1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年八月二十三日(土曜日)
午前十時三十五分開議
出席委員
委員長 喜多楢治郎君
理事 石神 啓吾君 理事 笹口 晃君
理事 佃 良一君 理事 片岡伊三郎君
理事 福永 一臣君 理事 中村元治郎君
金子益太郎君 佐竹 新市君
林 大作君 松原喜之次君
師岡 榮一君 山口 靜江君
岡野 繁藏君 櫻内 義雄君
松井 豊吉君 鈴木 仙八君
關内 正一君 辻 寛一君
唐木田藤五郎君 木下 榮君
出席政府委員
経済安定本部副
長官 永野 重雄君
経済安定本部貿
易局長 藤澤 次郎君
貿易廳次長 新井 茂君
委員外の出席者
議 員 石原 登君
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本日の会議に付した事件
貿易組合法を廃止する法律案(内閣提出)(第
三九号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/0
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001・喜多楢治郎
○喜多委員長 これより会議を開きます。
前回に引続き貿易組合法を廃止する法律案について質疑を続けます。委員の発言を許します。中村元治郎君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/1
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002・中村元治郎
○中村(元)委員 ごく簡単に目的とする要旨だけを伺います。
貿易方の中に規定なさんとする第五、組合員たるの資格に関する規定でありますが、この規定が今後わが国の貿易が民間貿易となつて発展なさんとする途上にありまして、過去における組合法によります弊害をながめて見ましたときにおいて憂慮せざるを得ないことは、この組合員たる資格に関する規定が、あまりにも漠然としておりまして、どの程度からどの程度までが組合員たる資格でありやということが、まことに不鮮明でありますので、その資格に関しまして一つお伺いしたいということと、いま一点は、第六の組合員の加入及び脱退に関する規定でありますが、この組合員の加入というものが、非常に今日までの組合法により加入に対しましてどれもこの条項が定められておりますがゆえに、正規の手続をとれば加入なし得られることがほんとうであらねばならないのでありますが、その組合の幹部の意見により、加入を拒絶するということが、今日までの慣例になつておるのであります。さような場合において、組合が自己の建前から、個人の感情から加入を拒否した場合において、いかなる手続いかなる方法をもつてなせば、定められた組合員の加入がなし得られるか。以上のに点をお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/2
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003・新井茂
○新井政府委員 組合の加入脱退について、ある程度の強制的の規定を設けておりまして、こういうことが今度組合法を廃止する一つの理由であります。今日のようになるべく各業者に自由に商売をやらせなければならぬという時代において、こういういろいろな制限をしておるような規定をもつ組合法を存置するということはよくないということが、今度この組合法を廃止する一つの理由でございまして、従つて今後はそういう制限なしに業者はいやしくも資力信用のある限り、外国貿易をやる能力がある限りにおいては、どういう業者の方でも営業を認めるということにやつていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/3
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004・中村元治郎
○中村(元)委員 さよういたしますと、われわれが杞憂するところが非常に心強くなつてくるわけなのでありますが、参考までに申し上げたいと思うのであります。今日までの組合は資格ということに対しまして、非常に重点をおきまして、この戦時中に生まれました組合員の多くは、実績を云々するわけであります。この実績を云々せられるということになりますならば、今後わが国が貿易をもつて再建なさんとする途上にありまして、広くその業をなさんとするものを阻害するおそれが多分にありますので、この資格ということを非常に考えていただかなければ相ならぬと思うのであります。もちろん資力もなく、また実力もなく、なし得る資格のないものは当然であります、けれども、設備の点においても、また資力の点におきましても、ともに兼ね備えたものが今後組合員たる一人として加入を申込みます場合においては、過去のごとき実績を云々するのでなくして、新しく出発する途上にありますので、でき得る限りその点は除去せられたいと思うのであります。
それからもう一つ、今の点でよく私も了承できるのでありますが、組合の加入でございます。この組合の加入も組合に定めましたところの規定に基いて加入を申込みます場合、往々にして今日までは不当なる負担を要求しましたことが、今日までどの組合におきましても実例なんでありまして、かようなことの絶対にないようにしていただきたいということに対して、十分御注意が願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/4
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005・新井茂
○新井政府委員 先ほども申し述べました通り、この組合法廃止法案が通過いたしたならば、貿易組合法は全部消滅をいたしてしまうわけであります。従いまして、御心配のことは全部なくなると思います。さらに今度の貿易公団というものができまして、これの運用につきましても、あるいはお話の通りの御意見があるかと思いますが、将来におきましては、先ほども申し述べました通り、この公団の相手方たるべる業者につきましても、資力信用のある者につきましては、過去の実績等にとらわれずに、相手方としてやつてまいるという方針で進んでいこうと思つておりますから、お話のごとき弊害は、今後はなくなると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/5
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006・櫻内義雄
○櫻内委員 今の問題に関連してちよつとお尋ねしますが、ただいまの御答弁の中に触れられました輸出業務取扱業者の資格審査を公団でなさつておりますが、それの基準や何かはどういうふうになつているのか、第一次の七月十日の発表に、百三十三というものを指定しておりますけれども、今後においてはこの指定をどういうお考えでやつていかれるのか、この点について、もう少し詳しいことをお聴きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/6
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007・新井茂
○新井政府委員 従来は貿易公団の相手方といたしましては、いわゆる公団発足前の代行機関が、その相手方として実務をやらせておりました業者を、一応暫定的に引継いでやつてまいつたのでありますけれども、これは暫定措置でありまして、今後におきましては、そういうきわめて限定せられた範囲内の業者のみならず、広くほんとうに能力をもち信用のあるところの業者は、すべて貿易公団の相手として取扱うという方針をもつて進んでまいりたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/7
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008・櫻内義雄
○櫻内委員 広く能力のある者ということは、無制限にいくのでしようか、それとも資本金の上で制限があるとか、あるいは生産設備に直結していなければならないとか、何かそこに一つの制限があるのでしようか。単に、たとえば某がその資格審査を申し出まして、これが大体今の広くその能力ある者という見解に基いて指定されるのかどうか、その点をちよつとお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/8
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009・新井茂
○新井政府委員 公団の相手方といたします業者の範囲の問題は、方針といたしましては、先ほど申し上げました通りであります。個々の具体的の業態によりまして、どういふふうにして広い担当者の中から、ほんとうに契約の相手方となる人を選ぶかということにつきましては、各業態においてそれぞれ適切なる方法によつてきめなければならないと思いますが、一つの例で申せば、たとえば入札というふうな方法も考えられると思いますし、その他それぞれ各業種の実態に応じて、ほんとうに信用あり能力ある人は、すべて参加できるような建前のもとにやる。かようにいたしまして、目下それぞれ具体的な方法を研究中であります。近く成案を得る運びに至ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/9
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010・喜多楢治郎
○喜多委員長 委員外石原登君より発言を求められておりますので、これを許します。石原登君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/10
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011・石原登
○石原登君 長官がお見えにならないそうでありますから、新井さんに二、三質問したいと思います。非常に窮迫しました日本の今日の経済において、新しく貿易が再開いたしました。このことについては、国民ひとしく非常に喜んでおるのでありまして、その間関係当局特に貿易庁の諸君の御苦労に対しては、敬意を表する次第であります。しかるに私は最近の機会におきまして、非常に看過できない一つの事態を発見したのでございますので、今日は率直に申し上げまして、政府の深厚なる反省を促したい、かように考えます。実は私かような問題を本委員会で申し上げることは、きわめて遺憾でありますが、このことはしかしながら新しい貿易を再開して、これを運営していく上において、非常に大きな影響がありますことと、もう一つは新しい憲法によりまして、官吏は一部の人の代表でなくて、全体の奉仕者である。こういうような建前から申しますとき、言いかえれば、官吏は公僕だ、その公僕であるべき官吏の姿が決して公僕でなかつたということを、実はきわめて近い最近の機会において、私自身が体験いたしました。私は当時輸出局長にも簡単に話しておきましたが、これはただ単に貿易庁のみでなく、今日あらゆる方面で官僚に対する批判が行われている。しかもそういうような批判のまつただなかにあつて、しかも衆議院議員の私どもが二人も行つたのに、それに対してあのような態度をとられるというようなことであれば、おそらく一般の人が行つたら、たいへんなことであろうと思う。ひそかに私どももいろいろな方面にそのことを聴き合わせたら、部内においても、さらに部外においても、相当の非難がある。私はその事情を明らかにしまして、新井さんから率直な御所見を伺いたいと、かように考えます。
実は二、三日前に私は貿易庁の輸出局化学農水産課の關という課長さんに面会を求めた。私が面会を求めた理由は、これは本委員会で申し上げることに、そう大した影響はありませんが、話をよく了解していただくために、簡単にその理由を申し上げたいと思います。私の出生地であります鹿児島県は、日本で最も優秀なゆり根の産地であります。ゆえにこれまで数十年間横浜の商社を経由いたしまして、アメリカと貿易をして、アメリカへ輸出いたしておりました。しかしながら、この商社は、僻地にある生産業者並びに当局の者の無智乗じてとは申し上げませんが、無智につけこんで、相当悪辣な仕事をやつておる。値段の立て方にしても何にしても、勝手なことをやつておつた。こういうようなことから、ちようど十年くらい前から生産業者が当局と打合わせまして、これから自分たちの手でぜひ輸出をいたしたい。貿易を直接にやりたい。こういうような心構えでちようどその緒についておつたのであります。たまたま日華事変が始まりまして、さらに今次大戦と発展いたしましたために、この計画も画餅に帰しまして、今日に及んだのでありますが、いずれにいたしましても、この鹿児島県のゆり根が、日本輸出のゆり根のほとんど全パーセントに近いことは事実であります。こういうことから、今度の貿易再開にあたつては、ぜひとも自分たちの手でこれを輸出したい。こういうような計画を立てまして、その後県農業会を中心にいたしまして、輸出の協同組合をつくつたのであります。ちようどこういうようなやさきにおきまして、貿易庁の方から一方的に、この輸出のゆり根のことについては、横浜の某々商社二社を指定いたしまして、これをして取扱わしめることにしたと、こういうような御通知をいただいた。生産業者は非常にびつくりいたしまして、今度東京に飛んで参りました。その飛んで参つた理由は、どうしてもわれわれ生産業者に直接やらしてください、そうしたら生産業者の名誉にかけても、また生産業者に非常に利害を伴いますために、われわれの手でりつぱにして差上げましよう。さらに過去数十年の輸出に対するいろいろな作業上の経験も有しておりますから、その陳情に出て参つたわけであります。実はその陳情にあたりまして、鹿児島県の農業会では、農業会に特別に関係のありますところの国民協同党の的場代議士、それからもう一つは私の郷里がそのゆり根の直接の生産地であります関係で、私と的場代議士を特に選んで、この問題に対して特別の援助をやつてくれ、こういうような要望があつた。私実は非常に忙しい中ではありましたが、この生産者の意にこたえるために同道いたしまして、農林省の意向も聴き、さらに先ほど申しました關君に面会を求めた。そうして關君に会つたのですが、私はどうも第一印象から気にくわない。と申しますのは、私は決して人きらいをするわけではないのですが、実は私も人にも使われたこともありますし、また自分自身も部下を使つたことがある。私どもは行つて關君の前に相対して坐つた。關君はほかの人と話をしていた。たしか事務官だつたと思うが、私どもはその話が済むのを待つておつたのであります。ところがその話が済んだら、今度はまた次の人を呼んで話をしている。私どもとしては、大概こちらが来ていることもわかつているのだから、いい加減にやめてくれればいいなあと思つておつた。今度はそればかりではない。關君が部下に対する言葉の使い方は、かつて軍閥華やかなりし時代に上長官が部下に対して使つた言葉とまつたく違わない。私はこれまで部下を使い、また上司に仕えたこともあるが、上司に対してへつらつたこともないが、部下に対してもあんな横暴な言葉を使つたことはない。こういうことは部下であるから構わないようなものの、決して聴いておる部下にしても喜んでいないと思う。その喜んでいない結果はどういうふうになるかというと、そこに参りました関係の業者に今度は間接的にあたつていくことになりはしないかということを、私はおそれたのであります。とにもかくにも、私はこういうような気持ちで關君の話が終るのを待つておつた。そしていよいよ要件をもち出したところが、そのときの話し方がまたたいへんひどい。私どもは大体以上の要点を話してその説明を求めました。そうして私どもは横浜の貿易業者との関係など話もして、今後の取引に関することもいろいろ尋ねた。取引は外国貿易のことになりますので、為替レートのことなども話しました。私ははなはだ失礼な言い分ではありますが、経済のことも若干勉強してわかるつもりであります。ところが關君が僕に対して二回ほど失敬な態度をとつた。大体ああいう態度がとれるものかどうか、私は実演いたします。こういうふうに坐つて「何だ、こんなことがわからなくて驚いたなあ」とこう言う。失礼もはなはだしい。「驚いたなあ、このくらいのことがわからないとは。」と言う。国会議員の私どもが二人も行つてああいうような態度をとるのだから、どうもほかの業者には、なおさらあんな態度をとつているのだろうと、私どもは心配いたしたのであります。少くとも關君のあの地位においては、日本の業者も相当集まりましよう。外国のバイヤーも相当来るであろう。しかしながら、これは官僚の本領を発揮して、弱い日本の業者には強くなつて、外国のバイヤーには非常に鄭重であるというなら問題は少ないが、外国のバイヤーに対してもああいうような態度に出られるということは、私は日本の貿易の発展のために悲しむのであります。私はよほどそのとき關君に注意を促そうと思つたくらいでありましたが、同行者の中にそういうような利害の直接関係者もおりましたので、一応そこを引揚げまして、そうして輸出局長にもお目にかかつて、簡単な事情は話してまいつたのであります。これはただ単に私と關君との間の話合ではない。こういうような態度を多くの人々にとられることが、仕事をやる上の非常な阻害になる。私は戦時中一会社の課長をやつておりました。そういう関係で、多くの商工省の役人並びに陸海軍の将校諸君に会つたが、陸海軍の商工諸君は、よほど話がわかつてくれたが、商工省の役人の尊大さというものは驚くべきものがあつた。われわれは協力しようというつもりでおりますが、向うは高飛車に出て、われわれが協力しようという意思をどれだけ阻害したかわからない。そういうならわしがある。今日国民の公僕として、むしろ国民が働きやすいようにならなければならぬ時勢において、なおかつそれを持続しておる。こういうことは断じて許されないのであります。この点に関しては私は新井さんに、ぜひその間の事情を詳細に御調査いただいて、十二分の御注意をお願いいたしたいと考えるのであります。
それからもう一つは事務室のことでありますが、私あすこに参りまして意外に思つておるのであります。これは新井さんに言うよりは、むしろ商工大臣に言いたいことでありますが、あすこの事務室はどちらかというとあまり感心しない。貿易に従事しておりますと、先ほどから申します通り、外国の人も来るでしようが、その事務室が非常に陰気だ。商工省にはほかにりつぱな部屋がいくらでもあるはずです。あの部屋のことも、この貿易に開するいろいろなことを考えるならば、これはただ商工大臣の心構えであつて、どうにでも方法はある。さらにもう一つの意外なことは、關君の前に並べてある椅子であります。これもほかのところであるならばいざ知らず、ちようど裁判所の控室と同じで、本椅子をずつと並べてある、あれも今日貿易立国をしようとする日本、しかも貿易の元締めとも言うべきところとして、まことに貧弱である。私は別に贅沢せよというのではないが、ほかのところから融通し合つても、あの部屋だけはぜひ繕つてもらいたい。この点が私どもの希望であります。どうかこういう希望があつたということを、ぜひ新井さんから商工大臣に御伝達願いたい。
それからもう一つは、今度の輸出品に対する価格の設定のことに関して、当時もちよつと尋ねましたが、あまり明らかではないようであります。たとえば私どもが関係いたしたゆり根の問題にしても、六寸まわりが十円、七寸まわりが十五円という値段がついた。ところがその値段は根拠がないとおつしやるが、そうすると十円で買つたゆりが、アメリカにおいて案外よいお客があつて、もつと高くても引合うということになつた場合、生産業者に対する補償はどういうふうな形になつて現われるか。その点もぜひ承つておきたいと思う。
それからもう一つは、貿易公団と貿易庁並びに一般の貿易業者との関係であります。何か聞くところによりますと、一応貿易公団がすべてのものを買上げて、それをさらに一般の貿易業者に売渡すということでありますから、どういう手続をするかわかりませんが、その間ややこしい手続があるようです。その点私ども不分明でありますから、簡単で結構ですが、御指示を願いたい。そうしてその間の生産原価、それから貿易によつつて最終決済があると言いますが、その利潤の決済がどういう形において計算されるのであるか。この点も併せて承つておきたい。大体以上のことに対して御答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/11
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012・新井茂
○新井政府委員 ただいまお尋ねの第一点の官吏の態度についての問題でありますが、私どもといたしましては、官吏が公僕の精神に徹しまして、最も懇切丁寧な態度で接するようにということは、常々よく申して注意をいたしておるのでありまするが、万一にもお話のごとき事柄がありましては十分事情も調べまして、今後そういうことのないように、手をつけていきたいと思います。
それから事務室がたいへんひどい。さらにまた机、椅子の問題につきましても御注意をいただきました。これはまことにありがたい御注意でありまして、感謝いたします。実は事務室等につきましても、現状のような日本の状況でありまして、これはむしろそこに座つておる人からは、前からいろいろとこれが改善について、要望も受けておるのでありまするが、現状におきましては、なかなか適当な建物もございませんし、新しく建築するということも、日本の資材等の現状からいたしまして、なかなか困難なために、お話のような非常に適当でない場所にはいつておるような状況であります。さらに備品等につきましても、そういう粗悪なものに甘んじておるという状況でありまして、これはむしろ官吏がそういうふうな悪い場所でも、相当な仕事をやつておるということについて、十分実情を御了承願いたいと思います。私どもといたしましては、何とか適当なところを見つけたいというので、目下方々を探しておるような次第でありますから、この点御了承いただきたいと思います。
それから第三番目の輸出品の価格につきましては、これは物価庁は自分の責任において設定をしておるわけであります。その大体のやり方は、公定価格のございますものは公定価格を基礎にいたしまして、さらに輸出品として特別な包装その他の諸がかりがございますので、これが実費を加えまして決定しておるような次第であります。それから公定価格のないものにつきましては、大体ほかの類似品等の価格を基礎にして定めていつておるのであります。最近いわゆる民間貿易の再開等のことにつきまして、いろいろと手段を講じておりますが、従来のごとき方法は、輸出品としての適当な品質のものの製造や、その他輸出に支障があるというので、最近輸出品にはそれぞれ適当な価格を設定いたしたいという趣旨をもちまして、物価庁の中に輸出品の価格審査委員会という委員会を設けまして、各商品ごとに部会をつくりまして、この部会にその商品の専門家にはいつてもらい、そうして輸出品に適応した価格をつけることになりまして、近くこの委員会が発足することになつておりますので、今後におきましては、不当な低い価格でもつて輸出するというようなことにはならぬように相なると存じております。私どもといたしましては、でき得る限り各輸出品の、ほんとうの品質に適応した価格でもつて、今後とも輸出したい、かように思つております。
それから貿易公団と業者との関係につきましては、貿易公団はいわゆる貿易庁の代行機関といたしまして、業者から品物を買取つて、そうしてこれを輸出港までもつてまいつて、船積みをいたすという実務を担当をしているようなわけであります。従つて貿易公団はそういう実務の担当者でありまして、貿易に関するいろいろな方針をそこで決めたりする機関ではないのであります。従つて貿易公団の仕事は、すべて貿易庁の指示のもとにやつてまいるという趣旨でやつているわけでありまして、貿易公団の仕事の適切でない点につきましては、すべて貿易庁において責任をもつて改善いたしたい、かように存じている次第でありますので、どうぞそういう実際問題といたしまして、何か適切でない点がありましたならば、どんどんお申出を願いまして、改善を加えてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/12
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013・石原登
○石原登君 最後に一つ、これは私の希望でありますが、これからおそらく貿易庁において起る摩擦を想像しますとき、新しく貿易を開始しようという希望の人と、それからこれまで貿易をやつておつた人とのいわゆるあつれき、このあつれきの間に、いわゆる官僚のあり方の印象がよほど影響するのではないかと思われます。特に最近に至りましては、あちらでもこちらでも、官僚の醜聞の聞かれますために、一般の民間人は、どうもそういう目で官僚を見がちであります。この点については、もちろん御如才ないことと思いますが、十二分の御注意をお願い申したい。
さらにもう一つは、貿易公団といわゆる貿易業者との間において、これもまた一般世人からどうも色目で見られがちでありますが、この間においていろいろなことも起り得る可能性もあると、かように実は杞憂をいたしております。その点については、御当局としましては、十二分に御留意くださつて、少くとも貿易に関する限り、そういうようなことがないように、万全の御研究をお願いいたしたいと思います。私の質問はこれをもつて終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/13
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014・喜多楢治郎
○喜多委員長 林大作君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/14
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015・林大作
○林(大)委員 輸出に関する生産品の技術面というものは、現在の日本の工業の状態におきましては、戦前に比べてずつと技術的にも落ちている。また材料からの制限もずいぶん食つていると思います。それに比べて諸外国においては、われわれが足踏みをしておつた間に、技術面がずつと進んでいる。私が東洋諸国に長くおりました経験などを今ふりかえつて見ても、はたしてインドの工業と、日本の今の工業と、どちらが高いかということについては、私はちよつと疑問であろうと思う。むしろインドの方が進んでいるのじやないか。これは物によりますが、そういうことを考えるのであります。そういう状態に、現在の日本の輸出生産品の技術面がおかれている場合に、貿易が再開されているからというので、単にドアを開けただけで、どうぞお願いしますという態度を政府はとつておられますが、それではいけないのじやないか。はたしてこの技術的の指導とか、もしくは研究機関とかいうようなことについて、具体的などういう手段で向われようとするのであるか。このことは貿易庁のみならず、永野さんの方の御関係にも相なると私は思うのでありますが、この点はなるべく詳細に承りたいのであります。
それからその次に、先ほど石原君の話の中にございましたが、貿易業者が今度貿易公団と契約をして商売をする場合に、従来のいわゆる実績主義というものをあくまで守るつもりであるか。それとも石原君の希望するように、新しい熱心な、いい者をどんどん入れていくのであるか。いわゆる実績主義を捨てるという声明がここでできるのであるかどうかということを、具体的に承りたいのであります。その二点をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/15
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016・新井茂
○新井政府委員 日本の輸出品の生産の技術が、戦時中日本が外国から距つておつたというような事情のために、相当低下しておるであろうということはお話の通り予想せられるるところでもありますが、今後日本が輸出貿易を大いに振興してまいるということのためには、お話の通り、どうしても技術面の向上ということは必要であると存じますので、商工省といたしましても、今後におきまして各試験研究機関、指導所等を総動員することはもちろん、民間の各工業方面の権威者の協力を求めまして、たとえば指導委員というような役柄をもお願いをいたしまして、今後どんどんと技術指導、品質向上ということに力を入れてまいりたいという趣旨でもつて、ただいまそれぞれ研究立案をいたしておるような次第でありますので、成案を得次第機会を得まして、その詳細につきましても、ご報告申し上げるつもりであります。
それから第二の、貿易公団の相手方となるべき業者の範囲につきまして、従来の実績ある者に限定するということを将来も続けていくか、あるいはまた新しい業者もこれに加えるかという問題につきましては、これは御承知の通り、最近の経済民主化の見地からいたしまして、従来の実績ある者にこれを限定することは適当でございませんので、今後においては能力あり、信用ある業者は、実績の有無にかかわらず、これを相手方として入れてまいりたい、かように存じております。ただそうかといつて、外国貿易の性質からいたしまして、日本の国際信用を傷つけるというようなことが万一ございましたならば、将来長きにわたつて禍根をのこすような結果になりますので、この信用と資力ということにつきましては、十分に審査をいたしまして、そういう点につきまして、疑いのあるような場合におきましては、そういう人はこれを除外してまいるというふうにいたしまして、ほんとうに信用あり、能力ある人は、従来の実績いかんにかかわらず、これを貿易公団の相手方としていくというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/16
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017・林大作
○林(大)委員 今の実績主義についてのもう一つつつこんだお話を実は承りたいのであります。いわゆる全体を一〇〇として、実績がこうであるから、三〇〇をAに与え、二〇をBに与え、五をCに与え、その他を公開するというような行き方で行くのであるか、それとも実績というものを全然考慮せずに、この際新しい立場でもつて、ものを考えていくのであるか、その点をはつきり承りたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/17
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018・新井茂
○新井政府委員 実績によつて割当までもきめるということは、今後におきましてはいたさないつもりでありまして、ほんとうに一定の能力を有しており、その能力に応じて契約の数量当についても与えるというふうにいたしてまいりたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/18
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019・喜多楢治郎
○喜多委員長 安本に対する御質問は、松原君が見えておりませんから、櫻内君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/19
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020・櫻内義雄
○櫻内委員 まず第一に経済安定本部の御意見を承りたいのは、経済緊急対策の第六の三番目に、「輸出産業の振興等、生産的な雇用機会の造出、広大に、画期的な努力を傾注する」この画期的な努力ということは、どういうことを意味するのであるか。
それから第七の四でございますが、「貿易の再開に備え、貿易関係者の創意にもとづいた活発な活動を伸長させるように、経済制度の全般を通じて必要な改善を行う。」この経済制度の全般を通じて必要な改善を行う。この二点についてお尋ねしたいのであります。特に最近におきまして、経済安定本部が机上作文をして、空文的なことを発表しているのではないかと言われておる際でございますので、これに対する御意見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/20
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021・永野重雄
○永野政府委員 ただいまの御意向につきまして、輸出産業に対する画期的な努力とはどういうことであろうかというお話でございますが、今日の日本の産業経済すべてを通じまして、生きる途の最も大きな手段としては、輸出を振興して、これによつて必要物資、特に食糧等を手に入れるよりほかにはないのであります。そのためにはどんな手段をとつても輸出をしなければならぬということを意味しておるのであります。そのためには、たとえば先ほども新井政府委員から御説明のありましたごとく、輸出品に対して技術の振興をはかるために、いろいろな研究を具体的に目下いたしておりますし、また一面輸出産業は必ずしも全部とは申し上げかねるのでございますが、中小工業に依存する面が非常に多いわけであります。従いまして中小工業の振興ということも、全面的に取上げられておるわけでありまして、これが資金の面、技術の面、あるいは資材の面等で全面的にこれを技術的にも優秀な技術になるように指導助成をし、また必要な資金が欠けておる場合には、これに対しては全面的な考慮を払う等の手段を講じまして、これが振興を心がけておる次第であります。またそれがためには技術の振興の一つの手段としまして、検定制度というようなことも考えております。それやこれやの手段を講じまして、輸出の振興をはかりたいと考えております。特にただいま申し上げましたごとく、輸出産業と申しましても、これだけを切り離しては、技術的にも、あるいは従つて比率的にも伸ばしていけるものでもないのであります。内地に出すもの、輸出に行くもの、すべてを通じて技術が進んでこなければ、またそのものに対する生産者の責任感が強くなつてくるのでなければ、いい物はできないわけであります。かような意味合いにおきまして、ただいま申し上げましたような、いろいろの手段を講じていきたいものだと考えております。
それから輸出振興の手段として、経済全般的にいろいろな手段を考えるというようなことがあるかというお話でございましたが、これについてはただいま申し上げた趣意でもつて、大体御了承を願えるのではないかと考えますが、結局日本の技術あるいは金、資材の面を通じて、全面的にこれを考えるという反面には、輸出のために石炭を割き、動力を割くという反面には、他の産業には一部の足踏みをしてもらはなければならぬことが起るだろうと思います。従いまして、日本経済全体の産業の重要性を考えて、日本の全需要者あるいは全生産者が、同じ気持ちでもつてこれを考えてもらわなければいけないわけであります。かような意味において、日本の全体をあげて輸出の振興を考えていくのだということから掲げたわけであります。また経済安定本部が、ともすれば作文に堕するという御説のような注意もあつたわけでありますが、実は安定本部の本来の使命は、直接に個々の仕事に携わるという面はほとんどないのでありまして、ある構想を立てまして、その構想に基いて、各官庁に実施の面は当つていただくわけであります。従つて実務に直接鞅掌しない関係上、ともすれば作文に堕するというような関係がありがちかとも存じますが、実際はさような扱いになつておるわけであります。従いましてその立てました構想が、実施に適しないということになりますれば、いくらでも是正してはばからないのであります。実施面における各官庁と十分話合いをつけて、ただ空文、作文に終らないように十分努力しなければならぬと思います。また皆さんのお説のごとく、十分注意を続けてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/21
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022・櫻内義雄
○櫻内委員 今朝の新聞によりますと、輸出入回轉基金委員会が経済安定本部の中に設けられたのでありますが、ただいまの御説明にもありましたように、実務は経済安定本部が扱うのでないと思うのであります。しかるにこの委員会が安定本部の中に置かれたという点につきましてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/22
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023・永野重雄
○永野政府委員 実は安定本部に回轉基金の委員会をつくりましたのは、実際の個々の仕事は、あるいは大蔵省、あるいは商工省、あるいは農林省の各省がやつていくのは当然でございますが、全体の生産計画に照応いたしまして、どういうものをどの程度買つて、またどの程度海外に出して、全体の資金的なバランスをとり、また資材的なバランスをとつていくかというような問題、あるいはその輸出の問題は、相当大きな部分が関係方面との折衝の上で取極めていかなければならぬ面が多いわけであります。従つてこういう問題の交渉にあたりますのに、各官庁が個々の立場で折衝することになりますと、ともすればちぐはぐな話になつても困るわけであります。総合的な一つの意思で計画を立てて、その計画に基いて各省と連絡して実施の面に移していくというような構想をもつている関係上、委員会を安定本部に置いたわけであります。しかしこれも実情にそぐわない案をつくつたのではいけないのでありまして、各官庁からその仕事に関係しておられます局長あるいは課長の方々を、あるいは委員あるいは幹事に参加していただきまして、全面的な実情に即応した案を立てていきたいと考えておる次第であります。そういう意味において、安定本部に委員会を置いたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/23
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024・櫻内義雄
○櫻内委員 今度は新井さんにお聴きしたいのでありますが、経済再建のための基金資材の現段階における輸入計画をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/24
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025・唐木田藤五郎
○唐木田委員 今政府委員の御説明を承ると、中小工業の振興策が貿易再開において大きな役割を演じているということでありますが、私もその通りだと思つております。ところが中小工業者の実情を直視いたしますれば、政府の企圖するところは私どもの見たところとは全然反対にいつている。と言うのは、これは商工省の問題だ、いやそれは農林省だ、いやそれは大蔵省だとやつている。大きな会社で、大きな設備で、多くの人を使つて完全な運用をしているところは差支えありませんが、いわゆる中小工業者は、自分みずからそういうことを一々やつておつたら日が暮れてしまうという実情であります。いろいろな行きがかりや因縁からこうなつているとは思いますが、事実上中小商工業者が中心となり、根底となり、背景となつて、新しい日本の運命を開拓するのだということになれば、どうしても中小商工業者が働きやすいようにしていかなければならぬということを目に見、耳に聴いているのであります。ここにおいて、先ほどの話にからんで、願くは中小商工業振興局とでも称すべき——名は何でもよろしゆうございますが、とにかく中小企業者がひとつの局に行けば資材の面、資金の面、労力の面、その他あらゆる面において、簡単にこと足りる場所ばなければ、百万遍お説教を並べても、中小企業の振興は不可能ではないかと思う。その点について、何か政府当局にお考えがあればお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/25
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026・永野重雄
○永野政府委員 中小企業の振興については、先ほど申し上げたように、貿易の再開を見るその前から生活必需物資の中小企業に依存する面が非常に多い点から考えて、大分前からこれが振興策については、内面的にはいろいろと検討中だつたわけであります。おつしやるように、中小企業ともなれば、主人公が仕事をやつておつて、当面の政府に資金の折衝等に駆けずりまわるひまのないという実情が相当多いのではなかろうか。従つてともすれば資材、資金の面で御不便をかけておる点が多いのではないか。御説のようにわれわれとしても感じております。これが打開策といたしまして、おつしやるような大体の構想をもつて、相当大きな機構で中小企業の事務を処理する準備を目下進めております。ほぼ成案に近いものもできたので、近く御検討を願えるようになるのではないかと考えております。そのうちには各品目ごとの部門をつくつたり、機能的な部門をつくつたりいたしまして、おつしやるような中小企業が奔命に疲れることのないように、すべてをここに取上げて、中小企業のために温かい手を差伸べて、中小企業が振興していけるような手段をとるべく目下検討しておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/26
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027・唐木田藤五郎
○唐木田委員 お話の趣旨はよくわかりましたが、ひとつ御参考までにお耳に入れておきたいのは、最近私の郷里の信州の川中島のほとりで農村工業という見地から、いずれ来るであろうところの農村恐慌に備えて、農村時計工業というものを始めたのであります。これはスイツツルの気候状況、あるいは地理、人情といつたものと照し合わして、信州がそれに適しておるということによつて始めたのであります。出発にあたつての指導者は、大体において農業会の農村工業部とか、県庁のそれにふさわしい部でありました。大体において農村という字がついておりますから、農林省関係らしい——農林省にもそれらしいものがあります。ところがさていよいよ本幕になつて来たところが、資材は商工省からもらう。お前は農林省に厄介になつておるのだからそつちへ行け、商工省は知らぬぞと言わぬばかりの態度で自分たちは厚生省から徒弟を教育するためにたくさんの助成金をいただいて、厚生省も政府だし、農林省も政府だし、商工省も政府だし、私はどこが政府だか知らぬが、私たちは自分たちの生活に即してこうすることによつて日本の運命を開拓することができるのだ、自分たちは皆損得にかかわらず身分不相応の努力をしている。にもかかわらず東京に来てみたらお前たちは農林省は知らぬから商工省に行けということで非常に憤慨して、こんなべらぼうなことはない。そんなものならやめてしまえと言われたと、血の涙で私のところに訴えて来た者がつい最近あります。こういうことは必ずしも全部がそうだとは言わないが、少くとも今言われている官庁のセクシヨナリズム——縄張り争いと言いますか、聴くに忍びない実に不愉快な話であります。かつては天下の公僕であり、天皇の官吏と称した者が——もちろん全部とは申しませんが、まのあたりこういうことを見せられると、実に考えざるを得ないのであります。ですから今中小工業振興局——名前は何でも構いませんが、それは先ほどお話たがあつたようなことにして、ほんとうに疲れないで彼等の立場において自然的の努力を画して、新日本の建設に御奉仕できるということを念願として、あらゆる法律をつくり、予算を組み、あらゆる施設をしていただきたいということを、重ねて御参考までに申し上げて御注意を促すわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/27
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028・喜多楢治郎
○喜多委員長 それでは櫻内君に対する御答弁を願います。藤澤政府委員発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/28
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029・藤澤次郎
○藤澤政府委員 実を申しますと、どういうような輸入の計算が立つているかと言われますと、まだ具体的に立つておりません。案本と貿易庁の関係について、事情を少しわかるように申し上げたいと思います。
御案内の通り、貿易庁がまだ案本にできません時代から、たびたび骨を折つて貿易計画を立てましたが、これはわれわれの方が立てたのであつて、関係方面においては参考に見ておられた程度であつたろうと思います。実を言いますと、日本の貿易計画はフアイナルなものじやありません。それが実行に移されるには、海外の情勢を握つておられる方面で考案せられて、日本の経済に適する貿易がやがて許されることになつております。今日輸出入回轉基金が与えられましたが、それを利用しつつ貿易計画を立てることは当然のことであります。この基金が与えられる前から、日本の新聞には出ませんでしたが、すでに外国新聞には日本に対するクレジツトということがたびたび出ておりました。また日本側でも相当気勢をあげて騒ぎました。そういうことも考慮して、クレジツトあるいは資金に値するものが与えられるじやなかろうかという予想のもとに、相当前から、もしこのくらいの程度が与えられたらどうしよう、もしこのくらいの程度であつたらどうしようといふようなことを、案本の内部におても、役員の諸君が画夜の別なく働いて、予想を立てておつたのであります。たまたま占領下日本輸出入貿易基金が発表されましたので、われわれは得たり賢しとその貿易基金をうまく使おうということで、すでにいろいろと作業いたしておりましたのをさらに集大成して、大体の考えを立てたのであります。これは先ほどおつしやいましたように、決して官吏の作文ではなく、日本の生産状況たとえば石炭の一トンに至るまで見届けて、親切丁寧な案がつくられております。けれどもこれはまだ関係方面にもお見せいたしておりません。ここで何トン何を輸出するということは、実は申し上げても実現できないことであります。そういうふうな意味で、案本は貿易庁と密接な連絡のもとに、回轉基金をいかに利用して危機を過すか、それのみならず、将来の生産過程においても立つて行けるように、ということでやつております。
もう一つ御参考までに申し上げておきますが、先ほど申し上げたように、従来は窓を閉められておつて輸出入貿易計画を立てておつた。ほんとう言うと、自分の力が自分でわからないようなときにつくつた計画は参考にする程度でありますけれども、このたび私どもがつくりつつあるものは大体関係方面で考えているような線に近いものだと申してよろしいと思います。屏風一つ距てて向う側から日本の経済を見届けた上で、このたびの基金というものを、彼らはすでに予定しておられたのじやないかと考えますが、そういうことから、殊に日本の輸入に対する計画は、出されたものを比較的に利用しまして、まるで飛び離れたものじやなく、日本の経済に対する認識が、われわれとほとんど近寄つてきた。そういうわけでいましばらくお待ち願いましたら、基金をいかに利用するか、日本の経済に即して石炭をうんと買おうと思つても相手のあることですから、向うに石炭がないかもしれない。かりに鐵と言つても鐵がないかもしれないというように、いろいろな制約ができますけれども、要するに向う側の考え方も、われわれの構想もそこに大いなる差がないということを申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/29
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030・櫻内義雄
○櫻内委員 戦前輸出の大宗と言われた生絲あるいは茶が、戦後においては非常に悲観的に見られている。しかし一面生絲ごときは楽観材料——そう言つては語弊がありますけれども、まだ大丈夫だというようなことも言われております。最近バイヤーがやつて見えましたけれども、この生絲や日本茶に対する先方の空気あるいは今後の見透し、そういうものにつきまして新井政府委員にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/30
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031・新井茂
○新井政府委員 ただいまのお話の点は、たいへんむずかしい問題であります。今度参りましたバイヤーからも、そこまでの意見を聴く機会を実はもちませんので、その辺の事情はよくわかりません。しかし外国の新聞記事等からいろいろ推測しますと、生絲は、くつ下に使う生絲はナイロンの関係から相当むずかしいが、将来着物とか肌着とか、ネクタイとか、いろいろ新しい用途が広大せられることもあるということを聞いておりますので、くつ下に向かないからといつて、必ずしも生絲がだめだということは言えないじやないか。今後は日本の生絲をその品質に最も適応した製品に使うという方面に努力して、生絲の需要の増大を期してまいらなければならないと考えておる次第であります。
お茶につきましては、実は昨年非常にたくさん輸出があつたのでありますが、今年は昨年ほど輸出がないということで、関係方面においてお茶の輸出について、たいへん悲観的な見方もあるようでありますが、これは必ずしもそうとも言えないのであつて、昨年あまり出過ぎたことが、今年あまり出ないということの原因にもなつておるじやないかと考えるのであります。今後日本のお茶の輸出のしかた、品質のつくり方等について、外国の嗜好に十分向くようになりましたならば、戦争前においても相当出ておつたものでありますし、世界の産出状況からいたしましても、日本のお茶の需要は、まだ相当あると信じておるような次第であります。そういう見方からして、お茶についても今後輸出の方に努力いたしたいと考えております。
御参考まででありますが、生絲とお茶につきましては、今度バイヤーの取引の対象から除外されておるのでありまして、従つてバイヤーからはそういう方面についての輸出の取引はできないという状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/31
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032・櫻内義雄
○櫻内委員 もう一つお尋ねしたいのであります。それはこの間の委員会におきまして、林委員からも輸出物品の価格問題につきましていろいろお尋ね申し上げたのでありますが、やはりきようの新聞によると、物価庁の中に輸出物品価格審査会というものが設けられて、これが発足したようであります。しかるにその審査会の内容の中に、自由価格品の買上価格の決定は貿易庁でやるということになつております。そうすると物価庁の中にこの審査会があり、そうして自由価格品は貿易庁の決定によるというこの点につきまして、なぜ物価庁がこの価格審査会をやらなければならないかということをお聴きしたいのと、自由価格品の買上価格の決定が特に貿易庁にどうしていつたのか。むしろこういう審査会は物価庁にいくべきものじやなくて、当然貿易庁にいくべきものだ。同時にまたこれは先ほど質問したのでありますけれども、輸出入回轉基金委員会も、当然貿易庁にくるべきものじやないかと思うのであります。この点お尋ねしたいのと、さらに進んで公団は実務機関で、一般方針は貿易庁だといわれたのでありますけれども、案本の御見解では、何か案本が一般方針をとられて、貿易庁は実務機関であるように、さつき聴きとれたのでありますけれども、この案本と貿易庁と公団との相互関係、これについてもお聴きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/32
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033・新井茂
○新井政府委員 輸出品の価格審査委員会所管の問題でありますが、価格の設定は物価庁所管でありまして、それと同時に物価問題一般の所管はまた物価庁に属しておる関係上、今度輸出入価格の審査委員会も、物価庁の所管として設置されるような次第であります。ただその運用につきましては、これは物価庁の官吏が設定するということではございませんので、ほんとうに、各商品の事情に通じたところの専門家を委員にいたしまして、その委員がこの審査をいたす。こういうふうなことになります。実際問題といたしましては、ほんとうに実情に適したような価格が設定せられるであろう、かように期待をいたしておるような次第であります。
それから自由の価格のものについてのみ貿易庁がやるという点でございますが、自由価格の物品につきましては、国内の取引で申せば、別に価格の制限がございませんで、自由の取引ができるわけでありまして、従つてどこで所管するだろうという問題はないのでありますが、ただ輸出品につきましては、現在の建前からいたしまして、すべて国内においては貿易庁が買上げをして、関係方面にお渡しするという建前になつております関係上、そういうものについては、貿易庁が買上げるときの価格は貿易庁できめる。こういう当然なることを言うておるような次第であります。従いまして、この価格審査委員会の所管につきましても、そういう建前からいたしまして、これは新聞発表の通り、関係方面といたしましては、不満をもつておらぬような次第でございます。
それから第二点の案本と各実施官庁との責任分担の問題でございますが、経済安定本部におかれましては、総合的経済計画をおつくりになる次第でございまして、その定まりました計画の範囲内において、実施はすべて実施官庁においてやるような次第であります。従つて今回の輸出入回転資金の運用の問題につきましても、その相当的の計画、すなわちいつまでにどういうものをいくら入れるかという全体の計画については、経済安定本部において設定をみるわけでございますが、その計画の範囲内におきまして、関係方面と折衝して、ものの輸入を認めてもらう。あるいはさらに輸入せられたものを引取つて、国内にどういうふうに配分するか、ということは、実施官庁でありまする貿易庁において運営を行つてまいる。かように運営をいたすわけございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/33
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034・櫻内義雄
○櫻内委員 最後にお尋ねしたいのは、この貿易組合法廃止に伴いまして、従来組合のやつておりました事業の中で、今後においても残しておいてもらつた方がいいじやないか。たとえば海外市場の調査であるとか、新販路の開拓、そういうような問題であるとか、あるいはたとえば輸出組合の方で言えば輸出の斡旋、保管、選別、包装、荷造、その他組合員の営業に関する共同施設ということが、この事業の中にうたつてありますけれども、残しておいていいような事業目的について、この組合法廃止と同時に、貿易庁当たりはどういうふうに御指導なされ、勧励されるのかということをひとつお聴きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/34
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035・新井茂
○新井政府委員 ただいまお尋ねの点でありますが、従来の貿易組合でやつておりました一部の仕事であります海外の市場の調査とか、その他いろいろなことについては、今後組合によらずして、ほかの方法によつていたしたいと思います。もつとも現在におきましては、海外の市場を直接わが国において調査するというようなことは、ほとんど不可能な状況でありまして、これにつきましては、関係方面より入手しました情報を業者に提供するというような程度に止まつておる次第であります。さらに最近の外国貿易使節団の来朝によりまして、日本の業者としては、直接そういう業者から外国の市場の状況等につきましても、十分状況を聴く機会をもつておるような次第であります。その他包装、荷造等の関係につきましては、こういう実務は業者において実力があつてやられるものは業者にお願いをいたしますが、そうでないものにつきましては、貿易公団においていたすということにいたしております。従つて貿易組合のその方の部面につきましても、支障なく行われることと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/35
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036・笹口晃
○笹口委員 貿易組合法が廃止になりまして、その後におきまする個々業者の営業、今もお話があつたようなことも一つでありますが、私は主として小さい生産業者、そういうものなものが今後個々ばらばらに何らの業者間の脈絡なしに進んでいくということに対して、何ら救済方法がありはしないか、たとえて申し上げますれば、従来相当アメリカ方面にも輸出されておりましたハンド・メードで家内工業的にかなり精巧なものができておりまして、貿易品としても相当の実績を収めておる品でございますが、こういうような品物をまとめるということになりますと、どうしてもその前提としてやはり一つの貿易組合というようなものが必要になつてくる。あるいは商工協同組合法を利用いたしまして商工協同組合をつくるか、または他の何らかの形のものをつくる、こういうようなことになろうと思うのであります。ところが組合というような形になりまして、これが今申し上げましたそういうきわめて零細な家内工業者を組合いたし、この生産力を高めるために努力をいたしますと、自然この組合というものが、貿易の表面に出てくることになるのでありまするが、どうも過去の事例によりますれば、組合というようなものが貿易につきましてはきわめて押しのけられておる感がございまするが、状況よつてかような協同組合というようなものが、ひとつの貿易業者として取扱われるようなことはできないものであるかどうか。
それから次にはやはり小さい業者の関係でございますが、殊に資金の点で昨今非常に困つておるようでございます。貿易資金も枯渇をいたしまして、たとえば本年第一四半期に納入いたしました品物の代金というものが、未だに支払われないでおる。こういうことのために、業者は貿易庁に日参をいたしまして、その金をもらおうとするけれども、予算がないからもう少し待つてくれというようなことで次の仕事をすることができない。こういうようなことが非常に零細な業者に対しまして、ただいま実際問題として隘路になつておりますが、かような貿易資金の見透し、こういうことも伺いたいのであります。
さらに先ほどのお話で、中小企業者が今後の貿易について受持つ役割が大きいということは、どなたも御異論がないのでありまして、政府にいたしましても、またわれわれにいたしましても、口を開けばさようなこと言つておりますが、しかし実際問題としますと、この重点的に扱わるべき業者というものが、まだ非常に隅つこの方に押しのけられているような取扱いを受けている面があるのであります。たとえば最近非常にひどくなつてきております電力制限の問題につきましても、この電力制限の緩和を受けるべき資格が与えられておらない。これは全部ではございませんけれども、過去においてきわめて非重点的な取扱いを受けておりました雑貨製造業者のごときは、いまだ電力制限を緩和してもらうだけの資格をもつておらない。それがためにせつかく納期を目の前にいたしまして、連日回転をいたそうとしましても、支障を来すようなこともございますが、こういうようなことも、やはりある程度の制限の緩和をしていただく方がよろしいのでないかと思うが、この点いかがでありますか。
最後に労務者の加配米の問題であります。これも今と同じような取扱いを受けておりまして、雑貨工場に働いております労務者の加配ということは、ただいままではあまり恵まれた状態になつておりませんでした。しかしやはり今の電力と同じように、昨今では労務者も非常に必死な努力をいたしており、それがために相当長時間にわたりまして、時間外勤労等もいたすような場合も往々ございまして、この労務者加配米の必要性というものが、非常に痛感されるように見受けられますが、この点に対する何らかの御用意があるかどうか、以上ちよつとお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/36
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037・新井茂
○新井政府委員 協同組合でも貿易業者になれるかというお話でありますが、協同組合でも適当なものにつきましては貿易業者になれます。貿易業者と申しては語弊がありますが、法律に許される範囲内におきまして、貿易公団の相手方になると思います。
第二点の輸出品の代金支払の問題でありますが、これにつきましては、支払が大変遅れるという非難に鑑みまして、私どもとしては、でき得る限り早く支払うように努めておるのでありますが、先ほども御指摘の通り、貿易資金の全体のわくが制限せられているような次第で、最近の状況におきましては、必ずしも迅速に代金を支払つているということも申せないような実情でございますのは、たいへん遺憾でありますが、この貿易資金につきましても、私どもといたしましては、なるべく拡張していただきまして、そういう非難のないように、迅速な支払いをいたすようにいたしたいと考えまして、目下関係方面と相談を進めつつあるような次第でございます。
なお電力等の問題につきましては、貿易庁といたしましては、こういう方面についても、でき得る限り輸出産業の重要性に鑑みまして、優先的な扱いを受けられるように、関係方面に懇請をいたしておりますが、これらの点につきましては、日本経済の全般的の見地から関係もありますので、経済安定本部の方から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/37
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038・永野重雄
○永野政府委員 先ほど中小企業は輸出産業に対して重要な役割をもつておるにかかわらず、電力あるいは労務の問題について、さような意味の取扱いは受けていないというお話がございましたが、先ほど申しましたように、輸出産業に対します中小企業の重要度というものは、政府といたしましても、十分これを認識して、いろいろな手段、また近く具体化していきたいと考えておりますような手段をもちまして、振興策を考えておるのであります。ただ従来までのところ、ともすれば電力の規制等が中小工業、特に雑貨産業等について強く受けておるというようなこともあつたのであります。これは従来は日本の産業の面から考えまして、石炭とか、鐵とか、あるいはその他の重要産業の方が、より角度が広い、あるいはより重要な処が今までの面から考えると強かつたということでございまして、今後輸出がどんどん盛んになつて、これがまた日本の再建の一番有効的な手段であるという建前からしまして、輸出できるものに対する諸手段は、金の面でも先ほど申しました通りですが、同時に電力の点につきましても、最も重要度をもつて考えたいと考えておるのであります。従いまして、これに対する他の手段につきましてもそうでありますが、労務等につきましても、どうしても足りないというようなことがあれば、それはいろいろな手段を考えなければならぬと思いますが、これは最近の諸情勢から考えますと、人手等については、さほど不便はないのではないかと考えます。ただその労務者の扱い方としましては、これは他の重労働等に働いている労務者と、この雑貨産業等中小企業に働いておる人たちの実情等を勘案して考えなければならぬのであります。現在までのところでは、たとえば非常な重労働者、あるいは炭抗の中で働いている労働者、あるいは船に乗つて過重な労働をしている人たちとかいう人と同程度であれば、同程度に考えなければならぬのであります。ただいまの程度でがまんしていただける。そのかわりほかの資材なり電力の方面なりで万全の配慮をしていけば、仕事が順調にできるということであれば、そういうふうに考慮していきたいと思います。決して軽く考える意味で労務加配の問題なり、あるいは従来の電力の配当量の問題を考えるという意味でないことを、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/38
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039・笹口晃
○笹口委員 なお先ほどの新井政府委員からの御答弁中、貿易資金の問題でありますが、これはきわめて重要でもありますし、現に今までの輸出しておりまする業者が、この問題で非常に行脳んで、場合によつては輸出を放棄しようというような考えすらもつような人も出てきておるのであります。今御説によりますと、十分努力するというお話でございますが、一体貿易資金のわくというものが、どの程度に認められ、しかもいつごろ拡張されるお見込みであるかどうか、これをひとつはつきりとお伺いいたしておきたいと思うのであります。
それから今永野政府委員からのお答えの中で、私どももやはり何を重点とすべきかということについては、よく了承しておりまするが、あまりにも従来の輸出方面の、殊に雑貨業者等が恵まれな過ぎる。今お話ような労務者の方の問題にいたしましても、大体重工業に従事いたしておりまするものは、労働条件等も労働組合法に測りましたきわめてりつぱな規律をもつてやられてれておりまするが、こういう軽工業、家内工業的なものに従事しておりまするものは、その点もきわめて不明確なのであります。言葉をかえて言いまするならば、相当過重な労働を余儀なくされているというような面も見えまするし、殊に深夜業の問題、これは期限をきめていついつまでにというような厳重な期限がございまするだけに、この輸出に関しまする業者は、特に昔から習慣といたしまして、その期限に間に合わせるためには万難を排して努力をする。これは過去の習慣からかようなことが出てきておるのでございます。このときに労働者の諸君が、やはりわれわれは制限の時間があるからといつて、その制限時間で仕事をやめるというようなことになりますると、これはせつかくの船に間に合わないというようなことがございまするので、この点は輸出方面に関係している労務者の諸君も、非常によく理解されまして、あるいは深夜業を行つてまでもその船に間に合わせるというようなことをよくいたすのであります。こういうような場合に、一番の悩みは食事の問題であります。殊に現在のような状況で、さような場合の食糧をどうするか。しかたがございませんから、輸出業者はやむを得ずきわめて高いやみの食糧をむりして購入いたしまして供給するというようなことで、今糊塗いたしておるのでございますが、こういうようなことについても、やはりある点実情をお認めになつて、政府といたしましても、多少奨励的な意味も含めた加配米というようなものも給与さるる必要があるのじやなかろうか。そうすることによつて、労務者が国家の重要産業に従事しているのだという意識を非常に明確にさせる効果もあろうかと考えるのであります。この点については、ぜひとももう一応御考慮くださいまして、電力の問題等と併せまして、今後適当な改善をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/39
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040・新井茂
○新井政府委員 貿易資金の限度の拡張の見透しの問題でありますが、ただいまのところでは、いつごろまでにというはつきりした期限を申し上げることは、はなはだ残念ながらその時期に至つておらぬことを御了承願いたいと思います。私どもといたしましては、どうしてもこの限度は拡張をしてもらわなくちやならぬと考えまして、できる限り早くこれを実現していただくように、最善の努力をいたしておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/40
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041・笹口晃
○笹口委員 くどいようですが、どうも今のお答えでは私どももその点はきわめてどうかと思うのですが、貿易業者は、さつきお話ししましたように、一・四半期ですから、四月から六月までの間に、これに納めた品物の金がもらえないで今困つておる。それを貿易庁の方に請求いたしますると、わくいつぱい使つてしまつているから待つてくれ、こうなつてきますと、大きな業者はよろしいが、今日のような金融難の状況において、銀行からさらに金を借りるわけにもいかないし、あとの手を打つこともできないし、どうにもこうにも行詰つて、さつきお話したように、これじや貿易などはやつていてもしかたがないからというので、放棄しようとまで、極端に考えている人も私は承知している。これについては、政府はもう少し貿易というものが大事だとお考えになるならば、この資金を獲得することに、もつと熱意をもたれてよろしいのじやないか。私は今大体どの程度でいつごろくらいのお話は承れると思つておつたのですが、きわめておざなりな、いつになるやらわからぬ、わくもどの程度になるやらわからぬ。こういうことでは、今後の貿易を一体政府の方でどういうふうになさつていくつもりか。これからはどんどん、バイヤーも来ておりますし、商談も成立しております。これが勢いこんでおりますから、業者といたしましては一生懸命つくる。品物をどんどん出すは出しますが、さてその金がいつもらえるかわからぬということでは、今後新しく貿易に参加してくるようなメーカーなども、はなはだ躊躇するのではなかろうかと考えるのでありますが、これはどうも新井政府委員だけでお答えできなかつたら、適当な時期に、もつと明確にこの点はお答えできるようにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/41
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042・新井茂
○新井政府委員 ただいまたいへんおしかりをこうむりまして恐縮でありますが、私どもは熱意において欠けておるとは決して考えておらぬのであります。これは財政当局のいろいろな意見もありまするし、またその他関係方面におきまして、どの限度に拡張するかということにつきまして、いろいろ御意見がございまして、ただいままで最後的の決定に至つておらぬような実情でございます。昨日参議院におきまして、この法案の予備審査がございましたときに、商工大臣より大体今議会、もつともこの議会ということにつきましても、いろいろやかましく申すと、議会の方で会期をおきめになるわけで、たいへんむずかしい問題でありますが、できれば今議会開会中に、何とかして法案を出すようにしたい。さようなことを御答弁しておられましたので、その辺で御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/42
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043・福永一臣
○福永委員 私は新井さんに輸出原材料の関係につきまして、現在及び将来の問題についてお伺いしたいのであります。
先般この委員会において業者を呼び、その声を聴いたのでありますが、そのときに要望の一つといたしまして、原材料を確保してもらいたい。従来はアツプリケーシヨンを出しましても、貿易庁の方で原材料の手当ができるものはG・H・Qに出すけれども、見込みのないものはみんな机の申に入れてしまつたというわけであります。現在におきましては、いよいよ貿易もこれから再開されまして、本格的になるのでありますが、貿易庁といたしましては、この輸出原材料のわくを、自分で確保されるという計画がありますかどうか。おそらくあると思いますが、その計画について承りたいと思います。私が聞きますところによると、商工省が大体物をもつておつて、国内の必需品を賄つております関係上、輸出に対しましては冷淡である。そうしてそれをもつておつても、なかなかよこさぬということで、貿易庁と商工省との間に、非常にしつくりしないところがあつたのではないかと、私は漏れ聞いております。また今後案本がその上に立ちまして、どういう采配を振られますか、その点を新井さん、あとに永野さんにもちよつとお伺いしたい。
第二点の将来の問題は、従来綿花、羊毛といつたようなものが、政府対政府の加工貿易であつたのであります。そうしてそれが実施されてきたのでありますが、今後は個人取引ベーシスの上に立ちまして、輸出用原材料をその個人々々が輸入いたしまして、その製品を輸出するというやり方が、当然促進されなければならぬと考えます。これについて貿易庁及び案本の御見透し、あるいは御意見を承りたいと思います。またできますならば、特にどういう品物についてそのやり方が可能であるか。またそういう可能となるための前提条件として、当局が考えておられるところのものがありましたならば、お示しを願いたい。この二点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/43
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044・新井茂
○新井政府委員 輸出品の原材料の問題でありまするが、従来は実は輸出品用の原材料として、物動計画の実施の総合計画の中に特掲を見ておりませんで、従来の計画はただ物品別に原材料を計画しておつたというふうな関係からいたしまして、どこからどこまでを輸出品の原材料として認めるかという点につきまして、必ずしも明確でなかつたために、あるいは御指摘のような遅れるような場合も、必ずしもなかつたとは申しかねるのでありますが、この点については、今後の計画においては、輸出品の原材料はすべてはつきりと特掲をしていただきまして、そういう問題の起らないようにいたしたいということで、経済安定本部等にもお願いをしておるようなわけでありまして、これは近く私どもの期待通りに相なるように、期待をいたしておるわけでございます。なおこの点については、経済安定本部からもお答えがあると思います。
それから個人のクレジツトによつて原材料を輸入して、輸出品をつくるという点については、従来の綿花等の関係は、御承知の通り関係方面において、日本の政府の責任においてすべてやるという方針のもとに、輸入を認めてもらつておるような関係でございまして、これについては、政府がすべて自分で所有権をもつて、加工をやつておるということになつておりますが、そうでなく、外国の業者が自分の責任において、日本の業者にクレジツトを与えて、商品をつくらして、輸出をしてもらうというふうな約束でも、できるようなことでありましたならば、そうして私どもとしてはそれを期待いたすわけでありますが、そういう状態でありましたならば、必ずしも政府として自分で所有権をもつてやつていくという必要もございませんので、これは業者の力において、そういう原料を輸入いたされて、輸出品をおつくり願うということは、たいへん結構なことと思う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/44
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045・藤澤次郎
○藤澤政府委員 原材料のことについて、新井政府委員からお答えがありましたが、案本の方の立場から少し申し上げますと、御案内かと思いますが、最近関係方面では少くとも二箇月以前に、輸出品に対する生産計画というものを与えてくれるのであります。ですから十月のものに対しては八月の初めに、大体こういうものを出すのだ。ほかの方面からいえば、輸出ができるということであります。ですからそれに対してわれわれの方は、貿易庁からそれの回収を受けますとともに、寸刻を争つて案本内における生産、動力の方面と十分に協議して、貿易局が中心になつて、それに対する資材、動力を割当てることになつております。ですから今後は一種のアツプリケーシヨンを受けますと、かような方法によつて特掲品に対する資材も十分得られる。特掲されてなにものにつきましても、ただ野放しにうつちやつておいては困るということで、貿易庁とともにわれわれも大いに力を尽して、特掲品でないものも斡旋する。こういうことにするつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/45
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046・岡野繁藏
○岡野委員 新井さんに申し上げるのでありますが、新井さんは何もかも御存じだと思うことが無理だと思いますが、先ほど茶と生絲の輸出の将来の見透しについて委員からお尋ねがありましたお答えのうち、お話を聴いておりますと、将来たいへん輸出の見透しがいいように、新井さんのお話から印象を受けたのでありますが、私はそう考えないのであります。お茶に至りましては、新井さんは要するに輸出し過ぎた。向うにストツクが多くあり過ぎるというお答えでありまして、またこのストツクがさばければ、いずれは出るだろうというようなお答えでありましたが、そうでなく、私は茶はここ数年間戦争によつて日本からの輸入が杜絶され、しこうして向うの茶を愛喫しておつた人たちは、その嗜好物が数年間に変わりまして、再び緑茶をのむという嗜好の気持が変わつた。そこで茶が売れない。もう一つは日本が戦争中に茶の生産ということを怠つて、結局茶畑はほとんど半分以上が麥畑になり、芋畑になつて荒廃しているこの茶園から出まするお茶が、かつて戦前のような優良なものは出ないのであります。この二つの観点におきまして、私は茶の前途はこの二点に対して政府も非常な熱意を出して努力し、また民間もともに熱意を出してこの原因を除去しない限り、とうてい将来光ある茶の輸出はできないと思うのであります。そこで最近来朝いたしましたバイヤーのお話を聴きましても、やはりこの二点を強く主張しております。先ほどこれは日本の貿易再開後の今の一般の輸出品とは違うとおつしやつておりますが、なかなか国にとつてはたいへんな問題であります。そこで政府は向うからみえましたバイヤーの御意見も聴き、——これは私自分が貿易をやつておりまして、その二点以外ないと思うのでありますが、茶の嗜好というものは、外人はわれわれ日本人の考え及ばない嗜好の気持をもつております。たとえばウーロン茶を愛喫する人もあり、あるいはインド茶、あるいはアツサム茶というようなぐあいに、各人が各様の茶をのんでおるのみならず、また一本の茶の木から数種の茶を案出して、そうして茶を楽しんでおるのであります。そこでこういうような嗜好物の輸出ということは、私はやはりその嗜好物が移り変るこの危機に際して、貿易再開に当たりまして、政府はこれが再び行けるように宣伝しなければならぬ。また品質の改良もしなければならぬ。また同時にこの輸出につきまして、いろいろの指導がなされなければならぬ。そしてこれに対する政府にもつと大きな熱意がなければならぬと思うのであります。静岡県に参りますと、業者が日本茶が行かなくなつた。だから紅茶にかえようという暴論を吐くのでありますが、とんでもない話だ。日本の紅茶なんというものが外国に行くというようなことを考えたら、大きな間違いである。ジヤワにおきましても、インドにおきましても、その他南方におきましても、日本の紅茶が世界に行くと考えるのは間違いだ。やはりどうしても緑茶が行かなければならぬ。日本の茶の一つの特徴というのは、この今の南方の紅茶におきましては、ただできるまま摘んでいくのでありますが、日本ではそれを刈つて、一つの株からたくさんの芽を出させるのであります。これが日本の茶の特徴であります。芽を出させるということは、たくさんの芽を出させるのでありますから、肥料をやつて、そうして芽をたくさん出すようにしなければいい茶はできないのであります。そういうことを改善しないで、茶の輸出を将来夢みることは、とうてい不可能だと思います。
もう一つ生絲でありますが、お説のように生絲は将来そう悲観したものでないというお話でありますが、生絲はすでに戦前ナイロンに押されかかつていたのであります。数年の間にナイロンはすべての研究が積みまして、生絲以上に研究が達成せられました今日において、この生絲の将来にも、私は非常な熱意をもつて、たとえば蚕業の研究所をつくるとか、あるいは羽二重織物の研究所をつくるとか、いろいろ戦前以上の努力を払わなければ、とうてい世界の市場に再び出ていくことはできないと思うのであります。私はこういう悲観的な観点に立つて、これを悲観してしまわずに、こういう悲観の暗いどん底にあるから、これを熱意をもつて再興しなければならぬという御熱意を、政府御当局に抱いていただきたい。また先ほど笹口委員は、どうも御答弁が熱意がないというお話でありましたが、私も聴いておつて同感の感じを抱くのであります。熱意がないということは、失体かもしれませんが、どうもお座なりの御答弁のように思うのであります。お座なりでないかもしれませんが、しかし実際に業者がもらうべき代金がもらえないでいるということは、容易ならざる苦痛であります。商工省あるいは貿易庁のあの窓口へ行つたり来たりして汗だくだくになつたら、もう銭金にかえがたい。やめてしまへという気持になつてしまうのであります。これは官庁の方では、その気持を受けないのでありましようが、実際ここに出入しております業者というものは、血の汗を出すのであります。そこで私は貿易再開ということで、貿易が国家のために必要ならば、貿易庁の官吏というものは、他の省に比べて、もつと熱意をもち、もつと真剣にやつていただきたいと思うのであります。外国に例をとりますならば、経済危機の際会いたしましたときに、各国の経済省の役人は、徹夜いたしまして、その経済危機突破に努力いたします姿を、われわれは目のあたり見ておるのであります。私はちようどその危機に際会しておる日本の今日におきまして、特に国民の与望の的となつております貿易庁は、私はそういうお気持をもつていただきたい。また貿易そのものは生きたものであります。理屈ばかりではございません。実に迅速を尊ぶべき業務でございますから、これにおきましても、特に私は迅速を尊んでいただきたいと思うのであります。最近参りましたバイヤーの言を聴きましても、貿易庁の役人が、ものを知らな過ぎるという批判があるのであります。まことに残念なことでありますが、それはもつともなことだと思うのでありまして、将来一段の御勉強を願つて、そまうして日本の貿易再開のために、真に御努力を傾注していただきたいと思うのであります。一言申し述べる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/46
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047・新井茂
○新井政府委員 第一点のお茶、生絲の輸出の問題でありますが、品質の改善なり、あるいは宣伝の必要なことは、御指摘の通りのことでありまして、私の申しましたのは、将来年々輸出の希望が少くなるかというふうな御趣旨の御質問のように伺いましたので、その辺のことについて意見を申し上げたわけでありますが、お話の通りわが国のお茶は戦時中木の手入がたいへん悪かつたために、品質が落ちておるということも事実でありますし、それからまた戦時中、これはお茶に限りませんが、輸出がなかつたために、嗜好がほかに移つておるというふうなこともあるであろうと思いますので、宣伝なり品質の改善等につきましては、私どもとしても、極力関係方面と協力いたしまして、最善を尽くしてまいりたいと思います。それから熱意が足らぬというお話でございましたが、これは私どもとして十分お言葉は身にしみて、今後努力をいたしたいと思いますが、しかし貿易庁へおいでになつて見ていただけばわかるのでありますが、貿易庁の官吏は、一々をとつてみては、ほんとうに涙ぐましいような努力をいたしておるのでありまして、よくあれだけの人数で、あれだけの仕事ができると、私どもとしては考えておるわけであります。従いまして、御鞭撻はまことにありがたいわけでありますが、熱意が足りぬ、あるいはまた働いておらぬというふうなことにつきましては、私どもといたしまして努力はむろんいたしますが、その辺の実情も十分御了承を願つて、今後とも御鞭撻をお願いいたしたいと思うのであります。御注意の点は、十分身にしみて、今後とも努力をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/47
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048・喜多楢治郎
○喜多委員長 お諮りをいたします。別に発言の通告もありませんので、質疑はこれで打切ろうと思いますが、よろしうございますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/48
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049・喜多楢治郎
○喜多委員長 御異議なしと認めます。それでは本案に対する質疑はこれをもつて終了いたしました。
本日はこれをもつて散会いたします。
午後零時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00719470823/49
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