1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年八月二十七日(水曜日)
午前十一時二十七分開議
出席委員
委員長代理 理事 佃 良一君
理事 石神 啓吾君 理事 笹口 晃君
理事 細川八十八君 理事 福永 一臣君
佐竹 新市君 林 大作君
山口 靜江君 井村 徳二君
岡野 繁藏君 櫻内 義雄君
山本 猛夫君 鈴木 仙八君
關内 正一君 唐木田藤五郎君
寺崎 覺君
出席政府委員
貿易廳長官 永井幸太郎君
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本日の会議に付した事件
貿易組合法を廃止する法律案(内閣提出)(第
三九号)
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001・佃良一
○佃委員長代理 ただいまから会議を開きます。
本案についての質疑は前回にて終了いたしましたので、貿易組合法を廃止する法律案を議題として討論にはいります。笹口晃君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/1
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002・笹口晃
○笹口委員 ただいま議題となりました貿易組合法廃止に関する法律案でありまするが、その土台となつておりまする貿易組合法は、昭和十二年八月日華事変が始まりました当初の制定にかかわるものでありまして、その内容は多分に戦時的な色彩を濃厚にいたしておるものでございますから、今日においてこれを廃止いたすことは、もとより当然であり、私どもといたしましても、この廃止については賛意を表するものであります。しかしながらこの組合法を廃止いたしました後、あたかも貿易再開を得ました今日におきまして、はたして廃止したこのままの姿で、しかも現在の貿易公団の運用等を見ておりまして、このままでよろしいかどうかということを、はなはだ疑問に考えるのでございます。言うまでもなく、今後における日本産業の再建は、貿易振興のいかんにかかわつておるということは、もうすでに世の定説でございます。これに関しまして、特に政府自体の用意が万端滞りなく行われてきたかどうかということにつきましては、いろいろ批判すべきものがあろうと存ずるのであります。大きな点を申し上げますれば、まず総合的に貿易再開となりました後に、はたして日本といたしましては、どの方面にどういう品を振向けるべきか、これに関する資材等は、どのような手当をなすべきかという準備をいたさなければなりませぬし、また輸入も先日マッカーサー司令部の非常な好意によりまして、五億ドルに上ります貿易基金を獲得することができたのでありますが、金が獲得できましても、今後何の品をどのくらい輸入するかというような総合的な計画すら、今日のところでは、まだ国民の前に明確にされておらぬというような点を考えて見ますときに、いろいろな準備が非常に不行届であつたということを、私どもは感ずるのであります。その他貿易業を振興いたしますのには、ここにいろいろ隘路とも称すべきものが山積みいたしておるのであります。単に貿易組合法を廃止し、貿易公団に今後の貿易の運用を任せておくということだけで、はたして日本の貿易再建振興ができるかどうかということにつきましては、われわれ非常な疑問をもつものでございまして、この点については、政府は従来努力は払われておつたのでありましようけれども、さらに二倍し、三倍するところの御努力を払つていただかなくてはなりませんし、また私ども国政に参与いたしまするものとしましても、この点についての十分な推進力とならなくてはならないと考えておるのであります。
かような意味におきまして、私は本案を賛成するにあたりまして、これに対して各派の御了解を得まして、各派共同の提案といたしまして、附帯決議をここに提出いたしたいと存ずるのであります。附帯決議の趣旨といたしまするところは、ただいま簡潔に申し上げたようなことが根本の理由に相なつておるのでございまするが、その内容は附帯決議の案分を朗読いたしまして、各位の御賛同を仰ぎたいと考える次第であります。
貿易組合法を廃止する法律案に対する附帯決議
貿易再開に対処する政府の諸準備については、遺憾ながら万全の措置を講じたものとは認めがたい。本案による貿易組合法が廃止せられた後の四貿易公団の運営如何は、日本経済再建の前途を左右するものであり、従つて政府は公団の組織、機構、運営の民主化を計ることに渾身の努力を傾倒すべきであり、官僚の独善的施策を排し、既成特権の復活には厳重なる警戒を要するものと認める。
次に政府は輸出産業者に対し、資金資材の優先的割当、技術の近代化につき従来の机上計画を一擲し、強力なる施策を実行することが肝要である。
更に輸出品買上価格については、その特性と輸出振興の緊要性に鑑み、内需向価格と異りたる合理的な特殊価格を裁定するよう特段の配慮を望みたい。
以上が案分でございます。この内容は御説明するまでもなく、案分によつて明瞭であろうと存じまするが、このほかにもたとえば貿貿の為替レートについて、やはりここの業者がその内容を一刻も早く知りたがつておるというような事情もございまするが、こういうことに対しましても、政府が格別の意を用いられまして、特殊な手段を講じて、これについて業者の真の満足のいくような御努力を払つていただきたいと思いまするし、まだまだこまかい点になりますれば、今後貿易の振興をはかりまするためには、非常ないろいろな努力が必要であるとは存じまするが、要は先ほど申し上げまする通りに、日本経済再建の根本が貿易振興にあることを十分に念頭においていただきまして、今申し上げました附帯決議の趣旨に測りまして、政府は今後一層積極的な施策を実施せられるよう希望いたすのでございます。
本案賛成の理由を申し述べ、併せて附帯決議の趣旨弁明をいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/2
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003・佃良一
○佃委員長代理 山本猛夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/3
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004・山本猛夫
○山本(猛)委員 私もきわめて簡潔に本案に対する賛成の言葉を申し上げます。
本案に対しては賛成であります。賛成でありまするが、今後これが廃止せられました場合、公団法によつてできております貿易公団が、はたして日本これからの貿易に対する万全の策を講ぜられるや否やということに対しては、大いなる疑問をもちます。よつてだたいま附帯決議として述べられました内容は、貿易庁におかれましても、篤と御考慮を願いたいということが一つと、それからもう一つの問題は、先刻来われわれはでき上がりました公団のまずもつて、機構に対して検討をいたしたいというようなところから、とりあえず人事の課長以上の経歴を知りたいという資料を要求しておりましたが、いまだに出ておりません。そういうようなことは、なるべく速やかにひとつやつていただかなければならないと思う。そしてそれがいつ出されるのかを知りたいと思います。それからもう一つには、貿易庁の中に、各業者から嘱託と称する人間が多数にはいつておるかのように聞いておりますが、もしそういうようなものがはいつておるとすれば、どういう人たちがはいつておるかということを、われわれは一応知りたい。そしてそれは何の必要があつてそういうものがはいつておるかということを知りたい。それからもう一つには、先般われわれはこれからの日本のあり方は貿易経済立国を国是としていかなければならないという目標に進んで、われわれは貿易に対しては、この委員会をあげて、非常な注目を払い、かつまた努力をしようとしておるのでありますが、その前提といたしまして、今までやつてきた日本貿易の様相というものを、まずもつて知りたいというようなところから考えまして、とりあえず戦争中にやつていた交易営団のやり方を知りたい。よつてその資料を提供されたい。ところがはなはだもつてわれわれの解しがたい御回答を口頭をもつて貿易庁からいただいた。そんなものは貿易庁は知らぬ。貿易庁は関係ないのだ。だからそういう資料を提供する必要はない。こういう御回答であつたと聞き及んでおります。これはまことに言語道断であつて、奇怪至極な御回答だと存じます。そうして今日に至るも、相当の日数が経つておるにもかかわらず、その資料の提供に接しておらぬということは、まことに遺憾であります。本席には貿易庁の次長もおみえになつておりますから、さような逃げ口上は言われないで、責任がないということであれば責任がないということを文書をもつて御通告願いたい。しかしわれわれは交易営団は貿易官庁ではなかつたに違いありませんけれども、戦争中官庁の監督下にあり、官庁の指導下にあつてやつたいたということは明らかである。そうして交易営団というものは、終末をつけて以来どうなつておるかわからない。世間に伝えられるところによりますと、今合同団体としてできた貿易公団が遺産を相続しておる。そうして交易営団の資産というものは雲散霧消するようなかつこうにつくり上げられてしまつて、あるいは有価証券にかえられた。交易営団に所属していた物資は横流しをされたというように、いろいろと伝えられて疑惑を投げられておる。今日われわれは政府が指導し、また政府が戦争中おつくりになつた交易営団のあり方を知つておきたい。これはどこまでも日本貿易の備える一つの用意といたしまして、従来行われておりました日本貿易のあり方を知りたいと思いますから、どうか貿易庁が御提供願えるというのであれば、資料を御提供願いたい。資料を御提供願えないというのであれば、その責任の帰趨を明らかにして、御同答を願いたいと思います。どうかさような意味において、とげとげしく申し上げて恐縮ですが、何といたしましても、これからの日本の再建には貿易というものが重要なことであるということは、申すまでもないのでありますから、どうかさように願いたい。そうして一つには貿易公団のやり方でありますが、貿易公団が今後やつてまいりますのに、おそらく中小の業者、殊に中小の産業機関というものを日本でソシヤル・ダンピングの行われておつた昭和九年の統計から見ましても、全日本の工場数の七十何パーセントまでは、中小の生産工場から出ておつたものであるのであります。そういうようなことで、今度この貿易公団というものは、貿易の対象たる貿易品をつくる中小の産業機関に対して、どういうような考え方をもつてやつていくかということを、監督官庁である貿易庁からお答え願いたいと思います。質問をかねた賛成意見で恐縮でありますが、ひとつさようにお願いいたします。それからこれは別問題でありますが、中国及び朝鮮、仏印、シヤム、ジヤワ等に対しては、相当数量輸出超過になつておると聞き及んでおりますが、これら受取勘定は対米輸入支払超過分と相殺することができるのかどうか。為替裁定の場合にそれが認められるかどうか。あるいは認められないとすれば、こういうようなものは、どういうふうにして決済していくかという見透しを、ひとつ伺いたいと思うのであります。かようなお伺いを附け加えて本案に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/4
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005・福永一臣
○福永委員 自由党といたしましては、この共同提案に対しまして賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/5
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006・唐木田藤五郎
○唐木田委員 国民協同党といたしましては、一言賛成の意見を申し上げたいと思います。
昭和十二年にきめられた貿易組合法が、この十年間のめまぐるしい、驚くべき大転換の跡を顧みれば、もはや残骸であることは言うまでもありません。貿易組合法の廃止は、当然過ぎるほど当然であると思います。この意味において、私は賛成いたします。ただ心配は、この貿易組合法が廃止されると同時に生まれてくるところの貿易公団というものが、いかなる角度に立ち、いかなる心構えをもつて、何をしようとするかまだ未知数で、楽しみでもありまするが、実に不安にたえないものがあります。従つてかつて大政翼賛会というものが生まれようとするときに、私はあれはぬえ的存在であるといつて罵つた一人であります。いやしくも天下の動きに先んじようとする人であるならば、私利、私欲を捨て、自己をなげうち、熱血を傾けて天下の公党、パブリツク・パーテイをつくり、そうして自分の国家の隆盛を願うことは、あまりにも当然なことであります。国家からたくさんの費用を分取りして、そうして政党でもなく、精動でもない、すなわち妙ちきりんなぬえ的な存在、これが大政翼賛会の姿であつたと私は信じます。この意味において、私はこの大政翼賛会とはぬえ的存在である。政党か、あらず、精動か、あらず一体何だといつて、これに対して思う存分嘲笑を浴びせかけたことを、今思い起すのであります。それとこれとは問題は違いますものの、一体公団というものの本質が、この時勢上やむを得ないとしても、本来あるべき姿では断じてないと思う。このあり得べからざる姿を容認して、この姿を新しい日本の新しい運命を開拓するお役に立たせようとするためには、その衝にあたる者、運用にあたる人々の御苦心は、実に容易ならぬものがあると思います。それだけに御苦労のほどは十分にわかりまするが、今までの明治、大正、昭和の八十年にわたる日本民族の発展の跡を顧みて、特に役人の心構えというものに対しては、非常な遺憾そのものの感じをもつておるものであります。特にいまさら泣言を並べるものではありませんが、大体農商務省時代から商業関係の役人は割合相手が少くあり、そうして実際上その当時の有様を顧みますれば、あながち政府とか役人の指導を受ける必要がありませんでしたから、農商務省が農林省と商工省にわかれてからも、大体において商工省の役人は人民の声なき声を聴き、形なき形を見るというような政治的訓練が欠けるものが多分にあつたのであります。商工省になつてからすでにそうであつたが、それがさらに軍需省という妙ちきりんな形になりましてから、命令することだけがわかつておつて、ほんとうにこの仕事に携わつておる人たちの血の出るような、涙のにじむような気持がわからなくて、この時勢になつてしまつた。ですからそれらの人々は決して悪意をもつてものを見、ものを考えなくても、結果としては過失致死罪、過つて人を殺すというような結果を招来しないとは言い得ないと思います。たくさんあり得るのであります。ですから私はそういう意味において、この貿易組合法の廃止はもとより大賛成であるが、さりながら、やがて生まれ来るであろうところのこの貿易公団なるものの運営いかんが、かかつて新しい日本の新しい運命を打開するか否かにあるということを思いまするがゆえに、重ねてこの言葉を申し上げておきたいと思うのであります。私過日も商業委員会の席上において、自分の身のまわりにあつたところの一つを御参考に申し上げて、政府当事者の御注意を喚起したのでありまするが、私の郷里信州の千曲川のほとりに、信州が高原地帯であり、比較的精密工業に適当しているゆえをもつて、農村工業、すなわちやがて来るであろうところの農村恐慌に備えて、労力を調節するという眼目に基いて、時計工業を開いた。これはいうまでもなく農村工業でありますから、県の農業会、あるいは県庁の経済部の農業関係の諸君によつて指導され、鞭撻され、あるいは地元の人たちの熱意に基いて起つたのであります。さいわい厚生省からは、この企てがいいものとして地方の農村の子弟に精密工業の観念をより多く与えたいということでもつて、身分不相応な補助も与えられ、激励もされ、あらゆる面から祝福されて、この事業はきわめて順調に進んできたのであります。ところが、さて本格的な運営にあたつて、資材を必要とするために商工省に参りましたところが、あにはからんや、商工省は知らぬ。そんなものはだめだ。農林省の指導を得たのだから、勝手にしろ。商工省の知つたことではないと一顧も与えない。その人は地方の有力者でありましたが、血の涙をのんでくやしかつたと言つておりました。これは単なる一つの例に過ぎません。地方の農村の人たちからみれば、商工省も農林省も、大蔵省も、ともにひとしく日本の政府であり、ともにひとしく自分たちを指導し、鞭撻して、再建日本の原動力になつてくれる人々であるということを信じております。こういう人たちに対してそういうべらぼう千万な、まつたくこの世にあり得べからざることが、現実の問題としてあるとすれば、単に私はこの貿易公団に対して、今後のいき方に危惧を懐くだけでなくして、あるいは再びこの愚を繰り返すことがあるのじやないかということを考えておりまするがゆえに、はなはだくどくはありますけれども、重ねてこの実例をお耳に入れて、今後再びこの過ちを繰返さざらんことを念じて、ぜひ中小工業の振興によつて、これを中心とし、背景とし、これをバツクとして、日本の新しい運命が開拓できますように、官民ともに十二分の御協力、お力添えを願いたいということを重ねて希望して、この原案に賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/6
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007・寺崎覺
○寺崎委員 私は農民党を代表いたしまして本案に賛成し、さらにまた附帯決議の共同提案に賛成すものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/7
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008・佃良一
○佃委員長代理 以上で討論は終結いたしました。これより採決いたします。原案に賛成の諸君は起立を願いたいと思います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/8
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009・佃良一
○佃委員長代理 起立総員、よつて本案は原案の通り可決決定いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/9
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010・佃良一
○佃委員長代理 次に笹口晃君より提出せられました各派共同一致の附帯決議について採決いたします。本附帯決議に賛成の諸君の起立をお願いいたします。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/10
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011・佃良一
○佃委員長代理 起立総員、よつて本附帯決議は決定いたしました。
この際政府より発言を求められておりますので、これを許します。永井貿易庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/11
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012・永井幸太郎
○永井政府委員 貿易組合法を廃止する法律案につきまして、各派共同の条件附で希望案を附して御可決していただきましてありがとうございました。附帯決議の御説明中、笹口君より御指摘の諸点は、まことにごもつともな御注意でございまして、政府においても、必ずしも万全の準備が整うておるとは申しません。殊に回転資金の運用等についての基礎的の調査ということも、今安定本部その他関係方面と種々折衝協議いたしておりますので、できるだけ早い機会に、最善の計画が成り立つようにいたしたいと考えております。もつとも世界の経済情勢は刻々変つておりますので、たとえば先日ポンドがドルに転換するという約束を英国政府が撤回いたしたというように、世界の経済に非常な影響を与えるような事件が突発いたしますので、政府といたしましては、これに対処する確固たる案をただちに進めていくということにもいろいろ障害がありますので、そういうむづかしい情勢に処しておるということを御了解願いまして、政府においても、できるだけ笹口委員よりの御注意の点を心がけたいと思つております。その他公団に対する御注文、及び山本委員、唐木田委員よりだんだん御注意、御指摘を願いました点等は、十分留意いたしまして、御期待にできるだけ副いたいと思います。もつともこういうことは、政府がいかに努力いたしましても、そううまく行きませんので、あまり政府や公団にのみ期待をかけるということよりも、むしろ業者が大いに奮闘努力して、自分の力でどんどんやつていく。いたずらに公団の仕事、能力の足らぬことにのみ不平を言うということでなしに、業者そのものが自発的に大いに努力するという方にも皆様から御指導を願いたいと思います。それから箇々の事柄について御注意がありました中で、公団の課長以上の経歴を一応出せということでありますが、今商工省でこれをまとめておりますので、でき次第これをお出しすることができると思います。貿易庁に嘱託が民間の方からはいつているが、これはどういうことであるかという御質問でありましたが、これは終戦後貿易庁ができましたけれども、ちようど商売のことに堪能な職員というものが、そうたくさんいるものではありませんから、民間の各社からお願いして、嘱託になつてもらつておるのでございまして、これはやむを得ない便法であつたかと思うのであります。それから交易営団のことについて、どういうことになつているか知らせよという御質問で、貿易庁は知らぬという御返事を申し上げたそうでありますが、これはなおよく調べまして御返事いたしたいと思います。ここで御了解を願つておきたいのは、交易営団は閉鎖期間に指定せられまして、今閉鎖機関整理委員会の手に移つております。財産その他はすべて閉鎖機関整理委員の手に整理せられておりますので、そちらの方と連絡をとりまして、お知らせすることのできるものはお知らせいたしたいと思つております。これは今閉鎖機関整理委員の管理下にあるということを御承知おき願いたいと思います。
それから財産を貿易会に云々と言われたのですが、私はそういうことは万万ないと存じております。何かお聴き違いであると思つております。これはすべて閉鎖機関整理委員会の手にありますから、財産の移動等はできないはずであります。ただ交易営団がもつておりましたストツクの中で、輸出品に適するものを選り出して輸出の方に向けようということについて、今閉鎖機関整理委員と話をしております。貿易庁との繋がりはそれだけなのであります。
それから中小工業者に対する御注意、まことにその通りでありまして、せいぜいこの公団に対しまして、強く親切に中小業者と連絡をとりまして、中小業者の指導をいたしまして、中小業者が貿易振興のために、輸出産業進展のために大いに力の出ますよう、働いてもらうよう、公団の方とも連絡をとりたいと思います。
次に仏印、中国、ジヤワ等への輸出は、輸出超過になつておるが、その決済はどうなつているかというお尋ねでありますが、ただいまのところは、みな政府対政府の貿易でありまして、仏印、中国、ジヤワのみならず、今年になりましてから、輸出品の仕向け先が三十余箇国になつておりまして、これはすべてドル払いになつておるということをお答え申し上げます。
それから唐木田委員から御指摘になりました公団その他のことに対する御注意は、拳々服膺いたしまして、御期待に背かぬようにいたしたいと思います。信州の時計の製造に関することは、まことに遺憾なことであると思いますが、今後そういうことのないように、さらに各方面とも話合いをいたしたいと思つております。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/12
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013・山本猛夫
○山本(猛)委員 長官からのお言葉で大体了承いたしましたが、その間、私の聴き誤りかもしれませんが、あまり貿易庁や公団などに頼らずして、業者を鞭撻するように、あるいはまた業者が進んでやるようにというお話があつたかのように聴き及んだのでありますが、しかし、ただいまはG・H・Qの管理下にあつて、貿易庁が貿易をしていて、そうして先般来代行機関というものをお設けになつて、代行機関を通せずしては貿易ができない。今度は貿易公団法によつて貿易団ができて、これを通せずしては自由に貿易をやろうとしてもできないというようなかつこうになつておるのじやないかと私は考えるのであります。さようなことを言われますと、国民が完全に直接貿易ができるようになつたのかどうかということをお尋ねしたい。
それからはなはだ恐縮ではあるけれども、財閥貿易が解体されても、初代の貿易長官も何か財閥関係の会社からおいでになり、二代目の長官もさようなように聞いております。従つて貿易庁にはそういう方面におられた方が多数はいつておられるように思う。私の言葉を申し上げることをお許し願いますならば、財閥貿易はなるほど一応解体したけれども、その財閥貿易の残骸が残つて、日本貿易を再び壟断するようなかつこうになつているということが申し上げられるのであります。生産業者に対しまして伸びているその手を、大体において私は知つております。たとえば北陸の一例を言つてもそうである。東北の方面にも相当手が伸びておる。こういうようなかつこうで、そうして経験と称する美名のもとに隠れて、かつての実績のあつた人たちが第一線に立つて、日本貿易をやつているようなかつこうになつていることは、まごう方なき事実である。その場合に、官庁とか、貿易公団とかいつたものにあまり頼らないで、業者が勝手にやつていつてよろしいといつたようなことが、はたして言い得るかどうかということを、お尋ねいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/13
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014・永井幸太郎
○永井政府委員 ただいまの私の申し上げ方が多少悪かつたかと思いますが、とにかく民間の方からも、公団その他に対して自発的に協力を願いたいというような意味でありますので、どうかさよう御承知を願います。
それから貿易庁には初代、二代目の長官は、皆財閥関係でありましたけれども、実際のところ財閥会社から貿易庁えはいつて役人になつておられる人は、私の存じておりますところによれば、五指をもつて算うるに足らぬくらいでありまして、皆有能なしかも公平無私な人であります。私は断じて財閥色があるとは思いません。それで今なおその残骸が残つておるようなお考えがあるかもしれませんけれども、ほとんどそれは払拭しておると思うのであります。アンチ・トラストの方からもいろいろ御注意がありまして、できるだけそういう財閥色の払拭ということに努めておりますので、このごろの実情を詳しく御説明いたしましたならば、必ず御納得がいくと思います。ただいま輸出入業務に従事しております業者をずつとごらんくださいましたならば、大体財閥貿易的の色彩はよほど払拭されておると信じております。なおおひまでもありましてお立寄りくださいましなならば、業者の表でもお眼にかけたら、御納得がいくと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/14
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015・山本猛夫
○山本(猛)委員 大体御回答によりまして了承いたしましたが、実例をあげて申しますと、今社団法人で許されております貿易団体は、日本貿易会、社団法人の貿易経済懇談会、この二つに大体なつておるようであります。この団体をつくりました実情を例に引いて申し上げますと、日本貿易会は四団体が統合してつくられるに当りましては、貿易庁は最大なる支援を与えた。しかるに一方貿易振興懇話会が申請いたしましたときには、ああでもない、こうでもないと言つて、そうして内容を骨抜きにしてしまつた。しかも当時の貿易長官はこれをやめろうと言い、あるいは四団体に統合しろと言い、両者を比べてみると、まつたく想像のつかないような御回答を貿易庁がなすつたことは明らかであります。今後もいろいろと貿易に関心をもたれる方面で、研究会とか業者が集つて団体をつくつていくでありましようが、今後もさようなことがあつて、最前も申し上げたように、かつて日本に戦争を誘発し、また戦争中にやつていた人々のみがやつておる団体を擁護してこれに特段の援助を与え、これからできる新たな団体に対してはそれを屏息せしめようとしたり、援助を与えない。またもつていつた定款に対しては骨抜きにするような検討を加えることを、今後もやるかどうか伺いたい。
もう一つは、これから中小の企業を背景とする貿易機関の確立を、われわれはやつていきたいと考えますが、今後これらに対して、具体的な指導方針を貿易庁はおもちになつておるかどうか伺いたい。殊に唐木田委員から先刻もお話がありましたが、今後おそらく世界の食糧生産は飽和点に達する時代がくることは明白であります。農村の経済恐慌が必ずやつてくるという場合に、農村に輸出向けの工業をやらしていかなければならぬということは、すでに常識でありますが、これらに対する御方針が当局にお立ちになつておるかどうか、お伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/15
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016・永井幸太郎
○永井政府委員 大日本貿易会というのは、貿易振興協会とか貿易協会とかいうのが四つ集まつたのだと思いますが、今山本委員より御指摘の協会が貿易庁に呼ばれた当時のことは、私存じませんが、その当時の考えは、せつかく四つあるのを一つにまとめたのだから、なるべくそれにはいつたらどうだという話でなかつたかと想像するのであります。しかしいろいろな角度から見て、日本全国のいろいろの方面の人が一つの協会にのみはいらなければならぬという理屈はないのでありまして、おのおの特色を備えたそういう貿易振興に関する会ならば、できていつていいと思うのであります。そういう違つた協会とか貿易会をこしらえたいというようなお話がありました場合には、私どもはこれは歓迎いたしたいと思つております。中小工業家に対する具体的の振興策といたしましては、貿易庁において調査いたしました。輸出産業になるというようなものに対しましては、できるだけ外国の模様をも知らせましたり、その他金融のことにつきましても、あるいは産業復興営団とか、そういつた方面に対しまして、その輸出品の有望性というようなことを表明いたしましたり、そういつた方面の助長援助、協力といつた方面に対しまして、できるだけの協力をいたしております。なお指導もやつておるのでありますが、総合的の対策といたしましては、漸次ただいま参つておりまする外国貿易代表団等の注文振り、商売振り等を見まして、何分日本の経済界は日華事変以来約十年国際経済社会から孤立しておりましたので、ほんとうの方針なり政策を今樹立するということは、なかなかむずかしいことであります。ただいま参つております貿易団等との取引がだんだん進んでいきますうちに、わが国の輸出商品はどういつた方面に売れ、どういう物がいいのかというようなことが、だんだんわかつてくるだろうと思います。この戦時中の六年間、世界の輸出市場の変化は、非常な変化でありまして、これまでのような状態では、ほんとうの向うの状態が暗中模索なんであります。大体向うの状態が今後かわるがわる参ります貿易団によつてわれわれに明らかになろうと思います。その上で総合的な中小商工業の奨励、助長というようなこともさせたいと思います。ただいまのところでは抽象的な政策は立てられまするけれども、具体的に中小工業のうちで、どれをどう奨励助長していいかということは、はなはだ確固たる方針が立てにくいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/16
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017・山本猛夫
○山本(猛)委員 ただいまの御答弁では必ずしも満足はいたさないのでありますが、しかしお説のように、今日はまだ具体的な御検討が加えられない時期にあるということは認めますので、了承いたします。しかし最後に御注文を申し上げておきたいのであります。日本貿易会は四団体が統合しておつくりになりました。私が関係しておりました貿易経済懇話会もまた、当時の貿易長官から統合のお勧めを受けた。そして統合の場合にお伺いいたしましたところが、浅野良三君、高島君というような方々が来られまして、どうしても貿易というものは経験がなければやつていけない。だから経験のあるものを集めてわれわれはやつていくのだ。とりあえずそれには運営の方法からいつて、団体がここにあつてはそのわれわれの希望は達し得られない。よつて統合するのだということを承つておりまして、明らかに実績主義者の団体をつくるという方向であつた。その統合される場合の準備委員会に私も出席いたしましたが、これは間違いない事実であります。そんなようなことは許さるべきものではありませんから、さようなことを歯芽にかけるわけではありませんが、今後貿易庁におかれましては、いろいろなこの種の団体が出てまいるだろうと思いますが、特定の団体であつて、しかも在来貿易庁と陰に陽に繋がりのあつた人たちだけがやる団体にだけ特定の援助を与えるということは、今後はなさないように御注意を申しておきたい。新たに起るべき貿易に対するまじめな人たちが集まりました団体に対しても、同様な御処置をおとり願いたいと思います。
それから最後的な希望をとりまとめて簡単に申し上げておきます。日本は何といつても、貿易経済立国を国是としていかなければならない。すなわち国をあげて貿易国民にならなければならない。あげて貿易国民にならなければならないことは、常識であります。そこで在来の経験ということはまことに結構なことであります。経験のあるものでなければ貿易をやれないということは結構であります。しかし経験のあるものといつても、経験のあるものを基準としてやるということは、千年も万年も生きられるものじやありませんから、そういう人たちで今後貿易をやるということも許されない。今後日本貿易の性質からいきましても、経験のあるものも結構ですが、しかし国をあげて貿易国にならなければならぬ、貿易国民にならなければならぬということになれば、経験のないものに貿易を指導していくということも大事なことで——大事なことと言うよりは、むしろそれが必要なことでありますから、経験のあるものだけを特定な立場においてやるということは、おやりにならないように、それはなかつたといくら仰せになつても、現実の問題としてあるのでありますから、あつたことはいたし方ありませんし、今後はどうか国をあげて貿易国になるということに向つて、すべての立案をなさるように希望を申し上げまして、質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/17
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018・佃良一
○佃委員長代理 なおこの際お諮り申し上げます。衆議院規則第八十六条による報告書は、委員会の決議を要するのでありますが、委員長に一任していただきたいのであります。御異議ありませんでしようか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/18
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019・佃良一
○佃委員長代理 御異議の声を聴きません。御異議なしと認めて、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時一七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100104449X00819470827/19
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