1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十三年七月一日(木曜日)
午前十一時七分開議
出席委員
委員長 伊藤卯四郎君
理事 三好 竹勇君 理事 澁谷雄太郎君
理事 菊川 忠雄君 理事 松本 七郎君
理事 生悦住貞太郎君 有田 二郎君
生越 三郎君 前田 正男君
今澄 勇君 成田 知巳君
萬田 五郎君 村尾 薩男君
高橋清治郎君 西田 隆男君
福田 繁芳君 豊澤 豊雄君
齋藤 晃君
出席政府委員
訟 務 長 官 奧野 健一君
特許標準局長官 久保敬二郎君
委員外の出席者
議 員 鍛冶 良作君
議 員 八並 達雄君
参議院議員 小林 英三君
商工事務官 池永 光彌君
專門調査員 谷崎 明君
—————————————
本日の会議に付した事件
弁理士法の一部を改正する法律案(内閣提出、
参議院送付)(第一七五号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/0
-
001・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 これより会議を開きます。
この際、速記の件について諸君に御諒解を願つておきます。会期切迫の折柄、各委員会ともに、数多くの議案を抱えて活所は活動をいたしておりますが、御承知のように、速記の数は午前中に五ツ、午後四ツというのが最大限でありますため、去る二十八日の常任委員長会議の決定によりまして、付託議案の少い委員会には速記が附せられないことと相なつた次第であります。しかし速記の有無にかかわらず、議事議決の効力には、何ら影響のないことはもちろんであります。以上、御諒承を願つておきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/1
-
002・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 それではこれより前会に引き続き内閣提出参議院送付の弁理士法の一部を改正する法律案の審査を進めます。これより質疑に移ります。参議院修正箇所につきましては、前会に引続き特に参議院議員小林英三君の御出席を煩わしておりますから、同君より御答弁を願います。この際前回委員長において適当なる時期に発言をお許しすることと決定いたしておりまする司法委員の方の委員外発言を許可いたします。司法委員鍛冶良作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/2
-
003・鍛冶良作
○鍛冶良作君 質疑に先だちお尋ねいたしますが、政府委員としてはどなたが出席されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/3
-
004・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 特許標準局長官久保敬二郎君と、池永総務課長が出席されております。ただいま久保政府委員は所用のため席におられませんから、その間池永総務課長がお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/4
-
005・鍛冶良作
○鍛冶良作君 法務廳の訟務長官奧野君の出席を要求をしていただきたい。法務総裁なら、なおよいと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/5
-
006・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 そのように至急手続いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/6
-
007・鍛冶良作
○鍛冶良作君 最初にお尋ねいたします。過日弁理士法の一部を改正する法律案全文の修正理由をお聽きいたしましたが、さらに九條の二をどうして加えたかその理由を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/7
-
008・小林英三
○小林英三君 この修正については、当委員会におきまして、すでに述べておりますから、質問があれば、個所についての質問にしていただきたいと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/8
-
009・鍛冶良作
○鍛冶良作君 九條の二の訴訟代理人についてお伺い致したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/9
-
010・小林英三
○小林英三君 先に特許法の一部を改正する法律が両院を通過いたしましてその法の百三十八條の二におきまして、「抗告審判ノ審決又ハ抗告審判請求書却下ノ決定ニ対スル訴ハ東京高等裁判所ノ專属管轄トス、前項ノ訴ハ審決又ハ決定ノ送達アリタル日ヨリ三十日ヲ経過シタルトキハ之ヲ提起スルコトヲ得ズ、前項ノ期間ハ之ヲ不変期間トス」、と言つており、同條の末項に、「審判又ハ抗告審判ヲ請求スルコトヲ得ベキ事項ニ関スル訴ハ抗告審判ノ審決ニ対スルモノニ非ザレバ之ヲ提起スルコトヲ得ズ」と規定されておりまして、この規定の場合においては、弁理士も弁護士同樣訴訟代理人となることができる途を開いたのであります。
まず改正した根本理由といたしましては、特許権とか実用新案権等の権利を、でき得る限り擁護することにあるのであります。第一の理由を致しまして、一般の民事訴訟におきましては、もちろん弁護士が訴訟代理人となるのでありますが、しかし百二十八條の二に抗告審判の審決又は抗告審判請求書却下の決定に対する訴は東京高等裁判所に提起することができると規定されてありまして、從來旧法によりますと、特許事件を出訴した場合、大審院におきましては、法律審のみで事実審は取扱わなかつたのであります。今回裁判制度の改正に伴う特許法の改正によりまして、東京高等裁判所は、事実審を行うことになるので、この訴訟代理人には、技術に明るい弁理士がなるのが正当だと思うのであります。権利者が訴を東京高等裁判所に提起した場合、判事がその調べに当るのでありますが、特許内容に通じた判事が行つて初めて公正なる判決ができることに相成るのであります。過日の参議院の司法委員会におきまして、答弁に立たれた政府委員も、この点もつともであると言われておるのであります。
次に現行制度によりますと、特許事件につきましては、特許局における二審を通じ、いずれも弁理士がこれを代理するのでございますが、出訴して事件が裁判所に係属されますと、弁理士の手を離れて、弁護士が新たに訴訟代理人となるのであります。しかるに裁判所におきまして、抗告審判の審決が取消され、特許局でさらに審理及び審決される際、事件は再び弁護士の手を離れて弁理士がこれを取扱うことになるのであります。このように、事件が同一で継続しているにもかかわらず、代理人がしばしば変ることは、種々な点におきまして不都合が生ずるわけであります。ゆえに弁理士に一貫して事件を取扱わせようとするのが、修正の第二の点であります。以上のように改正の主たる目的は、あくまで権利者の権利の擁護にあるのでございます。このようなわけで、参議院におきましても、満場一致をもつて可決いたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/10
-
011・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 鍛冶委員にお知らせします。ただいま久保政府委員が御出席になりましたからどうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/11
-
012・鍛冶良作
○鍛冶良作君 ただいま小林さんの述べられた御意見は、ごもつともであり、権利者の権利を擁護することには同感であります。また特許の事情に通ずる判事に当らせることにも賛成いたします。しかし訴訟代理人は、特許に明るいだけでなくて、專門家でなくてはならないのでしようか。この点についてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/12
-
013・小林英三
○小林英三君 権利者の権利を擁護するためには、特許権利等の技術内容に精通したものがよいと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/13
-
014・鍛冶良作
○鍛冶良作君 知識をもち、明るいというだけで、專門家でなくてもよいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/14
-
015・小林英三
○小林英三君 明るければよいのでありますが、專門家なれば、なおよいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/15
-
016・鍛冶良作
○鍛冶良作君 裁判所におきまして、訴に当る裁判官も、特許に明るい者が行うのでありまして、それが弁理士でなくてもよいと思います。裁判官の中に特許に明るい人を入れることは、私たちとしても、主張いたしておるのでありますが、專門家が行うというようなことはいけないと思います。現在の裁判官は、六法のみに頼つてやつているのではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/16
-
017・小林英三
○小林英三君 今の鍛冶委員の言われたことは、よくわかるのでございますが、特許の事実に明るい知識をもち、技術に精通されておる者がよいと存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/17
-
018・鍛冶良作
○鍛冶良作君 それでは弁護士は特許に明るくないと言われるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/18
-
019・小林英三
○小林英三君 從來の弁護士の方も代理人となれるのでありますが、さらに内容に明るい弁理士を入れたいという修正案なのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/19
-
020・鍛冶良作
○鍛冶良作君 明るい人が一人でもいればよいのであつて、弁護士が明るくないのではないと認めますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/20
-
021・小林英三
○小林英三君 権利の擁護のために、さらに技術の内容に明るい人を、この遂につかせることが、新憲法における権利の擁護と合致するのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/21
-
022・鍛冶良作
○鍛冶良作君 それでは裁判所に特許内容に明るい人を入れたいというだけなのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/22
-
023・小林英三
○小林英三君 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/23
-
024・鍛冶良作
○鍛冶良作君 新法におきまして、訴認をなす場合、直接代理人として法廷に出るのは弁理士で、弁護士の出る余地がないようにも考えられますし、また今まで聞きました御意見でございますと、でき得れば入れたいというようにも受取れるのであります。從來の裁判に出られた場合、直接ではございませんが、意見が聽かれており、又資料等集めて、十分に協議いたしておりまして、弁理士の方々の御意見が聽かれぬとは思われませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/24
-
025・小林英三
○小林英三君 この席で私のことを述べるのはまことに恐縮ではありますが、私は現在まで百二・三十の特許の許可を得ています。自分自身発明の権威であると思つております。旧法において審判をやつてきたが、訴を裁判所へ出したり、大審院に出したりした。その際技術に明るい弁理士も法廷に出ますが、いざという場合、みずからの代りとすることができないので、技術に明るい人に出てもらいたいというこてを、しばしば痛感したのであります。このために弁理士にも裁判所に出ることを認めさせたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/25
-
026・鍛冶良作
○鍛冶良作君 それはもつともであるが、しかし便宜論であつて、法律論ではない。それでは民事訴訟法第七十九條にまつこうから相反するが、その点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/26
-
027・小林英三
○小林英三君 七十九條を見て、あとでのべる……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/27
-
028・鍛冶良作
○鍛冶良作君 それでは法文をお読みいたしましようか。——「法令ニ依リテ裁判上ノ行為ヲ為スコトヲ得ル代理人ノ外弁護士ニ非サレハ訴訟代理人タルコトヲ得ス」となつておりますが、これをどう解釈しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/28
-
029・小林英三
○小林英三君 これは法の立法の精神は権利者を擁護するものであつて、法令上によつても、裁判所において弁護士のほかにも代理人になることができるとなつているのであるから、百二十八條の二によつてできるようになれば、法令上の代理人となることができるのでありますから、必ず弁護士でなくてはだめだというのではないと思う。特許法十三條において、國内に籍のない人は、弁護士以外の代理人も民訴ができることになつているのであるから、この問題も、できるのではないかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/29
-
030・鍛冶良作
○鍛冶良作君 権利者の擁護のために、訴訟する場合、原則として弁護士でなくてはならないと定めてあるが、たれでも法廷代理人として立つことは資格問題からしても、司法の尊嚴を傷つけるものである。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/30
-
031・小林英三
○小林英三君 今のあなたの言つてように、裁判官になるということは、それはできないのであります。しかしこの特許法におきましては、御承知のように、特別法なのでありますから、弁理士を代理人にするということは、今あなたが言われたような司法の原則を乱すことにはならないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/31
-
032・鍛冶良作
○鍛冶良作君 根本的に言えば、原則として訴訟は弁護士でなければならないのでありまして、それは弁護士法の第一條より六條までに、明確に定まつているのであります。それを弁理士が行うということはいけないものである。いや、それが民事訴訟法の七十九條に、はつきりと書かれているのであります。弁護士に資格がないというのならば、別であるが、皆一應資格は備えているのであり、さらに特許に関することの知識を磨いてくれというのならばかわるが、今のあなたの言うことは、便宜論であつて、法律論ではない。もしこの法案が國会を通過すれば、司法の大原則を乱すばかりでなく、すべての訴に專門家が出るようなことになる。そのようなことをすると、司法の大原則に反するものである。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/32
-
033・小林英三
○小林英三君 それではあなたの言う司法の大原則というのは、何條を指しているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/33
-
034・鍛冶良作
○鍛冶良作君 七十九條のことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/34
-
035・小林英三
○小林英三君 民事訴訟法の七十九條は、法令上に依りて裁判上の行為をなすことは得る代理人となつており、法令で定めればよいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/35
-
036・鍛冶良作
○鍛冶良作君 いや、その七十九條の代理人というのは、すでに定まつておる場合なのでありまして、この場合とは違うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/36
-
037・小林英三
○小林英三君 それでは特許法の十六條の解釈を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/37
-
038・鍛冶良作
○鍛冶良作君 「帝國内ニ住所ヲモ居所ヲモ有ヲサル者ハ命令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ除帝國内ニ住所又ハ居所ヲ有スル。代理人ニ依ルニ非サレハ特許ニ関スル出願、請求其ノ他ノ手続ヲ為シ又ハ特許権若ハ特許ニ関スル権利ヲ主張スルコトヲ得ス」この條文ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/38
-
039・小林英三
○小林英三君 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/39
-
040・鍛冶良作
○鍛冶良作君 これは外國人についての、また國内に居所を有さない人の代理人は、民事訴訟についても、本人を代理することができるという規定であるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/40
-
041・小林英三
○小林英三君 それではその代理人は民訴七十九條の代理人ではないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/41
-
042・鍛冶良作
○鍛冶良作君 これはこの七十九條の法令上の代理人であります。國外にいる者は、代理人がいなくては訴訟ができず、これを取扱つた者が法廷代理人となるのであります。他の例をあげれば、未成年者が訴訟する場合、未成年者の親が代理人となつて訴訟するというのと、同じようなことである。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/42
-
043・小林英三
○小林英三君 弁護士が訴訟するのが原則であるが、このように法令で定めれば、このようにできるのではないかと思うのでありますが、この際特許局の政府委員の意見も聽いてもらいたいと思うのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/43
-
044・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 あまり討論にならずに質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/44
-
045・鍛冶良作
○鍛冶良作君 法律をつくれば何でもできるのでありますが、その法律をつくるそのことの可否を、私は言つているのであります。特許法の十六條の規定というのは、死んだ人が訴訟を発する場合のような、特定な規定であり、又本人がいて他の人を代理人とするのと、根本的に違いがあるのであります。これ以外は皆弁護士でなくてはならないのであります。ゆえにここに弁護士法の一條より六條までの意義が存するのであります。これをそのまま特許法に用いることはいけないと、私は言うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/45
-
046・小林英三
○小林英三君 七十九條のことについて、ここで討論してもしかたがないが、一度國会がこれを可決すれば、法令上のものとして認められるのであります。特許の問題について、百二十八條の二において、個人の権利を主張する場合、弁理士が行うのは、この新憲法下においては、当然であると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/46
-
047・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 暫時休憩いたします。
午前十一時四十二分休憩
————◇—————
午前十一時四十分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/47
-
048・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 休憩前に引続き質疑を継続いたします。
鍛冶君にちよつと——法務廳の奧野君も見えておりまするので、なるべく重要な点だけを質問することにして、議事を進めていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/48
-
049・鍛冶良作
○鍛冶良作君 民事訴訟法第七十九條の前段にあります「法令ニ依リテ裁判上ノ行為ヲ為スルコト得ル代理人」というのは、いわゆる法定代理人であります。これはやむを得ざる場合で、つくらなくてはやつていけぬためにつくつた特別のものでありまして、これは仕方がないからやるのであつて、それ以外のものは、弁護士に非ざれば訴訟代理人としてやれないんだということが、わが立法の根本原則であると考えておるのであります。しかるに、專門の知識のある者を、これは便宜だということで拡張して入れるということになりますと、訴訟の尊嚴を保つ上において、裁判者たる者の特別の資格、弁護士たる者の特別の資格を認めておる原則を壞すものであると考えますが、この点に対して特許局の專門家の御意見、並びに訴訟上における專門家の御意見を伺いたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/49
-
050・久保敬二郎
○久保政府委員 民事訴訟法の七十九でございますが、これは民訴法が、一般訴訟に対する原則を指示しております関係上、弁護士が代理をするということは、訴訟に対する原則であるということを示しておると存じます。しかし特別法に基きましては、弁護士以外の者も代理をなし得ると解釈しております。特許法はいろいろ訴訟に関することも規定しておりますが、民訴法が一般原則を規定しておりますのに、特許法は工業所有権というものの特別性に基くことにより特別法を規定いたしておりまして、一般のことに関しましては、民訴法で取扱われますが、特許に関しましては、その特殊性から、特許法に基いて特別の取扱ができることになると存じます。それによりまして、特別の規定が設けられたら、弁理士も弁護士以外の者も、訴訟の代理人になり得るということであつても、七十九條の精神と何ら反しないと解釈しております。この度の修正案につきましては、百二十八條の二に関する訴えだけに限られておるわけでございますが、百二十八條の二項の訴えはどういうものかといいますと、これは主として審査に対する不平の抗告審判、特許の無効の審判、確認審判、こういう三つのものが主体になつていて、その中でも一番多数を占めておりますものは、審査に対する不服の抗告審判であります。審査に対する不服と申しますのは、発明者が発明したそれに対して自分は発明したから特許をしてもらいたいと願い出るのに対しまして、審査をいたしまして、それは特許法に規定している発明にならぬから特許をしないということに審査で査定しますと、それに対して不服の抗告審判を出してくるわけでございます。それでさらに不服ならば、東京高等裁判所に百二十八條の二項で出すわけであります。審査は実はこのものが発明になるかならぬかということは、ほとんど技術的の問題でありまして、審査と法律の関係も、なかなか不可分のものでありますが、大部分は技術の判断になるわけであります。たとえば飛行機のプロペラを発明したから、これを特許してもらいたいと届け出てまいりまして、審査官がそういうプロペラはあるといつて拒絶いたしました場合に、発明者の方では、そのプロペラと引例のプロペラと違うという問題になると、そのプロペラの形状を現わします例えば数字式がどう違つているかということを議論しなければ、このどちらが是か非かということが解決がつきませんから、この百二十八條の二項の客体になつておりますところのものは、技術の非常にめんどうな問題を含んでおりますので、そういうものの説明につきましては、民訴法の七十九條の規定にかかわらず特別法によりまして、代理が認められましたならば、非常に事件の解釈というものに対して、便宜が得られるのではないかと、私どもの方では考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/50
-
051・鍛冶良作
○鍛冶良作君 伺いますが、私の質問の要点と答弁が、ポイントが違います。きめればできるということを言うておるんではない。きめるということが、この訴訟法の精神に反するのではないかと聽いておるんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/51
-
052・奧野健一
○奧野政府委員 お答えいたします。民事訴訟法の立場といたしましては、弁護士が訴訟代理をするということを原則としておりまして、ごく軽微な事件につきましては、簡易裁判所だけにおきましては、弁護士以外の者でも訴訟代理を許すことになつておりますが、それ以外は訴訟の代理は弁護士という主義をとつております。弁理士は特許その他の工業所有権の事件についての技術的の方面については、非常に堪能であると考えますが、こと訴訟に関してまいりますと、非常に技術的な面がありますので、われわれの立場といたしましては、やはり弁護士が訴訟についての代理をするのが適当ではなかろうかと思います。もつとも技術的なことが問題になりますので、その場合におきましては、從來通り輔佐員として弁理士が十分訴訟の面においても活動ができますので、代表して訴訟を遂行する方面においては、やはり弁護士訴訟代理主義が、適当であろうと思いますが、もちろん法律をもつてそれと違つた規定を設けることは、これは法律の力をもつてすることができますが、從來の考えからまいりますと、やはり弁護士が主体であることが適当であろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/52
-
053・鍛冶良作
○鍛冶良作君 いま訟務長官から言われる通りで、さようなことをきめることは、司法の大原則を崩すものと考えます。便宜論としては承りますが、法律論としては、さようなことはいかぬのだと思います。この点を皆さんに十分御認識を願いたいと思うのであります。若し便宜から言うならば、これはあらゆる面から考えなければならぬと思います。たとえば藥事に関することは藥剤師がやろうし、医療に関することは医者がよかろう。あらゆる專門家がいる。そういうものが便宜だからやつたらよいということになりますと、大原則を全部崩すことになります。これは、はなはだ重大なことでありますから、われわれは十分お考えを願うと同時に、さようなお考えはお取止めを願うことを、強く申上げて私の質問を打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/53
-
054・小林英三
○小林英三君 法務廳の政府委員の方の考えからいたしますと、弁理士よりも弁護士の方が、いわゆる訴訟のセンスに慣れているからいいというお話がありましたが、私が修正案を出しました理由は、特許の第二十八條の二といいますのは、権利用の権利を擁護するために、抗告審判、確認審判、無効審判をなす場合に、権利者が自分の権利を擁護する建前から、東京高等裁判所に訴訟を起すというきわめて限られた場合におきまする代理人となることができるということでありまして、從來ややもすると、古い解釈をそのままにしておくことが安全だという観念がありますが、新憲法のもとにおきましては、最も必要なる権利を擁護するという建前からいたしましては、この修正案によりまして、当然弁理士をこういう場合に権利者のために爭うことができるということを制定することが、最も現下の情勢に應じまする特別法だと思います。でうかそういう意味におきまして、本委員会におきましても、御理解ある御審議をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/54
-
055・八並達雄
○八並達雄君 先ほどから御議論を承りまして、鍛冶委員のおつしやつたことにも、小林提案者のおつしやることも、いろいろ理由のあることと思いますが、私どもの法律の解釈といたしましては、やはり鍛冶委員の説をどうしても支持せざるを得ないのであります。先ほどの民事訴訟法七十九條の趣旨から申して、もちろんであります。しばしば議論されましたが、特に附け加える必要もないのでありますが、もし便宜論からいうならば、裁判官といえども、必ずしも万能ではないのでありまして、医事に関しては医者の裁判官がやろうということにならぬとも限らないのでありますが、ことは根本の問題でありまして、裁判官に特別に嚴格な資格を要求しておると同樣、弁護士にも嚴重なる規定をつくつておるのであります。この規定を拡張することは許せないと、先ほど奥野委員は便宜論のように訴訟の便宜のためという御回答でありましたが、私どもといたしましては、この拡張は許されないと思います。根本的な司法の威信の問題であると、私は考えております。なるほど先ほど引合に出されました特許法の十六條でございますが、これは鍛冶君の指摘されましたように、法廷代理人と、私は考えております。もしもかような便宜論から拡張されるということになりますと、裁判所に関する嚴格な規定、または弁護士に関する嚴重なる資格を要求している現在の法制自体が濫れる、この一角を崩されることによつて、司法の根本理念が崩されるということにもなるかと思いますので、どうぞこの鉱工業委員会におかれましても、その点を御了承くださいまして、この提案は否決せられんことを私は希望するのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/55
-
056・小林英三
○小林英三君 いまの御議論でありますが、先ほど私は、技術に関することは医者でも弁護士にできる意味ではないか、ということは、それは牽強附会の言かと思います。弁理士がこの場合に代理人になることができるのは、特許権擁護のために特許の問題に関する場合のみであります。しかも一審二審を通つてきて、審判が二つついて、最後にさらに東京高等裁判所において自分の権利を爭うというのであります。その場合におきまして、一審二審は弁理士であつて、東京高等裁判所に移された場合は、新たに別の弁護士を頼む、そして技術の問題に対しては、明るくない方がやるという場合におきましては、当然特別法として、これを國会において認めてやるという途を開くということが、最も正しい途だと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/56
-
057・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 司法委員の方々の質問はこの程度でよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/57
-
058・鍛冶良作
○鍛冶良作君 議論になりますから、これで結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/58
-
059・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 司法委員の方の質問は、この程度で終了いたしまして、暫時休憩いたしまして、ちよつと御相談いたしたいと思います。
午後零時八分休憩
————◇—————
午後零時二十分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/59
-
060・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 再開いたします。
本案につきましては、他に発言の通告がありませんから、これにて質疑は終了いたします。なお、討論の通告もありませんから、討論は省略いたします。引続き採決をいたします。本参議院送付案を可決するに御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/60
-
061・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 御異議なしと認めます。よつて本参議院送付案は可決いたしました。
この際本案の委員会報告書についてお諮りいたします。これは從來通り委員長において作成のうえ、議長に提出いたしたいと思いますが、御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/61
-
062・伊藤卯四郎
○伊藤委員長 御異議なしと認めます。よつて後刻委員長より書面をもつて議長に提出いたします。
次会は明二日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204283X01219480701/62
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。