1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十三年四月五日(月曜日)
午前十一時三十九分開議
出席委員
委員長 松永 義雄君
理事 石川金次郎君 井伊 誠一君
池谷 信一君 石井 繁丸君
中村 又一君 八並 達雄君
山下 春江君 吉田 安君
北浦圭太郎君 花村 四郎君
明禮輝三郎君 大島 多藏君
出席政府委員
訟 務 長 官 奧野 健一君
委員外の出席者
專門調査員 村 教三君
專門調査員 小木 貞一君
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四月二日
行政代執行法案(内閣提出)(第三一号)
民事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提
出)(第三三号)
行政事件訴訟特例法案(内閣提出)(第三四
号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
民事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提
出)(第三三号)
行政事件訴訟特例法案(内閣提出)(第三四
号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X00919480405/0
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001・井伊誠一
○井伊委員長代理 会議を開きます。
民事訴訟法の一部を改正する法律案及び行政事件訴訟特例法案の両案を一括議題として政府の説明を願います。奥野政府委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X00919480405/1
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002・奧野健一
○奧野政府委員 ただいま議題となりました民事訴訟法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明いたします。
裁判所法の施行により、裁判機構に著しい改革がもたらされましたので、「日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に関する法律」を制定して、日本國憲法及び裁判所法の施行上必要やむを得ない部分に限り、民事訴訟法に対する應急的措置を講じたのでありますが、この應急的措置に関する法律は、本年七月十五日を以てその効力を失いますので、この際、現行民事訴訟法に所要の改正を加え、新しい裁判機構のもとにおける訴訟手続の進行を円滑にし、國民の権利保護に遺憾なきを期そうとするのが、本改正法律案の趣旨であります。
なお、民事訴訟法につきましては、廣範囲にわたり、最高裁判所の定める民事訴訟規則との調整をはかる等、根本的に檢討すべきものがありますので、鋭意研究を続けているのでありますが、諸種の事情のため、いまだこれを立法化するの域に達しておりませんので、民事訴訟法の根本的な改正はこれを他日に讓り、本改正法律案においては、右の應急的措置に関する法律の失効に伴い必要な最小限度の改正を主眼とし、併せて、新しい裁判機構のもとにおける民事訴訟制度の運営上適当と考えられる一、二の新しい制度をも取り入れることとして、その立案をいたした次第であります。
以下本改正法律案の要点を御説明いたしますと、まず第一は、日本國憲法、裁判所法及び民法の一部を改正する法律の施行等に伴い、必要な條文の整理をしたことであります。たとえば、軍人軍属に関する特別規定を削除し、「区裁判所」を「簡易裁判所」または「地方裁判所」に改め、「家族」を「同居の親族」に改めたもの等で、本改正案中の大部分は、この部類に属するものであります。
第二は、裁判所法により、地方裁判所の審理及び裁判についても單独制が認められましたので、これに伴い必要な規定を設けたことであります。たとえば、地方裁判所の單独の裁判官の除斥忌避に関する第三十九條の規定、準備手続に関する第二百四十九條の規定がそれであります。
第三は、証拠調について、当事者の権利と責任とを拡張し、直接審理の建前をさらに推し進めたことであります。すなわち民事訴訟の性格に鑑み、職権による証拠調を廃止するとともに、証人、鑑定人に対する当事者の尋問権を適当に拡張し、かつ裁判官の更送のあつた場合、及び証拠保全手続において証人等を尋問した場合について、直接審理の建前に添う規定を設けたのであります。
第四は、正当な理由がなくて出頭しない証人等に対する制裁を強化したことであります。裁判所から証人または鑑定人として出頭を命ぜられた者が、正当の理由がないにかかわらず、これに應じないことは、單に当事者の不利不便を招くというに止まらず、裁判所の命令を無視するものとして、また訴訟遅延の原因となるものとして、裁判所の機能の運営に重大な悪影響を及ぼすものでありますので、これらに対しては從來より金額を増額した過料を以て臨むほか、新たに場合によつては拘留、科料の刑罰をも科し得ることといたしたのであります。
第五は、簡易裁判所の訴訟手続に関する特則を設けたことであります。すなわち簡易裁判所における審理及び裁判につきまして、場合により、調書に記載すべき事項を省略し得ることとしたこと、及び口頭弁論期日に出頭しない当事者の提出した書面の設載事項を陳述したものとみなす場合を拡張したこと等、簡易な手続により迅速に紛議を解決するための適当な規定を設けたのでありまして、第三百五十二條以下数條の規定が、これであります。
第六は、上訴の制度について、新しい裁判機構に即應する規定を設けたことであります。
日本國憲法及び裁判所法の施行により、從來の制度と比べ、特に大きい変革を見るに至つたのは、最高裁判所の機能でありますことは、すでに御承知の通りであります。この大きい変革に即應するために、裁判所法におきまして、簡易裁判所の事件に対する上告は、高等裁判所の権限に属するものと定められましたが、さらに上訴一般につきまして、不必要ないしは不当な目的を以てする上訴を能う限り防止し、上訴審理裁判所、殊に最高裁判所の負担の軽減をはかる必要があると考えられますので、本改正案におきましては、第三百八十四條ノ二により、事件の完結の遅延のみを目的とする上訴の防止をはかりますとともに、第百九十三條ノ二において、裁判に対する信頼を高め、かつ不必要な上訴を防止するため、明らかに法令に違背した判決は裁判所みずからこれを変更し得ることとしたのであります。
しかして、かように不当または不必要な上訴の防止をはかります反面、最高裁判所を違憲の判断に関する終審裁判所とする日本國憲法第八十一條の精神に鑑み、いやしくも、法律、命令、規則または処分の立憲性が爭われる場合には、たとえそれが簡易裁判所の事件でありましても、また不服申立の方法のない決定、命令でありましても、常にその点につき最高裁判所の判断を受け得ることといたしました。本改正案第三百九十三條以下第五百條までが、この新しい上訴制度に関する規定であります。
第七は、民事訴訟の全般にわたり、訴訟または強制執行の関係人の権利の伸張または利益の保護を全からしめるため必要な規定を設けたことであります。たとえば、口頭弁論を経ずして訴を却下する場合に関する第百十四條、債権の差押に関する第六百十八條第二項及び第六百十八條ノ二の規定等がそれでありまして、上告裁判所の判決に対しても、その裁判所に異議の申立をすることができることとした第四百九條ノ二以下の規定も、この部類にはいるものということができるのであります。
最後に第八は、以上の改正に伴い必要な経過規定を設けたことであります。附則に掲げた諸規定がそれでありまして、改正法律施行の前後にわたる事件については、手続法としての性質上、原則として新しい規定によることを建前といたしましたが、他面当事者の利益をさかのぼつて奪う結果にならないように必要な配慮をいたしております。
以上を以て民事訴訟法の一部を改正する法律案の大要の御説明を申し上げた次第であります。
次に行政事件訴訟特例法案につきまして、提案の理由を御説明いたします。
日本國憲法及び裁判所法の施行により、從來行政裁判所が取扱つておりました行政廳の違法は処分の取消または変更にかかる訴訟その他公法上の権利関係に関する訴訟は、すべて裁判所の管轄するところとなり、民事訴訟法の定める手続によつて審理裁判されることになりましたが、この種の事件は、公法上の権利関係に関する爭を内容とするものでありますから、民事事件とはその趣を異にし、その裁判は、直接公共の福祉に重大な関係を有するものでありますため、若干の点について、民事事件とは別個な取扱をする必要があると存ずるのであります。この行政事件の特質に鑑みまして、このたび民事訴訟法の一部を改正いたします機会に、行政事件の訴訟について必要な特例を設け、この種事件の適正な処理をはかろうとするのが、この法律案を提案する趣旨であります。
以下この法案の要点を御説明いたしますと、まず第一は、行政廳の違法な処分の取消または変更を求める訴を提起するには、その前提として訴願を経なければならないものとしたことであります。違法は行政処分に対しては、まず訴願による救済を求め、行政廳に処分を匡正する機会を與えることが、訴願制度を認める趣旨に適合し、またそれが迅速に行われる限り、國民のためにも便宜であると考えられますので、法令上訴願の途が開かれている場合には、原則として、訴願の裁決を経た後でなければ、訴を提起することができないものといたしました。
第二は右の訴の被告及び土地管轄を定めたことであります。この訴は行政処分の適法性を爭うものでありますから、從來の行政訴訟におけると同樣に、直接処分をした行政廳を被告とすることが、裁判の適正と迅速を期する上に適当であると考えまして、その旨の規定を設けました。またこの種の訴については、專属管轄の制度を採用し、事件につき審理の円滑を期するとともに、訴訟の取扱が区々にわたることのないように、万全の措置を講じました。
第三は行政廳の違法な処分の取消または変更を求める訴について出訴期間を定めたことであります。行政処分は、処分を受けた者のみでなく、公共の利害にも関係することが深いから、これを長く未確定の特態におくことは避けなければならないので、日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に関する法律第八條と同じく、この期間を、原則として、処分のあつたことを知つた日から六箇月と定めました。なお、この出訴期間の制限と関連して、原告が被告とすべき行政廳を誤つたときは、訴訟の係属中いつでも被告を変更することができることといたしました。これは從來の行政裁判の経驗に微しますと、原告が被告とすべき行政廳を誤つたために、回復することのできない不利益を受ける事例が往往ありましたので、かような事態を避けようとする趣旨に出たものであります。
第四は、違法な行政処分の取消または変更を求める訴に併合し得る訴の種類を定めたことであります。この訴には、その請求と関連する原状回復、損害賠償その他の請求にかかる訴に限り、これを併合することができるものとし、これによつて、当該行政処分に関連する紛爭を一挙に請決するとともに、他面、廣く訴の併合を認めることにより、行政事件そのものの裁判が遅延することを避けようとするものであります。
第五は、行政処分は、出訴によつてその執行を停止されないことを明らかにし、併せてこれに対應して必要な規定を設けたことであります。出訴が行政処分の執行を停止する効力を有しないことは、事柄の性質上明らかなところであると存じますが、これを貫きますと、せつかく勝訴した者のため、はなはだ酷にすぎる結果となることがありますので、裁判所は、処分の執行により生ずべき償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、事件の終局的解決に至るまで、一時行政処分の執行の停止を命じ得ることといたしました。しかしながら、行政処分の停止が、公共の福祉に重大なる影響を及ぼすおそれのあるとき、及び内閣総理大臣が異議を述べたときは、執行の停止ができないことといたしまして、國家公共の利益の保護に遺憾なきを期しました。
最後に第六は、行政処分の取消または変更を求める訴の提起があつた場合において、請求の理由があるときでも、裁判所は、請求棄却の判決をし得ることとしたことであります。すなわち裁判所が一切の事情を考慮し、行政処分を取消しまたは変更することが、かえつて公共の福祉に適合しないと認めるときは、原告の請求を棄却することができることとし、公共の福祉の確保をはかつたのであります。
そのほか、行政事件の特殊性に鑑みまして、裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、訴訟の結果について利害関係のある行政廳その他の第三者を訴訟に参加させることができるものとし、また、公共の福祉を維持するため必要と認めるときは、職権で証拠調べをし得る途を開くとともに、確定判決は、その事件について関係行政廳を拘束するものと定めて、裁判の実効性を確保いたしております。
以上を以て、ただいま議題となりました行政事件訴訟特例法案の大要の説明を終ります。何とぞ慎重御審議の上、速やかに可決せられんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X00919480405/2
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003・井伊誠一
○井伊委員長代理 これら両案につきましては、本日は説明に止めます。
午後一時まで休憩いたします
午前一一時五十七分休憩
〔休憩後は開会に至らなかつた〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X00919480405/3
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