1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年十月二十二日(水曜日)
午前十時二十六分開議
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議事日程 第四十号
昭和二十二年十月二十二日
午前十時開議
第一 國会法第三十九條第二項の規定による國会の議決に関する件(中央労働委員会委員)
第二 昭和二十二年度一般会計予算補正(第四号)(委員長報告)
第三 昭和二十二年度特別会計予算補正(特第一号)(委員長報告)
第四 裁判官彈劾法案(衆議院提出)(委員長報告)
第五 最高裁判所裁判官國民審査法案(衆議院提出)(委員長報告)
第六 裁判所法の一部を改正する等の法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第七 岐阜地方裁判所多治見支部を設置することに関する請願(委員長報告)
第八 廣島高等裁判所岡山支部設置に関する請願(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/0
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001・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。
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002・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。この際議事の都合により日程を変更し、日程第七及び日程第八を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/2
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003・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/3
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004・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 日程第七、岐阜地方裁判所多治見市部を設置することに関する請願、日程第八、廣島高等裁判所岡山支部設置に関する請願、先ず委員長の報告を求めます。司法委員会理事松井道夫君。
〔松井道夫君登壇、拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/4
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005・松井道夫
○松井道夫君 只今上程せられました請願第十一号、請願第二百八十一号についての司法委員会におきまする審査の経過を御報告申上げます。
先ず請願第十一号でございまするが、これは岐阜地方裁判所多治見支部を設置することに関する請願でございまして、伊藤修議員の紹介によるものであります。その請願の理由といたしまするところは、岐阜縣の多治見市及び土岐郡、惠那郡は、御嵩区裁判所の管轄であつたのでありまするが、御嵩町に区裁判所が設置されておりましたのは、御嵩町が古く中仙道の交通の要路といたしまして、宿場であり、当時相当栄えておつたというところに淵源いたしまするものでありまして、時世は移り変りまして、その後鉄道その他の交通路線が、御嵩町は非常な不利な立場に置かれまして、多治見市がその要衝に当りまして、これを人口の上から申しましても、或いは経済上の力から申しましても、多治見市に裁判所を置くということが適当と考えられる情勢になつて参りまして、今回多治見に簡易裁判所が設置されたのでございまするが、併しながら地方裁判所の支部がございませんために、地方裁判所事件、例えば今は窃盗罪でもこれが地方裁判所の管轄に相成りまする関係上、非常な不便な交通の路線によりまして御嵩に行かなければならん。そういう状況に相成つているのでございまして、尚多治見市をめぐりまするところの土岐郡、惠那郡も相当の人口を擁しますに拘わらず、やはり同樣の地理的、経済的その他の関係になつております。それで何とかしてこの多治見市に岐阜地方裁判所の多治見支部を設置して、その不便を除いて頂きたいというのがこの請願の趣旨でございます。司法当局におきましても夙にその必要を認めておられまして、この請願の趣旨には賛成であるということでございます。司法委員会におきましても、十分に諸種の事情を勘案いたしました上、この請願はこれを採り上げまして本会議の議に付し、更に内閣の方に通達いたすということが相当であるという議決に相成つた次第でございます。
次に請願第二百八十一号でございますが、これは廣島高等裁判所岡山支部設置に関する請願、太田敏兄君外二名の紹介になつておりまするものでございます。これは岡山市に廣島高等裁判所の支部を設置して貰いたい。かような請願でございます。その理由といたしまするところは、先程多治見支部設置の際に申上げましたが、地方裁判所事件は、刑事事件について特に問題に相成るのでございまするが、從前は短期一年以上の懲役に当るものは、これは地方裁判所に行つたのでありまして、その外の通常の刑事事件、例えば窃盗でありますとか、詐欺でございまするとか、そういつたものはすべて区裁判所の管轄であつたのであります。ところでその控訴審といたしましては、以前は控訴院の勿論繋属したのでございまするが、今度は高等裁判所に控訴をしなければいけない。この点は同樣でございまするけれども、例の簡易裁判所に繋属いたしまする事件が、先程申しましたように、普通の窃盗事件などもこれは地方裁判所に繋属しまする関係上、高等裁判所に持つて行かなければいかんということに相成ります。そういうような関係で、窃盗事件の控訴が岡山からわざわざ廣島まで参りまして審議を受けなければならんということに相成るのであります。從前は区裁判所で裁判を受けまして岡山の地方裁判所で解決ができたのであります。さような関係から、高等裁判所の支部を岡山市に持つて参りますれば、從前どおり岡山地方裁判所の窃盗事件に関しまする控訴が岡山市において解決することができるということに相成りまして、この交通難の時代、或いは非常に交通費その他宿泊料などの経済的の出費の多い時代におきまして、非常に便益を受ける。廣島に出なければならんということになりますると、今のような関係上、折角控訴いたしまして軽減を受けることができるような事件でも、そういつた不便の関係から控訴権を十分行使できない。控訴しないで済むというようなことに相成る虞れが十分にございます。それで是非この岡山市に廣島高等裁判所の支部を設けて頂きたい。こういう請願でございます。この問題は全國的に今論議せられておりますので、有力な從前の地方裁判所の所在地に高等裁判所の支部を設置して貰いたいという運動は全國的に起きておるのでございますが、この岡山支部設置の請願が先ず第一に採り上げられた次第なのであります。司法委員会におきましてもその趣旨は十分に痛感いたしておりまするので、何とかしてこの支部設置の問題は一般國民の要望どおり解決したいと存じておる次第であります。司法当局におきましても、今のような状況でありまして、特に岡山は事件数も非常に多いのでありまして、この請願の趣旨に賛成であると申しておるのであります。司法委員会は諸種の事情を勘案いたしまして、審議の結果これ亦本会議に付し、内閣に通達いたすのを相当とすると議決いたしました次第であります。皆樣のご賛同を得たいと存じます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/5
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006・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) これら二件の請願は、採択し、内閣に送付することに賛成の諸君の起立を請います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/6
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007・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつてこれら二件の請願は全会一致を以て採択し、内閣に送付することに決定せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/7
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008・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 議事の都合によりこの際日程を変更し、日程第四、日程第五、及び日程第六を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/8
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009・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。司法委員会理事松井道夫君。
〔松井道夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/9
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010・松井道夫
○松井道夫君 只今上程せられました裁判官彈劾法案、最高裁判所裁判官國民審査法案、裁判所法の一部を改正する等の法律案、この三案に対しまする委員会の審議の経過を御報告申上げます。
先ず裁判官彈劾法案についての提案の理由、内容を簡單に申上げます。
この法律は憲法附属の法典でございまして、憲法第七十八條には、「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の彈劾によらなければ罷免されない。」かような規定がございまして、裁判官は原則といたしまして、公の彈劾によらなければ罷免されないことに相成つておるのであります。更に憲法第六十四條には、「國会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する大願裁判所を設ける。彈劾に関する事項は、法律でこれを定める。」ということに相成りまして、國会に彈劾裁判所を置くことになつておるのであります。この憲法の規定によりまして、この法律が立案せられましたので、凡そ公務員の選定又はその罷免は國民固有の権利であるという、これ亦憲法の規定の趣旨から言いまして、これを衆議院において立案いたすということが最も適当であるという考えから、衆議院の提出案に相成つておるのであります。
内容について聊か説明を申上げますと、この問題に相成りまするのは、彈劾による罷免の事由でございまするが、これは「職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠つたとき。その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があつたとき。」ということに相成つております。ここに書いておりまする「著しく違反し、」或いは「甚だしく怠つたとき、」又は「威信を著しく失うべき非行」というように書いてございまするのは、軽々に彈劾裁判所の問題にいたしまして、裁判官の職務の自由、公正、独立というものに多少たりとも影響を及ぼしてはならんという考えから出て來るのでございまして、その程度に至らぬものは、これは先般議決いたしました裁判官の分限に関する法律によつて懲戒の理由として採り上げられることと相成るのであります。彈劾に相当すべき事由があつたと考えられましたときに、これに対して檢事の役目をいたす、訴追の役目をいたしまするものは訴追委員会でございます。訴追委員会は二十人の衆議院議員を以てこれを構成いたすのでありまして、予備員として同じく衆議院議員が十人選ばれます。これは選挙で選ばれるのでございまして、「衆議院議員総選挙の後初めて召集される國会の会期の始めにこれを行う。但し、第一回國会においては、その会期中にこれを行う。」ということに相成つております。予備員は勿論訴追委員に事故のある場合、また訴追委員が欠けた場合に、その訴追委員の職務を行うことになつておるのであります。それから國会法の規定によりまして、訴追委員が委員長を互選いたします。その委員長が会務を統理いたしまして、訴追委員会を代表することに相成つております。それから訴追委員会は十五人以上の訴追委員の出席がなければ議事を開き、議決することができないことになつております。普通の議事は出席訴追委員の過半数でこれを決するのでありまして、可否同数の時には委員長の決するところによるのでございますが、罷免の訴追又は罷免の訴追を猶予するという議決をいたす場合には、出席訴追委員の三分の二以上の多数でこれを決することになつております。只今申上げましたように、訴追委員会は情状によつて訴追の必要がないと認める時には訴追の罷免を猶予するということができることに相成つております。又訴追委員会は、裁判官につきまして彈劾による罷免の事由があると考えます時には、これを職権によりまして調査し、又これを官公署に調査を嘱託する。その他いろいろ調査いたすことに相成るのでございますが、更に國民は何人も裁判官について今の罷免の事由があると考えます時には、訴追委員会に対してこれを請求するという権限が與えられておるのでございまして、國民訴追の制度がここに認められておるわけなのであります。
次に裁判員でございますが、裁判員は衆議院議員及び参議院議員各七人がこれを構成いたします。その予備員は、衆議院議員、参議院議員各四人であります。参議院における裁判員及び予備員の選挙は、第一回國会の会期中にこれを行うことになつておりまして、衆議院議員たる裁判員、予備員については、訴追委員会につき申したと同樣なことになつております。又彈劾裁判所は國会法の規定によりまして、裁判員がその裁判長を互選することになつておりまして、裁判長は、口頭弁論を指揮し、法廷における秩序を維持し、裁判の評議を整理する外、彈劾裁判所の事務を統理いたし、彈劾裁判所を代表することに相成つております。すべて訴追委員会もその通りでございますが、國会に措置いたすと言いましても、裁判員は独立して今の裁判の権限を行うのでございまして、必ずしも國会の指揮に從うものではございません。その旨の規定が特に入れてあるのであります。又彈劾裁判所は、衆議院議員たる裁判員及び参議院議員たる裁判員がそれぞれ五名以上出席しなければ審理及び裁判をすることができないことになつておりまして、罷免をする裁判をいたします時には三分の二以上の多数でなければそれができないということに相成つております。彈劾裁判所は刑事訴訟関係法令に規定しておりまする種々の証拠調その他の調査をいたすことができるのでございまするが、強制処分はできないことに相成つております。ただ証拠物の所持者に対し証拠物の提出を命じ、或いは事実発見のため必要のある場所を檢査する。或いは官公署に対しまして報告又は資料の提出を求める。かような権限があるのでございまするが、これに應じない場合には、三千円以下の科料を科することができる規定に相成つております。
次に裁判をいたしまするときには理由を附す。その他裁判所を作るといつたような手続の規定ができておりまするが、いよいよ裁判をいたしましたときには、裁判所の謄本を罷免の訴追を受けた裁判官に送達することに相成つております。又この裁判所は一審且つ終審裁判所でございまして、これに対して不服を申立てることはできないのであります。罷免をされました裁判官は、勿論裁判官にその後就くことができないのでございます。その他各種の法令によりまして不利益を受けるのでございまするが、五年を経ちまして、相当とする事由があるときには、その者の請求によつて、彈劾裁判所が資格回復の裁判をすることができるのであります。又罷免されましたけれども、罷免の事由がないということの明確な証拠を新たに発見したというような場合にも、やはり資格回復の裁判ができることに相成つております。その他細かな手続規定ができておるのでありまするが、大体におきまして裁判の機構は只今申上げたように相成つております。
次に最高裁判所裁判官國民審査法案について、その提案の理由並びに内容のあらましを申上げます。
この最高裁判所裁判官國民審査法も亦、憲法の附属の法典でございまして、憲法第七十九條には、その第二項に、「最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際國民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行われる衆議院議員総選挙の際更に審査に附し、その後も同樣とする。」次の項に、「前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。」第四項に、「審査に関する事項は、法律でこれを定める。」かように相成つておりまして、その規定によりましてこの法律がが立案せられたのであります。憲法の建前から申しますと、最高の立法機関でございまする國会は、國民が直接に選挙いたしますし、行政府の長でありまする総理大臣は、これは國会が指名するということになつておりまするので、衆議院議員の選挙その他を通じてこれに関與することができるのでございまするが、最高裁判所の裁判官は成る程総理大臣の指名により、或いは普通の長でありません裁判官でございますると内閣でこれを任命することに相成つておるのでございまするけれども、一旦任命されてしまいますると、その後三権分立の建前上、如何とも身分上の干渉は他の機関からこれをいたすことができないということに相成つておるのでございまして、すべて公務員を選定し或いはこれを罷免するということは國民の固有の権利であるという建前から申しまして、憲法第七十九條の規定を設けた次第なのであります。かような理由で立案いたされましたこの法律も亦只今の趣旨から衆議院におきまして立案するのが最も適当であるということに相成りまして、衆議院でこれを提出いたしたわけであります。
これからその内容について極く簡單に御説明申上げます。この審査は衆議院議員の選挙権を有する者がすべて審査権を有しまして、全國をいわば一区といたしましてこれを審査いたすのであります。そうして各裁判官につきまして、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙のその期日にこれを行う。それから最初の審査の期日から十年を経過した後初めて行われる同じく総選挙の期日に審査を行う。かようなことに相成つております。この審査に関する事務を管理いたしまする機関といたしまして、最高裁判所裁判官國民審査管理委員会というものが置かれるのでございます。この審査委員会の委員は十名でございまして、参議院議員がその議員中からこれを選挙する。参議院においてその議員の中からこれを選挙することに相成つております。任期は三年でございます。この國民審査管理委員会の下に都道府縣の選挙管理委員会が附属し、その下に更に市町村の選挙管理委員会が附属いたしまして、この審査事務をいたすということに相成ります。
それから投票及び開票につきましては、衆議院議員の総選挙と々やり方でやるのでございまして、衆議院議員の選挙における投票管理者はそのまま審査における投票管理者となり、開票の関係も同じでございます。そうして各開票区におきまして開票いたしましたその結果は、審査分会というものがございまして、これは審査分会長は都道府縣選挙管理委員会で任命するものでございまするが、そこに投票の結果が集まります。更に全國の都道府縣のその開票の結果が、中央の國民審査管理委員会で任命いたしました審査長というものの手許に集まりまして、これが衆議院議員選挙の選挙長に当るわけなのでございまするが、そこに集まりまして、その投票の結果を整理発表することに相成るのであります。それで勿論罷免を可とする投票が否とする投票よりも余計でありまするならば、その裁判官は罷免されることに相成るのであります。そこで投票の樣式を申上げますと、投票用紙に審査管理委員会で抽籤によつて決めましたその順序によりまして、各裁判官の指名が印刷されております。それで各審査人は、罷免を可とすると考えまする裁判官の氏名の上に×印を書くのでございます。そういう方法に相成つております。それでその結果罷免いたされました裁判官は、この管理委員会におきましてその旨を公告いたします。その公告の日から三十日以内に、審査の無効或いは罷免の無効を主張いたしまして、東京高等裁判所に出訴することができるのであります。そうしてその出訴期間を徒過いたす。或いは出訴いたしましたが、その後取下げその他で裁判所から離れる。或いは出訴の理由なしとする裁判が確定いたしましたときに、罷免されることに相成つております。それからこの罷免いたされました裁判官は、罷免の日から五年間は最高裁判所の裁判官に任命されることができないことに相成つておるのであります。それから最後に罰則の規定がございますが、衆議院議員の選挙の罰則にございますると大体似通いました規程、即ち利益の供與或いは職権の濫用でありまするとか、審査の自由を暴行脅迫によつて妨げる。こういつたような者を処罰する規定ができておるのであります。大体内容は以上の通りでございます。
次に裁判所法の一部を改正する等の法律案の説明を簡單に申上げます。裁判所法の一部を改正する等の法律案の第一條によりますと、裁判所には今度裁判所調査官というものが置かれまして、いろいろ裁判事務の調査をいたす。その待遇が二級官ということになつておつたのでございまするが、今度は十人に限り一級とすることができるということに相成つたのであります。それからその第二條には、高等裁判所以下の裁判官は、最高裁判所の指名に基ずいて内閣で任命することになつておつたのでございまするが、最高裁判所の組織その他が遅れましたので、その期間が十一月二日で終りまするのを、昭和二十二年十二月三十一日までこれを延ばす。かような規定でございます。それから第三條は、いろいろ経済統制の法を強化いたす。それから独占禁止法その他で、裁判官、裁判所職員が手不足になりますので、これを相当数の増員をいたすという規定でございます。それから第四條、これは裁判官の報酬等に関する暫定の措置に関する法律でございまするが、この裁判官の待遇をよくしたいという意味の改正でございます。簡易裁判所の判事の報酬は二級なみの報酬ということになつておつたのでございまするが、これを一級なみの報酬を與えることもできるということが一点であります。それから地方裁判所の判事の報酬は一級及び二級ということになつておりましたのを、これを全部一級にいたすという趣旨の改正でございます。この第二点は、衆議院におきまして修正して参つたのでございまするが、その趣旨といたしますところは、裁判官は從前非常に待遇が菲薄でございまして、この六月に調査いたしました結果によりますると、現在一級官になつておられまする諸公について調査いたした結果は、裁判官は五十四歳ぐらいで大体一級官になられるのが一番多いのでございまして、外の行政部の方では、大体四十四五歳で一級官になられる方が一番多いと、かようなことになつておりまして、その間十年の差があつたのであります。又裁判官は職務の内外を問わず、苟くも疑惑を受けるような行動があつてはならないのでありまして、終戰後のこの経済状態におきまして、非常な苦悩の中にその菲薄な待遇で暮して來ておられますので、良心的な立派な裁判官であればある程その苦悩は深いのであります。今年になりましても、最近の調査によりますと、五十名以上になつておると思いまするが、それだけの裁判官、殊に中堅の裁判官が続々と辞職せられておるのであります。その理由は、経済的に非常に苦痛でありますので、それが精神的にもその苦痛に堪えない。弁護士その他の多少でも自由に行動ができる、或いは多少でも収入のいい方へ逃れて参るという理由が大多数であると聞いておるのでありまして、実に司法権の確立という意味から言いますと、由々しい寒心すべき状態を現わしておるのであります。衆議院の司法委員会ではこの点に着目せられて、この修正案を提出して参つたのでありまするが、参議院の司法委員会におきましてもその趣旨に賛同いたしまして、司法省の方でもそれに賛成でございまして、ただ大藏省の方におきまして、ややこれに対して異論があるかのごとき模樣でございましたが、結局そのまま成立いたしたのであります。
只今御説明申上げました裁判官彈劾法案、最高裁判所裁判官國民審査法案、それから裁判所法の一部を改正する等の法律案、これはいずれも去る十八日に司法委員会におきまして、大多数の賛成を以て可決すべきものと決定いたしたのでございまするが、その間数回委員会を開きまして、特に裁判官彈劾法案及び最高裁判所裁判官國民審査法案につきましては、十分の質疑應答もあつたのでございまするが、その詳細は速記録によつて御承知を願いたいと存じます。裁判所法の一部を改正する等の法律案につきましては、先程申上げました多少の異論もございましたので、更に強く司法委員会の意向も表明いたしまするため、附帶決議をいたしたのでございます。
一、裁判官の報酬については、一般官吏の給與水準より高い水準を定めること
二、当面の措置として、一級の一般官吏の俸給額以上の報酬を受ける裁判官の報酬は、官吏俸給令の別表中二十四号以上とすること。
三、公務員給與法が制定される場合には、前二項の趣旨に應じて裁判官の給與法を制定すること。
かような附帶決議をいたしまして、裁判官の報酬というものを十分にいたしまして、その聖職に十分の熱意を注ぎまして立派な裁判をして頂く。我々の裁判官に対する感謝と支援の志をこの附帶決議によつて表明いたした次第でございます。どうか以上の三案に御賛同を賜りたいと存ずる次第であります。これを以て御報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/10
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011・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。先ず裁判官彈劾法案及び最高裁判所裁判官國民審査法案の両案全部を一括して問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を請います。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/11
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012・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて両案は可決せられました。
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013・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 次に裁判所法の一部を改正する等の法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を請います。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/13
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014・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
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015・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 議事の都合により、この際日程を変更し、日程第二及び第三を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/15
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016・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/16
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017・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 日程第二、昭和二十二年度一般会計予算補正(第四号)、日程第三、昭和二十二年度特別会計予算補正(特第一号)、以上両案を一括して議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。予算委員長櫻内辰郎君。
〔櫻内辰郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/17
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018・櫻内辰郎
○櫻内辰郎君 只今議題となりました昭和二十二年度一般会計予算補正(第四号)案及び昭和二十二年度特別会計予算補正(特第一号)案の予算委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
去る十月十日から十月二十一日まで愼重に審議いたしまして、質疑應答の後、十月二十一日討論に入り、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしたのであります。
さてこの両案は、先きに本國会において決定されました政府職員に対する一時手当の支給に関する法律に基ずきまして政府職員に対し一時手当を支給するに必要なる予算補正でありまして、その歳出予算の追加額は、一般会計において三億五千七百八十一万円、特別会計において七億三千二百八十八万七千円、合計十億九千六十九万七千円であります。
先ず一般会計予算について申上げますと、その歳出において追加を要する額は、國会、裁判所、その他政府機関の職員に対する一時手当支給に要する経費二億五千二百二十九万三千円、警察及び義務教育関係職員に対して要する経費九千三百二十万円、地方公共團体における國庫補助職員に対して要する経費九百九十八万円、厚生保險特別会計所属職員に対する一時手当の財源の一部を一般会計において負担するに要する経費二百三十三万七千円、合計三億五千七百八十一万円でありまして、これが財源といたしましては、本年七月の價格改訂に伴う刑務所作業収入の増加見込額四千四百五十八万六千円、家畜並びに有價証券等の拂下による収入見込額五千六百四十七万円、旧陸海軍恤兵金等の勘定整理に伴う雜収入五千二百七十六万円、宝籤の発行増加による納入金増加見込額二億円、前年度剩余金受入三百九十九万四千円、合計三億五千七百八十一万円を充当するものであります。
次に特別会計について申上げますと各特別会計所属職員に対する一時手当支給に要する経費は、國有鉄道事業特別会計において四億五百三十五万六千円、通信事業特別会計において二億八千四十五万三千円、その他の特別会計において九千三十二万八千円、合計七億七千六百十三万七千円と相成りますが、既定予算の予備費から四千三百二十五万円を減額いたしましてその財源に充当いたしますので、これを差引きますと、歳出予算の追加額は七億三千二百八十八万七千円でありまして、これが財源といたしましては、運賃、料金並びに價格の改定等による収入増加見込額六億六千二十二万五千円、既定予算の歳入超過額三千八十九万円、一般会計よりの受入二百三十三万七千円の外に、國有鉄道事業並びに通信事業特別会計の建設勘定所属職員に対する経費の財源として、公債金受入三千八百九十九万五千円、貿易資金特別会計の歳入不足填補のため借入金四十四万円、合計七億三千二百八十八万七千円を充当するものであります。
本案審議に当り各委員から熱心なる質問があり、政府亦これに対して懇切なる答弁がありました。今その質疑應答の主なるものを申上げますれば、一委員より、この追加予算の歳入においては、鉄道事業収入、通信事業収入その他宝籤の収入等が主要なものとなつておるが、これらの収入増加を見積られた根拠を伺いたいとの質疑に対し、政府委員よりは、鉄道事業においては去る七月より、通信事業においては去る四月より料金の引上げをいたした。その増収の一部をこの一時金の財源に繰入れ、宝籤について四億円程度の発行増加になるために、その國庫納入金約二億円を財源に繰入れましたとの答弁がありました。又一委員より、今提出された一般会計及び特別会計の更正を要するものは、いわゆる給與基準を千六百円より千八百円に引上げ、その差額を七月より九月まで三ヶ月分を一時支給金として支出するという政府委員の説明であるが、官吏待遇改善準備委員会において組合側と千八百円ベースについて了解ができておるかどうか、又今日の経済情勢では、千八百円基準を続けて行くことは困難ではないか。その場合はどうするかとの質疑に対して、政府委員より、組合側において千八百円水準を承認したとは申しませんが、政府側として一方的に千八百円水準として千六百円との差額に相当する額を一時金として支拂うことにしたのである。これには組合側も異議を述べないことになつておるのであります。尚又政府は千八百円ベースを維持して、実質的賃金というところに重点を置いて、新物價体系を守り抜こうと考えておるが、併し情勢の変化に應じてはこの千八百円を釘附けにするのではありませんが、只今のところでは千八百円を維持してインフレ対策が失敗に帰しないようにする考えなりとの答弁がありました。又一委員より、補正第四号の歳入金の中に旧陸海軍恤兵金より繰入れとあるのはいかなる性質のものかとの質疑に対して、それは國防献金、恤兵金等、國庫金以外の取扱をしてある寄付金の集積でありますが、この恤兵金より一部を一時支給金の財源に繰入れましたとの答弁がありました。更に一委員より、家畜の役牛役馬の拂下げ價格が、牛は一頭三百円、馬は五百三十円と評價されておるが、現在実際闇價格の百分の一にも足りない價格で拂下げるとはいかなる理由かとの質疑に対しては、昭和十九年に食糧増産を確保する必要から、政府において無理に農家から牛馬を買上げて、これを農家に貸付けて、牛馬の増産奨励を図ると共に、食糧増産のために使役して参つたのであるが、牛馬買上げ当時貸付け制度を定め、貸付期限到來の際は買上價格を以て拂下げるという約束になつているために、買上当時の價格をそのまま歳入予算に計上した次第であるとの答弁がありました。更に一委員より、昨日本院の本会議において政府職員に対する一時手当支給に関する法律案につき、財政金融委員長の報告によると、その費用十一億二千二百二万円と報告せられておりますが、本予算委員会における大藏大臣の説明によると十億九千余万円と説明せられておりますが、いかなるわけかとの質問に対し、政府委員より、財政金融委員会にお配りした資料は六月一日現在による概算を配付したので、まだ精査が済んでおりませんでしたが、実際に必要な金額は予算委員会で説明をした補正第四号に載つております金額が、精査の結果確定した金額でありますとの答弁がありました。その他重要なる質疑應答がありましたが、詳細は委員会の速記録により御承知を願います。
而して十月二十一日討論に入りましたが、別に発言もなく、採決いたしましたところ、全会一致を以て原案通り可決いたした次第であります。ここに御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/18
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019・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を請います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/19
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020・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて両案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/20
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021・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 日程第一、國会法第三十九條第二項の規定による國会の議決に関する件につきお諮りいたします。労働組合法に基ずき明年三月三十一日まで中央労働委員会委員に衆議院議員荒畑勝三君及び島上善五郎君、本院議員原虎一君を充てる件でございます。念のため申上げますが、議長は本件を予め議院運営委員会に付議いたしましたところ、同委員会においては、以上の三名が委員に就くことに異議がない旨の決定がございました。内閣総理大臣の申出にかかる本件を容れることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/21
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022・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。これにて本日の議事日程は終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
午前十一時三十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100115254X04119471022/22
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