1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十五年十二月四日(金曜日)
午前十時三十一分開議
出席委員
委員長代理 理事 小島 徹三君
理事 鍛冶 良作君 理事 田中伊三次君
理事 福永 健司君 理事 畑 和君
理事 沖本 泰幸君
石井 桂君 江藤 隆美君
河本 敏夫君 島村 一郎君
永田 亮一君 羽田野忠文君
松本 十郎君 黒田 寿男君
林 孝矩君 岡沢 完治君
青柳 盛雄君
出席政府委員
法務政務次官 大竹 太郎君
法務大臣官房長 安原 美穂君
法務大臣官房司
法法制調査部長 貞家 克巳君
委員外の出席者
議 員 畑 和君
最高裁判所事務
総局総務局長 長井 澄君
最高裁判所事務
総局人事局給与
課長 中村 修三君
法務委員会調査
室長 福山 忠義君
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十二月四日
事業活動に伴つて人の健康等に係る公害を生じ
させた事業者の無過失損害賠償責任に関する法
律案(細谷治嘉君外十名提出、衆法第二号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
裁判官の報酬等に関する法律等の一部を改正す
る法律案(内閣提出第九号)
検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正す
る法律案(内閣提出第一〇号)
事業活動に伴つて人の健康等に係る公害を生じ
させた事業者の無過失損害賠償責任に関する法
律案(細谷治嘉君外十名提出、衆法第二号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/0
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001・小島徹三
○小島委員長代理 これより会議を開きます。
委員長が所用のため、指名により、私が委員長の職務を代行いたします。
本日付託になりました細谷治嘉君外十名提出にかかる、事業活動に伴つて人の健康等に係る公害を生じさせた事業者の無過失損害賠償責任に関する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。畑和君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/1
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002・畑和
○畑委員 ただいま議題となりました事業活動に伴つて人の健康等に係る公害を生じさせた事業者の無過失損害賠償責任に関する法律案につき、日本社会党、公明党、民社党の三党を代表いたしまして、提案の理由及びその内容の概略を御説明いたします。
今日、四大公害裁判といわれる、熊本及び新潟水俣病、四日市ぜんそく、及びイタイイタイ病患者による訴訟が、きわめて難航している最大の理由は、加害者企業に故意または過失があったかどうかの究明にあります。これが重大な論点になるのは、加害者側に故意または過失がないとするならば、被害者に対する損害賠償を命じることが、原則的に不可能だからであります。
このように、公害にかかる民事訴訟において、無過失賠償責任制度が確立していないために、被害者は、長引く訴訟と過重な訴訟費用の負担にあえぎながら、加害者側の故意または過失を立証するために、みずから苦渋に満ちた努力を続けなければなりません。
民事上の無過失賠償責任制度は、すでに鉱業法、水洗炭業法、労働基準法などで確立していることを勘案するならば、公害訴訟にこれを適用できない合理的な理由はどこにもありません。この制度がないまま、被害者救済制度を設けてみても、それはざるで水をくむがごとしといわなければならないのであります。
これが本法案の提案理由であります。
次に、本法案の概要を御説明いたします。
第一は、本法案は、公害問題についての企業側の損害賠償責任について、民法の故意過失主義という一般原則に対する重大な特例を規定しようとするものであります。
第二は、本法案の眼目とするものは、事業者は、事業活動に伴って排出する物質によって、人の生命または健康、もしくは人の食用に供される動植物の生産にかかる人の権利を侵害したときは、故意または過失がなくても、その損害を賠償する責めに任ずる、としたことであります。すなわち、公害を発生させた事業者に、無過失責任、換言すれば一種の結果責任を負わせんとするものであります。
なお、本法案の対象となる損害は、まず人の生命と健康、次いで人の食用に供される動植物の生産にかかわる人の財産権に限定しました。食用動植物の生産にかかる財産権の侵害を対象といたしましたのは、これら動植物の被害が、直接人間の生存につながるものだからであります。
また、本法案の適用を受ける事業者の範囲は、右の公害を生ずる可能性の最も大きい製造加工業者、土木建築業者、運送事業者などであります。
以上、本法案を提出いたしました理由並びにその大要について御説明申し上げました。
何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに可決されんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/2
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003・小島徹三
○小島委員長代理 これにて提案理由の説明は終わりました。
本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/3
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004・小島徹三
○小島委員長代理 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。
人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律案の審査のため、来たる九日、参考人の出頭を求め、その意見を聴取することとし、その人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/4
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005・小島徹三
○小島委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/5
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006・小島徹三
○小島委員長代理 次に、裁判官の報酬等に関する法律等の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案を一括議題とし、審査を進めます。
質疑の申し出がありまするので、順次これを許します。羽田野忠文君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/6
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007・羽田野忠文
○羽田野委員 裁判官の報酬等に関する法律並びに検察官の俸給等に関する法律、この一部改正について質問をいたします。担当政府委員の答弁を求めます。
まず、この裁判官の報酬並びに検察官の俸給の平均昇給率はどのくらいになっておるのか、そうしてこれは一般政府職員のそれと対比したときにどういうふうな比率になるのか、この点を御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/7
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008・貞家克巳
○貞家政府委員 今回の給与改定によりまして、裁判官及び検察官の報酬及び俸給の月額が引き上げられるわけでございますが、裁判官につきましては平均一八・三%、検察官につきましては平均一五・五%増額されることになっております。これを一般職の職員についての給与改定に比較いたしますと、一般職の職員につきましては、俸給表全体の改善率が一〇・七%ということになっておりますので、裁判官、検察官のほうがやや上回っているという結果になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/8
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009・羽田野忠文
○羽田野委員 一般職に比べて裁判官、検察官の昇給率が非常に高いようですが、これは裁判官、検察官のその職務の重要性ということが認識されてそういうふうに昇給率が高くなったのか、それともこの裁判所、検察官と同じような給与あるいは報酬を受けておる一般職の職員も大体この程度に上がったのか、その点はどうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/9
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010・貞家克巳
○貞家政府委員 裁判官、検察官の職務とその責任がきわめて大きいものであることは申すまでもございません。したがいまして、そういった職責というものを考慮いたしまして、裁判官、検察官の上位と申しますか、大部分の者の報酬、俸給は、一般職で申しますとごく上位の指定職俸給表の適用を受ける者におおむね準じて定められているわけでございます。
ところで、今回の人事院勧告に基づきますところの一般職の給与改定におきましても、これは人事院勧告が申しておりますように、民間の企業におきます役員の給与というような点も考慮されまして、かなり大幅な引き上げということを行なっております。したがいまして、それにおおむね準じておりますところの裁判官、検察官の大部分がやや大幅の引き上げとなっております。したがいまして、その結果出てきたわけでございまして、特にこの際、職務と責任の重大性ということを考えましてバランスを操作するとか、そういうことは必ずしも行なわれておりませんけれども、全体として一般の政府職員の平均に比べますとやや上回った数字が出てまいった、こういう次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/10
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011・羽田野忠文
○羽田野委員 今回の改正の全貌がよく出ております法律案参考資料、これに基づいてちょっと質問いたします。
参考資料の二〇ページから二一ページ、番号五というところでございます。「裁判官・検察官給与改定対比表」というものが出ております。これを見ますと、最高裁判所の長官、最高裁判所の判事、検事総長、これは総理大臣あるいは国務大臣と同額になっております。この総理大臣、国務大臣が今回は昇給をせなかったために、これに準じて据え置いたということはわかるわけです。ちょっと不合理と思いますのは、その下の、判事の部ですが、判事のいわゆる特号判事といわれる判事と判事の一号俸判事、この報酬が改正前には差額が一万五千二百円という差額になっていた。ところが改正後、この両者の差額がわずか五千円というふうに非常にバランスを失しておるのじゃないかと思われる数字が出ているわけですが、これはどういうふうな理由でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/11
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012・貞家克巳
○貞家政府委員 御指摘の点でございますが、裁判官で申しますと、東京高裁長官以外の高等裁判所長官の報酬月額は、東京高検の検事長の俸給月額と同じく、この表で申しますと政務次官、その他に検査官、人事官等もございますが、それに準じて従来定められております。それから次長検事と東京高検検事長以外の検事長の俸給月額は、内閣官房副長官、それからこの表にはございませんけれども、総理府総務副長官というようなものに準じて従来定められているわけでございます。その結果、今回の改定におきましても従来の方針を維持いたしまして、それらに準じて改定月額が定められたわけでございますが、それが前者につきましてはこの表の改正案というところにございますように、四十万、三十九万というふうに相なったわけでございます。
一方、判事一号の報酬月額、検事一号の俸給月額は、これは従来から通常の一般の行政職の最高のものとほぼ一致しているわけでございまして、それが一般職のほうとの均衡を考慮いたしまして、三十八万円ということに相なった次第でございます。したがいまして、上が三十九万、下が三十八万という間差が非常に狭くなったわけでございます。一方、従来ずっと来ておりますこのバランスをくずすということは、給与体系として非常に問題がございます。したがいまして、今回の改正におきましては、三十九万と三十八万の中間である三十八万五千円という、多少不自然な感じはいたしますけれども、そういう金額を算出いたしまして、従来のバランスをくずさず、しかも一般の判事、一般の検事——認証官は別でございますが、ごく一般の行政職の職員の最高に一歩踏み出るという、判事特号の趣旨もわずかながらこの金額によって維持する、そういうことにいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/12
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013・羽田野忠文
○羽田野委員 今回のこの改正案を見ますと、裁判官の報酬等に関する法案の第一条と第二条、それから検察官の俸給等に関する法案の第二条と第三条、この中で従来裁判官、検察官に支給しておりました暫定手当に関する規定を削除しております。こういうことになっておりますが、いままで支給していた暫定手当というものはどういうふうなものを支給しておったのか、今回削除したのはどういう理由なのか、もう削除してもいいような状態になったのか、そういう点について説明をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/13
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014・貞家克巳
○貞家政府委員 暫定手当と申しますのは、昭和三十二年以来一般の政府職員に対しまして、それまで支給されておりました勤務地手当にかわるものといたしまして、四級地までの各級別に区分いたしまして、当分の間支給するということになっていたわけでありまして、裁判官、検察官にも一般官吏の例に準じましてこれが支給されてまいったわけでございます。
ところが、この暫定手当を漸時本俸の中に繰り入れるという作業が進みまして、ことに昭和三十四年四月一日以降昭和四十五年四月一日までの間に、暫定手当が本俸に繰り入れられるということが完全に行なわれてしまったわけでございます。したがって、一般職の職員につきましても、今回の一般職の給与表の改正案におきまして、暫定手当の制度をもとから廃止して、そしてそれに伴ういろいろな整理を行なっております。それに伴いまして裁判官及び検察官の暫定手当の制度もここに廃止されることになりますし、これに関する諸規定も削除するということになったわけでございます。
なお、昭和四十二年の改正以来は、三カ年計画を立てまして、これは一般職の職員についても、裁判官、検察官についても同様でございますけれども、法律の別表の報酬、俸給の月額は法規上はそのままにいたしまして、ただ改正附則の規定によりまして別表の数字を読みかえてしまう、つまり暫定手当を繰り入れた額に読みかえるという、自動的に金額が変更されていくという措置をとってきたわけでございます。そこで、たとえばこの表にございますように、そういう金額があらわれておりますので、現行の額として非常にはんぱな金額に出ているのはその結果であったわけでございます。ところが、今回の改正におきましては、そういった金額を全部本俸に繰り入れた状態をもとにして金額を算定いたしておりますので、そういった読みかえ規定も必要がなくなったわけでございます。
さらに、これは裁判官報酬法十六条の規定でございますけれども、最高裁判所裁判官その他につきましては、暫定手当を本俸に繰り入れるという措置がおくれておりましたので、恩給でございますとか退職手当でございますとか、そういったものの計算におきまして、他の裁判官、検察官に比べて不利益がないように、一定の額を報酬とみなすという措置をとっていたわけでございますが、これにつきましても、今回暫定手当というものの支給を受ける者が絶無となった、この四月一日からはそういった事態が解消いたしましたので、そういった特別の措置をとる必要もなくなった、したがって、これら暫定手当に関する規定、それから暫定手当の一部を報酬または俸給とみなすというような規定も一切御用済みになったわけでございます。そこで、その状態に合わせて、これは一般職あるいは特別職の職員の場合と同様でございますが、そういった本法中の規定並びに改正附則中の規定を全部削除することにいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/14
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015・羽田野忠文
○羽田野委員 次に、この両法の改正案の附則の第二項、第三項、これによりますと、先ほど示しましたこの法律案参考資料の二〇ページをごらんいただくとよくわかるんですが、判事の部で五号俸、六号俸を受ける判事、それから簡易裁判所の判事の部で二号俸、三号俸を受ける簡易裁判所判事、それから検事の部で五号俸、六号俸を受ける検事、この報酬並びに俸給の号を定めることについて、最高裁判所並びに検事のほうは法務大臣が内閣総理大臣と協議して定めるというような特別な規定を設けておるが、これはどういうふうな必要から設けておるのか、その点を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/15
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016・貞家克巳
○貞家政府委員 まず附則第二項の規定の趣旨でございますが、この法律によります給与改定は、本年五月一日現在にさかのぼって適用されるわけでございますが、その五月一日現在におきまして、旧五号あるいは旧六号に在号いたします判事、検事等につきまして、いわゆる号俸の切りかえ措置をとることができるようにしたものでございます。このような切りかえを行なおうという趣旨は何かと申しますと、今回の一般職の給与法の改正案によりますと、従来これらの判事、検事におおむね対応しておりました行政職のうちの上位の指定職乙欄の号俸のきざみが九つから七つに減りまして、現在乙欄の適用を受けている一般職員の号俸は、改正法の施行の際、新しい号俸に切りかえられることになることが予定されているわけでございます。この参考資料で申しますと、最後の四二ページに指定職俸給表の月額が出ておりますが、これらのきざみが変わりますことによって、そのままの号俸ではいかない、新たに切りかえて人事院が指定をされることになっているわけでございます。ところで、この一般職の場合におきます指定職俸給表の号俸の切りかえにあたりましては、旧号俸に在号している期間が短い者は、ある程度下位と申しますか、下のほうの号俸にランクされるということが予定されているのでございます。したがいまして、そういったおおむね対応しております一般職員とのバランスを考慮いたしまして、判事、検事につきましても、五号俸、六号俸、その他これと同額の簡易裁判所の判事、検事も同じでございますが、そういった者のうち在号期間の短い者については切りかえを行なうということができるようにしたものでございます。
第三項は、これと同趣旨でございまして、切りかえ日、つまり五月一日以後改正法の施行の日の前日までの間に五号あるいは六号になった者も、これも同様にいたしませんと不公平が生じますので、これについても切りかえ措置ができるようにするということで、おおむね対応する一般職の職員のうちの指定職俸給表の適用を受ける者とのバランスを考えて、それに準じて行なったこととすることにしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/16
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017・羽田野忠文
○羽田野委員 今回の一般職政府職員の給与改定に準じて、判事、検事についても住居手当が支給されるようになるというふうに考えられますが、この住居手当の適用の範囲、額、こういうふうなものはどうなっているのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/17
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018・貞家克巳
○貞家政府委員 今回、一般職給与法の改正案におきましては、住居手当が新設されまして、公務員宿舎に居住している職員はこれから除かれますが、その他の賃貸住宅に居住して、月額三千円をこえる家賃を支払っているという職員に対しましては、その家賃の額と三千円との差額、つまり三千円をこえる額の二分の一の額を支給する、ただし三千円が最高限度であるというような規定が設けられることになっております。もっともこの住居手当は、一般職の職員中、先ほど来申しております上位の指定職俸給表の適用を受ける一般職の職員には支給されないことになっております。
ところで、裁判官、検察官につきましては、お手元の資料の、裁判官につきましては一ページから二ページの裁判官の報酬等に関する法律の第九条、それから検察官の俸給等に関する法律におきましては、七ページの第一条でございますが、裁判官につきましては、報酬以外の給与は、一般の官吏の例に準じて最高裁判所の定めるところによりこれを支給するということになっているわけでございまして、裁判官、検察官につきましても、これが支給されることになるわけでございますが、ただ先ほど申しました条文をごらんいただきますとおわかりになりますように、認証官以上の裁判官につきましては、特別職の給与表に準ずる、それから判事、それからそれと同額を受けますところの簡易裁判所判事の上位の者、これについては、指定職俸給表の適用を受ける者と同一、その例に準ずる、そしてその他の裁判官は、一般の官吏の例に準ずるということになっておりますし、検察官についても、ほぼ同様の区分がなされているわけでございます。
したがいまして、具体的に申しますと、住居手当というものは、当然裁判官、検察官にも支給されるわけでございますけれども、一般職の場合、その他特別職等に準じましてこれを受けない者もある。結局結論的に申しますと、判事は五号以下の簡易裁判所判事、それから九号以下の検事及び二号以下の副検事についてだけ支給されるという結果になるわけでございまして、これは、おおむね報酬、俸給の額において準じている一般職の場合と全く同一の取り扱いになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/18
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019・羽田野忠文
○羽田野委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/19
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020・小島徹三
○小島委員長代理 岡沢完治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/20
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021・岡沢完治
○岡沢委員 私は、去る五月の法務大臣の分離修習の発想、発言と結びつけまして、この裁判官、検察官の初任給が妥当であるかということを中心に若干の質問をさせていただきたいと思います。
あの五月の発言がたいへんな波紋を呼んだということは御承知のとおりでございますし、日弁連はじめ単位弁護士会でも分離修習問題が一つの大きな課題としてたいへんな騒ぎを起こしております。この問題の本質をついた質疑は別の機会にさせていただくといたしまして、なぜ裁判官並びに検察官志望者が少ないか。法務大臣の発言の裏にも、せっかく修習を終えた修習生の大半が任官をしないで弁護士のほうに進むということの背景があったことは、御発言でも明らかでございます。そういうことを考えました場合、裁判官、検察官志望者が少ない理由は何かということを究明することがやはり一つのキーポイントではないかというふうに私は思います。また、裁判官、検察官任官希望者の少ない理由としては、一部に言われますように、裁判官、検察官の職場に魅力を感じないということが大きな理由の一つではないかと指摘をされたり、あるいは任地の問題等も論じられておりますけれども、私は、端的に申し上げまして、私の接しました修習生あるいは私の事務所に来られた最近の若い弁護士の方々の意見等を見ましても、初任給があまりにも少ないということが非常に大きな理由になっているように感じます。もちろん、いわゆる一般公務員との格差の問題等も考えられますけれども、裁判官は、憲法七十九条あるいは八十条で、定期に一定の報酬を受けるとあり、憲法上報酬が約束された唯一の職業だと私は思うわけでございますけれども、それだけに、裁判官にふさわしい給与、あるいはまたそれに準ずる検察官にも、社会的地位あるいはその専門的職業あるいは特に司法権の独立という観点から、相当な報酬が確保されるということは憲法上の要請でもあるわけだと思います。そういうことを考えました場合に、単純に一般公務員との格差を論ずる、格差を基準にして報酬額を考えるということは、私は短見に過ぎるという感じがいたします。
ことに、司法修習生の試験合格の年齢を考えました場合、私の承知いたしております限りでは二十七歳が平均でございます。それから二年間の司法修習を受ける。任官の時期は大体二十九歳と考えてもいいかと思います。もちろん、その大部分がいわゆる大学を卒業し、苦しい司法試験の試練に耐え、そしてまたさらに二年間の研修を経る。一般の大学卒の方々の給与を基準にして、あるいは一般の上級職の公務員を基準にしてきめること自体に、私は年齢的な面からいたしましても大きな間違いがあるのではないかと指摘せざるを得ないわけであります。
昨日の本会議で論議されました一般公務員の給与の場合にも、いわゆる医師やあるいは他の専門職につきましては格別の配慮がなされておることが明らかにされております。私は、医師と弁護士、あるいは医師の資格を持って公務員になる人といわゆる裁判官、検察官というのはきわめて類似した立場にあると思います。いずれも高度の専門職であること、大学を卒業してもそのまま資格を与えられないで、それぞれ一定の研修期間あるいは修習期間を経ていわゆる医者としてのあるいは法曹実務家としての資格を与えられるものであること、その他非常に類似点が多いということが考えられますし、ことに先ほど指摘いたしましたように、医師以上に裁判官は憲法上あるいは職務上格別の身分あるいは責任の重い地位におられるということを考えました場合に、少なくとも医師と同等の給与ということは一つの基準になっていいのではないかと思うわけでございます。
ここに一つの資料がございますけれども、「昭和四十四年度に関する人事院給与局編「民間給与の実体」」という報告がございますが、それによりますと、二十四歳ないし二十八歳の月額給与は、医師で十万九千五十九円という数字がございます。これに比較いたしまして裁判官あるいは検察官の初任給があまりにも低いということは、今度の御提案の中身を見ましても明らかでございます。約五〇%という数字になろうかと思うわけでございます。これでは、初任給一つを見ましても、裁判官、検察官になり手が少ないということは指摘せざるを得ないし、むしろここにこそ任官希望者不足の大きな理由があるというふうに考えてもいいのではないか。
分離修習あるいは法曹一元の問題、きわめて論議を呼び、また各方面からいろいろな角度から検討を要する問題でございますけれども、もし五月の法務大臣の発言あるいは発想の背景の一つに、この任官希望者が少ないということが大きなウエートを占めておるといたしますならば、この初任給の低過ぎることを解決するということが大きな回答になるのではないか。最近の弁護士会あるいは修習生諸君に与えている法務大臣発言の波紋の大きさを考える場合に、じみではありますけれども、この給与体系にメスを入れる、これにこたえるということもきわめて重要な課題だし、これは国会の立場からも必要な責務ではないかと考えるわけでございますが、これについての御見解を、最高裁及び法務省両方からお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/21
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022・大竹太郎
○大竹政府委員 こまかい点については調査部長のほうからお答えいたしたいと思いますが、いまほど研修制度をめぐっての大臣のこの春の発言、特に判検事の志望者が少ないということも、その大きな原因であることはいまさら申し上げるまでもないわけであります。それについてはいろいろの原因もあろうかと思うわけでありますが、いまおっしゃったような給与の問題もこの志望者が少ないという大きな原因であることを、私どもは率直に認めなければならないだろうと思います。
ただ、いま初任給の問題を主として御論議になったようでありますが、こまかい点はあとで調査部長のほうからお話をします。現在たしか初任給でも一般公務員との間に三、四年の開きがあるように思うのであります。ただ初任給だけを比較いたしますと、その差額はその程度でありますが、判検事はつとめる期間、最後において——御承知のように一般の管理職でありますと大体五十五前後でおやめになるようでありますが、たとえば検察官にいたしますと、一般は六十三でありますが、検事総長は六十五、たしかそういうような定年になっておるかと思います。その終わりにおいてやはり少なくとも七、八年の差異があるというようなことを考えてみますと、ある程度そこでバランスするというようなことも考えなければならないのじゃないかというふうにも実は考えるのであります。
しかし、いずれにいたしましても、岡沢委員も御承知のように、司法制度調査会におかれましても、判検事の給与その他については特別に考える必要があるのじゃないかというような御意見も出ているわけでございまして、それらも勘案いたしまして、法務省、裁判所におかれましても十分調査研究を進めている段階でございますけれども、やはり一般職員とかけ離れた制度、基本的なものの考え方を変えて給与体系をつくるということにはなかなか踏み切れないでいるわけでございます。ただ、いまほど医師の例を引かれたわけでございますが、現在は医師というものに対して特別の手当が出ているわけでございますので、こういう方面とも兼ね考えまして、この根本的な改正ということはなかなかむずかしいかもしれませんけれども、そういうようないわゆる特別な手当というような面であわせて考えさせていただきたい、こう思っているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/22
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023・貞家克巳
○貞家政府委員 裁判官、検察官の初任給でございますが、現在の程度で申しますと五等級の四号、三号といったところに対応しているわけでございまして、実はこれは先年の昭和三十九年の改正でございますが、これは臨時司法制度調査会の答申が出ました直後の給与改定でございます。その際に、答申の趣旨にかんがみまして、どうしても初任給を相当増額する必要があるということで、その際には一般との均衡ということをある程度破りまして、一挙に二一・七%引き上げたという事実もあるわけでございまして、それ以前に比べますと初任給の額というものはかなり改善されていると思うわけであります。もちろん、これで必ずしも十分であるとは思いませんけれども、相当程度改善されている。なお、給与の問題につきましては、報酬、俸給の額そのものばかりではありませんで、いろいろ裁判官、検察官の執務環境の整備でございますとか、あるいは宿舎の整備、充実というようなことが着々と行なわれておりまして、こういった面も含めまして、給与、待遇というものを向上させることが、やはり優秀な司法修習生修了者を裁判官、検察官に吸収する何と申しましても有効な道ではないかというふうに考えているわけでございます。
初任給を比較いたしますと、これは非常にむずかしいのでございますけれども、司法修習生の経験を経まして三年目になるわけでございます。それが判事補、検事の初任給でございますけれども、おおむねこれを上級職の試験を合格いたしました者が三年目に受ける俸給と比べますと、相当程度——約三割程度かと思います。これは必ずしも正確な数字ではございませんけれども、三割程度は上回っているのではないかと思うわけでございます。
なお、いま申し上げましたのは主として報酬、俸給の月額を中心にして申し上げたわけでございますが、この裁判官、検察官につきましても、一般の職員につきましても種々の手当が支給されるわけでございまして、こういったものを全部合計いたしますと、改正案によりますと初任給の報酬、俸給の月額は五万四千五百円でございますけれども、それを年額にいたしますと百二万四千四百四十円、それを十二で割りますと八万五千三百七十円というような数字になるわけでございまして、これはそんなにいばれた数字ではないかもしれませんけれども、月給の額だけをごらんになって、これは非常に安いというその感じとは若干違うのではないかというふうに考えているわけでございます。
なお、ちょっとこの機会に、先ほど私が羽田野委員の御質問に対しまして御答弁申し上げた中に、不注意で間違えた点が一カ所ございます。つまり附則二項、三項の適用を受ける者は、判事、検事五号、六号とそれから簡易裁判所判事、副検事と申しましたが、副検事にはこれに対応するものがございませんので、副検事は誤りでございますから、この機会に訂正させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/23
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024・長井澄
○長井最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましても、裁判官の志望者が少ないということにつきましては、検察官と同様の悩みを持っているわけでございます。この点につきまして非常に御理解のある御質問をいただいて、感謝にたえないところでございます。
これに対する対策といたしましては、やはり裁判官、検察官、初任者として同じような状況に置かれておりますので、いま政務次官、調査部長からお答えになりましたと同様な方向で解決をいたしたいというふうに考えておりますが、なお御示唆のありましたような点につきましては、今後給与の問題あるいは予算の問題として努力していきたい、その具体案について種々可能なものについては検討していきたい、こう考えております。
宿舎の問題につきましても、その土地の住居事情によりまして非常にアンバランスが出てまいります。住居事情がよくなければ志望者がふえたのではないかと見られるような数字の関係も考えられる場合もございますので、こういうものも初任給、あるいは医師に対する特別の手当と同様な問題として今後考えていかなければならないのではないか、このように裁判所として考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/24
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025・岡沢完治
○岡沢委員 私は、この法務委員会に席を持たせていただいてから三、四年になりますが、給与に関する限りは主客が転倒しているのではないか。国会側は超党派でいつも給与問題等について思い切った要求、あるいは裁判官、検察官の立場に立った防衛をすべきじゃないかと言っている。ところが、非常に御遠慮深いのです。まあ理屈はいろいろつきますけれども、先ほどの一般公務員との格差の問題につきましても、単に年数という点をとってみましても、いわゆる大学卒でストレートに司法試験に合格をして任官するという諸君を対象にしておられるような数字としかとれないわけです。先ほど申しましたように、合格の年齢が大体二十七歳、その差がもう大学卒とは五年の差がある。さらにそれに二年間の修習期間を加えるということを考えました場合に、一般公務員との格差をとるならむしろ七年ないし八年の差を基準にして数字をはじき出すべきではないか。むしろ裁判官、検察官に不利益な立場から法務省も最高裁も主張の根拠を置いておられるというところに、非常な疑問というよりもむしろ逆な感じを持つわけでございます。われわれは何も裁判官、検察官を不当に優遇せよということを言っておるわけではございませんが、先ほど来繰り返しましたように、憲法上の立場からいたしましても、あるいは三権分立の立場からいたしましても、国民の利益のために優秀な裁判官、検察官の希望者が殺到して、優秀な裁判をしていただく、あるいは人材が検察官に集まるということはむしろ国民的な利益だという観点から、理屈は抜きにして現実に司法修習生の大多数が任官を回避をしていくという理由にメスを入れるべきだ。その一つの大きな問題としてやはり初任給の低さということを指摘せざるを得ないという点から質問を申し上げているわけでございます。大竹政務次官がおっしゃった、定年が他の公務員に比べて長いというような問題もそれは事実でありますけれども、その根拠はむしろ裁判官、検察官の仕事の性質等に由来するところが多いわけでございまして、将来の展望からものを考えるということも大事でございますけれども、この問題に関する限りは、いま現実に任官希望者が少ない、判検事が定数にも満たないということを前提にして、どうしたらいい人材を集められるかという観点から議論をすべきではないか。先ほど医師との比較の問題を出されましたけれども、やはり医師につきまして特別の給与あるいは特別の待遇が考えられる一つの理由に、医師もやめれば開業ができる。判検事もやめればすぐ弁護士になれる。そういう点、やはり開業医との比較の問題、あるいは弁護士の収入との比較の問題を無視してこの給与体系を論じましても、結局それは任官希望者を確保することにはならないと考えるわけでございます。
私は詳しいデータを持つわけではございませんが、私の属しております大阪弁護士会の場合、修習生を終わって最初に登録した弁護士が受ける報酬、いわゆる勤務弁護士といわれる方々の報酬の基準は昨年度で大阪の場合八万円、多いところは九万円、私の事務所も大体それに近いものを現に支払っておるわけでございまして、それは自分でやる事件の報酬は別でございますし、国選弁護も別であります。そういうことを考えます場合に、いまの初任給の給与があまりにも低いということは否定できない事実ではないか。これを単に一般公務員との比較において優遇されているからといって、満足されるべき数字では決してない。むしろ比較するなら、開業できる登録当時の弁護士の報酬と比較をする。もちろん、それは弁護士には交際費その他が要ることは十分承知いたしておりますが、それにしてもあまりにも格差があり過ぎるということが、任官希望者が少ないきわめて大きな端的な理由ではないかと考えますだけに、ぜひもう少し前向きに、意欲的に取り組んでいただく必要があるし、またそれが正しいのではないか。謙虚な態度というものは好ましい場合が多うございますけれども、この場合は政務次官もあるいは調査部長も、総務局長も、これはやはり一裁判官、検察官の問題ではなしに、日本の法曹界に優秀な人材を確保するという意味から取り組んでいただきたいということをお願いしたいと思います。
それから、この機会にやはり任官希望者が少ないことと結びつけまして、若干給与の問題から横にそれるおそれがございますが、先ほど執務環境の整備に関連して宿舎の問題等も御答弁の中に含まれておりました。いわゆる司法研修所がいま新庁舎を建設中であるというふうに承っておりますが、その建設の状況、完成した場合の収容人員、使用開始の時期等について明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/25
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026・長井澄
○長井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
司法研修所につきましては、昭和二十二年ないし二十四年の間に現在の庁舎が建築されまして、これが古くかつ狭隘になりましたために、昭和四十三年度の予算に新営費が計上されまして、今会計年度に完成する予定となっております。収容人員は六百名ということで建設をいたしまして、現実に使用開始いたしますのは来年度初めの昭和四十六年の四月ころの予定ということに相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/26
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027・岡沢完治
○岡沢委員 私の聞いている範囲では、何か使い方いかんによれば千名くらいの修習生を収容できるということでありますが、いまの御答弁だと六百名だということでございます。私の非公式に聞いておる数字は間違いでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/27
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028・長井澄
○長井最高裁判所長官代理者 これは新営費のいろいろな予算設計の上から六百名という計算に相なっておるわけでございますけれども、ただいま御質問のように、使い方によりまして、あるいはそのような収容も可能であろうということは考えられないわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/28
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029・岡沢完治
○岡沢委員 私は、分離修習の問題と関連いたしまして、たしかさきの法務委員会におきましても、いわゆる司法修習生の収容合格人員をことし五百名前後というようなことを、思い切って大幅にふやして、そのかわり二年間の修習期間中、努力しなかった者、成績をあげ得なかった者等につきましては、思い切っていわゆる二回試験で落とす、そのことによって二年間の修習生の生活あるいは中身がきわめて充実したものにできるのではないか。いわゆる一発試験と申しますか、運、不運がきわめて大きく左右する司法試験の合格者に対しては無条件に一〇〇%近い資格を与える。ところが、きわめてわずかの点差で毎回試験に失敗する者に対してはきびしく門戸が閉ざされる。われわれ修習経験を経た者の体験からいたしましても、優秀な者ももちろんおりますけれども、この人が合格したのかと思われるような方々もおられます。しかも、それが努力をしないでも当然の権利として国家の給与を受けながら弁護士あるいは判検事の資格を得ていかれる、非常に私は疑問を持つわけでございます。それだけに、いま申しましたような意味で、日本の大学制度一般にも言えますけれども、大学の入試までが非常にむずかしい、通ってしまうと特権が与えられ、勉強しないでも大学卒の資格が与えられる。同じことが修習生にも大体適用できるような制度になっておるところにかなり大きな問題があるような気がするわけでございます。修習生の人員をかりに倍の千名にいたしましても、予算措置といたしましては国家財政上大きな支障を来たすということは考えられませんし、逆にそれによって優秀な人材が確保され、あるいは修習生の二年間の修習期間が充実したものになるという効果が得られるといたしましたら、メリットはきわめて大きい。ことに司法試験の合格者と不合格者の格差といいますか、一点の差によって百名以上の人員が変わるというようなことを考えましたら、試験の制度にもよりますけれども、一つの問題がいわゆる山が当たるか当たらないかということで一生の運命がきまるというような不合理も、確かに司法試験に関する限りは私はあると指摘せざるを得ないだけに、ある程度の実力のある者が合格できる、そのかわりに努力をしなければ資格を与えられないという制度に切りかえるほうが、もちろんそれについてのデメリットもありますけれども、メリットのほうが大きいのではないかという私見を持つものでございますが、これについての見解を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/29
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030・長井澄
○長井最高裁判所長官代理者 司法研修所の教育につきまして、ただいま御指摘のような悩みがございますことはまことに同感でございまして、この点深く検討いたさなければならないと痛感いたしております。ただ現在の状況におきましても、合格者を出しますことにつきまして、またいろいろ変わった批判もございますので、その点等もあわせて研修の方策につきましてなお検討を重ねたいと存じますが、ただいまのところ、司法研修所の実施の機関でございますところの裁判所といたしましては、司法試験の合格者につきましては十分に収容いたし得る状況にございますので、司法試験の実施の関係につきまして、なお違った結果が出てまいりますれば、それに即応した体制をとっていかなければならない、このように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/30
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031・岡沢完治
○岡沢委員 総務局長の答弁、私の質問とちょっとはずれているような気がするのです。私は司法試験の合格者のワクをふやせ、そうしてその合格者の中で修習期間中努力をしない者あるいは資格を与えるにふさわしくない者は思い切って落とす。いま修習生の中では反対意見がありまして、全員二回試験は無条件に通せという意見がありますけれども、これはむしろおかしいので、修習期間中の努力を要請する意味からも、俗なことばで言いますと、修習期間のいわゆる勤務評定と申しますか、修習生にふさわしい充実した修習生活を送らすためにも、制度上現在のように司法試験を通った者には無条件に二回試験を通させるという制度がかえって過保護になって、彼らに勉強の意欲、努力をも失わせているのではないか。そういう点から私は任官希望者の不足とも結びつけまして、現在の日本の大学制度のあり方等とも結びつけて、かつて日本で物理学校で採用されたような方法、あるいはアメリカの大学等において広く採用されているように、入学については思い切って門戸を開放する、しかし試験に合格しなければ資格を与えない。司法試験に通っても、これに類したことと申しますか、その制度を幾ぶん加味した方向で制度の改革を検討されてしかるべきではないかという意見でございますが、重ねて総務局長の見解をお聞きします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/31
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032・長井澄
○長井最高裁判所長官代理者 合格者の数の問題でございますけれども、これは司法試験の実施につきましては、司法試験管理委員会がその衝に当たっておりますので、調査部長から御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/32
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033・貞家克巳
○貞家政府委員 御指摘の司法試験合格者数の問題でございますが、これは御承知のとおり、臨時司法制度調査会でも盛んに討議されたわけでございまして、法曹全体——裁判官、検察官、弁護士を通じまして、そういった法曹全体の量と質を充実させるということが一つの大きな目標にされたわけでございます。ただ、御承知かと思いますけれども、それにつきましては、若干やはり質の低下ということをおそれる声もあることは事実でございます。しかし、国民の法生活のためにとりましても、優秀な法曹が数多く出るということは必要なことではないかと思います。ただ、試験を行ないまして、これを何人合格させるかということは、結局は現実に試験を行なって合否を決定いたします司法試験考査委員の権限に属するわけでございまして、直ちに政策的に何人ぐらいとるべきだとか、何人以下にするべきだというようなことは言えないわけでございますが、そういった法曹人口の問題、それから御指摘になりましたように、一たん採用するのは比較的多数にいたしまして、その後修習を充実し、厳正にふるいにかけるというような態度が望ましいかどうかというようなことは、十分そういった問題についての考え方というものが考査委員の態度にも反映されるように御説明もし、また現にそういった討議が合否の決定においてはなされているように伺っておる次第でございます。もちろん、これにつきましては、賛成の意見、反対の意見あるいは憂慮する意見、いろいろあることは御承知のとおりだと思いますが、結論的には、量質ともに充実をはかるという方向で司法試験の運営が行なわれるように私どもは希望しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/33
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034・岡沢完治
○岡沢委員 貞家調査部長の御発言に反発する気持ちはございませんが、司法試験管理委員は試験の管理が主たる目的でございますし、あるいは考査委員は試験そのものの採点等が中心だろうと思います。やはりこの問題は大きく制度、あるいは国会等におきましても、おっしゃっているように法曹人口の質と量を確保するという観点から検討を要すべきではないか。私の先ほどの質問に対する答弁のように、新しい研修所が六百名しか入れないということになれば、司法試験管理委員会は、六百名を限度としてしか採用されないことは当然でありますけれども、しかし、そういういわゆる物理的な観点から尺度をきめられるべき問題ではない。もう少し大きな観点から、予算措置その他についても関連のある国会でも、この質と量との確保についてやはり再検討を要すべき時期に来ているのではないか。私も、質が低下していいというような気持ちはさらさらございませんが、先ほど申しましたように、一点の差で百名変わる。一点や二点、いわゆる合格点を増したところで、質全体が大きく下がるという見方は私はできないと思いますだけに、検討をしていただく価値ある課題ではないか。ぜひ前向きに御検討をいただきたいと思うわけでございます。
〔小島委員長代理退席、福永(健)委員長代理着席〕
ここで、私は新しい角度から、いわゆる判検事の俸給あるいは報酬の確保について、三権分立の大前提を踏まえまして、制度的に検討してもらえないかという提案がございます。それは、いわゆる最高裁にいたしましても、法務省にいたしましても、大蔵省に交渉して、裁判官や検察官の俸給を確保されるということがきわめてふえてなお立場あるいは性格の方々のお集まりのような感じもいたしますだけに、いわゆる基本的な三権分立の立場から、判検事の俸給全額を一括して法務省または裁判所に大蔵省から手交していただいて、その月給の割り振り等は法務省、裁判所等にまかす制度に変更するというような考え方も、私は検討に値すると思うわけでございますが、これについての調査部長あるいは総務局長の御見解、あるいは政務次官、御見識がございましたら御発言をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/34
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035・貞家克巳
○貞家政府委員 ただいま御指摘の点は、法曹全体の立場にとりまして、非常に重要な御指摘を含んでいる問題だと思います。単に給与のワクをどうするかという単純な問題ではなくして、むしろその根源にある裁判官、検察官、弁護士というものをどう取り扱っていくのか、そしてその養成をどうしていくかという、きわめて司法の根幹に触れるむずかしい問題でございます。財政問題ももちろん関連をいたしますけれども、その基礎にあるべき裁判官、検察官、弁護士の姿というものが基準になってくるわけでございまして、こういった問題につきまして、もちろん平素から準備はいたしておりますけれども、なおそういった養成の問題、給与の問題、全般を通じまして、さらに突き進んだ検討を行なって、御指摘の諸点につきまして十分研究をいたしていきたいと思っている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/35
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036・岡沢完治
○岡沢委員 これはきわめて大きな問題であるけれども、ある意味では、三権分立の司法の本質に触れる問題だ。いま立法機関あるいは行政府と司法との相関の問題、司法の侵害の問題等が、新聞紙上でもあるいは国会でも大きな論議を呼んでおりますけれども、やはり人事問題と財源と申しますか給与の問題、これで裁判官、特に司法の中で裁判所は、立法府、行政府から独立した立場におられないと、事実上行政に従属する。率直に言ったら、大蔵省に頭を下げなければ裁判官、検察官の報酬も上がらないということでは、どういたしましても不純な関係が生まれないという保証はないわけでございます。ことに大蔵省の頭のいい役人の方々といえども、司法の独立、あるいは裁判官、検察官の職務の特殊性、また先ほど御指摘いたしました年齢構成一つにいたしましても、非常に理解が不十分な点がある。それの結果といたしまして、単に三、四年の一般公務員との格差の是正だけで事足れりとする態度にあらわれてくるのではないか。ぜひ思い切って前向きに、あるいは国会のほうでも、おそらく党派をあげて協力を惜しまないという方向にあるという感じがいたしますが、法務省あるいは最高裁のほうで御検討をいただくべき大きな課題ではないかと考えるわけでございます。
最後に、私は、前にも触れたかもしれませんが、いわゆる最高裁判所の裁判官をやめた方が弁護士で登録をされまして、簡易裁判所へ行って、頭を下げたり、あるいは検察庁、地検や区検に出入りをなさっておる姿を、事実まのあたりに見たことがございます。最高裁判所の裁判官の前歴をお持ちになって、弁護士——法律的には弁護士で登録されることも自由でありますし、別にその方方の仕事をなさるその意欲に不満があるわけでは全くございませんが、司法の権威ということを考えました場合にかなり問題があり、国民の司法への信頼という観点からいたしましても、ことに現に仕事に当たっておられる検察官あるいは第一線の裁判官に、かつてのいわば最高裁の判事の方々が弁護士というバッジをつけて、事件の依頼に、あるいは交渉に来られるということには、私はすっきりしないものが実際あるんではないかというふうに考えるわけでございます。
それと関連いたしまして、私は、そういうことを事実上禁止をしていただく意味からも、逆に最高裁の判事をおやめになった方々には特別の、いわば一生身分を保障するような給与上での配慮があっても、決して国民も不満に思わない、納税者も納得するだけの理由があるという感じがするわけでございます。いわゆる最高裁判事に限っては、あるいはまた検事総長を含めるかどうかという問題もあろうかと思いますけれども、前官礼遇的な、いわゆる法曹界あるいは日本の司法の番人として、最高裁等の判事という現職を離れましても、司法の元老としての処遇を国民的に申し上げるということは許されるし、また必要な時期ではないかと感ずるわけでございますが、これについての見解を聞きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/36
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037・長井澄
○長井最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のような事情がございますこと、これまたまことに考えなければならないことでございまして、国によっては、ただいま御質問の中に出ておりますような形で、退職後の裁判官がその後の生活を送っておられるというような国もあると聞いております。そのような観点もございまして、昭和四十一年には最高裁判所の裁判官の退職手当の特例というものを御制定いただきまして、十分とは申せませんけれども、そのような考え方の基礎に立ちました法的手当をしていただいたわけでございますが、何ぶんにも努力不十分で、なおこの点については一そうの努力を重ねなければならないと考えております。ただ何ぶんにも、在野法曹というものはやはり一つの聖職でございまして、かたがた職業に関しますところの自由の問題もございますので、この点は慎重に考えました上で、退職された裁判官が晩節を汚すことのないように制度的に保障をいたすということは、きわめて重要な問題だと考えておりますので、今後努力さしていただきたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/37
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038・大竹太郎
○大竹政府委員 先ほどの判検事の俸給に関する御意見、これは俸給の問題だけじゃない、予算全体についても非常に問題のあるところでございますし、また、いまほどの最高裁の判事としての前歴のある方に対する待遇の問題等、これいずれも事務的だけで考える筋合いのものではない。国全体の今後の司法のあり方についてどう考えるかという問題とも関連する重要な御示唆のある御質問だと思いますので、大臣にも申し上げまして、十分検討させていただきたいと思いますので、御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/38
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039・岡沢完治
○岡沢委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/39
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040・福永健司
○福永(健)委員長代理 本日は、この程度にとどめ、次回は、来たる七日月曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、これにて散会いたします。
午前十一時四十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106405206X00219701204/40
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