1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年三月二十三日(金曜日)
午後一時一分開会
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委員の異動
三月六日
辞任 補欠選任
稲村 稔夫君 小山 一平君
三月二十三日
辞任 補欠選任
小山 一平君 稲村 稔夫君
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出席者は左のとおり。
委員長 谷川 寛三君
理 事
川原新次郎君
北 修二君
村沢 牧君
藤原 房雄君
委 員
浦田 勝君
大城 眞順君
岡部 三郎君
熊谷太三郎君
坂元 親男君
高木 正明君
竹山 裕君
初村滝一郎君
星 長治君
水谷 力君
森田 重郎君
稲村 稔夫君
上野 雄文君
菅野 久光君
刈田 貞子君
鶴岡 洋君
下田 京子君
喜屋武眞榮君
国務大臣
農林水産大臣 山村新治郎君
政府委員
農林水産大臣官
房長 角道 謙一君
農林水産大臣官
房総務審議官 塚田 実君
農林水産省農蚕
園芸局長 小島 和義君
農林水産省畜産
局長 石川 弘君
事務局側
常任委員会専門
員 安達 正君
説明員
公正取引委員会
事務局審査部第 河村 穰君
一審査長
厚生省環境衛生
局乳肉衛生課長 難波 江君
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本日の会議に付した案件
○農林水産政策に関する調査
(畜産物等の価格安定等に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/0
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001・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
農林水産政策に関する調査のうち、畜産物等の価格安定等に関する件を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/1
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002・菅野久光
○菅野久光君 いよいよ新しい畜産物の政策価格が決定される時期を迎えたわけでございますけれども、私は特に乳価と酪農をめぐる情勢について政府の見解を伺いたいと思います。
そこで、本論に入ります前に大臣から、政府の農政に対する基本的な考え方を伺いたいというふうに思います。
大臣は、さきの所信の中で、世界的な食糧需給の展望を見ても中長期的に楽観を許さない、このため国内で生産可能な農産物は極力国内生産で賄う方針と述べておられますが、畜産物の輸入が国内の需給関係を圧迫し、国内生産が調整を強いられるという状況に対してどのような見解を持たれるのか、まずお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/2
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003・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 先生のおっしゃられますように、中長期的に見てかなり食糧というのは苦しくなるという展望は間違いございませんし、また農産物については極力国内生産で賄う、このような基本姿勢でやってまいります。
また、特に今回は、いわゆる畜産物、乳製品につきましては需要に見合った生産を行っていくというような方向でまいりたいと思っております。また、これらの輸入につきましては、主要な乳製品を畜産振興事業団の一元輸入の対象にすると一緒に、そのほかの品目の多くを輸入割り当て制度、これを対象としてやっていきたいというぐあいに考えております。これによりまして、今後とも国内需給に見合った生産体制をやっていきたいというぐあいに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/3
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004・菅野久光
○菅野久光君 今の大臣の御答弁の中で、あくまでも今後の問題については需要に見合ったことでということが基本になるということで、その点は確認をしておきたいと思いますが、よろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/4
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005・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 今先生がおっしゃられましたように、需要に見合ったというものを原則としてやってまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/5
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006・菅野久光
○菅野久光君 私は、先ほど申し上げましたが、牛乳の問題に絞ってお尋ねをいたしたいと思います。
御承知のように、生乳の生産量は、五十一年以降高い伸びを示しましたが、この伸びが飲用牛乳の消費量を大きく上回ったために、乳製品向け牛乳処理量が増大し、乳製品の生産量はバター、脱脂粉乳を中心に増加いたしました。そして、乳製品の需給は著しい緩和基調で推移したのでございますが、このために五十四年度以降生乳の生産調整が実施され、規模拡大も実質的な抑制を強いられてきたわけであります。
またこの間、乳価も実質据え置かれて、酪農経営は極めて厳しい状況に置かれております。畜産物生産費調査によりますと、一日当たり家族の労働報酬は、五十四年に九千八百十三円であったものが、五十七年では六千七百六円に、所得率も四三・一%から三一%と収益性はこの三年間に三二%も減少しているのであります。これは乳価の長期据え置きの結果であるというふうに思います。
しかし、新聞報道等によれば、政府は一頭当たり産乳量の増大あるいは労働報酬の減少などで総じて上げ材料に乏しいと判断し、価格抑制方針を固めつつあるというように報じられておるわけです。実質的な酪農家の状況というのは極めて私は厳しいというふうに思っておるわけでありますが、酪農経営のこのような状況を政府はどのように認識されているのか。また、これで加工原料乳の補給金暫定措置法にある再生産が確保されていると言えるのか、その辺についてお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/6
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007・石川弘
○政府委員(石川弘君) 先生から今御指摘がございましたように、苦しい生産調整の時期を過ぎたわけでございますが、おかげさまで最近はいわば乳製品、バター、脱粉等の過剰という問題が消えてまいりまして、比較的ここ二年間ばかり最終製品、バター、脱粉等の需給がバランスがとれて
きたわけでございます。
それと同時に、牛乳の三分の二を占めます飲用牛乳につきましても、ひところの過剰による非常に乱れた販売の形がら徐々に秩序を取り戻してきておりまして、そういう意味でよく酪農家の方々なんかも明るさが見えてきたということを言っていらっしゃるわけでございます。
そういう中で、やはり私どもが一番気をつけなければならないのは、ただいま大臣の方からお答えもございましたように、これは何と申しましても、伸びてはくるものではございますが、かつてのような大きな伸びを期待できない。むしろバランスよく生産をしていくことが農家の所得を確保するためにも、あるいは消費者のためにも望ましいことでございますので、そういうことが長く持続できるように、かつては率直に申しますと、少しよくなりますと生産がまた急速に拡大をして過剰を迎える。過去に既に二回そういう経験がございますので、私どもは過去の例を引くようなことがないように、安定的拡大がどうしてできるかということについて腐心をいたしているわけでございます。
今お尋ねがございました、価格についていろいろ報道されていることでございますが、私どもはまだそういう算定をやっておりまして、いろいろ折衝をいたします途上でございますので、何か決めたということは全くないわけでございます。先生御指摘のように、いろいろな要素の中で比較的価格の引き下げにつながるような要素とか、あるいは引き上げにつながる要素というようなことで判断をいたしてみますと、先生も御指摘のありましたように、一頭当たりの搾乳量が増加してきているということは、これは値段を下げる方に働く要素でございます。
それから、労働時間が合理化されて少なくなるということも同じような要素でございます。しかし逆に、例えば配合飼料の量がふえているとか、あるいは価格が上がるというようなことは、これは物事の方向とすれば上げる方に働く要素でございます。
それから、労賃等は製造業労賃等に評価がえをいたしますが、そういう周辺の労賃が上がるということはいわば上げの方に働くわけでございます。
それから、副産物として出てまいります子牛の価格が下がるなどということは、これは上がる方に働く、こういういろいろな上げ下げの要素を見ながら現在慎重に検討している最中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/7
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008・菅野久光
○菅野久光君 現在検討中であるということですが、一般的にはやはり新聞その他でそういう報道がされるわけで、酪農家にとってはこれらの状況について大変な関心を深めているというところでございます。
今日、多くの農家が多額な負債を抱えながら営農していることは御承知のとおりであります。この負債も年々ふえて、五十五年度では約半数に近い農家が償還不能であると言われているわけであります。農水省の「農家の形態別に見た農家経済」の中で、酪農単一経営の資本装備の推移を見ますと、北海道で一戸当たり資産額は、五十六年度で対前年比七・九%の伸びでありますが、負債額は一三・九%伸びている。それで負債の総額が約二千六百六十万、この負債利子だけでも百十七万八千円ぐらいになるということであります。所得は平均して約四百五万ということでありますから、年三百万以下で負債の元本を返しながら生活しなければならないというようなことで、とても再生産が確保されるというような状況ではないわけであります。負債の問題まで乳価にはね返らせるわけにはいかないわけでありますが、乳価の据え置き、一昨年は五十銭ですか、あるいは昨年は七十銭と上げましたが、この程度では、物価、資材の上昇等から見れば実質据え置きと同じで、乳価の据え置きが酪農経営に大きな打撃を与えたことはもう間違いないというふうに思うわけであります。
また、搾乳牛一頭当たりの利潤も、統計情報部の畜産物生産費調査によりますと、同じく北海道で五十六年以降マイナスとなり、五十七年度では四万六千三十八円の赤字となっておりますし、所得率も五十四年で三七・六%が五十七年度は二六・七%と、実に一〇・九%も落ち込んできているのであります。
こういったような実態をどのように御認識されておるか、お伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/8
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009・石川弘
○政府委員(石川弘君) 酪農の場合は、御承知のように非常に高い伸びを示した、したがいまして、経営的に非常に条件のよかった時期がありましたが、そのことが今になって考えてみますと大変な生産増強につながりまして、結果的には製品が累増する、それから最終生産物の牛乳が乱売されるという形で、結局、生産者にとっても、結果論としましてマイナスに働いたということが酪農家自身の自覚になりまして、計画生産に入ってきたわけでございます。したがいまして、その計画生産に入りました時期におきましては、特に新規の投資を多くなさった方につきましては、せっかくの投資を十分活用できないという意味のマイナスと、それから価格、数量、その他が据え置かれるというマイナスが重なりまして、御承知のように、特に北海道を中心に大規模な負債を抱えた方々が出てこられたわけでございまして、それにつきましては、御承知のように、私どもは五十六年度から負債整理資金でかなり思い切った借りかえ措置を進めて現在にきております。
一般論で申し上げますと、まず、酪農家の中で内地の方々にとりましては、非常に限られた方を除きまして、この負債問題が特に経営を圧迫なさっているというような経営は少のうございます。これは一頭当たりの借入金を見ましても北海道の半分以下でございます。そういう意味で、負債問題は地域で申しますと北海道の大型化をなさった方に非常に集中をしておりまして、それにはそれなりの対策をすべきだと思っております。実は五十七年度の数字を見ていただきますと、今まで私どもは、負債もふえたけれども、片一方で資産もどんどんふえてきている。預貯金もふえているというような申し方をしてまいりましたけれども、五十七年度からは、一頭当たりで見る限りでは、一番負債の大きい北海道でも減ってまいりました。このことは、先ほど申しましたような計画生産の一巡とか、あるいは負債整理資金の貸し付けとか、乳価、これは何も保証価格だけではございませんで、市乳として売り渡します価格についても若干の好転をしてきたというようなことがあらわれているものではなかろうかと思っております。
私どもの今後の考え方といたしまして、必要な負債整理は今後も継続いたしますけれども、一般論として申し上げますと、負債整理を前面に打ち出していく段階は少しずつ遠のいてきているのではないか、むしろ健全な酪農経営を誘導いたしますために前向きに必要なことをしていく、しかし、それが余り度を過ぎまして、かつて二度経験しましたような過剰生産を誘導するようなことであってはならない、そういうつもりで今後の施策の展開を図ってまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/9
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010・菅野久光
○菅野久光君 負債の問題については、また別な機会にいろいろ論議をしたいというふうに思っております。
次に、乳製品の輸入の問題でありますが、この輸入量を見ますと、昨年の一月から十一月の間に、生乳換算では約二百十五万トン輸入されております。これは昨年の特定乳製品向け生乳量、つまり不足払い対象の限度数量にほぼ見合う量であります。このことによって国内供給を圧迫していることは私は明らかだというふうに思うわけです。冒頭、大臣に伺ったわけでありますが、輸入によって国内供給が圧迫され、生産調整を強いられる、その結果、生産農家の経営が圧迫され脱落していく、このようなことでは生産農民が政策不信を抱くのは当然であります。あくまでも需要に見合った輸入というようなことを先ほど大臣は言われておりますが、特に輸入乳製品のうち、バターを多く含む食用混合油脂であります調製食用油脂、こ
れが自由化品目であることから、事業団による一元輸入制度を迂回して、擬装的に輸入されている、このようなことではなおさら問題だというふうに思うわけです。
そこで、まず擬装乳製品の輸入の実態と、これに対する輸入の規制措置、さらには乳製品の輸入抑制措置について政府の見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/10
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011・石川弘
○政府委員(石川弘君) まず輸入につきましては、基本的な考え方は、日本の国で合理的な生産が可能とは言えないような非常に価格差が大きいもの、一番典型的に申しますと、農家自身がお使いになっているえさ用の脱粉、これが非常に多うございます。それからもう一つはカゼインのようなもの、これも非常に価格差が大きゅうございまして、国内で生産はまず難しい、こういう国内ではなかなかつくれないというものが一種類ございます。
それからもう一種類は、御承知のように、ナチュラルチーズのように国内でも生産がされてまいりましたけれども、かって国内生産がないという状況の中で既に自由化を行っている、しかし、国内でのチーズ生産を誘導するため一種の割り当て制度等を使いながら入れているという、あのチーズのようなグループでございます。
それからもう一つが、先生から御指摘のありましたように、私どもは事業団を通じて一元管理をするという趣旨で制度を整備しているわけでございますが、食用油脂を混合させることによって、いわば自由化品目として入れてきているという、その三つのグループがあろうかと思います。
そのえさ用脱粉等の問題につきまして、これは農業生産の観点からある程度必要でございますが、酪農家がそういう問題を問題としていろいろと主張なさるときには、やはりえさの場合でも自分の酪農の牛の乳を使うということもこれは必要でございますので、そういうこともいろいろな政策面では進めておりますが、私は、こういうものは余り大きく伸ばす性質のものではなかろうと思っております。
それから、次のグループのナチュラルチーズ問題は、御承知のように、国内生産が外国から入れますものをあわせて使いながらある程度伸びてまいっておりますので、これは量的には若干下がってくることもあるのですが、ただ、大変問題なのは、為替の変動等によりまして国外の製品が大変有利になるような時期があるわけでございます。そういうこととの関係で、最近生産者の方々もこのナチュラルチーズ問題についていろいろとお考えのようでございますが、私どもも国産のナチュラルチーズがつくりやすいような条件をつくるということが必要であるとは思いますが、現在の国際関係の中で、既に自由化したものをまた、例えば配給化するというようなことはこれは不可能でございますので、そういう貿易問題も考えながら国内振興をやっていくということで解決する性質のものだと思っております。
それからもう一つの調製食用油脂のようなものは、制度の趣旨からいって余り入れることは好ましくないという前提で我々が対処しているものでございまして、これもいろいろな貿易関係の中で大変難しいわけではございますが、例えば輸出国政府との協議、協定のような姿で今のような水準に輸出を抑えてもらう、それから、国内の業者もこれをそういう基準以上に使わないように指導するという処置をとっておりまして、幸い五十八年はこの調製食用油脂とココア調製品を含みましても、両方で輸入量としまして対前年比九六・五ということで減ってはおるわけでございますが、これは御承知のように協定につきまして期限が切れるという問題がございますので、ただいま私が申しましたような方針で今後もこういうものを抑制していくという形で、何とか輸出国とも、あるいは実需者とも話をしておきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/11
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012・菅野久光
○菅野久光君 先ほど乳製品の輸入量を生乳換算で約二百十五万トン、ちょうど昨年の限度数量と全く同じなわけでありますが、酪農家にとっては限度数量をふやしてもらいたいという要求は強くあるわけです。そういうことからいって、この二百十五万トンというものが限度数量を圧迫しているとお考えになっておられるかどうかという御認識をひとつお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/12
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013・石川弘
○政府委員(石川弘君) 私は、直接圧迫をしているとはなかなか言いにくいと思います。要するに性質の違うもの、かわりにそれでは国内でつくれと言われた場合につくれるものですと競合するわけでございますが、なかなかそれがつくりがたいということでございますので、この量につきましては、ある程度これ以上大きくさせないという意味でのチェックはしたいと思っております。例えば極端に申しますと、それではえさ脱粉をゼロにして、国内でかわりにえさ脱粉をつくれということは不可能ではなかろうか。そういう意味で、強いて競合といいますと、先ほど申しました調製食用油脂のようなものは極力抑えることによって競合を避けていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/13
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014・菅野久光
○菅野久光君 全く全面的に圧迫しているとは認めがたいが、しかし若干の圧迫といいますか、そういうことをしているということについては御認識をされるというふうに受け取ってよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/14
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015・石川弘
○政府委員(石川弘君) 調製食用油脂等の問題につきましては、そういう要素が多分にあると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/15
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016・菅野久光
○菅野久光君 先ほど申し上げましたように乳価が長期間にわたって実質据え置かれてその間にも経費は増大する。このようなことで再生産が確保されるはずはないのでありますが、それは小規模層を中心に統計的にも乳用牛の飼養農家数が減少し、五十八年二月一日現在で九万二千戸、対前年比で六・四%の減少となったことなどからも、この乳用牛の飼養農家数が減少していることは明らかでありますが、特に最近のこのように乳価が長期間にわたって据え置きというような価格政策は、価格支持政策ではなくて何か構造政策として位置づけられているのではないか、言えば弱者切り捨てを意図していると思われるわけでありますが、その点について政府はどのように考えておられるのか、ひとつ明確にお答えいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/16
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017・石川弘
○政府委員(石川弘君) 酪農の場合は、やはりある程度の頭数をもちまして比較的専業度を高くやっていくという経営でございますので、どうしても例えば規模が小さい、あるいは専業的な運営がなかなか難しいという方々の中から酪農家としては減ってこられる方があるということは、これはある程度やむを得ないと思っております。ただ私どもは、ただ大きければ大きいほどいいという考え方ではございませんで、既に平均しまして二十三頭ぐらい、ECの一般的水準で、北海道の四十数頭というのはECの中でも大きなオランダの水準に来ているわけでございます。そろそろそういう意味で戸数がかつてのような大幅に減るという状況にはなくなってきておると思います。したがいまして、私どもは価格政策だけということではございませんで、御承知のようにこの価格政策で支持をしておりますのは加工部分だけでございまして、内地の酪農家の大半は市乳を出荷することによって所得を得ているわけでございますので、この加工原料乳の不足払いの制度とここ数年来意を用いております市乳のいわば生産流通のための施策というものを並行させまして、今あります酪農家が極力安定的な姿に落ちつくようにやっていくつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/17
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018・菅野久光
○菅野久光君 時間がございませんので、保証乳価についてでございますけれども、特に私は北海道でありますので、北海道では限りない規模拡大を強いられて、その実現に向けて生産農家は多額の投資をしてまいりました。それが乳製品の輸入や国内需要の見通し違いなどから、国内需給が緩和すると生産調整を強いて規模拡大を実質的に抑える、しかも乳価を据え置く、これでは生産農家は何に生産意欲を求めればいいかわからないというふうに思うのです。生産農家にとっては、乳価は経営を左右する重要な要素であることは論をま
たないわけであります。
昨年、若干の乳価引き上げと限度数量の拡大が行われたわけでありますが、これも何ら酪農民のこれまでの苦労にこたえるものではなかったというふうに思います。政府は明年度の保証価格について、先ほども申し上げましたが酪農情勢はよくなったと、早々と何か据え置く方針を示唆したかのように、実はそうではないというふうにおっしゃっておられますが、何かどうも感ずるところそのように感ぜざるを得ないような状況でありますが、こういったようなことは私どもとしては断じて許すわけにはいかないというふうに思うわけです。ことしの乳価決定に際しては、生産費を適正に評価して、全中を初め農業団体が要求している九十九円七十五銭以上に引き上げて、積極的に農民の要求にこたえていただきたいと考えているわけでございますが、その点いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/18
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019・石川弘
○政府委員(石川弘君) 決めますのは、御承知のように保証価格以外に安定指標価格とか基準取引価格とか、それから限度数量とかいろいろあるわけでございますが、それぞれ法律に明定されておりまして、いろいろな要素を勘案しながら決めるということが書いてあるわけでございます。私どもはそれらの諸要素を今慎重に検討いたしておりまして、不足払い法十一条に定めますような趣旨に従いまして適正に決めたいと思っております。
それから、毎度申すことでございますが、牛乳の価格とそれから農家の所得という問題は、実はいわば不足払い制度で決めることだけで確保するものではございません。市乳の原料をどう得るかというようなことは大変大きい問題でございます。例えば昨年北海道から内地に向けて売ります市乳原料、従来は九十円そこそこで売っておりましたものを、私どもはいろいろと生産者団体と話をいたしまして、九十四円幾らという引き上げをしたこともございますが、そういうことが大変大きな所得の増にもつながることでございますので、こういうことについても関係者とよく協議しながら、先生のおっしゃっているような、北海道でやっていらっしゃる方々の所得が確保されて、しかもバランスよく国内に流通できるようなことについても努力するつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/19
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020・菅野久光
○菅野久光君 昨年の乳価の決定を見ますと、保証価格は実質据え置きというふうに思いますけれども、数字の上では〇・七五%と若干引き上げられたわけでございます。基準取引価格はそれ以上に引き上げられたわけで、この結果、補給金単価はついに減額となって、それをもとに交付対象数量を拡大するという極めて異例と言えるような状況であったわけであります。平たく言えば、農家には据え置きではないと言えるように対応して、政府の財政負担はふやさずにその分メーカーにそのツケを回すという極めて都合のいい話であったわけであります。しかし、メーカーにツケを回すと必ず製品価格にはね返ってくるのが常でありますが、需要拡大を推進する上でこれは矛盾があるのではないか。やはり値段が高くなればそれだけ需要が落ち込むという部分がありますので、今後補給金単価を引き上げていく考えがおありか、またそういった製品にすぐはね返るような価格政策を需要拡大とのかかわりでどのようにお考えになっているのか、あるいはこれから指導されようとしているのか、その辺についてお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/20
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021・石川弘
○政府委員(石川弘君) 今幾つか御指摘がございましたが、私どもはその保証価格につきましては、御承知のように生産条件とか需給事情といった経済事情を考慮しながらその加工原料乳地帯、実際は北海道だけでございますが、北海道における生乳の再生産を確保することを旨として定めると、その場合に酪農経営の合理化の促進に配慮するように、合理化が進むようなことも考えてつくれというのが法に定めている趣旨でございます。そういう形で保証価格がつくられまして、基準取引価格と申しますのは、これも御承知のようにメーカーがこの値段ならば安定指標価格の水準でのバターとか脱粉とか、そういうものをつくれる価格ということでございますので、ここにやはりメーカーが合理化をすればするだけそういうものは安くつくられるという要素があるわけでございます。
私どもは、よくどこから財源をひねり出してということを指摘されることがあるわけでございますが、こういう違った原理で幾つかつくる価格で、その間どうしても財政で埋めなきゃいかぬものを補給金にするわけでございますので、私どもはこれらの定めるべき要件を精密にかつ法の趣旨に従いまして算定をいたしまして、そこで財源が要るということであればその必要財源をてん補するという考え方で今後もやっていくつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/21
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022・菅野久光
○菅野久光君 時間がございませんので、基準取引価格の関係でちょっとお伺いしたいと思いますが、昨年、基準取引価格が引き上げられて、いわばメーカーの持ち出しが多くなった。それにもかかわらず大手乳業三社の五十八年度上期の売り上げ総利益は過去三年で最も高く、また経常利益の伸びは五十一年以降二社が一番高い数値となっておりますし、通年決算も好調と予想されています。これは乳製品の実勢価格が安定指標価格を六ないし七%も上回って推移している、そしてその差額がそっくりメーカーの懐に入ったのがその一因というふうに思われるわけであります。
さて、その基準取引価格についてでありますが、政府の乳製品製造コストの算定が甘いのではないかということが生産者の中でいろいろ論議になっているわけであります。つまり、工場の大型化、効率化に伴って当然製造経費がダウンしているというふうに思われるわけでありますが、これが価格の算定に反映されていない。基準取引価格の算定に当たって、政府は単位当たり必要乳量をバターについては四十二年、脱脂粉乳等については四十八年以降変えていないわけであります。
最近、乳質が大変よくなって、例えば脂肪分は四十二年の平均が三・四八%、五十七年には同じく三・六七%に上がっているということから乳製品の歩どまりはよくなっているはずであります。現に三社の単純平均の売上高に占める原料乳価格の比率は五十三年度三六%をピークに下がり続けて、五十七年度は二八・一%まで低下しております。
このような事情を勘案すれば、昨年上げたばかりではありますけれども、さらに基準取引価格を引き上げることができるのではないかというふうに思うのですけれども、その辺についての御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/22
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023・石川弘
○政府委員(石川弘君) いろいろなことを一度にお答えすることになろうかと思いますが、まずメーカーのどんな経費で製造しているかというのは、先生も御承知のように、主要な乳業工場を調べまして、毎年毎年私たちがそれに基づきまして算定しているわけでございます。それは今御指摘のありましたような合理化要素があればそういう合理化要素というものは算定にあらわれてくるわけでございます。そういう合理化要素をどのように見るかということにつきましてはいろいろ論議があるところでございますが、逆に私どもは、メーカーの方からは利益率の問題一つとりましても、そういう非常に厳しく全く何年も据え置いたままで変えていない、もっと適正な、例えば食料品工業全体の経常利益率みたいなものを頭に置いて算定しろとか、先生の御主張と違った立場の主張も実はあるわけでございます。
私どもはそういうものをいろいろと見ておりますけれども、これは最終製品がなるべく競争力を持つためには、合理化要素は合理化要素として入れるべきであるということで、昨年そういう要素を加味したわけでございます。ことしはそういうことでいろいろと算定をしておりまして、最終的にどうなるかということは申し上げる時期じゃございませんが、そういう考え方によって、要するに今までやっておりますような生産費調査によりまして出ました数字をつぶさに検討いたしまして、そういう基準取引価格というようなものをつくっていくつもりでございます。
それからもう一つ、脂肪分の問題とか無脂固形分のお話もあったように思いますが、これにつきましては、これも御承知のように、脂肪分等につきましては一定の分量でやっておりますが、脂肪分取引というような形で我々の算定以外に生産者との間でお取引があるというのが実情でございます。無脂固形分につきましては、かねがね問題がありまして一定の水準でやっておりますけれども、その後、それを特段に変えなければならないような現状にまだ来ていないというのが大方の今までの話し合いの中でそうなっております。そういうことで、このあたりにつきましては、私どもは従来も一定の考え方をいたしておりますけれども、そういう考え方の線上で算定したらいいのではなかろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/23
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024・菅野久光
○菅野久光君 この基準取引価格と限度数量との問題は、昨年の経過などから見ても非常に深いかかわりがありますので、限度数量の問題について次に伺いたいと思います。
加工原料乳の限度数量は、五十四年以来百九十三万トンに据え置かれてきたわけでありますが、昨年、乳製品の需要が逼迫していたことなどから二十二万トン増加して二百十五万トンになったわけであります。しかし、最近の乳製品の需給を見ますと、事業団在庫はバターで約一千トン、脱脂粉乳で約九千トンと言われております。この在庫量は昨年のバター三千トン、脱脂粉乳二万一千八百トンに比べてかなり低い水準となっております。また、従来需給操作のために必要な事業団の在庫量は、需要量の約一カ月分でバターで五千トン、脱脂粉乳で約一万トンと言われておるわけであります。こうした状況から乳製品の需給はなかり逼迫しており、不測の事態が生じかねないというふうに思われます。また、五十年初めまでに投資して整備した施設、機械を最大限に活用し、今後EC並みのコスト水準に持っていくためにも、どうしても投資に見合った乳量の生産ができることが重要な課題であるというふうに考えるわけであります。このため中央酪農会議は五十九年度の限度数量を二百四十万トンに設定してこれを要求しております。また、日本乳製品協会も同じく加工原料乳を二百四十万トンと見通しているわけであります。
そこで、最近の乳製の需給状況から、この限度数量の拡大問題について政府の見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/24
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025・石川弘
○政府委員(石川弘君) 先ほど申しましたように、バター、脱脂粉乳等の需給につきましては、五十六年から改善をされてまいりまして、五十七年、五十八年にかけて大変バランスよくいってきたと思っています。
ただ、五十八年の終わり、昨年の暮れからことしにかけまして状況が大変変わってまいりまして、実は市乳の伸びがとまりまして以降、製品に向けられますものがかなりの勢いで増えてまいりまして、民間のバター、脱粉在庫は増加傾向に入ってきたわけでございます。これは私どもの過去の経験に照らしましても大変判断を要することでございますが、バター、脱粉を使います業界といいますのは底が浅うございまして、足らないというときは足らないという声が大変出るのでございまるが、一時あるとき急変しまして過剰型と思われるような状況になりますと、大変急速に累積をするという苦い経験がございます。
それから、事業団在庫は御指摘のように非常に少ないもの、特に、バター千トン、これは輸入しまして三千トンのうち二千トン放出しました残りでございますが、事業団がバターを持つというのは、これが足らなくなってくる過程ですと非常に効果的なのですが、余り出します過程になりますと大変困った代物でございまして、なかなか他と交換がきかないというようなことです。それから事業団が持っておりますこと自身が、下がり始めましたらこれは値段をまた下げる要因になるものでございますから、私どもは事業団在庫につきましては今の水準を積極的に上げる理由はないと思っておるわけでございます。
そういうことから見ますと、今度の限度数量を決めます場合には、やはり今後における乳製品需給問題、それから市乳をいかにバランスさせるかという両方の観点から、極力慎重に考えるべき時期に来ているのではないか。生産者団体の方は御承知のように二百四十万トンということを申しておりますけれども、乳製品協会の方はむしろ慎重な態度でございます。
そういういろいろな要件をかみ合わせてみながら、私どもは先ほど申しました法律の趣旨なりあるいは市乳との関係を考えまして慎重に決定すべきものと考えておりまして、牛酪等の二百四十万トンというような数字がそのまま何か具体的な意味を持つものではなくて、むしろ今回のこの水準を決めますことはかなり市乳問題も含めました慎重な配慮の中で行われるべきものではなかろうかと思っております。
もう一つつけ加えさしていただきますと、特に乳製品の需要が非常に強いという中には、本来市乳から直接回されてしかるべき用途のところまでこの脱粉とかあるいはバターから還元して行っているという状況がございますので、そういうことを考えますと、農家の手取りをふやすという意味からは、むしろ生乳からそのまま行く方が農家の手取りの面でもプラスという要因がございますので、私どもがこの限度数量のことを考えます場合には、やはり生産者全体の利益ということを考えますと、ただふやすことが生産者の利益と考えられないという条件もあることをつけ加えさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/25
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026・菅野久光
○菅野久光君 最後になりますけれども、先ほど来から私も質問の中で申し上げましたが、保証価格の引き上げと基準取引価格の問題、限度数量の拡大、これは北海道の酪農家にとってはまさに死活問題だと言ってもいいような状況でありますし、特に加工原料乳の約八〇%を生産している北海道としては、これがどうなるかということがもう今最大の問題でありますので、ぜひ保証乳価の上げ、そして限度数量の拡大という要求に沿って日本の酪農というものをしっかりこれから発展させる、そういう方向で、今までも農水省はそういったような方向で少なくとも指導してやってきた、そのことが実質的に農家に生産意欲をわかさせる、そして日本の酪農をしっかり位置づける。そういうことで、ひとつこの価格の設定に当たっては十分その点を配慮しながらこの要望にこたえるように私の方から強く要望して、私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/26
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027・稲村稔夫
○稲村稔夫君 私は、今非常に大きな関心事にもなっております肉の問題について、集中的に肉だけについて伺いたいということで通告をしていたのでありますけれども、肉ということになりますと、当然今焦眉の問題になっております東京ラウンド以来の日米農産物交渉の結果がどういうふうになっているのか、その辺の経過をまずお聞きをしたいわけであります。それによってまた聞き方も随分変わってまいりますので、まずその辺から大臣に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/27
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028・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 日米農産物交渉で現在佐野局長が渡米しておりまして、二十二日ですからちょうど日本時間のけさ四時あたりから交渉いたしております。この交渉は、牛肉、かんきつ、そしてまた十三品目をあわせてこれの交渉を行っております。
この交渉に当たりましての日本側、特に担当省としての農林水産省としての心構えというのは、我が国農業というものを守っていくということを念頭に置いていてやっておるつもりでございます。特に、一昨年五月、当農林水産委員会での御決議、そしてまた本年一月の当農林水産委員会での申し入れ、これをいただいておりますし、この趣旨にのっとりまして農業者が犠牲にならないように、我が国農業を着実に発展さしていくということを念頭に置いて、今交渉に当たらせておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/28
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029・稲村稔夫
○稲村稔夫君 大臣のお答えは前回もそうだったわけであります。当然のことだと思うのですけれども、本委員会の決議、申し入れというのを踏まえていただいてということでありますが、しかし
一部の報道等の中では、ある程度もう事務レベルでの詰めも相当進んでいるのじゃないかという推測なども出てきたりしているわけであります。このことは、農林水産委員会所属の委員だけではなくて、国会議員全部と言っていい大きな関心事にもなっておりますし、国民的関心事でもある、こういうことにもなるわけでありますが、佐野局長のその詰めの段階で、大臣はそうするとまた近いうちに渡米をされるというような段階になるとお感じになっているのでしょうか、それともまだ時間がかかりそうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/29
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030・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) きょう始まったばかりでございますが、佐野局長にはある程度の詰めを行ってもらいたいということで渡米をしていただいたわけでございます。
ただ、前々から申し上げておりますように、いわゆる今月末が一応期限ということになっております。金子前大臣も五十九年三月いっぱいというようなことで、いろいろ何遍も約束されておられるようでございますし、そしてまた、我が国とアメリカとの間のいわゆる友好関係というのが、この話し合いによって妥結をするということによりまして、アメリカの中における対日強硬派というものに対する抑止力、歯どめと申しますか、それにもなっておるということも聞いておりますので、できれば何とか今月いっぱいにということで今やっておる最中でございますが、前々から申し上げましたように、今月いっぱいという期限にとらわれまして無理な妥結というものはしないというような基本姿勢で行ってまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/30
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031・稲村稔夫
○稲村稔夫君 それじゃまた確認で申しわけありませんが、そうすると期限が来てもこれは妥結されないままにまた経過をするということもかなりあり得ると、現在はもうあと何日もないわけですからね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/31
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032・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 今先生がおっしゃいましたそのまま、そのとおりでございます。
今、佐野局長がいろいろ話を、交渉をしておる最中ですが、余りにも隔たりがひどいという場合には、これは期限にとらわれてということは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/32
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033・稲村稔夫
○稲村稔夫君 このことは大臣の決意を信用させていただきましす。
そこで、ということに相なりますと、これからの我が国の畜産のあり方というものを大臣がどのように考えておられるのか、その辺のところが伺いたいわけであります。
我が国農業における畜産の役割、この辺は、これは後でまたさらにコストの問題やなんかいろいろとお聞きしたいと思う点がございますけれども、今までの我が国の農業は主として耕種農業、水田農業を中心にしてやってまいりました。そういう中で、今の畜産というものを今後どういうふうにしていこうと位置づけておられるのか、その辺から伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/33
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034・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 我が国の畜産というものは、これまで順調に伸びてきておったというぐあいに認識しております。特に、農業産出額の中の約三分の一を占めるというようにまで大きく発展してきております。わが国の農業の発展を図る上で重要な役割を果たしておる、こういうぐあいにも考えております。また、畜産物は特に国民の食生活上重要なたんぱく質供給源である。そして、従来ほどの高い伸びはないにしても、これからも上向きで伸びていくのではないかというぐあいに考えております。このために、畜産につきましては、今後国民への畜産物の安定的供給、そしてまた、畜産経営の健全な発展を図ることを基本として、それぞれの部門、実態に応じてその振興を図っていきたいというぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/34
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035・稲村稔夫
○稲村稔夫君 安定的供給という言葉もそれなりにわかるのでありますけれども、そうしますと、それは今後畜産についても、自給度を上げるという方向でその生産を考えていかれるのか。それとも、国際分業論の立場に立って、物によっては自給度も上げていくけれども、物によっては外国へ依存をするという立場に立たれるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/35
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036・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) いわゆる自給力というものに対する御決議もいただいておりますので、私といたしましては、我が国で生産可能なものはできるだけ生産して、これで賄うという基本方針でやってまいりたいというぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/36
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037・稲村稔夫
○稲村稔夫君 自給度を上げていくということになりますと、やはりそこでは当然国際競争の問題が出てくるわけであります。そこで、畜産物のコストということにもなるわけでありますが、この点につきましては一応EC並みのコストを目指しておられるというのが、私が昨年十月に前金子大臣に伺ったときに御答弁があったところであります。EC並みというのに対して、私はまたいろいろとその辺にも若干疑問がないわけではありませんけれども、しかし、とにかくEC並みに持っていくということを言われ、しかもその中で、二、三年で大体その辺にいくだろうという計算になっております、という御答弁をいただいたのでありますが、そんなに早くEC並みというふうになるのでありましょうか。これは、酪農の面では規模ではEC並みになっているということは今も御答弁がありましたけれども、コストの面ではどうなのでしょう。そして、それがもしそうでないとしたらどの程度かかるのでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/37
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038・石川弘
○政府委員(石川弘君) 私どもでEC並みということを言い始めておりますのは、比較的大家畜について目指すものとして掲げたわけでございます。御承知のように、日本の畜産の中で既に中小家畜、豚とか鶏のように、えさは主として海外に依存するけれども、それを合理的に使って、この種のものは土地の制約が小そうございますから、合理化をしていくというようなものについては、物によってはEC並みに既に到達をしている。例えば卵なんか典型でございますが、そういうものがございますが、やはり一番自給力という面で大事であります。また、人間の食べますものと違った草を使ってやれるという意味で、一番自給力上も必要な大家畜につきましては、御承知のように、酪農についてECを目指して走りながら、先ほど申しました規模においてそういう水準にようやく達した。
ただ、これらはECの諸国が長い年月をかけて築き上げました現在の体制と、日本のように比較的短期間に追いつこうとしました結果、やはりコストその他の面につきましてはまだ格差がございます。酪農がある意味では一歩早くそちらを目指して走っていたわけでございますが、最も格差が大きいのが肉用牛生産でございますので、肉用牛生産につきましても、酪農に追いつくという意味でECを一つの目標にし、と申しますのは、粗飼料といった面でもアメリカとかオーストラリアとかではこれは比較になりません。ECの場合は比較的、日本より恵まれておりますけれども、土地条件の制約が大きいということもございますので、そういうものを目標にして、いわば近代化をしますための基本的な方針を昨年十月に決めたわけでございます。
到達すべき時間につきましては、私どもはあの際にも申し上げておりますが、そういう二、三年というテンポでは実は難しゅうございまして、私どもがかねがね言っておりますのは、せめて六十五年のあの見通しの最終年にはかなり接近をしたいものであるというようなことを申しておりますが、これらのことはいずれも何年ということで決めることよりも、そういう方向に向かっていくということを必要と考えておりますので、二、三年という期間は私どもとすれば大変短い期間ではないか。先生の御指摘のように、そういう御答弁があったことも承知をいたしておりますけれども、これは酪農とか肉用牛生産ということで申しますれば、もう少し時間のかかることではなかろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/38
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039・稲村稔夫
○稲村稔夫君 畜産局長、大変申しわけないですけれども、やはり大臣にはその辺は正確なところを教えておいていただきたいのであります。私が秋にお伺いしたときには、こう明確に言われているわけです。「EC並みの生産コストに日本の農
業が成長するというのはここ二、三年で大体到達する、そういう計算になっております。」、これは議事録にもちゃんと残った形なのでありますから、きちっと大臣にはその辺は理解をしておいていただくように、山村大臣はそういうことはないと思いますけれども、ぜひお願いをしたいと思います。
そこで、ECを目指して努力をしていかれるということでありますけれども、実際にEC並みになることが可能なのだろうかどうだろうか。例えば粗飼料の問題もお考えになっているようでありますけれども、粗飼料を得るための土地、経営面積という観点からいくとかなりECとはかけ離れてくることにもなるということが一つと、それから、コストがEC並みよりはまだ高いけれども、いろいろと努力をして自給度を上げていく、こういう努力をしていかれる中では、そこでコストは少しは高いけれども、生産が上がってきます。そうすると、輸入との問題が当然起こってくるのではないでしょうか。今後、特に大型家畜ということで、牛肉の需要については長期計画でしょうか、六十五年を目指してのあれでいくと、何か輸入依存度の方が高くなるという形のようでありますけれども、その辺は自給を目指していくということと何か矛盾するように思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/39
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040・石川弘
○政府委員(石川弘君) これは、私どもの需要の伸びをどう見るかということにもかかわるわけでございますが、牛肉の場合はどうしても肉資源としまして国土の大きさみたいなものに限りがあるわけでございます。そういう意味で国内で供給可能など言います場合に、ある程度合理的な供給ということを考えなければいけないと思います。どんなに高くても構わぬという論法になりますと、これは消費者との関係で合意が得られないところでございますので、合理的な生産で自給が可能なものは自給をするという試算で六十五年見通しをつくりました際には、若干今よりも供給の比率が下がることがあるというのがあの表の中にございますけれども、この辺は基本的に何か圧倒的に輸入が多くなるというような数字ではなくて、若干、確か一ポイント前後の下がりがあり得べしという試算になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/40
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041・稲村稔夫
○稲村稔夫君 そうすると、六十五年度を見通した長期見通しの話が出たものですからついでにちょっとお聞きするのですけれども、それは現状もう経過をしておりますが、そこでその現状は長期計画との関係で大体うまくいっているのですか。何かものによっては、ずれがあるように思うのですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/41
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042・石川弘
○政府委員(石川弘君) これは御承知のように、生産につきましてはいろいろな変動がございまして、生産の見通しで申しますと、かつての穀物ショック以来のそういうショックが残っておりまして、例えば五十四年なんというのは生産が大体見通しよりかかなり下回っています。それから五十六年になりますと、今度は先ほど申しました酪農の生産調整と申しますか、駄牛淘汰ということでその牛乳の生産調整の結果、比較的能力の低い牛を殺して肉に回したという時期がございますが、そうしますと五十六年は生産見通しをオーバーするような生産が出てきたというぐあいに、短期的に見ますと目標年次に比べてある程度の振れがございます。これは天然自然の産業といいますか、こういうものでやむを得ぬと思いますが、非常に大ざっぱに言えば、方向としては余り間違いのない方向を今走っているのではないか。
これは将来のことになりますと、例えば、最近問題になっておりますような雌牛の淘汰がある程度行われているのじゃないかということになりますと、これまた二年後に生産が余り伸びないということが出てくる可能性があるわけでございますが、私の今の感じでは、大変大まかな言い方をしますれば、ほぼそういう見通し線に余り大きく振れない形で動いてきておると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/42
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043・稲村稔夫
○稲村稔夫君 そこで大臣、私はわが国における畜産の振興、自給度を上げていくということを考えていきましたときに、耕種農業とのかかわりというものをかなり考えていかなければいけないのではないかというふうに思うわけです。
それで、特にわが国の耕種農業と言ったときは水田でありますけれども、こういう耕種農業との複合経営というものを基本に考えていっておられるのか、それとも今とられている方向のように畜産専業化への方向を中心にとられるのか、その辺は農林水産省の今後の指導方向ということなわけでありますけれども、私が大臣に伺いたいのは、大臣としてどういう方向をとるのが一番いいのか。いいですか、メモは要らないでお答えいただきたいのでありますけれども、要するに耕種農業と複合というようなわが国独特の行き方をとるのがいいのか。それとも今のように大体専業化し、少しずつ大型化をしていくということでやっていくという方向をとる方がいいと思っておられるのか。これはやはり基本的な考え方になりますので、それを聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/43
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044・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) これは大型という家畜の畜産経営ということもありましょうが、また、土地によりましては耕種農業とのいわゆる複合経営というようなもの、これはその土地土地によって私はやってもいいのじゃないかというぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/44
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045・稲村稔夫
○稲村稔夫君 土地土地によってというお答えでありますけれども、しかし、全体の流れとして今、畜産は大体専業化への方向をとりつつあります。そして今のコストの問題、さっきからいろいろと出ているわけであります。コストの問題を追求していきますとどうしても一方では畜産専業という方向へ向かざるを得ないという要素を持っているのじゃないだろうか。このことが今度は、耕種農業とのかかわりの中で日本農業のあり方として果たしてそれでいいのでしょうか、こういうことを私は伺いたいわけなのです。小さな地域地域での特徴的なことを伺っているのではなくて、日本農業の流れとしてどうお考えになっているかということを聞きたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/45
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046・石川弘
○政府委員(石川弘君) 専業化に向かっているというお話でございますが、まず典型的に言いますと、中小家畜のようなものはそういう方向に向かいつつありますし、現にそういう専業化した大型経営が主力でございます。
問題は大家畜生産でございますが、大家畜生産の中で比較的専業化が進んでおりますのは酪農でございます。それからもう一つ、肉用牛経営でも肥育経営が大型化を目指しているものが多うございますが、実は繁殖経営、特に肉専の繁殖経営の主力は依然として水田とかあるいは畑作とのいわば複合型の経営でございます。
私どもは今回の基本方針の策定につきましても、そういうことを頭に置きましてあの基本方針の中では、酪農経営の場合それから肉用牛経営の場合にそれぞれタイプを設けまして、専業型で進むような人はこういう形を選べ、それから背後の条件等を考えながら複合経営でいく者はこういう形を選んだらどうかという別々のタイプを指示をしまして、そういうものを先ほど大臣が申し上げましたようにその立地立地に応じまして、しかも比較的土地の制約が少ないところ、これは北海道とか東北とかあるいは九州の一部とか、そういうところと、土地条件の制約が比較的大きいところ、比較的そういう広範な背後地を持たないところ、こういう二つに分けましていわば誘導すべき目標を定めておりまして、特に繁殖経営の場合にはやはり繁殖単一でやるという条件というのはなかなか整ってこない。今御指摘のありましたような複合、これは水田だとかあるいは畑作とか野菜作とかいろいろございますけれども、そういうものとの組み合わせがむしろ必要ではないか。そういうものから外そうとしますとかえって経営が脆弱になる場合もある。そういう割り切り方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/46
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047・稲村稔夫
○稲村稔夫君 私は畜産局長の立場での御答弁はそうだろうと思うのです。というのは、畜産経営というその範囲だけで見ていけばおっしゃるようなことだろうというふうに思うのです。
私の聞き方が悪いのかもしれませんけれども、例えば家畜を飼うということになりますと兼業化
が非常に難しくなってきます。今日本の農業は大体大変激しい勢いで兼業化をしてしまっているのです。そういう中で畜産の振興を図っていこうとするならば、新たにまた拡大をしていこう、畜産と取り組もうとするならば、家畜を飼っているために外へほかの農外収入を得るために出られないという条件が今度は阻害要件になってくる、こういうことにもなってまいります。あるいは畜産経営の中で、例えば繁殖と取り組んでいっても、もうどうしても農外収入を当てにしなきゃならないという農家になってきますと、結局やめなきゃならぬということになっていってしまうでしょう。
ですから、日本農業全体のあり方という観点から見ていったときには、私は今の畜産の行き方というものが、今の繁殖なんかのことはひとつ別にいたしましても、全体として経営としては専業化への方向、要するに専業化でなければ取り組めないような状況になってきていると言ってもいいわけなのです。だから、そういうあり方で日本農業はいいのだろうか、日本農業の一つの未来へのビジョンも含めてその辺のところが私は問題だと思っておりますので、それで大臣の見解が聞きたい、こういうふうに申し上げているわけなのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/47
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048・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 私も畜産局長と実は一緒なのですが、北海道やそのほかの大きいところでは畜産農家というのはいわゆる専業でやっていく。それでまた、さっき話が出ました繁殖と申しますか、子牛の方のことになりますと、これはやはり複合経営というような形、これは両方を取り入れてやっていくべきでありまして、それ以上私としてはまだちょっとほかに新しい政策というのは持ち合わせておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/48
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049・稲村稔夫
○稲村稔夫君 わかりました。
このことについてはまだまだいろいろと御議論しなきゃならない部分があると思うのです。要するに農業の根幹の問題にみな触れていると私は思っております。
そのことは時間もなくなりましたからこの程度にさしていただきまして、次に、えさのことについてちょっと伺いたいと思います。
まず、この間の畜産振興審議会の飼料部会で、えさの自給を高めるという視点を踏まえた建議がされたようであります。この建議をもちろん踏まえていろいろとこれは対処していかれるのだとは思いますけれども、これについてのお考えをまず伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/49
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050・石川弘
○政府委員(石川弘君) 飼料部会から御建議をいただいておりますが、私どもここに掲げてありますような趣旨はごもっともと思っておるわけでございまして、今後とも極力こういう趣旨に沿った政策展開をしたいと思っております。
特に、ことしは粗飼料給与率を上げますために、単に公共事業で草地造成をやるというだけではありませんで、いろいろと新しい考え方を導入いたしました。例えば団体営草地開発なんかにつきましては、新しく造成します場合にどうしても農民の負担が重くなりますものですから、再整備の方の農家負担は実はこれは低いものでございますから、そこと新しく造成するものを調整しまして、新しくやる方が負担がふえないような調整係数というのも新しく入れておりますし、それから草地管理用機械等につきましていろいろな助成体系もあったわけでございますが、極力簡易な、しかも負担の少なくなるようにということで無利息資金で草地管理用機械とかあるいはサイロをつくれるようにするとか、そういうことで粗飼料の供給にうんと力を入れたいと思っております。その場合に、やはり里山とか国有林といったようなものもかねがね利用するということでやっておりますが、こういうことにつきましても新しい考え方でやれますように、特に畜産農家とそれから耕種農家がある程度結びつきまして土地を有効に使おうという、地代の一括払い的なようなものも新しく入れたいと思っております。
そのほか、備蓄等につきましても御要請がございましたので、これは御承知のように備蓄の積み増しなりあるいは価格安定制度の基金の増勢といったようなことで措置をしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/50
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051・稲村稔夫
○稲村稔夫君 もう時間がありませんので、あとまだいろいろとえさについて伺いたいと思いました点はありましたけれども、これはまたいずれかの機会ということにさしていただきまして、今の建議にありますようなえさの自給への努力、特に粗飼料への努力というものはぜひ積極的な施策を展開していただきたい、このように思うわけでございます。
ただ、そこでちょっと少し気になることだけ聞いておきたいと思うのですけれども、粗飼料の生産を伸ばしてまいりまして、一定程度粗飼料に依拠する分がふえるということは、コストの引き下げにつながるでありましょうということで大変歓迎なのであります。しかし同時に、そうすることによって今度は濃厚飼料の供給量が減ります。そうすると新しい貿易摩擦の原因になるということにはなりませんか。そういう心配はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/51
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052・石川弘
○政府委員(石川弘君) 濃厚飼料が入らなくなって貿易摩擦という前に、私どもは牛肉を必要以上買えということは、国内における牛肉生産を阻害して、結果的に穀物の輸入が減るよということを既に向こうには申しております。これは御承知のように、濃厚飼料の輸入は全く自由化しているし、それから関税も一銭もかけていないわけでございますので、要らない物を買わないということは別に貿易摩擦にはならないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/52
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053・稲村稔夫
○稲村稔夫君 私は、いろいろと政治的なものがひっ絡んでくるから、このことだって決して油断をしていてはならぬ、十分警戒をしながら、例えば新たなそういうことが起こったとしても毅然として頑張っていただきたい、そう思うものですから申し上げたわけです。
そこでさらに、飼料の安全性のチェックの問題が一つありますので、そのこともちょっと伺いたいのです。
飼料に対する添加物について現在百一品目が挙げられているようでありますけれども、この添加物についてそれを認められている基準は何なのだろうか、それからまた、それに対する安全性へのチェックの体制というのはどうなっているのだろうか、この辺のところをお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/53
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054・石川弘
○政府委員(石川弘君) 添加物を認めております理由といたしましては、飼料の品質が下がりますことを防止するという目的が一つございます。それからもう一つは、飼料の栄養成分を補給するという意味でございます。これは典型的にはビタミンとかミネラルみたいなものでございます。それからもう一つは、飼料が含有している栄養成分の有効な利用の促進というようなものでございまして、これは抗生物質等がそれに当たるわけでございます。こういう物の考え方によりまして、先生から御指摘のありましたように百一品目が添加物として指定をされております。これらにつきましてはいずれも御承知のように、農業資材審議会におきまして飼料添加物の評価基準というものがございまして、これでチェックをいたしまして、安全性とか有効性が完全に確認されたものを指定するということでございます。
これはそういうことで認められるわけでございますが、今度はそれを適正に使用してもらわないと困るわけでございますので、それを遵守しますために、まず農家段階では、私どもで一種の飼料安全使用緊急対策事業というのをやっておりますけれども、こういうものを通じまして獣医師さん等による畜産農家を対象とした講習会の開催とか、あるいは巡回指導等によりまして、使用基準が定められている飼料がそのように使われているかどうかということを指導をいたしております。
それから、特に自家配農家でみずから抗菌性物質製剤を飼料に配合しております人につきましては、飼料製造管理者の設置義務というのがあるわけでございますが、そういう特定の義務を負っている方々につきましては、そういう人がちゃんと置かれているかどうかということやら、あるいは一斉点検をするとかしましてその責務が完全に行
われているかどうかのチェックをいたしております。
それからもう一つは、配合飼料等をつくりましたり売りましたりする段階でのチェックでございますが、これにつきましては、肥飼料検査所によって立入検査をするというようなこと、それから添加物を生産、輸入、販売することにつきまして報告聴取をいたしておりますが、それでチェックをいたしまして、そういうものがきちっと使われているかどうかということをやります。それから特定の添加物、これは特に抗生物質でございますが、こういう物につきましては安全性の確保に万全を期す必要がございますので、肥飼料検査所で行います国家検定にかけておりまして、これに合格しないと販売できない、こういう姿でチェックをいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/54
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055・稲村稔夫
○稲村稔夫君 えさというのも直接的には家畜に対しての影響がありますし、それをまた人間がとるということになるわけであります。それだけに安全チェック体制というものは万全な上にも万全を期してもらいたいというふうに思うわけであります。この点では今も肥飼料検査所の話が出ましたけれども、国民的にはこの点では農水省、ちょっと今あれを買っているところですね。縦割りの何かとかいうふうに言われているところでありますから、それだけに人体への影響等についても常にチェック体制をきちっと、厚生省との関係などもありましょうがやっていただきたいと思っております。
もう時間がないので本当に申しわけありませんが、あと簡単に肉の価格について伺いたいと思います。
価格についてはいろいろとありますけれども、新聞の中には、また据え置きで諮問されるのじゃないだろうか、というような心配もしている向きもあります。この点がどうなのかということと、それから、農業団体等のやっております生産費計算と農水省の算定方式というのは違うようでありますけれども、この生産費が肉の価格に影響をするのはどの程度影響するのであろうか、その辺のところ、特にこの点は先ほど来からいろいろと同僚の菅野議員が伺いました酪農においての話で借金の話がありましたけれども、こういう農家が借金で苦しむということは私も随分訴えを聞いているわけであります。借金で苦しむということは、生産費が必ずしも十分正当に評価をされていないということになるのではなかろうか、こんなふうにも思うものですから、その辺をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/55
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056・石川弘
○政府委員(石川弘君) 私どもが、指定食肉、牛肉と豚でございますが、これにつきましてとっております方式は、通常需給実勢方式と言われている方式でございます。農業団体の場合と方式を異にしておりまして、実際に市場で形成されております価格というものを一つの基準にしましてこれを一定の期間、これを基準期間と言っておりますが、牛肉の場合は七年間、豚肉の場合は五年間、その間で生産費がどのように動いてきたかということをバランスさせながら算定をする方式になっております。これはそういう意味で生産費の動きがならされて加味されるわけでございますが、そういう方式でございます。私どもは、この方式で現実に生産が順調に拡大をしてまいっておりますので、農業団体が言います所得補償方式という方式をとらなくても生産の実態は反映していると思っております。これは比較的動かさないできておりますのは、先ほどから申し上げておりますように、生産者の方の合理化努力という形で、水準は上がっておりませんけれども個別農家とすればそれなりの合理化で対応してこられたという意味で、消費者の方にも十分御納得のいただける方式じゃないかと思っております。
先ほど先生からちょっと御指摘がありました負債等につきましては、たとえば五十七年のように一般論といたしましてあらゆる経営にかなり大きなマイナスが出てまいりました場合は、御承知の肉畜経営改善資金というような形での負債整理等をいたしております。その俊の食肉肥育、生産、特に肥育の方々の条件はかなり改善されてきておりまして、五十八年度は明らかに前年よりもはるかに改善した姿になっているように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/56
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057・稲村稔夫
○稲村稔夫君 いずれにいたしましても、私は今の算定方式で多少まだわからないところもありますから、これはまたいずれかの機会にいろいろとお聞かせいただきたいというふうに思いますけれども、要は、農業団体の計算などによりますと、生産費所得補償方式になるかどうかということは別にいたしまして、生産費の部分でえさ代は上がってきておりますし、それからまた労働時間も若干ずつではありますけれどもふえているようであります。そういうことになりますと、今の政府のこの計算でいくと最終的には所得がゼロになってもしょうがないような形、印象にもなるわけでありますけれども、そんなことにならないようにもちろん配慮していただいていると思いますが、要するに、生産費が正当に反映をされるような価格というのを常に御諮問いただいて、それが生産者にも消費者にもよくなるように御指導をいただきたいということを最後に要望いたしまして、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/57
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058・上野雄文
○上野雄文君 私は、一連の農業問題の中で養蚕に限って御質問申し上げたいと思うのです。
今、菅野委員から酪農、そして稲村委員から畜産。畜産農家、酪農家の皆さんの悲鳴が聞こえるような質問だったと思うのです。養蚕の面でも、今減反の問題やら、あるいはまた価格の問題やら、そういうことを前にして、大変な悲鳴が上がっている。実は、三月二日の日にも、私が木材、それから菅野委員が魚、稲村委員が米、これも一連の輸入の問題と絡んで大変な状態にあるというそれぞれの角度から御質問を申し上げたわけですが、農林省はまさに受難の年の連続と言ってもいいのだろうと思うのであります。また逆に言えば、今ほど農林省が農家の立場に立って踏ん張り続けなければいけない年はないのだろうと思うのです。
そこで、私は、実は大臣かや御答弁をいただくのは一番後にしようと思っておったのでありますが、冒頭に大臣の率直なお気持ちを養蚕問題についてお尋ねをしてみたいなと思うのです。それは、三月二日に村沢委員からも、国内の生産は国内の需要を下回っているのだから国内でとれるものについては抑制するというようなことはできるだけしない、そういう方向でやってくれという結びがあったと思うのです。今酪農の問題で菅野委員の質問に大臣は、極力国内生産で賄います、そうして需要に見合ったということを原則にして取り組みます、こういうお話でありますから、養蚕問題についても大臣の率直なお気持ちというものを、十二万八千戸の養蚕農家に向けてのお気持ちをお伝えをいただきたいというふうに思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/58
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059・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) まさに、先生の言われるように、日本農業受難の年と言われる。私は、実は農林水産大臣をやれと言われましたときに、本当のところを言ってうれしいよりもぞっとしたというような、これは率直な感じでございました。それぐらいはっきり申しまして難問が山積しております。
その中にあって、特に養蚕の場合に戦前は全農業の四分の一ぐらい、二五%を占めておった。現在ではこれはかなり低下して二%弱というような状況ではございます。しかし、これは農山村における農業経営上重要な複合作物の一つということは認識しております。そうしてまた、現在減反の御協力もお願いしておるし、また、特に繭糸価格安定制度、これ自体大変な危機に陥っておる中でこれをどういうぐあいにするか、今研究会を設けて研究していただいておるところでございますが、ただ、自由化してしまった品物の一つであるということでなかなか輸入等に対しての規制というものはむずかしいようでございます。しかし、それにしましても、農林水産省といたしましてはできるだけいわゆる相手国にお願いいたしまして輸入の縮減という方向へは努力してまいりたいと思いますし、また、伝統産業でございますこの養蚕業というものを何とかして持ち直してやってい
きたいという基本姿勢でこれに臨んでまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/59
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060・上野雄文
○上野雄文君 そこで、一つ一つお尋ねをしていきたいと思うのですが、局長、やはり養蚕農家の方々は、減反の問題が出てきておっても、ことしの価格は一体どうなるだろうかというのがどうしても一番の心配事だろうと思うのです。ここら辺について三月末までにお決めになるようでありますが、畜産あるいは乳価、そういったものとの、もうその時期に実際に来ているわけでありますけれども、今どういう状況になっているか、どんなふうに持っていってもらいたいものだというような願い、お気持ちなどをこれまたお知らせをいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/60
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061・小島和義
○政府委員(小島和義君) 私どものところには、生糸の需要者側からは、大変機業地も輸入の織物等に押されて苦しい状況にありますので、基準糸価についてできれば引き下げてもらいたいという要望が寄せられております。また養蚕関係者からは、自分たちとしても大変苦しい中に減産の方向に向かって現在検討を進めている最中でありますから、基準糸価を下げるということはしないでもらいたいという要望が寄せられておるわけでございます。基準糸価の決定方法については、御承知のとおり繭糸価格安定法によりまして、生糸の生産条件及び需給事情その他の経済事情から見て適正と認められる水準に決定すると、これが法律上のルールでございますので、今申し上げましたような大変難しい諸情勢を勘案しながら審議会の意見も聞いて適正に決定してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/61
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062・上野雄文
○上野雄文君 そういっても——ここのところもきのうは事務局の方々が、もうそれ以上の答弁はできませんよというのを繰り返し言われました。しかしそういってみても、今日の状況を考えてみると、やはり農林省なのですから養蚕農家に重点を置いたそういう態度を貫いてほしい。ここのところ、五十七年対比で言ってみても一〇%下がって一万四千円ですか、そういう状況、それでも耐え抜いてきた、こう言っているわけです。ですから、さらに減反問題で今相談中だ、お願いをしているというのであれば、その補償は我々は全力を挙げてそういう仕組みの中でも頑張っていきますよというような気持ちなりそういったものがせめてあらわれてもいいのでないかと思うのです。これはこれ以上聞いてもそれ以上のお答えをしないというのであれば、私どもの要望ということになるかと思うのですけれども、おっしゃりたいことがありましたら重ねてお話をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/62
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063・小島和義
○政府委員(小島和義君) 繭糸価格安定制度は、直接には生糸の価格安定でございますが、その生糸の安定を図っているということの意味は、やはり国内の養蚕を保護するというねらいから制度ができておるわけでございまして、申し上げますと大変長くなりますが、最近の蚕糸業をめぐる情勢の中でこういった制度の健全な機能発揮というのが大変難しくなってきているという状況にあるわけでございます。私どもとしましても、気持ちにおきましてはこの法律の趣旨でございます養蚕の安定的な発展を図るということは農林省の役人であります以上持っているわけでございまして、この難しい中でどうやって適正に価格を決められるかということで苦慮しておるというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/63
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064・上野雄文
○上野雄文君 ひとつ大いに養蚕農家の養蚕安定のために頑張っていただきたいと思うのです。
そこで、養蚕農家の指導をされてきている農水省として、今日典型的な専業の養蚕農家が施設や設備、装備といったものについて大体どのくらい投資をしているか、そういう状況を知りたいのですが、その把握の状況などについて教えていただきたいというように思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/64
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065・小島和義
○政府委員(小島和義君) これは最も信頼できる資料といたしましては、統計情報部で行っております繭の生産費調査に出てくるわけでございますが、遺憾ながらこの生産費で把握できますものは、全国平均の養蚕農家の経営状況と、あわせて掃き立て箱数別にどれぐらいかということしかわからないわけでございまして、その中で生産費の一部を構成しております償却費がどれぐらいかということは、数字の上では把握できるわけでございます。ただ、その償却費の背景にあります資本装備というものが総額でどれぐらいか、またどういう種類のものがあるかというのは、生産費調査の上からは直接には把握できないわけでございます。そこで私どもといたしましては、いわば望ましい一つの専業農家と申しますか、養蚕の所得が大体八割ぐらい以上を占めております養蚕専業農家について一つの指標を示しておるわけでございます。
これは二、三年前に蚕糸業振興審議会の生産部会を煩わして決めたものでございます。その内容を簡単に申し上げますと、家族労働力で三人、経営規模で桑園面積が二・五ヘクタール、掃き立て箱数が年間百十箱、一蚕期で二十箱で年六回ぐらい飼育する。そういたしますと、収繭量で三・七トンぐらいに相なるわけでありますが、所得といたしましては年間三百六十万ぐらいになる、こういう養蚕経営を想定しているわけでございます。そういう養蚕経営をするための設備がどれぐらいかかるかということになるわけでございまして、これは当然のことながら他の養蚕農家に比べれば充実しておるわけでございまして、トラクターでありますとか、条桑刈り取り機でありますとか、あるいは蚕室でありますとか、そういったものを兼ね備えた経営でありますので、全部新品でそろえるということになりますと、大体八百万から一千万ぐらいの投資が必要であろうというふうに見ておるわけでございます。現実には、養蚕農家はおおむね父祖伝来の仕事としてやっておりますので既往の投資が既にあるわけでございまして、例えば蚕室などにつきましても従来の建物を利用するということがございますので、全部新品で投資した場合は今申し上げたような金額、実際には、それの半分から七割ぐらいというところが実際の投資額であろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/65
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066・上野雄文
○上野雄文君 それから、米の転作と関連して、桑園をつくる、つまり養蚕をやりなさいと、転作の場合に永年作目にできるだけ切りかえてもらう、またもとに戻ったのではどうにもならないということで、奨励金もつけて切りかえをさせたと思うのです。うちの、栃木県ですけれども、かなり広がってきまして、ある地域なんかではほとんど全部桑園にかわっているという地域なんかも出てきていますが、全国的にどのくらい桑園に切りかえをしたか、総面積はどのぐらいあるのか、これも知ってみたいなと、こう思うのですけれども、その把握した数字というものはございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/66
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067・小島和義
○政府委員(小島和義君) 米の転作が始まりましたのは厳密には四十六年からやっておるわけでございまして、古いものについては概数しかわかっておりません。ただいまやっております水田利用再編対策が始まりましたのは昭和五十三年度からでございまして、五十二年度以降今日までということでございますれば、おおむね二千町歩が転換をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/67
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068・上野雄文
○上野雄文君 それから、この転作で桑園にした人たちからの悩みが訴えられているわけなのですが、それは三年で奨励金が打ち切り、さらに二年たつと桑園は水田でなくなる。そうしますと、今度の第三期対策なんかでも、新たな減反割り当てが来た場合に、もう既に水田でなくなってしまったのだから残ったものについてまた割り当てを受ける。極端なことを言えば、そういうふうに農林省の方針に従って永年作目をつくった人は五年たつと水田でなくなってしまうので、残った水田に対してまたぶつかかるということで雪だるま式にふえていくというような二重の被害を受けているのです。片や一年作でやっておった人は十何年もずっと奨励金をもらい続けてきている。農林省の言うとおりに忠実に水田をつぶしていった人はえらい目に遭ってしまっている。やはりお上に逆らっておってやった方がいいのだな、正直者が馬鹿を見たという結果があらわれるような施策が——もともと養蚕自体だって、米づくりをやめて、ひ
とつこれで専門でいったらいいじゃないですかというので、これはわっとよくなった時期があったわけですね。ですから、その辺の農家の皆さんの矛盾した気持ちというものについて、これは直接、やはりここの担当でいいのですか、その辺の扱いをどうお考えになっているのか、そういうものもちょっとお尋ねしてみたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/68
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069・小島和義
○政府委員(小島和義君) この問題は、桑でございますとか、果樹でございますとか、いわゆる永年性の作物に転換をいたしました場合、水田利用再編奨励補助金は三年または五年で打ち切りになる。打ち切りになりました後、その奨励金を今までもらっておりました面積に相当するものを他の水田で転作をしなければならなくなるのではないか、こういう問題と存じます。
従来、水田利用再編対策の始まりました当時は、そういう形で、水田から水田でなくなるものというものをいわば潜在生産力の中にあらかじめ控除してありまして、卒業生がこれだけ出るということを計算に入れまして転作面積をはじいておったわけでございますので、奨励金が切れますと、その分についてはほかに転作田を見出さなきゃならないという矛盾があったわけでございます。
そこで、昭和五十六年度に水田利用再編対策の第二期を始めましたときに、第二期におきましては永年性作物で奨励金打ち切りになるものが出ましても、その面積の分は転作をしたものとみなす。奨励金こそ出しませんが、転作面積のカウント上はその分も引き続きカウントをするという扱いにいたしたわけでございます。
引き続きまして、明年度から第三期に入りますが、第二期中のいわば卒業生につきましては、これは第三期中においても転作したものとみなしてカウントをするという扱いを先般決めておるわけでございます。その反面に、いわゆる潜在生産力の計算上も、既に永年性作物が終わっております田んぼの面積も、いわば潜在作付面積として分母の方にも入れておるわけでございます。分母に入っておりますので当然分子の方にカウントしてもおかしくない。こういう扱いをいたしておりますので、既往のものにつきましてはいかんともしがたいわけでございますが、第二期以降の奨励金打ち切りになりましたものについては引き続きカウントをするという扱いにしておりますので、今後はその問題が発生しないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/69
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070・上野雄文
○上野雄文君 次は、最近の養蚕の所得率の推移をここ五、六年ぐらいの間で結構ですけれども、ちょっと教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/70
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071・小島和義
○政府委員(小島和義君) これは毎年の繭価が実際には多少変動いたしておりますので、簡単に比較しにくいのでございますが、五年間ということで限って申し上げますと、五十三年、この年は五八・三%でございます。糸値も割といい時期でございます。それから五十四年が五五・六%、五十五年が四九・二%、五十六年が四〇・七%、五十七年が四五・五%ということに相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/71
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072・上野雄文
○上野雄文君 五十八年の推計はわかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/72
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073・小島和義
○政府委員(小島和義君) これはちょっと今の段階で申し上げかねるのでございますが、今お聞き取りいただきましたような数字で、五十六年よりは五十七年が少しよくなっておると申しますのは、五十七年は少し糸値が、少なくとも前半はよかった年でございます。五十八年はそれに引きかえますと、年当初以来ずっと基準糸価割れ状態が続いたという経緯もございますので、五十七年の所得率よりは少し悪くなるのではないかという想定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/73
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074・上野雄文
○上野雄文君 次に、減産の話で、端的に申し上げて、今いろいろな新聞やなんかによると、減産三〇%というのが、農林省筋から出たのかどこから出たのかわかりませんが、ともあれその話が出てからひとり歩きしているようだという話も新聞なんかには出ています。実は、私の栃木県でも五十八年産のものは、五十七年と比べて大体一二〇%ぐらいの増産の指導というのをやっているのです。結果としては対前年九九ぐらいに落ちついたようであります。
それから、五十九年の具体的な計画というものも、もう各県段階で取り組みをやっています。これはある新聞によれば、福島県なんかは、五十九年は五十八年を上回る一万トンなんという目標まで掲げて具体的な動きをやっているのだというようなことも聞かされているわけですけれども、減産問題と絡んでくると、一体、一連の流れの中で農林省の方としていつごろからこういう話を出していって、議論をしてもらうような体制にしたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/74
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075・小島和義
○政府委員(小島和義君) 繭の計画生産の推進ということは、五十六年度、この年は御承知のように基準糸価の引き下げということをやった年でございまして、この年から生産者団体に対しましては目標を決めて自主的に計画生産を推進するということをお願いしてまいりました。
具体的には、五十六年は前年の収繭量が七万二千トンほどございましたけれども、その年の五十六年の目標としては六万二千トンという目標を掲げたわけでございます。それから五十七年は、同じく前年の実績は六万四千トンほどございましたが、六万一千トンという目標を掲げております。それから五十八年は、前年実績六万二千八百トンに対しまして五万九千トンという目標を掲げてやってきたわけでございます。
しかしながら、このときにおきましては、中央段階でこれぐらいにしようという団体の中の申し合わせがございますけれども、具体的に県までその目標をおろすというふうなことはやっていなかったわけでございます。その最前線の指導者の意識といたしましては、やはり地域の養蚕が、蚕繭量が減ってくるということに対する一種の危機感を感じておりますので、何とかして減ることに歯どめをかけたいという意識の方が強うございまして、中央の方では生産を抑制ぎみに運用したいという希望はあったにもかかわらず、現実には目標数量をかなり上回る実績ということでこれまできたわけでございます。
私どもも先ほどお答え申し上げましたように、繭糸価格安定制度の趣旨というのは養蚕保護ということが本旨でございますから、輸入の絹製品を抑えるというふうなこと、需要喚起をするというふうなことに主眼を置いておりまして、国内生産の縮小ということについて余りドライブをかけるということは差し控えてまいったわけでございます。
しかしながら、いよいよ絹の全体の消費量が落ち込んでまいりましたし、これに反比例的に事業団の在庫はふくれ上がる一方ということになりまして、制度自体の存立についてかなり危機的な感じを強めてきております。そういう意味におきまして、従来のかけ声だけといってはあれですが、中央で申し合わせをするというだけではなくて、これを地方段階にもおろして計画生産を進めていただかなきゃならぬという意味で、この一月以来呼びかけをいたしてまいりまして、二月に計画生産推進協議会という関係団体、都道府県も入れましての協議会をつくりまして、そこで考え方のまとめをいたしたわけでございます。その際に、養蚕団体の方からは、考え方についてはわかったけれども、具体的にどの程度にするかという問題についてはなお組織内で討議をしたいので、その点だけはリザーブさしてもらいたいというお話がございましたので、私どもも養蚕団体の中の討議というものを待っておる状況でございまして、いよいよ予算の時期も近づいてまいりましたものですから、できるだけ早い時期に養蚕団体との話し合いを詰めまして具体的な目標を決定いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/75
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076・上野雄文
○上野雄文君 いずれにしても御丁重な御答弁をいただいたのですけれども、一月ごろになって言われたのではこれは頭にきてしまうというのも無理がないと思うのです。
そこで大臣、実は私がここで質問をするに当たって、我が栃木県には養蚕日本一、五十三年には天皇杯をいただいた方がいらっしゃるのです。私
もそこへ行って、倉井寛さんとおっしゃるのですが、いろいろ話を聞いてまいりました。彼は今度の米の転作、政府の方針にひとつ乗っかってやってみようと、こういう決意でやったのですね。今言うところの三〇%減反というのを目前にして、彼の率直な気持ちというものを私が代弁してみたいなと思うのです。
彼は、転作と同時に始めまして規模拡大をし、そして自分のところの田んぼだけでは足りないので、減反をした人の田んぼまで借りて全部桑園にしてやったのです。収量は八・五トンです。こんな大変な養蚕農家になったのですけれども、ここへ来て三〇%減反の追い打ちをかけられると、五十七年には約二千万上がり、五十八年は値段が下がりましたから千八百万、今度は三〇%、価格が安定していると見ても六百万も減ってしまう。
そこでもう一つは、一体今度の減反は何年続くのですか。その展望というのはことし一年だけなのですか。そこのところも明らかでないまま割り当てさせられてもこれはどうにもならない。今やっている桑園は一年手を抜いたらもうどうにもならなくなってしまう。それから一番問題なのは、農家の後継者がいない、いないというのを、これだけの展望があるのだからおまえが来て後継者になってくれ。彼が後継者になって七年目でだめだと言われたときに、おれはせがれに合わせる顔がないと言うのです。今から家じゅうみんなして日傭取りに出かけていくようなことになって全部やめてしまう、どっちかするしか方法がない、しかも田んぼまで借りて桑園にしたわけですから、三年間の奨励金がなくなり、それ以降は小作払いを続けるのです。展望のないまま一体いつまで借りておったらいいのだろうかということを考えたら、これまた頭の痛い話でございます。いろいろな省力化の問題なんかでも、生産コストを下げるために大変な努力もやってきた、それも全部ふいになってしまう。
そこで、今度は彼の感想として私に言って、一番私も答えに窮してしまったのは、我々農民がつくった米で倉庫がいっぱいになって、おまえたちのつくったものだからと言われれば、それは多少は納得すると言うのです。しかし、事業団の倉庫にあるのは半分近くは輸入物じゃないか、今四〇何%まで下がっているというお話ですけれども、おれたちがつくったものじゃなくて輸入したものがいっぱいになっているというのであれば、何とも泣くに泣けないじゃありませんか、こういう訴えです。私は、かつての連合赤軍じゃないけれども、本当に時限爆弾を抱えて事業団の倉庫に飛び込みたい気持ちでいっぱいなのですと。それから十日ぐらい前は、おれは焼き打ちしたいのだと、十日たって私が行ったら、今度は、もう自分の体も一緒に吹っ飛んでもおれは構わないというぐらいの切実な気持ちになっている。これが五十三年に養蚕日本一、そして天皇杯をいただいた人の悲痛な叫びです。
その人の家の前に記念の石碑があるのです。立派な石で、そこに天皇杯受賞記念と書いてあったのですが、私が行った十六日の日はちょうど雪が降っていまして、その石の上に雪が積もって、それが解け出して流れているのは、まさに彼が涙ながらに訴えている姿そのままが天皇杯記念と書いた石碑の上に解けて流れているのです。これはまさに悲惨この上もないというふうにお感じになるのではないのかなと、こう思うのです。
それから、私がもう一カ所行ったのは、小山の三拝地区ですが、これはさっき私がちょっと申し上げましたけれども、減反に全面的に協力しろというので一面見渡す限り桑畑です。それで十九戸で共同して団地形成したわけです。十九戸のうち十四人が全部後継者ができたというのです。できて、これからというときにこの仕打ちでは、私は子供に合わせる顔がない、後継者の笑顔が見たいというのが今の共通の、たしかそこは五十トン生産記念と鎮守の森に記念の石碑をつくったばかりです。まだしめ縄が張ってあるわけです。そのしめ縄の縄も新しいのです。おれたちに死ねということなのかということですね。そういう状況下での、大臣以下農林省当局の皆さんの一層の奮起をお願いしたいし、これも通産政策や何かといろいろなところで絡むのも知っています。しかし、今頼りにするのは農林省以外にないじゃないですか。男山新でひとつ踏ん張ってください。最後に一言決意を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/76
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077・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 本当に、今先生言われるのは……、本当に涙が出るような、私としましてもできるだけ守るようにやってまいります。せんだっても新聞で御存じだと思いますが、何にしても内需の拡大ということで、実は閣議のときに恥を忍んで閣僚に絹の背広を売り込んだようなこともございましたけれども、先生の言われるのは本当によくわかります。一生懸命……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/77
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078・浦田勝
○浦田勝君 先ほどから同じような質問がそれぞれ畜産関係につきまして出たわけでございます。重ねて私がまた同じような重複する質問をいたしますことは極めて恐縮ではございますけれども、お許しをいただきたいと思います。なおまた通告外のことでお尋ねするかもしれませんが、これはふなれのためにお許しをいただきたいと思います。
〔委員長退席、理事北修二君着席〕
先ほど話が出ておりましたように、非常にたんぱく質が食生活で変化いたしまして非でん粉化、たんぱく質による食糧に変わってきたというようなことでございまして、特に農業基本法が制定されましてから拍車をかけるように規模拡大あるいは多頭飼育というようなものになりまして、非常に先行き明るいものがあったわけでありますけれども、高度経済成長の彼とともに非常に飛躍的な発達、発展をし、生産性も高まりきたわけです。過剰ということで、生産調整とか減反とか、あるいは農家戸数の減少、兼業農家の肥大化と非常に社会構造も変わってきた中で、今回特に乳価並びに食肉の価格の決定もいよいよ大詰めの段階を迎えてきたわけでございますが、まず第一点といたしまして、牛乳と乳製品並びに牛肉及び豚肉の需給の見通しと、今後の畜産行政の進め方についてお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/78
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079・石川弘
○政府委員(石川弘君) 牛乳、乳製品の需要の見通してございますが、かつて大変高い伸び率で来ました。御承知のように、安定成長期に入りましてからは伸び率は鈍化をいたしておりますけれども、やはりこれらもパーセンテージは低くなりましたが、ある程度今後も伸びていけると思います。ただ、御承知のように、市乳なんかの場合はかなり伸び率が低目になってきていること、それから乳製品等につきましては、ここ数年過剰の中で比較的価格が低廉であったということで伸びましたけれども、これもいわば伸び率が落ちてきているというようなことがございます。それに対しまして、生産は御承知のようにかなり各農家の力がついてまいっておりまして、ちょっと気を許しますと生産が思った以上に伸びられるという体質をもう既に持っておりますので、これにつきましては極力生産を安定的に伸ばす。かつてのような高い伸びを期待しますと、結果としては需給の不均衡になりまして、農家の方々自身も大変お困りになるという事態でございますので、牛乳、乳製品につきましては需要の動向に見合った安定生産、それから何度も申しますが、比較的速いスピードで伸びてまいりましたので、ここしばらくは体質改善というような意味での落ちついた経営に持っていくというところに政策の中心があろうかと思います。
それから、肉でございますが、牛肉は御承知のように比較的かつての伸びから落ち込んできましたものの、肉類の中ではまだ伸びが比較的大きいものでございます。これは国内生産を伸ばしますにはいろいろと制約もございますけれども、ようやく牛の数もふえてきたという大事な時期でございますので、生産の量を伸ばすという面では私どもは比較的安心ができる分野でございます。これにつきましては御承知のように、製品価格自身は安定をしてきているわけでございますが、生産資材でございますとか子牛の価格が非常に低落をしまして、繁殖農家が大変お困りになっているとい
う事態でございますので、その辺に政策の中心を置きまして、繁殖農家も安定的拡大ができるようなことをするのがここ当分の施策のいわばかなめではないかと思います。それと輸入政策を適正に行いまして、農家の方々に不安がないようにというようなことに政策の中心があろうかと思います。
それから、豚でございますが、これは御承知のように既に百万トン台の国内生産をいたしておりまして、需要の伸びも若干は伸びますけれども、どちらかというと頭打ちに近うございます。特に食卓で使いますいわばテーブルミートというものはなかなか伸びておりませんで、むしろ加工原料に回って全体の需要が伸びるという状態でございます。これについては自由化のされている物資でございまして、差額関税で対外関係を調整しているわけでございますが、これも大体国内生産の一割強ぐらいのものが輸入に入ってきている。生産は大規模化が行われておりますし、一貫生産が七割以上に達しておりますので、これはどちらかというと生産を需要に見合った形でうまくコントロールしますと同時に、これも体質を強めるというところに重点を置いた政策展開が必要かと思います。
簡単でございますが、以上のような考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/79
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080・浦田勝
○浦田勝君 畜産物を中心としたたんぱく質というのがもう食糧の頭打ちになってきておるわけでありまして、特にコストが高いというようなこと等もあり、生産者においても非常に自助努力を持ちながらコスト意識に徹して二割減と団体自身も打ち出しておるわけであります。先ほど野党の皆さんがおっしゃっておりましたけれども、ECと比べますと三割高、六十五年までには三割のコストダウン、こういうような目標設定で今やっておるわけですけれども、肉そのものが変化が非常に激しいというようなこと等もあり、そういうもので非常に先行き不安があるわけであります。
そこで、一番心配になっておりますのは農産物の輸入に対する問題でございます。この点につきましてお尋ねをしたいと思うわけでありますが、現在、我が国は価格、構造政策によって農業の振興を図ってきつつも農産物の輸入を認めてきたのですが、そういう中でありながらも、これ以上の輸入の枠の拡大は農家の生産意欲を低下させるばかりでなく、食糧の自給率の低下に拍車をかけるということになります。
新聞等によりますと、牛肉におきまして五千トンともあるいはまた七千五百トンとも報道されておるわけであります。仮に七千五百トンの増枠となりますと、四年後には三万トンとなり、さらにはオーストラリアが同調いたしまして同量の増枠を要求してきたとすれば合わせて六万トンとなり、屠殺頭数に換算した場合におきましては実に百万頭を超えるということにもなるわけであります。昭和五十八年の全国肉用牛飼育頭数の約四〇%に及ぶわけであります。また、オレンジにつきましても一万トンの増枠と言われておりまして、四年後は現行の輸入枠の八万二千トンと加えますと実にこれまた十二万二千トンの輸入量となるわけであります。これは昭和五十七年の全国伊予カン出荷量に匹敵する数量であります。輸入枠の増大につきましては、我が国農業を守る見地に立ってより慎重に交渉に当たっていただかなければならないというふうに願っておるわけであります。
三月の二十二日、二十三日、きょう佐野経済局長が日米交渉に当たっておられるわけであります。この佐野経済局長が日ならずしてお帰りになるわけでありますけれども、山村農水大臣の訪米が取りざたされておるわけでございます。その交渉に臨む姿勢につきましては、さきの委員会におきまして大臣から表明もありましたけれども、重ねてこの点について基本方針をお尋ね申し上げたいと思うわけであります。また、訪米されるといたしますならばいつになるのか、これもあわせてお願いをいたしたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/80
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081・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) ちょうど昨日の午後二時から五時十五分ごろまで佐野経済局長とアメリカ側との交渉があったわけでございます。そして、内容についてはひとつお許しいただきたいと思いますが、静かな話し合いを行っておるということでございます。そして、私がこの交渉に臨む態度、これは前々から言っておりますが、我が国農業を守るということを堅持してまいります。
そして、いつ行くかということでございますが、これは佐野局長が帰りまして、そして前の安倍外務大臣の方は堀の深さをはかってくるというまあ丸橋忠弥で、目測で見たのかもしれませんが、今度は佐野経済局長の場合はかなり具体的に話し合ってくるものと思います。その話し合いの大筋を見まして、そしてこれが我が国農業を守るという立場を崩さないでそれに応じられるかということで、できるということになれば今月中にも渡米したいと思います。しかし、これが余りにもかけ離れたものであるという場合には、今月いっぱいの決着というこの期日にこだわってそんな無理な決着というものはしないということで、その場合はやはり私は渡米というものは控えたいというぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/81
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082・浦田勝
○浦田勝君 非常に大臣の心強い御表明をいただきまして、本当に心強く思っておるわけでございます。
いじわるな話でありますけれども、牛肉、オレンジの今度の交渉の争点が、かんきつの交渉関係の争点が何だろうかという気もいたしますし、お尋ねもしたいと思います。あわせて、また十三品目の関心品目は一体何だろうかという感じも持つわけでありますが、恐らくここでは答えられぬだろうと思いますので、もうあした一晩寝ればわかることですから辛抱いたしまして、この件にはお尋ねしないことにいたします。どうか大臣、日本農民が全部注目をして見ておるわけであります。生産農民の期待を裏切らないようにひとつ大臣、よろしくお願い申し上げたいと思います。非常にまじめな方ですから安心いたしております。
第三点につきましては、乳製品の安定指標価格等についてお尋ねをいたしたいと思います。
近年、乳製品の需要の伸びが極めて顕著であり、畜産振興事業団の手持ち在庫は、昭和五十三年、昭和五十四年当時に比較すれば大幅にダウンし、バターのごときは需要量の〇・二カ月分の手持ちと聞き及んでおります。振興事業団の適正在庫の確保を図るべきではないかと思われますが、このように乳製品の需要が非常に強いという状況の中で、加工原乳の不足払い限度数量は現行の二百十五万トンのままでよいのかどうか、お尋ねしたいと思います。
さらにまた、現在の乳製品の価格は安定指標価格の一〇四%の水準を上回るような価格に推移しており、安定指標価格のアップについてその考えがあるのかどうか、お伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/82
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083・石川弘
○政府委員(石川弘君) まず、限度数量についてのお尋ねでございますが、私どもは今いろいろと需給状況等を見ながらの判断をしているわけでございます。限度数量につきましては、御承知のように、農家の方々とすれば乳製品を余計つくることが可能だという意味で、限度数量をふやしてほしいというお話があるわけでございますが、実はこの限度数量あるいは価格もそういう意味を持つわけでございますが、一歩処理を誤りまして過剰を招来をいたしますと、今度は市場価格が下がってくるという形で、かつてありましたような大変苦しい状況をつくり出す可能性があるわけでございます。
それから、もう一つ最近の事情で申し上げますと、いわば乳製品の用途の中に従来飲用牛乳から向かっていたもの、例えばヨーグルトの一部とか高級のアイスクリームとかいったものがこういう製品を経由していくということがかなり行われております。このことは農家の手取りのことを考えますれば、むしろ生乳の方を一定価格にして原料として供給した方が農家の手取りがふえるという可能性もございますし、それから財政的観点からいたしますと、そういうことで足りるものに財源を持ち得るということのある種の非合理性というようなこともございます。ですから、私どもは生
産者の方々にも申し上げておるわけでございますが、必要な限度数量をつくるということは必要なことでございますけれども、何か量がふえればふえるほど農民にとって有利な条件ということは必ずしも言えない。例えばかつてのような、それがもとになって値下がりする、要するに正常な価格が形成できにくくなるということも恐れておるわけでございます。
もう一つは、安定指標価格でございますが、安定指標価格は御承知のように、一定の価格で市場に流通するであろうということを予想します水準でございまして、これはいわば消費者の方々がどういう価格でバターなり脱粉なりをお使いになれるかという数字でございます。これを引き上げますことは、御承知のように当然のことといたしまして消費者の負担の増、したがいまして需要を抑圧するおそれもあるわけでございます。必要な場合にこういうものの調整が必要でございますけれども、そういうもろ刃のやいばと申しますか、上げて需要が減ってきて、需要が減ることによってその安定指標価格を極端に下回るような価格を形成いたしますことは、これまた大変困難な事態を招来するわけでございますので、私どもはこれらの要素を勘案しながら、いかなる水準を考えるべきかということを現在検討いたしておりまして、法律に定めます各種の要件を調べながら適正に決めていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/83
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084・浦田勝
○浦田勝君 その件につきましては、いろいろとむずかしい問題がありますけれども、それはそれなりとしてお尋ねしたわけでございます。
第四点として、牛肉価格安定制度等についてお伺いいたします。
牛肉安定価格に対する算定方式並びに肉牛生産費について、算定方式を生産者サイドが要求いたしております生産費及び所得補償方式を採用する考えがないかどうか、お尋ねしたいと思います。
また、現在の肉用牛経営は、素牛の価格低迷によって辛うじて経営が成り立っておるというのが実情でございます。言いかえれば、肉用繁殖牛農家の犠牲によるもので、肉用繁殖の雌牛は大変激減しております。雌牛の振興方策に伴う子牛価格安定のための政策が十分であるのかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/84
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085・石川弘
○政府委員(石川弘君) まず、算定方式でございますが、私どもは需給実勢方式という方式を採用しておりまして、それに対しまして生産者団体の方々は所得補償というようなお考えのようでございます。実は、私どもの算定方式で市場で形成されております価格が安定的に推移をする、その中で農家の方が再生産を確保していくということから見ますと、現在までこの方式をとりながら生産農家の方が安定的に生産を拡大してきたという現実から見ますと、今の算定方式を特段改変をする必要があるとは考えておりません。実は算定方式は大変違っておりますように見えますけれども、出ております数字自身はそんな大幅な格差があることではございませんので、私どもはむしろ今の水準と申しますか、今の制度の考え方でも特段生産者の方と大きく意見が違っていないのではないかと思っております。
それから、もう一つ御指摘がありました、肥育農家の方が現在比較的経営改善がなされておりますのは、これも先生が御指摘になりましたように、素牛の価格が低落しているということが大変大きな要素でございます。ということになりますと、素牛価格が大変高いときには繁殖農家は大変喜び、今度は素牛価格が下がりますと繁殖農家はお困りですけれども、肥育農家がその利益を受けるという意味ではこれは両方ともいいというときがなかなか出てこないわけでございます。そこでやはり経営内一貫とか、あるいは地域内一貫とかという形で、かつて豚がこのようなことでございましたけれども、豚では現在肥育と繁殖というのがかなり結びつきまして、一貫経営が約七割あるわけでございますが、牛肉につきましてもそういう形が望ましいということで私どもはいろいろと対策を考えているわけでございます。しかし、繁殖農家がただお困りになるという形ではこれを放置ができませんので、先生もよく御承知のように、子牛価格安定制度をもちまして、低落しました価格の九割は補てんをいたしております。そのほかに、昨年でございますと、一万五千円の生産奨励を出しておりますし、多頭化をなさった方には全部で二万円の生産奨励をしたわけでございます。
それでもどうも価格が思わしくございませんでしたので、昨年の秋に急遽、雌牛を導入しますことに対する助成事業を新たに起こしまして、名前は肉専用種雌子牛効率利用緊急促進事業と長い名前でございますが、こういう事業も起こしまして、価格が回復するようにということをやったわけでございますが、昨年の十月ごろを底にいたしまして若干ずつ子牛価格も回復をしてきております。ただ、テンポが思わしくないということで、私どもは今回の価格決定に際しまして、このような分野について生産を極力振興するような方途を考えてみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/85
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086・浦田勝
○浦田勝君 再生産ができるように、繁殖雌牛が非常に減ってきたというようなこともあり、更新率が極めて低下いたしておりますので、その点ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。
次に、肉用牛生産近代化基本方針において、輸送コストの低減及び生産性の向上並びに経営体質強化のため、繁殖、肥育の地域内、経営内一貫生産が取り上げられているが、当然な政策であり、積極的に推進しなければならないが、畜産経営においては莫大な運転資金が必要であり、金利負担が著しいことから、その実を上げるためには農林公庫資金程度の低利資金の供給が必要であると考えますが、この点についてお尋ね申し上げたいと思います。
〔理事北修二君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/86
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087・石川弘
○政府委員(石川弘君) 私どもは資金のお世話をいたします場合に、やはり基本的には長期の低利の必要な資金といいますのは、施設の資金とか、あるいは資金の性格からいってかなり長く寝ます中期資金と申しますか、そういうものにつきましては御承知のように農林漁業金融公庫の資金なり、あるいは農業近代化資金なり、そういうような資金をつくっております。しかしながら、純粋に経営をしますような例えばえさ代とかというようなものは資金の性格から短期のものでございまして、こういうようなものにつきましては、普通は系統の資金というものを使うようにということでいろいろお願いをしているわけでございます。私どもはそういう意味で、いま先生が御指摘になりました資金の中で、例えば家畜を導入します資金とか、そういう中長期と説明がつくようなものにつきましては、極力既存の制度あるいは既存の制度を若干でも改善をしながら、そういう制度資金が活用できるように考えておりますが、ごく短期の運転資金というようなものについてはやはり原則的にも自分の調達、要するに農協のプロパー資金というようなものをお使いいただきたいということが基本でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/87
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088・浦田勝
○浦田勝君 素牛の導入、育成費の金利、そういうものが大変農家にとっては重荷になっておるわけでございまして、農協、市町村、生産者と一体となった推進をするためにも、低利資金の供給が必要であろうと思うわけであります。奨励金その他をでき得れば御配慮願いたいと思うわけであります。
最後に、さきに申し上げましたが、現在における畜産の価格政策はそれなりの成果をおさめております。その点、高く評価しておるものでありますが、これは単年の成果でありまして、畜産農家経営の根本的解決にまでは至っていないわけであります。それは、昭和五十七年以前の累積負債が今なお多額に上っておる農家も多いわけでありまして、これらの負債整理が必要ではないかと思われるわけであります。何らかの特別な手当が考えられないものか、また農協等が実施しておる預託制度に対しても何らかの助成措置は考えられないものか、あわせてお聞かせ願いたいと思うわけであります。
さらに、畜産経営は耕種農家と比較にならない経営管理能力と体質改善が要求されているわけで
ありますが、そういう実情からいたしまして、末端農家に対する経営診断、簿記記帳の普及指導などにおける援助措置など、指導体制の強化についてはどのようにお考えになっておるのか、お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/88
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089・石川弘
○政府委員(石川弘君) 農家の負債問題につきましては、特に畜産農家といいますのは耕種農家に比べまして相当多額の資金を投入してやっておりますので、他の制度とは別個に畜産政策として幾つかの負債対策をやったわけでございます。
まず最初に、御承知のような酪農家の負債問題につきまして、五十六年に酪農経営負債整理資金を設けまして、既に五十八年度まで入れますと約四百数十億の資金を投入しまして長期低利資金に借りかえをいたしております。
それから、肉用牛につきましては先ほどちょっとお話がありましたように、子牛価格が大変高い段階で肥育をなさった方々が、一般的にその負債に耐えられないということがございましたので、五十七年に肉畜経営改善資金という資金の貸し付けを行いまして、一般的なそういう方々について農家経営の改善とか家計の改善というようなことを条件にしまして借りかえ措置をやったわけでございます。
その後の事情を申し上げますと、酪農にしろ肉用牛生産にしろ基礎条件はむしろ改善をされております。個々の農家につきましては今御指摘のありましたように、やはりかなり大きな負債を抱えて経営改善ができないという方もございますので、御承知の自作農維持資金のうち再建整備資金というもの、これは五十九年度の予算では二百五十五億の枠を持っておりますが、こういう資金を投入いたしまして、個別の経営改善に努めるようにしたいと思っております。
それから、その次に御指摘がありました件でございますが、預託でございますが、農協等が預託という形でやっておりますものが現在四十万頭ぐらいございます。預託という制度は農家の方々が自分の危険負担でなくて牛を飼っているという意味のメリットも片側にありますと同時に、どちらかといいますと、農家が自分で責任を持ってやるということが必ずしも十分じゃないとか、それから、その場合に農協等がいろいろ預託のために使いました金とか何かを全部結果的に農家の方から取るわけでございますので、そこがなかなか負担がかさんでいるとかというような欠陥もございます。
これは、例えば農家の方が自分で飼うということにいたしますと、近代化資金とかそういうものをいろいろ使って有利にやれるわけでございます。そういうことを私どもはお勧めしておりますが、一方でやはりそういうこともなかなか安心してできないという農家のお気持ちもあるわけでございまして、私どもはこの預託牛のことを今後どう持っていくかということでいまいろいろと考えております。これは一つはぜひやっていただかなければいけませんことは、預託ということで農家の方々がある程度責任を持つ、あるいは自主性を持つということは明らかにしておいていただかなければいけない。いままでの例を見ますと、例えばどんな条件で預託されているかというようなことを農家の方が知っていらっしゃらない。あとで返すような条件になりましてから、そういうはずではなかったというようなことでは困りますので、こういう経営主宰権の明確化ということが必要でございます。
それと同時に、やはり預託で飼っております農家の方々が、そういう面で積極的に経営も自分で責任を持つと同時に、行っております農協等もそれに対して責任を持って指導助成をしていくということが必要かと思います。
現在、例えば肥育素牛導入価格平均化事業というような実験事業をやっております。これなども預託牛の制度の一つでございますが、いろいろと預託問題についての団体からの要請もあるところでございますので、この預託牛をより合理的にする手法についてさらに検討を進め、できれば実施に移したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/89
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090・浦田勝
○浦田勝君 時間がありませんから申しわけないのですけれども、預託牛は制度資金の対象外となって、先ほど局長がおっしゃったように、こんなはずじゃなかったというのは、非常に金利負担が重いというようなことで、もうかりが少なかったというようなことがあるわけであります。そういうことで、この点につきましてできるだけそういう面での助成措置をお願い申し上げると同時に、非常に厚かましい話でありますけれども、先ほどまた申し上げましたように、畜産農家は、概して農家というのは経営につきましての診断というものについてはうといのであります。そういう面から、少なくともそれだけ国の方からしていただいても、なおかつまた借金が、累積赤字が出ていくというようなことは決して芳しいことではありませんから、これは中央、農業団体一体となり、あるいは県、市町村一緒になって、この問題を解決するための助成措置を何らかお考えいただきたいと思うわけであります。
最後に、要望であります。
さっきはちょっと忘れましたけれども、今度の輸入の問題で、牛肉とオレンジにばかり目が走ってしまいまして、肝心なものを忘れておるわけであります。それは何かと申しますと、あわゆる一元入札の畜産事業団の入札に対してこれに参入をさせろというようなことが新聞報道に出ておりました。なおまた、オレンジにつきましても参入させろというようなことでございますが、こういうことになりますと、見返りというのが、生産農家にはね返りがないというようなこと。それから、一割も入れたら大変なことになるということもございますものですから、どうぞその点につきましてはあくまでも一元入札ということでお願い申し上げたいと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/90
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091・刈田貞子
○刈田貞子君 御質問さしていただきます。
公明党は、先ごろ農水大臣に申し入れをさしていただきました。昭和五十九年度の畜産物の価格については、生産農家の所得補償と畜産物の再生産を確保できる水準で決定すること、また加工原料乳の限度数量については、最近における乳製品の需給と価格の動向を踏まえ大幅に拡大すること、こういう申し入れをさしていただいたわけでございますけれども、この中で、生産農家の所得補償ということを私は大変重点的に考えておりますので、一言大臣にお言葉をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/91
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092・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 所得の確保ということでございますが、再生産ということ、これをもとにしてひとつやってまいりたいというぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/92
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093・刈田貞子
○刈田貞子君 先ほどから同僚議員の中で、農家の現状が非常に厳しいという状況が多々出ておりますので、ぜひ大臣、そのお覚悟を施策の上に表現していただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
私は、先ほどから伺っておりますと、生産者の保証価格の問題、限度数量の問題、あるいは取引価格の問題等、かなり出てまいりましたので、当初はそういうものを用意してまいりましたけれども、立場を逆にいたしまして、乳及び乳製品が消費される市場の側から見てこの問題がどういう意味を持ってくるのかという形で、市場の方の問題から伺ってみたいと思います。
先ほど局長が何回となくおっしゃられた言葉の中に、生産者のいわゆる生活保障というのは、この限度数量をふやしたり、あるいは保証価格を引き上げたりということだけではないのであって、ということがございまして、私もそのことはそうではないかというふうに思います。基本的には、生産者によって生産されたものがいかに消費されていくかという問題が非常に現時点では大切な課題になっているというふうに思うのでございますけれども、先ほどからの幾つかの数字を挙げられて、乳及び乳製品の消費が鈍化しているというふうな問題も出ております。この乳及び乳製品の消費拡大ということはかなり前からの一つの懸案の事項であり、大切なものとなっておるわけですけ
れども、具体的にはどんなことをなされてきたのか、今後しようとされておるのか、この点をまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/93
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094・石川弘
○政府委員(石川弘君) 牛乳の消費拡大といいますことは、やはりこれから生産を拡大していく面で一番大事でございまして、消費の拡大がございません場合は、過剰問題という形で生産者にもそのとがが来るわけでございます。
そこで、私どもが消費拡大対策で一番重きを置いておりますのは御承知の学校給食でございます。飲用牛乳の総消費量の一五%が学校給食で消費をされておりますので、いろいろと財政的な問題もございますけれども、極力合理化をしながら学校給食を伸ばしていくというのが一つの大きな施策でございます。
それからもう一つ、これは畜産振興事業団の助成事業の形でやっておりますが、牛乳普及協会等を通じます、幼稚園だとかあるいは老人ホームにおきます集団飲用、それから妊産婦の牛乳を飲まれることに対する援助といったような、こういう具体的な金をつけましての普及でございまして、これにつきましてもかなりの成果を上げているものと考えております。
そのほかもう一つ、一般論といたしましての啓蒙宣伝。この場合に、既に牛乳を飲むという姿ではかなりの限度まできておりますので、欧米と大変牛乳の消費量が違いますのは、料理にお使いになるかどうかという点に相当ありますので、この消費宣伝の中では、単に飲用ということだけではなくて、そういうお料理用に使うというような面にも最近力を入れております。
それから、もう一つは製品としての拡大でございますが、最近、御承知のように、いろいろな形で乳製品を使いました冷菓類というようなものが伸びております、ヨーグルトその他のものが伸びておりますが、こういうものとか、あるいはナチュラルチーズといったようなものが伸びておりますので、このような製品につきましても、それぞれ所要の形でその消費が伸びるようにと、大体今申し上げましたようなことを中心にいたしまして拡大のための助成なり指導なりというものをやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/94
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095・刈田貞子
○刈田貞子君 私は生活を預かっております主婦といたしまして、食生活が大変多様化していることが今食生活の中で一番大きな変化だというふうに思いますし、特に欧風化していることが一つの特色だというふうに思うわけです。そういう食生活の変化に伴う乳製品の対応の仕方、この問題がいささかおくれているのではないかというふうな考えを少々持っているものでございます。例えば乳等省令に出てくる牛乳、加工乳、それから乳飲料あるいは乳等を主原料とする食品というものの中で、具体的に本当に生乳が使われているのかいないのか、その実情をちょっと伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/95
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096・石川弘
○政府委員(石川弘君) ちょっと先生の御趣旨がよくわからなかったのですが、牛乳、加工乳とか、あるいは乳飲料とか、そういうものの中でどのように牛乳が使用されているかということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/96
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097・刈田貞子
○刈田貞子君 乳等省令の中に、「「乳飲料」とは、生乳、牛乳若しくは特別牛乳又はこれらを原料として製造した食品を主要原料とした飲料」というふうなことが入っているわけです。私が言いたいのは、これを原料として製造した食品を主原料とした飲料という種類のものはどういうものに匹敵するのかということ、そしてもっと言えば、これを原料として製造した食品というのは、さっきさんざ局長がおっしゃられたような調製食用油脂みたいなものではないのか、そういうものを使っていわゆる還元乳というもの、そういうものではないのでしょうかということを聞きたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/97
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098・石川弘
○政府委員(石川弘君) 今先生がおっしゃいました生乳及び生乳を使った製品、端的に言いますと、バター、脱粉みたいなものを水に戻せばまた牛乳と同じような成分になるわけですから、そういうものはその両方の道からいける。今先生が言いました乳飲料あるいは加工乳なんかのところの定義には、その両側から、生乳及び乳製品を加工して製造した飲料ということになっておりますので、本来生の乳からだけしかいけないということにはなっていないわけでございます。それに対していわば牛乳というものは、生乳に生乳以外のものを混入することなくて、こうこうこういう成分ということを書いてあるわけでございますから、生乳以外のところでいろいろ書かれているものの中に生乳または生乳を原料としたものと書かれたものは、どちらの道からいってもいけるという乳等省令の規定の仕方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/98
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099・刈田貞子
○刈田貞子君 私は、解釈の仕方によってはそれが生乳を使う頻度を占めているような感じに思えて仕方がないのでこのことを質問しているわけですけれども、そうすると、乳飲料それから乳等を主原料とする食品、こういう種類のものも全部生乳を使って現行つくっているわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/99
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100・石川弘
○政府委員(石川弘君) 同じことを申し上げますけれども、そういうもので牛乳だけからしかいけないという規定の仕方ではないわけでございますから、そう言われているものは例えば、乳飲料あたりだといいますとコーヒー牛乳などと称するものがこういうところへ入ってくるわけでございます。そういう意味で、考え方が二通りございまして、ひところは、牛乳というものは何も加えないものが一番いいのだ、また、そういうことをすればうんと消費が拡大するのだという論法で、どちらかというと、生乳だけを原料にしていけというようなお考えが一方にあったことも事実でございます。しかしながら、今度は逆に、そうしますとなかなか消費が伸びてこなくて、例えば、最近外国なんかの学校給食で行われておりますように、そういうものに香料を入れましたフレーバーミルクなんというようなものの方が喜んで子供さんが飲んでくださるというようなことで、そういうような道に向かうものもあるわけでございます。
ですから、率直に私どもの立場から言いますと、できるだけ牛乳というものを牛乳に近い状態で一遍乳製品にして水でまた戻してくるなどということがないのが一番私どもありがたい立場でございますけれども、しかしやはり、片側でどうしても製品にしておかなければ、いわば量としてのコントロールもできない。例えば御承知のように、牛乳というのは大変季節的に需要変動が多うございますから、生乳の消費がどうしても落ちるときは加工に回すということがあるわけでございます。
そういう形で考えておりまして、先生の御趣旨がなるべく生の乳を原料にして使った方がいいという御趣旨でございますれば私どもも、例えば高級アイスクリームだとか、あるいは高級なヨーグルトというようなものは生の牛乳をそのまま使って原料にして加工なさるのが一番いいことと思っておりますので、先生の御趣旨と同じではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/100
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101・刈田貞子
○刈田貞子君 そういたしますと、私が四番目に申し上げました乳等を主原料とする食品、例えばこれはクリーミーパウダーとか、エバークリームとか、あんなふうな種類のものが入るのではないかと思うのですけれども、これは何でできているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/101
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102・石川弘
○政府委員(石川弘君) 生クリームは、乳等省令上も、生乳のうち乳脂肪分を分離したものということでその範疇に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/102
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103・刈田貞子
○刈田貞子君 クリーミーパウダーはどうでしょう。紅茶にクリープ、というあれですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/103
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104・石川弘
○政府委員(石川弘君) 私もそれほど詳しくございませんが、乳製品を主原料とするという方に大体入っているというお話でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/104
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105・刈田貞子
○刈田貞子君 余り局長も市場を御存じないようでございますけれども、目をみはるほど並んでおります。それで、もしお調べになれるようでございましたら、その種の製品の一覧表とそれからメーカー名と価格みたいなものを、いつでも結構でございますので、私どもの手元の方にちょうだいできれば大変ありがたいと思います。今はその辺のところでとめさしていただきますけれども、今私はここで牛乳あるいは乳製品論争をやる気は毛
頭ございませんで、これはとにかくどんな形ででもいいから、乳が消費されていくことをどんな形で工夫されているかということを私は伺いたくて実はこういうことを申し上げているわけでございます。
もっと言えば、公正競争規約の中のチーズフードみたいなものがかなりその範疇が広がっているのではないかというふうに思いますけれども、このチーズフードの中に乳等によらない脂肪、たんぱくそれから炭水化物等を添加した場合にはその百分率を書くようにというものがたしかったってあるはずなのです。これらあたりも、乳製品の原料を使わないでつくるチーズの道がやはり開かれているというふうに思うのですけれども、そういうところの御見解はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/105
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106・石川弘
○政府委員(石川弘君) これは実は厚生省令のことでございまして、私がお答えするのはいかがかと思いますけれども、イミテーションチーズのお話かと思います。これは植物油脂を使用したチーズ類似商品でございます。これは国内で今、現につくられておりまして、一般家庭用、業務用という形で使用されておりますが、量的にはそう大きいものではございません。この植物油脂使用チーズは、厚生省の乳等省令の上ではチーズではございません。ですから、もしチーズという表示を行って販売すれば違法でございますけれども、そうでない限りこのようなものを製造販売すること自身が悪いということにはなっていないわけです、要するにチーズと言えばチーズじゃないわけですから。商品形態から見まして、チーズの需要と競合するということは考えられておりますし、そのチーズと混同されますとやはり表示の問題になりますものですから、いわばこの表示の仕方自身についてはチーズという紛らわしいことがないようにということがあるわけでございます。
これが大変出てまいりましたのは、一つは、アメリカで動物性脂肪のとり過ぎというようなところからそういう植物原料に変えてきたということで、いわば牛乳、豆乳問題みたいなところがあるわけでございますけれども、私どもの場合はまだこういう形での脂肪のとり過ぎということは余り言われていない段階でございますので、今御指摘がそういうものをどうするかということでございますと、私どもは、本来の牛乳を使った、牛乳からつくるチーズというものの消費がまだ伸びてくる段階でございますし、そういうものに主力を置いて考えていくべきではないかなと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/106
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107・刈田貞子
○刈田貞子君 いずれにいたしましても、先ほど申しましたように、多様化した食生活の中で新し好きの若いファミリーが何かこういうふうなものに飛びつきがちなところがございますので、やはりこの際市場の商品整理みたいなことをなさると同時に、あわせて今私が申し上げましたこれは、恐らく何かの形で整理されるべきではないかなという要素を私は含んでいるというふうに思いますので、乳等省令あるいはまたチーズの公正競争規約のようなものを一度洗い直していただくような作業もあってよろしいのではないかという、これは私の私見でございますので、よろしくお願いいたします。
次に、やはり牛乳の市場の問題で、今大きな課題を持っておりますロングライフミルクについてちょっとお伺いをしたいのです。
昨年の三月ですか、厚生省が常温流通の安全宣言をなさいまして以降この論議が大変沸騰いたしておるわけでございますけれども、農水省のお立場ではどういう見解をおとりになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/107
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108・石川弘
○政府委員(石川弘君) ロングライフミルクにつきましては、かねがね常温流通の衛生上の問題について厚生省で御検討なさっていたわけでございます。一応の結論として、問題はないのではないかというお話があったわけでございますが、私どもの立場で今検討していることを申し上げますと、LL牛乳自身は既にこれは製造をすることが認められているわけでございます。ですから、これを常温で流すかどうかということにかかわるわけでございまして、このことの権限は厚生省がお持ちになっているわけでございますが、実はLL問題の中にはいろいろな要素がございまして、一つはここ数年牛乳の市場が大変乱れております。そういう中でLLが常温解禁されます場合に一体どういうことになるのだという御心配がたくさんあるわけでございます。
まず、生産者の立場で言いましても、御承知の牛乳の南北問題というように、強力な生産地帯であります例えば北海道と都市周辺のバランスの問題ということがございます。それから、これは流通業者のお立場でも比較的そういうものに関心の強い方と、例えば小売業者の方々のようにこのことがいわば乱売のもとになるのではないかという御心配の方があります。それから消費者のお立場でも、これに非常に問題ありと指摘なさっている方もありますし、消費拡大に役立つという面でプラス面もおっしゃっている方があるわけでございます。
私どもの基本的な考え方を申し上げますと、LLそのものがいいかどうかということになりますと、それは既に製造も認められておりますし、もし衛生条件として常温流通してもいいという厚生省の御判断があれば、このLLそのものが問題であるということではないのではなかろうか。それはLLそのものが問題とおっしゃっている一部の消費者の方にはまだまだ御説明が要ると思いますが、問題はLLというものがその道具になりまして、いろいろとさっき言いました生産者間あるいは流通業者の間の混乱の道具になるということについてうまくチェックができるかということでございます。
まず第一の点を申し上げますと、例えば牛乳は、今普通関東等で申しますと百十八円ぐらいの価格で原料乳価があるわけでございますが、それに大変極端に安い原料乳価で入れられるとしますれば、大変安い価格で売られる性質を持ちますので、産地の方々がLLに一体どんな値段で入れられるかということについて共通の認識ができるかどうかということでございます。
それからもう一つは、LL自身はこれは日本の国土の特殊性と申しますか、関東のこの東京の周辺でも相当の酪農家がいるわけでございまして、フレッシュの牛乳を非常に供給しやすいのが日本の特色でございますので、そういうフレッシュで当然供給できるところまで何かLLという、いわば包装容器がそれだけ割高になるわけでございますから、そういうものでそういうものを使わなきゃいけないのかどうかという面がございます。そのことは最終的に言いますと絶対量の問題になろうかと思います。
それから、LLの利点としまして、販売の容易さということがございます。例えば、御承知のように、牛乳が他のいろいろな飲料に比べまして自動販売機に入りにくいというのは、低温流通を義務づけられているということにあるわけでございます。例えば二百五十といったような小さな小箱で安易に自動販売機で売れるということであれば、牛乳の販売拡大にプラスになるという考え方もあるわけでございます。
それから、最終の小売業者の方がスーパー等で安売りするものの道具に使われちゃ困るというふうな御議論については、逆に言いまして、小売の方も常温で大量配達ができるというメリットもあるのではないかという反論もあるわけでございます。
いずれにしましても、今私が申し上げましたような議論が大変にございますので、私どもは昨年来、まず生産者とメーカーの方々、その次に販売業者の方々、それから最終消費の方々にお寄りいただきまして、今私が簡単に要点だけ申し上げたわけでございますが、そういう事柄の利害得失、それからその害があります場合はどうやればそれが防げるかというようなことを御議論いただいておりまして、大体その考え方がまとまりつつある段階でございます。まだ一致したということではございませんが、考え方がだんだんまとまってきている段階だと思っております。
しかし、なお調整を要しますので、そういうような方々の御意見をある程度調整をした上で私どもとしての最終的な判断をしたいと思いますが、これは何らの制限なしにゴーというような性質ではございませんで、各関係者の合意事項を一つの原則にいたしまして、そういう原則が守られるということであれば、それからそのことについて関係者の方々の合意が得られるのであれば、この問題を前進させるという立場で収拾をしていきたいと思っております。かっても、LLを認めましたときに三原則と言われる一つの覚書がございまして、そういう覚書の線上で事が運んだという経緯もございますので、今回の場合もそういう大方の合意ができることを関係者の合意といたしました上でこの問題に決着をつけていきたいと思っております。もうしばらく時間をかしていただく必要があろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/108
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109・刈田貞子
○刈田貞子君 要冷蔵が外されるという方向で話がだんだん固まりつつあるというふうに了解してよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/109
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110・石川弘
○政府委員(石川弘君) 関係者の合意ができますれば、そういう方向に向かいたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/110
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111・刈田貞子
○刈田貞子君 厚生省のお方がお見えになっておると思うのですけれども、この常温流通で安全であるというデータをお出しになった何か経過でしょうか、この経過について、もし御説明いただければ、どんな実験をしたか。難しいことは私どもは素人ですからわかりませんけれども、やはり消費者を納得させる実験をなさったから安全宣言をなさったと思うので、その点をちょっとわかりやすくおっしゃっていただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/111
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112・難波江
○説明員(難波江君) 厚生省といたしましては、いわゆるLL牛乳が常温で流通するという特性を考慮をいたしまして、昭和五十五年度から長距離輸送試験でございますとか、それから常温の長期保存試験でございますとか、あるいは変異原性物質の生成に関する試験等、食品衛生上のいろいろな問題について調査研究を進めてきたわけでございます。それとLL牛乳につきましてはかなり内外の文献がございます。それらの文献をあわせて検討いたしました結果、常温流通を認めても食品衛生上は支障ないという結論に達したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/112
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113・刈田貞子
○刈田貞子君 その場合の賞味期間をどういうふうに考えるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/113
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114・難波江
○説明員(難波江君) まだ具体的に賞味期間についてどうするかというような内容は検討してございませんけれども、いろいろな調査結果から見まして確かに微生物学的には無菌でございますから、相当長期に保存をいたしましてもふえてくることはないわけでございますが、酵素の問題その他が原料乳が悪いといろいろな問題が出てくるということもございますので、何らかの流通期間を限るような規制あるいは指導というようなことが必要だろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/114
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115・刈田貞子
○刈田貞子君 私どもは公明党といたしましても、随分あちこちの方からいろいろ意見を聞かれるわけでございますけれども、公明党はこの問題に対して慎重でございます。まだ結論を出しておりません。先ほど局長の方からもお話がありましたように、ぜひあらゆる分野の角度の方々からの御意見をまとめて適正な判断を下していただきたいというふうに要望しておきます。
それから、牛乳の市場における過当競争の問題が過去においてかなり熾烈にあったことがございますけれども、昨年の九月の局長通達でこれが大変いい傾向に鎮静化しているのではないかというふうに私は思います。けれども、例えば宅配の瓶の牛乳が紙パックの牛乳の流通の仕方に変わることによって牛乳の流れが変わってしまったように、このロングライフミルクが出回ることによって、また新たな過当競争みたいなものが起きてこないとも私は言えないと思うのです。市場における過当競争について、農水省が指導できる部分のものと、それからいささか独禁法にかかわってくる問題とあると思うのですが、その点、過去の事例等もいささか含めて農水省はどの程度まで介入できるのか、それをちょっと伺わせていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/115
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116・河村穰
○説明員(河村穰君) 独占禁止法上不公正な取引方法として不当廉売が禁止されておるわけでございますが、その規定によりますと、量販店等の事業者が、正当な理由がないのに、商品を供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給をする、そういったことによりまして、周辺の同業者など他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある、そういうふうな場合に、独禁法で不当廉売として規制の対象になる、そういうことになっております。
それで、牛乳の不当廉売の案件でございますが、現実に量販店で牛乳について不当廉売を行っておるので独禁法に違反するのではないか、そういった点について調査をするようにということで、公正取引委員会の方に毎年金国各地から報告が寄せられておるわけでございます。その報告の件数の推移を御紹介いたしますと、五十六年度で約八千四百件、五十七年度で約五千件、五十八年度に入りますと、四月から十二月まででございますが約二千件、そういった件数で推移いたしております。傾向といたしましては減少傾向にあるわけでございますが、年間数千件という相当多数の件数が寄せられておるという状況にございます。
それで、私どもといたしましては、先ほど申しましたような独禁法上の不当廉売に該当するかどうかといった観点から、その報告の内容を検討いたしまして、独禁法で禁止しておる不当廉売に該当するおそれがあるといったような案件につきましては必要な調査をして、その調査結果に基づきまして、独禁法に違反しておる、あるいは違反のおそれがあるというふうに考えられる案件につきましては、そういった行為を中止するように、あるいは将来再び繰り返さないように、そういったことで警告なり注意をするという形で改善の指導をしているという状況でございます。
それで、五十七年の五月に、これは千葉県の松戸市の大手のスーパー二社が、牛乳につきまして相当原価を割った形でお互いに廉売競争をやっておりまして、この二社につきましては、正式に、独禁法にいう不当廉売に該当する、独禁法違反であるということで、そういった行為を将来繰り返さないようにということを関係者に周知するようにと、そういった内容の命令を出すということもやっております。そういった形でこの問題については処理をいたしておるという状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/116
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117・刈田貞子
○刈田貞子君 牛乳は、私ども主婦の懐から言えば、安ければ安いほどよく売れるのです。それで大変困ったことになるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、流通秩序とか整備あるいは取引価格の正常化というふうなことはやはり農水省所轄の仕事になると思いますので、消費拡大ということを前提としながらこの辺の秩序をぜひ整理していただきたいということをお願いして、時間がございませんのでさきの問題に話を戻します。
私は先ほど、農家の加工原料乳の保証価格の問題あるいは限度数量の問題を消費の市場から見てどうかということでお尋ねしたいというふうに申し上げたのでございますけれども、この暫定措置法十一条が言っているところの需給事情そして生産事情あるいは一般経済事情でしょうか、こういうことを踏まえて生産者の再生産を保証するというこのことが局長の頭の中におありになって出てくる額というのは、どういうことを考慮してこの五十九年度の分が考えられるのでしょうか、一応見解をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/117
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118・石川弘
○政府委員(石川弘君) これは先生も法文を引かれましたように、物によって書き方が変わっておりまして、保証価格のときはこれは生乳の生産事情及び需給事情その他の経済事情を考慮し、加工原料乳地帯——これは北海道でございます——の生乳の再生産の確保を旨として定めると。その場合には酪農経営の合理化の促進に配慮しなきゃいかぬと書いてあるわけでございます。したがいまして、ここでは御承知のように、生乳生産の生
産状況といいますと、いろいろな生産関係の諸条件の動きというものを見なければいけませんし、それから需給事情という中には、例えば余り過ぎても困りますし、足らなくても困るわけでございますから、そういう事情も考慮するわけでございまして、そういう中でやはり農家の方々が合理化をしながらでもこれは再生産を確保しなきゃ、もう乳が出てこなくなると困るわけでございますから、そういう要素がいろいろと計算要素に入るわけでございます。
それから、その場合に酪農経営の合理化の促進に配慮するというのは、やはり合理化したものは合理化したものとして、いろいろな合理化の要素が加味されて算定されなきゃいかぬということを命ぜられているわけでございますので、御承知のように現在の保証価格のとり方につきましては、労働費だとかあるいは地代だとか資本利子みたいなものにつきまして、一種の評価がえをしまして再生産確保ができるようにということをやりますと同時に、各種の経費につきましてはその経費の動きを全部調査いたしまして、それを最近の時点に直しまして間違いないようにというそういう諸要素の計算をやっているわけでございます。
それと、もう一つの基準取引価格と申しますのは、これはメーカーがそういう価格でうまくできるかどうかということでございます。これは先ほども申しましたように、メーカーの合理化といったようなものは、この中でいろいろと合理化すべきものは合理化いたしますし、それからかかる経費はやはりかかります経費として算定しなきゃいかぬわけでございますから、これも工場を我々は直接調査をしまして、代表的な幾つかの工場の中の調査した数字を使って毎年毎年の試算をしているわけでございます。
それから、もう一つの安定指標価格といいますのは、これは生産条件及び需給条件その他の経済条件ということと、それからここは最終消費につながるものでございますから、「指定乳製品の消費の安定に資することを旨として」と。ですから、消費が安定的にうまくいってくれるようにということを頭に置くことでございますので、ただ何か計算上上げたり下げたりということじゃございませんで、こういう価格ならうまく消費が伸びていくのかどうかというようなことも条件として定めるわけでございます。
それから、限度数量につきましては、これは保証価格と同じでございまして、「生乳の生産事情こそれからこれは「飲用牛乳及び乳製品の需要事情」と書いてありますが、この限度数量の場合は飲用牛乳に対する影響力というものも当然考えなきゃいかぬわけでございますし、それを考える場合に酪農経営の合理化の促進に資するようにやれということも書いてございますので、そういう諸要素を勘案して現在慎重に詰めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/118
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119・刈田貞子
○刈田貞子君 いずれにいたしましても、生産者の再生産を確保できるという水準をぜひ保っていっていただきたい、このように思います。
それから、先ほどちょっと局長の方から出ました学校給食における牛乳の問題ですけれども、この補助金が降下の一途をたどっておりまして、五円八十銭の時期、五円二十銭の時期、それから五円、そして四円になりました。これは行く行くはゼロになってしまうのでしょうか、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/119
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120・石川弘
○政府委員(石川弘君) ゼロにするつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/120
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121・刈田貞子
○刈田貞子君 そういたしますと、これは一応趣旨があるわけですね。その趣旨を踏まえて将来ともこれを保証していくということでは今確認できたわけですけれども、どのくらいの水準、例えば地方自治体では国の補助にさらに上乗せをしていた事例はございますけれども、これが消えていってしまった地方自治体がたくさんあるわけです。それで私も、国も消えてしまうのではないかというふうに伺うわけですけれども、どの辺の水準でこれを保っていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/121
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122・石川弘
○政府委員(石川弘君) これは法律に根拠を持っておりまして、酪農振興法の中でもこういう消費拡大ということを言っておるわけでございます。単価を下げましたことは、やはり学校給食には二つの側面がございまして、私どもの牛乳の消費拡大という側面と学校教育の面での児童生徒の体位向上といった二つの側面があるわけでございますが、ここのところしばらく量の拡大ということについては、これは児童数が頭打ちになってくるというようなこともございまして余り熱心ではなかったという問題もございますので、私どもは、やはり消費拡大の観点からいいますとなるべく量がふえるように、例えば土曜日に飲んでもらいたいとか、あるいは二百ccを超えますような量も飲んでいただきたいとか、そういう量的拡大をいたします場合には極力単価が下がらないようにということで考えたわけでございます。
これは、何しろ片一方で補助金の合理化という面でいろいろと論議なさる向きもあるわけでございますが、私たちは必要な合理化措置をとっているのであるからそれをさらに毎年毎年切り下げるということでは困るということで、実は五円から四円に下げますプロセスにおきましても、こういうことを毎年やるという前提で考えておりませんで、思い切って単価も下げますと同時に、相当期間これでいきたいということで、財政当局とも話しながらやっておる措置でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/122
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123・刈田貞子
○刈田貞子君 ぜひよろしくお願いいたします。
最後にお伺いいたしますが、先ごろ酪農の中にコンピューター導入による新しい一つの試みをということで、研究会が開かれたやに伺っておりますけれども、今後こういうことがどんな形で進んでちって、将来的にはどんな見通しを持っているのか、あるいは現状はどんな状況になっているのか、そのことを伺わせていただいて、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/123
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124・石川弘
○政府委員(石川弘君) 酪農も大変大型化をしてまいります。これは酪農に限りませんで、養豚とか養鶏もそうでございますが、大型化してまいりますと、経営技術の格差によりまして非常に成績が違ってくるわけでございます。
例えば、えさをどうやって有効にやれば一番よく乳が出るかとか、あるいは卵を生むかとか、こういうようなことにつきましてはやはり相当高度な分析をすると同時に、その分析して得ましたものを農家に還元をして差し上げる。それから我々のやっています中でも、牛の能力みたいなものを厳密に調査をしました上で、どういうえさをどのようにやると一番効率よく乳を出すかというようなこと、こういうことをいろいろとやっております。こういう中ではやはり大変大量なものを集計をいたしまして、またそこで出た結果というものを農家に戻すということが必要でございますので、現在そういう面では酪農の方の乳の能力をどう検定するかという問題とか、あるいは肉用牛の繁殖の能力をどう集計し、戻していくとか、あるいはえさのやり方についてどのような考え方でどのようにやっていくかという、そういうようなことで、実は戸数といたしましても既に現在では酪農、肉用牛、養豚、ブロイラー等も入れますと三百数十戸の農家の方々がそういうような手法に従ってやっております。それから全農とかあるいは県の経済連等がそういうことをやって、そういうデータに基づいて経営を診断なさっている戸数を見ましても二千数百戸というようなことでございますので、私どもはこういうものも十分活用をしていきたいと思っています。ただ、何か、はやりで入れるということでは困るわけでございます。こういう科学的根拠のあることで合理的に使用されるものについては今後も進めていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/124
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125・藤原房雄
○藤原房雄君 過日の委員会におきましてもいろいろ大臣の所信を中心といたしまして御質問したわけでありますが、本日は、今月の末に畜産物の価格が決定するという非常に大事な時点にかかっておりまして、これは生産者はもちろんのこと、消費者にとりましても非常に重大な関心事であります。こういうことから、この畜産物の価格問題についてきょう同僚委員からもいろいろお話がございました。私もやはりその問題について大臣の
基本的な考え方、また農水省としての取り組み等についてお伺いをしたいと思うのであります。
それの前に、何といいましても今月いっぱいで東京ラウンドでの取り決めが一応期限が来るということで精力的に交渉が行われているわけであります。この中身のことについては外交上のことがありまして表ざたにできないことも多々あると思いますが、大臣は口を開くと頑張りますということで威勢のいい返事が返ってくるわけであります。こっちもまた頑張れということで、頑張れ、頑張りますで暗黙のうちにこういうことで過ぎておるわけでありますが、基本的には大臣も日本の農業を自滅させるようなことがあってはならぬ、こういう強い決意の上に立って頑張りますということのようであります。
これは既に御存じのとおり、日本の食糧の自給率というものは年々低下をいたしておりまして、かつてありました農作物もだんだん輸入に依存するような形をとっております。極端なものは、最近はもう麦などはほとんどつくっていない。水田対策で麦をつくったらいいじゃないかということでいろいろ指導をされたようでありますけれども、十年も十五年もやっておりませんと品種改良もできておりませんし、また農家の方もそれをつくる技術すらももうないという。農業というものは一朝一夕にできるものじゃない。やはり先人の積み上げたものを大事に受け継ぎ、そしてまた、その上に大きく発展をさせていく。これは民族の使命といいますか、大きな課題であって、これを時代の変化の中で安易に経済性だけの追求のために食糧の自給というものをそいでしまうようなことがあってはならぬ、こういう強い強い反省の上に立って、このたびのアメリカとの農産物交渉について、私どもは強く大臣にも決意のほどを促しておるわけであります。消費者団体の中にも、やはり自給というのは大事なのだということが認識をされておりますし、また、そう言われております。
一部財界人の中に、我々と意見を異にする人がおるようでありますが、国論が統一しないという弱みにつけ込まれてか、アメリカも強い態度で臨んでおるようでありますが、ぜひこれは強い決意の上に立って、日本の農業、日本の民族の将来に禍根を残すことのないような、大臣のこれからの働きを期待をしたいと思うのであります。
さらにまた、本日の新聞ですか、異常気象の問題につきまして報道されておりますが、日本は寒さが続いておりまして、どうなっておるのかということでありますが、世界的には温暖な傾向にある、こういうことが報じられております。いずれにしましても、異常な気象が地球を不気味に取り囲んでおるという現象がここ数年続いておる、これからもまたそういう可能性があるのだということでありますから、こういうこと等も考え合わせますと、ますますこういう問題については真剣に考えざるを得ないと思うのであります。
今日までもいろいろ日米交渉については大臣も発言をいたしておりますから、私どももここでいろいろお聞きしたいことはありますけれども、お聞きしましても、頑張りますでまた同じ答弁が返ってくるみたいな気がするのです。あす、あさって、一日、二日のうちにおよそのいろいろな問題が出てくるでしょう。
私どもの立場といたしましては、やはり毅然たる態度で臨んでいただきたいというのは、過日来私どもが申し述べておるところであります。三月いっぱいまでに何が何でも決着をさせなきゃならないということではないのだということも、やはり基本は、日本の農業を守るということに基準を置くのだと、こんなことも大臣は表明なさったと記憶しておりますが、その辺のことについて、今の交渉の経過、そしてまた三月いっぱいという期日が目の前にあるわけでありますけれども、それを過ぎるか過ぎないかということの論議、大臣の胸の内を率直にお聞きしておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/125
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126・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 牛肉、かんきつの問題につきましては、ちょうどおととしの十月以来五回にわたって日米間で事務的な協議を行ってまいりました。いろいろな経過はございましたが、しかし、アメリカ側もこの交渉態度が潮時緩和してきたというような状況でございますが、依然としてまだ大きな隔たりがあるというのが、佐野局長が参りますまでの経過でございます。そして今度、いわゆる十三品目問題についても、これを取り上げて、包括的にこれを何とか解決したいということでやってまいったわけでございます。
ちょうどアメリカ時間の昨日午後二時から五時十五分まで、佐野局長とアメリカ側との協議が行われたわけでございます。私にとりましては、この佐野局長との協議の経過を踏まえまして、そして渡米するかどうかを決めたいと思っております。
今、先と言われましたように、余りにも大きな隔たりがあり過ぎるという場合には、これは何も期日にこだわって、この三月末までに決着をつけるということで、無理な要求をのむということにはしないつもりでございます。
しかし、考えてみますと、この三月いっぱいで決着をつけるということ自体が、今までの日米間、特にアメリカにおける対日強硬派と言われる皆さん、これらの方々に対する大きな抑止力、歯どめになっておったことも事実でございます。前大臣も何回もお約束しておるようでございますので、できれば三月いっぱいに決着をつけたいという気持ちで全力投球いたしますが、今申しましたように、期日にとらわれて無理な決着はつけないという姿勢で終始してまいりたいと思っております。現在、佐野局長の方では、いわゆる日本時間で言いますとけさの四時ごろからですか、始まったわけでございますが、引き続きまして本日二十三日も協議を行うという約束を取りつけたようでございますので、この交渉経過を待って交渉に臨みたいというぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/126
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127・藤原房雄
○藤原房雄君 日本の現状についてはさっきもちょっと申し上げましたが、アメリカにおきましても非常にかたい態度から、今大臣からお話のありましたように、やや交渉のテーブルに着いたということでありますから、これは緩和の方向と見ていいのかどうかわかりませんが、一時期は非常にかたい態度であったときもありました。アメリカの世論、これは過日来日いたしました農業団体のカーペンター議長、こういう人たちの発言や、それから大統領の経済諮問委員会の報告というものなんかを見ますと、アメリカがもう一枚岩でかたいという姿勢が全国にみなぎっておるということでは決してない。一年半の交渉の中で皆さん方も、農水省の担当の方々もそれぞれの立場で交渉なさる、農業団体またそれぞれの人的交流、こういうものの中で日本の農業の現状というものについてもそれなりの理解を深めることができたのだろうと思いますが、こういう条件では日本もアメリカも同じような状況の中にあるのではないか。
いずれにいたしましても、減反をしてかんきつ類農家が血のにじむような思いで転換をしたわけでありますし、また酪農にいたしましても、ようやく酪振法ができてこれからという段階。先ほど来お話がございましたように多くの負債を抱えて、またこれからいろいろお話を申し上げますが、こういう窮状の中にありまして、自給率向上、これ以下には絶対させてはならぬという、もう最終的なところに来ておる。こういう現状の中で、最後まで毅然たる態度で農業を守る、守るじゃない、さらに発展させるという気持ちでなければいかぬのですが、こういうことでひとつ大臣に頑張っていただきたいと思うのです。
さて、そういうことで、過日もちょっとお聞きしたかもしれませんけれど、今までの国会決議で自給率向上ということを決議したことがございました。また、総理も、食糧というのは自給が基本なのだという、こういう発言もございます。農産物の自給ということに対して大臣のお考え、今まで何かお聞きしていないような気がするのですが、これは私どもは現状で決して甘んじておるわけじゃありません。しかし、内には大きな負債を抱え、また過剰な農産物があり、いろいろな窮状
の中で混迷をいたしております。また、外には外圧に押されて、こういう中で非常に展望のない農業の現状であると言わざるを得ません。そういう中にありまして、安易にことし、来年ということで自給が向上できるわけじゃないだろうと思いますけれども、何といいましても、先ほどお話ししましたように、民族生存の基本産業であります農業というものの基本に自給率をどこに定めるかということは非常に重要なことであります。農林大臣としまして、この農産物の国内自給率というものをどう考えていらっしゃるのか。これは今までも農政審や八〇年代の農政、いろいろなことで出されてはおりますけれども、大臣としてこれに対するきちっとしたお考えをこの際お伺いをしておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/127
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128・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 国会におきまして、食糧自給力の強化に関する決議をいただいておるのは十分承知しております。食糧というものは国民生活にとって最も重要な物資であり、この食糧の安定供給と安全保障の確保の要請にこたえるよう農政を展開してまいらなければならないと思っております。特に米におきましては完全自給を守ってまいります。このために、農業の生産性の向上を図りながら、国内で生産可能なものは極力国内で生産してこれを賄うという基本方針を貫いてまいりたいと思っております。
この場合に、どのような施策がということになりますが、需要の動向に応じた農業生産の再編成、そしてまた農地流動化推進等による中核農家の育成確保と経営規模の拡大、また現状程度の五百五十万ヘクタールの農地というものは確保してまいらなければならないと思っております。また、農業基盤の整備、技術の開発普及、そして就業と生きがいの場を提供する豊かな村づくり等の施策を講じ、我が国農業の体質強化、いわゆる足腰の強い農業ということをもって着実な生産性の向上を図るということを基本にしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/128
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129・藤原房雄
○藤原房雄君 立場がかわれば、我々が主張しなければならないようなことを大臣は今いろいろお述べになりました。今日までも各大臣はそういうお取り組みであったろうと思うのであります。しかし、国内的にもまた外からの圧力も非常に厳しい中にありまして、現実は、国会決議をしたにもかかわらず自給率は決してふえるどころか現状維持もできない、減少傾向にあることは事実であります。こういうことから、アメリカとの交渉を乗り越えて、さらにまた、今御決意ありました所感を述べられましたが、それに沿いまして、ぜひ自給率の向上ということのために、足腰の強い基盤の確立した農業を建設するために大臣に頑張ってもらいたい。
先ほど同僚委員に答えておりましたが、農水大臣に任命になったときぞっとしたなんという、ぞっとしてその後どういう決意になったか、その後を聞いておりませんから、ちょっとお聞きしておきましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/129
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130・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 本当のところを言いまして、身の引き締まる厳しさというものを農水大臣を任命されたときに感じたわけでございます。しかしまた、考え方によれば、はっきり言って男としてやりがいのある仕事だということで全力投球でやってまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/130
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131・藤原房雄
○藤原房雄君 大臣がぞっとするなんというのじゃ、後継者もぞっとするということで、みんな農業から離れてしまっていなくなってしまいます。ぜひ、それは厳しい環境にあることは御存じのとおりでございますが、その気持ちを貫き通して、内閣が改造になりましても留任してやるぐらいの意気込みで、そんなことは私どもが軽々に言えることではないかもしれませんが、一年や二年で大臣がかわったのでは思ったことができるわけはございません。外務大臣だけじゃございません、これは本当に。農業なんかというのは非常に厳しい産業でありますから、そういう点では大臣にこのくらいの腹をひとつ決めていただいてお取り組みをいただきたいと思うわけであります。
さて、今問題になっております畜産物の価格のことにつきまして、先ほど刈田委員からもお話がございましたように、私どももやはり生産者の再生産可能な価格にぜひお決めいただきたいということを申し上げ、また過日、党といたしましても申し入れをいたしたところでございます。さっき局長から、保証価格の算定方法がございまして、法律にのっとりまして法の十一条一項一号、二号いろいろございますが、こういう条項について試算をするのだということです。今ここで、まだその決定の前でありますからはっきりした数字をここで述べられるわけもございませんし、私どももそれを要求するということはどうかと思いますが、そういうことじゃございませんで、当局といたしましてこういう環境についてどう認識していらっしゃるかということの認識をぜひお聞きしたいと思うのであります。
保証価格、それから基準取引価格、安定標準価格、限度数量はいずれにしましても経済事情ということが参酌されることになっております。農業生産をするに当たりまして、生産条件とか需給情勢とかその他の経済情勢、ここ数年は農業を取り巻く諸情勢というのは非常に冷・災害に見舞われて厳しい環境にあったし、さらにまた、日本の経済もマイナスシーリングという財政事情の中にありまして、非常に逼迫した情勢の中にあったと思うのでありますが、こういう経済事情ということについてはどのように認識していらっしゃるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/131
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132・石川弘
○政府委員(石川弘君) 最初に、全体の感じを申し上げますと、私は実はこれで三度目の乳価の決定の仕事をしているわけでございますが、五十七年度、五十八年度、五十九年度と三年間通して見ますと、率直に申しまして酪農関係の環境条件はよくなってきている。かつてのような過剰在庫を抱えた中とか、あるいはいろいろと市乳の混乱した中というようなことで考えておりました条件に比べますと、今の条件は比較的いい条件下にある。それは絶対水準のことを申しておることよりも、経過の流れで申しますといい水準にきているのではないかという一般的な気持ちは持っております。
もう一つ、その周辺のいろいろな経済条件を加味してみましたときに、かつてはどちらかというと、過剰ということを非常に過敏に心配しながら計画生産をしてきて、それを解きほぐしながら五十七、五十八ときたわけでございますが、これは酪農の長い歴史の中で、御承知のように二度不足型から過剰型に転じていろいろ変わってきたわけでございます。そういう中で、かつては消費の拡大というものが高い経済成長の中でどんどん伸びたわけでございますが、一般経済情勢としては景気が回復するというようなプラス面もありますけれども、かつてのようにそれがこういう乳製品だとか肉類とかの伸びを極端に大きくするというような条件にはない。しかし、それは個人の消費支出が停滞しているときよりも若干でも伸びているときの方が条件はいいと考えます。そういう意味で一般論としていえば、条件的に過去の二年よりもよくなってきているとは思っておりますが、それが何か絶対水準として正しいものかどうかということはいろいろと数字で検証をしてみる必要があろうかと思います。
それからもう一つ、別の角度で申し上げますと、いわば短期の変動ということだけじゃなくて、構造的にいい方向に向かっているかどうかという判断が要るわけでございまして、これは十一条にも合理化が促進されるようにという形で価格を見ろと書いてございます。そういう意味で申しました場合、これは短期の観点よりも若干長期の観点で見た場合にも酪農経営というものはいい方向にと申しますか、健全な方向に向かっているのではないか。例えば戸当たりと申しますか、一頭当たりの借入金が北海道、都府県を通じて減少に回ってきたというのはそういう条件じゃなかろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/132
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133・藤原房雄
○藤原房雄君 確かに四、五年前は過剰在庫を抱えまして酪農経営というのは大変なことでありました。それは、一つは農水省の、農業全体としま
して規模拡大こそ農業の安定経営という発想といいますか、農業基本法以来そういう形でずっとやってきました。需給に見合う生産ということよりも、農家経済というものはやはり多頭飼育、規模拡大を進めることがということの方に力点が置かれたと私は思うのです。そういうことで過剰生産というのは、とにかくこれは国内の消費動向というのはありますし、また輸入もされており、外国との問題もありますから一概には判断できませんけれども、しかし、今まで取り続けてきました農業基本法以来のそういう物の考え方というのはやはり一つの壁にぶつかって大きな問題となったと思うのです。それをいろいろ皆さん方の御努力はもちろんですが、農家の方々の犠牲の中でこの問題の処理については何とか片を見たような形になっているわけです。
今日、こういう過剰在庫、過剰問題という大きな問題で、ここで青筋を立てて論議するという時期でなくなったことは事実です。しかし、規模拡大をした後遺症といいますか、その後のツケというものは今日もやはり大きく酪農経営に尾を引いていることは間違いありません。これは局長も一般論としてというお話でありますから、そうでありますけれども、規模の大きいところほどそういう経営にあることは言い得ると思います。
最近の一般的な傾向として北海道なんかでも経営状態は決してよくない。しかし、それはちょっと鈍化したといいますか、悪化のペースが落ちたといいますか、そういう中で負債が非常に増加したというような見方をせざるを得ない状況にあると思うのです。これは個々の農家の力量といいますか、農業というのは非常に個人差というのは大きいですから、平均的なことでただ大枠等を論ずるだけでは済まないのかもしれませんけれども、平均的にといいますか、全体的に見ましてそういうことが言えるのじゃないかと思うのです。そういう負債が非常にふえる傾向にある点についてはどうですか。この経営状況というのは、前のように悪い状況で決していいということではないが、悪化の度合いが少なくなったということが言えるのじゃないかと思うのですけれども、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/133
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134・石川弘
○政府委員(石川弘君) 私どもは今まで農家経営分析をいたします場合に、酪農が主でございますが、今までの姿といたしましては、負債の総額もふえてくる、それからこれは規模拡大していきますので一頭当たりの負債額も若干ずつはふえてきている。しかし、それ以上に資産の増加額なり預貯金の増加額があるから、これは平均論でございますが、平均的には少しずつよくなっているのではないかというふうな言い方をしたわけでございます。五十七年の数字で見ます限り、初めて一頭当たりの負債額も減少の数字が出てきております。特に内地におきましては非常にいい形になっておりますが、北海道はやはり落ちたと言いますけれども、絶対額が多うございます。そういう意味で、単に資産対負債という関係だけじゃなくて、一頭当たり負債額が平均値で落ちてきたということは、ある意味では改善がされてきたということが言えるのではなかろうかと思います。
しかし、何度も申しますようにこのことはあくまで一般論でございまして、北海道の場合、御承知のような負債整理のための特別の調査をいたしておりますが、非常に荒っぽく申しまして、三分の一の方は何らの政策なくして十分やっていけるという健全階層でございますが、あと三分の一ぐらいの方については負債整理のようなかなりの負債整理をやって、例えば利息分とかあるいは元本分についてある程度の繰り延べみたいなものが要る。それからもう三分の一についてはいろいろな経営改善の手法をとりませんと、単に金を返すとか何とかという方法だけではいかぬというふうなことがひところの調査で言われていたわけでございます。これはむしろ五十六年ぐらいのことでございますから、それより後につきましてはもっと数字的には改善をされてきていると思いますけれども、北海道は御承知のように、負債整理で使っております金の大半を実は北海道に投入いたしておりますので、負債整理の借り入れをなさる絶対戸数も減少をしてきている。結局北海道の場合のあの程度、四十頭平均というような経営規模でございますと、かなりの大きな他の産業で言いましても中小企業並みぐらいの資本投入をやる産業でございますので、やはり経営者の能力とか、あるいはこれは入植をなさった時期等によっていろいろな格差が出てまいりますけれども、私どもはもはやそういう意味で一般論だけではなくて、特に個々の農家についてもどうやったら改善できるかということに真剣に取り組んでおりますので、そういうことに従いまして今後改善をやっていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/134
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135・藤原房雄
○藤原房雄君 今局長からお話がございましたように農家の方々も必死になってこれは努力をした。また負債整理資金等で手当てをしたということもあります。そういうことで立ち直ったところもありますが、しかし、依然として離農しなけりゃならないというような現実もこれまたあるわけでございまして、そういう点では五十頭、百頭なんという大きなところでやっております農家について経営の指導強化といいますか、こういうこと等もあわせましてそれに手当てをしなけりゃならない面もあるだろうと思います。今お話のありました三分の一ということですが、大枠はそういうことでしょう。また、地域によりましても既存といいますか、ある程度の年数のたっているところはやはりそれなりにやっているようでありますが、入植した時点がちょうどオイルショックの前か後かというこんなことでも非常に差があるようであります。個人差だけではなくてその入植時点というか、こういうこと等もございますから、必死にそこから立ち上がろうとしてやっているそういう方々の意欲をそぐことのないような手だてをしなきゃならないだろうと思うのであります。
これは乳製品につきましても、過剰傾向というのは、一応本日のこの委員会において過剰在庫ということについては議論がないわけでありますから、現在の頭数、現在の農家戸数、現状というものから推移して、日本に乳製品が急に大量に過剰になるのだということは恐らくないだろうと思います。これは消費の傾向というものがありますからそのときそのときいろいろな状況にもよりますけれども、適正な農家戸数、適正な乳牛、肉牛はどうかということになりますと非常にむずかしいことになりますけれども、現在少なくともこれは過剰状況ではないということは言えるだろうと思います。そういうことであるならば、さっき局長のお話でありました三分の一は利子も払えない、生活も大変だという方々がいらっしゃるということでありますけれども、本当にやる意欲のある方で、そしてまた現実やれるということであるならやはり手だてをすべきだと思います。
また、東北、関東、千葉、茨城につきましても酪農を一生懸命やっている方々、比較的既存の方々はよろしいのですけれども、新しく入植なさって年数の少ない、大きな借財の上に立って経営なさっている方というのがどうしても一時期そのトンネルを抜けるまでが大変だということで、こういうことにつきましては負債整理の枠と、また本州におきましてもぜひ手当てをしていただかなきゃならないという団体の方々とお話しいたしますとそういう声も非常に聞かれるわけでありまして、ぜひそういう点については配慮をしていただきたいものだと思います。
現在、アメリカとの間でかんきつ類とそれから牛肉、高級牛肉ということでありますが、農業団体が自由化絶対反対、枠拡大も絶対阻止という厳しい態度で臨んでおります。これはやはり今基盤を確立する、いつまでもということじゃない、やはり基盤を確立するまではぜひ見てもらいたいということでありますが、これは当然のことであろうと思います。
今日、六十五年見通しとか近代化基本方針とかいろいろな農業についても見通しを立てております。この見通しは経済の大きな変化でどうしても修正しなきゃならないことがしばしばあるわけでありますけれども、牛肉が安いから消費がどんど
んふえるのだということではない。日本人の食生活というのは牛肉をそう多く消費するような構造になっていないと私は思うのです。そういうことから言いますと、見通し自身にもし甘い点がございまして安易な妥協をするようなことになりますと、冒頭に私が申し上げましたように、畜産農業政策に一つの大きな禍根を残すことになるのだということですが、こういう消費動向、現在の生産可能状況ということと整合性をどういうように農林省ではお考えになっていらっしゃるか。
それと、価格決定に当たりましては飼料というのは非常に重要な位置を占めるわけであります。今日までも草地造成とか国有林野をもっと活用すべきだというようなこと等を言われておりますけれども、草地造成につきましても、現実問題を私どもは調査をいたしますと、それが実際に生かされていないという状況にあることを間々見ます。きょうは時間がありませんからまた後日いろいろ申し上げたいと思うのでありますが、こういう草地造成に対する取り組み、この二点を最後にお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/135
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136・石川弘
○政府委員(石川弘君) 需給の見通しと輸入との関係でございますが、私どもは過去の東京ラウンドの経緯を見ておりますと、一定の見通しをしながら輸入枠を設定するわけでございますが、全く違った二つの対応が出ておりまして、例えば五十四年あたりは当初国内生産で考えたものよりもはるかに国内生産が少のうございまして、逆に輸入を大変大量にしたという経緯もございます。五十六年は、これまた御承知のように国内生産が当初予定したもの以上のものが出てまいりまして、これは対外折衝をしながら輸入枠を前年より削減をしたという経験を持っております。したがいまして、いろいろと需給見通しと輸入枠の関係ということになりますと、あくまで片一方はそういう見通してございますので、これはなかなかかなり先まで当てるということが難しゅうございます。
何と申しましても、例えば五十七年、五十八年の二つを見ましても、五十七年は特段に消費支出が大きかったというわけでなくても七%伸びてみたり、そうすると次の年は伸び率が一転して下がるということもございますので、私どもは東京ラウンドの協定の場合でもあくまで一定のものを見通して、そしていろいろな需給事情が変化のあったときにはそれなりに対応できるというようなことも頭に置きながら考えなければいけないことだと思っております。そのことは今後の問題においてもやはり同じではなかろうか。そういうことは実は各国でやっておりまして、アメリカ自身がオーストラリアとの関係を調整しますときに、毎年毎年食肉輸入法に基づいて一定の数量を想定して数量をコントロールしておるということでございますので、これは長期にわたっていろいろとほかの国と話し合うということと、それから毎年毎年どうやったらそのことが国内の生産、あるいは国内の需要と調整できるかということは、これは分けて考えて、しかもそういうことができるようにやることがこれからのやり方ではなかろうかと思っております。したがいまして、そういう点は十分頭に置きました形で今後の話し合いを詰めていく必要があろうかと思っております。
それから、もう一点のえさの問題でございますが、これは御指摘のように、国内の草資源を活用してやるということが日本の酪農肉用牛生産を伸ばすゆえんでございますが、残念ながら現在の粗飼料の給与率というものは他の諸国に比べても大変低いわけでございます。したがいまして、私どもはこれは大家畜生産の基本であると思っておりますので、そのための施策としまして先ほど申しましたように、単に面積的拡大だけではなくて新規の草地開発がやりやすいような措置だとか、あるいはなるべく金をかけないでサイロなり汎用機械を入れていくような道とかいろいろ考えておりますが、これも先生御承知のように、日本の場合はなかなか土地利用を調整しながら拡大することが困難な条件にございます。
それからもう一つは、畜産農家というのはどちらかといいますと数の少ない集団でございまして、既存の耕地を持っている方との調整なんかにもいろいろ心すべき点があろうと思いますので、そういうことも含めました新しい援助の仕方なり、それからそれを定着化させますために、今度の酪農肉用牛の近代化計画の中で、県なり市町村がそういうことを十分織り込んで背後地の利用関係等を盛り込んだ計画を立てていただくように誘導しますと同時に、それが単なる絵に終わらないで実行ができるような援助の仕方も工夫をしていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/136
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137・下田京子
○下田京子君 まず最初に、二十七日から予定されております畜産振興審議会に当たっての基本的な大臣の姿勢について御要望を申し上げておきたいと思うのです。他の委員からもいろいろお話がございましたが、畜産物価格据え置き諮問が、しかもアメリカからの開放要求、刺激をおそれてと、こういうふうなことが言われております。
先ほどからの議論で、酪農問題につきましても局長の方から、総体的水準がよくなったかどうかということは別としても、よい水準に向かっているというふうな御認識が述べられましたが、例えば加工原料乳の場合ですと、政府の保証価格が御承知のように現在キロ当たり九十円七銭になっておりますけれども、過去六年の間にわずか一・四%しかアップしていないということですから、六年かかって据え置きにも等しいという状態、こういうことをよく御認識いただきまして臨んでいただきたいと思います。
そこで、価格据え置きにまで連動しようとしているアメリカの開放要求との関係なのですけれども、どうも今行われております佐野局長とスミス次席代表との話に向かいましても、基本的な態度がどうなのかということがどうも明確でない部分がございますので、その辺をひとつ明らかにさせていただきたいと思うのです。
これは大臣も、予算委員会の総括質問で我が党の立木議員が、選挙時のときの農業新聞なんかに出された公約、ごらんになっていましたですね、あのとき総理にお伺いしたけれども、うちの立木議員は大臣にお聞きしませんでしたので改めてお尋ねしたいのです。「「自由化」問題」というところで、「わが国農業を壊滅させるような農産物の輸入自由化枠拡大には応じられない。ゆえにねばり強く交渉を続けて行くべきと考える。ガットに提訴されようと守るべきことは守らなければならない。今日、消費者団体も、その点については同調しているが、今後とも全国的合意を得つつ頑張って行く。」、こう述べられております。これは自民党の公約でありますけれども、当然大臣もその公約実現に向かって対応されるのだろうと思うわけですが、改めて大臣の御意見をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/137
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138・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 三十七回総選挙の公約ということでございます。「特に、農産物自由化問題については、世界中いずれの国もそれぞれの事情に応じて、各種の国境保護措置を講じている例をあげるまでもなく、国民食料の安全保障及びわが国農林水産業の実情等にかんがみ農政の基本を揺がすような自由化等は行うべきではなく、一億国民の食生活を守るとともに、国内農林水産業を守り育てていきます。」という公約でございます。そのとおりやってまいりますし、特に農林水産委員会で一昨年の五月の決議、そして本年の一月の申し入れ、これはもう念頭に入れてやってまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/138
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139・下田京子
○下田京子君 どうも具体的に詰める時間もないからなにですが、ただはっきりしたのは、大臣は自民党の選挙公約はきちっと守っていくのだ、今言ったこの農業新聞についても否定されていませんから、これも守っていくのだと。それで大事なところは、輸入自由化、枠拡大にも応じられない、我が国の農業を衰退させるようなことにあっては、その際にはガットに提訴されようとも、というようなことを言っておりますが、とにかく政府・与党一体になってやっていくのだというふうに受けとめてよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/139
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140・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 一体となって、最終
的には私の責任でやってまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/140
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141・下田京子
○下田京子君 そこでお尋ねしたいのは、実は先般の委員会で、大臣がおりませんで佐野局長にお尋ねしたのですが、我が国国内にあって財界の一部から非常に自由化論の攻撃が強まっている、そこに対してはしかるべき反論も出さなきゃならないと申しましたときに、官房長もおいでで御存じだと思うのですけれども、佐野局長が、政府広報とのしかるべき検討を約束されております。
そこでお尋ねしたいのですが、「あらかると」というミニビラ、大臣はごらんになったことがあるかどうか、恐らくあると思います。これは「エコノミイ あらかると」ということで経済広報センターカードで出しているものです。それに対する反論ということで、これは大臣はお読みになっていると思うのですが、官房企画室が責任を持っておられます。
その「あらかると」の中で実はけしからぬことが書かれているのです。二月七日号なのですけれども、「貧者が富者に援助する」、つまり貧しい者が富める者に援助するのだという格好で書いてあるのは、「大まかにいえば農村は「富者」で都市は「貧者」なのですが、ここで問題は「貧者」が「富者」に援助をしている」のだ、そういうことがあって農村の水準が高くなっている云々だということを述べております。それからまた、国会議員の定数の問題まで述べておりますけれども、定数の問題は別にしまして、別にしましてもというのは、これはわかる部分もあるのですが、農村が豊かで都市が貧しいという認識というのは間違いじゃないか。これは向こうの言い方なのですが、それにきちっと反論をすべきだと思うのです。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/141
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142・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) まさにそれは逆じゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/142
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143・下田京子
○下田京子君 私はどっちが云々ということを言いたいのではないけれども、予算の使い方として間違っているという点で指摘の仕方が間違っていると思うのです。
そこのところでは反論が一応ここにあります。決して農業予算というのは農家だけのものじゃなくて国民食糧全体の云々だと言っているのですが、そういう意味でこの指摘というのは正しくないと思います。
そこで、さらに昨年の十二月十二日号なのです。「エコノミイ あらかると」ナンバー二一三、「農業保護と「食料安保」」、ここではどういうふうに書いているかというと、「農業保護は国内農業をぜい弱のまま残します。国際競争に耐えうる日本農業にすることが本当の「安全保障」で、そのためのいい方法は市場開放です。市場開放が産業を強くすることは、工業部門で実験ずみです。農業に限ってそれができないことはありません。」ということでもって、市場開放を強く言っております。
このことについて官房企画室が責任を持ってまとめられた反論文書には、「狭い国土や自然という制約を受ける農産物は、工業製品のように市場開放により競争力をつけることは困難である。そればかりか、急激に自由化されると貴重な農地が遊休化し、農業生産の縮小を招くことにもなりかねない。また、日本は、世界一の農林水産物輸入国であり、既に自給率も相当低くなっており、市場開放が進んだ国の一つであることを評価すべきである。」、こういうふうに反論文書を書かれております。私は全くそうだと思うのですが、大臣はどう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/143
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144・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 下田さんのおっしゃられるとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/144
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145・下田京子
○下田京子君 ところが大臣、「自由民主」という本を御存じだと思いますが、この「自由民主」の三月号に、今私が述べた部分をそっくり掲載しているのです。経済広報センターの「農業保護と「食料安保」」で今の話がそのまま載っているのです。
それで確認したいことは、大臣は政府・自民党一体になっていくのだと、選挙公約もそういうことでした。そして財界のやり方について反論すべきはすべきだと言っている。その反論内容についても認められた。同じものが「自由民主」に、しかも三月号ですからちょうど今大きな問題になっているその時期にこういう掲載をされているのです。私は、自由民主党の党の公約とそれから党の政策というものがどういうことなのだろうかというふうに非常に疑問を持ったわけです。農村に読者が多い農業新聞や何かには非常に毅然とした態度で、まあ言ってみれば格好いいですよ、ガットに提訴されても絶対やる、輸入自由化も枠の拡大もしないと明確に言っているのです。一方こういうのを掲載されているということについて、少なくとも今度は政府の側の反論を掲載すべきでないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/145
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146・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) それはさっきのビラを出したところの宣伝文ですから、今度はこっちでひとつ宣伝文を、じゃ載せるようにします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/146
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147・下田京子
○下田京子君 宣伝文を載せていただくということですからよろしいですが、筋が通っていないという点で、これは大臣もどういう経過なのか明確にしていただきたいと思います。
我が党はその点でいきますと非常に明確であって、日本農業を国の基幹産業に据える、工業や農業とそれはどちらもつり合いのとれた格好で発展させるのだ、そういうことになっていけば、今全くそうだとおっしゃったように、自給率の問題ではもう大変な事態だからもっと引き上げていくべきなのだ、とすれば、アメリカの言いなりになってこれ以上自由化、枠拡大ということはあり得ないのだと思うのです。
もう今のところで非常に明確になってきているのですが、きょうの日経夕刊によりますと、ワシントン二十二日田村特派員の報道ということで、スミス次席代表と佐野局長の会談で、牛肉については日本側が五千五百トンの上乗せ案を出した、ところが、アメリカ側は七千五百トンの上乗せを出してきた、それで合意ならず。オレンジについては、現在八万二千トン輸入しているわけですが、日本側が九千五百トン出した、米側が一万一千トン出した、それで折り合いつかず。しかし、確認されたことは、双方とも今回の話し合いで、ほぼ今月末には農相が出かけていって決着ができるようにしようということは確認できた、こういうことです。
私が言いたいのは、本当に日本農業を守るのだということになりますと、これ以上の輸入、自由化などというのはもう話になりませんし、枠の拡大をしていって今のような状況でいったら限りない自由化への接近です。もう絶対ここで明確に態度を明らかにして臨んでいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/147
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148・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 内容につきましては、交渉している最中ですのでお許しいただきたいと思いますが、私が聞いた範囲ではそんなのは聞いておりませんし、それとまた、恐らく今まで連日のように出てきているのはみんな推測記事でございますので、私どもも責任持って佐野局長をやっておるわけでございますので、ひとつ静かに応援していただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/148
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149・下田京子
○下田京子君 これはつまり静かにということは、これ以上の枠の拡大も許さずというふうなことでお臨みいただけるようにということは、これは私の方から再度、重ねて要望しておきます。
次に、畜産物価格との関係、日本のこれからの肉用牛の振興にとって重要な問題である子牛価格の低迷についてお聞きしたいと思うのですが、私は昨年の九月に質問主意書を出しましたときに、子牛価格が非常に低迷している大きな原因となっているのが、農産物貿易問題が生産者の心理に微妙な影響を与えるということで答弁もいただいているのです。これは当然だと思うのです。今、振興しようといったやさきに一体どれぐらい入ってくるのかわからぬということですから、こういう保証基準価格が二年間にもわたって下回っているというような事例は過去にあったかどうか、局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/149
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150・石川弘
○政府委員(石川弘君) ちょっと数字の長さで申しますと、私も、どの程度下がったかということにも絡みますので、比較的長い期間下がっているということの部類に入ると思います。高い時間
がそういうこともありましたこともございます。過去どちらかと申しますと、低い時期で申しますと、当時はまだ水準が今よりもかなり低い水準でございますが、比較的長かったのは、四十九年から五十一年にかけての期間が約二年続いていたというのが一つございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/150
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151・下田京子
○下田京子君 過去にそういうこともあったということですね、今お聞きするのは。最近では明確に五十七年、五十八年と二年続いてこれだけ下回ったということはなかったと思います。そういう状況の中で繁殖農家の手取りが一体どうなのかという点で御認識をお聞きしたいわけなのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/151
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152・石川弘
○政府委員(石川弘君) これは、私どもの考え方で申しますと、子牛価格安定基金に加入をしていただいております場合は、これは当然のことでございますが、値下がり額の九割を補てんをいたしております。したがいまして、九割部分が補てんされますとともに、実はこういう事態も頭に置いておりまして、昨年で申しますと、生産奨励金といたしまして三十万を下回れば手当たり一万五千円を差し上げております。それから、増頭なさっている方の子牛については二万円を差し上げておりますので、そういう価格以外の補てんという要素を入れていただきますとかなりの水準がお手元へ行っているという状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/152
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153・下田京子
○下田京子君 農家の手取りが減ってきているのじゃないかということで、今答弁がありましたが、私は大変甘い認識じゃないかと思います。なぜなら、今お話しのように、確かに保証基準価格が二十九万二千円でありますから、その二十九万二千円の九割までが保証されますし、一般的には奨励金一万五千円ですから。そうなりますと、一体一頭当たりの生産費から見てどうなのだろうかという点でいきますと、資本利子や地代を除いた第一次生産費、これは五十七年の農水省の調査によりましても、御承知のように三十九万八千八百七円ということになっております。それから、政府が進めている五頭飼い以上でも第一次生産費三十七万四千円なんです。ですから、こういったところからいったら第一次生産費も償えるはずはない。しかも、それが長期にわたって行われている。ですから、やはり農家の経営は大変だというのが率直なところ現実ではないかと思います。この点については私は否定はなさらないと思うのです。なぜなら、二月六日ですか、地方農政局会議で各農政局ことから御連絡いただいておりますね。東北農政局の「管内農業情勢報告」を見ますと、とにかくもう「子牛価格は、五十七年春以来の低迷を脱していない。このため、繁殖農家の収益性は低下しており、価格補てん事業の実施等で繁殖めす牛頭数の減少にまでは至っていないものの、」もう「子牛を保留して肥育を始めるなど自衛手段を講ずるものもみられる。」、こういうふうに述べておりますから、やはりこれは大変だと。これはもう否定できないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/153
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154・石川弘
○政府委員(石川弘君) 私どもは五十七年度に入ります前から、実は特に和牛の繁殖につきましてはこういうサイクルがあると。例えば四十数万円という非常に高いときにはいいわけでございますけれども、低迷期に入りますとこういう状態が起こったという過去の経験もございますし、これからは、やはり安定的に生産拡大するために何とかそういうことが制度として維持できるようにということで、御承知のように昨年、今まで財団法人組織でやっておりました子牛価格安定制度を法制化いたしますとともに、こういうこともある程度予見をいたしておりましたので、御承知の中央基金に金を積み増すとか、中央基金が県の基金にお貸しをします金の金利を無利息にするとか、そういうような形で対応してきたわけでございます。しかしながら、これは基本的なことを申しますと、対外問題だけが低落原因だということになりますと、乳用種も同じく低落するというのが普通でございますが、乳用種の低落は比較的小そうございまして、肉専用種だけの低落が大きいわけでございます。これはやはり何と申しましても肉用の子牛の生産の基盤が弱いため、非常に小頭飼育とかそういうものがあって、多頭化がまだまだおくれているということとか、あるいは繁殖経営の場合はどうしても肉用牛経営だけで所得を上げるというのは大変難しいものでございますから、背後にあります稲作とかあるいは畑作とか野菜作とかというものとの結びつきを強める必要があろうと思っておりますので、いろいろな関連施策を年度の途中等にいたしたわけでございます。しかし、御指摘のように繁殖経営農家が非常に経営的に苦難の道を歩いていることは事実でございますので、五十九年度の価格決定の際にも、この繁殖農家の経営を改善するための関連施策に重点を置きたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/154
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155・下田京子
○下田京子君 最後に経営が大変だということの御認識は一致いたしました。まだ私は、子牛価格が低迷しているのは海外要因だけだなんていうことは極端には言っていませんから、念のために。
ただ、今の話の中で念のために申し上げておきますと、肉用牛の経営だけで安定ができないだろうから、他の稲作等も含めて総合的に云々ということになりますと、これは問題なのであります。そこだけはちゃんと指摘しておきます。なぜならば、同じように、北陸農政局ではどういうふうに指摘しているかといいますと、大臣にこれはお尋ねしたいのですが、「長期にわたり子牛価格が低迷していることから、一—二頭飼養農家層で離脱の動きが見え始めている。」と、こういう状況。それで福島県の状況なのですけれども、今、局長からるる御説明をいただきました五十八年から出発した事業なんかも使ってどういう状況になっておるかといいますと、低落の一途なのです。五十八年度の実態なのですけれども、県の基金協会の補てん単価がどんどん上がりっ放しなのです。第一・四半期で五万三千八百二十三円補てんしました。第二・四半期が六万八千八百八十六円になった。第三・四半期では七万九千三百八十九円補てんした。それで第四・四半期は五十九年の一月から三月になるのですが、約八万円台になるだろうと言われているのです。
こういう中にあって、今、福島県の肉用牛生産農家がどういう状況に追い込まれたかということなのですが、双葉郡の川内村というところで遠藤さんという四十二歳の方が自殺された。これは五十六年から繁殖牛を始めまして、そして十一頭の規模というところで、まさに政府の進める大規模化を目指してようやく軌道に乗ったなというやさきに、これは昨年の十二月なのですけれども、競りが終わって、余りにも低いもので、本当に手塩にかけて我が子のように育てできたその子牛が大変な安い値段だったことでショックを受けて、競りから帰って自殺をされたということなのです。四十二歳ですから非常に若い。残された家族や、特にお子さんたちの問題、将来のことを思うとどうなるのかというそういう事態を考えていただいて、やはり子牛価格の安定対策、一日も早い価格暴落からの脱却、そして肉用農家の抜本的な対策を早期的に考えていくということが今重要じゃないか。大臣の決意を伺わしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/155
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156・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 肉用子牛価格につきましては五十七年からずっと低迷を続けておったと。私の聞いたところでは、五十八年十月を底にして十一月以降はわずかながら回復しているというようなことを聞いておりますが、ちょっと事務局から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/156
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157・下田京子
○下田京子君 事実が違ったでしょう、この福島の例は。決意を聞かしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/157
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158・石川弘
○政府委員(石川弘君) 子牛価格は、御承知のように、地域によりましていろいろ動きが違って動いておりますが、一般論で申しますと、去年の秋口を最後に回復の兆しが出ておりますが、何度も申しますように、そのテンポがはかばかしくないというのが全体の姿でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/158
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159・下田京子
○下田京子君 そうそう、はかばかしくないです。ですから大臣……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/159
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160・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) いや、上がってきているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/160
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161・下田京子
○下田京子君 いや、とんでもないです。大臣、どこを聞いていたのですか。五十八年度で上がってきたなどということで、それであったら補てん
なんか出す必要もないのです。
ちょっとついでに申し上げます。全国的な状況で今お話がありました。これは順次聞いていこうと思ったのですけれども、畜産振興事業団の指定事業がございます。その事業団でやられている中で、さっきもお話しになりましたが二つあるわけです。
一つは子牛の生産拡大奨励金、二つ目には子牛の生産奨励金があります。その後者の特に生産奨励金というものの単価アップだとか枠の拡大だとかいうことが、非常に今どうするかということで関係者から要望が強くなっていると思うのです。基金全体の話で見ますと、この間、都道府県の肉用子牛の価格安定基金の協会から補てんがずっと続いていく中で、もう補てん準備金が不足をするという事態が出ているはずです。いいですか、全国的に見ますと、その五十八年度開始時点で繰り越しが約百億、それが五十八年度に入ってからの積立金が、これは国が二分の一で県四分の一、農家四分の一でやっているわけですが、三十五億から四十億積み立てて合計で今約百三十五億から四十億になっていると思います。
一方、補てん金の交付の方はどういう状況かといいますと、四月から九月の上半期で既に百十五億円をもう出しているのです。下半期でどのくらい必要かといいますと、同程度の補てん金が見込まれる。そうなったら補てん金の交付額は総額で二百三十億ですからパアになってしまうのです。今、局長が県にあって云々なんという話をされましたけれども、全国ベースで今言ったような状況なのです。そして特に県別で言えば、福島県や九州の宮崎、大分、熊本、長崎、それに岡山などがもう不足する見込みだと言われているのです。何らかの手だてをしなきゃならないのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/161
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162・石川弘
○政府委員(石川弘君) 先ほどから申し上げましたように、そういう事態があるといけないということでまず法律にしまして、農民の方は、これは民法法人では金がなくなるとつぶれてしまうということを御心配でございますから、昨年法律化をしました。その中で、国が必要な援助をするということを明文で書きました。それ以外にも今お金がなくなったらどうするかというお話でございますが、中央に基金がございまして、その基金を県の基金にお貸しをしまして、それは今まで金利を二・五%取っておりましたものを無利息にしまして、据置期間も置いて返しやすいような制度をつくってございます。したがいまして、今生産農家の方々にはそういう手当てをしております。そういうことをまた商売屋さんで悪いのがいまして、今につぶれると大変だとか言って安く買いたたくなどという方がいますので、いろいろと関係者の方々に不安を募らせるよりも、むしろこういう形で国は制度としてやっているのだから、私はもう少し安心してやっていただきたい。
それから、御承知のようにことしの予算でも、県で基金をつくります場合に、昨年予算枠は十八億ぐらいでございましたけれども、それを三十二億と予算もふやしてございます。
それから、今度の価格決定の際に、中央の基金にもし金が足りなくなるという事態があるといけませんから、そういう手当てもしようと思っております。
私が子牛問題で一番心配をいたしておりますのは、子牛自身が、本当にそれじゃ日米とかなんとかという問題だけでこんなに動いているのかどうか。どうも子牛につきましては、必要以上にこういうことを材料にして安く買いたたくというような悪い傾向もございますので、極力生産者を安定させるためにも私どもは一生懸命やるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/162
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163・下田京子
○下田京子君 最後に、やるということですから、改めてこれはぜひ対応いただきたい。特に福島県の場合は、言ってみれば、そういう無利子の融資でも受けないとやっていけないということは御存じだと思います。削減補てん準備金なるもののところには加入していませんから、だからそういう点で具体的な対応はしていただきたい。
それから、実際にはここが大事だと思うのですが、今経営問題で触れられましたが、私たちはとにかくこの子牛の生産が安定しないと肉用牛の生産の安定ということはやはり保証できないと思うのです。その点で、お年寄りとかあるいは婦人だとか規模が小さくても丹精込めてやられている。前大臣のときに私は御紹介しましたが、広島県のママさん牧場なんというところは、三頭飼いで年間百万以上というふうなことを一つの目標にしまして、傾斜地の中で農業をやり、そして家庭も守って、本当に日本農業の食糧の発展にも寄与できる、こういう話があったと思う。そういうところを大事にしながら積極的に対応していくということが一つ考えられてしかるべきだと思う。そういう点で、最後に今、局長がいろいろ対応しますとおっしゃいましたが、畜審が終わった後で指定事業のことなんかは大蔵と協議して決めていくことになると思う。まあまあやってくれるということですから間違いないと思うのですが、決意を聞いて終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/163
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164・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 繁殖農家の体質強化には、我が農林水産省としてできるだけの施策を講じてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115007X00419840323/164
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165・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) 本件に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時二十八分散会
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