1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十三年六月一日(火曜日)
午前十時五十三分開議
出席委員
委員長 井上 良次君
理事 岩本 信行君 理事 森 幸太郎君
理事 永井勝次郎君 理事 北 二郎君
小川原政信君 小野瀬忠兵衞君
綱島 正興君 野原 正勝君
八木 一郎君 渡邊 良夫君
勝間田清一君 河合 義一君
清澤 俊英君 成瀬喜五郎君
溝淵松太郎君 神山 榮一君
菊池 豐君 小林 運美君
関根 久藏君 寺本 齋君
中垣 國男君 坪井 亀藏君
的場金右衞門君 大瀧亀代司君
森山 武彦君
出席政府委員
農林政務次官 平野善治郎君
農林事務官 山添 利作君
委員外の出席者
農林事務官 田口 昌弘君
專門調査員 片山 徳次君
專門調査員 岩隈 博君
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五月二十八日
三篠川水源地の溜池築設計画地変更の請願(平川篤雄君紹介)(第一〇六三号)
農村工業助成に関する請願(田中豊君紹介)(第一〇七九号)
金田一村地内山林買上中止の請願(山本猛夫君紹介)(第一〇八一号)
農村工業助成に関する請願(織田正信君紹介)(第一〇八三号)
青山村の國有林拂下の請願(梅林時雄君紹介)(第一〇八六号)
雄武村の酪農事業助成に関する請願(伊藤郷一君紹介)(第一〇九四号)
青森縣の土地改良事業費國庫補助の請願(苫米地義三君紹介)(第一〇九九号)
農村工業助成に関する請願(川野芳滿君少一名紹介)(第一一〇九号)
同(鈴木強平君外二名紹介)(第一一一一号)
廣島市の農業水利改良事業費國庫補助の請願(佐竹新市君紹介)(第一一二三号)
安佐郡の水路改良事業費國庫補助の請願(佐竹新市君紹介)(第一一二四号)
廣島縣の耕地災害復旧國庫補助増額等の請願(佐竹新市君紹介)(第一一二六号)
廣島縣の開拓及びに耕地事業費國庫補助増額の願請(佐竹新市君紹介)(第一一二七号)
廣島縣の農業土木費國庫補助の請願外一件(佐竹新市君紹介)(第一一二八号)
廣島縣の水害耕地復旧費國庫補助の請願(佐竹新市君紹介)(第一一二九号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
農藥取締法案(内閣提出)(第六六号)
國政調査承認要求に関する件
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001・井上良次
○井上委員長 それでは会式を開きます。
本日の日程でございます農藥取締法案の審議にはいる前に、この際米價調整の小委員を選任いたしたいと思いますが、その選任の方法は委員長において指名するに異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/1
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002・井上良次
○井上委員長 異議なきものと認めまして、それでは
岩本 信行君 小川原政信君
綱島 正興君 森 幸太郎君
渡邊 良夫君 勝間田清一君
清澤 俊英君 成瀬喜五郎君
野上 健次君 小林 運美君
寺本 齋君 関根 久藏君
中垣 國男君 坪井 亀藏君
的場金右衞門君 松澤 一君
山口 武秀君 北 二郎君
を指名いたします。
小委員長は清澤俊英君にお願いをいたしたいと思います。
これより農藥取締法案を議題に供します。まず政府より説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/2
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003・平野善治郎
○平野政府委員 農藥取締法案の提案理由を御説明申し上げます。
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農藥は肥料及び農機具とともに、農業生産上重要な生産資材であります。農藥の特質とするところは、農作物を害する病害虫を防除し得られるものであること、すなわち殺菌殺虫の効果があるものであることと、農作物に藥害がないものであることの二つの條件を具備することが必要であるのでありますが、市販の農藥の中には、これら二つの條件を具備せないものが多数出廻つているばかりでなく、その内容に比し、誇大な表示をして販賣されているものも少くないのであります。これら不明粗惡な農藥によつて農家のこうむる損害が少くないばかりでなく、これがため病害虫防除の意欲を減退せしめ、農業生産に惡影響を與えていることが甚だ多いのであります。殊に終戰以來工場の轉換、手持資材の利用等の点から、新たにいろいろな農藥を製造販賣するものが増加し、また以前から製造販賣されていた農藥も、資材事情等から品質が低下しているものも少くないのでありまして、農藥の供給不足と相まつて不正粗惡な農藥の出廻りが特にいちじるしいので、今回新たに農藥取締法を制定いたしまして、これら不正粗惡な農藥を取締るとともに、農藥の品質の保持向上をはかることといたしたのであります。農藥取締法の制定は農家及び農業指導者の多年の要望でありまして、これによつて農家の利益が擁護されるとともに、農作物病害虫防除の普及が促進され、農業生産に裨益するところが少くないものと信じます。
法案の要点を申し上げますと、取締の対象となる農藥は、農作物または農林産物を害する病害虫の防除に用いられる藥剤でありまして、中には同じ藥剤で家庭用または家畜用、あるいは工業用等他の用途に用いられるものがありますが、これら他用途に用いられるものは当然本法の取締りの対象にはならないのでありまして、從つて農作物病害虫防除用として製造販賣せられる藥剤のみが本法の取締りの対象となるものであります。
次に農藥の登録制度につきまして、企業の自由性を尊重するとともに、取締りの必要から農藥そのものの登録制を採用したのであります。すなわち農藥は登録を受けたものでなければ販賣できないものとし、登録は申請があれば原則として登録するのでありますが、登録申請書の記載事項に虚偽のあるもの、または藥害のあるものについては、登録を拒否できる途を開いているのであります。
更に農藥の表示制度のことでありまするが、農藥を販賣するには、その品質等を保証する表示をせなければならぬこととし、随時檢査を行いまして、もし品質とその表示が合致せぬ不正な農藥については、販賣の禁止または停止等の処分を行い、これを嚴重に取締ることといたしているのであります。この表示の責任者は、製造業者または輸入業者とし、販賣業者はこの表示のある農藥でなければ販賣ではないことといたしたのであります。
また防除業者に対する監督の点でありまするが、現在はありませんが、將來病害虫の防除を営業とする者が出現することが予想されるのでありまして、これらの防除業は、農業生産上きわめて影響の多いものでありますので、防除業者は届出制とし、防除業者の行う防除の方法または使用する藥剤が有害なものであつと認められるときは、その防除方法の変更を命じ、またはその農藥の使用を禁止して、農業生産を保護することといたしたのであります。
以上の各処分に不服がある者は、異議の申立ができる途を開き、また公正を期するため、これらの処分及び異議の申立に対する当、不当の決定を行う場合には、各方面における学識経驗者をもつて組織する農藥審議会の議決を経なければならないものといたしたのであります。
以上簡單でありまするが、提案の理由を御説明申し上げた次第であります。何とぞ愼重御審議の上、速やかに御可決をお願い申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/3
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004・井上良次
○井上委員長 それでは質疑にはいります。質疑は通告順によつてこれを許します。成瀬君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/4
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005・成瀬喜五郎
○成瀬委員 ただいま農藥取締の法案に対する提案理由の説明がございましたが、病虫害による被害は約一割に及ぶものであることは、多年農業に経驗せる者のひとしく認むべきものであるにかかわらず、今までそういつた方面に重要な関係をもつ農藥に対して、なぜ政府が取締りをおろそかにいたしておつたかということを、まず第一点としてお尋ね申し上げたい。
なおまた戰爭中より現在に至るまで、米麦その他園芸等に必要なる農藥が非常に欠乏をいたしまして、それがために多大なる損失をいたしておるということは周知のことであります。この農藥取締法の実施はなるほど結構でありますけれども、一面農藥を増産する方面の措置がどういうふうに運ばれておるか。輸入等によるそれらは一刻も早く促進をいたさなくちやなりませんが、それらの方面についての現在進行中の状態は、ここに参考資料として提出されておりますけれども、この参考資料とし提出されておる内容については、二十三年度その需給関係におきましてはなはだ寒心すべき点があるのであります。かようなことをいたしましたならば、食糧増産ということはまだまだ前途遼遠であることも、この面から考えられますので、政府といたしましてのこの方面における今後の見透しについての御意見、御説明を承りたい。かように存ずる次第であります。
なおまたいろいろこの取締りについての周知方につきましても、御計画があるわけでありましようが、一般農業者に対しまして、周知するための徹底的な措置を講んじられんことをわれわれは要求する次第であります。以上とりあえず三点につきまして政府の御答弁を煩わしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/5
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006・山添利作
○山添政府委員 農藥の取締り等に関する措置が今日に至るまで講ぜられていなかつた理由につきましては、元來日本は非常に農藥の製造が盛んな國でありまして、戰爭前は御承知のように、世界的に輸出をいたしておつたような状況であつたのであります。従つて非常に物の多いときには、自然優良品が出廻るということで、あまり粗惡品も出ないので、むしろ農藥を使うことにもつぱら宣傳したりなんかいたしておつたのであります。取締りというよりも、むしろ使うことを奬めておつた。ところが戰爭後になりますと、資材が非常に少いものでありまするから、自然そこに惡い物が跋扈する。こういう状況を呈しておつたのであります。そこで農林省におきましては、昨年來農藥檢査所を設けております。法律も実は同時に準備をいたしたのでありまするけれども、関係方面の審議が手間取るというようなことで、およそ一年遅れた、こういうことになつておるのであります。なおまたその法律によりませんけれども、農林省といたしましては、農林省認定農藥という制度をとりまして、一定の規格をきめ、それに合つて農藥を推奬する、こういうような手段をとりまして、何と言いますか、取締りの方面ではございませんが、別の方面において優良な農藥を農家が使うように奨めておつたのであります。今回遅しといえどもこの法律が出たことは仕合せでありまして、今後この運用によりまして、いいものを奬めことるによつて、惡いものを駆逐することに努力いたしていきたいと考えております。
それから農藥の需給状況でございますが、硫酸銅そのほか大体菌を殺す農藥は、現在ではおおむねその需要に應ずることができるような状態に立至つております。從つて米麦を中心にいたしますことしの一割増産関係に必要だと考えられますものにつきましては、おおむね需要に應ぜられるであろうという考えをもつております。ただ、砒素の方面、あるいはもつぱら輸入しなければならぬデリスコン、あるいはただいま非常に生産が減つております除虫菊というようなものにおきましては、なお相当足りないのでありまするが、これらにつきましては海外からの援助をも懇請いたしております。また除虫菊は國産でありまするので、増産をはかりたいという考えをもちまして努めております。もつとも除虫菊につきましては、主として價格の問題であります。價格につきましてはひとり除虫菊と言わず、工業的な生産については非常なパリテイ計算の困難があり、しかもパリテイ計算でいくというようなことでありますので、この辺はちよつと実情に合うような計算をとらなければならぬと考えておるのであります。なおこの法律が出ましてから農家に対してこの制度を知らせるという事柄につきましては、もとより十分な措置をいたしたいと思つております。これは肥料と同じように、要するに農藥にどういう性分がはいつているか、どういうことにきくか、どういう使い方をするかということを、わかりやすく書いたものをはつておくということが骨子でありまして、それを見ればわかるということでございます。と同時に今後新しく農業技術滲透等の施設ができますにつきましては、この農藥方面の使い方その他についても、十分な普及をはかつていきたいという考え方をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/6
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007・成瀬喜五郎
○成瀬委員 大体政府の御意向を承りまして了としたわけでありますが、特に主食面の増産に必要な石炭硫黄合剤のごときは非常な減産の状態でありまして、平年需要量に対する四四%の状態であるということは、はなはだ遺憾なように考えるのであります。このため麦作りの先進地である靜岡縣の農業経営においては、廣幅薄まきの増收ができない。今からすでに二十五年前には、石灰硫黄合剤を三月ごろに撒布して、全国唯一の増産を記録しておつたのでありますが、こういうような主食方面に特に大切な石灰硫黄合剤の増産に対しては、特に御留意ありたいのでありまして、願わくはこの方面の増産についての見込みをひとつ承りたい。また主食でありませんけれども、柑橘の栽培につきまして、一昨年から非常に立枯れが多いというような傾向があるのであります。これは專ら肥料の減少ということもありますけれども、これを防除するところの藥剤の欠乏ということが、その主たる原因でもあるように聞いておるわけであります。そういつた方面に対する藥剤については、どういう見透しをもつて指導されておるかということをお伺いしたいのであります。
なおもう一点は農藥の不良粗惡によりまして、経済上におけるところの犠牲は、農民のみならず、國家自体が多大なる損失を來たしておりますので、さいわいこうしたところの取締法の決定を國会においてなされる場合におきましては、十分その違反者に対しまして嚴罰をもつて進んでいかなければならぬと考えておるのでありますけれども、法でいかに嚴罰の規定をいたしておりましても、運用する面におきまして、その期待に副わない点が、現在他の方面におきましてもあるわけでありまして、徹底的に、これらの今までに行われておるところの不正を防止するという意味におきましては、むしろ法の強化も必要でありますけれども、農民に十分に周知徹底せしめることが必要なのでありまして、ただいま御意見もありましたが、この点十分に周知方をやつていただきたい。以上追加質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/7
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008・田口昌弘
○田口説明員 代つて説明を申し上げます。最初の石灰硫黄合剤でございますが、これは昨年から相当需給が均衡を得てまいりましたので、配給統制から除外いたしたものでございます。ただこの表に出ておりますように、供給が需要よりも下廻つて、約四四%の供給という数字が出ておりますが、一應平年需要量として掲げました数字は、農林省の計画によりまして、主として表の方の防除に相当量の藥剤を見込んでおるわけなのであります。ただ單作地帶の農民側といたしましては、その表の方の防除につきましては、知識の水準が果樹蔬菜業者とは異なりまして、相当低いものでございますから、私の方でこれだけ供給しようという数字までの需要を要求していないのです。從いましてこの供給実績と申しますのは、需要が下つたために約四四%になつたわけであります。もちろん生産の方の資材は私の方で確保いたしまして、硫黄につきましても年間約四千トンから五千トン。それから問題は石灰硫黄合剤が液体のものでございますから、それを運ぶ容器に非常に困難を來しております。主としまして農民の回轉容器をもつてこれに充てることになつておるのでありますが、その單作地帶の農民が回轉容器の供出を十分いたしていない関係もありまして、こういう数字の結果になつたわけであります。それにつきましては、私の方もドラムカンの供給その他につきまして、容器の手配には努力中でございます。そういう関係でございますから、硫黄剤につきましては一應配給統制を撤廃いたしましたが、農民側の需要の声が強くなりますれば、それに対しては原料の方面におきましてはある程度まで應ぜられるつもりでありますが、ただいま申し上げましたように、農民側の回轉容器を主としております関係上、容器の供給による点が相当ございますので、今後農民の防除意欲の向上に努めまして、特に今年実施しております一割増産の面を推進いたしたいと思つております。
それから次の柑橘用の殺菌剤でございますが、これは硫酸銅、それから銅製剤その他、これも昨年以來供給が大体需要にマッチしてまいりましたので、配給統制を撤廃しております。ただ生産の方はこれに要する資材は要求通りの手当ができることになつておりますので、果樹業者その他の需要増加の声がございますれば、私の方で関係方面と連絡いたしまして、増産の手はただちに打てるような状況になつております。現在ではそういう状況でございますので、柑橘方面の殺菌剤はバランスがとれておる状況でございます。農民にいろいろ取締りの点その他配給統制、それから單作地帶における農民の知識の水準の向上、そういう面における普及徹底につきましては、ただいまの食糧一割増産の農民への浸透と併せまして極力努力中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/8
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009・坪井亀藏
○坪井委員 この農藥取締法案について質問いたしたいのでありますが、提案の理由といたしましては、末尾に「不良粗惡農藥の出廻りが多く、農業生産に支障を來す虞があるので、農藥の檢査取締を行い、不良農藥を排除する必要がある。これが、この法律を提出する理由である。」とあります。もちろん不良粗惡な農藥が出るというこの原因を十分に追究しなくちやならぬと思いますが、ややもしまするとこの不良粗惡な農藥が出てくるという原因は、質よりも量というような点から、やはりないから何でもいい、まあひとつやろうということに私は帰着すると思う。私どもの見解は、少くとも家畜においてさえ、家畜傳染病法において全部費用を國家が負担して家畜の傳染病を取締つておる。しかるにわれわれ八千万の食するこの食糧に対するところの、しかもこうした病虫害に対するところの防除藥の農業、こうしたものを今まで國家で取上げずに、ただこれを民間任せで、しかもこれらに対して手を打つていなかつたということが、そもそも政府としても手遅れじやないか、こういう観点から見れば、むしろこれこそ國営で、しかも國がつくつて必要なるときにおいて防除を國家が行うべきである。こう私は考えておるのであつて、むしろそうなればこんな法律は出さなくてもいいのじやないか。こう考えていますが、しかし今窮余の一策で、不正なる物が出た場合の取締りをするということも、緊急処置として私はやむを得ぬ事項じやないかと考えております。家畜でさえも傳染病法において國家が保障してすべての予防をやつておるにかかわらず、主食である米麦その他甘藷、馬鈴薯一切のものに対する病虫害についての防除費なるものを、補助費の一部くらいでこれをやつていこどういうことが間違つておる。またこれを一般業者に任しておいて、そうしてただ取締るなんということが、すでに私は姑息な考えだ、こう考えておるわけであります。こういう見解についても一應農政局長の御意見を伺いたい。時間がありませんから、なお重ねて逐次質問いたしたいと思いますが、これが一点であります。
次にこの第一條の三項に、製造業者及び輸入業者、販賣業者、防除業者ということがありますが、十二分にいい質のものをつくるという上においては、この製造過程の前において、原料業者と言いますか、そうしたものをなぜ登録させないのか。やはりいいものをとにかくもつてきてつくらせるということになれば、それだけ不良なる、粗雜なる藥剤が少くなつてくる。だから原料を扱う業者を十二分に取締らなければだめだ、私はこう考えます。これらについての御見解を飼いたい。
その次にこれが登録ということを頻りに言つておりますが、もちろん登録すればそこで認証するとか、許可するということになりますが、なぜこれを許可制にしないか。こういう重要なものについては、登録なんかせずになぜ許可制にしないかということをお尋ねします。
次に第二條の四項にまいりまして、「農林大臣は、前項の檢査につき、省令で定めるところにより、申請者から手数料を徴收することができる」。とありますが、いやしくも國家的に一つのこうした仕事をやろうというのに、手数料などを徴收するということが根本的に間違いである。しかもこうしてことは國家がみずから進んでやるべきだ。しかるに手数料などとるということはもつてのほかである。これについての御見解をお伺いいたします。
次に第三條にまいりまして、「農林大臣は、前條第三項の檢査の結果、同條第二項の書面の記載事項に虚偽の事実があると認めるとき又はその書面に記載する使用法により当該農藥を使用する場合に農作物、農林産物若しくは使用者に害があると認めるときは、同條第三項の規定にかかわらず登録を保留して、申請者に対しその書面の記載事項を訂正し、又は当該農藥の品質を改良すべきことを指示することができる。」これはまことに子供だましのような、子供に飴玉をくれるような簡單なことに考えられております。こうした場合においては、これはどこまでも虚偽のあつた場合とか、あるいはまた被害があつた場合には、責任をもつて損害賠償をすると同時に、ただちに業者をして廃業せしめる、営業停止を命ずるというような、もちろん罰則にはあるでしようけれども、これは非常に軽い意味になつておるが、この点はどういう考えであるか、私はこれをもつと重く考えなくてはいかぬ、こう考えておりますが、この点伺いたい。
なおその次は第二項でありますが、「前項の指示を受けた者が、その指示を受けた日から一箇月以内にその指示に基き書面の記載事項の訂正又は品質の改良をしないときは、農林大臣は、その者の登録の申請を却下する」そんな場合には一箇月なんて余裕をおかず、なぜ即時にこれをやらないのか。不正があつた場合に、一箇月も経つてから勝手なことをして、やはりそういう不正をするくらいな者は金をもうけてしまう。即時にやらなければいかぬと思うが、この点はどうか。
三項にまいりまして、「農林大臣は、前二項の処分をするには、農藥審議会の議決を経なければならない。」こうありますが、私はもちろん審議会の必要もあろう、そうして即時審議会にかけるという場合と、場合によつてはもつと急な場合においては、農林大臣においてただちにこれについて処置することができる。いわゆる善後処置をすることができるということをなぜこれにうたわないか。こう考えております。それについて伺いたい。
その次へまいりまして、第五條の登録の有効期間でありますけれども、「第二條の登録の有効期間は三年とする。但し、同條第二項第二号の事項中に変更を生じたときは、登録はその効力を失う。」こうありますが、これは時々刻々変つていくし、やはり不正を取締るということがありますから、やはり一遍免許をとつて、あるいは登録したものを、居すわりで三年も放置するということはぐあいが惡いから、他の自動車の免許証のごときも年に一遍は車体檢査をやつておるし、あるいはそうした免許証の再交付を一年に一遍やつていく。しかるにこれを三年もすえおきにすることはどうか、少くとも私はむしろこうした重要性のあるものは六箇月目には登録していく、長くても一年を超えてはならぬと思うが、これに対する御見解をお聽かせ願いたいと思います。
それから登録でありますが、製造業者及び輸入業者の農藥の表示ということがありますけれども、目的はいずれ不正からつくり出すものにとつては、もうけさえすればいいのだ、高ければいいのだという者があります。なぜその中にマル公厳守で、價格の表示をさせないか。私はこの三條の中にあるように、製造業者とかあるいは輸入業者、あるいは販賣業者あるいは防除業者は、なぜ價格まで表示をしないのか、やはり最終の目的というものは價格というものが伴いますので、もうかるからやるのだというような最終目的は、不正肥料を扱う者は農藥の効力いかんというよりも、もうけいかんということでやつておる関係上、私どもの考えとしては、そうしたものにも全部マル公價格を明示するということがむしろ必要だと考えるが、これらについいどんなお考えをもつておるかということであります。
そうして第十七條へまいりまして、「左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の徴役又は一万円以下の罰金に処する。但し、違反行為に因つて得た対價の額が一万円を超える場合には、罰金は、その対價の額以下とする」。左の各号がずつと一から三号までありますけれども、これは私軽いと思う。ただひとりもうかつたとか、もうからぬとかいうことでなく、こうした一つの不正なるところの藥品を製造し、輸入し、販賣し、防除をされて、ばかを見るのは結局農家自体が被害を受ける、その農藥の代價をただもらつたつて、多少の補助をされたつて、それによつて被害があつた場合には、主要食糧の全部、あるいはまたその大半にもしそうした被害を及ぼしたときには、相当の補償をしなければいかぬ。こういうときにはもちろん國家も責任があるのだから、國家でも被害のあつたものについては相当の補償をしてしかるべきだ。結局農業凶災の方にはちよつと今記憶がありませんが、虫害はいかぬが、病害の方は今度から認められることになつたようでありますけれども、農業災害補償の方の関係から見ても、こうした惡い不正藥品をつい知らずに散布した、いいと思つてやつたところが藥害があつて農作物に大被害が出た場合には、結局それを扱つた業者に対して相当過重な刑に処す。と同時に、場合によつては國家においても何か災害補償とか、そうした方面に相当の補償をする必要があると考えるが、そうしたことはどんなことになつておるか。これは重要な問題である。そうして一年以下の懲役は、少くとも五年以下の懲役、一万円以下というのは、十万円以下の罰金というくらいに、多きにもつていかなければ効果がないと思う。うんとやつて大いにもうけさえすればいいぢやないかということで、がさが少いから、もうけようと思えば、いくらでももうかつてしまう。そういうような最初から不正農藥を扱おうという精神から出ておるような者については、もつと重い刑に処するのが当然だと思うが、それらについての見解を伺いたいと思います。大体以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/9
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010・山添利作
○山添政府委員 第一点は農藥について國営に関する御意見をお述べになりましたが、これについては二つの面を区別しなければならぬと思います。一つは農藥の製造、一つは病害虫発生の場合の防除であります。農藥の製造については國営にする必要はないと思います。また実情から申しましても、農藥製造は比較的中小工業でありまして、業者も多い。またその製品も化学工業の一部でありますから、これはいろいろなものをつくる。いずれにいたしましても、これを國営にする必要はないと思います。さて防除に関しまして、國家施設を厚くするということは、当然將來考えていかなければならぬことと思います。通常のものにつきましては農家個々にやつていただき、その指導を十分いたしますとともに、相当程度に発生するような場合に、未然に手取り早く、自動車でまわつてさあつとやつてしまうというようなことは、当然考えていかなければならぬことと思つております。今年は一部そういうことを考えましたけれども、まだ財政上の理由で実際は行つておりませんが、將來防除に対しては手厚くしていきたいと思つております。
それから農藥の原料について登録制をとる必要がないかという御意見でございますが、これは原料のことでありますからそういう必要を認めておりません。なるほどいい原料でなければいい物はできぬということは仰せの通りでありますけれども、いやしくも農藥をみづから製造しようというような人は、それくらいの鑑識がなければいかぬのであります。そこまでせわをやくことはない。またそういうことをやりますれば、産業全般に登録制というようなことに普及するのでありまして、それは見解を異にしております。
それから登録制でなくて、許可制にしたらどうかという御意見であります。從來日本のやり方といたしましては、こういう場合に必ず許可制としておつたものでありますが、最近はいずれも登録制ということになつております。登録制と許可制との違います点は、許可にもいろいろありましようが、登録制となりますと、一定の條件を具備しているものは、必ず登録される。許可という言葉を使えば必ず許可される。許可制となりますと、そこにどうしても自由裁量の余地がはいつてくる。同じものでありましても、甲は許可をする。乙は許可をせぬというようなこともあり得るわけであります。さようなことでなくて、最近では一定の要件を具えたものは、全部昔の言葉で言う許可を與える。これを登録という言葉にいたしているのであります。
それからこの登録をいたしますのについて手数料をとる。これは千円未満にいたしているのでありますが、新しい農藥を奬めるものでありますならば、國が一定の行政行為をいたしますのについてその実費をとることは、これは從來と言えども差支えないことであります。たとえばいろいろな商品の檢査をいたします場合においても、やはりある程度の手数料はとつているのであります。最近の財政上の理由等とも併せ考えまして、この際若干の手数料の納付をお願いすることにいたしたのであります。
それから第三條の関係についてでございますが、不正のものを取締るのについて、非常に氣の長いようなお説でございましたが、これは新しくこれから登録をさせる。新しく登録するものについての規定でございまして、登録がなければ賣れないのです。從つてこの法律の建前から申しますれば、登録を受ける前に賣るということはないのでありまして、そういう場合がございますればこれは罰則にひつかかることであります。仰せの場合は、今非常に不良なものがあるのに対して、ここに登録の申請がある、それに対して手つ取り早く処置せぬといかぬじやないか、こういうことになると思いますが、それについては、今まではともかくこの法律を施行いたしていないのであります。取締法規がないのでありますから、その点はやむを得ないと考えます。
それから第五條の三年は長過ぎるということでございますが、この法律の建前といたしましては、なるほど時勢が変り、どんどん新しいものができる。優良なものを奬めていくというのが、政策の目的ではございますが、その法律自体は惡いものを取締るといいますか、少くとも内容をはつきりせしめて、いい惡いは農家が判断して買う、こういう建前になつているのであります。從つて時勢が変つていいものがどんどんできる。そうしていいものを奬めるわけで、効能の低いものをこれは禁止したり排除したりはしないのであります。効能の低いものは効能が低い、成分が低いものは成分が低いで、それは農家が買わぬ、こういう建前になつているのであります。その意味から申しますと、三年というのは手ごろのところではないかと考えております。
それから販賣業者が農藥の成分効能等を表示いたしますのについて、公定價格を表示する必要があるという御意見は御もつともであります。これは戰爭中からマル公表示の規則があるはずでありまして、別の規則によつてマル公が表示されるものと考えております。
なお罰則の点につきまして、軽きに失するというお考えでございますか、罰則については個々の具体的な事情に應じてはいろいろあると思いますが、法定全般としてやはり罰則の釣合いということがなければならぬのでありますので、その意味においてこの十七條にあるような罰則を適当と認めているのであります。但し、この但書に書いてありますのは、これは新しい立法例でありまして、表向きの罰則は一万円以下でありますけれども、登録をしないで不良な藥剤を賣つて、かりに百万円もうけたといえば、百万円この但書によつてとられるのです。これは新しい立法例になつているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/10
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011・坪井亀藏
○坪井委員 ちよつと補足いたしますが、不正農藥を販賣しあるいは製造し、これらによつて受けたところの被害者の損害というものは実に莫大なものです。ただそこで金をもうけたから金を返せばいいと言われますけれども、その点から見ると、私はこれらについては、当然被害を受けた方面にもその業者がある程度の補償をすべきである。またその他何か國家的になおまた災害補償とか何とかというような方法があるかないかということをひとつ明示を願いたいことと、それから第二條の最後の四項ですが、「農林大臣は、」という檢査料の問題です。これについて「手数料を徴收することができる。」承れば千円であるということでありますが、手数料としてはちよつと千円は高過ぎるように思う。しかしこれはやはり登録をしてどこまでも不正農藥はつくらない、なおまたどこまでも責任をもつというふうの保証的のものであるならば、むしろ私は千円が一万円になつても差支えない、その点はどんなぐあいに処理すればいいかという点について、補足的にお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/11
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012・山添利作
○山添政府委員 不正なる農藥を販賣し、よつて農家に損害をかけたという場合の補償関係は、これは民法に任せてあるわけでありまして、民法から申しますれば、農家の方で損害賠償を請求する権利は当然ございます。これを農業災害補償法等で國家が補償する制度はございません。農業災害補償法の対象になりますのは、不可抗力と言いますか、天然自然の氣象上の原因に基くものを補償するわけでありまして、この場合は民法の民事関係に任せてあるわけでございます。
それから手数料は保証金としてとつておく、あとで返してやるという制度ではないのでありまして、やはり國が檢査をし、化学分析等をいたしまするにつきましての費用を一部負担をしてもらう。これは営業に伴う一つの負担と考えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/12
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013・北二郎
○北(二)委員 まず最初に第一條の第二項の「天敵」ということが意味がわからないので、この点の解釈を質問いたします。
次には先ほど農政局長も日本の農藥というものは世界的に進んでいると言われましたが、その反面非常に強い藥品を使われるようになつてきたので、これが人畜に及ぼす害というものが非常に多いと思う。たとえばこれは私の近所で現実にあつたことでありますが、水田に藥をまいた。そしてその翌日、翌々日になりまして、藥をまいたところのあぜ草を刈つて兎にやつた、子牛にやつたという場合に、その子牛がたちまち死んでしまつた。たとえばまた人に対しましても、子供が嘗めてどうしたという場合が非常に多いのですが、こういう農藥に対しての性質を、この法律の中に織りこまなければならないと私は思つている次第でありますが、この点農政局長はどう考えているか。
次にこれは北海道におけるはりがね虫の件でありますが、これは北海道だけでなく、今全國的にはりがね虫というものがたくさん出てきたのであります。これは麦とか、とうきびとかデントコーン、馬鈴薯とかいうような植物の植えた種につきまして、これは発育盛りにみな黄色くなつて枯れてしまうというような場合が非常に多いのでありますが、これに対しては私どもの見解といたしましてはDDTが非常によいと思いますが、農林省のDDTに対するところの増産の根本の見込状態を伺いたい。これらの害虫はりがね虫に対して、農林省はどういうぐあいに駆逐するかというその方針を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/13
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014・山添利作
○山添政府委員 「天敵」という言葉はずつと前から使つております。ナチユラル・エネミーの訳語でありますが、例をあげますると野鼠を退治するのにチフス菌を團子の中に入れてまいておくと、だんだん傳播してしまう。普通そういうものと御了解願いたいのであります。それから藥のことでありますから、使う人に被害があつたり、家畜に被害があつたりする場合があるのでありますが、その点については、この法律の中においても、登録をいたします場合にはまずその使う人に一体被害があるかないかというようなことは十分に考えられるわけでありまして、それは第三條の一項に、ちようど四ページの一番初めの行でありますが、「農林産物若しくは利用者に害があると認めるときは、」というふうにありますので、十分注意をいたしておりますとともに第七條の農藥を賣る場合にいろいろ記載事項があります。第四項に「人畜に有毒な農藥については、」云々とあります。こういうことでこれらの点を明らかにいたしまして、使用を誤らないようにという注意を拂つているわけであります。それからはりがね虫に関連してのDDTの話でありますが、これは係の方から御説明をいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/14
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015・田口昌弘
○田口説明員 DDTの生産のことでございますが、DDTは御承知のようにごく最近わが國にはいりました藥剤でございまして、防疫用の方は、終戰後ただちに厚生省の指導のもとに、飛行機からの撤布その他大々的に始まつたのでございますが、農藥の方はこれを動植物、農作物に使用しまして害がないように用いさえすれば合理的にやれる。こういう研究が必要なものでございますから、試驗研究をやつたのでございますが、昨年、一昨年の研究を経まして、ことしから本格的に使うことになりました。それでことしのDDTの生産は、純粹のDDTにしますと約百六十トンでございます。これを製品にしてただいま配給しております。二〇%を含有しますものに換算しますと、八百トンの生産を予定しております。なお明年よりはこれを原末二百トン、製品といたしまして一千トンの生産を予定いたしております。その原末の確保については、最近アメリカより相当数量のものがはいりまして、農藥用には約七十トン程度の原末が供給される予定になつております。それによつて三百五十トンの二〇%の製剤ができることになつております。國内生産の原料の生産につきましては、ことしは國内で約五百トンの生産を計画しております。これは厚生省の関係でやつております。しかし生産隘路が種々ございまして、五百トンまではいかないようでありますが、相当程度の生産はできると思います。なお來年度は約九百トンの生産計画をもつて生産をやつております。それにつきまして農藥の原料の確保も相当程度までは確信をもつております。それではりがね虫でございますが、これはただいま本格的な生産をしておりませんが、DDTの粉剤をまいたりするわけでございますが、この粉剤の生産につきましては、至急今年の生産には間に合わせるべく生産計画を進めております。そういう関係上、大体DDTの需要につきましては、今年の末ころからは需要に應ぜられるような計画になつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/15
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016・北二郎
○北(二)委員 先ほど山添農政局長は人畜の農藥に対する被害については、この法律の中にうたわれておると申されましたが、この法律の中にうたわれておるようなことでは今までと同じようなことで、たとえば業者が出す場合にただ小さな紙にちよこちよこと書いたくらいでは、非常に多忙な農家は実際にそれを見ることはできないわけである。そこで何とかしてこの藥についてはこうだ、この藥についてはこういうような害があるというようなことを、農家にはつきりと示す方法をとつていただきたい。かく希望を申し上げまして質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/16
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017・八木一郎
○八木委員 三点伺います。第一点はこの法案はたとえ一人でも役人を殖やす結果になると思います。はたしてそうであるかどうか。
第二点はそのために農林省においては余人をもつてかえることができないという意味で配置轉換その他のことを緻密に檢討せられ、調査せられた結果であるかどうか、何とか全國の多数の農業技術專門員がありまするこの際、新たに置かなくともいけるのじやないかという観点から檢討せられたかどうか。檢討せられたならばその内容を伺いたい。
それから第三点は、政府並びに委員長にお尋ねしたい。予算の伴う法案は、どうしても予算的処置が伴わないと車がかたわになる。片方しか審議できないような感がするのであります。本案のごときわずかの予算が伴うものは別であります。そこでこの対策として予算委員会と本委員会とに関係を、その後お骨折りだと思いまするが、委員長からその経過見透しについて伺いたいと思います。政府に対してはこの予算が成立しなかつた場合に、二十三年度要求額——ここに資料はありますが、この予算が成立しなかつた場合に、この法律はどうなるかというお考え、それから第二点は審議をこのまま進めて行くことは事実上予算の事前審議ということになるとも考えまするが、その点はどうかということをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/17
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018・山添利作
○山添政府委員 資料にして配付してございます農藥取締りに関する経費予算、二十三年度要求額と書いてございまするが、農藥檢査所費——檢査所はすでに昨年からできておるので予算は昨年度成立して檢査所もできておるのであります。從つて新しく人員を増加するところはございません。これだけとりあえずにお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/18
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019・井上良次
○井上委員長 委員長からお答えします。法律案の審議に伴つて当然その予算的処置が講ぜられる関係もございます。單に法律案を審議するだけでは農林委員会としても十分その審議の目的を果すことができません。そこで実は衆議院常任委員長会議において本問題を提起いたしまして、衆議院の議会運営委員会において、一應予算委員会としては、予算各般にわたる大綱的な質問をして審議を進めてもらつて、各省所管に関係するものはそれぞれ各省の所管の委員会がございますから、その委員会で一應詳細な審議を進めた後に、さらにそれを予算委員会にもち込んで最後的審議を仕上げる、こういう方向に予算の取扱いを願いたいということを申し出でております。そこで当然この問題は常任委員長会議においても、各委員長からきわめて熱心に主張され、これがまた近く議会輸営委員会で愼重に審議されて、國会法に関係する部分、また委員会の取扱い審議の條項等に多少修正を加えて、今八木さんからの御質問の御趣旨に副うように進めておりますからさよう御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/19
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020・八木一郎
○八木委員 予算は別に殖やさないということでありますが、これをよく見ていくと、とにかく新規に殖えるように見えますが、それは間違いであつて全然殖えない、從つてこの予算が不成立に終つても、何らこの法案の趣旨には支障がない、予算的裏づけは全然必要のない法案である、こういうふうに理解していいかどうか、重ねて伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/20
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021・山添利作
○山添政府委員 それはたとえば農藥審査に関する費用というようなものは新しい費用であります。從つて予算が成立しなければ困ると思います。從つてただいま農林委員長から仰せになりましたようなことで取扱つていただくことを私は希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/21
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022・八木一郎
○八木委員 たとえばこのほかの項目を見ましても、説明を伺わないとわかりませんが、やはり人は殖やすことになると思う、殖やさないということはうそで、やはり殖やすことになる、こう承知したいのでありますが、それをはつきり伺いたいと思います。それは当然予算を伴つて役人を一人でも殖やすことになるという意味から、どつちかという場合に殖やすことになると承知してよい案ではないかと思いますから、なおその点をだめを押しておきたいと思います。それから委員長のお尋ねに対する回答は了承しました。それから十七の法律案を本委員会に予定しておられるのでありますが、この十七の法律案のうち予算を伴うものは何々であるかという資料を委員長より政府に要求して配布方を要求いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/22
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023・山添利作
○山添政府委員 予算的に人員の増加はいたさないのであります。府縣等のそれはここに書いてありますように嘱託制度で運用していくわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/23
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024・井上良次
○井上委員長 次は小川原君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/24
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025・小川原政信
○小川原委員 私は二点をお尋ねしようと思いましたが、ただいま八木さんから予算の話が出ましたからその程度にいたしておきましよう。
第一点はまことに小さい話ですが、重大なことなんです。この農藥の價格はどういうふうにしてお定めになるお考えであるか、これは経済安定本部できめるのだから、農林省は大体それにお任せになることだと思いますが、これまでの経過をながめてみます、と何かに基準があつてつくつたのではなく、製藥する人が製藥する人の利潤を基準にしてつくつておるのですから、非常に高いものになる。米をつくつたり食糧をつくる者は、公定を政府が定めてしまつて利潤を一つも見ておらないから、それで安いものを賣つて高いものを買わなければ農業経営ができないということに今まではなつてきておるのであります。今後において農藥というものを詳細に考えてみると、相当日本全國で大きな金になると思う。これらに対して農林省はどういう方法でこの價格を決定しようとするのであるか、一應それらを考えておられることがあるならばお話を願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/25
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026・山添利作
○山添政府委員 これは生産費による割合でありまして、從つてこの生産費の中には固定設備費の何パーセントというような意味における利潤はみてありますが、それあるがために非常に高くなつておるという事実はないと思います。これはやはり生産費を算定し、それに基いて決定をやるというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/26
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027・小川原政信
○小川原委員 お話はその通りで、理論としてもそうあるべきでありますが、実際の結果においては非常に違うのであります。たとえば一例をほかに求めてみます。品物が違うと言えば違うのですが、ビタミンBを製造するということになると、計算していきますと非常に高いものになる。そして十本入れたものを九十何円で今賣つておる。そういうぐあいに、これらは非常に利潤が大きくて、もつと安くできるものであるとわれわれが承知しておるのに、経済安定本部では業者から届けてきたものを、どう査定したか、知らないが、非常に今言つたように高くし、次から次へと改訂していつてしもうから非常に高いものになる。藥というものは特殊なものであるというような考え方が先入主になつておるものですから、業者から言いますと、非常に上手なと言えば上手な仕打ちをして値段を上げていく。ところが農業者のほうは、農業生産というものは非常に重大なものであるために、多くの人から関心をもつて値段をかれこれ言われて、非常に生産費が高くかかるにかかわらず生産費が盛りこまれないで、米價の改訂にしましてもそうであります。バリテイ計算というのが都合がいいというので、生産費を別につくつて、そうして農民はどうであるかというと、生産にかかつたところの費用、たとえば農家一軒が経営していく上におきまして、日常品と農業に関するところの品物とを研究してみると、いつも生産費が高まつて、そうして農業者の收入だけでは経営が成り立たないという結論になつておりますから、日本の農家は非常に困る。そういう点に微細な注意を拂つていかなければならぬので、藥品をこしらえるということになりますれば、この藥品は商工省の関係になりますか、農林省の関係になりますか、その点はよくわかりませんが、おそらくこれは商工省の関係として届け出して、そして経済安定本部では相当の利潤を盛り込んでいく。農林省は農業者の方に非常な力を盡してくださるというけれども、関係が遠くなつてしまいすから、結局そこのバランスがとれないということになる。いつも農業者の手を離れたところの加工物というものは非常に高い。こういう点をどういうふうに導いていくかということが、將來考えていただかなければならぬ問題である。こういう点の御研究を煩わさなければならぬと思う。私どもも力を添えますが、農林省自体もそれに努力して乘り出してもらわないと、いつまで経つても農業者は頭をはねられる。わずかな品物をとつて、それを賣つてその價格で全部買込んでいくのでありますから、バランスのとれる理窟がない。この点をひとつ農林省の方でのお考えをお聽かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/27
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028・山添利作
○山添政府委員 これは農藥の價格というよりも、結局米價の問題、また米價を基準にしてすべて農産物はパリテイ計算でやられておりますので、ここに問題があるわけであります。そこで、これにつきましては農林省の他の当局からしばしば説明を聽かれておりましようし、また議論もされておるのでありましようから、私から申し上げることはないと思いますけれども、私の感じを申しますれば、パリテイ計算ということについてはこれは理窟があるわけであります。生産費というものは、ああいう農業生産物は非常に算定しにくい、しかもその大部分が結局労賃をどう見るかということに帰着します性質上、パリテイ計算ということでいいのであろうと思うのであります。問題はパリテイ計算の前提といいますか、その前提といたしましては購入物資のパリテイがおおむね基礎になつて値段で入るということが前提にされておるわけです。ところが、事実がそれに反するということ、また一面から言えば、そういう公定價格によらないものを買いますと同時に、一部は公定價格によらない價格で賣る、そこのバランスがどうなつておるかというようなことが、実際にあてはめてみた場合に非常に問題があるわけであります。理窟だけから申しますと、労賃というものは非常に規制されておつて、昔からみますと、労賃あるいはわれわれの給料というものは非常に低い。これは申すまでもない。しかし、パリテイ計算をやります結果として、米價の中に含まれている労賃というものは普通の物價並みに認められておる。だから、その点からみると非常に有利である。その有利なものはしかし主要資材ほそのか生活物資を公定價格で入手できない、やみでなければならないというところに相殺されている。でありますので、パリテイ計算は理論としていいと思いますが、実際方法としてどうして生産費を参酌するか。生産費をそのまま参酌して勝手にきめるわけにいきませんので、パリテイ計算の内容をなす品目のとり方、特に品目はたくさんとられておりますので、各品目のグループにおけるウエイトのとり方、こういうことがいろいろ算定の仕方がある。そういうところを生産費とにらみ合せて、操作すると言いますと言葉が過ぎますが、よく見なければならぬ。こういうことに考えております。もう一つは、何といいましてもパリテイ計算の趣旨を徹底する、こういうことだろうと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/28
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029・森幸太郎
○森委員 二、三質問のされてない、小さい事務的な問題でありますが、伺いたいと思います。この要項に記載されてあります登録申請の記載事項、容器の記載の一定事項、届出の一定事項というのがありますが、その内容がどういうものであるかお示しを願いたいのであります。今小川原君の質問に対して、價格は生産費によるということをお話になつておるのでありますが、生産費によるということになれば、その内容、——どういう原料、資材をもつて生産したかということを知らなければ、生産費が出ないわけであります。この原料はこういう特殊の藥剤であり、生産者あるいは創造者が祕密にしておるものも相当あろうと思うのであります。かつて賣藥の届出は、処方箋の内容を届出たのであります。もちろんこれは内務省において祕密にされておつたわけでありますが、そういうように、これこれこういう品物をもつて生産するのであるということを届け出さしめるのか。あるいはまたその容器には、藥剤としての有効成分を標示するのであるか、この点をひとつ伺いたいのであります。生産費から價格をきめるならば、どうしてもその内容——原料資料を突き止めなければ、生産費は出ないわけでありますが、この点をどう取扱われるかという問題であります。從つて申請登録、あるいは容器に記載する、あるいは届出という一定事項ということがうたわれておりますが、これは政府はどういうことを考えておられるかという問題であります。
それからもう一つ、私は実際問題について疑問をもつのは、なるほど檢査所というのはできておる、それは中央に一箇所あるわけでありますが、これが地方に分布されました場合に、はたして不正藥剤であるかどうかを発見する能力はだけがもつか、こういう問題であります。これは不正肥料の取締りの問題と同じようになりますが、各府縣に昔は肥料檢査官というものがおりました。農事試驗場とか、あるいは縣廳に檢査官がおりましたが、戰後ばらばらになつてしまつて組織がない。そこに乘ぜられ不正化学肥料がどんどんと出ておるわけであります。また有機質肥料につきましても、十分にこれを分析する設備を地方がもつておりませんから、これが何の成分をもつかわからないながら、有機質肥料として農家が使用しておるのであります。この農藥に対しましても、結局はそういうことになりはしないかと私は心配するのであります。なるほど東京に持つていけば見てくれる。しかし地方でこれはいいのか惡いのか、もし羊頭を掲げて狗肉を賣るような内容であつても、それを突き止めるだけの組織が地方にない。そういう場合農民は、きくきくと宣傳されてやつてみて一向きかなければ、ばかを見るのは使用者である、こういうことを私は心配するのであります。なるほど檢査所は現在の組織で、新しく陣容を整えなくてもやつていける、その末端の事務に対しては、地方の技術者に嘱託の形式をもつていく、こういうお話を今せられたのでありますが、地方の技術者にこれを嘱託され、委嘱されただけで、これを発見するだけの組織、設備、能力というものがあるかどうかということを私は心配するのであります。昨年肥料取締法をこしらえながら、それが一向末端の組織網によつて取締りができていない、こういう現実を見たときに、農藥取締法ができても、これを突き止めるところの組織が全國的にできていないということになれば、できた法律も死物になつてしまうわけであります。これは國家の権威の上におきましても、またわれわれはこの法案がぜひ必要であると考える上からも、また農業を保護する上からも、ぜひとも徹底的な取締りをやつて、いかがわしき農藥の分布を禁止しなければならぬ、かように考えるのであります。その点について政府は相当の用意があるか、この点を伺いたいのであります。いわゆる價格を決定するについて生産費を基礎とするならば、その製藥の内容、資材をあくまでも登録させて調べるのであるか、あるいは有効成分によつてこれを認めるのであるか、あるいはまたどういう組織によつてこの檢査を徹底するのであるか、この点について政府の用意のあるところの御説明願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/29
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030・山添利作
○山添政府委員 價格の算定の基礎になる問題と、この法律で要求するところとは、おのずから違いますけれども、しかしこの法律でもつてとります申請の場合の記載事項というものは、同時にまた價格算定の参考にもなるわけであります。申請をする場合の記載事項等は法律の第二條に書いてありますが、その中に、農藥について製造方法ということも書いてありますので、原料だとかあるいは化学的な製造過程等を記載いたすことになつております。販賣をいたす場合には、そういうことはできませんから、書いてありません。それからこれを徹底さすことについてですが、ただいま森さんのお述べになつた事柄はごもつともでありますし、私どもも現在の状況で十分なことができるとは考えておりませんが、これは非常に苦心を要すると思つております。この法律をつくつて、府縣に取扱官吏としては一名を嘱託することになつておりますが、元來肥料の方には肥料檢査官というものを配置してあるわけですが、しかし農藥にしても、あるいは肥料でも雜多なものがありますので、これらの取締をするについて、ある限られた取締官吏という名称を帶びた人だけがこれに注意するということであれば、とうてい十分ではないので、法律上取締りの権限をもつ人はそういう限定された人でありますけれども、しかし農業指導に当るような人も、こういう事柄について絶えず注意してもらう、公の権限に基くということでなくて、惡いものがあればこれを通報する。あるいは注意する、こういうことを十分にしていきたいし、またいたす必要があると考えております。それについては今年から技術の普及について新しい制度を設ける、それは府縣の吏員たる資格をもつた今を全國に六万五千人も配置することにして、これは本職としては農業技術の向上、傳播、浸透ということに努めるのですが、同時に種苗の問題についても、農藥についても、これは農業技術を進める上、また農民の利害関係にとつて、非常に重要な仕事でありますので、そういう組織においても、こういう事柄について十分注意をする、これは取締る官吏ではないけれども、その人人の立場としてこういうことに協力するというか、実際上取締りの効果が上るような活動を期待いたし、またそういうような仕向け方で、廣い意味における農業技術の改善向上に資していきたい、かように考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/30
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031・森幸太郎
○森(幸)委員 縣に一人の官吏をして委嘱する、こういうことになつておりますが、なるほど技術員に対してはこういう農業がいいとか惡いとかいうようなことも指導されると思いますが、もし不正な藥剤を発見したときに、官吏にあらざればこれを告発することができないと思うのであります。種苗法のごときでも、不正な種苗を販賣しておる者に対して、これは不正だと言つても、私が生産したものであつて完全な種子だと言われれば、申し上げるまでもなく、種子というものは発芽して成熟してみなければ、どんな大根ができるか、どんなかぶができるかわからないのでありますから、これがはたしていいか惡いかという認定は、生産者の責任に問うよりほかむずかしいのであります。それを、技術者があそこのものはいけないとか、ここの大根の種子はいけないということの鑑定を下すことができない。あれは商賣であるからややこしい。もしもあの大根種子は買つてはいけないと言うと営業妨害としてやられる。これは告発することもできなければ、営業妨害としてかえつてしつぺい返しを受けるようなことになるから、技術者は種苗に対して徹底した容喙はできないことになるのであります。藥剤なんかはこれと違いますけれども、この藥剤が効くのか効かないのかということを全國の隅々の技術員が知るか知らぬかということであります。これを周知せしめる方法はどうかというのであります。それから政府においてこれは有効なる農藥であるということを決定されされたら、こういう農藥を認可して、こういう農藥はこういう病虫害にいいのだということを周知せしめるような徹底方を、政府として考えられることが必要であろうと思うのでありますけれども、それ以外に藥剤というものがたくさんありますから、どうも見分がわからない。それの善惡を鑑別することが、はたしてその技術員の指導ぐらいでできるかできぬかということを私は心配するので、もし不正なる藥剤だと思つても、官吏にあらざればそれを告発することができ得ないという悩みがここに生じてくるのであります。せつかくこの法律をつくりましても、末端まで徹底するのには今のようなお考えの組織では、とうてい十分なる法の効果をあげることができ得ない。しからばどうするか。また人員を殖やさなければならぬ。この上人員を殖やされたらたいへんなことになりますから、政府としては、この法案を出された以上は、一日も早くこの農藥のりつぱなものを農業に役立たせたいという氣持で、このことをお考えになつたと思いますが、その考え方をさらに押し進めて、どうしたらこの農藥が農業経営の上において役立つか。役立たしめる方法があるか。その手段方法を私は具体的に突込んで研究していただかなければならぬのではないか。かように考えるのでありますが、今のお話のように縣の一人の官吏ではどうも心細いと思うのであります。はたして政府の期待されるごとくいくでしようか。この点ひとつお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/31
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032・山添利作
○山添政府委員 これは理想論になるかもしれませんが、問題の骨子は結局農家自身に対する教育活動を盛んにしなければならぬということに帰着すると同樣であります。いいものを奬めるという意味におきましては、この法律の制度とは別に、農林省の認定農藥という制度をとつております。一定の規格をきめまして、優良な農藥を農林省の認定ということにして推奬をする制度をとつております。そういうものはそうむやみにたくさんあるわけではありません。どういうときはどういうものを使うというように、その奬める方法によりまして、信用のあるものを使つていく。これはただいま申しましたような技術の普及滲透等によつて十分これは進めていいものと思つておるわけであります。ただ不正なものの取締り、これは肥料の場合でもそうでありますが、とかく誇大な廣告をいたしまするとか、新しいものはだれでもひとつやつてみたいというような事柄から、時にいろいろなことが起るわけでありますが、そういう場合に、とにかく新しいものでも登録いたしますれば、そこで内容は明かになつているはずでございます。問題は登録をしないものが登録したように顔をする、これが法律の違反になるわけであります。そういうものがありますれば、これは通報してもらうことについて取締りができます。登録しないものが登録を受けたような顔をするというところに、あるいはそういうことを言わないで賣つて歩くというところに問題が生ずると思うのであります。それにつきましては、多くの人が注意をして通報をしてもらう、こういうことを考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/32
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033・成瀬喜五郎
○成瀬委員 私は農藥取締法の参考資料について一点だけお伺いしたいのであります。特にこの資料の中で不正農藥としてあげられておるところの砒酸鉛、石灰硫黄合剤、硫酸ニコチンについてでありますが、この中で砒酸鉛については二十九品種の中で適格品は四品種しかない。石灰硫黄合剤は十八品種の中で七品種しかない。また硫酸ニコチンにおいては適格品は皆無である。この資料から考えてみまして、さきの農藥需給状況及び二十三年度生産計画について疑問をもつのであります。終戰以來のこれらの状態から考えても、さいぜん申し上げます資料にある適格品以外の不良農藥が一般に市販されまして、それを含めた数字がここに現われているかどうかということをお尋ねするわけでありまして、もし不良品を含めた数字であるといたしますならば、どういう方法をもつて農民の安心の得られる農藥を一般に販賣せしめていくかという点についてお尋ね申し上げたい。
なお一番最後に百三十五品種につきまして、それぞれ製造業者と販賣業者あるいは不明であるとか、いろいろ不良品についての参考数字が出ておりまするが、これらの販賣業者なり製造業者に対しましては、なぜその内容をもう少し明かにされないか。DであるとかTであるとかいう英語の頭文字をもつてしているのは、何だかそれらの業者に対して遠慮しているような感じもあるのでありまして、これらの業者の名誉を重んずるためになされたものであるか。もしことさらにそういう業者におもねるという氣持があるということになつたならば、今まで農家のこうむつた莫大なる損害に対してでも、われわれはそれこそとんでもないことであるというふうに考えられますが、むしろこれははつきりいたしまして、そうしてこれらに対して徹底的な反省をなさしめるということになすことが、良心的な指導の立場であろうと考えるのでありまして、併せて説明を求める次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/33
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034・山添利作
○山添政府委員 この供給されました数字の中には、そういうあいまいなものは含んでおらない。國が資材を割当をし、それによつて供給せられた正規のものであります。またここにいかがわしいものを営業した製造会社の名前が明示してないのでありますが、これはこの法律の施行されることによつて、かようなものは登録申請をしてくる、それがはねられれば賣つてはいかぬという順序になるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/34
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035・成瀬喜五郎
○成瀬委員 大体それでありましたならば、硫酸ニコチンについては、八品種の中で規格に適合するものは皆無であつたというにもかかわらず、こちらの方にはそれぞれ数字があげられておる。この点どういうような考えでおられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/35
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036・田口昌弘
○田口説明員 この八品種の方は、市場におきまして蒐集しましたサンプルでございまして、これには農林省認定の農藥はたまたま含んでいなかつたのでございます。それでいかがわしいものだけ出てきたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/36
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037・清澤俊英
○清澤委員 ちよつとお伺いいたしたいのは、この審議会の構成について少し詳しくお伺いしたい。今までとかく農林省で取扱つている肥料並びにこういう農藥等の決定が一方的であるという声を相当聞いておるのでありますから、この審議会はどういう構成でもたれるか、お伺いしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/37
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038・山添利作
○山添政府委員 ただいま考えております腹案といたしましては、官廳関係の者、それから行政に從事しておる者それから同じ役所関係でも特に試驗研究の方に從事しております者、これは四名ばかり。それから農藥の檢査所長、それから製造業者の代表者、販責業者の代表というものも入れますが、農民代表といたしましてもぜひ参加をしてもらいたい。そのほか学識経驗者というようなものを予定しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/38
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039・清澤俊英
○清澤委員 それはすべて農林大臣からの依嘱のような形式になりますか、それともいずれ審査規定のようなものができて、これだけの範囲のものは審査委員とするが、それ以外のものは廣範囲から民主的に選ばれるというような方法を考えておられるか、その点をお伺いしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/39
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040・山添利作
○山添政府委員 もとより農林大臣がこれを命ずることになつておりますが、どういう範囲から選ぶかということは、政令をもつて明示したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/40
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041・井上良次
○井上委員長 それでは農藥取締法案に対する質疑は以上をもちまして終了いたしました。これで質疑を一應打切つておきたいと思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/41
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042・井上良次
○井上委員長 この際お諮りをいたしますが、関東及び東北地方の雹害に関する事項の國政調査承認要求書を議長に提出いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/42
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043・井上良次
○井上委員長 異議なきものと認めまして、それでは雹害に関する事項の國政調査承認の要求書を提出することに決定いたしました。それからこの雹害に関して群馬、栃木両縣の被害がきわめて重大化されておりますので、現地実地調査のため委員を派遣いたしたいと思いますが、これも議長に対し委員派遣承認申請書を提出しなければなりませんので、派遣委員及び派遣委員の期間等の一切は委員長に一任せられたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/43
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044・井上良次
○井上委員長 御異議なきものと認めまして、そのように決定いたしました。
なお午後米價調整に関する小委員会を開くそうであるますから、委員の方はひとつお繰合せを願つて、御審議を願いたいと思います。
それでは本日はこれで散会いたします。
午後零時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100204988X01219480601/44
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