1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年十月二十日(月曜日)
午後一時五十三分開議
出席委員
委員長 伊藤卯四郎君
理事 大矢 省三君 理事 岡田 春夫君
理事 澁谷雄太郎君 理事 早川 崇君
今澄 勇君 衞藤 速君
松本 七郎君 村尾 薩男君
庄 忠人君 西田 隆男君
三好 竹勇君 有田 二郎君
平島 良一君 深津玉一郎君
淵上房太郎君 山口六郎次君
谷口 武雄君 前田 正男君
高倉 定助君
出席國務大臣
商 工 大 臣 水谷長三郎君
出席政府委員
商工政務次官 冨吉 榮二君
石炭廳長官 菅 禮之助君
石炭廳次長 吉田悌二郎君
商工事務官 平井富三郎君
委員外の出席者
專門調査員 谷崎 明君
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十月十四日
配炭公團法の一部を改正する請願(今澄勇君紹
介)(第八五七號)
新庄町に國立亞炭研究所設置の請願(圖司安正
君外一名紹介)(第八七六號)
窯爐研究指導費國庫補助の請願(海野三朗君紹
介)(第九一四號)
の審査を本委員會に付託された。
十月十一日
炭鑛業社會化に關する陳情書
(第三七九號)
を本委員會に送付された。
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本日の會議に付した事件
臨時石炭鑛業管理法案(内閣提出)(第六四
號)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/0
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001・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 これより會議を開きます。
前會に引續き臨時石炭鑛業管理法案を議題とし、質疑を繼續いたします。淵上房太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/1
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002・淵上房太郎
○淵上委員 委員長にまずお願いしたいのでありますが、本案審議のために必要なる資料を數項にわたりまして、政府當局から提出願えるように、委員長からしかるべく御手配願いたいと思います。
第一、資材に關する問題であります。次の十一品目の二十二年度及び二十三年度の生産見込調べをできるだけ正確にお調べを願つて、提出を要求していただきたいと思います。その品目は銑鐵、鑄鐵管、壓延鋼材、釘、針金、鐵線、鋼索、亞鉛、鐵板、爆藥、カーバイト、コンベアベルト、セメント、その十一品目であります。
第二、炭住に關する調べであります。イ、ロ、ハ、ニ、四つにわけます。
(イ)、二十二年度及び二十三年度の勞務者及び職員の住宅、合宿舎、竝びに厚生施設の建設、増改築及び修理計畫(資材、坪數、戸數、棟數及び目標期月)
(ロ)、二十二年度の右建設増改築等の進捗状況。
(ハ)、炭住資材調達の現況。
(ニ)、二十二年度及び二十三年度の炭住の建設、増改築及び修理所要資金見込額。
第三、二十一年度の坑内事故による死傷者數調べ。
第四、二十二年度の四月から九月に至る各月末現在の各地區別の貯炭状況調べ。(坑所及び港頭別)
第五、左記各港の石炭積出し能力。その港は稚内、留萠、小樽、函館、釧路、宇部、戸畑、若松、宇島、中津、三池、唐津、相の浦。
以上各資料が提出されましたときは、私の今の繼續質問終了後といえども、提出に應じまして、あらためて質問いたしたいと思います。委員長にあらかじめ御了承おきを願いたいと思います。
次にもう一つお願いがあるのであります。先般の公聽會におきまして、各方面の意見を聽いたのでありますが、本案審議上まことにいい参考になつたのであります。炭鑛關係のみならず、各關連産業の經營者側及び技術者側の意見は、もちろん憂國の至情からいろいろ意見を述べられたものでありまして、國家管理は増産にならぬ、減産になるんだ。また時期尚早であるというような意見も相當多く、あるいは全部かもしれません。體驗からにじみ出ました尊い意見は、まことに傾聽すべきものがあつたのであります。勞務者側におきましても、もちろん祖國を憂うるの眞情を吐露されておつたのでありますが、非常に参考になる意見があつたのであります。ただ私からみますれば、どうも多少言うことが地についていない點があり、あるいは口頭的であり、觀念的であり、概念論的である。中にはこの法案では不徹底で、これでは勞務者にも生産意欲が起らぬ、増産にはならぬという反對論さへ何人かあつたのは、注目に値したのであります。私は勞務者の公述人の意見を聽くときには、常にその人たちの手を見ておつたのでありますが、なかなかきれいな手をしておられるのでありまして、その割合に經營面に關する知識、あるいは理解が比較的足りないのではないかといえ感じを得たのであります。經營者側が、勞務面に對しまして、非常に研究しておる割合に、勞務者側の經營面に對する知識が、何だか物足りないという感を受けたのであります。この法案によりますれば、これらの人たちが生産協議會にはいつてきて、あるいは事業主や炭鑛管理者の心身を打ちこんだ責任ある業務計畫や、その執行に妨げをするようなことがあるのではないかと思いまして、私は實に憂慮にたえぬ感を抱いたのであります。中には經營者の資金、資材の横流しを責めたてておつた公述人もあつたのでありますが、中小炭鑛の中で歩合から申しまして、あるいは一%にも上らないようなきわめてレーアケースを、全般的レポートであるかのごとく取上げて、攻撃した人もあつたのであります。この問題につきましては、私どもの郷里の實情において見るところでありますが、坑夫の人たちが、少しずつ石炭をもつて歸る。こういう問題につきましては、各地方から出られた勞務者公述人は、一言も觸れられない。ただ資本家の資金、資材の横流しのみを責めておつた。かりに一戸に五キロずつもち歸りましても、二百戸で一トンの横流し、あるいは横領になるのであります。これはレーアケースではないのであります。こういう問題には全然觸れられなかつたのでありますが、とにかく勞務者の公述人の方がいろいろ言われたことも、私どもとしては非常に参考になつたのであります。私はこの際委員長に特にお願いしたいのでありますが、先般の公聽會の各公述人の供述した速記を特に繰上げて早く印刷に付しまして、少くともこの常任委員のみんなに配付できるように、特別の措置をとつていただきたい。こういうことを特に委員長にお願いしたいと思うのであります。非常によい参考になつたのでありまして、この公聽會には商工大臣も何とかお繰合わせをつけていただいて出られて、公述人の全部の人々に質問をさしていただきたいと思つたのでありますが、委員長の最後の謝辭におきましても、非常によい供述であつて、本案審議上参考になつたという感謝の言葉を捧げられたのでありまして、私もこの點につきましては、まことに同感であつたのであります。こういうよい公聽會の速記を、私は一日でも早く委員諸君にもう一遍續んでいただき、私自身も續みたいのでありますが、特にこれだけは、今待つていると一月もかかるようでありますから、速やかに印刷をして委員に配付していただきたいということを、特に委員長にお願いいたします。
これから質問をいたします。まず商工大臣にお伺いしたいと思います。この法案は先般も申しますように、去る七月初めきわめて近い機會に提案すると申されて以来、九月十五日、指折り算えてみますれば、八十七日目に提案されたのであります。その間私どもは毎日新聞を見ておつたのでありますが、それによりますれば、何とか會談、何とか會談と、三箇月間繰返し繰返しやられて、その間折衝に折衝を重ねられ、幾多の紆餘曲折を經て、結局九月の下旬に提案されたのであります。案の内容のごときは、あたかも猫の眼のようにぐるぐる變つていつたように思うのであります。世間ではいろいろ話しております。増産の達成なんかまずどうでもいいのだ、國管という型だけでもできれば、それでいいのだというようなうわさをしておる人もあります。あるいは片山總理とか西尾長官が、内閣の命にかけても通すのだと、しきりに力んでおられたので、世間の一部では面子が問題なんだというような風評もしておるのであります。私考えますのに、大體妥協ということは、關係者が互いに相讓り合つていかなければできぬではないか、讓り合い、がまんし合うというところで始めて妥協というものができる。各當事者が十分の滿足を得られないで、とにかく讓り合う、十分の滿足ができないところに十分の確信があるはずはないのであります。確信のないものにどうして責任が負われるか、かように思うのであります。七月初頭の商工大臣のお話では、炭鑛國管にそまさに増産の現質的に要求を滿たさんために構想されたものである。これによりまして、政府は直接責任をとるのだ、かように申されておられますが、非常に商工大臣としては讓歩されたのでありましようが、この不滿ながら讓歩された、その不滿のこもついているこの法案につきまして、はたして石炭増産の確信があるか、責任がもてるか、私はこれをまず商工大臣にお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/2
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003・水谷長三郎
○水谷國務大臣 ただいまいろいろお話がございましたが、われわれは、この法案によりまして、石炭増産の態勢を整えたいと思つており次第であります。もとより政府といたしましては、國會に提出いたしました以上は、この法案におきまして、十分石炭増産の責任がとれるという確信がなれけば提出しないのでございまして、斷じてささやかなる面子のためであるとか、あるいはイデオロギーのためとかいうようなことではないのでありまして、あくまで増産のために、石炭増産を契機といたしまして、日本の生産増強をはかりまして、この日本の經濟危機を救いたいという念願のもとに出したのでございまして、その點は、これまで機會あるたびに繰返し繰返し申し上げた通りでございますので、さよう御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/3
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004・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 淵上君にちよつと委員長から申し上げておきたいと思いますが、先ほど御要求の政府に對する資料の件は、それぞれ速やかに出さすようにいたします。さらに速記の件でありますが、これは淵上郡も御承知の通り、諸般の事情がありまして、舊來のごとく早急にいかない點をあらかじめお含みを願つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/4
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005・淵上房太郎
○淵上委員 ただいまお願いいたしましたのは、順序を經ると一月もかかりますので、本案審議上特に急を要しますので、これだけ切り離して、特別に早く印刷に付せられたいということをお願いしたのであります。どうぞ特別にお手配を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/5
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006・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 仰せの通りこちらばかりの都合でないということはお含みを願つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/6
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007・淵上房太郎
○淵上委員 こちらばかりの都合ではいかないかもしれませんが、何とか一つ特別に御手配を願つていただきたいと思います。せつかくのよい公聽會であつたと確信いたしておりますので、商工國臣にもよくごらんおきを願つて、この畫期的な重大法案を最も愼重に、適正に審議したいという觀點からいたしまして、特に特別の手配を委員長にお願いいたします。
次に經營の民主化という點につきましてお伺いいたしたいと思います。その法案を見ますと、大體事業主とか炭鑛管理者という人たちは、多年石炭生産に努力した、炭鑛の經營に明るい、山の性格もよく知つている、そうしてふだん創意くふうをこらして、心魂を打ちこんで生産に精勵している人たちであるのであります。これに對しまして、經營に無經驗であり無理解である從業者、勞務者が多數はいり込んできて、そうしてこれらの人たちの構成するところの炭鑛管理委員會や生産協議會が、その事業主とか炭鑛管理者の一生懸命になつてつくつた計畫にかれこれ文句を言つて、あるいはこれの變更を餘儀なくせしめるというようなことがあり、あるいはまた實情を知らぬ官僚の人たちがこれに拘束を加えたり、制限を加えたり、變更を命じたりするような法案の建前であるのでありますが、これではたして増産ができるかどうか。責任というものは、十分に權限を與え、任されなければ責任は負えないものでありますが、その責任を事業主とか炭鑛管理者にもてといつて、はたして責任がもてるかどうか。私はその點を疑うのでありますが、商工大臣はどういうお考えでおいでになるか、伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/7
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008・水谷長三郎
○水谷國務大臣 繰返し申し上げます通りに、この法案のねらいは、政府、炭鑛業者竝びに勞務者の三位一體の協力態勢を整えることが、ねらいでございまして、政府といたしましても、このたびつくりますところの石炭局は、御案内のように、局長及びその局員の過半數は、炭鑛事業に明るい民間人をもつてこれに充てまして、從來のいわゆる官廳機構とは、本質的に異つた構成をもつて臨むのであります。そうしてただいま淵上さんが申されましたように、山の事情に精通しておられるところの業者諸君には、從來以上の働きをしていただくとともに、さらにまた炭鑛の生産要素の七五%を占める勤勞意欲の振興をはかりまして、政府、業者竝びに勞務者、三位一體の協力態勢を整えるというのが、この法案のねらいでございまして、このようにすることによりまして、石炭企業というものの生産が増大するゆえんであると、われわれは信じている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/8
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009・淵上房太郎
○淵上委員 ただいまの三位一體のお説につきましては、さらにあとでお伺いいたします。政府委員の方にお伺いいたしますが、四十八條の「學識經驗ある」という字句は、學識及び經驗と讀むのか、學識または經驗と讀むのか、どういう讀み方をしたらいいかということをお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/9
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010・平井富三郎
○平井(富)政府委員 お答え申し上げます。四十八條その他この法案において「學識經驗ある」とうたつておりますのは、いわゆる從來の法制の慣用語でございまして、學識經驗と一つの熟語として讀んでいるわけでありますが、學識ある者、經驗ある者、このどちらもはいるというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/10
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011・淵上房太郎
○淵上委員 ただいまの御説明でよくわかりました。學識ある者または經驗ある者というように解釋すべきだという御説明でありますが、さよう解釋いたします。
商工大臣は先般の御説明で、野に遣賢なからしめて、民間企業のエキスパートが石炭生産に溶けこむようにすることが必要だと言われたのであります。かりに野に遣賢があつて私は現在の實情からしまして、石炭生産に關して、あまり遣賢がころころ野に殘つていないと思うのであります。さような御趣旨であるということはよくわかりましたが、かりに有能者が遊んでおつても、今日役人になるということは、職權の濫用でもしなければ、品位も保てないし、食うことも食つていけないだろうと、私は思うのであります。商工大臣は、まだたくさん今日野に遣賢がころがつておる、さようにごらんになつておりますかどうかをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/11
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012・水谷長三郎
○水谷國務大臣 これはどうお答えすれば御滿足がいただけるかどうか知りませんがわれわれといたしましては、石炭増産のためには、朝と言わず、野と言わず、總動員をやりたいという趣旨から出ておるのでございまして、さいわいに大陸方面からは、相當石炭に經驗のある技術者、あるいは經營者も内地へ續々と歸つておられますし、さらにまた財閥解體というような點からも、相當の有能なる經營者、技術者というものも考えられますので、それらの方が、おのおのところを得て、そうして十分に働いていただくというぐあいに考えております。もちろんこれまで野におつた方が官吏になられた場合の處遇問題に關しまして、いろいろの御意見もありましたけれども、しかしながら、私らといたしましては、そういうような點なんかもいろいろ考慮はいたしまするが、この際日本の石炭企業に關係のある人々が、石炭企業の重要性に鑑みられまして、できるだけそういうようなことをば乗り越えて、この石炭生産増強という至上命令に協力してくださることを、心より期待しておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/12
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013・淵上房太郎
○淵上委員 なるほど先ほどお話になりまするように、石炭局の局員は、定數の過半數に相當する職員を民間からとるという御趣旨であります。私はこれは失業救濟であると思つて、單に失業救濟に終らねばいい、かように思つておつたのであります。引揚者の問題は氣がつきませんでした。これはなかなか連達堪能の士がおるかもしれませんが、大臣の御趣旨はよくわかりました。政府委員にちよつとこの間に伺いたいのでありますが、ただいま大臣の説明では、これはこの間、二日の日に、岡田委員の質問に對してのお答えもあつたのであります。そのときにも言われた。石炭局長及び局を構成する人たちは、過半數が民間人であるということを、ただいまも言われました。五十條の第三項、これを續みますと、「各石炭局の局員の定數の過半數に相當する局員は、石炭の生産に關し學識經驗ある者及び石炭の生産に關し學識經驗ある官吏の中から、命ぜられた者でなければならない。」こう書いてあるのであります。石炭生産に關し學識經驗ある民間者及び石炭生産に關係ある學識經驗ある官吏と、合せて二つが石炭局の局員の定數の過半數にならなければならぬのであるか、あるいは大臣のお言葉のごとく、ただいまも、この間二日の日にも岡田委員に言われたのでありますが、及び以下でなくして、ただ民間者だけで過半數を占めなければならぬのか、どちらであるかをこの際伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/13
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014・平井富三郎
○平井(富)政府委員 第十五條の第三項に、石炭局の局員の定數の過半數に相當する職員は、學識經驗ある者と、學識經驗ある官吏と、書きわけてありますが、民間人を石炭局の局員にいたします場合に、いわゆるワンダラ・マン式に、從來の會社なら會社の業務をやりながら、同時に石炭局の仕事もやる。ワンダラ・マン式な政府職員というものと、民間人ではありますが、これが官吏の身分を保有してなる者と、兩方あるわけであります。從いまして、前段の學識經驗ある者は、いわゆるワンダラ・マンでありまして、後段の學識經驗ある官吏といいますのは、民間人が官吏の身分を取得いたしましてなつた者、この兩方が過半數を占めるというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/14
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015・淵上房太郎
○淵上委員 わかりました。今の石炭廳の長官は御就任になりますときに、私はあとで二、三の人から話を聞いたのでありますが、こういうりつぱな遺賢はあまりないのである。もしも本法が成立いたしましたならば、よほど愼重に御選考になりませんと、單純な失業救濟に終ることなきやを私は心配しておりましたので、そういう質問をしたのであります。
次にお伺いいたしまするが、民主日本の建設のためには、政府も國民も一致協力して、速やかに軍國主義的の思想を清算して、舊來の封建的な遺習、遺制を拂拭する。これに格段の努力を盡さなければならぬことは、申すまでもないのでありますが、何と言つても、今石炭の増産が焦眉の急を告げておるのであります。民主化も必要であるが、それにも増して増産が第一、かように私は考えるのであります。先般私が商工大臣にお伺いしたのは、社會黨首班内閣である今日、現内閣が今日及びこの後にとられようとする政策につきましては、國民は非常な關心をもつておる。今日は生産ということが非常に急を要するときである。生産という問題を、社會主義方式でお考えになるか、資本主義方式でお考えになるか、その根本の商工大臣の理念をお尋ねしたのであります。私は今日分配という問題よりも、まず分配すべきものを生産すべき、この生産という問題に專念すべきときでないか、かように思いますがゆえに、根本のお考えとして、生産ということと、社會主義という問題につきまして、商工大臣の根本理念をお尋ねしたのであります。この間も申しますように、御承知のようにレーニンですら中途で悲鳴をあげて、手をあげて、そうして資本主義方式によらざるを得ぬと述懷して、いわゆるネツプという新經濟政策に後退いたしまして、そうしてまず生産の増強をはかるまでは資本主義方式によらなければならぬということで、そういう方式によつたのでありますが、先般そのお尋ねをいたしましたところが、商工大臣は、この法案は社會主義方式でもなければ、資本主義方式でもない、かようにお答えになつたのであります。私は先般のお答えに重ねてお尋ねいたすのであります。私の見ますところでは、この法案はむりに社會主義方式をつつこんでおられる、かように見ておるのであります。物が十分できて、その上での社會主義方式は私はぜひ必要である、かように思うのでありますが、今日はまずつくること、生産が第一である。分配理論であるというところの社會主義方式は、今日は少し遠慮しなければならないときである、まず資本主義方式によつて生産に專念すべきときである、かように私は思つておるのであります。こういう時期に、社會主義方式をむりに注ぎこまれるから變な法律ができるのだと思うのであります。先般數囘にわたりまして、西田委員からいろいろ質疑されて、政府當局からもお答えがあつたのでありますが、どうも割り切れない。まるでこの法律はぬえみたいな法律だと、私は今日さように思うのであります。その法案の説明としまして、理由の第二に、「行政と經營と勞働の三者が渾然一體となつて、増産第一主義を實行し得る民主的體制を整備することであります。」先ほども大臣の御説明のように、三味一體となつて増産第一主義を實行し得る民主的體制を整備するという説明が出ておるのであります。何遍讀んでも、これはしつくり私には理解ができない。増産第一主義を實行し得る民主的體制という言葉は、きわめて無理な言葉だと私は思うのであります。御説明にありますように「事業運營に關する重要事項に關しましては、すべて經營者の發案權を十分尊重いたしますとともに、政府意思の決定にあたりましては、當事者竝びに各方面の經驗者が直接間接にこれに參畫することにいたしまして、」と言われております。どうもこの法案の説明にならぬような氣がしてならぬ。「事業運營に關する重要事項に關しましては、すべて經營者の發案權を十分尊重いたしますとともに、」法文を讀んでみますと、ここの説明は經營者の發案權を十分抑制いたしますとともにと書かれなければ、私はこの法文の説明にならぬと思つております。政府意思の決定にあたつては、當事者竝びに各方面の經驗者が直接間接にこれに參畫する——むしろ當事者の意思決定にあたつては、各方面の無經驗者が直接間接にこれに容喙する、かように書かれないとこの法文の説明にならぬと思います。「さらに現場の勞働者も、また事案の決定實施につきまして、みずから關與することといたしまして、」云々と書いてありますが、これは文句がちよつと拔けておるのであります。「現場の勞働者も、また事案の決定實施につきまして、」の次にみずからその無經験、無知識を顧みずこれに介入、という文句が脱けているのではないかと思うのであります。「かくして決定された計畫は、現場の責任者を中心として、經營者も勞務者も相率いて一體となつて、これが完遂に邁進するようにいたしたいのであります。」と書いてありまするが、かくして決定された計畫は、現場の責任場の中心として、政府と勞働者が相率いて邪魔することとし、これが破壊に邁進することとす——こういうふうにでも書かれますと、この提案理由の説明はこの法文としつくり合つてくると、私はかようにみておるのであります。どうも立法の根本的の考え方に無理がある。いかにりつぱな立法技術をもつておる役所の方でも、なかなかこれはむずかしかろうと思いますが、要するによろいと衣を一緒に着ようとされるところに、無理があるのだと、かように私は思つております。去る九月三十日の岡田委員の質問に對する御説明の中に、増産を可能にすることの具體的な口頭説明が大臣からされたのであります。八項目あつたのでありますが、その第二には生産を確實にするということがありました。第七番目くらいでしたが、炭鑛業の民主化をはかるという御説明があつたのであります。生産を確實にすることが主であるか、民主化をはかることが主であるか、衣が主であるか、よろいが主であるか、これは私はつきりわからない。根本の理念において、氷炭相容れない今の連立内閣におきまして、三箇月を小田原評定をやられるのは無理もないことでありますが、この連立内閣のどさくさ粉れに好機逸すべからずとして、民主化を少しでもやつて外壕でも掘つておこうかというお考えがあるんじやないかと思うのでありますが、私はこの法案の目的が、民主化が主目的であつて、増産が從目的である。あるいは増産が主目的であつて民主化が從目的であるか、この點に關しまして、良心的なお答えを商工大臣から伺いたい。かように思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/15
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016・水谷長三郎
○水谷國務大臣 ただいま淵上さんからいろいろ詳細にわたりて御意見がありましたが、この法案に對しては増産が主目的か、それとも民主化が主目的か、良心的な答辯をしろというお言葉でありまするが、これは繰返し繰返し申し上げますように、この法案の主目的は、言までもなく増産でございます。増産をやつていくその一つの手段方法として、民主化という方法がとられるのでございまして、それはあくまでも手段でありまして、目的は増産にほかならないのでございます。
さらにまたこの民主化ということは、ひとり石炭企業ばかりではございません。敗戰日本におきましては、あらゆる方面において民主化をしなければならないことは、これはポツダム宣言によつて規制された點でございまして、單に炭鑛だけが民主化されるのではないのでございます。その點は十分に御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/16
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017・淵上房太郎
○淵上委員 ただいまの御説明をよく伺いまして、私はなお納得いかぬ點がありまするが、後日またさらに機を得てお尋ねいたしたいと思います。もう一つ大臣にお伺いしたいと思いますのは、國家の統制力という問題につきまして御所見を伺いたいのであります。先般西田委員からこの法案の八條その他につきましてお尋ねがあつたのであります。憲法違反でないかどうかという熱心なる質疑應答が繰返されたのでありまするが、この法案は私は根本において命令、禁止、抑制、罰則を骨子とした、いわゆる國家權力を過大に期待したところの法律だと、かように思つているのであります。かように私はこの法案を讀んでおります。この法律は、要するに今申しましたように命令、抑制、禁止、罰則——この間も私は質問の際に申し上げましたが、權力というものがはたしてほんとうに増産を期待し得るかどうかという問題であります。ロシヤのような人民を奴隷視いたしまして、パンと水とだけ與えて、まつたく自由というもりを與えない徹底した國家權力を發揮し得る國においてならいざ知らず、今日の日本におきまして、はたして國家權力というものが生産殊に増産を期待し得るかどうか、私はそれはきわめてむずかしいことであると思うのであります。生産はあくまでも人間の本能でありますところの營利の自由を認めて、その人間の創意、くふう、努力を促すという方式でなければ、とうてい生産の増加ということは期し得ない、かように私は思うのであります。勞務者でもそうでありますが、餘分に働いて、働けば働くだけの報酬がなければ増産はできないのであります。ただいたずらに權力の過大に依存していくことは、國家權力萬能主義であつたかつての軍國主義を思わせるのであります。東條暴政を思い出させるにすぎないのであります。私が商工大臣に特にお尋ねしたいのは、今日現在の日本の國家權力の強さ、國家權力のほんとうの力がどれくらいの力をもつておるかということをお尋ねしたいのであります。われわれの國家は、もちろん舊來の封建的一切の制度思想を拂拭、清算しつつ、民主國家の建設に著々歩武を進めつつありますけれども、現在民主化とか、あるいは民主主義ということにつきましては、一般の國民の理解あるいは認識というものは、まことに遺憾の點が多いのであります。民主主義といえば、亂暴狼藉、勝手氣ままなもののごとく、今日なお一般に解釋されている。國民の國家に對する責任感は、きわめて弱いのである。遵法精神は地を拂つているといつてもよいくらいである。同時にまた、國家の方面から見ましても、國家機構が順次に變革されており、行政運營のいき方が急激に變りつつありますために、國家の人民に對する統制力、權力というものは、きわめて弱いのであります。經濟統制違反のごとき、まつたく枚擧にいとまいくらいであります。やみ横行はごらんの通りであります。われわれはやみ値は知つているが、マル公の値段を知つている品目は一、二もあるかないかわからないという状態であります。どろぼうよけにセパードを二匹も飼つている家でも、どうしてあの家は配給食糧であつているのだろうと普通考えるのでありますが、一般の國民は何とかやつているだろう、かように評判しているような時世であります。ルートといい、値段といい、やみでなければ食つていけないのが、ほんとうの實情であります。たとえばタバコを見ましても、燒跡に葉タバコがりつぱに生育している。生産價格の小さい、家の中での施設タバコ製造所がたくさんできている。東京驛初め都内はもちろんですが、全國各地にやみタバコの立賣りがたくさんある。しかるにタバコ專賣法は今日嚴然として存しております。許可なくして耕作、製造、販賣はできないことになつておりますが、專賣法違反であげられたことは、新聞記事にもほとんど見ない。殊に凶惡犯罪の跳梁跋扈にいたしましては、ごらんの通りでありまして、この検擧の實績のごときは、まことに寥々たるものであります。電車の運轉臺に乘るなということも、國家權力では禁止することはできないので、「進駐軍の命により」という文句を使わなければらちがあかぬぐらいに、今日の日本の國家權力は非常に弱いものであります。國家の統制力というものは、非常に薄弱なものであるというなさけない國情に今日なり下つておるのであります。かりに國家權力がある程度強く行使できるといたしましても、經濟を国家權力が支配することは、これはまたきわめて困難な問題でありまして、これは戰爭中でも、軍部官僚がさんざん弱つておつたことは、ごらんの通り體験濟みである。石炭増産のために必要な資金、資材、勞務、輸送、食糧柱の各種の施策につきまして、今日まで國家や行政官廳が、國家權力、國家の統制力を十分に發揮できなかつたことが、出炭の一大隘路とされておることは、すでに御承知の通りであります。この法律によりまして、あるいは一年、一萬圓、三年、三萬圓なんかの嚴罰をもつて、あるいは報告を徴し、あるいは臨檢をやり、あるいは設備の新設、改良、新坑開発、坑道堀進を命じたり、協力を命ずるというような規定がありますが、はたしてこの法律を有效に施行するだけの國家の權力、統制力を今日日本の國家がもつておるかどうか。この法律の建前から申しまして、強力な國家權力を發揮し得るような建前で、この法律が立案されておるのでありますが、今日の日本の國力として、國家の現状としまして、それほど強い國家權力を發揮し得る現状にあるかどうかを、商工大臣にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/17
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018・水谷長三郎
○水谷國務大臣 私たちは戰爭時分の統制經濟のように、政府が經濟に優位いたしまして統制をしようというような考えは、毛頭ないのでございまして、あくまでも政治と經濟との調整を、どのようにやつていこうというところに、今後の統制經濟のあり方があるのではないかと思います。われわれはあくまでも國民の公僕といたしまして、國の最高機關である國會が決定する線、わくに沿うて進んでいかなくてはならぬと思います。われわれの申しまする點は、ただいま淵上さんは國家の統制力の限界いかんということでありますが、われわれは國家の統制力というよりも、國民の統制力というくらいに考えなくてはならないのではないかと思います。現在の民主日本におきましては、あくまで國民が主人公になりまして、國民の手によつて、國民の為になるように、もし必要ならば統制經濟を行うというのが、今日のあり方でございまして、國家が國民の上に立つて、國民を統制するという考えは、これは根本的に間違いであります。從つて國家の統制力いかんとか、あるいはその限界いかんということは、私らの立場から申しますならば、國民に現在の日本の經濟危機を深く認識していただいて、國民が自分の手で、現在の統制をどのように規律しなくてはならないかというところに問題があるのではないか、このように私らは解釋しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/18
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019・淵上房太郎
○淵上委員 統制力の限界を今伺つたのでありませんですが、はたして本法で期待するような嚴罰主義でもつて石炭の増産ができるかどうかを、私は聽いたのでありまして、現實の實情がこの法律を冷笑する時期の來らざらんことを、私は念願するのであります。
次に、さらにもう一つお伺いしたいことは、企業形態の問題であります。商工大臣は企業形態は變革しないと、繰返し申されておることも、私は聽いております。炭鑛企業の經營が、出資者の方から勞働者に移されたのだ。この法案の目的はそこにあるのだ。黒化だ、赤化だというようなことを一部には批評しております。私は社會主義であろうと、資本主義であろうと、そういうことを今論爭する必要もない。イデオロギーの論爭はもちろんやる必要はないのであります。ただ一トンの石炭でもよけいに出すことが今日の目標である。どうすれば増産ができるか。民主化よりまず増産を増産がすなわち唯一無二の目標でなければならぬ、かように思つておるのであります。しこうしてこの企業形態の問題につきましても、先般西田委員と繰返し質疑應答があつたのでありますが、これに關連して思い出しますことは、去る六月十日前後、これは私傳え聞いたのでありますが、商工大臣官邸において、業者の代表の方々と商工大臣とお會になつていろいろお話合になつたその中に、企業形態の變革ではないか、いやそうではないという論議が、一くさりあつたということを聞いておるのであります。水谷商工大臣は、企業形態の變革ではないと主張されておつたということでありますが、たまたま同席しておつた和田安本長官は、企業形態の變革であるということを言つたそうであります。この判斷はどうも安本長官の方が頭がいいのではないかと私は感じたのであります。この問題につきまして、ちよつと伺いたいのであります。去る六月二十三日の鑛工委員會に、石炭廳から非常に貴重な資料をお出しくだすつております。「最近における石炭生産の概況」という題目で、各項にわたり御説明をいただいておるのでありますが、最後に、「國家管理制度の審議について」という一項があるのであります。「石炭三千萬瓲計畫の達成は、直面する經濟危機を打開するための不可缺の要因である。このためには資金、資材、勞務、經理、價格等の生産條件についての隘路を打開しなければならないが、更にこれらの條件の根底にひそむ企業形態について根本的な對策を講ずる必要がある。然し乍ら現段階においては企業形態の變革によつて問題が解決すると見るのは觀念的である。生産諸要素がインフレの縮少生産の影響をうける限り、これらに面を的確に把握し歩一歩適切なる措置を講ずることなくして企業形態の急激な變更を行うならは過渡的な混亂によつて生産は激減するであろう。敍上の線に沿つて政府は目下炭鑛國家管理制度につき審議中であるが、まだ最後的結論に達していない。具體的計畫は可及的速かに發表する豫定である。」という御報告をいただいたのであります。石炭廳にはなかなか明敏なお役人がいられるので、私は感心いたしたのであります。この企業形態の問題につきましてお伺いしたいのでありますが在來の企業は、御承知のごとくに、出資者の集團である株主總會が經營の基礎であり、その選任による重役が經營の責任者になつている。社長が業務計畫を策定して業務を執行し、監査役が不當違法でないかを監査し、それを株主總會に報告して、株主總會はこれを承認して、株主總會の信頼と承認のもとに、社長が重役の補佐を得て責任をもつてこれの執行にあたる、これが今までの業務運營の方式であるのであります。ここにくふう努力の餘地があり、創意を生み出して業務の運營をはかるというようなことができておるのであります。しかるにこの法によりますれば、たとえば指定炭鑛の事業主は、毎四半期の詳細なる事業計畫の案を石炭局長にまず提出する。石炭局長は地方管理委員會に諮つて業務計畫案の作成上基礎となるべき事項をまずきめて、事業主及び炭鑛管理者に指示する。炭鑛管理者は計畫案をつくつて、事業主はその原案を基礎として業務計畫案を作成してまた局長に出す。この業務計畫案の作成にも、また提出につきましても生産協議會の議を經なければならぬ。議を經るということは、ここで變更をされることはもちろん豫想されなければならぬのですが、そういう制度であるから、多年炭鑛の實情もよく熟知しており、經營に堪能な事業主、炭鑛管理者が、最善の案と思つてつくつた案についても、管理委員會という直接には經營の經驗もない炭鑛の實情も知らぬ者やら、あるいは官吏たる局長の意見を指示して、その指示によつて案をつくらなければならない。その案をつくるにも、生産協議會などという經驗の淺い人たちに諮つて議を經なければならぬ。一々ここの拘束を受け變更を命ぜられる。こういうことで、はたして事業主あるいは炭鑛管理者が責任を負えるかどうか。また炭鑛管理者選任につきましても、生産協議會または從業者の賛成がなければならぬ。事業主が實にりつぱな人があり、この人は實に適當な人だと思つて選任しようとしても、從業者に普段よろしくやつていなければ生産協議會の賛成が得られない。從つて管理者を選任することはできないということになつております。まさしくこれは企業形態のはつきりした變革であるのであります。炭鑛管理委員會や生産協議會に、業務計畫を立てることにも、あるいは人事權にまで立入つて發言權を與え拘束をさせ變更を餘義なくさせるということに對して、世間では出資者の經營權を奪つて從業者あるいは勞務者の方にこれを引渡す制度であると言つているのでありますが、まさしく企業形態の變革だと思うのであります。これにつきまして商工大臣はなお企業形態の變革でないと思われているかどうか、もう一遍重ねて伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/19
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020・水谷長三郎
○水谷國務大臣 ただいま淵上さんからるる申されたのでありますが、この法案におきましては、勞務者の經營参加は認めておりますけれども、企業權の變更ということは、毫末も考えておりません。政府が去る六月十六日に發表いたしました經濟緊急對策におきましても、私企業において責任のとれない場合においては、國家が直接責任をとるが、しかし企業形態は斷じて變更しないということをうたつておるのでありまして、この法案はまさにその線に副うてつくられたものでございます。ただ經營協議會等におきまして、從來法的に確認されておりませんでした勞務者の經營参加が、これによつて認められておりますけれども、それはあくまでも勞務者の經營参加でございまして、これによつて企業の形態は毫末も變更を受けないものである、このようにわれわれは了解し、かつそのように確信している次第でございますので、何とぞその點は御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/20
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021・淵上房太郎
○淵上委員 その點は先般來度々論議されたのでありまするから、何遍伺いましても、ただいまのような御答辯だろうと思いますので、一應このままにして次に進みたいと思います。
炭鑛の特殊性と言いますか、そのことについて大臣の御所見を伺いたいと思います。先般の公聽會で、大臣は惜しいことにお聽きにならなかつたのでありますが、東大教授の青山博士は、炭鑛にはそれぞれ特殊性がある、畫一的には見ることはできない、そこに苦心があるのだということを強調いたしておつたのであります。御承知のごとくに、炭鑛はその自然的條件にもよりまして、經營技術に非常に苦心がいるのであります。また勞務方向その他の面につきましても、いろいろな問題が包藏されておる危險もこの中に潜在しておるのであります。わが國の炭鑛は特にまた特殊な事情にある火山脈を主軸とした御承知のような地帶なのでありますので、地殼の變動による斷層が非常に多い。從つてまた埋藏量も千差萬別でありまして、炭層にも傾斜のきわめてひどいところがある。あるいは地層の亂れのために落盤の危險も相當にある。あるいは地下湧水の非常にひどいところもある。あるいはガス發生のひどいところもある。いろいろ惡條件が錯綜しておるのであります。この自然的惡條件の多いことが、日本の炭鑛業の科學化、機械化に多大の制約を與えておるのではないかと思うのであります。また同時に高度の入力依存を餘儀なくせしめておると思うのであります。以上のような炭鑛業の自然的な諸條件の必然的な結果としまして、またな諸條件の必然的な結果としまして、またこの炭鑛の經營ということにつきましては、きわめてここに苦心があるのであります。經營的の技能がここに非常に重要視されなければならぬということになるのであります。從いましてその經驗、その苦心というものが、その山というものに密接不可分の關係が結ばれてまいるものと私は認めております。經營的の手腕も、最高の採掘技術も、作業技能も、よその山に行つては全然役に立たない、能力が發揮され得ないほど特殊化されておるという面も相當あるのであります。この點は先般青山博士も強調しておつたのでありますが、この高度の人力依存とか、經營の苦心、これは私はよその國の炭鑛と日本の炭鑛は大分事情が違うと思つておるのであります。從いまして、山では必然牧に事業主、經營者層と從業者、職員層との間に靄々たる切つても切れない人的つながりができておるのであります。かくのごとく自然的特殊條件は、わが國炭鑛の宿命的條件であり、外國には見られない特殊の人的つながりを、日本の炭鑛はもつておるのであります。このために炭鑛關係者が、その炭鑛と運命をともにして、一生をその山に捧げておるという事例は、實に多いのであります。これは外國の炭鑛と大分事情が違つておると思うのであります。こういう特殊的な條件を基盤としたわが日本の炭鑛につきまして、それぞれ炭鑛ごとの特殊の業務計畫を立てなければならぬのでありますが、商工省や石炭局、所在地ごとにおられるところの特殊事情を知らない役人や炭鑛委員の人たちが、かれこれ容喙したり、變更を命じたりすることが、はたしてその山の増産のためになるかならぬか、もちろん増産の妨げになると私は思います。この法文によりましても、國家管理の有する方式というのは、本質的には一元性、總合性、畫一性をもつておるのであります。こういう法律で、はたして特殊の事情をおのおのの山にもつておる炭鑛につきまして、増産が期待し得るかどうか、言葉をかえて申しますならば、わが國の炭鑛は火山脈を主軸とする地帶を原因としまして、それぞれ特殊事情がある、それに對してこういう畫一的な管理法というもので増産が期待し得るかどうか、この點に關しまして、商工大臣はどういうふうにお考えになりますか、お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/21
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022・水谷長三郎
○水谷國務大臣 炭鑛に特殊性があるということは、青山博士のお言葉を待つまでもなく、明々白々の事實であろうと思います。そこでこのたびの法案によりますれば、その山の特殊性に最も精通し、しかも勞資双方から信望のあるような人が炭鑛管理者となつて、そしてその山で働いているところの勞資双方から委員を出して、生産協議會をつくつて、炭鑛管理者と生産協議會と兩々相まつてその山の特殊性に應じた生産をやつていくというところに、この法案のねらいがあるのでございます。從つて炭鑛に特殊性があるということであればあるほど、この法案というものは、その炭鑛の特殊性を十分認識した上におきまして、現場管理者、さらにまた生産協議會、さらにまた企業の責任というものを規定したのでございまして、これらの規定をよく讀んでいただきますならば、それはあくまでも炭鑛の特殊性という認識の上に立つて、こういうような規定が生れたというぐあいにお考えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/22
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023・淵上房太郎
○淵上委員 次は官廳事務の問題であります。石炭増産の隘路を打開するというためには、今日國家管理をやることは有害無益であると私は考えるのでありまして、むしろ官廳事務の刷新をやることが増産のために最も妥當適切なる法策ではないかと考えているのであります。石炭官廳を初め、地方商工局とか、地方鐵道局、あるいは特殊資材關係の出先官廳に至るまで、その事務の敏速な協力化によりまして、資材、資金、輸送、食糧各部面におきまして、強力な措置を講ずることによつて、石炭の増産は期し得ると思つているのであります。かつてある商工局の課長がこれは、石炭廳のできたときですが、石炭廳になつて石炭行政の關係するところが非常に複雑になり、石炭廳の人間が各關係局課長と折衝しても、石炭關係の業者が考えるように簡單にいかない、たとえば食糧問題で農林省と折衝しても、それができない。資材の面にしても、給與の面にしても、石炭廳においてできるものは一つもない。日本に行政機構は非常に複雑しておいて、いくらがんばつても、これが政府の一貫した方針として取上げられるまでには相當の時日を要する。ここに日本の行政機構の缺陥があるのではないかというような述懷をしたことがあるのであります。この課長の述懷は、要するに増産の隘路は企業形態の内部のみにあるのではなくして、行政機構の内部にも潛在しているのだということを、はつきり告白しているのであります。私もまさにその通りだと思うのであります。一たび提案されましたるこの法案を見まするに、民間人が先ほどもお話のように、役所にぽかつとはいつてきて、どれだけの能率が上るか、私はこれを疑うのであります。官廳事務の運營はよしあしは別として、特殊のやり方をやつているのであります。結局在來の官廳ではそれはその人の地位の高い低いにかかわらず、これにしてやられるのでありまして、有能優秀なる民間人は、なかなか簡單に出てこない。役人にはならぬと私は思うのであります。今ごろ簡單に役人になるような有能な人はおらぬのであります。たまたまくる人はどういう人かといえば、一級事務官とかいうような役人になるのが一世一代の誇りのつもりで來るようなやくざ者しか來ない、かように私は考えておるのでありますが、炭鑛をかりに國家管理にしましても、今までの官僚制度というものを、すつかりやりかえなければできぬことであるし、先ほど申しましたように、國家管理にすることは、むしろ有害無益だ。現在の官廳の内部の機構を刷新していくことこそ、増産のために最も必要なことだ、かように思うのであります。國家管理は増産の方策として、ただ結局においては官僚濁善、不能率に終ることがないかということを心配しておるのであります。御承知のように、今日われわれ一般の國民が見ておるのは、役人というものは現實な知識に缺けておる、なわ張り争いをする、責任逃れをやる、盡一的形式主義に流れる。しかも能率が低い、あるいは立身出世主義に堕しておる、こういうふうに見ておる。こういうふうなことは、國民ひとしく異口同音に申しておる事柄でおるのであります。たとえば二十二年度の資材の問題につきましても、第一・四半期の切符が七月になつてようやく来ておる。第二・四半期の資材の切符が九月末から今ごろになつてようやく動いておるというような實情であるのであります。これが現在の官僚のやり方だ。きわめて低能率である。こういうことで、今までやつてきている。私のこの際むしろ現在の官僚機構を刷新強化して、強力適切なる措置を講ずることをやることが増産の目的になる。國家管理なんかやらぬで、むしろ官僚の内部の機能の刷新強化ということがまず有数であり、これ以外に方法はない、かようにも考えておるのでありますが、大臣はどういうふうにお考えになつておりますか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/23
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024・水谷長三郎
○水谷國務大臣 ただいま國家管理をやらなくとも、官僚の機構の刷新をやる方がいいのではないかという御意見のように拜聽をいたしましたが、私はこの二つは別であろうと思います。官僚機構と一口に申し上げましても、戰爭前と後とは違いまして、さらにまた今度公務員法ができまして、官僚の機構、ならびに精神というものは、根本的に變ることになるのでございます。従つて十三年あるいは十五年前の官僚機構あるいは官僚の立場、官僚というようなものを土臺にされることには、相常私も異議があるのではないかと思います。われわれは一方におきまして、こういうぐあいに、官僚機構の民主化を徹底さすとともに、しかもその民主化された官僚機構のもとに行われる國家管理の機構というものは、従來のような官僚組織機構のもとにおける國家管理とは、本質的に異なるものである、このように御承知を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/24
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025・淵上房太郎
○淵上委員 次にさらにお伺いいたしまするが、制度機構の變革というものは、なかなかその新制度、新機構が軌道に乘るまでには、相當期間が必要であるということは、もちろん申すまでもないことであります。このたびかりにこの御提案のこれが成立いたしまして、國家管理が實施されるということになりますと、この間いよいよこれが軌道に乘るまでには、半年、一年は—少くとも半年あるいは八箇月、九箇月はかかるだろう、かように思うのであります。この間の空白時代、この間にいたずらに混亂を來し、動揺を來して、増産に對する國家の措置というものに、非常に弱いところが出てくるのではないかと思うのであります。この空白時代を、なお減量を來さないようにするがためにはどうしたらよいか、この點も、提案される以上は、一應お考えになつておこることだと思いますが。大臣はいかようにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/25
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026・水谷長三郎
○水谷國務大臣 機構の改革に伴い時間のがれをどうするかということは、これは石炭増産の責任を負う者の立場からは、十分に檢討せねばなりませんので、私らもこのいわゆる國家管理法案を提出するにあたつて、その時間のずれをば、どのようにするかということを、非常に苦慮した次第でございます。從いてそれらの點を考えまして、この機構の變革に伴う減産というものは、絶對にあつてはならないという觀點に立ちまして、今度のような法案の内容をつくつたような次第であります。さいわいこの國家管理法案を中心にして贊否兩論が行わてれおる中におきましても、石炭の生産増強が行われておる次第でございまして、一たび國家が最終的に意思を決定してくれましたその暁におきましては、贊成反對者ともに、欣然としてこの法律に協力してくださるものと確信しておりますがゆえに、そういう時間のずれの減産というものは、絶對ないものであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/26
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027・淵上房太郎
○淵上委員 非常に心強い御答辯を得ましたが、はたしてそういうふうに行けば結構でありますけれども、私はこの間總理大臣が出席された時に質問いたしましたが、國家管理法をやるということ自體が、すでに減産の傾向を來しつつおる。從つてこの減産の責任は總理大臣がお負いになるかという質問をしたのであります。しかるにお聴きのように、減産はしないという御答辯があつたのであります。ただいま商工大臣は、この時間的のずれに對しては十分考えておる。そういう減産を來さないという御答辯があつたのでありまするが、先般の總理大臣の答辯に對して、私は商工大臣にお伺いいたしますが、何か總理大臣にうその報告をされておるのではないかと思います。まず北海道の七月の数字をあげますが、計畫は六十二萬五千トンである。實績は六十萬九千三百二十トンでありまして、この遂行率は九七%であります。八月は五十九萬二千トンの豫定に對しまして、實績は五十六萬二千九百トン、九五・一%である。九月は六十七萬トンの豫定に對して六十萬八千四百トン、九〇・%である。七月の九七・五%から八月は九五・一%になり、九月に九〇・八%となつて、まさに低減しております。東北の豫定はどうかと申しますると、七月が十六萬一千トンに對して十七萬一百五百四十七トンこの遂行率は一〇六・五%でありますが、八月にはいつて十五萬七千トンの豫定のところ、十四萬六千七百トン、その遂行率は九二・三%であります。九月は十八萬二千トンに對して十六萬四千九百トン、九〇・六%でありまして、七月の一〇六・五%から八月に九二・三%に下り、九月に九〇・六%に下つておるのであります。私は今商工大臣に伺つたのは、この國管法施行による期間的のずれ、その期間のブランクの時代を減産をしないように、増産を確保する心構えがあるかということを伺つたのであります。さいわいにしてそういう心配はないという答辯を得まして、心強く思つているのであります。私はそうでありたいと衷心念願いたしております。ただ先ほど申しましたように、國管法をやるということ自體でも、すでに北海道、東北の實績がはつきり證明しております。減産を來している。まして機構が變る。おつしやるようにさいわいにこの法案が成立して國管が行われるとしますならば、さらに私は現實的に混迷動搖を來して、減産を來すのではないかと思つているのであります。この間總理大臣の減産はしていないという言明に對しまして、私は今北海道と東北の遂行率をあげましたが、商工大臣はいかにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/27
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028・水谷長三郎
○水谷國務大臣 ただいま成績の悪い地方だけをおあげになりまして、九州あるいは山口の方をおあげにならなかつたのですが。現にわれわれがお互いに神聖なる國會において七月初めて一〇〇%突破いたしまして、石炭増産の感謝決議をしたことは、淵上さんも御存じであろうと思つているのであります。七月八月は一〇〇%突破しましたが、九月はやや下まわつておりまして、國管が較ら論議されておらない終戰以來の石炭増産の足どりに比べますれば、國管が論議されましてから七月以後、石炭の増産は非常に上まわつている。これは何人も動かすことができない事實でありますので、さよう御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/28
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029・淵上房太郎
○淵上委員 七月以來上まわつているというお話であります。これは数字を見ればはつきりわかりますが、なお北海道の減産の點につきましては、先般西田委員も御質問があつて御答辯があつたのでありますが、なお後刻私もこれに對して関連してお尋ねいたしますが、政府委員の方にここに数件お尋ねいたし、しばらく大臣の御休養をお願いいたします。
この非常増産對策の點につきまして、先般一、二お伺いしたのでありますが、重ねてお尋ねする點もあります。まず要領の第一の重點炭鑛ということは、法案にいう指定炭鑛のことを指定されるのであるか、あるいは十萬トン以上の炭鑛のことであるか、またはほかに何らかの標準があるのか、どういう炭鑛を重點炭鑛と言われるのであるか。政府委員から御説明を願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/29
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030・吉田悌二郎
○吉田政府委員 ここにあります重點炭鑛は國家管理法の指定炭鑛とは違いまして、この増産對策に協力して増産を大いにやる、こういう炭鑛、これを考えております。増産對策要綱にあるような、たとえば作業時間を延長するとか、能率を向上していこうということを進んでやつてくれるところの炭鑛、これを重點炭鑛と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/30
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031・淵上房太郎
○淵上委員 要綱にあるようなことを進んでやつてくれる炭鑛と言われるのでありますが、どことどこでありますか、ひとつ炭鑛の名をあげられたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/31
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032・吉田悌二郎
○吉田政府委員 これは相手のあることでございまして、勞働時間の延長その他の方式に、經營者なり勞働組合なりが進んでこういうことをきめてくれて、そうして増産をやつていこう、こういう炭鑛でございます。先般關係の經營者及び勞働組合代表を總理官邸に呼びまして、それらのことを一應提案しております。今後現場につきまして、いろいろの方と御折衝をいたしました上で、この對策を實行してもらうところの炭鑛、こういうものを指すわけでありますが、今豫定をいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/32
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033・淵上房太郎
○淵上委員 政府の御方針に協力してくれる炭鑛が重點炭鑛、さように在ずるのでありますが、さように一應了承いたします。しからばこの重點炭鑛に優先的に資材資金の集中配當をやる。協力しない所にはやらぬという意味であるかどうかをお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/33
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034・吉田悌二郎
○吉田政府委員 協力しない所にやらぬという趣旨ではございませんので、ここに特にそういう炭鑛に對しましては、資材資金の内容がよくわかつてまいりますので、それらの中で、十分の考慮を拂つていきたい、こういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/34
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035・淵上房太郎
○淵上委員 資材の問題はあとでさらに質疑いたしますが、お答えの方はよくわかりました。職場轉換等の強力な推進により、これは先般もお尋ねしたのでありますが、一體増員の必要があるのじやないかと、私思うのであります。はつきり増員されたらどうか、坑内夫をいくらかしらぬ、十萬人なら十萬人、坑外夫を三萬人なら三萬人増員することが、石炭の増産に非常に必要であり、そのために食糧の手配が要るということなら、國民はさらに犠牲を覺悟しても、日本再建のために一生懸命になるはずであります。そういう食糧資材の問題、たとえば食糧の點を心配して、必要な増産を遠慮するという臆病なことでは、どうしても石炭が出いこぬのであります。私は強力な推進ということは、何が強力であるか、どういうようにお考えになつて、どういうようなやり方が強力な推進協力であるか、それがわからぬのですが、これはどういう意味でありますか、ひとつ政府の御方針と意味を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/35
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036・吉田悌二郎
○吉田政府委員 言葉は必ずしも適當でないかもしれませんが、要するにこの要領の一の二にありますように、作業時間を三交代を行うといたしますると、おつしやる通り勞働者を増すのが、一番簡單な方法でございます。從いまして、この制度を實行いたしますのには、ある程度増員をすることは必要だろうと考えます。但し御承知のように、今日の炭鑛住宅というものは、非常に逼迫いたしております。本年四月頃、三十九萬人ほどの勞働者の數が今日は四十三萬人になつております。すでに三萬人以上の増加がございまして、從いまして炭鑛住宅は非常に逼迫をいたしております。從いまして、この際まて急激に増加いたしこれらを收容することも實際問題といたしましては困難でございます。そこでとりあえずとして、坑外勞働者の數が、たびたび問題になりますように、戰爭中に比べまして、割合に多くなつておりますので、このものを一部坑内に振かえることをやりたい。從いまして、それらに對しましては、やはりこの要綱にございますように、給與の問題等において、坑内のごとくに優遇をいたすことによりまして、そうして坑内夫に轉換することをまずいたす。そうして足らぬものを、逐次炭鑛住宅の方とにらみ合わせまして、さらに坑内夫の數の増加をはかる、こういうように進めていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/36
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037・淵上房太郎
○淵上委員 どうも滿足ができませんが、さらに次に移ります。第二項の問題でありますが、命令系統を明確にして、就業規則を勞働協約によつて規定せしめる。これは大體どういうふうになさるのか、やはり前項のように實施するように要望するというのでありましようか、具體的にはどういう方法で進歩させるのであるか、その方法をお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/37
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038・吉田悌二郎
○吉田政府委員 ただいまもお尋ねがありましたように、職場における規律というものが、今日必ずしも十分でございませんので、就業規則の準則をつくりまして、それによつて各炭鑛につきまして勞働協約をつくつていただきまして、規律の嚴正をはかる。これはただいま勞働省の方で一案をつくつておられますが、そういうものができましたならば、各炭鑛でそれを採用することにして、協議會等を開いてもらいたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/38
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039・淵上房太郎
○淵上委員 準則をつくつてそれにならわしめるという御趣旨のように聽きました。先ほども申しますように、政府が準則を出してこれでやつてくれと要望したくらいで、大體所期の目的が達成し得ると商工省ではお考えになつておるのかどうか。もしそうであるとすると、きわめて頼りないものであると感ぜざるを得ないのであります。この要綱につきましても、大體この間も聽いたのでありますけれども、いつまで待つのだ。要望する、促進するとこちらばかり頑張つてそのつもりでおつても、相手が經營協議會でこれを取上げなければ、一體どうなるのだ。最後にはもちろん法的措置をとることになつておりますが、拱手傍觀とまでは言えないかもしらぬが、少し勞働功勢を恐れ過ぎているのではないかという感じをもつのであります。
さらに二、三附け加えてついでに伺いますが、第三項の勞働組合の自主性の確立竝びにその民主的運營というのは一體どういうことであるかわからぬのですが、どういう意味であるか御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/39
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040・水谷長三郎
○水谷國務大臣 ただいまの淵上さんの御質問は勞働組合の健全化と、勞働組合の自主性の確立と、民主的運營によりその健全強化を促進するというのはどういう意味かというお尋ねだと思うのであります。これは一部の行き過ぎた勞働組合の方からは、勞働組合の健全化というのは、これは勞働組合を侮辱するものだ、けしからぬというようなおしかりをこうむつたことがあります。この間の會合におきましても、商工大臣は過去の勞働運動の體驗者として、ざつくばらんに勞働組合の健全化ということを話せと言われましたので、私もざつくばらんに言つたのでありますが、今日本におきまして勞働組合には大體二つの流れがあると思うのであります。それは勞働者の生活保障を生産増強と一緒にやつていこうという考え方と、いま一つは、自分らの生活が保障されなければ、生産増強に協力をしないという考え方と二通りあるのであつて、われわれの考え方から申しますれば、日本のこの經濟の危機の現状に即して、勞働組合の健全化ということは、結局勞働者の生活保障と生産増強と一緒にやつていこうというような考え方が、勞働組合の健全なるものであるというぐあいにわれわれは考えております。さらにまた勞働組合の自主性の確立と民主的運營ということになりますが、これまで行き過ぎた勞働組合におきましては、ごく少數のいわゆる指導者によりまして、勞働組合員全般の意向をあまり考えずに、勞働組合の運營をやつていつたというような傾向があつたのでございますが、それらの點を改めまして、あくまでも勞働組合の自主性と、勞働組合員の多數の意思によつて、勞働組合の民主的運營をやつていつて、健全な勞働組合の發展をはかろうというように御了解願えば結構であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/40
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041・淵上房太郎
○淵上委員 さすが大臣であります。大體御趣旨はわかりました。私もやはり生活保障が問題であると思つておるのであります。この點につきましては、後ほどまた關連してお伺いすることがありますが、次に進みまして、第五項の炭鑛生産設備の緊急補修整備の項に「特に生産設備の主幹をなす運搬設備を緊急に補修増強するための資金資材の優先的取扱を更に一段と強化す」と實に名文が書いてございますが、この運搬設備の補修増強と申しますことは、要するに炭車とコンベアベルト、そのほかにどういうものがあるかお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/41
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042・吉田悌二郎
○吉田政府委員 ここに書いてありますのは、ただいま仰せの通りの炭車を第一にいたしまして、それに機械化しているところではコンベアベルトとレール、そういうものを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/42
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043・淵上房太郎
○淵上委員 まことに緊急必要なもので、早く補修増強をしなければならぬのであります。その點は同感でありますが、今年度の第一・四半期の期間におきましては、御承知のように、資材が非常によくはいつておる。二十一年度の第四・四半期がごらんのように非常によくはいつた期でありまして、そのずれの關係で相當はいつてきた時期でありますにもかかわらず、鋼材の所要量をかりに見ますと、所要量が二萬五千トンであつて、實際の入手量は一萬八千五百トンにすぎない七四%であります。コンベアベルトについて調べてみますのに、所要量は二百十六トンであり、入手量が百十五トンで五三%にすぎないのであります。そういう状況であります。資材のことは、さらにあとで伺いますが、一體第二、第三・四半期、及び今度、この次、この下期の資材につきまして、炭車、コンベアベルト、レールが、どれくらいはいるのか、私はきわめて心細い感じをもつておるのであります。文章としては急緊に補修増強する、優先的取扱いをする、一段と強化すると言われておりますが、これは實際成算があつて、商工省當局ではお考えになつておることでありますか、この點を念のために伺つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/43
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044・吉田悌二郎
○吉田政府委員 この要綱をつくりましてから、ただいまそういう點の實施についての調べをいたしております。要するに、物資の需給計畫の中におきまするわくのきめ方の問題でございます。從いまして、安定本部等におきまして、これらの計畫をつくるにあたりましては、特にそういう資材の炭鑛向けの割當につきまして考慮したい、こういう方針をきめたわけでございまして、おそらく第四・四半期からできるだけのことが考えられることと思います。ただゴムの輸入は非常に苦しゆうございますので、これにつきましても、他産業との關係がありますから、どの程度まいるかは、ただいまわかりませんが、この第四・四半期の計畫におきましては、できるだけこれを反映していきたい。こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/44
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045・淵上房太郎
○淵上委員 第四・四半期のことを今ごろから考えられるのは當然であります。先ほどから申しますように、第一・四半期の切符がクーポン制になつて、初めて今度第一・四半期から七月になつてクーポンが動いておる。第二・四半期の分が九月末からこのごろになつて動いておるような状態にあるのであります。お話のように第四・四半期の分を今から一生懸命やらなければならぬが、現在の第三・四半期の準備をしなれけばならぬ。これについての何らの御説明がないのでありますが、これらのごときは、よほどしつかりとおやりにならぬと、ただ方針だけをお示しになつても、これは空文に終るにきまつておるのであります。この機會に特に警告を申し上げておいて、後ほどさらに資材の問題をお伺いします。
次に新炭層開發につきまして、所要の機構を整備する。そうして産業復興公團に必要があればやらせるというのですが、何人くらい動員をされるお見込であるか。それをこの機會に伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/45
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046・吉田悌二郎
○吉田政府委員 新炭坑開發のためには、ただいま豫算案を作成中でございまするが、大體考え方といたしまして、從來は石炭公團、産業公團というもので、この仕事をやつていきたいと考えておつたのでありますが、前會來たびたびお話が出たと思いまするが、公團を設置することを取やめることによりまして、石炭廳みずから新炭坑の關發についての事務を行うことにいたしまして、一面その實施の事務につきましては、産業復興公團を使う。こういうことにきまつたわけでございます。所要の人員も相當に整備をするわけでございまして、石炭廳に新しく開發局というものを設けまして、とりあえず新炭層、新炭坑の開發調査をいたします。たがいま炭田の調査をいたしておりますが、これをさらに企業化するための開發調査を實施したいと考えております。そうしてその結果、ある程度の工事に著手することになります場合においては、とりあえず産業復興公團を使つていきたい。こう考えておるわけでございまして、産業復興公團には、石炭部というものをこのたび新設をすることにいたしております。所要の人員等は、ただいま豫算の面が確定しておりませんので、數字として申し上げる域に達しておりませんが、もちろんこれは後ほど豫算案として今議會に提出いたす豫定であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/46
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047・淵上房太郎
○淵上委員 この八の2に「速かに從業員の歸趨を明瞭ならしめ、人心の安定を圖ると共に、經營方針の見透しを明確ならしめるため、石炭鑛業に關する財閥解體の實體を明確にする。」とありますが、速やかにやせないといけないということは、政府自身もお認めになつておるのであります。いけないというのは、要するに石炭の増産を阻害するというおそれがあるからでありましようが、それはよしとして、今北海道方面の財閥炭鑛の幹部級の人たちは、聞くところによりますれば、この國管案が成立すれば早く東京に歸れるというような考えをもつておる人が、相當多いやに聞くのであります。それゆえにこそ、この一項が加えてあるのだろうと、私は想像するのでありますが、これは一體いつごろはつきりなつて、人心安定はいつごろできるか、このお見透しを、大臣にひとつお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/47
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048・水谷長三郎
○水谷國務大臣 これは何月何日、あるいは何月と正確には申されませんが、しかし日本政府といたしましては、できるだけ早くこういう見透しができるようにしたいというので、たえず努力しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/48
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049・淵上房太郎
○淵上委員 この北海道問題は、さらに後で關連してお伺いしますが、ほんとうにお示しのように、速やかに方針を確立される必要があると、私どもは思つておるのであります。要するにこの實施要綱を通覧して考えますことは、先ほど來述べますように、ただ實施する、實行する、強力に推進するというような方針を示されておるのでありまするが、基本法針に述べられておりますように、ほんとうに責任をもつて改善實行する、あるいはその他一、二、三、四にわたつて書いてありますが、はたしてこれは確信があるのかどうか。要領の各項にわたつて芸畫されておる各事項を、ただ漫然と各炭鑛の經營協議會等で取上げるのを待つておられるというような状態にあるとしか見えぬのであります。先般總理大臣にもお伺いしたのでありますが、最後に書いてありますように、必要があれば法的措置をとると言われるのですが、さいわいに會期もこのたび延長されたのであります。この法的措置というのは、この會期中にとられるのか、總理大臣のお答えははなはだ茫洋としてはつきりわからない。あるいはこは會期中には法的措置をとらずに、しばらく勞働組合關係の顔色を見ておつて、次の會期、すなわち結局二月か三月に法的措置をとる、半年後に法的措置をとるということになるのか、私は非常増産對策という非常というのは、一體どういう意味だかわからぬのでありますが、大臣は一體どういうお見透しでいられるのか、ひとつ伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/49
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050・水谷長三郎
○水谷國務大臣 これはこの文字にもはつきりと書いてありますように、できるならばあくまで經營者及び勞働者の自主的協力に待つて推進しようとするものであります。しかしながら、政府といたしましては、ただ漫然と手をこまねいて自主的協力にまつというのではないのでございまして、あの手この手の方法を、政府は政府の立場として打ちたいのでありまするが、ここにも書いてありますように、なお所期の成果をあげ得ない場合においては、必要の法的措置を講ずる決意であるということでございまして、なお所期の成果をあげ得ない場合というのには、相當の期間を必要といたします。政府といたしましては、あくまでも經營者及び勞働者の自主的協力によつてこれをやつていこうと考えておりますが、しかし若しそれが不幸にしてうまくいかなかつた場合の第二段として必要な法的措置を考えておる次第でございますがゆえに、今度の議會におきまして、この法的措置をば、皆様方と御相談するというようなことは、考えておらない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/50
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051・淵上房太郎
○淵上委員 しからばお伺いいたしまするが、來るべき通常會におきまして、實際問題としては二月に提案され、あるいは審議を了するのは三月になるかもしれませんから、今から半年後になります。増炭非常對策の非常とというのは、先ほども申しますように、何の意味で非常と書かれたのか知りませんが、文句はどうでもよいが、現在の出炭を待つために、強力なる、しかも敏速なる手段を講ぜられなければ、とうていこのままではいかぬと、私は思つておるのであります。しかるに大臣のお話のごとく、所期の効果をあげ得ない場合に、非常な必要な法的措置をとると言われるが、その法的措置は、もし今會期中には間に合わぬということであれば、この五箇月、六箇月間の石炭の増産は、一體どうされるのか、繰返し申しますが、私があとで質問したい資材問題につきましては、實に悲觀すべき状態にあるのであります。ただ圓滿な協力ができるまでは、じつと指をくわえて待つておる、それができなければ、來議會になつて法的措置をとるということですが、この後の五、六箇月のブランク期間の石炭の増産は、一體政府はどう考えておるか、そういうことで大體よいのであるかどうか。私は非常に心配にたえぬのでありますが、もう一遍この點に關する大臣の御所見を伺つておきたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/51
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052・水谷長三郎
○水谷國務大臣 私は經營者の方も勞働者の方も、このいわゆる非常増産對策要綱は、これまで政府でまた關係者でやつておつたことでございますが、このたびのマツカーサー元帥が片山總理にあてられた書翰にこたえて、從來のやつてきたことを明確化したものでございます。これはぜひやらねばならない問題でございます。さいわい經營者竝びに勞働者の方々が、現在の日本の經濟危機及びこの段階における石炭増産の重要性というものは、十分認識してくださるものであると固く信じておりますがゆえに、われわれはすぐ最初から法的措置を講じなくても、經營者竝びに勞働者の自主的協力によつて、これらの目的を達することができるとわれわれは固く信じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/52
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053・淵上房太郎
○淵上委員 必ず所期の目的を達成し得ると、固く商工大臣は信じておられるということを伺つたのでありまするが、要するに時期の問題であります。そういうことで、じつと待つていてよいのかどうか、この對策を發表せられまして、すでに半月になるのであります。先ほどもお話のように、あの手この手で進めておられるだらうと思うのでありますが、こういうことでよいのかどうか、きわめて私は憂慮にたえぬのであります。マツカーサー元帥の書翰の話も出ましたが、この對策要綱を推進されるために、もう少し熱をもつて、それこそほんとうに國家權力を發揮するだけの氣魄をもつて進んでいただきたい、かように私はお願いしたいのであります。
マツカーサー元帥の書翰のお話が出きましたが、これに關しまして、ひとつお伺いしたいのであります。この元帥の書翰の原文を見ますと、あの公にされた翻譯というものは、なかなか巧妙な譯がされてあるのであります。この問題は質問しませんが、最後の項に、これは私は緊急質問として九月三十日の日でしたかお尋ねしたのでありますが、何らのお答えに接し得なかつたのであります。増産という事業を故意に妨害する者に對する嚴重なる訴追方法の問題であります。たしか三日頃田委員から質問ありましたが、經營者の生産サボという問題が取上げられたのであります。私はそれと同時に、また勞働者側の産生サボにつきまして、この書翰にいう故意の妨害ということを、政府はどういうようにお考えになるかということにつきまして、お尋ねしたいのであります。この法律案を見ますと、事業主、經營者あるいは關連産業の人たちに對しては、きわめて嚴重なる罰則があるのでありますが、先般もたれか申されましたが、從業者、勞務者側に對する處罰の規定は、あまり見當らぬようであります。マツカーサー元帥の書翰によるところのこの故意の妨害につきましては、一體政府はどういうふうにお考えになつているかという問題をお伺いしたいのであります。
これに關連しまして、われわれ國民として平素考えるのでありますが、勞働組合というものに對して、私はたしかに今日猛省を要望しなければならぬ時期だと、かように思つておるのであります。古い話でありますが去る二月一日のゼネストのときに、マツカーサー元帥の聲明が出まして、續いて故アチソン議長の報告があつて、そのときに、日本の健全なる民主主義化の將來に期待を寄せ、日本人が最善に努力をつくすならば、援助に手をさし伸べる用意があるということを、はつきり申しておるのであります。そのときの一般國民の意向としましては、勞働組合の反省を要望してやまなかつたのであります。もう少し國家のために勞働組合というものが眞劍なる反省をしなけりばならぬということが、當時の國家の要望であつたのであります。ある新關の社設はこういうことを申しております。日本の勞働組合運動は、今こそ過去の誤つた方針を捨て去り、正しい軌道に復歸すべきである。過去の運動で示された共通的な誤り、また最大の誤り、そしてアメリカ國民に失望を與えたものは次の點である。その一つは勞働組合が政府目的を直接目標としてストライキのごとき手段に訴えることである。これは勞働運動の完全な脱線行為である。いわゆるゼネストは、革命主義者の理論では、暴力による革命實現の手段として規定されている。これは眞の民主主義的勞組としては議論の餘地のない誤つた行動である。訪日中の世界勞連アメリカ代表タウセンド氏も、アメリカでは産別、總同盟の二大組合は決して政治的目標を直接目的としていない、と語つている。第二の重要な點は、組合員の大多數がかもとされ、一部の野心家の專制が行われることである。これは第一の點よりも一層恐るべき問題である。勞働が專制や獨裁の舞臺と化するならば、一切の過誤がそこから生み出される。不幸なことには、日本の勞組にはその傾向が濃厚に存在した。これが一掃されない限り、勞資の不安定、ひいては政治、經濟の不安定は際限なしに續く。外國からさし伸べられた復興への援助の手はひつこめられてしまうだろう。こういう意見を書いてある新聞もあるのであります。ストライキの多くは少数の指導者によつてリードされておる。これは事實であります。しかも時々重大なる過誤に陥ることもあるのであります。正當に主張すべき理由を逸脱した場合が相當にあるのであります。ときには感情的にやられて、不當理由により増産を故意に妨害する場合があるのでありますが、この非常増産對策要綱には、この場合の點は何ら觸れていないのであります。政府ではストライキの故意の増産妨害に對する場合の措置として、どういうようにやられるか、御所見を承りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/53
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054・水谷長三郎
○水谷國務大臣 ただいまお尋ねの故意の妨害者というのは、政府といたしましては、勞資いずれか一方だけを目途にして、こういうような規定を考えておるものではございません。故意の妨害者というものに對しましては、甲乙丙丁何らの差別なしに、それに對處したいと思つております。それでは一體故意の妨害とは何ぞやということにつきましては、具體的な一つ一つの出來事に對しまして、社會通念によつてこれを律しなければならないところの問題でございまして、今からあらかじめこういう問題が故意の妨害であるというぐあいに規定するのは、なかなか困難ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/54
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055・淵上房太郎
○淵上委員 資材と勞務の問題につきまして、私は相當まだ時間がかかるのでありまするが、切りの關係できようはこれで一應閉會なすつたらいかがかと思いますが…。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/55
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056・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 それでは本日はこの程度に止めまして、明日は午後一時より繼續し再開することにいたします。
本日はこれにて散會いたします。
午後四時一分散會発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104283X01919471020/56
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