとよほどまだ現在の物的設備などは隔りがあるものでございましようか。
それからこういう少年などの社会保護という場合に、これを指導される人、従つて指導される職員というものは非常に大事だと思いますが、そういう職員なり或いは又お医者さんなりも、普通の職員なり普通のお医者さんとはよほど精神的にも違つた人でないと十分な指導はできないと思います。そういう点について、十分な安心のできる人が持てておりましようか。それからそういう特殊な仕事をされる人の待遇についてどういうお扱いになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/9
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010・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 予算の点につきましては、このたび昇格いたすための予算としては特に頂いていないのでございまするが、年齢引上げに必要とします職員として、若し只今の予算案をお認め下さいますれば、従来の職員の約三分の一という職員が新たに得られることになるのでございまして、それによつて賄うことができると考えております。
施設、設備等につきましても、勿論私どもの理想としておりまするところには非常に遠いのでございます。これにつきましては来年度の予算におきまして、若しお認め下さいますれば、或る程度の進歩が得られるのでございまして、更に来年度におきましてもこの点につきましては議会の絶大な御支援によりまして一層拡充したいと思つておるのでございます。実はいろいろな方法がございまして、職員も或る程度揃えましても、器具、設備等のためにそれが活用できないというような場合もあるのでございます。私どもといたしましては、一刻も早く予算を得て設備を整えたいと考えておるのでございます。職員の点につきましては、只今問題になつておりまするこの医療少年院につきましては一々申上げられませんが、三人乃至五人の医官がすでに勤めておるのでございます。それぞれの専門的な医官をそこに採用しておりまするが、未だ定員全部を充足するに至つておりません。なお矯正施設に勤める医官その他の専門家は御質問にありました通り、ただその専門だけでは足りないのでございまして、どうしてもこういう少年を社会復帰させるということについて熱情のあるかたでないと到底とどまつてやつて頂くことができないのでございますので、ためにその人を得るということは非常に困難なことでございます。従いましてこれについては勢い待遇という面から広く各方面のかたを迎え得られるような工合にいたしたいと思つておるのでございます。併し今日では一般の技官と同じ、まあ人事院では同じと申しておりまするが、特別に我々のほうがいい待遇を得るということができないために、非常に人を得るのに困つておるのでございます。殊に精神医学等につきましては、日本でもその全体の数が少いのでございまして、これらの人を矯正施設に十分迎えるのは今日困難しておるのでございます。以上御質問に対しまして申上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/10
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011・竹下豐次
○竹下豐次君 この法律案に面接の関係はありませんが、重大な関係があると思いますからこの際お伺いして置きます。終戦後少年の犯罪の傾向が著しく変つて来たということを言われておりますが、ここ数年間における少年の思想の動向、それから犯罪の傾向、特に終戦前と著しく違つた点というような問題につきましてお話願いたいと思います。なお資料がございましたら、すぐでなくてもよろしうございますから、あとでも結構ですが、頂戴したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/11
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012・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 終戦後少年犯罪が非常に激増いたしましたことは事実でございます。その数を申上げますると、国警本部の調査によりますると、昭和二十年には刑法犯として、十四歳未満の者も入れまして二十歳までの者を総計いたしまして五万四千七百八十四名ということになつております。それが二十一年には十一万一千七百九十名、二十二年には十万四千八百二十九名、二十三年に十二万四千八百三十六名、二十四年度は十三万一千九百七十名となつております。なお昨年度の統計につきましては、只今持合せておりませんのでいずれ御報告申上げたいと思います。そうしてこれらの数の増加と共に目立ちまずるのは、凶悪犯罪の数が殖えておることでございます。いずれ必要でございましたら表にして差上げます。例えば殺人は、昭和二十年には百四十九名ございましたが、二十四年になりまするとこれが四百十五名になつております。強盗は、二十年が四百五十二名でございますが、二十四年になりますると二千七百九十四名、強姦、放火、窃盗等もさような傾向で、これが数の増加と同じようにこの数が殖えておるのでございます。少年の犯罪の質がかように悪くなつて参りました原因が、どういうところにあるかということは、今日各所でいろいろ問題にしておるのでございまするが、未だそれについて、はつきりまとまつたデータによもての調査はできておりませんので軽々に申上げることはできないのでございます。ただ法務府の少年院などに入つておりまする少年によつて調べましたところによりますると、非常に少年というものが不羈奔放になつておつて、監督者という者の言うことに対しては極めて無関心であるのでございます。そうしてやることが昔の、二十年以前の少年よりも非常に突発的な、目に付きやすいことをやるという点が特に目立つのでございます。数の増加、質の悪質化等も相当ではありまするけれども、特に最近におきましては、非常に目立つ、突飛なものが非常に出るということが見られるのであります。只今の少年の教育にいたしましても、非常にそういうような点から困難をしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/12
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013・梅津錦一
○梅津錦一君 今の点ですが、そういうような資料が是非欲しいと思うので、竹下さんのおつしやつたのと同じです。今のような資料が……。なお原因と思われるようなものに対して、只今不覊奔放或いは突発的だとか或いは突飛なものというような特異な犯罪ですね、こういうようなものが何か時代の動きですか、そういうような情勢が、社会的な情勢がそういうものを作つておるに違いないと思うのですが、そういう点から、それではそういうような突飛な事件の小部分でいいと思うのですが、そういうようなものが集約できておれば、そこから何らかの形で今の少年の一つの傾向がわかると思うのですが、そういうようなところがわかれば非常に都合がいいと思いますので、そういう点から、そうむずかしくお考えにならないで結構でございますが、資料を欲しいと、こう思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/13
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014・竹下豐次
○竹下豐次君 何かお答えになられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/14
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015・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 追つて作成して提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/15
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016・竹下豐次
○竹下豐次君 先ほどの御説明に犯罪が特に増加しておるその原因は、それぞれ調査中であるが、まだ十分な調査ができないから迂潤にそれを述べるわけに行かないという愼重な答えで結構だと思つておりますが、ただ一度犯したその少年犯の子供たちを矯正する上につきまして、一体どういう原因でそういう犯罪をするようなことになつたかというその基礎がはつきりというところまで行きませんでも、相当にわからないというと矯正のしようにも因るのです。ただいい人間にならなければならないぞというようなことをぼんやり教えることではいかんと思います。その根抵を早く突きとめるということが必要じやないかと思うわけです。不覊奔放になつておる原因、監督者に対する関心が少くなつておるとか、こういう事実が事実あるだろうと私心想像はいたしておりますが、そういうところに至る原因、社会の情勢とかいうようなそれぞれ複雑な点がたくさんあるのじやないかと思いますが、こういう点につきましても、もう少し今まで本当に完全な調査ができていないにしても、今日までできておる程度のことでもお話が頂けたら結構だと思います。なお、まあ我々といたしましても、今日までできておる当局の御調査を話して頂ければ、今後我々が気を付ける上においても非常に参考になると思いますので……。
なおいろいろ予防の点につきまして当局は相当に手を盡しておいでのように承わつたのでありますけれども、それもどういう方法でその予防を講じておられるのか、それも具体的に……、或いは学校との関係、或いは家庭との関係、そのほか社会事業の団体、そういう方面とこの犯罪との関係、或いは生活の関係というような点につきまして、どういう手を打つておられますか伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/16
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017・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 少年の矯正保護につきましては、その原因を突きとめてその原因に対する最も適切な措置を講ずるというよう必要があることは御指摘の通りでございまして、個々のケースにつきましては、すべて御指摘の通りな方法をとつてやつておるのでございます。特にこの少年犯罪につきましては早期にその原因を発見して適切な方法をとる、少年につきましては非常に原因が突きとめやすいのでございまして、成人について非常に複雑した、原因の錯綜しましたものに比べますと、少年につきましてはそれが非常に簡單に突きとめやすいのでございまして、犯罪防止の上から考えますと、不良傾向のある少年に対しまして早期にさような措置を講ずる、そうして大きくなる前に立派な人になるようなあらゆる手段を講ずるということが必要でござまますので、各現場の施設におきましては、少年一人々々につきましてそれぞれ本人の資質の鑑別を社会学的な面から見るとか、或いは精神医学的な面から見るとか、心理学的な面から見るとか、或いは生活歴等から見るとか、今まで申上げましたのは本人の資質の調査でございますけれども、更に環境の調査という点を十分にすることになつております。御承知のように少年法では、起訴する前にそういうような調査をした上で処分をするという方法になつておりますから、裁判所においてもそれをやる。法務府の少年保護鑑別所も資質鑑別の一役としてやつております。そうしてあらゆる面から見ました措置を講じなければ、少年に対する適切な保護にはならないということでございますから、現場ではやつております。私が申上げましたのは実はそういう個々のケースが非常にたくさん集まつておりますが、それをパーセンテージにしましてどの点が主であるかという最後の総合的な締めくくりのものがまだできておりませんので、只今簡單に申上げられません、いずれできました程度のものは差上げたいと思います。
なお犯罪予防の問題でございまするが、これはたしか第五国会から両院の御決議によりまして、政府といたしましては少年犯罪予防のためにさらに一層適切な手段を講じなければならんというお示がございまして、そのときに内閣の下に中央青少年問題審議会というものが設置せられまして、各省が協力して少年の不良化防止ということに努力することになつておりまして、毎月幹事会或いは委員会を催しまして、各人それぞれの分野から出ましたデータを以て相談し合い、他の協力を得るという方法をとつているのでございます。そうして昨年も中央におきまして大会を開きましたが、各地方でも協力してやるという方向に進んでやつております。なお法務府といたしましてこの犯罪予防につきましては、主として司法保護委員等の手を借りますことと、そのほかいろいろな団体に現場において働きかけることによりまして、社会の関心を深め協力を得るように努力をしているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/17
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018・竹下豐次
○竹下豐次君 先ほど承わりました少年犯罪が年によつて、少し減つている年も……、二十年ぐらいが減つておりますけれども、あとはずつと殖えている。これは成年の犯罪もこういう傾向になつておりますか。どんどん殖えて行く傾向にありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/18
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019・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 成年も同様に殖えて参りまして、只今全部の検挙件数、犯罪件数についての統計は私持合しておりませんが、收容者の数で申上げますと、終戦前の昭和二十年に四万二千二百六十五名というものが全国の刑務所におつたのでございます。それ以前の数字は大体四万台から五万台を出たり入つたりしておつたのでございますが。昭和二十一年にはこれが殖えて六万七千九百九十五名、昭和二十二年が七万九千九百十六名、二十三年が九万一千百九十八名、二十四年が九万六千六百四十七名、二十五年は、四月から十二月までの毎月の平均が十万三千人余でございます。なおこれも正確に調べまして、追つて書類にして御報告申上げますが、大体この数と御承知願います。実はこれは取つた月によつて違いがありますので、この点一年間の平均のやつか何かで詳しく御報告申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/19
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020・竹下豐次
○竹下豐次君 この少年犯と成年犯を比較してみますと、いずれも非常に増加しておりますが、まだ少年犯の増加率のほうが高いように思います。大体犯罪の増減の理由というものはいろろありましようけれども、極く漠然だる見当をつけますと、非常に生活が苦しくなつたというような場合には犯罪が殖えていると考えられます。又教育が非常に悪くなつたら又殖えて行くだろう、こういうふうにも考えられるわけです。終戦後生活というものは、一般的に言うと幾らかよくなつているというふうに見えるのじやないかと思いますが、併しこれも細かく言いますと、成る家庭、つまり金を持つている人は金さえ出せば買えて生活が楽になつているけれども、併し又一方には品物は殖えているけれども、買う金はいよいよ詰つて来たというような点で、却つて生活が苦しくなつて来ているという人もあるのじやないか、こういうふうに考えます。併し概括して見ると、幾らか生活が楽になつて来ているのじやないかというような気もするのであります。お伺いしたいことは、社会教育なり、学校教育なりなどの不徹底のために殖える傾向が多いのか。或いは生活難のために殖える傾向が多いのか。その点を法務府のほうじやどういうふうに観察しておられますか、その点を御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/20
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021・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 少年犯罪の数が非常に殖えておりまするのですが、又この検挙数その他は警察力とか検察力というものと非常に関係があるわけでございまして、果して終戦後の混乱時代に犯罪が非常に少なかつたということは又考えなければならんことだと思つております。私ども毎年犯罪者の数をいろいろ予想いたしまして施設の準備をいたして参つたのでございますが、その当時も幾度かそういうふうな問題に逢着いたしまして、治安を維持する力が非常に殖えてくるということは犯罪者の刑務所或いは少年院に入つて来ることに非常に影響があります。そういうような終戦後いろいろ警察力等の変動のあのあつたとき、或いは刑事訴訟法の変動のあつたとき等は、ときどきその影響ができて参りましたので、一概にこの数字を平年のときの数字の推移とだけは見られないと思うのでございますが、そういたしまして、終戦後実は生活に困つた少年の犯罪も非常に多いのでございまするが、半面には相当困らない少年の犯罪というものが非常に多かつたのでございまして、それらは主として家庭の教育とか或いは学校の教育等に不徹底なところがあつたと思われるものが相当多いのでございます。殊に終戦前後法律というものに対する信頼感が一般になくなりまして、特に統制を守つていては生きておられないなどというようなことが公然と言われるようなことが、少年の心理には非常に影響があつたと思つております。それから家族制度が非常に改革せられたことも、子供に悪い方面の自由な考え方を持たせまして成る程度影響があつたように私は考えております。併し漸次收まりまして、最近におきましてはだんだん犯罪件数も頭打ちになつて来たのではないかと思うのであります。殊に成人につきましては、昨年の統計によりますると大分減つて参りました。昨年十月には刑務所も十万八千人になりました。最近は八千人ぐらい減つておるのでございまして、勿論これは一、二月頃は刑務所は少くなるのでございますが、その傾向を考えましても成る程度減つて参つておりますので、だんだんこれは大人の犯罪も或る程度減つておるのではないかというふうに考えております。併しこれが終戦前のような四万、五万の台になるということは考えられません。というのは、非常に生活的に恵まれておつても犯罪を犯す者が今日なお相当にあるのでございます。少年犯罪につきましては、さような傾向がまだ出て参りませんけれども、私は大人の犯罪というものから考えまして、いつかは同じ傾向になる日が来るだろうと考えておるのでございます。私自身がさような安易なことを考えてはいけないかも知れませんけれども、そういう希望を持つております。御指摘のような、生活から来ない犯罪、経済というものから来ない犯罪というものも少年犯罪については非常に多いのでございます。それらも社会というものの秩序が維持せられ、教育が徹底して参りますれば、いい結果が出て参ると思うのでございます。そういう少年につきましては、私どもといたしましても、その原因に対する適切な措置を講じなければならんという工合に考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/21
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022・竹下豐次
○竹下豐次君 この昭和二十年の統計が五万四千余、二十一年が十一万一千、倍以上に上つておりますね、これは私は昭和二十年の八月以降というものは、警察の検挙力というものは相当弱つているのじやないですか。それでその年にはその以前よりも件数というものが減つておるのじやないかという疑いを一応持つのです。それは私の考えだけです。だから二十一年以後にどのくらい殖えておるかどうかということは、二十年の統計と比較するのはちよつと無理じやないか。昔戦争が余り激烈に入らない、言い換えれば日本の警察力が底だ弱くならない昔のままで続いておる時代と比較しなければ本当の比較はできない。それから戦争中は国民が大人も子供も大体緊張しておりまして、比較的犯罪が少なかつたように思う。その後は思想的に、生活的にむいろいろと支障があり、取締の方面は、警察力が非常に弱くなつているということは、これは疑いもないところで、それで見ようによつてはまだたくさんあるものが、検挙の数が或いは割合に少いのじやないかというように考えます。警察力のほうとも考え合せなければならない。あとでよろしゆうございますから、昭和十五、六年頃の統計表もお手許におありでしようから、それとの比較の表でもこしらえて頂きますならば大変参考になると思いますが、どうでございますか、二十年の検挙は私の想像は当りませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/22
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023・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) まだ何とも申上げかねますが、資料につきましては整えて提出いたします。二十年から二十一年頃は、実際検挙力といたしましては非常に弱かつたと思います。そうして警察法の改正などの時には、非常に一時的にはそういうことが出て参りました。例えば刑事訴訟法を新らしく実施されるということになりますと、一時それになずまないで一時的に出て来ない。最近はそれに慣れて来ると又常態に復するということになる。あれだけの大きな影響を受けまして、国家の警察力というものが大きな変化がありましたので、あの当時の検挙率は非常に悪かつたのであります。検挙率につきましては、まだ統計を持合せておりませんが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/23
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024・河井彌八
○委員長(河井彌八君) ちよつと今の竹下君の御質問がありましたのに関連しまして、再犯とか、累犯とかという、その時分はもう少年じやなくなると思うのですが、そういうものがどんな数が出ておるかということを、つまりこの制度がどれだけ有効に行くかというようなことを考えますると、又罪を犯したというようなことが非常に遺憾なのですが、そういう数のお調べがあつたのでございましようが、何か御説明を伺いたいと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/24
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025・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 初犯、累犯のパーセンテージにつきましては、昭和二十五年度の例によりますると、初犯者が全体の五五・五%を占めております。残りの四四・五%が累犯者であります。なお終戰前におきましては、詳しいことは、正確のところはわかりませんが、大体四〇%が初犯者で、六〇%が累犯者という程度の状態であつたと記憶いたしております。大体終戰後のことを申上げますると、昭和二十年の統計が丁度本年と同じ五五・五%が初犯者でございます。それから初犯者の数が少し上りまして、昭和二十一年が六二・一%、二十二年が六〇・五%、それから二十三年が六一・六%、二十四年が五七・八%、それで今度は二十五年の五五・五%に下つて来たのでございます。私どもは終戰後の累犯、初犯の位置が全く入れ替えになつた状態は、社会の非常な混乱のために初めての人がく犯罪を犯すことになつた、いわゆる累犯型の、常習型のものよりもそういう人たちが夥しく犯罪を犯さなければならなくなつたという工合に一応解釈しております。ただなお非常に穿つたことを考えますれば、あの当時は非常にごたごたして、いわゆる商売人はなかなかつかまらんので、駆け出しの者ばかりつかまつたのではないかということを言う人もありますけれども、併し全国的な大きな数字から申しますると、それよりもやはり社会の混乱のために非常な生活の極度の転換があつて、堪えられないでいろいろな犯罪を犯した者が非常に殖えたという工合に解釈しておるのでございます。それからそれがだんだん六二%から漸次下つて今日五五・五%になつて来ておるのは、これは社会の秩序が成る程度維持されて来る、又矯正保護の点でも力を注いで行つた甲斐かあつたのだという工合に考えておるのでございます。なお累犯者が非常に多いということは、この絶対数から考えましていろいろの問題を提供しておるのでございます。一昨年の七月から犯罪者予防更生法というものができまして、そうして累犯、再犯予防のために刀をいたすことになつておりまするから、との成果が暫らく時間を頂ければ成る程度出るのではないかと考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/25
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026・河井彌八
○委員長(河井彌八君) もう一つ、六二%から五五・五%まで累犯者が初犯者に対する関係においてだんだん下つて来たということは喜ぶべきことだと思います。だが私どもの考えでは、まだまだ非常に下り方が足りないというような気持がして不安で堪らないのであります。これは何か徹底的によくする方法ということについて、当局はどんなお考えを、施設をお考えをなさつていらつしやるか、むずかしいことではありますが、伺いたいと思います。
それからなお又、今委員諸君から表のようなものを御要求になりましたが、今の累犯者のパーセンテージですね、それを実際の数に当てはめて、のパーセンテージを出したものを、実数と併せて作つて、それを出して頂きたいということをお願いいたします。何か累犯をなくすようないい方法はないものでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/26
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027・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 成人の再犯防止ということは非常に困難な問題とされております。併しその再犯防止ということも、矯正の分野におきましては絶対に不可能なものではないという信念で私ども一同一生懸命やつておるのでございますが、大体犯罪者の矯正につきましても、先ほど少年の矯正保護について考えられました通り、犯罪者というものを問題にしなければ解決できない。裁判といろものは、従来犯罪を問題にして、人を問題にしないということが言われて来たのでございまするが、それを矯正保護の部面から考えれば、問題は人間にあるのでございまして、犯罪者という人間をどういう手段を講じてよくするかという点で、先ずその人を、先ほど申上げましたように、いろいろの見地から鑑別する必要が出て参るのでございます。そうしてその人たちのそれぞれ個別的な処遇ということは、なかなか今日の財政の点でできませんので、それは或る程度に分類いたしまして、その分類の中の個別処遇という方法でその人たちの悪い点を補つてやるという方法以外には今のところないと考えております。尤もその個別的な処遇のほかに集団心理を利用したいろいろな方法もアメリカあたりでは採用されておりまして、日本でもそれを考えておる所もございますが、何にいたしましても、そういう人たちを個別的に人と見て、その人の欠点をよく究めて直すという方法にいたしたいと思つております。
なおそういう問題は、本来から申しますれば、日本のように平均在監期間が一年と三ヵ月というような短期刑の多い所では非常に困難でありまして、直つても直らなくても刑期が来れば出るというような所では、その運営が非常に困難だと思うのでございます。私個人の考えでは、成るべく短期自由刑というものは避けて、そしてそれは刑務所へ入れない、ほかの方法をとつて矯正する途が望ましいと思います。そして入れる以上は、或る程度長く置いて十分な矯正保護の手段を盡せる余裕が欲しいと考えておるのでございます。非常に漠然とした答でございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/27
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028・河井彌八
○委員長(河井彌八君) 只今の御説明によつて考えて見ますと、少年院というものは全国に相当たくさんあります。その少年院の、何と言いますか、組織或いは運用の方法等は、いわば全国画一というようなことでなしに、それぞれ特色を持つたいい施設、いい方法によつて進むというような行き方になつておるのでしようか、どうでしようか。それで現在たくさんありますが、そういう少年院で成績を最もよく挙げておる例などはどこでありますか。結局私は設備もそうでありますが、人によつてよくなつて行くのだ、それよりほかないのだと、こう思うのでありますが、そういういい例はどこにあるかというようなことを一つ数例挙げて、場所だけでもいいですが、お示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/28
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029・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 全国の少年院につきましては、まだ少年院の施設が非常に新らしいために、成る程度中央において統制いたしまして、一定の規格に入れようとしておるのでございまするが、中の運営或いは処遇等につきましては、それぞれ少年院の特質を十分に発揮いたしまして、画一的な傾向を排しまして、特色を生かした、そこに入れておる少年をよくするのに最も適した処遇計画の下に仕事をやつて頂くようにしておるのでございます。従いまして各院それぞれ非常に違つた形式になつておることは、一般の刑務所と非常に対照的になつておるのでございます。そのために、ときには大きな失敗もいたしておりまするが、私どもはこの失敗の原因を尋ねて、その原因は除きまするが、刑務所と同じような画一的にしないようにいたしたいと思つておるのでございます。
なお少年の矯正保護につきましては、御指摘の通り本当に人が問題でございます。立派な人がなければ到底こういうような仕事はできません。その人に配するにいい設備を得たいと考えておるのでございます。
少年院のうちで業績を挙げておるものは、新らしい少年法ができまして、従来八つの本院が、現在ございますのは二十八の本院、二十六の分院でございまするが、非常に急激に殖えましたために、それと少年が二年前には千数百名のところが、今日は約六千人に殖えております。創設時代でございまして、いずれの院も運営に苦心して来ておるのでございまするが、それらの中で瀬戸少年院或いは浪速少年院、あの附近でございますと再度山の少年院、四国の丸亀の少女の家等は比較的いい成績を挙げておると思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/29
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030・河井彌八
○委員長(河井彌八君) もう一つ伺います。そういういい成績を挙げておるのは、きつと立派な人が中心になつておると思うのです。そういう人に対して表彰とか何とかそういうような途を講じておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/30
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031・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) まだそういうことにつきまして特別な表彰というようなことは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/31
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032・河井彌八
○委員長(河井彌八君) もう一つ伺いますが、少年院というと何だか監獄とか、刑務所とか言うようにもうすぐ直感されるのですが、その名称をもつと自由にすることはできないでしようか。ここに揚げてありますので見ますと、例えば各務農芸学院というようなのもあるのですからかまわんように思うのですが、少年院法の規定の下に作つても、何だか少年院という所へ一遍收容されれば、もう自分は一生正しい人にはなれないというような烙印を押されたような感じを起させはしないかと思うのですが、文字から言えば少年院ということは何も悪いことはありませんが、併しどうもそういう感じが起るんです。もつとよい名前を付けてこれからよい人になるのだという気持を起させる名称はありませんか。つまらないようだが、そういうことを考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/32
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033・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) さような心持も酌みまして、成る程度この少年院の名称につきましては特別な名前ができておるのがございます。なお官制の上の名前のほかに、私設によりましては管制と別に名前を付けていろいろな連絡とか、家庭との連絡とかそういう場合に、丁度郵便局のような関係等を考慮したり或いは子供たちが本当に勉強するという心持を育てるために、いろいろな学院の名前を使うことを許しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/33
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034・梅津錦一
○梅津錦一君 大体短期で一年三カ月を経ると結局世の中に出るわけになるのでしようが、大体そういう人たちがこの家庭に帰れば、まあ要保護者というので、帰つて来ても職がない限り職業の問題ですぐに困るというようないろいろな場合で、その帰るべき親許ですか、それがないような子供も相当私はいると思うのですが、浮浪兒が特にそうですが、そういうような者の身許引受の機関といますか、授産所みたいなものがあれば非常に結構だと思うのですが、今の状態では授産所もすでに一ぱいで入れないし、そういう子供を刑を科して少年院に收容されてそれが終つて出て行つて、その受入態勢というものはどこで責任を引受けるか、そういうものの引受人のない場合には、これはどういうふうにするのか、そこのところが相当累犯、再犯の原因にもなると私は考えておるのですが、そういうような引受機関ですか、受入態勢というようなものを、そういうものに対しても政府機関なり、或いは民間のそういうような施設があるとすれば、お伺いしたいと思うのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/34
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035・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 受入態勢につきましては、大体少年院の退院者と仮釈放者につきましては、中央更正保護委員会という法務府の外局で所管しておりまする各地の保護観察所がその仕事を受持つことになつております。
ちよつとお断りしますが、先ほど一年三カ月と申上げましたのは、刑罰で入つて来る全受刑者の平均在獄日数でございます。少年院のほうは大体九カ月になつております。少年院との関係で申上げますると、家庭裁判所から送致されて参りました者を、その本人の社会復帰の状態を考慮いたしまして、それぞれ適した期間に主として仮退院させるのであります。本退院させる場合もございます。その場合には更正保護委員会のほうで仮退院の許可をいたしまして、そうして退院後のいろいろな計画というものについて生活をさせることにしております。仮釈放者も同じ関係になつております。その委員会で仮釈放の決定をいたしまして、出てから仮釈放後の生活計画に従つて生活をさせる。その間は委員会管下の各観察所が保護し、更に観察するという態勢になつておるのでございます。
なお出てから帰る所のない者のために、更正緊急保護法という法律によりまして、これもやはり法務府の中央更正保護委員会の所管でございまするが、各地の保護民間の保護施設が法務総裁の認可を得まして、一時的な收容保護をすることに相成つております。併し最近この保護の事業というものが非常に困難になりましたのは、生活費等に大きな金が要りまして、私的た経営では困難が多いために非常にその点が遅れておるということが遺憾で、文中訳ない点だと思つておるのでございますけれども、一応態勢はさようなことになつておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/35
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036・梅津錦一
○梅津錦一君 今お聞きすると、非常にスムースに、それぞれの機関を通してそういう人たちの行くべき道がはつきりしているようだと思うのですが、これはもうそういうふうに説明を聞きますと成るほどと思われるのですね。だが、その実際社会のそういうような機構がすでに一方に完備しているとは私には考えられないし、厚生省がそれほどのこうした施設に対する補助費なり、或いはそういう者を收容する国家機関を作つているとも私は考えられない。それは予算を見れば明瞭だと思う。結局は犯罪者は受刑という形で少年院に入れられて、結局は少年院のほうでもその釈放後は責任を、事実上の責任はとつていないと思うのですが、結局もう突放すという形で、あとは結局厚生省のほうで更生緊急保護法によつてやるということははつきりはしているのですが、果してそれが少年院の立場からですね、厚生省としての保護施設ができているのかいないのか、この点はお互いに食い違いがあると思う。特に少年院のほうから言えば、非常に御不満な点があると私は思う。これは想像できる。そういう点からお聞きしてですね、一体この法案が、改正法案ができても、将来のことを考えれば、これはやはり厚生省のこうした関係もやつぱり聞かないと、私は一貫した少年の受刑者に対する将来の復帰するとか、或いは再生するとかいうことが不可能なんじやないか、こういうことを考えますので、己憚のない、少年院の立場から忌憚のないこれに対する希望なり批判なりを私はお聞きしたいと、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/36
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037・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 更生緊急保護法によりまする保護施設は、これは法務府のほうの更生保護委員会で所管しておりまして、厚生省とは関係がないのでございまするが、その施設がまだいろいろできていない点は法務府として暫らく日をかして頂きたいと思つておるのでございます。併し或る程度、この少年につきましては保護期間も長いので、法務府でいろいろな手を打つことも残されておるのでございます。ただ問題になりまするのは、この満期釈放等になりました者に対して全然手当ができないという点でございます。御承知のように満期釈放者に対する保護観察というような制度は、司法的な分野からやるということがいかんというので、この保護観察に付せられることは除かれておりまして、これはすべて厚生省で受持つて下さるということとなつておるのでございます。更生施設では、出獄者といろものについて、その性格なりいろいろな点をお考えになつて、特段に御配慮を願えれば非常に結構だと思うのでございますが、まだ今日はその程度まで行つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/37
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038・梅津錦一
○梅津錦一君 昔は免囚保護の事業を民間の人が非常に協力してやつた歴史があるのですが、現在特に少年の場合にはそうした特殊な人がおつて、そうして出て来た者を親がなくて行く所がない、或いは親が、もうそういう者は家に入れない、そんな不肯な子はおれの子ではないから勘当してしまうという、何としても親が入れないようなのがあるのですね。そういうような子供は親があり、親戚がありながらかまつてくれない。こういうような少年、成年すべてを含めた免囚保護事業をやつたような人が過去においてはあつたと思うのですが、現在はそういうような人を收容して、開拓をやるとか何とかいうような民間の奇特な人がありますか。そういうような收容所を持つておるような人があればお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/38
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039・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 今日でもさような心持を持たれまして従事しておられるかたが相当ございますけれど、ただ先ほど申上げましたように非常に收容保護するということについては費用を莫大に要することになつております。生活費というものが、大きな額に上りまするために、昔のような保護事業に各団体、個人が力を注いでなさつたときに比することは到底できないのでございます。将来はどうしてもやはりこういう事業につきましては一般の民間のかたが十分御協力下さいませんと、本当に目的を達することができないので、その点については一層努力したいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/39
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040・梅津錦一
○梅津錦一君 この状態で行つて、まあ幸いにして民間にそういうような人がおつて、そういう事業団体を作つてくれれば、まあ更生団体を作つてくれれば結構だと私は思うのですけれども、そういうものが将来できないということの仮定に立てば、これは突放して直ぐだけだということになりはしたいか、そこのところを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/40
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041・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 仮釈放者につきましては、只今申上げましたように保護観察機関におきまして保護観察を受ける期間がございまするので、成るべく広く仮釈放の制度を運営して頂きたいという工合に感じておるのでございます。いずれにしましても、定期の懲役刑でございますれば社会に出る者でございまするので、その刑期の前に出すことによりまして本人たちの発奮というものをいよいよ固めさせると共に、他面社会に対する責任といううのを強くしまして、出ましてから保護観察をするこの仮釈放の制度は十分に活用されるようにしたいと思つております。これによりますると或る程度の保護の方法も講ぜられます。なお更生緊急保護法によりまする一時的な保護の機関を十分活用しましてやりたいと思つておりますが、なお御指摘の点につきまして、足らぬ点は今日の状態では相当ございます。その点を遺憾なことに思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/41
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042・竹下豐次
○竹下豐次君 もう一つ資料をお願いしたいのであります。それは犯罪の件数と検挙の率に関する統計であります。この終戦後大分犯罪が殖えておりますが、お示しになつただけでも相当に殖えておる、私などの見込ではこれ以上によほど殖えておるのじやないかと思つております。警察力が非常に弱くなつた。例えば窃盗に会つたと、今警察に届けて見てもなかなか挙げてくれない、届けたつて駄目だというようなのが相当にあるように聞いております。届けなかつたら警察のほうにはわからないのでありますから、大体これは今その統計をお示し下さいということは申上げにくいのでありますけれども、届出のあつた部分で、どのくらいの検挙率になつておるか、或いは届けがなくてもわかつておる部分の検挙率をお示し願いたい。いろいろ警察制度の自治警と国警との制度ができたことによつて、警察の間の連繋が悪くなつた、或いは警察の費用が足りないがために、例えば東京警視庁の管内におきましてもよく聞くことは、犯罪嫌疑者を尾行しようとしても、なかなか電車賃ももらえないので、その係官が途中で見逃さなければならないというようなことにぶつかることが多い。それは小さいことですが、そういう種類のものがかなり耳に聞かれるのであります。よほど検挙率が下つておるのじやないかという疑問を持つておるのであります。そうすると先ほど示された数字に対しまして、これに幾らかプラスしなければ本当の処置ができないという疑いも起るのであります。すべての犯罪についての統計をお願いするのではございません。窃盗とか、強盗とか、殺人だとか、主だつた犯罪統計で結構であります。そしてその年度は、終戰後のものはもとよりでありますが、昭和十六年の戦争開始前と過去三カ年のものと比較して頂きたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/42
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043・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 私の所管外のことでございますが、国警のほうに紹介いたしまして、得られた程度の点で御報告いたすことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/43
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044・河井彌八
○委員長(河井彌八君) 一つ政務次官でもどなたでもいいのですが、つまり監獄分監の昇格とか、少年院分院の昇格とか、実に嬉しくない内容を持つていると思うのですが、これでどのくらい職員が殖えるか、そしてその職員は、ただ分院が昇格したとかというふうで鰻上りに上るようなことでなく、本当に働ける人が働けるような地位に行くということが大事だと思うのですが、そういう点について相当の増員もあるだろうが、その適材を適所に持つて行くというような政府のお考えがあるのかどうか。あるならばそれはどうなつているかということを伺いたい。
もう一つは、二十六年度の予算にそれは組入れてあると思うのですが、どのくらいの費用が、人員の増加に伴つて組入れてあるか、それをお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/44
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045・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 予算につきましては、二十六年度に認められました予算のうちで、私のほうの操作によつて振向けます。
なお分監、分院にはすでに成る度それに必要な人員が配置になつておるのでございまして、昇格と共に多少そこに必要としまする上級の職員の配置を考えなければならんと思うのでございますが、それらの人選につきましても、数カ月いろいろ御選考願つておりまして、適材を置きたいと考えておるのでございます。どのくらいの予算になりますかは、はつきり申上げかねるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/45
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046・河井彌八
○委員長(河井彌八君) 定員の増加については……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/46
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047・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 定員の増員は、これについては認められておりませんです。或いは收容人員が非常に殖えましたために、それによりまして全般的な收容増によりまする職員を今度の国会にお願いしておるのでございまして、大蔵省ではその率によつては或る程度考慮してくれるということでありまして、それをこちらに向けるということになります。それは昇格しなくても頂けることになつておる予算でございます。なお設備費等は多少どうしても少しは余計になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/47
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048・河井彌八
○委員長(河井彌八君) 今の政府委員の御説明では、少しどうかと思われるところもありますので、この次の機会にでもはつきりした説明を頂きたいと思います。
本日はこの程度にとどめたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/48
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049・河井彌八
○委員長(河井彌八君) それではこれにて散会いたします。
午後三時四十五分散会
出席者は左の通り
委員長 河井 彌八君
理事
楠瀬 常猪君
梅津 錦一君
尾山 三郎君
委員
郡 祐一君
松平 勇雄君
竹下 豐次君
林屋亀次郎君
政府委員
法務政務次官 高木 松吉君
法務府矯正保護
局長 古橋浦四郎君
経済安定政務次
官 小峯 柳多君
経済調査庁次長 奧村 重正君
事務局側
常任委員会專門
員 杉田正三郎君
常任委員会專門
員 藤田 友作君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014889X00719510301/49
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