1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十三年五月二十六日(水曜日)
午後二時五十八分開議
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議事日程 第四十五号
昭和二十三年五月二十六日(水曜日)
午後一時開議
第一 自由討論(前回の続)
第二 民事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第三 行政代執行法の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案(内閣提出)
第四 日本國憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律の一部改正する法律案(内閣提出)
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001・松岡駒吉
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
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002・安平鹿一
○安平鹿一君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際野本品吉君提出、教育問題に関する緊急質問を許可されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/2
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003・松岡駒吉
○議長(松岡駒吉君) 安平君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/3
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004・松岡駒吉
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
教育問題に関する緊急質問を許可します。野本品吉君。
〔野本品吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/4
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005・野本品吉
○野本品吉君 現在わが國は、経済不安定、社会不安、生活不安と、各方面において深刻なる危機に当面しておりまして、われわれ國民は、これが危機の打開克服に対して全力を傾けておるのであります。しかしながら、一方眼を國家再建の根本でありますところの教育の面に向けてみて、そうしてその実相を分析検討してみますと、ここにもまた、憂慮すべき危機の様相が数々発見されるのであります。そして今において適切有効なる方策を樹立いたしまして、強力に推進するのでなければ、現在われわれが努力しつつありますところの経済の再建も生活の安定も教育の欠落から土崩瓦解するのではないかということを深く憂えざるを得ないのであります。
本年四月警視廳において取扱いました刑法犯を犯しました青少年のうち、学生生徒の数は、小学校の兒童において六十五名、新制中学の生徒において百四十九名、新制高等学校の生徒において二十五名、高等專門学校の生徒において二十二名、合計二百六十一名の多きに達しておる実情であります。これは單に東京における一つの例でありますれども、その他の都市・農村におきましても、大体についてかような傾向に赴きつつあるということは、われわれの想像にかたくないところであります。
近時、青少年教育の面におきまして、犯罪防止のことに関しまして、いろいろな方法がとられつつあるのでありますけれども、大体におきまして、いずれもきわめて消極的なものでありまして、われわれはその拔本的な対策はただ教育の振興徹底に期待すべきであるということを確信するのであります。
私は、かのような観点から以下二、三の点につきまして問題を提起し、なお所信を述べつつ当局の考えをお伺いしたいと思うのであります。
第一に私が申し上げたいと思うことは、わが國の教育界におきまして現在最も憂慮すべきことの一つは、優秀な教員が続々とその職を離れ、しかも教育界に志を向けるものがきわめて寥々たるこの事実であります。本年の三月末におきまする調査によりますと、教員の退職者数は、新制中学において七千七百二十二名、小学校において二万七千四百八十二名、合計三万五千二百四名になつておるのであります。これに従来に定員の不足の補充と学級の増加とを合せますと、本年度の当初におきまして、事実に十万九千名の多数の教員不足の状況になつておるのであります。従つて、この教員不足というのが教育上どういう影響を與えるかということは、いまさら私の申し上げるまでもない点であります。
なほ、このことと表裏の関係にありまする教員志望者がいかなる状態にあるかということを、われわれは考えなければならぬのであります。昭和二十二年度末における全國の教員養成に諸学校の應募状況を見ますと、高等師範学校、女子高等師範、農業教育專門学校、体育專門学校等の募集人員二千百二十五名に対しまして、應募人員は七千四百六十三名、比率は百人に対して三百四十一名とあいなつておるのであります。師範学校についてこれをみますと、募集人員八千八十名に対しまして九千九百四十一名、百名に対して百二十三名と言う應募率になつておるのであります。青年師範学校についてこれを見ますと、四千六百十名の募集人員に対しましてこれに應募しましたものは実に二千九百名でありまして百名に対してわずか六十五名の少数なのであります。その最も著しき例を申しますならば、大阪の第一・第二師範学校におきまして男子三百六十名の募集に対しまして、三百十九名、女子二百四十名の募集に対しまして四十四名、合計六百名の募集に対しまして三百六十三名の應募であります。さらに大阪の青年師範におきましては、農業科、工業科合せて百六十名の募集に対しまして、実に四十五名しか應募者がないのであります。
かようにいたしまして、一方に起きましては優秀なる教員が続々と教室を去り、一方においては教育に志を向けるものがきわめて少なくなつてきておる。この事柄が、日本教育の将来にきわめて深刻、甚大な影響を與えるもでありまして、われわれは見逃してならない重大問題であると思うのであります。なぜ退職者が多く、教員の希望者が少ないかということの原因につきましては、いろいろと見るところがあろうと思うのでありまするけれども、何と申しましても、その最も大きな原因の一つはその生活難にあることはいうまでもありません。昨年の上期におきましても、教員の、特に小・中学校の教員の待遇を調べてみますと、民間における平均賃金が三千円程度になつておりますときに、四十歳から四十五歳の最も働き盛りの教員の平均待遇は、実に二千九百円の少額であるのであります。この事柄は、当然教員の生活がいかに深刻であでるかということがわれわれにも思わしめるのでありますけれども、さらに私どもは、こうした教職員の生活不安の結果はどういうことになるのかと申しますと、この生活上の欠陥を補うために、教職員が各種の内職を営んでおるのであります。
これは昨年の十月に、東京都におきまして調査いたしましたところによりますと、調査人員二千五百名のうち、内職をいたしております者が、三百五名あります。内職の主たるものといたしましては、家庭教師、農耕、洋裁、ブローカー、ネクタイ製作、手芸、筆耕、和裁、袋はり、人形加工、麻雀、接骨、古着賣り、手傳い、会社の夜勤、図案、ラヂオ修理等種ありますけれども、これをもつてみてみましても、いかに教職員が生活に追われておるかということを、はつきりとわれわれは見てとることができるのであります。
かようにいたしまして、結局人材があとからあとからと教育界を去つていつておるのであります。しかして、そのあとを継ぐべき人材はまことに寥々たるものなのであります。こうした状況下にあればこそ、一面においては教員が、好ましからざるではあるけれども、やむを得ず待遇改善のためのストを行うというようなことになつてきておりますし、その他各種の、われわれからみれば好ましからざる行為をあえてせざるを得ないという状況になつておるのであります。結局私は、かような点から日本の教育が根本から崩壊するのではないかということを憂えるのであります。教育の崩壊はやがて日本の崩壊であるということを、われわれは考えなければなりません。
私は、ここにおきまして、文部大臣に対しまして、どのような方策によつて教育界に人材を招致しようというのであるか。また一たび教鞭をとつた人たちに、その聖職に安住し、專念せしむるために、どういう方策をおとりになろうとしておられるのであるか。お聴きしたいのであります。
第二の問題は、青年学校の廃止と勤労青年の教育の問題であります。本年三月三十一日をもちまして、わが國における勤労青年を対称といたします唯一の教育機関でありました勤労学校は廃止せられました。廃止せられた当時、青年学校はどれだけの生徒と包容しておつたかと申しますと、官公私立の青年学校の総数は一万七百三十五校であります。この一万七百三十五校におきまして、実に二百四十五万五千二百七十六名の多数の勤労青年を包容しておつたのであります。この勤労青年のうち、青年学校の本科一年の三十一万二千百七十三名を差引きまして二百十四万三千百三名、これが、われわれの力強く、口を極めて提唱しておりますところの、新制高等学校の定時制の教育という遂によつて教育されなければならない人たちなのであります。
憲法第二十六條によつて教育の機会均等が保障せられました時に、境遇のために志を伸ばすことができなかつた全國の勤労青年のうち優秀な人たちは、実に小躍りして喜んだのであります。そして、われわれのためにいかなる教育の途が開かれるのであろうかということを待望しておつたのであります。そうして、それらの人たちは、全國的にその力を協せ、その心を一つにいたしまして、勤労青年のための教育修養の機関を最も適切有効なる方法おいて樹立せられるようにいうことを心から当局に訴え、議会に訴えてまいつておるのであります。そうしつ、当局も議会も、それらの純真なる叫びに対しまして、必ず君たちの望みを遂げげさせてやるということを答えておるのであります。
しかるに、私が最も遺憾といたします点は、いろいろな複雑な事情はあつたではありましようけりども、暫定予算におつきまして、これらの勤労青年学徒を対象とする何ものも、その片鱗さえも現してなかつたということであります。こ事実を見まして、ほんとうに望みをかけておりましたところの全國の勤労青年は愕然として驚きました。そして大いなる失望を感じたのであります。一体どういうわけで、三月三十一日に青年学校を廃止しておいて、未だに青年教育について何らの目鼻をつけていないのか。勤労青年教育の必要性がないと思つているのでありましようか。私は全國の勤労青年とともに、この点をきわめて遺憾とつしておるのであります。もし、このままで放任されるといたしましたならば、おそらく、将来日本の生産力推進の中核でありますこれらの勤労青年はごとごとくその望みを失つて、かれらは懇廃と虚無とに赴くでありましよう。はたして、青年がそういう方向に向かつたといたしましたならば、われわれは青年の立場につて追究論難する資格がなくなるのでありまして、その責任は実に國家にありまして、政府にありといわざるを得ないのであります。
そこで、私がお伺いいたしたいと思います。事柄は、この定時制高等学校の実施に対して、当局ははたしてどのようにお考えになつておられるのであるか、具体的な計画をはつきりお示し願いたいと思うのであります。
なお、この教育の関しまして併せてお伺いしたいと思いまする事柄は、定時制高等学校は、その設置せられる数がきわめて少なくありまして、現状をもつていたしましては、いかに心から勉学の意がありましても、その望みを満たしてやるに十分なものでないと思います。すなわち地域的な制約を受け、また経済的な制約を受けて、この地域的、経済的な制約のために、勉強しようと思つてもできない、実に数多くの勤労青年のあることを忘れてはなりません。当局は、新制高等学校に定時制の道を開くことによつて、勉強したいと思うならここへ來てやれといつて、形式的に道を開けてやるだけでは、真に日本の将来を青年に期待するものであるとは言えないと思うのであります。
私どもは、かような点から、一面において定時制高等学校によつて教養を受ける青年があると同時に、他面において定時制高等学校に就学できない多数の勤労青年に対しまして独自の教育施設の必要を感じておるのでありますけれども、この点に関する文部大臣の所見をお伺いしたいと思うのであります。
次に第三点といたしまして、学校整備の問題であります。これは本年当初に起きまして、小学校、新制中学を合わしまして、教室不足の数は実に四万四千八百五十一に多きに達しておるのであります。この結果、やむを得ざる方法といたしまして、二部教授、三部教授等、あるいはきわめて不完全なる建物により教育が行われておるのであります。たとえば寺において教育をしており、あるいは風呂場を改造して教育をしており、その他いろいろと、見るにたえない姿を示しておるのでありますが、この不完全な教育を受けておる結果が、先ほど申し上げたように、在学生徒のうち刑法犯を犯すものの数が最も多く新制中学の生徒にあるという事実となつて現れてきておるのであります。これは二部教授、三部教授の欠陥が具体的に現れてきておるものといたしまして、われわれは軽々に看過することではない事実であろうと思うのであります。
多数の教室の不足をいかにしてに補うかということにつきましては、政府といたしましても多大の苦心努力を拂われておる事実は、これを認めます。またわれわれ一般國民といたしましたは、その負担に耐えないのを無理をしてまでもこの建物に協力しているのでありますが、いまや地方の財力、一般國民の経済力はとうていの負担に耐えない限界に達しておるのであります。かようなときに、このきわめて数多い教室不足をいかにして補おうとするものであるか、これに関しまして、はつきりしたお答えをお聴きいたしたいのであります。
以上私は、当面しておりますきわめて中心的な問題につきまして申し上げたのであります。この私の質問に対するお答えは、おそらく全國の子弟をもつておられる親たちが、また全國の青年諸君が、全國の子供たちが、はつきり聞きたいと思つておる事柄であろうと確信いたしますので、それらの人たちが十分納得のいきますような御答弁を期待するものであります。
以上をもちまして私の質問を終ります。(拍手)
〔國務大臣森戸辰雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/5
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006・森戸辰男
○國務大臣(森戸辰男君) 野本君の質問にお答えします。
日本再建のために政治並びに経済の改革が必要であるとともに、それに伴う基礎的なものとして教育の刷新が徹底しなければ、政治的、経済的な改革もその目的を達することはできないという御趣意には、まことに同感でございます。
かような立場に立ちまして、三点のご質問があつたのでありますが、第一点は、今日優秀な先生方が教団を去つて、教育崩壊の危機にあるように思われるが、これについていかなるどんな対策をもつているかという御質問であります。申すまでもございませんけれども、教育の最も大事なところは、建物や制度ではなく人間でございまして、よい先生がなくてよい教育が成就いたされることはないのでございます。ところが、最近の事情を申しますとただいまも数字でお示しになつたように、先生が、数の上でも、また質の上でも、基準から退いておるという遺憾な事態があるのでございして、私ども皆さんとともに憂慮にたえない事態にあるのでございます。これにつきまして私どもは、御指摘になつたような原因をも認めまして、一つ経済的事情がこういう先生の教育離脱を持つてきたものである。もつとも、御指摘になりました、優良な先生がみんな教壇を去るということではないと思います。優良な先生は実にいろいろな経済上の苦痛を忍びながら、幾多致壇に留まつておいでになられるので、私どもは、かような立派な先生に対して心から敬意を持つておるのでありますが、他面、よい先生と考えられる方々が多く致壇を去られるという事実も全然ないのではないのであります。この点におきまして、先生方の待遇を改善することが非常に大事な点である。従いまして私どもは、その方面に努力をいたし、先生方が一般の官吏よりも待遇が悪かつたという事情から、一般官公吏と同じレベルまで引上げまして、さらに新しい給與制度におきましては、先生方の待遇について、普通の官公吏よりも、教育という特殊な労働に副いながら、特殊の方途を講ずるという方向に努力をいたしておりまして、十分ではありませんけれども、ある程度その成果を得ておるのでございます。その他一番問題になるのは、先生の初任給の待遇が悪いことでありまして、先生方の初任給を引上げるように努力いたしておるのであります。その他いろいろな方法によつて先生方の物的な待遇よくいたそうと存じております。
他面、先生方の供給源であります師範学校の状態が、ただいま数字をお示しになつたとおり、はなはだ遺憾な状態になつております。その原因は、先生の待遇が悪いという点もあり、また師範学校の生徒に対する給與の少いという点もありまして、従来の給與月二十五円を百五十円に引上げております。なお、育英会の貸費制度につきましては、特別に寛大な処置をとることになつておるのであります。なお育英会の貸費につきまして、將來先生方になられる人にはこれを免除するというような方法を講じていきたいというふうに考えておるのでございます。かような方法によりまして、師範学校に入る人々の数が十分にその募集の数に満つるように、私どもは努力をいたしておるのであります。
なお、行政整理、企業整備というものが行われることになりますれば、適当な配置轉換がある程度この問題を解決するという面も、全然考慮の外におく必要はないと思うのであります。かような物的な面とともに、教師の不足につきましては、一般社会並びに教師自身の教育の仕事に対する自身と誇りとが、ようよう薄らいできたというような憂いも、なくはないのでありまして、この点私どもは、教師の地位はある人々、一般社会の人々におきましても教師の地位に対する十分な尊敬が物的待遇の不十分を補うことで、この問題に対するある程度の解決の途が得られるのであろうと私は存じております。この点は、ただ教師の需要供給のみならず、教師の新しい建設の上にも重大な意義をもつておると存ずるのであります。これが第一点であります。
第二点は、青年学校が廃止せられた場合、青少年、殊に勤労学徒の教育というものはどうなるのであるか、政府は四月からこれらに対する予算を出すべきであるのにだしていないが、それはどういうことになつておるかという御質問であります。ことに勤労学徒の教育というものは日本再建の上できわめて大事なことであり、教育機会均等の原則にたちまして、私どもは、さいわい自由に学校にいかれる子供たち、生徒たちともに、経済事情から普通の意味で学校に通えない人について十分な注意を払わなければならぬ、しかも制度的に拂わなければならぬと存じまして、青年学校が廃止されるとともに、定時制の高等学校を設けまして、働きながら勉強ができる制度を設け、さらに晝の学校とともに夜間の課程を設けまして、都会において晝働いて夜勉強のできるような制度を作りました。それでもいろいろな点で、御指摘になつた地域等の事情で勉強できない人には、通信教育の方法を講じまして、これで学校にいつたと同じような資格が得られるような方途を講じておるのであります。定時制を含めた新制高等学校は四月から発足したのでありますが、その予算は本予算に盛られるのでありまして、これが実は御承知の事情で提出が遅れましたため政府の國費として経費の計上いたされておらないのであります。しかし、本来から申しますと青年学校は地方で経営をしたので、この経費は実は地方に分興金として渡つたておるので、その形からいえば地方で発足させるということがむしろ本筋なのであります。しかしながら地方の財政の事情から申しますと、分興金がいつておりましてもなかなかそれがむずかしい。そこで、これは新たに國費の予算にこれを盛り込むことが必要である。義務教育は半額でありまして、私どもは準義務教育として半額の國費補充を望んでおるのでありますが、これは均衡の上から難しい事情がありまするが、それに近い國費の補助費よつて行うようにと考えております。それがために本予算の問題となつておるのでありますが本予算におきまして、かような費目が必ず計上いたされると存じております。なお、かような定時制高等学校にもいけない青少年について、どういうふうに考えておるかということでございますが、これは一つは、先ほど申しました通信教育の方法によることが必要であります。なお、青少年たちの自主的な運動、青年團、殊に公民館を中心とした公民教育の方法をとつてこれを補うていくことが適切であると存じまして、特に公民館運動ということに非常に重点を置いて考えるべきであろうかと存じておるのであります。
第三点の御質問は、教育問題は他面設備の問題である。殊に新制中学におきましては新制高等学校並びに小学校と違いまして新しい発足をもちましたのでその点、人的方面のみならず、物的方面においても幾多の不十分な点があり、遺憾ながら、先ほど御指摘になつてような二部教授、きわめて例外ではありますけれども、三部教授というものも行われておりまして、誠に遺憾な自体と存じておるのであります。それに対しまして、これも御指摘になつたように、地方民の負担に——ときには強制的な形の寄付による負担ということもまことに多いので、私どもは、かような状態は一日も早く脱却しなければならぬと思つておるのであります。他面しかしながら、日本の現状の状態、住宅問題等いろいろな問題を勘案しましてこの問題が解決されなければならぬので、一時にこの問題を解消して完全な設備を持つということは、非常に困難な事態にもあるのであります。私ども文教の責任の立場に立つておりまする者は、あくまでも最小限度の実現に対して努力いたしております。これらの二分教授、また仮教室、かような事態が一日も早く解消されるように努力いたしておるのであります。
かような形で、人的面におきましても物的面に起きましても日本の教育が今日当面しておることの困難の打開というものは、私ども政府にたつているものがあらゆる努力をいたしておるのでありますが、他面地方団体にも多くの負担をかけ、のみならず、父兄の方にも相済まない負担をかけており、また教師、生徒の皆様にも非常な苦労と不便をかけておることを私ども非常に遺憾に思つておるのであります。しかしかような方向に向かつて最善を盡くしまして、教育刷新の実をあげまして、皆様のご協力によりまして再建日本の精神的基礎を築いていきたいと存ずる次第でございます。(拍手)
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007・森三樹二
○森三樹二君 議事日程の順序を変更いたしまして、この際日程第二ないし第四の三案を繰上げ一括上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/7
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008・松岡駒吉
○議長(松岡駒吉君) 森君の動議に御異議ありませんか、
〔「異議なし」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/8
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009・松岡駒吉
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程に順序は変更せられました。
日程第二、民事訴訟法の一部を改正する法律案、日程第三、行政外執行法の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案、日程第三、日本國憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。司法委員長井伊誠一君。
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〔井伊誠一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/9
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010・井伊誠一
○井伊誠一君 ただいま議題と相なりました、民事訴訟法の一部を改正する法律案、行政代執行の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案及び日本國憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律の一部を改正する法律案の三案について、司法委員会における審議の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。
最初に、民事訴訟法の一部を改正する法律案について御報告申し上げます。
まず、本案の要旨について簡單に御説明いたします。日本國憲法及び裁判所法の施行上やむを得ない部分に限つて、民事訴訟法に対する應急措置として制定せられました。日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に関する法律が、本年七月十五日をもつてその効力を失うので、現行民事訴訟法に必要な改正を加えて、新しい裁判機構のもとにおける訴訟手続の進行を円滑にし、國民の権利保護及び伸張に遺憾なきを期そうとするのが本案の趣旨とされております。ただ、新しい憲法によつて最高裁判所に認められた民事訴訟規則制定権と民事訴訟法との調整をはかる等根本的檢討を要するものがありますが、未だこれを立法化する域にまで達していないので、本法案では、このような根本的な改正には触れないで、もつぱら、さきに述べました應急的措置に関する法律の失効に伴い必要な最小限度の改正を行うことを主眼とし、併せて、新しい裁判機構のもとにおける民事訴訟制度の運営上適当と考えられる一、二の新しい制度を取り入れて立案せられております。
改正の主要な点は、第一に、証拠調べについて当事者の権利と責任とを拡張し、直接審理の建前を従來よりもさらに一層推し進めた点であります。すなわち、対等の当事者が相争う民事訴訟の性格に鑑みまして、裁判所の職権による証拠調べを廃止するとともに、新たに証人の鑑定人に対する当事者の尋問権を適当に拡張するところの、いわゆるクロス・エキザミネーションの制度を採用した点であります。かつ、裁判官の更迭があつた場合及び証拠保全手続において証人等を尋問した場合について、直接審理に副う規定が設けられています。
第二に、判決が明らかに法令に違背したことを発見したときは、裁判所は一定期間内——言渡した後一週間内に、みずからこれを変更することができることとした点であります。
第三に、訴訟手続の遅延することを防ぎ、迅速化をはかる方法として、一、正当な理由がなくて出頭しない証人等に対する制裁を強化し、二、簡易裁判所の訴訟手続においては、場合により調書に記載すべき事項を省略し得る等の規定を設け、三、殊に訴訟審において控訴を棄却する場合に、控訴人が訴訟の完結を遅延させる目的だけで控訴したものと認められるときには、裁判所は控訴人に対し、控訴上に貼用すべき印紙金額の十倍以下の金銭の納付を命ずることができるものとした点であります。
第四に、新憲法により最高裁判所がいわゆる違憲審査の最終裁判所となりました建前から、憲法違反が争われる場合には、簡易裁判所事件につき高等裁判所が上告審として審判をした場合でありましても、また不服申立の方法のない決定・命令に対しましても、常にその点につき最高裁判所の判断を受けることとなつた点等であります。以上が本案の大体の要旨であります。
委員会は、四月五日政府の説明を聴き、さらに十三日敷衍して説明を求め、同日ただちに質疑に移り、その後懇談を重ねてまいりましたが、今論議せられた問題のうち、主なる点について簡單に御披露申し上げます。
第一に、最高裁判所の規則制定権に服する訴訟に関する手続既定の範囲いかんということが、本案審議上まず直面した問題でありますが、この憲法上の問題に対する政府の答弁を要約いたしますれば、憲法全体から見て最高唯一の立法府たる國会の性格に鑑み、大網は國会制定の法律で定め、実際的な手続については規則に譲るのが憲法の趣旨に副うものと思われるけれども、この問題については、現在なお意見がわかれているところであるから、慎重に研究の上決定したい考えであるとの見解でありました。
次は、訴訟主義に関する問題でありますが、第一に証拠調べにおいて、いわゆる職権主義を後退せしめたことは、裁判の普通的妥当の維持という観点からすれば、。なお考慮を要するのではないかという点であります。この点に関し政府より、私権関係においては、和解、認諾等のいわゆる当事者主義を認めながら、裁判所が職権でみずから進んで証拠調べをするのは当事者の一方を援助しているとか、あるいは何らかの予断を抱いているというような誤解を招きやすいので、民事訴訟本来の性格に帰るのが適当と考え、証人、鑑定人等の純粋の証拠申立については職権主義を廃止したのであるとの答弁でありました。
第二に、当事者の尋問権を拡張するいわゆるクロス・エキザミネーションを採用することによつて訴訟手続を長引かせる憂いはないかという質問がなされたのであります。それに対して政府からは、立案の際十分の考慮をめぐらし、たとえば、当事者の尋問が重複尋問、争点に関係のない尋問その他誘導尋問に陥る場合等、必要と認めれば裁判長はいつでもこれを制限出来る途も開いてあるので、裁判所の訴訟指揮がよろしきを得たならば、そのような懸念はありません。しかも裁判所の訴訟指揮の制度は現行のまま認められる旨の答弁があつたのであります。
次に、上訴権の乱用防止を強化する規定は、運用のいかんによつて個人の権益の伸張を妨害する結果を招くのではないかとの問いに対しては、眞に個人の権利を伸長する意図に出た控訴に対しては適用はないのである、しかも他の改正点についてみても、かえつて控訴権を十分に保護する建前になつているから、かかる懸念はないとの見解でありました。なおこれに関連しまして、訴訟提起の段階においても同様に濫訴を防止する途を講ずる必要はないかという質疑がなされましたが、國民の訴権を保護する憲法の建前からいつて、第一審にまで何らかの制約を設けるのは適当ではないとの見解でありました。
なお、その他種々な議論がなされたのであるますが、ここは主なる問題についてのみ紹介するに止めます。
委員会は、次いで本月二十一日本案を討論に付し、各党委員よりそれぞれ賛成意見が述べられたあと、採決の結果、全会一致をもつて原案の通り可決いたした次第であります。
次に、行政代執行法の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案について申し上げます
まず、政府原案の概要を御紹介申し上げます。本案は、さきに成立した行政代執行法によつて行政執行法が廃止された結果、従来の法律中行政執行法の條文を引用して規定を整理せんとするものであります。その内容は大別して二通りあります。その一つは、森林法のように費用の徴収に関する準用條文の整理であります。これは行政執行法第六条とあるのを、これに相当した用語である行政代執行六条という用語に改めただけのものであります。その二は、都市計画法のごとく、地方公共団体またはその長にも代執行等の権限を認めるため、特に行政執行法を準用していたものの整理であります。行政執行法では行政官廳のみならず、廣く地方公共団体及びその長も代執行ができることとしているので、他の法律で特に準用規定を設ける必要がなくなつたために、これを削除せんとするものであります。本法案において準用を削除しましたのは、都市計画法を初め、公共団体の管理する公共用土地物件の使用に関する法律、道路法、不良住宅地区改良法、災害救助法、森林資源造成法の六つであります。以上が政府原案の要旨であります。
司法委員会は、五月二十日政府の説明を聴き、二十一日質疑應答をいたしました。質疑は、この法案の施行期日に関するものただ一つであり、その内容は、この法案は代執行法の提出と同時に提出すべきものではないか、又、この法案の施行期日が代執行法の施行日となつており、さかのぼつた期日に適用されるのはどういうわけか言う質疑がありました。これに対して政府より、本法案は仰せの通り代執行法と同じ期日に提出すべきであるが、施行期日は、代執行法が六月十五日から適応されるのでさかのぼつた日に摘要されたわけではないという答弁がありました。
本委員会は、この法案が法文の用語のみの整理であつて新法案が作成される場合の通常の手続にすぎないことを認め、五月二十一日ただちに採決に入りました。その結果、本法案は全会一致をもつて政府の原案通り可決した次第であります。最後に、日本國憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律の一部を改正する法律案について申しあげます。
まず政府原案の要旨を申し上げます。日本國憲法施行の際現に効力を有する命令で立法事項を規定するものはすでにほとんど法律の形に改められたのでありますが、なお右法律の第一條の四に列記するものは、命令のままの形で今日まで法律としてみなされてきたのであります。しかして、これらの命令については、今年五月二日までに改廃の措置をとるべきものとされていたのでありますが、諸般の手続上の関係もあつて、同日までにその措置をとることができなかつたものが若干生じました。よつてここに、同法第一條の四第二項中「五月二日」とあるのを「七月十五日」と改めるとともに、七月十五日までに法律化の手続が完成しなかつたものは爾後その効力を失う旨を定めんとするものであります。以上が政府原案の要旨であります。
司法委員会は、五月二十日政府の説明を聴き、二十一日質疑應答をいたしました。質疑はわずか二点であり、その1は七月十五日までに命令がすべて法律化されることができるかということであります。これに対し政府より、命令が法律化されるに必要な手続中、政府部内においてなすべき手続はすでに完了している、従つて、法律制定手続の期間ならいえば、七月十五日までに十分に立法化できる見込みであるという答弁がありました。質疑のその二は、本法案中すでに効力が失つた命令が掲げてある、たとえば放火犯処罰例や栄養士規則のごときはすで失効しているにかかわらず、七月十五日までなお効力があるものと國民は誤解する恐れはないかということであります。これに対し政府よりすでに成立した法律の附則において、その命令が効力を失つた旨を記している。これについて、廃止の法律がなお効力を有するものと誤認されることはあるまいという答弁がありました。
司法委員会は、本案が「五月二日」を「七月十五日」に改めたにすぎないと認め、五月二十一日ただちに採決に入りました、その結果本法案は全会一致をもつて政府の原案通り可決と議決した次第であります。
以上、三案について御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/10
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011・松岡駒吉
○議長(松岡駒吉君) 右三案を一括採決いたします。司法委員会委員長報告はいずれも可決であります三案は委員長報告通り決するに御異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/11
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012・松岡駒吉
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて三案は委員長報告の通り可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/12
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013・松岡駒吉
○議長(松岡駒吉君) 農林大臣より、外崎千代吉君及び田口助太郎君の緊急質問に対し答弁のため、発言を求められております。これを許します。農林大臣永江一夫君
〔國務大臣永江一夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/13
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014・永江一夫
○國務大臣(永江一夫君) 去る二十一日、本会議場におきまして、外崎君から緊急質問がございました。その中に、農林省といたしまして調査の上でお答えするお約束をいたしておきましたから、この際、その点についてお答えいたします。
すなわち主要食糧の摘発数量でありますが、これは昨年の十一月から本年の三月までの分でございます。この主要食糧摘発数量は、白米は玄米に換算をいたしまして、大体米が一万六千九百四十二石、雑穀が四千四百十三石、麦が二千五百七石、麦加工品が一千四百三十五石、合計二万五千二百九十八石であります。なお芋類につきましては、馬鈴薯八万九百七十一貫、甘藷十四万六百四十七貫、合計九十二万千六百十八貫でありまして、これらの摘発食糧は、すべて一般給配のために、それぞれの正規のルートを通じまして配給済みでございます。
なお、昨年の本会議場におきまして田口君からお尋ねがありました点について、数字の点を調査いたしましてお答えをいたします。これは信越科学から滋賀縣に回しました肥料についてでありますが、昨年の九月中旬から十月中旬までに信越化学から発送いたしまし石灰窒素四百九十貨車トンにつきまして、その保証票分の中に切れ目があるという疑いが生じましたから、政府におきましては、これらのものをそれぞれ滋賀縣当局と協力いたしまして分析いたしました。農林省の中央肥料検査所並びに滋賀縣のそれぞれの係官が分析いたしましたものを総合いたしまして、それらのものにそれぞれ不良肥料であるということの断定を下しました。そうして、その成分の不足分につきましては、二百十三トン余を信越化学から滋賀縣当てに補填をするよう命じました。従つて滋賀縣の肥料公團は、それぞれこの補填肥料の手配をいたした次第であります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/14
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015・松岡駒吉
○議長(松岡駒吉君) これよる前回に引続き自由討論を行います。笹口晃君。発言者を指名願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/15
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016・笹口晃
○笹口晃君 日本社会党は、竹谷源太郎君を指名いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/16
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017・松岡駒吉
○議長(松岡駒吉君) 竹谷源太郎君。発言を許します。
〔竹谷源太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/17
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018・竹谷源太郎
○竹谷源太郎君 政治道楽という言葉が昔からございますが、これは、政治というものはむやみに金がかかつて、しかももうからない商賣であるというとこからきていると思います。私の親類で、もうすでに故人になりましたが、長い間縣議会議員をしたり、いわゆる田舎政治家をやつて、さんざん大きな資産を使い盡してから、死ぬときに息子に遺言をして、政治というものに関係しては相成らぬ、これは家憲だというような、勝手な虫のいいことを言つて死んだ人がありますが、昭和の初めに、むろんこれは普通選挙になつてからでございますが、山口縣の某氏は、一つの選挙で三十万円金を使つた。物価指数が現在は当時の三、四百倍になつておる点から考えますと、今日の金で一億円という厖大な金額でございます。
選挙には金がかかりますことは、これはひとりわが國ばかりでなく、民主政治の先進國でありますところの英米においても、昔からずいぶんと金がかかつて悩んできたようであります。英國に置きまして、千七百六十八年、いまから百八十年の昔ではありますが、この総選挙はいわゆる浪費選挙といわれて有名でありますが、この浪費選挙における腐敗選挙区といわれたその選挙区に、ハリフアクスとノーサンプトン及びスペンサーという三人の伯爵が、一人の定員をめぐつて相爭つたのであります。投票が十四日間に渡つて行われましたが、貴族の金持候補者連中は大邸宅を開放し、酒倉を開いて、そうして酒宴を連日連夜続けたのであります。羊毛苅込人も、百姓も、織物職工も、高価なポルト酒を鯨飲いたしましたので、さすがに大きな酒蔵に一杯あつたポルト酒が盡き果ててしまつた。そこで今度は一層高價なクラレツトという酒を出して飲ませたところこの高いクラレツト酒というものを飲んだことのない群集連中は、これはすつぱいといつて飲むのをやめしまつたということであります。こうしたむちやくちやな選挙の結果は、月桂冠は選挙費の一番少ない、十万ポンドであつたスペンサーという伯爵の手に帰したそうであります。ところが、あとのひとりのハリフアツクスという人の家は、その後百三十年間というものは、このときの浪費のために満身創痍で、なかなか回復しなかつたといわれておりますし、もう一人の、一番金を使つたノーサンプトンという伯爵は、庭園の樹木を賣つたり、家財道具を賣拂つても、なおかつ借金が拂えない。そこで、わずかに残つた金を抱いて海を渡つてスイスへ行つて、貧窮のどん底にあつて死んでしまつたということであります。
こうした極端な例は別といたしましても、選挙区の培養に日ごろから金と労力を投入するばかりでなく、いざ選挙となりますると多額の金のかかることから、今不当財蓄取引調査特別委員会が究明しておるような醜聞、あるいは政治腐敗が惹起せられるものと思うのであります。こんなことでは、闇で大もうけをした人か、あるいは特別のパトロンのついておる人以外は、たとい優秀な、そして公共のためになる人材でありましても、選挙に打つて出ることができない。また代議士の利権あさりを根絶することは絶対にできないと思うのであります。
大正十四年、すなわち普通選挙法の制定にあたつて、選挙権の大拡張を試みますとともに、選挙界を汚濁するところの金権候補者を排除するために、不正選挙運動の嚴禁をする。選挙費用の制限をする。また罰則を非常に強化する。また選挙界を紊乱するところの、当選の自信のない、朝に立候補して夕に辞退するというような、こうしたうたかたのごとき、いわゆる泡沫候補者を排除するために、御承知の供託金制度ができたのでございます。しかるに、この二十箇年間の経驗におきましては、これらの取締規定だけでは、とうてい選挙に金のかかるということを防止できなかつた、こう思うのであります。
新憲法のもとにおいて、民主政治に不可欠な選挙の役割というものが一段と重要なものになつてきた。この際われわれは、ぜひ画期的な対策をこれに対して講じなければならないと思うのであります。この趣旨から、ただいま政党法及び選挙法の特別委員会におきましては、選挙法改正の問題を取上げまして、連日委員会を開いて熱心に審議立案中でありますが、日本社会党の方針には大体私は今賛成する方針のもとにしやべるのではありますけれども、あまりこれに拘泥をせずに、私個人の自由な意思をも加えまして、二、三意見を申し述べてみたいと思います。
選挙に金のかからないようにするためには、選挙運動を公営にするよりほか手はないと私は思うのであります。しかし、むろん反対論があります。選挙は一つの重大なる國民の政治啓蒙運動である、これを公営という一つのわくにはめこんでしまうということは、ただ窮屈になつてしまう、自由潤達、奔放な選挙運動をやるところに初めてこの選挙運動というものの本質があるのに、この本質を破壊してしまう、こういう議論があつて、もつともの次第もありますが、しかし、現下のわが國の政治情勢におきましては、金のかからない、そして政治の粛正ということと、自由な選挙ということとを、両方てんびんにかけてみますと、どうしても政治腐敗を防止し、選挙に金のかからないようにするという方を重視しなければならないと思うのであります。私は、かような視点から、可能な限り選挙運動の公営を徹底すべしとする、昨日の討論者である岩本君の徹底公営論については、同意見なのでございます。
公営の内容について二、三触れますならば、まず演説会についてでございますが、これは全部公営でやることにしたい。立会または共同の演説会及び個人演説会も、すべて選挙管理委員会がこれを施設し、演説会の告知、すなわち周知徹底の方法もとつてやる。候補者は演説会に出てしやべればそれでよろしい。立会演説会は、しかしながら代理を許さない。申請によるところの個人演説会は、ある条件のもとに代理者を認めるが、これにつきましては度数に制限を設けなければならない。すなわち三、四十回程度に制限の必要があろうと思いますが、会場は何も屋内ときめる必要はない。街頭でも差支えないと思うのであります。
それから近ごろの選挙では、トラツクに乗つたり、その他メガホン隊というものが、朝から晩まで、あるいは夜中も、候補者の名前を連呼して騒ぎまわる。これがたいへんな物入りでございますから、これはラジオで、ニュースとして候補者の氏名、党派、経歴等を毎日のように公営放送をいたしますならば、その必要はなくなつてくる。これは嚴禁してよろしいと思ひます。(拍手)
次に無料郵便の問題であります。これは全廃論と、もつと枚数を増せという、二つの意見がございます。廃止論の方は、選挙公報を拡充すれば二重になる、無料郵便と選挙公報と両方各戸に配達になる、従つて、これは不要であるという議論でありまして、これももつともであります。(拍手)しかし、第一回の普通選挙の記録を見ますと、一通だけは無料郵便が認められておりますが、この有権者あたり一通の無料郵便のほかに、福井縣においては、一候補当り平均しまして四十七万枚の有料郵便を発送しております。全國平均では、一候補当たり十五万三千枚を発送しております。わが國の現状では、他人の影響を受けずに、自己独自の見解で投票すると限らない選挙人が相当ある。こうした人の投票を獲得するために、候補者または第三者の書面が相当投票を獲得するに有効である。こういうことになると、この禁を潜つて推薦状を出す者が考えられるのでありまして、そうすると、法規を守つて一通も出さない、まじめな候補者に対して、はなはだ不公平な、不利益なことになる。こうした関係から、今しばらく、現行法で二万枚とあるのを一万枚くらいに減らして存置することが妥当であろうと思います。
それからポスターにつきましては、かつて愛知縣で一候補当たり平均十万五千枚というポスターをはつたことがあります。このとき福井縣では一候補者当たり七万二千枚、全國平均三万五千七百五十二枚のポスターを、べたべた方々にはつた記録があるのであります。愛知縣のように十万以上出しますと、一枚の紙代あるいは印刷代、はり賃、そういうものを考えますと、どうしても一枚当たり七円くらいは今はかかるだろうと思います。そうしますと、それだけで七十万円の金がかかつてしもうということに相なるのであります。このポスターは、現行法では御承知のように一千枚に限られておりますが、これは一方において公営の指名等の掲示というものがございます。これと重複をいたしますからポスターを廃止してしまつた方がよろしいと思います。そこで、公営の指名等の掲示を、もつとあでやかな、見やすいものといたしまして、一投票國五箇所以上くらいこれを掲示することにいたしたならば、ポスターの廃止ができると思うのであります。
それから政見のラジオ放送とか、あるいは公営の新聞広告とか、その他こうした公営の拡充はむろん徹底的にやりますとともに、政党のある程度の選挙運動の公認を認める必要のあることはもちろんのことであります。
以上のような公営をやりますとずいぶんとたくさんの金がかかる。いくらかかるかということは、まだ計算をいたしてみないのでありますが、おそらく十数億あるいは何十億という國費が要るのではないかと思うのであります。これは國家財政上、現在においては特に容易ならぬ負担であります点と、なお泡沫候補者や、ただで政府から宣傳てもらえる、こんな安い広告料はないというので名乗りを上げるやからが出てくるのに違いありません。これらは公営を著しく紊乱破壊する結果が憂慮せられるのでありますから、嚴にこれを防止する方法がとられなければならないと思うのであります。そこで、昨日岩本君の意見にもありましたように、数万円の公営費の納付金を出させるがいいと思う。これはむろん勝つても負けても返さない金であります。この他三万円くらいを供託金とする。そうして現在は、候補者の得票数をその区の定員で割つた数の十分の一以下の得票しかない場合に供託金を没収するということになつつおりまして、これは大体五、六十票以下という者が没収に相なることになるのでありますが、この総得票を定員で割つたものの十分の一というのを、五分の一に引上げたらよろしいと思う。それであるから、單記でありますと、少なくとも一万もしくは一万二千票以上とらないと三万円没収になる。それからまた連記制をとる場合にありましては、連記一人を増すごとに一万五千、三人の連記なら二万票、というふうに得票数を上げていつて、そうしてあとは没収する。そうして泡沫候補を抑制すべきであると思うのであります。
さて、徹底した選挙公営を実施するということになりますと、一面都道府縣、市町村の選挙管理委員会の仕事がたいへんであります。これを完全に実施することができるかどうか、私としても疑いなきを得ないであります。すなわち、法定された選挙運動の施行につきまして、もし欠陷・瑕疵がありますならば、選挙無効の訴えの原因となりますので、この点は慎重なる考慮が必要であります。外國の文献を調べてみましたが、私の調査いたしましたところでは、現行のわが國の選挙法に認められてある選挙公営、すなわち無料郵便とか、演説会の施設の公営とか、こういうもの以外にやつているところはあまり見当たりません。それで、今本議院において取上げているような公営をやるということになりますれば、これはまつたく新機軸であります。
そこで私は、次に公営と選挙区の大小ということについて、いささか考えてみたいと思うのであります。四百六十六名の定員に対しまして、昨年の選挙においては千五百九十名、すなわち三・四倍強の立候補者があつたのであります。選挙公営を徹底させることになりますれば、防止方法を講じましても、前よりも濫立があつて、減ることは考えらないのであります。五人の定員の選挙区で、地域が広く、しかも百箇町村、二百箇町村というものを包含して、そうして候補者は二十人、三十人ということになりましたら、立会演説会の公営なども事実実施不可能に陥りはしないかということが憂慮されます。
現行選挙区は、田舎は5人区でありまして、かえつて大都市が三、四人の区が多いのであります。大都市は五人区でありましても、選挙公営の実施上大なる支障はございません。しかしながら、農魚山村地帯の五人区となりますと、完全公営実施が非常に困難になつてまいるのであります。私個人の考えでは、選挙区を二人あるいは三人区とし、選挙公営をやりやすくしたらいいのではないかと思うのであります。一区あたりの定員数が少なくなりますれば、立補者の数はそのわりあいだけ減るばかりではなく、当選の可能性のある候補者がおのずからはつきりしてまいりますから、濫立はなくなるのではあります。このことは、かつて一人一区の小選挙区時代における状況を顧みれば明らかなところなのであります。すなわち五人の選挙区では、当選の僥倖を夢みおる人までも立候補いたしまして、五倍くらいの二十五人立候補したといたしましても、もし三人区にいたしますれば、その五分の三の十五人の立候補があるかというと、そうではない。三倍くらいの九人に減つてしまうのであります。この二十五人くらいの多数の立候補者のために廣い選挙区で選挙公営をやるということと、九人の候補者のために狭い選挙区で選挙公営をやるということとを比較いたしますならば、これは数や面積や量の問題ではなくて、質の問題になつてくると思う。すなわち選挙公営が可能か不可能かという問題にも相なつてくると思うのであります。
時間の関係上、この点に関する詳しい論証を省きますけれども、公営立会演説会一つをここに例にとつてみましても出演候補者が二十人も三十人もある。これを一体立会共同演説会にどいうふうにして時間をあんばいするか、もう半分くらいやつたところに聴衆はみんな帰つてしまうということになつては、この共同立会演説会には聴衆はほとんどこないということになりはしないか。これに反しまして、三人区で九人立候補いたすといたしますと、これに二十分の時間を與えても、九人でありますから三時間で済んでしまう。それからまた一方において、全市町村において一回以上は必ず立会公営演説会をやれという議論があります。これももつともでありますが、そういうようなことになると、五人区というような所では、町村の数が百箇町村あるいは百二、三十箇町村、多い所では二百箇町村もありますので、とうてい二十五日間の選挙運動期間中において全市町村で公営演説会を行うことはできない。そうなると、どこを省くかというようなことが大きな問題になる。これを、選挙区を小さくしますと、町村の数も半減し、あるいは三分の一近くになりますから、大体各町村において選挙公営演説会ができる。こういうことに相なると思うのでありまして、選挙区が大きいとなかなか困難な問題が出てくるのであります。
この選挙区に関しましては、公営の問題以外に二、三人区でありますならば、たくさんの利益がある。すなわち第一に、選挙費が、選挙人も少なくい地域も狭いから少なくてすみます。また補欠選挙に非常に便利である。第三に、選挙人としては、数が少なくなるから候補者の判定のつきやすい。さらにこれに二、三人の完全連記制という制度を採用いたしますならば多数派は一層多数となる。すなわち多数代表主義によつて政局安定の利益があつて、しかも新人の進出の機会にも恵まれる。また選挙運動の苛烈化が防止されまして、一人を買収しても三分の一が二分に一票の買収にしかならない。従つて選挙腐敗防止に非常に役立つのであります。また同一党派内の争いがなくなる。そして選挙運動は組織化、國体化されまして、政党の健全な発達を助長するという多くの利益がございます。しかも弊害はまつたくないと言つてよろしいと思うのであります。私個人としては日本の現段階において、理想として二、三人区の完全連記制が最良であると考える次第であります。
しかしながら、現行選挙区制の変更というものが諸般の情勢から困難といたしますならば、次善の策として現行選挙区のもとにおいて制限連記制を採用したらよい。これを主張するものであります。昨日岩本君の主張せられました單記投票というものは、二、三人区完全連記制の利益としておりますところの大体において逆に相なるのでありまして、次のような多くの欠点短所があるのであります。すなわち第一に、選挙運動は個人的となつて金が多くかかる。第二に、少数代表主義となりますから、いたずらに議会は小会派が多くなつて政局が安定しない、政局安定に逆行すると思うのであります。第三に、相変わらず買収等のやみの運動が行われまして、政治腐敗を招きやすいと思うのであります。第四は同一党派内の候補者が相争つて政党の発達を著しく阻害する。第五に、選挙人の議員候補者選択の範囲が、多数の定員に対してわずか一票、これではあまりに窮屈で、選択の範囲が狭過ぎると思うのであるます。たとえば選挙人の猫八さんは、数ある候補者の中で花ちやんと権兵衛が代議士として非常にりつぱな候補であると思いまして、二人ぜひ当選させてやりたいと思いましても、單記制では一人しか書けない。こうなりますと、猫八のりつぱな判断も半分は死んでしまうということになりまして、まことに残念であります。もし二人連記ということになりますれば、この猫八の考えはりつぱに投票に現れるということに相なるのであります。
これに反しまして、制限連記制を採用いたしますならば、單記投票の欠点を除きまして、しかも次に述べますような利益・長所があると思うのであります。まず第一に、一部の候補者に極端に偏在することが防止できると思います。第二は、候補者の選択の余地を認める。すなわち花ちやんと権兵衛二人に投票することができる。第三は、選挙運動は組織化、國体化せられまして、政党の健全な発達に資し、しかめ同一党派内の争いがなくなる。第四に、個人競争に伴うところの弊害を除去して、選挙の腐敗防止ができる。最後に、連記制も制限連記制ということになりまするならば、小会派あるいは新人の選出を比較的容易ならしめると思うのであります。
この制限連記制につきましては、岩本君は、一昨年四月の制限連記制の選挙は完全に失敗であつたと昨日述べられたのであります。候補者の品定めができない。たくさんの候補者が立つて、その結果、最初の一人は確かなものだとしても、二人目、三人目となると、これは女だからとか、この人には義理があるとか、これは変つた、おもしろい人間だからというような、きわめて無責任な考えから、選挙人が二人目、三人目を書いた。こういう岩本君の言われるような投票が多少あつたであろうことは、私も認めるものであります。しかしながら、一昨年の選挙区は御承知のように大選挙区であります。しかも終戦後間もなく、パージその他の関係で、候補者ががらりと変つて新顔だつた。そういう関係で、人数が五十人、百人という候補者でありまして、その中から適当な候補者を判定するということは、選挙人として相当の良識のある人でもなかなかむずかしかつたと思うのであります。
しかしながら、その後すでに二年半も時は経過しております。この間に新憲法が実施せられ、國民の政治に対する認識、政党に対する考え方、こういうものが非常に向上しておるのであります。しかも選挙区が一縣一区、あるいは非常に大きな縣で二区というような、選挙区から十人も十三人に出すような大選挙区ではなくて、三、五人という現行選挙区になりますならば、候補者の判定がつかないというようなこともなくなつてきた。こうした関係から、今後の選挙におきまして、一昨年の制限連記制のことをもつて反対するということは、まつたく理由のないことであると思うのであります。(拍手)以上のような理由によつて、私は現行選挙区制においては制限連記制の投票方法を採用すべきことを主張する次第であります。
なお、今回選挙法改正の機会において、不在者投票の事由をできるだけ拡張して、主権者たる國民の選挙権行使に完璧を期すべきである。殊に二十万船員中には、選挙権行使のできない者がまだ相当多いのであります。昨年の選挙におきまして、兵庫縣在籍の船員世帯が一万二千五百あるそうでありまするが、このなかで不在者投票をした者は、わずか五百八十四名にすぎない状況であります。この不在者の投票方法を簡易化すること、それとともに選挙人登録名簿についても新くふうを凝らすべきであると思うのであります。
終わりに、選挙法中に、選挙管理委員会は選挙人に対して投票の方法、選挙違反その他選挙に関する重要なる事項を周知徹底させる方法をとらなければならない、こういう規定をおいて、これを委員会の重要なる責任としたいと思うのであります。外國の立法例にも、この選挙管理委員会、あるいは選挙執行者に対して、選挙法の周知徹底に関して公営でやるように義務づけておる國も相当あるのでございます。
なほ、最近行われました数次にわたる補欠選挙の状況をみますと、金のある候補者はむちやくちやな運動をやつて、選挙無警察状態であります。選挙取締法規というものは完全に死分化しておる状態である。そこで私は、取締機関に対しまして、特に次のような倫理的な服従規定を設けたらどうかと思うのであります。すなわち、選挙の公正を確保するため、検察官並びに都道府縣及び市町村公安委員及び警察吏は、選挙運動の取締りに関する規定が嚴格に励行されるように努めなければならない、こういうことを選挙法中に設けたいと思う次第であります。
以上、気のつきました数項目につきまして意見を申し述べたのであります。最後に私は、りつぱな選挙法ができまして、金のかからない選挙が実現し、そうして政界が郭清せられまして、優秀な人材が金がなくともどしどし立候補して当選してこられて、わが國の民主政治が輝かしい発展を遂げるように祈つて、私の討論を終る次第であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/18
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019・笹口晃
○笹口晃君 本日の自由討議はこの程度に止め、明二十七日定刻より本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会せられんことを希望します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/19
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020・松岡駒吉
○議長(松岡駒吉君) 笹口君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/20
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021・松岡駒吉
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時二十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100205254X05019480526/21
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