1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十三年六月三十日(水曜日)
午前十時三十四分開議
出席委員
委員長 井伊 誠一君
理事 鍛冶 良作君 理事 八並 達雄君
岡井藤志郎君 佐瀬 昌三君
花村 四郎君 松木 宏君
山口 好一君 池谷 信一君
石井 繁丸君 猪俣 浩三君
榊原 千代君 打出 信行君
中村 俊夫君 中村 又一君
吉田 安君 大島 多藏君
酒井 俊雄君
出席議員
参議院司法委員
長 伊藤 修君
出席政府委員
檢 務 長 官 木内 曾益君
法務廳事務官 岡咲 恕一君
法務廳事務官 野木 新一君
法務廳事務官 宮下 明義君
委員外の出席者
議 員 林 百郎君
專門調査員 村 教三君
專門調査員 小木 貞一君
―――――――――――――
六月二十九日
罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の
災害及び同條の規定を適用する地区を定める法
律案(内閣提出)(第二〇〇号)
の審査を本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した事件
人身保護法案(参議院提出)(参法第二号)
刑事訴訟法を改正をする法律案(内閣提出)(
第六九号)
判事補の職権の特例等に関する法律案(内閣提
出)(第九〇号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/0
-
001・井伊誠一
○井伊委員長 会議を開きます。
判事補の職権の特例等に関する法律案を議題といたします。本案については各党の共同提案になる修正案が提出せられております。これを朗読いたします。
判事補の職権の特例等に関する法律案の修正案
第二條第三項中「衆議院若しくは参議院の司法委員会專門調査員、衆議院若しくは参議院の法制部に勤務する参事若しくは福参事、」を削り、「判事又は檢事たる資格を有する者が、」の下に「衆議院若しくは参議院の司法委員会專門調査員、衆議院若しくは参議院の法制部に勤務する参事若しくは福参事、」を、「海軍司政官」、の下に「特許局若しくは特許標準局の抗告審査官若しくは審判官たる特許局事務官若しくは特許標準事務官若しくは商工事務官、技術院の抗告審判官若しくは審判官たる技術院参技官、」を加え、「法務府事務官」を「法務廳事務官」に改め、同條第四項中「法務府教官」を「法務廳教官」に改める。
第五條第一項中「海軍司政官、」の下に「特許局若しくは特許標準局の抗告審判官若しくは審判官たる特許局事務官若しくは特許標準局事務官若しくは商工事務官、技術院の抗告審判官若しくは審判官たる技術院参技官、」を加え、「法務府事務官」を「法務廳事務官」に改める。修正案の提案理由を説明願います。石井繁丸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/1
-
002・石井繁丸
○石井委員 この法律案の修正案の中心をなすものは、特許局もしくは特許標準局の抗告審判官もしくは審判官たる特許局事務官もしくは特許標準局の事務官もしくは商工事務官、技術院の抗告審判官もしくは審判官たる技術院参技官、これらの人々にその在職期間を判事補あるいは判事としての在職期間を与える、これを認めるという点に盡きるのでありまして、これらの人々を判事または檢事たるの資格を有し、そうしてさような職務についた者については、他の者と同じくさようなる在職期間を認めてやるのが適当ではないか、かような点をもちまして修正案を提出した次第であります。その他の点は字句の点に止まるのでありまして、字句の羅列を少しく改正した、または法務府事務官を法務廳事務官にいたしましたのは、法務府がまだできませんで、現在の法務廳そのままでありますから、そのような字句を修正した、かような点に止まるのでありますが、実質的な修正におきましても、問題の範囲は狹くありますが、しかしかような人にかようなる地位を与えることは適当ではないかというので、全員一致で考慮した結果修正案を提出した次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/2
-
003・鍛冶良作
○鍛冶委員 本法についてまず承りたいのは、これは第一條にも明記してありまする通り、当分の間となつておりまするから、やむを得ざる臨時法であろうと考えるのであります。しかしこのような臨時法を設けなければならぬという根本の理由が一体どこにあつたのかを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/3
-
004・岡咲恕一
○岡咲政府委員 お答え申し上げます。現在判事の定員に相当数の欠員がございまして、裁判所におきまして会議体で裁判をする、あるいは單独で裁判をいたします場合に、非常に手不足を感じておりまして、いたずらに事件が山積するという状態にありますので、何とかしてこの窮状を打開したいということを裁判所の方でもお考えになりますし、われわれも考えまして、やむを得ないから、判事補の中で五年間も在職すれば裁判官としての経驗も相当積んだことにもなりますし、かつ最高裁判所におきまして十分その実質的な資格を備えておると認定せられました者に限りまして、当分の間この裁判官の充実されてない状態を補充する意味におきまして、その判事補としての職権の制限を受けないものとし、判事補に地方裁判所の判事の権限を行使せしめようという趣旨に基きまして、第一條を立案いたした次第でございます。お言葉にもございましたように、これはまつたく当分の間のやむを得ない必要を充す便宜的な措置に過ぎないことを御了承いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/4
-
005・鍛冶良作
○鍛冶委員 そこで私はまず根本論として承つておきたいと思いまするが、現状のようなことで、はたして判事の補充を思うておられるようにできるでありましようか。できないということになれば、これは永久法のようなことになる憂いがあります。そこでわれわれの考えるのは、もつとこういう法律を出されるまでには、根本的に判事の補充はいつでもできるという制度並びに実際の途を開いておかれることが、何より大事だと思うのでありまして、今日判事がなり手がないからといつて、こういうものを出して、またなり手がないからといつて、また便法をやることになりますと、裁判所法で定めて資格というものがまつたく失せることになると思う。私はこの法律をつくる前に、今言つたような、だれでも裁判官に喜んでなるというような制度を確立することに努力せられることが、前提だと思うまであります。この点に対して立案者の御意見を承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/5
-
006・岡咲恕一
○岡咲政府委員 ただいまお尋ねのお言葉に対しましてはまつたく同感でありまして、最高裁判所におかれましても、判事の欠員の充実には非常に努力しておられるように承つております。ところが現実にはなかなか補充が困難でございますのは、一つは、裁判官の待遇が必ずしもその品位を保つのにふさわしいものでないということと、それからあまりに裁判官の負担が過重であるという点が、大きな原因になつているように考えるのでございますが、先般國会におきまして御可決を願いました裁判官の放酬等に関する法律案によりまして、裁判官は從前にない高い待遇を受けることになりましたので、この法律が施行されました曉には、判事の補充は現在よりもよほど困難を減ずるであろうと考えます。また最高裁判所が判事の補充についてとつておられます措置についても多少問題がございまして、もつと人材を吸收することに対して積極的な努力をお重ねになるように伺つておりますので、その努力と、ただいま申しました裁判官の待遇が從前にない高い待遇を与えられるようになつた、この二つの事実によりまして、欠員の補充はおそらく遠からざる將來に実現するだろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/6
-
007・鍛冶良作
○鍛冶委員 私は本法にはやむを得ざるものとして賛成はいたしますが、今お答えになつたようなことを一日も早く実現せられるように、この法律が一日も早くなくなることを希望いたしておきます。
なお私はついでにこの修正案提案者にも伺いたいのでありますが、このような臨時立法であります以上は、この臨時立法の中にことさらにこういう人を入れて悪いというのではありませんが、入れなければならぬという理由がないと思いますが、この中にぜひはいらなければならぬということになると、これは判事の永久的の法律であるというような感じを与えはせぬかと思うのでありますが、この点は修正せられる上においてどういうお考えであつたかを伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/7
-
008・石井繁丸
○石井委員 この臨時的な立法の中にかような点を入れたということは、ただいま鍛冶委員の言われた通り相当疑問があるのでありまして、この点いろいろと政府当局にも伺いましたら、この関係の者が三名ないし五名くらいであるというので、またあらためて新しく立法するということもどうかと思います。その数が非常に少く將來また新しくさような人がかような地位につくということもあまり考えられないのでありまして、さような関係で臨時立法でありまするが、これを入れて併せて修正をしたい、かようなわけでありますので御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/8
-
009・鍛冶良作
○鍛冶委員 私はこれにあながち不賛成ではありませんけれども、根本の趣旨から考えてあまり喜ばしいことでないが、なおまた廣く法曹界を探してみまするならば、このほかにも入れてしかるべき人のなきにしもあらずと思います。この人を入れなくては現在の裁判官がいかぬというならば、これはどうも入れなければならぬということも考えまするが、これも入れなければならぬじやないか、これも入れなければならぬじやないかといつて、この臨時立法に入れるという考え方は、まことにおもしろくないと考えますので、私は今日せつかく出ました修正案でありますから、これに賛成はいたしまするが、今後そういう考えでこれを補充されないことを希望しておきます。それのみならず先ほど言つたような一日も早くこういう法律のなくなることを希望しているのであるから、こういうものを一人も入れないで早くほんとうの裁判官にするという建前で、今後進まれることを希望して修正に賛成いたすものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/9
-
010・井伊誠一
○井伊委員長 それでは本案を討論に付します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/10
-
011・猪俣浩三
○猪俣委員 本法は現在の判事の現状におきまして理想ではありませんが、現実の問題としてやむを得ないことだと思うのであります。経済査察廳法、あるいは警察官の職務執行法その他の法律におきましても、裁判官の許可状とか令状を請求する事件がたいへん殖えてまいりましたし、また本刑事訴訟法の改正におきましても、さような裁判官の定員ということにつきましては、非常に増員を必要とする現状におきまして、やむを得ざる場合といたしまして本法に賛成をいたします。但しなるべく近い將來において、かような変則的な法律が必要でないような適切な御処置を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/11
-
012・中村俊夫
○中村(俊)委員 民主党を代表いたしまして、ただいまの修正案に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/12
-
013・大島多藏
○大島(多)委員 先ほどの鍛冶委員からの質問にもありました通り、私たちは本法案に喜んで賛成するものではありませんが、目下の裁判所の事務繁忙の実情よりいたしまして、やむを得ざる緊急措置と考えまして、私は國民協同党を代表いたしまして修正意見を除く政府原案に賛成し、並びに修正案にも賛成申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/13
-
014・松木宏
○松木委員 現下の事情といたしまして、臨時立法としてやむを得ないものと思いますから、私は民主自由党を代表いたしまして、修正案並びにその以外の原案に賛成の意を表します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/14
-
015・井伊誠一
○井伊委員長 討論は終局いたしました。これより採決いたします。
まず修正案について採決いたします。提案のごとく修正するに賛成の諸君の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/15
-
016・井伊誠一
○井伊委員長 起立総員。よつて全会一致をもつて修正のごとく決しました。
次に修正に決しました部分を除いた他の部分について採決いたします。
ただいま修正に決した部分を除いては、原案の通り決するに賛成の諸君の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/16
-
017・井伊誠一
○井伊委員長 起立総員。よつて修正部分以外は原案通り全会一致をもつて決したので、ここに本案は全会一致で提案のごとく修正議決いたしました。
なお本案に対する委員長報告書の作成並びに事後の取扱方は委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/17
-
018・井伊誠一
○井伊委員長 御異議なしと認めましてそのようにいたします。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/18
-
019・井伊誠一
○井伊委員長 次に刑事訴訟法を改正する法律案を議題とし審査を進めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/19
-
020・中村俊夫
○中村(俊)委員 私が先般の質問の中で、大体刑事訴訟法全般を通じて使われている用語として、訓辞規定か、強行規定かというような部分があるのですが、先ほどの前の質問において私が述べましたように、刑事訴訟法のごとく効力が外部に及ぶような法律案に対しては、絶対に訓辞規定というものはあり得ないという考えをもつておりますが、これに対する政府の答弁が留保になつております。それから二條の條文についても訓辞規定であるか、強行規定であるかということをお伺いしたのでありますが、私の考えが妥当であれば、次の質問に対してお答えを願う必要はないのでありますが、その点について全般的に関する御意見、そうしてかりに訓辞規定というようなものもあり得るというようなお説であるならば、先般お尋ねした二、三の條項について、はたしてそれが訓辞規定か、強行規定かということを御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/20
-
021・野木新一
○野木政府委員 訓辞規定か、強行規定かという対立さして御質問願うと、いささか答弁が苦しくなるわけでありますけれども、訓辞規定という言葉はむしろ努力規定と対立する観念である。強行規定という観念はむしろ任意規定と対立する観念ではないかと存ずる次第であります。強行規定かどうかという点から論じますと、刑事訴訟法の規定は後者に属しまして、当事者の意思をもつてこれと異なる私的、自治的規定を設けないという意味におきまして、ほとんど全部強行規定である、そう申して差支えないと思います。ただその強行規定に反した場合に、その効力が全部なくなるかどうかという点から論じますと、個々の規定について論じてみないといろいろむづかしい問題が起きてきて、場合によつては非常に重要なものであればただちにその効力にも関係するものもあるし、中には効力に関係せず、ただ違反したために違法行為が起きる、そういう場合もあるかと存ずるのであります。先日御指摘の各規定は、その意味において全部強行規定であるということを申し上げることができると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/21
-
022・中村俊夫
○中村(俊)委員 結構ですが、その規定をお示し願いたい。例の百四十條の「訴体の檢査を受ける者の異議の理由を知るため適当な努力をしなければならない。」という條項、それから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/22
-
023・野木新一
○野木政府委員 第百四十條及び第百三十一條第二項、これは全部強行規定であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/23
-
024・中村俊夫
○中村(俊)委員 それからもう一箇所あつたと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/24
-
025・野木新一
○野木政府委員 いま一つ搜索の場合の第百十五條、それからただいま申し上げました檢証の第百三十一條第二項、第百四十條、これはただいま申し上げた意味の強行規定であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/25
-
026・猪俣浩三
○猪俣委員 前に私が質問しておりまして留保になつておりました点でありますが、経済統制法令におきまして処罰規定が非常に多い現在、法人の刑事責任ということに関連いたしまして、本法の第三百三十九條及び四百九十二條との関連におきまして、およそ三つの点について御質問申し上げたのであります。一つは審理が継続中に法人が解散した場合はどうなるのであるか。二つは清算が結了してしまつた希にこの法人に対する刑事責任はどうなるのであるが。三つは会社が刑罰を受けまして、罰金か何かに処せられた場合に、無資力になつてしまつて会社それ自体としては何ら罰金の納付能力がないというときに、いわゆる会社の無限責任社員に対してそれを追求できるかどうかという三点について御質問申し上げました。その答弁がまだ留保になつておりますから御答弁願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/26
-
027・野木新一
○野木政府委員 ただいま御質問の点につきましては、今度の案におきましても全部現行法をそのまま踏襲しておるのでありまして、御承知のようにそれらの点につきましては、現行法上すでに判例が存し、またこれに対する有力な反対説もあるわけでありますが、それらの点は全部現行法のもとにおける判例解釈法を一応そのまま踏襲したものが本法においても持越されるものと御承知おき願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/27
-
028・松木宏
○松木委員 第二十七條ですが、法人が被告人または被疑者であるときは「数人が共同して法人を代表する場合にも、訴訟行為については、各自が、これを代表する。」と書いてあります。これはもし代表者の行為が予盾した場合にはどういう取扱いになるのでありましようか、それをちよつとお聽きしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/28
-
029・野木新一
○野木政府委員 矛盾したような場合には、大体先に正当に裁判所なりに訴訟行為をした方が、他の特別の事情がない限り優先する、そういうことになると思います。
それからなお先日石川委員から御質問がありまして答弁を留保しておきました請求を持つて論ずるということでありますけれども、それにつきましては労働関係調整法及び労働組合法にございます。その点を附け加えておきます。それからなお外國政府の請求を待つて論ずる刑法の罪の場合におきまして、これについて訴訟費用を負担させることができるかという点につきましては、やはり國際法との関係でそれがむつかしいだろうというように御承知おき願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/29
-
030・松木宏
○松木委員 ただいまのお答えですと先の方をとるとおつしやるのですが、これは被告人の利益になる方をとるのが穏当じやないかと思います。その点に対していま一度お答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/30
-
031・野木新一
○野木政府委員 各自が代表するとしました点は、御指摘のような矛盾した場合が起つたときに非常に困難しますので、その点を解釈する意味もあるわけであります。從つてたとえば書面の証拠力について考えてみますと、ある代表者が正式に最初その書面を証拠とすることに同意したという場合に、今度は次の階程において他の代表者が出てきてこれを撤回するというようなことを許しますと、訴訟というものは進行できませんので、やはり先ほど申し上げたような解釈が適当と存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/31
-
032・花村四郎
○花村委員 前会の継続をいたしまして御質問いたしたいと思います。改正刑事訴訟法の時に関する効力についてちよつとお尋ねしたいと思います。現行刑事訴訟法で訴訟が進行中新刑事訴訟法が実施をいたされることに相なりました場合においては、いずれの法律でその手続は進められるのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/32
-
033・野木新一
○野木政府委員 その点は施行法で解決することになつておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/33
-
034・花村四郎
○花村委員 施行法でどのように解決されるお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/34
-
035・野木新一
○野木政府委員 ただいま私どものもつております施行法の案におきましては、第二條におきまして現行刑事訴訟法と同じように「新法は、新法施行前に生じた事件にも、これを適用する。前項の規定は新法施行前にした訴訟手続の旧法又は応急措置法による効力を妨げない。新法施行前に旧法又は応急措置法によつてした訴訟手続で新法にこれに相当する規定のあるものは、これを新法によつてしたものとみなす。」という規定をおきまして、それに対して原則規定を離れぬようにいたしております。案の第六條におきまして、「新法施行前から進行を始めた法定の期間及びその期間について訴訟行為をすべき者の住居又は事務所の所在地と裁判所所在地との距離に從つて加えるべき期間は、新法施行後もなお旧法による。」といたしまして、なお上訴の期間につきましては、さらに特例を設けまして、なお大まかに申しますと、旧法当時受理している事犯については、大体旧法によつていくということになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/35
-
036・花村四郎
○花村委員 そうすると旧法でただいま公判が開かれているという事件は、新法が実施をいたされることに相なりましても、旧法で進む、こういうことにお聽きいたしてよいでしようね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/36
-
037・野木新一
○野木政府委員 私どもとしては大体そういう方針を考えまして、いろいろ関係方面とも折衝している次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/37
-
038・花村四郎
○花村委員 そうしますと旧法に新法が施行されているのであるが、旧法で手続を進めてきたものは、旧法で判決を受けるということに今の御答弁では相なろうと思うのですが、それが一審である場合においては一審だけ適用されて、控訴は旧法では適用されませんかということが一つ。それから旧法で第一審の判決を受けて控訴中、新法が適用せられたという場合においては、その事件は旧法でいくのか、あるいは新法でいくのか、それを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/38
-
039・野木新一
○野木政府委員 施行法と本法と一緒に御審議願いたいと思いまして、その手続を進めてまいりましたが、いろいろの関係で一緒に御審議を願えないことになりましたので、いろいろの御疑問の点が生じましたことは、まことに恐縮に存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/39
-
040・花村四郎
○花村委員 時間がありませんから簡單に私の方から質問をしますから、急所だけ答弁をしてください。今度は新刑事訴訟法の場所に関する効力についてひとつお尋ねしたいのですが、新刑事訴訟法が日本の版図に及びますことはもちろん疑いがないと思いますが、そこで條約によらなければ決定しない未決定な日本の島嶼があるのでありますが、その島嶼には及びますか及びませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/40
-
041・野木新一
○野木政府委員 現在のところ及ばないと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/41
-
042・花村四郎
○花村委員 それから刑事訴訟法はもちろん朝鮮人や台湾人に適用せられることは当然だと思うのですが、第三國人のいかんを問わず、すべて適用せられますか。そうして第三國人にして適用せられざる人はどういう関係の人ですか。その限界をはつきりお示しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/42
-
043・野木新一
○野木政府委員 現在のところは連合國人には適用になりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/43
-
044・花村四郎
○花村委員 連合國人。というと、朝鮮、台湾人にはもちろんなりましようね、どうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/44
-
045・野木新一
○野木政府委員 この刑事訴訟法は、要するに日本の裁判権が適用になる場上に適用になるのでありまして、朝鮮人につきましては適用があります。台湾人につきましては、ある制限が設けられておりますので、その制限に從うことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/45
-
046・花村四郎
○花村委員 その制限というのはどういうものでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/46
-
047・野木新一
○野木政府委員 台湾人につきましては、支那側の総督官憲から発行しました証明書を持つている者については裁判権が及びませんので、從つて刑事訴訟法も適用がないということになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/47
-
048・花村四郎
○花村委員 その点については、なお詳しくお尋ねしたいが、時間がないからその程度に止めておきます。
次にちよつと條文についてお尋ねしたいのですが、第八十三條に開示の手続というものが規定せられておるのであります。この開示の手続をいたしました結果、勾留が理由がないというような場合においては、被告人及び弁護人並びにこれらの者以外の請求者はもちろんのこと、檢事も意見を述べるということに相なつておるのでありまするが、ただ意見を述べるだけですか。さらにその開示の手続の結果、勾留の理由なしと認める場合においては、それに対してさらに進んで何らかの保護規定を設ける必要があろうと思うのですけれども、その点はいかがでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/48
-
049・野木新一
○野木政府委員 その点につきましては第八十七條の規定が結びついて適用になりまして、請求または職権で勾留を取消す、そういうことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/49
-
050・花村四郎
○花村委員 しかしこの八十七條は「勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、」ここに規定してある人々の請求により、または職権でもつて勾留を取消さなければならぬ、こういうのですが、もしこの開示の結果、裁判所においてはこれは正当なりと認めるのでありまするが、請求者の方では不当な理由であるということに認めた場合はどうしますか。不当だという意見が述べられるだけでは何にもならぬことになる。意見を述べ得る。不当だという意見を述べてみたところがどうにもならない。八十七條とはちよつと違うように思いますが、これは勾留の理由または勾留の必要のないときなんだから、ないときは取消すのは当然なんですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/50
-
051・野木新一
○野木政府委員 御質問の点につきましては、結局裁判所の判断によるわけでありまして、初めから勾留の理由がなかつたことがわかつた場合はもちろん、あとで勾留の理由がなくなつた場合、または勾留の必要がなくなつた場合、そういう場合もすべて勾留を取消す、そういうことになつておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/51
-
052・花村四郎
○花村委員 それはよくわかります。この開示を求める場合は、大体においてこれは裁判所では勾留が必要である理由がある。こう考えております場合において、被告人あるいは弁護人その他の請求者が、その勾留の理由を開示してもらいたいというので開示してみたところが、これらの請求者からいえば不当に考えるが、裁判所の方ではこれは正当に考えておるというような場合に、もちろん八十四條によつて不当だという意見は述べられるのだ、意見だけ述べてもその不当であるという請求に対して何らかの保護規定がなければ、これは意味をなさぬじやないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/52
-
053・野木新一
○野木政府委員 勾留の理由の開示を求めまして、その結果意見を述べ、入れられないような場合には、どうなるかという点については、第四章抗告の規定におきまして、たとえば裁判所がもう身柄を拘束しておく必要も全然なくなることもはつきりしておるのに、なお勾留を取消さない。あるいは保釈をしない、そういうような場合には、抗告できることになつております。ただ犯罪の嫌疑がないという点につきましては、これは法案で審議するのが適当でありますので、犯罪の嫌疑がないという点を理由にしては抗告はできないことになつておりますが、その他の点を理由としてはその勾留に対して抗告ができる、こういう規定によつて十分保護できるものと存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/53
-
054・花村四郎
○花村委員 次に第九十一條に、「勾留による拘禁が不当に長くなつたとき」とあるのですが、この不当というのはどういうことを意味するのですか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/54
-
055・野木新一
○野木政府委員 不当に長くなつたときというのは、一概に申し上げられませんが、そのときの事件の難易とか、裁判所の裁判官の数とか、あるいは事件の輻湊ぐあいとか、そういうすべての点を考えてみて不当に長くなつたということでありまして、これは將來の判例等によつてだんだんと確立されていく、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/55
-
056・花村四郎
○花村委員 どうもそういう趣旨ではまことに漠然たるもので、はたして不当なりや否やということがやはり爭いになるばかりでなくて、不当という漠然たる言葉では、本條に対する適用はなかなかむずかしいと思います。これはなお問題として残しておきます。
それから二百四條の一項の末段に、「拘束された時から四十八時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。」こういう規定があります。この四十八時間という文字はほかにも用いられてありますが、ところが多くは四十八時間以内でやらない。多くの場合は四十八時間を超えている。それでも被疑者の方は泣き寢入りになつているというのが実情でありますが、四十八時間を超えた場合には一体どうなさるのですか。その違法行為に対して何らかの制裁を考えておられましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/56
-
057・野木新一
○野木政府委員 まず第一には二百六條によりまして、裁判官がその時間の制限に從うことができなかつたことの正否を判断いたしまして、不当である場合には勾留状を発する。從つて爾後の拘束の繋続はないわけであります。
なおそれとは別に、正当な理由がなくて、二十四時間なり、四十八時間という時間の制限を超えた場合におきましては、行政監督上の責任、あるいは時として不法行為の責任、あるいは職権濫用というような刑事上の責任も問われる場合があると存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/57
-
058・花村四郎
○花村委員 大概の事件は四十八時間を超えておるのが多いのですが、これは前の現行刑法にもあつたと思いますが、この四十八時間を超えたという事案に対して、何らかの処分行為をやつた事実があるかどうか。
それからもう一点、二百六十八條の二項の末段に「檢察官に嘱託してこれをしなければならない。」とあるのですが、この檢察官に嘱託をするという場合に、とかく嘱託に応じない場合があるということを予想できる。何となれば、要するに弁護士が裁判官に代つてやるというような関係になりまするので、急に弁護士がこういう裁判官の立場になつて、そうして檢察官を指揮と言つては語弊があるでしようが、檢察官に頼んで、こういう捜査をやつてもらいたいというようなことを言うても、なかなかやらない。おそらくやらぬことが予想できると思うのでありますが、この嘱託に応ぜざる場合においての、何らかの罰則規定を設けるとか、あるいは嘱託のある場合においては、必ずその嘱託を実行するという、何か方途を考慮する必要があろうと思うが、その点はいかがでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/58
-
059・木内曾益
○木内政府委員 その点におきまして、御心配の点は私もごもつともと思つておるのでありまして、十分その点は考えておりまして、法務総裁の訓令または通牒等によつて、十分その点は配慮いたすつもりでおります。なおこれに從わなかつたというような場合におきましては、行政裁督権の発動が当然起つてくるものと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/59
-
060・花村四郎
○花村委員 もう時間がないようですから、それではこの程度に打切つて、また機会を見て質問することにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/60
-
061・松木宏
○松木委員 先刻の代表者の矛盾した行為についての御答弁は、先のものを採用するという御答弁だつたのですが、眞実に近いものを採用するというのがほんとうではないでしようか。たとえば控訴の申立をしたが、他の代表者が出てきて取下げをしたというような場合は、これは控訴の先の申立を御採用になるということが正当だろうと思いますが、被告人の代表者の各自の申立を、どこまでも先のもののみを採用するということは、ちよつと意味をなさぬと思う。そういう場合には眞実に近いものを採用するという精神でないと、この規定はいけないと思うのですが、どうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/61
-
062・木内曾益
○木内政府委員 その点につきましては、それぞれ会社の利益のために代表しておるのでありまして、さような衡突があるということは、私は考えられないと思う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/62
-
063・松木宏
○松木委員 衡突があるとは考えられぬと言いましても、これはあるかもしれないのでありまして、先の被告代表として出た被告の申立と、後の被告の代表として出た被告の申立が矛盾することがないとは限らぬのであります。そういう場合には眞実に近いものを採用するというのでないと、意味をなさぬように思うのですが、この点をはつきりお聽きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/63
-
064・野木新一
○野木政府委員 法人のある代表者の訴訟行為によりまして、すでにある法律効果が発生してしまつた訴訟は、その法律の効果の上に立つて順次展開していくわけでありまして、そのあとの方で他の代表者が出てきて、先の行為を、問題つたら取消すというような場合を考えますとこの法律上、訴訟行為取消しを認めておるような場合ならば、あるいは認め得ることもあるかもしれませんが、そうでない場合でありますと、ある一人の人が昨日はこういう主張をと、次の日はただちにこれの反対を主張するということと同じになりまして、訴訟秩序は混乱いたしますので、やはり先ほど申し上げた解釈は妥当であると存じておる次第であります。そうしてこの点は現行法と同じでありまして、現行刑事訴訟法のもとにおきましても、この点につきましてはあまり問題の点を聽いたことはありませんので、大体これで差支えなく動いておるものと存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/64
-
065・松木宏
○松木委員 これ以上は議論にわたりますからやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/65
-
066・井伊誠一
○井伊委員長 この際お諮りいたしますが、林百郎君からごく短い間、発言を求められておりますから許したいと思います。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/66
-
067・林百郎
○林百郎君 私の方は委員が出ていないために意見を述べる機会がありませんでしたが、三点ほど本刑事訴訟法についてなお愼重に各委員に考えていただき、もし直していただけるならば直していただき、採決の際にも考慮していただきたいという点があるのであります。
その第一点は、第一審中心主義であるということ、控訴上告においては、ほとんど例外的に事実審理をなされるのみであつて、事実的には第一審限りで刑罰が確定される結果になつておる。このことは裁判の敏速に名をかりて、実質的には司法官僚の專制になるのではないかという点が心配になるのであります。いわゆる三審制度が事実上第一審中心主義になつておるという点が第一。
それから第二点としましては、依然として檢察官が司法警察の職員を指揮して、強大な独自的な権力をもつごとく構成されておる。これは捜査権の保持の名のもとに、その実は檢察官僚の機構を依然として從來よりも強化される心配がある。これは百九十三條、百九十四條の檢察官の司法警察官に対する指揮命令の條文を読んでいただけばわかると思います。
それから第三点としましては、一般の民衆が裁判に関与いるという規定は一つもないのであります。ところがむしろこの際廃止していただきたいような手続がなお温存されておるという点であります。第一は畧式の手続の制度がなお温存されておる点が第一、それから逮捕、勾留、勾引が原則として認められておる。わずか例外として制限があるということ、殊に第一審で有罪の判決があるとすぐ保釈が取消されまして勾留が回復してしまう。その後は職権により保釈のみしか許さない。当然保釈事由による弁護人側からの要求による保釈は許されないのであります。こうなつたらもう一審で有罪の判決を受けたものは、おそらく控訴するものはないと思うのであります。これはかえつて旧來より悪くなつているのではないかと思うのであります。それから先ほど花村委員からも質問があつた点でありますが、裁判官の專断的な処置に対する救済方法、異議の申立、抗告の申立等が非常に制限されているという点が、私の方が算えただけで十三箇所程度もあるのであります。こういう点も十分斟酌していただきたいと思うのであります。
次に申し上げることは、弁護人の数を制限して、かつ主任弁護人の制度を設けておる点であります。これは弁護人の行動を非常に制約すると思うのであります。やはり自由に弁護人を付して、十分被告人の権利を主張させる途を開かなければならないと思うのであります。もう一つは、被疑者ないし被告人が不当に拘束される。これは五十五條、二百三條ないし二百八條において明らかであります。やたらに拘束される、原則として拘束されるということになつておるのであります。これは明らかにわれわれが憲法上保障されている身体の自由の権利が分当に拘束されるので、この点非常に愼重に御考慮願いたいと思うのであります。
以上を要約いたしますと、第一点が一審中心主義になつておるということ。第二点は依然として檢察官の権力が強大になつておるということ。すなわち司法檢察官の指揮、監督権を通じて、この機構が從來よりも確立されておるという点であります。第三点としては、弁護人の制限、保釈の取消し、畧式手続の温存等によつて、人民の裁判に関与する権利が制限せられておるのみならず、かえつて從來よりもわれわれの権利が不当に制限される危險がある。しかも普通の民衆が裁判に関与するという手続は一つも認められておらない。こういう三つの点について、本刑事訴訟法が多少の進歩的な要素をもつているにかかわらず、依然として糾問式的な從來の制度のもとに、わずかに米法式な手続を入れておるだけで、われわれの十分戒心を要する法案ではないかと考えておるのであります。斯界の権威者が集まつてやつておる司法委員の皆樣方でありますから、どうぞ愼重に御審議願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/67
-
068・井伊誠一
○井伊委員長 本案につきましては先月來連日御審議を煩わしてまいりました。非常に廣汎な本案の全條を通じて質疑を盡しました。各委員の修正意見等についても大体まとまりをみたように存じます。つきましてはこれにて質疑を打切りたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/68
-
069・井伊誠一
○井伊委員長 それではこれにて質疑を打切ります。
なお委員長の手もとに各党提案にかかる修正案がまいつておりますので、この際これを朗読いたします。
刑事訴訟法を改正する法律案の一部を修正する案
刑事訴訟法を改正する法律案の一部を次のように修正する。
第三十三條 被告人に数人の弁護人があるときは、裁判所の規則で、主任弁護人を定めなければならない。
第三十四條 前條の規定による主任弁護人の権限については、裁判所の規則の定めるところによる。
第三十五條 裁判所は、裁判所の規則の定めるところにより、被告人又は被疑者の弁護人の数を制限することができる。但し、被告人の弁護人については、特別の事情のあるときに限る。
第四十八條第三項を次のように改める。
公判調書は、各公判期日後速やかに、遅くとも判決を宣告するまでにこれを整理しなければならない。但し、判決を宣告する公判期日の調書は、この限りでない。
第五十一條第二項但書中「最終の公判期日後に整理された公判調書」を「判決を宣告する公判期日の調書」に改める。
第八十九條第四号中「虞があるとき。」を「と疑うに足りる相当な理由があるとき。」に改める。
第三百四十三條後段を次のように改める。
この場合には、あらたに保釈又は勾留の執行停止の決定がないとはに限り、第九十八條の規定を準用する。
第三百九十三條第一項に次の但書を加える。
但し、第一審の弁論終結局前に取調を請求することができなかつた証拠でその事由が疎明されたものについては、刑の量定の不当又は判決に影響を及ぼすべき事実の誤認を証明するために欠くことができない場合に限り、これを取り調べなければならない。
修正案について提案の説明を願います。鍛冶良作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/69
-
070・鍛冶良作
○鍛冶委員 簡單に修正案の理由を説明いたします。
大体においてただいま林君から述べられましたような点はわれわれもともに同感でありまして、できるだけ修正をしたいと思つておつたのであります。四囲の事情これを許しませんので、最小限度における修正を出したわけでありまして、なお修正したい点は多々ありますが、現在の段階においてはこれをもつて満足しなければならぬかと考えておるのであります。
第一は、三十三條から三十五條の修正でありますが、これを要約いたしますと、弁護人の数を制限したり、または主任弁護人をきめるというようなことを法律によつて定めることはおもしろくない、こういう点からすべてこれを削除したいと思つたのでありますが、そうわけにもいかぬ事情がありましたので、これは裁判所の規則においてしかるべくやられてよいものだ、こういうので、趣旨は、訴訟法からこれを除くという意味で、これを出したのであります。從いまして説明するまでもなくおわかりのことと思います。なお三十五條の「被告人の弁護人については、特別の事情のあるときに限る。」ということは公訴が提起せられて、公判に移つた場合は、原則として制限しない。特に制限しなければ困るという特別の事情のあるときに限るということを明確にしたいという趣旨であります。
第四十八條の第三項の修正は、公判調書はでき得るだけ早くつくつて審理に間に合うようにつくらなければならぬという建前から修正をしたのであります。でき得るものならば遅くとも弁論の開始前に整備して、それに基いて弁論をなす、または裁判をするということを理想といたすのでありますが、いろいろ実際を聽いてみますと、なかなかそうもいかぬようでありますから、少くとも判決をするまでに調書ができておらなければならぬ。その調書に現われたる証拠をもととして判決をしなければならぬ、こういう意味でこの改正をしたわけであります。
五十一條の第二項の但書の修正は、これはもう当然のことでありまして、判決宣告の期日までに調書ができますとすれば、その判決の日の調書は当然残るわけでありますから、それをここに現わしただけであります。
次に第八十九條第四号の修正でありますが、これは保釈を拒絶する理由の一つとして「罪証を隠滅する虞があるとき。」となつておつたのであります。この虞れありというだけでありますと、あらゆる場合が含まれますので、これを理由に保釈を拒絶せられることが多いと考えましたので、でき得るだけこれを嚴格に定むべきものだと考えまして、「隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」と改めて、相当な理由を明示し得るとき、または明示するにあらざれば拒否できないということに改めたのであります。
次に三百四十三條後段の修正でありまするが、第三百四十三條によりますると、禁錮以上の刑に処する判決があつた場合は、当然に保釈の効力が消滅いたしまして、さらに原案によりますると、第九十八條の規定を準用してただちに收監することになつておるのであります。これは上訴をしたる場合等を考えますると、はなはだおもしろくない規定であると考えましたので、願わくはこれを削除したいということでいろいろ盡力してみたのでありまするが、四囲の事情これを許さないようでありますから、せめて判決があつてもさらに保釈の申請ができ、保釈があり、または勾留執行の停止の決定があつたときは、九十八條の規定を準用しないのだということを明確にしたいと考えまして、この通り「あらたに保釈又は勾留の執行停止の決定がないときに限り、第九十八條の規定を準用する。」かように改めたわけであります。
次は三百九十三條第一項の但書でありまするが、これはできる限り控訴審においても事実の取調べをしてもらいたい。また新たなる証拠があればこれを取調べをしてもらうことにしなければならぬという趣旨から、いろいろ考えまして、これもいろいろ努力はいたしましたが、今日の情勢上これ以上のことができませんので、せめて新しい証拠で第一審に出さなかつたものであれば、これだけを取調べする、取調べするだけではありません。これは職権によつて当然取調べできるのでありますが、当事者の申立によつて取調べをしなければならぬということを明示するためにやつたのであります。但しその代りここに書いてありまするように、請求することができなかつた事由を疎明し、またその証拠が刑の量定の不当または判決に影響を及すべき事実の誤認を証明するために欠くことのできない場合に限るという制限があるのでありますが、とにもかくにもこのようにして新しい証拠があれば申立によつてこれを取調べてもらうという規定にしたい。かように考えましてこの修正を出したわけであります。
以上簡單でありまするが、御説明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/70
-
071・井伊誠一
○井伊委員長 次に岡井藤志郎君より個人の修正案が出ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/71
-
072・岡井藤志郎
○岡井委員 同僚各位からお出しになつておられる点、これは私も満腔の熱誠を捧げてこれに賛成し支持するものでございます。そのほかに私の個人の意見でございまするが、個人の意見でございまするのであえて皆樣にお諮りせずに、そのいとまもございませんでしたので、ここに提出する次第でございます。すなわち第三十九條第一項中「立会人なくして」を削る。その理由は、かくのごとく立会人なくして接見ができるとするならば、身体拘束の意義いずれにありやということを問いたい。身体拘束をする必要は毛頭ない。ただ体が刑務所におるというだけであつて、自由自在に交通ができる。いかなることでも立会人なくしてやれば天下なし能わざることなしです。そうして弁護人は当該事件の弁護に急なるあまり、いかなる聖人君子の弁護人でも、被告人と相当の相談をやり、相当の証拠隠滅は必ずやる。これはやらなければ人間でない。そうなれば勾引、勾留、逮捕ということはまつたくやめてしまつたらよろしい。何らの意義もなさない。
その次は第百九十八條第二項を削る。それから第二百九十一條中「終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨その他」を削る。それから第三百十一條第一項、及び第二項中「被告人が任意に供述をする場合には」を削る。その理由。そもそも身体拘束のごときこそ不利益供述強要の最たるものです。不利益供述を強要するのには身体拘束が最もよろしい。これ以上に有効適切なる方法はない。うそだと思つたら実驗を受けてみたらわかる。ところがこの論理に從い、実原則に從い、またほかの証拠に照し合わせてみたら、質問、尋問というものは決して憲法にいわゆる不利益供述強要ではない。それでわれわれはよろしくこの被告人の地位のみでなく、國家の地位を考えなければいかぬ。被告人のみの人権を擁護するに止まらず、國民大多数は善良なる人々です。この善良なる大多数の人々の基本的人権を擁護するということを考えなければいけない。贈收賄のごとく本人のほか知る者のない犯罪、これは贈賄者も收賄者もともに被告人になるべきものでございまするが、これらは本人のほか知る者はない。かような犯罪は國家の尋問権を認めなければわかりつこない。それから窃盗、強盗、殺人のごとき平凡なる犯罪は、被害届があつて被害はわかりまするが、本人に尋問することができなければ本人に結びつきがつかない。ですから贓品を一つもつておりましても、これこれの窃盗であると認定するわけにもいきませんし、またどの程度、どの分量の窃盗であるかということを認定するによしなきもので、刑の量定ができない。そこで弁護人と自由に交通ができるということと、國家は被告人に向つて尋問権がないということにいたしますれば、結局世の中のばか正直なもの、智惠の足りないものが罰せられて、少しく知識階級の者がこの二箇條を悪用したならば、もう刑罰を科せられるということは絶対にないという結果を招來するものと思います。政治家としてかかるむちやな立法に賛成をするということは不見識である。わが日本は経済その他あらゆる文明の点からいつても、アメリカのごとき大國と違いまして貧弱國である。生存競爭がはげしい。かような國で司法が乱れたならば國は亡びる。この重大なる点を私はいかにしても閑却することができない。それからすでに一言申し上げましてたが、國家が被告人に向い、被疑者に向つて尋問権がないといたしますならば、犯罪がありと思料しただけで無罪の判定を受くべき人間に向つて逮捕状を発する。勾引状を発する。無制限に勾留する。これいかに。ものをお伺い申すくらいは問うたらいいじやないか。尋問ぐらいはかけられないで國家であると言えますか。この点についてはアメリカがわからぬならばアメリカの蒙を啓く必要があると思う。私はかような立法に対しては、個人といたしましても断々固としてかような立法を阻止しなければならぬと思う。もり機会があれが本会議でもどこにでも出て、私一人でも反対します。かように思います。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/72
-
073・井伊誠一
○井伊委員長 これより岡井藤志郎君提出修正案、江党共同提案の修正案並びに原案を一括して討論に付します。池谷信一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/73
-
074・池谷信一
○池谷委員 今回の刑事訴訟法の改正は必ずしも万全なものでないと思うのでありますが、新憲法の施行に伴いまして、本法を相当大幅に至急改正しなければならない必要に迫られていると思いますので、足らざる点につきましては、近き將來においてさらに檢討し、徹底的に改正することといたしまして、この際社会党を代表いたしまして、各党共同提案になりますところの修正案に賛成し、岡井委員提出の修正案に対しては反対し、その他修正部分を除いたところの部分につきましては、政府原案に賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/74
-
075・中村俊夫
○中村(俊)委員 私は民主党を代表いたしまして、ただいま提出になりました各党共同提案による修正案に賛成いたしまして、その他の部分については原案に賛成いたします。なおただいま提出になりました岡井委員の修正案につきましては、はなはだ遺憾ながら賛成することができません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/75
-
076・佐瀬昌三
○佐瀬委員 私は民主自由党を代表いたしまして、政府提出の原案中、各党派共同提案の修正案について賛成し、この部分を除いた原案全体について賛成いたし、同僚岡井委員の修正案については反対するもとであります。理由を簡單に申し上げてみたいと思いますが、この大法典である刑事訴訟法は、政府委員に対する質疑を中心に熱心な論議が当委員会において継続されたのであります。しかし重要な刑事訴訟法の施行法が経過法としてまだ提案されていない。同時に本法の施行上重要な関連をもつ裁判規則が今もつてその案すらも成案を得ていないという段階においては、この審議を盡す上においてきわめて不便を感じておるのであります。しかしながら一方新憲法下、個人的人権保障と公共の福祉の維持と、しこうして刑事裁判の迅速適正を期するというこの三大原則のもとに、私どもはこの法案を審議した結果、さしあたりましてはただいま提案された共同提案の修正案が、最少限度の修正と認め、しかして他の部分の原案はこの際一応成立を認め、追つて関連の法規が制定された場合、及び將來の実務の状況等から見まして、さらに徹底したところの改正案をいずれまた用意するという希望のもとに、とりあえず本法案に賛成するものであります。從つてこの法律が制定された上において、その不備欠点は十分この運営にあたる当局において万全を期せられて、立法の不備を十分補うようにここに希望條項を附け加えまして、以上賛成の意見とする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/76
-
077・大島多藏
○大島(多)委員 國民協同党を代表いたしまして、各派共同提案になり修正案に賛成をし、それを除く政府原案に賛成いたす次第であります。從いまして岡井君の修正案に対しましては、同感の点なきにしもあらずでありますが、残念ながら賛成申しかねる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/77
-
078・井伊誠一
○井伊委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより採決いたします。まず岡井藤志郎君提出の修正案について採決いたします。提案のごとき、修正案に対し賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/78
-
079・井伊誠一
○井伊委員長 起立少数。よつて岡井君提出の修正案は否決せられました。
次に各党共同提案の修正案について採決いたします。提案のごとく修正案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/79
-
080・井伊誠一
○井伊委員長 起立総員。よつて全会一致をもつて提案のごとく修正に決しました。
最後にただいま修正に決しました部分を除きました他の部分について採決いたします。修正以外の部分は、内閣原案の通り決するに賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/80
-
081・井伊誠一
○井伊委員長 起立多数。よつて修正部分を除いては、多数をもつて内閣原案通り決しました。ここに本案は多数をもつて提案のごとく修正議決いたしました。
なお本案に対する委員会報告書の作成並びにその後の取扱い方について委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/81
-
082・井伊誠一
○井伊委員長 御異議なしと認めます。そのように決定いたします。
これにて休憩いたします。
午後零時五分休憩
━━━━◇━━━━━
午後二時五十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/82
-
083・井伊誠一
○井伊委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
人身保護法案を議題といたします。鍛冶良作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/83
-
084・鍛冶良作
○鍛冶委員 第十五條の第二項のして「拘束者は拘束の事由を疎明することを要する。」とありまするが、これは当然のことでありまして、この拘束の事由、いよゆる立証責任を拘束者にもたせるというならば、第九條の準備手続における調査においても、拘束の事由について疎明の必要のあることもあると思いまするので、本條においても疎明の責任を拘束者に負わすべきものだと考えるのであります。しかるに第十五條の第二項に加えてありますると、第十五條だけはこの疎明責任を拘束者に負わせて、九條の場合は負わせないのじやないかという疑問が起るのでありますが、この点は参議院において、どういうお考えであつたかを聽かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/84
-
085・伊藤修
○伊藤参議院司法委員長 ただいまの御質問にお答えいたします。本法の立案の当時におきましては、ただいま御指摘のような点は当然と考えておりましたものでありますから、明文をもつてそれを置かなかつたのでありますが、その後いろいろ研究の結果、これを明らかにすることの方が、法律の面におきましても親切である。かように考えまして、その後修正いたしまして、その趣旨を十五條の第二項に規定いたした次第でありますが、大体におきまして、立案当時の考え方も、全般にこの趣旨は適用されるもの、こう考えておつた次第でありまして、特に十五條にのみこれを適用するという考えではありません。第九條の場合においても、当然適用されるもの、かように考えた立案である次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/85
-
086・井伊誠一
○井伊委員長 それでは本案については、すでに予備審査の過程等におきまして、審議が盡されておりますので、これをもつて質疑を終了し、討論に移りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/86
-
087・井伊誠一
○井伊委員長 御異議ないものと認めます。それではこれより討論に移ります。猪俣浩三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/87
-
088・猪俣浩三
○猪俣委員 本法はまことに画期的な、しかも時宜に適した立法だと考えまして、社会党を代表いたしまして、賛成をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/88
-
089・八並達雄
○八並委員 私は民主党を代表いたしまして、本案に賛成するものであります。その理由は、この法案の第一條にございますように、基本的人権を保障する新憲法の精神に從いまして、不当に現に奪われておる人身の自由を司法裁判によつて迅速に簡易に回復せしめるということでありまして、実は大陸法系を有しました日本で、未だかつて知らない画期的な法律でありまして、もとより刑事訴訟法その他いろいろの法律におきまして、この憲法の精神を現実に具体化するもろもろの法律がございますけれども、なおそれをもつて足りないのであります。しかもそれを迅速かつ簡易に救済せしめたい、人身の保護を厚くしたいという趣旨なのでありまして、まことに時宜に適した法律であると考えるのであります。さような意味におきまして、全幅の賛意荘表する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/89
-
090・鍛冶良作
○鍛冶委員 私は民主自由党を代表いたしまして、本法案に賛成いたします。ただいま八並君から述べられた通り、新憲法に基く基本的人権を保障する上において、まことに欠くべからざる有用な法律と考えるのであります。ただこの法律は、わが日本では今まで実施しておられない法律でありますから、はたしてこれだけの條文でその目的を達することができるか否やという点には、危惧の念なきにしもあらずであります。從いまして、この適用の任にあたられる方々は、欠点がありましても、できるだけ法の精神に從うように、十分適用の面で御苦労を願いたいものだと思うのであります。なおもう一点は、かえつてこれがきき過ぎまして、これが濫用するの弊害はないかという危惧もあります。これらの点も本法の実施に関与するすべての人々が十分心して、さらに法の目的を達し、さらに法の目的を逸脱しないように御注意あらんことを希望いたしまして、本案に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/90
-
091・酒井俊雄
○酒井委員 國民協同党を代表しまして、本案に賛成するものであります。新憲法によりまして、人権は基本的に保護されることになりました。この実現をはかるもろもろの法律は、順次体系を整えていくと思います。その中において本法のごときは最も活用さるべき期待をもち得る法律だと考えます。ただいま鍛冶君も申されましたように、この法律の運営を、十分その精神に則つて、当路にあたる者が過ちなからんことを希望いたしまして、賛成をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/91
-
092・井伊誠一
○井伊委員長 討論は終局いたしました。
これより採決いたします。本案について、原案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/92
-
093・井伊誠一
○井伊委員長 起立総員。よつて本案は全会一致をもつて原案の通り可決いたしました。
なお本案に対する委員会報告書の作成並びに事後の取扱い方は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/93
-
094・井伊誠一
○井伊委員長 御異議なしと認めまして、さよういたします。
これで散会いたします。
午後三時五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204390X04619480630/94
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。