1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年九月二十三日(火曜日)
午後二時十三分開議
出席委員
委員長 正木 清君
理事 佐伯 宗義君 理事 前田 郁君
井谷 正吉君 重井 鹿治君
島上善五郎君 館 俊三君
原 彪君 山崎 岩男君
岡村利右衞門君 田村 虎一君
高橋 英吉君 中野 武雄君
増田甲子七君 木下 榮君
出席政府委員
運輸政務次官 田中源三郎君
運輸事務官 郷野 基秀君
委員外の出席者
専門調査員 岩村 勝君
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九月二十日
遠州地區内における國營トラツク運營中止に關
する請願(鈴木里一郎君紹介)(第六二一號)
二俣、佐久間鐵道速成の請願(竹山祐太郎君外
一名紹介)(第六二九號)
松本よりの二路線竝びに明科よりの二路線及び
山清路、上田間に國營バス運輸開始の請願(増
田甲子七君紹介)(第六三七號)
奈良、上野間國營バス運輸開始の請願(前田正
男君紹介)(第六六四號)
西彼杵半島内に國營バス及び航路開設の請願(
本田英作君外一名紹介)(第六六五號)
の審査を本委員會に付託された。
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本日の會議に付した事件
道路運送法案(内閣提出)(第四七號)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100103889X01819470923/0
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001・正木清
○正木委員長 會議を開きます。
これより道路運送法案を議題として質疑にはいりますが、それに先だち、念のためもう一度政府より本法案の趣旨の説明を求めることにいたします。郷野政府委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100103889X01819470923/1
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002・郷野基秀
○郷野政府委員 道路運送法案の提案理由につきましては、さきに運輸大臣に代りまして政務次官から御説明申し上げましたが、私から法案の内容につきまして、概要を重ねて申し上げたいと存じます。
現在道路運送に關する法律の體系といたしましては、まことに不十分でございまして、ただ自動車交通事業法と自動車取締令とがあるのでございまするが、自動車交通事業法は、自動車運送事業と自動車道事業に關する事業法規でございまして、自家用運送に關する規定を缺いておりまするし、自動車取締令は自動車の交通取締りに關する警察法規でございまして、この兩者間の法制上の連係につきましても十分でないものがございまするばかりでなく、なお輕車輛使用の適正化を規しております。第九章は罰則でございまして、罰則を規定しております。この法律案の主要な點につきまして、概略を以下御説明申し上げたいと存じます。
第一章におきまして、總則にはこの法律の目的と、この法律一般に通ずる定義を規定いたしております。第一條に揚げておりまするこの法律の目的は、同時に道路運送行政の指導理念でもございまして、一見はなはだ抽象的に書いてございまするが、以下この法律案の各條項に規定いたしております事項は、すべてこの理念の具體化せられたものと考えて差支えないものと存じております。
次に第二章でございまするが、この章は監理といたしまして、こ法律の運用に關する事項を規定いたしております。このうち特に新たにこの法律により制度化せられるものといたしまして、この七條の車輛檢査官と、第八條の道路運送委員會とがございます。この法律案におきましては、車輛の機能及び保安の適正化をはかりまして、輸送力の向上に資しまするため第八章において車輛の構造、檢査及び整備に關し必要な規定を設けておりまするが、この仕事は非常に技術的なものでありますばかりでなく、必要ありますときは車庫等を臨檢いたしまして檢査をしなければならないのでございます。この職務に從事する官吏吏員は一般官吏、吏員とおのずから異なる性格をもつものでありますので、車輛檢査官の制度を新たに設けた次第でございます。
次に第八條の道路運送委員會について申し上げます。現行法では事業の免許や取消、停止等すべて行政官廳の自由裁量行為でございまするが、本法案におきましては、できるだけ一般の聲を聽きまして、行政の民主化をはかりますために、中央及び地方に道路運送委員會を設けまして、行政官廳がこの法律及びこの法律に基く政令、命令の制定及び改正立案、免許基準の設定及び變更、事業の免許停止、取消等をいたしまするときには、委員會の意見を徴してしなければならないことにいたしております。委員會の組織、運用その他必要な事項は政令でこれを定めることにいたしてございまするが、その組織につきましては、地方委員會は各都府縣から一人づつの委員を、それから北海道におきましては數人の委員を知事に推薦していただきまして、これで組織をいたしまして、中央委員會は各地方委員會の委員長をもつて組織するような構成にいたしたいと考えております。
次に第三章の自動車運送事業について申し上げます。第十條におきまして事業の種類を一般事業と特定事業とに大別いたしまして、それをさらに乘合旅客、貸切旅客、積合貨物、貸切貨物にわけております。現行法におきましては法律において旅客自動車運輸事業、旅客自動車運送事業及び貨物自動車運送事業にわけまして、さらに施行規則におきまして、旅客自動車運送事業を普通、路線、團體にわけ、さらにまた別の省令によりまして特定旅客自動車運送事業を認めている。貨物自動車運送事業につきましては、これを施行規則におきまして普通と特定とにわけまして、さらにその普通を路線の有無によりまして區域事業と區間事業にわかつというふうな、まことに複雜な分類でございまするが、この法律におきましてはアメリカのコンモン・キヤリヤー、コントラクト・キヤリヤーというような分類にならないまして、一般特定と、事業を分類いたしまして、在來に比しまして一段の正助さと妥富さを加えるようにいたしたのでございます。なお現在の業者は、附則の第三條に規定いたしまする通り、別に命令の定めるところに從いまして、それぞれ該當する新しい種別の業者となつたものとみなされることにいたしたいのでございます。
次に自動車運送事業を經營しようとしまする者は、第十一條の規定によりまして、事業計畫を定めて主務大臣の免許を受けなければならないことは現行法と同様でございますが、本法では第十二條において、自動車運送事業の免許に關し妥當な基準を設けてこれを公示しなければならないように定めまして、この基準に適合する申請があつたときは、申請者が法律に定めました缺格條項に該當するとか、その事業の經營によりまして公共の福祉に反するような結果を生ずる、競争をひき起すおそれがあるような場合等を除きまして、原則として免許しなければならないことといたしまして、免許の公正を期しておるのでございます。
次に第十五條及び第十六條において運送約款を定めて、認可を受けた上で、これを公示することにいたしまして、從來ややもしますれば、契約の内容が不明確なために責任の限度について爭いを生ずることが多かつた弊害を改めまして、契約の公正化と簡易化をはかり、公益をはかつてまいりたいと存じております。これまた現行法にない規定でございます。
次に最近の事情を見ますと、事業の健全な發達をはかりますとともに、公共の福祉を確保するためには、現行法ではいろいろ不備な點が認められますし、この點に關しまして新たに數種の規定をおくことといたしました。それはすなわち第十八條におきまして、公共の福祉に反する行為と、事業の健全な發達を阻害するような競爭を禁止いたしまして、第十九條におきまして、法律で定めました特定の場合のほかは運送の引受義務があるものといたしまして、第二十條におきまして、申込の順序によりまして物品を運送しなければならないと定めたことなどがこれでございます。その他公共の福祉を確保するため主務大臣は從前通り事業改善の命令、これは第二十四條でございます、等を發し得ますほか、事業の讓渡等、第二十八條でございます、事業の停止、免許の取消、これは第三十條でございます。免許の失效、第三十一條、これらについての主務大臣の管理、業者の權利義務等は在來とほとんど變りございません。
次に第二十五條におきまして、第二十三條、第二十四條第一項の規定による他業者との連絡運輸、共同經營及び運輸に關する協定について、いわゆる獨占禁止法の規定を排除しておりますが、これはいわゆる獨占禁止法第二十二條の規定によりまして、特定の事業について特別の法律があり、事業者がその法律またはその法律に基く命令によつて行う正當な行為でございますので、同條第二項の規定によりまして本法第二十五條の規定をもつてこれを指定をいたしたわけでございます。獨占禁止法の適用除外はこの二つの場合だけでございまして、同法において公正取引委員會の認可を受けなければならないとされております事項、たとえて申しますれば、第二十八條の讓渡、合併等につきましては、本法によりまして主務大臣の認可を受けなければ效果を生じないと同時に、公正取引委員會の認可をも受けなければならないことになるのでございます。
次に第二十九條におきまして事業區域が東京都の區の區域あるいは政令の定めます市の區域内に限られております乘合旅客自動車運送事業につきまして、免許、運賃、料金の認可、事業計畫等の變更の認可、運輸に關する協定等の認可、讓渡の認可等をいたしますには、都知事または市長の意見を徴しなければならぬことといたしております。これは市が地方公共團體のうちで特に家族的な意味をもつ團體であることに基くものでございます。なお道路運送委員會に諮るべきものにつきましては、もちろんさらに道路運送委員會に諮ることは當然でございます。
次に第三十二條におきまして特定自動車運送事業には、その權利義務について一般事業よりも輕減した規定をおきましたが、これは特定事業が一般事業に比較いたしまして公共性が低いからであります。
次に第四章の輕車輛運送事業について申し上げます。輕車輛運送事業とは、第二條に定義いたします通り、他人の需要に應じ輕車輛を使用して旅客または物品を運送する事業でありまして、荷牛馬車による運搬業、旅客自轉車——厚生事業、人力事業等であります。この事業は從來は府縣令等に任せられており、法律に基いていなかつたのでありますが、年間約二億トンを輸送すると推定される陸上小運搬業を初め、道路運送の重要な一環をなしておりますので、道路運送における公共の福祉を確保し、また事業の總合的な健全な發達をはかる意味において、今囘新たに本法に規定した次第であります。但しその公共性と機動性は自動車に比較して低度の状態でありますので、これに對する監督行政もあり嚴重とせず主として屆出で足りることにいたした次第であります。旅客輕車輛の車輛檢査についても、その檢査事務を市町村長に委託し、實状に副うようにしたいと存ずる次第であります。
次に第五章自動車及び自動車道事業、第六章國營自動車運送事業及び國營自動車事業についてでありますが、この規定はいずれも現行法のものと大差ありませんので、説明を省略させていただきます。
次に、自家用自動車に對する規定、すなわち第七章自家用自動車の使用について申し上げます。自動車は道路運送の中核とし、産業經濟活動の基盤であるにもかかわらず、現状においてはその實在輛數も、その供給量も著しく不足しており、さらにまたガソリン、薪炭、タイヤ、チユーブ等の所要諸資材も非常に不足しておるのであります。從つて自動車は現在におきましては、最も使用效率を高めるように運營しなければならないのであります。自動車の使用效率の點か考えますと、自己の所有物をのみ運送する自家用車が、業者の車に劣りますことは當然でありまして、效率の點だけから判斷いたしますと、自動車は業者に任せるのが最も適當ということになるのであります。しかしながら業者車だけでは賄いきれない部面も必然的にできますので、ここに自家用車の存在の意義があるのであります。從つて自家用車の使用效率の低いことは、自家用車を認めることに伴つて必然的に考えられることであります。一部遊休輸送力を生じても、全體のためにはロスとならないようなところに自家用車が認められているのであります。
以上の權點からいたしますと、自家用車と業者の車は、それぞれの分野において、互に侵すことなく、最高度に能率を發揮すべきものであります。自家用車の遊休輸送力を他に活用すると稱して營業の分野に乘出すことは、前申しましたように、すでに自家用の意味を没却すばかりでなく、現在輸送業者を中核として成り立つている輸送の分野を攪亂し、輸送の秩序を混亂に陷れるもので、たとえその行為に直接附隨する一小部分の利益はあつても、終局的には國民全體の利益を損うものであると申し得るのであります。輸送力の向上は、輸送の適正な秩序を確保して初めて期し得られるので、自動車の使用效率の向上もおのずからこの秩序の範圍内ではかられなければならないのであります。本法第一條に、この法律の目的として輸送の秩序の確立を第一に掲げたのもこの趣旨であります。第七章の規定は、ただいま申し述べました趣旨から定められております。すなわち第五十二條に自家用車は對價を得てこれを運送の用に供してはならないと定め、第二項に、主務大臣の許可がなければ對價を得てこれを貸し渡してはならないと規定したのであります。これはただいま申し述べました營業行為の禁止であります。また第五十三條に、主務大臣は自家用自動車の使用がこの法律の目的に照らし適正でないと認めるときは、その使用を制限し、または禁止できると規定したのも同じ趣旨であります。本條において命令の定める乘車定員を有する乘用車を除いたのは小型乘用車等でその公共性の著しく低いと認められるものについての除外であります。本章に規定するところは、自家用車の不適正な使用の規正でありまして、本來の意味の自家用車の適正な使用は、産業經濟の上からも望ましいことと考える次第であります。
次に第八章車輛について申し上げます。車輛の檢査は從來警察で行つてまいつたのでありますが、本法の施行により新たに運輸省の所管となるのであります。すでに自動車に關しまして、車輛檢査以外の行政はすべて運輸省の所管でありますので、今囘この移管により、窓口が一元化される等、一般の受ける利便はまことに大きいものがあると存じます。第五十四條は車輛檢査の規定でありまして、車輛檢査證、車輛番號等に關しましては從來と同様でありますが、第五十五條に車輛の整備の規定を設け、車所有者または使用者に整備の義を負擔させることにいたしました。現在車輛は老朽し、新車の供給の少いとき、整備は輸送力向上のポイントとなるからであります。行政廳は車輛が使用に適しないと認めるときは、必要な整備を命じ得ることとし、それに從わない者には、車輛使用を制限しもしくは禁止することができることとしたのであります。第五十六條の自動車の登録は現行自動車取締令の登録と同じ趣旨であります。なお旅客輕車輛の檢査は、その特殊性に基き、その檢査事務を市町村長に委員してまいりたいと考えております。
次に第九章罰則であります。從來は相當抽象的に規定してありましたが、刑罰法規はできるだけ具體的に條文に即して規定することが妥當と認められますので、さようにした次第でございます。同時に最近の状況に鑑みまして金刑も増加いたしました。
最後に附則でありますが、この法律の適正な運用をはかるためには、まず道路運送委員會を設置した上で、これに諮つて必要な政令、命令を定めていくことになりますので、第一條で施行の期日は、各規定ごとに定めることといたしまして、道路運送委員會の規定から先に實施してまいりたいと考えております。第三條において自動車交通事業法またこれに基いてした處分は、この法律中にこれに相當する規定がある場合には、命令の定めるところによりまして、この法律に基いてこれをしたものとみなしますから、現在の自動車運送事業は、それぞれ命令の定める通り新しい種類の業者となるわけであります。また輕車輛運送事業者は施行後三箇月以内に屆出をすればよいのであります。第四條に自動車運送事業組合及び同聯合會を解散することといたしております。なおその他必要な經過規定を置いてあります。
以上申し上げましたように、この法律では現行法に缺けております重要な規定をいろいろ設けまして、道路運送に關する總合法規として、道路運送の健全な發達をはかつておる次第でございます。以上をもちまして御説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100103889X01819470923/2
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003・正木清
○正木委員長 それでは質疑は次會よりいたすことにいたしまして、本日はこれにて散會いたします。次會は公報をもつてお知らせいたします。
午後二時四十五分散會発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100103889X01819470923/3
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